○森
委員 私は、日本社会党を代表いたしまして、
国有林野の
活用に関する
法律案に対し、反対の討論を行ないます。
戦後の農地改革によりまして、日本農業の生産力はかなり高まり、農村の民主化も進んだのでありますが、しかし、この農地改革も山林開放に手をつけず、山村における山林所有の形態をそのまま取り残すことによりまして、山村の封建性は温存され、旧態依然たる山村の支配
関係が今日に至るまで持続されてきていることは、私どももよく
承知しているところであります。
しかしながら、わが国の森林は、国土の保全等の公益的機能の確保と、木材その他の林産物を安定的に供給するという国民経済の
発展、国民
生活の安定をはかる上できわめて重要な使命をになっているのであります。
わが国の
自然条件は、きわめて急峻な山岳地形と、戦後の森林の乱伐から、風水害は年々増加の傾向にあり、また、工業用水、上水道用水など水需要も急増し、社会の進歩に伴って森林の公益的機能の拡充は、今後ますますその必要の度を増してきているのであります。
一方、木材の需要は、いわゆる高度成長のもとで年々飛躍的に増大し、
昭和四十四年度のそれは一億立方メートルに達するといわれております。他方国内生産は、
昭和四十三年度四千九百万立方メートル、すなわち、前年比九二・八%と一割近くも減少しているのでありまして、
昭和三十五年を一〇〇とすると需要は七〇%もふえておりますが、国内生産は
昭和三十五年とほぼ同じ、むしろ減少ぎみなのであります。
このような供給不足から、外国からの木材輸入は年々増大し、四十三年には四千万立方メートルの大台をこえ、
昭和三十五年の実に四・五倍にも達し、本年には、木材総需要の五〇%が輸入材でまかなわれると見られております。世界有数の森林国でありながら、世界最大の木材輸入国となり、山あって林業なく、木材は海で生産されるといっても過言でないのであります。
さらに、合板の原木の九〇%は外材であり、製材のそれも四〇%をこえ、それらのほとんどが独占的大商社の集中支配の手にあり、しかも、外材産出国における丸太輸出制限問題なども加わって、中小企業が支配的なわが国木材関連産業にとっては、きわめて深刻な問題となっているのであります。また、国産材の生産供給不足や、外材商社の思惑買いや価格つり上げなどによって、木材価格は依然として高騰を続けているのであります。
このように林業が後退していることは、単に需給の問題だけでなく、国民経済の上にとって重大問題といわざるを得ないのであります。林業基本法で指向している林業総生産の増大と国土保全上の任務を果たすべき
役割りを持ちながら、逆に林業総生産は減退し、森林荒廃による山地災害、風水害等が頻発しております。このような時期に、里山を
対象とする草地利用権の設定や国有林の開放など、林野の農業的利用を
推進す立場からのみ森林を取り扱おうとしていることは、日本林業の衰退に拍車をかけることになりこそすれ、いささかも日本林業を守ることにならないのでありまして、まさに国家百年の大計を誤るものと断ぜざるを得ないのであります。
わが党の山林
政策の前提は、山を国民のものにということであって、独占
資本と
政府が山を食いものにしようという立場と全く異なった立場をとっているのであります。すなわち、山を国民のものにするための
政策の基本として、次のことを
考えているのであります。
第一に、国土の高度利用の原則のもとに、国有林、公有林、民有林を含めて、科学的、民主的に土地利用計画を定め、山林原野を国民全体のために
活用すること。
第二に、この利用計画に基づいて、農用適地は国が農用地に造成して、農民に共同利用の形で積極的に解放する。
第三に、林業適地については、林業基本計画を樹立し、民有林経営もこれに基づいた計画伐採、造林等を指導し、切り惜しみや粗放経営の排除につとめる。
第四に、国有林の使命である国土保全、林産物の安定した供給、地元住民の福祉増進、林業
関係中小企業の育成及び国民のための保養施設の建設など公益的
役割りを重視し、国民全体の共同の財産であるという立場を貫くこと。
第五に、国有林に対する地元住民の民主的
活用の道を開くために、部分林の条件を
緩和して
活用させ、学校材、住宅材の地元払い下げや中小企業への特売を行ない、林道、橋など施設をつくって地元に利用させ、地元住民の雇用を積極的に行なうこと。
第六には、林業経営者の
共同組織を育成し、零細な山林所有者も共同化の
方向で経営の安定拡大、経営の高度化ができるよう国が積極的に指導援助すること。
第七として、林業労働者の福祉向上のために、雇用安定、労働条件
改善、社会保障拡充等を
推進すること。であります。
国有林野の
活用につきましては、林業基本法、
国有林野法、農地法等々現行制度によって十分なし得るにもかかわらず、あえてこのような国有林の生産基盤を左右する
本法案を急いで制定しようとする眞のねらいは、
国有林野売り払いをめぐる一連のいわゆる“黒い霧”を制度的に合法化しようと意図するものであり、加えて国民不在の農林
行政によって、ますます深刻化する山村の経済的貧困を国有林のボス的、利権的
活用によってしりぬぐいしようとするものであります。
以下、
本法案の具体的内容にわたり、反対の趣旨を申し上げるものであります。
まず、基本的
問題点は、国有林の
活用の課題を引き出す前提条件としての林業の基本
政策が、当然明確にされていなければならないわけでありますが、この点が全く放置されていることであります。
まず第一に、木材の国内生産の減退と造林の後退による外材輸入の増大という日本林業が危機に瀕しているとき、国内林業総生産を拡大するための
政策がないことであります。
第二に、日本林業の中核たる国有林の
役割りと経営のあり方について、
昭和四十年三月三十一日の中央森林
審議会の
答申に対する
政府の
方針が出されていないことからも明らかなように、国有林に対する
政府の基本
政策が明らかにされていないことであります。
第三に、農山村住民の急激な流出という、いわゆる過疎現象に対する総合的な
対策と、林政上の
役割りが明確になっておらないのであります。
第四に、林業総生産拡大のにない手についての具体的
政策視点がないと同時に、第五に、公有林野の破局的現状に対して、抜本的な林政展開が明らかにされていないことも看過できないのであります。
このような前提がないまま
本法案が提出されたことに、根本的な問題があるのであります。
次に、
本法案の具体的な
問題点を
指摘したいと
考えます。
問題点の第一は、国有林を開放させ、立木の売り払いや観光開発を
目的とするボス、大山林地主などが、自分の利益のために
本法案の成立を国有林開放の突破口として、国民の基本的財産を食いものにしようとしていることであります。このように利権のために開放を意図していることは、
国有林野制度の解体をねらうすこぶる悪質なものと断ぜざるを得ないのであります。
第二に、国有林の払い下げは、これまでもしばしば黒い霧問題を起こし、有効な資源を
活用するという口実のもとに払い下げした土地が、ゴルフ場や観光
資本へ転売されるという実例が多いことであります。
第三の
問題点は、
本案の大部分がきわめて抽象的な表現を使かい、払い下げ後の管理についてもあいまいであり、一部のボスの手に集中するおそれが強いなど、
法律の具体化は
政省令で行なわれることになっており、そのときどきの圧力によって
活用の
方針が、また
活用の方式が自由に変更し得る。まさに国有林開放、
国有林野制度解体の突破口となっていると断定せざるを得ないのであります。
第四は、払い下げを受けた者は、
活用の
目的に従って土地の利用を適正に行なわなければならないとあるのでありますが、土地の利用を適正に行なわれるための
政府の農林業に対する
施策は全くないといっても過言ではなく、農林業の根本的改革がまさに先決といわねばなりません。
以上、この
法案の意図するものは、真の民主的な
地域住民への
活用から逆行し、
地域住民の利益を締め出してきた今日までの国有林経営とその
政策への批判をそらし、むしろ合法化するためのものであり、
本法案の基本的な前提となるべき林政上の問題、さらには黒い霧につながるおそれのある
本法案の
問題点を明らかにいたしたわけでありますが、以上
指摘しました諸点から、この改正案に対し、日本社会党としては断固反対であることを表明し、私の討論を終わります。(拍手)