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1969-03-14 第61回国会 衆議院 法務委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十四年三月十四日(金曜日)     午前十時四十七分開議  出席委員    委員長 高橋 英吉君    理事 大村 襄治君 理事 進藤 一馬君    理事 田中伊三次君 理事 永田 亮一君    理事 濱野 清吾君 理事 猪俣 浩三君    理事 神近 市子君       大竹 太郎君    渡海元三郎君       中谷 鉄也君    楢崎弥之助君       畑   和君    岡沢 完治君       山田 太郎君    松本 善明君  出席国務大臣         法 務 大 臣 西郷吉之助君         国 務 大 臣         (国家公安委員         会委員長)   荒木萬壽夫君  出席政府委員         内閣法制局第一         部長      真田 秀夫君         警察庁長官官房         長       浅沼清太郎君         警察庁警備局長 川島 広守君         防衛庁人事教育         局長      麻生  茂君         法務政務次官  小澤 太郎君         法務大臣官房長 辻 辰三郎君         法務省民事局長 新谷 正夫君         法務省刑事局長 川井 英良君         法務省矯正局長 勝尾 鐐三君         法務省人権擁護         局長      上田 明信君         公安調査庁長官 吉橋 敏雄君  委員外出席者         法務省刑事局公         安課長     豊島英次郎君         最高裁判所事務         総局家庭局第一         課長      松井  薫君         専  門  員 福山 忠義君     ————————————— 三月十四日  委員菅太郎君、柳田秀一君、横山利秋君及び西  村榮一辞任につき、その補欠として松野幸泰  君、中谷鉄也君、楢崎弥之助君及び岡沢完治君  が議長指名委員に選任された。 同日  委員中谷鉄也君、楢崎弥之助君及び岡沢完治君  辞任につき、その補欠として柳田秀一君、横山  利秋君及び西村榮一君が議長指名委員に選  任された。     ————————————— 三月十三日  訴訟費用臨時措置法の一部を改正する法律案(  内閣提出第七三号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  訴訟費用臨時措置法の一部を改正する法律案(  内閣提出第七三号)  裁判所司法行政に関する件  法務行政に関する件  検察行政に関する件  人権擁護に関する件      ————◇—————
  2. 高橋英吉

    高橋委員長 これより会議を開きます。  裁判所司法行政に関する件、法務行政に関する件、検察行政に関する件及び人権擁護に関する件について、調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。中谷鉄也君。
  3. 中谷鉄也

    中谷委員 公安委員長お尋ねをいたします。私のいただいている時間が十分少々ですので、二点だけお尋ねをいたしたいと思います。  一つは、学園紛争に関してですが、いわゆる高校生学園紛争——学園紛争高校生にまで及んできているという実態を非常に憂慮をいたします。このことについて、公安委員長としてどのようにお考えになり、どのような対策をお持ちになっておられるか。  なお、この問題は公安委員長の御管轄ではございませんけれども、御見解を一応承っておきたいと思います。いわゆる大学紛争に関連をいたしまして、法務省の一部などでは少年法を改正すべきなどという意見があるようでありますけれども、私はそのような意見はとりませんが、この点についての公安委員長の御見解はいかがでしょうか。これがまず第一の質問であります。
  4. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 少年法改正課題につきましては、全然私知識がありませんし、御指摘のような話題があることも、承知いたしておりません。  そこで、暴力を伴います大学紛争が新聞をにぎわしておる状態は、私もあなたと同様、国民の一人として憂慮いたしております。それが高校にまで最近及んでまいりまして、たとえば今度の卒業式をめぐりましても、異常な状態あるいは不法状態を伴いました混乱した高校が全国で五十六校に及んでおると聞かされておるくらいに、だんだんと年々エスカレートしつつあるような状態を、御同様憂慮するものであります。これに対しまして、警察当局といたしましても、一応の対策とあらたまって申し上げるほどのことはないと思いますけれども、何としましても未成年者でございます。そういうことからいたしまして、それぞれ現地警察当局とそれぞれの教育委員会、場合によりましては学校の校長さんあたりともなるべく緊密な連絡をとりながら、不法事案未然に防止できるような相談もいたしておるわけでございます。それでもなおかつ、先ほど申し上げたような状態にありますことは残念しごくでありますが、未成年者ではございましても、暴力がまかり通ることを許すわけにまいらぬ。一般論としては、おとなと同様のことと存じます。ただ、その刑罰法令等に関連します関係においては、詳しくは存じませんけれども、裁判の関係等もおのずから別途の措置は講ぜられるはずではありますが、いやしくも教育の場が、高等学校といえども、政治的にも厳正中立の場として維持せられねばならないと同時に、特に暴力ざた等が行なわれますことは、何としても、できれば未然に防止し、不幸にしてそういう事案が起こりましたならば、なるべくすみやかにこれを制止し、排除する。また、場合によりましては、犯人と目される者に対しましては、学校当局の協力を得ながらこれを補導するという感覚のもとに対処せねばならないということで、いま申し上げましたように、教育当局とも積極的に常時連絡をしながら対処しておるということをお答えさしていただきます。
  5. 中谷鉄也

    中谷委員 第二の質問は、次のような質問です。  これは、予算委員会でも同僚議員のほうからお尋ねをいたしましたが、こういうふうなことをおそれます。それは、警察には従来、ある人によると二つの顔がある。一つ警備警察といわれる顔であり、一つはほんとうに汗みどろになって働いている、市民人権を守るために、殺人とか強盗をあげておるいわゆる一般刑事、こういう顔があるという。公安委員長二つの顔があるということには御不満でしょうが、そういう見解といいますか、説があります。そこで、われわれのおそれるのは、機動隊の増設、警備警察の強化などという中で、一体いわゆる市民を保護する刑事警察の面がおろそかになるというおそれはないのかどうか、この点についてひとつお答えをいただきたいと思いますが、公安委員長、現在、殺人強盗重要事件等について、未検挙になっておる事件の数というのは、どの程度あるか、これは御存じでございましょうか。そうしてそういうふうな傾向は増加しておる傾向にあるというふうに言う人もおりますが、この点いかがでしょうか、これが一点。  第二点は、いわゆる三億円の強奪事件と、いわゆる一〇八号事件といわれている、この二つ事件、この事件について、私自身も第一線の警察官諸君汗みどろの努力をしているということは、率直に認めたいと思うのです。刑事警察とは本来そのようなものだと思うのです。ところが、これは公安委員長の口から、捜査の秘密にわたらない範囲において検挙の見通し、こういう積み重ね方式でやっておるのだから間違いなしにめどはいつまでにつくということの御答弁がないと、国民は安心しないと思う。日大の秋田共闘会議議長を逮捕したということについて、同僚議員のほうから盛んに何か質問があったことがありますけれども、何といってもやはり三億円強奪事件犯人と一〇八号の犯人というものをつかまえてもらわなければいかぬ、この点についての、熱心にやっておるという御答弁じゃなしに、いつまでに少なくともこれは逮捕できるというふうな御答弁をいただけるかどうか。この点について、いかがでございましょうか。
  6. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 警察の使命を大分けすれば二つの顔があるとおっしゃったことは、概念的には私も理解しておるつもりでございます。理屈を申せば同じだといえましょうけれども、現実問題を中心に、そういう気持ちはむろんあります。そこで、警備警察重点が移ったんじゃないかという御質問は再々ございまして、そのつどお答え申し上げておりますが、本来、言わずもがなのことでございますけれども、警察職責というのは何も警備警察だけでないことは、いま御指摘のとおりであります。しかし、そこに集団暴力というものがございますれば、それに対応するだけの、国民に対する責任課題としまして、準備態勢を整えるということは、これは当然の職責だと存ずるわけでございまして、ことさら警備警察に既存の勢力をさいて、そのほうへ持っていって、いま御指摘のような刑事警察面等を初めとする、国民日常生活に直結したような課題をおろそかにしてでもそっちのほうへいくという重点の移し方はしていないつもりでございます。ただ、実際問題としますと、特に東京を中心に、万々御承知のように、機動隊出動しなければどうにもならないという集団暴力事案が続発いたしまして、たとえば東大の一月十八日の課題にいたしましても、本来の機動隊と通称される集団訓練を受けました警察官の数が足りませんために、一部外勤警察官等を動員しまして、数をそろえてこれに対処した。その反面、御指摘のような手薄になった部分があろうかとは思います。しかし、その対象が必要とする限りにおいての増員も認めていただいて、そういうお留守にならないような手配をすることは、ことさら警備警察重点を置くという課題でなしに、そういう課題があるから、やむを得ず、要らぬことまで申し上げましたけれども、そういう考え方に立って対処すべきである、かように考えておるわけであります。  御指摘具体的犯罪事件捜査状況見込み等は、政府委員からお答え申し上げさせていただきますが、基本的には、初めのお尋ねに対しましては、いま申し上げたように理解をいたしております。あと、具体性ある問題は、政府委員から答弁させていただきます。
  7. 中谷鉄也

    中谷委員 実は、割り当ての時間があとございませんので、政府委員の御答弁のほうはあとでしてください。  あと一点だけ質問をいたします。先輩の楢崎委員のほうからかつて論議された問題でありますけれども、自衛隊法八十一条の治安出動の問題でございます。この治安出動の問題について、今度の国会におきましても、防衛庁においてはいわゆる指揮官心得というふうなものを現在検討しているんだというところまで答弁が出ておりますね。そこで、八十一条は、言うまでもなしに、「都道府県知事は、治安維持上重大な事態につきやむを得ない必要があると認める場合には、当該都道府県都道府県公安委員会協議の上、内閣総理大臣に対し、部隊等出動を要請する」とあります。したがいまして、この場合の協議内容、どんな場合に都道府県公安委員治安維持上重大な事態につきやむを得ない必要があると認めるというふうな判断基準、そのような問題については、国家公安委員会として当然検討しておられるだろうと思われるのです。その点について、八十一条の法律問題として、また具体的な検討問題として、ひとつお答えをいただきたい。八十一条に書いてある「治安維持上重大な事態につきやむを得ない必要」とあるのは、具体的にどのような場合をさすのか。どのような場合を想定し、またそのような判断基準について協議の場合、どのような点に配慮するよう都道府県公安委員会に対し指示、指導しているのか、これらの問題をひとつお答えをいただくと同時に、いわゆる指揮官心得等というのは、これは自衛隊において作成検討中であるということだけれども、いわゆる治安出動したところの自衛隊警察との関係について、防衛庁国家公安委員会との間にどのような協議を今日までされているのか。いわゆる指揮官心得なるものが作成検討されているということであるけれども、その作成について国家公安委員会は全くタッチをしない、あるいは自衛隊出動について、警察との関係においては、自衛隊独自の判断にまかしておるのか、それともこの問題については十分な検討協議をしているのか、質問はこの二点であります。ひとつこの点についてお答えいただきたいと思います。
  8. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 さっきの御質問全部政府委員にまかせましたが、具体的には存じませんけれども、少なくとも心がまえとしては、凶悪犯罪、たとえばピストル事件と通称される課題あるいは三億円事件が代表的でございますが、いまだに検挙できないでおりますことは、国民に対して申しわけなく思っております。しかし、御指摘のとおり、担当の刑事警察官は、昼夜を分かたず、全国的な手配までもしながら努力しておりますということだけをお答えさせていただきます。  治安出動の場合の防衛庁における指揮官心得内容も存じませんが、当然必要なこととして検討しておると思うだけでございますけれども、現地都道府県知事の要請によって自衛隊治安出動するという場合につきましての国家公安委員会ないしは地方の公安委員会の立場におきまして、おっしゃることについての具体的な打ち合わせの結果に基づく基準等それはございません。当然に間近に予想されなかったせいと思いますが、今日までないと承知いたしております。さらに、今度は防衛庁国家公安委員会ないしは警察庁との関係につきましては、そう突き詰めたものではないようですけれども、ある程度連絡をしながら、心がまえぐらいのものはあるやに承知いたしております。もっと具体的に何かがあるか、私は確かめないまま申し上げておりますが、小耳にはさんだ程度で申しわけありませんけれども、中央としましては、一応の連絡はしつつある。しかし、それは指揮官心得なんという具体的な課題でなく、治安出動をします場合は、指揮系統が別になりますし、警察の手に負えないときのことだろうと存じます。ただし、その接触面、切りかえのことに関連しましては、いままで何がしかの話し合い等は行なわれておる、こう承知いたしております。
  9. 中谷鉄也

    中谷委員 質問を終わりますが、では川島さんに一点だけ。その防衛庁警察庁あるいは国家公安委員会との話し合いというのは、いわゆる文書になっておるわけですね。だとすると、その文書の名前と、いっそういうものができたか、今後継続して協議されるか、それだけお答えください。それで質問を終わります。
  10. 川島広守

    川島(広)政府委員 ただいまのお尋ねでございますが、この問題につきましては、昭和二十九年の九月三十日に、当時の防衛庁長官国家公安委員長の間で、治安出動の際における治安維持に関する協定というのがございます。これは御案内のとおりに、治安維持力が不足しておる状況によって、具体的にそのときに協議する、こういうことに相なっておる次第でございます。
  11. 中谷鉄也

    中谷委員 それでは質問を保留して、一応終わります。
  12. 高橋英吉

  13. 猪俣浩三

    猪俣委員 荒木公安委員長お尋ねいたします。今度の東大事件その他の大学紛争事件につきまして、いわゆる警視庁の機動隊なるものが出動しているのでありますが、この攻撃武器と申しますか、機動隊が使っておりまする武器ですね、武器と申していいかどうかわからぬが、どういうものを使っておりますか。
  14. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 催涙ガスを使っておりまして、警棒、警杖等は使わない。むしろ防御一方とも申すべきたてを使いながら、ことさら警棒は持ちにくいゆえもあるそうですけれども、むしろ警棒等はかえって傷害を与えるおそれがあるということで使っていない。主として催涙ガスによって抵抗を弱めながら制圧するというやり方でやっておると承知いたしております。
  15. 猪俣浩三

    猪俣委員 その催涙ガスですが、何かこれはガス砲といわれている鉄砲のようなもので撃つようになっておるようですが、こういうものの使用について何か細則があるのですか、ないのですか。
  16. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 一応の内規がございます。政府委員からお答え申し上げます。
  17. 川島広守

    川島(広)政府委員 ただいまお尋ねガス発射銑でございますけれども、これは紙製ガス筒発射する器具でございます。したがいまして、この使用につきましては、一応内部的に取り扱いの規定をつくってございます。内容を簡単に御披露申し上げますと、このガス銃使用いたします場合には、射角は三十度以上というふうに規定してございまして、しかもさらに、ガスの性能上一般の第三者にもいろいろ御迷惑のかかる向きもございますので、その使用のつどに、風向きでございますとか、場所環境等も十分に考慮をして使用しなければならないとか、あるいはまた至近距離において使ってはならないとか、あるいは水平撃ちをしてはならないとか、こういうようなことは、規定内容としてつくってあるわけでございます。
  18. 猪俣浩三

    猪俣委員 至近距離というのは、どのくらいの距離なんですか。
  19. 川島広守

    川島(広)政府委員 このガス銃は、中にらせんのない滑腔銃でございまして、つるつるで、中は全然らせんがございません。したがって、三十度で発射いたしました場合にはおおむね七、八十メートル程度到達距離がございますけれども、三十メートルを過ぎますと、急速に速度が落ちて回転して飛ぶわけでございます。それでございますから、三十度で向けてまいりますと、大体七、八十メートルぐらいの到達距離があるわけでございます。そこで、ガス銃を使いました場合には、そのつどそのつどどこに落ちたかということを確認した上で次にまた使っていく、こういうような使用の順序にいたしておるわけであります。
  20. 猪俣浩三

    猪俣委員 それから、何か放水したというのですが、これはただ単なる水なのか、何か薬でもまぜているのか。これは大臣に聞くのだ。
  21. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 単なる水でございます。
  22. 猪俣浩三

    猪俣委員 そういう答弁は、はなはだ不満足ですよ。あなた、これをごらんになったですか。「アサヒグラフ」の三月七日号、こういう写真が出ているじゃないですか。
  23. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 これは見ておりません。
  24. 猪俣浩三

    猪俣委員 これが単なる水でできますか。そんな答弁をしてはいかぬ。それは現実じゃないですか。
  25. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 放水車で飛ばします水は、単なる水でございます。
  26. 猪俣浩三

    猪俣委員 では、それは何だ、どうしてそうなったか。単なる水でどうしてそう腐乱するのですか。
  27. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 ガス発射しますときに、ガス銃発射します場合と——ガスといわれるのは粉であって、水には溶けないそうであります。それを水にまぜてガス液として発射するということがございまして、こういうふうな写真が出てきていることがあると思いますが、同時に、粉だけでありましても、水にぬれたり何かいたしますと、動く拍子にこすったり何かすれば、気泡というか、水ぶくれができたりするケースがあったようであります。そういうことでございまして、お尋ね放水車放水をしますものは単純な水、ガス銃のかわりに水と一緒発射しましたもので主としてこういう症状が起こり得ることがあるというふうに承知いたしております。
  28. 猪俣浩三

    猪俣委員 だから、私はそれを聞いている。単なる水であるか、そうじゃないものを放水したのか、聞いておるのだ。あなたは単なる水だと言うから、それはどうしたのかということになる。その水にガスがまじったのですか。そういう妙な、あいまいな答弁じゃ困るな。だから、防御用でもいいが、どういうものを使って鎮圧したのか、聞いたのだ。そうしたら、警棒は使わぬ、ただ催涙弾だ、こう言う。そうすると、どうしてこういう写真に写ったような惨たんたる熱傷が起こるのか。あなた時間がないから私はその記事を読みませんが、患者の説明を聞くと、最初ぬれて、それからだんだんだんだん腐乱してくるのだ。一体そういうものを使ってやっていいかどうか。あなた、その写真を見てどういう感想を受けますか。
  29. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 先ほど来私がお答え申し上げておることは、ことさらにはぐらかして申し上げておるのじゃございません。放水車放水する水は何だというお尋ねでございますから、それは単なる水でございます、ガスガス銃発射します場合と水液にまぜて発射します場合とございますから、水にまじったガス発射は別個のものと思って、私がお答えしたことによる御指摘だと思います。粉でガス発射いたしましても、先刻も触れましたように、単純な水を放水したことによって、水とガスの粉が一緒にまざったのと同じ状態になることがあり得る。それが時間が相当たちまして、その間に盛んに行動しているわけでございますから、ついそれをこすったり何かするということが起こりまして、いま御指摘のようなことがあるということに承知いたしております。
  30. 猪俣浩三

    猪俣委員 そこに医者意見も出ておる。そんなあなた、答弁——時間がないから私これから追及しませんが、はなはだ不誠意な答弁だと思う。そんなものじゃないじゃないですか。三分の一以上の皮膚がそういう状態になれば、生命にかかわると医者は言っている。そういう非常な負傷をしているのじゃないですか。だから、それは放水という中に、水のものもあるだろうが、そういう水の中にはガスがまじっているようなものもやっているのじゃないですか。それはあなた、こっちが突っ込まぬなら、答弁しないのだ。  それからいま一つ、いま至近距離で撃つちゃならぬと言っておるが、これは「アサヒカメラ」、実写だ。これは撃っている。場所はわかっておる。この間二十メートルだ。こういうたまが飛んできているじゃないですか。そういうことをやっている。至近距離で撃っているですよ。しかも顔をねらえ、顔をねらえと指揮官が指揮している録音まである。どうしてそういう至近距離で撃ったか、大臣その写真を見て答弁してください。それは、場所は高さの同じ場所なんだ。高さの同じ場所のところに、二十メートルの近距離ねらい撃ちゃっているじゃないですか。それが実写されているじゃないか。
  31. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 もっと詳しく御説明をしなければならぬと思いますが、すべての事情を暗記しておりませんので、要すれば詳しい御説明政府委員あとでさせていただきたいと思いますけれども、先刻政府委員から申し上げましたように、ガス銃を使うときの心得は御披露のとおりでありまして、水平撃ちは禁止いたしておりますので、水平撃ちをやるはずがない、かように私は心得ております。
  32. 猪俣浩三

    猪俣委員 私はあなたに尋ねたいことがたくさんあるけれども、最後に、こまかいことは政府委員に聞くことにして、あなた国務大臣の一人なんだ。この東大その他の大学騒動というものの根本原因を一体何と閣僚の一人として考えておられるのか。これは文部大臣が最も責任がありましょうが、あなたも閣僚の一人として、しかも公安委員長で、弾圧する側の総大将なんだ。これは一体機動隊さえふやせば静まるものだと思っておるのか、根本は何であると考えておるのか、それをお尋ねしたい。
  33. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 さっきも申し上げましたが、遺憾ながら大学ともあろうところで集団暴力が現にございます。これを排除することは警察責任でございますから、機動隊は足りなければふやさねばならない。ふやすことによって不法事犯排除国民に対する責任を果たさねばならない。こういうことと心得ておるわけでございまして、本来最高学府といわれる大学で、議会制民主主義の根底をゆるがすとでも申し上ぐべき暴力がまかり通っておることは、許しがたい事態だと思います。これは弾圧とか何とかでなしに、その暴力未然に防止し、不幸にして暴力が横行する状態になりますれば、生命、身体の傷害も考えられる、国有財産損壊等も予想される、お互いがなぐり合いをすることによっての重軽傷者の続出も、具体例は御承知のとおりたくさんございます。そのような許されない、法治国において許されないことが、学園内でありましょうとも、外でありましょうとも、学生によって行なわれようと、一般人の間で行なわれましょうと、法の前に平等な扱いをしなければならない警察責任の態度に立脚いたしまして、その不法状態に対処する、当然のことだと存じております。  その原因が何だということは、これは教育課題として受け取めて分析さるべき課題と存じますが、このごろの学生運動が、ともすれば学生自治会の本来の姿を逸脱いたしまして、一種の政治集団的な目的意識を掲げ、かつ暴力を伴う集団暴力団的に成り下がっておる。残念なことですけれども、そういうことになぜなったかということにつきましては、第一には、消極的ながら大学の当局が管理の、運営の責任者としての責任国民に対して果たしていない、果たさない傾向が顕著である。具体的に東大をとって申し上げれば、昨年の一月以来、集団暴力、その他器物投棄罪、ないしは不退去罪、あるいは建造物の損壊罪等、傷害罪も含めましてずいぶんございますが、文学部の学部長を一週間以上も閉じ込めました人権じゅうりんざたもございますけれども、公務員として刑事訴訟法が要求しておる、義務づけておる、不法行為があったならば告発しなければならないという、その義務すらも実行しようとしない、というふうなことが直接的な原因でもありましょうし、これはもっと大学生になる以前からの家庭教育なり、社会教育なり、学校教育なりという中にも、問題がひそんでおるのじゃなかろうか。これは私の守備範囲ではございませんけれども、そういうめちゃなことをやるような心情、意識を持って大学に入ってくる。その大学では、いま申し上げたような不法まかり通るようなことを管理者ともあろう者が傍観しておる。さらに三派系といわれる者、あるいは代々木系といわれる者、この集団が大学全体についてのヘゲモニーを争っておるというふうに見られる。その中に暴力が伴っておる。それが放任されておるという結果が、以上御指摘のようなことになっておる、かように心得ております。
  34. 猪俣浩三

    猪俣委員 私の聞かんとするところは、そんなことじゃないんだ。そんなことは、あなた、あたりまえじゃないですか、国家公安委員長として。そうじゃなくて、今度の大学問題というのは、世界的な現象じゃないですか。一体、政府は二月十四日、国連総会で世界青年宣言というのを出したのを読んだですか。あるいはローマカソリック法王のこの全世界の学生騒動についての感想を読んだですか。日本だけの現象じゃないじゃないですか。そこに根本的な問題があることを私はお尋ねしたいと思ったのですが、まああなたには無理かもしらぬ。ですから、これはやめておきます。やめておきますが、閣僚の一員としてもう少し、世界的な現象の一つの現象が日本にあらわれているんだ、単なる機動隊の増強だけではこれは阻止できないんだということについて、もっと深く考えていただきたい。  それから最後に、私はいま「アサヒグラフ」及び「アサヒカメラ」、その写真をお見せしたんだ。こういう惨状を呈しておる。これについてもっと詳しく聞きたいのですが、時間がない。そこでなお、あなたが言うように、水にガスがまじったものが放射された。こういうおそるべきやけどをやっておる。それから、例のガス銃なんかの直撃を受けて、失明している人がある。詳しく報告が来ているんです。この東大事件について、四十数名の弁護団が組織せられておる。そして詳密なる調べをやっておる。その報告が「世界」の四月号に詳しく出ている。そうしてこういう写真が出ているんです。この四月号に発表された弁護団の論文の表題は「「暴力学生」には人権がないのか」という題なんだ。暴力学生といえども人権があるに違いない。それに対してこういう乱暴なやり方。なおあなたに一つ聞きたいことは、逮捕すれば、そうして現場から拉致すれば、それで警察の目的は達しておるわけであるが、逮捕後すっかり手錠をかけられた人間に対して、警棒でなぐったり、け飛ばしたり、こづき回すということは、これはどういうわけなんだ。そういうことがないというのか、そういうことをやってもいいということになっておるのか、どっちなんだ。
  35. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 御指摘のようなことを警察官がやるはずがない、やってはならない、やった者がいないと信じております。  なお、失明した者があるようにおっしゃっていますが、私どものほうで承知します限り、失明した者は一人もおりません。
  36. 猪俣浩三

    猪俣委員 そうすれば、逮捕後さような暴行を働いちゃいかぬということが原則としてあるというんなら、暴行を受けたり負傷したりしたのは、そういうものはどうするんです。そういう機動隊員に対しは、どういうふうな処置をとります。
  37. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 さっき申し上げましたように、警察官職務執行法に反するようなことをやる者があるはずがない。私の承知します限りは、そんな者はいないと承知しておりますが、逮捕されまして、司法権の支配下に属しました以後、裁判を通じて、さような御指摘のようなことの有無、あるいはもし万一あったとして、いかにすべきかは、司法権の裁断にまたざるを得ない。少なくとも私の承知します限りは、御指摘のようなことはないと、かように存じております。
  38. 猪俣浩三

    猪俣委員 私の時間が来たそうですからこれでやめますが、はなはだ心残りがあります。
  39. 高橋英吉

    高橋委員長 松本善明君。
  40. 松本善明

    ○松本(善)委員 国家公安委員長に一言。いわゆるけんか両成敗論ということを国家公安委員長がたびたび言われることについて、お尋ねしたいのです。公安委員長は、ことばが適当でないということで最近国会でいろいろことばを取り消されたりなどすることもありますので、私は厳密に聞きますので、正確にお答えをいただきたい、こう思います。  いわゆる正当防衛論の根拠となっております刑法の三十六条でありますが、申し上げるまでもなく「急迫不正ノ侵害ニ対シ自己又ハ他人ノ権利ヲ防衛スル為メ已ムコトヲ得サルニ出テタル行為ハ之ヲ罰セス」ということになっております。いわゆるトロツキスト暴力集団というものが、自治会の決議も何にもなく、学園の封鎖を自分がやりたいと思えばやってしまう、あるいは入試を阻止しようということであれば暴力でこれをやる、こういう行為は、まさにここにいう「急迫不正ノ侵害」ということになるのではないかと考えますが、国家公安委員長は、そういう点ではどう考えておられるか、お聞きしたいと思います。
  41. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 まあ大体共産党がしょっちゅう御指摘になりますように、トロツキストをはじめとする暴力集団化した通称三派全学連系統の者が、武器を持って襲いかかる、暴力をふるうという習性があるということは、民青の学生集団も、共産党も、御指摘のとおりであります。起こり得るであろう侵害というものが予想されるという意味において、刑法三十六条の適用上、一般的な課題としてはちょっと例外的な場面じゃなかろうか、こう思います。しかしながら、現実に侵害が起こった場合、個人的な立場においてそれに対して正当防衛権がないと、私が申し上げたことはございません。いわんや、そこに不法行為があるならば、国民はだれしも現行犯逮捕というか、とっつかまえて警察に突き出すという権利までも認められておるくらいに、不法行為を憲法は厳粛に受けとめておる。さようなことは、私は否定した覚えはございません。ただ、民青という集団が、トロツキストをはじめとする暴力集団と意識的に初めから念頭に置きながら、集団として、警察官は来ちゃいかぬよと一方では言いながら、警察官こそが暴力に対しは法の認める実力のもとに制圧する責任と権限が与えられておるのに、民青という集団がトロツキスト派をはじめとする暴力集団に対してわれわれが制圧するから警察官は学内に入っちゃいかぬぞとシュプレヒコールでもしょっちゅう指揮官はそう言わせておるという、あらかじめ予定しておる集団的な暴力の対抗手段である、こうしか理解できない、そうである限りにおいては、それは暴力団同士のなぐり合いでしかない。そんなことを法は許してない。刑法三十六条は、そんなことは絶対に許さないというたてまえであると私は理解しております。
  42. 松本善明

    ○松本(善)委員 私の聞いておることにお答えいただきたいと思うのでございますが、そうすると、確かめておきますが、個々の場合の——刑法三十六条をまとめてお聞きしますが、三十五条、三十六条、三十七条にそれぞれの違法性、緊急性というものが規定をされておりますが、こういう権利を否定するわけではない。それからまた現行犯逮捕の権利、こういうものも否定するわけでもない。これははっきりしておっていいわけですね。このことだけまず、幾つもたくさんのことをお答えになったので、一つずつお聞きしますが、私の確かめることについてお答えいただきたいと思います。
  43. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 個々の場合、個人的な立場においての関連においては、お話しのとおりと心得ております。
  44. 松本善明

    ○松本(善)委員 それからもう一つお聞きしておきたいのは、いまの大学の中へ警察が入るという問題については、これやははり大学の自治を守るという点から、できるだけ大学の内部のことを干渉しないようにということの配慮をやってきておるということは、国家公安委員長もかつて国会で述べられた。そういう意味で、学問の自由あるいは大学の自治ということについての配慮なしに、大学の中に軽々に入っていくというような性質のものでもないのではないですか。その点についての見解が、変わったわけではないのか。
  45. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 終始一貫変わっておりません、一般論と現実論の違いはございますけれども。大学の自治といわれますけれども、大学の自治の名のもとに、警察法ないしは警察官職務執行法、法律の規定に基づき、その範囲内において国民に対する責任を果たすという課題として申し上げておるわけですけれども、大学内に不法行為がないのにのこのこ出かけていくことは、警察当局としては違法であるというぐらいに厳粛に考えております。不法行為がありと確信できる根拠があります場合には、大学からの請求があろうとなかろうと、当然の職責として、大学内といえども警察官出動しまして不法行為を予防し、制圧し、犯人を逮捕し、証拠を収集しということは、法律上の責任を果たすにすぎない、大学の自治を侵すという概念とは全然関係ない。ただ、現実問題は、警察官アレルギー症があるゆえに、しょっちゅう申し上げることですけれども、大学当局が、警察権が大学内に入りまして、現に不法行為があるというのを知りながら非協力である場合は、出かけていきましても出動効果があがらない。極端の場合を申し上げれば、東大におきましても、その他の大学でも、具体例はたくさんあるようですが、東大に八千人以上の学長以下の教職員がおります。その教職員が、管理、運営の権利と責任を持っておりながら、警察官がきらいであるという感情的な、ゆえなき個人的な気持ちから、警察官の入ることをきらっておる。きらっておりますから、合法的に出動しましても協力はしないと公言する人すらあるという条件のもとに、かつまた学生といえども、トロツキスト派はもちろんのこと警察官導入絶対反対、また共産党の指揮下にありますところの民青の集団といえども、常に、さっきも申し上げましたとおり、シュプレヒコールを通じましても、明確に警察官が学内に入ることは反対だということを言い続けております。さらに、一般学生といわれる、セクトに関係のない、絶対多数の学生すらもが、民青がそう言い、三派がそう言い、八千人余りの教職員すらもがアレルギー症があるというときに、法の命ずるところに従って、法の範囲内において、厳粛な気持ちでもって責任を果たすべく出かけましても、教職員、全学生を相手に何かしらん実力行使をやっておる、行き過ぎでないかと、とかく言われそうな風景だけしかあらわれないで、何ら実効があがらない。証拠を収集しようにも協力しない、いろいろな事情を聴取しようにも協力しないというふうな状態で出かけましても、実効があがらない。むしろかえってそれでもってエスカレートして騒ぎが大きくなることも想像される。そういうときにのこのこ出かけて、形式上の警察責任を果たしさえすればよろしい、出かけたじゃないか、それで警察責任を果たしましたよという状態で、また不法状態が起これは翌日また出かけるという、いわば愚かなシーソーゲームをやることは、警察当局としては、国民的立場に立って慎重に考え、できれば大学の協力を少なくとも得るという状態が望ましいという意味合いで、大学の中へそうそう簡単に入るべきものでないと、かつて申し上げ続けておりました。東大に対しましても、そういう態度で私が拝命した後もまいりまして、年が明けて一月に入りましてから、大学当局がその誤りに気づいたと見えまして、その不法状態を排除してくれという要請がありましたから出かけたのが、安田講堂その他の暴力排除ということでございます。他の大学についても同じ考え方で、警察はあくまでも法の定めるところに従い、その範囲内において職責を果たしているということを申し上げたいと思います。
  46. 松本善明

    ○松本(善)委員 私の確かめることだけでけっこうです。時間もないようでありますので、最後に確かめておきますが、この大学の中に警察が入るということについて、国家公安委員長一つ見解を持っておられる、これはそれでいいと思います。それを承認するわけではないが、その見解があるというのはいいと思いますが、その大学の中に警察が入るということについて、これはいろいろ議論がある。学者の中にも議論がある。それから国民の中でも、これがいいのかどうか、またこれが大学の自治に対する干渉になるのであるかないかというようなことは、いろいろ議論がある。それは当然に言論の自由として国民に保障されておることであります。学生もやはり基本的な人権があるわけでありまして、そしてこれは大学の自治に対する干渉である、こういうふうに考えた場合には、これはシュプレヒコールをやる場合もあるでありましょう。それが国家公安委員長の立場から見て、これは正しくないと考えることもあるいはあるかもしれない。しかしまた、国民の側にも、学生の側にも、人権を持っておる学生の側に、そういうことを言う権利もある。これは大学の自治に対する干渉である、こう言う権利もあるというふうに考えます。こういう権利はないというふうにおっしゃられますか。
  47. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 言論は自由でありますし、国民は陳情、請願の基本的人権が与えられておる。マスコミも世界一の表現の自由を享受しておる。いろいろな立場の方々、共産党の方々といえども、民青の諸君といえども、批評することは自由だと思います。それをいささかも批評してはならないと思ったこともなければ、言ったこともいまだかつてありません。私どもの職責は、憲法の命ずるところに従って、憲法に基づいて民主的に定められた法律、命令等に基づいて、それを逸脱しないで国民に対する責任を果たすという立場からだけ申し上げ、かつ、行なっておるのでありまして、立法論的に、あるいは批判精神で、いろいろと御意見があることは、それ自体は自由であり、表現の自由、基本的人権の一部でもある。それらの御意見を拝聴しつつ、現行法に不備があるがゆえにということがはっきりしましたら、立法論として現行法を改正するよすがになるかもしれませんけれども、私どもは、現行法に基づいて忠実に責任を果たすということだけでございますから、その果たしている状態の御批判は、それ自身としては意に介して批判があるからといって法律の命ずるところをゆがめてはならないという心がまえで臨んでおる次第であります。
  48. 松本善明

    ○松本(善)委員 質問を終わります。
  49. 高橋英吉

    高橋委員長 引き続いて、猪俣浩三質問やりますか。法務大臣もおられます。川島警備局長もおられることはおられますよ。
  50. 猪俣浩三

    猪俣委員 警察庁の人はいないか。
  51. 高橋英吉

    高橋委員長 警察庁は、川島警備局長、官房長もいます。
  52. 猪俣浩三

    猪俣委員 私は、質問の中に、今回の東大事件で昨年から本年にかけての逮捕者の数、負傷者の数、負傷の原因等の質問を出しているのですが、それをお答え願いたい。   〔委員長退席、進藤委員長代理着席〕
  53. 川島広守

    川島(広)政府委員 お尋ねがございました昭和四十三年二月から本年一月までの一年間におきますけが人の数でございますが、東大事件だけについてまず最初にお答え申し上げますが、一月十八、十九の両日にわたりまして、けがをいたしました学生の総数は百四十一名でございます。これの内容は、捻挫、裂傷挫傷、擦過傷、それから接触性皮膚炎等がございます。  原因でございますけれども、先生御案内のとおりに、東大の場合には、硝酸、硫酸というようなものが投げられ、さらに火炎ビンが十八日だけで五百本も投げられております。そういうようなことで、自分でみずからやけどしたと自供している者もありますけれども、一切を含めますと百四十一名、入院しました者が十一名でございます。現在は、先ほど問題になりました皮膚炎の学生等は、全員がなおって活動いたしておる、そういうふうな次第でございます。  さらに、四十三年二月から本年一月までに検挙いたしました総数でございますが、七千百八十八名、うち学生が六千九十四名、こういうふうに相なっております。
  54. 猪俣浩三

    猪俣委員 その負傷の原因は何ですか。
  55. 川島広守

    川島(広)政府委員 ただいまもお答えいたしましたように、原因はいろいろございまして、逮捕しました学生の供述等もいろいろ分析はいたしておりますけれども、多くの場合において黙秘を使っておりまして、具体的にどういうふうにけがをしたのかという詳細につきましては、十分に把握しかねる現況でございます。
  56. 猪俣浩三

    猪俣委員 この「アサヒグラフ」の三月七日号、これは何が原因ですか。
  57. 川島広守

    川島(広)政府委員 いまお示しの写真は、三鷹署の十八番という番号を打ってある被疑者、学生でございますけれども、これは当時ガスを使いましたし、ガス液も使っております。したがって、これについてのおそらく接触性の皮膚炎ではなかろうか、こういうふうに考えております。この被疑者は、御参考まででございますけれども、すでに完全になおっておりまして、実際に運動しておるというのが現状でございます。御参考までに申し添えさせていただきます。
  58. 猪俣浩三

    猪俣委員 それから法務大臣お尋ねいたしますが、雑誌「世界」に発表されましたる石川弁護士の実地調査によりますと「一九六八年三月以降の学生運動関係事件」の表が出ておるのでありますが、ただ、私お尋ねいたしたいことは、昨年の六月二十七日の東洋大学の争いにつきまして、百七十名現行犯として逮捕されておる。そうして七十五名が留置されておる。しかるに起訴されたのは二人しかない。こういう状況。それから、同じく七月二十日の日本大学の争いにつきまして、九十五名が逮捕され、起訴されたのはやはり二人であります。同年の九月四日のやはり日大の争いで、百三十二人が逮捕され、起訴されたのは六人、同じく日大の、九月七日、逮捕されたのが百二十九人で起訴されたのは三人、同じ日本大学の争いで、九月十二日に、百五十四名逮捕され起訴されたのは二人、こういう実情を見ますると、めちゃくちゃに逮捕、勾留しているというふうに考えられる。いやしくも逮捕するというようなことは、容易ならざる人権の問題です。なお、それを勾留するということも、はなはだ人権問題だ。しかるに、起訴されたる者とその比率があまりにひど過ぎる。警察がめちゃくちゃに逮捕、勾留しているんじゃないかというふうな感を持つのですが、こういうことがいいことかどうか。戦前、治安維持法の被疑者に対しまして、相当のリンチが行なわれた。小林多喜二なんという人は、明らかに惨殺されたということは、今日歴史的事実になっている。その当時、警察官は、治安維持法に引っかかるようなやつは国の法律を無視するやつであるから、われわれも何も刑事訴訟法に拘泥する必要はないということで拷問をやったのです。徹底的な拷問をやって、惨殺する者が出てきた。それが今度は一般の習い性となりまして、選挙違反事件その他の、治安維持法と関係のない被疑者に対しましても、平気で拷問をやるような習性が警察官についてしまった。そうして戦前の憲兵、警察というものが、常に国民からおそれられる存在になった。今日この全学連の学生に対しまする機動隊のやり方、めちゃくちゃに逮捕し、勾留し、しかし調べてみるというと、起訴に値するものははなはだ少ない。こういうことは、今後警察がむやみに人を逮捕し、勾留する習性がつくんじゃなかろうかとはなはだおそれるのでありますが、法務大臣の御意見を承りたい。
  59. 西郷吉之助

    ○西郷国務大臣 お答えいたします。いま猪俣先生のおあげになりましたことで、非常に多数の者が逮捕されておるが、最終的に起訴した者が非常に少ない、これは少し行き過ぎじゃないかという御質問だと思いますが、具体的に、いろいろの状況下によりまして、そのときどきで事情も違う一思いますけれども、警察としては、多数の集団暴力でありますから、一応逮捕はする。しかし、調べてみて、罪状がはっきりしないので最後の起訴は非常に少数になる。この例はそうでございますが、また東大の場合などには、かなりの者が起訴されておりますので、個々の場合、その状況によって非常に違うのではないかと思います。
  60. 猪俣浩三

    猪俣委員 なお「アサヒグラフ」に写っておりますような症状、それからガス弾なるものをガス銃によって発射し、細則があって至近距離では撃ってはならぬということになっているのが、みな至近距離で撃っていることは事実です。これはこの写真にも出ております。この写真は分けられていますが、一枚の写真です。ここで撃っている。このたまはここへ飛んでいる。これは同じ高さで、距離は二十メートル以内なんです。それでやっている。あるいはこういう写真に写っておりますような、こういう症状ですね。さっきごらんになりましたか。ああいうような行動を、一体法務省には人権擁護局もあるのだが、警察が盛んにやってもかまわぬものであるかどうか、人権擁護局に訴えたら一体どういうことになるのか。私は負傷者の年齢から住所姓名の控えを持っている。ところが、これを発表していいものやらどういうものやらわかりません。中にはまだ起訴されていない者もあるのです。それから黙秘権を使っている者もある。非常な重傷者、さっき失明者がないと言ったが、ほとんど失明状態になったのをようよう医者の努力によって薄くもやがかかったようにまで回復したという人間がいる。これはガス弾の直撃にあったのです。こういうことを遠慮会釈なくやっていいものかどうか。法務大臣は、人権擁護局を主宰しておられる大臣として、どういう御所見をお持ちになっておるか、承りたいと思います。
  61. 西郷吉之助

    ○西郷国務大臣 先ほど先生のいろいろお持ちになりました写真なども拝見いたしましたが、ああいう非常な集団的な中で逮捕などをするために警察もいろいろ苦労をし、ガス弾なども発射しておると思いますけれども、いまお話しのとおり、私の重要な任務の一つ人権擁護ということがございますので、ああいう集団暴力に対処する方法に非常に警察当局も苦慮はしておると思いますが、そこに行き過ぎがあってはやはり人権擁護の立場から考えなければいかぬと思いますし、今回の事態にかんがみまして、警察等においてもさらにそういう研究をなし、行き過ぎのないように心がけると思いますし、また、私どもも人権擁護の立場で行き過ぎのないことを大いに期待しております。
  62. 神近市子

    ○神近委員 ちょっと関連。私は事務の局長お尋ねしたいと思うのですけれども、この間——ちょっと間がありますけれども、国連で学生問題をよく調査した結果、学生の問題は今後十年くらいは続くだろうという結論を出しておるのです。それはごらんになったことがありますか。
  63. 川井英良

    ○川井政府委員 読みました。
  64. 神近市子

    ○神近委員 日本の学生の騒ぎも国際的なつながりがあるというような結論だろうと思うのです、国連の報告は。いま猪俣先生の御質問にも関連しますけれども、どういうところに原因があると、あなた方は考えていらっしゃいますか。
  65. 川井英良

    ○川井政府委員 特に私にお尋ねですので、私の見解を申し上げたいと思いますが、私は大学問題は、紛争の原因と、それから紛争の過程においてそれが暴力化しておる原因というものを分けて考えないと、真相もわからないし、対策も出てこないのじゃないかという気がいたしております。私の考え方でございます。  その前の、そもそもの大学の紛争、大学の中でなぜもめごとが起こるのだ、なぜ意見の対立が起こるのだということにつきましては、先ほど御指摘になりました国連の指摘は、私どもが大学の問題を考える場合におきましても、非常に参考になるものが多々あったと思います。そしてその紛争というものは、ここわずかの期間にすべて問題が片づく、こういうふうには私も考えておりません。かなり長引くのではないかと思います。ただし、日本の大学で行なわれておりますような紛争の過程における暴力というものは、また別な観点から原因をきわめて、それでその暴力大学の中から一掃したいというのも、一つの切なる願いであり、また、特にそれは日本の場合において、暴力活動はほかの大学の場合におけるよりも鋭角的できついものがある、こういうふうに私は事実を観察いたしておりますので、その面におきましては、私どもの治安機関がある程度タッチしなければならない問題ではないか、こう思っております。
  66. 猪俣浩三

    猪俣委員 これは事務当局でなしに、大臣のお考えを聞かなければならぬ問題だと思うのです。大臣閣僚の一人として——さっきも荒木公安委員長お尋ねしたのですが、ほんとうは文部大臣かあるいは総理大臣かが答弁しなければならぬが、おいでにならない。しかし閣僚の一員として大臣の御所見を承りたいのです。   〔進藤委員長代理退席、委員長着席〕  いま、刑事局長から日本の大学は激し過ぎるような御答弁がありましたが、私の調べた範囲においてはそうじゃない。アメリカでも、ドイツでも、フランスでも——フランスなどは革命寸前にいったじゃないですか。わかっているでしょう。昨年の五月、学生と労働者が結合してドゴール政権がゆらいだ。総選挙によってやっと防いだ。そのくらい激しい。イギリスもしかり。そういう世界的現象であるとするならば、根本的な社会哲学的な原因がなければならない。それを閣僚諸士は一体どの程度理解なさっておるか。二月十四日の国連世界青年白書を見ましても、若い世代がおとなたちの社会的指導能力に全く信頼を失っていることがあげられている。自分たちが直接社会に参画しなければだめだ、こういう意気込みによって、その最も先鋭部隊として学生が立ち上がっているのだ。ローマ法王も、そういう趣旨のことを言っておるのであります。私は、現内閣におきましては、その根本原因を考えられて、これに対する対処策を考えなければならぬと思う。ただ非常に殺伐な、暴に報いるには暴をもってするというふうな方法でこれを鎮圧するということでは、おさまらない。何らかそこに根本原因がなければならない。私たちは、現閣僚がどこまでそれをお考えになっておるか、知りたいのであります。一体西郷法務大臣は、どういうようにお考えになっておられるか。
  67. 西郷吉之助

    ○西郷国務大臣 この問題は、猪俣先生の御指摘のとおり、世界的な風潮もございますし、いまお尋ねではございますが、原因はそう簡単なものではない。大勢から先に申し上げれば、この時代になりまして、若い世代の、現状を打破してより新しきものにしたいというような若い人の強い考えが、世界的に盛り上がってきておるのではないか。ただ、それは非常にいいことでございますけれども、この主張貫徹のために、日本におけるような暴力行為があり、大学に立てこもるような事態になりますことは、非常に残念でありまして、若い人の非常な行き過ぎであろう。中には思想的なものもありますから、極端な人はああいう行動に出る。そういうことがなければ、やはり若い人の考え方におきまして、いま先生の御指摘したとおり、高い見地からいえば、社会哲学的な見地からも考えなければいかぬ、この点は私も同感でございます。したがいまして、現実の問題といたしまして、われわれはもちろん暴力、違法行為は処置しなければなりませんが、これを契機といたしまして、政府としては、やはり行なうべき施策の上にできるだけ若い人に愛情を持った新しい感覚の配慮をあらゆる角度からしてまいるということも、非常に重要な問題だと思います。しかし、国連白書にもいろいろあるとおり、世界的な風潮でもございますので、これはそう簡単なものではない。心を鬼にして違法行為は処置しなければなりませんが、同時に、若い人の気持ちをよくそんたくしまして、そしてやはり近代化していくというセンスがないと、これはなかなか終局しない。私も、非常に困難な問題ではあるけれども、こういう風潮である以上、政府としても全力をあげて各立場から適切な配慮をしていくべきである、かように考えております。
  68. 猪俣浩三

    猪俣委員 実はいま東京大学の教授の中にも非常に反省が起こっておりまして、「東京大学の頽廃の淵にて」という論文を東京大学の教養学部の助教授が書いておられるその中に、「内なる頽廃とはなにか。ほかならぬわれわれ教師に、人間性と生ける理性を回復させるべく青春を賭けて闘った学生を、みずからの手で国家権力の暴力装置にゆだね、失明させ、骨折させ、火傷を負わせ、牢屋につないで、それで平然と、「経営」を再開しようとする、そのおそるべき神経である。」こういうふうにこの学者は自己反省をしておる。普通にただ暴力学生、暴力行為というような観点だけでこれを弾圧なさろうということに対しては、非常に危険性を伴っておる。これは法務省といたしましても、検察当局の活動におきましても、ただばくち打ちの暴力団というふうなものと同じような考え方で対処されては、大いなる間違いじゃないか。もう世界的の現象であるのみならず、国連やローマ法王まで言っておる。また東京大学の教授会までも、かような反省をしてきておる。彼ら学生が何を思考し、何をいままでやってきたか、それに対して先生は一体何をしておったろう、非常な自己反省にさいなまれておるわけであります。かような現象は、なかなか複雑な問題であり、法務省だけで処置できる問題ではないと思いますが、今度の検挙につきましても、深甚の御注意をしていただきたい。まあ幸いに検事のほうは良識があると思えまして、警察から送られてきました多数の者はみな釈放されて、起訴者は非常にわずかである。その反面、警察のやり方に行き過ぎがあるとわれわれは思うのでありますが、なお法務省は、この点について検察当局に対ししかるべくやはり指導をしていただきたいと思うわけでありますが、大臣のお考えを聞かしていただきたいと思います。
  69. 西郷吉之助

    ○西郷国務大臣 いまいろいろ先生から御注意を伺いまして、やはり違法行為については適切に処置しなければなりませんが、反面に、私ども人権擁護の立場から、行き過ぎのないように十分に心がけてやっていくようにいたしたいと思います。
  70. 高橋英吉

    高橋委員長 この際、暫時休憩いたします。    午後零時十一分休憩      ————◇—————
  71. 高橋英吉

    高橋委員長 まず、本案について政府に提案理由の説明を求めます。西郷法務大臣
  72. 西郷吉之助

    ○西郷国務大臣 訴訟費用臨時措置法の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明いたします。  この法律案は、民事訴訟及び刑事訴訟の証人、鑑定人等の日当の最高額を増加しようとするものであります。すなわち、現在、民事訴訟における当事者及び証人並びに刑事訴訟における証人の各日当は、その最高額を千二百円と定められ、また、民事訴訟における鑑定人等及び刑事訴訟における鑑定人、国選弁護人等の各日当は、その最高額を千円と定められているのでありますが、最近における賃金及び物価の状況等を考慮いたしまして、いずれもその最高額を引き上げることといたしまして、当事者及び証人の日当につきましては千三百円に、また、鑑定人、国選弁護人等の日当につきましては千百円に、それぞれ改めようとするものでございます。  以上が、この法律案の趣旨でございますが、何とぞ慎重に御審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願い申し上げます。
  73. 高橋英吉

    高橋委員長 これにて提案理由の説明は終わりました。  本案に対する質疑は、後日に譲ることといたします。      ————◇—————
  74. 高橋英吉

    高橋委員長 引き続き国政調査の質疑を行ないます。猪俣浩三君。
  75. 猪俣浩三

    猪俣委員 私、東大事件につきまして、加藤代行と学生の団体との間に取りかわされたいわゆる確認書というもの、このものの、これは法律から見た法制局の見解を承りたいと思うのです。文部大臣いらっしゃらないから、法制局に対しては、ただその点についてだけお尋ねしておきます。私いまこの原案を持っておりませんから、あなたのほうから原案を説明していただいて、それに対する御意見を承りたいと思います。
  76. 真田秀夫

    ○真田政府委員 お答え申し上げます、御質問の趣旨は、いわゆる東大の確認書の法律的な性格でございましょうか、中身についてのことでございましょうか。
  77. 猪俣浩三

    猪俣委員 その法律の性格及び中身と連関して、あなたのほうの見解を承りたい。
  78. 真田秀夫

    ○真田政府委員 その確認書につきまして私の役所でタッチいたしましたのは、文部大臣のほうから御依頼がございまして、この確認書の各項目の内容について現行法に触れる点がないかどうかということを調べていただきたいという御要請がありまして、私たちのほうで実は中身を逐一調べたわけでございますが、私のところは法制局でございますので、その確認書ができたいきさつとか、そういうことは一切責任を持ってお答えできませんので、ただこの中身について法律に照らしてどうであるかということを調べた経過、それからその結論のようなものを御説明させていただきたいと存じます。  私のほうで文部大臣から御依頼を受けましたのは、たしか一月の十八日か十九日だったと存じますが、その後私たちのほうでいろいろ会議をもちまして、中身について調べたわけでございます。そして一月三十一日に文部大臣あてに「確認書についての法律的検討(覚書)」という表題をつけまして、御返事申し上げてございます。その「確認書についての法律的検討(覚書)」という中にも触れておきましたけれども、この確認書は、一見いたしましておわかりのように、非常にあいまいでありまして、いかようにでも意味がとれるというようなしろものでございまして、実は法律的判断を下すにもかなり困難といいますか、苦慮いたしたわけでございます。非常にあいまいなものでございますので、対立する両当事者の各一方がそれぞれ自分に都合のいいように解釈するということが可能であるという面を含んでおりまして、文言自体から直ちにこれが違法であるというふうにきめつけるということも、いささか困難であるという部面が非常に多かったということを申し添えておきます。  この確認書は、大体大きく分けまして十項目ございますが、そのうちで私のほうでチェックいたしましたと申しますか、多少問題があるというふうに指摘いたしました個所が幾つかございますが、それを順序を追って簡単に申し上げさしていただきたいと存じます。  まず、最初に「医学部処分について」という項目がございまして、さらにこまかく分かれておりますが、その一番最後の「4」というところに「評議会はこの処分に関し直接重大な」、つまり医学部学生に対する処分でありますが、この処分に関し「直接重大な責任をもつ豊川、上田両教授の退官につき、適切な措置をとる。」ということがありまして、これがまず第一に、最初に私たちのほうの審査にひっかかったわけでございます。この意味が、先ほど申し上げましたようにまことにあいまいでございまして、法律の条文どおりのことをやるのだというのであれば、もちろん違法のかどは毫もないわけでございますが、わざわざここに確認書の中に一項目として掲げてあるところを見ると、かなり意味があるのではなかろうかということも推測できるわけでございまして、その推測といいますか、その意味内容が、豊川、上田両教授の意に反して退官させるのだということをもし言っているのだとすれば、現行法に照らしてはなはだ問題があろうというふうな結論に達したわけでございます。その程度でよろしゅうございましょうか。——もう少し詳しく申し上げましょうか。その次は、項目といたしまして第三に、「追加処分について」というのがございまして、その確認書の追加処分について「1」の内容でございますが、これは「昨年一月二十九日以来の闘争の中で行なわれた学生・院生のストライキをはじめとした抗議行動については、大学側に重大な誤りがあった以上、大学当局は処分の対象としない。」ということが書いてございます。もともと学生に対して処分をするかしないか、どういう処分をするかということは、大学当局に実は法律上まかせられておりますので、その大学当局が法律上持っております処分権限の行使のしかたとしてこういうことを言っただけである。しかも逐一、過去にすでに起きた事件でありますから、その抗議行動を全部調べてみたところが、やはりたいしたことがないから処分をしないのだというものであれば、これはとにかくそれほど違法だというようなかどもないかとも存じますが、一月二十九日以来行なわれた抗議行動の中には、かなり刑法犯に触れる住居侵入とか建築物損壊とか傷害暴行というようなものもあったのではないか、もしそういうものを全部ひっくるめて一切処分の対象にしないということをここで確認書が約束をしたということになりますと、かなり法律上問題でなかろうかというふうに感じたわけでございます。といいますのは、処分をするかしないかは大学側の裁量にまかされておりますけれども、やはり裁量でありまして、裁量を逸脱するということは、やはり法律上問題であろうと存じたからでございます。  それから次は……。
  79. 高橋英吉

    高橋委員長 たくさん質問者が残っておりますし、時間が少ないですから、人道問題だと言われておるから、簡単にして要を得るように御答弁願いたい。猪俣さん頭がいいから、簡単でわかりますから……。
  80. 真田秀夫

    ○真田政府委員 次は、「今後の処分制度」というところでございますが、これは確認書によりますと、大学当局と学生側といろいろ協議してきめるということになっておりまして、つまり処分制度のルールをきめるということであろうと存じますが、この意味内容が、いろいろ話し合いをして学生側の要望も聞き入れてきめる、きめる決定権は大学のほうにあるのだということであれば、現行法上問題がない。もし話し合いがつかなければ処分はできないのだということであれば、法律上問題がある、こういう趣旨でございます。  次は、問題の警察力の導入でございますが、警察力の導入ということにつきましては、先ほど国家公安委員長がここでいろいろ御説明になりましたように、法律に基づいて警察力導入は行なわれるわけでございますが、いろいろ従来からの沿革とか大学の自治ともからみましょうが、大学の要請によって入っていくということが大体行なわれてきておりました。それで問題になりましたのは、確認書の中で、昨年の六月十七日の警察力導入が誤りであったというふうに、警察力導入を要請したことが誤りであったというふうに反省をしておる個所でございます。この反省の結果、今後は六月十七日程度事態のもとにおいては警察力の導入は一切要請しないのだという方針をはっきりここで打ち出したのだとすると、やはり法律上問題がある、こういうふうに感じた次第であります。  その次は捜査協力の点でございますが、例の正規の令状に基づいて警察が権力を行使する場合に協力するとかしないとかいう問題の点でございますが、正規の令状に基づく警察権の行使につきまして、これを拒否するということはもちろんできないわけで、その点は加藤代行も別の機会にこの趣旨のことを述べておられますので、よもやそういう趣旨のことではなかろうというふうに私たちも感じます。感じますが、ただその第二項というものがございまして、学生の自治活動に関する警察の調査や捜査については協力しないぞということが書いてあります。これが意味のとりようでございますが、正規の令状に基づくものについても、事学生の自治活動に関連しておるものであるならば協力をしないということであれば、やはり法律上問題になる、こういう点で意見を述べたわけでございます。  あと「学生・院生の自治活動の自由について」というのとそれから「大学の管理運営の改革について」という二点について、私のほうの意見書で触れている点がございますけれども、この二点につきましては、その後の大学における確認書の取り扱いの結果、確認書からは一応落としたということになっておりますので、今後は問題にならないということかもしれませんが、ただ、この両点につきましては、大学の管理運営権について決定権に参画するということであれば、現行法上は問題である。これは将来の大学のあり方として、大学の基本に関する事項につきましていろいろ文部省で御検討であろうと思いますけれども、将来はいざ知らず、現行法のもとにおきましては、大学の管理権はそれぞれ法律にきまっておりますので、その決定権に大学の学生が参画するということを約束したものであるとするならば、法律上問題であるというふうに意見を述べた次第でございます。簡単でございますが……。
  81. 高橋英吉

  82. 中谷鉄也

    中谷委員 一点だけ、大臣お尋ねしておきます。こういうことはまさかないだろうと思うので、念のためにお尋ねしておきたいと思うのですが、最近の大学紛争に関連をして、大学紛争を理由として少年法を改正をする、すなわち少年の年齢を引き下げるというふうなことを法務省の一部で検討されているやのことを、文字どおり伝え聞いたわけでありまするけれども、少年法改正などという大事な問題が学生対策に利用されるというふうなことは、まことに遺憾なことであるし、そのようなことはあってはならないことだと思うのですが、この点についての大臣の御所見を承りたいと思います。
  83. 西郷吉之助

    ○西郷国務大臣 中谷さんの御心配でございますが、七〇年を控えていることでもございますので、そういう御質問かと思いますが、さようなことは全然考えておりませんので、御安心願いたいと思います。
  84. 中谷鉄也

    中谷委員 いずれにいたしましても、少年法改正についても慎重にということであって、数年前、少年法改正論議が出ましたけれども、少年法については十分に検討——少年法改正ということは、大学問題に関係のないことはわかりましたが、少年法改正などということは当面考えていない、こういうふうにお伺いしてよろしいのでございますか。
  85. 西郷吉之助

    ○西郷国務大臣 全くそうでございます。
  86. 中谷鉄也

    中谷委員 法務省と最高裁との間で、ここ数年来少年法改正論議が非常にありましたので、気にいたしておりましたが、この委員会の席で、大臣の御答弁を通じて、法務省として少年法改正については考えていないというお話がありましたので、少年法を改正すべきではないという立場に立つ者として、私は非常にけっこうな御答弁であると考えますが、いま一度確認をしていただきたいと思います。
  87. 西郷吉之助

    ○西郷国務大臣 いま申し上げたとおりでございますが、重要な問題でございますから、今後とも慎重なる検討を続けていきたいと思います。
  88. 中谷鉄也

    中谷委員 お尋ねしたいのは、その一点だけで、どうもきょうは行き違い行き違いになりまして、最高裁がお見えになっておりませんので、この質問はこの程度にしまして、同じことの関連の質問でございますが、そうすると、大学紛争の中でいわゆる暴力学生といわれている、また現に暴力学生でございますが、これらの諸君に対する取り扱いとして、暴力学生の中で少年である学生については、少年法の精神に基づいて措置をするということに相なるわけでございましょうか。
  89. 西郷吉之助

    ○西郷国務大臣 全くそのとおりでございます。
  90. 中谷鉄也

    中谷委員 最後に、一点だけ刑事局長お尋ねしておきたいと思います。実は、この問題は、特に刑事局長から言質を取ろうというようなものでもなんでもないわけですけれども、最近、いわゆる安田講堂の事件などの裁判が、どんどん進行しているようであります。その統一裁判要求を出しておる諸君の裁判というのは進行はしていないようですけれども、現に、いわゆる分離公判と申しますか、単独審理を受けている人たちの公判は、どんどん進行している。こういう中で、裁判長御自身も、それぞれ審理の中で御発言があったようでありまするけれども、私、個人としてでもどうしても一つ発言しておきたいと思うのは、あれだけ暴力学生といわれている諸君が、テレビ、その他国会、あらゆる場所、あらゆる機会に、暴力はやめるべきだという点についての勧告、批評、批判を受けた。それらの批判について、それを聞き入れようとせずに、いわゆる暴力行為に出た。その結果、裁判を受けた。そうしてその裁判を受けたとたんにと申しますか、突如として、いわゆる法律用語でいえば反省悔悟した。そうして、そのことによって反省の情があるということで執行猶予の判決をもらって、再び社会に復帰していく。学生に対する取り扱いというのは、私は社会復帰——学生のみならず、あらゆる刑事被告人に対する取り扱いというのは、社会復帰の可能性というものを残していかなければならないと思いますけれども、それはそれとしていいと思いますけれども、やはり人間として、非常に極端な言い方をすれば、はたしていずれが一体りっぱなのであろうか。みずからの信念を是として、なお勾留をされてでもみずからのやったことは正しいのだと言っている学生のほうが、むしろ将来の長い展望に立った場合には、人間として信頼ができるのではないだろうか。それだけのことをやっておって、何か裁判というそういう権力によってさばかれるという場合になると、直ちに反省をしたと言って頭を下げるというふうなことで、いわゆる人間として非常な信頼感を、私はある意味では失ったわけです。そういうふうなことで、何か検察官の立場からいって、法律用語でいえば、特に反省悔悟をした者についての取り扱いが非常にゆるいのだ、あるいは否認をしているから重いのだというようなことは、刑事訴訟法のたてまえからいっても、私はそういうことはあり得ないことだと思いますけれども、そういうような点について、ひとつ刑事局長の御所見といいますか、御所壊を私はこの機会に承りたいと思います。
  91. 川井英良

    ○川井政府委員 ただいまお述べになりましたような御見解というふうなものも、一方において十分に成り立ち得るのではないかというふうにも考えられますが、要するに、いま起訴しておりますのは、御説明するまでもなく、考え方、思想をさばいているのではなくて、行なわれた行動が刑法の罰条に触れているのだ、そういうことは今日の社会においてはいけないことなんだというような観点に立って起訴をし、またその処遇をいたしておるわけでございます。そこで、そういう観点から申し上げますならば、あくまで事実を認めないでいるというふうなことは、そのこと自体は憲法の保障する黙秘権でございますので、いささかも責めるということはできないと思います。ただ、一方において、自分の心情は変えないけれども、自分のとった行動については、いろいろの面から考えてみて適当でなかったという面において深い反省の意を示しているというふうな者が、御指摘のようにかなり出ているわけでございますが、私は、やはりそういうような者につきましては、今日のいわゆる刑政ということについての本質、あるいは考え方からいいますならば、それはそれとしてまたその立場からたいへん望ましいことではないかというふうに考えますので、本質的に、両者の間に考え方と処遇において差異はないし、また本質的な差異をしてはいけないとは思いまするけれども、いま申したような限度におきましては、反省の意を示しているというふうな者につきましては処遇の面で何がしかの別な処遇が考えられていいのじゃなかろうか、その別な処遇というものは、必ずしも軽い処遇ということを意味するものではありませんけれども、また別な角度からの処遇というものがあっていいんじゃないだろうか、そういうふうに思います。したがいまして、現場の検察官も、たぶんいま私が述べたような考え方のもとに事件を処理しているのではないか、こういうふうに思っております。
  92. 中谷鉄也

    中谷委員 山田委員がお待ちなので、もう一点だけで終わります。  予算の分科会でも私刑事局長お尋ねをしましたが、安田講堂事件の起訴率というのは、ずいぶん高かったわけです。それはそれとして、そうすると、いわゆる新宿騒乱事件といわれている事件については、ほとんど起訴されていないわけですね。起訴された人が非常に少ない。また検挙された者も非常に少ない。検察庁の立場といいますか、検察の立場から見て、ここの中で、新宿、要するに都市、市街地で騒乱を起こして暴力行為を起こした者については、ほとんど検挙を免れる、そうしていわゆる大学構内における場合には、非常に検挙率も高い、そういうようなことについての何かアンバランスというようなもの、不均衡というようなものも私あるだろうと思うのです。しかし、そういうような点について、一体どう考えたらいいのかという点。  それからいま一点、これは国家公安委員長お尋ねをすべく予定をしておったのですけれども、今後都市、市街地における騒乱というのがかなり起こってくるだろうと私は思う。一体そういうようなものについて、検察庁として対策が立っているのかどうか。むやみやたらな、たとえば私の理解では、佐世保などにおけるような違法警備というふうな問題が起こってくる。要するに過剰警備という問題が起こってくる。これは私、非常に許しがたいことだと思うのです。同時に、反面においては、多数の虞犯者、被疑者、いわゆる違反者を出しておりながら、検挙できないという状態も起こってくる。言ってみると、最近流行のことばで言えば、都市ゲリラということばさえもはやっておりますけれども、こういうようなものに対する対策というものは、大衆社会化状況、都市化現象のもとにおいては、もうやむを得ないんだ、これはもう検察庁としても実はお手上げなんだということなのか。それとも、警備の行き過ぎがない、捜査の行き過ぎがない、過剰警備のない状態のもとにおいて、検挙できる対策というものを立てざるを得ないだろうと私は思う。そういうところで検挙できないから、大学の構内に立てこもった者についてはごっそり網を打って検挙をして、全部起訴する。はなはだしくアンバランスというか、起訴の不均衡が最近目立ってきている。こういうような問題についての是正がなければ、やはり学生諸君についても不満感、不信感というものが、一そう醸成されるだろうと私は思う。この点はいかがでございましょうか。
  93. 川井英良

    ○川井政府委員 起訴のアンバランスの点でございますが、この種の事件について起訴があまり画一的にきまってくるということは、私はまた別な意味で必ずしも好ましくない、やはり刑事事件の個性と、逮捕された者の性格なり行動なりというふうなものを十二分に吟味して、そうして、先ほども申し上げました、あくまでも刑事政策的な立場でもって処理をしていくということが妥当だと思いますので、むしろ一件一件の間に御指摘のようなアンバランスが出ているということは、いまの段階におきましては、私としてはあまり心配をいたしておりません。むしろもうしばらくこの検察庁の処理の状況を見ていきたい、こう思っております。  それから第二点の市街地の問題でございますが、これは端的に申し上げまして、要するに証拠の収集ということが、市街地における混乱状況の場合にはたいへん困難であるというふうなこと、第二点としましては、安田講堂に立てこもったというような人は、何回も過去に逮捕歴もある人でありますけれども、その辺の市街地でつかまったという者の中には、半ばやじ馬的な立場でもって参加したというふうな者もかなり見受けられますので、一回は一応許して、そうしてその後の状況を見よう、こういうふうな考え方も検察官の中にいままでございますので、そういう面から、市街地の場合においてはわりあいに起訴率が低くなっている、こういうことではないかと思います。したがいまして、今後証拠収集の方法を警察当局が十二分に研究、また開発をされるというようなことになってまいりますれば、その辺のところもまだアンバランスが漸次是正されていくのではないか、こう思います。
  94. 中谷鉄也

    中谷委員 終わります。
  95. 高橋英吉

    高橋委員長 山田太郎君。
  96. 山田太郎

    ○山田(太)委員 まず、最初に法務大臣にお伺いいたします。私どもといたしましては、このたびの学生紛争にあたりましては、学内の自治、これはもちろん尊重しなければいけない。ただしこのたびのような暴力事件に対しては、これはあくまでも排除しなければいけないものであるという、そういう見解はとっております。しかし、その次に起きております学生紛争についての、ことに安田講堂事件についての学生の大量起訴であります。この大量起訴について、法務大臣としてどのようなお考えであるか。当然、学生の将来もあることだし、あるいは親やきょうだいもあることだし、非常に大きな影響を与える問題でございますので、法務大臣がこの問題についてどのような所見を持っていらっしゃるか、これをまず最初にお伺いしたいと思います。
  97. 西郷吉之助

    ○西郷国務大臣 非常に多数の者が起訴されておるじゃないかということでございますが、先般の東大事件におきましては、大量の五百九名という、いまだかつてない起訴を見ましたが、この例を考えましても、あの当時大学当局も非常に苦労をして、安田講堂から退去せよということを非常に言ったけれども、どうしても聞かない、こういう点から見まして、あの場合には不退去罪ということがその罪名一つでも非常に明確でございますし、そういうこともありまして、ああいう大量の検挙を見たと思います。しかし、中には未成年の者もおりまして、私が聞きますところによると、逮捕後そういう暴力をふるったということに非常に反省をしておる者もかなりあるようでございますが、あの場合には、不退去罪などが非常にはっきりしておる、また器物破壊というようなこともはっきりしておりますので、そういう意味と、やはりあの事態は非常に激しいものでございましたから、東大の場合には非常に大きな起訴を見まして、そういう結果ではないかというふうに私ども考えております。
  98. 山田太郎

    ○山田(太)委員 私のお伺いしたのは、大臣の立場として——刑事局長さんにお伺いする問題だったらまた別にやるのですが、大臣としてどのようにお考えになっているかという点もお伺いしたかったわけです。
  99. 西郷吉之助

    ○西郷国務大臣 私自体といたしましても、学生運動がだんだん延蔓してまいりまして、そうしてずいぶん警察当局大学当局も注意を与えても聞かない、自分の主義主張のためにはあらゆる手段を顧みずやる、まことに良識の府の最高学府の学生に似合わぬ暴力をふるっておりますので、私は、ああいう大量の起訴を見まして、ああいうことがかなりその後の学生諸君の心境には影響を与えたのではないか。御承知のとおり、いままで学生問題は非常に起訴率が低うございます。しかし、先ほど来のお話のとおり、各地でいろいろ紛争を見ておりまして、ほんとうに警察当局も手を焼いておるわけでございます。あの東大の大量の起訴を見たことが、学生にかなり強い影響を与え、かなり反省をしておるのじゃないか。その後の関西の大学紛争などを見ましても、最後に機動隊が出た場合にはたいがい逃走しております。ほとんどつかまっておりません。そういうことを考えも、やはりあの大量の起訴、罪名もはっきりしておりますので、そういうことも影響を与えておるのじゃないかと私は考えております。
  100. 山田太郎

    ○山田(太)委員 そこで、きょうは文部省の方は見えておりませんので、刑事局長さんの所見を伺いたいと思います。このたびのように、東大紛争にしてもそうですが、公共の営造物といってもいいものに対して非常な損壊があった。これに対して、文部省に聞くべきことではありますけれども、管理責任者として、このような事態があったときに、法的にどのような措置をすべきであったかという点について御見解をお聞きしておきたいと思います。
  101. 川井英良

    ○川井政府委員 法律家のはしくれですので、御見解のといいますか、御質問のことにつきましても私なりの多少の見解は持っておりますけれども、主として行政法ないしは民事法的な関係に属する事柄でございますので、しかも、なおかつ正式な国会の場でございますので、私からそれを申し上げることは、はばかられるわけでございます。  ただ、印象として申し上げれば、やはり国有財産の管理者というものは、国民から預かっておるその不動産なり中にある物品なりというものの管理につきましては、善良な管理者の注意と立場でもってその損壊を防いでいくということが理想でありますし、また、そのために万全の判断措置をとるべきものではないかというふうに思います。
  102. 山田太郎

    ○山田(太)委員 当たりさわりのない御答弁だったと思いますが、またそれだけしかきょうは言えないかとも思います。  そこで、次には警察当局にもあわせてお伺いしたいわけでございますが、法秩序を維持していかなければならないということは、当然でございます。したがって、このたびの警察機動隊の導入があったということも、あの時点においてはやむを得ない、これも当然だと思います。したがって、その次に起こるべき問題といたしまして、東大のように要請がなかろうとも、事実中央大学とか立命館大学ですか、そのような場合、強制捜査をやった。その実情、また、それがどのような効果があったかという点について、警察当局からも御答弁を願いたいと思います。
  103. 川島広守

    川島(広)政府委員 いまお述べになりました大学への警察官の導入の問題でございますけれども、お話にもございましたように、現在起こっておりますのは、いわゆる大学の自治と無縁な暴力行為が行なわれておるわけでございます。警察の基本的立場といたしましては、あくまでも犯罪が行なわれようとしておる、あるいは犯罪が現に行なわれておる、あるいは犯罪が行なわれた、いわゆる犯罪というものが存在することが前提でございます。したがいまして、そこに犯罪がありますれば、警察官が出てその不法な状態を排除する、ないしは必要な検挙なり捜査なりというものが、当然行なわれなければならない、これは警察の責務でございます。ただ、大臣お答え申し上げましたように、現実の問題といたしましては、犯罪の捜査というものはいわゆる一人歩きのできるものではございません。どのような小さな犯罪でございましても、たくさんのいわば参考人の方々なりそういう方々の御協力を得ないことには、捜査はできないわけでございます。現実問題として、大学の場合におきましては、きわめて多くの場合、捜査につきましての十分なる協力が得られない、はなはだ遺憾でございますけれども、そういう実情にございます。しかしながら、警察側の基本的立場はいま冒険に申し述べたとおりでございますから、今後ともそのような立場で責任を果たしてまいりたい、こう考えております。  いまお話しになりました中央大学及び立命館大学のケースでございますけれども、これは立命館大学の場合には、二月十八日に、学内におきましていわゆる代々木系とその他の反代々木系との間に大乱闘が起こったわけでございます。その結果として、新聞に報ぜられておりますところによりますれば、二百四十二人という大量のけが人が出たという事案でございます。これを認知いたしました警察といたしましては、必要なる令状の発布を受けまして、警察官約二千五百名程度を編成して、それで所要の措置をとったわけでございます。しかし、中央大学の場合におきましては、二月十九日でございますけれども、これは大学当局においてあらかじめ学内に立ち入りをしてはいけないというふうな措置をとりましたにもかかわらず、二百二十名に及ぶ大量の学生が、その立ち入り禁止の措置に反して不法に侵入をした、こういう事件でありまして、警察官およそ五百名をもちましてこの全員を退去させた、こういうケースでございます。
  104. 山田太郎

    ○山田(太)委員 そこで、このたびの学生の大量起訴の問題について、もう一度警察当局にお伺いしたいのですが、この起訴については、法的にはもちろん検察官の独占行為ではありましょう。しかし、これについて、この起訴がいまだかつてない大量の数ということについては、警察当局として、いわゆる警察政策的な意味があって、検察当局のほうに何かの要請なり、あるいは起訴処分にしてもらうように慫慂といいますか、そういうものがあったやに聞くのですが、その点はどうでしょうか。
  105. 川島広守

    川島(広)政府委員 いまお述べになりましたことにつきましては、結論から申し上げますれば、特段あらためて今回の場合にこうしてほしいというような意見を申し述べておるものではございません。すべての刑事事件を検察庁に送ります場合には、当然捜査官の立場でいろいろな意見をそのつど述べておりますが、別して今回の東大事件に限って特別な意見を付したということはございません。
  106. 山田太郎

    ○山田(太)委員 当然その御答弁があるべきだとも思います。  そこで次には、刑事局長さんにお伺いしますが、私の申し上げるのは、あくまでもいまの学生のこのような暴力行為を是認するという、そのつもりはみじんもありませんから、その点はまず了解願った上で、ただ心配なのは、この大量の学生が非常に将来のある身である、また同時に、御父兄あるいはごきょうだい等々に、いいにしろ、悪いにしろ、非常に大きな影響力を持っておると思います。ことに不安な気持ちを与えておると思います。また、学生自身の将来にとっても、メーデー事件のことを考えてみても、十数年、十五年とか十六年とかかかっておる。もうすでに社会的有罪とも言っていい。あるいは吹田事件にしてもそうです。おそらくやこのたびのこの事件も、裁判が長引くことは予想されるわけです。少数の分離裁判は行なわれておるようではありますが、しかし、やはり統一裁判の要請ももちろんあるようですので、当然長期間にわたる裁判になると思います。したがって、いまだかつてない大量の起訴があったこと自体は、一つの政策的な意味もあるかもしれません。あるいは一罰百戒の意味があるかもしれません。しかし、それにしてはあまりにも多いという印象を世間に与えております。と同時に、学生の将来のことを考えますと、いまの裁判官にしろ、あるいはいまの検察官にしろ、過去においては学生運動に身を入れた人さえあると聞いております。やはりいまのこの紛争事件に参加した学生も、全部が首謀者じゃないということは、はっきりしております。また、付和雷同組であるという人も、相当数いらっしゃるようです。そういう点からかんがみて、この起訴という問題については、非常に慎重にすべきではなかったか。また、将来のこともありますので、いまの起訴された事実を踏まえて、この問題についてもう一度どういう意味で——事実犯罪事実があったのだから、あるいは不退去罪とか、あるいは公務執行妨害罪だとか、とにかく事実の犯罪があったのだから、これに対して起訴するのは当然であるということも、法的にはもちろん当然でしょう。学生だからといって、それを差別するわけにはいかぬというふうな峻厳な立場があるかもしれません。しかし、事柄が事柄でありますので、この学生の将来に対しては、どのようなことを考えられたか、何にも考えずにやったか、とは考えたくないわけですね。その点についてはどうでしょうか。
  107. 川井英良

    ○川井政府委員 まず、学生事件の起訴率について、実態をお話し申し上げなければいけないと思います。と申しますのは、起訴率そのものは、東大の大量起訴がありましても、学生事件については非常に低いわけでございます。今日までにおもなる学生事件は、羽田事件以降拾ってみますと、検察庁が受理したのはおおよそ八千件に及んであります。そういうふうな八千件の中で、起訴が二千件弱ということでございます。一般の刑事事件の起訴率は、ここ年間平均六三%から大体七〇%あたりを上下しておるのが実情でございます。そこで、この種の学生暴力事件一般の刑事事件一つでございますので、きのう現在でいわゆる起訴率なるものを整理したところによりますと、学生暴力事件については、三四%の起訴率を示しております。八千件で二千件だから、二五%ということに起訴率が常識的にはなるわけでございますが、これは実は処分留保ということで、非常にたくさんの者がまだ起訴、不起訴をきめないで、釈放のままで捜査中ということになっておりますので、今日まで不起訴がきまった者と、それから起訴がきまった者とを合わせて起訴率を出しますために、三四%という起訴率になっております。そこで、処分留保の者のほとんど八%以上は不起訴になるという大体従来の見込みでございますので、それを入れますと、結局起訴率は二〇%から二五%程度になるのじゃないか、こう思います。これは東大事件を入れてもそういうことでございますので、全体といたしましては、検察庁の処理の方針は、一般刑事事件に比べまして非常に慎重に処理しておるということが、一般的に申し上げることができると思います。  それから東大事件の起訴率は、まだ処分留保がございますけれども、私どもの計算では大体七〇%弱が東大事件の起訴率でございますので、ただ大量起訴という点で非常に目立ちましたけれども、起訴率そのものからいきますと、必ずしもきわ立って高い起訴率だと、こういうふうには言えないわけでございますので、その辺のところを一応最初に御了解賜わりたいと思います。  大量起訴でございますが、これにつきましては、公訴は裁判官が主宰するところでございますので、裁判官の決意と認識と態度にかかっておる、こういうふうに思いますけれども、起訴いたしました法務、検察当局というふうな面におきましても裁判所に全面的に協力をいたしまして、何とかしてこういうふうな事件を早く処理して、そうして結末をつけるということが、起訴された者の人権を保護するためにも最も好ましいことである、こういうふうに考えますので、あらゆる面から裁判所に対して今日協力を示しておるところでございますが、結果におきましては、学生事件は、いままでのメーデー事件とかあるいは青梅事件とかいうような公安労働事件に比べまして、去年の羽田事件以来のあれを考えてみましても、かなり早く相当の者が裁判ができておりますので、私、この調子でいくならば、この事件全体につきましても、いままでと違って相当なスピードでもって迅速な審理が行なわれるのではないか、またそういうふうに十分に期待することができる、こういうふうに思っております。
  108. 山田太郎

    ○山田(太)委員 そうすると、これも今度はやはり刑事局長としての御見解になりますが、起訴されたのだから、当然裁判になる。そうすると、裁判官の方々に協力して早く判決がおりるようにする、それがまたいまの起訴された学生の人権を擁護することにもなるのじゃなかろうか、これは非常にいいことばだと思いますし、またそうでなければならぬと思います。そこで、事実が一これは裁判所の方にお伺いすべきことではありますが、きょういらっしやらないので。事実は、メーデー事件にしても、吹田事件にしても、長くなっております。また、当然いまの刑事訴訟法のあり方として、大量の被告に対して裁判のできるあり方ではないともいわれております。したがって、じゃ分離裁判かということになるわけですが、これが分離裁判にしても、やはり一人二人というわけにいかぬと思う。やはり十人あるいは十数人のグループになるかとも報道されております。したがって、将来特別立法でもこの問題について考えなければいけないのじゃないかというふうにもいわれておりますが、その点についての御見解はどうでしょう。
  109. 川井英良

    ○川井政府委員 刑事裁判というものは、なるべく迅速に結論を出すということが一方において最大の目的でございますけれども、また、他面において非賞に人権に直結する事柄でございますので、裁判制度を認める限り、その裁判官の心証に訴えて、有罪だという結論が出るまで、あるいは有罪の心証がこないという結論が出るまで、やはりある意味ではとことんまでそれぞれの裁判官がその審理を尽くすということも、また他面において迅速裁判と並んで重要な条件になってくるというふうに思うわけでございますので、早くすることが好ましいことは申し上げるまでもございませんけれども、早くすることだけを考えてもいけないと思います。いままでこの手続法についではいろいろ考え方は出ておりますけれども、なかなか早くしかも正確に公正な結論が出るような訴訟手続というものは、世界じゅういろいろさがしてみましても、あまり的確なものは今日出ておりません。  それから日本の刑事手続法というのは、御案内のとおり、日本の憲法が三十一条から四十条まで、全条文の実に一割をさいて刑事訴訟手続の基本規定を憲法に置いております。こういう憲法は、世界じゅうどこにもないことでございます。それほど刑事手続というものに憲法自体が重点を置いておりますので、その憲法のワク内において、どの程度迅速化をはかるような手続法規ができるかということを検討いたしてみますると、そういう面からも、手続法というものはかなり審理のほうに重点がかかっておるようにも思うわけでございます。しかし、他面において人権の尊重ということもまた別な憲法の条文で要請されておりますので、いま妥当なそのバランスをどこに求めていくかということについて、いろいろ検討をいたしておるところでございます。  ただ、今度の事件は、前の騒擾事件なんかと違いまして、不退去罪とか、兇器準備集合罪とか、公務執行妨害罪というような、いわゆる訴因がきわめて簡明な事件でございます。なるほど大量起訴ではございますけれども、審理の対象になる訴因が、非常に簡明でございます。したがいまして、検事のほうの用意しております立証のための証人とか証拠物件とかいうふうなものも、きわめて簡潔、簡素なものを用意いたしておりますので、裁判が始まれば、決してそんなに長くかかる性質の裁判ではない、こういうふうに思っておりますので、一つは今度の東大事件の審理の状況というふうなものも考え合わせてみまして、そしてさらに将来の集団事件についての取り締まり法規が必要かどうかというようなことについて、またさらに検討を続けていきたい、こういう気持ちでおります。
  110. 山田太郎

    ○山田(太)委員 では、特別立法云々の問題については、いままだ検討中だということですか。
  111. 川井英良

    ○川井政府委員 ただいまその必要性を検討中という段階でございます。
  112. 山田太郎

    ○山田(太)委員 よく世上にいわれております、木を見て森を見ない、あるいは森を見て木を見ない、そういうことばがあります。格言ですが、これはやはり裁判においてもいえることだと思います。当然、非常に簡単な不退去罪あるいは公務執行妨害罪というような罪名でございますから、処理しやすいというふうなお話もありますが、これは新聞の報道ですが、同じ背景でありながら、いままでやった分離裁判の中で判決が違う、刑罰に差ができておる、そういうようなことも報道されております。したがって、このような問題があれば、当然統一裁判の声も出てくるかとも思う。そうなれば、どうしてもいまの裁判形態では非常に長くかからざるを得ないのじゃないか、ことに大量でございますから。この点については、もう刑事局長さんは聞かれておると思いますが、どう思われますか。
  113. 川井英良

    ○川井政府委員 その御質問お答えするためには、この種の事件がなぜ手間がかかるのか、その原因を分析してみないと的確なお答えができないと思いますけれども、それはかなり時間を要しますので、簡単に要点だけ申し上げますと、一つの点は、今度の東大事件につきましても、裁判所は迅速審理を目標にいたしまして、当事者である検察官とこの事件についておる弁護人の双方を招集いたしまして、そしてどういうふうな方向で審理をしていこうか、いつごろ第一回公判期日を入れようかということで、二回にわたって裁判官から招集があったという報告がきております。検事はその招集に応じまして、裁判官のもとに行きまして待っておりましたけれども、この事件についておる弁護人の方は、多忙を理由に二回とも出席をしていないということで、とうとうその協議会がいまだに開かれていなかったという報告に接しております。そういうようなところからうかがわれますように、やはり被告人ないし被告人についておる弁護人のいろいろの立場とか、あるいはその考え方とかいうものがありまして、なかなか第一回公判期日が指定されにくいというふうな事情も、一つあるわけでございます。  それじゃ、裁判官として訴訟を主宰する立場において、弁護人に対してどういうふうな命令措置ができるのかということになりますと、これは法律的にはいろいろの措置がございますけれども、実際問題として、検察官のほうに対しましては、これは役人でございますので、裁判官の命令にほとんど一〇〇%応じて訴訟を進行していくという立場にございますけれども、片方は、弁護人のほうは必ずしも検事に同じような身分の立場にはございませんので、なかなか指示なりあるいは趣旨なりというものが必ずしも徹底しない。むしろ独自の立場で訴訟に協力するといいますか。訴訟を推進していこう、こういうふうな立場にもございまするので、制度的な問題もからんでおりまするけれども、今日非常にこの種事件は長引いておりますのは、そういうふうな事件についておられる弁護人側のいろいろな事情というものも、一つの事情として数えあげていいんじゃないかと私は思いますが、これは非常に解決にむずかしい問題を含んでおりますので、やはり法曹三者というものが、先ほど申し上げましたような刑事裁判の本旨にかんがみまして、できる限りあらゆる面から裁判所に協力をしていくという態勢と気持ちがないと、この問題はなかなか解決ができないのじゃないかというふうな気がいたします。分析いたしましても、一つの問題を取り上げましてもそういうふうな非常に難点があるわけでございます。  それから、先ほどおあげになりました、分離すると、あるところでは重くなって、あるところでは軽くなるようなことが出やすいんじゃないかという御指摘がございました。これはそのとおりでございます。ただ、裁判というものは、一律の表を設けて、こういう事件をやったら懲役一年、こういう事件をやったら懲役六カ月、こういうふうにするわけにはまいりませんので、やはり裁判をする裁判官の人生観とか、態度とか、ものの考え方とか、あるいは法秩序のあり方とかいうものの信念に基づいて、そしてしかもさばかれる者は、同じ行為をやりましても、経歴も違いますれば、それからものの考え方も違った人でございますので、その人に最も合ったような判決が言い渡されるというのが、私理想だと思います。そうは申しましても、同じ時期に同じ若い者が同じことをやったのだから、なるべく同じような刑罰が下るということも、また一方においてはなはだ常識的なことだろう、こう思いますので、違う裁判所でありましても、なるべく近いような判決があるということが一般的には望ましいと思いますけれども、他方において、それが多少の食い違いを見せたからといって、直ちにそういう裁判の制度というものが批判の対象にならなければいけないものかどうかということにつきましても、なおさらに検討が必要ではないか、こういうふうに考えております。要は、こういう事件を処理する裁判官が、いろいろな方面から万全の措置判断に基づきまして、最も妥当公正な審理がされることを期待したいと思います。
  114. 山田太郎

    ○山田(太)委員 では、最後に一点。国民も、このたびのような暴力は、当然憎んでおります。しかし、罪は憎んで人は憎まずということもあります。あまり短期ですぐ釈放したのでは、またもとへ戻ってしまうという懸念もあるかとも思いますが、しかし、何ぶんにも将来のある若い人々です。その罪は罰せられべきが当然の人もたくさんおると思います。しかし、私の知っている人々の中に、過去の人ですが、いわゆる付和雷同組であって、しかもそれが長引いたために、よしんば執行猶予になったとしても、社会的刑罰は十分受けて、ほんとうにその人の一生をめちゃめちゃにしてしまった、破滅に近い状態にしてしまった。これは国家的な見地から言うても、非常に大きな損害だと思うわけです。また、その多くの中にも、優秀な頭脳を持っていらっしゃる方々もおると思う。これは考えてもいいのではないか。そういう点から、罪は憎んで人は憎まず、また人間的な立場から、また国民的な立場からいっても、こういう人々を納得いくような、しかも将来を思った、そういう取り計らいを、もちろん先ほどおっしゃった法曹三者の強力なバックアップが大切なことでしょうけれども、ことに検察陣としてもその点を強力に進めてもらいたいということを要望して、きょうの質問を終わります。
  115. 高橋英吉

    高橋委員長 次回は、来たる十八日午前十時より理事会、理事会散会後委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。    午後一時二十二分散会