○石野久男君 私は、
日本社会党を代表して、ただいま趣旨
説明のありました
外務委員長北澤直吉君
解任決議案に関連して、
提案者
穗積七郎君に
質問を行ないます。
外務委員長北澤直吉君は、私の郷土の大先輩でありまするから、
委員長解任決議が行なわれること自体、非常に残念なことであります。きわめて遺憾千万なことに存じ上げております。ましてや、私が
北澤君
解任決議案に関連した
質問を行なわねばならぬということは、情において忍び得ないところがございます。しかし、政治は
国民の前に厳粛でなくてはなりません。情実の許されるところではありませんので、私は、勇気を出して
提案者
穗積君に
質問をいたします。
まず、今日の
議会混乱の最大の原因は、
自民党が
政府と結託して、一部独占資本に奉仕するために、自分たちを選び出してくれた選挙民の願いや希望を全く無視した一党独裁の政治を行なっているところにあります。先ほど総理大臣は、同僚の島上君に対して、
諸君も選ばれてきている以上、
国民の期待にこたえるように願いたいということを言いました。しかし、今日、この
議会の混乱している大きな原因は、何といっても
自民党の多数横暴にあることはいなめません。たとえば、先般行なわれた国鉄運賃の値上げに関する本院における
審議を見てもわかるように、自由民主党を選んでくれた選挙民の各位は、百人のうち九十九人までは運賃値上げには反対であります。ところが、選ばれてきて、一たびバッジをつけた
議員諸君が、
国民の意思を無視して、
議会で
強行採決をしておる。これが今日のわが国の
議会の
実態であるとするならば、いずれに民意の反映があるといえるでしょうか。(
拍手)私たちは、このように選挙民を無視した
議会の
審議、多数党であるということによって
審議が
強行採決されたり、あるいは
審議打ち切りをされたりすることは、許せないところであります。(
拍手)今日の
国会運営の最大の混乱の原因は、自由民主党の多数横暴、
議会における民意の尊重を忘れておる一党独裁の政治にあると私は思っておりますが、
提案者である
穗積君は、どのようにお考えになりますか、これをお尋ねしたいのであります。
そしてまた、私は、今日のこの混乱を防ぐためには、もうこのような状態をなくするために、
議会は解散をして選挙し、新しい
国民の意思による代表が出なければ、ほんとうの
議会の正常化はできないのではないかというふうに考えますが、
穗積君はどのように考えるか、この際、お聞かせを願いたいところであります。(
拍手)
第二にお尋ねしたいことは、
外務委員長北澤直吉君が一昨二十八日、多数暴力にたよって
強行採決したやり方は、単に一
外務委員会の問題としてだけではなく、
国会、
議会政治を民主的に正しく守るという
立場から、断じて許されないということについてであります。
提案者
穗積君が
提案理由の
説明を行なった際にも強く訴えているように、そしてまた、わが党がきびしく追及してきたように、このたびの
外務委員会における
委員長北澤君の
暴挙は、
自民党が、すでに国鉄運賃法、総定員法、地方公務員定年制法で
強行採決を行ない、さらに、先般の
国会延長におけるようなむちゃくちゃなやり方をした、四度にわたる
強行採決に重なり合ったもので、
議会における
民主主義を一顧だにしないやくざの手法である。まさに、日本の
議会制民主主義の歴史をファシズムの方向に書きかえる許しがたい政治悪を意図したものであると思うのでありますが、
穗積君はこれをどのようにお考えになるか、明快な御
説明をお願いしたいところであります。
第三に、社会党をはじめ
各党が
審議に協力を惜しまないで整然と
質疑を行なってきたものを、なぜ
北澤君が
強行採決をしたのかということです。その意図は何であるかということであります。
外務委員会は、一国の国際社会における指針となる外交
政策を論じ、決する場であります。その
審議は常に
国民の
立場に立って、
国民の利益を守るために、大所高所から誤りなきを期さなくてはなりません。後世に至るまで日本の歴史の方向に重大な
責任を負うべき、きわめて重要な
委員会でありますことは、いまさら言うまでもないところであります。今回の
北澤君の
暴挙は、一党一派に偏し、しかもまた、先ほど
穗積君が
説明いたしたように、これは現地住民に対する福祉に即応するものでなく、アメリカの極東軍事体制に対して協力するというような、非常にわが国の
立場を無視したものだどいうふうに思われる。そのようなことをなぜやったか。これを
穗積君はどのように見ておられるか、率直に所見を聞かしていただきたいところであります。
この
北澤君の
行為は、
国民に対する背信であるだけでなく、
議会政治の原則をじゅうりんする許しがたい
暴挙でありまするが、どうして
自民党並びに
北澤君たちがこのようなことをしたのか、その政治的背景について、
穗積君に解明をしていただきたいところであります。
第四に、
北澤君は、先ほど
穗積君からもお話がありましたように、いまはない吉田茂氏の門下生として、切っても切れない
関係にある側近者であります。そしてまた、一面反共軍国主義外交家だという高名が、あまねく行きわたっているところでありますが、ほんとうに彼は反共軍国主義に徹しているのでしょうか。外交問題にうんちくの深い
穗積君の所見を承りたいところであります。
また、彼は、古い外交官であっても新しい外交を論ずる
政治家であるかどうかということについても、私は疑問を持つところでございますが、今日アジアの情勢は、ベトナムにおいて、すでにアメリカ帝国主義者の全面的敗退が決定的であります。同時にまた、それは、三十八度線に新しい危機が伝えられ、第二の朝鮮戦争の危機が憂えられているときであります。七〇年安保廃棄を戦っている
日本社会党は、これを重要視し、日韓条約、三矢計画、第四次防衛計画やいま
国会に
提案されている防衛二法とともに、新しい戦争に日本を巻き込む危険を痛感しているところでありますが、このような事態は、まさにアメリカの極東
政策、軍事体制が、依然として中国封じ込め
政策に基づいているからだと考えます。
佐藤政府は、アメリカの中国封じ込め
政策に積極的協力を進め、二つの中国論を展開しております。この二つの中国論を具体的に実証し、政治的制約を加えているのが吉田書簡であることは、本院においてしばしば論議されてきたところであります。この吉田書簡なるものが、
北澤直吉君が書きおろしたものだと巷間伝えられ、それが事実だといわれております。吉田書簡が今日、日本と中華人民共和国との友好と親善を阻害していることは、だれも否認するものがいません。先般、
自民党の古井君や田川君がたいへんな努力をしましたにもかかわらず、吉田書簡が大きな障害となって、長年にわたって
民間の経済人が努力し、積み上げてきた日中貿易の漸減を食いとめることができず、日中間の経済
関係をますます悪化させている事実を直視しなくてはなりません。
北澤君の手になる吉田書簡は、重大なわが国の外交上における害悪を残しておるといっても過言でありません。数千年にわたる長い日中間の友好的歴史に、ぬぐうことのできない汚点を残してきた日本帝国主義の中国侵略
行為のあと始末もつけていない事実を反省することもしないで、七億五千万の中国人民とその主権を無視した吉田書簡、それが吉田茂氏なきあとも亡霊のように
佐藤内閣と
自民党を引きずり回していることは、日本の悲劇であります。(
拍手)死せる吉田が
佐藤政府を引きずり回しているこの吉田書簡の舞台装置と演出が
北澤直吉君であるとすれば、その
政治家としての功罪はおのずから明らかであります。
北澤直吉君の外交姿勢は、アジアの平和と諸国間の友好を願う
国民にとって、許すことのできない反民族的外交路線をたどっているといわなければなりません。
北澤君は、はたして本院における
外務委員長としての今日における資格要件である戦後のアジア、日本と中国との新しい感覚を持っているのかどうか、まことに疑わしい。外交問題の
権威である
穗積君は、率直にこれをどのように考えておるか、お聞かせ願いたいところであります。
以上、私は、
提案者
穗積君に対して若干の
質問をいたしました。これで終わります。(
拍手)
〔
穗積七郎君
登壇〕