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1969-02-06 第61回国会 衆議院 予算委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十四年二月六日(木曜日)     午前十時五分開議  出席委員    委員長 荒舩清十郎君    理事 櫻内 義雄君 理事 田中 龍夫君    理事 塚原 俊郎君 理事 中野 四郎君    理事 八木 徹雄君 理事 大原  亨君    理事 中澤 茂一君 理事 小平  忠君    理事 広沢 直樹君       足立 篤郎君    相川 勝六君       赤澤 正道君    植木庚子郎君       臼井 莊一君    江崎 真澄君       上林山榮吉君    仮谷 忠男君       川崎 秀二君    倉成  正君       小坂善太郎君    重政 誠之君       田中伊三次君    竹内 黎一君       灘尾 弘吉君    西村 直己君       野田 卯一君    野原 正勝君       橋本龍太郎君    福田  一君       船田  中君    松浦周太郎君       松野 頼三君    角屋堅次郎君       川崎 寛治君    北山 愛郎君       久保 三郎君    阪上安太郎君       田中 武夫君    高田 富之君       楯 兼次郎君    楢崎弥之助君       畑   和君    山内  広君       麻生 良方君    小沢 貞孝君       和田 耕作君    石田幸四郎君       山田 太郎君    林  百郎君  出席国務大臣         内閣総理大臣  佐藤 榮作君         法 務 大 臣 西郷吉之助君         外 務 大 臣 愛知 揆一君         大 蔵 大 臣 福田 赳夫君         文 部 大 臣 坂田 道太君         厚 生 大 臣 斎藤  昇君         農 林 大 臣 長谷川四郎君         通商産業大臣  大平 正芳君         運 輸 大 臣 原田  憲君         郵 政 大 臣 河本 敏夫君         労 働 大 臣 原 健三郎君         建 設 大 臣 坪川 信三君         自 治 大 臣         北海道開発庁長         官       野田 武夫君         国 務 大 臣         (内閣官房長         官)      保利  茂君         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)      床次 徳二君         国 務 大 臣         (国家公安委員         会委員長)         (行政管理庁長         官)      荒木萬壽夫君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 有田 喜一君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      菅野和太郎君         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      木内 四郎君  出席政府委員         内閣法制局長官 高辻 正巳君         内閣法制次長  吉國 一郎君         総理府特別地域         連絡局長    山野 幸吉君         公正取引委員会         委員長     山田 精一君         防衛庁長官官房         長       島田  豊君         防衛庁防衛局長 宍戸 基男君         防衛施設庁長官 山上 信重君         防衛施設庁総務         部長      鐘江 士郎君         防衛施設庁総務         部会計課長   高橋 定夫君         防衛施設庁施設         部長      鶴崎  敏君         経済企画庁国民         生活局長    八塚 陽介君         法務省民事局長 新谷 正夫君         法務省刑事局長 川井 英良君         法務省人権擁護         局長      上田 明信君         外務省アジア局         長       須之部量三君         外務省アメリカ         局長      東郷 文彦君         外務省経済局長 鶴見 清彦君         外務省経済協力         局長      上田 常光君         外務省条約局長 佐藤 正二君         外務省国際連合         局長      重光  晶君         大蔵省主計局長 鳩山威一郎君         大蔵省主計局次         長       相沢 英之君         大蔵省銀行局長 澄田  智君         農林省農林経済         局長      亀長 友義君         農林省畜産局長 太田 康二君         通商産業省通商         局長      宮沢 鉄蔵君         通商産業省貿易         振興局長    原田  明君         通商産業省企業         局長      大慈彌嘉久君         通商産業省重工         業局長     吉光  久君         通商産業省鉱山         石炭局長    中川理一郎君         中小企業庁長官 乙竹 虔三君         労働省労政局長 松永 正男君         労働省労働基準         局長      和田 勝美君         労働省職業安定         局長      村上 茂利君         消防庁長官   佐久間 彊君  委員外出席者         日本輸出入銀行         副総裁     藤澤徳三郎君         参  考  人         (日本銀行総         裁)      宇佐美 洵君         参  考  人         (全国銀行協会         連合会副会長) 寺尾 威夫君         専  門  員 大沢  実君     ————————————— 二月六日  委員福家俊一君、塚本三郎君、伊藤惣助丸君及  び矢野絢也君辞任につき、その補欠として船田  中君、和田耕作君、山田太郎君及び石田幸四郎  君が議長指名委員に選任された。 同日  委員和田耕作君及び山田太郎辞任につき、そ  の補欠として小沢貞孝君及び矢野絢也君議長  の指名委員に選任された。 同日  委員小沢貞孝辞任につき、その補欠として塚  本三郎君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和四十四年度一般会計予算  昭和四十四年度特別会計予算  昭和四十四年度政府関係機関予算      ————◇—————
  2. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 これより会議を開きます。  昭和四十四年度一般会計予算昭和四十四年度特別会計予算昭和四十四年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題とし、総括質疑を行ないます。麻生良方君。
  3. 麻生良方

    麻生委員 きょうは、総理、この前は国内住宅問題その他でございましたから、私はかなり対話的ムードで行ないました。しかし、最近の日本国内世情その他から見て、きょうは必ずしもそういうムードでいき得るとは限りませんので、あらかじめひとつ総理もえりを正してお答えを願いたいと思うのです。  実は私は、あらかじめ総理その他の関係大臣には、私が何を質問するかということについてはプリントを差し上げてございますし、また、現在も理事を通じまして差し上げてございます。したがって、私は抜き打ち的な質問をするつもりはございませんから、十分ひとつ総理関係大臣も、はっきり御自分の所信をおっしゃっていただきたい。また、私はそのことばじりをとらえて追及するようなことはいたしません。あくまで正は正、否は否としてそのお考えを明らかにしていただきたい。こういう角度で御質問を申し上げますから、どうぞひとつそのおつもりでお答えを願いたいのです。  それからもう一つは、私は、実はきょうはそのプリントにありますように、防衛問題を中心として御質問をする予定でおりました。ところが、けさ新聞を見てぎょうてんをしたのですよ。それで私は、この点については、緊急でございますけれども、どうしても御質問を申し上げておかなければ、はなはだ日本国民に対して相すまぬ。私は、きょうの福島県の磐梯熱海のホテルの火事記事を見て、ぎょうてんをいたしました。  私のところにただいま入りました情報によりますと、この火災によって九時現在ですでに三十人の死亡が確認されておるという情報であります。国外の防衛問題に国会はいま明け暮れしておる。しかし、国内のわれわれの生命財産を守るための防衛は一体どうなっておるんだ、この点について関係大臣から明確な責任ある答弁を冒頭にお願い申し上げたい。——これだけの事件を起こしながら、関係大臣責任がいまだに明らかにならぬのですか。一体何をしておるか。
  4. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 お答え申し上げます。  私も新聞を見まして、麻生さん同様がく然としたわけでございます。直ちにその実態を究明すべく命令をいたしております。私のほうの守備範囲として申し上げますれば、原因の究明及び避難誘導体制に手落ちなかったかどうかということを通じまして御報告を申し上げる責任を感じます。しばらく時間をかしていただきまして、後ほど申し上げることをお許しをいただきます。
  5. 野田武夫

    野田国務大臣 全く驚くべきことでございまして、この間に消防のとった態度、それからその現状に対してどういう処置をしたかということにつきまして、いま資料を全部取り寄せるように申しつけおきましたので、すぐ参りますから、その際また内容について詳しく申し上げます。
  6. 麻生良方

    麻生委員 まだ関係大臣の御答弁が出ておりませんが、私は総理、この前の予算委員会質問の中で、東京の都市問題を取り上げまして、万が一火災その他がある、あるいは津波等があったときにどうなるかということについて、私は総理質問をした記憶があります。しかし、きょうまでこの種の火災によってとうとい人命を失った数は相当数にのぼっておる。私は、総理日本の安全についてアメリカ交渉しているそのお気持ちはよくわかる。しかし、大事なことは、われわれの国民生活をどうやって守るかという点について、いままであまりにも政府はその施策におくれをとり過ぎていた。こういうような観光地における建造物その他がいかに危険であるかということは当然わかり切っておる。しかし問題は、いつもこの種の事故が起こったあとで調査をいたします、これでは、死んだ人が浮かばれぬではありませんか。せっかくのわずかな時間とためた貯金を楽しみにしてレジャーに行ったその結果が、この惨害を受けた。だれがこの生命財産を補償しますか。総理、補償されますか。
  7. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は、けさテレビをニュースの時間にかけたとたんに、この惨事をテレビを通じて見たのです。ほんとに驚いた。しかも深夜というならともかくも、あの時間、まだ宵の口ですね。それもまだ九時にならない、その前に起きた。その火事でこれだけの多数の犠牲者を出した。私はその点にたいへん驚いた。昼間の火事でももちろんですが、あの宵の口の火事でこれだけの犠牲者が出る。一体こういうことはどうなっておるのか。この前、有馬の温泉の火事、多数の犠牲者を出し、そうしてその意味において各観光地観光施設について、あの有馬の不幸な事故を、ああいうものを再現しないように、それをひとつ例にとって十分よく見ろ、よく調査してくれ、こういうことを命じたその直後、こういう事態が起きた。そういう意味におきまして、私、まことに残念に思い、また、麻生君がただいまのように仰せられること、もっともだと思います。  ただいま、やや性質は違いますが、交通事故死傷者の数の多いこと、これまたたいへんでございますから、これなども、戦争による犠牲者もさることながら、たいへんなものだ。交通戦争というような形で示しておりますが、今度はまた消火、何といいますか火事戦争とでもいうか火災戦争とでもいうか、たいへんな事態が起きておる、かように思って心を痛めておりますので、ただいま関係省を通じまして、再現しないように十分の処置をとりたいし、また、不幸にして死亡された方その他に対する慰問あるいは補償等については万全を期するようにしたい、かように思います。
  8. 麻生良方

    麻生委員 まだ、いま総理の御答弁関係者の御答弁によりますと、完全な資料の整いがないようでございますから、委員長、この問題については、もう一度明細な資料の提出を願いまして、その上に立ってあらためてもう一度この問題をただしたいと思いますから、委員長におきまして御了承のほどをお願い申し上げたいと思います。よろしゅうございますか。
  9. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 ちょっとお待ちください。麻生君に申し上げます。建設大臣より発言を求められておりますから、これを許します。
  10. 坪川信三

    坪川国務大臣 ただいま麻生議員御指摘のとおり、まことに重大な問題であり、人命尊重立場からも、建設省といたしましては、昨年の不幸にもかんがみまして、建築基準法政令を改正いたしまして、それらの措置に万全を期する政令を五月一日から施行することに相なっておることを御了承願いたいと思います。
  11. 麻生良方

    麻生委員 しかし、いまの答弁では、資料その他まだ不十分であります。先ほどの発言をお認めいただいた上で、次の質問に移りたいと思います。
  12. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 麻生君の資料の問題は、本日の理事会において、これを検討することにいたします。御了承願います。
  13. 麻生良方

    麻生委員 それでは、私のきょうの本題であります日米関係、主として安保体制の再検討、一般に一九七〇年の危機といわれておるが、その実体は一体何かという問題について、それぞれ関係大臣所見をただしながら、その回避の具体策について政府所信予算委員会でただしていきたい、こういうふうに考えております。  いずれにしても日本防衛問題でありますからして、当然政府関係大臣は、アメリカ側政策についてそれぞれ適切な批判なり御判断なりをされておられると思います。私は、特にニクソン大統領が実現をしてから、いろいろ世上にニクソン政治姿勢、あるいはニクソンアジアに対する基本的な思想について喧伝されておることを知っておりますが、一体外務大臣、初めに大臣にお伺いをいたしますが、あなたはニクソンの対日、対アジア政策基本的思想をどういうふうにとらえておるか、きわめて簡単に御答弁を願いたいと思います。
  14. 愛知揆一

    愛知国務大臣 二つに分けてお答えいたしたいと思いますが、ニクソン氏が大統領に就任いたします前にいろいろ発表された意見というものがございます。しかし、これは野にあったときのニクソン氏の意見である、こういうふうに理解してよろしいのではないかと思います。  大統領になられてからのニクソン大統領所見というものは、対外政策等について具体的にまだ発表されたものはございませんけれども、従来からの日本との関係におきましては、ますます親善友好関係を高めていきたいということが基本になっておると思います。
  15. 麻生良方

    麻生委員 親善友好を高めていくのが基本だというのは、それは思想にならぬのですよ。そんなことはどこの国であろうと当然の基本的姿勢である。問題は、ニクソンがその政策においてどういう基本思想日本に対して持っているかという問題の把握を外務大臣及び関係閣僚はしておかなければ、日本アメリカに対する姿勢がきまらないではありませんか。私はいま外務大臣が言われた、ニクソン自身大統領になる前のいろいろな所見については、ここでは差し控えましょう。それは、ニクソンがまだ政権の座についていないときの、ニクソンの個人の見解であります。しかし、それでもきわめて明瞭なことは、ニクソンは明らかに二つの点を指摘しております。その一つは、アジアにおける防衛責任の一端を日本はになうべしという主張であります、軍事的に。もう一つ主張は、日本みずからが軍備を持って、そして日本防衛に当たるべしという、この二つ思想が、実に十年間におけるニクソンの変わらざる思想である。この思想が、今度のニクソン政権が成立したときに具体的にどういふ政策となって日本にもたらされてきておるか、その点の解明なしには、沖繩問題を論ずることもできないし、ましてや日本防衛体制を論ずることはできない。  そこで、私は一つだけお伺いをいたします。総理、あなたは、ニクソン大統領が就任されるその前後のときに、あなた御自身総裁選に立候補される前後に、外人記者団会見をされた事実がありますか。
  16. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 個人的な記者と会ったことはあるかわかりませんが、いわゆる会見というような式のものはなかったように思います。ちょっと記憶しておりませんが、どうも会見というような記憶はない。多数記者を相手にしてですね、そういうことはない……(麻生委員外務省からとってありますよ、総理」と呼ぶ)どうもそんな気がします。
  17. 麻生良方

    麻生委員 私は、個人的か公かということを言っているわけではございません。外人記者クラブ会見をされたことがあるかということです。
  18. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 記者クラブはございません。
  19. 麻生良方

    麻生委員 その外人記者との会見内容が、昨年の十一月九日であります、ワシントン・ポスト紙において明快に報道されておる。私は実はそのときにアメリカにいたのであります、現実に。そして事実それを見て、私は容易ならぬことになると判断をした。その記事を読み上げます。「本日、佐藤首相自民党総裁、すなわち首相としての地位を求めて、来たる十一月二十七日の選挙に三選の候補を明らかにしたとき、彼はさっそくジャーナリズムから、ニクソン氏が主張している「アジアにおける日本指導的役割り」について質問を浴せかけられた。「われわれは、この考え方には応じることはできない」と佐藤首相はちゅうちょすることなく答えている。「われわれの軍事力は、そのような役割りを果たし得るほど十分ではないし、いずれにしても憲法第九条がこれを阻止している。」」というあなた自身の御見解ワシントン・ポストに大きく報道されておりました。との御見解はいまでも変わりがございませんか。
  20. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 その話ならば、いわゆるASPACの会を軍事的にしたらどうかというニクソン主張がある、それについてどういうように考えるんだ。そういう考え方はない。これはASPACを形成している各国の申し合わせばそういうところだ。また、日本憲法は外へ出ていくようなことはわれわれやらないんだから、そういうわけにもいきません。かように私は言いました。だから、その記事そのとおりではございませんが、大体その方向で言った。いまもそれに変わりのないことは御承知のとおりであります。
  21. 麻生良方

    麻生委員 そのASPACの問題についても、ニクソン見解を明確に表明しておりますね。日本が将来アジア防衛集団体制の中の一員としてになう以上は、ASPACに軍事的な性格を持たせるべきであるというのがニクソン主張であります。必要とあれば、その主張はいつでも私はここで読みます。  それともう一つ、いまの総理の御答弁の中で、要するにニクソン日本に求めようとしておるものに対してあなたは反論をされておるではありませんか、現実に。それでもなおかつ外務大臣は、何の変わりもない、ただ友好親善の上に立つだけである。はなはだ相矛盾しておるではありませんか。外務大臣、いかがですか。
  22. 愛知揆一

    愛知国務大臣 私は、一つも矛盾しておらないと思っております。というのは、先ほど私お答えいたしましたように、ニクソン氏のASPACについての意見というのは、野にあった当時の意見でございまして、大統領になってからそういう意見を特に申しておるとは私は承知しておりません。  それからその次には、今度は別の観点から考えました場合に、アメリカがどういう考え方を持っておろうが、日本日本の主体的の立場、いかなる主体的な立場かといえば、私はかねがね申しておりますように、やはり平和国家として真にその名に値するような平和国家でありたい、そういうところから割り出した日本外交政策でなければならない。こういうふうに考えておりますから、ASPACにつきましてもしばしば申しておりますように、ASPACの従来からの憲章的な性格、すなわち平和的な話し合いの場、協力の場としてこれをできるだけ盛り上げるようにしてまいりたい、これが私の考えでございます。
  23. 麻生良方

    麻生委員 私は、外交でありますから、基本的にはアメリカ友好親善のうちに話を進めなければならぬ、この点については総理も外相も私も同じであります。しかし、おのずから国が違う。国が違えばそこに利害が相反する問題がある。少なくとも外交をなす以上は、相手方の政策を見きわめ、それに対するわが国基本政策姿勢をはっきり確立をした上で交渉に臨まなければ——もし何も主張がない、フリーハンドである、白紙であるという状態で臨む。しかし、アメリカニクソンは明確に意思表示しておる。たとえば朝日新聞社が質問をした回答の中で——これは十月二十二日ですね。ニクソンは明確な回答を与えておりますよ、沖繩問題についても。「日本アジアにおいて、相互依存地域的協力方向でリーダーシップを続けるのに見合って、沖繩返還が可能である、というのが私の見解である。」もう一つ、「これら諸島にある米国の基地が、日本およびアジア自由諸国安全確保に、重要な役割を果していることは認めなければならない。」全く総理の日ごろおっしゃることと同一ですね。それから第三は、「アジアにおける健全なバランスを維持するため、外交的、経済的、政治的、そして軍事面でも、より大きな役割を演じることはたしかだと思う。」これがニクソンの明快な回答ですよ。したがって、いまアメリカニクソン政権は、沖繩問題返還交渉をめぐっても明確にこの路線を明らかにして日本に臨んできておるではありませんか。ところが総理フリーハンドである、白紙である。これで対米折衝が成立しますか。
  24. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 最初からきょうは声が大きくなるかもわからぬということを断わられましたが、少し声が大きくなっておるのですが、私は、わが国基本的な態度、これは抽象的に国民にもはっきり申し上げております。いま言われる基地の態様がどうあるかというその末の問題はまだ私は申しておりません。しかし、私どもが自由憲法のもとで自衛力を持ち、そして国を守る気概は十分国民も持って立ち上がってもらいたいし、そして足らざるところを日米安全保障条約で補っていくのだ、そういう基本政策、そうしてしかも、これは日本だけの存立と安全だけじゃないのだ。それに最も関係の深い極東諸国安全確保、そういうこともわれわれ考えなければならぬ、そういうことを申し上げておるので、いま言われるように、いわゆる外交フリーハンドはもちろん私は必要でございますが、しかし、基本的な態度は明確じゃないかと思っております。なお明確を欠いておるところがありますか。
  25. 麻生良方

    麻生委員 外務大臣、あなたポラリスについて、一昨日でしたか、楢崎委員質問に答えて、緊急避難あり得るという御答弁をされましたね。緊急事態における避難というのはどういう意味ですか。
  26. 愛知揆一

    愛知国務大臣 ポラリス緊急避難ということについて一昨日楢崎委員からお尋ねがございました。突然のお尋ねでもございましたし、私の答弁にも足らざるところがあったかと思いますけれども、緊急避難——私はおそらくポラリス緊急避難ということは実際問題としてはあり得ないと思うのですけれども、しかし、仮定的な観念的な問題として、人道的な立場というようなことからそんなことが観念的に考えられるならば、これはいわゆる緊急避難だ、しかし、その場合でも核を持っているようなものは事前協議に当然かけなければならない、こういう趣旨で御答弁申し上げたのであって、そのときにも念のためにつけ加えて申しておきましたが、非核三原則という現内閣の基本政策というもの、これはもう絶対に守るのであります。こういうことで私の真意を御理解願いたいと思います。
  27. 麻生良方

    麻生委員 そうしますと、外務大臣はこの間の檜楢質問に対する御答弁は不用意に答弁をされたということをお認めになるんですね。つまり、緊急避難ということはいろいろな解釈ができます。たとえば軍事戦略上における緊急避難は幾らでもあり得ることであります。それからいま外務大臣が言われたように、不慮のできごと、つまりそのことが、軍事戦略に関係なくて避難をする場合もあるいはあるかもしれないということをひっくるめて、不用意に御答弁されたことをお認めになりますか。
  28. 愛知揆一

    愛知国務大臣 不用意とおっしゃられれば、不用意であると申し上げたほうが率直だと思います。きわめて限定された緊急避難、こういうことを頭に置きまして御答弁したのでありますし、これは従来、たとえば外務委員会等でも論争があった点もございますけれども、そういう点と全く変わってはおりません。
  29. 麻生良方

    麻生委員 総理、私は、先ほど来私が資料をもとにして申し上げておるニクソン思想的な背景を、アメリカ政策の上に立って具体的に言いかえてみると、アメリカ側としては明確に沖繩返還には条件をつけておるのですよ。その条件とは、核基地を認めるということが一つと、もう一つ、私がアメリカにおいて入手した情報筋によれば、アメリカ側政府としては、ポラリスの寄港を日本政府に認めさせるという基本方針を明確に持っております。アメリカ政府はその背景があるから、ただいまの愛知外務大臣の御答弁が、きわめてわれわれとしては危惧を持って受けとめざるを得ない背景が現実にあるのです。アメリカ自身ポラリスの寄港を日本に強要する意図がなければ、私はここであっさり外務大臣が、少し口がすべったでこれを見過ごすことはできます。しかし、現実はそうではない。明確にニクソン思想的な裏づけをもってそれを現に書き、言明し、わが日本の有力新聞質問回答にもそれを寄せておることは、国民に対して、そのアメリカ立場を明確に強要しておるとわれわれは受けとめておる。その背景の上で、かりにも軍事戦略上でない場合のポラリスの寄港を認めるといういまの大臣の御答弁を是認するとしたら、それが軍事戦略上であるかそうでないかという判断は、いずれがなすのですか。
  30. 愛知揆一

    愛知国務大臣 私は、先ほど申し上げましたように、ポラリスが、私の言うもう非常に狭い範囲の緊急避難ということは、実際問題としてもあり得ないと思うのです。ですから、そういう点をまず前提として、観念的に、そういう人道的な問題というものがもしあり得るならば、しかしその場合であっても、核である以上は事前協議にかけなければならない、こういうことを申し上げたわけであります。
  31. 麻生良方

    麻生委員 外務大臣ポラリス性格はよく御存じでしょう。ポラリスというのは、そういうことがあり得ないのですよ。かりにあったにしても、それは米軍の中で処理できる問題なんです。かりに乗り組み員の中に急病患者が出た場合でも、あるいは食糧その他でどうにもならなくなった場合でも、それは、わざわざ日本に寄港しなくてもでき得るからポラリスの威力があるのですね。そのたびにポラリスがどこかに浮いてくるようなポラリスであるなら、ボラリスの性能は、もはや今日世界で云々される必要がないのですよ。そういう状態は大臣もあり得ないとお考えになるなら、なぜ一切を含めてポラリスの寄港は認められないとおっしゃれないのですか。そこが問題なんだ。私は基本方針として、いかなる理由があろうともポラリスの寄港は認められないという御答弁大臣からちょうだいしたいのです。
  32. 愛知揆一

    愛知国務大臣 私は、ですから実際問題としてはそういうことはあり得ない、こういうふうに考えます……
  33. 麻生良方

    麻生委員 そこまででいいですよ。あとはおっしゃるな。外務大臣ポラリスの寄港問題について、私はそれを善意に解釈をいたします。  しかし、私が先ほど来指摘しておりますように、ニクソンは明確に、総理を中心とする日本政府に対していまの諸点を要求しながら、その交換条件として沖繩返還考えているということだけは、明らかに総理は肝に銘じて考えていただきたい。  ところが、昨今来の総理沖繩問題に対する国会の答弁の中で明らかにされてきた過程を考えてみましょう。まず、核を持ち込まずというのは、この前の国会においては、これは絶対的な三原則であると総理は重ねて主張された。ところが、昨今の答弁では、その最後は、持ち込むか持ち込まないかは政策上の問題である、こう言われる。政策上の問題なら、いつでも転換はあり得ます。そうですね。ここに大きな総理としてのこの一年間の転化がある。それから、もう一つメースの問題がある。これはどうですか。いままで総理は否定されていた。しかし、それもあり得る、憲法上疑義はないとあなたは答弁されておる。それから、この次に出てきたのは、愛知外務大臣ポラリスの寄港も緊急の場合は認める。  こういう一連の総理の最近の答弁の変化を見れば、まさにニクソン政策を全くうのみにしつつある状態であると判断されてもやむを得ないではありませんか。ここが問題なんですよ。それに対して総理は、否なら否、それはできないならできないということを、あなたが記者会見で答えられたように、なぜ国会で御答弁され、アメリカ政府に対しても明確にその意思表示をされ得ないのですか。
  34. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私が記者会見のとき外人記者に話したその考え方、これは非常に明確に向こうから具体的な話が出てきた。いま日米交渉沖繩問題交渉するというその段階でございます。また、相手方が確かにこう言うのだ、こういういま御注意を受けて、これは大いに私も参考にしますが、まだそこまでは踏み切っておらないように私は思うんですよ。そこがこれからの問題じゃないか。でありますから、私、あえてとやかく言うわけではありませんが、非常にむずかしい交渉なんだ、そうして、私がいつも言っているように、最終的には国民の支持なくして外交はできるものではない、一人でかってなことをするつもりはありません、こういうことを申しております。  でありますから、私が出かけて最終的な交渉をするその段階までに、それまでにひとつそういう点については十分見きわめて結論を出そうという、私はそういう慎重な態度をとっておるのです。どうも白紙が気に食わぬ、早くきめろ、早くきめろと言われますけれども、早いばかりが実は能でもありません。目的を達成するのが私の役目だ、かように思いますから、いましばらく時間をかしていただきたい、かように私は思っているのです。  もう一つは、私は、ニクソンがどういう話をするかわかりませんけれども、むしろペンタゴンというか、軍部の考え方が非常にはっきりしないと、科学技術の進歩というものをどういうように考えるか、そこらに一つの問題があるのではないか。メースBはただ単なる防御的な武器なのか、これはいわれるような攻撃的なものだ。しかし、攻撃的なものではあるが、もうすでにその攻撃的な能力というか、もうだんだん老朽化しているとか、どうも時代に合わないのだというような話もありますから、そういうような点がもう少し明確にならないと、これはどうもはっきりしないのではないかと思います。  ポラリスについては、お説のとおりだと思います。しかし、これが幾ら政策的な問題だと申しましても、私ども国民の批判、これはいま三原則を厳守するという立場であります。これを持ち込まさないという——持ち込むのじゃない、持ち込まさないという、これは国民一つの願望であり、また、政府はその考え方を無視するつもりはいまございません。先ほど来いろいろお話がありまして、緊急の場合、これはおそらくないでしょうが、そういう場合の事前協議というものがあり得るかどうか、そこらの問題は別として、とにかく私どもはその三原則に忠実である、これだけは言えるのです。これらの点をも含めて、国民の皆さん方が、政府が立っておる現時点、どういう立場にあるのか、やはり祖国復帰は実現したい、一方ではそれと交換にいろいろなものを日本がしょってくるのではないかという、そういう心配は国民にもあろうと思います。したがって、私が白紙であると言うところに、不安が全然ないと私は国民の皆さんには申し上げかねますが、しかし、私自身はただいま言うような、国民のために最も賢明な方法を選ぼう、こういうことでいま苦慮している最中だ、したがって白紙である、こういうことを実は申しておるので、誤解のないようにお願いします。
  35. 麻生良方

    麻生委員 総理が、この重大な問題について苦慮しておられるというのは私もよく理解できる。しかし、それであるがゆえに一そうその立場を明らかにしていただきたいとわれわれ国民は、特に質問者はみな総理に迫っておるわけですね。その点はひとつ御理解を願った上でお答えを願いたいと思うのですよ。  そこでもう一つニクソンがそういう考え方を持っていることは明らかです。しかし、アメリカは世論の国ですね。ニクソンがどういう思想を持っていようと、現にアメリカの国会においては、共和党ならざる民主党が多数派を構成しておるわけですね。また、ニクソン自身のブレーンの中にも、必ずしもニクソン基本的な思想に賛成する者ばかりがあるとは限らない。だから私は、その辺を総理が見きわめることがきわめて重大だと思うのですよ。  まず、アメリカの世論の背景から考えてみましょう。ニクソン基本姿勢はいま言ったような基本姿勢ですけれども、しかし、アメリカの世論の中にはそうでない世論がありますね。その点について、総理はどういうふうに把握をしておられますか。
  36. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 まあ日本における場合でも、いろいろ政党もあるし、また、政党に所属しない専門の批評家、評論家がいる、こういう立場でいろいろの考え方がございます。また、日本に出かけてまで、最近行なわれた京都会議などで発表された米国の有力な人たち、これもそれぞれが発言をしておる。私は、こういうものもやはり十分、それらの人たちが大学の教授であったりあるいは旧外交官であったりする、その立場から高く評価していいと思っております。しかし、いまのアメリカ政府自身がどこまでそういうものをつかんでいるか、十分つかんだ上の結論だろうと思いますけれども、まあ内政に関する問題だから、なるべくそれらの点については、私、触れないほうがいいんじゃないだろうか、かように思っております。  まだ私どもは、われわれと考えを同じくする者、いわゆる恒久平和を願っておるそういう人たちとの提携はやはり可能ではあろう、わがほうの主張を十分理解していただく、そういう意味で、官民が力を合わせてアメリカに呼びかけること、これは必要だろう、かように私は思っております。
  37. 麻生良方

    麻生委員 総理アメリカ国内の問題に、とやかくこの際おっしゃるのは差し控えたいというお気持ちはわかる。しかし、アメリカの世論の中で、相当の有力者が、ニクソンとは異なった見解の上に立って沖繩の返還問題に取り組もうという主張を明らかにしておることは、お認めになりますね。
  38. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いままだ大統領考え方が明確になっておりません。大統領に就任前、「フォーリン・アフェアーズ」などにも非常にはっきりした所論を書いておられるし、また新聞も報道しているから、それでもう間違いないんだという考え方も、これは当然でございます。私が非常に記憶に残っておりますのは、副大統領時分に初めて日本を訪問して、あの憲法日本につくったのは間違っていた、こういうことを言われたことがありますが、それなどは非常に頭にはっきり残っております。しかし、大統領になられた後の発言はなかなか慎重ですから、まだはっきりつかめないというのがいまの状況でありますので、いきなりどうも、違うでしょうとか、いや同じだとか、こういうことを言いかねるのです。
  39. 麻生良方

    麻生委員 まあアメリカ国内の問題でありますから、あまり突き詰めてお話をすることはいかがかと思うが、明快にアメリカの上院外交委員長その他有力者が、ニクソン基本思想とは異なった立場で、沖繩の内地並み返還を主張していることは事実である。  もう一つ私は総理にお伺いする。日本国内の世論の動向はどうですか。特に自民党内部における世論の動向はどうですか、総理
  40. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いまの状態は、本土並みというのが多数ではないかと思っております。しかし、その本土並みという中身については、それぞれがそれぞれ違っておるようであります。しかし表現は、一応本土並みというのが多数の意見のようで、ただ、時期的にそこにまた余裕があって、将来そういうものが保証されるか、あるいは返還の際そうだとか、またその分け方も、事前協議などをめぐり、いろいろあるようでございます。
  41. 麻生良方

    麻生委員 総理、きわめて率直な御見解でけっこうです。私は名前をあげて、自民党内部における内地並み返還を主張される方々が現に多数あることを総理は知っておられるかと質問をして、総理はそれをお認めになりました。そして内地並み返還の要求が与党の内部においても多数であるということになれば、これは野党も含めて——即時返還を主張する者もあります。私も本来なら即時返還、無条件返還を主張したいですよ、日本人としては。しかし、いま諸般の事情にかんがみて、アメリカとの摩擦なく、しかも日本国民が最も危惧する向きを回避をして返還せしめる道は、内地並み返還であると私も考え、わが党もつとにこれを主張してきた。とすれば、わが党の内地並み返還という主張が、もはや今日において、自民党の多数も含めて国民的世論であるということは、総理、お認めになりますか。
  42. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 問題は、いま申しますように、一言にして内地並み、本土並み返還といいながら、時期的な問題でいろいろ分かれておる。そのとおりでございます。
  43. 麻生良方

    麻生委員 とすれば、総理、私が危惧するのは、総理がそれだけ的確に日本国内世論も把握をされ、しかも、折衝すべきアメリカ国内にも、ことばのニュアンスの相違はあれ内地並みの返還、核抜き返還が好ましいと主張されておる、この世論をあなたは百万の味方があるとお思いになれないですか。これだけの味方がありながら、なおかつあなたがき然としてその立場に立ってアメリカに臨めない。これはなぜですか。
  44. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 こういう問題は、沖繩がアメリカの施政権下にあるというその事情はどういうことでできたのか、これは歴史的な経緯もございます。またその果たしておる役割り、これは日本だけじゃございませんが、それらもやはり考えなければならない。日本総理として考えれば、日本立場だけで考えていい、それでけっこうじゃないかという、そういう単純な議論もございますけれども、何しろ外交は相手のあることでありますし、そういう意味では十分この動向を見きわめなければならない。さらに、いま申しましたように、単純なことばではありますが、しかし、その中身になってくると非常な相違がありますから、そこらについての十分の見きわめをしないと、私が結論を申し上げるわけにはいかない、こういうことであります。
  45. 麻生良方

    麻生委員 これ以上この問題について、時間がございませんから中断をいたしますが、しかし、私のいま総理答弁から解釈をした結論は、少なくとも総理の御意思として、本土並みという立場に立って、日本国民の世論を背景とし、その上に立って交渉する基本姿勢はお持ちになっておられる、こう判断してよろしいですか、この点だけについて再度御答弁を……。
  46. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 これもたびたび申したのですが、私の基本的な態度、沖繩が返還されれば日本憲法は直ちにそのまま適用される、また特別な約束がなければ、いまある安全保障条約はそのまま沖繩にも適用される、そういう基本態度に立ってものごとを考えておる、これはただいま御指摘になったとおりであります。
  47. 麻生良方

    麻生委員 そうするとまだ、たとえばポラリスの問題あるいは核兵器の問題等、煮詰めていかなければならない問題もあると思いますけれども、それらの点は、後日また同僚議員によって質問されると思いますから、その点はそれで省略をいたしまして、次に、いま国内で適用を受けておる安保条約の問題に移りたいと思うのです。  外務大臣お尋ねをいたしますが、占領政策時代からいわゆる旧安保条約を経て現行安保条約に至っているわけですね、推移としては。一番私が知りたいのは、第一次安保条約つまり旧安保条約における基本性格と、現行安保条約の基本性格との間に、根本的にどういう相違点があるかということについて外務大臣見解お尋ねしたい。
  48. 愛知揆一

    愛知国務大臣 お尋ねの点を具体的にまず申し上げてみたいと思いますが、旧安保条約と現行安保条約の相違しております点は、一つは、日米間の安全保障体制と、世界の平和維持機構たる国連との関係が明らかになっている点ではないかと思います。それから、アメリカ日本を守る防衛の義務ということが条約上明らかになっておることであります。それから、条約の実施全般について日米間で協議を十分行なっていくことになりました。特に、事前協議事項というものが、重大な点においていわば歯どめになっておるということが明らかになっておる点。それからその次には、日米関係におきまして単に防衛的な面だけではなくて、広く政治的、経済的な面においても一そう協力を推進すべきことが約束されておる点であると思います。その次に、条約の期間について御承知のように明確な規定が設けられたこと。こういうような点が具体的に——旧安保条約に比べまして新安保条約は、一口に申せば対等な双務、平等な関係になったということが大きな特色ではないだろうか、こういうふうに考えております。
  49. 麻生良方

    麻生委員 外務大臣、あなた一つだけ最も重要な基本性格の相違を落としておられます。旧安保条約の第一条において、この安保条約が何のために結ばれ、またどういう目的を果たすかということが明らかにされておりますね。私がちょっと読み上げてみましょう。第一条の末尾にこういうことが書いてある。  「以上の外部の国による教唆又は干渉によって引き起された日本国における大規模の内乱及び騒じようを鎮圧するため日本政府の明示の要請に応じて与えられる援助を含めて、外部からの武力攻撃に対する日本国の安全に寄与するために使用することができる。」こうなっている。  このことは具体的に平易にいえば二つの目的があった。その一つは、日本国内に内乱があるかもしれない。アメリカ軍が占領しておったのであるから、アメリカ軍に反旗をひるがえす勢力が温存されておるかもしれない。したがって、そういう内乱状態をアメリカ軍によって鎮圧することをも含め、さらに外部からの防衛の意義を含めて第一次の安保条約が締結されておるのですね。  ところが、現行安保条約になれば、全くその目的は変わってくるのですよ。どこが変わってくるかといえば、第一条においては「締約国は、国際連合憲章に定めるところに従い、それぞれが関係することのある国際紛争を平和的手段によって国際の平和及び安全並びに正義を危うくしないように解決し、並びにそれぞれの国際関係において、武力による威嚇又は武力の行使を、いかなる国の領土保全又は政治的独立に対するものも、また、国際連合の目的と両立しない他のいかなる方法によるものも慎むことを約束する。」となっておる。これは重大な性格の相違なんですね。いいですか。この性格の相違点を外務大臣は明確にお認めになりますか。
  50. 愛知揆一

    愛知国務大臣 わが国の独立、安全を保障したいということにおきましては、私はそのねらっておりますところは性格の変更はないと思うのです。  それからいま御指摘の点は、確かにそうでございます。いわば内乱条項とでも申しましょうか、これがなくなりました。このことは、先ほどもちょっと私申しましたけれども、日本の地位の向上に伴いまして双務、対等、平等という関係が、新安保条約におきましては明確になっている。そういう点と関連して解釈すべきものではないかと思います。
  51. 麻生良方

    麻生委員 そうすると、このような安保条約の性格の変化、これに伴って当然実質が変化しなければならぬと私は思うのですね。少なくとも安保条約の性格が、いま外務大臣が言われたように変化をした以上は、その実質もそれに伴って変化をすべきが当然です。  そこで私はお伺いをしたいのだが、当初の安保条約においては、占領政策の継続としてこれが締結された。これは当時の情勢としてはやむを得ないことであったろうと私は判断します。したがって、国内の内乱を鎮圧するためには、少なくとも国内にかなり多数のアメリカの軍事基地が必要とされたのであろうことは当然推測できます。しかし、現行安保条約において、明確に国内の内乱の鎮圧条項が省かれておる。あくまで外国の侵略に対して防衛するのを目的とした条約に性格が移行した以上、そこに基地問題について相当の変化が現状にあってしかるべきだと思う。この基地問題との関連はどうなりますか。
  52. 愛知揆一

    愛知国務大臣 この点は、なかなかむずかしい御質問なんでありますけれども、私は、基本的には性格は変更がない、こう考えるのです。しかし、その間、国力も非常に充実してまいりましたし、そういう点も加味して、新安保条約というものは、私は非常によく改善されて、りっぱなものになったと思います。  それから一方、いろいろの条件、あるいはその条件という中にはいろいろのものもございましょうが、この安保条約におきまして、日本が、アメリカ日本を守る義務に対応して、施設、区域の提供をしているわけでございますが、その運用等につきましても快く、日米間の協力がより一そうでき得るようにという観点からいいまして、その後いろいろの経過がございますが、基地はどんどん縮小してきておる。在日米軍の兵員も、御承知のとおりに非常に減ってきておる。これがその後の状況であって、これによって新安保条約というものは、私どもからいえば非常に運用が、その所期の目的に達するように遂行されつつある、かように考えるわけでございます。
  53. 麻生良方

    麻生委員 外務大臣が言われるように、当然その性格、目的が変われば実質も変化しなければならぬ。したがって、基地の関連においては米軍も相当数基地の縮小をしてきたとおっしゃっておりますが、現在日本国内にある基地は何カ所ですか。
  54. 愛知揆一

    愛知国務大臣 正確には政府委員からお答えさせますが、百四十数件ということになっておりますし、さらに、昨年十二月中旬の日米安保協議委員会におきまして、米側からさらに約五十カ所の返還、共同使用等の提案がございましたことは御承知のとおりでございまして、この処理が全部済めば、面積からいえば現有の約半分減ることになることが期待されている、こういう状況でございます。
  55. 麻生良方

    麻生委員 米軍が提議した五十カ所にのぼるといわれる基地の返還、使用目的の変更、あるいは共同使用等の中には、当初第一次安保条約が締結されるときに、基地貸与の問題について、日本政府と米軍との間に合意が得られなかった場合には、自動的に米軍の要求するものが認められるということになった結果貸与されたものも含まれておるのです、その中にはね。全部とは申し上げませんよ。そういう状態の中で、第一次安保条約のときに、不本意ながらわが国としては五十カ所に近い米軍の要求を認めざるを得なかった。その後十年間の年月が経過しておる。その十年間の年月があったにもかかわらず、現在外務大臣は、先ほど性格上指摘した安保条約の、外敵の侵入を防御するために結ばれておると解釈したときに、国内の百四十数カ所の基地が、そのために必要欠くべからざるものであるとあなた御判断されますか。
  56. 愛知揆一

    愛知国務大臣 よく基地ということばが使われますが、要するに施設、区域の提供なんです、条約的に申しますれば。この運用等につきましては、日米間に委員会もございますし、下部機構もございますし、日本側の希望というものは的確に反映し、かつその線に沿うてアメリカ側が処理してくれるように、この体制は私は最近は非常によくなってきていると思います。旧安保条約当時のいろいろの経緯については私は詳細承知してない分もございますが、現状は私は相当改善されていると思いますし、また今後は一そうの努力をしてまいりたいと思っております。
  57. 麻生良方

    麻生委員 私は、ここでは事実を突きとめておきたいだけのことなんです。要するに、大臣は、第一次安保条約と現行条約との間には、性格上の相違があるということは一応お認めになった。その重大な点は、先ほど大臣答弁されたことに加えて、旧安保においては、国内の内乱状態を食いとめるための目的があったが、新しい条約のもとでは、それが削除されておる。したがって、当然それに伴って基地も米軍は縮小しつつある、こういう御答弁であります。これは私はある程度是認いたします。しかし私に言わしめれば、その度合いがきわめて緩慢である。またスムーズに運んでおるという御答弁であるが、後刻御質問を申し上げますから、その中でスムーズにいっているかどうかを私は明らかにしてもらいたい、こういうふうに思います。   〔委員長退席、中野(四)委員長代理着席〕 したがって、その点は解明だけにとどめておきます。  次に私は、現行安保条約の功罪の問題について、一応政府のお考えをただしておきたい。私は、率直に申し上げまして、安保条約、いろいろあります。ないにこしたことはない。しかし、それがそこにあれば、その功罪はおのずからありましたでしょう。  そこで、総理にお伺いしたいんだが、一体安保条約は、過去においてどういう具体的な効果を日本に持ったか、簡単にお答え願いたい。
  58. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 功罪ともにですか。
  59. 麻生良方

    麻生委員 効果を持ったかということです。
  60. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 まあ、抽象的だと言われるかわかりませんが、わが国の存立並びに安全にたいへんに寄与した。したがって、私どもはそういう点では別に心配ないこと、経済に全力を打ち込むことができた、すばらしい発展ができた、かように私は思っております。
  61. 麻生良方

    麻生委員 それは総理の御見解として承ります。  次に、この安保条約が、アジアの安全に、具体的にどういう寄与をしたと総理はお考えになりますか。
  62. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 やはり問題を未然に防いでいるというか、戦争抑止力としての効果はあったろうと、かように思っております。
  63. 麻生良方

    麻生委員 このいま総理が言われた功のほうですね、それは総理の御見解として一応承ります。  そこで総理、この安保条約は、わが国にとって全くマイナス面はなかったかあったか、その点明らかにしていただきたい。
  64. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 先ほどお尋ねのありました基地を提供している、施設、区域等、その付近の住民にたいへん不便や、また困った事態まで起こしておる、かように思っております。
  65. 麻生良方

    麻生委員 そうすると、基地問題についてマイナスがあったという御答弁と解してよろしゅうございますか。
  66. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 端的に申して、そういうことです。
  67. 麻生良方

    麻生委員 次に、この安保条約がアジアのいわゆる戦争抑止力に効果があったという判定、これはあなたのお考え総理のお考え。しかし、これはなかなか確証を得ることはむずかしい所見です。しかし逆に、それではこのことによってアジアにマイナス面、アジアの平和と安全にマイナス面が全くなかったかどうか、この点をお伺いしたい。
  68. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 どうも国内の場合は、はっきりマイナスの面が指摘できますが、私はアジア全体についてはマイナス面が指摘できません。
  69. 麻生良方

    麻生委員 アジア全体についてマイナス面があったかなかったか、これはいろいろ議論の分かれるところですが、私の見解を申し述べましょう。  総理が中国の総理大臣であるというお立場に立ったと仮定してください。いいですか。この安保条約は日本の安全を保障するのみならず、沖繩あるいは日本内地においても基地を持っておりますね。もし中国の総理という立場に立ったときに、この日本にあるアメリカの軍事基地を、あなたはどう受けとめられるか。中国の総理大臣という立場に立った場合、これを何ともなく見過ごしていかれますか。外交というのは、常に相手の立場に立ってもものを考えなければなりませんよ。中国がこれをどう受けとめるでしょう。
  70. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いまのお話は、中華民国ですか。
  71. 麻生良方

    麻生委員 中国です、中共です。とぼけちゃいけませんよ。常識で判断してください。
  72. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 大陸中国、これはどう見ているか。これは私は大陸中国の総理じゃございませんが、また、日本アメリカが持つ基地、ここを発進して、そうしていろいろ問題が起こるような事態、その場合は事前協議があり、むしろそれは日本憲法からいい、また日本政府政策からいい、どちらかというと抑止的な方向でいつも判断している。かように考えると、大陸中国には日本の本土の基地は問題ない、かように私は考えていいんじゃないだろうか、かように思います。しかしこれは、北京政府がどういうように考えるか、これはまた別でございます。
  73. 麻生良方

    麻生委員 日本の本土の基地は問題ではないだろうと言われます。しかし、沖繩の基地はどうですか、沖繩の基地は中国にとって。北京政府ですよ。
  74. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 北京政府立場考えろと言われるが、私はどうもそうはできないといいますか、これがあることは、極東の平和には寄与している、私はかように考えております。そういう意味では、平和を愛好する立場ならば、どこも問題にしないだろう、かように思います。
  75. 麻生良方

    麻生委員 日本自身が持っていて日本政府の意思で動くものであれば、中国政府、つまり北京政府立場に立てば、日本と話し合いをすれば解決します。しかし、問題はそうではない。日本にある軍事基地は、アメリカの軍事基地である。アメリカは中国に対して敵視をし、封じ込め政策現実にとっておる国である。その国の軍事基地日本に置かれておるということは、中国にとっては相当の恐怖と受け取るのは当然ではありませんか。常識でありましょう。
  76. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 問題は、その脅威を感ずるか感じないかという、自分のほうの立場にもあるんじゃないだろうか。私はアメリカ自身は平和勢力、戦争侵略主義的な考え方を持ってない、かように考えますから、そういう平和主義が、どこに基地があろうと、そういうことを意に介さなくていいんじゃないですか。これはやはり何かそれにぶつかる、どこでぶつかるのか。やっぱり平和主義、共存の立場ならば、そういうことは問題にならないのじゃないか。これが攻めてくると考える、あるいはこちらから攻めていくのにじゃまになるとか、かように考えたときに、それが問題になるだけじゃないだろうか、かように私は思います。
  77. 麻生良方

    麻生委員 現にそのアメリカは北爆をしたではありませんか。いいですか、アメリカはいま中国によって脅威にさらされておるわけではないのですよ。中国がアメリカ本土を攻撃すると考えているアメリカ国民はほとんどおりませんよ。しかし、日本は中国にとってはどてっ腹ですよ。あなたが中国と判断すれば、あなたと敵対関係に立とうとしているアメリカである私があなたのどてっ腹にあいくちを突きつけていると同じ状態が今日の日本における安保体制なんです。だから、このことは一面からいえば総理の御答弁のように抑止力になっておる。これは認める。しかし、一面からいえば中国の恐怖を増大せしめ、その結果アジアの緊張を高めているという事実も否定することはできない。この見解について総理見解を承りたい。
  78. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 結論から申しまして、私は麻生君と考え方が違うのです。と申しますのは、アメリカ、いわゆる自由主義陣営、これは本来平和主義陣営でございます。したがいまして、これが侵略的行動をとろうとは考えられない。しばしば世界の平和はバランス・オブ・パワー、力の均衡で保たれておる、かようにいわれておりますが、私はこの委員会でしばしば申し上げましたように、そうじゃないのだ、均衡というよりもやはり平和、自由主義陣営、このほうの力が優位にある限りにおいて戦争が起こらないのだ、それが戦争抑止力だ、こういうことを実は申してきたつもりであります。  そこでいま北爆について触れられました。しかしベトナム戦争というものはやや趣を異にしているのじゃないか。これがアメリカの侵略戦争と見る一部の連中もおります、これは確かに。しかし、アメリカはまた、ベトナム戦争は南ベトナムの独立を守るために南ベトナムの要請に基づいてアメリカは行動しておるわけなんです。これはいわゆる侵略主義によってあの戦争が行なわれておるわけじゃない。だからその実態をよく考えてみてやらないと困るんじゃないか。やはりどういうように世界の情勢をごらんになるか。すべては共存政策、それが打ち立てられれば私は何をか言わんです。これはりっぱなものなんです。おれのほうは脅威を感ずる——いまの大学の紛争でもそうじゃありませんか。一部からいえば、三派全学連のあの暴力に対して、自衛上おれのほうも持つのだ、こういう言い方をしまして、それが暴力に発展する。暴力に発展することはどういう理由であろうと否定するのが私どもの立場じゃないかと思う。  私ども、その立場から考えまして、アメリカがいわゆる戦争、侵略的な立場に立っているかというとそうじゃない、平和を願っておる。そうして戦争を抑止しておる。これがその立場だ。それではいま、外務大臣外交方針演説にも述べましたように、昔とはよほど違う。軍事力というものは戦争防止のためにいまみんなやっているのだ、戦争に勝つためだ、こういうようには判断できないということを申しましたが、ここに新しい見方があると思う。でありますから、いまどてっ腹に対して砲を突きつけた、たいへんな脅威を感ずるのだ、かようには私思う必要はないのじゃないか。私どものこの国、平和憲法のもと、中共と私申しませんが、ソ連自身があれだけの強大な力を持ち、北方領土が解決もされておらない。それこそどてっ腹じゃない、その一部を取られておるのですよ。しかし、日ソの間が非常な脅威を感じているか、さような状態じゃないだろうと思う。経済的にはやはりシベリア開発に協力をしておる。しかし、領土的にはまだ解決はしない。基本態度は違う。私どもが日米安全保障条約を必要とするのも、自衛権を持っておるけれども、その足らない点をこれで補おうという。  そこで、私どもが皆さんからしばしば聞かれるのだが、どこかの国を脅威に感ずるか、もし脅威に感ずるならそれを仮想敵国にするのか、こういって言われますが、私どもはさようなことは考えておらない、こういうことを言っております。私と同じ立場に立たれれば、北京政府総理もまたさように考えていただけばけっこうだと思います。
  79. 麻生良方

    麻生委員 私は、総理が中国に攻撃をしかけるなどと考えておりませんよ。しかし、アメリカの軍事基地アメリカの軍事戦略とは、事前協議があるといいながら、特に沖繩を中心としてはアメリカの意思によって行なえるのですよ。だから私は、総理が侵略をするなどと疑いを持つものではありません。いやしくも日本憲法の上に選定された総理なんですから、その点は御信頼申し上げていますよ。  しかし、問題はアメリカなんです。アメリカは、ベトナム戦争が侵略であるかどうかという判断はしばらくおきましょう。しかし、北爆という事実は、抑止力がエスカレートした最悪の状態であったということは事実ですよ。抑止力というものは、それがエスカレートした場合緊張を増大せしめ、破裂せしめ、戦争状態を惹起する、その可能性を常に持っているということを念頭に置かなければならぬのです、抑止力をいう場合においては。そうでなければ、またある意味で抑止力の効果もありますまい。  そこで私は、アメリカがこの点について、特にニクソンは明確な反省をしていますよ。ベトナム問題についてはこう言っておる。「ベトナムの結果の一つとして、合衆国が同じような紛争に同じような根拠で介入せしめられることに非常に消極的になるであろうことはほとんど確実である」と言っている。いいですか。この戦争は、合衆国に対して軍事的及び経済的のみならず、社会的そして政治的にも激しい負担をしいてきたと反省をしていますよ、アメリカ自身が。こういう反省をアメリカが余儀なくされたということは、アメリカアジアにおける抑止力がエスカレートして北爆を招いたということを背景として、ニクソン自身こういう反省をせざるを得なくなっておる。  したがって、アメリカのもう一つの大きな誤謬は、アメリカが民主主義の国だとあなたは言われた。平和国家と言われた。しかし、民主主義の国というのはどういうことですか。相手がどういう思想を持とうと、その存在を認めるというのが民主主義の原則ではございませんか。そうでしょう。日本では日本共産党の存在もちゃんと認められていますよ。議会でも発言を認められていますよ。しかし、アメリカはどうですか。現に中国がそこにある、そのことを認めておらないではありませんか。現実において中国がそこにある、北京が。政権がある。それをアメリカは認めようとしてないではありませんか。平和共存の思想の上にアメリカは立っておるというが、平和共存というのは相手の存在を認めた上で平和的にどう共存するかという思想である。アメリカは認めてないではありませんか。アメリカがどこが平和共存の国ですか。アメリカがもし平和共存を主張する民主国家であるというならば、当然中国を承認した上で、中国との平和共存をはかるべき政策を打ち出すべきではないですか。その点についての総理見解は、端的に、簡単にお答え願います。
  80. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 アメリカの承認している中国、これはやはり冒頭にどこを言われますかと言ったように、中華民国でございます。中華民国をアメリカは承認している。しかして北京政府との関係においては、今度はまた再開されたといいますが、ワルソー会談、そこにおいてしばしば会見をしております。私がジョンソン大統領と話をした際に、アメリカ自身も、日本と同じようにまず先に新聞、通信の記者交換をしよう、こういう申し出をしたが、北京政府から断わられた、こういうことを実は言っております。私は、いろいろの理由があって両者の間は深いみぞができておると思います。そのどちらが責任があるとは申しませんが、やはりこういう事柄はお互いに責任があってやはりああいう仲になるのじゃないかと思いますが、その基本的なものはやはり中国が一つだという考え方、その立場から出ているのじゃないか、かように私は思っております。
  81. 麻生良方

    麻生委員 中国が一つであるということは理想ですよ。現実においては台湾は台湾、中国は中国ですよ。アメリカにおいてもそれを認めるという主張が現にあります。そして今日の世界の緊張を緩和していく唯一の道があるとすれば、アメリカが中国を承認することである。そのことをアドバイスするのがアメリカの友好国家の総理としてのあなたの使命だと私は思う。しかし、これはせんじ詰めれば抽象論になりますから、この程度でこの質問は終わります。あなたの御見解だけを承ります。  それから次に、私は問題を先に進めて御質問を申し上げますけれども、国内の軍事基地の問題についてであります。先ほど来、性格の相違から、当然国内の軍事基地は縮小されるべきである、あるいは撤廃されるべきである、これは現行条約のもとにおいてさえそうあるべきものなんだ。この点について現在縮小、撤廃等の協議がなされておるかどうか、外務大臣からお伺いしたいと思います。
  82. 愛知揆一

    愛知国務大臣 くどいようでございますけれども、新旧安保条約において性格の変更ということを麻生さんは強調なさいますけれども、その点について私は必ずしも承服しておりません。ただ、具体的に基地の問題につきましては、お考えはよくわかりますし、また、そういう気持ちでもって今後も対処してまいりたいと思います。  ただ、こういうこともお考えいただきたいのでありますが、いま百四十余りあります中で、これから五十ばかりのものを処理していかなければならぬわけです。これは米側も認めておるわけですが、実際問題としてこちら側にもなかなか国内的にむずかしい問題もございます。これは私の守備範囲ではございませんので多くを申し上げられませんけれども、なかなか防衛施設庁を中心にいたしまして、実際問題として非常な苦労なことがある。したがいまして、せっかくここまで安全保障協議委員会でも話が原則論というか、相当具体的に進んできておるのですけれども、日本側でも大いに国民的な支持と協力をいただいて、そしてこの五十の問題がスムーズにかつ急速に処理ができるようになれば、またその次の段階に話し合いを進めていくことができるわけでございます。そういうふうな、国内的にも微妙でかつむずかしい問題がございますことも念頭に入れて御協力をいただきたいと思います。
  83. 麻生良方

    麻生委員 私に御協力してくれと言われましても、私はその任ではありませんから……。ただ、私は事実を知りたいと思っておるだけであります。  この間、新聞によりますと、最近最も新しい日米合同委員会において、この軍事基地の縮小、使用変更、共同使用等について協議をされたという発表がありました。その中に王子野戦病院の移転問題を含まれておりますか、おりませんか。
  84. 有田喜一

    ○有田国務大臣 王子野戦病院はお互いに検討するということで、あの中に含まれております。
  85. 麻生良方

    麻生委員 大蔵大臣にお伺いしたいのですけれども、いまわれわれに予算を審議せよとわれわれ承っておるのですが、私これを審議しておる過程の中で、防衛施設庁の予算の中に特別会計として十億円の予算が計上されておりますが、これは何ですか。
  86. 福田赳夫

    福田国務大臣 それは王子野戦病院を他に移転をするというための経費の一部であります。
  87. 麻生良方

    麻生委員 そうすると、これは特別会計でありますから、歳出歳入が見込まれるわけでございますね。
  88. 福田赳夫

    福田国務大臣 さようでございまして、王子病院あとを処分をする、その処分した財源を当てにいたしまして十億円の歳出をする、こういうたてまえであります。
  89. 麻生良方

    麻生委員 防衛庁長官お尋ねをいたします。  王子の野戦病院があそこから撤去してもらうということは、つとにこれは地元の党派を越えた要望であります。昨一年来、政府もこれについて懸命な御努力をしばしば御発言の中でされてきたことは私も認めております。私はたいへんこの予算書を見て歓迎したのでありますが、これはどこに持っていくのですか。
  90. 有田喜一

    ○有田国務大臣 王子病院の移転の問題につきましては、政府としては、移転するという方針を立てて、その移転先につきましていま米軍と鋭意折衝しておるところなんです。そこで、いまやや具体的になりますが、わがほうとしましては、米軍の持っておるいまの基地内に移転せよ、こういうことで話がほとんど煮詰まりつつあるところなんですよ。その煮詰まりつつあるときに、まだ最後の煮詰まりがしておりませんから、いまこういう所だということは、ちょっと発表しきれない状態にありますから、その点は御了承願いたい。
  91. 麻生良方

    麻生委員 少なくとも予算として計上されておる以上、われわれが審議する場合に、妥当性を審議しなければなりませんね。そうでしょう。そうすると、王子の野戦病院というのは米軍の施設ですよね。日本政府の権限でかってにできるものではない。したがって、当然この前提には米軍の合意書が必要である。たとえば水戸の射爆場を新島に移すという計画の場合は、日米合同の声明が発せられました。つまり米国が合意をした旨を明らかにしたんですね。これは米軍が合意をした結果この予算措置をとられたのですか。
  92. 有田喜一

    ○有田国務大臣 先ほど言いましたように、いまほとんど煮詰まりつつあるところなので、まだ合意の段階に行っておりませんが、少なくとも四十四年度中、来年度中にはこれを移転できる見通しを持っておるわけですよ。そういう前提に立ってあの予算を組んでおります。
  93. 麻生良方

    麻生委員 私は、わからないことはありませんよ。だから、これがそのための調査費であるとかいうことなら、私はいまの御答弁でけっこうなんです。しかし、こうやって大蔵大臣が歳出歳入を見込んだ特別会計としてわれわれに審議せよ、こう要求されているのです。審議する立場に立てば、どこに移転するのか。これは建設費でしょう、この内訳はほとんどが。大蔵大臣そうでしょう。
  94. 福田赳夫

    福田国務大臣 ごくわずかは設計費ですが、大部分は工事費でございます。
  95. 麻生良方

    麻生委員 その移転建設費としてわれわれに審議せよとおっしゃっているんですよ、大蔵大臣は私に。予算委員長も私に。私はこれが妥当であるかということをここで議論しなければならぬでしょう。いま煮詰めているんだ——私は、日本政府の権限で、最悪の場合は政府の権限でできる道路建設なら何も言いませんよ。しかし、ここにアメリカ軍の何とか参謀を連れてきて参考人にするわけにいかぬのでしょう。しかし、権限は明らかに米軍にあるんだ。あなたがどういう見通しだと言われても、米軍の同意書がなければわれわれは審議ができない。これがまず第一だ。  それからもう一つ、あなたは家をつくるのに、つくるつくるということだけで計画になりますか。家をつくるといえば、どこにつくるかということが先行するでしょう、土地が。土地の先行しない家屋の建設計画なんていうのはナンセンスですよ。どこにつくるかということで、初めてその建設予算が妥当かどうかということをわれわれは審議できる。われわれに審議の基準を、材料を与えてくださいよ。審議できないじゃないですか、こんなばかげた予算は。
  96. 有田喜一

    ○有田国務大臣 先ほど言いますように、もうほとんど煮詰まっておるんですよ。それで私たちとしては、来年度中には話をして建設ができるという確信を持っておるわけなんですから、これはもう麻生さんもよくおわかり願いたいと思うのですがね。いまかくかくでございますと言うことは楽なのでございますけれども、それを言いますと、またいろいろな問題が起こりますので、どうかひとつ私を信頼してくださって、もう発表したい気持ちは一ぱいなんですけれども、私は確信を持って来年度中にはいけるであろう、こういうことでございますから、御了承願います。
  97. 麻生良方

    麻生委員 私、大臣は御信頼申し上げる。しかし、大臣はかわるかもしれないじゃないですか、あなた。一年前の木村官房長官どこにおりますか。これは木村官房長官が移転すると言明したんだ。言明しちゃったから、移転せざるを得なくなった。米軍に折衝したが、一年後いまだにらちがあかない。しかし、移転したいという以上は何とかしなければならぬ。大蔵大臣もだいぶこの予算は苦労されたと思うんですよ。私は、厳密な、きわめて冷静な大蔵大臣は、本来こういうあいまいな予算の計上には御賛同なかったと思うが、同僚議員が移転すると言ってしまった以上、何とかしなければならぬという御苦衷はわかります。  しかし、私はなぜこの問題を取り上げるかといいますと、政府は軍事基地の問題で基地闘争が起こるたびに、移転する——移転が成功した実例をあげてください、いままで。防衛庁長官、あげてください。問題になったところでですよ、問題にならないところの基地など聞いていない。——長官に聞いていない。防衛庁長官に聞いているんだ。そのくらいのことはわかるでしょう、防衛庁長官。何もわれわれが問題にしていないような小さなことを言っているのじゃないですよ。
  98. 山上信重

    ○山上(信)政府委員 お答え申し上げます。  佐世保における名切谷の住宅その他、あるいは東京におきますところのオリンピック関係の施設の移転等は、現にやっております。また、横浜の住宅の移転等につきましても、目下精力的に移転に努力いたしておる次第でございます。
  99. 麻生良方

    麻生委員 施設庁長官の御答弁、私は知っていますよ。私が言っているのは、問題になった個所の移転、たとえば水戸の射爆場を新島に持っていくときめたのはいつですか、防衛庁長官
  100. 有田喜一

    ○有田国務大臣 水戸の射爆場にしましても、板付にしても、よくわかっておるんですよ。非常に努力しておるのです。しかし、まあそのほうは御承知のとおり、調査費ということで、まだ移転地が具体的にここというところまできまっておりませんから、調査費。  ところが、いまの王子のほうは、ここに発表はできませんけれども、先ほど言います米軍のいまの基地の中にこうだという具体的に話が進んでおるのですから、それは麻生さんもよくおわかり願いたいと思いまして、ひとつ……。
  101. 麻生良方

    麻生委員 私は、総理、決してつっつき出して意地悪しようというつもりはないのです。ただ、基地問題の扱いが政府は無定見ですよ。いいですか。問題が起こると、すぐ移転をするということを先に発言する。  私は総理にお伺いしたい。王子にあって地元住民が迷惑を受けるものが、日本国内にあって他の個所ならば日本国民が迷惑を受けないであろうと総理考えですか。
  102. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 まあいろいろ迷惑の度合いの問題もございますから、病院が都市のまん中にあるというようなことは、これはたいへんなことだと思います。そういうことも考慮に入れて、そして適切なる施設であれば、やはり地域住民の方も、とにかくしんぼうもしてもらわなければならぬ、かように私は思います。何にも犠牲も払わないで、わが国の安全が確保されるというわけのものでもないだろう。しかし、不適当な施設のある場所、そういうものは変わらなければならぬ、かように私思っております。
  103. 麻生良方

    麻生委員 そういう場合もありましょう。しかし総理、先ほど来申し上げているように、移転ということを口にして、問題になった基地で成功している例はない。現にない。私は、水戸の射爆場の場合でも、責任追及問題ですよ。これは米軍と合意をしたのがすでに三年半前だ。三年半かかっても、いまだに移転のめどが立たないで、調査費だ、これは何事ですか。責任ある政府としては、移転ときめたらなぜ移転できないのですかという論拠も成り立つのだ。いいですか。ことほどさように移転の問題というのは慎重を期さなければならぬ。  いま防衛庁長官、実は移転先はきまっておるのだと言いましたね。いまそこでちょっと漏らしましたね。だいじょうぶですか。
  104. 有田喜一

    ○有田国務大臣 麻生さんのおっしゃるように、移転問題は移転先が非常に問題なんですね。そこでせっかくほとんど煮詰まりつつあるところですね。そこで、いまそこを簡単に発表しますと、米軍の関係もあるし、周辺地域の関係もありますので、もう少し慎重にやりたいというので、いま鋭意努力中と……。
  105. 麻生良方

    麻生委員 私は、防衛庁長官、慎重に扱いたいというのはわかりますよ。しかし、いいですか、この種の問題は、住民が知らないうちにでき上がってしまったという夢の建設じゃない。建設しようとすれば、それだけの資材を運び、当然いつかは住民にわかることなんです。それなら、きまっているというなら、なぜここで明らかにして、われわれ全国会議員も含めて堂々たる論議の中で、国会を背景としてそのことをきめませんか。そうすれば、私は基地反対闘争には参加しないし、私自身も説得に向かいますよ。その体制をしかないで、秘密裏に事を運んで、どこやらにこっそり建ててしまおうというその魂胆、何事ですか、一体。
  106. 有田喜一

    ○有田国務大臣 決して秘密裏にやろうなんという考えを持っていないのですよ。いまもうほとんど米軍との間に話をきめつつあって、それを前提として周辺の地区といろいろ話をしなければならぬ。それがもとがきまらないのに、合議ができないのに、それをいたずらに発表すると問題が起こりますので、もうしばらくお待ちを願いたい。
  107. 麻生良方

    麻生委員 防衛庁長官、米軍がなぜおこるのですか、国会でそのことを議論して。私はわからぬのですよ。そしてこれは、防衛庁長官、この種の問題は、一体安保条約下においてどこで協議するのですか、何という委員会で……。
  108. 有田喜一

    ○有田国務大臣 もちろんそれは合同委員会となるわけであります。
  109. 麻生良方

    麻生委員 合同委員会には、あなた自身も御出席になったのでしょう。
  110. 有田喜一

    ○有田国務大臣 私や外務大臣の出たのは、日米安全保障協議会のほうでして、それが合同委員会において具体的処理をさすことになったのです。
  111. 麻生良方

    麻生委員 その合同委員会に出席をして協議したメンバーを、外務大臣明らかにしてください。
  112. 愛知揆一

    愛知国務大臣 政府委員から御説明いたさせます。
  113. 東郷文彦

    ○東郷政府委員 私、合同委員会の日本側の代表をいたしておりまして、合同委員会の本会議には私が出席いたします。個々の施設区域の問題に関しましては、合同委員会の分科委員会でございます施設委員会においてまず取り上げるわけでございます。施設委員会において結論を得ましたところで合同委員会の本会議に持ってきて、日米両方の代表の間でこれを確定するわけでございます。  したがいまして、王子の問題に関しましては、現在まで施設委員会において協議中という段階でございます。
  114. 麻生良方

    麻生委員 メンバーを聞いているのですが、局長、メンバーは私の手元に全部出ておりますから、それはいいです。  ところが、この日米協議委員会、第九回、十二月二十三日の会合においてアメリカとの間に合意に達したものが全部あげられておりますね。ところが、王子キャンプは依然として検討中ですが、依然として検討中ということは、相談ができるかもしれないし、できないかもしれないということなんでしょう。そうでしょう、防衛庁長官
  115. 有田喜一

    ○有田国務大臣 昨年の十二月二十三日の段階では検討中ですね。それをいま検討しつつありまして、それでもうほとんどそこが煮詰まりつつあるところなんですよ。それが、もとが煮詰まらずしてそれを発表すると、もしもいろいろなことが起こっては困るから、慎重にかまえて周辺地区の了解も得て、そうしてやりたいというのが私の考えです。
  116. 麻生良方

    麻生委員 大蔵大臣、これはいまの答弁でおわかりになるように、審議して妥当であるかどうかという判断の基準が与えられてないんです。移すという日本政府の意向もわかる。相談中だということもわかる。しかし、大蔵大臣は具体的に特別会計予算としてこれを計上して、いまここにはかっておる。だから私は、当然大蔵大臣としては一応この予算計上にあたっての具体的プログラムをお聞き取りの上で、妥当と判断して御計上されたんでしょう。いかがですか。
  117. 福田赳夫

    福田国務大臣 移転先の候補地、これも伺っております。それから王子のかいわい、あそこが妥当でないという事情も、よく承知しております。でありますので、一部でありますが、十億円計上するということにいたしたわけであります。
  118. 麻生良方

    麻生委員 私は当然だと思うのですよ。大蔵大臣がこの予算をおつけになったのは。いまあなたが相談しつつあるプログラムの具体的な検討をして、ここならばこの程度の予算が妥当であろうと判断されてつけられたというわけです。私は予算委員ですよ。大蔵大臣からこれを審議してくれと示された以上、少なくともあなたが大蔵大臣に示した程度の構想を示した上ではかってもらわなければ、私は審議ができない。大蔵大臣の権限と予算委員の権限は同じですよ。大蔵大臣がその具体的なプログラムを背景として検討したものであれば、われわれにもその具体的なプログラムと背景を指示して、それが公開の場でできないというなら、理事会の場においてはっきり示して、その上に立ってわれわれに検討を要請するのが妥当ではないですか。あなた方はわれわれを侮辱するのですか。審議の基準も何も与えずして、十億円の予算を検討しろという。だれができますか。与党の議員でもできますか、こんなばかなことが。(「できますよ」と呼ぶ者あり)できます、できますか。プログラムのない予算の検討が、予算委員会でできるんですか、委員長。だれだ、いまできると言ったのは、予算委員の中で。われわれはまじめに討論しているんじゃないですか。われわれは、妥当であるか妥当でないかについて意見が異なるという場合は多数決に従います。妥当であるかどうかさえ審議できない、材料も与えられないでおいて、しかも特別会計で十億という多額の金を計上して、それはいま秘密だ、秘密だ、これで一体審議ができますか。私はできませんね、こんな審議は。
  119. 福田赳夫

    福田国務大臣 予算といたしましては、私ども説明を防衛庁当局から聞きまして、まずこれは本年中に実行可能であろうという心証を得たわけなんです。その心証に従いまして予算をお願いをしておる、かようなことでございまするが、先ほど来、るる防衛庁長官からその具体的候補地についてお話ししにくい事情を申し上げておるわけでございますが、私がかりに大蔵大臣として防衛庁長官からどこどこだという具体的な話を聞かぬでも、まあことし中はやりたいんだ、できるんだと確信を持っているということがお話がありますれば、予算は私は要求をするということに相なると思うのです。その辺ひとつ御了察の上お願いしたいと思います。
  120. 麻生良方

    麻生委員 私も、複雑な事情はわからなくはないんですよ。アメリカ外交委員会では、アメリカが関与している他国との軍事の問題について、国会の中に小委員会を設置いたしました。いいですか。そこで公表できないものもはっきり示した上で、アメリカ基本方針をきめております。  ところが、日本はそうではないんですね。外務大臣、あなたは、日米合同委員会の資料、前後九回続けられてきた日米協議委員会の資料予算委員会に提出できますか。私はしていただきたいという資料提出要求をしておるんだ。その資料があれば、少なくとも私の判断の材料になります。資料提出をしていただきたい。
  121. 愛知揆一

    愛知国務大臣 実はその点、昨日も私自分でも検討いたしましたが、この協議会、合同委員会におきましては、議事録的なものはないんです。そうして、これは会議性格と申しますか、やり方、慣行からいたしまして、発表文を双方了解の上で提出をいたしておりますので、それ以外のもので取りそろえて提出するというようなものはございませんし、また、いままでのところは、少なくともそういうことはやらないことになっておりました。そういう経過でございます。
  122. 麻生良方

    麻生委員 私は、日米合同委員会に参加しておるメンバーも全部持っております。その中には属僚も入っておりますよ。お役人さんも入っておりますが、それらの人たちはみな知っていますよ。いいですか。それがなぜわれわれ国会議員に提出できないか。  佐藤総理は、参議院の本会議における野坂参三氏の質問に対して、専門家会議の点について触れられました。野坂さんの、それは非常に重要な性格のものであるという質問に対して、総理は、そんなものではない、何でもないことである、別に秘密の事項ではないという答弁をされておる。秘密の事項でもないもの、条約上において秘密を保たなければならないと取りきめされておるものでもない資料、その合同委員会と協議委員会の資料がなぜ国会のわれわれの舞台に出せないのか、私は納得できない。それがなければ、われわれは軍事基地の問題を討議することができない。しかも、軍事基地は、総理答弁によって、安保条約におけるマイナス面であるとはっきり答弁されておる。しかもどうですか。ちまたには基地闘争がどうなっていますか。今後どうなりますか。私は日本の国会議員として承服できない。委員長、私の発言が妥当であるかどうかを委員におはかりをいただきたい。私は、できるなら、公表の場でとは申し上げない。この間、楢崎君がここで提案をいたしました。楢崎君も同じ問題、同種の問題ではありませんけれども、予算委員会の中に小委員会を設置して、それを秘密にしてでもいいから資料提出をして審議をしてもらいたいという提案が出ておるはずだ。私も同趣旨の提案を御採択いただけるなら、この質問はここで保留をいたします。
  123. 中野四郎

    ○中野(四)委員長代理 麻生君にお答えをいたします。  本件については、追って理事会においてその取り扱いを検討することといたします、さよう御了承願いたいと思います。
  124. 麻生良方

    麻生委員 委員長もひとつ誠意をもって御検討願いたいと思います。  私は、これ以上この場でこの問題で紛糾させたくありません。しかし、私の真意は、重ねて申し上げますが、これから基地闘争は激化をたどる一方です。総理、この基地の問題について、移転ということは口にやすく行なうことはきわめてむずかしいのです。かりにそれを多摩弾薬庫に移すといえばそこの住民、立川基地の中に移すといえばそこの住民、王子に移すといえば、私の情報では、王子の野戦病院の移転についてアメリカ軍人の家族が反対したではありませんか。私はその資料も入手していますよ。アメリカ軍の軍属、家族、婦人たちまで反対するんだ。必要とあれば、その状況を出しましょうか。それほど重要な軍事基地の移転問題を、政治的発言でみだりに移転ということばで現状を糊塗してきた。だから、水戸の射爆場の問題も解決しない。板付の問題も解決しない。そうして移転するたびに軍事基地の種火を政府みずからが日本全国にまき散らしておるではありませんか。これは全国基地化だ。そういうことを私は総理に深く戒めていただきたい。  私は、王子などというのは撤去を迫るべきである。いずれは米軍は撤去をすべき軍事施設です。それを移転という小手先でごまかさずに、腰をすえて米軍に撤去を迫る、その本腰がない限り、基地問題のマイナス面は解決されませんよ。総理、あなたの簡単な御見解、今後の方針をお聞きしたい。
  125. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 基地問題は、簡単なものではございません。ただいまるるお述べになりましたことも、私ども十分これからの扱い方、取り組むときに参考にしたいと思います。ありがとうございます。
  126. 麻生良方

    麻生委員 次に、私は平和憲法、非核三原則、核拡散防止条約等について、実は御質問する予定でおりました。しかし、時間も経過をしておりますし、さらに自主防衛の点についても触れたいと思いますが、これは後刻同僚の永末議員から同趣旨の質問もあるかと存じますので、私はこれは本日は割愛をいたします。あらかじめ御了承願って、最後の質問に移りたいと思います。  総理一般世上では一九七〇年の危機ということがいわれていますね。私は正直のところ、あまり危機感をあおり立てたくはないのです。しかし、現実にその危機があることも、客観的に判断しなければならぬと思うのです。私は、その一つの現象として大学の紛争もある。大学問題ではありませんね、一面からとらえるならば。そうですね。それからつい先ごろのアメリカ大使館乱入事件があります。この乱入事件について、アメリカの世論の上にどういう反響があったか、外務大臣、あなたはアメリカの世論、特にニューヨーク・タイムズもしくはワシントン・ポストのこの問題について掲載された記事内容の御報告を願いたい。   〔中野(四)委員長代理退席、委員長着席〕
  127. 愛知揆一

    愛知国務大臣 在米の日本公館からさっそく新聞テレビその他の状況を報告をいたしてまいっておりますが、何と申しますか、相当不快な事件として取り上げられているということは事実のようでございます。中には写真を掲載して、旗の立っているような写真も掲載しているようでございますが、要するに私といたしましては、この事件は、それらの報道を通して見ましても、まことに遺憾なことであった。これはほんとうに情けないような気さえもするわけでございます。
  128. 麻生良方

    麻生委員 委員長にお願いがあります。私の質疑時間の限度は零時五分であります。私はこれを厳守をしたいと思って質問を続行してまいりましたが、先ほどの答弁、その答弁内容等にかんがみて、実は相当の時間をその中で空費をいたしました。私は委員長におはかり願いたいのは、十分間だけ私の質問の延期を委員各位におはかりを願いたい。
  129. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 麻生君に申し上げます。先ほどの火災の問題について、荒木公安委員長原田運輸大臣、斎藤厚生大臣野田自治大臣から最後に答弁をすることになっております。これを含めてですか。
  130. 麻生良方

    麻生委員 はい。
  131. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 含めてなら、さよういたします。許します。
  132. 麻生良方

    麻生委員 かつてライシャワー大使の刺傷事件がありました。それからその次に外務大臣、今度の事件ですね。この事件は、いま重要な沖繩返還交渉総理が渡米する予定が組まれておるおりから、国際関係の上でどういう影響を現実に与えておるか。ただいま外務大臣答弁された中では明らかにされておりませんが、私は必要とあればニューヨーク・タイムズに掲載された原文をここに持っております。しかし、これははなはだ遺憾でありますから、私はここでは朗読をいたしませんよ。しかし、ことほどさようにアメリカの世論の上においてこれが重大な事件として報告をされておる。いいですか。この事件の認識についてニューヨーク・タイムズの中で、ただ一カ所だけ私は朗読します。「この問題について政府は簡単な陳謝の意があっただけである」と報告しております。これは簡単な陳謝だけで済むと外務大臣はお考えですか。
  133. 愛知揆一

    愛知国務大臣 いまおあげになった記事を私も事実認めるのですけれども、ほかの新聞等におきましては、政府がさっそく官房長官はじめ高官をして、その中には名前を出しておるところも相当ございますが、日本政府としては深甚な遺憾の意を表した、ことにこういう高官がわざわざ事件の直後米大使館を訪問して見舞い、かつ陳謝の意を表したということを詳細に掲げておるものもございます。とにかく、先ほど申しましたように、私としてはほんとうにこれは遺憾なことだったと思いますし、とりあえず政府側がそうした措置をとりましたことに対して、米国の大使館側はさっそく本国にも通知をいたしましたし、日本側の警察等のとった敏速な措置についても、むしろこれを感謝するというか、アクセプトするというようなことばも使っておりますけれども、こういう状況でございます。それからなお、駐米大使に、国務長官に対しましても同様の遺憾の意を表させております。
  134. 麻生良方

    麻生委員 この前のライシャワー事件のときには、どなたか責任をとられましたな。どなたか、総理ね、あなたがおとらせになったのか、本人がとったのか存じませんが、これはどなたでしたかね、官房長官、答弁してください。——前内閣のときには、ライシャワー事件に関連して早川当時の国家公安委員長でしたか、みずから責任をとられたかどうかは存じませんが、おやめになるほど重要な事件であった。  今度の事件は、政治的に考え——総理、ライシャワー事件と今度の事件と政治的に考えた場合、アメリカの世論に対する影響の度合いはどうですか。
  135. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 今度の事件も、実は私たいへんなことだと思っております。ことに治外法権の場所に暴徒が乱入する、そういうことについて、これはもちろんそういう者を入れないように私どもしなければならないものだ、かように思っておりますが、まあ被害が比較的少なくて済んだ、こういうようなことで、ただいまのようなお互いの話し合いというか、こちらから私のかわりに官房長官が出かけまして、そうして代理大使とよく事情をお話しした、こういう事柄もございますが、とにかく私は非常に重大なことだと思っております。  しかし、まあこういう事柄でいわゆる大臣がやめたからといって、それで済む筋のものでもない、かように思いますので、その意味では、警察当局に対しましても、さらに注意するように——また時節がら一九七〇年闘争、これもすでに始まっているという、あの革マル派の連中、これは特別の連中だし、ちょうど沖繩の問題と呼応して、対応して本土でもいろいろな計画があった、そういう意味でずいぶん注意はしていたのでありますが、意外なところで意外なことができた、こういうことでありまして、心から遺憾の意を表した、こういうことであります。したがいまして、ただいま相手、米国内新聞等でも報道されておりますけれども、いわゆる非常にセンセーショナルな書き方ではない、かように私は思っております。友好親善関係にひびを入れた、かようには実は思っておりません。また、そう意味で閣僚の進退なぞに関する問題ではない、かように私は判断したのでございます。
  136. 麻生良方

    麻生委員 私は総理、別に——国家公安委員長、あまりのんきにしておられると困るのですが、私は別に責任をとれなどと言うておるのではないのです。ただ、この種の事件が起こった。だれも予測しなかったですね、こんなことは。つまり、現状は、だれも予測ができないことが起こるのですよ。  そうすると、私はひとつ総理お尋ねしたい。あなたは全学連三派の行動を是認しておらないと思います、ああいうばかげた行動は。あれは暴徒同然だろうと心の中では御解釈されておると思いますね。私もそうであります。しかし、一九七〇年を目ざして、その全学連三派、暴徒同然と日本国民の多数が考えている学生諸君が、政府の今日までの態度によって、ついに占領以来そのつめあととして残されている軍事基地を政治の力によって撤去解決ができないと彼らが判断をして、彼らがその集団をもって角材をふるい、ヘルメットをかぶって軍事基地になだれ込まないという保証は一つもない。よろしいですか。なだれ込んだときに、軍事基地の中でいかなる事態が起こるかという想定を総理はされたことがありますか。
  137. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 実は、いまお尋ねのように、意外の事柄が起こるという、そういう意味で、私はたいへん心配をしております。これは本土内においてのみならず、去る四日の沖繩のゼネストなども、そういう意味で非常に心配しました。
  138. 麻生良方

    麻生委員 総理は、沖繩の返還がない限り戦後は終わらないと名言を吐かれました。私は同感であります。しかし、一つだけ総理は忘れられていることがある。どう安保条約によって合理化しようとも、現在の国内の軍事基地は、占領政策によってアメリカにとられた軍事基地であります。本来なら、その軍事基地を断絶をして、対等な立場で安保条約を結ぶべきがしかるべきである。私は、今日でも、本来なら安保条約は一時断絶をすべきだと思っております。しかし、断絶ができないままに、戦争のつめあとである沖繩問題を未処理に残し、一方においては軍事基地を未処理、未解決のまま今日まで残してきた。日本経済は総理の言うように繁栄をしました。日本という国は健全五体になったように見えるが、しかし、その体内には沖繩というガン、軍事基地というガンが厳然としてある。  私は思い出すのですよ。私の同胞たち、かつて戦争によって死んだ者たちはどうであったか、いまの全学連三派の諸君と比べて、彼らは気違いである。いちずにそれを信じ込んでおる。政治にはたよれないと彼らは狂信しておる。そのことを私は笑えない。私自身が、かつて大東亜戦争時代にはその狂信者の一人として、背中に爆弾を背負って航空母艦に体当たりをすれば日本が勝つと信じたのだ。日本国民のすべてが信じたのだ。いまこの若者たちが、その行動のよしあしの判断のできない若者たちが、日本の政治の責任においてこの敗戦のつめあとを日本の中から一掃されないとすれば、自分たちが角材をふるってでも肉弾をもって撤去をしようと信ずるのを、私は否定し、これをあげつらうことはできないのです。いいですか。私は決して彼らの行動を是認をしない。しかし、佐世保においてどうですか。あれだけあばれ回り、傷ついた全学連三派に、佐世保市民はひそかに暮夜数十万円の献金をしているではありませんか。この佐世保市民は決して彼らの行動を是認しておるのではないのですよ。しかし、エンタープライズを見るから、彼らが体当たりでこのエンタープライズにぶつかってそれを撤去させようとする、その心情の中に日本人として一脈通ずるものがあるから、彼らは千円のカンパをなしたのだ。  一九七〇年に、いま日本の全国民から暴徒であるといわれている全学連三派が角材を振い、ヘルメットをかぶってアメリカの軍事基地に突撃をして、万が一アメリカ兵の銃撃にあって倒れた瞬間、日本の世論は一変しますよ。それが民族感情というものなんですよ。いいですか。その事態が起こらないという保証はないと総理答弁された。その行動を阻止することすら警察の力でできないではありませんか。とするならば、あなたが戦前を生きてきた政治家としての責任は、われわれがかつておかしたあやまちを繰り返してはならぬ。あなたが総理であるというその立場において、沖繩の返還の実現と、もう一つは、戦争のつめあとである軍事基地を撤去することによって、われわれの戦後の世代、ヤングパワーに新しい政治をゆだねる、この姿勢を明確にして、腰を据えて一九七〇年に対処をしてもらいたいのだ。  私は、これを民社党などという立場で言うておるのではないのです。私は生き残った一人だ。私はいまだに思い出します。総理、いいですか、私は、全学連三派を警察で取り締まれなどということで解決する問題ではないと思っているのです。彼らにその行動をやめよと言う以上は、彼らが狂信的に信じているこの戦争のつめあとの軍事基地日本から一掃することが、現代に生きるわれわれ政治家の責任ではないか。これは総理ばかりではない、われわれもそうだ。だから、私は先ほどから、軍事基地の問題についても討議をしたり、それが移転するところに軍事基地の発火点をつくりたくはない、その見地から追究したんです。この私の心情は、総理、了とされるかどうか、総理の所感を最後に承りたい。
  139. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 麻生君は、みずからの体験からただいまのようなお話をなさいました。私は、過去の戦争における反省、これが今日の日本には必要だと思います。私どもは民主主義のもとに自由な国民活動ができる。それはひとり経済活動ばかりじゃありません。政治活動、同様であります。その民主主義、また自由主義のもとにおいて、いかなる暴力もこれを肯定するわけにはいきません。これを否定しなければならない。私は、若者たちのそのエネルギー、それを信用しないわけでもありませんし、またそれらの諸君の感情をそのままむき出すことについて理解がないわけでもありません。しかし、ここのところは、われわれは民主主義を守るんだ、その立場に立ってわれわれの主張を貫徹するのだ、これでなければならない。  私は、そういう意味から、心の点で、感情の面でその行動に理解を示しても、現実の彼らがやっておる行動、これは許すわけにはいきません。それこそ自由主義、民主主義を破壊するものだ、かように私は思っております。その意味において彼らに反省を求める、これが必要なのではないか。また、さように民主主義のもとにおいてあるべき政治の姿、それこそは、私が政治家である限り、総理である限り、また皆さん方が政治家である限り、その政治家の責任も果たしていかなければならない。それは民主主義の方法で、自由主義の方法で、その形において、それぞれが姿勢を正して邁進しようじゃないですか。  私が沖繩の問題と取り組んでおるのもその意味でございます。また、先ほど基地について私が答えたゆえんも、私は、基地地域住民に非常に迷惑を与えておること、これも私は承知をしております。したがって、それが場所が適当でないんだということを実は申しました。とにかく、犠牲なしに安全保障は達成できないのであります。しかし、それだからといって、暴力行為を肯定するわけにはまいりません。私の話のうちにも、どこかに暴力行為を是認するかのように誤解されたらたいへんだと思います。私は感情的にわからないわけじゃないけれども、それはしかしやめてほしい、やめてもらいたい。私どもは、新しい民主主義、自由主義のもとにこの国をつくろうというその立場に立って、もう軍国主義とはさようならしたはずなんだ、そこに新しいセンチメンタリズムはとにかく困るから、それはやめてもらいたい。これが私どもの考え方であります。また、そういう意味でこそ、初めてりっぱな国ができるんだと思う。また、暴に報いるに暴をもってする、こういうことがよく一部で言われます。しかし、国家権力というものは、いわゆるいま学生諸君のやっておる暴力と同じ地位において考えられるべきものではないんだ。国家の考え方というものはもっと必要、もっと最高のものだ。そういう意味において、国家は権威を持って反民主主義、反自由主義の者を取り締まる、この立場でなければならぬ、かように思います。  とにかく、いま起きている問題は非常に重大な段階にきている。御指摘のとおりであります。私は、そういう意味で、この時代の政治家の責任はいまだかってないほど大きく重大ではないか、かように思っております。
  140. 麻生良方

    麻生委員 ひとつあなた総理として、いまの点も十分御配慮の上、現代に生きる総理として、日本の民主主義の達成、並びに戦後の断絶、占領の断絶、これもひとつ考えられて御努力されんことを願います。  たいへん若輩でございまして、いろいろ関係閣僚に失礼のおことばを申し上げました。その点は御容赦を願いまして、私の質問はこれで終わります。ありがとうございました。(拍手)
  141. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 先ほどの火災関係の質疑に対しまして、運輸大臣原田憲君より政府を代表いたしまして報告をいたします。原田憲君。
  142. 原田憲

    原田国務大臣 麻生さんにお答えを申し上げます。  ただいま委員長からお話のございましたように、この案件が郡山熱海町の観光地のいわゆる政府登録観光旅館磐光ホテルの火災でございますので、私が代表して答弁させていただきます。  十一時現在でございますが、二月五日の二十時五十分に出火いたしまして、六日の三時十五分に鎮火をいたしております。出火の原因はまだ不明でございます。  お客さんが約三百人、従業員が二百人おりまして、死傷者の数は、死者が三十人、男二十一人、女九人、それから重軽傷者が二十八名、計五十八名、こういうことでございます。  こういう死傷者が生じた理由は、たいへん風が強くて火の回りが早いために、逃げおくれたというふうに見られております。  それから、焼失した軒数は、三むねが焼けておりまして、面積にして一万五千二百八十六平方メートル、出動しておりますのは、消防署が八十人、五台、消防団が三百人、四十台であります。  この旅館は、四十三年十二月の初日に立ち入り検査を行なって、法基準は十分整っております。それから四十三年十二月十二日にも総合防災訓練を行なっておりますので、先ほど申し上げましたように、十五メートルの風が吹いて、五メートルの視界しかなかったというので、逃げおくれた、こういうのが、今度の死傷者の出ておる原因じゃないか、こういうことでございます。  現在、宿泊者の避難誘導あるいは負傷者の救出、救護、雑踏整理、国道、県道の交通規制、広報活動、死体収容、現場保存に警察は活動いたしております。  また、罹災者に対する処置といたしましは、死者は三十体熱海町の常円寺に安置してございます。負傷者二十八名については、同町太田病院熱海分院と塙病院、郡山の太田病院の三カ所に収容中でございます。宿泊客三百人につきましては、熱海町の旅館十四軒に分宿してもらっております。目下現場検証と身元確認につとめておるのでございます。  今後の対策といたしましては、先般有馬におきまして火災事故が起きまして、自治省消防庁を中心に、建設、文部、運輸、厚生、労働などの関係各省担当官によって防災対策連絡協議会を設けまして、特に温泉地旅館については、消防と建設関係で一斉に立ち入り検査、先ほど御報告申しましたが、このようにいたして防災につとめておったのでございます。私ども運輸省もこれに協力いたしておるのでございます。今後ともかかる事故の起きないように一そう防災対策の強化についてつとめたいと考えておる次第でございます。  今後も十分対策を立てたいと思いますが、いずれにいたしましても、なくなられた方、また傷つかれた方について、衷心からお見舞いを申し上げる次第でございます。
  143. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 運輸大臣原田憲君に申し上げますが、先ほどの麻生君の質疑は、そういうことだけでなく、こういう火災が、こういう惨事が起こらないようにしてもらいたいという意味質問でございました。ひとつよく研究してもらいたいと思います。  これにて麻生君の質疑は終了いたしました。  午後の会議は午後一時より再開し、川崎寛治君、田中武夫君の質疑を行なうことといたします。  この際、暫時休憩いたします。    午後零時十七分休憩      ————◇—————    午後一時七分開議
  144. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。川崎寛治君。
  145. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 総理は、この十一月にアメリカを訪問してニクソンと首脳会談を行なって、沖繩の返還問題を話し合う、こういうことで、昨日の新聞にも出ておりますように、具体的な外交交渉のスケジュールも動き始めておるわけであります。私は、今回の佐藤ニクソン会談というのは、一昨年の佐藤・ジョンソン第二回目の会談と比較をいたしましても、より以上重要な会談である、こういうふうに思います。それは、あなた自身どろをかぶり、政治生命をかけるとまでいわれておる決意があるわけであります。そこで私は、この沖繩返還問題を論議をいたしますについては、沖繩の県民はもとより、国民もたいへん大きな関心をもって見詰めております。  ところが、佐藤総理発言というのは、きょうは東あすは西、いまは南かと思ったら北のほう、全くとらえどころのない答弁を繰り返しております。そして、この数年来の、特に沖繩問題を通しての答弁というものをずっと整理をしてみますと、国会における発言が、総理大臣をはじめ閣僚の発言が今日ほど権威を失っているときはないと思うのです。だから、そうも言っているし、反対のことも言っている、こういうことが常に繰り返されております。これでは、私は、ほんとうに国民が納得のいく、民族の課題としてのこの沖繩返還問題というものを、あなたの真意を理解してあなたをささえるということにはならないと思います。私は、それゆえに沖繩返還問題というのは、時間的にも長期の問題であるし、それからまた問題の本質がグローバルな点から考えてまいらなければならない。それは、アメリカアジア安保体制再編成を迫られております。また、あなたが強調いたします日米安保体制と沖繩の関係、これも再編成を迫られております。そこでそういう長期の見通し、見通しというよりも長期の時間的な要素、それからグローバルな点、そういうものを踏まえながら、私は以下お尋ねをいたしてまいりたい、こう思います。  まずお尋ねを端的にいたします。沖繩の基地アメリカの極東戦略上重要な役割りを果たしておるのか、それとも日本の安全を第一の役割りとして沖繩の基地は存在をしておるのであるか、この点をまずお尋ねをいたします。
  146. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 沖繩の基地、これは私が申し上げるまでもなく、ただいまアメリカの施政権下にある。この施政権下にある沖繩の基地、それをどういうようにアメリカが使っておるか、これは私どもがとやかく言うことじゃない。少なくとも私どもに言えることは、わが国安全確保の上においてこれが役立っておる、同時にまた日本の周辺、極東地域の安全にも役立っておる、このことは言えると思う。これは日本立場で言える。いまお尋ねになりましたその点には、そのままお答えができません。これはアメリカの施政権下にある沖繩、その基地アメリカがどういうように使うか、これはまた別なことであります。
  147. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 日本立場からだと、こういうことで言われました。しかし、あなたが交渉をする相手はアメリカであります。だから、アメリカがどのようにこの基地考えておるか、どのようにこの基地役割りというものを考えておるか、そしてまた、これまでどういう役割りを果たしてきたか、それが今後返還をされたときにどうなるかという点は、施政権を持っておるアメリカ側が当然に考えるわけです。それを考えずに、あなたは日本側だけの立場でこれを判断をし、そして日本側の立場だけでアメリカ交渉するのですか。そうすると、いままでの答弁は全部変わってまいります。
  148. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は日本総理です。沖繩の早期返還を願う以上、やはり日本の国益に合致した方向考える、これは当然のことです。しかし相手のあることだから、川崎君の言われるように、アメリカ考え方も十分頭に置け、こういう御注意は、いかにもそのままたいへんけっこうな御注意だ、私はかように聞いたのであります。しかし、いまアメリカがどういうように考えているか、それはいま川崎君の指摘されるようなことであるかどうか、これはまた別だと思っております。
  149. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 アメリカ考えておることは別だ、こういうことであるなら、交渉はもっと簡単なはずですね。施政権アメリカが持って、百万県民の人権を無視をしてまで使ってきた。それはアメリカの極東戦略にとって放すことのできない基地であるから、そのような保持をし、統治をしてきた、こういうふうに私は見ます。そうでないと総理は断定をされますか。
  150. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 川崎君のお説をもってすれば、アメリカ日本に返還するものか、こういうようにとれるようなお話です。あれだけの人権まで侵害して、そうして施政権を行使しておる、その実情を考えないで飛び込んでいく、それは無謀じゃないか、かように実は私に対する御注意だと聞いたのです。もしそれでなければたいへんしあわせですが。  私は一昨年のジョンソン大統領との共同コミュニケ、これに基づいて出かけて、そうして話し合いをする。ジョンソンからニクソンにかわったからといって、これは首脳者の申し合わせでございますから、共同コミュニケに出ておる点で、そこで私、十分日本立場を話しできる。そうしてアメリカ側考え方にも私も共鳴する点もありますから、そういう意味で両国が話し合っていく。そしてその場合に、ひとり総理が納得したとか大統領が納得したとか、こういうばかりでなく、やはり国民全体が納得されるような——全体、全部といかなくとも、大多数の方が支援されるような形で話をまとめなければならない、私はかように思っております。この点では別に私が独断専行、、走り出すつもりはございません。
  151. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 それでは日米安保条約を除いて——除いてですよ。米韓、米華、米比、ANZUS、SEATO、これらの相互防衛条約、その共同防衛区域に沖繩を入れてあるのはなぜでありますか、お尋ねをいたします。
  152. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 これは最初に申しましたように、施政権アメリカが持っておる。その立場においてアメリカは沖繩の基地を使っている、かように理解しております。
  153. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 それでは軍事戦略的に見て沖繩が、ネブラスカ、ハワイ、グアム、沖繩と、このような核を含むアメリカの太平洋、アジアにおける戦略の、その一番先端であり、かなめであるということをお認めになりますか、どうでありますか。
  154. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 かなめであるか先端であるか。先端というのはどういう意味でお話しになっておるのか、またかなめというのはどういう意味か、これは別として、とにかくいま言われましたようなその地域と一体になって、そしてアメリカの形成する軍事力、その一部であること、これはそのとおりであります。
  155. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 アメリカが太平洋に展開をいたしております前進戦略の体制というのは、いま申しましたそれぞれの防衛条約——日米、米韓、米華、米比、ANZUS、そしてSEATO、こういうアリューシャンからインド洋にかけて弧状に展開をされておる。それは全部米軍が駐留しておるわけですね。そうしますと在日米軍も、そういうアメリカが共産陣営を封じ込めるための前進戦略体制の中の基地群の一つであるという事実はお認めになりますか。
  156. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 それはもう先ほど申したようにアメリカ軍事力一つだ、こういうことを申しておりますから、それはもう間違いのないことです。
  157. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 事実は認められておるわけですね。そういう体系というのは、これは条約的にいえば、サンフランシスコで対日平和条約が締結をされる、同時に安保条約が結ばれた。ここが出発点である。つまり先ほど言いましたような条約の体系、体制と、アメリカアジアに展開をいたしておりますアジア安保体制というものの出発点が平和条約であり、そしてまた直ちに結ばれた安保条約、それが出発点になっておるという歴史的な経過はお認めになりますか。
  158. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 もちろん、さきの戦争日本が負けて、占領されて、そしてそれがサンフランシスコ条約で、これはずいぶん反対をされましたけれども、部分的にしろ多数講和の形で日本が独立が認められた。そのときにこの問題がある、そのとおりであります。
  159. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 たいへん古い、まだるっこいことを議論しておるようにあなたお思いになるかもわからぬけれども、しかし、これはそうではなくて、沖繩が、アメリカアジアにおけるそうした戦略体制の中のかなめであるという事実、このことをはっきり見詰めながら今後の問題を、好きであろうがきらいであろうが、考えなければならぬわけです。  そこで、振り返ってみますならば、いまお認めのように、平和条約の第三条で沖繩をはずした、このことについては後ほどまた、いわゆる施政権の返還の問題と関連をいたしまして、条約三条それ自体はもう一ぺんお尋ねをいたします。  平和条約が一九五一年の九月八日署名された。フィリピンとANZUSはその前でありますね。その前に米比とANZUSが調印されて、それからその上に平和条約三条ではずされる。その体系の上で米韓、米華、それからSEATO、こういうふうに一九五三年から一九五四年にかけて展開されてまいりました。今度あなたがお会いになろうとするニクソン大統領は当時副大統領として、一九五四年のSEATOの結成には一生懸命、乗り込んでいって動かれたわけです。だから、午前中、麻生君が、ニクソン氏の発言をいろいろと引きましたけれども、彼がSEATOについて、今日機能を失っておるということをみずから認めるのは、アジア安保体制を展開するためにSEATOの結成にみずからが努力をした、そういう経験、彼が今日SEATOの機能喪失、そしてアジアにおける新しい地域集団安全保障体制の確立ということを考えざるを得ない体験があるわけです。そして、その上にもう一つ、六〇年の現行安保条約はニクソン氏が副大統領の当時、あなたのお兄さんと展開をしていったわけですね。大統領はアイゼンハワー。だから、そういう背景の上で、私はやはり沖繩の返還問題というものをグローバルに見ていきたい、こう思うわけです。  これは総理に聞いてもおそらくわからないと思うし、また言わないと思いますから、外務大臣お尋ねいたします。  アメリカアジアで展開いたしておりますアジア安保体制、つまり日米、米韓、米比、米華、ANZUS、こういう中でANZUSだけは三国の複数でございます。多数国でございますけれども、ほかのアジアにおける相互防衛条約というのが二国間の相互防衛条約であるということは、NATOあるいはSEATO、全米相互援助条約、そうした、アメリカが世界で展開いたしております防衛同盟体制の中で、アジアにおいては非常に特異な展開をいたしておる。アジアにおいて二国間の条約体制をつくってきたのはなぜであるか、そのことを日本外務大臣として、あなたはどうお考えになるか。そのことをはっきりいたしていただきたいと思います。
  160. 愛知揆一

    愛知国務大臣 お尋ねになる趣旨が私によく理解ができない点もあろうかと思いますけれども、いままでの経過は経過といたしまして、たとえばサンフランシスコ条約との関係にいまお触れになっておりますけれども、たとえば米韓というような条約について見れば、韓国はサンフランスコ条約には参加しておりません。そういったようなことも含めて、従来の経過はともかくとして、現在どうするか、今後どうするかということを日本外務大臣としてお答えするならば、前々から申しておりますように、形態をいかがにするかは別ですけれども、、アメリカとの間の二国間の安全保障体制というものを堅持をしたい、またそれが最善の選択である、こういうふうに考えております。
  161. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 外務省アメリカ局長お尋ねいたします。  アメリカアジアで展開しておる相互の防衛条約というのが、特異な二国間条約の形態で来ておる。それはアジアのどういう情勢のためにそういう状態になったのか、そのことをお尋ねしたいと思います。
  162. 東郷文彦

    ○東郷政府委員 お話しのように、アジアでは韓国、台湾、フィリピン、その他個別的の相互防衛援助条約ができておりますが、当時の情勢は、朝鮮事変以後極東は非常に不安定といいますか、危険を含んだ状態でございました。その中でそれぞれの国の事情もございますし、またヨーロッパにおいてはたまたま全部陸続きの大陸でございまして、ここにまとまって一つの多数国間条約というものをつくる下地があったからああいう形になったと思いますが、アジアにおきましてはそれぞれの国の事情も違いますし、にわかにそのような多数国間の取りきめをする下地がない。しかし現実の問題には対処しなければならぬということで、アメリカとそれぞれの相手の国の意思が各個に一致したところで、ああいう形の条約がいろいろできたということだと考えます。
  163. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 そういうアジアにおける後進性、それから複雑さ、不安定性というものから、アメリカアジアで二国間条約という非常に強いむしろ支配体制というか、圧倒的に力の違うアメリカが、そういうおくれた国々との間の相互防衛条約をやってきておる。このことがアメリカアジアにオーバーコミットする、介入し過ぎる、そういうことになったと思うのでありますが、どうでありますか、アメリカ局長
  164. 東郷文彦

    ○東郷政府委員 私の見ますところでは、それぞれの集団安全保障条約というものが、アメリカの一方的意思を相手に押しつけるというよりは、それぞれの当事者の間で意見が一致したところでああいう形ができてきたのだと思いますので、これがアメリカの意思を一方的にアジア諸国に押しつける手段としてできたというふうにはわれわれは考えておらぬわけでございます。
  165. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 ちょっと待ってください。一方的に押しつける、それは見解の相違だろう、こういうことになると思いますが、事実上そういう形態であったから介入し過ぎるという現実になった。アジアが動いていく中で、アメリカアジアのそれぞれの国々に深く結びつくというか、深くはまってしまう、こういうことになった根本である、こういうふうに思いますが、その点はどうですか。  それから、そのことはさらにベトナム戦争で失敗をした。今後パリの和平会談のあとで、この二国間の条約という体系が非常に不安定なものだ。それはニクソン氏が選挙の最中に常に、アジアにおける地域の集団安全保障体制を再編成せい、ASPACの問題、これは何回も質問があり、また、いささか的はずれの答弁を、半分当たり、半分当たらぬような答弁外務大臣はしてきておる。  そこで、いま二国間条約で来たアメリカアジア安保体制というのが、介入し過ぎて、しかも米ソ超二大国といった支配体制がくずれて、どちらかというと、これからアメリカ国内のほうに重点を置かざるを得ない、手を引いていく、こういう事態が生まれてくる。これは経済的にもそうですね。そういう中で、いまの二国間条約というものが再検討される。ニクソンは、すでにそれを昨年の大統領選のさなか、あるいはその前には繰り返し言っておるわけです。その点を日本外務省としてどう判断をするか、外務大臣お尋ねいたします。
  166. 愛知揆一

    愛知国務大臣 だんだんと川崎さんの御質問が何を意図しておられるかということがわかってまいりましたが、私はさようには考えません、いままでの経過から申しましても。それから、したがって、外国の政策のことをどうも日本の私としてとやかく申すべきでないと思います。あなたがどうごらんになるかは別といたしまして、私としてそれに対して論評を加えることは慎みたいと思いますが、私は、日本立場としては、ASPACの問題につきましても、あるいは今後の安保条約体制につきましても、従来から申し上げ、また、本日も申し上げておるとおりの気持ちで扱ってまいりたいと思います。
  167. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 少しも中の分析が出てないわけです。ただお役人のように、どう処理をするという、処理が出ておるわけです。まさに佐藤内閣の性格がそのままにじみ出ておるわけです。国民はそれではわからぬのです。そうじゃないですか。後ほどまた本質論をやりますよ。  そこで、外務大臣はよく、というか、常に繰り返しASPAC軍事化の希望国はない、参加の国々の中にASPACを軍事化しようという国はないのだ、こういうふうに断定をしておりますが、これまでの三回にわたるASPAC会議の中において、韓国、フィリピン、タイ、マレーシア、台湾、これらが軍事化を主張しておる。この事実はお認めになりますか。
  168. 愛知揆一

    愛知国務大臣 私の承知しておるところで、ASPACの中でそういう主張が出ていることはございません。
  169. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 これはマレーシアがカンボジアに、入らぬかといって呼びかけをやったけれども、カンボジアはこれを断わっておるわけですね。そういう軍事化の傾向があるということで、カンボジアは断わっておる。これは知らないなら知らないということで、おそらく水かけ論になると思いますから、貴重な時間でありますので、その点はあなたの御見解と私の判断は違うということを明確にいたしておきたいと思います。  そういたしますと八カ国のうち——幸いにして三木さんが外務大臣のときには、これまで軍事化の方向というものについては、させないようにがんばってきた。その点は私高く評価したいと思うのです。いわゆる、そこには三木外交というものがあったと思うのですね。佐藤さんとはだいぶん違って——ああいう外務大臣を置いたのは不明のいたすところだ、こういうふうにあなたは総裁選挙で、ついことばが過ぎたのだろうけれども、言われた。——そこで、ASPACの八カ国のうち、いわゆるそれに反対をしておりますのは、日本、オーストラリア、ニュージーランド、五対三なんですよ。数は少ない。このことを私は事実として、はっきりしておきたい。  では、これは外務省お尋ねします。そういうASPACの中で一あるいは周辺の会議の中でどこか会議を限定すると、その中で言わなかった、こういうふうに逃げるでしょうから、ASPACに関する会議の中で、これらの韓国やフィリピンやタイやマレーシア、台湾が、ASPACの軍事化について強い要求を出しておった、方向を出しておったということについて否定をされますか、事実をあるとお認めになりますか。
  170. 須之部量三

    ○須之部政府委員 お答え申し上げます。  いままでASPACに関しまして、これを軍事化すべしという議論は公式に行なわれておりません。
  171. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 非公式にはどうか。共同声明でいつも問題になっているじゃないか。
  172. 須之部量三

    ○須之部政府委員 軍事化すべしという議論は全然行なわれておりません。
  173. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 まあことばの解釈で、軍事化ということばそのものを言わなかった、おそらくこういうことだろうと思うのです。反共同盟にしよう、あるいはそういうことはあるのです。  それでは、第四回の総会を日本で行なうのでありますけれども、との幹事国として、カンボジアなりビルマなりシンガポールなり、そうした中立的な国々に対して、幹事国の日本は、すでに参加を呼びかけておりますか、どうでありますか。
  174. 愛知揆一

    愛知国務大臣 できるだけそれらの国が参加することを希望しておるわけでございます。すでにラオスはオブザーバーとしては参加いたしております。
  175. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 それでは韓国がことしの初め以来、アジア太平洋条約機構というものをつくろうということで、特にベトナム参戦国とそれから甘木、アメリカを入れた、そういう構想を出し、動いておるという事実をお認めになりますか、外務大臣
  176. 愛知揆一

    愛知国務大臣 私は韓国政府との間にも常に接触の機会を公式、非公式にずいぶん多く持っておりますけれども、私の接触いたしました限りにおきまして、さような提案はございません。
  177. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 それではこの三月に韓国の特使、代表がアメリカを訪問する。また、ベトナム参戦国会議が近くあるわけでありますが、そういう中で提案があっても、日本は断わりますね。そのことをはっきり総理大臣、言明願いたいと思います。   〔委員長退席、櫻内委員長代理着席〕
  178. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 当然そういうことはお断わりしますし、また……
  179. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 私のことばが足りなかったと思いますが、参戦国じゃないのですよ。参戦国が集まって、それを土台にしてアジア太平洋条約機構をつくろうという韓国の提案があるわけです。ベトナム参戦国会議というものは別にあるわけですね。だから、そういうところでそういう提案が出てきて、そういう構想が出されてきて、そうしてアメリカはそれをオーケーする、日本側に出してくる、提案をしてくるということがあっても、日本はそういうものは一切お断わりになりますね。はっきりしていただきたいのです。
  180. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 お断わりいたします。
  181. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 けっこうです。それを貫いてほしいと思います。  それでは英連邦の五カ国も、七一年までに英軍が撤退をするという中で、英連邦五カ国の防衛構想というのがいろいろいま取りざたされております。これもオーストラリアが三月にアメリカに代表を出します、韓国が代表を出す。そういう動きが太平洋、アジアで動くわけですね。そういう事実はお認めになりますね。流動しておる、動いておるということ、いいですか。  ではお尋ねしますが、これは新聞で見かけるところでありますが、岸さんが総理の特使として、沖繩返還問題について三、四月ごろアメリカに行くということも報道されたことがあります。そういう計画はございますか。
  182. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私の特使として派遣するという計画を私、持っておりません。しかし、岸自身がどういうような旅行計画を持っておるか、ただいまのところ私が関知もしておりません。したがって、行くことがあるかもわからないし、欧州へ行くことがあるかもわからないし、行動を縛るつもりはございません。
  183. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 これはまあ、外務大臣は岸さんと云々ということで話し合ったこと等もことしの初めから何べんも出ておるのです。肯定をしたり否定をしたり、出たり入ったり、また引っ込んだりで、わからぬ。これは外務省としても、じゃ、そういうあれはございませんね。外務大臣、どうですか。総理が否定をされたからもう言えないですか。
  184. 愛知揆一

    愛知国務大臣 これはいま総理お答えになったとおりでございます。
  185. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 いずれにいたしましても、そのように、アジアの情勢が、いまベトナム戦後というものを目ざして動いておる。そういう中で、沖繩の返還ということが具体的な日程にのぼっておるわけでありますけれども、沖繩の施政権の返還によって、アメリカが、先ほどから言っておるそういう共同防衛体制の中からはずれるということは、アメリカアジア安保体制の再編成、それはもうアメリカのかってだ、日本が関知しないところだ、そういうふうにお考えになるか、それはやはり一つの再編成のきっかけになると——これは日本の意思が入りますよ。日米安保条約とアメリカアジア安保体制関係でございますから、これは当然に日本の意思が入る。アメリカアジア安保体制というものが変わる一つのきっかけになるというふうに総理はお考えになりますか。
  186. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 御指摘になりますように、沖繩の基地というもの、米軍が持っている施政権、これはまことに複雑なものでございます。私どもが、日本憲法のもとにおいて、他国と攻守同盟を結ぶとか、こういうようなことはできないことも御知承のとおりで、私ども、これはよく、憲法のもとに、また、川崎君もよもや、日本にある憲法に触れないでいまのような御議論はなさらないだろうと思う。私は、もう、憲法がある限り、その心配はないはずなんだ。ただ、しかし、アメリカ自身が、いろんな米台、米韓、米比、その他ANZUS、SEATO、いろいろの条約を結んでおりますから、いまのような施政権を持っている限り、この沖繩の基地というものをアメリカは自由に使っておるわけですね。それほど実はむずかしい問題なんだ。それ以外にもありますよ。この沖繩の返還、この施政権日本に返してもらう、そのためには、たいへん複雑なものがあるわけなんです。私は、これをぜひ実現したい、かように思って、あらゆる機会にそのいい交渉の方法をしたい。もちろん、相手方もあるのですから、やはり外交フリーハンドでいかなければいかない。しかし、私自身が、国民の皆さん方の意思を無視して、そうして単独でこの外交を展開するというものじゃございません。  また、先ほど、私は、いま持っておらないと申しましたが、岸だろうがだれだろうが、とにかく、役立つものがあれば、私は、そういうものも、全部を動員してでも、やはり祖国復帰、これはぜひとも実現したいと思うのです。  ただいまのところ、いままで何度も聞かれるのですが、日米安全保障条約の体制は、私は続けていくということを申しております。が、同時に、沖繩が返ってきたら、この安全保障条約もこれに適用されるんだ、まあ特別な約束をしない限りそういうことになるんだ、こういう話はしております。しかし、その特別な約束があるのかないのか、どうするのだ、こういうような意味においていろいろ聞かれますが、それが大体私が白紙だといままで答えておるんです。その点だけは…(川崎(寛)委員「それはあとで聞きます。」と呼ぶ)あとでお聞きになるのも同じですから、先に申し上げておきます。  だから、これはもう、とにかく、白紙だということになっているんです。私が白紙だと言うのは、できるだけ皆さん方の御意見も聞いて、そうして国民が納得いくような、大多数の国民が喜ばれるような、そういう解決をしたいがためであります。だから、それはもう、どういう立場からであろうが、お話しになっていいんです。これは非武装中立の立場お尋ねになりましても、私はもう、十分お答えもいたしますし、また、そういう立場の方の御意見もとくと伺っておきたいんです。
  187. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 非常にくどいようでありますが、それでは再度確認のためにお尋ねいたします。  どうあろうとも、いかなる形の地域集団安全保障体制——二国間の、個別的な、日米間の日米安保条約以外は地域集団安全保障体制にはいかなる形のものであるにせよ、これには入らないということをここで言明をされるわけでありますね。
  188. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 事前にそういうような条約を締結する意思はございません。日本が攻撃を受けた場合に、日本を助けてやろうというものを断わる筋はございませんけれども、事前にですよ、前もって、そういう条約を締結する、かような考えはございません。明確に申し上ておきます。
  189. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 攻撃をされたときにということ、これは後ほど具体的な安保条約六条の問題と沖繩基地の問題で少しお尋ねをします。だから、この問題は後に残します。これが非常に問題になるわけですから、これは後に残します。  そこで、私は、これは問題を整理しておく意味において、あなたはまた言うかと言われるかとも思いますけれども、ただ、日本が朝鮮戦争のさなかに——朝鮮戦争も事実上一つのイデオロギー戦争であった。——その戦争のさなかに、講和条約と安保条約というもの、講和というものが平和な形でというものじゃないくて、安保条約と不即不離の一体の形で結ばれて出発したということは、これは非常に日本の対米依存というものをつくってきておるわけです。これが、あなたが強調する日米安保体制になるわけです。ベトナム戦争についても、これは野党とあなたとは違う。民社党も含めて違うわけですね。きょうの午前中に麻生君もその点は指摘をしておる。ベトナム戦後、いま朝鮮半島に危機も言われます。そこで、この沖繩の返還というのが日米安保条約というものをどのように変えていくか。条約の形は変えないにしても、中身を変えていく。それは、あなたに今後具体的にお尋ねをしてまいります。当面とか将来とかと伏線がいろいろあるわけです。だから、その問題については後ほど沖繩返還を通して私は具体的に日米安保条約体制の問題をお尋ねをいたします。  しかし、とにかく、日本の戦後の出発というのが、そういう形で非常に複雑な状態で、つまり、対米依存の出発をしておる、これはもう否定できないと思うのですね。  それで、冷徹な弁護士である、力の政治家であるニクソン氏とあなたがこれから十一月に会うわけです。ジョンソン氏は、テキサスの伴睦ともいわれたそうでありますが、そうすると、ジョンソン氏が怒るかもからぬ、伴睦さんに比較されたんじゃかなわぬといって怒るかもしれませんけれども、ジョンソン氏はある程度の腹芸というものがあったと思います。だから、あなたが、両三年、そういう腹芸的なことをやってこられた。しかし、今度やられるニクソン氏、これは非常に慎重な形で計算をしながら新しい政権をいま進めよります。政策を進めよる。だから、私は、このことはよほど、あなたがやろうとしておることを国民にわからして、そしてやらなければ——ジョンソン前大統領アメリカ国内における信頼の欠除というものをつくらした。それはベトナム戦争の結果そういうことになったわけです。ビジョンのない、見通しのない——やめたばかりの大統領に対してそういうことを言うのはどうのこうの言われるかもわからぬけれども、しかしこれは日本民族の今後の運命に関する問題でありますから、それはずばりお互いに議論しておくべきだと思うのです。国内においては、残念ながらいまのところあなたがやろうとしておること、それは白紙だと言う。私はあなたのお習字の墨すりの役はしたくないと思います。墨が薄いとか濃いとか、そういうことで問題がごまかされてはならないと思いますから、これは後ほど詰めてまいりますけれども、しかし残念ながら国内はいま割れておるのです。そうでしょう。十一月というめどがある。十一月というめどをあなたは置いておる。タイムリミットがかかっておるわけですね。そしてスケジュールはいろいろと組まれてきた。その中で、あなたがこの十一月というタイムリミットがかかったこの中で、態度がきまっていない。しかも国民はあげてあなたの考え方に対して、非常に危険だ、残念だ、県民に差別を継続させる、こう言っておるのですね。野党はあげていまあなたの考え方に対しては反対しておる。残念ながら中身がわからぬから反対しておる。あなたは笑っておるけれども、自民党の中もいま割れておるのですね。自民党の中もいま意見は割れておる。そういたしますと、あなたのきわめて少数な、ただ議会内における総理という最高の権力、外交権だけでこの問題を処理できることではないのです。  そこで私は、そういう十一月というタイムリミットのかかった中でこの問題を処理されていくことについて、非常に重要な問題でありますから、まずそういう警告をしておいて詰めていきたいと思うのです。ベトナム戦争が終わったら、和平会談が成立をしたら、沖繩の基地の値打ちは低下するとお考えになりますか、どうでありますか。
  190. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 一つ問題が片づいた、こういう感じでしょうね。
  191. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 一つ問題が片づいた。あと幾つ残っているのですか。
  192. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 あと問題が幾つ残っているかと、これはなかなかむずかしいでしょうね。こういうのがわからないところが国際政治のあり方なんだ、そう幾つ残っているか、この場で返事はなかなかむずかしいですね。
  193. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 それでは、一つ問題が片づいただけで、値打ちは変わらないのでありますか。それとも値打ちは落ちるのでありますか。その点をひとつ明確にお答えいただきたいと思います。
  194. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は、沖繩にアメリカが施政権を持ち、そうして基地を持っている、その基地の力というものは変わりがないと思います。したがいまして、いまベトナム問題片づいた、かように言われましても、それで基地の使命が非常に軽くなったとか、こういうものじゃない、私はかように考えております。基地基地としての力を持っておるのだから。それがいままでは戦争抑止力だ、こういう表現でございました。しかしこの戦争抑止力、これは、沖繩が沖繩として独立してあるわけじゃありません。ハワイとかあるいはグアムその他の基地と本土の基地と合わしてのいわゆる米軍事力を形成する一つとしての沖繩と、かように考うべきだと思っております。
  195. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 まず第一にわが国の安全のためにと、こういうふうに——これまでは極東の平和あるいは日本の平和とその他のアジア自由諸国、こういう並列であった。それが今度の施政方針演説で、まず第一にと、こういうふうに一九六九年の一月一日に変わったのかどうか。このまず第一にと、こういうふうに変わったのは、日本側の主観的な、つまり日本総理大臣としての主観的な立場から変わったのでありますか、どうでありますか。
  196. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 もちろんこれは日本総理としての主観的立場からの変わりであります。日米安全保障条約の評価のしかたがいろいろあるようですから、国民に正しく評価してもらう、そういう意味で私はまず第一に日本、これは安全保障条約の基本的な考え方であります。そして日本を含む極東の安全保障、こういうように私は考えております。  いま私は安全保障条約について考えたお話をいたしましたが、しかしここで混同してもらわないように願いたいのは、沖繩は、先ほど私にお尋ねがありましたように、アメリカの施政権下にある沖繩で、沖繩がどういうことを果たしておるか、これはあるいは並列であるか、同じ立場考えているか、これはアメリカのやることで、私どもがとやかく言うことではございません。
  197. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 先般の楢崎委員質問に対して、基地の態様を首脳会談までにどうするか、こういうことで尋ねたわけですね。返還だけ先にきめられるか、こういうことについて総理はたいへん苦悶をしたような答弁をしておるわけです。できるだけ、基地の態様が固まればたいへんけっこうだが、もっと煮詰まらなければ返還のめどもつかないかもしれない、こう言われましたね、こう答弁された。返還のめどもつかないかもしれない。つまり基地の態様がきまらぬで、返還のめどもきまらぬ、こういうことになれば、これはもう佐藤内閣は総辞職ですね。あなたの命をかけると言った問題ができないわけだから、あなたは退場せざるを得ない。そこで、そういうふうに固まればけっこうだが、煮詰まらなければ、とこう言っておる。それをそのとおりにとれば、もういけなということですね。日米首脳会談はできないということ、このことは明らかでありますね。いかがでありますか。
  198. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私の願うところは、とにかくぜひとも沖繩の早期復帰、これを実現したいと思っていろいろスケジュールを組み、これが今秋、秋にでも出かけようか、秋より前にはなかなか出かけられない、秋以後に出かけよう、こういうことを実は言っておるのであります。ただいま一ぺんの交渉で成功しなかったらやめるかやめないかというようなお話ですが、まあやめろと言わぬばかり一まあそのほうがはっきりしているんでしょう、やめろと。とにかく私はそれはそのときになりまして考えますが、最初からそういう点で出かけることは、これはいかがかと申すのです。私はとにかく祖国復帰を実現することが第一番、その他の事柄について国民から不信任を受ければ、これはもう当然やめるでしょう、申し上げておきます。
  199. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 それでは、日米首脳会談を行なうにあたって、私は四通りあると思いますけれども、その四通りのうちの最後の、つまり基地の態様がきまらぬということでは返還めどがきまらぬというわけで、最後のやつは一つ落とします。そうすると、基地の態様をきめていって返還の時期をきめる、第一。きめずにいって、向こうで返還の時期をきめる、施政権返還の時期ですね。これは楢崎委員質問した点でありますが、返還時期だけで基地の態様は——これは前にあなたがこういう疑いを持たれるような答弁をしておるわけです。だから詰めておきたいのです。つまり東に行ったり西に行ったりしないように私は整理しておきたい。返還時期だけをきめて、基地の態様は返還の際にきめる、まずこれから。返還時期だけで、基地の態様はきめる、これはもうありませんね。
  200. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いかにも具体的に詰めれば一々お答えするかというような発想からやられますが、私は何度も申しましたように、基地の態様についてはただいままだ白紙でございますということを申し上げている。そうして返還とこの基地の状況、このものがやはり結ばれつかないと話は進まぬだろう、こういうことを申し上げている。だから、たいへん頭のいい分析のようだが、いま未定のものが一つありますから——最も大事なところは未定な状況にある。だから……(川崎(寛)委員「未定のことを聞いているんだ。」と呼ぶ)それを聞かれても答えられない。その点で、私が最もいい状況の、国益に沿ったものの結論で出かける、これが私の考え方ですから、まだあした出かけるわけでもありませんし、皆さん方から知恵もつけていただきたい。これこそ国家的なたいへんな問題なんですから。戦争をしないで戦争で失った領土返還を実現しようという……(川崎(寛)委員「それはこの間私に対する答弁で訂正しているんだから」と呼ぶ)だから、その点をやはり皆さんからも十分聞きたいのです。そのことを申し上げているのです。
  201. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 それじゃ、いま言った三つはあるというわけですね。あり得るというわけですね。その三つは全部含んでおる。
  202. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 三つあるか四つあるか五つあるか、そういうこともただいま私はきめておらないということであります。
  203. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 それでは施政権の返還についてお尋ねをしますが、アメリカアメリカが必要とする間、無期限に沖繩を占有する、保有をする権限を持っているのでありますか。その点を明らかにしていただきたいと思います。
  204. 愛知揆一

    愛知国務大臣 条約論についてのお尋ねであるとすれば、もう少し専門的に政府委員からお答えいたしますけれども、私の考え方では、平和条約第三条というもので、アメリカアメリカを唯一の信託統治者とするような信託統治という国連への提案をする、そしてそれがきまるまではアメリカが施政権を持っているということと、それがきまったサンフランシスコ条約の会議のときに日本が潜在主権を主張し、かつ関係国の相当部分がこれに賛意を表しているというところが施政権返還を求める根拠であるということは、昨日も申し上げたとおりでございますから、裏から言えば、施政権返還ができない間は、現在のアメリカ政府立場としては立法、司法、行政三権を引き続き持っているのではなかろうかと想像されます。
  205. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 アメリカアメリカが必要とする間無期限に、ざっくばらんに、もっとずばり言えば、要するに必要とする間無期限に沖繩を保有する権利あり、こういうふうに日本政府は平和条約第三条を解し、そしてアメリカの施政権をそのような状態で見ながら対米交渉をやる、こういうことでありますね。そうしますと、施政権をどのような形で返すかはアメリカの自由でありますか。その点を明らかにしていただきたいと思います。
  206. 愛知揆一

    愛知国務大臣 私どもはいま申し上げましたような解釈というか、従来から引き続きそういう態度でおりますから、アメリカとしては施政権者である立場において、その処理についてはアメリカが権限を持っている、こういう解釈をしてよろしいのではないだろうか、こういうふうに考えております。  なお、当然よく御承知のことでありますが、アメリカが平和条約第三条によりまして信託統治の提案をするかどうかということについては、おそらくそういう意思はいまはあるまいと思います。同時に、そういうことを申し出るかどうかということについての期限も何も約束されているわけではございませんから、やはりアメリカは自由にと言うと語弊がございますけれども、日米の返還交渉がまとまればこれで解決ができる。すでに小笠原等にももう前例もある、こういうふうに御承知願って間違いないかと思います。
  207. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 先般の日米共同声明の継続協議には、基地の態様についても話し合う、そういうことも含んでおるのでありますか。その点を明らかにしてもらいたいと思います。共同声明に、返還について継続協議をやるといっておりますね。
  208. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 これは、共同声明どおりやっているということですね。だから、継続協議は一度やりましたね。その後もまた引き続いても協議をやるということになっていると思う。また、いわゆる形を協議という……(川崎(寛)委員「違う、違うんだよ」と呼ぶ)違う……。どうもぼくはいま、この前一度やったような報告を聞いているように思いますがね。
  209. 愛知揆一

    愛知国務大臣 ちょっと念のために補足いたしますが、基地の態様ということは当然その中に入っている、こう私は理解いたします。
  210. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 これは、あの当時の説明はそうなっておらぬ。施政権の返還については継続協議をやるといっておるが、基地の態様については入ってなかったと思うのです。どうですか、それをもう一ぺん明確にしてください。
  211. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いま外務大臣お答えしたと思いますが、施政権返還についての話をする。基地の態様そのものについて具体的に話し合う、こういうものじゃない。
  212. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 それで明らかになりましたね。  そこで、平和条約三条について先般春日委員質問されました。いま外務大臣も信託統治制度のことにちょっと触れられました。私はこの点について少し詰めてみたいと思います。  ケネディの新声明、これは一九六二年でありましたか、ケネディの沖繩についての新政策、あるいはもっと近いところでいえば、あなたとジョンソンがやった第二回の日米共同声明、ここで日本に返すということは明らかになったのでありますね。念を押したいと思います。
  213. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 あの共同声明を読んでいただくと、施政権を返す方針のもとに話をする、こういうことになっているのです。だから、方針はきまっておる、かように考えていいことです。
  214. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 方針はきまっておるけれども、返すとは言明しておらぬ。そうしますと、返さないということを言うこともあり得るわけでありますか。
  215. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 どうも、方針がきまっていると方針以外の方向に行くわけがないと思うのですが、何か疑問がありますか。その方針はきまっているのですよ。
  216. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 それでは、返さないということはないのですね、ありませんね。返さないことがなかったら、信託統治制度にはしないことじゃないですか。そうすると、信託統治制度にはしないということは明らかですね。その点を確認をとりたいと思います。
  217. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 信託統治にいままでもしておらないし、これからもするつもりはない、これはもうはっきりしている。だから、いま返ってくる方針で交渉ができるのです。信託統治になったら、返るということからうんと遠くなりますよ。そんなものはいつ返ってくるかわからない。
  218. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 そうしたら、先ほど外務大臣が説明されておるのです。アメリカを唯一の施政権者とする国連の信託統治制度のもとに置くという提案をすることを日本は認める、そして立法、司法、行政、一切の権限を提案し可決されるまでの間持つんだ、こういうことになっておりますね。そうすると提案するということがないわけでしょう。いままであなた方は、提案権はあるんだということで条約三条の合法性を言ってきたわけだ。しかし提案権はもうなくなっているじゃないですか。信託統治制度にしないということは明らかでありながら、提案権はまだ残るのですか。
  219. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 どうも私そのお尋ねの点をつかみかねるのですが、これは第三条の書き方から見れば、いまのとおり、提案することがあればそれに反対しないという、そういう書き方ですね。だけれども、向こうもしないし、こちらのほうもそんなものを提案をするというような相談があればもちろんそれを押えるという、だから提案をしないし、今日まできているので、そうしてジョンソン大統領と私との間で今度は返還の方針でひとつ話し合おう、こうなっているのですから、いまこれを信託統治、そういうことを何か相談することはないのですね。  だけれども、第三条自身は、書いてあることは、その条文をちゃんと読むと先ほど来のようなことになっている。そのために第三条自身が、いまやっていることが第三条違反だとかいうようなものではない。これはあるいは先走った私の議論かわかりませんが、そこは混同されないように願いたいと思います。
  220. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 だから、私は最初にお尋ねしたのですね。アメリカが必要とする限り無期限に沖繩を保有する権限を持っているのか、こう言った。そうしたら、その条約三条で持っているんだ、こう言ったのですね。ところが、その条約三条は信託統治制度にしないということが明らかになった。提案しないのですよ。だからこれは実行不可能じゃないですか。実行不可能ですよ。民法だって実行不可能の契約はこれは無効ですよ。そのことを沖繩百万県民が——これは後ほど触れますが、下田駐米大使がたいへんけしからぬことを言っておる。信託統治制度というこの化けもので百万の県民は二十四年間苦しんできておる。厳密にいえば昭和二十七年以降でありますけれども、とにかくこの信託統治制度という化けもので苦しんできておる。実行不可能だということがありながら、なおかつ無制限に、無期限にアメリカが持つ権限があるんだという解釈に立って、この条約第三条に基づいたアメリカの沖繩支配というものを許してきているわけです。だから実行不可能なんでしょう。だから沖繩の県民が即時無条件全面返還と言うのは、この施政権の第三条の実行不可能の条約というものは直ちに撤廃をして、固有の領土なんだから返しなさい、当然の国民の要求じゃないですか。それがどうしてわからないのか。それが私にわからぬわけです。アメリカ側立場考えるあなた方の気持ちというものがわからぬ。実行不可能なんでしょう。実行不可能であることは明らかでありますね。どうですか。
  221. 愛知揆一

    愛知国務大臣 これは条約的に法制局長官にでもわかりやすく説明を願ったほうが、条約論としてはよろしいと思います。しかし、私の理解しておりますことはこうなんです。先ほど来申しておりますように、アメリカは信託統治の提案をすることはできる。しかし、いつまでにそれをしなければならないという義務は負っていない。アメリカは国連に対してそういう提案をする権限は持っている。しかし、それはやらないわけですね。やるかやらないかはアメリカ態度にかかりますね。アメリカがそれをやるかやらぬかということをきめないでいる間は、立法、司法、行政、三権を持っておりますね。そのアメリカ日本に対して現に小笠原を両国間の協定で返還しているではございませんか。私は条約論、法律論からいえばそれが正しいと思います。したがって、沖繩返還に対しましての法的根拠は、それに加えるのに、日本はかねがね潜在主権を主張しているんだ、そこに根拠があるわけでございます。
  222. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 それはアメリカ側からいえば、条約の字づらをそういうふうに解釈すれば、いつでも提案権はあるんだという解釈に立つでしょう。しかし、両国の最高首脳が返すんだ、もう返さないことはないんだということを確認されていながら、なおかつそういう字づらの解釈で提案権はアメリカ側にあるんだ、これが沖繩問題のあなた方の出発点になるわけです。具体的にどうですか。百万県民の基地公害の問題、B52の撤去にしても、総合労働布令の問題にしても、あるいは裁判の問題等にしても、これは全部あなた方が施政権がないからといって放置しておる。ところが、防衛問題については極東の範囲、極東の役割り、そういう防衛上の役割りについては、これを最大限に評価をしていっておる。これが出発です。しかし、これは議論をしても、私は、あなた方はなかなか納得しないと思う。しかし国民は、固有の領土を返せ、即時無条件全面返還というこの根拠、これは私は理解できると思うのです。グアンタナモの基地協定とは明らかに違うのです。だから、もっと固有の領土を返せ——私は先般の春日氏の質問をさらに詰める意味でこれをやってきましたけれども、国民は、この実行不可能な信託統治制度ということを前提にした沖繩の施政権というものを前提にしておる佐藤内閣の領土返還の姿勢というものを支持をしない、私はこう思います。この点はここにおいておきます。  そこで、この平和条約の三条が——「今週の日本」という政府が金を出しているPR紙がございますね、これに下田氏が、自分は外務省最古参の者だということで得々と語っておるわけです。あるいはこれは読売の一月八日の座談会、この中でも信託統治制度にしたのは、吉田元総理とダレス氏の腹芸だったんだ、こういうことを言っておる。その腹芸で実行不可能な信託統治制度というものの中で百万県民はこの二十数年間施政権という化けものの中で苦しんできた。といたしますならば、平和条約第三条による沖繩の分離というのは、まさに日米合意による差別分離ではないですか。私はそう思います。総理見解伺いたいと思います。
  223. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 川崎君、だいぶまげて考えておられやしませんか。御承知のように、さきの戦争で私どもは、沖繩はもちろん占領された、激戦が展開された後、占領された。本土、これは激戦は展開されなかったが、占領された。こういう状態ですね。そこで普通の状態なら、必ず戦勝国は、自分たちが占領した地域、それをなかなか返すものではございません。領土というものはそういうことでしばしば甲から乙、乙からまた甲にというように歴史は繰り返されておる。この事実はお認めだと思います。  私は、吉田総理とダレスとの腹芸という、それは沖繩に対してやはり領土を主張したところが必ずあったに違いないと思います。その領土を主張するところのものを、やはりこれは日本本来の領土だ、さような意味から、その主張に対する一応の防波堤というか、そういう意味でああいう施政権を認めるという形になったと思います。私ども残念ながら戦争に負けて無条件降伏したのです。しかし、それにしても、この南の領土については、そういう潜在主権を認めさすとかなんとかして、これがいつか返ることのできるような状態に取りきめられたと思います。それがいわゆる腹芸であったと思う。それで沖繩の人が苦しんだと言われるけれども、私は、今日祖国復帰、これの交渉ができるのも、あの第三条の規定があるからです。もし信託統治にでもなっていたら交渉する余地はない。(「信託統治にはできぬ」と呼ぶ者あり)おそらく絶対にそんなことはない。だけど、(「いまの時代に……」と呼ぶ者あり)いまの時代にと言うが、これまでにそういうことがあったら、これはたいへんなことなんです。だから、私は、これはいまわれわれが要求しているのは、日本固有の領土だ、そういう意味におき、また、ここに住んでおる百万は日本国民、同胞だ、この立場に立って私ども主張している。だから、これに対して佐藤内閣の返還交渉国民は支持する者なし、かようにきめつけられると、私も一言なきを得ない。さようなものじゃない。だから、この歴史的な事実をそのままもっと正しく認識していただきたい。そうして私どもが何がゆえにこのような苦しい状態において交渉しているか、これについても理解してもらいたいのです。私は、そう簡単なものじゃないんだと思う。これは第三条が有効だとか無効だとか、そんな議論からスタートしてやるわけのものじゃないと思う。私はむしろ、これは日米双方の理解と協力、この親善の関係において解決すべき問題だと思う。また、その方向において進みつつあるのです。そういう際に、これはやはり私どもに対してももっと声援していただきたいし、力をかしていただいて、そうして佐藤のやること、どうも非武装中立じゃないからその点はけしからぬけれども、とにかく早く祖国復帰するための国民の世論、一翼かしてやるよと社会党からも言っていただきたいのです。政府のやること、それだけを批判し、政府は間違っていると、こういうことも言いたいでしょうけれども、それだけじゃ事は足りないんだ。そうして、もうしばしば言われますように、沖繩の同胞は、これを日本国の国内における政争の具に供してもらいたくはないと言っているのです。これをお互いにひとつ理解してやろうじゃないですか。私は別に社会党をとやかく言って非難するつもりはございません。むしろ力をかしてくださいと言ってお願いをしておる。そうして私は、最善を尽くす方法があればその方向で努力すると言っておるのですから、あなた方の考え方、一切聞きませんという、そういう立場じゃございませんよ。私はあらゆる立場でそれぞれの方が、この祖国復帰を実現するのに役立つお話ならいつでも聞きますという、どうかこの場をそういう意味で使っていただきたいのです。これを私はお願いしておるのです。
  224. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 いずれ、これは一番基本の問題であります。しかも、沖繩返還問題の基本が何であるかということを私はここであらためて問いたいと思うのです。沖繩返還問題の基本は何か、総理の御見解をただしたいと思います。
  225. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いまお答えいたしましたように、沖繩は日本固有の領土でありますし、また、ここに住んでおる百万の同胞、これは沖繩県民といわれ、同胞といわれしておりますが、みんな日本人であります。そういう意味から私どもはいまこの祖国復帰をほんとうに願い、これが実現するまでは戦争は終わらないと言ったのもそういう点でございます。私どもはその立場に立って交渉する考えであります。
  226. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 それでは次に安保の取り扱いについて具体的に詰めたいと思います。  一九七〇年の六月二十三日は自動延長かどうかということだけではないと思うのです。そのことじゃないと思うのですね。もっと大きい、つまり七〇年の六月二十三日以降、これは一佐藤内閣が——当時佐藤内閣が存続するとしても、これは国民がこの十条二項からくれば、安保条約の廃棄、それから自動延長、固定延長、この三つの選択権を持つことになると思うのです。その点はいかがでありますか。
  227. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いま言われるように三つのものがあるだろうと思います。
  228. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 そういたしますと、佐藤内閣は自動延長を前提にした日米安保体制の堅持、こういうことで進められますね。ですから、これはどういう形で自動延長にするか、固定延長にするか、それはあなた方の問題です。しかし、いま言われたように、七〇年の六月二十三日以降は、国民が廃棄、自動延長、固定延長という三つの権限を、つまり選択権を国民が持つんだということがいま総理から確認をされました。これは非常に大事なことだと思います。その上に立って今度の日米首脳会談を考えますと、私は、本会議、またこの委員会を通じて、ずっと議論になっております、あなたが白紙だ、こう言っておる議論の本質に触れてくるわけでありますけれども、核つき自由使用ということになれば、一九六九年の、ことしの十一月に基地の態様が核つき自由使用——これはあなた白紙だと言うかもわからぬ。だから、もし核つき自由使用ということに仮定をして、核つき自由使用、こういうことになったとする。そういたしますと、非核三原則あるいは事前協議の問題等が出てまいりますが、核つき自由使用、こういうことになって返還がきまるということになりますと——返還はあなたは来年じゃないとこう言っておる。内田さんの質問に対して来年ではない、こう言っておりますね。そうすると一九七X年ですね。あなたのスケジュールからいけば一九七X年。この一九六九年にあなたがきめられてくる基地の態様によっては、そしてそれがもしも核つき自由使用、こういうことであるならば、一九七〇年以後の日米安保体制というものは、従来の日米安保体制と現在の沖繩が切れておる日米安保条約体制というものと質的に違うわけですね。日本の領土の中に核つき自由使用という特別地域が一つあることになる。これは後ほど安保条約との関係お尋ねをしてまいります。そういたしますと、あなたが外交権だということで、この十一月に首脳会談でもしも核つき自由使用だ、こういうことになりますならば、いま言ったように、安保の大きな変質をやるわけですね。それだけの権限を国民はあなたに与えていない。いまあなたは一九七〇年の六月二十三日以降は廃棄か、自動延長か固定延長かという権限は、国民が選択権を持つんだということを確認をされた。それであるならば、そのことがきまらない前に、それ以降の日米安保体制というものの質をこの十一月の首脳会談でおきめになるということは許されないことだと思うのです。それは許されないことだということをあなたはお認めになりますか。
  229. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 たいへんな仮定の質問でございます。(川崎(寛)委員「だから、もしそうなったらということです」と呼ぶ)たいへんな仮定なんですね。私が言えることは、まず日米安全保障体制、これは堅持するということを言っている。しかし、それをどういう形で残すか、これはまだきめておらない、かようにも言っております。また日米安全保障条約は、憲法と同様沖繩にも特別な約束のない限りそのまま適用される、こういうことを言っている。こういうことを前提にして、いまお尋ねのあったことは仮定の事実だから答えられない、かように私申し上げます。
  230. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 それでは十一月に行かれますまでに、自動延長、七十年の六月二十三日以前の問題ではなくて、六九年の十一月前にこの安保条約の問題についてはきめなければいけない。先ほど国民の選択権ということをあなたはお認めになったんだから、そうなれば十一月の首脳会談に行く前に、従来は来年の六月まで、こういうふうに言っておられましたが、そうするとあなたは、この秋行かれるまでに取り扱いについてはおきめになるということを言明できますか。
  231. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 まあいまからなかなか予測のできないような状況の問題でありますから、御意見は御意見として拝承しておきます。
  232. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 白紙ということは、基地の態様は白紙だ。このことは、つまり非核三原則の持ち込まずが一つですね。白紙というのは非核三原則の三つのうちの持ち込まずが一つ。それから事前協議、これについて留保しておるということですね。
  233. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 非核三原則、これは自分たちが持っておるわけじゃないのですから、持ち込まずというのは不適当ですね。やはり持ち込まさないというか、何か中に入らないというそのほうが正しいと思うのです。そのことは、いままで政策論争として私がりっぱに守っていく、こういうことを申しております。でありますから、またいまも、もう一つ自由使用だ、こういうような話を言っておられますが、自由使用ということがどういうことなのか。これは何か施政権が返らないような……。(川崎(寛)委員「端的に答えてください」と呼ぶ)いや、端的ではときどき間違うのです。それはどうしても間違うから、よく話をしないと、理解のいくように申し上げないといけない。それで、私はやはり自由使用という単なることばだけだとずいぶん誤解を受けるだろうと思うのですよ。しかし、いま御懸念になる点は、おそらく事前協議によって片づくような問題ではないだろうか、かように私は思いますから、私のつけ加えての説明もひとつお聞き取りいただきたい。
  234. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 そうすると非核三原則、三つの原則だと言いながら、実は二原則一政策、こういうことですね。非核三原則は二原則一政策、こういうことですね。原則は二つしかないのですね。どうですか。
  235. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 二原則とか三原則とか言われますけれども、これも憲法論争から、前のつくらず、使わないという問題は、これは一応憲法論争の問題があるということだけ御承知おき願って、三つを含めて私は、政策としてこれは守っていくということをはっきり申し上げておきます。(川崎委員「原則でなくて政策ですか」と呼ぶ)これは厳格に言うと、前の二つ憲法の問題としては先ほど法制局長官からもお答えしたとおりだ。また、もう一つは、わが国の原子力基本法、その制約も受けております。しかし、第三の問題がしばしば問題になる、かように考えていただく。それでいいのです。だから前の二つは、まあ憲法の問題でなくても、ある程度はこれからいつでも改正されるような——原子力基本法によって、これははっきりなにができない、これは平和利用はできるが、軍事的には使わない、こういうことでございますから、第三のものはどこまでも政策問題だ、かように思っております。
  236. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 春日氏に対して、非核三原則は堅持する、こういうことでまいりましたね。そうすると、この非核三原則堅持ということは、昨年の通常国会で私に対しては、核つき返還の場合は、非核三原則はくずれますねという私の質問に対しては、核つき返還の場合にはくずれます、こう言った。そうすると、春日氏に対して非核三原則は堅持する、それは依然として本土だけですか。そして、あとはまだ白紙。そうすると、核つき返還の場合は、非核三原則はくずれるということは、もう一ぺん確認をとりたいと思いますが、くずれますね。
  237. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いままで一貫して説明していたものは、本土について非核三原則は守る、堅持する、かように申しました。  それから、ただいまは、沖繩に核のものがあったら一体どうなるのか、それはくずれるということです。これははっきりしている。しかし、私どもは、これは特別な約束がない限り、沖繩が日本に返ってくるということはこれは本土の適用している憲法をはじめその他の法律がそのまま適用されることを意味する、こういう説明もしておりますから、ただいまのような点についてあまりとやかくお考えにならなくてもいいのではないか、かように私は思います。  そこで、もう一つつけ加えておきます、大事なことですから。基地の態様については白紙だ、かように申しておきます。
  238. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 非核三原則は堅持する、本土は堅持する、そこまでははっきりしていますね。  ところが、核つきで入ったらくずれる、基地の態様は白紙だ、特別の協定がない限り、こう言いますね。そうすると、特別基地協定を結ぶことも検討の中の一つでありますか。
  239. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 これはもうあらゆる面から考えていかなければならぬ。これはいま検討したからそれがそのほうへ結論を出した、こういうものじゃございません、結論は出しておりませんけれども。私は、むずかしい問題でありますだけに、白紙だというのは何もやらぬということではない。あらゆる面からいま検討している、こういうことでございます。
  240. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 あなたは、昨年の夏でしたか、臨時国会で私がお尋ねしたときには、キューバのようないわゆる租借地的なものにはしない、こう言った。そうすると、その特別協定という形で本土から離すということもなお検討の一つだということになると、従来の事前協議の扱いだと言っておった問題がもっとまた複雑になってくるわけです。あなたは、施政権はやはり全面返還だ、こう言ってきました。しかし一方では、基地と施政権は分離できる、こうも言ってきた。こう言ってきましたね。そうすると、あなたが考えておる基地と施政権を分離した場合の、つまり統治権は返すが、その特別地区というものを設けるという設け方も検討の一つでありますか、どうでありますか。
  241. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 どこかの席でキューバにおけるようなことは考えておらぬということを申しました。だから、これはもうそれを取り消す考えはございませんから、さように御了承いただきたい。
  242. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 それではキューバというものに代表されたそういう特別基地協定はやらないということは言明できますか。
  243. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いま私ども非常にきめかねるというものは、基地の機能——基地自身日本に返ってくる、しかし、その基地の機能はどういうような程度になるかという、そういう問題について私が白紙であるのです。でありますから、白紙と申しましても、よほど狭まってきておる。(発言する者あり)楢崎君ならわかっていただける、かように私は思いますが、これはよほど……。大体そういうような問題でございます。
  244. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 そういう問題だという、そういう問題がわからぬのですよ。総理、もう一ぺん……。
  245. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 施政権は返る。それが分割的な施政権返還ではない。そのとおりですね。私どもは、さような意味交渉を持ちます。だから、基地そのものが施政権の返らない特別地区だとか、さようなものにはしない。これだけははっきり言っているのです。
  246. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 条約局長お尋ねしたいと思います。  現在の安保条約下にある本土の基地と、それから現在の沖繩の性格を一ただ、これは問題は非常に複雑です。道路の問題やら何やらありますから非常に複雑でありますけれども、少し単純化して考えるならば、現在の沖繩の性格というものを、現在基地がある地域だけというものに圧縮をして残した。まあ事前協議をかぶせるだけよりも、ちょっと強くなりますわね。そうなりますと、沖繩地区の統治権というのは、もしも現在の安保条約下の基地ということになれば、統治権は日本に属する。そして、地区の内外で駐留軍人に対しては一定の治外法権が認められるとともに、その地区内では管理警察権だけは認められることになりますわね。ところが、現在の沖繩の基地の機能というものを認める、そしてその基地に圧縮していくという形の、そういう特別な地区、つまり特別な定めがない限り、こう言っておられますが、特別な定めを、もしして、そういう現在の基地の機能というものを圧縮をした基地をつくっていく、こういうことになった場合には、その地区の統治権はアメリカに残るのですね。それから地区外では、駐留軍人に一定の治外法権が認められる。それから地区内では、一般人に対して相当広範囲な立法、司法、行政にわたる支配権が今度は米軍側に認められる。つまり自由な軍事基地、こういうことになりますね。どうですか。
  247. 佐藤正二

    佐藤(正二)政府委員 いろいろな形態が考えられるわけでございます。地区が特別地区になりました場合にいたしましても、いわゆる先ほどお話に出ておりましたキューバのグアンタナモ地区のごとき、ああいうふうな租借地的なものになってまいりますれば、非常に米国のほうの施政権が残っていくという形になりますし、そうじゃございませんで、安保条約をかぶせまして、それから施設区域の提供をやりまして、しかも先生のおっしゃるような基地の態様と申しますか、オペレーショナルな態様でございますね、そういうふうなものをルースと申しますか、自由にする。そういうふうな形もできないことはないと思います。いろいろな形が考えられますので、そのときの形態によってアメリカの施政権が非常に強くなったり弱くなったりという形があると思いますので、一がいにお答えできないと思います。
  248. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 これはなかなか議論が詰めにくいと思いますね、また仮定だ何だと逃げられるから。  大蔵大臣お尋ねします。現在の沖繩の基地の機能というのは、アメリカが電力も水道も油も全部握っておる。それはアメリカの資本でやっておりますね。そうすると、一体化政策というのが、昨年の十一月の五日閣議決定で出されました。三カ年間で本土と変わらないようにするんだ、こう言っておる。  そこで、今度日米首脳会談に行かれるにあたって、一体化政策のほうはわきに置きましょう。基地の機能を維持していく一番一つの大きな原動力としての水なりあるいは電力なりあるいは油なりと、こういう基幹産業的なものをアメリカ側が握って沖繩の基地を統治しておりますね。ところで、この基地というのを、あなたは全面返還をやるんだ、施政権の全面返還をやられるのだ、こういうのでありますならば、当然にこのいま言った電力や水や油脂やこういったものを日本側が買い取る。管理権を日本側に引き取る。それは当然買わにゃいかぬですね。その計算。それから安保条約のもとに移れば、地代を払わなければいけませんね。特別の地域の定めをしない限りは、安保条約下の基地として地代を日本が払わなければいかぬ、大体そういうこともつまりめどを立ててあなたは外交交渉をやり、施政権の返還というところまでいくのか。そういうことはあとの問題なのか。これは沖繩の基地が世界に例のない非常に複雑な基地であるだけに、私は、あなたの言う将来本土並み、当面沖繩の基地の現状をと、こういう形のものではたいへんな危惧がそこにあるわけです。大蔵大臣、そういうのをはじいておるのですか。政府側として検討しておりますか、どうでありますか。
  249. 福田赳夫

    福田国務大臣 まだ基地の返還の態様の概貌も白紙の状態でありますので、ただいまのお尋ねのような問題は検討しておりませんでございます。
  250. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 私は、内田委員答弁をされた総理質問を非常に重視しているのです。「私はことし出かけるが、何らの準備のない今日、」いいですか、「何らの準備のない今日、来年沖繩をかえしてくれるとは私も思わないし、また国民全体もそこまでは考えておられないだろう。」冗談じゃないですよ。あなたは一昨年何と言ったのですか。両三年の間に返還のめどをする。ところが国民は早く返せと、こういつているのでしょう。めどだけつけてくれなんて言っておらぬのだ。この準備がないというのは何ですか。何の準備がないのでありますか。私は、この準備というのは、沖繩返還を通しての佐藤内閣の長期展望、このことを考えるのです。長期展望を考えるのです。だから、ただ単に一つ一つのこまかい議論がどうでなしに、佐藤内閣が長期にわたって考えておる、あなたが政治生命をかけようとしておる問題が、ここに何らの準備もないということにあらわれておると私は思うのです。これは何でありますか。
  251. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ジョンソン大統領との声明は、私が申すまでもなく、両三年のうち返還のめどをつける、こういうことでございますね。そういうことを言っておるので、来年返ってこい、こういうわけじゃない。また一部においては——しかし、国民のほうからいえば早期返還、しかも無条件即時返還、そこまで実は国民の声もあります。ことに野党の諸君からは、そういうのは非常に強く出ております。これはそこに問題が一つあります。だが、ことに私が、返還の方向はあのジョンソンと私の声明できまっておるけれども、しかし基地については、まだ先ほど来申すようにこれは白紙だ。さらに、そのうちから水道、電力これを買い取れ、幾らで買い取るのだ、こういうようなことまではもちろん考えておりません。しかし、この基地の態様にしても、また施政権が返還されるについては、道水の供給あるいは電力の供給、これは当然政府において支配できるような形でなければ、これはもういまの施政権返還というものが無になるでしょうね。だから、そういうことはしない。油まで云々されましたけれども、油は私は自由に購入できるものじゃないか、かように思っておりますけれども、水道、電力の供給、こういうことは施政権とは申しませんけれども、やはり公的機関が供給するのが当然じゃないだろうか。米軍が一般に市民に供給してくれる、これは異例のことだろう、かように思いますので、そういうことは当然こちらへ返してもらいたい。しかし、その金額が一体幾らだ、こう言われましても、そこまで計算していないというのは、これは当然です。だから、そういう点は、これから先の実行の問題に、どうして日本に返ってくるか、それが問題なしに円滑に返ってくるか、こういうときになって考えていきたい。
  252. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 沖繩の施政権が返還されると、日本の施政下に入るわけですね。そこで本土同様安保条約の日米共同防衛区域になりますね、外務大臣
  253. 愛知揆一

    愛知国務大臣 そのとおりでございます。
  254. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 事前協議条項がはずされて、自由使用、こういうことになりますと、沖繩の米軍基地は直接作戦行動ができますね。
  255. 愛知揆一

    愛知国務大臣 それは沖繩の基地の態様ということに関連いたします部分は、これは白紙でございます。
  256. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 だから私は、事前協議条項がはずされたらと、こういう条約論として言っているのですよ。それまでも審議を拒否するのですか、そういう中身について。条約論をやろうというわけですよ。  だから、事前協議条項がはずされて、事前協議三項目がはずされる、こういうことになれば、沖繩の現在の米軍基地は、米軍は直接作戦行動ができますね。安保条約のとおりですね。そこからいって当然なりますね。
  257. 愛知揆一

    愛知国務大臣 これは大事なことでございますから、ただいま申しましたように、仮定のそういうことを考えながら御答弁することは、条約論といたしましても、お答えはできません。
  258. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 事前協議がはずされれば、そうして現在の沖繩の基地の機能というものを持てば、できるじゃないですか。外務省条約局長、お願いします。
  259. 佐藤正二

    佐藤(正二)政府委員 大臣答弁されたとおりでございます。純粋法律論だけを申し上げますと、事前協議を受けてイエスと言った場合、事前協議がなかった場合、はずれた場合、これはできます。
  260. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 あたりまえのことですね。そこでそういう状態を想定して、少し沖繩の基地というものの、あなたは白紙だ、白紙だと言っておるけれども、一つの想定をやりたいと思うのです。  時間がたいへんなくなってしまったのですが、トンキン湾事件を私は例にとって考えてみたい、こういうふうに思います。これは一つ一つ聞いておりますと、あなた方は全部逃げますから、私が一応経過を振り返ります。  六四年の八月二日、マドックスとクーナジョイが国籍不明の魚雷艇に攻撃をされた、こういうことで五日、アメリカの空母艦隊、それから戦闘爆撃機が、その根拠地だということで、自衛権の行使を発動いたしまして、そうして燃料基地やら魚雷艇の基地やら、そういうところを六十数カ所にわたって弾薬庫を片っ端からたたいたわけですね。これがトンキン湾事件であります。これはプエブロの場合も、あるいは日本のかつての柳条溝の場合でも、たいへんあとで問題になっておることで、つまりこのトンキン湾の場合もかってに作為したということは、これはアメリカの議会でも問題になっている。アメリカの上院の外交委員会でも、これはアメリカ側がつくったのだ、こういう点は相当議論になっておる点です。ただ、最終的な認定者がないということになりますが……。そこで自衛権の行使をして、国連の安全保障理事会に報告はいたしておりますけれども、これは正しい、安全保障理事会が認められた戦争としては続いてない。ただ国連憲章五十一条の自衛権の行使ということで現にやってきておるわけですね。そうしてさらに、これは八月の五日、当時のライシャワー大使が当時の池田総理に報告をして、一年後になってようやく国会でも問題になりましたが、四条に基づく随時協議だ、こういうことが当時議論になってまいったわけです。  そこで、きのうからも憲法と侵略あるいは攻撃、こういう問題についてはいろいろ法制局長官も言っておられたわけだけれども、この侵略というのは非常にむずかしい、条約上も不明確な問題であります。しかし、ダレス的な予防自衛というものは、アジアにおけるいろいろな問題を非常に起こしてきておるわけですね。そこで、こういうトンキン湾事件というものを一ぺん振り返ってみて問題を想定したい、こう私は思うのです。  いま条約局長が言われたように、直接作戦行動ができる。そこで、A地区にそういう問題が起こったということで、沖繩の米軍から直接行動を起こす、攻撃を起こす、そういたしますね。それが今度は沖繩は日米共同防衛区域でありますから、もし日本——日本の本土でもよろしい、沖繩の基地でもよろしい、報復を受けますと、五条が発動されて、日本は共同防衛しなければなりませんですね。この点条約局長いかがでありますか。
  261. 佐藤正二

    佐藤(正二)政府委員 全く仮定の純法律的なものだと心得えて御答弁いたします。  日本に武力攻撃がございましたときには、五条が発動いたしまして共同防衛義務が起こります。
  262. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 つまり沖繩をもし現状のような基地で置く、こういうことになると、事前協議条項をはずした沖繩を現在のような基地で置くということになりますと、いま仮定の議論として進められましたけれども、従来は共同防衛区域ではなかった、しかしこれからは共同防衛区域に——仮定の議論ですよ、あなた心配するから——なるわけでありますけれども、つまり戦争に巻き込まれる、このことは非常にふえてくるわけですね、その危険性というものは。つまり沖繩における命を守る県民共闘会議の諸君がB52の撤去で立ち上がっておるのも、そこにあるわけです。だから、この沖繩を事前協議条項をはずした特別の基地にするということが、日本国民にとってどんなに戦争に巻き込まれるという従来の議論がさらに展開をしていくかということを、はっきり知らなければならないと思うのです。これは極東の範囲の問題もございますが、これは沖繩の現在の基地の機能というものを持つならば、極東の範囲といったいろいろの議論も全部吹っ飛んでしまう、このことを指摘しておきたいと思うのです。  次に私は、最初にちょっと触れた点でありますけれども、もし朝鮮半島で火が吹いたとする——これも仮定ですよ。火が吹いたとする。沖繩のB52、これはまだ撤去されていない。このことはまだ議論になります。しかし、B29が前の朝鮮戦争のときには飛び立っていった。このB52が朝鮮半島に飛んでいく、もしその場合があるならば、そういう不幸な場合があるならば——あり得るわけです、これは条約論、法律論として。そういたしますと、沖繩はいま米韓、米華の防衛同盟条約からははずれましたね、先ほど最初に明らかにしたように。はずれておるのです、返還されたらですよ。返還されたらはずれておる。そうして朝鮮半島で火が吹いて、もしもB52が沖繩の、先ほどから仮定のあれで直接行動を起こす、こういうことになりますと、そして日本が報復爆撃を受けた、報復攻撃を受けたという仮定に立ちますならば、今度は、先ほど条約局長答弁のように、五条で共同防衛、それが一つ。それから米韓防衛条約は当然発動ですね。条約局長、よろしいですね、当然発動する。そういたしますと、沖繩の施政権が返還をされて、もし沖繩の現状というままでいくならば、沖繩の基地の現状というままでいくならば、いまのような想定に立ちますならば、日、米、韓という間の三国共同防衛というものが、二つの条約が結び合ってここにでき上がるわけです。つまり施政権が返還されない現在と、されて、もしそのような基地の状態になった場合には、こういう違いが出てくる。その点を条約局長お答えをいただきたいと思う。
  263. 佐藤正二

    佐藤(正二)政府委員 全く仮定の問題で、沖繩の返還がどういう形になっていくかわかりませんのであれでございますが、沖繩から直接作戦行動が行なわれる、これが何らかの形で行なわれるという場合には、当然これは日、韓、米というものは軍事的には一緒になるわけでございます。しかし、その沖繩から直接に作戦行動が行なわれる前には、当然いまの安保条約がかかれば事前協議がかかる、こういう形になるかと思います。
  264. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 報復を受けたときには、もう六条の事前協議ははずれます、当然ですね。——いや、交換公文のね、六条の……。
  265. 佐藤正二

    佐藤(正二)政府委員 五条の事態を想定しましたときには、これは日本が攻められているときでございます。それで、日本の防備については、これは事前協議の条項はかぶりません。
  266. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 時間がたいへんございませんので、少しこれを詰めておいて、現状のままでもしも返還と、基地の態様というものがそういうことにされたならばたいへんなことになるということを、私は国民に理解してもらいたい、こう思って、仮定の議論でありますけれども、議論してきたわけです。  そして、非核三原則、それから事前協議。しかも非核三原則もいまくずれてきておる、くずれつつある。現在くずれつつある過程と見たくないのでありますが、どうもそういう方向にいきつつある。   〔櫻内委員長代理退席、委員長着席〕 そこで、このような状態というものは、私は絶対に許せない。そしてあなたは先ほど、ベトナムの和平後は一つの状態は変わる、こういうことを言われたわけであります。だから、今度の返還にあたっては、私は、事前協議をはずすとかあるいは非核三原則をくずすというふうなことは、これは日本国民のために絶対やるべきでないということを明確にいたしたいと思うのであります。総理の御回答をいただきたいと思います。
  267. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 川崎君、るるお話しになりました。私が基地の態様については白紙である、そういう状況のもとにおいて、お話しになったことはたいへん参考になる点もあったし、またそのままとれないと思いますのは、どうも立場も違っておるようだ。非武装中立論の立場において議論されておる点も、多分にあるように思います。(発言する者あり)これは私のひがみかもしれませんが、そういう点もございます。とにかくいまのような仮定の御議論、これは私が基地の態様について白紙であるだけに、たいへんありがたい御親切なお話だ、かように伺いました。ありがとうございました。
  268. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 たいへん時間をなくしてしまいまして、あれですが、先ほども申しましたように、B52や原潜や総合労働布令あるいは基地公害、こういうものは、全部残念ながら施政権がないということで放棄をしてきた。今度のB52の問題については少し動いたというけれども、外交交渉というものに値しない。しかも外交保護権があるかないかを新任の外務大臣は前外相代理から受け取っていない、そういうたいへんあわれな状態であるわけでありますが、一方自主防衛とか極東の安全、基地の態様、こういう点についてはたいへん熱心である。これは私は、沖繩返還問題を先ほど総理基本的な姿勢ということでお述べになった点からいたしますと、たいへん食い違っておると思うのです。  いま沖繩県民は、渡航証明では日本国民という、りっぱに日本国民になっておるわけです。それでありながら、今回の総合労働布令を見ますと基本的人権が無視をされたということは、あなた方が繰り返し述べてきておるところです。だから私は、沖繩問題基本というのは、領土の回復でありますし、県民の基本的人権を根本から改めて、日本憲法の中に入れるということでなければならぬと思います。  そこで、私は最後に憲法との関係で、先ほど来申し上げております基地の自由使用あるいは核つき、こういうことになった場合には——これもあくまでも仮定でありますけれども、なった場合には、私は憲法の前文違反である。それから憲法九十五条違反である。それは沖繩県民に、沖繩という特別の地域に差別を強制するわけです。でありますから、憲法の九十五条に、私は、違反をする。それは事前協議の持ち方、承認のしかた、あるいは交換公文にするか特例にするか、あるいは奄美返還協定のような形にするか、いろいろなことももう少し詰めなければいけませんでしたが、実は時間がなかったので、できませんでした。  しかし、いずれにしても、そういう自由使用、それから核つきということになれば、憲法前文の政府の行為によって戦争の惨禍に巻き込ませることのないように決意をし、こういうことになっております、これはきのうの高辻法制局長官の在日米軍のいろいろな砂川判決等の問題もあるのでありますけれども、憲法前文のこの解釈からいくならば、そういう状態というものは許されない。それからそういう強制下に置かれる、差別をされるということは、憲法九十五条やあるいは憲法の本文の「すべて国民は、」とあるあらゆる基本的人権の面から見ても、これは許されない。  だから、私は最後に、特別の定めをして沖繩を——その特別の定めの中には、先ほど言いましたように、事前協議の扱い、いろいろ含みますよ、それをして、沖繩県民を差別をするということは憲法違反であるということについて、ひとつ総理も明確にお認めをいただきたいと思います。
  269. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 貴重なる御意見を聞かしていただいて、まことにありがとうございました。私は日本総理でございます。憲法に違反しないように最善を尽くすこと、これはあたりまえでありますから、あらためてお答えするまでもないことであります。
  270. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 それでは憲法違反——憲法を守ることは、最高の日本責任者であります総理の任務であります。だから、そういうことはない、日米首脳会談においてはないということが、ここで明らかになりましたね。そのように受け取ります。よろしいですね。
  271. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 重ねて申しますが、憲法に違反するようなことは絶対にいたしません。
  272. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 これにて川崎君の質疑は終了いたしました。  次に田中武夫君。
  273. 田中武夫

    田中(武)委員 私は、産業政策と貿易につきまして御質問をいたしますが、多くの事柄をお伺いしたいと思っております。したがいまして、御答弁もできるだけ簡潔に要領を得たものにしていただきたい。なお、政府委員が時間つぶしのような長々とした答弁、言いかえるならば審議妨害のような答弁は拒否をいたします。それだけを初めに申し上げて、質問に入りたいと思います。  まず、佐藤総理にお伺いをいたしますが、ニクソンアメリカ大統領は、力の信奉者だといわれ、自由貿易主義者のような顔をしておられますが、実は国内産業第一主義、言うならば保護貿易主義者である、こういうように一般的に観測をせられております。そこで、日本との貿易にあたりましても、いままでよりきびしいものがあろうと思います。現に鉄鋼輸入の制限法、これをはじめとして、貿易輸入制限のための法案が百近くも用意せられておると聞いております。このようなアメリカからの日本製品の輸入制限、これに対して総理はどのように対処していくか、まずその点をお伺いいたします。
  274. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ニクソン大統領基本態度、いろいろいわれておりますが、私はやはり自由貿易論者だと、かように確信しております。またそうあってほしいと思っております。  ところで、いまの貿易の自由化、これについては、かねてからいろいろ日本の産業について注文があります。できるだけその注文に沿うべくこれと取り組んでおりますが、しかし、まだまだなかなかアメリカ側の要望とも日本との間においては大きな開きがあります。これはいまに始まったことではありません。私の短いつき合いから見ましても、かつてのジョンソン大統領、その前のケネディ大統領、その時分からも、日本国内におけると同じような事情がございます。やはりコングレスにおいてそれぞれの業界を代表し、それぞれの政治家がやはりその問題と取り組んでおる、そういう実情でございます。でありますから、私はお話をすれば、私の経験もありますが、時間がだんだんなくなりますから、この程度でやめますが、とにかくこの問題は、それぞれの政治家がそれぞれの立場においてやはり国益を守る、そういう意味でいろいろ活躍しておることは事実であります。しかし、基本的には自由貿易主義、かように確信しております。
  275. 田中武夫

    田中(武)委員 ニクソンさんがどういう考えかということをここでやりとりしても始まらぬと思うのですが、私は、ジョンソン時代よりか、より日本にきびしいものがあろう、そういうように思っているわけなのです。  そこで、これは通産大臣にお伺いいたしますが、昨年末、十二月の二十七、二十八日の二日間にわたって、残存輸入制限につきまして日米間の交渉が行なわれました。それがまた近く再開せられることになっているようであります。ところが、政府はこの交渉について公式な発表をやっていない、聞くところによると、アメリカはその交渉に対して不満を示している、あるいは報復措置をとるかもわからぬ、こういうこともいわれておる。それに対して日本側としてどう対処するのか。向こうが報復手段をとるなら、こちらも報復手段をとる、そのように考えておられるのか。ひとつ、簡単でよろしいですから、経過の公表とその後の対策についてお伺いいたします。
  276. 大平正芳

    ○大平国務大臣 お尋ねの問題について、私が答弁するのが適切かどうかわかりませんが、時間の節約上、それでは政府を代表してお答えいたします。  日米交渉が旧臘二十八、九両日にわたって行なわれたことは事実でございます。その結果の反応がどうかと心配しておりましたが、一月に入りまして十三日でございましたか、アメリカ側から、この問題は引き続き両国の外交ルートを通じて協議をしたいという公式の反応がありまして、ただいまその交渉外交ルートを通じて行なわれておるというのが現状でございまして、報復措置云々というようなこと、そういう問題ではなくて、いま両国間で鋭意交渉が行なわれておる、そういう段階でございます。
  277. 田中武夫

    田中(武)委員 見通しはどうですか、
  278. 大平正芳

    ○大平国務大臣 これは鋭意やってみなければわかりません。
  279. 田中武夫

    田中(武)委員 やってみなければわからぬ見通しを持たずに交渉しておる、そういうことなんですか。(「白紙だよ」と呼ぶ者あり)いまも話が出ておるように、これも白紙なんですか。
  280. 大平正芳

    ○大平国務大臣 たいへん国会は権威あるところでございますから、間違った見通しを述べて、あとであげ足をとられたらいけませんと思いまして……。  私どもといたしましては、いま申しましたように、鋭意両国間で協商を遂げるということで、それにベストを尽くしたいと思います。アメリカ側も本件をガットに提訴する権利を依然留保しておるようでございますけれども、私どもとしては、二国間の協商で問題を片づけなければならぬと思いまするし、また、われわれがベストを尽くしてやりますれば片づけられ得るのではないか、そう思っています。
  281. 田中武夫

    田中(武)委員 あまり適切な答弁と思えませんが、次へ参ります。  繊維とか雑貨、さらに鉄鋼等は、従来すでに自主規制という名のもとに、こちらが言うならば輸出、アメリカ側から言うならば輸入が事実制限を受けております。このニクソン政権下になってからは、この動きがよりきびしくなってきておる。先日も、伝えられるところによると、ニクソン大統領は、鉄鋼輸入制限に対して何らか——あれは補佐官というんですか、に命じた、こういうようなこともいわれておるし、また、日本の繊維業界は、そういう動きに対して政府が強力な経済外交によって対処してもらうことを希望しておるようであります。アメリカに対する経済外交姿勢、これについて総理にお伺いいたします。
  282. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 繊維関係では、なかなかおもしろい話があるのです。これは別にこの場をかりて漫談しておるわけじゃありません。私は、ケネディ大統領時分に、実は綿製品についてずいぶんやかましく言われたのを記憶しております。そして、ことにそのときの商相、通産大臣ですが、ホッジスが来て、はたして製品に関税を課するということがほんとかどうか、こういって尋ねた。そういう議論があるんだ、もともと安い値で外国へ売っているんだから、製品として入ってくるときにはそれに関税をかけなければならぬ、あのナイアガラ爆布を考えてみてくれ、あの川の向こうはカナダ領なんで、あそこで、あの川をはさんで、アメリカ内では高い米綿を使い、安い米綿を使った製品と競争する、これは困るから、それでこれは関税を課するんだ、こういうことでした。私は、それは大体国内問題じゃないか、君のほうの農業政策からそういうことをやっているんじゃないか、米綿を買え、米綿借款——借款まで供与して買え買えといって奨励しておいて、いざでき上がったら今度はそれに関税をかける、これはずいぶんひどい話じゃないかと言いましたら、こういうこともあるんだ、まだはっきりきめたんじゃないと言って、その話は当時ずいぶん問題になったから、自主規制の形でいったのです。  今度ジョンソン大統領になった。ジョンソン大統領は御承知のようにテキサス生まれですから、今度は米綿の問題はないだろう——なるほど純綿の話はジョンソン大統領のときには話がない。ところが、今度は羊毛の話が出ている。これは、やっぱりアメリカ国内の羊飼いというもの、これは安い豪州あるいはニュージーランドの原料となかなか対抗はできない、そういう意味でいろいろ文句を言われた。私はそのときにもジョンソン大統領に話したのです。今度はもう米綿の話はないだろう、かように思って来たんだが、とんでもない、今度は羊毛かと言った。実はそれほどこういう産業についてはそれぞれの国の代議士、政治家が力を注いでいる、こういうことの例に実は申したのであります。漫談ではありません。  そこで、私は、やはり日本政府日本の業界を保護していく。どうしたら日本の貿易が伸びていくか、そういうことに一そうの力をいたさなければならない。幸いに、いまの鉄鋼の問題については、業界において自主規制をした。それが日本だけの問題ではありません。これは欧州各国とも協調しての話であります。そういうことでこの問題が落ちついてきつつあることは、これはたいへん望ましいことだと思います。これは大統領がかわって、そこでそういう問題が起こったとは実は思いません。また、ことに、いずれ出てくるのでしょうが、中小企業に対する影響が非常にあるとかいうこと、そういう意味で、日本から安いたばこのライターが入った、そこでアメリカの中小業者、ライターをつくっているのが倒産した、こういうことでたいへんな不平を言われている。しかし、私は、それがハンフリーの出たところの州なんだ。その州からは農産物を一億ドル以上も買っている。こちらから出たライターはたぶん五百万ドルをこすかこさないかという程度だ。だから、そういうことがありますから、その点はひとつお互いに注意して、国益を守る、産業を保護する、こういう立場交渉したい。長くなりまして恐縮でございます。
  283. 田中武夫

    田中(武)委員 通産大臣、先ほど総理もちょっと触れられましたが、ニクソン大統領は、その経済顧問に対して、繊維の規制を綿製品だけでなくて、それを拡大せい、いま羊毛の話を総理なされましたが、あるいは化学繊維にまで拡大せよ、そういうようなことを命じたそうでございますが、それに対して日本はどう対処するのか。現在綿製品だけでなく、それを他の繊維にも及ぼすような話がきた場合はどうしますか。断わるとはっきり言ってほしい。
  284. 大平正芳

    ○大平国務大臣 そういう御提案はまだ聞いておりません。私どもといたしましては、あなたが懸念されるようにアメリカの貿易政策が保護主義的な傾きを持たないことを期待いたしますとともに、そういう傾向を促進する要素の一つとして、成長貿易国であるわが国の自由化というものが、資本の面におきましても、商品の面におきましても、技術の面におきましても、相当積極的であるという姿勢でいかないと、彼らに思わざる口実を与えることをおそれるのでありまして、対米交渉外務省を通じて鋭意やっていただかなければなりませんが、同時に、国内の体制もまた緊張した体制を確立して臨まないといけない、そう考えております。
  285. 田中武夫

    田中(武)委員 総理、いま日本はまあ輸出も伸びた、国際収支も改善せられた、円の国際価値も高められた。こういうときこそ強い経済外交をやるべきじゃないか。いままでよく核とドルのかさのもとに日本は置かれておる、こういわれておったほど——防衛関係についてはいままで同僚委員がたくさん質問しておりますから、それは別といたしましても、ドルのかさのもとにあるといわれた。アメリカ依存の経済だともいわれた。いまこそ日本は自主経済をはっきりと打ち立てる、そうしてアメリカに対しても強い経済外交を行なえるところの基礎ができたと思います。総理の決意を簡単に伺いまして、次へ移りたいと思います。
  286. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 そろそろ貿易立国と、こういうことばが適用できるような状況じゃないかと思います。そこで、ただいまもアメリカ一つの大きなマーケットだ、こういう意味で、アメリカのマーケットが大事にされる。そこで、いろいろな制限を受けるとかいわれておりますが、産業界の方々は、アメリカも大事なマーケットだが、世界はもっと広いんだ、そこであらゆる面にやはり進出していくという、非常な積極的な態度をとっておられます。鉄鋼の問題なども、そういう意味で、他に十分そのあと補い得るようなそういう態度でおる、かように私は聞いて、たいへんうれしく思っております。こういうときこそ、政府が貿易立国、その辺までの看板を上げるべきじゃないだろうか、かように思います。
  287. 田中武夫

    田中(武)委員 まあ次に行きましょう。  総理は、先日の施政方針演説で対中国問題に触れられまして、接触を広げる、こういうことばを使われました。しかし、その中身は何かというと、まだはっきりいたしません。そうして、あなたが総裁をしておられる自民党の有志がつくっておられるAA研究グループでも、中国の国連加盟に、ことしは実現するようにやるんだということを申し合わしたようです。この際、総理は中国に対してどのように考えておられ、かつ中国貿易を伸ばすためにはどうすればいいか、ひとつお考え伺います。
  288. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 結論から申しますと、いままでの態度と変わりはない。また、本会議等において申しましたとおり、門戸を開放して、どこからでも交流ができるように、そういうことをつとめてまいります。  そこで、貿易は一体どうなんだ。日工展でいろんな議論が展開されましたが、日工展などはたいへんいいチャンスだ、かように思って、これは外務大臣も通産大臣も非常に骨を折ったと思います。しかし、いろいろまだこれは不満だという、そういう批判を受けておる。もう一つは、民間貿易が長期にわたって結ばれることが望ましい。やはり貿易立国まで旗上げようというときに、縮小均衡ではなく、とにかく拡大均衡の方向で貿易がとり行なわれること、これが望ましいのです。まして七億五千万の国民を持っているそういう中国大陸が、過去におきましてもりっぱにわが国の貿易をささえていたが、今日も変わりはないんだ、かように私は思っております。いま直ちに、いままでとってきた態度が急に変わるという状況ではございませんけれども、私どもはできるだけ相互に独立を尊重し、内政に不干渉、共存の立場において貿易の拡大をはかっていくべきだ、かように私は考えております。
  289. 田中武夫

    田中(武)委員 日中間の貿易は、先細りを望むのではなくて、将来だんだんと拡大することを考え、希望しておる、そういうことですね。はっきりひとつ……。
  290. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 もっと拡大されるべきだと思います。いわゆる文化大革命前はたいへん順調に進んでおりました。それがあの革命以来やや次第細りになった。これをやはり取り返して、昨年後半期に示したような拡大の方向へもっと積極的に進むべきだ、かように私、思っております。
  291. 田中武夫

    田中(武)委員 高辻法制局長官はいまいないのですか。出なくてもいいときにのこのこ出てくるのだが、私は積極的に高辻さんに質問したいと思っておったのですが、どうなんです。——それでは、高辻さんおりませんので、これは大蔵ないし通産にお伺いします。  日本輸出入銀行法の第一条、その中に、「本邦の外国との貿易を主とする経済の交流を促進するため、」とあります。この輸銀法の第一条の外国とは一体どういうことなんです。この外国を特に区別する理由はあるかないか。もし区別する理由があるとするならば、その根拠をお示し願いたい。そのことは輸銀の総裁にもお伺いいたします。
  292. 福田赳夫

    福田国務大臣 法律第一条にいう外国とは、いずれの国についても差別をいたす趣旨ではございませんです。
  293. 藤澤徳三郎

    ○藤澤説明員 輸銀法第一条にいわれておりまする外国とは、本邦以外の国をさすということに了解いたしております。
  294. 田中武夫

    田中(武)委員 そういたしますと、法律は、たとえば中国を特別扱いにはしていないわけなんですね。しかるに、実際の運営において、吉田書簡というのがあるのかないのか、あるのならば出してもらいたいのですが、そういうことを口実にしてプラント輸出に対して輸銀の利用を拒むということは、一体法律違反じゃないですか。通産大臣、ケース・バイ・ケースで考えると言ったんですが、ケース・バイ・ケースで考えるということと、法律の目的、第一条とはどういう関係にありますか。
  295. 大平正芳

    ○大平国務大臣 第一条の志向する範囲内におきまして、個々のケースに応じて処理する、そういうことだと了解いたしております。
  296. 田中武夫

    田中(武)委員 もう一つはっきりしないのですが、法律的に、第一条の外国は中国を区別するという条文ではありません。にもかかわらず、吉田書簡があるとかなんとかいうことで、法律の適用を曲げておるということは、一体どういうことなのか。
  297. 大平正芳

    ○大平国務大臣 輸出商人というのは、国に対してやるのではありませんで、個々の取引について輸銀が信用を与えるかどうか、そういう個々の案件について吟味いたしまして、認めるべきものは認めるということであろうと了解します。
  298. 田中武夫

    田中(武)委員 そうすれば、今後中国向けのプラント輸出に対しまして、輸銀に対してこれが申請をしたときに差別待遇を与えない、それを通産大臣及び輸銀の副総裁からここで御確認を願います。そうじゃなかったら法律違反ですよ。
  299. 大平正芳

    ○大平国務大臣 そういう案件が出てまいりました場合に吟味さしていただきたいと思います。
  300. 藤澤徳三郎

    ○藤澤説明員 輸銀といたしましても、そういう具体的な案件が出てまいりました場合に、それを輸銀としての立場から処理いたしたいと思っております。
  301. 田中武夫

    田中(武)委員 大平さん、法律の区別する何ものもないのですよ。したがって、今後法律的に見て区別するようなことがあるとするならば許されないと思います。はっきりしてください。  それから、これは総理愛知さんにお伺いしますが、先日の江田委員長質問の中でも問題になりましたが、(「書記長だよ」と呼ぶ者あり)おれは委員長になってもらってもいいと思っておったからね。江田書記長の質問のときにも問題になりましたが、吉田書簡、これに対する蒋総統の談話、これらを総合した場合に、一体、吉田書簡なるものの正体は何なのか。あるならひとつ、理事会でも問題になっておるようでありますが、お示しを願いたい。それと私は輸銀法とを対照して、いずれが優先するか、じっくりと論議したいと思いますが、いかがです。
  302. 愛知揆一

    愛知国務大臣 先般江田書記長の御質問に対しましてお答えをいたしましたとおりなんでありますが、この吉田書簡なるものは、昭和三十九年に発出されております私的書簡、個人的書簡、たまたまその内容は当時の池田内閣の政策に合致することが盛られておった、かように承知いたしております。  それから、これはいまお尋ねなかったかもしれませんが、繰り返して申しますが、蒋総統がこれに対して、新聞記者会見でございますかで言っておられますことについては、これはそういう書簡でもございますし、また特に日本政府に対してどうこうという御意見でもないようでございますから、私といたしましてこれに対してコメントすることは差し控えたい、どうか御了解いただきたいと思います。
  303. 大平正芳

    ○大平国務大臣 ただいま愛知外務大臣お答え申し上げたとおり了解いたしております。
  304. 田中武夫

    田中(武)委員 吉田書簡に対する江田書記長の質問に関連して、いま理事会で問題になっていることには私は触れません。しかし、私がここではっきりと言えることは、元総理の私的な書簡は法律に優先するものではない。はっきりしてください。間違いないですね。
  305. 大平正芳

    ○大平国務大臣 万々仰せのとおりと思います。
  306. 田中武夫

    田中(武)委員 総理、イタリアが中国承認に踏み切った、カナダもやるだろう等々、情勢が変わってきております。私は、イタリアが中国承認に踏み切ったその一つの理由には、やはり中国との貿易ということがあると思うのです。そこで、いま日本が吉田書簡だとかなんだとかいってプラント輸出に対して輸銀の適用を拒む、こういうようなことをやっておりますと、ますます日本の輸出ということが、あるいは輸出市場が狭められてくる。いまこそ私は、過去のいきさつにとらわれずに、輸銀の目的に戻って、輸銀利用の門戸を開くべきである、こう考えますが、いかがです。
  307. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いまイタリアと中共との間がどのくらいの貿易額になるか、私ちょっと記憶しておりませんが、日本と中国大陸との貿易総額は六億ドル前後になっております。二国間でこの金額にのぼっておるというのはたいへんな貿易でございます。さらにその金額が、これでいいというのでなくて、もっと伸ばしたいといっている。そういうことを考えれば、私どもの気持ちはよくわかっていただけると思います。いま言われるように、吉田書簡が問題になるとか、あるいは承認が問題になるとか、あるいは国連加入が問題になるとか、いろいろ問題が提起されております。しかし、問題がありながらも貿易自体はどんどん行なわれておる。しかも、おそらく今度また日工展、その結果は、もっと金額がふえるだろうと思いますが、そういうような状況にあるのですから、あまり御心配なさらなくてもけっこうかと思います。
  308. 田中武夫

    田中(武)委員 政府はどちらかといえば締める、と言えば語弊がありますが、積極的協力をしていない。でも、貿易は、いわゆるLT協定のときからいえば、覚書貿易になってから下がったと思うのですが、いずれにしろ、現に六億ドル前後も多くあるということは、必要だからですよ。その必要を、ことさらに応援せずに押えておるというのが政府態度じゃありませんか。だから、ほかのことは言わなくてもいいんですよ。輸銀利用について政府は特別の意図を持っておりません、これだけ答えていただけばけっこうなんです。
  309. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 輸銀使用については、先ほど来、通産大臣お答えしたように、ケース・バイ・ケースで処理する。
  310. 田中武夫

    田中(武)委員 ケース・バイ・ケースというのはおかしいのですよ。法律の目的には何ら区別がないのですよ。だから門戸を開放すべきなんですよ。ケース・バイ・ケースということばは各歴代の通産大臣が言われておるのですよ。そういうことはおかしいと言っているのですよ。法律上区別をしたりする必要があるのかと言っているのです。その必要は一つもないし、もしするとするならば、法の命に行政がそむくということになるのです。いいですか、はっきりしてください。
  311. 福田赳夫

    福田国務大臣 第一条は外国ということについて別に差別は設けておりませんけれども、どこの外国でも貸さなければならない、こういうふうな規定ではないのです。これは政府のほうで裁量権があるのでありますから、その裁量をするにあたりましてはケース・バイ・ケースでやる、こういうことで、決して法律違反をやっておるのじゃない。違反をやっておるというお話ですが、違反をやっておるというのじゃないということを申し上げます。
  312. 田中武夫

    田中(武)委員 そうではないのですよ。そういうことは輸銀の業務方法書によってやるべきなんです。政府は区別すべきでない。貸す義務があるとかないとか、貸すに値するとかせぬとかいうことは、輸銀の業務方法書がそれをきめる。政府が言うべきじゃないのです。輸銀の副総裁、どうです。
  313. 藤澤徳三郎

    ○藤澤説明員 輸出入銀行は、具体的な案件が輸銀の窓口に出てまいりました場合には、それを金融判断をいたしました上で処理をするわけでございますが、その際に、やはり輸銀は御承知のとおり政府機関でございますから・政府の御方針に沿いまして、いろいろな事情を勘案して処理をするということになろうかと思います。
  314. 田中武夫

    田中(武)委員 時間がないので、これだけにかかっておることはできないのですがね。輸銀の副総裁政府は区別しないと言っておるのですよ。法律上区別すべきでないのです。だから、あなたのほうは業務方法書に基づいて処理していけばいいんです。そうじゃないですか。もう一ぺん言ってください。
  315. 藤澤徳三郎

    ○藤澤説明員 お説のとおり、業務方法書に基づいて処理をいたします。しかし、その根本には輸銀法があるわけでございます。それに基づいて業務方法書ができておる。それによって実際の処理をいたすということでございます。
  316. 田中武夫

    田中(武)委員 いま確認したように、政府がとかく言うべき問題でない。法律は、外国として中国を別に区別してない。ただそれが経済ベースに合うのか合わないのか等々については、輸銀が大蔵大臣の承認を得たところの業務方法書によって処理をする、それでいいんじゃないのですかな。違いますか。違うのなら言ってください。いいのなら次にいきますが、いかがですか。
  317. 福田赳夫

    福田国務大臣 お話のとおりでございます。ケース・バイ・ケースでいくのです。
  318. 田中武夫

    田中(武)委員 ケース・バイ・ケースということばは一体どういうことですかね。法律にはないのですよ。  しかし、こんなことにかかわっておれませんので、次に参ります。  これは農林大臣に簡単にお伺いいたしますが、中国の食肉輸入につきましていまいろいろと論議があります。まず数量について一万トンとか三千トンとかいわれている。あるいは船上でカン詰めにするとか加工するとか、いやこれを離島でやったらどうかとか、こういうような意見もありますが、農林省の方針をお伺いいたします。
  319. 長谷川四郎

    ○長谷川国務大臣 中共からの食肉輸入につきましては、前もってお断わりしておきますけれども、これに対しましては政治的意図というものは全くないということだけは申し上げておきます。  ただ、衛生上の見地というのがありまして、行なおうといろいろここは考えてみたのでございますけれども、つい最近の例といたしまして、英国においてやはり同じ口蹄疫という病気が発生いたしまして、これによって大体四十二万九千六百頭、五十万頭近いものを全部焼却しなければならないというような大きな事件が起きております。したがって、私の国、この日本という国には、この口蹄疫というものがまだ全然発生したことのない処女の国です。ですから、もしこういうものが入ってまいりますると、それこそ国内のわずかしかない、まだこれでも足りない、まだこれでも足らぬと言っておる数量を全滅するような事態も発生しないとも限りませんので、こういうものを憂慮いたしましていろいろ交渉をしたのでございましたけれども、なかなかそれが決定をしておりません。したがって、私のほうは、何とかして輸入する方法はほかにないだろうかというようなことの結果、先ほどお話がありましたような洋上加工というようなことまでしたらどうだろうというように、ほんとうに献身的にこれつとめていると申し上げても差しつかえない。いかにこれ一つにおいても政治的意図が全くないかということが証明できるだろうと私は考えます。
  320. 田中武夫

    田中(武)委員 それから、離島加工はどうですか。
  321. 長谷川四郎

    ○長谷川国務大臣 ですから、洋上加工というか船の上で加工をして、そしてそれを国内に持ち込まないように——口蹄疫がまだ中共そのもの自体において全然ないということが言い切れない事態にある。これの調査が十分できていない限りはやむを得ない事態だ、こう考えております。
  322. 田中武夫

    田中(武)委員 いや、洋上加工では入れるのですね。
  323. 長谷川四郎

    ○長谷川国務大臣 そういうことなんです。それをいまどうしたらいいかということで、いろいろ検討中でございます。
  324. 田中武夫

    田中(武)委員 数量は。
  325. 長谷川四郎

    ○長谷川国務大臣 数量等につきましても、まだ検討中でございます。
  326. 田中武夫

    田中(武)委員 すべて検討中だとこういうことで、私は農林大臣がうそをつかない人であると思いますので、この程度にしておきます。  次に、総理、ポストベトナムということがよくいわれておるパリ会談も、どうなるのかということについてはまだまだ見解なり見通しはまちまちであろうと思います。しかし北ベトナムは日本の友好商社に対して入国を招請してきておる。そして日本と貿易したいということを熱望しておるというか、積極的な姿勢を示しておるのです。今後北ベトナムとの貿易については、政府はどういう方針を持ちますか。
  327. 愛知揆一

    愛知国務大臣 ポストベトナムにつきましては、これからの和平会談の結果がどういうふうに推移するかということに至大の関心をもってその成果を見守っておるわけでございます。その後においてどういうふうな経済政策協力政策をとるかということにつきましては、これまた慎重に事態の推移を見ながら検討いたしておる状態でございます。
  328. 田中武夫

    田中(武)委員 法制局長官、あなたはいつも出てきてはきらわれるのですが、特に私はあなたを指名して質問いたします。  貿易をすること、輸出し輸入することは、憲法二十二条の定めた基本的人権、すなわち職業選択の自由であろうと思いますが、違いますか。いかがです。イエス・ノーだけでよろしい。
  329. 高辻正巳

    ○高辻政府委員 御指摘の事項、条文は職業選択の自由ということになっておりますから、それにかかわる職業であれば少なくもその規定にいう職業選択の自由になると思います。まあさらにお尋ねがあると思いますので、ただいまのところはそれだけにしておきます。
  330. 田中武夫

    田中(武)委員 いや、さらには聞きません。輸入すること、輸出すること、これも職業なんです。したがって、公共の福祉に反しない限り、これは憲法において認められたるところの基本的人権であると解しますが、違うかそうかだけをお答え願います。憲法の条文なんか読まなくてもいいのだ。お互い頭に入っておるんだから。
  331. 高辻正巳

    ○高辻政府委員 ただいま御指摘のように、公共の福祉に反しない限りということがつけ足してございますが、ただいまの輸出あるいは輸入を職業的面から見れば仰せのとおりでございます。
  332. 田中武夫

    田中(武)委員 通産大臣にお伺いいたしますが、日工展、どういうことだかわかりますね、この出品に対して十九品目を輸出禁止、十九品目を持ち帰り条件つき、このような処分をいたしましたね。この理由を法的に御説明願います。
  333. 大平正芳

    ○大平国務大臣 御承知のように、われわれの輸出行政、輸出を禁止する、あるいは条件をつけるということは、外国為替及び外国貿易管理法、それに基づく輸出貿易管理令の規定に基づきまして実施いたしておるのでございます。それで、輸出貿易管理令の第一条第六項にある「外国貿易及び国民経済の健全な発展を図るため必要があると認めるときは、」通産大臣は輸出の承認をせず、または輸出の承認に条件を付することができるという規定に基づきまして、戦略物資の輸出につきまして原則として承認しないことにいたしておるのでございます。
  334. 田中武夫

    田中(武)委員 戦略物資について承認をしないということがどこに書いてあるのです。どこにあります。
  335. 大平正芳

    ○大平国務大臣 たいへん失礼しました。戦略物資というのは法律用語ではございませんで、輸出貿易管理令の付表に物資を掲げてございまして、それに該当するものにつきまして、承認をしないということにいたしたわけでございます。
  336. 田中武夫

    田中(武)委員 貿管令は外為法を受けたものであります。外為法の四十七条、「貨物の輸出は、この法律の目的に合致する限り、最少限度の制限の下に」許される。「最少限度の制限」ですよ。そしてあなたがいまあげられました貿管令の一条六項、そして外為法の四十八条二項には、その範囲を越えてはならないという、こういう規定があるのです。言うまでもなく、先ほど確認いたしましたように、物を輸出することは憲法で認められた基本的人権である。したがって、これを制限するときには、外為法でいっているように、あるいは貿管令でいっているように、国際収支、外国貿易、そして国民経済の健全な発展を阻害するという、こういうことにしぼってあるのですね。しかし貿管令一条六項はいわゆる原則に対する例外規定なんです。したがって、これを越えてはならないということは、拡張解釈を許さない。あなたも法律をやられたでしょう。例外規定は厳格に解する、拡張解釈を許さないというのが法律のいろはでございます。しかも、あとで触れますが、その令の付表によってこれを押えるということは、その付表それ自体が憲法、法に照らしておかしければ変えさせねばなりません。その点いかがでしょうか。何なら法制局長官、お得意のところを伺いましょう。
  337. 大平正芳

    ○大平国務大臣 先ほど御答弁申し上げましたとおり、外国貿易及び国民経済の健全な発展をはかる必要があるという法律の趣旨から申しまして、私どもは輸出貿易管理令に掲示してありまする品目につきまして、輸出を承認しないことがその趣旨に合致するという判断に基づきまして、かかる処分をいたしたのでございます。
  338. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 いいですか、法制局長官は。さっきから待っているようでありますが……。
  339. 高辻正巳

    ○高辻政府委員 例外規定についての解釈態度、これは原則としてはそのとおりだろうと思います。  ただいま通産大臣からお話がございましたように、通産大臣には公共の福祉上の要請に基づくものという解釈のもとに、それが適切に、この法の解釈として適当であろうという御見解でございますが、そういう御見解もあり得ると私は思っております。
  340. 田中武夫

    田中(武)委員 法制局長官は法律の解釈をしたらいいんです。政治的配慮は要りません。  そこで、愛知さんにお伺いしますが、愛知さんは、先日の、これは内田質問ですかに対して、自由諸国との申し合わせ云々ということを言ったんですね。これはココムのことを意味しておるのですか、いかがですか。
  341. 愛知揆一

    愛知国務大臣 それをも念頭に入れております。
  342. 田中武夫

    田中(武)委員 ココムは条約ではない。まして法律でもない。したがって、ココムはそれ自体国民の権利を束縛することはできない。このことは、そこにおられる菅野さんが通産大臣のときに私と確約をしまして、以後一切国会ではココムということは申しませんということになっておるのです。それは当時の主管大臣です。したがって、ココムは国民を束縛する権利はありません。そこで、外為法、貿管令、これとココムとの関係を見てみましたときには、何ら直接関係がない。  ところが突如としてあるのですね。戦略物資輸出承認事務取扱要領というのがあるのです。これは通産省の内規なんです。ところが現実においてチェックをしていくのは、この事務取扱要領によってチェックしていく。これはあくまで通産省部内の内規なんですよ。それが、法あるいは憲法で認められた基本的人権までチェックするということは、一体どういうことなんです。
  343. 大平正芳

    ○大平国務大臣 輸出貿易管理令の運営につきまして内規を定めたものと承知いたしておりまして、そういうことと関係なく、やたらにきめた内規であるとは思いません。
  344. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 田中君に申し上げますが、日本銀行総裁宇佐美洵君、全国銀行協会連合会副会長寺尾威夫君に御出席をいただいておりますから、お含みの上、御質問を願います。
  345. 田中武夫

    田中(武)委員 この貿管令の運営についてというのは別にあるのですよ。そして戦略物資輸出承認事務取扱要領というのがあるのです。これはココムに関係してくる。一体どうなんです。内規とか令とかいうのは、法のもとになくちゃならぬのですよ。貿管令、さかのぼって外為法等にココムは関係がありません。関係があるというならば、ないという立証をいたしましょう。そうするならば、突如として戦略物資輸出承認事務取扱要領というものの存在は、一体何なんです。
  346. 大平正芳

    ○大平国務大臣 通産省においていたしました処分が輸出貿易管理令に違反しておるという結果が出ますれば、それは大問題であると思いますが、問題は、いま戦略物資という表現につきましてあなたから御指摘を受けましたが、これは私、案ずるに、俗称であろうと思います。先ほど申しましたように、法律用語とは言えないと思うのでありまして、そういう便宜的な俗称を使うことがいけないという、行儀が悪いとは言えますけれども、それが法律違反であるということは私は言えないと思うのです。
  347. 田中武夫

    田中(武)委員 このことにひっかかっておったらどうかと思いますが、憲法、法、令、内規とあるのですね。その内規の中に突如としてそういうものが出てきておるわけなんです。これは法律あるいは貿管令とは関係のないココムというのをここで生かしておるということになるのです。  それはその程度にしておいて、具体的に聞きます。たとえば十九品目の中に、雑音測定器MFM−1というのがやはり禁止になっているのです。雑音測定器ですよ。これは別表の一三九の千メガサイクル以上の周波数を測定することのできる機械というのがありまして、それに該当する、こういうことなんです。しかし貿管令ができたのは二十四年、それから若干の改正がありますが、技術進歩の今日、千メガサイクルをこえる周波数をはかるぐらいのことが、そんなに秘密なものになっておりますか。あるいはまたその一つに1C、わかりますか、集積回路、これを輸出することは別表の一七二でだめだ、こういつているのです。先ほど来、私、言っているように、かりに別表にあったとしても、それは絶対ではありません。それが令なり令の別表、したがって令の一条六項、あるいは法の四十七条、四十八条二項、これからいうて拡大せられるようなものである、言うならば基本的人権を令において押えるようなものであるなら無効であります。これは改正をするとか検討する必要がありますが、いかがです。事は行政訴訟にまで発展をいたしております。いまここであなたが私に追い詰められて——ということには訴訟の問題もあろうと思いますので、そう追い詰めません。しかし、おかしいですよ、これ。おかしいです。あくまでも法というものを頭に置き、憲法のもとに考えていくべきである。しかも、例外規定である。高辻法制局長官も言ったように、例外規定は厳格に解釈すべきであって、これの拡張を許さない。そういう立場からいって、別表についてはどうでしょう。昭和二十四年からの今日の技術革新をもあわせて、いかがでしょう。
  348. 大平正芳

    ○大平国務大臣 技術が日進月歩でございまして、いまわれわれが採用いたしておりまする別表が絶対のものであるとは思いませんで、技術の変化に応じまして変え得るものである、そう承知しています。
  349. 田中武夫

    田中(武)委員 この件について最後に一点だけ。  この問題につきましては、現に日工展事務局は東京地方裁判所に、大平さんを被申請人及び被告として、行政訴訟及びこれを本訴とするところの仮処分申請をいたしております。その結果は、まあそれは裁判所の判断にまつといたしまして、仮処分の決定が出たときに、総理はすなおにこれを受けられますか。それとも、こちらからそういう知恵をつけてはどうかと思いますが、行政事件訴訟法の規定によっていわゆる総理の異議申し立てというのがありますね。そういうことをやるんじゃないかというような懸念もあるわけなんです。しかし、それにはそれ相当の、やはり「公共の福祉に」ということがかぶっておるわけなんですが、いかがでしょう。裁判所の決定には従われますね。
  350. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 裁判の結果をいまからあれやこれやと憶測して次の段階の処置をとる、こういうことを私はいたしません。それでおわかりかと思います。
  351. 田中武夫

    田中(武)委員 行政事件訴訟法二十七条三項の総理の異議申し立てということについては、いまは考えていない。(「白紙だ」と呼ぶ者あり)これも白紙だ。まあいいでしょう。こんなことを言って私が知恵をつけたようになってもいかぬですがね。まあ、優秀な法制局長官もおられることですから、そのくらいのことはわかっておると思うのですがね。  そこで、この中国貿易等々について最後の御質問をいたしますが、日本と中国とは、歴史的にいっても、地理的にいっても、これはもっと貿易を拡大しなければならない。また、日本が貿易立国として立っていく上においても、乏しい資源のわが国としては中国から資源を求めるのが一番私は便利であろうとも思うのです。総理は核の抑止力によってアジアの平和をと言っておりますが、私は、中国貿易を拡大していく、そうしてもっと交流を高めていく、そういうこと、あるいは日工展なんかにつまらないけちをつけずに、日本の現代の新しい水準の機械その他を展示して日本というものの技術をもっと認めさす、そういうことのほうがアジアの平和のためにもより有効適切であろうと考えます。いかがでしょうか。
  352. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 簡単にお答えいたします。  基本的には別に異議はございません。
  353. 田中武夫

    田中(武)委員 例外があるのですか。
  354. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 なるべく簡単にと思ったのですが、だんだん引っぱり込まれるといろいろお話ししなければならない。  いま民間貿易、これが一年ぽっきりになっております。いま私どもは貿易の拡大を心から願っておりますが、よしそれが民間の覚書協定にしろ、とにかく長期であること、これが望ましいことだ、かように思いますので、とにかくそれぞれの問題を積み重ねていきまして、もっと交流もしげくなるように、そうしたいものだと思います。
  355. 田中武夫

    田中(武)委員 時間の制限もありますので、海外協力についても通告をいたしましたが、これを省きまして国内産業政策に入っていきたいと思います。  最近の産業政策は、いわゆる経済の国際化、国際競争力の強化、こういうことで産業構造の改善、高度化が強調せられて、企業の合併ということが多く行なわれ、また行なわれつつある。ところが、この合併、再編成のすべては、各企業がかってにいわゆる企業ベースで、企業利益のために考えておる。そうして、日本経済全体という立場、あるいはまた国民経済の健全な発展、そういったことはあまり考えていない。こういうような再編成、合併に対して、通産大臣をはじめ個々の大臣が、それは賛成であるというようなことを軽率に言っておる。そういうことも含めて、一体国内産業政策基本はどうあるべきなのか。軽率にある種の特定の会社の合併に閣僚が賛意を表するとか、こういうことについて、総理そうして山田公正取引委員長——これらの合併あるいは再編成は、いまも申しましたように、企業は自分たちのかってな構想のもとに、そうして独禁政策が一体何かということも少しも理解をせず進められておるように思います。このような産業再編成に対して、独禁法の立場から独禁政策をいかに守るか、このことについてまず基本的な姿勢総理山田委員長にお伺いいたします。
  356. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いわゆる大型合併についてのお尋ねかと思いますが、私はやはり今日の状態のもとにおいては、いわゆる国際競争力、そういうことも考えなければいけない。何だか産業界の方に対して、自分たちがおおむね利益だけを追求して、どうも国家的利益を十分考えないのじゃないか、こういうような発想からのお尋ねであったと思うが、これは私は現在の産業界の方に対して必ずしも当たらないと思う。田中君にしては珍しい前提から発想されたと思って、この点では私は意外に思うのですが、とにかく私はただいま申し上げたように、競争によってこれは消費者あるいは国民の利益も擁護いたしますが、最近の大型化した、また国際化した経済においては、もっとそれに対応する態度が望ましい、かように私は思っております。
  357. 山田精一

    山田政府委員 お答えを申し上げます。  第一点いたしましては、ただいま御指摘のございました企業の合併または再編成、これはいろいろな政策の角度から評価されるべきものと考えます。  第二点といたしましては、私ども公正取引委員会立場といたしましては、どこまでも当該合併なり再編成が、競争の実質的制限になるかならないか、この角度から厳重に検討いたしてまいりたいと思います。  それから第三点といたしましては、実業界において独禁政策を知らないでというおことばがございましたが、私どもの努力が足りないのかもしれませんが、十分独禁政策の趣旨を徹底させるようにつとめたいと存じます。
  358. 田中武夫

    田中(武)委員 総理にお伺いしますが、そういう国際化あるいは競争力強化ということで、鉄鋼とか金融とか内部に多くの問題をかかえているのが先行しておる。政府もこれを応援しておられるようである。  ところが、石炭産業はいまや私企業としてはもう成り立たないのだ、こういうことは衆目の一致するところであろうと思います。むしろ石炭産業こそ先に再編成をやるべきじゃないか。社会党は国有化ということを考えておりますが、いかがでしょう、そのことが、石炭産業の再編成を進めていくということ自体が、私は政府の産業政策の再編成を一貫したものとせしめる、こういうふうに考えるのですが、必要でないところに力を入れて、いまこそ再編成をやらねばならないところが抜けているように思うのですが、いかがでしょうか。
  359. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 本来の態度から申せば、経済界のことはあまり政府がタッチしないがよろしい。われわれ自由経済のたてまえですから、そうありたいものだと思っております。しかし、これを民間だけにまかしてもいけない。必要な機関、たとえば公正取引委員会あるいはまた通商産業省等々、必要な機関が政府にはあるわけです。  そこで、いまの産業の再編成だとか大型合併は別にして、お尋ねの石炭産業についてひとつ述べると、実はこれはたいへんな問題です。そうして将来の暗い産業でございます。でありますから、そういうものについても特別な対策、これは石炭だけ切り離して、一般産業の問題としてでなしに、石炭産業を特別なものとして、それに対する対策を立てる。これは国会におきましても特別委員会を設けておるゆえんだと思うし、政府がこれと取り組んでいる態度は、審議会の答申を得てそうしてこれと取り組んでおる、こういうことでございますから、ただいまこの国会において御審議をいただいておる、かように私は考えております。石炭が特殊な事情下にあること、これを考慮しないと石炭産業の再編はなかなか云々できない、かように思います。
  360. 田中武夫

    田中(武)委員 石炭鉱業政策にはもうすでに三千億ですかの金を出しておられるわけです。今度はまた五カ年間に四千二百億円の支出が予定せられておるわけです。ところが、いま再編成をやらなければ将来やろうとしても財源がないということにもなりましょう。いま政府考えておられるような方向でいくならば企業は残る、ことに財閥系の企業はむしろ石炭産業以外の分野に進出して企業は残る。だが石炭鉱業というものはなくなるのじゃないか、こういうおそれすらあるわけなんです。現に第三次答申で一千億を出して債権の肩がわりをした。結果は、これは企業と金融機関の救済に終わったわけであります。そういうことであるならば、国民の血税のむだづかいといえないこともありません。私は、金を出す以上、エネルギー政策の中における石炭産業をいかに位置づけるか、そうして石炭産業をどのように存続さしていくのか、こうでなくてはならないと思いますが、いかがでしょう。
  361. 大平正芳

    ○大平国務大臣 仰せのとおり巨額の国費を投じての石炭新政策でございまして、私どもも慎重な態度で対処いたしておるのでございますが、石炭鉱業は、御案内のように、自然条件から申しましても、また非常に労働集約的な産業でもございまして、画一的な、体制的な処理がたいへんむずかしい部門であることは、田中さんもよく御承知のことと思うのでございます。それで、与えられた条件のもとにおいて、また与えられた石炭政策に割愛し得る財源の範囲内におきまして、どういう施策がベストであるかということにつきまして、御案内のように石炭鉱業審議会が八カ月の長きにわたりまして鋭意検討いたしました結果、去年の暮れ答申がもたらされたのでありまして、私どもはその答申を尊重いたしまして、その線に沿って法律案を策定し、予算案を編成して、御審議を願うということにいたしておるのでございます。
  362. 田中武夫

    田中(武)委員 これは総理に確かめたいと思うのですが、その石炭答申が十二月二十六日になされて、四党の国対委員長の申し合わせによって、石炭政策のあり方について四党の政策審議会長、まあ社会党では政審、自民党では政調ですが、政策関係責任者が会談をやった。そうして一月八日に自民党の根本政調会長の名で文書の申し出があった。これは三社化案ともいわれているわけです。あなたが総裁をしておるその自民党の政策責任者がそういう提案をしておるわけですね。そういうことを踏まえて、政府も各党もこの石炭政策のあり方について、再編成について、もっと今後協議していくことになろうと思いますが、政調会長の約束といいますか、文書等については、総理でなくて総裁としてのあなたは、やはりこれを支持するというか、その線でまとめられることが政党政治の本分だと思うのですが、いかがでしょうか。
  363. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 原則論的にはただいま言われたとおりであります。しかし、この石炭問題についての経過はいろいろ私も聞いたのでありますが、その途中においてただいまのような三社案のあったこと、そのとおりであります。しかしただいま石炭産業として一番困っているのは、金融がつかないということのようです。金融さえつける方法があればこれは何とでもなるだろう。そこでまずとりあえず金融を得る方法、そういうのは一体どこにあるのだ、これをいろいろ議論しなければいけませんが、皆さんが言われるように、企業あるいは金融それだけを救済する案で、石炭鉱業はどこへ行くやらわからぬ、こういうような非難を受けているようでございますが、しかし私はこういう事柄もやっぱり含めて、基本的な態度でこの問題と取り組まなければならない、かように思っております。いまのが最終案だとは必ずしも思いません。これからまだあるいは三社案が出るのか一社案になるのか、あるいは国有論になるのか、そこらもあろうと思いますけれども、しかしこれを停止することはできないいまの現状でございますから、現在の一番可能な手っとり早い方法を考えたのがいま出ている案でございます。
  364. 田中武夫

    田中(武)委員 石炭政策につきましては、あとで同僚委員がこれを専門に質問する、こういう予定もありますので、いまの答弁いささか受け取りがたいのですが、次にまいります。  次に金融再編成の問題で若干お伺いいたします。これは大蔵大臣ということになろうと思いますが、政府は、昨年いわゆる金融二法、一つは改正、一つは新しい法律だったのですが、これは金融再編成のための法案として出されたと思う。通過成立をいたしております。その目的は金融の効率化、さらに中小企業の金融の円滑化、こうなっておりますが、一点の金融の効率化と中小企業金融の円滑化ということは実はうらはらの関係にあります。大蔵省の責任ある人は、この改正はかきねを取り払って相互乗り入れをやらすのだ、こういうことも言っておる。このことはいままでの経過から見た場合に、いわゆる都市銀行といいますか、これは大企業向けの金融機関である。ところが、大企業は多くの資金を必要といたします。むしろ大銀行には資金が少なくて、中小企業金融機関である相互銀行とか信用金庫のほうに預金残額が多かった。それを都市銀行へ集中する。その結果は、金融の効率化ということは、結局は弱小中小企業の金融をむしろ苦しくする、あるいは締め出す、あるいは金融機関の中でも弱いもの、弱小は身売りせよ、そういうことになろうと思いますが、いかがでございますか。
  365. 福田赳夫

    福田国務大臣 いわゆる金融二法は、お話しのとおり、一つの整備法のほうは中小関係の金融系列をさらに強化いたしまして中小金融を進めよう、もう一つの合併転換のほうの法律はお話しのとおりの相互乗り入れも認めておこう、こういう趣旨なのでありまして、実際の動きを見ておりますと、相互乗り入れば中小金融機関間で行なわれる傾向が多いのです。小さいのと大きなのとというような動きよりは、むしろ小さなの同士の合併転換という動きが多いようでありますが、もし中小金融機関と大金融機関との合併転換が行なわれるというような事態でありますれば、これが中小企業金融に悪いマイナスの影響を及ぼさないように、私ども行政上特段の注意を払わなければならぬ、かように考えております。
  366. 田中武夫

    田中(武)委員 私は、金融資本といいますか、銀行は産業に奉仕するものだと思うのです。ところが、今日では金融資本が産業を牛耳っておる。また、政府も産業再編成に先立って金融再編成をやって、銀行中心に編成を考えておるやに受け取れる点も多いわけです。また銀行は、これは預金者保護の名目に名をかりておりますが、多くの融資先に対して役員、従業員を送り込んでおります。こういう点については私は本来の銀行の任務から反しておるのじゃないか、このように思います。  銀行の任務、さらに銀行は商売ですから損をしなければいいということであろうが、不健全な第三次産業といいますか、これにはどんどん金を貸すが、中小企業にはいわゆる拘束預金、歩積み両建て、こういうことできわめて冷淡である。こういう実情について大蔵大臣、日銀総裁、そして銀行協会のそれぞれの方のお立場からのお考え方伺いたいと思います。
  367. 福田赳夫

    福田国務大臣 中小企業につきましては政府としては非常に気をつけておるのです。一般の大企業でありますれば受けられないような金融を、中小企業につきましてはいわゆる中小企業三機関を通じて受ける、こういう仕組みにもなっておりまするし、また大蔵省の行政運営上も、政府機関でない普通の銀行にありましても、なるべく中小企業に便益を供与するようにということに配意をいたしております。調査の結果を見てみますると、だんだんと市中銀行の中小企業金融の分野がふえてきておるような傾向でありまして、中小企業金融は順調に動いておる、私はかように見ております。  それから、銀行が産業に対する奉仕者であるというようなお話でありますが、これは車の両輪みたいなものでお互いに相助け合っていかなければならぬ。合せて一本になるのだ、かように考えております。  また銀行の天下りといいますか、そういうようなお話でございまするが、産業から頼まれてどうしても来てくれ、金融を見てくれという際に行かないのもいかがかと思います。しかし、これをいわゆる押しつけみたいなことをしては相ならぬ、かように考えます。
  368. 宇佐美洵

    ○宇佐美参考人 ただいまの田中さんの御質問に対して大蔵大臣がおっしゃったとおりでありますが、現在の再編成につきましては、いま日本経済が世界的に見ましても、また国内的のたとえば自由化の問題であるとか、また労使の問題であるとか、そのほかだんだん非常に変化が起こっておるわけであります。したがって、産業界がいろいろこれに合わせるべく体質改善をされておるわけでありますが、また金融といたしましても、これに対応してやはり考えていかなければならぬ。銀行の首脳者としていまの時世を金融機関の体質改善について考えておることは当然のことだと思うのであります。  それからいまの、銀行から産業界に人が行っておるじゃないか、確かに行っておることもございます。しかし、これは私が知っておる限りにおきまして、やはりその企業が自分の体質をよくしたい、あるいは経理をもっと健全にしたいとかいうことで、銀行の経験者あるいは学識のある者に来てもらって、そうして自分の事業を発展さす、健全にするというためにやっておることだろうと思っておるわけであります。したがって、その企業にとりましてもきわめて有益なことだろうと考えております。
  369. 寺尾威夫

    ○寺尾参考人 第一点の産業と金融との問題でございまするが、この問題につきましては相ともに助け合って、そうして日本の国力が増進するようにという方向において御理解願いたいと存じます。また、われわれもそういう方向でやっておるわけであります。  第二点の、産業会社へ銀行の人が行っておるじゃないか、こういうことでございまするが、確かにこれには行っておらぬというわけではございません。行ってもおります。しかしながら、これは産業界におきましてもいろいろな面において銀行の知識を活用するという方向が、特にこの第二次産業革命の段階になってまいりますと必要になりましたので、そういう方向で行っておるのもあります。これはむしろ銀行のほうが勉強に行っておるわけであります。また、ある意味におきましては、建て直しその他の場面におきまして協力を要請されておるというふうな点もあろうかと思いますが、そういう面で御理解賜わりたいと思います。  次に、中小企業の問題でございますが、中小企業の問題につきましては、当面これは一番大きな問題でございまするので、金融機関といたしましても、常にその点についての配慮を忘れておりませんし、現実に、過去いろいろ好況、不況のときがございましたが、でき得る限りの協力をいたしておるような次第でございます。  以上でございます。
  370. 田中武夫

    田中(武)委員 銀行協会の副会長さん、私は、自分の出身の会社が銀行から役員を押しつけられ、銀行との話し合いの中で五百人首切りを持ち出されて長期ストライキをやった経験者であります。また、いわゆる拘束預金が九億からあって——預金が九億あるのですよ。負債が五億か六億で倒れた会社更生法の申請を出した企業もございます。ひとつ、どうでしょう、各銀行から各産業に行っている、これも資本金十億くらい以上でけっこうですが、リストできますか。何銀行からどういう会社へ、名前はどっちでもいいが、何人ほど行っているか、そういうリストはできますか。いかがでしょう。
  371. 寺尾威夫

    ○寺尾参考人 そういうふうなリストは、残念ながら現在のところ持っておりません。
  372. 田中武夫

    田中(武)委員 ひとつ、すぐにとはいっても無理でしょうが、そういうものを一応調査してもらいたいと思うのです。その上であらためてまた検討することにいたしたいと思います。  時間の関係があるので、次に参りたいと思います。  そこで、次は大型合併の問題をお伺いしたいのですが、八幡・富士の合併問題はきょうは出ておりませんでしたが、毎日のように各新聞に出ております。しかも、その新聞記事を見ますと、どうも楽観論が多過ぎる。ある新聞記事は、これは一月二十六日か何かですが、「合併、条件つき承認」、「八幡、富士へ今週公取委員解」を示す。「このため予定通り六月一日に新会社の新日本製鉄が誕生するのは確実」。あるいは柿沼事務局長が両社の専務に十二日以降に問題を指摘して発表しますとかなんとか、これはもちろん新聞の観測記事もあろうと思いますが、概してみんなが楽観論である。火のないところに煙は立たぬ。どうも公取の審査のあり方等と、あるいは審査の状況等が漏れておる、そういうようにも思われるわけです。公取委及びその職員は独禁法によってその内容を公表してはならぬという義務があります。これはどうも公取委、事務局も含んで、内部体制にも問題があるのじゃないか。そうでなければこのような問題が、楽観論を常にかまえつつ新聞上に出るということはおかしいと思うし、国民もおかしいと思っております。いかがでしょうか。
  373. 山田精一

    山田政府委員 御指摘のとおり、新聞紙上にいろいろな記事が出ておるわけでございますが、これはただいま御指摘のとおり、観測記事でございまして、たとえばA紙とB紙と全く内容が正反対のことが同日に出ることもあるのが実情でございます。  私ども公正取引委員会といたしましては、楽観的も悲観的も、まだ現在厳重に調査中でございまして、その態度を決定しておらないのでございますから、漏れるにも漏れないにも、まだきまっておらないことなんでございます。
  374. 田中武夫

    田中(武)委員 現在八幡・富士について審査が行なわれておるということ。しかしこれはいわゆる独禁法上の審査ではない。両社から出されておるところの届け出は、独禁法十五条二項による届けではない。言うならば事前審査といわれておるが、私は一つの行政相談だと思うのです。ところが、公取委の性格は、政府各省庁のそれぞれの原局とは違って、行政指導ということはあり得ないわけなんです。また、あなたは昨年八月の臨時国会で当委員会において、私は事前審査とかなんとかいって土俵の外で事をきめないで、土俵の中で正式手続をもっておきめなさい。あなたは、そうしますと答えたのです。ところが、現に行なわれているのは、昨年八月に国会において約束したことと違うんじゃないか、こう思うわけなんです。それが一点。  そうして、行政相談ともいうべき事前審査の性格は一体何ですか。また、八月の臨時国会のときに、公聴会を開くかということについて、あなたは、従来からの例を見て、このような問題については公聴会を開かねばならない、こう思いますと答えておる。ところが、新聞の報ずるところ等では、公聴会は開かない、こういう情報も出ておるわけなんです。これらをあわせてひとつ御答弁願います。
  375. 山田精一

    山田政府委員 ただいま審査をいたしております段階について御指摘がございましたが、御指摘の事前相談の面と、それから独禁法第四十五条によりますところの独禁法に違反する疑いのあった場合に、私どもの役所が積極的に調査をいたします権限と、この両面を兼ね備えておるわけでございます。積極面におきましては、法律に違反する疑いが少しでもございました場合、これは私どもとして四十五条第三項の規定に基づきまして調査をいたします権限を持っております。  それから、相談を受けました場合、これは他の行政官庁と違いまして、裁量いたす範囲というものはないわけでございますが、しかし法律がなかなか難解なものでございますから、法律を適用するにあたってどうであろうかという一種の行政相談、これは親切に応じてやってしかるべきことかと考えます。  それから、第二点のお尋ねは、何か幾日までに内示するとかしないとかいうことを言ったような記事があったということでございますが、さようなことは一切申しておりません。  それから、第三点といたしましては、公聴会の問題についてお尋ねがございましたが、公聴会は現在のところでは、まだ当該合併の内容、条件その他が確定しておらないのでございます。先方から相談のございましたのは、すべて仮定の上で、かような条件の上で合併をしようとしたらどうなるでしょうかという相談でございます。それから、その合併契約の内容もまだ確定しておらないわけでございますから、私どもが四十五条の権限によって調査をいたしましても、その内容を的確に確定いたすことはできないのが現状でございます。したがいまして、公聴会は、その内容が確定した暁において、これは委員会の合議によって決することでございますから、私一人でとやかく申し上げることは差し控えたいと思いますが、私個人の見解といたしましては、昨年八月に申し上げましたごとく、まず常識的に考えて、公聴会をいたすべきものであると思います。これらを通じまして、ただいま御指摘のございました土俵の外で何かいたすというようなことは毛頭いたす気持ちはございません。成規の手続によって処理をいたしたい、かように考えております。
  376. 田中武夫

    田中(武)委員 毎日のように新聞記事が出ておる。それはみな推測だ、こういうことであるなら——まあいわゆる調査権限に基づいていま調査しておる、こういうことなんですが、それではいまの時点に立って、簡単でよろしいが、どういうことを調査しておるのか、その結果はどうなのか、さらに、この調査に入ったのは一体いつからか、これを明らかにしていただきたいと思います。
  377. 山田精一

    山田政府委員 現在調査をいたしております内容は、法律第十五条に照らしまして、一定の取引分野において競争を実質的に制限することとなるかいなかにつきまして調査をいたしておる段階でございます。  それから、調査を始めました時点でございますが、昨年の、大体両社から関係資料が提出されましたのが七月の末でございまして、八月の半ばから調査を始めておるのでございます。
  378. 田中武夫

    田中(武)委員 独禁法十五条三項では、合併について届け出が出てから三十日、必要があるならば六十日までの延長、加えて最大限九十日ということになる。ところが、いまあなたがおっしゃっているように、調査権限によって調査をする、それはもう半年近くもかかっておる。そうして問題点を指摘する。こういうことであるならば、私は、独禁法十五条三項は空文になるんじゃないか、少なくとも違反ないし不当なやり方ではないかと思いますが、いかがでしょう。
  379. 山田精一

    山田政府委員 正式の第十五条第二項に基づきます届け出がございました暁におきましては、御指摘のとおり三十日またはこれにプラス六十日の期間内において処理すべき規定になっております。現在の段階は、まだ正式の意思表示があったわけではございません。いわば一種の予備的な審査でございますので、これをなるべく早くいたすということは当然考えなければならないところでございますが、法律に抵触するとは考えておらないわけでございます。全力を尽くして調査をいたしております。
  380. 田中武夫

    田中(武)委員 どうも日銀上がりだけあって、あなた腹を見せない。しかし、あなたが何とおっしゃろうとも、ことごとく事前審査だということでやれば、十五条三項の三十日とか六十日とかいう期間は、これはもう足らないですよ。これは脱法行為ですよ。あなたが何と言われようと、私はそう思います。  それから、公正取引委員会は独禁法の番人である、その立場に立ってものごとが出てきたときに、独禁法を通してイエスかノーか、承認か拒否かをきめればよろしいわけで、それに対して条件をつけるというようなことは許されないと思います。ところが、今日事前審査ということで、あなたが言うなら調査権の発動、いろいろと新聞の伝えるところでは、各品種が出ております。そのことに関連をいたしまして、たとえば釜石を切り離す、そういううわさが出る。それに対して、現地においては労働者が動揺をしておる。そうかと思うと、経済界の何がしがこれを調整するというようなことを言い出す。こういうことは私、独禁法政策からいって好ましいことではないし、かりにあなたのほうで、こういうことはどうかという産業政策にまで足を踏み入れるとするならば、これは公取委員会の権限を逸脱した行為だといえると思います。独禁法に照らしてイエスかノーかを言えばよい、産業政策にまで立ち入るべきではない、こういうように思いますが、あなたの御見解はどうなんでしょう。
  381. 山田精一

    山田政府委員 御指摘の第一点でございました、事前審査ということで時間をかけると脱法ではないかという御指摘でございましたが、これはどこまでも、法律の規定は、先方から正式な確定した意思表示があったときから期間を起算するということになっておりますので、決して脱法とは存じません。それから、それだけ調査日数を要する大型化の事件であるという点を了解をいただきたいと存じます。  それから、第二点の条件つきでということはあり得ないではないかという御指摘でございます。全くそのとおりでございます。イエスかノーかしかございません。条件つきということは法律上あり得ないわけでございます。  それから、第三点の産業政策に口を出していはしないかという御指摘でございましたが、私どもは毛頭そういう気持ちはございません。新聞にいろいろな対案でございますか、対策でございますか、出ておりますが、それは当事者あるいはどこかの人がいろいろと憶測をして、こうもしたら通るかということを考えておるのかと存じますが、私どもの口からいささかでもそれをサゼストしたような事実は全くないということを申し上げておきたいと思います。
  382. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 ちょっと田中君に申し上げますが、先ほど日銀総裁及び……。
  383. 田中武夫

    田中(武)委員 もうけっこうです。
  384. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 もう退場してよろしゅうございますか。——それではちょっとお待ちください。  参考人の日本銀行総裁宇佐美洵君、全国銀行協会連合会副会長寺尾威夫君に申し上げます。  本日は御多用中のところを御出席いただきましてありがとうございました。委員会を代表して厚くお礼を申し上げます。  なお、後日当委員会に再び御出席を願うようなことがあるかもしれませんが、その際はよろしくお願いをいたします。お忙しいところありがとうございました。御退席願ってけっこうでございます。
  385. 田中武夫

    田中(武)委員 公取委員長はそのように否定をせられますが、公式に漏らしたことはないとかなんとかいって否定せられますが、現に両社の専務を呼んで柿沼事務局長がこうこう言ったという、日と時間と人まで新聞に出ておるのですよ。これをもっても憶測記事だとおっしゃるのですか。
  386. 山田精一

    山田政府委員 その代案としてどういうことをしたらどうかというようなことは全然言っておる事実はございません。
  387. 田中武夫

    田中(武)委員 公取委員会及び独禁法は、ことしは運命の岐路に立たされておると思うのです。もしこの大型合併を承認するとするならば、公取頼むに足らず、自後の合併その他の問題はすべてフリーパスになると思います。また、かりにこれを否認するとするならば、通産省をはじめとする政府あるいは財界の動き、圧力等によって、独禁法十五条あるいは九条、持株会社の禁止規定等々の改正を含むところの改正案が出てくるのじゃないか、いままでの通産省等の動きからいえばそう思います。  そこで総理、この合併問題の決定は、公取委員会がいわゆる行政委員会として独自に行ないます。その結果に対して、法の改正とかなんとかいうようなことは考えませんね。あなたの兄さんの岸内閣のときには、三十三年に独禁法の改正が出てまいりました。これは国会が審議未了、廃案といたしました。今日の公取委の動きを見ておりますと、三十三年の改正にさかのぼる、三十三年の改正が通ったような態度ではなかろうかということを危惧いたしております。いまこそ公正取引委員会姿勢を正し、厳然たる態度で処すべきであろうと思います。言うならば王手飛車をかけられておる今日、公取の自殺行為にならないだけの決意は持っておりますか、総理と双方にお伺いいたします。
  388. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 公正取引委員会国民の期待に沿って、公正にこの問題と取り組んでいる最中でございます。その際にどういうようなことが出るだろう。こういうような仮定からいろいろな御議論が出ておりますが、私は公正取引委員会を信頼しておりますので、公正なる処置が行なわれることだ、かように思いますので、それより以上の答弁はいたしません。  また、いろいろお話を聞いていると、何だか、聞き方によると、田中君のお説はやや公正取引委員長に圧力を加えておるかの感もなきにあらず。これは聞き方によるんですよ。これは絶対にそんなことはないと思いますが、さように思いますので、とにかくいま、公正取引委員会が、山田君が公正に行なわれることだ、かように私は思っておりますから、以上をもって私のお答えといたします。
  389. 田中武夫

    田中(武)委員 私は公取委員会を激励しておるのです。  そこで、この問題がどうなろうとも、あなた、独禁法の改正は佐藤内閣の手で出しませんね。どうでしょう。
  390. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 突然の話で、一体こういうことをどう考えるかということですが、私はいままで考えたことはございません。
  391. 田中武夫

    田中(武)委員 総理考えていないということは、改正を出すというような気持ちはないということに受け取ってよろしいですね。
  392. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いま突然のお話です。私、頭の中にそういう問題があればそれについてとやかく申しますけれども、いまのところ白紙でございます。
  393. 田中武夫

    田中(武)委員 現在考えていないということは、そういうことは近い将来において佐藤内閣の手で持ち出さないと理解をいたします。よろしいですか。
  394. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 あまり考えてないことをお聞きにならないほうがいいだろうと思います。
  395. 山田精一

    山田政府委員 法律に忠実に、またこれを厳正に適用いたしてまいりまして、御信頼にこたえたいと決心いたしております。御激励をいただきましてありがとうございます。
  396. 田中武夫

    田中(武)委員 そういうことはない、こう言えばしまいですが、大体流れている予測、また、私もそうだと思いますが、公取委員会は事前調査によって、これこれこれこれの点に問題があります、こういう問題点を指摘する。そういたしますと、両社がその点だけをはずすとか、あるいはそこに何とかあると思いますが、そうして出してくることによってフリーパスだ、こういうような方向をとるのではなかろうか、このように私も思ってますし、一般も思っておるんですよ。そういうことはないでしょうね。いかがでしょう。
  397. 山田精一

    山田政府委員 現在調査中で、いわゆる御指摘の問題点もまだはっきりしぼられておらないのでございますから、これを内示するも内示しないも、ないものでございますから、しようがない、こういうことでございます。
  398. 田中武夫

    田中(武)委員 その調査の結果を発表するときに、これこれは問題であります、こうやれば、それを直せば全部フリーパスだ、こういうことになる、それをねらっているのではなかろうか、こう言っているのです。だから、そういう回答というか、結論は出さないでしょうねと言っているのです。
  399. 山田精一

    山田政府委員 これは法律に抵触する点が全部なくなってしまって申請が出れば、これはパスをいたすと思います。要は法律に抵触いたす点があるかないか、これを法律に照らしまして、厳正に判断をいたしてまいりたい、かような考えでございます。
  400. 田中武夫

    田中(武)委員 これはもう私が言っているように、調査権だとか事前調査と言っているが、結局はこれこれこれに問題がありますと言えば、それを直せば通すということなんだ。だからだめだと言っているんですよ。それならば土俵の上で勝負をせずに、外で勝負をしてしまうということになるんですよ。そうでしょう。そうするとあなたは、八月の臨時国会における当委員会、国会での約束を守らなかったということになるんですよ。そういう立場をとっておる限り、公正取引委員会は墓穴を掘ることになりますよ。これを認めるならば、あらゆるものがフリーパスになるということを私は予言しておきます。公正取引委員会は現在ハムレットの心境といいますか、右するか左するかで悩んでおるけれども、あなたは独禁法の番人としての態度だけはくずさずにおってもらいたい。今日寡占状態が国際競争力強化の名のもとに起こっておる。それが管理価格を形成していく。このことは高田委員も先日指摘をいたしました。どうおっしゃろうとも、そのことは経済学的にいっても事実が示しておるわけなんですね。公正取引委員会は独禁法の番人として、独禁法第一条の国民経済の民主的な発展、消費者の利益ということに最大の目的を置かねばなりません。その上に立ってあくまでも厳然とした態度で臨むということをもう一度はっきりと議事録に残してください。
  401. 山田精一

    山田政府委員 何か土俵の外で事を運ぶような御指摘でございましたが、そういうつもりは毛頭ございません。届け出を当事者がいたしてまいるか、いたしてまいらないか、これは私どもの関知するところではございませんが、かりに届け出が出ました場合におきましては、先ほど申し上げましたごとく、おそらく公聴会を開きまして成規の手続によって決定をいたす、かように考えております。
  402. 田中武夫

    田中(武)委員 いま国民は公取委員会がどう出るかということを注目しております。多分こうではなかろうか、日本における二大大企業、ビッグビジネスが合併するという問題に対して、公取委はその姿勢を守り通し得るであろうかということを危惧しております。先ほど来何回も言っておりますが、誤まれば自殺行為でありますよ、それだけははっきり言っておきます。  それから総理、この合併の問題で、もちろん他の者が応援しておると思うのですが、担当は六人なんです。公正取引委員会で十五条関係の担当者は六人でしょう。そのような状態でこの巨大産業のほんとうの調査ができるかどうかということを考えて、私は公取委員会の強化をひとつ提案いたします。予算も少しはふえているけれども、こんなみみっちいことじゃだめだと思います。  さらに、公正取引委員の構成メンバーについても疑問があります。一人は大蔵、一人は通産、司法畑というようにワクがきまっておるんですよ。そして国会人事だといって相談に来るのは、今度は通産の番でございますのでこの人を、今度は大蔵の番でございますのでというような、そういう公正取引委員会の構成それ自体に私は問題があると思う。こういうような点につきまして、総理公正取引委員会をどのように見ておられますか、お伺いいたします。
  403. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 公正取引委員会を設けましたゆえんは、これは寡占状態にならないように、競争のもとに企業の発達、同時に消費者の利益を保護する、そういう立場に立って公正取引委員会が設けられておるものだ、かように考えております。したがって、この認識に立って先ほど来の御議論も実は拝聴しております。大いに鞭撻されることもけっこうだし、また委員の構成等についてもよく考えなければならないとか、あるいはまたもっと機構を拡大しなければならないという御意見についても、私も拝聴したような次第であります。いまこの際に直ちに機構を拡大すると、かようには私申しませんが、御意見は御意見として拝聴しておく、ありがとうございました。
  404. 田中武夫

    田中(武)委員 委員長、最後に。  まさかそのようにはならないであろうとは思いまするが、八幡・富士がかりに合併が容認せられるならば、そのときは独禁法第一条の目的に照らし、国民経済の民主的発展、消費者のために必要であったという積極的な理由をつけてもらいたい。そういう理由なくして変な行動は慎んでいただきたい。このことを要望いたします。  最後に、中小企業問題でお伺いいたしたいと思っておりましたが、時間が参りました。一口だけ。  いま中小企業が一番悩んでいるのは、労務問題であります。労働者を集めることであります。そのことと、それからせっかく入った労働者が定着をしない、寄らば大樹の陰ということで、大企業へいってしまう。そこで中小企業に労務倒産というようなことのないような措置が必要である。そのためには、不健全なる第三次産業に働いておるまだ若い労働力を中小企業に振り向けるような、といって統制的なものでなくて、進んで中小企業にいくような施策、すなわちその職場の環境あるいは社会保険、厚生福祉等について十分に考えなくてはならないと思いまするが、労働大臣と厚生大臣、それから中小企業庁の担当である通産大臣の御意見を簡単に伺って終わります。
  405. 原健三郎

    ○原国務大臣 簡単にお答え申します。  中小企業に労働者を定着さすことは、何といたしましても賃金と住宅等の福祉、福利面の両方だと思っております。それで、こういう方面の弱年層の労働者の賃金が上昇したとは申しましても、賃金の格差は従来と比べて縮小いたしておりますが、依然として格差がございます。しかしながら、だんだん賃金は上昇の過程にあります。住宅などの福祉方面でも、中小企業についてはかなりの立ちおくれが認められますので、こんなことが中小企業における労働者の定着を困難にしております。そのため労働省としては、中小企業についてまず福祉面の充実をはかるため、いろいろな施策をいたしております。また、賃金面では、最低賃金制の拡充につとめ、現在六百七十万人の労働者が適用されております。また都道府県労働基準局などに賃金相談室を設け、賃金制度の改善について相談をいたしております。  なお、特に新規学卒就職者等については、職業生活を通じて社会人としての成長を遂げることができるよう特別な配慮を、こう考えております。  また、中卒職業者に働く青少年手帳を交付し、公共職業安定所に青少年就職相談室を設けるなど、職場適応をはかるためきめのこまかい施策をいたしておるところでございます。
  406. 斎藤昇

    ○斎藤国務大臣 お説ごもっともに存じます。保険制度の抜本改正の際に、そういう点を十分考慮いたしたいと考えております。
  407. 大平正芳

    ○大平国務大臣 私どもといたしましては、中小企業の体質の改善、体制の整備を骨格といたしまして、金融、税制、技術、組織、そういった各般の分野におきまして、各省の協力を十分得ながら鋭意努力してまいるつもりです。
  408. 田中武夫

    田中(武)委員 どうもありがとうございました。
  409. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 これにて田中君の質疑は終了いたしました。     —————————————
  410. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 この際、本日の麻生良方君の質疑にかかる磐梯熱海火災にかんがみ、理事会において協議いたしました結果、政府に対し、委員長より次のように要望をすることに決しました。すなわち、  続発するホテルの火災について、政府は、速かに関係機関に対し、事故防止のための適切にして統一的な措置を講ずるよう善処されたい。 以上であります。  政府所見を求めます。内閣官房長官保利茂君。
  411. 保利茂

    ○保利国務大臣 ただいまの委員長の御発言の御趣旨につきましては、政府といたしましては、これを尊重いたし、すみやかに最善の措置をいたしたいと考えておる次第であります。
  412. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 明日は午前十時より委員会を開会し、阪上安太郎君、久保三郎君、石田幸四郎君の総括質疑を行ないます。  本日は、これにて散会いたします。    午後五時十八分散会