○渡辺芳男君 私は、
日本社会党を代表して、ただいま説明のありました
昭和四十三
年度観光の
状況に関する
年次報告及び
昭和四十四
年度における
観光政策について、佐藤
総理及び関係各
大臣に対して
質問をいたします。
観光白書は、今回で六回目を数えますが、その
内容は、従前と同様に総花的であり、しかも事務的な
報告に終始をいたしております。このことは、すでに指摘されておりまするように、
観光行政が十七省庁三十五部局の多岐にわたっていることから来る必然的な結果で、まことに残念であるといわなければなりません。特に、昨年来
観光行政の一元化について行政管理庁を中心に検討され、いまだに各省庁との調整が整わないようでありますが、この際、
観光行政機能の一元化は、すみやかに確立しなければならぬと思うのであります。このことは、特にここ数年来激増している
国民観光とレクリエーションに対する対策が後手を踏み、積極的な対応策に欠けていることを痛感するからであります。
総理の明確な
方針を承りたいと存じます。
次に、
国民観光と総合開発計画との関連について伺います。
昭和三十七年に
全国総合開発計画が策定されすしたが、そのねらいは、申すまでもなく、工業中心の
考え方でありました。つまり工場を誘致して、工業化を進めて、地域間の格差をなくすことにありましたが、その意図とは逆に、今日では、後進地域は人口の過疎で悩んでおります。反面、大
都市や太平洋ベルト地帯には人口が集中して過密
都市を生み、また、東海道メガロポリスが形成されつつあります。そして、過密
都市や工業地帯に住む人々は、大気汚染、騒音、水質汚濁、緑の喪失などで
生活環境が悪化しているため、いこいの場を求めて、自然の山河や青い海あるいは温泉地への旅行が殺到しているのが
現状であります。
このような大きな矛盾を生んだ開発計画の改定は、特に工業優先主義の是正、自然保護の徹底、過密、過疎対策と地域格差の是正、大
都市の環境条件の整備などを最も重視し、人間疎外の
現状を改めるべきであります。すでに発表された新
全国総合開発計画も、従来の
方針を踏襲していると
考えますが、これではますます人間社会の矛盾の
拡大を招くばかりで、きわめて重大な問題であると思うのであります。人間尊重を公約する佐藤
総理は、どのような
考えで対処するか、その
所信を承りたいと存じます。(
拍手)
次に、
観光政策と自然保護について伺います。
現在、国立公園の指定が全国で三十三カ所、国定公園の指定が三十八カ所ありますが、これらの維持管理費は、本
年度の
予算を見てもきわめてわずかであります。これでは、
政府は申しわけ的に管理費を出すだけで、自然の保護対策は皆無にひとしいといわなければなりません。しかも、従来、ともすれば
観光開発がばらばらに行なわれたり、あるいは
観光開発に名をかりて、自然の破壊が行なわれていることは遺憾なことであります。また、モータリゼーションの急速な進展に伴って、
観光客が急増していることと相まって、いまや自然の保護対策は緊急を要する課題となっています。
私は、今後
政府は、自然保護のため、自然公園法による景観保護だけでなく、必要があれば民有地を買収するなどの積極的な自然保護対策を行なうべきだと思うのであります。また、大規模な
観光開発については、自然保護をはじめ、道路、用排水など、その責任分担の基準を示すべきであると思います。特に、大
都市近郊の
観光開発は、その資源保護の
立場に立って、今後はつとめてこれを抑制し、私は、むしろ過疎地帯の
観光開発に重点を置くようにしなければならぬと思うのであります。
私は、この際、次の具体的な問題について伺っておきます。
富士箱根伊豆国立公園地区は、急速に道路の整備が進められるとともに、
観光開発が行なわれております。最近、モータリゼーションの激しい進展と相まって、箱根の名所である杉並み木や、旧東海道でも数少なくなった箱根峠の松並み木などは、排気ガスの
影響で枯れ始めています。また、日光東照宮の通称太郎杉ほか十数本の伐採をめぐる係争中の問題など、これらはいずれも関係団体から保護の要望が出ておりますが、文化財か名勝の指定を行ない、積極的に保護すべきではないかと思うのであります。
以上の諸点について、関係各
大臣の
見解を承りたいと存じます。
次に、厚生省が本年初め、延長八百九十キロに及ぶ東海道自然歩道の構想を発表いたしましたが、これは、いわゆる東海道メガロポリスが形成されていくに従って、住民に手軽なレクリエーションと休養を与えるものとして、この構想は
国民から大きな期待が寄せられています。私は、この計画を進めるにあたって、次のことを要望しておきます。
この自然歩道は、老若男女を問わず手軽に利用できる散歩道とすること、宿泊施設は、
国民宿舎とキャンプ場などを主として、いわゆる俗化を防ぐことに配慮する必要があると思うのであります。
また、林野庁の自然休養林の指定も、
国民の期待にこたえるように、すみやかに施設の整備を要望いたしておきます。
特に、この際、佐藤
総理に要望しておきますが、東海道自然歩道の整備はすみやかに着手すべきだと思うのでありますが、お
考えを承りたいと存じます。
次に、野鳥の保護対策について伺います。
わが国の戦前における最高の狩猟人口は十万人を数えましたが、現在の狩猟人口は約四十万人に達しているといわれております。このように狩猟人口が激増した上に、工業化が進んだ地域では、森林や草原、干潟の開発で、最近はますます野鳥が減り、
都市近郊の自然公園や
観光地にも野鳥がきわめて少なくなってきております。しかも、野鳥保護の
現状は万全ではありません。野鳥保護区の立て札があっても、何の施設もなく、監視人も少なく、また、かすみ網などが相変わらず使われて、乱獲されておるのであります。
農林大臣は野鳥の保護対策を強化するために、林野庁の一部が行政を担当するだけでなく、担当行政部門を
拡大する必要があると思うのであります。また、禁猟区を
拡大して、これらの対策について積極的に行なわなければならぬと思うのでありますが、この対策についてお伺いをいたします。
次に、最近の遊漁ブームについての対策を
お尋ねいたします。
最近の遊漁人口は年間延べ千七百万人といわれておりますが、今日、全国各所で沿岸漁民との間に問題が起きております。魚の宝庫といわれておる伊豆半島一帯でもこの問題が取り上げられておりますが、この際、
政府は、沿岸漁場保護と遊漁者との調整について、すみやかに対策を立てる必要があると思うのでありますが、その対策があれば明らかにしていただきたいのであります。
次に、ホテル及び旅館等における火災事故の防止対策について伺います。
統計によりますと、
昭和四十二
年度中に発生したホテル及び旅館の火災事故は、実に四百四十九件を数えております。特に、昨年二月には湯河原温泉大伊豆ホテルの火災事故で死者二人、負傷者四十六人を出し、十一月には有馬温泉の池之坊満月城の火災で死者三十人、負傷者四十四人を出し、さらに本年二月には、磐光ホテルの火災で死者三十一人、負傷者二十七人にのぼる犠牲者を出しております。去る四月、行政管理庁が
観光地のホテル及び旅館等の行政監察を行なった結果、その問題点を指摘し、
関係各省に対して勧告を行なっておりますが、たとえば国際
観光都市熱海温泉で、ホテル及び旅館二百五十二軒について
調査した結果、自動火災報知機を設置してあるホテル及び旅館は百十七軒で、百三十五軒が設置していないと
報告されています。しかも、市の消防施設は、消防車が六台で、十五メートル用のはしご車が一台しかないといわれています。近代化された
観光都市熱海にしてこのような
現状でありますから、他の
観光地の消防施設はきわめて貧弱であると思います。先般の片山津温泉における昼火災は、その実態を暴露いたしました。
政府は、続発する
観光地の火災事故にかんがみ、まず消防施設のすみやかな充実に特段の
努力をしなければなりません。また、ホテルや旅館の消防設備の完備のために必要な金融
措置をはじめ、
改善命令などの指導を一そう強化し、あわせて防火訓練などに意を用いるべきだと思うのであります。この対策について伺います。
次に、
国民宿舎はだれもが気軽に利用できる低廉な施設として、今後もますます
需要は増大するものと思います。現在、公営の
国民宿舎は二百四十六カ所、民営の
国民宿舎は百三十カ所ありますが、
需要に応じ切れないようでありますから、さらに未設置地区をはじめ大
都市近郊には増設をはかるように強く要望いたしておきます。
また、四十二
年度から新たに設置することになった日帰り休養施設である
国民保養センターについても、地方公共団体に対してその設置を慫慂し、地域住民へのサービスに特段の意を用うべきであると思うのでありますが、以上について、この対策を伺います。
次に、国際
観光について
お尋ねいたします。
日本万国博覧会は来春三月から開催されますが、全体計画で六千三百七十八億円の巨額の費用を投じて開催するのでありますから、平和と友好の実をあげるために、思想信条を越えて、最大多数の参加国を求めるように
努力すべきであります。特に、一九六四年の東京オリンピックにおける経験と反省に基づき、この万国博覧会を契機に、外客の誘致の
発展のために海外
観光宣伝に当たる
政府、在外公館、国際
観光振興会、日本貿易振興会、国鉄、日航等は有機的な連携を保って、宣伝資料の効果的な作成と宣伝活動につとめなければならないと思うのであります。特に大量の外客誘致に対応するために、国際
観光ホテルの整備充実及びユースホステルの増設を行ない、その利用につとめるとともに、ホテルの宿泊費が高いなどの非難のないように、業界の指導に当たるべきだと思うのであります。また、航空機の急速な
発展はますます国際
観光を容易にしておりますが、反面、海外旅行をゆっくり楽しもうとする多くの要望があることにかんがみ、新たに国際
観光旅客船の建造を考慮すべき段階にあると思うのであります。
以上について
政府の
所見を承りたいと存じます。
次に、旅行あっせん業者の問題について伺います。
邦人旅行あっせん業者は、
昭和四十三年四月一日現在で、陸運局長登録が九十九業者、海運局長登録が十六業者、都道府県知事登録が三千九十六業者で、合計して三千二百十一業者にのぼっています。しかも、業者数は年々増加の一途をたどっておりまして、これらは個人経営が全体の半数を占め、また、大半が零細業者であります。さらに、そのほかに、無登録旅行あっせんが行なわれているので、業界は非常な過当競争になっております。私は、今日、旅行あっせん業について抜本的な対策を立てるべき時期に来ていると思うのであります。
また、昨年の飛騨川バス事故に見られるように、旅行あっせん業者が、悪天候に対しての配慮に欠けていたことにかんがみ、旅行あっせん業者の旅行安全に対する責任を法的にも明確にする必要があると思うのでありますが、これらについての対策を承りたいと存じます。
以上、十五項目について
質問いたしましたが、最後に、もう一度申し上げます。
非能率な
観光行政を改めて能率的な運営にすることが、
国民への最大のサービスであると思うのであります。佐藤
総理をはじめ、関係各
大臣の誠意ある
答弁を要望しまして、私の
質問を終わります。(
拍手)
〔
内閣総理大臣佐藤榮作君
登壇〕