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1969-09-09 第61回国会 衆議院 法務委員会 第30号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十四年九月九日(火曜日)     午前十時四十五分開議  出席委員    委員長 高橋 英吉君    理事 大村 襄治君 理事 鍛冶 良作君    理事 進藤 一馬君 理事 田中伊三次君    理事 永田 亮一君 理事 畑   和君       大竹 太郎君    千葉 三郎君       松野 幸泰君    村上  勇君       猪俣 浩三君    神近 市子君       河野  密君    田中 武夫君       中谷 鉄也君    中村 重光君       山内  広君    岡沢 完治君       山田 太郎君    松本 善明君  出席国務大臣         法 務 大 臣 西郷吉之助君         国 務 大 臣         (国家公安委員         会委員長)   荒木萬壽夫君  委員外出席者         内閣法制局第一         部長      真田 秀夫君         警察庁刑事局長 内海  倫君         警察庁警備局長 川島 広守君         警察庁警備局参         事官      三井  脩君         法務政務次官  小澤 太郎君         法務大臣官房長 辻 辰三郎君         法務省刑事局長 川井 英良君         法務省矯正局長 勝尾 鐐三君         法務省保護局長 鹽野 宜慶君         法務省人権擁護         局長      上田 明信君         厚生大臣官房審         議官      首尾木 一君         厚生省公衆衛生         局長      村中 俊明君         厚生省環境衛生         局公害部公害課         長       橋本 道夫君         郵政省人事局長 山本  博君         最高裁判所事務         総局刑事局長  佐藤 千速君         参  考  人         (日本放送協会         専務理事)   川上 行蔵君         専  門  員 福山 忠義君     ――――――――――――― 九月九日  委員猪俣浩三君、栗林三郎君、河野密君、柳田  秀一君及び西村榮一辞任につき、その補欠と  して田中武夫君、中村重光君、山内広君、中谷  鉄也君及び岡沢完治君が議長指名委員に選  任された。 同日  委員田中武夫君、中谷鉄也君、中村重光君、山  内広君及び岡沢完治辞任につき、その補欠と  して猪俣浩三君、柳田秀一君、栗林三郎君、河  野密君及び西村榮一君が議長指名委員に選  任された。     ――――――――――――― 八月五日  一、裁判所司法行政に関する件  二、法務行政及び検察行政に関する件  三、国内治安及び人権擁護に関する件 の閉会審査を本委員会に付託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  法務行政に関する件  検察行政に関する件  人権擁護に関する件      ――――◇―――――
  2. 高橋英吉

    高橋委員長 これより会議を開きます。  この際、参考人出頭要求に関する件についておはかりいたします。  ただいま本委員会において調査中の法務行政に関する件のうち、報道の素材と刑事訴訟について、本日参考人として日本放送協会専務理事川上行蔵君の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 高橋英吉

    高橋委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。      ――――◇―――――
  4. 高橋英吉

    高橋委員長 法務行政に関する件、検察行政に関する件及び人権擁護に関する件について、調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、これを許します。畑和君。
  5. 畑和

    畑委員 法務大臣も、それから国家公安委員長もまだ見えておりませんけれども、そのうちに来るでしょうから、ぼつぼつ質問を始めたいと思います。  私は、例の、非常に大きな問題になっておりまする博多事件、この問題について質問をいたしたいと思うのであります。この博多事件というのは、御承知のとおり、去年の一月の十六日に例のエンタープライズ佐世保入港反対をして、その反対運動に参加するために学生たちが、おもに東京をたち、各地の学生たちが合流をして、博多の駅へおりたときの、博多の駅頭における集札口における福岡県警の規制の問題でありまして、学生は、その前に第一次、第二次博多事件等でいろいろ警察当局と紛争を起こしたのでありますけれども、その後、いま言ったエンタープライズ反対闘争佐世保へ向かったその際のできごとであります。この博多事件は、単に博多駅だけの問題ではなくて、その前日における東京での飯田橋事件、続いてこの博多事件、さらに、その次の現地である佐世保での事件、この三つ事件がおのおの関連をしておるわけでありまして、いずれも当時、警察警備当局警備実施過剰警備である、あるいは過剰警備を逸脱した、むしろ違法警備ではないかというようなことで問題になった事件でありまして、いずれの事件も現在、この訴訟が進行中であって、特にその博多駅の事件においては、検挙されて、それで裁判に回った学生一人が、その後無罪判決を下されておる。それで、現在、検察当局が控訴中でありますけれども、そのほかの学生に対する裁判のほうは、飯田橋のほうも、また佐世保のほうの事件も、いまだに審理中であるはずであります。  ところで、この博多事件については、そうした判決もございましたし、そういうことで非常に注目を引いておる事件であるわけであります。しかも、この三つ事件について、われわれ社会党は護憲連合等と一緒になりまして、警察官違法警備を告発をいたしておるわけでありまして、他の二つの事件は、まだ起訴、不起訴決定が参りませんが、博多駅の事件についてだけは、約一年たちまして、不起訴犯罪の嫌疑なし、警察警備実施は適法であったということで、不起訴の通知がわれわれの手元へ届きましたので、われわれのほうでは、さらにそれに対して準抗告手続をいたしておるわけであります。したがって、この三つ関連した事件の中で博多の駅の前の事件が一番先行しております関係もありまして、それがどうなることかということが国民注目の的になっておる。しかもそれについてのいわゆる準起訴手続をめぐって、警察本部長付審判請求事件を取り上げて調査審理をいたしておりまする真庭裁判長以下の裁判官に対して忌避申し立てをいたしておるわけであります。というのは、御承知のとおり、それに関連をした学生の刑事問題、公務執行妨害罪について審理をし、無罪判決をした同じ裁判官が準起訴付審判事件調査審理をいたしておるということは、不公平な裁判をするおそれがある、一種の前審関与裁判官裁判だ、こういうことから忌避申し立てをいたしておるわけであります。そこで、しかもその忌避真庭裁判長によって簡易手続却下になりました。それに対して高裁即時抗告をする。それがまた差し戻しになって、今度はほかの部で審理をされて、ほかの部でもこれを却下する。それからさらに高裁事件がいって、いまでは高裁でまた却下をする。そこで今度はさらに最後の手で、最高裁特別上告をしておる、こういうようないま状態になっておるわけでありまして、あたかも裁判所とそれから警察陣がお互いに敵対関係というような形でマスコミ等でも盛んに登場してまいっております。裁判官のほうは、裁判官弁解せずの原則で、あまり弁解等はいたしておらないようでありますけれども警察官のほうの前田本部長は、なかなか活発に発言をしておるようであります。そういうことで、これを見た場合に、一体これでいいのかといったような感じもするわけであります。実はそのことでいろいろ法規の不備のような問題もあろうと思います。たとえば忌避の問題について、一体起訴手続付審判手続裁判官に対して忌避申し立てができるかどうか――できないというのが通説だと思うのでありまして、いままでの経過は、ともかくそれができないという傾向にあるようであります。われわれ常識的に考えましても、これは忌避申し立ては訴されない、かように考えておりますが、まだ最終的な最高裁判断はこれについて下されておらないという段階でございます。  そこで実は、私この間現地へ行ってまいりました。かつてあの事件の当時、私は事件調査いたしまして、当時本部長前田君ともお会いしたことがございますが、今度また再び参りまして、七月三十一日でございました、国会閉会のまぎわに時間を見まして行ってまいりました。真庭裁判長以下の裁判官ともお会いをして、事情をお聞きをいたしました。さらに井上正治教授にもお会いいたしました。そして最後前田本部長にお会いしまして、どうして事件審理がおくれておるかというようなこと等についていろいろ意見を交換をして事情聴取をしてまいったのでありますが、その経過も少し御紹介をして、一体これが第一線の警察官の長としてのあり方であろうかどうかということについて、ここで警察当局あるいはこれから参られます国家公安委員長お尋ねをいたしたいのであります。国家公安委員長がここにおらぬとちょっと都合が悪いのだけれども、もうそろそろ参ると思いますので、いろいろほかの方に質問してそれが効果的になりますように、質問を開始いたしたのですが、その問題があるわけです。そのときの模様について申し上げるのにやはり大臣がおらぬとちょっと実感が出ませんから、私の会見の模様等については、あと大臣が来たらさっそくそれを始めます。したがって、大臣がおられぬ関係がございますので、ほかのことについてほかの関係の方に質問をいたすことにいたします。  この忌避の問題について、一体いまこの場合に忌避ができるかどうかということについて最高裁判断を求めているときでありまするから、これに対してどうこうという返事はできないかもしらぬけれども、これに対しての法務省刑事局なり、あるいは裁判所刑事局長見えておりますか――両方の見解を聞かしていただきたい。そのうちに国家公安委員長も参ると思います。
  6. 川井英良

    川井説明員 具体的には、刑事訴訟法二十一条の「被告人」とある中に、本件のような場合のいわゆる被疑者に類するものが入るかどうかという解釈の問題になると思います。ただいま御説明がございましたように、この事件についての福岡地裁判決並びに高裁判決は、いずれも入らないという消極判断をしております。ただし、これも御指摘がございましたように、相手方から不服がありまして、最高裁判所特別抗告がなされておりますので、おそらく近い機会最高裁のこれについての権威のある判断が示されるのではないか、こういうふうに思いますので、法務当局立場から、積極とか消極とかいうようなことにつきまして、具体的な案件が問題になっておるおりからでございますので、私としましては確定的な解釈あるいは判断は一応ここでは差し控えさしていただきたい、こういうふうに思います。
  7. 佐藤千速

    佐藤最高裁判所長官代理者 先ほど御指摘のございましたように、またいま川井局長からも御説明ございましたように、福岡決定趣旨消極でございます。その理由は、形式的には被疑者及びその弁護人忌避申し立て権を認めた規定がないということと、実質的には、この準起訴手続対審構造という構造はとっておらない。実質は、比喩的にいえば、捜査に近似したものである、こういう判断。したがって、被疑者立場は、捜査段階における被疑者に似ているということをいっているわけでございます。福岡高裁決定は、被疑者に関する裁判に当たりましても、除斥の事由があれば、当然その職務から排除される。それがまた忌避されるべき原因があると思料するときはみずからこれを回避すべきものであるということを前提にして、先ほどのように、地位を異にするから被疑者忌避申し立て権はないのである、こういう判断を示しておるわけでございます。最高裁判所にこのことがまさに判断されようとしておるわけでございますので、私の立場から御質問のようなことを申し上げることは適当でないと思いますので、差し控えさしていただきたいと思います。
  8. 高橋英吉

    高橋委員長 畑君、大臣が十二時までしかおられないので、一応大臣に対してずっと皆さんが質問されるという形式をとりたいと思うから、ひとつ……。
  9. 畑和

    畑委員 きょうは九月九日ですが、一カ月に一ぺんしか法務委員会閉会中の審査がない。初めから九日は法務委員会の日であることばわかっておって、法務大臣が、国内巡視か何かしらぬけれども、出発するということはおかしい。非常に国会を軽視している。それで、先ほど理事会でも問題になった。了解はできないということになっておるのですが、しかし、そんなことをやっていてもしようがないから、少しは協力します。
  10. 高橋英吉

    高橋委員長 どうぞひとつよろしくお願いします。
  11. 畑和

    畑委員 それで、いまのお二人の答弁、私それでよろしいと思います。これは近く最高裁判断が出ることでありますから、その判例によって確定をするということになろう。また、当然そうした高裁判断と、最高裁もやはり同じ判断に帰着するであろうと私は確信をいたしておる。したがって、あえて法の不備とかなんとか言ってみたって、いまのところはっきり明文に書いてないからそういう問題が起こるけれども、常識的に考えてみても、この段階で、告発された人に忌避申し立て権があろうなどとは思えないのであります。それを待つことにいたします。  それで、法務大臣のほうに関することだけれども、それは私は、直接いまの段階では法務大臣質問はしないでもよろしゅうございますから、そうすると、急ぐとすれば、私の質問は中断をして、短時間にひとつほかの人の法務大臣に対する質問をやってもらいたい。
  12. 高橋英吉

    高橋委員長 そういうふうに、一時間内にすべて解決することとします。猪俣浩三君。
  13. 猪俣浩三

    猪俣委員 私はごく簡単にお尋ねしますが、いつぞやの本法務委員会で、再審法案の審議中でありましたが、自民党の大村議員から大臣に対する質問があって、われわれが再審法案で再審するべきものと予定しておりました者たちに対しては恩赦考えがないかということに対しまして、大臣は、それは恩赦になるように非常に努力するという答弁があられたのでありますが、それは間違いないわけですね。
  14. 西郷吉之助

    西郷国務大臣 間違いございません。
  15. 猪俣浩三

    猪俣委員 ただ、その後どうも様子がよくわからない。関係者法務省にも相当陳情にも行っておりますが、はっきりしない。実は七日付の内外タイムスという新聞を見ますと、恩赦課長と称する男がおります。この恩赦に対する一問一答をしている記事が出ておるのでありますが、全体の趣旨を見ますと、大臣答弁と非常に違ったニュアンスで――山本宏子という女の死刑囚については恩赦があったのでありますが、それを機会に、この前委員会大臣にお答えいただきましたような点につきまして、にわかにみんなが関心を持って関係者がその実現を期待しているわけでありますが、その人たちが実際の権限を持っております中央更生保護審査会をたずねまして、恩赦課長なる者に会ったのですが、これは大臣趣旨と全く違うような答弁でございます。そんなことはどうも期待を持つことがむずかしいような答弁をしているのであります。そこで、実は関係者が非常に憂慮しているわけでありますが、ただしこれは法律上の権限からいえば、中央更生保護審査会恩赦権限を持っているわけでありますけれども、しかしその人たち法務大臣から任命される人たちであり、法務省諮問機関みたいな形になっている人たちでありまして、法務大臣の、しかも国会における言明と全く相反する態度をとるとは思われないのでありますが、その辺のことにつきまして、大臣はどういう御決意を持っているのか、当法務委員会で確言せられたことを必ず実行する決意がおありであるかどうか、その点の大臣確信をお聞きしたいと思うわけであります。これは当法務委員会で、人数まで何人だ、七人になるというような政府当局言明を得まして、私ども調査いたしております七人の死刑囚、その中に先般恩赦が実行せられました山本宏子も入っているわけでありますが、私どもはこの山本宏子恩赦によって始まったというふうに歓喜したのでありますが、この恩赦課長の言は、それに水をぶっかけるようなことに相なっておりまして、またここに非常に心配が出てきたわけでありますので、大臣にこの点についての御決意を承りたいと存じます。
  16. 西郷吉之助

    西郷国務大臣 何か新聞記事がありまして、その記事につきまして先生も非常に御心配になっておられると思いますが、それもあわせてお答えしたいと思いますけれども、前国会におきまして申し上げましたとおり、死刑確定者につきましても、他の犯罪者と同様に、あらゆる点を考慮いたしまして、恩赦を行なうことが相当と認められます場合には、所定の手続によりまして恩赦を行なうことは当然でございますが、御指摘死刑確定者恩赦上申のあった者につきまして、慎重に検討をいたしました。御承知のとおり、その対象者の一人である山本宏子につきましても、前々から検討を行なっておりましたが、今月の二日に恩赦が行なわれまして、そして死刑を減刑し、無期懲役にいたしたのでございます。記事に出ました点で先生いろいろ御心配になっていると思いますが、いま申しましたとおり、前国会におきまして申し上げましたとおり、それに相当する者については恩赦を行ない、先般山本宏子の問題を解決した次第でございまして、私の所信には何らの変化もございません。この記事はよく読んでおりませんけれども、不十分な発言があったのじゃないかと思いますが、私ども既定方針には何らの変化がございませんことを申し上げておきます。
  17. 高橋英吉

  18. 神近市子

    神近委員 いまお返事がありましたけれど、この山本宏子恩赦については、どういう種類の恩赦だったのか。恩赦法によりますと、恩赦にあずかった者は有罪の言い渡しの効力を失うと書いてあるのですけれど、新聞報道によりますと、無期になって、そして相変わらず抑留されるというふうなことが伝えられているのですけれども、これはやはり大臣が認可して、判を押しての滅罪だったのですか。どちらでございますか。
  19. 西郷吉之助

    西郷国務大臣 先ほども申しましたとおり、恩赦上申がございまして、審査会審査をいたしまして、それが妥当と考えました場合に実行するわけでございまして、山本宏子の場合には個別恩赦でございます。
  20. 神近市子

    神近委員 個別でして、この前の七人の場合に一括して大臣が御声明になったのとは、これは関係ないものなんですか。
  21. 西郷吉之助

    西郷国務大臣 先般国会でお答え申し上げました趣旨にのっとりましてずっとやってまいりまして、今回山本宏子個別恩赦の減刑を受けた次第でございます。
  22. 神近市子

    神近委員 七人でも、一人一人一ぺんにというわけにはいかないですから、この個別恩赦ということばが私どもちょっと納得できないのは、この一人一人をやるということが個別恩赦なんですか。それとも、個別恩赦大臣声明というものはちっとも関係ないということになるのですか。
  23. 西郷吉之助

    西郷国務大臣 お答え申し上げます。恩赦には、個別恩赦政令恩赦の二通りがあることは御承知のとおりでございますが、政令恩赦の場合には一律にずっといたしますけれども個別恩赦の場合には、審査会におきまして上申のありました者について個別に審査をして決定をしていく次第でございます。
  24. 神近市子

    神近委員 あと事務局お尋ねしたいと思いますから、終わります。
  25. 高橋英吉

  26. 松本善明

    松本(善)委員 大臣下山事件記録の問題についてお聞きしたいと思うのですが、その前に一言お聞きしておきたいのは、国務大臣国会への出席というのは、憲法六十三条に基づく義務であります。どのような仕事にも優先をして国会での答弁のために出席をしてやっていくというのは、当然のことではないか。国会を国権の最高機関として、憲法で定めているとおりの実質を備えさせるためには、そういう心がまえでなければならぬと思いますけれども、これについての大臣見解を聞きたいです。
  27. 西郷吉之助

    西郷国務大臣 松本さんのおっしゃるとおりに、私も考えております。
  28. 松本善明

    松本(善)委員 そういうふうにきょうもやっていただきたいと思いますが、私が本年の七月二十八日に「下山事件捜査記録等の公表に関する質問主意書」というのを出しました。それについて総理の答弁書が来たわけであります。大臣ももちろんこの答弁をするについては関与しておられると思いますが、この内容雑誌の「新評」というのに、解剖立ち会い報告書供述調書が十数通、それから検察庁警視庁最高首脳捜査会議内容、それから警視庁坂本刑事部長の開かれた東大の法医学者を交えた捜査会議内容、こういうようなことが全部書かれておるわけであります。それで、そういうことを公表するということがかってにできるということになりますと、これは捜査秘密ということをいっておりましても、その担当しておる者がかってに発表していくという結果になるわけであります。一方、この質問主意書で、私はそういうことをするくらいなら、下山事件についての疑惑が国民の中にあるから、すべての記録を公表すべきだといったら、これは公表できないという答弁になっておるわけであります。そういたしますと、一体捜査の中で得た資料というものについて、法務省であるとか警察庁であるとかでは、どう考えておるのか。こういうふうに軽々に行なわれていきますならば、捜査に協力をするという人もなくなってくるのではないかと思います。この問題について、一体政府のほうはどういうふうに考えたのか、お答えをいただきたいと思います。
  29. 西郷吉之助

    西郷国務大臣 いま下山事件鑑定書等の問題についてお尋ねでございますが、いまお尋ねに発表したということがございましたが、これは私ども法務省並びに検察のほうではなくして、警察のほうの関係であると思われますので、警察のほうから御答弁いただくのが妥当ではないかと思います。
  30. 松本善明

    松本(善)委員 そうすると、これは警察のほうのことであるという趣旨のことは、これが違法であるかどうかということについては検察庁は別個の考えを持っておる、内閣考えには拘束されないんだ、こういうことになるでしょうか。それはそういうことがあってもいいと思いますけれども、そういうふうに考えている。この関口という発表をした人間は、私の考えでは、地方公務員法違反ということになろうかと思います。本人雑誌の中で、公務員法違反になるかもしれない、そのことを覚悟しながらも、しかし時効も成立しているし、本人の言うには、警視庁了解を得た。警視庁のほうは了解していないと言う。私の考えでいけば、これは地方公務員法違反考えているのですが、このことについては、検察庁としては内閣見解に拘束されることなく別個に考えるんだ、こういう趣旨でありますか。
  31. 西郷吉之助

    西郷国務大臣 重ねてのお尋ねでございますが、やはりいろいろなことがあると思いますけれども、要するに公表することが妥当であるような場合には公表いたしましょうし、また、その他公表してぐあいが悪いというような、たとえば御遺族のこととかいろいろデリケートな関係がありますから、公表しないほうがいいという場合もあるかと思いますけれども、これはそういう事態がございましたので、最終的には警察考えをお聞き取り願いたいと思います。
  32. 松本善明

    松本(善)委員 大臣、よくお聞きいただきたいのは、検察庁でありますとか警察当局が発表するかしないかということをきめるということは、それはあり得ることでしょう。しかし、やめました元警察官が、自分の知っていたことをかってに公表してしまったわけです。それが一体、かってにやられていいものかどうか、こういうことなんです。それがかってにやられて、答弁書によれば、内容秘密でないと言われるのだけれども秘密でないから違反でないというふうに書いてあります。しかしながら、内容は、先ほど申しましたように、供述調書が十数通、それから捜査会議内容が全部出ているわけです。そういうことをかってにやってもいいんだということになったら、そういう方針でいいのか、検察庁ないし警察というのはそういう方針でいいのか、こういうことなんです。それを政府として責任をもって答えてもらいたい、こういうことなんです。
  33. 西郷吉之助

    西郷国務大臣 お話しのように、公務員がやめたからと申しまして、現役当時のことを何でもしゃべってもいいというものではないと思いますが、しかし、警察のほうがどういう考えか聞いておりませんけれども、よく警察見解も聞きまして、最終的には答弁することが間違いないのじゃないかと思います。
  34. 松本善明

    松本(善)委員 法務大臣最後に聞いておきますが、総理大臣答弁なんです。質問主意書に対する答弁は、大臣出席をして閣議で了承されるわけでしょう。あれは次官会議もかかるわけでしょう。警察のほうのことだから知りませんというようなわけにいくのかどうか。そういうような程度で国会議員に対する答弁というのはされておるのかどうか。それでもいいのですよ、警察のことだから私のほうは知りませんということが最終的な答弁であるならば、それなりにその欠陥をただしていこうと思います。そういうものであるかどうか。
  35. 西郷吉之助

    西郷国務大臣 少し松本さんのほうに誤解があると思いますけれども、そういうお尋ねのような無責任のようなことを申したのではなくして、警察関係がございますから、慎重を期するために警察考え等も聞きました上でわれわれも御意見を申し上げたいということを申し上げましたが、ちょっと私、先ほど申し上げましたとおり、公務員であった者がやめたからといいまして、現役当時の事柄をかってに公表するということは妥当でないように考えます。
  36. 松本善明

    松本(善)委員 じゃ、またあらためてこの点は詳しく聞くことにいたします。大臣に対する質問を終わります。
  37. 高橋英吉

    高橋委員長 畑君。
  38. 畑和

    畑委員 それでは中断されておりました前の博多事件についての質問を続行いたします。たまたま国家公安委員長がお見えになってなく、また逆に法務大臣のほうが非常に急ぐようであるということで順序を入れかえてやった関係で、いままでちょっと聞きましたことは、博多事件の大体の経過を私がしゃべっておって、それが中断したわけです。  続いて質問いたしますが、博多事件経過については、もう十分国家公安委員長も御承知のはずであります。そして、あの問題についてその後準起訴手続がなされまして、その手続が進行中である。それに関連して、前田本部長から忌避申し立てが何回も出されております。その忌避の問題については、最高裁特別上告されておりますから、したがって、もう近いうちにその忌避権があるかどうかという問題については終局的な判断が下されると期待いたしております。この点、私ずっとあの問題についての新聞記事等を見てまいっておるのでありますけれども、常識的に考えて、われわれとしてはあの場合に通常の訴訟手続上の、訴訟法上の忌避は許されないものだと考えておったのですが、前田本部長が次々と忌避申し立てをされておるので一まあまだ判例的に確立されてない、そういった判例が出てないからというので、できるだけの抵抗をしようという気持はわかりますけれども、しかし、ああ何回も出していろいろやり合っているという形は、どうもあまりいい図じゃないというふうに思ったわけであります。一体この忌避の問題については、前田本部長等からあらかじめ警察本部長のほうへこういう忌避申し立てをするというようなことを連絡があり、あらかじめ了解されておったものかどうかということについてお聞きいたしたい。この点は、まあ大臣でなくて、警備局長でもよろしゅうございます。事務的なことだと思いますから、警備局長お尋ねいたします。あと大臣には別に……。
  39. 川島広守

    ○川島説明員 ただいまお尋ねのございました前田本部長忌避申し立てでございますが、これは申すまでもございませんように、申し立て権者は前田本部長でございますので、その状況等につきましては逐一報告を受けております。以上でございます。
  40. 畑和

    畑委員 そうすると、申し立てした者あるいはその被疑者というような立場におるのは前田本部長以下であるから、その人の自由であると考えて、特にどうこうという指図はしなかったけれども警察官立場にある前田本部長がやることであって、そういう意味であなたの本庁のほうへ逐次連絡はしてあった、こういうことですか。――わかりました。  そこで、実は先ほども私申し上げたんですが、これがなかなかの大きな問題になり、さらにはまたその後フィルムの提出命令その他の問題になって、いずれ川上さんにもあとでお聞きしなくちゃなりませんが、そういった問題にもいろいろ波及して注目を引いている事件でありまして、そこで私この間博多へ行ってまいった、先ほど申しましたが。私と、それから護憲連合の代表の方、それから現地の社会党の人、それからこの事件学生博多事件の刑事事件を担当した弁護士であると同時に、われわれの告発、それからまたさらにいまの準起訴手続、それらの代理もやっております福岡清弁護士を一緒に帯同いたしてまいりまして、そしてその事情をいろいろ各方面から聞こうと思いまして、真庭裁判長以下にも会い、井上正治教授とも会い、それから最後前田本部長ともお会いをする機会を得たわけであります。そこで調査をした結果について、さらに私の危惧というか、そういった印象を得たものでありますから、それについて一体国家公安委員長はどうお考えになるだろうかということについて聞きたいのですが、結局は、私は公務員としては適格性に問題があるのじゃないかというような、結論的に申しますと、そういう印象を受けておる。というのは、私が七月の三十一日に参りまして本部長に面会々求めたんですが、本部長は、私は衆議院議員である、それと同時にまた県会においてこの問題を取り上げた浦川君という県議会の議員、その方の二人だけとは会うけれども、ほかの人とは会えない、こういうことで入り口で押し問答をしましたが、いつまでそれではらちがあかぬので、私と浦川君で前田本部長とお会いしました。ところで、だいぶかたいことを言うじゃないかというような話等もしたのでありますが、前田君が言うには、警察関係の記者を同席させてください、こういう話だったのです。いままでかつてそういう申し出があったようなことは経験をしておりません。私は、全部の調査を終わってから、新聞記者の人たちと会見を予定しておりました。裁判所で、司法記者クラブが中心と思いますけれども、そこでわれわれの調査結果についての考え方を申し述べたいということで打ち合わせしてありました。ところがいま言ったような申し出でありますから、それは困るということで意見が対立いたしましたのでありますが、どうしてもたってそうしてもらいたい、そういうことで、そこで私も考えました。それじゃ、君はさっき拒否した弁護士福岡清君を立ち会わせるか、一緒にわれわれの一員に加えるか。そうしたら、困ると言っておりましたけれども、それじゃよろしい、ただし発言をさせないということで了解願いたい、こういうことであるから、せっかくわれわれの一団として来て、本人が拒否して、ようやく新聞記者の会見の問題、立ち会いの問題を一まとめでまとめて話をするということについては、その弁護士が発言をしないというようなことはあり得ない、困るということで、結局は発言をさせるということで、福岡弁護士もその会見に参加をさせると同時に、また警察関係の記者の方々にも立ち会いを許すということになりました。それで会見が始まったのでありますけれども、その途中におきまして、特に福岡弁護士が、私の発問した問題から、忌避の問題について、準起訴の問題について、真庭裁判長とお会いしましたときに私たちが聞いた話でありますけれども、当日の実情を明らかにするために、当日博多駅の集札口を中心とする警備体制、その編成や人名、こういうものをひとつ明らかにしてもらいたい、通知してもらいたいという官公署の照会を、裁判所から県警本部長のもとに、特にそういう点も配慮をして名前を入れず、官名、官職名だけで出したそうであります。   〔委員長退席、進藤委員長代理着席〕  ところが、それに対して協力が得られない。それで実は調査がなかなか困難をきわめておる、こういうような話等がございましたので、その話を申して、県警本部長としては、官公署の照会には、本部長として官公署であるから当然答えるべきではないか、その結果どうこうということは別問題である、自分が被疑者というような立場に置かれておるという問題は別問題であるから、そのときには当然それに応ずるべきである。それでなければ公務員としての要請にこたえてないことになるではないかということを申しましたところが、君たちは裁判所の使い走りか、こういうような発言があった。そこで実は福岡君も私もおこりましたけれども福岡君は特にハッスルして、その発言を取り消せというようなことで迫った。その後、片岡照征巡査――当時被告の学生を逮捕した巡査でありますが、その人が公務執行妨害を受けたということで問題になっておるのですけれども、その人がその当時おらない。裁判所も実はその行くえを追っているけれども、なかなかわからないというようなことだったから、その問題などを取り上げました。ところが、その片岡さんがその後に復職をいたした。一たん辞職をして、それから今度は機動隊に復職をしております。こういうような話等がございましたが、それで、それじゃ証拠隠滅じゃないかといったようなやりとりなどあって、黙れ、黙らぬというようなことなどあって、その会見は、そのまま、とうとう最後にはこの弁護士をつまみ出せ、こういうのでほかの人に指図をするというようなハッスルする場面までありまして、私も、みっともないからそんなあなた興奮しなさんなということでたしなめたのでありますけれども、なかなか一向おさまらぬというようなことで、そこに、すぐ目の前に、ちょうど大臣のおられるくらいのところに記者連中が十数人放列を敷いて写真をとったりなどいたしておりました、その前でのできごとであります。こういうことから、いろいろ考えまして、実は私の心配がやはりそういうところにあるわいというような感じを受けたのであります。そうして被疑者であるから、われわれは君らとも話はせぬのだ。国会議員の畑さんとだけはしようがない、会う。だけれども、ほかの連中と、おれは被疑者で、おまえら相手だから会えないといったようなことだった。あるいは最後のいろいろな暴言等にも発展する、こういうようなことで、私はどうも前田本部長が、そういう意味でも、裁判所からの照会にも応じないといったようなこと等からいたしましても、どうも公務員としての適格性を欠くのではなかろうかというふうに考えたわけでありますが、その点でその後にも「週刊ポスト」というような週刊誌にも、この「タカ派県警対ハト派地裁」といったようなことで、マスコミから取り上げられた。「七〇年安保に追われた? 良識派裁判長」こういったような見出しで「週刊ポスト」にも出ておりますけれども、その「週刊ポスト」に書いてある県警記者クラブのある記者の見方として、前田本部長「気が強くて親分肌。推理小説を書いて一人エツに入ったりする“文才”もあるが(『グランジェ氏の激怒』という自費出版の推理小説集がある)、政治的な判断もなかなか鋭く、真庭裁判長忌避申し立てに当たって『大将がフラフラしていては部下の士気にかかわる』といった言葉が彼の性格をいちばんよく表わしているだろう」こういうような批評もあるくらいであります。さらにほかの新聞、フクニチ新聞でしたか、には、「裁判官忌避問題」ということで相当大きな記事で「ねらいは部下の士気高揚か」、こういうような見出しでいろいろ記者の連中の匿名での対談が載っておるわけです。そういうことで、私としては一連の前田本部長忌避申し立てが、公務員としての適切な処置ではないのではないか。むしろ付審判事件の引き延ばしをやっておるというような感じを持っておるわけです。そういった全般の点から考えまして、前田本部長に対して、国家警察のほうの大臣を担当されておる荒木大臣として、どのようにお考えになっておられるか、それをお伺いしたいと思うのです。いま対立したような形になっておって、どうもうまくない。この辺に対する大臣見解をひとつ承りたいと思います。
  41. 荒木萬壽夫

    ○荒木国務大臣 私は、福岡県の本部長を公務員としての適格性がないとは考えておりません。むしろ公務員としての責任を大まじめに果たしておる一人である、こう思っております。
  42. 畑和

    畑委員 まことにどうも高姿勢な――高姿勢というのは評判があるけれども、そういう答弁が出るとは、まさかそこまでは思わなかったが、前田本部長の頼もしいといったような感じを大臣自身が持っておるから、したがって、第一線のさきに言った士気の高揚ですか、これをそのまま、前田本部長が部下に対して考えていると同じように、大臣がまた前田に対して同じように考えておる。したがって、いまの高姿勢な前田を完全に弁護する答弁が生まれたと思う。そこに私は問題があると思う。大体国家公安委員長は、この前予算委員会で私の見ている前で、あなたは井上教授についての大ばかものという発言をした。それがあとで問題になって取り消した。ところが、その後また別の集会でやっているじゃないですか。あなたは井上正治は大ばかものだと、日経連かあるいは何かの問題について言っていましたね。新聞に出ておりましたよ。それを見まして、国会で取り消したものを――取り消さなければいいのです。あなたは取り消さなければよかった。突っぱねればよかった。それを取り消した。取り消したことを、同じことばをまたほかの講演でしゃべっていることが新聞に出ておりました。依然として高姿勢。高姿勢のところを買われておる面があるかもしれぬ。したがって、部下のほうは頼もしい親分だ、こう思っておるかもしらぬけれども、それじゃ大衆が困るのです。そういう警察では、私は困る。警察は、あくまでも憲法に従い、刑事訴訟法に従い、警職法を忠実に守って、違法警備過剰警備をしない、そういう警察官でなければならない。また、警察法も守らなければならぬ。そういう態度でなければならぬと思うのだ。したがって、私は、この前田本部長のああしてマスコミに対してえらい活発に発言をしているところが、実は苦々しく思っております。あたかも裁判所警察との対立というような感じをますます抱かせるようなあり方だ、私はかように思うのです。ところが、どうも間違いない、りっぱな県警本部長だ、こう言われるのだけれども、これに対して私は善処をする考えはないかというように聞きたかったのだが、あなたのそういう答弁からは、そういったものも出てこないと思う。いかがでございますか、私もいろいろ申しましたが、ああいうことは好ましいと思われますかどうですか、もう一度ひとつ答えていただきたい。
  43. 荒木萬壽夫

    ○荒木国務大臣 この話、ことばが上品であるか上品でないかという批判の余地はあるかと思います。私もつい大ばかものと言いましたが、賢くない人であるとはいまでも思っております。用語があまりに直説法でありすぎて、国会で予算の審議にも関係があるから取り消したらどうだというおすすめもありまして、なるほど、それもそうだと思って、大ばかものと申し上げましたのは用語が適切でないから取り消しますということを朗読いたしたことは、承知しております。その意味において、私ももうちょっと上品なことばで話す努力をすべきだとは思っちゃおりますけれども、私のみならず、前田本部長がどういうことばをどういうときにどう使ったかということは、るるお話もあったようですけれども、要するに用語の不適切の点がお気にさわっているようなお話かと承りましたから、その範囲内においては、人間的な一種の個人的修業をすべき問題で、修業が足らないという非難はあり得ましても、それ自体が公務員として不適任であるということではなかろう、こう存じまして、さっきのような答えを申し上げた次第であります。
  44. 畑和

    畑委員 いや、ますますもって聞き捨てならぬと思う。それは予算委員会でしゃべったことばが不適切だというので取り消したらどうだというような話があったから、予算委員会を円満に進行させるために、そのあれに従ったのだという話であります。ところが、それと同じことばをほかで言ったでしょう。そういう発言をしたかどうかについてまず聞きましょう。そういうことがあったかないか。そうだとすれば、ではもっと上品なことばを使ったらいいじゃないですか。大ばかものということをまた再び発言しなければいいじゃないですか。ことば自体が少しぐあいが悪かったということは、少なくともあなたが意識しておるとすれば、それこそあなたの大臣としての適格性が問題なんですよ。いまの民主警察の一番上になっている人には、ふさわしくないと私は思うのです。その点であなたに言っているのです。あなたは調子に乗っているかもしれないけれども、大きな間違いですよ。いまもてはやされておる全学連を弾圧しておるから、おれがやらなければだめだろうという気だろうけれども、全学連のあれはわれわれだって否定していますよ。だけれども、そうした高姿勢的な態度は、私はぐあいが悪いだろうというのです。それを、あなたは平気でいまも自分のあれを支持している。私はいま記録はないのですけれども、どっかで大ばかものと言ったのは出ていますよ。一体それを言ったか言わなかったか、言ってください。それで、適切でなかったことだけは少なくとも反省しているのだが、心情的には同じなんだが言い方が少し悪かったということだけですが、それだけは認めているのですから……。しかも、予算委員会の進行をうまくするようにということなんてけしからぬですよ。国会を否定していますよ。私は、あのとき分科会の担当の主査をやっていたのですから、それでよく知っていますけれども、そういうことはやはり大臣答弁としてはふさわしくないだろうと思う。その点、不適格性はむしろあなた自身にあるのではないか、そういうふうに思っております。どうですか、ほかで言ったことを言ってください。
  45. 荒木萬壽夫

    ○荒木国務大臣 私の用語の不適切さを御指摘でのお話でございますが、おっしゃられれば、適切であったとは思いません。さっきも申し上げたように、もうちょっと上品なことばで表現する努力をしなければならぬとは思っております。ただ、子供時分から使いなれたことばなものですから、つい出っちまいます。九州にお生まれの方は御共鳴いただけると思いますが、九州弁で「ばか」というのは、一種の愛称でもあります。ただ、一般的に国会ないしは東京あたりで申しますと、私どもの子供心から定着しておるようなニュアンスとは違う受けとめ方をされるなあということを発見いたしまして、その意味で用語は慎むべきだということは、私自身も考えております。郷里に帰りまして、私が自民党のいなかの支部長をしているものですから、定期大会をやりまして、一くさりしゃべろと言われまして、心やすだてについ九州弁そのままのニュアンスで申しましたことは事実であります。しかし、いかに何でも、井上正治法学部長を非常に賢い人だとは私は思わない。賢くない人であることは確かである、かように思っておりますから、そのことの早わかりの九州弁を使う人々の前にわかっていただく意味においては、つい国会での取り消しましたことばそのものが、警戒心が薄れましたせいか、また出たわけでございまして、それ自身が上品なことばとはむろん思いませんけれども、今後にもっとそういうことばを使わないでよくわかってもらえるような表現を勉強したいと思います。
  46. 畑和

    畑委員 大臣が歯に衣を着せないでずばずば言うというところが、また人気のあるところかもしれません。だけれども――、そういうことはわかりますよ、九州人ということば。それはわかるけれども、九州人は、ばかということをあほうと言うわね。関西もそうですが。そのときのあほうというのは、だいぶ感じが違いますね。正式の標準語の大ばかものというのと、あほうというのとちょっと違う。そういうあれもあるけれども、いずれにしろ、やはり大臣がそういったことでやっていると、部下おのずとこれに見習うということで、それでだいぶ元気がついて、場合によってはやり過ぎるということになる可能性があると思うのです。したがって、その用語についてはいま注意すると言われましたけれども、これはやはり人格修養の問題です。あなたもそういう意味じゃあまり人格が高くないと私は思う。もう少し、そんなことばを使わぬでも、もっとほかの形で部下を激励したほうがよろしいと思います。そういうことが、さっき言ったように、だいぶ悪いほうに影響するおそれがある。前田本部長もかばわれて、頼もしい部下だとか、こう思われている。調子に乗っている。調子に乗せちゃいけませんよ。それで、最初に私が会ったときに言ったことばは何ですか。井上正治教授と会いましたか、会いました。そうしたら、井上君はしょうすいしているでしょう、やせたでしょう。何ですか、これは。それからまたさらに、真庭裁判長と会いましたか、会いました。真庭裁判長はいま世論の前に立って非常に苦しい立場に立っていますね。こういったことば、これは一体腹の中では非常に高姿勢な態度ですよ。そうしておいて、私に記者団と目の前で会見さしてください、こう言うものだから、こいつときましたわい。なかなかの政治家だ。しかしながら、政治家としても、どうも逆にいうと、少し知恵が足りないと私は思ったんです。お坊ちゃんだなという感じを受けたんです。そしてしかも態度は傲慢ですよ。そして福岡君に対しては、初めからおまえです。私と行った人に、同行者におまえと言われて、私だけに対して先生先生と言われたって、いい気持ちは少しもしませんよ。私はそれで言っているんです。これは人間の問題です。上、大臣がそれだから、また下の県警本部長、それで激励されているからと思っていい気持ちになっている。それだと大間違いだ。むしろマスコミはやゆ的に書いているんだと私は思いますよ。その辺をもう少し考えて、全日本の国のことを考えてやってもらう必要がある。いつまで議論していてもしようがありませんから、この点は、大臣もまたほかにもあるようだから、以上で大臣に対する質問は終わります。けっこうです。
  47. 進藤一馬

    ○進藤委員長代理 中村重光君。
  48. 中村重光

    中村(重)委員 大臣に二、三点お尋ねしますが、私は九州だけれども大臣のどんな答弁があっても大ばかものとは言いません。だけれども率直にひとつお答え願いたい。あとで警備局長に具体的な問題でお尋ねします。  一般論としてお尋ねしますが、警察の人事ですね、これはまあ最高幹部の――最高というか幹部の人事ですが、それは、七〇年対策という形でいまやっておりますか。
  49. 荒木萬壽夫

    ○荒木国務大臣 国家公安委員会としまして、自主的な立場で七〇年対策としての人事などということは、話題にも出たことはございません。
  50. 中村重光

    中村(重)委員 長崎の警備部長になって来た郡、これは先般川島局長に御連絡したが、私は七〇年対策として長崎にやられましたと言うのです。しかもそのことばだけではなくて、もうわれわれに対する態度というのは実にけしからぬ。これこそ私は公務員の資格はないと思う。名刺を交換してあいさつをする。用件も何も聞かないで、頭から部下の報告――部下といっても課長ですが、その報告を聞いて、君はつるし上げられた、けしからぬ、おれをつるし上げるならつるし上げていいぞ、これが初対面のあいさつなんです。それでわれわれは引き揚げてすぐ川島局長に、こういう不都合な言動をするのでは話にならぬじゃないかと申し上げたのですが、しかし、これは具体的な問題で時間がだいぶかかるから、この点はこの程度にとどめます。  次に、労使の交渉の場に機動隊が出動をする場合はどういう場合か、どのような手続で行なわれるのか。具体的な手続ですから、事務的なことになるわけですが、そういう意味でお尋ねしているのではない。公安委員長として、労使の関係に対して機動隊が出動するというような場合は、こういうような場合でなければならぬという、いわゆる基本方針があるだろう、そういう意味で委員長お尋ねするのです。
  51. 荒木萬壽夫

    ○荒木国務大臣 労使の相互の問題に関連して、当然に警察が介入するということはあり得ないと思うのです。ただ大学にも、本来無縁のところに警察が出かけておる実例は、万々御承知のとおりであります。それと同じように、そこに犯罪がある、不法行為があるとするならば、それを知った警察が、知らぬ顔をすることは許されない。これは警察法の趣旨であり、警察官職務執行法に基づきましても当然の警察の職責であろうと思います。だから、そういう不法行為があるがゆえに、労使の問題であろうとなかろうと、大学の中であろうと外であろうと町であろうと、本来の警察の職責を果すべき犯罪の予防、ないしは鎮圧、あるいは検挙などということを必要とする警察としては、当然にその職務を行なうために出かけるという事態においてであればあり得ると思います。そうでなくて、何もないのに労使関係警察が出かけるなんということ、それ自体が不当であり、不法であると思います。
  52. 中村重光

    中村(重)委員 何もないのに出動するということはあり得ないですよ。私が言ったのは、出動するという場合は、必ず民間の企業の場合は資本家、経営者のほうから、それから公企体なんかの場合は管理者の側から出動を要請するだろうと思うのですね。その場合、要請があったから、内容というものを調査をしないでそのまま出動するということがあっていいのかどうか。どんなに要請があっても、これは出動すべきである出動すべきでないというような慎重な判断というものが、特に労使の関係の場から出てくる問題に対しては、慎重に配慮されなければならないのではないか。そのことをお尋ねしているのです。
  53. 荒木萬壽夫

    ○荒木国務大臣 これもやはりさっき申し上げましたように、労使関係もさることながら、大学問題だって同じことだろうと思う。本来、大学側が要請しなくたって、不法行為があるならば出かけていくべきであるというものではありますが、原則はそうでありましょうとも、そこに大学の管理運営の責任者がおる。ことに国立大学であるならば、公務員がいる。その公務員がいるのに、それからは何の連絡もないのに、ただいきなり出かければよろしいということは、これは手続というか、常識的な判断としては、直接法過ぎるという非難ばあり得ると思う。それと同じ意味において、労使の問題におきましても、さっき申し上げたとおりと原則は思いますが、ただお話しのとおり、そこに会社側もおるだろうし、使用者側もおるだろうし、組合側もおるだろう。だのに、それとは全然無関係にいきなり出かけていくということは、望ましいことではないかもしれぬと思います。手続その他が慣行上どうなっておるかは存じません。
  54. 中村重光

    中村(重)委員 それから出動をして今度は排除をする。どういう場合に排除が行なわれるか。労使の間に話し合いが持たれる。もちろんそれが正常な形において持たれている場合は、これは出動しても、排除なんということは考えられない。ただしかし、そこで非常に何というのか、お互いに興奮をして議論をしている、そういう場合は、排除するということになるのかどうか。排除の場合は、これはもう排除しなければ、労使の関係において、そのいずれか一方の身体に危険が生じる、こういったようなきわめて緊迫した場合に排除が行なわれるだろう。また、これは警職法のたてまえでもあろうと思うのです。排除はどういう場合になされるか。
  55. 荒木萬壽夫

    ○荒木国務大臣 お尋ねの問題の具体的な事象を全然存じませんので、お答えできません。ただし、さっき申し上げたことを繰り返すことをお許しいただきますが、いかなるときにどういう手続で出かけましょうとも、そこに警察の職責を果たすべき課題がないときに出かけるべきじゃない、これはもう当然のことだと思います。具体的なことは、必要ならば政府委員からお答え申し上げましょう。
  56. 中村重光

    中村(重)委員 そこで今度は、出動をしてから、かりにピケ隊がおったとする。そのピケ隊に対して警察が進んで積極的に攻撃を加える。私はもう端的に申し上げると、暴行をこのピケ隊に加えることがあっていいのかどうか。あるべきでない、これはもう当然のことだろうと思いますが、委員長はどうお考えになりますか。どういう場合に機動隊がみずから進んで攻撃を加えるか。
  57. 荒木萬壽夫

    ○荒木国務大臣 これもどうも私がお尋ねに明確に答え得る能力を持ちませんが、抽象的に申し上げ得ることはいままで申し上げたことに尽きると思います。たとえば、管理者が退去を要求したのに退去しない、不退去罪を構成するとか、何かしらそういう不法行為が具体的にありと認められないときに、警察が、いかなる個人であろうと部隊であろうと、行動する場面は出てきっこない問題である、そう思います。
  58. 中村重光

    中村(重)委員 そこで、具体的な問題は警備局長あとお尋ねすることにいたします。委員長に対する質問はこれで終わります。
  59. 進藤一馬

    ○進藤委員長代理 松本善明君。
  60. 松本善明

    松本(善)委員 国家公安委員長にちょっとお聞きしておきたいのですけれども下山事件捜査記録の公表に関して七月二十八日に質問主意書を出し、それについて総理の答弁書が来ております。それによる結論が非常に私たちにとっては不審に思うので、この点についての公安委員長の方針を聞いておきたいわけです。  元警察官でありました関口という人が発表いたしましたのは、解剖立会い報告書から供述調書が十数通、検察庁警察の首脳の捜査会議内容、そういうものが全部雑誌の「新評」というものに出ておるわけであります。私どもは、そういうものは個人の判断で出すということになれば、これは地方公務員法に違反するのではないかというふうに考えたわけです。いまも、国家公安委員長がおいでになる前に法務大臣にいろいろお聞きしていたのですけれども捜査の中で知り得たことをかってに発表することはよろしくないということを言われた。警察のことなので、詳しいことは警察に聞いてほしいという話でありました。もしこういうようなことが行なわれていきますとなれば、一応かってに発表して、あとから内容がたいしたことでないからかまわないのだ、こういうことになっていった場合には、捜査官の中の規律というものが全くなくなってしまうと思います。いま、御存じのように、警察官が覆面パトカーを酔っぱらって運転してやってきて、そうしてそれを取り締まるべき警察官が酔いをさまさせてから飲酒量の検査をする。警察官であれば何をやってもいいかのような風潮が、方々で起こっている。こういうことを考えると、これはゆゆしいことだと考えておるわけなんですけれども一体捜査官はその知り得たことをかってに発表してしまってもいいのかどうか、そういう考えでやっておるのかどうか、この点についての責任あるお答えをいただきたいと思います。
  61. 荒木萬壽夫

    ○荒木国務大臣 結論から先に申し上げれば、好ましいことではないということだけは申し得ると思います。私も、下山事件そのものは、昔新聞で読んだ程度で実態よく知りませんので、一応お答えする要点を相談して書いておりますから、読ましていただきます。  下山事件は、二十年前にきわめて重大な事件であるということで喧伝されておったのでありますが、当時の警視庁におきましては、最大の努力を傾けて捜査に当たりましたところ、残念ながら自殺、他殺を明らかになし得ぬままに時効が完成しておることは、御承知のとおりであります。このような事件につきまして捜査に従事した者が、今日手記を発表するということにつきましては、私どもとしてはもちろんすすめるような筋のものではない。と同時に、本人が自分の責任において書く限り、すでに退職しておる人でもあるようですから、これを事実上とめることはできないのでございます。しかし、書きますときは、できる限り慎重であってもらいたい。特に機密に属するようなことを――公務員法上とういう解釈であるかは、私も法律的には申し上げかねますけれども、機密に属するようなことをやめたからじゃんじゃん発表するなどということが一般的に許されるものじゃなかろう、少なくとも慎むべきことであろうというふうに存じます。
  62. 松本善明

    松本(善)委員 こまかいことはあとからお聞きいたしますが、この問題については、私はたいへん重大なことなので、この総理大臣からの答弁書によれば、これは違法でないということをいわれておるわけです。しかも警視庁は許可をしてないということもいわれておる。それでこれは退職したあとも、もちろん地方公務員法違反にかかるわけであります。その問題について、総理大臣答弁書がこういう形で出るとは、夢にも思わなかった。非常に大事な問題でありますので、きょう委員長が退席されたあと、詳しく私は警察庁法務省の人に聞きます。その速記録を十分検討をして、あらためてこの総理大臣答弁書というものが一体正しいかどうか、さらに検討をして、この問題について処置をしてもらいたい、こう思います。いかがでしょうか。――そういうことについてあらためて検討する必要があるんじゃないか。いま委員長の言われたのでは、好ましいことではない、法律的にはよくわからないけれども、という話ですけれども内閣答弁書では、警視庁は許可をしていないけれども、違法ではないという答弁が来ておるわけであります。全く理解に苦しむものであります。この点について、さらに十分検討し直すということについていかがでしょうかと言っているのです。
  63. 荒木萬壽夫

    ○荒木国務大臣 後ほど政府委員にもお尋ねがあって、その上で松本さん御自身も御検討の上にあらためて質問もしたいというような御意向が漏らされたと聞きましたが、松本さん御自身がそういうことであります限り、あらためて御質問があったときにノーと言うわけにはいかぬだろう。
  64. 松本善明

    松本(善)委員 そうですがね。あらためて質問があったときにノーと言うわけにいかぬということでなくて、これはほんとうならば、委員長の時間があれば、きょう十分にやりたいところであります。やりたいところでありますが、この点について相当の問題があるということを、いまのお話だけでもこれは感じられてしかるべきものではないかと思います。そういう点での検討と、国会での質問のあるなしにかかわらず、もう一度この点については、内閣答弁書を出したけれども検討する必要があるというふうにお考えになれば、これは国会答弁のあるなしにかかわらず、検討をされたい、こういうことであります。
  65. 荒木萬壽夫

    ○荒木国務大臣 内閣としてのお答えを申し上げておりますことそれ自体をかれこれ申し上げるわけにもいかぬと思うのですけれども、しかし、いまお話もあることですから、あなたがこの次にお尋ねくださるかどうかは別としましても、どういう気持ちであなたがそう言われておるのか、われわれとしてもっと検討する余地があるかどうかということは、これは私らが自主的に勉強する課題ではあろうと思います。
  66. 進藤一馬

    ○進藤委員長代理 この際、申し上げます。  日本放送協会専務理事川上行蔵君が参考人としてすでに出席されております。川上参考人には、御多用中のところ長らくお待ちいただきまして、まことに恐縮でございました。  中谷鉄也君。
  67. 中谷鉄也

    中谷委員 七月四日の法務委員会におきまして、私は、報道の自由と捜査における真実の発見というものは、現実の問題として矛盾を生じてくるが、調和できるものかどうか、いかにすれば調和が可能なのかどうかという点について、報道の自由、報道の中立というものの大事さを前提とした上で数点お尋ねをいたしました。本日も法務政務次官及び法制局の御出席をいただきましたのでお尋ねいたしたいと思いますが、川上参考人にとりあえずお尋ねをいたしたいと思います。  前回参考人は、社会の公共的な福祉あるいは個人の人権、それにあわせて言論の自由という、この三つ憲法上保障された国民的な基本的な権利であって、その三つの調和の上に立って報道の自由、言論の自由というものを主張すべきであるということをお述べになりました。さて、その後いわゆる博多事件といわれているところの事件のフィルム提出の問題、さらに本日の新聞報道によりますと、週刊朝日に対するところの掲載写真のいわゆるネガ提出の問題など、報道の自由と捜査のあり方についていろいろな問題が生起をいたしております。当法務委員会委員といたしまして、具体的な事件についてお尋ねをすることは差し控えたいと思います。すでに本件について、ことに参考人のおつとめになっておられるNHKにおきましても、いわゆる利害関係人の一方になってすでに具体的な事件になっておるので、このことについてお尋ねをするつもりはありません。ただあらためて私はお答えをいただきたい。それは報道の自由と捜査における真実の発見というものとは現実の問題として矛盾する問題があるが、ではいかにして調和をさせるのか、この点についてはどのようにお考えなのだろうか、まず最初にこの点についてお答えをいただきたい。
  68. 川上行蔵

    川上参考人 いまお尋ねの点につきましては、七月四日のこの委員会でも同じ趣旨で御質問がございましたので、私はその当時申し上げた意見と全く変わらない理念と申しますか、考え方を持っております。ただ一点、ここまで事態が各方面に取り上げられまして、各新聞の社説、あるいは論説、あるいは全新聞社がこれに対してどういう声明を出すか、態度決定を迫られているというこの際にあたりますので、ひとつ私の考え方を申し上げてお許しをいただきたいと考えます。  それは、こういう問題が起こりましたことは、私は、戦後二十五年間、報道というものが社会を構成する上において非常に大きな意義を持ってきたのだというように考えられるわけでございます。それはやはり民主主義社会というものが、国民各自の判断の上に立って、しかもそれが国会を通じて反映し、国のいろいろな政策あるいは法律の上に反映してくるということになりますと、全国民が真実を知るということは基本的な大前提で、その上に立って民主主義社会が成り立っている。そういう上に立って報道というものが戦後非常に大きなウエートを占めてきたことは、社会の成立の根幹であるということを各方面に認識していただいてきた、その結果がこうなってきているのだと思います。同時に、報道機関もそういう観点から、上から与えられたことを伝えることは報道ではなくして、真実を伝えて国民判断に供しようということを自覚してきた、そういう態度にまた基点を求めてきたというような気がいたします。そういうような両面から見まして、民主主義社会をつくるために、われわれの報道の自由、言論の自由あるいは取材の自由というものを守ることが、いまこの際要求されることの最大の問題ではなかろうか。そのために、証言拒否ということは世界の各国においてもかなり認められてきた。それと同じように、取材の自由なり、あるいはいま具体的に問題になっております写真の提供、そういうことも本来の目的以外には使用されては困るのだということも、いま最初に私が申し上げましたその理念の上に立って社会的に理解を得たい。同時にまた、現実の法律というものがそういう事態の上に立ってつくられておる法律であろうかどうかということをあえて伺いたい。そういうことが、今回この裁判をあえて提訴した、即時抗告なりあるいは一般抗告なりを提起した大きな理由であるということを御理解いただきたい、このように思います。
  69. 中谷鉄也

    中谷委員 そこで、あらためて私のほうから次のような点について、前回の質問に引き続いてお尋ねをいたしたいと思うのです。と申しますのは、前回私は、いわゆる犯罪の態様、その反社会性、あるいはその取材されたフィルムが有罪の証拠に連なるか無罪の証拠に連なるか、そういうような点のケースごとの提出について、報道機関として協力する場合もあり得るのではなかろうかというふうな趣旨お尋ねをいたしました。これについての参考人のお答えは、要約をいたしまして、私の理解をいたしますところでは、そういうふうなこまかい問題はあるだろうけれども、そういう個々のケース一つ一つが積み重なることによって基本的なことがくずれてしまったならば、長い目で見るとやはりかえって社会的にあるいは公共の福祉にもそむくということを心配する、こういう御答弁であった。ところが、同時に、同委員会において、参考人お聞きいただいたと思いますけれども法務省の豊島説明員の答弁の中に、任意に新聞社がフィルムを提出した事実はある。これは昭和二十七年のメーデー騒擾事件の際であるけれども新聞社から当日の現場の状況を撮影いたしました写真を、これは買い受けをいたしておる事実があるのだ、こういう趣旨答弁がありました。そこで、その間の事情について調査をいたしてみますと、これは聞くところによりますと、弁護人検察官が合意をいたして、裁判所了解を得て検察官のほうから、法務省を通じてであろうと思いますけれども新聞社にお願いをしてそのフィルムの提供を受けたというふうな事実関係であるらしいのです。そこで、個々のケースについてここまで具体的な事件においても話が煮詰まってまいりますと、やはりこういう場合はどうだろうということを、この機会に調和を求めるという点で私はお尋ねをしておいてもいいのじゃないかと思う。たとえば裁判において、弁護人検察官が合意をして、ともに報道機関に対して裁判所を通じてフィルムの提出を求めるというふうな場合は、はたして報道の自由、報道の中立とどのような関係になるだろうか。これはひとつ一般的に、個々のケースというのではなしに、そういう場合はおおむねというふうなお答えがいただけるのじゃないかと思う。それが一点。  いま一つは、今度の二つの事件に共通していえることは、ともにいわゆる権力側の、要するに権力を持った人たちが、いわゆる特別公務員陵虐罪、職権乱用その他になりかねない。そういうようなことについての証拠になる可能性のあるケースのように私は思うわけです。したがいまして、権力を持った者と権力を持たない者とのその証拠にする――権力を持った者が犯罪として問われていて、その者が有罪になる証拠になる場合と、権力を持たない者の有罪の証拠になる場合についてのフィルムの提供とは、異なるとお考えなのかどうか、これが第二点。  いま一つは、その証拠がその人の個人の人権に関係してまいると私は思いまするけれども、唯一の無罪の証拠に連なる、そういうような場合も、報道の自由、報道の中立ということで、一般的には協力が拒否さるべきものなのだろうか。有罪の場合と無罪の場合において異なるべきではなかろうかというような点、その他いろいろな、ここまで話が煮詰まってまいりますると、そのあたりも含めて、長期的な展望、長い見通しの中で、一般的にいって報道の自由はケース・バイ・ケースで考えなければならぬけれども報道の自由の上においては、取材したものの提供を拒否するのは正しい、これも私は一つの御見識だと思いますが、そのあたりも私は国民が知りたがっていることだろうと思うし、報道機関のあり方として国民もまた検討いたしたいことだろうと思うので、お答えをいただきたいと思うのです。  なお、本日は質問の時間がたいへん制限されておりますので、第二の質問を続けていたしますが、前回立法化の問題について、各政府委員に対して私若干質問をいたしました。参考人についても若干のお尋ねをいたしました。立法化して、この二つの問題、すなわち報道の自由、報道の中立性を守るということと、いま一つ捜査ということによって真実を発見をする、あるいは裁判を通じて真実を発見するということとを調和させるためのいわゆる立法化というものに、どんなものがあるだろうか。ことに、すでに前回も指摘をいたしましたように、この場合は報道の自由という観点に立って考えるべきだ。すでに九十年も前に、アメリカのある州においては証言拒否法が制定されておる。こういうような法の立法というものは、急がるべきではなかろうか。そうでなければ、今後とも裁判所報道機関を通じてのいわゆるこの種の相対立した紛争というものは絶えないのではないか、こういうようなことを私は国民の一人として憂えます。この点についてひとつお答えいただきたい。  たいへんお待ちをいただきまして、私は質問はかなり準備をいたしましたが、時間の都合で以上で質問を割愛いたしますが、この点についてお答えをいただきたい。
  70. 川上行蔵

    川上参考人 二点お尋ねをいただきました。初めの一点につきましては、これを三つに分けることができるかと思います。  それから第二点は立法化の問題。私は、実は逆に立法化の問題のほうから先にお答えをさしていただくことをお許しいただきたいと思います。  私たちは、今回の問題の経緯、あるいは七月四日の際の御質問以後あるいはそれ以前、いろいろなケースを予想いたしまして、こまかく問題を検討いたしてまいりました。同時に、そのこまかい問題を検討しながらも、やはりわれわれがこういう態度と申しますか、全面的に拒否をするということは、いま申し上げましたような提出の義務というものが全面的に認められておって、その中で今度はケース・バイ・ケースで報道機関の自主的な立場において提出が許されるならば、またその場合の考え方があろう。しかし、現在の法律のもとにおきまして、特に情報化社会といわれ、国民みんなが真実を知りたがっている、また知らせなければいけないという時代に、その大事な原則が認められていない際に、個々のケースに応じていくということは、その原則がつくられる時間をいたずらに遷延させる、あるいは原則がつくられようとする空気さえも逆に言えばぶちこわしてしまうという危険を感知して、こうして私どもはいま起こっている事件につきましての抗告をしておるわけであります。そういうような意味におきまして、できるだけ早く立法化をしていただきたい。その立法化の過程におきまして、いま先生からお話がありましたような第一の質問の三点、そういうこともあわせ配慮いただいた立法化ができるならば、われわれはまた喜んで応じなければいけないという気もいたします。  そういうふうな意味におきまして、逆に第一問に返りますならば、前回も私が申し上げましたように、やはり個々のケースに応ずることによって報道機関の生命とする基本的な原則が、いつまでも旧態依然とした旧社会の、情報社会が生まれない以前の社会組織に応じたような形での運用をされる危険があるということで、先生から最初にお話がありました三点についても、お断わりするのが原則じゃなかろうかというように考えておるわけであります。
  71. 畑和

    畑委員 川上さんも忙しいから、ちょっといま中心的な点について彼に先に質問してもらったのです。私の問題は博多事件関連している問題です。さらにまた、きのうあたり東京地裁で何かあったようですね。羽田事件ですか、写真の云々というあれがあったようで、いまその点が非常に問題になっておる。そこで、この前中谷君が川上さんに質問したときに、関連して私も質問したのですが、いろんな場合があると思うんです。特にこの博多事件の場合には、どうしてもあのときの状況を再現するには、具体的な真実を発見するためには、あのとき報道陣が写してくれたフィルムあるいは写真、そういったものがあることによっていろいろ事件のきめ手になる。人権が問題になっているときにそれを出してもらえないか、こういう裁判所の最初は任意提出の要請であった。それに対しておたくたちは断わられた。今度は提出命令が出た。それに対しても報道の自由を守るということで拒否をされて、いま裁判手続抗告をされておる、こういうことです。私、その点はよくわかります。報道の自由を守る、守るべきである、表現の自由を守るということについては、私も同感であります。かって国学院大学の学生が例の騒乱罪のときに写した写真を検察陣、警察側のほうでいろいろ手をかえ品をかえて裁判所の命令をもらって一たん押収した。それがまた異議が出て却下になったということの事件がありましたときに、私当局に対して質問いたしたのですが、そういう点では私は、報道の自由を守る、表現の自由を守るということについては人後に落ちないと思うのです。ところで、そういう点についてきめ手になるということで、最後に提出命令になった。おたくのほうは、先ほど申しました前田本部長の場合と違って民間でもありまするし――民間と申しますとちょっと語弊がありますかもしれませんが、そういう立場にもありますし、報道の自由を守るためには最後まで手を打とう。私、それでよろしいと思う。しかし、最後には、私はおそらく提出命令からさらに押収、差し押えということになると思う。具体的真実を求めるためには、裁判所最後はそこをやる。また、やらなきゃいかぬのだ。しかし、裁判所もそういう点については慎重を期していままできていると思うのでありますが、そういう点で先ほど中谷君の言われた、要するに権力側のあれであるかどうか。この場合には――普通は権力側の警察のほうあるいは検察のほうの側から命令を要請して裁判所がやる。実際には実権は検察側、警察側が持っている、ただ命令をもらうだけだという問題とは違って、このこと自体が裁判官付審判の請求について審理をしようということであるから、ほかの場合とちょっと問題が違うと思うのでありますが、そういう点で、あなたのほうで最後までその処置を講じておられることはわかりますけれども、その辺について川上さんはどう考えますか。
  72. 川上行蔵

    川上参考人 七月四日の際に、先生から実は同じ御質問ございました。それは、検察当局の提出命令ではなくして裁判所からの命令とすればどう考えるかというお話でございましたので、私は、やはり同じ趣旨でお断わりするのが本心だということを申し上げました。それは中谷先生の御質問にもお答えしましたように、真実を報道するためには、やはり取材の自由ということ、そのためには民間の方々あるいはその関係者の方々の報道のためには協力しようという御趣旨あるいは無言の理解というものを十分前提にして判断しなければいけないんじゃないかということがありましたので、申し上げたわけであります。  今回の場合におきましても、権力者であろうがあるいは非権力者であろうが、やはりこれが裁判の証拠になるということにつきましては、十分にわれわれとしては慎重な態度で臨まなければいけないということは変わらないつもりでおります。そういう意味におきまして、先ほどお答え申し上げましたような趣旨で、報道機関というものが、新聞とかテレビとかいうものがとかく対立しておりましたけれども、この事件に関する限りは歩調をそろえてみな同じ態度に出ようとしておるのは、いま申し上げましたような取材の自由あるいは報道の自由ということを守りたいためだということが、今日の国民の要望というものにこたえる、そのこたえることを求めてきている社会の動きと現在の中における法律のあり方というものの矛盾がそこにもあるんじゃないかという気がして、こういうことになっているんじゃないかという気がするので、私は特にこういう処置を現在進めておるわけです。その点をひとつ切に御理解いただきたい、こういうふうに思うのです。
  73. 畑和

    畑委員 わかりました。よろしゅうございます。
  74. 進藤一馬

    ○進藤委員長代理 この際、参考人に一言ごあいさつ申し上げます。  参考人には、御多用中にもかかわらず、長時間本委員会に御出席いただきまして、貴重な御意見の御開陳をいただき、まことにありがとうございました。どうぞ御退席ください。  質疑を続行いたします。中谷鉄也君。
  75. 中谷鉄也

    中谷委員 畑先生の御了解をいただきまして、私恐縮ですが、引き続いて一点だけ法務政務次官とそれから真田部長さんに、先回お尋ねしたことと同趣旨質問になりますけれどもお尋ねをしておきたいと思います。それ一点で終わります。  法務政務次官に対するお尋ねは次の点です。要するに、前回、報道の自由、報道の中立を守るための、たとえばアメリカにおいてはすでに証言拒否法というようなものが制定されている。そういうふうな立法化について研究をされるというふうなお話の御答弁がありましたが、さらに一歩を進めて、これだけ問題が社会問題化してきた中においては、立法についての検討をされる、そういう作業に着手するべき時期に私は来ているのではないか、こういうふうに考えるわけです。この点についての次官の御答弁を私はいただきたい、これが一点であります。  部長お尋ねをいたしたいのは、前回非常に詳しく御答弁いただいております、現行法制がそのままで完ぺきかと言われると、確かにそれは論ずべき、研究すべき点があろうと思う、この点についてはひとつ十分に検討してみよう、こういうふうな部長のお話があった。現在の段階において、七月四日そういうふうなお尋ねをいたしまして、今日ほぼ二カ月を経過してきている。その後いろんな問題が生じてきているわけでございますけれども、現行法制のもとにおいて報道の自由、報道の中立性――先ほど川上参考人もいろんな意見を述べられましたが、法制局の御専門の立場から、どのような点が研究され、問題にさるべきか、こういう点について、ひとつお答えをいただきたいと思います。以上、それぞれ一点ずつ私はお尋ねをいたします。あと、あるのですけれども、こういうことで本日はもう終わっておきたいと思いますので、お答えいただきたい。
  76. 小澤太郎

    ○小澤説明員 先般もお答えしたとおり、検討すべき問題である、かように考えております。
  77. 真田秀夫

    ○真田説明員 大体この前お答えしたことの繰り返しに相なるかと思いますけれども、確かにおっしゃいますような問題点があることは、私もそのとおりだと存じます。ただ、これをすぐいきなり立法化するかどうかということになりますと、御承知のとおり、私の役所で進んで政策をきめるというものではございませんので、それぞれの分担の主務省がございまして、そこでいろいろ御検討の結果、法律案という形でもし立法化が進んでくれば、もちろんそれを受けて検討するにはやぶさかではない、こういう趣旨を申し上げたつもりでございます。
  78. 畑和

    畑委員 とぎれとぎれで、まことにどうも調子が出ないのだけれども、人がよ過ぎるものだから、みんな譲歩しちゃって……。まだ準起訴問題、忌避問題がちょっと残っていますから、せっかくお出かけいただいた方々にひとつ質問いたしたい。  先ほどから例の忌避の問題が問題になっておりますけれども、私が真庭裁判長とお会いしていろいろ話をしました経過からいたしまして、この忌避の問題が相当時間かせぎのような印象を受けて、なかなか事件が進まない、こういうようなふうに感じ取りました。また、真庭さんの御意見も、そういったような、近いような御意見のようだと思ったのですが、問題は結局時効の問題につながると思います。そこで、御承知のように、公訴時効がいろいろあるわけですが、単純公務員の職権乱用については、公訴時効は三年と思いましたね。それから特別公務員の場合は二つに分かれておりまして、普通の場合と二つに分かれて、一つは五年、一つは七年、こういう時効だと思いました。ところで、単純公務員の条項でもわれわれは告発をいたしておるのです。特別公務員と両方によってやっておるわけです。身体検査をしたりなにかしてやったのは、普通の公務員の一般の職権乱用で告発している。けったり、なぐったりしているような、投げ飛ばしたりするほうは、暴行陵虐で告発をいたしておる。こういうことなんですが、短いほうは三年ということになると、すでに――あの事件が起きたのは一月十六日のことです。そうすると、もうすでに一年半以上も経過をいたしておるわけでありまして、公訴の時効の中断の問題が大いに問題になります。普通は、もちろん現行法によりますと、公訴提起のときに中断をするということになっておりますが、したがって、付審判の請求によって、その調査をした結果、審判に付するという決定があったことが、すなわち起訴と同じだというのが、いまの法制であることは御承知のとおりです。そうなりますと、そういった過程で忌避等の問題が起こって時間かせぎをされますと、公訴の時効に非常に影響する。しかも、この問題が、たとえ審判の結果審判に付するという決定が起きましても、裁判になる。それからさらに準起訴手続が進んで裁判になって、それからまた控訴、上告というようなことになりますと――お互いがやるでしょう。そうなりますると、結局そのうちに三年はたちますというようなこと等にもになるわけだと思う。そういう点で、現行法について、その辺、立法的に考える必要がないのであろうか、あるんじゃないかというような考えなんでありますが、この点ひとつ法務省のほうの御見解刑事局長ですか、それと裁判所のほうの刑事局長の御見解を承りたいと思います。
  79. 川井英良

    川井説明員 いま直ちに結論といたしまして、その点について、公訴の時効の問題を改正しなければならないというふうには法務省としては考えておりません。いろいろ理由がございますけれども、公務員のいわゆる非行に対して告訴、告発がたくさん出てまいって警察検察捜査をいたしておりますけれども、公訴時効、捜査官が事件を持っているうちに公訴時効が完成してしまったというような事件は、ほとんどないと思うわけでございまして、私ども行政的な指導の面におきましても、時効完成については十分考えて、迅速な捜査と処理をするようにというふうなことを繰り返し、重ねて全検察庁に対して指導を行なっておる状況でございます。  それから法律的には、なるほどこの問題だけを取り上げて考えてみますと、公訴の時効について付審判の請求をもってこの起算点とするというようなことについては、一応の理屈があるように思いますけれども刑事訴訟手続全般にわたりまして、公訴時効の起算につきましては一つの原則が貫かれているわけでございまして、その一つだけについて特別な例外を認めるということは、そのほかのいろいろな請求手続につきましても、同じような観点からの検討と処理を必要とするというようなことがございますので、もちろん有力な一つの研究素材として前々から私ども研究しておるところでございますけれども、今日の段階におきましては、いま直ちに御質問の点について法改正をしなければならないというふうな結論には到達しておりません。
  80. 佐藤千速

    佐藤最高裁判所長官代理者 最近処理いたしました審判事件数十件について見てみたのでございます。  先ほどのお話しの公務員職権乱用、公訴時効三年のケースでございますね。それについて、裁判所で平均してどのくらいかかっておるかというようなものを見ますると、審判の請求がありましてから四カ月ぐらい、その他特別公務員職権乱用七年の公訴時効について見ますと七カ月というようなこと、それから特別公務員の暴行陵虐、これは五年の公訴時効ではございますが、これにつきましては、これは具体的な事件は一カ月十日ぐらいで処理されておりまして、これだけで直ちに何とも言えないわけでございまするが、最近の傾向を見ますると、裁判所に関する限りは七カ月から一カ月余り、こういう期間で処理されているわけでございます。もちろん、これは公訴の時効もあることでございますから、非常に集中的にやるというたてまえでやった結果、こうなっておるわけなんでございます。もちろん、裁判所の審判の期間だけを問題にできないわけでございまして、その前手続でございまする検察庁のほうの処分決定というものが早くされませんと、請求自体またおそくなってくるということに相なっているので、そこは現在におきましても運用の問題として、先ほど川井刑事局長も言われましたように、検察庁のほうの処分をできる限り早く進めていただくということはどうしてもお願いしなければならないことだと思っております。しかる上で、裁判所も事柄の性質上集中的に早くやらなければならないということでございます。最近の傾向からまいりますると、現在の法のたてまえで一応まかなえるのではないか――まかなうように努力しているからではございまするが――と考えます。  それから立法的な措置の問題につきましては、先ほど法務省からもお答えになりましたように、時効制度一般の趣旨から申しまして、特殊な例外を設けることがいいか悪いかということをまず検討しなければならないと思います。  私の記憶で、あるいは不確かでございますが、公職選挙法あるいは政治資金規正法におきまして、逃亡しておりました場合には、特に公訴の時効を延長するというような立法がございましたが、それが廃止されておるというようなこともあると思いますので、公訴時効全般につきまして、そこのところをやはり考えた上で、どういうことか、まずその検討を先にいたしまして、しかる上で、仰せのような例外的措置がとれるかどうか、どういう形でとったらいいか、こういうふうな検討に進むべきものであろう、かように考えておるわけでございます。
  81. 畑和

    畑委員 わかりました。  結局、検察庁のほうで相当時間がかかっていることがある。これはひとつできるだけ促進してもらいたい。現に博多事件を除くほかの二つの事件については、いまだに何らの決定がなされておらぬ、こういう状況です。もう二年近くなります。そういうことがやはりそういった問題になるわけですから、それもひとつ確かにその前段として努力をしてもらいたい、これを法務省へ要求いたします。  それから、もう一つだけ裁判所お尋ねいたしたいのでありますが、準起訴手続については、そうめつたにある問題ではありませんが、しかもこうした集団的な問題についてはなかなか調査がむずかしいということで、相当手間がかかると思うのです。ところで、裁判所ではそういった事件をあまり予想しておりませんから、人員的に裁判官はもちろんでありますが、書記さんの問題も予算関係その他も関連いたしまして特別の措置を講じなければならぬ。博多事件などはそういう顕著な例だと思います。一方、警察のほうは不協力だというような態度もありますから、そういうことから関連して、相当の書記官や何かの増員をしなければならぬということもあり得ると思うのです。そういうことでも苦労をしておるように私は承ってまいりました。その辺はどういう見解を持っておられますか、裁判所、それだけです。
  82. 佐藤千速

    佐藤最高裁判所長官代理者 先ほども申し上げましたように、短い期間に集中的に処理しなければならないという裁判所の苦労があるわけでございます。ところで、準起訴手続の調べ方は、検察庁、実態は捜査に類似いたしまするが、さりとて、検察事務官をして調べさせるというようなわけに――それに当たらせるようなわけにまいりませんので、やはり裁判官が証拠に当たるということにならざるを得ないわけでございますので、その意味では、やや補助職員の動き方は違ってまいるかと思います。ただ、忙しいことはもとよりそうでございます。この事件に限らず、現在、特に最近では非常に困難な刑事事件が逐次増加しておりまするので、特にこの事件ということではございませんが、それも含めまして、今年におきましても、当法務委員会その他各方面の御理解をいただきまして、裁判官その他の職員の方の機動的な応援でございますね、そういうものの予算とか、その他裁判官十五名の増員というものが実現いたしておるわけでございます。現に東京地裁の東大事件におきましても、他所からの裁判官及び書記官の応援を得て処理しておるというのも、そういう予算的措置がついたおかげでございまするが、一般的に仰せのような裁判所の人手不足の問題につきましては、今後も裁判官、書記官その他の裁判所職員につきましては、その給源の問題もございますが、それとにらみ合わせて対処してまいりたい、かように考えておる次第でございます。
  83. 進藤一馬

    ○進藤委員長代理 中村重光君。
  84. 中村重光

    中村(重)委員 先日あなたに郡警備部長の言動について御連絡申し上げました。あなたから御注意があったのではないかと思いますが、どういった弁解をしておりましたか。
  85. 川島広守

    ○川島説明員 お電話がございましたので、お電話でも申し上げましたが、通常考えて、先生がせっかくおいでになったのに、そのようなことをお話を聞かない前に申し上げるということは、私たちは考えられませんでしたので、そのようにお答えをしたわけでございますが、その直後、直ちに電話で本人を呼びまして、どういうことか一応聞いてみたわけです。そうしましたら、警備課長が、お話しございましたように、先般つるし上げを受けたという報告をしたのを彼自身が感違いをして、たいへん手違いで申しわけございませんでしたというふうな答えでございました。
  86. 中村重光

    中村(重)委員 時間もございませんので、そのことについてはあまり深く追及いたしません。指導をひとつうまくやっていただきたい。私は警備部長を過去二回経験しております、岡山県では警務部長をやっていた、そして長崎に七十年対策としての警備部長として参りましたという言い方なんです。しかし、これは公式な形ではございません、個人的な楽な気持ちで話をしたものだと善意に私は理解をいたしておりますが、しかし、そうした行動の中に強い姿勢が感じられてなりません。ですから、その点はひとつ十分御注意をいただきたい、こう思います。  次にあなたは警備局長として、各県の機動隊がどういうことをやっているか、報告されたことは絶対にそのまま間違いないのだというような解釈でもって対処されたのでは、大きな間違いが起こるであろう、警察に対する不信感が起こってくるというような感じがしてなりません。その点は十分ひとつ配慮していただきたいということを要請をしておきたいと思います。  そこで、長崎郵便局の事件ですが、詳細な報告があっておると思います。時間の関係がございますので、簡潔にひとつお答えを願います。
  87. 川島広守

    ○川島説明員 長崎郵便局におきます事案は、七月二十二日から八月十六日までの間でございますけれども、暴力行為あるいは傷害その他の暴力事犯が一応連続的に十一件発生をいたしておるわけでございます。もともとの事の発端は、御承知のとおりに、いわゆる全逓と全郵政との組織活動のいわば対立というふうなところから発展をし、さらにまた、その感情的なもつれが当局側との間にも波及してまいりまして、一連の事件が発生しておるものというふうに見ておるわけでございます。そのようだわけでございまして、特にこの暴力事犯と警察との関係でございますけれども、七月二十五日に集配課長あるいは局長室の中に組合の人々が三十名前後侵入をいたしまして、そこで暴力事犯が発生をいたしたわけでございます。これにつきましては、局長からも要請を受け、さらにまた警察側独自でその事態について確認をいたしました上で、慎重に機動隊を出動させまして、いわゆる不退去ないしは暴力事犯等の制止及び検挙につとめたわけでございます。具体的に逮捕は事後逮捕になっておりますけれども、そのようなことで機動隊が長崎郵便局に出動した、こういう経緯でございます。
  88. 中村重光

    中村(重)委員 あなたのいまのお答えは事実に反するのです。長崎県の警備部長からあなたのほうに御報告された資料はそうではない。局長室に、七月二十五日ですか、入っておった組合員は七名、廊下にいた者は十数人ということを書いてある。ですから、これは三十名ということは事実に相違する。局長室に入っておって局長と話をしておった労組員が七名、廊下にそれを見守っておったのだと思うのですが、それが十数名ですね。組合側はこれも七名と言っております。しかし、十数名と七名ですから、たいした違いはない。あなたのほうから出動した機動隊員は四十二名です。ですから、これは数字の問題を私はいろいろ申し上げようとは思いません。あとであなたのお答えと関連をしてまいりますから、その際に問題点としてお尋ねを申し上げたいと思います。なぜに機動隊を出動させたのか出動させなければならないというような状況であったのかどうか、その点どうですか。
  89. 川島広守

    ○川島説明員 七月二十五日の事案は、いまお話がございましたように、局長室に入って、局長を部屋の片すみに押しつけてえり首をつかみ、ネクタイをちぎっておった人たちの数は七、八名なんです。また、これはお話がございましたけれども、廊下で二列になってそれぞれがベルトを持って、いわゆる阻止線というような形で張っておりましたのが、警察のほうの現認では十数名、こういうふうに相なっておるわけでございます。  そこで、お話もございましたように、集配課長のところに組合の人々が抗議に出向いておって、局内がたいへん喧騒をきわめ、このまま放置すればいろいろなことが起こってくるであろうということを郵便局長はどうもお感じになったようでございます。当初、時間は正確に覚えておりませんが、四時半ごろに、いまお話し申し上げましたようなあらましの局内の状況について局長から電話で連絡がございまして、このまま放置して大事態に発展するようなことがございますれば出動を要請いたしたいと考えておる旨の連絡がございました。後刻、具体的に集配課長のところの抗議が終わりまして、三階にございます局長室にいま申し上げました人数の方々が上がってまいられた。当時、局長はそれほどにはならぬというようにお考えになったのでしょう、内部から外部からはいれないように施錠をしておったようでございます。それを足げりにして、あけろあけろ、なぜ団体交渉に応じないのだということで喧騒をきわめ、そうこうしてまいりますうちに、局長から二回目の電話で要請がございました。その後、長崎警察署の中村警視から、事前にいま申し上げましたような二回にわたる要請もございましたので、その後の事態がどのように推移しているかを確かめるべく、局長室に電話をかけたという経緯でございます。ところが、もうすでに中に入られて、そして局長は再三にわたって退去要請を告げておるけれども、一向に立ちのく気配はないし、あまつさえ本人自身が身体に非常に危険を感じておるというような状態でございました。そこで、先ほど申し上げましたような経過を経まして、長崎警察署では警察官二十一名を現場に出動させた、こういう経緯でございます。
  90. 中村重光

    中村(重)委員 数字も四十二名であるということは間違いないのです。ただ、約五百メートルくらい離れたところに四十二名はずいぶん早いうちに集結しておる。そこに入ってきたのがあなたのおっしゃる二十一名、こういうことであります。これは数の問題ではないのです。根本的な問題になってまいります。  それであなたは、局長室に入っておった者は七名である、そうしてネクタイをつかんだり、何かそういうような暴行を加えておったということをおっしゃった。事実はそうではない。あなたのほうでは、付近の情況図というものを長崎県警から報告として出された。それは正常な状態において局長と組合員とが――これは図面をあなたはお持ちでしょうから、見られるとわかるんです。正常な状態において、局長と組合員とは――もちろん声は大きかったかもしれません。ネクタイをつかむとか、なぐるとか、そういうような状態ではなかった。いいですか。それは二十六日、抗議に行っておる抗議団に対し、中村警備官は、私どもが出動いたしましたけれども、出動しなければならないような緊迫した状態ではございませんでしたと、はっきり言っているのですよ。そして、後日署長が、君は抗議団に対してどうしてああいうことを言ったのか、これは出動しなければならないということで言い張っておかなければならぬということで、署長があとで注意したと伝えられている。あなたがいまお答えになるような、そういった暴行を加えておるというようなことではなかった。それは後日、あとで局側からああだったこうだったといって事情聴取のときに報告をされた。それをあたかもそういう状態であったというようにあなたのほうには報告がなされておるということであって、事実はそれと相違する。だから、出動しなければならぬような緊迫した状態ではなかったというのに、なぜに出動したのかということが一点であります。私は、先ほど公安委員長に基本的な問題としてお尋ねをしたのは、具体的な内容についていま申し上げるようなことと関連をいたしますからお尋ねをしたわけであります。それから、局長が二回電話をかけたことは事実であります。しかし、それは出動を要請したのではない、労働組合員多数が私のところに押しかけてくる情勢があるから、何かあったら警察官の出動をお願いしたい、これは第一回目の電話ですね。第二回目の電話は、五時六分ごろ、同局長から再び所轄警察署に電話して、局長室に大勢の労組員が来ており、ドアを破って中に入るのではないかと思う、退去要求をしても聞き入れないときは出動をお願いする、こう言っている。これが局長からの電話。それ以降は局長からの連絡はないんです。それはいまあなたのお答えのとおり、中村警備官が、こういう二回の連絡があったのに、その後何の音さたもないので、何か変わったことはないのだろうかといって電話をかけた。ところが、その際に、あなたのほうに来ている報告では、いま労組員がドアを破って入ってきて、局長ほか幹部に生命の危険がある、すぐ出動してもらいたいというような要請があったというふうにこの報告書はなっている。ところが、事実はそうではない。集配課長が電話に出ている。集配課長は「ハイハイ」と答えただけです。一切中村警備官のほうから言っている。それは労組員が中にいるんだから、集配課長が電話をとったことも、それから何をしゃべったかということもわかっている。「ハイハイ」と答えただけだ。そうすると、積極的に警察が出動しよう、こういう姿勢であったということです。労使の関係、しかも問題は、お話がございましたように、全逓と全郵政と二つの組合がある。そして、これはあとで人事局長に私はお尋ねをするわけですけれども、全逓の組合を脱退させて、全郵政に入れていこうとする郵政省当局のそういうような不当労働行為、そういうものから感情的に発展して、問題が警察が介入しなければならないというような形に発展をしておるわけです。であるから、なおさら警備警察としては慎重な態度をもって臨まれなければならないんだろうと私は思います。にもかかわらず、ともかくみずから出動しよう、出動しよう、こういうような考え方で対処した警察のあり方というのは、正しい警備警察の方向であろうか。あなたはこれらの点についてどのようにお考えになっておられるのであるか、それをお尋ねしたい。それから私が申し上げた事実。そうじゃない、あくまであなたのほうが受けておられる報告のとおりであるということをお答えできる確信がおありなのかどうか。私は、社会党として、いまここにおる畑委員その他とともに調査団として調査に参っております。私は地元でございますだけに、なお詳細に県警とも、警察ともあるいは局側とも数回にわたって話し合いをいたしておりますから、少なくともあなた以上に事実を承知しておるつもりです。しかし、事は非常に重大な問題ですから、公式にはあなたにお尋ねをしなければならないからお尋ねをしておるわけです。
  91. 川島広守

    ○川島説明員 ただいまお話がございました三回目の電話の「ハイハイ」という問題でございますが、それは私どもいま初めてお聞きをするわけでございますけれども、長崎県警から私どものほうに参っております報告によりますと、電話をかけましたところが、集配課長が電話口に出られて、もうすでに組合員が中に入っております、たびたび出てくれと言っておりますが、少しも聞かない、至急出動願いたい、こういう趣旨の電話であったということでございまして、先ほどもちょっと触れましたけれども、この事案は、いまお話がございましたようなことで起こってまいったわけでございますけれども、この七月二十五日に先立つ七月の二十二日から事案が起こっているわけでございます。率直に申しますれば、両者の対立が感情的に非常に高まりまして、さまざまな小ぜり合いのようなことあるいは暴力事件のようなことが発生しておる。こういうような背景の中で七月二十五日の事案が起こっているわけでございます。そういうようなわけでございますので、いま中村先生おっしゃいました電話のやりとりの問題等につきましては、私のほうは、私の申し上げましたようなことで報告を受けておるわけです。さらにまた、その後の捜査の結果でも、一応いま私が申し上げましたようなことに捜査の結果は相なっておるわけでございますので、そのように御了解願いたいと存じます。
  92. 中村重光

    中村(重)委員 短いですから読み上げますが、七月の二十五日午後六時二十分ごろ、長崎局長室において組合員七名が局長、次長、集配課長に対して抗議を行なっていた中で電話があり、集配課長がこれを受けたところ、警察からのもので、「出動してよいか」と聞かれたのが、局長に電話ですと集配課長が伝えた。局長は「警察からだろう出動をお願いします」と言えと指示されたので「ハイハイ」と返事しただけで電話を切り、それ以外には何も言っていない。この確認内容を副課長のノートへ記録、どのようなところでも証言することを約束をした「ハイハイ」です。それ以上何も言っていない。このことは、私どもは、この「ハイハイ」問題は、調査団として郡警備部長、それから所轄署長の小佐々警察署長、その他警察側と話をするときに、この「ハイハイ」論議はやったんですが、このくらい積極的に警察が出動しよう、出動しようという意欲をもって出動した。ここに私は警備警察としての問題がある。少なくとも先ほど公安委員長がお答えになったような態度ではない。  次に、排除はどういう場合にするのかということについてもお尋ねをいたしましたが、当日は排除しなければならないような事実があったとあなたはお思いですか。
  93. 川島広守

    ○川島説明員 先ほども申しましたように、内部にいま申された局長なり次長なり集配課長が入っておる。そうして片すみのほうに押しやられておるという状況であり、中村警備官が前面にありましたピケの間をくぐって局内に入ったわけでございます。そうしましたら、いま申しましたような状況になっておりましたので、当然このまま放置をすれば不法事態に発展することは明らかである。現に局長のからだには危機が迫っておる。こういうように現場で、指揮官である中村警視が判断し、その結果としていま申しましたような局長室の前にピケを張っておりました十数名の労組員、それをまず排除をし、そうして中に入って退去の警告を発したという経緯でございます。その結果、内部に入っておられました幹部がそのまま表に退出をした、こういうような経緯に理解をいたしております。
  94. 中村重光

    中村(重)委員 局長、ちょっとあなたが常識的に判断してみませんか。局長室は広いんですよ。そうして六、七名すわれるような応接セットが置いてある。そうすると、廊下におる者は、警察調査では十七、八名でしょう。たとえそれがそのとおりであったにいたしましても、そう生命の危険というようなものが局長に迫るような状態であるならば、そういうことを組合員がしなければならないのだったら、なぜ中に入らないのでしょうか、あれほど広い局長室に。局長室に入っておったのは、宮崎支部長ほか幹部が中心でわずかに七名ですよ。そうすると、そんなに局長に暴行を加えよう、局長に危害を加えようとするのなら、廊下におる必要はありません。そういった組合員は中に入るはずです。中に入って、一緒になって抗議したりあるいは暴行を加えるでしょう。しかし、そうでなく、ただ廊下に立って中の交渉の状態を見守っておったのです。そうして中村警備官が中に、カメラの私服の警察官を一人連れて正常な常態で局長室に入ったんですよ。ピケを張って察警官を中に入れまいなんとしようとする態度をとったんじゃないんですよ。あなたが少なくとも警備警察最高責任者としてお考えになって、いまあなたがお答えになるようなことが常識的に考えられましょうか。あなたが言われるように、ネクタイを取ったりなんかしたというならば、中に入って同じような行動をとるんじゃないでしょうか。何と弁解されようと、明らかにこれは過剰警備である。しかも中村警備官とカメラマンの私服だけが二人中に入りましたあと、部隊はどういう行動をとったとお思いですか。そこへ立っているところの組合員に対して襲いかかっているんですよ。そうして髪をつかんでからだを引き下げて、ひざでけり上げて、踏むけるのろうぜきです。一人一人やられた者の名前も、私はここに記録を全部資料として持っています。そうしてこの四通の診断書が出ています。一人はもう動き切れなくなって倒れておるのを――機動隊が出動してきたということで、きょうはこれまでだ、こういうので、宮崎支部長が交渉を打ち切った。そうして外へ出たところが、倒れて動き切らないでおるので、それを市民病院にかつぎ込んだという事実がある。  もう一点、警備局長、あなたがお考えにならなければいけないのは、生命の危険を感じたとして局長が出動を要請したその局長室では、排除がなされていないという事実をどうお思いです。すなわち、このことは、正常な状態であった、中村警備官が後日抗議団に対して、出動しなければならぬような緊迫した状態ではなかったと言ったことを実証することにならないでしょうか。そうお思いになりませんか、常識的な判断をして。どうですか。
  95. 川島広守

    ○川島説明員 最初の局長室の問題でございますけれども、いま先生もお手元にお持ちのようでございますが、これは局長室の入り口から向かって一番左のすみへずっと押されていっているわけですね。御案内のとおりに、局長の机のところを通ってずっと一番すみまで押されている。そういうような状態であり、さらにまた、第二にお尋ねの排除がなかったではないかというお話でございますが、これはいま先生のお話がございましたように、機動隊が全部中に入りまして、廊下のピケを張っておりました労組員を排除いたしまして、その結果として、すなおにといいますか、そのまま出てきた、こういうふうに私は理解します。
  96. 中村重光

    中村(重)委員 すみのほうに押されているんじゃないんですよ。いすにすわっておったんです。それはあなたのほうの報告書にも書いてあるのです。これは公文書ですよ。それにすわったと書いてある。何もすみのほうに押しつけられてぐうぐうやられておったんじゃない。だから、中村警備官が局長室の排除は行なわなかった、こう言っているのです。すなわち、機動隊が来たというので、宮崎支部長が、もうきょうはこれまでだ、交渉打ち切り、解散、こういうことを言っているわけです。  ほんとうは中村警備官が入る前、支部長は言っているわけです。だから、肝心かなめの生命の危険があるという局長室の排除はする必要がない状態なのに、どうして廊下に立っている組合員に対して警察は襲いかかって、踏むけるの乱暴ろうぜきをしなければならなかったのでしょう。これは過剰警備というよりも、明らかに警察官の暴行傷害事件である、そのこと自体が刑事事件であると考えております。私がこう申し上げていることは、私ども権威を持ってこの調査をいたしております。その調査の結果に基づいて確信を持って言うわけです。ですから、あなたの部下から報告を受けたこれが絶対間違いないものだということであなたは確信を持ってお答えができますか。あるいはこれに対して調査を再度してみなければならぬとはお考えになりませんか。私どもの抗議に対しまして郡警備部長は、一応の調査はしましたけれども、あなた方が指摘された事実があったとするならばもう一度これはやってみなければなりませんと、すなおに答えましたよ。現場の警備部長ですらそれほど確信がないのです。それを、東京におられる警備局長が、この報告に基づいて、これは絶対間違いのないことだ、警察は絶対に過剰警備はしていないんだ、当然なことだというように言い張ることは、私は正しい警察のあり方ではないと思う。少なくとも、再調査をしてみる、そして行き過ぎがあるならば、処分しなければならぬ者はこれを処分していくという態度が、私は、あなたとして警備局長としての職責を全うすることになるのではないか、こう思います。そうはお思いになりませんか。
  97. 川島広守

    ○川島説明員 私が申し上げておりますのも、長崎県警からの詳細な報告に基づいていまお答えを申し上げた次第でございまして、局長室のいすが向かって左の片すみにありますことはそのとおりであり、さらにまた、局長がそこにすわっておられたことも事実でございます。そのいすを両脇からゆさぶってかなり脅迫がましい言辞を吐いておることも、調査の結果で明らかでございます。さらにまた、その廊下におりました組合員をなぐるけるの暴行をしたというお話でございますけれども、機動隊としましては、事前に再三再四にわたって警告をし、それに続いて慎重に実は排除行為を行なったわけでございます。その中で、いま診断書のお話がございましたけれども、確かにその中で前のほうにつんのめってころんだ労組員が一人、それから解散しようとしたその瞬間に、うしろのほうにいた労組員がこれまた転倒して、その上をまたいで飛び越えた労組員がおって、痛い痛いというふうな声を出したという状況があり、さらにいまお話がございましたように、自今、私のほうといたしましても、病院に参りまして、それらけがをされた労組員の方々のけがの状況等についても実は詳細承っております。その結果明らかでございますことは、血圧に異常があったとかそういうことは全然ございませんし、ひどい外傷があったということもございませんし、いま先生のおっしゃいましたような、足げにしたとか、あるいはたたいたとかいうことはないというふうに、われわれとしては医者の診断を承ってきておる次第でございます。
  98. 中村重光

    中村(重)委員 あなたにこれ以上質疑をいたしましても、あなたはそれ以上のことをお答えにならないだろう。ただ、非常に遺憾に思うことは、現地部長ですら、実はその病院に行きましたが、診断書が出ていることは知りませんでした、だからしてこれははっきり調査をしてみなければなりませんと答えた。それを局長が、この一片の報告をもとにして、間違いないのだ、これは自分たちが踏み越えたり何かしてけがしたんだという答弁は、まことに非常識な答弁かと思う。十数名の人たちが、一人が倒れたからといって、その上をだれか通ったときに、かりに足で踏んだ、こういったことで、一週間も幾らものけがをするような状態が起こりましょうか。人事不省におちいるような状態になっているのですよ、一人は。しかし、これは時間がございませんから、あなたに対する質疑はひとつあらためてやることにいたします。  郵政省の人事局長に一、二点お尋ねをいたしますが、いま警備局長に私が質疑を行なったことをお聞きになって、郵政省の問題であるだけにどのようにお考えになりますか。
  99. 山本博

    山本説明員 先ほど公安委員長からお話がございましたように、労働問題につきまして、私たちも、原則的に、警察の出動をお願いするというようなことはたてまえとして考えておりません。ただ、今回の長崎の郵便局におきましては、これはいわば異例中の異例の事件でございました。七月の半ばごろから労使間の状態が円滑にいっておらないまま、その間に、正常な労使間の処理のしかたでなくて、相当激しい、いわば実力行使といいますか、暴力的な行為というものがずっと継続をいたしておりました。郵便物の滞留にいたしましても、その局の処理能力の五日間のものがたまった。公衆からは毎日郵便物の滞留についての苦情申告がある、こういう実態が非常に長期にわたって続きました。また、全国的には労使の話、春闘並びにそれ以降のいろいろな紛争の話がつきまして、全国全部が正常化いたしまして、三六といいますか、超過勤務協定も結んで、業務運行の正常化ということも確保された時期におきましても、日本全国で長崎の郵便局だけがこういう状態というものが改善されないという事態もございました。たまたま、七月の二十五日の時点におきまして、紛争の直接の原因といたしまして、いろいろ背景はございますが、その日の問題としましては、集配をいたしておりました職員が警察に尾行されたという問題を局の幹部に提起をしております。局の幹部が警察に頼んで尾行させたのであるということが発端になりまして、夕方からそういう問題で庶務課長室並びに局長室、こういうところに集団の抗議というものが非常に激しい形で行なわれておったわけでございます。しかもそのときに、いろいろ経緯がございますけれども局長のほうから警察に出動をお願いする、最終的には六時十分ごろだと思いますが、お願いするという経過がございます。これは日本でも、これだけのひどい、一万数千の郵便局の中でも異例中の異例のものであります。本質的には、労使の問題に警察をお願いするということは私たちも考えておりません。そういうきわめて異例の事態の場合にはやむを得なかったのではないか。しかし、こういうことを再び繰り返さないように労使間でできるだけこういう問題の解決をはかっていくという態度は、今後とも努力していくべき問題だと考えております。
  100. 中村重光

    中村(重)委員 長崎県でも長崎郵便局だけですよ、こういう不正常な状態にあるのは。三六協定がいま結ばれていない、こういうことです。  どうしてそういった、警察が介入しなければならないような不正常な状態であろうか。これを正常化しなければならないというような熱意に欠けている。全く責任体制というものが確立されていないというように思います。ともかく、具体的な不当労働行為というものが行なわれている。管理者側が勤務時間中に、全逓の組合員を脱退しなさい、そうして全郵政に加盟しなさいという勧誘を堂々とやっているという事実、そういうような事例が数多く繰り返されてきている。それに対して、全逓組合員の反発となって、いわゆる田中事件というものが起こってきた。そうして今回のような、また七月二十五日の警察介入というような事件が勃発した。  なぜそういうことになったのかということについては、先ほど私が申し上げましたような行為があるわけですけれども、いま一つは、支部と局側が話し合いをやって、それに回答がなされている。その回答を少しも守ろうとしないというところにある。ここに不信感が起こってきている。こういう状態というものを解消しなければならない。やはり約束したことは守るという態度がなければならないのではないか。そうお思いになりませんか。
  101. 山本博

    山本説明員 おっしゃるとおり、労使間の基本的な大事な問題というのは、相互信頼の問題だと思います。この局におきましてそういう点が欠けておったということは、私も率直に認めざるを得ない。しかし、これがすべて――私も管理者側に落ち度あるいは努力が足りなかった点がないとは申しませんが、同時に、組合員側におきましても、こういう事態を起こしたということについて、組合側自身もやはり反省をしていただかなければならない問題もいろいろあると思います。今後につきましては、相互に足らざるところを補って、相互不信というものをなくすように努力をしたいと思います。
  102. 中村重光

    中村(重)委員 いまのは率直な答弁です。組合側も反省しなければならない点もあるだろう。しかし、何といっても、主たる責任は管理者側にある。しかも、こういった事件が勃発したのに、人事関係だから、これは一つの御方針がありましょうが、片一方は組合の責任追及をして解雇処分になさった。一方、今度は局長は、九州最大の局にいわゆる栄転をさせられたんです。しかも、こういう事件を勃発させて不正常な状態に置いているのは長崎局だけだ。それから警察が介入している。そういったような最中に、九州の最高の局に片一方は栄転させ、片一方は首にしてしまったという態度について、人事局長としてあなたの人事は正しかったのでしょうか。いましばらく時期を見て、正常化に努力をさせて、そうしてそれが正常化した暁に、あなたのその御方針があるならば、そういうような人事をおやりになるべきでなかったでしょうか。組合員がここに非常な憤りを持つということは当然じゃないでしょうか。どうお思いになりますか。
  103. 山本博

    山本説明員 人事のやり方につきましては、またいろいろ見方があるかと思いますが、組合員の責任者が処分をされましたのは、これは労使間の問題というとらえ方ではございませんで、これはいわゆる暴力行為ということで、その責めを追及したわけでございます。局側の管理者につきましても、いま申し上げましたように、足らざるところがあることは認めますけれども、むしろこの際、人心を一新いたしまして、新しい形で問題の処理に当たったほうがいいんじゃないか。相当長期間にわたりまして、局長以下の幹部と組合との間にそういう不信感というものあるいはトラブルというものが解決されないで継続しておりましたので、むしろ局の幹部を一新いたしまして、新しい体制で問題の処理に当ったほうがいいんじゃないかということで、局長以下ほとんど全部の幹部を一新いたしたわけでございます。  なお、ただいまお話がありました局長の配転先でございますけれども、これは郵政省の格づけといたしましては同じ格でございまして、特に栄転というようなものとは私たちは考えておりません。   〔進藤委員長代理退席、鍛冶委員長代理着席〕
  104. 中村重光

    中村(重)委員 これで終わります。  ともかく、一番局員の多い局に栄転させられたんだから、まあ格づけはどうだこうだという、そこまでは私は議論しませんが、少なくとも非常な反発というものが起こっていることは事実です。  ともかく、あなたのほうの人事管理というものはひどいです。労働屋といわれる者が最近五十名くらい派遣されている。組合員が便所に行くのも、たばこを吸うのも、時間をはかって、秒読みをやって監視するという体制をとっているのですよ。タコ部屋、監獄部屋という、実にひどいやり方です。そういうような不正常な、不当なことが今日労使関係の中において行なわれてよろしいだろうか。ともかく、今度は、人事一切を刷新する、そういう決意で人事を一斉に行なった、こういうことですが、私がいま申し上げましたような点を十分ひとつ参考にされて調査をして、すみやかに正常化する、労使の慣行というようなものはともかく正常に行なう、そうして組合員納得の中に三六協定等も結ぶ、その他の協定も結ぶ、そうしてまた、誠意をもってそういった三六協定とか二四協定以外の労使の関係については話し合いをする、そういう指導をなさいますか。
  105. 山本博

    山本説明員 基本的に、労使間の問題というのは、お互い誠意をもって話し合って解決していくというのがたてまえだと思います。長崎の局の場合もそのような方針で対処いたしたい、こう思います。  ちなみに、本日労使双方で三六協定を結びまして、正常に業務並びに局全体の仕事をやっているということを申し上げておきます。
  106. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員長代理 神近市子君。
  107. 神近市子

    神近委員 一番おそくなりましたけれども、私は人権擁護の問題で御質問申し上げようと思います。  山本宏子という人が恩赦になったということが新聞報道に出ておりますけれども、そのときに、恩赦課の小嶋課長という人は言語道断のことを言っているのです。これは七月八日の大臣声明にはちっとも関係がない、恩赦は、ただ気が違っていて、貧乏で、女であるというようなことに同情する点があったから、これを許したというようなことを言って、この大臣声明にありますほかの六人のことなんかはもう全部ほうり出したようなことを言っているのですけれども、これは、この言った小嶋という方がきょう見えていないということですので、どなたかかわりの方から、この大臣声明というものは官僚の間ではどういうように受け取っていらっしゃるかということを伺いたいと思います。
  108. 鹽野宜慶

    ○鹽野説明員 お答えいたします。  御指摘新聞に載っております恩赦課長は私の局の職員でございます。法務省の今回の恩赦の問題につきましては、先ほど大臣答弁申し上げましたとおりでございまして、決してこれを軽く扱うということはないのでございます。そこで、ただいま御指摘新聞には、私がただいま申し上げていることと若干違うようなニュアンスで載っておりますけれども、これはおそらく小嶋恩赦課長説明したことがそのままの形で載っていないのじゃないか、何かそこに若干の誤解なり印象の受け方の違いというようなものがあったのではなかろうかというふうに考えております。私どもといたしましては、この前の大臣のこの委員会における答弁によりまして、今後引き続きましてその他の者についても検討を続けたい、かように考えております。
  109. 神近市子

    神近委員 この七人の死刑囚の中から嘆願書が出ているはずですけれども、いま何人出ていますですか、それはどなたか御存じですか。
  110. 鹽野宜慶

    ○鹽野説明員 いまの仰せのは、おそらく恩赦の出願が出ているかという御質問であろうかと思いますが、その点につきましては、現在対象者のうち二人について出願が出ております。しかしながら、どの人から出願が出ているかということは、恩赦事件については一般に申し上げないことになっておりますので、どの人とどの人ということは控えさしていただきたいと思います。
  111. 神近市子

    神近委員 この山本宏子が病気であった、気が変であったということが、優先的に許されたというふうに考えられるのですけれども、もう一人福岡事件の西武雄というのが、白内障と心臓か何かで、非常に治療を急がなければならない状態にあるということなんです。そして、もう恩赦申請の手続はやったというような電報が入っておりますけれども、そればどうなんでしょうか。
  112. 勝尾鐐三

    ○勝尾説明員 私のほうから、西の健康問題についてお答えを申し上げます。  西武雄の健康の状況を概括的に申し上げますと、身長が百六十七センチ、体重が八十三キロ、血圧が上限が百三十、下限が八十四、これが一般的な健康状態であります。  お尋ねの目の問題でございますが、専門医の診察によりますと、老人性の白内障ではないかという結論でございまして、現在手術をしたほうがいいというのが専門医の意見でございます。したがいまして、私のほうでは現在具体的な措置と関連して結論を急いでおりますが、近々一週間前後にはその結論を出して具体的な措置に移る予定でおります。
  113. 神近市子

    神近委員 何かはっきりとしなかったのですけれども、私が嘆願に行ったときには、熊本大学というような名前が出ていたようでした。そして本人はもっと近くにあるじょうずな眼科医にかかりたいということで、嘆願をしているということだったのですけれども、これは御決定になったかどうか、はっきりもうちょっと大きな声でおっしゃってください。
  114. 勝尾鐐三

    ○勝尾説明員 手術を要するというのが専門医の意見でございますので、その専門医の意見を尊重して、私のほうとしては具体的な措置を講ずる。その場合に、どういう場所でどういう専門医に手術をお願いをするかという点につきましては、たとえば九州大学とか、あるいは日赤の病院だとか、あるいは熊本大学だとか、あるいは医療専門施設とか、いろいろございますが、現在までのところ、いま申し上げましたような外部のお医者さんの中には、人手の関係だとかあるいは多忙であるとかということで、同意を得られない医者もあるようでございます。いま御指摘のありました近くの専門医等についても、いま具体的な措置、もし手術をお願いするとすれば、どういう条件でどういう措置を私たちのほうが必要かというような――、これから専門の医療施設で手術するといたしますれば、護送等をどういうぐあいにするか、そういう具体的な問題を目下詰めております。専門医の意見を尊重しながら、間に合うように結論を出して措置をとる、こういう方針でおります。
  115. 神近市子

    神近委員 これは再審法が通らなかったので、問題にできないのですけれども、この山本宏子恩赦の嘆願が三千人あったということが新聞に出ているのです。ところが、この西武雄のケースは、五万人以上の名簿を、私は相談に応じて委員長の部屋に届けましたから、知っているのですけれども、あれは法務省に届いておりますか。三千人と五万人とでは非常に開きが大きいと思うのです。それは届いておりますか。
  116. 鹽野宜慶

    ○鹽野説明員 私どもの手元には届いておりません。
  117. 神近市子

    神近委員 私は立ち会ったから知っておりますけれども委員長のお部屋に届けてあるはずです。それが事務局あたりでほうり出してあるのかどうか……。
  118. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員長代理 委員長というのはこの法務委員長ですか。
  119. 神近市子

    神近委員 委員長の自室に届けたんです。――それじゃ、ここへ持ってこなかったのが私の手落ちじゃなかったかと思うのです。
  120. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員長代理 委員長の部屋というのは会館の部屋ですか。
  121. 神近市子

    神近委員 会館です。ともかく、事実として五万人以上の人の署名があるのです。三千人くらいの人の要請というようなことですけれど、あるいは五万人どころでない、十万人かもしれない。というのは、古川さんという僧侶の方が調査されて、ほんとうに西武雄という人は小指の先も関係していない、それが誤審だということで、救命運動がすごく起こって、何にも知らない人でなく、教戒師を十年もして、言うことが一つも変わらないので、これを調査し始めた。それで、ほかのケースの調査とはたいへん違うのです。ですから、白内障と心臓というようなことになって、ほんとうに無実の人がそれにかかっているといえば、これは何としても早く受け付けて、早く手術をやらせてあげなければならないのじゃないかと考えるのです。それで、私は嘆願にも行ったし、また八重樫さんという人がやはり救護運動をしていて、保護局長のところに行ったはずです。それがきのうかきょう、お願いしてあるけれども、許可が出ない、ぜひ早くこの許可をいただきたいという電報が入っているのです。どうかひとつその点は、あまり小さな手続に――この白内障と心臓が悪くて、そして寝ている人が、警備とかなんとかおっしゃるけれど、逃亡するということは考えられないでしょう。開業医でもじょうずな人であったら、刑務所の中に道具を持って入ればやれるでしょうから、私はそういうふうなことも考えていただいていいんじゃないかと考えますが、いかがですか。
  122. 勝尾鐐三

    ○勝尾説明員 ただいま申されました方法も考えております。ただいま申し上げましたように、手術をするといたしますれば、その時期というものを失しないようにしなければなりませんので、専門医の意見を十分尊重しながら、ごく近いうちに具体的な施策をあわせて結論を出して間に合うようにいたす所存でおります。
  123. 神近市子

    神近委員 あまり長くしませんから、もうちょっと一、二問。  保護局長山本宏子の放免に関して言ったことは、言語道断だと思うのですよ。山本宏子恩赦をやったあと、六人はどうなるなんということは論外だ。この委員会のいろいろの論議の結果、大臣が御声明になったことを、一人のたった保護局長ぐらいですかの官僚が、まるで無視したような発言をするということを次官はどうお考えになりますか。やはり大臣というものは法務省最高のところにいる人でしょう。この人の言動は尊重しなければならない。こういうようなことを役人がかってに言っているということは、許してよろしいですか。次官はどう考えますか……。
  124. 小澤太郎

    ○小澤説明員 保護局長ではなしに、別の職員でございますから、その点は誤解のないように……。  それから、先ほども答弁がありましたように、大臣からもお話ししたと思いますが、内容が真実そのとおりであるかどうかということにつきましても、私ども疑問を持っております。
  125. 神近市子

    神近委員 保護審査会審査にかかるというのですけれど、きょうは保護審査会の方はお見えになっておりますか。私、お一人かお二人か御意見を聞きたいと思って、名前をお願いしておいたのですけれど……。
  126. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員長代理 見えていないそうです。ちょっと普通のなにと違って出られなかったらしいです。
  127. 神近市子

    神近委員 出ていない。それじゃしかたないと思うのですけれど、次官にお尋ねいたします。  この保護審査会というところは法務省のどこかに同居しているということで、独立したものではないのですね。それで保護審査会なんというものの役割りが、官僚と一緒になっていれば独立した性格はないじゃありませんか。私はこう思うのです。占領後、ちょっとていさいを民主主義的にするということで、こういう委員会をつくって、そしてただ名目だけ官僚の決定審査会審査いたしましたという名前で決定するということになるのじゃありませんか。行ってみると同じ部屋だそうです。それで、やはり部屋を別にして、独立して、この人たちの審議には官僚は介入しないというくらいのものでなければ、あってもなくてもこれはいいものだと思うのですよ。いかがですか。
  128. 小澤太郎

    ○小澤説明員 事務局がたまたま法務省の中にあるということでございまして、事務所の位置がどうあろうと、その審査に当たる委員の方は、独自の判断で何ものにも影響されずにやるたてまえになっておりますから、事務所の所在でそのような御判断をされることはいかがかと私ども思っております。もとより、環境等の関係から、先生のおっしゃるようなことも一応懸念されないこともないかとも思いますけれども委員の諸君は、そのようなことで牽制されるような方が委員になっておるはずはないのですから、その点は御安心いただきたいと思います。
  129. 神近市子

    神近委員 私はあまりそれを信用しません。小さな部屋でもっても、たった五人ですから、何も大きないすなんかなくたっていいから、独立して、協議するときにはそこを密閉してやるくらいのものでなければ、何の役にも立たない。それが非常勤である。一週間三日ですか、隔日くらいの出勤。そしてこういう大きな問題をこの人たち決定する。それで役人の介入を排除することができるものですか。私はその点はもうちっとも信用しません。その点は次官がよくお考えになって、たとえばどんなきたない部屋だって、幾らでも法務省にはありますよ。そこへちゃんと入れれば、独立性を守ることができる。いま森川さんという人は来ていないそうですけれども、あの人の言動なんかを見ると、全く法務官僚というものが、そこからのを参考にするとかあるいは考えてみるとかいう能力、配慮に欠けているんじゃないか。そして、再審法が出たのが契機になって大臣声明ができたんですけれども、これは皆さんの御好意で成立したのですけれども、これはそういうことならば、もとへ返ってまた法案をつくるということを考えなければならない。その点は、私は、役人は、この人道的な――別に利益も名誉も介入してない法案だったら、法務省のお役人方も、前の自分たち役人の間違いを反省して、そして大臣決定にもっと従順に同調的におなりになるべきだと思うのですけれども、これはどういうふうにお考えになりますか。
  130. 小澤太郎

    ○小澤説明員 先ほど法務大臣から御答弁がありましたし、それから保護局長からも御答弁申し上げましたように、大臣がこの部屋で答弁された趣旨は、法務省の官僚もその趣旨に従って行なうということにいたしております。たまたまその新聞記事が、先ほど申しましたように、発言を真実そのまま伝えておるかどうかについては、私ども疑問を持っております。そこで、この席で私どもが申し上げることをひとつ信じていただきたい、かように存じます。
  131. 神近市子

    神近委員 恩赦課の小嶋さんという人が、大臣声明に相当反するようなことを言っておりますけれども、この人の言うようなことを考えると、私どもは悪意ではないけれども、ははあん、法務官僚はこんなふうなことを考えて、そして大臣声明なんかまるで自分たちの業務の上で追っ払っているのじゃないかというふうに考えるのです。これは次官としてきびしく規制なさるべきだと私は考えます。  それから、もう少しお尋ねしたい。もう一、二点でやめますけれども恩赦手続というか申し出、恩赦をお願いする者は、あとの六人の中からいまどのくらい出ておりますか。
  132. 鹽野宜慶

    ○鹽野説明員 先ほど申し上げましたように、二名出ているわけでございます。
  133. 神近市子

    神近委員 何か私どものほうには平沢貞通、西武雄その他出ているように通知があっていますけれども、いまきているのは二通だけですね。――はい、わかりました。ひとつそういうわけで、変なやり方をなさらないで、きのうの山本宏子ですか、この人なんかを第一歩として、あと六人のなにを検定というか、審査あるいは協議というものを早くやっていただきたい。特に平沢貞通とそれから西武雄とはかなり重病にかかっているということであります。二十数年入っていたということは、私どもここで有罪、無罪は言わないとしても、名前はみんなに非常に知られて、そして盛んな救護運動が起こっている。この山本宏子の三千人どころじゃない救護運動が起こっているということを考えて、ひとつ急速にこの問題を解決していただきたい。万一お役人が、先輩の決定したことがわれわれにはこれを訂正するのが法の安定性とかなんとかいうことばをおっしゃれば、これはまた新しい法律をつくらなければならない。その点では後継者がたくさんおいでになるから、いつでもそれはできると思うのです。ひとつ決定したことは早急に決行していただきたい。これをお願いして、私の質問は終わります。
  134. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員長代理 山田太郎君。
  135. 山田太郎

    ○山田(太)委員 質問を始めます前に、きょう同僚委員からの要望もありましたが、法務大臣委員会への出席は当然のことでありまして、ことに憲法にもうたってあるとおりでございます。きょうも十二時までは法務大臣がおるというので、急用を済ませて十二時二十分前にこの部屋に入ってみたところが、もう法務大臣はいなかった。大臣のこのような状況はもってのほかのことであると思いますし、どうか委員長からもきつく要望しておいていただきたい。その点をまず要望しておきます。  さて、本題に移りますが、この前の法務委員会において、前々回でございましたか、保留しておきました問題もありますし、御承知のスモンの問題について、まず人権擁護局長にお伺いいたしますが、村八分的な処遇を受ける状況について調査しておくということであった。まだ期間が短いかもしれませんが、どの程度まで調査がいっておるか。途中ならば途中でけっこうでございますが、その点の状況をまず教えてもらいたいと思います。
  136. 上田明信

    ○上田説明員 お尋ねの件につきましては、あれからすぐに岡山地方法務局に対して調査を命じましたところ、岡山県の新見市及びその周辺地区にスモン病の方が多いようであります。この周辺について、村八分的な人権侵犯問題が発生していないかどうかということをつぶさに調査いたしましたところ、岡山県新見市及びその周辺においては、そういう事実は認められないという報告に接しております。しかし、もし他の地域において御指摘のような村八分的な事件が発生しているとすれば、その地区をできれば御指摘願えますれば、直ちに調査いたしたいと思います。
  137. 山田太郎

    ○山田(太)委員 局長答弁は、そのとおりだと思います。いま現在、新見のほうにおいてはその状況はありません。岡山県の西部、井原市でありますが、その周辺、それから北部は湯原町という温泉町でございますが、この周辺、そういう点を主として当たってみていただければ状況がわかるのじゃないかと思いますので、この点はきょうは保留しておきます。お願いいたしておきます。  それから後々の質問のために政務次官にお伺いしておきますが、このスモンの原因として農薬説もあります。もちろん原因が究明されていない現在でございますから、とやこう言う段階ではないと思いますが、後の質問にも兼ね合わせて関連がありますので、例の公害罪でございますが、この公害罪は、聞きますと、法制審議会においての刑法全面改正の作業は進められてはおりますが、それとは別個にこの公害罪を考える、そういう意見報道されております。これは現在の状況から照らして、当然公害罪を早急に施行するのもやむを得ないのじゃないかと思います。したがって、それに対するいまの準備状況あるいはそれに対しての見解、これを政務次官から御答弁願いたいと思います。
  138. 小澤太郎

    ○小澤説明員 公害罪の問題につきましては、現在法制審議会で検討いたしておるわけであります。私どものほうにはまだ答申も出ておりません。その上でひとつ考えよう、こういう状態になっております。
  139. 山田太郎

    ○山田(太)委員 政務次官はその上で考えられてもけっこうです。が、では、局長のほうにお伺いしたいと思いますが、それに対する見解ですね。差しさわりがあるならばいざ知らず、できるならば見解を発表できる段階まででけっこうですが、見解を聞いておきたいと思います。
  140. 川井英良

    川井説明員 法制審議会で全面改正の一環として公害罪の問題をいま議論いたしております。そこで、法制審議会でやっておりますのは、御承知のように、全面改正の一環としての立場からの公害罪の検討でございます。したがいまして、政府といたしましては、公害の実態に即しまして、公害を刑事的な面から規制をするための立法を考えるというふうな場合におきましては、刑法の一部改正という方法でまかなうか、あるいは特別法規というような一本の別の法規でまかなうかというようないろいろまだ検討課題がございます。いずれにいたしましても、最も権威のある法制審議会で目下検討中でございますので、その最終的な結論が出たその暁におきまして、切り離してやるか、あるいは全面改正を待ってやるかというようなことについて早急に法務省としての態度をきめたい、こういう考え方でございます。
  141. 山田太郎

    ○山田(太)委員 その状況はいまの答弁で了といたしますが、私の希望とするならば、現在の各地に起こっておる公害から徴してみても、別個に取り扱うべき問題じゃないか、これは私の意見でございますが、この点を特に強調しておきたいと思います。   〔鍛冶委員長代理退席、進藤委員長代理着席〕  そこで、問題を次に移しますが、先般科学技術庁から、三千十一万円のスモンの病因と治療に関する特別研究促進調整費というのですか、正式の名前は、それが出て、従来の研究班が発展的解消をして、そうして新たに全国的規模でスモン調査研究協議会が先日発足したわけです。ことしの三月でございましたか、これは産業公害特別委員会だったと思いますが、同じく村中局長さんも出ていらっしゃった。厚生大臣は途中で席をはずされた。政務次官は残っていらっしゃったのですが、当時専門の学者の研究を徴して、三百万円では調査費だけで終わってしまう、研究の段階に入るところの予算ではない、そういうところから計算してみると、約三千万円は必要である、そういうお話を委員会で論議した、その覚えがあります。それから数えて約六カ月もかかっている。非常に社会問題となっているスモンに対しての手の打ち方としては、非常に時間がかかったなという点が一点気にかかるところでございますが、まずそれができたこと自体は、非常にうれしいことです。同時に、患者並びに国民がこの研究協議会に非常に期待をかけております。  そこで、先日行なわれたこの協議会、四班に分かれての作業を進めるという発表がございましたが、これのまず第一回だから、どのような成果があって、そしてどのような方向で進んでいこうとするのか、あわせて予算等の問題もありますので、この第一回にかかった費用、わかるならば、あわせてこれは村中局長のほうから答弁していただきたいと思います。
  142. 村中俊明

    ○村中説明員 ただいま御指摘のスモンの研究についてでございますが、御承知のとおり、私どもが省として当初予算で組みました研究費、その後調整でプラスされた研究費、合計で五百万円ございます。これについて五月の中旬に研究班を発足させております。それと並行いたしまして、科学技術庁といろいろ四十四年度についての緊急の研究ということで、スモンの研究の予算につきまして折衝いたしました。これが一応めどがつきましたのが、八月に入ってからでございます。これは御承知のとおりであります。そういう過程の中で、特に昨年から多発している岡山県を選びまして、当地で第一回の、都合三千五百万円の研究費を中心にした研究調査協議会を開いたわけであります。  この第一回の会合で、おもな議題としましては、一つは協議会の構成についていろいろ討議いたしました。端的に申し上げますと、会長、班長の選考、さらに班長の選考にあわせまして、どういう内容の班編成かということも議論された。こういう中で一応国立予防衛生研究所の甲野部長が協議会の会長に推されまして、各班の班長が報告をされまして、そのあと岡山大学で従来各教室が共同で行なってまいりましたスモンの研究の成果について報告がございました。この報告を中心にいたしまして、自由討議をその後五時半近くまで持たれまして、今後の班活動あるいは総合的な協議の研究について、どういう方法で進めていくかというようなことでフリートーキングをいたしました。  これを私、横でいろいろ拝聴いたしまして、特に興味を持ちました点を二、三かいつまんで申し上げますと、第一点は、岡山大学の教室の発表につきまして、臨床の専門家の討議が出ました。ある研究によりますと、ウィルスという説は一応成り立つのじゃないか。ある学者によりますと、ウイルスという原因を持ち込むのはまだ早計である。ある教室ではどうも水が原因と相当深い関係がある。同時に隣の学者はいや水ということについては自分の教室の研究では否定的な結論であるというふうな、はたから伺っておりまして、やはり原因の究明は今後に待たなければならないという印象を実は受けたわけであります。  この中で先ほどちょっと御指摘がございましたけれども、岡山大学の従来農薬の研究をやっておられます平木教授がおられます。この教授が特に発言をされまして、農薬の問題についていろいろ突っ込んでいるけれども、どうもいままでの研究の成果からは、農薬とスモンの結びつきが私としては考えられない。これについて何か会場の学者の方の御意見はないでしょうかというふうな特別の発言ども出まして、これについてはあまり活発な討議はありませんでしたが、同教授の御意見に対する反対的な意見というのは出なかったようでございます。  さらにまた先般新聞その他で報道されておりましたスモンにニコチン酸を併用した特殊な治療法が非常に有効であるというふうな新潟大学の椿教授の発表がございましたが、これにつきましてもまだ例数が非常に少なくて、スモンの患者を扱っておるところでは、こういう臨床的な治療方法をぜひ使ってみてほしい。例数がふえていけばスモンに対する特効的な作用があるのかないのか、その点の究明がもっとはっきりするだろうというふうな意見もありまして、さらにまた病理学者などからは、脊髄の病理切片の結果について相当詳細な剖検例の発表などがございまして、一応当日の研究協議会の発足を終わったわけでございます。  今後の会議の進め方といたしましては、四つの班ができましたけれども、それぞれの班が今月の下旬から来月の上旬にかけまして、それぞれ独自に班の班会議を持つ。ただし、この班には属さない他の班の研究者も一緒に自由に参加してそこで討議をしようというふうな申し合わせをいたしまして、この日が終わったわけでございます。  大ざっぱでございますが、協議会の模様というのはこういうことでございます。
  143. 山田太郎

    ○山田(太)委員 もう一点お伺いしておりましたのは、この第一回の協議会でどのくらいの費用が要ったのだろうか。これは後学のために聞いておきたいと思います。
  144. 村中俊明

    ○村中説明員 どうも失礼いたしました。会議に使われた費用について私詳細に承知しておりませんが、各委員が、地元岡山の学者もおりますし、あるいは東京、九州から集まった学者もおりますし、これらの方々の旅費、それから当日の会議の費用、そういうものときわめて少額な事務的な経費である、こんなふうに考えております。
  145. 山田太郎

    ○山田(太)委員 そこで、たしか八月の十八日だったと思うのです。これは記憶が間違っていたら失礼いたしますが、テレビで厚生大臣が患者の方々やあるいは関係の深い方々と対談されたときがあります。これは御承知と思いますが、村中局長も先日井原の市民病院やあるいは湯原の町立病院等々みずから視察もなさったし、あるいは患者の実情も目のあたり見てこられたことでしょうし、その実態というものをつかんでいかれたと思います。あのテレビにおいての厚生大臣の――きょうは厚生大臣に出てもらうよう要求しておりましたが、もうすでに他へ出ておられたそうですが、そこで局長にお伺いするのはどうかとも思います。しかし、関連性があるものですから、そのときにこの三千十一万円の研究費の中から治療費も当然使ってもらえればいいです、そういう面から治療費に苦しまれる方々にも一分の助けになるのではないかというふうな発言があったわけですが、その他についての治療費云々についての答えはなかった。あのテレビを見ておりました患者の方々が――ちょうとそのあくる日に私現地へ参りました。そして病院のほうへもあるいは現地の患者等々にもお会いしたところでございますが、ほんとうに厚生大臣が、実態がわかって、そしてあんな話をしたのだろうか、厚生大臣ともあろうのに、ほんとうの実態がわからないで、よくああいうことが言えたことだと、ほんとうに泣いて訴えておりました。  その大臣の意図したところは、局長はかわって答弁はできないかもしれません。そこでその点をまず踏んまえて、いま現実にこのスモンに対する治療費がとのように――健康保険の当人、これはいいです、健康保険の家族、それから国保はどのように治療費がいっているか、その点をひとつ説明していただきたいと思います。
  146. 村中俊明

    ○村中説明員 大臣がテレビを通じて発言された内容につきまして私よく承知をいたしておりませんが、おそらく大臣が治療費の問題について触れられた内容というのは、こういう意味だと私は理解しております。それは、当初の研究費の中では疫学調査を中心にした原因究明ということが主体でございました。その後、科学技術庁の特別調査費で三千万円の研究費が入りまして、これで治療方法の確立をしようということが研究の大きな柱の一つに上がったわけであります。これは、内容につきましては、まだ班会議が開かれておりませんので、そこで具体的な研究の方法がきめられると思いますけれども、一つの方法として、現在いろいろいわれておりますたとえば栄養剤の使用とか、あるいは副腎皮質ホルモンの使用などがありますが、これらの使用方法なり効果の点で、こういったものについては、やはり系統的な研究に待たなければならぬ。この研究をするにあたりましては、それぞれの薬剤を研究費の中でまかなわれることになるわけでありますが、言いかえますと、最終的にはその分の費用というのは、患者の自己負担の分から省ける。そういう意味では医療費の軽減に間接的には役に立つのではないかという意味だと私は考えております。  なお、現在国民健康保険あるいは社会保険それぞれの、本人は別といたしまして、家族の自己負担の部分については、これは保険制度のたてまえから、現在はそれは自己負担、自費で費用を持つというふうなたてまえになっておりますが、ただし、経済状態その他で支払いのできないような実態に対しては、他の方法によってそれが措置される。これは全般的な他の疾患と同じでございます。なお、スモンの疾病そのものの実態が究明できないという現実の中で、従来基準的な診断、基準的な治療方法というのがないわけでありまして、患者を治療した扱っている主治医からの医療費の支払い請求については、そのまま実態として把握して、支払い基金を通じて支払われているというふうに私は理解をいたしておる次第でございます。
  147. 山田太郎

    ○山田(太)委員 私の聞いた答弁がなかったようでございますが、実際の患者が支払っている金額、そこにまず大きなポイントがある。これはある病院の患者でございます。健康保険の家族。費用が十九万一千八百四十三円、自己負担が一カ月に九万五千九百七十二円。一人です。その翌月、治療費が十七万五千七百一円、自己負担は八万七千八百五十二円。そのまた次、三カ月目です。これは十二万八千四百七十五円、自己負担が六万四千二百三十三円。自己負担合計、三カ月で二十四万八千六十二円。あるいはこれは同じ健康保険の家族、これは二十六万六千二百四十八円。三カ月でこれだけの自己負担の金額です。このような実態を踏んまえて、いま現在全国で厚生省で把握できている人数だけでも約三千人。三千万円を一人に割ってみたところで一万円です、そのまま研究費にも使わないで。自己負担が三カ月で二十六万も二十五万も要る。それでこの三千万円は研究費にも使われる。調査費にも使われる。しかも治療研究のためにも使われる。三千万円全部使ってみたところで一人に一万円しか行かない。この数字を見てみても、患者が泣いておこるのも当然だと思います。決して喜んでおりません。あのテレビを見てかえって患者は嘆き悲しんでいる。あれで一国の厚生大臣のことばであろうか。私はまのあたり耳にし、目にしてきております。そういうところをよく実態をつかんで措置していかないと、とんでもない社会不安の増大になっていくのは必定でございます。そこで、テレビにおいての厚生大臣発言というのは、これはほんとうに患者の窮状を無視した発言だった。私も憤慨する一人です。厚生大臣に次の機会には面と向かってもう一度究明するつもりでございますが、その点はきょうはここでおいておきます。  そこで大事なことは、このスモンがなぜこのようにマスコミにおいても取り上げられ、あるいは社会不安の情勢にまでのぼってきたか。その一つのキーポイントは治療費です。もう一つは、防ごうに防げない。何を基準にしていいのかわからない。もう一つは、いまの村八分的処遇を受けるということ。それは、伝染病であるかもしれないという感じを非常に深めてきております。私のほうから申し上げたわけでございますが、もう一つば厚生省自体に責任があるのじゃないか。なぜならば、もう昭和三十年のころからスモンは日本に出てきております。しかも日本の特有の奇病だといわれている。そしてやっと昭和三十九年に、御存じではございましょうが、あのオリンピックのボートの競技場の戸田、いまは戸田市ですが、ここに多発したことによって初めて騒がれ、当局も取り上げて第一回の研究班をつくった。その研究班が何の成果も見ないまま、四十一年にはこの研究班が解消されたと同じような状態になっておる。もしこのときに真剣にこれが取り上げられて研究が続けられておったならば、いまのような多発の状態には至らなかったのではないかという声さえあります。そういう点について、厚生省としてはどのような責任を感じ、どのような判断を下しておるか、聞いておきたいと思います。
  148. 村中俊明

    ○村中説明員 スモンがいろいろ社会的な問題を起こしている原因として幾つかあげられましたが、私もこれらの点につきましてはほぼ同感でございます。ただ、これにどういう順位と申しますか、何が一番キーポイントなのかという点になってまいりますと、多少御意見と違うかもしれません。余談になりますが、しばしばスモンの患者さんとお目にかかりながら、いろいろと話をしたり陳情や要望を受けております。その中で特に、どこに出ても厚生省としては声を大にしてはっきりさせておいてほしいということがあるのです。それは何かというと、スモンという病気はうつるかどうかわからないのだということをはっきり行政当局の責任者から出るところに出たらいつも言ってくれ、そこをはっきりさせないから、ある人はうつるのじゃないかという不安を持っている、しかし、いまの学問的な究明ではうつるかうつらないかわからないのだ、これは患者の立場からぜひそのことをはっきり言ってほしい、こう言われたわけです。いたずらな、伝染するかもしれない、伝染病かもしれないというふうな不用意な発言が、いろいろ神経のすり減っている患者に与える心理的な影響というのは、私はゆるがせにできないと考えるのであります。  なお私は、これらのいろいろな社会的不安の原因の中でも一番大きなのは、原因の究明がなされていないこと、これが一番問題だと思います。もしも原因究明ができるならば、それに付随した治療の方法も確立されるでしょうし、したがって予防の方策も出てまいる、こういうふうに考えるわけであります。そういうことで、先ほど研究の方針につきまして申し上げましたように、現在治療方法の確立という問題と原因究明という問題、この二つの柱を中心に学者の研究を期待しているわけでございます。  なお昭和三十九年からやった研究が一時中断された、これは厚生省の怠慢じゃないかという趣旨の御指摘でございますが、これは過去のことでございまして、私自身も申しわけないと考えております。ただ、この研究が中断された背景の中には、続いていたスモン患者の新しい発生がだんだん下火になってきたという実態が一つあった。しかし昭和四十二年、四十三年とは、少ない患者を中心にして国立の病院で臨床研究は続けてまいっていたわけでございます。その後昨年から岡山地域を中心にして新しい発生が起きてきたというのが実態でございまして、私どももこの事象を十分把握しながら、早急に学者の研究に期待しながら対策を立ててまいりたい、こう存じます。
  149. 山田太郎

    ○山田(太)委員 いま、昨年から岡山県に多発してきたとおっしゃいましたが、これは四十一年、四十二年からです。それから、何といったって第一回の研究班を中断したと同然にしたということは、現実において怠慢のそしりを免れないと思います。それは発病患者の数が減ったとおっしゃいますが、統計的に見ると発病患者は決して減っておりません。局長は数字的に御存じないはずです。したがって、それは単なる理由だけにすぎないことだと思います。  そこで一番問題なのは、局長にことに聞きたいことは、何といってもこのスモンは、現在原因がわからぬだけに、防ぎようがないのです。ちょうどこれは天災などと同じです。いわゆる災害ならば災害救助法の発動があります。しかし、これには現在何ものもない。何を用心していいかわからない。いつ発病するやらわからない。また一年後、二年後にはどこでまた多発するかもわからない。現在すでに各県でスモン病患者のいない県はないようになっております、現在つかんでおるだけでも。ましてや診断基準がはっきりするならば、これはもっともっと、いまの数倍あるいはそれ以上の患者がおるかもわからないといわれておる。これも専門家でございますから、そういう点に局長が触れられないから、私が言わざるを得ない。お医者さん自体がスモンの診断をようしない人が多いということを聞いております。最近のことですが、別府で自治体病院の院長会議があった。ところが、その自治体病院の院長の集まった会合において、ある病院の院長がスモンの話をしたところが、そのスモンとはどのような病気かということを聞いた院長さえおったということを聞いております。したがって、実態はもっともっとひどい状況が全国にあるのじゃないかということが予想される。その点が一点と、もう一つは、天災よりもまだひどいこのスモンが、ここに一番の根本の社会不安が出てくるのは、どれだけふえてくるかわからない状況です。  もう一つは、局長が触れたがりませんが、治療費の問題、これは大きな問題です。ここにも最近私のところに来た手紙がたくさんあります。これは一番最近来ておるものです。これが実情ですよ。これは自分のことはおっしゃっていません。自分のことはおっしゃっていませんが、このような手紙が来ております。局長は何のために視察したのやらわからない。治療費の問題も知らないでは、しょうがないと思う。  全文は省略しますが、聞いておいてくださいよ。「さて、この奇病スモンは、口には言いあらわせないまことに不可解なる病気で、その苦しみは病人よりほかに想像だもできないふしぎきわまる病状でございます。私自身」――私自身とは奥さんです。下半身が麻痺です。そして主人もスモンです。「主人の看護に当たってはや十カ月経過しておりますが、その間の主人の治療は、院長先生の指示によって、注射二千本、輸血二〇〇〇CCしてまいりましたが、病状は一向に回復のきざしはございません。いろいろな症状にあえぐ三十歳、四十歳の人、見ることも歩くこともできない数十人の患者を見てまいりましたが、何ともいえない生き地獄そのもので悲惨きわまるものがございます。医学の進歩にたよるほかございませんが、何ぶん原因すら判明せず、したがって治療費の多額に伴い、生活困難というまことに悲惨なる日々を送っておるわけでございます。どうか一日も早く原因究明と治療法の確立、治療費の軽減方法等、救済の手を国をあげて対策していただきたいと苦しさのあまり身分をも顧みず先生にお願いする次第でございます。どうぞよろしくお願い申し上げます。」下半身不随の奥さんが主人の看病をしています。主人はめくらです。スモンで目が見えなくなっております。そして、この家庭はもう一人、むすこもスモン病です。したがって、ここの家族は国保の三割は三人が払っております。そしてこれには書いておりませんが、実情はたんぼも農機具も全部売り払ってしまっております。いま何も残っておりません。しかし、生活保護は受けたくありません。何とかがんばっていきたいですと言う。しかし、この人が一人だけではないのですよ。現実に見てこられたのならば、何を見てこられたのですか。こういう窮状も見てこないで帰ったのですかと言いたいくらいです。これに対して、いまの法律では、どうにも処置ないから、あえて治療費のことは言わない。これはひきょうにもほどがあると思うのです。これに対して政府として打つ手なく、ただ原因究明、治療法の確立のみに専念していればいいという問題じゃないと思いますが。どうですか。
  150. 村中俊明

    ○村中説明員 いろいろ御指摘がございましたが、私も井原市及び湯原町の病院について実態に触れましたし、患者の窮状の訴えも聞いてまいりました。患者に対する認識は、失礼ですが、御摘指の山田議員に劣るものではないと思います。  ただ問題は、先ほど来繰り返して申し上げますように、残念ながら現在の国内の専門的な学者の英知をもってしても究明がなかなかむずかしい状態であります。こういう中で原因を早急に確立するというのが私ども行政当局に課せられた一つの責任だと考えております。そういう意味で一生懸命努力をしているわけですが、なかなか思うような成果はあがらないのです。  第二点の御指摘の医療費が非常にかさんでおる。しかも自己負担の部分の金額がかさむために、それによって経済的な圧迫が非常に強い。これに対する政府としての対策が何もないという点についての御指摘でございますが、これは先ほど来申し上げておりますように、治療方法の確立とうらはらになる問題だと考えております。治療費の軽減ということにつきましては、これも先ほど申し上げましたけれども、薬物その他の研究費の中でそれを処理することが間接的に医療費の軽減に役立つというふうな考え方で現在研究費の使い方を学者にお願いしているということでございます。  なお、保険による自己負担分の処理につきましては、それぞれ疾病その他特殊事情によって若干の支払いの引き延ばしあるいは町村の肩がわりというふうな問題もあるようでございますが、これはスモンだからそういうことができないということではなくて、またスモンは全部そういう対象にするということも従来の慣例上行なわれていないようでございますが、私はそれらの関連の諸制度を十分生かされるように努力いたしながら、患者の医療費軽減をはかってまいりたい、こう思います。
  151. 山田太郎

    ○山田(太)委員 あなたは患者の医療費負担の軽減をはかってまいりたいと口では言いながら、また研究費は治療費の軽減に役立つとおっしゃいます。しかし、先ほど申し上げたとおり、三千万円はまだ患者一人当たり一万円にしかならない。いまあげましたように、一カ月に八万円も九万円も十万円も要るのです。その研究費三千万円を全部ぶち込んでも一人当たり一万円にしかならぬのです。それでよく口はばったくも軽減になります――これは軽減にならぬのですよ。数字でいえば一人当たり一万円にしかならぬ。だけれども、実態をいえば、つんぼとどきにもならぬじゃないか、研究費が治療費のほうにも回されますから、それは幾ぶんの役立ちになります、そう言える数字じゃないのです、金額が。それは何べん言うても同じような答弁しか出ないかもしらぬが、しかし、それじゃこれは政治でもなければ行政でもなくなってしまう。天災よりひどいのですよ。水害なりあるいは地震なり、そういうものは突っかい棒もできる。あるいは水害なら堤防を上げることもできる。ダムを築くこともできる。しかし、現在はその突っかい棒もできない。あるいはダムをつくるために研究を進めていると言われるかもわからぬが、それはいつになるやらわからない。いままで続けてきたって、できなかったじゃないですか。これから先何年かかるかわからないじゃないですか。その間、これらの悲惨な患者が続々ふえてくる。それに対して何ら手を打たないで、手をこまねいて見ておる、それが行政ですか。天災よりひどいですよ。言うならば、災害救助法に匹敵するようなものをこのスモンに対してはとるべきが当然じゃないですか。いま保険の問題について、保険の中でこのような措置ができる、これはスモンだけじゃありません、こういう答えもありましたので、一部そちらのほうに話を移しますが、保険の方は来ていますね。  いまの法規の中で、保険法の中で、どのような措置が講じられるか、ありたけの知恵をしぼって、ひとつ答弁してみてください。
  152. 首尾木一

    首尾木説明員 ただいま先生がちょっとお触れになりました国民健康保険の一部負担の問題でございますが、国民健康保険法の第四十四条の規定に、一部負担の支払いにつきまして、特別の理由のある被保険者で、支払いが困難な場合に、保険者がその一部負担の減免をすることができるという規定があります。必ずしもスモンだけに限られるわけではございませんが、そういったような措置が考えられるわけでございます。これは個々の患者につきまして認定をいたしまして、生活が困難であるというような実情の場合に、保険者が決定をするようになっておるわけでございます。なお、その際に、そのような一部負担を保険者として相当の額行ないました場合に、保険者の財政負担の問題が生ずるわけでございますが、その財政負担の問題につきましては、特別調整交付金の中で配慮するというようなことができるわけでございます。健康保険につきましては特別ございませんが、現在の国民健康保険の中ではそのようなものがございますので、生活困窮の者につきまして個々に町村等で認定されました場合に、そのような措置がとられるということでございます。
  153. 山田太郎

    ○山田(太)委員 その国保法の第四十四条も知っております。それから調整交付金の五%のことも知っております。しかし、これは生活保護を受ける手前まで転落しなければ適用されないじゃないですか。それ以前においてこれが適用されますか。
  154. 首尾木一

    首尾木説明員 御案内のように、現在は、生活保護法の被保護者につきましては、国民健康保険の被保険者でなくなるということになっております。したがいまして当然、生活保護基準よりも高いところでもって、一般的に生活困難というふうに認定されました者につきましてこの規定が働くようになっておるわけでございます。
  155. 山田太郎

    ○山田(太)委員 この認定は地方団体の長の責任ですか。
  156. 首尾木一

    首尾木説明員 保険者たる市町村長の市町村において認定をするということになっております。
  157. 山田太郎

    ○山田(太)委員 では、スモンについて、これが認定されている状況を説明してみてください。
  158. 首尾木一

    首尾木説明員 たいへん申しわけございませんが、その点につきましては、私どもいまだ実態を調査いたしておりませんので、現在実情を把握しておりません。
  159. 山田太郎

    ○山田(太)委員 いまの答弁のとおりじゃないですか。実際においてこれはスモン患者の真の窮状を救うことになってないのです。そういう条項があるというだけです。したがって、不親切きわまる答弁ですし、この場だけ済めばいいという答弁になってしまうのも当然です。そういう意味で私は質問しているのじゃないのです。この多発するスモン、これは将来どこまで多発するかわからない。またいつ原因がわかるやらわからない。いままでだって、長い間一生懸命研究してもわからなかった。しかし、患者は出てくる。これをそのまま見過ごしてはいけない。患者の方が窮状を訴えてくるから、それだけで言うのじゃないのです。実際見てもそうですよ。それに対して当然災害救助法に匹敵するようなもの、たとえばスモン患者の医療等に関する臨時措置法というようなものも考えるべきじゃないかと思うのですが、それはどうでしょうか、局長
  160. 村中俊明

    ○村中説明員 スモン患者の取り扱いにつきまして特別な立法化という問題も一応私なりに判断をいたしましたが、何ぶんにも原因の見通しすらまだ立たない。たとえば、これが伝染の可能性がある、先ほどちょっとお話が出ました、こういう方向が出てくるような可能性が出てくれば、その時点で私どもはそういう措置についての検討を積極的にできるわけです。私は、いまの段階では、残念ながら、もう少し原因究明の研究の度合いが進まなければ、特別措置法的な法制化というのは非常に困難である、こう考えております。
  161. 山田太郎

    ○山田(太)委員 では、局長はスモン患者が次々と出て、そうしてその治療費に困り、生活苦にあえぐようになっても、それはまあやむを得ぬということですか。そういう考ええですか。原因究明とこの治療の問題と――伝染病的な性格が出なければ伝染病予防法的な措置が講ぜられないというその意味はわかります。しかし、何も伝染病予防法的に措置を講じなさいというのじゃない。これは別個に考えていかなければいけない。伝染病であろうとなかろうと、多発しておるのは間違いない。まだ診断基準だって――いままで患者の治療に携わった医者ならば、誤診する心配はありません。その講習会等を設けたっていいのです。そうして医者に周知徹底すればいいのです。もっとふえるでしょう。どんどんふえてくるでしょう、実態は。しかしこのように窮状にあえぐ患者並びにその家庭をそのまま原因が究明されるまでは捨てておいていいということなんですか。その点はどうですか。
  162. 村中俊明

    ○村中説明員 先ほど来申し上げておりますように、研究の中で間接的な医療費の軽減をはかる一方、現在あるそれぞれの社会保障制度を十分活用する立場で処置していくというふうに考えております。
  163. 山田太郎

    ○山田(太)委員 それが何も実効をあげてないということを言っているのじゃないですか。いまの研究費の問題は数字をあげてぼくは話しした。それからいまの法規の問題は、実態はいまのとおりである。ちっとも効果をあげてないじゃないですか。また効果があがるはずもないじゃないですか。それでみすみす生活苦にあえぐ悲惨な状態になるのを見捨てておくわけですか、どうですか。
  164. 村中俊明

    ○村中説明員 ただいまお答え申し上げましたとおり、研究費の中と現在ある制度を十分活用するような形で善処してまいりたい、こう存じております。
  165. 山田太郎

    ○山田(太)委員 わからないことをおっしゃいますね、局長。研究費の中といったって、三千万円全部使ったって一人頭一万円にしかならない。ある制度といったって、いまの答弁のとおりじゃないですか。具体的にはどうやろうというのです。患者がほんとうに安心できるには、どうやろうというのです。それで患者が安心できますか。多発する患者が安心できますか。あなたが患者としたら、それで安心できますか。どうですか。
  166. 村中俊明

    ○村中説明員 ただいまお答え申し上げましたとおりであります。
  167. 山田太郎

    ○山田(太)委員 局長のほんとうに非人間的なといいますか、あるいは役人的なといいますか、いまの答弁を聞くと、多くの努力をしている医者もあるいは患者もおそらく泣くでありましょうよ。これ以上まだ進んでいくのだったならば、当然臨時措置でも講じなければいけないというぼくの考えが間違っていますか。
  168. 村中俊明

    ○村中説明員 御意見として拝聴いたします。
  169. 山田太郎

    ○山田(太)委員 そういう答弁しかできない、またそういう答弁をする段階にしか考えてないということは、ほんとうに国民は驚きですよ。いまのままの段階で進めていったのでは、スモン病の研究費が三千万円で、そうして事終われりとなってしまいますよ。それでは厚生行政じゃないじゃないですか。  じゃ治療費については、現段階じゃ何も考えてない、研究費以外は何も考えてないということと同じじゃないですか。行政に携わる局長として、それは無責任きわまることだと思います。当然議員立法を考えてもいいんじゃないか、他の党の先生方にもはかって、議員立法を考えたほうがいいのじゃないかとさえ思っております、いまの答弁では。
  170. 大村襄治

    大村委員 関連。このスモン病に関する山田委員の御発言を聞いておりますと、同じようにスモン病多発地帯の岡山県に選挙区を持つ私といたしましては、まことに御同感な節が多いわけでございます。ただ、この病気が、まだ病因がはっきり究明されておらない。しかるに患者の発生数が刻々とふえてまいりまして、各地で多発しているという点からいたしまして、厚生省の当局におかれましては確たる対策を明確にお答えしにくい節もあるように見受けられますので、その点は若干同情すべき節もあるような気もいたすわけでございます。  そこで私は、この段階で提案と申しましては言い過ぎかもしれませんが、要望があるわけであります。すなわち、このスモン病の原因の究明について厚生省としては一そう力を傾中して当たっていただきたいという問題が第一であります。すなわち、最近私がやはり選挙区へ帰りまして聞きましたところによりましても、スモン病多発地帯の町立病院におきまして看護婦にまで感染して、中にはどうもそれが原因らしくて死亡した事例も起こってきている、そういうことも耳にしております。また多発地帯のある温泉場におきましては、あんまりたくさん発生して、しかも長引く。それがどうも伝染性らしいといううわさが伝わるために、お客さんがだんだん減ってきてしまった。去年と比べると、ことしの温泉宿のお客さんが二割も減ってきて、このままでは温泉場の死活問題にもかかわってくるといううわさすらかなり広がってきておるというふうな現状でございます。  そこで、医学的な見地から言いますると、長年御研究になって、しかもなおよくわからぬということですから、そう早く結論を出せといいましても、いつ出せるというふうな明確なお答えはなかなかいただきかねるのかもしれませんけれども、そこはこの際科学技術庁から三千万円も追加支出を踏み切っておられるのですから、一そうこの機会に、この究明に省をあげて、全力をあげて取り組んでいただいて、はたしてその原因が何であるか、伝染性の疾患であるのかどうか、ほかに農薬その他等の原因があるのか、そういった点をはっきり出していただいて、そうしてそれを、わかり次第一般に発表されて、よけいな心配は防ぐようにしていただくと同時に、本格的な治療対策が進むようにやっていただきたい、これが第一点であります。  それから、第二点としましては、病因の究明もさることながら、山田委員も御指摘のとおり、治療の面で、社会保険なり国民健康保険の問題がある。保険制度を活用して治療をやるよりほかはないのであります。どうしても長期化しますると患者の負担がふえてくるわけであります。その負担をどうするかという問題、さらに長期化した場合には、生活困窮者も出ます。そういった場合には、どんなに適用を受けたくないといいましても、受けざるを得ない家庭も出てくることは必至であります。そういたしますれば、生活保護の適用の問題も出てくる。そうしますと、公衆衛生局だけでは足りないのでありまして、保険局、社会局、厚生省、全省をあげて取り組まなければ、総合的な対策はできない。  それから、私はさらに地方財政の負担の問題が出てくると思うのです。どんなに保険のほうの適用を広げましても、患者の負担もふえ、また市町村の財政負担もふえるということになりますれば、また地方財政の特別措置も考えていかなければならぬ。現在の特別交付税の運用におきましても、伝染病の多発地帯におきましては、特別の交付金を交付するようにいたしておるわけでありますが、はたしてスモン病についてはどうするか、私はつまびらかにいたしておりません。しかし、この状態が今後続くとすれば、少なくとも多発地帯については、従来の伝染病の多発地帯に準ずるような措置は講ずべきではないかと思います。そういった問題については、やはり実態を明らかにし、そうして対策を講ずるということでないと、これは間に合わないということになると思います。  以上、私は思いついた点を申し上げたわけでありますけれども、ひとつ厚生省の関係局を通じて、この問題の前向きの対策をすみやかに樹立するように、全省をあげて取り組んでいただくよう強く要請するものであります。その上でなおかつ山田委員御提案のように、特別立法の必要があれば、これはまたひとつ各党相談して臨む、こういうことになろうかと思います。  とりあえず実態を明らかにし、原因を究明し、そうして総合的な対策を樹立されるように強く要望いたしまして、私の質問を終わります。
  171. 山田太郎

    ○山田(太)委員 いま大村先生の御発言、やはりむべなるかなだという、そのとおりだと思います。  そこで、一歩譲って、いまの審議官の御答弁の調整交付金、これを高度に活用してもらいたい。  それからもう一つは貸し付け制度、この点を考慮してもらいたい。これは法的に措置しなくてもできるはずです。  それからもう一つは、先ほど申し上げた、当局においてもスモンの治療に対する臨時措置法的な、そういうことを検討してもらいたい。その点を要望しておきたいと思います。そして、局長答弁がどうのこうのと言うのでなし、これはおそらくや間もなく全国的な問題になってくると思います。同時に、社会不安、社会問題は、やはり先ほど申し上げたことが原因となってますます大きな問題になってくることは必定であります。そこで、打つ手がおくれないように、厚生大臣にも当然当の責任者として質問することを保留しておきたいと思います。  そこで、最後に、もう五、六分時間をいただきまして、厚生省の公害関係の方に来ていただいておりますが、一点だけお伺いしたいと思います。  これは、実は一昨日のことでございます。私も現地を視察してまいりました。どういうことかと申しますと、先月の二十六日、七日、八日だったと思いますが、その三日間にわたって、岡山県の南部に児島湾というところがありますが、その児島湾の水流検査といいますか、通産省と県と岡山市当局と、三者でこの検査に三日間来られました。ところが、その間は、当の児島湾に注ぐ旭川の水が非常にきれいになっちゃった。ところが、その三日間が過ぎると、間もなく、各沿岸の工場が廃液を出したと思われて、ものすごい濁りに変わってきたわけです。と同時に、下流の魚が全部浮いてきた。私の調べた範囲でも、三十分でつけものだるに一ぱいになるほど、あっぷあっぷと上に浮いた魚をくみ上げて、三十分で一ばいになったそうです。そうして、それを家に持って帰って、十分か十四、五分たったらしい、そうして来てみると、もう、いままであっぷあっぷしておった魚が、白い腹を出して浮いて流れ出す。むざんに、その川の表面は、まつ白になったというほどの状況であります。そのとった魚を沿岸の人々はつくだ煮にして食べておるということを聞いております。そのときはウナギまでも死んだそうです。ウナギまでも死んだということは、よほどその害毒がひどかったということが想像できるわけです。その沿岸の人は、身体への影響などは考えないでとったかもしれない。しかし、魚が死に、ウナギまで死ぬるという、そういう状況にあるわけですから、ひとつ公害関係の方々、いままでそういうことが他の場所であったかどうか、同時にこの児島湾においての実態を調査して報告してもらいたい。その点を要望して、いままであったかどうか、よその地にもあったかどうか、そういうことを一言答えていただきたいと思います。
  172. 橋本道夫

    ○橋本説明員 いま先生から御質問のあった件につきまして、さっそく岡山県の公害課と通産省に照会をいたしました。  調べてみますと、二十五日、二十六日、二十七日と、この三日の間に蛍光物質を放流したということであります。ただ、蛍光物質を流したことによって従来そういうことが起こったという経験は一切ございません。  それから、工場排水につきましては、特にその間にとめるということは一切させていないし、そういう事実はなかったというような話として聞いております。実態はどうであったかということにつきましての先生の御意見も、私どもも一応耳にとめて今後検討いたしたいと思います。  もう一点、従来こういうことがあったかという点でございますが、御指摘のように、児島湾は、干拓をいたしまして、そしてその中の水はその外海と出入りが非常に悪いという形になりましたが、河川としましては旭川と吉井川の二つが入ってきまして、そこに入ります。そこの工場といたしましては、岡山市の南の臨海工業地帯の製紙とパルプと精錬と化学というような関連企業がある、都市下水も入るというようなことで、従来もこのようなことがあったそうでございます。  こういうことがありまして、どういう原因かということについて、一々詳しく私どもはまだ承知をいたしておりませんが、一つは溶存酸素が非常に減ってしまって、そして魚が死んだのだという点、もう一つは、農薬を近辺で使用した場合に、そこで魚が死んだということでございますが、工場排水としての事件があったかどうかということについては、県から一応聞いた状況では、そういうことについては私ども事情を知ることができませんでした。そういうことでございまして、昨年八月も、この魚の形が変なものがいるというようなことで調査をしたが、特に認むべき原因がなかったということだそうでございまして、この点につきまして、私どもは、県はいつ知ったかと言って聞いてみましたら、九月六日に知ったということでございまして、これは漁民から県の水産課、県の水産課から公害課、それで現地調査ということをしたそうであります。ただ非常に大量な魚が死んだというような事実ではなかったというような認識を地元ではいたしておるようであります。  こういう点につきまして、全国でこういうケースがあるかということでございますが、これはまま起こることでございます。特に夏場から前後はわりにこういうことはぽつぽつ起こることが残念ながらございます。そういう点につきまして、死んだ魚がある、あるいは死のうとしている魚があるというようなものをとって食べるということは、衛生常識としては、これは全くまずいことです。私どもは、弱って浮いたような魚は食べないようにということを、一般的な衛生教育として公衆衛生のサイドのほうでやってもらうことは、今後も全国的に必要だと思います。  もう一つは、どうしてそういう事件が起こったのかということの究明でございますが、事実の究明というのは非常にむずかしゅうございます。そこで、今後は、そういう斃死魚が起こった場合に、どのようなことを手順として調査をするかというようなことにつきましても、前の木曽川の問題もございますし、私どもも、ぜひその点は詰めて、そういう問題の処理のしかたというものを検討いたしてまいりたいと思っております。今年度私ども調査をするということではございませんが、来年度の問題としては考えてみたいと思っております。先生からのお話もあったので、現地のほうへもう一度よく事情調査してみるように申しておりますが、その結果によって、またお知らせいたします。
  173. 山田太郎

    ○山田(太)委員 一言だけ。その現地調査視察のときに、私も水をくんで帰っております。それはとてもじゃないが、たいへんな――まだ分析しておりません。しかし、通産省と、それから県の役人と、それから市の役人とで――やはり検査実態は通産省でございます。ぼくのあえて言いたいことは、通産省から聞きたいわけじゃないのです。やはり人間性を主とする厚生省の立場から、実態を把握して、そうして人体への影響はどうか。もちろん製紙会社もありますし、あるいは硫酸関係の同和鉱業もありますし、あるいはダイケン・ボードもありますし、あるいは苛性ソーダをつくるソーダ会社もありますし、全部並んでおります。それは全部水を持って帰っております。したがって、厚生省の立場としての検査、調査、それをやっていただいて、報告していただきたいことをお願いして、私の質問を終わります。
  174. 進藤一馬

    ○進藤委員長代理 松本善明君。
  175. 松本善明

    松本(善)委員 先ほど来、法務大臣国家公安委員長にお聞きいたしました下山事件捜査記録の公表に関する質問主意書について、内閣から答弁書が送付されました。それによりますと、元警視庁捜査第一課主任の関口由三という人が雑誌の「新評」に公表した手記の内容について、地公法第三十四条に違反するのではないかという問いに対して、警視庁当局の説明では、内容秘密でないので同法違反ではないという回答になっております。関口氏は、この資料の公表については、「新評」七月号によれば、「事件は既に時効も成立しているし、当時事件関係した先輩・同僚の了解も得て」と書いておりますし、サンデー毎日の六月十五日号では、関口氏が語ったということで、「二十年もたって事件が時効になったのと、警視庁了解も得られたので、捜査の真相を発表することにした。」ということになっております。答弁書では、関口氏の手記公表については警視庁当局が了解したことはないというふうに言っておりますが、この個人的に手記公表について相談を受けた人はいるのかどうかということについて、警察庁はお調べになったのかどうか、その点をお聞きしたいと思います。
  176. 内海倫

    ○内海説明員 関口由三氏が、雑誌「新評」に下山事件に関しまして手記を発表いたしました。私もこの手記を読んでみましたが、いま言われますように、上司、同僚等に相談したというふうなことは書いておるようでありますが、彼がいわゆる上司、同僚と言っておる人の全部がもうすでに退職をしてしまっており、また、中にはすでになくなっておる人もあるわけでありまして、その方たちにどういうふうな話をしたかということは私ども明らかではございませんが、すでに質問書にも総理大臣名でお答えを申し上げておりますとおり、警視庁として、これに対して、こういうものを書くから了解をしてくれというふうな相談を受けた人もおりませんし、かつまた、そういうふうな了解を与えたというふうな事実もないということでございまして、この問題について、彼がだれとどういうふうに相談をしておるというふうなことは、以上申し上げたようなことでございます。
  177. 松本善明

    松本(善)委員 そうすると、警視庁としては、関口氏がだれの了解を得たかということについてはわからないということになりますか。警察庁からひとつ伺いたい。
  178. 内海倫

    ○内海説明員 先ほども申しましたように、警視庁として了解を与えるというふうな事実は何もございませんが、彼が、やめた人、またやめた人の中における上司、同僚、こういう人の名前なども、この自分の書いたものの中にかなり出しておりますから、あるいはそういうことについての了解などは得たのかもしれませんけれども、その点については、だれにどういうふうな話をしたかということについては承知をいたしておりません。
  179. 松本善明

    松本(善)委員 この答弁では、関口氏の手記の場合に、内容秘密でないということを言っておりますが、捜査官が捜査の途上で知ったことは、一般には秘密ということになるのではないかと思いますが、どうでしょう。
  180. 内海倫

    ○内海説明員 もう十分御承知だと思いますが、現に捜査中の事件につきまして、その捜査に従事をしておる者が知り得ておる事柄というものは、大部分が秘密に属するものだと私ども考えております。また、捜査が終了いたしましたり、あるいはその捜査に従事した人がその職を退きましても、その捜査の中において知り得た事柄がその捜査当局によって一般に知らされておらない、あるいはその他の事由でこれが一般国民の耳目に触れておらないことで、しかもそれがいろいろな利益を害するというふうなものであれば、これは私はたとえ捜査が終了しておっても、秘密に属する場合がもちろんあるだろうと考えます。
  181. 松本善明

    松本(善)委員 そうすると、捜査中に知り得たものは、一般的には全部秘密というわけにはいかない。秘密のものもあり、秘密でないものもある、こういう考えでいるわけですか。
  182. 内海倫

    ○内海説明員 その点については、それぞれの具体的な事実によって異なると思いますけれども捜査中に知り得たことでも、もうすべての人が知っておるような事実であれば、これは捜査上の秘密ということにはならないと思いますが、しかしながら、捜査に従事しておる人がその職務上のゆえに知り得た事柄である、そしてまたそれが外部に全然知られておるものでないことである、かつまたそれが知られることが、捜査上、あるいはそれに関係する人の名誉というふうな面で非常に不利益を与えるというふうな事柄であれば、これは秘密に属するものだと思います。
  183. 松本善明

    松本(善)委員 捜査に従事しておる公務員が、これは秘密であるか秘密でないかということは一見してわかるようになっておりますか。それとも、個々人がかってに判断をできるのですか。
  184. 内海倫

    ○内海説明員 これは一つの捜査に従事すれば、人によっては非常に広範な範囲で、あるいは人によってはごく極限された範囲で、あるいは深くあるいは浅く知るものでありますから、それぞれが、どれが秘密に属するものか、あるいは秘密に属さざるものかということの判定は、きわめて容易な場合と、本人では非常に判断のつかないもの等いろいろ私はあろうと思いますが、しかしながら、少なくとも現に捜査中のことである限りにおきましては、それの捜査の責任者が一切の責任をもってその捜査に当たっておるわけですから、たとえばそういう人が新聞に発表をするとか、あるいはこういう国会その他の公の席において発言するとかいうふうなことによって、在来秘密であるものもその秘密性がなくなるという場合もございます。しかし、いま一般的にどうということをお答えすることは容易でなかろう、かように思います。
  185. 松本善明

    松本(善)委員 そうすると、私の聞いていることは、そういう捜査中知ったことを、個々の捜査官がかってに主観でこれは秘密でないというふうに判断をして公表をしていく。あとで上司や責任ある当局は、それが一体秘密であったかどうかによってその問題の当否を判断する、こういうふうな仕組みになっておるならば、これは捜査官個人がこれは秘密でないと思って幾らでも発表することができるということになるのではないか。そういうことが、警察庁においては認められておるのかどうか。  それからこれは法務省にも聞きたいと思いますが、検察庁ではどういう方針になっておるかということをお聞きしたいと思います。
  186. 内海倫

    ○内海説明員 先ほどから申し上げますように、現に捜査に従事しておる者は、その捜査の中において知り得たことを自己の判断によってかってに発表する、あるいは外部に漏らしていくというふうなことは、私はなすべきでもありませんし、またその結果が、国家公務員であれば国家公務員法の、あるいは地方公務員であれば地方公務員法の職務上知り得た秘密を漏らすことに該当する場合がしばしばあろうと思いますから、少なくとも現に捜査に従事している範囲というものは、その職務上知り得た事柄についてこれを恣意に漏らすべきものではない、かように考えております。
  187. 川井英良

    川井説明員 地方公務員法にいうところの法律上の秘密という概念と、それから捜査秘密である、捜査は密行すべきであるというふうな意味においての捜査秘密というものは、概念的には私は違うのではないかと思います。ですから、地方公務員法三十四条にいうところの秘密に該当したい事項であっても、捜査の遂行上秘密として外部に漏らすことができない、そういう事項もあろうかと思います。そういうふうな前提でもって検察庁の取り扱いを申し上げたいと思いますけれども、原則として、捜査を行なうことによって知り得た他人の秘密並びに職務の秘密というふうなものは、この処分前に公にしないことに指導いたしております。それから処分後におきましても、処分によって当然明らかになった事項以外のものにつきましては、やはり原則といたしましてそれを公にしないほうがいいというふうな態度をとっております。一般抽象的に基準を申し上げるならば、捜査秘密でありましても、それを公表することによってより大きな公益上の利益がある、こういうふうに合理的に判断された場合においては、合理的な限度において、また必要な範囲において捜査によって知り得た事項を外部に発表することがあり得る。これが大体基本的な、一般的な検察庁における方針でございます。
  188. 松本善明

    松本(善)委員 そうすると、具体的にお聞きしたいわけですが、この雑談の「新評」には関口捜査記録の写真が載っております。関口主任という官名をはっきり書いた捜査記録の写真が出ている。おそらく捜査記録に基づいて発表されたのではないかと思われる。しかもその中には、詳しく言いますと、昭和二十四年七月六日付の警部補関口由三より警視堀崎繁善にあてた「解剖立会報告書」。昭和二十四年七月七日の東京地検とそれから警視庁との合同会議内容、馬場、山内、布施、佐久間、金沢各検事、警視庁坂本刑事部長、堀崎捜査第一課長、金原第二係長、寺本第三係長、外一川、鈴木両警部、関口、小島、溝口各主任、そのほか第一課刑事二十三名、捜査第二課吉武第三係長、浦島捜査第三課長、野田第一係長、西井第二係長、中野主任、塚本鑑識課長、東大古畑、秋谷両博士、総計四十三名出席会議、その捜査方針の決定についての会議内容を明らかにしている。それから七月九日付の加藤谷蔵の供述調書、これは関口氏の作成したものですが、それから七月十五日付渡辺盛、千代子の供述調書。藤田伸子の供述調書。七月十二月付の萩原詮秋の供述調書。七月十二日付長島フクの供述調書。七月十一日付成島正男の供述調書。七月十九日付の辻一郎の供述調書。七月十四付古川フミの供述調書。七月十六日付の山崎たけの供述調書。十四日付の増田定次郎、清枝の供述調書。七月二十五日付の仲山はつの調書。七月二十六日付の三田喜代子の調書、これは別の、関口氏ではなく溝口警部補の作成したもの。七月十八日付の中島義雄の調書、これも関口氏ではなくて、中野警部補の作成した調書。七月二十三日付の須坂吉乃の答申書。仲山はるの供述調書、これは関口氏の作成したもの。八月十一日付の田村喜代治の答申書。七月三十日に東大医学部の講堂で開かれた非公開の日本法医学会の会議。それから七月二十一日行なわれました検察警視庁両首脳会議。八月一日午後二時から警視庁の総監別室で開かれた捜査会議出席者坂本刑事部長、堀崎一課長、金原、野田、吉武各係長、鈴木、関口、峯岸、溝口各主任ほか各部屋長、それからこの会議の堀崎メモ。八月三日の坂本刑事部長公舎で開かれた東大法医学者を交えた捜査会議。こういうようなことが克明に明らかにされているわけですね。こういうような捜査の中で知り得た、警視庁なら警視庁が許可をしなければ普通は発表できないと思われるようなものが、かなり発表されておって、しかも、これが地方公務員法にいう秘密ではないというふうにいわれておる根拠はどこにあるのか、それをここで説明してもらいたいというふうに思います。
  189. 内海倫

    ○内海説明員 まず、先ほどの「新評」の中にいろいろ書かれてあります具体的な問題ですけれども、関口氏について警視庁が尋ねましたところ、いわゆるある写真に出ております捜査記録、関口主任というふうなつづりですけれども、これらはいずれも、実は全部自分が捜査に従事中、いろいろな捜査の間にいわゆる捜査員として心メモしておくべきメモを非常にたくさんメモしておるわけですが、そういうものを自分で整理をしてああいうふうな見出しをつけておるものであって、決していわゆる正規の捜査記録というようなものではないようでございます。それから、述べられたいろいろな事柄につきましては、自分のそういうふうなメモの中から引き出したものもあるようでございますし、またすでにいろいろな形で公にされておる――新聞、あるいは雑誌、あるいは週刊誌、あるいは単行本、これなどにいろいろ書かれておるものの中からこれを引用して、ただそういうふうないわゆる手記というふうなことのていさいを整えるために、あるいは供述書というふうな形をとって記述をしておるというふうなことがあるようですけれども、そういうふうなことで、警視庁でいまお話にありましたようなものにつきましては克明に、そういうものが関口氏が記述する以前にすでに一般国民の目に触れる状態になっておるものであったかどうかということも調べましたが、全部そういうふうなものは、すでに何らかの形で周知、あるいは公になっておる、こういうものであるということを明らかにいたしたようでございます。そこでこの場合、現時点においてそれが公務員法にいうところの秘密に該当するものであるかどうかということは、この関口氏の手記に関する場合につきましては、この下山事件捜査に当たりました警視庁当局が認定をするものであって、その警視庁当局が、いま言いましたように克明にこれらについて一つ一つ当たりまして、すでにこれは一般に知られておる事柄であるということでございまして、いま関口氏がこれを書いたことが、いままで秘匿されておることを明らかにしたというふうなものではないという認定をしたわけでございます。そういう意味で、公務員法三十四条に触れるものではない、こういうふうに述べて、御質問にお答えするものとして先ほどから御返答申し上げた次第でございます。
  190. 松本善明

    松本(善)委員 そういたしますと、たとえばいま私が申しましたようなことについて、どういうことによって明らかになっておるということを認定をされたわけですか。
  191. 内海倫

    ○内海説明員 いま私ここに全部の資料を持ち合わせませんので一つ一つについてお答口えいたしかねますけれども、この関口氏が「新評」に書いておる事柄について、いわゆる所見とかあるいは所感とかいうふうなものは別にいたしまして、いわゆる事実関係に属するものについては、克明にこれを拾い上げたわけでございます。そしてそれが当時またはその後に新聞にすでに発表、あるいは市販されておる雑誌に克明にすでに記載されてある、あるいは単行本としてその事柄が書かれてある、あるいは鑑定等の一部につきましては、当国会においても説明が行なわれておるというふうなこと等で、これを明らかにして私どもに報告をしてまいったということであります。
  192. 松本善明

    松本(善)委員 そうすると、この関口氏の発表したことは何ら新規なものではないということのようですけれども、しかし、これが発表されたことによって、この下山事件を研究しておる人たちにとっては、非常に大きないろいろな影響を与えておる。いままで全然知られてなかったようなものでは全くないといういまの刑事局長のお話を聞いて、私は、世の中の人はちょっと納得ができないというふうに思います。その点についてはそういうふうに思いますが、一応いまの話をお聞きしましても、こういう供述調書だとか捜査会議内容をそのまま明らかにしたというようなことば、全く初めてだと思う。供述調書内容、それはあるいは人がしゃべったとか、そういういろいろな別の形をとっておると思います。関口氏の認識はどうであったかわかりませんが、雑誌に書いていたのでは、本人地方公務員法違反になることがあり得るということを覚悟して、これは将来のことも考えるわけですけれども、もしそういうようなやり方で別に上司の許可も得ずに捜査官がこれは秘密ではないと思って発表しておる。一応そのことは内容を一々検討してみなければ、これは秘密であるかどうかわからないということで不問に付されるということになるならば、捜査記録というものは容易に公表されていくのじゃないか。そういう危険はありませんですか。
  193. 内海倫

    ○内海説明員 先ほど法務省刑事局長も答弁されておりましたけれども、この捜査秘密という問題につきましては、一方において公務員法上の秘密、要するに公務員法によって規制を受けておるものと、それからその規制は受けないけれども、しかしながら、われわれ捜査に従事しておる者としてそれを公にすべきものでないというものとあると思います。私どもは、そういう意味で広く問題を解して、いやしくも現に捜査に従事しておる捜査内容について、捜査員が恣意、要するに責任ある上司の許可も受けないでそういう事実を部外に発表するというふうなことは、私はなすべきでない。かりにそれが公務員法に触れる内容ではなくても、やはり職務規律の上から規制さるべきものと考えます。ただしかし、捜査がすでに完了する、そして多くの事実が何らかの形で一般国民の目に触れる状態に明らかになっておる、そういう事実を捜査員が発表するというふうなことがあります場合は、それが現職の警察官であれば、ことによりますれば職務規律という面で問題にされることがあるかもしれませんが、今回のようにすでにやめておる人であれば、これがすでにいわゆる公務員法上の秘密というものを失っておるものであれば、それが――私どもは何もそういうものが書かれることを望ましいものとは決して思っておりませんけれども、さればといって、そういう人が自己の責任においてそれを書くということを規制するということもできないと私は考えます。もしまた、それがかりに自分は絶対に公務員法に触れるものではない、十分調べて書いたものであると申しましても、しかし、それがその後調べて公務員法に触れる事実があれば、その事実に関しては責任を当然とるべきであろうと思いますが、その点は、やはりもうすでに捜査というものが完了する、あるいは今回のように時効が完成してしまった後において、捜査秘密性がなくなっておる事柄については、もと捜査に従事した人が発表するといたしましても、これをわれわれが何らかの形で規制するということは、私は事実上できないのではないか、かように考えます。
  194. 松本善明

    松本(善)委員 法務省刑事局長に伺いますが、先ほど公務員法違反秘密捜査秘密とは多少違うのじゃないかという趣旨のことを言われましたけれども、この捜査上知り得た秘密、特に現在進行しているような事件について、これがああいうことは望ましくないとすれば、それを言った場合には、これは公務員法違反にはならないのですか。その刑事局長の言われる公務員が秘密を漏らしても、公務員法違反にはならない秘密というのは、一体どういうものなのですか。それを少し説明していただきたいと思います。
  195. 川井英良

    川井説明員 御承知のように、国家公務員法や地方公務員法に書いてある職務上知り得た秘密というものは、いわゆる秘密ということの概念についていわれておる自然秘を言うのかあるいは指定秘を言うのかということについて、その解釈上並びに学説上あるいは判例上に対立があります。そこで、地方公務員法には的確な判例はございませんけれども、私の記憶によれば、国家公務員法について全く同種の規定がありますが、それについては東京の地裁あるいは東京高裁あたりで一応の見解が示されておりますが、ここににいわゆる官庁秘密というのは、原則として自然秘をいうのである、事柄の本質上当然に秘匿しなければならないものをいうのである。しかし、それのみにはとどまらないで、いわゆる官庁秘密の中には、さらに若干の指定秘を含む。事柄の性質上、当然に秘匿すべき事項ではないとしても、その官庁の職務の運営上秘密にしたほうがいいと思われるようなものについて、その秘密を指定する権限のある者が、これは秘密だから、当分の間外部に出してはいけない、こういうふうに指定された場合においては、その指定された秘密も、このいわゆる官庁秘密の中に入るのだ、こういうような見解が、大体最近の実務の解釈のように記憶いたしております。そういう意味におきまして、いま申しました自然秘ではない事項、いわゆる指定秘に該当するような事項があって、なおかつ指定されていないような事項、そういうようなものにつきましても、先ほども冒頭に申し上げましたとおり、捜査の遂行上、特に捜査中においては、それを漫然とみだりに公にすることは適当でありませんけれども、かりにそれを何らかの理由によりまして当該捜査官が外部に漏らしたというようなことがありましても、指定をまだされていないような事項につきましては、職務上知り得た事項でありましても、当然にはこの法律にいうところの職務上知得した秘密には当たらない、こういうことが一応理論的には説明できようかと思います。
  196. 松本善明

    松本(善)委員 そういたしますと、刑事局長の言われるのはこういうことですか。捜査上知り得た秘密というのは、自然秘ではないのだ。指定によって初めて秘密になるのだ。したがって、そのことについては、漏らしてもいい部分があるのだ。こういうことでありますか。
  197. 川井英良

    川井説明員 そうではありません。自然秘に該当するものが大部分であろうと思いますが、自然秘に該当しない事項につきましても、指定秘としてここにいうところの秘密に該当する事項がある。さらに言うならば、捜査の必要上政策的に秘にしなければいけない、外部に漏らしてはいけない事項があるのだけれども、その事項については権限がある者から指定されていない場合におきましては、そういうものを外部に漏らしても、それは捜査の政策上適当でない職務上の行為であったという批判は受けましょうけれども、法律にいうところの秘密を漏らしたというようなことにはならない、こういう考え方であります。
  198. 松本善明

    松本(善)委員 もう一度重ねてお聞きしておきますが、捜査記録は自然秘ではないのですか。供述調書でありますとか、解剖立ち会いの報告でありますとか、そういうものは自然秘ではありませんのですか。
  199. 川井英良

    川井説明員 内容によりけりであり、また事項によりけりだと思います。去年秘密であった供述調書も、ことしになりましてからは秘密を失うということがあろうかと思います。
  200. 松本善明

    松本(善)委員 そうしますと、供述調書捜査記録の中でも自然秘でないものがある、こういうことでありますね。もしそうだとすると、捜査官は、やはり個人的にこれを自然秘ではないと確信して公表することは可能であろうと思う。その場合に、先ほど内海警察庁刑事局長は、その場合でも責任を問われる場合があるといいますけれども、私は秘密でないと思った必ずしも――捜査記録全部が自然秘でないという刑事局長の御見解であります。そうすると、これは検察官にしろ、警察官にしろ、私はこれは自然秘ではない、捜査記録ではあるけれども、発表してもいい、こういうふうにここに判断することができるのではないか。あるいはまた、あとから刑事責任を問おうということになりましても、これは場合によっては犯罪にならないということになるのじゃないかと思いますが、その点についての刑事局長の御見解をお聞きしたいと思います。
  201. 川井英良

    川井説明員 捜査記録と一口に申されますけれども捜査記録の中には、御承知のとおり、非常にたくさんの性格を持った種類があるわけであります。ですから、一口に捜査記録が自然秘であるか指定秘であるかということを断定することは、たいへん困難であろうかと思います。その捜査記録の法律上の性格なり、それからその捜査記録に盛られた供述の内容なりというふうなものと、それから問題になる時期と、それからその内容が持っておる証明力といいましょうか、そういうふうなもの、諸般の事情を勘案いたしまして、その捜査記録が自然秘であるかあるいは指定秘であるか、あるいはどちらにも該当しないけれども当分の間は外部に出してはいけないものである、あるいは出してもいいものであるというようなことがきまるのじゃないかと思います。
  202. 松本善明

    松本(善)委員 そうしますと、捜査記録の中で、個人的に判断をして発表しても、少なくとも刑事責任は問わないものがある、こういうことを言われるわけですね。
  203. 川井英良

    川井説明員 理論的にはそういうことがいえると思います。なぜならば、自然秘であるかどうかということは、およそ犯罪捜査に従事するものについては、それが自然秘であるかどうかということは見当がつくはずであります。当然見当がつかなければならないと思います。指定秘につきましては、私ども何らかの形においてこれは秘密のものだという表示をしたり、あるいはまた上司が口頭をもってこれは秘密だということを明らかにされておりますので、指定秘であることも一般の捜査官は明確にこれを認識することができます。自然秘でもない、しかも指定された秘密でもないというようなものにつきましては、当該捜査官がそれをどういうふうに扱うかということは、一応その捜査官の裁量にまかされていることじゃなかろうか、法律的にはそういうことになろうかと思います。
  204. 松本善明

    松本(善)委員 それでは法務省刑事局長の御意見を伺いたいのです。先ほど私がずっと読み上げました供述調書あるいは捜査会議内容、こういうことは秘密ではありませんですか。
  205. 川井英良

    川井説明員 捜査会議内容というものは――捜査会議というものは別に刑事訴訟法に書いてある会議ではございませんけれども、私ども捜査官が犯罪が起きるたびによくやっていることでありますが、これは犯罪捜査中においては、私は絶対秘密の事項だろうと思います。その捜査会議内容が外部に漏れるということは、結局捜査妨害になるわけでありますから、これは漏らしてはいけないことだと思います。ただ、その捜査が終わったとか、あるいはすでに長年時日が経過したとかというようなことで、過去の事件になってしまったというふうな場合に、何十年か前の具体的事件についての捜査会議内容がどの程度その時点において自然秘であるかあるいは指定秘であるかということは、これはまた別個な立場からの判断が可能だろう、こういうふうに思いますので、抽象的には、そういう基準に基づいて、先ほど御指摘になりましたような「新評」という月刊雑誌に発表されたその内容について、個別に検討していくことが必要だろうと思います。  それからもう一つ、秘密というものは、自然秘については時の経過によって流動性がありますし、それから指定秘につきましては、その指定をした官庁が、それが秘密であるかどうかということをまず第一次的に判断する権限が法律上あると私は思います。したがいまして、警視庁が行なった捜査でありますけれども、それにつきまして当時は指定秘であったけれども今日においては秘密にする必要がなくなった、そういうふうに警視庁判断した場合におきましては、それはすでにその時点におきましては指定秘である秘密の性格を失ったものだ、こういうふうに説明すべきだろうと思います。
  206. 松本善明

    松本(善)委員 そういたしますと、実は私ども関口氏を犯罪だということよりも、この全記録を公表しろということが本来の主張であります。この答弁書では、私ども記録を公表しろということを要求しましたところ、鑑定書の全文及び捜査に関する全記録を公表することは、死者及び遺族等関係人の名誉及び感情を著しく棄損するおそれがあり、また、今後におけるこの種事件捜査に支障をもたらすおそれがあるなど検察運営上好ましくないので、この際公表を差し控えるという答弁をいただいております。この全体についての御判断はともかくとして、私が先ほど申しましたような供述調書内容、それから捜査会議内容、これを堂々と公表するということは、すでに秘密でも何でもないということを先ほど警察庁刑事局長が言っておるのです。これは公表したらどうかと思いますけれども、できないのかどうか。その点についての意見はどう考えておるか、警察庁に聞きたいと思います。
  207. 内海倫

    ○内海説明員 お答えする前に、先ほど申しましたように、捜査記録とかあるいは捜査会議内容というもの、これらはいわゆる公に作成された記録に基づいて関口氏が発表をしたものではなくて、先ほど申しましたように、彼が捜査中にいろいろメモとして残したものあるいはすでにいろいろ発表されておるようなもの等をもちまして作成をした、こういうふうに言っておるわけでありますから、いわゆる公に作成された捜査記録そのものがこの中に発表され、あるいは捜査会議の、たとえばもし議事録がつくられておるならば、その議事録がそのまま発表されておるというようなものではございませんが、ただその捜査会議内容といわれて関口氏が書いておるものは、すでに関口氏が書く以前に新聞、あるいは雑誌、あるいは単行本、そういうふうなものにすでに記載されてありますので、警視庁としてはそういうものについての秘密性は彼が書くときにはすでに消失しておる、こういうふうに認定をしておるということを先ほど申し上げたわけで、決して堂々と公の捜査記録が公表されておる、こういうふうに申し上げておるわけではございません。  なお、先ほど申されましたこの下山事件に関する記録を全部公開したらどうかという御意見でございますが、これはこの質問書の答弁にもありますように、捜査の面、あるいはこの関係する人たちの名誉の点、その他諸般の面から考えて、それらのすべてを公表するということは望ましいことでもないし、適当でもないと考えて、こういう答弁が書かれたものでございます。と申しますのは、なるほどいま松本委員からは、すでに関口氏は堂々と供述書だ、あるいは捜査記録だ、あるいは捜査会議内容だといって一ばい書いておるじゃないか、こういうことでございますが、かりにそれが公のものから発表された、あるいは関口君がそういう公のものからひっこ抜いて書いたといたしましても――それは先ほども言いましたように、私はこれは公のものから書いたものでない、こういうふうに考えますが、それはほんの一部分である。関口氏が知り得あるいはメモし得ておるものというものは、ごく一部でございます。おそらく彼が非常に多くの知識を得たのは、すでに公にされておるいろんな雑誌新聞あるいは単行本等から拾い集めたものが、相当多いわけでございます。しかし、真実警視庁、あるいは検察庁、あるいは法務省、あるいは東京大学その他関係のところに保管されておるこの捜査に関する公式の記録というものは、膨大なものである。それらについては、なお公表をなすべきでない。内容も私は詳細知りませんけれども、そういうものを多分に含んでおると思われますので、そういう点から考えましても、こういうものを公表することは適当ではない、こういうふうに私ども考え、また法務省におかれましても考えられて、答弁書におけるようなお答えを申し上げておるところでございます。
  208. 松本善明

    松本(善)委員 そうすると、先ほど一つ一つ言った供述調書、少なくもその供述調書については秘密でないということなんですから、その供述調書だけでも発表したらどうかということを言っているのですよ。それがなぜできないのかということです。それをもう一度はっきり答えてください。
  209. 内海倫

    ○内海説明員 私どもの聞いておりますところでは、先ほどもたびたび言いましたように、「新評」という雑誌に関口氏が手記を書くについて、彼がいろいろ供述についての下メモをとったようなもの、あるいは公にすでになっておるような、何々がこういうふうな供述をしたというふうなもの等をきちっと整理して、供述書というふうな形態といいますか、ていさいを整えてこれに記述した、こういうふうに聞いております。いわゆる供述書そのものがそのままの形で引き写されておるものではないというふうに聞いておるのでございます。
  210. 松本善明

    松本(善)委員 この形式を見ますと、供述調書の作成の様式そのままなんです。住所を書いて、職業を書いて、名前を書いて、ずっと書いておるわけです。これを見ましたら、これは供述調書をそのまま書いたなとだれでも思うものです。それが供述調書そのままでないと言ったら、これは、関口氏の書いたものはたいへんな人を惑わすものです。もしそれが供述調書らしく装って書いたとすれば、これは原稿料も取っておるだろうし、相当社会的に非難をされなければならない問題になろうかと思いますが、そういうようなものだということでありますか。
  211. 内海倫

    ○内海説明員 いわゆる供述書という形でそこに記載されておるものは、供述書そのものを引き写しておるものではない、こういうふうに私どもはこれを認定するについて警視庁の報告を聞いております。
  212. 松本善明

    松本(善)委員 そうすると、「新評」はお読みになったでしょうね、内海さんは。
  213. 内海倫

    ○内海説明員 もうすでに記憶は薄れておりますが、一ぺん読んでおります。
  214. 松本善明

    松本(善)委員 これを見たら、しかし、やはりだれでも読者は供述調書をそのまま書いてあるように見ると思うのですが、あなたはどういうふうに思われましたか。
  215. 内海倫

    ○内海説明員 おそらく読者は、たぶん供述書であろうと思います。しかし、また同時に、これはたいへんかってな言い方かもしれませんが、私どもであるとかあるいは松本委員であるとか、そういうものをよく知っておる者はその形式を知っておりましょうけれども、そうでない人は、そういう供述書の形式というものはおそらくそうたくさんの人が知っておられるわけではなかろうと思いますから、その点は確かに誤読といいますか、あるいはそれを本物であるというふうに受け取る読者はたいへん多いであろうと思います。
  216. 松本善明

    松本(善)委員 法務政務次官、お聞きしたいのですけれども、これは私は、たいへん捜査官にとっては遺憾なことだというふうに思うのです。単にこういうことだけでなくて、週刊誌をごらんになると、性犯罪なんかの記事が、捜査官から取材したであろうと思われるものがもう山のように出ております。しかも扇情的に出ております。こういう捜査官が、これは役得と考えておるのか、何と考えておるのか、原稿料はどのくらいもらったかわかりませんが、世の中を惑わすようなことをやっておるわけです、自分の職務上得た秘密を利用して。こういうことについて、先ほど来、関口氏の場合は犯罪でないということを盛んに弁護されるけれども一体こういうことをそのままほっておいていいのかどうか。捜査官が簡単に知っておることをどんどん流しているらしいというふうに思われる雑誌や何かは、たくさんあります。こういう問題について、政務次官はどういうふうに対処したらいいというふうに思っておられるか、見解を承りたいと思います。
  217. 小澤太郎

    ○小澤説明員 個人の秘密にわたるようなことを捜査官が週刊誌等に材料を提供したといいますか、何かそういうようなお話があるようでありますが、そういうことは一応御想像だと思いまして、真実それがあるかどうかということを確認いたすことは私どもいたしておりませんが、こういう問題は、一つにはお互いのモラルの問題だと思います。それから、それが現実に個人の秘密等であるとすれば、プライバシー侵害の問題にもなります。あるいはまた、公務員として守るべき秘密であるとすれば、公務員法の違反ということになりますから、おそらくそういうことを捜査官が出しておるとは思いませんけれども、いま御指摘がありましたから、今後こういう点については十分に注意をいたしたい、かように考えます。
  218. 松本善明

    松本(善)委員 政務次官、やっておらないと思われると言うけれども、いま言っておるように、供述調書という形を――本物ではないはずだと言っておるにもかかわらず、供述調書という形をとって、だれでもが、警察庁刑事局長のことばで言えば、非常に多くの人が、供述調書そのままであるかのように受け取るような形で雑誌に書いているわけです。みんなこれは捜査に当たった人が書いているんだから本物だと思って、大騒ぎをしておるわけです。そうして新聞にもたくさん載っておるわけです。よく聞いてみたら、こんなものは信用も何もできない、本物でも何でもないという話でしょう。そういうような形で職務上知った秘密を――私は秘密だと思います、きょうの当局の答弁では秘密でないと言われるけれども。こういうことを利用してやっていいもんだろうかという点ですね。  もう一つ、それから政務次官、捜査官が流しているとは思わないという話ですが、私も捜査官でありませんから、だれがどういうふうに流したなんということを証拠をあげて言うことはできません。もしそんなことがわかれば、これは場合によっては告発をする義務があるかと思いますけれども、そういうことはわかりませんが、週刊誌をごらんになれば、これはおわかりだと思うのです。捜査官でなければわからないようなことが幾らも書かれていますよ。そうしてその中に外少の間違いがありましても、それを書かれた人は、それを名誉棄損だとかなんとかいって問題にするのはたいへんな騒ぎです。そのまま泣き寝入りすることが幾らでもあります。それでやはり法務政務次官、きょう帰りに週刊誌を何冊かお買いになったら、必ずありますよ。それを知らないということは、これは政治家としては世の中を知らぬということになるんじゃないか。おそらくことばを注意をされて言われたんだろうと思いますけれども、これはそんなことがあるとは思わないと言われるけれども、現実にはそうなっておるのです。こういう捜査官から出たであろう――だれがとういうふうにニュースを流したかということは、もちろんわかりませんよ。わかりませんけれども、おそらく捜査官でなければ知らないようなことが幾らでも出ている。こういうことについて、野放しでいっていいわけは絶対にないと思うのです。それについての次官としての決意をお聞きしたいわけです。
  219. 小澤太郎

    ○小澤説明員 捜査官が材料を流したというふうに断定的におっしゃいますけれども、これまたいかがかと思うのでありまして、そういう断定的なことはこの席で言われるとするならば、それはその根拠になるものがしつかりしたものがなければ……(松本(善)委員捜査官でなければわからないようなものなんかです。」と呼ぶ)それは想像でございまして、それは私はいかがかと思います。また、そういうことに対して、この席で答弁は私はいたしかねます。
  220. 松本善明

    松本(善)委員 それでは次官、お聞きいたしておきますが、捜査をしたときのこういう犯罪があった、こういう犯罪があったということを、捜査官以外からどうやって記事にしていくことができますか。
  221. 小澤太郎

    ○小澤説明員 私は記者をやったことがないからわかりませんけれども、週刊誌もそうよくは読んではおりませんけれども、ある程度読んではおるつもりであります。しかし、それが、いま警察庁刑事局長が答弁しましたように、いかにもあったがごときに表現をいたしまして、事実のごとき表現をする――そういうものが多いと思います。ですから、それをもって直ちに捜査官から出たという断定をするのもいかがかと思います。しかし、絶対にないということも、これもいかがかと思いますから、この問題は、そう断定した前提に立っての話じゃなしに、今後われわれの心すべき事柄として、かつまた、私はやはりこれは犯罪とかなんとかいうわれわれの対象にはならないものにいたしましても、世間の一つのモラルとして、そういうことについては注意をしてもらいたいということを私も思っております。そういう意味でひとつあなたの御質問に対してはお答えいたしたいのです。
  222. 松本善明

    松本(善)委員 念のために言っておきますが、断定をしておりません。断定するようにきちっとあれば、名前をあげ、犯罪だという場合には告発もいたします。しかし、私の言うのは、いま問題になっておりました関口氏の書いたものが、はからずも内海刑事局長のことばによって、供述調書らしくつくってあるけれども、そういうものではないのだというお話が出たから、これはほかについても、捜査官から出たとしか考えられないようなことがたくさんあるということを言っているわけです。その点について、法務省のお考えはいま一応お聞きしましたけれども警察庁でも考えなければならない問題だと思います。こういう問題についての警察庁考えを聞いておきたいと思います。
  223. 小澤太郎

    ○小澤説明員 ただいま内海局長からの説明でおわかりになりましたように、私もわかったのでありますが、いかにもその記事が調書らしくつくろってつくってある、こういう事実がわかったわけですね。同じように、いろいろな性犯罪その他の問題につきまして、週刊誌に取り上げられておることも同じような操作をしておるのじゃないかということが、むしろはっきりしたわけでございましょう。そうなりますと、捜査官からそういう資料が流れたということは、そういう断定をするには非常に遠いということ、断定が非常にしにくいということが明らかになったわけでございますから、そういう意味で、私は捜査官の名誉のためにも、松本委員も法曹の一人として、議員であると同時にお考えをいただきたい、かように申し上げておるわけでございます。
  224. 松本善明

    松本(善)委員 次官がそういうふうに言われると、ちょっともう一言言っておかなければいけないのだけれども、私はもちろん断定はしていません。断定していませんけれども、いま言いましたように、現職の警察官、これなんかきちっと証拠があるようなものです。今度の下山事件のような場合、こういうことさえあるんだから。これはほかの週刊誌についてもないとはいえぬぞ、そうしか考えられないようなものもあるぞ。だから、そういうものについての一般的な考えを聞こう。それについて捜査官はそういうことをするはずがないという弁護だけでは、やはり済まぬのじゃないか。この問題についてはどういう態度で臨んでいくということについて、しっかりした考え方を明らかにされるべきが当然ではないかということでお聞きをしておるわけです。警察庁考えを聞きたいと思います。
  225. 内海倫

    ○内海説明員 先ほど政務次官が法務省についてお答えを述べましたことと変わるところではないわけでございますが、きょうもいろいろ申し上げておりますように、捜査が完了いたしまして、それが秘密性がすでに解除されたようなものにつきましては、いろいろ捜査官として質問されることもございましょうし、そういう場合、それがすでに秘密性というものが解除されておるということが明らかな範囲においては、捜査官もそれについて自分の体験なり意見を述べることはあろうと思いますが、たとえば現に捜査中の事件、これは捜査中と申しましても、ひとり警察だけでなく、検察庁における捜査中というふうな事件について、職務上知り得ておる秘密と認められる事柄を捜査官が漏らすというふうなことは、許すべからざることでございますし、いやしくも捜査官たるものは、みずからの職務から考えても、そういう点について厳正な気持ちと態度をもって臨んでおるものと私ども確信をいたしております。しかし、もしそういうふうなことがかりにもあるようであれば、これは厳重に反省を促さなければいけませんし、私どもも、捜査秘密というものは厳に守らるべきものである、こういうふうに考えております。しかし、繰り返すようですが、捜査官は何よりも捜査というものにその全生命をささげて働いておる人たちでございますので、そういうことの秘密を漏らすことがいかに自分のその使命を傷つけるか、自分の現に行なっておる捜査に対して大きな支障になるかということは、だれよりも捜査官がよく知っておるところでございます。私は、全国の捜査官がほんとうに命がけで自己の職務に対して当たっておるということを確信しておるわけでございます。しかし、それに反するような行為がありとすれば、これを是正するにやぶさかではございません。
  226. 松本善明

    松本(善)委員 もう一つ次官に聞いておきたいのですけれども、先ほど法務省刑事局長が、秘密というのは時期によっても違うんだというお話をしていました。この下山事件につきまして私どもこういう関心を持っておりますのは、これは下山、三鷹、松川事件と続きまして、非常に奇怪な事件として日本の歴史に残っておるわけであります。いまなお多くの有識者がこの事件の真相を明らかにしようということで努力しておるのは、日本の歴史の上でこの事件の果たす役割りがかなり大きいからであります。あの直後に国鉄のストライキが弾圧されるということがあり、当時は共産党がやったんだというようなことが盛んにいわれたものであります。こういう歴史的な真実というものを永久に日本の国民が知ることができないというのは、まことに不合理な話だろうと考えます。これはいま公表しないという答弁をいただいておるのでありますけれども、政治家として次官、これは永久に厳秘に付されるべき性質のものであろうかどうか、この点について意見を聞きたいと思います。
  227. 小澤太郎

    ○小澤説明員 たいへんむずいしい御質問でありますが、永久にというわけにはいきますまい。しかし、少なくとも現在の事情が非常に変わったようなときになればともかく、いま申しましたように、公表しないという理由が消えてしまうということでない限りは公表すべき問題ではない、かように考えます。
  228. 松本善明

    松本(善)委員 理由を述べてあるわけなんですけれども、その理由がなくなってしまうというのは、たとえばどういう場合でありましょうか。
  229. 小澤太郎

    ○小澤説明員 死んだ方の名誉、遺族の方の名誉、それからその及ぼす影響、将来の捜査に関する影響、こういうものを理由としてあげております。そうしますと、死んだ方の名誉はいつまでも消えるものじゃないのです。それから家族に対する問題も、百年、二百年たてばともかく、消えるものではない。こういう意味から私は、相当長い期間これが公表されないものである、かように思っております。
  230. 松本善明

    松本(善)委員 たいへん不満でありますし、私の見解と違います。こういう犯罪がどういうところで行なわれたかということについて、国民はやはり検討する権利を持っておる。それを明らかにする義務が政府はあると思いますけれども、これはこれ以上やりましても押し問答になりますので、この点はこの程度にしたいと思います。  次に、アナーキストの背叛社グループの事件に関する問題をお聞きしたいと思います。  アナーキストの背叛社グループに属する和田俊一というものが、最近東京地裁の公判廷で、私は警視庁公安一課の間々田警部補と、爆発事件のあった昨年十月六日以前から連絡を持っていた。火炎びんに使う四合びんや硫酸は間々田が上司の許可を得てもらってきた軍資金で買った。間々田から、共産党本部だけでなく、自民党と公明党の本部も襲撃したらどうかという指示をされていた。治安立法がしやすいという話であった、というふうに、自分が警察のスパイであったことを陳述したわけであります。この和田の陳述について、どういう陳述があったのかということについて、わかっている範囲で詳しく話をしてもらいたいと思います。
  231. 三井脩

    ○三井説明員 ただいまの御質問の点は、八月六日第八回公判における間々田警部補に対する証人尋問がございまして、そのときに、被告人であります和田俊一が、反対尋問をいたした中で言っておるところでございます。和田俊一と出頭いたしました間々田警部補が会っておった、また間々田警部補がアナーキスト・グループであります背叛社の動きにつきまして、その動向について情報を得ておったということがございます。また、この情報の提供に対しまして謝礼の意味で一定の金を渡しておったことも、そのとおりでございます。ただ、間々田警部補がどこそこの場所を襲撃せよというような指示ないし示唆を与えたというようなことは、和田俊一が反対尋問の中で言っておるわけでございますが、これに対しましては間々田警部補もはっきりとさようなことはしておらないということを、否定しておるところでございます。  それからまた、十月六日に背叛社の事務所におきまして、手製爆弾を製造中に爆発を起こしまして、多くのその場にいた人間が負傷をいたしました。この爆弾を製造するにあたりまして、その材料を警察から謝礼としてもらった金の中から支払ったといいますか、使った、こういうような点につきましては、これは和田俊一はそう言っておるようでありますけれども、ばうもおかしいのではないかと私たちは考えております。調べの中でもわかっておるわけでありますけれども、あそこでつくりました手製爆弾、それに必要な材料というのは、和田自身が理科大に関係のある人間でありまして、元理科大生ということでありますが、本人自身ではありませんけれども、このグループのメンバーが東京理科大学から持ち出したものであります。これは捜査の結果わかっております。それからまた、理科大学自身からも、品目をあげまして盗難として届け出が出されております。つまり、われわれの捜査の過程におきましては、あそこでつくった爆弾、その材料というのは、そういう出所であったということが一つございます。もう一つは、あそこでつくった、本人が硫酸とガソリンを買ってきたというようなことを言っておるようでありますけれども、これは金額にいたしますと、大体四百円という金額でございます。したがいまして、これが、警察官が謝礼として出した金額、この中からでなければ払えないというような金額でもないというふうにも考えますので、この点は、本人和田俊一がそういうことを言い出した趣旨等はよくわかりませんけれども、あるいは本人自身も公判にそういうことが有利に作用するのではなかろうかと考えておるとも思うわけでございます。  なお、本人は、昨年十月六日の背叛社の爆発事件で検挙され、起訴されておりますけれども、その二年前にやはりアナーキストのグループで敢行いたしました、四十一年の十月十九日、日本特殊金属工業に対する、これは田無にございますが、襲撃事件被疑者起訴されて、目下保釈中の身の上である、こういうことともからみまして、いまのようなことを考慮した結果の発言ではないかというふうに私たちは考えております。
  232. 松本善明

    松本(善)委員 この問題について、警視庁山本公安部長は記者会見で、情報謝礼として金を渡していたことは認めるということで、暴力的な結社や危険分子の情報を取るのは公安警察として当然で、アナーキストにとどまらず、極左暴力学生についても同様であるということを記者会見で述べたようでありますが、こういう形で金品がアナーキストやいわゆるトロツキスト集団、そういうものに流れておるわけでありますか。
  233. 三井脩

    ○三井説明員 山本公安部長発言、私も新聞で見たわけでございますが、あるいはニュアンスの点で違うかとも思うわけでございますけれども、私たちは、御存じのように基本的に申しますと、警察法二条一項の責務を果たすために平素から活動をいたしております。この中で、犯罪が発生いたしましてからこれを検挙するということも一つの重要な仕事でございますが、犯罪が発生する以前に、あるいはまた社会に大きな治安上混乱を起こすという事態、これの発生する以前に、これの予防、防止ということにもつとめなければならないということでございます。そのためには、やはり事前にそういうような危険のある人物あるいは組織というようなものにつきまして、その動きを知る必要があるわけでございます。ことに最近、過激な学生行動が盛んになっておりますし、またただいま申しましたように、アナーキストのグループは、この数年しばしば過激な行動を試み、あるいはまた現実に敢行しておる、こういうような状況でございますので、特にそういう激しい不法行為をやろうと考えておるような組織あるいはそのメンバーというものについては、重要な関心を払って平素から仕事をいたしておるわけでございます。この場合に、こういう組織なり個人なりの動きに関するわれわれのいろいろな資料、情報というような点につきましては、いろいろ関係者もありますし、いろいろの方々から御協力をいただいて資料をいただき、あるいはアドバイスをいただき、判断をいたしておるわけでございますが、その中でやはり組織に最も近い人物、この的確な動向についての情報をわれわれが取りいれることが、たいへん重要な問題であります。まあ組織に一番近いという中では、組織の中におる人間が一番近いわけでありますから、こういう人物につきましても、われわれは情報を得るようにいろいろ警察の治安維持活動についての協力を求めておるということでございます。  御指摘の、そういう場合にすべて一々情報提供者に対する謝礼として金を渡しておるのか、こういうことでございますが、この点につきましては、必ずしも金を渡さなくても協力をしていただく方というのもたいへん多くあるわけでございまして、万やむを得ないと申しますか、通常の場合は、ごく常識的に考えて、たとえば実費弁償的なものは謝礼として渡しておるわけでございますけれども、具体的な場合につきましては、それのほかにさらに若干のものを謝礼として差し上げるということもあるわけでございます。そういう意味で、私たちが過激な街頭行動を何とか事前に押える、事前に犯罪行為に至らないうちに事態を思いとどまってもらうなりあるいはわれわれの警戒措置等によって事態がそこまで発展することを防止したいということを第一番に念願しておるわけですけどれも、同時にまた、発生した場合につきましては、その捜査が的確に遂行されるというために、ただいま申しました情報に対する謝礼ということを行なっておりますが、すべての場合に謝礼が行なわれるというわけではございませんで、謝礼なしに御協力いただいておるという場合も多々あるわけでございます。それは個別個別の事案と申しますか、ケースによって異なっておるというのが実情でございます。
  234. 松本善明

    松本(善)委員 和田の場合には、幾ら払っていたのか。そして実費弁償と言うんですが、どういう実費弁償なんですか。
  235. 三井脩

    ○三井説明員 和田の場合は、新聞等でいわれておりますように、これは六回会っておるわけです。六回会っておりますが、そのうちで五回金を渡しております。総額は十一万ということになっておるわけです。これにつきましては、和田本人警視庁は電話をかけてまいりまして、会いたいというようなことで、前に事件で検挙されておりますから、いかなる理由であるか、また背叛社の関係者であるということもわかっておりますので、真意をはかりかねながら会っておったわけですけれども、そのときに彼が言いますのには、金を貸してほしい、これは五回あるわけですけれども、学費が払えないので、大学が卒業期がきておるのに、またほかの条件がそろっているのに、金を滞納しておるために卒業できない。これは最初会ったのは七月でございますが、そういうことで金を、このときはたぶん三万円であったと思いますが、貸してほしい、こういうことでございます。これは学費ということですので、これは情報に対する謝礼という意味でこの三万円を渡したということがございます。その後彼に会った際に、この間学費ということで金をやったけれども、その後大学はどうなったのだと聞きますと、おかげであれを払い込んで無事に卒業いたしました、こういうことで感謝をいたしております。また別の機会には、本人は両親が長野県に住んでおるわけですけれども、おやじのところに帰りたいのだが金がない、金を貸してほしいということで、このときには二万円渡しておるわけでございます。これにつきましても、その後ほんとうにそういうふうに使っておるのかということを確認する意味も込めまして、この担当の警察官が、郷里に帰っておやじさんはどういう状況であったかということを聞きましたところ、おやじとどうも意見が合わずに滞在予定を繰り上げて早く帰ってきたというようなことも言っておるわけでございます。そういうケースでございますが、これをトータルいたしまして十一万という金額になっております。
  236. 松本善明

    松本(善)委員 実費弁償というには相当高いように思いますね。何の実費弁償であるのかさっぱりわからない。家に帰るのまで実費として見るのですか、そういう場合は。
  237. 三井脩

    ○三井説明員 ただいまその点ちょっと落としましたが、本人はいろいろ背叛社の動向について教えてくれる。それから背叛社で出しておる機関紙があるわけです、こういうものを出るつど送ろう、こういうような約束をしてくれまして、また時期のおそい、早いは別といたしまして、現実にそういう資料も送ってきております。そういう意味で実費弁償ということがあるわけでございますが、本人の場合は、ただいま申しましたように、背叛社がたいへん過激な行動をしようというような動向を示しておる、こういうこともありまして、ちょうど昨年の五月一日のメーデーの日には、約二、三十名が黒ヘルメット、黒旗を振って東京メーデーのときはあばれて、他のデモ隊になぐり込みをかける、こういうこともあって、単に連中がいろいろ考えておる、計面しておるという段階から、いよいよ秋の十月闘争あるいは一〇・二一闘争に向けて具体的な行動に移ろうとしておる、こういうようなことが、他の情報その他によって判断できましたので、そういう段階で、特に背叛社の動きについては重視をいたしておったわけでございます。ただいま実費弁償等と申しましたけれども、そういう意味で、本件の場合は実費弁償的な性格もございますけれども、この貴重な情報に対する謝礼といった要素がたいへん大きいということが言えるかと思います。
  238. 松本善明

    松本(善)委員 アナーキストの団体であるとかトロツキストの団体、そういうものの中に、その団体の幹部あるいはその中にいる人で、無料で情報を提供する、そういう特殊な人がいるのですか。
  239. 三井脩

    ○三井説明員 これは情報提供の程度でもいろいろございまして、普通のたとえば集会がございまして、集会の中に警察官は入れない、本人は入っております。メンバーでさえあれば入れる。内容はどういうことですか、こういうようなことを聞く場合もあります。それからまたもっと突っ込んだこともありますし、単に人の動き、あるいはどういうメンバーがそのトロツキストあるいはアナーキストの中にいるのかというような名前だけ聞かしてもらうという場合もありまして、その段階でいろいろ違いますが、御指摘のような、何らの報償といいますか、謝礼を求めないで協力をしてくれるという者も、もとよりございます。ただ、その数その他につきましては、私もただいま明らかに申し上げるわけにまいりませんけれども、いろいろ協力の程度等につきましては、ニュアンス、段階があるということでございます。したがいまして、それに対するこちらの報償のしかたという点にも、ゼロから相当のところまである、こういうことでございます。
  240. 松本善明

    松本(善)委員 菅生事件のときの戸高公徳氏のように警察の送り込んだ人なら別かもしらぬが、謝礼なしに、対価なしにそういう団体の情報を送ってくるというのは、どういう場合ですかね。私にはとうてい想像がつかないのです。どういうような考えで――それは精神分裂か何かならば、それはそういうこともあるかもしれませんが、どういう場合に、一切対価なしにその団体の構成員とか幹部になっておって警察に情報を送るということが起こるのですか。
  241. 三井脩

    ○三井説明員 ケースは千差万別でございます。したがいまして、ただいま具体的な内容につきましては、いろいろ協力をいただいておる方との関係もございますので、いわば手のうちとでもいうべき問題でございますので、このケースがあるということだけで、内容のこまかい点については差し控えさせていただきたいと思います。
  242. 松本善明

    松本(善)委員 通常では想像できないでしょう。特別の弱点を握っておどかして使っているか、金をやって使っているか、そうでなければ警察官の身分で特に任務を持ってもぐり込んでいるか、そういうことでなければ、スパイでそういうことをやるというのは、普通の人には理解できないですよ。私たち、それは興味本位ではなくて、国民の税金がどういうふうに使われているか、そういうのが正当なのかどうかということを知りたいために聞いているのです。一体、普通の人にわかるような場合で、金をもらわないでそういうスパイになるというのは、どういう場合ですか。重ねて聞きます。
  243. 三井脩

    ○三井説明員 それは相手の協力内容によると思うのですが、たとえば次に日比谷の――先日、九月五日に日比谷で全国全共闘連合の結成大会があったわけでございますけれども、それが東京都公安条例に基づく集会の届け出、これは七十二時間前にあるわけでございますけれども、われわれとしては七十二時間をこえてもっと早い段階で知りたいということが、いろいろの準備と関係がありますので、警備措置をやる上で関心事でございます。そういうような点は、どこかの大学の全共闘のメンバーでありさえすれば、また若干の関心を持っておればわかることである、こう思います。あるいはまた、当日最初は早稲田大学を使うというような予定がありましたので、早稲田大学の中にどういうビラが張ってあるかということを見ればわかるわけでありまして、そういうような場合に、早稲田大学に通学しておる――いまは休んでおるかもしれませんけれども関係学生に、学内にそんなビラはないか、こう聞いた場合に、事実こう書いてありましたというようなこともあるわけでありまして、その程度の協力も、わがほうから見れば、たいへん貴重な協力であります。そういうような場合に、一々謝礼を払わなくても、あるいは実費弁償をいたさなくても、協力してくれるケースは幾らでもあると思います。
  244. 松本善明

    松本(善)委員 私の聞いているのは、団体の構成員でということですよ。それは通学している学生であれば、あるいはそんなことを知り合いの警察官に、いつやるんだ、そういうビラが張ってあったというようなことを言うかもしれません。しかし、団体の構成員でそういうことがありますか。
  245. 三井脩

    ○三井説明員 先ほどの御質問は、団体の構成員の中でいわば対価ゼロでやる人間がおるのかというような御質問であったようですが、あるいは私は警察が協力を得ておる人一般にということで取り違えたかもしれませんが、ただいまの組織の中におる人間について対価ゼロで働く人間がおるかという具体的な問題につきましては、いますぐお答えできるだけの材料は持っておりません。私はあると思っておりますけれども、現実にあるかないか、こう言われましても、ちょっと即答できかねる問題でございます。
  246. 松本善明

    松本(善)委員 別なことを聞きますが、このアナーキストのグループが、共産党の本部襲撃事件を昨年六月二十九日に起こしました。この捜査はどうなっておるか、御報告をいただきたいと思います。
  247. 三井脩

    ○三井説明員 結論を申しますと、その事件は十月の二十日であったと思いますが、脅迫罪として地検に送致をしておるということでございます。  そこに至る捜査の大体の過程でございますが、六月二十九日に代々木の共産党本部に対して火炎びん投てき事件というのがございました。同じ日に東洋大学の学園紛争の中でも火炎びんが投てきされるという事案があったのでございますが、こういうような行動をするのはアナーキストではないかということは一応の想像といいますか、そういうような見当はつけられるわけでございますけれども、直ちにそうだということは、捜査の結果をまたなければならないわけでありまして、ただいまの共産党本部に対する火炎びん投てき事件につきましては、直ちに原宿警察署におきまして、共産党本部の協力を得まして実況見分を始める等、捜査に着手をいたしたわけでございます。この点日本アナーキストクラブが機関紙でその後、これはアナーキストがやったんだというようなことを書いたことがございます。これからまた、この背叛社自身が出しております機関紙がございます。これは九月に発行したというようになっておるようでありますけれども、いつ発行したか確たる時日はわかりませんが、われわれ警察側で入手いたしたのは十月に入ってからというように私は記憶しておりますが、これには、この共産党本部に対する火炎びんはわれわれが背叛社のグループがやったんだという意味のことが書いてございます。この捜査をずっと続けておりましたが、この時期と十月六日の背叛社で爆発が起こって検挙をいたした時期とが、その前後の関係必ずしもはっきりいたしませんが、たいへん近い時期でございました。したがいまして、十月六日の爆発事件でたしか十三名検挙しておるわけでありますが、この取り調べの中で、ただいまの点とそれから原宿署がやっております捜査の結果ともにらみ合わせまして、背叛社事件で逮捕いたした被疑者の調べの中から日共本部に対して火炎びんを投げたという被疑者も割れてまいりましたので、これを脅迫事件としてただいま申したように送致をいたした、こういうことでございます。
  248. 松本善明

    松本(善)委員 検察庁ではどうなっておるか、お聞きしたい。
  249. 川井英良

    川井説明員 東京地検に照会しましたところ、本件は証拠上並びに法律の適用上非常に問題点がたくさんあるので、引き続き処理について検討中である。したがって、本日のお答えは、東京地検において捜査中である、こういうことになろうかと思います。
  250. 松本善明

    松本(善)委員 事件が起こりましてから、もう一年二カ月以上になろうとしているわけです。検察庁に送致をされたのは昨年の十月ですか、そうすると、検察庁に送致をされてからも大かた一年近くなろうとしておる。こういう火炎びんの投てき事件というような事件ですね。いま警察庁答弁でも、われわれがやったのだというようなことを背叛社の出しておるものにも書いておるわけです。こういう問題について、こういうふうに長くかかっておるということについては、あたりまえのことでありますか。ちょっと検察庁から……。
  251. 三井脩

    ○三井説明員 先ほど私十月二十日送致と申しましたが、十一月二十日の送致でございます。
  252. 川井英良

    川井説明員 もう一つの大きな事件である爆発物取り締まり罰則が、昨年の十一月二十一日だったと思いますけれども、公判請求をいたしております。これは御承知のとおり、非常に重い法定刑を持った事件でございます。それからそれに引き続きまして、先ほど警察当局から御説明がありましたように、その事件の追送のかっこうでもって先ほどの火炎びん事件が送られてきたわけであります。この送致事実は、地検の説明によりますと、火炎びんを玄関に投げて中にいる人を脅迫したのだという脅迫罪の容疑で送ってきておりますけれども、担当検察官のいろいろ捜査の結果によりますと、はたしてこれが脅迫罪の構成要件に該当するかどうかということについては、かなり事実上、法律上問題があるということで、むしろその他もっと的確な当てはまる罪名はないものかということにつきまして、かなり詳しい捜査をいろいろ進めてきたようでございます。関係者一人や二人ではございませんで、かなりたくさんありまして、またそれぞれの供述におきましてもその間にいろいろニュアンスの相違があるというようなことで、証拠上の点におきましても、これをどういうふうに処理するかということについて、最終的な結論に達していないということであります。ただし、事件はなるべく迅速に処理するということが検察の使命でありますので、御指摘のように昨年十一月二十日に事件は受理しておりますけれども、かなり日数がたっておりますので、本筋の事件起訴してあるからということも長引いておる一つの理由かとも思いますけれども、私どもといたしましては、適当な方法でもって迅速処理が好ましいということを検察当局に伝えたい、こう思います。
  253. 松本善明

    松本(善)委員 共産党本部襲撃事件が起こりました翌日の三十日には、すでに朝日新聞内外タイムスなどが、これはアナーキストらしいという警察の観測を報道しておる。そして背叛社の周辺の住民が、手製爆発物の訓練に対する苦情を盛んに警察に届け出ておる。これも警察当局は知っておる。それからいま警察庁のほうでお話のありましたように、アナーキストクラブの機関紙その他でも、われわれがやったんだということをはっきり言われておるわけです。そういう状態になっていながら、これは逮捕されないできたわけです、彼らが爆発事件を起こすまでは。そしてその間に、また金を出して情報収集ということがやられておる。私たちから見るならば、これはすぐにでも逮捕することのできる犯罪を起こしておきながら、情報収集の金はその後も出されておる。接触が続けられておる。一体何のための情報収集であるか。当然に犯罪として処理されるべき性質のものが延び延びになって、一年以上たっていまだにそのままになっておる。こういう事実についてどう考えているのか、まず警察庁に聞きたいと思います。
  254. 三井脩

    ○三井説明員 ただいまの新聞報道でございますが、警察としてアナーキストのしわざであろうというようなことを特に発表したことはありませんけれども、先ほど申しましたように、われわれのほうでもアナーキストくさいというふうに考えておったことは事実でございます。それがああいうような報道になったのかと思うわけでございますが、またアナーキストクラブの機関紙に書いてありますのは、この背叛社とアナーキストクラブとは別に関係のない別個の組織でありますので、アナーキストクラブの機関紙にはアナがやったというような式に書いてありまして、これは背叛社であるのかあるいはアナーキストクラブ自身であるのか、御存じのようにアナーキストはその考え方が無政府主義そのものでありますので、その組織行動に至りましても、必ずしも綱領、規約といったようなものがなく、同一グループの集まり、極端にいいますとごく数人あるいは個人の行動であるというふうなこともありまして、幾つにも分かれておるわけでございます。したがいまして、先ほど申しましたように、このアナーキストクラブの機関紙の記事から直ちにこれをアナの行動であると断定するわけにもまいりませんが、もちろん捜査上こういうような記事等も資料といたしまして参考としながら捜査を続けてまいったわけでございます。また、住民がしばしば苦情を言っておったということでございますけれども警察に届け出があったのは、私が聞いておるところでは一件でございまして、これも九月二十八日に環状七号線でありましたか六号線でありましたか、ここで路上で火炎びんらしいものが爆発をして燃えておるというようなことを、通行上のオートバイに乗った人が走っておったパトカーに届け出た、こういうふうに聞いておるわけであります。もちろん状況はそういうことでございますけれども、先ほど申し上げましたように、このアナーキストの中でも、背叛社というのが秋には過激なことを考えておる節があった、まただんだんその他の状況等でもわかってまいりましたが、最終的には検挙後明確になっておりますけれども、ちょうど先ほど申しました日特金属工業に対する襲撃事件が四十一年の十月十九日に行なわれておりますので、この十月十九日ないしは十月二十一日の国際反戦デー、これを念頭におきまして、あるいは十月八日は第一羽田事件の記念日でもあるというようなことで大衆行動が行なわれるわけでありますが、そういう中でいろいろ過激なテロ的な行動をやるというような動きをわれわれとしては判断をいたしておりましたので、これを何とか事前に――万一そういうようなことが起こりますと、相当な死傷者も出かねない、そういう心配もありましたので、ただいま申したような観点から、事前にこれを押えると申しますか、防止をいたしたいということで鋭意取り組んだというような実情であります。
  255. 松本善明

    松本(善)委員 長々と弁解を聞きましたけれども、事が起こってからいまだに起訴もされていないです。  それで法務次官にお聞きしたいのですけれども、政党の本部が火炎びんで襲撃されるということはただごとではないです。これは憲法で保障されておる結社の自由との問題でもある。これがまるで、いままでかかっているのはあたりまえのことである――直後にはアナーキストらしいことはわかっておったといいながら、こうかかっておる。それから法務省についても私は決して満足をしないのでありまして、それは催促をさせようというから幾らか前向きであるかもしれませんけれども、これは私は捜査官の感覚の問題ではないか。日本の民主主義や結社の自由、そういうものが火炎びんで政党の本部を襲撃されるというような事態については、何と考えているのだろうかというふうに全くふしぎに思うわけです。これを私ども東京地検に参りまして聞きましたところが、これの法律的な評価がきめられないということを盛んにいっておられます。きょうの正式の答弁では出てきておりませんけれども、これは根本的な捜査官のあり方という問題に私は関係するのではないかと思うのです。この点について、次官、そういう政党本部が火炎びんで襲撃をされるというような事件について、こういうような捜査の態度でいいものとお考えになっておるかどうか、お聞きしたいと思います。
  256. 小澤太郎

    ○小澤説明員 お説のとおり、政党本部が火炎びんの襲撃を受けたということは、政治的に非常に大きな問題だと思います。したがいまして、われわれ望むべくんば早く処理をするということが適当かと思いますが、またこれは言いのがれではございませんが、しかく重大な問題でございますから、これを裁判に持っていく場合におきましては、やはりそれだけ十分な、慎重な調査捜査も必要か、かように思います。いずれにしましてもおくれておるということは、これは好ましくないことでございますから、先ほど刑事局長が答弁いたしましたように、私のほうからも早く的確な措置ができるようにということを地検のほうに申しつけておく、こう考えております。
  257. 松本善明

    松本(善)委員 この事件につきましては、私の聞きますところでは数人、五、六人ですでに自白をした者もあるというふうに聞いております。そういうようなケースを脅迫罪で警察が送致をするということは、全く理解ができないことであります。これは、こういうケースは非常に軽く見ておるというふうにしか私は考えられない。次官のいまの話でありますが、さらに厳重にこういう事案の重大性というものについて捜査当局が認識をするようにやってもらいたいというふうに要望して、この点は終わります。  最後に、白鳥事件のことについてちょっと聞きたいのですけれども、この白鳥事件について再審は棄却をされましたけれども、この点事件について非常に疑問が多い。再審の棄却は、非常に不当だということを各方面でもいわれております。また、もし再審になれば、これは無罪になっただろうというようなこともいわれております。また、十七年も実際上身柄を拘束されておるということで、党派を越えて、こういうものは早く釈放しなければいかぬという声は、非常に高まってきております。網走の刑務所長が仮釈放の申請をいたしましてからもう一年近くにもなっておるわけでありますが、北海道の地方更生保護委員会審理の現状、見通し、どういう状況になっておるかということについて、保護局長にお伺いしたいと思います。
  258. 鹽野宜慶

    ○鹽野説明員 御指摘のとおり、いわゆる白鳥事件の仮釈放問題は、北海道の地方更生保護委員会でただいま審査中でございます。前回も申し上げましたとおり、この仮釈放の審理決定は、委員会のもっぱらつかさどるところでございまして、法務省からも何らの指示、介入等をいたす筋合いではございませんので、その審理の進行状況の内容につきましても、具体的にこまかいことは私ども承知していないのでございます。最近私ども承知しております程度で申し上げますと、御指摘のとおり、審理を開始いたしましてからほぼ一年近くになりまして、その間に本人に対して面接審理を行ないましたのが二回でございます。それから外部等に対する調査案件と申しますか、調査活動と申しますか、調査をいたしましたのが十六回、それから合議をいたしましたのは三十数回、こういう状況でございまして、七月、八月というごく最近の状況におきましても、鋭意審理の促進に努力しているというような状況と認められます。
  259. 松本善明

    松本(善)委員 保護局長、東六十一国会で、この仮釈放の問題につきまして、長くても六カ月から一年くらいで結論が出るのが普通であるという趣旨答弁をされました。いまお話しのように、もう一年になろうとしておるわけであります。早急にこの事件についても結論が出されなければならないと思いますが、御意見はいかがでしょう。
  260. 鹽野宜慶

    ○鹽野説明員 御指摘のとおり、前国会のいつごろでございましたか、御質問を受けまして、その当時はたしか審査を始めましてから五カ月か六カ月ごろではなかったかと思うのでございます。この事件は、御承知のとおり、非常に重要な事件で、複雑な内容を持っておりますので、この程度の月日がかかるということは、私としてはそれほどふしぎなことではないというふうに考えていたわけでございます。しかしながら、その後の状況を見ますと、ただいま申し上げましたように、それからさらに数カ月経過したわけでございますが、いまなお係属審理中という状況でございます。前回も申し上げましたように、仮釈放事件でも一年以上審理にかかるというような事件は決して絶無ではない。数はそう多くはございませんけれども、年に二十件ないし三十件というようなものはさような事件もあるわけでございます。  そこで本件でございますが、私ども、先ほど申しましたように、具体的な審理の進行状況というものは承知いたしておりませんけれども、大体の状況を見ますと、近く再度の本人面接というものが行なわれる段階にきているのではなかろうかというふうに考えるわけでございまして、この事件は非常に重要な、複雑な内容を持った事件でございますので、鋭意委員会審査に努力を続けてきたのでございますけれども、かような長い期間が経過してしまったわけでございます。しかしながら、全体の審理経過というようなものを私ども見ておりますと、それは私の推測が若干入るわけでございますけれども、おおむね最終段階に近づきつつあるのではなかろうかというふうに感ずる次第でございます。
  261. 松本善明

    松本(善)委員 この前の委員会で保護局長が、よほどのことがない限り刑務所長の判断と更生保護委員会判断が違うということはないという趣旨のことを答弁されましたけれども、この現状で、この村上国治君の釈放の障害になっていることは何であるかということについてはおわかりになっておるか、おわかりになっておれば、お話しをいただきたいというふうに考えます。
  262. 鹽野宜慶

    ○鹽野説明員 その点につきましては、私ども承知いたしておりません。  それから刑務所長と委員会判断との一致あるいはズレという問題につきましては、前回申し上げましたとおり、最近の状況では、刑務所長の申請の大体八五%くらいが許可になっているというのが実情のようでございます。
  263. 松本善明

    松本(善)委員 終わります。
  264. 進藤一馬

    ○進藤委員長代理 本日は、これにて散会いたします。    午後五時七分散会