○高田富之君 私は、
日本社会党を代表して、ただいまの
政府の
財政演説と
昭和四十三
年度補正
予算に対して、
佐藤総理、
福田大蔵大臣並びに
経済企画庁長官に若干の基本的な諸点について
質問いたしたいと思うのであります。
まず第一にお尋ねいたしたいことは、この補正
予算の
提出に対する
政府の重大な
責任に関してであります。
昨年の第五十八回国会におきまして、当時の水田蔵相は次のように述べております。「
予算の組み方につき、新たに総合
予算主義をとることにいたしました。すなわち、
昭和四十三
年度予算におきましては、恒例的な
予算補正の慣行を排除することとし、公務員の給与
改定等に備えて予備費の充実をはかると同時に、食糧管理特別会計への繰り入れについては、
年度の途中において、米価の
改定等事情の変化があっても、これにより補正財源を必要としない方式。確立を期することといたしております。」以上のように述べておるのであります。これに対して、
佐藤総理もまた、本
会議でわが党の八木昇君の
質問に答えて、きわめて明確にこう述べております。「私は、
年度の中間において多額の補正をするというような
予算の組み方は、これは間違っておると思いますので、今回総合
予算主義に踏み切ったことは大英断であったと思います。」これは
総理みずからの言明であります。
しかるに、今日ここに四十三
年度補正
予算が
提出されましたことは、一体これは何を意味するのでありますか。これほどの大英断であったはずの総合
予算主義なるものが、事実上破綻してしまったことを意味するものではありませんか。(
拍手)このような事態に追い込まれるだろうということは、当初から十分に予想されていたことでありまして、わが党はこれを具体的に指摘してまいったのであります。すなわち、現在の
財政法は、あらためて申すまでもありませんが、正しい意味での総合
予算主義のたてまえに立っているのでありまして、そのことは、当然に緊急の場合には補正
予算が必要であることを明記しておるのであります。
しかるに、
政府は、その解釈をことさらにゆがめて、補正なし
予算ということを強調することによって、みずからの失政が招いたいわゆる
財政硬直化なるものの打開策として、
国民生活に
犠牲を押しつけ、地方
財政を圧迫しようとする、このようなことを企図したものにほかならなかったことが、いまやはっきりと暴露されたのであります。(
拍手)先国会におけるわが党の多賀谷君の
質問に答えて、
福田大蔵大臣は、「組みかえ補正なんかはあり得るわけであります。それから国家非常の際とかなんとか、
国民に非常に迷惑があるという際に、これは高度の政治判断できめなければならぬ」云々と、このように述べておるのでありますが、この間の経緯を振り返ってみますというと、重大な
政府の欺瞞があったことは明らかでありまして、今日では、結局
総理みずからの言明をも否定しなければならない
羽目に追い込まれたものであり、これはまことに重大な食言であったといわなければならぬと思うのであります。(
拍手)
総理は、一体、この
責任をどうお考えになっているのか承りたいと思うのであります。
本来、
予算は、数字で示された国政の鏡ともいうべきものであって、
国民は、
政府の
予算編成を通じて政治の実態を知ることができるのであります。しかるに、
政府は、その実態を
国民の目からおおい隠すために、あるときは総合
予算主義を口実として
国民に
犠牲を押しつけ、それに失敗したことが明らかになりますや、たちまち言を左右にして
責任を回避しようとする。
大蔵大臣に伺いますが、今回の補正は、あなたの言う国家非常の際なのかどうか、はっきりお答え願いたいのであります。(
拍手)
このような無
責任な態度は、
国民の
予算というものに対する不信感を高めるのみならず、政治不信をいよいよ強めることとなると考えるのでありますが、重ねて
総理の御所見を伺いたいと思うのであります。
次に、税収入の問題についてでありますが、四十三
年度において、当初見積もりを越えて二千四百億円にのぼる税の自然増収がありましたことは、四十三
年度の減税が全く少な過ぎ、実質増税による税の取り過ぎが行なわれたからであります。すなわち、四十三
年度当初
予算では六千五百七十六億円の税の自然増収が計上されていたにもかかわらず、所得減税を削り、その上、酒、たばこなどの増税を強行いたしました結果、実質的な自然増収が九千億円にのぼるに至ったのであります。さらに、この結果として、地方交付税は七百五十四億円の追加となっております。これは、総合
予算のたてまえからいえば、当然、当初
予算の際に見込むことができたはずのものであって、単なる
予算見積もりの狂いでは済まされないと考えるのであります。(
拍手)しかも、地方交付税を国の景気政策に組み込んで、国の意のままに動かそうという姿勢がとられておりますのは、法の
趣旨にも反し、地方自治を侵害するものといわなければなりません。これは
昭和四十四
年度予算にも貫かれて、六百九十億円の国への貸し付けを強要しておりますことなど、まことに許さるべきことではないと考えるのであります。
政府はこのような増税による大衆収奪と地方
財政圧迫というこのやり方を根本的に改めるべきだと考えるのでありますが、この際、
政府のお考えを承っておきたいのであります。
第三は、国債削減の問題であります。
政府は、本
年度当初
予算において六千四百億円の国債発行を予定していたのでありますが、税の自然増収を引き当てとして千六百二十三億円の国債減額が計上され、四十三
年度国債発行額は四千七百七十七億円となったわけであります。このことは、
政府が四十四
年度に国債発行を千五百億円減額し、四千九百億円にすると申しましても、実際の発行額は四十三
年度よりも増加することになるのでありまして、景気抑制に逆行するといわなければなりません。しかも、この国債発行の削減は、短期的には金融界、産業界の要望にこたえるための金融緩和の要因となるものであります。また、長期的に見ましても、すでに発行された国債の半分近くが、日銀の買いオペ操作を通じて実質的には日銀引き受けによる国債発行と同じ効果をもたらし、大きなインフレ要因となっておるのであります。つまり、四十三
年度に発行される国債は四千七百七十七億円となったのでありますが、実は、日銀による買いオペによって、四十三年中に約四千億円の国債が買い取られているのでありまして、これは買いオペ対象債の約七割が買いオペにより日銀に還流したことを意味しておるのでありまして、四十三年分の国債発行は、実は、日銀引き受けによる国債発行そのものであったといわなければなりません。(
拍手)その結果、通貨増発、
物価上昇をもたらすインフレ政策となっておるわけであります。
福田大蔵大臣、あなたは、かつて、国債発行政策導入にあたりまして、国債の市中消化を強調し、日銀引き受けはしないと公言されたのでありますが、ただいまのこの事実を一体どうお考えになっておるのか、
責任ある御
答弁を承りたいと思うのであります。(
拍手)
第四に、補正
予算の
内容について一言いたしますならば、
政府は、緊急な
国民のいろいろな要求にこたえる気持ちがないのではないか。たとえば、公務員給与につきましても、人事院勧告を完全に
実施するための
予算を計上すべきでありまするし、また、食管会計繰り入れにつきましても、恣意的にその額を決定すべきではなく、実態に合わせた追加をなすべきでありますことは、申すまでもありません。また、低所得層に対する
措置とか生活保護、失対賃金など、
物価の上昇、賃上げ補償に十分見合う
予算の計上を行なうべきであります。さらにまた、公害
対策、石炭
対策、沖繩援助等々、
国民的な緊急を要する諸課題を全く軽視していると考えるのでありますが、
政府の御所見を承りたいのであります。
なお、
政府の補正
予算の
内容について大きな疑問がございます。
すなわち、今回の補正の一つの
原因は、食管会計の
赤字が当初
予算よりも著しく増加したので、
一般会計から繰り入れを三百七十億円増加するところにあったのでありますが、
一般会計歳出には三百七十億円の追加繰り入れを計上しておきながら、食糧管理特別会計の補正
予算は
提案されていない。これは一体どういう理由によるものであるのか。食管会計に
赤字を生じたのでありますから、その食糧管理勘定歳出の組みかえ補正をしなければならないと思うのであります。地方交付税の増加には特別会計の補正をしておきながら、食管特別会計の補正をしていないということは、まことに不可解というほかありません。これは明らかに
財政法上の手続に欠けるものがあるのではないかと考えるのでありますが、
政府は、あらためて食管特別会計の補正案もあわせ
提出する考えはないのかどうか、この点、ひとつ明確に御
答弁をいただいておきたいのであります。
最後に、もう一度強調しておきたいことは、今回の補正
予算は、
政府のいう総合
予算主義が完全にくずれ去ったことを示すものであります。それと同時に、四十三
年度予算は、まさに増税とインフレの
予算でありますことが決定的となったことを示すものであります。しかるに、大蔵大臣は、いまなお総合
予算主義のたてまえを堅持すると称して、このような欺瞞的なやり方を今後とも引き続き運用して、大衆収奪と民生圧迫の道具にしようとしていることは、断じて許すことはできません。(
拍手)
ここに、
総理並びに
財政当局の
責任をきびしく追及いたしますとともに、根本的な反省を促して、私の
質問を終わる次第であります。(
拍手)
〔
内閣総理大臣佐藤榮作君
登壇〕