○林百郎君 私は、日本共産党を代表して、
国鉄運賃法の
改正案並びに
国鉄財政再建促進
特別措置法案に対し、
総理並びに関係
大臣に
質問いたします。
まず、
質問に先立って、去る二十五日の
運輸委員会における自民党の
暴挙についてでありますが、
政府・自民党は、
国鉄運賃値上げ法案等に対する広範な勤労人民の
反対を無視して強行
採決をあえて行ないました。
運輸委員会では、
質問通告者は、わが党の田代文久
議員をも含めて十四人もまだ残っていたわけであります。
審議時間は、しかるにもかかわらず、わずか二十時間余にすぎないのであります。このことは、
政府・自民党が、
国民の前に
国鉄の
赤字の
内容など、十分明らかにされることをおそれた結果にほかならない、こう
考えるわけであります。
国会の民主主義的
運営を全く踏みにじった態度であります。わが党は、
政府・自民党のこのような
暴挙に対して、
国民とともに断固抗議をするものであります。
わが党は、一貫して、このたびの
運賃値上げが必ず他の
物価の
値上げを呼び起こし、
国民生活に深刻な影響を及ぼすことにかんがみて、徹底的に
審議をすることによって、
政府のいわゆる
赤字の根源を明らかにし、
値上げを中止させるべきである、こういう
立場に立ってまいりました。今日までの
運輸委員会の
審議の中では、この
赤字の根源はほとんど明らかにされておりません。本来、
政府・自民党の言ういわゆる
国鉄の
赤字なるものは、
国鉄を大資本の食いものにさして、この犠牲を
国民に負担させようとする、つくられた
赤字というべきものであります。だからこそ、本
法案に
国鉄労働者をはじめ広範な
国民が
反対するのは当然であります。よって、わが党は、このような
赤字を
理由とするこのたびの
国鉄運賃の
値上げについて徹底的な
審議を主張し、そのために
努力もしてきました。今後とも、さらに
審議を尽くすことを主張するものであります。
このような
立場から、私は、以下の
質問を行なうものであります。
第一に、
総理並びに
運輸大臣に
質問します。
昭和三十五年度から三十九年度までの運輸別損益は、貨物で六百五十一億の
赤字であります。旅客では二千百七十二億の黒字であります。このことは公然と発表されております。ところが、何ゆえに、
赤字の大きいはずの貨物
運賃は据え置いて、いや、そればかりでなく、大
企業には特別契約によって値下げの
措置までしておるのに、勤労大衆向けの旅客
運賃は、四十一年、四十三年に続き、今回さらに平均一五%という、四年間に三回もの大幅
値上げを行なうのですか、その根拠をはっきりと伺いたいのであります。
第二に、在日米軍の物資輸送並びに大
企業の貨物
運賃について
質問いたします。
一昨年、新宿駅構内で爆発事故を起こし、沿線住民を恐怖におとしいれました立川、横田基地向けの米軍ジェット燃料輸送の
運賃を例にとってみますと、四十一年度、神奈川の安善駅から拝島駅まで、年間五十三万二千三百十トンを輸送しておりまして、これは二億三千二百八万円の
運賃を取っておりますけれども、これを
国有鉄道運賃法による貨物
運賃等級表で計算しますと、二億五千四百三十六万円になるのであります。すなわち、この区間の米軍ジェット燃料だけでも、年間に二千二百万円の割引を行なっているのであります。これを全国的に見れば、相当な額にのぼるのであります。また、在日米軍に対する割引は、単にジェット燃料のみでなく、弾薬や資材など、ばく大なものがあります。
国鉄運賃は、
国有鉄道運賃法に基づいて具体的な金額がきめられているはずであります。
国鉄独自で料金割引ができるのは、災害だとか学童、団体等に対しての軽微な割引だけのはずであります。一体、米軍に対するかかるばく大な割引の
運賃契約は、どのような
法律的な根拠に基づいて行なわれているのか、その根拠を明らかにしていただきたいと思うのであります。(
拍手)
また、日産
自動車等独占大
企業に対しても、私的契約と称して特別な割引
運賃による製品輸送を行なっております。これについても、一体その法的根拠はどこにあるのか、これも明確にされたいと思います。
第三には、東京周辺その他の収容率が二六〇%から二八〇%といわれておる殺人的な通勤輸送の混雑の緩和、安全
対策にはわずかな
財政支出しかしておらない
政府が、大
企業のための専用線の施設費の負担、特急、急行貨物列車の増発、コンテナ車及び
自動車用、冷蔵用などの物資別の適合貨車の増備、新幹線など、独占資本に奉仕する一貫輸送
体制を確立するための設備
投資には巨額の借金までしてこれを
強化しているのであります。そのために、四十二年度においては一千十二億円というばく大な金利の負担を生じて金融大資本に奉仕している結果になっております。しかも、この
借り入れ金の返済のほとんどを、旅客
運賃の
値上げと
国鉄労働者の首切り
合理化等、
国民大衆の負担によって行なおうとしているのであります。
政府はこの際、いわゆる
再建債に対する孫
利子補給
方式等のやり方でなくて、
国鉄借り入れ金に対する年間一千十二億にも及ぶばく大な
利子の支払いを、
政府の
責任においてたな上げをするという抜本的な
対策をとるべきものだと思いますけれども、どうか、この点について
総理並びに関係
大臣の明確な
答弁を求めます。
第四に、このたびのいわゆる
赤字の原因の
一つである
国鉄の資材購入について、
質問いたしたいと思います。
国鉄の資材購入は、当然、公開競争契約をたてまえとしておるわけであります。これは
国鉄法の規定にそのようにきめられております。しかるに
国鉄は、今日その資材購入の八割以上を随意契約で行なっております。
国鉄営業局の調査資料によれば、
国鉄が一千億円の
投資をするたびに、車両会社をはじめとする輸送機器業界には約四百億円、建設業界には百八十一億円、電機製品業界には百十一億円の需要がふえるということを
国鉄当局が発表しております。このことは、
国鉄というものが、
いかに大資本にばく大な市場として利用され、ばく大な利潤を提供しているかということを明白に示していると思うのであります。しかもこの
投資は、いまや年間実に三千八百億円という、ばく大な額にのぼろうとしているのであります。
国鉄が
赤字を問題にするならば、この不当な資材の購入
方式と購入資材の独占価格を引き下げる、これをまず
政府は
措置すべき問題だと思うのであります。これに対して
総理並びに関係
大臣の
答弁を求めます。
第五に、旅客、貨物別運送の原価計算や
損益計算など、
国鉄の
財政、経理の
内容の公表の問題であります。
国鉄は、
損益計算については、
昭和四十年以降、また、原価計算については、旅客
運賃を大幅に
値上げした
昭和四十一年以降、全くこれを発表しておらないのであります。この点について、先般私が
地方行政
委員会で
質問したのに対して、
国鉄当局は、ようやく四十一年度の原価計算などができ上がりつつあるのだ、そして近く資料として提供すると述べておりますが、一体
企業の
赤字を云々するのに、その根拠となるべき原価計算を
国会で追及されて初めて
提出する、それもようやく
昭和四十一年度分のものというのは、一体どういうことなんでしょうか。民間の会社ならば、毎月でも原価計算はやっておるはずであります。このような言語道断な経営状態自体、
政府と
国鉄当局が、いわゆる
赤字の実態をごまかしたまま今度の
運賃値上げを強行しようとしていることを明らかに示すものではないでしょうか。
政府が
運賃値上げの本
法案を、いまここで通そうという
考えがあるとするならば、この場で、少なくとも四十二年度以降の
国鉄の旅客、貨物、その他の原価計算並びに
損益計算等、財務諸表を明確に発表する
責任があると思うのであります。これについて
総理並びに関係
大臣の
責任ある
答弁を求めます。
以上の私の
質問で明らかにしたごとく、
国鉄運賃法の
改正と
国鉄財政再建法の二
法案の真のねらいが、大
企業や在日米軍の貨物については原価を割る安い
運賃、一方、旅客に対しては原価をはるかにこえる高い差別
運賃政策をとり続けておる、これを続けようとすること。また、大
企業のための貨物輸送体系の整備拡充、大
企業からの独占価格による高い資材の購入など、巨額の資金を投じ、それに必要な
借り入れ金のばく大な金利を支払うことによって生じたいわゆる
赤字、これを
理由にして、
国鉄を十年間自民党
政府の直接の管理に置いて、しかも、今後十年間に少なくとも三回もの
運賃の
値上げをさらに予定し、その上、
赤字路線の
廃止、五千駅のうち三千百にのぼる駅の
廃止、無人化、十六万人をこす
国鉄労働者の人減らし
合理化を行なおうとしておるのであります。それてよって、実に三兆七千億円の巨額の設備
投資資金を捻出して、大量、敏速な輸送と
自動車道との結合を重点に、
国鉄を大資本に一そう大規模に、徹底的に奉仕する輸送機関に変貌させようとするものであります。
わが党は、
国鉄が真に
国民の期待にこたえるために、すみやかにこのような独占資本に奉仕し、
企業主義をいよいよ
強化する政策を直ちにやめて、第一に、在日米軍及び大
企業の貨物などに対する違法な割引を取りやめること、大
企業に有利な原価を割るような現行の貨物
運賃体系を改めて、公正な料金を徴収すること、第二に、年間千億以上にも及んできた金利負担をたな上げして、購入物資の独占価格を引き下げること、第三に、
国鉄の
財政、経理の公開、過大な償却の是正、経営の民主化をはかること、第四に、独占資本の物資輸送、高速幹線への巨額な
投資などを中心とする
再建計画を、通勤輸送力の増強を重点とした、真に
国民に奉仕する
国鉄の
再建計画に改めること、以上を実行することによって、
赤字を黒字に転化することができ、旅客
運賃の引き上げの必要をなくすことができるのであります。また、人減らし
合理化をやめて、
国鉄労働者の労働条件を
改善して、輸送の安全確保をすることができるのであります。これこそ、公共輸送機関としての
国鉄を
再建する真の道であると
考えます。
よって、わが党は、
国鉄運賃法
改正案並びに
国鉄財政再建法案を
政府が撤回すべきことを要求し、真に
国民に奉仕する
再建計画をつくり直すべきである、これを要求するものであります。これについて
総理並びに
運輸大臣、関係
大臣の明確な
答弁を求めて、私の
質問を終わります。(
拍手)
〔
内閣総理大臣佐藤榮作君
登壇〕