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1969-07-31 第61回国会 衆議院 物価問題等に関する特別委員会 第16号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十四年七月三十一日(木曜日)     午前十時十九分開議  出席委員    委員長 帆足  計君    理事 小笠 公韶君 理事 木部 佳昭君    理事 竹内 黎一君 理事 阿部 助哉君    理事 武部  文君 理事 和田 耕作君       青木 正久君    大野 市郎君       笹山茂太郎君    広川シズエ君       唐橋  東君    戸叶 里子君       内藤 良平君    村山 喜一君       有島 重武君  出席政府委員         防衛庁経理局長 佐々木達夫君         経済企画庁政務         次官      登坂重次郎君         経済企画庁国民         生活局長    八塚 陽介君         厚生省環境衛生         局長      金光 克己君  委員外出席者         大蔵省主計局主         計官      辻  敬一君         文部省体育局学         校保健課長   田  健一君         厚生省環境衛生         局食品化学課長 小島 康平君         厚生省環境衛生         局公害部公害課         長       橋本 道夫君         厚生省医務局国         立病院課長   滝沢  正君         参  考  人         (一橋大学名誉         教授)     中山伊知郎君     ――――――――――――― 七月三十一日  委員中野明君辞任につき、その補欠として有島  重武君が議長の指名で委員に選任された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  物価問題等に関する件(物価安定対策に関する  問題等)      ――――◇―――――
  2. 帆足計

    帆足委員長 これより会議を開きます。  物価問題等に関する件につきまして調査を進めます。  まず、参考人から、物価安定対策に関する問題につきまして御意見を承ることといたします。  御出席参考人は、一橋大学名誉教授中山伊知郎君でございます。  この際、一言ごあいさつを申し上げます。  中山参考人には、御多忙中にもかかわらず本委員会に御出席くださいまして、まことにありがとうございました。委員一同感謝いたします。  申すまでもなく、物価安定対策に関する問題につきましては、さきに政府に対し、物価問題懇談会及び物価安定推進会議から諸提言がなされておりますが、本日は、広い識見を有せられる中山参考人から忌憚のない御意見を承りまして、本委員会の今後の調査参考に供したいと存ずる次第でございます。何とぞよろしくお願いいたします。(拍手)  なお、議事の整理上、初めに中山参考人の御意見を約十五分程度に要約してその重点をお述べいただき、その後委員各位から御腹蔵のない質疑をお出し願いまして、それにお答えいただくことにいたしたいと存じます。  また、委員各位に申し上げますが、中山参考人は御都合によりまして正午ごろまでしか出席できませんから、このことをも念のためお含みくださいますようお知らせいたしておく次第でございます。  それでは、これより中山参考人最初に御意見をお述べ願うことといたしたいと存じます。中山参考人
  3. 中山伊知郎

    中山参考人 中山でございます。  ただいま委員長から御紹介のありました趣旨に従いまして、できるだけ簡単に、現在の物価の問題、その原因、それから対策、そういう問題を順次お話し申し上げたいと思います。  まず第一に、現在の日本物価の状況でございますが、これはもう皆さんが十分御承知とは思いますけれども、この本年の六月末までの結果でこれを見ますると、四十二年中の東京のCPI、消費者物価は四・一%の上昇でございます。それから、四十二年中ではなくて四十二年度、つまり四月-三月という年度で申しますと、これはまた偶然でございますけれども、四十二年度の場合には四・一%の上昇でございます。それから四十三年度になりますと、四十三年中の物価騰貴は五・六%、四十三年度物価騰貴は五・二%、大体、昨年と一昨年との間では、年度をとりましても年中をとりましても、およそ政府の宣言しました物価上昇ワク内、あるいはワク内外と言ったほうが正確でございますが、大体そのワクにおさまってまいりました。しかし、これはあとから申し上げますが、そのワク自体が相当大きなものでございますから、これで安心はできないわけでございます。  ところが、ことしになりましてから消費者物価はだんだんに騰勢を強めておるような傾向でございまして、一月から六月までの上昇率だけを申しますと、〇・六、〇・三、一・〇、一・三、マイナス〇・二、そして〇・一、これが一月から六月までの物価上昇でございます。すなわち、五月一カ月がごくわずかのマイナス、〇・二%のマイナスであった以外は、毎月ずっと騰貴が続いてまいりまして、したがいまして、この六月の対前年同月比は実に五・七%という、近来数年間にまれに見るような高い上昇率を示したということになっております。このことが、消費者物価につきましては、ことしはこのままでまいりますと、あるいは政府の予定しております四・五%というような上昇率ではとどまらないのではないかという心配をみんなに与えているわけでございます。これが消費者物価情勢。  次は卸売り物価でございますが、本年の日本物価情勢一つの特色は、卸売り物価騰勢が続いているということでございまして、日本銀行の調査も、四十年を基準といたします物価指数がいまちょうど一〇七・〇という指数でございます。この指数だけを見ますると、日本卸売り物価は幸いにして、まだそんなに高い水準ではございません。けれども、これを本年一月から六月までの騰勢をずっと見てまいりますと、これから申し上げます六つの数字がそうでございますが、一月〇%、〇・一%、〇・三%、〇・三%、〇・三%、そして六月が〇・四%、ごくわずかでございますけれども、一月から六月まで全部プラスで、つまり騰貴ばかりでずっと今日まで上げ調を続けております。この理由は、一番大きなものは輸入原材料が上がったというようなことでございまして、特に非鉄金属、したがいまして日本のほうでどうもできない事情もございます。けれども、この卸売り物価騰貴というのは、これは何と申しましてもやがて日本輸出に響く数字でございますから、輸出をてこにして今日続いております好景気には、これは一つの暗影と申さなければなりません。  この意味で、日本物価は、消費財物価数字騰勢を続けておるという、この累年の、三十六年以降の引き続いている現象につけ加えまして、つい昨年までは卸売り物価が安定しているからいいじゃないかというような感じで見られておりました卸売り物価のほうが、どうやらはっきりと長い上昇傾向を示しているところに特徴を持っております。  そこで、このような物価問題について一体何が物価騰貴原因であるかということが問題になります。この問題は、経済学のABCから申しましてきわめて簡単なことでございまして、需要供給よりも大きいから物価が上がる、これは世界的な、そして古今を通じて曲がらない一つの当然の理由でございます。日本の場合にもこの需要供給のそういう相違から物価が上がる、こういうことについては何の違いもございません。  ただ、これをもう一歩立ち入って申しますと、実は二つの問題がございます。一つは個別の物資、たとえば野菜でありますとかあるいは魚でありますとかの一般生鮮食料品でありますとか、あるいは特定サービスでありますとか、そういう特定物資もしくはサービス需要供給アンバランス、ここからくる物価騰貴という問題、もう一つ所得生産と申しましょうか、つまり購買力が一方でふえて需要がふえる、これに対して物の生産もしくは供給が追いつかない、こういう意味での物価騰貴、これは非常に一般的なものでございます。そういう需要供給関係がございます。  つまり、物価騰貴原因というのは、総じて申しますれば、需要のほうが供給よりも大きいということから起こることは間違いございませんが、場合によってはそれは特定のものについて起こることもございますし、もっと一般的に国全体の購買力、それは結局財政金融政策というようなところにいくものでございますけれども、そういう購買力と国全体の持っている供給、すなわち物資というものとの関係から起こってくる場合と、二つございます。  もっと詳しいことを申し上げますと、実は需要供給と申しましても、さらにめんどうな問題がございまして、需要と一口に申しましても、本来の需要なのか、つくられた需要なのか。供給と一口に申しましても、これは自然に出てくる供給なのか、押えられてコントロールされている供給なのか。つまり独占の問題、それから消費者をだますようないろいろな策略の問題、いろいろな問題がここにからんでおるのでございますが、ここでは問題を非常に簡単にするために、需要供給ギャップから物価騰貴が起こるんだということを申し上げておきたいと思います。  そこで今度は、そういう物価騰貴に対する対策はどういうことであるかということになりますと、やはり二つに分かれます。一つ個別物資対策。これは言うまでもなく、たとえば野菜東京都について足りないということになりますれば、近郊の農家の野菜生産を奨励する、こういう形で供給力増加していくということが必要になってまいります。もしどうしても急に間に合わないという場合には外国から輸入する。たとえば豚肉が足りないといえば、その豚肉緊急輸入をする。実はこの緊急輸入も、簡単に申しますけれども、いままでの実績では、緊急輸入したときにはもう上がり過ぎておったというような時期で、間に合わないといういろんな欠点はございますけれども、足りなければ輸入してこれを間に合わせるということも一つ方法になります。根本的には、たとえば農業基本政策を推進するとかあるいは中小企業に対する対策を、合理化によってどんどん生産力を進めていくようにするとか、そして供給力を増す以外にないのでありますけれども、やむを得ない場合には輸入政策というものも非常に大きな問題になる。これは個別物資の場合の需給を調節する方法でございます。  それから、一般物価、一般的な需給アンバランスは、これは財政金融政策でやるよりほかにはございません。つまり財政でできるだけ所要の費用を節するか、あるいは、これも緊急的な場合でございますけれども前途が非常に危険であるというならば、当然予算で確定しているような支出でも、せめて三カ月とかあるいは六カ月でも支出を延ばす。あまり有効な政策ではございませんけれども、それでもそういう形で調節をとるということもできましょう。  それから、金融政策のもとは、何といっても成長金融をどこまでまかなうかということでございます。したがいまして、前途に非常に大きな国民経済的な需給アンバランスが出てくるという傾向がございましたら、そのときには少しは設備投資を押えて、そして銀行の金の出し方を押える。そうしますれば、自然にこれが購買力として回っていく程度も少なくなりますから、したがって需要を押えることになる。この政策は、実は日本以外のヨーロッパ、アメリカ日本以外のほとんどすべての国が最重点を置いている物価政策でございます。これはもう世界物価政策を、イギリスであろうとフランスであろうと、西ドイツであろうとアメリカであろうと、ごらんになりますれば、およそ物価騰貴に対する対策というのは何かという場合に、最初に出てくるものは金融の引き締めあるいは財政の縮小ということなんでございますが、日本ではどういうわけか、これが正面にいままで出てまいりませんでした。この理由は、あとから御質問があると思いますけれども、おそらく日本経済政策重点が、外国貿易の伸長という点に置かれていた。そのためには設備を更改して、そして設備投資を十分にやって、競争力をつけなければならぬということが一つであった。そのためにどうしても財政金融政策を第一義に置くよりは、むしろ他の政策によって物価騰貴を押えようという努力が行なわれたというふうに考えておりますけれども、もし物価政策というものをほんとうに考えますならば、これからはそろそろもう総需要対策といいますか、そういう金融、それから財政政策のほうにも、いままでよりももう少し注意を払う必要があるんじゃなかろうかと考えております。  それから、日本でやれますこういう物価政策には、二つの面からまだ非常に期待が持てる面を日本経済は持っておるのです。  一つは、物資政策についても流動性というのはまだかなりあるのです。たとえば労働が、生産性が低い部門から高い部門に移る可能性外国から比べて大きい。それから一般物価政策にしましても、いままで手をつけていませんので、これもいざ手をつければ有効であろうと思われる面も相当にあるというようなことで、両方ともまだ対策としては打つべき手が残っておりますが、さて一体そういうような消費財物価騰貴、特に最近では卸売り物価騰貴というものがあったにかかわらず、日本物価問題が、国民大衆の中に大きな不満を残してはおりますものの、日本経済全体の進行には、これは生産とか貿易とか輸出とかいう面でございますけれども、直接に大きな悪い影響を持たなかったのはどういう理由であろうか。これが物価問題に対する注意をいままで一般的にそらしており、また政府についても、物価問題について十分に真剣になれなかった理由だと思うのですけれども、どうしてそうだろうかということを考えてみますと、一つには消費者物価上昇によるところの国民生活への圧迫、つまり家計への圧迫というのが、非常に高い成長による所得増加によって相当埋められていたということでございます。  たとえば昭和三十六年から今日まで、大体五・五%ないし六%近い消費財物価騰貴を続けてきてもう八年以上になっておるのですけれども、その間に物が高い物が高いという不平はずうっとあるのですけれども、それが爆発的な大きな力にならなかった理由は何だろうかということを考えてみますと、やっぱりそう言いますものの、他面では所得がふえているということだろうと思うのです。所得がふえているから物価騰貴はかまわぬということでは決してございません。それは分配の問題もございますし公平の問題もございますし、その問題を入れますというと、所得増加は必ずしも物価騰貴ほど公平にはまいりません。物価騰貴は非常に公平にいくわけです。あらゆる消費者階級にほとんど同時にいくんですけれども所得増加のほうはそうはまいりません。その間のギャップがございますから、所得増加があったら物価騰貴があってもかまわぬということではございませんけれども、しかしこんなに長い高い消費財物価上昇が続きながら、なおかつ、あんまり大きな声としてはなかなかならなかったという理由は、私は、どうも一面において成長所得増加をもたらしていたということであろうと思います。そしてその状態は今日もなお続いていると思います。  それからもう一つ理由は、最近では事情が違ってまいりましたけれども、それでもなお、消費財物価値上がりにもかかわらず卸売り物価がほとんど安定しておったということでございます。卸売り物価と申しますのは、先ほども申しましたように、これは原材料、それから生産手段、たとえば鉄鋼でありますとかあるいはセメントでありますとかいうような生産手段物価がおもな構成要因をなしております。そのことは、ことばをかえて申しますと、日本輸出物価を構成していると考えてよろしい。言いかえますというと、消費財物価のここ八年以上の騰貴にもかかわらず、日本輸出品物価は上がらなかった。ところが、それと競争している外国物価はどうかと申しますと、外国では、皆さん承知のように、消費財物価とそれから卸売り物価というものとはほとんど同じ動きを示しております。一方が五%上がれば一方も五%上がる、一方が一%上がれば他方も一%上がるというふうに、完全に一致はしておりませんけれども、大体において同じような動きを示しております。そしてその外国物価は、日本のこの八年間の卸売り物価の安定時に実は上がっております。つまり向こうの物価は上がっているのに日本物価は上がってないという形で外国の市場では競争できた。これが日本輸出が大体世界輸出増加の倍の率でいままで伸びてきた理由でびざいます。たとえば、世界輸出増加が昨年は八%くらい、非常に伸びたのでございますけれども、それに対して日本は一六%というような、あるいは二〇%に近い大きな率で輸出が伸びている。これはもう十年間くらい同じ傾向でございますが、そういうような傾向をなぜ持ち得たかということは、日本卸売り物価が安定しておったということでございまして、これは非常に偶然の、日本経済にまだ弾力性がある、たとえば、先ほど申しましたような労働移動による弾力性、それから能率増加による弾力性、そういうものが残っておったという理由でございますけれども、それが非常に日本経済に幸いをしておった。  この二つ事情を一まとめにして考え直してみますというと、日本は、経済のいまの基本をなしております輸出の増進というものを達成するのに非常に有利な条件を利用することができた、つまりチャンスをつかんだということでございます。そのチャンスをつかんだということは、これからそうは続きません。もう一度、もう二度というふうに繰り返して同じようなチャンスがあると考えることは私は非常に危険である。  第一に、消費財物価値上がりは徐々に卸売り物価を押し上げるようになってくる。これは私どもがずいぶんもう数年前から言っておったことでございますけれども、不幸にしてことしに入ってから半年の間の実績は、卸売り物価のほうがじりじり上がってきて、そして消費者物価影響をまともに受けることを示しつつある。何とかしないというと、もう次のチャンスというものをこのままで続けていくことができないのではないか。  私ども、こういう物価問題に取り組みましてから、これで大体もう六、七年になりましょうか、第一回は昭和三十九年ごろでございますか、物懇物価問題懇談会という形で、そのときにはさしあたり公共料金ストップというのを旗じるしにして物価問題に取り組みました。第二回の物価問題懇談会では、特に米、麦というような食糧品の中の大きなものをつかまえまして、そしてそれの物価をどうするかというような提言をいたしました。第三回の物価に対する会議は、御承知物価安定推進会議というのでございましたが、これは四十二年から四十四年、ことしまで続いた二カ年間の会議でびざいましたが、ここではもうちょっと物価問題に深く入りまして、制度とか慣習とか、日本物価を不合理に押し上げていると考えられるいろいろな制度慣習や、そういうものに立ち入って、若干の提言をしてまいりました。  以上の三つの場合を回顧いたしますと、第一には、三十六年以降数年間、非常な急ピッチで上がってまいりました物価に対する緊急の対応策を考えた。これが公共料金の一年間ストップという対策にあらわれた。この場合にもそれで全部が済むとは決して思っていないので、あの答申をもし読んでいただく機会がございますれば、いろいろなことをいっておるのでございますけれども、しかし要約して何が実際できたかということから考えますと、公共料金ストップしかできなかった。そういう緊急対策をやった。  それから第二の物懇におきましても、あるいは緊急輸入でありますとか、あるいは米や麦の価格の調整でありますとかいうような当面の問題についての緊急的な提案中心でございました。あるいはその場合の緊急提案一つには、財政の規模を経済成長の範囲にとどめてくれというような要求もありましたけれども、みな緊急でありました。  そうして推進会議に至って、どうやらもう少し根本的な制度の点、たとえば財政制度、それから金融制度、これはごく最後に触れただけでございますけれども金利の制度、それからさかのぼりまして、米の食管制度、これは食管をまともに取り扱ったわけではございませんけれども食管制度をめぐっての米価の問題に対する検討、同じような意味で麦、それから公取の関係では例の再販制度の問題その他を取り上げまして、日本物価関係のある制度というようなものを中心に取り上げてまいりました。  しかしこれもわずか二年のことで、ようやく緒についたというのが偽らざるところでございまして、今度いよいよこの十二日から、物価安定政策会議という名前で新しい会議が始まりますが、ここでは、私どもいままでこの問題を手がけてまいりました仲間での希望といたしましては、もう少し本格的に、恒常的に――何か物価に関する審議会とか委員会というものが、何かこう手当たり次第に、そのときそのときの事情で設けられては消えていくというような形ではなしに、もっと恒常的な、本格的なものにしたい、これが希望でございまして、そしてそのためにひとつ、ややパーマネントな調査機関をくっつけるという形でスタートをしたいと考えております。  と同時に、いろいろ提言しました政策のフォローアップ、どういうふうに政府がそれを取り上げ、どういうふうに実行して、どういう成果をあげているかということを、これをもっと調査的に、客観的にフォローしていくことをやりたい。ことばをかえて申しますと、いままで三回の経験を全体として本格的に物価問題に取り組むように再組織をしていきたい。そして、先ほどから申し上げております物価情勢というのは、まさにそういうような包括的な、系統的な、根本的な取り扱い方物価問題に対してすることを要請しているように思うのでございます。  これだけのことを最初に申し上げまして、御質問に答えたいと思います。どうもありがとうございました。     ―――――――――――――
  4. 帆足計

    帆足委員長 ただいまの御陳述をもちまして一応の御意見の開陳は終わりましたが、これから、皆さまから御質問のお申し出もありますから、順次御発言をお願いいたします。阿部哉君
  5. 阿部助哉

    阿部(助)委員 非常にお忙しいところおいでいただきまして、中山先生にいまいろいろと物価原因対策、そしていままでやっておいでになったいろいろなことをお伺いし、教えていただいたわけであります。私たち物価委員会として国民負託に沿うためにいろいろとやってまいりましたが、現実の日本物価は、先生がいまお話しのありましたように、この八年間大体五・七%という、まあ異常といっていいほどの上昇を続けておるわけでありまして、これまた先生の御指摘のように、国民の中には、爆発こそはしなかったけれども、非常な不満というか、そういうものが起きておるわけであります。それで、この六年、物懇以来ずっとこの会議あるいは推進会議議長というか座長というか、その指導的な立場においでになった先生に御意見あるいは教えをいただきまして、私たち国民負託にこたえていきたいということでおったわけであります。  私に与えられた時間も非常に短いようでありますし、また先生の御都合もあるようでありますから、論議をするということも避けまして非常に端的にお伺いいたしますので、ことば足らずで失礼に当たることもあろうかと思いますが、ひとつかんにんをしていただきまして、教えていただきたいと考えるのであります。  まず第一に、いまお話をお伺いをしたのでありますが、この第一次の物懇以来今日までおおむね六年間、この間にいま申し上げたような五・七%という上昇を続けてきておる。そうすると、この推進会議あるいは物懇での提言等が一体効果があったのだろうかどうだろうかという、国民は疑問を持っておるだろうと思うのです。効果があったとすればどういう点だろうか、効果がなかったとすれば何が一体その原因なんだろうかということをまずお伺いしたいと思います。
  6. 中山伊知郎

    中山参考人 お答え申し上げます。  これは非常にごもっともな御質問でございますし、私どもいまおっしゃられましたように、こういう審議会その他に数年関係してまいりました者としても、実際の結果がこういうことになっておりますことは非常に遺憾だと思いますし、力の足りないことを特に痛感するわけでございます。  効果があったかなかったかという問題は、これは非常にむずかしい問題でございますが、私どもといたしましては全然効果がなかったとは考えておりません。たとえば、これはまだ議論の続いている問題でございますから断定的に申し上げるのはどうかと存じますけれども、米価が今日のような状態で抑制された一番大きな理由は、何と申しましても先ほどから御説明しております需給関係なんで、供給があれだけ余ってくれば幾ら米価でもそういうふうになるだろうといわれることは当然だと思うのでございますけれども、そこにもつていきますまでに、米価の問題を何とかして需給状態が反映するように、これは三年越しに私どもは主張してまいりまして、そしてそれが私どもの力とは申しませんけれども、ある形で落ちついて解決された。もしもあの米価の問題を放任しておきましたら、たとえば一昨年の消費者物価騰貴というのは、ほとんど消費者米価の値上がりで運命がきまったというくらいのことでございますので、そういう点から申しますと若干の効果がそこにはあったのではなかろうか。  それからもう一つは、政府の側で――これは政府の側でと言いますのは、むしろ各省の側と申したほうがよろしいかもしれませんが、物価マインドといいますか、物価に対して幾らかの、いままでよりは強い注目をしなければならないということになったということ、これはたしか第二物懇あと、それから推進会議の始まるころでございましたが、各省に物価担当官というのが置かれまして、これが一月数回の会合を企画庁で持つようになった。これは企画庁自体の統制力とも関係がありますから、そんなものができたからといってすぐに各省が物価を考えて、たとえば公共事業の計画を立てるというようなことがすぐ行なわれるとは私は考えません。けれども、そういう計画の中に、物価も少しめんどうな問題になったからこれも考慮に入れて考えなければならない。たとえば道路計画を立てる場合に、ガソリン税の収入でそれをまかなっていこうという場合に、ガソリン税をこれ以上上げたら物価にどんな影響を及ぼすだろうかというようなことを、いままではおそらく建設省のほうでは第二次的に考えていたという問題を、少なくとも建設計画、道路計画の中に一つの項目として入れなければならぬというような意識を持ってきた。これは私は非常に大きな効果ではないかと存じます。  その他、小さい点を申しますれば、たとえば私どもが一番困っております問題は土地なんでございますけれども、土地の開発利益の吸収というような問題も、皆さんが国会で承認されました都市計画法というようなものの中に一部でございますけれども取り上げられるようになった。これも決して、全体を一〇〇%といたしますればせいぜい五%か一〇%くらいの効果しか認められない段階だと思いますけれども、一歩の前進であるというようなことがいえるかと存じます。  そこで、そういうような言い方を申し上げてやっと効果を説明申し上げるよりしかたのない状態に置かれた理由はどこにあるだろうか。一番大きな理由は、客観点な理由といたしましては経済成長の速さということだと思います。これは私ども経済成長の速さに全部を押しつけるのは間違いであります。熊谷報告がいっておりますように、一方に経済成長を持続させながら、他面にむずかしい物価騰貴という問題を押えていくというのが、新しい時代の経済政策の眼目でございます。これはもう各国の政府国民が正面から取り組んでおる問題でございますから、だから物価騰貴原因を全部経済成長におっかぶせようとは存じません。けれども、事実の問題として、たとえばここ十年間の西欧の、特にヨーロッパの経済成長物価との関係を、ちょうど一昨年ILOがそういう研究結果を発表しておりますけれども、それを見ましても、結論だけを申しますと、どうも経済成長を速くすると、そして特にそれが完全雇用という条件とぶつかると、どうしても物価騰貴というのがある程度やむを得ないということを告白せざるを得ないような状況にございます。その意味で、日本の場合にも一つの大きな客観的な理由は、この超スピードの経済成長ということでございまして、その点については、私はもし責任があれば、経済成長をそんなに速く推進したのはだれだということで、もし政府が責められるならば政府にも責任があると存じます。同時に、そういう経済成長の計画を政府の計画よりも一回り大きくして先走りをしようとする民間にも責任がある。その民間の一番大きなところはやっぱり金融機関じゃないか。金融機関というようなところに大きな一つの責任もあるんじゃないか、私はこう思っております。  しかし、この問題はまた非常に議論の多いところでありまして、それじゃ逆にいって、経済成長をやめたら物価騰貴は一体おさまるかといいますと、これは非常に疑問のあるところでございまして、必ずしも成長をとめるだけで物価が安定するとは限らない。もしもやりそこなって、成長はとまったけれども物価上昇がとまらないというようなことになりますると、いまよりももっと悪い状態になる。そういうことも考えなきゃなりませんので、これは非常に議論のあるところでございますけれども、私はこれを一歩先に議論を展開する前に、とにかく客観的な事実として、経済成長一つ原因であるということを申し上げます。  それから、そういう事情のもとでわれわれがいろいろ苦労して提案をし、それから国会の方面においても、質疑応答の中で皆さんが非常に苦労して物価問題についての関心を示されている。それが有効に適用されてないという点には政府のほうに責任がある。その政府の責任というのは、いままでの縦割りの産業行政というのは、どうも産業保護に偏しているとまでは申しませんけれども、少なくとも物価マインドというものについては薄かったということはどうも認めざるを得ないんじゃなかろうか。その意味で、政府のチームワークが物価について十分にできていなかったという点に問題があるのではなかろうか。これは私どもがちょうど推進会議の終わりに、各省の物価担当の方々、それに公取その他を加えて、長いヒヤリングを連続的にいたしました。その間に各省の担当官は、それぞれ自分のほうではこういうふうにしている、この勧告についてはこうこたえたというふうに説明をされておりますし、その説明には決して私うそがあるとは思いません。けれどもその説明をずっと伺っておりますと、そういう政策あるいは措置の裏に、必ずしもそれを裏づけるような十分な物価マインドがなかったということが、おのずから暴露されてくるような場合もございます。したがいまして私は、政府の側にもっとそういう政策を推進する熱意というのがほしかったと思います。その熱意と、それから成長に対する意欲とどう調和させるか、これは政府の中でもたいへんな問題だろうと思うのでございますけれども、そういうことが意識されず、十分に問題にならなかったところに一つの実らなかった欠点があると思います。  同時に、私どものほうでもそういう事情を十分に取り入れて、実行可能なそういう対策を十分に展開することができなかったというのは、これはわれわれの委員会の欠点だろうと思います。  そういうところで効果の両方を判定していただいて、私は効果のプラス面とマイナス面とを両方勘案した上で、なおかつ、恒久的な物価対策の審議機関というのはやはり必要じゃないかという結論を持っているわけでございます。
  7. 阿部助哉

    阿部(助)委員 先生非常に謙虚に、われわれの力が足らなかった、こうおっしゃるのでありますが、また一面、政府の熱意であるとかあるいはまた経済成長の速さとか、いろいろおっしゃっておる。この前「エコノミスト」に「この人と一時間」という記事が載っておるのでありますが、先生物価対策について点数をつけると落第点のようなお話をなすっておる。それでいま、非常にぶしつけな質問でありますが、端的にお伺いしたわけであります。  いまいろいろと米価等に成果もあげた。私、これには多少私なりの意見も持っておりますけれども、しかし全体としてはやはり五・七%ばかりずつ上がってきておるという現実は、何としてもこれはどこかに欠点があると思わざるを得ないわけであります。これが常道であるとはだれしも考えない。先生はいろいろと政府の立場もお考えになっての発言のようでありますけれども、そうすると、私もう一つ疑問に思うのは、物価問題に対する推進会議あるいは政府の認識は間違っていなかった、だけれども施策、熱意がなかったとか足らなかったとかいうことで今日に来たのか、それとも認識自体にも何がしかの狂いがあってここへ来たのかという疑問を持つわけであります。いま先生のお話からは、認識は狂っていなかったけれども、むしろ政府の施策、熱意に足らないものがあった、こういうようにお伺いしたのですが、非常に端的な質問であれですが、時間がありませんので……。
  8. 中山伊知郎

    中山参考人 これは非常にむずかしい問題でございますが、私は、ことばが悪いかもしれませんが、間違いであったとかなかったとか、そういう認識が初めからなかったんじゃないか。これは非常に悪い言い方でありますけれども、実は経済学全体について、先ほどもちょっと触れましたけれども、これは何といいますか、世界の大問題なんです。その意味は、つまりいままでの経済政策の普通の観念から申しますと、景気が過熱して物価騰貴して非常に困るという場合には、金さえ締めたらいいんですね。非常に簡単なんです。金を締めて仕事をさせないようにすればいいんです。そうすると一面に失業が起こって不景気が起こる、これは回復のためのやむを得ない手術なんだからがまんしろということだったんですね。  ところが、そういうがまんをする必要はないということを言い出したのが、もう皆さん承知の一九三六年、昭和十一年のケインズなんですね。ケインズがそれを言い出してから、今日では政策の面でニューエコノミストの時代になっているんです。これはどういうことかと申しますと、苦痛なしにそういう状態を乗り切ろうじゃないか。失業者が出たり非常なデプレッションがあってなおるというのは、これは昔の医者だ。いまは無痛分べんですね。簡単に言いますと無痛分べんでいこうじゃないかというのがケインズ以後の経済政策で、それでもういまでは、不景気になったらとにかく金を出してその不景気を救う、それで失業者は出さない。いつでも完全雇用というのは、どの政府もどの国民も、これはもう間違いのない、そして掛け値をいうことのできない最高の目標なんです。現に完全雇用というのを疑っている政府世界じゅう一つもないのです。  そうしますと、どういう経済状態でも完全雇用を完全に満たしていくためには、不景気のときに金を出さなきゃならないのですね。金を出した場合には、つまり生産力が足らないのに金だけを出していけば、何といっても先ほど需要供給関係から物価は上がるんですよ。ですからそういう政策、つまり無痛分べん的な政策を一方でとりながら、他方で健康を維持していくために、物価を上げないためにはどうするかということを世界の国々が、学説的にも実験し、実際上にも実験しているというのが事実なんですね。これは熊谷委員会の報告では、皆さん承知のように、冒頭に、一方に成長を維持し、他方で物価安定を維持するというこの二つの目的を同時に達成するというのは、世界一つのアウフガーベ、課題だということをいっておられるんですね。私どもそれは全くそのとおりだと思うのでありますけれども、そういう意味では、簡単にいまのご質問を――こういうレジュメのしかたはおしかりを受けると思いますけれども物価騰貴の全然ない世の中にするのは、そういう政策をとらなければ大体間違いなんだと言われますれば、そういう政策はありますまい、こういう答えを申し上げるよりしようがない。  ただし、それは野方図に物価を放任して上げていってもいいということにはならない。それは限度もありますし、やりようによってはいままでの五・七%というのは、私はせめて四・五%とか、一%か二%下へ押えることができたと思います。思いますから、決していまの御質問に対して物価騰貴を全然押えることができないという点だけを強調しようとは思いませんけれども、逆に申しまして、どうしても物価は〇%の騰貴にしなければ経済政策としては健全でない、その意識を政府が持っていたかといったら政府は持っていない。持っていないことは必ずしも責められるべきことではない。ただ持っていないから物価はほっておけというような考え方が若干あったとしたら、それは政府の間違いなんだ。こういうことなんですが、これ説明が非常に不足で恐縮なんですけれども、時間があれば何かお答えを申し上げたいと思います。
  9. 阿部助哉

    阿部(助)委員 確かにこれはむずかしい問題だとおっしゃられるのはわかるのでありますが、それだけに国民には何というか、わからないもやもやした不満というものが非常に強かろうと思うのであります。以前に政府のほうでは物価白書というようなものを出しておったわけでありますが、これでは三十六年は一・一%の物価上昇、それに対しても相当に神経を使って、その一・一%の物価上昇に対して言いわけと思われるような書き方をしておられるわけであります。ところが、それから毎年、先ほど来話がありますような五・七%というものは何としても異常であり、国民生活圧迫し過ぎる。そこで、先ほど先生おっしゃったように、成長の速度を何がしか見るべきであるとかいうようなものがもっととられてしかるべきではないか。何かいままでの日本物価問題、また特に政府政策は、口では安定ということをおっしゃるけれども、実際は貿易、国際収支、そういうものだけを見ながら、国内物価というものは二の次、三の次になってきたのじゃないか。何かそこに、物価推進会議あるいは物懇皆さん方の熱意に政府はこたえていないのではないかという感じがいたしましたので、非常にぶしつけな質問をしたわけであります。  それで、先生がこの物懇推進会議議長ということで最も指導的な立場をとられてまいりましたし、おそらく今度の安定政策会議ですか、ここでも先生がそういう立場になるだろうと推測をしておるわけであります。それで、いままで出てまいりました個々の提言であるとかいうものは、先ほどお話しいただきましたように、緊急対策であったり、あるいはまだ抜本的なものでないようでありますので、これからまた指導的な立場で日本の重大な物価問題の提言をされるであろう先生の御意見をお伺いするために、実は私も先生の「物価について」というこの本を読ましていただきました。しかし、たいへん私の勉強が足らないのかどうかわかりませんけれども、政治を担当する、国民負託にこたえるという立場でこれを読んでまいりますと、どうも私にはよくわからない。それならばどこに問題の焦点があるのかというところが私にはなかなかわからない。そこで、先生の本でお伺いするのはたいへん失礼なんでありますけれども先ほどお話し申し上げましたように、先生がそういう非常に指導的なお立場にあるということで、先生のこれからの考え方をひとつ教えていただきたいと思うのであります。  それで、この本の末尾のほうで、百七十六ページでありますが、物価政策基本は結局生産性の向上と競争の徹底である、こうおっしゃっておるのでありますが、これは一体具体的にはどういうことなのか、ちょっと教えていただきたいと思うのであります。
  10. 中山伊知郎

    中山参考人 お答え申し上げます。  たいへんどうも御勉強いただきまして、かえってお答えがむずかしくなりまして恐縮でございますが、どういうところからお答えしたらいいかわかりませんが、まず最初の問題、このま物価推進会議の延長として次の会議に私どもが発言をいたしますとすれば、どんなところにそれでは重点を置いてこれからの物価政策を考えていくのか、この先ほど最初のほうの御質問にまずお答え申し上げます。  いまちょうどその点にお触れになったのでありますが、日本のいままでの物価政策というのは、特に日銀、それから大蔵省を中心としての政策貿易伸長、輸出伸長というのに重点が置かれ過ぎていたのではなかろうか、したがって、先ほどから申し上げておりますように、卸売り物価さえ安定しておれば、すなわち輸出物価さえ安定しておれば、国内物価にはそんなに気をつける必要はないのではないかということが、どうも政策当局者の重点的な考えであったらしい。その点について私どもはこの前の推進会議の最後の提案の中で、その時期はもう過ぎたのではないだろうか、もう外貨もだんだん蓄積されてきた、それから特に消費者物価影響卸売り物価のほうに来そうになってきた、そういう状態の中でいままでのような政策をそのままとっておられるのは困りますから、これからは、通貨安定というのは、たとえば日銀の通貨の価値安定というのが最大の目的なんですから、その通貨の価値という中にはひとつ国内の消費物価も考えてくださいということを、特にあの最後の提案の中にはうたっているわけでございます。そんな意味でそちらのほうに重点を置いて、政策転換というようなところに一つ問題を求めていこうと思っております。しかしこれのむずかしさは、輸出を押えるという政策をとるわけにはいかない、伸ばしながらなおかついまのような問題をどういうふうに持っていくかという点でございまして、その点についてはなお皆さんの御審議によって内容を固めていきたいと思っております。それが一つの転換点であります。  それを一つ問題といたしますと、どうしても成長政策金融政策とに手をつけざるを得ない。いままでは緊急対策的なこと、あるいは制度的なことの一部に触れておりまして、十分にその成長政策的なところまでメスを入れていくことができなかったのでございますけれども、これからは、もし有効に成長率のスローダウンができて、しかもそれが安定的な成長につながり、他方物価安定につながるというようなことができますれば、その方策を推進する方向に持っていきたい、これが第二の希望でございます。  と言いながら、現在起こっておりますような豚肉とか、あるいはやや近い将来起こるでございましょう交通料金、私鉄の料金あるいはタクシー料金というような身近な問題について全然黙っているわけにもまいりませんので、そういう点の調整をどのようにしていくか、それをいま構造としては考えているわけでございます。  これが、これからの物価政策重点をどこに置くかという点についてのお答えでございまして、その焦点を、いままでの物価政策あるいは日本経済政策の根本に反省すべき点があるのではないかと言われる点では、私は全く同感でございます。  それから第二の点でございますが、「競争」とここで申しておりますのは、実は生産性の向上と同じことなんでございまして、競争によって生産性増加するというのは、一言で申しますと、先ほど申しました需要供給関係で、供給力増加する一つの方策なんでございます。供給力増加というのが、物価対策の根本でありますことは、たとえば、先ほどお触れになりました米の場合でも明白でありまして、私は、農林省の米の増産計画というのは間違っていなかった。あのためにあれだけの増産ができて、そしてその需要供給関係から米価が安定をするようになった、非常にけっこうなことだと思っているのです。実はその米の増産、供給増が政策に――これは余談になりますけれども食管制度というものがもう、少し古くなっているのを、すぐにそのまま修正しなかったことが最近までの米価問題のもつれであろうと私は思っておりますので、その米に対する農林省の増産政策というのは私は間違っていない、こう思っているのです。つまり、何といっても米価は物価の王さまなんで、したがって、それを安定させるためには米の供給が豊富でなければならぬ。そのためには生産性が上がらなければならぬ、そのために奨励をしたということは、私は間違っていないと思うのです。  これは余談でございますけれども、およそもし物価の問題を需要供給関係に立って根本的に考えていきますれば、一方では需要をどうにか押えることも一つ方法でしょうが、根本的には何といっても供給増加しなければならない、それには生産性を上げていかなければならない。その生産性を上げていく最も一般的な、そしてだれにも文句がわりあいに出ない政策というのは、輸入の自由化ではないかと思うのであります。これもいろいろ問題がひざいますけれども、とにかく競争、第一には国外の競争――私は国内の競争をあまり強調するのはどうかと思うのです。むしろ競争の相手は外国に置いたほうがいいのじゃないかと思っておりますけれども、とにかく競争というのが一つの能率推進の薬である。その薬というのはあらゆる機会をつかまえてこれを強調するようにしなければいけないのじゃないか。そして逆に申しますと、日本にはそういう競争をもっと増進して、新しい風を入れる余地がいろいろな産業にいまのところ相当残っている、こういう認識でございます。
  11. 阿部助哉

    阿部(助)委員 それで、もう一つ先生の本の百七十八ページには「物価政策のもっとも大きな責任者は、いうまでもなく政府である。」こうおっしゃっている。「政府は公共的な料金について決定し、勧告し、あるいは監督の権限をもっている。また米価や地価のように、主として制度的な条件によってきめられる価格については、制度をにぎっている政府だけが、実際にこれを左右する力をもつであろう。」その次に、金融財政の根本に触れられておるわけでありますが、実際私もこのことについては、抽象的には異議はないのでありますけれども、それならば一体どうすれば政府がやるのか。ただ熱意が足らないというだけでは何かあれのような気がするわけですが、先生は、具体的にこれを政府にさせるためにはどうしたらいいのか、ここで国会に席を置くわれわれとしては、一体どういう形でその問題を政府に迫っていくべきなのかという点で、お気づきの点がありましたらひとつお教えをいただきたいと思います。
  12. 中山伊知郎

    中山参考人 非常にむずかしいことかもしれませんが、一つ方法としては、もし見通しが間違ったら政府に賠償しなさいと言うのです。たとえば、これはどういうふうにチェックするかが問題でございますけれども、かりに今年度物価騰貴は四・五%である、それ以上は上げないつもりだということでいろいろな政策がとられていきますが、不幸にしてそれが一%も二%も上がるようなことになったら、減税をして国民におわびをするというくらいのことはしてもいいんじゃないか。これは非常に極端な言い方のようで、まだ実行不可能だと言われますけれども、何か政府がそういう意味で責任を持つような体制をおつくりになることが、何といいますか、自己責任をお持ちになることで、私どもが外から何かものを言うよりは、もっとずっと有効なんじゃないかというような気がするのです。そういうことは、非常に戦時的な、あるいは特殊な場合には、たとえば生産担当官が生産実績があげられない、販売担当官がその実績を言うたようにやれないという場合には責任をとるというようなこともあったわけですが、政府だけが責任をとらないというのはどうもおかしいと思うのです。物価のようにだれにも見通しのつかないようなことも起こり得るのですから、そういう問題についてどのような責任のとり方がいいかは存じませんけれども、そういう思想も一つの考え方だと思います。
  13. 帆足計

    帆足委員長 質問者各位に申し上げますが、最初に御了解を得ましたように、中山教授は正午まででございますから、時間のことを御勘案されながら御質問のほど願います。
  14. 阿部助哉

    阿部(助)委員 時間も大体来たようでありますので、最後にもう一点お伺いしてお教えいただきたいと思うのですが、この本の最後に「このように、政府、企業、家計の三つが協力し合うことによって、安定化への努力が重ねられるならば、われわれは経済成長物価の安定と両立させていくことに、もっと大きな自信をもつことができると思う。」こうおっしゃって、この本を結んでおられるわけでありますが、それならば、企業がこの物価安定に協力するそのしかたというものが一体あるのだろうか。また企業がそういう協力をしている例というものが一体あるのだろうかという疑問を私は持っているわけでありますが、この点はいかがでしょうか。
  15. 中山伊知郎

    中山参考人 お答えを申し上げます。  それも実際問題として非常にむずかしい問題だと思いますけれども、たとえば企業の競争の方法には二つあるわけでございますね。一つは純然たる価格競争、それからもう一つはクォリティの競争というものがございますね。それで、価格競争のほうでは、いまおっしゃるように、企業のほうで、生産費が安くなったから特に自分のところは値下げをして競争していこうというような意欲を持つのは、私はだんだん少なくなるのじゃないかと思うのです、実際問題としては。それは、中企業以下のところではかえってそういうことが行なわれるかもしれませんが、それが物価に非常に大きな影響を持っておりますので、大企業のほうになってまいりますとなかなかそうはいかないのじゃないかと思うのです。ところがクォリティのほうの競争は物価の値下げをしなくてもできるんでございますね。たとえば一カ月もつ歯ブラシのようなものを二カ月、三カ月もつように改良する。それができますれば、そして同じ値段でそれが売られたとすれば、実はそれは物価問題については非常なプラスなんですね。何かそういう意味の協力のしかたというのは企業にもたくさん残されているのではないだろうか。日進月歩の世の中でございますから、商品の改良という面は無限なんですね。その無限の可能性を競争という名のもとに、しかし価格競争ではなく、クォリティの競争でいこうというような形に企業がなってくるといたしますれば、企業にそういう意味の競争による効果を期待し、それがひるがえって物価の上に大きな効果を持つということも可能ではないだろうかと思うのです。その意味で、企業にも何かの貢献の可能性はあるのではないかということをそこでうたったわけでございます。
  16. 阿部助哉

    阿部(助)委員 家計というものは、今日物価でたたかれっぱなしというと強いのでありますが、たたかれっぱなしで来ている。協力しようにも、もうこれ以上協力のしょうはないじゃないか。実際いうて、企業と家計とは、非常に端的にいえば、どっちかというと敵対関係であって、これを調和させるということ自体がむずかしいのではないか。そしてその上に政府の協力というが、先生先ほどお話しにありましたように、輸出、そして卸売り物価をにらんでいる。卸売り物価は論議をすればあれでありますけれども卸売り物価のウエートでいえば八二%が輸出産業といわれるような大企業の指数をとっておられる。そうすると、この点でいくと、政府は企業の側に立って成長政策オンリーで来ておったといっても過言ではないのじゃないか。そうすると、政府、企業、家計の三つの協力と、こうおっしゃっておられるけれども、実際はこれは協力のしようがないんじゃないだろうか。  そこでむしろ、先ほど先生のお話がありましたように、これからの政策は、物価問題に関する限りは、成長政策を何がしかチェックしても家計の安定という立場にお立ちになっていただかないと、何か三者三様協力すれば何とかなるとかいうことでこの問題が解決されるというような、先生の御意図はそうではないのだろうけれども国民がそういった感じを持った場合には、むしろ物価問題が混迷をするんではないだろうかという、私不安を持つわけでありまして、先生、これからまたたいへんな御努力をなされるわけでありますが、どうかひとつ、いま一番物価問題で痛めつけられております家計の問題、消費者大衆の問題、そういう立場にお立ちになって、これからの物価問題によりよい提言をしていただきますことをお願いをいたしまして、私の質問を終わります。ありがとうございました。
  17. 中山伊知郎

    中山参考人 どうもありがとうございました。
  18. 帆足計

    帆足委員長 武部文君。
  19. 武部文

    ○武部委員 いま阿部君のほうからいろいろ基本的な問題について質問がございました。きょうはたいへん時間が少ないのでありまして、まだあと同僚議員の質問もあるようでございますから、私はほんの二、三点についてお伺いをいたしたいと思います。  その第一は、先ほどお話が出ておりましたが、昭和三十八年の第一次物懇、第二次物懇物価安定推進会議、今度できます物価安定政策会議、こういうように非常に長い間、物価問題について政府の諮問機関の、特に先生中心にたくさんの提言がなされております。大体二十ばかり出ておりますが、当委員会では、基本的な物価政策の問題と同時に個別物価の問題についていろいろ長い期間討議をいたしてまいりました。そういう面からお伺いをするわけでありますが、何か政府が今日までの三つ、これからできる四つの懇談会なりあるいは会議等を通じて責任のがれといいましょうか、国民物価値上げの不満に対する隠れみのにしておるのではないだろうかというような声を聞くのであります。というのは、その提言が生かされないから、そういうものを通じて政府は努力をしておるんだということを国民の前に見せつけておるのではないか、たいへん悪い表現かもしれませんが、そういうような気持ちを持っていることは事実だろうと思います。  そこで、これからの物価安定政策会議の中でぜひ取り上げていただいて、今後は御提言になったことがどのように具体化をしていくのか、そうしてそれがどういう理由でできないのか、こうしたことが国民の前に明らかになるような、そういう運営をぜひひとつしていただきたいものだ、こういうふうに思います。これは私の先生に対する要望でございます。  第二の点でございますが、第一に、予算委員会の席を通じて、私傍聴してお聞きいたしておりますと、政府の答弁は、経済がこれだけ成長するんだから五%ぐらいの物価値上がりはやむを得ぬ、こういうことが総理なり大蔵大臣の答弁に出ておるわけです。経済成長がこれだけ進んでおるんたから五%くらいは当然――当然とは言いませんが、やむを得ぬのだということを言うのでありますが、私どもから見ると、この五%という数字はたいへんな数字だと思うのですが、この点についてどういう見解をお持ちでしょうか、これが御質問の第一の点であります。  それから第二の点は、たしか去年だったと思いますが、ことしの初めでしょうか、NHKの討論会を私聞いておりましたら、宮澤長官、それから中山先生、小坂徳三郎さん、総評の岩井事務局長、この対談の中で、物価と賃金との問題が取り上げられております。巷間、物価値上がりは賃金が上がるからだという悪循環の面を強調される面が多分にございますが、こういう面で一体中山先生は賃金と物価についてどういうお考えをお持ちでございましょうか。それが第二の御質問であります。  それから第三の問題は、行政指導と物価の問題でございます。特に管理価格制度、これは米麦の問題、それから安定価格制度、これは豚肉や乳製品の問題であります。それから第三は最低価格保障の問題、イモ、でん粉等、こうしたいわゆる価格政策と申しましょうか、そうしたことで、むしろこのことが価格の下ささえをやっておるのじゃないだろうか。この間豚肉の安定価格制度の価格が上限、下限とも上がりました。豚肉は御存じのようなことになっておりますけれども、こういうものが政府のむしろ介入となって、物価にそれが影響を与えるのじゃないだろうかというような気持ちを持っておりますが、これについてどういう見解かをお伺いしたいのであります。  最後の点は、物価値上がり原因について、最初にお述べになりましたように、これは経済の原則から需要供給との関係をお述べになりました。多くの新聞が世論調査をいたしました際の回答を新聞で見ますと、物価上昇の最大の原因は、公共料金が大幅に上がるからだという非常に素朴な国民の声がアンケートの中に反映をされております。御案内のように、第一次物懇で御提言になって、公共料金ストップすべきだということで、昭和三十九年でしたか、一年間ストップをいたしまして、物価は前年に比べて半分に下がった。解除したらとたんにまた倍に上がったというような実績があるわけであります。この公共料金の問題を勇断をもってやるならば、いまの物価値上げをある程度押えることができるのではないかという気持ちを国民はいま率直に持っておると思うのであります。こうした点について、一体値上げの原因について、さっきの経済の原則、需要供給のことにお触れになりましたが、公共料金の問題や管理価格の問題や、それからお触れになった再販の問題や、こうしたことがむしろ下がるべきものを下げない、そういうことが現実の問題としてあるじゃないかというような点を考えるのでありますが、この点についてどのようにお考えでしょうか。  私は四つばかりについて先生の御見解を承りたいと思います。
  20. 中山伊知郎

    中山参考人 お答えを申し上げます。  第一の、勧告を政府がどういうふうに適用し、その効果がどうなっているかということを追跡すべきであるという御主張は、全く私同感でございまして、先ほども申し上げましたように、今度出発いたします物価安定政策会議一つの目標は、常置的な調査機関を置いて、単に物価の動向を調査するだけでなしに、具体的な政策が各省で実際にどう取り上げられているか、どういう効果を生んで、どういう欠点があるかというようなことを常時調査して、追跡しながらこれを本会議に上げていくというような形をとりたいと思っております。  それから第二の、五%は高過ぎないかという御議論、これは先ほども申しましたように、日本成長が高いためにある程度物価騰貴はやむを得ないだろうというのは、私の申しました原因一つがそこにあるという点では正しいのでございますけれども、五%がいいか悪いかという問題になりますと、私は五%は少し高いのじゃないだろうか。つまり、これは具体的に申しますと、現在の定期預金一年ものの税引きの率でございますね。あれは五%五でございますけれども、大体上平均的に税率を引きますと五%になる。そうしますと定期預金を一年間しておって、それがちっとも利子を生まないような状態に物価騰貴があるということは少し高いのではないだろうか。したがって、せめてそれが一%でも、あるいはぎりぎりのところ〇・五%でも定期預金のほうが、預金をしておったほうが物価騰貴をカバーして若干のプラスがあるのだというところまで持っていきませんと、これは国民生活安定ということを幾ら言っても幸いに貯蓄熱は高いのですから問題ないようなものでございますけれども、理屈としてはおかしいのではなかろうか。現に外国から来るそういう学者連中が私ども質問するのは、日本人はなぜ、そういう利子がちっともないような物価騰貴でありながら、なおそういう定期預金をこんなにばく大にしているのか自分にはわからぬ、どういうわけで貯金をするのだと聞くので、貯金をするというのは、ほかに何もすることがない、金のため方を知らないからでしょうという説明をすると、やっとわかったような苦笑いをしているような状態なんですが、こういう状態はよろしくない。その意味で五%というのは少し高いのじゃないかという感じを私は持っております。それが具体的にどの程度がいいかという点につては相当に議論を要しますので、ここでは御容赦を願いたいと思います。  それから次に賃金と物価関係でございますが、賃金もやっぱり個別物価でございます。その意味で、この賃金を押えようとしますならば供給増加ということが必要なんでございます。供給増加はどうするか。それは流動性を与えるということであります。したがって、たとえば農村から都会地、工業地帯への労働の移動をよくするか、あるいは全体として働くことのできる人の数を増すか、これは教育あるいは再訓練というようなことでしょうが、そういう形で労働供給力を増すことがやっぱり賃金全体を物価としては押えていく一つの大きな理由になるでしょう。  もう一つは、賃金はちょうど日本銀行のお札のような一般物価の様相を持っております。たとえば、春闘で一六%の賃上げがノミナルに行なわれますと、それは他の物価にずっと影響すること、あたかも日本銀行が一兆あるいは十億の兌換券をよけい出しますれば、それが物価影響するのと同じような意味を持っております。その意味で賃金に対する政策には総需要政策に合うようなものが一つ必要になるかもしれません。両面を持っております。その一部が、そして非常にまずい形で出てきたのが所得政策ということなんでございますが、私はそれに賛成するとか賛成しないというよりも、所得政策の持っているアイデアというのは、賃金の総需要に及ぼす影響というようなものをつかまえて、その対策を考えていくという意味においては正しいと思うのです。ただし、現在イギリスでとっておりますような所得政策日本にそのまま適用されるとは決して私は思いません。そのことは先ほどの書物にも私は書いておるつもりでございます。そういう意味でそういう両面を持っておりますが、しかし総じて申しますと、賃金もやっぱり他の物価と同じように需要供給で動く一つ物価であることは間違いありませんので、高いからといってそういう需要供給需要を無視して押えようとしても、それは無理でございますということをここでは申し上げます。  それから行政指導と物価という問題、これもいろいろな提案に若干ずつは触れておるのでございますけれども、確かに管理価格あるいはいろいろな最低価格の制度その他が、ちょうど農産物に対する下ざさえというような意味物価の下ざさえをし、場合によってはそれが物価全体の下がるべきものをとめている、あるいはむしろ逆に上昇をささえることになっていることは私は否定できないと思います。その意味では、いままでの産業政策、特に農林省や通産省の両省、それからそのほかに運輸省とか建設省とかいうところが持っております産業政策をやはり根本的に考え直す必要があると思います。ただし、こういうものを全部取っ払うほうがいいかどうかは、これはひとつ皆さんでもよくお考え願いたいと思う。私は取っ払うこと必ずしも日本経済の安定に資するものであるとは思いません。ということは、逆に申しますと、こういう下ざさえ的な物価政策のあるものは、むしろ中小企業や農民層の一部の生活の安定に役立っていると思うのでありまして、そのことをお考えの上で、こういうものをどの程度まで、どこをどのように緩和すれば一番競争の風を入れるのにいいかということは、確かに具体的な研究問題だと思っております。ただ、全体として印象を言えとおっしゃれば、私は現在の保護政策というのは少し行過ぎておるのではないかという感触を持っております。  それから公共料金の問題でございますが、実は第一回の一年間の公共料金ストップというのは成功であったか失敗であったか、問題でございます。確かに翌年の一カ年間の消費者物価騰貴率が前年に対して半分になったという効果はございました。ございましたけれども、それはもうせいぜい一年一回くらいしかできないことでございまして、繰り返して効果の期待できる政策ではないと思いますので、私はあれをあのままの形で今度もやるというのは非常にむずかしいのじゃないかと思います。その上にもう一つ公共料金にはほかの物価のしわ寄せだという面もございます。ですから、数年間ある公共料金を据え置くことがはたして経済の全体のバランスをとるために適当であるかどうかということもございますので、非常にその点は微妙な問題があるかと存じます。  結局どうなのかと申しますと、公共料金の問題については、受益者負担という原則を強調するか、あるいは租税負担、つまり一般国民の負担という面を強調するかということが一番大きな問題であると思うのです。どっちも国民の負担であることには間違いございません。それをどの程度にかみ合わせることによって社会的な正義という点に立った公平を満足させるかというのがまさに政治の問題だと思います。私は、公共料金を永久にストップするということは不可能であるし得策でもない。ただ、それをどの程度どの場合にゆるめたりきつくしたりすることができるかという点は、それは情勢に応じて考えなければならない問題だと思います。たとえば、公共料金というのをもう全部なくしてしまって、たとえば地方税の一部になっております電気ガス税なんかはやめてしまえという議論、私どもも実は税制調査会ではそういう主張をしたのでございますけれども、そういうことをすることは実は電気料金を国民全体の負担に切りかえてしまうということなのでございます。どういうふうにそういうことを切りかえたらいいのかというのは、一般的な問題として相当考慮の余地があるだろうと思います。  ただ、日本公共料金の問題について言えますことは、そういう原理的な問題にいく前に、公共事業そのものの能率をもっとよくしなければならない。その点では相当いろんな勧告が臨時行政調査会あたりから出ておるのでございますけれども、どうも能率の点からは公共事業というのはもう少し締めていい面があるのではなかろうか、その上でひとついまの根本的な公共料金をどうするかという問題に入らなければならないのじゃないかと思うのです。そこで、いままでの勧告ではその両方をとりまして、こういう合理化手段をとってください、そうすればこの料金の改定を認めるようにいたしましょうというような勧告をしておったのです。そこで国鉄では例の五カ年の改定計画、三段階の料金値上げをする場合にこれだけの合理化計画をいたしますというようなことをいっておるのですけれども、はたしてあの合理化計画というのがほんとうに行なわれているのかどうか非常に疑問がありますので、そういう監督というのは政府としては十分やってもらいたい、私どもはそう考えております。
  21. 武部文

    ○武部委員 御答弁ありがとうございました。  私の申しましたのは、最低保障の問題あるいは安定帯価格制度、そういうものが価格の下ざさえになっておる、だから取り払えというような意見を言う人が、われわれが反論すると、それと同時に――ちょっとお触れになりませんでしたが、再販価格や大企業の管理価格の問題を一緒にして討論をすることがあるわけですが、それは違う。おっしゃるように、いまの農村の収入をささえておるのはこういう最低保障価格であるとか安定帯価格だというふうに言うのですけれども、それを一緒に議論をするような向きがある。提言の中にございましたが、実は再販価格の問題は今日に至っても解決いたしておりません。若干洗い直しをいたしましたが、ほとんど効果を生んでいない。私は、やはり再販価格制度というものが相当大きな影響を持っておるし、同時にそれがやみ再販というような形で他のものにも影響をしておるというような点で、物懇なり安定推進会議提言がどう生かされるかということを期待しておったのですが、残念ながらいまの段階では再販価格の問題もほとんど投げやり的なことになっておるのではないだろうかというような気持ちを持っておりますので、ぜひ今度の安定政策会議では、こうした問題も取り上げて再度御検討をいただきたい。この点をひとつ御要望を申し上げて、私の質問を終わります。ありがとうございました。
  22. 帆足計

    帆足委員長 関連いたしまして、唐橋委員から質問の申し出があります。あと有島君からも申し出がありますので、御了承願います。
  23. 唐橋東

    ○唐橋委員 関連して。米価の問題でございますが、いまいろいろお話がありまして、三年来米価を上げないようにして、今度はその実現ができたのだという意味のこともお話がありました。お伺いの前提には、いま政府がとっております生産者米価を上げれば消費者米価も上げます、この前提が一つございます。そういう上に立った質問でございます。  お話がありましたように、従来の物価政策一つの欠点は、輸出価格には安定を考えたが、国内価格は、非常に消費価格には力が足りなかったのだ、こういう御説明もありました。私はそのとおりだと思うわけでございます。こういう中において、いま生産者米価を上げないということが決定されたわけでございますが、生産者米価というのは国内価格の問題だと思います。そうしますと農民は、やはり他の国内価格の消費物価が上がってくる、それに対して自分たち生産者米価は上げないのだ、こういうことに対して、他方、いま御説明があったように輸出価格のほうはこの八年間横ばいであって、それが国内価格のほうは五・七%も平均して上がってくる、その中において米だけが押えられるということは納得できないのだ、こういうことを主張するわけでございます。特に米価の場合には、御承知のように手取りのときには一年前の価格を基準としてきめてあるのですから、私たち物価上昇原因にはなっていないのだという主張が農民の間には出てきているわけなんです。そうしますと、米は物価決定の中心であり、王さまであるというようなおことばがあったようでございますが、農民から見れば、物価が上がった分だけ自分たち生産者米価を上げてもらうのは当然なんだ。むしろ政府がやっていただくことは、全体の物価を押えた中において米も押えていただくならばいいんだが、他方輸出価格のほうは横ばいで、国内価格のほうは放置しておいて、米だけ押えていくということについては、これは私たちは了承できないのですというのが農民の強い主張だと思うわけでございます。それに対して先生先ほど消費者米価を押えていこうと言われたが、こういうことについて私は農民の一つのあたりまえの要求として考えるのですが、これとの関係はどうお考えになっていらっしゃるのか、お聞きしたいと思います。
  24. 中山伊知郎

    中山参考人 お答え申し上げます。  三年以来と申しましたが、実は三年でなくて五年以来と申し上たげほうがいいと思います。そういう主張をしてまいりましたのは懇談会あるいは推進会議でございますが、そういう主張をしてまいりましたのは、需給関係を反映するように生産者米価をきめようではないかというだけでございまして、押えるということではございません。これはたまたま、需給関係を反映しますと、先ほども申し上げましたのですが、非常に供給が過剰になって倉庫が足りないというような状況になってまいりましたから、生産者米価据え置きという状況になりましたけれども、私ども基本的な主張は、決して特に米価だけを据え置けということを言っておるのではないのです。そうではなくて、需給状況を反映するようにきめてほしい、それが経済の原則ではありませんかということを言っておるわけです。  そこで、なぜそれがたまたまこの数年、据え置きあるいは値下げ――値下げまではいきませんが、据え置きというような主張に固まってきたかと申しますと、これは三十六年以降の米価と一般の賃金やその他の指数との関係をごらんになればわかりますように、生産者米価だけが飛び上がって数年上がっておるのです。物価騰貴以上に上がっておるのです。それはもう十分御承知だと思うのですが、最近この一、二年こそ、物価騰貴生産者米価とのつり合いは、上がり方がようやくバランスをとってきたように見えますけれども、その数年前にさかのぼりますと飛び上がっておるわけです。その前はまた逆に押えられておったかもしれませんが、少なくとも物価騰貴が問題になりました時代から数年間はもう非常に飛び上がって、ほかの物価の倍くらいの勢いで生産者米価が上がっていった時期があるのです。そのことがいま響いておりますために、たまたまこの据え置きというような決定をしなければならないようになったと私は思うのです。  しかし、繰り返して申し上げますけれども、私は、米価据え置きというのは経済原則としてどんな意味を持っているかといえば、ナンセンスだと思います。ほかの物価との関係で米価もきまるのですから、米価だけ据え置くというのは、ちょうど賃金を据え置くのと同じような意味で、全くナンセンスだと思います。しかし、いまの二つ事情、つまりある時期に生産者米価は一般物価よりも飛び上がって上げられたという事実、それから供給が非常に多くなったという現在の事実、この事実を考えますと、これを反映してある年度について、たとえばことしについて米価の据え置きが行なわれたということは決して矛盾でも何でもない、むしろ当然ではないかと私は考えております。
  25. 唐橋東

    ○唐橋委員 その場合、いまもお話が出ましたように、輸出価格のほうへの努力と、それから国内の消費価格のほうへの抑制策というものを政府が全然やらなくて、安い小麦だけが入ってきて米が余ったのです。そうすれば、そこに国内の消費者価格だけ上げておくから安いものが入ってくる――もちろん品物によっては国際価格の問題もございますが、そういうものは省略いたしまして、一般論として農民が主張しますのは、国内価格は押えないで全体を上げておくから安いものが入ってくる、そうすれば小麦が入ってきて米がだぶつくのであって、増産は間違いではなかった、そういう先ほど仰せられたとおりのことを農民は言っているわけです。そのとおり私たちは増産してきたが、他方いまのような政策上の問題で小麦が入ってきたのでこの米が余ってしまって、そこで今度押えられてしまっている、こういう点に対して農民は非常に矛盾を感じている、こういうことですが、それについてどのようにお考えになりますか。
  26. 中山伊知郎

    中山参考人 その点につきましては、実は米の代用品は輸入されていないではないかと思います。いまおっしゃったように、麦がある程度代位しておるかもしれません。しかし、この伸び方も一時米から麦への転換が非常にやかましくいわれていたときと比べますと、最近はずっと落ちついております。これは御承知でございますけれども、そういう転換もあまり考えられないといたしますと、米に対してだけにつきましては、あれの代用輸入がそうたくさんあって、それが農民を圧迫しているというような事情はないのではないかと私は思います。そしていままでの唯一の買い手が政府であったということも考えますと、そういう点では比較的コンブレイント等は少ないのじゃないかと思います。私は、いまの農民の一番の不平は、少なくともここ一、二年だけを考えますと、物価が上がっている、労賃が上がっているのに米だけ上がらないのはけしからぬ、それが一番強いのじゃないかと思いますが、この点は過去の時代を少し長く見ますと、農民の姿勢のほうにも少し無理な点があるのじゃないかと思います。
  27. 唐橋東

    ○唐橋委員 時間がありませんから終わります。
  28. 帆足計

    帆足委員長 それでは有島重武君。
  29. 有島重武

    有島委員 時間が全くなくなってしまいましたので、一つだけ競争と生産性の向上という点でございますが、自由な競争の方向に持っていけば生産性の向上はほとんど無限である、競争を奨励すべきである、それが原則であるとおっしゃった。ところがアメリカはいま日本に自主規制を押しつけていますね。そういったことも一つあるかと思うのです。  もう一つは、品質の向上という中に、さっき歯ブラシのお話がございましたけれども、実用性の向上ということ以上に宣伝の部分に非常にコストがかかっているとか、かっこうをよくするということ、美的要素ですね、これは一つの向上であると思うのですが、そういった面が今後非常に多くなってくるのじゃないか、そう思います。これは一つの矛盾点になるのじゃないかと思うのです。  もう一つは、農産物の輸入が競争ということ、品質向上にそのままつながるかどうかという問題と、それから日本の農業の疲弊をかえって招かないか、そういうような問題があると思います。こういった幾つかの矛盾点があるのじゃないかと思います。  もう一つは、中国との輸出入の可能性です。これを今後の日本の長期的な問題として考えなければならないと思うのですが、先生はこの点についてはどんなふうにお考えになりますか。
  30. 中山伊知郎

    中山参考人 お答え申し上げます。  競争の内容ということになりますが、いまおっしゃったような消費者の嗜好だけを挑発するような意味で広告費や包装にうんと金をかけて、そのために値段を上げる、むしろ上げたほうが売れるということをねらっているような生産者が非常に多くなる、それは競争でも何でもないじゃないか、競争かもしれないけれども、むしろ物価の点でも国民経済の点でもマイナスじゃないかとおっしゃるのは、もちろんそのとおりだと思うのです。その意味で、実はこれをここで繰り返して申し上げるのは恐縮なんですけれども物価問題全体にやはり消費者の協力も要るのじゃなかろうか。消費者の協力といいますか、消費者をして商品のほんとうの性質を知らしめるような啓蒙といいますかあるいは監督といいますか、そういうものも要るのじゃなかろうか。実は消費財なんかにつきましては、あまり値段のことばかり言いますと衛生的に欠陥のあるものとかいろんな抜け道が出てまいりまして、かえって消費者が利益を害されるような場合もございますので、やはり消費者保護の行政というのが物価問題にはくっついていなければならない。その点から申しますと、いまのような競争というのは、できるだけ消費者のほうにも自覚を促して、そういう流行にとらわれないようにしてもらう必要があるのじゃなかろうか。どの程度までそういう宣伝とか啓蒙とかが有効であるかは問題でございますけれども、しかし全然放任で黙ってそれを承認するような態度をとるのと、いささかでもそれに対して警戒を起こすような形で出るのとでは効果が非常に違うと思います。その点で注意すべき問題があることは私も全く同感でございます。  それから、いま自由化の問題で日米経済会議が開かれて、そして特に農業生産物という本来の意味での自由化が問題になっておりますが、私は大きな問題として見ますと、自由化によるそういう競争の増加というのは全体的に利益があることは認めざるを得ないと思うのです。しかし農業品に関しては、もう実際問題としてどの国も保護をしてない国はないわけですね。それから一ぺんにそういう障壁を取りはずしたら非常に混乱を起こすことも事実なのです。だから一般原則と個別利益との間をどのように調和するかということを真剣に考える時代が来ているのじゃなかろうか。したがって私は、日米経済交渉がほんとうにイコールパートナーの話し合いならば、そういう問題をこそ取り上げて議論すべきであって、一般原則を日本もこれだけ大きくなったんだからすぐに適用しろとかなんとかいう議論で上すべりの議論をすべき段階ではない、私はそういうふうに考えておりますし、それから現にEECにしてもイギリスにしても、農産物に関してなぜあんなにコモンマーケットの形成がむずかしいかということを考えますと、日本だけがその例外ではないということもよくわかります。その意味で競争を利益として受け入れるということ、したがって、自由化を進めるという大原則と個々のそういう利害問題は区別して考えてちっとも差しつかえない問題だと私は思っております。  中国の問題につきましては、これはもう私ども経済学者として申しますれば、隣の国と貿易をするのは当然のことなのでございます。いままでEECにせよあるいはケネディラウンドにしろ、何を目的にしてああいう自由化運動をしているかと申しますれば、マーケットを広げるということなんです。マーケットを広げるということはお互いに交流することなんですから、その意味から申しますれば、隣に中国があってあんな大きなマーケットがある、そのマーケットと交流を持てないということは何といっても日本の不幸だと思います。しかし、そういう不幸が出てきた理由経済的な理由じゃないのですから、その経済的な理由でないほうを解決してくださいませんと、経済的な理由だけで逆に中国との政治問題を解決せよということは、私は無理だと思っております。したがって、経済的な理由で申しますれば、中国との交流を避けなければならぬ理由は何もございませんということを申し上げておきます。
  31. 有島重武

    有島委員 時間がだいぶ超過しましたから……。
  32. 帆足計

    帆足委員長 一、二問ならいいですよ。
  33. 有島重武

    有島委員 もう一つ伺いたいのですけれども、米の増産ができた、それに伴って食管のほうの修正が同時に行なわれるべきであったというお話でございますけれども、具体的に御構想がありますれば……。
  34. 中山伊知郎

    中山参考人 具体的にお答えを申し上げます材料を私は持っておりませんが、申し上げたいことは、食管制度というのは価格を中心にして米の増産をはかっていく制度であったと思います。もちろん原則としては生産費補償、それから所得補償という二つの原則を持っておりますけれども、どちらにいたしましても米の価格を中心にしての増産政策であったと思います。それは米がこれだけ供給が十分になったときには改められていいのではなかろうか。もし生産費補償をする必要がありますれば違った方法もあるのじゃなかろうか。所得補償をするにつきましても、もっと根本的な農業改革と結びつけてやる方法もあるのじゃなかろうか。その意味でいままでの米価を中心とした増産政策はこれを改定の余地があるのではございませんかということだけを申し上げておきます。その具体的な方策をどうとっていかれるかということについてはまた別の問題だと思います。私はいま十分にそれをお答えする準備を持っておりません。
  35. 帆足計

    帆足委員長 本日は、貴重な御意見を承りましてほんとうにありがとうございました。当委員会を代表いたしまして中山教授に深く感謝いたす次第でございます。  なお、短時間でございますが、政府当局に対する質問が若干ございますため続行いたしますので、中山教授委員長お見送りもいたしません。まことに失礼でございますが、これでお許しを願います。ありがとうございました。(拍手)     ―――――――――――――   〔委員長退席、武部委員長代理着席〕
  36. 武部文

    ○武部委員長代理 引き続き質疑の申し出がありますので、これを許します。帆足計君。
  37. 帆足計

    帆足委員 今日、家庭内における家族の健康並びに教育問題等に関する経費というものが生計費中に大きな比重を占めておりますこと、あたかも住宅問題が深刻なのと軌を一にするような状況でございます。かねて当委員会におきましては、危険なる食品につきまして熱心な検討をいたしまして、消費者擁護の基準に関する法律を決定いたしまして、これが各省において、それぞれ所管の事項について良心的かつ一日も早く消費者保護の目的を達するようにしてもらいたいということを要望しておりましたが、当委員会として、各委員こもごも満足でないということを指摘して今日に至りました。  それと連関いたしまして子供の死亡率を見てみますると、死亡率の最高のものが事故による死亡、驚くべきことでございます。第二はガンによる死亡でございまして、病気による死亡の第一位でございます。ガンとはお年寄りがなるものと思っておりましたところ、幼い子供たちがこの犠牲になるということを知りまして、私どもは一日も黙っておれない気がいたしまして、先日、文教委員会におきましても多少の質問を行ない、かつ小児ガン病棟にも見学に参りました。かねて当委員会におきまして検討されております危険なる食品、その影響も子供に及んでおるのであるまいかと考えられる節々がたくさんございますので、それとの連関も考えまして、まず第一に、小児ガンの、原因並びに予防に対しまして、政府当局の深甚な考慮をわずらわしたいと思うのでございます。  きょうは大蔵省の主計局の方にも、それから防衛庁の方にも来ていただきました。  主計局の方には、この方面の健康な、幸福な国民生活に対する配慮がいかにおくれておるかということを十分に聞いていただきまして、現在厚生省当局の国民生活白書に指摘されておりますような国民生活の立ちおくれを取り戻す政策が行なわれれば、今日の危険な状況のもとでも国民生活はよほど健康になると思うのですけれども、その深い病根が国民のあらゆる部分を根腐れのごとくに侵食し、学生の心まで入り、傷あとを残し、学生の紛争にまで間接には影響しておりますことをあわせ考えますとき、大蔵省は質屋さんのような機能を果たすのでは困るのでありまして、切実な世の中を少し知っていただきたい。それが子供の死亡率の第一は事故死、第二は小児ガン、このような実情になっておる。親の因果が子に報いていることを大蔵省当局に知っていただきたいと思って主計局に来ていただきました。きょうは体温計を持ってまいろうと思いましたけれども、人類常温の体温の方であるならば私たちが憂えておることを必ず理解されまして、厚生省当局の要求する正当な予算に対しまして必ず報いてくださるものと信じます。しかし、これらの討論並びに速記録をお読みくださって、なおかつ心がやわらかにならないとするならば、これは体温の問題であると思いますから、次回は体温計を用意してまいりまして検査いたさなければならぬ。爬虫類であるか人類であるか、まずここから始めなければならぬということが心に浮かびますことはまことに容易ならざる事態である。そのことは白書にも統計等をもってあらわされておるところであります。  第二に防衛庁の方に来ていただきましたのは――厳粛な気持ちで聞いてください。国土を防衛し、国民の生活と幸福を防衛するということが防衛庁の仕事であるとするならば、防衛庁はもっと目を開いて――国民を防衛するのは軍備たけではなく災害から防衛し、病気から国民を守ることもある。災害から守ることには多少貢献していただいておることを私どもは喜んでおりますが、そのほうに予算を回さねばならぬときは、セコハンのジェット機五台や十台くらいは御辞退してもそれは厚生省のほうに回してくださいというくらいの愛国心がなければ、これは日雇い傭兵でありまして、国民から税金つぶしと言われるのもむべなるかな、かようにも思う次第でありますから、きょうは防衛庁当局も道徳教育のために御出席願って、聞いていただきたいと思います。  以上を前提といたしまして、当委員会かねての課題と連関がありますから、最初に小児ガンにつきましてお尋ね申し上げます。本問題については、概略は文教委員会において質問いたしましたから、重複することを避けまして結論的に申し上げたいと思います。  第一に、小児ガンがここ数年間激増いたしましたのはどういう原因に基づくものであるか。私どもの研究したところによりますと、これは食料品の影響もある。すなわち有害なる染色加工品、防腐剤、またはふりかけ等の検査が不十分でダニが非常にたくさんの数おること、それから空気が汚染されまして、空気中に一酸化炭素並びにタール物質その他の有害なものがあること等であります。六十代の人がガンになりますときは、六十年善根悪根を重ねた結果でございますから、その原因が何であるか把握しにくいのでございますけれども、二歳、三歳、四歳、五歳の子供たちがガンになりましたときには、その原因は探究しやすいのでありまして、子供を犠牲にして、そしてそれがガンの真相を把握するよすがともなるというような悲しい現実でございます。また、ガンで倒れる小児の数は年々千五百人にも達しておりますのに、ガン病棟は東京で二、三年前は十五、ただいま十八ぐらいだと思いますが、専門医の数も少なく、その知識も全国のがんセンターに有機的に伝えられていないというような状況でございますから、まず、この原因からお尋ねしたいと思います。  厚生省は、ただいま把握しております資料によりまして、小児ガンがこの短期間の間に激増しました原因をどのようにお考えなさっておられるか、その原因把握について心を痛めておられるか、まずそのことを、時間がありませんから結論だけ伺いたいと思います。
  38. 滝沢正

    ○滝沢説明員 小児ガンの原因につきましては、研究班がございまして種々検討いたしておりますけれども、われわれの承知いたします範囲では、ただいま先生の御指摘のように、一部タール等の空気の汚染等もその検討の要素には残っておりますけれども、結論的に申しますと、遺伝的要素あるいはその他、原因的に見て現在学界ではこの原因がまだ不明である、究明し尽くされておらないというふうに承知いたしております。しかしながら、研究費の使途につきましては、文部省系統では主として基礎的な研究につき、また厚生省関係ではガン助成金につきまして臨床的な面を担当いたしておるわけでございまして、ともに先生御指摘のとおり、きわめて幼少の時期に発ガンするというこのことは、ガンの本体の究明の上にかなり大きな要素が提供されるものでございますので、小児ガンの治療、研究をすることは即原因の究明にも関係あるものと考えておりますけれども、ただいま申し上げましたような次第で、現段階では原因については不明であるというふうに理解いたしております。
  39. 帆足計

    帆足委員 先日国立衛生試験所に参りましたところ、終戦直後さながらのバラックに住んで――バラックの部分が大部分でありまして、そして職員の待遇も科学技術者としてそれほどよくはなく、冷暖房もなく、設備においても、この事の重大性、すなわち危険なる食品のその重大性から見まして、設備も不十分、人手も不十分、予算も不十分という実情を見まして、かくも国立衛生試験所が放てきされておるかということを知りまして、私ども委員会委員一同実地を見学して驚いた次第であります。  また、輸入食料品の点検が一そう重大になってきております今日、その抜き取り検査ですら十分に行なわれていない、あるいはまたコカコーラの原液等につきましてほとんど調査も行なわれていない。それは武部委員から峻烈な質問がありましたところでありまして、したがいまして、後ほど衛生試験所に関する今後の方針を伺いますが、その前に、その席で見ました七味トウガラシ並びにふりかけ等につきまして……。  七味トウガラシは大体おやじが食べるものでありますから、おやじなどには子供に比べると私はあまり興味がありません。しかし、われらの未来を背負うわれらの天使、子供たちにつきましては、赤ちゃんはふりかけを好みます。ふりかけについては、私は子供たちが幼かった日のことを思い出すのであります。やっとおかゆが食べられるころになるとふりかけを喜ぶのでございますが、そのふりかけの中に大量なダニがおる。顕微鏡で見ましてぞっとする思いがいたしました。このダニは、ふりかけの中におりますときにはうじゃうじゃウジ虫のようにおりまして、そうして互いに交尾、恋愛しておりますが、一たび人間のからだの中へ入りますと、十分な血液がございますので、血液の中ではもうわずらわしい夫婦生活などはやめまして、食料は豊富にありますからゆうゆう自適、晩年を楽しみ、そうして肝臓へ向けて行進を始め、そうして肝臓ガンを起こすということを知りまして実に驚いたのでございます。  そして、その七味トウガラシに入っておるダニの数は、デパートから買いましたものでも相当ありますし、一般の商店からアトランダムに買いましたものは、セロハン紙包みのもので、これは三百六でなくて七だと思いますが、三百六、それから紙包みでは、ある種のものには三百前後、かん入りで内側がビニールのものにつきましては安全かと思いましたところ六百からおりますし、それからふりかけにおきましては、デパートから買いましたもので、タイ茶に千三百三十六、ワカサギ、辛口のもの三千四百八十二、ワカサギの黒干し千六百八十三、ワカサギ、三色のもの一万五千五百八十七、乾魚肉にノリ、ゴマのまじっておるもの四千九百七十八、次に、小売り商で買ったふりかけでは、ノリ、ゴマが二千ないし二千三百、こういう数字を見まして肝をつぶさんばかり私は驚いた次第でございます。これは七十度くらいに熱すれば、幸いにしてダニは熱に弱いといいますから、フライパンでいって食べるように教えれば難を免れるとしろうと考えに思うのでございますが、これにつきまして私は何らいままで、新聞の社会面におきましても週刊誌におきましても、そういう御注意を耳にしたことがございませんが、厚生省当局はこれをどういうふうにお考えになっており、どういう措置をしておりますか、お尋ねしたいと思います。
  40. 金光克己

    ○金光政府委員 ふりかけその他のダニの問題でございますが、ただいま御指摘ございましたように、国立衛生試験所におきましてもこの問題は現在いろいろと研究をいたしておるわけでございます。  なお、このダニを含んでおる食品につきます監督、指導につきましても現在行なっておるわけでございますが、しかしながら、今後の問題として、さらにこの点につきましては研究とあわせましてこれの監視ということにつきまして十分力を入れていきたいと考えておるわけでございます。
  41. 帆足計

    帆足委員 これが小児ガンの一部の原因になっておることは御存じでございますか。また、御自身も少し召し上がってみましたか。
  42. 金光克己

    ○金光政府委員 小児ガンといいますか、ガンの原因というものがまだはっきりしないということもございます。したがいまして、食品におきましては、御承知のように一部のタール系色素あるいはズルチン等につきましていろいろ検査した結果、発ガン性のおそれありということで使用禁止等もいたしてまいっておるわけでございますが、このダニとの関係につきましては、現在のところ、これがガンの原因になるかどうかにつきましては、十分な研究はまだないということでございます。
  43. 帆足計

    帆足委員 ガンでなくても、肝臓硬変とか肝臓の病的現象を起こす原因になることは明らかでございますが、このふりかけにつきまして、小学校や幼稚園の先生、または父兄、または新聞の社会面等に対して注意を促したことはございますか。また、注意のためにどういう印刷物等を御用意してありますか。ありましたらそれを御提出願いたいと思います。
  44. 金光克己

    ○金光政府委員 終戦後ダニが問題になったことがございますが、その後におきまして、このダニの問題につきまして特にいろいろの注意をいたしたことは、厚生省の立場ではないわけでございまして、こういった点につきましては先ほど申し上げましたように、研究とあわせましてこの問題等は考えたいと思っております。
  45. 帆足計

    帆足委員 厚生省当局は、子供の命を守るために、小児の健康を守る小児健康擁護大将、小児ガン退治少将、そのくらいの意気込みでなければならぬと私は思うのです。何というざまですか。防衛庁のような――原爆、ロケットの時代に、月世界の時代に、要りもしないセコハンの、日露戦争のあとに三八式歩兵銃をシャムに売りつけたように、アメリカの軍備のおこぼれを日本に売りつけて、そして今日、戦略のイロハを知っておる者であるならば幾ばくかの役にも立たないようなもののために金が流れていくことに目をつぶっていて、厚生省が大蔵省を折伏するだけのエネルギーと自信と使命感がないということは、私はほんとうに残念に思うのです。  当物価委員会は、一面生活の安定のためにインフレーションと戦い、他方では消費生活を擁護するという二つの任務を持っておりますから、当委員会は厚生省の応援団でありまして、委員長は応援団長の役割りをしておるのでありますから、応援の意味で申し上げますが、秋の予算審議も近うございますから、どんどん御準備のほどありたいと思います。  そこで、時間をとると恐縮でございますから、当面ガンに影響あると推察される添加染料、防腐剤、それからそういう寄生虫等はどういうものがあるように見当づけておられますか。
  46. 金光克己

    ○金光政府委員 先ほどもちょっと申し上げましたが、食べものの中で、特にそのうちの添加物がガンの発生に関係があるのではないかということで、指定されました添加物を禁止したという事例を申し上げましたが、これにつきましては、昭和四十年に食用赤色一号と一〇一号がございます。それから昭和四十二年に緑色一号。これが、いろいろと研究の結果、発ガン性があるのではないかということで使用禁止にいたしたわけでございます。指定を取り消したわけでございます。それからもう一つは、御承知のようにズルチンにつきましてもいろいろと問題になっておりまして、研究の結果、これもやはり発ガンの可能性があるというような考え方に基づきまして、本年一月から禁止することになったわけでございます。  さようなことでございまして、添加物につきましてはいろいろと慢性毒性を慎重に検討いたしておりまして、その他のタール系色素につきましても検討いたしておりますが、大体残りのものにつきましては発ガン性のおそれはまずないと現段階では考えております。その他の防腐剤その他の添加物につきましても、いろいろと慢性毒は調べておりますが、発ガン性につきましては、現在のところでは発ガン性の可能性があるものはない、かように考えているわけでございます。
  47. 帆足計

    帆足委員 それでは、ただいま並べましたような添加物の入っております商品は、しろうとにわかるように説明しますと大体どういう種類のものが例でございますか。たとえば、たくあんの黄色い粉は何とかに当たるとか、若干の例をお示し願いたいと思います。
  48. 小島康平

    ○小島説明員 先生の御質問の削除したほうの色素でございますが、たとえば食用赤色一号、食用赤色一〇一号等は、紅しょうが等に使われておりますのがその例でございます。これにつきましては現在削除になりましたので、赤色一〇二号あるいは一〇五号等が使用されております。  それからたくあんの黄色でございますが、これは食用黄色四号というような色素を使われております。
  49. 帆足計

    帆足委員 その他、甘味料のこともございましたが、紅しょうが、それから黄色いたくあん――私のむすこの家内のふるさとが秋田でございますから、秋田からひねたくあんを送ってもらっておりますが、まことに風流で、なつかしいものでございます。しかるに、私は東京のいなかっぺと言っているのですが、東京のいなかっぺ市民諸君は、まつ黄色な、そして水っぽいたくあんを、好んで召し上がっておるのか好まずして召し上がっておるのか存じませんが、そういうものが非常に多いのでございます。そういうことを放てきしておいて、文教委員会で文部大臣がどれほどよい子、よい日本人をつくろうと言われましても、子供のときから黄色い粉で、防腐剤が入って、じゅくじゅくしているようなたくあんを食って、りっぱな日本人ができるはずがないと思うのです。子供のときからにせものを食って育っておって、にせものにならないやつはないのです。そういうのが官吏になったら汚職をするし、そういうのが総理になったら指揮権発動で免れて恥なしというようなことにもなり得る、私はそういう毒素も持っておると思うのです。まことに食が悪いこと、住が悪いことは国民生活をスポイルするものとしてまことに不愉快なことであります。ともに力を合わせ、党派を越えて助け合って、よい国土、よい食べものをつくらなければ――衣食住と申しますけれども、衣のほうは裁縫がうまければかっこうよくできます、りりしい服装もできます。住宅政策は建設省に対して言わなければなりませんが、日本人らしい特色がある住宅がよかろうと思います。食べもののおいしいことは日本世界に冠たるものでございますが、それに毒物が入っておるということは嘆かわしいことでございます。  そこで、時間がありませんから、結論を急ぎまして、厚生省当局は昨年どのようなふうに――いろいろ予算を要求されておりましょうが、危険なる食品関係で削られた予算はどういうものであったでしょうか。また、来年はどういう予算を危険なる食品関係で、また小児ガン対策関係で要求をなさろうと思うのですが、ガン対策とあわして。それから、先ほど申し上げましたように、国立衛生試験所の設備、建物その他、人件費も非常な不足であります。こういうものは、要求しても事態の真相を理解する能力がない大蔵省の役人によってむごくも削られたのですか。それとも厚生省の使命に関する自覚が非常に足らぬのですか。厚生省は昔警視庁衛生課、内務省衛生局だったような伝統がありますから、そういう内務省根性がまだ残っておるので真実の勇気がわかないのか。また、私たち会議員の援助が皆さまに足りないのか。その辺、お困りの点があると思いますから、赤裸々に申していただきたいと思います。
  50. 金光克己

    ○金光政府委員 昨年度の予算要求におきまして、特別に厚生省として予算が認められなくて困ったというようなものにつきましては、大きな問題としてはございません。  それで、今後の問題としまして、予算的にもまた実際的にも特に強化してまいりたいと考えておりますものは、やはりこれは国立衛生試験所とも関連はしてまいるわけでございますが、最近食べものもいろいろと複雑になりまして、特に慢性毒試験等につきましては慎重に研究をする必要があるというような状態でございますので、そういった研究調査等につきまして特に力を入れてまいりまして、国民の健康を守りたい、また不安を除きたい、かようなことで現在いろいろ検討をいたしておるという段階でございます。
  51. 帆足計

    帆足委員 ただいまの御答弁を伺いまして、まことにたよりないと思います。どうしてこんないくじがないのか、世にもふしぎな物語であると思います。それはビタミンが足らないのでしょうか、勇気が足らないのか、人間に対する愛情が足らないのか、愛国心が足らないのか、深く反省していただきたいと思います。  ガンのことにつきまして、毎日新聞の杉本要吉君が、私もよく知っている間柄でありますが、その坊ちゃんをなくしましたときに、「私たちは、文夫がガンであることを知りながら、文夫に苦痛を訴えられても、その原因を教えることができずに、じっと歯をくいしばって、看護をつづけた。その心の中の苦しさは、いま到底筆や口で表現できるものではない。」「しかし、いまはただ最愛のわが子を、しかもたった一人の男の子を失って、すべてむなしい気持を、どうすることもできないのである。」「夏目漱石は、娘のひな子を失ったとき、明治四十四年十二月三日の日記に、こう書いている。表をあるいて小さい子供を見ると、この子が健全に遊んでいるのに、吾が子は何故生きていられないのかという不審が起こる。」こういう述懐をしておりますが、子をなくした親の気持ちは痛ましいものであるばかりでなく、そのガンで死ぬ子たちが年間千五百人にも達しておるのに、中央のがんセンターにおいてすら子供のためのガン病棟一つなく、少しばかり仕切られた部屋、おとなの声が聞こえる部屋で杉本さんがお子さんをなくしたときは病棟十五、私が一カ月前に参りましたときは十八ぐらいになっておりましたか、一向進歩のあとも見えません。厚生省はもう血みどろに戦ったあげく予算を削られたものと思っておりましたら、そのような情けない予算の出し方であると聞いて、私は不安を感じざるを得ません。  杉本君は、わが子をなくした死ぬほどの苦しみの最後の結論としてわれわれに訴えておる。その書物は「ママぼくの病気はガンなの?」という書物ですが、「小児ガン医療対策への意見」として、第一に、自分の子供でもガンになり得るということを皆さん知ってください。子供にもガンがあることを知っていた、けれども、それが身近なものであるということを知ってください。さらに進んで、自分の子供でもガンになることを頭に入れておかないと、子供の様子が変なとき、適切な処置がとれなくなる。  第二に、早期発見と適切な治療が必要です。子供が手が変だといったとき、近所の医院へ連れていった。その医院にはレントゲンがあるにもかかわらず、写真をとってもらえなかった。そして、筋肉炎か神経痛としての手当てを受けていた。当時の時点では、あるいは写真に写るほどガンが進んでいなかったかもしれないけれども、それから一カ月後には、あれほどはっきり写っていたのである。  第三に、徹底的に検査し、原因を追求すること。この努力を怠ってはならない。文夫が第二回に発病したのは、四十一年七月八日に、学校で骨盤に骨折したときである。しかし私たちはそれを見のがして、このときもまた失敗をおかした。その後水泳に行ったりなどして、再発とわかったのは、それからさらに四十日もたった後であった。  それから、この病気の進行に対して、細心の注意を怠らないこと。三月にすでに血たんが相当出ていた。このときに気がついて専門医の指導を受ければ、御承知のように小児ガンに対する放射線の治療も抗生物質の治療も、おとなに対するよりも何倍かよくきくということは皆さんが御承知のとおりです。  小児ガンの実態はまだよく世の中に知られていないが、実際には小児ガン患者は非常に多く、わが国では毎年、約千五百人の子供がガンのために生命を失っている、といわれている。事実、国立がんセンターの「こどものへや」の十二ベッドは、いつも満員であり、新しい患者が入院を待っている。また、小児ガン専門医はきわめて少ない。  それからさらに問題なのは、子供ががんセンターに行ったときに、がんセンターという字を読んで、ママぼくの病気はガンなのと聞かれたらどう答えたらいいか。それからおとなの患者と接触する機会が多いので、たびたびおとなの話を聞き耳を立てて聞く。そして子供に質問されても答えることもできない。そのためには、国立小児病院に小児ガン部門を置くとか、またがんセンターに小児病棟をつくるとか適切な方法を講じてもらいたい。生まれたばかりの赤ちゃんと、中学、高校生を一緒に収容しておる。国立がんセンターですらそういう悩みを持っている。大部屋一つ、個室四つ、この状況ではどうしようもない。  次に、治療の面について。東大病院や日赤や慶応病院など数々の病院があるからと思って安心していたけれども、小児ガンについてそこで最高の治療を受け得ると思っていたけれども、そういう設備はなかった。  その費用もたいへんかかる。ばかにならない費用であって、私の親類に、「がんセンターは国立の研究所だから、入院してもタダでしょう」と聞いたものがあるそうだが、とんでもない話だ。入院中の付き添いとか、さらに食料、交通費など、健康保険の支払いの何倍という費用がかかり、親はその間看護のためにほとんど寝ることもできない。このようなことも深く考えてもらいたい。  私はこういう事実を見まして、議員であることをほんとに恥ずかしく思うのでございます。これらの要望にこたえまして、がんセンターの設備及び必要要員を拡充していただきたい。また、子供の看護のために母が次いで病気になるという悲劇を起こしやすいのでございますから、完全看護についての対策も考えていただきたい。また、中央のがんセンターの経験を講習会等を通じて地方のがんセンター並びに能力のある大病院に伝えまして、そしてそこでも治療ができるようにしてもらいたい。  少なくとも放射線治療については二億円の設備費がかかるといわれております。一体二億円くらいの金が軍備と比べるならばどれほどのことがありますか。もし安全保障ということが人の命の安全を第一義とするならば、小児ガンのために戦う人は、その責任者は、小児ガン征服元帥という名前をつけてもいいくらいです。大将とか准尉とかいうくだらぬ名前にだまされて、人類のほんとうの敵を見失っているのでないかと私は思います。人類の敵は、中国でもなくソ連でもなく、まずばい菌でありウイルスであり災害であり、貧乏と病気でございます。貧乏と病気と戦う者こそ大将軍といわれるべきであって、人間の理性がアポロとして月世界に到達する今日、何という情けないことをわれわれはやっておるか。  自衛隊の諸君もよくそこらを考えて、緩急よろしく国政に参加されんことを、それだけの自覚を持ってもらいたいと思います。だとするならば、東条時代の軍備のようなことはしないで済む。私ばかりに現体制のもとに立っても、予算をじょうずに使えば現在の三分の一の軍事費でやっていけると思います。その証拠を示せというならば、他日防衛関係委員会におきましていつでもそれを示すこともできるのです。今日の原子力の時代では、防衛ということは職業軍人にまかせるべきことでなくて、人間の良識が決定すべき問題であって、それには立地条件、それから原子力の問題、ロケットの問題、電子工学に関するいろいろな問題、なかんずく食糧の問題、貿易問題等々を考慮するならば、日本における軍事費の地位はどの程度であり、日本における厚生省予算の程度がどのくらいの程度であらねばならぬかということは、電子計算機を待たずして大体出てくるはずでございます。  したがいまして、小児ガンの病棟を独立させ、全国系統的に連絡をとり、設備を充実し、人員を充実しまするために予算を要求する気があるか、これから御研究なさる気があられるか、並びに国立衛生試験所に対しても同様の処置をとられるお気持ちがあられるか。さらに食料品に関する衛生法規等の改正案が出ることをわれわれは一日千秋の思いで待っておりますが、そのような準備がなされるならば同時に監視、監督、検査の機関を拡充せねばなりません。そういう準備があられるか。厚生省は一度斎戒沐浴して出直す必要があろうと思います。それを聞かないならば二・二六事件を起こすぞ――精神的二・二六事件ですが、そのくらいの気魄がほしいと思います。具体的にその大綱だけ示していただきたい。そしてやがて実施機関ができましたならば当委員会にお示し願って、私どもは党派を越えてそれをお助けしたいと思うものでございます。
  52. 滝沢正

    ○滝沢説明員 六月十三日の文教委員会で、先生から小児ガンについてただいまの御発言と同様の御指摘がございました。私も帰りまして局長、大臣に御報告いたしました。ちょうど予算編成期でもございますし、われわれもかねがね小児ガンの問題につきまして、御指摘のとおり体制を一貧的に整備する必要があることを痛感いたしておりましたので、四十五年度予算には、大綱を申しますと、国立小児病院に小児ガンの治療が可能なような施設の増強をはかりたい。それから国立がんセンターにつきましては、ただいまの建物、設備は旧海軍病院のあとを引き受けたものでございますので、必ずしも小児病棟というものも理想的に専用に持つことが現状ではなかなか困難でございますので、長期的な観点になりますが、がんセンター全体の整備ということを検討いたすことを考えております。その中において、小児ガンの治療を小児病院との関連においてどう整備するかということについては、まだ検討の段階でございます。  その他、地方につきましては、国立の病院等に地方小児の医療センター的な役割りを持たせる構想を持ちまして、特に小児ガンのみならず、未熟児の発生あるいは障害児の発生予防的な対策を含めまして、小児の医療センター的な構想を持ちます。もちろんこの施設は、国立病院でも大きな施設でございますから、当然ガンの治療施設にも該当いたしておりますので、小児ガンの治療の可能、特に早期の診断が可能なような設備をいたす所存でございます。  その他御指摘の専門医の養成でございますが、これは小児科が専門医というわけではございませんが、まず検査その他小児ガンを早期発見することがきわめて重要でございますので、小児専門医というのみならず、検査技術者を含めまして研修につとめてまいっておりまして、すでに四十三年以来ガンの専門技術者の研修の一環として、その中で小児ガンを取り上げて実行いたしておりますが、これをさらに強化いたしてまいる所存でございます。  以上のような、国立病院並びに医務局として、小児医療センターは国立直轄以外にも都道府県等に補助金を考慮いたしまして、小児医療の充実をはかりたいというのが四十五年度における計画の大綱でございます。
  53. 帆足計

    帆足委員 私はまだその程度では不満でございます。たとえばガンの問題で重要なのは脳外科の問題でございます。脳における腫瘍がガンに転移する場合が非常に多うございまして、早期の手術を必要とする場合が非常に多いのですが、交通事故等のために脳外科の病院が手不足でありまして、専門医の数も限られております。したがいまして、脳外科の方面において脳腫瘍対策が可能になりますように、専門医、専門看護婦さん、それから血液の準備、輸血の準備、また放射線関係の検査のための技師等の準備をしていただきたいと思います。  それから、この看護婦さんはほとんどかけがえのない専門的知識が必要でございます。ガン全般がそうでございますが、小児ガンの場合は一そうそうでございますから、看護婦を保護し、育成し、定着せしめるための必要な優遇措置をお考え願いたいと思います。  それから、国立がんセンターにおきまして非常に長い時間患者を待たせます。その気持ちをお察しください。これについての対策も必要だと思います。  さらに、したがいましていまのちっぽけな予算を再検討なさいまして、もう少し自由濶達に気持ちをお持ちになりまして、大蔵省などの前でびくびくすることはないのでありまして、厚生省は宮中席次第一位、そして副総理格とお考えくださって、そして予算を要求される。それが通らなければ、暴力でこいというわけにも、ゲバでこいというわけにもまいりませんから、皆さんの熱意と能力と哲学でいく、そのくらいの御覚悟が必要であると思います。  連関いたしまして危険な食品につきまして、当委員会はずっとほとんど連続その問題に時間をとったのでありますけれども、神戸の生活協同組合の統計を先日送ってまいりましたので見ますると、主婦たちが最も不安を感じておりますのは飲料水と称する粉末ジュースでございます。これはジュースと称して、果汁でなくてインキ、みやこ染のたぐいを飲ませられている。敷島の大和の国に生まれて、山高く水清き国――レオナルド・ダ・ヴィンチはルネッサンスのときには、食卓には水こそよけれという有名なことばを残しております。食卓には水こそよけれ。これはイタリアに旅にやってくる外来者が、よその国では水が飲めない国が非常に多くて、げっぷの出るようなミネラルウォーターを飲んでおりますが、それに対してイタリアでは水が飲めますから、食卓には水こそよけれ。あとはオレンジの豊かにとれる国でありますから――これと同じく山高く水清き国でありながらインキを常用しておるとは、これは何ごとそよと私は思うのであります。第二には即席ラーメンを心配しております。第三には、たくあん、つくだ煮、煮豆、ソーセージ等に不安を感じております。したがいまして、着色剤、漂白剤、甘味料、防腐剤――最近食パンの漂白剤の使い方はよほどよくなってきたようでありますけれども、なおかつそれにも不安を感じております。  そのような状況でありますから、ただいまの衛生試験所の改善、食品衛生法の一日も早い改正、それに必要な要員の人件費、設備費等の準備等は、必ず今次の予算に準備していただきたいと思います。  続いて、皆さまのことも連関いたしておりますが、もう時間はありませんから時間はとりません。幼年、少年の最高の死亡率はほとんど事故による死亡でございます。物価委員会と一見関係ないかのごとく見受けられるが、子供の教育費のみならず、子供の負傷の治療、死亡等に関する経費はばく大なものでございまして、事故によって親を失った子供たちには、このたび特殊の手当を出すようになりましたことは、おくればせながらも御同慶の至りでございます。  子供そのものの死亡率の最高が事故による死亡でございます。まず、新生児の死亡、これは固有の疾患によるものでございましょうが、あとは事故による死亡の中で、おんもに出ることができるようになるまでは窒息死、また異物を飲みまして呼吸がとまる。父兄は近所の耳鼻咽喉科のお医者さんともいつでも連絡がとれるように準備しておかねばならぬ。それから階段から落ちたとか、二階から落ちたとか、どぶに落ちたとか、さくから落ちたとかという事件が非常に多いのです。  これは建設省に聞いていただきたいのですが、私のおります中野でも、中小河川を整理したのはけっこうですけれども、その横にきくがありますけれども、第一、さくの高さが一尺五寸くらいでありまして、さくとさくとの一区画の間が二尺くらいあいているところがざらにあります。私はいつもひやひやして通るのですが、よくその中から子供が落っこちないと思っていましたところが、最近どぶ川に子供が落ちまして訴訟問題が起こっております。当然これは政府が不注意として賠償すべきものでありましょう。  それから、公団やその他鉄筋コンクリートの建物がふえるにつれまして、階段から落ちた、手すりから落ちた、それから三階、四階から落ちたという事故がふえてまいります。私も一つマンションをつくりましたが、役所の御指導のもとにつくったのですけれども、十階の階段の手すりが、みんな子供が入り得るくらいのすき間があいているのです。専門家にまかしてあるからこんなことをしろうとが見る必要はないと思って、私は設計を児なかったのでありますが、どうしてこのようにおくれているか。しかも、公団と関係のある建物でございますのに、そこへ住みまして半カ年後にやっとビニールと鉄板でもってさくを補うことにいたしました。そういうむだな費用をまたかけねばならぬのです。また相当心臓の強い家主でありますからそういうことをあとでさしたのでございますけれども、そういう細心の注意力のない家主でしたらそういうことをほったらかしたままで、事故を起こして初めて気がつくということが多いのであります。  それから、おんもに出るようになりますると交通事故でございます。しかも一学期にそういうことが非常に多い。それから夏に入りますと溺死が多いプールその他急流の――急流でなくても、砂利トラの穴が非常に危険なものと聞いております。  したがいまして、皆さま御関係筋は専門でございますから、文部省体育課を中心として会議を開かれまして、これらの具体的な事例、それに対する具体的な措置について、たとえば建築関係、特に公団関係は率先してこの対策を講ずべきである。また、今後できますマンションに対しましては率先してあらかじめ注意を与えていけば、費用としてはたいしたことはないのです。したがいまして、あらかじめ御注意をなさるように。   〔武部委員長代理退席、阿部(助)委員長代理着席〕  それから、交通事故に対しまして陸橋がたくさんできましたが、あの効果がどの程度まであったか。これもちょっとお尋ねしておきたい。効果が確かにあったと私は思います。魔の環七と称した場所に陸橋が三十幾つかできましたが、どれほどそれで助かったかわかりません。陸橋を環七に千や二千つくることは、日本生産力をもってすれば割りばしを千や二千つくるのと同じことだと思います。したがって、応急措置としてこれを徹底的にやってもらいたい。  それから、恒久措置としての一環としてどうしても立体交差をやらなければならぬ。立体交差は、四つ角を引っ込めましてげたばきマンションにしてやれば可能なことでありまして、みんな助かるのであります。  それから、溺死をどういうふうにして防止するか。もし皆さんが案をよく立て、必要な予算を組まれ、そして、学校の先生、PTAがその事情を知って相呼応するならば、それを半数以下に減らすことは可能であると私は思います。一人の子供の命は地球全体より重いといわれておりますから、ぜひ具体的に対策をお願いしたい。それで、政府当局のほうで法制化するなり、または指導するなりしてやらなければならぬことはこれをおやりになり、それから、父兄なり子供たちがみずから注意せねばならぬことは、たとえば中野の区役所から出しております中野区報を見ますと、夏休みに入りまして、「夏休みに入った子供たちのまわりは危険が一ぱい」という表題で対策をずっと書いてあります。私読んでみましたけれども、これでもまだ不十分でございます。ですから、そういうものを厚生省でおつくりになって、公団及び建築関係はこういう点を気をつけてもらいたい。それから、水泳関係の体操の先生はこういう点を指導してもらいたい。子供及び父兄はこういう点を気をつけてもらいたい。政府自身は法令その他施行細則、予算等でなし得ることは率先してなす。大蔵省はもうここで傍聴しておられるからよく御理解されたと思います。御理解しなければこれから人類という名前は返上して爬虫類ということにいたしますから……。  それから、もう一つ気がつきますことは、子供のしつけがこの国ではなっていないということです。これは文教関係の体育課のほうで御担当すべきことでありますが、世界じゅうで日本ほど子供を甘やかしている国はないといわれております。映画を見ましても、外国の子供はおおむねりりしく、よく親の言いつけを聞いておりまして、まことに愛らしいのですが、この国では、でれでれして、お客が来ておりますときでもちょこちょこ出てきて、お客さまのお菓子をちょんとつまんで、あかんべえをして逃げていく。それを親がまたしかりもせず、とがめもしないような家庭がたくさんあるのでございます。同じような原因で、水泳に対する注意とか、それから階段をのぼるときの注意とか、高い窓からの注意とかということを子供のときから十分にしつけをしておりません。ニューヨークにいたしましても北欧諸国にいたしましても、コンクリート建てで高層建築があることは日本以上でございます。しかし、そのための十分な注意が行き届いておりますし、また子供の多い家庭等につきましては、建築家側の注意も相当行き届いておるように聞いております。子供のしつけにつきまして、溺死、交通事故等、そういう不祥事故が非常に多いということを親に知らしておく必要があると思います。これは、厚生省と建設省と文部省と御相談なさって、必要な対策は講じ、父兄並びに学校の先生等に御注意いたさねばならぬことは文部省の体育課を通じてでも、命にかかわることははずみとして起こることでございますから、もっと細目にわたって具体的に親切に注意を促してもらいたい。そして、日本の子供の死亡率の最高が事故死であり、二番目がもはや小児ガンであるという事実を、新聞、ラジオ、テレビ等を通じて徹底的に周知徹底さしてもらいたい。NHKなどは広告費は何ら要らないのですから、こういう問題を文部省のほうでお取り上げくださって発表する。NHKと御相談なされば必ず取り上げてもらえるものと思います。また、各市役所、都議会、区議会、県会等のニュースにもこれを載せていただくことができますし、PTAに四季それぞれを通じて啓蒙することもできると思います。しかし、みずからなすべきことをなさずして、ただ啓蒙だけしても何にもなりませんから、なすべきことは予算としてなし、そして啓蒙すべきことは啓蒙していただきたいと思います。  以上につきまして、厚生省並びに文部省及び建設省からまず御答弁を願います。それが済みましてから私は防衛庁と大蔵省に一言聞きたいことがありますが、それで質問は終わりにいたします。他に関連、また独立の質問が若干ございますから、私は以上をもって終わりたいと思いますので、まず御三方から御答弁を願います。
  54. 橋本道夫

    ○橋本説明員 ただいまの事故死の問題でございますが、子供の事故死のうちで大きなものを占めておりますのは、確かに溺死等の水による事故及び交通事故であるわけでございます。こういう事故防止のための施策として、厚生省とじましては、安全でかつ子供が喜びながら遊べるというふうな遊び場の確保という観点から、従来から児童遊園、それから屋内の遊び場としての児童館等の施設の設置というものをはかってきたわけでございます。それから、御説のとおり家庭及び地域における事故防止活動というふうな問題を大きく取り上げまして、母親クラブあるいは親の会というような、地域の組織というものを育成し、またこれらの指導者の養成という面につとめておるわけでございますが、今後ともこういう面につきまして、なお一そうの努力をしなければならないというふうに考えております。  それから、それに関連しまして、子供の遊び場における事故防止というふうなことにつきまして、昭和三十九年に各都道府県にそういうふうな通達を出しておるわけであります。今後こういう問題の周知徹底ということについては、なお努力すべきじゃないかというふうに考えております。
  55. 田健一

    ○田説明員 いまお話のございました子供たちの死亡原因の第一に不慮の事故がございますことにつきまして、私ども文部省で関係いたします者といたしまして、非常に遺憾に思い、かつ私どもも責任の一端を感じている次第でございます。  学校におきます健康あるいは安全というような問題は、これは学校教育活動の全体を通じて、毎日の日常活動の中において、あるいは教科書等の中において、一番基本的に考慮すべき問題として私ども取り上げて指導をしているところでございます。  その基本は、言うまでもございませんが、人間の尊重、自他の生命の尊重ということに立脚するのでございますが、お互いの命を大事にしようという立場から、子供たちを事故から守ります対策、あるいは子供たちに健康とか安全についての能力、態度というものをしっかり身につけさせるための指導ということに力を入れているところでございます。今度、昭和四十六年から、小学校、中学校、高等学校と順を追いまして、新しい学習指導要領が実施に移されるわけでございますが、この中においで安全指導、安全管理の問題を一そう重視したところでございます。今後も私どもといたしまして一そう努力をしてまいりたいと存じます。  なお、いま御指摘のございました家庭における子供のしつけの問題でございますが、私どもも全くその点御同感でございまして、たとえば交通安全につきまして、右側を歩行するとか、あるいは横断のときに信号機に従うとか、こういったような最も基本的な行動というものは、家庭において幼児の間にしつけられるべきものと私どもは考えているのでございますが、現在は残念ながらそれが家庭のしつけとして行なわれておりませんので、学校が指導内容として取り上げて、小学校に入ってまいりましてから、あるいは幼稚園におきましてこれを指導しているところでございますが、今後はこういった家庭のしつけという面も大いに私どもも重視いたしまして、家庭に対する、学校を通じまして、あるいはPTA組織を通じましての各種の啓蒙活動というものを、一そう強力に進めてまいりたいというふうに考えている次第でございます。
  56. 帆足計

    帆足委員 私は、それに触れましたから少し言っておきたいことは、いまの交通に対する子供たちの公共的な教育なども生活の実践と結びつけまして、たとえば通学ごっこ、向こうでブーブーと音がしたらどうすればいいか。遊戯にしてでもそういうものを幼稚園のときから教える。それから遠足ごっこ、歌や舞踊で教えていく。そして紙など散らかしたときはそれを拾っていくとか、それをおもしろく、ユーモアをまじえてやっていく。それからお客さまごっこ。またはバス待ちごっこ。バスを待つときは列をつくって、どういうふうにしてこれを楽しく待つか、そういう社会的訓練が必要であると思います。変な道徳教育などよりもそれが最高の道徳である、こう思うのであります。私どもが道徳教育に反対するのは偽善者をつくりたくないからでありまして、人間は肉体を持っておりますから、肉体の訓練は心の訓練とともに必要でございます。しかし、それは世のいわゆる道徳教育とは違うのでございます。  それから、ついでにお尋ねしておきます。この前映画を見ておりましたら、外国では十五歳になるまでコーヒーを飲ませない。おまえ、誕生日だから、きょうはコーヒーを少し飲んでもいいよとおっかさんが言うところがありました。コーヒーがそうであるならばコカコーラも、武部君が言って正体を暴露されましたが、子供のときは私は飲ましてはいけないと思いますが、コーヒーは幾つまでは大体禁止する方針でございますか。文部省及び厚生省にお尋ねしたいと思います。
  57. 金光克己

    ○金光政府委員 コーヒーは何歳まで禁止するか、こういう御質問でございますが、この問題につきましては従来この委員会でいろいろと御意見が出ておるところでありまして、やはり外国におきましても、何歳まで禁止という制度にはなってないように承知いたしておるわけでございますが、やはり子供が、幼児と申しますか小さい者が飲み過ぎるということはからだに害があるであろうということで、一般教養としてそういう扱いをしておる、かように考えておるわけでございます。  そういう意味におきまして、日本におきましてもやはりそういった知識を持っておる人はそういうような考え方も持っておると思うのでございますが、これにつきましていかような形で教育をしていくかというような問題につきましては、やはりもう少しそういった面の研究も必要であろうかと思うのでございます。こういった面につきましてはこの委員会でいろいろと御指摘がございましたので、いわゆる食生活上のいろいろの注意と申しますか、そういう立場で今後検討をしてまいりたい、厚生省におきましては、かように考えておる次第でございます。
  58. 帆足計

    帆足委員 私が禁止と言ったのは軽い意味で、しつけの場合に幾つぐらいまでは飲まないほうがよかろう。これは酒、たばこの禁止とは違います。また、エロ映画の禁止とは違います。何歳ぐらいまで好ましくないというふうに厚生省はお考えになっており、文部省はお考えになっておられるか、あるいはそういうことはまだ研究してないのか。結論に到達してないのか。しかし、外国の習慣をお調べになれば、大体何歳ぐらいまでは慎んだほうがよかろうという習慣がありますけれども、御存じでしょうか、お尋ねしたいわけです。
  59. 金光克己

    ○金光政府委員 何歳までは慎んだほうがいいだろうかということでございますが、それにつきましては、何歳までということを明確にお答えするだけの実は資料を持っていないのでございまして、問題はやはり幼児の期間、発育期間、そういった年齢層におきましては注意をする必要がある、かように考えております。
  60. 帆足計

    帆足委員 けっこうです。ここは予算委員会でありませんから、論戦して局長さんを困らせて気勢を上げるというような場所ではありませんからけっこうです。ただ、御研究が多少足らぬようでありますから、お忙しいことでございましょうけれども、どうか文部省も厚生省も御研究くださって、そうして学者の間でおおむね一致する常識くらいのところを基準にして、子供たちや学校の先生たちにもお伝えくださって、何歳ぐらいまでの発育期には飲まないほうがいい、慎むほうがよかろう。何歳になったからといって機械的に飲んでいいという性質のものではありませんが、どういう理由で神経を興奮させるかを知らせて、幼少期、またからだの固まらないうちに慎んだほうがよかろう。いわんや赤ちゃんにはいけません。コカコーラも私はそれに類することになると思いますが、それも結論が出たならばわれわれはそれを要求いたしますから、おとなの皆さんも危険な食品について御注意なさるばかりでなくて、幼年、少年、それから青年たちの食生活についてもひとつ科学と実験に基づいた常識的な、良識的な意見をお持ちくださって、それで啓蒙、指導されることを要求する次第であります。  最後に、お答えは要りません。アイスクリーム、非常に種類が多うございます。それはモスクワに行って痛感したことでございますけれども、国営というものは私は必ずしも好みませんけれども、モスクワのアイスクリームは有名でございまして、パリーへの帰国客がたくさんドライアイスに入れて持って帰っております。わが国でアイスクリームを安心して飲めるのは、大体一流ホテルのアイスクリームは味もよいし安心して飲めますけれども、おおむねのアイスクリームは大腸菌がうじょうじょおるというのが相場でございまして、特に子供たちに対して非常に危険であります。その試験の結果も一部の新聞に出ておりましたとおりでありますから、アイスクリームに対しまして格段の御注意を、また業界に対する警告及び建設的指導をお願いしたいと思います。  最後に、大蔵省は、事態かくのごとしでありますから、ガン、幼児ガン、危険なる食品等の予防についても、これ以上お耳に入れる必要もなかろうと思いますし、たくさんの単行本も出ておりますからお読みくださって、今度は厚生省に抵抗なさらないように、もし抵抗なさるならば私は直ちに体温計で熱をはかりますが、そういう事態が起こらないように、ひとつ深い御理解を願いたいと思います。これは大蔵大臣の御答弁なさるべきことでありますけれども、主計宮殿として事態の深刻さを十分御理解くださったかどうか。あわせて、生活白書もお読みくださって、また厚生白書もお読みくださって、また犯罪白書もお読みくださって、お互いに連関しておりますから、厚生省の予算に対しては、愛国的及び人道的見地から格段の御理解を願いたいと思いますが、一言御所見の一端だけでもお漏らしください。まことに不愉快であったとか、勇気づけられたとかいうことでけっこうでございます。
  61. 辻敬一

    ○辻説明員 ガン対策その他につきましていろいろ御指摘を賜わったわけでございますが、たとえばガン対策について申し上げますと、私どもといたしましても、従来から治療、研究あるいは検診等の面につきまして、できるだけ充実をはかってまいってきたところでございます。たとえば、四十年度を基準といたしてみますと、四十四年度までの四カ年におきまして、ガン対策費の総額はおよそ二・五倍程度になっております。一般会計の規模が御承知のように一・八倍程度でございますので、他の経費に比べましてもできるだけ充実をはかってまいってきたところでございます。社会保障関係全体につきましても同様なつもりでやっておりまして、御承知のように年々充実いたしておると考えております。今後におきましても厚生省とも十分相談いたしまして、さらに検討を重ねてまいりたい、かように考えます。
  62. 帆足計

    帆足委員 ただいま統計をあげられまして言われましたけれども、そういう統計から出すというような水くさいことでなくて――皆さんのほうが統計を言うならば、大資本の生産増加率だとかあるいは軍事費の増加率だとかいって論戦しなければなりません。そういうことでなくて、小児ガンの病棟がたった十八しかなくて困っておる。国立がんセンターのほうも十年後に改築になるからというので、いま増築を控えておる。いろいろな事情がありますから、もう少し人間的に接近なさって、必要な予算をとっていただきたいということを要望する次第でございます。このように御理解願いたいと思います。統計でもって、従来何%だったとか、ことしは何%だからこのくらいふえたというような、そういうことじゃないと思うのです。でございますから、よく御理解くださって、そうして国民生活に薄く、その他に厚過ぎるということのないように、絶対に人命に関することは最優先というくらいにしてもらいたいと思うのでございます。  次に、防衛庁の経理局長さんお見えになっておると思いますが、私どもの要望をお聞きくださいまして、防衛庁はその責任いよいよ重大であることをお考えくださったと思います。経費を極力節約し有効な使い方をしていただかねばなりません。いやしくも汚職が起こるなどということはもってのほかのことでございます。したがいまして、国民の緊急必要がありますときは、国民生活の擁護、すなわち真の防衛に対しまして軍事の防衛はバランスをとっていくという反省が常に必要であろうと思います。予算委員会であれば峻烈なことばをもって、憲法違反その他等々をもって批判し、攻撃論難するのでございますけれども、この委員会国民生活を守るための気持ちの通じた委員会でございますから、防衛庁に望みますことは、国民経済白書をお読みくださいまして、そうして小児ガン千五百人の子供を救うのに十八のベッドしか持っていないという日本の国情を御理解くださいますように要望する次第でございます。言わぬが花で、御回答は伺わないほうがかえっていいのではないかと思いますが、また一国民として申したいことがありますれば申していただきますし、御理解くださるならばうなずいていただけばけっこうでございます。
  63. 阿部助哉

    阿部(助)委員長代理 武部文君。
  64. 武部文

    ○武部委員 きょうはたいへん時間がおくれましたので、あと理事懇談会を開く予定でございますから、ごく簡単に申し上げ、回答をいただきたいと思います。  前回、食品衛生法第十七条の問題について粟山政務次官から御回答をいただきました。ここに速記録をいただきましたが、この内容については私どもまだ納得できませんので、これは相当将来全国的に影響のある問題ですから、閉会中にでもさらに私どもと厚生省との間に、ひとつ見解をできるならば一致をさせたい、この点を申し上げておきたいと思います。  そこで、きょうこれから私が申し上げますのは、当委員会で与野党を通じまして、危険な食品等について、この問題が全国的に相当大きく世論に反映をしておるので、こうした問題について詳細に討論をしたらどうだというような御意見もございまして、私ども賛成でありました。ときあたかも、科学技術庁から食品添加物についての調査会の答申が出ました。この点については、当委員会で前回私も質問をし、厚生省なりあるいは科学技術庁の御回答をいただいたわけであります。  そういう点から、食品添加物というものはたいへん大きな影響国民の食生活に持っておる、こういうことから具体的な個別の問題を取り上げて皆さんの御見解をただしたわけでありますが、きょう私がなぜこのことをこの機会に申し上げるかといいますと、私がコーラ飲料を取り上げて、いろいろと具体的に市販の書物を読み、文献をあさって皆さんに御質問を申し上げた、このことに対して厚生省がどういう見解を持っておるかということを私はかねがね非常に疑問に思っておったのでありますが、たまたまこれから申し上げるものに厚生省の見解ともとれるものが出ておる。私はそれを読んで実に不愉快でありました。同時に、厚生省がもしほんとうにそういう気持ちを持っておるならば、私はこれは何回でも厚生省とやりとりしてもいいという気持ちを持って、きょうは基本的なことだけお聞きをする。このあとは、先ほど申し上げたように十七条と関連をして閉会中にこれを取り上げたいと思いますから、そのことだけ申し上げます。  私が申し上げたいのは、日本食糧新聞という新聞、つい先日の七月十九日に発行された新聞であります。ここに「食品添加物行政の展望」という、そこにお見えになっておりますが、厚生省の食品化学課長がお書きになった――これは大げさに論文とは申し上げませんが、文章が載っておるのであります。これを私は読んで、なるほど、私が先ほど記録部からここへこれだけの本を返してもらって、ここに持っておりますが、これ以外のものもたくさん持っておるのでありますが、これに対する反論が、当委員会ではなしにこの文章によって厚生省の見解が出たものだというふうにとったのであります。間違いならひとつ御反論いただいてけっこうであります。本来ならば、私が申し上げたときにおまえの見解は間違いだというふうにこの委員会でお述べになっていただきたかった。しかしそれはお述べにならなくて、この新聞に――ゼロックスでとってきたわけですが、出ておったので、なるほど厚生省はそういう御見解を持っていらっしゃるのか、それならば私もひとつ申し上げなければならぬ、こういうことなのでありますから、決して感情的とかそういうことはございませんから、この点を前もって申し上げておきます。  そこで、小島課長が「食品添加物行政の展望」という中に書いておられるところで三つばかり問題点があります。  一つは、食品添加物について総点検運動というようなものが行なわれておるがけっこうなことである。しかし「一般消費者の方々の認識が、添加物はすべて悪いものと頭からきめてかかっていることである。」こういうことが述べられております。私どもは決して添加物がすべて悪いものだというようなことは言っていないし、国民自身も、添加物がどういう作用をしているかというようなことは、ある程度関心を持った人はわかっているはずであります。それを「悪いものと頭からきめてかかっている」というようなことを言われるのは、いささかこれは問題がありはしないかと思うのです。  第二点は、「添加物の使用はきびしく規制されており、安全性は十分確保されているわけで、このような非難はいささか迷惑といわなければならない。」こういうことが書いてあります。私どもからいうと、きびしく規制されておって安全性は十分確保されておる、こういう厚生省の見解は間違いではないか。むしろきびしくされておらぬからこそ国民生活審議会からも厳重な勧告が政府に発せられたではないか、このように考えるのですが、この点につきましてはどういうお考えか。  さらに、安全性を確保されておる、こういうことをおっしゃっておるならば、それなら、さっき帆足委員から質問がございましたが、ズルチンなりあるいはタール系の色素、こういうものは厚生省自身がすでに公認したものです。それを厚生省自身が禁止をするという段階になった、こういう経過があるわけですね。あなた方自身が認めておったものが、二十年たって、ズルチンはいけない、こういうふうにあなた方自身も反省をされて禁止された。それはズルチンであり、タール系の色素なんですよ。そういう点についてきびしく規制されておって安全性は十分確保されておるということは、これは間違いではないか、こう思います。  それから「なぜこういった誤った認識を一般消費者が持つにいたったかというと、どうもこれにはキワモノ的な書物が大いにあずかって力があるらしい。大衆の無知につけこんでデタラメだらけの内容の本をでっち上げて金をかせぐ不徳漢の罪はまことに大きいといわなければならない。」こう書いてあるのです。それで、なるほど私がここへ持ってきた本のことだろうと思ったわけですよ。こういうことをお言いになるのは、私はけっこうだと思う、あなた方がそういうふうにお考えになるならば。私はコーラ飲料で一々何ページに書いてあるということを言いました、これに対する反論だと思うのです。それならば堂々とここで御反論いただいてけっこうなんですよ。もしあなたがおっしゃっているようにきわもの的な書物というものがあるならば一体何か、書物の名前をあげてもらっていただいてけっこうだと思うのですよ。  それから、大衆の無知につけ込んで、でたらめだらけの本を出して金をかせぐ不徳漢、こういう罪はまことに大きい、なるほど事実ならばこれは大きいのです。もしうそを言って何も知らぬ無知の大衆に押しつけて、それを世論にして、あるいはまたおもしろいからというのでこんな本がどんどん売れるということならば、これはたいへんなことだと思う。それならば私はその書物をあげていただきたい。どの内容の本のどこがでたらめで、大衆の無知につけ込んだものか、あるいはその書物は一体何なのか、そういう点をひとつあげていただきたいくらいなのです。もしどうしてもそういうことが当委員会で御発言できなければ、資料をとっていただいて後刻出していただいてもけっこうであります。   〔阿部(助)委員長代理退席、委員長着席〕 私が調べた添加物に関する本はこれだけあります。これはごく最近出た本ですから「うそつき食品」のぶんはつけ加えますが、これと同じ著者の郡司篤孝「危険な食品」というのがございます、三一書房。渡辺洋三郎「自然食入門」これは読売新聞社。岩垂荘二「日本的長寿法」学習研究社。柳沢文生「いつまでも美しく」東洋経済。大木幸介「恐怖の人工毒」実業之日本社。この発行の社は有名な社ですね。これは架空な社ではない、りっぱな出版社ですよ。それがおそらく責任をもってこういう書物を発行しておると思うのです。それから経歴を調べてみても、みんなそれぞれ、学者もありますし、それから長い問食物について研究された方とか、そういうものがついておりますね。一体こういうところのどこがあなた方のおっしゃるような不徳漢の部類に属するのか、たいへん疑問に思う。そういう気持ちでもって食品添加物を礼賛されておるということについてたいへん疑義を持つのです。これが三つ目です。  四つ目にもう一つ言っておきますが、あなた方はこういうふうに書いておる。「こういった低級な連中を世の中に横行させたままでほおっておいた業界の態度もおかしいのではないだろうか。おかしないいがかりをつけられたらこれを反撃して一般の人々の正しい理解を得るように努めることが必要なのではないだろうか。」なるほどこれは読むとその通りですが、このニュアンスの中から生まれるものは、おまえらはぼやぼやしておる、業界、もっとしっかりしろというような、業界をむしろ叱咤激励しているような、そういうことがこの文章の中からうかがえます。厚生省は業界本位といわれてもしかたがない、そういうことがこの文章の中からは読まれます。  私はいま四つばかりのことを申し上げましたが、日本国民は、添加物についていろんなことが明らかになるにつれて、この食品行政についてたいへん大きな疑問を持っておるのです。たとえば、先般ある新聞で、アメリカでは禁止された食品添加物がたしか三十幾つでしたか、日本ではそのまま、まだ禁止されていない、認められておるが、一体これはどういうわけか。これは新聞の中に投書に出ております。そういうような添加物について国民の関心が非常に高まっているのです。それはなぜかというと、ある意味においてはこういう市販のものを読んで、そしてこれが新聞に載り、それを国民が知ってそういう疑問を持つのです。あなたは、お書きになっているように、安全性についてはきちんとしておって、そしていささかも非難を受けることはない、こういうふうに断言されておるわけですが、私はこの点についてあまりきっぱりと断言されることについては疑問があるのです。それだからこそ当委員会でいろいろな問題を取り上げてあなた方の見解を求めるけれども調査をしております、研究をしております、まだ分析はしてない、こういう答弁に終始しておるわけでしょう。こういうことを外部の新聞にお書きになるならば、私ども質問したときに堂々とお答えいただいてけっこうですよ。それを当委員会では答えないでおいて、外部にこういうふうに御発表になることについて、重複いたしますが、私はたいへん遺憾に思います。これについて小島さん、きょうお見えいただいたのですから、一応あなたの見解を伺っておきたい。これが厚生省の食品添加物に対する公式な見解だと私は見ておるのです。もしそうならばたくさんの言い分がありますが、これはきょうの委員会では時間の関係上申し上げません。あらためて食品添加物についていろいろ申し上げますから、私が読み上げた「日本食糧新聞」のあなたの「食品添加物行政の展望」ということについて、真意をひとつお伺いしておきたいと思います。
  65. 小島康平

    ○小島説明員 武部先生から、御質問に対する反論ではないかというような当初お話がございましたが、決してそのようなことはございませんで、実は私自身が清涼飲料行政を担当している課の者ではございません。これは「日本食糧新聞」のほうから今度の政、省令改正について何か書いてくれという依頼がございました。そして私書いたわけでございます。  中身につきましては、消費者が頭から添加物を悪いときめてかかっていることはたいへん迷惑だというような書き方をしたわけでありますが、この点につきましては、実は私どものほうへ主婦の方がお見えになりますと、添加物という名前だけで添加物はすべて悪いものだというお話を非常によくされますので、添加物の中にはビタミンとかアミノ酸というものもございます、添加物はすべて悪いものだというお考えは非常に困る、もっと正しい理解を持っていただきたいという気持ちで私おるわけでございます。  それから添加物の使用について非常にきびしく規制されているということを書いてあるわけですが、日本の添加物の規制は世界的に見ても非常にきびしいのでございまして、EEC諸国に比べましてもたいへんきびしいのであります。ただアメリカが、実はかつては日本より非常にゆるかったわけでございますが、日本の法律というふうなものの形を向こうで採用いたしまして、そのためにアメリカでは色素などの数を減らしましたために非常にきびしいように見えているようでございますが、日本の規制は非常にきびしゅうございます。それで私ども食品添加物の行政をおあずかりいたしておりまして、何とかして国際的なレベルにしようということで努力をいたしておりますが、その努力がいろいろな添加物の削除というような形であらわれているわけでございます。ことに最近は非常にきびしくて、新しく許可になるものも非常に減ってきた、今後は新しい添加物の許可をとるのはたいへん困難ではないかといわれるくらいのところまでやってきておりまして、私どもとしては現在の技術、研究水準からいえば安全であると言えるのではないかというような考え方で行政をやっているわけでございます。  それから「キワモノ的な書物」というような点でございますが、これにつきましては私どものほうから後刻武部先生のところへ詳細資料をお届けしたいと思います。といいますのは、ここで書物の一つ一つの一部につきまして詳しく御説明を申し上げるわけにいきませんから、全部につきまして、一冊の書物のこの部分がどうであるかということが書いてあるものがございます。つくりました資料もございます。これは前に委員会のほうの先生方から御要求もありましてつくったものもありますから、あがりまして御説明したいと思います。  それから、業界を叱咤激励しているようにとられるというようなお話でございます。「おかしないいがかりをつけられたら」どうこうという部分でございますが、この点につきましては私はこう思うのでございます。業界が、もし自分たちがほんとうに正しいことをやっているならば黙って引っ込んでいるのはおかしいじゃないか、黙って引っ込んでいるのは業界が正しい姿勢をとっていないからではないか。ですからほんとうに正しいものをやっているならばはっきりと反論しなさい、そうでないならば間違っている。とにかく業界の姿勢というものは、ほんとうに自分たち消費者のためにいい食品を供給しているという、もっと義務感と責任を持った態度をとるべきだというのが私の考え方でございまして、私非常に若げの至りでそういう書き方をしたのを、先生に業界を叱咤激励しているようにとられたことはまことに残念でございます。私は決して業界の味方をしようという考えはございません。実は最近私どものほうで省令、告示を改正いたしまして、色素を生鮮食品から除きまして、あるいはまた表示を添加物に全部義務づける、これはもう非常にきびしい規制でございまして、世界でもこの表示の関係は一番きびしくなってしまう。これは業界にとってたいへんな負担でございます。私どもはそういうことまで強く規制をして、そしてできるだけ消費者の方のためにと思って行政をやっているわけでございまして、決して、業界サイドに立っているというような気持ちはございませんので、その点はひとつ武部先生に御理解いただきたいと思います。  それから新聞紙上の投書で、アメリカで禁止されているものが三十幾つも日本で許可されているということでございます。これはアメリカのものと日本のものと比べますと、そこではいろいろと違っている部分もございます。日本が禁止しているものをアメリカで使っている例もございます。実はアメリカで禁止しているものを日本で許可している例につきましては、それぞれ一つ一つ十分な毒性資料のあるものばかりであります。こういう点については、委員会における御指摘もありまして、私ども非帯に注意をして慎重にやっております。  なお全般的な問題でございますが私どもは現在の添加物規制が絶対に安全だというようなことではなくて、私どもとしては極力努力して、そして安全を確保するようにやっているということを私言いたかったわけでございます。そういう点をひとつ御理解いただきまして、また今後とも先生方のよろしき御指導をいただきたいと考えておる次第でございます。
  66. 武部文

    ○武部委員 あなたのいまおっしゃったことならば、私は別に反論することはないのですよ。ところがお書きになっておるこの文章から見ると、そうはとれないのです。規制の問題について、ズルチンがどうだとかタール系色素がどうだとか言いますが、こうしたことは私ども委員会で何べんもやっていることなんです。それから、前のことをあなたに責任を追及するわけじゃありませんが、コーラ飲料をやったときに、三十二年に燐酸が入ってきた。燐酸がなぜ食品添加物として認められたかということをお聞きいたしましたね。三十二年に燐酸が食品添加物と認められたのは、それだけの政治的な背景があったのじゃないか。コーラーが入ったときに燐酸が食品添加物と認められたという資料がある。コーラに燐酸が入っているけれども、あなた方は認められているのですから。こうしたことを考えると、十分規制されたものとは考えられない。  そうした点から見ると、あなたのお書きになったものから見ると、「キワモノ的な」と書いてありますけれども、なるほど一部にはそういうものがあるかもしらぬ。それならばそのようにお書きにならぬと、この文章を読むと、私ここにまだたくさん持っておるが、みんなここで読み上げて、何ページだというと、おまえの読んだのはみんなこれだ、きわもので、とにかく金もうけのためにやられておるのだ、これとしか思えないような言い方なんです、これは。ですから、もしそこまで配慮されるならば、一部の中にそういうものがあるというふうにお書きになるならまだいいですけれども、それなら一つ一つあげてくださいと私は言いたくなるのですよ。  それと同時に、もしかりに国民大衆が、一般消費者がそういうきわもの的なものにごまかされておるとするならば、それはたいへんなことなんです。それならばあなた方は勇気を持って堂々と反論をして、ここにはこういうことが書いてあるけれども、これは私ども間違いだと思う、そういう点を言われたほうがいいと思うのです。こそこそ言わぬでけっこうです。ここで言われてけっこうです。そういう点は私どもも、間違いがあれば訂正しなければならぬ。何ぼ本を買ってきて読んだって、間違っておったらしようがないのだから。そういう反論がない限り、やはり認めておるな、こう思うのです。業界のほうで、何を言っているか、おまえの言っていることはほんとうはかくかくのとおりたということだったら、ここで何べんやっておっても何にもならぬ、私はそれを言いたかったわけです。ですから、反論はしてないから何にもならぬ。郡司さんという人がどんな人か、私ども会ったこともないのです。間違いなら間違いで言っていただいたほうがいい。そうしたらここへ呼んで、あなたの言っていることは間違いじゃないか、こう私ども質問をしてもいいと思うのです。そうせぬと、われわれはこれを信用します、あなたの回答がない限り、抽象的な限りは。  私はきょうはそういう点について言いたかったのです。ですから、あらためて閉会中審査の際にもう少しやるということにして、きょうは時間がありませんし、阿部君のほうから関連質問がありますから、私はこれでやめます。
  67. 阿部助哉

    阿部(助)委員 関連。いままでの武部君のコカコーラその他に対する質問を私たちわきで聞いておっても、厚生省の態度には解せない点が多々あります。厚生省が、消費者保護法をつくられたり何かしておるのだが、一体どういう態度でこれに対処しようとしておるのか、私お伺いしたいけれども、時間がありません。まああなたは担当しておられるならば、一九六二年ケネディが有名な消費者に対する演説をしておられるのだが、それくらいのものはあなたは御存じなんでしょうね。ケネディは有名なあの演説の中で、第一には消費者の安全の権利、消費者にとっては安全の権利があるのだということを言っておる。二番目には、内容を知らされる権利がある。三番目には選択の権利がある。そうして四番目には意見を聞いてもらう権利があるのだ。これを私は実行するのだということを言っておられるわけです。ジョンソンもそれを引き継いでおる。アメリカの国でもそれをやっておるのです。いままでのコカコーラに対する武部君の質問に対する厚生省の態度というものは、ほとんど調査していない。国民に知らせるという努力をしてないのじゃないか。そういう中でいまのような問題が出てくれば、だれしもがこれに対する不満を感ずるのは無理がないと思う。そういう点で厚生省も少ししっかりした調査と、消費者の立場に立った行政をもう少ししてもらいたいということを、質問というよりも要望しておきます。
  68. 和田耕作

    ○和田委員 関連。先ほど帆足委員からの質問に対して金光局長がお答えになったことで、これはどうもならぬなという点が一つありますので御質問したいと思います。  物価委員会でせんだって国立衛生試験所に参ったときに、私も実はびっくりしたのですが、私は朝、別行動で世田谷の国立衛生試験所に行ったのですが、さがすのに困ったのです。所は大体聞いて地図をもらっておったのですけれども。つまり、私が考えておった国立衛生試験所と現実の試験所とはたいへんな違いがあったということなんです。日本の公衆衛生をつかさどる一番中心の機関だと思っておったので、もっとりっぱなものだと思っておったのですが、たいへんなお粗末なものだという感じを受けたのです。  それで私は、厚生省のほうはいままで何回となしにそういうものの拡充について予算の請求をしたのだろうと思って、実は先ほど帆足委員質問の途中で、その点を一ぺんただしてくれということを耳打ちしたのですが、そのお答えとしては、いままでほとんど予算の拡充の努力をしてなかったみたいなお答えを聞きまして、私非常にびっくりしておる。なぜそういうふうな態度をとっておるのだろうか。現在公害がたくさん出てくる、あるいは米ぬか油その他の問題がたくさん出てくるのに、問題が先走って出てきて、厚生省が対応策に戸惑っておるということはわかりますけれども、それにしてもいままで何回か出た問題で、今後もますます大きくなるようなことがわかっているこの問題に対して、まだ厚生省として大蔵省に対する予算要求なんというものをしていないということを聞きまして、あ然としているのですよ。この前、課長さんも一緒だったと思いますけれども、どの場所で聞きましても、設備が非常に不十分である、予算が非常に不十分であるということを言っておられるわけですね。そのことは十分承知しておられると私は思っておったのです。さぞかし大蔵省にいじめられてと思ったけれども、ほとんどやってないということは何事かということなんですね。こういう問題を、どうしてそういうようなことになったのか、局長さんから一度お答えをいただきたいと思います。
  69. 帆足計

    帆足委員長 阿部委員の要望並びに和田委員からの質問につきまして、それぞれ御答弁をお願いします。
  70. 金光克己

    ○金光政府委員 阿部先生の御要望でございますが、それに対しましてまずお答えをいたしますが、厚生省としましては、食品衛生につきましては御承知のように食品衛生法ということで、それに基づきましていろいろと努力してまいっておるわけでございます。それで、そういう意味消費者保護基本法ができましてからも、いろいろと食品衛生法をいかようにしたらいいかということを検討してまいっております。  それから、いろいろとこの委員会でも御指摘を受けてまいっておるわけでございますが、先般、御承知いただいておると思いますが、十五日には食品衛生法の政令を改正し、二十五日には省令、告示等を改正いたしまして、現行法におきましてできる範囲の改正を行なったような次第でございます。しかしながら、これだけではまだまだとても十分ではないわけでございまして、引き続き現行法に基づきます必要な改正につきましても検討を進めたい、かように考えておりまして、さらに食品衛生全般の問題としての立場からもいろいろと検討してまいりたい、かように考えておる次第でございます。そういうことでございまして、今後におきましても、食品衛生につきましては公害と同じように力を入れていかなければならぬものだ、かように考えまして努力していくつもりでございます。  それから和田先生の御質問でございますが、国立衛生試験所につきましては、御指摘のようにいろいろと研究面におきまして、まだ設備あるいは予算上におきましても十分でない面があると思うのでございます。しかしながら、ごらんいただきましたように、毒性の研究等は新しくことしでき上がったというようなことで、逐次改善をし、努力はしてまいっておるわけでございますが、現在の食品衛生の面から見ましても、まだまだ十分でないという面もあるわけでございます。そういうことでございまして、率直に申し上げますと、国立衛生試験所は窓口としては薬務局が扱っておるわけでございますが、私ども関係の食品衛生の仕事も扱ってもらっておるわけでございますから、環境衛生局の立場におきましても、今後はこういった面につきましてさらに十分検討し、努力してまいりたいというようなことでござます。先ほど帆足先生の御質問にもお答え申し上げましたように、やはり日進月歩で科学は進歩していかなければならぬし、またしておるわけでございますが、そういうことで、やはり食品の安全性ということの研究につきましてはさらに努力していかなければならぬ、かような考え方で、今後におきましていかようにしていこうか、どのような方策で強化していこうかというようなことを、来年度予算とあわせまして現在検討しておるような次第でございます。
  71. 和田耕作

    ○和田委員 こまかいことは申し上げる時間もございませんけれども、特に全体の感じとして、国の最も権威ある中心的な衛生試験所というものに対して、厚生省は、いろいろ所管の問題はあるでしょうけれども、この際かなり抜本的な対策を考える必要があるということを私感ずるわけです。これは別の機会にでもいろいろ申し上げてみたいと思うのですけれども、いまのあの施設、また研究員の状態を拝見しまして、国立大学との問題がいろいろありはしないかという感じを受けるのです。大学、特に医学あるいは衛生のほうの大学の問題、現在混乱していますね。こういう点も考えまして、国立衛生試験所のようなものは、この際大学の研究機関とは一応独立させて権威あるものにしていく必要がある。いまはそういうことの非常に好機だという感じを持つのです。その問題を厚生省としてぜひとも検討していただきたい。食品衛生の問題、添加物の問題、公害の問題についてこうまでやかましくなっていることを、あのような状態では実際問題として扱えないのではないですか。そのことをもっと真剣に考えていただきたい。これは他の機会に文部省のそういうほうと関連させて、もっとまとめた質問をしたいと思っておりますけれども、ほんとうにあ然としているのです。文字どおり権威的な一つの研究機関をつくってもらいたい、そのことを努力してもらいたいということを考えるわけです。要望いたしまして私の質問を終わります。
  72. 金光克己

    ○金光政府委員 国立衛生試験所の問題につきましては、先ほど申し上げましたように年々努力はしてまいっておるつもりでございますが、まだ十分でないという状況でございます。私ども関係の仕事から見ましても、さらに強化していかなければならぬという考えを持っておりまして、ただいまの御意見の面につきましても、関係者と十分協議をいたしたいと思います。  それからガンと食品衛生関係の問題でございますが、食べものとガン発生の関連につきましては、私どもの立場でも十分考えなければいけない。またこれは考えておるわけでございますが、慢性毒性とあわせまして、ガンあるいは催奇型の問題は非常に重要な問題でございます。今後さらに研究体制を強化してまいりたいと存じます。
  73. 帆足計

    帆足委員長 次回は公報をもってお知らせすることといたしまして、本日はこれにて散会いたします。    午後二時六分散会