○芳賀
委員 そういう農家が土地を手放さないからしようがないというような、安易な妥協だけで制度の改正をやるということは間違いですよ。そうなれば第一条の目的に照らして、土地は所有しておるが耕作の意思がない、働く意思がないという者の所有地は漸次買い上げて、
農業に専念する者に与えるということは、いまの
農地法の規定を十分に運営すれば当然できることじゃないですか。だめなんだからしようがないということで次々に法律を直していった場合には、一体結果はどうなるのですか。
ちょうど先日、六月十五日日曜日の夜、NHKの番組を通じて
農林大臣と秋田県の
農民が対話をしたのを私も見ておったわけです。あれは米価決定後ですから、米価の問題とか今後の
米作の問題に
重点はしぼられておったが、たまたま土地所有の問題に触れた点があるのですよ。その場合
農林大臣は、個別農家が一反歩七十万円も百万円もする農地を取得して、経営
規模を
拡大するなんということは絶対できない。できないことはもうわかっておる。だから、今後集団化、共同化を進めるような形で、いわゆる
生産法人の経営形態というものを大きく
拡大して、そこで土地保有を
拡大するとかして一生懸命にやってもらわなければならぬ。その場合には、いままでの兼業の零細農家の場合にも、その集団化の中へ参加して、そこで分に応じて
農業に従事してもらうようにしたい、こういう希望を述べられておったわけです。現実はそうだと思うのですよ。
しかし、中野局長のいまの答弁を聞くと、必ずしもあなたはそうは考えていないのでしょう。零細農家の場合には、
生産法人に参加しても特別働く必要はない。そういうふうにあなたは割り切っておるわけですからね。労働する意思がなくて
生産法人に参加して、どのような
意味があるのですか。労働しない構成員をかかえて、どうしてそこから
農業生産が上がるのですか。その点は、やはり今度の改正で不在地主を復活させるということと通じておると思うのですよ。
もう
一つは、先般の当
委員会で成立さした農協法の改正による委託経営の場合にも、そういうことが言えるわけですよ。あの際、私も農協法の改正の部分だけに触れて、
農政局長と中野局長にただしたわけですが、経営委託といっても、経営も全部農協に委託して、その農地の耕作については、その委託した組合員は労働に従事しない形でも、組合員として自分の農協に経営委託ができるという、そういう説明があったわけですね。だから、土地を所有して
農業に従事しておることによって、
農民であり正組合員としての資格を持って協同組合に加入しておるその組合員が、今度は土地だけは所有しておるけれ
ども、経営も耕作も全部農協に委託してしまって、残っているのはただその土地の所有権だけということになるわけです。こういう場合には、厳密に協同組合法からいっても、それは
農民である正組合員ということには当然ならぬのじゃないかと思うのですよ。農協法の改正と
農地法の改正は、三十七年の改正、それ以前の改正の場合も、大体同時改正のような形でやってきておるわけですね。だから、もう少し真剣に問題を考えてもらいたいと思うのですよ。あなた方のやっておる二年や三年の時代だけ何とかいけばいいということじゃないのですよ。
似たような例をとると、ほめた話じゃないが、食管法の場合は法律は改正しないのですよ。法律改正をしないで、政令だけ改正して自主
流通米を実施するわけだが、これもけしからぬ話ですよ。まともに法律改正に取り組んで、やるんなら堂々とやればいいのに、全くインチキで、政令だけ改正してやっておるわけですね。しかし、その中には
一つの配慮があると思うのですよ。別に私は桧垣君に聞いたわけじゃないが、米が余ったとか
需給緩和とかいっても、将来にわたって米が余って困るという時代は続かぬと思うのですよ。米価の据え置きをやる、
農民の所得を激減させる、
生産意欲を喪失させるということになれば、
農業の
生産はもう一年一年大きく後退するでしょう。そうすればまた
供給不足、
需給逼迫という事態が来るわけだから、そういう場合は、法律を改正しないで、政令改正だけでごまかしておけば、また昔のように法律の第三条はどうだということで、従来どおりの法律運営ができる。
そこまで先を読んで政令の改正をやったわけでもないかもしらぬが、
農地法の場合は再びもとへ戻すことはできないのですよ。それは国会でやることだから、多数の賛成があれば改正できますけれ
ども、改悪したものをもとへ
改善するということは、いままでの国会の歴史を見てもなかなかないんですね。政権交代でも早く行なわれて、自民党の中のたらい回しでない形で政権がかわればまた別ですがね。そういう点は農地局の皆さんは、単純というか素朴というか、そういう先の配慮というのが足りないのじゃないですか。中野君なんか特にまじめ一点ばりのほうだから、何でもかんでも法律改正しておけばいいということで、あなたはむきになってやっておるようですが、これはあとになって、中野というのはばかな男だったなということの批判が必ず出るですよ。私は老婆心までにそのことを言っておくのです。
今後、集団化とか共同化を進める以外に大きな道は開けないということになれば、この
生産法人に関する改正というのは、これは非常に大きな障害になると思うのですよ。どうですか。あなたに聞いてわからぬければ、うしろにおる
小山管
理部長でもいいし、農地課長もどこかにおるでしょう。