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1969-02-25 第61回国会 衆議院 本会議 第8号
公式Web版
会議録情報
0
昭和
四十四年二月二十五日(火曜日)
—————————————
昭和
四十四年二月二十五日 午後二時 本
会議
—————————————
○本日の
会議
に付した案件
議員辞職
の件
所得税法
の一部を
改正
する
法律案
(
内閣提出
)及
び租税特別措置法
の一部を
改正
する
法律案
(
内閣提出
)の
趣旨説明
及び
質疑
昭和
四十三
年度
衆議院予備金支出
の件(承諾を 求めるの件) 午後二時八分
開議
石井光次郎
1
○
議長
(
石井光次郎
君) これより
会議
を開きます。
————◇—————
議員辞職
の件
石井光次郎
2
○
議長
(
石井光次郎
君)
議員西宮弘
君より
辞表
が提出されております。これにつきおはかりいたしたいと思います。 まず、その
辞表
を朗読いたさせます。 〔
参事朗読
〕
辞職願
今般
宮城県知事選挙
に立候補の為
議員
を
辞職
いたしたく御許可下さるようお
願い
申し上げます。
昭和
四十四年二月二十五日
衆議院議員
西宮
弘
衆議院議長
石井光次郎
殿
石井光次郎
3
○
議長
(
石井光次郎
君) 採決いたします。
西宮弘
君の
辞職
を許可するに御
異議
ありませんか。 〔「
異議
なし」と呼ぶ者あり〕
石井光次郎
4
○
議長
(
石井光次郎
君) 御
異議
なしと認めます。よって、
辞職
を許可するに決しました。(
拍手
)
————◇—————
所得税法
の一部を
改正
する
法律案
(
内閣提出
)及
び租税特別措置法
の一部を
改正
する
法律案
(
内閣提出
)の
趣旨説明
石井光次郎
5
○
議長
(
石井光次郎
君)
内閣提出
、
所得税法
の一部を
改正
する
法律案
、及
び租税特別措置法
の一部を
改正
する
法律案
について、
趣旨
の
説明
を求めます。
大蔵大臣福田赳夫
君。 〔
国務大臣福田赳夫
君
登壇
〕
福田赳夫
6
○
国務大臣
(
福田赳夫
君)
所得税法
の一部を
改正
する
法律案
について、その
趣旨
を御
説明
申し上げます。
政府
は、
さき
に
経済
の
安定的成長
に即応する
税制
の
あり方
とその
具体化
の方策につきまして、
税制調査会
に諮問いたしたところでありますが、昨年七月、同
調査会
から、三年間にわたる審議の結論として、「
長期税制
の
あり方
についての
答申
」、「
税制簡素化
についての
答申
」及び「
土地税制
の
あり方
についての
答申
」、この三つの
答申
が提出され、さらに昨年十二月には、これらの
答申
の
内容
のうち、来
年度
の
改正
において実現すべき事項につき「
昭和
四十四
年度
の
税制改正
に関する
答申
」が提出されました。
政府
といたしましては、これらの
答申
を
中心
として
昭和
四十四
年度
の
税制改正
につきまして鋭意検討を行なってまいったのであります。 その結果、最近における
国民負担
の
状況
にかんがみ、
中小所得者
の
所得税
の
負担軽減
を
主眼
として、平
年度
一千八百二十五億円にのぼる
所得税
の
減税
を行なうこととし、また、当面の
経済
、
社会情勢
に即応して
住宅
及び
土地対策
の
拡充合理化
、
公害対策
の
促進
、
原子力発電
の
推進
、
中小企業
の
構造改善等
に資するため、
税制
上の諸
措置
を講ずるとともに、
交際費
の
課税
を強化するほか、
納税者
の
権利救済制度
の
改善
をはかることといたしたのであります。 今回は、これらの
税制改正
の
一環
として、
所得税法
の一部を
改正
する
法律案
を提出した次第であります。 以下、この
法律案
の
内容
につきまして、その大要を御
説明
申し上げます。 まず、
中小所得者
の
所得税負担
の
軽減
をはかることといたしておるのであります。すなわち、
基礎控除
を現在の十六万円から十七万円に、
配偶者控除
を同じく十六万円から十七万円に
引き上げ
るとともに、
扶養控除
を現在の八万円から十万円に
引き上げ
ることとしております。この結果、
夫婦
と
子供
三人の
給与所得者
の
課税最低限
は、現在の八十三万三千円が九十三万五千円となり、十万円
程度
引き上げ
られることになるのであります。 次に、
給与所得者
の
給与所得控除
について大幅な
改善
を行なうこととしております。すなわち、現在、
給与
の
年収
が百十万円をこえる者については、
控除額
が頭打ちとなり、すべて
同額
となっているのでありますが、これを改めまして、
年収
が三百十万円に達するまでは、収入の増加に応じて
給与所得控除額
も増加するようにいたしたのであります。 さらに、
税率
につきまして、主として
中堅
以下の
所得階層
の
負担軽減
をはかる
見地
から、
税率
の
刻み
とその
適用区分
の
改善
を行なうことといたしております。 その他、
ノーベル賞
を
非課税所得
として法定し、
短期譲渡所得
の
範囲
及び
予定納税
を要しない者の
範囲
を拡大するほか、
小規模企業共済掛け金
を年末
調整
の
段階
で
控除
するなど
所要
の規定の
整備
をはかることといたしております。 以上、
所得税法
の一部を
改正
する
法律案
につき、その
趣旨
を申し上げた次第であります。(
拍手
) 次に、
租税特別措置法
の一部を
改正
する
法律案
について、その
趣旨
を御
説明
申し上げます。 私は、
さき
に
所得税法
の一部を
改正
する
法律案
についてその
趣旨
を御
説明
いたしました際に、
昭和
四十四
年度
の
税制改正
の基本的な
考え方
を申し述べたのであります。今回ここに提出いたします
租税特別措置法
の一部を
改正
する
法律案
は、その
一環
として、当面要請される
住宅対策
、
原子力発電
の
推進
、
中小企業対策等
に資する
措置
及び
土地
問題の
解決
に資するための
税制
上の
措置
を講ずることを
内容
とするものであります。 まず、
住宅対策等
の当面要請される
措置
について申し上げます。 第一に、
住宅対策
といたしましては、
住宅貯蓄控除制度
について
適用要件
を
緩和
するほか、
新築貸し家住宅
の
割り増し償却制度等
について
整備
をはかるとともに、その
適用期限
を延長することといたしております。 第二に、
原子力発電
の
推進策
といたしましては、
原子力発電設備
について
償却準備金
及び
特別償却
の
制度
を創設し、また、動力炉・核燃料開発事業団が行なう
原型炉
の建設のために
企業
の
支出
する
出損金
について、これを
損金
に
算入
することといたしております。 第三に、
中小企業
の
体質強化
という面におきましては、
中小企業構造改善計画
を実施する
商工組合等
の
組合員
について、
割り増し償却制度
及び合併、
現物出資
の場合の
課税
の
特例
を設けることといたしております。また、商工組合中央金庫の
抵当権
の
設定登記
について
登録免許税
を
軽減
する等の
措置
を講じております。 第四に、
輸出振興
に関しましては、
輸出割り増し償却
、
海外市場開拓準備金
、
海外投費損失準備金
、
技術等海外取引
の
所得控除
の諸
制度
及び
外航舶船
の
保存登記等
の
登録免許税
の
軽減措置
について、それぞれ
適用期限
を延長するとともに、
中小商社
の
海外市場開拓準備金
の
積み立て率
を
引き上げ
る等
制度
の
改善
、
合理化
を行なうことといたしております。 第五に、
交際費
の節減をさらに進めるために、
交際費
の
損金
不
算入制度
について
適用期限
を延長するとともに、法定の
控除額
をこえる額に対する
損金
不
算入
の割合を六〇%に
引き上げ
ることといたしております。 以上のほか、
ガス事業者
の
特定ガス導管設備
について
特別償却制度
を創設し、また、
地方公共団体
の行なう
身体障害者扶養共済契約
に基づく
年金受給権
、
石炭企業
が
交付
を受ける
再建交付金
及び
日本万国博覧会
の会場で行なわれる催しものについて、それぞれ
課税
しない
措置
を講ずることといたしております。 さらに、
適用期限
の到来するその他の
特別措置
については、効果が認められないものを廃止し、実情に応じ
簡素化
ないしは
合理的改定
を加える等
所要
の
配意
を加えた上で、なお必要とされる
措置
については
適用期限
の延長を行なうことといたしております。 次に、
土地税制
の
改正
について申し上げます。
土地政策全般
において、
税制
の果たし得る
役割り
は補完的、誘導的なものにとどまると認められ、
土地利用
のための
制度
の
確立
を待たずして
税制
上の
施策
のみによって
土地
問題の
解決
をはかることには、おのずから
限界
があると
考え
ざるを得ないのであります。しかしながら、現下の
土地
問題の深刻さに顧みますと、
土地税制
の
改善
をいたずらに遷延することもまた許されない
状況
にあると
考え
られますので、今回その
改正
を行なおうとするものであります。 第一に、
土地
の供給の
促進
に資するため、
個人
が五年をこえて保有している
土地等
の
譲渡所得
については、
昭和
五十年までの間分離比例
課税
といたし、たとえば
昭和
四十五年から二年間は一〇%の
軽減税率
を
適用
することといたしております。 第二に、
土地
の
投機的需要
を抑制する等のため、
個人
の
保有期間
五年以内の
土地等
及び
昭和
四十四年一月一日以後に取得した
土地等
の
譲渡所得
につきましては、
現行負担
を上回る高率の
分離課税
を行なうことといたしておるのであります。 第三に、
買い
かえ
制度
の
縮減合理化
であります。すなわち、
事業用資産
の
買い
かえ
制度
は、
期限到来
を待って廃止し、その後は、あらためて
土地政策
または
国土政策
に合致すると認められる
特定
の
買い
かえに限って
特例
を設けるとともに、
居住用財産
を取得するための
買い
かえ
制度
は
昭和
四十四年十二月三十一日限りで廃止し、これにかえて、現に居住している
土地
、家屋を譲渡した場合について新たに一千万円の
特別控除
を設けることといたしております。 第四に、
収用等
を受けた場合については、いわゆる四分の一
課税
の
特例
は廃止することとしておりますが、
買い
かえの
特例
及び一千二百万円の
特別控除
はそのまま存続することといたしております。 最後に、
経過措置
といたしまして、
個人
の
昭和
四十四年中の
土地等
にかかわる
譲渡所得
については、
納税者
の
選択
により、
改正
後の新しい
課税方式
の
適用
を全面的に受けることができるようにいたしております。 以上、
租税特別措置法
の一部を
改正
する
法律案
につきまして、その
趣旨
を御
説明
申し上げました。(
拍手
)
————◇—————
所得税法
の一部を
改正
する
法律案
(
内閣提出
)及
び租税特別措置法
の一部を
改正
する
法律案
(
内閣提出
)の
趣旨説明
に対する
質疑
石井光次郎
7
○
議長
(
石井光次郎
君) ただいまの
趣旨
の
説明
に対して
質疑
の通告があります。順次これを許します。
広瀬秀吉
君。 〔
広瀬秀吉
君
登壇
〕
広瀬秀吉
8
○
広瀬秀吉
君 私は、
日本社会党
を代表して、ただいま
趣旨説明
のありました
所得税法
の一部を
改正
する
法律案
について、
総理大臣
及び
大蔵大臣
に質問をいたし、その所信をたださんとするものであります。 まず最初に、
総理
にお尋ねいたしたいのであります。 四十三年度、昨年度は、
財政硬直
の
一大キャンペーン
のもとに、
所得減税
は一千五十億、一方、酒、たばこ、
物品税
の
増税
千五十億であり、まさに
減税
ゼロ、
所得減税
をすら受けられない低
所得層
に対しては、
実質増税
であったことを想起していただきたいのであります。しかも、
消費者物価
一%上昇につき必要とされる
物価調整減税
は七十億といわれますから、五・二%の
物価上昇
によって三百五十四億は確実に
増税
になったと見られるのであります。 しかるに、
昭和
四十四年度
予算編成
においては、今年度当初あれほど喧伝されました
財政硬直化
については、ほとんどその声が聞かれなかったのであります。
財政硬直化
はもはや終わったのであります。 しかも、四十四年度予算は、すでに有識者から指摘されているように、
景気警戒
型ないし中立型ではなく、
インフレ促進的積極施策型予算
ないしは
軍備促進
、
治安増強
、
海外援助
に重点を置いた
選挙対策
、七〇年に向けての大
資本優先
に編成をされました。これは
自然増収
という名の
増税見込み
一兆二千億円、うち四九%は
所得税
の増収でありますが、この
数字
にささえられたものと思われます。したがって、長い重税に苦しみ抜き、しかも、
昭和
四十三年度における
実質増税
にあえいできました
納税大衆
は、これだけ巨額の
自然増収
がある以上、四十三年度の過酷な
増税
への埋め合わせを含めて、今回こそ実のある
大幅減税
をしてくれるであろう、こういう大きな期待を持ったのであります。この
国民
の切実なる願いと期待は、もののみごとに裏切られたのであります。 今次
所得税制改正
の基礎となった昨年七月の
税調答申
が尊重されるならば、
課税最低限引き上げ
で千二百億、
税率緩和
で千六百億、合わせて二千八百億程度の
減税
を待ち望んでおったのであります。にもかかわらず、今回提案されている
減税
は、
自然増収
に対し一二・五%、千五百三億円にすぎません。かつて税調が
答申
をいたしました
自然増収
の二〇%ぐらいは毎年
減税
することが望ましいとした
数字
からも隔たることまことに遠い、お粗末な
減税規模
でしかないのであります。
総理
、いかがお考えでありますか。 四十四年度
予算策定
において、
減債
か
減税
かの激しい論議の末、
減債方針
に軍配があがって
減税
が犠牲にされた、このように評されるのもむべなるかなと思うのであります。
減債
千五百億円によって
国債発行
は四千九百億、
依存度
は七・二%に押えることができましたが、これが
景気抑制
の意味をどれだけ持ちますか。おそらく
減債
千五百億円は、今日の
国債引き受け方式
から申しましても、
市中銀行
の
余裕金
となり、かえって大
企業中心
の
民間設備投資
に向けて貸し出され、その
刺激要因
となることは確実であります。
減税分
を増額すれば景気に拍車をかけるとの論をなす者もありますが、今日まで相次ぐ
インフレ
、
物価値上げ
の中で、
生計費
を切り詰め、貯蓄を減らしてきた
国民大衆
は、
減税分
はささやかな家計の
改善
と不時の災害に備えての貯蓄に向かうでありましょう。
国民
総支出における
個人消費支出
五二・四%、これは
先進国
から見て著しく低いことが、総生産では世界第二位だ、
国民
一人
当たり所得
、そして
生活水準
では第二十位だという、その
数字
の裏づけになっているのであります。
経済高度成長政策
は
個人消費支出
の
引き上げ
、
生活向上
をもたらすことにその主眼を置くべきだと言えるのではないでしょうか。
大蔵大臣
は、
自然増収見込み額
に対して上回った
数字
が出た場合には、これを
減債
に回すと言明しております。
総理
は、このような場合、年度途中においても
減税
を行なうよう、
大蔵大臣
に指示される気はございませんか。 次に、
総理
にお伺いいたしたいのは、
法人税
と
所得税
の関係についてであります。
税制調査会
は、その
答申
において、
所得税
については、
納税者個々
の
所得水準
や蓄積の低さにもかかわらず、いわゆる
中小所得者層
にかなりの重い
税負担
を求めている、特に
給与所得者
は
捕捉率
が高く、
負担
が過重であるといっております。一方、
法人税
については、
国際的水準
に比べても、
個人所得
の
負担水準
から見ても、相対的に高い水準ではない、
法人税負担
にはなお余裕があるということを認めておるのであります。 ちなみに、この十年間を通じ、
所得税
の伸びが
実質所得
の伸びの二・四、五倍になっているのに対し、
法人
の場合は、三十五年度に比較いたしまして、四十二年度で総資産、資本は三倍に、
桂内留保
は三・二八倍に、
配当金
は二・八四倍と伸びているのに対し、
法人税
はわずかに二・一倍にしかなっていないのであります。 このような
状況
を念頭に置き、かつ
法人
、特に
法人数
において一・二%にしかならないそういう
数字
の大会社が、総
所得
の六四・四%を占める、こういう一億円以上の大
法人
は、
租税特別措置
による
減税額
、国税、
地方税
で四千二百億と推定されておりますが、そのうち七割の恩恵をこれらが受けておるのであります。こういうことを考え合わせますると、大
法人
にはなお十二分な
税負担能力
があるものと思います。
総理
及び
大蔵大臣
は、これらに着目をいたしまして、
法人擬制説
から脱却をし、
法人
独自の
税負担
を求めること、このことこそが社会、
経済
の実態に即して税の公平を回復するものであることを認識し、
法人
に対して
法人利潤税導入
など能力に応じた
納税強化
を行なうとともに、
租税特別措置
の勇気ある改廃を行ない、そして、これを財源として
所得税減税
を大幅に行なうことが必要であると思いますが、所信を承りたいのであります。(
拍手
) 次に、
課税最低限
についてお伺いいたします。 今次
改正案
によりますれば、
標準世帯
が四十四年度で九十一万五百十八円、
独身者
で三十二万五千四百八十六円であります。戦前、
昭和
十一年ごろの
給与所得者
の
課税最低限
は、今日に引き直して比較をいたしてみますると、
平均所得
の一・八倍程度の高いところに
課税最低標準
があったのであります。それに引きかえ、
昭和
四十年度一人
当たり給与所得
は、
大蔵省提出
の資料によれば九十万六千円であるのに対し、
課税最低限
は九十一万という
数字
であります。この点から考えましても、戦前に比して
課税最低限
が低く押えられて、
課税
が今日広範な低
所得者層
にも及んで、その
最低生活費
に食い込んでいたことが明らかになるのであります。
総理
並びに
大蔵大臣
は、
昭和
四十五年度には
課税最低限
を百万円以上にするとしばしば国会で公約されているのでありますが、戦前、
昭和
十一年当時、八十七万人の
所得税納税者
に対し、今日は二千百六十四万に及ぶ
納税者数
を数えているという、その革命的な変化が、
課税最低限
を低く押えてきたことによるものであるとは思いませんか。今日、
理論生計費
を基礎に算定すれば、五人家族で百七十万円以上の
生計費
を要するということを考え合わせる場合、
最低生活費
に
課税
せず、蓄積と
ゆとり
のある家計をという見地に立って、少なくとも四十四年度百二十万円程度に
引き上げ
るべきであると思うのでありますが、お考えを承りたいのであります。 今日、
高卒者
の
初任給
にいたしましても、月額二万五千円以上になっております。これを、ボーナス三カ月分として十五カ月で計算をしてみますと、三十七万五千円になります。
課税最低限
を少なくとも四、五万こえるわけであります。就職して、とたんに、まだ
未成年者
が
所得税
を取られるという事態になるのであります。 さらに、この点に関し
大蔵大臣
に所見を伺いたいのは、
大蔵省
の統計によっても、
給与所得者
の
家族構成
は、
世帯主
を含めて三・八九人であります。
夫婦子供
三人を
標準世帯
としている今日のやり方は、現実の姿を反映しておりません。したがって、現実と遠い五人
世帯
を
標準世帯
とする
方式
を、四人
世帯
に改めることが必要であろうと思いますが、その点について、いかがでございましょうか。(
拍手
) 次に
大蔵大臣
に伺いたい点は、
税率
についてであります。 今次
改正案
によりますると、
現行
十万以下の
最低税率
九・五%を三十万以下一〇%に引き下げるとともに、
現行
の五%
刻み
の
累進税率
を、七百万以下の各
段階
について、その
刻み
を四%に引き下げたのであります。このことは、今次
改正案
がいわゆる
部課長減税
といわれるゆえんであり、
中堅所得者
の
減税
をはかる最大の点でありました。しかしながら、この点について考えまするに、
所得税制
の最も原理的な
応能負担
、
公平負担
、
所得
再配分の原則の立場に立てば、
課税標準所得
二百万円くらいまでは二%
刻み
、三百万円くらいまでは三%
刻み
にするというくらいの、きめこまかな
税率改正
をなすべきであったと思いますが、なぜ一率に四%
刻み
にしたのか、その理由を明らかにしていただきたいのであります。(
拍手
) おそらく財源が足りなかったと答弁されるでありましょうが、財源が足りなければ足りないように、税調の
答申
のごとく、百五十万円までの四
段階
は二%
刻み
、三百万円まではその三
段階
について三%の
刻み
にするという、そういうものを実現させて、残余のものについては
明年度
に持ち越すくらいの配慮があってしかるべきであったと思いますが、いかがでありますか。このような態度があってこそ、
国民大衆
の切実な願いにこたえた
税制改正
と言えるのではないでしょうか。 次に、
課税単位
の
あり方
の問題について、
大蔵大臣
及び
総理
に質問をいたします。
所得税
の
課税単位
については、
所得
をかせぎ得る
個人ごと
に
担税力
を見出す方法と
消費生活
を同じくする
単位ごと
に
課税
する
考え方
とがあることは、御承知のとおりであります。そこで伺いたいのでありますが、すでにアメリカや西ドイツにおいて実施されている
夫婦
間の
所得分割法
がとれないかどうかであります。これは、いわゆる二分二乗
方式
といわれるものであります。今回の
税制改正
は、
基礎控除
、
配偶者控除
各一万円、
扶養控除
二万円
引き上げ
、
税率
の一部緩和が中心であります。さらに、
給与所得控除
の
定率分
の
引き上げ
、
限度額
の
引き上げ等
でありますが、このような
方式
による
減税
は、いまや限界に達しつつあると思います。真に蓄積と
ゆとり
のある家計の実現を目ざす
財政政策
の中で
減税
を考えるとするならば、やはり
抜本的減税方式
を考える時期に来ているのだと思います。その観点から、
夫婦所得
に対して二分二乗
方式
が採用されてしかるべきときと存じます。共かせぎの
夫婦
ないしは内職する妻の場合等においてはもちろん、
家事労働
に従事し、子供の教育、夫をして安んじて職場において精一ぱい活動していくことができるようにするための妻の内助の功、働きというものを正しく評価すべきであります。
現行配偶者控除
は、
独身者
に与えられる
基礎控除
十七万と同額にするという
現行
の
方式
は、妻の一家の
所得
に対する
貢献度
を正しく評価しておりません。かりに妻のかわりに、いわゆるお手伝いさん、
家政婦
を雇っても、月額二万五千円以上は支払わなければならない現状から見ても、まことに不当であります。このような見地に立って、
配偶者控除
の思い切った
引き上げ
を断行するか、いわゆる二分二乗
方式
による
課税方式
を採用する必要があると思うのでありますが、
総理
及び
大蔵大臣
の所信を明確にお聞きいたしたいのであります。(
拍手
) もし、
佐藤総理
にして、公平な
税制確立
について、
抜本的方式
としてこの
方式
を採用する英断を行なうならば、少なくとも千数百万の
納税者
の
妻たち
は、
佐藤総理
こそ希代の名宰相として、大きなかっさいを与えるであろうことは疑いをいれません。 次にお尋ねをしたい点は、
給与所得
に対する
源泉徴収
の
制度
についてであります。 この
制度
は、
昭和
十五年、
戦争財政
の必要に基づいてつくられた
制度
であり、
民主憲法
のもとにそのまま引き継がれ、今日に至っているのでありまして、今日違憲の疑いがあり、現に
同志社大学大島教授
から
違憲訴訟
が提起されておる重要問題であります。すなわち、
給与所得者
は、
源泉徴収制度
によって、他の
所得者
に比して著しく不利な取り扱いを受けているのであります。本来、法の前に平等であるべき
国民
のうち、
給与所得者
だけが、これあるがゆえに他に認められている
自主申告
の権利を奪われ、一〇〇%税金を
先取り
され、
給与所得
を得るための
必要経費
の主張すら否定されているのであります。今日俗に言うクロヨンあるいは
トーゴサン
ということは、
給与所得者
、
事業所得者
、
農業所得者
に対する
課税捕捉率
の
状況
を端的に表現するものでありまして、裏返せば、サラリーマンの憤りと恨みつらみの象徴であります。
インフレ
、
物価値上げ
の
高度経済成長政策
の中で、有無を言わさず
源泉徴収
されている
給与所得税
の重さこそ、
勤労大衆
に耐えがたい
重税感
を与える最大の
問題点
であります。
総理大臣
、
大蔵大臣
、この
人権無視
、
憲法違反
の疑いの濃い
源泉徴収制度
を
自主申告制
に改める意思がありますか、所信をお伺いいたします。(
拍手
) もし、二千二百万に近い
給与所得納税者
に一々
自主申告制
を認めることは
徴税事務
上困難である、これをやめることはできないと
説明
されるならば、あなた方は、
給与所得者
には他の
所得者
に対する以上に有利な
必要経費控除
が
給与所得控除
の中で考慮されていることを
数字
をもって
説明
すべきであります。これはできないでありましょう。他の
所得者
は、いずれも翌年三月十五日の
申告期限
までに申告納税すればよいのに、
ひとり給与所得者
だけが毎月税金の
先取り
をされているのであります。
総理
並びに
大蔵大臣
、このような不公平に対して、
税金先取り分
の
利子補てん
、
徴税費節約分
などを考慮して、とりあえずの
措置
として、現在の諸
控除
のほかに、たとえば
源泉徴収特別控除
を、仮称でありますが、新設し、不当な
給与所得者
の重税を緩和し、税の公平を期するお考えはございませんか。 さらに、
給与所得控除
を、
定額分
、
定率分
の思い切った
引き上げ
を行なうべきであると思いますが、いかがでございますか。
源泉徴収制度
について、少なくとも
給与所得
に対しても、
概算控除
の
現行制度
と
必要経費
を
自主申告
によって認める
制度
の導入、いわば
選択制度
を採用すべきであると思いますが、いかがでございますか。これはすでに西ドイツにおいて実施せられておるのであります。この
制度
導入を、勇断をもって実施せられることこそ、従来の惰性による
税制改正
のからを破って、真に
国民
の切実な期待にこたえるゆえんであると信ずるのであります。 最後に、私は、次の一文を呈して私の質問を終わりたいと思います。それは、税金酷書を発表した総評、社長や部課長を構成員とするサラリーマン・ユニオン、全国サラリーマン同盟の各代表者による共同討議の末、まとめられた共同宣言の一節であります。 全国二千七百万人のサラリーマンは、有無をいわせず取立てられる重い税金に泣いている。サラリーマンは、その苦しさを訴えるすべを知らず、運動を起す組織を持たず、ただひつじのように従順に税金を納め続けてきた。しかし、いまこそわれわれサラリーマンの立上がるときが来た。「これ以上、不当な税金の手カセ足カセに甘んじることはできない。日本の中堅たるわれわれサラリーマンの声を、政治に反映させよう」と重い腰を上げたのである。
総理
、
大蔵大臣
、このように
給与所得者
は、いまきゅう然として
減税
の要求を掲げて立ち上がっておるのであります。これはかつて見られなかったことであります。長い長い酷税の中で苦しんだサラリーマンの血の出るような叫びであります。 この声に謙虚に耳を傾け、
給与所得
を中心に
大幅減税
を断行されるよう明確な答弁を求めて、私の質問を終わります。(
拍手
) 〔内閣
総理大臣
佐藤榮作君登壇〕
佐藤榮作
9
○内閣
総理大臣
(佐藤榮作君) お答えいたします。 まず、
財政硬直化
打開の声が陰をひそめているではないか、かようなお話でございますが、決してそのようなことはありません。国債の
依存度
の引き下げや、両米価の据え置き方針の強い決意などをごらんいただけば、
政府
が相変わらずこの問題と取り組んでいるその姿勢がおわかりだと思います。 次に、
自然増収
は
減税
優先にと、こういうように主張されましたが、
政府
といたしましては、ただいま借金をしておる、その意味で、国債の発行額がなお相当額にのぼっております現在としては、何をおいても国債の
依存度
を引き下げることが財政体質の
改善
のために望ましいものである、かように
考え
ております。
年度
途中においても
自然増収
分で
減税
をしろ、かようにお話しでございますが、
減税
は来
年度
予算
におきまして積極的に行なったところであります。 次に、
所得税
を
軽減
すべし、この御主張でございますが、方向としては、全くそのとおりだと私も思います。現に、来
年度
予算
はその方向で
減税
を実施したのであります。しかしながら、
法人税
の増徴は、
法人
の
税負担
から見ましても問題があるし、また
法人
、
個人
を通ずる税体系から見ても、にわかに
増税
には賛成しかねます。 次に、
給与所得者
の
課税最低限
の問題でありますが、
課税最低限
を四十四年からでも百二十万円にしろ、かような御主張であります。
税制調査会
の長期
答申
でも、
夫婦子供
三人、この標準家庭におきまして、その
所得
については百万円
程度
とすることが、先進諸国との比較から見ましても妥当である、かようにしております。
政府
としては、その線に沿った
減税
計画を遂行中であります。
課税最低限
の百万円の目標は、アメリカの百三十三万円には及びませんが、英国は七十八万円、ドイツは八十八万円、この
水準
等から見ましてもわが国の百万円は高いのでありまして、英、独よりも高い、一応の
水準
である、かように私は
考え
ております。 なお、
配偶者控除
につきましては、今回の
改正
で若干の
改善
を実現いたしたつもりであります。 さらに、ただいまお話のありました、妻の座を重視して、
夫婦
の
所得
について
二分
二乗
方式
をとれとの御主張でありますが、これは
現行
所得税法
の基本的な
考え方
に触れる問題であり、単に
夫婦
の
所得
の計算
方式
だけの問題ではなくなりますので、御意見は御意見として伺っておきます。 なお、私は、妻の座を守るという意味からは、相続税並びに贈与税等に特に問題があるように思われます。このことは、
さき
に
予算
委員会におきまして、
社会
党の堀君からのお尋ねがありまして
質疑
応答をかわしたのでありますが、次の相続税手直しの機会に、妻の座を守るという意味合いでさらに一歩前進させたいものと、かように
考え
ております。 次に、
源泉徴収
の
制度
でありますが、これは諸外国でも広く採用されている
納税者
にも便宜的な
制度
であり、これを廃止するつもりはありません。問題は、御指摘のように、勤労
所得者
の
重税感
にあると
考え
ますので、今後とも、特に
中堅
以下の
所得税
軽減
に努力してまいります。 また、御提案のあった
源泉徴収
方式
の
改善
につきましては、
制度
的に種々むずかしい問題がありますが、今後の研究課題として取り組んでまいりたいと、かように
考え
ております。 最後に、御意見として、サラリーマン・ユニオンの、その一節を引き合いにして
政府
の
施策
を御批判になりました。私も謙虚に、その御意見は御意見として伺ったつもりでございます。(
拍手
) 〔
国務大臣福田赳夫
君
登壇
〕
福田赳夫
10
○
国務大臣
(
福田赳夫
君) 広瀬さんのお尋ねは、おおむね
総理
からお答えがありましたのですが、私にもと言うので、重ねてお答え申し上げます。 今回の四十四
年度
予算
につきまして、一兆二千億円も
自然増収
がある。歳出に充てた残りも三千億円もある。なのに、それを半分半分ずつ、
減税
には千五百億円しか充当しないが、これは拡大すべきであったのではないかというようなお話でございますが、今日の
段階
におきまして何よりも大事なことは、
経済
がすくすくと成長、発展していくこの基本路線を守るということであろうと思うのです。四十一
年度
以来公債政策が採用されましたが、依然としてわが日本の
経済
は堅実な歩みを続けて今日に至っております。しかし、公債政策の節度というもの、これはこの辺でぴしっと打ち立てなければいかぬ、かように
考え
まして、公債の減額、これを重要視した。しかし、お話しのように、
減税
ということも当面の問題である。さようなことで、半々というきわめて公正なさばきをした、かように御了承
願い
たいのであります。
減税
はしない、しないと言いますが、
減税
は少なかった。しかし、歳出が九千億円もふえているのです。この歳出の九千億円のふえは何になっているのだといえば、
社会
保障費になり、道路になり、橋梁になり、
住宅
になり、そういう形で
国民
にお返ししてあるのだ、このこともはっきりと御了承
願い
たいのであります。 次に、
法人税
と
個人所得
税との比較論に触れられまして、
法人税
増徴の必要があるのじゃないか、
法人擬制説
をこの辺で清算する必要があるのじゃないかというようなお話でありますが、いま
経済
が変動するこの状態下において
税制
の基本を改めるのは適切でない、かように
考え
ておるのであります。
法人税
につきましては、いま世界の
経済
の自由化という中に臨みまして、いかにもわが日本の
経済
の体質というものが弱い、いわゆる
資本
比率なんかにいたしましても世界で最低の
水準
である、これを
改善
しなければならぬという要請のあるこの際、
法人税
の増徴をするということは適切でない、さように
考え
ております。 また、
給与所得者
の
課税最低限
、これを大幅に
引き上げ
よというお話でございまするが、いま
総理
からもお話がありましたように、
昭和
四十五
年度
におきましては百万円までこれを持っていく計画をいたしておるのです。しかし、この行き方、これには私は疑問を持っております。つまり、いま世をおおっておるところの議論は、
税率
が高いのではないか、その
負担
感というもの、これが問題にされておる。それは、過去長い間
税率
の
調整
が行なわれないで、ひたすらに
課税最低限
の
引き上げ
に集中されてきておった、そこに問題があるのだろうと思う。
政府
の公約でありますので、四十五
年度
には
課税最低限
百万円までの
引き上げ
はいたします。いたしまするが、その後の
考え方
といたしましては、
税率
調整
、これにこそ重点を置くべきではないか、さように
考え
ておるのであります。 また、
夫婦
子三人という統計を
大蔵省
がつくっておりますが、これを
夫婦
子二人に改めよという話であります。これはもっともだと思うのです。ただ、
夫婦
子三人というのは、前からの長い統計上の必要がありますので
夫婦
子三人と言っておる、それだけの話なんです。何も、これを
夫婦
子二人といたしたところで税が減るわけでも何でもないのでありまして、
夫婦
子二人という計算をいたした場合におきましては、わが国におきましては八十八万五千円という
課税最低限
が、英国においては六十三万円、ドイツにおいては七十一万円となる。いずれにいたしましても、わが国の
課税最低限
制度
というものはきわめて妥当なところまで来ておるということを申し上げたいのであります。
所得税
率の
刻み
をもう少し小さくしたらどうだというお話でありますが、これはごもっともだと思います。私どももそういう努力をしていきたいと思う。
税制調査会
でもそういっております。そこで、私どもとしては、ことしは、今度の
改正
におきましては四%
刻み
にいたしまするけれども、これはお話のような方向で進めてまいりたい、かように
考え
ておるのであります。
夫婦
の関係、妻の座につきましては、ただいま
総理
からお話があったようであります。夫人の地位につきましては、私もこれを重要視いたします。しかしながら、
二分
二乗の
方式
につきましては、これは非常に根本的な問題でありますので、これが採用には慎重を期して臨みたい、かように
考え
ます。 源泉
課税
の方法の問題につきましては、これはいろいろ御意見がありましたが、御意見のように、
自主申告
に改めよ、こういう
考え方
は私どもはとりません。これは先進各国でも用いられておる税の徴収方法でございまして、ただ、
源泉徴収
を受けるところの
所得者
の立場、これはよく考慮しなければならぬ。それゆえに、四十四
年度
予算
におきましても、
給与所得
の
税率
の引き下げ、また
控除
の拡大、そういうことをいたしますが、この方向はさらにさらに進めまして、
給与所得者
と申告
所得者
との間の不公平感の是正に大いにつとめていきたい、かように
考え
ております。(
拍手
)
—————————————
石井光次郎
11
○
議長
(
石井光次郎
君) 阿部助哉君。 〔阿部助哉君
登壇
〕
阿部助哉
12
○阿部助哉君 私は、
日本社会党
を代表し、この際、
租税特別措置
をめぐる基本的な諸問題につき、
総理大臣
の見解をただしたいと思います。 〔
議長
退席、副
議長
着席〕 巨大な独占
資本
に奉仕する税の減免
措置
に対し、
国民大衆
のふんまんはいまや頂点に達しております。
政府
の御用機関ではないかといわれる
税制調査会
ですら、
租税特別措置
が
課税
公平の原則に違反し、さらに、慢性化、既得権化の危険を指摘しております。にもかかわらず、他方、経団連は、
政府
に対し
特別措置
の新設を強く迫っており、昨年末彼らが作成いたしました要望一覧表には、実に延べ二百三十余件にのぼる新たな
特別措置
が列記されておるのであります。 本日提案されましたのは
住宅
、
原子力発電
などに関するものでありますけれども、独占
資本
に奉仕するための
特別措置
全体に対する理念、租税原則破壊による大衆収奪が大きく問題となっております。そこで、一つ一つの
措置
に関する
質疑
は大蔵委員会において十分これを行なうこととし、ここでは、冒頭に述べました租税をめぐる政治
状況
を踏まえ、基本的な問題をただしたいと思います。 われわれが
租税特別措置
による大
企業
の暴利をなじると、当局は、必ず判で押したように、
中小企業
にはこれこれの優遇云々と、聞きもしないことを力説する。
特別措置
の中には、なるほど
中小企業
向けのものがあることは承知いたしております。同時に、
中小企業
向けの看板を掲げて出発いたしたものが、実際には大
企業
専用化したもののあることも承知いたしておるのであります。だがしかし、
租税特別措置
の主たる目的と実際の効果が、国家権力による大
企業
の利潤拡大の手段であり、
勤労大衆
に対する追加搾取の
制度
であるこの罪を断じて免罪するものではありません。(
拍手
)ここでは、そういったまやかしの答弁を控えていただきたいと思います。
政府
は、
租税特別措置
の当、不当、また、その実態を不断に検討する義務があります。しかし、実際にはやられていない。われわれが資料を要求しても、満足に提示したためしがないのであります。たとえば、例年
大蔵省
から配ってくる減収試算表、この
程度
では役に立たないから、せめて業種別、
資本
規模別に分類してもらいたいといっても、それができないということであります。これでは
政府
自身検討することができないではないか。もし、あるものを出さないとするならば、これは国
会議
員の調査研究活動を故意に妨害するものであるといわなければなりません。(
拍手
)それとも、
政府
が検討しておりますという意味は、実は財界と寄り寄り打ち合わせ中ということなのか、いずれであるか、お答えを
願い
たいのであります。 わが国の租税体系の中核は、
所得
、
法人税
であって、近代租税原則にのっとったたてまえであるはずであります。かりに
特別措置
が必要であるというなら、それは基本税法の具体的
適用
にあたって、部分的不合理を是正し、
課税
の公平を期する場合に限るべきではないか。
現行
特別措置
のほとんどが、それとは逆に、租税原則をずたずたに破壊するものであって、民主国家においては許すことのできる
限界
を越えているのであるが、御所見を承りたいのであります。(
拍手
) もともと、金融その他あらゆる分野で有利にふるまっている独占
資本
に対し、国家が財政
支出
、さらにばく大な財政投融資によってフルサービスを行なっている。その上に税の減免である。
国民
的反撃の機運が高まるのは、これ当然であります。
政府
は、
企業
の利潤拡大という主目的を、やれ設備の近代化だの、国際競争力の強化だのといった衣装で飾り立ててはおりまするが、
企業
のほうは、もっと正直に事実を告白しております。ここでは時間の制約があるので、それを一々あげないが、要するに、
適用
される
企業
にとって
特別措置
は既得権であり、これを前提として経営計画を立てており、廃止されれば
増税
だといって騒ぎ立てるまでに慢性化しておるのであります。今日の独占
資本
は、市場のメカニズムを通じて公正な利潤を得ることでは満足をしない。会計
制度
に極力利潤の費用化
方式
を取り入れ、国家権力を道具に使ってばく大な利潤を獲得し、
資本
の
蓄積
に狂奔しているのであります。
租税特別措置
の主目的はここにある。だから、異なった産業間に
特別措置
の要求の競争が起こり、
特別措置
がまた新たな
特別措置
を呼んで、無限に拡大されることになるのであります。
総理大臣
の御所見を伺いたいのであります。
租税特別措置法
の第一条には、「当分の間」という規定があります。大部分の
特別措置
は期限つきであります。しかし、従来
政府
は、無反省に期限の延長を求めるか、あるいは装いを新たに新設の提案を行なって、今日百三十八件に及ぶ
特別措置
が現存しておるのであります。大
企業
は七期連続の高収益、増配を行なっている。また、昨年あたりは、設備投資の行き過ぎを押えるのだと称して、当局は金融財政の引き締めを行ない、重ね重ね自重を要望したが、その効果はなかったではありませんか。これでも
特別措置
の廃止を約束する勇気が起こらないのか、
総理
にお伺いをしたいのであります。
特別措置
は、
減税
という形はとっておるが、補助金と同じ財政上の効果を持つものであります。補助金より一そうたちの悪いことは、個々の対象、補助額などが国会審議の対象にならない。
企業
経理の操作によって弾力的な利用ができる。浮いた資金の使途に制限がない。営利
企業
としての成績のあがったものほど、つまり、独占
企業
ほど大きく活用できるのであります。この不合理を
総理
はいかにお
考え
になっておられますか。
租税特別措置
の本質と実態が明らかになれば、
中小企業
者がさらに
減税
を要求する。農民も黙ってはいない。中間層からも声があがる。当然のことであります。労働者階級は
課税
権、徴税権とまっこうから対決しなければなりません。われわれは、
租税特別措置
の全廃を主張するものであります。
政府
は、これが全廃を行なうことも、全廃の約束もせず、今
年度
は、予約
減税
に関する
特別措置
の提案を見送り、眠り込ませようとしている。かりに
特別措置
の廃止を順次決行するなら、まず大
企業
向けのものから征伐し、農民に対するこのような
措置
の廃止はあと回しにするのが政治の道ではないかと思います。(
拍手
)ことに、不公平きわまる利子配当の
特別措置
は、来年で期限が切れるのでありまするが、これをやめる御意思があるかどうか、
総理
にお伺いをいたします。
資本
の自由化に伴い、外資
企業
の急速な増加が予想されます。ここで私が外資
企業
をあげるのは、決して排外的な観点からではありません。
特別措置
自体が、
資本
と労働の関係からいいますれば、
資本
の労働に対する追加搾取の有力な手段であります。外資
企業
の日本進出の動機について、
政府
の調査によれば、第一に、目ざましい
経済
成長、次には、安い労働力だと指摘しております。つまり、大
企業
にとって、日本は
税金
天国であり、労働者は安く働く上に、
税金
の形でさらに
企業
に貢献するおめでたい国だということであります。いよいよもって全廃の決意を明らかにすべきときではないでしょうか。 次に、
地方税
との関係についてお伺いしたい。 地方自治体は、その政治的判断のいかんにかかわりなく、中央
政府
の
特別措置
によって自動的な税の減収を余儀なくされる。さらに、
地方税
法上の
特別措置
と合わせて千七百四十六億円の減収と自治省は試算をいたしております。
支出
面におけるひもつきの問題とともに重大な事態と思うが、
総理
の御所見を伺いたい。 最後に、
交際費
は
国民
的な非難の焦点であり、
企業
にとっても道徳的退廃をもたらしている。これに対する全面
課税
を行なうため、むしろ本法に規定すべきではないか。御所見を伺いたいのであります。 われわれは、
租税特別措置
の本質と実態を明らかにし、その全廃を期し、わが国租税体系に民主主義を
確立
する運動を展開する決意のあることを明らかにして、私の
質問
を終わります。(
拍手
) 〔内閣
総理大臣
佐藤榮作君
登壇
〕
佐藤榮作
13
○内閣
総理大臣
(佐藤榮作君) お答えいたします。
租税特別措置
、この法律は、私が申し上げるまでもなく、
特定
の政策目標を達成する上から、いままで有効な
役割り
を果たしているものでございます。これは、あえて
説明
するまでもないと思います。今回、提案いたしております持ち家をすすめる意味においての
特別措置
なども、非常に目的がはっきりしているものであります。これは、過去におきましても有効に働いております。したがいまして、いま言われたように、これを全廃するような
考え
はもちろんございません。 また、大
資本
擁護の問題だ、こういって声を大にして、特にこの点に力を入れて御
説明
になりましたが、大
資本
擁護ではございません。私がただいま例をとりましたが、
中小企業
関係の方々も、この
特別措置
の恩恵を受けておるものが、
企業
関係の
減税額
の五五%にものぼっております。このことを
考え
ると、これは大
資本
だけのものでないことがはっきりわかる、かように
考え
ます。どうも、特別な見方をしておられるようでありまして、この点は、私、
社会
党のためにもとらない。
制度
は
制度
として、率直にいいことはいい、かように認めていただきたいと思います。(
拍手
) また、租税の
特別措置
は既得権化する、あるいは慢性化しやすい、かように言われたこと、この点につきましては、私も、ややもするとそのようなおそれがある、かように
考え
ます。したがいまして、
制度
は流動的にその改廃を常に検討していかなければならない、かように私は
考え
ております。今回の
税制改正
におきましても、数多くの
改正
を実施しようとしていますので、その詳細は
大蔵大臣
から申し上げることにいたします。 特に、利子配当についての
特別措置
、これが来年期限が来る。それはどうするか、こういうことでありますが、私は、この問題については、とくと
税制調査会
においてよく審議していただく、そうして、その意見を聞いて善処したいつもりであります。この点を申し上げておきます。 次に、国税、さらにまた
地方税
との
あり方
についてのお話がございましたが、これなども
大蔵大臣
に譲らしていただくこととして、失礼いたします。(
拍手
) 〔
国務大臣福田赳夫
君
登壇
〕
福田赳夫
14
○
国務大臣
(
福田赳夫
君) おおむね
総理
からお答えがありましたのですが、ただ一点、中央、地方の税の関係につきましては、これは相補い、相助ける関係になければならぬ、かように
考え
ます。しかしながら、
所得税
、住民税、これに見られるように、中央税と
地方税
、これはおのずからその性質も違いますれば、その体系も違ってくるのであります。
所得税
の最低限が百万円だからといって、地方自治体の
所得
に対する
課税
である住民税が百万円でなければならぬ、こういうことはない。やはりこれは違うのが、これは性質上ほんとうであろう、こういうふうな感じがいたします。しかし、
地方税
も国税も、
個人
から見ますれば、これはもう
負担
に違いないのでありまするから、両方合わせて、
国民
の
負担軽減
ということには今後とも努力をいたしてまいります。(
拍手
)
小平久雄
15
○副
議長
(小平久雄君) これにて
質疑
は終了いたしました。
————◇—————
昭和
四十三
年度
衆議院予備金支出
の件(承諾を求めるの件)
西岡武夫
16
○西岡武夫君 予備金
支出
の件上程に関する緊急動議を提出いたします。 すなわち、この際、
昭和
四十三
年度
衆議院予備金支出
の件を議題となし、議院運営委員長の報告を求め、その審議を進められんことを望みます。
小平久雄
17
○副
議長
(小平久雄君) 西岡武夫君の動議に御
異議
ありませんか。 〔「
異議
なし」と呼ぶ者あり〕
小平久雄
18
○副
議長
(小平久雄君) 御
異議
なしと認めます。
昭和
四十三
年度
衆議院予備金支出
の件を議題といたします。
—————————————
小平久雄
19
○副
議長
(小平久雄君) 議院運営委員長の報告を求めます。議院運営委員会理事田澤吉郎君。 〔田澤吉郎君
登壇
〕
田澤吉郎
20
○田澤吉郎君 ただいま議題になりました
昭和
四十三
年度
衆議院予備金支出
の件について御報告申し上げます。 今回御承諾をお
願い
いたしますのは、
昭和
四十二年十二月二十七日から
昭和
四十三年十二月二十六日までの間に本院で
支出
した予備金七百万円であります。その所属
年度
は全額
昭和
四十三
年度
分でありまして、使途は、すべて在職中なくなられました
議員
の遺族に贈った弔慰金であります。 これらの
支出
については、そのつど議院運営委員会の承認を経たものでありますから、御承諾くださいますようお
願い
いたします。(
拍手
)
—————————————
小平久雄
21
○副
議長
(小平久雄君) 採決いたします。 本件は承諾を与えるに御
異議
ありませんか。 〔「
異議
なし」と呼ぶ者あり〕
小平久雄
22
○副
議長
(小平久雄君) 御
異議
なしと認めます。よって、承諾を与えるに決しました。
————◇—————
小平久雄
23
○副
議長
(小平久雄君) 本日は、これにて散会いたします。 午後三時十五分散会
————◇—————
出席
国務大臣
内閣
総理大臣
佐藤 榮作君 大 蔵 大 臣 福田 赳夫君 出席
政府
委員 内閣法制局長官 高辻 正巳君