○阿部助哉君 私は、
日本社会党を代表し、この際、
租税特別措置をめぐる基本的な諸問題につき、
総理大臣の見解をただしたいと思います。
〔
議長退席、副
議長着席〕
巨大な独占
資本に奉仕する税の減免
措置に対し、
国民大衆のふんまんはいまや頂点に達しております。
政府の御用機関ではないかといわれる
税制調査会ですら、
租税特別措置が
課税公平の原則に違反し、さらに、慢性化、既得権化の危険を指摘しております。にもかかわらず、他方、経団連は、
政府に対し
特別措置の新設を強く迫っており、昨年末彼らが作成いたしました要望一覧表には、実に延べ二百三十余件にのぼる新たな
特別措置が列記されておるのであります。
本日提案されましたのは
住宅、
原子力発電などに関するものでありますけれども、独占
資本に奉仕するための
特別措置全体に対する理念、租税原則破壊による大衆収奪が大きく問題となっております。そこで、一つ一つの
措置に関する
質疑は大蔵委員会において十分これを行なうこととし、ここでは、冒頭に述べました租税をめぐる政治
状況を踏まえ、基本的な問題をただしたいと思います。
われわれが
租税特別措置による大
企業の暴利をなじると、当局は、必ず判で押したように、
中小企業にはこれこれの優遇云々と、聞きもしないことを力説する。
特別措置の中には、なるほど
中小企業向けのものがあることは承知いたしております。同時に、
中小企業向けの看板を掲げて出発いたしたものが、実際には大
企業専用化したもののあることも承知いたしておるのであります。だがしかし、
租税特別措置の主たる目的と実際の効果が、国家権力による大
企業の利潤拡大の手段であり、
勤労大衆に対する追加搾取の
制度であるこの罪を断じて免罪するものではありません。(
拍手)ここでは、そういったまやかしの答弁を控えていただきたいと思います。
政府は、
租税特別措置の当、不当、また、その実態を不断に検討する義務があります。しかし、実際にはやられていない。われわれが資料を要求しても、満足に提示したためしがないのであります。たとえば、例年
大蔵省から配ってくる減収試算表、この
程度では役に立たないから、せめて業種別、
資本規模別に分類してもらいたいといっても、それができないということであります。これでは
政府自身検討することができないではないか。もし、あるものを出さないとするならば、これは国
会議員の調査研究活動を故意に妨害するものであるといわなければなりません。(
拍手)それとも、
政府が検討しておりますという意味は、実は財界と寄り寄り打ち合わせ中ということなのか、いずれであるか、お答えを
願いたいのであります。
わが国の租税体系の中核は、
所得、
法人税であって、近代租税原則にのっとったたてまえであるはずであります。かりに
特別措置が必要であるというなら、それは基本税法の具体的
適用にあたって、部分的不合理を是正し、
課税の公平を期する場合に限るべきではないか。
現行特別措置のほとんどが、それとは逆に、租税原則をずたずたに破壊するものであって、民主国家においては許すことのできる
限界を越えているのであるが、御所見を承りたいのであります。(
拍手)
もともと、金融その他あらゆる分野で有利にふるまっている独占
資本に対し、国家が財政
支出、さらにばく大な財政投融資によってフルサービスを行なっている。その上に税の減免である。
国民的反撃の機運が高まるのは、これ当然であります。
政府は、
企業の利潤拡大という主目的を、やれ設備の近代化だの、国際競争力の強化だのといった衣装で飾り立ててはおりまするが、
企業のほうは、もっと正直に事実を告白しております。ここでは時間の制約があるので、それを一々あげないが、要するに、
適用される
企業にとって
特別措置は既得権であり、これを前提として経営計画を立てており、廃止されれば
増税だといって騒ぎ立てるまでに慢性化しておるのであります。今日の独占
資本は、市場のメカニズムを通じて公正な利潤を得ることでは満足をしない。会計
制度に極力利潤の費用化
方式を取り入れ、国家権力を道具に使ってばく大な利潤を獲得し、
資本の
蓄積に狂奔しているのであります。
租税特別措置の主目的はここにある。だから、異なった産業間に
特別措置の要求の競争が起こり、
特別措置がまた新たな
特別措置を呼んで、無限に拡大されることになるのであります。
総理大臣の御所見を伺いたいのであります。
租税特別措置法の第一条には、「当分の間」という規定があります。大部分の
特別措置は期限つきであります。しかし、従来
政府は、無反省に期限の延長を求めるか、あるいは装いを新たに新設の提案を行なって、今日百三十八件に及ぶ
特別措置が現存しておるのであります。大
企業は七期連続の高収益、増配を行なっている。また、昨年あたりは、設備投資の行き過ぎを押えるのだと称して、当局は金融財政の引き締めを行ない、重ね重ね自重を要望したが、その効果はなかったではありませんか。これでも
特別措置の廃止を約束する勇気が起こらないのか、
総理にお伺いをしたいのであります。
特別措置は、
減税という形はとっておるが、補助金と同じ財政上の効果を持つものであります。補助金より一そうたちの悪いことは、個々の対象、補助額などが国会審議の対象にならない。
企業経理の操作によって弾力的な利用ができる。浮いた資金の使途に制限がない。営利
企業としての成績のあがったものほど、つまり、独占
企業ほど大きく活用できるのであります。この不合理を
総理はいかにお
考えになっておられますか。
租税特別措置の本質と実態が明らかになれば、
中小企業者がさらに
減税を要求する。農民も黙ってはいない。中間層からも声があがる。当然のことであります。労働者階級は
課税権、徴税権とまっこうから対決しなければなりません。われわれは、
租税特別措置の全廃を主張するものであります。
政府は、これが全廃を行なうことも、全廃の約束もせず、今
年度は、予約
減税に関する
特別措置の提案を見送り、眠り込ませようとしている。かりに
特別措置の廃止を順次決行するなら、まず大
企業向けのものから征伐し、農民に対するこのような
措置の廃止はあと回しにするのが政治の道ではないかと思います。(
拍手)ことに、不公平きわまる利子配当の
特別措置は、来年で期限が切れるのでありまするが、これをやめる御意思があるかどうか、
総理にお伺いをいたします。
資本の自由化に伴い、外資
企業の急速な増加が予想されます。ここで私が外資
企業をあげるのは、決して排外的な観点からではありません。
特別措置自体が、
資本と労働の関係からいいますれば、
資本の労働に対する追加搾取の有力な手段であります。外資
企業の日本進出の動機について、
政府の調査によれば、第一に、目ざましい
経済成長、次には、安い労働力だと指摘しております。つまり、大
企業にとって、日本は
税金天国であり、労働者は安く働く上に、
税金の形でさらに
企業に貢献するおめでたい国だということであります。いよいよもって全廃の決意を明らかにすべきときではないでしょうか。
次に、
地方税との関係についてお伺いしたい。
地方自治体は、その政治的判断のいかんにかかわりなく、中央
政府の
特別措置によって自動的な税の減収を余儀なくされる。さらに、
地方税法上の
特別措置と合わせて千七百四十六億円の減収と自治省は試算をいたしております。
支出面におけるひもつきの問題とともに重大な事態と思うが、
総理の御所見を伺いたい。
最後に、
交際費は
国民的な非難の焦点であり、
企業にとっても道徳的退廃をもたらしている。これに対する全面
課税を行なうため、むしろ本法に規定すべきではないか。御所見を伺いたいのであります。
われわれは、
租税特別措置の本質と実態を明らかにし、その全廃を期し、わが国租税体系に民主主義を
確立する運動を展開する決意のあることを明らかにして、私の
質問を終わります。(
拍手)
〔内閣
総理大臣佐藤榮作君
登壇〕