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1969-06-11 第61回国会 衆議院 農林水産委員会 第36号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十四年六月十一日(水曜日)     午前十時四十九分開議  出席委員    委員長 丹羽 兵助君    理事 安倍晋太郎君 理事 仮谷 忠男君   理事 藤本 孝雄君 理事 三ツ林弥太郎君    理事 湊  徹郎君 理事 兒玉 末男君    理事 森  義視君 理事 稲富 稜人君       金子 岩三君    小山 長規君       佐々木秀世君    白浜 仁吉君       菅波  茂君    瀬戸山三男君       田澤 吉郎君    中尾 栄一君       中垣 國男君    中山 榮一君       野原 正勝君    葉梨 信行君       八田 貞義君    松野 幸泰君       伊賀 定盛君    石田 宥全君       工藤 良平君    佐々栄三郎君       實川 清之君    柴田 健治君       永井勝次郎君    芳賀  貢君       美濃 政市君   米内山義一郎君       斎藤  実君    樋上 新一君  出席国務大臣         農 林 大 臣 長谷川四郎君  出席政府委員         総理府統計局長 岡部 秀一君         農林政務次官  小沢 辰男君         農林大臣官房長 大和田啓気君         農林省農地局長 中野 和仁君         食糧庁長官   桧垣徳太郎君         労働省労働基準         局賃金部長   小鴨 光男君  委員外出席者         総理府統計局調         査部労働力統計         課長      田島  正君         厚生省保険局保         険課長     木暮 保成君         厚生省年金局年         金課長     山口新一郎君         農林省農政局参         事官      中澤 三郎君         食糧庁総務部長 松元 威雄君         建設省住宅局調         査官      沢田 光英君        専  門  員 松任谷健太郎君     ————————————— 六月十一日  委員菅波茂辞任につき、その補欠として葉梨  信行君が議長指名委員に選任された。 同日  委員葉梨信行辞任につき、その補欠として菅  波茂君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  農地法の一部を改正する法律案内閣提出第一  四号)  農林水産業振興に関する件(昭和四十四年産  米穀政府買価格等)      ————◇—————
  2. 丹羽兵助

    丹羽委員長 これより会議を開きます。  農林水産業振興に関する件について調査を進めます。  この際、昭和四十四年産米穀政府買い入れ価格等について、政府から説明を聴取いたします。長谷川農林大臣。   〔「資料はどうした」と呼ぶ者あり〕
  3. 丹羽兵助

    丹羽委員長 ちょっと速記をとめて。   〔速記中止
  4. 丹羽兵助

    丹羽委員長 速記を始めて。  農林大臣
  5. 長谷川四郎

    長谷川国務大臣 昭和四十四年産生産者米価につきまして決定をいたしましたので、御報告を申し上げます。  昭和四十四年産生産者米価は据え置くこととして、ウルチ一—四等平均包装込み生産者手取り予定価格を、百五十キログラム当たり二万六百四十円といたしました。  なお、消費者米価も据え置くことにしております。  暫定加算は、諸般の事情を考慮して、本年度に限り昨年どおりとする。  次は等級間格差歩どまり加算モチ米加算及び陸稲格差は、昨年どおりといたします。  そのほか、なお稲作対策特別事業費として、昭和四十四年度において二百二十五億円の補助金を支出することに決定をいたしましたので、御報告を申し上げます。  なお、詳細にわたりましては、いま総務部長から御説明を申し上げます。
  6. 松元威雄

    松元説明員 補足して御説明申し上げます。  ただいま大臣が御説明申しましたとおり、ウルチ一—四等包装込み二万六百四十円という平均がございますが、その算出法といたしましては、生産費及び所得補償方式に基づきまして、その場合昨年度と異なりますのは、一つ対象農家の取り方を変更いたしました点、それから概算金の利子を控除することといたしました点、それから、さらに昨年の価格を勘案いたしまして、それによって算出額を補整いたしまして、昨年と平均同額の二万六百四十円と算定いたした次第でございます。  ただいま全体の算出を申し上げたわけでございますが、お手元に御配付申しました閣議決定でございますが、昭和四十四年産米穀政府買い入れ価格といたしまして、第一に、ウルチの一−四等平均包装込み手取り予定価格、これがただいま申しましたとおり二万六百四十円でございます。  このうち等級間格差、これは昨年と同じでございまして、三等を基準といたしまして昨年と同様の格差でございまして、一等は百五十キログラム当たりプラス六百円、二等はプラス三百円、三等は基準でございます。それから四等は、三等を基準といたしましてマイナス三百円、五等は、三等を基準といたしましてマイナスの一千五十円ということで、この格差の額は昨年と同じでございます。  それから、次に歩どまり加算につきましては、北海道、東北及び北陸を除きます地域産米、ただし、西南暖地早期栽培米は従来どおり除きますが、その地域産米につきましては百五十キロ当たり百円を支払う。この歩どまり加算単価も、昨年と同じでございます。  それから、包装代を次のように支払うということで、二重俵は一俵当たり百六十一円、複式俵は百三十三円、かます百十五円、以下麻袋、紙袋というふうにきめている次第でございます。  それから、第四に暫定加算でございますが、これは御承知のとおり、昨年時期別格差の廃止をいたしまして、それにかわりまして、急激なる変化を緩和する措置で始められたも一のでございまして、昨年は、従来の時期別格差県平均をそれぞれとりまして、その約三分の二ということを基準で算定をいたした次第でございますが、その額を本年も同額に据え置いたわけでございまして、県別にお手元資料のようになっておるわけでございます。  それからモチ米加算でございますが、先ほど私は二万六百四十円と申しまして、それはウルチの一—四等包装込みでと申し上げましたが、モチ米加算につきましては、この単価は昨年どおり水稲モチ米の一、二等は千五百二十五円、三等は千四百五十円、四等、五等は千三百七十五円、それから陸稲モチ米は千五十円ということで、この加算単価は昨年どおり加算するわけでございます。  ただし、昨年の場合でございますと、米の平均価格表示します場合に、このモチ米加算額を全体にあらわしまして二万六百七十二円という表示をいたしたわけでございますが、本年度から自主流通米制度を始めるに伴いまして、モチは大部分が自主流通に回るという想定をされるものでありますから、政府の買うものの中にモチ米がどの程度入っているかということが一義的にあらわしがたいものでございますから、表示といたしましてはウルチの一—四等平均であらわしますが、モチ米加算そのものは、昨年と同額加算をいたすということにいたしているわけでございます。  さらに、陸稲格差につきましても、昨年どおり百五十キログラム当たり九百円マイナスというふうにいたしているわけでございます。  以上、簡単でございますが、一応御説明を終わらせていただきます。
  7. 丹羽兵助

    丹羽委員長 以上で説明は終わりました。     —————————————
  8. 丹羽兵助

    丹羽委員長 質疑の申し出がありますので、これを許します。芳賀貢君。
  9. 芳賀貢

    芳賀委員 ただいま農林大臣から、昭和四十四年産米政府買い入れ価格決定について報告がありましたので、主要な点について質問をいたしたいと思います。  前回の六月五日の当委員会において、今回の政府米価審議会に行なった諮問は、食管法第三条第二項の規定に照らしてこれは違法の諮問であるということを指摘したわけであります。農林大臣との質疑の中ではこの点が明確になりませんので、内閣総理大臣出席を求めてこの点を明らかにしたいと思っておったわけでありますが、本日も総理出席がありませんので、この重要な問題については次の機会に譲ることにいたしまして、本日は、ただいまの農林大臣報告に関する主要な点について質問をいたします。  第一にお尋ねしたいのは、昨日政府閣議決定を経まして、佐藤総理大臣並びに長谷川農林大臣から、それぞれ記者会見を通じて新聞テレビ等談話表明されたわけでありますが、その中で、総理並びに農林大臣談話といたしまして、本年の生産者米価決定は、当初からの政府基本方針を貫いて安心したということが述べられておるわけであります。この点は非常に重要な問題でありますので、今回の決定は、当初からの政府基本方針によってきまったというふうに解釈してよろしいかどうか、農林大臣からお答えを願います。
  10. 長谷川四郎

    長谷川国務大臣 当初からの基本方針ではなくて、当初施政演説において、総理生産者米価消費者米価、両米価を据え置く、こういうふうに申し上げたのでございますけれども、その中に、やはり米価審議会意見は尊重いたします、したがって、消費者米価決定はできますけれども、十分にその意見を尊重して、答申をいただいた後に決定をみたい、こういうふうに必ずつけ加えてあるのでございますから、当初からの基本方針だとは申し上げられないと考えられます。
  11. 芳賀貢

    芳賀委員 それでは、根拠のない議論を戦わすということでなくて、具体的な事実の上に立ってお尋ねいたします。  ことしの一月二十七日の衆議院本会議において、佐藤内閣総理大臣の行なった施政方針演説の中で、次のことが述べられておるわけであります。すなわち、「消費者物価の問題は、国民生活にとって切実な問題であり、政府が最も力を入れてきたところであります。このため、公共料金については、国鉄旅客運賃以外は極力抑制することとし、生産者米価及び消費者米価を据え置く方針をとるなど、政府が関与する公共料金により物価上昇を刺激することがないよう配慮いたします。」このように、総理施政方針の中で明らかにしておるわけであります。国鉄運賃値上げについては、衆参両院において、異常な審議状態の中で強行採決されて、すでに実施されておることはもう明らかであります。二番目の問題としては、生産者米価については、物価政策上必ず据え置きにするということが、国鉄運賃値上げとあわせて総理の姿勢として述べられておることは否定することができないと思うわけです。この中には何ら、米価審議会諮問した場合には、その意見を尊重してということはうたわれておらぬわけであります。  その次に、ことしの二月十二日に長谷川農林大臣は当委員会において、農林水産委員会における農林大臣所信表明をなされたわけであります。この中で、「また、これら米の生産対策と関連して重要な問題は米の管理の問題であります。米の管理につきましては、最近における米の需給大幅緩和の実情、米穀管理の現状に対処いたしまして、米の輸出等の米の需要の増進につとめますとともに、管理制度の根幹を維持しつつ、米の買い入れ売り渡し等制度運営の各面にわたって事態に即応して所要の改善につとめてまいるほか、米価については、生産者米価及び消費者米価を据え置くことといたしたいと考えております。」これは農林大臣といたしまして、佐藤内閣基本的な農政方針に従って述べられた所信内容であります。しばしば農林大臣の言われる、必ずそのたびごと米価審議会意見を尊重してきめるということを言っておりますと言われておるが、この大事な本会議における総理施政方針演説農林大臣農林水産委員会における所信表明の中にも、明確に、ことしは何が何でも生産者米価据え置きにするということが明らかにされておるわけであります。  したがって、私のお尋ねした点は、いまの佐藤内閣基本方針として、ことしの米価決定は、据え置き方針が実現したというふうにわれわれは解釈して差しつかえないかどうかということをいまお尋ねしておるわけであります。
  12. 長谷川四郎

    長谷川国務大臣 ただいま読んでいただいた中におきましても、いたしたいというのであって、一つの希望でありまして、決していたしますと申し上げておるのではないのでございます。それは申し上げるまでもなく、総理決定する前に私が決定するのでございますから、その決定は、いたしたいということを申し上げておるので、いたしますとは申し上げておらないはずであります。  ただ、いずれにしても、その前には米価審議会意見を問わなければならないことになっておりますから、その前に私が決定するなどという大それた考え方は持っておりません。
  13. 芳賀貢

    芳賀委員 この場でそういう詭弁を弄するのはいかがでしょうかね。内閣総理大臣は明らかに決定いたしますということを言っておるわけですから、内閣総理大臣に選任されたあなたが、いや、米価決定はわしの権限だから、総理大臣が何と言おうと、そういうものは意に介する必要がないということを、この場だけで言われても、総理大臣の前ではそういうことは決してあなたは発言なさらぬと思うわけであります。  そこで、けさの新聞発表等を見ても、まず第一に総理大臣談話といたしましては、「政府はかねての方針どおり年産米生産者米価を据え置くことを決定した。」ということを談話壁頭で言っておるわけです。いいですか、あなたの親分の総理大臣は、当初方針どおり据え置き決定いたしましたと言っているわけです。国民にこれを言っているんですよ。だからこの問題は、もうとかくの議論の余地はないわけであります。  そういたしますと、ことしわざわざ米価審議会を開いて、三日間かかって答申を求めたけれども、この審議会というのは、もう政府既定方針据え置きがきまっておるにもかかわらず、三日間一生懸命で審議をして答申をしたが、これはいかなる答えが出ても、いかなる内容答申がなされても、政府既定方針というものは変わらぬということが貫かれておるので、ことしの米審は、全くの茶番劇で苦労したというふうに判断されるわけであります。農林大臣も内心ではそのように思っておられると思いますが、これに対する御所見はいかがですか。
  14. 長谷川四郎

    長谷川国務大臣 米価審議会は、芳賀さんも御承知のように、真剣に米価についての御審議を賜わったと思いますし、私といたしましても審議会に、何らこれを制肘するような言辞を申し上げたこともございません。いろいろな御質問に対しましては、需給状態がどうだとか、あるいは今後のこれに対する考えはどうだとかというような御答弁はいたしましたけれども、米価審議会審議中に、決定したようなことでもっていこうというような点について、私は何ら触れた覚えはございません。  しかしながら、新聞のお話でございますから、新聞では、昨日も申し上げましたとおり、生産者生産者の立場に立っていろいろな御発言もあり、また、消費団体消費団体としての御意見もあり、また、中間といいましょうか、学識経験者方々の御意見等もありまして、いろいろの御意見は十分わかりました。したがって私は、米価を据え置くということに決定することがこの際は妥当であろう、こういうふうに考えて、しかしながら、生産者が今日まで御苦労なすってきたという点はよくわかりますけれども、毎年毎年お米が余って、生産者がせっかくつくったお米が、あるいは鶏のえさになり、また豚のえさになったというようなことがあったのでは、これは生産者も不本意であろうというような点も十分私は考えておりますので、というような話もその中につけ加えてあるわけでございます。  したがって、本年度米価据え置きにはなりましたけれども、これは決してそのままではなく、それに対する再生産の確保をどうするかという点につきましては、今後、来年度の予算におきましても十分それらに対処でき得るようなことをやってまいりたい、こういうように考えておるのでございます。
  15. 芳賀貢

    芳賀委員 それでは、答申が出ておりますが、答申の記の一の前提には、「昭和四十四年産米穀政府買入れ価格生産費および所得補償方式基本とし米穀需給事情を考慮して決定することについて、」これは諮問主文をここへ書いたわけですが、その次が答申の基礎をなす点であります。それはまず、「生産費および所得補償方式基本とすることは差し支えない。」これは二十五名の委員が全員一致して、決定にあたっては、「生産費および所得補償方式基本とすることは差し支えない。」ということを冒頭に、答申主文の第一にうたっておるわけでありますが、これははたして尊重されたわけですか。
  16. 長谷川四郎

    長谷川国務大臣 委員方々は、生産費及び所得補償方式というものを基本として今回の米価審議に当たっていただいた、このように考えております。
  17. 芳賀貢

    芳賀委員 ですから、全員が異議のなかった「生産費および所得補償方式基本とすることは差し支えない。」これはもうだれも異論がないのですから、少数も多数もないわけです。しからば、この点がどのような形で尊重されて米価に反映したかという点です。これは大事な点ですから、農林大臣から直接答えてもらいたいと思います。
  18. 長谷川四郎

    長谷川国務大臣 「生産費および所得補償方式基本とし」こういう点については、どのような点を考慮したかという、これにつきましては、総務部長から詳細にわたって御説明申し上げます。
  19. 芳賀貢

    芳賀委員 総務部長説明員でして、米審において直接責任をもって答申を受けたわけでもないですから、農林大臣答申米審会長小倉武一君から受け取って、どのように尊重したかということを当委員会は尋ねておるわけでありますから、この大事な点を農林大臣が認識されなかったとすれば、これは他の政府職員に聞いてもいたし方がない点であります。これは、あとで思い起こした場合に答えてもらいたいと思います。  その次に、「しかし、米穀需給事情を考慮することは食糧管理法趣旨にもとるので、」という、この「もとる」というのは、ことば表現が古いことばを使っておるが、これは違反するといういまの現代的な解釈、あるいは法律に用いる場合には、違反と解釈して差しつかえないわけでして、「食糧管理法趣旨にもとるので、米穀需給事情を考慮することなく、労賃、物価上昇を適正に反映するよう従来の生産費および所得補償方式により決定することという意見表明された。」ここから意見が分かれるわけですね。生産者代表の四人の委員、それから大臣が選任されました消費者側代表の三名のうちの一名がこの意見に加わっておることは、農林大臣承知のとおりでありまして、この生産者委員を中心とした委員意思というものが、この答申の二番目の点にうたわれておるわけですが、これに対してどのような配慮をされて尊重されたか、お伺いいたします。
  20. 長谷川四郎

    長谷川国務大臣 お間違いのないように申し上げておきますが、生産者団体方々も他の方々も、全部私が御指名申し上げたのでございますから、その点はお間違いなく願いたいと思います。  したがいまして、「米穀需給事情を考慮することは食糧管理法趣旨にもとるので、」というところに御意見があるようでございますけれども、「もとるので、」というのは、決して反するのだと言っておるのではないのでございまして、そういう御意見がありましたということを十分表現するために、こういうことを御答申なすったのだと私は推察をいたします。
  21. 芳賀貢

    芳賀委員 これは大臣、重大な御発言ですよ。ではもとらぬという意味なんですか。もとるかもとらぬかということになると、これは正反対のことになるのだが、この点は、それでは食管法趣旨に合致しておるのでというふうに解釈しなければならぬですか。その点はっきりしてもらいたいと思います。
  22. 長谷川四郎

    長谷川国務大臣 私たち解釈は、趣旨にもとるということは、違法であるときめつけておるのではないのだ、こういうふうに解釈をしております。
  23. 芳賀貢

    芳賀委員 この点は文法上の解釈ですから、農林省学識のある大和田官房長から、ここでいうもとるというのは、一体どういう意味を持つのか伺いたい。食糧管理法趣旨にもとるというのは、反しないという意味か、反するという意味か。
  24. 大和田啓気

    大和田政府委員 これは文字どおり食糧管理法趣旨にもとるということでありますから、食糧管理法趣旨から見ておもしろくないということでございまして、食糧管理法規定に反する、違法であるというふうにきめつけた趣旨ではないというふうに私も理解をいたしております。
  25. 芳賀貢

    芳賀委員 農林大臣大和田官房長小学校時代は学校で教育勅語を習ったと思うのです。大体ここにおる委員の皆さんもその年代ですが、私ども小学校時代教育勅語内容を、いまだに思い出せばそらんずることができるわけですが、その中に、「之ヲ古今ニ通シテ謬ラス之ヲ中外ニ施シテ悖ラス」というととが書いてある。これはいま農林大臣になって急に勉強したことばとか、官房長になって研究したことばではないのですよ。いいですか、もとるとかもとらぬとかいう点は、やはりそれに反するとか反しないということに通ずるわけなので、これをあくまでもがんばって、食管法趣旨に反する意味でないということをもし強調されるとすれば、これは農林大臣あるいは官房長常識を疑うということでなくて、そういう程度常識では、農林大臣としてあるいは官房長として、法律あるいは政令、省令等を尊重して行政を行なうという資格が根本的に欠けるものであるというふうにわれわれは考えますが、そういうふうに断定してよろしいですか。この程度字句解釈ができないような人物が、一国の農政を担当する農林大臣とかあるいは行政を担当する指導的な官房長であるということが、こういう官僚主義事大主義というものが、今日の農政を誤っておる根源なわけですよ。これは軽々しい発言じゃありませんよ。もう少し明快にしてください。
  26. 長谷川四郎

    長谷川国務大臣 先ほどから何回も申し上げたとおり、私たちのほうは、違法だというようにきめつけているものではない、こういうふうに解釈をしております。その農林省をつかさどる云々の点についての解釈は、それはもうごかってでございますから、その点はどちらでも、お考えはけっこうでございます。ただ、もとるというこの字句の問題については、私のほうはそのように解釈しております。
  27. 芳賀貢

    芳賀委員 これは解釈上に問題があるという事柄じゃないですよ。大和田君もやはりおもしろくないという意味だといまでも思っているのですか。これは重大な問題ですよ。特に私は、単に私だけではなくて、この程度答申表現上の正しい解釈ができないということであれば、これは農林大臣を信任することはできないですよ。この答申のこの事項に関する趣旨というものは、食管法趣旨にこれはもとる、すなわち、反するという点を強調して、だから需給事情を考慮するということはいけないということが、ここに盛られておるわけなんです。これをそうではないということであれば、これは重大問題ですから、私、独断の処置はできませんけれども、当然農林大臣は信任できない。あくまでもそういう頑迷な態度を変えないということであれば、これは国会においても、正当な手続きを経てこれを処置しなければならぬところへ問題が発展すると思うのですよ。そういうことになったのでは、これはおもしろくないでしょう。また与党の諸君が擁護して、不信任案が通らない場合があるとしても、こういうもとるの解釈が違って、農政の遂行ができない農林大臣は信任できないというようなことで、不信の意思国会から提起された場合、これは恥ずかしくて論争することはできないじゃないですか。  米価決定は、農林大臣行政的に行なうわけでありますから、すでに決定されたことそれ自体を、もとに戻せとかなんとか言っているのではないですよ。農林大臣答申については、その趣旨を十分検討して、できるだけ尊重したということを強弁されておるので、それではこの点については一体尊重したのか、この点は尊重しなかったのかということを聞いておるわけです。審議会が率直に意思表示をした点についてさえも、そういう趣旨ではないというような曲がった解釈をしなければならぬ理由はどこにもないと思いますが、どういうわけなんですか。
  28. 大和田啓気

    大和田政府委員 繰り返してお答えいたしますが、もしお話しのとおりでございますれば、たとえば、食糧管理法第三条第二項の規定に反するという、そういう書き方を当然いたすわけであります。  それで、米価審議会議論で、そういうふうにおっしゃった方もあるいはあろうと思いますけれども、結果においてこういう表現になりましたことは、食糧管理法趣旨からいってよくない、あるいはおもしろくないという趣旨であって、食糧管理法に違反するという詰めたふうにいわないという、そういう皆さんのお考えが、こういう文章になったのであろうというふうに理解することが、やはり一番すなおであろうと思います。御趣旨のように、御主張した人たちがあるということは、私もそのとおりだと思います。   〔委員長退席、三ツ林委員長代理着席〕
  29. 芳賀貢

    芳賀委員 それでは、官房長なんていうことばを使いたくないので、大和田君に尋ねますが、もとるという字句を別に表現すれば、その趣旨に沿わないとか、反する、合致しない、こういうふうにこれは当然同義語として通ずるわけですけれども、それも違うというふうに考えているわけですか。反する、沿わないという意味と、もとるというのは違うと思いますか。
  30. 大和田啓気

    大和田政府委員 違反かどうかという厳密な議論をいたすときは、当然食糧管理法規定に反するということでございます。これは食糧管理法趣旨にもとるということでございますから、趣旨にもとるということは、もう少しふわっとした観念であって、一つ一つの項目に違反するという趣旨ではないというふうに私どもは考えているわけでございます。
  31. 芳賀貢

    芳賀委員 これは、起草委員五人が小倉会長を中心として、何とか文章上の表現を一本の答申の形にまとめたいということで、画然とした並列答申ができなかったわけですよ。私たちもその経過は、会場にはおらぬが十分承知をしております。生産者代表、消費者代表は、これはまことに少数であって、多数の委員農林大臣が選任した委員であって、しかも、これは最初から政府と共通の考え方の上に立って米審に参加している委員であるから、われわれのように民主的な方法によって国民から選ばれて、そうして国民を代表して議論するような形ではないんですよ。いわゆる端的にいえば、御用委員と目されるような委員を多数並べて、それを数の上で多数であった、少数であったというようなことで、政府の当初からの意思を通すために米価審議会委員は選任されているわけです。この表現は、何とか文章上一つにまとめようということになれば、据え置きを主張する起草委員のほうが多いわけだから、それで表現が、違反から反する、反するからもとるというふうにだんだん軟かくなったという経過は確かにあるでしょう。それはもう食糧庁長官も十分知っていることで、最初からもとると出たんじゃないんですよ。違反から反するになり、反するからもとるになったわけであるから、出発点が違反から出ているのだから、おもしろくないとか、そういう意味ではないなんていうことには、これはならないんですよ。  しかも六月の六日には、農林大臣米価審議会の開会冒頭に、前日の六月五日に衆議院農林水産委員会においては、社会党、民社党、公明党の各委員から、それぞれ今回の諮問は、食管法第三条第二項の趣旨にかんがみて違法の諮問であるという指摘がありましたということを、農林大臣は文書を配付して、直接米価審議会に当委員会審議の模様を、丹羽農林水産委員長の閉会直前における指示に従って、これが忠実に報告されているわけです。そういう一連のつながりから見て、ここに述べられている「米穀需給事情を考慮することは食糧管理法趣旨にもとるので、」この趣旨というのは、問題になっている第三条第二項の趣旨に反するわけだから、「労賃、物価上昇を適正に反映するよう従来の生産費および所得補償方式により決定すること」という意見表明されたというふうに、これは明確になっておるわけです。この答申の真意さえも歪曲して問題をすりかえるというような考えは、これは責任ある者のとるべき態度でないと思うのですよ。あなたはそういう人だったのですか。はっきりしてください。
  32. 長谷川四郎

    長谷川国務大臣 私は、国会においての発言なら責任を持つ。したがって、私は皆さん方がおっしゃったことをすなおにお伝え申し上げた。この答申は私がつくったのじゃないのですよ。間違わないでください。私は答申を受けたのです。あなたは私がつくったようなことをおっしゃっているけれども、私は皆さんがおっしゃることをお知らせ申し上げた。感謝してもらっていいぐらいに思っている。逆ですよ。私は答申を受けたのです。そういう違反だという意見だったら、その人たちが加わっているはずがないじゃありませんか。私は、生産者団体の方からもそういう御意見がありましたけれども、私がお話し申し上げたからおわかりになったと思うのですよ。あくまで反対だというなら、その会議に列席していないはずだと私は思う。最後まで、この方は答申をつくられるまでその大役をつとめた。その人友がおつくりになったのですから、私は受けたんですよ。それは間違わないでくださいよ。あたかも私がつくったみたいに言われたら困るのです。
  33. 芳賀貢

    芳賀委員 まあ形の上ではそうでしょう。しかし、実質的にはリモコンがあっていろいろ操作されたことは、これは従来の経過から見ても明らかです。  それじゃ第一の、二十五人が一致して、生産費所得補償方式基本とすることは差しつかえない、この点も大臣は十分理解されていなかったわけですし、それから二番目の、生産者委員を中心とする、この食糧管理法の第三条第二項の趣旨にもとるので、こういう決定の方法はよくないということについても、正しい理解ができなかったということが明らかになったわけであります。  それでは、その次の「他方、「需給事情を考慮することは妥当である」との意見が多くの委員から表明された。」この点はどのように検討して尊重されたわけですか。
  34. 長谷川四郎

    長谷川国務大臣 ここに示されているとおりでありまして、そういうおことばはありましたけれども、需給事情を考慮するということは妥当であるというような意見方々がおった、たくさんおりましたということを私は答申を受けたから、そのとおりに解釈をいたします。
  35. 芳賀貢

    芳賀委員 それで、この点を尊重されたわけですか。
  36. 長谷川四郎

    長谷川国務大臣 この点だけを尊重するわけではございません。そういう御意見等も十分考慮に入れて検討を加えたわけでございます。
  37. 芳賀貢

    芳賀委員 これは大臣、全部の意見じゃ、ないですよ。他方の意見ということになっておるのですよ。全部の中で前の半分なら半分が、これは食糧管理法趣旨にもとるから、こういう政府諮問は間違っておる、したがって、需給事情を考慮するということでなくて、従来方式を正しく運用してきめなさいというのが、最初議論しました一方の意見ですね。そのほかの意見、他方の意見ということになるのだから、これは同じ意見ということにはならぬでしょう。いいですか、だからこの他方の意見というのは、政府諮問どおり需給事情をことしは考慮して据え置きにきめなさいというこれは意見ですね。これはこのとおり正しく解釈しておるわけですか。
  38. 長谷川四郎

    長谷川国務大臣 他方ということばが加えられております。私は、その他方といっても、同じかどうかわかりませんけれども、需給事情を考慮してという意見が多くの委員から出された。しかし、これをきめるのには、わざわざ生産者方々を選んで出席をしてもらった、その生産者の御意見が十分に反映されるように私は十分考慮を加えたわけでございますから、それもそのとおりに、ここに、そういう意見も出ておりました、また一方にはこういう意見もございました、こういうことが明細にしるされてあるのでございまして、ですから、全般にわたって私は十分考慮に考慮を加え、そうして決定をした、こういうことでございますので、ただ一方的に、数が多いからその意見だけをとったという意味ばかりではございません。
  39. 芳賀貢

    芳賀委員 それでは、その次から今度は価格に触れているわけですね。「上記に関連して、政府から提出された試算米価」これは諮問の別表に添付された参考資料ということで、一案、二案、三案となっておるのが従来のやり方ですが、今度は、需給事情を考慮した場合こうなるという一案だけが政府の試算米価として示されておったわけですからして、審議会においては、この政府試算米価について意見を述べる以外の機会は許されなかったわけです。  それで(1)は、「政府試算米価には全く反対であり、これをさらに引き上げるべきであるとの強い見解」があった。この試算米価に対する反対である、引き上げろという意見は、これは先ほど私が言いました「米穀需給事情を考慮することは食糧管理法趣旨にもとるので、米穀需給事情を考慮することなく、労賃、物価上昇を適正に反映するよう従来の生産費および所得補償方式により決定」しなさいというこの部分と、(1)の従来方式によって当然価格が上がるわけだから、そのようにしなさいというのが一体をなすわけです。  その次の、他方の意見である需給事情を考慮してきめなさいという意見が、「これに対し、需給事情を考慮することは妥当であるとの立場の委員においては、この際政府試算米価でやむを得ないとする見解が有力であったが、そのほか政府試算米価を引き下げるべきであるとの強い見解が述べられた。」この(2)は、いずれにしても需給事情を考慮してきめるのが妥当である。しかし、それがまた分かれて、政府考えどおり、前年同様据え置きにしなさいというのと、また一部の委員は、それではまだ納得できないので、さらに需給事情を十分考慮してまだ下げろという意見に、これは需給事情論が二つに分かれたということがいえるので、これはやはり政府諮問を全面的に賛成する、政府の試算米価を支持するという、こういうことになっておるわけですからして、結果から見れば、この点だけを尊重されて、生産者委員並びに良識ある委員答申の部分は全く尊重もしないし、振り向きもしなかったということになったわけです。  これは、もう結果がそうなったから弁明の余地はないと思いますが、何かこの際言っておきたい点があれば発言してもらいたいと思います。
  40. 長谷川四郎

    長谷川国務大臣 このような御意見を受けまして、私も党へ持ち帰り、また党に御報告を申し上げ、党もあらゆる広い角度からこれを検討していただきたい、こういうことで、御承知のように、一昨夜も夜を徹してというぐらいの御意見等も承って米価決定を見るに至ったのでございます。  お話のあった第一項にある、生産者のおっしゃるようなことばも中心となっていろいろな御意見が述べられましたし、また、この(2)にあるようなお話も中には出ましたし、いろいろな御意見等も十分に、あらゆる角度から、私は代表者の立場から承りました。そうして、今回の答申とあわせまして決定をすることになったのでございますから、ただ答申が出たからそのまま私がこれをきめた、こればかりではないのでございまして、広く御意見も十分に私は承って、そして今回の米価決定を見るに至った、このようにお答え申し上げたいと思います。
  41. 芳賀貢

    芳賀委員 それでは、答申の扱いについては本日はこの程度にいたしておきますが、特にこの趣旨にもとるという解釈の問題については、実は本日は参議院の農林水産委員会においては、米審会長小倉武一君を参考人として呼んでいるわけです。当委員会としても後刻理事会で御相談願って、適当な機会に小倉米審会長出席を求めて、その際またあらためて、小倉君のほうが皆さんよりは一段学者ですから、そういう点もただしておきたいと思うわけで、これは保留いたします。   〔三ツ林委員長代理退席、委員長着席〕  米審答申の扱いに次いで、昨日、昭和四十四年六月十日、衆議院農林水産委員会においては、政府米価決定に先立ちまして委員会の決議を行なったわけでありますが、これは農林大臣手元に届いたことと思いますが、いかがですか。
  42. 長谷川四郎

    長谷川国務大臣 昨日の当委員会の御決議は、今後十分に尊重してまいる考えでございます。
  43. 芳賀貢

    芳賀委員 これは、決定後の今後のために決議したのじゃないのですよ。    昭和四十四年産生産者米価決定に関する件   政府は、本年産生産者米価決定については、食糧管理法第三条第二項の規定にのっとり、生産費及び所得補償方式に基づき、物価等経済事情の変動を考慮し、生産農民が再生産を確保できるよう決定すること。   なお、消費者米価については、物価及び消費者家計の安定の見地から据置くこと。   右決議する。     昭和四十四年六月十日          衆議院農林水産委員会 これは委員長から提案がなされまして、全会一致で議決が行なわれたわけで、政府価格決定をする前に、当委員会としての意思を明確にして、これを尊重するようにしてもらいたい。しかも小沢農林政務次官は、ただいまの御決議の趣旨を十分尊重して善処をいたします、こういうあいさつをしたわけです。これは政府を代表したものとは認めておりませんでしたけれども、農林大臣は、これはこれからの決議だというふうに勘違いされておるようですが、まことに遺憾千万で、一体丹羽委員長は、委員会にわざわざおはかりになって、政府に対する伝達は委員長にまかしてくれということで、皆さんが異議なしでおまかせしたのですが、農林大臣に、きまったあとでこうやってくれというような伝達をされたのですか。これは委員長から明らかにしてもらいたい。
  44. 丹羽兵助

    丹羽委員長 お答え申し上げます。  昨日御決議をちょうだいいたしまして、直ちに農林大臣等関係大臣、そして衆議院議長であった  かと思いますが、文書で、慣例に従いましてその手続はとってあります。
  45. 芳賀貢

    芳賀委員 大臣から……。
  46. 長谷川四郎

    長谷川国務大臣 ことば足らずで申しわけござ  いませんが、昨日ちょうだいをいたしまして、十分考慮に入れて米価決定いたしました。
  47. 芳賀貢

    芳賀委員 米価決定を見ますと、全会一致で議決したこの、委員会意思というものは、何ら尊重されなかったというふうに思いますが、いかがでしょうか。
  48. 長谷川四郎

    長谷川国務大臣 十分尊重いたしまして、これに対するお答えを出したわけでございます。
  49. 芳賀貢

    芳賀委員 それじゃ尊重ということばは、前年同様据え置くと解釈してよろしいわけですか。
  50. 長谷川四郎

    長谷川国務大臣 前年同様の価格決定するにあたりましては、このような点についても、先ほどからのお話のとおり、また皆さん方の御決議も十分その中に織り込んで御協議をお願い申し上げて、価格決定に至ったわけでございますから、この点につきましては、尊重をいたしたと申し上げるよりほかにございません。
  51. 芳賀貢

    芳賀委員 次に、重要な問題をお尋ねしますが、今回米価据え置き政府は当初方針どおり貫いたと満足しておられるわけですが、米価のほかに稲作特別対策事業費ということで総額二百二十五億円の支出を、これは米とは関係ない、したがって、財政支出も食管特別会計でない一般会計から出すようにするということをあわせて閣議で決定して、これはあくまでも米価と関係はないということを強調されておるわけであります。この点は閣議決定事項ですからして、この二百二十五億の支出は年度内に行なわれるものと思いますが、食管特別会計からの米価に関する支出でないとすれば、やはり財政法上の問題、昭和四十四年度の予算上の問題と重要な関係があるわけですね。この点は、特にきょうは委員会で私は質問いたしません。これは国会としても、財政法上、予算上重要な問題ですから、私どもの党といたしましても、衆議院本会議において総理大臣から報告を求めて、この問題の究明を行なう方針をきめておりますので、私はきょうはこの問題の内容には触れないつもりでございます。  ただ、けさの新聞長谷川農林大臣談話といたしまして、この稲作特別対策事業費についてこう述べられておるわけです。「稲作特別対質事業費は米不足時代から現在に至るまで努力して来た農民に最後のお礼として出したものであって、米審答申に反しているものでもない。来年度は出す考えはない。」この「最後のお礼」というのはどうなんですか。何か離縁状を渡すとか、わらじ銭を預けて、これが最後だぞ、そういうふうに聞こえるわけですが、この最後のお礼として稲作特別対策事業費を出すというのは、これは短い談話の中ですから真意はわかりませんが、特に「最後のお礼」という点について、一国の農政を担当する農林大臣から所信を明快にしてもらいたいと思います。
  52. 長谷川四郎

    長谷川国務大臣 私も、最後だということはっけ加えた覚えはございません。しかしながら、そういうような気持ちというものが十分この中に含まれておるということだけは、そのとおり申し上げました。
  53. 芳賀貢

    芳賀委員 それじゃ、大体このとおりなわけですね。全国の生産農民と自民党佐藤内閣との絶縁の形で、いままで米不足時代から一生懸命にやってくれた、それは御苦労だった、もうこれから君らに努力してもらう必要もないし、世話にもならぬから、これを手切れ金のような形で出す、しかし、これがもう最後ですぞ、これからまた同じようなことをくどくど言ってきちゃいかぬ、そういうことですね。素朴な農民に向かって答えるような気持ちで、わかりやすく答えてください。
  54. 長谷川四郎

    長谷川国務大臣 むずかしく言えといってもむずかしくは言えませんから、私は率直にそのようなお答えを申し上げたわけでございます。
  55. 芳賀貢

    芳賀委員 これは、今後の日本の農政を扱う国会の当委員会としては重要な問題ですからして、きょうだけでこれは論議するわけにはいきませんから、今後あらゆる機会にこの問題の内容について究明をしていきたいと思います。もちろん、政府が孤立してやるわけではありませんので、当然この基本的な方針を今後、あるいは表現は総合農政といたしましても何といたしましても、これは与党自民党といまの佐藤内閣が一体にならなければ、このような施策を進めるわけにはいかぬと思いますので、ここで直接自民党に御質旧するわけにはいきませんので、いささか間接的にはなりますけれども、この点について農林大臣から、率直なお答えを願いたいと思うわけであります。  これはことしの六月二日、武道館において米価要求のための全国農協主催の大会が開かれて、約二万人の生産者代表出席いたしまして、その際、与党自民党並びに社会党、民社党、公明党、各党が正式に代表を送って、そこでそれぞれの党の方針を明らかにしたわけであります。その際、自民党におかれましては、政務調査会長の根本龍太郎君が正式に党を代表してあいさつを行なわれたわけであります。全部を取り上げるわけではありませんが、その中にこういう一節があります。「皆さん現在、昭和四十四年度予算の中で、農業予算は、七千六百八十八億でございまして、全体の国の一般会計の中で、六・六%を占めているのであります。そうして農民の皆さんが、四十三年度に国税として国に納税しておる額は、〇・二%の百二億円にすぎないのであります。四十四年度は納税額は百八十八億にすぎません。しかるに農業関係予算は、七千五百億円をさしておるのであります。」これは実態はなるほどそうかもしれませんが、ここでいう皆さん、農民はわずか国税を全体の〇・二%の百二億円しか納めていないではないか。しかるに、ことしの国の予算の中で農業関係予算は、これは食管特別会計の赤字負担の三千億を含めてでありますが、七千五百億円を計上しておる。ろくに税金も納めないで、米価決定一ついてかっての要求をするのはおこがましいではないかというようなふうに、大会に出席した全国の生産農民はこれを受け取ったのであります。  これと、いまの佐藤内閣決定した生産者米価は、物価が毎年五%以上どんどん急激に上昇しても、あるいは全国の労働者の賃金が毎年、去年は一四%、ことしは春闘を通じて二八%、そうして日本の国の総生産あるいは国民所得が、自由諸国の中では第二位、第三位にのし上がったというような状態の中で、一体なぜ全国の農民が、農業所得税等を中心にして年額にして百何億しか納めることができないかという点であります。これは、納められないおまえたちは貧乏百姓だと言うことは間違っておると思うのですね。いまの政府の農業施策のもとにおいて、農業所得税を納めるだけの水準の所得がないから税金を納めることができないのじゃないですか。所得税さえも納めることのできない状態に賢いて、何万人という大衆との会議の中で、君ら農民はわずか百億円そこそこしか税金を納めていないじゃないか、それにもかかわらずえらそうなことをとやかく言うのはおこがましいというような、こういう全国の生産農民をあたかも向こうに回すような冷酷無情の発言を、与党である大政党の、しかも政策を担当する政務調査会長が公然と述べるこの姿勢、それと年当初から、ことしは何が何でも生産者米価は絶対据え置きするという佐藤内閣総理大臣のこの冷酷の態度というものは、やはり相通ずるものがある、一体をなした農民圧迫の姿勢であるというふうに全国の農民が受け取っておることを、農林大臣は一体御承知ですか。この点を率直にお答え願いたいと思います。
  56. 長谷川四郎

    長谷川国務大臣 私たちが、農業という点がいかに重要な部門であるか、産業であるか、こういう点に、それは皆さん方ばかりでなくて、与党、野党をあげて今日までこれほど懸命に努力をしておる。これに対して、先ほど私に対して、これでもう離縁状かというようなお話まで承りましたけれども、そういう問題ではないのであって、価格政策のみでなくても幾らでもやる方法が、再生産を確保することができるのではないでしょうか。本年度の予算を見ましても、昨年から見れば一五%ぐらいですか、もうちょっと上ですか、それぐらいは伸びているではございませんか。決して皆さんがおっしゃるように、米価ずばりそのものでなくてもなす方法は、私はあるだろうと思う。やらなければ相ならぬ、やってこそ初めてここに農業の発展性を見ることもできる、こういうような考え方に立っております。  しかしながら、今回の米価決定だけにおいてもそういうようなことを十分私は考えておりますし、私もこれらには責任をもって再生産ができるような方法を、さらにまた農産物全般が、需要と生産のバランスがとれるような方法をとっていきたい、こういうふうな考え方に立っておりますので、私は決してこの価格政策だけではなくて、もっと全般の生産政策の上に立ってものを考えていくべきであろう、こういうふうに考えておるのでございます。しかし、御不満の点は十分承っておきます。  そのほかに、党の政調会長が農民大会ですか、米価要求大会でお話があったそうですが、それは私の関係以外でございますので、お答えをするわけにはまいりません。
  57. 芳賀貢

    芳賀委員 理事会の申し合わせの時間がありますので、その点はその範囲でとどめたいと思います。  この際、農林大臣にお尋ねしておきたいことは、たとえば、自主流通米制度実施の問題にいたしましても、政府食糧管理法の改正を行なわないで、去る五月十六日に二つの政令の改正を行ない、同時に自主流通米の取り扱い要綱をすでに決定したわけですね。われわれとしては自主流通米構想というものは、これは明らかに現在の食糧管理制度から見れば、当然食管制度を逸脱した方法であるということは、昨年から指摘しているわけです。結局法律をそのままにして、一片の政令の改正だけを閣議で行なって、自主流通米制度を実行しようとするその態度、これはやはり明らかに法律無視で、今回の米審諮問にいたしましても、それと同様であります。  そこで、この食管法の歴史的経過の中で、一九四八年(れ)第一四一号事件というものが食管法の違憲問題として最高裁判所に提訴されたことがあるわけです。この点は農林大臣として記憶にあるか、はたしてそれはどういう食管法上の問題であったかということを、この機会に明確にしてもらいたいと思います。
  58. 長谷川四郎

    長谷川国務大臣 しばしば申し上げておりますとおり、食管法のワクの中において政令で自主流通米制度というものを開いたわけでございますが、その点は私は記憶ございません。ですから、あとでお調べして御返事を申し上げることにいたします。
  59. 芳賀貢

    芳賀委員 この違憲問題を知らないで、食管制度を扱う資格はないですよ。これは大和田君にしたって桧垣君にしたって、えらそうなことを始終言うが、これはあなた方が生まれる前のことじゃないのですよ。一九四八年というから、これは明らかに戦後の昭和二十三年ということになるわけですから、大和田君にしても桧垣君にしても、将来を嘱望されて農林省に入った若手の特権官僚の卵時代だったと思うのです。こういう大事な食管法上違憲訴訟があったということをほんとうに知らないのですか。これはことしの米価とは直接結びつける考えはないですが……。
  60. 桧垣徳太郎

    ○桧垣政府委員 食管法運営の長い歴史がございまして、できるだけの勉強をしておるつもりでございますが、至りませんで、ただいま御指摘のケースについては、私どもただいまのところ承知をいたしておりません。大臣がお答えいたしましたようにさっそく調べまして、私どもの見解を申し上げる機会を与えていただきたいと思います。
  61. 芳賀貢

    芳賀委員 それでは、せっかくこちらから問題を提起したわけですから、概要だけを話しておきます。あと十分当時の状態等研究しておいてもらいたいのです。  この発端は、昭和十七年に食管法ができたわけですから、性格的には戦時立法的な性格を当時持ったことはやむを得ないことだったと思うわけです。それが戦後にそのまま引き継がれた関係もあって、その法律の随所に、命令の定めるところとかいうようなことで、その法律そのものの示す規定よりも、何でもかんでも行政府が、授権命令という形で命令を乱発して、それが結局、主権在民あるいは民主主義の基本から見て国民を大きく圧迫するじゃないかというような問題が幾多生じたわけです。その中の一つとして、一九四八年(れ)第一四一号事件というものが、違憲問題として最高裁に提訴されたわけです。  これは、当時のアメリカ占領軍においても非常に重視した問題でありますが、一体食管法のどの点が問題になったかというと、食管法第九条のいまの規定は、この違憲問題が起きました翌年の昭和二十四年五月三十一日の第五国会で全面改正が行なわれました際に、現在の第九条の体系に改まったわけです。今回の食管法による政府に売り渡すべき米穀に関する政令、ことしにすれば、昭和四十四年度米穀政府に売り渡すべき米穀に関する政令、これの改正をやっておるわけです。それからもう一つは、食糧管理法施行令の第五条の五及び第六条の改正を行なって、二つの改正を通じてこの自主流通米を実施するということを進めておるわけです。ですから、今回政府以外に売り渡してもいいという政令の改正を通じて自主流通米を進めようとしておるわけですから、たまたま今回の政府が行なおうとする自主流通米は、この食管法第九条にひっかかってくるわけです。  この点は、食糧庁長官は、従来当委員会の皆さんの質問等には、食糧管理法施行令第五条の五の根拠規定は、食管法第三条であるというふうな答弁をして、いる。そういう趣旨説明に終始しているわけですね。それから法制局長官の高辻君の当委員会における発言を見ると、これは明らかに食管法施行令第五条の五の根拠規定は、食管法第九条  であるということを言っておるわけです。これは政令の経過から見て第九条に基づいておることは間違いないわけですが、この第九条の違憲問題と  いうものが、そもそも法律趣旨を逸脱して、法律以上の権限を持って生産者あるいは消費者を束縛するということから発展した違憲問題であります。はしなくもまたこの第九条との関係において、法律改正をしない、そうして自主流通米制度を進めるというような態度というものは、われわれ立法府の者としてこれを容認することは絶対できないわけです。  しかし、経緯とかその内容を御存じないようですからして、これは残念ながら同一条件できょう議論するわけにいかぬですね。ですから次の機会までに十分その経緯、内容等を勉強しておいてもらって、次の委員会において自主流通米の問題、食管法との関係等について十分議論をしたいと思いますが、大臣いかがですか。きょうやるというならそれでよろしいですが、もうちょっと期間をおいてくれというのならそれでもよろしいです。
  62. 桧垣徳太郎

    ○桧垣政府委員 先刻もお願いを申し上げましたように、私どもも御指摘のケースについての知識がございませんので、その知識なしに議論を進めますと、十分論理的な御答弁がいたしかねる場面が出るかと思いますので、私どもに勉強の時間を与えていただきました上で、御質疑に応ずるようにお願いしたいと思います。
  63. 芳賀貢

    芳賀委員 委員長、本日はこの程度でやめておきます。      ————◇—————
  64. 丹羽兵助

    丹羽委員長 農地法の一部を改正する法律案を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。伊賀定盛君。
  65. 伊賀定盛

    ○伊賀委員 私は、農地法の一部を改正する法律案について、若干の御質問を申し上げたいと思います。  そこで、最初に農林大臣にお尋ねしますが、戦後の民主化の波にささえられて財界の民主化が行なわれて、例の独占禁止法というものができ上がり、農村における地主支配が日本の民主化を阻害するということで、農村における憲法ともいうべき農地法の制定を見たわけでありますが、戦後二十数年間の経過の中から、国際的、国内的あるいは社会的その他のいろいろな条件の変化から、財界における一部特定財閥の復活、その動きが、御承知のような王子系三社の合併であり、あるいは富士鉄・八幡製鉄の合併の動き、あるいはその他の丸紅飯田の合併、あるいはその他の繊維関係有力会社の合併の動きが出てきておることは御承知のとおりであります。  したがって、戦後の経済の民主化が、新しく一部特定財閥の復活の動きと相呼応して、農村における農地法に守られた農村民主化というものが、農地法の改正その他一連の法改正を伴いつつ、再び戦前の農村の地主支配へと布石されようとする有力な財界からの圧力がある、こういうような見解があるわけでありますが、農林大臣は、この見解に対してどういうお考えをお持ちですか。
  66. 長谷川四郎

    長谷川国務大臣 かつての時代とは全く大きく変わってきておりまして、昔のような、地主支配制度が復活するだろうというような考え方は毛頭持っておりません。  したがって、今回の農地法の改正は、すなわち、農地がより生産性の高い経営によって効率的に利用をされるようにその流動化を促進する等、また、土地の農業上の効率的な利用をはかることが主たるねらいとなっておりますので、昔のような地主制度が復活するなどということは、私たちは毛頭考えておりません。
  67. 伊賀定盛

    ○伊賀委員 私は、ただいま私が申し上げた考え方を、全面的にそうだとは断言し切れないものがありますけれども、いま農地法が提案をされて、そして農地法の一部改正についての大臣の提案説明には、いまの御答弁のような趣旨が盛られておることはよく承知しておりますけれども、先ほど申し上げますように、一連の財界の動きといい、農村の動きは、かなりそうした動きが顕著にあらわれつつあるように私は考えております。  そこで、いま農地法の一部改正についての提案説明に盛られておるようなものを御答弁になりましたが、それ以外に、およそ一つ法律でありますから、当然その法律には政策が盛られておるわけでありますから、文章に表現された以外の一つの政策意図といいますか、そういうものがあるはずだと思うのであります。この農地法を改正するのにいろいろ書いておりますが、ポイントは、今後の農村を、あるいは農民を、一体どう持っていこうとするのか、これをひとつ的確にお知らせいただきたい。
  68. 長谷川四郎

    長谷川国務大臣 もう私が申し上げるまでもなくよく御存じのとおりでございますが、いずれにいたしましてもいかに省力化していくか。したがって、日本の農業自体が非常に兼業化しております。これらに対しましてもより一そう生産を高めていただくようにしていかなければならぬ。こういうような点については、やはり機械化をしていかなければならぬだろうというような点もございます。それらにいたしましても、機械化をするのにいたしましても、やはり協業化していくとか、土地の高度利用を行なうような方途を開くことによって、農村の所得を高めていくこともできる。こういうような、つまり時代の要求に応じた施策というものを講じさせていく、これをそのように指導していくというのが、やはり現代の世に沿ったやり方であろろうと私は考えます。  いまもお話がございましたように、財界というような点のお話もございましたけれども、これらもやはり、他国と比較をして生産性を高め、そしてその効率的な効果をいかにするかという、そういうような点についての大型化が進められたのだと私は解釈をいたします。  しかしながら、日本の農業というものは他国の農業とは違いまして、非常に規模が、零細と申し上げては失礼でありますけれども、小さい。それをいかに高度に利用し、そして生産を高めていくかというような点については、これらはほんとうに考えなければならない問題だと思うのでございます。
  69. 伊賀定盛

    ○伊賀委員 どうもさっぱりわからぬのですけれども、私はたぶんこうだろうと思うのであります。今度の農地法の改正のねらいというものは、一面から言いますると、日本がようやく先進国の仲間入りをして自由化の波が高まってきた、したがって、日本の農産物を国際競争に耐え得る、そういうものに一つは持っていきたい。それから、国内的には諸物価が高騰しておるので、できるだけ生産費を安くして、そしてコンスタントに国民に食糧を安く供給したい、的確に言いますと、これはそういう意図ではないですか。
  70. 長谷川四郎

    長谷川国務大臣 答弁を申し上げるよりも、伊賀さんのほうがもうよく御承知で、現在の日本を取り巻く農業というものは、想像以上にきびしいものがあることば申し上げるまでもございません。  したがって、日本がこの自由化の波にさらされる中に立って、何といっても日本の農業が生産性というものを高めていかなければならぬ、こういうような点は、御指摘のとおりそのような考え方が十分その中に含まれていることを申し上げておきます。
  71. 伊賀定盛

    ○伊賀委員 そうしますと、生産性を高めるためには、いままでからよくいわれてまいりましたが、日本の農業の零細性を脱却していかなければならない。言いかえますと、大型化といいますか、そのことによって生産性を高め、あわせて一方において国際競争力を強めるということになるわけであります。  そうすると、零細性を脱却するということは、すなわち大型化する。大型化するためには、いまの日本の農地の零細性を、この農地法がいっておるところの規模拡大に持っていくためには、農家の人口を減らす、そして戸数を減らすことと、一方においては未解放の、米利用の国土を利用していくこと、これ以外にまだありますか。
  72. 長谷川四郎

    長谷川国務大臣 御質問者の伊賀さんのほうが、私が御答弁申し上げる必要がないぐらい御承知で、もうそのほかにございませんが、といって、ただ私は、大型化は確かにこれは行なわなければなりませんし、規模の拡大もまた当然行なってはまいりたいけれども、これが急速にそのようなことのできないのが現在の日本の農業の実態でありまして、そういうような考え方がございましても、これほど定着しているその兼業農家、小さい零細農家を逐次そのような型に持っていくということは、非常な困難ではございます。困難ではございますけれども、そのような方向づけをするということは、私たちのこれがすなわち使命であろう、このようにも考えます。  また、それに関連をいたしまして未利用土地の開発、これらは当然あわせ行なっていかなければならない問題だと考えております。
  73. 伊賀定盛

    ○伊賀委員 そこで、今度の農地法改正というのが、そういうねらいで提案をされておられるだろうと思いますが、今度の農地法の条文の中身とか、あるいは農業内部の諸問題については、いままでもいろいろ委員方々からお話がございましたから、私は少し観点を変えまして、いわば今日の農村が曲がりかどに来ておるが、これを農業内部から新しい方向づけをしようという一つの政策意図、もう一つは、農業外部からもあわせて将来の農村の方向づけをしていく必要もあろうかと思うのでありまして、そういう意味で、私は後ほど農業内部の農地法の問題については触れてみたいと思いますが、最初に、農業外の問題についてお尋ねをしたいと思うのであります。  先ほど申し上げましたように、農家所得が、都市労働者に比較して所得が低い。最近ようやく均衡がとれたということで、米価を下げてもいいというような有力な見解もあるようですけれども、いずれにしても、所得を確保するためにも農家の戸数と人口を減らす必要がある。あわせて日本の経済成長が、御承知のとおり、きのうきょうの新聞の報ずるところによりますと、世界で第二位に上昇したといわれておる。そこで、財界は安い労働力がほしい。そういう両々相まって、農村から安く労働力を供給する必要が、国内的な事情からいうてある。  そこで、御承知のように、どんどんいま農村から若い労働力が流れていっております。私どもの農村でありますと、中学校卒業生なんというのは、毎年県の教育委員会、町の教育委員会あたりが調べておりますけれども、ほとんど中学校卒業生は、男女を含めまして皆無であります。校卒業生でわずかに残る程度で、中学校卒業生というのはほとんど農村には残らぬわけでありますが、これは私どもの農村だけでなしに、今日日本全体を取り巻く一般的な傾向だろうと思いますが、一体このようにして農村から若い労働力が都市に流れていきますが、この原因を大臣はどういう理由だとお考えでしょうか。
  74. 長谷川四郎

    長谷川国務大臣 現在の農政のあり方の上に立っていろいろな問題が起きてきておる、したがって、農業後継者がこれに対して不安を感じてきておる、こういうような点も含まれておるでしょう。でありまするから、後継者が進んで農業に従事できる、そして生産性を高めていくような方法を考えて、これらの指導に当たるということが、すなわち、われわれ国会においての大きな役割であろうと考えられます。  したがって、これに対しての幾つか、たくさんの方法はございます。しかし、それらを行なっていく上に立っては、やはり何といってもいま御審議を願っておる、基本となるべき農地法というようなものが活用されていくことによってその希望を満たすことができ得る、私はこのように考えております。
  75. 伊賀定盛

    ○伊賀委員 どうも私が期待しておるような答弁がないのですけれども、私のほうから申し上げます。  結局、農村に若い者がいなくなるというのは、先ほどから申し上げますように、農村に残っても将来の生活の安定というものが期待できない。一つは先ほど申し上げますように、非常に耕地面積が少ない。そして、一生懸命に汗水たらして努力してつくった米は据え置きになったり、一生懸命にキャベツをつくってみたらつくり過ぎになって、もう畑からキャベツを採取するほうがかえって金がかかるから、しかたがないから畑にほうっておいたほうがいいということになる。ことしはキャベツがあかぬということで、今度ハクサイがいいそうだというてハクサイをつくってみたところ、これがまたとれ過ぎになってこれもあかぬ。今度は果樹がいいということで、一生懸命にリンゴをつくってみたところが、今度はバナナがどんどんどんどん輸入されてきてどうもこれもいかぬ。四国で一生懸命ミカンをつくったところが、やっぱりバナナの影響でもうミカンもだめになった。今度は畜産がいいということで、いろいろと牛を飼ってみたけれども、今度は高いということで、外国から輸入しなければいかぬらしいということになってきて、肉をつくってもどうも思わしくない。それなら、若い青年諸君は一体何を目標に、何を楽しみに農業に従事するかという一つの不安が出てきますね。そこで、牛を飼ってもしようがない、野菜をつくってもしようがない、米をつくってもしかたがない、まあこんないなかにおるよりは都会に出れば、何か働くところがよけいあるそうだからということで都会に出てきますね。  そこで、せっかく農村に見切りを——せっかくかどうかわかりませんが、農林大臣からいいますとせっかくということばを使ってもいいかもしれませんね。せっかく農村に見切りをつけて、農林大臣の期待するように農家人口がどんどんいま減ってきております。一体この減り方は、どのくらいの比率で減っておりますか。人口とそれから戸数は……。
  76. 大和田啓気

    大和田政府委員 農業就業者の減り方は、大体三%強で減っております。それから農家戸数は、三十五年くらいまではほとんど変動はありませんでしたけれども、三十五年ごろから一・四%程度、大体年にいたしまして八万戸程度ずつ減っております。  最近の数字で申し上げますと、農業就業者は九百三十万人程度、農家戸数ば五百四十万戸程度ということになっておるわけでございます。
  77. 伊賀定盛

    ○伊賀委員 従業者で三%、戸数で一・四%ということでありますと、おそらく農林大臣の期待にこの減り方は反しておるだろうと思うのでありますが、これはやむを得ぬことでありまして、農村に見切りをつけて若い労働力が都会に流れてきましたが、さて、流れていった先の都市におけるこれら若い労働力の生活環境、生活条件は一体どういうことに相なっておるか、問題は都市問題に移ってくるわけであります。  これは大まかにいいまして、まず就職します。就職した場合に、何といいましても先立つものは金ですから、言いかえますと月給がどの程度か、低賃金なのか、あるいは最低賃金法によって保障されておるのか、一つは賃金の問題であります。  もう一つは、やはり人間なま身でありますから、ときに病気することもありますし、けがするときもありますから、したがって、そういう場合の労災保険、失業保険の適用状況がどうなっておるのか。やはり病気になるときがありますので、したがって各種組合保険、政府管掌保険、国民健康保険、これは農業のほうが多いわけですけれども、五人未満の方も国民健康保険に入っておりますから、そうした各種保険。  それからもう一つは、住宅というものが今日たいへん大きな問題になってきております。まあ局、長さんあたりになりますと退職金が何千万円でしょうから、おやめになっても家の二軒や三軒はつくれるかもしれませんが、いわゆる勤労者というのは、三十年から三十五年勤続してせいぜい三百万から五百万と違いますか。そうすると、わずか三百万、五百万で、営々辛苦して三十年、三十五年つとめても家は建ちません。私の友人が東京の調布におりますが、坪が十五万だそうです。そうすると、三百万円の退職金をもらったとして土地が二十坪しか買えない。退職するときには、もはやぼつぼつ孫ができようというのですから、平均五人家族ということになりますと、五人が住む家がはたして三百万円の退職金——まあ五百万円としても、十五万円の土地を二十坪買って三百万要りますから、そこに残るのがあと二百万円残るわけで、この二百万円でへ今度はどんな家が建つか。五人家族を収容するに足る家が建つかどうか。  もう一つは、今度は、やめてからの年金の問題があります。役所の方なら恩給がありますが、民間ですと厚生年金があります。  こうした都市問題としての住宅の問題、それから各種保険、こういう問題が大きくひっかかってくるわけでありますが、これは労働省でも厚生省でも総理府でもどこでもよろしい、順次ひとつ現在の状況について御答弁をいただきたいと思います。
  78. 小鴨光男

    ○小鴨政府委員 労働省関係についてお答え申し上げます。  農村から流出します労働力につきまして、その流出先は特に製造業関係、それから建設業関係、卸、小売りあるいはサービス業、そういうところのパーセントが非常に高うございます。  それから、農村から流出した方々の各流出先の賃金でございますが、これは特別それに限って調査した資料はございません。ただ、いわゆる新規就職者のうち、いわゆる中学卒あるいは高等学校を卒業したという方々が、全国の新卒就職者のうちで占める比率というものにつきましては、これは約三八%ないしは三七%程度の比率になっております。  就職先におきますところの労働条件でございますが、平均賃金といたしまして、特にこれは農村から出た人たち平均賃金というわけではございませんが、昭和四十二年は前年に比べて一二・一%、四十三年は一四・二%ということで、賃金が逐次上昇しております。  それから、最低賃金の問題でございますが、特に中小企業を中心といたしまして、私ども最低賃金制の実施をやっておるわけでございますが、現在その適用労働者数は六百七十万に達しております。実質的に最低賃金制がしかれまして賃金が上がった比率というのは、約二〇%引き上げが行なわれておるという状況でございます。  それから、労災保険の問題でございますけれども、五人未満の事業所につきましてその適用拡大について、現在法案を提出中でありますけれども、五人以上の労災保険の適用状況は、事業所にいたしまして六四・八%、労働者数にいたしまして八八・七%という適用状況になっております。
  79. 木暮保成

    ○木暮説明員 健康保険の場合には、ただいま御指摘のございましたように、幾つかの制度に分かれておるわけでございます。  千人以上従業員がございます大企業につとめました場合には、その職域にございます健康保険組合に入ることになっております。四十二年度末で、健康保険組合の適用者は七百九十九万人でございます。  それから、千人未満五人以上の事業所につとめます場合には、原則としまして政府管掌健康保険に入ることになりますが、その適用者の数が千二百五十二万という状況でございます。  それから、五人未満の事業所につとめます場合には、これもお話のございましたように、国民健康保険の被保険者になるわけでございますが、国民健康保険は本人、家族を含めまして、四十二年度末で四千二百七十一万人が適用人口になっておるような状況でございます。
  80. 山口新一郎

    ○山口説明員 年金関係の適用状況について申し上げます。  一般に被用者は厚生年金でございますが、厚生年金の加入者は、四十三年十月で二千五十一万人でございます。  それから、自営業者、農民、五人未満の事業所の大部分、これは国民年金になりますが、国民年金のほうは、四十三年度末の被保険者数が二千二百三十一万人と相なっております。
  81. 沢田光英

    ○沢田説明員 住宅についてお答えいたします。  住宅につきましては、全国的に住宅の状況を見ますと、私ども、ただいま四十年から四十五年までの五カ年計画の遂行中でございます。これは六百七十万戸を民間、公共で合わせて供給しようということでございまして、そのうち四百万戸は民間で、二百六十万戸は公共の補助、融資その他でやろう、かようなかっこうになっておりまして、、本年度は第四年目になっております。おおむね八〇%の進捗率を見ておりまして、全国的に申しますれば、この計画は達成されるだろうというふうに考えております。  しかし、御指摘のように都市、特に大都市においてはどうかといいますと、総数においてはさような状況でございますけれども、大都市におきましては、まだまだ住宅問題は大きくございます。特に、最近におきましては住宅問題というものが都市問題の中心をなし、逆に申しますれば、都市問題の中で住宅問題が一番大きいというふうなかっこうの状況になっております。  そこで、このような原因は、私ども計画を立てました時点から人口集中が非常に多くなってきておる、あるいは世帯分離が予想以上に多くなっておりまして、一世帯当たりの人員が相当急激に減ってきておるということ、これも都市集中に関連があるわけでございます。それから、皆さん方の収入の向上に伴います住宅の質の向上に対する希望というものが非常に高くなってきておる。かような条件がまざり合いまして、都市におきましては、特に住宅問題がいまだ解決されないという状況でございます。  そこで、政府はこれらの住宅問題に対しまして、政府施策住宅といたしましては、大都市の特に低所得階層あるいは勤労階層、こういうものにつきまして、住宅を持ちあるいは住宅に入るということが非常に困難な状況であるということから、補助制度によります公営住宅、あるいは公団住宅、あるいは金融公庫によります融資住宅、こういうものを重点的に大都市に振り向けまして対策をやっておるわけでございますけれども、先ほど申しましたように、大都市におきましては、問題がいまだかなり残ってございます。  そこで、今後私どもといたしましては、このような状況から、具体的にそれじゃどういうふうな問題が残っておるかといいますと、数におきましてはまあ何とかあるわけでございますが、問題は、環境とか通勤距離とかそういうものを含めました質の問題に移行しております。非常にいい例を申しますと、たとえば、通勤距離が非常に遠くなって、公団の団地が遠くなっておるというふうな問題、かような問題がございます。そういうふうな問題に対処いたしまして、私どもは今後四十六年から第二回目の五カ年計画になるわけでございますが、特に大都市に重点を置きまして、職住近接、こういう原理に基づきまして、都市のほうに住宅を引き戻してくる、それによって住居条件を引き戻そう、かような方針で、たとえば都市の再開発であるとか、公有地の利用であるとか、あるいは得ました土地の立体化建築によりましてこれを有効利用する。さようなことで、できるだけ住宅を都市の内部のほうに引き併せまして、通勤条件をよくする、あるいは通勤条件をよくするとともに、再開発事業等をやってあわせ住環境もよくする、かような方向で、次の五カ年計画につきましては、審議会答申を得まして住宅の環境をよくしたい、さようなことで対処してまいりたいというような方針でやっておる次第でございます。
  82. 伊賀定盛

    ○伊賀委員 いま各省からお話を承りましたけれども、総理府統計局からも御答弁いただけますか。
  83. 岡部秀一

    ○岡部(秀)政府委員 農業就業者のここ数年来の状況を申し上げます。  三十八年千六十六万人、三十九年千十八万人、以下年を追いまして九百八十一万人、九百四十万人、九百三十万人、九百四万人です。増減を見てみますと、三十八年が五・三%の減、次が四・五%の減、三・六%の減、四・二%の減、一・一%の減、二・八%の減でございます。  それから、企業別の非農林の雇用者の状況を見てまいりますと、三十八年が二千五百六十三万人、次が二千六百五十四万人、二千七百八十万人、二千八百八十六万人、三千十万人、三千百三十二万人。増減率を見てまいりますと、三十八年が四・一%増、三・六%増、四・七%増、三・八%増、四・三%増、四・〇%の増という状況でございます。  なお、規模別に申し上げますと、一人から二十九人の雇用者数のところで四十三年度のみを見ますと、千十六万人で前年より四%の増です。三十人から九十九人の規模のところを見ますると、四百六十一万人で二・九%の増、百人から四百九十九人のところで、四百三十六万人で四・六%の増、五百人以上及び官公庁ですと、千二百十三万人で四・二%の増という状況になっております。
  84. 伊賀定盛

    ○伊賀委員 そこで、もう一つお伺いしたいと思いますのは、年金それから給与、保険、おのおの国際比較です。先ほど申し上げましたように、日本の総生産は世界で二番目になったというのですが、はたして今度は国民の生活の中身であります各種保険、年金、賃金が、いわゆる先進国といわれます、アメリカの場合はちょっと日本と比較にならぬと思いますが、少なくともイギリス、ドイツ、フランス、イタリアぐらいの国際比較はしてみる必要があると思うのでありますが、そうした国際比較、それから、特に各種保険の場合には各国によって事情が違いますが、拠出制か無拠出制かという区分がありますが、そうしたかりに日本と同じように拠出制をとっておる場合なら、給付内容とそれからいわゆる受益者負担といいますか、掛け金、この比率が国際的にどういうことになっておるかということ、並びに健康保険にしても、年金にしても、各種保険にしましても、将来計画があればあわせてこれもお伺いしたいと思います。  それから、もう一つ問題になりますのは、いま各種統計から御報告いただいたと思うのでありますが、たとえば政府管掌保険の場合、五人以上はこれは義務加入になっておりますが、五人以下の場合には義務加入ではありません。そこで、この五人未満のいわゆる任意包括の部分の未加入の部分と、それから加入しておる部分はどの程度の比率になっておるかということ。  それからもう一つは、都市における賃金水準が必ずしも家族すべての生活を保障するに足らないと私は見るわけです。そこで、都市における家内労働というものが最近かなりふえつつあるように見受けるわけでありまして、家内労働といいますと、都市における婦人労働という表現になってもいいかと思うのでありますが、そうした都市における内職の実態、もしくは婦人労働の趨勢、あるいはその婦人労働——もっとも、何か家内労働法ですかがこの国会で提案されようとしておるようでありますけれども、その実態も、あわせてひとつこの際御報告をいただきたいと思うのであります。
  85. 小鴨光男

    ○小鴨政府委員 給与関係について申し上げます。  各国との比率でございますが、一九六七年の製造業に限りまして、一時間当たりの賃金の国際比較を申し上げます。名目賃金でございますが、セントに換算いたします。日本が六十五・三セント、イタリアが六十四・二セント、フランスが六十八・三セント、イギリスが百三十五・四セント、西ドイツが百十四・五セントでございます。  家内労働関係でございますが、先ほど先生御指摘のように、ただいま家内労働法案を国会に出しておりますが、いままで行政上把握いたしました家内労働の数でございますけれども、全国約百二万人でございます。その中で、もっぱら世帯主が専業としてやっておりますのが十五万人、内職的なものが約八十一万人、これが一番多うございます。副業的なものとして約六万人、こういう数になっておりまして、その大半は東京、大阪、愛知、兵庫というような大都市に集中しておる、こういう現状でございます。
  86. 伊賀定盛

    ○伊賀委員 趨勢はわかりませんか。
  87. 小鴨光男

    ○小鴨政府委員 この趨勢はなかなか把握しにくいのでございます。また家内労働が、いわゆる発展途上国との関係で非常に就業構造が変化しておるという状況でございます。  ただ、状況といたしましては、最近におきますところの工場の農村地域への進出あるいは人手不足の進展というようなことで、内職的な家内労働者というものが増加する傾向にございます。農村地域におきましても、この面についての数が今後増加するであろうというふうに見込んでおります。
  88. 木暮保成

    ○木暮説明員 ただいまお話しのございましたイギリス、西ドイツ、フランス、イタリアの健康保険の状況でございますが、まずイギリスについて申し上げますと、イギリスの場合は、原則として十割給付でございますが、一部負担がございます。一部負担は、まず薬につきましては、一処方ごとに日本の円に直しまして百九円の一部負担がございます。それから歯科の場合には、一治療ごとに千二百九十六円の患者負担がございます。それからめがねのレンズにつきましては、一個ごとに五百四十円の自己負担がございます。それから入れ歯の場合には、かかりました費用の半額を患者負担にする、こういう制度になっておるわけでございます。イギリスの場合、やはり拠出を若干加味しておるわけでございます。これは政府直営の健康保険事業という形で、費用の八割以上が国費で出ておりますけれども、二割足らずを掛け金で取るというたてまえになっておるわけでございますが、掛け金は、被用者の場合には、男子は、これは一週につきまして百三十九円でございます。女子の場合には週百十円でございます。ただいま申し上げましたのは雇用されておる者でございまして、雇用されていない者につきましては、男子が週百二十二円、女子が九十四円、こういう形になっておるわけでございます。  それから、西ドイツでございますが、西ドイツも十割給付というたてまえをとっておりますが、薬につきましては、一処方につき九十円の自己負担がございます。それから歯科補綴は、ドイツの場合には認められておりません。保険料でございますが、ドイツの場合には国が一銭も出しておりませんで、全部保険料でやっておるわけでございますが、保険の種類によって違いますが、賃金に対しまして八%から一一%の保険料が取られておるわけであります。ただし、これは労使が折半をするということでございますので、被保険者について見ますと四%ないし五・五%の保険料が取られる、こういう形でございます。  フランスは若干変わったたてまえをとっておりまして、一ぺんお医者さんに診療費を払いまして、その受け取りを持っていって保険から七割の償還を受ける。したがいまして、医療費の三割が患者負担になっておるわけでございます。七割でございますが、特に高価で治療効果が認められる薬につきましては九〇%償還が認められておりまして、患者負担が一割ということになっております。保険料につきましては、被用者が賃金の三・五%の保険料を納めております。それに対しまして事業主が、支払い給与の一一・五%の保険料を納めておる状況でございます。国庫負担は、フランスの場合にはございません。  それからイタリアの場合は、やはり現物給与でございますが、歯科医療につきましては五〇%の患者負担がございます。それから掛け金でございますが、被保険者は賃金の〇・一五%でありますが、それに対しまして事業主が支払い給与の九%ないし一二%を払っておるわけでございます。国庫負担につきましては、原則としてございません。  以上がイギリス、西ドイツ、フランス、イタリアの制度でございますが、日本の制度と比較いたします場合に、日本の場合には健康保険が非常に進んでおりまして、大体国際水準になっておろうかと思いますけれども、私ども現在考えておりますのは、家族の給付率が若干ほかの国に比べて低い点がございますので、この点を今後上げていくという努力をしなければならないと思っておるわけでございます。  なお、保険料につきましては、ただいま申し上げましたように各国に比べまして日本の保険料は高くないわけでございますが、先ほど申しましたように、健康保険が大企業あるいは中小企業の別にできておるというような点がございまして、保険の中で保険料負担のアンバランスがございますので、この辺をバランスをとっていかなければならない、かように考えておる次第でございます。  それから政府管掌健康保険の被保険者千二百五十二万人と申し上げましたが、この中に五人未満が二十八万三千人入っておるわけでございます。五人未満の事業所につとめております従業員の数でございますが、事業所センサスによりますと百十六万事業所がございまして、そこに二百四十二万の方が働いておられるということでございますので、その五人未満の事業所で政府管掌健康保険の対象になっておりますのは一〇%強という状況でございます。この点につきましても、医療保険の将来の問題といたしまして、五人未満に政府管掌健康保険を適用していくということを課題として考えておる次第でございます。
  89. 山口新一郎

    ○山口説明員 年金関係の国際比較について申し上げます。  まずイギリスでございますが、費用は日本と同様拠出制でございます。この負担額でございますが、イギリスは週給に対して課しておりまして、週当たり一千百十四円、そのほかに一定額以上の所得がある場合には、その所得につきまして八・五%、その両者を労使折半しております。給付額のほうは、これは一九六八年でございますが、配偶者があります場合に、その平均が二万七千四百四円でございます。当時の製造業の賃金月額に対しまして二七・一%という給付水準でございます。  それから、次に西ドイツでございますが、西ドイツは保険料率が一六・五%でございます。給付水準のほうは、労働者年金と職員年金と分かれておりまして、労働者年金のほうは二万一千八百五十二円、職員年金のほうは三万六年八百一円でございまして、それぞれ当時の製造業賃金月額に対しまして、二八・五%と四七・九%の二つになります。  それからフランスでございますが、フランスの費用負担は俸給の三%、それに対しまして使用者が同時に給料総額の八・五%をまとめて負担いたしております。フランスの給付実績につきましては、私どものほうではちょっと承知いたしておりません。  これに対しましてわが国の場合は、現在厚生年金の改正案を国会に提案中でございますが保険料率は六・五%にすることにいたしまして、これは労使折でございます。給付水準のほうは二万円年金ということでございまして、製造業賃金の約四割確保を目標にしているわけでございます。  以上でございます。
  90. 岡部秀一

    ○岡部(秀)政府委員 四十二年の就業構造基本調益の結果によって申し上げますと、四十三年七月一日現在の全国の十五歳以上の人口は七千六百五十五万一千人でございます。そのうちふだん仕事をしている有業者は四千九百万六千人で、有業率は六四・〇%です。ふだん仕事をしておりません無業者は二千七百五十四万四千人、三六・〇%で、この前の四十年の調査と比べますと、有業者で四百二十二万七千人の増加をいたしております。  この増加した有業者の内訳を就業状態別に見ますと、前回の調査と比べまして仕事がおもな者は二百二十九万人、仕事が従な者は二百七万人増加をいたしております。この結果有業者に占めます仕事がおもな者の割合は、四十年の九〇・八%から四十三年の八七・六%へ低下をいたしまして、逆に仕事が従な者の割合は八・九%から一二・四%へと増加をいたしております。仕事がおもな者の増加数二百二十九万人のうち百九十三万六千人が男子で、女子は三十五万五千人ですが、仕事が従な者について見ますと、増加数二百七万人のうち甘八十七万六千人までが女子でございます。そのうち百七十万人が家事をおもにやっている人でございますが、今回の調査において有業者の増加、特に女子の仕事が従な者で家事がおもな者の増加が目立っておるような状況です。  女子の仕事が従な者の増加を年齢別有業率で見ますと、四十年に比べまして各年齢の階層において増加をしておりますが、特に四十歳から五十四歳の一五・六%から二一・四%への増加を最高にいたしまして、三十五歳から三十九歳、五十五歳から六十四歳及び三十歳から三十四歳というところが非常に増加が目立っておる状況でございます。
  91. 丹羽兵助

    丹羽委員長 午後二時に再開することとし、これにて休憩いたします。    午後一時六分休憩      ————◇—————    午後二時二十八分開議
  92. 丹羽兵助

    丹羽委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  午前の会議に引き続き質疑を続行いたします。伊賀定盛君。
  93. 伊賀定盛

    ○伊賀委員 午前に引き続いて質疑を続行いたしたいと思います。  先ほど各省から保険の実態、就業状況等を御報告いただいたのですが、もう一つは産業及び規模別従事者数です。これは総理府統計局の数字だと思うのですが、四十一年の七月で全産業従事者が三千四百四十一万三千人、国営公社が百四十九万三千人、公営が百六十六万六千人、民営が規模の計で三千百二十五万六千、それから一人の企業で百二十万二千人、二人から四人で三百二十五万七千人、五人から九人で三百十二万五千人、十人から二十九人で五百六十四万一千人、三十人から九十九人で五百六十五万六千人、百人から四百九十九人で四百八十万九千人、五百人から九百九十九人で百二十六万四千人、千人以上で二言十四万九千人、こういう数字があるのですが、俗に大企業、中小企業、零細企業、こういう分け方をするのですが、どうも何人から何人まで、どこからどこまでが中小企業で、どれから上が大企業かということが、各省、各役所によって考え方も違うようですから、一応私は五百人以上を中小企業の上からとそれから大企業、それから四百九十九人以下を中小企業の下と零細企業という二つに分類をして、たとえば、各種保険とかあるいは賃金水準とかいうようなものを考えた場合に、大企業ないしは中小企業の上のほうは、不十分ながら各種保険等がまあまあよかろう、こういう考え方に立って、全従事者に対する中小企業の比率、それから大企業と国営公社もしくは公営を一緒くたにして、こういう全産業に対する比率が逐年どういう比率になっておるか、これをひとつ統計局のほうで御答弁をいただきたいと思います。
  94. 田島正

    ○田島説明員 お答えいたします。  私どもでやりました調査結果に基づきますと、企業規模別の要するに非農林業雇用者の数につきまして、三十四年度以降の数を、先生いま御質問の五百人未満、五百人以上及び官公の種類に分けまして、各年度におきまして五百人未満の規模におきましての事業所雇用者数が総数に占める比率を出してみますと、三十四年度が五六%、三十五年度五七%、以下逐年度で申し上げますと、五八%、五九%、五九%、五九%、五九%、六一%、六一%、四十三年度における比率六一%、こういうふうになっておりまして、わずかながら五百人未満の規模における雇用者の数は増加傾向を示しております。これに対しまして、当然のことながら、五百人以上及び官公における雇用者数の総雇用者に対する分布は、逆にわずかながら減少を示しておる、かような結果になっております。
  95. 伊賀定盛

    ○伊賀委員 そこで、農林大臣にお伺いしますが、午前中から規模別就業状況、それから各種保険の適用の状況、ないしは賃金水準における国際比較、それから家内労働、言いかえますと婦人労働の趨勢等を数字で報告してもらったわけですけれども、これを概括いたしますと、婦人労働が逐年増加傾向を見せておるということが一つ、それから各種保険の適用状況を見ましても、未適用の分野が、たとえば五人未満の場合でいいましても、五人未満の総企業数並びにその従事者のわずかに一〇%が任意加入として加入しておるだけであって、あとの九〇%は加入しておらないという事実、それから加入もしくは各種保険の適用を受けておるけれども、これを国際比較で見ましても、必ずしも日本の水準が高くないという事実等から考えて、先ほど来申し上げましたように、農村から都市に労働力が流動してまいりますけれども、流れた先の都市における就業の状況、もしくは各種保険の適用状況、ないしはその給付水準、あるいは未組織のそういう人たち等の現状を考え、かつ、住宅の事情についても御報告をいただきましたけれども、特に東京、大阪、兵庫といった過密都市における住宅の需給状況というものは、好ましくないという住宅局の発表があったわけであります。  こうした現況に対して、農林大臣は何かお考えはありませんか。それでもう十分だと、こういうお考えですか。
  96. 大和田啓気

    大和田政府委員 御指摘のように、工業その他を中心とする農業外の産業におきましても、社会・保障一あるいは賃金その他の労働条件、あるいは住居の事情等々、必ずしもまだ十分でございませんで、そのことが農村から人が出ていった場合に、あるいは定着しないということでありますし、また、農村からなかなか円滑に人口が流れていかないという問題もあろうかと思います。  私ども、さきに農政審議会に、農政基本的事項についての御諮問を申し上げて、農林省考え方の御説明をいたしたわけでございますが、その中でも、今後農政を進めていくためには、単に狭い意味農政農林省の行なう農政ばかりでなしに、社会保障、賃金、労働条件その他万般の施策が充実されることが必要であるということを申し上げておりますし、またきのうでございますか、米価決定にあわせて内閣に農政推進閣僚協議会というものもできまして、全政府の立場から農政を推進しようということになりましたのも、私は同じ事情であろうというふうに考えております。
  97. 伊賀定盛

    ○伊賀委員 どうも、それだけでは的確な答弁になっておらないと思うのです。  さらに、これらと関連をして農林省にお尋ねしますが、兼業農家がふえていますね。私は兵庫県ですけれども、兵庫県知事は、四十四年度の県政の施政方針として、兵庫県農家の総兼業化、こういうことを農政一つの目標にしておやりになっておるのです。兼業の実態ですね、これがどういうことになっておりますか、御答弁をいただきたいと思います。
  98. 大和田啓気

    大和田政府委員 農家数のおおむね二割が専業農家でございまして、それ以外の八割弱が農業を主とする第一種兼業農家と、農業を従とする第二種兼業農家に分かれておるわけでございます。  兼業農家の実態といたしましては、自営兼業といいますか、農村で商売をしたり、その他自分で営業している人の数がやや減り、正規のつとめを持つ、つとめ人的な人たちの数がだんだんふえておる状況でございますけれども、まだそういう正規の職というものには至らないで、いわば臨時的な、日雇い的な雇用も相当残っておるのが現状でございます。  ただ、あるいは御質問なかったかと存じますが、農家の総兼業化ということにつきましては、私どもとしましては異論がございまして、小さな農家が農業だけで十分の生活水準を享受することはむずかしいわけでございますから、小さな農家が大いに兼業に乗り出して、そこで雇用の条件あるいは賃金等の条件をよくして、十分生活程度上昇が期待できるような状況に至ることはきわめて望ましいことでございますけれども、すべての農家が兼業農家になって生産力が十分伸びないという状態は、私ども、日本の農業の将来にとって決して望ましいことではなくて、かなりの部分の農家がいわば専業的な、生産力の高い農家として残り、そして相当数多くの農家が兼業農家になって、その収入によって生活程度を上げるという、そういう状況がむしろ望ましいのではないかというふうに考えておるわけでございます。
  99. 伊賀定盛

    ○伊賀委員 さらにお尋ねしますが、いま兼業農家がざっと八割で、専業が二割というようなお話ですが、その八割の兼業農家の中で、雇用条件が十分ではないけれども、各種社会保険が適用されておるもの、言いかえますと、先ほど私が申し上げましたように、少なくとも五百人以上の企業ないしは国営公社または公営に従事しておる兼業農家の数並びにそれ以下に従事している数字ですね。それからもう一つは、出かせぎ、期間労務者、これが東北、北海道のみならず、最近は関西から九州、四国、全国にわたってふえておるわけでありますが、この実態を、おわかりでしたら御報告をいただきたいのです。逐年の趨勢というようなものも含めて……。
  100. 大和田啓気

    大和田政府委員 現在農林省の統計は、農家を一種農家と二種農家というふうに分けて整理していることは御承知のとおりであろうと思います。一種農家というのは、いわゆる農家らしくない農家を除いた部分でございまして、おおむね耕作面積五反歩以上の農家でございます。  そこで、四十一年で申し上げますと、一種農家の中で専業農家が三八・八%でございます。そうしてその中で自営農家が約一割でございまして、その自営農家を除きますと、一種農家の中の兼業農家は六一・二%、約六割でございます。その六割の中の一割が自営兼業で、残りの五割程度が雇われ兼業で、恒常的勤務に属しておりますものが二六・六%、季節の出かせぎが四・三%、人夫・日雇いが一九・六%、そういう状況でございます。  それで、実数でその数字を申し上げますと、一種農家が総数で三百七十九万九千戸で、一種農家のうち専業農家が百四十七万三千戸、兼業農家が二百三十二万六千戸、兼業農家の中で恒常的勤務を持っておるものが百万九主日季節出かせぎが十六万五千戸、人夫・日雇いが七十四万四千戸自営が四十万九千戸そういう状況でございます。  二種農家は、申し上げましたように五反歩未満の農家でございますが、総数で百六十七万二千戸のうちで、兼業農家が百五十三万一千戸でございますから、ほとんど全部が兼業農家といってよかろうと思います。ただ、恒常的勤務に属しております、一種農家で申し上げますれば百万戸ほどの農家が、どの程度の規模の工場ないし国営の企業につとめておるかという詳細な統計はございません。
  101. 伊賀定盛

    ○伊賀委員 その逐年の傾向を言うてください。
  102. 大和田啓気

    大和田政府委員 この一種農家と二種農家につきましての三十九年から四十一年までの趨勢で申し上げます。実数で申し上げますと煩雑でございますので、百分比で申し上げますと、一種農家の中の専業農家が三十九年が四二・三%、四十一年が三八・八%でございまして、したがいまして、兼業農家は五七・七%から六一・二%に増加いたしております。恒常的な勤務のものが二五・八%から二六・六%へ若干の増加、季節出かせぎが四・五%から四・三%へ、人夫・日雇いが一五・七%から一九・六%と、そういう状態でございます。また兼業農家のうちの自営部分は二・七%から一〇・八%、そういう状況でございます。  なお、二種農家について申し上げますと、二種農家の中の兼業農家は九〇・三%から九一・六%へ若干の増加をいたしておりまして、うち恒常的勤務が四九・六%から五一・一%、季節出かせぎが三・四から二・九へ、人夫・日雇いが一四・九から一五・六、そういう状況でございます。
  103. 伊賀定盛

    ○伊賀委員 いま逐年の趨勢を御報告願ったのでありますが、季節の出かせぎその他若干の部分は減退傾向を示しておりますけれども、概括的にいいますと、一種、二種農家含めて増加傾向をたどっておるわけであります。私は先ほど兵庫県知事の例を申し上げて、その評価について御答弁を求めたわけじゃないんですが、官房長から自発的に御答弁をいただいた。その御答弁によりますと、兼業農家は好ましい姿ではない、こういう表現をしておられるわけでありますが、その表現といまの趨勢というものは全く一致しておるわけであります。そういう好ましくない情勢がだんだんふえてきつつあるわけであります。  御承知のとおり、農業基本法ができて新農村建設とか、あるいは第一次構造改善事業とかいうようなことで、各種構造政策というものが農林省の手によって進められてきたわけですけれども、せっかくのそうした農林省の御努力というものが、今日農林省の意図する方向よりもむしろ逆の方向に農村の実態というものが進んできておる、こういう事実があると思うのでありますが、この評価はよろしいですか。
  104. 大和田啓気

    大和田政府委員 私が先ほど申し上げましたのは、兼業農家が好ましくないというふうに申し上げたのではございませんで、いま兵庫県で農家の総兼業化という試みがあるというお話でございますから、農家が全部兼業農家になることは好ましくない。農家の中で相当な部分は、いわゆる自立経営として農業に専念して、相当な生活程度を農業からあげられるという人として残る。そうして、何といたしましても経営面積が小さいわけでございますから、自立経営的なものになりがたい人たちが、兼業によって大いに所得をあげることはけっこうでございましょう、そういうふうに申し上げたわけでございます。
  105. 伊賀定盛

    ○伊賀委員 そうですが、わかりました。わかりましたけれども、そうしますと、今度の農地法の改正のねらいというのは、先ほど大臣も指摘されましたし、それから提案説明の中にもありますし、私どももたぶんそうだろうと類推をしておるわけでありますが、冒頭にも申し上げましたが、日本の農家の生活水準の低さ、所得の低さというものの原因は、もちろんそこには価格政策とかその他いろいろありますけれども、やはり大きな理由としては、零細性にあるということは認めなければならないと思うわけで、それを規模拡大に持っていこう。その規模拡大に持っていく場合に、所有権の移転による規模拡大か、あるいは賃貸借による規模拡大かというところに一つの観点といいますか、視点を置いて、所有権移転による規模拡大はむずかしいので、賃貸借による規模拡大に持っていこうというのが、今度の農地法改正のねらいであると思うのであります。  その場合、いま官房長の御答弁によりますと、総兼業の姿は望ましくないけれども、そこそこの生産性が上がってそして兼業するならば差しつかえない、こう言うのでありますが、そこそこの生産性が上がって兼業なら差しつかえないという、そのそこそこというのは、たとえば米作で一体何反なのか。米作でかりにそこそこという場合、五反や六反がそこそこということにはならないと私は思うのですけれども、もし五反か六反で兼業をやってそこそこの生産性が上がるような経営のしかたは、私は手品でない限りそんなことはできないと思うのですけれども、あり得るのかどうか。そこそこの生産性を高めようと農林省でもお考えだと思いますが、少なくとも一町五反から二町以上のものを持たなければ、そこに省力栽培ないしは機械の導入、技術革新というようなことは、少なくともできないということになろうかと思いますが、一体どこら辺にめどを置いてただいまのような御発言があったのか。
  106. 大和田啓気

    大和田政府委員 農地法との関連につきましては、農地局長からあとでお答えがあると思いますが、四十三年度の農業の年次報告でも、四十二年度におきまして農業所得おおむね百三万円という線て、町村在住の勤労者世帯一人当たりにしての所得が見合うという計算をいたしまして、それがいわゆる自立経営の下限というふうに考えておるわけでございますが、その所得以上の経営の中身を年次報告でもあげておるわけでございます。  経営農地といたしましては、稲作あり野菜作ありいろいろあるわけでございますが、平均規模にして二町六反九畝というのが昭和四十二年度における自立経営農家の全体の経営面積の集計でございます。このうちでも、もちろん稲作、野菜作等々におきましては、相当な違いがあることは当然でございます。
  107. 伊賀定盛

    ○伊賀委員 それだけですか。
  108. 大和田啓気

    大和田政府委員 私が先ほど申し上げましたことの繰り返しになりますけれども、これからの農村を考えます場合に、農業で生活できるような農家をつくっていくということが一面、それからそこまで至り得ない人たちの所得源としては、当然兼業所得というものを重視するわけでございますが、農業を一生懸命やろうとする人に土地が円滑に集まるような形で農地法の改正をいたすことはもちろんでありますけれども、いきなり個別経営になかなか土地が集まりがたい。それは土地を購入するなりあるいは借り入れするなりという形でも、なかなか集まりきれない事実もあるわけでございますから、規模の利益といいますか、経営規模の拡大ということの観点から、兼業農家を含めていわば集団的な生産組織をつくっていく。そのために、農業生産法人の内容についても法律によって改正をする。個別経営で大きくなるものはその道を選び、個別経営として大きくなりがたいものについては、集団的な生産組織によって経営規模の拡大をする。いずれにいたしましても、農地法の改正を要するというのが私どもの考えでございます。
  109. 伊賀定盛

    ○伊賀委員 そうしますと、ある程度生産性が保障されるならば兼業も望ましいということなんですが、いまお話しの四十二年の二町六反九畝ですか、これで兼業できるわけですか。
  110. 大和田啓気

    大和田政府委員 どうも私の説明がまずくて、私の考えておりますことの御了解が十分得られないようでございますが、二町六反九畝というのは、農家によって、経営の内容によって当然違うわけでございますから、単に機械的に二町六反九畝の農地があれば自立経営としてやっていけるということではございませんけれども、その程度の経営によって、大体勤労者の生活程度とひとしくなるような農業を営んでおられるというのは事実でございます。  そうしてこの二町六反九畝という自立経営は、兼業をしなくても農業所得だけで生活できるという趣旨の農家でございますから、これだけの規模があって兼業するかどうかということとは、全く別問題でございます。
  111. 伊賀定盛

    ○伊賀委員 そうしますと、日本農業の中ですべてのものを専業化することは時間がかかる。そこで、望ましいのはすべてを専業化すべきだけれども、現状はそこまで持っていきにくいので、暫定措置として、好ましい兼業農家というものを認めざるを得ない。こういう意味だと思うのですが、その好ましい兼業農家の姿というのは、一体どれくらいの戸数で、自立経営が二町六反九畝ならば、兼業農家の好ましい姿というものの耕作面積はどれくらいで、今後の日本農業の中で、その兼業農家の果たすべき役割りといいますか、果たすべき役割りが設定されますと、その設定にふさわしい兼業農家の戸数というものが出てくると思うのです。そして、その兼業農家の果たすべき役割りが出てきますと、御承知のように今日の農村というのは、専業農家は別ですけれども、それ以外の兼業農家というのは、ほとんど労働力が婦人化、老齢化しておるわけでありまして、そういう年齢構成といいますか、兼業農家のそういう一つの好ましい姿というものを、一体農林省はどうお考えになっておられますか。
  112. 大和田啓気

    大和田政府委員 私は、二十年あるいは三十年先に農村が専業農家だけになって、兼業農家はもうなくなるというふうには考えておりません。農村にはやはり相当の人口が残っていて、農村に残る者は、専業的な農家だけだというふうには私ども考えておりませんで、かりに自立経営の育成政策というものが成功したといたしましても、私は、相当な数の兼業農家はやはり農村に残るだろうというふうに思います。また、それでいいのではないか。  ただ、この場合、御指摘のように、兼業農家が農業の面から見まして生産力がきわめて低い。荒らしづくりをやるとか、あるいは老人、主婦の過労を誘うような営農の形態であるといたしますれば、それは望ましいことではございませんので、兼業農家といたしましても、主婦あるいは老人に労働のウエートがそんなにかからない、これはやはり集団的な生産組織の一部に組み入られるということであろうと思いますけれども、無理して荒らしづくりをしなければ土地が保有できないという状態、これは私は、農地法で耕作権を非常に強くしたことの反射として、一たん土地を貸せばなかなかもとへ戻らないという事情から、無理して荒らしづくりをして人に貸さないという事情があることは事実でございますから、それは農地法の改正によって弾力的にする。  したがいまして、将来は兼業農家の経営する面積というのは、私はかなり減るというふうに思います。そうして相当集団的な生産組織の中に兼業農家が組み入れられ、その残りの農地というのは専業的な農家の手に帰して、これは所有権あるいは耕作権という形で専業的な農家の手に帰して、そこで生産力の高い農業が営まれる、そういう状態になることが望ましいのではないかというふうに思うわけでございます。
  113. 伊賀定盛

    ○伊賀委員 それはよくわかりましたけれども、日本の農業の中で、もう一歩突き進めていきますと、それに関連しまして現時点における、昭和四十二年度でも三年度でもよろしいが、現時点における主食、副食、肉類、飼料、畜産等別に、現在の国内における自給度、パーセントでよろしいがその自給度、それから、これは副食にしましても、全部の種類でなくてもよろしい。主要副食でよろしい。それの国内における自給度が出てまいりますと、当然それに伴う輸入量というものが出てくるはずであります。そういうものの現状、並びに将来のわが国における自給率をどういうふうに、何年後にどの程度まで持っていこうとするのか。  したがって、そういう計画の中で、いま言いましたように専業農家の果たすべき役割り、あるいは専業農家を、たとえば米なら米が千三百万トン必要なら、その千三百万トンをいまの農家戸数の何%、ないしは何千町歩、何方町歩までを専業農家の経営にゆだね、そうしてあとの何万町歩を兼業農家とするのか。規模は何戸で、専業農家を大体何戸まで持っていく、そういう専業農家と兼業農家の構成によって将来の日本農業の自給率を何%に持っていこうとするのか、ここら辺をひとつ御発表いただきたいと思います。
  114. 大和田啓気

    大和田政府委員 なかなか多方面にわたる御質問でございますが、農産物の自給率の現状から申し上げます。  品目別に申し上げますと、四十二年で米が一一五%、小麦が二〇%、大・裸麦が五九%、雑穀が三%、カンショーバレイショは一〇〇%、大豆八%、落花生六七%、雑豆七〇%、なたね二七%、茶九六%、ホップ七三%、野菜一〇〇%、牛乳八二%、肉類八五%、鶏卵九八%、油脂七八%という状況でございます。これが四十二年の現況でございます。  農産物の輸入のおもなものについて申し上げますが、四十三年について申し上げますと、四十三年の現況で、これは暦年でございますが、米が二十七万一千トン、小麦が四百七万三千トン、えさ用トウモロコシが四百四万トン、グレーンソルガムえさ用二百三十万トン、ふすま二十三万七千トン、それから牛肉が一万四千トン、羊の肉十万九千トン、馬肉三万三千トン等々でございます。詳細は省略をいたします。  そこで、将来の自給の見通しにつきましては、農業政策的な意図も入るわけでございますが、昨年の十一月に「農産物の需要と生産の長期見通し」を出したわけでございますが、昭和五十二年におきまして、米については一〇〇%の完全自給、野菜、卵も一〇〇%の自給、くだもの、肉類、牛乳・乳製品等につきましては八割ないし九割の自給ということを考えておるわけでございます。しかし小麦、大豆、トウモロコシ等々、日本の農業の性格からいって、なかなか合理的な増産がむずかしいものにつきましては、自給率は若干低下をするというふうに考えておるわけでございます。  さらに、現在の状態において、いわゆる自立経営といいますか、専業的な農家で農業所得によって生活が十分確保されておるという農家の数は、昭和四十二年度の農家経済調査におきましては、調査農家の約一二%でございまして、その人たち生産いたします農産物は、全体の中の三割五分ほどでございます。  自立経営農家の数を将来どうするか、あるいはその人たちがつくるところの農産物のシェアはどう考えるかということは、私ども現に詳細検討いたしておるところでございますが、少なくとも自立経営的な農家のつくる農産物が、五割をこす状況になることが望ましいのではないかというふうに考えておるわけでございます。   〔委員長退席、三ツ林委員長代理着席〕
  115. 伊賀定盛

    ○伊賀委員 そうしますと、現状において、たとえば主食に例をとると、専業農家の果たす役割りというのはわずかに三割ですか。
  116. 大和田啓気

    大和田政府委員 農産物全体で三五%でございます。
  117. 伊賀定盛

    ○伊賀委員 農産物全体で専業農家が果たす役割りは三五%。そうすると、あとの六五%というものが、いわゆる兼業に依存をしておるわけであります。そうすると、そのウエートというものはかなり高いわけであります。しかも官房長は、好ましい兼業農家ならこれを育てていきたい、こういう御趣旨であります。  ところが、これを今度は国際競争力を強めるという立場に立った場合、先ほどの御指摘のように、最低の自立農家の姿が二町六反九畝でありますから、したがって、少なくともそういう立場から見たときに、兼業農家というのは自立農家に比較すると零細でなければならないということになってくる。まさか四町も五町もつくっておって兼業というわけにまいりますまい。それは家族が十人もおるならば、生めよふやせよで十人家族なら話は別ですけれども、そうでない、四・五ないし五人の家族構成なら、せいぜい二町六反九畝が自立農家の最低だというのですから、それ以下でなければならない。そうした零細経営の場合に、はたして国際競争に耐え得られますか。
  118. 大和田啓気

    大和田政府委員 まず、農産物の生産の割合で三五%と申し上げましたのは、自立経営の占める割合でございまして、自立経営約二二%で、専業農家としては二〇%を多少こえる状況でございますから、三五%よりもっと専業的農家のシェアは大きいわけでございます。  それから、自立経営農家の平均が二町六反程度ということを申し上げましたが、稲作その他によって内容は違うわけでございますから、簡単には申し上げられないわけでございますし、また今後五年、十年先の勤労者の生活水準が上がっていくわけでございますから、したがって、それに匹敵する生活水準を農業によって確保できる自立経営の水準というのも、私はだんだんに上がっていくというふうに考えます。したがって、二町六反というのは現時点における自立経営の平均でありまして、五年、十年、二十年とたつと、私はもう少し大きなものでなければならないというふうに思います。  ただ、そういうふうなものでありましても、自立経営自体がそういう規模でございますし、兼業的な農家の規模はさらに小さいわけでございますから、生産性の向上ということはもちろん必要でございますが、一体自立経営的な規模であれば、国際競争力が一〇〇%ついて、海外農業との競争が完全にできるかといいますと、私は必ずしもそうは考えておりません。  その議論は、実は日本の農業の合理化あるいは生産性の向上によってコストを引き下、げて、農産物の価格も国際価格にさや寄せするという議論に通ずるわけでございますが、国際価格にさや寄せすることができれば、それは望ましいことでありますけれども、日本のような小農家族経営におきましては、相当な合理化をいたしましても、また生産性の向上をいたしましても、いきなりアメリカ、カナダ、オーストラリア等々の輸出農産物によって形成される国際価格並みに、日本の農産物の価格がなるという保証はございません。私は、また国際価格にさや寄せするということだけを考えて、農政を進めることはけっこうではないというふうに思うわけでございます。  それは、当然家族経営的な国における農業保護の問題がそこに出てくるわけでございますから、程度問題でございまして、まるっきり経済合理性のないような形で農業保護をするのではなくて、十分合理的な面で農業保護をするということは、私は今後も十分続ける理由がある、また、続けなければならないというふうに思うわけでございます。
  119. 伊賀定盛

    ○伊賀委員 官房長の個人的な見解はよくわかりますが、それではいま日本の農産物の中で、自由化されておる品目と自由化されていない品目、それから今後の見通しですね。いまおっしゃったように、日本の農産物は今後国際水準まで持っていけない、また持っていく必要はなかろう、あるいはできないだろう、こういう御見解ですが、その御見解のとおり、いまアメリカあたりからの日本に対するいわゆる自由化の圧力というもの、これは見のがせないわけでありまして、そういうアメリカあたりの強い圧力をはねのけて、そうして日本の農産物というものを保護貿易でいけるかどうか、その自信があるのかどうか。現時点における自由化されておる農産物、それをひとつ御発表いただきたいと思うのです。
  120. 大和田啓気

    大和田政府委員 重要な農産物の中で、現在自由化いたしておりませんのは、米麦、酪農品、これはナチュラルチーズを除く酪農品、それから牛肉、豚肉、でん粉、なたね等々が主要なものでございます。  それで、今後も輸入の自由化の大波に抗して、残存輸入制限を守ることができるかという御質問でございますけれども、これは農林大臣がしばしば申し上げておりますように、きわめて重要な農産物で自由化することが困難なものは、農林省としてもあくまで守るように努力をいたすつもりでございます。
  121. 伊賀定盛

    ○伊賀委員 将来のことですから、守りたいという意図はわかるし、私どもも、日本の場合には、地理的その他の条件から、国際自由化にはなかなか日本農業を持っていくということは困難だと思いますから、むしろいま以上の保護貿易といいますか、自由化を阻止していく努力をしてもらいたいとは思いますけれども、しかし、政府・自民党の考え方——政府・自民党というよりも、これはやはり日本の財界の圧力ということになってくると思いますが、日本の工業製品を外国に売りつけるためには、どうしてもその見返りとして農産物を買ってくれ、こういう要望が諸外国から出てくると、財界としては、当然工業製品を売りつけるために、現に、たとえば中国に肥料を売りつけるために、中国の口蹄疫を持つ牛肉を輸入するのだとか、あるいはアメリカから豚の飼料である脱脂粉乳を輸入して、そして日本の酪農家をいじめておるとかいうような情勢があるわけであります。  ですから、官房長がここでどんなに声を大にして、今後自由化を阻止するのだと言うてみたところで、やはり日本の財界の大きな圧力には、結局は官房長農林大臣も自民党も含めて、この圧力には屈せざるを得ないという過去の事実がありますから、今後もあまり——官房長のそうしたせっかくの善意に満ちた御発言ですから、これは敬意を表したいと思いますけれども、現実はそうなまぬるいものと違うのじゃありませんか。
  122. 大和田啓気

    大和田政府委員 私ども、農産物を二十四億ドルぐらい現在輸入いたしておるわけでございますし、また、いろいろな場面における農産物の輸入の自由化の圧力というものが大きいことは、おっしゃるとおりでございます。それに対して残存輸入制限の品目を守るということは、容易でないこともおっしゃるとおりでございます。しかし、どれだけの圧力がございましても、やはり現在七十幾つも残存輸入制限の品目がございますから、全部が全部というわけではございませんが、その中でどうしても守るべきものは、やはり私どもとしては絶対に守るように努力いたすことも当然であろうと思います。また、それがまるで望みのないことだというふうにも考えておらないわけでございます。
  123. 伊賀定盛

    ○伊賀委員 そこで、官房長の御答弁のような、自由化の圧力から守り続けたいという意思のいかんにかかわらず、自由化の圧力に屈するだろう、政府・自民党が農政を担当する限りこういう見通しを私は持っております、好ましい姿じゃないけれども。  そこで、ひとつ大臣にお尋ねしますが、先ほど来申し上げますように、善意に満ちた意図いかんにかかわらず、やはり日本も国際自由化のあらしの中にさらされるだろう、国際競争力に耐え得る日本農業に育てなければならないだろう、こう考えた場合に、今度の農地法の改正というのは、いま二町六反九畝というのが自立農家の最低だということでありましたが、大体四町歩ぐらいまで持っていこうということなんでしょう、米作農家にしまして。かりに四町歩に持っていく場合、またここにも一つ議論が出てくるわけです。つまり、先ほど申し上げました所有権の移転による四町規模に持っていくのか、まあ二町六反でもよろしいけれども、それは賃貸借による二町六反まで持っていくのか、ここにも議論がありますが、かりに二町六反ないし四町まで持っていったとしても、そして一方においては自立経営、それからもう一つは共同経営という、二つのものをセットして日本の農業を育てていこう、こういう考え方に立っておるようですね。  しかし、私はそうした国際競争力に耐えしめるためには、わずか二町六反やないしは二反や三反の零細規模のものを一緒にして——この議論はまたあとでしますが、一緒にして、省力栽培とか技術導入とか機械化とかいろいろ言うていますけれども、せんじ詰めるところ、国際競争力に耐えさせるためには、いわゆるアメリカのような大農場経営か、もしくはソ連、中国のコルホーズもしくは合作社のようなああいう完全な共同経営か、しかも面積はむちゃくちゃにだだっ広い、そういう完全な利潤追求以外何ものもない、人間性も何もかも無視したそういう経営か、もしくは完全な共同経営かのものが、最終的には国際競争力に一番勝つのであって、日本のような、まあ二町か二町六反くらいのもので、そして小さいものはごっちゃにして一緒にやれや、そして完全な共同経営できぬから部分的な協業でひとつ生産性を高めろや、こんなことでは、国際競争力に耐える農業ということにはならないのではないかと思うのですが、どうですか、官房長大臣からでもいいです。
  124. 長谷川四郎

    長谷川国務大臣 伊賀さんのお話のようにやればこれは理想的であり、たとえば、先ほど官房長が申し上げたようなトウモロコシをつくろうとも、なたねをつくろうとも、これはそういうような大規模なことであるならば引き合うかもしれません。しかしながら、現在の日本の農業というものが、御存じでありましょうけれども、必ずしも規模が小さいから、零細で非常に貧農だということは言い切れないと思います。その土地の利用とか、あるいは気候を利用するとか、こういう利用度によっては、やはり相当の収益をあげている方方がたくさんあるということを知ってもらわなければならない。  しかし、それは理想であるけれども、現在のようなこの日本の中で、そういう理想的な大農業が行なわれ得るようにしようということは、非常に困難だと思います。これは、持っている土地を一たん全部取り上げて、そうして政府が命令によってこれを動かすというようなやり方をするならともかくも、現在のような日本の政治形態の上に立って、そのようなことを行なうことは非常に困難だと私は思います。でありますから、小規模であることは小規模である、その上に立ってそれの高度の土地の利用をし、そして生産性を高めていくという、このような指導を今後することによって、はじめてその目的を達することができるのだ、こういうふうにわれわれは考えておるのでございます。
  125. 伊賀定盛

    ○伊賀委員 まあこれはちょっと話が大き過ぎますから、このくらいでやめます。  もう一ぺん話をもとへ戻しまして、兼業化が進みあるいは出かせぎが多くなるという事実は、先ほど私が申し上げましたように、せっかくの農業基本法の成立、あるいは新農村建設、第一次構造改善事業の施策にもかかわらず、事志と違った姿になっておるという評価についてはどうでしょうか。
  126. 大和田啓気

    大和田政府委員 兼業農家が多くなっているということは、これは先ほども申し上げましたように、経営面積が小さくて十分の農業所得があがらない、片方でどんどん勤労者の、あるいは農村在住者の生活水準が上がっていくということから生ずる一つの現象でございまして、私は農業経営の小さい国で、しかも工業その他の産業が発達しておる国、しかも日本のように相当工場分散も行なわれ、また地方にも就労の機会が多いというところでは、自然の勢いであろうと思います。これは基本農政の失敗であるかないかということとは、私は別の問題であろうと思います。別の問題と言うと正確ではございませんけれども、私は、むしろ農業に専念して十分農業所得があげられる農家がどのように今後も伸びるか、あるいは農業生産がどうふえるか、需要に即して農業生産がどういうように行なわれるか、そういうことが問題でございまして、兼業農家がふえるということ自体について、基本農政が失敗であるか成功であるかということとは、私は、多少違う問題じゃないかというふうに考えております。  それから、さらに出かせぎの問題でございますが、できるならば遠いところから出かせぎに来て、故郷の家庭から離れるという状態がないことが望ましいわけでございますが、出かせぎの数は、統計によりますと最近少しずつ減っておるわけでございまして、また、遠いところから来る出かせぎの人が少なくなるように、私は、工場の地方分散等を、政府全体の力によって今後行なうべきではないかというふうに思うわけでございます。
  127. 伊賀定盛

    ○伊賀委員 出かせぎは好ましい姿ではないというお考え方、これは私も同感です。ところが、兼業農家は農業基本法あるいは構造政策の推進等とは別の角度だ、こう逃げておられるのですけれども、それなら、兼業農家が多くなるということはいいことですか、悪いことですか。
  128. 大和田啓気

    大和田政府委員 私は、農家が農業だけで十分りっぱな生活ができるような農家であることが、農業の面からは一番望ましいと思います。ただ、先ほど申し上げましたような数字からいいましても、いろいろな経営を合わせて、自立経営の経営面積の平均というのは二町六反何畝でございますから、現在農家戸数は五百四十一万戸あるわけでございますから、そういう自立経営農家だけで農地をかりに専有をして耕作するといたしますれば、その数には限度があるわけでございますから、とても五百四十一万戸の農家を農村が保有できないわけでございます。  したがいまして、小さな農家が兼業をして、その兼業先の賃金、雇用条件も安定して、十分な所得があげられる状態でありますれば、それは悪いというふうにきめつける必要は、毛頭ないというふうに思うわけでございます。
  129. 伊賀定盛

    ○伊賀委員 それでは、これは農地法との関連でお尋ねしますが、今度所有権の移転でなしに、賃貸借による規模拡大に持っていこうということなんですが、賃貸借による規模拡大ということは、すなわち、専業農家が人に貸したりすることはないのですから、どうしても兼業農家が専業農家に貸していく。そういう場合、小さな五畝か六畝のようなたんぼをちょこちょこたくさんのものを経営しておったのでは、生産が上がりませんし、コストも下がりません。どうしても思い切った土地改良事業、圃場整備というものをやっていかなければならぬわけです。  その土地改良をやる場合に、思い切った土地改良をやろうと思いますと、とうしても多額の——国や県が全額やってくれるなら問題はありませんけれども、実際は、規模にもよったりいろいろしますけれども、いま土地改良で、補助率がいいところで六割でしょう。県単独事業なんかの場合ですと三割程度で、国費はもちろんありません。あとの七割というものは自己負担です。その自己負担に兼業農家が耐えられますか。
  130. 中野和仁

    ○中野政府委員 現在の土地改良法によりますと、土地改良の事業に参加をする資格のある者は耕作者ということになっております。したがいまして、いまのお話のように賃借人が資格者になるわけでございます。そうしますと、その耕作権が安定していなければならないということは、私もそういうふうに考えるわけでございますが、いまの土地改良法のたてまえからいきまして、耕作者が参加するわけでございますから、当然自己負担は耕作者がするわけでございます。第一次的には地主はいたしません。その場合に耕作権が安定していませんと、せっかく多額な金を負担しても、そこでいざこざが起きるとかどうとかいう問題が起きるわけでございますから、できるだけ耕作権の安定をはからなければならないというふうに考えておるわけでございます。現に、耕作者がかなり負担をしておりますので、その点は心配はないかと思います。  ただ、万一契約を解約する場合には、耕作者のほうで負担しました金は、有益費の償還で地主側に請求できるということにも民法上なっておりますので、心配はないのではないかというふうに思っております。
  131. 伊賀定盛

    ○伊賀委員 現在はおっしゃるとおりです。しかし、今度農地法が改正されますと、合意すれば引き揚げられるのでしょう。そうすると、耕作権の賃借人、借りているほうです。この地位は不安定になりますね。
  132. 中野和仁

    ○中野政府委員 現行法におきましても、合意をして知事の許可を受ければ解約になるわけでございます。今度の改正で、新しい契約からは、合意の場合は許可が要らないということにしたことと、それから、十年以上の契約を初めに結びました場合には、十年たてば、地主側が解約を申し出た場合には、小作人は返さなければならないという改正はいたしておりますけれども、それ以上賃貸借に関する権利関係を、耕作者に非常に不利のようにもゆるめておりませんので、私が先ほど申し上げましたように、今度の改正によってその辺が非常に不安定になるということは、基本的にはないというふうに思っております。
  133. 伊賀定盛

    ○伊賀委員 白いものでも黒だと思うと言われるなら、これはしかたがないわけでして、十人のうち九人までがこの服を黒いと見るけれども、一人だけが、いやこの服は白いんだと言い張れば、これはしかたがないわけでありまして、今度の農地法の改正によって、現農地法に比較して賃借人の地位が不安定になるということは、これは黒いものを黒と見、白いものを白と見る常識のある人なら、いまのような農地局長の御答弁にはならないと私は思うのです。しかし、局長さんは安定しておると言うなら、これはそれ以上の議論は何ぼ進めてもしかたがありませんから、これ以上は進めません。  そこで、話をもう一ぺんもとに戻しまして、官房長のお話によると、農業基本法並びに第一次構造改善事業その他は失敗じゃない、それとは別の意味だ、こういう御回答がありましたけれども、出かせぎがふえ、そして兼業農家がふえてくるということは、やはりいままでの農政というものが——もちろん、すべてがマイナスだったと言うのではありません。評価すべきものは正しく評価したいと思いますけれども、そういう意味では一面の失敗だということは、官房長にしても農林大臣にしてもよくお認めいただいた上で、今後の農政を御担当いただいたほうがいいと思う。何でもかんでも、いままで農林省のおやりになったことは全部正しかったんだ、失敗は何もなかったんだということでは、やはりものごとは前進しません。過去の農林省のおやりになったことも、いいことはいいとして評価されてけっこうですけれども、悪い面は悪い面として正しくこれを反省して、その反省の上に立ってこそ、初めてものごとは前向きに進むということですから、これはあえて答弁は求めませんけれども、今後のお考えがあれば、承れればけっこうだと思います。
  134. 長谷川四郎

    長谷川国務大臣 御指摘の点、後半には私、賛成をいたします。必ずしも農林省の案そのものが全部が全部よかったとは私も思っておりません。しかしながら、そういったような点があったからこそていろいろな点について、たとえば農基法についても——農基法も全部が全部完全だったとは言い切れないだろうと私も思います。ですから、そういう点をいかに補うか。したがって、これらを総合的に考えて、さらに考えを直していきたい。  こういうような検討等から考えまして、今回も総合農政を行なっていくという、これと同じことでありまして、私はいま御指摘のように、農林省考えたことが全部が全部成功だった、これは少しも間違いがなかったということだけは言い切れない、このように考えております。
  135. 伊賀定盛

    ○伊賀委員 理事会の申し合わせの時間があるそうでありまして、もうすでに超過しておるようですけれども、話を具体的にして伺います。  いまの賃貸借の場合、これは私はひとつよく御検討いただきたいと思うのですがね。これは賃貸借の場合だけでありませんで、自立農家の場合でも一緒ですけれども、補助率の適正化という問題があるのです。いまの農林省の補助率によりますと、国営あるいは県営あるいは組合営というふうなものにより、規模によって補助率の差があります。  そこで、この補助率の場合に、たとえば東京の周辺、あるいは大阪の周辺、神戸の周辺ならば、たんぼを一反つぶしてトマトでもつくりますと、一反から七十万くらいの所得があるんですね。それから北海道とかあるいは私どもの辺ですと、これはもちろん雪が降りますから、単作地帯ですから、米しかとれないわけです。そうすると、ことし二万六百余円ですから、三石とれたとしても六万円だ。その六万円の中から諸経費を引いたら、まあいいところ手取り四割、一反から二万四千円。ところが、土地改良を行なう場合に、一反から七十万円の収益のあるところも、国なり県なりの補助はもう五割なら五割、六万円しかとれないところも、土地改良をやる場合には補助率が五割。これはなるほど不公平じゃない、公平だ、なるほどそれは公平です。両方とも五割ということは公平なんだけれども、七十万円の所得のあがるたんぼの土地改良をするのも五割、たった二万四千円しか所得のあがらないところも五割、この公平さがほんとうの意味の公平さでしょうか。
  136. 中野和仁

    ○中野政府委員 ただいま基盤整備事業で、国営事業の国の負担あるいは補助事業の補助率というものにつきましては、先生お話しのとおり、大体事業規模によりまして分けております。それからもう一つは、事業の種類によって分けております。たとえば、圃場整備事業でありますと四割五分でございます。ただ、それは圃場整備であります限りは四割五分でございますが、農用地造成でございますと相当金もかかりますので、国営なら七割ということにしまして、農家の負担とのかね合いも考えまして、規模と事業種類で分けております。それからもう一つ、自然条件その他のことがございまして、北海道と内地と離島という区分はしております。  その辺を、いま先生のおっしゃいましたように詰めてまいりますと、確かに農家の収益に応じて補助率をきめればよろしいかと思いますけれども、(発言する者あり)そういうお話もあるかと思いますけれども、私の考えでは、公共事業でございますから、非常に広範囲な事業をやるわけでございます。それを、一軒一軒農家の収益を調べてやるという、そういうことはなかなかできがたい、またそういうことを公共事業としてはすべきでないのではないかというふうに私は考えておるわけでございます。
  137. 伊賀定盛

    ○伊賀委員 えらく局長さんはやじのことばに惑わされて、本心を何か曲げて御答弁になったようですが、そんな腰だめではたまは当たりませんよ。戦争に行って鉄砲撃ってみなはれ、腰だめでは目的地に当たらないのです、照準を定めてはっきりせぬと。少女やじが出たからといって、答弁が一々変わるということでは、これは困りますね。まあそれはよろしい。  これは、公共事業としてそういうことをやっては好ましくないなんておっしゃいますけれども、北海道へ行ってごらんなさい。北海道は農家群を三つに分けまして、そうして補助率もみな変えておりますよ。それで、たとえば運輸省、それから農林省の水産庁の担当にもあるかと思いますけれども、港湾は、これも補助率がみな違いますよ。三段階くらいに分けておる。これは公共事業ですよ。だから同じ公共事業でも、農地局長は、これは段階に分けてはいかぬ、こう言うし、県の行なう公共事業は、三段階に分けて補助率に差を設けておるところもあるわけです。ですから、公共事業としてそういう分けることが好ましくないという議論は、これはおかしいです。  また、いま言いますように収益性が違う。七十万円とたった二万四千円しか収益のないところに、全く同じ五割なら五割、五割五分なら五割五分の補助率を適用するということが、ますます格差を激しくするのと違いますか。七十万円の収益のあるところに、とにかく五割の補助金で土地改良を行なう、そしてより便利がよくなりますと、七十万円が百四十万円になるかもしれない。そして二万四千円しか所得のないところに、同じ五割の補助金を出して土地改良事業を行なっても、これが倍になったって五万円。七十万円が倍になったら百四十万円だ。七十万円と二万四千円の差額は六十七万六千円で、百五十万円と五万円の差は百四十五万円ですよ。ますます格差を多くするものと違いますか。  土地改良なんかの場合に、それは完全に公平にはできません。このたんぼは七十万円だ、おまえのところは補助金は一割でいい、おまえのところは二万四千円だから補助金九割やる、おまえのところは五万円だから六割やる、こんなことはできませんが、少なくともまあまあという常識的な、やはりA地区、B地区、C地区とかに分けて——税金だってそうでしょう。税金だって、全く個人個人の所得に応じた税率を使えなんて、そんなことはできませんけれども、まあまあというところがあるわけですから、せめて三段階くらいに分けて、今後こうした土地改良を行なう場合に、御検討いただく必要があるのではなかろうかと思いますが、どうですか。
  138. 中野和仁

    ○中野政府委員 先ほど申し上げましたように、現在の農業関係の基盤整備につきましては、事業の規模、種類によりまして、たとえば開拓パイロット事業にいたしましても、規模の大きい国営事業につきましては七割五分、それから県営事業につきましては六割五分、それから団体営の事業につきましては五割五分というような補助率をきめておるわけでございます。これは、先ほど先生のおっしゃいました、たとえば漁港でも一種、二種、三種という区別と申しましょうか、そういう漁港の性格と申しましょうか、そういうようなものと同じような考え方で、われわれとしても規模の大きさ、それからそれにかかる事業費等を勘案いたしまして、そういう差を設けておるわけでございます。  それを個々の農家ごとに、収益の差によって補助率をきめるということは、公共事業の性格から見て、しかも何千人、あるいは大きな事業によりましては何万人かが参加する事業につきましては、とうてい困難ではないかというふうに考えます。
  139. 伊賀定盛

    ○伊賀委員 いや、個々の場合にできないということは、私も先ほど指摘したわけでして、これは個個の農家に全く公平にということはできませんから、日本全体を、北海道と離島は特殊な条件として別にしても、たとえば、内地の中でも特に近郊農家ですね、大消費地に近いところと純農村と山村、あるいは気候条件が非常にいいところ、非常に悪いところ、その中間地出市と分けて——今度の場合でも、市街化区域、調整区域、農業振興地域と分けるのでしょう。やっぱりこれも三つにわかれておるわけです。それなら補助率の場合だって、そういう考え方をするほうが好ましいのと違いますか。何も個々に公平にせいと言うのじゃないのです。
  140. 中野和仁

    ○中野政府委員 いまおあげになりました近郊、あるいは純農村、あるいは山村ということで、確かに経済的な収益力の違う場合があるかと思いますけれども、それでは近郊地帯はどこどこにするか、それから純農村をどうするか、あるいは山村をどうするかということが、補助率をきめる場合の分け方としてはなかなか困難になってくるのではないかという気がいたします。  そこで、われわれのほうといたしましては、たとえば山村振興につきましては、その地帯の特殊性に応じまして採択基準を緩和いたしますとか、そういう対応はしておりますけれども、地帯によりまして補助率を一割あるいは二割と差を設けることは、なかなか実際問題としてはできないんではないかというふうに思います。
  141. 伊賀定盛

    ○伊賀委員 それはおかしいので、それなら市街化区域と調整区域と、あの農業振興地域のほうはどうされたんですか。
  142. 中野和仁

    ○中野政府委員 たとえば、圃場整備をいたしますにつきましても、先生は七十万円と普通の水田の反収とをお比べになったわけでありますが、普通水田の圃場整備をいたします場合に、水田の生産力の差も、確かに六俵とれるところあるいは十俵とれるところとあるかと思いますけれども、大局的に見ますと、そこに四割五分の補助をし、県がその裏負担といたしまして二割二分五厘出してやるという体系を、たとえば、東北地方は反収が非常に高いから三割にする、それから四国の山の圃場整備は、反収が低いから五割補助にするというようなことではないかというふうに先生のお話を想像できるわけでございますけれども、そういう場合に、その差をどういう理屈で、どういうふうな水準でどういうふうにやっていくかということになりますと、非常にむずかしい問題になるかと思いますので、農家の負担の軽減という観点から、たとえば、四割五分の補助をするということでやっていくほうがいいんではないかというふうに考えるわけでございます。
  143. 伊賀定盛

    ○伊賀委員 これは議論してもしかたがありませんけれども、たとえば兵庫県の場合は、御承知だと思いますが日本海面と太平洋面、瀬戸内海面と二つに分かれているわけです。兵庫県でも公共事業として裏日本、日本海面と表のなには、同じ土地改良事業を、国のように規模別でなしに補助率を変えています。ですから、公共事業としてそういう段階を分けるのがむずかしいだとか、してはならないだとかいう議論はおかしいのです。一番古いのが農林省だそうですから、もう少し農林省としては前向きにしてもらいませんといけない。だからこそ農村がだんだん落ち込んできたわけです。これはしかたがありませんよ。しかし、これは前向きで進めていただきたいと思うのです、現にやっているところがあるのですから。わからぬなら、兵庫県や北海道に一ぺん現地視察されたらどうですか。現にやっておるところがあるのですからね。ここで何ぼ議論しておってもしかたがありません。  それから、これは美濃委員からお話がありましたけれども、所有権を拡大する場合の農地取得資金、これはようやく去年百万円を二百万円にしたところだから、できませんとかなんとか言うて——できませんと言うたかどうか忘れましたけれども、局長はこの間むずかしいような発言をしておられたのを私、聞いたんです。これはあなた、せっかく憲法ともいうべき農地法を改正して、そうして規模拡大に持っていこうと言うておりながら、二百万円で一体何ぼ買えますかね。このごろ一反歩が、何ぼ純農村地帯でも、七十万から高いところは百万円もしていますよ。そうすると、一反七十万円もするところなら三反しか買えないわけですよ。これでは、ちょうどいまの補助金の差ができない、できないと言うておる考え方と一緒ですよ。だから、前を向いていないでうしろを向いておる。うしろ向きでは、今日の国際化に対応する農村もできませんし、農家もできません。少し前向きでお考え願うならば、この二百万の限度額というものは、たとえ去年上げても、いいじゃないですか。やむを得ぬじゃないですか。これは少し前向きで御検討いただきたいと思うのですが、考え方はまだ同じですか。
  144. 中野和仁

    ○中野政府委員 農地取得資金の最高限度額につきまして、たしか美濃先生からるる御質問がございまして、私、御答弁申し上げたわけでございますが、その節にも、去年の十二月、実質的には、資金的にはことしの予算から引き上げたようなかっこうになっておるわけでございまして、その二百万で幾ら買えるかということになりますと、当然いま御計算になりましたように、四十万円であれば五反歩ということになるわけでございまして、たとえば、一町買うには足らぬということは私もよくわかるわけでございます。  しかし、百万円を二百万円まで上げて、ことし実質的に初めて実施をしまして、その結果どういうふうな事態になるかということを、もう少しわれわれとしても見届けた上で、前向きに対処をいたしたいというふうに御答弁申し上げたつもりでございますし、現在でもそのつもりで、早急にといいましても、いまこれから貸し始めるところでございますから、地域によってどういう事態が起きるかいろいろ調査をいたしました上で、前向きに対処したいと思います。
  145. 伊賀定盛

    ○伊賀委員 時間が切迫しておりますので、話を進めます。  そこで、今度は流動化の場合の紛争ですね。特に、いろいろ議論がありましたが、小作料が高額な場合には農業委員会が勧告をする、それから草地利用権を設定した場合に、協議がととのわなかった場合の知事の裁定、それから違反転用のあった場合に、農林大臣または知事が行なう許可の取り消し、条件の変更、工事の停止等必要措置の命令、この三つの事項があるのですけれども、こうした行政委員会の行なう勧告、裁定もしくは命令、こういうものが一体どの程度までの拘束力、執行力を持っておるのか。行政委員会の命令や裁定というようなことでは、結局らちがあかずに、最後は司法裁判所に持ち込まれるということになってきて、そうして実効というものはあがらないという結果になるんではないかという懸念があるわけでありますが、そこら辺の行政委員会における一つの処分と、それから司法裁判所の判決もしくは和解等との差、並びにこうしたことについての見通し、これはどうでしょうか。
  146. 中野和仁

    ○中野政府委員 ただいま御指摘になりました小作料の標準額をつくりまして、それに対する農業委員会の勧告、それから草地利用権の設定、違反転用の場合の行政命令、この三つについていろいろその効果等御質問があったわけでございますが、最初の農業委員会の小作料に対する勧告につきましては、これは当事者の話し合いでは、たとえば、小作料は二万円にしようとかいう話がついておるわけでございます。ところが、その額自体がその村の水準としては非常に高過ぎる、そういう高いのをつくったんでは村全体の小作料の水準に悪影響を及ぼすということで、農業委員会が勧告をするわけでございます。これは勧告でございますから、法的拘束力はございません。ただ、これは最初に申し上げましたように、話がついた額でございますから、それによって当事者同士に紛争が起きるということはないわけでございます。  それから、草地利用権の設定の問題につきまして、市町村なり農協が土地所有者なり権利者と話し合いをしまして、話がつかない場合に、最終的には知事が草地利用権、賃借権でございますが、この内容をきめて裁定をするわけでございます。裁定をいたしますと、その内容どおりに賃借権が設定されたものとみなすということに法律上なっておりますので、それによりまして、農協なり市町村が賃借権を取得して草地利用を始めるということになるわけでございます。ただ、その知事の裁定が非常に不適正な場合がございまして、地主側がどうしても納得しません場合は、これは当然不服審査の問題になり、それでも解決しません場合には裁判の問題になるわけでございます。  それから、第三番目の違反転用の問題につきましては、現行農地法におきましては、何ら行政庁側の違反の場合の行政命令がなかったわけでございます。事実上指導といたしまして、いろいろ違反転用についてはわれわれやっておるわけでございますが、法律上の権限が農林大臣にも知事にもなかったのを、新しくこういう制度を設けることに改正案でいたしたわけでございます。ただ、これに従わない場合どうするかということでございますが、その場合には行政代執行法がございまして、それによりまして、たとえば知事がもとに戻せという命令を出しましたにかかわらずしませんときには、もう一ぺん畑にするために知事が自分で工事をやりまして、その金を請求するというようなことで、行政代執行法によりましてそれは確保されるのではないかというふうに考えております。
  147. 伊賀定盛

    ○伊賀委員 現在の借地借家法なんかにもちやんとありますが、農地法に基づく転用なんかの場合も、いまでも法律かちゃんとある。あるけれども、実際は執行されてないのですね。ですから、この場合にもあまり実効はあがらぬではないかと思うのです。  それから、草地利用権の設定で、「市町村又は農業協同組合が、その住民又は組合員の共同利用のために未墾地を開発して草地として利用することを内容とする利用権(賃借権)を設定できる制度を設ける」こういうことなんですが、この「市町村又は農業協同組合が、その住民又は組合員の」ということは、その住民または組合員が、農協の組合長さん、町長さんに、ひとつわしらがここで草地をこさえたいと思いますので、こういう適地がありますから、何とかしておくんなさらぬかと言うて、組合長さんや町長さんのところに頼みに行きます。これは簡単に、よしきた、待ってましたというわけにいくでしょうか。
  148. 中野和仁

    ○中野政府委員 いま先生が例を引かれましたことは、なかなか実際問題として判断しにくい面もございますわけですが、ここでは、農協の組合員あるいは住民の中で畜産をやりたいという場合でございます。  その場合には、いまお話しのように、地元からそういう熱意が出てまいりましたものに対して、市町村なり農協が取り上げてやるわけでございますから、そうすぐ簡単にいくかどうかという問題になりますと、やはりその土地自身が、それ以外に草地をつくる場所がないとか、あるいは地主がそこを雑木林でほうってあるというような、非常に低度な利用しかしていないといったような場合には、そこへ利用権の設定ができるという場合が多いわけでございます。たまたまりっぱな森林であるといったような場合には、なかなかむずかしいということでございまして、出てきました具体的な事案につきまして、できるだけそういう多くの住民あるいは組合員のためにこの制度が活用されるように、われわれも指導をしていきたいというふうに考えておるわけでございます。
  149. 伊賀定盛

    ○伊賀委員 ここに書いてありますように、「一定の基準に適合する傾斜、土性の土地で、これを農業のために利用することが国土資源の利用に関する総合的な見地から適当であると認められ、かつ、他の土地をもって代えることが困難であると認められるものであるもの」これはだれがきめるのですか。
  150. 中野和仁

    ○中野政府委員 いまお引きになりましたのは、たしか改正案の七十五条の五だと思いますが、これは知事が裁定をするわけでございますから、知事がそういう判断をするわけでございます。
  151. 伊賀定盛

    ○伊賀委員 その知事が判断するまでに、住民もしくは組合員が農協の組合長さんや町長さんのところへ、わしらこれからひとつ草地をこしらえますさかい何とかたのんまっせと言っていくのですけれども、組合長さんや町長さんが簡単に、いま言いますように、ああ待ってましたというわけにいかぬと思うのですよ、現実には。簡単にいくと思われますか。
  152. 中野和仁

    ○中野政府委員 この草地利用権は、組合なり市町村が共同利用に供するために自分で造成しまして、そこの管理、運営をするわけでございます。したがいまして、いまのお話のように、五人なり十人なりの地元の農家が、われわれがそこをやるのだからということではございません。町村なり農協が組合員の意向を受けてそういう決心をしまして、そういうことを地主側と話し合いをし、かつ、そこで話がつかない場合に知事のところに裁定を求めるわけでございますので、いまのように、組合員がただわれわれがそこを使いたいというだけのことになりますと、それは簡単にいかないと思います。  それからまた、いま私が御説明申し上げましたような方向でも、なかなか土地所有者との折衝の困難な場合もあるかと思いますけれども、その点実際問題としましては、地元でその所有者といろいろこまかい話し合いをしまして、納得させていくという前提がありませんと、いきなり強権でやるということは非常にむずかしいかと私も思いますけれども、こういう制度で、ぜひ使わなければいかぬ土地があればやれるということにいたしたものですから、この法律が通りますれば、畜産の振興のための一つの有力な手段になるのではないかというふうに考えております。
  153. 伊賀定盛

    ○伊賀委員 いま局長さんは、住民がやりたいからやるというのでなしに、市町村や農協が、一つの政策というほどの大きなことにはならぬかもしれませんけれども、農協や市町村がこれを組合員もしくは住民にやらせるのだという意思決定してと、こう言うのですけれども、それは逆ですよ。それは日本は大きいですから、三つや四つの町村ではそういう何が出てくるかもしれませんけれども、町長さんや農協の組合長さんにまかしておいたって、こんなものはできませんよ。これはやはり年とった人はやりませんからね。やはり農業高校くらい卒業して、大きな将来の農業に対するビジョンといいますか、希望を持った若い青年諸君が何人か集まって、もしくは青年でなくても、少なくとも荘年くらいな人たちが、子供は大きくなるわ、学費は要るわ、また都会に行ったって、たいして手に職を持ってないから、あまり月給をもらえそうなところへは行けぬわということで、子供かわいさのゆえに、ひとつこの際踏み切ってみようかということなんで、町長や組合長さんにまかしたってこんなものはできませんよ。そこら辺、ひとつ局長さん考え方を改めてもらいたいと思うのです、住民の強い要望によってでなければこれはできないということは。  それから、私が簡単にできないだろうと言いますことは、そういう草地にでもしようかというところは、いわゆる入り会い林野で、部落の共有ですね。もしくは、かなりの土地を持っているけれども、別にちゃんと収入があって、そんな土地なんかにあまり期待をしないというような人等が持っているところが実際問題として多いわけですよ、こういうところは。ところが、そういう草地になりそうなところに生活を期待しないような人たちというのは、住民がここでやろうと思っても、そんなことはあまりぴんとこぬわけです、局長さんみたいなわりあい生活にゆとりのある人が持っているわけですから。これではやはり期待はできません。したがって、あまり強権を持たしてはいかぬなんと言っておりますけれども、むしろよほど強力に、もし指導されるならおやりになりませんと、こんなものはあってもなくても同じことになりますよ。むしろこんな条文ははずしたほうがよろしい。無用の長物になります。(「アクセサリーだ」と呼ぶ者であり)ですから、よほどそころ辺の——アクセサリーだという声もありますが、だから、こんなことでは実際の効果はありません。
  154. 中野和仁

    ○中野政府委員 先ほど私が申し上げたことで、あるいは誤解を招いたかと思いますのでちょっと繰り返しますけれども、住民が酪農の熱意がありまして要請をするということが前提でありますけれども、そういう人たちが賃借権を取得するのではなくて、草地の利用権そのものは町村なり農協が持つという意味で申し上げたわけでございます。   〔三ツ林委員長代理退席、委員長着席〕 先生おっしゃいましたように、当然住民の要望から事は起こってくるわけでございます。  それから、いまお触れになりました入り会い林野の問題が、確かにこういう草地をつくる地帯にはかなりあるということは私もよく承知しております。この場合に、単に地主だけではありませんで、入り会い権者に対しましても協議を求めまして、これは賃借権を設定する。入り会い権の行使が制限されるわけでございますから、入り会い権者とも話し合いをいたしまして、そこを草地に変えるということも制度的にはできるということになっております。  それからなお、いまお話しのように、これは最終的な強制権でございますので、むやみやたらに振り回すのは問題かと思いますけれども、やはり全体の酪農振興のためには、こういう強い権利も背後に持ちまして、地主側といろいろ話し合いをすることが非常に必要になってこようかと思いますし、われわれも、その点十分わきまえた上で指導はいたしたいと思います。
  155. 伊賀定盛

    ○伊賀委員 「市町村又は農業協同組合が」と、こういっておるのですが、これは市町村が議会にかけてやるのですか。議会の議決を要するのですか。それから「農業協同組合が」と、こう書いてありますが、農業協同組合の意思決定するもの、あるいは行なうものは一つの人格者ですから、これはその農業協同組合の組合長個人が決心をするのか、あるいは農業協同組合が理事会にはかるのか、あるいは農業協同組合の総会にかけるのか、ここら辺の具体的な問題についてはどうでしょうか。
  156. 中野和仁

    ○中野政府委員 法律そのものからは、議会にかけあるいは総会にかけることは、必ずしも必要はないかと思いますけれども、やはりこういう事業をやります上におきましては、当然予算が必要であり、管理のこまかい規則等も要りますので、しかも、村での大きな問題でございますから、総会なりあるいは議会にはかることがよろしいかと思います。
  157. 伊賀定盛

    ○伊賀委員 もう少し具体的に、親切に答弁してもらいたかったのです、そこまで言うなら。というのは、市町村が行ない、あるいは協同組合の事業として行なうわけですけれども、それを利用するのは住民または組合員が利用するわけですから、その費用は、あらかじめ使用する住民が、町なり農協に金を預託して行なうのか、あるいは農協や市町村が、たとえば市町村の場合なら、一般財源によってやっておいて、そうして手数料を取って貸すのか、そこら辺はどうなるのですか。
  158. 中野和仁

    ○中野政府委員 草地が完成いたしますと、おそらくその草地の上で放牧をしたり、あるいはその草地の草を刈り取って冬使うということになるわけでございますので、そういう造成をし、そうして管理をするのは市町村なり農協でございますから、使わせる人々に対しまして利用料を徴収するというのが普通の形態だというふうに思います。
  159. 伊賀定盛

    ○伊賀委員 ここで一問一答するよりも、とにかくそういう具体的な問題もありますから、これはよく、いま局長さんの言うたようなお考えでは、この条文というものはあまり実効があがらないと思いますので、よほど腹を据えてやっていただきたいことをお願いいたしたいと思います。  最後に、私の質問の概略は、冒頭に申し上げましたように、農村から都市に労働力が流れていく場合、都市における生活の実態というものが確保されないといかぬのじゃないか、こういう趣旨できたわけですけれども、最後の年金の問題です。農民年金、これはいろいろ議論があります。農民年金にも、離農年金だとか、いや老齢年金だとか、国民年金の付加年金だとか、いろいろ議論があるようですしいたしますが、この農民年金というものは、一体どの程度までいま作業が進んでおり、いつごろから、どういう種類のもので、どういう中身でおやりになろうとしておられるのか、この点ちょっと御説明いただきたいと思います。
  160. 中澤三郎

    ○中澤説明員 お答え申し上げます。  農民年金の問題につきましては、御案内のように、国民年金審議会の中に農民年金問題専門部会が設けられまして、昨年来十数回にわたって検討が行なわれているわけでございます。検討が行なわれる場合の素材になりましたのは、農林省が検討を依頼申し上げました農民年金問題研究会の農林大臣に対する報告をもとにして今日まで検討をいただいたわけでございますが、大筋につきましては、最近検討を了したというふうに専門部会でお考えになりまして、近く国民年金審議会の総会のほうに中間的な報告をなされる予定になっておるわけでございます。  その専門部会におきますところの主要な内容につきましては、国民年金審議会報告されるという形で初めて公表される性質のものでございますので、ここで詳細にわたって申し上げるわけにまいりませんけれども、主としてその大きな方向を申し上げますと、農業の特殊性と、それから農民の老後の保障を充実するという二つの観点から、何らかの制度を考えることが必要であり、有効ではないかというような方向にあるわけでございます。  この報告が受け入れられますと、本年度におきまして農林、厚生両省におきまして、さらに制度をつくる場合に必要な詳細な調査をする予定にしておりますので、そういう親審議会に対する専門部会からの報告をもとにいたしまして、また親審議会の御意見を聞いた上でさらに検討を加えて、これまで大臣もしばしばお答え申し上げておりますように、四十五年度実施を目途に準備を進めていきたい、こういうふうな考え方で取り進めておるわけでございます。
  161. 伊賀定盛

    ○伊賀委員 これは大臣承知かもしれませんが、お茶を濁すようなことならおやめになったほうがよろしい。大臣承知ですかな、国民年金の付加年金などということもいまいわれておりますし、単独でやるかどうかわかりませんけれども、御承知のように、国民年金が発足したときには、二十歳で百円掛け金、三十五歳から百五十円だった。いま増額されましたけれども、二十歳から百円ずっとかけまして、五十五歳まで三十五年ずっとかけるわけです。そのときに何ぼになるかといいますと、十九万円の自分の貯金ができるわけです。それを六十四歳まで積み立てると、ざっと四十万円になるのです。いまは改正になりましたけれども、百円の掛け金当時でいきますと、六十五歳から年四万円だ。六十五歳から年四万、月にして三千円の国民年金を支給してもらって、そして何年間受けられるかといいますと、わしは百まで年金もらうんだといったって、これは特殊の人であって、統計の示すところによると、年々違いますけれども、大体男六十九歳、女七十一歳というのが人間の平均寿命です。七十歳までの六年間に二十四万円ですね。二十四万円の年金をもらって、実は自分の掛けた金が五十五歳で十九万円で、十年間据え置きにすると四十万円。四十万円自分の金があるのに、年金でもらえるのは二十四万円、あとの十六万円はたぶん国でしょう。国がピンはねしたわけですよ。これが今日の国民年金の実態なんです。  だから、もし今度国民年金の付加年金となりますと、いままで十六万円ピンはねされておったものがよけいになるだけなんですよ。だから、そういう年金ならおやめになったほうがよろしい。やるんならそんなピンはねでなしに、自分が一生懸命に二十年も三十年もかかって掛け金を掛けるのですから、農民の掛けたものが四十万円になるならば、せめてそれにもう四十万円でも出して、八十万円を六年間で年金として農家に支給していく、年金としてさし上げるというなら、これは意味があるのですけれども、ピンはねをするような年金ならおやめになったほうがよろしいし、やるからにはそういう趣旨でひとつ今後とも御検討いただく必要があろうかと思います。御答弁をいただきたい。
  162. 長谷川四郎

    長谷川国務大臣 十分承っておきます。
  163. 伊賀定盛

    ○伊賀委員 承っておくということですから、まあ聞き置く程度ですから、やはりいままでどおりピンはねをするような年金をやる意思があると、こういうふうに解釈せざるを得ないわけでありまして、承っておくだけでなしに、少なくとも前向きで御検討をいただきたいと思います。  もう時間がございませんから、この点を強く大臣に要望いたしまして、以上をもって私の質問を終わりたいと思います。
  164. 丹羽兵助

  165. 佐々栄三郎

    ○佐々委員 農地法の一部改正案、私はこの改正案は、戦後の農地改革にも匹敵すべき、日本の農地制度、日本の農業に対して非常に大きな変革をもたらすきわめて重要な法律案である、こういうふうに考えておるわけです。少し大げさな言い方をいたしますと、こういうような重要な改正案の審議に、私が国会議員として、特に農林水産委員として参加できましたことについて、私自身非常に大きな責任を感じておるようなわけであります。したがいまして、私はできるだけこの責任を果たすために、私がこの法案について抱いております疑問点を徹底的にお尋ねをいたしまして、私の疑問点を氷解をさせていただきたい、こういうように考えておるものであります。  ただ、今日までだいぶ審議が行なわれましたので、しかも非常にりっぱな御議論がたくさんありましたので、私はできるだけ重複を避けたいと思います。特にこの法案をめぐります農業一般の情勢につきましては、相当突っ込んだ、しかも広範な御議論がありましたので、私はそういう点はなるべく避けまして、この法案自体の内容、こまかく申しますと、条文に関する疑義、こういうようなところに重点を置きましてお尋ねを申し上げたいと思うのでありますが、まず初めにあたりまして、二つ三つの問題について総括的な質問をいたしまして、農林大臣の御答弁をわずらわしたいと思うのであります。それが終わりまして、あと条文の疑義をただすという形で御質問をしたいと思うのであります。  まず第一に、農林大臣にお尋ねをいたしたいのは、先ほどお話がありましたように、農民のうちの八割が兼業農家でありますが、この八割を占める兼業零細農家にとって、この改正案がどういうような利益をもたらすものであるか、どういうごりやくがあるものであるかという点について、お尋ねを申し上げたいと思うわけです。
  166. 長谷川四郎

    長谷川国務大臣 自分はこの土地からいっときどうしても離れていたい、あるいはまた、自分は土地は持っていたいけれども、いま農業を一時休みたい、こういうような方たがあることは御承知のとおりでございまして、そういうときに、権利を保持しつつそれが他の、あるいは農協なりで効率的な利用が行なえる、したがって、農地がより生産性の高い部面の経営によって、効率的に利用されていくという面が私は考えられると思います。
  167. 佐々栄三郎

    ○佐々委員 よそへ行くときに農地を預けていける、そういう便宜がこの法律案でできてくる、こう言われるのでありますが、そういうような農地を預けてよそへ行けるというようなことで便宜を受ける兼業農家が、八割の兼業農家の中でどのくらいあるというふうにお考えになっておられるか。
  168. 中野和仁

    ○中野政府委員 先ほど来兼業農家の議論が多々あったわけでございますが、いまこの法律案が改正になりましてこういう制度になりましたら、それでは直ちにどれだけそういうことになってくるかということは、なかなか推定しがたいと思いますけれども、技術の進歩、機械化の進み方によりまして、零細な規模の経営をやっている農家が順次土地から手を放しまして、それを大きな農家に貸すなり、あるいは売るなりしていくことが順次ふえていくのではないかと考えております。
  169. 佐々栄三郎

    ○佐々委員 そういうような農家がどのくらいありますか。現在でもいわゆる農業生産法人もありますね。それから農協法による委託もございます。しかし、御承知のように、農協法による委託もほとんど利用されておらない。農家生産法人にしましても、全農家の比率から申しますと、若干ふえてきておることは承知しておりますが、これも微微たるものですね。その上、今度のような改正案をつくって、そういうようなところに預けられるという利益を受ける者が、一体八割の兼業農家の中でどれだけあるか、これをもう少し具体的におっしゃっていただきたいと思うのです。あることはあるでしょう。あることはあるが、程度の問題だと私は思うのです。
  170. 中野和仁

    ○中野政府委員 兼業の中にも、まだ比較的農業にウエートを持っているいわゆる第一種兼業農家、それから、農業以外の他産業に従事している部面にウエートを持っておる第二種兼業農家がございます。現に第二種兼業農家、それも経営としては零細な第二種兼業農家が順次ふえてきておりますので、第二種兼業農家が、大体順次土地から離れていくのではないかというふうに思われます。  そういたしますと、第二種兼業農家が日本の農家の中で約四割程度を占めておるわけでございますから、相当な数が、もちろん一年にすぐということにはまいりませんけれども、順次そういうことになってくるのではないかというふうに考えます。
  171. 佐々栄三郎

    ○佐々委員 私の質問を、むしろ聞き違えておられるんではないかという気がするんです。先ほど農林大臣は、あとで経営規模の拡大に貢献するというようなことも言われたように思うのです。いま土地を預けて農民が離農するとか、経営規模を拡大するとかいうことは、これは二割の農民の利益であって、八割の兼業農家の利益とは私は言えないと思う。もしそれを言うなら、それは強弁というものであって、そういうことは私は言えないと思いますが、どうですか。この法案そのものを率直にいうて、専業農家の利益にはなるけれども、兼業農家の利益にはあまりなりませんというのが、これが正しい答えのように私は思うのですが、どうですか。率直におっしゃったらどうでしょう。
  172. 中野和仁

    ○中野政府委員 昨今の兼業といいますか、あるいは農村からの人口の流出ということを考えてみますと、兼業農家が兼業の面で非常に安定するということは、必ずしもその農家にとって、先生のおっしゃいますように、不幸であるとは思えない面が多いわけでございます。ただ、そういうことになってまいりますと、農業面では、その農家はほんとうに農業に力を入れないということになってくるものですから、そういうことを私、申し上げたわけでございます。  これには、一つには土地の値打ちといいましょうか、そういうものが、先ほどから御議論がありますように、社会保障の不十分という面もからみまして、しかもまた、不動産を持っているということは非常に安全だというような農家の気持ちも強いものですから、一ぺんにはそう売らない。もちろん売る農家もございますが、売らない。だけれども、経営はそう本気でやる気はない。だれか預かってくれたらいいが——もちろん、全国全部でこういうことは申せません。都市周辺が中心でございましようけれども、こういうことがあるわけです。したがいまして、必ずしも兼業農家が、兼業を中心にやっていって順次農地から離れていくこと自体が、不幸であるというふうには考えられない場合が多いのではないかというふうに思います。
  173. 佐々栄三郎

    ○佐々委員 私は、もう少し率直に答えてほしいと思うのですが、この法律案は、初めから兼業農家の利益を考え法律案ではないでしょう。これは非常に経営規模拡大を目的とした法律案であって、二割の専業農家の方向へ兼業農家の土地を集めようとする法律案ですからね。農地を捨てて町に出ようという人には、それはある程度便宜があるかしれませんが、それはいままででも、何もこの改正案が出なくても不自由はないのですよ。この改正案そのものが、目的が兼業農家の利益のためだというようなことは、私はこれは強弁である、こういっていいと思うのです。もっと率直に、経営規模拡大のために、大きな農家のほうに小さい農家の土地が集まるようにする法律案だと言ったらどうですか。だから、兼業農家の利益という問題を主たる目的にしておりませんというふうにお答えになるのがほんとうじゃありませんか。それが率直な答えというべきものだと私は思うのですが、どうですか。
  174. 中野和仁

    ○中野政府委員 兼業の面からのお尋ねかと思って、私その点を申し上げたわけでございますが、兼業農家の側からはそういう利益があると同時に、農村に残って農業をやっていく農家、これは必ずしもいまおっしゃいますように、すぐに二割だけの農家に土地が集まるというふうにわれわれ考えていないわけでございますけれども、農村に残って農業をやっていく農家がまた取得しやすく、あるいは借りやすくなるということを、両方踏まえておるわけでございます。その点は、あるいは先ほど説明が足りなかったかもしれませんけれども、当然そういうことでございます。
  175. 佐々栄三郎

    ○佐々委員 私は、この問題で押し問答することはやめますが、たとえば、この法律改正案の三条の二項の五号、いわゆる農地の最低保有面積の問題ですね。私は零細農、あるいは兼業零細農と申してもいいと思うのですが、それらの人たちにとって、この法律案が決して利益でないということを端的にあらわしておるのがこの条文だと思うのです。  御承知のように、従来は三反歩の農地を持っていなければ、農地の買い足しができないですね。今度は、買って五反歩以上にならなければ、農地の所有権及び使用収益権を取得できないという規定ですね。私はほかにいろいろ、これから質問と間でそういう例をあげますけれども、この一つの事実を見ても、兼業、特に零細農というものに対して、この法律案がいかにその利益という点からいって反対的なものであるかということがわかると思うのですよ。そうじゃありませんか。少なくとも土地の買い足しという一点に関したことだけを見ても、五反というような制限を加えて、いままでの三反という制限からさらに二反ふやして、土地が五反以上にならなければ土地の買い足しを許さぬというようなことになっているのです。これは零細農に対する弾圧的というか、制限的な法律です。これを見ても、この法律案がいかに零細農に対して不利益な法律案かということがわかると私は思うのですが、どうですか。
  176. 中野和仁

    ○中野政府委員 農地法を制定いたしました当時三反ときめましたのにも、いろいろ当時のデータから判断をいたしますと、三反以下の農家の大部分は第二種兼業農家で、農業にウエートはなかったわけでございます。あれから十数年たちまして、現在では五反以下の農家の八割はすでに、先ほど私が申し上げましたように第二種兼業農家で、農業にウエートを置いておりません。  そういう段階でございますので、限られた日本の耕地を効率的に使うということになりますと、農業を今後続けていく以上は、せめて五反以上くらいで農業をやるのがいいのではないかというふうに判断をいたしまして、こういうふうにしたわけでございます。
  177. 佐々栄三郎

    ○佐々委員 そうしますと、五反以下の農家は一体幾らありますか。
  178. 中野和仁

    ○中野政府委員 昭和四十年の統計によりますと、五反米満の農家は、合計二百八万戸でございます。
  179. 佐々栄三郎

    ○佐々委員 五百五十万戸余りの中で二百八万戸の農家は、これから土地を買うことが非常に困難になるのですね。その二百八万戸の五反以下の農家の中にも、たとえば、農業学校を出てこれから農業というものを真剣にやろうという青年も私はおると思うのですね。そういう人もおる反面、また、もう少し土地を買い足しをして農業による生活というものを少しでも向上させようという人もおりますね。こういう人たちがその希望の芽を、この法律が施行されたら刈り取られることになるわけですね。そういうことがはたしていいことかどうか。私は決してそれはいいことじゃないと思うのです。同時に、こういうような制限を加えるということは、これは非常な不公平な農業政策といわざるを得ないと思うのです。  私は、この一点から言うても、この改正案が非常に兼業零細農家のために利益にならない法律だというふうに言いたいのですが、どうですか。
  180. 中野和仁

    ○中野政府委員 五反以下の農家であれば、土地が取得できないということではなくて、取得後五反になればよろしいわけでございますから、先ほど申し上げましたように、農村で農業をやっていこうという農家は、たとえば、三反の農家はあと二反取得することができるわけでございますから、いま先生おっしゃいましたように、五反以下の農家を非常にいじめているというふうには考えていないわけでございます。
  181. 佐々栄三郎

    ○佐々委員 それはあなた、少し現状認識が足らぬと私は思うのですよ。いまの農村で土地が売りに出るというのは、それは何反もまとまった土地が売りに出るのじゃないですね。一反とか五畝とかいう土地です。それも離れたところじゃいけないのですね。自分のたんぼの近くのたんぼでなくちゃいけないのですね。そうすると、いま三反つくっている人が土地を買いたいという場合に、一反買い足したら四反ですから、土地は買えないでしょう。一反九畝でも買えぬのですね。三反の人は、二反以上でなければ買えぬですね。自分の周辺の通作距離の範囲内で、幾らでもチャンスがあるかというと、それはないのです。大きな農地の売りというものは、そらまとまってというものは私はあり得ないと思う。  それから、もう一つ私はあなたにお聞きしたいのですが、あなたはいま、買ったあと五反以上になればいいのだから、こうおっしゃった。私はここにも問題があると思うのですよ。たとえば、現在すでに農業をやっている人が、一反の土地を買い足して四反の百姓になれないのですね。ところが、この法律案によると、いままで町へ出て通勤しておった人が、退職金をもろうてお金をつくって村へ帰って、一つも百姓をしたことのないような人が、五反以上であればこれは土地を買えるのでしょう。そうじゃないですか。その点まず……。
  182. 中野和仁

    ○中野政府委員 いまの点は、現行法では、確かに法律上は現在三反以下でも持っていなければいかぬわけでございますけれども、政令で、ゼロからでも、三反以上取得するならいいということに、昭和二十七年に農地法をつくりましたときの政令からそ、ういうことになっておるわけでございます。したがいまして、ゼロから出発しまして、現行法では三反以上買えばよろしい、改正になれば五反以上ということになるわけでございます。その点は、ものの考え方は同じでございます。  ただ、先生おっしゃいましたように、町の人が、わしが買いたいんだというだけでは、もちろん農地法ではそういうことは許可いたしません。その人が農業経営をやっていくのだということが明確でありませんと、許可はしないということにしているわけでございます。それをルーズにいたしますと、非耕作者が土地を取得するということになりまして、農地法を根底からくずすということになるわけでございますから……。
  183. 佐々栄三郎

    ○佐々委員 私は局長の答弁納得できないのですが、もっと簡明に答えていただきたいのです。取得した後五反以上になればいいということですね。そうすると、三反の農家あるいは四反の農家が、五畝の土地を買い足すということは不可能なんです。五反にならぬからだめでしょう。けれども、五反以上になればいい。それは法律を見ても制限ありませんよ。いままで百姓をしておらぬ者が、五反以上の農家になれないという規定はどこにあるのですか。なれるでしょう。そういうようなことが可能なんです。これは矛盾しておるのじゃないですか。いままで百姓をしておった人が、土地を買い足して規模拡大ができない、百姓をしておらぬ人でも五反以上なら買える、百姓になれるということは、矛盾しておりはしませんか。
  184. 中野和仁

    ○中野政府委員 先ほども申し上げましたのをもう少し申し上げますと、農地法の三条の二項の二号では、先ほども私が申し上げましたように、耕作をやらない以上は許可をいたしませんし、それから四号では、その取得後におきまして、「耕作又は養畜の事業に必要な農作業に常時従事すると認められない場合」には取得できないし、それから、なお八号におきましても、距離等から見まして、効率的に土地が利用できない場合には取得は認めませんという条文を同時に働かせるわけでございますから、単なる町の人には許可できないわけであります。
  185. 佐々栄三郎

    ○佐々委員 そういうことは私は百も承知の上で言うのです。これは農地法から見ても、町から帰ってきた人が、土地は買ったが自分はつくらぬということがわかっておって、それを許可するはずがないでしょう。それは常時従事するとか、通作距離に入っておるとか、いろいろの条件に入っておれば、百姓しておらぬ者も、村へ帰って百姓できるのです。土地を買えるのでしょう。この点を聞いておるのです。
  186. 中野和仁

    ○中野政府委員 ただいま申し上げましたような条件に合致しておれば、町から帰ってきて、新しく農業をやることはできるわけでございます。
  187. 佐々栄三郎

    ○佐々委員 そんなら、四反もつくっておる農家が、五畝の土地を買い足しできない、いままで百姓しておらぬ人間でも、五反以上買えばすぐ百姓になれるという、こういうような規定が、矛盾として感じられるか感じられないかということです。あなた、どう思うのですか。
  188. 中野和仁

    ○中野政府委員 その点は、現行法におきましても同様でございます。それを三反から五反に上げましたのは、先ほど申し上げたような事情でございますので、そういうことにいたしたわけでございます。  たとえば、いま四反の農家が一反買えば五反になるわけでございますが、いま先生のお説のように、四反に五畝というのと、ゼロからというのと、計算上そういうことになるということは矛盾のように思われますけれども、農業の実態からいたしますと、せめて五反以上買って農業をやってもらいたいという面では、同じではないかというふうに考えてます。
  189. 佐々栄三郎

    ○佐々委員 まあ、ここだけでいつまでもとどまっておるわけにはいかぬですが、私がこの問題を持ち出したのは、この改正案というものが、零細農あるいは兼業農家というものの方向を向いた法案ではなくて、専業農家とか、富農とまでは言いませんが、とにかく富農になる可能性の方向へ向いた法案だ。したがって、兼業零細農家にとっては、この法律案というものは好ましくない法律案だということを私は言いたかった。その一つの例として、農地取得の場合においてすら、これだけの制限を加えられることになるということを私は言いたかったわけなんです。そのことだけはおわかりになりますか。
  190. 中野和仁

    ○中野政府委員 先生のお話がわかるかと言われますと、わかるわけでございますけれども、先ほどから申し上げておりますように、大部分の五反以下の農家は兼業中心であります。農業をやりたいという農家ももちろん中にはあるかと思いますけれども、大部分、大勢は、むしろ農業外の産業に従事することにウエートを置いておるわけでございますから、どうしてもやはり農業は荒らしづくりの方向に向かっていくのではないか。これは大勢でございますので、今回そういうふうに考えたわけでございます。
  191. 佐々栄三郎

    ○佐々委員 いろいろ荒らしづくりとか、そういうようなことは私も知らぬわけではないのです。私がお尋ねしておるのは、はっきり初めから聞いておるとおり、この法律案というものは、零細兼業農家の利益ということは全く考えておられない。なるほど、土地は預けたり何かするという点についてはちょっと都合よくなりますけれども、そういう農家というものはごく一部分ですね。全体として小農零細経営者にとっては、これはもうないほうがいい法律ですよ。私はそう思うのです。  それから、最近農家所得がかなり上がってきまして、他産業従事者の所得並みになっておるようでありますが、これはどういうような事情からこういうふうになってきたか。詳しく言いますと、この農家所得が上がってまいったのは、その中で兼業所得というのが大きな比重を占めておると思うのですが、大体その兼業所得が、どのくらいの比率を占めて農家所得の向上に寄与しておるか。
  192. 中野和仁

    ○中野政府委員 最近の農家経済調査によりますと、平均農家で申し上げますと八十五万円、その中で農業所得が四十万、農外所得が四十五万ということで、平均的には農外所得にウエートがかかっておわるけでございます。階層別には非常なる差がございます。
  193. 佐々栄三郎

    ○佐々委員 それでお伺いしたいのは、とにかくいま局長が御答弁になりましたように、最近の農家所得の増加というものは、農業そのものの所得の増加でなしに、兼農することによって農家の所得が上がってきておるのですね。そうすると、農家の経済的な安定というものに対して、兼農というものは必ずしも忌避すべきものでないということが私は言えると思うのですが、いかがでしょう。端的にいえば、いまの農家が全部兼業をやめてしまったらどうなるかということです。零細農家、いまの兼業農家が全部農業をやめたら、一体どうなるかということです。
  194. 中野和仁

    ○中野政府委員 兼業農家の労働力が、農外で非常なウエートを占めておりますので、それを全部やめてしまうと、非常にいろいろな事態が起こるかと思いますけれども、それをこういう席でどうなるかということも、なかなか想定しにくいと思います。
  195. 佐々栄三郎

    ○佐々委員 とにかく、あまり経営規模拡大という方向だけに目を向けて、兼業農家を——現実の日本の農業というものは、八割の兼業農家があって、しかも、これあるがゆえにこそいまの農家所得が、他産業の水準にまで追っついていったんだということを考えると、兼業農家というものを無視した農業政策というものは、私は考えられないと思う。やはり現実の上に立った手がたい農業政策が必要じゃないかと私は思うのです。  そこでお尋ねしたいのは、かりに兼業農家が、あなた方が希望せられるように土地を貸して、あるいは農業生産法人に土地を提供して兼業をやめるということになりました場合、その小作料収入プラス兼業収入というもので、従来の兼業農家として得た所得を得ることができるようにお思いになりますか、どうですか。
  196. 中野和仁

    ○中野政府委員 地帯により、また農業の種類によりいろいろな違いがあるかと思いますけれども、小作料の統制が、今度の改正案のようになりましたあとでの想定をいたしましても、現在の兼業収入とそれからそれ以外に入ってきます小作料を足しました分で、いまの所得が維持できるかどうかという場合に、おそらく維持できないほうが多いのではないかと思います。と申しますのは、そういう場合にはおそらく農地はなかなか放せないと同時に、兼業のほうにもつとウエートをかけて、そこで安定したときにそういうことになってくるというふうに考えるわけでございます。
  197. 佐々栄三郎

    ○佐々委員 あなたがお答えになったように、現在兼業農家の所得というものは、自分で兼業して農地も耕しておることによって保障されておるので、これを貸して得た小作料とプラス兼業所得が、従来と同じようなものになるということはとうてい想定できない。また、そういう小作料でありますれば、それを借りた人の農業経営も成り立たぬと思うのですね。  そういうことを考えますというと、現在の兼業農家からその土地を手放させるような、そういう誘導的な、作為的な政策というものは、これは農業政策として、特に日本のように兼業農家が八割もおるというこの現状を直視した場合に、はたして妥当な政策であるかどうかということです。いかがです。
  198. 中野和仁

    ○中野政府委員 先ほども御答弁申し上げましたように、兼業農家の中にも、兼業に非常にウエートがかかっていて、農業収入が一割しかないような農家から、農業にウエートが非常にかかっていて、兼業収入が少ない農家、いろいろあるわけでございます。先ほどの御設例のような、おそらくはとんどが兼業中心で、農業のウエートがほとんどないといった場合には、地代収入だけでも満足する、あるいは場所によりましては、その土地を管理しておいてもらうだけの小作料でよろしいというような農家も、都市周辺にはあるようでございますから、さまざまではないかというふうに思います。
  199. 佐々栄三郎

    ○佐々委員 私は、少なくとも現在、先ほど来申し上げたように、ここまで農家の所得が他産業従事者に追いついてきたということの原動力というのは、やはり兼業所得というものにあるのですから、この事実を直視した農業政策が必要であって、経営規模拡大という点だけに視点を合わせて、ここから農地を集めていこうということをすると、その農家の生活というものは決して安定しないと思うのです。だから、あなたのいま言われたこともわかりますよ。希望しない人までから土地を取り上げるということはしないんだ、希望する人から、第二種兼業農家から土地を預かるというようなことを考えておるのだ、こう言われるけれども、私はこれを政策として、たとえば、あとで詳しくお尋ねをいたしますけれども、農地保有合理化法人というようなものをつくったり、あるいはまた賃貸借の規制の緩和を行なったり、小作料の統制を撤廃したりというような形で、兼業農家が土地を手放すような、そういう誘導的な政策を行なうということは、私は政策として行き過ぎになるのではないか、現在の安定した生活を、そういうような政府の政策によって破壊をされる糸口になるのではないか、契機になるのではないかということをやはり心配するわけです。しかし、これはこれだけにしておきまして、私、さらに次の問題をお尋ねしたいと思います。  それは、今度の農地法改正案によりまして、とにかく土地を兼業農家が貸しやすいようにするために、小作料の統制撤廃とか、あるいは賃貸借の規制の緩和ということを改正案の重要な内容にしておるわけですね、私は疑い深いのかしらぬけれども、そういうようなことを政策的にやって、いまの兼業農家から土地を出さしておいて、一応そういう時期が経過したあとにおいて、その出さした土地を賃借人、いわゆる専業農家あるいは法人に固定化させる、あるいは政府が買収して、借りた人にその土地を売り渡すというところまででなくても、少なくとも固定化をするというような、現在の改革の次にまた第二次の、土地を大きなところに集めて固定化するというようなことを、将来ある時期に行なうというようなことを考えておられるのじゃないかという気が私にはするのです。  なぜ私がそういう気がするかと申しますと、現在の賃借権による経営というものが非常に不安定です。それから小作料が高率になれば、これも賃借による農業経営というものを困難にしますね。だから、借地農なら借地農を安定させる、やはり将来それを自作農に持っていくというようなことを、恒久的な日本の農業の姿として考えておるのではないか、しかし当面は、とにかく土地を集めるんだというようなお考えでこの改正をやられるのじゃないかというようなことを心配しておるのですが、そういうことはいかがでしょうか。
  200. 中野和仁

    ○中野政府委員 もちろん、今回の改正案によりまして、先生御指摘のように、土地を使わない農家から使うほうに持っていきたいという政策ではあるわけでございますが、それを無理にやろうというつもりはございません。と同時に、いまおっしゃいましたようなことは、われわれとしては全然考えておりません。  と申しますのは、農地を借りて農家が農業をやっていくようなこともこれから多くなってきますし、昔のような地主と小作人の関係でもございませんし、相対の話し合いで十分いけるのではないかと思いますので、大体そういう小さな農家の土地が大きな農家に集まったころ、またそれを固定化するというような政策をとるということは考えておりません。
  201. 佐々栄三郎

    ○佐々委員 五時になったのですが、よろしいですか。
  202. 丹羽兵助

    丹羽委員長 どうぞ質問を続けてください。
  203. 佐々栄三郎

    ○佐々委員 何時までですか。
  204. 丹羽兵助

    丹羽委員長 それは理事方々と御相談をいたしますから……。
  205. 佐々栄三郎

    ○佐々委員 私がこういう疑問を出しましたのは、これから私はこの法律案の第一条の目的というところに質問が入るわけですが、第一条の目的を見ますと、こういう規定がありますね。「この法律は、農地はその耕作者みずからが所有することを最も適当であると認めて、耕作者の農地の取得を促進し、その権利を保護し、もって耕作者の地位の安定と農業生産力の増進とを図ることを目的とする。」これは以前からある条文でございます。これはいわゆる自作農主義なんですね。今度の第一条の改正案の中にも、この自作農主義の条文は生きておるのですが、あなたが言うように、いま貸し出しをした農地、その農地の耕作権の固定化を将来する意思はないと言うなら、この条文に反すると私は思うのです。この条文というのは耕作権保護の規定でしょう。自作農主義の規定でしょう。そうでなければこの条文はのけてしまったらどうですか。この条文を置いておくから、私がいま言ったような質問が出てくるのです。  いま出した土地を、将来借り主のほうへ固定させるというような意図を持っておるんじゃないかという疑いが起こるのは、この改正案の中に、依然として第一条の自作農主義をうたい込んでおるからなんですね。だから、この改正案の賃借権や小作料の中で、個々の規定で、土地を兼業農家から手放しやすいような規定にして、手放させてしまったあとで固定するというようなことを考えておるから、この自作農主義の条文はやはり残しておると私は思うのです。そうでないなら、これは削ってしまったらどうですか。これはほんとうに賃借権の安定、耕作権保護主義、この精神そのものじゃありませんか。どうですか。
  206. 中野和仁

    ○中野政府委員 今回の改正案におきましても、不在地主は原則として認めないということは貫いておるわけでございます。ただ、例外といいましょうか、離農する農家について、在村地主と同じように一ヘクタールまでは認める。それから、農協なり生産法人に貸す場合には面積の制限はしない。これは、預かったほうが自主管理できるというような意味でございます。  そういうふうなわけでございまして、そういうことが一段落したあとまた法律を改正して−先生おっしゃいますのは、買収してその農家に渡すということでございましょうから、そういうことは法律を改正しなければ、現在の改正案でもできませんし、いまのところそういうことは全然考えておりません。
  207. 佐々栄三郎

    ○佐々委員 それならば、いま私が言った第一条の規定はなぜ残しておくのですか。削除したらどうでしょう。
  208. 中野和仁

    ○中野政府委員 いまの農地法基本原則であります、不耕作者の土地取得は認めない、あるいはできるだけ耕作者が土地を取得するようにというようなこと、あるいは農地転用等の関係もございますけれども、農地の確保はできるだけはかっていく、それから耕作権の安定もはからなければならないという農地法の目的、大原則は変えないで、その範囲内で、先ほどからるる御議論がありますような、農業の内外の事情に対応してやっていこうという考え方で改正をしておるわけでございますので、いまおっしゃいましたように、本来のもとのほうを削るというような改正では決してございません。
  209. 佐々栄三郎

    ○佐々委員 それなら、私はいまの第一条に関連をしてもう一つ聞きたいことがあるのです。それは二十条の二項四号ですね。二十条の二項の四号の規定というのは、知事が農地、採草放牧地の解除、更新の取り扱いができる場合で、農業生産法人について賃貸人が貸し出しの取り返しを許されるためには、農業生産法人が法人でなくなったときと、それから賃貸人が構成員でなくなったとき、こういう二つの条件があるのですね。農業生産法人に貸した土地を返してもらう場合には、賃貸人が構成員でなくなったとき取り返しができるけれども、その取り返しができる条件として賃貸人に課される条件は、現行法によりますと、主としてその労働力により効率的に事業を行なうと認められる場合は、農業生産法人から土地を返してもらうことができるわけですね。  ところが、今度の改正案によりますとそれがさらにきびしくなって、土地の取り返しがむずかしくなっておるのですね。二つの条件がある。一つは、農地等のすべてについて効率的に事業を行なうことが認められる場合、それとあわせて、その事業に必要な農作業に常時従事すると認められる場合、こんな従来よりきびしい条件が今度加えられておるのです。農業生産法人を脱退した構成員が土地を返してもらえるときの条件として、現行法よりむずかしくなっているのですね。これはどういうことでしょうね。われわれの常識からいうと、いままでより法人の賃借権を保護しているということになると思うのですね。先ほどの私の言い方をすると、借りた土地を固定して、貸し主が返してもらいにくくするということなんですね。現行よりもこれはきびしくなっておるでしょう。この条文を見ても、私が先ほど言ったように、今度は土地を一ぺん人に貸したら、返ってこないようにするのではないかという疑問が非常にわいてくる。特に、現在の改正案の中にさえそういうような条文が出ておるのですね。これをあなたはどういうふうに説明されますか。
  210. 中野和仁

    ○中野政府委員 今回の改正案の第三条におきまして、ちょっと先ほど触れたかと思いますが、農地の取得、農地の所有権なり賃貸借権の取得の条件の場合に、やはり農地は効率的に使うというのを取得の条件にしたわけでございますから、今度は逆に、借りたものを返す場合もそれと同じような考え方をということで、二十条もそういうふうに改正したわけでございまして、特に先生がおっしゃいましたように、賃借権を強化してそれを固定化する、そういうような考え方からの発想ではございません。
  211. 佐々栄三郎

    ○佐々委員 あなたの言うことば私にわからぬのですがね。今度の改正案では、賃借権の規制を緩和して、貸した土地が返ってきやすくするのでしょう。ところが、この規定に関する限りは、農業生産法人に対して構成員が貸した土地に対しては、現行よりも返してもらえなくしておるじゃありませんか。これが私はおかしいというのですよ。矛盾しておると思いませんか。あなたはこれはわかるのですか。この条文おわかりですか。農業生産法人に出した土地はいままでより返してもらいにくくなるのですね。他の賃貸借については緩和しておるのに、これはこういうようなやり方をするのはどういうわけですか。
  212. 中野和仁

    ○中野政府委員 繰り返すようで恐縮でございますが、今度の農地法の改正案の三条での取得の場合でも、こういう規定を置いているわけでございます。この場合は法人が借りまして、その法人が今度はなくなるという場合でございますから、それを戻すわけでございます。つまり、法人がなくなって解約をした場合に、もとの貸した人が農業をやれるかどうかといった場合の判断でございますから、特にここで強くしたというふうなわけではないと思います。
  213. 佐々栄三郎

    ○佐々委員 農地局長、もう少し私の言うことをよく聞いてください。私はこういうことを言っておるのですよ。現行法では、返してもらうときには、主としてその労働力により効率的に事業を行なうと認められる場合には返してもらえる。改正案によると、農地等のすべてについて効率的に事業を行なうというふうに、すべてについてとなっている。現行法は主としてですね。改正案は農地のすべてを効率的に耕作しなければならぬという条件、現行法では常時従事という条件がくっついておらぬのに、改正案ではその上に常時従事という条件がくっついておる。ますます現行法よりは土地が返してもらいにくくなっておるじゃないか。要するに賃貸借の対象の土地が、借りたほうへ固定するような規定に変わってきておるじゃないかということを言っておる。わかりますか。——それじゃそれで答えてください。
  214. 中野和仁

    ○中野政府委員 ちょっと説明が不十分で申しわけなかった面もあるわけですが、現行法は、返ってくる場合に、主としてその労働力により効率的に利用するというこれの解釈は、半分以上自家労働力でという意味でございます。ところが、今回の改正では、農地のすべてを効率的に利用して耕作または養畜の事業を行なうという、これは経営をやればよろしい。全部そこで農作業をやる必要はない。かつ、その農作業に常時従事すると認められる場合、自分の労働力がある範囲で農作業に従事する場合というふうに直したわけでございまして、特に今回きつくしたというわけではないわけでございます。
  215. 佐々栄三郎

    ○佐々委員 主としてその労働力によりというのと、その農地のすべてについてというのじゃ、これは違うでしょう。やるんなら主としてやっただけでいいのでしょう。こっちは農地の全部について、しかも常時従事というのだから、現行よりきびしいということはだれでもわかるはずですがね。
  216. 中野和仁

    ○中野政府委員 ただいまも申し上げましたように、返ってきたすべてについてというほうは、必ずしも自分で手を下して労働までしなくともいいわけでございます。たとえば、法人に貸しておったのが一町歩ございまして、それが一町歩返ってきた、だけれども自分の労働力だけでは三反しかやれないということになりましても、一町歩の経営を直接自分で労働をしなくて、たまには雇用労働力を入れましてもよろしい、自分でやれる範囲でやればよろしい、こういう趣旨ですから、そういう面では、現行法が半分以上はその労働力ですから、自分の労働力でやらなければならないということよりもゆるい面もあるわけでございます。と同時に、働ける間は必ず自分で働けというきつい面もあるわけでございますけれども、先生おっしゃいますような意味で、これで返ってくるのが非常にきつくなったというふうにはわれわれ考えていないわけでございます。
  217. 佐々栄三郎

    ○佐々委員 農林大臣にここのところの締めくくりをしておきたいのですが、いま局長の御答弁があったわけですけれども、私は、第一条に自作農主義を依然としてうたい込んでおるというところから見ると、この改正案によって、当面、目先の問題としては、賃貸借を緩和したり小作料の統制を廃止したりして土地をあけて、兼業農家が持っている土地を貸しやすくして借り切ってしまう。ある時期が経過しますと、その兼業農家の持っている土地というものは、専業農家に集まって規模拡大ができるその段階になって、その借りた土地を借りた人のほうへ固定するとか、あるいはそれを政府が買収して、その人に売り渡すとかいうようなことをやるのではないか。やらないんならやらない、そういう考えはないと——いまあなた答えたって、また法律改正すればできるから、あなたの答えそのものにどの程度価値があるか問題ですけれども、ひとついまの時点においてのあなたの考え方を聞かしてください。
  218. 長谷川四郎

    長谷川国務大臣 佐々さんはこの問題に長い間取り組んできておりますから、いろいろの疑問点が出て、また想像ということも出るだろうと考えられます。しかし、いまの私は、そういうような考え方は毛頭持っておらない。また、こういうことは記録に残して、そういうことは絶対にあり得ないということだけははっきりとお答え申し上げておきます。
  219. 佐々栄三郎

    ○佐々委員 そうですか。私は、いわゆる自作農主義でない、借地農主義というものをやる以上は、そういう方向へ進む以上は、小作料についてのある程度の統制というものと、耕作権の保護というものが必要だと思うのです。ところが、この法律の中ではそれと逆行した、耕作権に対する保護を廃止するという行き方がある。そういう行き方のもとで、はたしてこれからの借地農というものが安定して経営できるかどうか、高い小作料でそれがやっていけるかどうかということを非常に不審に思うので、いまとりあえず取り上げて、あとで固定するというようなことをやるのじゃないかということを疑問に思っておるわけなんです。しかし、あなたのお答えで、一応現段階として、そういうことを考えておられぬということを了承いたします。  ただ、先ほどの局長の、農業生産法人の主としてというのと、すべてについてという問題、それから常時従事という問題、これは私はきょう質問を終わりませんから、次の質問までに、あなたももう少し研究してもらいたいと思うのです。  それから、農林大臣にちょっとお尋ねしたい。イソップ物語か何かちょっと忘れましたが、北風と太陽と旅人という小供のおとぎ話を御存知ですか。——御存知だろうと思います。これはこういうことかといえば、あまり詳しく言う必要はないと思うのですが、きびしく取り上げようとしたってなかなか取り上げられない。しかし、おてんとさんの光があたたかくさし込んでくれば旅人はマントを脱ぐというわけで、私は経営規模の拡大ということはいいことだと思います。これは理想です。特に、機械化していく以上はそうでなくてはならぬと思うのです。しかし、先ほど言うたような作為的な方法で、兼業農家から土地をできるだけ出させるというような行き方でなくて——兼業農家でも片足をたんぼにかけ、片足を通勤勤労者という生活はしたくないのです。農業で立っていけるか、労働者としてやっていけるか、どっちもやっていけぬから二本足をかけるわけです。たんぼから片足はずしてでもやっていけるような社会環境ができれば、すなわち、あたたかい太陽の光がさしてくれば、何もこういうような法律をつくらなくても、兼業農家はたんぼを手放すと思う。ところが、政府のやり方を見ておりますと、旅人にマントを脱がすような政策で、これが非常に欠けておると私は思うのです。  昨年の十二月に、EECのマンスホルトプランというものが発表になりました。大臣も御承知だと思うのです。私もよく読んでみたのです。どこの国でも経営規模の拡大というものは必要で、ああいうようなEECの国たにしても必要性があるのですから、日本においてもあることは当然のことだと思うのです。ただ、ああいうところでは、こういう農業政策の大転換をやろう、経営規模の拡大政策をやろうとするときには、十分政策的に、たとえば、農地法だけが独走するというような行き方でなしに、農業以外の社会環境において、農民が土地を提供しやすいような社会環境、兼業農家が農業から片足をはずすような社会環境をつくるために、非常な努力というか、配慮をしておるのですね。マンスホルトプランの中を見ますと、詳しく言う必要はありませんけれども、年金制度、保証基金制度あるいは子弟の教育、そういうものについて実にばく大なお金を投ずる。それから、農業をやめて勤労者だけになったらなったで、他の労働者と遜色のない、あるいはそれ以上の生活を保障するというようなやり方で百姓をやめさすということを考えておるのです。現在の兼業農家の中高年の戸主が百姓をやめて、そしてそんなところへ就職できるかというと、これはできやしません。中小企業は低賃金ですから、土地を放さぬですね。  だから私は、農地法が独走するのではなしに、この農地法の改正案を出す前にもっと、いまの労働賃金の問題にすれば、全国一律の労働賃金制度を確立するとか、あるいは、これより先に農民年金制度のもっとりっぱなものをつくるとか、社会保障制度をもっとりっぱにするとかというようなことを、これより先にできぬのなら、少なくともこれと並行してやるのがほんとうだと思う。私はどうも北風主義だと思う。とにかく百姓から土地をもぎ取っていって、経営規模を拡大するというところばかりを見て、その他の政策がないから、喜んでマントを脱がぬのだと思うのですが、こういう点について、大臣はどういうように思われますか。
  220. 長谷川四郎

    長谷川国務大臣 私は、お説ごもっともだと承っておきます。したがいまして、そのような環境を一日も早くつくらなければ相なりませんし、また、経営規模の拡大ばかりをねらっているということについて考えましても、わが国の伝統といい、この歴史の上から考えましても、国民性というものが、各国とは全く異なった国民性を持っておりまして、したがって、父祖伝来の土地を放すということはなかなか容易でないことであって、たとえば、環境がよくてもこれをなかなか放しにくいのが日本の現状だと考えられます。しかし、何といっても他の環境、また他に業を求めようというか、転業しようというか、こういうような方方に対するところの、喜んでこれに飛び込んでいけるような環境をつくるということがまずもって必要であることは、もう議論の余地のないところだと思います。  私もよくこの法案を伺ってみたのでございますけれども、想像すればいろいろな想像は出ますけれども、無理やりにこれをもぎ取ってというような考え方でなく、ただ経営規模を大きくすれば、それでいいという問題ばかりではないと思うのです。要するに、何といっても生産性を上げていこうというのには、現在のようなことでなくて、もう少し規模を拡大していかなければならぬ。たとえば、大型機械が一台入る、入ったらもう隣のあぜにつつかえてしまうというようなことでは、省力化したところで生産性を高めていくというようなことが非常に困難であろう。こういうような点について、私は、決して取り上げるのではなくて、そういうような人がなるべく協業化していくような方法をとっていくということが、日本の国民性にぴったり合ったやり方にやはりなるのではないだろうか、こういうようにも考えるのでございます。  いずれにしても、佐々さんは長い間、この農地という問題、農民と取り組んできたわけでございます。その御体験からのお話でございますので、私は、もうどれがこれがと申し上げません。おっしゃることはまことにごもっともなことばかりでございますので、できる限り私は記録に残して、そういう御心配になるような点は絶対にありませんということだけははっきりと責任をもって、たとえば、大臣がかわればすぐそうなるんだろう、決してそういうことのないようにはっきりと記録に残して、そのおことばをありがたく拝聴をしておきます。
  221. 佐々栄三郎

    ○佐々委員 農林大臣は非常にものわかりがいいのですが、それなら、やはり私が先ほど言うたように、兼業農家が土地を離れてよそへ働きに行くときは、後顧の憂いなく、家族を全部教育し、養うことができるような、そういう社会環境をつくるということが、経営規模も拡大するし、一方はまたそれで独立できるのですから、そういう政策とあわせて進めるようにしたらどうですか。農民年金の問題一つとってみたって、まだ来年どうするんだ、こうするんだといっている。  それで、何か土地をもぎ取らぬとあなたは言われたけれども、私からいうと、この農地法の改正というのは、きれいなことばでいえばそうじゃないけれども、きたないことばでいえば、これは法律的に土地をもぎ取る、強奪、強盗でなければ、これは詐欺みたいなものですよ。とにかく当面、土地を手放すために小作料を廃止して自由になりました、貸してもすぐ返ってくる、しかし、そのあと固定されてしまうなら、これは詐欺にかかったようなものですから、そういうようなやり方でなしに、自然に農民が、兼業農家が近代的な賃金労働者になるように、こういう政策を先行させたらどうですか。そのためにこれを撤回するというか、これはもう控えたらどうかと私は思うのですがね。それが私は紳士的な行き方だと思うのです。この法律自体を見ると、何か詐欺的な要素があるように思う。どうですか。
  222. 長谷川四郎

    長谷川国務大臣 どうも、そんなような考え方は毛頭持っておりませんけれども、合理的に、しかもそういう希望を持っておる人がそういう希望が達せられるような方法、いろいろございますものですから、このような法案をつくって出したわけでありますが、いずれにしても、ただいまの御指摘のような、おことばのようなことは、全くこの中にはないので、十分御審議を賜わって、そういう面を解明させていただきたいと思いますけれども、そういう考え方は全く持っておらないということだけは、はっきり知っていただきたいと思います。  また、これが撤回する理由があるならば撤回もいたしますけれども、審議を続けていただければ、十分それらの点については御納得のいける点があるだろうと考えられます。
  223. 佐々栄三郎

    ○佐々委員 この程度にいまの議論はしておきまして、次に、第二条の定義の問題に入りたいと思います。  二条の七項、農業生産法人の定義なんですが、その農業生産法人の要件として、一号の要件、「その法人の事業が農業」そのあといろいろありますが、「及びこれに附帯する事業に限られること。」こういうような農業生産法人の要件があるのですが、この農業というのは一体どういうものか。私、寡聞にして、いろいろ農業関係法規を見たのですが、農業とは何々であるという規定がないのですね。しかし、あるのかもしれないので、まずそれをお聞きしたいと思うのです。
  224. 中野和仁

    ○中野政府委員 農協法を引っぱって恐縮でございますが、農協法の第三条によりまして、「農業とは、耕作、養畜又は養蚕の業務(これに附随する業務を含む。)」ということに定義されております。
  225. 佐々栄三郎

    ○佐々委員 わかりました。私の浅学でございました。  それで、この問題に関連しましてお尋ねしたいのは、農業というと、農業するということが条件の一つになっておるのですが、たとえば、農業生産法人の中で、最近観光農業とでも申しますか、農業生産法人をつくって観光的な農業をやる。たとえば、ミカン畑でミカンをちぎらせるとか、山でマツタケを掘らすとか、そういうことに重点を置いておる場合と、それからそうでない場合とがあると思うのですけれども、いまから農業生産法人をそういうようなものでつくられる場合、いろいろあると思うのですが、どういう点で限界点を設けられますか、この法人に該当するその要件を満たしておるか満たしておらぬか。もう一つ例をあげると、都市近郊にあるところのいわゆる果樹菜園のような問題これは農業生産法人でやれるのかどうか。
  226. 中野和仁

    ○中野政府委員 最近、いろいろレジャーブーム等もございまして、そういう果樹のもぎ取りだとか、そのほか観光牧場とか、いろいろできておりますけれども、やはり基本は、そこの経営が、先ほど申し上げました耕作あるいは養畜の事業をやるという範囲でものを考えなければならないというふうには思います。  ただ、その限界ということになりますと、先ほど申し上げましたような事情もございますので、ちょっとでもそういうことがあるといかぬということにはならないのではないかと思います。
  227. 佐々栄三郎

    ○佐々委員 そういうことを目的にして農業生産法人をつくってはだめですね。
  228. 中野和仁

    ○中野政府委員 たとえば、ブドウ園をつくりまして、ブドウができたころに、いろいろ都市から人を入れてそれをもぎ取らせるということも、これはまあ一種の販売ということであるかもわかりません。農協に出すだけではございませんで、そういう販売方法もあるかと思いますので、そういう観点から、常識的に農業と解釈される範囲では認められるのではないかと思います。
  229. 佐々栄三郎

    ○佐々委員 農業生産法人の条件が今度、現行法の借入地要件、雇用労働要件、議決権要件、利益配当要件、これが従来と変わってきております。それで私がお伺いしたいのは、これはいずれも要作の緩和ですね。従来あったこういう要件を今度はなくするというわけなんですが、現在の農業生産法人の要件、いま言うたような要件というものが農業生産法人の発展を阻害しておる、これはどうしても改めなくちゃならぬのだというような、そういう必要性がどの程度あるかということを聞きたいと思うのです。
  230. 中野和仁

    ○中野政府委員 現在、約二千くらい生産法人があるかと思います。その生産法人の実態を見てみますと、必ずしも全部が、いまの要件では非常にじゃまになるというようなことではありません。しかしながら、法人をつくってみまして、たとえば大型機械を入れて経営を始めてみますと、そこへ集まりました人全部で働かなければならぬという事態にもならなくなってくる場合もあります。しかも、先ほどからの御議論のように、兼業農家で土地だけその法人に預かっておいてもらいたいというのもだんだん出てきております。  そういう実態から見ますと、今度の改正いたしました要件は、それをもう少し先まで考えた上での法人というふうに御理解願ってもいい場合もありますし、それから、先ほど申し上げましたような、現在のままでの法人でそのままいけるという法人も、別に全然ないというわけではございません。
  231. 佐々栄三郎

    ○佐々委員 私は、現在の農業生産法人の要件でありましたら、これは自作農主義といえると思うのですが、今度の改正案によりますと、まずこの自作農主義を放棄したということになると思うのです。  それで、この利益較量の問題とでも申しますか、こういうように改正しないと、現実どうにもならぬのだというのであれば、それはある程度私もやむを得ないように思うのです。しかし、現実の問題として、そこまでやる必要は私はないんじゃないかと思う。そしてまたこれをやることによって、いままでどなたかがおっしゃったことがあるように記憶しておりますが、そういう法人をつくって、そして従来のようなきびしい雇用労働力条件というようなものをなくしてしまうということになると、やはり町の資本、あるいは外国資本、食品資本というようなものが土地の買い占めをやる。農業生産法人は土地の使用権、収益権の取得ができるわけですから、そういうような形による土地の略取というか、資本の農村進出というような問題から、むしろ利益よりも、現在の段階においては不利益が大きいんじゃないか。農民が資本の収奪、資本の攻勢というものによって受ける不利益のほうがむしろ多いんじゃないか。であれば、現在程度の必要性であれば、これはむしろ撤回してはどうか。  いま、特に外資が日本に入ってこようとしております。現実にいろいろそういうことが行なわれておる段階です。観光資本なんかも、私のほうの土地では、ずいぶんたくさんの土地を買い占めておるところもあるんですね。そういうことを考えると、こういうような改正が行なわれると、えたりやおうとでも申しますか、これはいいということになって、一そう農村に対する資本の侵入に拍車をかけることになると思うのですが、その点はどうですか。あまり現状で不自由がないなら、現状でとどめておくほうがいいんじゃないかと私は思いますけれども……。
  232. 中野和仁

    ○中野政府委員 今回、生産法人をこのように改正いたしましても、資本の提供者を法人の構成員にするということはいたしておりません。したがいまして、もぐってくるということはあるかと思いますけれども、われわれ考えましたのは、この法人の中核をなす農家が土地を提供し、かつ、農作業に従事している者が法人の事業を握っていくと申しましょうか、そういうことをやるわけでございますので、いま御心配のような形での法人が、これによってどんどん出てくるというふうには判断しておりません。
  233. 佐々栄三郎

    ○佐々委員 そう言われますけれども、この農業生産法人というのは、土地の所有権を取得できるのですから、そう軽々しくは私は言えぬと思うのです。それはいろいろ制限はありますけれども、擬装法人というようなものも考えられるし、人を表に立ててやるということも考えられるし、従来でもやっぱり脱法的にやっておるのですから、こういうように要件が緩和されてくると、資本が跳梁ばっこするという形に私はなってくると思うのです。それを私たちは心配するのですが、そういうおそれがないとおっしゃるのですか。
  234. 中野和仁

    ○中野政府委員 ただいま申し上げましたような考え方でつくりましたわけでございますので、生産法人の改正後といえども、農地取得については、これは知事の許可ということで、農業委員会にまかせておりませんので、厳重な審査をして、できるだけ外部の資本が流入しないようにいたしたいと思います。
  235. 佐々栄三郎

    ○佐々委員 そこで、私が聞きたいのは、私はこれは利益較量の問題だと思う。そういうようなおそれと、それから、現在それでは不自由だというそれと、一体どちらに重点を置くべきか。私は、やはり資本の進出というものに重点を置くべきではないかと思うのであります。従来の生産法人の要件で、とりあえず現在はしんぼうできるのじゃないか。そういう危険をおかしてまで、その条件を緩和するという必要性があるかないかということについて、私は、むしろ改正を行なう利益よりも、受ける被害のほうが多いように思うのですが、あなたは私と見解が反対でございますか。
  236. 中野和仁

    ○中野政府委員 現行の法人と、改正後の法人との比較の問題でございますが、われわれとしましては、そういう心配の面も全然考えないわけではございませんけれども、たとえば、現在の法人におきまして、借り入れ地の面積が全経営面積の半分以下であるといいましても、もう少しよけい借りたいという場合も出てきておりますし、あるいは、先ほど申し上げたような機械化が進みまして、常時従事者が議決権の半分持つということはすでに無理になってきておる。それから、雇用労働力の制限にしましても同様でございますし、出資配当にしましても、六分というようなきめ方になりますと、なかなか法人がつくりにくいということになってきまして、今後の規模の拡大といいましょうか、そういう規模の拡大を協業的な考え方ではかっていく場合には、やはり現段階におきまして、いまの制限を緩和といいましょうか、今度のような新しい考え方にしたほうが、よりベターであるというふうに考えたわけでございます。
  237. 佐々栄三郎

    ○佐々委員 定義の問題として最後に一つお伺いしたいのは、三条二項のただし書きで次の条になりますけれども、この際お伺いしておきたいのですが、「農地保有合理化促進事業を行なう営利を目的としない法人で省令で定めるものが」というこれです。これが農地の所有権、使用収益権を取得することができるというのが、新しく今度の改正案に加えられておるのです。  私がこれを定義のところでお伺いするのは、農業生産法人については、第二条で定義として要件をこまかく規定してあるのです。それを、これはなぜこういうふうにこの三条の条文の中で、しかも、われわれが見てもいかにも不自然な書き方なんですね。なぜ堂女と第二条の定義の中で……。名称にしても、名称があるのやらないのやらわかりませんね。名称がないのがほんとうじゃないかと思うのです。何々法人というふうにはっきりすべきじゃないか。それから、その目的、あるいはその構成、組織というようなことも、第二条の中ではっきりするのがほんとうじゃないか、こう思うのですが、なぜこういうようなこそどろのような——私が言うたらこそとろと言いたいのです。これは農地管理事業団法案でだいぶん手を焼いたので、今度はこっそりとはさみ込んでおいて通すというようなお気持ちでこういうふうな規定のしかたをしたのかどうか、ちょっとお伺いしたいと思うのです。
  238. 中野和仁

    ○中野政府委員 農業生産法人の場合は、農地を取得しましてその法人が農業経営をやっていく。そうしてまた、その要件を欠いた場合は、その解体をします場合の農地の処理というところまで必要なわけでございますので、こういうふうに厳密に書いたわけでございます。  三条二項、いま御指摘の農地保有合理化法人につきましては、われわれ考えておりますのは、主として県や市町村の出資しました非営利法人を考えておりまして、これが構造改善のために、たとえばでございますが、離農する農家の土地を買ってそれを売り渡すというような、これ自体が農業経営をやるわけではございません。いわば農地法上は一時的な取得であり、それから貸し借りでございますから、そのために、いま御指摘のように、定義に入れましてこの中身を詳しくは書かなかった点が一つ。  それからもう一つは、われわれこれを考えました場合に、各地の御要望が非常に違っておる面がありまして、一律に法律には規定しにくい。都市近郊では、畜産公害のために、もう少し市街化調整区域の中に土地を取得して、そこに牧場をつくってやるような事業をやりたいといわれますし、それから過疎地帯的なところでは、未墾地と農地と合わせて取得して、もう少し大きな牧場等を造成するような事業等をやりたいというような県もございますし、それから、特に第二次構造改善事業がこれから正式にできるわけでございますが、それによりましては、町村の段階で、従来の近代化施設、基盤整備事業のほかに、経営整備事業というようなもので、先ほど申し上げましたように、土地を買って必要な農家に売ってやるとか、あるいは借りて貸してやるという事業をやりたいということでございますので、いろいろ中身がそういうふうに違ってきておりますので、しかも、農地法でそういう場合は可能であるということに、いたしたいためにこういう規定をしたわけでございまして、決してこそどろ的なものの考え方でこういうことを書いたわけではございません。
  239. 佐々栄三郎

    ○佐々委員 いまのような内容で、第二条へ規定することはいけないんですか。可能なんですか。
  240. 中野和仁

    ○中野政府委員 ただいま申し上げましたように、いろいろ事情が違っておりますので、全部書けと言われれば法律を書けないわけではございませんけれども、むしろいま申し上げましたように地元の事情がいろいろ違っておりますので、その中で、これならそういう農地の保有合理化事業をやるのに適しておるものだということで、具体的には省令によりまして農林大臣が個々の指定をしたいというふうに考えておりますので、逐一法律に書く必要はないのではないかと思います。
  241. 佐々栄三郎

    ○佐々委員 そうすると、今後これがもしできました場合に、農業生産法人のときには農業生産法人と呼称できますが、これは何と言ったらいいのですか。名称はないのですね。どない言うたらいいのですか、これは。
  242. 中野和仁

    ○中野政府委員 法律上農業生産法人、こう言っておりますが、農業生産法人そのものはいろいろ名前がついておるわけであります。これも、しいて言えば農地保有合理化法人とでも言ってもよろしゅうございますけれども、具体的には何々県農業振興公社とかそういうふうな名前が、順次ついてくるんじゃないかというふうに想定されますけれども、まだこれは先のことでございます。
  243. 佐々栄三郎

    ○佐々委員 私は、自説を固守するようですけれども、やはり第二条の定義の中でこれを書いたほうが公明正大、せっかくこれが生まれたと仮定しましても公明正大ですが、このままで生まれると、何か私生児のような感じがします。もっと堂堂とやられたらよろしいと思う。  特に私が聞きたいのは、省令に委任する問題ですね。「営利を目的としない法人で省令で定めるもの」この省令で定めるものというのはどういうようなものを定めようとしておるのか。いま、町村あるいは県による公社というようなことを言われましたが、そういうことでございますか。
  244. 中野和仁

    ○中野政府委員 そのとおりでございます。いま考えておりますのは、民法法人によりまして、県それから市町村が主として出資する公社的なものというふうに考えております。
  245. 佐々栄三郎

    ○佐々委員 そうしますと、こういう場合は想定できませんか。これは県なんかの公社を考えておると言うが、しかし、省令でやるならほかのものもできますね。たとえば、この東京に全国の公社というものを統合したような、公社の親分ですね、これも省令でできるのですか。
  246. 中野和仁

    ○中野政府委員 そういう団体は、いま想定しておりません。  それからなお、これは具体的には、定款なり条例でこまかくその事業の内容等もわれわれやるつもりでございますが、個別に農林大臣が指定をしていただくつもりでおりますので、そういう全国一円の公社が、こういう事業をやるというところまで考えておりません。むしろ地域の実情に応じて、地域ごとにやりたいというのがねらいでございます。
  247. 佐々栄三郎

    ○佐々委員 考えておらないけれども、この法律が通れば、それをしようとすればできるのかどうか。
  248. 中野和仁

    ○中野政府委員 形式的には、そういう法人はつくることは可能だと思います。けれども、農林省としましては、いま申し上げましたように、地域の実情に応じて末端に入り込んでやりたい事業でございますので、そういう全国一円の公社でこういうことをやるということは、この農地法では想定をいたしておりません。
  249. 佐々栄三郎

    ○佐々委員 これは、ひとつ大臣から明確な御答弁を、この際いただいておきたいのです。というのは、巷間にはこれは一応市町村、県段階でつくるけれども、省令に委任したという法律が通過すれば、農地管理事業団法案のような中央機構をつくるということも可能なんです。だからこの法律が通ったら、何年先になるかわからぬけれども、将来は中央に統合団体をつくるということがいわれておるのですね。そうして、最近よく問題になる渡り鳥官僚といいますか、皆さんが退職したときに入るところを一つでもふやしておこう、こういうような考えがあるということを言う人があるのです。そういうようなことは絶対いたしません、せぬならせぬでよろしい、そういうときには別に法律をつくりますということを言えるなら、この際はっきり言っておいてもらったほうが、誤解がなくていいと思います。
  250. 長谷川四郎

    長谷川国務大臣 お尋ねの件ですが、中央にこれをつくる考え方は持っておりませんし、地方地方によってこれがつくられるということはあります。したがって、これをもし中央へつくるということになるならば、当然法的基礎を持ったものでなければ相ならぬと考えます。
  251. 佐々栄三郎

    ○佐々委員 大臣、法的基礎はこの法律が通ればあるのです。中央へっくれるのです、これは省令によって。だからそういうことでなしに、農地保有合理化法人という単行法を別につくるときには、つくりますということをはっきりこの際言うてほしいのです。
  252. 長谷川四郎

    長谷川国務大臣 もし中央へつくる場合は、別途法律を出しまして御審議を願う考えでございます。
  253. 佐々栄三郎

    ○佐々委員 何時までやるのですか。私はこれが切りがいいのです。あと第三条へ移りますが……。
  254. 丹羽兵助

    丹羽委員長 どうぞお続けください。
  255. 佐々栄三郎

    ○佐々委員 よろしいのですか。
  256. 丹羽兵助

    丹羽委員長 はい。
  257. 佐々栄三郎

    ○佐々委員 それでは、第三条の権利移動の制限のところへ入りましてお尋ねをいたします。  今度の改正案によりますと、許可する許可権者が、従来知事、農委が持っておった許可権者の内容がかなり変わりまして、農業委員会の権利が非常に拡大されております。すなわち、住所地内の個人の所有権、使用収益権の移転が農委の権限の範囲に今度入りまして、知事の許可権限というのは、住所地外の個人の所有権、使用収益権の移転、それから法人の所有権、使用収益権の移転、こういうことになっておるんですね。それで、この権利移転の場合一番多いのは何かというと、これはやはり住所地内の権利移動というのがほとんどですね。そうすると、知事の権限というものは従来と比べて非常に狭くなって、農業委員会の権限というものが非常に強化されてまいるわけなんですが、こういうふうに強化をする理由、なぜあなた方は農業委員会をそれほど頼もしく思われるのか。思っておられるから権限を強化するんだろうと思うのですが、その理由をお聞きしたい思うのです。
  258. 中野和仁

    ○中野政府委員 この許可権者の問題につきましては、御指摘のようなふうに改正をしたわけでございます。  その理由としますところには、現行法おきましても、農業委員会が、知事の許可の前提といたしまして農業委員会の審査にかけて、意見を付しまして知事に意見書を出しております。そういうことを十数年続けてまいりまして、しかも、大体村内のことは農業委員会のほうが承知しておりまして、大部分は農業委員会意見書のとおり知事が処理をしておるという実態でもございますので、行政簡素化という面もあわせ兼ねまして、この際、村内のことは農業委員会にまかしておいてだいじょうぶだという判断をいたしましたので、こういうふうな改正をしたわけでございます。
  259. 佐々栄三郎

    ○佐々委員 村内のことは農業委員会にまかしてだいじょうぶだというふうな、農業委員会に対する非常なあなたの御信頼は、一体どこからきておるのですか。私たちは、先般来からの農業委員会に関する質問の答えを聞いておりますと、また、あなた方が出された印刷物を見てみましても、どうもあなたのほうの御信頼にこたえるような姿勢じゃないと思うのですね。そういう農地と採草放牧地の所有権、使用収益の移動の権利、こんな大きな権利を、そういうような農業委員会に渡すということは、実に安心ならぬと思うのですね。それを押し切ってやられるのはどういうわけでしょうね。それをひとつ答えてください。
  260. 中野和仁

    ○中野政府委員 当委員会におきましてほかの先生方からも、農業委員会についてのいろいろな御意見がございましたが、また、一部いろいろな事件も起こしておるという問題もございます。その点はわれわれとしましてはもっと厳重な指導の必要はあるかというふうに考えております。  それを前提にいたしまして、農業委員会というのは選挙制でつくられておりますので、やはりこういう農地の権利関係の問題については、直接第一線でやるのが一番望ましいというふうに基本的には思っておるわけでございます。その上に、先ほど申し上げましたように、すでに十数年経験を積んでおりますので、村内のことの事情が一番わかっている委員会に許可権限を与えても、だいじょうぶだというふうに判断したわけです。
  261. 佐々栄三郎

    ○佐々委員 あなたはさらっと流してしまおうというお考えのようだが、実際この所有権の移動という問題は、農民の立場からすると大問題なんですね。それは、実際農業委員会がほんとうに公正にやるかどうかで、いわゆる生殺与奪の権を握られるのです、農民としては。ちょっと軽はずみじゃないかと私は思うのですがね。もう少しこれは考え直したらどうですか。
  262. 中野和仁

    ○中野政府委員 答弁を繰り返すようで恐縮でございますけれども、この農地法を運用してきました間、ずっと所有権の権利移動につきましても、農業委員会委員会にかけまして意見書を知事に出しておりまして、知事がそれをはね返すということは、よほどの場合でないとございません。したがいまして、先生おっしゃいますけれども、われわれとしましては、そういう村内のことを農業委員会の許可制にしても、もはやだいじょうぶだというふうに思います。
  263. 佐々栄三郎

    ○佐々委員 あなたはだいじょうぶと思われるかしらぬが、われわれは直接農村におって、あなたよりはもっと実情を見ておるんですね。だから、その見ておる私はそう思わぬのです。まあそれだけ申しておきます。ちょっとこれは権限を与え過ぎる。むしろ権限は、現状であれば、もう少し少なくするのがほんとうじゃないかと私は考えておるのです。  それから、三条の二項の許可基準の問題についてお尋ねしますが、ここでまずお尋ねしたいのは、小作人と法人の優先譲り受け権とでも申しますか、その優先譲り受けの権利ですね。小作農あるいは法人は、地主が人に土地を譲ろうとすれば、小作人ないしはその関係の法人以外の者には譲り渡すことができない。ですから、現在でも地主が百姓をやめていく場合、小作人は、チャンスが来たらその土地は自分以外のだれにも譲られぬのだと思っている。待てば海路のひよりというか、時期を待っておれば地主さんがたんぼをやめる時代がくるだろう、そのときには、地主さんがほかの人に売ろうと思っても売れない、自分に売るのだという期待権を持っておるのですね。  ところが、三条二項によりまして、そういうような小作人の期待権というものがなくなるのですね。これは一体どういう趣旨でこういうような規定を設けられるのですか。
  264. 中野和仁

    ○中野政府委員 ただいまのお話でございますが、基本的にその小作農の期待権をなくしたわけではございません。このカッコの中にございますように、許可申請の六カ月前に、小作人がほかに売ってもいいということを書面で同意をした場合に限りましてほかに売らせることにしたわけでございます。  これは、いまの規定でありますと、小作農が買わない以上は地主側になかなか換金の道がないわけでございますから、その辺のところを考えまして、今回、同意をした場合だけは例外としていいということにしましたけれども、基本的には、小作農が第一順位で買えるわけでございます。
  265. 佐々栄三郎

    ○佐々委員 あなたがそういうふうに言われては困るのですよ。従来から小作人が第一に譲り受ける話をしてもらう権利はあるのだ、それは変わりがありませんと言われるが、それなら、こんなところ直す必要がないでしょう。少なくとも戦後の、たとえば残存小作人の立場からいいましたら、これはやはり大きな期待権だったのですね。まず自分のところに話を持ってきてくれるだろうと思っていたところが、そういう話を持ってきたとしても、たとえば、ちょうどそのときにお金がなくて買えないという場合に、話を持ってきてくれたって買うことはできませんね。従来はそんなことなかったし、現在もそんなことないのですね。金があるなしにかかわらず、やはり、その人が期待権を持っておったのです。  なるほど、こういうことになったら貸し主は都合がいいですよ。しかし、借り主は都合が悪い。常にどっちかよければどっちか悪い。今度の改正というのは、貸し主には都合がいいですわ。そういうように、とにかく二十数年間おれが買えるのだと思っておった権利を、そんな貸し主の都合によって変更していいと思いますか。これはなるほど、金のほしい地主が、小作人が買ってくれぬからという場合もあるから、それはそれなりに理屈があると私は思います。思うけれども、その都合によって小作人の長い間の期待権というものを、そういう形で、まず話はそこに持ってくるはずだから、買おうと思ったら買えるのですというような言い方は、あまりにも従来から持っておる権利を尊重しない行き方だと思うのです。もっとほかに考え方があるのじゃないですか。
  266. 中野和仁

    ○中野政府委員 先生のようなふうにこれをお読みいただきますと非常に困るのでして、小作人の方が、ほかに売ってもいいということを同意しない限りは小作人が買えるわけでございますから、その点は、いまのような御心配はないと思います。
  267. 佐々栄三郎

    ○佐々委員 小作人が同意をしない場合は、たとえば、信義違反とか正当な事由というようなことで、土地を取り上げるというようなことはないですかどうか。これははっきりした返事をしておいてもらいたい。
  268. 中野和仁

    ○中野政府委員 二十条の信義違反の問題は、賃貸借での関係の問題でございまして、その地主の土地を売る、売らぬの問題での判断は関係ございませんので、そういうことは絶対ございません。
  269. 佐々栄三郎

    ○佐々委員 いずれにしても、私はこの条文がありますと、こういう場合が出てくると思うのですね。いままではとにかく耕作者が買う権利を持っておった。ところが、今度は本人が買わなければほかの人へも売れるということになってきた。そうすると、第三者のところへ行って何ぼと話をつける。第三者は何ぼで買うてくれる、だからあんたも何ぼで買え、こういった話が小作人のところに必ずくると思うのですね。それで、あなたが買わなければよそへ売りますがどうですかと、こういうような形で値段はつり上げられる。そして農村の内部ですから、小作人というのは非常にがんばりにくい点が出てきますよ。しかも、そのときその金がないというようなところで、何ぼあなたは断わりできると言ったって、小作人はそこえ追い込まれるのですよ。そういうようなことをやはり想像しておく必要があると私は思う。そういうことを考えると、戦後長い間耕作した土地をみすみす自分が買えずに、よそで買われるという状態におちいる危険性が非常に多くなってくる。  だから、私は少なくとも残存小作地については、このような期待権は一方的に剥奪すべきものじゃない。あなたは剥奪とは言わぬけれども、現実に実際問題となってくると、土地を手放さざるを得ないような形に追い込まれるのですね。
  270. 中野和仁

    ○中野政府委員 ただいま残存小作地についてはというお話がございましたけれども、残存小作地につきましてはもう二十数年以上たっておりますから、これについては小作人も相当な権利意識を持っております。したがって、先生のおっしゃいましたような場合もあるいはあるのかもしれませんけれども、大部分はそういう心配はないのではないかというふうに考えております。
  271. 佐々栄三郎

    ○佐々委員 それなら、残存小作地は除くと書いておいたらどうですか。これからできる小作地はとにかくとして、こういうような優先買い受け権というような多年の間の期待権というようなものなんですから、これは残存小作地の場合は除外をするというふうに、あなたがそうなると思うなら、ちょっと入れておいてやりなさい。そうしたら安心しますよ。そうせぬと、この法律が施行されたわ、いままではおれだけが買えると思っておったら、よその人が買いに来て、そして値段もせり上げてきたというようなことになって、これは迷惑千万ですよ。大臣、いかがですか。
  272. 中野和仁

    ○中野政府委員 ただいま申し上げましたように、残存小作地につきましては権利意識が非常に強いものですから、残存小作地はこういうふうにするのだ、あるいは新規の賃貸借についてはこういうふうにするのだというふうに区別しませんでも、小作人が同意をしない場合はそういうことはあり得せんから、私はだいじょうぶだと申し上げたわけでありまして、残存小作地は特別にそうするというふうには考えていないわけでございます。
  273. 佐々栄三郎

    ○佐々委員 残存小作地の問題については、あとでまたいろいろなところで出てきますから、また別の機会に申し上げたいと思いますが、そんなあなたが言われるようなことにはならぬと思うのですよ。やはり農地法が改正になった、今度は土地を返してくれと言うたらくれるんだというような空気が、この法案が通ると農村の中に起こってくる。そうすると、そういう空気に残存小作人もだんだん圧迫されてきて、これは小作料の問題のみならず、土地の返還の問題についてもやはり出てくる。  あとから申しますが、例の合意解約の場合でも、十年の契約の更新拒絶の問題にしても、十年の契約をするように周囲から押しつけられる、それから合意解約で文書でするというようなことも押しつけられるというように、いかに権利意識を持っておるからといっても、法律全体が大転換をすると、やはりそれが農民の心理に影響をしてくる。地主も強くなる。地主が強くなるに従って小作人は弱くなるというので、だんだんその権利は後退していくのです。こういうような微妙な人間心理というものを、もう少し行政官はよく理解をして法律をつくる必要があると思うのです。そうしないと、これは既得権を侵害するという非常に重要な問題になってくると思うのです。これは、またあとでお尋ねをする機会があります。  そこでいまの場合、もし新地主に土地が移った場合、従来の地主以外の者に土地が移った場合、その新しい地主と小作人との間の契約関係というものがどういうふうになるか。
  274. 中野和仁

    ○中野政府委員 農地法の十八条で、これは現行法でも改正法でも同様でございますが、農地法の場合には、農地の引き渡しがあったときは、登記がなくとも第三者に対抗できまずから、その点は、地主が変わろうと従来と同様に耕作ができるわけでございます。
  275. 佐々栄三郎

    ○佐々委員 その場合に、契約の期間はどうなりますか。契約の定めのあるときと定めのないときによって、移転した場合それぞれごとに違ってくると思うのだが……。
  276. 中野和仁

    ○中野政府委員 従来と同一の条件になります。したがいまして、期間があればその期間でございますし、なければ、解約になるまでの間ずっとということになるわけでございます。
  277. 佐々栄三郎

    ○佐々委員 小作料はどうですか。
  278. 中野和仁

    ○中野政府委員 小作料も同一の条件でございますから、同様にやるわけでございます。
  279. 佐々栄三郎

    ○佐々委員 しかし、今度の改正案が実施されたら、そういうチャン入て、いままでの——小作料は現在統制ですけれども、新しく地主が変わった場合に、従来の地主ならいままでの権利を主張することもできると思うのだが、たとえば、今度十年間は小作料の最高統制額による、こうなっておる。地主が同じならそれは主張できますが、今度は地主が変わった場合に、これは主張できるのかどうか。それは非常に重要な問題だから聞いておきたい。
  280. 中野和仁

    ○中野政府委員 残存小作地については、人が変わりましても、十年間は小作を続けられるわけでございますから、続きます。
  281. 佐々栄三郎

    ○佐々委員 賃借関係も……。
  282. 中野和仁

    ○中野政府委員 そのとおりです。
  283. 佐々栄三郎

    ○佐々委員 その問題についてもう一つお聞きしたいのは、土地を第三者に譲り渡した場合に、その第三者が耕作者でなくて不耕作者だった場合、そういう場合でも土地の譲渡ができますか。
  284. 中野和仁

    ○中野政府委員 その土地は、当然現在小作人が耕作しておるわけでございますから、そこを取得する本人自身がその土地は耕作できないで、まあ地主になる。その場合、ただ純然たる地主ではございませんで、やはり三条の全体の中から、ほかの土地では農業をやっておるという者に資格があるというふうに考えております。
  285. 佐々栄三郎

    ○佐々委員 私が言うのは、不耕作者というのは全然たんぼをやっておらぬ人ですね。たんぼをやっておらぬ人に、従来の地主が土地を譲り渡すことが可能かどうかということを聞いておるわけです。
  286. 中野和仁

    ○中野政府委員 全然農業をやっていない者に土地を譲り渡すことは、許可には該当いたしません。だから、そういうことばありません。
  287. 佐々栄三郎

    ○佐々委員 それはどういう根拠でですか。条文からいくとどういう文句があるのですか。
  288. 中野和仁

    ○中野政府委員 三条二項五号によりまして、五十アール以上農業をやっていなければいかぬというような規定にもその人は該当しないはずでございます。それから八号によりましては、効率的にその人は農業経営をやっておりませんから、そこの土地を取得することができないというふうに考えております。
  289. 佐々栄三郎

    ○佐々委員 しかし、その譲り受けた土地が五反以上ならいいのじゃないでしょうか。それで恒常的に、常時従事すればいいのじゃないですか。
  290. 中野和仁

    ○中野政府委員 ただいまの先生の御説例では、小作人はそのまま、土地地主が変わると言われましたから、小作人を追い出さない以上は耕作できません。追い出せば別の話になります。ですから、小作人がおる以上は耕作できませんので、不耕作者でございます。
  291. 佐々栄三郎

    ○佐々委員 私が言うのは、村の中でたんぼをやっておる農家がその土地を買う場合と、そうじゃなくて、農業の経験のない人がその土地を買う場合とが想定されるのです。その場合に、農業をやったことがない人の場合でも、その土地を買うことによって五反以上になり、それに常時従事するのなら、その人でもできるのですかということを聞いておるのです。
  292. 中野和仁

    ○中野政府委員 先生のただいまの場合は、その御本人は農業に常時従事できないわけでございますから、買えないわけでございます。
  293. 佐々栄三郎

    ○佐々委員 そうしますと、その買った土地以外に土地を持っておる場合は、そしてその人が、その持っておる土地を自分が耕作するというような、それであわせて常時従事という事態が起こったらどうなりますか。
  294. 中野和仁

    ○中野政府委員 ただいまの御説例の場合のように、ほかで自分が農業をやっておった場合には、買える資格はあるわけでございます。
  295. 佐々栄三郎

    ○佐々委員 そうすると、もう全然土地を持っておらぬ人は、その資格はないのですね。——わかりました。  私はこの問題について大臣に一おらぬのですか。おらなければしかたがないが、優先譲り受け権と私は言っておるのですが、くどいようですけれども、こういう権利がこの改正によってなくなるということは、やはり私は問題だと思うので、何とかひとつこれは、一方の地主の場合ばかり考えずに、実際に自分で戦後長い間すきとくわを持ってその土地を耕しておった人間ですから、そのほうも考えてもらいたい。金がなければ土地というものは買えないんですね。一反の土地が七十万、百万するような土地もあるんですね。そういうようなときに、金をくめんすることもできないという場合があり得るのですから、そういう実情を考えずに、地主が売ろうと思えば売れるということだけ考えるということは、私は一方的だと思うので、やはりこれはもう少し検討する必要があると思うのです。それだけを申し上げておきたいと思います。  それから、三条の二項の二号の二で、農業生産法人以外の法人が所有権を取得することを禁止しておるのです。ところが、政令で相当の事由がある場合には、農業生産法人以外のものでも取得できるという規定があるのですね。これは以前からあるのですけれども、具体的にはどういうような場合が考えられておるのですか。また、具体的にこれが適用された例があるのでしょうか。
  296. 中野和仁

    ○中野政府委員 いまのお尋ねの件は、施行令の第一条に一号から六号まで規定してございまして、生産法人以外の法人であっても、たとえば、試験研究とか農事指導用に農地の取得ができる、あるいは市町村が公用、公共用に農地を取得できる、農協あるいは農事組合法人が、その組合員のために共同利用に供するための農地を取得するという例もかなりあるわけでございます。
  297. 佐々栄三郎

    ○佐々委員 三条二項四号の土地の上限面積制限撤廃の問題についてお伺いしますが、現行法は、北海道で十二ヘクタール、府県で三ヘクタール、それから三十七年の改正で、自家労力でやれれば、その制限を越えてもいいというのが現行法です。ところが今度の改正点は、面積制限を全部撤廃する、それから雇用労力でもよい、ただし常時従事する必要があるというような規定に変更しようとしておるのです。  そこで、私はまずお聞きしたいのは、昭和三十七年に改正された、いわゆる自家労力でこなせる程度であれば面積制限を超過してもよいという規定ですね。この規定で現在まで来たのですが、これがどうも窮屈になったという実情があるのでしょうか。今後のような改正をする必要性がどの程度あるのか、少しお話を聞かしていただきたいのです。
  298. 中野和仁

    ○中野政府委員 ただいまの問題につきましては、農業はずっと進んでまいりまして、果樹なり酪農なりという業種を考えてみますと、時期的にはかなりの雇用労力を必要とするわけでございます。  そういう場合に、いままでだと、主として自家労力というのは分量ではかっておりまして、半分までは自分でできなければいかぬということをいっておったわけであります。場合によってはそういうことはできない、しかしながら、もう少し土地を広げてりっぱな経営をやりたいといった場合に、雇用労力をもう少し入れるからといってもそれはだめだということは、規模拡大その他から見ましてどうかと思われますので、もうこの段階ではそこまで認めていいのではないかというふうに判断をしたわけでございます。
  299. 佐々栄三郎

    ○佐々委員 そうすると、現在三ヘクタール以上の農家というのはどのくらいの戸数がありますか。
  300. 中野和仁

    ○中野政府委員 昭和四十年でございますが、三ヘクタール以上の農家は約四万戸でございます。それは内地でございます。北海道は、ちょっとこれは三ヘクタールということになるとまずいものですから申し上げませんけれども、内地の場合四万戸ということでございます。
  301. 佐々栄三郎

    ○佐々委員 パーセントでは幾らですか。
  302. 中野和仁

    ○中野政府委員 パーセントにいたしまして〇・七%であります。
  303. 佐々栄三郎

    ○佐々委員 そういたしますと、その中で自家労力でこなせるというので、三町以上の土地所有を認めた場合、そういう農家は何戸で何%くらいありますか。
  304. 中野和仁

    ○中野政府委員 ただいまお尋ねの、許可件数中の上限面積の制限に該当しまして許可したものにつきましては、所有権の有償移動につきまして、昭和三十八年は約六千件、昭和四十二年には八千七百五十件というふうにふえてきております。
  305. 佐々栄三郎

    ○佐々委員 全体の数からいえば、これは実に微微たるものですね。私はいま、三十七年のときにとにかく自家労力でこなせれば、府県三町歩、北海道十二町歩以上持てるというあの改正が行なわれた後に、さらにまたこの要件を緩和するというような必要性が、それほどあるというふうには受け取れぬのです。ただし、そうしても弊害がほかになければそれもいいと思うのですけれども、どうもそういうふうに土地が集中して、それでしかも、自家労力を使わなくても雇用労力でよいとはっきり今度なるのですね。それから、常時従事という問題についても、ずいぶんこれは制限が緩和されてくるようになると思うのです。  一つ私お尋ねしますけれども、この常時従事ということばはどういう内容か。おやじさんがせずに細君がやった場合、これは常時従事になるのですか。主人がせぬと奥さんがやる場合でも常時従事になるのですか。
  306. 中野和仁

    ○中野政府委員 日本の普通の農業経営は家族経営でございますので、主人、あるいは奥さん、あるいはその息子さんが従事するということで、世帯員がその地方におきまして普通の農業をやっております場合には、大体そこでずっと働くという観念でございます。したがいまして、日数で申し上げますと、普通は大体百五十日は働くというのが、われわれ常時従事と考えております。
  307. 佐々栄三郎

    ○佐々委員 だから、主人でなくても奥さんが百五十日ですか、やればいいんですね。
  308. 中野和仁

    ○中野政府委員 そのとおりでございます。
  309. 佐々栄三郎

    ○佐々委員 奥さんが、たとえば十町歩のうち一町歩を常時従事するような場合でもいいんですか。
  310. 中野和仁

    ○中野政府委員 奥さんの能力が一町歩が限界であって、十町歩お持ちの場合に、御主人があるいは東京で役職についておられるといったような場合に、雇用労力を入れてやることは差しつかえございません。
  311. 佐々栄三郎

    ○佐々委員 いままでお伺いしたところによると、私は、今度のこの土地所有の上限制限の撤廃というものは、現実の必要性が希薄なだけでなしに、むしろお金を持っておる者が土地を集中する。しかも、奥さんがやればいい。その奥さんも一部分やればいいというようなことでは、これから農村の自作農主義というものは、実際破壊されると思うのですね。破壊しかかっているのだからそれでいいようなものの、実際問題としてそういうような形でだんだんと、特に都市の近郊で、値上がりの見込みのあるようなところの土地を買い占めにかかって、奥さんだけにちょっとやらすというような形が出る。いままでは一町歩だったのですが、今度は無制限ですから、何十町歩でも買えるのですね。それで土地投機をやれますね。いままでは制限があったからそういうことまでできなかったでしょうが、今度はそういうような道を開くのですね。あなた、農業政策という点からいってこんなやり方はいいでしょうか。そんな必要性がありますか。あるとしても、ちょっと時期尚早ではないでしょうか。土地投機を促進するようなものじゃないでしょうか。
  312. 中野和仁

    ○中野政府委員 先生の御設例のようなことに、今後なっていくということになればそういうふうに考えられますけれども、われわれが考えましたのは、先ほども例に引きましたように、酪農の三十頭経営あるいは五十頭経営、場合によっては、大きな機械を入れていきますとオペレーターも雇用するような場合もありましょうし、そういうふうなものの考え方から、今後の農業を発展させていく上において規模の拡大に支障がないようにするというのが本来のねらいでございます。  いまの御設例のように、土地集中をしてどうとかというような場合でございますけれども、そういう場合、はたして土地取得で効率的な経営がやれるかどうかという観点から判断をいたしまして、許可しない場合があるわけでございますから、御心配はないのではないかと思います。
  313. 佐々栄三郎

    ○佐々委員 あなたは心配ないと言うが、法律というものはできたらひとり歩きするのです、実際立法の趣旨から離れて。あなた方がここでお答えになるときには、何か心配ないような感じがまたわれわれもしますけれども、これが一応法律になったら、そういうようなきれいごとでは済まぬのです。やはり土地というものを投資の対象にして、ほんとうの農業経営でなしに土地投資の目的に使われる。農業経営にしたって、ここにあるいわゆる常時従事とかいうような制限、それからその他の制限があっても、雇用労力の撤廃ということによって、ほんとうは奥さんがやるだけ、何百人という人を雇った農業もできるのです。これでもまだ農業をやればいいのですが、当分しばらくの間は農業をやっておって、またそれを人に売ったりして、土地を取得する目的でこの条文か使われるということが起こるのですね。  だから、私は先ほど来いろいろ言うておるが、あなた方は将来の規模拡大という問題を非常に理想の方針のように見て、そこへとにかく一歩でも近づこうということばかり一生懸命考えて、さて、現在そういうような改正をしなくちゃならぬという必要性がどの程度あるかということを考えてみると、それをあえていま改正しなくても、現在やっていけないことはないという状況の場合が非常に多い。しかも、それによって非常に害悪を流すとか、農民に被害を与えるとか、農村に弊害を及ぼすというようなおそれがないならばいいのだけれども、むしろそういうおそれがある。払う犠性があまりにも多過ぎるのですよ、経営規模拡大のあなた方の理想主義というものは。だから、私はもう少し、勇み足にならずに、農村の現状とかいまの経済の状況というものを見ながら、経営規模拡大を考えていくのがほんとうじやないかというような気がしているのですが、どうでしょう。
  314. 中野和仁

    ○中野政府委員 三条二項の各号全部によっていろいろ判断をするわけでございますから、先ほどのような場合、この八号によりまして土地の効率的な利用ができないという場合は、そういう経営状況であればそれは許可をいたしませんし、われわれとしましては、先ほどからも繰り返し申し上げていますように、今後経営規模の拡大をはかり、構造政策を進めていく上におきましては、この程度の改正は、その前提としての条件整備として必要ではないかというふうに考えておるわけでございます。
  315. 佐々栄三郎

    ○佐々委員 とにかくこれは、文字どおりそういう雇用労働による経営というものを考えられた具体性のある、現実性のあるものと仮定しましても、現実の農村で雇用労働による大規模経営というのは、いまの農業収益をもってしては、雇用労働力を確保するというのは非常に困難ですからね。せっかく法律ができたって、何十人という人を雇ったそういう経営が実現される可能性は、私は現在の段階においてはないと思うのです。それからもう一つは、何ぼ土地をたくさん持ってもいいのだということになっても、いまのような農地価格で、土地を買って大規模経営をやるといったって、それは引き合わぬですからね。そういうような希望者もないように私は思うのです。そういう点からいって、この法律に具体的に該当するような雇用労働力による経営規模の拡大というものが可能かというと、これは不可能だ、せっかく法律をつくっても役に立たないのじゃないかというような気持ちが現在のところ私はしておるのです。  そういうことをいろいろ総合してみますと、この改正というのは、むしろ農村が資本によっていろいろこうむる害悪という点は、先ほど言ったように非常にあるけれども、これによって日本農業の経営の発展という点からの利益というものは、あなたが考えておるようにはないのじゃないかというような気が私はしておるわけです。  次に、五号は下限の制限の問題です。これは私、初めに申し上げましたのであまり申し上げることはないのですけれども、その中で、先ほど申さなかったことを申し上げますが、今度の改正によりまして採草放牧地も同じように五反、それから北海道は二町というような制限になっておるのですね、取得後。この農地のことは先ほど申しましたけれども、採草放牧地について、現行法は農地三反、採草放牧地三反、改正案は農地五反、採草放牧地五反というふうになってきておるのです。これは数字が合っておるからこういうふうにしたのですか。私の考えでは、採草放牧地というのは農地に付属的に利用されるものだから、何も農地の反数と同じでなくてもいいと思うのです。なぜ同じ五反になったのか。もっと少のうてもいいのじゃないですか。
  316. 中野和仁

    ○中野政府委員 採草放牧地の役割りにつきましては、農地法を制定しましたときのように、耕種農業に密着しているというようなことがだんだんなくなってきたわけでございますから、むしろ三反とか五反というのは、逆にいえばあるいはおかしいのかもしれません。そこで農地と同じように、五反に上げたから五反としたわけでございまして、特に三反にしておかなければならない理由が、逆にないのではないかというふうに思います。
  317. 佐々栄三郎

    ○佐々委員 そうすると、何も意味なしに五反にしたというわけですね。五反になったという立法理由はないのですね。
  318. 中野和仁

    ○中野政府委員 そういうふうに申し上げたわけではございませんで、採草放牧地の役割りも変わってきておりますので、むしろそういうところは改良して草地をつくっていくというような方向に持っていく必要があるわけでございます。二反や三反というような程度で下限をきめるよりも、もっと大きくしたほうがいいということから、農地と同じように五反にしたわけでございます。
  319. 佐々栄三郎

    ○佐々委員 次に、下限面積に例外を認めるのかどうか。私のほうは非常に零細農家が多いところなんですが、例外を認めるかどうか。特に島嶼部なんかいかがですか。
  320. 中野和仁

    ○中野政府委員 その点は現行法どおり、改正案でも例外を認めるつもりで改正をいたしておりません。従来どおりこの例外は認めたいと思います。
  321. 佐々栄三郎

    ○佐々委員 次に、三条二項の六号、創設自作地等の貸し付けについてお尋ねをしたいと思うのです。  創設自作地の場合で、十年を経過したものについては、今後貸し付けを許すというような改正案になっておるのですが、これはどういうようなところから十年という数字が出てきたかということです。
  322. 中野和仁

    ○中野政府委員 現行法によりますと、自作農創設で政府から売り渡しを受けた土地は、これは売ることは許可を受ければできるわけでございますが、永久に貸せないということになっておるわけでございます。しかし、農地改革後二十数年たちまして、農家の事情もいろいろ変わってきておるということを念頭に置きまして、やはり政府が売ったものにしましても、十年そこを耕作しておれば、あとは、その農家の事情によりましては貸してもいいのではないかというふうに考えたわけでございます。  十年の根拠といたしましては、いわばこれは直接それが根拠になるかどうかわかりませんが、現に未墾地を政府が売りました場合には、成功検査後三年、大体八年までは政府が買い戻しますけれども、それ以上は買い戻さないというようなこと、あるいは民法の取得時効も十年というようなことがございますので、大体十年政府から買ったものを耕作すれば、あとはそれ以上永久にいけないという必要はないのではないかというふうに考えたわけでございます。
  323. 佐々栄三郎

    ○佐々委員 第三条の二項の八号、農業経営の状況と通作距離の問題ですが、この改正案によりますと、個人の能力や熱意というものに関係なしに、土地の効率的な利用という政策的な観点から、権利取得の許可を受けられるか受けられぬかということになったように私は思うのです。  これは従来の現行法の場合と比べますと、行政的な点からいうと、現行法は覊束裁量的な、非常に制限を受けた裁量行為だと思うのです。改正案は非常に行政官の自由裁量の余地があるような、そういう幅の広い改正になっておるように思うのです。これは実際当事者の場合から見ますると、やはりかなり重要な問題なんですね。行政官の恣意によって自由裁量の余地が従来より大きくなったのですが、なぜこういうような改正をなさったか。
  324. 中野和仁

    ○中野政府委員 現行法の規定でありますと、農業生産が低下することが明らかな場合ということで、先生おっしゃいましたように、行政庁の認定の余地はほとんどありません。ということは、農業経営をやるといって許可申請された者が、ほんとうは土地取得だけをねらっておるのだけれども、そういう場合でも、ほんとうにその人が農業生産が低下することがわからない場合には許可せざるを得なかったわけでございます。  しかし、それでは土地の効率的利用に欠けるという面もございますので、今回のようにその人の経営なり、あるいは通作距離等を判断いたしまして、効率的に使えるかどうかの判断の余地をもう少し加えたわけでございます。
  325. 佐々栄三郎

    ○佐々委員 もうだいぶんいなくなったので、もう一問くらいで私もやめたいと思うのです。  それで、この第三条の問題について最後にお聞きしたいのですが、三条の一項のただし書きに、「その他省令で定める場合」、これは農地、採草放牧地の所有権、使用収益権の設定、移転につき、知事や農業委員会の許可を必要としない場合として、省令で定めた場合は許可が要らないということですね。先ほど芳賀さんだったか、いろいろ議論をしておられたいわゆる省令、政令への授権、委任の問題です。  それから、この三条の二項のただし書きに、やはり「政令で定める相当の事由があるとき」ということで、三条二項二号の二は、農業生産法人以外の法人が農地、採草放牧地の所有権を取得できる、四号の場合は所有権、使用収益権の取得によって農作業に常時従事しなくてもできる、五号の場合は下限制限を受けない、八号の場合は経営状況、通作距離からの取得制限が、政令で定める相当の事由があればない。こういうように、法律規定せずに、権限を政令なり省令に委任する問題、これについて私は、こういうように委任をしていけば、これは従来からあった法律ですが、せっかく私たちがここでいろいろ審議をしましても、これを行政官として、われわれの審議の場でないところで、この条文で許可不要の事項とかなんとか幾らでも入れられるわけですね。私はこれはおもしろくないと思うのですが、いかがですか。従来どういうような場合がこれに適用されるようになっておったかということも、あわせてひとつお聞きしたいと思うのです。
  326. 中野和仁

    ○中野政府委員 権利の移動の許可の場合の例外としまして、許可除外の場合が三条の一項に書いてありますが、その場合の最後に省令ということで書いてありますのは、省令でございますから、法律で許可除外になっておりますものと同じような性質のものについては許可除外をいたしますけれども、それを飛び越えて、農林大臣の省令でかってにそういう許可除外をつくるということはできないわけでございます。  施行規則の三条でございますが、大体そういうような観点から、現在は一号から七号まで除外の場合を書いてございます。
  327. 佐々栄三郎

    ○佐々委員 こういう問題はまだほかにもあるのです。たとえば、もう一つ申し上げますと、五条の一項四号に、「その他省令で定める場合」とある。これは農地、採草放牧地の転用のための権利移動の制限ですね。知事または農林大臣の許可を必要としない場合として、「その他省令で定める場合」とあるのです。これも私は先ほどの問題と同じだと思うのです。私たちが五条に該当する問題についてここでいろいろ議論をしましても、あなた方が省令で出せば、もう簡単に何もかもいくのじゃないですか。先ほどの答弁、私ちょっと理解できなかったけれども、この五条の問題と関連して、もう一度おっしゃってみていただきたいと思うのです。
  328. 中野和仁

    ○中野政府委員 現在の第五条におきまして許可除外にしておりますのは、国や県が転用のために土地を取得する場合、あるいは土地収用法による場合、それから新住宅市街地開発事業、これはその後直りまして、市街化区域内における市街地開発事業というものは許可除外になっております。  こういうことからいたしまして、それと同じような場合、たとえば国に準ぜられます道路公団、道路は大体路線がきまってきますと、位置の選定について任意性がないものですから、こういうような場合とか、それから鉄道建設公団の場合、いろいろそういうような場合で、特に現在は転用許可基準で運用しておりますけれども、その運用をしなくても差しつかえない明白な場合だけは許可除外にしておるわけでございまして、法律で許されないようなものを省令でかってに許可除外にするということはいたしておりません。
  329. 佐々栄三郎

    ○佐々委員 それでは四条、五条に入りますが、いま言った「その他省令で定める場合」として、これから何か予想しておるものがありますか。許可なくしてやれるような場合ですね。
  330. 中野和仁

    ○中野政府委員 転用許可を受けたいほうからしますと、許可がめんどうなものですから、関係各省を通じましていろいろな要請は来ております。  ただ、きょう現在、それじゃこの法律の御審議中に、省令を直すというようなところまで具体化したものはございません。
  331. 佐々栄三郎

    ○佐々委員 電力会社の鉄塔なんかの敷地の所有権の移動、あるいは賃借権、これは従来どういうようにやっておるのですか。許可を要しておるのですか、要しておらぬのですか。
  332. 中野和仁

    ○中野政府委員 電力会社の高圧線なんかの鉄塔敷地につきましては、現在は農地転用の許可を受けなければできないことになっております。これにつきましては、かねてから転用許可の除外にしてもらいたいという要請はございます。
  333. 佐々栄三郎

    ○佐々委員 これは大臣おらぬから、政務次官にひとつお答え願いたいのですが、電力会社の鉄塔敷地というのは、これは農村からいうと実に迷惑な話なんですね。いまお話を聞くと、許可事項からはずしてくれという要求があったというのですね。これは許可事項からはずしてもらっては困ると私は思うのです。この問題を省令で許可事項からはずすというようなことをしないようにしてもらいたいと思うのですが、ここで確約してもらえますか。
  334. 小沢辰男

    ○小沢(辰)政府委員 実は、電力会社の鉄塔の用地は、全く任意なところというよりも、もうきまっているところでございますので、通産省が希望することも私ども理解できるわけでございます。しかしながら、従来の方針の変更でございますので、慎重にいま検討しているところでございます。
  335. 佐々栄三郎

    ○佐々委員 慎重に検討しておるというのでは、私はきょうは納得できないのです。これは許可事項の中に入れて、省令で許可からはずすということは、農業、農村、農民の立場からいうてしてもらいたくないのです。
  336. 中野和仁

    ○中野政府委員 先ほど申し上げました道路公団の場合でも、これははずしますと同時に、ただはずしっぱなしじゃございません。あらかじめ知事なり農政局、それから道路公団なら道路公団と、その路線について事実上の話し合いをして、その場合には当然地元が加わりまして、農業委員会はじめみんな加わりまして、納得のいったところでやっておりますので、そういう運用はしておりますから、その辺は心配ないかと思います。  電力会社の場合は、いま政務次官から御答弁がありましたように、なお研究しなければならない問題だと思っております。
  337. 佐々栄三郎

    ○佐々委員 だから私は、省令で委任するということは非常な問題だと思うのです。われわれは何も通産省の立場から審議しているのじゃなく、農業の立場から審議しているのです。たんぼの中へぼこぼこと建てられて、農業の側からいって迷惑じゃないというはずはないですよ。だからこれは、法の条文の中で省令の委任事項というものがなければそういうことはできないのです。しかし、省令の委任事項というものがここにあって、ここで可決された以上は、あなた方は通産省と話し合って、電力会社と取引して、どんなことでもできるのです。  しかし、それは具体的な場合に、鉄塔を建てるについて、一つ一つ許可を受けてやるならばいいですよ。それを包括的に許可を受けずにやれるというようなことをしてしまったのでは、民衆がそれらについて意見を述べる機会がないでしょう。つくったからといって、じゃまにならぬところまでじゃまするわけではないけれども、やはり許可を受けるようにしておくのがほんとうですよ。あなた方はそういうような陰謀を持っていると思うのですよ。そういうような返事がはっきりしないところを見ると、おそらく電力会社は、何か省令で許可不要にしてしまうつもりであると思うのですよ。しかし、それはいけないですよ。電力会社を許可事項からはずさないということを確約してください。
  338. 中野和仁

    ○中野政府委員 るるお話しでございますが、この場で確約しろというようなことでございますが、現在通産省からもそういう話がございますし、われわれも、年間どういうところがどういうふうに農地がつぶれて、農業上どういう影響があるかというようなこともあわせていま調べておりまして、その辺を調べた上でやりませんと、この場合は、電力会社が最終的には収用ができるというような措置でございますので、これはやるということを申し上げているわけではございませんけれども、法律にそれが書いてないからといって、省令では全然書けないという問題ではございません。その辺をいま関係各省ともよく相談しておるところでございます。申し入れがあったことでございますので、検討しておるわけでございます。
  339. 佐々栄三郎

    ○佐々委員 あなた方は、相手がこういう独占資本になってくると非常に弱いですね。そうして、農民というものはばらばらですから、あなた方の思うままになるのですね。だから、われわれは農民の立場からいって、農民の権利を主張するということは、こういう機会しかないからやはりしつこく言うのですよ。ここで私たちが譲歩したら、あなた方は必ず、電力会社はどこでも鉄塔を建てられるようにやってしまうでしょう。しかし、それは農民の立場からすれば非常に迷惑な話なんですよ。だから、ここでわれわれがそういう要求をやったからということになれば、あなた方は電力会社に対しても、通産省に対しても強くなると思う。あなた方自身がそういうふうに話し合っておったら弱くなるから、それを私は強く要求するのです。鉄塔というのは、ずいぶん場をとるのですよ。これは農業生産からいっても非常に妨害になるのです。だから私は言うのですが、許可不要事項の中に入れないということをこの機会に私は確約してほしいのです。
  340. 小沢辰男

    ○小沢(辰)政府委員 御承知と思いますけれども、この鉄塔の建設の事業といいますか、これにつきましては、土地収用の関係がやはり道路と同じようにできるようになっているわけでございます。たとえ許可を要する事項になっておりましても、むしろ土地収用法のほうが強いわけでございます。しかし、私どもはやはりこの農地法のたてまえから、農地の保護といいますか、保全といいますか、そういう立場から、いままではそういう権限の行使にならぬようにやってきたわけでございます。  いろいろお話しでございますけれども、やはり地域の開発なりあるいはその他いろいろな目的のための多種多様な問題が出てまいりましたときに、私どもとしては先生の御趣旨のように、農地を守るといいますか、農業を保護するといいますか、そういう立場をあくまでも貫きながら、そういう社会的な要請に対して、あるいはまた地域の開発に資するようないろいろな問題等が出ました場合に、それとの調和をはかっていかなければならないことは御理解いただけるだろうと思うわけでございます。したがって、そういう場合には、先ほど農地局長が道路の問題の例のときに申し上げましたように、県あるいはその他の公的な機関が中に立って、十分地元の状況等を把握しながら問題解決の方向に、調和のとれる方向に進めてまいるということは、これは行政庁としては当然のことではないかと思うわけでございます。  いま、ずばりどっちにするのだ、はっきりしろ、むしろばずすようなことはするな、それについて明快な確約を得なければというお話でございますけれども、私どもはその申し入れを受け取って、いまいろいろ検討している段階でございますので、この点は、ここで私がお説に従いますというふうにも申し上げられませんし、また、許可からはずすとも申し上げられない。この点は、それぞれ政府部内のいろいろな問題を担当している役所の事情を十分聞きながら、農林省としては農地を守るといいますか、農政をやる者としての責任をいかようにして果たしていくかということを、十分検討しながらいかなければならぬ問題でございますので、暫時御猶予を願いたいと思います。
  341. 佐々栄三郎

    ○佐々委員 次官に申しますが、私は電力会社に土地を貸すなとか、土地を売るなということを言っておるのじゃないのです。従来知事あるいは農林大臣の許可を得てやっておったのでしょう。許可を得てやればいいじゃありませんか。知事だって大臣だって良識がありますよ。あなたはいま開発事情だとかいろいろ言われたが、そういうような立場に立って許可すればいいんでしょう。何がそれの妨げになるか。そういう許可もなしに、もう自分らの思うようにさしてくれという要求が電力会社からあるんでしょう。それでは農民が迷惑だから、知事なり大臣を信頼して、大臣、知事の許可を必要とするという必要事項の中に入れてもらいたいというだけのことです。それをあなたは、知事や大臣の許可事項の権限から外にはずして、電力会社のかって気ままにさせなければならぬ理由が一体どこにあるのですか。そういうようなところまであなたのほうはいまの電力会社に足を突っ込んでいるのですか。そこまで通産省に対して譲歩しなければいかぬのですか。あなた方は農地の権利移動については、この五条によって権利を与えられておる。その権利をあなた方行使すればいいじゃないですか。なぜそれを放棄しようとするのです。  先ほど来くどく言うようですけれども、電力会社に土地を貸すなとか、売るなということじゃないことだけはわかってください。そうでしょう。いままでどおり許可事項にしておいたらいいじゃないですか。省令をつくる必要はないじゃありませんか。
  342. 小沢辰男

    ○小沢(辰)政府委員 お話はよくわかってお答えをしているつもりなんでございますが、現在許可事項になっております。その場合でも、考えてみますと、この事業は土地収用法の手続をとり得る事業でございます。そちらのほうがこちらの許可の問題よりは、いわば法的な権限といいますか、強制力からいえば強いわけでございます。いまの問題をおきまして、許可事項でない、はずれているものでも、たとえば、いまの鉄塔の問題がはずれた場合を想定いたしましても、電力会社がかってに何でもできるわけではありません。当然これは農民との話し合いのもとでそれが成立して、初めてできるわけでございます。  いま政府部内では、地域開発の必要性からくるいろいろの問題の要請を受け取りまして、私どもとしても検討しないで、だめだだめだといつまでもやっているわけにはいきませんので、慎重に検討いたしておるということを申し上げているわけでございます。ここでやはり行政府というものは慎重にものごとを進めてまいらなければいかぬわけでございますから、先生の要請があるから、ここでやりませんと言うわけにもいきませんし、また、要請を受け取ったばかりでいま検討しつつあるところでございますから、また、はずしますということを私どもはきめたわけでもございませんし、そういう点は、いろいろ行政上の諸要請をよく検討しながら、しかも他の法律体系等のことも考えながら、慎重に検討をいたしておるそのままを申し上げているわけでございまして、ひとつしばらく猶予をいただきたいと言っているわけでございます。
  343. 佐々栄三郎

    ○佐々委員 土地収用法とかなんとかの話もありましたが、土地収用法で土地を取るということは、なかなかそう簡単にいけるものじゃないんですよ。いずれにせよ、私は現在のあなた方が持っておる許可権限は、相手が独占資本であろうが何であろうが持っておるのがほんとうであって、独占資本対農民という関係で放棄すべきものではないと思うのです。そこはやはり行政庁としての保護機能が発揮されなければならぬ。あなた方は保護機能を放棄しようとしておるのだ。だから私は賛成できない。しかし、これはいずれ後日、私は農林大臣出席の席で確約をとりたいと思います。  そこで、この問題に関連して若干お尋ねしたいと思うのです。それはいままでに電力会社の敷地で所有権を移転した場合に、五条で許可をした件数とその面積、一基当たりの広さ、こういうものをひとつお知らせいただきたい。
  344. 中野和仁

    ○中野政府委員 農林省で農地転用の許可の統計をとっておりますけれども、電力会社の敷地という統計をとっておりませんので、そちらの側からの件数は申し上げかねるわけでございますが、通産省からわれわれが調査したところによりますと、三十九年から四十一年の年平均にいたしますと、鉄塔敷地になりました面積は六十五ヘクタール、そのうち農地面積は二十三ヘクタール、約三五%に当たります。  この農地面積は三年間で六十九ヘクタールで、そのうち、電力会社が所有権を取得いたしましたのは五十六ヘクタール、それから賃借権によりますものが約十一ヘクタール、その他は地役権等ということになっております。
  345. 佐々栄三郎

    ○佐々委員 その所有権の売買の価格、それから賃借料というものはどういうふうになっておるか。あなた方は許可する権限をいまのところは持っておる。これからは持たぬのかもわからぬけれども……。
  346. 中野和仁

    ○中野政府委員 許可をいたします場合に、所有権の売買だとか、あるいは賃借料が幾らかというのはわれわれとっておりません。これも通産省から調べたところによりますと、売買価格は、田が平米当たり二千八百四十五円、畑が三千百二十四円、大体反三百万円ぐらいになっておるようでございます。
  347. 佐々栄三郎

    ○佐々委員 まだほかにこの問題に関連してお伺いしたいことがあるのですけれども、少し話がこまかくなりますから、この問題はこの程度にいたしておきます。ただし、先ほどの許可事項からはずすという問題については、事が重大でありますので、農林大臣出席のときに質問したいと思います。  それから、四条、五条の権利移動についてなお二、三お尋ねをしたいのですが、この四条の規定は、農地の転用を規制して、採草放牧地の転用を規制しておりません。これは現行法がそうなんですが、今度採草放牧地の利用権の設定というのは、七十五条の二で新たに設けられようとしておる。それから畜産政策、飼料政策という点から申しましても、この転用の規制は私はやはり必要ではないか、こう思うのですが、これを従来どおりにしておく理由は一体どこにありますか。私は、新しく七十五条の二で草地利用権の設定というような積極的な姿勢を示されたのですから、転用規制というものも、今度新たに改正があるべきものだと思いますが、それがない。一体どういう事情によるか。
  348. 中野和仁

    ○中野政府委員 第四条の場合は、農家が自分の土地を転用する場合でございますので、当時の立法といたしましても、農地は大事であるから、採草放牧地は大事でないからということではございませんけれども、当時農地は転用許可にかける、それから採草放牧地は、当時からかけておりません。  これは農家の採草放牧地でございますから、そういう利用調整という点からしまして問題はないということから、現行法でもそうなっておるわけでございますし、今回の改正の場合にも、より強く農家の採草放牧地の転用の規制をいたすということにはいたさなかったわけでございます。
  349. 佐々栄三郎

    ○佐々委員 しかし、この草地の利用権の設定というのは、他人の土地に対して利用権を設定するのですね。そうすると、自分の採草放牧地なら何に転用しようがいいというわけですか。だから、自分の土地だから採草放牧地は何にしてもよろしいという、そういう御見解ですか。私は少なくとも他人の土地まで規制するのなら、自分の採草牧放地もやはり転用の許可があってしかるべきだと思うのです。田にするのならまた別です。農地にするのなら別ですけれども、採草放牧地以外にするのなら、やはり規制する必要があると私は思うのです。
  350. 中野和仁

    ○中野政府委員 草地利用権の場合は、採草放牧地もございましょうし、山林もございましょうが、その草地を取得しまして、軽易な工事を施しまして農地にするわけでございます。そこでそういう規制をいたしておるわけでございますが、採草放牧地のままでは、先ほど申しましたとおり、畜産的な利用としては非常に粗放なものでございますから、あえて規制をしていないのでございます。
  351. 佐々栄三郎

    ○佐々委員 そう言うのなら、七十五条の草地利用権の設定というような規定を設けないほうがいいのじゃないですか。矛盾しておりますよ、それは。そこまで採草放牧地を確保して、いわゆる畜産行政、総合農政の方向に向いた政策をとりながら、やはり個人の転用の場合も、採草放牧地を他の農地、あるいは採草放牧地以外にするような場合には、やはりこれは規制するという、そういう姿勢を示すのが私はほんとうだと思います。いかがですか。
  352. 中野和仁

    ○中野政府委員 そういうお話もあるかと思いますけれども、繰り返すようで恐縮でございますが、現段階におきまして、個人の農家の持っておる採草放牧地まで一々それを他に、植林する場合、あるいはその他にする場合がございましょうが、一々許可をする必要はないのではないかというふうに判断をしておるわけでございます。
  353. 佐々栄三郎

    ○佐々委員 都市計画法等についていろいろ質問をしたいことがあるのですが、この農地法審議を逸脱せぬ範囲で、二つばかりお尋ねをしておきたい。  それは都計法の三十四条によりますと、市街化調整区域の開発行為につき知事の許可事項を規定しておるわけですね。これによりますと、農家の人が分家や別家をするような場合の住宅建設、これが許可にならないので、いま農村では非常に困っておるのですね。調整地域に自分の土地はあるけれどもそれができない。他の土地を買えば非常に高くなる。そういうようなので非常に恐慌を来たしておるのですが、そういう別家とか分家とかいうような場合に、特例事項を認める意思があるか、ないか。
  354. 中野和仁

    ○中野政府委員 これは都市計画法上の取り扱いの問題でございますので、農林省として有権解釈というのは無理でございますが、いまのお話の農家の分家の場合、都市計画法の二十九条の二号によりまして、市街化調整区域内において行なう開発行為で、農業の用に供する建築物、またはこれらの業務を営む者の居住の用に供する建築物の建築の用に供する目的で行なうもの、これは許可除外にしております。したがいまして、農家が分家をいたしまして農業を営む場合は許可除外になっております。  おそらく御指摘の場合は三十四条の一号で、日常生活のため必要な物品の販売、加工、修理等の業務を営む店舗等をつくる場合の開発行為、これは許可ができるわけでございます。そこで抜けてまいりますのは、農家から分家をしましてサラリーマンで通勤をする、これでございます。これはこの法律上からは許可できません。われわれ都市計画法を見ましても、しいて解釈すれば、この三十四条の十号に口というのがございまして、開発区域の周辺における市街化を促進するおそれがないと認められるような場合、それは許可できまずから、その辺の運用で今後考えなければならないかと思いますけれども、解釈上はそういうことになっております。
  355. 佐々栄三郎

    ○佐々委員 まだ私の質問は、解約、小作料等の問題が残っておりますので、質問を次回に譲りまして、きょうはこれで終わりたいと思います。
  356. 丹羽兵助

    丹羽委員長 速記をとめてください。   〔速記中止
  357. 丹羽兵助

    丹羽委員長 速記を起こしてください。  佐々議員の御質問の残余は後日に譲って、中山榮一君に発言を許します。中山君。
  358. 中山榮一

    ○中山(榮)委員 私の質問は、おそくもありますし、きわめて簡単に、三分か五分くらいで終わりますから、どうぞおつき合いをお願いいたします。  私は、地元で五千町歩余りの土地改良の理事長をしております。昭和二十一年に起工式をあげまして、本年は四十四年ですから、足かけ二十四年もやっておりますが、まだ土地改良が完成しないのでございます。こんなことじゃどうも困ると思っておるのであります。何で完了しないかといいますと、原因はやはりそういう方面の予算が足りないということなのです。私は実際口分が仕事をしていて痛切に感じておるのでございますが、そういう前向きの予算というものは、ほかの予算をしぼってももっと集中的に予算を集めて投入してもらいたい。予算のつくのが待ち切れないで融資でやろうというと、融資のワクがまた制限をされておりまして、これがまたできないというような現状であります。  土地改良というのは、皆さまが御承知のとおり、まとまった区画があるんです。それを分割してやられると、これは仕事上非常に困るのです。ところがそれを二分割する、三分割する、これは仕事上非常に困難であります。そういうことで、これから政府でもそういう方面を前向きに積極的におやりになるのだろうと私は思いますが、予算のワクをふやすこと、それからその他補助率の拡大、また融資の利息を減らすこと、そういうことを前向きにやっていかなくちゃならないのだが、現在の農林省の予算のワクでも、使いようによってはもっと有効に、そういう前向きの予算がつけられると私は思います。  それでその例に、私は干拓のことを気がついておるのでございます。米が必要以上に生産された、これは政府も農家もみんなが一斉に勉強してそこまで持ってきたのでありますから、非常な大成功だと私は思っております。たいへんけっこうなことだと思っておりますが、とにかく需要以上の米が余ってしまったというので、予算的にもその始末にも因っておるようなわけでありますが、この政府の干拓でありますが、いま干拓をやりつつあるところ、それからやろうとするところが、みんなで三万三千ヘクタールあるのでございます。米が余っているというのに、どうしてこれからたんぼをつくらなければならないのか、こういう問題であります。私は幾ら考えてもこの理由がどうもわからない。これをこれから完成をしていくのには——いま干拓をやっているところ、これから干拓をやろうとするところ、合わせて五十六カ所あります。これは予算どおりにはできませんが、この予算が千七百億ぐらい要るわけですね。しかし、これは五年も六年も、われわれのいままでの経験から徴しますと、あるいは十年以上もかかります。そうすると、いまのそろばんでつくった予算ではとうていできません。これは三倍あるいは四倍になってしまうかもしれない。そうすると、三千億、四千億の国費をこれから米をつくることに国は予算を投入していかなければならない。こういうことはどうだろうと私は思っております。  しかし、自分のほうの土地改良をやっているので、その米づくり、こういうことをやめろとは言いませんし、世の中は常に変化しておりますから、将来また人口が激増して、米がこれでは足らないという時期がこれから来るかもしれませんが、そのときにおやりになったらいいじゃないか。いま余っている時期に、米づくりにこういう大金をあらためて使っていくということは、これはどうかと思うのです。そういう金があったら、いま私が言う前向きのほうに使っていったら、これは予算の面でも相当楽になって、この米づくり農業が、省力農業ができるような状態に早く行くのではないか。むろん予算をふやす必要はあるだろうが、あらためてふやさなくても、いまの予算内でもよほどそういう方面に使っていくことができる。これからたんぼをつくってそして米をつくっていく、そういうほうに使う必要がないんじゃないかと私は思うのでございます。計画をしてしまったのだから、何でもかんでもやってしまうんだ、国費を使うんだという考えではないと思いますが、こういう点について政務次官、それから農地局長、官房長、おのおのの御意見をひとつお聞きしたいと思います。
  359. 小沢辰男

    ○小沢(辰)政府委員 私から代表してお答えをいたしますが、先生のおっしゃること、まことにごもっともだと私は思っております。本来ならこういう時期でもございますし、しかも、米価まで据え置いていただかなければいけないというようなときでございますから、農林省としても、干拓あるいはその他開田というものは極力御遠慮願いたい。  先生のおっしゃるように、その金があるなら、むしろ土地改良のまだ済んでないところ、着工して完成を見るになかなか至らないようなところのほうにうんと重点を注ぐべきだと考えたわけでございますが、何しろすでに着工し、あるいは全体実施計画というものが完了しているようなところで、それぞれやはりその地区内、あるいはまたいろいろ関係の国会国民を代表した方々の御意見、強い御要望等もございまして、万やむを得ず、そうしたすでに着工をしたようなところについては、いろいろ地元の事情等を勘案して、若干認めるような始末になったわけでございます。  土地改良の予算の効率的配分、あるいはさらに増額をすること、いわゆる土地改良の補助、非補助融資のワク等につきましても、私どもはまだ十分でない、うんと拡充強化していかなければいかぬと考えております。昨日米価決定する際におきましても、政府側でも新しい農政の展開のためには、しかも一方においては米作の思い切った転換をはかると同時に、特に生産性の向上をはかるというような点から、新しい考え方の総合農政というものを進めていかなければならない、それには何よりも基盤整備事業というものを重要視していかなければならないということになっているので、ひとつ来年は思い切った努力をいたしまして、十分御期待に沿うようにいたしたいと考えておるところでございます。  若干のそうした地元のそれぞれいろんな事情によりまして、計画を進めてまいったところに、全部ではありませんで、相当制限しながらも、やむを得ずそうした事業を進めてまいりましたことは、まことに残念でございますが、御了承いただきたいと思うわけでございます。
  360. 大和田啓気

    大和田政府委員 政務次官が詳細申し上げたとおりでございます。
  361. 中野和仁

    ○中野政府委員 政務次官がただいまお答え申し上げたとおりでございます。私、直接の責任者でございますので、開田抑制につきましては、先ほどの政務次官の趣旨に沿いまして、極力抑制するものはするという方向でやっていきたいと考えております。
  362. 中山榮一

    ○中山(榮)委員 大体わかりましたが、極力抑制生したいという局長のお話が一番ぴんときましたが、これから三万三千ヘクタールのたんぼをつくるということはどうも私は割り切れない。でありますが、お話はわかりましたけれども、これからやっていこうというところは、海の中を埋める、湖水を仕切ってたんぼつくる、これからその手をつけようというところが約一万ヘクタールあるのですが、こういうのも計画なんだから、国費のむだ使いでもやってしまうんだ、こういうことですか。
  363. 中野和仁

    ○中野政府委員 御指摘のように、国営の干拓事業で、二、三おととしあるいはさきおととし着工いたしましたが、まだ実際の着工に入ってないものもございます。現在漁業交渉を進めておるものもございます。それにつきましては、地元の御要望が非常に強いものですから、その段階で農林省が、先ほど政務次官もおっしゃいましたが、すぐに打ち切るというのはいかがかというようないろいろな事情がございますので、その辺は十分考えまして、慎重に対処いたしたいと考えます。
  364. 中山榮一

    ○中山(榮)委員 わかりました。
  365. 丹羽兵助

    丹羽委員長 次回は来たる十七日開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後七時二十七分散会