運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1969-07-22 第61回国会 衆議院 農林水産委員会 第49号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十四年七月二十二日(火曜日)    午前十一時一分開議  出席委員    委員長 丹羽 兵助君    理事 安倍晋太郎君 理事 仮谷 忠男君   理事 藤本 孝雄君 理事 三ツ林弥太郎君    理事 湊  徹郎君 理事 兒玉 末男君    理事 森  義視君 理事 稻富 稜人君       大石 武一君    大野 市郎君       金子 岩三君    小山 長規君       佐々木秀世君    白濱 仁吉君       菅波  茂君    瀬戸山三男君       田澤 吉郎君    中尾 栄一君       野原 正勝君    八田 貞義君       福永 一臣君    藤波 孝生君       伊賀 定盛君    工藤 良平君       佐々栄三郎君    實川 清之君       柴田 健治君    永井勝次郎君       芳賀  貢君    美濃 政市君      米内山義一郎君    神田 大作君       斎藤  実君    樋上 新一君  出席国務大臣         農 林 大 臣 長谷川四郎君  出席政府委員         農林政務次官  小沢 辰男君         農林大臣官房長 大和田啓気君         農林省農政局長 池田 俊也君         農林省農地局長 中野 和仁君         農林省畜産局長 太田 康二君         林野庁長官   片山 正英君  委員外出席者         経済企画庁総合         開発局参事官  小榑 康雄君         林野庁林政部長 大山 一生君         林野庁林政部管         理課長     新井 昭一君        専  門  員 松任谷健太郎君     ————————————— 七月十七日  委員伊藤宗一郎君及び渡部一郎辞任につき、  その補欠として大石武一君及び樋上新一君が議  長の指命委員に選任された。 同月二十一日  委員藤波孝生君及び松野幸泰辞任につき、そ  の補欠として増田甲子七君及び臼井荘一君が議  長の指命委員に選任された。 同日  委員臼井荘一君及び増田甲子七君辞任につき、  その補欠として松野幸泰君及び藤波孝生君が議  長の指名で委員に選任された。     ————————————— 七月十一日  農地法の一部を改正する法律案成立促進に関  する請願三木武夫紹介)(第一〇一三一  号)  同外一件(渡海元三郎紹介)(第一〇三九七  号)  中国食肉輸入禁止解除に関する請願外一件(  武部文紹介)(第一〇三九五号)  同(内藤良平紹介)(第一〇三九六号)  国有林野活用に関する法律案成立促進に関  する請願外三件(渡海元三郎紹介)(第一〇  三九八号) 同月十四日  中国食肉輸入禁止解除に関する請願阿部助  哉君紹介)(第一〇四七六号)  同(唐橋東紹介)(第一〇五九八号)  国有林野活用に関する法律案成立促進に関  する請願外一件(有田喜一紹介)(第一〇四  七七号) 同月十九日  農地法の一部を改正する法律案成立促進に関  する請願細田吉藏紹介)(第一〇八六二  号)  中国食肉輸入禁止解除に関する請願村山喜  一君紹介)(第一〇八六三号)  国有林野活用に関する法律案反対に関する請  願(安井吉典紹介)(第一〇八六四号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  国有林野活用に関する法律案内閣提出、第  五十八回国会閣法第八八号)      ————◇—————
  2. 丹羽兵助

    丹羽委員長 これより会議を開きます。  この際、おはかりいたします。  去る十七日の農林水産委員打合会の記録につきましては、本日の会議録の末尾に参照として掲載いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 丹羽兵助

    丹羽委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————
  4. 丹羽兵助

    丹羽委員長 国有林野活用に関する法律案を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。米内山義一郎君。
  5. 米内山義一郎

    米内山委員 私は、農林大臣並びに林野庁長官にお尋ねしたいと思います。  いま、日本の山というものは荒れに荒れていると思うのであります。このままで経過するならば、日本山林というものは全く荒廃に帰するのではないか、こういう見解を持っておるのであります。  と申しますのは、林業白書を見ますと、カナダあるいはアメリカ、西ドイツその他の国々と、一人当たり蓄積あるいは一ヘクタール当たり生産量というもので比較しておるのでありますが、日本の今日の高度に発達した経済社会におきましては、たったこれだけのことを対象にして日本林業を考えるべきではないと思うのであります。すでに木材需給関係は問題にならない。需要は非常に旺盛であるが、生産は停滞しておるし、また、伐採量生長量を上回っておる。そうしてこの傾向というものは、いつ平静な状態に戻るかということも予測がつかないような状態なのであります。  大臣見解を求めたいことは、これは大臣であろうが一人の政治家であろうが、われわれはもっと百年、二百年後の子孫に責任を持つという考え方が、この際特に重要ではなかろうかと思うのであります。工業の成長により輸出が拡大するから、石油にしろ鉄原料にしろ輸入が可能なのでありますが、しかしその石油でさえ、資源の量というものには限度があるといわれている。国民の未来というものは限界がない。こういうときに、特にこの農林業というものは、不足ならば買えばいいんだということでは済まされる問題ではないのであります。われわれはもっと長期的に、もっと理想に基づいて林政というものを考えるべきではなかろうかと思うのであります。  しかも、特に営林政策と申しますか、国有林政策におきまして、われわれは日本林政貧困と申しますか、官僚制と申しますか、これを如実に見るのであります。国有林制度ができた古い歴史的なことにいまさら立ち戻らなくとも、その後の営林事業国有林制度というものは、山の下の人民のためにどういう役割りをなしてきたか、その地域発展のためにどういう貢献をしてきたかということを、私はこの際お聞きしたいのであります。  特に、国有林は偏在しております。全国まんべんなく存在していない。東北、なかんずく青森県は極端な国有林偏在地であり、しかも、その中におきまして農業環境産業経済環境が最もおくれている。青森県で申しますならば、下北半島とか津軽半島というようなものは、下北半島国有林があるのじゃなくて、佐井村に国有林があるのじゃなくて、国有林の中に半島がある、国有林の中に村が存在するというような実情にあるわけであります。しかも、こういう地域は例外なしに県下でも貧しいのであります。   〔委員長退席三ツ林委員長代理着席〕 海に面して、海の資源枯渇状態である。うしろの山は国有林である。軒下から国有林である。牛を飼いたくとも、その土地はきわめて強く制約されております。一般的には漁業で今日まで生活してきましたが、今後生きるとするならば、村にとどまるとしたならば、他の陸上産業と結合せざる限り村で生きていく道がありません。こういうふうな地域に対して、山下国民を豊かにするために、国有林はどういう貢献をしてきたかということを私はこの際お尋ねしたいのであります。  そのために、市町村担税力が低い。市町村の財政が困窮している。林野の所在地に対する交付金というものは、これに実質的にこたえる何ものでもなかった。これは今日に始ったものではない。明治以来の問題である。この貧困蓄積が、今日この地域住民を、とどまるも地獄、出るも地獄というような状態におとしいれているのが事実であります。こういうことを根拠にして、国有林開放の運動が起きるのはあたりまえのことだ。この根源についてどう考えるか。特に、こういうふうに経済的に強い力を持ちながら、個々具体的には林野官僚というものは人民を卑下し、官尊民卑の態度を今日まで変えなかった。戦後の民主化の時代においても、戦前ほどではないとしても、依然として経済的にも、心理的にも住民圧迫感を脱却できない状態にあります。  したがって、われわれの地方では、農家自分生産した米で酒をつくることは自由だというが、税法ではこれを押えている。税務署の役人酒かぎという。酒官吏という。農家の小屋の酒のにおいをかいで歩くから酒かぎという。山役人山悪人というのは、明治、大正に生まれたわれわれの世代の人の脳裏には、まだこれはこびりついているのです。  戦後、農地解放が行なわれたときも、青森県のように国有林賦存状態の多い、あるいは平地国有林の多いところでは、その開放された面積も多いが、しかしながら、部落民ほんとうにほしいところにおいては、林野役人が村のボスと手を組んで、共用林開放を阻害した行為も幾多もある。そうして農民が、いままで部落の近くに牛の牧野として借りているところを、開放されることをおそれてこれを取り上げて、次の日にうろたえて植林をして、そして農民牧野山岳部のほうに追いやった事実もある。私は、その牛の牧場として貸した牧野を踏査したことがあるが、その傾射角度、その土壌の性質からいって、シカやカモシカならば可能だが、牛などとうてい歩ける牧野じゃない。  こういう山下住民生活無視状態を今日までやり続けてきたのであるが、私は、何としても国有林におけるこの官僚制、これを脱却しなければならない。官僚制根源は何であるか、これを明らかにすることが重要だと思うのでありますが、この法案は、はたしてこういう政治的な課題にこたえるものであるかどうかを後段でお尋ねするわけでありますが、林政の基本的な問題について、大臣並びに長官から御所見を伺いたいのであります。
  6. 長谷川四郎

    長谷川国務大臣 御承知のように、わが国が戦中から戦後にかけて過伐乱伐した、こういうような点については、他国の例もお出しになったようでございますけれども、他国とは全く違った過伐乱伐が行なわれて、先ほどお話しのあったように、国有林といわず民有林といわず、全く見る影もないような状態林野がなっておった。しかしながら、その後二十有余年間ほんとうに手がけてやっと今日、幾ぶんでも見るべき状態林野植林されてきたということは、米内山さん御承知のとおりだと思うのでございます。  したがって、今後もさらに生産基盤の整備もやらなければならぬ。そして、さらに生産向上をはかっていかなければならぬ。御指摘のあったように、外国からの輸入材というような点につきましても、でき得る限り国内の生産によって防止策をとらなければならぬ。しかしながら、五年や十年、二十年において木材としての役割り木材建築材としての使用をなかなか果たすことができないということは、御承知のとおりであります。でありますから、せっかくただいま、それらのお話のあったようなお答えができるように、植林植林未開地にまで手を伸ばして、でき得る限りの植林を行なって、その合理性をあらわしておるところでございます。  さらに、貧しい方面の人たちというか、そういう方々にはどうするかというようなお話もございますが、今回の活用によって、ひとしくそういう人たちにも潤いが幾ぶんでも保てるように、国土完全利用ができ得るような方途を開いていきたい、これが今回提案をしておるその一端であると私は信じてやみません。  でありますから、ただいま米内山さんのおっしゃったような点については、今後これらの活用利用、そういう点に重点を置いて、部落の繁栄というか、過疎地帯というものは、なるべくそういうことにならないような方向に導いていく考え方でございます。
  7. 片山正英

    片山政府委員 ただいま大臣がお答え申したのに、若干補足いたしましてお答え申し上げたいと思います。  先ほど先生は、日本の山が荒廃をしているじゃないかというお話でございます。確かに大臣御答弁のとおり、戦中から戦後にかけて、過伐、乱伐ということから山が非常に荒廃いたしました。その復興のために、造林面積というのは、終戦後戦前の約三倍から四倍毎年実行してまいりまして、大体昭和三十年ぐらいの段階におきまして、未植栽地解消をはかったわけでございます。しかしながら、やはり災害等によりまして、残念ながらまだ荒廃地は、面積の約一%弱でございますけれども存在をいたしております。したがいまして、これらについての解消は、治山、五カ年計画等の推進によって達成いたしたい、かように思っているわけでございます。  それから、世界森林事情日本森林事情からの御指摘がございましたが、なるほど日本森林国といわれ、六八%が森林だといわれながらも、世界と比較いたしますと、一人当たりに換算いたますと、米国の八分の一ぐらい、あるいはカナダに至りましては八十分の一ぐらいの森林しか持っておらないのが現状でございます。したがいまして、日本木材需要にこたえる姿として、これをどうするのかということがわれわれの責務であろうと思っております。  したがって、先ほど御指摘生長量以上に伐採する現況はおかしいじゃないかということの御質問と関連するわけでございますけれども、日本のいまの森林は、半分近くはまだ未開発の点もございます関係上、生長量というものがゼロに近い山が多いわけです。腐っていく木と伸びる木とが相半ばいたしまして、その林地生長量がほとんどゼロである、こういう林地がございます。したがいまして、そういう林地生長量の高い旺盛な森林に切りかえていくという方向をとっておるわけでございます。民有林につきましては、薪炭林用材林に切りかえるという方向をとっておるわけでございます。したがいまして、その間におきましては、われわれのことばで言いますと更新期間と言っているわけでございますが、悪い山をいい山にする。その更新期間におきましては、生長量よりも伐採量が多くても、さらにより優秀な山々育てるという目的でございますから、その中で、将来は非常に安定した形になるわけでございますから、そういう方針をとっておるわけでございます。したがいまして、それらの関連で、昭和四十一年に森林基本計画というものの閣議の決定々いただきまして、それに基づきまして、具体的な計画を樹立してやっておるのが現況でございます。  それから、国有林開発が非常におくれ、あるいは地元民が、国有林があることによって非常にまずい面があるのじゃないかという御指摘だったと思います。御承知のように国有林事業は、基本法の四条できめられておりますが、それ以前からも、国土の保全と水資源の涵養、それから木材生産を継続的に、保続的に維持する、それから地元民福祉向上、この三つ目的のもとにそれぞれ進めてきたわけでございます。地元民福祉向上に対しても、継続的に木材を供給するとか、あるいは地元民共用林部分林制度利用するとか、そういうことで、つとめていまの三つ目標に対して対処してきたわけでございますけれども、先生指摘のように、官尊民卑と申しますか、そういうことがあるじゃないかということにつきましては、われわれとしまして、少なくとも新しい憲法の下において、そういうことのないように指導はしてまいっておるわけでございます。今後とも十分そのような大きな三つ方向に対処するように指導してまいりたい、かように思っておる次第でございます。
  8. 米内山義一郎

    米内山委員 官尊民卑ということばはずいぶん古いことばで、近ごろはあまり使われないことばだが、私の言うのは、そういう古い意味じゃないのです。今日なお官尊民卑であるという意味はどういうことかと申しますと、昔から山高きをもってたっとしとせずということばがある。木あるをもってたっとしとするわけだが、民主主義社会においては、木のあることはいいことであるが、木あるだけではたっといのではありません。木があり、なおかつ住民が豊かであって、はじめて山というものはとうといのです。山深く民貧しい、こういうことば官尊民卑以外の何ものでもない。個々の役人の民主的なことばづかいで、官尊民卑解消されたというべき筋合いのものではないのです。膨大な天然資源をその地域住民から強奪状態で収奪した日本国有林歴史から見て、与えるものは何もなかったはずだ。  たとえば、私は子供のときのことを現に知っておる。私の村の小学校の二百メートル先に二かかえもあるような赤松の美林があった。大火によってわれわれの家が焼かれて、地元住民に対して払い下げを受けたときに、その山の中の曲がりくねったものしか払い下げなかった。私の曽祖父が総代であったが拒否した、こんな木なら自分にもあると。こういう取り扱いを受けてきたころの私の村は貧寒きわまりない村だった。それが開放されて、今日では青森県でも中以上の農村になっている。私は、逆に考えると、国有林農業発展を阻害している事実には疑う余地がないと思う。炭、たきぎを安くもらったくらいで、農民は今日の社会に生きていけるものじゃないのです。こうするならば、国有林が今日まで存在し得たのは、こういうふうな住民生活の低さの上に、同時に住民の意識の低さの上にあぐらをかいておったと思う。  営林事業においては、山下農民をきわめて安い賃金で何十年となく使ってきた。考えようによっては、住民の犠牲の上に、収奪の上に営林事業が成立したのです。昔から、人の車に乗せてもらったならば、やがてはその人を背負う気持ちでなければならぬということばがある。一体政府はそういう気持ちでこの法案を出しているのかどうか。私の見解を申し上げるならば、単にこういうことだけではなしに、政治的な意義歴史的意義、経済的な意義だけではなしに、住民だけではなしに、国有林そのもの開放を要求していると私は思う。青森県の国有林の山々を歩いてみると、こだまが開放を要求していると私は思うのです。そうせざる限り、あの山は近代的な山林になることは、私は不可能だと思うのだが、今度の活用法案というものは、そういう意義を含むものかどうかということを、あらためてお尋ねしたい。
  9. 片山正英

    片山政府委員 今回の活用法案は、前にも御答弁申し上げましたが、農林業構造改善地域振興上、いま農林業の置かれている立場は非常にきびしいわけでございから、そういうものを達成するための積極的な開放活用のしかたはどうあるべきかということで、この法案を出しているわけでございます。したがいまして、農林業構造改善地域振興、そういうものに積極的に対処してまいるというのが、本法案内容でございます。
  10. 米内山義一郎

    米内山委員 それでは、この法案は何年間に何十万ヘクタールぐらいを活用に供するという意思があるか。いいことは大きくやる必要がある。そうして早くなければならない。積極的でなければならない。ごまかし政策ならば、わずかずつ長年にわたってやったほうが人民はごまかしやすいだろうが、いいことは大きくやることなんだ。そうして早くやることだ。林業構造改善のためには、一体何年間におよそ何十万町歩国有林をさくつもりなのか。牧野のためにはどうやるのか。農業経営規模拡大のためには何十万町歩さこうとするのか。何年目ぐらいまでやるのか。なぜこの法案時限立法にしなかったのか。  農民開放を要求するのは、営林署から見ても、営林事業から見てもいいところだ。山岳部のブナの木しか生えていないようなところでは農民活用できない。ところが、そういう場所は営林署にとっても、営林事業から見ても、事業収益を上げる上からいってもいいところなんだ。ほんとう農民の要求にこたえてやるならば、いいところを出すべきでしょう。ところが、十年先に開放されるのかどうかわからぬところに、営林事業計画的なものができるでしょうか。本気でやるならば目標を明らかにして、この法律によって何十万町歩、全国有林野の何十%を出すのだ、特に青森県とか岩手県というような国有林賦存状態の多いところにおいては、これこれくらいは出すのだ、こういうことが明示されてしかるべきだと思うのです。これはきわめて常識的なことなんだ。これも出さずに、何ら具体的な項目のない法案を出された意図というものは何であるか。われわれが最もこの法案に対して疑いを持つ点はこういう一点なのでありまして、この点をひとつ、明確にできるならばしてもらいたいし、できないならばそれでよろしい。時限立法にしなかったのは、何百年もだらだらと、牛の小便のように国有林活用していくのだというふうなやり方ならばそれでもいいが、いずれにしろこれは大事な点であるから、これを明確にしてもらいたい。
  11. 片山正英

    片山政府委員 今回の活用法は、先生おっしゃるように、あらかじめ面積をきめて、これだけを活用するという方向じゃなしに、現在農林省がいろいろ推進しております、先ほど申し上げました農林業構造改善事業であるとか、あるいは開拓パイロット事業であるとか、あるいは草地造成事業であるとか、そういう基本的な方向に対処するための内容と、その相手方を明確にしておるのが内容でございます。したがいまして、そういう事業計画が明確になった段階におきまして、国有林活用という問題を、土地利用高度化という観点から判断をいたしまして対処してまいるということでございます。したがいまして、現在、先生指摘幾ら面積があるのだ、こういう具体的の計画はございません。  それからもう一点、恒久法としておる、時限立法としない理由いかん、こういう御指摘でございますが、これは林業基本法そのものがいわゆる恒久法でございます。その基本法を受けました具体的の姿をここで明確にしたいというのが内容でございますので、恒久法として処してまいりたい、かように思うわけでございます。
  12. 米内山義一郎

    米内山委員 私は、ここで念のためにお聞きしたいのですが、国の林政責任を持っておるから、世界における林業のいろいろな対策なり、そういうものを研究調査されていることは当然だと思うのでありますが、林野庁ないしは政府が、最近の朝鮮民主主義人民共和国における林業状態はどうあるかということを、御存じだろうかということを私は聞きたい。けさのテレビにこういうことばがあった。お月さまに行けるときに隣の国に行けない世の中だ、こういうことがあったが、アジアにおける最も近い国、しかも朝鮮というのは、はげ山の代表的なものだった。あの寒い国において、わらを燃やしていた民族が、いまそのはげ山をどの程度に緑に被覆しているのか、どういう土地利用区分農業畜産、養蚕をやっているのかということを、皆さんは御存じだろうかどうかをまずお聞きしたいのです。
  13. 片山正英

    片山政府委員 朝鮮森林状況、なぜああいう状況になったか。これは、確かに過去のいろいろな焼き畑政策と申しますか、そういう転々とした焼き畑政策山林荒廃に導いたというふうにわれわれは判断をいたしております。したがいまして、現在朝鮮におきます山林政策というものは、一本の木でも非常に足りない、水も非常に不足しているという状況でございますから、それの植林関係の大計画に基づきましていま進行しておるというふうに判断をいたしております。  なお、北と南では若干違うようでございますけれども、基本方向としては、そのように考えておるわけでございます。
  14. 米内山義一郎

    米内山委員 これは人間の行き来や、特に政治的な交流がないから、知らないのも無理ないことだとも思うが、しかし、ああいう現実を知らないということは、これは重大な手落ちだと思うのです。  私は数年前に朝鮮へ行って見てきたが、朝鮮へ行って何よりも驚くのは、山が緑になってしまったことなんです。そして焼き畑でアワやヒエを食っておった朝鮮人民が、いまや基本的には、水田化できるところは水田化したし、その次の機械化できるところは雑穀畑にした、それよりも斜角の強いところは果樹園地にした、その上は桑園にした、その上は山蚕の畑にした、その上はことごとく植林は完了しております。問題は政治なんだ。それに資本、技術政策を集中すれば、世界はげ山がきわめて驚くような速さで緑化が可能なのです。私は、この点あなた方の怠慢じゃないかと思う。知らないならばともかくとして、しかし、隣のことを知らないということは、これは不見識だ。  それならば、同じ自由主義国家の中で西ドイツの林業をどう思うか。私はたまたま昨年の十月に西ドイツへ行きました。案内されたところはシュワルツワルトという森林地帯です。世界林学の発祥地といわれる場所をたまたま見たのでありますが、しかし、その後十日間西ドイツを回っている間に、実にその林政のみごとさというものに感嘆せざるを得なかった。われわれは青森県に住んでおって世間を知らないと、下北の山も山だと実は思っておった。寒山ということばがあるが、夏だけは緑で、冬は雪の上に草がはえたようなあの広葉樹の天然林は、少なくとも近代的な工業国家においては山とはいえない。なぜ何十年、一世紀にもわたって、古い時代はともかくとして、今日のように経済力が充実し、需要がふえることは明らかな中に、林業をもっと近代化し、大規模にやる道はなかったのかということを疑うのであります。ドイツの山林だって、あの戦争に負けたために荒廃せざるを得なかったのでありましたが、その後どういう制度で、ドイツの林業がああいう世界のだれでも感嘆せざるを得ない状態になったのか。民有林制度がよかったのか、部分林制度がよかったのか、国、州、地方公共団体が中心なのか。朝鮮と違って経済体制も似ておるのだから、この点については知らないはずがない。  特に、日本の基本農政というものは、言ってみると、ドイツを参考にしたというものじゃなくて、ドイツを模倣した。十分の一ないしは百分の一くらいのスケールに小さくして模倣したのが日本の基本農政だと私は実は理解してきたが、近ごろの日本の農林行政というものは、ドイツにはさまざまな点できわめて似た点があり、似通った点があるので、農林官僚もドイツについてはかなり勉強し、資料を持っておるはずだ。西ドイツの林政が、ヒットラー戦争の敗戦後今日のようなみごとな状態になったその基本的な政策は何であるかを、御存じならばお伺いしたい。
  15. 長谷川四郎

    長谷川国務大臣 西ドイツのお話でございますけれども、私もそう詳しくは聞いておりませんからわかりませんが、御承知のように、西ドイツは国有林でなく民有林であり、また、木材利用程度というものが、戦争中にも違っておったというような点、そしてその後の林業政策は確かにりっぱだったと思います。しかしながら、米内山さんはドイツの、その部分的なものを見て感嘆をしておるけれども、わが国においても、そのようなところはたくさんあると思う。しかしながら、奥地の未開発地帯、こういう地帯を今後いかに生長させるか、その目的を達するかという、これは一にかかって今後の林政の問題で取り上げなければならない問題だと思う。これらの問題は、何といっても林道の開発をやらなければならぬし、あわせて、これらに対するところの開発を徹底的に行なっていくべきだ、こういうふうに考えます。  しかしながら、決して私はドイツの問題を無視するのでもございませんが、あのような部分的な面を見るならば、日本にとっても決して劣っておらない点が多々あるということだけは、私は自信をもって申し上げられると思います。こういうような点で、今後につきましては、いま申し上げたような未開発地帯につきましては十分意を用いて、ただいまお話しのような点には手を尽くされるだけは尽くして早期開発をやりたい、私はこのように念願しております。
  16. 米内山義一郎

    米内山委員 私は、外国のことを根拠にして、日本農林大臣とこれ以上議論する気持ちはない。いずれ具体的な資料に基づいて、この点はどうかということは、機会を見てやりたいと思いますが、特に日本でも、吉野あるいは熊野、あるいは四国山脈の雨量の多い地帯のように、日本の林相のいいという地域もわれわれは見ておりますが、問題にならぬ。部分的に見るならば、わが国の吉野の杉にしろ、四国山脈の杉にしろ、竹林と思えるようなみごとなものがあります。だが、林業全体を見た場合に、問題があまりにも多いのです。これをドイツに見劣りしないと言うならば、あなたのひとりよがりとして私は聞きのがしておきます。  ところで、そういうふうな外国と比べるよりも、まず具体的にこの法案についてお聞きしていきたいのです。  国有林の偏在は事実なんですが、それはともかくとして、林政の偏在というものについて問題があるのではなかろうかと思う。たとえば、具体的な問題として、最近、昭和四十年以降年ごとに青森営林局が、林野特別会計の中でどれだけの生産をあげ、どれだけの経費を使って、どれだけの剰余をあげているのか、そしてそれがどのように使われているのか、大阪営林局と対比してお尋ねしたいのです。  御承知のとおり、国有林は単に木を切って木材生産するだけではない。特別会計の中で治山治水事業、建設省が本来やるべきような性質の仕事も負担している。こういうふうなことから、国有林生産量の多い地帯、面積の多い地帯は、絶対的にもおくれているし、相対的には著しく立ちおくれがあることは事実でしょう。認めざるを得ないでしょう。  というのは、われわれは国有林のある地帯は、ことごとく青森県のような状態であろうかと実は思っておったのが、あちこちを国政調査で歩いてみると、実は驚きにたえない。四国山脈にはあの山脈を横断する、県を越える峰越し林道というものが二本も存在しており、それがその後そのまま二級国道になっている。建設省は主要なる仕事々したのは、峰のトンネルだけだということをわれわれは聞いたのでありますが、青森県には、下北半島の東の村から西の村へ越える峰越し林道さ身ない。その地域は一〇〇%国有林だ。四国の県々越える林道は、国有林の地帯というものは二五%くらいしかないのです。そうしてこの林道の発展は、四国の産業経済、文化の発達に貢献している。こうしてみると、国有林というものもありがたいと思わざるを得ない。  青森県には、いま津軽地域から岩木川の奥を秋田に通そうという林道の計画があったり、最近になってから、下北地域における観光を兼ねる林道、あれなどがあるが、かってはこういうものがあったことを聞かない。こういうふうな、国有林内部の林政の偏在というものは何から起きるのですか。私はこの点をお聞きしたいのです。
  17. 片山正英

    片山政府委員 ただいまの国有林の偏在というのは、土地ではなしに林政としての偏在というお話でございますが、国有林の収支に関連しましての御質問のように承ったわけでございます。  なるほど国有林は、全国一本の収支の予算をつくっております。青森局だけが収支バランスとか、北海道だけが収支バランスとかというのではなしに、全国を一環とした施策をやっておるわけでございます。端的に申しますと、青森と大阪という御質問でございましたが、むしろ大きく見ますと北海道と内地、こういうふうに分けますと、北海道はやはり赤字と申しますか、支出のほうが多い現状でございます。内地のほうは、それに反して黒字の現況でございます。それから局別にいきますと、林相を改良しなければならない、新しい生長の旺盛な山にしなければならない、こういう森林を多く持っている営林局につきましては、少なくとも当面の投資は多いわけでございます。現在の林相が非常にいい場合には、当然投資よりも収入は上がってきておる、これが現況であります。国有林としましては、いかに全体の森林生長量の増大をはかり、総生産の増大をはかるかというのが目的でございますから、そういう局別ではなしに、全体の総生産を上げるべく努力しておる、こういうことでございます。  それから、先ほど先生に御指摘いただきましたように、青森県の例をとりますと、確かにわれわれも反省いたしますのは、林業というものは、たとえば五十年の伐期ということであれば、毎年毎年五十分の一ずつを切るのがたてまえでございます。それを一挙に切ればはげ山になりますし、あと後続する生産もございません。したがいまして、五十年伐期であれば、五十分の一ずつ切るのがたてまえでございます。しかし、重点の開発方式ということをとりまして、国有林の多い地帯においては、まず幹線林道というものをつくって、その中でこれを進めていく。したがって、幹線林道につきましては、地域開発との関連で先行投資をすべきであるという方向を打ち出して、現在青森でもやっているのを先ほど御指摘いただきましたが、そういう形で、地域開発ということで進んでおるわけでございます。  そういうような形で、国有林としては全体の林政と申しますか、少なくとも総合した日本の山のあり方は、こうあるべきだという方向の中で実施しておるわけでございますので、御了承いただきたいと思います。
  18. 米内山義一郎

    米内山委員 では、関連してお聞きいたしますが、近ごろは炭を焼く人も、石油ストーブをたいたり、炭がまにプロパンガスを持っていっているような状態で、薪炭の需要は著しく低下しているわけです。ところが、いままでの燃料の実情からいって、わが国の林野の中において、国有林においてもそうですが、特に民有林において薪炭林の占める割合はきわめて大きい。しかも、これは奥地と違いまして、どちらかというと里山です。シイタケや、ナメコのほだ木は利用できるが、その他今後あまり高度な利用は期待できない。この薪炭林をどういうふうにしてすみやかに林相を改善していこうとしているのか。これは単に所有者の林家の問題でなく、わが国の林業の復興のために最も重要な課題だと思う。  ところが、山村はますます過疎化している。木を植えたくとも人がいない。経済の高度成長にストップがかかるならばともかくとして、最も林業生産性の高い吉野、熊野の流域さえも、万国博覧会の影響を受けて、山の手入れをする人手がない。植栽する人手がない。あったとしても、これは老齢者である。しかも、賃金はますます高騰しているという実情なのです。戦後の極端な混乱のときには、植栽しても、手入れ不十分のために雑木の繁茂によって、二度植栽しなければならないような事態も至るところにあったのでありますが、今日また同じような状態で、森林を改良しようとしても、きわめて困難な問題ができてきていると思うのです。そうしてこの状態は、ますます深刻に進行しつつあると思う。これをやる方法いかん。あなた方の分別では、あなた方の考えでは、どういうふうにしてこれをやろうとするのか。少ない面積じゃないのだから、もっと大局的にものを考えて、民有薪炭林などの林相改善というものを、いかにしてすみやかに可能性のある方法でやろうとしているのか、その方針なりお考えをお聞きしたい。
  19. 片山正英

    片山政府委員 先生指摘のとおり、民有林の約半分近くが薪炭林だと判断しております。これは、戦前の用材と薪炭材がほぼ半々の需要形態を持っておった姿の中におきましては非常に円滑な需給があったわけでございますが、御承知のように、終戦後急激な薪炭需要の減少を来たしまして、その木材に占める薪炭のウエートは、戦前の半々から現在は五、六%程度に激減をしております。そのような傾向をたどっております。したがいまして、半分近くある薪炭林の改良は、われわれとして大きな柱の一つでございます。  したがいまして、これに対する対策といたしまして、まず予算措置といたしまして造林補助金を出しておるわけでございますが、この補助金の優遇措置というのをとっております。  それから第二点といたしましては、同じく金融措置としまして、薪炭林用材林に切りかえる、われわれのことばでいいますと拡大造林という表現をいたしておりますが、その拡大造林についての金融措置のまた優遇措置をとっておるわけでございます。  さらに、それが奥地林であるとか、あるいは水源函養の機能もあわせ持つ林であるというようなものにつきましては、国の全額投資ということで、森林開発公団による国の全額投資によりまするその用材林切りかえを実施しておるわけでございます。  予算措置といたしましては、以上のような諸点の施策を進めておるわけでございますが、問題は、先生の御指摘のように労務の問題がございます。そこで、われわれといたしましては、従来林業が山村におきまする余剰労務というものを中心にして雇用されておったというのは十二、三年前、いわゆる二、三男対策ともいわれる時代まで、これは余剰労力というものを対象にしたというふうに考えざるを得ません。しかし、今後の労務の姿におきましては、他産業に伍してやっていけるような体制を持つことこそこれを達成する問題だ、こう思っておりますが、一番われわれの苦労いたしますのは、林業はどうしても季節性というものがある。通年的の雇用が非常にやりにくい性格のものであるということを感じておるわけでございます。あるいはその所有者が非常に零細であるということもまたその一つの原因として通年化できないということもあるわけでございますから、それらを含めましたいわゆる通年可能な姿に持っていくことこそ解決の道であろうということで、林業構造改善等の推進の中におきまして、一つの方向として、森林組合の労務班の育成というものも通しまして、それによる社会保障の充実ということも相関連してまいりますので、それらもはかるということを目標にいたしまして、そういう形の中で労務の確保、労務の安定をはかってまいりたい、かように思って施策を進めておるわけでございます。
  20. 米内山義一郎

    米内山委員 林業は確かに通年雇用不可能な産業であるが、植栽すれば、よしんば出かせぎしておった間にも数十年の問毎日太り、生産がある。だから、必ずしも官地官木、賃金雇用でなくとも林業というものは成立する理論的根拠があると思う。戦前、解放前の中国がどこにも木がなかったのは、林政の根本的な誤りがあったからです。いわゆる民地官木という思想が長い間ありました。だれかたんぼや畑の端っこに木を植えれば、それは宮木だという思想があったから木が育たなかった。だから、墓場のあちこちに太い大きな柳しかないのが普通だったのです。林業というものは必ずしも官地官木でなくてもよい。官地民木という考え方を実情に合わせて拡大していけばいい。国には土地がある、資本がある、技術がある、権力もある。山下住民には土地がない、金がない、持っておるのは労力だけだ。林業を機械化し近代化し、りっぱな林道を山の峰を越えてまで通して、五里先であろうが自動車が行けるようにするならば、植栽は可能だし、大型の機械化によって山の整地は可能だし、あとは山火事を出さないように管理すればいいのです。民の持っている力を発揮させようとせずに、官僚だけでものを独占しようという思想があるから、この点の壁が開けないのではなかろうかという疑念を私は長年持っておる。どうです。公団でやるならば全額国家投資だというが、その市町村の能力、その地域住民の能力の限界まで山林開放してやったらどうです。ない者には、おまえたちには一切の補助をしない、こういうことではできない。  いろいろ活用法案にも、住民にはたいへんな誤解がある。あまりにも政治的にこれを振り回したために、あまりにも国有林存在市町村人たちが苦しんでいるために、国有林開放すれば、この請願書に判をつけば、やがて山が下がって、ただで分けるというような宣伝がなされて、そこに今日の運動の基礎がある。  だれが考えてもわかるとおり、確かに山村の人は貧困だ。貧困の原因は山を持たないことでもあるが、だがよく考えてみれば、国有林だけに罪はない。貧乏だから山が持てないのか、山を持たなければ貧乏なのか、国有林があるから貧しいのかというと、ここに非常に重大な問題がある。同じ青森県でも、国有林の賦存しない八戸を中心とした数カ町村がある。これは林野率のきわめて高いものであるが、民有林であっても山が深ければ民は貧しい。山が開放されていなければ農業発展しないのです。これは統計上も明らかです。下北半島国有林は九〇%もあるが、公有林、民有林七五%のこの地域は貧しい。担税力においても貧しい。県の所得統計においても明らかである。同じようなことは岩手県の北部にも存在するのです。そうすると、山を持たないから貧しいのじゃなくて、貧しいから山を持てないという論理のほうが正しいと思う。  いまの状態農民に、木も有料、土地も有料貸し付けだというなら、よしんば償還期限が二十五年間といっても、木が生長するまでには三十年かかるとしたならば、出かせぎしなければならない農民は、この開放された、活用に供された山から、自分の労働の成果を得ることはまず不可能だろう、大多数は不可能だろうと思うのです。ちょうどネコの手におまんまを持たせたようにこうやっちゃう、貧しい場合は。したがって、国有林の所有権分割によって林業構造改善しようとしても、実際問題として、山村民の少数のしあわせにはなるかもしれないが、ならないというのが私どもの見解なのです。あなた方はこういうふうな経済清勢、農山村の清勢の中でこれを活用して、植林して木は育ったとしても、それが山村民のしあわせにつながるとお考えになっているのか。そう信じてこの法案を出しておられるなら、その根拠をお聞きしたい。
  21. 片山正英

    片山政府委員 御質問にそのとおり合うかどうか、ちょっとことばが足りないかもしれませんが、まず、国有林があることによって、地元民とまるで無関係国有林事業をしているように承ったわけでございますけれども、国有林は、御承知のように定員内が約四万名、定員外の常用、定期が約四万名で、常用、定期の人はほとんど地元民でございます。地元民の方と打ち合わせながら、造林、育林あるいは木材生産、そういうものを実施しているわけでございます。そうやって雇用している地元民の方々の賃金という問題で、高い安いの問題の御指摘はあるかと思いますが、しかし、そういう形の地元民の所得ということに対しましては、これは国有林事業の運営の中で、御期待に沿うように運営し、十分対処しているというのが現況でございます。  それからもう一つ、山を持たせる場合のあり方としまして、部分林方式というのをわれわれは推進しておるわけでございます。これは御承知のように、土地は国のものでございますけれども、植えていただくのは地元民の方々という形で推進しておる部分林というのが相当ございます。地元民福祉向上ということ、あるいは関係の地元の学校部分林、そういう形で、それはそれなりに、地元民の方々の御要望によって打ち合わせながら実施している、こういうことでございますので、ひとつ御了承願います。
  22. 米内山義一郎

    米内山委員 これは大臣並びに長官から御意見を聞きたいのですが、山に木を植えるということは、農林行政の中ではきわめて単純な作業なんです。苗木を買って、穴を掘って植えればいい。ただ、整地をしたり、何年間かはかなりな手入れをしなければならぬ。そのためには、けわしい山を奥まで行かなければならぬ。道路の問題がある。敷地の問題は機械化の問題がある。したがって、一人で二町歩、三町歩林業経営というものはむしろ困難であって、十ヘクタール、二十ヘクタールというほうが、私は林業としてやれる可能性のほうが近いと思う。  そう言うとあなた方は、そんな金はどこから出すか。しかも、一人当たり二、三十町歩というと、国有林がなくなるという考え方林野庁役人などは持つだろうが、それでなければ国土は太りません。あなた方が一手に握って、日本列島が火山であったときから手を加えない山を、おれの山だというような思想で開発もしないよりは、こっちのほうがはかどる。資本、技術をあなた方持っているでしょう。森林開発公団の開発ならば、全額国家が資本を投ずるというならば、市町村よし、農業協同組合よし、計画が成り立つならば、官地民木の形でやったらいいじゃないですか。そのほうが早いです。愛護は行き届きます。離農する、離村する農家があったら、将来を見通した価格で国が買ったらいいでしょう。農地法では、離農する農家から借りるという制度もあるんじゃないですか。  二十ヘクタールの植林に、十万かかるのは高いと言うかもしれないが、米が不足というときに、八郎干拓に二戸当たり町歩ではないか。そして十アール当たり何十万もかけて、コンバインだ、お守り役の役人までつけて、米は十分にやってきた。いま木材は不足だ。国家がやらんとしたならば、これくらいのことはきわめて簡単だ。問題は、金の問題でしょう。これは国家財政の宿命でしょう。そうして経済の不安定でしょう。こういうふうなことをよく考えた場合に、木材価格というのが上がることは確かでしょう。したがって、山村の人たちもやろうとすればできる。官地民木でいいじゃないですか。官だって、まるでただというわけにはいきますまい。しかし、少なくとも北海道並みに——内地は二公八民だ。北海道並みに一公九民くらいにして、安い利子で長期に供給してやってごらんなさい、あなた方の苦労なしにできる。政府機関は林道とか土地造成をやればいいのです。きわめて早い速度で緑化が可能だと私は思う。こういう意味で、山は国民開放されることを望んでおると私は思う。  あなた方はいやだかもしれない。役人自分の財産のような気持ちで確かに国有林を管理してきたが、すでにあなた方を乗り越えて、客観的な情勢というものは、こういう形の近代的な開放を要求しておる。私が先ほどこだまが開放を叫んでおると言ったのは、そういう意味です。林政上この考え方は危険なのか、間違いなのかどうか、危機をはらむ部分があるかどうか、大臣長官と相談して答弁してもらいたい。
  23. 長谷川四郎

    長谷川国務大臣 お説のように、一町歩、二町歩お持ちの方が、植えつけてから五十年後に収入がある。その間の十年間は、まず下刈りをしなければならない。こういうような点でなかなかそれは困難だと、お説のように思います。しかしながら、二十町歩、三十町歩持っておるというような方は、やはりそれだけの、かけるだけの資力といいましょうか、それと年月を置けばある程度は順次伐採のできる立場にある。そういうような相違があるだろうとは考えます。さらに民有林の点で、民有林が売りたいというなら、国のほうはこれは買い上げます。買い上げないとは言わない。売ってくれるというなら、国に売りたいというなら、当然買い上げることはできまずから、そういうことがあるならば、私のほうではそれは買い上げてまいります。  しかしながら、今回の活用というのは、御承知のように、個人個人に払い下げていこうとかいうのではなくて、団体そのものに対して活用方法があるとするならばこれをやるとか、あるいは部分林方法をやるとか、こういうようなことが考えられておるわけでございまして、ですから、米内山さんがおっしゃるような、一人一人にこれを払い下げていくのだというようなことは、現在考えておらないわけでございます。  以下、こまかい点につきましては、また長官からお答え申し上げます。
  24. 片山正英

    片山政府委員 大臣の御答弁にちょっと補足いたします。  林業構造改善は、先生指摘のように思います。その場合に、一町歩なら一町歩というような小さな部分林というものをわれわれは望んでおりません。したがいまして、部落人たちの協業体というものをおつくりいただいて、その中で三十町歩とか五十町歩とか、大きな面積をそういう形で運営していただくことが望ましいということで考えておりますので、先生のそういう御指摘とわれわれの考えておるところとは合っておると思いますが、そういう形で推進をいたしておるわけでございます。
  25. 米内山義一郎

    米内山委員 よしんばそういう形の活用がなされることになったとしても、林業の技術体系がいまのままでは私はできないと思う。労働事情からいってそういうことになると思うのです。いかに山村の人といえども、今日の経済から独立、孤立していないのです。   〔三ツ林委員長代理退席、委員長着席〕 能率性、生産性の高さのないものは存在し得ない社会になっている。  そこで、林業の近代化というなら、まず機械化でしょう。大臣とか長官は忙しい職にあるから、外国を見て歩いていないだろうが、林野庁農林省には、こういう調査、研究がないはずはないのです。日本のように装置産業とかそういう工業は発達しているが、こういう林野の機械化というものは、全くみずから苦労して、ある場合には人間を機械化のモルモットにして、今日に至るまで——八郎干拓なんというものは、アメリカのインターナショナルあるいはクレイソンというコンバイン会社のモルモットだ。コンバインを使う営農というものはまだ確立の可能性もないのです。西ドイツあたりの林業がああいうふうな速度でいったところには、林業機械の問題が重要なんです。いわゆる林地における土地の所有制というような金銭上の問題も重要であったが、林業用の機械というものは——諸君のやっている林業近代化、機械化というものはとんでもないものなんだ。あなた方の最新の兵器は何です。白書にも書いてあるように、チェーンソーというものがあなた方の見方で近代化兵器なんだ。人間を職業病におとしいれるような、ただ能率があがればいいというようなものだけしかあなた方は採用していない。林道をつくるにしても、あるいはその林道を補修するにしても、同じ機械で切り払いをし、同じ機械で穴を掘り、その機械で薬剤散布をし、その機械で集材し、その機械で運材できるというふうな機械が、ドイツでは林業に一般的に使われている。こういうものを日本の国の、こういう活用される民間の林業にも取り入れる必要がある。  ところが、政府がやっているのさえここまでいかない。あなた方の近代化というものは手間減らしなんだ。時代に逆行するようなことだけだ。できるだけ人件費を押えながら、乱暴な近代化、能率化をはかるのが、あなた方のいわゆる合理化なんだ。だから、常に働く人との間に対立が起きざるを得ない。そして不誠実、不親切だ。白ろう病というような、あの単純な病理がなぜわからぬのです。別にぶたれたわけでもなく、かじられたわけでもない。指の末梢に血が通わなくなるなんというようなのは、ガンなどよりは簡単な病理に基づくものなんだ。まだこれを知らないでしょう。ドイツの医学では明確なんだ。動脈血が静脈に移るとき、非常なこまかい血管を通る。これを動静脈吻合という。これが心臓より低いところで振動を受けた場合、寒い状態で受けた場合に、この吻合が破壊される。こういう生理が明らかなら対策があるはずだ。しかも、この原理はドイツで利用されているが、この原理を発見している学者は日本の人なんだ。その辺の労災病院あたりのへっぽこ医者に頼んで、こういう原理のはっきりしたものさえ不可能なことにしておるのは、あなた方の怠慢じゃないか。実に無知識もおそるべきものだ。こういうふうな近代化というようなものは、あなた方の能率が高まっても、国民所得の増大とは結合するはずがない。人をばかにしたようなことばかりやっているのでしょう。  たとえば、岩手県で大山火事がある。近村の人が火を消しに行きますよ。国有林であろうが民有林であろうが、ほっておけば自分の家までも焼ける。よしんば国有林だけのところに地方の住民が火消しに行ったとき、あなた方は日当を何ぼ払うことになっておるか、長官は知っているだろうからお聞きしたい。岩手の山火事のとき、まっ黒焦げになって、まゆ毛が焼けるようなところまで行って山火事を消した人たちに、賃金じゃない、謝礼金を、一日につきいまの物価の相場で何ぼ出しておるか、これをひとつ……。
  26. 片山正英

    片山政府委員 山火事に対しまして、地元民がかけつけていただいて御協力をいただいたということに対しましては、予算的には一人二百円ないし三百円。しかし、これは賃金という意味ではなしに、御協力をいただいた寸志と申しますか、そういう気持ちをあらわしたものでございます。  しかし、この前の岩手の火事を通していろいろ御議論がございました。したがいましてわれわれは、出ていただいた方に気持ちとして寸志をお上げしたという気持ちでございますけれども、今後の方向といたしましては、やはり正当な賃金、雇うという賃金の形でこれを検討してまいりたい。そういう形で来ていただいた方もございますので、そういう点もあわせ検討してまいりたい、かように存じておる次第でございます。
  27. 米内山義一郎

    米内山委員 ついでだから聞きますが、単にそういう銭金の問題じゃなく、いま能率を上げるためにササを殺すというか、アメリカがベトナムでジャングルを枯らすような種類の、程度の薄いものを実際に使用しておる。これはササが死ぬくらいだから、付近のキュウリにも影響がある。農作物に影響がある。ましてや飲み水やいろいろなものに影響のないはずがない。あなた方は、これを飲んでごろんと死んだ者がないから人畜無害だ、こういうふうな考えでやっているだろう。少なくとも人の産業経済に迷惑を及ぼすもの、少なくとも人間の健康に影響を及ぼすものは、単に食品のみならず、疑わしきは使わないという考え方でなければならぬ。  こういう新聞記事があるが、山形県で町民の反対を押し切って、ヘリコプターでこういう薬をまいた事実がある。そうして被害を及ぼした事実がある。これを知っているのか、これに対して責任を感じているのか、この点をひとつ明確にしてもらいたい。
  28. 片山正英

    片山政府委員 山形県の事例を御指摘でございますが、林野庁のいまの造林に関する技術の一つとして、いわゆる下刈り関係の労務等の関係を考慮いたしまして、薬剤の散布による下刈りをやっておるということは事実でございます。これは全国的にやっております。  下刈りの薬品でございますが、これは先生も御承知のように、塩素系のものとそれからホルモン系のものでございますが、これはいずれも非常にそういう被害というものは少ない。これは実験的に調査をいたした結果でやっているわけでございます。たとえば、語弊があるかもしれませんが、食塩に例をとりますと、食塩よりもこれは害は少ないというほどの程度のものでございます。したがいまして、ほかの特殊の薬品というものじゃなしに、一般的に使われている程度の薬品でございますので、被害というものは考えられないというふうに考えて、実際実施しておるわけでございます。
  29. 米内山義一郎

    米内山委員 ついでだからもう一つ。ちょっとしゃべりずらい点もあるけれども、けしからぬことをお尋ねしておく。  近ごろ国有林生産協同組合、略称国生協というものが、営林局ないしは署の管理職であった諸君によって結成されておる。この任務というか、これの主要なる業務は何であるか。すでに秋田県などにおいては横断的につくられておる。青森県においてもこういうものはなされておる。他人は入っていない。局、署の管理職であった者だけで、名前は国有林生産協同組合というものだが、知っておりますか。聞くところによると、これは部落に払い下げられた木材などの処理をやるための企業組合だという話だが、だとすれば、それはけしからぬことだ。在職中は人民を虫けらのごとく扱って、退職後において山下農民の上前をはねようということが、下級官僚にまで及ぼしているということは許すべからざることだと思う。長官、これは知っておりますか。
  30. 片山正英

    片山政府委員 先生おっしゃいました生産協同組合というのは、ちょっと御指摘の点と違うかもしれませんが、確かに生産協同組合というのはあると思います。しかし、それは役人だけが結成しているものじゃなしに、いわゆる地元の従来やっておられた方、そういう方も含めまして、いかに合理的に材の生産をするとかいうような形で結成されたものだと思います。役人だけがそれを結成してどうという問題ではない、こう思っております。
  31. 米内山義一郎

    米内山委員 それはなくて幸い、あれば命にかかわるというものなんだ。とかく林野庁という事業官庁は、国民から見ると全く疑い深い対象になっている。あなた方のやることは常に国民から見ると、特に国有林山下で長年恨んできた人間から見ると、割り切れないことばかり多い。事業官庁というものは非常に魔力、魅力を持っておる。特に今度の活用法案の中において、国民が一番不安を持っているのは黒い霧の問題なんです。われわれの村の人たちは、山村の人たちは、私をも含めて、日本政治家のはらわたを割ってみたい、おそらく木くず、のこくずが出てくるだろうと、こう言うのです。食わない人間がないというくらい、国有林事業に対して国民は不信感を持っておるのです。  一つ聞いておきたい。戦後青森県の十和田市にある畜産協同組合には、十和田湖の渓流奥入瀬川に沿うた牧野があります。相当の面積で、しかもケヤキを含む、広葉樹を含む牧野が払い下げになった。これは今日どうなっているのです。何ぼで払い下げられたか。木を含んで、面積が幾らで、材積量が幾らで、価格が何ぼであったか、まずこの委員会の席上で明確にしてもらいたい。われわれは知っています。だが、これは国民の疑問に対して政府が答えるべき義務のあることだ。そうして、これが何年後にどういう金額で東京の材木商に所有権が移転されたのか。これに関連して牧野組合の何百人の人が署名して、営林局ないしは林野庁農林省に、こうしてもらいたくないという陳情をしたか、それはあるはずです。  しかも、この払い下げを受けた人間は国会議員であり、この委員会委員長だった。そうして、その山を買った会社の顧問は当時の委員長であった。言うてもいい。これは小笠原八十美という人だ。当時の農林大臣はあのタヌキづらをした何とかいう坊主だ。これはわれわれはみんな知っている。そうしてそのために涙を流して悔やんでいる。この買った木材会社の顧問を政治家がやっているという雑誌の記事が出るに至っては、これは国民は不安を持たざるを得ない。疑いを持たざるを得ない。この事実をまず明確にして、この法案にそういうことは絶対ないということを、確信をもって明らかにしてもらいたい。
  32. 片山正英

    片山政府委員 先生の御指摘のものは、おそらく三本木営林署管内め黄瀬山牧野所属がえ地だと思います。これは七百二十ヘクタールの面積で、立木は六万九千六百七十四石、当時は石という名前を使っておりましたが、石で、対価が二百一万九千七百三円で、この対価によりまして、三本木畜産協同組合が相手方でございます。二十七年の三月一日で農地局に所属がえをしておる林地だ、こう思っております。  以上であります。
  33. 米内山義一郎

    米内山委員 林野庁はそこまでではおわかりのはずだが、あとは農林省の農地局がこれは答えなければならないはずだ。農地局長、これは何ぼの価格で転売されたか。これは訴訟にもなっているから、あなた方これを調査してないはずがない。表向きの価格だけにしてもおそるべき暴利なんだ。政治家の腹を割ってみたら、木くず、のこくずが出るだろうというのはこのことなんです。これは農地局長、あなた方にとって重大な問題だ。あなた、知っているなら資料に基づいて答えてもらいたい。
  34. 中野和仁

    ○中野政府委員 林野庁から農地局のほうに所属がえになりました経緯につきましては、いま林野庁長官がお答えになったとおりでありますが、われわれの調査によりますと、その後昭和三十七年三月に地元の農業委員会を経由しまして、三本木の畜産協同組合とそれから株式会社小林商店の両方から、植林転用の目的で、農地法五条の許可申請が青森県知事に出されたわけであります。  そこで、県では審査の結果問題があるということで、再審査をさせて、意見進達をするようにということで一度書類を戻しております。その後、昭和三十七年十一月に農業委員会からは、不許可相当の意見が知事あてに出されております。それから、あと青森県の牧野協会の上北南部牧野連合会からも、転用反対の陳情が県に出されております。三十七年十二月に至りまして、申請者双方から、許可申請の取り下げが来ております。  それから一方、これはわれわれがその後県から報告を徴したわけでございますが、株式会社小林商店が、昭和三十五年五月に三本木の畜産協同組合との間で締結しました、売買契約に基づきます所用権移転登記の請求訴訟を起こしております。そして、その場合は三本木の畜産協同組合が被告になるわけでございますが、その裁判で、昭和三十八年五月十八日に小林商店のほうが勝ちました。そこで、その判決に基づきまして、昭和三十八年六月に小林商店のほうに所用権移転登記がされておるという事実を報告を受けておるわけでございますが、われわれとしましては、その間の取引が幾らであったかということは、残念ながら調査をいたしておりません。
  35. 米内山義一郎

    米内山委員 国家の財産をこういうふうに処理すべきものじゃない。これは私だけの議論ではない。農地法あるいは民法の合法、適法をもって論議すべき筋合いのものじゃないんです。社会的な道義も重要視しなければならない。常識をもって論断しなければならぬと思います。こういうことは、単にこれだけじゃありませんぞ。八甲田山南部の田代開拓地というきわめて因難な開懇地があるが、北海道の酪農の聖者といわれる富樫さんという老人が、下北半島の酪農集落に成功して、もっと困難なところに前進した。雪中行軍で五津隊が一個大隊全滅したもっと先の困難なところに開拓地を設定したのです。だが、その後の農業情勢が、開拓農民に対して不利に転換した。平たん部の畑地農民でさえ、困難をさらに通り越して由かせぎせざるを得ないとき、これらの人々は涙をのんで観光資本に屈従せざるを得なかった。これに対して、時の開拓行政というものは残忍きわまりない。  この上に日本鉱業の事業所がある。この地域にも地下資源があるだろうというので、開拓地の組合長と相談の上で、わざわざ開拓地内に温泉がわくという可能性と、硫化物ないしは銅鉱があるであろうということで、まあ銅が出なくても、硫化物が出なくても、湯ならば確実に出る、出たならば、開拓者諸君もふろ屋ぐらいはやれるだろうし、鉱山会社も従業員の保養地にしようということでやった。そうしたら湯がわいたんです。湯がわいたら県庁がどういうことをやったかというと、この川には天然の毒性がある。その上に、二・五インチのパイプから温泉水がわけば毒性がさらに加わるということで、この温泉を許可しなかった。開拓民は恩恵に浴せなかった。売ったら、元副知事というような人間がこの土地を買い占めて、観光地になっている。オープンのときに宮さまを連れていく。これが日本の開拓行政の末端における実態なんです。これじゃ国民は納得するわけにいかない。こういうふうな不親切な土地管理をやっている。  われわれは、何も憲法を否定するわけじゃない、財産権を否認するわけじゃないが、国土を保全するためにも、産業を振興するためにも、個人の所有権の一部の制限というものはあり得ると思う。都市の再開発でさえ、いまの所有権万能主義というものは今日開発を困難にしている。ましてや国の政策によって移動した土地を、まっ黒い手の人間にわしづかみにされるようなことを今後も黙認していくならば、国有林は泣くんだ、国民の財産は死ぬんだ。私はこの法案に対して限りない疑いを持つのは、こういう事実に基づいて持たざるを得ない。あなた方の答弁は、いままでやったことに対して何らの反省もなければ、国民に対する謝罪の気持ちもない。したがって、今後やることに対しても信用がおけないということは当然なんです。この点は答弁は要らない。  次に、農業活用について。いまも申し上げたとおり、平地農村部の畑作農業も困難であるし、開田はすでに抑制されているし、農業的に活用するというならば何を栽培すればいいのか。何を植えればいいのか。今会期の農政論議において、私は、たった一つ政府から聞きたいのは、今後の農業のために、どういう作目を選べばいいかということを聞いてくにのみやげにしたがった。ところが、この間の委員会で、あなた方はとうとうこれには答えていない。私の聞き落としだと思って、私は速記録をたんねんに見たが答えていない。官房長、もう一ぺん山村の傾斜地、火山灰地、酸性土壌、平たん地より幾多の条件の悪い農地を日本農民活用しようとして、何を植えれば手間賃になるのか、めしが食えるのか、お答えが願いたい。
  36. 大和田啓気

    ○大和田政府委員 先日の委員会でもお答えをいたしましたけれども、農作物はそれぞれの地帯、あるいはそれぞれの自然条件に従って適作物が選ばれるわけでございますから、抽象的ないまのようなお話で、そこに何を植えるかということをお答えすることは、農林省としてなかなかむずかしいと思います。  ただ、むずかしいことでございますけれども、そういう条件において山村から人が下って過疎地帯ができております反面、また畜産あるいは果樹の面で、山へ少しずつ登っておることも事実でございますから、技術指導あるいは金融の面のめんどう、開拓パイロット方式の推進等々の措置によって、私は、エネルギーのある農家が新しい農業を生み出して、相当山地に進出していくことは、今後も十分期待できると思います。
  37. 米内山義一郎

    米内山委員 畜産活用についてお尋ねします。  経済企画庁からお見えのようでありますが、新全国総合開発計画によりますと、数百万ヘクタールの牧野造成をして、そうして肉牛、乳牛、日本畜産的楽園をつくるというような構想とうかがわれる。工業の発展は金があれば、日本銀行が札を印刷して資金を供給すれば、今日の科学技術を活用して可能だが、悪い土地開発して草をとろうということは、やさしいようできわめてむずかしい仕事です。場合によっては、米を日本の反収平均並みにあげることよりも、山岳部で草を安定生産することは技術的にむずかしい。経済企画庁は、かつてわが国における草資源活用という、きわめて敬服にたえないりっぱな報告書を出しているが、こういう技術的な根拠に基づき、わが国の経済の発展の線に沿うて、新国土総合開発計画における畜産計画というものを、特に林野活用についてのあの構想というか、計画を出されたものだと思うのです。  わが国の現在の畜産問題において、飼料の自給度はますます低下している。特に最近はヘイキューブという、草を乾燥して圧搾したものまで輸入し、それが国内で栽培する牧草よりも、都市周辺の酪農経営には有利だろうというような太鼓をたたく者もある。そうすればアメリカのカリフォルニアの牧草栽培業者は、いわば農業における、畜産業における第一次産品みたいなものを輸出できる。これはたいへんなことになるだろうというので経済企画庁では、そういう日本の農林政策は不安でたまらないから、将来の国際経済のバランスがこわれることをおそれて、あえて経済企画庁が農業のはかまに片足を入れたと私は思う。  これは本気なのか、そうしてこれがこの活用法案というものと関連があるのか無関係なのか。少なくとも国の政治を総合的にプランを立てている経済企画庁は、その総合性とその具体性がなければ意味がないと思うが、この点をお尋ねしたいと思うのです。
  38. 小榑康雄

    ○小榑説明員 新全国総合開発計画におきましては、昭和六十年時点におきまして畜産物の需要が非常に増大するであろうという見通しから、これに対応いたしまして、一千万頭の牛を飼育するという計画を立てたわけでございます。しかし、この一千万頭を飼うということは、この計画にも書いてございますように、具体的な計画の進行あるいはその成果というようなものと相関連するものでありまして、確定的な目標ではないわけであります。それで、一応の前提であるというふうに書いてはあります。  開拓すべき草地百四十万ヘクタールは、一千万頭の牛を飼養するに足る粗飼料を自給するという立場から、百四十万ヘクタールが必要であるというふうに算出したものでありまして、これの実施につきましては、個々のプロジェクトが具体化した際に検討されるべきものであるというふうに考えますし、また、この数字を算出するにあたりましても、主務官庁であります農林省とは十分に打ち合わせをしたものでございます。  この国有林野活用に関する法律と直接の関係というわけではございませんけれども、しかし、この計画を推進するにあたりまして、やはり一つのよりどころになるものであろうというふうに考えておる次第でございます。
  39. 米内山義一郎

    米内山委員 最後になりましたが、大臣にお尋ねします。  このつまらない法案を中心に長い時間お尋ねしたわけでありますが、まだこれはズロースを脱がせるところまでいっておりません。だが、これは時間の制約がありますから、同僚諸君によってやられると思います。  そこで問題なのは、私はこの法案よりも重要なのは、日本林政であると思う。林政をいまのままにおくなら、単なる政治的迎合です。およそ上衣は脱げたでしょう。しかし、林業活用畜産活用農業活用、どれ一つ希望の持てる政策を裏づけるしろものでないということは明らかだんです。そうするならば、急がれることは、五カ年計画等ありますが、これは日本の現在の森林荒廃しておる、需給バランスがこわれておる、輸入依存度が高い、値段が上がる、国民は家を建てたくても、もう間もなく鉄やアルミニウムのほうが安くなるという時代になっているので、こういう国民の要求にこたえるためにも、林政というものを私は出直してもらいたい。  そのためには、何としても国有林は先頭を切らなければならない。そのためには、何としても明治以来単なる習慣としてなされてきた安上がりの便宜主義の国有林特別会計というものから国有林を解放しなければいけぬ。これある限り、そこに官僚があぐらをかいて国民の指弾を受ける反民主的な、およそ自由民主党の期待にも沿わないような林政が存在するのです。私は長谷川大臣に、来国会から国有林特別会計をなくせという要求はしないが、少なくともその方向に向かって、行政の責任者として、政府を構成する一人の政治家として、そのことを要求申し上げたいのです。いいかげんなことをやることは、やらないことより悪いのです。こんないいかげんなことでいくならば、この法律は、もし法律になったならば林政自体、国の営林事業自体の首を締めるようなことにもなりかねぬというような不安を持つのです。最後に、私は大臣の勇気ある所見を伺って質問を終わりたいと思います。
  40. 長谷川四郎

    長谷川国務大臣 いろいろ承りまして、私もだいぶりこうになりました。したがって、森林の持つ経済的な機能、また公益的機能、こういう点もつとめて積極的に行なっていくように、機能が活躍できるような方法をやっていきたい。さらにまた、今後の林政という点につきましては、もちろんこれらをあわせまして、そして林政というものをもっと総合的にやっていかなければならぬ。  したがって、総合農政ということばもあるとおり、これらと見合わせて十分に御期待に沿うような方向にいきたいと考えております。ただ、それには今回の活用法案もあわせてひとつ両立するような方法でもって進めていきたい、こういうふうに考えております。
  41. 米内山義一郎

    米内山委員 たくさんの答弁ありがとうございました。これをもって質問を終わります。
  42. 丹羽兵助

    丹羽委員長 午後一時三十分に再開することとし、これにて休憩いたします。    午後零時五十一分休憩      ————◇—————    午後二時五分開議
  43. 丹羽兵助

    丹羽委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  午前の会議に引き続き質疑を続行いたします。芳賀貢君。
  44. 芳賀貢

    ○芳賀委員 まず、農林大臣にお尋ねします。  今回の国有林野活用法案内容というものは、非常にこれは単純なものでありまして、今日まで農林省の事務次官通達で行なった活用の方式が法律に書いてあるだけのものですからして、何も特別に法律をつくる必要はないというのがわれわれ社会党の主張であります。法律をつくらなければならぬということであれば、むしろいままでの国有林活用が、農業あるいは林業構造改善に十分寄与できるような行政努力を怠ったということになると思うわけでありますが、大臣はどう考えておられますか。
  45. 長谷川四郎

    長谷川国務大臣 行政努力を怠ったという意味ではないのですけれども、国有林野事業の使命が、その保有する林野について、国土保全その他の公益的機能をさらに有効に確保されるように配慮しながら、その適正な管理経営を行なって、そして、今日までいろいろ話題になってきておる重要林産物の需給及び価格の安定に貢献をして、ともに奥地未開発林の開発等に力を入れて、そして林業の総生産に対する増大をさらに期していきたい、こういうような点もあわせておりますし、また地元産業の振興とか、地元農山村の住民福祉になり、それが福祉向上につながるような方法をとってまいりたい、こういうような考え方でございます。
  46. 芳賀貢

    ○芳賀委員 いや、そういうことをいま聞いたんではなくて、農業並びに林業構造改善に資するために国有林野活用するということは、これは林業基本法を制定した際の議論の中にもあり、また農業基本法の審議の中でも、農業林業の経営が総合的に行なわれるようにするために、国有林としての寄与すべき方策いかんということについても議論が行なわれておるわけです。それを受けて、事務次官通達でありますけれども、通達に基づいて、林野庁が主体になって活用に行政努力をするということになっておるわけです。   〔委員長退席三ツ林委員長代理着席〕 だから、その努力の実績があがれば、次官通達と同じことが書いてあるわけですから、何も大騒ぎして法律を出して、何年越しにも議論をするむだというものは要らないことになるわけなんですよ。  ですから、大臣としてながめられて、一体次官通達というものが、積極的に林野庁を中心として効果的に運用されたかどうかということについては、どう考えていますか。十分やったというふうに考えておるか、全然やらなかったと考えておるか、その点はいかがですか。
  47. 長谷川四郎

    長谷川国務大臣 次官通達にあわせまして、三十八年から構造改善という点には重点を置いてやっておりますけれども、国民経済というものが異常な発展を続けておりまして、したがって木材の需給、こういうような点にも非常な変化を来たしておる。こういう点について、すなわち建築用材と申しましょうか、建築用材だとか、あるいはパルプだとか、こういうようなものの需給というものが非常に大きく変化をしてきている。そういうところに構造の変化があるわけでございまして、こういうものにやはり合うような方法を今後とらなければならない。  したがって、次官通達そのものが役に立ったか立たないかという点については、別に私は役に立たなかったとは言い切れないだろう。十分活用はされてはいるけれども、さらにもう一段需給を満たすべきもの、また需給に対して不要になってきている木材、そういうようなものがありますから、そういう分野というものをさらに確立をして、不要の分は、そのほうに対しましてはそれ相当の措置をとりながら需給を拡大していく方面に移行していく、そういうようなやり方をすべきだろう、こういうふうに考えるわけでございます。
  48. 芳賀貢

    ○芳賀委員 そういたしますと、農業構造改善に寄与させるために次官通達を出したが、その後、最近の経済事情の大きな変化によって木材需要というものが急速に伸びておる。それに対して、国内の国有林あるいは民有林林業生産を通じての供給はなかなか追いつかない。したがって、その不足分は、総需要量の四〇%をこえるものを外材に依存して供給してているような状態であるので、やはりこの際農業部面に対する林野活用ということも、当時次官通達で道を開いてあるが、そこまでは手が回らぬ。国有林野事業本来の事業を進めるということが政府としての当然の責任であるので、まず正しい国有林野事業を通じて、木材の激増する需要に対応するための仕事を重点に進めていくと、結果的に活用の部面については、せっかく次官通達等を出してやってみたけれども、そこまで手が伸びない。むしろ集中的に国有林本来の、国の企業としての生産を高め、供給を持続するということのほうが、本来的の使命達成としてとるべき方策であるということで、結果的には活用の実があがらなかったということですね。
  49. 長谷川四郎

    長谷川国務大臣 実があがらなかったといえばなんでございますけれども、そうではなくて、需要というものが非常に大きく変化をしてきている。たとえば、石炭の生産量の減少に伴って坑木が不必要になってきているとか、あるいは薪炭材が著しく減少してきているとか、こういうような経済成長に応じて変わってきている。したがって、建築用材、パルプ用材を中心としたものの需給というものが非常にふえてきている。こういう面に対するところの、今後は需給の増大しているほうに向かって、需要生産のバランスがとれるような方向に持っていきたい。  反面さらに、御承知でもありましょうけれども、今回の活用もさることながら、たとえば五千とか一万とかというような小さい都市におきましても、畜産といいましょうか、養鶏とか養豚とかこういうようなものに対しまして、公害問題が非常に起きてきておる。でありますから、こういうものをやはり団地的な方向に向けていくということをやらないと、やはりその公害問題とあわせてその畜産の増大をはかっていくということができ得ない。こういう面もありますので、そういう面に対する活用をあわせて行なっていくような方向にひとつ持っていきたい、こういう考え方でございます。
  50. 芳賀貢

    ○芳賀委員 ただいまの農林大臣の発言は、われわれ社会党の方針とおおよそ合致しておるんですよ。いままでの各法案の審議あるいは米価問題等の論議を通じた場合には、どうも大臣の発言がわれわれの質問と食い違って、かみ合わぬようなことがしばしばでありましたけれども、いまの御発言はそのとおりなんですよ。国有林野事業本来の使命に立って十分の努力をされておるが、それでも増大する需要にはなかなか追いついていかない。やはりこの際国有林事業が中心になって、民有林の適正な経営とか生産の増大というものを誘導しながら、できるだけ外材の輸入を急激に増加しないような形で、国内の木材需要に対しては国内の林業生産を通じてこれに対応させる、こういうことは当然のことですからして、それを全精力を傾注してやっても、まだ外材の輸入がどんどんふえているわけですからね。それにもかかわらず、大事な本来的な使命をややもすれば放てきするような態度で、国有林活用するとかなんかというところにあまり精力をさくということは、これは林野庁という役所の本来的な使命を逸脱するようなおそれがあるんではないかというふうにわれわれ心配しておったわけですが、いまの農林大臣の答弁で、相当意を強くすることができたわけであります。  そのとおりであるとすれば、この法案の取り扱いについても、通達で行なっても、法律でやっても中身は同じであるということになれば、むしろ行政的な責任を十分確立して、そうして弾力ある行政運営をされたほうがよろしいのではないかというふうに思うわけでありますが、この点についても同じ御意見ですか。
  51. 長谷川四郎

    長谷川国務大臣 通達で出しても法律で出しても、同じようなものはどちらでも同じようなものだと私も思います。しかし、その効果といいますか、効率的運用が、法律だとやはり可能になるというような考え方を一般大衆は持っておりますし、そのほうがまた価値があるようにも考えておりますが、しかし、今回法律を改正したといってみても、そうほんとうに表と裏を返すほどの変化があるわけではございません、実際を申し上げまして。そういうような中に立って、法律内容はいずれにいたしましても、やはりそういうような非常に需要が大きく変化をしてきておるというような点に重点があり、そうするのが当然本来の姿ではないだろうか。  先日御審議を願った農地法にいたしましても、民有林もかなりこれに向かって活用をしなければならぬ、あわせて国有林活用していかなければならぬ、こういうように考えておるのでございます。でありますから、どちらでも同じではありますけれども、今回は法律をもってその意に沿うような活用方法を開いていきたい、こう考えておるわけであります。
  52. 芳賀貢

    ○芳賀委員 次の質問は長官からでよろしいですが、次官通達が出されてから行なった農業構造改善林業構造改善、これは昭和四十三年までの間にどれだけの実績があがったか。いずれも面積が非常に少な過ぎるわけであります。活用の決定面積が少ないわけでありますが、これはその地元からの要請が非常に少ないのでこういう結果になっておるのか、要請は相当あったが、これを消極的に扱った結果こういう面積に落ちついたのか、その点もあわせて答弁してもらいたいと思います。
  53. 片山正英

    片山政府委員 三十八年からの農業構造改善におきます活用面積は一万八千五百九十七ヘクタール。内容は、農業構造改善、開拓パイロット、草地改良、樹園地造成その他でございます。次に、林業構造改善につきましての活用は、一万五千八十四ヘクタールでございます。  なお、これにつきましては、それぞれ地元からの要望に基づきまして、所管官庁等との打ち合わせ並びに現地踏査の結果、これだけの面積が有効に活用されるであろうという審査の結果、この面積が確定したわけでございます。
  54. 芳賀貢

    ○芳賀委員 あわせて、いまお尋ねしたとおり、これは地元の要望が少ないからこういう結果になったのか、要望があっても、非常に消極的に扱った結果こういう決定面積になったのか、その点はどうなんですか。
  55. 片山正英

    片山政府委員 決定した面積はただいま申し上げたとおりでございますが、この面積に至った要望面積いかんという点につきましては、実ははっきりした資料がございません。ただ、いずれにしましても適地選定基準等がございます。要は、有効に活用されるというような点から協議をいたし、現地の踏査をいたし、選定基準に合うものに対してこれをいたしたということでございます。
  56. 芳賀貢

    ○芳賀委員 それでは、かりに法律が成立したとしても、この活用の速度はそう変わらぬと思いますが、どうですか。鈍行列車が急に新幹線になるように変わるものであるか。農業利用する場合には、農業活用することが、従来の国有林の経営を行なうよりも国民経済的に見ても効果的であるという判断の上に立ち、あるいは、ここは農地にすることが他の地域にかえがたいというようなところでなければ、簡単に変更することはできないと思うのですよ。だから、先ほど大臣に聞きましたとおり、次官通達だから、鈍行列車のように各駅停車でのろのろやってきたのか、法律ができれば、一挙に新幹線のように数倍の活用が行なわれるようになるのか、その辺は一体どう考えているのですか。
  57. 長谷川四郎

    長谷川国務大臣 法律ができたから、鈍行が急行に変わるというほどの進み方はなかなかできないと思いますけれども、やはり今後の農業経営、先ほど申し上げたような、私は農地にするとかなんとかそういう問題よりも、公害問題などを何とか避けていく。畜産、牧畜、そういうような問題に対しての利用という場合は、集団的、団地的な構造にする。こういうふうにしてやるということが、力強い農民の一つのかてになっていくだろうということだけははっきり申し上げられますけれども、鈍行が急行に変わるほどの効果があるかどうかという、そこまではどうも確信を持った御答弁を申し上げられません。  いずれにしても、政治といいましょうか、政治の上でこれだけのものを考えてくれておったという一つの大きなかてにはなるだろう、こういうふうに考えます。
  58. 芳賀貢

    ○芳賀委員 きょうは大臣の答弁がなかなか明快なんですよ。別にほめるわけではないが、かつて林業基本法を審議したとき、農林大臣は赤城さんだったわけです。あなたは与党の理事で、あの当時は農林大臣を出した派閥の理事がやはり責任があるということで、筆頭理事という形でやられたわけですね。いま皆さんの党内事情がどうなっているかわかりませんけれども、あの当時は赤城さんが農林大臣で、同じ派閥に属する長谷川理事が、前の委員長であったような関係もあって、非常に苦労して、われわれと協力して委員会運営をやったわけです。だから、もう数年たちますけれども、そのときの苦労というものがやはり残っているわけですね。したがって、林業基本法というものの真髄がどこにあるか、志向するものは何であるかということを、農林大臣のほうが、いまの林野庁長官よりよく心得ておるので、明快な答弁が行なわれておると私は解釈しておるわけです。  もちろん、法律をつくっても、新幹線に乗りかえるわけにはいかないのですよ。特に、この活用を何に充てるかということになれば、これは主として農業構造改善を進める場合に、側面的に寄与させるということがねらいですし、そうなると、本体はあくまでも農業構造改善事業を進める。これも、第一次の構造改善事業は今年で完結して、来年度から新たに第二次構造改善事業というものが行なわれるわけですね。行なう対象は、先般審議をして両院をすでに成立しました農業振興地域整備法のいわゆる対象地域が、第二次構造改善の対象地域ということに当然なるわけです。  ところが、この農業構造改善事業というものは実体法、法律を持たないで事業が進められておるわけです。これも次官通達によって、農業構造改善事業というものはずっと長期計画に基づいて行なわれておるわけでありまして、当時私ども国会におきまして、これだけの大きな構造改善事業を行なうのであるから、むしろ基礎になる、根拠になる実体法を国会で成立さして、それに基づいて、国が責任をもって行なうべきでないかということを指摘して論議したことがありますけれども、今日まで法律を持たないで行なってきておるわけです。ですから、主体をなす構造改善事業は、この通達で大きな支障もなくやってきておるわけでありますから、それにできるだけ寄与させるという国有林活用等については、何もそれだけを法律をもって実行しなければならぬということではないと思うのですが、構造改善事業との関連で、この点はどう考えておられますか。これは大和田官房長でもよろしいです。
  59. 大和田啓気

    ○大和田政府委員 農業構造改善事業は、昭和三十六年から農業基本法に基づいて施行したものでございまして、予算の面あるいはその及ぶところの範囲はなかなか重かつ大のものもございましたけれども、法律の形にするよりも次官通達ということで、運用を相当弾力的にすることがいいのではないかという判断で、今日まで来たわけでございます。
  60. 芳賀貢

    ○芳賀委員 長官に尋ねますが、今後国有林野の中で、農業の部面に、農用地造成という形で活用すべき適地面積というものはどのくらいあるのですか。この際は総括的にどのくらいあるかということでよろしいですが、長官、資料があれば、営林局単位にこれだけあるということを明確にしてもらえば一番いいです。そういう手持ち資料がもしなければ、全国的に国有林野の中で、農地として活用すべき面積というものは一体どのくらいあるかということを、この際明らかにしておいていただきたい。
  61. 片山正英

    片山政府委員 現在の国有林の中で、農地としての活用面積がどれだけあるかということは、われわれとしまして、現段階ではございません。これは先ほども御説明申し上げたわけでございますが、農業構造改善林業構造改善、開拓パイロット等、それぞれの具体的の計画が出た中でこれを検討して決定したい、かように思っておるわけでございます。
  62. 芳賀貢

    ○芳賀委員 ないというのはどういうわけなんですか。わからないからないというのか、主体的にどうするという考えがないからないというのですか。実態がわからぬければ、ありますということは言えないでしょう。そういう場合にも、ありませんという以外答弁の方法はないでしょう。
  63. 長谷川四郎

    長谷川国務大臣 それは私から……。これは芳賀さんの御質問ですけれども、林野庁とすれば、なるべく一寸でも放したくないという気持ちがある。しかしながら、その一寸でも放したくないという気持ちはよくわかると思う。ですから、これだけは農地にしたいという計算を立てろといっても、それは御無理だと思うのです。ですけれども、これは国というか、農林省としてはどのくらい牧草地帯が必要か、こういう案は、畜産局なら、畜産局のほうは持っておる。こういうことで、それも畜産局が持っておるのでありまして、これは必ず両者とも、林野庁畜産局のほうで、じゃ合致したからこれだけやるんだ、こういう意味ではないのでございまして、そういう点はひとつ御理解を賜わりたい。  長官、おまえどのくらいあるんだと言われても、長官のほうは、ほんとうのことをいえば一寸も放したくないので、そんな簡単にはいかないのではないか。ですからそういう点で、その目標はどのくらい畜産というか、牧草地帯というものに必要かということになると、これは畜産局のほうでないと、なかなかお答えがむずかしいのではないか、こういうように考えます。
  64. 芳賀貢

    ○芳賀委員 それは大臣おかしいですよ。林野庁は一寸も出したくないということになれば、この法案というものは一体どこでやるのですか。どこで作業をして出したのですか。——ちょっと待ってください。そういう大臣の答弁からいうと、林野庁は全然関知しないで、この法案が内閣の手によって作成されたということになるわけですね。それじゃ、何も長官政府委員席へすわって答弁する資格はないじゃないですか。これと真剣に取り組んで、この法案を成立させるという努力とか意欲がないまま、政府委員席にすわって一体どういう答弁ができるのですか。それじゃ、法律をつくった張本人がそこへすわって答弁すべきじゃないですか。それはあなたのおかしな答弁ですよ。
  65. 長谷川四郎

    長谷川国務大臣 農林省全体の上に立って国有林をどういうふうに活用するかというと、先ほどいろいろ申し上げたような事態に迫られております。好むと好まざるにかかわらず活用をしなければならない部分というのは、当然必然的に生まれ出てきている。こういう面について、活用方法というものはこういうことによって、こういう法律に基づいて今後の活用をいたしましょう。これは、もちろん林野庁農林省一体となって、内閣できめた法律でございますから、当然それには参画しております。しかしながら、林野庁が進んで、これだけの土地が当然農地に転用すべき、そしてこれが構造改善を行なうべきだという案は持っておらないだろう、こういうことを申し上げておるわけでございます。
  66. 芳賀貢

    ○芳賀委員 あげ足をとるわけじゃないですけれども、この法案が通った場合には、どういう働きをさせるかということで法案というものは国会へ出すでしょう。審議中にもそれがわからぬ。それじゃ、これが国会で成立した場合にも、準備も何もないじゃないですか。そういう態度だから、毎回の国会に提案し継続審議にしても、提案した張本人が中身がわからないのです。そういうやり方では、こういう審議をやるということが全くばかばかしいですよ。これは活用するとかしないとかいう問題じゃないですよ。七百万ヘクタールをこえる国有林面積の中に、林野庁としては自分が直接管理運営しておる国有林の中に、これを農業活用するために転用できる面積というものが、総体でどのくらいあるかということが全然わからないということはないじゃないですか。それはほんとうにわからぬというのが本音ですか。
  67. 片山正英

    片山政府委員 林野庁といたしまして、先ほど大臣がお答え申し上げたように、木材需給の関係からいたしますと、森林というのはさらにさらに充実しなければならないという立場でございます。しかしながら、土地の高度利用という面から、さらに林業以上に土地が高度利用されることは、これもまた望ましいことであり、山村振興あるいは地元振興上それが必要であるならば、それはまた望ましいことであるわけでございます。そのような意味で、林野庁といたしまして出さないという意味ではなしに、これは確かに受け身の立場になることは事実でございますが、そういう形で十分りっぱに利用されるのであれば、活用してまいりたいということで御提案申し上げたわけでございます。  ただ、畜産であるとかどういうものでやるかということは、それぞれの局が御検討されております。これは単なる土地の問題ばかりではなしに、経営問題というものが入るわけでございますから、そういうものも含めてそれぞれの局で検討されまして、そしてわれわれとその活用を協議してまいりたい、かような次第でございます。
  68. 芳賀貢

    ○芳賀委員 それから、もう少し具体的に詰めて、いまあなたの言われた、林業よりも高度に利用できる面積というものはどのくらいありますか。国有林であっても、林業以外の農業とかあるいは地域産業の振興貢献できる、いわゆる林業よりも高度に社会的に、あるいは経済的に、文化的にこれは貢献できるという、高度利用のできる面積というのは、どのくらいあるわけですか。
  69. 片山正英

    片山政府委員 それは、先ほどもお答え申し上げたことと重複することでございますが、具体的な計画が出た中でその問題を判断してまいりたい、かように思うわけでございます。
  70. 芳賀貢

    ○芳賀委員 この法案国有林を対象にしておるから、所管は林野庁ですが、その目的とするところは、農業の部面にこれを活用させるということにあるわけですから、林業だけの狭い視野の判断しかできない担当者には、ちょっと無理だと思うのです、率直に言ってですね。そうじゃないですか。林野庁長官は、もう若いときから国有林だけに献身的に努力して今日に至ったわけですから、それ以外の農政全般に対する視野を広げるといういとまはなかなかなかったと思うのですよ。しかし、こういう法案を出して、高度利用とか農業林業、漁業等を含めた総体的な農政全般の中で、それでは国有林のあり方というものはどうあるべきかということの判断ということになると、林業の分野あるいは国有林のことだけしか知らないということでは、農政全般に対する見識がないということに当然なるわけですから、大事な活用に関する質問を国会でわれわれがした場合においても、自信のある答弁がなかなかできがたいのではないかと思うわけですが、この点は、忌憚のない答弁をしてもらいたいと思うわけです。
  71. 片山正英

    片山政府委員 なかなかむずかしい問題でございます。一つ畜産の例をとりましても、たとえば、牛なら牛の需給というものがどうなるんだろうというような判断は、まさしく私は判断ができません。しかし、農林省全体としてこれが一つの方向としてきまった場合に、われわれはそれに対して、国有林活用ということに積極的に御協力申し上げたい、かような態度でございます。
  72. 芳賀貢

    ○芳賀委員 農林大臣にお尋ねしますが、この点にやはり農林省全体の機構、人事の上に問題があるのじゃないですか。これは、私は長官とか林野庁の高級幹部を責めるわけじゃないですよ。しかし、いやしくも林野庁というのは、農林省の中においての一つの部門を担当しておるわけです。これだけで全部農林省というわけにはいかぬのですね。食糧庁あり、水産庁あり、また内局にしても、官房はじめ経済、農政、農地、畜産、蚕糸園芸という部門に分かれておるわけです。失礼ではございますが、林野庁長官を除いたあとの局長、長官は全部、そこで始まってそこだけで終わるというわけではないのです。そうでしょう。今日官房長をやった者があすの日には食糧庁長官になるとか、畜産局長をやった人物が今度は農政局長を担当するとか、過去の人事の中において、林野庁以外の局長あるいは長官は、適切に人事の交流を行なっておるわけですから、とにかく長官、局長になるような人物は、一通り農政全般に通暁しておるということになるわけです。それだけ視野が広がらなければならぬ。おれは畜産局長だから、畜産以外のことは何にもわからないのがあたりまえだということにはならぬと思うのですよ。  だから、たとえば林野庁長官をやるほどの人物であれば、この次の異動のときには、一番関係がある農地局長にするとか、あるいは畜産局長にするとか、そうして畜産局長が、あるときには林野庁長官になるとか、農地局長が林野庁長官になるとか、こういう農林省全体の中における人事の交流というものはできないわけですか。林野庁だけはしないというところに、私は今日の問題があると思うのですよ。これは人事権は農林大臣が持っておるわけですからして、あなたの在任一年間を通じての所見を聞かせてもらいたいと思う。
  73. 長谷川四郎

    長谷川国務大臣 林野庁に入れば林野だけで終生終わるんだ、こういう意味ではないと思います。交流はやっておる。ただし技術的な面、技術官、こういうような面になりますと特定な者がなるものですから、勢いそういうような事態になってくるだろう、こう思います。しかしながら、他の人事というものは、当然全部交流ができるようになっておることは御承知のとおりであります。
  74. 芳賀貢

    ○芳賀委員 ここ十数年やってないじゃないですか。林野庁長官からほかの局長や長官になった例がありますか。これは以前はありますよ、戦前等においては。その当時は、例をとると、いまの畜産局は馬政局といった。軍国主義はなやかなりしころは、畜産といえば軍馬重点だということでやったわけだから、馬政局長官といった。いまの畜産局長という名前よりも、馬政局長官というと数段えらそうに見えるが、この馬政局長官よりも林野庁長官のほうが右翼だったのです。あの当時は林野庁長官といわないで、たしか山林長官といったかと思うが、なぜ右翼だというと、農林省の各部局の中で山林局というのは一番財産を持っておるわけだから、金持ちが右翼ということで、とにかく林野を担当する長官が最右翼。これは何も技官出身でなくて、特権官僚の一番右翼の人物が長官にすわった時代があるわけですからね。最近はどういうわけか、林野庁長官からよそへ動かさないのですよ。動かさぬから、しょうがないから今度は参議院に出るということになるわけですね。  これは大臣、いまの時点では考える必要がありますよ。技術的だから、山で育った人物だけが長官で終わる、それ以外のところへはやらぬというようなことは間違いだと思うのですよ。一体それでは林業に関する技術は何ぞやということになるのですよ。樹種の名前を覚えるなどということは、長官になるまでかからぬでもわかるじゃないですか。あるいは造林にしても林業生産にしても、そんなのはとにかく林野庁に入ってから——入るまでに勉強して入るのですよ。それから十年ぐらいも生懸命に現地を回ってやってもらえば、技術的なこととか専門的なことは大体覚えるわけです。あと行政的にどうするかということは、林業を含めた農政全般の中で、高い視点からこれを判断して、林業農業関係を、この時代においてはどういうふうにこれを調整してやる必要があるかとか、特に、林業の場合には百年の計を立てなければ、途中でそう大きな変化を与えるわけにはいかないわけですから、少なくとも農林大臣の在任中に、こういう欠点は是正する努力をして、正常な姿にしたほうがいいじゃないかと思うのです。  そうなれば、十月首脳部の異動がある場合、長官片山君を今度は別の局長にするとかいうことになれば、将来に希望を与えるということになるじゃないですか。もうこれで終わりということになれば、まだ五十になったかならぬかでもうそれで退官して、外郭団体へ行くとか、あるいは独占的なパルプ会社に就職する。あなたがそうなるとは私は言ってないですよ。とにかく何十年という問国有林一筋に努力してきた人に、もう少し広い舞台で働けるような道を講じてやる。そして今度はまた、林野以外の局長が林野庁長官になって新鮮味を発揮するということも、決してむだにはならぬことだと思うわけです。  先ほどからの質問を通じて、肝心な法案の一番本元と思った林野庁長官が、何もわからぬということに端を発した問題ですが、この点、農林大臣として率直な見解を述べてもらいたいと思うわけです。
  75. 長谷川四郎

    長谷川国務大臣 せっかくのお尋ねでございますけれども、人事の問題でございますので、おことばを承っておくことにいたしておきます。
  76. 芳賀貢

    ○芳賀委員 私は、この次だれをどこへ据えるなんということを聞いておるのじゃないのです。戦後二十年間、林野庁長官になった者が他の局長や長官になったためしがないでしょう。それから林野庁以外の事務官僚が、林野庁長官になったためしもないわけなんです。そういうことが、今後長期にわたって続けられるべきものであるかどうかということに対して、この際農林省としては真剣に考えなければならぬ問題だと思うのです。人事だから口外できないなんということを、そういう小さいことを私は聞いておるのじゃないのですよ。農林省全体の中における人事の交流というものは、農林大臣の人事権のもとにおいて行なうべきであるが、林野庁だけはあくまでも技官官僚で固めるということでいかなければならぬのか、そういう点について率直な見解を聞いておるわけです。
  77. 長谷川四郎

    長谷川国務大臣 長官になるころになりますと、相当年配にもなっておりますし、また後進に道も開かなければならぬと思います。しかしながら、おことばの中にあるように、長官は必ず技官でなければならぬということもございませんし、事務官だから長官になれないということもございません。そういう点については、今後は十分考慮はいたします。せっかくのおことばでございますので、そういうようなおことばは十分承っておくことにして、今後の人事の問題のかてにいたしたい、こう考えております。
  78. 芳賀貢

    ○芳賀委員 これ以上繰り返して私は言わぬが、国有林法案の審議も済んで国会も終わって、十月にはいまの長官は退陣して、指導部長の松本君が長官になる。この松本君を、再来年の参議院選挙に自民党で出す、こういうことが決定されたというふうに伝わっておるわけてす。——あなたは笑っておるが、いま私の言った人事交流の問題に手をつけない場合には、おそらくそういうことになると思うのですよ。そういうことを全然知らぬですか。任命権者でないほうで、もう人事はきまっておるのですからね。
  79. 長谷川四郎

    長谷川国務大臣 せっかくのお話しですが、私はまだ何もそんなことを聞いてもおりませんし、知ってもおりませんし、十月人事をやるとか、再来年どうするとか、そんなことまで——とにかくいずれにしても、十二月から始まりまして八月五日まで、毎日こうやって来ているので、人事のほうまで考えている余裕は全くありません。これでも終えましたら、また十分人事の件についても考えてみたいと思います。
  80. 芳賀貢

    ○芳賀委員 これは老婆心までに言ったことですが、あなたの知らないところで人事が進められることもあり得べきことではないか。たまたま農林大臣以外に実力者があって、農林省の人事は大体こういうふうにきめるということであるとすれば、これはまた別ですからね。これはよく記憶にとどめておいてもらいたいと思う。  次にお尋ねしたい点は、林野庁では全然活用面積がわからぬということでありますから、農林省の中でわかる局長があれば、かわって説明してもらいたいと思います。おそらく農地局長あるいは畜産局長くらいしかわからぬと思うのですがね。
  81. 中野和仁

    ○中野政府委員 農用地造成あるいは草地造成をいたします場合に、未墾地開発をするわけでございますが、その中に国有林がどれくらい見通せるかということになりますと、われわれのほうで昭和三十九年に、現在の土地改良長期計画を立てる前提の調査をいたしました。土地改良総合計画調査というのをやったわけでございます。したがいまして、その場合でございますので、先ほど林野庁長官からもお話がありましたように、具体的な地区について話し合いが済んだというものではございませんけれども、開発可能面積といたしまして、開拓パイロット事業としては約五十五万ヘクタールの中で、前回もこれは御答弁申し上げましたが、八万四千ヘクタールぐらい、それから草地造成といたしましては、八十五万ヘクタールの中で約二十万ヘクタールというものが可能ではないかというふうに、一応調査では出ておるわけでございます。  しかし、それも地区別に想定はしておりますけれども、具体的に、それではこの場所をこれだけ、何ヘクタールの面積だというところまで確定をいたしたものではございません。
  82. 芳賀貢

    ○芳賀委員 いまの農地局長の説明でいくと、農地関係については、国有林中で約八万四千ヘクタール程度農用適地があるというわけですね。それから草地に利用できる適地が約二十万ヘクタール。これは間違いないですか。
  83. 中野和仁

    ○中野政府委員 先ほど申し上げましたように、これは三十九年の農業側の希望といいますか、そういう調査でございますので、その数字自体には間違いございませんけれども、具体的に、それではその面積そのまま全部農用地造成ができるかということになりますと、やはりもっと具体的な調査をいたしまして、設計をしてみて具体化をするということになるわけでございます。
  84. 芳賀貢

    ○芳賀委員 農地局長にお尋ねしますが、そうすると、国有林野内における利用区分あるいは適地調査等は、これは林野庁が行なわなくて農地局が直接行なうということになっておるわけですね。
  85. 中野和仁

    ○中野政府委員 具体的な開拓パイロット事業なり、草地造成の事業になりますと、適地基準がございまして、そこを営林局、農政局、あるいは県営の場合は県も入りまして、具体的な共同の調査をするわけでございます。
  86. 芳賀貢

    ○芳賀委員 そうすると、共同調査の結果というものは、農地局だけがわかって林野庁はわからぬということになっておりますか。
  87. 中野和仁

    ○中野政府委員 具体的な事業をいたします場合の調査でございますから、いま私、申し上げましたように、営林局とそれから農政局なり県も緒に入って調査をいたしますから、当然両方で承知しておるわけでございます。
  88. 芳賀貢

    ○芳賀委員 そうなると、いま中野局長の説明した程度のことは、これは林野庁長官としてもわかっていなければならぬわけですね。たとえば、昭和三十九年の時点でパイロット事業を進めるために基礎的な調査を行なったときには、農地の適地としては八万四千ヘクタール、それから草地の適地としては二十万ヘクタール、合わせて約二十八万四千ヘクタール程度はありますという、この程度のことを、林野庁長官が全然わからぬというのはおかしいですね。
  89. 片山正英

    片山政府委員 ただいま農地局長がお話しになりました八万あるいは二十万、これは承知いたしております。  ただ、その具体的の場合には、営林局並びに出先の農政局、あるいは県、そういうものが入りまして、適地選定基準をもとにいたしまして審査をいたすわけでございます。そういうような形で最終的にきまるわけでございますから、具体的にどうだと言われますと、先ほど申しましたように、具体的なものはまだわかりませんと申し上げたわけでございます。
  90. 芳賀貢

    ○芳賀委員 農地局にしても、決定する場合には、たとえば開拓審議会等を通じて、都道府県ごとに十分適地審査を行なってからきめることは、それは同様なんですよ。しかし、基本調査の結果こうなりましたぐらいのことは、あなた、国会で答弁できないというのはおかしいじゃないですか。これは、わかっておって答弁できないのですか。中野局長が言うまでは全然知らなかったから答弁できなかったわけですか。
  91. 片山正英

    片山政府委員 林野庁といたしまして、それぞれの山を調査し計画をしたものじゃございませんものですから、私から答弁をしなかったわけでございます。
  92. 芳賀貢

    ○芳賀委員 しかし、共同調査をやったわけでしょう。農地局といえども、林野庁が管理している山に、かってに踏み込んで調査をするなんというばかなことはできないと思うのですよ。農地局のほうが出先の職員は少ないですからね。おそらく現地調査をやる場合には、出先の営林局あるいは営林署の職員の諸君が農地局に協力して、現地の調査あるいは航空写真等を基礎にして基本的な調査をやったと思うのですよ。それじゃ、十四ある営林局等が調査した結果というものは、林野庁として集約していないのですか。
  93. 中野和仁

    ○中野政府委員 私、先ほど御説明申し上げました場合に、あるいは先生お聞き漏らしかと思いますけれども、私が三十九年の調査と申し上げましたのは、これは農業側が、いわば一方的に、この辺が農用地として使えるという面積国有林野に求めたものが、それだけあるということを御説明申し上げたわけでございますので、当時営林局と相談をして、共同調査をやってきめた面積ではないわけでございます。
  94. 芳賀貢

    ○芳賀委員 あなたは、共同調査と言ったじゃないですか。
  95. 中野和仁

    ○中野政府委員 そういう面積の中で事業を具体化していく場合に、両方で具体的な調査をいたしますということを申し上げたわけでございます。
  96. 芳賀貢

    ○芳賀委員 いずれにしても、農地、草地を合わせて約三十万ヘクタール程度は、現在の国有林の中に所在するということはいえるわけですね。
  97. 中野和仁

    ○中野政府委員 その三十万ヘクタール近いものが、きっちりそのままということは、あるいは治山の問題、造林等の関連で調整を必要としますから、全部が全部そうだということは言い切れないと思いますけれども、相当な面積が、農業側から見れば開発可能だというところはあるかというふうに思います。
  98. 芳賀貢

    ○芳賀委員 国有林の中の、たとえば第一種林地というのは、これは中野局長御存じと思いますが、保安林等が中心となって伐採制限とか、国有林事業運営上一定の制限を受けているのが第一種林地というわけですからして、こういう林地の中に、たとえば農用適地があっても、これをすぐ、適地だから活用するというわけにはいかないと思うのです。もちろん、そういう第一種林地等は除外してあるわけですね。
  99. 中野和仁

    ○中野政府委員 この調査は、先ほど申し上げましたように、可能性を求める調査でございますから、具体的にどういうところを、どの地区をどれだけ除外してあるかというようなことまで、本省のほうでは把握いたしておりません。大体こういう面積が開拓パイロットなり草地に使えるのではないか、この地帯ではこれくらいということを、現地の農政局なり県のほうで、地元と別に相談をしないで把握をした面積でございます。
  100. 芳賀貢

    ○芳賀委員 今回の活用を進める場合も、これは林野を農地にするとか、あるいは草地に利用するわけですからして、利用できる状態に造成しなければならぬわけですね。これは、林野庁から農地局にただ所属がえしますだけでは利用できないのですね。それから、農地に造成する場合にも、開墾あるいはまた完全に作付ができる状態にするためには、これは従来の長年にわたる開拓行政の成果から見ても、思い切って国が全面的に財政負担をしなければ、これから林野を開墾してりっぱな農地をつくるなんということはできないと思うのですね。草地にしても、国有林が完全に草地として、もうあすの日から活用できるというふうにするまでにも、多額の費用というものがかかるわけです。ですから、林野庁だけが一方的にこれを農地あるいは草地に転用するということにしても、実際に地元の農民がこれを利用して経済的な利益を受けるということには、相当の年限もかかるし、一体その負担がどうなるかという問題も、これはひっかかってくると思うわけです。  そうなってくれば、国有林活用というものは、やはり一方において農地局が中心になって、昭和四十一年三月二十五日に閣議決定をしました土地改良長期計画というものがやはり基礎になって、農地あるいは草地の造成というものを、国が主体的な責任で進めるということになると思いますが、その点はどう考えておりますか。
  101. 中野和仁

    ○中野政府委員 まさにいまの点は先生お話しのとおりでございまして、土地改良長期計画に基づきまして、先ほど申し上げました調査をもとにして、そのうちの現在では、十カ年分の農用地造成、草地造成の計画を立てて、ちょうどことしで五年目になる段階まで来ておるわけでございます。
  102. 芳賀貢

    ○芳賀委員 この際、林野庁長官にお尋ねしますが、農林省が策定して閣議決定されておるこの土地改良長期十カ年計画というのは、あなたは中身を御存じですか。
  103. 片山正英

    片山政府委員 十カ年計画が策定された概要については伺っておりますけれども、詳細については存じておりません。
  104. 芳賀貢

    ○芳賀委員 こういうことを長官知らぬと、活用法案というものを出しても意味がないのですよ。法律が通った、さあ地元から要請があるから、企業財産である国有林の一部を林野庁から直接払い下げたり、活用させるわけじゃないでしょう。これは当然林野庁から農地局に、農林省の内部ですから、財産の所属がえというものをやるわけですね。農林省の中で、林野庁から農地局にその財産の所属がえを行なって、今度は農地局が所属がえを受けた財産を、農地造成あるいは草地造成をやるということに当然なるわけですからして、あなたが、ただ国有林を希望に応じてどこでも切り離して渡せばいいというわけにはいかぬのですよ。その切り離した面積が、一体国の土地改良十カ年計画なら十カ年計画に対応して、どういうふうな年次計画で造成されて活用されるかということがわからなければいかぬと思うのですよ。こういうものを持っていないのですか。なければ、あとで上げてもいいですよ。
  105. 片山正英

    片山政府委員 先ほどもちょっと触れましたけれども、今回の草地造成の二十万町歩であるとか、農地の八万であるとか、あるいは十カ年計画であるとか、そういうものの概要は知っております。  ただ、それを具体的に進める場合には、これはあくまで現地におきましてそれぞれの担当、関係各機関が具体的な調査の中で決定してまいる、その土地が有効に利用され、かつまた振興に寄与する面から十分検討されて、そうして決定されるということでございますから、その段階で明確な活用面積というものが出るわけでございます。したがって、概要については知っておりますけれども、具体的な場合においては、そういう方法によって決定されるということでございます。
  106. 芳賀貢

    ○芳賀委員 それでは、これはあすまでこの点を保留しておきますが、いいですか、土地改良十カ年計画と今度出した国有林活用との関連です。万一国有林活用法が通った場合に、これは土地改良長期計画との間でどうなるかという問題ですね。通らなくても、いまの次官通達というものを踏まえてどう対応するかということは、これはすでにやっていなければならぬ点ですよ。何もわからぬでいるから、二十八年から四十三年までの間にわずか一万八千ヘクタールしか農地に活用されていないわけですからね。これはあしたでいいです。あすの午後にまた国有林の質疑を続けることになっておりますから、それまでよく勉強して、明快な答弁ができるようにしておいてもらいたいと思います。  それから、次にお尋ねしたい点は、一体農地に活用する場合、林野庁の方針としては、個別農業の経営拡大を重点にして払い下げをするという方針で進むのか、あるいは集団化によるところの、大臣がいつも言っておる農業の集団化を進めるために、経営規模を拡大する一環として農地の造成拡大をはかる、そういう個別でいくか、集団化でいくか、どっちを重点にして、農地の活用の場合には進めるようにしたいと思っていますか、
  107. 片山正英

    片山政府委員 農地の問題の個別であるか、集団化であるか、こういう問題につきましては、農地そのものの運営をどうするかという問題に関連するわけでございましょうから、それらの方針につきましては、たとえば、農業構造改善の姿であるとか、開拓パイロットの姿であるとか、そういうものの中において明確になっていくわけでございますから、それら即応して林野庁としては対処してまいる、国が補助をし、国の指導するその方向によって対処してまいる、こういうように考えております。
  108. 芳賀貢

    ○芳賀委員 その対処の内容ですけれども、長官としての希望的なあり方としては、個別的に経営拡大に資するようにしたいと思っておるのか。そういう個別経営で農地拡大等をするということは、非常に困難な事情にも置かれておるし、農業の近代化を進めるためにはとるべき方策ではない、むしろ大事な国の財産の払い下げ等を行なって、農業の経営拡大をする場合には、これは集団化の方向活用農地というものが高度に利用さるべきものであるというふうに希望として考えておるのか。何か考えがあるでしょう。個別か集団か、何も考えがないか、三つのどれかと思うのです。
  109. 片山正英

    片山政府委員 今回の活用方向といたしましては、先生先ほど御指摘のとおり、所属がえという方向が一つございます。これにつきましては、所属がえした以降につきましては、農地局によって処理されていくわけでございましょうが、最終的には、個別になるのではないだろうかと私は思います。  だだ、林野庁から直接所属がえをしないで、貸付をしたりするものがございます。たとえば、部分林であるとか、あるいは草地の場合ですが、貸付形式をとる場合、われわれといたしましては、これは当然所管局とも連絡をいたすわけでございますが、共同利用のほうが適当であろう、かように考えておるわけでございます。
  110. 芳賀貢

    ○芳賀委員 いまちょっと変なことを言われたですね。農地局は個別の方法を考えておるらしいということですが、それじゃ中野局長、あなたのところへ所属がえになった場合、農地の拡大は個別方式ですね。個々の農家のいわゆる増反のような形で農地を造成して、小面積を分配するようにする考えなんですか。
  111. 中野和仁

    ○中野政府委員 戦後の開拓の旧制度を改めまして開拓パイロット制度になりましたあとは、造成されました面積を、できるだけ地元の増反に向けるということで、その向けました結果が、その地域地域の専業農家の平均規模以上に達するように配分をするという原則で現在までやっているわけでございます。  ただ、草地造成等をとってみますと、町村や農協の公共的な牧場に使う場合には、そういう場合として所属がえをして払い下げるということもあるわけでございますから、両方やっているわけでございます。
  112. 芳賀貢

    ○芳賀委員 それじゃ、来年から始まる第二次構造改善も、個別経営の規模拡大ということで、国の財産の売り払いを通じて農地造成する、そういうことでまたいくのですか。それじゃ全然前進がないと思うのですけれども……。
  113. 中野和仁

    ○中野政府委員 第二次構造改善事業を来年からいよいよ具体化するわけでございますが、その場合でも、おそらく個別農家の規模拡大に資する。個別農家の規模拡大の場合、それが単に個別のままでいいか、あるいは数軒共同してそこに大きな規模の経営をやったほうがいいか、それはそれぞれの地区の実情に即すると思います。農地法でやります場合には、個別に売り渡しますか、あるいは生産法人をつくった場合には、それに売り渡すということができるわけでございますので、その地域の実情によりましての経営のあり方というものと密接に関連するかと考えます。
  114. 芳賀貢

    ○芳賀委員 あなたの考えと農林大臣の考えは違うですね。長谷川農林大臣は六月十五日のテレビで、秋田県の農民とテレビを通じて話し合いをしたとき、いまの時代は、個々の農家が農地を取得して経営拡大をするということは、これは非常に至難なことである。むしろ日本農業というものは、零細所有、零細経営の上に立っておるので、これからの農業の新たなる経営拡大というものは、やはり集団化の方向を目ざして皆さんにやってもらいたいということを言っておるのですよ。秋田の農民とテレビで話をされたわけですが、これはやはり全国の農民を相手にして話をしているということを意識して大臣は言っておられる。私はその点は、農林大臣の政治判断というのは間違ってないというふうにあのときも考えておったわけですが、農林官僚というのは、旧態依然として新しい変化というのはないのですね。
  115. 中野和仁

    ○中野政府委員 先ほども申し上げましたように、国有林なりあるいはその他の土地を所属がえを受けましたものを、今度は農地として使います場合、それを個人の自立経営として伸ばしていくか、あるいはそういう自立経営的な農家を数軒まとめて共同経営をやりますか、あるいは生産法人をつくっていくか、いろいろな方法があるかと思います。それを一律に、それは共同化でなければやらないということまでは、現在の日本農業の実情からして踏み切れないというふうに思います。  しかし、規模を大きくするという点から、そういうことを積極的に進めていかなければならないということは、重々われわれも考えておりますし、今後とも進めていかなければならないことだと思っております。
  116. 芳賀貢

    ○芳賀委員 中野さん、あなたは何か勘違いしておるのではないですか。いまやっておる開拓パイロット方式は、いわゆる未墾地を造成する場合も、用地については、いわゆる受益者が相対売買で取得して、まず農地造成あるいは草地の造成をしたい場合には、自分でその土地を買いなさい、それを対象にして国として補助方式で助成してあげます、こういうことになっているわけでしょう。それはあくまでも国の財産を相手にしての売買ではないわけですよ。今度の場合には、国の企業財産を農業活用の場合に向けるわけですから、大事な国の財産は、できるだけ生産者に負担のかからぬような条件で売り渡し、あるいは利用させるわけですからして、そういう場合には国の立場で、これからの農業が新たに発展できるような経営のあり方というものを十分示して、それを指針としてこうやりなさいということで誘導すべきだと思いますが、そう考えていないのですか。
  117. 中野和仁

    ○中野政府委員 ただいまのお話はまさにそのとおりでございまして、具体的に国有林を含んでいましてもいませんでも、その地域の開拓パイロットにつきましては、将来の営農類型といいましょうか、そういう経営のあり方を考えた上で、こういう作物、こういう家畜の導入ということまで設計をいたしまして、それに合う経営に持っていくということは、十分考えてやっておるわけでございます。
  118. 芳賀貢

    ○芳賀委員 次に、草地に活用する場合、これは農地局の調査によっても、二十万ヘクタール程度適地があるということですからして、おそらく活用の希望も、今後は、農地よりもむしろ草地利用ということで希望が多いと思うわけです。そういう場合に、林野庁としては従来はどういう態度で臨んできたわけですか。売り払い方式を重点としてきたか、あるいはまた国有林利用させる、いわゆる利用収益を重点とした方式で草地利用というものを進めて、畜産発展に寄与させるということで努力してきたか、その点はどうなんです。
  119. 片山正英

    片山政府委員 従来、放牧に対する林野庁の態度は二つあります。放牧共用林野という制度を活用いたしましてやってまいりましたのが一つ。もう一つは、大体貸付になりますが、貸付をいたしまして、それによって活用を願っておるわけでございますが、さらにその貸付した結果、非常に良好にそれが管理運営されておるという場合に売り払いをしておるというのが現状でございます。
  120. 芳賀貢

    ○芳賀委員 そうすると、草地利用の場合には、払い下げ方式をとらないで、従来ある、たとえば共用林に基づく契約等を締結して、従来よりも積極的にこれを利用させる、いわゆる利用権の設定というような形でやりたいということですか。
  121. 片山正英

    片山政府委員 放牧共用林野という制度がございますが、これは林木と草地とが一緒になった形で利用されるわけでございます。こういう場合には、野草的利用のような場合が主として放牧共用林野という制度の中で行なわれておるのが現状でございます。草地そのものを造成して、牧草そのものを育成して、そしてやってまいるという場合には貸付方式をとり、先ほど申しましたのは、ちょっと説明が足りませんでしたが、完成した暁におきまして、それが有効に管理経営されるという場合には、所属がえ方式をとって売り渡しということになるわけでございます。
  122. 芳賀貢

    ○芳賀委員 もう一度詳しく説明してもらいたいと思います。それでは、草地に利用する場合は、直接所属がえはやらないわけですね。まず利用契約を、受益者であるその生産者の集団と林野庁が締結して、そして国有林を草地化するわけですね。一定の実績を見た上で、これは将来とも草地として活用することが望ましいという場合に、初めて農地局に所属がえをして、農地局の財産になってから、今度は農地局と利用契約を結ぶとか、そういうことにするわけですか。
  123. 片山正英

    片山政府委員 農地なり草地なりに現になっておるものでございますと、所属がえをしてやるわけでございますが、草地に活用する場合には、往々にして未墾地という場合がございます。したがいまして、未墾地の場合には一応貸付いたしまして、それを草地造成した中で、先ほど申しました、それが明確な管理運営ができるという段階で所属がえをやっているわけでございます。
  124. 芳賀貢

    ○芳賀委員 国有林の中の未墾地というものは、どういう土地ですか。
  125. 片山正英

    片山政府委員 未墾地というように表現をしておりますが、現在は農地でもなし草地でもなし、いわゆる雑木林等がはえておる普通の森林であるという場合でございます。
  126. 芳賀貢

    ○芳賀委員 森林国有林とは違うのですか。
  127. 片山正英

    片山政府委員 森林国有林は、森林の中で、所有形態が国である場合に国有林といっております。
  128. 芳賀貢

    ○芳賀委員 いや、あなたは国有林の中にも、雑木林等の森林は未墾地だということを自分で言っているじゃないですか。そうなると、国有林の中で森林という区分が一つあるというふうに聞き取れるわけですよ。国有林の中の雑木林が森林ということをいまあなた言っておるでしょう。間違って発言したら訂正しなさい。
  129. 片山正英

    片山政府委員 いま私が申し上げましたのは、現に農地になっておったり草地になっておるという場合には、直接所属がえをいたしまして、それぞれの手続によって売り渡し等が行なわれるわけでございますが、そういう形態になっておらないものをわれわれ未墾地と称したわけでございますが、そういう場合の活用については、最初その土地を貸付いたします、こういうことを申し上げておるわけでございます。
  130. 芳賀貢

    ○芳賀委員 それでは、農地を目的にする場合にも、最初貸付して、農地に造成された暁に所属がえをするということになるわけですね。
  131. 片山正英

    片山政府委員 農地の場合につきましては、直接所属がえをいたしております。
  132. 芳賀貢

    ○芳賀委員 それはどういうわけなんですか。農地を目的にする場合には、農地局に直接所属がえをして、それから農地局が主体になって農地の造成をやる。草地の場合には、その取り扱いが違っている。いわゆる草地にしても農地にしても、これは農林省としては農用地ということで一本に扱っておるわけですね。農地法も、いま農用地ということになっていて、農地、草地というものを厳密に区分していないのですよ。だから、活用という場合にも、これは農用地に活用するということで適切なる表現になると私は考えておるのですが、農用地の中の農地の場合と草地の場合の取り扱いが、国有林野として違うということは納得できないわけですがね。農地局長からでもいいです。
  133. 中野和仁

    ○中野政府委員 未墾地をそのまま農地局に所属がえをいたしまして、そうして未墾地のまま売り渡しまして、それで開墾を進めるというのが旧制度の開拓でやってきた制度でございますが、最近の公共牧場にしますとかなんとかいうものになりますと、それは林野から見ますれば山林あるいは原野であったかもわかりませんが、そのまま農地局に入れましては団体には売れないわけでございます。そこで林野庁が貸しまして、一面ではりっぱにやるかどうか見届けるという面もありましょうけれども、農地法との関係では、それを採草放牧地の形にして農地局に所属がえになりますと、それは団体に売れるという現行法の規定でございます。  今回の改正案が通りますれば、そのまま農用地として売れるわけでございますけれども、現在の農地法の規定では、採草放牧地としてでないと売れないということになっておるわけでございますので、現在は林野庁と相談をしながらそういう手続を経ているわけでございます。
  134. 芳賀貢

    ○芳賀委員 それでは長官に尋ねますが、この法律がもし通った場合には、どういう扱いをするわけですか。
  135. 片山正英

    片山政府委員 ただいま農地局長が御説明いたしましたとおり、これは国有林野の問題よりも、自作農特別措置特別会計の関係からそういう手続を経ているわけでございます。したがいまして、そのような姿が今後、ただいま農地局長の話のように改正されるということになれば、それによって対処してまいるということになります。   〔三ツ林委員長代理退席、委員長着席〕
  136. 芳賀貢

    ○芳賀委員 ここで、これは林野庁長官でも農林大臣でもいいのですが、三十九年に林業基本法が審議された場合、審議の最終段階で、時の高見三郎委員長が、委員会を代表して取りまとめの質問を赤城農林大臣に行なっているわけです。この委員長質問というものは、当時われわれ理事が相談しまして、そうして問題をまとめて、農林委員長質問という形で赤城農林大臣に数点の質問を行なったわけです。赤城農林大臣の答弁についても、これも委員長質問については、あらかじめ、どういうような積極的な答弁あるいは内容を明快にするかという打ち合わせ等も慎重に行なって、いわゆる委員長大臣との間の取りまとめの質疑が行なわれているわけです。  この中に、国有林活用の問題について高見委員長が質問をして農林大臣が答えておるわけでありますが、いやしくも国会の法案審議の際における所管大臣の答弁というものは、これは成立した法律運用上、政府見解として動かすことのできないものになるとわれわれは考えておるわけですが、その当時の委員長質問並びに赤城大臣の答弁の内容というものは、これは長官としてよく御存じですか。
  137. 片山正英

    片山政府委員 その当時の高見委員長の質問に対する赤城大臣の御答弁、三点承知いたしております。
  138. 芳賀貢

    ○芳賀委員 三点じゃないですよ。相当の部分にわたっておるわけですが、どこまでの三点ですか。
  139. 片山正英

    片山政府委員 当時の高見委員長の三点と申しますのは、第一点は、国有林野事業の基本的使命を明らかにされたいということを言っております。それから第二点は、奥地未開発林野開発等については、国の措置が含まれているのかどうかということが第二点でございます。第三点につきましては、国有林野活用についての、特に地元地域における林業及び農業構造改善その他地元民福祉向上のため、部分林、共用林野の設定等の方法により、積極的に活用すべきものであると考えるがいかん、大体以上三点のように中心は判断しております。
  140. 芳賀貢

    ○芳賀委員 その三点というのは、第一の質問の第一点、第二点、第三点というわけで、あと残り六項目にわたる質問がさらに続いておるわけですよ。しかし、あなたは三点でも御存じですから、まあまあというものだと思うわけです。  それで、この中で明快になっておる点は、やはり今度の国有林野活用の上でも指針としてこれは尊重されるべきだと思うのですが、この中の第三点に関する答弁の中に、林業利用というような面については、現在ある部分林制度あるいは共用林制度というものを十分生かして行なうということですね。それから、その前にあなたが言われた、民有の奥地林の開発というものが、民有林所有者の手においてはなかなか進まないので、そういう経済性の低い民有奥地林については、むしろ積極的に国が買い入れるということにして進めるということも述べられておるわけでありますから、まずこの活用の前に、その後奥地民有林等の買い上げというものは、一体どの程度やっておるわけですか。保安林はこれは別ですよ。
  141. 片山正英

    片山政府委員 国有林としましては、ただいま申しました赤城大臣の御答弁にもありますように、積極的に民有林は、開発の困難なものについて買い入れを行なってきております。ただそういう場合に、先ほど芳賀先生がおっしゃいましたが、保安林というのは、やはり民有林事業の経営がなかなか困難であろうということでございますから、保安林が中心に買われておることが実態でございます。  したがいまして、その面積について申し上げますと、四十三年まで保安林につきましては約二十七万六千町歩買っております。それから林野整備というような形で、先ほど申しましたような保安林以外の面積を買っておりますのが約四万四千ヘクタールでございます。
  142. 芳賀貢

    ○芳賀委員 保安林というのは、国土保全の必要上保安林整備臨時措置法に基づいて買い入れるわけですからして、ここでいう奥地民有林の買い入れと別なんですよ。保安林の場合は、まず林野庁が指定して、本人が売り渡しになかなか同意しないような場合においても、まず指定を行ない、あるいは買い入れ等についても十分協議を進めて、そうして一定の基準価格で買い入れをするということになっておるわけですが、ここでいう奥地民有林の買い入れというのは、奥地で未開発民有林というものは経済性が非常に低いと思う。これらの民有林については、やはり国の立場で積極的に買い入れ等の措置を進めて、そうして国有林野事業の中でこういう民有林については十分な成果があがるようにする、そのために買い入れを進めるようにしますということを、当時大臣は言っておるわけですから、これは保安林を中心にしたものではないのですよ。  この問題は、今度の活用法案の終末がどうなるか知りませんが、昨年の国会の末期等においても、政府案を一部修正して、国有林活用の対象にして売り払った土地代金等については、奥地民有林の買い入れの原資にしたほうがいいというような、そういう構想も一部にあったと私は聞いておるわけです。そういう措置を何もいまさら考えなくても、林業基本法ができたときに、時の農林大臣はこのことを明確にしておるのですよ。これも活用と同じように、あなたのところで全然やってないでしょう。これは一体どういうわけなんですか。売り渡しの希望がないからといって、これは強権で買うわけにもいかぬ。ほんとうは経済性が低いわけだから、進んで買いたくはないけれども、そういう奥地林というものは、やはり国に売り渡す道があるということが周知されれば、ぜひこれは国で買ってもらいたいというような申し出も当然出てくると思うのですよ。これは長谷川農林大臣からお答え願いたいと思います。
  143. 長谷川四郎

    長谷川国務大臣 先ほどどなたかに御答弁申し上げましたけれども、国のほうへ売ってくれる方があれば、国のほうでは幾らでも、保安林以外のものは、私のほうでお引き受けいたします。そういう考え方でおりますから、ありましたらぜひお願いいたします。
  144. 芳賀貢

    ○芳賀委員 それは大臣、私への答弁でなくて、あなたの部下である林野庁長官によく言っておいてくださいよ。三十九年に林業基本法ができたとき、赤城農林大臣ははっきり言っておるわけです。委員長質問に答えてちゃんと言っておるのです。幸いに、当時大臣は筆頭理事であった関係もあって、国会の中で明確になったわけだからね。わかったですか、長官、いま大臣の言ったことが。
  145. 片山正英

    片山政府委員 先生のおっしゃる方向でいまやっておりますし、大臣の御趣旨のとおりやっております。ことしの予算を見ますと、その買い入れ面積もだいぶふやしております。
  146. 芳賀貢

    ○芳賀委員 それから、次にお尋ねしたい点は、いままで部分林あるいは共用林野の制度がありますけれども、これは旧態依然として、いまの経済事情あるいは農業事情に合致しないような運営が行なわれておるわけです。ですからこの際、共用林にしてもあるいは部分林にしても、抜本的にこれが国民の山として十分活用できる道を開いたほうがいいのではないかと思うのですね。一片の法律を通すということよりも、あなたの運用にまかされた範囲内においてもまだまだやればやれるのです。  たとえば、畜産との関係にしても、いま林野庁の直営牧場というのをやっておるでしょう。去年四カ所、ことし三カ所予算をつけておるわけですから、こういう点と関連して、この構想はどこまで発展させるつもりでおられますか、林野庁の直営牧場というものは。
  147. 片山正英

    片山政府委員 現在、林野庁として国営の肉牛の実験牧場を設置しております。これは御承知のように、昭和四十二年から開始いたしまして、最初四カ所、今度予算とりまして三カ所追加いたしました。さらに全国的にもう少し広くするという意味におきまして、十カ所までは伸ばしていきまして、実験牧場でありますから、その成果を見た結果によりて対処してまいりたい、かように思っております。
  148. 芳賀貢

    ○芳賀委員 それが成果があがれば、どんどん必要な個所、必要な適地にそういうものを、林野庁のいわゆる国有林野事業の一環としてやるわけですね。そういうことで、農業あるいは畜産の部面に大いに貢献するという考えなんですか。
  149. 片山正英

    片山政府委員 いまの実験牧場の内容をちょっと御説明申し上げますと、林業と肉牛が両立しやしないだろうかということを一つの大きな目標にわれわれは置いておるわけです。したがって、実験の内容は、一つは人工林、植栽をいたしました林、その林に相当雑草が生えます。その雑草をいろいろ手で刈り取ったり、薬をまいておるわけでありますが、それを牛の放牧の中において消化して、うまく両立しないかということが第一点。それから、もう一つの実験は、天然林の中で非常に粗放にされておるものの中で牛を放しまして、その中でやはり野草が相当はえますから、それが牛との関係で両立しないかどうかということで、実は実験の開始をしたわけでございます。  十カ所それぞれの中で実施してまいるわけでございますが、それの消化につきましてどうするかという問題につきましては、あるいは国みずからがそれを全部やるんだということになりますと、あるいは特別会計法の改正等も必要になるかもしれません。したがいまして、あるいはそれは民間やっていただいたほうがいいのかもしれません。そういう点を、総合した判断の中でこれは決定してまいりたい、かように思っておる次第でございます。
  150. 芳賀貢

    ○芳賀委員 その事業は、将来畜産行政とどういう関係を持つことになるのですか。あなたの構想は悪くないですよ。しかし先ほどまでは、もう林業以外に何も知らぬというようなことを繰り返し言われたわけですが、なかなか視野が広いじゃないですか。国有林事業の中で畜産まで手広くやっていただくということになれば、それも全部国有林の特別会計の負担で行なって、将来の管理運営とか地元利用をどうされるかということはまだ聞いておりませんがね。これは畜産局との関係はどういうことで進めるわけですか。林野庁は金があるから、全部金は林野庁が出して仕事だけはする、あとの運営は、金のない畜産局へまかして適切にやってもらうというのか。これは長官並びに畜産局長からも聞かしてもらいたいと思います。
  151. 片山正英

    片山政府委員 この方向につきましては、実験牧場というのを十つくるわけでございますが、先ほども大臣からお話がありましたように、畜産の専門家の人の人事の交流をいたしまして、そうして牛と林業とが両立するような形の実験を実はやっておるわけでございます。  それから、その結果によりましてどうあるべきかというのは、まだ先の問題ではございますが、これまた畜産局とも連絡をとりながら、直営でやるということでありますと、いまの特別会計法の付帯業務の範疇から出るんじゃないかというふうにも考えますので、それらも含めて検討してまいりたい、こう思うわけであります。
  152. 太田康二

    ○太田政府委員 ちょうど昭和四十一、二年ごろ家畜が、特に肉牛でございますが、非常に減りました段階におきまして、国といたしましてできる限り繁殖育成部門に力を入れなければならぬということで、一部繁殖育成センターの設置等を始めたのでありますが、それと並行いたしまして、国有林におきまして、あれだけの土地もあるわけでございますので、林木の育成のみならず、家畜の放牧もやり得る場面があるのではないかということで、林野庁と相談をいたしまして、国有林野事業の特別会計の一応実験事業として、先ほど来長官が申し上げておるような形で発足をいたしたのでございます。  それで、将来十カ所でこれを実験いたしまして、その成果を見た上で、次のステップに入るということで現在考えておるのでございますが、実際の事業の運営にあたりましては、私のほうの種畜牧場のほうの専門官も人事交流を行なって実施に当たっておるのでございまして、これらの成果を踏まえた上で次の段階に入りたいということで、いまその準備をしておるという段階でございます。
  153. 芳賀貢

    ○芳賀委員 大臣にお尋ねします。こういうやり方は、その活用としては一番適切じゃないですか。全部国有林野特別会計が負担をして、自まかないでりっぱな牧場を創設して、そうして肉牛でもいいですよ、肉牛の増産をやる。それをなお、実験ですから結果を見て、それを地元に利用させるということにしてもいいですね。できた牧場に地元の農家が肉牛の放牧をやるとか、あるいは乳牛の子牛の放牧をやるとか、そういう肥育のために国有林活用する。しかも、農民が多額の負担をしないで、地元の農民畜産あるいは酪農の部面に十分国有林活用して、放牧林というわけですからある程度の林木も残っておるわけですから、それもきっと育つということになるのでしょうが、そういう構想というのは、これは農林大臣の発想ですか。それともこれは林野庁長官が考えてやらしたのですか。
  154. 長谷川四郎

    長谷川国務大臣 考え方は別といたしまして、私は、こういうようなやり方を、その成果を見て、自立経営できるというようなことになるならば、やはり集団的な方々におまかせする。実験はあくまでも国がやっても、そしてこれが経営が可能だというならば民間経営に移すべきだ。あくまで、直営で経営が成り立つから直営でやるのだ、これは避けなければならぬ、こういうふうに私は考えます。今後もおそらくそういうふうな考え方で進むであろう、私はそういうふうに考えます。
  155. 芳賀貢

    ○芳賀委員 農林大臣の答弁と、われわれ社会党の考えと、これは合致するのですよ。この点もですよ。なかなか農家個人の負担で、農地の造成とか草地造成というのはできないですからね。特に、米価据え置きとか農産物の据え置きというようなことになった中で、自分の負担でやりなさいなんて、これはできないですよ。それにはどうしても国が全額負担をして、そうして優良な農地あるいは草地を造成して、利用部面については地元の農民に十分やってもらう。これはもう社会党の方針と農林大臣の考え、全くこれは合致しているのですよ。むしろ社会党に来てもらったほうがいいぐらいに思うわけですがね。あなたはそういう信念的な考えがおありなんですから、やはり在任中に農林行政全般を通じて、長谷川農林大臣の信念的なものをもう十分やるということなら、これは五年ぐらい続けて大臣をやらなきゃできないですがね。やはりレールを敷いてやるということは一番大事だと思うのです。  私ども、国有林活用に何も反対しているわけではないのです。ただ方法論の中において、一体一片の法律だけをつくってお茶を濁すやり方がいいか、国の財産を高度に利用するということになれば、これは政府の行政責任で十分有機性、弾力性というものを発揮してやることのほうが、激変する経済の変化というのですか、時代の進展に対応できるのではないかということで、この点を問題にしておるわけですから、これは大いに進めてもらいたいと思う。  ただ、実験の結果これは有効であるということになった場合、その運営管理というものは、当然これは地元の農民にまかせる。しかし、放牧林ということになれば、林野庁が残した樹木については、これを損傷しないようにして十分畜産部面の成果をあげてもらうようにする。指導は、これは畜産局であっても、あるいは林野庁であっても、専門的な指導をしていくということで、これはぜひ、むしろ共用林の近代版ということでやったらいいと思うわけです。  長官、そういうことで進めたらどうですか、農林大臣の言うように。いつまでも、畜産のほうまでも林野庁自分でかかえてやるといったって、そうできないでしょう。いまの仕事だけだって、みんなから非難ごうごうで、だいぶふらふらしているのじゃないですか。だから、実験を特別会計の金を使っておやりになることはいいし、それからまた、林政協力に一年間八十億ないし百億の金を林野事業の収益から出しているわけだから、そういうものを重点的に、国有林活用とあわせて有効に使うということは、これはやはり財政的な活用だと思うわけです。その点はどう考えていますか。
  156. 片山正英

    片山政府委員 先生のおっしゃるとおり、そういう方向で地元の人たち活用がはかられるならば、非常にけっこうなことであろうというふうに考えます。  先ほど申し上げましたのは、もしこれを国有林でやるとするならば、あるいは特別会計法の改正が必要であるかもしれないということは触れましたが、しかし、地元民の方々がそういう形で活用し、所得が増大するということであれば非常にけっこうなことだろう、現在の共用林野制度にかわるいいことではないかというように考えております。
  157. 芳賀貢

    ○芳賀委員 そういういいと思ったことは、どんどんやったほうがいいのですね。特別会計の中でも、これは林野勘定と治山勘定と分けてやっておるわけでしょう。新治山五カ年計画というのがまた始まるわけですからね。どういう点に特別会計上問題があるかということは、これは事務的な議論をしなければならぬが、しかし、国有林の経営が地元民の利益に合致して、それが国民経済的にも有効であるということになれば、これは問題はないと思うのですよ。そう思わぬですか。
  158. 片山正英

    片山政府委員 ただいまの御趣旨が、ちょっとくみ取りにくかったわけでございますけれども、要は、土地の高度利用の中で地元民発展されるということをわれわれも考え、企画をしておるわけでございますから、そういう意味で十分今後とも検討し、対処してまいりたい、かように考えております。
  159. 芳賀貢

    ○芳賀委員 次にお尋ねしたいのは、今度の法律案の中には、交換という条項があるわけですね。これは、所在する民有林が農用地として非常に適当であるということで、その民有林農業活用した場合に、その代替として国有林民有林所有者に提供することができるというように、この法案の中に書いてあるわけです。この交換の問題というのは、運営いかんによっては非常に重大な問題を惹起するような場合があると思うのですよ。この点は、運営上どう考えておりますか。
  160. 片山正英

    片山政府委員 先生のおっしゃいましたのは、たしか第三条の第二項のことであろうかと思います。林地を所有している林業者が、農業構造改善等の活用のためにその林地を提供した場合に、その提供した林業者が、林業経営上非常に支障を来たすという場合には、国有林をその提供した人に活用させますということでございます。  と申しますのは、せっかく民地に適地があるならば、林業でなくともそれはりっぱに農用地としての適地であるということであれば、それを活用して、さらに林業としての適地はまた別の面で確保してあげます、こういう制度でございますから、農業構造改善の推進に役立つものじゃないだろうかというように判断して、この一項が入っているわけでございます。
  161. 芳賀貢

    ○芳賀委員 その問題と、先般農地法の改正が当委員会を通ったわけですね。その改正点の中の草地利用権の問題と、この民有林農業利用の場合の国有林野との交換の問題というのは、これは現実の問題としてからんでくると思うのです。長官は、農地法の改正の中における草地利用権の設定の問題については、これはこの国会でやったのだが御存じですか。
  162. 片山正英

    片山政府委員 農地法の改正における草地利用権、存じております。  それから、先ほどちょっと説明が足りませんでしたことを補足いたしたいわけですが、先生、交換という表現をおとりになりましたけれども、林家の人が農業活用した場合に、さらに林業上支障があるという場合に、国有林活用をいたす方法といたしまして、われわれの推進する方法といたしましては部分林の形式をとりたい、かように思っておる次第でございます。
  163. 芳賀貢

    ○芳賀委員 いや、私の聞いているのは、交換する場合もあるのでしょう。絶対にないのですか。
  164. 片山正英

    片山政府委員 ただいま法文の中では、交換も入っておりますけれども、われわれの運用として考えます場合には、やはり部分林形式が妥当であろうというふうに考えているわけでございます。
  165. 芳賀貢

    ○芳賀委員 しかし一般国民は、法律に交換と書いてあるのですから、地元の民有林の所有者が農業利用のために協力して、それじゃ私の所有の山を活用のために提供しましょう、しかし、これを提供しっぱなしということになれば、これはもともと林業経営に支障を来たすので、法律に基づいて国有林の相当する部分を代替として提供してもらいたい、こういう申し出がきっとあると思うのですよ。法律に書いてあるのですからね。法律には書いてあるだけで、実際には交換とか権利の移動はしません、これは部分林という意味ですよということでは、なかなか国民は納得しないと思うのですよ。もし交換ではないということであれば、そういう国民に疑惑を与えるような条文については、この際訂正をしておかぬと、国民に疑惑を与えると思うのですが、いかがですか。
  166. 片山正英

    片山政府委員 第二項の、農地に活用したその林家の人は、林業用として必要な場合をわれわれは一応想定しているわけでございますので、林業用という場合には、部分林というのが適当であろうというふうに実は判断しているわけでございます。  ただ、その林地が、たとえばシイタケの原木林であるというような場合もあり得るかと思います。そういう場合に、そのシイタケ原木林を農地のほうに活用したという場合には、なかなか部分林という方式では困難かと思います、実際問題としますと。そういう場合の特殊事情もございましょうが、そういう場合には、場合によると売り払いということになりますか、そういうものも含めて、活用した人と十分打ち合わせながら対処してまいりたい、かように思っているわけでございます。
  167. 芳賀貢

    ○芳賀委員 それでは、大部分は林業の用地としての交換はしない、ただ、シイタケ等の特産物の採取の用に供するもの、適するようなものについては、いわゆる雑木林でしょうが、そういう場合には交換も例外的にする、そういうことですね。
  168. 片山正英

    片山政府委員 売り払いという形の中でそれは処理されるのではないだろうかというふうに考えます。たとえば部分林となりますと、大きな用材林というように仕立てる場合に往々にして適当なやり方だと思いますが、先ほど言いましたシイタケ原木というものは、短伐期の非常に収益の少ないものでございます。そういうものについては、むしろ売り払いというような形の対処のほうがより適当じゃないだろうかというふうに考えられるわけでございますので、それらについて具体的に、活用せんとする人と打ち合わせてやってまいりたい、かように思うわけでございます。
  169. 芳賀貢

    ○芳賀委員 だから、木材生産目的としない場合ですね。シイタケとかそういういわゆる特産物ですね。シイタケというのは竹木じゃないわけですからね。ほだ木は木ですけれども、生産するシイタケはこれは木ではないでしょう。
  170. 片山正英

    片山政府委員 私、申し上げましたのは、シイタケそのものではなしに、やはりシイタケのほだ木の意味でございます。林地を出すわけでございますから、そういう意味でございます。
  171. 芳賀貢

    ○芳賀委員 ほだ木のあるような林相というのは、これはいわゆる雑木地でしょう。経済林としてはあまり価値のない、さっき長官が言われた未墾地的なものでしょう。そういうものは経済価値かあまりないから交換——交換というのは、結局は取り扱い上は払い下げということになるわけでしょう。
  172. 片山正英

    片山政府委員 いまのシイタケ林というのは、確かに林地そのものから見ますと、シイタケ原木というのは用材林と比較しますと単価も安いわけでございます。ただ、回転はそのほうが早いわけでございます。それから、シイタケをつくるということとからみ合わせますと、これはある程度の所得になるわけでございます。やはり農家の相当の所得になるというようなことから判断してまいりたい、こう思うわけでございます。
  173. 芳賀貢

    ○芳賀委員 そういうちゃちな問題だということはわからぬかったですからね。  そこで、先ほど言った農地法の改正点の草地利用権というのは、これは未墾地を対象にして、土地改良十カ年計画等を基礎にして草地の造成を進めるわけですよ。これは国有林じゃなくて未墾地を対象にしているわけですから、農地法のいう草地利用権の設定、これはもう交換も代替地の提供もないのですよ。この未墾地は農用地として最適である、他にかえがたい、これは未墾地であるという判定を開拓審議会が最終的には下して、そして所有者が同意しない場合も、合意が成立しなくても、最終的には知事の裁定で、所有権の移転ではないが、利用権の設定を、二十カ年を期限にして行なうことができるということになるわけです。私は農地法審議の場合に、この点だけは、これはなかなかいい構想だということで中野局長をほめたわけですが、それとこれはからんでくるのですよ。  一方国有林活用のほうでは、民有林を農地あるいは草地に活用する場合には、活用法では代替林の提供を法律で約束しておるのですよ。ですから、草地利用権の設定にしても国有林活用にしても、これは地元の計画ということになれば、先般成立しましたいわゆる農業振興地域整備法の農用地の利用計画の中に、これは包括されなければならぬということになるわけですね。いいですか、農振法の中にも国有林活用ということはわざわざ書いてあるのですよ。何のために書いたかということをいま私は聞くつもりですが、だから農地法でいく場合であっても、活用法でいく場合であっても、地元のいわゆる利用計画区域に編入されなければ、もちろん対象にならぬと思うのですよ。利用計画区域外の国有林とか未墾地を農用地にしたいというような希望が出ても、これは実現ができないわけですから、そういうところは地元からいって適地ではないわけですからね。  それで、農地法の場合には、本人の意思いかんにかかわらず、最終的には知事裁定で二十カ年の利用権の設定ができる。また二十カ年の間において、所有者が利用権者に対して売り渡しの申し出をすることができるということになっておるが、しかしその場合、活用法でいったほうが有利であるという所有者の意思が強い場合には、これは活用法のほうでやってもらいたい、私の未墾地は提供しますが、そのかわり国有林を代替地にして、交換地としてもらいたい、こういう希望が出ても、いや、それはだめだというわけにいかぬでしょう。同じ農林省が扱う問題の中で、法律によっては全く別個の取り扱いをするということになるわけです。  ですから、これは農林省内部において、こういう二つの異なった、一方は利用権の設定、一方は民有林との交換、これはどういうふうに調整して扱うことになるのですか。農地法審議の際、私は中野農地局長に、法律に書いただけではだめじゃないか、農地法の第三章の未墾地買収の規定を昼間ぐうぐう昼寝さして、第三章の末尾のほうに利用権の設定というようなことで、お茶を濁して実行しないようではだめじゃないかということを申しました。あわせて畜産局長に対しては、この設定された利用権の地域に対しても、土地改良の長期計画に基づいて、採択基準に基づいて、国が重厚な造成の計画を進めるかどうかということもただしてあるわけです。そういう点をあなた勉強しておるとすれば、調整問題をどうするか明確にしてもらいたい。
  174. 片山正英

    片山政府委員 現在、民有林の実態を見ますと、粗放利用あるいは未利用放置というものが残念ながらございます。そこで、農地法に基づく草地利用権の設定というものも、そういうものを主として対象にして設定されるというふうにわれわれは判断いたしております。  そこで、この国有林野活用法の三条二項と申しますのは、われわれは、粗放あるいは未利用の中に置いてあるものを活用したから、それに対して国有林をかわって活用するということを考えておるわけではございませんで、現に一つのりっぱな林業経営を行なっている人が、たまたま、経営はりっぱであるけれども、諸情勢の中からそれを供出するという場合に、林業経営上非常に支障を来たすという場合に限ってこれは活用しよう、支障がないように国有林も協力してまいりましょうということでございますから、趣旨として、私はダブった形というふうには判断をいたしておらないわけでございます。
  175. 芳賀貢

    ○芳賀委員 そんなことないですよ。それでは農地局長から明快に説明してください。
  176. 中野和仁

    ○中野政府委員 草地利用権を設定いたします場合の土地でございますが、これは農業サイドだけから見ますれば、あるいは非常に利用されていないいわば未墾地的なところでございます。その場合に、利用権を設定する場合に、結局林業経営としてりっぱにやっているところまで、これを強制的にやるというふうにはなかなかいかないと思いますが、林業経営をやったほうがいいものか、あるいは農地として使ったほうがいいものか、その辺を総合的に判断した上で、どちらかにきめるということになるかと考えておるわけでございます。
  177. 芳賀貢

    ○芳賀委員 それは、国有林活用における民有林利用であっても、農地法における草地に利用する場合の民有林利用権設定にしても、その基本は同じでしょう。違うですか。
  178. 中野和仁

    ○中野政府委員 農用地として国有林活用いたします場合も、あるいは民有の未墾地を活用いたします場合も、農業上使っていこうという意味では同じように考えるべきだと思います。
  179. 芳賀貢

    ○芳賀委員 いま問題にしているのは、直接国有林を対象にして活用する場合ではないのですよ。活用法には交換規定というものがあるのですよ。それは、まず民有林農業活用する、その場合代替措置として国有林を提供する、交換できるということになっておるのですよ。ですから、民有林であっても国有林であっても、林野として十分な生産をあげて経済性を発揮しているその林地を、わざわざ草地に造成する必要はないということをあなた言ったですね。そういうことであれば、国有林活用法案の中においても、りっぱな民有林をわざわざ農地や草地に、国の制度がそうだから活用しなければならぬ問題じゃないと思うのですよ。  ですから、国有林活用法にしても、農地法の改正点にしても、同じ政府が国会に法案を出して成立した暁には、農林省がこれは行政的に運用するわけですから、どの法律を根拠にしても実態は同一であるということにならなければいけないと思うのですよ。その意見の調整と統一が一体できているかどうか。また、審議中の活用法案に不備な点が発見された場合には、これはすぐその点を訂正することも必要だと思うのです。訂正がもういまごろできないというのであれば、これは政府提案ですから、与党が過半数を持っているのだから、交換の点というのは、これは採決のとき修正されてもいいんじゃないかと思うのですよ。中身がからっぽで、いかにも表面だけは交換だとかなんとかいって一いまの長官の答弁を聞いても、シイタケのほだ木山だけしか交換しないということになれば、これは全く羊頭狗肉どころじゃないですよ。  農林大臣、この点は、あなたは一番偉い人だから、調整して統一した答弁をしてくださいよ。
  180. 長谷川四郎

    長谷川国務大臣 芳賀さんのほうにはっきり話の意味が通じていないと思うのです。いま承ってみたのですけれども、りっぱに経営できる、たとえば針葉林なら針葉林を持っている、それが、今度は他の活用によって伐採をしてそのあと地を使う、そういう場合には、この人が必要だとするならば、国有林のほうを、部分林にしようともまた何にしようとも、その点は考えてあげてもよろしい、こういうような考え方なんだそうでございます。ですからりっぱに経営できる範囲内のもの、こういうようなことが、中に条件といいましょうか、はっきりと法律の上にはそう書いてないかもしれませんけれども、意思はそういうような意思で行なうんだと言っておられるわけです。——わかりにくいですか。
  181. 芳賀貢

    ○芳賀委員 ちょっとわからない。
  182. 長谷川四郎

    長谷川国務大臣 針葉林なら針葉林としてりっぱに経営が成り立つ山を持っておる。これを活用するのに他の人が必要だ、こういう場合、それは一応伐採する。伐採してしまうから、その人があと地が必要だというのですから、あと地は部分林かなんかでもって与えてよろしい、国有林のほうで渡してもよろしい、こういうことだそうであります。
  183. 芳賀貢

    ○芳賀委員 法案に明らかに交換ということをうたってあるわけですから、その点が自信がなければ、ここを直せばいいのですよ。
  184. 片山正英

    片山政府委員 ただいま大臣が御説明いたしましたように、たとえば、草地をある範囲で利用する区域を設定する。そういう場合に、その中に、たとえば五十年もたったりっぱな杉の木を経営している所有者がおった。所有者は、それは伐期に達しておりますから切るわけですが、そのあと地については、そういう総合した草地造成の中で十分協力しましょう、しかし、私もやはり林業の経営をやっていきたいんだ、従来も熱心にやってきたのだという場合には、その土地は草地になっても、経営者が林業として成り立つものがほしいんだ、そして経営をやっていきたいんだという場合にこれを適用しておるわけですから、いまの粗放に、何もしていないというものを出したからやってくれ、こういうことではないわけです。その点が、私は活用の二項の点は違うのじゃないかというふうに判断いたします。  それからもう一つ、活用の中で交換ないし貸し付けなりあるいは売り渡し、あるいは売り払いなり所属がえ、いろいろ方法がございますが、これは六項にわたりますいろいろな活用のしかたに、それぞれ全部が適用するわけでなしに、それぞれ適用する行き方があろうと思います。そういうような意味で御判断をいただきたい、かように思います。
  185. 芳賀貢

    ○芳賀委員 かわるべき土地として提供するということなら、これは交換じゃないですか。あなた読んでみなさい。
  186. 片山正英

    片山政府委員 第二条の中で、「国有林野を貸し付け、使用させ、交換し、売り払い、若しくは譲与し、国有林野の所管換若しくは所属替をし、又は国有林野につき部分林契約若しくは共用林野契約を締結することをいう。」さまざまなやり方がございます。しかし、それはそれなりに、以下掲げる六項に掲げますそれぞれの活用の相手方と、それから活用の種類が明確にしてありますが、その中で、最も適当とする活用のあり方がうたわれているわけでございます。  それからもう一つは、交換ということばでございますが、われわれ交換というのは、AとBがあった場合に、AとBが交換する、かえる場合に交換ということばを使うわけでございますが、Aの人がBに出してAがCからもらう、こういう場合には、実は交換ということばをわれわれ使っておらないわけでございます。
  187. 芳賀貢

    ○芳賀委員 自分の出した法律内容を、よくわからぬというのはおかしいじゃないですか。提供をした民有林にかわるべき土地活用させるというのだから、交換して提供するということじゃないですか。活用という法律上の字句が、全然これは売り払いとか交換というものを意味していないというならいいですよ。定義としてそういうものは意味していないというのであれば、これはわかりますけれども、そういう場合には、本法でいう交換というのは、通例行なうところの交換ではないというふうにでも書いておかなければわからぬじゃないですか。
  188. 片山正英

    片山政府委員 先生の御質問に、あるいは的を射ておるかどうかわかりませんけれども、私たち交換というのは、先ほども御説明いたしたのですが、AとBがお互いにかえるという場合に交換ということばを使うわけでございまして、Aがいまの農地をBの人に出した、しかし、Aは国有林からCというものを、部分林なりあるいは売り払いなりでもらうという場合には、普通われわれ交換ということばを使っておらないのでございますので、ちょっと説明が足らなかったと思いますけれども、そういうことでございます。
  189. 芳賀貢

    ○芳賀委員 ますますおかしいじゃないですか。われわれは民有林国有林を、林業目的として相互交換するというようなことは何も言っていないのですよ。民有林の所有者が、農地に活用しなければならぬという法律目的に沿って、それを農地に提供するわけでしょう。農業活用に提供した場合、それにかわるべき土地として、国有林の一部をその民有林を提供した所有者に与える。これは活用の中にも、与えるということが含まっているわけですからね。そうでないということであれば、この第三条一項二号というものは削ってしまうか何かしたほうがいいのじゃないですか。
  190. 新井昭一

    ○新井説明員 林野庁の管理課長でございます。事務的なことでございますので……。
  191. 芳賀貢

    ○芳賀委員 君は政府委員じゃないじゃないか。発言するなら政府委員になって出てきなさいよ。議長に手続をして……。
  192. 丹羽兵助

    丹羽委員長 説明員としてちょっと説明させますから……。
  193. 芳賀貢

    ○芳賀委員 このくらいのこと、長官政府委員として説明できないと恥ずかしいじゃないですか。
  194. 片山正英

    片山政府委員 どうも説明がへたなようでございますが、交換というわれわれの表現は、先ほど言ったように相対でのことなんです。したがって、第二項においては交換はあり得ないとわれわれは判断しております。
  195. 芳賀貢

    ○芳賀委員 あり得なければ、かわるべき土地として、提供するなんということは、これは書けないですよ。
  196. 片山正英

    片山政府委員 ただいま申しました第三条の中の二項については、私は、交換というのはそういう意味であり得ないというふうに申し上げましたのですが、第五項におきましては交換ということはあり得る、こう判断いたしております。
  197. 芳賀貢

    ○芳賀委員 この法案は、第三条は一項、二項しかないですよ。私らの持っておる法律案と違うのですか。第三条は一項の六号まであるけれども、一項と二項しかないじゃないか。この法律案は違うのか。
  198. 大山一生

    ○大山説明員 芳賀先生の言われます交換という問題でございますが、確かに二条の定義の中におきまして、活用の中に交換ということばがございます。この交換ということばは、国有財産法上の交換をいっております。つまり、当事者間においてお互いに所有権を移し合う場合、これが交換でございます。  そこで、先生の言われました三条の一項の二号の規定でございますが、二号の規定は、一号の規定におきまして、たとえば農業構造改善事業をやろうという場合に、やはりある程度の団地がなければ構造改善はできないわけでございます。そこで、農業サイドのほうからある程度の構造改善事業をやろうとすれば、団地としてのある程度の規模が要請される。ところがそういう規模を、かりに立地条件に合ったところでとろうとした場合に、中に美林等がないとは言えないわけでございます。そういう場合に、農地サイドでいうならば、そういうところもひとつ構造改善のために協力してくれという話は、当事者間であるわけでございまして、そういう場合に、そういう人から積極的にその美林を提供してもらうというようなことは、やはり構造改善事業としての団地をある程度確保する意味からも必要になってまいるわけでございます。ところが、その団地の中にありますところの美林を持っている人が、どうしても林業経営ということに執着をしておるということであって、そのために団地がとれぬということがあってはまずいであろう。したがって、そういう場合に限って二号で、林業経営をいままでも美林を持って経営しておった、こういう人で、いわゆる国有林の中に適当な土地があれば、そこに部分林契約を結んでこの人はやはり林業経営をやっていく、しかも、その人がいままで持っておりました美林も含んで、ある程度の団地としての規模を持った構造改善事業をやる、それが一号、二号関係になるわけでございます。  そこで、交換の問題でございますが、先ほど言いましたように、両当事者間において所有権を移し合うという場合は、一項の五号におきまして、「公用、公共用又は公益事業の用に供する施設に関するものの用に供する」場合、この場合において、たとえば、従前の相手方が所有している土地とそれからこちらが提供しようとする土地の間に交換する、市町村の場合において交換する場合がある、これが五号でございます。したがって、そういうふうないろいろの場合のことを入れて、活用という定義の中に交換ということばを入れてあるわけでございます。
  199. 芳賀貢

    ○芳賀委員 大山君は、初めて委員会へ出てきて発言しているようですが、それではこの三条一項二号の、「代わるべき土地」というものは、どの土地をいうわけですか。
  200. 大山一生

    ○大山説明員 二号で、「前号に掲げる事業の用に供することを目的として譲渡された土地」というのは、先ほどの例で申しますならば、美林を持っていて、それがいままでは林業経営に供されていた。それが一号で、構造改善のために団地として提供するというものにかわる土地、つまり、かわるというのは生産力等においての見合いにおける面積という意味合いでございますが、その面積として林業経営をやりたいという場合に国有林を出そう、こういうことでございます。「代わるべき土地」というのは、国有林野のことを申します。
  201. 芳賀貢

    ○芳賀委員 だから、それは交換じゃないかと言っているわけだ。
  202. 大山一生

    ○大山説明員 一号、二号で、いま美林を経営しておった人が、構造改善のために出す相手をBとした場合に、今度は、それのAがBに出した土地にかわるもの、面積的には大体同じようなものになると思いますが、そういうものをCという国有林が提供するということでございます。交換というのは、AとBがおって、その間において所有権を移し合うことを交換と財産法上申しておるわけでございます。
  203. 芳賀貢

    ○芳賀委員 そういう三百代言的なことを聞いておるのではない。自己の民有林を、法律に基づいて農業活用するために進んで提供するわけでしょう。提供したあと、本人が林業をやめるし農業もやめるということであれば別ですけれども、無償提供じゃないわけなんだからね。それから、本人はそういう積極的な意思がなくても、その民有地が地元市町村における農振法の利用区域の中にたまたま編入された。そういう場合には、売り渡しの合議に応ずるか、応じない場合には、これは草地利用権の道で、これは知事裁定で草地利用権の設定ができるわけですよ。こういうところは、何も国有林活用法で持っていかなくても、農地法の規定でも処理できるわけですね。農地法は、この未墾地、林野を農地にしなければ、その地域においては他にかわる適地がないという場合に限るわけですよ。おそらく治用法の場合でも、農用地に適当でない民有林を、いたずらに活用に供させるなんということにはこれはならぬと思うのですよ。  だから、こっちにはかわるべき土地を、国有林が提供するということを法律に書いてあるわけですよ。農地法の場合には、かわるべき土地も何も提供しない。そのかわり、所有権の移転ではなくて、利用権の設定で、二十年間あんたの民有林は、これは草地として利用権を設定して造成しますよということで、これは本人が不同意であっても、知事が裁定でそうするわけですからね。  だから、国有林活用の場合には代替地提供の規定があるので、これは実質的には交換ですよ、これは活用だから。AとBの交換なんというのはあり得ないですよ。そうでしょう。どうも林野庁へ来る事務官僚というのは、あまり優秀でないのが来るんですかね。何だか歯切れが悪いじゃないですか。進んで答弁するなら、もう少し明快に——あなたは山のことはあまりわからぬでしょう。林政部長と職員部長だけが、事務官僚として林野庁に来ておるわけですからね。農政一般はあなたは大体わかっているはずなんですよ。林政部長で、あなたはまつりごとをつかさどる方なんだから、農業一般の中で、これは一体どういうふうにするわけですか。農地法との関係活用法案との関係ですね。長官がわからぬ場合は、あなたが進んで明快にすべきじゃないですか。
  204. 大山一生

    ○大山説明員 農地法の今度の改正法案におきます利用権の設定というのは、あくまでも賃借権その他の暫定的な期間における権利でございます。それで一方、活用法の二号で考えておりますのは、ここにございますように、「譲渡された土地」と書いてございます。つまり、いままで美林を、かりに一号の問題として先ほど申し上げました例で申しますならば、所有権を移した場合、つまり、本人がその土地に対する権利を完全になくす場合については、気の毒であろうし、その人間は林業経営をいままでもりっぱにやっておったし、また、今後もやりたいという希望がある場合に提供しようということでございます。農地法の場合には、所有権は依然として残っておるわけでございまして、単に賃借権その他の利用権が一時的につくられるというだけのことであります。  したがって、いわゆるわれわれの感触で申しますならば、所有権までなくなる人と、それから、所有権はあってその上の利用権だけが設定される場合と、そこにおのずから、それに対する国有林側からの便宜供与といいますか、につきましても差があってしかるべきではないだろうか。こういうことで、われわれがこの三条の一項の二号の中には、利用権の設定等にからむ問題は入れておりません。
  205. 芳賀貢

    ○芳賀委員 あなたは美林美林と言っているけれども、林野庁長官は、個人所有の美林等については対象にしないということを言っているのですよ。あなたはえらく美林美林と言っているが、それはどういうわけですか。美林というのは、模範的に経営された森林のことじゃないですか。
  206. 片山正英

    片山政府委員 活用方向としましては、先ほど林政部長言いました美林、そういうものは対象外にすべきであろうというふうにわれわれは判断いたしておりますが、ただいま美林と申しましたのは、先ほども私、説明いたしましたように、たとえば五十年なら五十年で美林等は切るが、そのあと地の問題について、総合した草地造成の中でその場所が非常に活用上必要であるという場合にそれを提供する、譲渡する。そういう場合、その人が非常にりっぱな林業経営の腕もあるし、能力もある人でございますから、そうしてまた、林業経営上必要であるという場合には、それにかわる国有林土地活用していただくということが、より積極的に、より円滑にいくわけじゃないだろうかということでございます。
  207. 芳賀貢

    ○芳賀委員 どうもこの問題だけに停滞しておるのは残念ですけれども、これは決してあげ足をとるわけではないが、林野庁長官の説明から言うと、私有林の場合は、立木を適齢期に伐採したあと地、これは伐採した残りだから、立木のない無立木地帯になるわけでしょう。そうでしょう。だから、木を切ったあと地を農地に活用することに協力したいという所有者の意思があって初めて、それはその活用の対象になるわけでしょう。いいですか、この法律案は強権規定というのは何もないんですから、民有林活用に提供しない場合にはどうするというような規定は何もないのですから、おそらく所有者の意思に基づいて、私の立木を伐採したあと地は、再造林しないままでこれを農地に提供をして、地元で十分活用してもらいたいという自発的な意思があって初めて、これは活用ができるわけなんですよ。本人にその意思がないという場合には、これはどうすることもできないわけですからね。  ですから、その点は長官の説明どおり、木を切ったあと地に再造林をするか、これをどうするかという場合に、いっそ農地に提供して活用をしてもらいたいという場合がこれに当てはまるわけですよ。ただし、法律にはわざわざ、そういう提供者に対しては、国有林土地をそれにかわるべき土地として提供しますということを書いてあるからして、ぜひその国有林の一部を法律どおり提供してくださいということにこれはなるんじゃないですか。  その場合の活用ということは、部分林に限るということが明確になっていればこれは疑義が生じないが、かわるべき土地として提供するということになれば、これは立木がある土地じゃないでしょう。国有林のいわゆる土地でしょう。だから、あなたと大山君の答弁を比較すれば、あなたのほうがまともなことを言っているのですよね。美林をそのまま活用に向けるなんていうばかなことはないわけですからね。それじゃ農業利用じゃなく、林業利用のために個人から個人に森林を売るということにしかならぬわけだからね。  もうきょうは、この問題だけにとどまっているわけにいかぬですから、あすまでに提案者としての政府の統一見解を取りまとめて、明日審議の場合に、これを農林大臣から具体的にしてもらいたいんです。それでいいですか、大臣
  208. 長谷川四郎

    長谷川国務大臣 大体統一見解は先ほど申し上げましたけれども、さらに一そうよくおわかりになるように取りまとめまして、明日御説明を申し上げます。
  209. 芳賀貢

    ○芳賀委員 それでは次に進みますが、この法案によりますと、この法律がもし通って実行する場合には、どうしても国有林野特別会計といわゆる農地局の自作農創設特別会計との問題が出てくると思うのですよ。この問のやりとりとか調整というのはどういうふうに考えているのですか。この活用法案が万一法律として将来実行されるようなことがあった場合に、これは延納措置と特に関係があるわけですよ。
  210. 片山正英

    片山政府委員 活用の方法として大きく分けますと、先生さっき御指摘のとおり、所属がえでいく方法と、それから、林野庁が直接貸付なりあるいは売り払いをする方法と、こう二つあると思います。  そこで、直接の場合貸付なり売り払いをするわけでございますが、売り払いの場合は、先ほど申しました用途指定並びに買い戻しの特約ということを付しますとともに、二十五年という延納の制度がございます。それでその活用がはかられるということに相なろうと思います。  それから、所属がえをいたしましたものについては、従来同様農地局においてそれを処理してまいるということに相なると思います。
  211. 芳賀貢

    ○芳賀委員 主として所属がえのとき以外は、林野特別会計で直接処理する場合は、何も関係というのは出てこないのですね。所属がえの場合は、国有林特別会計の財産を農地局の財産に移すわけでしょう。そうですね。財産を所属がえさした場合の特別会計相互のやりとりというのは、どういうふうにするわけですか。
  212. 中野和仁

    ○中野政府委員 現在の自作農創設特別措置特別会計法によりますと、林野庁から土地の所属がえを受けまして、農地局のほうでそれを農家なりあるいはその他に売り渡すわけでございますが、売り渡す原則が年賦になっております。法律上は三十年賦になっておるわけでございます。そこで、農地局の特別会計から林野庁土地の代金として払います分も、現在の特別会計法によりましては、いわば年賦で返すという体系になっておるわけでございます。
  213. 芳賀貢

    ○芳賀委員 そうしますと、活用法案の場合もそれと同じ方式でいくわけですね。たとえば、延納の特約というものが法案の第七条にあって、長いのは二十五年、それから据え置き期間を相当期間設けることになっておるわけですから、そうすると、所属がえを通じての売り渡し代金の納付というものは、この条件どおりに農地局が収納して、それを毎年度林野特別会計に納付するということになるわけですか。
  214. 片山正英

    片山政府委員 先ほど農地局長からお話しのとおり、所属がえについては、そういうような年賦の受け入れにこちらはなると思います。また、林野庁が直接売り払ったものにつきましても、法案のとおり二十五年の延納でございますから、一応それによって年賦で入ってくるということに相なると思います。
  215. 芳賀貢

    ○芳賀委員 直接の場合は、これはいま聞いておるのじゃないですよ。ただ所属がえの場合には、自作農創設特別会計に入ってくるわけですね、その売り渡し代金というものは。ですから、活用法案に示された条件で売り渡しを受けたものは、この規定どおり代金を納入するわけですから、納入された分だけが、毎年自作農特別会計から林野特別会計に納付されるということになるわけですか。
  216. 中野和仁

    ○中野政府委員 特別会計法の考え方は、先生おっしゃるとおりでございます。  ただ、条文によりますと、これは三条に規定してございますが、農地局の特別会計に当年の年賦で入りました代金が入ってまいります。その全体の額に、所属がえをいたしました全体の受け入れ額分の所属がえの受け入れ額というものを掛けまして、林野庁に一括払っておるわけでございます。したがいまして、個々の林野庁から所管がえになりましたもの、売ったものについて、ちょうどそれと同じだけということではございませんで、全体としていま申し上げましたような気持ちで、林野庁から所属がえのありましたものを売りましたものが大体入るという計算をいたして、林野の特別会計に自作農の特別会計から繰り入れをやっておるわけでございます。
  217. 芳賀貢

    ○芳賀委員 次にお尋ねしたいのは、活用すべき場合の適地の選定ですね。農地法に基づく適地の選定は、農地法によって開拓審議会で扱うことになっておるわけです。従来、次官通達に基づく適地かどうかの選定というものは、開拓審議会で行なっているわけじゃないのですね。何か林野庁の落とし子のようなものをつくってやっておると聞いておるわけです。先日委員打合会で田村参考人が供述した中においても、銀行の社長とか木材会社の社長というような者が、みんな営林局の活用の審議会のメンバーになって、まことに不適正な審査をやっておるということを聞いたわけですが、農用地に適地かどうかということを選定する場合に、一番権威のある農地法に基づく開拓審議会というものをどうして活用しないのですか。
  218. 片山正英

    片山政府委員 先日の田村参考人と先生お話の中でもありましたが、林野庁が現在国有林活用の問題で、その適正かどうかという審査機関を設けておるわけでございます。これは国有林野のあり方の答申にも沿いまして、農林省設置法を改正しまして、各営林局ごとに確かに管理審議会というものを設けまして、そこで、具体的に活用の上がってまいりました計画につきまして審査をいたすわけでございますが、その以前の問題として、その土地活用が適正かどうかというものは、別途に、それぞれの所管庁並びに県を含めまして、具体的な場所について審査を行なうわけでございますが、それを経たものを具体的に活用する場合、営林局としての審議機関として、設置法に基づきまして設けたわけでございます。  その構成メンバーといたしましては、関係各省、たとえば地方農政局長、あるいは通産の出先の局長、あるいは大蔵関係の局長、あるいは県知事、あるいは学識経験者等を網羅したものの中の審査でございます。これは、営林局として国有林活用の最終の審査のために設けたものでございます。
  219. 芳賀貢

    ○芳賀委員 それでは林野庁としては、農地法を基礎にした開拓審議会の権威というものを認めないわけなんですね。こういう機関で農用地適地かどうかという調査、審査をすることは、不適当であるというふうに考えておるわけですね。活用法案によって適地の審査をする場合には、これは開拓審議会じゃ不適当だから、別の審議会でやるという考えなんですか。
  220. 片山正英

    片山政府委員 林野庁といたしまして、開拓審議会に審査していただくことがまずいんだとか、そういうことをわれわれは何も言っているわけじゃございません。ただ、林野庁として国有林の経営との調整をはかりつつこれを積極的にやるという趣旨から、そういうサイドから営林局としてそれぞれ審議会を設けて審査をしておる、こういうことでございますので、決して開拓審議会がいいとか悪いとか、そういうことを言っているわけじゃありません。
  221. 芳賀貢

    ○芳賀委員 要求のあった国有林野活用すべき地域というものが、はたして農用地として適地であるかどうかということをまず選定しなければならぬでしょう。そうじゃないですか。その場合には、やはり一番権威のあるものは、農地法に根拠を置いた開拓審議会が一番適格だと私は思っているのですよ。農林省の機関が幾つもなければならぬということにはならぬでしょう。だから開拓審議会が、各都道府県ごとに国有林の中で要望のあったその場所を十分調査選定して、これは農用地としては希望は出ておるけれども、これは適しないとかこれは適するということを、やはり審議会で十分検討してもらって、その結論が出た中で、適地であるという分について、あるいは国有林の経営上この適地と認められた地域をそのまま活用に向けるか、あるいは林野の経営上、これはどうしても適地であっても、これを提供することができないというような点については、林野庁長官判断で決定しても差しつかえないと思うのですよ。農用地として適当であるかどうかということは、当然これは開拓審議会にゆだねるべきだと思うのですよ。そうしなければ、一元的な行政というものはできないじゃないですか。農業というものを何も知らぬということを先ほど言いながら、選定については別個に林野庁だけでやりますなんて、これはおこがましいですよ。  この点は、農林大臣としてどう考えているのですか。これもきょう明快な答弁ができなければ、あすこれを一括して、この分についても政府としての統一見解を述べてもらえばよろしいと思うのです。
  222. 長谷川四郎

    長谷川国務大臣 人員もきまっていることでありますし、必ずしも適格者でないとは申しません。また、必ずしも入らなければならぬという義務づけられているわけでもないと思います。でありまするから、この選択に対しましては林野庁が、この人が適格であるということを選択すべき権利を当然持っておりますので、芳賀さんは開拓審議会が適格であろうと考えるかもしれませんけれども、林野庁見解は、そこにまた相違があるのだと私は信じます。でありますから、それは別に必ずしもその審議会に入らなければならぬという意味合いのものではない、こういうように私は考えます。
  223. 芳賀貢

    ○芳賀委員 いや大臣、私の言っているのは、国有林はこれは国の財産で、そうして国有林野特別会計の財産になっておるわけですよ。ですから活用にしても、これはやはり財産の処分ということになるわけですから、その場合は、林野庁長官の意思というものが中心に働かなければならぬわけですよ。ただこの場所が、国有林の中のこの地域が、活用法案にうたっておる農業活用する場合、地元から申し出があった場合に、これを活用することのほうが、国有林として経営する場合よりも高度利用になるという場合においては、これは活用するというのがこの法案の趣旨ですから、その場合、農地として適当であるかどうか、その判断というものは、やはり専門的な権威のある機関において、政府として統一的に行なうのが当然だと思うのですよ。  その場合には、農地法に明確に、都道府県に開拓審議会というものが法律上設置されて、戦後二十何年にわたってこれは適確に運営されてきておるわけです。だから、国の財産を農業利用するという場合、それが適当な土地であるかどうかということの選定を誤ると、戦後の開拓行政の失敗と同じような轍を踏むし、それは単に経済的な損益ということでなくして、受益者としての農民が、将来にわたって大きな犠牲やあるいは迷惑をこうむるということになるので、今後近代的な農業の経営を行なう場合において、将来にわたって農用地としての適地であるというその判断というものは、非常に大切であるというふうに思うわけです。  ですから、その場合には、同じ農林省の中の農地法に基づいた権威のある開拓審議会に、まず適地かどうかということの選定をしてもらう、これは当然じゃないですか。それをいま私は聞いておるのですよ。林野庁のやり方は、これは次官通達に基づいてやりますけれども、別な審議会というものを設けて適当にやっておるわけなんです。その中には、銀行の支店長であるとか、あるいは木材会社の社長であるとか、農業に何ら精通してないそういう者だけ集めて、これは一体どうするかなんて小田原評議をしたって何もならぬと思うんですよ。きょう即答ができなければあす、いろいろ重要な点については全部これは保留になっておるわけですから、その場合に、十分今晩内部的な意見統一を行なって、開拓審議会でやるならやるということで明快な答弁をしてもらいたい。
  224. 長谷川四郎

    長谷川国務大臣 もちろん重要な問題であり、開拓審議会の方々がその体験と、適地であるかどうかという点の判断力というものは相当持っておるだろうと私も考えます。しかしながら、この際これが入らなければならないということも私はないと思う。したがって、その入っている方々が必ずしもゼロの方々ばかりだというわけにはいかないだろう。やはり林野庁で見て相当の権威のある方であり、それだけの判断の間違わない方であるという判断の上に立って任命するわけでありますから、別に審議会の方々が入らなければならないという意味合いのものではないから、あらためてこれについてあす答弁を申し上げる必要はないのじゃないか、私はこういうふうに思います。
  225. 芳賀貢

    ○芳賀委員 あなたがわからなければ、あす答弁のしょうがないからいたし方がないが、あなたは質問をよくわからないで答弁しておるのですよ。審議会にだれを入れるかということを聞いておるのではないですよ。農用地として適地かどうかということの選定をする場合は、都道府県ごとに開拓審議会というものを設置するために、都道府県開拓審議会令という政令がちゃんとあるわけなんですよ。だから、これが法律的にも番権威を持っておる機関であるので、この機関にゆだねて、農用地として適当かどうかというような審査、選定をしてもらうべきでないか、それ以外の私生児的なものでやるのは、これは不適当であるということで私は聞いておるわけですよ。  これは官房長、よく大臣に説明して、いま即刻ということじゃないのですから、あす他の重要な問題とあわせて明快にしてもらえばいいんですよ。大ぜいそこについておって、このくらいのことを大臣にそばで教えられぬようじゃおかしいじゃないですか。
  226. 長谷川四郎

    長谷川国務大臣 あすでよろしければあすお答えを申し上げることにして、いずれ協議をしてまいりましょう。
  227. 芳賀貢

    ○芳賀委員 もう一つ重大な問題ですが、今回の活用法案の取り扱いの場合、これはもうすでに国会で成立して、法律として公布された農業振興地域法と国有林活用における地元のいわゆる農用地利用計画関係というものは、一体どう考えておるわけですか。それとあわせて、農業振興地域法の法文の中における国有林活用という規定と、今回の活用法案の運営というものはどう考えておるか。これは、長官並びに農振法所管の農政局長からも答弁してもらいたいと思うわけです。
  228. 片山正英

    片山政府委員 農業振興地域法に基づきまして各市町村長が計画を樹立する際に、その中に国有林が入るという場合には、それぞれの国有林を所管しております長に協議をいたしまして、その中で進めていくということでございます。
  229. 芳賀貢

    ○芳賀委員 そういうことはわかっておって聞いておるのですよ。それとこの活用法案の運営というものは、一体どう考えておるかということです。
  230. 片山正英

    片山政府委員 協議をいたして承認を求めることになっておりますが、そういう振興地域計画市町村長が樹立する場合、われわれも十分積極的にその趣旨並びにその方向に対し御協力申し上げまして活用の適正をはかりたい、かように思っております。
  231. 芳賀貢

    ○芳賀委員 だから、振興法によってその市町村農業利用計画を立てた場合、農業利用計画区域にたまたま国有林の一部が、これは農業適地であるということで編入される、線引きをされる場合もあるわけですよ。民有林も該当する場合もあるわけなんですよ。その点は、それを予測して、わざわざ農振法の中に国有林活用という一項が入っておるわけでしょう。だから、それが十分に運営されれば、何も別途に国有林活用法案というものを提案する必要はないわけですよ。たまたま国有林活用法案というものが数年先に国会に提案されて、農業振興地域法案というものがそのあとで出て、もう先に通っちゃったわけですからね。この先に出発したものが、まだこういうようにのろのろ運転で、一体どうなるかわからぬということになっておるわけですから、同じ農林省が運営する場合、あの農業振興地域法律で十分、これはこの法案以上に私は国有林活用はできると思うのですよ。  まず、地元市町村は先に、国有林の意向なんかがどうあっても、これは農業振興地域農業利用計画区域だということの線引きをすることに対しては、拒むわけにいかぬですからね。そのあとで、計画地域に編入されておる国有林農業利用の場合に、今度は林野庁と都道府県あるいは市町村法律上の代表すべきものと協議するということになっておるわけだから、むしろ私は、この活用法案よりも農振法の規定に基づく国有林活用のほうが、大きな根拠を持っておるのじゃないかというように考えておるわけです。そういう点に頭を働かして、農振法の中に国有林活用の一項を入れたのじゃないですか。それとも、あなたが知らぬ間にあの法律に入っちゃったのですか。
  232. 大和田啓気

    ○大和田政府委員 この農業振興地域の整備に関する法律というのは、当然国有林野活用に関する法律案があるという前提でつくったものでございます。国有林野活用に関する法律案というのは、国有林活用に関する行政の積極的な姿勢を表明する法案でございますから、それをいわば基礎といたしまして、農業振興地域の整備について大いに国有林活用をはかろうということでございまして、振興整備に関する法律国有林活用の規定があるから、国有林活用法案は不要であるというふうには、私ども考えておらないわけでございます。
  233. 芳賀貢

    ○芳賀委員 それでは、ないよりはましだが、なくても十分効果は発揮できるでしょう、農振法というものをまじめに運営すれば。そう思わぬですか。問題は、農振法によるところの計画区域に編入されない、いわゆるその地元の農業としての発展性のない、期待効果のない国有林さえも、活用法案だけがあった場合には、これを悪用して農地に解放するとか、林野のままで払い下げするなんという動きが出てこないとは限らぬわけですね。だから、長期計画に基づいてこれからの農業発展を考えるために農振法というものをつくったわけでしょう。われわれは、無害無益だからこれは賛成ということで通したという経過はありますけれども、あれは相当やれば働くと思うのですけれども、官房長はそう思わぬですか。
  234. 大和田啓気

    ○大和田政府委員 農業振興地域の整備に関する法律は、当然国有林活用ばかりではございません。一般的な農業振興のために、私ども大いに活用をいたすつもりでございます。それとあわせて国有林活用法案を、いままで次官通達でやっておりましたことを法律にすることの意味につきましては、先ほど来大臣あるいは林野庁長官から申し上げておるとおり、私どもは従来の行政措置を法律にすることによって、さらに政府の積極的な立場を表明し、今後の活用の展開に資するということでございますから、両法案は相まって、国有林活用の合理化に資するというふうに考えております。
  235. 芳賀貢

    ○芳賀委員 それでは、法律の運営の順序というものは、どっちが先になるのですか。まず農振法の対象地域になった国有林を、活用法案を運用して十分遺憾のない措置を講ずるということになれば、どっちが先に働くわけですか。
  236. 大和田啓気

    ○大和田政府委員 私どもは当然、農業振興地域の整備に関する法律の実施によって国有林活用が進むと思いますけれども、この振興地域の指定を待たないでも、ある場面におきましては、草地改良その他で国有林活用というのは現実に行なわれるわけでありますから、振興地域の整備に関する法律関係したところだけで国有林活用が行なわれるというふうには考えないわけでございます。
  237. 芳賀貢

    ○芳賀委員 問題は、地元市町村農業利用計画の中に入らない地域というものは、対象になるということはあり得ないと思うのです。あなたはあると考えているのですか。
  238. 大和田啓気

    ○大和田政府委員 農業振興地域というのは、そこに私ども農業投資を集中的に行なうと同時に、農地の転用を相当厳重に制限するということでございますから、それが多くの農村において受け入れられて、純農村地帯といいますか、あるいは農村らしい農村地帯は、すべて農業振興地域に漸次組み入れられるというふうに予想はいたしておりますけれども、いろいろな事情で、必ずしもそういうふうにならない場合があろうと思います。したがいまして、農業振興地域に限って国有林活用を行なうというふうに、限定して考える必要はあるまいというふうに思っておるわけでございます。
  239. 芳賀貢

    ○芳賀委員 全部自己負担で、農用地の造成も草地の造成もやるという場合は別ですよ。しかし、農業振興地域を重点として第二次構造改善事業を行なうということになれば、これは構造改善事業を進めるために国有林活用を行なうということになれば、やはりこれからの第二次構造改善事業の対象地域であるということが一番望ましいわけでしょう。そう思わぬですか。何のために新しい法律をつくって、重厚な施策をそこで行なうかということになるわけです。
  240. 大和田啓気

    ○大和田政府委員 農業振興地域について農業投資が集中的に行なわれるであろう、また国有林活用もそこで相当行なわれるであろうということは、私もそのとおりだというふうに思います。ただ、私が申し上げておりますことは、農業振興地域だけに限るというふうにはなかなかまいらないのではないかということだけでございます。
  241. 芳賀貢

    ○芳賀委員 農業振興地域以外のところで、無理やり国有林農業活用する必要はないじゃないですか。そういう必要のある地域であれば、これは振興地域に当然加えるべきじゃないですか。
  242. 大和田啓気

    ○大和田政府委員 農業振興地域の指定は農林省がやるのではございませんで、地方の意思のまとまりを受けて都道府県知事が指定をするわけでございますから、振興地域に指定することを、行政的に強制するわけにはなかなかまいらぬというふうに私は思います。したがって、おもな農村地帯は振興地域に指定をされるというふうに予想いたしますけれども、必ずしもそれが全部が全部というふうには、なかなかまいらないであろうということを申し上げておるわけでございます。
  243. 芳賀貢

    ○芳賀委員 議論を蒸し返したくはないが、農振法の審議の場合一番問題になったのは、農林省がへっぴり腰になって、全国計画をつくらないということが一番論議の中心になったわけですから、全部都道府県知事や市町村長にまかせ切りで、農林省が批判者の立場に立って、何にも締めくくりをやらぬというのがこの農振法のいわゆる計画ですから、そういうぼろをつつきたくはないが、問題は、いまから農振法というものは、そういう全く取るに足らぬものであるということが、官房長の今回の説明によってますます明らかになって、天下の笑いものになるだけだと思うのです。  ただ、参考までに申しておきたいことは、農地法の改正案の審議の場合に、農地局長並びに畜産局長は、草地利用権の設定をやる民有林という場合には、これは農振法との関係から見れば、地元の計画地域に編入されたところを主として対象としてやらなければならないということを言っておるわけです。これはあたりまえのことなんですからね。あなたもだいぶ考えがずれてきたのじゃないですか。何のためにそれじゃ農振法というものは必要なんです。民有林とか国有林計画区域の対象にできるという振興法の計画規定がありながら、その計画に入ったところを、長期計画の中で順次これは農用地として造成して、十分地域農業発展をはかる基礎にするというのが農振法の目的じゃないですか。その計画区域に入らない国有林民有林を対象にして活用ということは、これは当を得ないと思うのです。そこに活用すべき余地があれば、そこまで区域を広げて計画を策定すべきじゃないですか。そういう指導を農林省がやるということになっておるんじゃないですか。
  244. 大和田啓気

    ○大和田政府委員 私が繰り返して申し上げておりますことは、農業振興地域については、私ども農業投資を集中的にそこで行なう、農業振興地域を主として農業政策を行なっていくということでございます。したがいまして、国有林農業的な活用も、農業振興地域を主として行なうということについては、私もいささかも疑っておらないわけでございます。
  245. 芳賀貢

    ○芳賀委員 そうであれば、最初にそう言ったほうがいいでしょう。振興区域を主としてやっていくというならば、最初に一言言えば、よけいなことを何も言わぬでいいですよ。最初に、主とするかしないかわからぬから、繰り返して聞いておるわけですからね。われわれの考えとしては、せっかく新しい法律をつくったわけだから、その中に未墾地、あいは国有林でも農業振興に適当であるという適地があれば、市町村計画区域にそれを編入しておいて、そうして国有林と話し合いを進めるとか、あるいは民有林の所有者との間において合意に到達するような努力をするということが、一番法律の運用上望ましいと思うのですよ。  そうなれば、当然農振法が、これは基礎的な計画的な役割りを先に果たして、私はその場合には活用法案というものは不要と思いますけれども、皆さんが非常に熱心ですからして、将来万が一通った場合であっても、農振法の計画地域における国有林野活用というものは、これを優先的に重点的に取り上げて実施すべきではないかということを主張して質問しておるわけです。そう思わぬですか。
  246. 大和田啓気

    ○大和田政府委員 私も、別に変わったことを申し上げているわけではございませんで、農業振興地域を主として農業政策全体——国有林活用はかりではございません。農業政策全体を振興地域を主として行なうべきであるけれども、農林省が指定するのではございませんで、地方が自分の意思によって振興地域になるかならないのかをきめるわけでございますから、一〇〇%そこを主体としてやるというふうにはまいりますまいということだけを申し上げているわけでございます。
  247. 芳賀貢

    ○芳賀委員 それじゃ、この問題はその程度にしておきます。  最後に、これは国有林活用とは直接関係がありませんが、当面した国有林野事業の運営の中の問題になる点を一、二尋ねて終わらしたいと思います。  第一は、毎年の年次報告にも明らかになっておりますけれども、国内における国有林木材生産、あるいはまた民有林生産が停とんしておるわけですね。先般の年次報告に基づいても、昨年の一年間の国内の生産量は五千万立米を割っているわけでしょう。四千八百万立米で、少し前年より減っているわけですね。木材の国内需要が急激に増加しておる。したがって、国内の供給が鈍化、停滞しておる関係もあって、外材に対する依存度が非常に高まって、すでにもう四〇%をこえておるわけですね。おそらく四十四年あるいは来年の四十五年には、国内の供給と輸入の依存度というものは大体同等で、五割、五割ぐらいになるのではないかというふうにわれわれは推測しておるわけです。  ところが、三十九年の林業基本法審議の場合には、外材に対する依存度は二〇%台だったわけです。ですから、その当時は外材輸入は、これは国内の自給度を維持し、また向上させることを政策の重点としていくので、補完的に過渡的に外材輸入を行なうということを、林野庁あるいは農林大臣は言明しておるわけです。たとえば、昭和四十一年に私が衆議院本会議で年次報告に対する質問を行ないました場合も、輸入割合は大体三〇%程度でありましたけれども、まだ時の坂田農林大臣は、これは補完的に外材輸入をやっておるということで、長期見通しの上に立った需給計画の一環として、将来五年、十年あるいは二十年後に、国内の供給と外材輸入の割合が一体どうなるというようなことは、いまだに明確にされていないわけです。幸いにして林業基本法の中には長期見通し、需給見通しと生産の長期計画というものを、農林大臣が策定して公表しなければならぬということになっておるが、いまでも外材輸入というものを、需給面から補完的に考えてやるという気でおるのか、国内における自給度の向上とかあるいは供給の確保というものを、国有林が主体になってやる気になっておるか、全く自信を喪失して、むしろ民有林に追随する形でやっていく気でおるか、その点はどう考えておるわけです。  それからもう一つ、基本法の審議の場合、あるいは四十一年の年次計画の私の質問の場合も、国有林材の販売方法に欠陥があるではないか。当然国の財産の売り払い等については、自由競争入札を基本にして、これをたてまえにしてやるということになっておるにかかわらず、国有林材の処分、販売等については、随意契約が重点になって今日までこれが行なわれておるわけです。そうなると、随意契約の対象になる業者というものは、これはパルプ産業を中心とした独占的な業者だけを選定してそれに随意契約をして、林野庁の予定価格だけでそのまま大量のものを売り渡しておるわけですね。その他指名競争入札、一般競争入札というものはありますけれども、結局国有林材が一番有利に販売されるという実績を見ると、これは一零細な木材業者等を相手にした一般競争入札が、予定価格から相当上回った価格で販売されておるわけであります。結果論からいえば、随意契約でパルプ産業に対しては、予定価格どおり低廉な価格で国有林生産材を売り渡しておる。中小企業とか零細な関連業者に対しては、随意契約の機会を与えない。そして指名競争あるいは一般的には一般の競争入札の中で競争をさせて、高く販売しておるという結果が出ておるわけですね。  こういう点は、もう繰り返してわれわれが指摘したところでありますけれども、依然として態度が改まっていないわけです。一体これは何のためか。大企業優先に国民の共通の財産というものを安く売って、力のない地元の中小企業あるいは零細関連企業者に対しては、自由競争の中で高く競争さして売らなければならぬという理由というものは、一体どこにあるわけですか。この二点について、これはまず順序として農林大臣、それから長官ということで明快にしてもらいたい。
  248. 長谷川四郎

    長谷川国務大臣 わが国の経済の成長、この成長率というものがこのままで推移していくことになりますと、結論として、木材輸入の増大というものははばむわけにはいかないだろう、こういうふうに考えます。また、国内森林資源におきましても制約がございます。これが他の工業生産物と違いまして、他の農産物ともさらに違って、一年でこれがすぐ栽培できるというようなものでございませんものですから、これに対しましては、先ほど申し上げましたとおり、奥地の開発等相当の努力を尽くしまして、今後一定の計画性を持った伐採をやってまいりたい、こういうふうな考え方には変わりはございません。  したがって、今後は、さらに現在の経済力の推移によって見ますと、来年度もまた輸入材が相当ふえていくだろうということはいなめない事実だと考えます。しかしながら、何といっても国内資源の保護育成ということに重点を置いて、今後の政策を行なっていく考え方でございます。  さらに民有林の問題でございますけれども、決して民有林だけの問題において解決つけられる問題でない。何といっても、主として行なうものは国有林でなければならないとわれわれは考えておりますが、国有、民有併行した生産によってこれを補っていくというのが当然のことだと考えます。  さらに販売の、自由競争か指名競争かという点については、長官からこれをお答えさせます。
  249. 片山正英

    片山政府委員 木材需給の問題につきまして、大臣に御答弁いただきましたが、要は、四十一年にわれわれが閣議決定を経て長期見通し並びに森林資源基本計画というものをつくったわけでございますが、その当時のわれわれの想定と確かに若干食い違っております。  それは、まず第一点は、需要の伸びが非常に大きいということでございます。その背景といたしまして、当初われわれが想定した国民所得の伸び率が非常に大幅に変わったということから、需要予測をわれわれ当初非常に下回った形で想定いたしたわけでございます。したがいまして、需要が非常に伸びたことが一つであります。  それから、もう一点は生産でございますが、確かに御指摘のように、木材生産というのはなかなか増加いたしませんで停滞をいたしております。その理由はいろいろ判断されるわけでございますが、一つは、やはり木材利用し得る、伐期に達しておる山というのが、針葉樹につきましては、終戦後植えた山が七割を占める状況でございますので、伐期に達していない山が相当多いというのが一つでございます。それからもう一つは、やはり民有林国有林含めた奥地開発が非常におくれておる、林道等の投資が確かにおくれておる、これを認めざるを得ないわけでございます。もう一点は、木材生産を行なう場合に、やはり従来個々に小さな形で行なわれておるというのは、労務等も含めましてなかなか困難な諸情勢でございますので、ある程度協業化というような形の中で進められることがぜひ必要なことでございます。  その意味で、林業構造改善というものを三十九年から実施いたしまして、それぞれ協業化の方針をとるとともに、資本装備の高度化ということもあわせ含めまして推進をいたしておるわけでございますが、当初目的といたします約千三百町村に対しては、まだ半分以上の段階でございます。  それからもう一点は、薪炭需要の急激な減少であります。その薪炭材は、われわれはできればパルプ材に結びつけていきたいということで努力をいたしておるわけでございますが、やはり薪炭材の利用も、個々の小さな所有者でありますと、需要構造との関係で結びつきがなかなか困難でございます。やはり協業の中で大量の取引を実施していかないとなかなか困難でございますので、そのような方向で、ことしからやはり里山開発事業ということもあわせ行ないましてその目的を達成してまいりたい、かように思っておるわけでございます。いろいろな施策と相まって、国内生産の打開をはかってまいりたいと思います。  国有林野事業につきましても、同じような意味におきまして、不良な森林を早くりっぱな森林にするということで、先ほど御指摘もいただきましたが、生長量以上の伐採を続けながらその生産を確保してまいりたい、あわせて、あと地の森林をりっぱなものにしていきたいという方向で実施いたしておるわけでございます。  それから、もう一つ販売の問題でございます。確かに先先の御指摘のとおり、国有林の販売は大づかみにしまして随意契約が半分、公売、指名が半分、大体そのような形でやっているわけでございます。なぜ随意契約するのかということにつきましては、主としてこれは地元工場、先ほど先生は、地元工場は競争だということをおっしゃいましたが、そうじゃなしに、地元工場を中心にして随意契約というものを行なっておるわけでございます。ただパルプ工場に対して、なるほど随契をいたしております。しかし、そのパルプ工場に対する随契はパルプ適材、非常に不良林地をわれわれ伐採を始めておりますが、その不良木、非常にほかのものとしては使いにくい、パルプ適材とわれわれいいますが、そういうものを主として対象にして売り払っておるというような形でございますので、地元の振興、安定を前提としてやっておるわけでございます。  以上でございます。
  250. 芳賀貢

    ○芳賀委員 第一の点の、外材を補完的に輸入するというこの態度は改めるのですか。
  251. 片山正英

    片山政府委員 われわれは国内生産を中心に置いて、その足りない分を外材として輸入したい、こう思っております。しかし、御承知のように、外材はいま関税はございません。したがいまして無税の形で、いわゆる経済の中で入ってくるわけでございますから、われわれとしましても外材に対する態度、あるいは外材に対する指導、需給等の調整、これは十分業界とも打ち合わせながら、かつ、国内資源の有効な利用を業界にもお願いしながら、木材価格安定、需給安定を目途として進めておるわけでございます。
  252. 芳賀貢

    ○芳賀委員 だから、政策的には補完的に入れるという考えでこれからもやるのか、そうじゃなくて、もう外材と国内供給を並立的に考えて政策を進めるというのか、その点だけを聞いているんですよ。
  253. 片山正英

    片山政府委員 説明がくどくて失礼いたしましたが、補完的に考えたいわけです。しかし、実際問題としてはすでに、先ほど申しましたように、一つの経済のベースとして流れてきているわけでございますから、そのようなことが現状でございますから、補完的といっても、それは外材としての一つの流通が形成されております。したがって、われわれは需給安定上、また国内資源の有効利用がされるよう相はかりながら外材も輸入したい、こう思っているわけでございます。
  254. 芳賀貢

    ○芳賀委員 一言でいいんですよ、従来のように長期的な計画を持たないで、国内の林業政策というものは、国内生産を重点にしてやっていきますということを国会に対しても言っておるわけでしょう。外材問題は一体どうなるということをわれわれが指摘すれば、いやそれは補完的です、過渡的にそれはそういう現象が生じたので、長期的には国内生産で十分経済の発展に対応して供給ができます、そこに国有林野事業の重大な使命がありますということを、あなた方公言してきたじゃないですか。それがもう輸入四〇%をこえておる。来年あたりはもう五〇%になるということになるわけですからして、これは、国有林野事業を預かる長官としては重大な責任があるわけですよ。国有林活用なんと言っているときじゃないのですよ、ほんとうは。だから、補完でいくのか、これはもうどうしてもしょうがない、体制を立て直して国内生産と安定した輸入材というものの並立で進めていくというのか、政策の基調というものをどこに置くかということを、この際明確にする必要があると思うのです。
  255. 片山正英

    片山政府委員 閣議の決定を経ました需給長期見通しでございますが、これは、今後五十年先までも一応想定をいたした長期のものでございます。それにわれわれは準拠していま進めておるわけでございますが、考え方としましては、今後約二十年間におきましては、国内生産というものは非常に困難な時代でございます。二十年を過ぎますと、いま言いましたように造林したものが利用化される、伐期になるわけでございますから、二十年過ぎますと、その生産は逐次国内生産のウェートが高まりまして、将来の構想としましては、国内材九〇%、外材一〇%ということをわれわれは目途といたしております。  ただ、今後二十年間については、ある程度の外材に依存をしまして、需給その他価格の安定を考えなければならないであろう、かように考えておるわけでございます。
  256. 芳賀貢

    ○芳賀委員 長官、あなた安易なことを言っているじゃないですか。二十年たてば、私もあなたもこのしゃばにいるかどうかわからぬから、そういう平気なことを言っているかもしれませんが、あなたは、七月十五日に統計調査部が発表した速報を見たですか。これは民有林主体ですが、昨年の国内における調査の概況というものが出ておるが、一体二十年たって、国内供給が中心になってやれるという判断ができるのですか。一体どうなっているのです。去年の民有林の造林事業現況にしても、あるいは伐採量の問題にしても、あるいは林野事業で一生懸命働く労働力の確保の問題にしても、あるいは自営林業の場合でも、どうなっているということは、七月十五日の統計調査部の速報に出ておるでしょう。私は、林野関係の統計というものは、林野庁が調査してまとめてやっておるというように実は考えておったわけです。これはうかつな話ですけれども、たまたま統計調査部の発表内容を見ると、これは林野庁は何もやっておらぬで、農林省の統計調査部が、森林に関する造林から伐採から、そういうものをあなた方は何もしないで、統計とか長期見通しというものは、全部統計調査部にまかせっきりじゃないですか。一体そういう態度で、現状を知らないで、二十年たてば安心ですなんということが言えるのですかどうですか。  きのうたまたま私はくにに帰っておったところが、きのうの六時にNHKの北海道ニュースが出ておったですよ。これは、アポロで全部占めておったのですけれども、たまたまその終わりのほうで、いま私が申しました農林省の統計調査部の発表として、北海道における昨年の林業の動向がどうなったということを、数分間テレビで放送しておったわけです。それはごく短時間ですが、北海道の民有林の個別経営の林家は総数で約七千戸である。それから会社林等が約八百の経営体を持っておる。しかし、昨年の生産面における実態というものは、まず造林面積が前年度に比べて非常に減少しておる。伐採生産数量も減退しておる。それから、もう一つの顕著な実例としては、労働力が非常に不足をしておるので、十分な林業経営というものを進めることが困難な状態に置かれておる。これは、国有林野面積においても、林野率が北海道は一番多いわけです。これからの林業ということになれば、北海道は寒冷地ですから生長のテンポがおそいが、おろそかにできないところですね。そういう中でも停滞現象というものがはっきり出ておるわけなんですよ。  そういう実態の把握というものは、あなたは自分でやらないものだからわからないわけですね。国有林の山の統計とかは、あなたのところが林政を担当しておるわけですから、林政を進める上に必要な基礎資料としての統計等の問題を、どうして自分でやらないのです。能力がなくてできないわけですか。そういう点についてもこの際明快にしてもらわぬと、二十年たって、私が死んだあとはだいじょうぶだというようなことでは、これは通らないですよ。
  257. 片山正英

    片山政府委員 統計の問題でございますが、これはずっと前でございますけれども、林野庁といたしましても、需給問題の統計等をやっておった経緯はございます。しかし、農林省全体としての打ち合わせの結果、農林省一本として統計調査部でやっていただくのがより適確であろうということの打ち合わせの中でこれをきめておるわけでございます。したがいまして、統計調査部の調査されましたそのものに基づきまして、われわれは政策をさらに進めておるわけでございます。  それから林業全体の問題で、私ほんとうに簡単に二十年あるいは五十年というような表現で申し上げましたが、非常に内部のものを省略いたしすしたけれども、御承知のように、長期計画というものを閣議決定を経まして、それに基づきまして全国森林計画というのを実はつくっておるわけでございます。それで山の生産、育成の最も合理的な姿は何かということを全国森林計画で決定しまして、そうして需給見通し、生産見通しというものを出しておるわけでございます。その一接点が二十年、そこから先は林力が非常に上がってくるという意味で申し上げたわけでございます。
  258. 芳賀貢

    ○芳賀委員 この問題はひまなとき、あなたを相手にしてもう少し議論することにしましょう。  もう一つ、販売方法の中で、パルプ会社等に毎年大量な木材を随意契約で販売しておるわけですが、一体、パルプ会社が随意契約で国有林から買い受けた木材を、転売するという事実等についてはどう考えておるのですか。パルプ用材よりももっと有利に販売できるようなものは、パルプ経営を有利に導くために、転売しなさいという指導をしてやっているわけですか。
  259. 片山正英

    片山政府委員 随意契約につきましては、地元工場を対象にしまして随意契約をやっておるわけでございますが、またパルプ工場につきましてはパルプ適材という、悪いことばでいえば不良材というものを前提にしてパルプ材の売り払いをやっておるということでございます。  ただ、山の売り払いでございますから、その中でパルプ適材といっても、若干のものは製材に回したほうがいいというものがあり得るわけでございます。また、一方製材に売り払った中におきましても、これはおれのところじゃ使えない、パルプ以外に使えないという材木もあるわけでございます。そういう材の交換ということが、実際問題として行なわれておるということも承知いたしております。  したがいまして、なるべくそういうことを避けるために、われわれは適材主義、ある山について、これは製材、これはパルプしか使えないからパルブという形の共同買い受けという方針を推進して、その適正な利用をはかりたい、このように指導して、また今後ともこのような形でやってまいりたい、かように思っておる次第でございます。
  260. 芳賀貢

    ○芳賀委員 それじゃ、パルプ会社の転売は認めておるわけですね。いいですか長官、そういう点は実態がよくわかりませんという程度ならまだいいですよ。そういうことを承知の上で随意契約、低い予定価格そのままでパルプに大部分の国有林を売り渡している。これは問題なんですよ。販売方法については、行管の指摘も受けているじゃないですか。それにもかかわらずパルプ会社は国有林の立木あるいは製品を買い受けて、パルプの原料に使用しないで、利潤追求の形で高価に他に転売することを認めておるというふうにあなたは発言されたが、こういうやり方というものは、国有林野事業の運営からいってもこれは非常な問題ですよ。もしそれが事実であるとするならば、われわれとしては容認することができないですからね。
  261. 片山正英

    片山政府委員 先ほど申しましたように、パルプに販売したものはパルプに使うのが原則でございまして、したがいまして、われわれはパルプ適材というものを中心にしてパルプに売っているわけでございますが、先生先ほど御指摘のありましたように、パルプ適材以外の材が山でございますから若干あり得る。一方製材についてもそういうことがあり得る。そういう場合に交換というか、転売というか、あり得ると思います。その場合はわれわれの承認を受けて、これこれはできないのだということの承認を受けてこれを売り払うというような指導は、実はいたしておるわけでございます。ただ、パルプ適材であればパルプに使うのはあたりまえでございますから、そういう適材だけを原則として売り払うという方向で、先ほど申しました共同買い受け、若干これは製材に向くじゃないかという場合には製材というふうに指定して、共同買い受けを推進しているというのはそういう意味でございます。  それからもう一つ、価格を安くということでございますが、パルプ工場に安く売るということは毛頭ございません。これは予定価格というものをつくりまして、製材であれ、合板であれ何であれ、価格というものは一定の時価主義をとっておりますので、安く売るということはいたしておらないつもりでございます。
  262. 芳賀貢

    ○芳賀委員 それじゃ、許可制にして転売を認めておるわけですね。これはますます重大じゃないですか。よくわからぬとか、そういう事実があるらしいという程度ならまだいいが、一々今度は林野庁がタッチして、この程度のものはパルプ用材にもったいないから高く売りなさいという許可とか承認制で、パルプ会社に不当利潤を与えておるということなら、これはますます問題ですよ。これは簡単な質問でこういう問題がちょっと出たくらいですから、これはいろいろ内容を検討すると、まだまだ大きな問題が出てくるのじゃないですか。どうですか、転売をほんとうに許可制でやっているのですか。そうであれば明日までに、十四の営林局単位で、パルプに随意契約で販売した立木あるいは製品のうちのどのくらいの数量、何十%くらいの数量に対して交換なり転売を認めたかどうか、そういう内容を、少なくとも過去五年くらいにわたっての資料を出してもらいたいと思います。
  263. 片山正英

    片山政府委員 一般に、国有林の売り払いと先ほど申し上げましたのは、売り払う場合に用途指定というのを実はいたすわけであります。その用途指定以外に使う場合に、営林局の承認を得るという制度になっておるわけでございます。  それからパルプの問題で、ただいま申しましたような価格の問題で、あるいは若干の製材原木が山の姿の中では入り得るということがあった場合は、これはあくまでパルプ材としての評価ではございませんで、製材原木としての評価でございます。そのような形で売り払うわけでございますから、その価格を不当に安くするということは、ないだろうというふうに判断いたしておるわけでございます。
  264. 芳賀貢

    ○芳賀委員 ないだろうと言ったって、この資料にあるじゃないですか。いいですか、予定価格で売るのが随意契約でしょう。そうですね。それから一般の競争入札の場合は、参加した入札者が競争して入札するわけですから、どうしても結果的には予定価格よりも高く販売されるわけですね。国の方針は、一般競争入札によって行なうということは、これはたてまえになっておるわけだが、国有林の場合には、その国の財産の処分の基本というものを踏みはずして、随意契約でこれをやっているわけです。パルプ以外に若干の地元業者を参加さしたとしても、量的にはパルプが圧倒的に随意契約で販売を受けておるわけです。営林局単位において、一般の競争入札の予定価格との比較は、若干の高低はあるが、大体予定価格よりも二〇%ないし三〇%程度上回った価格で競争入札によるところの販売が行なわれておるわけですね。ですから、これをこの原則に立って競争入札ということでいけば、これは国有林の収益というものは一挙にして倍加すると思うわけなんです。それも、この売り払いの方針によって、地元の産業を育成するために随意契約等の道を特例に開くという場合には、経営力の弱い地元の関連産業に対して、限定した競売等を行なうのがたてまえであれば、われわれとしても理解できるわけです。しかし、特別措置の随意契約というものをパルプ会社を主体にして、国有林生産された製品全体の五〇%も売り渡すということは、これは問題があるじゃないですか。しかも、その中で一番低品位のものだけをパルプ原料に使って、あとは幾らでも高く転売しなさいというようなやり方というものは、これは国民の山、国民の財産を運営する長官として、適切なやり方じゃないと思うのですよ。  あなたは、歴代の長官がそうやってきたからふしぎに思わぬでやったと言われるかもしらぬが、いまのような明確な事実というものを述べられた場合には、われわれとして不問に付するわけにいかぬですからね。ですからこれは、明日にいろいろな重要問題を保留してあるわけですからして、このパルプ会社に対して転売を認めた数量というものが、全国の営林局管内において、売り渡し数量に対してどのくらいの割合あるかという資料というものは、ぜひ出してもらいたい。よろしいですか。
  265. 片山正英

    片山政府委員 ただいま転売数量いかんということでございますが、なかなかきょうあすの調査は困難かと思います。しかし、先生のおっしゃるように、転売を目的とすることはまず不適当だと思います。したがいましてそういう方向、先ほども御説明いたしましたように、やはりパルプに使うという、そういうパルプ材を売るというのが原則でございますから、そのような方向で対処してまいりたい、かように思います。
  266. 芳賀貢

    ○芳賀委員 だから、パルプ会社に売るためにはパルプの原料にするために国有林の材を売り払ってもらいたいというのがパルプ会社の態度じゃないですか。自分のパルプ工場の原料に充てるために、国有林の立木あるいは製品を払い下げてもらいたいというのが正当な態度じゃないですか。そういうきちっとした区分をつけないで、何もかも全部一括して売り渡して、その中で高く売れるものは、会社のもうけのために幾らでも転売してよろしいというようなやり方というのは、これは絶対許せぬですよ。これは与党、野党を通じて、それでいいという者はだれもいないと思うのです。  だから、これから改めるということは当然ですが、しかし、いままでどういうやり方で行なわれたということは、これはわれわれとしても内容の検討が必要ですから、これはぜひ資料として出してもらいたいと思います。大事な製品の販売等について、毎年どうなっておるかということが、林野庁の本庁としてわからぬはずはないと思うのです。いまやっておるものを出せというのじゃないです。年度の終わった分について、過去五カ年くらいについてはわかると思うのです。そういうことも全然わからぬというのは、林野庁なんというものはでたらめなことしかやっておらぬということになるじゃないですか。私はそういうことは思っておりませんが、必要な販売内容等についての区分というものは資料として出せるし、そうでなければ、この決算はできないじゃないですか。その点はどうですか。
  267. 片山正英

    片山政府委員 短期間ではなかなか困難だと思いますけれども、できる限り調査をいたしまして、御連絡申し上げたいと思います。
  268. 芳賀貢

    ○芳賀委員 大臣、その点の資料はぜひあなたからも長官に命じて提出してもらいたいと思いますが、よろしいですか。
  269. 長谷川四郎

    長谷川国務大臣 私も、いま聞いてみたのでございますけれども、芳賀さんのおっしゃることになりますと、パルプ材として安く買ったものを用材として売っておるじゃないか、よけい利益を与えておるじゃないか、こういうお話でございますが、聞いてみますと、この中から何%、たとえば一%なり二%、三%そういうものが出るだろうということになると、その価格を引き上げまして、その分だけ引き上げたものが会社の契約になるのだそうでございます。ですからそのものずばり、たとえば安い価格で買ったものが高く売れるのだ、こうはなっておらないシステムになっているそうでございます。  いずれにしても、資料が御入用ならば、資料はなるべく出すようにいたしましょう。
  270. 芳賀貢

    ○芳賀委員 なるべくじゃないですよ。それはわれわれも必要だし、あなたも農林大臣としてそういう資料を取り寄せて、十分検討する必要があると思うのです。これは共通の問題ですよ。
  271. 長谷川四郎

    長谷川国務大臣 もちろん、その点につきましてはいろいろお話を承っておりますし、その販売方法というものは一これは林野庁の財産じゃありません。国民の財産でございますから、国民の財産は国民の財産のような取り扱いをいたさなければならない。ですけれども、そういう点については十分私もいま伺っておりましたから……。
  272. 芳賀貢

    ○芳賀委員 それでは、いま大臣がいい答弁をされたですから、これで本日の質問は終わります。  ただし、先ほど保留した重要な数点の問題点については、この審議促進のためにも、政府の統一見解、われわれの納得できる法律上の見解というものを、ぜひ明らかにしてもらいたいと思います。その点だけ明確にしておきます。
  273. 長谷川四郎

    長谷川国務大臣 先ほどからの御質疑のうち三点、明日御答弁申し上げます。
  274. 丹羽兵助

    丹羽委員長 次回は明二十三日開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後五時五十八分散会      ————◇—————   〔参照〕 昭和四十四年七月十七日(木曜日)  農林水産委員打合会    午後一時十九分開会
  275. 安倍晋太郎

    ○安倍委員長代理 これより農林水産委員打合会を開会いたします。  委員長所用のため、指名により私が委員長の職務を行ないます。  本日は、国有林野活用に関する法律案について意見を聴取するため、全国農業会議所専務理事池田斉君、全林野労働組合中央執行委員長田村武君、日本国有林労働組合中央執行委員長熊井一夫君、以上三名の方々に御出席を願っております。  この際、本日御出席の各位に一言ごあいさつ申し上げます。  各位には、御多用中にもかかわらず御出席をいただきまして、まことにありがとうございました。本日は、国有林野活用に関する法律案につきまして、委員会において参考人として御意見を承る予定でありましたが、諸般の事情により、はなはだかってではありますが、委員打合会においてその御意見を承るよう変更いたしましたので、各位の御了解をお願い申し上げる次第であります。この点御了察の上、本法律案につきまして忌憚のない御意見をお聞かせ願いたいと存じます。  なお、はなはだかってではありますが、御意見の開陳は一人おおむね二十分程度にお願いすることとし、その後委員からの質疑があれば、これにお答えいただくことにいたしたいと存じます。  それでは、まず池田君にお願いいたします。池田君。
  276. 池田斉

    ○池田斉君 私、農業会議所の池田でございます。  皆さんもすでに御案内でございますが、全国国有林野解放対策協議会がございまして、これは昭和三十八年に全国的に結成をされまして、今日まで国有林活用法案の推進を行なっておるわけでございますが、その事務局を担当し、事務局長ということでやっておりますので、本日は、会議所と両方の立場を含めまして申し上げたいと思うわけでございます。  特に農業会議所は、御案内のとおりでございますが、農業基本法の制定以来、わが国の農政を基本法のレールに乗せて、どういうふうに今後転換をはかっていくか、こういう問題で、特に構造政策を全面的に前進をする、こういうことがいまや農政の推進上最も重要なことである、こういう認識に立ちまして、今日まで微力ながら、いろいろ皆さまのお世話になりながらやってまいったわけでございます。御承知のように、本年度は特に米価の据え置き、こういうような状態になりまして、いよいよもって農村地域農家は、将来のわれわれの農業をどういうふうにやっていったらいいかというようなどたんばに実は追い込まれておるわけでございまして、そういう時点に立ちます場合には、いよいよここで本格的な構造政策の体系というものを立てなければならぬ、こういうことがますます必要になっておるわけでございます。  これらとの関係におきまして、政府提案という形におきましてすでに当委員会におきまして審議が行なわれ、目下参議院に回っている、あるいは参議院を含めまして通過をいたしました幾つかの法案があるわけでございます。私どもは、これらをひっくるめまして構造政策の関連四法案、こういうふうに申しておるわけでございますが、申すまでもなくその中心は農地法であり、続きまして農協法の一部改正であり、農業振興地域整備法であり、ただいまこの国会で、特に当委員会におきまして御審議中の国有林活用法案も、四法案として密接不可分の大事な法律案である、こういう認識に立っておるわけでございます。したがいまして、これから地域的な農業振興していく、こういう場面に立ちましていろいろ問題を考えますと、この国有林活用法案が、今度の国会におきまして万一不成立に終わるというようなことになりますと——国有林所在地域の農山村におきましては、ある意味におきましては、一番大事な構造政策を推進するためには、この法案こそ最も重要な法案である、こういう認識に立って、農業会議所も全国国有林野解放対策協議会とタイアップいたしまして、今日まで推進をしてまいったわけでございます。そういうような意味におきまして、私は結論といたしまして、当委員会におきまして長年の懸案である、最後の構造政策関連法案として残されておるこの法案につきましても十分御審議を願うと同時に、もう会期が余すところ少ないわけでございますので、何とかひとつ審議を促進していただきまして、今国会でこれが成立することを、まず特にお願いを申し上げたいわけでございます。  そこで、この法案をめぐりまして、当委員会におきましても論議がたくさん出ております。私どもも傍聴をいたしながら、各党のいろいろな御意見を承っておるわけでございますが、それらの御意見等の中に出ております幾つかの問題点を、これから若干申し上げまして私どもの考え方を明らかにし、結論的には、ひとつこの法案につきまして十分御審議を願い、成立をお願いいたしたいというふうに考えるわけでございます。  第一の問題は、いま申し上げましたように、少なくとも国有林の所在地域におきましては、いまわが国の農業が置かれておる非常に重大な転機に対応いたしまして、いわゆる構造改善、総合農政を具体的に展開するという場合には、国有林活用の問題を前提としなければこれを進めていく道がないということでございます。もっとも、国有林活用につきましては、従来あります法律、あるいは御案内のように次官通達等におきまして、いろいろ具体的な措置が行政上とられておるわけでございますけれども、この問題との関連におきまして、この国有林活用法案というものは、その場合黒い霧が発生をする原因になる、こういうようなことが当委員会におきましてもいろいろ言われておるように聞いております。私どもは、むしろいままでのやり方こそ、黒い霧を発生する原因が何となくどこかにあるような感じがするわけでございます。  国有林の問題は、基本的には国有財産の管理あるいは国有林の経営、こういう立場に焦点が置かれておりまして、そのために国有林の所在地域のいわゆる民主的、農民的な要求、こういう問題が具体的には閉ざされて制限をされる、そういう姿の中にあります。あるいは言い過ぎかもしれませんけれども、むしろ一部の有力者と林野官僚の恣意的な運用、そういう問題が結びつくというようなことは、行政措置という立法の規制が強くないところにそういう原因があるのではないか。私はむしろ積極的にこの法律を通すことが、黒い霧の発生を押えるためにも必要ではないかというような感じさえいたしておるわけでございます。  したがいまして、今回の法律は、新しい時代に即応した農林業構造改善を促進する、そういう基本的な立場から、いままでの活用のいろいろな行政的な措置を法律として体系化いたしまして、地域住民が要望をしておる国有林野の民主的活用という問題との調和をはかりながら、特にこの問題に対する活用の基準でございますとか、あるいは条件でございますとか、あるいは対象でございますとかいうことを法律的に明確にいたしまして、いわゆる恣意的な運用を防止する、こういう問題が一つのねらいではないかと思うわけでございます。  第二の問題は、この法案を通す前に、わが国の農林業、特に林業の基本政策がまだ十分体系立っていないので、そういうものをやらない段階におきまして、先ばしってこういう活用法案を制定するのは、もう少し時期を待つべきではないか、こういう御意見があるように聞いております。  この法律というものが出てまいりました背景というものが、少なくとも国有林が非常に偏在しております地域住民ほんとうに強い要望という形で、しかもこれを民主的に活用しよう、こういう問題から出されておるわけでございまして、私どもは農林業の具体的な発展というものは、やはりそういう地域住民の要望、エネルギー、そういう問題とどういうふうにマッチをしてこの問題が具体的になるかということこそ、いわゆる農林業、特に林業振興に具体的につながる道筋であるというふうに考えるわけでございます。言うなれば、この法律農林業をこれから振興をしていくその前提条件、いわゆる土地利用、こういう問題を含めまして、これを地域住民の要望にできるだけ民主的にこたえていくというところにねらいがあると思うわけでございまして、林業の基本政策が確立していないから時期が早いということは、私は本末転倒した御意見ではないかというふうに考えておるわけでございます。  第三番目には、戦後の緊急開拓におきまして国有林をかなり開放活用をはかったが、これがすべて失敗に終わっているというような意見、あるいはそれとの関連におきまして、具体的に黒い霧が出てきておるというような御指摘等もあるやに聞いております。  私は、戦後の緊急開拓というものは、いわゆる農林業発展という問題以前の問題が、当時のわが国の敗戦後の、いわゆる国民全体をどうして食わすかというような、つまり職業を与える、こういうような問題がむしろ前面に出ておったというふうに理解をいたしておるわけでございます。そういう意味では、地域住民の要望ということではなくて、職業を与えるということで国がやむを得ず緊急開拓に、それらの方々を動員してそういうところで経営を確立させよう、こういう努力であったというふうに考えておるわけでございます。したがいまして、そういう意味におきましては、緊急開拓に従事した人々の中には、ほんとう農業発展させるということよりも、何とかひとつめしを食うというような問題が先行していることはやむを得ないわけでございまして、いわゆる農林業をその地域で担当し発展させていこう、こういうような主体的な条件が、今日とは非常に違っておったのではないかというふうに考えておるわけでございます。そういうような間隙を縫いまして、あるいは一部に黒い霧のような問題が発生をいたしたことも、ある意味ではやむを得ない姿ではなかったかというふうに考えるわけでございます。  しかしながら、今日起こっておりますところのこの運動というものは、そうではなくて、いわゆる地域住民ほんとう自分たちが農林業を確立し、ひいては日本農業発展にみずからひとつ寄与していこう、そういう意欲的な姿の中でこの問題が起こっておるわけでございまして、特に、農地改革以来長い間の中におきまして、皆さまも御承知のように、農業者もいまや立ち上がって、政府の施策を求めながらほんとうにその地域農林業をひとつ発展させる、みずからも所得の向上をはかる、こういうような農民の中にも主体的な条件というものが、今日成熟をしてきておるというふうに思うわけでございます。そういう姿の中でこの問題が起こっておるということを、十分ひとつお考えを願いまして、いま国有林活用法案が意図しておる客観的な農村の背景というものが、当時とは全く違うということを、ひとつぜひ御了承を願いたいと思うわけでございます。  それから、第四番目に申し上げたいことは、われわれのこの運動が、一部のボスの運動である、その食いものになる危険性があるというようなことが、とかく批判をされておるように聞いております。  なるほど、この運動を推進している中には県知事もおります。あるいは県会議員もおります。町村長もおります。そういうような方々の運動であるから、これはボス的な動きであるという考え方は、私は非常に誤解が多いのではないかと思います。いわゆる国有林地帯の住民というものはすなおな住民であり、ほんとうに先ほども申しましたような気持ちを中心としてこの運動に期待を寄せておるわけでございまして、これらの方々の考え方を代表した姿におきまして、あの国有林野解放対策協議会の運動が行なわれておるわけでございまして、私は、これらがボス的な一つの政治運動ということにつきましては、十分ひとつその誤解は解いていただきたいというふうに念願をするわけでございます。  特に、今度の活用に対する運動は、各偏在地域の市町村におきまして、いま十分具体的な計画を立てておるわけでございます。この計画住民と一緒に立てまして、そしてその村の農業なり林業を将来どうしようか、こういうような計画の上にこの運動が取り上げられておるということを、十分ひとつ御承知を願い、もし万一そういう問題があるならば、それらの問題につきまして、法律の上におきましても監視の機構なり、そういう問題を十分お考えを願いたいと思うわけでございます。あくまでもそういう地域住民の要求を背景として、すなおな形でこの運動が行なわれているということを、ぜひ御理解を願いたいわけでございます。  最後に、この法案を、私どもは原案で押し通せというような考え方は毛頭持っておりません。もしかりにこれでも黒い霧の心配があるというようなことでありますならば、そういう問題を防止するために、さらに万全な措置を立法的に規制をするということも、十分ひとつ考えていただきたいというふうにも考えておるわけでございます。  たとえば、買い戻しの特約の規定、あるいはその期間、あるいは活用後の事後報告、そういうような問題を義務づけるというような面につきまして、現在の法律でもございますけれども、そこをさらに強く規制をするというような問題を含めまして、不適正な活用というものはさらに規制を強化するというようなことは、当然ひとつお考えを願いたい点でございます。  また、御案内のように、国有林は東北、あるいは南九州、あるいは四国の一部、そういうところに大きく偏在をしておることは御承知のとおりでございます。むしろ民有林が圧倒的に多い、こういうような地帯があるわけでございまして、わが国全体の治山治水、あるいは国民の保養でございますとか、あるいはもっと経営を合理化して林業の総生産を増大するというような視点、これらが国有林野事業の本来の目的であると思うわけでございますが、そういう目的を全国的に及ぼしていくというような観点から申しますと、国有林偏在地域を中心としたこの活用によりますところの国のふところに入る原資、そういうものをむしろ積極的に利用していただきまして、民有林の多い地帯におきまして、奥地で民有林の経営が困っておる、こういう問題があれば、特に治山治水上から見ても大事である、あるいは国有林の経営をさらに経営的に伸ばすためにも必要である、こういう地域をむしろ買い入れるというような方向での問題等も、十分ひとつお考えを願いたいと思うわけでございます。  さらに、一部の御意見といたしまして、農地のほうは問題はないが、林地におきましては個人の活用という問題がこの規定にある。私どもはいま全国の調査をいたしておりますが、全国的な調査の中で、今日大体四十万ヘクタールから五十万ヘクタールくらいの間の希望が出ております。しかし、その活用の形というものは、ほとんど全部がいわゆる組合をつくってやりますとか、そういう共用あるいは共有的な姿の中での部落あるいは村ぐるみの活用、こういうような姿が圧倒的に多いわけであります。したがいまして、この個人という問題がやや黒い霧につながる危険があるというようなことでありますならば、私は、この条項につきましても適切な再検討をお願いして差しつかえないのではないか。いまの運動の中におきましては、個人活用というような、そういう気持ちはほとんどないのが現実でございます。  さらに、国有林偏在地域については事情がよくわかる。先般、当委員会が現地調査を数カ所やったことも聞いております。それらの方々の御意見等につきましては、なるほどこの地域はひどいものだ、こういうようなお話も聞いております。したがまして、法律でありますから、なかなかそれの適用につきましての運用についてはいろいろ問題があるかと思いますけれども、私は、少なくともこの運用につきましては、国有林偏在地域からまず行なう、こういうような行政方針なり、もしそのことが立法上の規制が必要でありますならば、そういうことも含めてでもやっていただく、こういうことを含めまして、ひとつ十分御検討を願いたいと思うわけでございます。  以上、いろいろ申し上げましたけれども、いま申し上げましたような筋道から、当委員会あるいは外部におきましていろいろ御意見のある問題点に対する私どもの考え方を明らかにいたしまして、結論的には、一日も早くこの法律が本委員会を通過し、今国会におきまして成立をすることを念願をいたすわけでございます。よろしくお願いを申し上げたいと思います。  御清聴ありがとうございました。(拍手)
  277. 安倍晋太郎

    ○安倍委員長代理 田村君にお願いいたします。田村君。
  278. 田村武

    ○田村武君 私は、全林野労働組合の中央執行委員長をしております田村武であります。  私たちが重大な関心を持っております本法案の審議にあたりまして、私の意見を述べる機会を与えてくださいました当委員会に対し、心から感謝を申し上げる次第であります。この機会に、私は国有林に働く多くの労働者を代表し、また国有林林政民主化を願う立場から、絶対反対の態度をあらためて表明をいたしまして、以下、この立場で意見を申し述べさしていただきたいと思います。  まず、わが国の林業国有林の現状について申し上げたいと思います。  御承知のように、森林はわが国の総面積の六八%をこえ、国土保全、水源涵養、国民の保健休養の確保、林産物の供給という国民経済の発展国民生活の安定上きわめて重要な任務を持っているのであります。しかしながら、歴代政府乱伐と独占本位、勤労国民大衆不在の林政の推進の結果、最近山林、山村地帯の災害が多発しておりまして、しかも、年々拡大の傾向にさえあるのであります。  何よりも私たちの憂慮にたえないのは、いわゆる経済の高度成長の中で、年々木材需要が増大をし、反面、林業生産は停滞または後退の一途をたどっているということであります。こうしてこの不足分は米材をはじめとする外材にたよる度合いを強め、わが国の木材需要は、外材主導型になったといわれている現状であります。外材の供給率は四〇%をこえんとし、世界有数の林業国が、世界最大の木材輸入国となっているのであります。  特に、私たちにとって重大に思われるのは、将来の林業生産をになうべき人工造林が、三十六年をピークに大幅に後退し続けていることであります。これは、民有林造林の八〇%を占める補助造林の後退に負うところが多いと思われます。  その理由は種々あると思いますが、林業白書によって見ますと、造林労賃が四十二年現在一日平均千四百六十円になっているのに、四十四年度林業予算の補助金算定の賃金はわずか八百九十五円であり、その後の賃金上昇を見れば、四十四年度における実際の造林労賃は、一千九百円をこえると想定されるのでありますから、実際賃金の半分以下の補助単価ということになるのであります。まさに安上がり林政の典型を見る思いがするのであります。  次に、大山林所有者の切り惜しみが依然として続いていることも指摘しないわけにはいきません。これは林業白書でも触れているので、時間の関係上省略をいたしたいと思いますが、政府の施策は、森林法の改正などでこれらの大山林所有者をむしろ保護し、助長しようとさえしているとしか見えないのは、まことに遺憾と思うのであります。  また、白書も指摘しているのでありますが、林道の立ちおくれは林業生産の隘路となっていることも指摘せざるを得ません。特に、私たちが奇異に感ずるのは、林業予算でも林道に重点を置き、毎年その延長、路網の整備につとめているにもかかわらず、林業生産がこれにほとんど伴わないという事実であります。これは林道開設が、実際には林業生産のためは名ばかりで、観光開発その他に重点の置かれたスーパー林道、農免峰越し林道などの開設であることによるものと思われるのであります。  次に、戦後の林政統一と特別会計制度によって、政府と独占資本の山林政策の、戦前に引き続くバックボーンとして経営されてきた国有林について申し上げたいと思うのであります。  国民の共通の財産ともいうべき国有林は、遺憾ながら戦前の天皇制、官僚経営とあまり変わらないきわめて強い官僚的、独善的姿勢に貫かれ、労働者、農民木材関係中小企業不在の紙パルプ資本や、一部の大木材消費資本と政治権力と結びついた経営が、いまなお続けられているのであります。  三十三年に発足して林力増強計画、三十六年にこれが木材増産計画と書きかえられた一連の合理化計画の実施は、紙パルプ独占をはじめとする独占資本の膨大な木材需要にこたえ、大量に安い木材を供給するためのものであったことは、いまや全く明瞭になっているのであります。  こうして、生長量の二倍もの過伐がいまもなお続けられておるのであります。これは民有林、大山林所有者の切り惜しみを国有林で供給カバーしようとする、独占資本の強い外圧を物語るものと思うのであります。国有林特別会計は、このような経営を通じて年々ばく大な黒字を計上しているのであります。この利益金の半分は、一般会計で行なうべき林業振興の財源に充てるため、特別積立金引当資金として積み立てられ、残り半分は、国有林野自身の財源に充てる利益積立金として積み立てられているのでありますが、昭和四十二年度末における積み立て金の累計は、利益積立金が四百七十四億円、特別積立金引当資金が百二十二億円、合計五百九十六億円に達しているのであります。  このほか、毎年の一般会計繰り入れや、本来当然公共事業費で負担すべきものや、非企業的支出などの経費が、年額百億をこえているのであり、これを合算するとばく大な黒字をあげていることになるのであります。   〔安倍委員長代理退席、三ツ林委員長代理着   席〕  この黒字の本質もさることながら、この黒字がだれによってつくり出されたものであるかということであります。現場でまっ黒になって黙々と働いている労働者こそが黒字のつくり手であり、林業生産のにない手なのであります。このにない手、国有林労働者が安んじて働く条件と環境なくして、国有林の真の発展はあり得ないといっても決して過言ではないのであります。今日、政府がいかに強弁しようとも、国有林荒廃し、国民のために果たすべき機能を日々失いつつあることは、おおい隠すことのできない事実であります。  しかるに林野庁当局は、労働者の雇用安定や賃金、労働条件の向上、労働災害や職業病の絶滅などの対策は、きわめて消極的であります。地元農山村民のための諸施策についても、きわめておざなりであり、死に瀕している森林の命を取り戻すための方策も、きわめて消極的であります。  このようにして計上された利益は、真の国民のための利益といえないことは言うまでもありません。日本林業の危機的現状の中で国有林は現状維持にきゅうきゅうとしているのでは問題になりません。人間疎外の結果でっち上げた見せかけの利益金すら山に還元させることなく、しかも、利益の半分は黙って国庫に取り上げ、残りの半分も全額資金運用部資金として独占擁護の政策に使っているのでありまして、実際は全額取り上げられていると同様の結果になっているのであります。いまや特別会計の意義は、全く否定されているといっても過言ではありません。  むしろ特別会計を理由に独立採算を強制され、人間無視の合理化を強行し、農山村民の雇用機会、賃金収入を締め出し、共用林野からの締め出し、農山村の過疎化、破壊に拍車をかけるような結果を生み出しているのであります。しかも、依然として紙パルプ会社や一部ボス的業者に対する大量の安売りが続けられていることは、言語道断だと思うのであります。  次いで、林業労働者を中心にその現状と問題点を申し上げたいと思います。  林業白書によっても明らかなとおり、今日林業労働力の不足はいよいよ深刻化しているのが現実であります。単に量的不足だけではなしに、質的劣弱化もおおいがたいのであります。これは低賃金と、雇用不安と、災害多発の結果によるものにほかなりません。労働時間、休日、休暇は依然として前近代的であり、労働基準法の最低基準すら適用除外となっているのであります。健保、失保などの社会保障の適用もきわめて不十分であり、まさに踏んだりけったりの状態に置かれているのであります。  労働災害は、産業全体の第三位にランクされ、依然として高率発生が続いています。また、人間不在の合理化の強行は、労働力の減少と急速の機械化による労働強化で、新しい職業病の発生となってあらわれています。  この中で、現状の医学では完全な治療の方法が発見されていないおそるべき白ろう病が、政府、使用者の予防、治療対策のサボタージュによって、ますます蔓延しているのであります。もはやこのような状態は一日も放置できない現状であります。そのためには、生産基盤の整備確立を労働者本位、地元農民の利益を重点に行ない、林業を国の重要な産業として、実質の伴った位置づけを行なうことが急務と考えるものであります。  以上、私はきわめて大ざっぱに日本林業国有林経営の現状と、克服すべき方向について意見を申し上げました。  この際、政府当局はこのきびしい日本林業の現状を正しく認識され、林業生産のにない手無視の政策を是正し、直ちに具体的諸施策を策定し、大胆に積極的に展開されることを心から切望するものであります。  また、国有林の経営姿勢を民主的に立て直し、特別会計制度の真の趣旨を回復し、所在地域の利益と労働者の生活と権利を高め、喜んで働き、進んで林業生産に協力できる体制を一日も早く確立し、国有林ほんとう国民の山として生き返らせるための諸施策を、直ちに実行してほしいのであります。私たちはこれらのことを林政民主化国有林経営の民主化といっているのでありまして、この実現を目ざして日夜努力をしているのであります。  さて、このような立場で見た場合、本活用法案国有林の真の農民利用、収益をはかるという角度から見て、百害あって一利なしとあえていわなければならないと思うのであります。地域農山村民の要求をはばんでいるのは一体何でありましょうか。現行の法令によりはばまれているのではありません。いままで申し上げてまいりました国有林経営当局、政策当局の天皇制的感覚に立った官僚独善の姿勢が、問題をこのようにしているということをあえて申し上げなければならぬのであります。  本法案に規定している内容は、現行の法令による措置で十分実行ができると思うのであります。法案第七条の取り扱いは、金融制度上の措置でやろうとすればすぐにでも可能だと考えるものであります。にもかかわらず、本法案が提案されている理由は那辺にあるでありましょうか。私は端的に申し上げますが、一部の特権的官僚と地方ボスの妥協の産物だと思うのであります。それは、私たちが林政民主化運動を全国的に展開してきた中で把握したものであります。  さきにも触れましたが、国有林は成立以来一貫して一部の紙パルプ資本や地方ボスの利益に奉仕し、労働者、農民の利益を踏みにじる官僚独善的経営を行なってきたし、今後も行なおうと考えているだろうと思います。彼らが一番おそれているのは、その根源にメスを入れられることであります。地域農山村民が国有林労働者と手を結んで、全山林の民主的な利用開放の広範な戦いに発展することをおそれ、その要求に応じるポーズで、実際は真の農民の民主的利用活用の道をふさごうとするところに、そのねらいがあると私たちは考えるものであります。  本法案は、その上で、かつての黒い霧事件を合理化し、合法化し、国有林を一そう一部ボスの食いものにし、ますます農民を疎外することになるのは明らかだと考えるものであります。私は、国有林所在地域農民及び木材関連中小産業の生活と経営安定、そのために国有林民有林も含めた民主的活用について、直接関係の労働者、農民代表その他を含めた民主的構成による地域協議会等をつくりまして、総合的な利用計画を策定し、各所有、経営に、この計画に従って経営をさせるような仕組みをつくることが、この際ぜひ必要だと思うのであります。  以上、林業労働者の代表として、日本林業国有林の将来を憂える国民の一人として、意見の一たんを述べさせていただきました。  政治の要諦は、一番目の当たらないところにあたたかい手を差し伸べることにあるといわれているのであります。どうか人里遠い山奥で働く恵まれない労働者、農民生活と権利を守るために、引き上げるために、私の本活用法案反対の意見を十分おくみ取りをいただきまして、国権の最高機関を構成いたします当委員会が、良識のある御判断をいただきますように心からお願いを申し上げまして、私の意見陳述を終わらせていただきたいと思います。  御清聴ありがとうございました。(拍手)
  279. 三ツ林弥太郎

    ○三ツ林委員長代理 次に熊井君にお願いいたします。熊井君。
  280. 熊井一夫

    ○熊井一夫君 ただいま御紹介にあずかりました日林労の委員長の熊井でございます。  本日は、私ども国有林労働者に最も関心の深い国有林野活用法案につきまして、私の所見の一端を申し述べさせていただく機会を得ましたことを、たいへんうれしく思っている次第でございます。  それでは、さっそく本法案につきましての私の見解を述べさせていただきたいと思いますけれども、その前に、若干現在の林野行政につきまして申し述べてみたいと思います。と申しますのは、現在、政府なり林野当局が国有林活用問題を云々する前に、やはり基本的にやらなければならない問題があるんではないか、こういう問題でございます。  現在の日本林業は、御承知のように、いわゆる過疎化の問題あるいは外材の問題、労働者の問題、さまざまの点がございますけれども、大きな問題点に差しかかっております。一口に申しまして、斜陽化する林業経営というような立場でいろいろな論評がなさ五ておりますが、いずれにいたしましても、国有林民有林を問わず、日本林業政策の抜本的な施策というものがないところに大きな問題があるんではないか、かように考えております。  先年、この農林水産委員会におきまして、自民党、社会党、民社党、俗にいう超党派をもって成立を見ました例の林業の憲法といわれる林業基本法、この林業基本法が制定を見ましてから今日まで、かなり時間が経過をしておりますけれども、あの基本法の骨子でございます林業生産の拡大の問題、あるいは生産向上の問題、林業従事者の所得の増大の問題、この三つの骨子が、今日ほとんど具体的に生かされていない。一口に申しまして、ここに林政貧困という問題がやはり大きな問題になっているんではないか、かように私は考えておりますので、どうか、あの林業基本法の制定の趣旨に即応いたしまして、一日も早く国有林民有林を問わず、やはりわが国の林業政策を抜本的に改正いたしまして、この林業政策というものを打ち出していただくように、まずもって冒頭にお願いというか、御要望を申し上げる次第でございます。  さて、いろいろとお話をさせていただきたいわけでございますけれども、時間の関係等もございましょうから、当面のこの国有林野活用法案について、私の見解を簡単に申し上げてみたいと思います。  率直に申しまして、活用法案をめぐりまして賛成、反対、さまざまな多くの論議がかわされておりますけれども、私から申しますならば、活用に対しての賛成とか反対というものはどこから出ているのだろうか。と申しますのは、この国の貴重なる社会資本でもございますところの国有林を、ややもすると自己の立場で賛成を訴えたり、反対を訴えたり、いわゆる立場上の見解、あるいはイデオロギー論争、あるいは感情論争、そういうような立場で賛否を論じているんではないか。そういうようなことでは、非常に危険きわまりないものではないかと私は思っております。  立場上のことを申しますと、私も労働組合の代表でございますから、国有林労働者の代表であるならば、国有林活用はややもするとこれは国有林の縮小につながる、こういうような問題にも関連いたしますから、立場上の問題だけをいうならば、国有林活用については反対論を述べるのはしごく当然かと思いますけれども、私はそういうけちな考え方を持っておりません。いわゆるこの国の貴重な社会資本が、いかに国家国民のために全体的に活用できるかいなか、十分活用させなければならない、こういうような論点からものごとをとらえなければならないのではないか、かように考えまして、この法案についての見解を具体的に意見として申し述べてみたいと思います。  国有林野の使命とか役割りについては、るる申し上げるまでもなく、もうすでに先生方も御存じのように、何と申しましても国有林の大目的は、やはり林産物の供給であり、国土保全、あるいは最近の公園、風致そのほか自然休養、こういうものがからんでおるわけでございますけれども、いずれにいたしましても、一方ではそういう国民生活に欠くことのできないいわゆる林産物の供給、一方では国土保全、こういう立場のきわめて重要な使命と役割りを持っておる。この国有林において、明治、大正、昭和を通じて、いわゆる古今を通じて、国有林開放論あるいは活用論がなぜ起きるのか、この点を率直に、真剣に考えなければならないのではないか、かように思っております。  いわゆる国有林活用、あるいはことばを変えて開放だとか、町によってことばは違っておりますが、さまざまな意見がございますけれども、この意見を大きく分けると、次の三つの問題点になっております。  一つは、何と申しましても現在の国有林野は、ほんとう国土の保全とかあるいは林産物の供給のために、これこれで国有林として必要だから、国有国営の企業をやらなければならない、こういう形で国有林が成立したものではない。いわゆる明治の初年、明治六年の地所区分改正のときから問題が発生をしている。いわゆる地元感情で申しますと、うちの村は国有林が少ないとか、問題があるとか、多少感情的なものもいろいろとある。いずれにいたしましても、この国有林の使命と役割りが、七百五十万町歩国有林の中に、いわゆる具体的に定義としてなされていない。たとえば、同じ国有国営をやっておりますところの国鉄とか郵政、造幣、専売、どの企業においても、これこれの企業だから国有国営のやらなければならない、こういうような立場でやっておりますけれども、国有林の場合は非常にばく然としている。そこにまた、ばく然としている背景として成立過程が問題としてある。また、国有林は重要な使命があるのだということをいっておりますけれども、具体的な一つの山、これはどの山をとってもけっこうでありますけれども、保安林関係の一部を除いては具体的な使命とか役割りというものがほんとうに明確化されていない、ここに一つの問題がございます。  そうして、第二番目の問題といたしましては、戦後日本の国も、海外資産というものがああいうように非常に縮小されました関係上、人間が一億以上ひしめき合っているこういう狭い国土に、畜産とか、果樹とか、レクリエーションとか、さまざまに国土の総合利用、総合開発というような問題がからんでまいりましたので、やはり国有林活用その他についての意見がかなり強く打ち出されている。  もう一点は、やはり欠くことのできないものは、国有林を管理経営しておりますところの経営者の姿勢も、これまた活用論、開放論に大きな問題を提起しております。一口に国有林事業と申しましても、造林から始まりまして、伐採、搬出、処分、あるいは関連する治山、林道、さまざまあるわけでございますけれども、これらの事業全般が、ややもするとそこに働くところの労働者なりあるいは地元住民、零細中小企業者、こういうような方々の意見を聞くというよりも、むしろ大きな問題については、大手の業者なりあるいはパルプその他の資本、こういうものの言いなりになっているきらいがある。したがって、地元民にとっては、われわれの意見は国有林の場においてはなかなか聞いていただけないのだ、これでは、国有林がわが村にあっても何の役にも立たぬではないかというような問題も、感情論というか、気持ちの上としてはあります。  そして、私も組合の一役員でございますけれども、もう一点は、私は端的に申しますけれども、先般も青森等に参りましたら、こういう意見も国有林の不信の問題点として出されております。と申しますのは、労使関係の問題に関連いたしますけれども、いわゆる村の村長さんとかあるいはさまざまな関係者が営林署長に陳情に行きましても、営林署に行くと玄関に組合の赤旗が立っていて、そうしてきょうも団体交渉、あしたも団体交渉、こういうような形で、せっかくの地元民の意見は聞いてくれない、何の団体交渉かわからぬけれども、もっと真剣に地元民の意見をほんとうに聞いて、国民の山としての国有林経営をやってもらわなければ困る、こういうことは営林署役人どもにまかしておくわけにはいかぬ、こういうことも青森とか、あるいは先般も宮崎県の某村で村会の段階で決議されたということも聞いております。  いずれにいたしましても、これら一連の問題については、やはり国有林を担当する管理経営者あるいは労働者も、おのずから国民的立場に立っての国有林経営というものをやらなければならないという、もう少し値命感に立った国有林の立場をとられない以上、いろいろなことを申しましても、国有林についての不信、そうして、具体的には開放論なりあるいは活用論が提起されることは、もう火を見るよりも明らかではないか。そういうような立場から考えまして、やはり現在の管理経営に対しての基本的な、抜本的な改正というものを、われわれ自身といたしましても、また経営側といたしましても十分取り上げていただいて、ほんとう部落民とか国民的な立場に立っての国有林の経営というものを積極的に進めなければならないのではないか、かように考えております。  そこで、活用についての具体的な私の見解を述べたいと思いますけれども、私はそういうように、所有権とかあるいは利用権の問題を云々する前に、いま申しましたように国有林というものがほんとう国民的な立場に立っての行政、管理経営というものをやらなければならないという姿勢の確立をぜひとも続けてもらう、そうしてそういう中で、無定見な国有林活用というものは絶対反対するものではございますけれども、しかしながら、やはり具体的には、以下述べる条件が整うならば、率直に申しまして、条件つきに立って本法案についての賛成を表明したい、かように考えております。  まず第一点といたしまして、この活用法案に流れる思想というものは、冒頭にも書いておりますように、林業基本法から受けて立っております。林業基本法から受けて立つならば、先ほども申し上げましたように、林業基本法というものははっきりと林業労働者の所得、林業従事者の所得の増大ということをうたっております。にもかかわらず、労働関係、従事者関係については、何らこの問題については触れていない。いまの林業労働者がどういう事情になっているかということについては、多く述べることもないと思いますけれども、いずれにいたしましても雇用の問題、社会保障の問題、そのほかさまざまな点において、きわめて劣悪な条件下に立っておる。にもかかわらずこういうものが生かされていない。したがって、林業基本法の精神から活用法案を云々するならば、当然のことながら林業従事者の所得の問題これはやはり具体的に、この問題と関連して取り上げてもらいたいという点でございます。  同時に、いわゆる活用に対しての具体的な内容でございますが、いずれにいたしましても、これこれ、これこれ活用しますということを書いておりますけれども、具体的な内容がない。というのは、こういう山についてはいわゆる貸し付けでいくのか、あるいはこういう山については部分林でいくのか、こういう山については所有権の移転でいくのか、具体的な林相を対象にしたところの活用方式、これがない。ここに、先ほど来若干問題が出ておりますように、いわゆる黒い霧が発生するおそれもなきにしもあらずでございます。したがって、せっかく活用法案でこれこれ、いわゆる貸付から始まりまして所属がえその他までいくならば、当然具体的な活用へのスケジュールというか、そういうようなものを明記すべきではないか。これをこのままにしておきますと非常に問題が起きる。  同時に、個人の活用というものは、原則として絶対認めないというような方式というものを貫いてもらいたい。また、公共団体その他において活用する場合も、いままでの経緯から考えまして、ほんとう土地利用計画から考えてどういうような利用計画活用計画をなされようとするのか、あるいは活用内容とか、またほんとう活用目的に従った形においてりっぱに活用できるかいなか、そういう資格とか能力とか、そういうような問題も十分審査をいたしまして、失敗のないような形においてひとつ活用の対象、相手方についても検討しなければならないのではないか、かように考えてます。  そうして、活用という中に所有権、利用権がございますけれども、できるだけ林業構造その他については、所有権の問題ではなくて、いわゆる団体を対象に置いて部分林の設定、こういうような中で活用というものを円満に実施していく、こういうような制度を貫いてもらいたい。  同時に、これは活用だけが能ではございませんので、活用からくるところの代金は当然国有林の買い上げ、特に保安林とか奥地林の買い上げ代金、こういうような方向に回してもらいたい、こういうようにお願いするわけでございます。  そのほか、第七条で申しますところの立木竹の、要するに活用と関連した、からましたところの売り払い方法、これも非常に問題が多いわけでございます。従来の活用の失敗した例を申しますと、ややもすると立木一代限りという傾向もかなり多かった。こういうような経緯から考えまして、いわゆる立木竹の取り扱いについては、これは特殊なもの、たとえば幼齢林とか、そのほか防風林とか特殊なものを除いては、いわゆる土地活用する立木というものは切り離した形において取り扱いを考慮すべきではないか、こういうような問題等もございます。  そのほかいろいろと申し上げたい点がございますけれども、時間も経過しておりますので、以上、私は条件つきで賛成の立場を表明するわけでございますが、ただ、最後に一言申し上げたい点は、今度は反対を論ずる人たちに対する私の所見でございますが、反対を論ずる人たちの意見としては大きく分けて二つにしぼられておる。一つは、黒い霧の問題、一つは、要するにいままでの活用された山がよくなかったのではないか、こういう点でございますけれども、これはどうやら本末転倒ではないかと私は思っております。  と申しますのは、黒い霧が起こるから現在の法律でもいいのではないかという意見がございますけれども、現在の国有林野法なり財産法は、私に言わせればざる法でございます。これこれで売り払い、貸し付けるその他書いておりますけれども、肝心な、要するにだれにどういうかっこうでどうするかとかいう問題については、全部訓令とか林野庁長官通達によってやられております。したがって、いいかげんとは申しませんけれども、運用上やっておりますので、そこに黒い霧の問題が発生する余地が、端的に申しましたら残っておる、したがって、通達とか訓令でやるよりも、むしろこういうような問題については、法律としたらいいかげんな運用ができないというような形において、法律の中でやはり活用方式というものを出さなければいかぬ、こういうように考えます。そして国有林活用された山につきましても、いままでの山についても、確かに悪い山もございました。問題になった山もございましたけれども、総体的に約八割程度は、戦後のどさくさの、あの開拓問題の時期を除いては、大体において活用された林分が成功をおさめておる、こういう事例がかなり膨大に私どもの調査の中には出てまいります。したがいまして、これも、いわゆる反対のための議論には当たらないのではないか。  要するに、私が言いたいのは、賛成、反対というよりも、むしろこの国の貴重なる財産、国有林についてほんとう国民的に全体の立場で活用する、そういうような見地に立ちまして、条件つき賛成をしたい、かように考えておりますので、どうか先生方の御審議を心からお願いしたい、かように考えておるわけでございます。(拍手)
  281. 三ツ林弥太郎

    ○三ツ林委員長代理 以上で、御意見の開陳は一応終わりました。     —————————————
  282. 三ツ林弥太郎

    ○三ツ林委員長代理 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。兒玉末男君。
  283. 兒玉末男

    ○兒玉委員 私は、田村参考人にお伺いをしたいと存じます。  ただいま貴重な御意見を、三人の方からお聞きしたわけでございますが、特にただいま、日本林業というものがきわめて重大な局面に立たされておることをお聞きしたわけでございますが、まず第一点としましてお伺いしたいのは、現在、日本木材需要というものは非常に増大をして、少なくとも五〇%近い外材が輸入されているということをお聞きしておりますが、急速に増大しているこの需要に対応し、昭和四十一年の政府の見通しよりも、大幅に木材需要が上回っているということでございますが、これらの状態と、さらに今後の需給関係について、いま少し詳しくお伺いしたいと思うのでございますが、第一点として、需給関係について田村さんの御見解を承りたいと思います。
  284. 田村武

    ○田村武君 お答えを申し上げます。  先ほども申し上げたのでございますが、昭和四十一年に政府が、重要な木材資源の需給の長期の見通し、こういうものを国会に報告をしておるのであります。その四十一年の見通しによりますと、大体昭和五十年代の各年平均の木材需要量というのは約一億立方メートル、こういうように見通しをしておりました。それから六十年代には約一億二千立方メートル、こういうようなことになっておりまして、国内の供給体制で申しますと、昭和五十年代が大体二千九百万立方くらい、そしてピークが六十年代で約三千万立方、これがピークでありまして、その後は国内の供給量が漸次増加をしていって、昭和九十年には、約一億四千万立方メートルに膨張する需要に対して、約九〇%の国内供給体制が整う、こういうような見通しでありました。  ところが、実際の動きは、先ほども申し上げましたように、四十二年すでに九千万立方メートルの大台をこえました。そして林業白書によりましても、四十三年の需要の増勢というものは依然として続いておって、四十三年上期の状態を見れば、前年の需要を六%から七%くらい上回る結果になっておる、こういうようなことがいわれております。  それから、昨年の秋に林野庁が発表いたしました中期見通し、こういうものがございます。これによりますというと、昭和五十年には驚くなかれ一億一千万立方メートルに達するであろう、外材はその五一%の五千六百万立方メートルに達するであろう、こういう中期見通しになっております。そうしますと、これを逆からとらえてみますと、五十年に国内の供給量というのは五千四百万立方メートル、四九%、こういうことになろうかと思います。  こういうような状態を見ますというと、いままでの推移の数字等から見ても、この政府の中期見通しそのものが、実際に五十年になった場合には、またはるかに違う数字になるのではないかということが容易に見通されるのではないかというように思います。こういうような状態から、国内の供給体制が非常に停滞をしておるということがいえるのでありますし、さらに問題となるのは、政府が見通したものよりも相当大きな落ち込みを見せておる、こういうことが指摘をされなければならないと思うのです。  先ほども申し上げましたが、なぜ国内の供給体制が計画どおりいってないのかということでありますが、一言にして言えば、政府が四十一年に出した見通しも、その後の中期見通しも、日本経済の動きに対応した綿密な計算の中から生まれたものではないということがいえるのではないかと思うのです。それから、需要のほうはどんどん計画を無視して伸びていくのだけれども、供給のほうについては計画自体が甘いというのですか、それに実際の実行が伴っていないということがはっきりあらわれておるのだというように思うのです。  その原因としては、先ほど申し上げましたように、一つには戦前戦後を通じての過伐乱伐による有効資源の枯渇、こういう問題があると思いますし、また、大山林地主の切り惜しみ、これもいえると思うのであります。この切り惜しみといいましても、ただことばの上で、立場が違うからそう言うのだろうというふうに言われるかもしれませんが、これは白書にも詳しい数字が出ておりますから、私がここでちょうちょう申し上げる必要はないと思うのです。  一つの例を申し上げますと、ここ一、二年のうちに、伐採する立木を持っておる森林所有者、これに対する伐採態度のアンケートが白書に載っております。これを見ますというと、一、二年のうちに切れる木材を持っておるという人の中で、七五・五%の非常に多い林家の方々が、切る気はないと答えておりますが、その切る気はないという理由は何かという問いに対しては、いますぐ現金の必要がないから切る必要はない、これがまた切る気はないという人の七割近いものが、こういうように答えておるのであります。それから約一割くらいの人は、切ってもあとの植林が困るから、こういうように答えております。なぜ困るのかということについては、これは労働力を確保することができない、こう答えておる人が非常に多いということであります。  それから、もう一つの角度からの質問があります。今後材価が引き続いてどんどん上がっていくとした場合にあなたは切りますか、切りませんかという、こういう態度の調査であります。この調査を見ましても、いま申し上げました数字と相関連をいたしましてやはり切る気はない。なぜなのかという問いに対しまして、現金を必要とするときが来なければ切る必要はないという答えが、これまた圧倒的に多いのであります。そうして、計画どおり切っていく気がありますか、こういうことについて、あくまで計画どおりに切っていくというように答えた人は、二割くらいしかいないのであります。  こういう状態を見て、いわゆる民有林の、山持ちの人たちの態度というのは、なべてみて、自分の私的経済の中での現金の必要のあるときには切るし、そうでないときには切らない、経済の変動による木材の需給とか、木材の値上がりとか、こういうものを調整するというような考えは全くない。また、あるのがふしぎかもしれません。  したがって、こういう点を克服するというためにはどうしたらいいのか。これは、経営面積の拡大ということ、これを本活用法案の理由に述べているのでありますけれども、そういう形にしていった場合に、こういう傾向というものは除去することができるのだろうか。植民地を失って、この狭い国土の中で苦しんでいる日本国民が、共通の財産である土地生産力というものを自分たちのものにする、国民のためのものにする、最も有効にこの土地利用するという観点に立ったときに、そういう方向国民のためなのか、これを国が直接行なって、有効にその生産力を国民のために利用する、そうしてそれを国民のために還元をするという方向をとるのが林政の道なのか、これはもうきわめて明らかだと思います。そういう立場で私はこの問題をとらえている、こういうことをお答え申し上げたいと思います。
  285. 兒玉末男

    ○兒玉委員 需給関係について、非常に貴重な御意見を聞かせていただきまして、今後の法案審議の貴重な参考にしたいと思っております。  あとに同僚委員の質問もございますので、できるだけしぼって御質問したいと思いますが、次に、先ほどの御説明の中で感じましたことは、国有林材というものが、一般の中小企業の製材業者とその他木材関係業者に売り払われる代価というものを比較して、特に紙パルプ会社等の大資本等に対しては、安い値段で売り払われているということの説明がありましたが、この実態は、比較論としてどういうようになっているのか、簡潔に御説明をいただきたいと思います。
  286. 田村武

    ○田村武君 直接のお答えになるかどうかという点を心配するのでありますが、一つの例をもって申し上げたいと思います。  ある確実な資料によって見たものでありまして、これは紙パルプの、日本ではもう第一といわれるくらいの会社の人の書いた論文であります。これを見ますと、日本の紙パルプ産業が国有林に依存をしてきた度合い、これは戦前は八割から九割が国有林にその原料を依存してきた、こういうようにいうております。それが、戦後の昭和四十年度には二六%に低下をしておる。これを地域別に見ますというと、北海道は四六%、東北は二四%、九州二二、中国、北陸が九、中部が八、近畿三、関東二、四国は一、地域別に見ますと、こういう依存度合いになっておるというております。そうして、北海道は四六%なんだけれども、間接の国有林の依存度合い、これはいわゆる国有林木材業者等々に売り払ったものが、木材業者を通じて紙パルプの原料となって供給される、こういうものを含めたものだと思います。これを見れば、四十年度でも北海道においては七五%を国有林に依存しているんだ、こういうようにいうております。そうして、紙パルプ産業の現状からいって、この二六%というものを、戦前の八〇から九〇というところまでは無理だろうけれども、もっともっと国有林が紙パルプ資本に対して協力をしてくれるということを心から切望するのだ、こういうようにその論文の中では述べております。  さて、これを一つの前提にいたしまして、昭和三十九年度の国有林の販売方法別数量、それから販売方法による値段の開き、こういうようなものを関連づけてみますと、いま私が、紙パルプには大量に安売りしているんだと言ったことがおわかりいただけると思いますから、そういう立場で申し上げます。  まず、三十九年度の販売方法別を見てみますと、国有林の販売方法には、随意契約と指名競争入札、それから一般公入札、こういうような三つの方法がとられます。これを北海道を例にとってみますと、随意契約が五一%、指名競争が三四%、公入札が一五%であります。といたしますと随意契約というのは、全く相対ずくでもって相談をして売り払う方法でありますから、これは随意であります。それから指名競争というのは、国がその用途とかいろいろなことによって、競争入札に参加するものを指名して入札させる、こういう制度でありますから、これも制度的に見れば、随意契約の中の一種と見ていいと思います。これを合わすと、北海道では実に八五%がそういう形で売り払われておる。  さて、ここで値段の関連を見てみます。まず値開き率の問題であります。これは、随意契約で売った場合の値段を一〇〇とした場合の公入札の比率は幾らかという意味であります。こう見てみますと、丸太、つまり素材であります。これが北海道全体を通じて二二〇%、公入札のほうが三割高いということであります。それから立木のほうでまいりますと一六四%、これは六割四分公入札のほうが高いということをいうておるのであります。  それから値段の関係一体それで値段はどのくらい違うのかということになりますと、素材では千四百九十八円違います。立木のほうでは九百八十五円違います。こういうことになっておるのであります。いわゆる国有林が、先ほど申し上げましたような経営姿勢を強く持ってやっている地域ほど、こういう傾向が強いということをこの数字が示しております。  また、これは卑近な例でありますが、一つのこまかい例を申し上げますと、宮崎県の高岡営林署で売り払われた実績でありますが、四十二年度の状態を取り上げてみますと、パルプ会社に売り払われた単価は平均百十七円、自家用の薪炭等で地域住民に売り払われた値段は五百十円平均、まさに五倍近い値段の差があるということの指摘をしなければなりません。もちろん立木の値段でありますから、その形質、あるいは立地条件、こういうものによって、一概に商品の値段を比べるようにいかないことを前提にして申し上げているのでありますけれども、大体そういうものに近似をした状態のものとして想定をいたしましても、こういう状態になっている。  ここのところが、私は地域の農山村民を疎外をしてしまって、締め出してしまって、紙パルプその他の一部の大資本に対して国有林が奉仕をしている、その姿勢がここにはっきりとあらわれている、こういうように考えておるわけであります。
  287. 兒玉末男

    ○兒玉委員 次にお伺いしたいのは、最初の需給見通しの中で御説明がありましたが、昭和五十年において、中期計画による場合、約五一%が輸入材にたよらなくてはいけない、こういうふうな御説明がありましたが、そこで、現在の国有林の、いわゆる伐採の状態というものを見てみますと、成長量の二倍近い伐採をやっているということが指摘されておりますが、昨年も私の郷里におきましては、これは西都という営林署ですけれども、非常に伐採量が多いために、集中豪雨によって相当の被害が出たことは、林野庁当局もその責任を十分感じているという事件があったわけでありますけれども、この中期計画から類推しましても、こういうふうな木材需要の増強に対応して二倍もの伐採をすることは、これはきわめて森林資源水資源あるいは治山治水の立場からも、重大な問題を引き起こす危険性というものがあるのじゃないかというふうに私は感ずるわけです。今後の国有林のこのような資源の維持、拡大ということがきわめて必要であろうかと思うわけでございますが、これに対してはどういうふうなお考えを持っておるのか、お伺いしたいと思います。
  288. 田村武

    ○田村武君 現在、国有林生長量のほとんど二倍の伐採をしておるということは、そのとおりであります。現在、国有林の総生長量は約千百万立方メートルであります。これに対して四十二年度の伐採は、経常伐採で二千百万立方メートル程度、それに森林資源充実特別事業の二百万立方メートルを加えますと、二千三百万立方メートルが伐採をされておる、こういうような関係になっておるのであります。  これが、どういう形でこういうふうになってきておるのか。昔流の考えの、いわゆる収穫保続といいますか、資源を減らさないで利用していく、こういう立場から見ると、まことに奇異な感じを受けるのでありますけれども、昭和三十三年あるいは三十六年から進められております林力増強計画あるいは木材増産計画等の中で、林野庁は積極的な再造林、拡大造林、いわゆる国有林の人工林化を高める中で、人工林の旺盛な生長量というものを見合いにして、現在切っていっても将来は資源は増強し得るのだ、こういう位置づけをして進めているのだと思うのです。そういうことでありますから、計算上は確かにそういう計算になっていると思います。  問題なのは、現実の姿がその計算どおりに進行しているのであろうか、こういう点であります。私も正確なことをいま申し上げるだけの資料がないのでありますが、三十三年の林力増強計画当時には、計画どおり人工造林を拡大していくことによって、昭和四十年代の後半には、大体切る量と生長量が見合う状態になる、それを越えれば、切る量よりも生長する量が多くなっていく、こういうような計画であったように記憶をしております。ところが、現実の姿はそういっているのか、こういうことになりますと、詳しい資料もありませんからわかりません。しかし、現実に山の状態が急速に荒れていっている、こういう状態から見まして、私どもはその資源計画というものが、計画どおりに進行していないということはきわめて明らかだ、こういうように指摘をして間違いがないと思います。  なぜそういうことになっているのかということになりますと、積極的に拡大造林をしていこう、こういうことになりましても、何せ、先ほど意見を申し述べた中でも言うたのでありますけれども、国有林野事業特別会計というのは、特別会計とは名ばかり、経営によって、見せかけではあろうけれども黒字があがった、これは国民のために、国有林をさらによくするということに投資されなければならぬものが、全部資金運用部のほうに積み立てられて、国有林資源を拡大をする、あるいはもっと充実するということに使うということは許されておらぬ。赤字になっても、単年度予算ということで、その年度の収入より使えない、こういうような予算、財政上の制度になっておる。この辺の制約から、なかなか造林を拡大することが思うにまかせないということが一つあろうと思います。  それから、この林力増強計画の中で、短伐期で生長量の旺盛な樹種に造林樹種をかえていく、こういう方向も打ち出されました。そうして北海道等においても、従来のエゾ、トドというような造林が、短伐期のカラマツに主流が置きかえられました。ところが、カラマツを植えていったところが、原因不明の先枯れ病というものがものすごく蔓延をいたしまして、植えたものが全部だめになってしまいました。こういうような問題も起きております。その他こういうことに類する、いわゆる造林はしたけれども、それがどのようになっていっているのか、計画どおりりっぱな林に育っていっているのかどうかというような点についての追跡並びにそれに対する手入れ、こういうようなことが非常に欠けている、こういうことをいわなければならぬと思います。  御承知のように、林業ですから、幾らつくった、幾ら仕事をやったというても、それでは仕事をやったことにならないのであります。造林をいたしましても、八万町歩計画があったのを、八万町歩やりました、一〇〇%達成いたしました、ことばではそういうことになるのであります。しかしながら、造林の仕事というのは、計画どおり面積をこなすということが目的ではなくて、そこにりっぱな森林をつくるということが目的なんでありますから、その森林をつくるということが一体どのように動いているのか、ここの点を見なければ、達成したとかなんとか数字の上ではいうても、実質があるのかないのかということになると、非常に問題があるというしろものであります。そういうような点について非常に問題があるのだ、こういうことを言わざるを得ないというような気がいたします。
  289. 兒玉末男

    ○兒玉委員 あと二、三点だけにしぼって御質問いたしますが、先ほど民有林状態お話がありましたが、特に切り惜しみをしている。その中で、現金の必要がないという点と同時に、伐採したあとのいわゆる植林において労働力が不足しているという説明がありましたが、これとあわせまして、特に今日の日本林業生産が停滞をし、後退をしているところの原因は一体どこにあるのか。  それからもう一点は、国有林民有林を問わず、特に国有林の場合においても、先ほどの御説明によりますと、労働条件、賃金等が非常に低位にあるということが御説明をなされたわけでありますけれども、今後のいわゆる木材需要に対応するためには、どうしても拡大造林ということについて相当の力を入れなければいけないということを御説明になったわけですが、やはりその前提となるのは、この国有林の労働者の雇用の安定並びに労働条件の改善、あるいは、先般私は静岡の現地を見に参りましたが、職業病といわれる白ろう病に対する予防対策というものが非常におくれている。こういうこと等は、国有林民有林を問わず山林労働者の共通の問題として、解決をしなければいけない問題だと私は思うわけでありまして、いずれの分野におきましても、国有林民有林を問わず、今後の林業生産振興の立場からきわめて重大な問題ではないかと思うのですが、この点、どういうふうな話し合いがなされておるのか。  次に、先ほどもちょっと触れましたとおり、林業生産の停滞、後退している原因は一体何なのか、また、これに対してはどういう対策をとったらいいのか、今回出されている国有林活用法案との関連にきましてどういうような影響を及ぼすのか、これらの点についてお聞かせをいただきたい。  同時にまた、林業生産の停滞の原因として、先ほどもちょっと触れましたが、労働力の不足ということが指摘をされておるようでございますが、特に労働組合の立場から、労働力の質の問題、確保についての考え方をお聞かせをいただきたい。  以上、問題点について御質問をいたします。
  290. 田村武

    ○田村武君 必要な労働力を確保し得ないところに生産活動があり得ない、こういうようなことは申し上げるまでもないと思います。  それで、林業の労働力の傾向というものはどうなっているのだろうか、これについて考えたいのでありますが、林業白書にこの傾向というものは、きわめて詳細に述べられております。したがって、その点あまり詳しく申し上げることもないと思うのですけれども、雇用労働力を必要とする林家のうちで半分近くの人は、必要な労働力を確保できない、こういうようにいうております。その理由は、賃金を幾ら高く出しても、雇うところの労働者がもういない、こういうのが、この半分近くの人のうちの六割を占めているのであります。それから、いままで来ておった特定の労働者、これは縁故のある労働者が他の職業に転じてしまったためにいなくなって、かわりの者を見つけることができない、こういうことを答えている人が二割くらいあります。これは、農山村におけるところの労働力の絶対量がいかに不足の状態になっているかということを示しているのだというふうに思います。それから、必要な労働力を確保することができる、こういうように答えた人が半分くらいいるのでありますけれども、その人たちの理由は、常用労働者を私はかかえているからだいじょうぶなんです、こういうようにいうた人と、特定の縁故のある労働者を持っておりますからいいという人が七割を占めています。こういうように見ますと、ほんとう林業の労働力というものは、将来きわめて不安な状態にあるということが言えると思いますし、またこの辺が、将来の林業発展の上に非常な問題点となるところであろう、こういうように考えられます。  それから質的な劣弱化の問題であります。これは、大体老齢化と女子化、こういうことになるのでありますけれども、国有林状態をちょっと見てみますと、昭和三十八年と四十二年を比べてみますと、十九歳以下の労働者が七一%ぐらいも減っております。二十歳から三十四歳までの労働者は四八%減っております。それで平均年齢が、新陳代謝がなければ一年に一つ上があるということになるのですけれども、若干の新陳代謝もありましょう。しかし、一年に一歳以上は平均年齢が上がっていっているというような傾向を示しているのであります。これは森林組合の労務班の場合について見ても、同じような傾向であります。  それから女子化の現象について見ると、これは漸次女子化が進行している。これは、こういうきつい労働でありますから、一般の農業労働と違ってなかなか女子化が進まないのかもしれませんけれども、そういう傾向を示しています。  それから、四十二年度の中学卒業者で林業への就職数は一体何ぼあったのだろうか、全国で四百十二名しかありませんでした。これは、四十年に比べて見ましても四七%の減少であります。これは、もう林業の労働力確保の面からいって、将来ほんとうに暗い状態を示しているのではないかというように思います。  それから、経済の高度成長と基本法農政を進める中で、農山村の過疎化現象がきわめて深刻な影響を与えているということも言えます。林野庁が四十三年度特定森林地域大規模開発調査事業報告書、こういうようなことをやったのでありますが、その調査報告をこの前見てみました。そうすると、その中にこういうことが書いてあります。「農家戸数および人口の減少とこれに伴う労働力の老齢化、女子化が進行しているが、反面、農林業を中心とする産業経済的諸施策の立ちおくれが目立ち、現有労働者の世代交代期が来た場合には、生産および生活機能の断絶、すなわち過疎化をこえたいわば空疎化が予想されるところが少なくないこと。」このようにいうておるのであります。これは、現在の山村の共通的な姿を浮きぼりにしているのではないでしょうか。いま農林政策当局は、ここのところをやはり注視をしなければいかぬ。これを注視して、その必要な対策をいまとることが絶対に急務なんだということをお考えいただきたい、こういうように思います。  こういうような状態の中で、もう好むと好まざるとにかかわらず、林業労働力確保のためには、林業労働者の常用化ということを進めなければなりません。私たちも林野庁当局と、原則的に基幹要員については全員常用化をする、こういうことを確認しまして、いまそのテンポをいかにして速めるか、こういう点で協議を続けているような状態なんでありますけれども、この常用化ということが、将来の労働力確保の絶対的条件だというように思います。  ただし、常用化というて名前が常用になり、雇用が通年化になっということだけでは問題は解決いたしません。他の産業がどんどん成長していきます。そうして他の産業の常用労働者といまの林業労働者の賃金を比較いたしますと、七割程度の水準であります。しかも、雇用は臨時的であり労働はきわめてきつい、生活環境は悪い、労働災害、職業病が多い、こういう状態なんでありますから、これはなかなか常用化ということだけでは問題が解決しないので、そういうところの問題点を解決するということがなければ問題の解決はない。たいへんなことでありますが、こういうような状態が現状なんであります。  こういう点から考えますと、日本林業というのは、近い将来大きな変貌をするだろうと思います。機械化が入ってまいりまして、伐木とかササ刈りとかこういうものは、ほとんど一〇〇%機械化されたといわれております。自動のこ、自動刈り払い機、こういうものは、すでに一〇〇%入ったといわれております。しかしながら、これらの機械というのは、機械という名に値するのかどうかわかりません。ただ単に昔の人のエネルギー、役畜のエネルギーというものを動力に置きかえたのにすぎない、こういうものでありますから、こういう状態では、他の産業の成長に林業が追いついて、そうして能率をあげ、生産性をあげるというようなことにはなっていかないと思うのです。すでに林野庁では、総合生産機械というものの開発、導入というようなことについて相当本腰を入れようとしております。また、沼田にある国有林の実験施設においてはすでに階段造林、機械を使うために山の斜面に階段をつくり、ここに木を植えて、これを機械でもって造林をする、伐採をする、こういうような方法の階段造林というものも、相当面積いま実験的ではありますけれども、もう実施に移されていっている、こういうような状態もあります。  こういうように近い将来ものすごい、いまの常識では考えられないような変貌が林業にくるのだと思います。そうでなければ他産業と太刀打ちできない、こういう状態になるであろう。そのときにその経営基盤、その経営主体がどうでなければならないのかというところを私どもは特に強調している。この点を無視して、いままでの常識で林業経営というようなことを考えておったのでは、林業の近代化なんていうのは全然おぼつかない。そして林業は滅亡のうき目を見るようなときがくるのではないだろうか。そのときがきてからあわててはだめだというのが、私どもの主張であるということもお含みいただきたい、このように思います。
  291. 兒玉末男

    ○兒玉委員 終わります。
  292. 三ツ林弥太郎

    ○三ツ林委員長代理 森義視君。
  293. 森義視

    ○森委員 私は、主として池田参考人と熊井参考人にお尋ねしたいと思うのですが、きょうここで参考人の皆さんの述べられる意見は、それなりにいろいろと傾聴さしていただきました。ここで国有林野活用法案の問題について、基本的な論議をやろうとは毛頭考えておりません。ただ、私たちがこの活用法を審議するにあたって、先ほど皆さんが述べられた意見の中でぜひただしておきたい、参考にしたいという点に限定をしてお尋ねをしたいと思います。  まず最初に、池田参考人にお伺いするんですが、総合農政の展開には国有林活用が絶対必要である、こういうふうに冒頭に述べられました。総合農政ということになりますと、農林業を含んでおると思うのです。これは私の聞き違いかもわかりませんが、池田参考人は、林業は総合農政の中に含んでおらないような印象でものを言っておられるように思ったわけです。  そこでお伺いするんですが、日本林業が当面している問題点に対して、どういうふうに認識をしておられるのか。先ほどの田村参考人の陳述と質疑応答の中で、大体日本林業が当面している問題点について明らかになったと思うのですが、池田参考人は、日本林業が当面している問題点はどういうふうに認識しておられるか、まず最初にお尋ねいたします。
  294. 池田斉

    ○池田斉君 私は、林業方面の勉強は十分やっておりませんので、詳しい問題を前提にした考え方は、必ずしも整理されておりません。   〔三ツ林委員長代理退席、安倍委員長代理着   席〕 ただ、林業におきましては、先ほど来いろいろ専門的なお話もございましたが、やはりこれは農業も同じでございまして、わが国の全体の国土をできるだけ合理的に活用をいたしまして、わが国でそれぞれの農林産物の自給をできるだけやっていく、これが一つのたてまえだと思います。  しかし、現在林業が、いろいろな条件の中で相当量の外材の輸入に依存をしないと需要に追いつかない、こういうようなことで、民有林のあり方の反省も一つあるようですが、むしろそういう場面を、七百五十万ヘクタールの国有林を中心にして相当部分ささえていく、こういう問題は、いわゆる林産物の生産という次元の高い、国民といいますか、国家経済の要請という点から見ますとある程度わかるわけでございます。ただ、国有林が非常に偏在をしておる地域、これが過疎化の現象を起こしている。そういうところの住民が居残って、しかも、その地域農業なり林業を含めた経営で生きていこう、そのためにその偏在地域の住民が、国有林につきまして農地なりあるいは林地の姿において活用したい、こういう要望にこたえていただくのがこの法律の問題の焦点であると思います。  したがいまして、地域住民のそういう要請にこたえるということと、わが国の林業の長期展望をどういうふうに民有林を含めて調整をしていくか、特にそれとの関連で、偏在をしておる国有林地域住民の要望、こういう問題を十分ひとつ合理的に調整をするという姿の中で、私は林政の問題がやはり取り上げられるべきである、こういうふうに考えておるわけでございます。
  295. 森義視

    ○森委員 私の質問に的を射た御答弁をいただけなかったわけですが、先ほどから話をお聞きのように、林業が持っている公益的な使命、治山、治水、水源涵養、そういう任務も今日十分果たしておらない。さらに、林産物の需給の問題については、いま御説明のあったように、外材に五割近くも依存しなくちゃならないというふうなまことに嘆かわしい、私たちの考え方から言うならば、日本林業は危機にあるわけです。そういう中で、何とかして国民の要求する木材需要を満たそうとして、国有林では生長の倍も切っておる。ところが、片方林地の三分の二を持っておる民有林が、大山林地主が値上がりを目当てに切り惜しみをしている、こういう実態なんです。  そこで、これほど国有林国土保全と林産物の需給に血眼になっておるときに、一方ぬくぬくと財産保全的な考え方で、大山林地主が民有林をかかえ込んでおることについて、その活用をどう考えておられるのか。ここで、いま国有林が必死になってやっておるのに、まだ活用しようと考えておられる。片や国の経済的な要請、あるいは公共的な要請にこたえずに、いわゆる財産保全的経営にあぐらをかいておる大山林地主の問題について、何かほかに考えておられることがあればお聞かせ願いたいと思います。国有林活用よりも民有林活用をもっとやらなければいかぬということが、総合農政という観点から論議を展開されることがより必要じゃないかと私は思うのですが、その点いかがですか。
  296. 池田斉

    ○池田斉君 民有林の問題につきまして、特に大きな山持ち、これが利益の追求だけであって、全体の、いまの国有林がかかえておるような目的、使命、それを含めた要請にこたえていない、こういうことでございます。この点につきましては、私どももそのとおりだと思います。  ただ、私どもがここでこの法律を通したいと念願しておりますのは、そんな大げさな、大きな山持ちをつくろうというようなことは毛頭考えていないわけでございまして、むしろ生産組合なり森林組合、そういうような姿において、非常に国有林の偏在している地域で、零細でしかも所得の低いそういう農家層がもう少し規模拡大、あるいは林業を含めたそういう形で、そこでひとつ定着をし、現在の段階においてより積極的な形で経営をしていきたい、こういう善意の中でこの問題が出ておると思うわけでございます。  特に民有林の問題を中心とした林政の問題につきましては、いま先生の言われるような方向で、国有林だけがこれをささえておるという問題を、民有林を含めてもう少し、全体としての林政の中で民有林の、特に大山地主の問題に対してどういう手を加えていったらいいかというようなことは、政策当局で十分考えらるべき問題ではないかというふうに考えております。
  297. 森義視

    ○森委員 次に、林業の基本的な政策が確立していないので、それが先だという意見があるけれども、これは本末転倒だ、こういうきびしい断定的な御意見がありましたし、またあなたの意見の中には、民主的活用ということを盛んに言っておられるわけです。私は、林業の基本的な政策が確立しない限りほんとう活用というものはない、こういう見地に立っておるわけですが、あなたが民主的活用とおっしゃるのは、どういう方法を具体的に考えておられるのか。林業の基本政策が先だという考え方は本末転倒しておるのだ、これは論議しますとだいぶんと時間がかかりますが、私は、その断定のしかたはちょっと的をはずれておるのではないかと思いますが、よく使っておられた民主的活用、これは私たちの主張している意見とも相通ずるものがあるのですが、内容はどういうものであるのか、お聞かせいただきたいと思います。
  298. 池田斉

    ○池田斉君 前段の問題は、基本政策が先行しないと活用の問題は十分な成果が出ない、これは筋道はごもっともだと思います。ただ、私どもは、やはり国有林偏在地域の住民ほんとうに強く要望をし、しかも間違いなく、あとで指弾を受けないような、そういう経営とひとつ取り組んでいこう、こういう善意に満ちた要望に対応した運動をわれわれはしておるというふうに確信いたしております。  したがいまして、この問題は従来のように、林野当局とそれぞれの個人が、個人の都合を含めまして、また林野当局の基準において、いろいろ活用の問題を個々のケースでやるのではなくて、町村を単位にいたしまして、やはりその村の将来の展望をどうするか、しかも、それがそれぞれの部落等を含めまして全体として十分討議をして、その村の土地利用計画という問題を国有林を含めて十分検討をする、そして国有林野当局の基本的な任務というものとの調整をはかって、十分ひとつ練り上げた形で、村単位あるいは部落単位に計画を立てるわけで、個人個人が恣意的な形でこの問題をやるということは、絶対に戒しめなければならぬ。こういう計画的なものの考え方で、しかも、その計画をつくる場合に、きわめて民主的な形で地域住民の意向を中心としてまとめる。こういうことでこの問題は前進をしなければならぬというような考え方に立っておりますので、あえて民主的ということばを使ったわけでございます。
  299. 森義視

    ○森委員 そうすると、具体的にどういう構成で、どういう機関をつくって、その機関がこの活用の問題について終始取り扱うとか、そういう考え方を基礎に持っておられるということで、具体案はまだ持っておられない、こういうことですね。地域住民の皆さんの意見を十分部落単位に聞いて、そしてやっていこう、こういうことですね。  そこで問題は、いま、特に山村僻地帯からの離村が相次いで、労働力の欠乏が日本林業発展を阻害する重大な要因になっているということ、これは先ほどの意見の中にもあったのですが、特に皆さんが、日本の山村から離村していく人たちを足どめするためには、どういうふうにしたらいいと思うのか、これがまず一点。  それから、先ほど田村さんからの陳述の中にありました国有林で得た利益、これは現在五百九十六億とおっしゃいましたが、こういうものを地元に還元せよという、そういう要求や運動、そういうものを今日まで展開された経緯があれば、つけ加えて御説明をいただきたいと思います。
  300. 池田斉

    ○池田斉君 いまわが国の問題で、国民経済全体として過疎、過密、こういう非常にむずかしい問題が出てきていることは十分承知をいたしております。特にこの過疎問題、これをどういう形で解決をしていくか、こういう問題のためには、その地域住民をできるだけ、いまお話がありますように足どめをして、そしてそこで生活なり経営の条件が確立をする、こういう条件をどう与えるかという問題が、私は根本の対策になるのではないか。ただ、もちろんこれは環境の問題とか、いろいろな問題が付随をしなければならないと思います。  特に農業の面におきまして、わが国におきまして長期的な展望を考えますと、やはり純農村地帯というものに、都市近郊の農業、これが逐次後退をして、だんだんと都市化が波及をその方面にしていく。したがって、純農村地帯をどう守るかということ、あるいは都市近郊をどう守るかということもきわめて大事でございますけれども、むしろ私は将来の日本農業のささえというものを、現在過疎化しつつあるそういう地帯に、もっといわゆる経営の安定した、そういう農業をどういうふうに確立するか、こういう視点から、その地域に対して十分の国家投資を行ない、また、国有林等の活用につきましても十分意を払うべきであると思います。  農業者というものは、相当環境あるいは条件さえ整えられるならば、十分農業で、あるいは林業を含めた経営におきまして立ち上がっていくという、そういう意欲と意識を私は持っておると思います。また、そういう青年も数は少ないけれども相当おる。そういう人々にどういう客観的な立ち上がりの条件を与えるか、こういうことが、特に過疎地帯におきましては大事な問題である、こういうふうに考えますので、そういう視点から、私は間接的ではありますけれども、具体的にそこに定着をする、こういう問題を国有林活用と関連をして考えておるわけでございます。
  301. 森義視

    ○森委員 この問題は、議論すればたくさんありますが、その程度にしておきます。  それから、もう一つお伺いしたいのですが、この運動は、いわれるところのボスの運動ではない、山村住民の、ほんとうに個々の住民の声からあがった運動であって、活用計画も立てる、こういうお話があったわけです。また、この法案にあるところの個人に対する活用は、ある場合においては禁止してもいい、いわゆる団体で共同でやる、こういうお話なんですが、現在、日本で一番荒廃しておるのは市町村の公有林なんです。あなたは個人に対する活用は削ってもいいと言われるが、どういう機関が一番林業上の活用に適するものと考えておられるのか。たとえば生産森林組合をつくってやる。その生産森林組合が、全国でどういう経営状態にあって、どういう問題点があるかということについて御存じですか。私は、公有林が荒廃しておるという事実、あるいは生産森林組合が各地でいろいろ問題があって、特に税金の問題等でたいへん問題を起こしておるということをよく知っておるわけです。そういう問題をも踏まえた上に立って、そういう御意見をはいておられるのかどうか。それだけでけっこうです。
  302. 池田斉

    ○池田斉君 私も、先ほど申しましたように、あまり専門家でございませんから、十分な調査を前提にいたしておりませんが、ただ、個人という場合には、いろいろありましても、やはり恣意的な形での問題になりやすい。現行法におきましてはそういう問題が多いわけでございますので、いま下から出ておるいろいろな要望というものが、やはり生産森林組合なり、あるいは森林組合というような形で共同で担当していこう、こういうような計画が中心でございますから、この際、個人の問題はしばらく保留してもいいのではないか。特に、黒い霧の問題等がいろいろ出ておりますので、こういうことを申し上げておるわけでございます。  公有林が、特に町村合併等で、市町村にかなり払い下げをしたところが、非常に荒廃をしておるということも十分聞いております。しかし、それは全部ではないのではないかというふうにも考えております。ただ、この法律国有林市町村へ移して、市町村経営でやるということは考えられておりません。これは、市町村長からはかなりそういう要望がございましたけれども、現在の実情からいって、やや問題があるというような認識に、私個人は立っておりますので、この市町村長の強い要望につきましては、この問題の中に入っていないことをいまの段階では了承しておりますが、森林組合なりあるいは生産組合、こういうものでやろう。  これが、現状はいろいろ問題があるということの御指摘でございますが、ただ、これにつきましては十分ひとつ指導をいたしまして、そういうことではなくてうまくいくようにやらす。過去の実例がいろいろあるからということだけでは——私はそれを、今度この法律との関連におきまして、活用される問題につきましては、ひとつ十分指導的な面をよくやっていけば、所期の成果が達せられるのじゃないかというふうに期待をいたしておるわけでございます。
  303. 森義視

    ○森委員 それでは、池田さんに対する質問は終わりまして、次に熊井さんにお尋ねいたします。  基本問題の中で、冒頭に触れられました日本林業政策に抜本的施策がない。私も同感であります。そこで、どのような抜本的施策をお考えか、お考えがあればお聞かせ願いたい。
  304. 熊井一夫

    ○熊井一夫君 お答えいたします。  日本林業の抜本的な政策ということでございますが、林業政策につきましてはいろいろな法律がございますけれども、私に言わすならば、やはり何と申しましても先年、昭和三十九年に成立いたしました林業基本法、この基本法を骨子といたしまして——この基本法はあくまでも骨子でございますから、これを柱といたしまして具体的な方策、具体的な政策というものを立てなければならないのではないか。  たとえば、あそこにも書いてありますように、いまお話が出た問題もございますが、生産性の問題、あるいは総生産の増大の問題におきましても、民有林関係におきましては非常に零細企業、零細所有、そういうところで長期低利の融資をするという問題もございますし、あるいはまた、それを集約化するとか協業化するとかいろいろな問題がございますけれども、いずれにいたしましても、やはり林業政策を考える場合には、林業基本法というものを骨子といたしまして、それに対する具体的なそれぞれの立法政策あるいは行政、そういうものをやはりとっていくことが一番適切ではないか、かように考えております。
  305. 森義視

    ○森委員 抜本政策については、いろいろとまたこの法案審議の過程の中で私も考えていきたいと思います。  そこで、参考人は先ほど、林業労務者の組織の役員をしておられるとおっしゃっておりましたが、所属しておられる組織というのはどういう現況ですか。先ほど全林野委員長という形で、田村参考人からの意見開陳がございました。熊井さんの場合は日林労ですか、そうおっしゃいました。その組織の実態はどういうようなのか、現況をちょっとお聞かせ願いたい。
  306. 熊井一夫

    ○熊井一夫君 先生の言わんとする質問の趣旨が、ちょっとぼくはわかりかねますけれども、簡単に申しまして、私たちの組織は、国有林に従事するところの月給制定員内職員をもって構成しておりまして、組織人員は現在一万一千八百名でございます。  そういうような実情でございますが、いずれにいたしましても林業が、今日いわゆる国際化、自由化、こういうことで、かなり林業自体も国有林民有林を問わず、いわゆる総合林政ということが叫ばれている今日でございますので、私たちといたしましても、この月給制職員をもって構成している日林労の組織は、この際若干改善いたしまして、ひとつ国有林労働者だけではなくて、幅広く林業労務者の民主的な労働組織の結集を行なうべく、来月の八月五日に全国大会を持ちまして、民主的な労働組織のいわゆる結集という立場で、今後林業労働者の総生産の問題、所得の問題、あるいは社会保障の問題、そういうような問題について取り組んでいきたい、かように考えているわけでございます。
  307. 森義視

    ○森委員 重要な林業問題を担当しておられる労働者の組織が、こういうように二つに割れておるということは、日本林業をこれから政策的にいろいろ進める場合において、問題点があるのじゃないか。したがって私は、日本林業ほんとう生産面で国民の期待にこたえられるような、あるいは国土保全、治山治水、水源林等の問題で、公共的な使命に十分こたえられるような体制をつくるためには、皆さんが一つになって、打って一丸となって努力していただくということが非常に重要ではないか、そういうふうに思うのです。  いまお聞きしますと、何か民主的な労働組合の結集を八月五日にはかる。こういうことは、いまの全林野の皆さんと一緒に組織をつくるという御意図があるのか、あるいはそれ以外に、皆さんが民主的と断定されるような方々とだけ別にまた組織をつくる、そういうことなのですか。その点、一本になるということなんですか、それとも、いまの皆さんの組織の中に賛成する人たちを集めて、民主的と称して別の組合をつくっていこう、こういう意図ですか。
  308. 熊井一夫

    ○熊井一夫君 いまいろいろと、直接は林業政策というか、本問題と関係ないかと思いますけれども、あえて御質問がございますからお答えしたいと思いますが、いずれにいたしましても、私も率直に申しまして、日本林業労働者の組織が二つ三つと、こういうのは決して望ましい姿とは考えておりません。しかしながら、なぜこういうような形態になっておるかということについて、若干触れてみたいと思います。  一つは、基本的に私たちが考え方を異にしておる点は、労働組合の内部問題でございますから、あえて大きく言うのはどうかと思いますけれども、いわゆる国有林野の経営に対して、特に当面するところの……。
  309. 森義視

    ○森委員 私の質問したことだけに答えてください。一本になるかどうかということです。
  310. 熊井一夫

    ○熊井一夫君 一本になるかどうか。これは相手のあることでございますから、ここでは約束できませんが、要するに私たちが提案しておりますように、国有林野の民主的な経営、いわゆる生産向上賛成、合理化賛成と、こういうような点なり、あるいは共産党に対する見解、そういう基本問題がそろうならば一本になる場合もありましょうけれども、当面、そういうものはかなり見解が異なっておりますので、将来の問題としてはちょっと言えませんけれども、いまの段階においては一本化はむずかしいのではないか、かように考えております。
  311. 森義視

    ○森委員 日本林業を考える場合に、私は見解だけ申し上げておきますが、国有林労働者はもちろん民有林労働者も含んで、日本林業をどう守るかというふうな組織になってほしいことを期待しておきます。この点はそれ以上触れません。  そこで、皆さんの場合には、日本林地の三分の二を占めておる民有林労働者の問題について、組織として何か御検討、お考えがありますか。
  312. 熊井一夫

    ○熊井一夫君 簡単に申しましてそういう立場をとっております。先ほども若干申し上げましたように、来月の八月五日に民有林関係、そして公有林関係、俗にいう林業労働者の諸君も、民主的な労働組合でひとつ一大結集しようじゃないか、こういうような声もかなり私たちのところに来ておりますので、ひとり私どもは国有林労働者の労働組織だけではなくて、今後の施策といたしましては、国有林労働者を母体といたしまして、民間の林業関係の労働者という立場も含めて、産業別の林業同盟というものをやっていきたい、組織していきたい、かように考えております。
  313. 森義視

    ○森委員 次に、現在の国有林経営のいわゆる林野庁の姿勢についてどういう見解を持っておられるか。現在の林野当局の経営姿勢で、この活用法を制定した場合に、真の意味における農民の要求にこたえられるような活用になると考えておられるかどうか。
  314. 熊井一夫

    ○熊井一夫君 私は率直に申しまして、こういう短い法案で、しかも私に言わすならば、内容のきわめて狭い範囲のもののとらえ方によっての法案では、真の意味の農山村民の意見を十分体した形での活用、そういうものは果たせないのではないか、かように考えます。本来ならば、私に言わすならば、こういうように狭い範囲の問題ではなくて、先ほども若干申しましたように、国有林の場合は七百五十万町歩を擁しておりますけれども、いわゆる所有権とか一部の問題だけではなくて、国有林の経営全体、造林から始まりまして伐採まで、すべての利用権の民主的な開放が抜本的な問題ではないか。これなくして、ほんとう意味国民の山としての国有林というものの解決というか、改善というものがなされないのではないか。したがって、狭い意味活用だけでなくて、もう少し広義の民主的な国有林野の経営計画、造林から始まりまして伐採、販売、全体の民主的な開放活用、こういうものをやらなければならない。  そのための一つの手段といたしましては、現在やっておりますところの、たとえば労働者も参画いたしておりますところの林政審議会、こういうようなものを十分活用するとか、あるいは現地の経営協議会、そういう中で、一体部落民なり村民はどういうように考えているか、消費者はどういうように考えているか、労働者はどういうように考えているか、そういうような意見も十分聞きながら、真の意味の幅広い立場に立っての国有林野の民主的な利用権の開放あるいは活用、そういうものを積極的にやらない以上は、ほんとう意味の経営の問題についての抜本的な改善というものはなされないのではないか、かように考えております。
  315. 森義視

    ○森委員 あなたのいまのお考えのような広義の、いわゆる国有林野全体を含んでの民主的な活用というものを、現在の林野庁の経営姿勢でやれると考えますか。
  316. 熊井一夫

    ○熊井一夫君 これは非常にむずかしい問題でございまして、これをめぐりましては、先般も中央森林審議会の答申とかいろいろと問題が出ますけれども、私は現在の体制では、少なくとも十分果たせないのではないか、かように考えております。  そのための一つの方法としては、たとえば、いわゆる経営者の人事の安定がなければならないのではないか。ここにもお見えになっておりますけれども、長官あるいは営林局長においても、半年や一年そこそこでくるくるかわるとかいうような形では問題がある。ほんとう国有林を長期ビジョンに立って長期安定をするには、いわゆる人事の安定、こういうような問題もしなければならないし、同時にまた、国有林の特別会計機構の問題についても、現在の形がいいのか悪いのか、こういうような点についても、かなり突っ込んだ検討がなされなければならないのではないか。そして労働関係においても、いまのような公労法だとかいうような中途はんぱなことではなくて、少なくとも現在の情勢から考えまして、労働者に対しては労働三法の適用を受けさす、こういうような問題とか、さまざまの機構あるいは関連する法律、そういうものを抜本的に検討された中で、政策の問題と並行いたしまして国有林ほんとうに期待されるところの長期安定というか長期計画、こういうものがなされないと、いまの姿だけではちょっと問題がありはしないか、私はかように考えております。
  317. 森義視

    ○森委員 いろいろこの問題では意見があると思うのですが、そういう機構上の問題だけじゃなくして、先ほど田村委員長からもお話がありましかように、常にパルプ資本には安く払い下げる、地域住民には高く売りつける、こういう独占擁護の林野庁の経営のあり方、姿勢、こういうものが根本的に改められない限り、機構いじりを幾らやっても、私は民主的な活用はできない、こういうように思うわけです。  そこで、いま一つお伺いしますが、先ほどのあなたの陳述の中で、国有林開放されたあと、中にはうまく活用されておらないのもあるけれども、約八割は有効に活用されておるということをおっしゃったわけですが、その実態についてどういう調査をされ、そのまとまった資料が何かありますか。あったら私たちほしいのです。国有林の今日まで開放された面積、それを農林業用にどういうふうに活用されたかということについて、あなたは八割はうまくいっておる、こういうお話でしたが、そのデータがあればほしいのです。私たちの持っておるデータでは、そういってないのです。
  318. 熊井一夫

    ○熊井一夫君 率直に申しまして、ここには持っていないわけでございますけれども、いわゆるこの調査は、先生御存じだと思いますけれども、国有林明治の初年に約一千六百万町歩、いまの倍以上山があったのですけれども、その山が今日どういうような所有権の移転状況をたどっておるか、あるいは今日の経営状況はどういうふうになっているか、こういうようなことについてきわめて大ざっぱなデーターは、私なりに調査し検討しているものがありますけれども、しかしながら、これも時期によってかなり起伏がございます。いわゆる戦中戦後のどさくさの間とか、あるいは安定期というか、現状のような段階とかいろいろございますので、まあ適切な資料であるかどうかちょっと疑問でございますけれども、私も、実はそういう方面の担当をやっておった関係もございますので、大体八割相当は間違いないのではないか。そして農林省の発表といたしましても、大体そういうような八割程度良好だ。私は人の話をまともに聞いて云々するわけではありませんけれども、これも政府データでございますし、まあ大体八割ラインというか、その線は、自分の経験、調査、その他から見ましても、大体順調というか、予定どおりの形において進められているのじゃないか、かように考えております。
  319. 森義視

    ○森委員 もしその資料がありましたら、私たちも審議の参考にしたいと思いますので、御提出をお願いしたいと思います。  それから、最後に一つだけ。先ほど断片的に御回答の中で触れておられますが、国有林の使命についてどう考えておられるか、総括的にまとめてお考えをお聞かせいただいて、私の質問を終わりたいと思います。
  320. 熊井一夫

    ○熊井一夫君 お答えいたします。  国有林の使命、これは御承知のように一口には言えない使命がございます。というのは、林産物の供給の問題国土保全の問題自然休養の問題とかあるいは保健の問題、農林業構造改善とかいろいろございますけれども、私は、そういう多目的な問題がありましても、いやしくも国有林野林業として問題を取り扱うことがやはり大きな使命ではないか。これは、はっきり申しまして人によっていろいろと違います。いわゆる林業を公共性、国土保全面から問題を取り扱うべきだ、経営体というものは第二義的じゃないかというような意見もございますけれども、私は国有林野というものを産業として取り組んで、その中でいろいろな多目的な問題を消化していく、克服していく、こういう形でやはり進めるべきではないか、かように考えているわけでございます。
  321. 森義視

    ○森委員 終わります。
  322. 安倍晋太郎

    ○安倍委員長代理 芳賀貢君。
  323. 芳賀貢

    ○芳賀委員 先に田村参考人にお尋ねしますが、現在の国有林の保有面積の中で、約三十万町歩無立木地帯というのがあるのですね。私は国有林の中で木のない——木がないから無立木というわけですが、そういう三十万町歩にも及ぶ無立木地帯というものが放置されておるという現状ですが、もうそれよりしようがないものかどうか。あなたにお尋ねするのは、現場の第一線で働いている林野庁の職員、あるいは労働者が実態を知っておるわけですから、今後の法案の審議の重要な資料として実態を説明願いたいわけです。
  324. 田村武

    ○田村武君 ただいま先生がお尋ねになりましたこの無立木地というのは、御承知のように、国有林というのは日本の背骨の部分を含んでおるわけでありますから、いわゆる高山地帯で、木材生産の用に供し得ないような状態のところ、そういうところがほとんどである、こう言っていいと思います。そうすると、岩石地帯であるとか、林木の生育には適しない、こういうようなところが約三十万町歩くらいある、このように理解をしております。
  325. 芳賀貢

    ○芳賀委員 そうなると、そういう国有林というものは、むしろ国有財産からは除外したほうがいいのじゃないかと思うのですね。たとえば、国有林財産の主要な目的のように、企業財産として有効に国民経済的に運用するということになれば、木のない土地というものは企業上何ら意味がないわけでしょう。立木があれば、これは水源涵養とか国土保全のためにその土地は必要であるということになりますね。木のない土地を国有財産として、しかも、企業財産として持っていなければならぬという理由はないと思うのですね。  こういうところに、七百五十万ヘクタールの国有林野というものは、この内部を検討すれば、いろいろな特徴とかあるいは利用関係についても、ただばく然と国有林面積が多いから、これを農業利用したらいいとか、あるいは民間林業活用したほうがいいというような、単純な議論は出てこないのではないかと思うわけなんです。そういう点は一体どう考えておりますか。
  326. 田村武

    ○田村武君 いまの先生のお尋ねが、そういう企業的な林業経営に適さないというようなところまで国有林野事業特別会計が受け持って、そうして、それでなくても苦しい台所の中で、そういう一般的に国が行なうべき役目まで負わされておる、こういう点について問題があるのではないかというような御指摘も含まれているんだというように理解をするのです。  いま、中央森林審議会の答申以降、いわゆる国有林の経営と行政の分離ということがやかましくいわれております。私たちはこれについて、国有林の負っておる役目、国有林の果たすべき役割りというものは、単に企業的経営であるとか、そういうような狭い視野からとらえるべきものではなくて、国の行政と密接不可分の関係にある、したがって、これをただ形ばかり分けるということは、分け得たとしても実質分け得るものではない、むしろそこには、国民の利益を害するような結果しか起こってこないのではないのか、こういう立場でもって私どもは反対をしておったのであります。  いまいろいろ問題になっておりますように、いわゆる国有林の役目、この中には国土の保全、水源の涵養、あるいは風致、観光、国民の保健、休養というような広い、森林森林として持っておる役目そのものがあるわけであります。そういう点からいきまして、こういう高山地帯等につきましても、これを保全をする、保護をする、荒らさせないというようなことについては、国がその所有をして適切な管理運営をしていくというものであり、かつ、そのためには、いま現にあるこの国有林野事業の機構というものを通じて行なう、そのことが国民的立場から見ても番経済的なやり方ではないのだろうかというような考えを持つものであります。  そういうことからいって、こういう総合的に果たすべき役割りにあるもの、しかして密接不可分で分け得がたいものまでいろいろな名目をつけて分けようとする、そういうところに、非常に大きな問題がある、このような考えもするのであります。  その中で一つの大きな問題が、いまの国有林野事業の特別会計制度、ここにあると思います。私は、国有林野事業の特別会計制度を否定する立場でありません。国有林野事業を円滑に進めていくためには、特別会計制度というものは必要だと思いますし、いま名前ばかりの特別会計制度で中身が失われているものを取り戻す。このことが非常に大切なときなんだというように思うのであります。  そういう点で考えまして、先ほどからいろいろな角度で私も申し上げてきましたけれども、言うておりますことを要約いたしますと、いま日本林業というものは危機的状態にある。これはイデオロギーが違っても、立場が違っても、どういう立場にあっても……。
  327. 芳賀貢

    ○芳賀委員 無立木のことだけでいいです。
  328. 田村武

    ○田村武君 そうですが。それじゃやめます。
  329. 芳賀貢

    ○芳賀委員 私の理解は、おそらく無立木地帯というのは、国有林事業で伐採したあと地等が、造林もされないで全く放置されておるという、純粋に立木のない、経営されておらない面積が、それに似たような条件の面積というものが相当あるのじゃないか。そういうことになれば、これは林野庁としても自分の本業をおろそかにして、国有林農業的に利用するとか、民間林業活用するというような、そういう余力というものは全然ないのじゃないかというように考えておったわけですが、いまのお話で、その土地は造林をしてもこれは生育をするような適地ではない、ただ、たまたま国有林地域の中にそういう劣悪な土地が包含されておるので、区分上これは無立木地ということになっておるということが理解されたわけです。  次に、三人の参考人の皆さんから、すでに法案に対しては賛成、反対の意見が明らかに述べられたので、御態度について聞く必要はありませんし、また、それぞれ根拠があるわけですからして、議論をする意思も全くありませんが、賛成の意見を述べられた農業会議所の池田専務、つまり池田参考人にお尋ねしますが、もうすでに五年以上にわたる農業会議所が中心となった非常に熱心な国有林開放の運動というものに対しては、熱意のほどについては、その分については敬意を表するわけであります。  そこで、率直にお尋ねしたいのは、あなた方の運動というものは、今回上程されておる国有林活用法案というものが、法律として成立すればいいということを目的にして運動をされておるのか、そうではなくて、国有林の果たす役割りの一環として、農業発展についても寄与できるような国有林については、積極的にそれが活用されるということが、従来は非常に行政的に消極的に取り扱われてきたので、これを積極的に、十分地域住民が納得できるような状態に実現させるのが、これが究極の目的ですか。法律さえ通れば、これはもう万々歳だということでやっておるのか。実体論からいって、もう少し国有林というものが、これは国民共用の財産ですからして、国民のこれは山ですからして、これを高度利用するということに対して、いまの自民党政府のやり方にも、行政的にも大きな欠陥があるんだからして、これを大きな国民的な世論で非難して、鞭撻して、要求を実現させるというのか、一体どこに目的があるか、その点を参考までに聞かせておいてもらいたいと思う。
  330. 池田斉

    ○池田斉君 いまお話しのように、このわれわれの強い運動は、もう六、七年経過いたしております。経過的には、林野庁はどうしてもこの問題には振り向かないという長い歴史の経過があったわけでございます。  実は私どもは、この法案が通ればそれでいいんだというような考え方ではございません。ただ少なくとも、いまお話しがありましたように、国有林偏在地域の住民が、何とかその地域に踏みとどまって生きていこう、こういうような強い要望を、まあ農業会議所でございますので、まともに取り上げて今日までまいった。しかし、やはり国民の山である国有林、これをもぎ取るというような、そういう考え方は毛頭ないので、国有林が果たさなければならない使命ともちろん調和をとって、そうしてできるだけ地域住民にも国有林活用を通して立ち上がってもらう、そういうような考え方で、しかも、これは相当やはり、先ほどいろいろ御質問もございましたが、十分民主的な形で——従来いろいろな批判がございます。そういうことのないように、とにかく計画的にこの問題をひとつ、話し合いを十分した上で、将来の問題についても再びあやまちを起こすようなことのないような、そういう形での活用を念願いたしておるわけでございます。  ただ、従来行政で、まあ次官通達等があるからいいじゃないかというような意見がございますが、むしろ、やはりほんとう林野当局が地域住民の要望に合理的にこたえていくという姿におきましては、きびしい点はもっときびしくするというような形での立法が背後にないと、やはり恣意的な問題におちいるのではないか。こういうようなことから、不十分ではありますけれども、とにかくここでこの法案をぜひともひとつ推進をして、目的は、地域住民ほんとうに立ち上がるということを念願をいたしておるわけでございます。
  331. 芳賀貢

    ○芳賀委員 大体わかりました。  次にお尋ねしたいのは、いま私が提起しました、現在の行政制度のもとにおいて、国有林農業活用というものは、これはもうやれることになっているわけですね。しかし、林野庁といえども、これは林野庁長官片山君の山ということにはなっておらぬので、かってなことはできないわけですね。ですから、農業的に活用するという根拠をさかのぼれば、一つは、昭和三十六年に農業基本法ができた場合、この日本の大部分の農業あるいは個別林業というものが零細経営のもとに置かれておる。これを、農業だけあるいは林業だけで拡大して、専業的な自立経営をすることは不可能である。特に農山村地域における、農業ももちろんやっておるが、一方において林業も兼業的にやっておるというような、そういう農家が非常に多いわけです。これは統計で調べても、全国の農家の約三百万戸というものは、これは大小にかかわらず山林を所有しておるわけですね。ですから、農業林業を合わした経営の拡大改善をやるべきであるということが、これが農業基本法の一節に出ているわけです。これを受けて農林省が次官通達で、農業構造改善実施の要綱を出して、これがいままで第一次構造改善事業としてことしで終了するわけです。ですから、この農業構造改善事業というものは、これは内容的には若干の問題はありますが、とにかく実体法というものがない状態の中で、行政的に農業構造改善事業というものは今日まで進められてきて、この最終段階においては、相当大きな成果をあげておるということをいわれておるわけです。今度は、来年度から第二次農業構造改善事業に入るということで、その準備体制を整えるために、先般、農業振興地域整備法が両院を通過したことも御承知のとおりであります。ですから、要は実質的に成果があがるということになれば、農業構造改善事業に例をとっても、特別の実体法がなくても、政府が熱意をもって成果をあげるということであれば、十分の効果というものをあげることができるわけです。  それから、その次には、三十九年に林業基本法が成立しまして、この基本法の中にも、国有林農業的な利用という点は述べられておるわけであります。したがって、三十九年以降、林業基本法を行政的にふえんして実施する場合の一つの与えられた業務として、国有林の中で、どうしてもこれは地域農業発展に寄与する地域があるということであれば、それは国有林の基本的な使命をそこなわないということを前提にして、積極的に行政的にこれは活用しなさいということになっておるわけです。ですから、結局農業構造改善事業、それから林業構造改善事業、それぞれ農林省の次官通達で、これは今日実施が進められておるわけです。  われわれは、このいま政府が出している、全く次官通達と同様のものを一片の法律にしたところで、何も大きな前進はないと思うわけなんです。法律をつくっても、やるのは役人がやるわけですからして、いままで行政的に、むしろ全面的に責任を負わされておった役人が、これはサボタージュして何にもしていないんですね。今度は自民党の政府が出した法律が通ったとしても、実際それを運営して実行するのは同じ役人がやるわけなんです。だから私は、やる気がない者に法律を預けても、次官通達を預けても、やらぬことには変わりはないと思うのですよ。ここに問題があると思うのですね。  それで、私は田村参考人にお尋ねしたいが、一体この国有林活用というものは、全国の営林局管内あるいはその下の段階である営林署段階において、はたしてその地域住民に対して、いままで、今度はこういうような次官通達に基づいて国有林農業の部面にも積極的に寄与させるような行政的な措置が講ぜられるようになったので、熱意のある農家関係者においてはこれを十分理解して、そうして活用の実があがるようにしてもらいたいというような、そういう周知徹底というものを、一体全国の林野庁の末端機構において積極的にやっているかどうかということに対して、実情をお話し願いたいわけです。
  332. 田村武

    ○田村武君 まず、いまの林野庁の経営姿勢の中で、かりに本活用法案ができたとしても、真の地域農山村民の利益になるような活用というものが、円滑に実施し得るであろうかというような点についての先生の御見解は、私も全くそのとおりに感じます。先ほど意見の中でも申し上げましたが、問題は、いまの農林業の危機的状態の中で、ほんとうに農林当局がこの問題を適確にとらえてやっていく気があるかないかということです。そういうところに問題があると思います。ですからこの問題は、いま先生も御指摘になりましたように、一つの問題は、いまの制度の中でもやり得るようになっておるわけでありますから、そこでやりづらいという、やってくれないというような問題があることについて、この国有林野活用法とかいうものを推進される立場にある方々が、そういう地域農山村民の切実な要求というものをとらえて、法律がなくてもできるものについて、やれということを行政当局に強く迫ったことがあるのだろうかどうかということ、それから、国有林があげてきたいろいろな利益、こういうものを所在の農山村に均てんさせるということについて、強く政府当局に迫ったことがあるのかどうか、先ほどから各先生の質問に出ておりましたけれども、私自身もそういう点をきわめてふしぎに思うところであります。今後問題は、農林当局がほんとう地域農山村の人たち生活をよくするために、また林業で働いておる労働者、ほんとう生産のにない手である者を尊重して、そうしてこれを向上させるためにやる気になることがいま必要だ。それができれば、この活用法に賛成だ、反対だ云々と騒がなくても、私は大部分の問題は解決をする、こういうことになるものだろうと思います。  そこで、意見になりますが、この国有林活用については、やはりその地域における労働者、農民の方、また関係木材産業の方々、こういう関係者を含めたほんとうに民主的な地域の総合的な立場で国有林活用を考える、あるいは民間の山林活用を考える、こういうようなものを制度的につくって、そしてここで出ました民主的な結論について、その所有者または経営者が義務を負ってこれをやっていかなければならない、そういうふうにすべきではないのだろうか。しかし、その計画に従えないという場合もありましょう。いまの日本の制度のもとでは、どんなことをやったって、所有者がこれを拒否する限りこれは実現しないと思うのです。その場合に、計画どおりやらないからお前に制裁を科するということで、刑罰を科するということは不可能だと思いますけれども、いま与えられておるいろいろ税制上の優遇措置であるとか、あるいは金融面における優遇措置、こういうものによって、こういう制度の運用面において不利益の制裁を与えるというようなことによって、この地域人たちほんとう自分たちのために利用するものを確保してやる、こういうことが、いま必要なんではないだろうかというように考えているところであります。
  333. 芳賀貢

    ○芳賀委員 田村参考人は旭川営林局の出身ですから、次の私の話はわかると思うのですが、旭川営林局の管内に士別営林署というのがあるのですよ。士別営林署の区域に和寒町という町があるわけですが、ここは非常に国有林活用をやっておるわけです。これは払い下げ等を受けておるわけではありませんが、一つは、農業の中の畜産を主体にしたいわゆる国有林共用林としての活用を町をあげて強力に進めておって、これは年次計画が完成して二百数十頭の乳牛を放牧し、あるいは採草できるような模範的な経営をやっておるわけです。こういうことは、全然旭川営林局も宣伝もしない、あるいは国会でも林野庁が、共用林の実績というものはこういうふうに発展していますなんということを何も言わないのですよ。これは忘れて言わぬのでなくて、ことさらに言わないわけだから、われわれ国会におる者もわからぬし、まして法律制度にうとい一般の国民は、なおそういう制度があることを知らないわけです。  それから林業利用にしても、国有林の場合には、分収林といわぬでこれは部分林というわけですが、和寒町の場合は、和寒町の区域にある全部の小中学校が国有林と部分林契約を締結して、そうしてもう長年にわたっていわゆる学校部分林を、これも非常に模範的に行なっておるわけです。これはおそらく農林大臣かあるいは林野庁長官が、和寒町の学校部分林は表彰しておるわけです。そういうことも何にも報告も宣伝もしないのですね。黒い霧や何かで非難されて弁解をするのは、これはできるだけそういうことは持ち出したくないと思うが、いいことをしたり業績のあがっていることは、これは遠慮しないでどんどん報告したり宣伝するのがあたりまえだと思いますが、こういう林野庁の態度というものは、これはもう長年一つの習性となっておるものであるか、これは田村参考人も林野庁に奉職して相当永年、国有林には生涯をかけて真剣に努力しておるわけですから、その点の特徴的な点を参考までに聞かしてもらいたいと思います。
  334. 田村武

    ○田村武君 先生には、まことに痛いところをいま御指摘をいただきまして申しわけありません。問題は、いま先生が言われましたように、そういう国有林活用について模範的なところがある。これは先生の言われる和寒町のほかにも、全国に相当たくさんあると思うのです。たしか共用林面積は全国で百八十万町歩ぐらいですか、そのくらいあると思うのですね。こういうりっぱにやっているところについてさっぱり知らせないじゃないかという点は、先生、そこが問題だと思うのです。私、そこが林野庁の姿勢の問題だ、そこが改めなければならぬところだと思うのですよ。ということは、できるだけ活用させたくない。和寒町では国有林活用してこうこうやっておると全国に宣伝をすれば、同じようなところが、それではおれにもやらしてくれということに必然的になる。できるだけそういうものを地域農民には使用させたくないという考えがあって、そこでいろいろな圧力のもとでこの次官通達が出た、いろいろなものが出たって、頭からやらせたくないというのが本旨ですから、そういうものについては、国民の前からおおい隠すということの努力が働くということになると思うのです。ここが改めなければならないところだと思うのですね。  そして、これは昔からのそういうものなのか、このごろのだれかがやったのかという点のお話もございましたが、これは昔から、国有林成立以来の、いわゆる国有林の官僚独善的経営の姿であるということだと思うのです。決していまの片山長官がそれを恣意的にやろうとしているものではない。そこがこの独占政府の、いわゆる日本山林政策の中心的なものだ、こういうようにとらえたければならないのではないだろうかと思います。  それからもう一つ、いまの共用林野がそういうことになっておるのです。近ごろ問題が起こってきておるのが、これはこの開放運動というものの一つの端緒になっているというようにもいわれているのですけれども、この百数十万町歩に及ぶ共用林野の問題なんです。共用林は、もちろん落ち枝だとか落ち葉とか、そういう自家用薪炭のための入り会いであるとか、あるいは放牧の入り会いとか、あるいはキノコとかあるいは山菜とか、こういうものの入り会いであるとか、いろいろあります。共用林野ということになれば、国有林の小業的経営の中からは除外されてしかるべきだと思うのですよ。ところが現在は、これが第二種林地ということになっておりまして、国有林が企業的に経営すべき面積の中に含まれておるわけなんです。そうすると、いま時代が進行して、蓄積も少なくなってくる、あるいは薪炭の需要が激減をしてくる、こういう状態の中で、入り会い林というものは近いところにあるわけですから、これは比較的立地条件がいいところだ。そこを改造して針葉樹の人工造林地に仕立て直していくということが、企業的面で国有林が非常に強く力を入れてきているという問題があります。したがって、いままで広葉樹で入り会いをしておったところで、自家用薪炭なり何なりの利用ができたんだが、そこを針葉樹の人工造林に仕立て直すということで、いままでの入り会い権が否定されるわけです。ところが、この否定されるといいますか、制限されるといいますか、使用し得なくなるといいますか、そういう状態に置かれるいわゆる共用者、入り会い権者、こういう者に対する権利の保障、こういうようなものが行なわれていかない、永続的に使っていけるような施策がそこにない、こういうことが、いま非常に大きな問題になってきておる。こういう点についても、やはり地域人たちの意見というものを十分反映させる、経営協議会的なものが地域にあることが絶対不可欠ではないだろうか。そして、いまの林野庁のこの経営姿勢を改めさせるためにも、下からそういうもので積み上げてくるというようなことがなければならない。  いま国有林野管理審議会というようなものが、確かに各営林局ごとにあると思います。そして活用についての諮問をし、そこで考えを出してもらっているようでありますが、この構成を見れば一目りょう然だと思うのです。銀行の頭取さんだとか支店長さんであるとか、あるいは、いわゆる私たちの悪い口からいわせれば地方のボスであります。こういう人たちがそれを構成して、国有林活用というものについて論議をしておる。これでどうしてほんとう地域の農山村民、食うに食えないで、人間として生きていけない状態に置かれている人たちの苦しみというものが、こういう人たちにわかりましょうか。ここの点を特にひとつ御留意をいただきたい、このように思います。
  335. 芳賀貢

    ○芳賀委員 これに関連して熊井参考人にお尋ねしますが、先ほど、林野庁のやっておる最近の国有林活用は、いろいろ指摘する点はあるが、しかし、総体的に八〇%くらいは成功しているということを言われました。そこで農業活用は、これは三十八年から始まったわけですし、林業活用は三十九年から始まったわけですが、これを二つに分けて、活用が開始以来、たとえば林業白書によると四十二年までですが、今日までどれだけの面積活用されて、どういうような成果をあげたかということを、あなたは林野庁本庁におるからよくわかると思いますが、その点ちょっとお聞きしたいと思います。
  336. 熊井一夫

    ○熊井一夫君 私がいわゆる活用と言うのは、三十九年からという最近の事例をとらえているのじゃないのです。先生方も御承知のように、国有林野活用開放、所属がえ、名前はいろいろな形においてやっておりますけれども、いずれにいたしましても、明治、大正、昭和とかなり長期にわたりまして、いわゆる名前はともかといたしましても、自主的な活用というか、利用権の設定というか、そういうものをやられている。  そこで、先生の御質問でございますけれども、三十九年からどういう内容か、こういうようなデータは、今日持ち合わせておりませんけれども、大体最近の傾向としていいといわれる内容は、むしろ林野当局のほうから、これこれで活用しなさいというようなことではなくて、地元のほうで活用計画利用計画、それに伴うところのさまざまな計画、そういうものも立ててから、これに対して当局は当局ながらの審査その他をやっていわゆる活用をはかっている、こういうような傾向の中で活用はかなり成功している。しかし、戦後から昭和二十七、八年ころまでは別です。むしろ林野庁のほうから、こういうようなことで活用してあげたい、たとえば開拓民のための活用をしてあげたいということで、受け入れ体制は十分でないにもかかわらず、いわゆる活用とか所属がえだとかいうようなことでやってきた関係上、その当時は比較的活用の形は成功した例が少ない。しかし、最近は逆に、いわゆる当局ではなくて地元、そういうようなところがら、これこれの計画に基づいて活用したいのでどうだろうか、それでどうしましょうというような話し合いの中からきておりますので、比較的一般的な問題になりますけれども、成功というか、活用後の実情は成績がよろしい、こういう傾向になっておる、こういうことでございます。
  337. 芳賀貢

    ○芳賀委員 いまの点ですが、これはことしの林業白書農林大臣が国会でも報告したわけですが、農業利用関係は、昭和三十八年に始まって四十二年までに一万九千ヘクタール、これを活用に充てたわけですね。いいですか、毎年一万九千ヘクタールじゃないですよ。三十八年から四十二年まで五年間にですから、一年にすれば全く微々たるものですよ。それから林業活用は、一年おくれて三十九年ですが、これは三十九年から四十二年まで一万五千ヘクタール。これでは、次官通達が出て活用しますといっても、地元関係者がおこるのはあたりまえなんですよ。別にぼくは池田参考人の肩をもつわけではないが、こういうちゃちなことをやっておるから、それではもう政府は当てにならぬ、役人の行政的なやり方というものは当てにならぬから、それでは国会で、中身が同じであっても、法律をつくってやるようにしてくれというような素朴な国民の声が出てくるということは、当然だと思うのですね。五年間でわずか二万ヘクタール足らずの活用をやって、八〇%成果があがったと思うくらいでは、これはあがったにも何にもならないですよ。別に私は議論をする必要はないと思うし、よくおわかりだと思いますので、この点だけちょっと申し上げておきたいと思います。  それから、池田参考人にお尋ねしますが、何もかにも国有林が、地元の地域社会経済発展にはマイナスであったということは、これは極論ではないかと思うのですよ。特に国有林が偏在しているというのは、これは北海道を筆頭にして東北地域、これが一番中心なわけですね。ですから、一番経済的にも、地理的条件でも劣悪な条件のもとに置かれておる北海道、東北地域に、国有林というものが果たしたものはマイナスかというと、その地域における社会的、経済的あるいは産業の発展の上に寄与、貢献しておるところはあると私は思うのですよ。  そこで、その貢献の度合いと偏在したことによって起因するマイナスの部面を差し引きした場合に、これはどうであるかという答えを出さなければならぬと思うわけですが、マイナス面はもうすでに強調しておられるわけですからして、この貢献した面、地域に寄与した部面というものは、どの程度であったという評価についても、率直にお話を願いたいわけです。
  338. 池田斉

    ○池田斉君 確かに先生のお説のように、国有林偏在地域の住民が、国有林のおかげでいろいろ生きてきておる、こういう問題はどこへ行きましてもよくわかります。ただ、国有林偏在地域に参りますと、私もまあこの運動を推進する立場で、きわめてしろうとでございますので、ほんとうの軒先国有林地帯もかなり歩いて、またその地域の人々の話もいろいろ聞いたこともあるわけですが、先ほどもいろいろお話がございますように、何かそういう地域に行きますと、やはり林野王国と申しますか、林野庁の出先のお世話になっておるということが必要以上に意識されまして、何か一つの恐怖感がある。きょうはほんとうのことを言うけれども、普通の場合にはこういうことは言えないのだ、自分たちはむしろこの際、もう少し活用に対して自分たちの力が十分発揮できる、そういうものをお願いしたいのだけれども、なかなかそういう地域ではものも十分言えない、こういうような話も聞いておるわけです。そのことは、国有林の経営の中で労務者をしたり、あるいはいろいろ部分林なんかの問題等で世話になっておる、こういう問題が反面にありますので、国有林活用に対して火の手をあげるというような問題について相当萎縮をしておる、こういうことを実はつぶさに見てまいっております。  そういうようなことを含めまして、いろいろ運動というようなものに対する御批判もございますけれども、やはり心ある町村長なり、あるいは知事なり、県会議員なり、私どもが、やはりそういう問題を解決すべく運動として、これを取り上げているという形で今日までやってきておるわけで、国有林の恩恵に非常に浴しておるということは、私も十分そのとおりだというふうに考えております。
  339. 芳賀貢

    ○芳賀委員 私は、国有林そのものが、地域住民に対して恩恵的な立場で臨んでおったことの成果を聞いておるのじゃないですよ。その地域国有林が所在することによって、地域農業林業あるいは産業経済全般に、何らかの寄与あるいは貢献歴史的にしてきておると思うのですよ。その貢献の度合いと、偏在しておるといういわゆるマイナス面もまたあると思うわけです。それを差し引きにした場合に、マイナスが非常に多いのか、差し引きとんとんくらいになるものであるか、そういう価値判断というものを、歴史的にずっとたどった場合に、どういう答えを持っておられるかということを聞いたわけです。  これは昔話のようになりますが、昭和二十九年の国会において、当時林野庁は、地方に散在する営林署を縮小して、営林署事業範囲を拡大するという計画を立てたことがあるわけです。そのとき、特に東北を中心とした関係農山村の町村ぐるみ、そういうことをやられては地元の死活問題に関する、歴史的にもう国有林とわれわれの生活というものは、あるいは行政というものは、切り離すことのできない不可分の協同体的な役割りをたどってきておるので、そういう営林署の縮小なんということ、廃止なんということを、一方的にやられてはたいへんだというような強力な国会に対する陳情、要請等が、いまの国有林開放よりもまだ真剣に、命がけの運動が実はこの国会に反映されたわけです。  そういうことで、私たち当時農林委員会としては、委員長はいまの自民党の井出一太郎君ですが、あのころは改進党というのがありまして、井出君は改進党所属でして、当時は絶対多数党というのはなかったわけです。多数横暴とか、多数独裁というような弊害は当時の国会にはなかったのです。それで、当然委員会として現地調査をするということにして、青森県、それから秋田県、山形県を主要な調査対象地域としてわれわれ現地に行ったわけです。あの当時長官は、いま参議院議員に席を有しておる柴田栄君、それから業務部長が、すでになくなった前の長官の石谷君です。石谷業務部長というのは当時非常に行動的な熱意のある人でして、調査団の案内役ということで、作業服にゲートル巻きで行ったわけですが、これはもうわれわれ国会で想像しておった以上に、東北地域における国有林と地元の町村あるいは地元住民との密着というものがあって、実は感銘したわけです。そういうことで、ついにこれはやるべきでないということで、国会の意思として中止させたことがあるわけです。  私は、今回の開放運動等について、現地の人たちと十分な接触はしておりませんが、十年前のあの状態と今日の状態というものの間において、そういう大きな、天と地がひっくり返るような変化というものは生じていないのではないかと思うわけです。ですから問題は、それだけ国有林との経済的な結合の度合いが強いというような地域については、国としてむしろ国有林の経営というものは、その地域の産業や経済や文化の発展に再重点的に貢献できるような、運用あるいは行政の方針というものを進めるべきだと思うのですよ。林野庁にしたって、これを通す気でいるか、通さぬ気でいるかわからないですよ。それは田村参考人の言ったように、歴史的に官僚制というものが、農林省の中で一番抜け切っていないのが私は林野庁だと思うのですよ。  たとえば、地方の営林署に行ったって全部床張りでしょう。われわれが行っても、やはり土足で上がるわけにはいかないのですよ。電報局等は、ああいう精密機械を持っておる役所の場合は、土足で上がれば、ほこりが立ったりなんかして高度の機械が損耗するようなおそれがあるからして、こういうところは特別です。くつを脱いできれいなスリッパをはいて、機械室に入る場合にはまたそのスリッパを脱いで、別な新しいのをはいて入らなければならぬことに当然なっているわけですが、一体地方の営林署がどうして板張りにして、地域住民が用足しに行っても、一々くつを脱いでいかなければならぬか、こういう問題が残っているわけです。これは一つの官僚制の温存された端的な姿であるというふうに考えるわけです。これは国民のわれわれの山ですから、法律をつくらなければどうともならぬというような問題では実はないと思うのです。この点を、ひとつ十分に研究あるいは究明してもらいたいと思うのです。  それから次に、池田参考人が冒頭に述べられましたが、戦後の開拓政策というものは、戦後緊急の政治課題として強力に進められたことは御承知のとおりであります。国有林が大体三十六万ヘクタール農地に所属がえをしたことも、これはもう明確になっておるわけですが、その国有林あるいは民有未墾地の強制買収によって入植した、当時十六万戸の開拓農家というものは、今日どういうことになっておるかという点なんですよ。池田参考人の御意見によれば、あなたの場合には、この政府の開拓行政に対する失敗の責任というものを追及しないで、開拓者はそれ以前は農民でなかった、農業者でなかったので、経験も浅いし、腰かけ的に入植したので、十分林野開放されたものを農地として活用して、高度に農業的な成果をあげることができなかったので、これは別だというようなお話がありましたが、これはとんでもないことだと思うのですよ。いま国会では、累積した開拓農家の負債整理をどうするかということで、国会に法案が提案されておるわけなんです。戦後二十数年たった今日、わずか十一万しかもう開拓農家は残っておらぬわけなんですよ。それが、もともと百姓でなかったんだから、農家でなかったんだから、そうなるのがあたりまえだというようなことで問題を片づけることは、これは適切でないと思うのですよ。そうなったのは、入植したその人たち責任ではなくて、そういう状態に追い込んだ政府の、やはり農業政策の一環としての開拓政策の大きな誤りというものが、今日の事態を招来しておると思うのですよ。  池田さんも、以前は農地問題に、農地改革以来真剣に取り組んだ方ですね。最近は、国有林開放だけに四、五年間も没頭しておるわけですから、日本農業の変転というものはどうなったかという一番大事な問題からやや遠ざかっておるんではないかというふうに、私も実は残念に思っておるわけですよ。やはりこの法律を通したい気持ちだけで、過去の前例として、戦後の国有林開放による農地の造成あるいは開拓というものが不成功だったということをはっきり言えば、また無理に国有林開放しても、今日のような農山村における過疎現象、あるいはまた労働力の不足、あるいはまたことしの米価据え置きとか自主流通米によって、これは米を中心として農業生産を縮小しようとする、そういういまの政府の方針のもとにおいて、困難性のある傾斜地の林野開放さして、どうしてそれをまた農地や草地に造成するための血の出るような努力を経なければならぬかというような点も、これはやはり相当問題があると思うのですね。これは別に答弁を聞く必要はありませんが、こういう点も優秀な池田参考人として、農政問題もあんまり忘れぬようにして、ひとつ農業会議所の専務としてがんばってもらいたいと思うわけです。  それから、最後になりますが、田村参考人にお尋ねしますけれども、林業基本法を三十九年に審議したときには、これは農林委員会としては相当大がかりな審議、調査を行なったわけです。特に必要を感じて、全国二カ所で地方公聴会を開いたわけですね。そのとき田村参考人は、たまたま北海道における地方公聴会の参考人として、国有林の労働者を代表して意見を述べられたことを、私はまだ覚えておるわけなんです。そのとき、わが農林水産委員会委員長は高見三郎君でして、あとで、いや芳賀さん、田村君というのは、これは労働者代表として意見を述べてもらったんだが、意見の内容というものは実に堂々たるもので、林野庁長官と比べても全然これは——いや、ほんとですよ。仮谷さん、これは笑いごとじゃないですよ。決して遜色がない、なかなかりっぱな人物であると言っておった。そういうことはあなたは知らぬと思うのですよ。高見三郎さんがそういう話をしたことも記憶しておるわけです。  そういうことで、われわれ熱意をもって、林業基本法を、当委員会で相当大幅に大事な点を修正して成立させたわけですが、その中に、田村参考人、熊井参考人として一番大事な点は、現在の法律の第十九条ですね。この国有林を含めた林業労働者の雇用の安定、あるいは就業の促進とか、あるいは社会保障制度の拡充ということとあわせて、今後の国有林の経営というものは、やはり林野庁責任をもって直接行なうということでなければいけない。それには、やはり経営方針を直営直用の形で行なうということになれば、大きな成果をあげることができるし、また、そこに就業するいわゆる国有林の労働者の場合においても、いまのように、一定の期間だけ働いてあとは失業状態になるということを、これを根本的に解決するためには、やはり直営直用方式で通年的に優秀な労働力を確保して、国有林事業というものが偉大な成果があがるようにしなければならぬということで、われわれはそういう大事な点は、全部政府案を手直しして法制化したわけです。  そういうことになっておるわけでありまして、その十九条を基礎にして、一体いまの国有林で働いておる皆さんの労働の条件、雇用の条件、あるいは通年雇用の問題等について、どの程度林業基本法というものがてこになって、皆さんを安心させるようになっておるか、なっていないか、そういう点についても、この際率直に意見を承りたいわけであります。  特に、昭和四十一年には、坂田農林大臣の時代ですが、当時田村委員長との間に、いわゆる二確認の問題があったわけですね。四十一年三月二十五日と六月三十日の両度にわたって、これは長官委員長ということでなくて、農林大臣と全林野委員長の間に確認事項というものが取りかわされて、それが着々と具体的に前進しておるというふうに私は期待しておるわけでありますが、それらの問題についてこの機会に、林業基本法をわれわれ苦心して通した成果というものは、あったとすれば皆さんに喜んでももらえるわけだし、あんなものはだめだったということになれば、また考え直さなければならぬわけですから、その辺を述べてもらいたい。
  340. 田村武

    ○田村武君 できるだけ簡潔に申し上げたいと思います。  御承知のように、昭和四十一年の三月二十五日、参議院の農林水産委員会において大臣から、また六月の二十一日、衆議院社会労働委員会において林野庁長官から、国有林の経営の基本姿勢についての答弁がありました。これに基づいて、私ども労使の間の団体交渉において、この大臣が国会で述べられた政府の基本方針、こういうものに基づいた国有林のいわゆる労働者の雇用安定、それから労働条件の向上、こういう基本方向について確認を行ないました。私たちはこれを三・二五、六・三〇の確認、こういうように呼んでおるのであります。  ここでいわれております三月二十五日の確認の趣旨というのは、国有林の経営の基本姿勢というのは、直営そして直用の事業、国が直接労働者を雇い入れて仕事を展開していくということを姿勢とする、こういうことであります。それから六・三〇確認といわれるものは、労働条件の問題に関連してのことでありますが、このようにして、国有林の経営を前進させ、そうして国民の負託にこたえるためには、経営基盤を確立しなければならぬ、その基本的なものは林業労働者の生活を安定させ向上させるということがなければいかぬ、そのために従来の臨時的雇用制度というものを抜本的に改めるようにこれから努力をしていく、こういうような内容のものなのであります。  それからちょうどまる三年たちました。この三年の間で、いわゆる確認と申しますか、労使の団体協約に基づくその内容はどう前進したのかということになるわけでありますが、実際問題といたしまして、二年間くらいの間というのは、これはもうこの確認を空文化しよう、空洞化しよう、こういうような林野庁のものすごい巻き返しがありました。これに抵抗して私どもずいぶん努力をいたしました。ところが、去年の秋あたりから林野庁考え方が変わって、臨時的雇用制度を抜本的に改善する方向というものでなければだめだ、具体的にやらなければならぬ、雇用安定のために常用化という方向もやはりやらねばならないということに変わってまいりました。  なぜなのかといいますと、先ほど申し上げました農山村の過疎化、空疎化、林業労働者の払底、世代交代にあたっては、これはもう断絶の状態があるというわれわれの長い間の主張というものが、ここ二、三年の間に急速にそういう状況を顕著にあらわしてきたということなんであります。これは、われわれが労働組合の圧力で押していったからそうなったというよりは、こういう社会経済の大きな変動で林野庁がその方向にせざるを得ない、こういうことが大きな影響をしているんだというように私は思います。そういうことで、これからいわゆる国有林野の現場で働いておる臨時的な作業員の取り扱いを常用化をせんければならぬ、同時に、常用化にふさわしい処遇の条件というものを与えねばならぬ、こういうようなことになっています。  そう言いますと、先行きがきわめてバラ色の状態に輝いているようであります。ところが、現実はなかなかそうはなっても進みません。たとえば、労働省に行きまして、国有林だけでなくて民間林業の労働者を含めて、この状態では林業という産業を守るためにどうにもならぬじゃないかということをわれわれが話をいたします。そうすると、そういう状況としてはわかる、何らかのことをせにゃならぬだろうな。しかしながら、その林業政策の当局である林野庁からは、そういう危機的な状況というものについて何も来ませんよ、林野庁が言うてこないものについて労働省がこうすべきだ、ああすべきだなんて言えないじゃないですか、こういうような話に端的になります。われわれも労働条件がきわめてきびしい、何とかしてもらわなければ困る、労働省がこの労働問題についての主管庁なんだから、労働省で主導権をとってやってくれとわれわれが言います。そうすると、いや、そういうことを言うたって、林野庁が何も言わぬのにどうにもならぬじゃないか、こう言います。そこでわれわれが、そんなことを言っているうちに林業労働者はいなくなって、林業という産業はなくなりますよ、こう言いますと、いや、そうなったら林野庁も重い腰をあげるということになるのでないのですか、こういうような話をするのです。  これは、まことに無責任といえば無責任だということになるのですけれども、日本の行政組織というものはなわ張りがあるからそういうことなんでしょうし、いいことは自分のもの、悪いことは人のことというように、これは人間の通弊でありますから、そういうことになるのかもしれません。しかし、現実はそういう状態でありますし、また、林野庁がこれらに対して何らかの改善を講じなければならぬとかりに思っても——かりにでないと思うのです。労使の間で確認したのだから、本気にそう思ったと思うのですが、これを予算の裏づけをする、いろいろな制度的な裏づけをするということになって、大蔵省、人事院、総理府、いろいろな関係当局と話を進めていくと、全部ほごにされるというような状況がいまの姿のようであります。  しかしわれわれは、われわれの相手は大蔵省でもなければ人事院でもないわけでありますから、これはわれわれの使用者としての林野庁を責める以外にありません。しかし、きわめて林野庁はそういう面では無力であります。たとえば、去年公労委の中である問題で仲裁の事情聴取があったのであります。この中で、使用者側の委員から、組合の言うとおりにしたら金が何ぼ要るのだ、こういう質問がありました。私が幾ら幾らぐらいかかると言ったら、その使用者委員は、君、そんなに金のかかることを林野庁を相手にしてできると思っておるのか、一番その力のない林野庁を相手にしてそれだけの金のかかることを言ったって、できないと思うのが常識的ではないかというような意味のことを言いまして、大笑いになったことがあります。そのくらいの状態なんであります。  ですから、ここでいまそういう状態に来ている、林業の危機的状態で何とかせなければならぬ、そして林野庁当局もその気になった、しかし、取り巻いているところの諸条件というものはきわめてきびしい。こういうものについて、ぜひともその指導の立場にあります当委員会が適切な御助言をいただく、御努力をいただくというようなことが、いま国有林労働者、ひいては日本林業労働者の生活をよくするために非常に重要な役割りを果たしてくれることになると思いますので、この点は、ひとつよろしくお願いを申し上げたいと思うのであります。  いろいろ申し上げたいのでありますけれども、特に職業病の問題があります。先ほどもちょっと触れましたが、白ろう病であります。自動のこぎり、自動刈り払い機、こういう振動工具というのはエンジンを手に持ってやるのであります。そうすると、たとえば自動のこぎりの場合は、大体がエンジンの馬力は百cc以上であります。大きいのになると百三十ccくらいのエンジンを手に持って機械を使うのであります。そういうことによって振動障害が出て、いまや、専門的にこういう機械を使っている者について見れば、一〇〇%白ろう病の症状を訴える、こういう状態になっています。この前参議院の農林水産委員会で、私も参考人として意見を述べましたけれども、こういう状態で使えば必ずかかるようなものを使わせるということは、これは故意に基づく犯罪行為ではないか、傷害犯ではないか、こういう点を申し上げました。こういう点で非常にいま問題があるのであります。  これも、労働大臣も非常に力を入れて、それを絶滅するために努力をしてやると言われておりますけれども、なかなか進んでおりません。こういう状態でありますので、こういう状況をひとつ見詰めていただきまして、ぜひとも適切な御助力を賜われば幸いだと思います。   〔安倍委員長代理退席、三ツ林委員長代理着   席〕
  341. 芳賀貢

    ○芳賀委員 参考人の皆さんもお疲れと思いますので、あと池田参考人と田村参考人に一点ずつお尋ねして、それでとどめたいと思います。  そこで、池田参考人にお尋ねしたいのは、これは全国国有林野解放対策協議会からいただいた資料ですが、これには、全国都道府県ごとに国有林野の地元施設と構造改善事業活用したいというので、農業林業あるいは内容を区分して希望面積が出ておるわけであります。いまの時点でまた変わっておるかもしれませんが、この点を参考にしたいと思うわけです。  そこで、農業活用に対する希望として、採草放牧、果樹園、田畑、その他と合計してあるわけでありますが、この面積は全国で十二万八千五百ヘクタールということになっておるわけですが、その農業活用したいという希望の中で、一万ヘクタールをこえる道県は一道五県になっておるわけです。  内容としては、北海道の場合には、農業利用したいというのが一万二千六百ヘクタール、青森県が一万一千三百ヘクタール、岩手県が一万七千五百ヘクタール、秋田県が一万二千六百ヘクタール、福島県が三万三千三百ヘクタール、長野県が九千七百ヘクタール、これが大体一万ヘクタール以上の道県であります。  それから、林業活用したい、払い下げをしてもらいたい、部分林として活用したい、あるいは交換したいというような希望の総計は、三十万三千ヘクタールということになっておりますので、大体農業活用したいという面積のおおよそ三倍に及んでおるわけであります。この趨勢から見ると、林業として地元で活用したいというのが圧倒的に多いということになっておるわけでございます。  これも、一万ヘクタール以上の道や県は、北海道が一万九千二百ヘクタール、青森が五万二千四百ヘクタール、岩手が一万七千四百ヘクタール、秋田が八千九百ヘクタール、福島が十二万二千九百ヘクタール、長野が一万八千五百ヘクタールということになっておるわけであります。それで、これで見ますと、農業活用したいという希望が非常に少ないわけです。林業の部面でこれを活用したいということが圧倒的に多いわけです。  そこで、林業活用の点については、池田参考人の冒頭の御意見の中で、個別的に国有林の払い下げを受けて、自己の財産として保有して、林業を拡大経営したいという希望は非常に少ない。むしろ部分林、あるいは共用林というような面で、高度に共同的に利用したいという希望が非常に多く、払い下げを受けて、個別経営あるいは個別所有にしたいという希望はほとんど少ないというお話でありますが、このいただいた資料によりますと、払い下げをしてもらって、自己の所有林として経営したいという面積が、二十四万六千二百ヘクタールでありますから、これは三十万三千ヘクタールの大体八〇%は、国有林を、立ち木のついた森林のままで払い下げをしてもらいたいというのが圧倒的に多いわけです。それから、部分林等については、これは大事な点でありますが、わずかに五万八百ヘクタールしかないというようなことになっておるわけです。  ここで問題は、ことし農林省が出しました林業白書においても、林業による所得というものは、農業所得に対してまた非常に低いわけなんです。それも経営面積別にいたしますと、一ヘクタールから五ヘクタールまでの林家、これは全国の林家の約九〇%を占めておるわけです。これはいかに零細所有であるかということがわかるわけです。それで一ヘクタールないし五ヘクタールの林家の平均でありますが、年間平均所得というものは、北海道においては二万円台、東北地方においては五万円台しかないわけです。ですから、個別的に払い下げて林業として経営拡大する場合も、その面積が五ヘクタールあるいは十ヘクタール程度のものであっては、これは農業林業の兼営の中で所得を高めるという効果は全然ないわけなんです。ですから、そこで所有は、国有林として当然所有しておっても、それは国民の山だから、これを国有林経営の一環としても成果があがり、また地元民の所得の増大にも寄与させるために、部分林あるいは共用林として大いに共同的にこれを利用したいという希望が多いと思うわけですが、これが実際少ないわけですから、これらの点も十分再考を要するのではないかと思うわけであります。  それからもう一つ、一日当たり林業所得ということになると、これも非常に少ないわけです。これも白書に載っておるわけですが、五ヘクタールから五十ヘクタールまでの林業経営をやった場合の家族従事者の一日当たりの平均労働報酬、農業でいう自家労賃というものは、大体四百六十円程度ということになっておるわけです。これが一時間四百六十円であれば、一日三千何百円ですから、これは所得向上の上に相当貢献することになるが、一日四百六十円程度では、だれも希望を持って、この零細林業というものを拡大した中で自家労働の所得を上げるということはできないと思うのです。五十ヘクタールから五百ヘクタールまでの経営の場合に、初めてその経営者の自家労賃が一日当たり千四百円程度確保される。こういう状態ですから、同じ第一次産業である農業林業を比較した場合においても、農業の所得も他産業に比べて非常に低いが、林業の所得というものは、農業所得に比べてなお低いということが明確になっておるわけです。  ですから、所得の趨勢というものはそうなっておるということをわかっておりながら、無理に、所得の上がらぬ、困難な経営とか労働の部面に、経営拡大の名のもとに住民を追いやるというようなことについても、これは相当慎重な配慮が必要ではないか。それには、やはり共同的な利用活用というものが非常に大事になるというふうに考えるわけです。  ですから問題は、自己の財産として所有するのが第一義的な要求であるのか、その国有林を地元に利用権、使用権を国が確保させて、そして安心して長期的にこれを活用することのほうがいいかどうか、こういう点についても、指導者としての十分慎重な検討をお願いしたいというふうに考えておるわけであります。  最後に、田村参考人にお尋ねしますが、これは長官等を前に置いて失礼になるかもしれませんが、最近相当の期間、歴代の林野庁長官は、国有林で努力されたいわゆる技官官僚が、歴代の林野庁長官になっておるわけです。ずっと以前はそうではなかったようでありますが、最近はそういうことになっておるわけです。これもやはり相当の理由があって、そういう農林省の人事というものが行なわれておるわけでありますが、しかし、全国の国有林で働いておる職員ないし作業員の皆さんが、これに対してどういう考えを持っておるか。  私の善意の判断からいうと、たとえば、NHKテレビドラマで「旅路」というのがあったですね。東京駅の駅長は、全国の駅の中では一番最高の駅長ですが、駅長の場合には、東大出の特権官僚が駅長になるということにはしていないのです。現場で働いた、成績をあげて仲間の模範になるような人が、歴代の東京駅長になっているわけですね。これはやはり国鉄一家から見れば、一生懸命がんばれば将来は東京駅長になれる機会もあるという象徴的な意味で、そういう人事が行なわれておるわけです。ですから、全国で月給制あるいは定期を入れて約六万人に国有林で一生懸命働いてもらっておるわけですが、この「旅路」の方式でいえば、一生懸命林野事業に挺身しておれば、やがて林野庁長官になれる機会もあるということで、みんなが将来に希望を持って、六万分の一のだれかがなれるということで、象徴的なものとしてやっておるかどうか。そういう点に対しては、林野で働いておる皆さんはどう受けとめておられるわけですか。そういうような人事があってしかるべきであると考えるのか。国民の財産としての国有林野の経営の最高責任者というものは、林野庁であろうと食糧庁であろうと、いわゆる農林省の職員の中の一番適格な、優秀な者がその任に当たるということのほうが望ましいかどうか。そういう点についても、何かお考えはあると思うのですよ。  それをもう一つ私は善意に判断すれば——そこまではいいと思うのですよ。いいのですが、その次の段階で、林野庁長官をやった者は、次の参議院選挙には必ず出馬して、国政に参加するという不文律のコースも一つあるわけです。国有林で働いた人たち長官になれるまでのコースは善意に理解するとしても、その次のコースとして、どうしても林野庁長官の地位を踏み台にして国政に参加しなければならぬというコースについては、皆さんは一体どう考えておるか。長官とか部長各首脳部を前に置いて、まことに失礼なことになるかもしれませんが、これはわれわれ国民の一人として、国民の山ですから、私もその中の一億分の一はやはり発言権があるわけですが、こういう点について、一体いまの労働組合の諸君というものはどう考えておるか、参考までに聞かしてもらいたいと思います。
  342. 池田斉

    ○池田斉君 先ほど資料に基づきましていろいろお話がございまして、誤解を招きますと困りますので、私からひとつ釈明をしておきます。  お手元の資料の中で四ページをお開きになりますと、なるほど林業関係での払い下げの希望が非常に多い、こういう数字が出ておりますけれども、これを活用する主体という形で考えますと、そこに個人分割、これを個人個人に分割してもらいたいという、今度の活用法案でいきますと、三条の三号の個人というのに該当するかと思いますが、これは、ここにありますように、全体として非常に少ないわけでございます。ただ、このまとめ方が、町村におろしまして町村単位でいろいろやりましたので、市町村という形の活用主体が非常に多いわけでございますが、当然この法律は、林業に関しましては市町村を対象にしておりません。したがいまして、部落なりあるいは生産組合というような形での共有的な形で一緒に山の経営をやる、こういう問題に整理されるわけでございまして、そういう意味におきまして個人分割の部分はきわめて少ない、大部分が、一人一人がいまの自分林地をもう少し個人所有でふやそう、こういうことではなくて、部落なりあるいは町村単位におきまして、農林業全体を含めて、もう少し林業の分野を広げようというすなおな要求が、この数字として出ておる。  ただ、いまお話のように、農業用にわりあいに、十万ヘクタール程度で少なく、林業用に多い。これは、国有林偏在地域のそういう町村の具体的な将来に対する展望でございますので、農業用の面積が約三分の一になった、こういうことかと思います。  しかし、これらのことは、先ほど先生お話のように、もっと農業用にウェートを置いて、しかも、ヘクタール当たりの収入も林業より農業のほうが有利であるというような問題を、今後具体的な計画として、この法律を前提として、いろいろ地元でさらにプランを練り直してもらうというような指導等も十分やりながら、地域住民ほんとうに、単に気持ちだけの問題じゃなくて、具体的な将来の設計を含めて指導をしてまいりたいというふうに考えております。
  343. 田村武

    ○田村武君 いまの人事の問題でありますが、私どもは、営林署長、営林局長、林野庁長官と、いろいろ組織上の機構に従ってのポストがあるわけでありますけれども、いままでの課長より署長がえらい、署長より営林局の部長がえらい、局長がえらい、長官がえらいというような考え方を、やっぱりここできちんと払拭する必要があるというように思います。  それから、人事についてどうなのかということでありますけれども、これはもう国民の期待をになって国有林経営をりっぱにやっていける、そういう人がすわってもらいたい。同時に、その経営について、国有林の場合でいえば、林野庁長官とういのはオールマイティーなわけですから、ほんとう林野庁長官としてき然として国民のために国有林をよくする、こういう立場で進めていただくということを、特にお願いをしたいというように思います。  それからもう一つは、先ほども熊井参考人も言うておりましたが、林野庁、営林局署の人事が非常に短期間のうちにかわります。営林局長も大体一年以下です。長官も三年より長い人はいない。大体一年か二年ということでかわります。こういうことであれば、やってから何十年後でなければその成果がはっきりしない仕事について、だれも責任をもってやっていくということにならないと思うのです。やっぱり役人として、そのときよければいいということでやっていくというような、いわゆる無責任な経営ということにしかならぬわけでありますから、こういう点については、国有林発展のために、ぜひひとつ一考してもらいたいというような気がいたします。そうして、このポストを移してえらくなったというようなことでなくても、たとえば、営林署長であっても、営林局長や林野庁長官よりいい待遇が与えられる、専心国有林の経営に打ち込めるというような制度が必要なのではないでしょうか。そういうことを痛感しております。  それから、長官の参議院出馬の問題でありますが、このことのあれについて私はとやかく言うつもりはありません。ただ、林野庁長官が事林政におけるオールマイティーの立場にあるがゆえに、その選挙に出ることとからんで、あるべき姿と違うほうの政策が、三年ごと三年ごとに展開されるというようなことが現実にあります。  具体的に申し上げますと、いま問題になっております官行造林法の廃止の問題であります。これはいま、当時の官行造林よりは幅を広げて、もっと国費による造林の拡大をしていかなければならぬ、国がその役割りを果たせということがいわれております。四国の西南地方の総合開発の問題等も、いまの日本林業の危機を適確にとらえたものだと私どもは評価をします。そういうようなことがあるのに、当時官行造林法は廃止をされました。そうして、いま市町村はどういう状態に置かれているか、こういう点を考えましても、この参議院選挙と長官がからんで、そういう政策が反国民的な方向を向くということについては、これは選挙云々の問題ではなくて絶対にやめてもらいたい、百年不動の方針というものを林政は貫いてもらいたいというように思います。
  344. 芳賀貢

    ○芳賀委員 終わります。
  345. 三ツ林弥太郎

    ○三ツ林委員長代理 柴田健治君。
  346. 柴田健治

    ○柴田委員 芳賀先輩が何ぶん長くやられましたので、時間がございませんし、参考人にはたいへん御迷惑だと思いますから、池田参考人に対してひとつ決意を聞いておきたい、こう思うのであります。  この法案について、先ほどいわゆる芳賀議員からも言われましたが、非常に熱心にこの国有林活用法案の促進運動の先頭を切ってやられることは、農業会議所として当然のことだと思います。農業委員会法の第六条で、農業振興または営農というものの計画、指導、助長ということで任務を持っておるのですから、当然なことだと思いますけれども、私たちは今日の農業の行き詰まり、そういう立場から、問題は今日まで歩んできた農政に対する分析のしかた、だれが責任があるのか、農民責任か、農業団体の責任か、政府責任か、こういう責任の分野を明らかにして、それを明確にしながら前進をはかっていかなきゃならぬという、その取り組みの基本的な姿勢が私は必要じゃないか、こう思うのです。  農業基本法、あの法案のときに社会党が反対をした。反対するのはいかにも悪人のような、日本の農政を妨害するような言い方をわれわれは受けたのです。その当時の農業会議所の諸君から、この法案を通せば、農業の憲法だから、いまにも日本農業発展し、農政が強力に推進されるのだ、こういうことで、反対したわれわれは盛んに攻撃を受けたのです。そういうにがい経験というか、苦しい経験というか、そういうものを踏まえて御意見申し上げるのですが、先般の農振法の促進も、また今度の農地法の促進も、国有林活用法案も、池田さんが先頭になってやっておられるのですが、やはり法案を賛成して通すという限りにおいては、ほんとう責任を持ってもらわなければならぬと思うのです。農業基本法を通して、あとは政府が悪いのだ、政府が悪いのだと言って農業団体が逃げてしまう。あまりにも無責任だと私は思うのです。いやしくも農業会議所がこの法案政府一体となって通す限りにおいては、これで失敗をして——おそらく失敗はないと信じますけれども、万が一この国有林活用について将来失敗でもあった場合には、農民が悪いのだ、借金ができたのは農民が悪いのだ、無計画に融資を受けたのだろう、こういうことで農民に全部どろをかぶせられて、農業会議所だけがいい顔をして逃げられたのでは、農民はたまったものではない。また、政府も大きな迷惑だと思うのです。  だから、今日の日本農業が行き詰まった、日本農業の失敗の原因は政府の農政の誤りにある、この誤りを誤りとして十分指摘をしながら、こうあるべきだということで責任を持って運動をしてもらわなければ、ただ簡単に法案を通しさえすればいいのだ、こういう運動だけでは、われわれは理解できない、それから、池田さんは農業会議所の代表者としてきょう参考人に来ていただいたのですから、農業会議所として、この法案が通って、将来万が一失敗のあった場合には農業会議所が全責任を持ちます、これだけの決意があるかどうか。  先ほど熊井さんの御意見を聞いておりますと、反対する者には反対する理由が二つある。一つは黒い霧で、過去の実績にとらわれておるということ、それからもう一つは、林業施策を明確にしないで、そういう点をはっきりせずにおいてこの法案に反対するのは、本末転倒だという御意見を聞いたのですが、この点について追及するというか、お尋ねをする気はないのですが、われわれは何もこの法案に反対ではない。けれども、あまりにも軽率過ぎるではないか、もう少し基本的なものを解決してから取り組むべきではないか。国有林活用について、何でもかんでも反対しておるわけじゃないのです。やはり基本的なものを明確にしない限りは、いやしくも国民の財産として処分をするのですから、国民の財産としての処分の考え方と、それを今度は活用として、農業活用していくのですから、やはり農業が行き詰まったから山へ追い上げればいいのだというような軽い考えではなしに、農業農業林業林業、こういう立場で基本的なものを明確にして取り組んでいかなければならぬ。  われわれはそういうものを踏まえて法案の審議をしているわけでありますから、いやしくも池田さんは、この法案の促進運動の先覚者というか、先導者でありますから、指導者でありますから、いままで農業関係法案を、農業会議所が一生懸命法案を通すのに推進してこられた、その過去のいろいろな失敗があると思うのです。その失敗の責任は私は追及しませんけれども、ともかく、今後農業会議所がどれだけ責任を感じられるのか、その決意だけを聞いておきたい。これが私のお尋ねする問題点です。
  347. 池田斉

    ○池田斉君 私ごとき者が答えて、それだけの値打ちがあるかどうかきわめて疑問に考えますが、私も戦後ずっと——戦前からでごさいますか、農政一筋に担当してまいりました。こういう歴史的な経過から、いまお話がありますように、農業基本法のときもこれの推進を、われわれ系統が中心でやったということがございます。  ただ、私どもは農業基本法は単なる宣言法ではなくて、もう少し実体が伴わなければならないということで、農業会議所は基本法の草案を策定いたしまして、内容がかなり実体的な仕組みであるという形で問題を出しましたけれども、遺憾ながらあの法律が、一応将来の農政のレールを示すのである、こういうようなことで、問題は、補完立法をどういうふうに具体的に肉づけをするかという、こういう問題として一応了承をしてあれを推進したのです。  ところが、あの段階におきましても、いま記憶を呼び起こすわけでございますが、ほんとう農業基本法をレールとしてさらに肉づけをしていくという場合には、当時たしか農林大臣は周東さんでありましたけれども、特にこの農林業構造改善、こういう問題をこれから本格的に、基本法のレールに乗せて肉づけをするという場合には、その当時国有林開放問題について、具体的な立法を直ちにいたすべきではないか、こういうことを主張をした一人でございます、当時の農林大臣は、これは間違いなくやるから、しかも林野当局はこの準備をしておるということであった。当時ついに公表はされませんでしたけれども、林野当局はその当時国有林活用という問題を、基本法の肉づけの一つの法律として準備をしたことがございます。しかしながら、いまだから言うのでございますけれども、やはりそういう問題につきましては、林野一家といたしまして、できるだけそういう問題は消極的であるというようなことで、大臣がいろいろ努力をいたしましたけれども、この問題が日の目を見なかった、こういう歴史的な経過を想起するわけでございます。  そのほかいろいろな補完立法というものが試みられましたけれども、なかなかそれが十分なかっこうになっていなかったというような問題が、その後の経済情勢の大きな変化とともに、農業の問題がここまで追い詰められてきたというふうに私は理解をいたしております。  特に価格政策が、ある程度国際的な環境なり、あるいは国民経済の中におきまして、一つの限界というものをひしひしと身にしみて感ずる。こういう段階におきまして、これが今日米価の据え置きというようなことで押し切られるというような全体の体制の中にありまして、ほかの農畜産物にいたしましても、農民ほんとうに安心をして将来を考えるというような情勢にないことは、先生承知のとおりでございまして、非常に大きな農政の転機にいまこそ名実ともに来ておる、こういう認識に立っておるわけでございます。  そういう意味におきましては、いわゆる基本法が失敗をしたのではなくて、基本法の肉づけの政策が、具体的に法制的な措置を含めまして、今日までおくれてきたというところに問題があり、構造政策を、これこそ本格的にこれから取り上げて、いわゆる農業の体質を改善し、国際的にも、ある程度いろいろな擁護はもちろんいたさなければなりませんけれども、そういう農業日本でどうしてつくり上げていくか、こういう問題をいまこそ勇気を出してやらなければならない段階ではないか。  そういう意味におきまして、実は今回この国会に出されております、先ほど申し上げました四つの法案は、いずれもそういうレールに肉づけをしていく、どうしてもここで仕上げておかなければならない問題である、こういう認識に立って、実は各法案の推進をはかったわけでございます。農地法にいたしましても、先般ここで申し上げましたけれども、これもわれわれみずからの組織で十分組織的に検討いたしまして、もちろん、全部政府がそれを採用したということではございません。国有林にいたしましても同様でございます。非常に不十分でございます。しかし、いまやそういう一つの危機というものが非常に時間的に迫ってきておる。これは、根本的な問題が全体として解決をするということを待ちまして、二年、三年先に延ばす、そういう時期ではもうないのではないか。もっともっと激しい姿で世の中は変わってきている。これに日本農業がどう対応するか、こういうようなせっぱ詰まった一つの危機感を前提として、これらの問題に対して取り組んでおるわけでございます。  国有林活用法案の中につきましても、問題は多々あると思います。そういう意味で、先ほどの私の陳述の中で、最後に、いろいろ黒い霧でありますとか、あるいは計画性がないとか、あるいは国有林偏在地域のことはよくわかるが、全国的にこれを及ばすのはまだ時期が早いではないか、いろいろな御指摘がございますが、そういう点につきましては、十分当委員会で御審議の上適当な修正等をおまとめ願いまして、この段階におきますところの特に過疎地域の農政問題は、やはり国有林の積極的な活用をその一つの条件として、それを含めて計画を立て、ほんとうに過疎問題に対応する農林業構造改善をどうやるか、こういう形で前進しなければならないということを確信いたしております。  そういう意味合いにおきましては、微力でありますけれども、農業委員会系統は全力を尽くしまして、皆さま方の御心配のないような、批判を受けるような問題のないように、最善の努力を払って今後やりたいと思いますので、どうかひとつよろしくお願い申し上げたいと思います。
  348. 三ツ林弥太郎

    ○三ツ林委員長代理 以上で質疑は終了いたしました。  各位には、御多用中のところ長時間にわたり貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。厚く御礼申し上げます。  これにて、農林水産委員打合会を終了いたします。    午後五時二十五分散会