○熊井一夫君 ただいま御
紹介にあずかりました日林労の
委員長の熊井でございます。
本日は、私ども
国有林労働者に最も関心の深い
国有林野活用法案につきまして、私の所見の一端を申し述べさせていただく機会を得ましたことを、たいへんうれしく思っている次第でございます。
それでは、さっそく本
法案につきましての私の
見解を述べさせていただきたいと思いますけれども、その前に、若干現在の
林野行政につきまして申し述べてみたいと思います。と申しますのは、現在、
政府なり
林野当局が
国有林活用問題を云々する前に、やはり基本的にやらなければならない問題があるんではないか、こういう問題でございます。
現在の
日本の
林業は、御
承知のように、いわゆる過疎化の問題あるいは外材の問題、労働者の問題、さまざまの点がございますけれども、大きな問題点に差しかかっております。一口に申しまして、斜陽化する
林業経営というような立場でいろいろな論評がなさ五ておりますが、いずれにいたしましても、
国有林、
民有林を問わず、
日本の
林業政策の抜本的な施策というものがないところに大きな問題があるんではないか、かように考えております。
先年、この農林水産
委員会におきまして、自民党、
社会党、民社党、俗にいう超党派をもって成立を見ました例の
林業の憲法といわれる
林業基本法、この
林業基本法が制定を見ましてから今日まで、かなり時間が経過をしておりますけれども、あの
基本法の骨子でございます
林業総
生産の拡大の問題、あるいは
生産性
向上の問題、
林業従事者の所得の増大の問題、この
三つの骨子が、今日ほとんど具体的に生かされていない。一口に申しまして、ここに
林政の
貧困という問題がやはり大きな問題になっているんではないか、かように私は考えておりますので、どうか、あの
林業基本法の制定の趣旨に即応いたしまして、一日も早く
国有林、
民有林を問わず、やはりわが国の
林業政策を抜本的に改正いたしまして、この
林業政策というものを打ち出していただくように、まずもって冒頭にお願いというか、御要望を申し上げる次第でございます。
さて、いろいろと
お話をさせていただきたいわけでございますけれども、時間の
関係等もございましょうから、当面のこの
国有林野の
活用法案について、私の
見解を簡単に申し上げてみたいと思います。
率直に申しまして、
活用法案をめぐりまして賛成、反対、さまざまな多くの論議がかわされておりますけれども、私から申しますならば、
活用に対しての賛成とか反対というものはどこから出ているのだろうか。と申しますのは、この国の貴重なる
社会資本でもございますところの
国有林を、ややもすると自己の立場で賛成を訴えたり、反対を訴えたり、いわゆる立場上の
見解、あるいはイデオロギー論争、あるいは感情論争、そういうような立場で賛否を論じているんではないか。そういうようなことでは、非常に危険きわまりないものではないかと私は思っております。
立場上のことを申しますと、私も労働組合の代表でございますから、
国有林労働者の代表であるならば、
国有林の
活用はややもするとこれは
国有林の縮小につながる、こういうような問題にも関連いたしますから、立場上の問題だけをいうならば、
国有林の
活用については反対論を述べるのはしごく当然かと思いますけれども、私はそういうけちな
考え方を持っておりません。いわゆるこの国の貴重な
社会資本が、いかに国家
国民のために全体的に
活用できるかいなか、十分
活用させなければならない、こういうような論点からものごとをとらえなければならないのではないか、かように考えまして、この
法案についての
見解を具体的に意見として申し述べてみたいと思います。
国有林野の使命とか
役割りについては、るる申し上げるまでもなく、もうすでに
先生方も
御存じのように、何と申しましても
国有林の大
目的は、やはり林産物の供給であり、
国土保全、あるいは最近の公園、風致そのほか自然休養、こういうものがからんでおるわけでございますけれども、いずれにいたしましても、一方ではそういう
国民生活に欠くことのできないいわゆる林産物の供給、一方では
国土保全、こういう立場のきわめて重要な使命と
役割りを持っておる。この
国有林において、
明治、大正、
昭和を通じて、いわゆる古今を通じて、
国有林の
開放論あるいは
活用論がなぜ起きるのか、この点を率直に、真剣に考えなければならないのではないか、かように思っております。
いわゆる
国有林の
活用、あるいは
ことばを変えて
開放だとか、町によって
ことばは違っておりますが、さまざまな意見がございますけれども、この意見を大きく分けると、次の
三つの問題点になっております。
一つは、何と申しましても現在の
国有林野は、
ほんとうに
国土の保全とかあるいは林産物の供給のために、これこれで
国有林として必要だから、国有国営の企業をやらなければならない、こういう形で
国有林が成立したものではない。いわゆる
明治の初年、
明治六年の地所区分改正のときから問題が発生をしている。いわゆる地元感情で申しますと、うちの村は
国有林が少ないとか、問題があるとか、多少感情的なものもいろいろとある。いずれにいたしましても、この
国有林の使命と
役割りが、七百五十万
町歩の
国有林の中に、いわゆる具体的に定義としてなされていない。たとえば、同じ国有国営をやっておりますところの国鉄とか郵政、造幣、専売、どの企業においても、これこれの企業だから国有国営のやらなければならない、こういうような立場でやっておりますけれども、
国有林の場合は非常にばく然としている。そこにまた、ばく然としている背景として成立過程が問題としてある。また、
国有林は重要な使命があるのだということをいっておりますけれども、具体的な一つの山、これはどの山をとってもけっこうでありますけれども、保安林
関係の一部を除いては具体的な使命とか
役割りというものが
ほんとうに明確化されていない、ここに一つの問題がございます。
そうして、第二番目の問題といたしましては、戦後
日本の国も、海外資産というものがああいうように非常に縮小されました
関係上、人間が一億以上ひしめき合っているこういう狭い
国土に、
畜産とか、果樹とか、レクリエーションとか、さまざまに
国土の総合
利用、総合
開発というような問題がからんでまいりましたので、やはり
国有林の
活用その他についての意見がかなり強く打ち出されている。
もう一点は、やはり欠くことのできないものは、
国有林を管理経営しておりますところの経営者の姿勢も、これまた
活用論、
開放論に大きな問題を提起しております。一口に
国有林事業と申しましても、造林から始まりまして、伐採、搬出、処分、あるいは関連する治山、林道、さまざまあるわけでございますけれども、これらの
事業全般が、ややもするとそこに働くところの労働者なりあるいは
地元住民、零細中小企業者、こういうような方々の意見を聞くというよりも、むしろ大きな問題については、大手の業者なりあるいはパルプその他の資本、こういうものの言いなりになっているきらいがある。したがって、
地元民にとっては、われわれの意見は
国有林の場においてはなかなか聞いていただけないのだ、これでは、
国有林がわが村にあっても何の役にも立たぬではないかというような問題も、感情論というか、
気持ちの上としてはあります。
そして、私も組合の一役員でございますけれども、もう一点は、私は端的に申しますけれども、先般も
青森等に参りましたら、こういう意見も
国有林の不信の問題点として出されております。と申しますのは、労使
関係の問題に関連いたしますけれども、いわゆる村の村長さんとかあるいはさまざまな
関係者が
営林署長に陳情に行きましても、
営林署に行くと玄関に組合の赤旗が立っていて、そうしてきょうも団体交渉、あしたも団体交渉、こういうような形で、せっかくの
地元民の意見は聞いてくれない、何の団体交渉かわからぬけれども、もっと真剣に
地元民の意見を
ほんとうに聞いて、
国民の山としての
国有林経営をやってもらわなければ困る、こういうことは
営林署の
役人どもにまかしておくわけにはいかぬ、こういうことも
青森とか、あるいは先般も宮崎県の某村で村会の
段階で決議されたということも聞いております。
いずれにいたしましても、これら一連の問題については、やはり
国有林を担当する管理経営者あるいは労働者も、おのずから
国民的立場に立っての
国有林経営というものをやらなければならないという、もう少し値命感に立った
国有林の立場をとられない以上、いろいろなことを申しましても、
国有林についての不信、そうして、具体的には
開放論なりあるいは
活用論が提起されることは、もう火を見るよりも明らかではないか。そういうような立場から考えまして、やはり現在の管理経営に対しての基本的な、抜本的な改正というものを、われわれ自身といたしましても、また経営側といたしましても十分取り上げていただいて、
ほんとうに
部落民とか
国民的な立場に立っての
国有林の経営というものを積極的に進めなければならないのではないか、かように考えております。
そこで、
活用についての具体的な私の
見解を述べたいと思いますけれども、私はそういうように、所有権とかあるいは
利用権の問題を云々する前に、いま申しましたように
国有林というものが
ほんとうに
国民的な立場に立っての行政、管理経営というものをやらなければならないという姿勢の確立をぜひとも続けてもらう、そうしてそういう中で、無定見な
国有林の
活用というものは絶対反対するものではございますけれども、しかしながら、やはり具体的には、以下述べる条件が整うならば、率直に申しまして、条件つきに立って本
法案についての賛成を表明したい、かように考えております。
まず第一点といたしまして、この
活用法案に流れる思想というものは、冒頭にも書いておりますように、
林業基本法から受けて立っております。
林業基本法から受けて立つならば、先ほども申し上げましたように、
林業基本法というものははっきりと
林業労働者の所得、
林業従事者の所得の増大ということをうたっております。にもかかわらず、労働
関係、従事者
関係については、何らこの問題については触れていない。いまの
林業労働者がどういう
事情になっているかということについては、多く述べることもないと思いますけれども、いずれにいたしましても雇用の問題、
社会保障の問題、そのほかさまざまな点において、きわめて劣悪な条件下に立っておる。にもかかわらずこういうものが生かされていない。したがって、
林業基本法の精神から
活用法案を云々するならば、当然のことながら
林業従事者の所得の問題これはやはり具体的に、この問題と関連して取り上げてもらいたいという点でございます。
同時に、いわゆる
活用に対しての具体的な
内容でございますが、いずれにいたしましても、これこれ、これこれ
活用しますということを書いておりますけれども、具体的な
内容がない。というのは、こういう山についてはいわゆる貸し付けでいくのか、あるいはこういう山については部分林でいくのか、こういう山については所有権の移転でいくのか、具体的な林相を対象にしたところの
活用方式、これがない。ここに、先ほど来若干問題が出ておりますように、いわゆる黒い霧が発生するおそれもなきにしもあらずでございます。したがって、せっかく
活用法案でこれこれ、いわゆる貸付から始まりまして所属がえその他までいくならば、当然具体的な
活用へのスケジュールというか、そういうようなものを明記すべきではないか。これをこのままにしておきますと非常に問題が起きる。
同時に、個人の
活用というものは、原則として絶対認めないというような方式というものを貫いてもらいたい。また、公共団体その他において
活用する場合も、いままでの経緯から考えまして、
ほんとうに
土地利用計画から考えてどういうような
利用計画、
活用計画をなされようとするのか、あるいは
活用の
内容とか、また
ほんとうに
活用目的に従った形においてりっぱに
活用できるかいなか、そういう資格とか能力とか、そういうような問題も十分審査をいたしまして、失敗のないような形においてひとつ
活用の対象、相手方についても検討しなければならないのではないか、かように考えてます。
そうして、
活用という中に所有権、
利用権がございますけれども、できるだけ
林業構造その他については、所有権の問題ではなくて、いわゆる団体を対象に置いて部分林の設定、こういうような中で
活用というものを円満に実施していく、こういうような制度を貫いてもらいたい。
同時に、これは
活用だけが能ではございませんので、
活用からくるところの代金は当然
国有林の買い上げ、特に保安林とか奥地林の買い上げ代金、こういうような
方向に回してもらいたい、こういうようにお願いするわけでございます。
そのほか、第七条で申しますところの立木竹の、要するに
活用と関連した、からましたところの売り払い方法、これも非常に問題が多いわけでございます。従来の
活用の失敗した例を申しますと、ややもすると立木一代限りという傾向もかなり多かった。こういうような経緯から考えまして、いわゆる立木竹の取り扱いについては、これは特殊なもの、たとえば幼齢林とか、そのほか防風林とか特殊なものを除いては、いわゆる
土地と
活用する立木というものは切り離した形において取り扱いを考慮すべきではないか、こういうような問題等もございます。
そのほかいろいろと申し上げたい点がございますけれども、時間も経過しておりますので、以上、私は条件つきで賛成の立場を表明するわけでございますが、ただ、最後に一言申し上げたい点は、今度は反対を論ずる
人たちに対する私の所見でございますが、反対を論ずる
人たちの意見としては大きく分けて二つにしぼられておる。一つは、黒い霧の問題、一つは、要するにいままでの
活用された山がよくなかったのではないか、こういう点でございますけれども、これはどうやら本末転倒ではないかと私は思っております。
と申しますのは、黒い霧が起こるから現在の
法律でもいいのではないかという意見がございますけれども、現在の
国有林野法なり財産法は、私に言わせればざる法でございます。これこれで売り払い、貸し付けるその他書いておりますけれども、肝心な、要するにだれにどういうかっこうでどうするかとかいう問題については、全部訓令とか
林野庁長官通達によってやられております。したがって、いいかげんとは申しませんけれども、運用上やっておりますので、そこに黒い霧の問題が発生する余地が、端的に申しましたら残っておる、したがって、通達とか訓令でやるよりも、むしろこういうような問題については、
法律としたらいいかげんな運用ができないというような形において、
法律の中でやはり
活用方式というものを出さなければいかぬ、こういうように考えます。そして
国有林の
活用された山につきましても、いままでの山についても、確かに悪い山もございました。問題になった山もございましたけれども、総体的に約八割程度は、戦後のどさくさの、あの開拓問題の時期を除いては、大体において
活用された林分が成功をおさめておる、こういう事例がかなり膨大に私どもの調査の中には出てまいります。したがいまして、これも、いわゆる反対のための議論には当たらないのではないか。
要するに、私が言いたいのは、賛成、反対というよりも、むしろこの国の貴重なる財産、
国有林について
ほんとうに
国民的に全体の立場で
活用する、そういうような見地に立ちまして、条件つき賛成をしたい、かように考えておりますので、どうか
先生方の御審議を心からお願いしたい、かように考えておるわけでございます。(拍手)