○猪俣
委員 大臣お見えになりませんし、矯正局長もお見えになりませんので、それでは事務的のことしか
答弁いただけないと思いますが、
政務次官おいでになるから、あわせてお
考えをいただきたいと思うのです。
これは、私が昨年の五月二十四日に当
法務委員会で質問をいたしました白鳥事件、村上国治の仮釈放の問題であります。ちょうど昨年の五月二十六日に仮釈放の期限が来るのであるから、これを仮釈放してはどうかという質問でありまして、当時の勝尾矯正局長が詳しく
意見を述べられております。実はこの
法務省の矯正局のお
考えが村上国治を救う会の人たちに非常に
希望を与えまして、自来全国的な救援運動になっているわけです。私も、昨年の八月要請を受けまして、網走刑務所まで行ってまいりました。刑務所長及び担当官にもお目にかかり、村上国治にも会ってまいりました。刑務所の担当官は村上を非常にほめておりました。模範囚だと言っておりました。これは
法務省の勝尾局長の
答弁にも出ておるわけです。犯罪者の処遇令で三級から二級に昇進したというのは、その
意味であります。そこで、なお帰りには札幌の地方更生保護
委員会をたずねまして、小泉
委員長に会ってまいりました。そのときの
委員長の
答弁は、刑務所のほうからまだ何らの上申もないから
委員会としてはそのまま活動しないでおるんだという御
答弁であったのでありまして、これは勝尾矯正局長の御
答弁でも、この仮釈放の上申は一〇〇%刑務所のほうから出るんだという御
答弁がありましたので、そういう慣例になっておる。それから本人の申し立てもありましょうが、刑務所がやる。その刑務所の上申がまだないというような話でありました。
ところが、最近ここに二つの新しい事実が耳に入りましたので
お尋ねするわけでありますが、昨年網走の刑務所では、刑務官全員
会議を開きまして、全部の
一致した
意見で村上国治は仮釈放すべきものだという決議をいたしまして、これを地方更生保護
委員会に上申したという事実が、私の訪問後起こってきておるわけであります。だから、その当時小泉
委員長が私に
答弁したことはなくなって、刑務所からそういう上申がされている。しかも条件つきだ、四十三年の年内に釈放することが適当であるという期限を付して上申しておるわけであります。しかるにかかわらず、それに対して何らの処置も
委員会はやっておらぬという点が一つ。
それからいま一つは、いまこの事件は札幌の高等
裁判所に再審の申し立てがなされまして、再審すべきやいなやについて再審開始決定の
裁判が行なわれておるのでありますが、ここに新たなる証拠があらわれてきた。これは実は私は年来当
法務委員会におきましてもしばしば
指摘したことでありますが、検事が公益の代表者という
立場を忘れて被告に有利な証拠を出さない。松川事件な
どもまさにそのためであります。これは根本的に刑事訴訟法を
改正しなければならぬのでありますが、それをしばしば私は要請しておりますが、今日まで何らの処置もとられておらぬ。やはり同じこの再審
裁判におきまして、科学警察研究所というところで、十数年前に事件当時唯一の物的証拠とされておりまするピストルの弾丸を鑑定している。つまり共産党の村上国治らが実弾射撃をしたという幌見峠から出てきた弾丸と射殺されました白鳥警部の体内から出てきた弾丸とが同一のものであるという主張によって、これが唯一の証拠として彼は有罪判決を受けているわけです。弁護団は、これは違うんだというあらゆる立証をしているけれ
ども、
当局者は採用しなかったのでありますが、今度初めて警察庁の一機関でありまする科学警察研究所ですでに十五年前に、これは違うんだ、幌見峠から出た弾丸と白鳥警部のからだから出た弾丸とは違うんだという鑑定ができておった。それを検事は出さぬのであります。それが今度ようやく明らかになりまして、再審
裁判所の札幌高等
裁判所が
提出命令を出しまして、科学警察研究所からその鑑定書があらわれました。いま
裁判所に非常にショックを与えておりまして、四月には再審決定されることも明らかであります。こういうことが、新たに事実としてあらわれてまいったのであります。これが立証されますならば、彼は無罪であります。唯一の証拠であります——彼は一切今日まで否認し続けてきておるのですが、白鳥警部から出た弾丸と幌見峠の弾丸が同一であるという鑑定だけを
裁判所は採用して、有罪として今日まできたのです。それが国家機関でありまする科学警察研究所では、十数年前に違うものであるという鑑定をしておるのです。それを一切
検察官は
提出しなかった。あらためてこれが出てきたわけであります。私が昨年八月網走に参りまして以来、こういう二つの新しい事実が出てきたわけであります。
そこで、この仮釈放の権限は札幌の地方更生保護
委員会でありましても、やはり指揮
監督権は
法務省にあると思うのであります。この小泉という
委員長は、検事上がりの
委員長だそうであるが、相当頑強であって、これは神近
委員から関連質問をしていただきたいと思いまするが、神近
委員が最近電話でもってこの
委員会に連絡をしたところが、どうも村上国治は仮釈放するとまた犯罪を犯すおそれがある、それだからなかなかこれは容易じゃない、こういうようなことを言うておるというのであります。五年間つぶさに彼を観察してまいりました刑務所が、全官
一致して仮釈放すべきであるという上申をしているにかかわらず、この
委員長はそんなようなことを言うている。私が訪問したときも、全記録を全部読まなければ判定がつかぬということを言っておりました。それで、全記録を読むには一、二年かかるのだというようなことを言っておった。一体こんなことでいいものだろうかどうか。これは
法務省としてもひとつお
考えいただいて、地方更生保護
委員会ともう少し緊密な連絡をとっていただきたい。もしこのままの姿で再審になりまして、そして被告が無罪になりましたら、どういうことになりますか。もう彼は十六、七年自由を拘束せられて刑務所におるわけであります。そういうことに対しまして、どうも札幌の地方更生保護
委員会の態度というものは、私
どもは不可解です。一体
法務省は、こういうことに対して適切なる指導ができないものであるかどうか、またこういう新しい事実を御存じなのであるかどうか、これを
お尋ねいたします。