○唐橋東君 私は、日本社会党及び公明党を代表して、ただいま議題となりました
文教委員長大坪保雄君の
解任決議案の
趣旨弁明をいたしたいと思います。(
拍手)
まず、
解任決議案を朗読いたします。
文教委員長大坪保雄君
解任決議案
本院は、
文教委員長大坪保雄君を解任する。
右決議する。
理 由
文教委員長大坪保雄君は、当日
議長より強行
採決をせざるよう強く要請されておりながら、本
会議の開会中ひそかに抜け出し、文教委員長席に着き、本
会議終了直後の強行
採決にそなえていた。この行為は、国会役員として懲罰にあたいする行為である。
さらに、公平であるべき委員長の職責に違反し、政府与党の意のままに多数の質疑者を残し、突如として、国家権力による大学の直接支配を意図する「大学の運営に関する
臨時措置法案」の質疑を打切り、強行
採決を行なった。
かかる暴挙は、
議員としてあるまじき行為であるのみならず、議会制民主主義をじゅうりんするものである。
従って、委員長としての責任はまことに重大であり、きびしく糾弾すべきであり、委員長としての任にあたいしない者と断ぜざるを得ない。
これが、本
決議案を
提出する理由である。
〔
拍手〕
以下、理由について御説明申し上げます。
先ほど、わが党代表
山口議員が、
大坪議員の懲罰事犯として、第一、委員長として
議長の裁定に従わざる不当なる行為、第二、
議長に虚偽の報告をした罪、第三、
衆議院規則を守らず、国会の権威を失墜した罪、第四、学問の自由を圧殺し、人文科学、自然科学の進歩に反逆する最大の罪、この四点をあげておりますが、
動議は多数という力によって取り上げることが否定されました。しかし、
議員として犯したこの懲罰事犯は絶対に消えません。わが党の主張は当然のこととして、議会の歴史の中に生きていきますし、また生かさなければならないことを銘記すべきであります。
いま読み上げました理由も、この懲罰事犯と同一の趣旨でありますが、できるだけ重複を避け、具体的に御説明申し上げます。
第一は、具体的な審議の経過から見た不適格性であります。文教委員長という重要な地位は、単に委員会の
議事の進行係であってはなりません。文教政策に対する高い識見と、現在の教育の現状に対する深い洞察力を持って、党派にとらわれず、広く各界各層の意見を取り入れ、教育立法の具体的な推進者でなければなりません。
委員長は、遺憾ながらこのような理想も識見も持ち合わせず、本国会の会期の終わり、すなわち、五月二十五日の前日である五月二十四日に出されましたこの法案を、自民党の方針のまま、ただ一日でも早く審議を終了することにのみきゅうきゅうとしていたのにすぎません。口でこそ、重要法案であるから十分に審議を尽くそうと言いながら、初めから審議時間の総ワクを三十時間とし、ここにめどを置いて、審議の途中、政府側が法案の矛盾をつかれて答弁に困りましょうが、公聴会で全くりっぱな意見が出ようが、そんなことは一切耳を傾けません。三十時間をこえてからは、気をもむこと、気をもむこと、夜中の十一時過ぎにあすの委員会の電報をかけてよこすような始末でございます。
質疑時間は、各党全部の合計がなるほど三十六時間五十二分となりましたが、公聴会のときの質問時間、各党総計五時間二十九分を引けば、三十一時間二十三分がその総計でありますから、当初からの予定より一時間二十三分超過のときに強行
採決をしたことになったわけでございます。しかも、そのうち五時間五分が自民党の質問でありますから、野党三党の質問総時間は実質二十六時間十八分であり、このうち社会党の質問総時間は、公聴会の二時間十八分を除くと、実質十八時間八分であります。それをあたかも三十七時間を野党質問に費やしたような印象づけをしておることでございます。
園田国会対策委員長が強行
採決後テレビで全国民に発表した中で、社会党は一人で十二時間も質問したと言われました。公聴会での質問時間も加えて、わが
山中委員の質問時間は八時間四十三分であります。このような虚偽の報告を国会対策委員長にさせ、あたかも社会党が審議引き延ばしをしているがごときことを宣伝していることは、公平なるべき文教委員長として絶対に許すべからざることなのであります。(
拍手)
第二としてあげることは、懲罰
動議にもありますので詳しくは触れませんが、いやしくも国会役員としての委員長が本
会議を欠席し、正式に国対から注意されたにもかかわらず、平然として省みない態度は、全く許すべからざるものがあります。
私は、資料を委員会室に置きましたので、急にこれに目を通す必要が出ましたので、ちょうど午後七時ごろ委員会室に資料を取りに行きましたところ、委員長席にただ一人新聞らしいものを見ているので驚きました。どうしたのですかと聞き、さらに、本
会議を欠席することは許せませんよと言いますと、君こそ委員長席を占領しに来たのだろう、こう言うのです。私は、国会正常化の申し合わせを重んじ、露ほどもそのようなことを考えておりませんでした。自分の不正を恥じず、他人に責めをかぶせること、これよりはなはだしきはございません。(
拍手)驚くべきことには、国対よりの注意に対しては、懲罰にされることは、むしろ光栄であると答えているのであります。かかる委員長のもとで公平な審議はなし得ないのであります。
次に重要なことは、
議長の権威を無視していることでございます。このことは懲罰事犯にもありましたので、重複いたしますので省略いたしますが、少なくとも、国会の
議長は国会の最高権威者であります。この権威を重んじてこそ初めて
議員たるの資格があるのでありますが、この権威を全く無視した
大坪委員長は、委員長たることはもちろん、
議員としての無資格者であるばかりでなく、国会の権威の破壊者であると断言せざるを得ません。(
拍手)
次にあげることは、うその報告を
議長にしていることでありますが、多少具体的に申し上げます。
議長の権威を無視している
大坪委員長でありますから、このようなことは当然でありましょうが、あの強行
採決のあと、
議長に対して、社会党の物理的抵抗があったので、やむなく強行
採決した旨報告されていることは、わが党代表と
議長との交渉から明らかになったのであります。この写真を見ていただきたい。少なくとも、委員長を中心にして、体力
議員、ボデー
議員が委員長席を取り巻いていて、社会党
議員は机を隔てて——机を隔てているのが社会党
議員なのであります。
大坪委員長に指一本触れておりません。(
拍手)このように取り囲み、引っぱっているのは与党
議員であり、社会党
議員は机の前で抗議しているだけであります。委員長を中心に自民党の体力派・ボデー
議員が取り囲み、自民党委員はほとんど全員本本
会議の終了を待たず席に着いており、わが党
議員が本
会議終了後、急を聞いてかけつけたのを見て、一気に開会を宣したので、わが党
議員が激高したのであります。人をわなにおとしいれておき、わなに入った者を罪人呼ばわりする、この根性の卑劣さには全く驚くほかありません。この手は、よく旧軍閥が植民地支配において使い、旧内務官僚が国民支配の手段として使った策略であるわけであります。なるほど、委員長の経歴を見ますと、悪名高き旧内務官僚のきっすいの系列の人であることを知り、初めてその人柄と計画の根源を理解することができました。
終戦後、占領軍は日本の民主化をはかるために、行政と警察権をもって国民に君臨していた旧内務官僚制度をまつ先に解体しましたが、この官僚の中には、旧罪を省みず、解体後、口に民主主義を唱え、民主国家の中であたかも平和論者のごとく装っている人がおりますが、
大坪委員長もその中の一人であると断言できるのでございます。(
拍手)教育の重大な危機に際し、よろいの上に衣を着た平清盛が、いま重大な文教政策樹立の中の責任者である実態を、私たちは知らなければなりません。後世の歴史家は、必ずこの事実を記載するでありましょうし、この実態を感じ、この法案粉砕のため、全大学人、全学生、全文化人が立ち上がるのもまた当然のことだと思います。(
拍手)
したがって、私は、解任の理由として、文教政策の本質にかんがみ、次のことをあげなければなりません。
すなわち、憲法において学問の自由が保障され、教育基本法において教育は不当な支配に属せざることを明記し、学校教育法において大学の自治を確立することができたのは、明治憲法下の天皇絶対制と軍国主義の中に行なわれたばく大な犠牲の上に立って、再びあやまちを繰り返すまいとした教育の原則でございます。国民の悲願なのであります。この崇高な理想も、長い保守党政権のもとで、憲法がじゅうりんされ、教育は再び軍国化することに対する純真な青年のやむにやまれぬ反発が、大学紛争の一原因なのでございます。したがって、これらの情勢を深く理解し、高い理想と一つ一つの現象の奥に秘められた本質を探り当て、一党一派や、目前の利害にとらわれない基本態度こそ、文教政策立法者の基本的な資格でありますことは、さきにも申し述べました。かかる観点に立つとき、
大坪委員長は全くこの資格を欠くのみならず、むしろ大きな害毒を流すものとして、この法案とともに排除しなければならない人であると断ぜざるを得ません。(
拍手)
その一つ一つの具体的事実はいまあげませんが、典型的旧内務官僚として、特高畑の経歴を持つ
大坪委員長の性格は、新しい文化と科学を創造しなければならない新しい教育をつくり上げる人ではなくて、再び軍国化と中央集権化の道をつくり上げる権化としての姿なのでございます。大学立法がねらいとする学問の自由と大学の自治の破壊に異常なまでに示した熱意は、ここにあることを私は知ったのでございます。(
拍手)私たちは、学問の自由と大学の自治を守る名において、
大坪委員長を排除しなければなりません。
以上が
解任決議案提出の最大理由であります。賢明なる各位の良識に期待し、提案理由の説明といたします。(
拍手)
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