運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1969-10-09 第61回国会 衆議院 法務委員会 第31号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十四年十月九日(木曜日)     午前十時四十二分開議  出席委員    委員長 高橋 英吉君    理事 鍛冶 良作君 理事 進藤 一馬君    理事 田中伊三次君 理事 永田 亮一君    理事 畑   和君       大竹 太郎君    千葉 三郎君       濱野 清吾君    松野 幸泰君       森山 欽司君    岡田 春夫君       神近 市子君    黒田 寿男君       河野  密君    岡沢 完治君       松本 善明君  委員外出席者         法務政務次官  小澤 太郎君         法務大臣官房長 辻 辰三郎君         法務省刑事局長 川井 英良君         最高裁判所事務         総長      岸  盛一君         最高裁判所事務         総局総務局長  寺田 治郎君         最高裁判所事務         総局人事局長  矢崎 憲正君         最高裁判所事務         総局刑事局長  佐藤 千速君         最高裁判所事務         総局行政局長  矢口 洪一君         専  門  員 福山 忠義君     ————————————— 十月九日  委員濱野清吾君、栗林三郎君及び西村榮一君辞  任につき、その補欠として森山欽司君、岡田春  夫君及び岡沢完治君が議長指名委員選任  された。 同日  委員森山欽司君、岡田春夫君及び岡沢完治君辞  任につき、その補欠として濱野清吾君、栗林三  郎君及び西村榮一君が議長指名委員選任  された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  裁判所司法行政に関する件  法務行政に関する件  検察行政に関する件      ————◇—————
  2. 高橋英吉

    高橋委員長 これより会議を開きます。  裁判所司法行政に関する件、法務行政に関する件及び検察行政に関する件について調査を進めます。  質疑申し出がありますので、これを許します。森山欽司君から質疑申し出がありましたけれども、諸般の事情、社会党の質問模様によって質問しようというので留保されることになりましたから、これを了承しまして、畑和君から先にお願いいたしたい。畑和君。
  3. 畑和

    畑委員 私は、目下非常に大きな問題となっておりまする札幌地裁所長平賀健太氏の例の事件、それからさらに、その問題についていろんな意見公表をいたしました鹿児島地裁所長飯守重任判事の問題、この両方関連をいたしておりますので、この両方の問題を取り上げて最高裁所信をただしたい、かように考えておる次第です。なお私のほかに、民社党並びに共産党のほうからもおそらく同じような趣旨質問があると思います。したがいまして、そういうこと等も考えまして、できるだけ簡略に質問を続けていきたいと考えますので、最高裁当局におかれましても、その趣旨に沿ってひとつなるべく簡明に、しかも要を得ての御答弁を願いたい、かように思っております。  実は私、この平賀書簡問題なるものにつきましては、ちょうどたまたま国会派遣外国に行っておりまして、その外遊先でこのニュースを聞き、さらに何日間かおくれまして、大使館におきまして日本の新聞を読ましていただきまして、詳細について新聞紙上承知をいたしたわけです。非常に問題が重要でございますので、たまたまそのときにわれわれの一行に法務委員長高橋さんもおいでになっておりまして、非常に問題は深刻にしてかつ重大だ、こういうことで、いろいろ具体的な裁判の問題にも若干関連があるけれども、しかし、それは別問題といたしまして、やはり裁判所あり方という立場からこの平賀書簡の問題は相当法務委員会で究明をされ、裁判所の正しいあり方について考え方を伺わねばならぬというふうに、実は道々話しながら参ったのであります。一昨日われわれ帰還をいたしてまいりましたけれども、さっそくこの問題を取り上げまして、最高裁考え方等についてお聞きをいたしたいと思います。  まず、平賀書簡の問題でございますけれども、この問題につきましてはもうすでに相当日時がたっております。われわれが外国へ行っておりまする間、この問題が発生をいたしましたので、聞きますれば、法務委員会開催等が各党から要求をされておったようでありまするけれども、たまたま今日が予定されておりましたので、今日に全部の質疑が集中したわけでございます。したがって、相当日時がたっておりますから、各方面からいろいろな指摘がなされており、しかもそれに対してもうすでに最高裁等におきましても最終的な処置がなされております。したがって、その問題につきましてはあまり多くは触れようとは思いません。しかし、問題が重大でございますので、最高裁処置処置として、いかなる考え方に基づいてそういう措置をとったかというようなこと等について、さらに質問をいたしたい、かように思います。  大体、最高裁当局はもう十分御承知のとおりでありまして、司法権独立ということは幾ら強調されても強調され過ぎることはないのでありまして、あらゆる干渉圧迫等から解放されて、裁判独立でなければならぬということであります。憲法の七十六条にこの根本の考え方が書いてあることは、いまさら言うまでもございません。裁判官良心に従って、独立をしてその職権を行なう、そしてこの憲法並びに法律にのみ拘束をされる、こういうことが明定をされておるわけであります。したがって、良心に従って独立をして職権を行なうべきであって、しかも、その基準とするところは憲法とそれから法律だけに拘束されるのだということ、これがすなわち裁判独立でございます。したがって、外部からの干渉等だけでなくて、裁判所内でのいわゆる司法行政上の監督的な地位にあるような立場所長というような場合でありましても、一つの裁判を行なっておる裁判官に対して、いろいろ指示等のことをやるべきではないことはもちろんだと思います。なるほどいろいろな裁判官良心に従って独立して裁判を行なうのでありますけれども、裁判官といえども神さまではない、したがって、すべてを知っているわけでは必ずしもないのでありまして、いろいろな前例その他を研究をし、しかもまた、先輩等にもいろいろな法律的な見解を聞くというような意味での助言を求める、内部的に助言を求める、こういったようなことはあり得るでありましょう。これは当然だと思います。しかしながら、それを幾ら上司であるというようなことであろうとも、裁判所長が、具体的な事件担当しておる裁判官に対して、法律的な見解等を述べて示唆を与える、こういうことはきわめて重大である。それでこの問題が公になったと思うのでありますが、この問題に対してまず簡明にその経過お話を願いたいと思います。大体新聞等にありますから、詳しくは要りません。順序として経過を御説明願いたい。
  4. 矢口洪一

    矢口最高裁判所長官代理者 平賀書簡事件経緯を説明せよということでございますが、事柄は非常に重要な問題でございますので、一応私から、現在具体的な事件札幌地方裁判所または高等裁判所に係属いたしておりますが、私どもが客観的に知り得ました範囲内におきまして、内容とあわせて御報告を申し上げたいと思います。  本件の問題になりました事件の正式な名称は「昭和四十四年行ウ第十六号保安林解除処分取消請求事件」これが本案事件でございます。それと同時に「昭和四十四年行ウ第一六号保安林解除処分執行停止申立事件」この事件はいわゆる執行申し立て事件と呼んでおりますが、この事件札幌地方裁判所に係属いたしました。係属いたしましたのは、いま申し上げましたように四十四年七月七日でございます。原告北海道夕張長沼町の住民でございまして、全員で百七十三名、被告農林大臣でございます。  この事件は、昭和四十四年八月二十二日、執行停止事件について決定がなされました。なお、その執行停止事件に対する決定に対しましては、同月二十六日即時抗告がなされまして、現在札幌高等裁判所に係属中でございます。  いわゆるこの長沼町の保安林解除処分取り消し事件と申しますのは、北海道夕張郡の長沼町に馬追山というのがございますが、その付近に約三十五ヘクタールの国有保安林がございます。その国有保安林農林大臣が四十四年七月七日、告示第一〇二三号をもって保安林解除告示をいたしました。その理由は、元来水源の涵養を目的とする保安林でございましたが、高射教育訓練施設にするためにこれを保安林から解除するという内容告示でございます。その告示取り消し処分を求めると同時に、その告示処分執行停止を求めたのが本件のいわゆる長沼ナイキ基地事件と申すものでございます。  この事件は、札幌地方裁判所におきましては、本案執行停止事件とを一緒にいたしまして、四部ございます民事部のうち第一部に係属いたしました。担当裁判官福島裁判長、それから木谷、石川両陪席裁判官でございます。直ちに事件審理に入ったわけでございますが、七月二十二日の火曜日になりまして国側から行政訴訟法の規定に従いまして意見書が提出されました。もちろんこれは執行停止事件関連するものでございます。なお、国側から提出されましたその意見書は直ちに原告側に送られまして、原告側からそれに対する反論として、申し立て書を補充する意味で、いわゆる反論書が提出されましたのが八月一日金曜日でございます。原告から申し立て書及び反論書が提出され、国側から意見書が提出されましたので、担当裁判部におきまして鋭意これの審理を行ないまして、近くその執行停止事件につきまして決定をするという段取りになりましたのは八月十日前後のことでございます。  ところで、当時の札幌地裁所長でございます平賀所長といたしましては、本件が非常に重要な問題であるということを考えまして、八月十日日曜日のお昼ごろに、札幌地方裁判所刑事所長代行であります渡部判事、それから民事所長代行でございます平田判事官舎に招致いたしまして、執行停止事件決定が近くなされるようであるが、その決定告知当日における庁舎管理上の問題について種々協議をしたわけでございます。その結果、これは具体的な事件の問題もあるということで、やはり福島裁判長を加えてその問題を協議すべきではないかということになりまして、八月十日、当日の夕刻、あらためて平賀所長はいま申しました渡部平田所長代行のほかに、担当裁判長でございます福島裁判長自宅に招致いたしまして、決定告知当日の庁舎警備の問題について種々協議をしたわけでございます。その際には、実は八月十日から始まります次の週と申しますか、八月十日ないし八月十六日の週は平賀所長出張のため庁舎をあけるということがあらかじめ予定されておりましたので、もし八月十日から始まる週において決定告知がなされるのであれば、これは重大な事件決定告知がなされる際に庁舎管理責任者である所長不在であるということは、あらゆる観点から好ましくない、したがって、決定告知がどうしても延期できないものであるならば、所長出張を取りやめることにするか、あるいはまたは逆に決定告知を一週間以上先に延ばすかということについて話し合いがなされたわけでございます。その結果福島裁判長は、せっかく所長があらかじめ出張予定をなさっておる段階において本件の言い渡しのために出張を取りやめるということになっては申しわけないということで、一応決定告知を少なくとも翌週は行なわない、八月十日から始まる週は行なわないということにしようではないかという意見を出され、そのことで話し合いが一応当日はまとまったということでございます。  ところが、翌八月十一日になりまして、福島裁判長としてはやはり決定告知あまり先に延ばすのもどうであろうかというようなことを考えられたらしく、もう一度その問題について所長と話し合うというようなことをしたようでございますが、結局におきましては八月十一日、月曜日におきましても、その週においては決定告知は行なわないというところに了解がついたというのが事実でございます。  ところで、八月十二日火曜日、同じ十三日水曜日、それから十四日の木曜日、その三日間は所長がいま申しましたようにあらかじめ定められておりました日程に従いまして管内出張をいたしました。その間、八月十二日火曜日には国側から補充の意見書が提出されております。  ところで、平賀所長としては、このような行政事件につきましては、かねてから個人的には相当興味をお持ちになっておりまして、種々研究しておられたわけでございますが、自分がこの問題について法律上問題となると考えた諸点につきまして、福島裁判長決定をするにあたってその参考に供してはどうかということを考えられまして、機会があれば福島裁判長にそのことを伝えたいということを考えておられたようでございます。しかし、いま申しましたように、八月十二日、十三日というのは所長出張不在であり、十四日木曜日の昼ごろ一応帰庁、登庁されたわけでございます。八月十四日の木曜日は、実は福島裁判長もその前日から札幌地裁管内浦河支部出張をいたしておりまして、場合によっては十四日の日にお昼ごろには登庁するのではないかということが考えられておりましたので、平賀所長としては、もし当日福島裁判官が登庁されるならば、いま申しました御自分が日ごろ考えておられたところを参考のために福島裁判長お話ししたいということを考えておったわけでございます。  ところが、八月十四日午後に至りましても、夕刻に至りましても、福島裁判長は登庁をいたしませんでしたので、平賀所長としては、実は十五日金曜日、十六日土曜日、この両日再び管内出張する予定になっておりましたので、その週は結局福島裁判長にも役所で会うことができないということを考え、かたがた、やはりせっかく自分が日ごろから考えておる法律問題について考えある程度まとまっておるので、その点を福島裁判長決定参考にしたほうがいいのではないかということを考えられ、結局八月十四日の夕刻になって書面をしたためて、その書面を使送により福島裁判長自宅官舎に届けたという事実でございます。これがいわゆる平賀書簡というものでございます。  その後の経過でございますが、八月十八日は月曜日でございますが、平賀所長は八月十五日、十六日の出張から帰庁して、八月十八日登庁いたしましたが、登庁いたしますと、上口首席書記官から、本件決定書告知は八月二十二日午前九時三十分に廷吏送達により行なわれることと決定された旨の報告に接しております。その報告にありますとおり、八月二十二日金曜日には予定どおり決定廷吏送達によって原告被告双方送達がなされますとともに、その直後、福島裁判長本件に関しまして記者会見を行なったという状況にあるわけでございます。  ところが福島裁判長は、八月二十二日の決定告知するため、その前日でございます八月二十一日木曜日に決定書き原本作成をいたしましたが、決定書き原本裁判官三名の署名を了しました後に、陪席裁判官に対しまして、実は八月十四日、平賀所長から先ほど申し上げました平賀書簡なるものが自宅に送られてきたというこの事実を告げたわけでございます。福島裁判長といたしましては、所長がこのような書簡を送るということは、これはやはり問題な事柄であるからして、場合によっては八月二十二日の記者会見において、その事実を発表してはどうかという意向を持っておるということも言明されたそうであります。と同時に、先ほど名前を申しました刑事代行でございます渡部判事民事代行でござます平田判事にもその趣旨のことを告げて相談をいたしたという事実でございます。  しかし、この点は、決定告知後の記者会見において、そのような事実をいま直ちに公表するかどうかということは十分に考え、慎重に考慮しなければいけない問題であるということを、平田渡部代行意見を述べたのでございまして、その結果、八月二十二日の告知の際の発表は一応見合わせて、この件について裁判官会議招集を求めて、その裁判官会議で十分に事情を審議した結果、その決定にゆだねるのが妥当ではないかということで、平田福島及び渡部裁判官の間で一応の話し合いができたというふうに報告されております。  そのようなことがございましたので、臨時裁判官会議を求めるということになりますと、これは個々の裁判官の問題ではなく、札幌地裁本庁全員裁判官の問題でもございますので、あらためて裁判官会議招集を求めるべきであるかどうかということについて、本庁裁判官合計九名が八月二十七日水曜日に会議室に集まりまして、その招集を求めることの可否を検討いたしました結果、やはり福島裁判長意向を尊重し、臨時裁判官会議招集を求める方向で事を運ぶべきであるというような相談がなされました。  このような相談がなされたということは、当然平賀所長にも報告がなされまして、その結果、平賀所長は、全員意向をくんで、しからば九月十三日土曜日に、臨時裁判官会議招集するのが妥当であるという結論に達し、所長職権によって九月十三日土曜日、裁判官会議を開催することについての決定を下されたわけでございます。  なお、その前に、八月三十日でございますが、土曜日午後、平賀所長は、本庁会議室で、本庁裁判官全員の集合しておる前で、書簡をどういう趣旨で交付したのであるかということの事情の説明をしております。  そのような状態を経まして、九月十三日土曜日、午後、裁判官会議が開催されました。この裁判官会議は、同じ札幌市内にございます高等裁判所の分室において開かれたわけでございます。議長は通常の場合は所長がなるのでございますが、本件問題の経緯等にかんがみ、最も関係がないと見られる広岡小樽支部長議長をつとめることになり、当日午後一時ごろ開催されて深更まで協議が行なわれ、終了したのは翌九月十四日午前零時半前後というふうに報告されております。この結果、所長に対して、札幌地方裁判所としては厳重注意処分を行なうということを決定いたしました。  なお、会議の席上では、平賀書簡公表することがいいかどうかということも議論されたわけでございますが、これにつきましては、福島裁判長個人あて書簡であるから個人としてもこれを公表したいという意向を強く主張されたようでございます。また、裁判官会議全員意向としては、それはどうであろうかという意見が非常に強かったようでございますので、結局その問題については裁判官会議決議としては成立するに至らず、今後の経緯を見るという意味も含めて、九月十六日火曜日以降の本庁裁判官会議または常置委員会処置に従うことにしようということになって、当日の裁判官会議が終了いたしております。  ところが翌九月十四日、日曜日でございますが、午後八時からのテレビ放映によりまして、平賀所長福島裁判長に対して書簡を交付いたしました事実及び書簡内容が放映されるに至りました。  さらに九月十五日月曜日、朝刊紙上には書簡全文発表されるに至りました。そこで、九時三十分、本庁の全裁判官及び先ほど臨時裁判官会議議長をつとめたと申し上げました広岡小樽支部長が急拠協議いたしまして、この問題をこれ以上公表しない場合はかえって世人の誤解を生むおそれがあるということで、決議内容——決議と申しますのは、平賀所長に対して厳重注意すると決定したその決議をさすわけでございますが、決議内容公表するほうがよいという決定を行ない、発表文作成に着手し、正午、広岡支部長より決議内容につきまして地裁本庁において記者団に対する発表を行なったわけでございます。  なお、そのようなことで十四日の午後から十五日の朝にかけて新聞紙上あるいはテレビ平賀書簡が問題になりましたので、平賀所長としてはどういう意味平賀書簡を出したのかということについての弁明書作成され、その弁明書全文を掲載することを希望して、報道陣に原稿を渡しておられます。これが平賀弁明書でございます。  以上のような経緯平賀書簡が報道されるに至ったわけでございますが、これに対しまして、最高裁判所といたしましては、九月十七日水曜日の定例裁判官会議におきまして、直ちにこの問題について協議がなされました。その結果、札幌高等裁判所長官たる熊野長官札幌地裁所長たる平賀所長事件報告のため急拠上京させるのが妥当であるという決定がなされまして、直ちにこのことを事務当局より熊野長官及び平賀所長にお伝えしたわけでございます。なお、熊野長官に対しましては、上京にあたっては福島裁判長より直接事情を十分に聴取してくるようにということで特に指示を与えられておるわけでございます。  その結果、翌九月十八日木曜日でございますが、午後、熊野長官平賀所長が上京いたしまして、石田最高裁判所長官の部屋におきまして、現在ここに参っております岸事務総長が立ち会いまして、正式の報告を聴取いたしました。  そのような正式の報告に基づきまして、九月二十日土曜日、午前十時三十分、最高裁判所といたしましては臨時裁判官会議招集いたしまして、前述の熊野長官及び平賀所長よりの報告を詳細にお伝えするとともに、本件についていかなる処置をとるべきかということにつきまして協議をいただき、その協議の終了後、石田長官より所長に対しまして、裁判官会議決定に基づき、長官室において注意を行ない、同時に、所長東京高等裁判所判事に補する旨の異動を発令したわけであります。  なお、その注意及び異動発令後、石田最高裁判所長官は午後一時三十分から記者会見を行ないまして、最高裁判所としての所信を表明いたしました。  以上が事件の概要でございます。
  5. 畑和

    畑委員 次の質問を続けます前に、委員長にひとつお願いいたしたいのですが、時間の若干延長を願いたい。というのは、いままで事件経過について、簡潔ではございましたが、事件がやはり相当複雑でございますから、長い答弁がございました。これはあとの番の方々の質問にも非常に参考になることでございます。そういう関係から若干私の質問時間の延長を配慮していただきたい、かように思います。  ただいま詳細にわたりまして、当時の模様経過等について報告がございました。その御報告によりますと、大体事件の全貌がわかってまいったのでありますけれども、いろいろ札幌地裁における裁判官会議の紆余曲折の模様がわかりました。そこで、裁判官会議あり方というような問題が若干問題を含んでおると思いますけれども、結局この平賀書簡公表をすべきかどうかというような問題等についても、それがまだきまってないうちに新聞マスコミ等に載せられたというような問題があるように思われます。そういう点をいろいろ議論しておりますと長くなりますので、この問題はそれだけにいたしておきますが、ただ、先ほど言われました平賀書簡の問題で、平賀所長がいろいろ出張するような関係があってなかなか口頭での助言をする機会がなかった、福島裁判官が登庁してこなかったしというようなことで、そのうちに所長出張するというようなことがあって、やむを得ず書簡による形にしたというようなお話がございましたけれども、ほかの新聞の報道するところによりますと、その平賀書簡以外にもこの事件をやはり担当された総括判事の、上席でございますか、平田判事に対しても同様にメモが所長から渡された、それが八月四日であるというようなことが、そういった問題が出てきたものですからきっと出てきたものだと思うのでありますが、それが出ております。これはしかしそういったことの言いわけが立つのかどうか、ちょっと問題が別だと思うのですが、しかもこの平田判事にあてられた書簡には、福島判事にあてられた場合と違って、憲法問題に対する見解等が述べられておるようであります。こうした事実については御調査になりましたかどうか。これがまた平賀書簡に対する、やむを得ず出されたのだという、そういった出張関係等と同じような弁解がなされる問題なのかどうか、その点をちょっと承りたいと思います。
  6. 矢口洪一

    矢口最高裁判所長官代理者 いま御指摘になりましたような、メモと一応申し上げておきますが、メモが、先ほど私が申し上げました、民事所長代行でございます平田判事平賀所長から出されておることは事実でございます。  そのメモは、八月四日に平賀所長平田判事に渡したもののようでございますが、実は、この平田メモと申しますものは、先ほども申し上げましたように、平賀所長はこの種行政事件について非常に個人的に興味を持っておりまして、いわば平賀所長の一つの終生の研究課題というふうに考えられておった問題を法律問題として持っておるということであったわけでございます。そこで、この自分なりに考えた問題点というものを鉛筆書きのメモにして平田判事に渡したものでございます。  その趣旨は、元来平田判事本件事件につきましては全くの局外者でございまして、なるほど、本件事件平田判事が総括裁判官をいたしております第一部に係属はいたしておりますが、しかし、合議部の構成としましては、平田裁判官を除く福島、木谷、石川、この三名が合議部を構成しており、平田裁判官は全然無関係なのでございます。そういった無関係な越判官に渡したという趣旨は、平田判事所長代行でもあることと関連をいたしまして、日ごろ重要だと考えております問題について二人の間の純粋な法律解釈上の研究材料と申しますか、勉強という趣旨で渡したものにすぎないのでございます。そういうことでございますので、これを平田判事に渡しました後も、平田判事としても、もちろんそういったメモをもらったということ、あるいはそのメモの内容等、第一部の他の裁判官福島裁判官、木谷裁判官、石川裁判官等には一切申しておりません。したがいまして、決定がなされますに至るまで、平賀所長平田判事にメモを渡したということは、全然平田判事平賀所長以外の間には出ていないのでございます。そのような性質のものとして平賀所長から平田判事にメモが手交されたということでございます。  しからば、なぜそのようなメモがあるということが、いわば平田、平賀以外の者に知れたかということになりますと、実はその点につきましては、先ほども申し上げましたように、八月二十二日決定告知されたわけでございますが、その前日、八月二十一日、決定書の原本作成を了しまして後、福島裁判長が両陪席に対して、平賀書簡の存在を告げて、これを問題にすべきであるということを述べ、なお、渡部所長代行あるいは平田所長代行にそのことを相談したわけでございます。その際に、平田判事は、実は、自分平賀所長からこのようなメモをもらっておる、しかし、このメモはあくまで平賀所長としても、また自分としても、いわゆる個々の純粋な法律解釈上の問題点として考えておるのだ、だからこそ、自分以外の者にはそのようなメモがあるということ、あるいはそのメモの内容にわたること一切のことを述べていないのである、平賀書簡もそれと同旨に出たものであって、平賀所長に何らの他意はないのであるということを説明するために、その便宜としてそのメモの存在を福島裁判長に披露した。そのことからいわゆる平田メモが存在するということが問題になったわけでございます。  そのような経緯平田メモが問題になりましたので、八月二十七日の、裁判官が集まって臨時裁判官会議を求めるかどうかということを協議いたしました際にも、またその後の場合にも、九月十三日の臨時裁判官会議の席上におきましても、当然のことながら平賀書簡意味内容、その意図するところを知るための徴憑資料として平田メモの写しが配付され、それが協議の材料になった、このような経緯であるわけでございます。
  7. 畑和

    畑委員 平田さんにあてたメモのこと、わかりました。しかし、事件に直接関係のない、しかも上司的な立場にある同じ第一部の総括判事に対して、こうした憲法問題に関するメモ、すなわち憲法第九条と自衛隊との関係、自衛隊が違憲であるかどうかという問題は政治問題であって、裁判所関係する範囲外の問題であるといったような見解だそうでありますけれども、こうした問題を裁判する人でない、しかもその同じ部におる総括判事の方に渡すということ自体、結局それによって間接にこれをひとつ裁判する三人の判事の方に対して意向として伝えろというような、間接的な一つの手段としてやられたのじゃないかという疑問さえむしろ持たれるわけであります。その辺においてやはり問題はあると思うのでありますが、あくまで裁判をしない判事に渡したのだから問題はないのだというような答弁のようでありますけれども、それはまたそういう意味でむしろ問題があると私は思います。しかし、この点長く問題にいたしましても時間がたってしまいますので、この程度にいたしますけれども、これを要するに、最高裁といたしましても、いろいろ検討の末、地裁の裁判官会議の結論を尊重された形になって、結局厳重注意という形で所長の職を免じて、東京高裁付に平賀さんをされたという処置をとられたわけであります。最高裁といたしましてそういう結論を出したのでありますから、平賀書簡を非とする態度には間違いはないと思いますが、その点、地裁の裁判官会議の行き方を含めまして、最高裁の平賀問題に対する最終的な判断を、ひとつ岸事務総長から簡潔でよろしゅうございますから承りたいと思います。
  8. 岸盛一

    ○岸最高裁判所長官代理者 裁判官会議の結果、最高裁判所所信石田長官から表明いたしました。その内容は、   札幌地方裁判所におけるいわゆる長沼保安林解除処分執行停止申立事件について、同地方裁判所長が同事件担当裁判官に対し、事件に関する個人見解を記載した書簡を交付したことは、先輩としての親切心から出たものであるとはいえ、節度を越えるもので、裁判独立と公正について国民の疑惑を招き、まことに遺憾である。   裁判独立と公正は、裁判官の生命ともいうべきものであり、従来ともわが国の裁判官すべてが、毅然たる態度で、良心に従い独立してその職責を遂行していることは、いうまでもない。もとより、裁判官は、独善に陥ることのないよう、平素から謙虚な気持で相互に知識と経験を交換し合い修養研鑽を積む努力をすることも必要ではあるが、いやしくも係属中の事件に関し裁判干渉とみられるおそれのあるような言動はもとより、その疑いを招くような行動をすることも、厳に慎しまなければならない。   われわれは、今後とも互にさらに厳しく戒め合いわが国裁判所の伝統である裁判独立と公正およびこれに対する国民の信頼の確保に一そうの力を尽くす覚悟である。  これが最高裁判所として発表しました所信内容でございます。
  9. 畑和

    畑委員 最高裁のその処置あるいは見解、そういった点には全面的に私も賛成いたします。非常に問題になったこの問題もこうした処置で結論がついたわけであります。およそ裁判所は正義と公平とを実現するということが目的であることはもちろんでありますが、このこと自体が肝要であるけれども、さらにもっと肝要なことは、裁判所は正義と公平とを実現するところである、こういうふうに国民が全部思うということが必要だ。そういうふうに裁判が行なわれることは必要だが、さらに国民がそう考えるように裁判所あり方を持っていくことが必要だ。こういうことはかつて三渕元最高裁長官がときどき述べられたことでございますけれども、これは非常に重要だと思うのです。この場合におきましても、実際においては裁判独立は守られたわけであります。ただ平賀書簡ということがあったということによって、そうしたおそれがあった。しかし、それが実際なしに済んだというようなことで、平賀書簡の問題は公になったことがむしろやはり今後のためにもよかったのではないかと思うのです。この問題は一応それでケリがつきました。  ところが、きのうの朝日新聞を見ますと、ほかの新聞にもあったかどうかわかりませんけれども、この平賀書簡の問題についての鹿児島地裁所長飯守重任判事——この飯守判事のことにつきましては、もうすでにいろいろな問題を起こした、いわゆる飯守発言をときどき出す判事でございます。いままでにも、例の嶋中社長ですか、あの問題についての右翼の問題について、むしろ左翼の暴力組織があるからこうした右翼の襲撃があるのである、こういうような発言などしたりして、かつて最高裁から注意処分を受けた人でもあります。またほかにも事件があったと記憶しておりますが、この飯守判事の平賀書簡問題についての批判が国民協会という新聞にも報道されておりました。  自民党の重要な資金団体でございます国民協会の機関紙に「平賀書簡事件の背景」という題目で、いろいろ批判の文章を発表しておる。「平賀書簡事件」それから「平賀書簡を問題にした背後関係」次に「裁判官独立の伝統」それから「裁判官の間に戦後できた断絶」その次に「青年法律家協会(青法協)」それから「裁判所から青法協勢力を一掃せよ」こういったような各項目の見出しでの批判の文章が発表されておりまして、これが新聞に載っております。  これは、平賀書簡も問題であるけれども、それ以上に私はさらに問題だと思う。この文章を見ますと、平賀書簡問題に対する最高裁処置が間違っておるというような趣旨で貫かれております。それがまず第一だと思うのです。それから、その中にさらに問題があると思う。一体その平賀書簡のような問題がいままでかつてされてないということはとうてい考えられない、こういうことがしばしばあったはずだ、あるのが当然である、こういったような文章もその中にあるわけであります。  そうなりますと、せっかく最高裁としてもこういったことはあり得ないはずである、あってはならぬはずであるということで平賀書簡に最後の結論をつけたのでありますが、ところがこの飯守判事は、こういったことは単に平賀書簡問題にとどまらない、こういったことは何度もいままであったはずである、しかもそれは当然である、いわゆる「善意の助言」ということ等でごまかしておるようでございますけれども、平賀さんの場合には、片方が求めたわけであれば別でありますが、求めない場合に所長という資格で文書を出したりなどをいたしますれば、単なる助言とは考えられない。そこに問題があると思う。ところが、それはいままでかつて何度もあったことであるというような意味のことが書いてあります。  この二つの問題については、最高裁判所裁判官会議をやられて批判をしておられるようであります。そのほかにも問題はあるけれども、これはいろいろこまかく調査をした後に結論を出す、こういうような態度のように新聞紙上で承っておりますが、そのとおりであるかどうか。  それから、時間があまりありませんので、はしょる関係であとの問題を申し上げます。  この飯守さんの出した国民協会の機関紙の「国民協会」という新聞、これは自民党の有力な資金団体でありますから、有力な要するに政治団体です。その政治団体へ裁判所所長がたまたま問題になっておる、政治問題であるところをねらったところの平賀書簡の問題について、最高裁の態度を批判するような論文を載せておる。このことが一つ大きな問題ではなかろうかと思うのです。そして非常に政治的な色彩の強い文章でございます。しかも政治的な色彩の強い国民協会の機関紙へ載せた論文であるということが非常に重要だと思う。  それから、さらに青法協の問題を大きく取り上げ——これが大きなねらいだと思う。結局、平賀書簡を問題にしたのはこれは青法協グループである、青法協に加入しておる裁判官あるいは弁護士、さらにそれを取り巻くマスコミ、こういったものによってでっち上げられたのが平賀書簡事件である、こういうような見解を述べております。そして、このいまの裁判所あり方というようなことについて態度を明らかにしておるわけです。いわゆる体制、反体制、こういった二つの明確な線を分けて、そうして裁判官はよろしく体制の側でなければならぬ、憲法の番人である——これはもうわれわれも大いに異論がないわけでありますが、ところがそれが修正資本主義だとか何だとか、あるいは階級闘争云々とか、こういったようなことを非常に刺激的に書いておられる。そうして、むしろそれをはっきりされる。そのままずばりはけっこうかもしらぬけれども、現職の所長がこういった階級的な立場で——むしろ自分自身が私は階級的だと思う。そういった立場で青法協を非難して、そうして福島裁判所長らが青法協の有力なメンバーだ、中にはその何百人かのリーダーである事実かどうか知りませんけれども、こういったような書きっぷりをしている。むしろ平賀さん——実はゆうべのテレビを見ておりましたら、飯守さんがテレビに出ておりました。そして、この平賀書簡については、平賀さんはほめられこそすれ非難されるべきものではない、こういったようなことまでも極言しておられる。そうすると、それは最高裁判所の態度と全然反する。それに弓を引く態度であると私は思う。しかも青年法律家協会についてそうしたことを言われております。そして青法協に加盟しておる者をよろしく最高裁裁判所等から離脱をさせるべきだ、青法協からそれを離脱させるべきだ、結局はこういったような結論でありまして、むしろすりかえておるというような感じが非常に強いのであります。これはいろいろあとを引く問題だと思うのです。  さらにまた、自民党の機関紙で「自由新報」というのがございます。この「自由新報」の四月三十日付にも飯守地裁所長の原稿が載っておりますす。「青法協その根底に流れるもの」「反体制につきる、法の下の平等いまや風前の灯」こういったような見出しで飯守さんの考え方が述べられておりますが、その日のやはり「自由新報」のトップの記事は、「常識は真実をとらえる、法律の番人の視点とは」「国民はもっと裁判に目を向けよう」「まかり通る偏見と誇張、過剰警備、目的のはき違え」これは無罪になった博多駅事件のことをいっています。これは自民党の新聞です。ちょうどそれと隣合ってそういった飯守さんの記事が出ておる。  これは明らかに自由民主党の機関紙でありますす。そういう機関紙に裁判所長見解を述べるということは、これまた非常な行き過ぎではないかか、このこと自体が非常に批判をさるべき問題じゃないか、かように「国民協会」への投稿と一緒に私は大いに問題になるところであろうと思う。この点について最高裁はどういうふうにお考えになっておられるか、承りたいと思うのです。  裁判官は、あくまで先ほど言うとおり、良心に従って独立して裁判を行なう、しかもあくまで憲法並びに法律に従って裁判を行なうのであって、そのほかのいかなる勢力にもわずらわされてはならぬということになっておるわけです。したがって、体制、反体制という式に分けること自体が、私はいまの憲法考え方ではなかろうかと思う。そういう点で飯守判事こそきわめて階級的で、きわめてはっきりし過ぎた立場である、かように思う。この点について最高裁見解をひとつ承りたい。
  10. 岸盛一

    ○岸最高裁判所長官代理者 飯守所長が御指摘のような「平賀書簡事件の背景」と題する解説を「国民協会」に載せられたという事実は、これは私どもも承知いたしております。なおある新聞に、平賀所長に対して最高裁がとった処置は間違っておるという談話をされたことも新聞承知いたしております。  このように、この問題が少し世間に浮かび上がってまいりましたので、昨日の裁判官会議でこの飯守所長の論文をいろいろ検討されましたが、現在のところでは、その論文に書かれているように、平賀書簡のような事例はいままで例がなかったとは考えられないと言われておる点は、これは全く事実に反することで、今回のような事例がむしろ異例である、そういうふうなことは間違いである、そういう各裁判官の非常に強い御意見がありました。それと同時に、裁判官会議平賀所長にとられた措置は、必要にして十分な措置であると最高裁は確信しておるのだ、それをもしかりにその措置が間違っておるというようなことを公言されたとしたならば、これは所長としては妥当なことばではない。その二点に昨日の裁判官会議で焦点が合わされまして、したがいまして、本日の各紙に出ておるような記事となったわけであります。  その他のことは、目下直近の上級裁判所の福岡高等裁判所でいろいろ事情を調査しております。その報告で、やがて長官が上京して、最高裁へ来られることになっておりますし、これは全くまだ調査の緒についた段階でございますので、先ほどのような問題については、この席で私どもの見解を申し上げることは、これは差し控えさしていただきたいと思います。
  11. 畑和

    畑委員 二つの問題については、きのうの裁判官会議意見が大体まとめられたようです。その他の問題については、まだ関係高裁での調査の結果を待って、裁判官会議を開く。したがって、自余の問題については見解を差し控えたい、こういう岸事務総長答弁です。これはやむを得ないと思います。  まあしかし、これからいろいろこの問題について、さらに報告が参りましてから、最高裁の態度を検討されるのでありましょうけれども、くれぐれも一つ希望しておきたいのは、先ほど来、初めから問題にいたしております法の独立裁判独立ということでございまして、平賀問題は、その問題に対する大きな一つの刺激になったと思うのであります。これは一つのいいわれわれの指針として考えなければならぬと思っておったやさき、この飯守所長見解がまた発表された。これは非常に重大だと思いました。しかも最高裁の態度にまっこうから反対を表明しておるようなことになりますから、これは平賀さん問題以上に私は問題だと思う。したがって、き然たる態度でひとつ最高裁はこれに対して処置をしてもらいたい。そうでなければ、国民が裁判に対していろいろぐらついた考えを持つと思う。したがって、あくまで筋を通して、最高裁としてはこの問題に結論をつけていただきたい。当然飯守所長のいろんな身分上の、司法行政上の問題等も起きてくると思うのでありまして、こういう問題につきましても、きっぱりとした態度でひとつ善処していただきたいということを重ねて要望いたしまして、ほかの諸君の質問もある関係がありますから、私の質問は以上で終了いたしたいと思います。  ありがとうございました。
  12. 高橋英吉

  13. 岡沢完治

    岡沢委員 ただいま畑委員のほうからお尋ねのありました平賀書簡の問題と飯守判事の寄稿の問題に関連してお尋ねを申し上げたいと思います。  これは私も非常に傾聴しておることばでありますけれども、一国で政治が乱れても、政変があっても国が滅びることはない、しかし、裁判と教育が乱れるときは国の滅亡に通ずるということばがございます。幸か不幸か裁判所も荒れておりますし、裁判所の権威が、ここ半年くらいの間に、いろいろな観点から批判される事態を起こしているわけでございまして、何とかこれを、国民の信頼を取り戻し、裁判所本来の公正にして厳正、しかも法の番人としての、憲法で与えられました機能を果たしてもらえる裁判所になっていただきたいという観点からお尋ねしたいと思います。  いま畑委員のほうからも、災いを転じて幸いとするという方向での最高裁の善処の御要望がございました。私もこの平賀あるいは飯守問題を通じまして、むしろこれを日本の裁判所の権威を高める方向へのステップにするための努力が、国会議員としてもまた立法府としても、あるいはまた法曹人としても必要ではないかというふうに考えるわけであります。そういたしますと、今後平賀書簡のような問題をどうして再発させないかということがきわめて大切になるかと思います。その観点から、では逆に、平賀書簡がなぜ生まれたかという背景をつくことによって、その背景がはっきりすればその背景を除くというところに、こういう問題を二度と繰り返さないという一つの処方ぜんが生まれてくるのではないかと考えるわけでございます。  この平賀書簡が生まれました背景につきましては、問題の飯守判事の論文によりますと、平賀書簡事件をつくり上げたのは、反体制集団である青年法律家協会加入の裁判官たちと、反体制弁護士の集団と、これらを支援するマスコミ勢力とであると断定をしておられるわけであります。  また一方、自民党の森山欽司代議士は、毎日新聞の報ずるところによりますと、この平賀書簡問題が起こった背景は、むしろ問題は裁判官である福島裁判官にあるというふうな御指摘をなさいました。これは毎日新聞の報道でございますので、私自身は確かめておりませんが、おそらく間違いないと思います。「平賀書簡裁判官独立を侵したものとは思っていない。問題はむしろ、なぜ、こんな騒ぎになったかだ。福島裁判長は京大時代に学生運動で逮捕されたことがある。司法試験に合格するまで富山地裁に勤めており、全司法労組の活動家だった。裁判官になってからも、左翼青年法曹の集まりである青年法律家協会の裁判官会員機関誌の編集長をやっていた。この経歴でわかるように、受けとった方が問題裁判官なのだ」むしろ平賀書簡の背景の真因は、書簡を受け取った福島裁判官にあるという趣旨の御発言だろうと思います。  また、東京大学の潮見俊隆教授は、司法行政優位の最高裁の体質がこういう平賀所長を生み、平賀書簡を生んだのだという趣旨見解公表しておられます。「「事務総局による官僚的司法行政が、裁判官会議の形がい化、所長の権限強化、司法行政上の監督権に名をかりた裁判統制、新司法官僚の育成」といった形で進められ、そのひとつの帰結が平賀書簡となって現われたと分析する。」そういうふうな見解発表しておられます。  また、私たち一番心配いたしますのは、平賀前札幌地裁所長は法務省の民事局長という、いわゆる行政官的生活を長く経験された、そういう体質からこの平賀書簡の背景に政治的な圧力がなかったかどうかというようなこともいささか心配するわけであります。  そういう点も含めて、すでに最高裁判官会議でも論議された問題でございますので、事務総長のほうから、最高裁として御調査の結果明らかにされたと思われます平賀書簡の背景についてどういう分析をなされておられるか、伺いたいのであります。
  14. 矢口洪一

    矢口最高裁判所長官代理者 総長裁判所の考え等につきましては申し上げると存じますが、事実関係でございますから私からその点申し上げたいと思います。  平賀所長は確かに法務省の民事局長をなさっておる方でありまして、そういう点でいま御指摘のような御疑問を持たれるということもあろうかと存じますが、私ども調査いたしました限りにおきましては、平賀所長平賀書簡または平田メモを出されるにあたりまして、そういった法務省の方面からの何らかの連絡があったというような事実は絶対にございません。この点ははっきりと断言できるかと存じます。平賀所長が先ほども申しましたような個人的な研究をなさっており、それらの点に関する論文もいろいろとございますが、その論文にも見られますような個人的研究の結果、たまたま事件がそれに関連する事件であったために、あのような書簡ないしメモをお書きになった、こういう事実関係でございます。
  15. 岸盛一

    ○岸最高裁判所長官代理者 先ほど御質問の中にありました潮見教授の見方、これも私どもから申しますと、とんでもない間違った見方であるということを断言いたします。何も司法行政の力で裁判を動かす、そういうようなことはいまだかつて起こったことはないわけです。平賀所長裁判官としては札幌地裁の他の裁判官と同等の裁判官、ただ所長として裁判官会議を統括していくにすぎないわけであります。ですから、平賀所長も何も裁判官に圧力を加えるという意思もなかったので、そういう見方は非常にゆがめた見方であると思います。その他、それについていろいろな見方をされるのはそれぞれのお考えのことで、私どもとしては別に申し上げることはありませんが、いまの問題についてはこの席で、司法行政に関することでありますので、はっきりと申し上げておきたいと思います。
  16. 岡沢完治

    岡沢委員 私も、裁判独立と公正ということは、先ほど事務総長がお答えになりましたように、裁判官の生命であるし、いま私が心配いたしましたような背景とか圧力がないことを心から希望するわけでございます。私たち率直に申し上げまして、裁判官も人間であります。そういう点から非常に国家権力の影響が一つ心配されます。逆にまた、いわゆる大衆迎合的な裁判ということについてもわれわれは心配せざるを得ないわけでありまして、いわゆる先物買い的な世論に迎合するという裁判あり方についても、確かに一つの問題点があろうと思います。そういう点で、今度の事件がいまお聞きした範囲では具体的ないわゆる圧力がなかったということをすなおに私としては受け取っておきたいと思います。  ただ、これは先ほど畑委員質問に対してもお答えになりましたが、同じようなことが繰り返されていないかという点につきまして、きのうの最高裁判官会議でも問題になりました。しかし、率直に申し上げまして、全国には地裁所長が四十九人しかおられないわけであります。そのうちの北の札幌地裁所長、そしてまた南の鹿児島の所長が期せずして同じような見解といいますか、飯守所長の発言によりますと、決して珍しいことではないという趣旨意見が率直に述べられておる。これは私は、やはり非常に大きな国民の裁判への疑問と、裁判独立、公正に対する不信という点で、裁判所内部からしかも現職の所長からそれが肯定されるような発言があったということは心配であります。ことに平賀所長書簡問題に関連いたしましても、先ほども指摘されましたように、平田メモの存在も指摘されております。本件の場合、たまたま書簡形式をとられましたから表面化いたしましたけれども、口頭等ではしょっちゅう行なわれておるのではないかという心配を一般国民としてむしろ持つほうが当然じゃないか。今回のは証拠上はっきりした書簡があったから、氷山の一角があらわれたという心配をほんとうにするものであります。  そういう点について重ねて、特に飯守論文とも関連して、最高裁のほうでこういうことがほんとうにないのかどうか、国民の疑惑を一掃する意味で明らかにしていただきたいと思います。
  17. 岸盛一

    ○岸最高裁判所長官代理者 重ねて申し上げますが、所長あるいは先輩裁判官が同僚の他の裁判官から求められもしないのに書簡あるいは口頭で具体的事件について介入する、そういう例はわが国には絶対ございません。現在でもある国では所長が判こを押さなければ、その裁判は言い渡すことができないという、そういう制度の国もございますけれども、近代民主国家の裁判制度にはそういうものはもちろんございません。その点の御懸念は決して御心配の必要はないと断言いたします。
  18. 岡沢完治

    岡沢委員 まあ事務総長のお答えを信頼したいんですが、先ほど申しましたように五十名足らずの裁判所長の中で二人が同じような見解あるいは行動をなさったということについては、やはり疑問が残る。今後最高裁司法行政上の許す範囲でのこの問題についての善処を要望しておきます。  それから、先ほどこの書簡形式をとられた理由につきまして、平賀所長出張といういわゆる物理的な要件があったことは理解できるわけでございますけれども、しかし、平田メモ等を考えますと、必ずしもそれだけが理由でもないような気がいたします。いわゆる所長裁判官との断絶、新旧裁判官の断層と申しますか、なぜ食事等のときにあるいは同じ所内で、わずかな裁判官の数でございますから、そういうアドバイスであれば、形式的な文書よりも論議の尽くせる口頭による意見交換がなされなかったかということを心配するわけでございまして、この書簡形式をとられた背景につきまして、もし何か見解がございましたら、あるいはまた裁判官のいわゆる新旧の断絶についての最高裁としての司法研修所の教育等の問題も含めて何かお考えがございましたら、この機会に明らかにしていただきたいと思います。
  19. 岸盛一

    ○岸最高裁判所長官代理者 先ほど申しましょうに、所長なり先輩裁判官が求められもしないのに担当裁判官に対して指示を与えたり、あるいはその見解を示したりする、そういうことは絶えてないことであります。ただ、裁判独立ということは決して独善を意味するものではない。また、今日のように非常にいろいろ複雑な問題が起こってまいりますと、一人の裁判官裁判をするというような、特にそのような場合に非常に考えあぐねることがあるわけであります。そういうときには謙虚な気持ちで先輩なりあるいは同僚なりの意見を聞くということ、これは差しつかえない。しかし、その場合でも問題は具体的な指示とかそういう形をとりません。抽象的な法律問題としてお互いに意見を交換し合う、また先輩の経験を披露する、そういうことはこれはむしろ必要な場合があるわけであります。決してその独立ということは裁判官の孤立、独善を意味するものではない。  よけいな話になりますが、ジョン・マーシャルというアメリカの最高裁判所の何代か前の長官が、裁判官は徹頭徹尾独立でなければならぬ、ただ自己の良心と神の意思に従わなければならない。さすがはああいう国ですから、そういうことばがあります。神の意思に従うということは、やはり判断が客観的でなきゃならない。神は絶対であり、したがってその裁判官の判断も神の意思に従う客観性を持ったものでなきゃならぬ。そういう点を謙虚に裁判官が考え、そして日ごろいろいろの問題について同僚あるいは先輩の意見を聞く、そのようにして裁判官が鍛えられていく。特に裁判官自分の法廷経験を積み重ねることによってだんだんと鍛えられていく。そしていま申しましたようなお互いの意見、経験の交換ということによって自分をみがいていく、そういう謙虚な気持ちは持っていなければならないと思います。また、そのことは当然であると思います。
  20. 岡沢完治

    岡沢委員 時間の関係で次に進ませていただきますけれども、この福島判事が受け取った書簡をどうして公表されたかという問題に関連いたしまして、ここで指摘申し上げるまでもありませんが、憲法二十一条の二項には「検閲は、これをしてはならない。通信の秘密は、これを侵してはならない。」という規定がございます。この点に関しまして問題の福島裁判官のほうは、「火事の場合、火をつけたのが悪いのか、消防署へ通報したのが悪いのか。ボヤなのに騒ぎを起こしたとすれば、問題かもしれない。が、平賀書簡は断じてボヤではない。平賀書簡が日本の裁判にとって正しいことか、正しくないことか、それを国民に判断してもらいたかったのだ」とおっしゃっておられます。この点について最高裁として、平賀所長処分問題とも関連いたしましておそらく御調査になったと思いますけれども、その辺のいきさつをお聞かせいただきたいと思います。
  21. 矢口洪一

    矢口最高裁判所長官代理者 先ほども御報告申し上げましたように、福島判事は八月二十一日の決定書を原本作成後におきまして、平賀書簡が存在する旨を自己以外の三者、すなわち両陪席あるいは所長代行等に告げておるわけでございます。それと同時に、直ちにこの書簡記者会見等において公表したいという意向を強く主張いたしました。そのことは結局裁判官会議の議を経てそれによるべきであるということで、臨時裁判官会議が開かれることとなったわけでございますが、その臨時裁判官会議が開かれますまでの間に、福島判事平賀書簡のコピーをとられまして、これを友人と思われる在京の裁判官等に配付されておる、そういう事実がございます。  それからまた、平田判事に交付されましたメモにつきましても、これは本来平賀書簡とは直接関係のない問題でございますので、先ほど御報告申し上げましたように、平賀書簡の性格を検討するための懲憑資料としてその写しが裁判官会議あるいはその前におきます本庁裁判官の集まり等に資料として提出されてはおりますけれども、公表するということにつきましては何らの問題にはななっていなかった性質のものでございます。  ところが、九月の十五日になりまして、裁判官会議の終了後、九月十五日の朝、新聞にいわゆる平賀書簡全文発表され、あるいはテレビに報道されました。その午後に至りまして、福島判事平田判事に対してメモの公表を要請しております。そこで、直ちに右メモの公表要請に対しまして、夕刻本庁職権特例判事補以上の裁判官及び先ほど申し上げました小樽の広岡支部長協議いたしました。その結果、全員一致の意見で、メモはこの平賀書簡とは直接の関係のないものであるから、一切これは公表したくない、しないという決定をいたし、その決定を午後七時ごろ広岡支部長より報道陣に発表いたしております。ところが、現実には九月十六日、翌日火曜日の新聞朝刊紙上にはこのメモの全文が掲載されるに至ったわけでございますが、以上の経緯からいたしまして、まず先ほど来申し上げておりますところと関連いたしまして、平賀書簡内容というものをとってまいりますと、この平賀書簡内容裁判官会議がこれを内容として正式に公表いたしましたものではなくて、そのいたします以前に、九月十五日の新聞にはすでにその全文発表され、九月十四日の午後にはテレビで放映されておるわけでございます。そして、いま申しました平田メモもまた現実には正式の発表をいたしておりません。むしろ発表はしないという決定をいたしました翌日に新聞紙上発表されておるわけでございます。  まず、最初の書簡がどういう経緯発表されるに至ったかということは私ども調査をいたしましたけれども、判然とはいたしておりません。ただ、福島判事がその写しの複数部数を在京の裁判官等にお送りになったという事実がわかっておるだけでございます。  それから、平田メモにつきましては、これは私どもの調査いたしましたところでは、福島判事がこれを報道陣に発表されたという事実であるようでございます。福島判事は、これは私的なメモではあるけれども、公の問題であるので発表したのであるというお考えを持っておられるようでございますが、この詳細の点につきましては、なお札幌高裁において現在調査いたしております。そういう段階でございます。
  22. 岡沢完治

    岡沢委員 それでは、この問題については最後に簡単に、最高裁が出されました注意処分について法的な根拠、正当性、簡単でけっこうですが、事務総長から御説明いただきたいと思います。
  23. 岸盛一

    ○岸最高裁判所長官代理者 裁判所法八十条による「司法行政の監督」それが根拠でございます。
  24. 岡沢完治

    岡沢委員 それではこの問題と関連して、いわゆる飯守鹿児島地裁所長の自民党の外郭団体であります国民協会の機関紙「国民協会」に寄稿された問題についてお尋ねをいたしたいと思います。  もうすでに、きのう最高裁判所におきましても裁判官会議でいろいろ御検討されたということは、先ほど畑委員の御質問に対してお答えがございました。いま最高裁が問題にされた点も含めて、私から疑問の個所を二、三聞いてみたいと思います。  いわゆる下級裁判所所長最高裁の判断決定を批判されることの是非、妥当性につきまして、この寄稿問題と関連した報道機関への発表、私もテレビ等で聞きましたけれども、明らかに平賀処分は間違いである、上級機関の最高裁の判断に対しても、間違っておるということをはっきりおっしゃっておられますが、特に札幌地裁裁判官会議がとった厳重注意処分等につきましては、越権、違法、非常識という発言まで使っておられるわけであります。これは一評論家なら私も——裁判官、しかも現職の地裁所長が上級裁判所憲法上の最高の司法機関である最高裁判所を批判されるということの妥当性、特に裁判の信頼への国民の期待から見た場合の影響等を考えました場合、私はかなりというか大きな問題だと思わざるを得ないわけでありますが、その辺についての最高裁事務当局の御見解を聞きます。
  25. 岸盛一

    ○岸最高裁判所長官代理者 先ほども申し上げましたが、昨日の裁判官会議で特に問題にされました問題点の一つが、ただいま御指摘の最高裁のとった措置に対して飯守所長所長室で記者会見をした、そしてあの措置は間違っておる、そういうことが報道されておりますが、もしそれが真実だとすれば、現職の所長としては妥当を欠く行動である、そういう各裁判官の強い御意見がありました。それで新聞発表いたしたわけであります。  その他の問題は、先ほども申しましたように、調査のまだ緒についたばかりでありまして、この段階で公の席でとやかく申し上げることは御遠慮申し上げたい、かように存じます。
  26. 岡沢完治

    岡沢委員 この飯守論文は、御承知のとおり先ほどから繰り返されておりますように、いわゆる国民協会、自民党の外郭団体の機関紙の一面にトップで報道されたわけでありますが、いわゆる現職裁判官が政党の機関紙に、純然たる法律問題以外の政治的発言ともとれる所見を公表することのあるいは寄稿することの是非について、最高裁判所としてはどのようにお考えになるのでございますか。われわれとしては、先ほど来繰り返されております裁判独立、公正から考えまして、不偏不党ということば、またこれ裁判所の生命でもありますし、国民の裁判への信頼の基礎でもあろうと思うわけであります。その問題に関連して飯守所長自体は、現職裁判官が政治色のある機関紙に寄稿しても、特定の政党を支持する内容でなければよいと自分ではおっしゃっておられます。最高裁も同じ見解をとられるのかどうか、お伺いいたします。
  27. 岸盛一

    ○岸最高裁判所長官代理者 せっかくのお尋ねでございますけれども、この問題もやはり飯守所長の問題でございますので、調査のこの段階では、公式の意見は申し上げたくないと思います。
  28. 岡沢完治

    岡沢委員 これは調査をしなければわからない問題なら別としまして、事務総長自体が「国民協会」への寄稿は事実としてお認めになって、それが前提になってきのうは最高裁判所会議が開かれておるわけですね。これは調査を待たなくても、飯守所長が「国民協会」へ寄稿された事実は明らかでございます。そうするとやっぱりこれについての見解は調査を待たなければできない、最高裁判所の正式見解は、これは裁判官会議に待たなければならないと思うのですが、事務総長としては個人的でもけっこうですが、どういう見解をお持ちであるのかどうか、これはこの際やはり明らかにされる必要があるのではないかと思うのです。
  29. 岸盛一

    ○岸最高裁判所長官代理者 「国民協会」という新聞は、どういう性格のものか私ども全然存じませんし、現職の裁判官としても、やはり自分見解を雑誌なり新聞に載せることは、これは一定の限度では許されてよいと思いますけれども、ただいまの飯守所長の行動をどう評価するかという問題になりますと、これは裁判官会議が今後そういう点について討議されることでございますので、事務当局として、先ばしってそういうことについての意見を申し上げることはやはり御遠慮しなければならぬと思います。
  30. 岡沢完治

    岡沢委員 飯守論文の一番大きな問題は、やはり平賀問題の本質、いわゆる裁判官独立性あるいは中立性を侵害するおそれがあるという平賀書簡問題の本質をすりかえまして、中身をはっきり平賀所長支持の、むしろそれを処分した札幌地裁あるいは最高裁を批判する立場で貫かれておるわけです。これが一番大きな問題点ではないか。先ほど申し上げましたように、飯守所長は、平賀問題の背景はむしろ裁判官だ、いやむしろ青法協の性格あるいはそれに迎合するマスコミあるいは弁護士集団だという意味の分析をしておられるわけです。これこそまさに平賀問題の本質をわれわれの見解とは全く違った立場で評価しておられる。どう考えましても、これは私は納得できないわけでございますし、おそらく最高裁判所の御判断とも違うと思います。この問題につきまして、これはやはり先ほど事務総長のお答えの範囲内では、類似の問題が重ねて行なわれていないかどうかという問題、あるいは先ほど私がお尋ねした下級裁判所長最高裁への批判の問題は問題にされる。しかし、中身の問題について御答弁がなかったわけですが、一番大きな問題は、この平賀問題の本質を飯守所長がはき違えて、私たちの見解からいえば、むしろこれを支持し激励し、逆にこれを批判しておるほうを批判しておられる態度ではないか。裁判官のあるいは裁判独立についての大きな危機だという感じが私はいたしますが、現職の地裁所長見解だけにほうっておけないように思います。事務総長見解を聞きます。
  31. 岸盛一

    ○岸最高裁判所長官代理者 どうも同じことを繰り返すようになって恐縮でございますが、いまその問題について福岡高裁が調査を進め、そしてさらに最高裁裁判官会議で検討するという段階でございますので、これはどうしても意見は申し上げられませんが、ただそういう御意見、御指摘があったということだけはわれわれはよく胸にたたんでおきます。
  32. 岡沢完治

    岡沢委員 この飯守論文のもう一つの論点は、いわゆる青法協の存在についての偏見だろうと思うのであります。実は、私自身が青法協のメンバーの一人でございますから、私も反体制闘争の一員ということにレッテルを張られたことになるわけでございますが、反体制の秘密結社というようなことばも使っておられます。現職裁判官でも約三百名近い青法協の会員がおられることも事実でございます。もし現職地裁の所長がこういう見解で青法協加盟の裁判官を見られた場合に、その三百名近い現職の裁判官に与える心理的な影響ということも無視できませんし、また、加盟しております二千三百人の私も含めた青法協メンバーへの国民の目といいますか批判というようなことにつきましても、これはやはりほうっておけない問題だと思います。  もう申し上げるまでもなしに、思想、信条の自由、これを侵害するものから守ることこそ憲法の番人の立場ではないかと思うわけでございますが、この論文を見ましても、はっきりと、裁判所から青法協勢力を一掃せよという趣旨の強い発言があるわけでございます。また、反体制の秘密結社という文字も使われておるのでございまして、こういうものがほんとうに正しいかどうか。最高裁判所としては、特に司法行政の元締めにおられる事務総長としてはどういうふうにこの青法協を見ておられるか、個人的な見解でけっこうでございますから。現職の地裁所長がはっきりこういうきめつけをしただけに、現職裁判官への影響を含めて考えましてもほうっておけない感じがいたしますので、最高裁判所見解ではなくて、事務総長個人見解でもけっこうでございますが、いわゆる青年法律家協会なるものをいかに理解しておられるか、お尋ねいたします。
  33. 岸盛一

    ○岸最高裁判所長官代理者 個人見解を述べよと仰せられますが、この公の席で個人見解を述べることは、先ほど来申し上げました理由によって、飯守所長関係がまだ調査の糸口の段階についたときに、飯守所長が書かれた青法協関係、それについてここで意見を申し上げるということは、これは私としてはやはり差し控えたい、かように考えます。
  34. 岡沢完治

    岡沢委員 実のある御答弁が得られなくて残念でございますが、おそらくこれから聞くことにつきましても、これは調査の結果裁判官会議がきめることだというお逃げの答弁かと——お逃げというよりもそういう答弁になるかと思いますが、やはり私は、この際国民を代表さしていただく立場から聞かざるを得ないのは、飯守鹿児島地裁所長は田中耕太郎最高裁判所長官の御実弟であられるというだけに、また昭和四年から裁判所に勤務され、その間十年余りシベリア抑留等のブランクがございますし、また満州国での御勤務等の問題がございますけれども、やはり現職地裁所長として裁判官生活三十年のベテランの御発言あるいは論文であるだけに、また、いままで最高裁からも注意の御処分のあったお方でございますし、福岡高裁長官の注意も受けておられますし、また国会の訴追の請求の対象になったお方であるだけに、また、先ほど申しましたような身分関係もお持ちであるだけに、むしろこの際公正な最高裁の措置というものが必要ではないか。  平賀所長につきましては注意、転任という処分をなされましたが、考え方によりましたら平賀書簡と同等あるいはそれ以上の問題をはらんだ飯守所長の論文であり、あるいはまた発言であろうと思うわけであります。先ほど畑委員からも処分の問題についての御発言がございました。国民を代表する立場からもわれわれは、いわゆる裁判官の身分の独立憲法上の保障等も十分踏まえておるつもりではございますけれども、やはりしかるべき処分憲法の許す範囲内、裁判所法の許す範囲内あるいは規則の許す範囲内での適当の処分が、これは国民に対する裁判の権威を保つ意味でも、あるいは裁判所内部の職員の規律の保持の面からも必要ではないかというふうに私は感ずるわけであります。  これは先ほど来の御答弁で、福岡高裁での調査の結果を待ってということでございますが、この問題についても当然裁判官会議が開かれて処分がなされることと思いますが、事務総長として今後の見通し等につきまして、あるいは今後最高裁判所として予定されておるような手続がございましたら、許せる範囲でお答えいただきたいと思います。
  35. 岸盛一

    ○岸最高裁判所長官代理者 あの問題をどう扱うかということは、これは将来の問題であり、しかも裁判官会議でおきめになることでございまして、私どもがそれを予測してああだろうこうだろうと申し上げることはできないことであります。ただ、御意見は御意見として十分ここで拝聴いたしておきます。
  36. 岡沢完治

    岡沢委員 最後に、この問題につきましては、繰り返すようですけれども、国民の裁判への信頼を取り戻し、あるいはまた国民が裁判を信頼できるような裁判所になっていただくために、現に大部分はそうだと思いますが、裁判の公正と独立という立場から、国会から見ても国民から見ても、納得のいく御処置をお願いして質問を終わりたいと思います。  なお、関連して松本委員最高裁判所等に対しての質問がございますので、そのあと法務省に対する現職検事の偽証事件についての質問を留保して、あとで御指名いただくということをお約束していただいて、一応この質問を終わりたいと思います。
  37. 森山欽司

    森山委員 関連して発言を求めます。先ほど同僚議員から私の名前が引き合いに出されましたので、私の立場を明らかにしておきたいと思います。  平賀書簡につきましては、新聞では、この趣旨裁判干渉し、裁判官独立を侵すものだというようなことが書き立てられたものが多かったわけであります。そこで私は、たまたま毎日新聞の記者に所見を求められまして、この裁判所所長自身が弁明しているように、これは一先輩としてのアドバイスをしたにすぎないと思う。助言である以上、それがいれられるかいれられないかは問題ではなくて、決定権は相手の裁判長にあるというのであるから、かりにそこにうかつな行き過ぎが認められたにしても、決して干渉とは言えないであろう。現に裁判長は所長の私信とは反対の決定をしておるではないか、私信の全文を見ても、アドバイスだということは明瞭であるという考え方を述べたあとで、この福島裁判長については、聞くところによると、実務経歴十年、三十九歳の若手裁判官であって、京都大学在学中の昭和二十五年十二月、京都の円山公園デモ事件の際に公安条例違反で検挙され、検察庁で起訴猶予になったことがある。大学卒業後、富山地裁に勤務して全司法の組合員として活動した。その後司法試験を通り、司法修習生を経て判事補になったが、その間青法協会員となり、特にその裁判官会員機関誌である「篝火」の編集連絡者となって、みずからもしばしばこれに投稿しているではないか。京大当時から民主主義科学者協会——民科といわれますが、またこれによりさらに進んだ団体のメンバーだといううわさも聞いておる。これだけ見れば、この人が普通の裁判官とは違って相当な左翼活動家の問題裁判官だということがはっきりしておるではないかということを私は言っただけであります。  こういう事実については、あまり新聞社は取り上げません。私が毎日新聞の記者に話したこのことと、それからサンケイ新聞で取り上げたとかいう話を聞いておる程度でありまして、あれだけ問題が大きく取り上げられながら、この裁判官のことについてはほとんど問題になっていない。こういう私が指摘したことに対しまして、毎日新聞紙上で同裁判長が、「裁判官にはいろいろな考えがあってもいいと思う。個人攻撃で論点をすりかえるのはおかしい。」と言っております。私は「裁判官にはいろいろな考えがあってもいいと思う。」という真意という点に問題を感じますが、少なくとも私自身は福島裁判長個人攻撃などするという意図は毛頭ないのであります。ただ、こういう事実は単に個人的な問題にとどまり得ず、真相を知る上で重大な論点の一つである、そのことについては多くの同僚議員諸君は異論がなかろうと思うのでございます。  この私の発言について、この席上において最高裁判所事務当局等にいろいろお聞きしたいこともございますが、関連質問でございますから、本日かあるいは他日、機会を得て、またあらためて御質疑をいたしたい、そういう考えでございます。
  38. 高橋英吉

    高橋委員長 松本君。
  39. 松本善明

    ○松本(善)委員 平賀書簡問題と、それに引き続く飯守裁判官の問題は、裁判独立という問題に非常に重大な疑問を投げかけて、法曹界のみならず、広く社会の関心事になりました。この問題について、法曹界で言われていることを少し御紹介した上で、最高裁のお考えをお聞きしたいと思います。  東京弁護士会は司法制度臨時措置委員会で、こういう行為は「憲法が保障する裁判官独立裁判所の内部から破壊する違憲、不当な裁判干渉行為であって、司法権独立を守る立場から絶対に許すことができない」という決議をし、そしてこれは最高裁が平賀裁判官を訴追すべきだということまできめて、そしてその決議に基づいて日弁連に善処を求めております。大阪弁護士会も総会の決議で、これは「司法行政による司法権独立に対する侵害のあらわれである」としております。日本弁護士連合会は会長談話で、「裁判官良心に従い独立してその職務を行なうことに対する不当な介入というべきである」こういうふうに言っておるわけであります。  ところが、最高裁所信は、「先輩としての親切心から出たものであるとはいえ、節度を越えるもので、裁判独立と公正について国民の疑惑を招き、まことによくない。」とか、「いやしくも係属中の事件について裁判干渉とみられるおそれのあるような言動はもとより、その疑いを招くような行動をすることも、慎しまなければならない。」というふうに言っておりまして、新聞の記事によっても非常に歯切れが悪いということがいわれておるわけでありますが、この最高裁所信の中では、裁判官独立を侵すという表現がないわけであります。これは平賀書簡の問題については裁判に対する干渉ではないというふうに最高裁は考えたというふうな趣旨であるかどうか、その点をお聞きしたいと思います。
  40. 矢口洪一

    矢口最高裁判所長官代理者 解釈の問題でございますので、私からお答えを申し上げたいと思います。  干渉といいますことは、別のことばで申しますと、他人のことに立ち入りまして、しいて自分の意思に従わせようとするということをさすものだというふうに理解いたしております。したがいまして、裁判干渉ということと相なりますと、当該事件担当している以外の者がしいて事件に立ち入りまして、自己の意見に従った裁判をさせようとする、そういうふうに定義されるのではないかと存じます。この場合には、そのような行為があって、その結果自己の意見に従った裁判がなされたかどうか、いわゆる結果の発生ということが問題ではないか、このように考えております。  ところで、今回のいわゆる平賀書簡と申しますのは、力で自分の結論を押しつけようとしたものではないわけでございます。所長としての地位がいわゆる力でないことはもちろんでございます。平賀所長といたしましては、事件の結論をいずれかに持っていこうという積極的意図は全くなかったわけでございます。ただ、事件の処理にあたりまして、論理の過程にそごがありはしないか、あるいは論点を尽くしていないということがありはしないかというようなことにつきまして、いわば先輩としての老婆心、親切心から、日ごろ自分が研究している問題でもございますので、自分なりに考えた問題点を書き送ったものにすぎないわけでございます。したがいまして、私どもは、これは裁判干渉したというふうには考えるべきものではない、このように思っております。もちろん係属中の事件につきまして、一般的に裁判干渉と見られるおそれのあるような言動でございますとか、見る人のいかんによりましてはそのような疑いを招くような行動をするということはいけないことでございまして、この点は最高裁判所所信の表明にも、「まことに遺憾である。」とされておる点でございます。
  41. 松本善明

    ○松本(善)委員 九月二十一日の毎日新聞の報道によりますと、この経過が詳細に出ておりますが、八月四日に平賀所長は、福島裁判長から三裁判官の属する民事一部の総括裁判官の、先ほどの話でもありましたが、平田裁判官平田メモを渡しておる。八月十二日に決定を出す予定であったところが、延期をするような経過になった、これも先ほど話がありました。それで十四日に平賀書簡が送られました。  この経過を見てみますと、この経過はいまの最高裁の説明でも裏づけられたわけでありますが、第一に平田メモと平賀書簡を含めて——その平賀書簡の前に、二度ほど福島裁判長は同じ趣旨のことを平賀所長から言われておるというここも、毎日新聞に報道をされております。この報道のとおりであるとするならば、平田メモと平賀書簡を含めて計四回にわたって非常に執拗な行動が行なわれておるわけであります。しかも期日の延期が必要であったとは私どもはちょっと考えられない。廷吏送達ということも考えられるだろうし、それから農民やその他の要求に沿う裁判でありますから、庁舎の警備の問題は非常に重大な問題になるということも考えられる。それにもかかわらず期日の延期を要求しておる。さらにこの平田判事に対するメモというものが関係がないという先ほどの御説明でありましたけれども、総括裁判官にそのメモを渡して、それが効果がないという時期的な関係から見て、平田裁判官に対するメモが渡されて、それからやはり延期ということになっておる。こういうあとで平賀書簡が出ておるわけです。この経過を見ますと、平田判事に対するメモは効果がないのでこの書簡になったとも考えられるわけであります。それからこの平賀書簡が出された時期が決定告知をきめた期日の延期を要求したあとであります。だから当然に、三人の裁判官がその結論を出した、合議によって結論を出したということが明白に平賀所長にもわかっておる段階でこの書簡が出されておる。  これらの経過を見ますと、これは時期的に、いま最高裁から説明がありましたように、しいて事件に立ち入って自己の意思に従って裁判をさせようという意思があったということを私どもは十分に疑うことができると考えております。私どもは、こういうことを平賀所長からだけ聞くのではなくて、当然に福島裁判長でありますとかその他からも聞いて、これが裁判干渉になるかどうかということについて明確な見解最高裁が出されるべきではないかというふうに思うわけですが、この私が申し上げましたような経過については最高裁はどのように考えられ、また、この事実調査については平賀所長からだけお聞きになったのはどういうわけか、この点をお聞きしたいと思います。
  42. 矢口洪一

    矢口最高裁判所長官代理者 まず第一点といたしまして、平田メモが八月四日に出ておるということ、それから八月十日の日曜日に福島裁判官もまじえまして、民事刑事所長代行平賀所長計四人が期日延期について協議をいたしておるということ、それから八月十四日の木曜日に平賀所長福島氏に書簡を送ったということ、この点はいずれも私ども調査いたしまして報告に接しておりますが、それ以外の二回ほど福島裁判官所長が会われたという点については、報告に接しておりません。したがいまして、その事実の有無につきましては、現在といたしまして私どもそういう福島裁判官平賀所長の折衝に関しましては、いま私が申し上げました折衝以外については何ものも了知していないわけでございます。  それから、平田メモが福島裁判官を含めております第一部の総括判事である平田判事に渡されたということは、当然福島判事に影響を与えるとして出されたものではないかという御疑問の点につきましては、一応私ども形式的にはそういった御疑問もごもっともかと存じますが、これは松本委員もよく御承知のように、各部では必ずしも一部三名の構成ではございませんで、部の構成といたしましては四名以上の構成をとっておるところも多々あるわけでございまして、現に札幌地裁の一部はそのような構成をとっておったわけでございますが、具体的に事件が合議部に配点され、それが福島裁判長事件ということになりますと、平田判事はそれについては何らの、いわゆる裁判所を構成する裁判官ではございませんので、その平田判事にメモを送っても一般論としてはそのことが福島判事に連絡されるということは、私どもの実際の実務の上からまいりますと問題にはならない点でございます。それに加えまして、現実の問題といたしましても、平賀所長は、先ほど来繰り返し申し上げておりますような意図で、ただその平田判事がたまたま民事全体の所長代行判事であって、そういう関係司法行政事務等についてもしばしば所長と接触を持っております関係上、民事所長代行ということでメモを渡したにすぎないのでございまして、その間の連絡は調査いたしましても何もない、また平賀所長としてもそういった意図は全然持っていなかったというふうに私ども了解いたしております。  それから、このような調査をいたしますについて一方的な調査ではないかというお尋ねでございますが、この点につきましては、先ほども申し上げましたように、平賀所長熊野長官に九月十八日上京を求めました際に、特に事務総長より、裁判官会議の意を受けまして、熊野長官に対し、福島判事から直接事情を十分聴取してくるようにということを指示いたしております。そして熊野長官福島判事から直接詳細の事情を聴取してきておられます。その中でも福島判事は、自分はあのような手紙を受けてももちろん動かされるものではないということをはっきりと申しておられます。したがいまして、この平田メモの問題にいたしましても、平賀書簡の問題にいたしましても、そのような干渉と申しますか、そういった問題はない、このように考えております。  それから、最後の一点といたしまして、言い渡し期日の延期の問題でございますが、これは過去におきましては、札幌におきましては大きな事件がございまして、その事件庁舎の警備といったような問題が必要であったこともあるわけでございまして、管理者でございます平賀所長としては、一応裁判の言い渡しあるいは告知がなされます際には、重要な事件の場合にはその点を十分考慮する必要がある、これは所長の職責として当然のことであると考えます。そういう観点から両代行を含めて福島裁判官も加わりまして、言い渡しを所長不在に行なうべきか、あるいは所長の在庁の際に行なうべきかということを協議し、福島裁判官も十分了承して、告知の期日の延期がなされたという段階でございますので、告知の延期と書簡を送ったということは——もちろん延期がなければ書簡を送るという問題は時間的にはなかったかと思いますけれども、直接の関係はない、このように私ども承知しておるわけでございます。
  43. 松本善明

    ○松本(善)委員 福島裁判長がもちろんそういうものによって動かされないんだというふうに言ったということは、これは直接関係のないことで、先ほどの説明のように、結果の発生いかんにかかわらず、干渉行為があれば干渉になるという話、これは当然のことであると思います。幸いにして結果が起こらなくてよかったから、だからいいというわけのものでは決してない。いま説明があったことについていろいろ問題がありますけれども、触れられなかった一番大きな重要な問題だと思いますのは、三人の裁判官が結論を出した後にこの平賀書簡が送られておる。これは一体助言であるとか好意であるとか忠告であるとかいうような性質のものでは全くないと思います。この点については当然そんなことはあり得るということですか。干渉ではないというふうに判断をしたわけですか。
  44. 矢口洪一

    矢口最高裁判所長官代理者 決定書き作成を終わりましたのは、先ほど来御説明いたしましたように八月二十一日でございますが、そういう決定書きのもとになります合議がいつ終了いたしましたか、この点は裁判の具体的な問題でございますので、私どもその点まで調査はいたしておりません。しかし、平賀所長書簡をお出しになりました趣旨は、先ほど来繰り返し申し上げておりますように、どのような結論になるかということが問題であったのではなくて、その論理の運びの中に矛盾がないかということ、あるいは当然予想される反論あるいは主張というものについて重要な論点を落としていないかどうかということを心配して、先輩として助言されたものでございますから、かりにそういった決定の原稿ができておるものという日時等の前後がございましても、その点、先ほど来干渉ということで申し上げました、いわゆる力で動かそうとする問題にはならない、このように考えておるわけでございます。
  45. 松本善明

    ○松本(善)委員 結局最高裁は、その期日の問題についても、それからそのほかに所長から二回ばかり福島裁判長に同じようなことがなされたということについても知らないで、今度の決定をしておるようであります。こういう問題については、やはり裁判の本来のあり方についての問題でありますから、もっと詳しく調べてなさるべきであったと思います。  特にもう一つ、いまの結論を聞きますと、結局においては平賀氏の意図については、平賀氏の弁解を全部入れている。はたしてその弁解どおりであったかどうかということについての事実関係の調査が全くなされていないということが明らかになっておると思います。こういう調査のしかたによっては、飯守裁判官が平賀支持の論文を出すような、そういう事態が起こるのは当然です。これは最高裁が厳格に裁判官独立について断固として守っていくという態度が足らないからではないかというふうに私どもは思うわけです。この点についてはたいへん不満であります。  この平賀裁判官については、法曹の中でも、最高裁は義務があるのだから訴追をすべきではないか。訴追、弾劾に当たる場合であるならば、最高裁長官は訴追をしなければならない義務があるわけです。そういう意見も出ておるわけでありますが、訴追をするかどうかということについては、最高裁の中では全く問題にならなかったのであろうかどうであろうか、この点をお聞きしたいと思います。
  46. 岸盛一

    ○岸最高裁判所長官代理者 裁判官会議におきましてこの問題を取り上げて検討協議された際に、訴追、つまり弾劾事由には当たらない、そこまでする必要はない、そういうのが裁判所考え方であります。
  47. 松本善明

    ○松本(善)委員 飯守裁判官の問題についてお聞きします。  これについてもいま種々説明がありましたけれども、特に同僚委員から執拗に聞かれたわけですが、こういうことが普通に行なわれておる、いままでも例があったんだということを飯守裁判官が言っているじゃないか、これは一体ほんとうなのかということについて、事務総長はじめ最高裁側は、そういうことは絶対にないんだということを強調されました。私どもは、それだけで必ずしも十分に疑惑が晴れたともいえませんけれども、もしそうだとするならば、飯守裁判官はことさらに事実をつくり上げて、そうして平賀氏を支持する意見を表明したということを言わざるを得ない。うそを言ったということを言わざるを得ない。そういうことであるのかどうか、この点を明確にしてもらいたいと思います。
  48. 岸盛一

    ○岸最高裁判所長官代理者 その点に関しまする飯守所長の書かれたものを見ますと、「平賀所長の場合のような書簡による助言が今まで例がなかったとは到底考えられない。孤立、独善を避けるための裁判官の良識として必要に応じて行なわれていたものと見てもよいと思う。」こういう表現になっております。非常に表現が弱いので、これは飯守裁判官の考えを書いたものです。事実問題ではなくて自分の考えを書いておられる、かように私は解釈します。
  49. 松本善明

    ○松本(善)委員 しかし、世間一般はその事実の問題だと考えております。これは事実そういうことが日常茶飯事のように行なわれておるのだ、だから平賀氏だけ処分されるのはおかしいじゃないかというのが全体の飯守裁判官の論理である、違いますか。
  50. 岸盛一

    ○岸最高裁判所長官代理者 その点は、確かに一般の人々が読むと、これは事実というふうにとられるかもしれませんけれども、私どもは、これを厳格に読む場合には、これは事実としてやっておるのではなくて、自分の想像といいますか、考えを述べておる、かように思われるわけであります。
  51. 松本善明

    ○松本(善)委員 最高裁が飯守裁判官見解所長として妥当でないという場合——事実とすれば妥当でない、最高裁の態度が間違っておったということを言ったとすれば、そういうことをいま明らかにしてもらったわけですけれども、この平賀書簡を肯定するというような考えの者が地裁であるとか高裁の所長であるということは、鹿児島地裁や家裁において同様の事態を起こす危険があるわけであります。私は最高裁のお考えは決して十分であるとは考えておりませんけれども、しかし、最高裁としても平賀氏に対しては注意処分と人事異動を行なっておるわけです。飯守氏の場合にはこれは平賀氏以上に、事後においてこの行動を肯定しておるわけです。こういうことはやってもいいのだという立場を積極的に明らかにしておるわけです。こういう人が地裁や家裁の所長であるということはとうてい許すことができないというふうに考えます。最高裁はこの所長を罷免するということを含めて検討をしておるということでありますか。
  52. 岸盛一

    ○岸最高裁判所長官代理者 まだ事実関係がはっきり詳細に調べられたわけでもありませんので、その処分を考えながら検討する、そういうことはございません。いずれ事が判明したときに厳正な処置、妥当な処置が行なわれるであろう。どういう扱いになるかということは、これは現在全く白紙状態であります。
  53. 松本善明

    ○松本(善)委員 それはもちろんそうでありましょうけれども、新聞報道で出ておる範囲では、これは重大な問題であるということだからこそ調査を始められたということではありませんか。
  54. 岸盛一

    ○岸最高裁判所長官代理者 それは新聞等で問題化されておる、重大だというわけで調査は始めたわけであります。だからといって、どういう処分ということをいまから考えて、また処分がとられるかどうか、そういうことは一切白紙状態であります。
  55. 松本善明

    ○松本(善)委員 先ほど事務総長は、国民協会はどういうものであるかは知らないということを、まことにこれは、日本人の中では非常に少ないものではないかと思いますけれども、「国民協会」の資料はごらんになったと思うのです。この新聞そのものにちゃんと「保守党を真の国民政党とする」ということを目的として掲げておる。これは保守党を支持するということを明らかにしておる新聞であります。そういう新聞に寄稿がされたわけであります。もしこういうことがいいということであれば、政党の機関紙であってももちろんかまわないということになるのではないかと思います。いままで最高裁はそういうことについては全く考えはなかったのでありますか。
  56. 岸盛一

    ○岸最高裁判所長官代理者 この「国民協会」というのを私見ましたのは今度が初めてで、しかもわれわれの関心は平賀問題の背景というその項目だけで、ほかのところは全然見ておりませんで、ただいま御指摘になったようなことが書いてあるかどうかという、そういうことも知りませんでした。
  57. 松本善明

    ○松本(善)委員 これは最高裁としてはたいへん手落ちであると私は思いますが、さらに厳格に検討してもらいたいと思います。  それから、飯守裁判官の問題でこういう事実があります。七月に鹿児島家庭裁判所の調停委員の控え室に次のような文書が掲示をされている。「回覧」と書いてあって、「全貌社発行の月刊誌「全貌」を購読ご希望の方は、壱年間の購読料七百円を添えて、家裁総務課長あて、お申し込みください。」これは写真でありますけれども、そういう掲示がされておるのであります。これは家庭裁判所所長の管轄の中で行なわれておることであります。  特定の雑誌の購読の世話を裁判所が行なうということを自体問題でありますけれども、「全貌」はたびたびこの委員会でも問題になっております。都知事選挙の最中には、美濃部さんの家庭のことまでいろいろ書きまして、悪質な選挙違反だということでこの委員会で問題になりました。  それから、この「全貌」の中では、共産党のこまにされた芸能人として、樫山文枝、高峰秀子、吉永小百合、中村錦之助、美空ひばりに至るまで赤呼ばわりをされておるのであります。  裁判所の共産党員という記事が出たことについて、これも私はこの委員会で問題にいたしました。そのときに矢崎人事局長は、私が聞いたことに対して、これは私どもが読んでも非常に的がはずれたことが書かれておる、私どもはたいへん迷惑を受けたと考えておる、こういうことを言っている「全貌」であります。  この「全貌」の購読のあっせんを裁判所の総務課長がやっている。一体これについて最高裁は何と考えますか。こういうことが一体許されていいものかどうか、事務総長の御見解をお聞きしたいと思います。
  58. 矢崎憲正

    ○矢崎最高裁判所長官代理者 事務的なことでございますので、私からお答え申し上げたいと思います。  かりにこういうような回覧があるといたしますならば、これはやめてもらうようにいたしたいと思います。
  59. 松本善明

    ○松本(善)委員 こういうことを繰り返しておる、あるいは場合によってはやらしておるかもしれませんが、そういう所長としての適格については、事務総長どうお考えになりますか。
  60. 矢崎憲正

    ○矢崎最高裁判所長官代理者 この「全貌」の回覧を回したというようなことについては、直ちに所長の適格がないということまではここで申し上げかねると思います。
  61. 松本善明

    ○松本(善)委員 飯守裁判官の問題については、たびたびこの委員会で問題になっております。四十二年の五月十一日の委員会で、「裁判所広報」に載せられた政治的発言が問題になって、岸事務総長は、行政上の責任を問わねばならない場合も今後出てくるかもしれないということをはっきり答弁されております。事務総長、このことを覚えておられますか。
  62. 岸盛一

    ○岸最高裁判所長官代理者 覚えております。
  63. 松本善明

    ○松本(善)委員 当時から問題になっておりますので、これは幾つも幾つも事例が出てきております。私はいまの答弁で、この司法行政上の責任を厳格に追及しなければならないものではないかというふうに考えます。今度の国民協会への投稿の問題だけでなくて、飯守所長の言動その他については、これが一体裁判所所長としていいのかどうかということを厳格に検討してもらいたいというふうに思います。飯守裁判官のこのような、私どもから考えれば、また普通の法曹から考えましても、非常に異常と考えられるようなことが、この人の考え方から出てきておるわけです。  これについて多少御紹介をして御意見を伺いたいと思いますが、飯守裁判官が「自由」という雑誌の十月号に書いておりますことによると、「裁判官良心と思想」という論文を発表して、その中で、治安維持法は合理的な体制防衛立法であったとか、共産党員は公務員にもなれないし、私企業でも雇い入れは拒否すべきだ。そうすると、共産党員は、この飯守裁判官見解に従えば、職業につくことはできないのです。死ねということなんです。そういう見解発表しておる。それから、共産党は合法政党ではないというようなことも言っております。  それから、時事通信社が出しております「裁判の危機」という本、この中で論文を発表いたしまして、公務員を採用する場合には思想調査をなすべきである。それから、アメリカの共産党取締法を引用いたしまして、日本の法律の解釈においても同様の解釈をなすべきであるということを言っておる。日本の憲法は根本において明治憲法と異なるところがない、こうも言っております。裁判所内の新刑訴派は基本的人権の擁護を第一義にしておるが、これは倒錯的な思考である等々、それからさらに雑誌「全貌」を根拠にして青年法律家協会の攻撃をしておる。  飯守裁判官はこういうようなまことに異常な見解発表をしておるわけです。これは全体として憲法に保障された基本的人権の擁護というようなことについて全く——むしろこれの侵害を考えておる人というふうに言わなければならないと思う。そうして裁判官には体制を防衛する義務がある。天皇制度と階級協調的議会民主制度、階級協調ということを非常に強調する。それから修正資本主義の擁護、この三つ。階級協調、それから修正資本主義、これを擁護するのが裁判官の任務なんだ、これが体制防衛なんだということを書いておるわけです。これが根本の思想になっていろいろなところに問題が起こってきておるわけです。  だから、こういう考えでいきますれば、資本主義を擁護するのが裁判官の任務であるということであれば、社会主義を唱えるならば全部反体制ということになるわけです。安保体制とか、サンフランシスコ体制とかいわれますが、安保条約の廃棄ということを言うならば、これは反体制ということになる。こういうようなものについては、人権はないんだ、こういう方向の思考であります。こういうような基本的人権を侵害する思想を持っておる人が一体裁判官として適格なのかどうかということは当然に考えられなければならないものであると思います。  この問題について、最高裁といたしましては、先ほど申しました裁判官弾劾の場合の訴追、場合によっては訴追をしなければならない義務が起こるわけであります。飯守裁判官の問題について訴追の問題も含めて現在調査中であるのかどうか、その点についてお聞きしたいと思います。
  64. 矢崎憲正

    ○矢崎最高裁判所長官代理者 ただいま御指摘の印刷物等につきましては、まだ十分読んでいるわけではございませんが、松本委員のここでの御発言は、御意見としては伺っておきたいと思います。
  65. 松本善明

    ○松本(善)委員 青年法律家協会の脱会を強制すべきだという趣旨の発言をしておりますが、最高裁としては裁判官はいろいろな会や団体に入ることは自由ではないのかどうか、この点をお聞きしておきたいと思います。
  66. 矢崎憲正

    ○矢崎最高裁判所長官代理者 いろいろな会がございまして、裁判官は適当に、その会にはそれぞれの自分の考えによって入っていけるわけでございます。
  67. 松本善明

    ○松本(善)委員 飯守裁判官の問題はこの程度にいたしますが、この飯守裁判官の問題にいたしましても平賀書簡の問題にいたしましても、これは司法裁判官独立という問題が非常に大事な問題だというふうに考えるからこそ私どもは発言しておるわけであります。  これに関係して、一つ申し上げたいのは、東大裁判、この問題に関係してであります。東大裁判そのものについて私たちはあの被告たちを支持するという考えは毛頭ないし、裁判所のやり方を支持するという考えもありませんけれども、この東大裁判のようなことを理由といたしまして、ここでこういうことが行なわれているからということで裁判所全体が訴訟指揮が非常にきびしくなったということ、被告人の権利が侵害されているという声を弁護士の中から方々で聞くわけであります。たとえば退廷命令が乱発される。いわゆる暴力学生事件だけではないですよ、普通の事件ですよ。退廷命令が乱発される。多数の警察官を動員しての警備が行なわれる。あるいは実力行使がすぐに行なわれる。あるいは弁護人や被告人の発言の禁止が簡単に行なわれる。あるいは弁護人に対する制裁が簡単に行なわれる。保釈の制限が行なわれてきておる。こういうことが普通の弁護士さんの中で問題になっております。これは非常に重大な事態ではないか。東大裁判を地方の裁判官が傍聴に来て、東京でこういうふうにやっているから同じようにやるのだ。地方のほうがひどいということを聞いております。たとえば例をあげて申しますならば、東大裁判被告の保釈金が十万円だ、だから十万円以下にすることはできないのだ、こういうことを公言をする裁判官がいるということでありますが、これも全く同じ考え方で、一人一人の裁判官独立して職務を執行しているはずです。東大裁判は東大裁判の特別の事情があるのでしょう。その被告のそれぞれについて、その事件事件について、裁判官が考えてものごとを進めなければならないはずであるにもかかわらず、全体的にこういう東大裁判の問題を利用といいますか、口実としてといいますか、裁判が反動化し始めているということについて、私たちは重大な関心を持っております。  事務総長に伺いたいのは、当然のことでありますけれども、そういう東大裁判、ほかの裁判のことを理由に事件の判断がされるということは全く正しくないと思いますけれども、総長の御意見を伺いたいと思います。
  68. 佐藤千速

    ○佐藤最高裁判所長官代理者 いまの御指摘の点でございますが、私ども全国的に見ておりますと、詳細に個々の事例まではすべて承知しているわけではございませんが、御承知のような東大事件の法廷における言動、傍聴人も含めて、そういうような状況は東京にとどまらず非常に急速に各地に及んでいるわけでございます。これは、この種事件の係属の状況を見ても顕著なわけでございます。  いまのお話、御質問の御趣旨でございますると、何か東大事件にならってそういうことをせよというようなことを指示したというようなこと、とはおっしゃいませんが、何かそういうことがあるのかということも含めてと思いますが、そういうことは全然ございませんし、また裁判官は好きこのんでそういうようなことをやっておるわけではございません。東大事件のようないわゆる法廷戦術と申しますか、そういうような言動が他の裁判所にも及んでくるということから、各裁判所はやむを得ずそういう措置をとらざるを得ないということでございまして、裁判所としては裁判を円滑に進めなければならない責務を負っているわけでございますので、審理を進めるために、法廷が喧騒にわたるというような場合には、法廷の秩序を回復して、しかる後にまた審理を進めなければならない、こういう責務を負っておりまする以上、そういう事態があれば、これはやむを得ないことである、このように考えておるわけでございます。
  69. 松本善明

    ○松本(善)委員 質問を十分御理解いただいていないようでありますが、いわゆる、正確にいえば私どもトロツキストというふうに言っております暴力学生の集団についての事件を言っておるのではないのです。これは普通の事件、普通の労働者の権利擁護の戦いでありますが、そういうような普通の事件について、同じようなケースが出てきておるということであります。本来裁判所は、弁護人や被告意見を十分聞いて、そのような強権的な訴訟指揮というものがないようにして、そうして十分な弁護を尽くさせる、あるいは意見を開陳させるということをした上で裁判をするのが当然ではないか。ほかの事件がこうだからというようなことでもしやることがあるとすれば、たいへんな間違いではないか、これについて念のためではあるが意見を聞きたいということを言ったわけであります。  これについて、結論だけでいいのですけれども、事務総長の御見解を聞きたいと思います。
  70. 岸盛一

    ○岸最高裁判所長官代理者 ただいまの問題でございますけれども、裁判官はそれぞれ独立してやっておるわけで、先ほど刑事局長が申しましたように、どこかでコントロールとか指示を与えておる、そういうことは絶対ございません。やはりそのときの具体的事情に応じて、その裁判官がその考えに従って独自にやっておるもの、かように考えます。
  71. 松本善明

    ○松本(善)委員 質問を終わります。
  72. 高橋英吉

    高橋委員長 岡沢君。御承知のようにもう時間がないので、簡単にお願いします。
  73. 岡沢完治

    岡沢委員 私は、昨年の八月二十八日、東京地方裁判所におきまして行なわれた大阪地裁事件出張尋問で、現職検事——いま法務省刑事局に所属の現職検事でございますが、当時は前橋地検の検事でありました人が、法律によって宣誓した神聖な法廷で、客観的に見まして虚偽の陳述をした事件がございます。これについて質問をさせていただくことに関連いたしまして、同じ検事が、これは別件でございますけれども、やはり大阪地検に所属しておりました当時に、みずから検事認知した事件で、夫婦を深夜に逮捕いたしまして、その後その妻のほうが検事の調べに抗議する趣旨の遺言を残して自殺をはかりました。ミカンの皮で拘置所の壁に検事への不満と弁護人への感謝等を訴えた遺書を残して自殺をはかったわけでございます。幸いに一命を取りとめました。しかもその事件は無罪になりました。一審で確定した事件でございます。こういう検察官の人権侵害の疑いの濃いケースが実際にあるわけでございます。  この問題につきまして質問を申し上げる予定でございましたけれども、きょうは昼飯を抜きにして、裁判所の問題を中心に審議が続けられましたし、実は、偽証事件と思われる事実のありました事件を、私自身が担当しております関係で、やはり筋を通す意味で、その事件の弁護人を辞任をいたしました。次回に、その手続を終わった上で質問をさせていただこうと思いますので、本日は質問を留保して、この程度で終わりたいと思います。
  74. 高橋英吉

    高橋委員長 本日は、これにて散会いたします。     午後一時十八分散会