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1969-06-18 第61回国会 衆議院 農林水産委員会 第38号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十四年六月十八日(水曜日)     午前十時二十二分開議  出席委員    委員長 丹羽 兵助君    理事 安倍晋太郎君 理事 仮谷 忠男君   理事 藤本 孝雄君 理事 三ツ林弥太郎君    理事 湊  徹郎君 理事 兒玉 末男君    理事 森  義視君       伊藤宗一郎君    大野 市郎君       金子 岩三君    小山 長規君       佐々木秀世君    白浜 仁吉君       菅波  茂君    瀬戸山三男君       田澤 吉郎君    中尾 栄一君       中垣 國男君    中山 榮一君       野原 正勝君    八田 貞義君       福永 一臣君    藤波 孝生君       古内 広雄君    松野 幸泰君       伊賀 定盛君    石田 宥全君       工藤 良平君    佐々栄三郎君       實川 清之君    柴田 健治君       永井勝次郎君    芳賀  貢君      米内山義一郎君    神田 大作君       斎藤  実君    樋上 新一君  出席国務大臣         内閣総理大臣  佐藤 榮作君         農 林 大 臣 長谷川四郎君  出席政府委員         内閣法制局第二         部長      田中 康民君         経済企画庁総合         開発局長    宮崎  仁君         農林政務次官  小沢 辰男君         農林大臣官房長 大和田啓気君         農林省農政局長 池田 俊也君         農林省農地局長 中野 和仁君         農林省畜産局長 太田 康二君         食糧庁長官   桧垣徳太郎君         林野庁長官   片山 正英君         建設省都市局長 竹内 藤男君  委員外出席者         農林省農政局参         事官      中澤 三郎君         農林省農地局管         理部長     小山 義夫君         自治省税務局固         定資産税課長  山下  稔君        専  門  員 松任谷健太郎君     ————————————— 六月十八日  委員大石武一君及び松野幸泰辞任につき、そ  の補欠として伊藤宗一郎君及び古内広雄君が議  長の指名委員に選任された。 同日  委員伊藤宗一郎君及び古内広雄辞任につき、  その補欠として大石武一君及び松野幸泰君が議  長の指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  農地法の一部を改正する法律案内閣提出第一  四号)      ————◇—————
  2. 丹羽兵助

    丹羽委員長 これより会議を開きます。  農地法の一部を改正する法律案を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。永井勝次郎君。
  3. 永井勝次郎

    永井委員 いま農政転換期だといわれておるのでありますが、この転換という意味は、大臣はどのように理解し、どのようなかまえを持っておられるのかを総括的に伺いたいと思うのであります。  いま世界が激動しておるから、その激動期の中の日本農政としてのつかまえ方なのか、あるいは国内における水稲の生産需要を上回って供給過剰になった、そういう意味でこれの転換を必要とする、こういうところ重点を置いた見方に立っての所見なのか、あるいは農基法によるところ農業者と他産業との生活を均衡させる、こういうようなねらいを持って進められておる今日の農業基本法というものが、いままでの実績によって失敗であった、そういう意味においてこれを転換しなければならない、こういうような考え方に立って再検討を用意しようとしておるのか。その日本農政転換期という意味性格と、それから今後におけるかまえと、こういうものを総括的に最初に伺っておきたいと思います。
  4. 長谷川四郎

    長谷川国務大臣 農業転換期といいましょうか、米で見た転換であって、いまお話のございましたように、農業基本法失敗と言いますけれども、私は失敗しているとは思いません。  ただ、農業基本法においてもそのとおりでございまして、米というのが不足をしておる、国民基本的食糧不足ということは、政治の上にとっても一応重大なる問題であり、また、農業を行なう者にいたしましても、これらの問題が先決しなければならない問題だと考えられます。そういう上に立って考えてみると、需要生産というもののバランスをいかにとるかというところで、ウエートが米というものにあったと思うのでございます。そういう結果に立って、米の生産が今日見るような過剰的な状態にもなってきた。こういうことでありますので、基本農政というものの基本の精神に返って、そして農作物の高いところと低いところ生産消費バランスの欠陥のある点、こういう点を総合的に見直すべきときである、こういうふうな考え方に立って今後の農政を進めなければならないだろう、こういうように考えておるのでございます。  したがって、農業基本法失敗とも考えておりませんし、また、今後に対する農業考え方というものは、総合的にそういうような消費生産というもののバランスをとった農政が行なわれていかなければならぬ。それには価格政策だけではなくて、構造政策、あるいはまたこれに対するところ生産政策、こういうものが総合的に行なわれることによって、期待できる農業の今後の推進ができる、このように考えておるのでございます。
  5. 永井勝次郎

    永井委員 そういたしますと、農業基本法失敗したか失敗しないかということについては、これは証明が必要であります。失敗したという証明が必要でありますが、ここでは時間がかかりますから省略をいたします。  それはさておきまして、日本農政転換ということは、米の需給のアンバランスから、これを需給面から是正をしていく、そういうことを中心として他の作目に波及していく、こういう視点から日本農政転換しよう、いわゆる需給面あるいは価格指導的な点から、生産性向上あるいは構造改善というところ重点を置いて今後やっていくんだ、それがいまの政府のいっておる農政転換というものの中身であり、性格である、また今後の計画目標である、こういうふうに理解してよろしいわけですか。
  6. 長谷川四郎

    長谷川国務大臣 でありまするから、先ほども申し上げたのでございますけれども、たとえば米の問題にいたしましても、稲の作付の面積というものを需要に応じて減少をさせていきたい。それにはまず、本年度からは新たに開田することは見合わせてもらいたい。したがって、品質というものの向上をはかってもらいたい、こういうような点で、米については意を用いております。  その反面、またこれらと見合わなければならない酪農関係におきましてもしかりでございますし、あるいは果樹の問題についても、野菜の問題に対しましても転換——ただ転換といって転換のできる問題ではございませんので、それにはそれだけの政府としての用意と、その指導性というものをはっきり示さなければ相ならぬだろう、このように考えております。  でありますので、せっかくいままでやってまいりました、本年度に入ってもやってまいりましたけれども、さらに確信を持って指導ができまするよう、いま農政審議会に答申を求めるとか、あるいは農政推進閣僚協議会を持つとか、こういうような点等々、御意見の点を十分伺いまして、なるべく早目にこれらを総合したところ基本方針を持って進めてまいりたい、こういうふうに考えておるわけでございます。
  7. 永井勝次郎

    永井委員 そういたしますと、政府のいう総合農政という中身は、ただいま大臣の答弁のありました米作需給の均衡をはかるということを中心として起こっていく一つの波紋、それの転換、これが総合農政中身である、こういうふうに理解してよろしいわけですか。
  8. 長谷川四郎

    長谷川国務大臣 米作もその一端ではございますが、総合でございますから、やはりもっと幅の広い、農作面を全般的に見て考えていくつもりでございます。  したがって、今後どうしても日本国内において生産して合わないものがあるとするならば、これらは輸入にまつ、また、輸入はいましておるけれども、今後はどうしてもこの点について輸入を全然なくし、自給ができるような方途を開くべきものは、そのような方針指導してまいりたい、こういうふうに考えておるのでございまして、米もその中の一つではございます。原因の一つではございますけれども、米の過剰によってのみ転換が行なわれ、総合的なものが考えられるとは申し上げられないと思います。
  9. 永井勝次郎

    永井委員 総合農政中身がまだ十分に検討されておらない、未熟であるということは理解できるのでありますが、その構想が、いま言ったように米の需給中心として、そういう視点からとらえたものの考え方構想というものであると、あまりに近視眼的であり、あまりに短見である、場当たりである、こう断ぜざるを得ないのであります。  農業というものは、農業の中の技術的な領域だけで解決できないことは議論の余地がありません。流通もあります。あるいは資材その他の関係もあります。でありますから、農業というものを総合的に方向確立するというならば、まず農業の中における調整、あるいは生産体系確立という問題がありましょう。さらには、他産業との中における農業位置づけという問題の検討が必要でありましょう。あるいは、今日のような国際事情の中においては、国際経済の中における日本農業あり方位置づけ、そういうものをきちっとかまえて、そうしてその中で日本農業総合的な所見というものを確立していきませんければ、その場、その場の場当たりで、いまの大臣のような理想なりあるいは論理の発展というものをしてまいりますならば、これは総合農政でも何でもない。口では総合であるけれども中身総合でない、こういうふうに断ぜざるを得ないと思うのです。  したがって、いま総合農政という問題を、政府審議会を開いてどうこう、こう言っているのでありますが、農民生産活動は毎日毎日続いておるわけであります。そうして米の値段も、あるいは転換も、その他作目のいろいろな問題も、経済は生きて一日一日動いているわけです。そういう動いていく中で、これからその審議会を開いて検討するんだ、答えはいつ出るかわからない、こういうようなことではたいへんだと思うのであります。  総合農政中身というものは、いま言ったような右往左往、そしてまたその方向づけについても、これから審議してみなければわからない、そして農業の中の技術的な分野における総合性調整というか、そういうことを重点にしたものがいまの農林省の持っておる総合農政中身である、こういうふうに理解してよろしいわけですか。そういうふうに理解する以外に理解のしようがないのでありますが、ほかに何かがあるとするならば、具体的に御提示を願いたいと思います。
  10. 長谷川四郎

    長谷川国務大臣 御理解、御判断は、おのおの自分みずからの考え方でございますからけっこうでございますが、農林省といたしましては、総合農政をこれからやるというのではなくて、本年初頭から、畜産におきましても、たとえば果樹におきましても、あるいは野菜におきましても、いまおっしゃった流通の面につきましても、もちろんこれらのものは最も重要なものばかりでありまして、生産流通、当然行なわなければならない問題、こういう問題は特に意を用いまして、本年度予算にも十分盛り込みまして、それらの指導には当たっておるつもりでございます。
  11. 永井勝次郎

    永井委員 これは質疑でございますから、一方的にかってに解釈しろ、こういうことでは話が進まないのであります。私は疑問があるからお尋ねをしておるのでありますから、その疑問に対して解明し、そして私に納得させるだけの具体的なものを提示する責任が大臣にはあると思うのであります。そういう一つの客観的な事実に基づいてわれわれが判断する。客観的な事実がここに明らかになりますと、おまえの判断はこの事実に対して間違いではないか、こういう御指摘があるなら私は納得いたします。  しかし、かってに解釈しろということでは、これは済まされないことだと思うので、もう少しお互い——農政の問題はたいへんな問題だと思います。いろいろな政党の立場もあります。それぞれの立場はあるにいたしましても、それぞれの立場で問題を提起し、そして検討して、農政の百年の基礎をここで固めるということは、いま非常に大切なときである、こういうふうに思うので、私は当局のあげ足とりに質問しているのではないのであります。ここに日本農業という病人をベッドの上にあげて、病気はどこどこにあるのかという診察を、いま大臣と私の二人でやろうとしているのです。そしてその診断がきまったら、その診断に基づいて、この病気をなおすにはどうしたらいいかという治療方針というものが立つわけでありますから、ひとつそういうふうに問題をとらえていただきたいと思います。  私は、そういう意味から申しますと、どうしてもいまの農業というものは、農業領域だけではどうにもならないと思うのであります。でありますから、農業内部における問題はもちろんたくさんありますから、この問題の総合的な施策というものを確立していくことが必要だ。さらには、他産業との関連における問題の検討を分析していく必要がある。さらには、国際的な競争の中における日本農業のこれからの行き方、いままでのあり方検討、こういうものが必要であろう。そういう基礎的なものがあって、日本食糧対策をどうするんだ、農業政策をどうするんだという一つ基本方針というものが立たなければ、私は、いいとか悪いとか、そういう尺度もきまってきませんし、価値判断も出てこない、こう思うのです。  その意味において、私は大臣にお伺いしたいのでありますが、農業領域内部においてはどういう問題を検討されておるのか、それから他産業との関連においてはどういう問題がいま具体的にあるのか、それから国際関係においてはどういう問題があるのか、そしてそういうものの検討の上に立って、日本食糧政策あるいは農業政策というものの基本方針を明確にしていただきませんと、ただ一つことばがあって中身がない。そしてそういうものを吟味するためには、そのことば概念規定お互いにまたしていかなければいけないということになって繁雑でありますから、これからの質疑の冒頭にあたりまして、一応これらの問題を明確にしていただきたいと思います。大臣政治的判断をすればいいのでありますから、そういう点において、私は政治家としての長谷川農林大臣を信頼しますが、部分的ないろいろな問題については、政府委員から説明させていただいてもけっこうであります。そういう問題をひとつここで明確にしていただきたい。
  12. 長谷川四郎

    長谷川国務大臣 わが国農業は、これまで食糧供給、他産業への労働力供給国内市場拡大というような面で、国民経済発展成長に重要な役割りを果たしてきたのでございまして、国民経済は今後とも高度成長をしていくだろう、さらに私たちはこれを続けていく見込みでございます。  したがって、今後の農政を進めるにあたりましては各方面の意見を伺って、その中で農業位置づけをさらに明らかにしていくということが、いまこの時期に立った農業に一番妥当性があり、そのほうが堅実的であるというような考え方も持っておるのでございまして、したがって農政方向づけをしてまいる。特に労働力の面につきましても、他産業成長に伴って、農業労働力に対する農業外雇用需要と申しましょうか、これは増大を続けるものと考えられますし、農業としては、むしろ農業労働力の流出の円滑化をはかるとともに、これを契機として農業構造改善に積極的に取り組む必要があると私は考えております。  このためには、今般設置を見た農政推進閣僚協議会とか、先ほど申し上げた農政審議会とかいうようなもの、さらにその他の御意見等を十分に伺いまして、そうして今後の農政に取り組んでまいらなければならないときである、こういうような考え方を持ってただいままで進めておるのでございます。  しからば、今年は何もしていないかというと、決してそうではございませんので、たとえば、酪農の面の一面を見ましても、施策としてはかなり思い切った施策を加えておりますし、野菜なら野菜はなるほど増産はされておりまして、いろいろ農民も、価格が引き合う、引き合わないという問題は別にいたしましても、これらに対するところ生産流通、こういうような面にもかなり本年度は意を用いまして施策を加えたと私は考えております。したがって、まだまだそれで事が足りるではなくて、さらに今後、将来の日本経済発展の動向と国外的な面もにらみ合わせまして、そうして日本農業というものの進展をはかっていかなければならない、こういうふうに考えておるのでございます。  最近、わが国をめぐる農業関係というものは非常なきびしいものがあって、したがって、内外の諸情勢等々も考慮しながら、価格の上昇に多くを依存するばかりでなくて、価格政策ばかりでなくて、生産性の高い農業というものの確立をはかってまいりたい、こういうようにも考えておるのでございまして、したがって、農業生産性向上をはかり、そして生産性向上の各般の施策をさらに充実強化をして、そうして国外からの農業に対しましても、いつでも持ってこいという体制の整うような点にまで持っていかなければならない。それも今後、将来の問題ではなくて、いま差し迫っている問題でございますので、本年から来年度にかけては、この基本的なものに意を大いに用いましてその方向づけを行なってまいりたい、こういうふうに考えておるのでございます。
  13. 永井勝次郎

    永井委員 言うことがわからないわけでもないのですが、きちっと入らないのです。そうしますと、これからの国内農政あり方を、価格保証であるとか価格維持であるとか、価格に偏重した農政あり方を変えて、構造改善なり生産性向上なり、そういう面に重点を置きかえて、そうして国際競争力を強化して、さあどこからでも世界じゅうからやってこい、こういう日本農政確立するのだ、こういう意味でしょうか、要約すれば。
  14. 長谷川四郎

    長谷川国務大臣 そういうようなやり方の中に主産地形成というようなものを大いに取り入れて、そうして適地適作主義というものをその中に組み入れていかなければならないだろう、そういうふうに考えておるのでございます。
  15. 永井勝次郎

    永井委員 そうしますと、先進国との競争においては規模拡大していかなければならない。アメリカからの輸入農産物輸入の約八割を占めておるのでありますから、アメリカ等先進国との競争においては、規模拡大をやっていかなければならない。その規模拡大競争に均衡できるようなそういう拡大が、日本国内において可能であろうか。また開発途上国との間においては、低賃金競争していかなければならぬ。そういう低賃金との競争に耐えて、そうして国内における他産業との均衡した生活水準農民生活向上、そういうものをはかっていかなければならない条件というものが、日本国内に本来的にあるのかどうか。この地積の上からいきましても、一体競争目標なりねらいなり、そういうものをどこに置くのか、これはひとつ官房長から……。
  16. 大和田啓気

    大和田政府委員 農政の大筋は、ただいま農林大臣から申し上げたとおりでございますが、私ども先進国農業、あるいは、いわゆる低開発国農業との競争力を強めるといいましても、本来的にアメリカカナダの平均百ヘクタールとか二百ヘクタールとかいうところ農業の産物と、いわば価格関係競争できるというようなことを、必ずしも考えておるわけではございません。  先ほど、農林大臣から価格政策についてのお話がございましたが、価格の安定ということは、これからもますます強く考えていかなければなりませんけれども国際価格さや寄せということで、私ども価格政策をやるつもりは毛頭ございません。できるだけ国際競争力を強めるという立場でございますけれども先進国の非常に強大な農業と、肩を直接並べるような農業ということではなくて、やはり何といいましても農業の目的といたしましては、国民に良質な食糧を豊富に、しかも、安定的な価格供給するということが農業の社会的な使命でございますから、国際的な関係から全く離れて、日本農産物独歩高になることは控えなければなりませんけれども国際価格にさや寄せするということではございません。  日本農業が今後合理化され、近代化されて強いものになりましても、私は、相当程度の国家的な保護というものはやはりなければ、日本農業というものはやっていけない。これは程度問題でございまして、いきなりアメリカカナダ農業と匹敵できるような規模農業日本においてつくるという、そういうことではございません。
  17. 永井勝次郎

    永井委員 そういたしますと、価格政策という形を集約した経済表示は別として、やはり先進農業と均衡していくためには、本来的に競争にならない地域の広さの問題であるとか、あるいは気象のいろいろな条件であるとか、そういうものを考慮して、その経済的な格差については、政治的に国内で措置していかなければならない、こういうことにならざるを得ないと思うのであります。  それから、後進地域における低賃金との競争に対しては、どういうふうな対処をされるわけですか。
  18. 大和田啓気

    大和田政府委員 これからの日本農産物生産方向を考えますと、私どもは、やはり米は完全自給野菜とかくだものとかあるいはなま乳、これも完全自給、肉類あるいは乳製品等につきましてはほぼ現在程度の八、九割の自給、そういう方向で、いわば基幹的な農産物についての相当程度自給ということは、今後も農業生産の、いわば戦略として考えていくべきであろうと思います。  したがいまして、これは後進国あるいは先進国ということを問いませんで、やはり基幹的な農産物についての輸入制限というものは、そう簡単に日本としてははずすことはできない、そういうふうに考えておるわけでございます。
  19. 永井勝次郎

    永井委員 そうしますと、その底にあるのは、日本農業基本的な姿勢としては、これだけのものは自給でまかなう、自給度をこの線まで確立していく、その残りの部分は弾力的に対応していく、こういう基本を持ちながら、国際的な競争力の強い関係については、開発途上国であれ、先進国であれ、あるいは農産物価格価格差が非常に大きくても、それだけに対処するのではないのだ、こういうかまえで臨むというお話でありますとすれば、食糧政策として、何が何でも戦略として国内で確保しておかなければならない量的基準というものはどういうところに置いているのか、これをもう少し具体的に内容を示していただきたい。
  20. 大和田啓気

    大和田政府委員 農産物全体の最近の自給率は八割、あるいは年によりましてはそれを多少こえるという状態でございます。私ども農産物全体の自給率を八割に据え置くとか、七割七、八分に据え置くべきだとか、頭からそういうふうに考えることは必ずしも適当ではあるまい。まあよそのことをいう必要もございませんけれども、EECの諸国でも、最初農産物全体の自給率ということをわりあいやかましくいった時代があるようでございますけれども、最近は全体としての自給率よりも、むしろ農産物個々自給率ということを強く意識いたしておるようでございます。  私どもも、八割とかあるいは七割七、八分とかいうそういう農産物全体の自給率ではなくて、むしろ個別に米はどうか、野菜はどうか、肉あるいは乳製品はどうかという、そういうことで日本農業の将来の可能性、それから国際競争力等々を含めまして、昨年の十一月に作業をして公表いたしました農産物長期見通しにおいても、先ほど私が申し上げましたような姿勢を相当明瞭に出しておるわけでございます。
  21. 永井勝次郎

    永井委員 そうしたら、先ほど大臣が言ったように、本年度予算総合農政の具体化が相当程度にできている、だから、それを見てもらえば大体方向がわかる、こういうお話でしたから、ひとつ予算から出発いたしましょう。  四十四年度農林省関係予算総額は、農林省から配付された資料によりましても七千六百八十八億。そうして一七・五%前年よりふえている。国の予算の中に占める率は一一・四%の割合だ。そのうちから食管会計繰り入れの三千億、あるいは災害復旧に要した費用というものを差し引くと残りが四千四百五十四億、これは国の予算に占める率が六・六%で、この中には林野庁、水産庁等農業に直接関係のない省庁のなにも入っておりますから、こういうものを除く、あるいは直接農業の政策費にならない人件費その他の事務費を除く、こういうふうにしてまいりますと、実際に膨大な国の予算を使っている中において、農政の大きな転換期にあるというその農政への予算措置として、これが大きな予算の投資なのだ、これが特徴的な投資だというものは、一体どのくらいあるのですか。一体純政策費というものはこの予算の中にどれだけありますか、これを明確にしていただきたい。  さらに、この人件費も何も全部入っている予算の中で、食管その他を除いたなにが六・六%です、国全体の予算に占める割合が。そうして四十三年度はどのくらいかというと六・五%です。でありますから、前年に比べますと〇・一%の増です。ここに明確になっている中だけでも〇・一%の増ですが、これが総合農政の野心的な予算の編成内容だ、こういうことに評価されるのですか、どうですか。  まず第一に、純政策費がどのくらいになるか、そうして、前年に比べて〇・一%しかふえていないのだが、これで豊富に組んである、こういう予算として評価できるのかどうか、この二点についてお尋ねをいたします。
  22. 大和田啓気

    大和田政府委員 詳細御承知のことと思いますけれども、私ども四十四年度予算を組みます際に、先ほど大臣が申されましたように、総合農政方向といいますか、農業生産の選択的拡大に資すること、構造政策推進に資すること、さらに流通消費改善に資することという、いわば三大目標を頭に置きまして、相当こまかい配慮をいたしておるわけでございます。  御承知のことと思いますが、たとえば、いわゆる農業生産基盤の問題にいたしましても、総額で二百二、三十億ふえておるということ以外に、相当畑作関係重点を置いておりますし、農道その他農村の生活環境の整備にも力を入れて予算を組んでおりますし、畜産関係で、草地改良にも新しいアイデアを入れておるわけでございます。また阿蘇、久住、飯田その他の大規模な未開地の開発についても、新しい調査費を組んでございます。畜産、園芸等々、詳細な説明は省略をいたしますけれども、私ども相当苦心をして新しい項目を盛り込んでおるわけでございます。  構造政策関係では、農地法の改正を主体として、新しい芽といたしましても、御承知の第二次構造改善事業の出発を昭和四十四年度からいたしております。これは、計画作成費として当初予算では二億程度のものしか出ておりませんけれども、将来相当大規模な事業として、一地域補助事業三億、融資事業一億という、いままでの構造改善事業に比べれば大規模なものでございます。  さらに、農民年金を四十五年度から出発するといたしまして、その調査費を組んでございます。これも金額としては一千万円でございますけれども、将来相当大幅な予算が予想されるわけでございます。  さらに、農業金融の問題といたしましては、公庫の資金をふやす以外に、農業近代化資金のワクを千億から一気に三千億にふやし、しかもその三千億の中で、農協が主体として推進いたしております営農団地の構想に、五分で五百億の資金ワクを予定する等、詳細御承知でございますから、詳しい説明は省略さしていただきますけれども、私ども、金額の問題もさることながら、内容において相当新しいくふうをいたしておるつもりでございます。
  23. 永井勝次郎

    永井委員 予算の内客を見ますと、価格支持政策の予算は後退しております。しかし、構造改善、土地改良、こういった方面の予算は確かに若干はふえております。また、いま官房長が言ったように、農業金融の面では相当ふえております。相当ふえておるといっても、三千億前後であります。三千億前後というと、これは日本全国の農民に対する、農業に対する金融のワクとしては、八幅製鉄などの一営利会社の年間金融のワクよりもちょっと多いくらいで、一企業と匹敵するくらいの金を全体の農業金融にばらまいておる。これで、大幅だという大きな口が聞ける筋ではないと思うのであります。  しかも、四十四年度予算と四十三年度予算をなまで比較して〇・一%の増でありまして、実際においては物価が上がっております。したがって同じ金額であれば、物価の値上がりだけ減退するのであります。物価の値上がり分だけ予算がふえて、初めて去年と同じ事業量ができる。事業量からいえば、金額はふえたけれども中身は同じだ、こういうことになるのですが、その表面上の比較においても〇・一%よりふえていない。でありますから、これは実質的には陥没しておる。予算は、物価値上がりその他の修正指数からいいますならば減退しているんだ、こういうことが言えると思うのであります。そうして、この中には人件費の値上がりも何もあるでしょうから、そういう点において私は、この予算の中に項目としては、いろいろいま官房長の言ったような項目は書いてありますよ。しかしこれは、ここに鉄かぶとがありますよ、ここに戦車がありますよ、こういう一つの見本としてそこに例示されてあるだけで、鉄かぶととしての戦力、戦車としての戦力というような、そういう戦力予算としての金額なり量というものではないのであって、ほんの見せかけだけそこに書いてある、予算が組んである、それだけの予算であります。  こんなものは問題にも何もなりません。大きな日本農政転換期であるその裏づけとしての農業予算にしましては、私は量的にいっても、問題にも何にもならない、こういうふうに思うのでございます。前年に比べて国全体の予算がどのくらい伸びておるのか、その中において農業予算がどれだけ伸びておるのか、こういうことを比較すると、問題にも何もならぬと思うのです。  さらに、私は官房長にお伺いしますが、米は確かに一〇〇%以上の自給率であります。しかし、米に次いで重要な小麦はどうなっておるのかといえば、八割は輸入であります。この小麦に対する国の主体性というものは、一体どこにあるのですか。年々これはふえてきているでしょう、輸入が。そうして国内においては、一昨年契約栽培、非契約栽培という新しい政策を出しました。この新しい政策は、陥没していく国内の小麦生産を盛り上げるための助けになる政策として組まれたものではなくて、会社側から見て、会社が契約する、そして非契約のところはそれは要らないんだ、こういうセクションするための契約、非契約という形において、生産を上げるというのではなくて、生産に水をかけるような、こういう政策を一昨年新しく出しております。  こういうような小麦政策というのは、一体国内の米に次ぐ重要な食糧、こういうものを二割以下の程度に陥没させておいて、これでこの国の食糧戦略体制というものが安心できるのかどうか、これが自民党政府食糧に対する戦略であるのかどうか、これを明確にしていただきたい。
  24. 大和田啓気

    大和田政府委員 ちょっと予算について申し上げますと、〇・一%という数字の詳細につきましては、また後刻ひとつ先生から親しくお教えいただきたいと思いますが、私どもの承知しておりますことは、四十四年度の農林予算は、総額で昨年に比べまして千百四十六億増加いたしております。それから食管繰り入れとか災害復旧等を除いた部分で申し上げますと、六百七十四億増加いたしております。また、千百四十六億増加いたしておりますけれども、前年度に比べて、いろいろ災害復旧事業等が減っておりますので、実質的に使える金としては千二百三十六億円の金が新規施策及び既定施策の増額に充てられるわけでございまして、私ども四十四年度の農林予算が、額において決して貧弱だというふうには考えておりません。もちろん、これで十分だという趣旨で申し上げているわけではございませんけれども、まずまず相当いいところまでいっているのではないかというふうに思います。  それから、小麦についてのお尋ねでございます。確かにおっしゃるように、小麦の自給率は最近二割程度でございますから、米が一〇〇%でありましても、小麦が二〇%であるとすれば、それは食糧自給の面でどうかという御意見は私は確かにあると思います。  ただ、先ほども国際競争力ということで先生からのお話しがございましたが、私どもの小麦の買い入れ価格は、国際価格に比べてどうかということを申し上げるのもやぼな話でございますが、EECできめております価格に比べますと五割高でございます。国際価格に比べますればほぼ倍でございますが、EECで、ドイツなりフランスなりの農家が価格を補償されているその価格が、大体日本の小麦の買い入れ価格の三分の二でございます。ちょうどまあ五割高でございます。したがいまして、小麦の増産ということは、私どもも、全体としての増産というふうにはいかないけれども、とにかく日本において需要が強い農産物であり、相当膨大な輸入をいたしておるわけでございますから、それが増産されることがきわめて望ましいわけでございますけれども、やはり農家の側からいえば、政府のそういう買い入れ価格といたしましても、決して有利な農産物ではございませんので、やむを得ず農家がそれに対応する形で生産を縮減してきたというのが実情でございます。  私ども、麦作につきましては、やはり地帯によりましては、主産地と申しますか、気候、風土その他の条件で小麦作に適しており、また集団的な生産組織、これは個々の農家が小麦をやる限りはなかなか引き合わないというのが現実でございますけれども、集団的な生産組織をつくり、機械を補助することによって、相当な主産地が形成されることが見込まれますので、麦対策として相当な予算を組んで、私ども主産地の形成をはかっておるわけでございます。その技術が定着いたしますれば、全体としての増産ということはなかなか進みにくいといたしましても、地域地域によりましては小麦の主産地が形成されて、そこでりっぱな小麦生産が行なわれるという、そういう形に小麦についてはなるというふうに考えておるわけでございます。
  25. 永井勝次郎

    永井委員 この予算の点でありますが、農林省が出した資料によって〇・一%よりふえておらないのでありまして、これは私がはじいた予算ではありません。国の予算が膨大にふくれたその中において、それだけより農業の部分がふえておらない。いままでそんなに豊富に予算があったのかというと、私は非常に不足していた、こういうふうに思うのであります。ですから、こういう転換期において、総合農政でおくれておる部分を盛り上げていくというならば、もう少し予算措置が具体的に示されて初めてそうかな、こういうことがわかるのでありますが、この予算の中に示されておる内容では、〇・一%よりふえておらないじゃないかということを、私は数字的に立証しておるのであります。  それで、官房長は千数百億の予算が新規に使える政策費として組まれておるのだ、こういうことでありますが、われわれ農林委員会が、今度熊本、宮崎に視察に参りました。ここには与党の安倍君もおられるからわかるのでありますが、中球磨の整備関係については、八年間でできるところを、いまの予算措置では、十年になるか十何年間になるか、ずっと長くなりますよ。そして延びれば延びるだけ、完成したところと完成しないところの格差があって、その中におけるいろいろな扱いが非常に困難な状態になっておる。これは金額が同じであっても、事業量にどんどん食い込んでいくのは議論の余地がないのであります。でありますから、末端ではどこでも、一つの年次計画でやっておるところは延びていくのです。延ばして、そうして事実においておくれている部分をますますおくらせることをやりながら、国の予算でもたった〇・一%よりふえていないじゃないか。こんな予算でどうなんだ、こう言うと、これで十分だ。これでは、大蔵省との折衝でけつをまくっても、現地で生活をかけている農民に対して、何とかしなければならぬという意気込みで立ち向かう農林省姿勢ではないと私は思うのです。現地に行けば、どこでも予算がなくてやれないのです。年次がだらだら延びていくのです。現地に行けばごまかしがきかないのですから、口先のごまかしではいけないのです。そういう事実はどこにもあると私は思うのです。  それから、小麦の問題ですが、値段の格差があることは議論の余地がないと思うのです。そこで価格競争でいくのなら、アメリカとはどんなにしたって価格競争はできませんよ。総合農政の当初において、私は何を自標にするのか、こういうことを言ったけれども、経営面積の拡大競争ができないということになれば、自然日本の特殊な事情で、コストが高くなっていくのはあたりまえです。そうすると、安いところからどんどん入れるということになれば、小麦のようなことになってしまう。それでは小麦を全然つぶしてしまっていいのかというと、そうはいかないのです。ですから、ほうったままになっているから、現在二割より国産が堅持できない、こういう状況になるのです。  さらにそこへ、一昨年新たに政策を出したのですよ。これだけ苦しんでいる国産小麦耕作者に対して、契約栽培、非契約栽培という新しい制度を出して、会社であなたのところの麦は要りませんよ、奨励費は出しませんよ、こういうことで水をかけるのですよ。ますます国産に水をかけるのですから、奨励にも何にもなりませんよ。こういうやり方は、さっきの長官の言っている、国産についてある程度政治的配慮をして盛り上げていくのだということと逆な方向ですが、これはどういうわけですか。
  26. 大和田啓気

    大和田政府委員 小麦についての契約栽培は、生産と実需といいますか、生産消費を結びつけてとられたもので、麦の管理によって、生産と実需とが完全に遮断されることを改善しようという食糧庁の計画であろうと思います。それはそれなりの意味があるわけで、それが具体的にどの地帯の小麦にどういう影響があるかということは、私も詳細存じておりませんけれども、かつての農林委員会で、永井先生がこの問題を取り上げて質疑をされた経過も、私たまたまそこに居合わせて伺っておりますので、具体的な問題でありますれば、それは食糧庁ともよく相談をしてみたいと思います。  ただ、方向としては、麦は国家管理でありますけれども生産消費といいますか、製粉工場の作業とが全然無関係に麦の生産が行なわれる、そういう状態はやはり直すべきだという食糧庁の見解は、正当だろうと思います。
  27. 永井勝次郎

    永井委員 麦の問題については、また議論の場所がありますが、とにかく国産二割、輸入八割という段階まで落ち込んだものを、さらに病人の足を引っぱるような、水をかけるような政策というものは、これはなっていない、こう思うので、また場所を変えて議論をいたしましょう。  それなら大豆はどうですか。大豆は九割輸入ですよ。国産一割を切っているのですよ。みそ、しょうゆ、それから油脂、こういう原料として国民食糧としても重要な作目であると思うのですが、これは一割に減っている、どうなんですか、このままにしておいたらこれは消えてしまいますよ。
  28. 大和田啓気

    大和田政府委員 大豆、麦、トウモロコシ等々、需要が強い作物でありながら、日本のように集約的な小規模栽培では、なかなか生産費が高くなり過ぎて市場価格に適合しないというものが、畑作物で相当あるということは、私は日本農業にとって一つの大きな悩みであろうと思います。  私は方向としては、その価格を無理に引き上げてどうこうということではなくて、やはり主産地を形成して、主産地においてはそれらの作物が十分成り立つような、そういう生産政策を今後も強化していくべきだというふうに考えております。
  29. 永井勝次郎

    永井委員 成り立つ成り立たないということを口の先で言うのではなくて、成り立つ基礎的条件は、アメリカの小麦と競争するには、アメリカの経営のような広い面積の耕地の基盤によって競争する。こういう基盤にして、同じ条件だから日本でできないことはないだろう、こういう農民への刺激なり奨励ならわかるけれども、向こうは膨大な何百ヘクタール、何千ヘクタールという耕作だ、こちらでは五ヘクタールか六ヘクタールの中にあって、半分以下のいまのコストであるのを、主産地形成によってこれを詰めろといったって、こんな経済ベースに乗らない、経済性のない話というのはありません。そういう経済性をはずしている問題については、政治的に配慮するというところ国内農業政策の主眼があると思うのです。そういうものを無視して競争しなさい、そうしておまえらの団地形成によって、主産地形成によって対等になりなさいといったって、なれっこないのです。私は、最初に問題を提起して、何をねらって国際競争に対抗するのかということを言ったのですが、いま言われたようにトウモロコシもそうです。  先日テレビで、てんぷらそばのどんぶりを出して、そうして、この中に輸入品がどのくらいあるかということを出したのをごらんになりましたか。これはだれも当てる人はないのです。この一つのどんぶりの、ささやかないなかの大衆食堂のどんぶりの中のものが、国産というのは水だけなんですよ。あとは全部輸入品ですよ。そば粉が輸入です。うどん粉も輸入です。それからエビが輸入です。それからてんぷらをあげるうどん粉が輸入です。それをあげる油が輸入です。それからしょうゆの原料が輸入です。それからしょうゆをつくるこうじの麦が輸入です。てんぷらそばのどんぶり一つをとってみても、ほとんど大部分が外国の輸入品をわれわれが食べなければならぬ。そして国産はその中の水だけだ。こんな状態農業政策で、一体何が国際競争力だ。それでは国際競争力にしっかりしたきめ手があるのかといったら、主産地を形成して競争しなさい。何千町歩の耕作面積のところと、五町歩か六町歩、せいぜい主産地を形成したってたいしたことないそういうところ関係と、ことばの上で均衡しなさいと言うのは簡単だけれども、二分の一以下にある価格経済的に詰めるということが、そんな簡単にいくわけはありませんよ。  そういう状態でありながら、アメリカではなおかつ価格政策農産物に対しては政治的助成政策をずっと続けているのでしょう。いろいろな変遷はあるにいたしましても、余剰農産物をたくさんかかえたり、あるいは生産制限に補助金を出したり、これだけの膨大な有利な条件の中にありながら、国が農業に対してそれだけの助成をしている。ヨーロッパだってそうですよ。農業というものが土地生産である限りにおいて、他の重化学工業と同じ生活水準国民に約束するならば、国がそれに対して何らかの政治的助成をしないで、均衡できる生活水準を維持するということはできっこない、こう思うのです。いかがですか。
  30. 大和田啓気

    大和田政府委員 私も先ほどから、日本のような農業では、国の保護が必要だということを申し上げておるわけでございます。裸で国際競争にさらせという趣旨を言っているわけでは毛頭ございません。  大豆につきましても、トン百ドル前後でアメリカの大豆が入ってくる状況におきまして、日本では交付金制度によっていわゆる不足払いをやっており、相当な保護をいたしておるわけでございます。
  31. 永井勝次郎

    永井委員 経済の問題で議論をするときには、経済のいろいろなファクターというものをきちっと踏まえて議論しなければならぬと思うのです。欧米先進国では、酪農というのはもう何百年の歴史を持っております。そういう中でいろいろな体制ができております。日本では、新しく酪農転換しようというならば、これから水田をつぶして、何から何まで全部借金して始めなければならないのです。それではあしたからひとつ酪農転換しようというときに、りっぱな育成牛というものがあって、そこからいい牛を買ってきて、すぐ酪農業にかかれるかというとかかれないのですよ。少なくもいま採算ベースに乗る最低限の十頭で酪農業を出発しよう、こういうならば、少なくも二千万円以上の資金は要るでしょう。畜舎から、それから機械から、それだけではいけませんで、自給飼料が必要でありまして、放牧地なり採草地なりそういうものを用意しなければならぬ。そういうものを借金をして大きな転換をして、そしてそれも経験がありませんから、生きものでありますから、これは飼育の経験というものを積んでいかなければ、同じ牛を飼って転換してすぐやれるかというと、そういうものではありません。  そういう条件を無視して、しかも外国では、いまヨーロッパなんかは乳製品は過剰気味でありますから、国が補助してこっちへ安く投げ売りしてきているのです。そういうものと国内競争せいといったって、競争になるものじゃありません。ですから、適地適作が適当だなんて言ったって、適地適作が適当なのはあたりまえです。自然条件からいってあたりまえなことです。それでは適地適作でやっていたら農業経営はできるのか、企業として成り立つのか、そろばんはとれるのか、これは経済の中におけるいろいろな問題について——これは植物学をやっておるようなものです。学問をやっておるようなもので、経済の論議をやっておるものではないのです。農業はおもしろ半分にやるものではない。ここは自然の条件でこういうものが育つから、適地適作をやっていたら農業経営が成り立つというなら別です。米は国際競争がないから、そして国のこれだけの補助があるから優位にある。酪農や畑作物というのは国際商品ですから、全部競争があります。ですから全部悲劇です。全部圧迫を受けるのです。  さっき長官は、畑作関係の悩みだと言ったのだが、悩みではありません。いま水稲は混迷しておる、それから酪農は不安定だ、畑作は悲劇だと言っております。悩みを通り越して悲劇なんですよ。どうやって成り立つのですか。耕作面積はどんどん拡大できないでしょう。そうして何百町歩、何千町歩の国と競争せい、こういうことを言われる。その競争する条件というのは、団地を形成しなさい。団地形成くらいでそれが埋まりますか。こんなことをやって、悲劇は悲劇のままにほったらかしておるのですよ。今日の畑作農業の悲劇の実情というものを、どういうふうに現実を把握していますか、ぼくはそれを聞きたい。
  32. 大和田啓気

    大和田政府委員 御指摘のように、日本の畑作物がなかなかむずかしい問題に当面しておることは、そのとおりであろうと思います。  したがいまして、私どもも畑作につきましては、大豆、なたね等に交付金制度をつくり、また野菜等につきましては、出荷あるいは生産の計画化、あるいは安定基金制度等々をつくって、畑作について相当な力を加え、今後もますますその方向で努力をいたすつもりでございます。
  33. 永井勝次郎

    永井委員 酪農がいいからすぐにといったって、一頭から始めていったのでは、これを十頭にするには、一年に一頭ずつふやしていくとすれば、十年後でなければこれはペイしない。経済的に成り立たない。経営の最低限です。それまで本人に——ほったらかしておけば十年間で死んでしまいますよ。だから酪農をほんとうに奨励するなら、最初から採算ベースに乗る十頭なら十頭、そういうところから出発させる、それだけの資金手当てをする、それだけ飼育できるような草の条件、経営の条件、そういうものを整えてやる、こういうところから出発しなければ、これは酪農は何ぼ口先で言ったって不安定なんです。  それで、現在だって三割輸入して、そして七割は国産でありますが、三割が埋まった場合にはこれは米と同じことになるのです。肉の関係でも、えさの関係でも問題はたくさんありますが、一つとして、まじめに取り組んでいれば何年かの後にはこれはしっかりとした解決の見通しがつくだろうという安心感というものが農民にありません。口先だけでごまかして、そうしていいかげんなことを言ったって、こんなことで何ができるのか。実際に経験している者は、農林省の言うことなんか信用しません。農民生活でこれを体験しているのです。  それで農民は、どうしたら自分の一生はしあわせにできるだろうか、農村の青年は、どうしたら農村にいて希望が持てるようになるのだろうか、農村の老人はいまどんどんふえておるわけですが、農村の老人は、どうしたら老後が安定できるのか悩んでいる。こんなささやかな、こんなみじめな農民の願いというものに対して、農民のほんとうの生活実態に触れた、そしてその具体的な政策の上に立って、農民の悩みを悩みとし、苦しみを苦しみとして政策とほんとうに取り組まないで、ただ口先だけです。  経済問題はアメリカと均衡すればいいにきまっていますが、均衡できる条件があったのかどうかといったら、ないのでしょう。そういうところを埋めていくのが政治じゃないですか。現実の問題を踏まえて、そして将来はこうする、その間の経過的な措置としてはこうするのだ、こういう政治的配慮と政治的なそこの埋めくさというものがなかったら、今日の農民というものはたいへんな苦しみにさらされると思うのです。でありますから、いやおうなしに青年は逃げ出しちゃっているでしょう。農村には年寄りと女だけでしょう。それを若返らせる、そのために土地をどうするか。農地法の改正にいたしましても、これは総合農政の中の一部の部分品です。土地そのものは生産的には活動しません。農業政策というものでこの土地をどういうふうに活用し、経済的に働かして、そして総合農政の中に土地の条件というものを位置づけていくかということが、これが私は農地法改正の趣旨だろうと思うのです。そういう基本がきまらないで、目標がなくて、農地の部分品だけこしらえて、これで総合農政だ、流動化だと言ったって、こんなものは動くものじゃないのです。  総括的に言って、いろんな議論はあるでしょう。こうしたらいい、ああしたらいいとか、技術的な問題もいろいろありますが、いま農民がこういう総合農政の上に立って、自分の、農民生活の中に消化して、どうしたら農民としての一生にどのくらいしあわせがつかめるのだろうか、農村に青年がとどまってどれだけの希望が持てるのだろうか、老後がどうなるのだろうか、この三つの条件に安心を与えるような答弁を、大臣ひとつしてください。
  34. 長谷川四郎

    長谷川国務大臣 もう先ほどからいろいろ申し上げているとおり、お米だけによって生産をということでなくて、もっと総合的にやるのだ、総合的というのには、こういうような基本的な考え方を持っております、しかしまだ不足であろう、であるから、さらにこれらについては多くの方々からの御意見も拝聴して、その実施に当たっていきたいということは、先ほど来申し上げておるとおりでございます。  したがって、価格におきましてもそのとおりであって、私たちはアメリカ並みの農業を行なえなんということを言ったこともなければ、考えたこともありはしません。外国のようにただ農地というものを拡大することが私たちの見込みではないのでございまして、いかにその中に立って総合して、そして生産コストというものを引き下げるようにやるか、そして機械化していくか。それには政府はこういうような施策を与えましょう、こういうふうな補助もしましよう、こういうこともやっておるのでございます。  たとえば、日本で裸麦一つ見ましても、三千四百二十円で農民から買い上げたものを実際政府の売る価格は千八百八十七円で売っている。小麦にしても、三千二百九十一円で買ったものを千九百四十一円で売るのだ、こういうような価格でやっておるので、つまり、私たちは土地を拡大しようとか、あるいはもっと土地を広めて大農をやるのだというのではなくて、その中に立った農業を行なわしめる。それには、先ほどたくさん申し上げたから申し上げませんが、そういうような施策をもって行なわしめたい、こういうような考え方でございます。  さらに今後におきましても、たとえば酪農にいたしましてもしかりであり、なま乳におきましても、北海道にあるなま乳を東京まで輸送してきて、なまの乳で消費拡大をはかろうというような点もその一つの例でありますし、いろいろな施策というものは十分に加えて、そうして安定した農業かやっていけるように——農民年金にいたしましてもそのとおりであって、いかにして安定した農業がやっていけるかというような点に施策を加えていく。  それには、先ほどから申し上げておるとおり、価格ばかりではなくて、構造、生産、こういう点に重点を置いて、バランスのとれた今後の農政を行なってまいりたい、こういうふうに申し上げておるのでございます。
  35. 永井勝次郎

    永井委員 だから総合農政はけっこうです。米に片寄り過ぎているから、米はそのとおりでよろしいが、米の線までほかのものを引き上げたらよろしい。適地適作もけっこうだ。だから、それが採算のとれるようにしなさい。耕地を拡大するといったって、アメリカのような拡大競争はできないのだから、そうすると、日本でできる限度の農地の中で、そしてアメリカ競争するために、価格競争でなくて、政治的な突っかい棒が国内で必要ではないか。それから、国内における他産業との均衡のとれた生活のためには、もっと農民生活の水準を上げなければいけないのじゃないか、そういう措置を総合的にする必要があるのじゃないか、私はこういうことを言っておるのです。  いま、日本経済は世界で第二位だという。そうしてその中で造船とカメラは世界第一ですよ。それから合成繊維と、テレビと、プラスチックは世界で第二位です。それから鉄鋼、自動車、セメントは第三位です。こういう非常にすぐれた高度成長日本経済はしておる。そうしてこれを所得の関係で見れば、資本金十億以上の会社八百九十内外の、わずか九百足らずの会社が、日本の全資産の四八%、半分を持っておるのですよ。日本の全所得の、純利益の半分をこの九百社が独占しておるのですよ。農業の中においては、米とその他のものとの格差があるが、他産業と比較したらこんな格差がある。これだけ有意義な経済を、なぜもっと農業の中につぎ込まないのか。そういうふうにしていくならば、国産のいろいろな戦略品目というものは相当な位置にのし上げることができるのじゃないか。ところが、ことしの〇・一%の予算のふえ方でもこれでたっぷりなのだ、こういうようなことを言っていたのでは私は問題でない、こう思うのです。  それでは大臣、私はこれだけ聞いて、参議院で呼んでおるそうですから、どうぞおいでください。口から出まかせでなくて、ほんとうに自分も納得できるような答弁をひとつ大臣もしてもらわなければいけないと思うのですね。そして参議院へどうぞお出かけください。
  36. 長谷川四郎

    長谷川国務大臣 私たちも、他産業との均衡のとれた農業を行なっていかせたい、そういうような考え方は皆さん方と少しも変わりはありませんし、また、私はその責任を持ってそのような方向方向づけていきたいというように考えております。本年度予算が、なるほど〇・一%であったか知りませんけれども、これに関連するところのいろいろな融資の面等においても相当大きく伸びておることも、反面見てもらわなければなりません。  いずれにいたしましても、他産業と均衡のとれた農業を営ませるという点については、責任を持ってその方向づけをしていく考え方でございます。
  37. 永井勝次郎

    永井委員 ただ、他産業とのかかわり合いにおいて私が心配なのは、他産業並み、並みと口では言いますが、実際には他産業並みではなくて、その中における農民位置づけ農業位置づけというものが非常に低い。そうして、まるで営利会社に農民を隷属させておる。  たとえば、小麦でありますと、製粉工場へもう永久小作のようなものです。ビール麦をつくる者は、ビール会社の永久小作です。アスパラをつくる者は、アスパラ工場の永久小作です。牛を飼う者は、乳業会社の永久小作です。ビートをつくる者は、製糖工場の永久小作です。自由にならないのですよ。自由になるような条件にしながら、実際は、もう昔の領主に年貢を上げるようにきまっちゃうんですから。そうして、そういうものの価格というのはある程度政府が関与してやっている。介入する。法律的に関与し、行政的に介入している。そうしておきながら、常に農民というものは押えつけられて、間違っても有利な条件というものはない。でありますから、いつでも余ったものは農民に押しつけられる。足りないものは農村からしぼり上げている。食糧が足りなくなれば、農民からいやおうなしにこれを取り上げてしまう。  私は、この総合農政というものは、あるいは農地法の改正にいたしましても、それから価格対策にいたしましても、結局、これは雇用問題に帰結すると思うのです。いかにして労働力を農村からしぼり上げるかというところに、この農業政策の他産業とのかかわり合いにおける焦点がしぼられておる、こう私は思う。どうですか。
  38. 大和田啓気

    大和田政府委員 非常に広範な問題の御質問でございますが、私は、原料農産物をつくる農家と製造会社との関係というのは、やはり契約栽培的な、製造業者にとってもコンスタントに原料が入るし、農家にとってもコンスタントのマーケットがあるという、そういう状態が一番望ましいと思います。  ただ、その場合隷属的な地位に農家があるかどうかということが問題で、そのためには、やはり私は、農協その他農民団体がしっかりしてもらう必要があるし、政府もそういう方向でてこ入れをいたしたいと思います。  それから雇用関係、まあ農業農業外とをつなぐバイブとしての農業労働力位置づけでございますけれども、いままでもずいぶん農業外からの雇用需要によって、農業従事者が外へ出てまいったわけで、この勢いは、私は今後も相当長期にわたって続くと思います。それが非常に無秩序に、あるいは無計画に、農業でほんとうに必要な人たちまでも一気に吸収するということでは、農業にとってきわめて痛手でございますけれども、私どもは、長い問題としては、やはり農業人口がだんだんに農業外に引き寄せられていくということは、そういう方向でものを考えていいと思います。  その場合の雇用条件あるいは就職後の賃金、労働関係の問題等々につきましては、これは農林省の所管ではございませんけれども関係省とも十分協力して、やはり適正なものをつくっていかなければならないと、そういうふうに考えるわけでございます。
  39. 永井勝次郎

    永井委員 雇用問題の分野について、経団連なり財界の発言は相当に強いのでありまして、いろいろなマスコミを通していろいろ論議をされております。それに対して農林省のほうも、それに呼応するように、農村からの離農労働力がずいぶん鈍化してきた。鈍化してきたのは、まず青年が行ってしまった。青年がそういうふうにしてだあっとなだれのように出ていったが、最近はずっと鈍化している。鈍化している原因は何かといえば、農業の過保護だ。保護に過ぎるから、それで離農を足どめする結果になっておる。いま一千万の労働力が農村にある。非常にこれは労働の生産性が低いんだ、だから、少なくもいまの省力化、機械化、近代化すれば、三百万ぐらいで労働力はいいだろう、七百万の労働力は、生産性の高い重化学工業のほうへ回すべきだ、こういう論議がずいぶんやかましく論議されておることは、皆さん御承知のとおり。  そういうところへこの農地法の改正、こういうもので、まあ安心していらっしゃい、土地はこういうふうにいたしますよ。それから価格政策については、これはもう後退して、構造政策でいきますよということで打ち切ってしまう。したがって、いかにして早く農村からその労働力を追い出すか。農業者年金の問題もそうであります。国民年金と中身がどれだけ違いますか。早く農村における老人を第一線から交代させるために、国民年金では六十五歳から給付する、それを六十歳ぐらいから給付しよう、これだけのことでしょう。いかにして早く農村から追い出すか、そうして農村の六十歳以上の老人に農業者年金を給付することによって、農村における若者が安心して他産業へ離農していける、そういう老人の生活に対する裏づけによってこの労働力の移動は促進される、こういう計算が、農地法の改正でも何でも、全部この中に集約されてきているんですよ。  だから私は、農地法改正の問題でも、農業者年金の問題でも、農産物価格の保証の問題でも、あるいは国際化における一つ競争力の強化というような、こういう大所高所によって、わからないようなばくとした問題によって、生活が立たないのはおまえが悪いんだ、こういうようなことにして、早く出ていきなさいと、農村から追い出し政策をいまやっているのが農林省農業政策だ。その引っぱり役をやっているのが財界だ。受け入れ体制をやっているのが財界だ。だから、結局、今日の農村問題は雇用の問題に集約できる。それ以外に何にも農村に魅力はないでしょう。  ですから、米の不足のときは米の供出によって、家さがししてまでも取り上げていった。今日労働力が非常に不足している、したがって、労働力をいかにして農村からしぼり上げるか、こういうことが私は、今日における総合農政の真のねらいである、こういうふうに理解しているのですが、これは思い過ぎでありますか。
  40. 大和田啓気

    大和田政府委員 私ども農地法その他あらゆる政策を通じて、農民を農村から無理に外に出すというふうに考えておるわけでは決してございません。農村から、あるいは農業から非農業へ少しずつ人口が移動していくということは、これは私は自然の勢いだと思いますけれども、出ていく人が円滑に、あるいはいい条件で出られるような方策ということを考えて、いろいろな策を考えておるわけで、決している人を追い出すという意図は毛頭ございません。  農村の道路その他生活環境を改善するということも、無理に農村から人を追い出すのではなくて、やはり農村に人が、無理でない形で相当安定的に落ちつけるようにという配慮でございます。
  41. 永井勝次郎

    永井委員 一体配慮ということは、具体的にどういうことをやっていますか。ほんとうに労働力生産性を高めるということが、国家的に、社会的に、民族的に必要であるとするならば、それはそういう配慮をすればよろしい。離農対策について、現在の農民生活よりもっとしあわせになるような条件ところへ、安心して行けるような道をちゃんとレールを敷けばよろしい。それは積極的にやらないんだ。  農業は現在でも、熟田の中に入って相当な面積を持っていても、どんどん規模拡大していくから、だんだん落ちていきます。あれは適正規模を持っていないんだから、あいつもいまにまいってしまうだろう、音をあげるだろう、こうやってじいっと自然死を待つ、安楽死を待つというような、こういうニヒリストのような、あいつも落ちていくぞ、落ちていくぞ、こうやって冷酷なにらみをしているのが農林省じゃないですか。ほんとうにあたたかい情を持っているなら、安心してそちらへ移れるような離農対策なり何なり、そうして現在よりも悪くない生活への道筋をちゃんとつくってやるのが総合農政、国の政治あり方じゃないですか。そういう対策は何もないでしょう。離農対策を私は奨励するのじゃありませんが、皆さんの理論としてそういうふうに農村から減らしていくというならば、五十二年の展望においてずっと減るという見通しを立てておるのですから、それならば、それらの人が長年農村において働いたというその功績に対して、普通なら退職年金なり何なりあるのですから、そういうことでそれらの人々に老後の安心感を与えるような、そういうあたたかい施策というものが裏づけになるのがほんとうでしょう。  たとえば、今度の構造改善にしても何にしてもそうですが、われわれこの間中球磨の圃場改良を見に行った。これは改良工事が完成して、一人当たりの所有面積は一・一ヘクタールくらいで、これでは経営が成り立たない。したがって、何か兼業をやらなきゃいかぬがというので、いま工場誘地をいろいろ考えている。しかし、そんなものは雲をつかむような話です。土地改良はしたが、しかし、それで経営は成り立たないという常に不安感がある。結局、これも土地改良したが、あとに残るのは半分かあるいは三分の一、そのほかの人たちは転落していく。それを冷酷に、土地改良したが、あれはいまに落ちていくぞというような態度で見ているのは、ひどいやり方じゃないかと思いますが、いかがでしょうか。
  42. 小沢辰男

    ○小沢(辰)政府委員 先生の所見ではございますが、少しどうもめがねに強い色がつき過ぎておるのじゃないかというふうに私は感じます。  先生のおっしゃることは、いまずっと私も、大臣のおられる間ほかの席で聞いておりまして、ごもっともな点ももちろんございます。そういうようにいま苦しい農業事情でありますから、私どもも実は農林省で、いかに農村を守り、農民を守り、農業生産力を上げていくかということに苦心をいたしておるわけでございまして、農地法の改正にいたしましても、あるいはまた、この前御審議いただきました農振法の問題にいたしましても、その他万般、少しでも農業生産性向上させ、従来の価格政策から脱却して自立的農業、あるいはいまの農地法の改正でも、少しでも規模拡大に役立つような、しかも、農地法基本の精神は維持しながら、そういう面で努力をしていることだけはひとつお認めを願わないと、何かこう私ども農林省が——もちろん効果はそんなにあがっておりませんで、いろいろな面で反省を要する点があろうと思いますけれども、どうも農村をいじめるとか、あるいは労働力をいびり出すためのあれを冷酷にやっているように言われますことは、少しめがねの色が強いのじゃないかと思うのでございます。  御叱正としては私どもよく傾聴いたしまして、今後の政策にあたっては、いろいろとまた御高見をひとつ反映するような努力もいたしたいと思いますけれども、非常に困難な中にあって、一つ一つ問題をより一歩前進をしようという真摯な気持ちだけは、ひとつお認めいただきたいと思うわけでございます。
  43. 永井勝次郎

    永井委員 いまの政務次官の答弁を、善意にそのとおり理解しますと、私はあなた個人の人間性を理解した、こういうふうな限度において理解します。しかし、資本主義自体というものは冷酷なものですよ。あなた方の所属している基盤というものは、政治姿勢というものは、これは弱い者に恵んでやるというようなことでは、営利的な追求というものは最大限に伸ばせるものではないのです。弱い者は踏みつけていく、そろばんに合わないものはどんどん削っていく、人間的な涙なんかは経済の分野ではする必要はないのだ、そういう涙を流せばそれで終わりなのだ、そろばんがはずれるのだ、こういう冷酷なものでしょう。冷酷なものであるから、先ほど私が言ったように、日本の全資産の半分が一これは大蔵省の統計ですから、うそでも何でもない。日本の全資産の半分を資本金十億以上の……(「株主構成はどうだ」と呼ぶ者あり)冗談でないよ。何を言っているのだ。資本金十億以上の九百社が、全資産の半分を所有しているのですよ。株主は、零細な者がどれだけ持っておりますか。冗談じゃないですよ。   〔発言する者あり〕
  44. 丹羽兵助

    丹羽委員長 不規則発言を禁じます。
  45. 永井勝次郎

    永井委員 だから、日本のいまの民主主義というものが、いま再び問われているのです。いまみな元へ戻ろう、戻ろうという逆風が吹いている。軍備はつくる、それから教育も軍事教育を再現しよう、あるいは産学協同で産業に奉仕する教育をやろう、それから農業も農村からもっと労働力を出してしまおう、こういうことをやっておる。もしそれが違うならば、いま農民生活をいかにして守るかということを考えているというなら、それじゃ現状のままで他産業生活水準を同じにし、国際競争力を持てるような条件農民生活を維持するための具体的な政策というものを示してごらんなさい。できますか。できないでしょう。それじゃ、国際競争力の足りないこの格差に対して、国が政治的にそこへ金をぶち込みますか。ぶち込んでいないでしょう。前年に比べて〇・一%より予算がふえていないでしょう。これでどうして維持できるか。維持したいという願望はわかりますよ。しかし、維持できる経済的な条件というものは何も整っていないのですよ。口で慰めているだけです。  ですから、昔は米のめしを食えない人が、病人になっていよいよ死ぬときに、竹筒に入れた米粒の音だけ聞かせた。いまはそれほどのひどい状態ではないでしょうけれども、自民党がいま米の値段を下げた、農村からどんどん人が離農していくときに、これは当然だということは、政務次官として言えないでしょう。ですから人が死んだときには、まくら元でお経をあげて、迷わず成仏してくれと言う。だからいまの小沢政務次官のお話は、そういう死んでいく人へのお経として聞けば私はわかります。それ以外の何ものでもありません。もしそれがそうでないというならば、具体的に政策を示しなさい。どうやって農民を守っていくか、どうやれば生活が安定できるか。そうしてこの現状の中において、さっき言ったような国際競争力を強める、さあどこからでも来い、そういうようなことが言える条件が自力で盛り上がるかどうか、そういうことを具体的に示すなら、私はいまの前言を取り消しましょう。どうですか。
  46. 小沢辰男

    ○小沢(辰)政府委員 先生の発言を、お取り消し願う必要はないと思うのです、先生は先生の御所見でいろいろ言われているわけでございますので。したがって、私どもはやはり先生の御発言については一つの批判として、十分いろいろ検討しながらやっていかなければならないと考えております。  ただ、何もしていない、お経だと言われますけれども、たとえば、今年度予算で第二次構造改善事業を進める、あるいは法律の問題でも、農業振興地域の整備に関する法律をお願いし、あるいは農協法の改正をやり、あるいは農地法の改正をやり、価格政策にいたしましても、今年米価問題はああいうようなことになりましたけれども、その他の——先ほどビートについては砂糖工場の下請だ、あるいはまた隷属だと言われますけれども、私どもがビートの値段をきめるときには、むしろ生産者の立場に立って今年度もきめておりますし、また乳価の問題につきましても、そういう面で三月末には相当の配慮をしたつもりでございます。  今後も、あるいは農産物の自由化問題につきましても農林大臣は就任以来もうあくまでも、国内の体制が整うまでは何とかしてこの大きな自由化の波に抵抗して、また農林省をあげてがんばって、今日までどうやら農産物の点については、いろいろ諸外国の理解を求めつつ、自由化の波に抵抗いたして、その間に私どもとしては、いま御審議願っておる農地法を含めまして三法について御協賛をいただき、その法制の整備をまって、できるだけ充実した農業というものをつくり上げていこうという努力をいたしておるわけでございますので、そういう面も十分御理解をいただいて、いろいろ御叱正をいただければ幸いと思うわけでございます。
  47. 永井勝次郎

    永井委員 私は、政務次官や政府当局と相対でいろいろやっているのじゃないのです。われわれも天下の野党です。第一党の野党です。国の農政に対しては、それなりの責任と一つの見識を持って対処しているつもりです。いま日本農業というものの病気をなおさなければいけない。先ほども言ったように、病人を中心にしていま診断をしているのです。治療方法をいまあなたと議論しているのです。これは氷で冷やしたらいいか、あっためたらいいかということで、あなたはあなたでかってにしなさいという、そういう性質のものじゃないですよ。そんなでたらめなことを、無責任なことを言っているのじゃない。われわれは数字をあげて言っているのです。もしほんとうにいまの政府農政について重要だということで取り組む気なら、先般閣僚協議会というものをつくられたようでありますが農林大臣が一人でがんばったって、それはさか立ちしたって問題じゃないのです。自民党政府それから自民党全体が、いまの農政をほんとうに正しいあり方にするには、どういうふうにして安定させるコースをちゃんと確立するかということを——これは自民党だけでも私はできないと思う。国民全体が、もう少し真剣に取り組まなければならないたいへんむずかしい問題だ、こう思うのです。  それで、いま農業基本法が出発して何年になりますか。米が増産して需給バランスが破れたという見通しを立ててから何年になりますか。それから、畑作が悲劇の状態にどんどん落ち込んでいるという状態を見て何年になりますか。そしていま米を転換させるための一つの目先の局面転回として、ここでただ総合農政だとかなんとか中身のないことを言っているだけです。それじゃ米をやめて何をつくったらいいのかといったら、適地適作だ、こんな抽象論より言えないでしょう。そういう問題がいけないというのです。それでわれわれは農民のことを最も愛するだなんということで自分をなぐさめていたのじゃ、夜になってから今日の農村を考えると、ほんとうに胸に手を置いたら胸がうずくだろうと私は思うのです。そういう問題はもう少し真剣に、ただこの場における野党と与党あるいは政府との質疑のやりとりという一片の、一時間半前後のやりとりだということで問題を済ましてもらいたくない。  日本のやり方について、これはおかしいぞということは私が言うばかりでないのです。イギリスのエコノミストが、この前「日本特集号」を出しました。その「日本特集号」の中に、「驚くべき日本」というわき見出しがついているのです。その中身は、イギリスでは力のある者は自力でやれるからこれはほうっておくのだ、力のない者にいろいろと国が援助をしそして育てていく。ところ日本ではその逆だ、力のある者には税金をまけてやる、安い金利で貸してやる、それからいろいろな国の助成をする、そして弱いほうの者には見向きもしない、驚くべき日本だと、これほど国際的に日本のいまの自民党の政策は有名になっているのですよ。私がここで言うだけじゃないのです。ですから私はその意味において、もう少し謙虚に事実をわきまえて、事実の分析の上に立って真剣に論議すべきときだ、こう思います。  約束の時間でありますから、私はこれでやめますが、もう少し他産業との関係で、具体的にどういうふうにしたら均衡がとれるのか、国際的な競争をどうしたらいいのか、適正規模というのはどれくらいに見ているのか、農家収入をどういうふうに見ているのか、こういうふうなことを私はもっと詰めなければいけないと思うのです。非常に大ざっぱな抽象論に終わりましたけれども、これらの問題が明確にならなければ、私は今日の総合農政とか農政転換とか、こういうことは言えないと思う。ひとつお互いに協力していきたい、こう思います。
  48. 丹羽兵助

    丹羽委員長 午後一時再会することとし、これにて休憩いたします。    午後零時六分休憩      ————◇—————    午後一時三十五分開議
  49. 丹羽兵助

    丹羽委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  午前の会議に引き続き質疑を続行いたします。芳賀貢君。
  50. 芳賀貢

    ○芳賀委員 農地法の改正点の質疑に入る前に、農林当局にお尋ねします。  去る昭和四十年、四十一年の両度の国会において、政府から農地管理事業団法案なるものが提出されたわけであります。これは両度の国会において慎重審議いたしましたけれども、ついに成立を見なかったわけであります。しかし、農地管理事業団構想というものは、現行の農地法に大きな関連と意義を持っておりますので、いまだに論争の主要な点が記憶に残っておるわけであります。  その当時、大臣は赤城農林大臣、坂田農林大臣の時代でありましたが、管理事業団法案を担当した現役は、いまの大和田官房長であります。当時の審議の過程におきまして、農地法の制度の問題については、政府としては現在の農地法の一番の柱である自作農主義。これを改変するような考えは毛頭ない、また農地制度というものは、世界諸国においても、一度これを誤った手直しをすると取り返しがつかないことになるので、政府としては、現行農地法についてはこれを改変する意思はないということを、たびたび言明されたわけであります。  その後、三年足らずの今日において、今日までの委員会審議を通じましても、現在の農地法の体系を根本的に改変するような改正が盛られておるわけでありまして、この三年間において政府として、特に農林省として、農地法のむしろ改悪に取り組んだその真意、これを明確にしてもらいたいと思うわけであります。これは農林省の現役官僚を代表して、大和田官房長からでもよろしいと思います。
  51. 大和田啓気

    大和田政府委員 農地制度が農業に関する基本的な制度であって、農業発展のためにこれをゆるがせにできないことは、私ども確信をいたしているところでございます。  これは農業基本法以来でございますけれども、特にここ二、三年、農林省といたしましては、基本農政推進するために、どの農業政策に力点を置くべきかということを、省内あげて検討をいたしました結果、先ほども農林大臣からお話がありましたように、新しい観点に立って構造政策生産政策を遂行すべきである、その農業経営の拡大といいますか、農業経営の発展のためには、現行の農地制度が一つの制約因子になっている、そういう判断に立ったわけでございます。
  52. 芳賀貢

    ○芳賀委員 それでは現在の農地法が、わが国農政発展させる場合に障害になっているということですか、いまの答弁は。
  53. 大和田啓気

    大和田政府委員 農地改革の結果、耕作権がきわめて強固なものになり、また、小作料が法律上厳重に統制されたわけでございます。それは農地改革の過程において、また農地改革後の日本農業条件の中においてしかるべき役割りを果たした。それはそういうふうな制度のもとでなければ、日本農業発展は望まれなかったというふうに考えるわけでございます。  しかし、その後の農業の動きを見ますと、基本法以来自立経営といいますか、あるいは自立経営候補者といいますか、片方で経営を相当伸ばすべき優秀な農家があり、また他方、すでに経営を縮小してもいいという兼業農家が相当できておるのが現実でございますけれども、現行の農地法の制度のもとにおいては、一たん農地を貸し付けると、耕作をする人が返すというふうに出ない限りは戻らないシステムになっておるわけでございます。したがいまして、経営を縮小しようとする者が、二、三反歩人に貸してもいいという状況にありましても、あぶなくてなかなか土地を人に貸すことができない、したがって、その人たちのやる道としては荒らしづくりをするか、あるいは請負耕作という形で相当高い負担で耕作者に耕作をさせ、しかも、そこにおいては法律上の耕作権が全然保障されないということになっておるわけでございますから、私が申し上げましたように、一方においては経営を伸ばすようなエネルギーのある農家があり、片方で経営を縮小しようとする農家がある場合に、それを円滑に借地の形で耕地の移動ができるということが、いまの農業条件においてたいへん必要なことであって、このことは自作農主義を放棄したということではございません。現在九四、五%も自作地であり、自作農が国の農業の大本であることは変わりがないことでありますから、自作農主義を守りつつ、やはり新しい条件に応じて経営を伸ばそうという思想でございます。
  54. 芳賀貢

    ○芳賀委員 いま聞きますと、現象面の枝葉末節と思われるような点を列挙されて、これだから改正の必要があるというように聞こえるわけです。もう少し基本的に、われわれが納得できるような改正あるいは改悪の理由というのは、他にはないのですか。
  55. 大和田啓気

    大和田政府委員 私は、経営を伸ばしたいと思う農家ができるだけ円滑に経営を伸ばす条件をつくるということは、決して技術的なあるいは枝葉末節な条件ではないというふうに思います。
  56. 芳賀貢

    ○芳賀委員 その程度のささたる理由では、改正の意義はないと私は考えるわけであります。  そこで大臣にお尋ねしますが、今回の改正案の中において、第一に、農地法第一条の目的の改正を企図しておるわけでありますが、これは目的の改正ですから、このように目的が改正された場合には、いまの農地法の体系というものは本質的に一変するというふうにわれわれは受け取っておるわけでありますけれども、責任の大臣としてはどう考えていますか。   〔委員長退席、藤本委員長代理着席〕
  57. 長谷川四郎

    長谷川国務大臣 農地法は、耕作者の地位の安定と農業生産力の増強をはかることが究極の目的でありまして、このため、耕作をしない者の農地取得の禁止、耕作者の農地取得の促進、また耕作者の権利の保護、優秀な農用地の確保などという措置を規定しているのでございます。  最近、先ほど官房長からもお話がございましたように、現在の農業というものの実態といいましょうか、消費構造に大きな変化がある。したがって、やはり何といってもその消費構造の変化に即した農政を行なっていかなければならない。それには、昨日からもいろいろ申し上げましたように、価格政策ばかりではなくて、それに伴うところの構造、生産、こういう政策的な変更をやっていかなければならない、こういうような考え方でございます。  それには、やはり農業以外の兼業に重点を移していこうとする者が増加をしてきておる。そういうような者が、その所有地は手放したくない、またこれが父祖伝来のものですから、自分のものにすぐ返ってくるというのならば、何とかそういう方途を開いてもらって、そうして十分にその土地の活用ができるような方向を裏づけていく、こういうような考え方でございます。  したがいまして、こういうような地区の多い土地は、いずれも都市周辺ということもなかなか言い切れませんけれども、近いところのほうが多いようにも考えられる点もございます。あるいはそれは全国的に同一でございましょうけれども、そういうような点等を考え合わせてみたときに、その上に立った生産性の高い経営によって効率的にこれが利用されることになるならば、これが農地法の改正のねらいというものにマッチすることができ得る、こういうように考えて改正を行なわんとしておるのでございます。
  58. 芳賀貢

    ○芳賀委員 私のお尋ねしたのは、第一条の目的の改正は、この改正が行なわれた場合には、現在の農地法の体系を大きく改変することになるではないかということを聞いておるわけです。だから、そうなるのでなければそうならぬ、ならぬ場合にはどういうわけで改正してもならぬかということを、これは自民党、佐藤内閣としてこの必要性を認めて改正案を出しておるわけですから、少なくとも法律の目的を変えるということは重大な事柄ですからして、この点だけは農林大臣から明確な説明をしてもらいたい。
  59. 長谷川四郎

    長谷川国務大臣 この法律の目的は、自作農主義というものを保護する、こういうことでございますので、その目的そのものには何ら変化というものはうかがうことができ得ないだろう、私はこのように考えます。
  60. 芳賀貢

    ○芳賀委員 変化を来たさない改正であれば、むしろ改正しないほうがいいじゃないですか。変化を期待するから改正するのであって、変化に期待がないとすれば、第一条については、これは大原則の規定ですからして、この第一条は改正の必要がないということになるわけですね。
  61. 長谷川四郎

    長谷川国務大臣 その目的そのものには維持しながら、先ほど申し上げましたような方途を切り開いていく、こういうことでございます。
  62. 芳賀貢

    ○芳賀委員 私のお尋ねしているのは、第一条の目的を改正される法案を出しておるので、この目的が改正されれば、農地法それ自体が本質的に変わってくるのではないかということを聞いておるわけです。だから、第一条を変えても変化がないということであれば、第一条については手をつける必要がなかったのじゃないかということになるのですね。とにかくこれは大臣から、佐藤内閣としての立場から明確にひとつ……。
  63. 長谷川四郎

    長谷川国務大臣 私は、先ほど御答弁申し上げたとおりでありますが、これを改正した局長から、こまかい点について御説明をいたさせます。
  64. 芳賀貢

    ○芳賀委員 それではお尋ねしますが、この内閣提出の法案というのは、役人がつくって出すのですか。局長が提案の権限を持っておるということですか、どういうことですか。われわれはいままで、内閣提出法律案というものは、内閣の責任において国会に提出するというふうに思っておるし、そのとおりのわけなんだが、農林省の場合には特例を設けて、局長が法律をつくって提案する、そういうことに変わったのですか。
  65. 長谷川四郎

    長谷川国務大臣 説明を局長にさせます。提案者は、農林大臣が責任をもって提案をいたしました。
  66. 芳賀貢

    ○芳賀委員 それでは、あなたの部下の局長の答弁は全部そのとおりということで、政府を代表して農林大臣はそれを認めるわけですね。そういうことであれば、まあ審議の都合上考慮してもよろしいと思うのですよ。
  67. 長谷川四郎

    長谷川国務大臣 法案の事務的説明等においては責任を持ちますし、また政治的の点があるとするならば、それは私のほうで責任を持ちます。いずれにいたしましても私が全部責任を持ちます。
  68. 芳賀貢

    ○芳賀委員 失礼ですが、わからない点があっても責任を持つということですか。
  69. 長谷川四郎

    長谷川国務大臣 わからない点があれば、よく事務局から説明をいたさせます。私にわからない点があっても責任を持ちます。
  70. 芳賀貢

    ○芳賀委員 それでは、国会の権威の関係もあるので、農林大臣の不明な点は後刻総理大臣が出席する予定になっておりますので、そういう大事な点に限っては総理に質問をすることにして、内容の質疑に入りたいと思います。  それでは農地局長に尋ねますが、第一条の目的の改正というものは何のために行なったか、要旨を簡単に答弁してもらいたい。
  71. 中野和仁

    ○中野政府委員 目的の改正につきましては、先ほど大臣が御答弁になられましたとおりでございまして、農地改革によりまして自作農主義というものを恒久化してきたわけでございます。  その内容とするところは、耕作者が土地を持つということが最も望ましいということでありまして、そして十数年経てきたわけでございますが、その間農業の内外の事情が変わってまいりまして、土地を持つ者が必ず耕作するかというと、必ずしもそうでないような状況が順次出てきたわけでございます。それと同時に、他産業と均衡ある所得を得させて生産性を上げていくというためには、どうしてもいまの経営規模だけでは零細過ぎてなかなか均衡がとれない、やはり経営規模拡大をしていかなければならないという問題が出てきたわけでございます。  したがいまして、自作農主義の基本を堅持しながら、——と申しますのは、今回の改正によりましても、不耕作者が農地を取得することを禁止しておる原則は貫いておりますし、それから優良農地を確保するための転用規制も続けておりますし、耕作権の安定についても意を用いて、一部改正した点はございますが、そういう原則は貫いておるわけでございます。  そのワク内におきまして、やはり土地を効率的に利用する方向農地法の中に入れていかなければならないのではないかというふうに考えまして、今度の改正の目的の中に、「並びに土地の農業上の効率的な利用を図るためその利用関係調整」するということばを入れたわけでございます。
  72. 芳賀貢

    ○芳賀委員 わが国の農地制度の歴史を見ると、戦前あるいは戦時中、戦後二十数年を通じて、同じ農林省の中においても、農地制度を守るという擁護の精神、あるいは権力者に対して抵抗してでも農民の地位を守る、そういうことで一貫してきたわけですね。この農地行政を担当した歴代の農林省の職員諸君の一貫した精神というか、気魄というものについては、われわれは常に同意し、敬意を表してきたわけです。  ところが、最近になって全く態度が一変して、結局節を曲げるといったほうが妥当でしょうが、われわれが日時を費やして慎重審議をした中においても、どうしても改正をしなければ打開ができない、進展ができないという理由を発見することができないのですよ。ですから、それは日本農業発展上どうしても改正しなければならぬということでなくて、むしろ農業の縮小生産、あるいは農政の後退を企画するために農地法がじゃまになるからして改正するということに、今度の改正は通ずると思うのです。  だから、いま局長の言われた第一条の改正についても、この目的は明確になっておるわけですね。農地は耕作農民の所有すべきものであるという大原則がうたわれておるわけなんですよ。この原則が、ことばをかえれば自作農主義の完全実施ということにもなるわけですね。この農地は国土の一部ですが、国土である農地は、これはやはり個人の私有財産的な物権としてだけ扱うべきではない。その土地を生産手段として活用することにおいて農業生産が持続的に行なわれて、そして国民食糧供給を十分果たしておるということになるわけですからして、その意味において、土地の所有形態というものは、これは耕作する者の所有にすべきである、そういう原則の上に立って戦後の農地改革、あるいは農地制度というものは堅持されてきたわけですね。  今度の改正は、この耕作者の所有という原則規定を法文上は残してはあるが、それと並列的に借地農業をあわせて行なうということが、目的の改正点になっておるわけでしょう。農地を耕作者が所有して行なう農業の経営とあわせて借地農業を並列的に行なう、これが第一条の改正の主たる点ではないかというふうに思われるわけなんですが、その点はどうなんですか。
  73. 中野和仁

    ○中野政府委員 日本のいまの農家の現状から見ますと、自作農が大部分でございまして、純粋に小作人というのは約十万戸そういう程度でございます。そこまで自作農主義が徹底しております。その中で土地の流動化していった場合を考えてみましても、おそらく自作農がプラス若干の借地を加えて規模拡大をはかっていくということでございまして、借地農主義に農地法を切り変える、そこまで考えた上の案ではございません。
  74. 芳賀貢

    ○芳賀委員 全面的に移行させるとは私は言ってないでしょう。自作農主義が徹底したといっても、これは経過があるわけですね。戦後の占領政策の時代における農地制度の改革、それ以前から行なわれてきました自作農創設の制度、あるいは戦後の農地調整法によるところの権力的な土地解放、それからその後に農地法というものが制定されてきておるわけですからして、やはり占領政策によるところの権力的な自作農化、あるいはこの農地法の二十年近く果たしてきた役割りというものは、自作農主義を徹底したというよりも、守ってきたというほうが妥当な表現だと思うのですよ。この法律があったからそうなったのであって、何も皆さんが努力して自作農主義を徹底したということにはならぬじゃないですか。いまの答弁から受ける感じというものは・…−。
  75. 中野和仁

    ○中野政府委員 自作農主義が農地法によって守られてきたということにつきましては、芳賀先生御指摘のとおりでございます。  ただ、先ほども私が申し上げましたように、そういう事態でずっとまいりましたけれども、その自作農の中で、結局兼業にウエートを置いて、そちらの兼業が安定してくると同時に、その農地を荒らしづくりをしますとか、あるいは、先ほど官房長も申し上げましたが、請負に出すとかいう事態が非常に出てきました。このまま放置をしておきますと、農地法のらち外の秩序がまただんだんできてくるというような情勢にもなってきておりますので、この際そういう情勢の変化を織り込んで、やはり日本の限られた農地でございますから、それを秩序を立てた上で効率的に使う必要が出てきたというふうにわれわれ考えておるわけでございます。
  76. 芳賀貢

    ○芳賀委員 この際、農地法の第一条をお互い銘記した上で議論しなければいけないと思うわけです。第一条、「この法律は、農地はその耕作者みずからが所有することを最も適当であると認めて、耕作者の農地の取得を促進し、及びその権利を保護し、並びに土地の農業上の効率的な利用を図るためその利用関係調整し、もって耕作者の地位の安定と農業生産力の増進とを図ることを目的とする。」これは今後百年たっても、この目的というものはいささかも改正する必要はないと思うのですよ。そう思わぬですか。
  77. 中野和仁

    ○中野政府委員 農地制度が日本農業を進めていく上におきましての基本的な制度でございますから、現在われわれとしましては、この第一条の目的に沿ったような方向農業を持っていくべきだと考えておるのでありまして、百年先生言われますとちょっと答えにくい面もございますけれども、相当長期間こういう方向農業を進めていかなければならないというふうに考えるわけでございます。
  78. 芳賀貢

    ○芳賀委員 百年と言わず五百年たっても、土地の所有形態は、耕作者みずからがこれは所有すべきであるというこの原則は、これはもう千年たっても狂わす必要ないと思うのですがね。そうじゃないですか。(発言する者あり)雑音を気にする必要はないのですよ。与党の自民党だろうが、だれが言っても、あなたが農地局長として農地法を守る責任があるわけですからね。信念に基づいて、それは違うんなら違うんだと言ってごらんなさい。
  79. 中野和仁

    ○中野政府委員 真の耕作者が土地を持ってはじめて安定した経営をやれるという点においては、そのとおりでございます。
  80. 芳賀貢

    ○芳賀委員 次に、今回の改正の中でいずれも重要な問題が多いわけでありますが、いま局長の言われた現在の耕作事情からいうと、土地を所有しておる農家であっても、耕作を放棄したりあるいは経営を荒廃させておるというような現象が随所に見受けられるということですが、これは現在の農地法がそういう悪い影響を与えておるわけではないでしょう。むしろ経済的な事情とか、あるいは労働力需給事情であるとか、あるいは農業と他産業との所得の不均衡状態であるとか、そういう農地制度以外の客観的な情勢が変化していくわけですから、それに対して孤立するというわけには農民といえどもいかないわけですね。そういうことで、土地だけを基礎にした農業経営だけでは完全な生活ができないということで、一部専業はありますけれども、兼業的な農業というものが激化しておるということになる。おそらくそれは農地法のせいじゃないと思うのですよ。むしろそうなっておる現象に対して、抜本的にどのような施策を講ずるかということのほうが先決だと思うわけですよ。幾ら農地法を直してみても、問題の解決にはならぬと思うがどうですか。これだけの改正をやれば、もう全部解決するというふうに思っておるのですか。
  81. 中野和仁

    ○中野政府委員 農地法のために、いまおっしゃいましたようなことになっておるというふうには私も考えておりません。と同時に、農地法自体にも、私が先ほどから申し上げておりますような、農業内外の事情に対応できない問題も出てきておるわけでございます。
  82. 芳賀貢

    ○芳賀委員 それでは参考までに聞きますが、一体現在の全国の農地の保有総面積というものは、これは妥当な面積であるのか、これ以上まだふやす必要があるのか、もう多過ぎるからだんだん農地としての保有総面積を減らす必要があるのか、どう考えておるか。これは農地法関係あるですよ。これは農林大臣としておわかりなら答えてもらいたい。
  83. 長谷川四郎

    長谷川国務大臣 農地は人口というものとやはり匹敵しなければならぬ。一九九九年になりますと、世界人口というものの統計が出ておりますが、かなりの増を見ております。わが国においても当然増でございます。  そういうようなことになりますので、農地を縮小しようなどという考え方は毛頭持っておりません。
  84. 芳賀貢

    ○芳賀委員 それでは、生産の対象になる農地の配分についてはどう思っておられますか。
  85. 長谷川四郎

    長谷川国務大臣 生産の対象になる配分はおのずから、米それから畜産、一々あげれば切りがありませんけれども、その作目の分野によって生産の土地というものは確保されるべきものだと考えます。
  86. 芳賀貢

    ○芳賀委員 それじゃ一つ一つ聞きますが、農林省の資料によると、昭和四十三年度の田の面積は三百四十三万五千ヘクタール。それは最近の米穀の事情、先般の米価の据え置き、あるいは米が過剰で困るというような政府の宣伝に対応して、この三百四十三万五千ヘクタールというものは多過ぎると思いますか、あるいはどのくらい水田農地というものを減少したほうがいいと思うか、これは食糧庁長官から答えてもらいたいと思います。
  87. 桧垣徳太郎

    ○桧垣政府委員 先般来米の需給の問題では、米が構造的な供給過剰の状態にあるということを申し上げてきたのでありまして、その見解には異を唱える人はいないであろうと私は思うのでございます。  ただ、現在の需給事情を見ますと、米の平年作を前提にし、作付面積に変動なしということで考えますと、供給量が大体千三百六十五万トン前後ということに相なりますし、四十三年の米の総需要量の推算をただいまいたしておるのでございますが、最終的な調整を終わっておりませんけれども、おおむね千二百二十五万トン前後というふうに試算をされますので、その差額は、米の需給に関する限り過剰であるということは、私ははっきりいたしておると思うのでございます。  ただ、耕地の問題は、総農業生産というものを考えて耕地が必要か必要でないかという判断をすべきでございます。そういう観点からは、先ほど農林大臣もお答えになりましたように、日本の総自給度が八〇%前後というような国柄で、今後さらに農産物需要もふえ、また人口も同様にふえていくというようなところで、現在の耕地が非常に貴重な国民的資産、財産であるということは、私は大臣のお答えと同様の考えを持っておるのでございます。
  88. 芳賀貢

    ○芳賀委員 いや、私の聞いているのは、この総面積の中で水田面積が三百四十三万ヘクタールあるわけですからして、この農地と農業生産というものを結びつけて考えた場合に、これは農林大臣としても、食糧庁長官としても、大和田官房長にしても、水田面積は多過ぎるというふうに考えておられるわけでしょう。これだけは要らないと考えているのじゃないですか。だから、多過ぎると考えておるか、要らないと考えておるか。要らないとすれば、この三百四十万ヘクタールはどのくらい水田面積の保有を減少したほうがいいか、数字をあげて述べてもらいたいと思います。
  89. 大和田啓気

    大和田政府委員 御指摘の四十三年の三百四十三万五千ヘクタールというのは水田の面積でございまして、水稲の作付面積に直しますと三百十七万ヘクタールになるわけです。それで三百十七万ヘクタールでございますが、私ども昨年の十一月に出しました長期見通しによりますと、四百四十五キロの水稲の十アール当たりの収穫といたしまして、千二百四十万トン程度の米の需要量でございますから、それに見合う生産をあげる水稲の作付面積というのは、三百十七万ヘクタールから四十万ヘクタール引いた二百七十七万ヘクタールの水稲作付面積ということになるわけでございます。
  90. 芳賀貢

    ○芳賀委員 ちょっと答弁がずれているようですが、それじゃ小山理部長からでよろしいが、これは農林省の資料による基本統計、耕地面積、属地主義統計による耕地面積の全国の総面積が五百八十九万七千ヘクタール、そのうち田畑に分けて、田の面積が三百四十三万五千ヘクタールということになっておるわけです。この農地の中の田の面積はこれで正確だと思うのですが、これはどうですか。これは管理部長でいいです。
  91. 小山義夫

    小山説明員 先生いまおっしゃいました数字は、農林省の作物統計の数字でございまして正確でございます。
  92. 芳賀貢

    ○芳賀委員 それじゃ、官房長の言っているのは何かの間違いですね。いずれにしても多過ぎるから要らぬということになるんじゃないですか、田の面積は。その点農林大臣でもいいです。ここがはっきりしないと、農地法を何のために改正するかわからぬですよ。土地が余って要らぬから改正するのか、土地は大切だから、ますますこれを守るために改正するのかということになるじゃないですか。
  93. 小山義夫

    小山説明員 先ほど私が申し上げました、全国の総数が五百八十九万七千ヘクタール、それからそのうちの田が三百四十三万五千ヘクタール、これは水田の面積でございます。水稲の作付面積とは違うわけでございます。
  94. 芳賀貢

    ○芳賀委員 農地を対象にして議論しているわけだから間違わんでくださいよ。それでは、水田面積はこれほど要らぬということがわかりました。  それから今度の改正では、草地利用権の設定が新たに改正案の中に出てきておるわけですが、結局草地の造成、利用等によって、いわゆる畜産農業拡大をはかるというのが、農地法がこれから改正された場合に期待される一つ役割りだと思うわけですが、この関係の農用地はどのくらい拡大する必要があるのですか。これは畜産局長にお尋ねいたします。
  95. 太田康二

    ○太田政府委員 いままで農林省が公表いたしておりますものによりますと、御承知のとおり土地改良長期計画がございまして、四十年から四十九年の間に草利造成を四十万ヘクタールする。これはその段階におきまする草地の造成面積が十二万三千ヘクタールでありますから、五十二万三千ヘクタールに持っていくという計画をいま実施いたしておるのでございます。  それから、御承知のとおり昨年の十一月に、「農産物需要生産長期見通し」を発表いたしたのでございますが、その際われわれは、乳牛につきましては二百九十三万六千頭、肉牛につきましては二百五十九万一千頭。これに対し必要とされる飼料基盤でございますが、乳牛につきましては七五%を粗飼料で給与する、しかもそれは全量を良質粗飼料で給与する、肉牛につきましては八〇%粗飼料で給与いたしまして、そのうち良質粗飼料は四五%給与するという想定で、これらの飼料をそれぞれ草地造成なりあるいは既耕地における飼料作物の導入によって対処してまいりたいということで計画の見通しを出しておるのでございますが、それによりますと、草地の造成は四十一年が十五万五千ヘクタール、これを六十一万一千ヘクタールまで持っていきたい、それから既耕地における飼料作物の作付でございますが、四十一年が五十二万五千ヘクタールで、これを八十九万六千ヘクタールまで持っていきたい、こういう見通しを立てておるのでございます。
  96. 芳賀貢

    ○芳賀委員 そうすると、農地というものは総体的に見るとみだりに粗末にできないというふうにもとれるわけですが、農林省の統一した見解はどうなんですか。なるたけ粗雑に扱って、農業の総生産が低下するように農地法を改めるということで改正案を出したわけなんですが、長期の展望に立った場合、そう簡単に農地を粗末にするというわけにいかないのじゃないですか。どうですか、大臣
  97. 長谷川四郎

    長谷川国務大臣 農地を粗末にするどころか、いかに大切にして、たとえば耕さないでほっておいて、ペンペン草がはえているということばがありますけれども、そういうことのないように高度利用してもらいたい、こういう考え方の上に立って農地法というものを提案をしておるのでございますから、農地ほど大事なものはない。農地あってこそ初めて人間が成育していくのですから、これほど大事なものはこの世の中にはない。基本ですから、その基本をいかに大切にするかということからこのような考え方を持っております。
  98. 芳賀貢

    ○芳賀委員 その大事な農地を、だれが所有して、だれが経営することが一番望ましいですか。耕作する農民が所有して、真剣に耕作して農業生産をやることが望ましいのか、所有だけして、みずから耕作をしないで放置しておる者に保有の道を与えて維持させるのが望ましいのか。大切なものの扱い方というのはおおよそ見当がつくわけですが、どっちのほうがいいですか。
  99. 長谷川四郎

    長谷川国務大臣 それは議論の余地はないので、保有者が耕作をしてくれるということが一番いいことなんです。  ですけれども、人間性というものはなかなかそうはいかぬいろいろな理由もある。その理由があるから、ただ耕作はしないけれども、権利だけ持っておる、そういうようなことのないようにこれをりっぱな耕作者にやってもらう、こういうようなやり方をとって、あくまで、一寸の漏れ地のないほど農地を生かしていくというのが、今回の農地法の改正の目的でございます。
  100. 芳賀貢

    ○芳賀委員 これは大臣、からかうわけでないのですが、いまの農地法がその精神ですよ。耕作する者に所有の道を与えて、そうして、いわゆる自立農業拡大発展に向かって真剣に農業生産に努力してもらう、いわゆる土地改良等を通じて土地の生産性を高める、あるいは労働の生産性を高めることによって農業の近代化を進める、それがいまの農地法の精神じゃないですか。あなたの言うとおりになっておるのですよ、いまの農地法というのは。これを変えると反対になるのですよ。土地を粗末に扱う者に所有の道を与える、あるいは全然農業を放棄して他に転出する者に対しても保有の道を与えるというのが今度の改正ですからして、持たせる必要のない者に持たせるために農地法の改正が今度出されているわけですからね。大臣の言うとおりであれば、こんなものはすぐ撤回して、現行農地法を完全に実施するというのがいいじゃないですか。
  101. 長谷川四郎

    長谷川国務大臣 芳賀さんの見方と私の解釈のしかたは少しも違わないと思うのですが、現行法におきましても改正法においても、その精神、目的というものはちっとも変わりがない、こういうふうに私は思います。とにかくこれに相違があるはずがないのですけれども……。私はさように考えております。
  102. 芳賀貢

    ○芳賀委員 そう信じて疑わない者に、とやかく言ってもしようがないですね。  その次にお尋ねしたい点は、現在の農地法の第三条を中心とした、いわゆる農地の権利移動の制限規定ですね。いままではこういう場合にはできない、いけないということで制限規定が明確になっておったわけですが、今度の改正案によると、これもよろしい、これもできるというふうに今度は改正になっておるわけです。これはたいへんな改悪だと思いますが、この点について、なぜそうしなければならぬという、主たる理由を局長から述べてもらいたい。
  103. 中野和仁

    ○中野政府委員 農地法の第三条の権利移動統制は、農地法基本一つをなしております。その点につきましては目的の改正、先ほど御議論ございましたが、そういう趣旨から農地法の三条の移動統制につきまして、若干の改正を加えておるわけでございます。  それを申し上げますと、一つは、農協法の改正でも御審議いただいたわけでございますが、農業協同組合が農地の所有者から委託を受けて、賃借権といいましょうか、権利を取得する場合には許可ができるということにいたしたわけでございます。これは先ほどからも御議論が出ておりますが、地区によりましては、農協の委託経営をやらせたほうがいいという意見もあるので、その場合に、農協にそういう権利取得を認めるという趣旨でございます。  それからもう一つは、農地保有合理化促進事業、これは経営規模拡大なり、あるいは集団化なり、そういう農地保有の合理化を促進するために、農地あるいは採草放牧地とか、あるいは未懇地を買い入れまして、あるいは借り受けて、これを売ったり、それから貸したりする事業をやりたい、こういう法人、これはいま市町村あるいは県の公社等を考えておりますが、こういう法人に権利取得を認めたいということを考えたわけでございます。  それから、その次のおもな問題は、現在は下限面積というのがございまして、これにつきましては三反歩持っていなければ、農地の取得は認められないということになっております。もっともこれは政令で、ゼロの人でも三反歩以上買うなり、借りるなりすれば認めるということになっておりますが、それを五反歩に引き上げたいということでございます。  それからその次は、上限面積といっておりますけれども、現在は、一応内地は三ヘクタール、それから北海道は十二ヘクタールという上限面積がございまして、それをこえる場合は、主として自家労力によるということになっておりますが、これを、自分で農業経営をやり、農作業に従事する限りは、そういう制限をしないということにいたしたいというふうに考えております。  それからもう一つは、いわゆる創設農地というのがございますが、これは農地改革のときに小作人に売り渡した農地でございます。これは売ることは許可を受けてできるわけでございますが、永久に貸せないということになっておりますけれども、先ほどから申し上げますような農業事情の変化等もございますので、創設農地につきましても、政府が売りました農地につきましては、十年たてば貸すこともできるということにいたしたいということを考えておるわけでございます。  それから、もう一つの改正といたしましては、耕作者の農地の利用という面から考えまして、その農業経営の状況等を見まして、通作距離等も判断をいたしまして、非常に遠いところから、いわば資産保有的に買うというようなことで、かなり買われるほうの村に悪影響を及ぼすというような問題もございますので、その辺の判断をして、通作距離等から見まして、効率的に農地が使えない場合には許可をしません。  大体、主要な三条の改正は以上のようなことでございます。
  104. 芳賀貢

    ○芳賀委員 それは改正点に出ておりますね。だから現行法から見ると、片っ端からこれはできる。してもよろしいということになるわけでしょう。  それでは残っている、いけないという点は何と何ですか。改正した残りの禁止しているのは何と何ですか。
  105. 中野和仁

    ○中野政府委員 耕作をしない者が、農地を取得できないという大原則は残しているわけでございます。その他につきましては、ただいま申し上げましたように改正をいたすわけでございます。これで何でもできるというふうにはわれわれ考えておりません。いま申し上げました内客のようなものについて、許可をすることができるということにいたしておるわけでございます。
  106. 芳賀貢

    ○芳賀委員 いま、一つ残ったというのは、耕作をしない者は土地の取得ができないということだけしか残らぬという説明ですね。これはあとでも聞きますが、たとえば、下限面積を五反歩以上保有の意思のある者、それから経営をする意思表示をした者に対しては、ゼロの人でも五反歩以上保有ができるということになるわけでしょう。これについても、取得するときに、農業経営をやる意思がありますということだけでいいわけですね。取得した後にその意思が変わって、今度はそれを小作地に出すこともできるでしょう。あるいは生産法人に、従事しない所有者としてこれは提供することもできるわけですね。これはいま答弁は要らぬですが、その一つだけ残った点についても、今度の改正点等の関連で疑点が残っているわけです。  そこでいまの、できるできぬの中の重要な点についてだけお尋ねしますが、一つは、農地保有合理化促進事業、これは民法の三十四条の規定による非営利法人の規定内の、いわゆる社団、財団が法人格を持ってこの事業が行なえるということにしようとしておるわけでしょう。この内容が全然わからないのですよ。法律や要綱や提案理由の説明を見ても、いままでの同僚委員各位の質疑を通じても、一体農地保有合理化促進事業というものが、どういうような組織と性格を持って設立されて、いかなる業務を行なうとか、あるいは農地法上の権利関係がどうなるとか、そういうような諸般の点について、これは全然不明確になっておるわけです。ですからこの点は、この際内容を明らかにしてもらいたいと思います。
  107. 中野和仁

    ○中野政府委員 農地保有合理化法人の組織あるいは性格、いま先生のおっしゃいましたことにつきましては、当委員会でしばしば御質問がありまして、そのつどお答え申し上げておるわけでございますが、もう一ぺん簡略に繰り返させていただきます。  いま先生御指摘のように、われわれ考えております組織といたしましては、民法の非営利法人、これは大体われわれの想定では、主として県の出資をいたします公社というものを考えております。それから、もう一つは市町村を考えております。これは、第二次構造改善事業がこれからスタートするわけでございますが、その中に新しく経営整備事業というものを取り入れてきまして、離農する農家等から、土地を買うあるいは借りるということをいたしまして、農業を専心やっていこうという農家に売り渡すあるいは貸すという事業を新しくやらせるということにもなりますので、それに対応しているものでございます。   〔藤本委員長代理退席、三ツ林委員長代理着   席〕  そういう組織を考えておりまして、性格といたしましては、これはもちろん営利を目的といたしませんので、いわば地域の実情に応じまして、農地の管理事業といいましょうか、農地保有合理化事業をやるというふうにわれわれ考えております。  そこで、そういう法人がいろいろな問題を起こしては問題があると思いますので、これも前回申し上げましたが、省令によりまして農林大臣が個別に指定をする。どういう事業をやるかという内容を審査いたしまして、個別に指定をするというふうにわれわれ考えておるわけでございます。
  108. 芳賀貢

    ○芳賀委員 もう少し詳しく言うてもらわぬとわからぬですよ。それでは地域的には、都道府県単位あるいは市町村単位で、地方公共団体が単独出資者になって法人をつくるということですか、その設立については。
  109. 中野和仁

    ○中野政府委員 地方公共団体が出資者になってつくる、公社の場合はそういうふうに考えております。
  110. 芳賀貢

    ○芳賀委員 だから、都道府県並びに市町村の単独ですね。他に出資者はないわけですね。他の非営利法人とみなされる団体等については、これに参画はしないわけですね。地方公共団体だけに限るという構想ですね。
  111. 中野和仁

    ○中野政府委員 原則としてはそういうふうに考えておりますけれども、県の希望によりましては、農協の出資も認めないかという議論もあるわけでございます。
  112. 芳賀貢

    ○芳賀委員 そういう議論もあるというのではなくて、たとえば、この種の法人を新たに設立できるということが法律の規定にもし設けられるとすれば、やはり少なくとも省令等に基づいて法人を設立する場合には、これこれの要件でなければならぬというような点は、これは政府としてあるいは農林省として責任をもろて明確にする必要があるのじゃないですか。これだと農振法と同じように、政府は全然責任を持たぬで、批判者のような立場に立って、よければ認めてやるから持ってこいという態度じゃ、大事な農地法の中にこういう機関を入れるということは、問題があるのじゃないですか。
  113. 中野和仁

    ○中野政府委員 先ほども申し上げましたように、事業の内容等につきましても、農林省で準則といいましょうか、そういうものの考え方は明確にいたしたいというふうに思っております。  それから、先ほどちょっと議論もあるということを申し上げまして失礼いたしましたが、県からそういう要望もあるわけでございます。われわれは原則としては、市町村それから県の出資ということを考えておるわけでございます。
  114. 芳賀貢

    ○芳賀委員 この点は、農地管理事業団法案が国会に提出された場合も、相当当農林委員会としては議論したわけなんです。あのときの構想は今度の構想と非常に違って、兼業化が非常に進んではおるが、しかし、日本農業の中で中核的な、たとえばそれは全農家の一〇%であっても、やはり独立して自立専業農業発展方向を目ざしていかれるような、そういう農家の育成というものはどうしても必要であるということだった。これは官房長も明確にいまでもそう思っておるでしょう。全部兼業になるなんということは、大反対だということを先日あなたは言っていましたね。もうすでに専業が二〇%くらいしかいないわけですから、これをふやすということは容易でないわけです。しかし、もう全部日本農業は兼業化していいなんということになれば、これは農業というものは全面的に崩壊するわけです。  だから、たとえば全農家の一〇%であっても一五%であっても、将来にわたって日本農業発展する方向を目ざしての中核としてこれはどうしても大切であるし、必要であるので、ここに重点を置いて、農地管理事業団の事業を通じて専業農家の経営拡大というものをやるということで、管理事業団法というものが出たわけなんですが、今度の場合にはそういう大目的というものは全然ないのでしょう。土地の売買のあっせんとか、耕作のあっせんであるとか、そういうあっせん屋のようなことを使命としてやるのではないかというふうにわれわれ判断しておるわけですが、これはどうなんですか。
  115. 中野和仁

    ○中野政府委員 農地法の改正案にもございますように、こういう事業をやらせる場合の目標といたしましては、農業経営規模拡大、農地の集団化、その他農地の保有の合理化を促進するという目的でやらせるつもりでございます。したがいまして、精神といいますか、趣旨としましては、先生おっしゃいましたかつての管理事業団法案のねらいと同じでございます。  ただ、先ほども説明いたしましたが、今回は地域の実情に応じまして、各県あるいは市町村で具体的な事業と結びつけながらやっていきたいというふうに考えておるわけでございます。
  116. 芳賀貢

    ○芳賀委員 農地管理事業団構想の場合には、これは国の機関としての役割りを果たす性格だったわけですね。今度の場合にはそういう性格づけはありませんが、しかし、国の農地制度の中でその一環を担当するということになれば、これは直接的な国の機関ではないとしても、やはり国の行政面に対する補助的な役割りというものはどうしても分担させるということになると思うが、その点はどうですか。
  117. 中野和仁

    ○中野政府委員 ただいま申し上げましたような目的を持ってやらせるわけでございますから、しかもさっき申し上げましたように、個別にそういう合理化法人の指定は農林大臣がいたすということにいたしたいと考えておりますので、国の農地行政の一種の一環をなすというふうに言っていいかと思います。
  118. 芳賀貢

    ○芳賀委員 農地管理事業団の場合は、その地域において事業団に売り渡しの希望が出された場合においても、取得の財源等の関係もあって、売り渡しの希望のある所有者の農地を全面的に買い取りができないという難点があったわけですよ。あるいはまた優良農地を優先的に買い入れるというようなところにも、離農希望の農家の場合には、生産条件が相当劣悪と思われるような農地を売り渡して離農したいというような希望もあるわけですから、そういうものに応ずるだけの体制が、管理事業団の場合はなかったのですね。  今度の場合は、都道府県を区域としあるいは市町村を区域としてこの種の法人ができた場合、その地域内の土地所有の農家が、自分の農地をこの事業法人に売り渡したいという申し出があった場合には、それは全面的にこの法人は農地の取得を行なうということになるのですか。金がないからできないとか、あなたの土地は非常に不良農地だからこれは買えないとか、そういう点は農林省としてはどのような指導をするわけなんですか。あるいはまたその地域で農地の売買が行なわれようとする場合、その地域にこうした非営利法人が介在するという場合には、たとえば、この法人に先買い権を付与するようにするのか、こういう点はどう考えておるのですか。
  119. 中野和仁

    ○中野政府委員 今度つくろうと考えております合理化法人が先買い権を持つ、あるいは申し出があれば全部買えるかどうか、こういう問題については、法律としてそれを義務づけるということは、今回は考えておりません。  と申しますのは、農地法では、そういう法人をつくった場合農地の取得ができるということを、今度の法律の改正案でお願いしておるわけでございまして、具体的にどういうふうに仕組んでいくかということは、そういう権能が与えられた上で、これから第二次構造改善事業の進められ方、それから地域におきましては、未墾地と既墾地と合わせて買って、そこへ都市からの、たとえば畜産公害で移転をしたい農家を入れるとか、いろいろなことを各県考えておるものですから、そういうものをあわせ考えまして、具体的なことを考えていきたいというふうに思っております。
  120. 芳賀貢

    ○芳賀委員 そういう権限を国から付与されない法人の場合には、期待した事業はできないと思うのですよ。いわゆる農地を売り渡す希望の者はなるたけ高く売りたいというのは、これは人情ですから、そういう場合は相対売買のほうがいいということになるわけですね。そうなれば必然的にこの法人に対しては、相対売買で有利に売れないというような農地を法人において扱ってくれということに、これは当然なると思うのです。そういうことは予期できないんですか。
  121. 中野和仁

    ○中野政府委員 あるいは地域の例を申し上げて恐縮でございますが、たとえば北海道では、まだ離農が進んでおる地帯もございます。そういうところの土地を買いまして、もう一ぺん農用地の造成等をやりまして、そこへ、北海道といえども過密の農業地帯もございますので、そこから移転をさせたいというようなことで、道庁とも話し合いをいたしておりますし、また鹿児島県におきましても、やはりそういうような考え方から、いま申し上げましたことに似たような事業をやりたいという希望もございます。そういう場合には、やはりそういう過疎的な地帯の離農農家の土地を買うということが一つの事業になるわけでございます。
  122. 芳賀貢

    ○芳賀委員 そうすると、過疎対策の一環として考えたいということになるわけですね。
  123. 中野和仁

    ○中野政府委員 ただいま申し上げましたのは一つの例でございます。そういう地域では、そういうふうに対応するということで公社をつくりたいということがございますし、また都市周辺では、たとえば千葉、埼玉、神奈川等からいろいろ相談に来ておりますが、市街化区域から市街化調整区域へと、ほんとに農業をやりたいんだからそちらへ移転したい、土地をあっせんしてくれぬかというような問題も出てきております。畜産団地をもう少し山につくりたいという希望も出ております。そういう事業をやりたいという希望が各県から出ておりますので、そういうものにも対応したいと考えております。
  124. 芳賀貢

    ○芳賀委員 それからこの法人は、たとえば希望者に対する土地取得資金等の導入あっせんというのは、どういう形でやるわけですか。
  125. 中野和仁

    ○中野政府委員 公社が離農者等から農地を買いまして、それを農家に売り渡すわけでありますから、われわれとしては、原則的には土地取得資金をそういう農家にあっせんと申しますか、公庫融資を優先的につけたいというふうに考えておるわけでございます。
  126. 芳賀貢

    ○芳賀委員 それじゃおもなねらいは、いまの公庫融資を考えているわけですね。われわれはこの改正に同意しているのではないが、せっかく政府のほうで改正案を出されたわけだから、内容を明らかにしないわけにいかぬですからね。それは農地管理事業団の場合も、この取得資金の導入等の問題が、やはり政府から明快な答弁が得られなかったんですよ。これは予算に拘束されるから、十分なことはできませんということで終わったわけですね。  だから、今度は希望があれば、制限なしに幾らでも、この公社を通じて取得希望者に、公庫資金を融通させるようにするわけですか。
  127. 中野和仁

    ○中野政府委員 今度の法人が、全国一斉に全部できるともわれわれは考えておりませんけれども、具体的にできましたものについて、そういう事業を具体的に仕組まれましたものにつきましては、優先的に公庫資金を持っていきたいというふうに考えております。
  128. 芳賀貢

    ○芳賀委員 その場合の条件は、たとえば年利二分五十年とか、三分四十年というようないろいろな説があるが、公庫資金の貸し付け規定等の抜本改正を行なうことは当然必要になると思うのです。どれくらいの条件の土地取得資金を流すようにするのか。その点はどうですか。
  129. 中野和仁

    ○中野政府委員 現行の土地取得資金は、先生御承知のとおり三分五厘二十五年でございます。これが金利が下がり、償還期間が長いほうがいいことは私どもも承知しておりますけれども、むしろ現在の土地取得資金の需要から見ますと、量を拡大しろというほうが強いのではないかというように思います。  したがいまして、きょう現在、農林漁業金融公庫法を直しまして、それを二分にするとか三分にするとかいうところまでは検討しておりません。
  130. 芳賀貢

    ○芳賀委員 管理事業団構想のときには三分四十年という案が出たわけですからね、もうすでに三年ぐらい前に。それから後退するわけにはいかないでしょう。希望者が、金利は幾ら高くても、資金ワクさえ一千万とか二千万貸してくれればいいというわけじゃないでしょう。資金量が大きければ大きいほど償還条件を可能にしてやらぬと、幾らでも貸してやるからという手放しなやり方じゃ、農地とか農業を対象にした金融の場合には成果があがらぬじゃないですか。
  131. 中野和仁

    ○中野政府委員 金利は、むろん幾ら高くてもいいということではございませんで、三分五厘ということになっております。これは現行の金利体系では一番低いわけでございます。  ただ、金利を下げればいいということは、農家のほうはそれだけ助かるわけでございますから、今後の検討課題にさせていただきたいと思います。
  132. 芳賀貢

    ○芳賀委員 次に、保有制限規定の問題ですが、まず下限ですね、現行法では保有を拡大する場合には、すでに現在三反歩以上の保有者でなければならぬ、ゼロから三反歩というわけにはまいらぬぞということになっておるが、今度は、すでに三反歩の保有をし経営を行なっておる農家でも、少しでも規模を拡張しようとする場合には、これは四反とか四反五畝ではだめだということになるわけですね。今度は三反から五反以上に飛躍しなければ保有の拡大はできないということになるわけですね。それからもう一つは、全然いままで農業の経営の経験もない、農業に携わっておらぬ者であっても、今後農業をやる意思があるということであれば、五反以上取得しようとすれば、それは認めるということになるわけですね。  その辺がどうもおかしいじゃないですか。ゼロの者が可能になって、従来何十年も好んで零細所有経営に甘んじておるわけではないでしょう、おそらく三反歩、四反歩農家であっても。その諸君に対しては、五反歩以上にならなければあなたはだめですよというような改正は、あまりにも冷酷じゃないですか。それからもう一方においては、ゼロの者であって、買い受けするときだけ農業経営の意思があります、精進する意思がありますということだけで取得を認めるということも、これはそのあとどうなるかということはだれもわからないわけですよ。この辺は特別に改正の必要はないのじゃないですか。何ら意味がないと思うのです。  この点が、一部から、これは零細農の首切りじゃないかということを指摘されておるのですよ。そういうつもりがなければ、この下限をこういうふうに改正するということは、これは差しとめたほうがいいじゃないですか。
  133. 中野和仁

    ○中野政府委員 問題は二点あるかと思いますが、その一つは、三反から五反に引き上げた理由でございます。これは前回にもたしか申し上げたと思いますが、当時三反ときめましたのは、大体三反以下は第二種兼業農家が多い。そして当時の統計によりますと、大体三反以下の農家のうち七割以上は第二種兼業農家でございました。ところが、その後兼業農家の規模が上がってきたと申しましょうか、現在では五反以下の八割以上はもう第二種兼業農家ということになっております。したがいまして、今後農業をやっていただこうという場合には、せめて五反以上でもってやってもらいたいという気持ちから、三反から五反に引き上げたわけでございます。それによりまして、現在三反の人は農業をやめてくれ、そういう意味ではございませんので、よくいわれます貧農切り捨てに通ずるということは、私たちはないと思っております。  それからもう一つ、ゼロの者との比較でございますが、これもたしか御議論があったかと思いますが、現行法によりましても、なるほど法律では先生御指摘のとおりでございますし、先生も御承知のことであるわけでございますが、政令によりまして、ゼロの人でも、農業に精進する見込みがあれば三反をこえることを認めるということに、これはかって現行農地法の国会での御審議のときにいろいろ議論になって、これを政令に入れた経緯がございます。それを今回法律に書いたわけでございまして、ゼロから出発して農業をやれるということについては、農地法上は同じことになるわけでございます。
  134. 芳賀貢

    ○芳賀委員 その点は、たとえば上限を越えた保有についても特例措置が、法律には書いてなくとも設けられて、実際にこれは適正に上限面積をこえる所有が行なわれておるわけだから、それと比較すれば、ゼロから三反歩という行政的な特例というのは、これはわかっていますが、今度は法律にゼロから五反以上、五反以下の保有者は五反にならなければだめだという、そういう点を明定するわけでしょう。  だから、百年前あるいは戦後二十年間、三反、四反の保有農地を大切にして経営を継続している農家もいるわけですね。機会があれば、それは五反あるいは一町歩にしたい気持ちは兼業農家の場合にもあると思うのです。しかし、なかなかいろいろな事情があって五反以下の農家が相当あるわけですね。だから、真剣に日本の零細所有形態の中で努力した農家に対して、一反歩でも五畝でも拡大しようという意思のある者に対して、その道を閉ざすというのは、これは制度的に見てもとるべき方法じゃないと思うのです。この点は重大な問題ですよ。そう思わぬですか。簡単に法律さえ変えればいいというぐあいに考えているのですか。
  135. 中野和仁

    ○中野政府委員 簡単に三反を五反に上げたということではございませんで、私も先ほど御説明申し上げましたように、農業事情の変化から、農業をやっていくにはせめて五反ということでやったわけでございます。  したがいまして、零細な農家が、三反であと五畝買いたいというときはなるほど買えない、あるいは借りられないということになるわけでございますけれども、その点は現在の三反歩にいたしましても、やはり二反の人は五畝買えないということでは同じことでございます。急に大原則を取っかえたというふうにはわれわれ考えていないわけでございます。
  136. 芳賀貢

    ○芳賀委員 それは局長、違うんじゃないですか。この農地法ができたときの三反以下と、今回の改正とは全く次元が違うんですよ。同じであるという小手先の答弁じゃ、これは相済まぬと思うのですがね。反省の余地がないとか、何とも思わぬというのならいいですよ、これは質疑ですから。  それから、上限を取っ払ってどれだけの意味があるんですか。上限を取っ払うことによって、一戸当たりの保有面積が五年後、十年後にどう変わるんですか。所有構造がどう変わるという期待を持っているんですか。  これは下限の引き上げとも関係がありますが、この資料には保有階層別の統計が出ておりますが、今回の下限の引き上げ、上限の撤廃によって、階層別の保有形態がどう変わるかという、何かの期待を持っているから改正するわけだと思うのですよ。その点を、五年後あるいは十年後と刻んで数字をあげてもらいたいと思うのです。
  137. 中野和仁

    ○中野政府委員 日本の農家の傾向、規模別の階層といいましょうか、それは順次零細な、三反や五反の農家が一方で離農して減るという問題と、それから上層農家が徐々にふえてくるという問題がございます。農地法をこういうふうに直したから、それでは五年先、十年先どうなるかということは、なかなか推定の方法もございませんので、われわれとして現在数字的には見込みを立てていません。  しかし、農業の技術あるいは機械化が進みまして、酪農なりあるいは果樹等の大規模な経営ということになってこないと、なかなか生産性も上げられないという問題もございますので、順次規模としては大きな農家がふえてくるというふうに考えております。
  138. 芳賀貢

    ○芳賀委員 たとえば上限の場合は、北海道を除いた都府県平均三ヘクタールでしょう。だから内地の都府県において、すでにもう上限の三ヘクタールに大部分の農家が達しておる、そこで頭打ちになって、この押えを取っ払わなければ、これからの発展が阻害されるということであれば理由はわかりますよ。しかし、いまでも大体七反歩から一町歩までの保有が一番多い割合を占めているわけでしょう。その占有率が一番多いわけでしょう。  だから、総体的に頭打ちになって困るというような現象は、どの都府県にも出ておらぬと思いますが、どうなんですか。実例があれば、何県はもう頭打ちになっているので、これはどうしても取っ払わなければならぬということの実例をあげてもらいたい。
  139. 中野和仁

    ○中野政府委員 日本の農家構成が、大体みんな均等に平均しておりまして、みんな二反五畝ぐらいが平均といいますか、全部がそのくらいに粒がそろっておる、そしてもう少し規模を大きくしたいから、あと何反というような需要のあることは、先生御承知のとおりでございます。非常に上層が少なくて、下層といいましょうか、それが多い、全体といたしましてはそういうことでございます。  しかし、先ほども申し上げましたように、今後の経営規模拡大ということから考えますと、三町歩で一応頭打ちだというようなものの考え方ではございませんで、むしろ自分で農作業に従事し、経営をやっていくという農家が出てまいりますれば、それの経営する面積は、やりたいというだけ認めるほうがいいんではないかというふうにわれわれ考えております。特に酪農あるいは果樹等につきましては、すでにそういう農家が徐々に出てきているというふうにわれわれ考えているわけでございます。
  140. 芳賀貢

    ○芳賀委員 これは局長も知っているとおり、現行制度のもとでもそれは行なわれておるわけですね、この保有限度を越える保有を認めるということについては。これは農地法の施行令の第一条の二項一号にちゃんと載っておるでしょう。これは適正に行なわれて、また効果をあげておるわけですから、いまの農地法のもとで行なわれることは行なったほうがいいのじゃないですか。大半の農家がもう平均三ヘクタールの限界に達して、この天井を取らなければ拡大生産ができないという場合には、これは十分検討して適正なものに直す必要があるが、ほとんどの農家がそういうようにいってないわけだから、あと十年、五十年たっても、大部分の農家が天井に達するなんということにはならぬじゃないですか。むしろこれは弊害が生じますよ、こういう青天井にするということは。そう思わないですか。いまの制度のもとでやっておることを、法律を改正して天井だけ取っ払っても意味がないじゃないですか。
  141. 中野和仁

    ○中野政府委員 現在でも、先ほど先生政令というふうにおっしゃいましたけれども、上限面積につきましては法律で、主として自家労力でやる場合には三町歩をこえてもよろしいということになっております。そしてその改正は、たしか三十七年に農地法を改正いたしましてそうなったわけでございますが、その後許可しました戸数としましても、八千七百戸というふうになってきております。  われわれ今度こういうふうに考えましたのは、個々の農家が大きく発展をしたいといった場合に、ほかにじゃまにならないといった場合には、農地法でそういう制限をしておく必要はないのではないかというふうに考えましたものですから、その三町歩という問題をはずしたわけでございます。
  142. 芳賀貢

    ○芳賀委員 次に、法人資格の制限の改正の点ですが、これはどういう主たるねらいがあるわけですか。いままでは、法人の経営面積内における常時従事者の提供する土地面積、あるいは法人の組合員の常時従事の割合というものが法律で明確になっておったわけですが、今度はその点は非常に緩和しておるわけですね。これはあとで述べます不在地主の復活とあわせて、表面から見ると気がつかないようなことになっておるが、これは内容は非常に危険性があると思うのです。特に、その正常な集団化、共同化を阻害するような要因もあると思うわけです。
  143. 中野和仁

    ○中野政府委員 農業生産法人の改正につきましては、先生いまおっしゃいましたような四つばかりの現行農業生産法人に加えております制限にかえまして、今度の生産法人の中核をなします、われわれはこれを農家と考えておるのでありますが、それが主として農業に従事し、かつ土地も提供するという農家が、役員の過半数を占めておればよろしいということにいたしたわけでございます。  ただ、この改正によりまして、それではいまある法人で、もし全員が働いている法人がありますれば、それがいけないということでは決してございません。しかし、機械化が進み、大規模化ということになってまいりますと、おそらく全員が全部働けというのは無理でございます。そういうことになってまいりますと、やはり中核をなす農家に土地を出資するという形がだんだん出てきておるようでございます。  その場合に、土地を出したにかかわらず配当はどうかということになりますと、現行法では六分という制限をしておるわけでございます。そういうことではなかなか土地は出したがらないという問題もございますので、今回改正案のような農業生産法人にいたしたわけでございます。それだからといって、ただいま申し上げましたように、現在の協業経営をこういう方向に全部持っていくというつもりでやったわけではございません。将来の発展方向から生産法人はこういうふうになってもよろしい、こういう意味でございます。
  144. 芳賀貢

    ○芳賀委員 中野局長は、先日同僚委員の質問に答えて、農業の定義について農協法を援用して述べられたでしょう。従来生産法人に参加する場合は、土地所有者であり耕作者である農民生産法人に参加するわけですね。耕作者である農民ということになれば、法人に参加しても、その者は従来同様農業にもっぱら従事することができると思うのですよ。法人に参加したとたんに農業に従事することができないという変化というのは生じないと思うのですよ。土地だけ提供して農業者としての地位に残るということになれば、いわゆる耕作しない、従事しない、働かないということになれば、どういう面から農業上の利益の分配を受けるということになるわけですか。結局、提供した農地に対する利益配分以外に方法はないじゃないですか。働かない法人の構成員をつくるというようなやり方は、正常な農業法人ということにならぬと思うのですよ。  盛んに集団化とか、協業化とかいうようなことを言っても、働かぬ農民だけがそれに参加して、それじゃ外部からの雇用労働を中心にやるか、資本的な企業農業生産法人の名のもとにやるかということになれば、これは擬装法人ということにもなりかねぬと思うのですよ。その辺どうも認識が甘いというか、他の目的があって農地法を改正しようとしておるのじゃないかというようにしか受け取れぬわけですが、どうですか。
  145. 中野和仁

    ○中野政府委員 ただいまの御議論は、前回にもあったと思いますが、現行法によりましても、改正法によりましても、資本の出資という形では農業生産法人の性格上認めないということにしております。ただ、現行法によりましても、これは労力を出すか、土地を出すかというのが条件でございます。したがって、現行法でも土地だけ出すという構成員がおります。今回もその点は同じでございます。  ただ、違いましたのは、たとえば、その法人の構成員の中の常時従事者が議決権の半分を持っていなければならぬということ、あるいは人から借りる面積は、法人経営面積の半分以下でなければならぬという制限もございましたけれども、法人の発展ということを考えますと、必ずしもそういうことにこだわる必要はないのじゃないか。  それからまた、生産規模拡大をはかっていきます場合に、機械も入ってまいりますと、やはり兼業農家も取り込んだような法人ということを考えますと、兼業農家を必ず働けというのも無理かと思います。補助労働で働く場合もありましょうし、あるいは土地だけその生産法人に出資をするなりあるいは貸すなりして、自分はほかで働く、こういうことになる場合が今後非常にふえてくると思いますし、現に、またそういう傾向も出てきておるわけでございます。  したがって、今度のような考え方をしたようなわけでございまして、外部資本云々の問題も前回もありましたけれども、われわれは、そういうことをねらってやっておるわけではございません。
  146. 芳賀貢

    ○芳賀委員 零細な土地所有者がみずから耕作することによって、農民としての範疇に入るわけでしょう。零細な土地を所有して耕作に従事しない、農業に従事しないということになれば、これは農民という規範からはずれるわけじゃないですか。どうですか。
  147. 中野和仁

    ○中野政府委員 耕作をしないということになりますと、いわゆる耕作をするという意味では農民からはずれるわけでございます。その点は御指摘のとおりですが、それではその農家の土地は全部もう取り上げる、そういうことはなかなかできませんけれども、それじゃすぐ売ってくれるかということになりますと、地価問題その他のことがあり、農業だけの責任ではございませんけれども、なかなか放したがらないという問題もございます。  しかも、いまのような生産法人の考え方をいたしませんと、結局法人にもなかなか入りにくいというようなことになりますと、結局土地はほっておくというようなことにもなりかねないという情勢が順次出てきておりますので、今回のような考え方をとったわけでございます。
  148. 芳賀貢

    ○芳賀委員 農民という定義を下す場合、土地を所有して耕作に従事している場合の農民と、土地は所有しておらなくて賃借の形で耕作に従事している場合と、それからもっぱら労働を通じて農業に従事する場合と多様性はあると思うのですよ。しかし、農地だけを所有しておるが全然農業に従事しておらぬ、耕作に従事しておらぬということになれば、これは農民というわけにはいかぬと思うのですね。ただ土地持ちということにしかならぬと思うんです。物権としての土地をその者が所有しておるというにすぎないと思うのですよ。だから、農民の資格を放棄させるような誘導の方法というのは間違っておるんじゃないですか。
  149. 中野和仁

    ○中野政府委員 放棄させるというふうに考えておるわけではございません。むしろそういう農家が二反、三反とやっておりましても、農業だけではもちろん成り立ちません。兼業とあわせて生計を営むことになるわけでございますが、田植え機が発達したり、あるいは刈り取り機が出てまいりますから、手の労働だけで二、三反をやるというのは無理でございます。  そこで、だんだんやる気がなくなる、あるいはだれかにやってもらう、こういうふうになってくるわけでございますので、過渡的と申しましょうか、経過的と申しましょうか、そういう農民が土地を放さない以上は、やはり今度の改正案のような考え方もとりまして、その土地が有効に利用されるということを考えなければならないというふうに考えるわけでございます。
  150. 芳賀貢

    ○芳賀委員 そういう農家が土地を手放さないからしようがないというような、安易な妥協だけで制度の改正をやるということは間違いですよ。そうなれば第一条の目的に照らして、土地は所有しておるが耕作の意思がない、働く意思がないという者の所有地は漸次買い上げて、農業に専念する者に与えるということは、いまの農地法の規定を十分に運営すれば当然できることじゃないですか。だめなんだからしようがないということで次々に法律を直していった場合には、一体結果はどうなるのですか。  ちょうど先日、六月十五日日曜日の夜、NHKの番組を通じて農林大臣と秋田県の農民が対話をしたのを私も見ておったわけです。あれは米価決定後ですから、米価の問題とか今後の米作の問題に重点はしぼられておったが、たまたま土地所有の問題に触れた点があるのですよ。その場合農林大臣は、個別農家が一反歩七十万円も百万円もする農地を取得して、経営規模拡大するなんということは絶対できない。できないことはもうわかっておる。だから、今後集団化、共同化を進めるような形で、いわゆる生産法人の経営形態というものを大きく拡大して、そこで土地保有を拡大するとかして一生懸命にやってもらわなければならぬ。その場合には、いままでの兼業の零細農家の場合にも、その集団化の中へ参加して、そこで分に応じて農業に従事してもらうようにしたい、こういう希望を述べられておったわけです。現実はそうだと思うのですよ。  しかし、中野局長のいまの答弁を聞くと、必ずしもあなたはそうは考えていないのでしょう。零細農家の場合には、生産法人に参加しても特別働く必要はない。そういうふうにあなたは割り切っておるわけですからね。労働する意思がなくて生産法人に参加して、どのような意味があるのですか。労働しない構成員をかかえて、どうしてそこから農業生産が上がるのですか。その点は、やはり今度の改正で不在地主を復活させるということと通じておると思うのですよ。  もう一つは、先般の当委員会で成立さした農協法の改正による委託経営の場合にも、そういうことが言えるわけですよ。あの際、私も農協法の改正の部分だけに触れて、農政局長と中野局長にただしたわけですが、経営委託といっても、経営も全部農協に委託して、その農地の耕作については、その委託した組合員は労働に従事しない形でも、組合員として自分の農協に経営委託ができるという、そういう説明があったわけですね。だから、土地を所有して農業に従事しておることによって、農民であり正組合員としての資格を持って協同組合に加入しておるその組合員が、今度は土地だけは所有しておるけれども、経営も耕作も全部農協に委託してしまって、残っているのはただその土地の所有権だけということになるわけです。こういう場合には、厳密に協同組合法からいっても、それは農民である正組合員ということには当然ならぬのじゃないかと思うのですよ。農協法の改正と農地法の改正は、三十七年の改正、それ以前の改正の場合も、大体同時改正のような形でやってきておるわけですね。だから、もう少し真剣に問題を考えてもらいたいと思うのですよ。あなた方のやっておる二年や三年の時代だけ何とかいけばいいということじゃないのですよ。  似たような例をとると、ほめた話じゃないが、食管法の場合は法律は改正しないのですよ。法律改正をしないで、政令だけ改正して自主流通米を実施するわけだが、これもけしからぬ話ですよ。まともに法律改正に取り組んで、やるんなら堂々とやればいいのに、全くインチキで、政令だけ改正してやっておるわけですね。しかし、その中には一つの配慮があると思うのですよ。別に私は桧垣君に聞いたわけじゃないが、米が余ったとか需給緩和とかいっても、将来にわたって米が余って困るという時代は続かぬと思うのですよ。米価の据え置きをやる、農民の所得を激減させる、生産意欲を喪失させるということになれば、農業生産はもう一年一年大きく後退するでしょう。そうすればまた供給不足需給逼迫という事態が来るわけだから、そういう場合は、法律を改正しないで、政令改正だけでごまかしておけば、また昔のように法律の第三条はどうだということで、従来どおりの法律運営ができる。  そこまで先を読んで政令の改正をやったわけでもないかもしらぬが、農地法の場合は再びもとへ戻すことはできないのですよ。それは国会でやることだから、多数の賛成があれば改正できますけれども、改悪したものをもとへ改善するということは、いままでの国会の歴史を見てもなかなかないんですね。政権交代でも早く行なわれて、自民党の中のたらい回しでない形で政権がかわればまた別ですがね。そういう点は農地局の皆さんは、単純というか素朴というか、そういう先の配慮というのが足りないのじゃないですか。中野君なんか特にまじめ一点ばりのほうだから、何でもかんでも法律改正しておけばいいということで、あなたはむきになってやっておるようですが、これはあとになって、中野というのはばかな男だったなということの批判が必ず出るですよ。私は老婆心までにそのことを言っておくのです。  今後、集団化とか共同化を進める以外に大きな道は開けないということになれば、この生産法人に関する改正というのは、これは非常に大きな障害になると思うのですよ。どうですか。あなたに聞いてわからぬければ、うしろにおる小山理部長でもいいし、農地課長もどこかにおるでしょう。
  151. 中野和仁

    ○中野政府委員 私自身、若い時分のことを申し上げて恐縮でございますが、農地改革にも携わったことがございます。そのときから、農地制度というのは日本農業基本的な制度であるということは十分承知をしておるわけでございます。今回改正いたしましたのも、思いつきでやったというふうにはわれわれ考えておりません。日本農業の将来のためには、こういう改正が、少なくとも条件整備として必要ではないかというふうに考えておるわけでございます。  そこで、ただいまお話生産法人の問題でございますが、先生おっしゃいましたように、全員が働くということを今回否定しておるわけではございません。そういう場合もありましょう。ありましょうけれども、現行法によりましても、土地だけ出して構成員になれるということにもなっております。ただ、外から雇用する量は半分ということになっておりますけれども、先ほど申し上げましたように、機械化が進んでまいりますと、たとえば十人で十ヘクタールの共同経営ということになりましても、中型トラクターを入れましてやるということになりますと、二、三人で済むというようなことになるわけで、あとの七人は労働力としては要らないということになってくるわけでございます。  そういう場合を考えましても、しかし、その人の土地がなければまた十ヘクタールの経営はできないという問題もございますので、本来その生産法人が、やめる農家から土地を一ぺんに買えればよろしゅうございますけれども、先ほどテレビの話が出ましたけれども、私も拝見いたしておりまして、あのときたしか秋田の農家の人が百万円と言いました。百万円の土地まで法人が買ったほうがいいのかどうか。それはいろいろな事情で高いのだと思いますが、単に農業だけの問題ではございません。しかし、それでは地代は、百万円の五分で五万円かというと、必ずしもそうばかりではございませんので、そういう高いところは、むしろ借りたほうがいいわけでございます。  いろいろなことがございますので、今回の改正のような考え方をとったわけでございます。
  152. 芳賀貢

    ○芳賀委員 この問題と請負耕作の問題は関係があると思うのですよ。これは表面に出ておりませんが、請負耕作は今度の改正でも、これは合法的に認めていないわけですね。しかし実際は、この農林省の資料によっても、請負耕作というのは逐年ふえておるわけです。これは全然否定、抹殺することはできないと思うのですよ。  だから、今度の生産法人の条件緩和と請負耕作の関係は、これは密接な関係が出てくると思うのですね。むしろ請負耕作を合法化させるために生産法人の条件緩和をやっておるというふうに思われるわけですが、この際、請負耕作の今後の取り扱いと、この生産法人の関連について局長から明確にしてもらいたい。
  153. 中野和仁

    ○中野政府委員 農家が農業から足を洗うといいましょうか、そういう場合には、最初は部分的に、非常に重労働的な作業から委託をするということから始まると思うのです。ところが、それがだんだん全面にわたりまして、結局請負になるということで、お出ししました統計にもありますように、かなり請負耕作が出ております。おそらく実態はもう少し多いのではないかというふうに思います。それを農地法立場から考えますと、耕作の全過程、あるいは大部分の過程を人にさせた場合には、それはもはや耕作者ではございません。むしろ請け負ったほうが耕作者なわけでございます。そういった立場からいいますと、請負耕作は望ましくないわけでございます。  そこでわれわれの考えましたのは、一方では個人間の相対の賃貸借につきまして、過去の経緯がございましてあまりにも強かった耕作権に対して、地主と小作人との間のバランスをとるという考え方を入れたことと、それから、先ほどから御議論のありました生産法人に土地を預けられるということ、あるいは農協の委託経営、そういうものも入れてまいりまして、もう少し正規の賃貸借的なものの考え方にしていきませんと、このまま放置しておきますと、請け負ったほうの権利は何もございません。だから、一年一年改定というのが実情のようでございます。そういうことでは農地としての制度がもたない、このままでは農地法というものが、先ほども申し上げましたけれども、ワク外の世界ばかりふえていくという実情でございますので、この際、そういうことを考えた上で、秩序を立てたいということも一つのねらいでございます。
  154. 芳賀貢

    ○芳賀委員 請負耕作以外の問題は、時代がそうなったからやむを得ぬので、それに対応させるために法律の改正をやるとあなたは繰り返して言っているでしょう。それを請負耕作だけ除くのはどうしてですか。これは何とか処理できると思っているのですか。これも禁止するとか、認めないとか、こういう形態で行なった場合には罰則の適用をするとか……。
  155. 中野和仁

    ○中野政府委員 請負耕作が、農地法上望ましくないということはいま申し上げましたが、今度の改正案におきましても、耕作または養畜の事業の委託を受けることによって、所有権なり賃借権が取得される場合は許可しないということにしておりまして、今度は、法律上も請負耕作は認めないということにいたしました。そのために、賃貸借のいろいろな面での緩和なり、生産法人の要件緩和なりで、正規の賃貸借という方向にできるだけ持っていきたいということを考えているわけでございます。
  156. 芳賀貢

    ○芳賀委員 いや、私の言っているのは、改正する必要のないような問題についても、時代がこうなっているからそれに合わせるために改正をやりますということをあなたは言っているでしょう。そうであれば、請負耕作というのは燎原の火のように拡大しているわけだから、これも時代がここまで来たのだからやむを得ぬので、これを農地法の中で適法化するというふうに出してくるのがあたりまえだと思っておったところが、これだけは違法の行為だから絶対認めぬと、これだけ一つがんばっているのはおかしいじゃないかと言うのですよ。これに賛成するわけではないですよ。ほかのものは全部ノーズロースになって、請負耕作にだけまともに太刀打ちするようなかまえですから、それはおかしいのじゃないかね。一体いまの農林省の体制でやれるのかどうかという心配もあるのですからね。あなた疲れたらだれかかわって答弁してくれてもいいですよ。これは大事な問題ですからね。
  157. 中野和仁

    ○中野政府委員 請負耕作だけを禁止してというふうに先生おっしゃいますけれども、請負耕作を認めるということは、先ほども申し上げましたように、これは耕作者がどちらかということをさっきも申し上げたわけでございますけれども、その辺の秩序が全部こわれてしまう。結局農地法の耕作者というのは、それじゃ請け負わしたほうなのかということにもなりかねない。と申しますのは、このごろ一部の学者の方には、危険負担、それから名儀があればこれは農家だという説もあるくらいでございます。そういったことになりますと、農地法上耕作者はだれかということになりますので、土地を持っていてなかなか放したがらない人は耕作をする人に貸すという形の秩序の上に乗っけておくことが必要なわけでございます。  それ以外のことはみんなくずしてということでございますけれども、今度考えましたのは、すべて土地が効率的に使われる方向で統一してものを考えているつもりでございます。
  158. 芳賀貢

    ○芳賀委員 それじゃ幾ぶんでも農地法、農地制度を守りたいという意思はあるわけですね。
  159. 中野和仁

    ○中野政府委員 幾分ではございませんで、改正をいたしました上で、農地法の秩序はできるだけ、力のある限り守りたいというのが、私たちの考えでございます。
  160. 芳賀貢

    ○芳賀委員 次に、不在地主の復活の問題ですが、これは必要だという点がどうもわからないんですよ、同僚委員との質疑応答を聞いておっても。昔のように地主勢力が耕作農民を支配するようなことにはならぬ、それはかわりますが、制度論としていままで一貫して、土地は耕作者に所有させるという大原則の上に立って、制限内で在村保有は小作地として認めてきたわけですが、今度は挙家離村した場合、小作地の保有を一般承継人までも認めるということに改正するわけですから、これもたいへんな改正だと思うわけですね。一体、この期待効果というのはどこにあるんですか。こういうように昔に復活させることによって、改正上の期待効果というのはどこにあるわけなんですか。
  161. 中野和仁

    ○中野政府委員 離農をしていく農家の形としましては、村から外へ出る場合と、それから村の中から通勤をする場合とございます。いまの離農の形態を見ますと、やはり五反歩以下の農家が過半以上、大部分を占めておるわけでございます。  その外へ出る場合、いずれまた村へ帰りたいという問題もございましょう。あるいはまた、いますぐは売りたくないという問題もございましょう。ところがいまの農地法でありますと、外に出ると一切国が強制的に買い上げるということになっているものですから、それで、しかも政府の買い上げ額が五万円ですから、そういうことになりますと、とても村から外へ出られないということになるわけです。そうかといって、農業に専心するというほどの面積もないということになるものですから、やはりその間の事情をよく考えて、ある意味では、これは昨日も申し上げましたけれども、一時的でございます。永久に不在地主を認めるということではございません。親子二代という範囲で認めまして、その間社会情勢の変化等もございますし、村へ帰る者がなければ、いずれ売るという問題もございましょう。そういうことを考えまして、離農しようとする農家がしやすいようにしたわけでございます。
  162. 芳賀貢

    ○芳賀委員 離農する意思があれば、いまの農地法に基づいて、保有農地は手放して出ればいいんじゃないですか。それじゃ気の毒だというんですか。そういう考えであれば、農地改革はできなかったはずですよ。そう思わぬですか。
  163. 中野和仁

    ○中野政府委員 農地改革の場合は、体制といいますか、制度としまして、いわゆる旧地主制の打破というところに問題があったわけでございます。  今回われわれが考えておりますのは、いま現在農家でございます。それも、農業面から見れば零細な農家でございます。それの土地を、急に村から出ていくからといって、法定の五万円で強制的に買い上げるというような、そういう社会情勢では現在ないというふうに考えておるわけでございます。
  164. 芳賀貢

    ○芳賀委員 どうも、あなたの言うことは的はずれなところがときどきあるわけですね。まじめな答弁もしておるが、的をはずしたところもあるんですよ。あなた、ことさらにそういうこと言っているわけじゃないでしょうが……。  一体、今度の改正は離農をすすめるためにやるんでしょう。そうじゃないですか。できるだけ農業に定着してもらいたいということで改正するわけではないんでしょう。離農が容易になるようにするために改正するのが、これがもうほんとうの目的ですから、そうなれば、あなたのいまの説明は間違っておるじゃないですか。一日も早く挙家離村をすすめるためには、不在地主の復活を認める必要があるので改正をするのだということであれば、これはまた意味が通じるんですよ。しかし、脱農、離村をすすめるために改正しているわけだから問題があるんですよ。定着させるためにこういう改正やるわけですか。
  165. 中野和仁

    ○中野政府委員 離農をすすめるという意味は、追い出すというような、これはそういうことではないと私たちも思っております。離農しようとする農家がしやすいようにするのが今度のねらいでございます。と同時に、そういう農家の土地が、農村に残る農家に有効に利用されるようにということをあわせて考えておるわけでございまして、単にいま先生おっしゃいましたように、離農をすすめるというだけがねらいではございません。
  166. 芳賀貢

    ○芳賀委員 離農をしても土地を持っていくわけにいかぬでしょう。どうですか。北海道から東京に出る場合に、北海道で所有している十ヘクタールの土地を東京に持ってくるわけにいかぬでしょう。
  167. 中野和仁

    ○中野政府委員 不動産でございますから、北海道から東京へ持ってこられないのは事実でございますけれども、ただ、いずれくにに帰ってもう一ペんやるという気持ちもあって、土地は置いておきたいという気持ちがあるということは、先ほど申し上げたとおりでございます。
  168. 芳賀貢

    ○芳賀委員 それは問題が違うですよ。一たん離村した人がまた農業をやる場合は、経済的理由だけで農業をやるのではなくて、離農したことによって、何年か努力して相当の資産もできた、今後余生を送るために、田園における農業をやるためにいなかにいきたいという場合もある。その場合、これはゼロから五反歩以上であれば幾らでも保有できるわけですから、何もその土地にしがみついていかなければならぬということじゃないですか、はっきり農業をやめる人については。問題は最高統制小作料の十一倍の地価というところに問題があるのでしょう。六月十五日のテレビでも、秋田県では、おそらく上田だ思いますけれども、十アール百万円もするということですから、農地を処分する場合、どうしても十アール五万円でなければならぬ、五万円で売るという必要はないですよ。これは農地合理化促進事業団が出ても、五万円や七万円で農地の売買のあっせんはできないと思うのです。  だから、やはり農業を放棄して新しい職に転換するという場合には、やはり最小限の資金も要るわけですから、そういう場合には、できるだけ適法に、有効に、農地というものが処分されて、そうして在村の農家がそれをまた取得して有効に使うということのほうが、これは国家百年の大計から見てもいいじゃないですか。農地制度としてはそれが筋が通るのですよ。しかも、これは一代に限らず二代目に及ぶわけでしょう。何のために二代に、子孫に伝えなければならぬのですか、不在地主の土地所有というものを。
  169. 中野和仁

    ○中野政府委員 離農いたしまして、その農家が売っていく場合も多いわけでございます。現に、われわれの統計によりましても相当ございます。と同時に、売るのはいやだという農家もあるわけでございます。両方のことを考えてやらないと、ただ売ってだけいけということだけでは、先ほども先生から地価の問題も出ましたけれども、百万円で買って農業をやるよりも借りたほうがいいという問題もございますから、やはりわれわれとしましては、売る場合、借りる場合両方があるので、両方の対策を考えてあげる必要があると思うわけでございます。
  170. 芳賀貢

    ○芳賀委員 土地を一般財産と見て、固定資産としての物権として財産保有をやるということであればこれは別ですよ。しかし、農地法における農地というのはそういうものじゃないでしょう。持っておれば地価がどんどん高騰して、いま売るよりも、金利相当分くらいはどんどん地価が上がるから心配ないというような、そういう考えの上に立って農地というものは保有さるべきものじゃないと思うのですよ。いままで在村地主を認めておって、いまのこの諸情勢の中でこれを禁止するという改正は、これはなかなか容易じゃないと思うのですよ。しかし、いままで不在地主は認めないということで二十年間やってきて、国民はもう全部そう理解しているわけですよ。納得をしているのです。それを無理に政府自身が、今度は不在地主を復活します、離村する場合にも処分しないで、都府県は一町歩の土地を持ってもいいですよというようなことを、何のためにやるわけですか。  この考えは、経済同友会なんかの方針と同じですよ。(笑声)いや、笑いごとじゃないですよ。経済同友会の二十年後の農業のビジョンというものを見れば、はっきりそういうことをうたっておるじゃ、ないですか。食管法の改悪にしても、全部バックをなすものは、政府を支持しているのは財界の勢力であるということは、これはもうだれ一人疑っていないのですよ。農林省の皆さんだって、一人も疑っておる者はないでしょう。この点を、どういうわけでそういう悪政への道を開くのか、農林大臣からはっきり言ってください。あなたは秋田県の農民と六月十五日対談したでしょう。あのときの発言も忘れないで答弁してください。
  171. 長谷川四郎

    長谷川国務大臣 芳賀さんのおっしゃることも、半面ごもっともなようにも聞こえるけれども、また現在という御時世の上に立って、父祖伝来から持ってきた土地をどうしても手放したくない、しかし、農業は一たん離れたい、こういう人がある場合には、やはり別にその道を開いて、そうしてその土地を高度に利用してもらう、専門農家で使って生産を高めてもらうことも、無理のないことだと私は思いますけれども、実際、おっしゃるように、現在の農地法でいけば、必ず売っていかなければならないんだ、持っていちゃならないんだという、それもどうかと思います。もう少しその点を解釈してやってこそ、足りない農用地というものとか農耕地というものを、より高く利用することができるのじゃないでしょうか。  したがって、この間うちも秋田の農民の方々との対談をしましたけれども、私は、決して農耕地をみずからがふやせというのではないんだ、現在、ふやせといってもなかなか売ってくれないじゃないですか、ふやせというのではないけれども、隣近所が一体となって、省力化し生産費というものを幾らでも安くあげるという方法は、企業として農業を行なうのだから当然のことだろう、こういうふうに申し上げました。ところが、農業は企業じゃないというようなお話でございましたけれども農業だってやはり同じ企業でございますから、おれは農業をしているんだから、これしかつくっていないんだけれども政府は食わしてくれるのはあたりまえだ、それもむちゃな話じゃないかというふうに考えます。  やはり現在のような社会情勢の中に立っては、十分その点も考えなければ——われわれは農業に対する保護政策を、決してもうこれでいいとかなんとかいうのではない、より以上その生産が高まるように、今後はさらに一そう努力を傾けることが当然なる使命だというように考えてもおります。私たちはおっしゃるように、土地を高度に利用してもらうということが、やはり国益の上に立って考うべき問題だ、このように考えておるわけでございますから、そういう点だけはひとつ御理解賜わりたいと思います。
  172. 芳賀貢

    ○芳賀委員 それでは、農林大臣はじめいまの農林省の諸君は、この農地法ができたということは間違いであったというふうに考えておるわけですね。間違いであるから……(笑声)笑いごとじゃないですよ。不在地主を認めるということは、この第一条の精神から見ても、これは大きなあやまちをおかそうとしているわけでしょう。いいですか、あなた方は守ってきたわけなんだ、不在地主を認めないというこの農地法基本を。しかし、いままでこれは間違っておったのだが、やっと時期が来たから、ここで改正して復活しなければならぬという考え方ですか。あるいは、戦後のアメリカの占領政策によってこういうふうに土地制度というものが変革されたが、いまは自由にどうでも変更できるので不在地主を復活させるという、そういう考えを持っているのですか。農林大臣はそういう考えの上に立っておるでしょう。これはいたしかたないですがね。まあ御しがたいと言ったほうがいいでしょう。  しかし、いままでの歴代農林省において、農地改革の成果あるいは日本の農地制度を逆行させないように守ってきた皆さんが、心の中では、これは間違いである、一日も早く不在地主の復活を行なうべきであったというふうに考えて、その機をねらっておったかどうか、これは明確にしてもらいたいと思います。
  173. 中野和仁

    ○中野政府委員 先ほどからも申し上げていますように、不在地主といいましても、結果として不在地主になるわけでございますが、現在の離農者について認めようとしているわけでございます。現在在村地主、一町持っております地主がおりますが、これが外に出たときにまでそれを適用するということを考えておるわけではございません。  先ほどからるる申し上げておりますように、離村をしようとする農家がしやすいようにしているという面での例外的な改正でございます。原則はあくまで、農地法の六条にございますように、在村地主一ヘクタール以外は、不在地主の土地所有は認めない原則は立てた上での例外措置として、こういうふうに考えておる点を御了解いただきたいと思います。
  174. 芳賀貢

    ○芳賀委員 それでは、農業基本法との関係について。これは政府案が通った農業基本法ですが、いまの農基法の十五条、この条文は、家族農業経営の発展と自立経営の育成、農業経営の共同化、経営規模拡大をうたっておるわけです。それで農地の所有権の相続をする場合、第十六条は相続の場合の農業経営の細分化の防止ということもうたっておるわけです。中身を別に読む必要はないと思うわけですが、これらと照らし合わせた場合に、今度の農地法の改正というものは、この農基法に対しては相反するものがあるというふうに思いますが、どうですか。
  175. 中野和仁

    ○中野政府委員 基本法の十五条は、家族農業経営を近代化するということでございまして、これは必ずしもわれわれとしましては、自作農だけであるというふうには考えておりません。  しかし、先ほども申し上げておりますように、日本農業経営の大部分は家族経営であり、かつ自作地中心の経営であります。それにプラスしまして、自作地で土地を大きくする場合もございましょうし、あるいは借りる場合もございましょう。そういう面も含めまして、家族農業経営を近代化していきたいという考え方でございます。
  176. 芳賀貢

    ○芳賀委員 それから十六条。
  177. 中野和仁

    ○中野政府委員 十六条は、農業経営が細分化しないように、防止措置を相続人の場合もとれということでございます。  現在、民法に対する特別法で、こういう例外は設けておりません。と申しますのは、これは直接私のほうの局が担当しておりませんけれども、調査によりますと、ほとんど大部分はやはり一人の子供が継いでおるというのが実態でございまして、最近多少都市周辺で、先ほど御議論のあったような、土地という問題に着目して細分化の場合もあり得るかと思いますけれども、純農村におきましては、大部分一人が継いでおるという状況でございますので、法的に特別の措置は、現在とっておりません。
  178. 芳賀貢

    ○芳賀委員 そこで不在地主が、その所有農地を一般承継人に承継させるということが出てくるわけですね。これはどういうような形になるのですか。   〔三ツ林委員長代理退席、委員長着席〕
  179. 中野和仁

    ○中野政府委員 離農する場合の家族もございましょうし、それから、離農しまして東京に出ました人のむすこさんあるいは娘さんというのが一般承継人になるわけですが、それのまた子供というのは認めないということでございます。
  180. 芳賀貢

    ○芳賀委員 そこまではわかるのですが、これは民法からいっても包括承継ということになるでしょう。その相続権ということになれば、これは在村の土地所有者であっても、不在村の土地所有者であっても、これはやはり相続すべき資格者の均分相続ということになるのですね。だから、不在地主の所有する不在農業の相続という場合、いろいろな事例が起きると思うのですよ。農業者の場合は、農業経営を引き継ぐ後継者が、これが農地については承継するということが、いま局長の言ったような実態ですが、今度は農村にいないわけですから、都会におって、土地所有者が死亡とかあるいは生前贈与ということもあるでしょうが、その場合一般承継人には、どういう形で土地所有が承継されるわけですか。
  181. 中野和仁

    ○中野政府委員 現在の民法によりますと、原則は均分相続でございますから、おやじさんが離農して出ていって、その子供が三人おれば三人が相続をしまして、普通均分に分けるということになるわけですから、いまの例によりますと三人になるわけです。しかし、農業経営者のほうから見れば、それを一括して借りておりますれば、経営としては一つで借りておるということになるわけでございます。
  182. 芳賀貢

    ○芳賀委員 だから、たとえば都府県一ヘクタールの不在所有を認めるわけですから、三人の承継人がいれば三十アールずつ均分するということになるわけでしょう。ですから、不在地主の面積はふえないとしても、所有者が非常にふえるということは避けることができないと思うわけなんですよ。ごく零細な不在地主、そういう者が、農村、農業に対して支配力を持つということにはならないとしても、そういう形態というものは、この近代国家における農地制度として、はたして望ましいあり方であるかどうかということを、これは農林省としてもよく考えてもらわなければならぬと思うのですよ。そう思わぬですか。
  183. 中野和仁

    ○中野政府委員 ただいまの御議論からすれば、土地が所有としては分散するわけでございます。それが望ましくないかどうかということになれは、あるいは望ましくないのかもわかりません。  けれども、現行法のような形にしておきますと、どうしても離農したい、しかし売りたくないといった場合には、おそらく請負耕作に出していくか、あるいは、耕作強制ということはできませんのでほっておいて出ていくというような事態にもなるわけでございます。その辺は、やはり一時的なことでございますので、やむを得ないかと思います。
  184. 芳賀貢

    ○芳賀委員 そこで、こういう形に法律が改正された場合、一体現在よりもどの程度挙家離村がふえるか、これは何か見通しがなければ、別にやる必要はないと思うのです。いまでさえも完全な農業生産を維持するだけの保有労働力が、農村にはもうないわけですから、この上さらに脱農をすすめるということになれば、この改正による政策的な効果として、たとえば五年、十年の間にどのくらい脱農がふえるか、そういう点は推計上把握しておると思うのですけれども、数字を示してもらいたいと思います。
  185. 中野和仁

    ○中野政府委員 農林省農業調査によりますと、最近五、六年の離農は大体九万、あるいは年によりましては八万ということになっております。その中で、都府県と北海道はかなり様相が違っておりますが、内地の場合は、居住地を変更しないで離農するというのが七八・六%、それから住居を他所へ移す者が二一・四%。北海道の場合は、住居を変更しない者が四一%、住居を変更した者が五八・九%でございますから、今度のこういう改正ができたからといって、全部外へ出るというふうにはわれわれ考えておりません。  それからまた離農傾向は、今後農家戸数の減少としてあらわれるものが、現在一・三%程度のものが一・四%と、若干ではございますが順次ふえてくると思います。  その場合に、やはり便利なところにおる農家は通勤をいたしますし、不便なところからは外へ出るという問題になってくると思います。将来の見込みというところまでは推定をいたしておりません。
  186. 芳賀貢

    ○芳賀委員 それはおかしいじゃないですか。農地の保有制限を取っ払った場合、それでは所有構造にどういう変化ができるかと尋ねても、それはわからぬと言ったわけでしょう。今度の場合も、農地制度の政策変更、政策転換ですから、不在地主を認めた場合に、現在よりも離農状況にどういう変化があらわれるか、どういうような離農傾向が出るかということをはっきり説明しないと、何もわからぬで改正、改正じゃしようがないじゃないですか。
  187. 中野和仁

    ○中野政府委員 離農農家は、差し上げました資料にもございますように、その規模がかなり違っておりますけれども、大部分零細な農家でございますから、もしその三反を手放していくとすれば、最近大体九万戸でございますから、約二万七千ヘクタールぐらいが対象になるわけでございます。  しかし、さっき申し上げましたように、内地では八割方が通勤で在村でございますから、それはそのまま。そうすると、残りの二割というものが今度の法律の適用になりまして、村に置いておく場合がそのうちの一部あるということでございますから、あるいは一万ヘクタールになりますか一万五千になりますか、農家のものの考え方がそれに加わってくるわけでございますから、的確な推定ができないということを先ほど申し上げたわけでございます。
  188. 芳賀貢

    ○芳賀委員 局長の説明によると、今日のごとき農地制度のもとにおいては、離農しようとしても土地を手放さなければならぬので離農ができない、離農政策を進める場合にこれが障害になるので、不在地主の制度復活を考えておるということを言っておるわけですから、もしこの法律が通った場合は、政府農林省の皆さんが考えたように、現在よりも著しくまた離農が進むと思うのですよ。だから、改正によってどのくらい離農がさらに激化するかということについて、これはもう来年すぐどうなるということは別としても、五年、十年後にはどうなるというような、そういう推定はできると思うのです。そういう期待を持って法律の改正案を出したわけでしょう。だから、その点を明確に答えてもらいたい。そういうものが何もわからぬじゃ、改正したって意味がないじゃないですか。
  189. 中野和仁

    ○中野政府委員 先ほど概略申し上げたつもりでございますが、約二万五、六千ヘクタールの離農者の農地があるわけでございます。その中で、先ほど申し上げましたように、二割は不在になる人の土地だと思われます。現在ないかというと、はなはだ申しわけないわけでございますが、請負耕作の形で土地を預けて出ていっておる農家がかなり多いわけでございます。われわれの調査によりましても、約六割近くは貸し付けて出ていっております。それから、売っていくのは約三割という統計もございます。その場合に、在村でありますかあるいは不在村になっておりますか、その辺のところまできちっとはとっておりませんけれども、そういう形になっております。  これが今度の改正によりまして、きちっと農業委員会の確認を受けて、だれに貸すか、小作料は幾らかということで正規に貸して出ていくということでございますから、借りている農家からいたしましても、いつ東京へ出た者が帰ってきて土地が取り上げられるかわからないということではなく、もっと安心して耕作ができるということになるわけでございます。われわれの推定といたしましても、こういうふうな安定した制度ができますと、いまよりはふえてくるというふうに思います。  と申しますのは、われわれの長期見通しによりましても、農家戸数は、現在の五百四十数万戸が十年先には約四百五十万戸になるということでございますので、かなりの離農があります。それの持っております面積の一部が、こういう形になるというふうに推定されるわけでございます。
  190. 芳賀貢

    ○芳賀委員 これに関連して、生産法人に参加して農地を提供した場合、これは面積の制限はないわけでしょう。したがって、その生産法人に参加して農地を提供した者が、今度は村を離れるという場合の小作地の保有関係というのは、これも無制限でしょう。その点を明らかにしてもらいたい。
  191. 中野和仁

    ○中野政府委員 先生のお話のとおり、一町歩という制限を加えておりません。
  192. 芳賀貢

    ○芳賀委員 だから、一般の農地所有者に対しては、都府県一町歩という制限があって、段階的に、まず地域生産法人にその農地を提供して法人に参加して、ただし在村の場合にも農業には従事しない。その者が今度は離村する場合、その場合には、三ヘクタールであろうと十ヘクタールであろうと制限はないわけですね。それはどういうことですか。
  193. 中野和仁

    ○中野政府委員 芳賀先生の御質問で、先ほど生産法人の問題がございましたわけでございますが、われわれとしましても、個々の農家の規模拡大とあわせまして、生産法人あるいは集団的な協業組織の場合もございましょうし、農事組合法人の場合もございましょうし、それから有限会社の場合もございますけれども、そういう面での規模拡大をはかりたいと考えておるわけでございます。こういう場合には、経営をやる法人が土地を管理するわけでございますから、それを昔のような小作人というふうに観念をする必要はございません。そこで、むしろ出ていく農家の土地は、全部預けたほうがいいのではないかというふうに考えたわけでございます。  ただ、個人間の場合に制限を加えましたのは、先ほども御議論がございましたように、われわれとしましては原則としては不在地主を認めない、例外としてやったという気持ちも出ておりまして、一ヘクタールという制限を置いたわけでございます。
  194. 芳賀貢

    ○芳賀委員 その制限が少ないと言うんじゃないですよ。不在地主の復活は、われわれ社会党としてはこれはもう絶対に同意できない事項ですが、その改正の中においても、生産法人に加入した場合は、一ヘクタールの制限を越えて無制限に土地を所有して離村できるわけですから、そういう不在地主が生まれるわけでしょう。この点は問題があるではないかということを指摘したわけですよ。これはもう少し内容を明らかにしてもらいたいと思う。
  195. 中野和仁

    ○中野政府委員 先ほども申し上げましたように、生産法人としては経営単位を大きくしなければいけません。そうなりますと、せっかく離農する農家の土地を、一つの単位を大きくするためには、全部出せれば出してもらって、それを借りるなり出資をしてもらったほうがいいわけでございます。  そこで、今回こういう改正をとりましても、その生産法人が昔のような小作人という考え方をとる必要はない。むしろ経営をやりまして、そこで利潤をあげて、その中から地代を払っていけるという形になるものですから、いわばその残った生産法人なりなんなり共同経営をやる人が、農地を管理するという形になるものですから、一町歩という制限を設けないで、生産法人の場合にはこういうふうにしたわけでございます。
  196. 芳賀貢

    ○芳賀委員 いや、その点がおかしいではないかと言っているのですよ。そう思わぬですか。この改正が通れば、そういう道があるということはみんな気がつくでしょう。頭のいい者はとうに気がつくわけですからね。また農林省としても、この改正点に対する指導はやるでしょう。現地指導とか、都道府県とか市町村の農業会議農業委員会も、今度はこういう道が開かれました、だから個人所有のままで離村する場合には、これは北海道以外は一ヘクタールまでですよ、しかし、村におる間に生産法人に参加して、たとえば五ヘクタールの土地を法人に提供して、その状態で離村した場合には、東京に行っても五町歩の土地所有はできますということ、これは法律が改正されればそうなるのだから、説明しないわけにいかぬでしょう。そこに問題があるのじゃないかというのですよ。個人所有のままであれば一ヘクタール以内、法人加盟であれば無制限ということになるわけですね。これは法律の裏をくぐるとか、脱法的にやることになれば、こういう盲点をついて、いろいろなことが次々に当然行なわれるのですよ。そう思わぬですか。
  197. 中野和仁

    ○中野政府委員 たびたび御説明を申し上げておりますように、われわれとしましては、協業的な経営への規模拡大をはかりたいという観点からこういうふうに考えたわけでございますから、めったに五ヘクタールの農家が預けていくということはないと思いますけれども、そういう場合でも、その法人がもし六ヘクタールの経営であれば、それも預かって、大きな生産単位として生産性を上げていく経営をつくったほうがいいというふうに考えておるわけでございます。
  198. 芳賀貢

    ○芳賀委員 いまの全国の離農傾向は、零細兼業農家が離農する傾向も一つはあるでしょう。しかし、相当の経営規模を持った安定農家が、いまの自民党農政に見切りをつけて離農するという傾向もあるわけですね。特に北海道における挙家離村は、これは全国で一番離村率が高いわけですからね。そういう場合には、中堅以上の農家がいま離農する傾向が非常に強いのですよ。中層農家はもう出るに出られぬ状態で、これは残村しておる。それからもうごく零細な農家は、農業に対する依存度が非常に少ないわけですからして、それほど神経質になっていないというような傾向なわけですからして、相当規模の大きな農家が、今度の農地法の改悪を利用して、所有地全部を所有できる形で離農、離村するということは、当然これはあり得るというふうにわれわれは考えております。  そういうことが、この農協法の改正による農地の経営委託、あるいは今度の農地法の改正によるところ生産法人の要件緩和等の中で、随所に弊害があらわれておるわけですからして、この点は十分改正点の内容の検討をする必要があるんではないかというふうに考えるわけですが、そう思わぬですか。
  199. 中野和仁

    ○中野政府委員 北海道の場合に、先ほど申し上げましたように、挙家離農が多くて、それも村の外へ出るということが多いわけでございます。それからまた、御指摘のように、必ずしも零細な農家だけではなくて、大きな農家の場合もあり得ますけれども、やはり大勢としましては、零細な農家が出るということでございます。  先生のおっしゃいました大きな規模の農家の場合は、あるいは僻地の開拓不振地区農家には若干あるということは私も承知しております。しかし、その土地をまた残った農家が買い受けまして、規模拡大しておるというのもまた実態でございます。その場合に、その地帯に生産法人ができますれば、その離農した農家の土地を有効に活用するという意味で、法人に対しては、離農農家全体の土地を預けていけるということにしても差しつかえないのではないか。先ほどからもるる申し上げておりますような意味で、御理解をいただきたいと思います。
  200. 芳賀貢

    ○芳賀委員 同僚石田委員から関連質問の希望があるので、委員長において取り計らっていただきたいと思います。
  201. 丹羽兵助

    丹羽委員長 石田宥全君。
  202. 石田宥全

    ○石田(宥)委員 農地法の一部改正につきまして御質問を申し上げたいと思うのでありますが、各条章についてのこまかな質問は、同僚委員から相当程度尽くされておると考えますので、私は、せっかく総理がおいででございますから、総理に対する基本的な質問を申し上げたいと思います。  まず最初に、農地法の一部改正の法律案提出でございますが、昨年の五月に自由民主党の都市政策大綱というものが発表になりました。この中では、農地法は廃止すべきであるという主張が明らかにされておったのであります。  私どもは、昨年の農地法改正に対しては、絶対に反対という立場に立っておったわけでありますから、たまたま継続審議にするかどうかの議論のありましたときに、いま申し上げましたように、自民党のほうの都市対策の田中現幹事長が、農地法は廃止すべきであるという意向を表明されましたので、本年の国会にこの法案が提出されるとは考えておらなかったのであります。しかるに、今国会に重ねて御提案になりましたが、総理であり総裁である佐藤さんは、一体この問題についてはどのように御理解になっておるのか、承りたいと思います。
  203. 佐藤榮作

    ○佐藤内閣総理大臣 石田君にお答えいたしますが、私から、農政通というか、農政のベテランの石田君にお話しするのは、あるいは逆かもわからない、しかし、いま事を分けてのお尋ねですから……。  いま私どもが当面する問題、これは最近の産業革命というとことばが大げさ過ぎるかわかりませんが、とにかく時代が非常に移り変わっております。そこで、それに適応する産業があってほしい、基本的にそのときに応じた各産業あり方を考えるべきであろう、かように私、思います。しかもその見方が、あるいは都市化という方向重点を置いてみますると、あるいは農業に対する正しい見方を考えそこなうかもわからない。また農業の保護育成という立場に立って考えると、都市化をなかなか進めにくいとか、こういう問題があろうと思います。  とにかく、新しい時代を迎えつつあるそういう際に、あの当時、占領下の一つ方向として定められた農地法そのものを、抜本的に、根本的にひとつ考えてみるような時期にきているのではないか、これはわずかな手直しではいかぬのだ、こういうような考え方が党内にあることは、これはもう事実であります。  しかし、私は、そういうような取り組み方をする前に、いまある農業、その姿を見て、そうして農地が本来の目的に利用されること、そのための農地法じゃないか、そういう意味農地法を改正して、手を加えて、そうして本来のあるべき姿の方向、もっと申すならば、農地が適正な生産性をあげ得るようなその方向で考えてみる、しかもまた都市化の方向がそれと矛盾しないで、双方が両立し得るような調整策もとってみる、ものごとをとにかく一方的に見ることはどうも間違いだ、かように実は思って、ただいまのように党の意見調整されて、そうしてただいま御審議をいただいておる、こういう関係になっておるのであります。  また、これからもおそらく、進んでまいりますと、いままでにきめた法律、その法律をそのまま維持しろといっても、そういうことはできないことだろうと思います。とにかく、時代とともに適切にその効果をあげるような法律でなければならない、私はかように考えております。
  204. 石田宥全

    ○石田(宥)委員 総理は、四月十七日の参議院の建設委員会において、次のような答弁をされております。最近の都市問題は土地問題といってもよい、そして今後の土地政策として国、公有地を拡大するとともに、所有権などの私有財産権を制限していきたいということを言っておられるのであります。この点については、一部の都市学者といわれる学者の中でも、秩序だった都市づくりのためには私権の制限があっても、それは公共の福祉に合致し、憲法違反ではないと言っておるのであります。しかしながら、都市に土地提供を迫られているのは農民であり、結局、農民のみの犠牲において都市づくりをしようとしておるものといわなければなりません。  その具体的なあらわれが、新都市計画法や都市再開発法であり、今回の農地法の改正案だと思われます。この点について、参議院の建設委員会における答弁を再確認されるかどうか、それから、憲法二十九条の三項に抵触するのではないかという疑いを持たれるのでありますが、御答弁を願います。
  205. 佐藤榮作

    ○佐藤内閣総理大臣 私が参議院の建設委員会でお答えしたこと、ただいまもそのとおりだと思っております。  いま都市開発、これは農民の犠牲においてと、こういうように言われますが、再開発法などはそういうものじゃない。いま都市がすでにできているもの、それをもっと高層化するとか、あるいはもっとあき地をつくるとか、そういうような意味で高度利用を進めるので、これは農民の方に限らないのであります。私はこういう意味から、そういうような土地の利用、もっと高度化されて都市が使われることが望ましいと思います。こういう意味では、むしろ社会党の方のほうに御賛成をいただけるような、ある程度私権の制限も、公共のためならやむを得ないじゃないか、実はかように思っております。私は、そういう本来の保守、革新というような考え方でなしに、当然いま言うようなことがあってしかるべきじゃないかと思う。  私はわずかな経験ですが、昔のロンドンのイーストエンド、これが今日出かけてみるとたいへんりっぱなものになっている。あの代表的な貧民窟といわれたイーストエンドが今日のように変貌する。都市の再開発だ。しかも、これなどは旧土地の使用者、そういう者からやはり公共的に市が買い上げるとかいうようなことで整理をして、初めてりっぱにできるのだ、かように思っておるのです。私はこれから都市の再開発が必要だ、こういう場合、いまある土地そのものが近代都市化に使われる、そういう方向であってほしいと思う。  それからまたもう一方、いまの農地の問題ですが、やはり新しい都市化の場合には、土地の利用計画が必ず立てられる。これは計画なしに都市がどんどん膨張するのではなくて、これからはある一つの土地の利用計画のもとに都市づくりをしていく。こういうことになると、これはある階層だけ、あるいはある職種だけに犠牲者が起こるというようなこともなくなるだろうと思います。ことに私、都民として生活する場合に、やはり都市生活と自然生活との調和というような問題がこれからむずかしくなってくるだろう。そういうことを考えると、ただいまの土地の利用計画、これはもっとこまかいところにまで入ってくるのじゃないだろうか。  そういうふうに考えますと、やはり憲法上の問題に抵触はしないか、そういうような議論も出てくるだろうと思いますけれども、しかし、やはり公共の用に供することが、もう少し、いわゆる何でも公共の用だということで権力的な措置をとらないで、それに大体協力できるといういうか、理解を与えてもらえる、そういうような方向でものごとがスムーズに開発される、そういうことが望ましいのじゃないかと、かように私、考えております。
  206. 石田宥全

    ○石田(宥)委員 憲法二十九条の三項には、公共の用に供する場合には、至当な補償をなければならない、こう書いてあるのです。いまの答弁でありますと、必ずしもその点が明らかでございません。私は何びとといえども、やはり公共の用に供する場合といえども、これは正当な補償をすべきであるという憲法の二十九条の三項というものは、生かされなければならないのではないかということを質問しておるのです。重ねてお願いします。
  207. 佐藤榮作

    ○佐藤内閣総理大臣 もし誤解があったら申しわけないですから、補足させてもらいます。  私が申しますのも、いま石田君の言われるような趣旨でございます。これはもう適正なる対価が払われる、こういうことがなければ、何でもかんでもみんな取り上げる、これでは国民は納得はしない、かように思います。
  208. 石田宥全

    ○石田(宥)委員 次に、都市周辺の農業でありますが、これはこの間大阪で参考人の意見聴取をやったわけですが、大阪市内でも専業農家が非常に多い。また、東京周辺あるいは京葉工業地帯といわれるような地域でも、専業農家が相当多い。同時に収益性も高い、したがって、生産性も高いといういろいろなデータがあるわけです。  それから、私は特にこの間大阪で聞いたところによりますと、大阪市周辺の生鮮食料品というものが、ほとんど大阪市内で大部分がまかなわれておるが、もしこの新都市計画が実現した場合においては、ほとんど供給が不能におちいるではないかという意見が出されておるわけであります。  そういう点から見て、都市の周辺に田園があるということは好ましい姿ではないか。都市の周辺にあるこの田園というものが、いかに都民に心の安らぎを与えるか、私は常に都会を歩くたびにそれを感ずるわけであります。今度の新都市計画法によると、ほとんどそれが市街化されてしまう。こういうことは、どうも高い見地に立って見るときに好ましい姿ではないのではないか。もっと都市に田園を残しておくべきである、こう考えるのでありますが、いかがでしょうか。
  209. 佐藤榮作

    ○佐藤内閣総理大臣 いまの御意見、大局的に見まして私も同様の考え方をいたします。同じような考え方でございます。  しかし、一面から見ますと、非常に狭いところで——一口に東京と申しましても、旧市内とその周辺ではもうずいぶん違っております。その旧市内の部分でも、ネコの額みたいなところに麦をつくっている。これは一体どれだけの耕作効果があるだろうか。あるいはまた大阪と言われますが、いまの大阪市内もずいぶん広いのですから、そういうところで、やっぱりきわめて狭いところで水田がある。それがはたして生産性を上げておるだろうか、こういうような疑問を持たざるを得ないのです。私はやっぱり市内に望ましい農業といえば、これは園芸、蔬菜だとか、あるいは果樹だとか、そういうようなものなら、これはわかりやすい。しかし、いま言うような米麦あたりがその都市のまん中につくられている。しかも、それが非常に広大な地域なら集約農業もできるでありましょうが、ほんとうにネコの額のようなところでつくられておる。私はどうもこれではちょっと困りはしないか、こういう感じがするのであります。  そこで、いまの新都市計画法は、これはお尋ねではございませんし、また石田君だから御承知のことだと思いますが、こういうような土地をいつまでも残しておくのはどうだろうか、こういうのはやはり何かくふうの余地はないだろうかというところから新都市計画法ができてきたのであります。あるいはいまのようなのは、農地法改正だけで集約農業に変わるとは思わないし、生産性を上げ得るとは思いませんが、とにかく所有権に基づく土地の使用、これはずいぶんまちまちだと思いますね。  せんだってヘリコプターで東京の上を飛ぶ機会がありましたが、私、上から見ると、東京をもっとうまく使える方法はないろだうかと、いろいろなことをずいぶん考えさせられますよ。いまの比較的に狭いところで芝生や何かにしておるところ、これなどは、むしろ付近の子供さんを遊ばされても十分役立っているだろう。別にこれは所有権をそこなわなくてうまく利用されている。いわゆるちびっこ広場というのはそんなところからきているだろう。むりやりとは申しませんが、ずいぶん無理をして麦をつくっているんだと思えるようなところがありますね。  こういうことは、これから土地の利用という大都市、都会の場合を考えてみると、ここらにひとつくふうをしてみる、これがお互いの問題じゃないだろうか、かように私、思います。
  210. 石田宥全

    ○石田(宥)委員 最近の過密、過疎の問題でありますが、都市づくりに専念するあまり、中高層ビルなどが建てば建つほど過密化するだけでありまして、過密化した場合に交通網を整備する、交通網を整備したらさらにまた人口がふえる、こういう状態を繰り返していったのでは、これは理想的な都市づくりとはいえないと思うのです。  そこで、これは農地法と直接関係ある問題ではないようでありますけれども、私はやはり、かつて河野一郎さんが提唱されたような開発疎開というか、都市の分散開発というか、そういう方向にいまから準備をすべきではないか、こう思うのでありますが、これについての総理の御見解はいかがですか。
  211. 佐藤榮作

    ○佐藤内閣総理大臣 いまあるものを地方に分散さす、これはなかなかむずかしいことです。  これは一つわれわれがすでに経験済みなんですが、いわゆる研究学園都市というものを考えてみた。そうしてこれは環境も整備され、たいへんけっこうだからどうか移ってください、こういってその計画を進めようとしたのでありますが、なかなかいまある機関は腰を上げない。ただいまこれが大学紛争の原因だとは申しませんが、そういうのがやはり一つの原因にもなっているところがある。新しいものをつくるときには、やはり新しい出方をするほうがわりにつくりやすい。そこらにちょっとむだなものができるのじゃないかという心配なり、あるいは二重投資じゃないかというような批判もありましょうが、やはり新しいものをつくると、思い切ってそれが発展する。  ちょうど鉄道が、旧東海道線の改良をしないで新幹線をつくった。あれだけの金をかけるよりも旧東海道線を改良したらどうか、そういう議論も当時あったのであります。しかし、思い切って新幹線をつくった。それによって旧東海道線も改良がどんどん進んでおる。そういうことを考えると、分散ということはなかなかできることじゃない。やはり適当なところに新しい産業を興していく。それから、やはりいまある都市の再開発、それを自然にまかさないで、やはり一つ方向を示して再開発を進めていく、これが必要なんじゃないだろうかと私は思っております。  私はいまの説ごもっともだと思いますが、それぞれがそれぞれの立場の権利を主張しますから、いまあるものをどこそこに移れといってもなかなかできない。それよりか、新しいものをつくるのだというかっこうで土地を提供する、あるいは施設を整備する、そしてもともとの都市はいわゆる再開発、そういう形であらゆるむだを省いて便利なようにしていく、これが望ましい姿じゃないだろうか、かように思います。
  212. 石田宥全

    ○石田(宥)委員 私はずっと長い目で、高い見地から見て、国の政策としては農業と工業、都市と農村はどういうバランスをとっていくかということは、さらに経済企画庁あたりで論議をされなければならない問題であろうと思いますけれども、何らかの形でやはり都市と農村、農業と工業というもののバランスが必要であると常に考えておるのでありますが、この点についての総理のお考えはどうでしょうか。
  213. 佐藤榮作

    ○佐藤内閣総理大臣 大臣私もその考え方には賛成であります。いま私どもがこれから先、十年先、二十年先、そういう一つの国土開発計画を持つべきじゃないかというので、新国土総合開発計画を立てておる。これはやはり都市と農村、別な言い方をすれば都会と自然、そういうものとのつながりをどういうふうにしたらいいか、そういうくふうを考えておる、こういうふうに思います。これはいまマスタープランの程度ですが、これをまた実施プランにすれば、さらにさらにもっとこまかい点まで突き進んでいく必要があるだろうと思います。  そこで、いま言われます農と工、業種別にどう考えるかというお話一つある。農業は私が申し上げるまでもなく、これはいまの時代でも国本、国のもとだと思いますし、われわれの食生活、これをまかなってくれるものは農生産物であります。そういう意味で幾ら工業が進みましても、やはり農産物、われわれの食糧自給体制、これができれは——全部自給自足とまでは申しませんが、自給体制を強化すること、これは望ましい姿であります。  かつてイギリスなどが、食糧を全部外国から輸入した。その結果一時繁栄はしたが、しかし基礎が危ういものだ。こういうことを考えると、われわれの食糧これはやはり自給度を高めていくというか、自足度とまでは私は申しませんけれども自給度を高めていく、それを維持する、こういう努力をしていかなければならぬ。  そこで、いまの農と工との割合も、そのうちにおのずから自然にきまってきはしないだろうか、かように思います。そういうことを考えますと、都市も地方に適当に分散されて、そしてやはりそれぞれの地域中心ができて、そしてその付近に適当に産業が分布される、こういうことが望ましい姿ではないだろうかと思います。いまの長期開発計画におきましても、そういうことで開発は必要だが、同時にまた自然も保存する、そういう立場からいまのようなことを考えるのであります。  私、これはもうすでに石田君も御承知のことだと思いますが、よく太平洋岸と日本海岸、この間に非常な格差があるといってよく指摘されます。なるほど見ると太平洋岸と日本海岸とには格差がある。しかし、太平洋から日本海に空を飛ぶとわずか三十分やそこら、あるいは遠くても一時間くらいかければ行くのです。そういう何というか、交通の便も変わってまいりますから、いままでのように非常に不便だけをかこつのではなしに、新しい機関を一つ考えれば、これは日本海と太平洋が一体として活動ができるような気もするのです。私は岩手県から秋田へ選挙中でありますが飛んで、それはわずか三十分だった。よく日本海側と太平洋岸と開発の格差があるといわれるけれども、何だわずか三十分じゃないか、こういう感がいたしました。また、北海道あたりにおきましてもそういうことが簡単に言えるので、もっと交通の便を進めれば、お互いに相互に助け合い得る、また役立ち得る、そういう情勢ができるように思います。
  214. 石田宥全

    ○石田(宥)委員 総理はよく国際分業論をおっしゃるのでありますが、国際分業ということになりますと、いまの残存輸入の問題がございます。無制限に外国から安いものが輸入されるからといって、輸入に依存するような体制は、これはおとりにならないと思うのでありますけれども、少なくとも現時点において、これとこれだけは永久に自由化はしない、これとこの点はある程度やむを得ないであろうというふうにこれを明示されて、農民が安んじて長期的な展望を持ち、計画的な農業経営ができるような指標を示すべきであろうと思いますが、いかがでしょうか。
  215. 佐藤榮作

    ○佐藤内閣総理大臣 これはたいへんむずかしいお尋ねであります。国際分業ということばは、これは国際経済あり方として、各国とも目標一つにしているところであります。私も、そういう意味でこれを目標にしております。また、国内におきましても地域的分業ということは考えられないか、こういうことを申しております。これは日本国内ですから、お互いが話し合えばできるはずでありますが、地域的分業、これも国内でありましてもなかなかできない。ましてや国際分業ということになりますと、これは簡単に実現するものではありません。国際分業を主張する私にいたしましても、わが国産業を犠牲にしてまで、国際分業の原則を貫くというような、そんな現実を無視した考え方にはどうしてもなれません。  早い話が、いま豚肉が高いといわれている。豚肉なら輸入をすれば必ず安くなるじゃないか、これはわかり切ったことですが、そう簡単に豚肉を輸入して、そうして高いものを安くするとか、こういうわけにはいかない。あるいは、日本は小麦は足りないのだから、そこで外麦がたいへん便利だというので買っておりますが、それにしても日本国内の一部では、外麦に依存するとは何事だ、われわれはりっぱにつくってみせると言っている。国際価格の大体倍もするという米にいたしましても、これまた幾ら国際分業だといって、米を外国からどんどん輸入して、日本農民を一体どうしてくれるのだと、必ず問題の起こることであります。  だから、いまの国際分業という問題にいたしましても、とにかくいま基本的には、わが国産業を一体どういうように強化維持していくか、これが一つの問題でありますし、どうしてわが国の中で国民相互の利益を確保するかということ、これはどうしても一番先に問題が出てまいります。だから、この国際分業の理論、その原則はよくわかりますが、ただいま申し上げるような率直な点も御理解をいただきたいと思います。  ただ、方向としては、国際分業という立場から残存輸入制限、こういうものはできるだけ早い機会に撤廃をしなければならない。あるいは資本の自由化もその方向に進んでいかなければならない、かように思っております。  いまも私、ここへ参りますのがおくれましたが、輸出会議に出て、ぜひどうか残存輸入制限、そういうものも撤廃し得るような、その方向でひとつ努力してもらいたいし、資本の自由化もひとつ進め得るように、こういうかけ声、気合いはかけてまいりましたが、やはりそれぞれの時点において、どうすることが国民に最もしあわせであるかという、それは絶えず考えていかなければなりません。  いま農業の問題で残存輸入の問題がある、これを一体どうしてくれるかという御心配、また、できるだけ早く輸入の自由になるもの、あるいは最後まで残すもの、そういうものを区別して生産者に安心を与えろ、こういうお話、その気持ちもわかります。いま私どもが取り組んでおるのは、いわゆる総合農政といいますか、農政転換期に来ている。でありますから、その転換期に来ている農業——いまの大原則は大原則として、また国際協力を私どももするつもりでくふうはいたしますが、いま転換期に来ている日本農業、それでどういうものは輸入し、どういうものは残す、これをきめることは、ただいまたいへんむずかしいことなんです。私がむずかしいことだと言ったのはそういう意味であります。私は、これはただ単に自民党だとか、あるいは社会党だとかいう立場ではなしに、こういう点についてはほんとうにひざをまじえて皆さんとも話し合い、いわゆる消費者も生産者も納得のいくような措置をとるべきじゃないだろうか、かように思います。  ただいま残存輸入の品目について、これを開放するような、その方向でいろいろ検討はしておりますが、ただいまのところ、何は残し何は開放する、こういうことはちょっと申し上げかねますが、しばらく時間をかしていただきたいと思います。
  216. 石田宥全

    ○石田(宥)委員 どうも抽象論でさっぱり要領を得ませんが、そういう抽象論としては、これはだれでもわかっていることなんです。そうじゃなくて、私はいますぐとは申しませんが、やはり農民に対して一定の指標を与えてやる義務と責任があるのじゃないか。  先般米価の問題でいろいろ議論がありましたが、ことしは米価は据え置きをされた。しかし、米の足りなかった時代には、日本国内価格国際価格の三分の一、四分の一のこともあった。それで権力をもって供出させられたこともあった。やはりこれだけのものは、将来保護政策として農民が安心してやれる作目だ、この作目については国際競争力を強化しなけれならない作目であるということを、近い時点で農民に示すべきである、そういうことを申し上げておるのであって、そんな抽象論を長々と繰り返されましても、それではさっぱり見当がつきませんよ。もうちょっと見当のつくような心がまえがおありであるならば、承りたいということです。
  217. 佐藤榮作

    ○佐藤内閣総理大臣 私の答弁も抽象的だが、お尋ねになる石田君のほうも抽象的じゃないかと思うのです。残存輸入制限は一体どうするのか、どれをどうするのか、こう何にもおっしゃらないのですが、たとえば、米はどうするのかとお尋ねになれば、これはもう食管法の根幹は維持するということをちゃんとはっきり申していますから、そうすると、これはもういまさら自由化するような問題じゃないだろう、こうなります。私の答えたのも抽象的でたいへん申しわけないが、お尋ねになるほうもどうも抽象的ならざるを得ないような問題じゃないか、かように私、思います。  いま、それじゃたとえばジュースは一体どうなるのか、ものによってはジュースもすでに自由化されたものもある。ものによってはその自由化はちょっと困る、こういうものがあると思いますね。これは実際の問題として個々のものについてよく精査してやらないと、総理大臣が全部の責任を持つとは申しましても、総理大臣がお答えするにはちょっと不適当な気がするのですが、私は抽象的な原則論を申しまして、その点をひとつお許しを得たいと思います。
  218. 石田宥全

    ○石田(宥)委員 時間の関係があって、一々並べ立ててもどうかと思って、大体の基本的な姿勢だけは伺っておきたいと思ったわけです。もちろんそれは、農林大臣中心として将来の展望は明らかにされることであろうと思うのでありますが、いままでのように、農業基本法以来畜産がいいといって畜産に飛びつき、果樹がいいといって果樹に飛びつく、そうすると畜産のほうも、養鶏をやっても引き合わない、酪農をやっても引き合わない、酪農じゃなくて苦農だといわれるような状態。くだものとはいえば、ミカンは捨て売り、リンゴもまたとってきて売りに行くだけの手間銭にもならないというので、総理もニュースなどでごらんになったと思いますが、畑に落ちほうだいにしておく。こういう点はどうも計画性がなくて、ただ抽象的に畜産がいいとか、果樹がいいとかいうような方向だけを示されて、その後の限界というものが全然示されておらない。そういうところに問題があるのであって、やはり一定の限界というものを示して、その方向づけを明らかにさせるというその責任があるであろう、こういうことを申し上げておるわけです。  この点議論をしましても何でありますから、次に農地法との関連で、一番大きな問題は地価の問題だろうと思うんです。土地価格が異常な値上がりをしておる。実は、私どもが土地利用区分を定むべしと言ったのは昭和三十一年です。昭和三十一年、二年にかけて土地利用区分を明らかにすべきであるということを主張してまいりました。しかし、その後これに全然手をつけようとしない。ようやく最近全国総合開発計画、それからまた農林省のほうでは農業振興地域整備法というようなものをおつくりになっておりますが、従来は、たとえば固定資産税の問題で、固定資産の評価がえをし税金を上げると土地が値上がりしますよとわれわれは指摘した。また新産業都市を十三カ所か十四カ所指定されたが、その各十三カ所か四カ所の指定地域中心として土地の価格が暴騰をする。それが波及的にどんどん広がっていく。これはもう説明を要しないことだと思うのでありますが、これについて、最近のいわゆる新全総といわれる国土総合開発計画などというものが表に出ますと、また土地価格の上昇を呼ぶのではないか。新都市計画法や都市再開発法の実施段階において、また土地価格の上昇をもたらすのではないか。  昭和三十七年の年に私は河野一部さんに言ったことがあるんですよ。土地価格がこれ以上暴騰すると、農業経営も困難になるし、国民生活全体にたいへんな悪影響を及ぼすと思うが、ここらあたりでひとつ土地の価格を抑制する立法措置が必要なのではないかということを質問をしたわけですが、当時河野さんは、それはやる気がない、こう言っておった。しかし、今日になると土地の価格がどんどん暴騰いたしまして、農業経営を困難にするばかりじゃなくて、国民生活全体に非常な悪影響を及ぼしていると思います。先般衆議院で議決になりました地価公示法などというものも、近く成立をするであろうと思われるのでありますが、そういうものによって土地価格を抑制するだけの効果が一体あるであろうか、どうであろうか。これははやり全体の問題でありますから、総理の見解を伺っておきたいと思います。
  219. 佐藤榮作

    ○佐藤内閣総理大臣 これは、別に議論をしたいから申すわけじゃありませんが、さっきの、農産物の計画性がないから、リンゴは豚に食わしているとか、あるいはナツミカンは捨ててるじゃないかというようなお話がありますが、これはそうではなく、やはり嗜好性の問題といいますか、嗜好に関する問題だ。  私のところは有名なナツミカンの産地です。しかし、それがいま、ナツミカンを幾ら食べろ食べろと言ったって食べる人はよほど減ってきました。ナツミカンを改良したアマカンならば食べるが、在来のナツミカンなら食べない。リンゴもやっぱりそのとおりです。在来のリンゴ、これはもう北海道で最も代表的なリンゴだといわれているものが、いまはだれも見向きもしない。新しい品種でなければだめだ、そういうように私は変わってきていると思う。  だから、適当に品種改良を加える、あるいは指導をする、そういう意味生産者の協力を得ないと、農林省だけが悪いんだ、あるいは県庁だけが悪いんだ、こう言わないで、そこらは相互にひとつ責任をもって品種改良にも協力してやろう、こういうことでないとなかなかできないんじゃないかと思います。これはよけいなことですが、まあ私の感じを率直に申したわけです。  そこで、本来のお尋ねのいまの地価の問題、ただいままであまりこれという効果をあげる妙案がなかなか見つからない。いままで土地収用法を改正するとか、あるいはいま言われた土地の公示制度を普及さしてそれによって何とかしよう、これらが二つの方法であります。あるいは税でもっと何とかならないか、税の問題が一つ出てくるようであります。しかし、どうもこれらのことを考えますと、地価についてこれがきめ手だというものは実はなくて、名案があったらひとつ教えていただきたい、かように実は思っておるのです。  私も、いまのように地価が上がり、そうして都市化が進む、ここらにずいぶん問題があると思います。そうしてみんな希望をするものは住宅だ。その住宅も借り家じゃない、自分の家を持ちたいという。そういうときに問題になるのがいまの土地の問題だ。そういうことを考えますと、ただいまは土地に対する政策、これはひとつりっぱな確固たるものをぜひともほしいと思います。いろいろ議論をされておりますが、税金などもどうも適当なものがない。いま残っておりますのに、固定資産税などをひとつ地価に適用する、適正な固定資産税を課すようにしたらこれは案外おさまるんじゃないかということがありますが、これはどらも議論するほうからいえば、固定資産税というものが地価をつり上げるそのもとだ、こう言う人もありますので、その見方によって、これもどうもはたして効果があるかどうか、まだ私は疑問を持っておるような次第です。
  220. 石田宥全

    ○石田(宥)委員 もう予定の時間がまいりましたからよけい申し上げませんが、だから私どもは三十一、二年の当時、土地の利用区分というものを明確にすべきであるということを主張し、さらに三十七年には、今日の憲法との関係がありますから、直ちに地価を抑制するということは困難であろうから、そこで、憲法とこの地価抑制との間にワンクッションを置いて、そうして適正にその抑制をすべきであるということを主張したのですよ。  ところが、そのいずれも政府のいれるところとならなかったので、今日のような地価の暴騰を招いたのではないか。これは自由民主党の政治の責任ではないかということを私は指摘したのであって、いい意見であったら教えてもらいたいなどということはとんでもない話なんで、私どもは三十年以来これを主張し続けておる。それを、政府が怠慢なために今日のような状態になったのではないかという責任を追及しておるわけですよ。知恵があったら教えてもらいたいなんという答弁は、これは答弁になりません。どうですか。
  221. 佐藤榮作

    ○佐藤内閣総理大臣 まあ私の答弁がお気に召さぬと言われるが、私は、国会議員だからお互いに協力して、りっぱな政治ができればこれにこしたことはないと思って、党は違いますが、あえて教えていただこう、こういうことで辞を低くして教えを請負うたわけですが、それがどうもそこまでの雅量はない、こういうお話です。  とにかくいまおそまきにしろ、地価の公示制度をつくったこと、これは確かに役立つ方法である、かように思います。それから税の問題も、やはり一方的に考えないで、いまの地価、その適正な価格、そういうものが評価される、それに相応する固定資産税をかけるとか、こういうようになっていくのが、どうもやはり地価を押えるゆえんではないだろうか。それが、どうもそこまでできていないように思いますが、これはもう自由民主党だけの問題ではありませんし、お互いが困る問題だ、かように思うので、私はたいへん弱気のお願いをしたのですが、ひとつお許しを得たいと思います。
  222. 石田宥全

    ○石田(宥)委員 約束の時間ですから、総理はよろしゅうございます。  農林大臣に若干御質問を申し上げたいと思いますが、今回の農地法の一部改正案は、土地の流動化をはかることによって大規模経営に移行するというところにねらいがあるようでありますが、農地を流動化させるということは、これは端的に申し上げて、農地を宅地やあるいは工場敷地に流動化させるということをねらいとしたもののように思えてならないのでありますが、現実にはそういう方向に動くと思うのでありますが、農林大臣、どうですか。
  223. 長谷川四郎

    長谷川国務大臣 せっかくのお尋ねでございますけれども、私たちの考え方というものは、現在ある農地をいかに効率化し、そうして農業生産性を高めるか、こういうところにございますので、これが宅地化に移行するというような考え方は、毛頭ないということだけははっきり申し上げておきたいと存じます。
  224. 石田宥全

    ○石田(宥)委員 建設省に伺いますが、新都市計画法の当面の関係農地はどれくらいになりましょうか。前の古い都市計画法によれば、農地の六〇%がこの都市計画法の地域に入っておると言われたのでありますが、新都市計画法ではどれくらいの農地面積になりますか、おわかりになったらお尋ねしたいと思います。
  225. 竹内藤男

    ○竹内政府委員 新しい都市計画法のできる前の旧法の時代に、都市計画区域というのを指定しておりますが、その都市計画区域の面積が約十一万平方キロでございます。この中に農地が三万平方キロ余り入っております。したがいまして、全耕地面積五万一千三百平方キロの約六〇%が入っていたわけでございます。  新法を施行いたしますと、都市計画区域の面積はかなり縮小される見込みでございます。したがいまして、新法の区域の中に含まれます農地面積も縮小されまして、約二万二千平方キロぐらいになると思われます。これは大体全農地面積の四〇%ぐらいに当たる、こういうふうに考えております。  ただ、都市計画区域と申しますのは、いわゆる市街化区域、調整区域というような指定をいたしますので、都市計画区域といいましても、調整区域を含む区域でございますので、この中でさらに市街化される区域というのは圧縮されるわけでございます。
  226. 石田宥全

    ○石田(宥)委員 農林大臣、いまお聞きのとおりでありまして、全農地の四〇%ほどは新都市計画法のこの区域に入るということです。もちろん調整区域も入りますけれども調整区域は市街化区域の予備区域になりますから、五年ごとに審査をしてこれを適当にまた市街化区域に編入することができるということになりますから、この数字から見る限りにおいては、農地を他の用途に転用することを目的とするものではないかという疑いを持たれるのは当然だと思うのです。  土地の利用効率というものは、これは経済本位に見るならば、あるいは工場敷地や住宅として利用するほうが効率が高いということになるかもしれない。しかし、農林大臣として農業を考えた場合には、そのような考えは許されないと思うのです。この点について、さっきの答弁ではどうも納得がいかないのでありますが、もう一度御答弁を願いたいと思います。
  227. 長谷川四郎

    長谷川国務大臣 農民農業を営み、そして農業に専念しようとする、こういうような方々に、その土地の拡大、農地の拡大をする、こういうような点、また農地の流動化と経営規模拡大のために条件等々を整備して、したがってその他の条件整備を行なって、そして他の関連施策というか、たとえば生産基盤の整備だとか、あるいは第二次で行なっているところ構造改善事業だとか、こういうような総合施策と相まって農地の流動化と経営規模拡大をはかってまいりたいという考え方は、そのとおりでございます。  いまお話しの都市周辺でございますけれども、都市周辺の問題につきましては、これはやはり考えなければならない、問題も複雑な面があるだろうと思います。御指摘のような点にも考える点がございます。したがって、反面、でありまするからさらに今回は未開発地帯というような点にもしかりであり、また、たとえばパイロットというような群をつくって、そして群によった経営規模拡大し、そしてコストを引き下げていくとか、生産能率を高めていこう、こういうようなことで今後も構造改善事業と基盤整備というようなものに対しましては、大いに意を用いて拡大をしていく考え方でございます。  さらに、本年に至りましても、先ほどもちょっと総理も触れたようでございましたけれども、主産地形成というような点につきまして、本年は五千ヘクタールくらいを対象とした八カ所を指定しておる、こういうように、つまり都市周辺が壊廃を余儀なくされるというような点は、他の地区、未開発地区、またよくことばにいわれる過疎地帯というような点に重点を置いて、これらの開発をあわせて行なっていくような方向に進みたい、こういうように考えておるのでございます。
  228. 石田宥全

    ○石田(宥)委員 関連でありますから、あまり多くを申しませんが、今度の農地法の一部改正で、流動化をはかることが規模拡大につながるように説明をされておるのでありますが、先般、本委員会において桑原参考人も指摘されたように、流動化が直ちに規模拡大につながるという何の必然性もないと思うのですね。どういう条件規模拡大につながるか。  ことに、今日のように土地価格が暴騰した中で、直ちに規模拡大につながるということは考えられない。貸借にいたしましても、委託、受託の関係にいたしましても、これは先般来議論のあるところでございですが、実は非常な高率の小作料のもとに委託、受託という形になっておるわけです。こういう状態のもとで、一体どうしてその流動化をはかれば規模拡大につながるのか、御説明を願いたいと思うのです。
  229. 長谷川四郎

    長谷川国務大臣 ただいまも申し上げましたとおり、流動化をはかりつつ生産基盤の整備拡充をやり、構造改善をやっていく、こういうような総合的な施策の上に立って行なっていきたい、こう考えておるわけでございます。
  230. 石田宥全

    ○石田(宥)委員 それでは次に、ちょっと今後の問題で、ほかの委員からも質問があるかと思いますけれども、自治省お見えになっておりますから、固定資産税の問題について質問をしておきたいと思います。  農地についてとられてきた従来の特別措置は、やめるつもりかどうか。  それから、新都市計画法による市街化区域内の農地については、宅地並み評価を行なう方針だといわれておるが、これはどうか。  それから第三点は、事実上の農地は、評価とは別に税額の据え置きをすべきではないかという問題。  さらに、固定資産の評価については、かつては収益還元方式で評価が行なわれておったのでありますが、私はやはり収益還元方式によって固定資産税というものは定むるべきであると考えておるのであります。  以上の点について、自治省では明年度の評価がえ並びに課税について、どういう方針をおとりになっておられるか、伺いたいと思います。
  231. 山下稔

    ○山下説明員 お尋ねの第一番目の特別措置をどうするかということと、第三番目にお尋ねのございました農地の据え置きについて、あわせてお答え申し上げたいと存じます。  一般的な農地につきましては、御指摘のとおり、三十九年度評価がえをいたしました場合、及び四十一年度におきまして一般的な負担調整措置の問題が論議されましたときに、いずれも農地につきましては三十八年度の税額を当分の間据え置くという特別措置がなされたわけであります。農地の経済環境その他を考えますと、この特別の事情が急激に変化したとは考えませんが、来年度の評価の問題とあわせて、今後の検討事項になると思いますが、基本的には、ただいま申し上げましたように、それほど多くの環境の変化はないというふうに考えております。  第二番目にお尋ねのありました市街化区域内の農地の評価の問題でございますが、昨年七月に政府の税制調査会から答申をいただきました中に、市街地の農地につきましては、新都市計画法による市街化区域内の農地のうちで、都市施設として整備の行なわれた地域における農地については、近郊宅地と評価の均街をはかるべきであるということが述べられております。したがいまして、私どもはこの答申の趣旨に沿いまして具体的な方法を検討いたしておりますが、実際問題といたしまして、市街化区域が具体的にどのように定められるかという動向も見きわめたいと思いますし、また、都市施設の整備された地域ということを、具体的に認定いたします基準を見出すことがなかなかむずかしい状態にございますので、まだ結論は出ておりませんが、いま申し上げましたようなことでただいま検討いたしている段階でございます。  第四番目にお尋ねのございました、農地の評価について収益還元方式をとってはどうかという御質問でございますが、この点につきましては、政府に置かれました固定資産評価制度調査会におきましても種々論議されました結果、農地につきましても全土地と同じように、売買実例価額方式をとるのが適当であるという御答申をいただきましたので、三十九年度の評価にあたりましては、売買実例価額方式をとることにいたしたわけでございまして、現在その事情は変わっていないと思うのでございます。すなわち、その他の土地につきましては売買実例価額方式をとっておりますので、農地だけ収益還元方式をとりますと、地目によって評価のしかたが異なるというような状態になりますので、各地目間の均衡をはかるという評価の趣旨から申しましても、全地目を通じて売買実例価額方式を共通的にとるのが至当ではないかと考えるわけでございます。  また、収益還元方式をとります場合におきましては、その収益をどのように見るか、あるいは資本還元率をどういうふうに考えるかというような点についても、いろいろ問題がございますので、先ほど申し上げましたように、固定資産評価制度調査会の答申に基づいてできております現行評価基準に基づきまして、四十五年度の評価を行なってまいりたいというふうに考えております。
  232. 石田宥全

    ○石田(宥)委員 また別の機会で建設省、自治省などについてお尋ねをいたしたいと思いますが、関連でございますので芳賀委員にお譲りをいたしまして、以上で私の質問を終わります。
  233. 芳賀貢

    ○芳賀委員 次にお尋ねしたいのは、農協法の改正が行なわれました場合には、土地所有者が農協に対して経営委託をすることができるということになるわけであります。これはまだ参議院段階において全然審議に入っておりませんので、この改正の成否ば予断を許さぬと思いますが、かりに農協法の改正が行なわれた場合の経営委託農地について、その委託者である農民が離農、離村した場合の所有関係というものはどうなるか、これは農地局長並びに農政局長から説明を願います。
  234. 中野和仁

    ○中野政府委員 委託をいたしまして、自分は農業をやらないわけでございます。その農家が離農いたしました場合にも、先ほどから生産法人のところで御議論がございましたように、それと同じように扱いまして、一町歩という制限を置かず、不在地主として認めるということになるわけでございます。
  235. 芳賀貢

    ○芳賀委員 もう一度明確にしてもらいたいが、たとえば、中野和仁という農地を所有しておる農協の組合員が、事情によって農協に対して全面的に農地を提供して経営委託を行なう、それはいいのですよ。しかし、何らかの事由によってどうしても離村しなければならぬ、農業を離脱しなければならぬという必要が生じて離村するわけですね。そういう場合、農協に委託した農地の所有関係というものは、これは生産法人の場合と違うですから、その場合どうなるかという点ですね。これは農協法との関係もあるわけですから、農地局長並びに農政局長からも、この点について明確にしてもらいたい。
  236. 中澤三郎

    ○中澤説明員 お答え申し上げます。  農地法上の取り扱いについては、ただいま農地局長がお答えされたとおりでございますが、農協法上の取り扱いといたしましては、先生の設例の場合でございますと、組合員の資格がないという形で、農協との関係がなくなるわけでございます。
  237. 芳賀貢

    ○芳賀委員 ですからお尋ねしておるのですが、農地法上から見れば、これはもちろん改正案ですが、農協に対する経営委託農地について、離農、離村した場合にも、その委託農地の全面積は、不在地主の形で保有ができるという点が農地局長から説明があったわけです。しかし、農協法の規定では、その区域内の組合員が、自己の所属する協同組合に対して農地を提供して経営委託をしたけれども、何らかの事由によってその区域を離れる。いわゆるその組合員が離村するわけですね。そういう場合には、組合区域外の者はその組合に加入することはできないわけですから、そこで組合員資格を失うわけです。それから農業経営の意思が、委託にしろ自営にしろなくなるわけですからして、その面からも組合員資格を失うということになるわけです。そういう場合に、農地法上から見ると、その委託農地はこれは不在地主の無制限所有ということで所有できるということと、それからそのことによって組合員資格を喪失するという、この二つの問題が出てくるわけですから、この点を明確にしておいてもらいたい。
  238. 中野和仁

    ○中野政府委員 改正案の三条二項で、農協法十条二項に規定する事業を行なう農協が、その所有者から委託を受けて事業に供する小作地については、小作地の所有制限の例外としておるわけでございます。したがいまして、その本人が委託をして外へ出ましても農協に預けては置けるわけでございますが、本人が死亡してしまいました場合に、そのむすこさんは組合員になっておりませんから、これは認められないということになるわけでございます。
  239. 芳賀貢

    ○芳賀委員 ちょっとおかしいじゃないですか、農地局長。中澤参事官の答弁とあなたのいまの解釈は違うですよ。
  240. 中野和仁

    ○中野政府委員 先般の農協法の改正によりまして、委託をしました農家自体は組合員とみなすということにしてあるわけでございます。それでその本人につきましては、その委託の事業については組合員とみなされているわけでございます。ところが、その本人が在村をしておりますれば普通の場合準組合員になれる。外に出ました場合にも、ここで組合員とみなされているわけでございます。本人でありませんでその相続人になりますと、これは組合員とみなされないことになるわけでございます。  そこで、私が申し上げましたように、農協に預けております小作地につきましては、先ほどから御議論のありました親子二代という場合のむすこさんの場合には、それは当たりません、こういうふうに申し上げたわけです。
  241. 芳賀貢

    ○芳賀委員 それはそういう拡大解釈ではないですよ。農協法の改正の審議をした場合は、その区域内の農家が農地を組合に提供して全面経営委託をするわけですから、その場合は、その組合員はいわゆる農業に従事しない、農業の経営を行なわない、単に土地所有者ということになるわけですよ。そうなると、その在村区域内におっても正組合員の資格をそこで失うわけですね。それを防ぐために、組合員とみなすという規定にこれはなっているわけなんですよ。  ですから区域を離れる、あるいは完全に離農するという場合には、東京へ行っても、外国へ行っても組合員とみなすというほど、今度の農協法の改正は、そこまで無制限に、無範囲に拡大解釈ができるというふうにはなっていないですよ。もしこじつけてそういう解釈をするとすれば、農協法の運営全体がまた狂ってくるということに当然なるわけですからね。農地局長としてかってな自己流の解釈は許さぬですよ。
  242. 中澤三郎

    ○中澤説明員 芳賀先生が先ほどからお尋ねされていることに関連いたしまして、御質問なり私たちのほうからのお答えが混乱しないように、もう一度私のほうから、農協法上の扱いにつきましてはっきりお答え申し上げたいと思います。  先ほどの御質問の中にありました例で、たとえば父親が離農する場合に、農協に土地を委託いたしまして、経営を委託しまして離農した、その場合の農地法上の取り扱いにつきましては、先ほど来お答え申し上げたとおりでございますが、そうした状態のままで父親が死んで、子供にその農地が相続された場合でございますけれども、農協法の今回の改正案におきましては、経営委託をいたします際に、組合員または組合員の同一の世帯に属する者は、これを組合員とみなしまして員外利用ができるというふうな規定になっております。この場合の員外利用といたしましては、通常、御承知のように二〇%以内の員外利用でございますが、この場合には一〇〇%の員外利用が認められるという形になっております。  しかしさらに、こういう例はあまりないかと思いますが、経営委託をしたけれども、相続する場合、同一の世帯に属さなかった者に相続される場合があるわけでございますが、その場合は、員外利用の趣旨にかんがみまして、五〇対五〇の範囲内に該当するならば、農協法との関係におきましては員外利用が認められる、こういうふうになろうかというふうに考えております。
  243. 芳賀貢

    ○芳賀委員 そうすると、区域外の員外利用まで認めるという思想ですか。
  244. 中澤三郎

    ○中澤説明員 員外利用の制度が認められた趣旨いかんということに関係すると思いますが、制度上は区域外の員外利用者も認めないということにはならないわけでございますが、そういうことを、制度がそれを許すからといって、農協法上それを進めていいかどうかということは、また別の問題であろうかと思います。
  245. 芳賀貢

    ○芳賀委員 私の判断としては、現在の農協法にある農地の信託制度ですね。これは農協に所有農地を貸し付け信託あるいは売り渡し信託の形で信託して、そうして区域外に出ても、それは信託制度によって適正に扱うということは、これは当然農協の業務の一環としてしなければならぬが、農地の所有関係とそれから経営委託の関係は、同じ農協が行なえるとしても、信託制度の場合とは全く別個のものじゃないかと思うのですよ。いま、あとの運営については、法律の改正が成立した暁に十分検討すると言うのですが、そうなると、いま中野局長の言った独断的な解釈は、これは間違いですね。
  246. 中野和仁

    ○中野政府委員 私、間違えて申したようなつもりはございませんので、私が申しましたのは、いまの農政局参事官の説明にもありましたように、組合員とみなすわけでございますから、それが外へ出る場合もあり得ます。外へ出たあとの子供といいましょうか、それはもともと委託をしたときの組合員ないしその世帯員ではございませんので、それには資格がないということを申し上げたわけでございます。
  247. 芳賀貢

    ○芳賀委員 これは重大な問題ですからね。当委員会では、農協法の審議は終わって参議院に送付しておるわけですが、これは農林省内部の所管局においてさえも法理論的に解釈が異なるわけだし、われわれとしても非常に疑点を感じておるわけですから、これは参議院で今後農協法の審議が行なわれる際に、十分論議を尽くしてもらうことにしたいと思います。しかし、これは農協法に根拠のある経営委託の問題ですから、農地法だけで独断的にこうだという断定をすることはできないですよ。いいですか、根拠は農協法の経営委託から出発するわけですから、そういうことでいいですか。
  248. 中野和仁

    ○中野政府委員 根拠は、農協法の経営委託が今度改正になりますればできるということは、先生おっしゃるとおりでございます。
  249. 芳賀貢

    ○芳賀委員 それでは、この重要な疑点は留保することにして、先ほど十分な答弁がまだありませんでしたが、生産法人に提供した農地の不在地主の承継は、やはりこれは一般承継の形で二代に及ぶのか、あるいはいま局長の言われたように、農協に対する経営委託農地と同じように一代限りとするのか、この点はいかがですか。
  250. 中野和仁

    ○中野政府委員 生産法人の場合に、都会に行ったむすこさんがそのまま何もしないでは、不在地主として小作地の所有を認めないわけです。構成員になればいいということでございます。
  251. 芳賀貢

    ○芳賀委員 次に、現在の農地法の賃貸借に関する制限を、これもまた大幅に緩和をして、いままではこれこれはできない、してはならぬというのが、これができる、できるにしてあるわけです。  世界各国の農地制度等の歴史並びに現況を見ると、冒頭に議論したとおり、わが国農地法の第一条の目的のごとく、農地は耕作農民の所有とすべきであるという大原則の上に立って、これを全面的に実行しておる諸国もあります。それから、農地の所有形態を耕作者の所有に全面的にするというところまで、まだ到達できない過渡的な段階においては、それにかわって、いわゆる賃借権ですね、耕作権を強力に国の制度の中で保護するという政策をとっておるわけです。ただ今度の改正のように、耕作農民に対して、小作地であっても、その農地に対して、いままでと違って、所有の機会を与えないという改正を一方において企図して、一方においてそれにかわって強化しなければならぬ、いわゆる耕作権というものを、これもまた弱体化するというようなやり方は、これは世界諸国にその例がないのですよ。これもたいへんな問題だと思うのです。  従来であれば、不在地主も認めないわけですからして、その小作地の所有者が、みずから農業拡大して耕作するという場合に、それが正当な理由として、小作者に対して所有の機会を与えることができないことは現行法においてもありますけれども、しかし離村、離農するというような場合は、当然これは、現在耕作しておるいわゆる小作人に、その農地は優先的に売り渡されるということになっておるわけですが、この点が今度は、所有関係において、所有者側に有利な、そういう改正が行なわれるわけでしょう。そうすると、農地取得の機会というもの、所有の機会というものは、現在よりもずっと機会が少なくなる、あるいはなくなる場合もあるわけです。  それではそれにかわって、国としては何をもって強力な保護をするかということになれば、当然賃借権、いわゆる農民の耕作権を強化する、保護するということが、その代償としてうたわれなければならぬと思いますが、この点も弱体化させるわけですね。所有の機会も失わせる、与えない、耕作権もいままでよりはずっと弱体化させる、こういうような農地制度というものはあり得ないと思うんですよ。どういうわけで両方とも弱体化させるわけなんですか。
  252. 中野和仁

    ○中野政府委員 第一点の、耕作者が土地を優先的に買えるという問題でございますが、これは今度の改正によりましてもその原則は、小作地は小作人以外には買えないという原則は変えておりません。ただ例外といたしまして、小作人が買いたくないという場合に、地主が小作人の同意をとりまして他に売ることができるということにしたわけでございます。繰り返すようでございますが、小作人が優先的に買えるということは、何ら変更しておりません。  それから、耕作権の弱化というお話でございますが、今度の改正によりまして、いままでの耕作権の保護をそうべらぼうに弱化したというふうにはわれわれ考えておりません。耕作権の保護をいたしております農地法の十八条からの規定がございますが、引き渡しがあれば、第三者対抗要件があるということ、それから定期賃貸借についての更新拒絶、法定更新の問題についてもそのとおりでございます。それから賃貸借の解約の場合の知事の許可が要るという原則も変えておりません。その中で今回変えましたのは、両方の合意がある場合には、知事の許可が要らないということが一つと、それから十年以上の賃貸借契約をしました場合には、知事の許可なしに更新拒絶ができるということと、それから水田裏作の賃貸借契約については知事の許可が要らないという三点は改正をいたしましたけれども、これによりまして大幅に耕作権を弱化したというふうにはわれわれ考えておりません。  ただ、いままでの耕作権があまりに強いものですから、初めに、知事といいますか、いまは農業委員会の許可になっておりますが、その許可を受けなければ、全くやみの小作ということになるわけで、こうなりますと、耕作者のほうには何ら権限がございません。そういうことでは、農地法上の賃貸借というのは、それこそだんだん弱化するということでございますので、いま申し上げましたような改正を加えた上で、賃貸借を、民法の特則としての農地法上の賃貸借に乗っけていきたいという点で改正を考えたわけでございます。
  253. 芳賀貢

    ○芳賀委員 いずれにしても、農地法第十八条の賃借権の対抗力の関係についてはそのままになっておるから、これは改正したことにはならぬでしょう。しかし、あとの局長の述べられた数点の改正は、これは耕作権を現状の線よりずっと——現状どおりで後退しないというのであれば、これに関する条文の改正は必要ないじゃないでしょうか。耕作者に対して今度は所有の機会は与えないわけでしょう、不在地主の復活によって。ですから、耕作者が所有の機会をいままでよりも与えられないということになれば、これは農業経営上から見ても、所有しない経営の形、いわゆる借り入れ農地に対する耕作権の確立ということが、従来以上にこれは強化されなければいけないということになるわけでしょう。両方弱体化させていいということにはならぬと思うのですよ。そういう農地制度の改革、改正というものは、世界諸国に実例がないんですよ。所有の原則を強めてこれを徹底させる農地改革は進めるが、そこに到達しない過渡的な段階においては、耕作権を国の制度において十分に保護するとか、いずれかの政策をとらなければ、生産農民が安心して持続的に農業の経営に従事することは、断じてできないと思うんですよ。  官房長は数年前、農地制度の問題について外国を調査してきたわけですね。あれはどの国かに招待されて行って、日本の農地制度の優位性というものをあなたは講演してきたこともあるのじゃないですか。この点は官房長から明確にしてもらいたい。
  254. 大和田啓気

    大和田政府委員 よく御存じのことと思いますけれども日本のように九四、五%の農地が自作地であって、しかも賃貸借の場合に、耕作者が承知しなければ土地が絶対に戻らないという法制は、普通の国ではどこにもございません。  そこで今回の改正は、別に普通の国並みにするということでは毛頭ございませんけれども、私、先ほど申し述べましたように、賃貸借関係の弾力化をしようとすることでございまして、世界的な水準から見て、耕作者の不利になるというようなことはないというふうに思っております。
  255. 芳賀貢

    ○芳賀委員 現在より不利になることは明らかでしょう。改正しない場合と改正した場合と、どっちが不利になるのですか。
  256. 大和田啓気

    大和田政府委員 私が申し上げましたのは、今回の農地法の改正は、経営規模拡大を円滑に行なうというその趣旨と、耕作者の利益といいますか、権利との調整をはかろうとするのが今回の趣旨でございます。したがいまして、賃借人の立場だけについて申し上げますれば、いろいろな点において耕作権が弾力化されたということは、それは事実でございます。
  257. 芳賀貢

    ○芳賀委員 弾力化というのは、不利になるということですか。
  258. 大和田啓気

    大和田政府委員 今回の賃貸借におきましても、合意解約の場合その他について円滑化、弾力化をはかりたということでございまして、たとえば、長期の定期賃貸借契約におきまして、従来の法制のもとでは、期間が来ましても耕作者が頭を振らない限りは、土地が戻るということはございませんけれども、今回の改正案では、長期の契約の期間がくれば、所有者に土地が戻るということでございますから、その点だけについて言えば、耕作者についての耕作権が弱くなったということはいなめないと思います。  しかし、それは他方におきまして、農業経営の拡大円滑化するということとの関連でございますから、一つの条項だけをながめて、それで耕作権が弱くなったから、今回の農地法の改正はいかぬということは、適当な見方ではないというふうに思います。
  259. 芳賀貢

    ○芳賀委員 国民に平等に与えられた権利関係の上に立って、現在の農地法の権利というものが、耕作者にとっては所有の機会にしても、耕作権の確立というこの点から見た場合にも、現行法から見て改正案というものは、明らかに不利益を及ぼすのではないかというその点を聞いているわけですよ。それを政策的に延長して、これがどうなるということは聞いていないんですからね。  どうも法律論になると、先般の食管法第三条第二項のいわゆる「もとる」という問題にしても、あなたはおもしろくないという意味だ、農林大臣はこれは反するということにはならぬ、反しないという意味だということで、そういうつまらぬ答弁を先日もしたじゃないですか。もう少し歯切れよく、この点は不利益になるなら不利益になる、この点は不利益にならぬなら不利益にならぬという明快さというものが必要だと思うんですよ。歯切れが悪いから質疑の時間がよけいかかるんですよ。
  260. 中野和仁

    ○中野政府委員 先ほどから離農者の問題につきまして、不在地主を認めるという御議論があったわけでございますが、その点について、不在地主の土地になりました耕作者が、その土地を売らなければ買えないということはそのとおりでございます。しかし、それの耕作権は何ら弱化されていない。正規の賃貸借を結べば、農地法上の保護はあるということでございます。  それから、耕作権の弱化の問題につきましても、今回われわれが改正をいたしましたのは、ゆるめたといたしますれば、先ほども申しましたように、特定のものについて知事の許可が要らないということにしただけでございます。その点は、るる先ほども申し上げましたように、一ぺん貸しますと返ってこないというような、耕作権はなるほど強いわけでございます。それについて、農地改革後現在まであります小作地についての耕作権の保護は、そのとおり必要であるわけでありますけれども、今後それじゃ貸し借りをやるといった場合に、あまり強過ぎれば貸す人がないということは、ひとつ御理解いただきたいと思います。
  261. 芳賀貢

    ○芳賀委員 現在の法律は、農業を放棄して離村する場合は、小作地の場合には、その小作人に売るか、しからずんば農地法の規定によって国に売り渡す、国の買収規定というものがあるのだから。その場合には、最高小作料の十一倍の価格ということになっておるわけですね。そこに、耕作者から見れば農地取得の機会があるのですよ、その所有者が離農、離村する場合。ところが、今度はそれは農地を所有したままで離村して不在地主になる。不在地主の復活が認められるわけですからして、その限りにおいては、耕作者は取得の機会を失うわけですね。現行法から見た土地所有は、耕作者が所有することを原則にするという規定から見ると、生産農民に対して不利益を及ぼす。それからそういう場合には、諸外国の実例を見ても、第二義的な施策として、耕作権をそれにかわって強化するという、そういう農地制度上の対策を講じておるわけなんですよ。  それがいまの自民党内閣の場合は、その所有の機会を与えない。それにかわる耕作権の強化措置についても、現在よりも弱体にする、こういうことになっておるのですよ。これは答弁の必要はない。そうなっておるのだから……。  その次にお尋ねしたいのは、十年間継続して耕作した者に対して、一定の事前通告によって、さらに耕作を継続したいという意思が小作人にあっても、更新の拒絶ができるという改正を今度やっておるわけですね。これは賃貸借権から見て明らかな後退じゃないですか。永小作権と地上権は、これは民法上からも物権としての、財産としての扱いを受けておるが、賃借権というものはそれと同等の取り扱いを受けていないですね。  しかし、農地法における賃借権というものは、民法の一般的な賃借権よりも相当優位性を持たしておるのですね。今度その賃借権を弱体化させるということは、民法における一般の賃借権と大体同等の地位までそれを引き下げるということに当然なると思うのです。民法の賃借権の場合は、何といってもその所有権者に優位につくられておるわけですから、その弊害を除去するために、農地法におけるいわゆる賃借権というものを、特に農地法を通じて強化しているわけですから、その特別の措置を取っ払うということになれば、一般賃借権と同格ということにずっと後退するということになる。  十年継続して耕作した者に対して、本人もまだつくりたい、所有者は耕作の意思がないという場合拒絶ができるというのは、これはおかしいじゃないですか。
  262. 中野和仁

    ○中野政府委員 先ほどから何度も申し上げておりますように、新しく土地を貸し借りしようといったときに、一ぺんおまえに貸したら永久に返ってこないという制度だったら、なかなか貸すほうは貸す気にならぬわけであります。そこで、われわれとしましては、今回耕作権の安定という面から考えまして、十年ということをきめたわけでございます。  先ほどからヨーロッパのお話がございますので、ちなみにその点を申し上げますと、ドイツでは農場の場合は十八年、日本のような地片取引の場合は九年というのが法定期間になっておるわけです。フランスも九年、オランダも農場は十二年、あるいは地片の場合は六年、ベルギーで九年というようなことでやっております。そして先生お話しのように、十年たった場合に地主のほうで耕作する意思がなければ、そこで話し合いをしまして、もう一ぺん継続をすればよろしいわけでございまして、初めから永久でなければいかぬということにしますれば、やはり地主側のその土地の事情の変化によって、また転用したいということもありましょうし、そういうことも全部封鎖するということになれば、貸さないという問題もございますので、その辺のバランスを考えたわけでございます。
  263. 芳賀貢

    ○芳賀委員 何も西ドイツとバランスをとる必要はないじゃないですか。いまあるのを、いまより弱体化させるからそういうことになるのでしょう。いままで十年以内のものを十年にするというのなら一歩前進ということになるが、更新拒絶ができるというふうに法律にうたって、法律に基づいた一定期間の事前通告をして拒絶された場合に、どうして賃借権の継続を対抗的に争えるのですか。話し合いだけでしょう。それは権利として更新させることはできなくなるのじゃないですか。できればいいですよ。所有者がみずから耕作する意思がない、耕作者は十年間善意の管理をして、契約に基づいた小作料も納めておる、他に比較して何ら遜色のない管理をやっておるという場合、これは耕作者のほうに拒絶される理由はないですよ。しかし法律に、十年経過した場合には更新の拒絶ができるというふうにはっきりうたってあれば、これはどうしようもないじゃないですか。そういう場合は話し合いでやりなさいじゃ、ちょっと酷じゃないですか。
  264. 中野和仁

    ○中野政府委員 いまの十年の場合は、初めから十年間借りましょうという約束をして借りるわけでございます。たったときに両方の都合で、解約の場合もありましょうし、地主が引き続き貸そうと思えば、また契約すればよろしいわけでございます。初めに十年という約束をしておいて、それが済んだあと、一方的に断われるということであれば、なかなか貸しにくい。それよりもやみで貸したほうがいい。先ほどから繰り返して申しておるようでございますけれども、そういうことになるのをわれわれは非常に心配しておるわけでございます。
  265. 芳賀貢

    ○芳賀委員 別にあんたが十年先の心配をする必要はないのですよ。耕作者本位にものを考えてもらわなければ困ると思うのです。これからの契約でも、法律で十年たてばこれは更新拒絶ができるということになれば、所有者が耕作の意思がなくても、法律どおりであんたには貸しませんと断われるわけでしょう。そこでもう契約は断絶して、また所有者が自分の希望する者に貸してもいいということになるわけですね。できるわけでしょう、法律上。そういう改正は問題があるじゃないかということを言っておるのです。
  266. 中野和仁

    ○中野政府委員 繰り返して恐縮でございますけれども、先生の御指摘も私わからないことはないのですけれども、何度も申し上げますように、それじゃ初めに十年という約束をしておいて、十年たったら、おれは返さないよと言って開き直るのを認めるということでは、これまた先ほど申し上げますように、それじゃ初めから許可を受けて、正規の賃貸借にしないということになるのを非常に心配しておるわけでございます。
  267. 芳賀貢

    ○芳賀委員 いずれにしても、所用するとしないにかかわらず、農地は国土であるから、有効に活用する必要があるでしょう。国民経済的にも、これは最も高度に、適正に耕作の手段として農地を活用する必要があるわけでしょう。本人が耕作する場合は別ですよ。耕作する意思がないのに、十年でだめだというのはおかしいじゃないですか。十年たっても耕作する意思がない、支障なくいまの耕作者が耕作を続けられる、そのことが好ましいということになれば、何も返しませんよというような契約をする必要はないのですからね。こういうふうに改正しなければ、その契約は十年たっても返しませんよということになるから困ると言うのでしょう、あなたは。現行法どおりやればいいじゃないですか。それを言っておるのですよ。何のために改正するのだ、改正しなくてもいいじゃないかということを言っておるのですよ。
  268. 中野和仁

    ○中野政府委員 何度も申し上げますように、現行法どおりで耕作権はそのとおりでございます。しかし、それでは初めから貸しません。それでやみ小作が非常にふえておるわけでございます。その貸せというのまで強制はなかなかできないわけでございます。やはり新しい契約ということになりますと、地主と小作人のバランスも同時に考えなければならぬのではないかと思います。
  269. 芳賀貢

    ○芳賀委員 そういう場合に、耕作者に対する法律上の規制はあるでしょう。しかし土地を所有しておる、それを耕作の具に供する意思がない、そして荒廃させておるという場合、いまの農地法はそのまま放任しておけるのですか。
  270. 中野和仁

    ○中野政府委員 いまの農地法といいましょうか、農業関係の法律で、本人が村に住んでおりまして、その農地を放置しておるというのを、強制的に耕作させる法律はございません。
  271. 芳賀貢

    ○芳賀委員 耕作させる根拠がないといっても、所有関係を改めることはできるでしょう。
  272. 中野和仁

    ○中野政府委員 それは、在村地主も耕作しないで一ヘクタールは持てるということでございます。その範囲では持てるわけでございます。それ以上耕作をしないで放置しておるといいましても、その場合は地主としましては、おそらく山林に転用申請をするとかなんとかいうことで、実際問題としましていまの農地法で、そういう個人の経営の中身まで強制するということは、なかなかむずかしいということを申し上げておるわけであります。
  273. 芳賀貢

    ○芳賀委員 それはむずかしいということだけで、やらないのでしょう。やればできるが、事態がむずかしいからやらぬということだけじゃないですか。たとえば、法律の第三章の未墾地買収の規定も、法律にははっきり買収する規定があるが、なかなかむずかしいからやらぬ。眠らしておる。それと同じことじゃないですか。何も首をひねることはないですよ。賃借権を弱めておるということ、これは間違いないわけだからね。  もう一つ、次にお尋ねしたいことは、こういうふうに所有の機会も与えない、耕作権も弱めるという場合、土地に付加された土地生産性向上ということに対してはどうなるのですか。将来にわたって耕作できる、あるいは将来自分の所有地にすることができるという、そういう希望があってこそ初めて土地改良を積極的に行なって、いわゆる土地の生産性を高めるとか、そういう努力というものは可能な限り現在の農民はやっておるわけなんですよ。しかし、所有の機会がない、耕作権も非常に不安定になるというような場合は、土地の生産性を高めるということもまた非常に不安定なことになるわけですね。こういう点は全然配慮する必要がないのですか。
  274. 中野和仁

    ○中野政府委員 先生は耕作権が非常に不安定になったと、こういうふうに言われるわけでございますが、私たちは、先ほど申し上げましたような趣旨での改正は加えたわけでございますが、根本的に不安定になったというふうには思っておりません。むしろ現段階では地主と小作人の話し合いで、また地主が再びやるという場合以外は、おそらくそのまま引き続いて貸すであろうというふうに、今後の情勢として考えられるわけでございます。  たまたま十年したら返せと言った場合に、小作人のほうが、いまの土地改良法のたてまえからいえば、第一義的に土地改良投資をするという資格があるわけでございます。その場合、十年たった場合に地主が返せと言った場合は、有益費の償還ということが地主に対して要求できるわけでございます。地主がその有益費を返さない場合は、土地を引き渡さなくてよろしいという留置権もございますし、その辺は先生が言われるほど不安定になるというふうにはわれわれ考えておりません。
  275. 芳賀貢

    ○芳賀委員 それは権利関係にしても、農業に関する事情が非常に困難性を高めておることはわかりますよ。だからといってどうしようもないから、農地法のいろいろな制限ももう取っ払って、もうあきらめて投げ出すというのがあなた方の態度じゃないですか。困難が倍加すればするほどやはり農政基本農業関係の制度のこれは根本をなすものだから——食管法の根幹を守るなんかと違うですよ、これは。困難になればなるほど、やはり農林省中心になって、農地局が中心になって、やはり将来にわたって日本の耕作農民の権利を擁護する、農業発展生産向上を守るという、こういう使命感というものがなければいけないと思うのですよ。もうそういうものはどうでもいいということであれば、これは別ですよ。そうなれば、もう農林省というものは一切の使命を捨てて要らなくなるわけですからね。農地局なんというのは要らぬですよ。食糧庁も要らぬ。みんな要らぬ要らぬということになると、農林省は要らぬということになるわけだから、大蔵省の農林水産局ぐらいにしておけばいいわけですからね。あるいは通産省の外局ぐらいにしておいてもいいじゃないですか。  その次に賃借料の問題です。小作料の問題ですね。これも同僚委員から若干の質問がありましたけれども、まだ解明されていないわけです。この点について特に問題になるのは、すでに契約進行中の農地については従来の統制小作料というものを維持するということは、これは明らかにされておるわけです。新たなる契約の場合には、今度の法律改正がされた場合には、その規定に基づいて小作料率を決定するということにこれはなっておるわけですね。そうでないですか。
  276. 中野和仁

    ○中野政府委員 お話しのとおりでございます。
  277. 芳賀貢

    ○芳賀委員 そこで、今度は農業委員会に標準小作料というものを算定させて、これを公表させるということになっておるでしょう。農業委員会が市町村ごとにいまあるわけですが、その農業委員会において標準小作料を算定してこれを公表する。この標準小作料を大きく上回ったような契約等がなされた場合は、これは減額の勧告を当事者に対して農業委員会は発することができる、こういうことになるわけですね。  そこで、いろいろお尋ねしたいわけですが、この減額勧告をした場合は、はたしてその勧告の内容というものを農業委員会は公表するのかしないのか。だれだれの契約に対してこういう勧告をしましたという、いわゆる標準小作料の公表と同じように、それに付随する勧告についても公表するかしないか、どうですか。
  278. 中野和仁

    ○中野政府委員 法律の制度といたしましては、公表をするというふうには規定してございません。  しかし、いまの先生のお話を伺っておりまして、本来、当事者が同意をしてきまっておる小作料が、周辺の小作料に高過ぎて悪影響を及ぼすということでございますから、一つのお考え方と思いますので、指導といたしましては、そういう点を考慮すべきことだと思います。
  279. 芳賀貢

    ○芳賀委員 農業委員会が標準小作料を設定して、それを相当上回るような場合には、農業委員会の責任においてその減額勧告ができるということが、この改正案に載っているわけですからね。載っていないのをどうすると言っているんじゃないですから、勧告まではやるわけでしょう。それは合意契約であっても、これは正常な契約でないと認めた場合も、その地域の標準小作料に照らして、これは勧告権の発動をやるわけですね。そういう場合、その勧告を当事者だけに秘密に勧告するのか。こういう問題がありましたので、勧告しましたということを公表するということは、これはやはり適正な小作料を維持するという意味から見て、非常に有効な措置だと思うわけなんですよ。改正に賛成ではないが、改正案を出すという場合には、そういう親切というものがあってしかるべきじゃないですか。
  280. 中野和仁

    ○中野政府委員 ただいま申し上げましたように、法律には書いてございませんが、省令あるいは通達によりまして、いまの先生の御示唆は十分考えていきたいと思います。
  281. 芳賀貢

    ○芳賀委員 次に、この標準小作料の算定の方式ですね。これは非常に大事な点ですが、この算定方式はどういうふうに考えておるわけですか。
  282. 中野和仁

    ○中野政府委員 改正法律の二十四条の二にございますように、その農業委員会の区域の自然条件なり、いろいろ土地の利用条件がございますので、必要な区分をいたします。それは普通の場合は、田、畑あるいは樹園地ということになると思います。その中も、おそらく一本ではきめられないと思います。田にいたしましても、大体普通の場合、上中下田という分け方は、通常村の中でやられておるようでありますから、そういう分け方をいたしたいと思います。  いまのたんほの例で言いますと、たんぼにつきまして普通の経営をやりました場合には、一体そこでは平年どれくらいとれるかという生産量、米でありましたら米価、そこで粗収益が出てまいります。それから、普通の場合に肥料あるいは農機具の償却費その他物財費がかかります。それと労賃がかかるわけでございます。それらを引きます。そうして、われわれの現在の小作料の考え方もそうでございますが、経営者報酬というものも見るべきだと考えております。そこで、その経営者報酬も引いた残りが地代に帰属するものであるというふうに考えて、そういうものの考え方、算定のしかたを指導をしたいというふうに考えております。
  283. 芳賀貢

    ○芳賀委員 それでは、現行の小作料の算定方式に比較して、そのとおりであるか、そこは違うということになるか、お尋ねしたいと思いますが、一昨年小作料の改定をしたわけですけれども、算定方式は以前から変わっていないわけですね。まず、小作料の基準額を出す場合には、単位収量、いわゆる反当、十アールなら十アール当たりの反当平均粗収益ですね。これはやはり反当の基準年をどこにとるかということになるかと思いますが、とにかくその地域の、今度は農業委員会の区域ごとということに細分化されると思いますからして、その地域における平年の反当平均収量というものは、やはり粗収益の基礎になると思うわけです。その反当粗収益から物財費、雇用労働費、家族労働費、その家族労働費については、米価算定と同じように、都市均衡労賃方式で家族労賃というものは計算してきているわけです。それに資本利子、それに租税公課を足して、いま言いました物財費、雇用労働費、家族労働費、資本利子、租税公課の金額の合計に四%を乗じた答えが、これがいわゆる企業者利潤として計上されることになっておるわけであります。これらの諸経費を粗収益から引いた残りがいわゆる地代部分ということに、現在の小作料の算定方式はなっておるわけですが、これに比較して、この改正案の場合の標準小作料の算定方式というものは、これと同じにやるわけですか、それとも要素を変えて計算するかですね。
  284. 中野和仁

    ○中野政府委員 ただいまのお話にも出ていましたように、収量は、これは全国一律にしておりますけれども、そういうわけにはまいりません。その村々の収量、たとえば米でありますと上中下田別にとります。それから価格は、米でありますと大体きまっておるわけでございますが、畑作物になりますといろいろな値段が出てまいりますので、その地域地域の相場といいますか、価格になるかと思います。それから物財費が、その地域の肥料代等大体きまっておるわけでございます。償却費等もそのとおりでございます。  そこで、家族労賃の評価が非常に問題だと思います。これは相当な農業地域では、大体家族労賃で評価できると思います。しかしそのほかは、そればいまちょうど米価で算定しておりますようなあの全国一律のがいいのか、やはり実態からしましてその町村在住者の労賃に匹敵させるほうがいいのか、それから農業労賃を使うのがいいのか、そういういろいろな問題があります。その辺は、気持ちといたしましては、その町村在住者的なものとの均衡がとれるというやり方でやったほうが私はよろしいと思います。しかし、地域によりましては非常に反収が低くて、そういう計算をすれば、昨日も議論が出ましたけれども、マイナスが出るというようなことではなかなか借り賃も出ません。やはりその辺の考慮も必要かと思います。  なお、つけ加えて申し上げますれば、こういう公定価格をつくる場合でございますから、先ほどのように利潤を四%というふうにしかかけませんでした。しかし、一昨年の小作料改定の場合は、反収が三百八十八キロの場合にこういう値段でございます。ところがいま、東北、北海道あるいはその他の米作地帯では、大体五百キロ、六百キロということになるわけでございます。そうしますと、計算してここへ出てきました土地収益というのは、おそらく三万円あるいは四万円ということになってくるわけであります。それを全部地主がもらっていいというふうにわれわれは考えておりません。むしろこの利潤の考え方、それは労賃のとり方とも関連してまいりますけれども、そういう計算をしてまいりました中の利潤の半分は、経営者報酬として耕作者が取ったほうがいいのではないか、そういうふうに考えて指導をいたしたいと思っておるわけでございます。
  285. 芳賀貢

    ○芳賀委員 これは非常に大事な問題です。これをあいまいにされると、どういう小作料がその農業委員会において決定されるかわからぬでしょう。これは従来と違って、農林省の責任において省令で示して、都道府県知事がその算定したものを農林省が承認するという形は今度はとらないわけですね。とらないだけに農業委員会としては、これは非常に責任が重くなるわけですが、まさか地代論からはずれたような小作料の算定をすることもできないと思うのですよ。まあ皆さんだから、やけくそになって何をやるかわからぬが、とにかく常識が残っておれば、そういう無法なことはやらぬと思うのですよ。  そこで、どうもいまの局長の算定方式における説明というのは、全くあいまいなんですよ。だから、一つ一つお尋ねしますが、この全国の農業委員会で標準小作料をつくる場合の収益の基礎というものは、これは反収に基づくということは間違いないですね。その地域の過去三年の平均とか決定年の中庸な収量とか、あるいは北海道のごときは三年凶作が続いて、二年また普通作で、またことしも凶作のおそれがあるというような場合は、安定収量というものをどこへ求めるかということは、地域によってたいへんな問題があると思うのですよ。これは農業委員会にまかせるから適当にやってくれというわけにいかぬでしょう。その系統団体の農業会議所に指導してくれなんていったって、これは全く農林省の御用機関で、指導性も何もないわけですからね。一番まじめに信用してやれるというのは末端の農業委員会しかないのですよ。そういう場合には、標準小作料の設定の場合は、一定の基準あるいは算定の根拠というものは、これはどうしても行政的に、省令の形でやるか、あるいは局長通達か事務次官通達か、何らかの形で行政的に責任をもって指導するのか。するならすると言ってください。
  286. 中野和仁

    ○中野政府委員 通達でそういう指導をいたしたいと思います。
  287. 芳賀貢

    ○芳賀委員 それでは粗収益については、適正な過去の収量を基礎にして粗収益の計算をやる、これはわかりました。  それでは、これから引き去るところの物財費、これは投下された物財費の適正価格、あるいは雇用労働費は、雇用労賃の支払い実績というものを平均値を求めてやる、この点は間違いないですね。ごまかしようはないと思いますが、この点はどうしますか。
  288. 中野和仁

    ○中野政府委員 お話しのとおりでございます。
  289. 芳賀貢

    ○芳賀委員 それから家族労働費については、長年にわたる農林省の計算としては、米価と同様な方式をとって都市均衡労賃方式で、これは現在は製造業五人規模以上ということになっておりますね。この点は、これ以上五十人とか百人にもできがたいかもしれぬが、最低の場合にも五人規模以上の都市均衡労賃でやるか。そういう指導をする方針かどうか。
  290. 中野和仁

    ○中野政府委員 労賃のとり方につきましては、先ほど私、申し上げましたように、地域によりましてかなりの差がございますので、全国一律の一時間当たり二百五十円なら二百五十円、こういう指示をするつもりはございません。しかし、さっき申し上げましたように、その町村周辺の工業労賃、そういうものを参酌して、その村々に適合するような労賃を一応きめるというほうがいいのではないかというふうに考えております。  と申しますのは、均衡労賃を二百五十円ととって、いまの米価計算どおりだということになりますと、相当な地帯がいまの地代よりもはるかに高いものに——いまの地代といいますか、利潤部分が非常に多くなり過ぎまして、それではいけないものですから、一応の労賃を計算しました残りの利潤部分の分け方を考えたほうがいいのではないかということを、さっき申し上げたわけであります。
  291. 芳賀貢

    ○芳賀委員 これは全国一律と言っていないのですよ。地域によってきめるわけですからね。たとえば、うしろに太田畜産局長おるが、加工原料乳の補給金をきめる場合には、加工原料乳の主要なる生産地域における他産業の労賃を、なま乳生産農家の自家労賃に算定するということになっておるわけだから、少なくとも都道府県なら都道府県単位における他産業労賃ということに、この法律の改正趣旨から見ればそうなると思うんですよ。その地域であっても、その均衡労賃の原則というものは堅持しなければいかぬわけでしょう。この基本というものは、現在の統制小作料の算定と同じ精神、同じ方式で家族労働費の関係は計算するかしないかということを聞いておるわけです。
  292. 中野和仁

    ○中野政府委員 そういうふうな考え方でございますけれども、繰り返して恐縮でございますが、地域によりましてはそういう均衡労賃をとったのでは、また、特に畑作物等のことを考えましても問題があるということで、必ずその地域地域の五人以上をとるというふうには私はきめられないと思います。  したがいまして、さっき申し上げましたように、その町村周辺の工業労賃を標準にする場合、あるいは農業労賃そのものを基準にしてきめておいて、そこで出てきました残りの部分を分けたほうがいいという考え方も、あわせて申し上げたわけでございます。
  293. 芳賀貢

    ○芳賀委員 分けなければ分けなくてもいいのですよ。当然優先的に享受すべきものを与えるということの計算で、いままでの地代の計算はいっておるわけですからね。三十人、百人でもいいですよ。いいが、いまの農業の実態から見れば、大体現行どおり五人の規模程度が最低限としてやむを得ぬじゃないかというふうに考えて聞いているのではないのですよ。上をとるというのであれば、それはかまわぬのですけれども、これは法律で規定するのだから、やはり最小限度の約束ということが必要ですからして、均衡労賃はどうするのかということを聞いておるわけです。これを明快に答えなければまだひまがかかりますよ。強行採決でもやれば別ですけれども、審議は尽くせないじゃありませんか、このくらいのところでひっかかっておるのなら。
  294. 中野和仁

    ○中野政府委員 私が、ものの説明のしかたが非常にへたでありましたらお許しいただきたいのですが、私自身は明快にお答えしているつもりであります。  ただ、先生のおっしゃいますように、製造業五人以上を全部とるべきだということで農林省が指示するということは、いろいろ問題がありますので、私、申し上げましたようにその地域の実情に応じた賃金をとるべきではないかということを申し上げておるわけです。
  295. 芳賀貢

    ○芳賀委員 そうなれば、従来問題になっておる農業日雇い労賃を基準にするということにこれは当然なりますね。
  296. 中野和仁

    ○中野政府委員 通常の場合、日雇い労賃をとった場合には、おそらく、その労賃の非常に低い高いの問題はございましても、いわゆる均衡労賃よりは低いわけでございます。そうしますと、経営者利潤が非常に多く出てくるといいますか、経営者利潤を四%しかとらないと、利潤部分が非常に多く出てまいります。それを全部地代だというきめ方をしたくない、むしい耕作者のほうに経営者利潤をふやしたほうがいいのではないかという考え方から、私は労賃の計算としては、その村で行なわれておる労賃、農業労賃もありましょうし、あるいは周辺の町村の中小企業の労賃を使う場合に、一応それを使ったあとの分け方を、いままでの小作料の統制方式のように、あと残りは全部地代だという考え方はしないほうがいい場合のほうが多いのではないかということを申し上げておるわけであります。
  297. 芳賀貢

    ○芳賀委員 だから、耕作者の所得部分を確保するということになれば、これは家族労働費、家族労賃を小作料算定の場合、優先的に確保させなければいかぬじゃないですか。あなたはこの計算だと、地主の受け取る分が多くなるから困るようなことを言っておるが、それだけあれば、五人規模を五十人規模とか、皆さんの公務員の給料をきめるように、百人規模以上にしてもそれはいいですよ。農地局長とか農地局の皆さん並みに、人事院勧告は百人規模以上で、ことしも一〇%以上これは引き上げになるんですから、だから、皆さん並みにこれは自家労賃を均衡させるほうがいいとすれば、公務員は民間の百人規模があたりまえで、農業従事者、耕作者の場合には五人規模でもよろしくない、好ましくないというのはおかしいじゃありませんか。そういう発展させた議論はしたくないが、いままでの最低基準の、少くとも五人規模以上を最低限の単位とすることにこれは当然なると思いますが、そこにおける他産業との均衡労賃は、いわゆる牛乳の不足払い方式ということになるのですよ、労賃評価は。これでもこっちが大譲歩して質問しているのですからね。これは大臣からでもいいですよ。  大臣は六月十五日のNHKの秋田県農民との話し合いで、企業というのは業を企てるから企業ですよということを親切に答弁しておったけれども、小作地の経営をしても農業は企業でしょう。小作農は企業でないということになりますかどうですか。小作農地も含めて借地農業も企業であるとすれば、企業内で働いた、その企業に従事したいわゆる自家労働に対して適正な所得、自家労賃を確保させるというのは、企業としての最低の約束じゃないですか。あなたは業を企てるというようなたいへんなことを言っておったが、そういう意味で答えてくださいよ。
  298. 長谷川四郎

    長谷川国務大臣 もう小作をやる方にしても、これを何反歩耕作すれば幾らとれるから幾ら利益になると差益計算をして小作をやるわけですから、何も強制的に小作をやらせるわけじゃない。農民に強制的に農業をやらせておくわけじゃないですから、全部企業でございます。先ほど申し上げたように業を企てることです。利益がないものを初めから、これが天性だからやるんだ、こういうことではないので、特に小作をやるなどという方は、小作で幾ら耕せば幾らもうかるというのが先行しておやりになる方だと考えます。
  299. 芳賀貢

    ○芳賀委員 あの際農林大臣は、社会主義の国においては農業は企業ではないが、資本主義の国においては農業が企業である、幾らでももうかる、もうかるのが企業だから、もうかる業を企ててやりなさいということを言ったわけですね。そういう企ての中においても、昨日の新聞に昭和四十三年度農家の所得内容が公表されたでしょう。従来は農家所得の中の大体五二%くらいが農業所得で、残りの四八%程度が農外所得ということで、ようやく百万円台を維持しておったが、去年はこの所得割合が農外所得が五二%、農業所得が四八%というふうに逆転して、特に勤労者世帯、他産業とのギャップがまた四十三年から開いてきておる。特に四十四年は、先日の米価の据え置きと、ことしの作況が過去二年の大豊作のような気象条件ではないので、四十三年を一つの転機として、今後農家所得の趨勢というものは困難の度合いを深めるということを政府が公表しておるのですよ。いいですか。農業だけでは業を企てても生活ができないから、農業以外の他産業に転出し、あるいは兼業の形で、そこで勤労報酬を中心にして総体の所得を確保しておるのでしょう。だから、企てた業のほうがだんだん所得が減って、企業でないほうの勤労収益がウエートを高めるということになれば、日本においては、農業というものは何ぼでもやればやるほどもうかる業の企てではないということになると思うのですよ。  だから、従来の小作料の算定をさらによくしろとは何も言っていないのですよ。地域の実情に合致した標準小作料を算定する場合においては、いま政府が用いておるこの算定方式というのは少なくともこれを維持して、農業委員会において適正な標準小作料を算定できるようにすべきではないかということを聞いておるわけです。ところが、この一番大事な所得部分である家族労働費について、農地局長ははっきりしないのですよ。この点がはっきりしなければ、一体どんな標準小作料ができるかわからぬです。これは農林大臣ちょっと無理でしょう。官房長でいいでしょう。
  300. 大和田啓気

    大和田政府委員 私は、農地局長の説明したところで尽きていると思います。小作料、それは田あり畑あり、なかなか複雑なことでございますし、結局、耕作者の経営が成り立つような小作料ということが、基準小作料を定める場合の一番大事な点でございますから、農地局長が言っておりますように、それを家族労賃で見るか、あるいは経営者報酬で見るか、どちらで見るかということについて、十分検討すべきものだろうと思います。
  301. 芳賀貢

    ○芳賀委員 だれが答弁してもここはあいまいですね。結局明快な答弁ができないということは、この際政府の責任を回避して、地域農業委員会において大幅に小作料を上げさせる、そういう考えですね。それしかないじゃないですか。どうしてこういう二十年も継続して行なった算定方式の家族労働費、この点だけにひっかかって答弁ができないのですか。
  302. 中野和仁

    ○中野政府委員 先ほどから申し上げていますように、経営者の所得というものは、労賃それから経営者報酬というものが計算上込みになって幾ら収益があるかということになるわけでございます。  そこで、米だけでございますれば、それからまた反収の高い地帯については、そういう五人以上の労賃をとるという指示もできると思います。しかし、反収の低いところもあり、畑作のことをいろいろ考えますと、全部それで統一して均衡労賃でやれという指示は、なかなかむずかしいのではないかということを申し上げているわけでございまして、反収の高いところは、均衡労賃をとった残りを全部地代部分にしろということを言いますと、逆に地代があまりにも高過ぎるという問題があるわけでございます。  そこで、われわれとしましては、適正な労賃それから利潤を合わせまして、適正な耕作者の所得が得られるような指示のしかたをしたいということを、先ほどから申し上げておるわけでございます。
  303. 芳賀貢

    ○芳賀委員 それでは、この点はきょうはなかなか明快に答弁できないとすれば、来週火曜日が定例日ですから、それまでに十分、実族労働費をどういう形で算出するようにするか、農林省部内の意見をまとめてもらいたい。これはもう三十秒もかかれば答弁ができる点ですから、この点はきょうは保留しておきます。  それから企業者利潤という形ですね。いままでは四%認めて計上してきたわけです。これは米価等の算定の場合には、生産価格の中にいままで企業者利潤というものは全然認められていなかったわけですね。ここに農地法上の小作料算定の一つの特徴点があるわけですよ。小作料の場合にはやはり耕作者を保護する、耕作農民に最低の所得を保障しなければならぬということで、特に企業者利潤四パーセントというものは確保しておるわけですね。これは米価についても、他の農産物についても企業者利潤というのはゼロですから、こういうところに農地制度の一つの耕作者本位の特徴というものはいままで守られてきたわけですから、この点はどうなさるのですか。四%を最低限にするか、あるいは一〇%にするかですね。
  304. 中野和仁

    ○中野政府委員 私、最低限四%程度は要ると思います。しかし、もっととっていいような計算のできるところはもっととっていいというふうに思います。  ただ、小作料の算定に経営者利潤を認めますのは、平均反収を使っておるからでございます。その点は米価の算定とは若干違うというふうに思います。
  305. 芳賀貢

    ○芳賀委員 それはどういう意味ですか。小作料の場合には実収平均反収であり、それから米価の場合は、調査農家の平均反収から、従来は標準偏差を除いたそういう反収ということになっておるので、たとえば、今度は二分の一シグマにして反収を上げましたからね。そうすると、過去三年の実収平均反収から見ると、ことしの米価に使った反収は若干高いのですよ。これは食糧庁長官がいないので、大和田さんならわかるでしょう。だから四%というものとの関係があるとは考えられぬが、それはそういうことで実収平均でいくから、地代を高くできない問題があるという意味ですかね、いま言われたのは。
  306. 中野和仁

    ○中野政府委員 私、申し上げましたのは、そういう算定の基礎をどの統計をとっているのかということでありませんで、小作料の考え方は、全国平均の反収を使って、それに米価をかけておるわけでございます。そういう前提において若干の経営利潤ということで、いま生産費総額の四%ということを認めているということを申し上げたわけでございます。
  307. 芳賀貢

    ○芳賀委員 ですから、いずれにしても、その地域の反収をとる場合にも、調査農家の反収ということではなくて、その地域における実収反収方式でいくわけでしょう。
  308. 中野和仁

    ○中野政府委員 上中下田に分けますれば、それぞれの上中下の平均的と申しましょうか、平年作と申しましょうか、そういう反収を使うべきだと思います。
  309. 芳賀貢

    ○芳賀委員 だから、実収の平均反収で当然いままではきたわけですからね。ところが、今度は地域分散をするから、地域によっては全国の実収平均より高いところもあるし、また、全国平均を下回る反収の地域も当然出てくるわけですよ。それはもう議論する必要はない。わかっておるからいいが、ただ反収のとり方を、農産物の場合には統計調査部の調査農家の平均反収というものを基礎にしておるわけです。それから小作料の場合には、実態に即するわけですからして、これは実収の中庸な単年度でもいいし、過去何カ年間かの平均でもいいが、とにかく従来同様に、実収反収を基礎にするということがわかればいいのですよ。
  310. 中野和仁

    ○中野政府委員 先ほど申し上げましたように、実収を基礎にするわけでございますけれども、災害等がありますればそれは除いて、大体平年的な考え方での実収を基礎にするわけであります。
  311. 芳賀貢

    ○芳賀委員 わかりました。それじゃ家族労働費以外はわかったことにしておきます。  そうなると、昨日の委員会におけるこれは官房長の答弁ですが、法改正を行なえば、現在の法定小作料の大体三倍ないし四倍に小作料が上がるという説明がありました、大体同一の算定方式を使えば、地域によっては変化が出ますけれども、三倍とか五倍に変わるというようなことにはちょっとならぬと思いますが、どうでしょうか。
  312. 中野和仁

    ○中野政府委員 こまかい計算を別にいたしまして、昨日私が申し上げたわけでございますが、たしかそのときの御設例では、八俵とれるところでどうかというようなお話でございました。その場合に、統計調査部のことしの生産費調査のそれだけを基準にするというわけにまいりませんが、平均的にそれを使わしていただきますと、第一次生産費はたしか三万六千円程度でございますから、これは四俵半です。そうするとあと残りが——これは日雇い労賃で計算した場合でございます。均衡労賃でとりましてもおそらく五俵半。そうしますと、八俵ですから二俵半残るわけです。その部分を全部地代にいたしますれば、いま米価一俵八千円としますと二万円になるということを申し上げたわけでございます。  そういうことで全部地代に帰属さしていいかどうか。そうでなくて、いまの二万円というふうに出ましたもののたとえば半分とか、それを経営者報酬として見たほうがいいではないかということになりますと、生産費の四%というような少ない額ではございませんで、もっと高く見るというような場合が出てくるわけでございます。そういうことを昨日私は説明申し上げたわけです。
  313. 芳賀貢

    ○芳賀委員 昭和四十三年度は、全国平均にすると、実収反収は四百五十キロで、四十二年は四百五十三キロ、それから四十年は四百キロということになって、過去三年ということになれば、大体四百三十キロぐらいということになるわけですよ。地域的にこれをとれば、あるいは八俵の四百八十キロ全県平均であるということもあり得ると思いますが、しかし、都道府県ごとのそういう反収というものをまた全国的に総平均していけば、やはり全国の実収平均とそう違わない反収ということに当然なるわけですね。  次にお尋ねしたいのは、小作料と地価の関係についてどう考えておるのですか。小作農地だけの影響でなくて、小作料が、たとえば局長の言うように三倍、四倍に上がるというような状態が全国的に広がっていくとすれば、その影響を受けるのは、小作農地の売買だけでは済まないと思うのですよ。全体の農地価格を引き上げる作用というものが、小作料の大幅改定によって惹起されると思いますが、その点はどう考えていますか。
  314. 中野和仁

    ○中野政府委員 小作料と地価の関係でございますが、小作料を資本還元をいたしましたのが普通地価だといわれております。いまの法定小作料を資本還元しましても、還元利率によりますけれども、五万ないし七万、これは現実の地価とは非常にかけ離れております。それは小作料の計算のやり方、反収の見方に差があるからそういう数字が出るわけでございます。実際の農家の感覚といたしましては、いいろろな地域によって違いますけれども、たとえば、これは例でございまして、こういうふうな水準になるということを申し上げるわけではございませんが、二万円を五分で還元すると四十万。米作中核地帯の農地の価格は三十万とか、四十万とか、あるいは五十万といっておりますから、大体米作中核地帯はそういう値段になると思います。  ただ、都市近郊をごらんいただきますと、百万あるいは反当三百万というようなことになっております。これはもはやそういう地価が小作料を資本還元したものでは出てきておりません。いまわれわれの悩みは、そういう地帯が非常にふえてきております。地価と地代とが農業のサイドからだけでは割り切れないということにだんだんなってきておるというふうに私は考えております。
  315. 芳賀貢

    ○芳賀委員 次に、草地利用権の設定制度についてです。これは新しく改正法案に出てきたわけですが、この点だけを取り上げればわれわれとしても賛意を表する点があるわけです。この点だけを独立にこういう法案をつくるということであれば、われわれは進んで賛成すると思うのですよ。しかし、ほかの全部が悪い中にこれ一つだけがよろしいということで、これは賛成というわけにもいかぬです。しかし、ここまで考えたということに対しては、われわれとしてもその努力は認めたいと思います。  ただ問題は、これは第三章の未懇地買収規定の一番末尾に載っているわけですね。そういう点から考えて、法律には載せたが、ほんとうにやる気があるかどうかということをまずお尋ねしたいと思います。
  316. 中野和仁

    ○中野政府委員 酪農の振興のために草地造成が必要であるという観点から、いろいろおほめいただきましたけれども、われわれも苦心しまして、なかなかいまの未懇地買収の規定が動かし得ない情勢でございますから、こういう利用権制度を考えたわけでございます。  われわれも、すでに今度の予算でも、法律を通していただきますればそれを普及し、かつ広めていくための予算も計上しているわけでございまして、本気でやるつもりでおります。
  317. 芳賀貢

    ○芳賀委員 これは法律の発想から見るとおもしろいと思うのですね。第三章の前段では未懇地買収の規定が明確にうたわれておるわけですね。ここ数年これは眠らしてあるわけですが、眠らしてあるにしろ、いずれにせよ、こういう規定が現存する形の中で、今度はその末尾のほうに、草地利用権の設定ということが出てくるわけです。一方は大いびきで昼寝をさしておいて、そうして草地利用権の設定で夜でも働くというような、そういうようなことにもこれはなるんじゃないですか。これはどう考えているのですか。大事な法律は昼寝をさして、草地関係だけをささやかに小さい手で実行しようとする点ですけれども、これはどういう関係があるのですか。
  318. 中野和仁

    ○中野政府委員 未懇地買収の規定は、戦後の緊急食糧増産、それから緊急開拓で満州その他からの引き揚げ対策として急速に買収する必要があるということでやったわけでございます。当時の社会情勢では、いまの農地法のような考え方でやれたわけでございます。それが二十数年たちました現在では、いわばいろいろな手続はいたしましても、一方的に強制的に未懇地、これは山の場合もありましょうし、原野の場合もありますけれども、これを買収するということは、社会情勢としてなかなか困難なわけです。  そこで、われわれとしては、山持ちの山を強制的にはとらないで、これは土地所有者に対する妥協といえばいわれてもいたし方ありませんけれども、強制的には買収しないけれども、おまえほっておくのであれば貸してくれというので、それを今度のような手続を経まして、強制的な賃貸借権の設定も、知事の裁定によって可能であるということにしたわけであります。
  319. 芳賀貢

    ○芳賀委員 それでは善意に解釈して、農林大臣、いま政府提案で国有林活用法案が継続審議で提出されているわけですね。これは国有林だけを対象にして、国有林の農業利用ということで一つの目的を持たして法律を出しておるわけです。いまの草地利用権の対象になる土地ということになりますと、その大半は既耕地ではなくて、民有林の中の農業適地ということになると思うのですよ。これは改正案にも、未懇地買収の規定で、買収の必要のある適地についてこれを適用するということになっておるわけです。だから、対象の土地ということになれば、その大半はこれは民有林ということになるのですよ。  そういう意味において、政府としては国有林というものが特定の国家目的を持って、国の財産として経営されておるにもかかわらず、それを今度は農業利用したいということで法律が出ておる。しかし、これは民有林の農業利用、活用という、そういう目的を持って登場したと見て差しつかえないと思うのです。これは農林大臣、どう考えているのですか。
  320. 長谷川四郎

    長谷川国務大臣 国有林もさることながら、民有林もともに活用をいたしたい、こういうふうな考え方を持っております。(拍手)
  321. 芳賀貢

    ○芳賀委員 これは簡単な拍手では済まぬと思うのですがね。だから私は、先ほどほんとうにやる気があるかどうかということを聞いておるのですよ。未懇地買収規定というものがありながら、これを眠らしておいて、土地のうち草地だけに限定をし、所有権の移動という形ではないが、しかし、二十年ということになると相当長期にわたるわけですからね。それを本人の同意がない場合であっても、最終的には知事の裁定で、これは草地利用権が設定できるということになるわけですからして、農業の主目的ということになれば、それが、たとえば二十年、三十年という長期にわたって権利が設定された場合においても、草地の利用、あるいは飼料の生産確保ということになれば、大きな変わりはないんですよ、生産に期待を持つということになればですね。  だから、その地域において、この民有林はどうしても草地としての適当な土地である、そういう場合には、これは当然地元から要地唄申請というものが出てくるわけですから、当事者の、たとえば農業協同組合とこの民有林所有者の間で合意が成立しなくても、知事の裁定権の発動によってきまった場合は、これは不同意はできないということになるわけですから、当然これは草地として造成開発できるわけですね。造成した場合には、二十年間はこれは草地として利用できるわけです。その間に、所有者がぜひこれは買い取ってもらいたいという場合には、申し出によって農協が買い取ることもできる。期限満了でこれは返還してもらいたいという場合には、これは返すことになるわけです。  ですから、まともに民有林に対して大きな改革的なことはできないが、これにほんとうに手をつけてやるということになれば、この点は、われわれとしても農林省の皆さんの努力というものは十分認めることができると思うのですよ。これは法律があるだけで、やっても一年にごくわずかしかやらぬという場合も予測できるのです。だから、こういう点は敢然としてやるのかどうか。農林省の事務当局の皆さんがやる気になっても、農林大臣が一年ごとにかわる。まあ長谷川大臣の場合は、ここでやりますと言ったからいいとしても、この次どんな人物が農林大臣に出てくるかわからないですよ。国有林だけ開放すれば、あとはこういうことはやるなということになれば、なかなか役人としてできないでしょうが、この点はぜひ万難を排してやってもらいたい。  先ほど太田畜産局長が言われたとおり、日本畜産発展させるためには——いま七百万トン以上の濃厚飼料を国外に依存しているのです。だから太田局長の話だと、長期計画の中で、少なくとも六十万町歩くらいの草地の造成はどうしても必要であるということになれば、その給源は、この相対売買だけでパイロット方式でやっても、これはわずかしかできないですからね。この利用権設定等を大きなてこにして、積極的にやる気かどうか。こういうことをどんどん進めれば、何も有益な国有林を開放する必要もないということになるのですよ、せんじ詰めれば。だから、そう簡単な拍手はできないと思うんですけれどもね。この点、まじめな答弁をお願いします。
  322. 長谷川四郎

    長谷川国務大臣 知事の裁定は最後でございますけれども、所有権はそのまま維持されるのでございますから、そういう知事の裁定の最後に至るまでに、十分それらとお話し合いを申し上げて、どうしてもその所有者に納得していただくことができなければ、知事の裁定は当然行なっていかなければならぬ。そして、その目的を達することが今回の法律にりっぱに書かれてあるわけですから、それを行使することには何ら、たとえば大臣がかわろうと何がかわろうと、法律は全然変わるものではございませんから、そういう御心配はないだろう、このように考えます。
  323. 芳賀貢

    ○芳賀委員 この点はもとらぬわけですね。法律がきまれば、それにもとったようなことはやらぬというわけですね。
  324. 長谷川四郎

    長谷川国務大臣 法律というのは、あなたがこれほど七時間も八時間も御審議なさっている、そういうふうな審議をして出したものが、大臣がかわったから変わる、たとえば神武天皇が出した法律があっても、その法律が改革されなければそのままでございますから、どうぞ御安心なすっていただきたい。
  325. 芳賀貢

    ○芳賀委員 次に、畜産局長にお尋ねしますが、もし法律が通ってこの種の草地利用権の設定が積極的に進むという場合、この開発造成をどういう方式でやるかということに当然なると思うのです。ですから、規模の大きいものは国営方式でやるとか、あるいは都道府県営にするとか、団体営にするとか、現在のこの草地造成計画もそういうことで、土地改良の長期十カ年計画の中で進めておるわけですが、この利用権設定の民有林に対する開発造成をどうやるかという点について、説明してもらいたいと思います。
  326. 太田康二

    ○太田政府委員 御承知のとおり、現在の草地造成事業では、おっしゃいましたとおり、国営、県営、団体営、それから開拓パイロットでも飼料畑造成をやっておりますし、それに農地開発機械公団の共同利用模範牧場の設置事業があるわけでございます。  それで、実際にわれわれがやってまいりました過程を見てまいりますと、実は今回の草地利用権の対象になっております市町村の農協等が、公共育成牧場として草地を設定している事例が非常に多いのでございまして、もちろん今回の利用権設定で開発される草地につきましても、利用の形態としては、そういった形での育成牧場としての利用が一番多かろうと思うのでございまして、これらにつきましては、現在実施いたしております草地改良事業のそれぞれの採択基準等で面積的にもきまっておりますから、それに従いまして、国営級であれば国営級で実施いたしますし、あるいは県営級であれば県営級で、団体営級であれば団体営級で、それぞれの事業種目に従いまして、従来の開発方式で実施してまいりたい、かように考えております。
  327. 芳賀貢

    ○芳賀委員 いまの局長の答弁はわかりました。  それから、農業振興地域法との関係ですが、農政局長はいないですね。——それでは中澤参事官でもよろしいですが、この農振法によると、農業振興の市町村の整備計画を立てる場合、農用地利用計画区域というものを設定するわけですね。その中には当然既耕地も包括されるが、未墾地もこの区域の中には、当然適地の場合に入るわけですね。この農振法からいうと、国有林も入るし、民有林も入るということになるわけです。  ですから、農地法では草地利用権の関係をこういうふうに新しく法案で設定しようとしておるわけですから、これとこの新しい農振法の農用地の利用計画区域との関係をどういうふうに考えていますか。
  328. 中澤三郎

    ○中澤説明員 御質問の、農振法に基づきますところの農用地利用計画におきますところの農用地の区分につきましては、十条三項で、「農業生産の基盤の保全、整備及び開発の見地から必要な限度において区分する農業上の用途を指定して、定めるものでなければならない。」というふうにあるわけでございまして、これは、たとえば利用上米をつくるとか何をつくるとかいう作物の種類ではなくて、田畑とか、樹園地とか、採草放牧地とかいう区分を意味するというふうに考えているわけでございます。  したがいまして、いま農地法で御審議いただいている草地利用権の規定がそのまま生きるということになると、こういう観点から草地が、ただいま申し上げましたような区分の種類に応じまして、計画として立てられるものだというふうに考えているわけでございます。
  329. 芳賀貢

    ○芳賀委員 だから、農振法の関係からいうと、農振法においても、草地利用の適当な土地については、民有林あるいは未墾地の場合も、それは農振法の利用計画の区域に入れることができるわけでしょう。そうじゃないですか。
  330. 中澤三郎

    ○中澤説明員 そのとおりでございます。
  331. 芳賀貢

    ○芳賀委員 農振法のほうは、入れることはできるが、この所有者の同意を得ることがむずかしい。市町村段階で合意が成立しない場合には、都道府県知事まで持っていくわけですね。それから農振法の場合は、行政不服審査法の規定を準用するということになるわけですね。この農地法の場合には、もう知事のところまでいけば、そこでどんぴしゃり裁定ということになるが、同じ区域にこれを取り入れる場合のこの決定の方法というものは違うわけです。振興法ではだめになる場合も出てくるのではないか。農地法ではうまくいくが、振興法の場合には、これはだめという場合も出てくるのではないですか。
  332. 中澤三郎

    ○中澤説明員 お答え申し上げます。  農用地利用計画の決定手続につきましては、御審議をいただきました振興法の十一条できめられておりますが、最終的には知事の裁決によってきまるということになるわけでございます。したがいまして、知事の裁決に持ち込まれない場合、市町村の段階で利害関係人の意向が、異議の申し立てがなくて定まりました場合には、草地の利用権の設定につきましてもそのようになるだろうと思いますし、それから知事の裁決によりまして農用地利用計画が定まります場合には、草地利用権のほうの知事の権限との調整が行なわれるというふうに考える次第でございます。
  333. 芳賀貢

    ○芳賀委員 最後に、林野庁長官にお尋ねしますが、いまの質疑をあなたは最初から聞いておられたわけでありますが、私は林野庁というのは、国有林を林野目的に合致するように経営する役所というふうに考えておった。ところが、それよりも農業利用に回したほうがいいというようなことで国有林活用の法律案を出したわけです。しかし、いまの農地法改正の質疑を通じて、大体六十万ヘクタールぐらいの民有林を草地に開発造成すれば、飼料資源の確保は十分できるということになってきたわけなんですよ。そうすると、あなたも肩の荷がだいぶ軽くなると思います。何も優良な国有林野を農地に転用するなどという必要はなくなるんですよ。そう思わないですか。しかも、民有の未墾地、民有林が六十万ヘクタールも農用適地として開発されるということになれば、あなたの荷物はずいぶん軽くなると思いますが、そうは思わぬですか。  特に、農地局の調査によると、全国でまだ三百万ヘクタールくらいの農用適地があるということになっておるんですから、せいぜい国有林経営に全力を入れて、一番困難な農業部面にあまり頭を悩ますのもどうかと思いますが、どう考えていますか、率直な見解を聞かしてもらいたいと思います。
  334. 片山正英

    ○片山政府委員 お答え申し上げます。  国有林の活用の問題につきましては、先生御承知のとおり、林業基本法の四条に国有林の活用の問題がうたってございますので、それに即しまして実施してまいりたい、かように思っております。
  335. 芳賀貢

    ○芳賀委員 それでは、書いてあれば何でもやるわけですか。林野庁長官の本来的な任務というのは一体何ですか。林業基本法はわれわれが審議してつくったんですよ。政府案を大幅に修正して、いまの林業基本法というのはわれわれが成立させたわけだから、そのあとで長官になったあなたよりもわれわれのほうが、林業基本法の目的あるいは各条章がどうなっているということはよくわかっておるんですよ。だから、農業のことを心配するのも農林省の役人の一人だからいいが、それよりも本来の任務である国有林の健全な経営というところに思いをいたして十分努力されてはどうかと思うわけです。これは答弁は要りません。  委員長、きょうはこの程度にしておきます。
  336. 丹羽兵助

    丹羽委員長 ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  337. 丹羽兵助

    丹羽委員長 速記を始めて。  次回は明十九日午前十時三十分開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後七時十一分散会