○門司亮君 私は、民社党を代表いたしまして、いま
自治大臣から御説明のございました四十四年度の
地方財政白書並びに
昭和四十二年度の財政
報告に対しまして、きわめて簡単に二、三の点について御
質問を申し上げますので、率直にひとつ御答弁を願いたいと思います。(
拍手)
私がきょうここで
質問を申し上げる
大臣を特に
総理と大蔵
大臣にお願いをいたしましたことは、
総理大臣はここでいろいろのことを申されます、大蔵
大臣もいろいろいままでの
質問について申されます。しかし、地方行政
委員会に幾ら要求しても、二人の
大臣は出られないのであります。これで一体、地方の行政、財政をめんどう見てますなんということが言えますか。(
拍手)ほんとうに地方の行政を考え、財政を考えて、ここで色のいい答弁をするなら、やはり
委員会にもひとつ出席をしていただいて、そうして十分にお互いに審議をするという
態度を示してもらいたいと考えておるが、これについてどういうふうにお考えになっておるか、冒頭に両
大臣からひとつ御答弁を願いたいと思うのでございます。(
拍手)
そこで、私は、
内容について少しお尋ねをいたしたいと思いますことは、地方
自治体の行政
内容が非常に変わっております。したがって、この行政
内容の変わっておりまする推移に対してどう対処するかということが、忘れられていはしないかということであります。これが、
地方財政は好転したとか、いや黒字があるとかいうようなことに大体なっていると私は思う。今日、過密、過疎という問題が議論されておりまするが、これも何も天災ではございません。長い間、自民党の
高度成長政策というような大資本中心の財政計画を立てて、そうして
社会資本を怠った結果が今日のような状態になっているのであって、人は仕事のあるところ職を求めて集まるのは当然であります。したがって、今日の過密、過疎の最大の
責任者は
政府であると申し上げてもちっとも差しつかえない。これをいかにも天災であるかのごとき印象を与えつつ議論されることは、私は、非常に大きな間違いだということを最初に
指摘をする必要があろうかと存じます。したがって、最近における地方行政の
内容というのは、公害の問題でございましても、あるいは交通災害の問題でありましょうと、あるいは
学校教育の問題、住宅、道路、水道、下水道、し尿の処理、じんあい等の処理に至るまで、従来の地方
自治行政の観念とはおよそ離れた考え方のもとに運営をし、また対処をしなければならない時期に来ておるのであります。
ごく卑近な例を私はここで一つ、二つ申し上げて御理解を願いたいと思いますことは、交通災害が非常に多い。しかし、この交通災害の始末はだれが一体しておるかということであります。
自治省は、ごく最近に、三万以上の市に対しまして救急業務を政令によって押しつけられておるということである。三万の小さい市が救急車をこしらえて、そして常時救急業務を行なうなんということは、とうてい従来考えられなかったことである。ところが交通事故が非常に多いから、やはりこういう行政が必要になってくる。いまはどんな農村に参りましても、大体プロパンガスで炊事いたしておりまするので、従来のように、出たごみがそのままかまどの中で焼却されるなんということは考えられない。したがって、これは全部焼却炉を設ければそれでいいのでありまするが、町村ではそこまでいかないから、川にみな捨ててしまう、したがって、川がよごれて困っておるということに必然的にならざるを得ない。し尿にいたしましても同じことでしょう。従来農家還元ができて、そうして何とかし尿の
処置がついたのでありまするが、今日それは許されない。したがって、どんな町村に参りましても、じんあいの処理、し尿の処理はどうしてもやらなければならない。下水は一体どうなっておるか。従来、地方の
自治体における、ことに市町村における下水というようなものについては一つの考え方があったが、これがどういう姿に今日あらわれてきたかといいますると、御承知のように、ことに
都市周辺におきましては非常に開拓が盛んになってまいりました。そうして、降った雨が直ちに、鉄砲水ということばで言われておりまするように、一ぺんに出てくる。そこで、従来は大河川が大体雨が降れば洪水の対象になっておりましたが、この鉄砲水の関係で、大河川まで水が行く前に中小河川がはんらんしておるというのが今日の現状でございます。したがって、県の河川であるとか、あるいは国の河川というよりも、むしろ市町村の中小河川に対する手当てというものが十分でなければならないということは当然である。こういう
社会現象を、一体
政府は御存じになっておるかどうかということである。私どもは、こういう問題を一つ一つここで取り上げて議論をいたします時間がございませんので、このくらいでやめておきますが、こういう行政
内容の変容に伴う財政
措置というものを、ひとつ考えてもらいたいということでございます。
ことに、最近における
地方財政の構成というのは、御承知のように税金と補助金、いわゆる国庫支出金あるいは起債によって大体まかなわれておるということが普通の常識であります。ところが最近の状態を見てみますると、いわゆる超過課税によって約一千億ぐらいのものが取り上げられておる。あるいは法定外普通税という
法律に
規定のない地方税というものが、かなり最近は出てきておる傾向がある。これに加えて、ギャンブルの収益からくるものが大体一千億以上あるということは、御承知のとおりであります。今日はこういうかき集めの状態である。なおかつこの上に、地方住民が自分の歩くところをかりに舗装してもらおうとすれば、寄付金をしなければ舗装ができないというような、地方住民の税以外の負担によってこれがまかなわれておる。こういう状態をほんとうに
総理大臣や大蔵
大臣は御存じになっておるかどうかということですね。これは、
総理大臣も山口の田布施の生まれでございますから、町に行って調べてみればすぐわかると思う。大蔵
大臣だって、郷里に行かれればこんなことはすぐわかると思う。東京のまん中におって、大きな官邸に住んでおいでになるから、このごろ少しうとくなっておると思いますが、ひとつお里のほうを少し見てもらいたいということを、この機会に申し上げておきます。こういう状態でございます。
その中で、私は、この機会にはっきりしておいていただきたいと思うことは、この財政構成の中で補助金がございます。この補助金は、年々減らすとか
整理するとか申されておりまするが、これからくる行政のゆがみ、これは何であるかというと、陳情政治であります。今日、地方の議員さんは、都道府県
会議員、市町村
会議員を集めてまいりますと、約十万の
諸君がいるはずであります。これらの
諸君が、一年に一回一万円ないし二万円の金を使って東京に出てきて陳情をしなければ地方の財政がうまくいかぬということになってまいりますると、これは根底から官治行政に返りつつあると申し上げてもちっとも差しつかえない。これはむだ金ですよ、実際。(
拍手)こういうことのないようにして、どうしてやれないかということであります。とにかく陳情すれば陳情しただけのかいがあるのだから来るのだということで、どんどん陳情に来るから、政治が一部官僚の私の考えによってゆがめられつつあるということを申し上げてもちっとも差しつかえない。(
拍手)私は、これらの問題に対して、特に
総理並びに大蔵
大臣からひとつ御答弁を願っておきたいと思うのでございます。
それから、その次に申し上げておきたいと思いますと同時に
お答えを願いたいのは、
国民の租税負担の現状でございます。
これが、国税と地方税との割合を白書によって調べてみまするとどういうことになっているかというと、
昭和四十二年度で、
国民所得に対して総額が一八・九%の税金になっておる。その内訳は、国税が一二・七%、地方税が六・二%であって、そうして都道府県が三・三%、市町村が二・九%ということになっておる。今日、地方で最も財政を必要といたしておりまするものは、むしろ府県よりも、基礎的団体である直接住民に関係を持っておりまする市町村であります。ところが、その市町村の割合が一番少ないことになっておる。これを税の伸びから考えてまいりますると、
昭和三十八年を一〇〇といたして今日勘定いたしてまいりますと、国税が二二五に伸びておる、都道府県税が二五九に伸びておる、市町村税はわずかに二〇二にしか伸びておらない。地方
自治体の基礎的団体であるといわれておりまする市町村の税金の伸びがこういう状態であっては、しかも、配分がいま申し上げましたような状態であっては、これはもう満足な環境が、住民に幾ら要求されてまいりましてもできようはずがないのである。私は、したがって、この税の配分を変える必要がありはしないかということを考えておりまするが、これについて、ひとつ大蔵
大臣から御答弁を願いたい。(
拍手)
ちなみに、佐藤内閣が何かアメリカ追従といわれておりますので、アメリカの例をひとつ見てみましょう。
米国の
昭和三十九年度
国民所得と租税負担はどういうことになっておるかというと、
国民租税負担の総額が二七・二%、うち連邦が一七・四%、州並びに地方が九・八%、こういうことになっておる。これは三十九年でありまするから戦争——現在の状態に最も近いのでありますが、しかし、この時点におきましては、御承知のようにアメリカは軍事費を非常にたくさん使っておりまするので、国税に多くの税負担をさくということは、私は当然だと考える。そこで、アメリカが平和でありました当時の
昭和九年から十六年、いわゆる戦争に入る前の状態を調べてみまするとどういうことになっているかというと、
国民所得に対しまして一八・一%が租税の総額であります。そのうち連邦
政府が取っておりまするものが六・八%であって、州及び地方の取っておるのが一一・三%であるということを記録は示しております。
日本は、いま軍事費はほとんど要らないというと語弊がありまするが、かなり少ない。総予算のわずかに七・五%ぐらいしか使っておらない。そういたしますと、このアメリカの最も平和であった時代といまの
日本の現状とは、そう変わらない時代と解釈して私は差しつかえないと考える。そうなってまいりますると、税の配分というものも少しアメリカを見習ってもらったらどうかということを——何でもかでもアメリカに追従するのじゃなくて、こういう点をひとつアメリカに追従してもらったらどうかということを、私は
総理大臣にお願いする。(
拍手)
それから、そのほかの問題としてもう少し聞いておきたいと思いますことは、先ほどから河上君の
質問に対していろいろ御答弁がございましたが、
地方財政と地方の借金との現況並びに推移について、少し
政府は考えていただきたいということでございます。
この推移を申し上げてまいりますと、御承知のように地方債が、ちょうどこの白書にありまする四十二年度の地方債は、普通会計と公営企業全部を合わせてみまして四兆六百五十九億円になっております。ところが、四十四年度の財政計画を見てみますると、これが五兆二千五百四十五億円というような形で非常に借金がふえてまいっておることは事実であります。そこで、この借金がふえておるが、それなら、その借金の資金構成は一体どうなっているか調べてみますると、四十一年度におきましては
政府資金が六一・四%、市中銀行その他から借り入れておりまするものが三八・六%、四十二年度は
政府の資金が五九・五%で、市中銀行その他から借り入れておりますものが四〇・五%、こうなっております。ところが、昨年の四十三年度の大体実績を見てみますると、
政府資金が五九・三%、その他が四〇・七%という数字で、資金に対して利息の安い国の資金がだんだん減っていって、そうして利息の高い市中銀行をはじめとする一般債務がだんだんだんだんふえておるということが、この推移の数字によって明らかにわかるのであります。これで一体よろしいかということであります。この点は、ひとつ十分に考えてもらいたい。
そこで、もう一つこれを突っ込んで、それからくる地方債に対しまする利率の推移を一応見てみましょう。これがどういうことになっているかというと、
昭和四十一年度は年利六分五厘以上のものが二六・五%であります。その内訳は、都道府県分が三一・二%、市町村分が二一・八%という数字になっておりまして、しかも、八分以上のお金を借りておるのが十億円以上になっているということが白書に書かれておる。さらに、これを四十二年度について見ますると、利率が六分五厘以上のものが二七・九%で、ここでは一・四%ふえておるという事実であります。その内訳はどうなっておるかといいますると、都道府県分が三三・三%で、市町村分が三二・五%、しかも、ここになってまいりますると、八分以上の借金が五十三億円以上あるという事実であります。一体、地方の公共団体が八分以上の利息で金を借りて仕事をして、何ができますか。どうにもならぬでしょう。こういう実態が、今日のいわゆる地方債の利率の推移であります。この点についてどういうふうにお考えになっているか、大蔵
大臣なり、あるいは
総理大臣から明確にひとつ答弁を願っておきたいと思うのでございます。これはぜひ改良しなければならないと私は考えておる。
その次に、私は、最後に参考までに申し上げておきたいと思いますことは、河上君の
質問に対しまして、地方の財政がいかにもよくなったようなことを言われ、また
自治大臣は、ここで
地方財政が非常に黒字に転向しているようなことを印象づけられておりまするが、実際は、先ほど冒頭に申し上げましたように、いろいろな行政の変容からくる財政需要の拡大というものは、これはいなむことはできません。しかし、それの最も大きな問題として取り扱わなければならないと私が考えておりますることは、東京都の現状であります。その中で私が最も遺憾に考えておりますし尿処理の現況を、ひとつ皆さんに知っていただきたい。
それは、総個数が二百三万九千個ある。いわゆる便所の数でありまするが、その中で、くみ取りをいたしておりまするものが百十二万八千個、この半分以上の家庭からくみ取ってまいりまするし尿は、全部海上投棄をいたしておることは御存じのとおりであります。今日、
世界のどこの文化都市において、近代
国家としての都市において、ことに
日本の東京において、半数以上の便所からくみ取ったものが海上投棄をしなければならないというような実情で一体よろしいとお考えになっているかどうかということであります。(
拍手)この実態をひとつよく見てごらんなさい。水洗便所の数はわずかに七十四万九千個、浄化槽が九万、その他浄化槽でもなければ水洗便所でもない、くみ取りもしていない、自家処理だと思いまするが、これが大体七万二千個ということが書かれている。これは東京都の数字であります。このような状態で一体どうお考えになりますか。
さらに、それからもう一つの問題は、お勝手やそこらから出るごみの問題でありますが、東京のじんあいの処理の状況は、全体の七〇%が集められて海上の埋め立てに使われておりましょう。夢の島で毎年毎年火が燃えておる、あのとおりである。わずかに三〇%だけが焼却炉において
処分されておるというこの実情、私は、こういう実情で、一体、東京が
世界のキャピタルであるとか、あるいは文化
国家であるとかいうようなことがよく言えたものだと考えておる。(
拍手)これは東京だけじゃありませんよ。これは大都市に行ってごらんなさい。ことごとくと言っていいほど、こういう状態になっておる。私は、こういう
社会資本の非常に大きく欠乏しておるものに目をおおって、そうして単なる外観だけの
地方財政が黒字であるとか赤字であるとかいう議論をすること
自体が間違っていると考えておる。
だから、この点について
総理大臣からひとつ明確な御答弁を要求いたしまして、時間もまいりましたので、私の
質問を終わらしていただきたいと思います。(
拍手)
〔
内閣総理大臣佐藤榮作君
登壇〕