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1969-02-08 第61回国会 衆議院 予算委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十四年二月八日(土曜日)     午前十時九分開議  出席委員    委員長 荒舩清十郎君    理事 櫻内 義雄君 理事 田中 龍夫君    理事 塚原 俊郎君 理事 中野 四郎君    理事 八木 徹雄君 理事 大原  亨君    理事 中澤 茂一君 理事 小平  忠君    理事 広沢 直樹君       足立 篤郎君    相川 勝六君       赤澤 正道君    植木庚子郎君       臼井 莊一君    江崎 真澄君       上林山榮吉君    仮谷 忠男君       川崎 秀二君    倉成  正君       小坂善太郎君    重政 誠之君       田中伊三次君    竹内 黎一君       灘尾 弘吉君    西村 直己君       野田 卯一君    野原 正勝君       橋本龍太郎君    福家 俊一君       福田  一君    船田  中君       松野 頼三君    角屋堅次郎君       川崎 寛治君    北山 愛郎君       久保 三郎君    阪上安太郎君       田中 武夫君    高田 富之君       楯 兼次郎君    楢崎弥之助君       畑   和君    華山 親義君       山内  広君    山中 吾郎君       麻生 良方君    小沢 貞孝君       塚本 三郎君    小川新一郎君       沖本 泰幸君    林  百郎君  出席国務大臣         内閣総理大臣  佐藤 榮作君         法 務 大 臣 西郷吉之助君         外 務 大 臣 愛知 揆一君         大 蔵 大 臣 福田 赳夫君         文 部 大 臣 坂田 道太君         厚 生 大 臣 斎藤  昇君         農 林 大 臣 長谷川四郎君         通商産業大臣  大平 正芳君         運 輸 大 臣 原田  憲君         郵 政 大 臣 河本 敏夫君         労 働 大 臣 原 健三郎君         建 設 大 臣 坪川 信三君         自 治 大 臣         北海道開発庁長         官       野田 武夫君         国 務 大 臣         (内閣官房長         官)      保利  茂君         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)      床次 徳二君         国 務 大 臣         (国家公安委員         会委員長)         (行政管理庁長         官)      荒木萬壽夫君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 有田 喜一君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      菅野和太郎君         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      木内 四郎君  出席政府委員         内閣法制局長官 高辻 正巳君         内閣法制局第一         部長      真田 秀夫君         警察庁長官官房         長       浅沼清太郎君         警察庁刑事局長 内海  倫君         警察庁警備局長 川島 広守君         行政管理庁行政         管理局長    河合 三良君         防衛庁防衛局長 宍戸 基男君         防衛庁人事教育         局長      麻生  茂君         経済企画庁調整         局長      赤澤 璋一君         経済企画庁国民         生活局長    八塚 陽介君         法務省保護局長 鹽野 宜慶君         外務省国際連合         局長      重光  晶君         大蔵省主計局長 鳩山威一郎君         大蔵省主計局次         長       船後 正道君         大蔵省主税局長 吉國 二郎君         大蔵省理財局長 青山  俊君         厚生省環境衛生         局長      金光 克己君         厚生省社会局長 今村  譲君         厚生省児童家庭         局長      渥美 節夫君         厚生省保険局長 梅本 純正君         厚生省年金局長 伊部 英男君         農林大臣官房長 大和田啓気君         農林省農林経済         局長      亀長 友義君         農林省農政局長 池田 俊也君         農林省畜産局長 太田 康二君         農林省蚕糸園芸         局長      小暮 光美君         食糧庁長官   桧垣徳太郎君         運輸省鉄道監督         局長      町田  直君         自治省行政局長 長野 士郎君         自治省財政局長 細郷 道一君         自治省税務局長 松島 五郎君  委員外出席者         厚生大臣官房審         議官      高木  玄君         日本国有鉄道副         総裁      磯崎  叡君         専  門  員 大沢  実君     ————————————— 二月八日  委員松浦周太郎君、阪上安太郎君、永末英一君、  石田幸四郎君及び鈴切康雄辞任につき、その  補欠として福家俊一君、華山親義君、塚本三郎  君、沖本泰幸君及び小川新一郎君が議長の指名  で委員に選任された。 同日  委員華山親義君及び塚本三郎辞任につき、そ  の補欠として阪上安太郎君及び小沢貞孝君が議  長の指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和四十四年度一般会計予算  昭和四十四年度特別会計予算  昭和四十四年度政府関係機関予算      ————◇—————
  2. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 とれより会議を開きます。  昭和四十四年度一般会計予算昭和四十四年度特別会計予算昭和四十四年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題とし、総括質疑を行ないます。山内広君。
  3. 山内広

    山内委員 私は、社会保障社会福祉、それから現在置かれている国民生活状態といったようなものに焦点を合わせまして、以下御質問申し上げたいと思います。  このことは、沖繩とか安保、大学問題と違いまして、非常にじみな質問になりますけれども国民一般は非常に深い関心を寄せている点だと思います。特に総理社会開発人間尊重を高く政治スローガンとして掲げておられるのでありますから、いろいろ御見解もたくさんおありになると思いますので、ひとつそういう点に誠意のある御答弁を期待いたしたいと思います。  私は、四十四年度の予算編成にあたりまして政府のとった態度社会保障福祉といったような問題を通してみますると、実に不可解な思いを禁じ得ないのであります。政府はどうも憲法に忠実でない、背中を向けているというので国民一般の評価であります。私も、憲法を今回もさらに読んでみまして、一般経済予算、そういうものと特別な取り扱いを当然憲法上受けるべきものである、そういう点を私はここに強調せざるを得ないのであります。総理に対してはなはだ失礼でありますけれども社会保障社会福祉といったものの生まれる第二十五条はもうあまりにも有名な、訴訟にまでなった事件でありますから、これは申し上げませんけれども、その前段になる十三条というのはどうもお忘れになっておるんじゃないか、そういう気がいたしますので、いまここで十三条の条文をちょっと読んでみます。この十三条には「すべて國民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に對する國民の権利については公共福祉に反しない限り、立法その他の國政の上で、最大尊重を必要とする。」と書かれてあります。これがはたして貫かれておるかどうかということ。次の二十五条でも一項と二項とありまして、一項は暗記されておられると思いますから、二項だけはちょっとやはり記憶を呼び起こす必要があろうと思います。「國は、すべての生活部面について、社會福祉社會保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。」と規定されておる。ところが、このたびの予算編成にあたりまして、この精神が貫かれたかどうか、この点を少し立証していきたいと思います。  今回、幸いにして非常に日本経済も伸びる見通しから、一兆二千億という自然増が見積もれるということで、政府にとっては思いがけない、われわれにすれば宝くじが一千万円当たったようなものであります。ただ、こういう際に、政府自然増に見積もれる分を、事業には九千億ほど出しております。三千億は減税それから公債に振り向けるということで、この考え方は、別な角度から別の方がいろいろ指摘されておりますので、触れませんけれども、この中で、いつでも毎年の予算編成ではそうでありますけれども、いずれ復活要求が出てくるであろう、そういうことで今回は五百六十億というものをまず調整財源としてお持ちになった。大蔵大臣それを握って、そして復活要求に振り向けた。この場合に、この社会保障福祉予算も同じ扱いを受けておる。私は、この態度が、政府憲法のこの精神を貫かないという一つの大きな例証だと思うのです。社会保障は私どももこれは義務があるし、政府ももちろんこれは責任がある。隠し財源を持っておいて、あるいは復活要求がきたときに自分ポケットマネーを分配するようなそういう態度というものは、これは憲法精神に反しておる。これは何も今回に始まったことではない。厚生省のお役人に聞いてみると、社会福祉予算というのはいつでもあと回しになるという。経済効果のあがる経済にはどんどん振り向けるけれども、その余った部分を自分ポケットマネーのようにしてくれておる。こういう一般予算つけ方と同じ取り扱いをいたしますから、世間では、選挙目当て総花予算だとか、あるいは防衛、治安にたくさん予算をつけた、そのまままる出しにすれば国民がますます怒るから、それを薄めるために保障費をちょっぴり色をつけた、こういう考え方より一般国民は持たないわけだ。私ははなはだ残念なことだと思います。  こういう予算編成の気持ちを改める必要があるが、来年度からはもっと社会福祉は、憲法精神に照らしても、そういうかけ引き国民人気取り総花式予算というようなことでなく、社会保障だけは優先的である、もう全部さらけ出して、そうして福祉国家建設のためにはかけ引きなしにこれだけ組んだんだ、よその経済予算と比較してみるとそれくらいの英断をもって編成してもらいたいと思うわけであります。総理並びに大蔵大臣のこの問題に対する御見解をまず最初に承っておきたいと思います。
  4. 福田赳夫

    福田国務大臣 社会保障につきまして国が重点を置かなければならないことはもちろんなんでありまして、四十四年度の予算でも、予算編成方針の根幹といたしまして、歳出では社会保障社会資本充実、この二つに最大重点を置くという旗を掲げてやっておるのです。大蔵省予算原案、これから最終的に予算案がきまるまで紆余曲折がありますが、これは大蔵省で骨と皮ばかりの予算をいつも出します。そうして各省の、また各界の意見最終決定までの間に聞く、そうしてなるべく均衡のとれたりっぱな肉のつく予算に仕上げる、こういう慣行がとられておるのでありますが、これは明治以来それがいいのだということでやられておる仕組みでございまして、これをまたどういうふうに変更してまいりますか、なかなかむずかしい問題かと思いますが、要するに結果を見ていただきたい。結果は、予算編成方針に申し上げておるとおりです。社会保障社会資本充実、これにまさに重点が置かれまして、社会保障予算は前年度に比べて一六・一%の増加である。今度九千四百億、もう来年は一兆円を展望し得るという予算額になってきたわけでありまして、私は非常に感慨深いのであります。私が代議士に出ました直後数年間というものは、社会保障費を千億円の台に乗せたい乗せたいと、こういうのが皆さん同僚議員の念願でございましたが、まさにそれが十倍、一兆円になろうとしている。それほどさように社会保障には重点が置かれておる、かように御了承願いたいのです。
  5. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいま大蔵大臣から社会保障についてのものの考え方を申しましたが、私はそれに答えようというわけじゃありません。最初山内君が、何か内政問題、ことに社会保障というようなじみな問題と取り組む、そういうことで国民の理解を求めるような特に発言がございました。私は、本来、内政にうんと力を入れないことには手が国際的には伸ばせないという基本的な考え方がございます。その意味では山内君と私の考えが同一でありますので、そこでただいま立って、ぜひひとつ内政についての審議を積極的にやっていただきたい、そのうちでもことに国民生活、いわゆる弱者、弱い者、日の当たらない者、そういうものについての意見を率直にひとつ聞かしていただきたい、かように思って立ち上がった次第であります。どうぞよろしくお願いします。
  6. 山内広

    山内委員 大蔵大臣は結果を見てくれと、こうおっしゃいます。その結果はどうなっているか。これから私、内容を分析して、はたして大蔵大臣の言われるとおりかどうか実証していきたいと思います。  私は、非常にこの社会保障費が少な過ぎるという見地に立っております。それはどういう点で言えるかと申しますと、前年度の伸び率をいま大蔵大臣は引用されたわけですけれども、私も与えられたこの資料を拾ってみますと、大臣がいばるほど伸びておらぬのであります。  この前年度との対比をちょっと見てみますと、四十一年度は、総予算は一九・六%伸びております。ところが、社会保障費は一六でありまして、この総予算に比べますとマイナスの三・六であります。四十二年度は、総予算は前年度に比べまして一六・二であります。ところが、社会保障費は一六・八でありまして、この年は〇・六確かに上回っております。四十三年度は、また総予算が一一・八伸びているにもかかわらず、社会保障費は一〇・三でありまして、かえってこの伸び率は総予算に比べて一・五%低くなっている。四十四年度は一五・八%に対して保障費が一六・一でありますから、確かに〇・三は伸び率が上回っておりますけれども、わずか四十一年から四十四年のこの四カ年間を総計しましても、マイナスのほうが五・一で、プラスのほうが〇・九でありますから、今回少し〇・三伸ばしたって、大蔵大臣、いままでのマイナスをまだカバーできないじゃありませんか。埋め合わせができないじゃありませんか。単年度の四十四年度だけとってもわずかに〇・三、あんまりこれは胸を張っていばれた予算編成とは私は思えません。  さらに国民所得割合を見ましても、これは四十三、四十四年はまだ私の手元に資料が届いておりませんし、またちょっと計算もなかなかできない段階だと思いますけれども国民所得との割合が四十二年で二・一〇、四十一年が二・一六、四十年度が二・一八でありますから、国民所得に対して占める社会保障費割合というものは、わずか二%ちょっとであります。こういう点、あるいは総予算との割合を見ましても、四十三年度が一四、四十二年度が一四・二、四十一年度が一四・一、わずかに一四であります。  それじゃ、一体外国ではどんなくらいに社会保障費を使っているかということをちょっと資料からとってみますと、この社会保障費に向けられる予算というものは、国民の総生産に対して日本は五・二であります、この資料に間違いなければ。ところが、あとはデンマークでもフランスでも西ドイツでもニュージーランド、ノルウェー、全部一〇%をこえておるのであります。大きいところは西ドイツで一五・三であります。日本の三倍以上の社会保障費をどんどん組んでおるというのが外国の例であります。  これがどうして胸を張って大蔵大臣がいばれる予算になっておるのか、その点をもう少し聞かしていただきたいと思います。
  7. 福田赳夫

    福田国務大臣 山内さんの数字と私のほうはだいぶまた違うのですが、国民所得に対しまする比率を申し上げますと、昭和九年から十一年、これはわが日本戦前標準時であります。このときには国民所得の実に〇・一%、これが社会保障費であります。(山内委員戦争前のことを出したってそれはだめだ、戦後のものを出してください。」と呼ぶ)それがお話しのように二・一%となってきておる。しかもその間縮むという時期はないのです。ずっと昭和三十年代は伸びてまいりまして二・一%、ここへきているのです。努力あとをひとつお認め願いたい。  それから、総予算の中でも、この戦前標準時には〇・七%なんです。それが三十年代になりますと九%、一〇%、一一%となりまして、四十四年度は一四・一%と、こういうふうになってきておるのであります。もっとも、国際社会の中ではわが日本のこの社会保障体系のスタートがおそいものですから、この体系の中ではそういい地位にあるとは申し上げられません。しかし、非常な勢いでわが日本社会保障体系というのは伸びておる。努力はされておる。この点は十分御了知願いたいのであります。  また、国際社会の中における地位につきましても、いまどういう資料で申されたのか存じませんが、一番権威のあるのはやはりILO資料であります。ILO資料に従いますると、そう悪いところにはきておりませんので、これも御了知願いたいのであります。
  8. 山内広

    山内委員 大蔵大臣は、昭和九年という戦争前の状態といまを比べておる。だから、いまの日本憲法を読み直してもらって、新しい生まれ変わった日本にふさわしい予算を組めと私は言っておるのです。戦争前のああいう軍部独裁で、むちをもって国民をどんどんどんどん使ったとき——いま憲法によって福祉国家をお互いに建設しようとしているのでしょう。そういう戦前資料から伸びているからといって、いばるなんというのは、そこからが、もうすでに出発点から私、間違っておると思うのです。これは前提になる議論でありますから、何かの機会にもう一度この点は明らかにしたいと思います。  今度社会保障費焦点を合わした質疑をやれということで党からテーマが与えられまして、私もいろいろ調べてみました。ところが、一番先に壁にぶち当たったのは、この社会保障関係行政窓口というものが実に複雑なんであります。自分で調べようと思っても、どこへ行ってどれを調べればわかるのか、非常に多岐になっております。  その行政のあり方をちょっと申し上げますと、もちろんこれは厚生省、労働省が主になるわけでありますけれども関係しておる省は、大蔵省自治省運輸省、郵政省、文部省、農林省、建設省、人事院、ほとんど各省にわたっておるわけであります。しかも、その社会保障関係を持つ国民の側から申しますと、健康保険厚生年金社会福祉事務所へ行かなければならない。失業保険をもらおうと思えば、公共職業安定所窓口になります。労災保険になると、これは労働基準監督署健康保険組合共済組合は各組合事務所国民健康保険国民年金福祉年金は市役所や市町村の役場へ行かなければならぬ。予防接種をしようと思えば保健所へ行かなければならない。同じ社会保障といっても、これはたまたま休みで、ぜひこれとこれをきょう用を足したいと思っても、役所ばらばらだし、窓口がこんなにたくさんある。これはたいへんな不便を利用者はしております。  特に私はこれは行政管理庁にお聞きしたいと思うのですけれども、いろいろ高度の行政改革は計画されておりますけれども国民生活に密着した、毎日国民と接するこういうお役所をこんな形に置いていいのかどうか、どういうお考えでこういうばらばら行政をそのままに見のがしておるのか。もう少し行政簡素化とか経費節減、あるいは利用する人の便宜をはかるという見地に立ったら、どういうものにも手をつけられる必要があると思うのです。こういう点について、関係大臣の御答弁をいただきたいと思います。
  9. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 お答え申し上げます。  確かに、御指摘のような点は、国民の側から見ましてすこぶる不便であると存じます。できれば、その窓口をせめて合同庁舎的にでも集めまして、便宜をはかる課題がそこにあると思います。行政管理庁としましても、関係省庁と連絡をしながら問題点として取り上げつつはございますけれども、現実問題としてはなかなかスピーディーにまいりません。今後も検討いたします。
  10. 山内広

    山内委員 そのスピーディーにいかないというのは、どういう点がネックになるのか、もう少し具体的に——これは事務当局でもけっこうですから、どういう点がガンになってできないのか、いつごろ手をかけて、いつごろ実現するのか、方向はこうなんだというように、何かもう少し具体的な御説明をいただかないと納得できません。
  11. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 率直に申し上げれば、なわ張り根性であると思います。自分の仕事は自分窓口でやりたい、これはまあ人情として一応わかりますけれども国民本位考えれば、さようなことは許されないという課題として取り組みたいと思います。
  12. 山内広

    山内委員 各お役所のなわ張り根性で、こういう国民の毎日利用しておる窓口行政の一元化もできない、なわ張り根性がそのガンだということを聞かされては、実に残念なことに思います。  一体、総理はこういう——私も確かに役所のセクショナリズム、なわ張り根性というものは相当の妨げになっておると思いますけれども総理国家公務員人員を三カ年で五%減らせということを、反対にもかかわらず強力に打ち出しておるでしょう。そういうものと思い合わせれば、できないことはない。どうしてこのなわ張り根性を払拭するための努力をされぬのか、総理の信念のほどもちょっと聞いておきたい。
  13. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 行政改革の基本はそういうところに置いてあるのです。行政能率をあげる、効率をあげる、かように申しますが、真に国民のための行政国民にどうしたら便利になるか、そういう一つの目標を立てて、そこに公務員考え方を集中していこう、これが行政整理の基本的な考え方であります。行政整理が進んでいないからただいまのような御批判がございます。私はむしろ、いま行政管理庁長官から率直な意見を言われておる、これをひとつ直していかなければならぬと思っております。私は、人が多いばかりじゃなく、効率的に考えれば必ず減らせる、かように考えております。
  14. 山内広

    山内委員 私は人を減らせと言っておるのではないのですよ。こういうところで経費節減もできるじゃないか。人を減らすならば、こういう行政をもう少し整理統合してうまくやれば、これは反対のできない人員の過剰が出てくる、そうすると、足りなくて困っておるところへそれは幾らでも転換ができる。これがほんとうに無理のない首切り行政につながることなんです。それを、ただ権力でもって三カ年で五%を減らせ、こういうことは、やはり一律にそういう態度は困るのであって、こういう点に手をつけられて、そうしてむだのないようにおやりになったほうがいい、こういう見解を私は申し上げたわけであります。しかし、それもあまり長いこと時間をかけておられませんので先に進みます。  五十六健保国会といわれましたあの国会におきまして健保特例法が出ました。そうして二カ年間で抜本改正案をつくりあげる、そういうことで政府は公約もし、私どももこの二カ年にはさだめしりっぱな改正案が生まれるであろうと期待をかけておりましたが、いまもってできてこない。抜本改正案は出てこない。そうして、またまたことしの八月の期限切れ以後二カ年ぐらいはこの特例法を延長しよう、そういうふうに報ぜられております。  一体、この二カ年間何をおやりになったのか、どうしてこの抜本改正案ができなかったのか、その点について、もう少し詳細にお伺いしたいと思います。
  15. 斎藤昇

    ○斎藤国務大臣 お説のように、健保特例法成立の際に二カ年の期限をおつけになられまして、政府は二カ年内に抜本改正をいたしますというお約束をいたしたのでございますが、自来、厚生省におきましては一試案をつくりました。一昨年の十一月ごろであったと思います。ところが、抜本改正の中身は非常に広範にわたりまするし、利害関係を持たれる諸団体もたくさんおられるわけであります。自民党のほうにおきましても十分検討をいたしたいということで、自民党では医療基本問題調査会を特に設けていただきまして、そこでまた各方面の意向を聞き、専心、最もいい案を考えようということで検討してもらっているわけであります。あまりおくれましてもまことに申しわけないと思いまして、私からも一日も早く案を出していただきたいということをお願いをいたしておりますので、間もなく党の案も見せてもらえるだろうと思いまするし、それによりまして、できるだけ早く政府の案もきめ、必要な審議会等に付議をいたしまして、提案の運びに持ってまいりたい、かように思っているわけであります。  しかしながら、ことしの八月三十一日、特例法の期限切れまでに成立をし、施行するということはきわめて困難である、かように考えますので、まことに申しわけないのでありますが、特例法のさらに延長をお願いしなければならない、かように考えておる次第でございます。
  16. 山内広

    山内委員 はなはだ残念な御答弁をもらったわけでありますが、二カ年間の期間を置いたということは、非常にこれは長い期間なんですよ。次の国会に出せというんならまだどうかしれませんが、問題点はどこにあるのか、もう特例法をつくる前からちゃんとわかっておるのであって、それをどういうふうに解決するかということは、これはもう政府の腹一つなんです。しかも、自民党にお伺いをたてたら、自民党が問題が多くてまだつくってないのだ。そうだったならば、一党の党利党略によってまたまた二カ年間、そうすると、これは前後四年になりますよ。総裁、これをどうお考えになりますか。
  17. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いま伺って、厚生大臣も苦労していること、これはやはり御同情願いたいと思います。また、先ほど山内君からも、社会保障関係が各方面にわたっている、たいへん多岐にわたっている、また複雑な仕組みだ、こういうお話もございます。そういう点も、やはりそういう際にこれらと取り組んでいかないことには解決はできない。問題は一つだけ取り上げましてもたいへんな問題でございます。御鞭撻をいただきまして、ひとつしっかりやることにいたしたいと思います。
  18. 山内広

    山内委員 厚生大臣にもう一つだけこの問題でお伺いしておきますけれども、かりに八月からまた二年延びるとすれば、どういう影響、どういう弊害、実害が起きるとお考えになっておるか、その点をまず明らかにしておきたい。お答えを願いたいと思います。
  19. 斎藤昇

    ○斎藤国務大臣 ただいま抜本改正をなぜしなければならないかという点から考えますると、医療保険は、御承知のようにいろいろ種類がございます。その保険間におきまして国民は全部医療保険に入っているという形になっておりますけれども、保険の種類によりまして給付が違う、保険の負担が違う、保険料が違うというような点、ことに日本の人口構造も非常に変わってまいりまして、老人層がふえてまいりました。したがって、これらの老人層はみな国民保険のほうに入ってくるわけでありますが、したがって、そういたしますると、国民保険のほうは非常に、何といいますか、財政がむずかしいということになってくる。したがって、国民総医療保険という観点から考えますると、その原資を公平に分けなければならないという点もございます。  また、ことに御承知のように最近の経済の発展に伴って、国民の体位を向上させる、そうして、医療だけでなしに、さらに予防に力を入れるというような点等も考えますると、職域保険と地域保険、これをどういうようにかみ合わせていって、そうして地域の要請に応じる保健体制——保健というのはインシュアランスでなしに、国民の健康を保持していくという体制とかみ合わせていくかという点を彼此勘案をいたしますると、非常にむずかしい点が多いのであります。その間に利害関係も錯綜するというわけであります。同時に、このままほうっておけば、さらに先ほど申しますような人口構造の変化、いろいろな点から保険財政がますます困難になってくるという点がございまするので、一日延びれば延びるだけそういった支障が長引いていくというわけでありますから、一日も早くこれは抜本改正をやらなければなるまい。できるならば、この国会中にでも骨子をお示しを申し、あるいは、できるなら提案だけにでもこぎつけたいという努力をいたしておりますので、御了承いただきたいと存じます。
  20. 山内広

    山内委員 大臣は、できればこの国会に提案したいと言われたが、それはぜひ早くおやりにならないと、複雑なものは解消するどころか、ますます困難が増すわけです。ぜひひとつ一日も早く御提案できるようにおはからいいただきたいと思います。  ところで、この抜本改正案がまだできない過程において、日雇健保だけが提案されたわけであります。私はどういうわけかこれが非常にふに落ちない。それで、かなり立ち入っていろいろ調べてみました。ところが、この審議会その他いろいろなところで、日雇健保もいろいろ問題はあるし、赤字も増してはおるけれども、抜本対策ができるときにこれも手をつけたい、それまでは手をつけない、こういう政府側の意向が伝えられておるわけであります。  なぜこの日雇健保だけ抜本改正を待たないでこれが急がれたのか、その点をまず明らかにしていただきたいと思います。
  21. 斎藤昇

    ○斎藤国務大臣 ただいま申しますような意味合いにおきまして、抜本改正はできるだけ急いでやりたいと、先ほど申したとおりでありますが、これが完全実施を見ますのには、やはりまだ、法案を通していただいてから一年あるいは一年有半かかるかもわからぬと思うのであります、機構そのものを変えていこうというわけですから。したがって、いま緊急に保険給付の内容の改善をいたしたいと思っております点に、まず出産手当の問題がございます。これは各保険に通じてやりたい。出産手当は、御承知のように、いま日本のそういった方面から考えますると、非常に緊要に考えます。したがいまして、日雇保険だけでなしに他の保険につきましても、出産手当を増額いたしたいと考えまするので、日雇保険以外の保険につきましても、保険給付の改善をそういう意味においてはかりたいと考えまして、これは抜本改正とは別に、この国会で成立をお願いをいたしたい。予算措置もお願いをいたしておるわけでございます。同時に日雇保険はここ数年間全く手をつけておりません。したがいまして、一言で言えば、日雇保険に手をつけるのはタブーだとさえいわれて今日まできたわけでありますが、いずれ抜本改正の際にはその中に取り入れてやります。出産手当を他の保険に通じて行ないます際に、日雇保険だけは手をつけないということは、私は日雇いの方々に対して非常に不親切だ、かように思います。同時に日雇保険の中の医療の給付期間の制限も、他の保険に比べますと非常に厳格であります。これをゆるめる必要があるんじゃないだろうか。それから傷害給付の点もきわめて低いのであります。これもある程度引き上げまして、そして日雇保険の対象になられる方々の保険給付は、もう二カ年待てといわないで、この際出産手当を増します際に同時にいたしたい。同時に保険料の点も、これも長い間改めておりません。一日の標準賃金四百八十円未満と四百八十円以上、この二つの分類しかないわけであります。そしてしかも、一日四百八十円未満はたしか二十円でありましたか、それから四百八十円以上は二十六円ということであったと思いますが、今日日雇いの賃金が四百八十円以下というものはきわめてまれである。むしろ一千円、千五百円というような賃金が支払われているわけでありますから、したがってそれに見合う程度の保険料負担もしてもらって、保険料給付を高めて、日雇い者の方々に対するしあわせを一日も早くしてあげたほうがよろしい、かように思って日雇保険の改正案を提案いたしたいと考えておりますので、御了承をいただきたいと存じます。
  22. 山内広

    山内委員 とても了承できません。この抜本改正を待たないで、早くお産手当を増額してやりたいのだと、親心のように言われる、そして最後にちょっぴり保険料の値上げを言っておりますが、ねらいはこの保険料の値上げにあったのでしょう。二十円から四十円を、今度は最高九十円になるのです。三段階に分けて、三倍以上の保険料の値上げでしょう。それが親心ですか。しかも、この組合員というのは非常に気の毒な、最も抵抗力の弱い、赤子の手をねじるような、権力を使えばできるような、いわば力の薄い人たちなんです。抵抗力のない人たち、そういう人の掛け金を三倍にぐんと上げておいて、親心だ、この人たちのことを思ってやったのだ、全然考えが逆ですよ。これはもう抜本改正のできるまで現行どおりおやんなさい。それほど親心があるなら……。これを勧告しておきます。どうぞ御答弁を……。
  23. 斎藤昇

    ○斎藤国務大臣 保険料の値上げは先ほど申し上げましたとおりでありますが、その程度の保険料の値上げをやって、そうして内容の改善をやる。また保険経済も安泰にするということは、私は結局日雇い者の方々のためだ、そう信じておるのであります。また保険料の値上げに伴い政府も負担をするわけでありまするし、日雇い者の方々のためにならないという御判断を国会でしていただくなら、それにも従います。私は国会の皆さんにその点を御審議をいただきたい。私の出したいと思いますねらいは、先ほど申し上げましたとおり、そのほうが日雇い者の方々のためになるだろう、かように信じ込んでおるのであります。
  24. 山内広

    山内委員 いまの大臣の御答弁の中に非常に重要なお話がありました。国会にかけておるのだから、国会でこれを否決したらそれに従うという、そういう御答弁でしたね。もう一回これは確認しておきます。
  25. 斎藤昇

    ○斎藤国務大臣 政府は法案を出しまして、国会がそれはいけないとおっしゃれば従うのが当然であります。国会は、与野党を通じて十分政府の出した真意を御審議をいただくというのが国会であろうと思います。私は、この問題だけではありません、すべて国会の議決に従ってやっておるというのが、これが日本の政治のあり方である、かように思います。
  26. 山内広

    山内委員 いや、私がそれを念を押したということは、そういう一般論ならこれはあたりまえのことで、国会が否決したら実行できない。あなた方は提案された以上それを通そうと努力することはあたりまえ、それを私から聞いたわけでもないのに、あなたみずからがこの抜本改正を待たないで、これだけを例外としていま提案することはやはり無理なんだ、何かいろいろな事情があってお出しになったかもしらぬけれども、強い国会の意思を、いわゆるこれを抜本改正の日まで延ばせ、そういう意思を期待して、いまああいう御答弁があったのではないか、そういうふうに私は受け取ったものですから、その点を確認したわけであります。
  27. 斎藤昇

    ○斎藤国務大臣 私は逆に、必ず国会は、ああなるほどそうだなといって、御理解いただけるであろう、こう思ってその反対面から申したわけであります。
  28. 山内広

    山内委員 大臣はまことにどうも詭弁を弄して、せっかく尊敬していた厚生大臣、この委員会で台なしにしたような印象を私、受けるわけです。  しかも先ほどもちょっとお話がありましたが、傷病手当も増した。二十二日を五日間延ばして二十七日にしただけなんでしょう。あわせてお聞きしますけれども、この組合員が男と女と分けて幾らおるのか、組合員の数とそれから年齢。もう一つ分べん手当、出産手当を増額したと言われますけれども、四十四年度に何件ぐらい出産手当の件数が出て、予算をどれくらいお使いになる計画を立てておるか、これをちょっと聞かしてください。非常に事務的になりましたけれども、先ほど出産手当を増額の理由にしていますから……。
  29. 斎藤昇

    ○斎藤国務大臣 数字の点は局長から答えさせます。
  30. 高木玄

    ○高木説明員 日雇健康保険の被保険者数は、四十二年度末現在で百三万人でございますが、その男女別、年齢別は、ちょっと調べて至急お返事申し上げます。出産手当金も調べておりますので、至急お返事申し上げます。
  31. 山内広

    山内委員 お調べになって御回答があると思いますけれども、そのときあわせて、今度の保険料の値上げによってどれだけの財源がふえるお見込みか、それもちょっとあわせて……。
  32. 高木玄

    ○高木説明員 今回の保険料引き上げが原案どおりでまいりますと九月実施でございまして、保険料の増収は約五十億でございます。
  33. 山内広

    山内委員 なぜこういうこまい数字を私は聞いたかというと、先ほども認めているとおり、いま日雇健保の人たちは非常に老齢化しておるわけです。失対労務者として働く人たちだって、もうほとんど子供を産む年齢を通り越している人ばっかりなんですよ。それを、出産手当を上げたということを口実にして保険料を三倍も上げておる。これは大蔵大臣も、あなたは社会保障費を上げた上げたと言うけれども、すべての上がった保険料のことをちっともあなたは言ってない。国民はみんなこの保険料を値上げすることに脅威を感じておる。物価は上がる。保険料も上がる、そういう点を総理は特にお考えにならないと、特に私、憲法からものを言ったということは、こういう日雇健保の適用を受ける方々というのは非常に弱いのだ、そういう人の保険料を三倍も上げている。出産手当なんてどういう数字が出るか知りませんけれども、これは私は幾らもないと思うのだ。手当を増額したと言うけれども、この恩典に浴する人が何ぼあるかということに私は非常に興味を持っている。まああとからこれは数字が出たときにこの点はまた議論をしたいと思います。  次に、児童手当の創設についてお伺いしたい。  これは各党からも質問が出、私も前の五十八国会で、本会議総理の御意見もただしております。歴代の厚生大臣、鈴木善幸さんも園田直さんも、もう四十三年度からやるという、あれは公約です、発言の記録を読んでみれば。どうしてこれがいまもって実現できないのか、世論は非常にきびしいのです。臨時行政調査会でもあるいは人口問題審議会、全国知事会、市議会議長会、みんな児童手当を創設してもらいたいと、決議されておる。これは総理も御存じだと思うのです。それからまた、市町村では国がやってくれるのはもう待っておれない、自分たちがやったらそれが誘いの水になって国もやってくれるであろう、そういうことで、金額はわずかでもすでにこれを実施している地方公共団体がどんどん出てきております。なぜこの実施をおくらしておるのか、この点を少し明らかにしていただきたいと思います。
  34. 斎藤昇

    ○斎藤国務大臣 児童手当も、御承知のように厚生省に児童手当懇談会を設けまして、そこで各国の児童手当の制度や、国内に置いたならばどんな制度が望ましいであろうかということを検討してもらっておったのでありますが、その答申は昨年の十二月の二十日にいただきました。これは一年有半かかってつくっていただいた答申でございます。この答申の内容、またその答申の内容を積み上げるまでのいろいろの資料等も拝見をいたしますると、なかなかそれだけ時間はかかったであろうと私は敬意を表しております。  ところが、この答申のとおりに実施していいかどうか、私、答申をいただいて検討してみますると、まだ大いに考えなければならない点が多々あるように思うのでございます。したがいまして、私はその答申を十分検討をいたし、今年、その答申の中にもありますように、児童手当審議会というものを設けて、そこで広くもう一度審議をしてもらうのが望ましいという答申になっておりますから、その線に従って本年は児童手当審議会をつくっていただき、同時に厚生省のほうにおきましても至急に政府の素案をつくってそれにかけ、また党のほうの御意見も伺って、来年には必ず出せるようにいたしたい、かように考えております。総理もかねがね言明しておられるところでありまするし、また非常に急いでおられます。私も非常に急いでおります。  しかしながら、これはいままでの日本の賃金体系やあるいはいろいろな児童に関する給付等がございますから、それらとはたして調整をしなければならぬか、せずにやれるか。また答申案によりますると、ちょうど健康保険とそれから国民健康保険の二本立てのような形になっておりますが、そういう形がはたして児童手当として望ましいかどうか、私は若干疑問を持っておるのであります。世界で六十二カ国児童手当をいたしておりますが、しかし国民全体に対する児童手当をつくっております国は十二カ国しかありません。あとの国はほとんどいわゆる被用者に対する児童手当であります。被用者に対する児童手当、日本では賃金体系の中に相当これが織り込まれているわけでありますが、そういう観点から考えまして、私はむしろ国民全体の児童手当ということを考えたいと思います。そしてまた被用者に対する児童手当が重くて、被用者でない農民あるいは自営業者、これらに対する児童手当が少ないという、これは財政上の配慮でありましょうが、答申になっておりますが、それでよろしいかどうかという点にもいささか疑問を持っております。同時に、日本の人口構造の変化にかんがみまして大いに考えなければならぬ点がある、かように考えまするので、これは少なくとも近いうちに厚生省の基本的な考え方を出しまして、そしてその審議会を国会で認めていただければその審議会に付議し、来年には必ず児童手当法を出せるようにいたしたい、かように思って非常に心せいているわけでございます。
  35. 山内広

    山内委員 答申の中身を検討すると考えさせられる点が多々あるということで、その中身を若干いま披瀝されたわけでありますけれども大臣がいまここで述べられたようなことを迷っていたら、とても来年も再来年もできませんですよ。これは踏み切らなければいかぬのです。大臣も言われるとおり、もう世界で六十二カ国も大きな国は全部やっておるのです。   〔委員長退席、櫻内委員長代理着席〕 どうも大臣の児童手当に対する考え方は、少し違っておると思うのです。児童手当は決して救貧対策ではない。貧乏で困っている人、これを救済するために児童手当を創設すると考えたら、これは大きな間違いです。教育に対する社会の責任を果たすのだ。そういうことで、いまちょっとお話しのあったとおり、被用者だろうがなかろうが、全部国として、将来大きくなって国のお役に立つ子供を育てる教育に対する社会の責任を果たすことなんです。ですから、たとえばいま話の出ました扶養手当をやっているのだ、これは救貧対策です。給料が安くて困っている者に、月給が安いからかわって家族の扶養手当をやっておるのだ、あるいはこれは前の本会議総理の口からも出たのですけれども、課税の際に控除の恩典も与えておるのだ、これもどこから出たかというと、救貧の考え方、貧乏に対する手厚い——手厚いというのはおかしいですけれども、そういう救貧対策から生まれた考え方です。  この六十二カ国のすでに外国で実施している児童手当の考え方というのは、そうじゃないのです。もっと高い観点に立って、社会の責任、国の責任を果たそうという考え方が根本にあるわけです。  そういうことで、これはことしこの国会に間に合わなくても、ぜひ次までにひとつ、そういう前からの約束何回もしておられますから、決意をひとつお伺いしておきたいと思います。
  36. 斎藤昇

    ○斎藤国務大臣 私も、児童手当は救貧対策とは考えておりません。先ほども申しますように、世界で六十二カ国児童手当の制度を持っておりますが、そのうちで、先ほども申しますように、国民全体を対象にしているのはわずか十二カ国、あとの四十何カ国というものは、これはいわゆる労働対策といいますか、いわゆる被用者の児童に対する手当であって、これはたいてい被用者とそれから事業主が分担し、国庫も若干分担しているというやり方で、これは労使対策とも考えられるわけであります。したがって、そうでない意味で、次代の国民を養成するのだという意味からの手当の制度をしている国は十二カ国であります。私はその十二カ国並みにならいたい、こう思っておる。したがって、その答申の中にも、被用者には厚く被用者でない者には薄くという手当制度はとるべきではないであろうという考えに達しておる、かように申しておるのであります。私はお考えのとおりに考えております。
  37. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 経過はただいま厚生大臣からお答えしたとおりでございます。御承知のように、児童手当懇談会から児童手当審議会に移った。ここにも一つの進歩があります。皆さんのほうから見れば、たいへんおそいじゃないか、もっと早くやれ、こう言っておしかりを受けておりますが、ただいまそういうように審議会にいよいよ移りますから、これが実施の方向に進んでいる、数歩進んでいるということを申し上げて、私はできるだけ御期待に沿うようにしたいものだ、かように思っております。
  38. 山内広

    山内委員 実施時期の明示はありませんけれども、まあ決意を強めてこの次の国会には御提案あるものと期待して、では次に進みたいと思います。  医療上のいろいろな問題がありますけれども国会で強く取り上げられた看護婦さんの問題とか、いろいろ問題はたくさんありますけれども、私は、ここでひとつ保育所の予算について若干お尋ねしておきたいと思います。  児童福祉法が制定されましてもう二十年もたっております。いろいろその間、都市人口がふえた、あるいは若年労働力が不足になってきた、農村の労働力も足りなくなってきた、こういうことで、家庭の奥さん方がどうしても就職をせざるを得ないような社会環境になってきたわけであります。したがって、この保育所というものは、どうしてもこれは必要でもあるし、拡充していかなければならない。これはもう国の置かれている必然的な考え方だと思うわけです。そこで、政府も今回、予算を見ますると、若干の改正を加えております。けれども、何せ施設が一万二千、百万になろうとするこの幼児、こういう人を収容するのですから、もちろん非常に予算も足りないわけです。しかし、その中でも、定数を二十五人を二十人にしたとか、あるいはゼロ歳の小さな子供も試験的に扱ってみようとか、いろいろ努力あとが見えるわけであります。しかし、まあ給食費一つ取り上げましても、これは三歳以上ですが、三十四円が三十七円になって、たった三円だ。涙一滴ぐらいのもので、はたしてこれで完全な給食ができるかどうかということは、私も非常に疑問に思っているどころか、できないと思っているわけです。  こういうことで、そういう予算の内容も触れたいのですが、だいぶ時間もたってまいりましたので、それはちょっと省略いたしまして、ただ一点、ここに働く職員の対策をどうされておるのか。私、厚生省からちょっと資料をいただきましたが、これは急に質問されてあわててつくったような、数字だけを合わせた、非常におかしな統計だと思うのですが、考えてみれば、私設の無認可の小さなものが僻村にまでもあるのですから、急に資料を出せと言われても非常に迷惑をかけたろう、そういう点では私もよく理解しております。そういうことで、この内容をどうこう言うわけではありませんけれども、何せ小さな、もう人間が将来形成される一番スタートの子供を扱うのですから、これはお手伝いさんに子供をおんぶさして、そして寝かせるような扱いで考えたらたいへんなことです。私は、保母さんの教育というものは非常に大事だと思う。泣き声一つ聞いても、手足を動かすのを見ても、すぐぴんとくるような熟練と経験と、そして教養が必要だと思う。どういうふうなことでこの保母さんの教育あるいは人間の充実をはかろうとしておるのか、この点の御見解を聞いておきたいと思います。
  39. 斎藤昇

    ○斎藤国務大臣 保母の教育を高めるということは非常に大事だと思います。いまおっしゃいますとおりだと思います。まあおかあさんより以上の考え方を持った人にやはり乳幼児の保育をやってもらわなければなりませんから、そういう意味におきまして、いま高等学校その他学校教育として特定な科目を専攻をしていただいて、そこを出れば保母の資格を与えるという制度をとっておるわけであります。できるだけその教育内容も高めていただくように、文部省当局にもお願いをいたしているわけでございます。
  40. 山内広

    山内委員 私は、一つ実例をあげて——考え方はいま大臣のお話しのようなことなんですけれども、実際に行政指導をする場合に、大事な点、欠けている点があると思うのです。これは、私、ある職業安定所へ別の用で行きまして、そのときに聞かされた保母さんの問題でありますけれども、学校を出た女の方が、保母さんになろう、自分の将来をこれに託したいと、非常に純真な気持ちから、昼働いて夜学校へ通おうと思った、そういうことで職安に頼みにいった。それでいろいろさがしてみたところが、この昼働きたいという希望を満たしてくれる雇い主が全然おらない。どこでもきらっておる。そのきらう理由はわかるわけです。二年間短大なら短大へ行って、出ちゃうとよその職業につかれますから、その会社なり商店で働く人じゃなくなる。しかも、これには二カ年を通じて実習七十五日という義務を課せられておる。そうすると、二カ年の間に七十五日間実習のために長期に休まなきゃならぬ。そういう点で、雇ってくれる人が全然ない。これも一点。ところが、今度は卒業しても、非常に待遇が劣悪である。給料が安い。使ってくれない。資格を持って保育所に就職しようとすれば、資格に応じた高い俸給を払わなきゃならないので、どこでも雇ってくれない。それで、わざわざせっかくとったその資格を隠して、そういう勉強をしたことにしないで、安い給料で就職せざるを得ない、こういう切実な訴えを聞かされました。これはどうしても雇い主に対して、そういうたくさん子供を使っておる人は、中卒なり高卒の人たちをそういう角度からも使ってやってくれと、ひとつこういう運動をあなたはおやりになるのじゃないと——せっかくとった資格は有効にそれが使用されるようにしなきゃいかぬ。そのためには給料が——確かに保育所はそれを経営する人に負担させるといったって、これは無理です。国が見てやらなきゃならない。そういう手厚い、行き届いた、こまい行政をやらないと、この保育所というのは育っていきません。ひとつその点について、具体的にどういうふうにいま進められようとしておるのか、大臣の御意見を聞きたい。
  41. 斎藤昇

    ○斎藤国務大臣 お説のとおりだと思います。先ほどの保母の定数基準を変えましたのも、それによって補助金を増額いたすわけでありまするし、また補助単位も引き上げるようにいたしたい、そうして、国と公設の、公共団体でやっておられる保育所が多いわけでありますから、地方公共団体の方々にもお願いを申し上げ、国と地方と両々相まって保母の待遇の改善もはかってまいりたい、かように思っているわけであります。
  42. 山内広

    山内委員 それでは前に進みまして、老人の福祉対策についてお伺いしたいと思います。  この老人対策は非常にいろいろな問題もありますし、特に私どもあたたかい庇護の手を差し延べなければならぬ、働けなくなったお年寄りの方々ですし、いままで健康なときは長い間社会に貢献された人ですから、これは言うまでもなく十分な庇護の手が延べられなければならぬわけであります。予算面にも問題はありますけれども、そこを一応割愛しまして、手元に届けられた資料を見て、私は実にびっくりいたしました。資料は、六十歳以上のお年寄りが十万人のうちにどれだけの自殺があるかということが、これはどこか厚生省で出した資料だと思いますが、載っておるわけです。それで、日本は十万人のうち五七・九名自殺される方がおる。これは順位から申しますと世界の七番目であります。ところが、女の人は四〇・五人、これは世界一であります。これは総理大臣どうお考えになりますか。非常に多い。しかも男の自殺率が七番で、女がトップだという。これは一体何を語っておるのですか。やはり昔から残っておる男尊女卑といいますか、女のほうがまだいろいろな意味で待遇が悪いとか、あたたかい庇護の手が延べられないで、世をはかなんで自殺する人だ。世界一の自殺率を持つということは、一体日本は文明国だといっていばれますか。これは財政の問題、家計が成り立たないで自殺される人もあるかもしれませんけれども、そうでなく、置かれておる生活環境が、もうこれ以上生きていても何の楽しみもない、死んだほうがいいということで、私は自殺されるのだと思う。これはたいへんなことですよ。やはり置かれている日本の実情をこれが物語っていると思うのです。これは総理からも、一体そういう現象を御存じなのかどうか。御存じだとすれば、今後こういう老人対策をどうお進めになって——健康なときは世の中のために尽くしておきながら、年をとったから自殺しなければならぬという人がたくさん出ておる、こういうことはやはりぜひ改める施策を講ずべきだと思うのです。
  43. 斎藤昇

    ○斎藤国務大臣 老人の自殺率のことからのお話でございますが、確かに数字はいまおっしゃるとおりであります。ただ、老人の自殺率も、日本におきましては戦後だんだんと少なくなってまいりまして、昭和二十二年には十万人に対して七〇人、それが年々減ってまいりまして、いま四七というところになってきているわけであります。これは男女平均であります。女の自殺率は確かに世界一でありますが、それも男に比べて低いわけです。大体男のほうが自殺率が多い。これは世界各国の例であります。男の自殺率の一番多いのはハンガリーで、八三であります。女は三八、同じくハンガリーにおきまして。これが世界の二番目であります。非常に社会保障が進んでいるように思われております北欧諸国も、老人の自殺率は非常に高いのであります。  そこで、老人の自殺の原因は何であろうかと考えてみるのであります。ことに男が高いということはどういうわけであろうか。平均寿命は女のほうが長いわけです。したがって、老人の方は男よりも女のほうが非常に多いわけでありますが、結局、先ほど申します生活苦、あるいは事業に失敗をした、あるいは孤独の身になって世をはかなむというようなことであろうかと考えます。したがいまして、できるだけ老人には元気で、世をはかなまないような、そういう施策が必要であろうと思いまして、一般老人対策としても、老人クラブ等の活動をはじめ、みなできるだけ元気でやろうじゃないかという気を起こさしていただくように、老人クラブ等の活動にもわずかばかりでありますが補助金を出して、そういう方向をとってもらっております。  ところが、寝たきりの老人の方も非常に多いわけでありますので、そういう方々に対しましては、本年度は、巡回をしてお医者さんを派遣するとか、あるいは巡回して困った点はないかと聞いていただくような人たちを派遣をしようというような費用を組みましたり、寝たきり老人に対するそういった新しい施策を始めようといたしております。ことに年金制度、二万円年金を実現いたしたいと考えております。これだけでは十分でないと思いますけれども、孤独の老人にとりましては、二万円年金というものも一つのおみやげにもなろうか、かように思いまして、老人対策には総理も非常に御心配になっておられます。われわれも重要な事項だと思って、厚生行政を進めてまいりたいと思っておるわけであります。
  44. 山内広

    山内委員 日本にいまおば捨て山が残っておるということは残念な話でありまして、申しわけないことだと思います。大体欧州の国というと、イタリアと日本は似ているということでよく引き合いに出されるのでありますけれども、このイタリアの自殺率も日本の六分の一ぐらいのものです。これは数字も持っておりますけれども、そういうことで、やはりこれは対策を早急に立てていただきたいと思います。  その次に、恩給、年金についてお尋ねしたいと思います。これは総理大臣御存じかどうかわかりませんけれども、遺族年金、厚生年金失業保険国民年金の受給者、これは先に掛けて、そして一定の年齢になって退職すればもらうわけですが、これらの人たちが適用を受けながら、それが非常に安いために、生活保護法の適用を受けている人が二十三万九千二百二十七名、約二十四万おるわけです。そうすると、この恩給、年金というものがいかに低いか。生活保護法の適用を受けなければならない、そして差額をもらうわけです。そしてようやく生活保護法の標準になる。これはもう決してダブってくれませんから、年金、恩給が控除されるのですから、こういう恩給の安い人たちというものは、全く恩給の恩典に浴せない。これを矛盾だとお考えになりませんか、まず大蔵大臣から。
  45. 福田赳夫

    福田国務大臣 いろいろの年金制度ができてきましたが、幅が非常に広いといいますか、かっこうは整ったが、厚みがまだ整わぬというのが現状じゃないか、さように私は考えています。特に年金の財源面からいろいろ制約がありますので、この給付額が御期待に沿わぬというような傾向もあるかと思うのですが、まあだんだんとこれは是正をしていかなければならぬと、かように考えております。
  46. 床次徳二

    ○床次国務大臣 お答えいたします。  恩給受給者でもって、生活保護よりも非常に低い恩給を得られておる方、相当の数がおられまするが、どういう方がそういう状態であるかということを考えますと、これは、勤務年限が非常に少ない方はやはり勢い低額の恩給を受けておられるわけであります。しかし、お話しのような生活保護とのつり合いを考えますると、この点もいろいろと検討すべき問題があるのではないかと思いまして、政府といたしましても、今後とも十分にこの点につきましては、事情の許す限り努力いたしたいと思っております。
  47. 鳩山威一郎

    ○鳩山政府委員 ただいま大蔵大臣から御答弁申し上げましたが、ちょっと補足さしていただきますと、ただいま申された数字の、私のほうの調査では二十三万六千人になっておりますが、これは大差ございませんが、この大部分の二十万一千人というのが福祉年金の受給者であります。福祉年金は、これは性格上年金が給付されましても保護費のほうを差し引かないという措置をとっておりますので、これは当然に併給になってしまう部分でございます。そういうことから考えまして、これはただいま年金の金額が少ないかどうかという問題は差し引きまして、そこに併給が制度上とられているというところに主たる原因があるかと存ずる次第でございます。
  48. 山内広

    山内委員 この福祉年金の例外規定だけ一つ取り上げて、これでいいのだという御答弁は、はなはだおかしいと思うのですよ。そしてしかも、この二十四万という人は、日本におります百二十八万の一九%の人です。そうして若いときは全部、これは恩給は別としても、ほとんど掛け金をとられておるわけです。そういう人が生活保護の適用を受けなければならぬというのは、これは矛盾しています。これは総理、どうしても解決してやってください。その点お願いしておきます。何か御答弁がありましたら……。  それでは、次に進みます。  この各種の保険料が運用部資金に蓄積されて、そしてこれがいろんなところに使われるわけですけれども、ほんとうに金を積み立てていった人たちが使用するいわゆる還元融資、これは二五%となっております。七五%というものは、運用部資金を経て大きな事業家や経営者の資金に回っていくわけです。まあ極端にそう言うのも、いろいろ財投の中身を見ますと種類がありますけれども、大まかに言ってそういうことになっておる。私、これは非常に不可解に思う。なぜ還元融資というものをもっと——全部とは申しません。けれども、二五%だけより自分の金を使えないというのも、これはおかしな話だと思うのです。大蔵大臣、どうお考えですか。
  49. 福田赳夫

    福田国務大臣 年金の積み立て金は、御承知のとおり財政投融資の原資として使われておるわけでありまして、国家財政運営上きわめて重要な原資であります。  そこで、この貴重な原資を運用するわけでございますが、その運用がある目的税的に制約される、こういうことになりますると、これは目的税についても同じ議論があるわけでございますが、年金からくる原資につきましても同じ議論になるわけでありまして、なるべくこれはある特定な目的に固定しないという形がいいのだろう、そこで、各種の年金その他郵便貯金等総合いたしまして、資金運用部において統合してこれを運用するという形をとっておるわけであります。  しかし、ただいまお話しのように、福祉的な年金につきましては、特にその性質を考慮いたしまして、二五%と、こういう還元融資というものを実行しておるわけですが、まあこの辺が限度じゃなかろうかと考えておる次第でございます。   〔櫻内委員長代理退席、委員長着席〕
  50. 山内広

    山内委員 二五%が限度だという大蔵大臣の御答弁、はなはだ私はこれは反論せざるを得ないわけです。これは自分たちが蓄積しているのですからね。たとえば住宅が足りない、庶民が非常に困っておる。自分たちの金で建てるとなったら一ぺんにできるでしょうが。それを別の金もうけの手段に利用させて、そして二五%より自分の金を使えないのですから、何年たってもなかなか住宅問題一つ解決できないのです。重点的に私はこういうところに使用すべきだと思うのです。  それからもう一点、金を利用した場合に、これは利子はたしか六分五厘です。よその人に使わして、金もうけの材料にして金をもうける人にも六分五厘、自分の金を還元融資して自分で使う場合も六分五厘、これは同率でしょう。そんな不公平なことありますか。せめて外部の人に使わせるならそれは七分五厘にして、片方の自分の金を使うほうには一分は安くして五分五厘にする、これはもうあたりまえのことだと思うんですが、大蔵大臣、厚生大臣、この辺の不合理をもう少し答弁してください。
  51. 斎藤昇

    ○斎藤国務大臣 お説のようにできるだけありたいものだと思いますので、今後も大蔵大臣とよく御相談を申し上げます。
  52. 福田赳夫

    福田国務大臣 御説のような次第もありますので、そういうふうな努力をいたしたいという考えであります。四十四年度につきましては、分譲住宅について個人負担の軽減をはかる必要も考慮し、特にその金利を五・五%に引き下げることにいたしております。御説のような傾向であることを御了知願います。
  53. 山内広

    山内委員 それから、還元融資の二五%の中身をどういうふうに使われておるかということを見たときに——私詳しくまだ見ておりません、ゆうべ資料をいただいたばかりで。ちょっと気がついたのですけれども、国立病院の特別会計に四十八億使っております。それからもう一つ、私、不可解だと思うのは、公害防止のために経営者が自分の責任でいろいろ産業公害を防ぐ施設をするというところにまたこれを、ちょっといまここに金額は漏らしておりますけれども、出しておる。これは還元融資の性格でないでしょう。別に組合員の住宅を建てたわけじゃない。経営者が当然やるべき産業災害に手をつけるために還元融資から使わせる。  この国立病院は、特別会計に移すときに私どもと約束があるのです。特別会計になったからといって決して独立採算を強要して、そうしていろいろ予算を減らすというようなことは絶対いたしません、それは一般会計で見ますとかたい約束があったはずです。ところがこれを見ると、ちゃんと還元融資の中から融資しておる。これはどういうことですか。少し解明していただきたいと思う。
  54. 伊部英男

    ○伊部政府委員 還元融資につきましては、御指摘のように被保険者の福祉に還元するのが主でございます。このため年金福祉事業団及び特別地方債を通じまして被保険者の住宅あるいは各種の福祉施設等に充当されておるのでございますが、その一部は医療公庫、あるいはただいま御指摘の国立病院会計等にも出資されておるのでございます、貸し付けられておるのでございます。その趣旨は、公立病院はやはり医療のメディカルセンターとして、国民医療の基礎をつくるものとして急速な整備を必要とする、あるいは公害防止事業団につきましても、公害の防止はひいては被保険者、一般国民福祉につながることでございますので、そのうちの約半分を還元融資を充てておるという状況でございます。
  55. 山内広

    山内委員 事務当局のそういう答弁は、これは全くおかしな話ですよ。積み立てていっている自分の金を使うのに、とんでもない事業家のほうに融資しておる。しかも一つあげました国立病院なんかも、これは全く国会の約束を無視したやり方ですよ。二五%より還元融資のできないものから頭をはねておるのですよ。何といっても弁解の余地がないと思う。もう一ぺんこれは確実な御答弁をいただきたい。
  56. 鳩山威一郎

    ○鳩山政府委員 ただいま療養所特会につきましてお話が出ましたので、その関係について御説明申し上げます。  昨年療養所を特別会計にいたしますときに、一般会計から特別会計にしたために独立採算というものが強化されるのではないかというお話がありました。それは毛頭私どもはそういうことは考えておりませんということを申し上げております。そういう意味で、本年度におきましても、国立療養所のための繰り入れは、去年は全体の四九%が繰り入れでありましたが、ことしは五〇・六%、一般会計の負担のシェアを一・六%ふやしておるわけであります。昨年も特別会計にいたしましたときの主要な目的の一つといたしまして、療養所の施設が非常に悪いではないか、ですから、この療養所の施設をよくするために、これは一般会計に置いておきますと、なかなかできない面もある、その面を、一つは土地を整理して財源を捻出して、土地の財源で建物をよくするとともに、借り入れの道も特会にありますので、借り入れ金もいたしまして設備をよくしたい、こういうことで、昨年からこの借り入れ金は十五億計上しておりまして、本年はそれを十八億にいたしておりますが、これはいずれ急速に療養所の整備をいたしますので、借り入れをいたしておるわけであります。これは急速な療養所の整備をいたすという趣旨でございます。そのためにいわゆる独立採算を強化するという趣旨のものではございません。  また二五%の問題につきましては、いろいろ過去の経緯があるわけでありますけれども、いま山内委員のおっしゃったことも一理あるかと思いますが、全体が、たとえば還元融資というものの性格が、たとえば住宅対策というものへの還元融資は私どもは適切なものではないかと考えておりますけれども、現状では、いわば厚生行政としてやる部面にこれが使われるというような使われ方をしてきております。これは、還元融資の制度の一つの問題だと思いますが、たとえば建設省が全国的に計画を立ててやっている住宅対策費にはこの還元融資が使われてないという問題があります。こういうような点は従来から住宅なりなんなり、結局全国のどこかに建つわけでありますから、住宅対策が拡充されることが必要なのでありますけれども、現状といたしましては、厚生年金福祉事業団がやっております住宅だけにしか還元されていない、こういうような問題がありまして、全体の財投が一番効率的にいい目的に使われるということが大事であります。そのために、この二五%というものの計算がどうありましても、全体の財投が一番効率的に使われることが必要だろう。で、その二五%をどこに配当するかということで従来計画を立てておりますけれども、目的といたしましては、そういう社会福祉関係に総体の財投が使われるということがもっと重大な問題ではなかろうかということで、そういうものの一環として、療養所の整備というものも社会福祉上非常に緊急に必要とされておりますので、これに対して二五%が使われておるということは決しておかしなことではないと私ども考えております。
  57. 山内広

    山内委員 いまの事務当局の前の方のお話を聞いていても、道路を直すのに使っても、あんた方も歩くんだからこれで恩典に浴すじゃないかと、そういう拡張解釈になったら、何だって国のやる仕事はみんな関連を持ってきますよ、それは。これは直接社会福祉重点を置くという考え方を、政治的に大臣なり総理なりが判断されておきめにならないと、そういうワクを広げていったらみんなそうでしょう。どうですか総理大臣、もう少しこれは考え直されませんか。
  58. 福田赳夫

    福田国務大臣 還元融資は、その名前のように還元融資でございまするから、特に二五%還元融資という名前のもとで使用しようということに考えまして、さような目的に沿うようにいたしたいと思います。  ただ、いま現に問題になっております国立病院に対する還元融資からの配分が、一体その趣旨に沿うか沿わぬかということになると、私は、沿うというふうな見方でしておるのじゃないか、またそれに妥当性があるのじゃないかと思いますが、根本的な趣旨には、そういうように私どもといたしましても厚生省に協力をいたす、さような考えであります。
  59. 山内広

    山内委員 やっぱり、政府は受益者負担ということを前の国会では盛んに言われて、そして赤字が出れば保険料を上げて、そしてそれが貯蓄されたものが今度は、それと関係ないといえば何ですが、経営者や事業主が利用してもうける、やっぱりこういうあり方は私おかしいと思うのですよ。これはどうしても改めていただきたいと思います。  この恩給、年金に関連いたしまして、スライド制についてお伺いしたいと思います。これは私が内閣委員会におりました当時、恩給法の第二条という調整規定が設けられまして、このとき私どもは、あの第二条の改正でもってスライド制がすぐできると考えた。ところが逆に、政府側はいまもってこれが完全に実行されていない。訓示規定にとどまっておる。実にこれは私おかしいと思うのです。そこで恩給審議会が答申を出されました。そしてこの調整の基準及び方法、これも答申の中にあるわけです。さらにこの経過措置が答申されております。ところが政府はこの経過措置だけを取り上げ、まだこの基準とか方法というものについてはどういうお考えを持っておるのか、私どもにはちっとも示されておりません。この点についての計画なり見通しをひとつ出していただきたい。
  60. 床次徳二

    ○床次国務大臣 ただいまのスライド制に対するお尋ねでありまするが、この恩給法第二条ノ二の調整規定につきましては、お話しのように、昨年の三月恩給審議会の答申がありまして、その大体の具体的な運用方針が示されております。したがって、政府といたしましてはこの趣旨を尊重いたしたいと思うのでありますが、ただこの問題に関連いたしまして、同じような規定が他の公的年金制度との関連もありますので、現在総理府におきまして設けられております公的年金制度調整連絡会議、これによりまして検討いたしまして、すみやかに趣旨のとおり実現いたしたいと思っております。  なお経過措置についてお尋ねがありましたが、明年度の予算におきましては、この経過措置として物価の値上がり分、これが大体四四・八%ありますが、この分につきまして処置をいたしました。残りの給与の分に対するもの、ベースアップ分といわれております六・五%につきましては、今後努力いたしたいと思うのでありまして、この二つの処置が実現いたしますと、二条は当然答申のように動いてくるということになると存じます。
  61. 山内広

    山内委員 いまの御答弁で大体わかりましたけれども、この総理府統計の四四・八%のほかに、公務員のベースアップ分六・五%を考慮するということ、これは考慮というのはおかしいのですよ。含まなければいけないのです。スライド制というものはそういうふうにわれわれは理解しておる。これは含めて一緒におやりにならなければ、残しておくとこれはまた、忘れるわけではないのでしょうけれども、実現しなくなります。もう一ぺんこれに対する誠意をお聞きしておきたい。
  62. 床次徳二

    ○床次国務大臣 お答え申し上げます。  ただいまお話がありましたごとく、ベースアップ分につきましては、明年度の予算においてはこれは積み残しております。実現しておりませんので、来たるべきできるだけすみやかな機会にあわせてこれを実施いたしまして、そうして完全な暫定措置が実現できるようにいたしたいと思います。
  63. 山内広

    山内委員 いまちょっと、この点については誠意のある御答弁だと思いますけれども、積み残された部分、これはあと大蔵省大蔵大臣の首が縦に振られないとできないわけです。これについて、大蔵大臣、いまの総務長官の言明をお認めになって、この次に積み残し分は足してくれますか。
  64. 福田赳夫

    福田国務大臣 総務長官が申し上げたように心得ております。
  65. 山内広

    山内委員 約束ができたと思います。  そこで、この恩給の措置は公共企業体あるいは地方公務員全部のやっぱり基準になります。これはどうしても正しいものを恩給でつくっておきませんと、影響するところが大きいので、これは先ほど総務長官の御答弁もありまして、そのとおりお約束できたものと私は思うのですが、政府の責任者はどういうふうにお考えになりますか。
  66. 床次徳二

    ○床次国務大臣 ただいま私からお答え申し上げ、さらに大蔵大臣からもお答え申し上げたごとく、できるだけ早い機会にこれは答申の趣旨によって実現いたしたい、そうして完全な恩給法の運用ができるようにいたしたいと思っております。
  67. 山内広

    山内委員 総務長官の誠意にひとつ信頼をかけて、話をもう一つ進めてまいりたいと思います。  今度生活保護費が若干上がりまして、過去の実績から見ますというと、年々増進していることは私も認めます。そこで、一般勤労者とそれから被保護世帯、この割合がどうなっておるか。四十年度は四七・一、四十一年度が五〇・二、それから四十二年度が五二、こういうことになっております。まあ金額やその他いろいろ申し上げたいこともありますけれども、時間も間もなく参りますので、この基本的な考え方だけ聞いておきます。一体この五二というのは妥当な線であるか、どこまで今度上げていけば、それが大体一般労働者に対する被保護者の生活というものがまあまあ均衡がとれると申しますか、妥当な線とお考えになるか、この点についてひとつ大臣から御答弁いただきたい。
  68. 斎藤昇

    ○斎藤国務大臣 勤労者の一般生活水準、いわゆる平均水準と保護基準とのパーセントのことだと思いますが、ここだんだんと上がってまいりまして、五二%余りになってまいりました。この程度でいいか、もう少し上げたほうがいいかというお問いであろうと思いますが、これには確たる基準というものがないわけでございますが、まあできるならばもう少しぐらいパーセントが上がっていいんじゃないだろうか、五五%前後というところを目標にいたしたい、かように思っております。
  69. 山内広

    山内委員 たしかこれは、この予算の原案ができた直後だったと思いますけれども大蔵大臣はNHKのテレビに出られまして奥さん方と対話をされたわけです。私もひょっと聞いておりましたが、そのときに大臣は、日本経済力は非常に伸びて世界の二位と言ったか三位と言いましたか、ところが、奥さん方がげらげらと笑っちゃった。あなたは胸を張っていばって、ほめられると思ったら、奥さん方はぴんとこないんです、そいつが。毎日の物価高、それに悩んでおる奥さん方、あなた、世界の二番目だ、三番目だといばったって何のことかちっともわからない。それでだんだん話を聞いていると、やはり大蔵大臣は、ものすごく最近の物価高や税金のことで攻められておる。いま国民は、非常にこの物価高に悩んでいることは事実です。奥さん方は困っておる。総理、いま選挙をやってごらんなさい、奥さん方の票はなかなか自民党にいきませんよ、これは。まあそれはそれとしまして、私、これも手元に寄せられました資料を見ました。「国民生活水準の国際比較」というのが出されております。ことに日本は一人当たりの国民所得が九百二十三ドル、これはこの表で見ますと、約二十番目になっております。アメリカが三千三百五ドル、スウェーデンが二千六百七十五ドルというわけで、たいへんな格差があります。いかに大蔵大臣が、経済は伸びた、二番だ、三番だといっても、国民一人当たりにすればもう非常に低いものになっておる。  いろいろお聞きしたいのですが、時間が来ておりますから、私の意見をちょっと差し加えて、御答弁はあれですが、この中で一番私は重視しなければならぬのは、個人の貯蓄率というのが一八・一%で世界一高いのです。あとは一〇%以上の個人貯蓄をしておるというのはあんまりない。大体みんな一〇%以下である。これは一体何を物語っておるのか。政府社会保障、こういうゆりかごから墓場までというこれが守られないから、国民は低い所得の中から自分を守るために無理して貯金しておるというのは、これははっきりしておるんじゃありませんか。情けない社会福祉だと思うのです。  もう一つこの資料の中で注意しなければならぬのは、これだけ交通地獄でやかましくやって、自動車がはんらんしておりますけれども、乗用車一人当たりの人口が日本は四十五人であります。アメリカは三人、そのほか文明国といわれておるのはみんな五人か六人に一台ということになっておる。まあ自動車産業も伸びておりますから、しかもこのとおり空気が悪い、郊外に子供を連れていって、少しいい空気を吸わしてやろうと思えば、少し豊かになれば自動車を買う気になります。これはレジャーなんて楽しくて行くのじゃなくて、健康を守るための国民——これは意識しなくとも健康を守るために、私はレジャーというものはふえていくと思うのです。ますます自動車ははんらんしてくる。こういうところにもいまやはり手を打っておかないと、だんだん困った事態が出てくると思うわけです。  そこで、これは総理一つだけお伺いしておきたいのですが、まあ私ども戦争に敗れてから二十年以上も民主主義の実現のために努力をしてまいりました。民主主義というものは非常に手間のかかる、時間のかかるものです。しかし、大体日本ももうこの憲法による民主主義というものは定着してきた、これは守っていかなければならぬ、そういうふうに私ども確信しております。  ところが、最近の政府のやり口を見ますと、どうもこれが破れておる。民主主義が強化されない。これは一つの例で私申し上げたいと思うのです。これはまあ佐藤総理の英断を仰がなければならぬのですけれども、二月の五日の新聞に、三公社の市町村会議員に出ておる人たちをその公社から締め出そうという案が自民党の中で計画され、この国会に出るという報道が出ております。これはたいへんなことです。この理由を見ますと、市なり町からの月給をもらって二重取りしておるように書いてありますけれども、そんなことはありませんですよ。公社は、市会なり町議会があって招集されれば、ちゃんとそれは月給から差し引いておるのです。こういう職員が地方議会に発言権を持つということは、その公社自体にも私は非常に利益になっておると思うのです。それを、自分たちの気に食わないから、みんな議員に出る資格を権力でもって取ってしまうなんという与え方はおかしいのです。これは、総理は自民党の総裁ですから、そんな時代逆行の考え方は持つなといって、あなたぱんと取り締まられるのがほんとうです。どうですか、この点を正当にお考えになりますか、地方議会から締め出そうとする考え方を。総理の御見解を聞いておきたいと思います。
  70. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 具体的の話は私まだ聞いておりません。しかし、これは過去におきましてそういう話のあったことは事実ですね。そしてまた、過去においてはずいぶん弊害もあったと、私かように心得ております。ある町やなんか、特に山内君も鉄道出身だが、鉄道の施設が多くて、そのほうからたくさんの議員が出ている。ただいま言われる程度の、公社そのものがそれでしあわせじゃないかというようなものじゃない。やはり公共団体として、特殊な機関が非常な発言権を持つということは必ずしも望ましい姿ではない。また、内輪におきましてもいろんな問題を引き起こす。そういうことで、過去においてはその議論がございました。しかし今回、いま新聞に出ていると言われるが、そこまでいっているかどうか、私よくわかりません。  また、ただいまお話しのように、憲法のもとにおいてこの民主主義はだんだん定着しつつある。最近の暴力学生、これは民主主義を破壊するものだと思ってたいへん心配しておりますが、大部分の、多数の国民はその方向にいっております。したがいまして、ただいまの問題も民主主義育成、強化、維持、そういう立場に立って十分考えていきます。
  71. 山内広

    山内委員 時間が参りましたので、最後に希望だけちょっと申し上げたいと思います。  それは、ILOの百二十号条約の批准をどうしようとしておられるのか。これは中身を、ちょっと意見を申し上げたいのですけれども、かいつまんで申せば、この百二十号条約というのはおくれておる国、アジアとか中近東、ラテンアメリカ、こういう非常に低い、おくれている国でもやろうと思えばやれるという条件が出ておるわけであります。そのうち項目が九つばかりありまして、三つだけできればもう批准の資格があるわけです。すでにもう十七カ国ぐらいは批准ができておる。総理も非常に努力されて、私もILO百二号条約の中身を比べてみますと、足りない点もあるけれども、これはかなり資格を持ったと思われるものもあるわけです。ほんの少しの努力でこれはできると思う。ぜひひとつ総理は在任中に、これをおみやげにしてもらいたいと思うのです。これはもうすぐできます。そうむずかしい中身ではありません。もし、こういう点が妨げになって百二号条約の批准ができないのだという担当大臣のお考えがあるなら、聞かしてもらいたい。
  72. 斎藤昇

    ○斎藤国務大臣 ILOの百二号条約は、批准するだけの内容を日本の国内法は十分持っておるのであります。ただ、いまILO当局では各事項別の、もっと高い水準のものを事項別につくろうとしているわけであります。すでに一つできております。これも厚生年金法が通れば批准できるわけでありまして、そういうような関係もありますので、いま百二号条約を批准をいたしましても、あまりいばれた条約ではないのであります、あの条約は。日本はもうすでに十分満足な状態にあるわけでありますから、批准しようと思えばいつでもできるわけでありますが、先ほど申しますように、批准したぞといって、そういばれる条約ではないものですから、もっと程度の高いものができてまいりましたら、そのときに程度の高いものを批准をしたい、こう思っているわけでございます。
  73. 山内広

    山内委員 大臣、それはお考えが違うのですよ。最高基準というものと最低基準——高いものを示したら、おくれた国はついていけない。それでしかたなくて最低の基準だけをきめて、それに達したものは批准していく。社会保障が、政府努力しているというのですから、私の国はあの最低基準にもうすでに達してしまいましたよ、それを世界に発表するのが何が悪いのですか。そういう卑屈なことは、私はかえってお考えにならぬほうがいいと思うのです。  これは、もう時間も経過しておりますので、希望だけを申し上げまして、私の質問を終わります。(拍手)
  74. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 先ほど山内広君の質疑に対する答弁を保留された出産手当等の問題について、この際厚生省当局より説明を求めます。厚生省高木審議官
  75. 高木玄

    ○高木説明員 先ほど、日雇労働者健康保険の被保険者数につきまして、四十二年の数字を申し上げましたが、その後調べました新しい数字として、四十三年十一月現在におきまして、被保険者数は百七万三千九百四十名でございます。その内訳、男女別は、男子七十八万八千六百九十八名、女子二十八万五千二百四十二名でございます。  それから、日雇い労働者の分べん件数でございますが、四十二年度中に支給いたしました実績数を申し上げますと、被保険者本人が千三百四十一件、それから配偶者が二万二千八百八十八件でございます。この本人が出産した場合に現在定額四千円、配偶者が出産した場合に定額二千円の支給が分べん費として行なわれるわけでございますが、今回はこの本人の四千円を二万円に、配偶者の二千円を一万円に引き上げようとするものでございます。  なお、被保険者の年齢別構成でございますが、これにつきましては、三十八年に調査したものしかございませんが、これによりますと、男子被保険者の平均年齢は四十二・六歳、女子被保険者の平均年齢は四十二・三歳でございます。  以上、御説明申し上げます。
  76. 山内広

    山内委員 では、資料の御提示がありましたから、これについて一つだけ伺っておきます。  私が年齢別を聞いたというのは、こういう数字が出やせぬかなということを——私は知らないのですよ、直感しておった。というのは、これは三十八年の統計で、女の年齢が四十二・三歳だというのでしょう。これでもって幾ら出産手当を上げたって、もう子供を産めなくなっているでしょう。そういうことを理由にして掛け金を増額するというのはけしからぬということを私は言っている。  もうこれで答弁は要りません。
  77. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 これにて山内君の質疑は終了いたしました。  午後の会議は、午後一時三十分から再開し、畑和君、小沢貞孝君の総括質疑を行ないます。  この際、暫時休憩いたします。    午後零時十九分休憩      ————◇—————    午後一時三十五分開議
  78. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。畑和君。
  79. 畑和

    ○畑委員 私は、社会党を代表いたしまして、質問通告を出しておいたような順序で、憲法と安保と沖繩の問題、それから警察の問題、さらにまた政治資金の規制と百年恩赦の問題、こういった問題について逐次質問をいたしてまいりたいと思います。  その前に、まず冒頭、先ほどニュースが入ったのであります。テレビあるいはラジオ等によりましてわれわれが聞いたところによりますると、本日のちょうど正午、金沢市の泉町という住宅街に自衛隊のF104ジェット機が墜落をして、そして人家が燃えて、いまだに燃えておる。そして死傷者が出た模様である、こういうようなニュースを聞いたわけであります。したがって、非常に緊急を要する問題で、われわれも知りたいものでありますから、その被害の概況、まだ時間があまりたっておらぬから詳細にと言うてもなかなか無理かもわからぬけれども、大体その被害の状況、それからおおよそわかったならばその墜落した原因、そういった点につきまして、自衛隊機でありまするから、防衛庁の長官にひとつ報告をお願いいたします。
  80. 有田喜一

    ○有田国務大臣 お答え申し上げます。  実は第六航空団飛行隊所属のF104Jが、本日午前十一時十七分に百里を離陸して、本属部隊である小松のほうに帰投中だったのです。そしてレーダーの誘導を受けてだんだん近寄っておったのですが、ちょうど約千メートル上空におきまして雷が非常にひどかったようでございます。それによって推力が減退いたしまして、そして操縦不能となりまして、パイロットは脱出をしたようでございますが、それが墜落いたしまして、おっしゃるように、金沢市の泉本町に落ちまして、地上の民家が火災になりましてたいへん御迷惑をかけた。そこで、その情報が伝わりますや直ちに陸上自衛隊一個中隊を災害派遣といたしまして、そして消防とともに協力しながら鎮火に当たったのです。私のほうに報告されたところによりますと、民家は十軒以上焼けたようでございますが、鎮火はちょうど午後の一時四分ごろにしたようで、おさまったようですが、相当死傷者もあるやに考えられるのでございますが、その詳細はまだわかりません。  それで、その原因は大体雷が原因でなかろうかということでございますが、しかし、その詳細につきましては、今後原因をよく調べ、また被害などもよく調査いたしまして善処いたしたい、かように考えておりますが、いずれにしましてもこういう事故を起こしたことはまことに申しわけない次第でありまして、ことに金沢の墜落した地方にことのほか御迷惑をかけ、ことに死傷者が出ておるということはまことに追悼の念にたえない次第でございます。ここに私は深く国民の皆さんにおわびし、ことに地元の方々に深くおわびして、この御報告を申し上げたい、かように思います。
  81. 畑和

    ○畑委員 事故直後の調査報告でありまするから、いまの防衛庁長官の報告程度でやむを得ないとは思いますけれども、ともかく今度の事件は、基地の近くのきわめて人口が密集しておる市街地の上に墜落をして多数の死傷者を出したという事実であります。ついこの間御承知のように九州大学におきまして米軍機が墜落をして、例の建築中の建物に引っかかって、その問題をめぐって相当な騒ぎが起きた。福岡の博多方面の住民が非常に恐怖におびえて、大学も基地が近くにあることが非常に障害になるということを強く訴えておるわけであります。基地問題はますますむずかしい問題になりつつある。今度の場合は米軍でなくて自衛隊機であります。日本の国の飛行機でありまして104といたしますれば国産機だと思いますけれども、そうした性能の問題もいろいろあろうと思います。かつ基地が金沢市の近くの小松であるというようなことも問題がある。私は、住民としてこうした事件が起きて初めて恐怖心を抱くと思う。平生に考えていたことがさらに目の前にあらわれたことでありまするから、非常な恐怖を覚えると思うのでありまして、こうした問題は原因をひとつ徹底的に究明していただいて、そして住民の不安をなくさなければならぬ。われわれ社会党の立場といたしましては、安保条約に反対をいたしておる立場もございます。しかし現実は現実でありまするから、そうした不安のないような措置をひとつ講じなければいかぬ。結局これは基地問題に関連がある。米軍の基地と自衛隊の基地、しかもこの小松飛行場は民間との共用であります。最近米軍が基地を返すかわりに日本の自衛隊のほうに肩がわりしている、こういう状況がございます。そういう点で必ずしも基地は外国の、米軍の基地問題ではなく、日本の自衛隊の基地の問題にもつながるわけでありますから、そうした点に十分配慮をされてこれからやっていただきたい、かように考えます。死傷者の方々には私としても非常にお気の毒に存じます。  この点、防衛庁長官の所感を承りたい。
  82. 有田喜一

    ○有田国務大臣 原因の究明につきましては今後しっかりとやりまして、再びかような事件が起こらないように十分注意いたしたいと考えております。  なお、死傷者の方々にはまことに申しわけない次第でありまして、ここにつつしんで哀悼の意を表しながら十分の措置をやっていきたいと思いまして、心からおわびを申し上げる次第でございます。
  83. 畑和

    ○畑委員 それでわが党といたしましても、さっそくその情報を聞きましたので、党としての調査団を現地に派遣いたしつつあります。先ほどの話にもありますが、飛行士は落下傘で飛びおりてしまったということで、人命尊重という点からいえば、その点は考えられないでもないですけれども、そのかわりそうした人口密集地に飛行機が落ちたのでは、一人だけ助かって、しかも住民にそうした死傷者が出るということ、これもやはり平素の訓練として、心がまえとして考えなければならないのではないか、かように思う。その点はつけ加えます。  つけ加えて申しますが、時間がかかりますから別に答弁は求めません。ひとつ急速に、先ほど言っとたおり十分に原因を調査して対処していただきたいということを最後につけ加えて要望しておきます。  次に、私は憲法と安保と沖繩の問題について、総理等に質問をいたしたいと思います。  大体、憲法沖繩の問題あるいは核の問題、こういったような点については、この間来わが党の楢崎、川崎両君あるいは公明党の矢野君等との質疑応答をじっと私も聞いてまいりました。そこで、再確認というわけではないけれども、われわれとしてもはっきりわからない点も若干ございますので、そういう意味で、くどいようでありますけれども二、三点お伺いいたしておきたいと思うのであります。   〔委員長退席、櫻内委員長代理着席〕  総理は、御承知のようにこの前本会議においても、政府態度として核の問題について非核三原則ということを表明されました。ところが今度の答弁を聞いておりますと、それが後退しているやにわれわれには判断されるのであります。この前にも、たしか楢崎君の前国会予算委員会の質問でしたかに総理が答えられて、非核三原則に触れられた際に、憲法の問題もありますから、非核三原則をわれわれの政府の方針といたしますということで、つくらず、持たず、持ち込まず、こういう三原則をはっきりと明言されたと思うのでありますが、今度いよいよ沖繩が日程にのぼってまいった、こういう関係もありましょうが、そのうちつくらず、持たずのほうは憲法問題であるけれども、持ち込まずあるいは逆に言えば持ち込ませず、このほうは憲法問題には関係ない、米軍のことだから関係ない。したがって、憲法問題じゃなくてもっぱら政策問題だ。したがって政治的判断によって処理をする、こういうふうに言われたのでありますけれども、初めからそういう考えだったのか、今度の新しい状況下においてそういうふうになったのか、われわれとしては後退だと思う。非核三原則まことにけっこう。あのときもわれわれ、国会の決議を求めたのでありまするけれども、四つの柱があっても、う一つあるのだ。核の抑止力にたよるというようなことも一つあるのだというようなことで、社会党はそれに反対だろうからということで、とうとう決議には賛成なさらなかったといういきさつがございますけれども、いずれにいたしましても、一つの後退だと思うのでありますが、その辺あらためて総理考え方をお伺いいたしたい。
  84. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 畑君にお答えいたします。  私は、後退はいたしたつもりはございません。核についての考え方は一貫して、もうすでに記録にもとってありますが、この席における、ことしの三君に対する答弁、これも一貫している、かように御了承いただきたいし、また在来からの考え方とこの国会における、この予算委員会における説明が違う、こういうような意味かと思いますが、これまた変わっておりません。どこまでも、三つのうちの二つ、これは楢崎君にお答えしたように憲法上も問題がある。それからあとは政策論問題だ、こういうことを申しております。ことに、具体的にその憲法を受けてだろうと思いますけれども、原子力基本法、これもはっきり平和利用は認めておる、こういうことでございます。その点は十分理解しておるつもりであります。後退だと言われ、私は後退じゃないと言ってここで水かけ論してもしかたありませんから、あの言ったとおりをひとつ御理解いただき、そうしてその線を守っておる、かように御了承いただきます。
  85. 畑和

    ○畑委員 後退ではない、前からそのとおり考えておったんだと言われる。しかし楢崎君の前国会での質疑に対する答弁のときには憲法問題もありということで、別に、二つの原則が憲法問題だ、一つは政治判断の問題だというような区別をなさらなかった。したがって、私のほうは疑問がそこにあったわけです。  そういたしますると、初めからそういうことである、ただ三原則は政策として守る、佐藤内閣の根本政策として、核の問題としてこれだけは憲法関係あろうがなかろうが守る、持ち込ませずということについても守る、こういうことと承ってよろしいか。
  86. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 あのときの答弁は記録に残っておりますから、よくお調べいただけばわかりますが、本土に持ち込ませない、これはもうはっきり申しております。
  87. 畑和

    ○畑委員 それでは、押し問答していてもしかたがありませんから、その次にまいります。  この間の答弁を伺っていると、高辻法制局長官は、憲法の解釈論として核の問題に触れられました。そして憲法の解釈としては防御用であれば、すなわち日本国民の生存と安全のための防御的な兵器であれば核兵器であろうと違憲ではない、こういう言明をされました。そこで私は、そのことはもう事実ですから別に答弁を求めませんが、そのことといまの総理答弁、二つのほうは憲法問題だ。ところが片っ方の高辻さんの話だと、それも防御用ならば憲法に問題にならぬというようなお話でありますが、その点に食い違いがあるのじゃないか、かように思う。その点をひとつ総理から釈明を願いたい。
  88. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 これはもう楢崎君のお尋ねにも、全部が違憲だ、こういうようには私はとらなかったし、またそのときもはっきり、お尋ねは憲法上問題がある、こう言われるから憲法上問題がある、かように私は申したのですということで、楢崎君もこれは了承されたと思いますが、しかし二度目には楢崎君の言い方は、違憲だからこれをとらないのだな、こういうように重ねて言われました。そのまま純憲法——とにかく楢崎君との議論は別といたしまして、法制局長官が答えているのは、憲法上の法理論、純法理論、それのたてまえから申しております。この法理論は岸内閣の時代から一貫して変わっておりません。岸内閣、また池田内閣同様でありますし、私の時代においてもこの法理論は変わりはない、かように御了承いただきます。
  89. 畑和

    ○畑委員 そうすると、結局純粋に法理論からいうと、とにかく防御用ならば核兵器でも持てるのだということ、ただ防御用でないかどうか明らかでないような問題があるから結局憲法問題の範囲には入る、一応入る、そういうところで高辻法制局長官の答弁と食い違いはない、こういうことですか。
  90. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 憲法上の法理論とすれば高辻君のあの説明でよろしい、かように私も考えております。ところで、憲法だけではいけない状況ですね、いま。原子力基本法というものがありますから、憲法で法理的に議論はなくても、原子力基本法ではこれは平和利用はいい、しかしその他はだめだぞとちゃんときめられておるから、その点もあわせて言わないとこれはいけない、これは正確でない、かように思います。誤解を招きやすい、かように思いますので、これはもうおわかりになっておることでございますが、念のために申し添えておきます。
  91. 畑和

    ○畑委員 原子力基本法は、これは憲法がもちろんもとでありますが、その憲法に基づいて、平和利用以外は違憲であるから平和利用についてだけ日本はやるのだ、こういう規定である。これは憲法を受けての規定だから問題はないと思うのですが、先ほどの総理答弁では、ちょっと私にもすっかりはどうもわかりかねるところがございます。しかし、これを議論しておってもしかたがございません。私の見解としてあとでも申し上げますけれども、法律論として、私は、米軍の兵器であってもそうでなくても、日本憲法が行なわれておる、施行されておるこの区域において、日本の領土内においてそうした核兵器の持ち込みの問題はもちろんでありますけれども、これは違憲である、かように考える。それから、それは米軍の関係でありますけれども日本軍のほうの関係につきましても、結局は最初から政府のほうは、歴代の政府がもう防御用ならば自衛力を保持することはいいのだ、こういう議論から発展をしていって先ほど言ったような議論にもなると私は思うのです。これはあとでの議論で申し上げます。したがって、この問題については以上にとどめるのですが、私は、核兵器の持ち込みは先ほど言うたとおりやはり憲法問題だ、こういうように思うのです。持ち込ませず——米軍のやることだけれども、これはやはり憲法問題だ。それは米軍だからいいのだというわけは私はどうも納得できない。これは日本憲法の施行されておる地域である。それは安保条約があるからというけれども、それは安保条約そのものがそうすれば米軍が関係してくるのだから、安保条約によって。したがって、私は、核兵器を持ち込ませることは憲法問題だ、かように思うのです。そうは思いませんか。高辻さんどうですか。
  92. 高辻正巳

    ○高辻政府委員 お答え申し上げます。  仰せのようにこの点はおそらく理論的にはいろいろな見解があってふしぎなものだとは思いません。しかし、アメリカの駐留軍の装備につきましては、これはかねてから、実は政府当局としては前々からお話ししているような解釈をとっておりましたが、それが、詳しく申し上げることもないと思いますけれども、砂川判決がありまして、政府が従来とっておった解釈と同じ解釈を実はとられたわけでございまして、それを離れて議論をすれば、またいろいろな議論としてはあり得ると思いますが、私どもとしては従来とっていた解釈、しかもそれが最高裁の支持する、と言ってはおかしゅうございますが、最高裁の考え方と同じ考え方がとられましたので、ますます確信を深くいたしておるわけでございます。
  93. 畑和

    ○畑委員 たぶん最高裁のその判決を引き合いに出されるとは思っておりました。しかし、この最高裁の判決につきましても、これは高度に政治的な問題であるから、したがって、一見憲法違反だということが明らかな場合を除いては審査権の対象にならない、こういう判決だと私は思います。したがって、高度に政治的な問題だというところで最高裁は逃げているんだから、まつ正面から取り組んでいない。そしてしかも、一見違憲なことが明らかな場合を除いてはということなんで、必ずしも違憲の審査権の対象外だと言い切っているわけでもないと私は思うのです。これはしかし議論していてもしかたがありませんから、次に進みます。  次に私は、憲法と安保の問題について申し上げたい。これは、もう古くて新しい問題だと思います。いまさら私がこれを申し上げましても、何だいまごろそんなことを言うと、こういうふうに考えられるかもわかりません。しかし、私はこうして機会を得たのでありまするから、私も法律家の端くれの一人といたしまして、日本憲法を守ることに人後に落ちない。そういう点からして、法律家としての良心から、私は以下のことを言いたい。あまりにも憲法と現実とが離れ過ぎておる。こういう点から、蒸し返しのようになります。したがって、いろいろ意見を聞いていますと時間がかかりますから、私の言いたいことだけをひとつ言わしてください。そういう意味でひとつ時間も関係ありますから申し上げます。  まず、憲法の成立過程と憲法精神、これにつきましては大体御承知のとおりです。ポツダム宣言のあとを受けまして、その趣旨を取り入れてできた日本憲法、しかも私は世界法的なあるいは自然法的な法律だと思う。いろいろ憲法はございますけれども、ほかの国の憲法に比べて日本憲法ほどいわゆる開かれた憲法というか、そういった憲法はないと思う。そういう点で、私は世界でも類のない平和的な民主的な憲法だと思っております。その憲法精神は、一々私読み上げたいのですが、時間がございません。十分承知しておられるから、読むことは省略しますけれども、前文あるいは憲法九条、これは明らかであります。だれがどう解釈しても——解釈がだいぶ政府のほうでは拡大解釈いたしております。そして今日までまいりました。法制局というのは何と詭弁をつくり出す法制局だ、詭弁製造局とでも私は言いたいくらいに、いままでずっと歴代の答弁を見ておりました。またさらに、先ほど来の話も聞いておりまして、そんな感じがいたす。これは佐藤内閣の中の法制局だからしかたがない。悪知恵をあまりつけないでもらいたい。そういった詭弁がこの間に支配をいたしておると思う。  ところで、そうした永久平和、しかもこの武力を持たないという非武装の憲法だと思う。これはそうでないとは言えないと思うのです。はっきり書いてあるでしょう。とにかく戦争は放棄する。その目的を達するために、その手段として、陸海空軍の戦力はこれを保持しない、こういうふうに明文に書いてある。それで、そのために交戦権も認めない、こういっておる。しかも、吉田総理などはもうすでに最初の制憲議会でもこれと同じようなことを言っているのですね。言わざるを得ないかもしれないけれども、言っているのです。自衛権ということでは、自衛権はある、したがって自衛力は認められなければならぬということで、だんだん理論が発展してまいって、現在の自衛隊ということになってきております。その兵力等は相当な兵力になっておるわけでありますけれども、その後憲法が制定されてから、御承知のように平和条約と安保条約が締結をされた。憲法ができたときには、日本国民政府も、またアメリカの政府自身もが、私はほんとうに平和を願ってこの憲法をつくったものだと思うのです。  ところが、その後平和条約を間もなく結んだ。一九五一年に講和条約を結び、安保がうらはらのものとして生まれた、こういうのです。その背景というものは、御承知のように中国における情勢の変化、そういったもの等もあって、アメリカの極東政策が変わり、対日政策が変わり、そして反共軍事体制を進めなければならぬというようなことになったために、方針が大転換をした。それで日本と早く講和条約を結んで日本を独占的に支配しなければならぬ、こういうような考えになって、日本の支配層との間にそれの合意が成立した。これが私は講和条約であり、かつ安保条約であったと思うのです。そこにこそ従属性がある。しかも私は、違憲性があると思う。これはもう私の信念なのです。  したがって、どうも総理とこれのやりとりをしたところが、たいした実益もないだろうし、逆の返事をされるに違いない。木で鼻をくくったような返事をするに違いないと思うのでありますが、ともかく日本はいままで大きな選択を二度したといわれる。その一つ憲法であります。その一つが講和条約と安保であります。この二つの選択が、私の考えからすれば——しかも、大多数の憲法学者もやはりその二大選択は相矛盾をしておる、こういうことを言っております。現に憲法を重視する者と安保を重視する者との二つの流れが国民の中にあると私は思う。だからこそ、安保問題が憲法問題と交錯をして、いろいろな問題に発展をいたしておると思うのです。私は、これは日本の悲劇だと思う。これが憲法に忠実であったならば、私は、こうした講和条約、安保がなければ、日本国民のコンセンサスというものは問題なかったと思う。ところが、私は、そこで安保という反対の選択をしたから、そこで国民も困っている、政府もなかなか言いわけに困っていると思う。しかしながら、安保を第一に取り上げて、憲法はどうしても日陰ものにされやすい、こういうのが現状だと思う。こうした状態に憤慨をする人も相当おると思う。私ばかりではないと思う。私は、学生のゲバルトなんかも、根本を尋ねるとその辺に原因があると思う。とても、これでは国民を納得させることができない。政治の不信というものはそこにある、私はこういうふうに思うのです。国論が二分している、間違いないのだ。憲法に、われわれの考えからすれば、安保は違反しているから、それだから国民、国論は二分をしておると私は思うのであります。その点だけどう考えるか、総理、所見を簡単に伺いたい。
  94. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 るる述べられて、これは私の信念だと——この信念と言われるとちょっと議論するわけにいかないのですが、具体的問題としてその信念から発想したことだとは思うが、どうも日本の選択が間違っていた、こういう点については、これは私がもう少し意見を述べてもいいだろうと思います。  いわゆる憲法で非武装中立論、これは自分の信念だ、かように言われたから、それはしばらく預けておきますが、(畑委員「そのとおりですか」と呼ぶ)そうじゃございません。私ども反対で、これはそこまでも述べろといえばだいぶ長くなりますから、もうその辺は、信念だとおっしゃるからあまり議論しないことにします。  御承知のように、講和条約が締結された際に、全面講和と多数講和、こういう形がありましたね。そのときの議論を一ぺん思い起こしていただきたい。私どもの選んだ方法は、その多数講和の方法だ、その方法のもとにおいて安全保障体制を考えた。だから、多数講和でわが国の安全確保の方法を考え、その後においてこの憲法の議論が出てきておりますが、私はそこに別に矛盾があろうとは思いません。  したがって、憲法論でいわゆる自衛権は認めておる。その範囲において私どもが自衛隊を持つこと、これは当然のことであるし、また、りっぱな、崇高な、理想的な憲法を持っておるわが国にしても、世界各国ともそういうようにあってほしいと思うけれども、なかなか世界的な国際環境はそこまでいっておらない。そういう状態のもとにおいて、やっぱり一つの存立を確保するための安全保障形態、これを私どもが選んだ。この選んだことは、憲法違反でもなく、私は非常な賢明な方法であったと、かように思います。  そこで、まあいろいろ議論が出てくるんだと思いますが、信念は信念として、やっぱり私ども憲法違反はしていないんだということ、これもまた認めていただいて——私は別に信念とは言いませんが、認めていただきたい。そうして、いまの安全保障体制を選択した。この選択のもとにおいて、わが国が金の使い方もたいへん国運を進めるのに役立った、こういうことだと思いますし、また、一部でいわれるような危険は全然ないし、たいへんりっぱな国ができつつある、かように私は思っております。
  95. 櫻内義雄

    ○櫻内委員長代理 福崎君より関連質疑を求められておりますので、この際、これを許します。楢崎弥之助君。
  96. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 関連質問ですから簡単にいたしたいと思います。私、十二日に質問する予定になっておりますが、総理がおられませんので、その関係がありますから、一言だけ聞いておきます。  先ほどの核禁三原則の問題と沖繩の問題です。あとで訂正されないように、ひとつちょっと御答弁を願いたい。持たず、つくらずの二原則は憲法上あるいは原子力基本法との関係がある。持ち込ませずは政策であるとおっしゃいましたが、沖繩に対しては、さきの二原則は、基地の態様いかんにかかわらずこれは貫く、したがって、総理沖繩に対する非核三原則との関係が白紙であるというその白紙は、三番目の持ち込ませないというその政策についてその点が白紙である。前の二原則は、沖繩といえども貫くかどうか、それが一つ。  それから、持ち込ませずは政策と言われますが、原子力基本法との関係は全然ないのかどうか。それだけであります。
  97. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 沖繩がいつも問題になるんですが、沖繩はこれからの問題なんで、いわゆる基地の態様については、私はまだ白紙でございます。したがって、各党からいい御意見があればそれを伺うのにやぶさかでない、かような前提で申しておりますから、いまの沖繩の問題についてもさような意味でお話をする。また、していただきたい。  そこでいま沖繩の問題は、あそこに弱いものにしろ何にしろメースBがあるということ、これはもう、一つの現実、これは否定できない状況じゃないかと思う。そういうような状況下にある沖繩が今後返ってくる場合にどうなるのかという、そこに問題があるのですね。新しいところで全然核基地はないんだ、こういう非常にきれいな土地、そういうところだと、いまの二原則を明確に申し上げることも可能です。可能ですが、沖繩についてはそうではないんだ、そういうところに一つの問題がある。したがって、私は沖繩の基地については白紙だと、かように申しておる。  それからまた、いまの持ち込ませず、こういう問題、これはもう本土についても政策的でも私は持ち込ませずということだ。これは米軍でも同じことがいえているから、これについては事前協議でなければそれは話がつかない。ただいまの原子力基本法も、そういう意味で私は憲法上もかくあるところで運営をする、こういうことでございますから、この政策論争のほうは別に問題はございませんが、それが沖繩に関すると、これはやはり私は白紙であるためにもつと考えなければならないだろう。ことに日本軍がどうこうじゃない。日本の自衛隊がどうこうじゃございません。しかし、このアメリカの問題が外国の問題だというところに一つのひっかかりがありますから、日本と同じような関係においてそれも考えなければならぬのだろう。日本と同じようなというのは、いま事前協議の態様ですね、そういうものになるのじゃないか、かように私考えております。とにかく、いまある沖繩、現状というものをひとつ認識して、そうしてこれからの沖繩にある基地はいかにすべきか、こういうようなことでありますから、そこに白紙といういまの態度があるのであります。御了承いただきます。
  98. 畑和

    ○畑委員 先ほど来申し上げました憲法の規定、それに比べて現在の防衛力というものがえらい隔たりがある、かように思う。これを数字をもってあげれば、いまや膨大な軍備になっておるはずであります。国際的にも相当な比重になり、さらにまた、この防衛力の充足率の速度、このパーセンテージ等も、非常な速度で多くなってきている事実があるわけでありまして、この憲法の明文と現実とを比較して、私は非常にふしぎな現状を考えるのであります。これは私ばかりじゃありません。おそらく小学生や中学生が憲法を文字どおり読んで、そうしていまの現状と比較した場合に、一体どういう感じを持つかということを私は申し上げたいのです。  そこで、結局は憲法のいまの規定と、それから安保の現状、こういうものがそれほど違っておる。とてもこれを調和することは——いま政府は調和しているんだ、こういうわけで、安保そのものが憲法精神に合っておるというような考えでおるようでありますが、とてもこれは一般の人にはちょっと納得ができぬのじゃないか、こう思う。結局は、私は、いまこの際その安保の状況に合わせるためには、憲法をそのままにしておいていいんだろうかという素朴な考えもあると思う。あるいはまた、憲法をそのまま行なおうとすれば安保を廃棄する以外にはないのじゃないか。早く独立しようというようなことで安保の道を選んだ事情もあろうと思います。結局、その当時の政治が、その後の政治が憲法を冒涜したものだ、私はかように考える。その点議論をしておってもしかたがございません。沖繩憲法の問題にちょっと触れます。  平和条約第三条、この間川崎君も触れられましたが、この三条によって沖繩が現在の非常に気の毒な地位にあるわけで、怪物とでもいうか、まことに変態的な沖繩地位であります。ところで、憲法というのは御承知のように昭和二十一年にできて二十二年の五月三日に施行された。ところで、講和条約と安保が昭和二十六年、実施が七年、こういうことになるわけであります。そうすると、観念的に、理論的に考えてみても、沖繩は当時日本憲法の支配下にあったはずだと私は思う。占領されておったということを言うかもしらぬけれども、その点では、日本の本土だって占領されていたのだ。程度の違いだけだ。したがって、憲法は本来行なわれるべきものであったと私は思う。ところが、それを当時の政治状況から講和条約を選ばざるを得なくなり、講和条約第三条というのが合意されたわけでありまして、考え方からいたしますならば、どうしてもこれは講和条約第三条そのものが憲法に違反をして結ばれた事実だけは私は間違いないと思う。したがって、憲法の基本的人権あるいは平和主義、それから現地の自治、こういったものが侵害をされて今日にまで及んでおる、こういう事実に着目をして、ぼくはもっと早く政府沖繩の返還に踏み切るべきだったと思う。いまになってはおそい。まあ、やるにこしたことはありません。どんどんやってください。だけれども、おそきに過ぎた、かように思うのであります。そういう点ひとつ、沖繩問題は憲法問題だというふうに考えるのでありますが、その点について簡単にひとつ答えていただきたい。
  99. 高辻正巳

    ○高辻政府委員 お答え申し上げます。  平和条約三条と憲法との関係は、これはまさに御指摘のような問題点一つあることは確かだと思いますが、いまも御指摘になりましたように、わが憲法昭和二十二年五月三日から施行されましたが、当時、これはもう申すまでもなく、わが国は敗戦による連合国の占領管理のもとにあって、憲法といえども実はこれを超越した権力による制約を免れなかったわけでございますね。わが国が完全な主権を回復し、わが憲法がこれに超越した権力により制約を免れることになったのは、これもまたおおうべくもない事実でございますが、実は平和条約の発効によってであって、平和条約の発効こそが実は現行憲法の真実の効力発揮の基盤をなしたものであることは否定のできないことであります。沖繩地位は、わが国の旧領域の処置とともに、かように日本憲法の真実の効力を発揮する基盤をなした平和条約によってその地位が設定されたのでありますが、これを日本憲法に根拠がないからといって、憲法上違法であるとかあるいは不当であるとかいうのは、理論問題としては少し筋違いの問題じゃないかというふうに考えるわけでございます。  お許しをいただきまして、この際、先ほど先生、安保条約に関する最高裁の判決について御指摘がございましたが、確かにおっしゃるように、例の安保条約が違憲かどうかのところは、一見明白に違憲であるとは思えないというようなところがございますが、私が申し上げたいわゆる戦力の保持、これについての判断は、これは明瞭に下しておりますので、それまでがあいまいであったわけではございませんことを、私も法律の事務の端くれにおる者でございますので、良心をもってお答えをすればそういうことを一言申し上げておかなければいかぬと思いますので、あしからずお願いいたします。
  100. 畑和

    ○畑委員 それではこの問題に関連して最後にお伺いいたします。  最近の歴代の自民党政府は、憲法の記念日というのをせっかく祝日として選んだのにかかわらず、憲法行事を一度もしない。かえって米国の軍隊がおったときにやっただけで、米国の軍隊がいなくなったら、日本が独立したら、それからずっとやらない。これは非常にふしぎなんです。これは自民党政府憲法軽視の一つのあらわれではないかと私は思うのであります。それと同時に、明治百年の記念行事はやったにもかかわらず、憲法はすでに二十周年がもう過ぎた、それでも二十周年をやった記憶がございません。やはり日本の国の基本法でありますから、最高法規でありますから、しかも世界に比類のない憲法でありますから、記念行事は、われわれがやらないでも政府が本来はやるべきだ、かように思う。しかも二十周年もとうとうその声も聞かなかった。自民党には憲法改正の綱領を持っておられる。そういう点でいろいろ考えてみて、私が最初から申し上げましたように、憲法はなるべく避けて通りたい、こういうのが政府考えではないか、そこにあらわれておるのじゃないか、かように思うのであります。その点簡単に最後にお答えを願いたい。
  101. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 憲法を避けて通る考えは毛頭ございません。もちろん憲法尊重していく。  また、ただいまの行事の問題でありますが、祝祭日にどういう行事をするかということと、また、何にもしなくとも国民一人一人が休日その日に、憲法を心から祝う人もありましょうし、思い起こしていろいろ反省する、こういうようなこともありますから、行事の形にとらわれないで、実際にわれわれがこれを祝祭日にしていること、それでひとつ御了承をいただきたい。
  102. 畑和

    ○畑委員 次に、警察問題について質問をいたします。  今度の予算案を見ますと、警察関係経費について、七〇年対策としての経費と思われるものが相当に載っております。その問題を中心として質問をいたしたいのであります。  まず機動隊を中心とする五千名の警察官の増員の問題、これは一般外勤が千五百名、公安係の私服の増員が千名、機動隊が二千五百名でございました。ところで、一般の外勤の千五百名の増員も、去年ふやすはずであったけれども、機動隊が去年ふえたために、機動隊をその一般外勤からとったというようなことでありましょうか、その穴埋めというようなものでありますから、したがって実質的にはほとんどこの五千名が全員、警備、公安関係の増員だともいえると私は思う。最近のいろいろな事案もございますからであろうとは思いますけれども、警備、公安が優先をしておるのではないか、七〇年対策ではないか、かように考えるのであります。  ところで、この間美濃部都知事との警察の問題がございました。美濃部都知事は、二千五百名のうちの二千名の機動隊の増員、これが警視庁への割り当てだという話。そのほかに公安関係の者等で千三百五十人とかいうふうに聞いておりますけれども、こうした警備隊を中心とする増員に対して納得できないということで、いろいろ警察庁関係のほうから内簡指導等をやっておったようでありますが、この内簡指導自体がぼくは行き過ぎだと思う。結局、予算が通って、そしてその後政令が出て、それから条例できめる、こういう順序にあるということは、この前国家公安委員長が答弁を最後にされました。けれどもこの機動隊の増員の問題でありますが、機動隊はあくまでも都道府県の機動隊であることは言うまでもございません。そこで、その増員について政令をきめる、政令で東京都は何名という基準をまずきめる、それからその基準に従って各都道府県で条例をきめる、条例はその基準に従わなければならぬ、こういうふうに政令になっておるわけでありますけれども、このことによって結局地方の都道府県の警察を支配をするという結果になろうと思うのです。財政的にも都道府県の財政を圧迫をするということになりかねない。結局、人件費、被服費等は全額都道府県が持たねばならぬわけであります。それに対する交付金等もありましょうけれども、しかしこれは都道府県が持たなければならぬということで、財政的にも圧迫になるし、また機構的にもそうした形で地方を制約をするということに規定上なります。  そこで、ひとつその点についてお伺いいたしたいのでありますけれども、今度の問題について、機動隊をふやすということでありますけれども、定員については基準をきめる、したがって、その基準に従って条例をきめさえすればよいのであって、もし美濃部さんが機動隊を増員しないでほかの一般の警察官のほうにそれだけの増員をする、基準は守る、こういうことであった場合に、そのとおりやれば美濃部さんのほうは政令違反にならないかどうか、その点を国家公安委員長にまず伺いたい。
  103. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 お答え申し上げます。  都道府県警察の警察官の定員は、御指摘のように政令で定める基準に従って条例で定められるということになっております。そこで、政令の基準には都道府県警察ごとの警察官の総数及び階級別定員のみが定められておるのであります。これは御案内のとおり、警察法第五十七条第二項、警察法施行令別表第一、第二でございます。したがいまして、お話しのような場合は政令違反の問題というものは起こらないと思います。  しかしながら、今回の増員は、都道府県の要請もございまして、機動隊の警備力を強化するという考え方に立って、政府の方針として行なうものでございまして、したがって国の予算案にも機動隊の増強としての経費が組まれていることにかんがみまして、国としましては、都道府県においてもこのような趣旨に沿って必ず所要の機動隊の増員が行なわれることを期待しておるわけでございます。
  104. 畑和

    ○畑委員 違反にはならない。これは間違いない。ただ、政府としてはそれを都道府県が守るように、それも趣旨に沿うように期待をする、こういうことと承ります。したがって、増員さえすればほかのほうに振り向けてもよろしいということになるわけであります。  それから、次に機動隊そのものの法的根拠を承りたい。私はこの警察関係の法規を調べてみました。ところが、この警察法そのものには機動隊という文句は一つも出ていない。それからまた、さらに警察法施行令というものを見ますと、その中にところどころたまに機動隊という文字があります。すなわち警備局の所管事項として「機動隊に関すること。」こういうことと、政令の第二条に機動隊の運営に関する活動経費、こういうような意味の記述があるだけでありまして、そのほかには、機動隊とは何ぞやといったような基本的なものは一切ないのです。ところで、地方の条例にも大体一、二の県を当たってみましたが、これまた機動隊そのものの定義をするような規定がないのでありますけれども、この点は法の不備かとも思う。機動隊そのものがわからぬ。いつの間にか機動隊というものができて、それがそのまま、機動隊という文字を政令の中でちょっと入れただけで、一つもそれが法規としての定義づけがないということになるのではないか、かように思うのでありますが、その点について法的根拠を承りたい。
  105. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 お答え申し上げます。  御指摘のように、機動隊という名前は法律そのものに根拠を置いた名前ではございません。警察機能を発揮しますのにつきまして、まあいわば対症療法と申しますか、御案内のとおり近来集団暴力事犯が多うございます。あるいは交通戦争に対処するにいたしましても、一斉捜査等につきましては、やはり一つの部隊を組織して集団的な警察力でなければ対処できないという暴力事犯をはじめとする課題が多うございます。そういうことから、昭和二十九年警察法改正の当時以来機動隊と通称するものが始まりまして、それが具体的には定着しつつ、御指摘のように、施行令等に事務的な経費配分等の関連において機動隊という名称が政令の中に定められたと申しますか、その必要のゆえに出てきておるという関係でございます。このことはいま御指摘のとおりであります。  そこで、重複するようでございますが申し上げます。都道府県警察本部の内部組織は、政令で定める基準に従って条例で定めるべきことを規定しておりますことは、警察法第四十七条第四項、御承知のとおりこの規定に基づきます。これによりまして、警察法施行令は、都道府県が条例で警察本部の内部組織を定める場合の基準を定めております。これは警察法施行令第四条附録で、先ほど御指摘のところであります。機動隊はこの基準に基づき定められている警察本部の内部組織、すなわち部の設置に関する都道府県条例の委任を受けた都道府県公安委員会規則によって、警備部の所掌事務を遂行する一つの分課として同部のもとに設置されているものでございます。  以上お答え申し上げます。
  106. 畑和

    ○畑委員 実際の警備実施の面を担当いたしておるのは機動隊が中心ですから、機動隊ということばはずいぶん出てきます。ところが、その機動隊についての根本的な根拠がないということは、私はどうかと思うのです。この辺はどうするお考えか。それを将来の問題として承りたい。
  107. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 お答え申し上げます。  機動隊そのもののいきさつ、法的根拠ともいうべき課題としては以上申し上げたとおりでございますが、機動隊、機動隊と毎日のように出てきますけれども、しかも具体的には警察の国民に対する責任を果たす上におきましても、東京をはじめとしてずいぶん苦労をいたしておるわけであります。それならば、そういう必要性を持った警察の責任を果たす上のやむを得ざる部隊としての名称、その部隊が必要であるならば、もっとその根拠を法的に明確にしたらどうかといういまの御意見であったかと思いますが、そのことは、当面としては二十九年以来の慣行に基づいておりますから、事実問題としては支障はないと思いますけれども、厳密な法的な体系を通じて明確にすべき課題にあらずやという御意見は、参考にさしていただきたいと思います。
  108. 畑和

    ○畑委員 次に、機動隊に対する報償費の支給の問題、この問題につきましてはこの前すでに質問をなされまして、さらにまた理事会等においていろいろ相談をされ、報告等も受けたようであります。したがって、この支出の根拠というようなこと、一体この費目で出していいのかどうか、こういうようなことについては、大体了解をいたしております。  ただ問題は、今度のこの予算を見ましても、相当ばく大な——いままでに比べてはばく大な予算が計上されておると思うのです。去年の報償費と来年度の報償費との数字をまず言ってもらいたい。そしてそのうち機動隊を対象として積算をされた報償費の金額も、四十三年度それから四十四年度の予算、これを両方をひとつ簡単にあげてもらいたい。
  109. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 具体的な数字の問題でもございますから、政府委員からお答えさせていただきます。
  110. 浅沼清太郎

    ○浅沼政府委員 お答えいたします。  昭和四十三年度が四千万でございます。昭和四十四年度に要求しております額は一億三千万でございます。
  111. 畑和

    ○畑委員 まことに膨張したものです。四千万から一億三千万になり、非常に大きくなったものであります。もっとも、これは最近のいろいろ機動隊出動の回数あるいはいろんな場合のゲバルト等によってのこと、それを考えに入れてのことだと思いますけれども、これは私は非常に多過ぎると思う。しかし、いま答えられた数字は、全額の予算ではないか。したがって、機動隊に対しての場合をもう一度言ってくれ。
  112. 浅沼清太郎

    ○浅沼政府委員 お答えいたします。  御承知のように、報償費は必ずしも機動隊とか警備だけでなく支出しておりますので、今回伸びました額のうち機動隊分がどれかということは、はっきりいたしません。
  113. 畑和

    ○畑委員 しかし、主として目標にしているのは、機動隊を対象としたものではないかと私は思うのです。それが積算上一回出動三百円などというような話が出たわけでありますが、それが積算の基礎になっているのでしょう。それが問題になったわけです。その問題はもう解消した。これはわかった。しかしながら、ああした事件等の出動に対して、賞揚金といっておるようでありますが、そうした基準をきちんときめておかなければならぬと思うのです。ところで、理事会の席上に提出をされた基準案というものをいま手元へ受け取っております。これによると、全治一週間未満の者に対して千円、それからだんだんときて、全治一カ月以上の者が一万円、右記の者のうち特に重傷の者が三万円というふうになっている。それから、前項以外の者で労苦の多大な者が千円、傷を受けた者でなくても労苦の多大な者が千円と、こういうことの基準案が出ております。これはあくまで国会で問題になったので、それで基準案を考えたのか。もともとこの基準案があったのか。あったとすれば、案ではないはずだ。いま実際に行なわれておるのがあるとすれば、基準規則か何かであるべきだと思う。案でないはずだと思うのだが、案となっているから、私はこの間の質問にこたえて、それでおくればせながらつくろうとした案ではないかと、かように思うのであります。その点をひとつ答えてもらいたい。
  114. 浅沼清太郎

    ○浅沼政府委員 従来も基準がありましてそれに基づいて支給をいたしておりますが、それは内規に基づいて支給いたしておりました。先生のいまおっしゃる基準案といいますのは、内規でなく、あるいは訓令でありますとか、そういう意味で検討したい、その前提となる案、こういう意味でございまして、従来もそのような基準で支給をいたしております。従来の支給している基準ではあるわけです。内規として支給した、こういうことであります。
  115. 畑和

    ○畑委員 従来内規で規定をいたしておる、こういう話であります。その内規を基準として、今度内規という形ではなく、もう少ししっかりした根拠を持った訓令等というような形でこれを実施したいというので、基準案ということにしてある、こういう答弁でございますが、まあ報償を出すのをわれわれは必ずしも反対はいたしません。しかしながら、これが結局賞揚されるのだからということで、かえってその辺をもらいたいというようなことでやり過ぎるというようなことがあってはならぬ、かように思う。しかも、これが治安関係の機動隊を中心とするものでなく、ほかにもひとつ公平にやってもらわなければならぬと思うのです。これは希望いたしておきまして、別に答弁は求めません。  以上で報償費の問題についての質問を終わります。  その次にお聞きいたしたいのは、管区警察機動隊、四千二百名の新設の問題であります。この問題は新聞にも出ております。管区警察学校に機動隊要員みたいなものを集めて、そこで教育訓練をする、こういうことのようでありますが、その概貌をできるだけ簡単にひとつ伺いたい。
  116. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 なるべく具体的に政府委員からお答えさせていただきます。
  117. 浅沼清太郎

    ○浅沼政府委員 お答えいたします。  管区警備部隊、これは仮称でございますけれども、これは性質は、それぞれの府県警察に所属する警察官をもって府県警察ごとに部隊を組織する。また常設の部隊ではありませんで、平生は所属に勤務しておりますものをあらかじめ指名をいたしまして編成をしておく、こういう性質のものでございます。ただ、他府県に応援に行くような場合もございまするので、教育訓練は一つの水準を得ておきたい、こういう考えでございまして、管区警察学校において合同して訓練を行なう、こういう性格のものでございます。
  118. 畑和

    ○畑委員 もし何か警備実施という際に、そのまま出動するということがあろうと思う。また、それも一つの大きなねらいだと思う、管区ごとに。その際、その警備実施をする府県警察がまず中心になって、そしてほかの援助要請等の手続が要るわけだと思うが、その辺はどういうふうになっているのです。
  119. 浅沼清太郎

    ○浅沼政府委員 ただいまの応援出動の場合でございますけれども、かりにこの管区警備部隊が他府県に応援に参るという場合には、当然警察法の第六十条に基づきまして、当該都道府県の公安委員会あてに個々具体的な援助要求をいたしまして、それに基づいて応援をする、こういうふうになっております。
  120. 畑和

    ○畑委員 規定には一応従った形だと思います。しかしながら、私の考えをもっていたしますならば、ちょっと脱法的なきらいがあると思うのです。ともかく各管区警察学校に集められたそうした警察官は、各都道府県の警察官であるという身分、ところである県に警備実施に出動するという場合には、そのつどそうした手続を全部の各県と整えなきゃならぬというような形がありますので、そういう形をとるんだと思うのですが、そういう点が、ほんとうにそれはあとで適当にやって、実際にはすぐ出動してしまう、こういうことであるのではないか。結局第二機動隊というようなことになるのではないか、かように思うのです。  それともう一つ、管区警察学校には、本来の教養訓練の問題があろうと思います。全部の管区、七つですか八つですか、ございますが、管区警察隊の一年間の普通の教養の員数、それと今度の四千二百名という問題ですが、そういう関係で本来の教養訓練に支障がないかどうか。どうしても機動隊のほうが優先するというようなことがないかどうか、この点を承りたい。
  121. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 管区警備部隊、これは仮称でございますが、大体私は、この名前を管区と冠すること自体が御質問の意味における疑念を誘発するのではないかと、内部でも言ってはおりますが、仮称と御承知をいただきます。  脱法行為ではないかという仰せでございますが、ことさら法律の裏をくぐってどうしようという意図は、毛頭ございません。現在の法律の範囲内において、先ほども申し上げましたように、最近における集団暴力事犯が多うございまして、隣県から応援を求めるということがしょっちゅうでございます。その場合に、訓練の度合いが誤差がございますと、集団としての行動に非常に不便だという、実施上の体験に基づいてこういう訓練教育ということをやる。一つ編成されたものを各都道府県が持っているほうが、相互応援上都合がよくないかという必要上から生まれたものの考え方でございますことを、冒頭に申し上げさしていただきます。  そこで、この管区警備部隊と申しておりますものは、先ほども政府委員からお答え申し上げたようですが、それぞれの府県警察がその所属する警察官をもって編成する当該府県警察の部隊でございます。しかも、それは常設の警備部隊ではございませんことは、先刻も申し上げました。府県警察の各所属におきまして、日常の警察業務に従事している警察官をあらかじめ指名して編成しておくものでございます。しかし、警察法第六十条に基づいて他府県警察から援助の要求がなされました場合にも、これに即応できるよう、警察庁の調整のもとにあらかじめ管区警察局の管轄区域ごとの編成計画をも策定しておこうというつもりにしておりまして、さらに管区単位の合同訓練も実施することがあるかもしれません。しかし、現実に他府県警察に応援出動するためには、警察法第六十条に基づき、当該府県公安委員会あてに具体的な援助の要求が個別になされなければならないことは、当然でございます。  以上のように、管警警備部隊と名前は仮称しておりますが、管区単位の編成と合同訓練を行なうものでありますけれども、あくまでもその本質は、各府県警察が設置する各府県警察の警備部隊でありますので、決して警察法のたてまえに反するものではなかろうと理解しておるわけでございます。  なお、警察学校の本来の教育訓練に支障ありやなしやという御質問もございましたが、このことは政府委員からお答えさしていただきます。
  122. 浅沼清太郎

    ○浅沼政府委員 計画によりますと、管区警備部隊は合計四千名でございます。一回に入りますのは、その三分の一でございます。いま年間教養計画で管区学校でどれだけやっているかという数字は手元にございませんので、あれですが、したがいまして、本来の教育訓練には差しつかえはございません。
  123. 畑和

    ○畑委員 時間がございませんので、先へ進みます。  新聞等を見ますると、また予算面にもあらわれておりますけれども、警察官全部が十六万何がしおると思うのですが、今度この全警察官の約半数、八万人ばかりの人たちに出動用のヘルメット、防石面、それからたれ等の装備を支給するそうであります。さらにまた、それより少ない数字ではありますけれども、約五万人の人に防護衣あるいは防護の手套と申しますか、こうしたものを支給するという話であります。その他車両等の問題も相当数が多い。去年も相当ふえておりますけれども、ことしは特にふえておる。これがいわゆる七〇年対策だと思うのですけれども、非常に数が多いのでありますけれども、その点の問題について簡単に答弁をしてもらいたい。
  124. 浅沼清太郎

    ○浅沼政府委員 お答え申し上げます。  御承知のように、最近学生の事件が非常にふえておりまして、その暴力的な傾向も強まってきておるということで、申しわけありませんが一つの例を申し上げさしていただきますと、四十一年には警察官でこのような警備事件に出動してけがをした者が七百七十名でございますが、四十二年には二・五倍の千九百七十名であります。昨年は約四倍の七千名であるというようなことで、ただいまお話しありました個人装備は、もっぱら現場に出動いたします警察官がけがをしないようにするための全くの防護用の器材でありまして、これはやはり全国的な現在の情勢を見ますと、少なくも制服八万人ぐらいは準備しておかないと現場に行けない、こういうような考えで整備をいたしておるわけであります。
  125. 畑和

    ○畑委員 ただ、その状況はわかりましたけれども、全国警察官の半分についてこうした装備をするというのは、こうした情勢に便乗してひとつ装備を充実しようということだ、そういう面もあろうと思います。しかし、時間がございませんから先へ進みます。  次には、警察機動隊の隊舎の問題であります。警察機動隊の入れ毛の、この問題でありますが、ちょっと私、法規等を調べてみますると、これはこの費目で支出することはできないのじゃないか、かように思うのです。それというのは、機動隊隊舎の予算——もっとも、これは去年からもうすでに国庫債務負担行為、これできまっておりまして、本来は去年質問をしておかなければならなかったところだと思うのでありますが、ことしは二年目、それで約五億ですかが今年度で計上されておるわけです。  ところで、国庫支弁は国庫支弁でありますけれども、その費目での支出はできないのではないか。それというのは、一体この機動隊の宿舎、隊舎、これは警察教養施設なのかどうか。この点は、私は警察教養施設じゃないと思う。  それからもう一つ、同じ国庫支弁できる例の第二条の第七号、いまの警察教養施設は第二号ですかでありますが、第七号に、「警衛及び警護並びに騒乱、大規模な災害その他の場合における警備のための出動、機動隊の運営、警備訓練、長距離にわたる移動警察、不法出入国の監視その他の警備活動に必要な経費」、こういう項目があります。この項目のうちの機動隊の運営ということに該当するのだ、この間事務局を呼んで私が話したときにはそういうことらしいのですが、ところがこれも私は無理だと思う。この項目は、結局警察法の第五条第二項の規定を受けなければならぬものでありますが、それに該当するような規定が第五条にはない。例のいま言った第二条の運営という点に該当するものがない。それでその運営でありますけれども、この項目は私はそういった施設をさすものではない。全文をずうっと見てみればわかりますが、警備活動に必要な経費というのでありまするから、したがって、大体そのときそのときに経費として使ってしまうもの、こういうものが、大体全部の規定を見ればわかる。ところが、そういう施設については、したがって該当しない。教養施設でもない。こういうことになれば一体どうなるのだ。  本来これは機動隊ですから、都道府県の県費で持つべきだ。それを国庫支弁は不当だと私は思う。それは都道府県は助かりましょう。しかしながら、法規上は不当だと思う。それでもし正規にやるといたしますならば、例の第三条に国庫補助の規定がございますが、その規定を見ていただきたいと思う。第三条に、「法第三十七条第三項の規定により、都道府県の支弁に係る都道府県警察に要する経費について、国がその一部を補助する経費は、当該都道府県の支弁する経費のうち警察職員の俸給その他の給与、警察官の被服費その他警察員職の設置に伴い必要となるもの以外のもの」、ややこしいのですが、そしてカッコして「(警察職員の待機宿舎の設置に必要な経費を含む。)」とわざわざ書いてある。これの半額適用を受けたいからであります。本来は都道府県警察の持つべきものであるけれども、この場合はひとつ半額補助をやろうじゃないかということで、例外的にカッコで述べておる。したがって、本件の場合にも、地方警察職員の宿舎でありますから、これと似かよったものであります。したがってここへ新しく例を挿入して、そうして半額国庫負担でやるということならばできるけれども、そうでない場合には、いずれの場合にも違法である、かように思う。この点はどう考えるか。少しこまかい質問になって……。
  126. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 お答え申し上げます。  厳密な法解釈を順序立ててのお話でございますが、御指摘のとおり、昨年来、実際は国費は出しておりませんが、ずっと以前から機動隊がございます宿舎につきましては、既存の、昔のおんぼろ兵営を使ったり何かしてやっておりましたが、だんだんと老朽いたしまして、改築等あるいは新設等の必要がございましたその案件が、前年度来登場してまいっておるわけでございます。で、私どもといたしましては、いま御指摘になりましたけれども、法第三十七条の関係の施行令第二条第七号の、お話に出ました機動隊の運営に必要な経費、いささか広義に解釈しますれば、機動隊がその機能を発揮しますために家がなければ動けない道理だということに関連を持たせまして、これに基づいて今日まで支出いたしておるような次第でございます。ただ、御指摘にもありましたように、もっと具体的に、列挙的に施行令に明記したらどうだという御提案を含めての御意見かと拝聴しますが、さような意味においては検討の余地があるんじゃなかろうかと存じておる次第であります。
  127. 畑和

    ○畑委員 これはひとつ大きな問題だと思うのです、本来は。その解釈は、私非常に無理があると思うのです。こまかい話をするようでありますが、しかし、これはやはり予算の審議でありますから重要だと思うのです。時間があれば、いろいろ大蔵大臣等にも承りたいのですが、時間が残念ながらない。そういう点で、この七号は、そうした宿舎の場合まで含まない。特に宿舎は施設と別に書かなければ、これの適用を受けない、こういう確信を持っております。この点、ただ法の不備だから、何とかこれを条文に載せるようにしろという建設的な意見というふうに拝聴するから、したがって前向きに検討いたします、こういう答弁だけれども、これは私のほうが勝ちだと思います。この点について、ひとつ委員長のほうで、よく理事会等で、保留しておきますから、ひとつ処理について相談してもらいたい。その問題についてはこれでとどめます。  それから、四十四度年予算のうち、七〇年対策はどれだけあるか。これをひとつ、この間調べてもらったはずだと思う。したがって、これを数字だけちょっと言ってもらえばよろしい。
  128. 櫻内義雄

    ○櫻内委員長代理 先ほどの申し出は、理事会で善処いたします。
  129. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 七〇年対策の予算の内容をというお尋ねでございますが、大体私は、七〇年対策ということがよくいわれますけれども、あれは新聞紙上いわれることであり、あるいは新聞にそう書かれるようにネタを提供する人があるから、そうなっておるんだ、そういう問題と心得ます。  ただし、現実問題としては、さしあたり七〇年を目標にあばれてやろうという人がおる以上は、それも念頭に置いて治安の責任を果たさねばならない、そういう考え方をもって四十四年度の予算にも臨んでおることは、これはもう当然でございます。そういう意味を御了解いただいておいて申し上げたいと思います。でございますから、特に七〇年対策費という限定された経費というわけではございませんので、俗にいうそういうことも、一応御質問の御趣旨もございますから、念頭に置きながら、明確ではございません点もありますけれども、申し上げます。  概括いたしまして、警備用車、警備装備品、通信器材、機動隊施設など整備、警備訓練の強化、機動隊の増員等に要する経費、それを一応集計してみますると、約八十一億円と相なります。この関係の四十四年度のやつを御参考までに申し上げますと、四十三年度に比べて約二十三億円の増加という勘定になろうかと存じます。これはいま申し上げましたように、最近の集団不法行為事案の増加、続発に対処するためのものであります。  なお、警備関係と申しましても、たとえば警備用車、通信器材などをはじめとし、災害救助や雑踏整理等にも使用されるものであることは当然でございますが、いわゆる公安警備のためだけのものとも申せないのでございまして、一応警備関係の費用ということでありますれば、一つのめどとして八十億円になるという意味合いと御理解をいただきたいと思います。  御参考までに、項目的に、ついでながら申し上げさせていただきます。  警備用車の購入維持約十億円、警備装備品約六億円、機動隊施設十三億円、リハビリテーション施設補助四千万円、警備訓練等警備活動費三十六億円、通信器材五億円、超勤補助八億円、増員教養経費及び施設付帯事務費等約二億六千万円、以上でございます。
  130. 畑和

    ○畑委員 合計八十一億といたしますると、四十四年度の予算のうちの約五分の一ということになります。七〇年対策ということにしては相当多い数字だ、かように思う。  次に進みます。  私は、こうしたいろいろないままでのデータからいたしまして、警備公安警察が、ほかの刑事警察その他の警察と比べて非常に優先をしているのではないかというふうに考えるのです。その証拠には、まあ証拠となるかどうかわからぬけれども、三億円の事件がいまにもつかまると思ったら、いまだにつかまらない。ちょっと警察がほんろうされたきらいがある。ある意味でかっさいをした人たちもいるようでありますが、いまだにつかまらぬ。なかなかみごとなものです。しかし、金額はきわめて大きい。やり方がなかなか知能犯的だ。こういう点で非常に注目を集めて、社会不安を増しておりますが、こうした事件がつかまらぬ。また、一〇八号の例の連続射殺魔事件が、いまだにつかまらぬ。ほとんど見込みが立っておらぬのではないか。こういうふうな状況だと思うのであります。この点を実は少し、一〇八号と三億円強奪事件についても質問をいたしたいと思いましたけれども、時間が残念ながらございません。したがって、この点を申し上げて、結属これが刑事警察をどうも軽視をしておるあらわれの一つだ、少なくともその一つになるのではないか、こういうふうに私は考えることを申し上げて、この点は終わりにいたしたいと思うのです。  以上のことをいろいろ総合してみまして、どうも法規的にいろいろな無理があるようであります。このことは、結局いまの警察法規が規定しているもの——だいぶ警察法も変わりました。そして、いま現在、都道府県警察が中心となった規定であります。しかし、その中では、国家警察的なものが相当中に入っておる規定でございまするが、その規定をもっていたしましても、なおかつ権力としての要請、いろいろもっと国家警察化しよう。たとえば機動隊の問題等はその最たるものであります。いまの機動隊の宿舎の問題もそうです。それからまた、さらに今度機動隊の増員にまつわる政令との関係、それから機動隊の第二機動隊ともいうべき管区警備部隊の問題、こういう問題等についても、現行法規では、先ほど来私が主張しておったような無理があるわけです。これはすなわち、現在の都道府県警察法のこの法の規定するものと、国家警察化そうとする当局の企図、志向、こういったものとの間に相当ギャップがある。したがって、そのギャップを何とか埋めたい、現行法規上埋めたいということのために、法規的に解釈すれば、私が申し上げた幾つかのごとく、きわめて無理なところが出てくる、こういったことになるのではないかと思うのです。この点は議論になりますから、別に答弁は求めません。  さらに、警察法の精神とは何かといったようなこと、あるいは最近の日本における警察権力の傾向等の問題について私の意見を述べて、当局の御意見等も聞きたかったのでありますけれども、時間がございませんので、この点は割愛をいたします。  三億円と一〇八号の現状と見通しについてだけ、簡単にひとつ言っていただきたい。あと次の質問があるから簡単に。
  131. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 三億円問題及びピストル魔問題等、今日まで問題の焦点にたどりつき得ておりませんことを恐縮に存じております。しかし、それは御指摘のような警備警察に重点を置いたからお留守になっておるというふうにはむろん考えておりません。関係の警察官は、昼夜を分かたず今日も懸命の努力をいたしておることを申し上げさせていただきます。  なお、国家警察化しようとしているのではないかという意味合いの御指摘がございましたが、さようなことは絶対にございません。一言申し上げさしていただきます。最近の警察運営に国家警察的色彩が強いという御指摘でございましたけれども、どういう点でそうおっしゃるか、私どもには理解ができない。今日の警察は民主的な警察法のもとに運用されております。警察法に定める警察の責務を遂行するために、ただひたすら努力を傾注しているものでございまして、御指摘のような懸念は一切御無用にお願いしたいと私は申し上げたいと思います。すなわち、法の命ずるところに従い、民主的に、不偏不党、法に基づき、法の範囲内において、公正なる警察活動を通じて国民に奉仕する、それ以上いささかの逸脱もないという考え方で行動しておることを申し上げさしていただきます。
  132. 畑和

    ○畑委員 最後のこの委員長のことばは、これは警察法にちゃんと書いてあるとおりで、私は、そのとおりやってもらいたい、こう時間があったら言おうと思っておったところが、そのとおり言われたのだが、これは警察法に書いてあることであります。そのとおり本来やるべきである。とかく逸脱しがちであるから、それで私たちはいろいろの点で質問をして、警告もしておるのです。  それでは、次の問題に入ります。  政治資金規正法の改正問題と公選法の改正問題、この点が、もう何度もあらゆる機会で問題になっております。最近の政治資金規正法についての従来の経過、それから政府並びに自民党の態度というものについては、私がいまさらここでちょうちょうするまでもありません。国民もよく知っておる。新聞もよく書いてくれております。それであるのに、いまだに政治資金規正法の改正が日の目を見ないということ、政府は、総理もずいぶん前にも小骨一本抜かないともおっしゃった。それからさらに、勇断をもって処理しますと選挙制度審議会でも言っておる。それにもかかわらず、いまだにこの状態は何事か、こういう趣旨でございます。  ところで、今度第六次選挙制度審議会の設置が急がれておるわけであります。そして参議院の定数の是正をはかるために——それは総理もその約束をしておられます。そのためには第六次選挙制度審議会が持たれなければなりません。ところが、いまだに持たれておらぬということについて、話を聞きますと、この前の答申が行なわれておらぬので、そういうことでは、われわれはそんな審議会には加わらないというような態度の人もいるようであります。そういう関係でおくれておるやに聞くのでありますけれども、なぜ審議会の設置がおくれておるか、見込みはいつごろかということ、それから法案がいつまでに出るか、どういう内容かということについて、総理並びに自治大臣にお伺いをいたしたい。簡単でけっこうですからお願いいたします。
  133. 野田武夫

    野田国務大臣 お答えします。  政治資金規正法につきましては、しばしば国会総理もお答えになっております。私もお答えいたしておりますが、現状よりも一歩前進した内容を持ちたいというので、いま検討いたしておりまして、その成案を急いでおるときでございます。  それから、第六次選挙制度審議会の発足でございますが、これは臨時国会で私ははっきりお答えいたしておきましたが、いま畑さんのおっしゃる、委員の方々が受けないとか受けるというのではございませんで、選挙制度の改善につきましては、まだ幾多の重要な問題が残されておりますから、できるだけりっぱな方をお願いしたいというので、大体の審議会の発足のめどを三月の末にいたしますということをこの前の臨時国会でもお答えしておりまして、いまその前提のもとにいろいろ選考を急いでおる次第でございます。(畑委員「法案の提出は」と呼ぶ)法案の提出は、政治資金規正法ですか。——これはいま申しまたとおり成案を急いでおりますから、成案ができ次第……(畑委員「いつごろ」と呼ぶ)まだいつごろということはここで明言はできません。
  134. 畑和

    ○畑委員 まだいつまで出すかということがきまらぬようであります。こういうことではならぬと思う。もう早くやってもらいたい。この政治資金については、これははっきり申して恐縮だが、自民党の恥部だと私は思うのです。これは総理もひとつ政党の近代化をはかるという意味で、政治資金の公開、さらにその資金の規制、こういったものをぜひ勇断をもってやらなければ、こういうことでやはりリーダーシップをとってもらわなければならぬと思うのです。国民の世論でもありますので、この点について考え方だけ、簡単でいいですから、ひとつ総理意見を承りたい。
  135. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 政治の不信を招いておる一つの原因に政治資金の問題がございます。もちろん、政治資金は政治活動上必要なものでもございますから、むやみやたらにそれを規制ずるという考えはございませんけれども、しかし、とかくこの問題について、その出所あるいは使途等が不明だ、こういうことがやはり国民の政治不信を招きやすいと思います。  そこで、今回改正しようというその政治資金規正法案なるものは、ただいまのような点に触れまして、そして国民に公開する、少なくとも公開の原則、それは貫きたい、こういうように私は考えております。ただいま、さらに公開の原則の上にもっと金額についても制限しろとか、あるいは会社その他拠出側についても制限をしろとか、いろいろの御意見がございますし。しかし、さような点は、それぞれがやはり順を追うていかないと、なかなかこの目的を達するわけにもいかぬだろう、かように実は考えておりまして、あるいは程度が低いと、かようなおしかりを受けるかわかりませんが、まずその低いものにしろ前通ができないようなことでは基本的な改革はできないんだ、かような観点に立って法案を整備中でございます。
  136. 畑和

    ○畑委員 ともかくなりふりかまわずということばがございますけれども、   〔機内委員長代理退席、委員長着席〕 ほんとうにそう申すほかはないと思うのです。幾らたたかれようと、とにかく金がなければ選挙には勝てないということで、どうもなかなか自民党の諸君もこの改正に乗り気ではないようです。総理もその点なかなか苦しいところがあろうと思うけれども、とにかく勇断をもってリーダーシップを発揮してもらいたいということをつけ加えておきます。  最後に、明治百年恩赦について簡単に触れます。この点も、どうも聞きづらいと思うのですが、時間が短いですから聞いてもらいたい。  それは、この間、御承知のように明治百年のお祝いをいたした。それについて、ごく軽微な犯罪人に恩赦の恩典に浴さしたいというようなことで恩赦がなされたのでありますが、この間の恩赦の種別と罪名別、この人数を明らかにしてもらいたいと思うのです。これはほんとうに簡単な数字でよろしゅうございます。二色しかありませんし、あるいは犯罪名はそう幾つもありません。数字だけをおっしゃってもらいたい。
  137. 西郷吉之助

    ○西郷国務大臣 お答えいたします。  明治百年記念恩赦といたしましては、政令による復権と特別恩赦基準による恩赦とがございまして、まず政令による復権該当者の数は大約千九百万人でございます。千九百万人と大体推定しておりまするが、そのほとんどは道路交通法違反関係者でございまして、公職選挙法違反関係者は、千九百万人のうち約三万八千人と見込んでおります。現在、検察庁におきまして復権該当者を選別中でございまして、まだ集計を見るに至っていないのでございますが、大体の数は以上のとおりでございます。  なお、次に特別恩赦基準に該当する者といたしまして、恩赦を受けた者の数は、一月末現在でございますが、二百八十二名でございまして、これを恩赦の種類別に見ますると、そのうち、特赦が二百三十一名、減刑が十九名、刑の執行の免除が一名で、復権が三十一名となっております。また、これを罪名別に見ますると、公職選挙法違反が二百二十七名でございまして、あとはその他でございます。  以上お答え申し上げました。
  138. 畑和

    ○畑委員 いまの数字で明らかなように、交通違反が大部分である。ところが、この交通違反のほうは前科が消えるだけであります。あとは何の実益もないんです。これは数が多いんだから、本来数が多いに違いない。ところが、選挙違反のほうは、御承知のように公民権停止が復権をする、こういうことでありまして、したがって、実際的には公民権停止者の復権ということがねらいだといわれてもいたし方がない。新聞等もそういうふうに書いておりまするし、いろいろな点で非難を受けておることは御承知のとおりです。  かつて、百年恩赦は行なわないということを——いまの段階では考えてないという意味だったかどうかわからぬけれども、そういうことを政府は言った。ところで、その後、やはり自民党の圧力に押されてというか、あるいは初めからそういう考えであったのか、突如として、やはり既定方針どおりというか、百年恩赦を行なった。そのねらいは、選挙違反の復権が主としてのねらいであった、こういうことなんでありまして、しかも、その基準日から将来三カ月以内に確定する刑の分までも含むということに至っては、私は全くもう何事だ、こう言いたくなる。それまでのやつだったらいいんですが、これから先三カ月以内に控訴中の者は控訴を取り下げて、それでそういう余裕を与えるということに至っては、私は論外だと思う。これがやはり世論にたたかれないでおられるはずはないと思う。これまた、そういっては恐縮だが、自民党政府のやはり恥部だ。この政治資金と百年恩赦、これはどうもどうたたかれても言いわけがなかろうと思うのであります。これではやはり政治不信を生む、いろいろ社会不安があるけれども、こうしたものに対する説得力がなくなることではないか、かように私は思うのであります。この点、佐藤内閣の一大汚点だというふうに思うのでありますが、この点について、ひとつ総理と法務大臣の御答弁を願いたい。
  139. 西郷吉之助

    ○西郷国務大臣 まず、第一点にお答え申し上げますが、明治百年恩赦は絶対に行なわないということは、今日まで政府としては言っておらないのでございます。政府といたしましては、明治百年記念の意義と法秩序の維持ないしは順法精神の高揚並びに刑事政策等を考慮いたしまして、今回の恩赦を行なったのでございまして、まことに妥当な措置と考えておるのでございます。  第二点でございますが、今回の復権令、特別恩赦基準とも、基準日である昭和四十三年十一月一日の前日までに刑が確定しておることを原則としておるのでございますが、基準日前に第一審の判決を受けました者で、基準日現在刑が確定していない者についても、右の原則と均衡をはかるために、基準日以後特別期間内に刑が確定した場合に限りましてこれを救済するものでございまして、これまた妥当なものと考えております。
  140. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいま畑君からいろいろ御意見を伺いました。そういうことを私も拝聴いたしましたので、将来そういうことを参考にいたしまして処置をいたします。
  141. 畑和

    ○畑委員 私の申しましたことを参考にして将来考えたい、こういう総理の仰せであります。これはどうも私への答弁としてはちょっともの足りないわけでありますが、ともかく非常に世論が批判をいたしております。そこで、ひとつ総理総裁は、こういう点についてもっとはっきりした態度で将来ともにやってもらいたいと思います。  以上をもちまして私の総括質問を終わりたいと思います。(拍手)
  142. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 これにて畑和君の質疑は終了いたしました。  次に小沢貞孝君。
  143. 小沢貞孝

    小沢(貞)委員 私は民社党を代表いたしまして、あらかじめ通告してありますように、行政簡素化、能率化、総合農政等農政問題、医療の抜本改正と社会保障の問題、それから最近の国鉄の値上げ等に関連しまして国鉄経営者の姿勢、こういう問題について質問をいたしたいと思います。  冒頭に、これは総理に質問通告をしてありませんので、第一の行政簡素化、能率化、この質問の終わるまでにひとつ十分考えて御答弁をいただきたいわけです。  それは、行政管理庁長官国家公安委員長の兼任であります。どうやら先ほどの質疑にもありましたように、治安問題については、荒木さんはたいへん御熱心のようですし、佐藤内閣としてはそれに、重点を置いておるようにも見受けられますが、また、私の見方からするならば、これから御質問申し上げる情報産業政策、データ通信だ、オンラインシステムだ、あるいは役所の中でコンピューター化していかなければいけない、こういう高度産業社会の中にあって、これまた将来の日本の運命を決するような重要な産業を扱わなければならない。しかもそれが緊急を要する。それからまた、いま最も国民から要望されているところの行政能率簡素化、こういうような問題もこれは取り組まなければいけない。こういうような重要な使命がやはりあろうかと思います。そういうことを、行政管理庁という名前がいいかどうかはわかりません。私はあるいは産業大臣とか、あるいはまた能率大臣とか、産業情報大臣とか、そういう名前のほうがいいかとも思いますけれども、この専任の大臣を、しかも民間から起用する、こういう考えがあるかどうか。特にアメリカ等においてもすでにそういうことをやっております。大使等についてまでそういうふうにやっておるわけです。私は、少し前は日本というものはやはり役人とか政治家が指導をしながらやってきたと思いますが、最近の高度産業社会の中にあっては、そうではなくて、やはりこの産業を育て上げてきたところの産業人、こういう者が社会の進化のイニシアチブをとっているのではないか、むしろ行政がそれにブレーキをかけているようなかっこうになってはいないか、こういうようなことも考えるわけです。そういう意味においては、いま情報産業だ、それコンピューター化だ、あるいは機構を簡素、能率化しろ、こういう時代にあっては、やはり民間人からそれにふさわしいような専任大臣を置いて、この時代にふさわしいような、ひとつ専門にその行政に取り組む、こういう形が私はこの際ぜひ必要ではないか、そういう建設的な提言を申し上げて、以下、私の行政機構能率化、簡素化、こういう問題の質問のあと総理からお答えをいただきたいと思うわけであります。  そこで、第一点は一番最初に、情報産業政策にどう取り組むか、こういうことについて総理にお尋ねをしたいと思います。  どうもこういうことは、われわれ政治家やそういう者にとってなかなかなじみがたい問題ですが、技術革新は日に日に進んでおるわけです。これからの日本の産業界ばかりではなくて、行政の内部の問題にとってもきわめてこれは重大な問題ではないか、こういうように考えるわけであります。  最近、全国の地方銀行六十三銀行、四千何がしの営業所だか支店が、相互間に為替通信や付帯業務を迅速かつ正確に行なうために、全国規模のデータ通信システムが電電公社の手によって完成されておるわけであります。情報処理や電送用の送受信装置など世界に誇り得るものだ、こういうようにいわれておるわけです。こういうようになってくると、日本の産業のあらゆる分野、中小企業は共同でやろう、こういうようなことにまでなって、中小企業の分野にまで浸透をしてくるのではないか、こういうように考えるわけです。この情報産業政策について政府は大至急、急速に何をなすべきかをきめなければならないと思います。これは日本の将来の運命を決する大問題だ、こういうように考えておりますので、この間、日本経済新聞の社説にもありましたが、総理みずからが主導権をとって、各官庁の総合活動をどういうように調整をしていくか。まあ郵政省、通産省あるいは行管、いろいろあるでしょうけれども、大局の上に立ってどういうように調整していくか。あるいは情報産業政策の確立、私は情報産業基本法、こういうようなものをすみやかに制定をして、日本の対処のしかたを誤らないようにしなければならないと思いますので、まずそういう基本法を制定する意思があるかということを含めてお答えをいただきたいと思うわけです。これは外国の企業が進出してくる、あるいはさらに日本の情報産業が海外に輸出産業として伸びていく、こういうようなことまでいろいろあるわけであります。そういう重要な問題について、総理としてはどういうように基本的にお考えであるか、そういう点をまず冒頭にお尋ねをしたいと思うわけです。
  144. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 小澤君がいま初めて情報産業ということばを使われました。私は国土総合開発計画を進める上において、また過密、過疎対策、これと取り組む上において、どういうことが必要か。いままでは多く交通、通信の整備ということを言っておりましたが、さらにそれに情報を加えて、特に施政方針演説でもその点を明らかにしたつもりであります。いわゆる交通、通信、情報網をひとつ整備する、これがいま言われるいわゆる情報産業ということではないかと思います。そこでお話にもありましたように、情報産業のその施設、それはいま電電公社の施設を使うこと、これはもうその提供者はちゃんとあるわけです。しかしこのコンピューター時代に情報をいかに利用するか、こういうことになりますと、これはまた各省関係がある。そこで各省関係がありますが、そのほうは大体において経済企画庁を中心にしてやっておるわけであります。したがって新しい時代に相応し、しかもおくれないためにも、このコンピューター時代に私どもが正しい道を歩むという、そのことが大事だと思います。そのためには、いまのような点もまだ始まったばかりだと、かように考えますので、基本的にも情報基本法というようなものが必要ではないかと思いますし、また役所関係におきましても、それぞれの機関がただコンピューターを計算がわりに使っているというような情けないことではいけない、かように思いますので、いわゆる新しい産業としてこれを取り上げる、こういうことでありたいと思います。  そういう点から、先ほどお話がありましたが、民間の方を特に登用したらどうか、こういうお話であります。実は大臣というのは数が制限されておりまして、なかなか思うにまかせない点があります。これを国会議員ばかりから採用する必要もないのでありますし、民間人を採用してもちっとも差しつかえないのです。もちろん数の制限はありますけれども、しかしそういうことをあわせ考え、しかもまた所管の事務、それなぞも考えて、いわゆる無任所というか、自分で所管なしの大臣というものは実は置けないようになっているものですから、それらの点をも勘案し、荒木君ならこれはまことに有能な人でありますから、片一方いかに警察が忙しかろうが、また行政機構の簡素化が大事であろうが、二つ所管して何ら事欠くというようなことはございません。かように思いまして、私は適任だと思って荒木大臣にお願いをしておるようなわけであります。これは一と二をあわせてお答えしたようなことになりましたが、御了承いただきます。
  145. 小沢貞孝

    小沢(貞)委員 産業界の意見を具体的に情報産業の中に入れて基本法をつくっていこう、こういうような前向きの御答弁であったようであります。  そこで、私は担当長官に具体的にお尋ねいたしますが、最近、生産性本部の情報産業の米国視察団の中で総理に進言をしていることがあるわけです。それについて、やはり政府としても最近答弁の準備が進んでいるようでありますが、その内容等についてわかりましたら、担当長官からお答えをいただきたい、こう思います。  ついでに、大綱だけはお話しいただいて、そのこまかい資料はひとつあとで御提示をいただきたい、これは委員長にもお願いをしておきたいと思います。
  146. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 ええ。
  147. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 行政機関における電子計算機の利用推進、その体制という課題に限って簡単に申し上げさせていただきます。  政府における電子計算機の利用促進につきましては昭和四十二年八月、去年の八月三十日に閣議決定が行なわれておりまして、その方策は電子計算機利用の諸問題、特に各省庁による共同利用の推進、電子計算機要員の養成、新しい適用業務の開発などについて検討をいたしておるわけでございます。またその方策を具体的に推進するために、行政管理庁が通商産業省並びに関係省庁との総合的な調整をはかりつつ、随時会議を開催し、推進いたしつつあります。ただ、情報産業ないしはコンピューターの官公庁内における利用につきましても急速度に伸展していくものと推察されます。相当長期の見通しのもとに、たとえば各関係省庁政府一体をなしましてコンピューターの高度の活用をはかるという課題があろうと思いますが、それをいかなる構想によって、どういう程度まで一応のめどをつけながら年次計画を定めつつそのセンターの確立に資するかという、具体的な青写真の程度までは申し上げる段階に至っておりません。最近も佐藤総理から特命を受けまして、いま申し上げたような線に沿って推進をはかりつつあるところでございます。
  148. 小沢貞孝

    小沢(貞)委員 長官、私の質問に答えていないわけです。アメリカに情報産業視察に生産性本部が行って総理に進言をした。政府としてはこれに最近おこたえをしよう、こういう段階になっているが、その内容はどうであろうか。こまかい資料はきょうは要らないから、あとでひとつ出していただきたい、こういうことですから、大綱だけをそれでは通産大臣に……。
  149. 大平正芳

    ○大平国務大臣 仰せのように、住友電工の北川会長を団長とするミッションがアメリカに行かれて、帰ってまいりまして総理大臣以下私どもに御報告がございました。それはアメリカにおける今日のコンピューティングパワーを使いました行政管理、企業管理、情報産業全体の状況の報告にあわせて、この問題は、一つは各行政機関の秩序ある協力体制がつくられなければならぬということが第一点。さらに、その他わが国のこれからの情報産業政策についての若干の献策を含んだものであると承知いたしております。したがって、このミッションの御報告はあとほど委員会のほうに提出いたすことにいたします。  ただ、私どもといたしましては、これは財界におきましても、いま御指摘のように生産性本部はもとよりでございますけれども、経団連といたしましても情報処理懇談会というものが設けられまして、政府に対する施策要望というものをただいま取りまとめておるようでございまして、遠からず意見書が出ることを期待いたしております。それから郵政省は郵政審議会で審議が開かれるように聞いておりまするし、通産省の産業構造審議会におきましても九月に中間答申がございましたけれども、この四月には本答申が、もうすでに骨格ができ上がっておりますが、四月には正式にちょうだいできることになっておりますので、いろいろそういった献策を十分ちょうだいいたしまして、御指摘のように、これをどう日本の実態に照らして消化し組織してまいることが適切であるかということを十分考えさしていただきたい、そう考えております。
  150. 小沢貞孝

    小沢(貞)委員 非常に重要な問題ですが、先ほど総理から情報産業基本法、そういうようなものの制定に前向きに取り組もう、こういうようなお話もありましたので、私は希望だけ、特に産業界、民間、こういうものの意見というものを十分反映させるようなぐあいにしてこの情報産業というものは進めていっていただきたい、こういうことだけを要望して、時間がありませんから進みたいと思います。  第二次行政改革、これについては……。
  151. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いまの情報産業はそれでけっこうですが、どうも日本のコンピューターの製作能力等を見まするとまだまだ不十分でございます。自由化を最も要望されていながら、そういう点が何ら対策が立てられておらない。この視察団長が帰られて報告され、ぜひとも情報産業をとらえてくれ、こういうことを言われ、先ほどのように、各省ひとつ強力に連携をとらないととんでもないことになりますよという御注意を受けたんですが、そこで私どものほうは、別に逆襲ではございません。いまのコンピューターの製作能力を見ていると、それぞれの会社がみんなそれぞれつくりつつある。みんな有力な会社なんだが、その中からコンピューターだけでも抽出して、そうしてりっぱな会社がつくれれば、もっと日本の産業もその方向に進むのじゃないか、製造産業がいまのような状態であっては困る、こういうことで両々相まって実は話をしたような次第であります。私はいまの状態がどうだからということで逆襲しておるわけではない。新しいものにおくれないように、もちろん進んだところからいいものは取り上げていく、こういうことでありたいと思っておりますが、そのためには、これはもう政府も民間もその方向で進まないと、やはり技術上の手おくれがこういう産業の発達をはばむ、こういう結果にもいまなりつつある、かように思いますので、政府が注意している点もまた適当なときに御披露おき願いたいと思います。
  152. 小沢貞孝

    小沢(貞)委員 時間の関係で先に進ましていただきますが、第二次行政改革、これはいつごろやろうとするか。これは長官でけっこうです。そうして内容はどうか、こういう点についてお尋ねをしたいと思います。総理の施政演説にもありましたし、わが党の西村委員長の質問に答えて総理は、一省一局削減をいたしましたというようなことがありました。しかし、どこの民間へ聞いてみても、一省一局削減するというが、まあ何の改革でもないんだ、こういうようなはね返りもあるわけです。第一次は昨年発表されて、幾らか進んでいるようですが、第二次はそのときの閣議決定によっても、去年の暮れにもう発表してやろうじゃないか、こういうことになっているようですが、たいへんおくれているようです。具体的にいつごろやろうとするか、内容の大要、こういうものをひとつ長官から御発表いただきたいと思います。
  153. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 お答え申し上げます。  今次の行政改革草案においては、臨時行政調査会の答申を尊重し、現実に即して逐次推進をはかる所存でございます。ただ、臨調答申は、行政制度の基本に関する事項その他広範にわたっての改革事項を掲げてありますので、政府としましては、できるものから実現をはかりたいという考えで今日までまいっておるのであります。第二次行政改革案につきましては、さきの第一次計画に引き続き行政改革本部において検討を進めておるところでありまして、できるだけ早い時期に結論を得たいと、目下懸命に努力中でございます。できればこの通常国会に成案を得て御審議を得たいという考え方のもとに、懸命の努力を続けておるところでございます。したがいまして、まだ解決の具体的内容を申し上げる段階ではございませんけれども、検討項目のおもなものとしては、第一に許認可、報告、補助金等の整理、行政事務の下部機関への委任、または地方公共団体への委譲等事務の簡素化行政機構の簡素合理化、先ほど申し上げました電子計算機の利用促進等でございます。
  154. 小沢貞孝

    小沢(貞)委員 私、行政機構の簡素、改革を推進しなければならないという立場でなぜやるかという具体的な例を総理と行管長官、その他のところへ新聞のコピーを持ってきました。「くたびれる書類の旅」、「補助金百万円もらうのに判こ九百九個」、この五百九個の判こ代を計算すれば、補助金の一割ぐらいは飛んじゃうかもしれません。これは内容を見ると、どうやら構造改善事業を県庁が——山梨県庁です、山梨県庁の中でついただけの判が五百九個で、この調査をした生産性本部の倉橋経営指導部長、ここへ私尋ねに行ったわけです。これは一体農林省あるいは農地事務局を通じ、県庁から今度県の出先機関、市町村、市町村の出先機関、これだけの旅を百万円の補助金がやっていったら幾ら判が押されただろうか、こういうふうにお尋ねしたところが、一千五百個であります、こういうわけです。これは計画を立てるための補助金百万円に一千五百個の判です。一つの判こをつく原価計算をして二、三十円はかかるのじゃないか、二、三十分、ゆっくり見れば一日かかる。二、三十分かかるのじゃないかということで計算をすると、千五百個は大体どのくらいになるか、二、三十万になるのでしょうか。これは計画だけです。これは三年計画で、ことし予算幾らだぞ、この次に予算は幾らだぞといって三年やって、やった結果の報告が戻ってくると、この事業の終わるのに、おそらく推定として、生産性本部で言っているわけですが、二千ないし三千個の判がつかれているでしょう、こういう話です。まさにこの新聞の記事にあるように、くたびれる書類の判この旅ではないか、こういうように考えます。  私たちお役所へ来てすぐ気のつくのは、一体お役所というのは何と非能率な、何と判この多い、責任をのがれる、こういうところではないかというように感ずるわけです。あるいは稟議制度しかり、その他みんなそうなんですけれども、こういうことをやっているのが、この高度産業社会の中において、もういわゆる民間の仕事をやっていくことにお役所がブレーキをかけているのだ。一例としては、よく行管の報告にもありましたように、特許の登録を特許庁に出したら四年だか五年かかりました、こういうような逸話がよくあるわけですが、お役所の非能率がいまの産業社会の発展にブレーキをかけているのだ、こういうようにしか見えないわけなんです。だからこういうことを直すためには、私は、たとえば生産性本部あるいは日本能率協会あるいは産業能率短期大学、そういうような民間の人からひとつお役所の事務というものを一回見てもらってはどうだろうか。一般の民間会社は国際競争にうちかつために、もう十年前にそういうことは済んでしまっているわけなんです。  だから、そういうことについて具体的に私はお尋ねをしますが、行政管理庁の長官、民間事業に委嘱してこの判この旅、事務の不能率、こういうものについてひとつ検討してもらう、こういう意思があるかどうか、まず長官にお尋ねをします。
  155. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 戦前に、かつて民間の有能者を頼んで行政査察をしてもらった例があったと思います。戦争間もない時期でございましたから、いまにむろん当てはまりませんけれども、現実にはあまり効果がなかったと聞いております。パーキンソンの法則とか申しますが、この壁をぶち破るということは容易なことではないと思います。八時半から五時までかの勤務時間、拘束八時間という一応のたてまえですけれども、実働時間が一体どれだけあるかということを私自身調べたことはございませんけれども、私自身もその例外じゃございません。十時見当に出勤をいたします。そのこと自体が申しわけなく思いますが、そういうことが一般の慣例になっておる。八時半に出てきますのならば、一時間半能率高く仕事ができる時間がそこにある。八時間対一時間半ですから、二割近い能率向上の実働時間が生まれてくる道理ですけれども、いわば明治以来の慣行的に定着しておるというわけでございますから、それとても、拘束八時間を有効に使うことはなかなか困難であるということをはじめ、民間の方にお願いしたからすぐ効果があがるということは期待できないじゃなかろうか。公務員みずから、一人一人が心がまえを新たにして能率をあげて、判こはかりによけい押しましても、ぽんぽん押していけば時間的にはたいしたことないだろう、数を減らすことも努力すべきではありましょうけれども、それはやがて冗員があるとするならば首切らなければならぬ。人手不足といわれる、数を減らして人手の足りないところにこれを動員するということにもつながる課題かと思いますが、首切りはまかりならぬ——臨時行政調査会設置法を御審議願いましたときにも、超党派で首切りまかりならぬという、その附帯決議のもとに臨調は答申されておるのであります。したがって、まずもってなし得ることは、御意見もさることながら、総定員法をひとつ御審議願いまして、現在の総定員を最も合理的に、少数精鋭的に活用していくということを定着させることから始めて、御提案のこともあわせ考えつつ、民間の有識者のお知恵も拝借して、あわせ行なうならば、いまお話しのような非能率が、能率高く作用してくるのではなかろうか、かように思います。
  156. 小沢貞孝

    小沢(貞)委員 壁は厚く、たやすくはその壁は破れない、私もそう思います。しかし、いろいろ査察をしなければならない対象の人と同じような立場の者がやっても、これはなかなか困難だと思うわけです。だから、やはり民間の人が新しい角度から——民間の産業界はもう能率協会とか産業能率短期大学、そういうところからみんなやってもらって事務能率をあげているわけなんです。役所だけがそういうことにおくれているわけです。この間、佐藤臨時行政調査会長以下、民間人のおえら方がやったが、それは大所からこうあるべきだという姿を提起しているわけですから、私はそれはそれでいいと思うわけです。しかし、もっと具体的に改善をしなければならない問題が山積しているわけです。  とれは総理、見ていただきたいのだけれども、ここに二十三万円の補助金の書類があるわけです。これをちょっと借りてきました。そうしたら、この二十三万円に判こが百六十五ついてある。こういうことをやっておったのでは、民間ではとうの昔に会社はみんなつぶれちゃっているわけです。役所の中においてはコストということを全然考えないわけで、一体、費用をかけてその効果は幾らあがっただろうかということをだれ一人として考える人はいないわけで、そういう感覚で行政の効率というものを見るためには、やはり民間人、能率協会でもよろしい、生産性本部でもよろしい、そういうところの人が来て、簡単な事務でいいのだから、そういうところから直せば、ものに取り組む姿勢というものが変わってくる、こう思うわけです。これは、たとえば私は電子計算機を入れるについてもそうだと思います。先ほども、質問もしないうちに長官は答弁したから、これからあえて聞こうとはしませんけれども、この電子計算機等を入れるにしても、それを駆使し、どういうように能率的に使うかということは、やはり現実に民間人が産業界で取り組んでいる、苦労をした、そういう人の知恵を持ってくる、こういうことが必要だと思うわけです。  そこで、冒頭に佐藤総理に質問をしたのは、やはりそういうことは、これから産業人社会です、やはり産業人がこの社会をリードしていくと思うわけです。そういうことについて、役所がブレーキをかけているというのがいまの行政の実態だと思う。やはり専任の大臣は、これは何も荒木長官にどうというわけじゃありません。そういう目で行政というものを評価し、改革すべきところは何だということをやれる民間の専任の大臣、こういうものをつくったほうがいいと思うわけです。それに持ってきてスタッフとして、やはり能率協会あるいは産業能率短期大学、あるいは生産性本部、こういうところからスタッフを持ってきて、改革の目標をつけてやっていく。簡単なことからやっていかなければだめだ、こう私は思うわけです。それで、冒頭に民間からひとつ能率大臣といおうか、情報大臣といおうか、産業大臣といおうか、そういうものあるいは無任所でもけっこう、こういうものを連れてきて、それで具体的な事務的なことは民間人にやはり査察をしてもらう、こういうことをしなければ、壁は厚いといっていたんでは、いつまでたっても行政簡素化、能率化は進んでいかない、こういうように考えるわけです。重ねて総理に質問をしたいと思います。
  157. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いま日本の場合に、私は一番おかしく思うのは、何でもかんでも政府にたよるという——政府がよかったをいうお話はあまり聞かないのですが、政府が悪い、これは政府の責任だ、天気の悪いのまで政府の責任だ、こうなっているのですね。それほど国民政府というものをたよりにしている。それほどたよられることはけっこうですが、本来もっと民間の自主的なものがあっていいのではないだろうか。昨年、政府の行管で整理した、報告でやめたものが千五百七十一件あります。それだけの報告をいままでとっていたわけですね。その報告はとにかく十分使われてもいないのに、さぞ民間でも御迷惑でしょうから、もうこれはやめようというので取りやめたのが千五百七十一件、国民のための行政ということを考えると、報告や何かはまだもっと整理ができやしないか、かように考えます。  それから許可、認可の件数が、廃止したものが千三百八十三件、これまたもっと政府にたよらないで、民間で処理できるのではないかと思う。私はこういうこともあわせて考えていかないと、真の国民のための行政機構というものができないように思う。  私は、民間の方から、能率協会その他から、政府をひとつ見ていただくことけっこうですよ。同時にまた、国会まで見ていただいたら、たいへんけっこうだと思うのですよ。私はさようにも考えますが、そこまで私は、能率協会にもそれだけの能力がないと思うのですよ。でありますから、何でもかんでも能率協会だというわけにはいかぬと思う。私はみずからがその姿勢を正していく。ことに官と民との関係ですね。日本くらい官にたよっているところはないのではないでしょうか。もう少し民間において自主的にやり得るのではないだろうか。  私は先だってある会合に参りまして、もう経済のことはみなさんにおまかせします、私ども、じゃまにならないように行動したいと思います、こういう話をしたのですが、もっとみずからやられても、羽目をはずさないようにしていただきたい。いわゆる、のりを越えないようになればけっこうなんだと思うのですね。大学の自治だって、そういう意味においては、私はもちろん大学の自治——のりを越さない限り、自治が尊重されなければならない、さように思うのであります。  でありますから、いまの、これらの点も人を得て適当な方があれば、もちろんそういうことにとらわれるつもりはございません。大臣は必ず議員でなければいかぬ、かような法律はないのですから——数の制限はございますけれども、それはそういうことをしてもいいわけなんで、最も適当な人を置けばいい、かように思います。民間の能率協会を悪く言うわけではありませんが、これはどうも概して先ほど荒木君から言ったように、過去の民間の査察は十分の効果をあげなかった、これだけは確かです。私は戦時中に査察使の随員として協力したことを思い起こしますが、なかなかそう簡単なものではない。やはりその道の人たちが、それぞれの筋で考えたほうが本筋のように思います。  そこで、省をつくれとか、局、課をふやせとか、そんなことは押えるとしても、いまのような民間との関係において、許可、認可というような事件がずいぶんあるのです。そういうものを減らせば、それだけ人間も仕事がなくなるんだと思うのですね。これこそ先ほど言っているような総定員法も出す必要があるわけなんです。最近は運輸省関係におきましても、自動車の検査やなんかを民間に移すとか思い切って大きな仕事を移す、そういうことも考えられておりますが、これなどは件数は一つにしても、効果はたいへんなものだと思うのですね。問題は、そのねらいはどこまでも国民のための行政だ、どうしたらその効果を発揮し得るか、そういうところへ焦点を当てて、そうしてこの問題と取り組んでいく、かように私はしたいものだと思っております。
  158. 小沢貞孝

    小沢(貞)委員 官庁の中で使っているコンピューターのことで、先ほども長官のほうから答弁があったから、これは質問しようとはしませんが、やはり官庁の中のコンピューター、大蔵省か何かはレンタルですか、国税庁と一緒になって何かやっているようで、これはだいぶ進んでおるようですが、あるところではまだ全然やっていない、あるところではだいぶ進んでいるというようなことで、やはり官庁の中の電子計算システムについても、行管なら行管でもう少し指導性を発揮してやっていかなければいけない、こういうように考えるわけです。それにはまず給与計算とか、会計事務とか、人事事務とか、統計調査事務とかやらなければいけないことが山積しているのではないか。あるいは現業にあっては貯金だとか、簡易保険だとか、こういうような問題についても中央に頭脳を置いて、そうして現場に統一したコンピューターでもって、電子計算機でもってやっていくというようなシステムがどうしてもなければいけない、こう思います。それからまた、役所の中がたいへんばらばらでいるわけです。これは佐藤総理もひとつ見ていただきたいと思うが、この原子力時代というのか、このコンピューター時代に、まだ貯金の原簿はこういうものを使っているわけです。そろばん、わらじがけ、原子力時代にわらじがけというようなことです。何万人という人が従事してやっているわけです。われわれが見ればショックを受けるようなことなんですね。こういうようなことについても全体の中がまだばらばらではないか、こう考えますから、まず聞きたいことは、第一点としては、会計事務とか人事事務とかそういうことを統一的にやる頭脳というものをどういうようにやるか、こういうことが必要だと思います。アメリカ等においては、国家予算を五千億も使って年々二〇%くらいずつふえていくわけです。それは現場の機械の導入費もあるのだけれども、ちゃんと使って計画的にやっていこうという頭脳を備えながら進めているわけです。ぜひそういうことをやっていただくように、総理でも長官でもいいから、御答弁をいただきたいと思います。
  159. 大平正芳

    ○大平国務大臣 仰せのように、人間的な要素が非常に大事なんでございまして、政府でも人的要員の養成訓練ということに関心を持ちまして予算をとり、施策を行なっておるのでございますが、いま御指摘の各行政官庁では、いま二十三省庁がコンピューターを使っておりまするが、そのエキスパートを集めまして、私どもの工業技術院におきまして共同のプログラムの作案についてずっと研究をいたしております。と同時に、そのデータの標準化等につきましても施策を進めております。  なお、要員の養成につきましては、わが国におきましても約二十余り学校がございますけれども、水準がまちまちでございまするから、仰せのようにその能力水準を上げてまいりますために、カリキュラムというものを政府できめまして、その教育指針によりまして教育するというようなことをいま進めておるわけでございまするが、これは端緒についたばかりでございまして、御不満の点がたいへん多いと思いまするが、これらは二十八年の八月三十日に、すでに閣議決定にあります方針にのっとりましてやっておることでございまして、今後は、こういったことばかりでなく、いま仰せのこのシステムの分野にも入ってまいらなければなりませんし、それから民間の能力をどのように動員するか、協力を求めるかというようなことも考えてまいらなければならぬ問題だと考えております。
  160. 小沢貞孝

    小沢(貞)委員 時間もありませんので……。そういうようなぐあいに、やはり役所も高能率、それから民間に対してもサービスが行き届く、こういう体制でやっていかなければいけない。それにはやはり役所の人の待遇を改善していかなければいけない。そういうことから、いままでやってきたことは、人事院勧告が出て闘争が盛り上がってくる、そうすると、政治的にそれにはつけてやるかということを繰り返してきたわけです。やはり闘争の効果はあったな、やはり騒げば価値はあるな、こういうことを政府みずからが植えつけているわけなんです。それよりは、やはり出せるものだったら政府最初から出して、これだけでぎりぎりだぞと出して、そうして能率をあげろ、こういうのがやはり正しい行き方ではないか。しかも、私はもうざっくばらんに具体的に言えば、ことしからすぐに完全実施とは言いません。ことしは少なくとも、去年七月だったから、四十四年度は六月から、次の年度は完全実施、こういう態勢で政府が、進めばこれはやはり秋になれば闘争だ、闘争が出てきたからまた政治的につけてやれ、こういうことを繰り返さないで済むわけです。どうですか総理。やはり役人には能率をあげてもらう。総定員法ということになると、もう何かたいへん首切りみたいなぐあいに、みんなの感覚は受けているわけです。やはりそれだけ能率をあげてもらうためには、ことしは少なくとも六月、四十五年度からは五月、そういう目票で努力します、こういう言明は得られませんか、総理から。
  161. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 二つの問題、一つはやはり出血整理、こういうことは時節柄できるわけじゃありません。だから出血整理はしない。総定員法を出しましても、いわゆる出血整理ということは考えてないということ、この点は御了承おき願いたい。  もう一つは、能率をあげた、その結果はひとつ給与もうんと考えろ、まず目安として人事限勧告をそのまま実施しろ、それも一ぺんにやれとは言わない、四十五年を目途ですか、にして完全実施をするようにしろ、こういうお話であります。私は、もういままで人事院勧告についてはお答えしたとおりでありますから、本来政府は人事院勧告を尊重しなければならないし、尊重する以上完全実施の方向への努力が払われたそのあとがなければ尊重したとは言われない、そういう点をも考えまして、予算編成並びに運用等についてただいま最善を期しておるような次第であります。
  162. 小沢貞孝

    小沢(貞)委員 時間の関係で次に進ましていただきますが、コンピューターから急に今度は農政問題に移ってくるわけです。  まず、私は、農林大臣にお尋ねをしたいと思うのですが、食糧庁の予算を見ると、四十四年度の政府の売り渡し米が六百十万トン、外国から輸入した麦が三百五万トン、まさに半分は外国から輸入した麦を売り渡して、日本の国内の食糧をまかなっているというのがこの食糧庁の予算ではないか、こういうように考えるわけです。なぜ国内に米がこんなに余っているのに——もう農民の実感です。国内にこんなに米が余っているのに、二人は米、一人は麦、つまり三分の一は麦、しかも外貨を払って外国から輸入してきてまかなわなければならないか、時間がないからもうずばっと答えていただきたいと思うわけです。
  163. 長谷川四郎

    ○長谷川国務大臣 小麦の輸入に対しましては、いままで米の生産と需要のバランスが合っておらなかったことは御承知のとおりでございます。したがって、米食——すなわち粉食を奨励をしてきたことも事実でございまして、それを一ぺんにここに、粉食から今度は米が余ったから、これを急に米に全部かえろということは非常な困難を伴っておるのでありますが、随時おっしゃるように今後はそういう点について需給のバランスを合わせた米の需要の奨励方法をとるつもりでございます。
  164. 小沢貞孝

    小沢(貞)委員 これは大蔵大臣にお尋ねをするのだが、財政制度審議会の答申の中でも明確に言っておるわけです。内地米に比べて著しく政府の売り渡しの小麦の価格が安過ぎる、だからこれを上げてやれ、簡単にはそういうことです。それによって、片や食管の財政の穴埋めにもなるのだ、いわばそういうことを言っておるわけです。小麦の値段を上げると、消費者物価の問題から、物価対策上文句がくるかもしれませんが、上げた分だけ米の値段を安くでもよろしい、生産者米価を上げてもよろしい、どちらでもいいのだけれども、そういうように償うならば、小麦の値段を上げて米の消費をふやそう、こういう大きな政策ができるはずです。なぜそれをやらなかったか、こういうことです。
  165. 福田赳夫

    福田国務大臣 麦の買い入れ値段、売り渡し値段、これをどうするかということはいろいろ考えてみたのです。みたのですが、とにかく昭和四十四年度というこの年は物価対策が非常に大事な年である、そういう考え方をとらざるを得ない。そういう考え方のもとに、米の生産者価格、また消費者価格を据え置くという方針をとることにしたのですが、その際麦の価格の引き上げをする、こういうようなことになりますと、画竜点睛を欠くというか、非常に米のほうで苦心をしたその結果がそこなわれる、そういうふうに考えました。お話はよくわかります。わかりますが、麦についてもこれを据え置く、こういう方針をとったわけであります。
  166. 小沢貞孝

    小沢(貞)委員 これは当局に聞けばいいのだけれども、私のほうで調べたのを、合っておるならば、そのとおり、こういうように答えていただきたいと思うわけです。四十三年四月、去年の四十三会計年度のスタートのときに米の在庫が約七百十八万トン、四十三年中の買い入れが一千四万二千トン、売り渡しが七百五十六万トン、四十四年三月末在庫、ことし三月末には在庫が九百六十五万八千トン。それで四十四年中に幾ら買い入れるかというと、これはあとでお尋ねする自主流通との関係もあるが、予定は七百五十万トン。売り渡しは幾らにするかというと、六百十三万トン。先ほど申し上げたとおり、小麦は三百万トン、米は六百十三万トン。この売り渡しで、暦年でいうと、四十五年の三月末の在庫は一千百工万四千トン。これは食糧庁、これで合っているかどうか、これはイエスかノーかの答弁あとでしていただきたいと思うわけです。その内訳は、古米四百五十万トン、四十四年産米六百五十万トン、こういう内訳になっております。ただ、これは政府の計画では、自主流通に百七十万トン、政府の買い入れが七百五十万トン、合計九百二十万トンというものを想定してやって、おそらく平年作を予定してやっていると思います。四十二、四十三年のように千四百四十万トン台の生産があがるということになれば、さらにこれより多くなって、おそらく百万ないし百五十万トン多くなるということになると、来年三月三十一日現在の在庫量はとにかく一千二百何十万トンになるわけです。一千二百万トンあれば、農家を含めて日本の全部の人の一年間の食糧があるわけです。つまり簡単に言うならば、来年の三月三十一日現在においては、日本の農家を含めて、とにかく全部の食糧が政府にたまっている。簡単に言えば、日本の農民は一年間全然米をつくらないでも困りはいたしません。それほどの在庫になってくるわけです。食糧庁、簡単にイエスかノーか答弁してください。
  167. 桧垣徳太郎

    ○檜垣政府委員 お答えを申し上げます。  小澤先生のお話に出ました仮定を置きませんでお述べになりました数量は、そのとおりでございます。ただ仮定を設けてお話しになりますと、来年の三月末の在庫が千二百万トンになるはずだ、またそれは一年間の全国民の消費量に相当し、一年間農民が一切米をつくらなくても食っていける量であるというところは、いささか問題であろうかと思います。
  168. 小沢貞孝

    小沢(貞)委員 食糧庁は問題でも、われわれ、四十二、四十三年度と同じようにとれたとするならば、数字的にいえば一千二百五十万トンになる、一年間の全国民の食糧がある、佐藤総理、そういう現実です。そういう現実の上に立っても、なおかつ三分の一は外国から買ってこなければならない、こういうことなのです、貴重な外貨を払って。財政制度審議会の意見をずいぶん取り入れて、自主流通米式のものはみんなそうなのだが、こいつだけをどうして取り入れないのか。財政制度審議会は、小麦は不当に安すぎるから、少しこれを高くして売ってやれば米の消費に役立つでしょう、そして食管会計にも役立つでしょう、しかもわれわれから見れば、貴重な外貨を使わなくて済むでしょう、一石三鳥、四鳥の効果があるにもかかわらず、なぜその小麦をこれだけ入れてこなければならないのか、総理、どうですか。日本の農民を苦しめて、外国の小麦を買い入れて、外国にドルを払わなければならぬのか。この間何か新聞を見ると、北海道の農民は、これはどうも食管法を変えてくるのは、安保に関係があるからやらなければいけないみたいなことまで、風吹けばおけ屋がもうかるみたいなことにまで発展してしまう。なるほど、いろいろ考えたものだなと思うのだけれども、よく考えてみると、政府の売り渡しは六百万トン、外麦は三百万トンの外貨を払う、こういうことは佐藤総理、一体許されると思うのですか。
  169. 長谷川四郎

    ○長谷川国務大臣 おことばも、われわれ考えないことはないのでございますけれども、現在の米価を据え置く、こういう点があります。現在物価水準の問題がいろいろ議論されておりますし、米価も御承知のように生産者米価、消費者米価を据え置くことに大体政府の方針はきめられまして、したがって小麦だけを値上げをするということは、非常な困難性を伴ないますし、また物価の安定という上においても、非常な影響がございますので、まずこれらは、本年は米に右へならえをして、例年どおりということに決定をはかったわけでございます。
  170. 小沢貞孝

    小沢(貞)委員 農林大臣、物価大臣みたいなことまで政府代表だから答弁をされておるのだが、とにかく来年千二百何万トンというものが食糧庁に持ち込まれてだいじょうぶですか。食管はパンクしませんか。ことし自主流通だとかなんとかやっていますが、とにかく千二百万トンの米をどうにか処理をしなくて、これはどうなりますか、一体。自主流通百七十万トンみんなやっておいたその後に、三月二十一日現在で千二百五十万トン、私の推計で言えば、一年間日本の農民が全部休んでも、それだけ倉庫に残っているという現実の中で、これを処理しないで農政がやっていけるか。どうでしょう、これは。
  171. 長谷川四郎

    ○長谷川国務大臣 先ほども申し上げましたとおり、わが省内におきましてもいろいろな議論は出てまりました。しかし、これらに対しましては、輸入のほうである程度アジャストしていきたいというような考え方を持っておるわけでございます。
  172. 小沢貞孝

    小沢(貞)委員 アジャストするから、それだから小麦を入れないようにして、小麦の売り渡し価格を高くして消費を促進して食管財政を助けろ、こう言っているわけなのです。そういうように私が言っているわけです。これは幾ら押し問答やってもいけないのだけれども、こういうことでは、食管の根幹を維持しますと言ったって、維持できますか。  そこで、米の消費対策を基本的にどう進めるか、こういうように私は積極的にお尋ねをしたいと思うわけです。学校給食に回したって、そんなものは二、三十万トン。こういうようなことで、何とかしてこれを処理しない限りは、トン十三、四万で買い入れて一年間の運賃や保管料が二万五千円かかる。それを保管しておけば一年間にまた金利や倉敷料だか何かで一万幾らかかる。変質米でも出れば、トン一万五千円くらいずつ経費がかさんでくる、こういうことになってくることは数字の上からはっきりしている。だから、財政制度審議会においてもこう言っている。徳用米で払い下げれば、百万トン当たり八百億損をいたします、国際価格で半値で外国へ売ったら、これは百万トン当たり九百四十億円損害であります、家畜のえさにしよう——これはどうやって家畜のえさにするかとこの間聞いたら、油でもかけてやらなければ、人間のほうに回ってきてはいけないからと言う。油でもかけてやるといえば、またこれはたいへんな手間と金がかかるわけなんだけれども、そういうことをして百万トン当たり千三百億かかる。そんないろいろなことをするより、いっそ海に捨てたほうが一番いいじゃないか。そうすると百万トン当たり千五百五十億かかる。いま海の中に捨てるか全然損をして家畜のえさにでもするか、こういう岐路に立っているのじゃないか。数字を正しく見れば、私にはそういうふうに見えるわけです。これは現場の農民にいけば、去年までは増産をしろ、しろと言ったのに、そんなばかなことがあるか、これは現場の率直な農民の声だと思うが、冷静に数字を見るならば、これはいろいろ手間をかけてもだめだ、それより早く海に持っていって捨ててしまえ、それが一番保管料も少なくて何もしないで済むのだ。かつてブラジルのコーヒーが、どうにも処置なくて海の中に捨てたと同じようなことをやらざるを得ないような運命にいま食管は立っている、こういうように私は見るわけです。どうでしょう。重大なピンチに立たされている。これでどうやって食管の根幹を維持するか、こういうわけです。いや、答弁にお困りでしょうから、私はさらに先へ進みます。  どうにもならないでしょう。そこで、これを海外に持っていく方法を積極的に考えないか、こういうことです。この間、韓国に三十万トン持っていった。たいへんいいことだから、もっと五十万トンなり六十万トン積極的に持っていく方法はないものか。沖繩では日本政府で援助している。西村農林大臣は、この間行って、沖繩では十万トンでほとんど米ができないから、日本の内地の現物の米でやろうじゃないか、これは新聞発表だけで、さっぱり何も事務当局は進んでおらないようです。何が原因かというと、食管法とか財政法とかそういう法律にこだわってそれしかできない、こう言っているわけです。これでは政治がないわけです。もっと言うならば、国際穀物協定でもって日本がインドネシアだかどっかへ千四百何十万トンずつ援助する、それは最低として援助する、グレーンで、穀物でやれ、こうなっておるのだから、それは最低なんだから、この際、後進国援助でもっとたくさんやったらどうだ、そう言うと、事務当局は何ちゅうことはない、それは食管法上そういうことはできぬ、財政法上そういうととはできぬ、ただそれだけのはね返り以外には日本政府事務当局の中で考えている者はいないわけです。  このパンクしそうな食管について、そういう積極的な施策、具体的に沖繩とか韓国とかあるいは穀物協定による後進国援助とか、そういうことについて具体的に考えているか。外務大臣あるいは農林大臣あるいはさらにこれは総理からもお尋ねしたいと思うわけです。
  173. 長谷川四郎

    ○長谷川国務大臣 この間も、先ほどお話しのように、韓国が非常な干ばつによりまして、食糧の危機にあるから何とかして米を少しの間貸してくれないか、こういうようなお話もありましたので、そのような措置をとろうといろいろやっておるのでございますけれども、この間、国会においてのいろいろな御質疑も、御承知のとおりの問題も横たわっております。これらがありますので、これらを勘案しつついま検討し、そして各省との打ち合わせをやっているところでございます。  さらにまた、沖繩の問題等におきましても、しかりでございまして、沖繩との交渉もいまさらに続けているわけであります。  また、先日来インドネシアへというようなお話もございまして、いろいろお話を申し上げたのでございましたけれども、どうしても日本の国内米というのはあちらへは向かないという結論がいろいろな面からつけられまして、これらの交渉は一応打ち切られたことになっておるのでございます。  そういうような実情も——てんたら、緩慢、ただ遊んでいるのだ、傍観しているという意味ばかりではなく、私のほうは積極的にこれらの対策は講じているということだけは御了承願いたいと存じます。
  174. 小沢貞孝

    小沢(貞)委員 インドネアシへは日本の米はだめですか。この穀物協定の食糧援助規定によってわざわざタイへ行って買い付けて、そしてインドネシアへ持っていってただくれている、長い間こういうことをやっているわけです。日本の米がなぜインドネシアあるいはもっとインドでもどこでもいい、マレーシアでもいいが、そういう後進国へ向かないか。私は外務大臣あるいは何なりにお尋ねしますが、そういうことについて積極的に検討したことがあるかどうか。これは外務省、まあ農林大臣……。
  175. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 ただいま御指摘もございましたが、一九六七年の国際穀物協定、これに基づく食糧援助規約に関連いたしまして、年間約千四百三十万ドルに相当するまさに食用穀物、農業物資の援助を行なうことになっております。いろいろいまも御論議がございましたように、こうした援助に基づく食用穀物は、主として米の形で実行いたしたい、供与したい、こういう方針で、外務省といたしましても、いろいろ農林省の御協力によって、受け入れるほうの側の希望、あるいはそれに対する折衝等も行なっておるわけでございますが、ただいま農林大臣からお答えがありましたような、インドネシア側の希望もありますし、それからまた評価のしかた、そのほか技術的な点でいろいろごたごたしておる状況でございますので、なかなか思うように運んでおりませんけれども、ただいま御指摘のような方向でぜひひとつこれは進めてまいりたい、こういうふうな方針で私どもはやっております。
  176. 小沢貞孝

    小沢(貞)委員 いま外務大臣の積極的な御発言がありましたので、私はこれ以上この問題にこだわりませんが、これは総理、千二百五十万トンの米が来年政府にあるということは、ほんとうに重大なことになってしまうわけです。自主流通米とかなんとか言っていたって、とにかく千二百五十万トンあって、海へ行って捨てなければならないという現実になったならば、食管の根幹も何もあったものじゃないと思う。だから、総理から大いに督励して——これは大蔵も関係あると思います。外務も経済企画庁も、農林はもとより、この問題については、総理からもうきつい達しによって直ちに対処をしろ、こういうぐあいにさしていただきたいと思います。総理どうでしょう。
  177. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 政府各省考え方は、いままでの応答でおそらく十分御理解だと思います。政府も米食を大いにすすめる、そうしてパン食はなるべく避ける、かような意味で指導をしておりますが、事柄は生活の基本に関する問題で、米以外食っちゃいかぬ、そういうわけにもいかない。笑いごとじゃございませんが、かつて貧しかったら麦を食えという話があったのですが、この節はどうもむしろ米を食えというような方向じゃないかと思います。これは笑いごとじゃございません。  そこで、いまわずかでも、学校給食なども、設備その他の困難はございますけれども、なるべく米食をすすめるような方法をとるとか、また外国に対しても、法の許す範囲内において、それぞれずいぶん困難な点がございますが、それを克服しながら、外国へも米は出していくとかいうようなことをして、とにかく、できるだけ手持ち米を減らすようにつとめていく。急に農村に米をつくるなと言いましても、いま、米以上に魅力のある作物はなかなかございません。また総合農政ということを申しておりますが、米以上に安定した、魅力のある作物は見つからない。小澤君の県の果樹などもこれは魅力のあるものだと思います。いま、そこらでいろいろ相談しておられるようですが、魅力のある作物、そういう奨励をすることは必要だと思います。私はいつかこの席上で申したと思いますが、米に対する手厚いいままでの政策、それに劣らないようなことを考えれば、魅力のある転換作物は見つかるのではないか、かように私は思います。そういう点で農林省はいろいろくふうしている、現状はそうでございます。また、皆さんからも、そういう意味ではお知恵も拝借したい、かように私は思っております。
  178. 小沢貞孝

    小沢(貞)委員 総理から、外に米を出すことに積極的にやろう、こういう御発言がありましたので、さらに進みたいと思います。  転換の話が出ましたから、ここで三百質問をしておきたいと思いますが、要するに農民はいま袋のネズミのわけです。昨年まで米をつくれというものだから、これは農林省政府の指導で一生懸命やってまいりました。米価闘争や、あるいは予算編成のときになったら、経済企画庁か財政制度審議会か知らないが、まるでいままで米をつくっていた者は悪者だった、こういうような印象を受けるような記事が出ておるわけです。そして、ことしの予算からは一万ヘクタールなり何なり転換をしていけ、こういうわけですが、去年まで一生懸命米をつくらせたのは政府ではないか、私はこういうように考えます。従来からみなそうです。桑園をやれ、補助金を出す。桑を抜け、補助金を出す。二、三回そういうことをやったのじゃないか。ビートもそう。そういうようなことを繰り返してきて、要するにいまほど農政に対する農民の不信、政府に対する不信はないと思うわけです。ここで産業構造の近代化あるいは国際化、技術革新、こういうもののしわ寄せというものは、みないま農業に集中しているかっこうではなかろうか、私はこういうように考えます。  演説ばかりしておるといけませんから、具体的にお尋ねをするが、長期的な食糧消費構造も、もうわかっています。いま未来学が盛んに発達していますから、生産性本部じゃないけれども昭和五十二年かそこらには、米の消費量は約六割ぐらいに減るとか、肉類の消費量は八割ふえるとか、そういうことはすでにわかっておるわけです。そういう長期展望もあって、国内ではどういうようにこれを生産をしていくか、そしてその方向へ転換をしていくためには、どのくらいな価格保障というものを、国際価格の推移とにらみあわせながらやっていくか。作付の大きなワクというものはどのくらいにするか。少なくとも最低五年や十年のビジョンというものを与えて、今度こそは農民はこれについてくれば間違いないのだ、そういうビジョンを与えなければ、もういまは袋のネズミで、農民はどこにも行きようがない、こういうかっこうです。このビジョンをすみやかにつくる必要があろう、私はこういうように考えます。担当大臣から……。
  179. 長谷川四郎

    ○長谷川国務大臣 お説のとおりだと思いまして、特にこの点については慎重にやっておるつもりでございます。何といたしましても、いままでの農作物の奨励がすべて米というものに重点が置かれた結果、需給のバランスが大きな欠陥を生じてきた。また過去にもそういうような例はたくさんあったことも承知しておりますので、長期の見通しをいかにして立てるか。御承知のように、いま国際的な面からいたしまして、非常に大きな波が押し寄せてきている点等もあわせ考えて行なわなければなりませんので、ただ果樹だ、あるいは園芸だ、さらにこれは桑園だというばかりの問題でなく、それを適地適作的にどういうふうな方向に裏づけをして持っていくか。お説のありましたような、たとえば転換にいたしましても、ただおあしを出すからそれで転換をしろというだけのもので解決がつけられるものではないと思います。農民の気持ちなどというものはそんなものではない。したがって、完全転換ができるのには、その裏づけとして長期の見通しの上に立った方途を切り開いてやる。そして政府が保障づけてやるというようなことでなければ、なかなか転換もできませんし、将来性を見出すととはでき得ないだろう、こういうような観点に立ちまして、いろいろなものを申し上げておりますけれども、特に今後の問題に対しまして、なお慎重な態度をもってこれに進んでいきたいと考えております。
  180. 小沢貞孝

    小沢(貞)委員 これはどうも明確な答弁——長期展望で、農民が安心してついていける道をつくるのだ、こういうように担当大臣としては明確にここでひとつ言っていただきたい、こう思うわけです。
  181. 長谷川四郎

    ○長谷川国務大臣 もちろん現在の実情から見て、将来性から考えていって、いまこそ農林省は、将来これなら間違いがないであろうというようなものを、確信の上に立った指導を申し上げるつもりでございます。
  182. 小沢貞孝

    小沢(貞)委員 ついでに、私は今度の新しいあれで構造改善というものは非常に大切なことだと思います。第二次構造改善というものはたいへん大切なことだと思いますが、第一次構造改善の反省の上に立って、われわれはこれだけ技術革新が進んでいく産業化の社会です。それから開放体制にますますもって進んでいく。成長産業である農作物は自由化のあらしの中にやはり立っている。これからますます労働力は不足する。長期見通しでいえば十年もたてば八、九%に農業就業人口はなろう、先ほど来言うように、食糧の消費構造が変わっていく、こういうもろもろの条件の中で、やはり構造計画を立てるのに農林省のやり方はこうなんです。民主的でまことにけっこうですが、現実の農民が、現地の市町村が——こういうことです。私はいいと思います。昔であったら、徳川や明治の間だったら、もう停滞社会ですから、なかなか進んでいかないからいいんです。いまはそうではないわけです。この急速に変わっていく産業社会の中にあって、この構造改善事業は、農業を産業化としてやっていかなければならない、企業的な、産業的な農業に育てていかなければならない。こういうことに立つならば、これは中央から長期ビジョンをもってやはり指導をする、誘導をする、こういう観念がこの構造改善事業にあってしかるべきだ、こう思います。先ほど、判この例で申し上げたように、地元から何とか委員会をつくって、何とかして村長から申請してよろしい。まことにこれは草の中から出てくる民主主義でいいと思いますが、最近の社会、経済の変わり方は急速なものがありますから、十年たった後に、何やらやってみたけれども、またそのやったことが桎梏であったんじゃないか、こういうのが農民のいまの現実です。短見的なんです。だからもっと中央から長期展望というものを与えなければいけない、誘導しなければいけないというようにこの構造改善について私は考える点が一点。  もう一つは、そういうように誘導するからには、やはり政府の補助率、政府の援助というものはもう少し高額でなければならない。われわれは、全額国庫ならば一番いいんだけれども、そうもいかないとするならば、この補助率では誘導には不向きである。こういう点が第二点。  第三点は、農民年金を実施します、こう言う。その農民年金は、単に社会保障的なことではなくて、やはり就業構造が変わっていくのですから、八%ぐらいに農民がなっていくということはわかるんだから、その方向づけが、やはり農民年金の中で構造改善の役割りをなす、経営規模を拡大する、構造改善の役割りを果たす、つまり離農年金、経営移譲年金的な性格というものをこの農民年金の中に取り入れて、そしてこの構造改善事業では経営構造というものに力を入れなければいけない。  まあ繰り返すならば、第一点は政府の誘導がもっとなければならない。したがって補助率が高くなければいけない。その中で特に経営構造の改善、こういうものについては、農民年金の設定等と関連をして格段の配慮がなければならない。そう三点考えるわけです。
  183. 長谷川四郎

    ○長谷川国務大臣 構造改善はただの構造改善でなくて、われわれは一つのビジョンを持たした構造改善でなければならない、このような考え方の上に立って、今日まで農業経営の規模拡大をはかるためにいろいろな施策を加えてきたと考えておるのであります。  特に最近の農業の動向を見るにつけ、経済成長というこの中で農家労働力の減少とか、あるいは農家戸数の減少、農地の移動も見られるものの、必ずしも経営規模の拡大は順調に進んでいるとは言えない状態だと考えるのであります。したがいまして、経済の高度成長、その他農業をめぐる諸情勢の推移の中で、農業の生産性の向上と、まず農業所得の増大をはかるためには、構造政策がますます重要になってきておるだろうと考えられるのであります。そこで本年度は農地の流動化をあわせて経営規模の拡大をはかるとか、さらに農地法の改正その他一連の構造対策関連諸法案の成立をはかりたいと考えておるのでございます。  したがって、またお尋ねの第二点の農業改善事業を発足させまして、農業者年金については四十五年度実施を目途に調査検討を行なおうとしておりまして、構造改善政策の一そうの推進をはかりたいと考えておるわけでございます。
  184. 小沢貞孝

    小沢(貞)委員 時間がないので、私はこういうように理解するので、それでよろしいというならば、一言御答弁をいただきたい。  米の決定についてです。食管法という法律に基づき米価審会議の答申を尊重するという政府の意思があるならば、——残念ながら政府の米価は、消費者も含めてでしょう、据え置きという方針ですから、行き先きとか予定とか、そういうことだと思う。だから食管法に基づいてそれを米価審議会が審議して答申する、答申を尊重する、それだけのことであるならば、理論的には、いいですか、理論的には政府の方針にもかかわらず米価は変わり得るんだ。私は消費者米価を上げろとか下げろとか、生産者米価を上げろとか下げろとか言うわけじゃない。米価審議会というものを設けて答申を尊重する、食管法どおりやる、こういうならば、方針のほうが先にきまってあとから米価審議会が開かれるのですから、理論的には変わり得るんだ、イエスと、こういうように一言。
  185. 長谷川四郎

    ○長谷川国務大臣 米価の据え置きは政府の方針でございます。したがって米価審議会というものがございます。これから米価審議会におはかりをしまして、その結論は尊重をいたすつもりでございます。
  186. 小沢貞孝

    小沢(貞)委員 どうも答弁を逃げている。米価審議会の答申は尊重する、食管法どおりやる、こうなれば理論的には変わるんだ、あとから米価審議会が開かれるのだから。いいとか悪いとか言っているわけじゃない。その一言なんです。
  187. 長谷川四郎

    ○長谷川国務大臣 食管法がございまして、米価審議会にはかることになっております。もちろん、米価審議会の決定は尊重をいたします。
  188. 小沢貞孝

    小沢(貞)委員 それでは時間もありませんから、もう一点、農林年金についてお尋ねをいたします。  農協や農業会議、農業共済、土地改良、こういう関係の職員はたいへん困難な中で農業の伸展のためにつとめてきておるわけです。長い間の運動が実って、今度は農林漁業団体職員共済組合法の一部改正をする、こういうように聞いているわけです。ついては、いつごろ法案を提案するか、改正の内容はどうか、ことしの予算措置はいいか、この三点についてお答えをいただきたい。
  189. 長谷川四郎

    ○長谷川国務大臣 四十五年を目途として必ずこれを実施をいたしたいという考えのもとに現在いろいろの施策が講じられておりますから、こまかい点につきましては事務当局をもって答弁させます。
  190. 池田俊也

    ○池田政府委員 現在検討いたしております農林年金制度の改正の主要な内容でございますが、一点は、実質的に旧法期間と新法期間を通算する、同じような条件でやるという点が一点でございます。第二点は、最低保障額の引き上げをするという点が第二点でございます。それから第三点といたしましては、既裁定の年金につきましてその額の改定を行なう、こういうような方針のもとに現在法案の作成を行なっている次第でございます。
  191. 小沢貞孝

    小沢(貞)委員 ことしの予算は。
  192. 池田俊也

    ○池田政府委員 予算でございますが、来年度の予算は総額で九億六千万円でございます。内容といたしましては、給付費の補助が八億一千万円、財源調整の補助が一億円、その他は事務費の補助でございます。
  193. 小沢貞孝

    小沢(貞)委員 事務当局に……。掛け金率を上げない、それから補助率は二〇%の要求が成功しなかった、しかし法律は改正をしていく、こういうことになると、ちょっと私たち不安なことがあるんだが、四十五年度以降もこの改定についてはだいじょうぶか。これは大臣のほうから一言。
  194. 池田俊也

    ○池田政府委員 四十四年度におきます給付額の制度改正によります増額でございますが、これにつきましては、実は先ほど申し上げました財源調整の補助というようなこともございますので、これは十分まかなえるわけでございます。問題は四十五年度以降でございますが、これにつきましては、まだ具体的な方針は決定しておりませんが、私どもといたしましては、基金の財政の状況を十分見まして、来年度予算の問題として善処をいたしたい、こういう考えでございます。
  195. 小沢貞孝

    小沢(貞)委員 農林大臣、来年以降もだいじょうぶですね。
  196. 長谷川四郎

    ○長谷川国務大臣 四十五年を期して必ず実施いたす考えでございます。
  197. 小沢貞孝

    小沢(貞)委員 それでは、時間の都合で先に進みます。  医療保険の抜本対策について。政府は、政管健保等の財政対策として健保特例法の二年延長を計画して提案しているようですが、一昨年の特例法審議の際、政府は再三にわたって、四十三年度には抜本対策に着手したい、こういうように言明をしてまいりました。わが党の提案で、国会修正によって健保特例法によって本年八月末までの期限が付されたのは、抜本対策の早期確立を政府に義務づける意図にほかなりませんでした。しかるに政府は、まだその結論を得ず、この段階において特例法をさらに二年延長しよう、こういうことのようであります。これはどうも政府の怠慢のようです。  そこでお尋ねをしたいことは、政府はこの間二年間どういうことをやってきたのか。伝えられるところによると、医療保険制度改革案という事務当局のたたき台みたいなものをつくった、こういうことだけは聞いておりますが、あとは、二年間どういうことを具体的に進めてきたのか、そのことについて最初に御答弁いただきたいと思います。
  198. 斎藤昇

    ○斎藤国務大臣 御承知のように、一昨年十一月厚生省試案をつくったわけでございますが、関係するところが非常に広く、また関係団体からのいろいろの意見もございまして、与党との調整をはかる必要もあり、与党におきましては、医療基本問題調査会を設けまして、昨年の二、三月ごろから精力的に各方面の意見を聞き、案をまとめる努力をしてもらっているわけであります。近く党の方針もきまるであろうと思いますので、政府としましても、党に、一日も早く方針を出してもらいたいということを申し入れておりまして、その結果によりまして、なるべく早い機会に政府の方針を確定をし、これを審議会に付議をいたしまして、できるならばこの国会の終わりまでにでも出したいと思っておるのであります。これは確約いたすことができませんが、少なくとも来年度には必ず成案を国会に提案をいたしまして、そして御成立を願いたい、かように思っているわけでございます。
  199. 小沢貞孝

    小沢(貞)委員 私は、政府・与党の中でやっていることを聞いているわけじゃありません。政府みずからはどういうことをしたかと、こう言うわけです。だから、これから利害関係がたくさんあるのだから、また政府は、各種団体の意向を聞かなければいけない、その聞く場をまたおそらくつくらなければならないでしょう。  そこで、お尋ねをしますが、自民党のほうから何とか調査会の案が出てきて、それを政府で検討して、また何とか審議会にはかって、そこで各種団体の意見がたくさん出てきてと、こういうことになれば、また一年半や二年はすぐかかってしまって、二年間延長してもまだ間に合わない。われわれが数字的にスケジュールを考えたってそうなんです。だから私は、政府・自民党の検討は検討でやってもらっていてけっこうです。直ちに、これは社会保険審議会でもいけない、社会保障制度審議会でもいけないのだから、昔つくったような臨時医療保険審議会か、ああいうようなものをすみやかにつくって、すぐにも諮問をしないと、これにまた各種団体の意見が反映されるわけですから、時間上二年延長したってまた間に合わない、こういうわけです。だから、そういう時間的なスケジュールを考えるならば、国会にかつて提案をして廃案になってしまったけれども、臨時医療保険審議会、こういうようなものをこの国会で提案をして、直ちに諮問をする、こういうことをしなければ、もう二年という期間でどういうようにして間に合うか。今期国会にそういうものを提案するかどうか。また、そういう場でもって審議するかどうか。この二点。
  200. 斎藤昇

    ○斎藤国務大臣 各界の意見政府自身も聞いておりますし、また党でも十分聞いておられるわけでございますから、そういう意見を聞くための、かつて昭和四十一年度に提案をし、流れてしまいました臨時医療保険審議会か調査会か、そういったものをつくる考えはただいま持っておりません。
  201. 小沢貞孝

    小沢(貞)委員 これは大臣、そういうことでいいわけですか、これだけの抜本改正をやるのに。大臣はこの間、特例法を二年延ばすだけでも社会保険審議会にかけて一月末までに答申してくれとやっている。あるいは社会保障制度すべてについていろいろの審議会にかけているのだが、これだけの抜本改正をやるのに、審議会にも何にもかけないでよろしい、自民党がいろいろ意見を聞いているのでよろしい、それでできるのですか。
  202. 斎藤昇

    ○斎藤国務大臣 先ほど申しましたように、関係の審議会にかけると申しました。それは既存の審議会にかけるつもりで、いまおっしゃいましたような特別の臨時審議会を設けて、それにかけるという考えは持っていないと、かように申し上げました。したがいまして、今日の社会保障制度審議会とそれから社会保険審議会、その二つにかけたいと、かように思っておるわけでございます。
  203. 小沢貞孝

    小沢(貞)委員 ちょっと事務当局、それでいいかな。こういうものをやるのに、社会保険審議会じゃ、これはできっこない、社会保障制度審議会もできっこない。これは事務的にできないでしょう、大臣。これはやはり取り消して、適切な審議会を臨時につくってかけるということでなければ、これはできっこないと思うのだ。事務当局と相談して至急ひとつ答弁をやり直してもらいたい。
  204. 斎藤昇

    ○斎藤国務大臣 事務当局とも十分相談をいたした結果でございます。新しい審議会をつくってみてはどうかという案も考えてみたのでありますが、四十一年の際には、その審議会をつくる法案自身もたいへんな問題で、流れてしまったわけであります。社会保障制度審議会は、必ずしも保険制度の審議会ではありませんけれども、しかし、これを活用をしてその場で審議をしてもらうのが一番適当ではなかろうかと、かように考えている次第でございます。
  205. 小沢貞孝

    小沢(貞)委員 この抜本改正のときに、世界の中でも各国がやっているわけですが、最近も請願署名が百万も集まったということなんだが、要するに正常分べん、妊産婦のお産を全額保険で見ろ、むずかしいことばで言うと現物給付、こういう要望が高いわけです。前の園田厚生大臣は、来年はやりますみたような答弁をしてあるわけなんです。  ところが、最近、政府管掌保険や何かに一時金二万円出しましょう、扶養家族には一万円出しましょうということになって、それはもう予算的にもたいへん前進で、われわれも感謝を申し上げます。しかし、イギリス、スウェーデン、西ドイツその他の各国においては、正常分べんはやはり保険で見る、こういうように大勢はなってきておるし、園田大臣の言明もあるので、抜本改正のときにはそれを織り込んで実施できるか。予算的には私はわずかだと思うわけです、もう二万円の一時金を出すようになってきたのだから。その辺、大臣にお尋ねしておきたいと思います。
  206. 斎藤昇

    ○斎藤国務大臣 おっしゃいますような方向で検討をいたしたいと存じます。ただ、これは御承知のように、いわゆる点数化をいたしますことは相当困難でございますが、しかしできるだけその困難を乗りこえてやってみたい、かように考えております。抜本改正の際にはぜひ考えてみたい、かように思っております。
  207. 小沢貞孝

    小沢(貞)委員 どうもありがとうございました。  次に、これは総理予算委員会でたびたび言明しておりますが、児童手当制度、これは総理から、来年実施する——あの当時の議事録を見ると、どうも四十三年から実施したいという意向でいろいろ検討しておりますというような答弁が、いまを去るもう二年も前の予算委員会でなされているわけです。これは世界各国六十二カ国もすでに実施しておって、日本のような国民総生産が世界三位なんというような国でやらないのは、これはたいへん恥ずかしい話じゃないか、こう思いますから、来年からは実施すると、総理、言明をしていただきたい。
  208. 斎藤昇

    ○斎藤国務大臣 ぜひ来年の国会には提案をして審議をしていただけるようにしたい、かように考えております。
  209. 小沢貞孝

    小沢(貞)委員 前向きの答弁で、たいへんありがとうございました。  それでは、事務的にちょっとお尋ねをしなければなりませんが、最近児童手当懇談会からの答申があって、この国会かな、児童手当審議会式のものを設ける、こういう意向のようで、やはり拠出制度もあるというならば、そういうこともしなければならないと思います。それで来年度から実施するということになると、延々とまた児童手当制度審議会でもって一年も二年もやっておったのではできっこないから、ことしの十月までに答申をしろというような、希望するというような意見を付せるかということです。この間の医療保険の臨時特例のときには、おおむね一カ月くらいで答申をしていただきたいと斎藤大臣からその審議会への要望もあるわけですから、この要望書をつけて、おおむね十月、おそくも十月、その答申がないとできないと思います。そういうぐあいに具体的にして来年に間に合わせるようにしてもらえるか。
  210. 斎藤昇

    ○斎藤国務大臣 明年度は提案をいたしたいと考えておりますので、したがいまして、審議会の審議を拘束することはなかなかむずかしいと思いますけれども、辞を低ういたしまして、できるだけ半年以内くらいに審議をしてもらいたいという希望をつけたいと思っております。
  211. 小沢貞孝

    小沢(貞)委員 たいへん前向きな御答弁をありがとうございました。  それでは最後に、国鉄の再建問題についてお尋ねをいたしたいと思います。  磯崎副総裁おりますか。——最初に磯崎副総裁にお尋ねをしたいと思いますが、政府の施政方針にもあるように、国鉄だけ例外で値上げをする、こういうことのようで、この物価の上がる中で、国民がこの問題については注視をしておるわけです。例外的に認められて、しかも再建促進法というようなことで財政援助を得て、こういうようにやっているようですが、昭和四十四年から五十三年の十年間を再建期間として三兆七千億の投資をしてやりたい、こういうことですが、私が仄聞するところによれば、ことし一五%上げただけではまだ再建ができないで、さらに二回値上げをしなければならない、こういう計画になっておるそうですが、そのとおりですか。
  212. 磯崎叡

    ○磯崎説明員 過般、運輸省に設けられました国鉄財政再建推進会議におきまして、四十四年度を初年度とする今後十カ年間の一応の財政計画ができたわけでございます。もちろん。その中にはいろいろ仮定が入っております。いま先生のお説のとおり、三兆七千億の投資も入っておりますが、今後輸送量がどれほど伸びていくか、したがって収入がどのくらい伸びていくかということも、いろいろ算定の基礎がございます。しかし、いろいろの総合的な施策をやってまいります場合に、全然現時点のままで、四十四年度の運賃のままで十年間過ごせるかどうかということは、これはほかの収入状態あるいはその他の公共負担の問題等とも関連いたしますので、現時点で、いまのままでやっていける、十年間絶対上げないでやっていけるということも申し上げられませんし、今後何年に上げるということも申し上げられません。ただ、過去の実績から申しますと、昭和三十二年以降、大体物価その他ベースアップとの関係で、四年に一回くらい上がっておったのが過去の事実でございます。それとは必ずしもマッチいたしませんが、これからの十年間は、そういうことで収入状況その他との見合いになりますので、もうしばらく輸送量の検討をしなければならない、こういうふうに思っております。
  213. 小沢貞孝

    小沢(貞)委員 今回値上げをする再建整備法ですか、何かの法律をつくって政府から援助ももらう。三兆七千億の投資もいたします、それでいて十年後にはどういうように黒字になりますとか、その中間においてどのくらい上げてもらわなければならないというビジョンというものはないのですか。ビジョンもなくて、ただ十年間に三兆七千億投資します、政府の援助もお願いします、値上げはお願いします、こう言っているだけなんですか。
  214. 磯崎叡

    ○磯崎説明員 十年間のビジョンはもちろん試算したものはございますが、いろいろな条件が入っております。その中には、もちろん運賃の問題も含まれております、あるいは輸送量の増加の問題も含まれております。いろいろな条件のもとに試算したものはございます。
  215. 小沢貞孝

    小沢(貞)委員 二回上げる予定になっておるか。今回上げて、さらに四年だか三年に一回ずつ上げなければならない、こういうように聞いておるが、あと二回上げるようになっておるのか。
  216. 磯崎叡

    ○磯崎説明員 試算といたしましては、そういう試算もございます。しかし、現在確定的に何年に何%上げるというふうな確定したものはございません。一応試算としてそういうものを財政再建推進会議でおつくりになったものはございます。
  217. 小沢貞孝

    小沢(貞)委員 ちょっとこまかいことになってすみません。私は、この間予算説明で、四十四年度の資金概要、こういうものを見せてもらいました。運賃改定で九百十億の収入だ、こういうことのようです。ところが、ことしの人件費の増が、ここに明確に出ておるだけで六百二十億で、これは修繕等に含まれている人件費のほうは含まれておりません。さらに、仲裁裁定がことし出れば、それも含まれておりません、こう言われますから、それをこの人件費の増に入れてみたら、大体の数字が千百億くらいになるのではないか。だから、ことし一五%上げて九百十億増収になったとしても、ことしのベアのために千百億要る、こういうかっこうに数字上はなるわけですが、そういうことでしょうか。それが一点。  それから、国鉄の一兆一千億の収入の中には、大体六割くらい人件費のようだが、それは正しいか、それが第二点。
  218. 磯崎叡

    ○磯崎説明員 ただいまの先生のお示しになった数字の中で、人件費の六百二十億の中には、修繕費その他に含まれた人件費は全部こちらに入っております。その点あるいは私のほうの御説明が誤ったかと存じますが、その点は、六百二十億は、当然物件費としていままで経理しておった修繕費の中の、たとえば線路保守の人件費あるいは工場の人件費等は、今回は人件費にはっきり経理いたしております。したがいまして、六百二十億の中には、総人件費がここに入っております。  ただし、いまの第二の点のベースアップの問題でございますが、これは昭和四十三年度分のべースアップは、そのはね返りその他は全部入れて、入っております。しかしながら、昭和四十四年度にあるかもしれないと思われるベースアップにつきましては、毎年度の例によりまして、この人件費の中には入っておりません。したがいまして、結論から申し上げますと、約一兆の収入に対しまして、人件費は六割というのは大体の数字でございます。
  219. 小沢貞孝

    小沢(貞)委員 これも先ほど冒頭に総理とさんざんあれしたんだが、私たち民間——これは国鉄の中には、社会政策的なものをやれ、それから公正競争条件がない、こういうような制約のもとにいるわけです。それは私理解できます。したがって、国からも援助する、これも理解できるわけです。ただ、われわれ長期ビジョンを見て、これで再建ができるかできないかということはさっぱりわからぬ。民間の製造企業か何かならば、資本の装備率、資本の投資を三倍なら三倍にいたします。装備率は三倍になります。労働の生産性、これは三倍になります。したがって、賃金は二倍上がってもその企業はやっていけます。こういう見通しを立ててちゃんとやっておるわけです。だから、国鉄の再建計画の中にも、三兆七千億を投資するというには、装備率はどうなるだろうか、労働装備率はどうなるだろうか、何倍になるか、生産性はどういうようになるか、そういうことから賃金をどのくらい払えるようになるか、こういう見通しを立てないと、いつまでたっても給料支払い団体のまま、赤字赤字という傾向になっていくのではないか、こういうことを私は心配するわけなんですが、そういうことについて試算なり何なりしたことがあるのですか。
  220. 磯崎叡

    ○磯崎説明員 十年間の試算につきましては、いろいろな角度からさっき申しましたように試算いたしております。もちろん三兆七千億投資すれば、それでもって、たとえば具体的に、いま先生労働の装備率とおっしゃいましたが、私のほうでいえば複線がどうなる、電化がどうなる、安全設備がどうなる、こういう具体的な数字は持っております。ただし、それによって、昨日も赤字線の問題が出ましたけれども、あるいは赤字線の問題、あるいは人員の減耗の補充の問題等も、いろいろございます。したがって、十年間のビジョン、十年後にとにかく損益勘定で単年度の償却後の黒にする、こういう一つの試算をやった上での今度の計画でございます。
  221. 小沢貞孝

    小沢(貞)委員 私ちょっと拝見しただけですが、日本国鉄の監査結果報告、これを見ると、保守業務の中で修繕費が一三%上がっていく、その中で六割は人件費だ、こういうことを拝見して、われわれ民間の企業から見ると、これは実はびっくりするわけです。私は、やはり電電公社の現場の工作所へ行ったら、一個五千円ばかりしかかからない電話機を一生懸命でああひねりこうひねりやっている。こうやっていれば、一日の人件費二千円か三千円払わなければいけないものを二日もかかってやっていれば、捨てて買ったほうが早いじゃないか、現場でそういうことを言ったこともありますが、いまコンビナートなり何なりそういうところにおいては、メーターを見るとか高級な管理をするとか、そういう人以外は従業員じゃないわけです。一緒に職場の中でバルブなり何なりの漏洩を見ていく、そういう保守をやるものはみんな下請企業がやって、それで企業というものは運営されていくわけで、そういうようなぐあいにやってきているわけです。そういうことについてのおくれというものが、たいへん多いのではないか、私はこう思います。それは従業員を整理するという方向ではなくして、やはり自然減耗、そういう中でだんだんに下請化していく、こういう合理化というものは、これから企業を伸ばしていく上においてはもう常識なんですから、そういうことを考えなければならないではないか、こういうことが一点。先に、それはどうでしょう。
  222. 磯崎叡

    ○磯崎説明員 長期ビジョンの中におきまして、やはり一番問題は人件費でございます。したがいまして、設備投資をふやし、労働装備率が上がれば、当然人間の頭数は減ってくる。しかしながら、先ほど総理もおっしゃいましたが、いわゆる出血整理ということは絶対しない。やはり職種別の配置転換をするなり何なりいたしまして、減耗をある程度とどめておく。そして全体の数が自然に減っていくようにする。それからまた、国鉄職員をもって充てることの必要のない、たとえばさっき先生のおっしゃった下請に出しても差しつかえのないようなこと、安全その他に関係のないことにつきましては、これは下請に出していくというふうな方向で考えてまいります。
  223. 小沢貞孝

    小沢(貞)委員 私、こういうことがふしぎに思うのですが、副総裁、答えてください。いまストをやっているスローガンの中に、きょう見たのですが、国鉄運賃値上げ反対と、こう項目のあがっているようです。副総裁、自分のところの従業員に納得できないものを、一億の人に納得させることができるでしょうか。自分のところの従業員に、経営の危機はこうなっているのだとあなたの部下の局長なり現場の駅長なり、そういうことが徹底してできないでおいて、一億の国民に値上げをしなければいけないということを納得させることができるか、どうでしょう。自分のところがまず、こういう経理状態で、こういう危機になっている、わが従業員立ち上がらなければいけない、そういうことを経理内容をよく説明をして、そしてやれる合理化や、やれる生産性向上や、そういうことには取り組むというまで企業内にちゃんと教育ができないでおいて、どうして一億の国民に値上げを賛成しろと言えるのですか。これは理論的にも私は言えないと思うのです。
  224. 磯崎叡

    ○磯崎説明員 ただいまの御質問は、確かに私どもにとりましては一番大きな問題でございます。私を含めまして、国鉄職員の中には、管理職といわず、現場職といわず、やはり陸の王者であった時代の感覚の残りが残っているということを率直に認めざるを得ないと思います。したがいまして、いまお示しのとおり、運賃を値上げしていただく、あるいは政府からと申しますか、一般国民から相当なお金をいただくということをいたしますなれば、私どもといたしまして、当然企業内の問題は十分取り上げなければいけない。私どもに対しましては、おまえたちは運賃を上げ、政府から金をもらいながら、一体自分のところの合理化をどうするのだ、あるいはうちの組合には、おまえたちは運賃値上げを反対しながらベースアップを言うとは何ごとか、こういう率直な国民の議論が、私どものほうにも、また組合のほうにも入っております。私どもといたしましても、少なくとも部内につきましては、現在の国鉄の財政上の危機、また今後必ずしもよくならないだろうと思われる国鉄の危機につきましては、十分機会を得て説明をしておるのでございますが、それが組合運動となりますと、形が変わって出てくることはたいへん私としても遺憾な点でございますが、できるだけの機会を見、おりを見てその説得につとめてまいりますから、先生おっしゃったとおり、確かに自分の部内の職員が納得しないのに国民が納得されるはずがないじゃないかという御疑問は、もちろん私は率直に受けますけれども、部内につきましては十分私どもの趣旨を徹底させておるつもりでございます。一部ああいうふうな形になりましたことは、たいへん遺憾に思っておる次第でございます。
  225. 小沢貞孝

    小沢(貞)委員 私はこういうことを率直に言うのだけれども日本の労働組合というものはみんな企業内なんだから、外国の労働組合やなんかと違って——日本の海員組合はどうか知りませんが、私は御用組合だ、こう思います。したがって、経営者が、うちの組合ははね上がりでどうしようもないなということを外へ行って悪口を言うのは、自分自分の顔につばをかけているのと同じことだ。それを言いかえるならば、私は労使は鏡だ、こう思います。経営がほんとうにいま赤字で、物価を上げてはならないというときに、政府に頼んで、国会に頼んで値上げをしなければいけないというならば、その実情というものを企業の中に命をかけて宣伝をし——宣伝というかコミュニケーション、教育をし、そうやっていけば——これは私は、労働組合教育をやれということを決して言っているわけではありません。管理層の末端までそういう教育をやっていけば、その姿勢というものが従業員の中に反映する、このことを私は産業民主主義と言うわけです。したがって、どうも理解はできないでいけないということは、何もやっていないということなんです。労使は鏡だということは、そういうことだと思います。そうして、ここでそういうことを言いながらも、組合がいうことを聞かないようなことだけを管理者がやってきたのではないですか。この監査報告にも明確に出ております。管理者の管理姿勢が確立をしなければいけない、こういうように、その全部を私は読もうとしませんけれども、あなたがやはりいまの従業員から理解できないようなことをやってきたのではないか。どうでしょう、そういう反省については。それをもう少し具体的にお尋ねをいたします。ちょっともう少し具体的にそのことをお答えいただいて……。  昭和三十八年の闘争関係処分状況表、こういうのを実はお借りをしたわけです。そうすると、昭和四十年ごろまで処分は行なわれましたが、昭和四十一年には五千八百四十五人、四十二年には四千八百八十三人、それから昭和四十二年十一月八日から昭和四十三年十二月十八日まで、つい最近のものは一万九千二百九十九人、これは私たちは新聞で、国鉄当局が処分した、こういうように理解をしておったわけです。ところが、それは社会的にそういうように発表しただけで、処分は何も行なわれていないという事実を私は聞いて、がく然としたわけです。なぜこういうことは——違法は違法で処分するなら処分すると、発令したものをなぜできないか。対外的にはそういうことをやっただけで、中はどういうようにやってきたか。その点を第二点として説明していただきたい。
  226. 磯崎叡

    ○磯崎説明員 ただいまのお尋ねの第一点でございますが、これはまさに先生おっしゃったとおりで、やはりこの陸の王者から転落した私どもといたしまして、もう一ぺんここでその根性を入れ直すと申しますか、精神革命をやらなければいけない。これは労使ともにそれが必要だということを思っております。現在、その基本になるいろいろな問題につきまして真剣に取り組んで、管理体制の刷新と申しますか、組織、形も、あるいは人間も、たとえば学閥打破、あるいは野に遺賢なからしむる方法等につきましても、相当具体的に、積極的にやってまいるつもりでおります。また、いままでも多少前進してきたつもりでおります。  それから第二点につきましては、ちょっと御理解のいってない点があるじゃないかと思いますのは、確かに過去四十一年からとりますと、約七十名の免職と約三万人の処分をいたしております。これはいろいろ労働争議の関係でございますが、そのうち免職のほうは、これはすぐ裁判になってしまいますので、発令の効果が約七日ないし二十日でもって発揮いたします。発令されます。しかしながら、免職でない、停職、減給、戒告等の処分につきましては、昭和二十六年に公共企業体等労働関係法に基づきます調停委員会がございまして、その調停委員会が人事の懲戒処分に対する調停案を出しております。この調停案に基づきまして、昭和二十六年以降懲戒処分の基準に関する協約というものを労働組合との間に正式に締結いたしております。その協約によりますと、いわゆる弁明、弁護というチャンスを組合員に与えております。ところが、そのころはまだ年間千人か千五百人くらいの処分でございましたが、四十一年度以降、ただいま先生がお読み上げのとおり四十一、四十二、四十三の三年間で実に三万人の処分をせざるを得なかったということで、処分のあと始末、弁明、弁護がおくれているわけでございます。現在約一万人近いあと始末を終わりまして、それは発令が済んでおりますが、協約によりまして弁明、弁護が終わりませんと効果が出ないということになっております。現在一カ月約千人くらい——とにかくうっかりいたしますと、弁明、弁護を聞く機会は一日に一人しかできないということになりますので、しかし一カ月何とかいま全国で千人だけはあと始末ができるようにいたしておりますが、千人といたしましてもまだ二万人残っておりまして二十カ月かかる。これではとてもだめだということで、何とか弁明、弁護の処理能力をあげるように、大体年内に全部片づけるということでもって能率をあげさすつもりでおりますが、何と申しましても多少専門的な知識を要しますし、また従事員に不当な不利益を与えてもいけませんので、その点私のほうの能力にも多少限界がございますが、残っている約二万人につきましては、年内には必ずあと始末をいたしましてきちっと発令いたしますが、現在の労働協約によりますと、弁明、弁護を済ませませんと発令できないということになっておるわけでございます。三万人のうちの一万人は、すでに発令済みでございます。
  227. 小沢貞孝

    小沢(貞)委員 たくさんだったからできなかった、こういうことは、私は言いわけにすぎないと思うのです。どうして言いわけだか、こういうことを私は具体的に証明をしたいと思う。ここで言っていることと実際やっていることは違うのです。そうしておいてここでうまいことを言ったって、それはだめなんだ。これはやはり副総裁も責任をとらなければいけないような重大なことをやっているわけなんです。処分をされた者が、これは昇給延伸なり何なりが行なわれて、懲戒だか訓戒だか知りませんが、そういうことが当然そういうように行なわれている。そういう者を特進という昇給制度のもとで特進させてやっていったのでは、これは処分したも何もないじゃないですか。どうですか、そういうことをやってきたのじゃないですか。
  228. 磯崎叡

    ○磯崎説明員 それは、たぶん私どものいう回復昇給ということをおっしゃっていると思います。しかし、私どもは処分した者をただ無条件で回復昇給などは、絶対さしておりません。これははっきり申し上げます。ただ、実際その処分回復昇給と申しますのは、たとえば非常にその成績がいいとかいうときに、一般の人でも一段階上げて昇給させることがございますが、それと同じようなことで昇給させることをいたしますが、単に処分された者を回復するためにだけ昇給させるということは、絶対ございませんです。
  229. 小沢貞孝

    小沢(貞)委員 組合活動に専従者で専念している者を、ほかより成績がいいからといって上げたことはないですか。ああいう違法なストをやることに専念する——それはことばはちょっとおかしいかもしれません。そういうものに対してさえやっているのじゃないですか。
  230. 磯崎叡

    ○磯崎説明員 お答えいたします。専従者には一切私のほうから給料を払っておりませんので、組合の内部で名目的に昇給させるかどうかこれは存じませんが、専従者には一切私のほうは給料を払っておりませんので、そういうことはないわけでございます。専従者の昇給ということはございませんです。
  231. 小沢貞孝

    小沢(貞)委員 専従している間に辞令は出さない。  もう一つ、現場管理体制、これは管理者のほうへ畳を修繕しなさい、窓ガラスを直してもらいたい、こう申し込んでいっても。管理者のほうはそれはやらないんだか、できないんだか、熱心にならない。それをとことこ組合に持っていって、組合がどこかの総務部長だか管理局に持っていけば、あくる日すぐ直る、こういう体制では、一体職制はどこにあるかということなのです。そういう管理体制のもとで、どうして管理者を信頼することができるか、どうです。これは具体的におたくのその機関誌に出ている。
  232. 磯崎叡

    ○磯崎説明員 いままでの管理上には、確かにおっしゃったようなことはございます。その点につきましては、やはり私どもといたしまして、管理者の教育といいますか、管理者の根性のすげかえと申しますか、それが一番大事なことだと思います。したがいまして、いままでのように、ただ年功序列による人事とか、あるいは何と申しますか、この次はここだというふうな人事は一切やめて、そしてほんとうにからだを張って管理できる人間を重要なポストに置くというふうなことで、最近の人事から相当考え方を変えてやっております。いま先生のおっしゃったようなことは、確かにこれは私のほうの中の管理体制の不十分な点でございまして、その点は十分具体的に改めてまいります。
  233. 小沢貞孝

    小沢(貞)委員 時間が参りましたので、運輸大臣にお尋ねをしたいが、運輸大臣は所用があってお留守のようです。だから、国鉄のことに詳しい総理にお尋ねをしたいと思うのだが、いま私が申し上げたようなことをるる申し上げていると切りがないわけです。しかし、今回物価問題のやかましい最中に国鉄だけ値上げをせよ、そう言いながら、きょうあたりまだストをやり、事故をやる。原因は何かとよく追及していくと、私は経営者の姿勢にあると思う。処分はちっともしないわ、その昇給のしかたは、具体的には私はまた実例をもって申し上げるけれども、そういうことをみんな回復してやっているわ、管理体制においては、組合に持っていけば早く仕事ができるが、駅長さんだかだれかに持っていけば絶えず仕事ができないという、こういう管理体制、その管理体制に欠陥があったのだ。監査の報告にも明確に出ているわけだ。だから、政府としても、この重大な問題についてどのように監督をし、どういう責任をとらせるか、こういう問題について明らかにしていただかなければなならないと思うわけです。
  234. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私のいました時分はもうずいぶん昔のことですが、きょうは運輸大臣がいないから、かわってお答えいたします。  昔の国鉄ではなく、いま公社にいたしましたが、これが法のもとに運営されることは、これは当然であります。ことに最近問題の一番主軸をなすもの、根韓をなすとでも申しますか、そのものは労使双方の協調だと思います。このことが十分に打ち立てられない限り、企業はりっぱな成績をあげるわけにまいりません。まして公共に奉仕している国鉄といたしましては、特にそのことが必要だと思います。そういう意味において、政府がかねがね国鉄首脳部に対しても、その本来の使命を達するに遺憾なきを期するようにと絶えず注意をいたしております。磯崎君は、もうそのほうでもべテランだ、かように思います。いろいろいま御指摘になりましたが、私は先ほどの弁明、答弁を聞きながら、これはどこかにたいへんな誤解があるようだな、こういう感じがいたしました。私ども国鉄育ちの者から見まして、また社会党にも多数いらっしゃいますが、それらの方々にしても、おそらく国鉄がいま公共に果たす、国民に果たすいわゆるその公共性の使命を遂行している、たいへん熱心にやっている、これは労使双方ともそういうものだと思っておりますので、その目的を達するに一そう遺憾なきを期するようにしたいものだと思いますが、監督官庁である政府としては、十分その点に意を用いて、いままでお尋ねになりましたような点についても、これを参考——参考というとしかられるかわかりませんが、十分監査の方向の材料にいたしまして、十分注意するようにいたしたいと思います。
  235. 小沢貞孝

    小沢(貞)委員 じゃ時間ですから、一点要望だけしておきます。  とにかく、処分は新聞に発表されても、何も処分していないということなんです。そういうことで労使の正常化はできない。私は、経営者が自分の従業員に納得させることのできないようなことを一億国定には納得させることができないと、こう言っておる。そして管理体則が悪いからこういうことになっておるんだと、国鉄の監査報告にもあるから、いま総理にやっぱり厳重に監督をしていただく、こういうことを要望したわけです。そのことだけ要望して終わりたいと思います。
  236. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 これにて小澤君の質疑は終了いたしました。     —————————————
  237. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 この際、公聴会の件について御報告いたします。  公聴会開会に関する諸般の手続につきましては、さきに委員長に御一任願っておりましたが、理事諸君と協議の結果、公聴会は、来たる二月二十一日金曜日及び二十二日土曜日の両日いずれも午前十時より開会することといたしましたので、以上御報告申し上げます。  明後十日は、午前十時より委員会を開会し、岡田利春君、伏木和雄君、林百郎君の総括質疑を行ないます。  本日は、これにて散会いたします。    午後五時四十二分散会