○千葉佳男君 衆議院要覧(乙)によりますと、
松田議長については、次のように記載されております。
「
松田竹千代 大阪府第五区選出、」「明治二十一年二月大阪府に生る、」「紐育」と書いてありますが、これはニューヨークだと思うのです。「紐育
大学にて経済学社会学を研究、同
大学より名誉法学博士号授与、
昭和三十九年勲一等瑞宝章を授与」、「伊国」と書いてありますが、これはイタリアだと思います。「伊国より功労大十字騎士章受章 我国初の隣保事業たる柏木有隣園理事等となる。」その次は、「海軍政務次官、地方制度調査会委員、郵政大臣、
文部大臣、コロンボ計画協議
委員会第七次
会議政府代表、ドミニカ国と貿易、移住問題につき交渉する政府代表等となる。第八回、第九回国際労働
会議、第二十九回列国議会同盟
会議に出席、欧米各国、満州、支那、東南アジア、中共を視察す。自由党総務、自由民主党相談役、総務、顧問、大阪府支部連合会々長」、その次に「永年在職
議員として衆議院より表彰さる」、最後に「当選十一回」。
このように記載されておるわけでありますが、功名武勲かくかくたる
——あえて私は武勲と言いたいのですが、功名武勲かくかくたるこの
松田議長が、なぜ一体不信任されるか。こういう
理由につきまして、以下
提案者に
説明をお聞きしたいと思います。
まず、この
議長不信任案が冒頭に出されたということは、私は単なる議会、
議事運営のかけ引きとか、技術的な問題ではなかろう。ついせんだって衆議院の
議長、副
議長が交代した直後でありますから、そういう意味におきまして、単なる技術上の問題、かけ引きの問題などと質的に違った非常に異常な
事態だというふうに私は考えるわけであります。そういう点で、普通一般の不信任案の
提出というふうなものよりも、まことに質的に違っておるということをまず最初に深く遺憾としながら、お尋ねしたいと思います。
まず、
松田議長が
就任されたその前後の事情を、私はもう一回振り返ってみたいと思うのであります。
今
国会の重要
法案である健保特例法改正に関しまして、御承知のように、
与党自民党は、
委員会審議の途中で、突如として全く別の
法案ともいえる本質的修正をあえて行ない、社会労働
委員会はもとより、衆議院本
会議においては、健保特例
法案の
記名採決中に起立
採決に切りかえるという、
国会史上例のない、常識のはずれた措置をとったのであります。このような
国会の無秩序的
運営の
責任をとって、前
石井議長が
辞任し、そしてそのあとを受けて、
国会の変則
事態の深刻さと、その
責任の所在を明らかにしながら、正常な
国会の回復に全力をあげるという
使命をになって、現在の
松田議長が
就任されたわけであります。
このような事情の中で生まれた
松田議長が、しかるがゆえに
議長就任にあたりまして、その記者会見においても、
国会の
正常化につとめるために、真摯な
態度で問題に当たる、
野党とも誠意をもって話し合い、その考えも尊重していく、
強行採決は本
会議ではやらないなどの
態度を明らかにし、また、翌十八日には、
国会正常化のためにとして、
強行採決はしないという
議長裁定を行なっているのであります。
ところが、御承知のように、
文教委員会の
強行採決が起こったわけでありますが、この
文教委員会における
大学管理臨時措置法、この
法案に対しまして、
衆議院議長である
松田議長が、この
採決を無効として
文教委員会に差し戻すことが、
国会正常化を重要な任務として
就任した
議長の当然とるべき真摯な
態度であろう、私はこのように思うのであります。ところが、こういうふうに
責務を放棄しました
議長が、はたして
議長として適任であるかどうか、もう一ぺん
提案者にお伺いいたしたいのであります。これが第一点であります。
次に、私は、
松田議長が議会民主主義のかなめである衆議院の
権威と、
審議を尽くす、こういう民主主義の基本原則に沿って院を
運営する立場にあるにもかかわらず、それを行なわなかった。これが一体衆議院の
議長としてふさわしいかどう
、この点についてもお伺いしたいと思うのであります。
次に第三点、私がお伺いしたいのは、この
国会に
提案されました
大学運営臨時措置法、この
法案は、憲法に定められました思想、言論の自由さえも侵す全くの悪法であるといわなければならないと考えておるのでありますが、本案が成立するならば、
大学は教育の場としての
権威を失い、わが国の将来にとって憂うべき
事態を引き起こすことは明らかであります。
政府は、
大学を研究の場として維持するために
暴力学生を取り締まることが必要だと強調しておりますが、法治国家であるわが国において、順法精神を持つことが基本であると、朝から晩まで精神訓話をされておる。そういう精神訓話を
——私はお尋ねしたいのでありますが、自分
たちが都合が悪いときには合法性を無視しているのではないかというふうに、あなた
たち自身が
暴力学生であるとレッテルを張った学生からもし突っ込まれたならば、一体どうするか。多数だから何をやってもかまわないのだ、こういうようなことがまかり通るとするならば、この精神訓話の中心である順法精神というものは、まさに根底からくずれる、私はこのように思うのであります。
でありますから、今晩の夕刊を見ましても、全国の九十六の
大学の学長があらためて反対のための会合をし、反対の
態度を強く表明しております。でありますから、今日のこの
大学問題が生じておる背景には、こうしたその場その場の御都合主義、こういうものが非常に大きな背景になっておるというふうに指摘せざるを得ないわけであります。でありますから、このことが背景である
大学問題、この
大学を
正常化しようとする現在、先ほどもちょっと触れましたような
大学の学長を先頭にして、学長、教授、助教授、一般学生、こういった者が一体となって努力している現在、こういうふうな努力に水をさし、さらには、
紛争校というものを新しい形で増していく、こういうふうな結果に相なるのではないか、このように考えるわけであります。
でありますから、こうした
法案を
強行採決してあえて恥じないというのは、この法治国家における、民主主義憲法下における、しかも、
議会制民主主義をたてまえとするわが国のこの本院において、これがはたして妥当なのかどうか、これをもう一ぺん
提案者から懇切丁寧に
説明をいただきたい、このように思うわけであります。
最後に、
大学法案の
強行採決によって、再び三たび、四たびですね、
国会が異常
事態を引き起こしたわけでありますが、ここで、もう一点お伺いいたしたいことがございます。それは、この
法案を成立させることが、はたして適当であるかどうか。今
国会における
強行採決は、参議院を含めて十六回になるというふうにいわれておりますが、一
国会におけるこのようなルール無視ということは、
国会史上例を見ないと私は思うわけであります。
文教委員会で強行されましたその瞬間には、御承知のように、月からアポロがちょうど地球に帰ってくる途中であったわけでありますが、わが国の科学技術の発達、人類の平和、こういう大きな点から考えてみましても、現在の
大学の教育、研究のあり方について、政治がこれに介入してはならないと私は強く考えておるわけでございます。政治が教育、研究に介入したとき、それはもはや、その発展の根拠というものがくずれるのではないか。日本の将来にとって非常にマイナスになる
法案をあえて
強行採決しようとしたこの
態度は、私は、許されない、このように思うわけであります。あえてオーバーな表現をするならば、今後の日本にとって非常に大きな憂うべき時代が到来した、こういうふうに言っても私はあえて過言ではないと思うわけであります。
最後に、もう一度お尋ねいたしたいと思うのでありますが、
議会制民主主義を
破壊するという、こういう政府並びに自由民主党の
態度は、おそらく
国民の諸階層もかんにん袋の緒を切らしておるというふうに思うのであります。
議長が公平な
裁定者としての
権威を高めるために党籍離脱を行なうというのがかねがねの私どもの主張でございましたが、
松田議長は党籍離脱にかかわらず、どこまでも公正な
態度で臨むつもりである、このように述べておられました。この党籍離脱を行なわないでも、公正な
態度をとるといったこの
態度が、いまや、まさにくつがえっておるわけでございまして、先ほどの
質問にもありましたように、これはまさに、自由民主党の走狗、つまり番頭に化しておる、
議長の
権威はまるっきり失墜した、このように思うわけでございますが、この点、
提案者はどのようにお考えになっておりますか、最後にお尊ねいたしたいと思います。
以上、数点にわたって
質疑を申し上げましたけれども、ひとつ懇切丁寧な回答をいただくことをお願い申し上げまして、私の
質疑を終わる次第であります。(
拍手)
〔
田中武夫君
登壇〕