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松元説明員 ただいまの
先生の問題の
指摘は、これはいわば
農政の
基本問題につながる大きな問題でございますから、あるいは私がお答えするのは適当かどうか存じませんけれども、一応の御
説明を申し上げますと、相関連するわけでございますが、
前段に
需給の見方についていろいろ過去の例の引用がございまして御
指摘があったわけでございます。確かに
農産物の
需給の
見通しにはいろいろむずかしい問題があるわけでございます。表面的に見ますれば、
見通しが違ったじゃないかという御
指摘を受ける事例も、私はないとは申さないわけでございます。これはもちろんわれわれの
見通しの誤りという問題も、私
たちとしてもこれは十分反省して
検討しなければならぬと思いますけれども、やはり全体の
経済の
変化と申しますか、そういうものが非常に大きゅうございまして、
通常で
見通したのではその
変化に対応し切れなかったという面もあるわけでございます。
そこで米につきましても、確かに米の
需給問題は前からいろいろ問題になった次第でございまして、米というのは御
承知のとおり、二十年代は絶対的な
不足であったわけであります。三十年に入りましてから、三十年度産米の大
豊作を
契機といたしまして
緩和の
方向に向かった。三十五、六年ごろ、ほぼ
需給が均衡したといわれた
段階があったわけでございます。ちょうどそのころ、三十七年に、
農林省は最初の「
農産物の
需要と
生産の
長期見通し」を出したわけでございますが、その場合には、将来は米は
供給過剰に向かうであろうということのいわば予告は確かにしていたわけでございます。そうしまして、三十七年は当時としては大
豊作であったわけでございますが、三十八年から四十年の三カ年にかけまして
生産が
減少いたしたわけでございます。当時
輸入もふえまして、したがって当時から、
農林省の
需給の
見通しは間違ったではないかということをいろいろいわれたわけでございます。当時もこの問題はいろいろ分析したわけでございますが、御
承知のとおり三十八年から四十年というのは
天候が悪うございまして、御記憶と存じますが、四十年などは、当時の気象庁は、これは天明の飢饉と同じような
気象条件であるというようなことすら言った状態でございまして、
反収は若干
減少した。にもかかわらずあの
程度にとどまったということは、私は、
基本的には
稲作の
生産力は上がっておったのだ。それが四十一年に回復いたしまして、四十二年には好
天候に恵まれまして、一挙に過去の蓄積された
生産力が発現されたというふうに
考えられるわけでございます。
そのように、米の
需給につきましてはいろいろ慎重な
検討が必要だということはおっしゃるとおりでございまして、他方、
輸入につきましてはいろいろ問題があったわけでございますが、
農林省といたしましては、今後は原則として米の
輸入は一切いたさないという方針をはっきりと打ち出したわけでございます。
小麦につきましても、
小麦は約三百万トン以上入れているのじゃないかという御
議論もあるわけでございます。確かに
小麦は当初は米の代替として入ったことは間違いはないわけでございますが、いまや
国民の
食生活の中に定着しておるわけでございます。したがいまして、
消費者側の
需要と申しますか、そういうものを無視いたしまして、いわば強制的な手段をもって
輸入を抑制するということは、これはなかなか時宜に即さないわけでございます。何と申しましても、
国民のいわば
食生活と申しますか、その
動向、あるいは
消費の
動向というものを十分に考慮しなければならぬ、そういった
段階でございますものですから、もちろんわれわれ
農林省といたしまして、特に
農業生産を担当する者といたしましては極力国内
生産したものを食べていただきたいと思うわけでございますが、やはり
需要というものを無視するわけにまいらぬ、こういった
事情もあるわけでございます。しかし、御
指摘のように
需給につきましてはいろいろむずかしい問題もございますものですから、われわれとしましても、この
見通しを立てるについてはさらに
検討を重ねなければならないということは十分
考えておるわけでございます。
それとも相関連するわけでございますが、先ほど私、
米価を本年度据え置いたというのは全体の
農政の
一環だということを申し上げたために、しからば
農政全般の
総合的な
展開なくして
米価だけに手をつけるのはどうかという御
質問がございました。今回の
米価の
据え置きというのは、今後私
たち農林省が
農政を
展開します場合に、その
一環として重要な意義を持つものであることはまさしくそのとおりでございます。私
たちが
農政を
展開するにつきまして、いままでもいろいろな
施策を講じてきたわけでございますが、これは正直申し上げまして、なかなか
時代の
変化、
経済の
変化が大きいものでございますから、それに対応し切れぬという面もあったわけでございます。そこでいまごろおそいという御
指摘もございましょうし、まだまだ
施策が不十分だということもございましょうが、昨年も
総合農政ということを打ち出しまして、現在の情勢に即応しました新しい
農政の
総合的展開をはかっていこうということで
各般の
施策の準備に着手をしておりまして、まず四十四年度におきましては、まだささやかではございますが、いろいろな芽を出している。もちろん
農政というものは非常に長いものでございまして、一朝一夕に
効果を生ずるものではございません。したがいまして、そういった
施策の
効果というものを結果として見るには時間もかかるわけでございますけれども、やはり
農政というものをそういった
方向に
展開していかなければならない。そういたしますと、そういうものと矛盾するような
施策をとるわけにまいらないわけでございまして、そういう
意味におきまして、今回まだ結果は直ちに実っておるわけではございませんが、そういった
総合農政の
一環として
米価についての
据え置き措置を決定した次第であるわけでございます。