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1969-07-02 第61回国会 衆議院 文教委員会 第28号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十四年七月二日(水曜日)     午前十時四十七分開議  出席委員    委員長 大坪 保雄君    理事 久保田円次君 理事 河野 洋平君    理事 高見 三郎君 理事 谷川 和穗君    理事 西岡 武夫君 理事 唐橋  東君    理事 長谷川正三君 理事 鈴木  一君       坂本三十次君    櫻内 義雄君       中村庸一郎君    藤波 孝生君       松澤 雄藏君    八木 徹雄君       川崎 寛治君    川村 継義君       小林 信一君    斉藤 正男君       帆足  計君    山中 吾郎君       岡沢 完治君    有島 重武君       石田幸四郎君  出席国務大臣         文 部 大 臣 坂田 道太君  出席政府委員         文部大臣官房長 安嶋  彌君         文部省大学学術         局長      村山 松雄君  委員外出席者         専  門  員 田中  彰君     ————————————— 七月一日  委員藤波孝生辞任につき、その補欠として西  宮久吉君が議長指名委員に選任された。 同日  委員西宮久吉辞任につき、その補欠として藤  波孝生君が議長指名委員に選任された。 同月二日  委員岡沢完治辞任につき、その補欠として西  村榮一君が議長指名委員に選任された。 同日  委員西村榮一辞任につき、その補欠として岡  沢完治君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 七月一日  大学運営に関する臨時措置法案の反対に関す  る請願(中野明君紹介)(第九八一九号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  大学運営に関する臨時措置法案内閣提出第  一一一号)      ————◇—————
  2. 大坪保雄

    大坪委員長 これより会議を開きます。  大学運営に関する臨時措置法案を議題とし、審査を進めます。  質疑の通告がありますので、これを許します。藤波孝生君。
  3. 藤波孝生

    藤波委員 先週の西岡委員質疑に引き続きまして、大学運営に関する臨時措置法案について質疑を行なってまいりたいと思います。いろいろな問題についてこの際お伺いをしておきたいと思いますので、与えられた時間の中でひとつ簡潔にお答えをいただいて質疑を進めてまいりたいと思いますので、御協力お願い申し上げたいと思います。  先週の西岡委員大臣との質疑の中で一番大きく取り上げられた問題は、何といっても大学制度改革について、教育改革についての大臣考え方ビジョンをひとつ打ち出してもらいたいという強い期待感西岡委員質問には込められておったと思うわけでございます。私ども自民党がいま最大の関心を払っております問題は、大学制度改革、発展をする社会と対応する大学、開かれた大学像というものを具体的に実現をしていくということでございます。そういう意味では、坂田大臣文教制度調査会会長をやっていらっしゃったころにまとめました中間報告の中にも、具体的な処方を緊急に用意することが求められることはありましょうけれども、やはりわれわれの姿勢として大切なことは、当面の即効薬ではなしに、将来の日本を展望した新しい大学像がつくられることである、これが坂田大臣自身が御執筆になった文教制度調査会会長のごあいさつであるわけであります。そういう意味で、私どもはいま最も大きな関心を持って、ずっとその後も検討は進めてきておるわけでございます。最近、中教審から中間報告が出、あるいは学術審議会中間報告をお出しになりましたけれども、ひとつこの際、やはり坂田文部大臣自身ビジョンというものをある程度打ち出していただくということが、国民に対して将来開かれた大学像というものの期待をさらに大きくさせる意味合いにおいて大切なことではなかろうか。特にこの大学運営に関する臨時措置法案を私どもとしてはどうしても通過をさせたいと考えておりますだけに、並行してやはり大学改革ビジョンというものが打ち出されることを大きく期待をするわけでございます。そういう意味合いにおいて、この際冒頭に、坂田大臣が考えていらっしゃいます大学制度改革ビジョンをひとつ御説明をいただきたいと思います。
  4. 坂田道太

    坂田国務大臣 大学のあるべき姿というものにつきまして、文部省といたしましては、明治以来今日までの学校教育制度全般につきまして二年間検討を重ね、その中間報告がこの六月の三十日に発表になったわけでございます。その中におきまして、さらに大学のあるべき姿を中教審はこれから精力的に審議をしていただく、そしてできるだけすみやかな時間においてこの大学問題の検討を終わっていただきたいとわれわれは念願をいたしておるわけでございます。もちろん、私といたしましては、社会変化に対応する新しい大学像というものは具体的にそういう形で生まれてまいると思いますけれども、しかし、その六月の三十日の中間報告にも示されておりますし、また、その前に御報告になりました当面する大学教育改善方策についてという答申の中においても、ある程度未来大学像というものを示唆しておられるわけでございます。  そういうものを踏まえまして申し上げるわけでございますが、まず第一に、戦前のような閉ざされた大学から国民のために広く開かれた大学というふうに変わらなければならないということが一つの大きい柱かと思います。国民のための大学というのには、まず量的に相当数の人々が学び研究をされるということ、それからもう一つは、将来労働時間もだんだん少なくなってまいることでございましょうし、やがてはだれでもそういう高等教育機関に学びたいという欲求が高まってくると思うのでございます。また一面において、そういう欲求を満たすべき役割りというものが大学に求められなければならないという時代を迎えたのではないか。つまり生涯教育にこたえる大学というのがやはり一つ大学の姿かと思います。そう考えてきました場合に、明治初年から国立大学、旧帝国大学という形で出発しました大学教育それ自体はそれなりの意味合いを持っておったでございましょうけれども、国公私立合わせて百五十万人の学生を擁するというような状況になった今日では、必ずしも国立であるということそれ自体に、意味をどう考えたらいいかということも検討さるべき課題じゃないか。国立私立への国の費用の出し方というものにあまりにも格差があるのではないか。たとえば国立三十万人の一学生に対して頭割り七十六万円、私立百万の学生一人に対して、財投を含めても三万円程度、これはあまりにも格差がひど過ぎるじゃないか。ところが、私立大学及び国立大学の果たしておりまする社会的な役割りあるいは貢献度というものは非常に大きい、差がないんじゃないかというわけでございまして、この辺の問題についても検討していかなければならないと思います。しかも私立大学に学ぶ人は年間十万円あるいはそれ以上の入学金やあるいはその他の費用を出さなければならない。国立大学の人はせいぜい一万二千円、この点もこういう形でいいのかどうかということも考えられなければならない。  それからもう一つは、戦後新しい大学という新制大学が発足をいたしまして、各県に一つ大学が持たれるようになってきたわけでございますけれども、同時に、私立大学がいわば大学設置基準条件を満たしておるならばそれが認められてきた。言うならば日本列島全体を見回した場合において、一つの長期的な教育計画のもとに高等教育機関をどういうふうに位置づけていくかということも考えらるべき課題であったと思うわけでございますが、この点については、われわれ文部省としても多少反省すべき点があるのではないかというふうに思いますし、そういう長期教育計画のもとに、一体どれぐらいの当該年齢人口の者を高等教育機関に学ばせたほうがいいかというそういう人数の問題、それからまた、それを受けとめる器のほうの大学というものが、戦前われわれが頭に描きました、また実際に行なわれました大学というものではなくて、たとえば短大もあります、あるいは一般教養を主とした大学もなければならない、あるいは高等職業教育を主体とした大学もなければならない、また研究中心大学もなければならない。つまりいろいろの高等教育機関に学ぼうとする人たち意欲——それぞれ目的が違う。またその目的の違うこと、多様な要求に対して多様な器というものが考えられなければならないのであって、ただ大学といっても、その大学の内容にはおのずと多様性を持たせなければいけないのじゃないか。目的、性格を明らかにすべきではないであろうかということが考えられるわけで、最近モデル大学というようなことばでいわれておりますけれども、私はむしろ個性ある大学というか、そういうものが必要であって、一つモデル大学というものを設定して、それに右へならえというようなことの意味モデル大学であるならば、そういうモデル大学はよく考えてみなければいけないもので、むしろ特色ある大学というものをこれからは考えていかなければいかぬというふうに思いますし、また地域というものに、どのような大学をつくるかということも考えていかなければならないのじゃないかというふうに思っておるわけでございます。
  5. 藤波孝生

    藤波委員 大綱は承ったわけでありますが、少少具体的にひとつ伺ってまいりたいと思いますので、簡潔に御答弁お願いをいたしたいと思います。  いま大臣の口から一つモデル大学ということばが出たわけでありますが、日本教育の暗さ、大学の暗さというものが、私ども若いものから見て考えますのは、就職をするときに、大きな企業へ入るためには、いわゆるでございますが、やはりいわゆる一流大学でなければならない。その大学へ入ろうと思うと、高等学校で特殊な教育をやらなければいかぬ。それが高等学校から中学校、小学校と、あるいは幼稚園へとずっとエスカレートしていって教育全体が非常に暗いものになってしまう。幼稚園をどこに入るかによって一生がきまってしまうような非常に暗い感じがずっと教育体系の中で暗雲漂うておるわけでございます。その辺の感じを思い切って改革をしてまいりませんと、日本社会民主化ということもかね合わせてでございますけれども、その中で明るい教育というものを確立をしていくということが大切だと思います。従来の一流大学二流大学三流大学といった観念を思い切り払拭をして、地方大学でもどんどんと力をつけて、むしろ日本指導者にそういう地方大学からどんどん人材が出てくるというような大学像というものをやはり確立をしていかなければいかぬのじゃないかというふうに考えるのでございますが、いまたまたま出ましたモデル大学ということばの中に個性のある大学という御説明がございましたが、その辺とからみ合わせて大臣の御所見を承っておきたいと思います。
  6. 坂田道太

    坂田国務大臣 先ほどもちょっと申し述べましたように、戦後新制大学ができました場合に、その大学というものの考え方が旧帝国大学を頭に入れて、そして東京大学あるいは京都大学というものと同じようなものを地方にもどんどんとつくっていくというようなことでございましたので、そこに一つ画一化というものが行なわれた。それからもう一つは、私立大学がたくさんできましたけれども、これまた大学設置基準という一つ基準である程度画一的に大学ができた。したがって、戦前私立大学私立大学なりの特色を持っておったのですけれども、戦後は私立大学特色というものが漸次失なわれてきて、むしろ国立大学に近寄ってきたのじゃないかというふうに思うわけなんでございまして、この辺を、やはり今度の新しい大学というものを構想します場合には、そういう画一性じゃなくて特色ある大学というものを考えていかなければいかぬのじゃないかというふうに私は考えるわけでございます。
  7. 藤波孝生

    藤波委員 学歴偏重の非常に暗い社会、新しい日本の姿というものはそんなものではいかぬと思うわけでありまして、それを何かしっかりと、たとえば教育の中から日本社会を明るくしていくのだというような打ち出し方というものを、ひとつ思い切って新しい大学像の中で打ち出していただきたいと思うわけであります。受け入れるほうの日本社会がどういうものでありましょうとも、教育世界からそれを打破していくのだというような文部省姿勢というものがやはりなければならぬと思うのであります。特に個性のある大学をつくっていく、開かれた大学をつくっていく一つの要因として、中教審中間報告にも学術審議会中間報告にも触れられております問題は、大学人事を刷新をするという項目でございまして、これが大学の暗さというものをほんとうに国民に開いていくために非常に重要な要素になってくるのではないか、このように考えるわけであります。この問題に対する大臣の御所見を承っておきたいと思います。
  8. 坂田道太

    坂田国務大臣 先ほどはちょっと私落としましたけれども学歴中心のものの考え方からむしろ実力主義というふうに変わっていかなければならないし、変えていかなければならないというふうに思います。東大を出た者だけが立身出世をするというようなことで、東大に集中をするというような考え方を改めていかなければならないと思うし、学校のやり方も考えていかなければいかぬのじゃないかというふうに思います。  それから、この前の学術審議会の御答申は、これはきわめて示唆に富む御答申であると私は思っております。一方において国民のために開かれた大学、大多数の人が、能力的にいいましても普通の程度能力を備えた者がだれでも入れるような大学ということが社会一つ要求でありますと同時に、今日の日本学術学問水準というものを世界的な水準を維持し、あるいは発展させていくためにはどうしても学問研究体制というものを確立する必要がある。そのためにはどうなければならないか。いまの大学で、かつて大学がやったような基礎的な研究の成果というものを果たしておるかどうか、またそれに対して国はちゃんとした施策を行なってきたかどうかということについての報告を出されているわけでございます。しかもそういうような研究活動というものがうまく機能していないという一つ原因には、一面において人事の面について停滞的、よどみがちである、あまりにも身分保障確立し過ぎておる。あるいは学部自治ということにとらわれて、自分のいすを守るためにきゅうきゅうとしておる。そのためにせっかくの若い助教授やあるいは助手あるいは研究生等がどんどん登用されるというようなことがない。また同時に、私立学校国立大学との教授の相互的な交流というものに欠けている。それから今日の社会ビッグサイエンス時代だ。当然大学を出てから会社へ入る、しかし同時にどんどんどんどん社会変化をしていく、大学を出たときの基礎的な考え方というものもどんどん進んできている。もう一ぺん再教育大学で受けなければならないというような求めに大学が応じるためにも、一般企業のいわば研究者人事的な交流もなされ得る道も開かれなければならないのじゃないか。そういうようなことについての示唆ある中間報告でございまして、この点をどういうふうに今後大学制度の中に取り上げていくか、そしてまたそういう形において、たとえばいまの学部制度というものがいいかどうかということについても考え直してみるべきではないか。たとえばドイツにおきますコンスタンツ大学等におきますような、いわば研究体制大学という新しい試み、これはいままでの学部制というものを全然なくしてしまって、そうして物理、社会それから哲学あるいは文学部といいますか、そういう三つか四つの学部に編成し直してやっておるというような試みも行なわれておりますし、同様のことがイギリスのエセックスあるいはサセックス等大学において行なわれておるようでありますが、こういうようなことをやはり日本のこれからの大学を考えていく場合において導入しなければならないのじゃないかというふうに思うわけでございます。そのことによって初めてこの研究活動というものが活発になり、そして世界学問水準を維持し、発展させていくことができるのではなかろうかというふうに私は考える次第であります。
  9. 藤波孝生

    藤波委員 大学制度改革大学の新しいビジョン文部大臣が打ち出していかれる中で、当然高等学校以下の問題も考えられなければならぬと思うわけであります。新しい大学像を打ち出していくということは、六・三・三・四制度、戦後二十四年間積み上げてきたこの六・三・三・四制度に抜本的に検討を加えるという意味は含まれておるかどうか、御所見を承っておきたいと思います。
  10. 坂田道太

    坂田国務大臣 これは六月三十日の中教審答申にも示されておりますように、一番下は就学前の幼稚園教育から上は大学教育まですべてを洗い直し、長所短所、いままで明治以来今日までやりました制度をどういうふうに社会が受けとめておるか、また、これから新しい社会は何を求めておるかというようなことについての総ざらいをいたしまして、問題点を指摘いたしておるわけでございますが、さらにわれわれは未来社会というものを描きつつ、それからのどういう要請があるかということを点検して、その中において大学問題というものを考えていかなければならぬし、その学校教育全体の中でこの大学問題を取り上げていこうという考えでございます。
  11. 藤波孝生

    藤波委員 この六・三・三・四の中のあとの三、高等学校でありますが、今日では中学から高等学校へ七五%から八〇%、ほとんど進学をして、高校教育を受けておるわけでありますが、高校教育の中には職業コース進学コース——進学コースというのは非常に暗い面もありますし、これはさっき申し上げた大学からエスカレートしてくるわけでありますが、そういった問題でありますとか、それから中学から高等学校進学できない子供たちを見ていると、能力の云々というよりも、経済的な問題であるとか、あるいは地理的に僻地であるとかというようなことが大きく災いして進学できないというような場合もある。何かこの辺、今日では中学から高等学校へというあたりで非常に暗いものが漂うわけでございますが、六・三・三・四の再検討という中には高等学校義務教育化ということも含まれておると考えてよろしいかどうか、大臣の御所見を承っておきたいと思います。
  12. 坂田道太

    坂田国務大臣 現在七〇%以上をこえて高等学校に進んでおる実情でございますが、この点につきましては、一つ問題点としては指摘をされておりますし、検討課題だと考えております。ただ私の考え方を申し上げますと、中学までは義務教育でございますけれども高等学校段階では、ことに複雑化いたしました社会、またその社会要請、また各人の教育を受けようとする要求も種々さまざまでございます。そういうわけでございまして、あらゆる才能を持ち、あらゆる傾向の違った人たちに対して、単純な一つ学校制度だけでこれにこたえようとするということは、真の意味における教育機会均等、あるいはその才能を引き上げるといいますか、引き伸ばすということに相反すると私は思うのでございまして、やはりこの後期中等教育段階においては、相当多様なる体制というものが導き出されなければならぬじゃないかというふうに思います。戦後特に普通教育万能主義というものが少し行き過ぎまして、どちらかというと職業教育というものを軽視する傾向もあったことはいなめないわけでございます。しかしながら、その後の各委員方の非常なお骨折り御協力等によりまして、産業教育振興法あるいは理科教育振興法等もできまして、そうして産業教育に力を入れるということで、一面においては多様化をしてきた。あるいは高専制度を導入するというような、単線型から複線型への導入ということも考えられました。今日、大学人口というものは大体百五十万といわれておりますけれども各種学校に学ぶ者が大体百四十万おる。この各種学校の百四十万という人たち教育というものは非常に大切な分野じゃなかろうか、また社会貢献をしておる度合いというものは非常に大きいのではないだろうか、こういうものを含めて後期中等教育というものを考えなければならないのではないかと思うのでございまして、選択する自由というものは学ぶほうの人たちにあるけれども、それをこなすところの器というものは、やはりもう少し多様に考えていくべきではないだろうか、そういう形においていわゆる教育機会均等を与えていくということのほうが、私は自由社会の行き方であろうかというふうに考えるわけでございます。大学問題を考えますと同時に、それにつながるところの後期中等教育の問題が非常に重大な問題であるというふうに考えておる次第でございます。
  13. 藤波孝生

    藤波委員 時間に限りがございますので、先を急ぎますが、大学制度改革と六・三・三・四の再検討中心にして、新しい教育像というものを思い切って打ち出していただきたい。中教審もけっこうでございましょうし、学術審議会もけっこうでございますが、それはあくまでも意見でありまして、腹をきめて取りかかるというのはやはり文部大臣でありますから、日本の将来を考えて、思い切った坂田カラーを打ち出して国民期待にこたえてもらいたい。国民は、いまや紛争状態にある大学改革教育改革については、それだけで一つ内閣ができなきゃいかぬ、一つ内閣がつぶれて一つ内閣が生まれてくる、それで初めて日本教育改革されるのだくらいに非常に大きな期待を持っておるわけでありまして、あまりあちらこちらのごきげんをとることを考えられないで、ひとつ文部大臣、思い切った坂田さんの気持ちを打ち出していただくということをお願いをいたしておきたいと思うのであります。  ところで、大学紛争実態でありますが、四年制大学三百七十九校のうち、百九校の大学の中に紛争が生じておるわけであります。しかもその中で国立大学国立総数の八〇%に及ぶ。こういう実態で、十万人がさらに授業が受けられないでおる。ビジョンとして開かれた大学といいながら、全く閉ざされた大学実態になっておるということをわれわれは非常に遺憾に存ずるわけであります。まず、この事態文部大臣としてどう考えるか、一言で簡潔にお答えをいただきたいと思います。
  14. 坂田道太

    坂田国務大臣 まことにこれは遺憾な状況でございまして、とにかく取り方はいろいろございますけれども国立大学七十四のうち三十校、四〇%に及ぶ大学紛争を起こしておる。一方、条件国立よりもきわめて劣悪であるといわれておる、あるいはマスプロダクションといわれておる私立大学のほうが、二百七十校のうち九校というふうにわずかである。そしてまた、紛争が起きましても復原力を持っておる。こういうことは一体どういうところに原因があるのかということを考えました場合に、どうも国立大学というものは、あまりにも身分保障先ほど申しますように安泰であるがために、これに対応できない。これに安住し、そしてその大学紛争に対して私立大学よりものんきではないだろうかというふうに私は思わざるを得ないのでございまして、もう少し自分たち社会的責任というものを痛感されて、一日も早く教育正常化をはかってもらいたいというふうに考えておるわけでございます。従来指導、助言によって大学側自主的解決を待ってきたわけでございますけれども、しかし、もう一年以上も紛争が続く、またエスカレートする、こういう事態に対しまして、来年の入学試験さえも危ぶまれるというようなことを考えました場合に、文部大臣といたしまして、国民に対する責任を果たす上におきまして、一日も早くこの事態が収拾いたしますように、ただいま最小限度の立法を私はお願いをいたしておる次第でございます。
  15. 藤波孝生

    藤波委員 学生暴力事件が相次いで、この間も谷川議員の本会議における質問にも答弁がありましたように、昨年の一年間に検挙した学生の数が五千五百四十七名、ことしの六月中旬までの数が四千九百五名の多きを数えるわけであります。本年の一月から現在までに検察庁が受理した学生の総数二千百十一名、捜査中の者が千六十三名という数字を数えております。この中にはすでに処分済みの者もあるわけでありますが、こういった学生が学籍を置く大学においては、一向に処分の対象になっていない。学校教育法の第十一条には、教育上必要ありと認めるときは、校長及び教員は学生に懲戒を加えることができるとして、停学、退学、訓告の処分が行なわれることを規定をいたしておるわけであります。学生としてという立場を別に考えなくとも、社会人として、そういった判決を受けた者については大学としての処分もなければなるまいと考えるのでありますが、それがほとんど行なわれていないのが大学実態でございます。この事態文部大臣はどのようにお考えになるか、御所見を承っておきたいと思います。
  16. 坂田道太

    坂田国務大臣 これだけの暴力事犯あるいは不法状況というものが行なわれておって、そしてなおかつ大学当局がこれに対してき然として——これの学則違反と申しますか、あるいは不法状況、不法なことを見のがしておる、あるいは非常に小さい事件が起きておったときにき然たる態度で臨まなかったというところに、まさしく今日ではどうにも手のつけようがないという事態になっておるのではないだろうかというふうに思うわけでございます。私といたしましては、まことに遺憾でございまして、大学当局がほんとうに自主解決ということをおっしゃるのであるならば、こういうようなことがびしびしやられる体制を一日も早くつくっていただきたいというふうに念願をいたすわけでございまして、そういう一つのささえになるかと思って今日の必要最小限度の立法も提出をいたしたわけでございます。そういういわば不法行為等が行なわれた場合において、大学当局が機敏に迅速果敢にこれに対処し得る道、あるいは手だてというものをこういう法律を制定をいたすことによって醸成しようというのが私の気持ちであるわけでございます。
  17. 藤波孝生

    藤波委員 今回提出をせられました大学運営に関する臨時措置法案をめぐって具体的に少々質疑を進めてまいりたいと思います。  この法案に対してはいろいろな意見が各方面から出されております。各大学においても、大学立法反対の決起集会であるとか、ストライキなどがあちこちで盛んに行なわれておりまして、私どものところにもその反対声明なるものをずいぶんとちょうだいをいたしておるわけでありますが、その集会の中で話し合われておりますことや、あるいは私どもの手元へ参っております反対声明書などを見ますると、いずれも非常に抽象的でありまして、もう大学の自治の侵害である、大学に対する政府の介入である、国家権力の介入である、この一点ばりで反対反対が打ち出されておるわけでございますが、そういった反対論に対してまず大臣はどのようにお考えになるか、御所見を承っておきたいと思います。
  18. 坂田道太

    坂田国務大臣 当事者でありまする大学当局あるいは学生たちが反対する気持ちがわからぬわけではないのでございますけれども、それだからといって、それじゃ今日提出いたしておりまする大学の立法というものをよく読んでやっているかというと、必ずしもそうではないのじゃないかという気もいたします。  それからもう一つは、やはり基本的に大学自治というものをどういうふうに学生たちが考え、あるいはまた教官でもどういうふうに考えておるのか。われわれとして理解に苦しむわけでありまして、まさにいま暴力学生によって学問の自由が侵されておる、教育研究というものができなくなってしまっておる、しかも大多数の教官や大多数の学生というものは真剣に静かに学ぼうとしている。ところが、一部暴力学生によってこの学問の自由が侵されているという認識を一体どういうふうに考えているのだというふうにあえて問いたいくらいでございまして、その暴力排除に対して自分たちが無力であるということはもうわかりきっていることでございます。そういう場合に、やはりある場合において警察力を入れるということは当然なことだと普通の常識ある者なら考えられなければならない。ところが、それが考え及ばない。大学の先生みずからが考え及ばないというのは一体何なのか。これはやはり戦前におきまして、その人事権やあるいはまた教授の学問研究、そのことに国家権力が介入した過去の歴史というものが災いをしている。しかし、戦後におきましてそういうような思想あるいはまた政治的信条、あるいはまた宗教その他に国家権力が介入して云々したということは、まあイールズのときは別といたしまして、ほとんどないといってもいいと私は思うのでございまして、そういう意味からいうならば、学問の自由というものは守られておると見るべきであります。むしろ、学問の自由というものがまさに危殆に瀕しておるというのは、学生の暴力によって、一部政治的な考え方を持った暴力学生みずからによってこれを侵されているということであるのでございまして、そういうものを直さぬことにはとうてい学問の自由というものは得られない、おっしゃるような大学の自治というものは確保できないわけでございまして、今日の事態というものは、むしろ危殆に瀕しておる大学の自治というものを取り返すための最小限度の立法である。しかも大学側が自主的に解決をするという努力を助けるということを主眼とする立法であるというこの考え方からいたしますならば、大学自治を侵すなどということでは毛頭ない。大学の自治を守る法案であるというふうに私は考える次第でございます。
  19. 藤波孝生

    藤波委員 西岡委員質疑の中でも、また、今回の立法をめぐって文部大臣が何回も繰り返してお話しになっておられるのは、紛争大学がみずから立ち上がることを助けるのだ、こういう表現がございます。その辺がはっきり解明されれば反対運動に立ち上がっている大学立法反対の学生諸君にももっと理解は得られるのではなかろうか。読んでいないのではないかという大臣の一方的な話でなしに、どういうふうにして立ち上がるものを政府が助けるのか、あくまでも助けるという形でこの立法をされたのだという具体的な解明がなければ、ほんとうに大学に対する介入だという誤解を晴らすことはできないのではないか、このように考えるわけでございます。その辺についての大臣考え方を承っておきたいと思います。
  20. 坂田道太

    坂田国務大臣 この法案のたとえば第六条までのことは、すべてと申し上げていいくらい大学みずからが努力をする、自主的解決のあらゆる努力を払うということについて規定をいたしておるわけでございまして、特に第六条におきまして、たとえば「副学長その他これに準ずる学長を補佐する機関」、そういうものが設けられることができるような規定、あるいは「大学紛争の収拾及び大学運営の改善に関する事項について審議する機関」、あるいはまた「大学運営に関する事項を管理し及び執行する機関」、あるいはまた「学校教育法及び教育公務員特例法に規定する機関で当該大学に置かれているものの職務及び権限の一部を、学長がみずから行なうものとし、若しくはこれらの機関の議を経ることなく行なうことができる」云々というような、こういう非常事態に対しては権限を集中いたしまして、そして迅速果敢にこれに対処する道を開けるという手だて等を列挙し、また、その規定を行なっておるわけでございまして、そういうようなことをみずからやることによって大学紛争の終結へのきっかけをつかむということをわれわれは期待いたしておるわけでございます。
  21. 藤波孝生

    藤波委員 文部大臣の権限を行使する場合には臨時大学問題審議会の議を経ることになっております。反対論の非常に有力な一つに、この審議会というのは政府が大学を弾圧をし介入をするための隠れみのであるという表現がございます。かりそめにもそんな形のものであるとするならば、長い間にわたって日本の国に築き上げてきた大学の自治であるとか、学問の自由というものを侵害するということになるわけでありまして、そういうことがかりそめにもあるならば、自民党が先頭に立って反対をしなければならぬ形になるわけであります。そういう意味で、この際はっきりとひとつ大臣の御所見を承っておきたいのは、この臨時大学問題審議会の委員の選任、審議会の性格というものをどのように考えておるか、どういう方針で審議会をつくっていこうとするのか、文部大臣考え方を承っておきたいと思いますす。
  22. 坂田道太

    坂田国務大臣 大学紛争が、大学側のあらゆる努力にもかかわらず、どうしても終結をしない、そしてそれが長期化して、いわばどろ沼状態になったという場合において、事実上教育もできないし研究もできないというような状況になる場合において、これをこのままほっておくか、あるいはまたそれでもなお大学側の自主解決を待って、じっと黙っておくかというと、そういうわけにもいかぬという文部大臣国民に対する責任もあるわけでございまして、その場合には一応事実上教育研究というものができないのでございますから、ここで教育研究の中止ということを命ずることができるような規定を設けたわけでございます。しかしながら、これはあくまでも文部大臣の恣意的な独断によってきめるべきものではない。最終的には文部大臣がきめますけれども、しかし、恣意的なものであってはならない。そういう意味合いにおいて、やはり第三者機関でございますところの臨時大学問題審議会というものを設けようというふうに考えておるわけでございます。  この人選等につきましては、十分大学問題を理解し、また学識経験豊かな方で社会人としてもきわめて常識を備えた方を厳選いたしまして任命をいたしたいというふうに考えるわけでございます。
  23. 藤波孝生

    藤波委員 この臨時措置法案は、国立のみならず公立、私立にも準用をしていくというかまえになっておるわけでありますが、公立の場合は、これに政府が立ち入っていくということになりますと、地方自治に対する侵害になるのではないか、あるいは私学の自由に対する侵害になるのではないかといった心配が各方面から出ておるわけであります。公立、私立に準用をしていくという面についての大臣考え方を承っておきたいと思います。
  24. 坂田道太

    坂田国務大臣 この法案は、公私立大学紛争の収拾につきましては、その大学の設置者と学長等の自主的な努力に期待することといたしております。このため、これらのものが収拾のためとり得る措置を、公私立それぞれの性格と運営実態に即して国立大学の場合に準じて規定することにとどめまして、国立大学の場合に見られるような、たとえば文部大臣が直接——先ほど申しました教育研究機能を停止するというなど、国が大学運営に直接関与するような規定は設けられておらないのでございます。なお、公私立大学といえども法律に定める学校としての公の性質を持つものでございますし、国としても公私立大学における教育研究に無関心ではおられませんので、この観点から必要な国との関係を定める規定は設けられております。たとえば教育等の停止を行なう場合文部大臣と協議するというようなこと、あるいは紛争が生じた場合文部大臣報告するというようなことでございますが、これらの規定はあくまでも公私立大学の自主的な努力を規制しようとするものではないということは申すまでもないことでございます。
  25. 藤波孝生

    藤波委員 大づかみな承り方をしてきたわけでありますが、この法案の中に各所に、紛争大学の学長や機関の者は学生の希望や意見を聞いて紛争をすみやかに収拾をする、こういうかまえになっております。これはそういう学生の希望や意見を聞くことができる会に参加をさせることができるという規定ではありますけれども、この規定をたてにとって、おそらくこれから紛争大学においてはほとんど全部といっていいくらい、やはり大学のそういった機関に対する学生の参加というものを要求してくると思うわけであります。「参加させることができる」という規定でありましても、その辺がこれから非常に問題になってくると私は思います。それはけっこうなことであります。紛争大学においては、どんどんと学生の希望や意見を聞くことは当然のことであり、大学運営に関してもまた当然のことだと思いますが、問題は、その学生を参加させるという場合に、参加のグラウンドであります自治会というものが、ほんとうに全部の学生の意見が反映されるような形になっていなければ、代表として参加させる、希望を述べさせる学生をめぐってまた三派と日共系との戦いが、紛争大学における紛争を激化させるというようなことになるのではなかろうかということを私どもは建設的に心配をするわけであります。そういう意味で、この自治会のあり方についての考え方をよほど整理をせられ、文部大臣の適切な指導や助言というものがもっともっと大学に行なわなければなるまい、このように私どもは考えておるわけでございます。新しい大学像の中には、もちろん学生の参加のしかた、学生が参加をする母体としての自治会のあり方ももちろん大きな問題になってまいりましょうけれども、当面この立法の中でこの問題をどのように考えるか、文部大臣考え方を承っておきたいと思います。
  26. 坂田道太

    坂田国務大臣 大学紛争を収拾してまいりまする場合、いろいろの手だてを大学当局がいたします場合において、とにかく大学学生の意思をどういうふうにくみ上げていくかということがやはり一番の重要なことであると思うのでございまして、私立大学等の紛争の場合、これが解決しました幾多の事例を分析してみますると、やはり一般学生の立ち上がり、圧倒的一般学生の立ち上がりという背景のもとに紛争の収拾が行なわれておるというふうに、あたりまえのことでございますけれども、それが一つの大きい力になっておると思うのでございます。でございますから、言うならば、むしろ大学紛争があるというのは、いま御指摘のように現在の自治会というものがあのような状態にセクト化が行なわれておるというところに紛争原因があると言っても過言でないので、その点、大多数の学生の意思が反映され、そしてその大多数の反映された意思のもとに大学当局が大学自治を行なって、管理運営をやっていかれたならば、当然紛争も終結しますし、正常な大学運営がなされるということになると思うのでございます。この正しい自治会のあり方というものをどうやってこれからつくり上げていくかということが、われわれに課せられた課題ではないか。また、第一次的には大学当局に課された課題ではないかというふうに思うわけでございますが、本法案の中において規定しておりまするのは、やはり学生大学を構成する者ではあっても教授とは違う。教授は教授、学生学生である。同質同等の権利が学生にあろうというふうには考えられない。これは中教審も指摘をいたしておるところでございます。したがいまして、学生にふさわしいところの参加の領域というものがきまるであろう、およそそういう領域があるであろう。また、そのことについてどうやって意思を大学当局がくみ上げるかというやり方等について、適切なやり方と不適当なやり方とあるのではないかと、こういうわけでありまして、こういうところが実をいうと世界のどこでもまだ定着をしておらないわけでございます。私は、おそらく三年、五年の試行錯誤の上においておのずとその領域もきまり、限界もきまっていくものだというふうに思うのでございまして、これから天から降ってきてぴしゃっときまるようなものじゃないし、また、法律でぴしっときめたからといってうまくいくんだというふうにも私は考えません。しかしながら、おのずとそこには常識的にも、あるいは大学というたたずまいからいたしましてどうなければならぬかという、多少のニュアンスの幅はございましても、そこにふさわしい領域あるいは適切な方法というものは考えられるのではなかろうかと思うわけでございます。この点がやはり今後の大学紛争を終結していきます一つのかぎになるわけでございまして、学生の意思の反映をくんだ大学自治というものを考えていっていただかなければなりませんけれども、同時に、その前提として大学学生たちの自治会のあり方というものを正常化するということが肝心かと考えておるわけでございます。
  27. 藤波孝生

    藤波委員 紛争を収拾するという場合にも、これからの新しい大学のあり方も考えてまいります場合にも、自治会のあり方というものは一番大きく取り上げられなければならぬと思うわけでありまして、その辺が急所であるにもかかわらず、文部省大学に対する助言なり指導なりというものを見ておりますと、まだ思い切ったあり方というものを打ち出していないうらみがあるように思われるわけでありまして、今後は、この立法を中心としてそういった面につきましても適切な助言なり指導なりが進められるようにお願いをいたしておきたいと思うわけであります。  そこで、その学生の勢力争いという問題が紛争の大きな原因であり、また、紛争をさらに激化させておるというお話がありましたが、この法案につきましても、第二条、第三条に関連して若干お伺いをしたいと思うのでありますが、紛争という形をどういうふうな形をとらまえるかということでありますが、いろいろ学生側から問題が提起をせられて、それがいろんな形で解決しないままにこじれていってしまう。しかもそのうちに必ず日共と反日共の勢力争いが起こってきて紛争を激化させる、これが大学紛争実態になっているように私ども見ておるわけでございます。ところが、日共と反日共の争いが生じておると紛争という形になり、完全に民青が大学を支配しておるというような形だと、外から見て紛争になっていない、そのペースでどんどんと大学運営が進められていくというようなとらえ方になってしまううらみがありはしないかということを心配をするわけでありますが、大臣としてひとつ考え方を承っておきたいと思います。
  28. 坂田道太

    坂田国務大臣 御質問は、大学紛争の定義なんでございましょうが、一応物理的な、施設を占拠されたりあるいは封鎖されたりしておる、あるいは授業放棄をしておるという一つの要件、それからもう一つはそれが学生であるという要件、それからまた、その正常でない行為によって大学教育研究というものが阻害されておるというところを大学紛争校というふうに規定をいたしておるわけです。  それからもう一つ何か御質問……。
  29. 藤波孝生

    藤波委員 別の角度からもう一ぺん承っておきたいと思うのですが、いろいろ問題が提起をせられてきて、それを大学が受けとめる。その問題が解決をしないうちに必ずといっていいくらい学生の勢力争いが起こってきて、さらにその紛争を激化させるという形になるわけであります。しかもその辺の日共、反日共の争いがばっと激化したときが、外から見た場合に一番紛争という形を一般には受けとめるわけでありますが、その辺を具体的な定義の中で文部省としてはどのように考えておるのか。紛争の定義をめぐって考え方を承っておきたいと思います。
  30. 坂田道太

    坂田国務大臣 ちょっとお答えになるかどうか、もしおわかりにくかったらもう一ぺんお尋ねいただきたいと思うのですが、学生の運動が確かにセクトの争いによってやられておるという点は、これは何人も否定できないことだと思うのでございますけれども、代々木がやった、反代々木がやった、あるいは中核がやった、革マルがやった、そういうことではなくて、およそ先ほど申しましたような物理的に占拠をされたり、封鎖をされたり、一斉授業放棄がなされておるという状況、そういうものが学生たちによってやられ、そして現に実際に教育研究というものが阻害されておるという点で紛争というものをとらえようというわけでありまして、民青の勢力が強いからどうだとか、あるいは反民青のトロツキストたちがやっているからどうだというとらえ方で考えておらないということをはっきり申し上げておきたいと思います。
  31. 藤波孝生

    藤波委員 もう一点だけ承っておきたいと思うのですが、民青なり反日共なりが要求を掲げてまいります。それを大学がまるのみにすれば紛争状態がなくなる、このように考えてよろしいのですか。
  32. 坂田道太

    坂田国務大臣 いままでの経験からいうならば、おそらくそういうことはないのじゃないかというふうに思いす。
  33. 藤波孝生

    藤波委員 その辺のとらえ方が、具体的に一つ一つ個々の例を考えてまいりますと、非常に問題が出てくると思います。民青が支配をしておる大学、それに反日共が反対する、勢力争いが起こる。たまたま問題は大学の寮の問題である、あるいは授業料値上げの問題である、問題はいろいろありましょうけれども、その要求が問題なのではなくて、大学の中での政治勢力を張っていこうというかまえの争いというのがむしろ中での紛争の一番中心になっておる、こういうことがあるわけです。そうなりますと、紛争がなくなるという状態を考えます場合に、反日共を警察官を導入して排除してしまってということであるならば、そこで紛争がおさまる。学生同士の争いがおさまれば紛争という形が外ら見た場合なくなるというかまえになる場合に、それは紛争でなくなるのですか。その大学の中での勢力争いとの問題をめぐって、紛争をどう規定していくかという考え方を承っておきたいわけであります。わかりませんか。
  34. 坂田道太

    坂田国務大臣 これは非常にむずかしいところだと思います。あるいはそれが一番の困難かとも思います。けれども、とらえ方としましては先ほど申し上げましたとおりでございます。ところが、われわれが抽象的に申し上げますると、いわば代々木であれ、反代々木であれ、そうではなくて、それ以外の一般学生、ほんとうに勉強をしようあるいは研究をしようという大多数の人たちは一体何を考えておるか、何を大学当局に求めておるのだというところに対して、私たちはやはりそれをくみ上げるという姿勢が必要ではないかというふうに思うのでございます。いま仰せのとおりに、代々木系にしましても反代々木系にいたしましても、一応要求は掲げておりますけれども、その要求を満たしたからといって、それでは紛争が解決するか、あるいはその激烈なる政治活動というものは終息するかというと、その人たちと、本人と私はお会いをいたしましてけれども、そういうことを申しておりません。まあ永遠に続くような考え方を持っておるわけなんです。でございますから、その掲げておりまする問題は、問題ではありまするけれども、それでは大学当局がそれを認めたからといって、それで紛争が終わるというものではないという認識をすべきであって、やはりほんとうに大学のやり方等について、一般学生が求めておることに対しては、大学当局が真剣にこれをくみ上げるという努力をやらなければならないのではないか。あるいはそういうような教育条件の不整備な点について、文部省等でやらなければならぬことをやっていないというようなことについては、われわれがこれにこたえなければならぬのではないかというふうに思うのでございます。しかも大学内における派閥抗争と権力争いということで、もう終息するようにするにはどうしなければならぬかということは、相当時間をかけてやらなければいかぬのではないか。そして同時に、先ほどから御指摘もございましたように、単に紛争処理の問題だけに目を奪われておったのではいけないので、新しい国民のための大学というものを構想しながら、それを打ち出しながら、自然とそういうような学生たちの気持ちが、一般学生の気持ちのほうへだんだん近づいていく、あるいはそういう無法なことをやる人たちが終息をする、一般学生の立ち上がりによってなくなっていくという方向に導いていくということが、私は大事であるというふうに思うのでございます。
  35. 藤波孝生

    藤波委員 結局、大学紛争収拾をさせるものは一般学生の良識である、こういうお話でございました。基本をその辺に置いてもっていくことが大事なことで、それでも紛争がおさまらない場合にはという意味で、今回の大学立法になったのだ。こういうふうにわれわれは理解をするわけでございますが、相当その辺についてやはり具体的に考えていかなければならぬ問題があると思うわけでございます。  時間の関係もございますので、あとで河野委員からもいろいろ御質問もあろうかと思いますので、若干気がかりなこともありますが、先へ急がせていただきます。  本会議における谷川議員質問の中で、紛争を終結をする手段の問題が提起をせられました。これは本会議のことでもあり、あまり具体的な御回答がなかったように思うのでありますが、それは紛争が起こりました場合に、大学側学生自治組織との、紛争を終結させるための手段として大衆団交方式をとる、これは大半の紛争大学がそういう形をとっておりますが、その大学側学生側との話し合いというのが、大衆団交方式によっていくところに、大学本来の形からいって無理があるというか、おかしいというか、根本的に考え直さなければいかぬ、終結するための手段として考えなければならぬところがあるのではないか、こういった谷川質問があったわけでありますが、大臣としてどのようにお考えになるか、あらためてお伺いをしておきたいと思います。
  36. 坂田道太

    坂田国務大臣 紛争解決の手段として、いわば力による解決、これはあるべきことではないというふうに思います。これは厳に慎まれるべきことだというように私は思うわけであります。しかしながら、いま御指摘がございましたように、学生運動そのものが幾つかのセクトに分かれておる。そうして大多数の意思というものがなかなか反映ができない、つかみがたいという場合において、全学集会という形において、ある程度そういう大多数の一般学生の意思をつかむ意味においての話し合いというものは、場合によっては必要ではなかろうかというふうに思うわけでございます。
  37. 藤波孝生

    藤波委員 全体の学生の意思をくみ取るために、場合によっては必要であろうと思います。しかし、その形でないと何か紛争が終結しないような感じがあって、そこにつけ込まれて、どこまでいっても紛争が絶えない。団交をやっておる間に、またさっき申し上げた学生の間の勢力争いが起こってきて、それがさらに紛争を激化させるというような泥沼におちいっていく場合が多いような感じがするわけでありまして、具体的な問題が提起されたら、それについては、あくまでまじめな一般学生の意見が反映されるような形というものを考え、しかも簡明にその問題の解決をはかって、そこに政治的な争いにつけ込まれるようなすきを与えないというような、何か大学のあり方、受けとめ方というものが必要であるわけでございます。  そこへいくと管理の問題が出てくるわけでございますが、ちょっと条項を追って、その次に第六条のことで少し伺っておきたいと思うのでありますが、学長は、評議会あるいは教授会にはかって措置をとる、こういう形に第六条はなっております。簡単にお答えをいただいていいのですが、評議会または教授会にはかって否決をされたら、学長は何もできないということになりますね。これを承っておきたいと思います。
  38. 坂田道太

    坂田国務大臣 一応これは諮問機関でございまして、はかりまして、最終的には学長がきめるということでございます。
  39. 藤波孝生

    藤波委員 評議会なり教授会は、大学運営に関する諮問機関でございますか。これは大学運営についての決議機関ではないのですか。そのことを……。
  40. 村山松雄

    ○村山(松)政府委員 評議会と申しますものは、現在文部省令によりまして国立大学に置かれております。文部省令の規定のしかたといたしましては、教育公務員特例法に規定する事項を除きましては、学長の諮問に応じて、次のような事項を審議するという形になっておりまして、諮問機関という形になっております。  それから教授会は、学校教育法によりまして、国公私立大学は、大学の「重要な事項を審議するため、教授会を置かなければならない。」ということになっています。これが諮問機関であるか、決議機関であるかは、法律の文面からは必ずしも明らかでございませんので、大学によりまして諮問機関として扱っているところもありますし、事実上決定機関であるごとく運用されている大学もある。実態によってやっておるというのが実情であります。
  41. 藤波孝生

    藤波委員 諮問をする機関であるから、評議会または教授会がどういう結論であろうとも、最終的には学長の意思によって措置を行なうことができるという御回答ですか、ちょっとその辺をもう一回整理してお答えを願います。
  42. 村山松雄

    ○村山(松)政府委員 諮問でありますから、諮問して、その合議制の機関の意向というものを尊重すべきものと思いますが、現在の法令上はそれに必ずしも拘束されない、かように解します。
  43. 藤波孝生

    藤波委員 その辺の整理が大切だと思うのですが、一般的に大学のほうで慣行として考えられておりますものは、事実上大学の評議会は、大学の最高意思決定機関としての地位を占めてきた。これが大学の慣行である。こういうことを各大学で打ち出しておりますが、もう一回承りますが、学長がいろいろな措置を講ずる場合に、評議会または教授会にはかり、こうありますが、はかって否決されたら、学長は何もできないことになりますか。もう一回、ひとつ簡明に局長、お答えを願います。
  44. 村山松雄

    ○村山(松)政府委員 従来慣行上は、学長は、全学的なことは評議会、それから学部長は、学部に関することは教授会にはかりまして、そこで得た結論のとおりに実行するという慣行が、かなり広範に行なわれております。しかし、法律的に申しますと、絶対に拘束されて何もできないというものではない、かように解しております。
  45. 藤波孝生

    藤波委員 評議会なり教授会なりの結論を重んずる、しかし何もできないということではありません、こうですね。そういう結論なら結論で、先へ急ぎます。  具体的に質問を進めますが、第一項第一号のイですが、「副学長その他これに準ずる学長を補佐する機関」は、その大学の職員以外の者でもよろしいのか、承っておきたいと思います。
  46. 村山松雄

    ○村山(松)政府委員 この法案では、その点は必ずしもはっきり明示しておりませんが、学外者を加えるものといたしまして、次に審議機関のほうにはそういうことを明示してございます。そういうことからいたしまして、副学長その他の補佐機関は学内者と解するのが妥当と思います。
  47. 藤波孝生

    藤波委員 「副学長その他これに準ずる学長を補佐する機関」の者は学内の者ですね。その次の口の審議機関のメンバーはわざわざ規定をして、学内の者にこだわらぬということになっておるわけでありますが、これは適用のしかたでございますけれども、たとえば地域社会の代表であるとか、その大学の校友の代表であるとか、あるいは学生の父兄の代表などもこれに参加することができると考えてよろしいか、念を押して承っておきたいと思います。
  48. 村山松雄

    ○村山(松)政府委員 端的に申しますと、紛争時において大学の当事者がまず努力するのがたてまえでありますが、当事者だけで収拾がむずかしい場合には学外者を考えたわけでございます。そういう場合、やはり学外者といっても全然無縁の者よりは、御指摘のように卒業生でありますとか、あるいは地域社会の関係の方でありますとか、そういう方をまずもって考えるのが妥当だと思います。
  49. 藤波孝生

    藤波委員 特に一項一号のイ、ロ、ハを整理して承っておきますが、ロだけ学外者を認めるという形をとった理由がございますか。大学の経営についての見識を持った者であるとか、あるいは経験を持った者であるとかいうような方がおられるならば、むしろどんどんと大学の中へ入っていってもらって、「副学長その他これに準ずる学長を補佐する機関」や「大学運営に関する事項を管理し及び執行する機関」に入っていってもらって、大学紛争を一日も早く収拾するということがむしろねらいでなければならぬと思いますが、特にこのロだけに限った理由があるのか、考え方を承っておきたいと思います。むしろその辺は非常に消極的じゃないですか。
  50. 村山松雄

    ○村山(松)政府委員 この法律の紛争収拾のやり方といたしまして、第一次的に大学の自主性を尊重しながら大学の自主性を助ける方向で若干の手だてを講ずるという考え方でございます。そこで第一次的には学長の補佐機関でありますとか、あるいは執行機関に学外者を入れるということについての自主性とのバランスを考えまして、そこまでは及ぼさずに、審議機関、ここにまずもって学外の意見を入れる。これが自主性の尊重と、それから自主性だけでは解決できない場合の地域社会との協力の接点と、かように考えた次第でございます。
  51. 藤波孝生

    藤波委員 質疑を進めまして第七条で若干承っておきたいと思いますが、第二項で、紛争によって九カ月教育の機能を大学自体が休止した後においても、当該大学の学長の意見を聞いた上、臨時大学問題審議会の議に基づいて、文部大臣教育及び研究に関する機能を停止することができる、こうなっておる。文部大臣教育及び研究に関する機能を停止しよう、こう考えたといたしましても、その前に当該大学の学長の意見、それから臨時大学問題審議会の議決というものが必要になるわけでございますが、当該大学の学長から、機能の停止は待ってもらいたい、もっと大学自体紛争収拾に当たるからという強い申し出があれば、文部大臣はその学長の意見に基づいて、その時期がきてもやはり学長にまかせるという形が考えられますが、その「学長の意見を聞いたうえ、」という意味合いを御説明願いたいと思います。
  52. 坂田道太

    坂田国務大臣 その意味合いは、何も学長、つまり大学文部大臣とがいつも対立するという考え方でなくて、この法案の基本になっておりまするのは、まず第一には、大学当局みずからが事態の収拾に当たる、その収拾の努力を助けるということを主眼としておるわけでございます。そうして、しかる後に、どうしても大学自体がみずからやってみたけれどもやり得ないという場合に、むしろ大学側から政府と一緒になって、協力して収拾に当たろう、こういう態度であるわけでございまして、実際問題といたしましては、やはりそういう形で学長の意見を聞いて、そうして第三者の議決というものの慎重さというものを取り上げて、最終的には文部大臣がきめるという、ちょっと見れば非常に煩瑣なような手続でございますけれども、しかしながら、やはり教育研究を中止するという事態は非常な事態でございまして、私から言わせますると、この法案の最大の目標というものは六条以下においておさまっていただきたいという悲願があるわけなんでございまして、そういうどうにもこうにもしようがない最後の段階という形においてこの七条という規定があるということでございます。それでございますから、こういうような手だてをいたしたわけであります。しかしながら、こういう事態に対しまして最後の断を下しまする場合は、学長の意見に法律的には拘束されない。しかしながら、十分その点は学長の意見というものを尊重して事をきめなければならぬということだけははっきり申し上げておきたいと思います。
  53. 藤波孝生

    藤波委員 大臣と学長が互いに協力し、十分意見を交換した上でこういった措置をとる、こういう意味合いであろうと思うわけであります。  同じく第七条の三項の、紛争が収拾されたと認めるのはだれが認めるのか、これは学長の申し出に基づいて紛争が終わったという判断を下すのか、その辺、ごく事務的なことでございますけれども、規定がございませんから、伺っておきたいと思います。
  54. 村山松雄

    ○村山(松)政府委員 この紛争というものが、第二条にありますように、授業放棄でありますとか、あるいは施設の封鎖、占拠でありますとか、そういう物理的な状態でございますので、紛争収拾とは、こういう物理的な状態が解除されて、普通の状態に戻ったことを意味するわけであります。したがって、これは客観的に認知し得るわけでありますので、だれかが権限を持って認定するということは必要ではございませんが、通常は当然大学からその旨報告があり、文部大臣がこれを了承するというような形がとられると思います。
  55. 藤波孝生

    藤波委員 進みます。  第九条、国立学校設置法改正の措置を講ずるとしておりますが、学校教育法の第十三条には、「監督庁は、学校の閉鎖を命ずることができる。」、こういう規定がございまして、その三号に、「六箇月以上授業を行わなかつたとき」という条項があるわけであります。これは従来もこれの条項の適用をめぐっていろいろ論議が展開をせられたところでございますが、今回のこの第九条の設置法改正の問題と関係づけて、片っ方は「六箇月以上授業を行わなかったとき」いう条項があり、片方には、設置法改正の措置を講ずる時期が、これは計算すると一年になりますか、若干すれがあるように私どもには思われるわけでございますが、その辺の関係づけをどう考えておるのか、御所見を承っておきたいと思います。
  56. 村山松雄

    ○村山(松)政府委員 学校教育法の閉鎖命令の規定は、法令を沿革的に申し上げますと、旧私立学校令に同じような規定がございまして、旧制度においては私立学校のみにこういう規定があって、国立、公立の学校にはかような規定がなかったわけであります。学校教育法のこの閉鎖命令の規定の解釈といたしましては、そういう沿革もあり、また国立学校の設置、廃止は、これはまた別途法律で定められておるというようなことからいたしまして、この規定は国立学校には適用がなく、私立学校を主体とした規定であるというのが通説でございます。また、この閉鎖命令を出す前提となるところの、ゆえなく六カ月以上授業を行なわなかったときというのは、今回の臨時措置法にありますように、理由があって故意にその授業を妨害して授業が行なわれないような状態ではなくて、むしろ、私立学校などが経営難などで、生徒も来ない、事実上休止状態に六カ月以上あって、法律関係を明らかにするような意味合いで行政機関が閉鎖命令によって終末的な処理をするという法意であるように解されております。今回の臨時措置法では、そのような状態ではなくて、学生によって故意に施設の封鎖、占拠あるいは授業放棄といったような事態があって、これに対して大学並びに行政機関がそれぞれ収拾措置を講ずるわけでございますので、おのずから立法趣旨あるいは法律の解釈が異なっております。この臨時措置法では、あらゆる段階に応じて自主的な収拾措置を促進しながら、なおかつ九カ月以上も収拾できないという場合の終末的処理という意味で、一応九カ月という時限を停止措置の発動の始点というぐあいにしたわけであります。
  57. 藤波孝生

    藤波委員 第八条の第二号で、機能の停止を命じた場合の休職者に対して百分の七十以内を支給をする、こういう規定がございます。労働基準法の会社の休業補償の規定の適用は、そういう適用のしかたはどうかという解釈論は別にいたしまして、その規定は百分の六十を支給をする、こういう規定になっておるわけでございます。もちろん、教育界のことであり国民が比較をいたします場合に、条件は全然異なります。何かその辺とのからみ合わせを考えて、むしろ休業補償の百分の六十というものを出してまいりますと、百分の七十が、紛争が生じておるにもかかわらず、先生方が国家、社会に対する責任が非常に希薄であり、なかなか解決できないときに、もうそれをずるずるずるずる時期を引っぱっても百分の七十かという議論は必ず起こってまいろうかと思うわけであります。その考え方について、大臣の御所見を承っておきたいと思います。
  58. 村山松雄

    ○村山(松)政府委員 大臣からお答え申し上げます前に、立法趣旨につきまして事務的な御説明をいたしますが、この臨時措置法による文部大臣教育研究の停止措置が行なわれた場合の国立大学の職員の休職措置並びにその間給与として百分の七十を支給するという根拠でございますが、これは国立学校の職員は国家公務員でございますので、国家公務員の休職に関する、たとえば起訴休職でありますとか、海外出張による休職でありますとかあるいは過員になった場合の休職でありますとか、それらとの権衡を考慮いたしまして、過員になった場合が百分の七十でございます。この停止措置による休職というのは、教育研究が行なわれていない、つまり行なうべき職務がない場合の休職でございますので、態様としてぴったり比較はできないわけでありますが、過員になった場合の休職の例に準じまして、原案といたしましては百分の七十ということにいたしたわけであります。これでもって職務がない場合の生活保障、一応他の休職の場合との権衡を考慮して妥当であろうというのが、原案の考え方でございます。
  59. 藤波孝生

    藤波委員 続いて第十条で一点だけ伺っておきます。臨時大学問題審議会の委員あるいは特別委員にあっせんを依頼するという条項がございます。具体的に伺いますが、紛争大学へあっせんに参りましたときに、何しろ紛争大学のことでありますから、どんなところで、どんな暴力事件が起こらないとも限らないわけでありますが、そういった事件が起こった場合の責任はだれが負うのか、また身分はどういう形のものになるのか、明らかにしておいていただきたいと思います。
  60. 村山松雄

    ○村山(松)政府委員 この法律によりましてあっせんを行なう者は、臨時大学問題審議会の委員であり、これが部外者である場合には、非常勤の一般職の国家公務員ということになります。したがって、この者が公務上災害を受けるというような場合には、職務上の責任はこの審議会を任命しております文部大臣、その系列で、態様に応じて負うということになりますし、また、その者が受けた災害に対しましては、国家公務員の災害補償法によって、態様に応じて補償がなされるということに相なります。
  61. 藤波孝生

    藤波委員 了解しました。  第十一条の、紛争大学において新入学生に対する教育の実施が正規に行なわれる見通しの困難なとき、当該大学の学長は、入学者の選抜について文部大臣に協議をするという条項がございます。これはもういまから来年度の入学試験については非常に心配をして、本会議においても谷川質問で触れられたとおりであります。この条項では、そういう事態の際に、学長は文部大臣と協議をするとありますが、入学試験をやるかどうかという決定権は、大臣と学長のどちらにありますか。簡潔にお答えをいただきます。
  62. 村山松雄

    ○村山(松)政府委員 現在大学の入学者選択に関しまして法律上はっきりした規定はございません。そこで事柄の性格を考えますと、国立学校の場合では、国立学校の利用関係の設定というぐあいに考えられますので、事柄の筋道といたしましては、設置者である国と大学に入ってまいります学生との関係ということになります。したがって、利用関係を設定する最終当事者は、国と学生、国を代表する者は文部大臣、かように解しております。
  63. 藤波孝生

    藤波委員 どうも説明が、簡潔にお願いしてもいろいろ説明が入るのでわかりにくいですが、紛争大学において入学者をきめるのは設置者である文部大臣だと考えてよろしいですか。
  64. 村山松雄

    ○村山(松)政府委員 文部大臣大学の学長と協議してきめるべきものであり、協議がととのわない場合には最終的には文部大臣の判断、かように解しております。
  65. 藤波孝生

    藤波委員 いろいろ承ってまいりまして、非常ににざっぱくな質疑でございましたが、いろいろ問題が明らかになってまいったわけであります。冒頭に御質疑申し上げましたように、われわれのねらいは何といっても新しい時代に対応する大学像、もう一回繰り返しますが、それをひとつ坂田カラーで思い切り打ち出してもらうということがほんとうに最も大きな関心であり、念願でございます。そういう意味で一日も早く大学像が打ち出され、しかも現実に移されていくということを期待をしてやまないわけでございますが、この法案の附則の第五項に、この法案は五年の限時立法と規定をせられております。われわれの念願は、立法者がどういうふうにお考えになったか知りませんが、何とか五年間に思い切った日本教育改革をやらなければ、大学改革をやらなければ、次の世紀の呼びかけに応ずるような日本体制にならぬ。こういうことを念願をしてやまないわけでございますが、大臣、五年の限時法とせられた根拠はその辺にもあるのか、ひとつからみ合わせて御所見を承っておきたいと思います。
  66. 坂田道太

    坂田国務大臣 時限立法といたしましたのは、全く先生御指摘のとおりでございまして、一日も早くあるべき姿の大学というものを生み出すことが必要かと考えておるわけでございます。しかし、それを生み出すまでに、当面いたしておりまする紛争処理というものもやはりやらなければならぬということで、並行して進めておるわけでございますが、とにかく近い将来に、五年以内に新しい大学というものをつくるべきだと考えておる次第でございます。それに対しまして最善の努力を払いたいと思っております。
  67. 藤波孝生

    藤波委員 法案の最後のところがそこにまいりましたので、そこで質問を終わらしていただくわけでありますが、ほんとうにわれわれの念願といたしまして、新しい大学、新しい教育改革というものが五年以内に完結をする、その間に大学紛争に入って、暴力事件でどうにも大学の機能が果たし得ない、国家社会に対して責任が負えないという形については、大学が自主的に収拾についての最善の努力をするけれども、政府の側からこれを助けるための措置なんだ、こういうふうにこの大学立法をわれわれ理解をいたしまして、同時に、ひとつ坂田カラーによる教育改革というものを、もう一回最後に念を押させていただいてこの質疑を終わらしていただく次第でございます。ありがとうございました。(拍手)
  68. 大坪保雄

    大坪委員長 午後一時三十分より再開することとし、暫時休憩いたします。    午後零時二十四分休憩      ————◇—————    午後二時一分開議
  69. 大坪保雄

    大坪委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  大学運営に関する臨時措置法案について、質疑を続行いたします。河野洋平君。
  70. 河野洋平

    ○河野(洋)委員 午前中の藤波委員質問に続きまして、私も政府提案の大学運営に関する臨時措置法案について、若干の質疑をしてまいりたいと思います。  過日の西岡委員質問に対する大臣の御答弁、さらに藤波委員質問に対する御答弁を伺っておりますと、現在の大学紛争に対する大臣の御認識、そして世間一般、世論が、この大学問題について非常に心配をしておるのは、幾つかの要因はありますけれども、その中に、大学という場を利用して一部の学生が政治的意図を持って行動をやっておる。さらにそうした問題を収拾しようと思っても、学部セクショナリズムと申しますか、教授会自治と申しますか、そういうものがじゃまをして、なかなか収拾が簡単にいかないというような点から、紛争収拾が非常に時間を要しておる。こうした問題が世間の心配の種になっておる、かように考えるわけでございます。そうした心配を一時的にでも、一刻も早く取り除こうということが、とりあえず紛争の収拾をしようというのが、この臨時措置法案の趣旨のように考えるわけでございますが、ずっとこの法案を拝見しますというと、ポイントは二、三点。その第一点のポイントは、学長への権限集中ということになるだろうと思うのですが、この学長への権限集中の場合、いわゆる第六条の第二項に書いてございます「学校教育法及び教育公務員特例法に規定する機関で当該大学は置かれているものの職務及び権限の一部を、学長がみずから行なう」、これが権限集中の点だろうと思うのですが、「教育公務員特例法に規定する」云々、そして「職務及び権限の一部を、学長がみずから行なう」ということになっておりますが、この点をひとつもう少し明確にしておいていただきたいと思います。
  71. 村山松雄

    ○村山(松)政府委員 大学には、学校教育法あるいは教育公務員特例法、それから国立学校につきましては、国立学校設置法並びにその校則、政令、省令で、もろもろの機関が置かれております。独任制の機関といたしましては、学長、学部長、研究所長その他の部局の長がおりますし、合議制の機関といたしましては、全学的には評議会、それから学部研究所等には教授会といったようなものがございまして、これらの権限規定は法律に準拠したものもございますし、それから学内措置によりまして、内規等によって権限を定めているもの等もございます。通常の場合ですと、大学の動かし方というのは、それぞれ合議制の機関で議論をして、それを学部段階の意思に持ち上げ、さらに評議会を経て、全学的な意思形成をし、学長がこれを執行するというようなかっこうになっております。これは大学のような教育研究機関の通常の意思決定並びに執行の過程としては、長年これで寄与してまいったわけでございますが、これ自体につきましても、中教審審議、あるいは大学問題をめぐる内外の議論を通じまして、これだけでは大学のように複雑な有機体の動かし方としては十分ではないといういろいろな議論がございます。一方において、もっと集中したほうがいいという意見もありますし、さらにもっと意思をくみ取る範囲を広げて、全学的な意思集中、形成をはかるべきだという意見もございます。しかし、紛争というような時点に着目いたしますと、これはやはり学長を中心として、全学人の意見というものを紛争収拾という方向に集中結集して、事に当たるということが必要と考えられます。  そこで具体的にというお示しでございますが、いままで申し上げました独任制の機関、あるいは合議制の機関につきましては、種々な権限が法律上あるいは事実上あるわけであります。そこで何をどうということは、それぞれの大学紛争の態様、あるいは紛争収拾に関する関係者の意向、学長の見識等々からいたしまして、でき得れば自主的に学長が評議会にはかって、何をどうする、その何をどうするというその目標としては、紛争を収拾するためには、いままで評議会で相談しておったものを、ある部分は学長の専決にする。それで、いままでは学部の教授会で議論して、さらに評議会に持ち上げておったものを、まず評議会で審議をするようにするというような、何をどうするという事柄の整理をいたしまして、これでもって紛争収拾に当たろうという取りきめをして、権限集中をやってほしい。こういう道を開くために六条の一項の二号といったような規定が設けられておるわけであります。
  72. 河野洋平

    ○河野(洋)委員 私のほうから少し一、二点具体的なところをお伺いしたいと思いますが、教授会自治、学部自治、そういったものを越えて、学長に権限を集中する。その場合には、たとえばこの第二号に書いてある教育公務員特例法、この中には教員の身分に関する条項等も入っておるわけでございます。いわゆる教員の不利益処分、そういったことも教育公務員特例法の中にはあるわけでございますが、学長に権限を集中されて、学長の判断で教員の身分についてもいろいろと権限の中に入れて、学長の判断で行使できるようになるのかどうか、その辺を一点伺いたい。
  73. 村山松雄

    ○村山(松)政府委員 この六条の規定そのものからしますと、権限委譲の態様について、全部または一部について行なうとあるのみで、限定がございませんので、観念的にはそれらの機関が現に持っておる権限の一部、場合によっては全部について委譲ができる。したがって、特例法上の権限も観念的には含まれますが、どれをどのようにするかにつきましては、先ほども御説明いたしましたように、紛争収拾のために必要な範囲で行なうのが望ましいわけでございますから、これによって無制限に、何でもかんでも学長に集中してしまう、そうなるとまた学長に権限が多くなり過ぎて動きがつかないということにも考えられますので、あくまでも紛争収拾に必要な範囲、その限度において権限を集中することが望ましいということを申し添えておきます。
  74. 河野洋平

    ○河野(洋)委員 その辺で私、若干議論が分かれるところだと思うのですが、冒頭に申し上げましたように、紛争収拾が非常に困難になっておるのは、学部自治、教授会自治が一つ原因としてあるということであれば、その教授会あるいは評議会と学長が相談の上で権限集中をする。たとえば第六条には、「学長は、評議会にはかり、」と書いてございますように、そうした会とはかった上で学長の権限集中などが行なわれるということになれば、ここには学長の権限集中とうたってあるけれども、実質的には、学長には権限など集中できないのではないかという不安が出てくると思いますが、大臣いかがでございますか。
  75. 坂田道太

    坂田国務大臣 その辺は確かに運用の一番大事なところだと思うのでありまして、文字どおりいうならば、御心配の点もないわけではないと私は思います。しかしながら、今度は権限を集中いたしまして、それを実際運用し、執行する場合においては、やはり教官の支持と申しますか、そういうものが背景になければ実際上機能しないということを考えました場合には、やはり一応評議会にはかるという形をとったほうがいいのではないかというふうに考えるわけでございます。たとえて申しますると、東京大学におきましても、加藤さんがまず学長代行を引き受けられる際に、このような権限の集中というものを自分に与えてくれるかどうか、もしそういうようなことを与えてもらえば、私は代行を引き受けます、そうですが、それならばやっていただきますということで、評議会も教授会も了承をしたという過程があるわけでございますが、その後、何らかの強いリーダーシップをとられた場合におきましても、今度は加藤さんのほうは、権限は集中したわけですけれども、同時に、形式的ではあっても評議会、教授会にはかってこれを執行された。そのことが非常に有効適切に行動し得たし、またそれが機能し得た。こういうことも聞いておるわけでございまして、やはりそのところが非常にポイントであるというふうに私は思います。問題はやはり運用の問題かと思います。だから非常に悪い場合を考えるならば、これが結局権限集中といいながら、実際はそれが機能していないということにもなりますし、あるいは評議会というものが非常に強いことを主張いたしまするならば何にもできないというようなことにもなりかねないと思います。
  76. 河野洋平

    ○河野(洋)委員 ただいま大臣自身が御指摘になったように、学内がまとまらない場合には学長に対する権限集中が十分にできないということは、可能性としてはあるわけでございます。問題は、紛争が非常に深刻化した場合にはそういうことは非常にやりにくい、やりにくいがゆえに深刻化するということだろうと思うのでございまして、その辺をもう少しこの六条についてははっきりさせる必要があるのではないか。特に第六条一項には「学長は、評議会にはかり、次の措置をとることができる。」、こう書いてありまして、とってもとらなくてもいいということでございましょう。そうして「次に掲げる機関を設けること。」、先ほど藤波委員も指摘されましたけれども、「副学長その他これに準ずる学長を補佐する機関」を置くことができるわけでございますが、これは一方学校教育法あるいは人事院規則その他には、副学長制度というものは現在はないわけでございます。そうしたものの整備を並行してなさらなくてもよろしいのかどうなのか、実際には学校教育法にも大学の中の管理職には副学長という制度はない。したがって、たとえば副学長を置いた場合には、管理職手当あるいはその他の財政的な措置は一体どういうことになってくるのかという心配が出てくる。「措置をとることができる。」と書いてあれば、まあ、とらないほうが無難ではないかということにはならないだろうかどうだろうか、若干事務的なことになりますから、局長でけっこうでございます。
  77. 村山松雄

    ○村山(松)政府委員 第六条に規定するような事柄は、現行法でも、これが他の法律の権限を侵さない範囲であれば、自主的に大学の判断で発意し実施ができると思います。しかし、他の法律との権限関係を動かすということになりますと、まずもって法的な根拠が要ると思います。それから大学の発意と法律との関係でありますが、いままでもたとえば東京大学においては自主的にある程度この第六条のような措置をおとりになったわけでありますが、それを決意するまでには、東大紛争が起こってから半年以上、その間において相当な施設の荒廃、教育研究機能の停止という犠牲を払った後に初めて決意がなされたわけでございます。むしろ、紛争の収拾というのは、そういうぐあいに時間を経過して紛争が深刻化し、こじれるよりは、なるべくその初期の段階に収拾措置を発動さすことが望ましいわけでございます。そこで法律上こういういろいろな措置をとることが可能であるということの例示がなされておれば、大学としては紛争収拾ということを望むのは当然でございますから、おそらく適当な方法を採用する決意をなされるであろう、そういう基礎をまずもって法律として与えておこうというのがこの法律の趣旨でございます。したがって、紛争収拾を望む声が多数であれば、どれをおとりになるかは大学の判断、考えによりますけれども、第六条などに列挙されたような事柄の中でその大学の事情に適合するものを採用して、紛争の初期の段階に収拾に入っていく、そうすることによって、むしろ七条、八条といったような大学としてはできるだけ避けなければならぬ事態が起こる以前に紛争が収拾できる。こういう法的根拠がないとなかなか決断ができなくて、大学紛争というものが深刻化して回復困難になる。そういう相当予防的なといいますか、初期の段階で立ち直りの機会を与えるというのがこの法律の一番基本的なねらいでございます。
  78. 河野洋平

    ○河野(洋)委員 大臣にお伺いをいたしますけれども先ほどから申し上げておりますように、大学紛争の収拾の一つのネックになっている学部自治、教授会自治、そうしたものを何とか乗り越えて、あるいはそうした点の行き違いを解消し、そして新しい大学像というものをつくっていきたいということを大臣はかねがねおっしゃっておられたわけですが、私どもは、学部自治、教授会自治、そういう学部間のセクショナリズムというものを何とかこの際解消できないだろうかと、特に管理運営に関してはそうした点を考えておるわけです。私どもはかねてから管理運営についてそうした弊害を取り除くべく法案の準備などをいたしたことがあるわけでございますが、残念ながらこの法案にはそうした点が入っておらない。おらないばかりか、第七条を拝見しますと、「大学紛争を収拾するため必要があると認めるときは、大学紛争が生じている学部、教養部、大学研究科その他の部局又は組織における教育及び研究に関する機能の全部又は一部を、六月以内の期間、休止することができる。」というふうに、つまり学部単位あるいはこまかい組織の単位で紛争の収拾をしようというふうになっておるわけでございます。私どもは、たとえばそれが何学部が悪いからといって学長がその学部だけをとめてしまえば、それでもう事足れりとするのは少し考え違いではないだろうか、具体的に申し上げますと、私どもは、大学紛争というのは、学生たちは学部間の対立ということはあまり考えられない。学生の争いは、先ほど藤波委員が指摘されたように、民青と三派というような対立、これは学部を乗り越えた対立になっておると思いますけれども、その上で、たとえばある学部が封鎖をされた。そうすると、封鎖をされたということでその学部が休止されてしまう。しかし、その封鎖を行なった学生はその学部学生であるかどうかはわからない。あるいは教授会にしても、その学部の教授会が紛争終結への努力が足りなかったためにそこが封鎖されたのでない場合だってあるだろうと思うのでございます。それがこの法案でまいりますと、どうも学部単位でものを処理しようとするところで矛盾してくるような気がするのでございます。その点はいかがでございましょうか。
  79. 坂田道太

    坂田国務大臣 河野委員のお話のようなことも考えられるわけでございますけれども、これはやはり紛争の態様というものはいろいろあるのじゃなかろうか、むしろ限定的に考えて処理をしたほうがいいという場合もございましょうし、非常に局部的に見えておるけれども、しかしそれはそうじゃなくて、一学部の問題だけじゃないのだ、数学部あるいは全学的な問題なんだ、こういう形で収拾をしなければならぬ場合もあるというふうに私は思います。現に東京大学を考えてみましても、実を申しますと、最初は医学部だけの問題であった。それがだんだんエスカレートしまして全学に及んでいった。ことに東京大学の場合は、本郷と駒場に分かれておるわけでございますし、駒場の場合におきましては、一年生と二年生とはほぼ本郷へ参ります準備段階としての一般教育を担当する教育研究の場である。もちろん、あそこで大学院まである学科もございますけれども、そういうので普通考えるならば、医学部で起きました学生紛争大学紛争というものが駒場にまで移るということは考えられないことでございますけれども、今日の大学紛争というものは、いま御指摘になりましたように、原因はとにかく、何らかの形において体制をぶちこわそうというようなところに、むしろ一部学生の政治的意図があるわけでございまして、お説のようなことを十分踏まえてケース・バイ・ケースでやらなければいかぬのじゃないかというふうに思うわけでございます。しかしながら、この法案といたしましては、とにかく紛争処理を第一義としておりまするので、一応限定的に考えていくということになっておるわけであります。
  80. 河野洋平

    ○河野(洋)委員 大臣御指摘のとおり、初期の大学紛争というものは、たとえば東京大学におきましては、医学部という限定された学部学部内の問題について紛争を起こしているわけでございますが、昨今の大学紛争というものは、いまこれも御指摘がありましたように、体制に対する運動ということで、特定の学部、特定の問題、テーマを取り上げて、学部単位で紛争が発生しているという事例はあまりないのではないか。むしろ、大学がその管理運営体制そのものに非常に欠陥があるために、紛争の収拾がうまくいかないという事例が多いのじゃないかと思うのです。そこで、紛争収拾の責任学校全体が負うか、学部単位で負うかということはたいへんな問題ではなかろうか。この法案では、どうも責任は当初は学部単位で負っていくというふうに私には読めるわけでございます。九条等へまいりますれば、これは国立学校設置法その他の改正措置がございますから、最終的には大学全体が負う場合もあるかもしれませんけれども、第七条の段階では、学部あるいはそれ以下の組織体で責任を負っていくような形になっておるわけでございますが、大学紛争責任というものは学長にある、大学自体にあるものだということからすれば、休止、停止を学部もしくはそれ以下の単位に命じていくというところは、私はどうしても解せないのでございますが、この点もう少し説明をしていただきたい。
  81. 坂田道太

    坂田国務大臣 私も実を申しますと、たとえばそのよってきたる原因等を考えた場合には、それからまた波及いたしておりまする今日の学生運動等を考えますると、一学部原因であっても、それはやはり学長みずからあるいは大学全体として責任を負うべき問題であるというふうに思うわけでございます。ただ、とるべき措置として、全体としての責任感じ、また責任ある措置をやりますけれども、そのやります措置そのものはむしろ限定的に考える。こういうことになろうかと思うので、あくまでも全学的な形において責任を負って処理をするという態度でなければ解決できないのじゃないかというふうに思います。
  82. 河野洋平

    ○河野(洋)委員 それでは大学局長に伺いますけれども、もう少し具体的にお話を進めたいと思いますが、第二条で大学紛争の定義をなさっておられます。この定義をそのまま了解をしたとして、この定義では「大学の管理に属する施設の占拠又は封鎖、授業放棄その他の学生による正常でない行為」が起こっている事態大学紛争という。それまでは「大学紛争」ということばで出てまいりますが、第七条ではじめて「紛争大学」というひっくり返った名前が出てまいります。つまりそこまでは大学単位で、この大学紛争があるかないかということはわかってまいりますけれども学部単位に、この学部紛争が起こっているかどうかという判断を第七条ではじめてするわけです。この学部紛争学部であるかどうかという判断は一体何によってなさるのですか。
  83. 村山松雄

    ○村山(松)政府委員 大学紛争の定義は二条にありますように、最終的には教育研究が阻害されている状態という物理的、客観的な状態をさしていっておるわけであります。その原因としては学生による正常でない行為、それから態様としては授業放棄あるいは施設の封鎖、占拠といった、それらの要素を備えたものを大学紛争といっておるわけであります。これは客観的な事態でございますから、客観的に認知し得るわけでありまして、まず当事者である大学が一番認知しやすい状態にございますので、そういう紛争状態を認めれば文部大臣報告をする。報告をされて文部大臣も了承するという具体的な若干の手続はあろうかと思いますけれども、具体的には客観的な事態が発生して、当然認知されて、大学報告文部大臣の了承という形ではっきりする、こう考えられております。そのような紛争状態をどこかの学部等の部局に持っておる大学を第五条で紛争大学、こう定義づけておるわけであります。  それから紛争大学の処理は、原則的には全学的になされるべきことでありますけれども教育研究の休止、停止といったような非常な措置は、これをとったほうが紛争収拾に役立つと思われる場合にやるわけでございます。紛争大学は何カ月たったら自動的に休止をしなければならぬというような筋合いのものではございません。そこで、もちろん全学的にやることを禁じておるわけでもございませんけれども学部によっては、他の学部紛争を起こしておっても、別にその学部には影響がないというような場合もございます。そういう場合には、一部の学部紛争があるからといって、休止、停止ということを常に全学的にやるということは、関係のない教職員、学生に累を及ぼす。それも全学的な連帯責任だからしかたがないではないかという見方もあり得るかもしれませんけれども、この法案の原案ではそういう立場をとらないで、休止、停止といったような非常措置は学部等の単位ごとに一応見ていこうという立場をとったわけでございます。  それから、先ほど答弁を落としましてたいへん失礼いたしましたが、副学長のように現行制度にないものをなぜ設けるか、その場合の待遇をどうするかという点でありますが、大学の管理運営の問題を論ぜられる場合、これは紛争がなくても、学長一人で、あとは合議機関の議論によって運営をしていくということは、大学のような複雑な有機体の運営機構として十分でない。むしろ教育研究、管理といったような機能別に学長を補佐する副学長のような職を置いて、管理運営を能率的、機動的にする必要があるという声はかなり高まっております。将来の大学の管理機構のあり方として副学長的なものが望ましいというような線は審議会の答申にも出ておりますし、それから世論でも指摘されておる点でございます。これを全大学制度として設けることは、これは基本的な問題でございますが、少なくとも大学の意思決定あるいは学長の執行を能率的にするために必要な機関として多くの推奨がなされておる副学長のような機関を、紛争大学のようにそのような措置が最も必要な場合に採用することは有意義であろうということで、この法案で、大学が必要と認めるならば採用し得る措置としての副学長制というのを採用いたしたわけでございます。こういうものを設けますからには、その処遇につきましても、学長、学部長、研究所長等の管理職とのバランスを考えまして、待遇上の措置も考えるべき筋合いのものと思っております。
  84. 河野洋平

    ○河野(洋)委員 いまの大学局長の答えでございますけれども、やはり私はどうしても紛争責任大学全体がとっていくというかまえが何より大事であろう。それはこの法案にも、第三条の「学長等の責務」という訓示規定の中に、とにかく紛争が起こったら全学一致してその紛争解決に当たれということを訓示しておる。にもかかわらず、いまの大学局長の御答弁では、いや、大学紛争は、一つ学部にあっても、隣りで授業が行なわれる学部もあるのだから、学部ごとでいいじゃないかというお話ですけれども、その辺がどうも学部セクショナリズム、学部自治が発生をする原因になるのじゃないだろうか。私はどうしてもいまの大学局長の御答弁ではまだ納得ができない。  いまの御答弁から、大学紛争あるいは紛争大学定義はわかりました。しかし、どの学部紛争中の学部であって、どの学部教育研究の機能を停止すればいいかという判断は、これはただ単に第二条の大学紛争の定義というところの表面的なとらえ方では解決をしない場合があるのではないか。もっともっと学長は十分に当該責任者として、ここはバリケードで封鎖されておるけれども、この封鎖を行なった原因は、ほんとうはこの学部ではないのだ、たまたま本部があるからここが封鎖されておるけれども原因はここではないのだということはわかっておるかしれない。しかし、第二条の定義その他によって、これがもし第七条まで準用されるとするならば、教育研究を停止される、あるいは休止される学部というものは、見当違いな学部が停止をされるようなことにならないだろうか、どうだろうかという心配が私にはまだ残ります。で、私はそれよりも何よりも、そういう心配があるからこそ、あるいはまたそういう心配を乗り越えて、大学紛争というものをその大学単位で考えるということもまだ少し小さな考え方だと思いますが、少なくとも学長以下その大学の全力をあげてこの紛争収拾のために当たるべきものであって、学部単位でものを考えるということは、まだいまの答弁では納得いかないのですが、大臣の御答弁を求めたいと思います。
  85. 坂田道太

    坂田国務大臣 河野委員のお話もわからぬわけではございません。しかし、この七条の措置をとりまするのは、すでに六カ月なり、さらに三カ月、あらゆる努力を払って、その間におきましては全学的な学生の意思をくみ取るようないろいろな方法もとられた後において、しかも第三者の臨時大学問題審議会の意見も聞いてとられるわけでございまして、そういう全学的なことを考えた上において、全部をやるかあるいは一部をやるかという最終的なことがきめられるということと御了解をいただければ、ある程度御理解をいただけるんじゃないかと思います。  同時に、私は、やはり基本的な問題としては仰せのとおりでございまして、今日大学紛争が起こりましても、これに対して迅速果敢な全学的意思の決定が下されず、そしてまた対応できなかった。そこにやはり今日大学紛争がここまでエスカレートしてきたところがあるわけなんで、やはり全学的に執行部が意思をきめる、あるいはまた学生についても、常々紛争が起きない前に、ふだんの大学の管理運営あるいは教育研究活動の中において、もう少し大学当局が学生の意思をくみ上げるような何らか、公聴会であるとかあるいは何か全学協議会であるとか、そういう広報活動や、あるいは広報委員会や、あるいは学生と対話をするような担当の副学長であるとか、あるいは厚生施設その他のめんどうを見るような人であるとかいうような、ふだんの機能というものがもう少しきめこまやかに行なわれるということが前提だと私は思うので、その意味におきましては、やはり大学それ自体の管理運営そのものに踏み込まなければ根本的な解決はできないという河野委員の御指摘は、私は全く同感なのでございますが、しかし、いま起こっておりまするこの紛争というものは何らかの処置をしなければならぬということで、必要最小限度の立法をお願いをしておるというわけでございます。
  86. 河野洋平

    ○河野(洋)委員 途中まで大臣と私は認識が全く同じなんでございますが、最後のところで違ってまいります。私は少なくともその学部単位でものをとらえるというのは、この法案の非常に大きな特色だろうと思います。八百数十の大学の中で紛争大学だけを特に取り出し、さらにこの法案の中で学部だけを特に取り出しておる。したがって、第八条には、その紛争大学で前条二項の停止措置がとられたときは、また当該学部の職員だけが給料も減るということになって、徹底的にその学部だけが攻めつけられる。うまくかわしてしまえば自分のところはセーフということになっておる。そこで、一体どの学部紛争学部かということは非常に大きな問題だろうと思うのでございます。なぜ大学単位でとらえることができないのか、なぜ学部ごとにとらえていかなければいけないのか、その辺のところをもう一度局長から答えてもらいたい。
  87. 村山松雄

    ○村山(松)政府委員 紛争処理は全学的に取り組むべきものであることは一条、二条、三条あたりの精神から当然でございますが、その処理は、ある段階では、場合によっては学部別の処理というものを加味するというのが休止、停止の場合に学部別にやるという趣旨でございます。そこで紛争学部とその責任の所在との関連の御指摘もございますが、紛争の態様によりまして、授業放棄の場合は紛争学部等とその責任の所在は大体直結しておると考えてよろしいのじゃないかと思います。問題は施設の封鎖、占拠の場合、これはよそからの者が来て占拠、封鎖する、したがって紛争大学になって、関係のない学生、職員が累をこうむるという事態が起こり得るわけでありますが、この場合はストライキの場合と違って物理的な処置が可能なわけでございます。封鎖、占拠というものは合法的なふるまいではございませんから、これを排除することは法治国として合法的に可能なわけで、この可能な処置をやらないために封鎖、占拠による紛争が長引いて、いろいろむずかしい事態におちいるということは、ある意味で、またそういう意味でやり得る措置をやらなかったという意味で当該学部等の責任になってくる。そういうものを学部ごとに処理しないで全学的にあらゆる場合にやったほうがいいじゃないかということは一つの御見識でありまして、それに対して反論申し上げるすべがございませんけれども、この法案では、休止、停止というような処置については学部ごとにやったほうがよろしいのではないかという一つの政策的判断で立案したというより御説明のしようがないことを御了承願いたいと思います。
  88. 河野洋平

    ○河野(洋)委員 そういうことに、もう反論もなさらないし、政策論だということになりますと、私はこれ以上何をか言わんやでございます。  そこで、それではもう少し議論を進めまして、この法案の附則の第二項で、もうすでに六カ月以上経過しておる大学を、この法案ができたときに五カ月目としていこうじゃないかという附則がございます。もう五カ月目ということは、あと残余の期間は一カ月で次の措置に移ることになるわけでございます。そういうことになりますね。
  89. 村山松雄

    ○村山(松)政府委員 この法律の適用を、現にこの法律で定義づけておるような大学紛争を客観的に見ればやっておるような大学にどうするかというのは、これまた一つの均衡上の政策的判断になるわけでありますが、既成事実をできるだけ過去にさかのぼらないという考えに立てば、この法律の施行の時点からあらためて起算するというやり方もございます。しかし、大学紛争という定義をこの法案のように客観的な状態で定義づけた場合において、それと全く類似した客観的状態が六カ月以上も存在するものを、一切過去の事実を見ないで施行の日から起算するということは、この法律施行後の新しく発生する大学紛争の処理との均衡を考えると、バランスを失するのではないか。しからばどれだけ通算したらよいかという問題、これを一応五カ月と押えたわけでございます。そういう意味合いでございますから、五カ月は計算に入って、六カ月で発動する場合にはあと一カ月、九カ月で発動する事項につきましてはあと四カ月たてば発動する、これはこのような附則の書き方をしたからには、当然そのような帰結になってまいります。
  90. 河野洋平

    ○河野(洋)委員 もし事務当局に、これは一校一校の固有名詞はけっこうでございますが、この法案ができ上がったら、五カ月目と数えざるを得ないという大学が幾つあるか、わかっておったら教えていただきたいと思いますが、いかがですか。
  91. 村山松雄

    ○村山(松)政府委員 約四大学あると考えております。
  92. 河野洋平

    ○河野(洋)委員 これは仮定の話になりますからどういうことになるかわかりませんが、その四つの大学は、この法律ができ上がると、五カ月目と数えられて、一番長くてあと四カ月たつと、停止処分を大臣が下す条件が整ってしまうことになるわけですね。そうしてさらに第九条で国立学校設置法を改正するための措置その他必要な措置が講ぜられなければならないということになるわけですが、この国立学校設置法を改正するということはどういうことですか。
  93. 坂田道太

    坂田国務大臣 この条項は、研究中止をいたしましてから、さらに三カ月を経過してなお紛争がおさまらないという場合に、この法律でそのまま廃校にするということはいかがかという観点に立ちまして、やはりこれは国立学校設置法という法案を出しまして、そうして国会の御意思を聞いた上でそういう措置をとるべきである、そういう慎重さが必要である、かように考えたわけでございます。
  94. 河野洋平

    ○河野(洋)委員 国立学校設置法に書いてあるものは大学の名称、学部、所在地、この三つですか。
  95. 村山松雄

    ○村山(松)政府委員 いろいろ書いてあるわけでありますが、設置の根拠といたしましては、大学の名称、位置、それから学部研究所、これらが法律事項になっておりまして、さらにこまかい学科でありますとか付属施設というようなものは政令、省令の段階になっております。
  96. 河野洋平

    ○河野(洋)委員 ということになると、国立学校設置法を改正するということは、大学の名前を変えるとか、あるいは位置を変えるとか、あるいは学部をやめる、この三つにしぼられると了解してよろしゅうございますか。
  97. 村山松雄

    ○村山(松)政府委員 大体そのようでございますが、あと大学院の問題が法律事項になります。
  98. 河野洋平

    ○河野(洋)委員 ということになると、やっぱりそこまで学部単位というのがずっとさかのぼっていくことになるだろうと思います。たいへんこだわるようですが、どうしても日本大学制度というものには、国立学校設置法をはじめとして学校教育法その他すべて学部というものを一つのユニットにして組み立てられている。その上に学部自治ができ、大学の進歩をいろいろな意味で阻害をしているということに私はなってくると思う。局長はいろいろ言われましたけれども、この法案自体がそうした既成の法律の上に立ってその措置をしようということになっておるから、大学を単位にして取り組むのではなくて、どうも学部単位で取り組んだほうが法案が組み立てやすいということから、学部にこの法案自体はたいへんこだわっておるのではないだろうかという気がするわけです。大臣自身先ほど来、私もたびたび確認をしておりますように、教授会自治、学部自治というものが大学の進歩発展あるいは大学紛争収拾に非常に弊害になっておる一つの要因であるということであるならば、やはりそうしたものを直していかなければ紛争の収拾にならないのじゃないか。そういう学部単位の法の上に幾らこういうものをこう載せていっても、これはもう学部自治学部エゴイズム、そういうものを特に表面に出してくるだけであって、どうもほんとうの意味のいい形の収拾にはならないと私は思うのですが、重ねてもう一度御答弁をいただきたいと思います。
  99. 坂田道太

    坂田国務大臣 河野委員の御指摘というのは、私から言うと、今日の大学のかかえておりまする病根の一番ポイントをついておられるのじゃないだろうかというふうに思うのでございます。しかしながら、実を申しますと、現在そういうような大学制度になっておるし、その上に立ってこの紛争処理を考えていきます場合、やはりどうしてもそういうような、ただいま御提案申し上げておるような形にならざるを得なかったということは、率直に私は認めざるを得ないのじゃないかと思います。しかしながら、これから先のあるべき姿の大学において、どういうような仕組みを考えたほうが管理運営がやりやすいかということを考えた場合に、もう少し学部というものについてもメスを入れる必要があるのじゃないだろうか。あるいは総合大学と称せられるこの膨大な規模というものも、一定の規模というもの、管理能力の限界というものは大体どの程度になければならないのかというようなもの、あるいは総合大学の場合においては、単に学長だけが全責任を負うということじゃなくて、やはり教学担当の副学長、それからまた学生と対話をするような担当の副学長、あるいはまた広報あるいは学内学外のコミュニケーションを担当するところの副学長、こういうような補佐機関というものの上に学長が立っているというような仕組み等も当然考えられなければならないと思う。河野委員の御指摘になったことが将来のあるべき大学の姿の一端をのぞかせておるというふうにも私は受け取れるわけでございまして、むしろカリフォルニア大学の中のサンディエゴ分校でございましたか、あの中で試みておるような学部制廃止の新たなる仕組みというもの、あるいはイギリスのエセックス、サセックスの例、あるいはまたドイツのコンスタンツ大学とかボーフム大学とかいうような新たな実験的な野心的な試み、あるいはまたフランスの今度のフォール改革に基づきますところの実験的なやり方というようなものも、やはりそういうような欠陥にメスを入れた結果としての新しい大学の構想だと思うわけでございまして、われわれは十分そういうものも頭に入れながら、今後の新しい大学の上において管理運営にはどういうようなやり方がいいかというようなことを検討していかなければならないと思っておる次第でございます。
  100. 河野洋平

    ○河野(洋)委員 大臣からただいま私たいへんいいお話を伺ったと思います。それに関連をいたしますけれども先ほど私が申し上げた国立学校設置法の改正の時点で、つまり一番最終的な時点になるわけですが、この時点で名称、位置、学部、そういったものを改正をする。その場合にたとえば適正規模に直していく。つまり世間一般では、私どももそういう感じを受けておりますけれども、過日西岡委員が指摘されたように、この法案は、川下で、紛争が起こって流れてきたやつを全部処理するだけのものだ、きたやつは全部そこで処理して終わりにしてしまう、お葬式を出すような法案だということになっておりますけれども、その国立学校設置法の改正の時点で何か適正規模の学部に変えていく。そのまま廃校、廃止してしまうのではなくて、生まれ変わったようなものにしていくというようなこともお考えになっておられるのかどうなのか、あるいはまた、これから考えられることなのかどうなのかについて……。
  101. 坂田道太

    坂田国務大臣 その点につきましては、やはり学部がなくなる、あるいは大学がなくなると申しましても、そこに学生がおるわけでございますから、その学生をどうするかということをともに考えなければならないわけでございまして、その意味合いにおいて、新しい更生した大学を設けるというようなこともやはり頭に置いて、適正規模等のことも十分考えながら検討をしてまいるべき課題であるというふうに考えております。
  102. 河野洋平

    ○河野(洋)委員 最後に、私は、私ども自由民主党の党内で坂田大臣がかつて委員長をしておられた文教制度調査会で種々検討し、そして引き続き私ども検討した結果、現在の大学紛争を何とかして収拾をする、あるいはまた、問題の解決をはかるというためには、今日政府が提案をなされているこの法案はこの法案として必要であるかもしれないけれども、やはり管理運営、あるいは学生の取り扱い、たとえば参加をどうするか、あるいはまた処分をどうするか、権利義務、そういった点を十分に考えた法案を出すべきではなかったかということを私どもは考えております。この点は西岡委員も過日御指摘申し上げたわけですが、この法案を見ておりますと、これも過日西岡委員が御指摘になりましたけれども大学運営に関する臨時措置法案と書いてあるだけで、これは世間一般にきわめて誤解を生じやすい法律案の名前だろうと思います。内容を読んでみれば、これは紛争の生じている大学運営に関する臨時措置法案とすべきものであって、ただ大学運営に関する臨時措置法案と書いてあれば、中身はいわゆる大学全般の運営に関する措置が盛られてあるとしか思えない。非常に誤解を生じやすい法案の名前でございます。私どもは、この法案の名前からして、内容にはやはり一般のすべての大学運営に関するもろもろの改革案件を盛り込むべきものだと依然として考えておるわけでございます。大臣先ほど来から、とりあえずはこれだけでいくのだということを繰り返しておられるわけですが、最後にもう一度お伺いをいたしますけれども、これを修正をなさるおつもりが若干でもおありになるかどうか、御答弁をいただきたい。
  103. 坂田道太

    坂田国務大臣 修正は、むしろ行政府のわれわれがやるべきことではなくて、やはり国会で修正をなさる場合もあり得るわけなんでございますが、私どもといたしましては、河野委員のおっしゃいますることも十分わかるわけでございますけれども、新しい大学の中における管理運営ということを頭に描きつつ、また、それに到達するワンステップとしてはこれでまいりたいというふうにただいま考えておるような次第でございます。
  104. 河野洋平

    ○河野(洋)委員 著作権の小委員会を開かなければならない時間にもなっておりますので、私は質問を留保して終わりたいと思います。  と申しますのは、この法案をこのまま通したいというならば、やはり法案の名前を変えるべきであるし、この名前でいこうとするなら、これは中身を何とかすべきではないかという気持ちが私はいたします。したがって、本日は時間の関係もございますから、これで質問を終わらしていただきます。(拍手)
  105. 大坪保雄

    大坪委員長 次回は明後四日、金曜日、午前十時より委員打ち合わせ会、午後一時より委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後二時五十七分散会