○村山(喜)
委員 お二人の話を総合いたしまして、総
需要の抑制という問題が概念的に頭の中に入ります。この問題は、
物価上昇というものの中に総
需要の急激な拡大がある。それは、供給の弾力性を上回る大幅な
需要の増加がある。そこから、
需要面から
物価の
上昇というものが生まれてくるのだという理論が、この総
需要を抑制しなければならないという理論構成であります。そこで、それにはいま
長官が言われたように、
政府がみずからなさなければならない分野と、
国民なりあるいは
民間に呼びかけてそういうような問題を達成する手法があると思う。
その中で、いま
国民生活局長から説明がありましたからそれでいいのですが、どうも今日はあまりにも
消費拡大が行なわれ過ぎている、個人
消費の増大があるから
物価が
上昇をするのだ、こういうようなとらえ方があまりにも多いのですよ。で、総
需要の中における個人
消費支出の占める割合というものは、これは世界の各国に比べてまだ低過ぎる。こういうような段階の中で総
需要を押える、
国民のいわゆる
消費生活のその
需要面を抑制をする、こちらのほうをとるべきなんだという理論構成を立てますと、いわゆる浮動購買力というものを吸収する。これは昔からの経済理論の中にございました。浮動購買力を吸収するためには増税をやったほうがいい、あるいは
公共料金の
値上げをやったほうがいい、こういうような理論構成が行なわれてきたのですよ。私は過去の帝国議会
時代の
国鉄運賃値上げの
提案理由の説明を見てみたら、そういうのがありますよ。
昭和十三年、シナ事変が勃発をいたしまして、
料金改定を二十年ぶりにするときの
提案理由の説明の中にもそういうような事項が入っている。ですから、この総
需要抑制という問題から発展をさしてまいりますと、今度の
国鉄運賃の
値上げというものも、放置しておったらいわゆる増税という形はとれない、だから
公共料金の
値上げ負担という形で吸収をしたら、それだけ購買力が減ってくるんだから
値上げはいいじゃないかという理論構成も成り立たぬでもないのです。ですから、この総
需要抑制という問題が出るたびに、私は、一体ほんとに
政府の腹は何を
考えているのだろう、
民間に
消費の節度を呼びかけておるのだろうか、それともそういうような形において
民間のいわゆる
企業家の諸君が設備投資をできるだけ抑制していくようにすることをねらっているのだろうか、いろいろな角度から分析をしないとまただまされるぞ、こういうような気持ちになるのです。
そこで、
経済企画庁長官は経済学博士でございますから、最近の景気の動向というものについては非常に鋭敏に受けとめていらっしゃるだろうと思うのでございますが、どうも四十四
年度の新
年度のほうに入りましてから、四月ないし六月の第一四半期分を見てみますと、日銀券が千五百億くらいの増発になるそうです。それから財政収支じりを見てみまする場合に三千三百億円ぐらいの払い超になります。そうなると現金の需給のゆるみが二千億以上だろう、こういうふうに見られておるわけです。そうして、
企業の
資金需要というものは特に第二四半期にかけて非常に多く出てくるのではなかろうかといわれております。すでに都市銀行が日銀のほうと協議をしているといううわさによれば、第一四半期の四月から六月にかけましての都銀の日銀に対する
資金需要のいわゆる要望額というものは、昨年同期の二倍以上の貸し出しを認めてくれ、こういうようなことをいっておるようであります。その足取りを見てみましても、四十三年の十月から十二月の分ですが、貸し出し増が二九%、ふえているのです。一月から三月にかけましては昨年同期に比べまして五三%ふえている。非常に
資金需要が旺盛でございます。日銀は
資金のポジション指導をやっているのですが、しかしながらいまの勢いでまいりますと、これはたいへんな
民間の設備投資その他昨年投資をした分に対するツケが回ってきて支払いの時期に直面をしたので、それだけの
資金需要があるともいえるわけですが、そういうような
関係で非常に
金融に対する
需要が増大をしつつあるということがいえるのでございますが、こういうような問題について、これを放置しておきますと、まさに信用インフレが起こってくる
可能性が強まってくる。
私はそういうような立場から、この際、やはり
物価担当の
大臣として
——これは大蔵省が責任を持つのが第一義的でありましょうけれども、このような数字が出されてまいりました暁においては、あなたがやはり、もう少し抑制をする
方向で
金融政策を進めるべきじゃないかということを述べていただかなければならないのではないか、こういうふうに私は思うのです。その具体的な数字を私がいま申し上げましたが、その総
需要対策の強化といっても、どちらの
方向を向いて強化をするかということをよく
国民にわかるように、あなたの感じとともに
政策の
方向をこの際明らかにしていただいたら幸いかと思うわけです。