○
中川(進)
政府委員 まず
お尋ねの第一点でございますが、何ゆえにこのような
遵守事項なるものを設けたか、いままでなかったではないかということでございます。もちろんいままでの
出入国管理令におきまして、
法律上の
規定はございませんでしたが、ただ、来る人の
種類によりましては、事実上、こういうことをしてもらっては困る、
日本へ
入国することはけっこうでありますが、こういうことはお慎み願いたいということを、場合によっては誓約を書きもので出してもらう、あるいは書きものまでいかなくても、少なくとも口頭でそういうことを約束してもらい、しかもその
方法は、本人からもらう場合もあれば、その
身元引き受け人の
保証人のような者からもらうこともあったのであります。いわゆるスポンサーでありますが、それからもらうこともあったのであります。しかしながら、そういうことでやってまいりますと、どうもやはりしっくりしない。そういうことに万が一違反したといたしましても、
日本としては、
政府としてはどうにも手がつけられないのでございまして、やはりこの
在留資格というもののきめ方が非常に荒いのでございます。そこで、その荒い中でもう少し、いわば
在留資格の
縦割りが十四なら十四ございますが
——いま十六ございますが、今度その
横割りをひとつつくろうという
必要が起こってきたのでございます。たとえば従来、
研修員ということで
東南アジア諸国から
日本の進歩した
技術などの
勉強にたくさん若い人が来ております。そういうような場合に、よほど気をつけておりませんというと、名前は
研修でも
実質上いわゆる低
賃金労働というようなものに化けるおそれがあるのでございまして、
研修ということを、たとえば
三菱なら
三菱の何県の何村にある何々研究所において何々に関することを
研修するということで、そこでやっている限りはいいのでございますが、これが、どこかの町の
中小工場のようなところへ移りまして、そうして
自動車なら
自動車の
勉強をしておる。なるほど
勉強には違いないが、行ってよく調べてみると、何だか低
賃金労働に類するようなことになるということになりますと、厳格にこれは
資格外ではない、確かに
研修生という
資格の中の
活動をしておるのでありまして、学生という
資格でやってきた者が
シナそば屋の手伝いをしておるというような、これは
資格外でございますからいまの法令でそのまま取り締まれる、おまえは
資格外の
活動をやっておるから
退去を命ずるということができるのでございますが、いまのように
資格内であって、しかも事実上は違っておることをやっておる場合には、取り締まる
方法がいままでなかったのでございます。そこで今度は、この
資格というものが新しい
法律では十四ございますが、非常に大まかでございますから、その大まかな
資格の中でまた
細目を設けて、そうして
管理を合理的にやりたいということが、新しくその
遵守事項ということがつくられました一番大きな
理由でございます。
そこで、第二の点でございますが、その
遵守事項なるものの
内容はどうかという点でございます。この
内容には、ただいま一例をあげて御
説明いたしましたように、
在留資格の
範囲内における
活動の指定ということがございます。たとえば
法案の第二条の二項の六号というのがございますが「
本邦で
貿易に従事し、又は
企業、
投資その他の
営利事業の
管理業務に従事する者としての
在留資格」というものが一例としてございます。ところが、この中で
国際貿易なり
企業その他の
営利事業の
管理業務というのがございますので、そこで、少なくとも
貿易に従事する者というのと、それから
投資その他の
営利事業の
管理業務に従事する者というのに区別しまして、あなたは
貿易をするために入ってよろしい、あなたは
投資その他の
営利事業の
管理業務に従事する者として入ってよろしいというふうに分ける
必要が起こるかもしれないというわけであります。そこでまた今度、
企業、
投資その他の
営利事業の
管理業務に従事する者につきましても、その職種、
勤務先を指定する
必要が起こるかもしれないのであります。しばしば申し上げますように、必ずつけるというわけではございません。何か
必要がある場合に限ってつけるというわけでございます。それから
技術研修生につきましても、ただいま申し上げましたような問題が起こります。さらに
興行活動者というのがございますが、これはいまの
法案の二条二項九号というのでございますが「
本邦で演劇、演芸、演奏、
スポーツ等の
興行を行ない、又はこれらの
興行に出演若しくは出場する者としての
在留資格」というのがございます。これにつきまして、
興行の場合は歌を歌うのか、踊りをするのか、それとも野球をやるのか、あるいは何か
アイスショーのようなことをやるのか、
興行にもいろいろ
種類がありますが、それを、何をやるかという
興行の
種類、それから
興行の
場所東京のどまん中でやるのとそれからまた北海道や
九州の
いなかでやるのとはたして全く同じことでいいか悪いかということもございましょうから、そういうような
場所を場合によっては指定するということがあり得るわけでございます。しばしば申しますように、必ずするというわけでは絶対にございません。それから
熟練特殊労働者というのがございますが、これは、
日本でいま現在しております一番多いのは
中国料理の
コックでございまして、
日本人にはできない
特殊労働者だということで入れております。そういうような人、あるいは
フランスパンの製法を教えるために
フランス人が来ておるということがございます。そういうときに、あなたは
シナ料理の
コックをして働くのはけっこうだが、
日本料理の
コックとして働いてくれては困る。
日本人の
労働者の、
日本人の
料理人の
職場を侵されるということでございますので、それは困るというようなことで、
熟練特殊労働者ではあるが、その
内容は
中国料理の
コックであるということを指定する。働く
場所も、あなたは
東京で働き、
九州のどこどこで働いてもらっては、やはりそこにいる
日本人の
中国料理人の
職場を侵されるから困るということがあるわけでございまして、しばしば申しますように、必ず指定するわけではございませんが、そういうような条件を付することがあり得るわけでございます。
それから第二番目に、
相互主義による
制限ということが
考えられます。たとえば、
外国によりましては、
日本人が参りましたときに、その
旅行地域とか
旅行区域とか
旅行経路とか、それから期間、期日、そういうことに関しましていろいろ
制限をする、あるいは
制限をしないまでも届け出ろというようなことを定めておる国があるわけでございまして、そういう国の人が
日本に来たときには、
日本はこういう国でございますから、旅行してはいけないとかなんとか言うつもりは少なくとも私
どもの役所ではございませんが、しかし、旅行する場合に、
最小限どこどこへ行くという届けを前に日程とともにひとつ出してもらいたいというようなことをきめることがあり得るわけでございます。必ずきめるわけではございません。
それからその次に三番目には、一番問題になっておる、
先ほど鍛冶先生からも御
指摘があった
政治的な
立法云々という点でございますが、
政治的な行為というものの
制限を場合によってはする
必要があるかもしれないということでございまして、たとえば
日本国の機関において決定しました
政策の遂行を妨げるための
集会、
示威運動の
組織、これらへの
参加、または
演説もしくは
文書、
図画の
頒布の
禁止ということを守ってもらうということが起こり得るわけでございます。それからまた、
日本国の国際的な
友好親善関係を阻害するおそれのあるような
集会、
示威運動の
組織、これらへの
参加、または
演説、
文書、
図画の
頒布というようなことをひとつ
禁止してもらうという
必要があるわけでございます。それで
鍛冶先生御
指摘の
政治的云々という点も、お答え申し上げたかと存じます。