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1969-04-24 第61回国会 衆議院 物価問題等に関する特別委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十四年四月二十四日(木曜日)     午前十時三十三分開議  出席委員    委員長 帆足  計君    理事 小笠 公韶君 理事 金子 一平君    理事 木部 佳昭君 理事 竹内 黎一君    理事 武藤 嘉文君 理事 阿部 助哉君    理事 武部  文君 理事 和田 耕作君       青木 正久君    大野 市郎君       山下 元利君    内藤 良平君       村山 喜一君    有島 重武君  出席国務大臣         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      菅野和太郎君  出席政府委員         経済企画庁国民         生活局長    八塚 陽介君         食糧庁長官   桧垣徳太郎君  委員外出席者         農林省畜産局牛         乳乳製品課長  松浦  昭君         農林省畜産局食         肉鶏卵課長   小島 和義君     ————————————— 四月十八日  物価値上げ反対に関する請願(林百郎君紹介)  (第四五三七号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  物価問題等に関する件      ————◇—————
  2. 帆足計

    帆足委員長 これより会議を開きます。  物価問題等に関する件につきまして調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、これを許します。武藤嘉文君。
  3. 武藤嘉文

    武藤(嘉)委員 きょうは、今度解散をして新しく物価安定政策会議ですかになるということで、物価安定推進会議解散の前に、従来いろいろ提言をしてきたことに対しましての最終的な意見が先日発表されたわけでございます。その問題にしぼってやれということでございますので、できる限りはずれないような形でいきたいと思うのでございますが、今度の最終提言最後に、「とくに消費者物価上昇率政府見通しを上回るような事態が予想される場合には、政府は、年度中においても、直ちに経済政策全般にわたり再検討を加え、強い政治的決意をもって物価安定に積極的に取り組むべきである。」こう書いてあるわけでございます。  そこで、今年度物価上昇率目標として、前から大臣言われておりますように、政府としては五%以内に押えるんだ、こういうことを言われておるわけでございます。われわれといたしましては、この五%というものも決してノーマルな状態ではない。定期預金の現在の利息に近いようなそういう高い五%というものがノーマルな状態ではないと思いますけれども、いずれにしてもそれが一応のめどになっておるわけでございます。その五%に必ず押えられるという確信をお持ちであるのか、あるいは万が一押えられない要素が今後出てくる可能性が強いとした場合には、それはどういう要素であるのか、あるいはまたその要素が出てきた場合には、それに対してどういう手を打って五%以内に押えようとしておられるのか。その辺、この最終提言に載ってございますけれども、この点について、大臣としての御所信と申しますか、御決意といいますか、それをひとつ聞かしていただきたいと思います。
  4. 菅野和太郎

    菅野国務大臣 四月十六日に、「物価安定対策実施状況と今後の基本的方向について」ということで、物価安定推進会議で決議されたのでありますが、そこで、本年度物価上昇率が五%に押えられるかどうかという問題、これはもう私どものほうでは押えなければならぬと考えております。そこで、現に外国の例を見てもそうですが、五%以下の物価上昇率であるアメリカにおいてもその他の国においても相当みな思い切った物価対策を最近講じておりますので、五%というものは、これは私は最上限であると考えておるのであって、それが理想的な数字ということではありません。が、しかし、昨年来の物価上昇の情勢から見れば五%以上になるという予想がされたので、どうしても五%で押えなければならぬということで、四十四年度については五%という目標を立てたのであります。  したがいまして、それに対していろいろな方策を講じてやっておる次第でありまして、三月の二十日の閣議了解事項でも、物価対策閣僚協議会を開きまして、そして今後の物価対策に関して政府はどういう態度をとるかということを決議して、これを発表した次第でありまして、この方策によって五%以内に押えるというあらゆる手を講ずるつもりであります。が、しかし、万が一五%以上になるということであれば、申すまでもなくこれは国民全体の福祉増進に影響しますからして、したがいまして、あくまで五%以内に押えるような機動的な対策を講じなければならぬ。  そこで、その対策についてはどうとるかという御質問であったと思うのでありますが、そうなりますと、どうしても金融財政面で手を打たなければならぬじゃないかというように考えております。御承知のとおり、英国にしても西ドイツでも、オランダでも、みなやはり金融財政面対策を講じております。でありますからして、金融財政面において対策を講ずるということで、機動的な緊急対策を講じて五%以内に押えるという心づもりをいたしておる次第であります。
  5. 武藤嘉文

    武藤(嘉)委員 そうなりますと、たとえば具体的にいえば、国債発行限度額をいま押えております。まあ承れば、一応現在の予算では千五百億の減額になっておりますけれども、実際は自然増収が相当ふえるので、それをすべて国債減額に充てるというようなことも聞いてはおります。たとえばそういう物価の安定を財政面からやっていくとすれば、とりあえずやりやすいのは、そういう国債減額自然増収分をすべて充てるというのがいいのかもしれませんが、しかし、また一方においては、単純にそれをやるだけで——それはことしの物価安定には役立つかもしれませんけれども、将来の問題を考えた場合には、物価安定という点からいけば、必ずしも国債発行を押えるだけでなくして、もっと何か積極的な手が打ち得ないか。提言にもいろいろございますけれども、そういう点について、いまのまず財政金融のうちの一つ財政面で具体的に私がちょっと想像してお聞きするわけでございますけれども、何か政府としてお考えになっておる点があるのかどうか、ちょっと承りたいと思います。
  6. 菅野和太郎

    菅野国務大臣 その点でわれわれが参考にすべきなのは、ドイツの例があります。ドイツ金融面においては金利引き上げをやっておる。一%上げました。財政面では、現在やっておる公共事業繰り延べということで財政的な措置をとるということ。公債政策ももちろんでございますが、そういう対策をとっておるのでありまして、日本においても、五%以上の上昇ということが続くような見通しがある場合には、これは金融面から、財政面から、いま申し上げましたような打つ手がある、こう考えておる次第でございます。
  7. 武藤嘉文

    武藤(嘉)委員 そうなると、場合によれば公共投資繰り延べということもあり得る、こういうふうに承ったことにいたしまして、次に、いまの金融政策でございますけれども、先ほどのお話ドイツのように金利引き上げ、あるいはアメリカその他における公定歩合引き上げ、そういうのもすべて景気対策としてやっておるわけでございます。これは必ずしも物価安定推進会議提言に直接には書いてございませんが、今後は消費の動向というものを常に考えて、いわゆる需要の圧迫によって物価が上がらないようにしなければいけない、こういうことが書いてございます。  そういう点で、最近消費者金融というものが非常に盛んになってまいりました。これはそれだけ国民生活にゆとりが出てきたわけでございますから大いにけっこうなことではございますけれども、しかし、安易に消費者金融が行なわれてまいりますと、ややもすれば、一般の国民といたしましては、いわゆるキャッシュで買わなくてもいいという意味において、案外自分の収入というものを上回るような消費をしていく可能性があるのではなかろうか。そういう点においては、私は外国の例を見ましても、いわゆる物価を安定する上において、消費者そのものにも協力を求めるいろいろの手段が過去においてとられてまいりました。日本の場合には、まだまだ消費者生活水準が低いということもよくわかります。消費者生活水準が低いためにそこまで指導ができないということであれば別でございますが、しかし、国民の一部においては相当高い水準生活をしておる方も出てきておるわけでございます。そういう点からいきますと、この消費者金融というものもいまは野放し状態になっておるのではなかろうか。銀行の独自性でおやりになっておるわけでございますが、国の一つ金融政策として、こういうものも真剣に取り上げ、同時にまた積極的に、消費者金融に対して消費者が自覚を持ってやれるような形にいくべきではなかろうか。そういう面において、消費者金融というものに対して今後目を向けていくべきではないかと私は思うのでございますが、その点について大臣のお考え方を承りたいと思います。
  8. 菅野和太郎

    菅野国務大臣 消費者金融というようなことがことに問題になってきたのは、日本においてはごく最近の事例です。外国などではすでに月賦販売制度というものが盛んに行なわれてきておるのであります。したがいまして、アメリカにおいてもやはり消費者需要を規制するという意味において、月賦販売制度に対してのコントロールをやっておるのであります。日本でも最近月賦販売制度が発達しましたのは、やはり耐久消費財の使用というものが盛んになってまいりましたから、したがって、やはり月賦販売制度が盛んになってきたし、また今後も盛んになると考えておりますが、まだ日本ではアメリカのように月賦販売制度というものは発達しておりませんからして、いま日本月賦販売制度自体をコントロールすることによって消費者金融を押えるということは、効果があるかどうか問題だろうと思います。  ただ、そこで問題は、やはり消費者自身消費生活合理化ということ、これが必要だと私は思うのであって、その点において日本人にはもう少し合理的な消費生活をするということの啓蒙運動をやる必要がありますからして、たとえば、今度各地で設けます生活センターなどにおきましても、商品鑑定をやると同時に、消費者啓蒙運動をやるということで、合理的な消費生活をやってもらう。収入範囲内において支出するというようにひとつやってもらいたい。そうすることがおのずから需要を抑制することになりますから、そういう方法で今後総需要を抑制するという運動を起こしたいと考えておる次第であります。
  9. 武藤嘉文

    武藤(嘉)委員 それからその次に、予算の立て方でここにいろいろ提言がございまして、特に米価の問題あるいは公共料金の問題については一応実施をされた、こう評価をされておるわけでございます。しかしながら、その実施がまだされてない一つの例といたしまして、交通問題を取り上げておるわけでございます。私は、最近の国鉄運賃値上げの問題でも先回質問をいたしまして、あくまでも運賃値上げという、国民が負担をしなければならないものに対して、それが国鉄合理化と申しますか、国鉄がより生産性を高める方向へいくという意味においてその金が使われる、こういう面においては、実際問題、われわれとしては必ずしも賛成ではないけれども、やむを得ず賛成するのだという話を申し上げたわけでございますけれども、ここにやはりそれと関連をいたしまして、「交通投資財源資金配分の再検討を行ない、資源配分効率化に努め、輸送機関の間に適正な競争条件を整備すべきであると提言したが、いまだ検討がすすんでいない。」と書いてあります。  私、聞いておりますと、国鉄の場合いろいろ合理化考えられておりますが、一番国鉄赤字が多いのは、正直いって、いわゆる合理化が進んでおるのにもかかわらず、まだまだ人件費が非常にかさんでおるという点と、もう一つ貨物輸送というものにおいて非常にマイナスになっておるということを聞いておるわけでございます。この提言の中にもございますように、交通体系の再検討として、たとえば国鉄貨物関係部門を将来において民間に委譲するという形のほうが、現実において国鉄の立ち直る機会がそれだけ早いと思いますし、あるいはまた民間運送機関においても、すでにトラック業界というものが相当進んでおります。こういう点において、道路が整備されてきた今日においては、私は案外国鉄貨物部門というものは将来——なくすというわけにはいかないと思います。特にまだまだ開発がおくれておる地域においては、国鉄輸送によって非常に助かっておる部門が多いと思いますが、少なくとも幹線的なところにおいてはこういう点は再検討されて、場合によれば民間トラック輸送に切りかえていっていいんじゃなかろうか、こういうふうに私思うのでございますけれども、ここに、再検討が行なわれていないということですが、その点について大臣としてのお考え方をひとつお聞かせいただきたいと思います。
  10. 菅野和太郎

    菅野国務大臣 この交通問題は、これは単に国鉄に限ったわけじゃないのであって、日本全体の交通問題についてのこの際再検討をすべきじゃ汁いかということをいうておるのでありまして、国鉄が今日のような状態におちいったということも、いわゆる交通革命と申しますか、輸送革命と申しますか、に対して順応せない従来の経営法をとってきたというところに、私は根本原因があると思うのであります。でありますからして、国鉄運賃料金値上げの問題のときにも、まず国鉄体質改善前提だ、国鉄体質改善せずして運賃値上げは、これは絶対私のほうでは認めるわけにはいかないということで、体質改善前提として料金値上げということに、最後にわれわれのほうも同意したわけであります。これは国鉄に限らず、他のトラック会社にしてもあるいはタクシー会社にしても、いままでみな安易な考え方をしておった。タクシーでもいままでもうかり過ぎておる。トラックでもそういうことで、安易た考えをしておりますからして、この際すべて合理化をやってもらうということが前提条件でありまして、料金値上げよりもまず各交通機関体質改善、新しい輸送革命に応ずるような体質改善をやってもらいたい。その上で実際赤字が出るということであれば、それは適当な料金の改定は考えてもいいが、その体質改善せずして単に料金値上げばかりを要求するのでは、それは筋が通らぬということで、今日私のほうでもそれを主張してまいっておるのであります。従来は、困ったら料金を上げてもらえるという安易な考え方交通関係はしておりましたから、そこで今日、私のほうで、安易に交通関係公共料金を上げないということでがんばっておりますので、したがって、今度は各交通関係会社などにおきましては、まずみずからの体質改善をやらなければならぬという機運が生じてきたと私は思うのであります。でありますからして、たとえばタクシーの問題にしても、もう少し合理化したタクシー料金考えてみたらどうか。単に料金値上げ考えるよりも、タクシー料金自体についてもう少し考え方があるんじゃないかということを私のほうでは申しておるのでありまして、ここでいったことはそういう意味で、また資金の必要な場合には、適当な、交通革命に応ずる交通機関を整備するに必要な資金はまた融通すべきだというようなことも含んでおるのでありまして、総合的な交通政策をこの際打ち立つべきじゃないかということをここではいっておるわけであります。それがまだ実現されておりませんから、推進会議においてそれを指摘したわけであります。
  11. 武藤嘉文

    武藤(嘉)委員 私の時間がなくなりましたので最後に……。  いろいろ物価政策をこまかくやっていけばもっと、たとえば農産物畜産物というものの需給関係を十分考えなければいけないとか、あるいは正直いって、農産物畜産物、これと米と比べた場合、一労働力当たりの手取りが米に比べて非常に低いとか、いろいろそういう点もございますし、あるいは中小企業関係にいたしましても、たとえば税金の面あるいは金融の面、あるいはこまかくいえば電力料とか、そういうようなものまで、中小企業関係は大企業に比べて非常に割り高になっておる。そういう点も、ここにある構造改善を進めると同時に、われわれもっと考えてやっていかなければならない点が物価政策上あると思います。  時間がありませんので最後に、私ども特にこの委員会でいろいろ問題が出てまいりますときに常に感じますことは、どうも行政官庁機構が、何といいますか、縦割りでありますために、いわゆる横の連絡というものが必ずしもうまくいかないというか、そこに一つの、悪くいえばなわ張り根性というものが私はあるのじゃないかと思いますけれども、そういうものがこの構造政策を進める上において、あるいは地価の問題を考えていく場合においても、あるいはその他のいろいろ物価関係のことをやってまりますときに、こういう新しい現在の物価政策というようなものが過去においてあまりなかったために、現在のような縦割り行政機構の中においてこれを解決していくというところに非常にむずかしい、困難さがあるのではなかろうか、私はこういう感じを特に最近いたしておるわけでございます。行政管理庁でいろいろと行政機構については御検討いただいておりますが、そして昭和三十八年でございましたか、行政機構改革についての調査会の案も出ておりますけれども、実際なかなかこれは進まない。物価政策の一環として、現在の時代あるいは将来の時代に合った行政機構改革、こういうものにも、物価政策担当になっておられる大臣がぜひとも取り組んでいただきたいと思うのでございますけれども、その点はいかがでございましょう。
  12. 菅野和太郎

    菅野国務大臣 今日の物価政策における行政制度の問題について御指摘があったのでありますが、これは実は各方面でわれわれ聞かされることばであります。先般の経団連の幹部連中との話し合いのときにも、物価問題で話をするときにも、先方からその問題が持ち出されて、行政制度の整備をやることが先決問題ではないか、それがひいて物価にも影響するのじゃないかということを言われたのであります。私もそう思っております。  でありますからして、私も、一昨年通産大臣をしておったときにも、この物価対策に関連してでありますが、ことに消費者行政というものはもう少し統一すべきだということで進言を総理にもしたのでありましたが、それが実現せずして終わったのであります。また当時経済企画庁長官宮澤氏にも、物価の問題は経済企画庁、あなたのほうで統一してやってほしいということも私提言をしたのでありましたが、宮澤長官はまた私と違った意見を持っておりまして実現しなかったのでありますが、この物価問題については、物価問題の重要性というものを現内閣はことに認識しまして、この物価問題については政府重大施策一つとしてやるということは総理もたびたび言明しております。したがいまして、私自身もこの物価の問題については取り組んでやるというかたい決意経済企画庁長官を引き受けたのでありますからして、したがいまして、この物価の問題については、私としては、消費者行政と申しますか、これは経済企画庁がやはり旗を振るべきだという考えをしております。  そういう関係で、先般申し上げたと思いますが、従来ありました臨時物価対策閣僚協議会も、これは臨時的のものと違うということで、その臨時ということばを取りまして常設のものにしましたし、また構成員も変えたのであります。そういうことで、政府があくまで物価対策については本気に取り組んでおるということを内外に示す必要があるということで、三月二十日にも閣議を開きまして、そして閣議了解事項としてそれを発表いたしたのであります。これはこの前も申し上げましたが、三月二十日にはちょうど西ドイツもやはり物価対策のことについて決意をしておりますし、三月二十六日にはアメリカも相当思い切った決意をしておりますし、公定歩合引き上げも思い切ってやっておる。それからオランダが四月八日にやっております。英国が最近またこの物価対策について思い切った対策を講じておるのであります。そういうことで、西ドイツなどでは、日本よりも条件がいい国だと思っておるのでありますが、それにもかかわらず物価対策については思い切った対策を講じております。したがいまして、日本がただひとり物価対策について、あるいは日本経済力が最近伸びてきた、外貨がたくさんふえたとかいうようなことでのんびりしているときではない。もう少し日本経済自体についてお互いが反省して、そしてこの物価という根本問題についてもう少し強く取り組む必要があるということで、幸い各大臣からその点については御理解を得ておりますから、ひとつ内閣一致してこの物価問題に当たりたい、こう考えておる次第であります。
  13. 武藤嘉文

    武藤(嘉)委員 いまよく承りまして、非常にけっこうなことだと思うのです。ただ、閣僚会議をつくってみたって、それによって実際に政策が出てこなければ何にもならないと思うのです。いま外国お話がございましたように、ほんとうに外国でそういうものがどういう形でできているのかわれわれは知りませんけれども、とにかく発表されるものを新聞その他で聞くわけでございます。それに比べると、日本は、閣僚会議ができたとか、いまの話で臨時をとって恒久的なものになったとか、いろいろ機構はできてまいりますけれども、そこから生まれてくるものは何にも出てこないという点、私は非常に残念だと思うのでございます。もちろんこれからうまくいけばけっこうでございますけれども、先ほどのように五%以上にならないように、ひとつ場合によったら思い切った手を閣僚会議としてどんどん打ち出していただく、そういう政治の世界におけるリーダーシップというものをひとつぜひとも確立をしていただくことを特にお願い申し上げまして、私の質問を終わりたいと思います。
  14. 帆足計

    帆足委員長 武部君より、各論にわたりましては後刻質問の申し入れがございましたので、国務大臣への質問を続行いたします。阿部哉君
  15. 阿部助哉

    阿部(助)委員 いま武藤委員からいろいろお話がありましたが、時間がたいへん制約されておりますので、全般を聞くわけにまいりませんが、長官、どうでしょう、物価担当大臣として、物価安定推進会議最後提案ということでこれを出されたわけですが、これに対するお考え、これをお認めになるのか、こういう形でいこうというのか、それともそこには幾つか違った意見があるというのか、そこをまずお聞かせ願いたいと思います。
  16. 菅野和太郎

    菅野国務大臣 この推進会議最後提案については、私たち全面的に賛成であります。しかし、推進会議は、これで任期というと語弊がありますが、大体その任期を終えるので、今度はまた改組して物価の問題について取り組んでもらうことになっておりますので、今度はいままでと違った見方で物価の問題についていろいろとまた御提言をしてもらいたい、こう考えておる次第であります。われわれとしてはあくまでこの推進会議——あるいは名前が変わるかもしれませんが、推進会議において提言されたことは、もう可能な範囲において可能なものから実行するということでいきたい、こう考えておりまするし、また私自身も、今度生まれてくる会議においては単なる作文をつくってもらったのでは困るので、皆さんのせっかくの英知を集めて、貴重な時間をさいてつくられたものであるからして、これを具体化するということについてはわれわれお約束しますから、ひとつそのつもりで皆さんにお願いしますということをこの間も申し上げた次第であります。したがいまして、推進会議提言というのは、これはもう可能な部分から実現したい、こう考えておる次第でございます。
  17. 阿部助哉

    阿部(助)委員 ただいま武藤委員質問に対して、ドイツでもアメリカでもイギリスでも、物価問題に対しては非常に真剣に取り組んでおるという御答弁がありましたが、日本の場合にはことし五%という見通しを立てられました。大臣に就任されて、ことしは五%でやむを得ないと言われた。そのいろいろな事情はわからぬではありませんけれども、これからも五%ずつ上がっていくとすれば、これはたいへんなことだと思うのです。その五%前後という数字が私どうも気にかかるのでして、どんなに経済成長しようとどうしようと、やはり、二、三%以下でなければ、預金金利の問題あるいは勤労者が貯蓄をしてみても将来の安定は期せられない、国民生活の設計が立たないという点からいきますと、私は五%ということ自体がもう高過ぎると思うのですが、大臣は、いまの日本の場合には、これはもう五%ぐらいずつ上がっていくのはやむを得ないというふうなお考えでございますか。
  18. 菅野和太郎

    菅野国務大臣 私は、大臣に就任した当時、五%ということを言ったのですが、それでも実は反対があったのであって、とても五%には物価を押えられないというのが多くの人々の意見であったのでありますが、私は、物価というものは、四十四年度は五%で押えなければならぬという私のかたい決意を示して、五%ということで進んできたのであります。これは何も五%が永久的にいいというわけではありません。お話しのとおり二%ないし三%くらいに物価を押えなければならぬ。四十四年度は、四十三年度の情勢からすれば、おそらく六%になるのじゃないかというように昨年末には考えられておりましたから、それを私は一%下げて、四十四年度は是が非でも五%で押えようというかたい決意を示して、いま経済企画庁のほうでいろいろと計画しておる次第であります。でありますからして、五%が理想的とは決して考えておりません。これはもうわれわれの努力によって二%、三%にしたい、こう考えております。
  19. 阿部助哉

    阿部(助)委員 ことしは昨年の引き続きでありますから、もっと上がるかもわからぬのを五%ぎりぎりで押えたい、こういうお気持ちはわかります。これは提言でも、将来はやはりこの上昇率をもっと下げろといっておられる。そして長官もそのようだ。  ところが、そういうことになりますとどうも私、気にかかるのです。菅野大臣は、私を信用しろとおっしゃるけれども、最近の総理のお考えや福田大蔵大臣の発言等は、経済成長が一〇%なら五%ぐらいはやむを得ないというようなことで、当初、施政演説や何かで物価が重大問題だとおっしゃったのとはどうも感じが違ってきておるのじゃないか。これは長官を責めるのじゃなしに、国民はみなそう思っておる。新聞もそう書いておる。私もそういう感じがしてならない。これは物価に対する決意のほどをもう一ぺん閣議で確認し合うというくらいのことをしなければ、いまの物価問題は解決できないのじゃないかという感じが私はするのです。大臣決意はわれわれにはわかります。しかし、新聞等で書いておるように、総理大臣のほうが物価問題に対して熱意を欠いておるような、所得も上がるのだから物価の上がるのはしようがないみたいな、物価も上がるが所得も上がるみたいな話では、佐藤内閣の物価に対する取り組みの姿勢を国民は疑わざるを得ないのじゃないか。こういう点で、一ぺん閣議で統一見解というか、決意を固められる必要があると思うのですが、いかがですか。
  20. 菅野和太郎

    菅野国務大臣 これは参議院の予算委員会でありましたか、社会党の議員さんから大蔵大臣質問がありまして、経済成長率は一〇%。そのときすぐ総理意見を聞いたら、総理も大蔵大臣が言うたとおりですというふうに返事した。すぐ私に質問がありましたから、私は、今日までの情勢からいえばそういうことは一応考えられるけれども、成長率が一〇%いくとは、ここでは私は確言よういたしません。いま私のほうではそういうことについていろいろ調査研究をしておりますから、その上でないと一〇%の成長率が五年間続くというようなことは確言よういたしませんと言うて、私は否定的な意味でそれを発言したのであります。そこで大蔵大臣にも、君はああいうことを言うけれども困るとあとで話をしたのでありますけれども、大蔵大臣も、気分的にそういうように言ったのだと言うて、私には軽くいなしておったのであります。  成長率にしても物価上昇率にしても、いませっかく経済企画庁でいろいろ材料を集めて、経済社会発展計画のやり直しというと語弊があるかもしれませんけれども、補正をやりかけております。この前のが昭和四十年度の最も不景気なときの数字をもとにして立てた計画でありますからして、今日までの実勢をもととした数字で発展計画の補正をいまやっておりますから、その上で成長率が一〇%になるならなるという見通しさえつけば、それは一〇%だと言いますし、あるいは八%であれば八%と言うて、政府の態度ははっきりするつもりであります。
  21. 阿部助哉

    阿部(助)委員 だから、その大臣決意は私認めないわけじゃありません。だけれども、国民に対してやはり内閣が決意を示すぐらいでなければ物価問題は解決しないのじゃないか。この提言の二ページにも「遺憾ながら、これらの努力はあまり効果をあげなかったといわなければならない。」こういっておるのです。そうすると、いままでの佐藤内閣は、物価安定に努力をしてきたのだけれども成果がないのだ、やるつもりでかかったのだけれどもやれないのだということになれば、もう物価問題に対しては佐藤内閣は無能力だ、こう国民は判定せざるを得ないのじゃないですか。それよりも、もっと決意を新たにして、大臣がおっしゃるような対策を立てないといかぬと私は思うのですが、残念ながら、努力をしてきた、精一ぱいやってきたのだ、だけれども上がるのだとなれば、佐藤内閣は物価問題を処理する能力なしということで、これはやめてもらわなければいかぬだろうし、しかし、決意政策にまだ不十分なところがあって、これからおやりになるのだというならば、その具体的なものをもう少し示してもらいたい。そういう点で、まず閣内の意思が不統一の感を与えるような、いま大臣おっしゃったように、福田さんにも佐藤さんにもその場で注意をしたという程度じゃ、私はどうも佐藤内閣の決意のほどを疑わざるを得ないと思うのです。そこを何とかもう少し本腰を入れてやるのだという点を、閣議で一ぺん意思統一する必要があるということを繰り返し私申し上げたいのですが、いかがですか。
  22. 菅野和太郎

    菅野国務大臣 そういう御懸念もおありかと思いまして、三月二十日に物価対策閣僚協議会を開きまして、そうしてそこで政府の態度を示したわけであります。それで政府があくまで来年度は五%でやるという態度を示せるし、政府がとっていく対策はこういう対策であるのだということも示せるし、また政府ばかりでなくて、各界、国民各層にも呼びかけなければならぬということで、その各層に呼びかけることはすでに始めておるのであります。これも漸次国民の各層に働きかけて、国民もともに協力してもらおうということでやるということをはっきりしたのでありますから、物価対策については、政府の態度というものは私はこれではっきりしておると思うのです。  そこで、大蔵大臣としてはそのときの気分で一〇%ということを言ったということで、本人自身は軽い気持ちで発言した、こう思うのでありますが、しかし大蔵大臣ですからして、世間では軽く扱わない。そういう点において、われわれもその点を非常に遺憾に思っておるのであります。そういう意味のことを先般大蔵大臣にも私は申し上げたのであります。成長率を一〇%ということは言わぬようにしてほしいということは、総理にも大蔵大臣にも私から申し上げておるのであります。近ごろは言わないだろうと思っておるのですが……。
  23. 阿部助哉

    阿部(助)委員 これは水かけ論になるのでしょうけれども、一〇%の成長率といま言わないようにしておるそうでありますが、ということになると、これは安定成長なんという段階でないのではないか。大体いま世界じゅうで一〇%の成長率をやっておる国はないのではないですか。佐藤内閣は池田内閣の高度成長政策を批判して、安定成長ということで発足をされた、国民もそう思っておる。それをとにかく一〇%、これを高度成長というか、これをすら安定成長というかは、それは解釈のしようはいろいろあるかもしれません。それは理屈をこねれば幾らでもあるかもしれませんが、一般常識論からいえばこれは明らかに高度成長です。そうすれば、佐藤内閣は国民に対する公約を踏みにじってしまったことになると思う。やはり口ではいろいろうまいことをおっしゃるのだけれども、私はこの辺に何か国民が信用しなくなるという風潮があるのではないかと思うのです。その問題は私は非常に不満ですけれども、質問しませんで、次に移りたいと思うのです。  この提言は、いままでずっといろいろなされてきました。大体物価上昇の主力は構造政策にあるのだという形で、いままで主力はそこにあったと思うのです。ところが最近は財政金融ということを何がしか述べておられる。そこで先ほど大臣武藤委員質問に対して財政金融の面をお話しなすった。私は当然だと思う。ところでその財政金融お話金利ドイツでは上げたとか、公共事業繰り延べであるとかいうお話がありましたが、金融政策でどの程度物価に影響しておるのか。そういう検討をしておるのかおらないのか。おるとするならばどういう資料で、どういう項目と項目を突き合わせてやっておるのかというものを、私たちも国民に対する責任としてはやはり勉強したいと思う。それをひとつ出してもらいたいのですが、いかがですか。
  24. 菅野和太郎

    菅野国務大臣 いまアメリカ西ドイツ対策を講じておりますが、その対策の効果があらわれるのは下期だと私は思うのです。すぐにはそうあらわれてこないと思います。それがどのようにあらわれてくるかということは、下期になって初めてわれわれも知るわけであります。しかし、たとえば金利を上げるということは、それによって民間設備投資が少し軽減されるというようなことになる。したがって物資の需要が減るということで、物価が下がるということは一応理論的には考えられるところです。そういう意味で、総需要を減らすという意味金利引き上げをやるし、財政の公共投資繰り延べをやるということをやったと思うのです。一応それによって物価に影響を与えるということは考えられますけれども、具体的にどれがどういうように響いたかということは下期になって判定される、こう考えておる次第であります。
  25. 八塚陽介

    ○八塚政府委員 資料のことでございますが、提言にございますように、従来の金融政策、特に通貨量の問題につきましては、やはり従来までは国際収支というものを頭に置いて考え金融政策が行なわれておる。特に通貨量につきましては、大体成長に見合って差しつかえのない通貨をいわば供給していくということで、積極的に総需要というようなものを頭に置いての政策はなかったというふうに提言は判断いたしております。私どもも大体そういうことであろうというふうに存じております。従来とも通貨量が多過ぎるのじゃないか云々という問題がよく提起されたわけでございますが、通貨量が特別に多くなっておるというわけではない。たとえばマーシャルの統計等の数字を申し上げましてそういうお答えをしてまいったわけでございますから、そういう意味では、従来は先生のおっしゃるような形で検討がなされておったということはできない。そこで提言は、今後は国際収支の問題だけではなくて、総需要という観点から金融政策というものを考えるべきではないかというところまでいっております。むしろ金融政策と総需要あるいは物価との関係は、この提言の御趣旨は、この次の重要な課題であるというふうに、問題をあとへ指摘されておるという範疇に入っておると思います。したがいまして、いま先生のお話にありましたようなそういう形での資料、検討してまいった資料というのは、正直に申し上げまして、従来なかったと申し上げざるを得ないと思います。
  26. 阿部助哉

    阿部(助)委員 通貨量は、日銀帳じりを見て、それほど増加しておらないとおっしゃるのはそのとおりであります。だけれども、預金通貨という面からいきますと、これは五、六年のうちに、私はちょっと資料をいま持ってきておりませんけれども、非常に大きな伸び率を示しておる。この問題は、やはりさっき武藤委員質問された消費者信用という問題も私はからんでこようと思うのです。こういう問題で、いまたとえば自動車だけ見ましても、これの金融が大体どれぐらいになっておるという見当をつけておられるのですか。私あまりこまかい数字のことをここで、私も向こうで持っておるのですけれども、申し上げませんけれども、これはばく大なんですよね。そういう点で、金融面からのある程度の手を打たなければ物価対策にならないのじゃないか。先ほど局長のお話から見ましても、国際収支という観点からだけ見てきた。もう一つは、やはり高度成長政策という点だけで金融とかいろいろなものがとられてきたところに、私は、そういう点で物価政策というのは二の次か三の次で、成長政策が佐藤内閣の頭の中でほとんど大半を占めておって、物価はつけ足しで、国民向けや選挙向けには物価に努力するということをおっしゃるけれども、実際の政策の大当は成長政策そのもの、国際収支の問題という形で来たという点は、これは争えない事実じゃないか、こう思うのですが、大臣否定されるかもわからぬけれども、いかがですか。
  27. 菅野和太郎

    菅野国務大臣 高度成長ということばが当てけまるかどうかは知りませんが、佐藤内閣になってから予想以上の成長をしたことは事実です。その点において、われわれいろいろ再検討しなければならない問題が多々あると思っておりますが、しかし池田内閣の成長率から見ると、佐藤内閣になってからの成長率のほうが低いのでありまして、したがいまして、その点からいうと、やはり安定ということはある意味においてはいわれるのじゃないか、こう思うのであります。  それから、物価問題を少し軽視しておるではないかというおことばでありますが、これはお互いわれわれ自身考えなければならぬことは、終戦後、全く物のない時代であったので、これはもう当時の国民はみな血眼になって物を求めておった時代であった。そこで物をつくらなければならぬということで、米の増産から織物の増産、石炭の増産ということでやったので、生産第一主義をとってきたことは事実です。それがために日本の経済というものは伸びてきたと思うのであります。その空気はまだ残っております、私から言うと。  したがって、私は十年前経済企画庁長官になったときに、もう生産政策より消費者政策に変えなければいかぬということを提言したのでありまして、もう物は大体十分だ、したがって、今後はそのつくられた物がいかに消費されるかということを考えての経済政策をとるべきであるということを、十年前に提言したのでありますが、まあおかげで消費者行政とか消費者保護の問題がやかましくなってきたので、同時に物価という問題もやかましくなってきたと思うのであります。でありますからして、われわれの頭の中にやはり物をより多くつくるという考え方が残っておるということは、これは否定できないと思うのであります。  そういう意味で、私は今度も大臣になったときに第一番に言明しましたのは、いままでは量の経済であるけれども、質の経済に変えていかなければならぬということであります。質の経済というのは消費者本位という意味であります。でありますからして、今日皆さん方も物価というものについて非常な関心を持っておられる。いままでは、物をつくれ、物をつくれというような要望ばかりを、委員会でもずいぶん私たちは十年前に聞かされたものでありますが、いまでは、皆さん方も物価という問題を重要視されておるし、政府物価という問題を重視しておりますからして、したがいまして、物価の問題については、皆さん国民とともに、ひとつ本腰を入れて取り組んでいきたい、こう考えておる次第であります。
  28. 阿部助哉

    阿部(助)委員 大臣の気持ちは、それは了としないではないのですし、大臣の就任のときに、物価問題は蛮勇をもって何とかという非常な決意で就任された。それにしては私何か、まあ公共料金国鉄以外は上げないという点は認めますし、幾つかのあなたの決意は認めますけれども、何か財政面において、これは担当大臣がほかにおるだろうけれども、佐藤内閣として財政政策の面から物価問題に対処しようという具体的な姿勢がない。あるいは、金融政策も大事だと、こうおっしゃるけれども、これからおやりになるということであろうけれども、金融政策についてもまだ何も手が打たれてない。もうドイツやなんかは、日本よりも低い段階でもすでに——最近だいぶ上昇率が上がっておりますけれども、そういう問題で、もう先、先と真剣に取り組んでおるわけです。そういう点で、何か物価問題がどうも佐藤内閣全体として取り組みが悪いというところにいまの問題があるのじゃないか。たとえば大臣、この前に委員会お話がありましたけれども、生産性が向上した分を消費者にも分けるというようなことを要望したようでありますが、これも何もきめ手がないのですよ。  でありますから、インフレというのはある意味で大衆課税だ、こう私たちは考えるのでありますが、まさにそのとおり、労働者や何かは働いて名目賃金が上がるけれども、実際の生活はさっぱりよくなっていかない。そうして大企業のほうは、いろいろな政府の保護政策もありますけれども、もう七期連続の増配といいますか、高収益を連続あげて、これは福田大蔵大臣じゃないが、好況を謳歌しておられる。全くインフレというものは大衆収奪だ、私はこういわざるを得ないわけでして、これを佐藤内閣はほんとうはやる気がないのではないだろうか。資本家のほうに奉仕するためにはインフレやむを得ずというのが、私は佐藤内閣の心の底にやはりあるんではないだろうかと思う。それが、最近いろいろな新聞でいわれますように、先ほど言った一〇%成長、五%物価というものはもうやむを得ないとか、あるいは賃金も上がるんだから物価も上がるのはしようがないというような表現になったので、必ずしもこれは偶然ではないのではないか。大企業のいまの高収益というものを考えれば、物価を引き下げる方向政府が何らかの手をもう少し打てないはずはないし、これが打てないとすれば、先ほど申し上げたように、佐藤内閣はもう物価問題に対して無能力者であるという判定をせざるを得ないわけですが、その辺はいかがですか。
  29. 菅野和太郎

    菅野国務大臣 お話しのとおり、インフレになればこれは大衆課税です。それをアメリカのニクソンもおそれておるのでありまして、若い人、年寄り、貧乏人に打撃を与えるような物価騰貴は押えなければならぬということを、ニクソンも教書の中でいっております。物価が上がるということは、これはある意味では大衆課税であるし、ことに弱い人に対する重税になる、私はこう思うのであります。でありますから、すべての国民が安定した生活を送ってもらうためには、物価上昇を適切にするということは必要なことであって、その点は佐藤総理もやかましく言っておることでありまして、それを軽視しておるわけでは決してないと思うのであります。  そこで、もう少し思い切った態度をとれというお話でありますが、日本では、物価だけの問題を取り扱うのだったら、この前言ったとおり、デフレをやれば一ぺんに物価は下がります。これをやったのが昭和四十一年のドイツです。それがためにドイツは非常な不景気が来て、それでついに内閣も倒れなければならぬということで、シラー経済大臣が出てきて、新しい経済政策をとってデフレ政策をやめたのであります。でありますから、物価だけ考えればそれはできます。アメリカのニクソンの教書を見ましても、今度自分は物価対策を講ずるが、これによって成長率は下がるかもしれぬが、それはやむを得ないということをはっきり言っています。  ところが日本では、御存じのとおり、一方では経済的な安定成長は持続さすという目標を持っております。一方では物価安定という、この二つの目的を達成しようというところに、われわれが非常に苦心をしております。でありますから、思い切った対策を講ずれば一方においては成長がとまる、不景気が来る、失業者が出るというようなことで、それこそまた大きな経済問題になってきまずから、依然として経済は安定した成長を続けるし、そして物価は上げないようにというところで苦心をしておるというところを、ひとつ御了解してもらいたいと思うのであります。  また、最近オランダなどでは、物価はこれ以上上げてはいかぬという、緊急の物価凍結令を出しておるのであります。オランダなどは、御承知のとおり、大体国民総生産の三割は輸出にまつ国でありますから、したがって、物価を上げることが輸出に非常な影響をする、貿易に影響するというところから、最近思い切った物価対策を講じておるのであります。しかし、日本の経済はまだそこまで迫っておるとは私は考えていないし、一方では成長する能力を持っておるのでありますから、成長する能力は活用していく。そうして適当に安定した成長をしてもらう。物価も適正な物価でいこうというところに苦心があるのでありますから、その点はひとつ御了解をしてもらいたいと思うのであります。
  30. 阿部助哉

    阿部(助)委員 だからその点なんですよ。私、成長を全然ストップしろというようなことは申し上げていないけれども、いまのような一〇%成長だとか十何%成長なんというものが物価に影響する場合には、それは少し低めてもやむを得ないのではないか。いま成長と物価と両方解決するために苦労しておる。苦労しておるということはわかりますけれども、実際の効果が出てこなければ、物価が毎年五%ずつ上がるとすれば、これは国民は耐えられない。特に低所得の人たちあるいはまた恩給をとっておる人たち、そういうような人たちの手当てもしないで五%ずつ物価が上がっていくということになったら、国民生活が破壊されてくる。これをインフレといおうというまいと——五%がインフレの段階であるとかないとかいう議論をしてみたってしようがありませんけれども、これに載っておりますように、とにかく三十六年以来八年間にわたって年平均五・七%の物価上昇、こういうことでは国民生活はたまらない。苦労しておるということだけでは国民は納得しないのでありまして、物価安定のためにかくかくの政策を行ないます、これによって、ことしは五%でも、来年以降は物価上昇率を下げますという、具体的な政策の裏づけのある決意でなければ、苦労しておるとか、いま検討中だということでは国民は安心しないのではないか、こう思うので、蛮勇をもって当たるという異常な決意で就任された物価担当大臣である菅野大臣に、その点を期待してお伺いしておるわけです。いかがですか、具体策が一つも出てこないじゃないですか。
  31. 菅野和太郎

    菅野国務大臣 具体策は大体三月の二十日のなにで、こういうことでやります、公共料金を上げないとか米価の問題は据え置きとかいうようなことを出しておりますが、いままだようやく四月でありますから、そう効果があらわれてこないし、米価の問題でもいよいよ据え置きということが決定すれば、政府はほんとうに米価の問題について取り組むんだということを世間に御理解していただけると思うのであります。また交通関係公共料金も、この際は抑制するという態度をとっておりますから、その抑制さえすれば、なるほど政府はやったなというようにみな考えられるのであります。まだ四月で、年度の初めでありますから、その具体化された結果を見るというわけにはいかないと思います。それだけの決意を持っておるということをいま申し上げるよりほかにない。こういう案をもってやりますということを申し上げるよりほかに方法はないのでありまして、結果については少し長い目で見ていただかなければならぬ、こう存ずる次第であります。
  32. 阿部助哉

    阿部(助)委員 いろいろお伺いしたいけれども、時間のようでありますのでなにしますが、大臣、一番安直な手は、労働者の賃金を押える、ある意味で賃金統制をやる。それが、そのためであるかどうかは別にして、私たちが非常に危険を感ずるのは所得政策。そして片一方では、諸物価がこうやって上がる中で生産者の米価を押えていく、こういうことは安直です。だけれども、資本家のほうはこれだけ七期連続の増配をやっておる。高収益をあげておる。しかもなおかつ、これは担当大臣は大蔵大臣でありますが、依然として特別措置等によるところの減税策を継続しておられるというあたりに、何か物価というと米価、賃金という形にすりかえてこられるところに、なおさら私たちは不満を感ずるわけです。そういう点、物価問題全体として、これからもっと財政金融という面から御検討されるそうでありますが、その面からの物価対策を総力をあげてやっていただきたいという点を特にお願いするわけであります。  最後に、時間がありませんのでもうお伺いをするひまはありませんが、やはり政府の経済見通し、先ほど武藤委員のおっしゃったとおり、またこの提言にいっておるとおり、これは国民生活設計をする場合のやはりめどである。同時に政府政策のめどだと私は思う。そういう点で、この物価見通しは一応適当な目標数字だとかということは私は許されないと思う。やはりこれには、責任を持って、どうしても物価がより上がろうとするときには、政策の転換もある程度やむを得ないという決意でやれと書いてありますが、私もそのとおりであって、昨年でありましたか、宮澤さんは、四・八%は何か目標みたいなことをおっしゃったけれども、これでは私は国民に責任を持つ政府物価見通しではなかろう、こう思う。そういう点で、まあことしは一応前年度の引き継ぎで五%という数字を出されたわけでありますが、さらにこれを引き下げるように、これより上がるときにはやはり政策の転換もあえて断行するという決意でひとつ物価対策に臨んでいただきたい。  最後に、物価の責任者でありますし、当物価委員会にはもう少し時間のゆとりをもって出席することを大臣に要望して、質問を終わります。
  33. 帆足計

    帆足委員長 村山喜一君。
  34. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 私は、物価安定推進会議最終提言を見まして、社会党の物価政策の案とよく似た点がきわめて多いというふうに感じました。もちろんわれわれは、公共料金値上げ等については党として認めておりませんが、まあこの提言を見てまいりまして、これを完全に政府がやれば相当な効果があるだろうと私も思うのであります。したがいまして、菅野長官は、この物価安定推進会議最終提言をどのように受けとめて、それをどういうふうに実行に移そうとお考えになっているのか、この点が一番肝要なことだと私は思うのでございます。そこで、長官がこれからこれを受けとめて、閣議なりあるいは物価対策閣僚協議会あたりで努力を願わなければならないわけですが、どういうような方向に今後やろうというふうに考えていらっしゃるのか、その点を初めに伺いたい。
  35. 菅野和太郎

    菅野国務大臣 先ほど申し上げましたとおり、この提言については、私は全般的に賛意を表しておるものです。この提言をいかに実現するかということのお尋ねと思いますが、この提言のうちで、もうすで実現、実行しておるものもあるのであります。まだ実行してないものもあります。一部実行しておるものもあります。でありますからして、実行してないものについては、今後可能な範囲内において漸次実行に移すということを、これは中山さんに対しても私はお約束しておるのであります。  そこで、先ほどもちょっとお話しがありました、今後の日本物価対策についてはもう一つ、一歩進んだ物価対策が必要でないかということの中山会長の御意見もありましたので、したがいまして、今度は改組して、新たに会議を進めてもらいたいと思っておるのであります。そこでどういうような提言があるか知りませんが、その提言は、せっかく多くの人々の英知を集めてでき上がる提言でありますから、それは私のほうでもそのとおり実行いたしますということをお約束しておりますからして、したがいまして、いままでの提言で実現してない問題については、もうできるだけわれわれも再検討して、そしてこれを物価対策閣僚協議会にかけて、そしてその実現をはかるつもりで、いまいろいろ準備をいたしておる次第でございます。
  36. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 そこで、実施の運びになった事例、それから実施がまだされていない事項、そういうようなものがここに並べられまして、そして今後の物価安定対策の基本的な方向、これが基本条項として出されておる。そこで最終的には、六項目の基本対策といいますか、基本方向を、今後やってもらわなければならないことだといって示されておるのですが、これを受けとめて、事務局段階でこの提言に基づいて、今度はどのようなふうに行政の分野の中でこれを推進していくべきであろうかということを、やはり検討されておると思うのです。そうでなければ、まことにりっぱな提言をしてもらいましたということでは、これは何のための安定推進会議か、わけがわかりません。行政のベースでいま実施していないものについては、これから閣議あたりに持ち出してやるのだという大臣の話でございました。私が国民生活局長にお尋ねいたしたいのは、今後の物価安定対策基本的方向について提言がされておりますが、これをどういうふうに受けとめ、やろうとしておられるのか。行政段階であなた方が検討されたものをひとつお示しを願いたい
  37. 八塚陽介

    ○八塚政府委員 十六日にこの提言ができたわけでございますが、いずれ来月の上旬にこれが総会にはかられる段取りになっております。その際は、総理大臣はじめ関係大臣が御出席になって、あらためて直接この提言の趣旨について推進会議からの話を聞かれるということになっております。  御承知のように、物価問題は、この提言を読みましても、いわば関係各省それぞれの立場でかなり大きな宿題を負わされております。したがいまして、私ども物価担当の企画庁の国民生活局といたしましては、従来とも物価担当会議であるとか、あるいは特定の問題については、その問題を特に関係の深い各省なり各機関と御相談して推進してまいっておりますが、今後はやはり各省、特に物価担当会議等を通じまして、そうしてそれぞれのところに対する宿題の実現方を働きかけていくということに相なるわけであります。もちろんその際に、ただこういう提言があるからしかるべくお願いしたいということでは、この提言にありますように、それぞれ関係各省は、物価の面もございますが、独自の政策目的で行政をやっておられますから、単なるお願いなり単なる話ではあまり進まない。したがいまして、私どものほうとしましては、もちろん関係各省の協力を得ていろいろな資料等を集めつつも、私どものほうではそれなりに勉強いたしまして、いわば立ち入って、そういう問題の実現方について今後促進していくということにいたさなければならないと思っております。従来ともそういうつもりでやってまいったと思っておりますが、なおこういう組織的な提言が出ました暁、今後さらにそういう点で努力をしてまいりたいと思います。  それに関連いたしまして、若干この提言の中にもございますが、現在のいわば経済企画庁の役人だけのスタッフでは、少しその点について立ち入った勉強なりあるいは推進のための力としては弱い点がある。したがって、もう少し専門家のスタッフの力をかりたらどうかというようなこともいっておられます。私どもも、かねがねそういう点についてはその感なきにしもあらずというふうに思っておりましたので、そういう点については若い少壮の学者、専門家等のお力添えを得て充実して、その力をかりていくというようなことも考えておる次第であります。
  38. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 考えておいでの方向はそれでいいと思いますが、そこで、いまあなた方が国民生活局の中でこの基本項目の中のものを分析されて、これについては自分たちで解決ができる、これはどこの省が中心になって検討してもらわなくちゃいかぬというようなことで、内々これについての事務当局のまとめというものがなければならないと思うのですが、そういうようなところまであなたを中心にして検討が進められておるわけですか。それともまだ、来月の上旬にその全体会議が開かれてから取り組むという姿勢でありますか、その点はどうですか。
  39. 八塚陽介

    ○八塚政府委員 お察しのとおり、この提言自体は、推進会議の非常に独自性のあるイニシアチブでもってできたわけでございますが、実際問題としては、関係各省は、この提言をまとめます過程でそれぞれ推進会議のヒヤリングを受けるるいはその批判を浴びて、そうしてそれなりにまた関係各省は意見を言ったり、将来の対応策についての考え方をそれぞれの過程で固めつつあるという実際の過程があるわけであります。したがいまして、私、先ほど総会があってから初めて問題意識が政府部門でできるかのごとくあるいは申し上げたかと思いますが、それはそういうことではございません。そういう意味におきまして、この問題の一つ一つはそれぞれ相当大きな問題を含んでおります。たとえば「公共料金の決定基準の明確化」の中の(ロ)にいたしましても、従来とも道路と鉄道の資金配分がどうであれば合理的であるか、そういう問題を解決しなければ一方的にその諸機関のコストなり料金が上がるだけであるから、そういう問題をさらに詰めなければいかぬのじゃないかというようなことは、従来も大きな問題であったわけであります。それには、たとえば一昨年の東京都バスの値上げ等を契機にいたしまして、その後企画庁あるいは運輸省、建設省等ともお話し合いをいたしまして、現在ちょっと私、目を離しておりますけれども、総理府の陸上交通安全調査室ではそういう問題を含めて検討してもらっている。そういう場合には、各省からも調査官を派遣して、そういう形で作業に参画し、内々の推進力になっているというようなことで、まあそれぞれたくさんございますが、アプローチのしかたはまたそれぞれの問題に対応しております。一つ一つ具体的に、比較的それに最も責任のある省に対してその推進方を連絡し、お願いをいたしておるということでございます。
  40. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 大臣、いまちょっと私局長から承りまして、これからまさにやろうということなんですね。ここに提言として示されたことはきわめて多くの中身を含んで、これを解決したら物価問題はほとんど大部分解消できるような内容だと私は思うのです。  そこで、これは今後努力してもらわなければならない点なんですが、文章だけはでき上がっても、実際に実行に移す段階が遅々として進まない。そこに政府物価に対する熱意がないということがいわれ、国民から見てもほんとうにくつの上からかゆいところをかいているような感じで、その間に物価はどんどん上昇をしていく、やりきれない思いがしているのが国民のほうだと思う。  そこで、私は一つの具体的な問題について、大臣がどの程度これが認識をされ、どの程度実行に移される意思があるのか、物価担当国務大臣としてどの程度行動に移されるつもりなのか、ちょっとお尋ねしてみたいと思うのであります。  それは、先ほど以来、総需要を抑制すべきだとおっしゃる。物価問題が構造論から始まりまして、そして総需要の抑制の議論に発展をしてまいりましたことは歴史的な事実でございます。そこでわれわれも、この総需要の抑制という議論が提起されましたので、それに対するいろいろな角度からの分析もいたしてまいりました。まあ、財政、金融、税制を通ずる需要抑制という問題が、この手段方法として考えられているのだろうと思うのです。そこで、一体総需要の抑制という中身をどういうふうに大臣はお考えになり、政策当局はそれをどういうふうにとらえてやろうとしておるのか。総需要抑制イコール金融政策、イコール税制政策、あるいは財政政策というわけにはいかないだろうと思う。一体総需要の中身をどういうふうにお考えになって、いまの国民の貯蓄性向とかあるいは消費性向の問題等をどういうふうに分析をされてこの総需要抑制という柱をお立てになっておるのか、その点を明らかにしていただきたいと思います。なお、こまかい点にわたるようであれば、事務当局のほうの説明もあわせて願いたい。
  41. 帆足計

    帆足委員長 武藤委員阿部委員並びに村山委員からたびたび、こもごも質問がございましたから、具体的に明確にお答えのほどを委員長は希望いたします。
  42. 菅野和太郎

    菅野国務大臣 総需要を押えるという方法については、これは国民各人に対する対策と、それから政府のとるべき対策とあると思うのです。そこで、たとえばアメリカは増税をとっておりますが、増税はそれだけ国民の支出能力を減らしますから、したがって国民消費力は減るということで、全体の総需要は減るということになると思います。それから金融面でいえば、金利を高くすることは民間設備投資を押えるということになりますからして、したがってその方面の総需要を減らす、物資の需要、生産財に対する需要を減らすということが考えられると思うのでございまして、これは一つ一つの問題でそれぞれ考えられると思います。しかし私は、アメリカのとっておる対策金融の問題にしても増税の問題にしても、日本ではこれはとるべきでないという考え方をしておるのであります。アメリカがとっておるから日本がそのとおりしたらいいという考えはしておりません。  そこで公共料金の問題でも、これからの問題でなくして、公共料金の問題は現にやっておる問題でありまして、これはたびたび閣議を開いて、国鉄料金値上げ問題についてはずいぶん討議した問題であります。私たちは初めから、国鉄料金は上げてはならぬという意見であったのでありましたが、各方面からいろいろの提言があるし、また国鉄の実情を知ることによって、国鉄を何とかしてあげなければならぬという考え方をしておるのでございます。そこでたとえば、私たちのほうでは、公共料金値上げの前に体質改善をやるべきだということをきつく要望したのです。そこでいま国鉄として、初めて体質改善ということについては具体的に経済企画庁のほうへも相談に来ております。いままでにない真剣さをもって相談に来ておりますから、したがってこの体質改善というようなことも実現するんじゃないか。体質改善しなければ公共料金値上げしてはいかぬというのがわれわれの立場であります。それから、それと同時に財政的な援助をすべきだということは、これは皆さん御承知のとおり、初めて大蔵省が財政的な援助をするということも実行してもらったのであります。  それから、便乗値上げは許さぬということ、交通関係公共料金の便乗値上げは許さぬ、極力抑制するということでやっております。しかしこれも、タクシー業者にしても各都市からもいろいろいうてきておりますけれども、便乗値上げはいかぬ、まずあなた自身体質改善をやりなさい。タクシー料金の問題についても、料金自体についてももう少し研究すべき点があるんじゃないか、また会社の経営自体についてももう少し考える余地があるんじゃないかということを私のほうでは申しておるのでありまして、そういうことで、まず体質改善をこの機会にやってもらわなければいかぬと思うのです。これをいままでは、赤字だからということで政府へ申請するとすぐ料金を上げてもらっておったが、今後こういう安易な考え方でやるべきじゃないので、赤字だということで単にそれをそのままうのみにはできない。実際それが赤字であるかどうかということについてはわれわれのほうも十分調査して、なお合理化ができるのであれば料金を上げないようにして、合理化をやってもらいたいということを強く要望しておりますから、したがって、各会社ともその点については反省してもらっておると思うのであります。  それから、具体的なことは、いろいろ推進会議で決議されたことでいままでにやっておることもあります。そういうことで、われわれとしては相当思い切った態度をとって、この推進会議提言どおり実行もしておるし、また実行したいという考えでやっております。たとえば米の問題でもそうですが、生産者米価、消費者米価は抑制するということ、これについては相当反対があるし、また今後も反対があると思いますが、これは敢然として反対を押し切るつもりでおります。そういうことで、経済企画庁としてはできるだけのことをやり、また同時に、最近物価という問題については各省ともにみんな真剣になって考えてきてくれております。各省とも、物価の問題については経済企画庁のほうにそれぞれいろいろ相談をして、いろいろ対策考えてくれておる、こう思うのでありまして、その点はいままでとは空気が非常に変わってきておる、こう私は考えておる次第であります。
  43. 八塚陽介

    ○八塚政府委員 いま大臣お話しになりましたのに特につけ加えることはございませんが、総需要を抑制するという場合に、大臣お話しになりましたように、まずやれることは、政府のいわゆる需要というものを、国民経済全体の中でどの程度の割合で、どの程度の伸び率でもっていくかという観点が一つあろうかと思います。これにつきましては、四十四年度予算はそれなりに配慮がされた数字になっておるわけであります。  それから、民間のいわば経済活動と申しますか、そういう関係につきましては、それの抑制と申しますかコントロールは、金融政策金利なり何なりでやってまいる。  最も問題になりますのは、個人の消費支出をどういうような形でどう考えていくかということでございますが、御承知のように、日本消費支出自体は、総需要の中で国際的に見て必ずしも高いというわけではございません。それから、現在の生活水準そのものも必ずしも国際的に見て高くない。したがいまして、個人の消費支出を、いわば何らかの法的なあるいは政策的な形でいま直ちに抑制しなければならぬかどうかはいろいろ問題があろうと思います。しかし、先ほど大臣お話しになりましたように、それならば現在のわれわれ国民生活態度というものが非常に堅実であるかということになると、やはり問題があろうかと思います。これはしかし、先ほど先生お話しになりました消費性向と申しますか、かなり長いトレンドの問題でもございますし、あるいは構造の問題でございますから、これについてはさしあたってどうこうという、いわば政策的な手段はあまりないのではないか。  たまたま先ほど消費者金融の問題が出ました。消費者金融の問題につきましては、昨年の消費者保護会議で先生のお話もございまして、消費者金融というものをどう考えていくかということは検討いたしておりますけれども、いずれにしましても、まだ現在の段階ではウエートは比較的小さいわけでございます。これをもってすぐ全体の消費性向のいわばコントロールのてこにするというのは、若干時間的に早かろうというふうに考えております。
  44. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 お二人の話を総合いたしまして、総需要の抑制という問題が概念的に頭の中に入ります。この問題は、物価上昇というものの中に総需要の急激な拡大がある。それは、供給の弾力性を上回る大幅な需要の増加がある。そこから、需要面から物価上昇というものが生まれてくるのだという理論が、この総需要を抑制しなければならないという理論構成であります。そこで、それにはいま長官が言われたように、政府がみずからなさなければならない分野と、国民なりあるいは民間に呼びかけてそういうような問題を達成する手法があると思う。  その中で、いま国民生活局長から説明がありましたからそれでいいのですが、どうも今日はあまりにも消費拡大が行なわれ過ぎている、個人消費の増大があるから物価上昇をするのだ、こういうようなとらえ方があまりにも多いのですよ。で、総需要の中における個人消費支出の占める割合というものは、これは世界の各国に比べてまだ低過ぎる。こういうような段階の中で総需要を押える、国民のいわゆる消費生活のその需要面を抑制をする、こちらのほうをとるべきなんだという理論構成を立てますと、いわゆる浮動購買力というものを吸収する。これは昔からの経済理論の中にございました。浮動購買力を吸収するためには増税をやったほうがいい、あるいは公共料金値上げをやったほうがいい、こういうような理論構成が行なわれてきたのですよ。私は過去の帝国議会時代国鉄運賃値上げ提案理由の説明を見てみたら、そういうのがありますよ。昭和十三年、シナ事変が勃発をいたしまして、料金改定を二十年ぶりにするときの提案理由の説明の中にもそういうような事項が入っている。ですから、この総需要抑制という問題から発展をさしてまいりますと、今度の国鉄運賃値上げというものも、放置しておったらいわゆる増税という形はとれない、だから公共料金値上げ負担という形で吸収をしたら、それだけ購買力が減ってくるんだから値上げはいいじゃないかという理論構成も成り立たぬでもないのです。ですから、この総需要抑制という問題が出るたびに、私は、一体ほんとに政府の腹は何を考えているのだろう、民間消費の節度を呼びかけておるのだろうか、それともそういうような形において民間のいわゆる企業家の諸君が設備投資をできるだけ抑制していくようにすることをねらっているのだろうか、いろいろな角度から分析をしないとまただまされるぞ、こういうような気持ちになるのです。  そこで、経済企画庁長官は経済学博士でございますから、最近の景気の動向というものについては非常に鋭敏に受けとめていらっしゃるだろうと思うのでございますが、どうも四十四年度の新年度のほうに入りましてから、四月ないし六月の第一四半期分を見てみますと、日銀券が千五百億くらいの増発になるそうです。それから財政収支じりを見てみまする場合に三千三百億円ぐらいの払い超になります。そうなると現金の需給のゆるみが二千億以上だろう、こういうふうに見られておるわけです。そうして、企業資金需要というものは特に第二四半期にかけて非常に多く出てくるのではなかろうかといわれております。すでに都市銀行が日銀のほうと協議をしているといううわさによれば、第一四半期の四月から六月にかけましての都銀の日銀に対する資金需要のいわゆる要望額というものは、昨年同期の二倍以上の貸し出しを認めてくれ、こういうようなことをいっておるようであります。その足取りを見てみましても、四十三年の十月から十二月の分ですが、貸し出し増が二九%、ふえているのです。一月から三月にかけましては昨年同期に比べまして五三%ふえている。非常に資金需要が旺盛でございます。日銀は資金のポジション指導をやっているのですが、しかしながらいまの勢いでまいりますと、これはたいへんな民間の設備投資その他昨年投資をした分に対するツケが回ってきて支払いの時期に直面をしたので、それだけの資金需要があるともいえるわけですが、そういうような関係で非常に金融に対する需要が増大をしつつあるということがいえるのでございますが、こういうような問題について、これを放置しておきますと、まさに信用インフレが起こってくる可能性が強まってくる。  私はそういうような立場から、この際、やはり物価担当大臣として——これは大蔵省が責任を持つのが第一義的でありましょうけれども、このような数字が出されてまいりました暁においては、あなたがやはり、もう少し抑制をする方向金融政策を進めるべきじゃないかということを述べていただかなければならないのではないか、こういうふうに私は思うのです。その具体的な数字を私がいま申し上げましたが、その総需要対策の強化といっても、どちらの方向を向いて強化をするかということをよく国民にわかるように、あなたの感じとともに政策方向をこの際明らかにしていただいたら幸いかと思うわけです。
  45. 菅野和太郎

    菅野国務大臣 いろいろ最近の金融財政、経済事情のことについてお話がありまして、お話しのとおりの情勢になっております。そこで、私どもの見通しでは、大体四十四年度上半期は依然として経済は好況を続けるという見通しであります。下期になると多少鈍化するという見通しをしたのであります。これにつきましてはこの前申し上げましたが、二月のOECDにおきましても各国ともにそういう見通しをしておりました。下期になると国際情勢に関連して景気が鈍化するということを、各国ともに各大臣がそれを発言しておったのであります。  それでありますからして、いま、なるほど仰せのとおり、民間資金需要も盛んでありますし、輸出も非常に盛んでありますし、景気は非常な好景気を呈しておりますが、しかしそれがこのままずっと四十四年度続くというようにわれわれは考えていない。したがいまして、経済成長率も四十三年度に比べれば、実質において四十四年度は九・八%というようにして、一〇%以内にわれわれ計算しております。でありますから、現在の状況がそのまま一年じゅう続くというようにわれわれは想像しておりませんから、したがって、いまのところ直ちに手を打たなければならぬということは考えておりません。  ただ一つ私が心配するのは、いま世界各国が高金利政策をとってきておる、これが日本に少なからず影響を及ぼしてくると思うのであって、これに対する対策をどう講ずべきかということは、至急に政府として考えなければならぬ問題である。大蔵省ももちろん考えておることと存じますが、われわれもこの問題を考えなければならぬということを痛切に感じておるのであります。しかし、この高金利時代というのが一時的であるか恒久的であるか、そこはまだ問題だと思いますが、高金利時代ということが一時的な問題であれば問題ありませんけれども、これが恒久的な問題であるということであれば、これは日本経済自体についてもいろいろの点において私は反省しなければならぬ、検討しなければならぬ、こう考えておるのであります。  いまの経済の状態は、先ほど申し上げたとおり物価対策を各国ともにとってきたということは、やはりこの経済情勢というものが普通の情勢でないという見通しのもとで、各国ともに物価対策の思い切った政策をとってきておるのでありますからして、したがって日本だけが安閑としておるわけにいかないということを考えております。私から見ると、日本ドイツの貨幣価値が上がってきたということになるのでありますが、しかしそれをもって、外貨もふえたし、日本の円もますます強くなってきたというようなことをもって、現在の状況に甘んじてはいけないということ、この問題については、われわれはもう少し勉強しなければならぬというようには痛切に感じておる次第であります。
  46. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 もう時間がありませんのであと一問でやめますが、最近世界的に高金利が進んでおる中でインフレの懸念が強まってきた。そこで、日本の場合も一番これが鋭敏にあらわれるのは証券市場です。その証券市場では、大臣御承知のように、証券会社の自己売買率が三六%にのぼっておるのです。そうして信用取引と現金取引の比率を求めてみると、信用取引のほうが高いのです。五〇%をこえておるわけですね。そういうような操作によって株価が上がっておるわけです。特に十二銘柄が、ねらいをつけられた株価が上がっているというような形の中で、インフレ期待への株価形成がなされておる。私たちこういうようなのを見るにつけまして、やはり総需要の抑制というような問題を考える場合には、それらの問題にメスを入れていかなければ物価はなかなか抑制されない。物価鎮静のムードを大臣がつくろうとされるのには、こういうようなものにこそ目を向けてもらいたいと私は思う。  それから最後に、予算委員会を通じて、五%の達成というのは非常にむずかしいのだと、先ほども阿部君の質問に対しまして、武藤君の質問に対しまして、またお答えになりました。努力をしていかなければなかなか達成困難なんだ、放置しておったらもっとこれ以上に上がる。まさにそのとおりだろうと思うのですが、しかし、これは政策効果を含んだ物価見通しというものを立てなさいということを提言されているわけですね。だから、五%というものは、その政策的な効果を含んだ物価見通しのラインではないのではないか。もっとこうやれば五%以下に下げられる、たとえば四・五%まで、よしこれをやって今度は下げて見せよう、しかしことしはそこまではいかないけれども、来年になったらここまでは下げられるのだ——幸いにして最近は卸売り物価はそう上昇をしないという傾向にございます。その中で生鮮食料品も値上がりがだいぶおさまってきておる。そういうような立場から見ていくならば、消費者物価値上げ率も押えられるところまで、政策効果を含めた、物価上昇率はここでとめるのだという政策目標が提示できるのではないだろうか、私はこういうようなふうに考えるのですが、それはできませんかどうか、その点だけ最後にお伺いをして質問を終わりたいと思います。
  47. 菅野和太郎

    菅野国務大臣 株価の値上がりについては、先ほど御指摘のとおり自己売買が非常に盛んです。これはやはり思惑です。これは、日本のほかが高金利になってきた、ということは、言うてみればその国の経済に対する不安感、ところが日本ばかりは低金利でおるということで、したがって日本の経済がいいということで、株価が高くなった一つの原因は、外資が株を買うています。そういうことで、それに関連をして思惑師が株を買う、証券会社自身が売買する、いわゆる自己売買、このことについてはすでに取引所の理事長が警告を先般発しておる。自己売買してはいかぬということを発しておるのであります。私は、思惑師によって動かされる株価というものについては、これはやはり厳重に大蔵省で監督してもらわなければならない、こう存じておる次第であります。しかし、私が先ほど、それがまたやがてそういう株価にも影響を及ぼすと言うたのは、外国のいわゆる流動資金というものが株式に流れておりますが、最近はその外国の流動資金日本には入ってこなくなった、ということは日本金利が安い、そうなってきますと、やはり民間設備投資もそれによって減るし、また株式に対する投資も減るということになってきやせぬかということが考えられるのでありまして、この株価は、私はこれがいつまでも続いて上がるべきものではないという考えをいたしております。  それから五%の問題については、お説どおりわれわれにとっては非常に好条件になってきたことは事実です。しかしこれも、野菜やくだものが安くなったのは暖冬異変ということで、これがいわゆる大原因ですからして、われわれの力によって消費者物価が五%以内になったということは私はよう言いません。これは天候のおかげだということを言っておるわけであります。しかしこれで五%以内に定着せしめたい、その政策を今後とるべきだ、こう考えておるのであります。とかく野菜類は、値段が安いと翌年は上がる、上がるとまた翌年は下がるというのがいままでの野菜類の価格変動ですが、これはやはり農民に対して、もう少し農林省の指導よろしきを得てもらいたいと思うのでありまして、そうすることによって野菜類が安定した価格でいくというようにしてもらえば、五%という数字が実現できるのではないか。それから問題はやはり米価です。米価がやはり日本物価を動かしております。いままで米価の変動ごとに物価が動いておりますから、したがって、米価はやはりあくまで抑制するということを堅持しなければならぬ、こう思っておるのであります。まあそんなことで五%ということは……。  しかしその他の物価については、最近卸売り物価はおさまったというが、最近またちょっと上がってきた。これはたとえば鉄鋼が、いま日本の鉄がどんどんヨーロッパへ売れております。南米へも売れております。最近においてはカナダへも売れておる。しかもそれが内地相場よりも高く売れておる。いままではそんなことはない。いままでは外地へ売るほうが安くて内地のほうが高かったのですが、日本の内地相場よりも外相場のほうが高く売れておる、ということは、それだけ日本の鉄が上質であるということと、それから世界的に見て価格が安いというところで非常に鉄が売れておる。それがために鉄の値段が少し上がっております。だからして、そういうことで五%ということはよほど困難であるけれども、これはひとつ政府国民皆さん方も、ともに御協力していただいて、そして国民生活が安定するように全力を注ぎたい、こう思っておる次第であります。
  48. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 終わります。
  49. 帆足計

    帆足委員長 和田耕作君。
  50. 和田耕作

    ○和田委員 大臣がここにおられる時間は何時までですか。
  51. 帆足計

    帆足委員長 一時ちょうどだそうで、ピアソン・カナダ前首相にお目にかかるそうです。
  52. 和田耕作

    ○和田委員 その時間は厳守しなければならぬわけでしょうね。
  53. 帆足計

    帆足委員長 外交関係だから——いかがですか、多少時間の余裕がございますか。
  54. 菅野和太郎

    菅野国務大臣 時間がやかましいので……。
  55. 和田耕作

    ○和田委員 私に与えられた時間は半時間ということでしたけれども、あとに有島委員もおりますから、それでは十五分間くらいの時間しかないと思います。  先ほど大臣の答弁をお聞きしておりますと、つまり交通料金に例をとりますと、交通料金の問題は、料金あるいは運賃を上げる前に合理化をしなければならぬ、これをやりなさいというお話だったのですけれども、実はこの話が一番当てはまるのが国鉄そのものなんですね。これは詳しくくどくど申し上げませんけれども、国鉄こそ、運賃を上げるよりは国鉄合理化が先だということがいえる典型的な例なんです。これは大臣も非常にがんばったと思いますけれども、結局はああいうふうなことになった。今度のバスその他の料金の問題についても、運輸大臣のいろいろな言い分なんか考えましてもそういうふうなことがたいへん心配される。  こういうふうなことについても、私は大臣がやりやすくなるような方法は何かないだろうかという感じをいつも持っておるのですけれども、これは内閣として総理大臣が、この内閣は物価はこれ以上は絶対上げないのだというふうな一つのワクをきめる、そのような形で物価を抑制していく、安定させていくという方法が、一番効果がありはしないかというように思うのです。それはいま強調されております五%という線ですね。これがつまり、これ以上は絶対上げないのだという線であるというような、内閣の何かの形の強い声明とかそういうものはできないだろうか、こういうことを思うのですが、いかがですか。
  56. 菅野和太郎

    菅野国務大臣 それは、実は三月二十日の閣議了解の決定したことがその声明だと思うのです、五%で停止するということを声明しておるのでありますからして。そこで、もう少し強くやれというお気持ちかもしれませんが、いまの日本政治情勢のもとでそれだけ総理がやれるかどうか。オランダでは四月二十一日に物価の凍結令を出しました。これは緊急物価対策ということで凍結令を出しておりまして、すべての商品及びサービスの価格を三月十四日現在の水準で凍結するという緊急物価対策をとったのでありますが、そこまで日本の政情ではやれるものか。皆さん方も全部賛成しておられればそれはやれないことはないと思いますが、この点はいまの政情のもとでは、総理大臣といえどもそこまでの決意はできないのじゃないか、私はこう思っております。やはりその際は、国民がすべて納得して、国民の同意を得て物価対策をやるということで、強権を用いることはできるだけ避けたい、こう思っております。
  57. 和田耕作

    ○和田委員 これは強権という考え方ではないと思いますね。たとえば、物価五%というラインは、いまの日本の経済の状態から見てほんとに危険な線になる、それ以上になれば危険になるという線であるということは、経済学的な意味でいろんな角度から検討しても、そういうことは出ると思うのですね。物価安定推進会議の、十一月でしたか、あの提案にしても、五%をこしていく、つまり政府が、四・八%が五・四%になる、こういう声明をなすった。今年は五%だと言っていたけれども、ひょっとしたら六%になるかもしれないという空気がいろいろあった。このときに安定推進会議が一番関心を持ったのはこのことですね。したがって、五%をこして上がれば非常手段をとらなければならぬという示唆をあの提案で与えておると思うのです。これはやっぱり国民所得、個人の所得との関係からいっても、利子の関係からいっても、いろんな条件から五%以上こしちゃいけないということがわかると思うのですね。現在の経済的ないろいろな事情からいって、内閣が物価を安定さすと言うなら、五%以上は絶対上げません、これ以上上がっていけば、上がらないような非常手段をとります、たとえば、肉類が上がっていけば外国肉を輸入するというようなことも含めて、そういった意味の、はっきり公約という形でこの問題は声明をするだけの価値のある問題、またそういう義務がある問題だと思いますけれども、重ねてひとつ大臣の……。
  58. 菅野和太郎

    菅野国務大臣 いま物価が、たとえば肉の例を申されましたけれども、豚肉が上がれば豚肉を輸入するという政策は、この三月二十日の決定にも出ておる。そういう対策はちゃんと書いてある。が、しかし、もう少しそれをきつく発表せよという御意見のようですが、日本としては、私はこの際、国民のすべての同意の上でやるという今日の日本の国情でありますからして、やはりこれで国民に訴えていって、そうして皆さんの同意、国民の同意を得てやるという態度でいくべきである。しかし、私は、五%以上になれば、これは日本の経済にとってゆゆしい問題だ、こう考えておりますから、そこで私は、金融財政面から機動的な対策を講ずるかもしれぬということは暗に言うておるわけです。
  59. 和田耕作

    ○和田委員 もう一歩進めまして、物価担当する責任の大臣たる自分としては、五%をこすなれば職を賭してこれに抵抗するのだ、こういうふうな意思表明はできませんか。それをやるべきだと私は思うのですけれども。
  60. 菅野和太郎

    菅野国務大臣 そういうことを私が言うことがいいか悪いか、それは問題ですが、私はいままでたびたび申し上げておることで、私の決意はおわかりになってくださっておることと思っておるのでありまして、いまからそういうことを申し上げることは、かえって蛇足になるのじゃないかと思うのですけれども、私の決意は、物価に取り組んでやるということでやっております。私は物価の問題と万博の完成ということで、この二つの問題が私に与えられたすべてで、そうでなければ私は大臣なんかになりはしませんから、それで私の大臣としての役目を果たしたい、こう考えておる次第であります。
  61. 和田耕作

    ○和田委員 これ以上言うのは蛇足になるという大臣のおことばで、なみなみならぬ決意を持っておられるということは了承するわけでありますけれども、きょうの各三、四人の委員が全部この問題に集中しておるわけですね。日本物価政策というものについて、総理大臣も一生懸命言っておられるし、一生懸命やっておられることもよくわかるし、また、朝起きて夜寝るまで一生懸命考えておられるのはよくわかるけれども、おやりになっておるこれは全部たよりないですね。ということから、私どもこのごろ選挙区でいろいろ街頭演説もやるのですけれども、物価の問題はたいへん関心を持っている、いろんな世論調査に出てくるわけですから、この問題に触れましたら、何言っているんだという形が一ぺんに出てくるのですね。これはゆゆしい問題だと思うのです。つまり、いろいろ言っても、政府政治家も本気に考えていないのだというような感じが出てきているわけですから、これは私は、内閣としても、特にあなたは責任者なんですから、異常な決意を表明するということが最大の物価政策だという、そういう段階に来ておると思うのですね。ぜひともひとつお願いをしたいと思います。  それから、この提案の問題でもそうですけれども、たとえば牛乳の問題に触れておりますけれども、牛乳の問題についての農林省の行政指導をはずしなさいというのが提案の趣旨だったのですね、物懇のときの。これで行政指導をはずした。ところが、二通りの理由をあげて、消費者のこれに対する対抗力がなかったというふうなことで十分な効果があげられなかったということになっておりますね。こういうような問題も、私は、物懇の方々自身もこの問題についてはっきり煮詰めて考えているかどうかということが疑わしいのですよ。単に自由にすればいいのだというような形のものが強く出過ぎて、そう単純なものではないのだという面を過小評価しておるのじゃないかという感じがするのですよ。大臣、どういうふうにお考えですか、行政指導の問題を。
  62. 八塚陽介

    ○八塚政府委員 基本的な問題でございますから大臣にお答えいただくのが筋でございますが、その前にちょっと申し上げておかなければならないことは、今回の提言がこういう形でまとまりました過程では非常に議論のあったところでございます。いつも和田先生は、どうもああいう状況のままで自由競争というのは安易に過ぎるじゃないか、むしろ行政介入を責任をもってやるべきじゃないかという御議論であったと思うのです。私どものほうは、絶えずそういう、もう少し自由競争状況を整える方向でしばらく見守りたいということを言っておったわけでございますけれども、やはり相当な議論があったわけでございます。したがいまして、そういう過程を反映いたしましてどう評価をするかということについては、一面では、まず関心が高まって、対抗力について機運が醸成されたというメリットを認め、しかし、行政介入を撤廃したその具体的な状況は、どうもまだ消費面における消費者、あるいは小売り面における対抗力が十分育成されていなかったということで、いわばプラス、マイナス両面の評価をいたしておりまして、今後具体的にどうするかについては、さらに行政当局で検討して煮詰めて、態度を決定するという形までなっておるわけであります。  私どもも、そういう段階でございますので、和田先生のおことばに対しましては、従来は一応やはり従来の線でまいりたいということを言っておったわけでございますが、一応こういうプラス、マイナスの評価が出ておるので、あらためてさらに検討いたすべき段階であるということでございます。ただ、やはり行政は連続性がございますので、そう急に方向転換するということは、さしあたって私個人としては考えられないのじゃないかと思います。こういう状態、こういう分析をいたしておりますので、この分析の線にすなおに沿ってよく検討していきたいというふうに考えております。   〔委員長退席、武部委員長代理着席〕
  63. 和田耕作

    ○和田委員 私、この問題を重視しますのは、物価行政というものを政府がやります場合に、ポイントになる問題ですね。この政府物価行政という面から見れば、これについて安定推進会議がこういう評価をするということは、推進会議自体の一つの責任でもあると思うのです。こういう評価をこの段階でするということは、やはりこの問題は、もっと政府としても自主的に検討してみる必要がある問題だというふうな感じがするのです。  たとえば、今度の大型合併の問題でも、立場は違いますけれども、同じような問題があるわけですね。この提案でも、全体の基調はやはり自由競争というものをベースにした提案になっておりますけれども、いまの行政指導の問題では違った評価が一つ出てきている。しかし、自由競争というものを基本的に強く評価する目から見れば、大型合併という問題についてはもっと違った目があるべきだと私は思うのですね。その間の見方が断絶しているのです。大型合併は国際競争力その他の問題で推進しなければならない、しかし、経済の自由な競争条件は強化しなければならない、こういうふうな見方が、趣旨一貫しない形でこういう提案にも出ているんじゃないかという感じが私はしてならないのです。大型合併の問題はここに出ていないのですけれども、そういう問題を、物価政策のかなめにある長官としてどういうふうにお考えになっておられるかということなんです。
  64. 菅野和太郎

    菅野国務大臣 この問題は、大型合併のこと自体ですか。
  65. 和田耕作

    ○和田委員 ええ。これと、いまの競争条件を整備していく、強化していかなければならないというこの二つの考え方を……。
  66. 菅野和太郎

    菅野国務大臣 競争条件を整備するということは、これは物価安定の必要な条件だと私は考えておりますし、また、それが資本主義の、自由主義の経済機構のもとにおいては当然だと考えておるのですが、それがなかなか完全な自由競争が行なわれていないことも事実です。が、しかし、それをより完全な自由競争を行なわしめるように指導するのが政府の役目だ、こういうふうに考えている次第でありまして、そういう点について競争条件を整備せよということがうたわれておると思うのであります。それと、いまの八幡、富士の大型合併の問題もそういう点から見ると、メーカーの数を少なくすることがいわゆる寡占価格を構成せしめる危険があるということは一応考えられると思うのです。が、しかし、寡占価格が起こり得る品種については公取のほうで指摘して、この点については対応策を講じなさい、その他の点については競争条件が整備しておるし、他のメーカーが相当の力を持っておるから、寡占価格は形成しないだろうという公正取引委員会の大体考え方だと思うのです。   〔武部委員長代理退席、委員長着席〕  それからもう一つは、やはり今後日本の産業を考える場合に、国際的にすべて考えていかなければならない。国内的に考えちゃいかぬので、国際的にも考えなければならないような世の中に変わってきておると思うのです。その点において、日本の経済というものは、まだやはり世界から孤立しておる空気が相当残っております。だんだんと国際化してきておりますけれども、これからいろいろと国際化されてきまするし、そしていまのように国民総生産が世界で二番、三番というようなことになってくると、世界の人がもう日本を孤立的に見なくなってきている。国際の仲間へ取り入れるという空気になってきておりますから、したがって、すべてをやはり国際的に見て、そうして競争力ありやいなやということを考えていかなければならない、こう思うのであります。その意味において、私は、この八幡、富士の合併というようなことも国際的な観点からメリットがある、こう考えておるのであって、国内的においてのデメリットについては、いま公正取引委員会で指摘した品種問題は、この点において十分の対応策を考えてくれるだろうと思うし、また、それは考えなければ、公正取引委員会は合併は決して承認しないだろう、こう考えておる次第であります。少しその点においては和田委員と観点があるいは違うかもしれませんが、私の意見はそういう意見です。
  67. 和田耕作

    ○和田委員 いまの問題は現実に矛盾のある問題ですから、それはそれでけっこうだと思いますけれども、物価の非常にとめどもなく上がっていく客観的条件がある場合に、政府の強い意思表明ということだけがつまりたよりになるという状態なんです。これを自由な取引条件にまかしたらいいということは、ある意味で理論的には言い得ても、現実の政策としては無責任な政策になるということを、牛乳政策ははっきり示しておると思うのです。つまり、そういう条件を整えればこれは効果があっただろうけれども、そういう条件がなかったという条件というものは、一日や二日や、短時間で片づく問題ではないのです。そういうふうなときに自由な競争条件をつくりなさいということは、現実には無責任なことになる。それを承知で政府はそういうふうな理論を採用しているというふうに私は思えてしようがないのです。つまり、政府一つの行政責任転嫁の理論的な煙幕みたいに、自由競争云々のことを言っているという感じがしてならないわけなんですけれども、それはそれとして、長官にひとつ、政府自体の行政責任ということがとれるような形で物価の問題をやっていただかないと、国民あるいはすべての者が帰趨に迷うということですね。賃上げでも、すべての問題でそうだと思うのです。  そういうふうな意味で、一番初めに申し上げたように、五%という線を出して、もうこれから上へは絶対上げないのだ、もし上がるようであれば非常手段でもとるのだというような決意政府が示す、こういうことを当面できなければ、経済社会発展計画の中にでもそういうふうな表現を、ここしばらくの経済指導としてそういうふうな方針をとるのだというような方針はうたい込めないものですか。あるいはもっと理論的な問題になれば、青信号は三%以下だ、警戒信号は四%台だ、五%以上になればこれは危険信号、ストップだ、こういうふうな判断というものを、経済企画庁としては何らかの形で表明する決意はないかどうかということをお伺いしたい。
  68. 菅野和太郎

    菅野国務大臣 五%以上がもう危険信号であることは、実は申すまでもないことでございます。五%で押えるということは、私はもうたびたび申しておりますし、地方の会議所に行っても、この五%で押し切りますということを強く私は言っております。でありますからして、世間ではもう、政府は五%で押えるのだというような一応の理解を得たのじゃないか、こう思うのであります。が、しかし、お話しのとおり、私は、機会あるごとに、五%以上は危険信号だということは、やはり国民に警告する必要があるということを痛切に感じております。
  69. 和田耕作

    ○和田委員 つまり、そういう目標ができれば、それを達成するために、ときには非常の行政指導も必要だ、つまり政府の責任を持った行政指導が必要だということになってくるのです、これを守ろうとすれば。まあいいかげんな、これはできるだけ努力目標でということになればそういうことにはならないですけれども、絶対守るのだということになれば、政府としては、行政責任という立場からいっても必要な指導というものが必要になってくるということになる。そういうふうな政府の態度が必要な段階に来ているという感じですね。これで質問をやめますけれども、何回も言うことですけれども、どうかひとつそういう問題をぜひとも明らかにしていただきたい。そうせぬとこれは迷いますよ。また政治不信の感じがますますつのってくる、そういう感じがするのですけれども、最後にもう一ぺん決意を表明していただきたい。
  70. 菅野和太郎

    菅野国務大臣 物価の問題に対していえば、私は、おそらく政府に対しての国民の不信感はあると思います。私も至るところで聞かされておる問題であります。同時に、これは政府のみならず、政治に対する不信感もあると思うのです。でありますからして、国民にはやはり安定した生活を送らすということが政治目標でありますからして、あくまで五%以内で押し切るということは、随所、随時、ひとつ発表すべきだ、こう思っております。私はそういうようにいまやっておるつもりであります。しかし皆さん方もひとつそういうように御協力を、特にお願いしたいと思うのでございます。
  71. 和田耕作

    ○和田委員 ありがとうございました。
  72. 帆足計

    帆足委員長 有島重武君、大臣は一時十分、すなわちピアソン・カナダ前首相との面会は少しく延ばしていただきましたから、一時十分というのが物理的限界でございまして、時間が短時間でまことに恐縮でございますが、どうぞ御質問のほどをお願いいたします。有島重武君。
  73. 有島重武

    ○有島委員 前に質問されました委員の方となるべく重複を避けたいと思いますが、菅野大臣は数年前から消費行政について深い関心を示されて、しかもそれを実行に移されたというようなことをいわれておりました。今度は先に向かって、あと十年後にどのような物価安定の状態にすべきか、そういうような観点に立って考えますと、この八年間というもの、大体平均五%以上の上昇をずっと続けてきたわけであります。それで、これはもう危険信号がぶつ続けているわけであります。これに政府としてはいつも真剣に取っ組んでおるということを言い続けてきた。それでひとつ、いつかこれを三%以下にしなければならない、その転換の時点をどの辺に持っていこうとしておられるのか。ことしは五%におさめます、これはもう飽きるほど聞いたわけであります。それがどうであるかということをみんな危ぶまれているわけであります。そうなりますと、ことしを一つの山として、来年からはこれを下げるという確信がおありになるのか。ことしはまだちょっと転換には無理なので、来年には必ず下げるという見通しのもとに手を打っていくのか、そういうような点について伺っておきたい。
  74. 菅野和太郎

    菅野国務大臣 ことしは五%でいくというのは、かたい決意を持っておる次第であります。しかし、五%は私からいうと最上限だと思うのです。一番最高を示しておる数字だ。五%というものは決して安定した数字ではないと私は思っておりますから、もう少し下げていかなければならぬという考えをしておりますが、それについては、いま私どもで経済社会発展計画の補正をやっておりますので、いろいろ数字を集めて計算をしておりますから、その上ではっきりした見通しがついて、そしていつごろには二%なら二%、三%なら三%というようなことの結論を生み出すことができる、こう思うのであります。いま私が申し上げたって、それは構想にすぎない、私のビジョンにすぎないのでありますから、それは三%が理想的だとか、二%が理想的だとかというようなことを言うたところで、実現しなければ役に立たない。もう少しそれだけの、私が言い得る理論的根拠を得て、はっきり申し上げたい、こう思う次第であります。
  75. 有島重武

    ○有島委員 伺っておりますのは、いきなり三%にしろとかでなく、目標——この前に経済社会発展計画を発表された、それが三年もたたないうちにそれを取り下げた、そんなようなたよりない話ではなしに、ことし五%にどうしてもがんばると言っておられますけれども、そのがんばるのが、これを転換期にして来年は下げるということを約束されるのかどうか、そういった点でございます。
  76. 菅野和太郎

    菅野国務大臣 それはいま申し上げたごとく、私自身はもちろん下げたいという考えでおりますけれども、理論的根拠というものは、いま数字を集めておりますから、その上ではっきりしたことが言い得ると思います。私の希望としては、五%は決して理想的な数字じゃない、五%以下にすべきだという考え方をしておりますから、理論的な根拠を得て、そしてはっきり発表したい、こう考えております。
  77. 有島重武

    ○有島委員 きょう議題になっておりますのは、今度の物価安定推進会議の最終提案についてのことでございます。実は私は六項目の各項目にわたって、一つずつその実施ということについて伺っていきたかったわけでありますが、最後の点にかかわる問題であると思うのですけれども、いま、理論的にその計算をした上でないと答えられないと言われましたが、ことしを頂点にしてどうしても下げなければいけない、そういう前提の上に立って指導をし、それでそれに努力をしていくのでなかったならば、これはまたずるずると、いままで八年間の惰性がさらにつながっていくのではないか。この点は計算の問題もございますけれども、行政上どうしてもここに手を加えなければいけない。そういうような一つの実権を握っていらっしゃる大臣でありますから、ひとつその表明をここでもってなさってもいいのではないか、こういうふうに私は思いますけれども、計算が立たないからどうしても、ことしが頂点であって来年からは下げるということが断言できないですか。
  78. 菅野和太郎

    菅野国務大臣 それは私が繰り返して申し上げましたとおり、五%が最上限でありますから、したがって、これは決して理想的な数字じゃない。消費者物価というものは五%以下にすべきものだという考えをしておりますから、その点において努力しなければならぬということは言っておるわけです。それを何%にするということは、その数字は言えないということを申し上げておるのです。五%以下にするということは、もうはっきりたびたび申し上げているのです。いま何%にするということを言えといわれても、それは理論的根拠がありませんから、これは私としてはそういう空想的なことは申し上げられぬ、こう言っておるわけです。
  79. 有島重武

    ○有島委員 そういたしますと、来年もし五%以下にならなかったといたしますと、これは大責任問題である、そういうふうになりますね。上限というのは、数学的に申しますと、こういうふうにカーブが上がっていって下がる、その上がり目と下がり目の一点のことをいうわけであります。ところがいままで上がりっぱなしで上がっておるわけです。これ以上また上がれば、ほとんどどこへ行ってとどまるのかわからないというような突っ走りになってしまうのではないかと思うわけでありますけれども、これでもって、がっちりことしの五%でもって押え切る、そのための手段がここに幾つか示されたのだと思うのであります。  それで、この中の一つに総需要の問題がございまして、それに関連いたしまして、これは三月二十日の物価問題の閣僚会議のときでも、国民に呼びかけるという話がございました。これについてはこの前ちょっと御質問いたしました。国民に呼びかけるというのは逆じゃないかというふうにそのときに申しました。これは、その考えとしては変わっておりませんけれども、国民に呼びかける、あるいは国民に働きかけるとした場合に、先ほどの村山委員質問に答えられまして、税制の問題とそれから金利の問題を言われました。国民のどの層にどのように呼びかけ、どのように働きかけるか、これが一つ問題になるのじゃないかと思うのです。大ざっぱに申しまして、大企業と中小企業と零細企業、そういうふうにあるわけであります。そういったややこまかい問題ですが、大ざっぱに呼びかけるといっても、これはあとでもってどうするのかわからないと思うわけでありますけれども、その点についてはどのようにお考えになっていらっしゃるでしょうか。
  80. 菅野和太郎

    菅野国務大臣 国民の各層に呼びかけるということは、それはこの物価対策の個々の問題によって呼びかけの相手が変わってきます。それで、消費生活合理化ということは国民一般に訴うべき問題だ、こう思います。これは消費者協会あるいは生活センターなどで、できるだけそういう消費生活合理化ということの啓蒙運動をやってもらうということは必要だと思います。そういうことで、最近生活センターなどでもやっておりますし、先般も名古屋へ行ってみますと、名古屋の新聞社はそういう運動を起こして展覧会をやっておりまして、ずいぶん大ぜいの人が見えておりましたし、私は消費者の苦情も聞かせてもらったのであります。  ですからして、消費者一般に働きかける問題と、それから生産者に働きかける問題、これは、たとえば生産性の向上によってより多く利益が生まれたときには、これは労使ばかりで分配せずして、消費者にも利益が転化する、ということは消費価格を安くするということです。これは、この間経団連の幹部の諸君と話し合ったときに、そういうようにあなた方もひとつやってもらいたいということを言ったのであります。それで経団連の幹部の諸君も非常に共鳴して、われわれとしてもできるだけのことをやりましょうということを言われたのです。これは、われわれは商工会議所あたりの会合へ行ってそういう話をしておるのであります。ですからして、そういうふうにして国民一般に働きかけるということをやっておるわけであります。
  81. 有島重武

    ○有島委員 先ほどの税制の問題ですね、税金をかけることによって総需要を押えていくという話がございました。その場合にも、やはり税の公平ということ、あるいは大企業を育てていく方向になるか、あるいは中小企業のアンバランスを是正していく方向になるかということ、これはいままでは物価等はかけ離した一つ政策としてやられたと思うのですけれども、そういった点については今度はどのような方向でもってそれをやっていかれるか、そのあたりはどうでしょうか。
  82. 菅野和太郎

    菅野国務大臣 先ほど私はアメリカの例を申し上げたのです。アメリカは一〇%所得税の付加税を増徴するという方針をとったのであります。これはジョンソン大統領のときからとっておるのを、ニクソンがまた続けて一年間やるということです。これは一般の所得税の付加税をそれだけ取って個人の購買力を減らすということで、総需要を減らすという対策をとったわけであります。しかし、日本ではいままだ減税政策をとっておるときであって、日本ではまだ税が重い重いという声が強いときでありますからして、日本では増税という処置はとる必要はない、こう私は考えております。
  83. 有島重武

    ○有島委員 先ほど言われました増税によって総需要を押えていく、これは日本ではやらない。そうするとあとは金利の問題でございますね。金利の問題が公平を欠くのじゃないか、不公平というか、これは一律にやられますとやはり中小企業が非常に圧迫されてくる、そういった点がいままであるわけであります。そういった点については、企画庁としての発言は何かなさいますでしょうか。
  84. 菅野和太郎

    菅野国務大臣 中小企業については、金利は従来から安くしてあるのです。中小企業金利はほかの金利よりも安くするように通産省でやっておりますし、私の時代金利を安くしました。ですからして、中小企業に対してはそういう特別な処置をとって、中小企業の育成を今日までやってきておるわけであります。
  85. 有島重武

    ○有島委員 この点については従来どおりということでございますね。そういたしますと、先ほどおっしゃった総需要の抑制ということについては、税金の問題とそれから金利の問題と二つ言われましたけれども、これは両方ともやらない、そういうことになりますね。
  86. 菅野和太郎

    菅野国務大臣 現時点のもとにおいては、私はまだやる必要はないと思うのです。とにかく五%以上に、もしも消費者物価が上がるような場面がくれば、そのときには機動的な対策を講じなければならぬ。それは金融面かあるいは財政面でとらなければならぬということは言えると思うのです。私は、現時点においてはまだそこまでの対策をとる必要はない、こう考えております。
  87. 有島重武

    ○有島委員 そういたしますと、四月十六日の最終提言の中の一項目に総需要調整の必要という提言はあったけれども、さしあたってはこれはそれほど重要ではない、そういうふうにお考えになっておるというふうに受け取ってよろしいでしょうか。
  88. 菅野和太郎

    菅野国務大臣 現時点においては、総需要が多いということについてはそれほど私は大きな問題ではないと思うのです。今後総需要がふえるような場合には、それは考えなければいかぬということがいわれておると思うのであって、そのときには機動的に対策を講ずるということをわれわれのほうもすでに言うておるのであります。そういう意味で、いままで公共料金を押えるとか、そういうような態度をとりましたけれども、金融財政面において、今後においてはとるべき処置があるんじゃないかということが示唆されておるのであって、われわれも、必要な場合には機動的にそういう金融財政面において対策を講じなければならぬ、こう考えておる次第であります。
  89. 有島重武

    ○有島委員 その問題は大体わかりました。  国民を騰貴感から脱却をさせるという問題でありますが、これについてはどのような対策をとつていかれるか。
  90. 菅野和太郎

    菅野国務大臣 これはいままでもたびたび申し上げましたが、日本物価上昇政府主導型だと、こういうのです。ということは、公共料金政府が上げるからほかの物価が上がるということでありますので、そこで公共料金は抑制するという方針をとりましたから、政府主導型でないということを国民に示す必要があるということで、政府物価を上げてないということをひとつ国民に徹底せしめる必要がある、こう思うのです。ただ、鉄道料金だけは上げましたから、その点だけについてはいろいろ批判があります。しかしほかの公共料金は押えるという方針でいっておりますから、これによって、物価については政府主導型でないということを国民に十分啓蒙する必要がある、こう考えておる次第であります。
  91. 有島重武

    ○有島委員 政府主導型でない証拠には、たとえば公共料金は全部押える、けれども、国鉄だけは上げさせてくれ、そういうようなことであります。そういうことを国民に徹底させようということでございますが、公共料金の中でも、鉄道、それからあとは主食ですか、この二つは、米が上がりましたし、それから国鉄は今度上がるということになりますと、これは国民に対しては、そうはいっても説得にならないと思うのですね。公共料金は全部ストップさせるようにするけれども、一番大事なお米と国鉄についての柱がどんどん上がっていく。これでもってなおやはり国民を説得させ得るであろうか。そういうふうにお考えですか。
  92. 菅野和太郎

    菅野国務大臣 米価については、生産者米価、消費者米価は抑制するということは言明しております。ことしは抑制する、現状のままでいくということでありますから、値上げはしない方針でおります。しかしこれは、決定は米審で決定することですから、決定したということはここで申し上げることはできませんが、抑制する方針だということはたびたび総理も、また大蔵大臣も、また農林大臣も言明しておることでありますから、それで問題は鉄道料金だけです。問題は鉄道料金でありますが、それに私鉄や何かの、ほかの交通関係公共料金が便乗して値上げしておることがまた非常に物価騰貴を促す原因になるのでありますからして、そこで鉄道料金だけは値上げするが、便乗的なほかの交通関係料金値上げをさせない、抑制するということを言っておるのです。それによって、政府物価を押える方針だということは国民に徹底ができる、こう私は思っておる次第であります。
  93. 帆足計

    帆足委員長 有島委員、時間が参っておりますから、お心にとめて御質問願います。
  94. 有島重武

    ○有島委員 最後に、米価の問題は、これ以上上げないということを言われながら上げられてきたという歴史があるわけであります。ですから、国民が心配するというのは無理ないのです。それで、むしろ下げるというくらいに、公共料金だって、今度は極力抑制し、かつ下げるという方向くらいに言わなければ、国民はとてもとても安心はしないであろうと思う。したがって、便乗値上げやなんかを心配されますけれども、そのくらい強硬なことを言わなければ、またかつ実行していかなければならないんじゃないか、そういう時点にいまあるんじゃないか、そういう御覚悟で今後は進んでいただきたい、そう思います。
  95. 菅野和太郎

    菅野国務大臣 鉄道料金だけはやむを得ず値上げしましたけれども、便乗値上げは許さぬということは、これはもう各業者でも徹底しております。経済企画庁が許さぬのだということで、タクシー値上げの申請なども地方の陸運局は押えてしまっておるということでありますからして、経済企画庁ががんばっておるということはもう徹底しておると思うのです。だからして、そういう意味で、鉄道料金以外の公共料金値上げはできぬということについては国民に徹底してきた、私はこう思っておる次第であります。
  96. 有島重武

    ○有島委員 終わります。
  97. 帆足計

    帆足委員長 それでは菅野国務大臣は御退席願います。  次は、武部委員から局長に対する御質問の申し出がございますが、夏目漱石が申しましたように、人は腹の減る生物でございまして、しかし昼食の時間を問にはさみますと時間の行き違いになりますから、このまま続行いたしますが、しばらく皆さまごしんぼうのほど願います。  武部委員
  98. 武部文

    武部委員 食糧庁長官に最初にお伺いをいたししたいのでありますが、食糧庁の調査で、農家から出ておるところのやみ米は大体推定何トンくらいと見ておるか、それをお伺いします。
  99. 桧垣徳太郎

    ○桧垣政府委員 米につきましては、御案内のように、農家の保有米と政府売り渡し米というものに、本来の姿として二分されるべきものと思いますが、農家の保有されたものから農家の消費量というものを推定いたしましたあとのものは、いわゆる不正規流通に流れたものというふうに推定されるのでございまして、その推定では、最近は大体七十万トンないし八十万トンの量のものが不正規の流通に流れておるというふうに推定されます。
  100. 武部文

    武部委員 現在、一般家庭に配給されておる米の量は全国で大体何トンくらいですか。
  101. 桧垣徳太郎

    ○桧垣政府委員 現在政府が売り渡しております総量が、玄米で約七百八十万トン程度、もっとも四十三年度はもう少し減っておると思いますが、七百八十万トン程度で、そのうち加工原料用として売っておりますものが約九十万トンばかりございますので、家庭配給用は、大ざっぱに申し上げまして七百万トン前後ということでございます。
  102. 武部文

    武部委員 いまの長官の答弁によりますと、一般家庭の配給のトン数、さらにやみ米の七十ないし八十万トン、その比率は大体一三%くらいになる、このように計算上は出てくるのであります。先般「昭和四十三年度農業の動向に関する年次報告」、こういうのが国会に提出をされました。その六十四ページから六十五ページにやみ米のパーセントが書いてあるわけでありますが、それによりますと全国平均で一二%、七大都市に至っては四二%、やみ米が流れておる、こういう数字が出ておるのでありますが、この政府提案の年次報告と、いま長官の説明された数字との間にはたいへん大きな開きがある。さらに私どもの承知するところでは、食管連の調査によれば、名古屋の団地あたりではその購入量の七〇ないし八〇%はやみ米である、こういう数字が出ておるのであります。ただいまのあなたのおっしゃった数字とたいへん大きな開きがあるわけですが、どういうふうにお考えでしょうか。
  103. 桧垣徳太郎

    ○桧垣政府委員 これは、この資料にもございますように、総理府の家計調査の記帳の数字を集計したものでございます。でございますから、消費の過程で、自分のところはいわゆる政府の売り渡しにかかる配給米、別なことばでいえば標準配給米の受配を受けておるのではないという意識で記帳したものであることは間違いないと思うのでございます。したがってそのことは、消費者の中に、自分の好む米を選択して買いたいという意識があることを示すものとしては、私はまさにこのとおり理解してよろしいと思うのでございます。  ただ、この一二%あるいは四二%という数字が真実の意味で非配給米であるかどうか、これは私は若干の疑問があるのでございます。と申しますのは、たとえば、これはいろいろ私どもも厚生省も留意してまいっておるのでありますが、ビタミン強化米を加えたものが、これはいわゆる統制価格に上積みされた価格で売られておるのでございまして、そういうものをはたしてどういう記帳をしておるかというようなことも明確でないということでございますので、私は、先ほど申し上げました農家から流れます不正規流通の米の量と、家計調査にあらわれます非配給米の受配量との間に差が出ることはあり得ると思いますが、なお御質問以上に立ち至るかと思いますけれども、そにの間に米の配給の過程において、従来からいわれておりますいわゆる格上げ販売というようなことが絶無であると言うほど、私も自信はございません。
  104. 武部文

    武部委員 いまのことばを聞いておりますと、結局は大部分は配給米の横流れだというふうに私は理解をするわけです。いま格上げ混米ということをおっしゃったわけですが、農林省はおそらくそれをお認めになっておるだろうと思う。一等から五等の米を卸、小売りの段階で格上げ混米にして、それを出しておる、こういうことがほぼ推定ができるのであります。このやみ米の値段というものは大体十キロ当たり平均千八百円、こういう数字が私どもの手元には来ておるのであります。御案内のように、甲地では千五百二十円、乙地では千五百十円、丙地では千五百円、これが千八百円になって流れておる、こういう数字が出てくる。加えて、先ほど申し上げるように名古屋の団地あたりでは七〇から八〇%、総理府の家計調査でも七大都市では四二%、こういう非常に高い数字が出ておる。この結果は、消費者が非常に高い米を現実に買っておるんだということになると思うのです。そういう面で一体行政府の責任はどこにあるのか。私はこの点は非常に重要だと思うのですが、長官、どうお考えですか。
  105. 桧垣徳太郎

    ○桧垣政府委員 政府の管理いたします米が価格統制のもとにありますから、もちろん、統制価格の範囲内で適正に消費者に配給せられるということを確保する行政の責任は、私ども食糧庁にあるというふうに申し上げざるを得ないわけであります。なお、末端の指導監督の行政は、都道府県あるいは市町村長というものに委任されておる分もあるわけでございます。
  106. 武部文

    武部委員 先ほど強化米ということをおっしゃったわけですが、私どものさっき申し上げた調査によると、大体配給米は十キロで千八百八十円くらい。ところが、消費者運動が非常に強い、活発だというような、たとえば東京の世田谷あたりを調べてみると、これは十キロが千五百八十円ですね。八十円くらいしか高くない。その他のところでは千八百八十円ですから、三百八十円も高い。消費者運動が非常に強いところではこういうインチキがまかり通る、こういう結果が現実に出ておる。  そこで、さらにお伺いいたしたいのですが、食糧庁は、現在、大阪ないし東京でやみ米の市場が立っておるということを御存じですか。具体的にいえば、東京なら深川にやみ米の市場が立っておる、これを知っておりますか。
  107. 桧垣徳太郎

    ○桧垣政府委員 新聞紙上等の報道で、いわゆる米の不正規な取引のための一種の集団的な存在があるということだけは承知いたしておりますが、詳細について私どもは承知をいたしておりません。
  108. 武部文

    武部委員 非常に抽象的な答弁ですが、私はたいへん不満であります。このやみ米の市場では市況まで発行されて、その市況状況は全国の集荷業者、卸、小売り段階までずっとその日のうちに流れておる。きょうは私は持ってきておりませんが、具体的な市況まで出ておるのです。そういうものをあなた方が全然知らないということは、私は職務怠慢だと思うのです。内容を明らかにいたしますと、たとえばササシグレだとか越路だとかいう現品がそこに並んで、それに何キロ何円という価格まで出て公然と取引をされておる。そういうことを食糧庁が知らぬということはないと私は思う。こういうことが自然と全国に蔓延をして、これが先ほど言ったような、総理府の家計調査の中にああいう数字になってあらわれてくるその根源だと私は思うのです。これは明らかに食管法違反だと思うのですが、間違いありませんね。
  109. 桧垣徳太郎

    ○桧垣政府委員 現行の食管法並びに食管法の施行令では、匿名供出の場合に特別指定業者に売る場合のほかは、生産者はすべて政府に米を売らなければならないという規定になっております。また、それぞれの米の取引に関しては、食管法並びに食管法施行令で規制をされておるのでございますから、したがって、いま御指摘になりましたようなケースは食糧管理法違反の取引であるということはまぎれもないと思います。
  110. 武部文

    武部委員 大阪なり東京で行なわれておるということは周知の事実だということを私は言ったわけですが、こういうことを厳重に取り締まるという考えが農林省におありですか。
  111. 桧垣徳太郎

    ○桧垣政府委員 違法の行為でございますから、これは好ましくないことであり、かつ行政的には取り締まるべきものであると私は考えておりますが、この点について、取り締まり当局の立場から先般当院の予算委員会で法務大臣が答弁をされました趣は、現在のような需給事情のもとで法的取り締まりを全面的にやるということはなかなか実際問題として困難があるが、大量悪質なやみ米の取引が行なわれておるというようなことについては、流通の経路を紊乱し、あるいは不当の利益を占めるというような違法性がきわめて強いので、それについては重点的な取り締まりをしてきた、また将来もそういう考えであるということでございまして、私どももおおむね法務大臣の答弁の方向しかないのではなかろうかというふうに思っております。
  112. 武部文

    武部委員 それなら、格上げ混米についてはどういう態度をおとりになりますか。
  113. 桧垣徳太郎

    ○桧垣政府委員 格上げ混米というのは、実は私どもなかなか現実に現場を押えることが困難であったわけでございますが、むしろこの問題については、先ほどもお話がございましたように、行政指導の立場のものと、それから消費者の側からの指摘というようなものが緊密に行なわれる場合に、効果的な指導が行なわれるというふうに私は考えております。私どもは、いままで配給米改善協議会あるいは食糧配給協議会というような組織といいますか、そういう機構を各都道府県に持ちまして、都道府県、それから食糧事務所、さらに消費者の代表、また流通業者、そういうものが加わりまして、配給の適正を期するようにし、また配給米について問題がありますものは専門家が鑑定をいたしまして、誤った配給をするということの防止につとめてきたのでございますが、私どもとしては、将来もその問題については都道府県と協力し、また消費者の支援も得て、適正な配給の確保につとめてまいるというようにいたしたいと思っております。
  114. 武部文

    武部委員 やみ市場で公然と米相場が立っておるわけでありますが、こういう現実の中で、政府物価統制令をはずすという動きが一時ありました。私はこういうことはたいへんな問題だと思うのですが、今後物価統制令の問題については一体どういうお考えか、これをお伺いしたい。
  115. 桧垣徳太郎

    ○桧垣政府委員 政府の売り渡しにかかります配給米につきましては、いずれにいたしましても、食糧管理法の基本的な考え方でございます家計の安定を旨とする消費者米価の設定ということはどうしても必要なことでございますので、私どもも一貫して何らかの価格規制を必要とするというふうに考えておったのでございますが、政府内部で慎重に検討いたしました結果、政府売り渡しにかかる配給米については物価統制令による価格規制を存置するということにいたしましたので、当面これを廃止するという考え方は持っておりません。
  116. 武部文

    武部委員 いままでも申し述べましたこの現実の姿からして、食管制度があっても現実は全く野放しの状態だ、消費者は非常に高いやみ米を買わされておる、こういう現実の姿があることは、これは否定されないと思うのです。  そこで、特に長官は非常に熱心だそうでありますが、自主流通米制度を特にあなたのほうで強力にやりたいというような話がいろいろ出ておる。自主流通ということばをつくられたのはあなただということが新聞に載っておりまして、自由流通米というようなことばではやみ米と間違えられるが、というようなことがある新聞によって報道されておるのを見たのでありますが、自由流通米であろうと自主流通米であろうと、先ほどから申し上げることになって、名前は変わろうとも、やみ米とは何ら本質は変わりはないと思うのです。自主流通米制度というのは、農協が集荷をして、そして末端の配給機構まで行政の指導をするということをあなた方がおっしゃっている。ところが現実には、先ほど申し上げたようなやみ市場の米相場に、あなたたちのおっしゃるようなことがあったにしても、左右されると思うのです。やみ相場に、やみ市場におけるところの米相場に左右される。そうした流れを考えることは当然ですが、それをやみ市場に流れないように、あなた方は末端配給機構まで行政指導する、こういうことならば、それは食いとめることができるという確信を持っておられますか。
  117. 桧垣徳太郎

    ○桧垣政府委員 私は、はなはだ好ましいことではないけれども、いわゆる自由流通米、やみ米というのが存在をする、またそれがむしろ拡大の傾向にある、ということは、現在のような需給状態になってまいりますと、消費者は、一定の価格で平均的な品質の米を一定量受配をするということだけでは、なかなか満足をしなくなってきた。米についても、こういう需給事情のもとでは、自分の嗜好に、選好に応じた米の購入をいたしたいという要求がある。その社会的要求というものがありまして初めて、現在のやみ米のようなものが存在するのであろうと理解をいたしておるのでございます。でございますので、そういう消費者の選好に応じた購入ができる道を正規に、食糧管理制度の立場に立ち、行政規制のもとで道を開くことが、不正規なやみ米の流通を抑止する力となるゆえんであろうというふうに考えておるのでありまして、御指摘の自主流通米につきましては特に価格の規制はしないという考え方がございますから、経済的には、いわゆる従来の自由流通米と価格関係の上で競合をするということは、私はこれはそのとおりであろうと思います。思いますが、自主流通米制度によって、消費者もあるいは流通業者も、正規のルートから安定した価格で購入ができるということに相なりますれば、いわゆるやみ米の抑止というものに大きな力になるであろうというふうに、私どもは確信をいたしております。
  118. 武部文

    武部委員 長官はかねがね、うまい米は高く、まずい米は安くということを、農水あたりでもしばしば言明になっておる。私もそれを聞いております。これは最後になりますが、先ほどから言うように、配給米が格上げ混米とか、そういう形になってやみにどんどん流れていく。そこでやみ市場で米相場が出る。流れる。結果的には、消費者は高い米を食わされる、さらに貧乏人はまずい米だ、こういうような結果が出てくるのではないか。そういう結果は、食管法の精神がこの辺からくずれてしまうじゃないかという気持ちを私は持つがゆえに、きょうは特に長官の御出席をいただいた。あなた方のおっしゃっていることと、この年次報告に出ておる家計調査の実態から見て、非常に開きがある。さらにやみ米は拡大の傾向を帯びておるというふうに長官自身もお認めになっておる。そうすると、行政指導においてこれを何とか食いとめなければならぬ、こういうふうにわれわれは考えるがゆえに、きょうあなたにおいでをいただいたわけであります。こういう点で、今後農林省は、こうしたやみ米の拡大には、どういう行政指導をして食管法の精神を守ろうとしておられるのか、これを最後にお聞きしたい。
  119. 桧垣徳太郎

    ○桧垣政府委員 先ほども申し上げましたように、現段階において、消費者の動向というのは、自己の選好に応じた質の選択をしたいという傾向があって、画一的な統制のもとではそれに応ずるようなことができにくい、できないということの欠陥から生まれた私は一つの現象であるというふうに思うのでございます。したがいまして、私はそういうような需要に応ずる道を開き、またそれをになう関係者がいわゆるやみ米というものの抑止に努力をすれば、現在のやみ米というものを少なくとも相当大きく後退させることができるであろう。そういう意味で、農協等の集荷団体も、まず集荷の面でやみへの流通をふさぐだけの努力を私は期待いたしたいのであります。と同時に、私どもは、先ほど申し上げましたように、悪質大量のやみ米の流通というものについては、法的な取り締まりということについても、一そう厳格にその実施に当たりたいというふうに思うのであります。  また流通業界につきましても、今後は正規の自主流通米というものが認められるわけでございますから、不正規な取り扱いをするものにつきましては、従来以上に行政的な措置を厳重にいたしたい。ただいままでは、実は私ども食糧事務所の末端におきましても、定期的な配給店の立ち入り検査、あるいは集合監査のようなことをいたしておったのでございますが、今後は定期的な立ち入り検査のほかに、随時巡回監査というようなことを行ないまして、業界の指導にも遺憾のないようにいたしたい。またその結果、非常に質のよくないような事例を発見いたしました場合には、従来とっておりませんでしたが、これを公表するという措置をとるという通達ももう出しております。なお、それにもかかわらず適正な配給につとめないというような事例がございますれば、さらに厳重な行政措置ということを考えてまいりたいというふうに思っております。
  120. 武部文

    武部委員 この問題は次回に譲りまして、畜産局長はまだですか……。  それでは農林省の畜産局の方にお伺いいたしますが、前回保留いたしました豚肉の関係であります。現在の豚の白の上の相場は幾らですか。
  121. 小島和義

    ○小島説明員 このところ大体四百五十円ないし四百六十円というところであります。
  122. 武部文

    武部委員 畜産振興事業団の在庫キロ数を……。
  123. 小島和義

    ○小島説明員 畜産振興事業団は、昨年の七月をもちまして、豚の在庫は全部売り払いを終わりました。ただいま在庫品を持っておりません。
  124. 武部文

    武部委員 七月以来ゼロですか。
  125. 小島和義

    ○小島説明員 七月十日をもちまして、在庫は全然なくなっております。
  126. 武部文

    武部委員 一年間に八十九万トンもの大量の豚を買い入れて、豚肉の価格を安定せしめる、こういう精神ででき上がった畜産振興事業団が、去年の七月以来、一キロの在庫もない、こういう状況をお聞きしたわけでありますが、私どもは非常にふしぎに思うのであります。  そこで、いま値段を聞きますと、三百九十円の上限価格——これはあとで、変わったことについては御質問をいたしますが、三百九十円をはるかにこえて四百五十円、四百六十円、高いときには五百二十円くらいまで上がっておった、こういう事態があったわけですが、これからの相場の推移は一体どういうふうに農林省は見ておるか、これをちょっとお伺いいたしたい。
  127. 小島和義

    ○小島説明員 毎月毎月の価格の水準を想定することは非常にむずかしゅうございまして、やや長期でながめました場合の価格水準の想定しかできないわけでございます。昨年の年間平均の東京市場の卸売り価格は四百六十七円だったと記憶いたしますが、本年の場合にもほぼそれと同じくらいの平均的な水準は実現するのではないか、こういうふうに考えております。
  128. 武部文

    武部委員 大体四百六十七円くらいが平均だったので、ことしもそれくらいだ。そうすると上限価格——上がらないときのことですが、三百九十円から見ると、大体七十七円くらい高いですね。そうすると、このたび畜産振興審議会が答申を出して、それを農林省がそのまま実施に移した。豚の上限下限の価格を引き上げた。その理由を一体農林省はどのように説明できますか。
  129. 小島和義

    ○小島説明員 ただいまの豚肉の安定価格のきめ方といたしましては、需給実勢方式という方法によっておるわけでございます。この考え方は、過去において実現いたしました価格の水準、これは短期的には高かったり安かったり、いろいろ問題はあるわけでございますが、長期的にながめますならば、その価格水準のもとにおいて生産も順調に伸びてまいりましたし——これは十年間に三倍強という伸びを示しているわけでございますが、同時に消費のほうもそれに追いついて伸びてきているわけでございまして、そういう事情にかんがみまして、過去において実現した価格水準というものを、将来に向かって上回り得る要素を織り込んだ上で引き伸ばしまして、それを上下一割に開きまして安定帯をきめる、こういうルールを採用いたしておるわけでございます。  本年の場合は、たまたま従来基準期間として使っております——これは四年間を使っておるわけでございますが、四年間の平均の価格水準が若干上がっております。それに加えまして、現在かような高値が続いておるにもかかわりませず、生産のほうがなかなか追いついてこない一つの理由といたしまして、先行きの安値警戒というものが生産者の間にかなり横溢しておるのでございます。そういう点にかんがみまして、今回の場合は、価格水準を若干引き上げまして、それによって生産の上昇を期待するという考え方から、安定価格を引き上げたわけでございます。
  130. 武部文

    武部委員 下限を十五円、上限を二十円上げたわけですね。そこで、おっしゃるように、農家の増産を刺激するためには、三百二十円という下限を上げて意欲を持たせる、このことはよくわかります。しかし現実に上限価格をはるかに突破をして四百六十だ、高いときには五百円だというような、全く上限をはるかにこえた金額になっておる。消費者はそういう高い豚肉を買わされておる。こういう段階で、上限の三百九十円を二十円上げて四百十円にする。こういうことになってくると、安定価格を実勢価格に近づける、こういうふうなやり方しかないじゃないかというような気持ちを消費者が持つのも、私はこれは当然だと思う。安定帯価格を実勢価格に近づける、こういうことでは消費者は浮かばれないと思うのです。こういう点でむしろ、いまの在庫がゼロだとかいうようなことであれば、当然、今回まで三回も緊急輸入しておるわけですから、輸入等を緊急に行なって、そういうことによっていまの実勢価格をどんどん下げて、上限価格に近づけるような努力こそすべきではないか、こういうように思うのですが、農林省はどういうようにお考えになりますか。
  131. 小島和義

    ○小島説明員 私ども全くその点は同感でございまして、昨年からことしにかけまして約二万トンの緊急輸入を行なったわけでございますが、引き続きまして本年の四月におきまして、一万五千トンの輸入割り当てを行ないました。本年夏場にかけての価格の高騰を押えたい、こういうことでございます。
  132. 武部文

    武部委員 この価格の引き上げは、増産が価格の安定にはね返ってくる、そういうやり方の金額の引き上げだというふうに農林省の説明からは受け取れるわけです。ところが、現在の養豚の実態を調べてみると、これは明らかに大多数が小規模の副業農家であります。副業農家で大量の増産を期待するということは、これはなかなか早期に達成できないし、相当の時間がかかる、私はこういうふうに考えます。そして、かりに下限価格を十五円上げても、これが増産になってあらわれてくるには、さっき言うように時間がかかる。片や消費者のほうは非常に高い肉を買う。これではいつまでたっても追いつかない。そういうことからいまの緊急輸入ということをおっしゃったけれども、現実に三回も緊急輸入したけれどもほとんど効果はあがっていないのです。これは相場を下げるのにほとんど役に立っていないと私は思うのです。また、その緊急輸入のやり方も、値段がどんどん上限価格を突破して、非常に高くなってからやっても、それが入ってくるまでには相当時間がかかるから、その高い値段を下げるのには、さっき言うようにあまり効果がない。そこで、緊急輸入するにはそれなりのまた方策考えなければならぬ。これは畜産振興審議会が今度の二十円と十五円の金額を引き上げる際の付帯意見にあったということを聞いておるのであります。たとえば、輸入をする場合は現行一〇%の関税をかけておるけれども、これを適当に減免して輸入しやすいようにしなければならないんじゃないか、こういうことにこそ農林省は配慮すべきではないかという付帯意見をつけたと聞いておりますが、このような関税の問題等について、一万五千トン緊急輸入をするそうですが、どういう見解を持っておるか、お聞きしたい。
  133. 小島和義

    ○小島説明員 豚肉の価格は、国内価格と現地価格を比較いたしますと、日本がかなり割り高になるのであります。輸入品について見ますと、基本税率、関税率の一〇%をかけました場合には、必ずしも輸入品が安くないという状況でございます。そこで今回の輸入にあたりましては、昨年六月以来、一定の価格水準を越えるものにつきましては関税を減免するという措置を講じておりまして、引き続き本年もその措置は延長しております。  審議会で議論が出ました問題はこういうことでございます。すなわち、現在の関税減免措置は、安定上位価格をこえておるということが減免措置を発動する要件に法律上はなっておるのでございます。これは輸入の発動を著しくおくらせることになりはしないか。したがいまして、できるだけ早い時期において、この制度を改正いたしまして、上位価格をこえなくても、こえるおそれがあるという時期においては、関税減免の措置が発動できるようにしろ、こういう趣旨が盛り込まれての答申というふうに承知しております。私どもとしましても、できるだけ早い時期にそのような措置を、関税当局とも相談いたしました上で、とるようにいたしたいと考えております。
  134. 武部文

    武部委員 この間アメリカの国会議員が日本にやって来て、国会議員といろいろ懇談したときに、こういうことを言ったそうであります。ロスアンゼルスではステーキが一ドルだった、ハワイに来たら二ドル、東京へ来たら三ドルだった、こっちへ来るに従って高くなったということをアメリカの国会議員が言ったそうであります。ことほどさように日本では肉は高い。もう肉牛あたりについては絶対量が不足しておる。こういう点で、前回の当委員会では参考人を呼んで、中国肉の輸入問題についてのいろいろな意見を聞いたわけであります。中国では百グラムが三十円から三十四、五円、それが日本では百グラムが牛の肉にすると百二、三十円、四倍程度の高い肉だ、こういう弄も出ておったのを私聞いたのでありますが、このように肉牛が絶対量として不足をしておる。輸入については、中国の口蹄疫問題を理由にして入れない。さらに、肉牛が高くて豚に転向すれば、上限価格をはるかに突破をして豚にも手が出ない。畜産振興事業団あたりは、八十九万トンの豚を買い占めてもほとんどそれが価格にはね返らない。また一キロの在庫もない。こういうことでは、消費者にとってはいつまでたっても牛の肉はおろか、豚の肉さえなかなか手に入れることが困難だ、こういう実情を農林省はよく承知しておると思う。そこで、ぜひこれからの緊急輸入については、先ほど申し上げるような関税の税率の問題とか、あるいは、上限価格は二十円上げて四百十円になった、これはさまったことだからそれはそれとして、畜産振興事業団というものの機能をもっと有機的にやらなければ、買うときは買ったわ、積んでおったら下のほうは二千トン黄色になって使いものにならないから、ハムかソーセージにしようということをいってみたり、年間何十億も損をするような、そういう畜産振興事業団では存在価値がないと思うのです。そういう意味で、多額の政府出資があるのですから、畜産振興事業団を督励をして、こうした四百六十円も七十円もしておるような値段をさらに上限価格に近づけるような努力を政府自身がやらなければ、消費者の不満というものはさらに強まるのではないか、私はそう思うのです。そういう意味で、農林省としてはこれから、こうした高値を続けている問題についてどういう手を打とうとしておるのか、これを最後にお伺いしたい。
  135. 小島和義

    ○小島説明員 ただいまの事業団の機能の問題でございますが、畜産振興事業団が輸入いたしましても、また民間の商社等を通じまして輸入を行なわせましても、それによる国内に対する価格効果は、ただいまのように輸入いたしましたものを直ちに売り渡さなければならないという事態のもとにおきましては、それほど大きな違いはないのではないかというふうに考えるわけでございます。もちろん、畜産振興事業団が在庫品として持っておりましたのは、価格が異常に低落いたしましたものを買いささえるという結果として持っておった在庫でございますので、ただいまのような価格高騰というようなものを想定いたしました場合に、もっと大量の在庫を持っておるべきではなかったかという御批判もあるわけでありますが、同時に、当時の状況といたしましては、かなり多目な在庫を持っておりまして、その適正な管理ということに事業団といたしましてもかなり腐心いたしたことは事実でございます。ただいま多額の赤字が出ておるということも御指摘ございましたが、これは決して事故品のみによって生じたものでございませんで、本来の仕事を通じまして、保管期間が非常に長期にわたったという事実から発生いたしたことでございます。  それから、これからの措置についてどう考えるかという問題でございますが、何と申しましても、輸入品によりまして国内の価格を安定させるということについては、輸入品の価格の面からくる、あるいは輸送上の面からくるものの一定の限界がございます。少なくとも国内の生産が必要量を十分に満たすというところまで回復してまいりませんと、ただいま設定いたしました安定上位価格も維持することがむずかしいのではないかと考えております。その意味におきまして最大の急務は、子豚の生産が早急に回復するということを期待する以外にないのでございますが、ただいまのところ農村部分におきましては、労働力の不足でございますとか、あるいは公害問題でございますとか、あるいは衛生面の問題でありますとか、生産を阻害するさまざまな条件が多く起こっておりまして、その面でも生産の急速な立ち直りを阻害しておると思います。したがいまして、その面の対策について早急に検討いたしました上で十分な施策を講じていく、こういう方向で問題の解決に当たりたいと考えております。
  136. 武部文

    武部委員 最後に、前回私が質問をした乳糖、カゼインを使ってインチキ牛乳をつくっている、それを普通の牛乳に一〇%なり三〇%まぜて大量にこれを販売をしておる、こういう具体的なつくる内容についてここで数字をあげて質問をしたわけでありますが、農林省はこの事実について何か回答がございますか。
  137. 松浦昭

    ○松浦説明員 先般局長からお答え申しましたように、カゼイン、乳糖につきましては、それぞれ固有の用途がございまして、輸入されたものの大部分はその固有の用途に使用されているというふうに私ども考えておるわけでございます。特にその中で固有の用途と申しますのは、乳糖につきましては医薬用、それから育児用の粉乳に使っているもの、その他ジュース類等が大部分の量になっております。ただ、残りのもの、私ども推定いたしますと、若干の部分が乳製品の代用として使われているのではないかという状態は私ども察知しておりまして、この点につきましてはその内容等を洗っているのでございますが、内容の大部分は低級のアイスクリームではないかと思っております。したがいまして、ただいま先生おっしゃいますような、還元乳材料としてこれが大量に用いられているという事実は、私どもはないと確信しておるわけでございますが、しかしながら、何と申しましても、このような代用乳製品が大量に出回りますことは、日本の酪農にとりまして重要な問題になるということはよく承知しておりますので、私どもといたしましては昨年の八月以来、乳糖につきましてAIQの制度をしきまして、その用途の確認とチェックをいたしておるわけであります。この用途確認をさらに進めまして、今後とも適切な措置をとってまいりたいというふうに考えます。
  138. 武部文

    武部委員 いまの答弁ですと、乳糖、カゼインは固有の用途に使われておるだろうということを農林省は考えておるようですが、私はそうだと思わないのです。なお、この乳糖の輸入量が近年非常にふえて、四十年から四十三年に至ってはまさに倍になっておる。二万トンが四万トンにまでなっておる。そうすると、一体何のためにこれだけの乳糖が日本に入ってくるのか、こういう点を非常にふしぎに思っていま調べておるのでありますが、固有の用途に使われていないという資料を私は手に入れておるのでありますから、次回あらためて、これは非常にインチキの方向に使われて、消費者がばかな牛乳を飲まされておるという事実をはっきりして、農林省の見解を求めたいと思います。  そこで、これまた前回から問題になっている例の三円の値上げ問題をめぐる再分配の問題で、東京で販売業者の大会が行なわれ、販売業者は、再大限、メーカーに還元をできる金額は一八〇cc五十四銭だということを言っておる。ある小売り業者が新聞に投書をしておるのを見ますと、八十銭だということを言っておる。こういうことがそれぞれ言われ、全国的には三円の値上げのうちの一円十銭、農民が六十銭とメーカー五十銭、合計一円十銭、それだけの還元について大体の話がついた。ところが東京ではその話はつかない。東京の消費量は全国の約三割、こうなってくると、かりにここの対立がきびしくなってくれば、当然再値上げということが行なわれてくる。メーカーは販売業者に対して、内容証明でもって一円十銭の原価の値上げを通告する。末端の業者は、三円の値上げは自分たちの人件費値上げその他で上げたものだからこれを還元することはできないという、そういう紛争が起きてくるならば、当然これは二十三円の牛乳代にさらにはね返って値上がりするというような結果になりはしないか、その点を非常に心配をしておるのですが、この東京の問題について農林省は一体どう考えておるのか、この現状をひとつ最後に説明していただきたい。
  139. 松浦昭

    ○松浦説明員 ただいま先生御指摘になられました東京都の卸価格の値上げの問題でございますが、御承知のように、全国のベースでは、東京を除きましてほぼ卸価格一円十銭ということで、すでに生産者並びにメーカーとの間の配分も話し合いがついたかっこうになっております。このような状態を私ども現出してまいりました背後には、先生おっしゃいますように、再値上げをぜひ防止したいという気持ちがございました。三円そのまま全部小売りの手に渡るならば、おそらくは去年の生産者乳価の経緯等にかんがみまして、本年もまた値上げをするというような事態になりはしないかということを懸念いたしまして、私どもは三者間の適正な配分ということを指導いたしてまいった次第でございます。したがいまして、残るところは東京だけになってまいりましたので、私どもも東京都の商業協同組合を呼びまして、何度か指示もいたし、また指導もいたしてまいったわけでございますが、近々日中に各メーカーと小売りの代表者との問の調節に入りまして、一日も早く本件が解決するよう指導いたしてまいりたいというふうに考えております。
  140. 武部文

    武部委員 時間が来ましたから終わります。
  141. 帆足計

    帆足委員長 次回は公報をもってお知らせすることといたしまして、本日は、これにて散会いたします。    午後二時散会