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佐々栄三郎君 私は、
日本社会党を代表して、ただいま
岡田利春君より
提案されました副
議長小平久雄君に対する
不信任決議案に対して、若干の
質疑を行ないたいと存ずるのであります。(
拍手)
さきに
衆議院議長石井光次郎君に対する
不信任決議案が
提案され、ただいままた引き続き副
議長小平久雄君に対する
不信任決議案が
提案されましたことは、
わが国議会政治にとってまことに痛嘆にたえないところであります。(
拍手)かかる
事態は、ひとり
議会の機能が一時的に混乱におちいったという技術的な観点からではありません。
事態はまことに深刻であり、単に
国会運営の問題としてだけでなく、実に、日本の
議会政治それ自体の存立にかかわる重大な段階に立ち至っていることを痛感するのであります。(
拍手)今日の
議会は、もはや
国権の
最高機関としての地位と機能が失なわれておるというだけでなく、
国会の規則も、慣行も、慣例も、一切がほごにされ、多数を頼む
与党自民党の独裁的暴力だけがまかり通っておる
状態であり、もはや
議会制民主主義は存在しないといわなければなりません。(
拍手)
今回の健保
特例法にあらわれた政府・
自民党の
行動は、まさに暴徒の集団
行動であります。
委員会も開会されず、
速記者はもとより、
与党議員すら席にいない状況のもとで強行されたあき巣ねらいに匹敵する行為であり、
委員会不存在の中で強行された単なる暴力事件にすぎないのであります。(
拍手)
国会運営のこのような無軌道ぶりは、われわれの口から語るよりも、むしろ取材に当たった新聞記者の公平な筆に語ってもらったほうがよいと私は思います。本日のある大新聞は、昨夜のできごとにつきまして、次のように報道をいたしておるのであります。「
自民党は十日夜の衆院社労委で、健保
特例法改正案の
修正採決を強行したが、今
国会では、
重要法案だけでも国鉄運賃法、総定員法、地方公務員定年制
法案に続いて四度目の
強行採決である。
与党の力による
採決は、いまや
重要法案の
採決方式として定着した感じだが、とくに健保
特例法改正案の場合は、
委員長が
委員会室にはいったのもはっきりしない
状態だ。さらに、広告ビラをばらまくような調子で
修正案の文書を配布し、瞬間的な早わざで可決するという、かつてないやり方であった。これでは、
自民党だけが一方的に
採決したと解釈しているだけといわれてもしかたのない異常な情景だった。それだけに、与野党それぞれの言い分はともかくとして、
国民は目を白黒させるだけで、いよいよ異常
国会のあり方が深刻化したといえよう。」、こういうことが報道されております。また同じ新聞には、次のようなことが書かれております。「大混乱のあと記者会見に現われた森田
委員長、ふるえる手でメモを読みあげながら、状況を説明したが、細部にわたる質問に対しては、介添え役の渡海
自民党国対副
委員長らの耳うちに助けられ、かろうじてつじつまを合わせる始末だった。それに
強行採決に加わった
与党議員たちの話もあやふや。「
委員長は
委員会室にはいっていたのか?」「はいっていたろう」「一向に見かけなかったが……」「そんならだれかが代理をつとめたんだろう」——と、まるでひとごとのよう。」であった。他の新聞の論調も、大体これと同じようなことを書いておるのであります。
私は、この政府・
与党の態度は、まさに亡国のきざしをあらわしておると思うのでございます。(
拍手)およそ民主的な国家においてこれはあり得べからざる姿であり、一切の私情を抜きにして、心からの怒りを感ずるのでございます。このようなことがまかり通るといたしますれば、日本の
民主主義は完全に葬り去られ、
国民の
政治不信をますます高め、ついには
議会制民主七義を絶望と死地に追いやることはきわめて明らかであります。
このような
立場から、私がまず第一に
提案者にお尋ねをいたしたいのは、副
議長の任務と
責任の問題であります。
私は、副
議長の
役割りは、
議長を代理し、あるいはこれを補佐し、公正な
議会運営を果たすべき
役割りを持ち、その重大さは
議長に比し著しく遜色あるものとは思わないのであります。しかるに、
小平副
議長は、全く政府・
与党の走狗となり、老齢の
石井議長を何ら補佐することなく、いたずらに手をこまねいて傍観していたとしか見られないのでございます。このようなことは今回に限ったことではありません。今日までに
国会を通過した
重要法案のほとんどすべては、全くその
審議を尽くさず、
自民党の一方的な問答無用の
強行採決によって片づけられてきたのであります。そうした混乱の中にあって、
小平副
議長は全く無為無策、いたずらに
事態を放置してきたばかりか、みずから
与党自民党と気脈を通じて独裁的
暴挙を黙認してきたのであります。まことに言語道断といわなければなりません。(
拍手)私は、今日のような混乱の中でこそ、院を代表する正副
議長が、公正無私の
立場に立って
事態の解決に身を挺して
行動すべきであると思うのでありますが、
小平副
議長の
行動は、みずからこの任務を放棄し、この混乱に拍車をかけているとしか思われないのであります。
小平副
議長は、副
議長として
事態収拾にどのような努力を払われたのか、私は
提案者から御説明をいただきたいのでございます。
さらに、これらの状況を前提として、副
議長とはいかなる
役割りを果たさなければならないものであるか、
提案者の御見解をあわせて承りたいと思うのでございます。
第二は、
国会運営の基本的問題は、
審議権の尊重、特に少数意見をいかに保障するかということであります。その意味では、正副
議長は審判者の
役割りを受け持つものであり、
民主政治を基礎として、
議事を公正かつ不偏不党の
立場で指揮する気魄に満ちていなければならないと信ずるのであります。したがって、正副
議長は、本来与野党満場一致の議決によって選出され、少なくとも在任中は党籍を離脱し、真に不偏不党の
立場に立って多数党の横暴を戒め、
少数党の意見を尊重し、
国会の正常な
運営に力を尽くすべきであると信ずるのであります。しかるに、その
議長、副
議長が、政府・
与党のロボットとなり、かつ、そのいすのたらい回しを続けている現実は、まことに残念であります。この際、真に
国会正常化を回復しようとするならば、かかるたらい回しの悪弊を一掃し、
議会の威信を回復して、
国民の負託にこたえるため、副
議長は野党第一党から選出をし、公正無私な
議会運営がはかれるよう改めるべきではないかと考えるのでありまするが、
提案者の
岡田君はどのようにお考えになられるか、お伺いをしたいのであります。
第三にお尋ねしたいのは、
小平君は、
岡田君も先ほど覆われましたように、当
議院における古参
議員であり、また、しばしば外国へ派遣をされております。みずから
議会制度を十分研究せられながら、日本の
議会制度を危機に追い込むというようなことに今日なっておるのでありますが、いたずらに今日に至ってみずからの地位に恋々とし、
国民の期待を裏切っておりますことは、
小平副
議長の
政治的良識を疑われるだけでなく、国際的な信用を失墜することになると私は思うのでございます。
そこで私は、最後に
提案者の
岡田君にこの際お伺いしたいのは、かりに
岡田君が今日の
小平副
議長の
立場に立たされたと仮定をいたしまして、あなたはどうせられるかということであります。失礼ながら
小平副
議長のように恋々としてそのいすにしがみつき、ますます
議会制民主主義の墓掘り作業を続けられるのでありましょうか、あるいは
不信任案を突きつけられる前に、いさぎよくその地位を去って、罪を天下に謝することによって、
議会制民主主義をその危機から救い出すことに貢献されるでありましょうか。
岡田君のごとき人格高潔、識見高邁をもって鳴る人がこのような
立場に立つことはないと思いますが、仮定の問題としてお考えをお漏らしいただくことができますならば、迷える小羊であるところの
小平副
議長が考慮をいたしますため非常に参考となると思いますので、あえてお尋ねを申し上げる次第でございます。
以上で私の質問を終わります。(
拍手)
〔
岡田利春君
登壇〕