運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1969-04-15 第61回国会 衆議院 法務委員会 第13号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十四年四月十五日(火曜日)     午前十時三十分開議  出席委員    委員長代理理事 進藤 一馬君    理事 大村 襄治君 理事 田中伊三次君    理事 永田 亮一君 理事 濱野 清吾君    理事 猪俣 浩三君 理事 神近 市子君    理事 中谷 鉄也君 理事 畑   和君       大竹 太郎君    鍛冶 良作君       渡海元三郎君    松野 幸泰君       岡沢 完治君    山田 太郎君       松本 善明君  出席国務大臣         法 務 大 臣 西郷吉之助君  出席政府委員         総理府特別地域         連絡局参事官  加藤 泰守君         法務政務次官  小澤 太郎君         法務大臣官房長 辻 辰三郎君         法務省刑事局長 川井 英良君         法務省人権擁護         局長      上田 明信君         公安調査庁長官 吉橋 敏雄君  委員外出席者         法務大臣官房司         法法制調査部司         法法制課長   平田 胤明君         法務省刑事局総         務課長     藤島  昭君         法務省刑事局公         安課長     豊島英次郎君         法務省人権擁護         局総務課長   辻本 隆一君         外務省アメリカ         局北米第一課長 千葉 一夫君         労働省労政局労         働法規課長   大塚 達一君         専  門  員 福山 忠義君     ————————————— 四月十一日  委員松野幸泰辞任につき、その補欠として古  井喜實君が議長指名委員に選任された。 同日  委員古井喜實辞任につき、その補欠として松  野幸泰君が議長指名委員に選任された。 同月十五日  委員西村榮一辞任につき、その補欠として岡  沢完治君が議長指名委員に選任された。 同日  委員岡沢完治辞任につき、その補欠として西  村榮一君が議長指名委員に選任された。 同日  理事猪俣浩三君及び神近市子君同日理事辞任に  つき、その補欠として畑和君及び中谷鉄也君が  理事に当選した。     ————————————— 四月十二日  法の威厳と秩序の回復に関する請願外四件(上  村千一郎君紹介)(第三八一七号)  同(田澤吉郎紹介)(第三八一八号)  同外二件(中村寅太紹介)(第三八一九号)  同(丹羽久章紹介)(第三八二〇号)  同外三件(粟山ひで紹介)(第三八二一号)  同(森田重次郎紹介)(第三八二二号)  出入国管理法制定反対等に関する請願外二件(  島本虎三紹介)(第三八二三号) は本委員会に付正された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  理事辞任及び補欠選任  法務行政に関する件  人権擁護に関する件      ————◇—————
  2. 進藤一馬

    進藤委員長代理 これより会議を開きます。  委員長が所用のため、指名により私が委員長の職務を行ないます。  まず、理事辞任についておはかりいたします。  理事猪俣浩三君及び神近市子君よりそれぞれ理事辞任申し出がありますので、これを許可することに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 進藤一馬

    進藤委員長代理 御異議なしと認め、そのように決しました。  次に、理事補欠選任についておはかりいたします。  ただいまの理事辞任に伴い、理事が二名欠員になりましたが、その補欠選任につきましては、先例により委員長において指名するに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 進藤一馬

    進藤委員長代理 御異議なしと認めます。よって、理事中谷鉄也君及び畑和君を指名いたします。      ————◇—————
  5. 進藤一馬

    進藤委員長代理 次に、法務行政に関する件及び人権擁護に関する件について、調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、これを許します。松本善明君。
  6. 松本善明

    松本(善)委員 きょうは公安調査庁調査活動について聞きたいと思うのですが、先日やはりこの委員会で、全学連方針について公安調査庁長官に私質問いたしましたが、そのときに長官は、二月一日の衆議院の予算委員会で説明をした、日共系全学連は究極的には人民管理目的としているということを言ったわけですが、このことを訂正しませんでしたけれども、この人民管理目的としておるということは、あなた個人見解であるか、それとも公安調査庁としての判断なのか、これを伺いたいと思います。
  7. 吉橋敏雄

    吉橋政府委員 お答えいたします。お尋ねの人民管理ということばの論拠は、先般申し上げたところで、御了承願います。また、この見解は、私個人ではなくて、公安調査庁としてさよう見解を持ったのでございます。
  8. 松本善明

    松本(善)委員 了承願いますというわけにはいきません。というのは、はっきりと全学連人民管理方針を持っておる団体を批判をしておるわけです。むしろ全く正反対といわなければならないわけです。公安調査庁見解まことに遺憾でありますが、これが公安調査庁見解だということになりますと、政府一つ機関が、国民基本的人権に基づいて構成をしておる団体について、その方針分析をする、そして政府なり公安調査庁立場から評価をし、それを公表するということになりますと、これは結社の自由、表現の自由に対する政府干渉ということになるのではないかと思いますが、その点についてはどう考えておるか。
  9. 吉橋敏雄

    吉橋政府委員 繰り返して申し上げますようですが、先般申し上げましたよう見解のもとに、究極において、これらの大学人によって大学運営管理を目ざしておるのだという趣旨での人民ということばを用いたのにすぎません。
  10. 松本善明

    松本(善)委員 私の聞いておるのは、政府機関がそういう分析をして一つ評価をして、特に公安調査庁がそういう評価を公表するということになると、これは結社の自由と表現の自由に対する干渉にならないか、こういうことなんです。
  11. 吉橋敏雄

    吉橋政府委員 結社の自由はもちろん十二分に尊重いたしておりまして、見解としてさよう見解を持つのだという意見であります。
  12. 松本善明

    松本(善)委員 その団体が公式の文書やその他に書いておることなら別ですが、むしろそれとは全く別のことを、かってに政府公安調査庁がその見解自分はそういうふうに評価をしたのだといって公表するということになると、その団体活動に対するいろいろの干渉、影響を及ぼしてくるわけです。そういう意味で、干渉ということにならないか。抽象的に結社の自由や表現の自由を侵すつもりはないということではなくて、そういう公安調査庁見解発表というものは、結社の自由、表現の自由をそこなうことにならないか、こういうことなんですが、その点についてのあなたの見解を聞きたい。
  13. 吉橋敏雄

    吉橋政府委員 繰り返して申し上げますようですが、この前の資料に基づいて「反動対人民の対決」ということばから出た「人民」ということばを端的に使ったものでありますから、結社の自由を侵犯するということにはならない、かように考えております。
  14. 松本善明

    松本(善)委員 その団体が抗議をするよう評価——そうでないなら別ですが、政府公安調査庁が公の立場で発言をするというのは、明らかに政府干渉だと思いますが、全学連をいま破防法容疑団体としている、その根拠を示してもらいたい。
  15. 吉橋敏雄

    吉橋政府委員 古く二十七年以降において、全学連が例のメーデー事件その他にも若干関係しておる容疑があるというところから、従来から全学連一つ調査対象団体ということにいたしておるのでございます。
  16. 松本善明

    松本(善)委員 私は根拠を聞いておるのですが、昭和二十七年からという話があったけれども、学生団体というのは、毎年毎年変わっていくわけです。いま活動しております全学連を、そういうことで二十七年の事柄根拠として調査対象にしておるということになると、これから先、学生運動には全部公安調査庁調査をしていくということになるわけですか。そういうことなんですか。
  17. 吉橋敏雄

    吉橋政府委員 その後、暴力主義的な破壊活動を行なうおそれがないということが確定された場合には、御指摘よう指定団体からはずすわけですが、遺憾ながら、現段階において、まだ完全にこれを払拭してない、おそれが全然ないという段階には至っていないという見解のもとに、まだ指定団体からはずしてないのでございます。
  18. 松本善明

    松本(善)委員 だから、現在おそれておる根拠を言えというのです。
  19. 吉橋敏雄

    吉橋政府委員 いま申し上げましたように、暴力主義的な破壊活動を行なうというおそれが全然ない、皆無という段階ではないので、遺憾ながら指定団体からまだ排除していないのでございます。
  20. 松本善明

    松本(善)委員 そういうおそれがないという段階には来ていないというあなたの判断を、幾ら聞いても、これは同じなんですよ。なぜそういうふうにいま考えておるのかということを聞きたい。その具体的な根拠なんですよ。
  21. 吉橋敏雄

    吉橋政府委員 先ほど来申し上げますように、指定いたしまして、現在の動きにおいて完全に暴力的な行為をしていないというふうには断定し得ないということから、まだ指定からはずさないということであります。
  22. 松本善明

    松本(善)委員 まじめに質問をしておるのだから、質問に合うようにちゃんと答えてもらいたいのだ。それは何べん言われても同じことですよ。あなたがそういうふうな判断をした根拠は、どこにあるのか。どういう全学連文書であるとか、あるいはどういう活動であるとか、そういうことを、どういう具体的な根拠に基づいて、いま全学連——これは七割の学生団体の連合体ですよ。いまの日本の学生の大半で組織しておるわけです。その団体調査団体としておるというからには、それには具体的な根拠がなければならない。そうでなくては、あなたの判断、ただ私たちはそういうふうに思っておりますというだけで一一各団体調査をされるということになれば、これはもう明らかに結社の自由に対する侵害になるのです。私たちは、公安調査庁活動そのものについて根本的に問題にしておるわけですけれども、いまのあなたの答弁で、まことにその点がはっきりしてくる。公安調査庁長官が、まだ暴力主義的な団体だと判断している。それだけを根拠としてあなたが言われるのだったら、国民は安心して結社の自由を守って団体活動ができますか。私の聞いているのは、具体的な根拠はどこにあるのか。それについて答えていない。今度ははっきりと具体的な根拠を言ってください。
  23. 吉橋敏雄

    吉橋政府委員 昨年来、いわゆる全共闘派の各派の暴力行為、これといわゆる正当防衛論で対決して衝突しているよう事例もあります。さような事実からいって、これが積極的であるか消極的であるかは別といたしまして、暴力的な行為がそこにあらわれているというところから、いまにわかに全学連活動を全然暴力的な行動のない形で指定団体からはずすことは、遺憾ながらできないということであります。
  24. 松本善明

    松本(善)委員 あなたもしろうとでないだろうから聞きますが、正当防衛になるかどうかというのは、やはりその具体的な事件について、一つ一つ個々の場合を検討しなければわからないでしょう。それを、あなたのほうでは別にその一つ一つの問題を問題にするのではなくて、正当防衛ということで衝突が起こっている、だから暴力主義的だ、こういうふうに判断している、こういうことですか。
  25. 吉橋敏雄

    吉橋政府委員 御指摘ように、すべてが暴力行為というわけではなくて、個々的な判断でさよう容疑の面があるというところから、指定の取り消しはいまだしていないということであります。
  26. 松本善明

    松本(善)委員 そうすると、国民正当防衛権利行使をするという場合は、ほかの場合にもあり得るわけです。全学連に限らず、そういうことがあれば、暴力主義団体だということで破防法調査対象になるのですか。
  27. 吉橋敏雄

    吉橋政府委員 各具体的な事案事案によって判断さるべきものだと思います。
  28. 松本善明

    松本(善)委員 だから、あなたは具体的な根拠を言えと言っているのですよ。正当防衛をした、その正当防衛だということで衝突があったということだけでは、それは国民のどこの部分だってあり得ることなんです。そのことを根拠調査対象にしているというのは、まことに不当じゃないか。そうして学生の七割が組織する団体をスパイ活動する、調査する、結局においてそういうことだと、これは明らかに結社の自由に対する侵害ではないか。あなた、自分で言われておって、そういうふうに思いませんか。あなたの根拠は、ちっとも具体的じゃない。あなたの言い分でいけば、どんな団体も、正当防衛権利行使をしたら、みんなやられてしまう。その疑いがある。
  29. 吉橋敏雄

    吉橋政府委員 先ほどから申し上げておりますように、個々的な事実、ケースバイケースによってそれは判断が違うわけであります。
  30. 松本善明

    松本(善)委員 あなたの答弁は、とうてい国民を納得させることはできない。それは個々のケースで違うのだという言い方で、どういう団体でも、結社の自由を侵害していくということになると思う。そのことについて、真剣な反省を求めたいと思います。  もう一つ別のことを聞きたいのですが、昨年の十月十四日、この委員会で、私は、公安調査庁から経営開発センター講座出席をして反共宣伝活動をやったことを取り上げて、質問をしました。これについてあなたは、これは公安調査庁設置法四条の十一号にあたる「所掌事務周知宣伝を行なうこと。」という規定によって宣伝活動をしているんだという答弁をした。「所掌事務周知宣伝」というのは、公安調査庁が行なう仕事の性質についての周知宣伝をするということで、この調査によって知り得たこと、そしてそれを分析をして得た公安調査庁としての所見まで周知宣伝するということではないというふうに考えるんだけれども、これは設置法にある「周知宣伝」ということは、そういうことだというふうに私たち考えますが、その点はどういうことですか。
  31. 吉橋敏雄

    吉橋政府委員 御指摘ように、設置法四条の十一号は、一応この公安調査庁がどういう仕事をしておるかということに関することの周知宣伝であります。さらに、それと関連いたしまして、四条の九号に「所掌事務に関する統計及び調査資料を作成し、頒布し、又は刊行すること。」という項目がありまして、この両方を総合して、それに関連する範囲内内において、ある程度は調査内容を解説、説明することができる、そういうふうに解釈いたしております。
  32. 松本善明

    松本(善)委員 ある程度というのは、どの程度なんですか。
  33. 吉橋敏雄

    吉橋政府委員 この許容範囲は、特に具体的に基準はありませんが、もちろん国家公務員法並びに破防法の法令に抵触しない範囲内において許されるもの、さように考えております。
  34. 松本善明

    松本(善)委員 昨年十月の十四日は、やむを得ないところに出席をしておるということを言っておりましたけれども、やむを得ないところというのは、どういうところなんですか。
  35. 吉橋敏雄

    吉橋政府委員 積極的に公安調査庁講演等に出向いてはおりません。これを根本的な原則にしております。それで、個々的な会社からの要請に対しては、原則として応じておりません。応じておる事例といたしましては、大体相手方の団体が研究的な見地から講師派遣を求めてくる場合を、さらに厳選して決定いたしておるのでございます。
  36. 松本善明

    松本(善)委員 その厳選の基準というのは、どういうものですか。
  37. 吉橋敏雄

    吉橋政府委員 先ほども申し上げましたように、破防法の三条にははっきりした限定基準がありますから、それに触れないように、しかも国家公務員法該当法条に触れないようにということを、一応の基準といたしております。
  38. 松本善明

    松本(善)委員 そうすると、学術団体があなたのほうの調査結果を聞きたいとか、それから場合によっては、私たちの党でも聞きたい、あるいは民主青年同盟が聞きたい、そういうようなことを言って申し込んだ場合に、あなたのほうは話に来るんですか。
  39. 吉橋敏雄

    吉橋政府委員 先ほど申し上げましたようにこの特定の限定された人々を対象に、公然資料に基づいて客観的な事実を解説的に述べるという範囲で出向いております。したがって、団体として、特にどの団体には出るというようなことをやっておりません。先ほども申し上げましたように、個個的な団体には原則として出ずに、協議団体、たとえば日経連から要請があった場合などは、十分考慮して、いまのような点を十分に留意、注意して、しぼって講師派遣する。先ほど来申し上げておりますように、この条項はありますが、積極的に公安調査庁から出向くというようなことは、従来いたしておりませんし、先般、昨年の十月の松本委員から御指摘もありましたので、誤解を招くようなことのないようにということを十分に関係部長にも留意するように言って、注意を与えております。
  40. 松本善明

    松本(善)委員 私の聞いているのは、学術団体共産党民青が呼んだら、来るかということなんです。日経連なら行くけれども、あるいは総評は行かない、あるいは学術会議は行かない。みんなこれは全国的な団体です。そういうようなかってな区別を、一体公安調査庁はやっているのかということなんです。どこでも来ますか。周知宣伝なら、どこでも来なければいかぬ。そうでしょう。
  41. 吉橋敏雄

    吉橋政府委員 先ほど来申し上げますように、積極的に周知宣伝をやっておるのではありません。(松本(善)委員「呼ばれた場合ですよ」と呼ぶ)呼ばれた場合は、こちらの事務都合等を考えた上で、また相手団体がどういう性格団体であるかというようなことも勘案して、講師派遣を認めるということをいたしておる、こういうことでございます。
  42. 松本善明

    松本(善)委員 そうすると、これは公務ですね。講師派遣は、公安調査庁としての公務ですね。
  43. 吉橋敏雄

    吉橋政府委員 ただいま申し上げましたように、九号と十一号、これの範囲内においてするのは、原則として公務であります。
  44. 松本善明

    松本(善)委員 日経連には再々行っているわけです。経営者団体には再々行っている。私のいま言う総評だとか、学術団体だとか、あるいは共産党だとか、民青だとかいう例をあげれば、これについてあなたは答えないのですが、一体どういうふうな基準で行ったり行かなかったりするのですか。
  45. 吉橋敏雄

    吉橋政府委員 いまお示しの学術団体とかあるいは民青とかいう方面からいままで講師要請という問題が全然ありませんので、そういう点は今後考えてみます。
  46. 松本善明

    松本(善)委員 そうじゃないのですよ。今後の問題ではなくて、そういうよう日経連に行く場合に、これはどうすべきものか。あなたの言う周知宣伝なら、これは呼ばれれば差別をするべきものではない。あなたの言われている公安調査庁設置法に基づく公務であるならば、各団体性格によって差別をするというなら、場合によっては憲法違反になりますよ。それは公安調査庁は、資本家のための団体である日経連は特別でございますというなら、別ですよ。そういうふうに答弁されるなら、私はこのことに関する質問を終わりますけれども、そういう結果になっているじゃないですか。それはどう思いますか。
  47. 吉橋敏雄

    吉橋政府委員 主として先ほど申し上げましたように従来から講師派遣要請があったのは、日経連あるいはその関係団体でありましたが、そのほかにいま御指摘ような、たとえば文教研究会——私大の学長、理事長の方の集まりですが、ここから講師要請があった場合に、担当部長が出向いておる事例もあります。
  48. 松本善明

    松本(善)委員 あなたは国の税金で、私たちが反対しているけれども、調査しているでしょう。それを周知宣伝調査業務と称している。それを国民によって、ある人は聞ける、ある人は聞けない、そういうばかなことありますか。そういうよう行政でいいんですか。
  49. 吉橋敏雄

    吉橋政府委員 過去にさよう団体からの要請という事例がありませんので、従来の実績はこうだということを申し上げておるのでありまして、今後いまのような、抽象的に言えば、御指摘よう団体については、差別はないということになろうかと思います。
  50. 松本善明

    松本(善)委員 そうすると、どの団体が申し込んでも、一応は行って話をする、調査結果を明らかにするということですね。確認しておきますからね。
  51. 吉橋敏雄

    吉橋政府委員 先ほど申しましたようワク内において、また公務に支障のないという判断において、それに応ずるというような抽象的な原則論であります。
  52. 松本善明

    松本(善)委員 先ほど申したワクというのは、どういうワクなんですか。日経連には行くが、総評にはいかないということになるのかどうかということです。どこでどういう区別なんだということです。
  53. 吉橋敏雄

    吉橋政府委員 これは話の内容の限界を申し上げたもので、団体といたしましては、いま申しましたように、過去において要請実績がありませんので、その点は考えなかったわけですが、御指摘ように、団体区別、差異はない、まことにそのとおりでありますから、要請がありました場合には、公務関係その他を勘案して、しかも先ほどから申し上げますように、この規定はありますが、公案庁から進んで積極的に広報宣伝活動をしようという意図は、従来からも、また現在は特にその点は慎重に留意して、積極的には行かないという方針でやっておるのであります。
  54. 松本善明

    松本(善)委員 その内容は、周知宣伝すべき事柄であるならば、もちろんそれはだれが聞いてもいいことであり、公開できることでしょうね。
  55. 吉橋敏雄

    吉橋政府委員 国家公務員法の百二条の関係で公に政治行為にわたるよう行為は禁止されておりますので、先ほど来申しますように、大衆の前で話すというようなことはいたさずに、ごく限定された範囲内においてお話をしておるということでございます。
  56. 松本善明

    松本(善)委員 そういうことを聞いているのじゃないのです。限定されていようとされていまいと、ある人は聞くことができる、ある人は聞くことができないということではならないでしょう。周知宣伝というのは、みんなに知らせるということでしょう。だから、話している内容は、当然公開できることを話しているんだろうなと言うのですよ。
  57. 吉橋敏雄

    吉橋政府委員 そのとおりでございます。
  58. 松本善明

    松本(善)委員 それでは聞きますが、この間問題にいたしました三月十八日の「日共民青同・外部団体対策総合実務講座」これはマル秘ということになっております。弘津恭輔氏の出席しておる、その講義内容が公開できますね。
  59. 吉橋敏雄

    吉橋政府委員 それはいつですか。私の着任前  の……。
  60. 松本善明

    松本(善)委員 あなたに聞いたのです。三月十八日の件です。昨年三月十八日です。あなたの就任前でしょうね。
  61. 吉橋敏雄

    吉橋政府委員 その後の部長のあれは、先般御指摘があって……。
  62. 松本善明

    松本(善)委員 これも聞いたんですよ。あなたに聞いたんです。就任前のことだけれども、あなたに聞いたんです。
  63. 吉橋敏雄

    吉橋政府委員 その内容については、詳しくまだこちらとしては私は聞いておりません。
  64. 松本善明

    松本(善)委員 いま聞いてもいいですよ。あなたは、周知宣伝ということを庁の業務ということでやっておるわけだから、当然公開できることを話しておるはずだということなんだから、昨年の三月十八日に言った、これは公開できるでしょうね。当然のことでしょう。もう一回聞きます。
  65. 吉橋敏雄

    吉橋政府委員 周知宣伝というのは、先ほど来申し上げておりますように、公安庁としてはなるべくしぼって、積極的にはしないという基本方針でやっております。したがって、ごく特定の人、特定の会合にだけ出るということを従来からのたてまえといたしておりますから、一般の大ぜいのところへ出てやるということは、従来はしていない、さように思っております。
  66. 松本善明

    松本(善)委員 だから聞いているのですよ。周知宣伝ということは、みんなに知らせるということでしょう。それで、団体について差別することはできないということでしょう。ある人は聞ける、ある人は聞けないというなら、これはまさに公安庁は私兵ですよ。公の役所の仕事じゃない。あなたも公開できると先ほど言いましたね。だから、この具体的な場合に公開できるでしょうねということを言っているのです。これはできるかできないか、そのことだけを聞きます。
  67. 吉橋敏雄

    吉橋政府委員 先ほど来申し上げておりますように、国家公務員法等の制肘を受けますので、これには公に政治的な行為をしてはならないというよう規定がございますので、いま言ったように、公開のところで話すということはしておりません。
  68. 松本善明

    松本(善)委員 そうすると、あなたはあれですか、その日経連やその他、この実務講座でやっていることは、限定された範囲だから国家公務員法には触れない。内容としては国家公務員法に触れる政治活動である。しかし、それはみんなの前に公表すれば政治活動になるかもしれぬから言えぬと、こういうことですか。
  69. 吉橋敏雄

    吉橋政府委員 内容的には客観的な公然資料に基づいて客観的に見解を述べておるので、したがって、政治活動にはなりませんが、しかも公にという疑いを受けないようにという意味において、従来の方針として、積極的に公開の席上へ行って公安庁内容その他をPRしておるということは、従来もありませんし、現在もやっておらないのでございます。
  70. 松本善明

    松本(善)委員 あなたここで公表するというのは、委員会にですよ。国会に対して明らかにできるかと聞いておるのですよ。日経連経営者団体では、その限定された人だから話ができる、国会には明らかにできない、そういうよう国民に対してこっそりやらなくちゃいかぬよう仕事をやっているのですか、公安調査庁は。これはたいへんな大問題になりますよ。
  71. 吉橋敏雄

    吉橋政府委員 一般に外部に出て公に講演はしないというのを基本ラインにしておりまして、国会はもちろん十二分に尊重いたしまして、国会の御要求についてはお答えいたしておるのでございます。
  72. 松本善明

    松本(善)委員 庁の設置法に基づく周知宣伝という業務は、公務としてやっているというのでしょう。その内容を国会に公表できないはずはないでしょう。だから、公表できるかと聞いている。何べん聞いたって、あなたそれについて答えない。公表できるかできないか、そのことについてだけ答えてください。
  73. 吉橋敏雄

    吉橋政府委員 講演内容については、もちろん公表できます。
  74. 松本善明

    松本(善)委員 それでは、後ほどでも要求しましたら、出してもらえますね。ことばで答えてください。
  75. 吉橋敏雄

    吉橋政府委員 資料としての要求があった場合には、講演内容の要旨は提出いたします。
  76. 松本善明

    松本(善)委員 そうすると、十月七日の島田純一郎調査第一部長、これもマル秘と書いてあるのだね。これももちろん公表してもらえますね。
  77. 吉橋敏雄

    吉橋政府委員 その経営開発センターですか、のパンフレットについては、島田調査第一部長は事前に何らの連絡も受けずに書かれたもので、あとでそういうものが出ておるということがわかって、彼としては経営開発センターのほうへ厳重に抗議をした次第であります。
  78. 松本善明

    松本(善)委員 私の聞いているのは、これも当然公表してもらえますねというのです。
  79. 吉橋敏雄

    吉橋政府委員 実際に同部長が講演した内容の要旨は、もちろん公表できます。
  80. 松本善明

    松本(善)委員 もう一つ、このあとあなたのほうは制限をしている、慎重にしているということを言っておるが、その後またあるのですね。「日共民青同・外部団体対策」ということで、これは昨年でしょう、十一月の十一日、十三日、十五日、十八日、二十一日。その内容が、またたいへんなんです。島田純一郎氏のしゃべることになっている内容は、「転換期を迎えた日共民青同の最近の動向について」「日共民青同の基本路線」ということである。それからいろいろありますが、最後の五番目のところに「最近の学生運動の新しい傾向とその動きについて」その一は「反日共全学連」二は「日共系全学連」三は「日共」四は「社会党総評」というふうに書いてあります。一体民青同や社会党・総評は、いつから公安調査庁調査対象になったのですか。
  81. 吉橋敏雄

    吉橋政府委員 いま御指摘のパンフレットは、私全然承知しておりません。本人からも聞いておりませんので、当人がそれだけの内容を言ったかどうかはわかりませんが、先ほど申しましたように、十月以降は、パンフレットにするというようなことや内容については特に留意せよということを言っておりますので、そこに御指摘よう内容を全般にわたって述べたのじゃないのじゃないか、かように考えております。
  82. 松本善明

    松本(善)委員 それはちゃんと書いてあります。「日共の対労組政策の変遷」も「産別会議の時代、総評結成時代、総評追随時代」こういう分類のしかた自体問題ですけれども「独自活動時代、最近の対労組政策」そういう中で、ずっと社会党、総評というのが出ております。こういうようなことは、とうていあり得ないことですか。
  83. 吉橋敏雄

    吉橋政府委員 社会党とか総評なんかは、もちろん調査対象には全然いたしておりません。
  84. 松本善明

    松本(善)委員 そうしたら、ここに何で出てくるのですかね。あなたは確認してないと言うけれども、そうすると、そういうことがあったとすれば、これはでたらめだということですか。
  85. 吉橋敏雄

    吉橋政府委員 当該部長に、先ほど経営開発センターのパンフレットを御指摘になりましたが、私は十分に注意いたしておりますので、その後は当人がさような細部にわたっての講演をしたことはないと確信いたしております。
  86. 松本善明

    松本(善)委員 ちょっとあなた、見てごらんなさい。ちゃんと麗々しく書いてありますよ。
  87. 吉橋敏雄

    吉橋政府委員 これは私ども承知しておりませんから……。
  88. 松本善明

    松本(善)委員 写しですけれどもね。民青同は、一体調査対象になっているのですか。
  89. 吉橋敏雄

    吉橋政府委員 現段階においては、対象になっておりません。
  90. 松本善明

    松本(善)委員 このいまのあれは、民青同が中心になっていますよ。これはどういうことです。社会党、総評については、いまお話がありました。これは表現からして「日共民青同の最近の動向」。見てごらんなさい。大部分民青同です。
  91. 吉橋敏雄

    吉橋政府委員 この内容は、先ほど来申し上げますよう関係からいって、島田部長個々的にこの薬日を述べたものじゃない、さように確信いたします。
  92. 松本善明

    松本(善)委員 そうすると、民青同についてそういうふうな形でやるということは、いけないということですね、調査対象になっていないということは。
  93. 吉橋敏雄

    吉橋政府委員 民青同自体を指定団体にいたしておりません。
  94. 松本善明

    松本(善)委員 さっきあなたが認められました弘津恭輔氏の三月十八日ですね、それから十月七日のもの、これもやはり日共民青なんです。どうですか。こうやって、青年が団体をつくったり学生団体をつくったりしているのをみんな調査している。
  95. 吉橋敏雄

    吉橋政府委員 民青同自体は調査指定団体にいたしておりませんが、日本共産党を現在いまだ調査対象団体にいたしておりますので、民青同の中に日本共産党員がどういうふうに活動されておるかという、その影響力等の関係において調べておるので、民青同自体を調べておるのではないのでございます。
  96. 松本善明

    松本(善)委員 なるほど、わかりました。よくわかりましたが、しかし、それはまたたいへんなことでありまして、共産党員がその団体の中で活動しているということなら、その団体がみな調査されるということになりますと、新日本婦人の会もそうです。たいへんたくさんな労働組合全部そうです。それから総評も、もちろんそうでしょう。だから、総評と出ておるのは、私は決して偶然ではないと思う。それから同盟だってそうです、労働組合という労働組合の中に、共産党員がいないというほうがふしぎなんですから。そうすると、労働組合は全部調査対象に実際上なっておる。それから、そのほかの民主的な団体といわれる団体ですね、これは文化人の団体にももちろん共産党員はいますし、それから法律家の団体にも共産党員がいます。共産党員の影響を調査するということで実際上そういうよう調査をされるということは、これはもうたいへんな結社の自由に対する侵害になるわけです。そういうことになると思いませんか。
  97. 吉橋敏雄

    吉橋政府委員 当該大衆団体自体は、もちろん調査対象には全然いたしておりません。そこへいま御質問ような党員が党活動をしておるかどうかということの範囲内においての関連調査ということがあるので、団体自体を対象には全然いたしておりません。
  98. 松本善明

    松本(善)委員 あなたはことばの上では否定をしているけれども、そうすると、共産党員が入っておる限り、その団体の中で党員がどう活動しているかをみんな調べるということになるじゃないですか。そういうことになることは、集会、結社の自由ということに対して根本的にこれは憲法違反になることじゃないか、どう思いますかということなんです。
  99. 吉橋敏雄

    吉橋政府委員 ただいまも申し上げましたように、大衆団体それ自体は全然調査対象にはしていなくて、遺憾ながら現在まだ指定団体にいたしております日本共産党の構成員が、その大衆団体で党活動をしているという、その限定された範囲内において関心を持つということに限られるわけであります。
  100. 松本善明

    松本(善)委員 この問題に出したのは、日共民青という印刷物から問題にしたわけですが、民青同は共産党員が活動しているからということで、調査対象ではないのだけれども、こういうふうに書かれているわけでしょう。そうすると、あなたのほうは、日共と新日本婦人の会というふうにやってもいいし、日共総評というふうにやってもいいし、それは内容共産党員が活動しているということを調査しただけで、その大衆団体そのものを問題にしているわけじゃないのだという理屈によって、共産党員が入っておるすべての大衆団体民青同と同じように扱うことができるということになるのじゃないですか。そうでしょう。
  101. 吉橋敏雄

    吉橋政府委員 その大衆団体に日本共産党の党員が入っておるという場合も、先ほど申しましたように、その大衆団体としての活動という面については、これは全然調査対象にしておりません。あくまでそれが党活動をいかにしておるかという、ごく限定された範囲内においてその動向を見るということをいたしておるのでございます。
  102. 松本善明

    松本(善)委員 共産党員は、その規約で、その所属している大衆団体の規約を守って誠実に活動するということになっているんですよ。その大衆団体活動調査するということになれば、実際上大衆団体をスパイ活動するということになるんじゃないですか。あなたのほうは大衆団体そのものを対象にしているのじゃないというけれども、結果としてそういうことになっておるということは事実じゃありませんか。
  103. 吉橋敏雄

    吉橋政府委員 その点慎重な調査を続けております。
  104. 松本善明

    松本(善)委員 私の言いますのは、結果としてそういうことになっているでしょうというのです。慎重であろうとなかろうと、結果として私の言ったようになっているでしょうというのです。その当否は別ですよ、あなたのほうはいいと言われるかどうかわかりませんが、結果として、そういうふうに共産党員の活動調査するという結果、大衆団体活動調査されるということになりませんかというのです。
  105. 吉橋敏雄

    吉橋政府委員 結果としても、その団体自身を対象にするようなことは、調査の限界と申しますか、もちろんいたしておりません。
  106. 松本善明

    松本(善)委員 団体自身を調査対象としてないということは再々あなたに言われることで、それは繰り返してもらう必要はないのです。しかし、その中で共産党員の活動調査をするというんでしょう。そうすると、その結果、大衆団体活動についても調査をされるという結果になる場合があるだろう、そういうことを言っているんですよ。それは事実でしょう。
  107. 吉橋敏雄

    吉橋政府委員 そこはきわめて慎重に限定して調査をいたしております。
  108. 松本善明

    松本(善)委員 事実としてそういうことになるかもしれぬが、しかし、慎重に限定してやっているんだから心配してくれるな、こういうことですね。
  109. 吉橋敏雄

    吉橋政府委員 さようであります。
  110. 松本善明

    松本(善)委員 大臣にもあとからお聞きしたいと思いますが、いまのやりとりを次官お聞きになってどうですか。憲法に保障された結社の自由は、共産党員の調査という名目で非常に侵害をされている。国民はいつでもスパイをされる危険があるということにさらされておるんじゃないか。政治家として次官の意見を聞きたいと思いますね。
  111. 小澤太郎

    ○小澤(太)政府委員 まず、第一に先ほどお示しになりましたその印刷物ですね、これの性各がどんなものかということから判断する必要があると思うのです。おそらく、私は内容を存じませんけれども、ちょっとべっ見した範囲内では、それは何か特定の研究団体の会員に対する予告というのですか、そういう性質のものだと拝見しました。したがって、それが講演の内容そのものをずばりと正しく示しておるとは思えないのであって、これは先ほど松本委員の御請求もありましたので、その内容については資料としてお出ししますから、それによって御判断をいただく、これが筋合いだと思います。したがって、その関係主催者が出した予告的なもので御判断をいただくのは、いささか早過ぎやせぬか、こう私考えます。なお、私は内容をよく存じておりませんから、資料を提出させますが、私自身もよく検討いたしたいと思います。  それに関連していまお話がございましたが、指定団体になっていない大衆団体調査対象とすることは、あり得ないことです。あってならないことでございます。ただ、共産党調査指定団体になっております関係上、党といたしましても、党活動は党員によって行なわれるのでございますから、それに随伴して、そのようなことも観念的には考えられるかと思います。また、松本委員のおっしゃるようなことが、結果としてでありますけれども——あるいは結果というよりも、反射的にそのような懸念がある、これは事実であろうと思います。したがって、その懸念のないような慎重な扱いをする、そしていやしくも人権が侵されないようにする、そういうことは、公安調査庁として当然とるべき態度であると思います。また、そうやってきたと思いますが、なお私も十分にそういう点については注意をしてまいりたい、かように考えます。
  112. 松本善明

    松本(善)委員 次官、民青同というのは、ちゃんと麗々しく印刷されているのです。調査対象になっていない。これは私どもの手にも入るわけです。これはどう思います。
  113. 小澤太郎

    ○小澤(太)政府委員 それが、先ほど申しましたその印刷物の性質、性格でありますけれども、こちらから民青同の説明をしにまいるといったわけではないようであります。ただ主催者団体がそのような予告をしておるんじゃないか、かように考えますので、先ほど申しましたように、講演内容資料として提出しますから、それによって御判断していただき、私のほうもそれによって判断したい、かように考えております。
  114. 松本善明

    松本(善)委員 次官、こういうことは、あなた資料をとってから検討したいと言われるけれども、大体好ましくないんじゃないですか。
  115. 小澤太郎

    ○小澤(太)政府委員 私どもの立場から申しますと、そのような予告を、ことに民青同、共産党と並べて、それを何か言うことは好ましくないと思います。
  116. 松本善明

    松本(善)委員 そういう話をするのはいいけれども、あまりわかるようにやっちゃぐあいが悪いということですか。
  117. 小澤太郎

    ○小澤(太)政府委員 そういう意味じゃなしに、その主催者団体が、公安調査庁の任務等を十分に理解せずに、ほかの講師もたくさんおられるようでありますが、いやしくも公安調査庁の職員を講師として招聘して、そこで意見と申しますか、解説的な話を聞こうとする場合において、十ぱ一からげに、責任ある国家公務員が話をする場合において、その表題にそのよう対象になっていないものを出すということは、私は好ましくない、こう申し上げておるわけです。
  118. 松本善明

    松本(善)委員 結社の自由との関係先ほど申しましたように、共産党員を調査するという名目で非常に広範な人がその危険にさらされるわけですね。これはやはりいいことではないのではないですか。やめなくちゃいかぬことになってきているのではないですか。
  119. 小澤太郎

    ○小澤(太)政府委員 調査対象を、共産党対象として指定されております関係がありまして、それに関する限りにおいて、その限度において調査することは、これは必要、かつ、やむを得ないものだと思います。しかしながら、その調査の方法、手段等によりまして、いまあなたのおっしゃるような、関係のない者にまで脅威を与え、その自由を侵害する、そういうことがあってはならないことは当然であります。しかし、繰り返して申しますように、指定された調査団体調査は、これは当然、かつ、正確、精密にやるべきことでありますから、これは与えられた行政庁の責任でございますから、その範囲内において、またその限度を越えない限りにおいて調査をやるということは、これは当然のことだと思います。
  120. 松本善明

    松本(善)委員 その共産党調査対象としているというようなことを、やめねばいかぬじゃないかということなんです。といいますことは、いまの話でもわかりますように、総評の中にはも——ちろん総評に限らず、同盟系にしろ、日本の労働組合の中で共産党員がいないというのは、むしろ異例のことなのです。そうすると、労働組合は全部、結果的に調査対象になりそうだし、国会議員もたくさん出てきております。私も共産党員です。そういうことの調査をするという名目で、そしてその活動周辺の団体はみな調査をするということになれば、これは結社の自由といっても全く名目だけになるのじゃないか。この段階で考え直す必要はないか、政治家としてどう思いますか、こういうことですよ。
  121. 小澤太郎

    ○小澤(太)政府委員 私は、政治家としてと同時に、法務政務次官としてお答えいたしているわけでありますが、破防法対象団体でございまして、いま総評というお話がございましたが、それを対象にはもちろんいたしておりません。対象とした団体調査する場合においては、必然的にその団体の行動というもの、団体員としての行動ということに対しては、やはり調査対象になる得るのでございます。それがやはりいま御指摘ように、共産党の党員の方々があらゆる団体関係していらっしゃる。その党員が関係しておられるということによってその団体調査対象にするということは毛頭ないのでございまして、あくまで共産党という対象になっている党、その党活動の党員として活動しておられることが調査対象になっているわけでございまして、いまあなたの議論のように、その党員がどこにおるから、そしてそこの団体をみな対象団体として、調査対象として調べていく、こういうようなことには相ならぬと思います。そこにおのずから限界があると思います。  それからお尋ねの共産党をいま対象からはずすかどうか、意見はどうかということでございますが、これはちょっと私、いまこの場では答弁を差し控えさせていただきたいと思います。
  122. 松本善明

    松本(善)委員 先ほど長官は、実際上そういう結果になっていることがあるけれども、慎重にしたいという話だし、あなたもできるだけそういうふうにならぬようにするが、懸念はあるという話ですね。そういうような危険がある。結社の自由という国民の基本的な人権ですよ。それは具体的な形であらわれて、ちゃんと調査団体以外の総評とか、社会党とか、それから民青同とかを並べて——あなたがこれは正確かどうかわからぬと言うけれども、不正確なものをこんなところへ持ってくるわけはないですよ。それで、そういうものが実際上公安調査庁調査対象になっているということは、結果として明らかになっておる。その事態を見て、あなたはどう思うかというのですよ。
  123. 小澤太郎

    ○小澤(太)政府委員 その印刷物の性格を、先ほど申しましたように、それだけでずばり御判断することはいかがと思いますので、先ほど申しました資料によって判断をお互いにやりたい、どうぞしていただきたい、かように思います。  それからいま申しましたのは、結果としてではなしに、私は、そういうことから反射的に懸念があるだろう——私は懸念しておるというわけじゃございません。そういう懸念があるだろう。そういうことがあるからこそ、慎重にその懸念のないよう調査を進めるべきだ、こう申し上げた。結果が出ておるとは申しません。反射的にそういう懸念があり得るのじゃないか。これもまた全然ないとは申せません。したがって、それに対しまして、その懸念がないような努力をすべきだ、こう申し上げておるわけであります。
  124. 松本善明

    松本(善)委員 ことばでじょうずに、次官答弁じょうずにやられても、これは事態は変わらないのですよ、私の示した資料を見たら、事実がそうなっているのですから。民青、社会党、総評、名前が出てきてやられているのですから、これはどこにでも同じようなことが考えられるのは、あたりまえのことでしょう。その辺は謙虚に考えて、事に処さなければならないのじゃないか。国会の答弁の場で、なるほど次官の答弁はじょうずだ、うまい、しっぽがつかまれぬようにうまくやっておるわい、そんなことに国民が感心したって、しょうがないでしょう。謙虚にこのことについてあらためて考えられるという気持ちがあるかどうか、これを聞きたいのです。
  125. 小澤太郎

    ○小澤(太)政府委員 何も答弁じょうずに免れるという気持ちじゃございません。私が申し上げたとおりの考えを持っておるわけであります。したがって、御指摘のありましたようなことの懸念のないような慎重な行政活動はさせたい、かように考えておる次第であります。
  126. 松本善明

    松本(善)委員 これは大臣に私も同じことを聞きたいと思うのですが、きょうの議事録ができて、大臣ぜひ読んでおいてもらいたい。そして法務省としてもよく考えて、この問題は国民基本的人権関係することですから、大臣に質問するのはあらためての機会にしますけれども、法務省として、この基本的人権との関係で厳格な反省と検討をするようにということを申しまして、私は質問を終わりたいと思います。
  127. 進藤一馬

  128. 猪俣浩三

    猪俣委員 いま出ていらっしゃるのは……。
  129. 進藤一馬

    進藤委員長代理 総理府と労働省です。
  130. 猪俣浩三

    猪俣委員 それじゃ、とにかく出ていらっしゃる方にお尋ねします。これは総理府になるかもしれませんが、沖縄の復帰問題、これについては沖縄島民のみならず、日本の全国民の熱望するところであり、佐藤総理大臣がおっしゃったように、国民的コンセンサス、合意がもうできておる。強い要望があることは申し上げるまでもない。しかるに、アメリカ政府の沖縄に対する態度、これは、今度新たに物議をかもしました総合労働布令というものを点検いたしますと、全くアメリカは逆に、前よりもかえって日本内地と沖縄との間の差異を著しく増大せしめるような考えがどらもあるんじゃないというふうに心配をされる。本年一月十一日にアンガー高等弁務官は離任の直前に、置きみやげみたいにして総合労働布令なるものを出した。ニクソン政権ができまして、しかも新しいランパート弁務官が一月二十八日に着任しているのですから、その一週間前くらいにやめる人間が、こういうことをぱっと置きみやげにして急遽出した。しかもそれは、百十六号布令が、はなはだ人権尊重に欠くるものがあるとして内外の批判を受けておった。その百十六号の布令以上の人権侵害の総合労働布令なるものを出した。どうも私どもは理解に苦しむのですが、何かそういうものを急遽彼が置きみやげとして出さなければならぬような政治的背景と申しますか、動機と申しますか、そういうものがあるのかないのか。政府は、何ゆえに突如としてかようなものを出したのか、それに対する動機なり政治的な背景なりについて、いかに理解をされておるかを御説明願いたい。これは総理府でしょう、外務省来ていないようだから。
  131. 加藤泰守

    ○加藤(泰)政府委員 総合労働布令の問題につきましては、先生の御指摘ように、百十六号につきまして——現行布令でございますが、その百十六号につきまして、現地でいろいろ撤廃運動があったことは事実でございます。ただ、アメリカ側といたしましては、約三年ばかり前から百十六号の改正を考えて検討していたようでございます。そしてわれわれもその改正につきましては非常に注目しておりまして、その点についてできるだけわれわれも事前に見せてほしいということを申し入れていたわけですが、ことしになりまして、御指摘ように一月十一日に公布されたわけでございますが、その直前に政府のほうに大体の説明があったわけでございます。この点につきましては、直前でございますので、政府のほうで意見を述べる機会がもちろんなかったわけでございますので、その後、布令についての意見を申し入れたわけでございますが、ただ、この問題につきましては、確かにおととしの十一月の日米首脳会談によりまして、沖縄と本土の一体化施策が推進をされるというような見地から見ますれば、こういう新たな布令を出すということ自体は問題があるようにとれるかもしれませんが、ただ、軍雇用者の雇用問題に関しましては、現在直接雇用の形をとっておりますので、その形からいきますれば、布令という形式もまたやむを得ない点があろうかというふうに考えるわけでございます。ただ、何といいましても、それ自体が沖縄住民の福祉に影響を及ぼすところが非常に大きいものでございますので、政府といたしましても、その内容がどうであるかという点については、十分関心を持っているわけでございます。
  132. 猪俣浩三

    猪俣委員 どうも説明が少しよくわからぬのですが……。私が質問いたしました趣旨は、この百十六号布令さえ非常に反動的なものであり、人権侵害のものであるという内外の批判がある。そして沖縄の立法院は、保守党が大勢を占めておるにかかわらず、日本の内地に行なわれておる労働基本三法を、高等弁務官が反対しているにかかわらず、立法院はこれを立法した、三法を手本にした。しかし、布令がその上に効力を持っているのでありますから、これは実際は行なわれないことになるわけです。しかし、沖縄の保守党が大勢を占めておりました立法院すら、この百十六号は労働権の侵害として、内地に行なわれておりまする労働三法を手本として立法作業をやったわけです。いかにも世論の帰するところが明らかなわけです。そういうことを腐るほども知っておるところのアメリカの高等弁務官が、百十六号以上の反動的な治安立法的なものを出したについては、しかも自分がやめる直前ですよ、新しい高等弁務官が着任一週間前だ、どうも私は奇怪だと思うのです。それに対して政府はどう理解しているかを私はお尋ねしたいと思うのです。この総合労働布令が百十六号よりも改善されたものと一体御理解になったのか、改悪されたものだ、労働基本法の侵害がなお百十六号よりも強まったと考えられるのであるか。そうじゃないんだ、改良されたんだとするならば、あなた方はその動機というようなことは考えられないでしょうが、私どもは、非常に改悪されたと思うのです。治安立法的な色彩が濃厚な条項が入ってきた。簡単な条文であるようであって、徹底的な違いがあるわけですよ。そういうふうに非常に改悪されたと考えられるのですか、考えられないのですか。改悪されたと考えられるならば、その動機はどこにありと考えられるのか、それをお尋ねしているのです。
  133. 加藤泰守

    ○加藤(泰)政府委員 先ほど私が申し上げましたのは、従来から労働布令の改正についてはアメリカ側で三年にわたって検討されていたという事実がございますということを申し上げたわけでございます。そうしてそれについてわれわれも十分関心を持っており、それについての意見を述べる機会が与えられることを望んでいたわけですが、実際公布されたのは一月の十一日であり、その直前にわれわれに提示されたという事実を申し上げ、そういう意味合いにおきまして、総合労働布令について政府から意見を述べる機会がなかったということを申し上げたつもりでございます。この内容につきましては、先生御指摘の点は第十条のことであろうかと思いますが、確かに第十条の問題は、本来の労働法規の範疇から逸脱したものが入っていることは、御指摘のとおりでございます。そういうこともございますので、政府としては、二月の十三日に外務省から大使館に対して、この十条についての再検討方を申し入れているわけでございます。そういうことでございますので、労働布令そのものの内容につきまして、少なくとも労働法規としての範疇から逸脱するものについては不適当であるから、一部削除等の措置がとられることを期待して、申し入れておるわけでございます。その他の点につきましては、確かに労働基準の面で従来よりも改善された点があると判断されますが、なお従来のものと比較して、布令は労働法規的な観点からいろいろ問題がある点を、去る三月二十日にこれを大使館に対して書面で申し入れをし、再検討を求めているところでございます。
  134. 猪俣浩三

    猪俣委員 外務省からおいでになっておりますが、ただいま私お尋ねしているのは、アメリカの大統領が改選されて、ニクソン大統領が出現した。そしてアンガー局等弁務官は解任されて帰国する。そして新しいランパート高等弁務官が赴任する。そのやめて帰る人が、置きみやげみたいにして急に総合労働布令というような、私どもから見ればはなはだけしからぬ布令を出した。何かそこには動機、政治的理由、背景があるのではなかろうか、それをいまお尋ねしているのです。ところが、どうもそれについて的確な御答弁がないようである。外務省はどう考えられるか。何がアメリカをそうさせたのであるかという、その点について……。
  135. 千葉一夫

    ○千葉説明員 ただいま先生が御指摘のとおり、この総合労働布令が公布された時期は、まさに大統領も交代するころでございますし、また高等弁務官も交代の時期でもあったわけでございます。そこで、何らかそこに政治的な動機があろうかという御質問でございますが、われわれが了解いたしておりますところでは、実は格別そういう政治的動機はアメリカにはなかったようでございます。と申しますのは、これはかねて数年間にわたりまして、前の、と申しますか、現行の百十六号と申します布令を改定することを、いろいろ米側は検討いたしておった次第でございます。なかなかそれがうまくいろいろな意味で進まなかったようでございますが、ようやく案ができましたのが去年の秋ぐらいだそうでございまして、それから本国へ持っていって、いろいろ本国の各関係の官庁及び軍などと協議しておって、ちょうどそれができ上がったのがそのころであったというふうに聞いております。したがいまして、政治的意図と申しますよりは、一種の米側なりの官僚機構の間でもんでいるうちに、そのときでなくてはできないくらいにおくれておったというふうに実は解釈しておるわけでございます。
  136. 猪俣浩三

    猪俣委員 あなた方は簡単にお考えになっておりますけれども、私ども多少逐条的に調べてみますと、非常な違いが出てきておる。たとえば今度出た総合労働布令の第一条のE項ですが、「本布令の条項が琉球政府の法令、民政府の布令またはその他の規則に抵触する場合は、本布令が優先する。」これはまあいいんだ。「本布令は大統領行政命令または米国議会の立法に基づく規則を含む米国議会の法律に優先するものではない。」この「米国議会の法律に優先するものではない。」というのは、百十六号にはなかったことなんだ。これは簡単なようであって重大なんだ。たとえば沖縄統治の問題については、基本法として大統領行政命令があり、アメリカの本国ではこの沖縄住民の統治に対しては本国の法律は関与しない、いままでずっとそういうふうに理解されておった。だから、旧布令は、第一条のd項、「この布令が民政府の先行布令又は指令及び琉球政府の法律又は行政規則並びに琉球列島において施行されている日本の法律、布令又は規則に矛盾若しは抵触する場合は、この布令の規定が先行するものとする。」これだけであった。しかるに今度は新たに「米国議会の立法に基づく規則を含む米国議会の法律に優先するものではない。」こう書いてあるから、結局アメリカの自由におけるアメリカ議会の立法が沖縄に影響を及ぼす。これは、きわめて重大な変化だと私は思うのです。それについて、どういうふうにお考えになりますか。
  137. 加藤泰守

    ○加藤(泰)政府委員 私からお答えいたしますが、いま御指摘の点につきましては、大統領行政命令、琉球列島の施政に関する行政命令ということでございますが、この行政命令の第一節に「合衆国議会が、琉球政府に関して、法律により別段の定めをしない限り」云々ということで、この大統領行政命令の第一節におきましても、アメリカの法律が、場合によれば琉球政府を拘束するような、そういう法律をつくることもあり得るということになっているわけでございますが、そういう点をこの布令の第一条のE項と比較してみますときには、この行政命令の第一節とのからみで書かれたものというふうに私は考えますが、御指摘の点につきましては、確かにどの法律が、あるいはどの規則がその労働関係に適用されるか、そういう点やや不明な点があろうかと思います。そういう点で、やはりこの布令により拘束される軍雇用者の立場から申しますれば、いかなる規則を守ったらいいのかというようなこともよく知る必要もございますので、そういう点から考えまして、そういう点を明らかにするのが望ましいことであろう、こういうふうに考えておりますが、いま申し上げましたような大統領行政命令との関係で申しますと、そういうこともあり得るということが言えるのではないか、そういうふうに思います。
  138. 猪俣浩三

    猪俣委員 前の百十六号にはなかったことを新たにこういうふうに入れだしたということに、非常に意義がある。そして大統領行政命令なるものの精神と、沖縄の百十六号でも、今度の総合布令でも、一体矛盾してはいませんか。大統領行政命令は、沖縄住民の権利を尊重し、その保護を厚くするということが中心になっているはずだ。今度の総合布令は、その行政命令それ自身に違反しているのじゃないか。それに対してどう考えられますか。
  139. 加藤泰守

    ○加藤(泰)政府委員 大統領行政命令と布令の関係につきましては、アメリカ側のこの布令についての解釈等を十分聞いておりますところによりますれば、大統領行政命令の趣旨に沿うてこの布令が立案されているように説明を受けております。
  140. 猪俣浩三

    猪俣委員 一々逐条をやっておりましては時間もありませんし、すでに沖縄特別委員会でも相当論議されたかと存じますので、私は、法務委員会として看過できない点だけを申し上げてみたいと思うのです。  第九条のB項ですが「軍の行動や重要産業を阻害するようなストライキが発生した場合には、軍事基地の運営を継続し、阻害されないように適当な機関によって必要とみとめられる措置がとられる。ストライキに入った被用者は有給休暇は認められない。また、軍事施設運営と安全維持のために一時的または恒久的に代替される。」こういう規定がありますが、非常に労働者の権利を専断的に阻害する規定だと思うのです。しかも規定それ自身が、法律的に見まして非常にあいまいである。軍事基地の運営を継続し、阻害されないように、阻害されるということが発生した場合、必要と認められる場合、必要と認められる措置が適当な機関によってとられる。一体軍事基地の運営を継続することを阻害するということは、どういうことなのか、適当な機関によって必要な措置というのは、どういうことなのか、これは罪刑法定主義から見ますと、はなはだ粗雑であり、何でもできるのです。これは、現行の百十六号よりなお悪化したものである、改悪したものです。これはどういうふうに理解されますか。
  141. 大塚達一

    ○大塚説明員 ただいま第九条のB項の点につきまして「軍の行動や重要産業を阻害するようなストライキ」あるいは「適当な機関によって必要をみとめられる措置」というのは、非常にあいまいであり、内容がはっきりしないではないか、どういうふうに理解するのか、こういう御質問でございます。私どもも、先生おっしゃるように、この表現自体において「阻害する」ということばが、九条の「阻害する」と十条の「阻害する」ということばが、同じような日本語でありながら、英語は違うことばが使われている。あるいはそのあとの「必要とみとめられる措置」とは何か。あるいは「適当な機関」というのは非常にあいまいではないかという点で、全く同様に疑問を感じたわけでございます。そこで、米側ともいろいろその内容を、一体どういう場合にどういうことをしようとしているのかという点を聞いたわけでございますが、米側が考えておりますのは、まず「軍の行動や重要産業を阻害する」という「阻害」というのは、物理的にそういう活動がじゃまされるということを考えているのであるということで、したがいまして、そういうような軍の活動あるいは産業活動が妨げられるというような場合に「適当な機関」というのは、軍の司令官あるいは高等弁務官、これは同じ人間が違った行政上の立場をとっておるわけでございます。使用者あるいは統治者という別の立場にはございますけれども、その高等弁務官あるいは軍の最高司令官が、同盟罷業の不参加者を基地内に入れ、あるいはそういう人たちを宿泊させるというような必要な措置をとるのだ。そうして軍の機能を確保しようということを考える。あるいはまた、同盟罷業の参加者について配置転換あるいは解雇その他の必要な処分をするというような措置を考えているものであるというふうに米側は言っておるわけであります。しかしながら、反面、そういうふうに非常に表現はおっしゃったようにあいまいでございますので、軍がその現場に出ていって、軍の威力をもって規制するというようなことまでできるのではないか、あるいはそうする意図ではないかというような誤解といいますか、そういう考え方も当然出てくる余地もございます。そこで私どもといたしましては、そういうあいまいなことを、あいまいな表現で重要な事項について表現することはおかしいという考え方に立ちまして、米側に対して、この九条につきましては規定のしかたが不明であり、不明確だという点で、その再検討をしてほしいということを申し入れたわけでございます。
  142. 猪俣浩三

    猪俣委員 そういうアメリカ側の解釈、そういうものは、一体何かちゃんと有形的に文書なり何なり残っているものなのですか。ただ交渉の途中で口頭でそういうことを言うただけなんですか。何かそういうものは議事録か何かでちゃんと残っているものなのですか。
  143. 大塚達一

    ○大塚説明員 それはアメリカ側と日本側の交渉で明らかにしたことでございまして、はっきりここで文書で往復したという性質のものではございません。
  144. 猪俣浩三

    猪俣委員 そうすると、はなはだあいまいなものですね。交渉の過程で向こうが口頭でそういうことを言うただけだということになると、はなはだそれは心細い話である。この九条に関しましては、結局軍に直接雇用されている軍労働者と称せられる者のほかに、民間の労働者も含むということになるようにわれわれは法律解釈はできますが、それは労働省はどう解釈される。
  145. 大塚達一

    ○大塚説明員 この九条の具体的な規定を見ますと、ストライキが発生した場合に適当な措置をとるという言い方をしておるのでございますので、読み方といたしましては、そのストライキをする対象がだれかということは、必ずしもはっきりいたしません。ただ、それによって結果的に阻害される業務が、軍の行動あるいは重要産業、これが物理的、具体的に阻害されるということをいっておるというふうに理解しておりますので、一般的には、そういう今度の総合労働布令の規制対象になっておりますような基地内に店舗を持っておるようなたとえばクリーニングとかパン屋とかいうような、新しく適用対象になった軍労働者以外のものでありますね、通常の概念でいう軍労働者以外のようなものが、当然に入るとは思っておりません。しかし、おっしゃるように、入るような可能性がないとは言い切れないと思います。
  146. 猪俣浩三

    猪俣委員 それに対してはどういう態度をとられたのですか、向こうとの話し合いは。
  147. 大塚達一

    ○大塚説明員 したがいまして、そういうあいまいな規定で基本的な権利をいわば侵害するというか、制約するおそれのあるような条項につきましては、それを明確にすることが必要であるという立場から、規定のしかたが不明確であるということで再検討をするように申し入れたわけでございます。
  148. 猪俣浩三

    猪俣委員 これは外務省になるか、労働省になるか、総理府になるかわかりませんが、政府として十条の問題についてアメリカ側に抗議というか、要求というか、したというのですが、十条のどういうところがわれわれはのめない、不満であるということを、どういう機関を通じてどういうふうに交渉なされたか、具体的に教えていただきたい。
  149. 大塚達一

    ○大塚説明員 十条の規定は、先生お持ちだと思いますが、第一項におきまして「すべての者は軍または重要産業の活動を阻害することを目的として、またはそのような効果を伴うピケット、集会、示威運動を行なうことは明白に禁止されている。」という言い方をまず第一文でいっておるわけであります。したがいまして、このよう規定は、対象といたしまして、単に軍に使用される労働者がその仕事との関係において派生する、あるいはその労使関係の紛争に伴って派生する問題について規制を受けるという姿ではなく、軍に関係のない一般の人がある特定目的あるいは結果を伴う行為をした場合を規制するという規制のしかたになっておるわけでございます。そこで、この布令の性格でございますけれども、布令の第一条の目的で述べておりますように、これはやはり軍の労働者の労使関係について規制するというのが、この布令の目的でもございますし、そういう労使関係——それで名前も総合労働布令という名前を使っておるわけでございます。そのような労使関係法ないしは労働者保護法という名前のもとに、そういう労使関係あるいは労働者保護とは何らの関係もない事項が規制されるということは、その規制すること自体の当否はともかくとして、事柄として筋がおかしいというのが、まず第一の問題でございます。その点につきましては、特に総合労働布令が一月十一日公布になりました後に、この十条をめぐりまして非常に大きな問題、非常に大きな反応が、日本国内にも現地にも起こったわけでございます。そういうことも考慮に入れ、かつこの条項を見ますと、ほかの条項の検討に先立って、この問題については特にアメリカ側に申し入れをする必要があるというふうに考えまして、二月の十三日に、この点につきましてとりあえずまず第一次的に、外務省を通じましてアメリカ大使館に対して、この第十条の規定は通常の労働法の規制の範囲を越えておるので、削除その他再検討をしてほしいということを申し入れたわけでございます。と同時に、その他の条項につきまして、さらに労働法としての検討、労働法的見地からの検討も加えた結果、この三月二十日に一−二月中に各現地ないしは日本の総評あるいは同盟等関係者からの意見が出そろったのも見まして、三月の二十日に再度意見を申し入れた際に、この十条の規定につきまして、この禁止される行為範囲について、要するに第一次的にはまず労働法外の、いわば労働関係以外の問題、先生方がいわゆる治安事項とおっしゃっておるような事項が入ってくることが、まず不適当だということを先に言ったわけでございます。同時に、労働法として見ても、この規定内容が明確でない。したがって、明確にする必要があると同時に、何でもかんでも明確にさえすれば十条のような争議規制が自由でよろしいというわけではないのでありますので、禁止される行為範囲について慎重に考慮する。そうして禁止する場合には、その禁止のしかたを明確にしろということを意見として申し入れたわけでございます。これは外務省よりアメリカ大使館を通じて申し入れたわけでございます。
  150. 猪俣浩三

    猪俣委員 私がさっき申しました、沖縄につきましてはほとんど日本国民の合意というものができ上がっておるくらい、沖縄の復帰を日本国民は熱望しておるわけでありますが、そういう際に突如としてかような、前の布令よりもなお人権問題としても許すことのできないような布令を出そうとしておる。このアメリカの態度に対し、非常に私どもは危惧の念を持つのであります。この十条のごときに至っては、さたの限りである。とにかく百十六号の布令では、その二十六条で軍用地内だけの組合活動というものを禁止されておったんです。場所がちゃんけ限定されていたんだ。今度は、もういかなる場所でも、いかなる人に対しても、いかなる行為に対しても、すべて罰則で処罰する。しかも、千ドル以下の罰金、一年以下の禁錮です。たとえば、これは労働組合のみならず、沖縄の民族主義者がそういう沖縄の本土復帰で大いにデモをやったりなどしても、場合によってはこの十条が発動する。そうして一網打尽にやられる。そうして千ドル以下の罰金をやられる、あるいは一年以下の禁錮を伴科される。まさにこれは恐怖政治ですよ。一九七〇年を前にして、かような弾圧法規を用意して、わが国民の民族運動を阻害する意図を持ったんじゃなかろうか。だから、最初から何の動機だということを、政府筋に私はお尋ねしておるんです。第九条を見ましても、軍労働者のみならず、一般の労働組合——ほとんど沖縄全部が基地化しておるでしょう。しからば、沖縄の軍に関係のない労働者というものは、ほとんどいないくらいだ。それを軍労働者から、民間労働者から、全部ひっくるめて弾圧する。そうして九条では、いつ何どきでも首を切られることが予測されます。そうして有給休暇戦術というものが封鎖されちゃっている。そしていつでも配置転換をさせられる、首を切られる、こういう弾圧的な条項を九条に含んでおる。それが十条に至っては、一般の国民全部。私はこういう布令の性質を考えると、一体何をアメリカは考えているんだ、沖縄住民及び日本国民のこれだけ熾烈なる世論というものをまるっきり顧みない、僣越しごくな態度だと思うのです。日本政府は、もっと強硬なる抗議をすべきだと私は思う。大統領の行政命令の精神にも、かようなことは違反しています。のみならず、世界人権宣言、国際憲章、ILOの八十七号条約、みんな違反しておるじゃないですか。  そこで、私は法務大臣に聞きますが、前に一度、十四、五年前ですか、この沖縄の施政権の問題について、国会で、内閣委員会、外務委員会、法務委員会の連合審査会が開かれた。そのとき重光さんが外務大臣だった。牧野良三さんが法務大臣だった。一体アメリカの施政権といえども、権利の乱用は許されないんじゃないか。一切の権限をアメリカに委任したから、アメリカは沖縄住民を煮て食おうが、焼いて食おうがかってだというわけにはいかない。やっぱり彼らにも権力行使の範囲があるはずだ。それは国連憲章であり、世界人権宣言であり、また国連憲章の信託統治の根本原則、そういうものがやっぱり基準になって、その精神に著しく違反したる施政権を行なったら、これは施政権の乱用だ。これは国際司法裁判所に訴えらるべきものではないか。私は質問をしたのです。われわれは条約によってアメリカに施政権を委譲しましたけれども、乱用を委譲したわけじゃない。著しく、いま言ったように、大統領の行政命令の精神にも違反し、日本国憲法はもちろんのこと、国連憲章に違反し、ILO条約にも違反し、あらゆるこういうものに違反した布令を出すなんということは、一体権利の乱用じゃないかと思うのだ。これは国際裁判所へ訴えるべきものじゃないか、こういう質問をしましたが、外務大臣は、初め何だかわけのわからないことを言っておりましたが、結局はそうだ。それから法務大臣は、はっきりそうだ。これは沖縄人は、日本国籍を有する住民だから、日本の政府は保護権を持っておる。そういう意味からいうても、権利の乱用は許されない。これは司法裁判所へ提訴できる問題だと、法務大臣は答弁いたしました。そこでかような労働布令、私はこれは権利の乱用だと思うのです。こんなものをやめる直前に置きみやげみたいにしてぱっと置いていく。ILO八十七号の労働者の団結権、団体交渉権に関する条約に全く反していますよ、こんなことは。そこで、法務大臣に御見解を聞きたいのだが、法務大臣のお答えの別に、外務省に聞きますが、いま外務省を通じて交渉している、その交渉の経過は、どうなっていますか。
  151. 千葉一夫

    ○千葉説明員 これは、先ほど来いろいろ御説明申し上げましたように、二月十三日に第一回の申し入れをいたしまして、続いて三月二十日に第二回の、一番最近の申し入れをいたしまして、これをもちましてわがほうの意見は全部ここに言い尽くしたわけでございまして、目下先方は検討中でございます。検討の上は、また向こうからこちらに対して連絡等があり、協議をすることとなると思います。ただいままだ検討中という段階でございます。
  152. 猪俣浩三

    猪俣委員 もしアメリカがこの外務省の交渉に応じないで、この布令十条のごときものをどこまでも有効なりとして施行しようとした際に、一体日本政府として国際裁判所に訴える決意がありますか。
  153. 千葉一夫

    ○千葉説明員 政府といたしましては、この点につきまして十分わが国の考え方、わが国民感情、これは現地沖縄の政府及び住民の感情も十分に伝えてございまして、これに関しましてはアメリカ側としても相当に理解をしておるという心証を得ておりますので、さようなことはないと信じております。
  154. 猪俣浩三

    猪俣委員 法務大臣どうですか、私は、施政権といえども権利の乱用は許されないという信念を持っている。無制限に何でもできるという意味じゃないと思う。一定のワクがあるはずだ。そのワクから見てはみ出したと思われる場合においては、権利の乱用なんだとして、ぼくは国際世論に訴える意味において司法裁判所の問題にすべきものだと思う。これはアメリカがどこまでもこちらの言うことを聞かぬ場合を仮定しての問題でありますが、ただ大臣としての決意を聞いておきたい。
  155. 西郷吉之助

    ○西郷国務大臣 猪俣先生のおっしゃるとおり、やはり施政権はございましても、乱用は厳に慎むべきものと考えますし、なお、この労働布令につきましては、いろいろな点に誤解やその他もございますので、いま外務省を通じまして鋭意先方、米国に対して理解を求めておりますので、おそらくわが方の考え方を理解するものと考えておりますけれども、なお、その結果が出ました暁においては、基本的人権その他の見地から、私どもも見守ってまいりたいと考えております。
  156. 猪俣浩三

    猪俣委員 なお、この総合労働布令のような問題は、日米琉諮問委員会の議題になっておるのか、ならぬのか。そうじゃなしに、交渉なさっているようにいま思えるのだが、この日米琉諮問委員会のこれは議題になるべきものじゃないか、それについての御見解を承りたい。
  157. 加藤泰守

    ○加藤(泰)政府委員 日米琉諮問委員会は、本土と沖縄の一体化の施策を遂行するために設けられたものであります。ただ、その所管事項といたしましては、社会的、経済的事項及びそれに関連する事項ということになっております。そういう観点から見た場合に、労働布令というものがどういう性格のものかということでございますが、一面社会的な問題であるようにも考えられる面はもちろんあると思います。ただ、労働布令の問題につきます限りにおきましては、先ほど外務省からも御答弁ございましたように、日米の間で、政府の間で取り上げるのが適当であるというふうな観点から取り上げたものでございます。そういうことから申しますれば、アメリカのほうもワシントンでいろいろ検討されているようでございます。そういう点から考えますと、諮問委員会で取り上げるというよりも、やはりいまの外交ルートでずっと進めていくほうがベターじゃないかというふうに、現在考えております。
  158. 猪俣浩三

    猪俣委員 この日米琉諮問委員会というものがもっと強力であるならば、ぼくはやはりそこへ持ち出されたほうがいいと思う。そこには議事録もありましょうし、相当公になると思うのだが、外務省とアメリカの当局だけで折衝しているのは、先ほども聞いたのだけれども、法律の解釈についても、口頭でただやりとりしているだけの話です。私ども弁護士なもんだから、すぐ証拠ということを考えるのですが、口で言ったことは何も証拠にならないのです。証人として呼んだって、いや、そんなことは言った覚えがないと言えば、それっきりになってしまう。そうすると、いまあなた方外交交渉になっているのは、文書で何か議事録みたいなものができているのですか。
  159. 千葉一夫

    ○千葉説明員 これはいわゆる広い意味での外交交渉には御指摘のとおり入りますのですが、いろいろ形態もございますこと御承知のとおりでありまして、これは一応まだ何といいましょうか、私のほうの主張を文書で渡しまして、先方の回答等はこれからあるものと期待いたしておる次第であります。したがいまして、まだ途中であるというようなことでありまして、口頭等でやっておる段階でごいいます。
  160. 猪俣浩三

    猪俣委員 これはもうこの原文を見ますと「施行日は一九六九年一月二十五日とする。」なんて書いてあるんだが、これが非常に延びてきている。四月になってもまだらちがあいていない。いつこれが妥結するのか。これが向こうから返事があるまでは、どうなんです、いまの百十六号布令が現行法として適用になっているのか、どういうものなんですか。
  161. 大塚達一

    ○大塚説明員 いまの先生御指摘の一月二十五日から施行するという部分は、一月二十三日に施行延期いたしました際に布令を一部改正いたしておりまして、ここのところは直っておるわけでございます。無期延期の形で施行日が消えているわけでございます。そこで、いずれ米側が実際に施行したいときには、その部分に日にちを入れるというような公布の作業をすると思います。したがいまして、現在のところは、未施行でございますので、布令百十六号が生きている、おっしゃるとおりでございます。
  162. 猪俣浩三

    猪俣委員 そこで、私はこの労働布令についての質問はこれでやめますが、法務大臣がせっかくお見えになっておりますので、これは私質問要項に申し上げておらなかったから即答なさらぬでいい、あとでお調べになっておいていただけばいいと思うのですが、これは話は変わりますけれども、三、四年前に例の松川事件の判決が出ました。有名な門田判決というものが出ました。宮城の高等裁判所の判決。その中に、検事で調書を偽造した者がある。警察官で法廷で偽証した者がある。判決の中に書いてあるのですよ。私はその判決を読みまして、いやしくも高等裁判所の判決の中に書いてある驚くべきことであると思うが、この偽造した検事、偽証したという警察官に対して、一体どういう取り締まりをやっているのかという質問をいたしましたら、時の法務大臣及び刑事局長は、この事件はいま上告中であって、われわれは門田判決に服していないのだ、だから上告判決を見てしかるべく考えます、こういう答弁だった。じょうずに逃げたわけです。ところが、御存じのように、この上告は棄却されて、松川事件全員無罪の判決が確定したわけです。そこで、この問題が追及されなければならぬときに、私は落選してしまった。それでそれを法務委員会のだれかに継承すればよかったけれども、そのままになってしまったのです。私どもどうも質問しっぱなしの傾向がありまして、ちょっとお互いよくないことだと思う。また、政府委員答弁しっぱなしでそれきりという国会の実情は、これはどうも議員も悪いし、政府委員も悪い。そのときだけ切り抜ければ、あと知らぬ顔しておる。こっちもまたそのときだけ言って、体をかわされると、あとそれを追及しない。これじゃほんとうの国政調査にならぬと思うのです。そこで一体、これはいま判決確定していますものですから、どういうふうに処分されたのであるか。はなはだおくれてしまったのですけれども、西郷大臣の手元でひとつ調べていただきたい。警察官の偽証問題というのは、前にもたびたび出たのです。それから検事の調書偽造というようなことが、よくいわれる。例の平沢貞通の帝銀事件でも、平沢及び弁護人は検事が調書を偽造したと主張しておりますが、なかなかこれは立証困難なんですが、いまのは高等裁判所の判決の中に指摘されているのですから、事は重大だと思うのです。これをうやむやにするというようなことは、私は許すことができないと思うのです。これは突然の質問でございますから、御調査の上、しかるべき機会に御答弁をいただきたい。私は、これで質問を終わります。
  163. 中谷鉄也

    中谷委員 ちょっと関連で、私一点だけ外務省にお尋ねをしておきたいと思います。布令百十六号につきましては、すでにいまから二年ぐらい前から国会においても論議をいたしまして、労働省の見解は、布令百十六号については問題点がある、こういう点についての確認と申しますか、御見解を承っております。そこで外務省に私お尋ねいたしたいと思うのだけれども、外務省は布令百十六号がどのような問題点を含んでおるという認識に当時立っておったか。この点いかがでしょうか、まず簡単にお答えいただきたい。
  164. 千葉一夫

    ○千葉説明員 ただいま先生より御質問のありました二年ほど前の百六十号につきましての問題になりました経緯につきましては、まことに申しわけございませんが、ちょっとつまびらかにいたしませんので、差し控えさせていただきたいと思います。
  165. 中谷鉄也

    中谷委員 これは外務大臣に対する質問も出ているのですよ、布令百十六号について。じゃ私のほうから言いますが、要するに労働基本権というのは、団結権であり、団体交渉権であり、団体行動権なんだ。そうして特に問題にしたのは、タ・ハ法との関係において問題点を指摘をいたしました。重要産業指定方式についての問題点があるというようなことも言った。第二種被雇用者等の問題点についても指摘をした。そこで、私が関連質問ですから簡単にお尋ねをいたしたいのは、布令百十六号というのは、結局労働法の世界的な水準には達していないのだ、きわめて反動的な労働法なんだという指摘が国会においてなされた。ことに刑事罰をもって処断をするところの条文があるというようなことは、もってのほかだという指摘もあった。そこで私がお尋ねをいたしたいのは、布令百十六号の改善問題について、この布令六十三号が突如として公布せられるまでの間、外務省としては布令百十六号の改正、改善について、日米間においてどのような交渉をお持ちになったのか、この点をひとつお答えをいただきたい。国会において問題があるということが指摘された。その点について、どういう交渉の経過があったかをお答えいただきたい。
  166. 千葉一夫

    ○千葉説明員 先ほど申し上げましたように、二年前の国会におきましてのこの件につきまして、たいへん申しわけありませんが私知りませんで、いま先生に教えていただいたわけでございますが、実はただいま私のほうも思い出したのでございますが、実はこの百十六号が問題点があるということは、アメリカ側もいろいろ日本側からの指摘もございまして、承知をしておったわけでございますので、いろいろ改定作業はやっておったわけでございます。これは先ほど猪俣先生にもお答え申し上げたとおりでごいいますが、この改定作業の内容は、何ぶん向こうの内部でやっておりまして、はっきりわれわれに対してそれをいってくれるまできてなかったものでございますので、実はその結果を待っておったわけでございます。われわれのほうからは、常々総合労働布令、そういうことばの新しいものが出るということは聞いておりましたので、その内容等については早きに及んで説明してくれろということを言っておったわけでございます。そういうようなことでございます。
  167. 中谷鉄也

    中谷委員 午後本会議終了後、沖縄問題等特別委員会が開かれますので、私はそこで外務大臣に対してお尋ねをしてもいいと思うのです。そこで、あなたにまず経過だけをお聞きしておきますが、先ほど答弁ちょっと重大だと思うのですよ。まず、一点お尋ねをいたしたいけれども、布令百十六号について、いつ、どのような改善を求めたか。指摘をしたとおっしゃるのですね。あなたのほうで布令百十六号で指摘したというのでしょう。先ほどその点を答弁になりましたね。その点は日米協議委員会指摘しなさいよということをわれわれは指摘をした。指摘をしたというなら、いつ指摘をしたということを、資料を午後までにそろえてください。それが一点。  それから私がなぜこんなふうな関連質問をするかというと、あなたは先ほどとんでもない答弁をされたと思うのですよ。秋ごろに布令六十三号の成案ができておったのですと言った。そんなことをいつあなたのほうでは認識をしたのですか。その点が第二点。  それから第三点の質問は、布令を主席のところに持ってくるのに、いわゆる原文のまま、要するにとにかく英文のままで持ってきたという持っていき方が、いまだかってございましたか。この点が現地の沖縄県民を激怒さしたのでしょう。そういうようなあり方について、あなた自身が、こういうふうな布令の公布には政治的な意図がない——私はこの前衆議院の沖縄問題の特別委員会派遣委員として沖縄に行って、民政官にも会ってこの点を指摘してきた。アメリカは政治的な意図があったといえば、たいへんなことですよ。日本政府がこういうふうな悪法の布令について、外務省は、政治的な意図がなかったというのですが、食い逃げのようなかっこうで英文のものを突きつけて、そしてとにかく見送りもないようなかっこうでアメリカのほうへ飛び立っていった。こういう布令を出したからこそ、見送りもしなかったのですよ。それについて政治的な意図がなかったなんということは、外務省としては、それは事務的な作業経過の中で政治的な意図がなかったということを、あなた自身、外務省としてそういうことをおっしゃるのですか。アメリカが政治的な意図がなかったということを言っております。しかし、日本の外務省が、こんな改善を求めておるものについて改悪したものをとにかくおっかぶせるようなものを出してきたことについて、政治的な意図がなかった、一月の何日かにこういうふうに突然に持ってきたということについては政治的な意図がなかったということは、先ほどのあなたのその答弁が、どう考えても私は納得ができない。これは外務省全体としての御見解なんですか。ひとつその点をお答えいただきたい。
  168. 千葉一夫

    ○千葉説明員 ただいまの御質問は三点にわたっておられますので、逐一お答えさせていただきます。  まず、百十六号につきましていろいろな問題点を指摘したと私が申し上げたというふうに先生ただいまおっしゃいましたが、もしそう申し上げたといたしましたら、私の舌足らずの点でありまして、おわび申し上げます。私が申し上げたかった意図は、別に、こういう点がある、こういう点があると政府が正式に申し述べたとの意味ではございませんで、いろいろと現地あたりでそういう問題点が明らかになってくる、非公式にたとえば話し合ったりしておるときに、こんな点があるじゃないかということが重なったのだ、実はそういう意味でございましたので、お答えを訂正させていただきたいと思います。  次に、第二点の総合労働布令が秋ごろに大体の案ができて、それが向こうのワシントンで審議され出したという点につきましては、これは当時実はよくわかっておりませんでしたので、何ぶん向こうの内部のことでございまして、こちらに一々通報してくれなかったわけでございますが、これは結局当時から何となしにそういう気配がいろいろありましたのですが、はっきりしたことは、結局アメリカの民政府の労働局長をしておりますフェーラーという者が、こちらへ最後の案を持ってまいりましたときに、初めてはっきり知ったわけでございます。(中谷委員「それはいつですか」と呼ぶ)それはことしの公布する直前にいきなり来てやったわけでございます。  最後の第三の点でございますが、アメリカに政治的意図がなかったと彼は申しておりましたのは、まさに先生御指摘のとおりでございまして、われわれといたしましても、もとよりアメリカの真の意図をはっきり確認することは不可能でございますが、私どもがいろいろ得た印象では、彼らといたしましては、政治的意図を持って、何といいましょうか、非常に画期的に労働面を通じまして施政の強化をするとか、そういったような非常に大きな意図ではなくて、むしろたいへん考えが足りなかったというふうに考えておるわけでございます。たとえば、御指摘の主席にいきなり英語だけで持っていきまして、われわれも聞いて実はたいへん驚いた次第でございます。そういったような考えの足りないやり方では困るんだということを、先ほど来いろいろ御答弁申し上げておりますような総合労働布令の内容につきまして向こうに申し入れたときに、またあわせて、そういうふうなやり方は困るじゃないかということでいろいろ申したわけでございます。
  169. 中谷鉄也

    中谷委員 関連質問ですから私は一点だけにしておきますが、はっきり申し上げて、あなたはあんまり労働布令については御存じないですね。労働布令改定の気配があったなんて、おかしいんですよ。百十六号について問題が出て、高等弁務官が正式にこの労働布令については改定をするということを発表した、そして検討に入ったんだということは、気配じゃないんですよ。だからこそ、われわれは、その労働布令はどういう点が改定さるべきか。そういう点で、労働基本権三権については重大な制約があるということなんですよ。だから、当然日米協議委員会の議題にしなさい、こういうふうにわれわれは指摘をしたわけです。その点について、あなたは気配があったというふうなことは、まずそもそも御答弁としてはおかしい。あなたは御担当じゃないかもしれませんから、私はこれ以上聞きませんが、その点が一つ。  それからいま一つは、そうするとあなたは、非公式に話はあったけれども、百十六号についてあれだけ現地で問題になった。それから布令百十六号を中に置いて軍労働者がストライキを打った。さらに二・四ゼネストを控えておった。こういう状態でこの六十三号が施行されておるわけです。そういうふうなことはともかくとして、あなたは気配があったという言い方は、これは従来の経過からいうと、全くおかしいですよ。改定しますととにかく弁務官が言って、作業に入ったということはわかっておる、改定内容はどうなるかわからぬが。それが一点。  いま一つは、そういう状態であるにかかわらず、日本の外務省は、布令百十六号について、公式の記録をもって、公式の場所で、こういう点が問題点として改定さるべきだということをアメリカ側に指摘したということを答弁できないという事実であるのかどうか。非公式で話をしたなんということは、これは私はおかしいと思うし、いけないと思うのです。  もう一度お伺いする。私は午後の質問関係においてもう一度確認をしておくが、公式にアメリカに対して布令百十六号の問題を指摘した事実があるかどうか。それはいつなのか。即答できないでしょうから、公式にいつということは、あとで資料としていただきたい。
  170. 千葉一夫

    ○千葉説明員 お答え申し上げます。まず、気配云々につきましては、私の言い方がたいへん悪かったのでおわびしますけれども、これは、私が申し上げたかったのは、向こうが沖縄現地で草案をつくりまして、アメリカの国防省その他の本国政府に持ち込んだ気配があったという、そういう意味で申し上げたのでございまして、もちろん、先生御指摘のとおり、私どものほうで、改定作業が行なわれておることは知っておった。私の舌足らずであったのをおわび申し上げます。  次に、百十六号につきまして、公式に先方に日本の政府が申し入れたかどうかという点でございますが、これにつきましては、後刻調べましてお答えをさせていただきたいと存じます。
  171. 中谷鉄也

    中谷委員 では、あなた自身もう少し——正確じゃないと私は思うのですよ。突然出席を求められたので気の毒な面もありますけれども、本国政府で検討しておったというけれども、本国政府の一体どこなんですか。そういうようなことについて、おなたはわかっていますか。要するに、本国政府、本国政府といいますけれども、本国政府の一体どこでこの問題については検討しておったのか。たとえば太平洋地区米陸軍司令部規程なんというものも問題になったのですよ、布令百十六号のときに。こういう問題もあったのですから、一体どこでこれを検討しておったのかということにつきまして、外務省は注目し、関心を持っておったのか。どこがやったのか、一ぺんお答えになってください。
  172. 千葉一夫

    ○千葉説明員 実は向こうの行政機構で沖縄を担当しております部局はいろいろ複雑でございますので、具体的にこれは本国政府のどこをどう回ったのか、そこまで精密に知っておりませんが、まず窓口は陸軍省であります。陸軍省が沖縄の民政の方面を担当いたしております役所でございますので、そこが窓口でございまして、また那覇へ訓令が戻ります。そこから戻るわけでございます。次に、軍の労働に関することでございますので、軍の省は三つございまして、御承知の陸海空軍の三省でございます。そのほかに統合参謀本部がございまして、これは総合的な軍事的な立場からこの問題を検討するわけであると聞いております。さらには、国防省の中に、国際安全保障局と申しまして、こういう国際的な関係のある、国際的側面を持ちます問題を検討いたしておるところがあるわけでごいいます。これが大体いわゆるペンタゴンの中でございまして、このほかには、もちろん、労働問題でございますので、労働省が関与しております。最後に、これは外交問題等にも関連してきますので、国務省も関与しております。かくのごとく、たいへん複雑な行政機構の中で、いろいろあるようでございますが、もとは陸軍省でございます。
  173. 中谷鉄也

    中谷委員 終わります。
  174. 進藤一馬

    進藤委員長代理 次回は、来たる十八日、午前十時より理事会、理事会散会後委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。    午後零時四十七分散会