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1969-06-05 第61回国会 衆議院 農林水産委員会 第34号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十四年六月五日(木曜日)     午前十一時二十三分開議  出席委員    委員長 丹羽 兵助君    理事 安倍晋太郎君 理事 仮谷 忠男君   理事 藤本 孝雄君 理事 三ツ林弥太郎君    理事 湊  徹郎君 理事 兒玉 末男君    理事 森  義視君 理事 稲富 稜人君       大石 武一君    大野 市郎君       金子 岩三君    佐々木秀世君       菅波  茂君    瀬戸山三男君       田澤 吉郎君    中尾 栄一君       中垣 國男君    中山 榮一君       野原 正勝君    八田 貞義君       藤波 孝生君    松野 幸泰君       伊賀 定盛君    石田 宥全君       角屋堅次郎君    工藤 良平君       佐々栄三郎君    實川 清之君       柴田 健治君    永井勝次郎君       芳賀  貢君    美濃 政市君      米内山義一郎君    神田 大作君       小平  忠君    斎藤  実君       樋上 新一君  出席国務大臣         農 林 大 臣 長谷川四郎君  出席政府委員         農林政務次官  小沢 辰男君         農林大臣官房長 大和田啓気君         食糧庁長官   桧垣徳太郎君  委員外出席者        専  門  員 松任谷健太郎君     ————————————— 六月五日  委員石田宥全君及び永江一夫辞任につき、そ  の補欠として角屋堅次郎君及び小平忠君が議長  の指名委員に選任された。 同日  委員角屋堅次郎君及び小平忠辞任につき、そ  の補欠として石田宥全君及び永江一夫君が議長  の指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  委員派遣承認申請に関する件  農林水産業振興に関する件(米価問題)      ————◇—————
  2. 丹羽兵助

    丹羽委員長 これより会議を開きます。  この際、委員派遣承認申請に関する件についておはかりいたします。  農地法の一部を改正する法律案及び国有林野の活用に関する法律案、両案審査のため各地に委員を派遣いたしたいと存じます。つきましては、衆議院規則第五十五条により、議長承認を求めたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 丹羽兵助

    丹羽委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  なお、派遣委員の氏名、人数、派遣期間派遣地及びその承認手続等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 丹羽兵助

    丹羽委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  なお、航空機利用の必要があります場合には、あわせて承認を求めたいと存じますが、これにつきましても委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 丹羽兵助

    丹羽委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。      ————◇—————
  6. 丹羽兵助

    丹羽委員長 農林水産業振興に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。芳賀貢君。
  7. 芳賀貢

    芳賀委員 農林大臣にお尋ねしますが、昨日米価審議会において、食糧管理法に基づき、農林大臣審議会に、昭和四十四年産米穀に関する政府買い入れ価格についての諮問を発せられたわけであります。  この諮問主文を私ども検討しました結果、この諮問内容は、明らかに現行食糧管理法違反する内容を持っておりますので、これは違法の諮問であるということを判断いたしまして、実は作目九段南米価審議会の会場において、社会党といたしまして農林大臣にこの点をつぶさに指摘して、かかる違法の諮問は直ちに撤回されて、食管法に基づく正しい諮問を発せらるべきであるということを要求したわけであります。本日は、当委員会においてこの点を、政府を代表して農林大臣から明確にしていただきたいと思うわけでございます。  われわれが指摘しました点は、従来、毎年行なわれる農林大臣審議会に対する諮問趣旨は、その年度における米穀買い入れ価格決定するために、食管法第三条特に第二項に規定されておる法律に基づいて、生産費及び所得補償方式による米価決定をするために審議会意見を求める、こういう内容でありましたが、ことしはそれに加えて、「生産費および所得補償方式基本とし米穀需給事情を考慮して決定することにつき、米価審議会意見を求める。」こういう内容になっておるわけであります。この「米穀需給事情を考慮して決定することにつき、」というこの点は、明らかに現行食管法に抵触する点でありますので、何のためにこのような違法の諮問をつくられたかという点について、明確にしてもらいたいのであります。
  8. 長谷川四郎

    長谷川国務大臣 諮問内容は、ただいま質問者が読み上げたとおりでございまして、生産費及び所得補償方式基本として、米穀需給事情を考慮して決定することにつき、米価審議会意見を求めたのでございまして、いわゆる所得補償方式基本として経済事情、要するに需給というものも考え合わせて御決定を願いたい、こういうことを御諮問申し上げたのでございまして、何ら違反だとは考えておりません。
  9. 芳賀貢

    芳賀委員 委員会において大臣が直接、違法の諮問をしましたということはなかなか言いがたいと思いますが、食管法第三条の規定は、大臣も御承知と思いますが、「米穀生産者ハ命令ノ定ムル所ニ依リ共生産シタル米穀ニシテ命令以テムルモノヲ政府売渡スベシ」その第二項は、「前項ノ場合二於ケル政府ノ買入ノ価格ハ政令ノ定ムル所ニ依リ生産費及物価其ノ他ノ経済事情参酌シ米穀ノ再生産確保スルコトヲ旨トシテ之ヲ定ム」これが生産者米価決定にあたって、農林大臣米価審議会諮問すべき内容でなければならぬわけであります。  したがって、過去の長い米審における諮問内容を検討いたしましても、需給事情勘案してことしの米価決定するが、それについての意見を求めるというような、こういう異例な諮問というものは、いままで発せられたことがないわけであります。  しかも、いま私が指摘しましたとおり、食管法三条二項においても、価格決定する場合に、経済事情参酌事項はありますけれども、需給事情勘案して、再生産確保のために米価を定めるということは、これは全然食管法法律そのものはもちろん、これに付随する食管法施行令等においても、需給事情勘案ということは何らうたわれていないわけであります。これが食糧管理法に基づいて、政府買い入れ米価消費者に対する売り渡し米価をきめる特徴的のものであるということは、農林大臣承知のとおりであります。  ですから、単にことばの上だけで違法の諮問ではありませんというようなことを、国会の中の委員会で発言されても、そうですかということにはならないわけであります。何の目的をもってかかる違法の諮問をされたか、その目的趣旨を明確にしてもらいたいわけです。
  10. 長谷川四郎

    長谷川国務大臣 もちろん、目的はもう何ら他意もございませんで、現実現実として御諮問申し上げたのでございまして、かつて昭和二十年には、買い入れ価格というものを二回にわたって、需給実情において変えたこともございます。何といっても、経済実情というものは需給によって行なわれるものでございますので、その実情を申し上げたのでございます。  ただいま食管法第三条第二項とのお話がございますが、食管法施行令第二条第二項は、経済事情を参酌して、米価を一たん定めた後に経済事情の変動が著しい場合には、その一たん定めた米価改定することができる旨までも定めてあるのでございまして、かつてそういう例があったか、ないかというお話でございますから、ただいま、昭和二十年には買い入れ米価を二度にわたって変更したことがあるという事実を申し上げる次第でございます。
  11. 芳賀貢

    芳賀委員 昭和二十年ごろには、まだ農林大臣衆議院議員にはなっていないわけです。ですから、そういう直接立法府に参加していない、あなたが生まれてすぐあとのころのことを言っても、それは議論にならないわけです。ですから、今回の諮問の中に、特に需給事情勘案するということは何のためにうたったかという点であります。  これは私から指摘いたしますが、たとえば、ことしの一月の六十一通常国会休会明け堅頭において、佐藤内閣総理大臣の行なった施政方針演説の中にも、物価問題に関連して、今年度は生産者米価並びに消費者米価は、政府基本方針として据え置きするということを明らかにしておるわけであります。そのあと長谷川農林大臣は、当委員会において、昭和四十四年度における農林省の施策の内容について、農林大臣所信表明の形で委員会における表明をされたわけでありますが、米価問題については、ことしは消費者米価据え置きを前提として、生産者米価についても据え置きする方針であるということを、農林大臣はその所信の中で表明しておるわけであります。  この国会における佐藤総理生産者米価据え置き方針農林大臣方針というものを、米審諮問を通じて実現するために、食管法違反してでも需給事情勘案する、いわゆる需給均衡価格を導入することを米価審議会に同調を求める形の諮問をこれは出しているわけです。ですからその意図は、明らかにことしの生産者米価を昨年同様に据え置くための米価審議会意見を求めるということをねらいとして、このような違法の諮問を発せられたわけでありますので、これはむしろ米価審議会の立場においても、審議会の公正な審議権を拘束して特定の結論を出させるような諮問というものは、法律上から見ても、米価審議会の存在から見ても大きな間違いであるということは、あなたも否定はできないと思うわけです。  この点、こういう目的のために、違法とは知りながら需給事情勘案諮問をやりましたということを、率直にここで明らかにしてもらいたいわけです。
  12. 長谷川四郎

    長谷川国務大臣 私が昭和二十年の例をとりましたら、おまえはまだ国会へ出ておらぬとおっしゃる。私は昭和二十四年一月二十六日に登院いたしました。食管法昭和十七年二月にできております。昭和十七年ですから、イモのつるを食ったようなときももう食管法はできておるのです。そういう時代からの食管法についてのあなたの御意見じゃございませんでしょうか。とするなら、私が、たとえば昭和二十四年一月に衆議院議員となって席を持つことに何らふしぎはないはずでありまして、かつての例を、あるかと言うから申し上げたのでありまして、それならば、あなたの御質問をお取り消しを願いたいと存じます。  したがいまして、私がその所信方針を述べたということは、ぜひそうありたい、けれども、これは私がきめるわけにはまいらない。米価審議会がありまして、審議会答申を受けまして、その答申によって初めて米価というものが決定されるのでございまして、私がかってに米価をきめるというわけにはまいらないのでございます。御承知のとおりです。それは専門家のあなただからよくその点はわかると思うのです。でありますから、答申を受けてその答申に基づいて私は米価決定する考えでございますということを、必ずつけ加えてあるだろうと考えます。その点十分速記録のほうをよく読んでいただきたいと存じます。
  13. 芳賀貢

    芳賀委員 きょうは、食糧庁長官やあるいは官房長に鞭撻されて、だいぶ張り切っておるようですが、それではお尋ねします。  もとより食管法ができたのは昭和十七年であります。しかし、現在の食管法昭和十七年に成立制定されて、そのままの形で今日に至っておるというふうに大臣は考えておられるようでありますが、現行食管制度は十七年の制定以来何回国会において改正措置が講ぜられて今日に至っておるか。しかも、現在の食管法内容というものは、昭和何年の改正を通じて今日に至っておるかということは、これは大臣よくおわかりのようですから、その点を明らかにしてもらいたいわけです。今日まで何回国会において改正が行なわれて今日に至っておるか、あるいは、最終的な改正が何年に行なわれて今日に至っておるか、相当古い経過を御承知のようですから、その点をこの際明らかにしておいてもらいたいと思います。
  14. 長谷川四郎

    長谷川国務大臣 昭和十八年三月十二日、昭和十九年二月十日、昭和二十一年十一月十一日、昭和二十二年十二月三十日、昭和二十三年七月七日、昭和二十三年十二月二十七日、昭和二十四年三月三十日、昭和二十四年五月三十一日、昭和二十四年六月二十五日、昭和二十五年三月三十一日、昭和二十五年三月三十一日、昭和二十六年の四月の十日、昭和二十七年の三月三十一日、昭和二十七年五月の二十九日、昭和二十七年七月三十一日、昭和三十七年五月の十六日、昭和三十七年九月の十五日、いずれも基本となることは、その需給というものが基礎となって、そして生産を高めようというその考え方の上に立っていろいろ変えられているようでございます。
  15. 芳賀貢

    芳賀委員 それは大臣、いままで十五回の改正が行なわれておるわけです。
  16. 長谷川四郎

    長谷川国務大臣 十七回です。
  17. 芳賀貢

    芳賀委員 そこで、現在の食管法最終改正が何年に行なわれ、その改正というものはどういう経緯を経て今日に至ったかという、これが大切なんですよ。特に食管法の第三条一項、二項、食管法第四条の一項、二項の改正というものがいつ行なわれて、それが今日まで運営されているかということが、これが明確にならぬと、何回改正したという年月だけ続み上げてもこれは意味がないからして、まともに私と議論をする御意思がもしあるならば、現在の食管法の一番大事な点がどういう形で改正されたか、政府提案のとおりに両院で成立したものであるか、あるいは国会において大事な点が修正されて、そうして成立して今日に至っておるものであるか、この経緯というものを大臣がわからなければ、いかなる答弁を行なっても核心を突かぬということになるわけです。
  18. 長谷川四郎

    長谷川国務大臣 その経緯は、ただいま申し上げたとおり、食糧確保をいかにするかという、こういう点が基礎となって、需給という面が表に出て、そうして改定をされていることは事実でございます。
  19. 芳賀貢

    芳賀委員 ちょっと意地の悪いことになるかもしれぬが、現在の第三条の一項、二項、特に二項の「政府ノ買入ノ価格ハ政令ノ定ムル所ニ依リ生産費及物価其ノ他ノ経済事情参酌シ米穀ノ再生産確保スルコトヲ旨トシテ之ヲ定ム」それから消費者米価に関する第四条第二項の、「政府売渡価格ハ政令ノ定ムル所二依リ家計費及物価其ノ他の経済事情参酌シ消費者家計安定セシムルコトヲ旨トシテ之ヲ定ム」この改正の行なわれた経過について、あとのむずかしいことは御質問いたしませんが、この点が、今回の米審関係した重要な点ですからして、この改正が行なわれた国会における審議経過あるいはその結果というものについて、委員会を通じて明らかにしてもらいたいと思うのです。これは農林大臣から答弁してください。
  20. 長谷川四郎

    長谷川国務大臣 買い入れ価格生産費所得補償方式というものは、その中にもいまお話しの経済事情経済事情というものは、先ほども申し上げましたとおり……(芳賀委員「そうじゃない。法律改正経過ということだよ」と呼ぶ)その経過のこまかい点については、食糧庁長官をもって答弁させます。
  21. 桧垣徳太郎

    桧垣政府委員 農林大臣からお答えいたしましたように、十数次にわたる改正でございますので、それをすべてここで明らかにせよということは、容易なわざではないわけでございますが、食管法第三条第二項の改正が御質問のような趣旨で行なわれましたのは、昭和二十七年の五月二十九日の改正法律第百五十八号によっておるのでございまして、これは当時の食糧需給事情変化に伴いまして、いわゆる麦類が、従来政府の直接管理食糧でございましたものを間接統制に移行をする措置をとりました際、第三条の一項の中から「大麦、裸麦、小麦又ハ雑穀」というのを削除いたし、「其ノ生産シタル米麦等」というのを「其ノ生産シタル米穀」に改め、二項で、「生産費及物価其ノ他ノ経済事情参酌シテ価格決定するという趣旨でございましたものを、以上の点を「参酌シ米穀ノ再生産確保スルコトヲ旨トシテ」ということに改めたということでございます。  なお、四条関係では、同じく二項で、「消費者家計安定セシムルコトヲ旨トシテ」ということに改めたというのが重要な点でございます。
  22. 芳賀貢

    芳賀委員 私がこの点を特に指摘するのは、いま食糧庁長官説明した昭和二十七年における食管法の大幅な改正が行なわれた際、この食管法第三条、第四条関係の当時の改正というものは、政府提案のとおり成立してはいないのです。特に第三条、第四条のそれぞれ二項の規定は、これは現在の法律内容のごとく修正をして、これが成立した経過があるわけです。だから、政府提案がそのまま通って今日に至っておる場合は、これは政府国会に出して成立をはかった法案だから、立法の趣旨あるいはその条文の目的等については、政府のほうがわかっていますという逃げ口上があるかもしれぬが、この一番大事な点は、幸いにして当時われわれが、政府原案改正では、これは農民生産費あるいは所得を補償して、国民の食生活を安定させるための根幹である食管法の完全な運営はできないということで、第三条の第二項については今日のごとく、「生産費及物価其ノ他ノ経済事情参酌シ米穀ノ再生産確保スルコトヲ旨トシテ買い入れ価格をきめる、消費者米価については、「消費者家計安定セシムルコトヲ旨トシテ之ヲ定ム」というふうに、これはわれわれが国会で、政府改正案を修正して制定してあるわけです。だから政府の皆さんよりも、修正成立さしたわれわれのほうが、現在の食管法については、法律精神目的というものが、あなた方よりも数段われわれのほうが正確に把握しておるわけです。  それに照らしてみた場合に、昨日諮問をされました農林大臣諮問主文というものは、明らかにこれは食管法に抵触する違法の諮問であるということを指摘したのは、これは当然なことなんです。いいですか、農林大臣昭和二十年に何があるとか、十五回改正があったなんということを聞いておるのじゃないのですよ。あなたが諮問を発せられたその根拠である食管法第三条第二項の精神目的というものは、二十七年にわれわれが国会の中で、政府改正案を修正して通して今日に至っておるわけですからして、われわれ立法府の者が、これが間違いだということを指摘すればそのとおりのことなんですよ。いいですか、もう少し何か説明とか言いわけがあればおやりなさい。
  23. 長谷川四郎

    長谷川国務大臣 言いわけでも何でもございません。あなたが私に質問するからお答えをしているだけでございまして、何も他意はございません。ですからただいまのように、「前項ノ場合」とこうあるのは、そういう面はそのときの精神というものが十分この中に盛り込まれておる。その盛り込まれておるとおりに今度も諮問をいたしましたので、何もふしぎはないと私は考えているわけでございます。
  24. 芳賀貢

    芳賀委員 それでは、何のために法律あるいは政令にない需給事情勘案というものを、特にことさらに諮問主文の中に入れられたか、この点を率直に答えてもらいたい。
  25. 長谷川四郎

    長谷川国務大臣 生産費及び所得方式基本として、そして経済の中にある需給事情というものを考慮して決定することをお願いしたい、こういうことでございまして、あなたのおっしゃっていることと何ら違いはないと思います。
  26. 芳賀貢

    芳賀委員 それが間違いなんですよ。いいですか、法律には「経済事情参酌シ」ということはありますが、何も需給事情を参酌してきめるということはないでしょう。あなたの言われた施行令の第二条第二項も、最初にきめた生産者米価が、その後の経済事情の大きな変化によって、当然年度内に引き上げる必要のある場合には、農林大臣米審を開いてそこに諮問をして、値上げの改定をすることができるということが、これは第三条の規定に基づいて施行令でうたってあるわけです。値下げをするために、米審を開いてきめるというようなことではないのですよ。どこにもないでしょう。需給事情勘案して、足りないときには米価を上げる、多いときには米価を下げるというような、食管法というものはそういうものじゃないでしょう。  参考までに、一昨年、倉石農林大臣のときに政府諮問をされたその説明の中で、この点が明らかになっていますから申し上げる。これは、同じ自民党の農林大臣諮問したときの諮問内容です。主文については、「生産費および所得補償方式により算定することおよびこれに関し留意すべき事項について、米価審議会意見を求める。」ということで、これはいままで毎年こういうことになっておるわけです。その説明の中に、いいですか、これはよく聞いておかぬとまた間違いを繰り返しますよ。「諮問についての説明」として、「米穀政府買価格は、食糧管理法第三条第二項の規定により、生産費および物価その他の経済事情を参酌し、米穀の再生産確保することを旨として定めることになっており、米価審議会のご答申に基づき、昭和三十五年産米穀から生産費および所得補償方式によって算定いたしております。」これからが大事ですよ。「米穀農業生産および国民生活に重要な地位を占めており、食糧管理法により直接統制を行なっている主要食糧であることにかんがみまして、本年におきましても、生産費および所得補償方式により米穀政府買価格を算定してはどうかということであります。」このように、一昨年の倉石農林大臣米審諮問をされたときの大臣諮問についての説明が、非常に明確になっておるわけです。  ですから、政府米穀については、直接国の権力をもって管理をしておる。直接統制を行なっておる。農民生産した米については、政府以外に売り渡してはならぬという、こういう強権規定に基づいて、食糧管理法の第三条第一項というものは明確になっておるわけです。ですから他の農産物のごとく、政府に売ってもよろしいし、他に売ってもよろしいというような、第四条二の規定による麦のような間接統制とは違う。あるいはまた、農産物価格安定法によるイモでん粉等価格支持の場合とも違う。あるいはまた加工原料乳保証価格のように、間接的に政府価格を維持する場合とこれは違うのです。とにかくとれてもとれなくても、農民生産した米は政府以外他に売ってはならぬということを、これは国の管理、直接統制をもって縛っておるわけですからして、需給事情がどうかということは、これは国は考慮しないわけですよ。  農林省として、あるいは政府としては、物の値段をきめる場合には、自由経済の原則に基づいて、需要に対して供給が多い場合には、これは値段を下げるのがあたりまえである、需要に対して供給が少ない場合には、価格が上がるのは当然であるというような、自由経済の一つの法則に照らして、法律改正しないで食管法の中に需給均衡方式を導入しようという、そういう魂胆のもとに今度の諮問をしておるわけですが、こういう完全統制完全国家管理の中で、そういうような違法の諮問をするということは、もう明らかに食管法の大きな違反であるということは、これは疑う余地がないわけです。それをみずから戒めて、一昨年倉石農林大臣米価審議会に対して、食管法どおり諮問をすると同時に、説明の中においても、米価については食管法に基づいて、全面的に国が直接統制を行なっておるからして、生産費所得補償方式によってこれはきめなければならぬので、これに関連して留意すべき事項について米価審議会の公正な御意見を承りたいという、こういう諮問内容になっておることは御承知のとおりであります。  しかも、農林大臣昭和二十年からの食管法のことを知っておると言われましたが、それでは戦時中、戦後の長い間、一体需給関係というものが、食管法による生産者米価の中に反映されたことがありますか。食糧不足のときに、もしいまの政府の考えるような均衡方式を導入しようとすれば、政府買い入れ米価は、五割あるいは倍の価格政府が買い入れしなければならぬということにこれはなるわけですよ。むしろ食管法というものが、食糧不足の時代、食糧窮迫の時代に、生産者米価については、それを抑制する役割りを果たしてきておるのですよ。需給均衡の原則からいえば、これは当時数倍に高く買わなければならぬものを、食管法の権力発動によって政府以外には売ってはならぬ、政府のきめた価格で全部政府に売り渡せということで生産者を拘束した。これは決して需給均衡の法則によって価格をきめたわけではないわけです。むしろ食管法を悪用して、当然上げなければならぬ米価というものを、法律の力で押えてきたというのが、食管法における買い入れ米価形成の経過であるということは、大臣も桧垣食糧長官も、そのころはまだ若かったろうけれども、やはり当時から優秀な官僚の卵であるとするならば、食糧管理法がどういう作用を需給関係に果たしてきたかということは、これはもう論ずるまでもないことじゃないですか。  そういうことを全くほおかぶりして、しゃあしゃあと委員会に出て、昭和二十年がどうでありましたとか、二十一年がどうでありましたとか言うことは、これは全く僭越しごくだと思うのですよ。いいですか、当時相当非難されたはずの倉石君さえも、こういうまともな諮問を行なっておるわけです。しかるに、人情大臣だとか話がわかるといわれておる長谷川農林大臣が、いかに自分の意思ではないといいながら、桧垣食糧庁長官と大和田官房長、もう一人大口事務次官等、三人の農林省のいわゆる指導的な役人にあやつられて、これが正しい諮問であるというような形できのう諮問を出されたということは、同じ国会議員の仲間として、われわれは党派を超越してまことに残念にたえない次第です。もう少し謙虚に、法律に基づいた答弁をしてもらいたいと思う。
  27. 長谷川四郎

    長谷川国務大臣 お話がたくさんございますが、たとえば再生産ということばは、もちろん再生産というものをあくまで旨として米価決定はいたすのでありまして、再生産は、価格だけの問題で再生産を行なうのではないのでございまして、再生産をしてもらうためには、他の方法がたくさんあるだろうと考えております。それらの施策が、かつてずっと続けられてきておることは御承知のとおりでございます。  他の面につきまして、需給均衡ですか、この点については、食糧庁長官から答弁をさせます。
  28. 桧垣徳太郎

    桧垣政府委員 ……(芳賀委員「いいですよ。要求もないのに、何もあなたが答える必要はない。ちゃんとあなたが農林大臣に答えさせなさい」と呼ぶ)委員長から御指名をいただきましたので、ちょっと補足させていただきますが……。
  29. 芳賀貢

    芳賀委員 要求がないのにいいですよ。委員の要求があって初めて政府から答弁するのであって、われわれは政府を代表する農林大臣から責任のある答弁を求めておるわけです。答弁の内容がよくても悪くても、とにかく内閣の一員として農林大臣がおるわけだから、その大臣から直接責任のある答弁をするのが当然じゃないですか。
  30. 丹羽兵助

    丹羽委員長 桧垣食糧庁長官の発言許可を取り消し、農林大臣の発言を求めます。
  31. 長谷川四郎

    長谷川国務大臣 私はただいま答弁をいたしましたけれども、新たなる質問が出ればさらにお答え申し上げます。
  32. 芳賀貢

    芳賀委員 それでは具体的にお尋ねしますが、農林大臣が従前同様の諮問をされて米価審議会から答申を得られる場合と、今回のごとき違法な諮問を発せられて米審から答申をとる場合と、農林大臣がきめる買い入れ価格決定上相当大きな開きが出ると思うわけです。しかも、今回の諮問で従来と違っておる点は、従来は、これこれの方式によって算定することにしたいので、これに関連して留意すべき事項について御意見を承りたい、こういうことになっておるわけですね。今度は、これこれの方式によって決定するので、意見があれば述べてもらいたい、こういうことになっているのですよ。いままでは、こういう方式で算定したいと思うがいかがでしょうかというのですが、今度の場合は、こういう方式で決定しようとしておるが——決定ですよ。いままでは算定といっているが、今度は、きめるが、皆さんに意見があれば述べてくれ、こういうことになっておるわけですよ。だから居直り強盗みたいに、これに対しておまえら何か言えということなんですね。だから、いままでと同じような生産費所得補償方式による算定上の意見を承りたいという場合に、それを受けて算定される価格と、需給均衡を導入して価格をきめるという場合においては、政府としても、相当大きな価格上の開きがあることを期待してこういう諮問を出しておるわけです。  その証拠に、これに付随しておる算定資料を見ると、需給均衡を導入することによって、少なくとも石、百五十キロ当たり二千円、当然上げなければならぬ価格が上がらぬということになるわけです。一俵については八百円以上当然上げなければならぬ価格が、需給事情勘案ということで昨年同様におさまるような、こういう計算を、米価審議会に同時に資料として出しておるわけですね。これはたいへんなことじゃないですか。農林省の統計調査部の発表によっても、十アール当たり、一反歩当たりの四十三年度の米の生産費は、前年に比べて一〇・五%上昇するということを発表しておるわけです。百五十キロ、一石当たりについては、前年よりも一一・五%生産費は上がりますということを、同じ農林省の統計調査部は天下に公表しておるわけです。これでいけば、一石当たりにして二千円以上、一俵当たり八百円以上、当然従来どおりの生産費所得補償方式諮問をすれば上がる。  二十五人の委員の中には、大臣が選任されたわけですから、大部分は政府の御用をつとめると思われる委員が多いわけですが、そういう諮問であれば、これはけしからぬということにはならぬわけです。それを上げないために、総理大臣の施政方針やあるいは農林大臣所信表明のごとく上げないということのために、需給均衡方式を導入して、上がるべきものが上がらぬようにするための諮問を行なっておるわけですから、これを可とする意見、あるいは否とする意見が二本立てで出たとしても、政府の思いどおりに、答申の中には政府の考えを可とする者もおるので、政府の責任において据え置きにしますということをやるでしょう。  ですから、従来同様の諮問をした場合と、今回のような違法の諮問をした場合と、私は大体を判断して価格上の指摘をしたわけでありますが、これは農林大臣から、どういう価格上の差が出るかということについて、率直な説明をしてもらいたいと思うわけです。
  33. 長谷川四郎

    長谷川国務大臣 お説のように、四日に開かれる米審に前もって、統計の調査によりますと、ただいまお話しのような数字になりますということを、最も明らかに、新聞発表までして公開をしておるのでございます。また、審議会委員にも十分その意が伝わるように、資料として提出してあるのでありますが、いま最後におっしゃる需給事情、その経済の実態はかくのごとくでございますということも、参考資料に入れることは当然だと私は考えるのであります。  ですから、あなたのおっしゃるように、物価というものと生産費というものがかくのごとくなっておりますということを、われわれは全日本に公表しております。さらに、審議会の資料としてりっぱにそれを整えて提出してあるのでございますから、それによって、おそらく委員の方々はこれを十分御審議なさることだと考えております。
  34. 芳賀貢

    芳賀委員 審議会としては、この諮問は違法な諮問であるといって、諮問を返上すれば別でございますけれども、とにかく農林大臣から諮問されたのだから、審議会では審議をしなければならぬということになれば、この諮問主文に書いてある、生産費所得補償方式基本とし、米穀需給事情を考慮して決定することについて審議会意見を求めるということになれば、最終的に予測される答申というものは、そのとおりでよろしいという意見と、これは断じて違法の諮問であるし、こういう算定方式というものは食管法違反するから不可である、こういう声が当然出てくるわけでしょう。だから、この諮問どおりの計算をやって、百五十キロ当たりについては去年よりも三十二円価格が下がります、六十キロ当たりについては去年よりも十二円値段が下がります、こういう計算一本にしぼってやっておるんじゃないですか。しかも、一〇%以上生産費が上がっておるということを農林省の統計調査部は公表しておるわけです。その値上がり分を下げるために、いわゆる需給均衡方式の導入というものをわざわざ米審諮問しておるわけでしょう。  そのやり方というものは、従来限界反収農家というものを一シグマの形で標準偏差をとって、そうして販売農家にすれば、一番目から百番目のうちの八十四番目までの農家が、いままでの生産費所得補償方式買い入れ価格の中においては包容されるという配慮を、いわゆる反当収量の勘案の中で行なってきたわけです。それを今度は二分の一シグマ、そういう計算を使っておる。これがいわゆる需給均衡の導入による計算上のあらわれということになるわけです。従来同様に一シグマをとれば、政府のいままでどおりの計算によっても、百五十キロ、一石当たりで当然二千円以上の値上げをしなければならぬ、一俵当たり八百円以上の値上げをすることになるのを、需給均衡方式で計算すれば去年よりも上がりません、こういうことじゃないですか。  需給均衡を導入するということは、これは非常に大きな意味を持っておるわけですよ。しかも、食管法をそのままにして権力的に生産者を縛りながら、今度は値上げをしないという形でさらにこれを抑圧するというようなやり方は、断じてわれわれとしては了承できません。何回でも繰り返して質問しますけれども、この点は、もう農林大臣だけじゃなくて総理大臣方針だから、農林大臣としては忠実にやっておるということなのか、そこらまで明らかにしてもらいたいと思います。
  35. 長谷川四郎

    長谷川国務大臣 どうも話が少しおかしいので、需給均衡方式をとるのではないのでございまして、私のほうは、需給事情を考慮に入れてと、こう言うのです。ですから、需給均衡方式をとるということはちっとも言ってないのです。  ですから、あなたが先ほどからおっしゃるように、物が上がってきておる、賃金も上がった、それは必ずこの中で十分に、生産費及び所得方式というものを基本としてお考えいただきたい、こういうことを御諮問申し上げておるのです。しかし、参考として需給事情というものも当然入れることは、ちっともふしぎじゃないと思うのですが、どうも話を聞いていると、それがえらい違反のような話ですけれども、やはり何といっても参考資料として全部そろえるのです。もし国会でも、じゃ需給はどうなっているんだ、資料が出てこないじゃないか、国会であってもきっと要求するだろうと私は考える。  だから、そういうものを参考資料としてそろえて出し、御諮問の中にも、基本としては生産費所得補償方式というものを基本としておやりください、ただし、需給事情も考慮に入れて考えてもらわなければならぬ、こういうことでございます。おかしいでしょうかね。
  36. 芳賀貢

    芳賀委員 食管法が指示していないことを、あなたは無理にやる気になっておるのですよ。食管法のどこにも、需給事情勘案してきめるということはないでしょう。経済事情勘案してということはある。それでは、経済事情をどうして勘案しないのですか。法律に書いてあるとおり、需給事情よりむしろ経済事情勘案して、再生産確保をはからなければならぬのじゃないですか。それを落としているのはどういうわけなんですか。
  37. 長谷川四郎

    長谷川国務大臣 経済基本となるべきものは、やはり何といっても需給というものが考えられなければ経済だって成り立っていかない。でありまするから、その経済事情基本となるべき、つまり、その需給というものの現実をお知らせ申し上げた、こういうことなんです。
  38. 芳賀貢

    芳賀委員 それじゃ、どういうわけで食管法需給事情というものを全然うたわないで、経済事情と書いたのですか。その辺はどうなっているのですか。(「自由経済の理論からそうなっているんだ」と呼ぶ者あり)
  39. 長谷川四郎

    長谷川国務大臣 いや、自由経済というのはそちらが言っているんで、私のほうは言ってないのです。私のほうは、均衡方式をとると言っているんじゃないです。両市給事情を考慮に入れていただきたいと、こういうことを言っているんです。均衡方式をとるということを言ってないのです。均衡方式でやるとも、やれとも言ってないのです。それを芳賀さんのほうは、あたかもそれはそうだそうだと言うから、そうじゃないですと、こういう話なんです。
  40. 芳賀貢

    芳賀委員 大臣、少しまじめに、国会の神聖な場所ですから……。いいですか、需給事情というのは食管法のどこにもうたってないでしょう。これはおわかりですね。需給事情とはうたっていないが、しかし、「物価其ノ他ノ経済事情参酌シ」ということは、これは法律にはっきりあるわけです。法律にある経済事情を使わないで、法律にない需給事情を使わなければならぬという点がわからないのですよ。何のために経済事情というものは勘案する必要がないのですか。
  41. 長谷川四郎

    長谷川国務大臣 経済事情はりっぱに入っていると私は考えておるのです。物価も経済の中に入るだろう。しかしながら所得方式、要するに生産費所得補償方式、これも当然中に加えるのであって、別に経済事情——需給というものを離れた経済というものは成り立たないのですから、私は少しもふしぎはないんだ、こういうふうに考えております。
  42. 芳賀貢

    芳賀委員 それじゃ、ふしぎでないことがどうして昭和十七年からいままで食管法の中に——あなた大事だと言うんでしょう。その大事な需給事情というのはどこにもないじゃないか。しかし、経済事情勘案してということはありますよ。物価その他の経済事情勘案して、米穀の再生産確保することを旨として政府買い入れ価格をきめますというのは、食管法第三条第二項の規定ですからね。需給事情を特に勘案してきめますということは何もないじゃないか。法律にないことをやれるだけの権限は、あなたに何もないんじゃないですか。
  43. 長谷川四郎

    長谷川国務大臣 食管法にしても何にしても、需給という面が基礎となっていろいろな法案がつくられたということは、もう議論の余地のないところでございまして、これなくして食管法というものが——食管法というものは、今日になって消費者方面から、食管法をなくせとかいろいろなことをいわれておりますけれども、私たちは、食管法をなくするなんという考え方は毛頭持っておりませんし、食管法はあくまでも続けなければ相ならぬと考えておる。それはなぜかというと、あの苦しいときに食管法によっていかに需給のバランスをとるか、少ない生産の上に立った需給のバランスをとるか、そして安定をさせるかという、こういう基礎の上に立ってすべてが今日まで行なわれてきたことは、私が申し上げるまでもございません。  でありますけれども、その経済の実態である需給はかくのごとく今日このごろはなりましたということを申し上げただけでございまして、それが違反になるとは私は考えておりません。
  44. 芳賀貢

    芳賀委員 いま、需給事情というのはもう議論の余地がない。どこで議論の余地がないのですか。これは法律にないから議論の余地がないと言うのか。それなら話はわかりますよ。法律のどこにも書いてないから、そういうものは議論の対象にはならぬ、議論の余地がないと言うなら話はわかるが、あなたの言うのはそういう意味ですか。
  45. 長谷川四郎

    長谷川国務大臣 需給という面は、申し上げるまでもなく、少ないとき、いかに平等にそれを分配をするかという、その需給です。それも需給です。そういう面からこの法案ができてきたのですから、その法律に基づいて今回も需給現実をお知らせ申し上げた、こういうことでございます。
  46. 芳賀貢

    芳賀委員 だから、法律のどこに根拠があるのですか、あなたのお知らせ申し上げるという根拠ですね。法律には明定されておるわけですから、根拠がないことを言ってもしょうがないですよ。
  47. 長谷川四郎

    長谷川国務大臣 同じことでございますけれども、経済事情経済という中の需給を申し上げただけでございます。
  48. 芳賀貢

    芳賀委員 それじゃ、食管法第三条第二項にうたってある経済事情というものは、どういうものなんですか。
  49. 長谷川四郎

    長谷川国務大臣 第二項、「前項ノ場合ニ於ケル政府ノ買入ノ価格ハ政令ノ定ムル所ニ依リ生産費及物価其ノ他ノ経済事情参酌シ米穀ノ再生産確保スルコトヲ旨トシテ之ヲ定ム」。同じことでございます。
  50. 芳賀貢

    芳賀委員 その経済事情というものはどういうものですか。
  51. 長谷川四郎

    長谷川国務大臣 もちろん、経済事情の中にはその需給が入っておる、こういう解釈でございますから……。
  52. 芳賀貢

    芳賀委員 農産物価格安定法その他の価格支持法律には、いいですか、物価事情その他経済事情勘案してという法律もありますよ。あなたの言うのは、経済事情需給事情ということですか。
  53. 長谷川四郎

    長谷川国務大臣 経済そのものが全部が需給だと申し上げているのではないのでございまして、その最も基礎となる要素であるということを申し上げたのでございまして、それをお知らせ申し上げた、こういうことでございます。
  54. 芳賀貢

    芳賀委員 経済事情の中に需給事情も入っておる。それは全部じゃないというと、そのほかの事情は何ですか、経済事情あとの事情というのは。
  55. 長谷川四郎

    長谷川国務大臣 法律の中にある物価事情というような面も、全部その中に加わっております。
  56. 芳賀貢

    芳賀委員 ところが、その経済事情の前のほうに、「物価其ノ他ノ経済事情」ということになっておるのだが、これは物価は入ってないんじゃないですか。「物価其ノ他ノ経済事情参酌シ」ということになっておるが、それがもう一つ入っておるのですか。
  57. 長谷川四郎

    長谷川国務大臣 私の今回諮問申し上げた中には、経済という中には需給事情というものが大いに含まれておる、最も重要な要素であるから、需給事情というものを価格決定の参考として、そのようにお願い申し上げたいと、こう諮問したのです。同じようなことで私はかりではなんでしたら、長官から御説明申し上げさせます。
  58. 芳賀貢

    芳賀委員 長官からはいいですよ、長官が大臣説明してから答弁してもらえばいいわけですから。  経済事情というのは、全部需給事情ではないということはようやくわかったが、それじゃ、全部でなければあとの要素もあるわけですから、需給事情とそのほか何の事情ですか、法律経済事情というのは。  それからもう一つは、他の法律には、需給事情経済事情と並べた農産物価格安定法のような法律がある。二つ並べたのもある。その辺も、あなたは非常に勉強家だから、あわせて明らかにしてください。
  59. 長谷川四郎

    長谷川国務大臣 経済事情、もちろん申し上げた需給そのほかで、その中をいろいろ分けていけば、賃金の問題も出てくるし、いろいろ出てくるでしょう、経済事情でございますから。しかし、最も大きな要素を持っておるのはすなわち需給事情だと、こう申し上げたのですよ。
  60. 芳賀貢

    芳賀委員 賃金の事情とかその他価格算定上の重要な要素を経済事情の中からはずしてしまって、その一部と大臣は言っておるわけですが、需給事情だけを取り上げて、需給が緩和されたんだから値段を下げますという材料だけに使うというのは変じゃないですか。むしろあわせて書くのであれば、法律どおり生産費所得補償方式基本として、経済事情を十分考慮して、価格算定上留意すべき点を答申してもらいたい、このほうが筋が通るんじゃないですか。
  61. 長谷川四郎

    長谷川国務大臣 賃金及びその他というものは生産費、この中に入るわけですから、所得補償方式の中に全部加わるのでございますから、あえてこの中に別にあらためてうたう必要はないわけです。
  62. 芳賀貢

    芳賀委員 先ほどあなたは、経済事情の中には需給事情が大半入っておる、そのほかの事情の中には賃金も入っておるということを言ったんですね。今度は賃金は別ですか。経済事情に入らないんですか。あなたがそういったじゃないですか。
  63. 長谷川四郎

    長谷川国務大臣 もちろん入ります。それも重要な要素を含んでおりますから、それは別に生産費及び所得補償方式の中に加わるのでございます、こう言っているのです。おわかりでしょうか。
  64. 芳賀貢

    芳賀委員 それじゃ賃金は、この法律では経済事情の中に入らぬわけですね。物価も入らぬわけですね。
  65. 長谷川四郎

    長谷川国務大臣 もちろんその中には入りますけれども、その中に最もウエートがある需給事情も入るわけでございますから、それをこの諮問の中に加えた、こういうことでございます。
  66. 芳賀貢

    芳賀委員 それでは歴代の自民党内閣が、一番大事な需給事情を、いままで米価算定上加えなかったのはどういうわけですか。
  67. 長谷川四郎

    長谷川国務大臣 本年度の現在と、かつて、過去昭和十七年から今日までの需給の実態の相違のあることは、御承知のとおりでありますからであります。
  68. 芳賀貢

    芳賀委員 それは需給が緩和したときだけ加えるというのですか。需給が逼迫したときはいままで加えなかったわけですね。
  69. 長谷川四郎

    長谷川国務大臣 需要生産のバランスをいかに合わせるか、そうしていかに生産に励んでもらうかということにつきましては、法律自体、そのものまでも変えて、そして生産を高めていっておるわけでございますから、あらためてこの諮問の中に入れる必要はなかったと考えられます。
  70. 芳賀貢

    芳賀委員 それでは法律改正してからということですか。
  71. 長谷川四郎

    長谷川国務大臣 改正してからとは、どういうことかわかりません。
  72. 芳賀貢

    芳賀委員 昭和十七年の戦中から二十年の戦後以来、米の需給事情というものは今日のごとき状態ではなかったわけでしょう。幸いにして全国の生産農民のたゆまざる努力によって、ようやく国内の生産で間に合うところまで来たから、これは喜ばなければならぬわけです。  しかし、食管法全体を通ずると、その大部分の時代は、需給関係はどうかということになれば、国内の生産だけでは供給が十分行なわれなかったわけです。需要供給関係から見れば、いままで二十七年の間、去年、おととしは別にして、二十五年間というものは常に食糧が足りない、米が足りないというような状態の中で、食管法で縛られて政府以外には売れない、政府のきめた値段以外には売れないということで、むしろ需給事情というものは全然無視して、米の足らぬときにはことさら需給事情を無視して、安い政府買い入れ米価決定されてきたわけです。いまになって需給事情勘案しなければならぬなんということは、歴代の自民党内閣がそういうことをやってきて、いまごろ一体何を言うのですか。  需給事情が大事であれば、米の足らぬときにそれを強調して、そうして正当な米価決定してきておるのであれば、需給が緩和した場合にもやはりそれを反映しなければなりませんということは一応筋道としてわかるが、いままで全然需給事情というものを取り上げないで生産者米価決定してきておりながら、しかも同じ自民党の内閣がやってきた行政でしょう。去年まで米をつくれつくれと言って農民のけつをたたいて、そのけつをたたいてきた政府が、今度は需給事情勘案して去年同様の米価に据え置くというようなそのねらいのもとに、ことしはそれを実現するために、米価審議会にあのような違法な諮問をしたわけですから、どうしていままで、需給事情というものを毎年の米価決定の場合に用いなかったか。それはどうなんですか。
  73. 長谷川四郎

    長谷川国務大臣 今日まで再生産確保するために、与党、野党を問わずしてどんなに大きく努力をしてきたかということは、別に書かなくてもわかることでございます。そのお互いが努力してきた結果が、今日需給というものがかくのごとくになりましたということをつけ加えることに、何らふしぎはないじゃないですか。どうなんでしょう。皆さん方が今日までおっしゃるとおりでございまして、それは野党ばかりやったのじゃありません、与党も野党も一体となって今日の生産が高まるようになった。その結果需給事情はこうなりましたということを報告するのに、何らふしぎはないと思うのです。私はないと確信をもって申し上げております。
  74. 芳賀貢

    芳賀委員 長谷川さん、あなたは何か居直り強盗みたいな調子で答弁をしているが、これは神聖な国会の場でわれわれは食糧管理法というこの権威を持った法律基礎にしていま質疑を行なっておるのですよ。それを理屈に詰まってまともな答弁ができないで、けつをまくって居直るような態度というのは、これは国会の品位を傷つけるものじゃないですかね。だからいま初めて、経済事情というものは大部分は需給事情だから、ことしの算定上これを取り入れるということであれば、いままでどうして米の需給が逼迫した時代、米の供給が不足しておる時代に、需給事情というものを十分取り入れて反映させなかったかということを明快にしてもらいたいのですよ。
  75. 長谷川四郎

    長谷川国務大臣 需給事情が逼迫していたからこそ、答申が出ても、お互い話し合って答申より以上の米価を算定してあげた。決して需給事情を今日まで無視したとは、どこにも私は考えられないと思うのです。  しかし、そうなった結果が今日にはかくのごとくなりましたということを、経済の実態の上に立って需給のほうがこうなりましたということを諮問文の中に入れるということは、私は当然のことだと考えられます。ですから、私は今回の諮問文は何ら違反をしているとは思えませんし、これが皆さんのおっしゃるような違法行為だとか、違反だとかいうことにはさらさら考えてはおりません。
  76. 芳賀貢

    芳賀委員 どうもわからぬでがんばるのは一番困るのですよ。十分質疑を通じ議論をしてどっちが正しいということがわかるのであればいいが、あなたの場合は、何かよく私の質問がわからぬせいか、食糧庁長官の教え方が悪いせいか、一番肝心なことがわからないのですね。  ちょうどいま米審会長の小倉君が事務次官をやっておった時代に「農林水産制度事典」、厚さにすればこのくらいの厚さですかね、その中で食管制度の問題を農林省が明らかにしておるわけです。小倉君が事務次官の時代にこれは編さんしたのであって、その中で需給事情の問題についてはこういうことを明らかにしておりますよ。食管法の第三条の規定からいって、需給が逼迫した場合に、需給事情を反映させて政府買い入れ価格を上げたということはない。むしろ食管法というものは、需給が逼迫して当然経済の面から見れば価格が上がらなければならぬのを、それを抑制する役割りを需給関係の面では果たしてきたということを、これは詳しく明らかにしてあるわけです。それを後輩の桧垣君が、それと異説を唱えるわけではないと思うのですよ。農林大臣くらいになれば忙しいかもしれぬが、そういう大事な農林水産関係の制度の変遷とか、その制度の内容がどうなっているかというようなことは、やはりかたわらに置いて、必要なときによく研究されたほうがいいのじゃないかと思うのですよ。だから、もし必要であれば、米審会長をやっておるが、それを編さんした前の事務次官の小倉君に委員会に参考人としてでも来てもらって、一体食管制度の歴史的な経緯というものは、需給事情というものをどう扱ったというような点についても、政府の立場、行政を担当した歴史的な経過の中で明らかにする必要もあると思うのですよ。  もう少し責任のある答弁をしてもらいたいし、できなければ、政府の最高責任者である佐藤総理に出席を求めて、施政方針の中で、米審にも何にもはからぬうちに、一月に、もうことしの生産者米価は据え置くということを言っておるわけだから、御本人にも来てもらって、要求はしてありますけれども、これ以上大臣にお聞きしてもなかなか無理なような点もあるので、総理大臣の出席を委員長から慫慂してもらって、お願いしたいと思います。それまでの間は農林大臣質問しますけれども、もう少しはっきりしてください。
  77. 長谷川四郎

    長谷川国務大臣 昭和十七年から今日まで、需給事情というものを勘案しないで米価決定したことは、おそらく一回もないと私は思う。したがって今回も、その結果がこのような需給事情になりましたということを諮問文の中に入れた、こういうことでございますので、何ら変わっていないのだ、いまあなたがおっしゃるとおりのことをやっておると私は考えます。  今日まで需給事情というものがいつでも基礎となって、米価というものがいずれにしても決定もされておるだろうし、米価というものばかりじゃなくて、生産という面もこれによってされておったのだ。いままでの間当然でなかったでしょうか。しかし、今日あらためて別に私が、経済の中に需給事情が結果がこういうふうな現実でございますということをつけ加えたからといって全くふしぎでない。参考でございますから、私が決定するのじゃないのでございますから、参考の中に御報告申し上げたということは何らふしぎじゃない、このように考えております。
  78. 芳賀貢

    芳賀委員 それでは農林大臣、ここに食糧庁が出しました「米価審議会諮問答申および政府決定」これは戦後いままでに至る毎年の生産者米価消費者米価決定についての農林大臣諮問審議会答申価格算定の内容が全部一冊になっておるわけです。これは農林省食糧庁が出してわれわれに配付した資料ですが、現実にこの資料に基づいて、それでは昭和二十何年あるいは三十何年に、いま農林大臣の言われた需給事情を、この年にはこのように価格算定の中に勘案してきめたという実例があれば説明してもらいたいのです。なければお貸ししますよ。この何ページに昭和何年のやつがあるが、この年には需給事情勘案したと、これははっきりしてください。ちゃんとあるのですよ。食糧庁で出したのですよ。
  79. 長谷川四郎

    長谷川国務大臣 それではその点については、長官から御説明申し上げましょう。
  80. 桧垣徳太郎

    桧垣政府委員 大臣のお答え申し上げましたことは、要するに、従来需給の窮屈な歴史の中で食管制度が運用され、この食管制度の運用の中で生産者米価決定がされてきた。その際政府としては、米の需給事情というものを念頭に置いた米価のきめ方をしてきたのであるということを申し上げたのでございます。  具体的には、需給事情は窮屈であり、かつ、他の経済事情等を考えましても、一定の算定方式に基づきます算定のほかに、需給事情に基づいた配慮をした加算を行なったという事例は、過去にもあったというふうに私は考えております。
  81. 芳賀貢

    芳賀委員 だから形式的な答弁でなくて、これはあなたのほうの食糧庁ですよ。いいですか桧垣君、この中に、この二十何年に及ぶ毎年の農林大臣米価審議会に対する諮問、その説明、それに対する米価審議会答申内容、それから米価決定経過、それは全部この算定の要素がはっきりしているわけだから、これの中で、何ページの昭和何年に、需給事情というものを勘案してきめましたという点があれば明確にしてもらいたいと思います。
  82. 桧垣徳太郎

    桧垣政府委員 私は基本的には、先ほども大臣からるるお話がありましたように、食糧需給事情が窮屈だという前提のもとに決定されました米価は、そういう需給事情というものを念頭に置いて決定されたというふうに理解をするのでございますが、何といいますか、一定の方式に基づいて算定されたもののほかに、需給事情勘案して加算をされたというようなものにつきまして、手元の資料によってうかがいますと、昭和三十年から三十八年までの間、申し込み加算というようなものの加算をされておりますし、また、臨時特別加算が三十九年に加算されておる。四十年には予約奨励金というようなものが加算をされておりますけれども、これは需給事情を考慮した上でのことであるというふうに理解をいたしております。
  83. 芳賀貢

    芳賀委員 それは桧垣君、そういうばかばかしいことを言うのは変ですよ。いいですか、正式な米価決定する経過の中で農林大臣がどのような諮問を行ない、それを受けて米価審議会がどのような答申をして、そうして、あるいは国会等の意見を尊重して一定の算定方式に基づいて米価というものが決定されておるわけですよ。決定の算定の要素の中に需給事情を取り上げたということは、いままで全然ないんですよ。いいですか、この予約加算とか奨励金なんというのは、これは特別の補助的な、補完的な制度であって、需給事情が逼迫しているから、減税をやるとか奨励金を出すなんというものじゃないんですよ。それはわかっているんでしょう。  それと、あなたの先輩である小倉君が事務次官の時代に編さんをした「農林水産制度事典」の中には、いままでの食管法は、需給不足の場合には、むしろ価格を抑制する役割りを食管法の中で果たしてきたということを明確にしておるわけですが、これは間違いですか。
  84. 桧垣徳太郎

    桧垣政府委員 食糧管理制度というものが国民食糧確保国民経済の安定のために米穀需給価格の調整をはかるということをいっております限り、また、それが目的でございます限り、需給事情が窮屈な際に、自由経済のもとで形成されるであろう価格よりは抑制的な米価、いわば暴騰を抑止する作用を果たしてきたということは、これは私はどなたがお書きになったのか知りませんが、そういう趣旨においては、ただいまの先生の御指摘の点は理解ができるのでございます。  また、今後供給過剰の状態におきましても、食糧管理制度のたてまえに立ちます限り、自由経済を前提とする価格現象というようなものから遮断をして、米価の安定性を保持するということは、当然なことであるというふうに私は思います。
  85. 芳賀貢

    芳賀委員 どなたが書いたかわからぬと言うが、あなたの名前もそれに載っておるんですよ。それは参考書を取り寄せてもいいんですよ、これはあまりにも膨大なものですからね。しかし、その責任者は小倉武一君ですから、ただいま米審の会長です。昨日われわれと小倉会長が会った場合におきましても、需給事情米価算定上取り入れるということは重要問題だ、米審の論議もこれが一番中心課題になるということを彼も言っておりましたし、けさの新聞にも、小倉米審会長談話でそれは載っているわけです。これはもう全く前例のないことです。食管法をそのままにした状態の中で需給事情を取り入れて導入するということで、それを算定上使うわけですからね。使わないならこれは何も影響がないが……。  一体、需給供給量と需要量というものを、分子と分母の形成の場合にどういうふうにして使うのですか。やる場合にはどっちを分母にしてやるつもりにしておりますか。農林大臣からたまには答弁してください。
  86. 桧垣徳太郎

    桧垣政府委員 御質問の御趣旨が必ずしも私は明確でないのでございますが、諮問文でいっております生産費及び所得補償方式ということは、投下されました物財費なりあるいは雇用労賃については米価によって回収されるような計算をし、また、家族労働につきましては他産業従事者の賃金をもって評価をするというやり方をやるわけでございまして、いわゆる評価がえ生産費でございますから、これが分子になる。分母は十アール当たり生産費というものを反収で除しましてキログラム当たりのコスト価格というものを求めるわけでございますから、したがって、反収が分母になるということでございます。
  87. 芳賀貢

    芳賀委員 そういうことを聞いておるんじゃないんですよ。あなたが考えている需給事情勘案というものを算定上用いるとすれば、米の供給数量と需要見込み数量というものを分子、分母の関係で使わなければならぬでしょう。その中で上がったり下がったりするわけですからね。いいですか、米審がこれでいいといえばどうやって使うつもりですか。労賃や何かではないんですよ。需給事情というものを算式の中で使いたいでしょう。
  88. 桧垣徳太郎

    桧垣政府委員 お話しの点は、需給事情というものを計数的にどう表示するかという御質問かと思うのでございますが、元来、自由市場というものを認めません米につきまして、計数的に価格に対する供給の弾性値というものを求められるはずがないのでございます。  諮問で申し上げておりますのは、現在のような需給事情というものは、もう大かたの理解を得ているところでもあるわけでございますが、そういう供給の構造的な過剰状態のもとで、その事情を考慮して生産費及び所得補償方式基本とする算定を行なってはどらかということでございますので、計数的な算式というものは求めることはきわめて困難であるし、現段階においてはほとんど不可能であるというふうに思います。
  89. 芳賀貢

    芳賀委員 それでは、不可能で意味のないものを、どうして需給事情を導入するというのですか。何かの役割りを果たすのであれば書き上げてもいいが、何も意味がない、現在の法律改正しない限り役割りは果たさないということであれば、こういう違法性のある諮問文をつくる必要はないじゃないですか。従来同様でやっても当然算定はできるわけでしょう。何ら作用を果たさぬ、意味がないというなら、はっきりそう言ってください。
  90. 桧垣徳太郎

    桧垣政府委員 もちろん、意味のないことを私どもは諮問文に述べたつもりはないのでございまして、今日米の問題につきまして、需給事情が急激な緩和をもたらしており、このことがいろいろな食糧管理の面からも、農政推進の上からも問題であるということを指摘されておるのでございまして、その点について政府の意識が統一をされておるのでございますから、そういう政府の問題意識というものを申し述べまして、米価審議会における御論議をいただきたいという趣旨諮問の考慮事項でございます。
  91. 芳賀貢

    芳賀委員 もう少し歯切れのいい答弁を願います。
  92. 桧垣徳太郎

    桧垣政府委員 現在までの米価の算定は、御案内のように、評価がえ平均生産費というものを平均反収以下の反収で除する、いわゆる適正限界反収方式をとっておるのでございますが、これは本質的に私どもとしては需給事情の窮屈な事情、つまり、さらに生産を刺激して需給の緩和を求めるべきであるという事情のもとでとられた方策であるというふうに理解をいたしております。  この点を、現在のような需給事情のもとでそのまま容認することがよろしいかどうか。むしろこれを平均生産費に近づけるということによって、現在の需給事情に即した価格の形成というものを考えることについての可否という問題を、御審議をいただきたいというのが趣旨でございます。
  93. 芳賀貢

    芳賀委員 それでは、今回試算しようとする一番大事な十アール当たりの平均反収を、従来と違った方式を採用して反収を上げようとする場合に、「需給事情を考慮して」と、これと関連を持たしてやりたいという意味ですね。
  94. 桧垣徳太郎

    桧垣政府委員 私どもとしましては、現在の需給事情のもとでは、これを反映した算定をいたしてはどうかという考え方を持っておりまして、その一つの考え方として、米価審議会における御審議の参考に、限界反収を求める場合、平均反収から二分の一シグマ分を差し引いた反収を用いるということでやってはどうかということで、参考資料として提出をいたした次第でございます。
  95. 芳賀貢

    芳賀委員 つまり、いまの食管法のもとでは、直接的に需給事情というものを算式上反映させることはできないので、需給事情と反収を関連さして、需給事情の緩和が価格に反映するようにするためには、いままでのたとえば限界反収方式は、百戸の生産農家のうち生産性の高い農家から八十四番目までの、つまり八四%まで再生産を補償する限界反収というものをいままで採用してきているわけです。計数的には、標準偏差一シグマを平均反収から差し引いて反収を調整してきたが、今度は間接的に米の需給事情の緩和ということを理由にして、反収をいままで以上に引き上げて米価を上げないようにする、あるいは下げる、そういう役割りを果たさせるために、諮問文の中に需給事情の考慮ということを入れたということですね。それで間違いないですか。
  96. 桧垣徳太郎

    桧垣政府委員 諮問文につきましては、生産費所得補償方式基本として米価の算定を決定することにするが、その際、現在のような米穀需給事情を考慮してきめるということについての可否、あるいはそれに関連する御意見を承りたいということでございますが、私どもはそういう諮問を申し上げました際に、私どもなりの考え方で一つの試算をつくってみますとこういう姿のものが算定されます、これを審議の御参考にしていただいたらいかがかということでございまして、諮問文にあります「需給事情を考慮して」ということが、即試算の内容そのものであるというふうには考えていないのでございます。
  97. 芳賀貢

    芳賀委員 この点は大事ですから、もう少し明快にやってください。あなたはいつも明快な答弁ができるじゃないですか。こういう大事な点を、何か歯切れの悪い不明確な答弁で濁すというのは、これは変ですよ。あなたはいま農林省のホープ的な役割りでしょう。米価を下げる、農民を苦しめる、農政を後退させる、その主要な役割りを果たしているあなたは立て役者でしょう。そうであればもう少し悪党らしく、重要な点については堂々と委員会において説明すべきじゃないでしょうか。農民を敵にする決意があるのでしょう。もう少しはっきりさしてください。
  98. 桧垣徳太郎

    桧垣政府委員 私どもは、今日のような段階で米価決定をいたしますについて、需給事情を考慮をした上で生産費所得補償方式というものによる米価を求めることが、食糧管理制度を今後円滑に運用していく上にも必要なことであり、またそのこととあわせて、農政の総合的な推進をはかっていく上にきわめて重要な事柄ではないだろうかという場立で考えておるのでございまして、私どもとしては、農業についての愛情が減退をしておるというふうには、全く意識をいたしておらないのでございます。
  99. 芳賀貢

    芳賀委員 委員長に申し上げますが、要求してある総理大臣の出席がまだないわけです。いままでの質疑を通じましても、これは結局佐藤総理大臣の施政方針に基づいて、ことしの生産者米価は、食管法よりもむしろ総理大臣の政治方針として、何が何でも据え置きにするということになっておるわけですから、その方針を受けて、農林大臣にしてもまた食糧庁長官にしても後生大事に、据え置き据え置きということで頭が一ぱいですからして、一番大事な法律上の解釈の問題、違法性の問題等については、われわれ委員を納得させるだけの答弁が当然行なわれていないわけです。  そこで、そうなる以上は総理大臣に直ちに出席していただいて、これこそ一番基本になる食糧管理法の根幹ですから、法律の精髄ですから、これを政府の最高責任者の総理大臣から直接明らかにしてもらいたいと思うわけですので、すみやかに総理の出席を要求してもらいたいと思うのです。総理が出席されるまでの間それを保留しておきますので、委員長においては議事の進行を願いたいと思います。
  100. 丹羽兵助

    丹羽委員長 先ほどの理事会のおりに総理の出席要求がございましたので、私のほうはさっそく総理の出席要求の手続はとってあります。まだ返事は来ておりません。さっそくもう一度返答を請求いたします。(芳賀委員理事で相談してください」と呼ぶ(委員長から申し上げます。午前の理事会におきまして、芳賀さんの要請により総理の出席を求めております。連絡をとっておりまするがまだ返答がございませんので、重ねて出席の要求をし、早く返答の来るように一要求いたします。しかし、その間工藤さんに御質問願うことにいたしまして、総理に対する芳賀さんの質問の分は一応保留にしておきたい。いずれ返答が参りまするから、その後はまた理事会において御相談をする、かようにして、工藤君の質疑に入りたいと思います。  工藤良平君。
  101. 工藤良平

    ○工藤委員 私は、ただいまの芳賀委員質問に関連をいたしまして、少し具体的に、このたびの諮問法律違反の問題についてただしてまいりたいと思います。  まず大臣にお伺いをいたしますが、このたびの諮問にあたりまして、政府買い入れ価格の試算が出されているわけでありますが、これを見ますと、これは明らかに据え置きということでございますが、なぜこのような措置をとらなければならなかったのか、具体的に御説明をいただきたいと思います。
  102. 長谷川四郎

    長谷川国務大臣 諮問をいたしました分、それから資料の提出に対しましてのこまかい点については、長官からこまかに、納得のいくような説明をいたさせます。
  103. 桧垣徳太郎

    桧垣政府委員 先ほどもお答えを申し上げましたが、私どもといたしましては、諮問につきまして、生産費所得補償方式基本とし、需給事情を考慮して米価を算定し決定してはいかがであるかということを諮問を申し上げたわけでございます。  そこで、そういうような諮問に際しまして、現在の需給事情を考慮いたしますと、私どもとしては、本来需給事情が均衡をし、あるいは供給に余力があるという場合には、一つの考え方としては、平均評価がえ生産費というものを平均反収によって除して求めるというのも、一つの議論としてあり得るであろうけれども、そのことは農家経済あるいは農業者の心理に対する影響の問題もございますので、当面二分の一シグマというものを差っ引いた限界反収で算定してはどうかという考え方をとりまして算定をいたしますと、ウルチ一—四等平均、包装込みの農家手取り価格は、若干前年度を下回るような数字が出るのでございますが、少なくとも食糧管理制度運用のもとでの価格で、前年度価格を下回るような価格の算定ということは穏当ではない。そこで、これに対する若干の補整をいたしまして、具体的な価格、個別価格決定基礎になります軟質三等裸の価格というものを調整をしました上で、ウルチの一−四等平均手取り価格というものが昨年より下回らないようにすることが、少なくとも妥当ではなかろうかという趣旨の試算を提出して、審議の御参考にいたしておるということでございます。
  104. 工藤良平

    ○工藤委員 この点は大臣に明らかにお答えをいただきたいと思いますが、この生産費所得補償方式の中で、昨年もたいへん問題になったわけでありますが、それは標準偏差の問題であります。いま長官のお話によりますと、平均反収に近づけるためにこういうような措置をした、これは、いわゆる需給の調整をはかるという意味が含まれておるというような御答弁であったわけでありますが、大臣、これは昨年一シグマから〇・九シグマに変えた、そういう過程の中で米審答申を求め、農林省の二・九という当初の案が、最終的には、政府決定の段階におきましては大幅に修正せざるを得なかった、こういう結果を招いているわけでありますが、大臣は、このような標準偏差を大きく変更するということについて、昨年のような自民党内部、政府内部における抵抗というものをどのように理解しながらこの原案というものを出されたのか、この点に対する大臣の明らかな答弁をいただきたいと思います。
  105. 長谷川四郎

    長谷川国務大臣 本年度のその偏差は、私たちは最も妥当であるというような考え方を持って資料として出しました。  したがって、御質問の党においてどうかというようなお話でございますが、党の御意見はまだ伺っておりません。でありますから、党の御意見に対しては私の答弁の限りではないと考えられます。
  106. 工藤良平

    ○工藤委員 大臣、そのようなことをおっしゃいますけれども、いま長官は、この算定資料の中のウルチ軟質三等裸価格の中で、調整額三百五十六円というものの説明をなされたわけでありますけれども、これは平均反収に近づけるということで二分の一シグマをとった。ところが、それでは昨年よりも下がり過ぎるから三百五十六円という、これはどのような根拠かわかりませんけれども、自主流通米に回るモチ米を除いた昨年の価格と同じ数字に持っていくために、この調整額というものをくっつけたんじゃないかという理解をするわけですけれども、そのような理論のないものを、事務レベルでこのような試算というものができますか。この点について大臣、ひとつ明確に御答弁をいただきたいと思います。
  107. 長谷川四郎

    長谷川国務大臣 事務レベルとしては、試算でありますから、このような計算をすればかくのごとくなりますというものを資料として提出するのでございますから、それで決定をするとは考えておりません。
  108. 工藤良平

    ○工藤委員 それではさらに私はお伺いいたしますが、この試算は、先ほど御説明のありましたように、二分の一シグマをとった結果というものが出されているわけでありますが、それでは、これを標準偏差の一シグマで、昨年並みの計算をした場合に一体幾らの額になりますか。昨年の数字をそのまま使った場合に、ことしの現在作付をしているものの米価というもので農民は一体どの程度の損害をこうむるのか、この委員会で明らかにしていただきたいと思います。
  109. 桧垣徳太郎

    桧垣政府委員 ただいまの御質問の数字でございますが、米価審議会へ提出をいたしました試算は、私どもとしては少なくとも計算上の責任は負って出したものでございますので、これは計算過程等に誤りはないと確信をいたしておりますけれども、ただいまの御質問の数字につきましては、正式に検証を終わったものでございませんが、あるいはそういう御質問があるかと思いまして、この場で試算をいたしたもので一応お答えをさせていただきます。  従来どおり、平均反収から一シグマを引きまして、それから予約概算金の金利控除をせず、生産性のメリットの還元を昨年どおりやるという前提で計算をいたしてみますと、いま米審に試算として提出しておりますものに比べ、一−四等の平均、包装込みの生産者手取りの予定価格は二万二千四百二十円ということになりまして、その差は千七百八十円ということになるのでございます。  なお、概算金の金利控除を行ない、メリットの還元はしないということで一シグマ引いた限界反収で出しました場合には、百五十キロ当たり二万二千百六十五円ということで、千五百二十五円というものがその差になるのでございます。
  110. 工藤良平

    ○工藤委員 まだ回答が全部出ておりませんけれども、この米審に出されました試算と比較をいたしますと、一シグマで計算をした場合には、いま長官が言いましたように、百五十キロ当たり千七百八十円という格差が出るようでございます。これは政府の数字をそのまま使って計算をした場合であります。  そういたしますと、たとえば四十三年産米の買い入れ数量が約一千万トンでありますが、大臣、一千万トンという政府の買い入れ量にこの千七百八十円をかけますと一体幾らの金額になりますか。これはことし農家の手取りが少なくなるわけであります。どういうことになりますか。
  111. 桧垣徳太郎

    桧垣政府委員 一千万トンということは、ことしの買い入れ数量としては考えておりませんが、かりに一千万トンといたしました場合、現在の試算で出しておりますものと、それから、現在の試算の二分の一シグマと一シグマとの置きかえで計算しましたものは、先ほど申し上げましたように、百五十キロ当たり約千五百円強の差があるわけでございますから、したがって、トン当たりは約一万円ということに相なるわけでございまして、その計算からいたしますれば、一千万トンということは約一千億ということになるかと思います。——ただいまの計算は、暗算にちょっと間違いがあるようでございますので、あらためてお答えをいたします。
  112. 工藤良平

    ○工藤委員 その点については、その算式に基づいてきちんと計算をして、八百万トン、一千万トンの場合を資料として提出をしていただきたい。  いずれにいたしましても、いま長官が言いますように、約一千億程度の手取りが農家の場合に少なくなるということになるわけであります。重大な問題でございます。大臣、このように手取りが少なくなる。あなたは新しい総合農政だ、選択的拡大だ、こう言いますけれども、農家の手取りが少なくなるという現状の中で、次の再生産が保障されますか、どうですか。物価は上がっているのですよ。
  113. 長谷川四郎

    長谷川国務大臣 再生産は、価格そのものでのみ考えてはおりません。ほかの方法によっても再生産の方法は考えられると思います。
  114. 工藤良平

    ○工藤委員 そこで、問題になりますのが食糧管理法の第三条二項であります。これは先ほど芳賀委員質問をいたしましたように、「生産費及物価其ノ他ノ経済事情参酌シ米穀ノ再生産確保スルコトヲ旨トシテ之ヲ定ム」こうなっているわけでありまして、少なくとも農林省はいろいろな政治的な配慮をすることなく、これは事務的な問題として計数を投げ出して、その中で政治的な判断が出てきたということであれば、これはまた話は違いますけれども、すでにこの数字が出てくる過程の中でそれがゆがめられてくるということになりますと、これは一体どうなりますか。たいへんな問題であります。ここに食糧管理法違反としての大きな疑問が出てくるわけであります。大臣、なぜこのことをそういう工作をすることなく率直に出さなかったのですか、明らかにしていただきたい。
  115. 長谷川四郎

    長谷川国務大臣 米価決定したわけではございませんで、私のほうは御諮問を申し上げただけでございまして、まだ米価決定をしておらないのであります。
  116. 工藤良平

    ○工藤委員 そういうことになりますと、たとえば諮問の問題につきましても、先ほど同じく芳賀委員からこの資料を提起しておりましたが、私も「米価審議会諮問答申および政府決定」というものを持っております。二十四年からずっと統計をとっておりますが、この答申を見ますと、ほとんど、政府諮問については非常に遺憾である、こういうことが出されているわけであります。特に昭和二十六年におきましては、計算のしかたに誤りがあるということで、米価審議会は、これを適当なものでないということできちんと位置づけをしているわけであります。  今回の場合も、先ほどから再三指摘がありますように、前文におきまして「米穀需給事情を考慮して」ということを諮問として入れたということは、私は明らかに法律違反というように言わざるを得ないわけであります。これは後ほど総理大臣が来る過程の中で、芳賀委員のほうから明らかにされるようでありますから、これ以上は追及いたしませんけれども、農林省自体としても、このような法律違反をしてなぜ出さなければならないのか、私はここに大きな疑問を持つわけであります。もう少しこの点を大臣、明らかにしていただきたいと思います。
  117. 長谷川四郎

    長谷川国務大臣 私のほうは法律違反だと考えておらないのでございますから、皆さんのほうの側と見解の相違だと考えられます。私のほうでは法律違反だと毛頭考えておりません。
  118. 工藤良平

    ○工藤委員 この点については、先ほどの一時間半の議論で平行線をたどっておりますから、これ以上は追及をしませんけれども、いずれこれは明らかになると思います。先般の国会におきましても、食糧管理法の解釈の問題をめぐって、政府側は一方的に、現在の食糧管理法というものは、農家のつくった米を全量買うという義務規定ではないということまでもあなた方はおっしゃいました。もちろんそのような解釈をしてまいりますと、このような適当なことはやれると思いますけれども、しかし、私たちは立法府でございますから、法律法律としてきちんと解釈をして、その解釈の上に基づいて諮問を出すというのがたてまえだと思うのです。そういうことで、これは後ほどの総理と芳賀委員との討論にゆだねたいと思います。  そこで、私はさらに大臣にお伺いをいたしたいわけでありますが、一千億の手取りが少なくなるということ、これは一体どういうことになるのか。特に一シグマから二分の一シグマに変えたということ、これは多くの農家が生産費を補償されないという事実が起こってくるわけであります。この点について農林大臣、それではあなたは具体的に、そのような補償されない農家が現実に出てまいるわけでありますから、これに対してはどのような措置を講じますか。
  119. 長谷川四郎

    長谷川国務大臣 米価決定をまだ見ておりません。したがって、その決定によって、さらに私のほうはなすべきことがあるならば、十分に再生産確保するような方法を切り開いていかなければならぬ、このように考えております。
  120. 工藤良平

    ○工藤委員 あなたは先ほどから決定していない、決定していないと言われる。もちろん決定はまだしておりませんけれども、大臣として諮問をする以上は、きちんとした農林省の考え方というものがあるわけでしょう。それは据え置きという形で出てきておるわけでしょう。決定はしていないけれども、あなたは据え置きという案を出してきた。これがいかがでありましょうかということもありますけれども、これは一応の農林省の考え方と私どもは理解せざるを得ないわけです。  そういたしますと、先ほどから私が指摘をしておりますように、限界以下の農家は生産費を補償されないわけです。その補償されない農家が、今度は昨年よりももっとふえるということが事実上明らかになってきているわけでしょう、この試算では。そういうことになりますと、大臣がその補償されない人たちに対して一体どのような措置を考えておられるのか。それはことし考えましょう、来年考えましょうでは話にならぬわけであります。出す以上は、それに伴った裏づけというものが並行的に出てこなければいかぬと思いますが、あなたはそれに対する考え方は何もお持ちでないわけですか。
  121. 長谷川四郎

    長谷川国務大臣 ただいま申し上げましたとおり、米価決定しておりませんので、答申を見、さらにその決定を見た上に立って、考慮すべき問題は十分考慮をする考えでございます。
  122. 工藤良平

    ○工藤委員 私どもはそういうことではごまかされないわけであります。一昨年の米価決定をする際に、政府は新しい構造方針ということを、米価を引き下げる一つの口実として打ち出しました。昨年は、同じく米価を大幅に下げなければならないという状況の中で、総合農政というものを西村農林大臣が打ち出したわけであります。あなたはまだ何もないと言う。これはきわめて正直者であります。確かに正直であります。何もないということは確かにそのとおりだと思いますけれども、けさの新聞あたりによりますと、何か新しい農業の長期計画を出すということで米価の据え置きとすりかえようとしている。こういうことではごまかされないわけです。具体的にどうするか、あなたここではっきりと農民の前に意思表示をしていただきたいと思うのです。どういたしますか。
  123. 長谷川四郎

    長谷川国務大臣 何回お話し申し上げても同じでありまして、答申を見、さらにその決定をいたしまして、その決定をいたすおりに際しまして、考慮すべき点は十分考慮いたさなければならぬと考えております。
  124. 工藤良平

    ○工藤委員 あなたは農林大臣じゃないのですか。この前私は農地法の論議の際にも、ここでいろいろ申し上げました。そのときあなたは、非常に前向きにいたしましょうという御答弁をいただいたわけであります。あのときは農地法ということであなたは御答弁をしたかもわかりませんけれども、農林大臣としては、農地法であろうと、食管法であろうと、米価の問題であろうと、あなたの考え方というものは一貫して農民の立場を守るということで、具体的な施策というものが伴ってこなければならないと思うのです。生産農家の生産費が補償されないような状態をつくりながら、それにかわるべき裏づけがまだ何もございません、白紙でございますということで、農民の方々はどうして納得できますか。あなたはそれを納得できるだけの政策というものを当然準備しなければならないと思うのです。すでに田植えは始まっているじゃないですか。もうあと三カ月後には、東北や北陸では稲刈りが始まるわけですよ。何もございませんじゃ私はどうしても納得することができません。考え方だけ、姿勢だけでも明らかにしていただきたいと思うのです。
  125. 長谷川四郎

    長谷川国務大臣 どうもお答えは同じことでございまして、答申を得て、また答申どおりに米価決定されたことも数が少ないようでございます。その米価答申どおりでなくて——また私たちが御諮問申し上げたとおりに御決定になるかどうかそれもわかりませんし、ですから、参考資料としていろいろなものをつけて出してありますから、米価答申を受けその決定を見るときには、御指摘のような点は十分考慮すべきときには考慮しなければならぬ、また考慮するのが当然だろう、このように考えます。
  126. 工藤良平

    ○工藤委員 あなたが先ほどから再三何もないということをおっしゃっているように、四十三、四十四年の予算を分析してみましても、農林省なり現在の政府が、ほんとうに農民のためを考えているという政策がないからこそ、私はこのことをいま指摘しているわけです。ないとするならば、いま一千億円損をする農民に対してどういう形で還元をしてやるか。それは生産者米価を昨年どおりの指数で計算をして、一千億円損をしないような試算をきちんとして再諮問するのが当然ではないか。それが農林大臣の仕事だと私は思うのです。一千億といえば、あなたのポケットマネーでは解決できないのですよ。大臣、どうですか、私はそのことを指摘をしているのです。何もないからこそ、ことしは米価を上げざるを得ないという結論になるじゃないですか。どうですか。
  127. 長谷川四郎

    長谷川国務大臣 私のほうは、ただいま申し上げましたように御諮問をまだ申し上げたばかりでございまして、まだ答申もいただいておりませんから、その答申が出、また米価が新たに決定をされたそのときには、私は私としての立場に立って、十分これらの手当てといいましょうか、前向きにこれらの解決をつけなければならぬ、このように考えておるわけでございます。
  128. 工藤良平

    ○工藤委員 さっぱりわからぬわけでありますが、そういたしますと、大臣はこの諮問は一応据え置きということでするが、今後変化が起こってくれば、これは値上げの見通しもある、このように理解をしていいわけですか。
  129. 長谷川四郎

    長谷川国務大臣 私は資料を提出して御諮問申し上げたのでございますから、その結果がどうなるかということは、私には想像できません。
  130. 工藤良平

    ○工藤委員 どういう話をしてもわからない、わからないということでたいへん私は遺憾ですが、わからないじゃ済まされないのです。現実に田植えが始まっているのですよ。植えつけが始まっているのですよ。  大臣、話がそれますけれども、それじゃあなたがことし決定をいたしました一万町歩の作付転換だって、具体的に進んでおりますか。どのように把握していますか。
  131. 長谷川四郎

    長谷川国務大臣 ぜひとも一万町歩を御協力願いたいというような考え方をもってお願いをいたしましたけれども、結局結論としては、その半数に満ちるか満ちないかぐらいだろうと考えます。したがって、本年度の壊廃や開田するところをプラスマイナスと申しますか、それらを差し引きまして、結局結論としては、作付反別は二千ヘクタールの上ふえるだろう、こういうような予想でございます。
  132. 工藤良平

    ○工藤委員 あなたはいまそういうことをおっしゃいましたけれども、農林省は作付転換、作付転換ということをしきりにおっしゃいますけれども、一万町歩のそれだって容易なことじゃないじゃないですか。これはおそらく二十億の金が日銀に眠るでしょう。そういうことを考えてみると、私がさっきから指摘しておりますように、大臣、この際思い切ってことしの米価を上げる、そうして並行的に農林政策というものを抜本的に出すとするならば、私は考える余地があると思いますよ。しかし、現在のように白紙だ、白紙だ、何もありませんということで、どうして日本の農民が納得できますか。そうでしょう。納得させるだけの度胸があるならば、あなたは佐藤総理の前でひとつ横になってみてください。あなたの首が飛んだときには、日本の農民があなたを救うでしょう。それくらいの度胸がなくて、この非常にむずかしい状態の中で、あなた農林大臣がつとまりますか。据え置きだ、政策もありません、こういうことでは話にならないのですよ。米価を上げるか再諮問をするか、どういう形をとるか、私は大臣にその答弁を迫りたいと思うのです。
  133. 長谷川四郎

    長谷川国務大臣 再諮問はいたしませんし、米価は私が最終的には決定でございますけれども、まだ答申もいただいておりませんし、その意見も伺っておりません。
  134. 工藤良平

    ○工藤委員 そうすると、日本の農民はどうすればいいのですか。あなたは道を示してください。
  135. 長谷川四郎

    長谷川国務大臣 価格決定を見て、ただいま御指摘のような部分があるとする分は、十分これらは考えなければならないと考えます。
  136. 工藤良平

    ○工藤委員 農業政策というものは、ことしの米価がきまらなければできないということでもないでしょう。あなたはこの行き詰まった農業問題をどう解決するかということで、再三にわたって答弁しているじゃないですか。なぜ明らかにできないのですか。その姿勢だけだって私は農民の前にはっきり明らかにしていただきたいと思います。
  137. 長谷川四郎

    長谷川国務大臣 農業政策全般ということになると、いろいろ今日まで御質疑が行なわれておりまして、農業政策全般という問題だとまた話が違ってくるのでございまして、ただあなたのおっしゃるのは、米価という点についての御質問でございますから、それに対しての御回答を申し上げておるのでございます。
  138. 工藤良平

    ○工藤委員 全く内容のない大臣の答弁で、私はまことに不満であります。この点については後ほどまた機会をあらためて御質問をいたしたいと思いますが、本会議の時間の関係もありますから、一応これで保留にいたしたいと思います。後ほど芳賀議員が総理大臣を呼びまして内容を聞くようでありますから、機会が与えられれば、さらに私も追及をしたいと思いますが、これは後日大臣との間に、本委員会を通じて私はその内容を明らかにしていきたい。  ただ問題は、過去の農林省が犯したような罪を犯さないように、この際は農民のための指針がきちんと出るように、そしてまた米価につきましても、農民の納得できるような再諮問というものを当然すべきであるということを要求いたしまして、一応これで質問を打ち切りまして保留いたしたいと思います。
  139. 丹羽兵助

    丹羽委員長 この際、暫時休憩いたします。    午後一時四十五分休憩      ————◇—————    午後五時六分開議
  140. 丹羽兵助

    丹羽委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  午前の会議に引き続き質疑を続行いたします。神田大作君。
  141. 神田大作

    ○神田(大)委員 私は、民社党を代表いたしまして、昭和四十四年産米穀政府買い入れ価格につきまして、若干大臣にお尋ね申し上げます。  まず、第一に御質問申し上げますが、本年産米価につきまして、政府米価を据え置くというようなそういう基本的態度に立ちまして、今回の諮問には米価を据え置くような、去年と同じような価格諮問いたしましたが、その根拠をお示し願いたいと思います。
  142. 長谷川四郎

    長谷川国務大臣 私のほうの諮問を申し上げた点は、まさにお説のとおりでございます。  いずれにいたしましても価格決定は、答申を得まして、その後に決定するわけでございますが、昨年と同様というような点につきましては、需給事情等が今日のような異常であるというような点、これらもその中の考慮に当然入れてもらいたい、こういうような考え方の上に立って、昨日諮問を申し上げたわけでございます。
  143. 神田大作

    ○神田(大)委員 今日のこの需給状況を勘案いたしまして、昨年と同じような価格諮問をしたと申しますが、それでは食糧管理法の第三条第二項にあるところの生産費所得補償によるところの米価決定をするということに、それは反することではなかろうかと思いますが、その点につきましてどう考えますか。
  144. 長谷川四郎

    長谷川国務大臣 その点につきましては、十分にこちらからも、生産費及び所得方式基本として、そしておきめを願いたいということは、強く私のほうからも諮問文の中に記載をいたしまして、申し入れをしてあるのでございます。   〔委員長退席、安倍委員長代理着席〕
  145. 神田大作

    ○神田(大)委員 実際問題といたしますると、この諮問案のこまかい点は、時間がありませんから御質問はできませんが、しかしながら、この内容等を見ますると、まず第一に、収量の点を、昨年が三百八十八キログラムでしたか、それを本年度の収量を四百四十四キログラムというように、非常に反当たり収量を多くしておりますが、これはいかなる関係でございます。
  146. 桧垣徳太郎

    桧垣政府委員 午前中にもお答えで触れたのでございますが、今回の試算では平均反収から二分の一シグマ、標準偏差の二分の一を差っ引いた収量をもって評価がえ生産費を割るということにいたしたのでございますが、その際、お手元に資料を御配付申し上げておるかと思いますが、ございますればその九ページに、昭和四十一年から四十三年までの十アール当たりの調査による平均収量が出ておるわけでございます。四十一年が四百五十六キロ、五百二キロ、四百九十八キロとそれぞれ三年間が出ておりまして、これが現実の平均反収でございます。その平均反収から各年の標準偏差の二分の一、四十一年については四十キロ、四十二年は四十二キロ、四十三年は四十三キロという標準偏差の二分の一だけを控除いたしまして、平均反収より低い反収で割るというやり方をやるわけでございますが、その平均が四百四十四キログラムということになるわけでございます。
  147. 神田大作

    ○神田(大)委員 これは数字の魔術であって、私たちから言いますれば、昨年と同額の価格にするためにこういうような食糧庁としては計算をいたしまして、昨年の価格に合わせるための一つの技術的なあれにすぎない。実際問題といたしますというと、こういうようなことでこれはごまかせるものではないと私は思うのです。食管法に基づきますというと、これは需給事情というようなことを勘案してこれをきめるべきではなしに、あくまでもこれは生産費所得補償方式に基づくところのこまかい計算に基づいた計算をするべきであって、このようなことは、われわれ農民をごまかす一つの方法として技術的に編み出したものであるとわれわれ考えますが、大臣はどう思います。
  148. 長谷川四郎

    長谷川国務大臣 ごまかしでも何でもないのでありまして、シグマのとり方というものは、一シグマをとっていたのを〇・五に今度は変えたということでありまして、そういたしますと、そのようなことになるのでありまして、要するに、それがごまかしだとかなんとかという意味ではなくて、算定をするとそのようになるということを明示したものでございます。
  149. 神田大作

    ○神田(大)委員 政府のほうで幾らにするということになりますというと、シグマを二分の一にするとか、あるいは一%にするとか五%にするとかということで、これは幾らでも動かせる問題で、このことはわれわれはもう長い間、いわゆる限界反収でもってこれをやってきたこの基本をくずすものであって、これがすなわち私の言う、政府の技術的な作業によって米価を低くするための一つの手段にすぎない。  われわれは食管法のある限りにおいては、生産費を償う、再生産をするという、そういう観点に立ってこれをやるべきであると思う。食管法改正された場合においては、需給調整に基づくところの自由な価格ということはできるかもしれません。しかしながら、現に食管法が現存しておる今日において、そのような需給調整というような立場に立ってこれは計算すべきものではないと私は考える。これが非常に大事な問題であるし、われわれとしては、これがいわゆる食管法違反する事項であると思うのでありますが、大臣はどう思います。
  150. 桧垣徳太郎

    桧垣政府委員 大臣から大局的な御答弁がございましょうから、その前に事務的にお答えを申し上げますが、食糧管理法第三条第二項の規定で、「生産費及物価其ノ他ノ経済事情参酌シ米穀ノ再生産確保スルコトヲ旨トシテ之ヲ定ム」とあり、そうしてこの規定に基づきまして、政府生産費所得補償方式基本としてとっていくということでございますから、私は、平均生産費を平均的な農家に償うことができないという状態は、この規定で私は許されないことであるというふうに考えるのでございます。標準偏差をどの程度考慮するかという問題は、私どもとしては、需給の事情を反映して考慮してしかるべきではなかろうかという考え方をこの中に持ち込みまして試算をいたしたということでございまして、自由流通のもとにおける、午前中にもお話がございましたが、いわゆる需給均衡価格というようなものを、食管法第三条第二項の規定に基づく価格として持ち込む余地は、私はあり得ないというふうに考えておるのでございます。
  151. 長谷川四郎

    長谷川国務大臣 おことばにもございましたように、再生産確保、こういう点につきましては、食管法第三条第二項の米穀の再生産確保と、国民食糧確保をはかるという立場に立って、つまり需給実情に照らして、国民経済的に見て必要な米穀の再生産確保することを旨として米価決定するということでありまして、米の再生産ということはこのような観点から理解さるべきものでありますので、決してそれは、現在の需給の上に立って、再生産という点については御無理な点ではないだろうと考えておるのでございます。
  152. 稲富稜人

    ○稲富委員 ただいまの神田委員質問に関連いたしまして、本年度政府米審諮問されました、その諮問基本的なことについてお尋ねしたいと思います。  ただいま神田委員からも御質問ありましたように、食管法の第三条第二項の「生産費及物価其ノ他ノ経済事情参酌シ米穀ノ再生産確保スルコトヲ旨トシテ之ヲ定ム」ということは、これは先刻から御説明があっております。ただ、この諮問の中に、「生産費および所得補償方式基本とし米穀需給事情を考慮して決定することにつき、」という、この需給事情というものをここに限定されたという理由はどこにあるか。きょう午前中からの質問応答を聞いておりますと、これは経済事情の一半である、こう言われております。もちろん、経済事情を参酌するという中には需給事情も入るかわかりませんが、その事情を参酌する中の、特に需給事情というこの限定されたものを考慮して決定するという考え方というものは、非常にこれが狭められた基本的な考え方になるわけなんです。ここに非常に問題があると思いますが、これをどうお考えになるのか、ちょっとお聞きしたい。
  153. 長谷川四郎

    長谷川国務大臣 これは稲富さんにおしかりを受けるかもしれませんけれども、おしかりなくお聞き願いたいと思いますのは、第三条には所得補償方式というようなものは、この中には書き入れてはないのでございますけれども、当然これをとっております。またこれを基本としてとっておる。したがって、経済ということになれば、もちろん需給という面にも大きくウエートを置く。  こういうような考え方によって、今日まで皆さん方のいろいろな御苦労によりまして、皆さん方の御意見を尊重しながら生産面の奨励をいたした結果が、今日のような需給状態になっておるのでございますから、やはりこの現実を知ってもらうということ、その上に立って米価というものは決定してもらうということが、最も妥当であるというような点も考えられますし、一方には需給状態というものはかくのごとくになっておりますということも御説明をすることが、やはり正しい諮問のしかたであろう、こういうように考えたからでございます。
  154. 稲富稜人

    ○稲富委員 これは審議内容において、そういう事情を参考とされることはやむを得ないかもわからない。しかしながら、本年は需給事情というものを特にこの諮問主文に書かれたということは、今日米がだぶついているといわれているそういうような需給関係にあるから、できるだけ本年度の米価決定は安くするような答申をしてもらいたい、こういう政府の意図がこの中にあるのじゃなかろうか。すなわち、「経済事情参酌シ」という幅の広いこの食管法内容の中で、特に「需給事情を考慮して決定する」こういう限定をされたということは、そこに政府諮問に対する意図があるんじゃないか、こういうことをわれわれは言わざるを得ないのであります。  こういうことは、諮問に対して政府がとるべき問題じゃない。参考に説明されることは別だけれども、この問題を主文にされるということは、すでにこれはできるだけ安くしなければならないという希望の上に立っての諮問主文である、こういうふうに考える。私はこの点は非常に不十分な表現であると思うのです。不当な表現というか、どうもおもしろくない表現だと思うが、これはどうお考えになっておるか伺いたい。
  155. 長谷川四郎

    長谷川国務大臣 私もお話を十分に承っておきますが、いずれにしても「生産費および所得補償方式基本とし」ということが、この中で大きな題目となっておるのでございまして、別にこの需給という面についてウエートをかけているというようには考えられないのでございます。  いずれにしても、くどいようでございますが、一応需給状態というものはこうでございますということを、やはり諮問主文の中に入れるのが当然だ、このような考え方をもってこの中に加えたのでございますから、御了承賜わりたいと存じます。
  156. 稲富稜人

    ○稲富委員 いま大臣は、「生産費および所得補償方式基本とし」ということにウエートを置いているんだとおっしゃるのですが、「需給事情を考慮して決定することにつき、」というこの文章を見るときに、どうも需給事情を考慮することにウエートを置いてあるような感さえも私たち深くする。  こういう点からいうと、すなわち、ここにウエートを置くことによって、今年度の米価決定というものは、いわゆる所得補償方式基本とするけれども、需給事情を考慮することによって決定するんだ、こういうように、いかにもできるだけ安く答申をしてもらいたいというような意図があると解釈せざるを得ない。これに対して大臣は、そうじゃないとおっしゃるけれども、この主文から見ますと、そういうような点があるということは、非常におもしろくないと私は思うのですが、これに対してどういう解釈をなさっているか。
  157. 長谷川四郎

    長谷川国務大臣 すでに申し上げてございますけれども、他の資料といたしまして、生産費というものがいかに高くなっておるかというような点につきましては、別途提出をしてございます。そういうような点から考えますならば、いまも申し上げたように、主文生産費及び所得補償方式というものが十分に加わっておりますから、別にこれでセーブしようというような考え方は、私たちは毛頭持っておらないのです。しかしながら、現在の需給の状態というものだけは知っておいてもらわなければならぬということを、はっきりとこの中につけ加えたわけでございます。
  158. 稲富稜人

    ○稲富委員 米審に対して、いずれ内容の御説明等が大臣からなされると思うのでございますが、この主文は、生産費及び所得補償方式基本として本年度の米価答申をしてもらいたいというのが大体主であって、需給事情を考慮するということは、現在の需給関係がこういう状態にあるという補足説明である、こういうふうに大臣から、機会を見て御説明を願うことができるのでありましょうか、この点をお伺いしたい。
  159. 長谷川四郎

    長谷川国務大臣 明日はいよいよ私も出席をしなければなりませんので、その点につきましては十分に納得のいくような、皆さんの御理解が得られるような御説明をいたす考えでございます。
  160. 神田大作

    ○神田(大)委員 いま大臣の答弁を聞きますと、米が余ったから安く買うという考えがあるようでありますが、米が余ったから安く買うとか、米が足らないから高く買うとかいうのは、これは食糧管理法に触れる問題であります。   〔安倍委員長代理退席、委員長着席〕 われわれは戦争中あるいは戦後におきまして食管法を守って、当時米が非常に足らなかったけれども、やはり政府決定したところの米価によって、損をしながらもこれを売り渡しをしたわけです。しかしながら、いまの大臣の考えを通しますと、その当時は米が足らないのでありますから、需給事情勘案するならば相当高い価格で買い入れなくちゃならなかった。しかしながら、食管法でもってこれを押えておったわけであります。  今日米が余ったからといって、これをシグマのやりくりによって、いわゆる去年から比較いたしますと、五十六キログラムでございますから、約一俵増収ということによりましてこの価格を引き下げておるわけです。私は先ほども申しましたとおり、食管法がくずれた、あるいは食管法を皆さんが撤廃したというならばその話はわかります。その場合、米が余ったら安くなる、米が足らなくなったら高くなる、これは需給によって操作されましょう。しかしながら、厳然として食管法がある以上においては、そのような理屈は通らぬ。余ろうがあるいは足らなかろうが、これはもう一つのワクでもってきめなくちゃならぬ問題であると思うのでありますからして、この辺が、私は政府の考えが間違っておるのじゃなかろうかと思いますが、その点どう思いますか。
  161. 長谷川四郎

    長谷川国務大臣 お説のとおりにやるつもりでございます。
  162. 神田大作

    ○神田(大)委員 それはたいへんなことだと思う。私は、政府の出した諮問案が、私がいま言ったことに反する諮問案を出したのではなかろうかと思う。大臣は私の言うとおりにやるというなら、諮問案を撤回しますか。それをお尋ねします。
  163. 長谷川四郎

    長谷川国務大臣 諮問案は撤回はいたしませんけれども、従来からも米価決定にあたっては、需給事情というものを十分考慮に入れたはずでございまして、年によってはいろいろな形で、たとえば、加算金だとか奨励金だとかいろいろな面でこれらが加えられたということは、需給事情というものが十分に考慮されて、そういうような価格形成を行なっておられるのだということは、御了承賜わりたいと思うのでございます。
  164. 神田大作

    ○神田(大)委員 それは重大な問題を農林大臣は答弁しましたね。私の言うのは、米が余ろうとあるいは足らなかろうと、食管制度に基づいて、生産費を補償する価格でもってこれをきめなければならぬということを申したわけでありますが、大臣はそのとおりだと言われる。しかしながら諮問案はこれと違う、需給事情勘案してきめる諮問案を出しておる。いままでもそういう需給事情勘案したと申されますが、いままではそういうことをやっておりますが、これは平均反収じゃなしに限界反収でもってこれをほとんどきめておったわけでございますから、そういうことから申しますと大臣の答弁はちぐはぐで、諮問をした案と大臣の答弁とは違うことでございますが、こういうことになりますと、これは責任重大だと思いますが、大臣はどう思います。
  165. 長谷川四郎

    長谷川国務大臣 御承知のように、かつて昭和十七年にさかのぼっていろいろな点を考えてみて、要は、何ゆえに食糧管理法が誕生したのかというような点からも考えてみるときに、またこれらに対して、いまお話しのような限界反収云々とございますけれども、やはりこれらも需給と再生産確保するために、したがって限界反収というものもとっておるのでございまして、決して私たちは農民を苦しめようなどという考え方も持っておりませんし、生産者を痛めようという考え方も持っておらない。  いずれにしても、さらに生産はやってもらわなければなりませんので、これらについてはただ価格の面——諮問に対して答申が出たら、それでやるという意味でもございませんし、答申即そのまま云々というような例は今日までもございませんので、それらの点、十分に皆さん方の御意見等を勘案しながら米価決定はなすべきものだ、このように考えておる次第でございます。
  166. 神田大作

    ○神田(大)委員 大臣は、そういう無責任な答弁をしておりますというと、これはそれこそ抜き差しならないことになりますよ。それは、大臣も私の質問であるから気やすくお答えになったと思うけれども、諮問案を出した以上は政府は責任があるわけです。大臣は責任をもって諮問案を出したわけですから、諮問案がどうなろうと、これはどうも私はわからぬというような答弁をしますというと、大臣としての責任は重大だと思う。あなた、自信を持ってこの諮問案を出したのでしょう。  しかしながら、この諮問案の精神とそれから大臣の答弁とが違っておるから、それでは諮問案は取り消して、大臣のいま答弁したお考えのとおりに出したらいいだろうと私は言うのです。ところが、大臣の言うように諮問案はどうでもいいのだというならば、いま一回考え直して、これを出し直したらいかがですか。
  167. 長谷川四郎

    長谷川国務大臣 ちっとも変わっておらないので、要するに諮問案の中には、「生産費および所得補償方式基本とし」とはっきりとうたってあるのでございますから、これによって、つまり今日の、現実需給事情というものも、十分知ってもらうことは当然だと考えて諮問をいたしたのでございますから、もちろん諮問に対しましては、私のほうは自信を持って諮問をしてあるのでございます。
  168. 小平忠

    小平(忠)委員 神田委員質問に関連しまして、若干質問したいと思うのであります。  ただいまの大臣の答弁を聞いておりますと、一体食管法を守るのか守らぬのか。政府みずからがこの食管法を守らない、違反をするという重大な責任をおかしておる、私はこう思うのであります。先刻も稲富委員の関連で明らかになったように、この諮問主文にわざわざ「米穀需給事情を考慮して」と入れたことは、いかに弁明されようとも、それは今日の米のだぶつきを理由に、この補足の試算あるいは諮問についての説明の中身をもってしても明らかなように、いわゆる米価を据え置きにしようという以外の何ものでもないわけであります。  そこで、私は非常に重要な問題ですからはっきり大臣にお伺いしますが、一体農林大臣はこの主文に、「米穀需給事情を考慮して」と入れたということは、従来の諮問は、食管法第三条第二項の経済事情を考慮してというのを今度は変えたわけですね。これはまさに食管法第三条第二項の精神違反しておりませんか。私はこの点、重ねて大臣に伺います。
  169. 長谷川四郎

    長谷川国務大臣 違反をしておりません。
  170. 小平忠

    小平(忠)委員 それならば、私は米の需給に関して大臣にお伺いします。米の管理はだれがやっているのですか。
  171. 長谷川四郎

    長谷川国務大臣 政府管理をしております。
  172. 小平忠

    小平(忠)委員 そうでしょう。今日の米の管理は、食管法によって政府、国が管理している。この諮問説明にも明確になされているように、「米の需給は大幅な緩和を示しており、当面平年作を前提としても生産需要を百万トン以上上回る状況にありますが、これを政府管理米についてみると、需給の大幅な緩和により過剰在庫は著しく増大し、」そしてその結果、「主食用配給量の約十カ月分に相当する約五百六十万玄米トンにも達すると見込まれ」ておる、こういう説明をしている。結局、本米穀年度末に五百六十万トンの在庫、よくもこうぬけぬけこんなものを主文に出したものですね。一体これはだれの責任なんですか。
  173. 長谷川四郎

    長谷川国務大臣 いかに政府管理といっても、需給がどういうふうになってもよろしいということはないのでございまして、政府は一億の国民経済をあずかっておるのでございます。したがって、幾ら米が余ろうとも、いかに需給のアンバランスをかかえようとも、幾ら古米で腐っていこうとも、そんなことはおかまいなし、こんな無責任なことはできません。  したがいまして、いまある現実はこうでございますということをお伝えすることは、当然政府の義務だと私は考えております。
  174. 小平忠

    小平(忠)委員 それはあなたは、この食管法ができてからの長い間、二十年も三十年も農林大臣をやっておるわけではないので、結局、最近農林大臣になったから過去のことは知らぬというようなことは言うべきでないし、またあなたもそうおっしゃってない。少なくとも現在の自民党の内閣、自民党の政府として、やはり米の管理については責任がある。戦後の混乱の中で米の増産のために、米生産農民はどういう努力をしたのです。現実農林省がそれの先頭に立って基盤の整備をやり、あらゆる品種の改良をやり、技術の改善をやって増産をやったでしょう。そういう結果昨年、一昨年、二年の豊作で米がだぶつく、あたりまえの話じゃないですか。そのだぶつく場合に、古米がだぶつかないように管理するのが政府の責任じゃないですか。  具体的に、政府はこの昨年、一昨年の豊作に対して、需給関係を考慮して過剰米、過剰在庫にならないようなどういう努力をされたのですか。そういう点がほんとうに全国の生産農民消費者が納得できる体制なら、このようないわゆる説明を加えて諮問してもいいと私は思うのです。どういう努力をしているのです。
  175. 長谷川四郎

    長谷川国務大臣 私が申し上げるまでもなく、開田要求というのはたくさん出てきております。しかしながら現在、今日を見ましても、あなたがお読みになったような米の需給状態でございます。ですから、開田を今後どしどし要求どおりにさせ、基盤整備をし、土地改良をして、そして米つくりをさらに拡大していくということになるならば、これこそその結果はどうなるであろうか。  こういうような考え方の上に立って、本年まで認可をしておったそういう点についてはそのままおやりなさい、新しく開田をすることだけは認めるわけにはまいりません、こういうような手段をとって、そして需給の調整をはかろうといたしておるわけでございまして、ですからそれに対していままでの、われわれがおやりなさいといったようなところに対しましては、従前どおりこれには助成もするし、お手伝いもいたしまして、そしてそのような生産を高めていこうということは考えておるのでございます。
  176. 小平忠

    小平(忠)委員 それは大臣、そのような答弁では納得できないのです。食糧庁から出されたこの資料にもありますように、四十二年の米の需要供給関係の具体的な表があります。これによって米の需要——主食は米と麦ですね。米と麦の需要量は千九百十九万トンです。これに対してどれだけの生産があるのです。昨年、一昨年の豊作でさえも、この米麦の需要に対して生産量は四百六十万トンも不足しているじゃありませんか。足らないのですよ。豊作でない過去十カ年の平均を見ましても、二百五十万トンもいわゆる主食である米麦が足らないのです、日本の食糧事情というものは。その足らないところを、輸入食糧によって補っているのが現状なんです。ですから、その平年作の場合に四百万トン以上の輸入食糧で、豊作になっても平年作と同じように四百万トンも輸入すれば、二百万トンから二百五十万トンの米がだいぶつくのはあたりまえじゃありませんか。  これに対して何らの措置もしていない。終戦直後の、米が不足で粉食奨励をしたあの終戦直後の惰性そのままにきておるじゃありませんか。したがって、米の消費拡大とか需要拡大について具体的に何ら努力もしないで、それ作付転換だの、あるいは買い上げ制限だの、自主流通米だのと、こういうことをやって、それは生産農民が納得できる問題じゃないと思うのです。だから私が申し上げたように、この需給関係ということを今度は大きな理由にして、生産者米価のいわゆる据え置き、値上げを抑制しようというこの考え方が間違っておる。  ここは神聖なる国会の、農林水産委員会審議であります。私は最後にあなたから、全国民が納得できる米価を——何のために据え置きしなければならぬか。物価は上がる、賃金は上がる、生産費も上がっておる。それにもかかわらず、需給関係を理由にして米価を据え置きにするというこの理由がわからない。わかるような説明をしてください。
  177. 長谷川四郎

    長谷川国務大臣 ただいまの数字の点につきましては、長官から説明をさせます。そのあとは私がまた御答弁を申し上げます。
  178. 桧垣徳太郎

    桧垣政府委員 御指摘にございましたように、確かにわが国の米穀需給事情は、少なくとも昭和四十一年までは供給不足の状態であったのでございます。したがいまして、不足の場合には、国民食糧確保という観点から、外国米の輸入をしてその不足を補うということは、これは当然食糧管理の一つの役割りであったわけでございます。  四十一年産米でようやく国内の需給状態は均衡をいたしたといってよろしいかと思うのでございます。四十二年、四十三年と、御案内のように千四百四十五万トン台あるいはそれに近い連年の豊作がございまして、一方この表にもございますように、昭和三十七年までは一人当たりの需要量が逐年ふえてまいりまして、三十八年からやや減少に転じたのでございますが、三十八年にナショナルベースで千三百四十一万トンという消費のピークを築いたのでございます。その後昭和四十二年になりますと、千二百四十八万三千トンというのが全国民消費量でございまして、約百万トンの消費の減がある。したがいまして、千四百四十五万トンというような収量に対し需要量が千二百四十八万トンであれば、これは当然過剰の結果が出るということに相なるわけでございます。  現段階におきます米の平年作の収量は、作付面積に変動なかりせば大体千三百六十五万トン程度の生産量と見込まれるのでございますが、昭和四十三年の総消費量はまだ試算中でございますけれども、おおむね千二百二十五万トン程度になっておる模様でございます。でございますから、諮問文の説明にもございますように、平年作としても年々百万トン以上の過剰供給になるということは、これは食糧管理の面のみならず農政の面からも、私はゆるがせにできない問題であるというふうに思うのでございます。  先ほど、輸入が在庫の圧力になっておるというお話がございましたが、昭和四十年までの輸入は、これは完全に国内の需要量に充てられたものでございまして、四十一年度のものも国内需要に充てられましたが、その後半からの分が今日の米の在庫に影響をしてないとは申し上げません。しかし、それは総体の量としては大きなものではないわけでございまして、大量の輸入をいたしましたときには大量の不足があった時代でございますから、その点については御了承いただきたいというふうに思います。
  179. 長谷川四郎

    長谷川国務大臣 したがって、いままでは砕米などを輸入した。これを輸入いたさないで、しょうちゅうに回すとか、あるいは米菓に回すとか、みそのほうへ回すとかいうふうにして、輸入は一切今年はやっておらないはずでございまして、そうして国内産の米をなるべく利用するようにやっております。したがって、買い入れ価格とは大いなる差額をもって、まさに、半値だとは申しませんけれども、それに近い価格をもってこれらは払い下げをして、そのような需要のほうに回しているような次第でございます。
  180. 神田大作

    ○神田(大)委員 先ほど私が質問したとおり、食管法に基づけば、米の過剰とか不足とかにかかわらず、食管法精神にのっとって米価というものはきめる、大臣もそのとおりだ、こういう答弁がありましたね。そうなりますと、米が余ったからといって今度去年の価格と同じだというようなやり方は、これはいまの大臣の答弁からいたしますと、われわれとしては納得のできないことであります。  しかも、今日賃金は一五%からの値上がり、国鉄運賃も十五%の値上がり、その他あらゆる物価も五・六%の値上がりをしておるというような現実において、米だけを据え置くというようなそういうことで、食管法に基づく精神によって米価決定されたと考えられますか。その点どうお考えになります。
  181. 長谷川四郎

    長谷川国務大臣 諮問を申し上げたばかりでございまして、答申が出ておりませんので、その価格決定云々は、いまここで私が申し上げるべきでないと考えております。
  182. 神田大作

    ○神田(大)委員 最後にどのような決定になるかは、それはまだわからぬでしまう。しかしながら、政府諮問案を出したのです。昨年と同じ価格諮問案を出したわけです。そういうことは間違いではないかということを私は追及しておるわけです。間違いじゃないですか。これが正しいと思いますか、お尋ねします。
  183. 桧垣徳太郎

    桧垣政府委員 農林大臣から米価審議会に対して諮問をいたしましたものは、先ほど来御議論になっておりますように、四十四年産米の生産者米価決定については、生産費所得補償方式基本とし、需給事情を考慮して決定することについて審議会意見を求めるというのが、これが諮問でございまして、審議の参考のために配付いたしました試算は、現在の需給事情というものを念頭に置きまして、私どもとして限界反収というものをマイナス二分の一シグマでやるとこういうような姿に相なりますということを、審議の御参考として供しておるという意味合いのものでございます。
  184. 神田大作

    ○神田(大)委員 しかし諮問を出した以上は、これは政府の考えが、佐藤総理大臣が再々言明しておるとおり、本年度米価は上げないというそういう圧力によって——農林大臣農民の生活をよくわかっているわけでございますから、大臣としては、物価がどんどん上がる、賃金もどんどん上がっておる、そういうときに、去年と米の価格は同じだということは、心の中では、これはとてもそんなわけにはいかぬと大臣は考えておったと私は思うのですが、そういうような内閣の圧力によって、あなたはやむを得ず、しかたなしに出したのか、またこういうことは、今日の食管法に照らしても正しいものであると思って出したのか、その点を明らかにしてもらいたいと思うのです。
  185. 長谷川四郎

    長谷川国務大臣 諮問案と同時に、先ほども申し上げましたとおり、物価、賃金、これらの上昇率が幾らになっておりますというのは、別途資料をもって提出をしてございますので、十分それらは勘案をされるであろうというふうに考えられます。したがって私は、一応私から諮問をいたしたのでございますから、諮問が間違っているとは考えておりません。
  186. 神田大作

    ○神田(大)委員 それでは、この食管法第三条二項にあるところの「米穀ノ再生産確保スル」ということは、いまの据え置きの米価でもって、米穀の再生産確保されると大臣はお考えでございますか。
  187. 長谷川四郎

    長谷川国務大臣 再生産は、価格そのものばかりではなくて、他の方法、いろいろたくさんございますので、再生産の方法は十分に考えなければならない問題が残されているだろうと私は考えております。
  188. 神田大作

    ○神田(大)委員 私は、約五十六キログラムも増産したことにして、去年よりもシグマをつけ加えて、そしてこのような算定をした、去年と同じ価格米価でもって再生産確保されるわけはないと思うのです。一体、一年たっても据え置きになっておる価格が何がありますか。特に労力が非常に要るこの米の場合において、一銭も去年よりも上がらぬというようなそういう諮問をして、大臣はこれでも農業者の生活を守っていけると言い切れますか。その点良心的にどうお考えになります。
  189. 長谷川四郎

    長谷川国務大臣 ただいまも申し上げたとおり、価格のみによって再生産確保するばかりではございませんので、他の方法によって十分確保ができるような手段をとる考え方でございます。
  190. 神田大作

    ○神田(大)委員 大臣は、そういう他の方法によって勘案すると申しますが、われわれはやはり一番問題は価格なのです。価格によって補償されなければ、あなたたちは畜産を振興するといいながら、今日酪農はだんだんと衰微しつつあるでしょう。あべこべでしょう。振興しないでしょう。あるいはまたこれらのことはどういうことであるかというと、乳の価格が、生産者においては一合十円そこそこであるが、消費者に渡るときはそれが三倍にもなって渡っているというようなことで、需給関係の改善に努力をしないでそのまま見過ごしておる。大企業の圧力に屈してこれを見過しておる。乳の価格が停滞しておるために、今日酪農の振興はできないのです。あるいはまた、消費量の増大をはかるといいながらそれをやらない。一番手っ取り早いのは学校給食でしょう。学校給食の問題などは、パンのかわりに米を食べさせたらどうか。もしそれをたく設備がなければ、うちからたいて弁当にして持ってきて、おかずだけをつくるというようなことでこれは解決する問題です。ところが、大臣があるいは内閣がそういう気持ちになればそれを解決できる問題も、これをやらぬ。あるいはまた総合農政をやるといいながら、今日総合農政の効果がほとんど上がってないでしょう。  そういうことをさておいて、米が余ったのは農民の責任であるかのごとく、あるいはまた食管の赤字が、これも米の価格が上がるからだというようなそういう認識のもとにおいて、このような諮問案を出すことに対しまして、われわれは断じてこれは許せない。それは皆さんが食管法をなくして、そして自由にした場合においてなら、価格の問題はそれは自由でけっこうでしょう。しかしながら、一応食管制度によって米の価格というものはきめられておる以上は、こういうシグマというようなものを取り出して、そして適当に去年と同じ価格に押えていくということは、これは生産者にとりましては何とも納得できないことであります。  先ほど大臣が言いましたとおり、今日においてはもう米は余るほどできるのです。しかし、できるやつを安く買いたたくというようなそういう冷たい農政は、これはやるべきではない。われわれも米がたくさん余ること、これは困ると思います。しかしながら、これは今後やはり総合農政を徹底的に遂行することによって勘案していくべきものであって、できた米を安く買いたたくというのは、農民といたしましてはこれはがまんのできないことでございますので、その点どうお考えになりますか。ことしのできた米はやはりそれ相応の値上げをして買い取るべきではないかと思いますが、その点はっきりとお答え願います。
  191. 長谷川四郎

    長谷川国務大臣 消費の拡大につきましても、十分意を用いていろいろなことを考えておりますが、きのうまで粉食の奨励をやっていたものが、急にこれが米の事情がこうなったのだからすぐ米に切りかえろ、こういうような点につきましてもなかなか、お宅の御家庭はどうか知りませんけれども、家庭の子供さんたちに聞いてみてもそう簡単なものではないだろう。米づくりがこれだけ定着しているものを、急にどうこういってもできるものではないので、本年度は新規開田は抑制するようにいたしましても、結論としては二千ヘクタール以上のものが結局作付が多くなっていくのと同じことでございまして、消費の拡大は十分はからなければならないし、それは当然われわれの義務だと考えて、大いにこれらの面につきましてはわれわれは意を用いておるところであります。  さらにまた、もう一方は食管の赤字でございますけれども、食管の赤字が出るので、それがいやでこうだろう、そういうような考え方は毛頭持っておらないことだけは明らかにいたしておきます。
  192. 神田大作

    ○神田(大)委員 私は、この諮問案に出ておることと農林大臣の答弁の食い違いは、あとで速記録を見て追及したいと思いますが、これは重大な問題であります。このような食管法に反するような諮問案に対しましては、われわれは納得できないのであります。  次に、時間がありませんから先へ進みますが、モチ米加算金の問題につきまして食糧庁長官にお尋ねしますが、モチ米につきましてはどのような考えを持っておりますか、お尋ね申し上げます。
  193. 桧垣徳太郎

    桧垣政府委員 あるいは、私どもが米審審議の御参考にと思って提出いたしました試算の中で、モチ米の加算が、最後の一−四等平均、包装込み生産者手取り予定価格の中に入ってないということの御指摘と関連するのかと思いますが、本年度からは、かねて申し上げておりますとおり、自主流通米の制度が発足するのでございまして、モチ米は、御案内のとおり、政府としても従来からコスト価格で売り渡しをいたしておるのでありまして、自主流通米に最もなじみやすいと見ておりますが、はたしてどれだけのものが自主流通に向けられ、どれだけ政府に入るかが明確でないのでございます。  そこで、昨年度のようにモチ米の政府買い入れ数量の予測がつきますときには、その予測数量をもってモチ米の加算額の加重ウエートによる石当たり加算額というものを出して計算することは可能でございますが、そういう本年度の産米については画然たることができませんので、ここで表示いたしておりますのは、ウルチ一—四等の手取り予定価格を少なくとも昨年より引き下げることのないようなことにする、それからモチ米につきましても、加算額は昨年と同様のモチ米加算をやることによって、昨年より下回ることのないようにする、そういう考え方で臨んでおるのでございまして、ただいまのような政府買い入れの事情の変更のために、モチ米を加えた手取り価格の算定をしておらないというだけのことでございます。
  194. 神田大作

    ○神田(大)委員 このモチ米の加算というものは、従来あったわけであります。モチ米というのは、皆さんも御存じのとおり収量が、普通の水稲に比較いたしまして低いわけでございますから、それでモチ米の生産費を補償する計算からいいますと、当然モチ米というものは加算金をつけなければならぬ。それを、自主流通米になるであろうというようなことでこのモチ米の加算金を削除するということは、これも生産費所得補償方式に反する重大な問題であると思いますが、それはどうお考えになりますか。   〔委員長退席、藤本委員長代理着席〕
  195. 桧垣徳太郎

    桧垣政府委員 何かお聞き違いをなさったかと思いますので、あえてお答えを申し上げますが、モチ米の政府買い入れに対しましては、昨年度と同様、水陸稲別、等級別のモチ米加算を加えて政府買い入れをするという考え方でございます。
  196. 神田大作

    ○神田(大)委員 いまモチ米が自主流通米になると言いますが、モチ米が自主流通米になるであろうというようなことの見通しは、私はそういうことを軽々に食糧庁長官というような責任ある者が言うべきじゃないと思うのです。大体自主流通米ということそれ自体においてわれわれは反対をしておるので、このものが食管法違反であるとわれわれは考えておるのであります。  今日この自主流通米制度ができるというようなことを見越して、業者はすでに庭先へ行って、金を前渡しして取引をしておる。こういう問題は明らかに食管法違反であると思う。あるいはまた、某料亭でもって業者が集まって取引をやっておる、こういうことが堂々と五大新聞のうちの一つに写真版とともに載っておる。こういうことをあなたたちが見のがしておるということは、やがて食管法を改悪するなりあるいは解消して、そうして自由制度にしようというもくろみがあるからこれを見のがしておるのではないかと思いますが、この点について長官はどう考えますか。
  197. 桧垣徳太郎

    桧垣政府委員 モチ米につきましては、自主流通米を実施いたしません昨年度の産米まで、需要者と生産者側がもち米需給協議会というようなものをつくりまして、モチ米加算の額について協議を遂げた上で、その結果を私どもは勘案してモチ米加算というものを定めて、政府の所要経費を加算いたしまして、さらにモチ米加算をいたしまして売り渡しをいたしておるのでございます。したがいまして、実質的には需要者と生産者の側で一種の需給関係についての話し合いが行なわれておるという事情がございますから、私は、自主流通米に最もなじみやすいものであるということを申し上げたのでございます。  それから、一部といいますか、報道されたところによりますと、小規模な正米取引市場まがいのものがあるようでございます。私どもは、それらの動きというのはまだほんの萌芽といいますか、ほんのささやかな存在にすぎないと見ております。また、転々と居を変えて取引しているというのはなかなか捕捉しがたいのでございますが、これが目に余るような違法な取引をやるということでございますれば、私どもも、それを見のがすことのないように規制を加えたいというふうに思っております。
  198. 神田大作

    ○神田(大)委員 そういうようなやみの取引がささやかなものであるという考えが非常に間違いであります。われわれは食管法のない戦前から正米取引所の状態をよく知っておりますが、こういう取引というものは今後増大してくる、またさらに大規模なものになってくるということは、火を見るよりも明らかであります。これが今日小さいからといって取り締まらないでおくというようなことそれ自体が、私は大きな間違いであろうと思う。今日この自由な流通米にからんでたくさんな問題がありますけれども、私は、時間がありませんからあとの機会に申し上げたいと思います。   〔藤本委員長代理退席、委員長着席〕  私は重ねて大臣に、今度の諮問案というようなものは食管法違反し、しかも、この安い据え置きの価格でもってこれを諮問していくということに対しまして、そのようなことをやる大臣の責任、並びに今日このような状態に追い込んだ政府の農政の失敗、これをやはり明らかにしていただきたい、このように思いますので、大臣に御答弁を願います。
  199. 長谷川四郎

    長谷川国務大臣 米の生産につきましては、政府はもちろんでございますけれども、与党、野党を問わず米の生産をすべく、大いにわれわれはともに努力をいたしたつもりでございまして、皆さん方野党の方々も、米の生産を差し控えろといったのではなくて、大いにやろうとお互いに協力し合って、今日の生産を高めることができたのでございます。  したがいまして、できたからといって、それを簡単に片づけるわけにはいかないということはお話のとおりでございますので、十分これらの点には考慮を加えながら、生産の調整、需給のバランスをとっていくような方法をとって、そして再生産確保できるような方途を開いていくのが、当然私に課せられたところの義務であろうと考えて、痛感をしております。
  200. 神田大作

    ○神田(大)委員 これは、大体政府の農政が、おととしまでは増産増産といって増産をさせ、ことしになったらば米が余ったから、今度はおまえらの米の価格は去年と同じだぞというようなやり方、しかも一方においては適地適作をやるといいながら、十年たっても今日これができなかったというような責任は、私は政府にあると思うのです。それを野党にまでなすりつけて、野党の責任であるかのごときそういう言いわけをすることは、はなはだもってけしからぬ。この点、どう考えますか。
  201. 長谷川四郎

    長谷川国務大臣 なすりつけるんではなくて、皆さん方と相ともに、与野党を問わず米の生産にはお互いが邁進したという事実だけはお認めになれませんか。私は質問しているのではございません。そういうような点について政府に責任なしと申し上げておるのでもございませんので、その結果でございます。当然政府の責任も、食糧をあずかるところの農林省の責任も、大なるものあることを十分了承しております。
  202. 神田大作

    ○神田(大)委員 それは大臣、たいへんなことを言われましたね。あなたは農林省の責任者でありますし、内閣の一員といたしまして政府の行政をつかさどっているわけですよ。一体われわれはいつ当局者になって政治の責任をとりましたか。あなた方はそういうことを言って、今日のこのような農政の失敗を他になすりつけたりあるいは農民の責任にしたりするから、これは紛糾するのであります。  今日、もちろん増産することはけっこうでしょう。しかし、その需給バランスを考えて、当局はそれに基づいた行政を指導するのではありませんか。その指導を誤ったことをたなに上げて、あなたたちは一緒にやったじゃないかという、そんな話を私は聞いていない。そんなばかな話がありますか。皆さんは農政の責任者として誤った、そういう意味合いにおいて日本の農政が失敗したのではないか。しかも、外国からたくさんの農産物を輸入いたしておりまして、それらに対する調整をしないで、今日そのしわ寄せを農民にしようとするのであるからしてわれわれは追及するのであります。政府の責任者としてもっとはっきりした態度をとらなければ、いまの言動に対しては承服できません。
  203. 長谷川四郎

    長谷川国務大臣 どうも神田さんのおっしゃることはさっぱり、神田さんは増産奨励をおやりにならなかったと言うのですか。私はおやりになったと考えているから申し上げたのであって、われわれはお互いともに手を携えて増産の奨励をしてきました。だから政府に責任なしとは申しませんので、責任のあることは十分承知しております、こう申し上げておるのであります。  したがって、このような異常な事態になってきたのでありますから、そういう認識の上に立って、今後は生産需要という面も十分考慮に入れて、そうして再生産がりっぱに確保でき、農業がりっぱに都市勤労者並みになるような方向に、今後さらに進めていかなければならないということを申し上げておるのでありまして、神田さんがおやりにならなかったからというならばそのとおりでけっこうでありますが、神田さんも、今日までずいぶん農業のために御努力なさったと私は認めておるつもりであります。
  204. 神田大作

    ○神田(大)委員 そういう無責任なことを言うんなら私は言いますが、いままで政府は政権をとっておって、そうして農政の責任者としての指導をやっていて、あるいは牛を飼え、豚を飼え、鶏を飼え、あるいは米をつくれ、あるいは果樹、野菜を奨励し、それに対する見通しというものを発表して、それに基づいてあなたたちは農政の指導をやっているんですよ。われわれがそれに反対したとかあるいは賛成したとかというのは、これは行政のやり方に対して、間違いを何回かわれわれも指摘してきたつもりであります。これはここにいる野党の議員の皆さんもそうだ。政府の農政の指導は間違っているんじゃないか、こういうことでは日本の農政がたいへんなことになるぞということは再々指摘しております。  それに耳をかさずに、政府の責任者が、このような今日の農政の重大な失態の状態になってきて、政府に責任は幾らかあるかもしれないけれどもお前らにもあるだろう、そんな話がありますか。そういう話は私は絶対聞けませんよ。
  205. 長谷川四郎

    長谷川国務大臣 私は、失敗した責任が皆さんにあると申し上げておるのではありません。責任は政府にあるということは、当然私は痛感をしておるということを申し上げておるのでございます。
  206. 神田大作

    ○神田(大)委員 もう時間がありませんからやめますが、そういう言動に対しまして、私は取り消しを委員長に申し込みます。いまの大臣の発言はこれを取り消すべきものである、これを取り消さなければ、近い機会に大臣への質問を許してもらって、徹底的に究明しましょう。そのことを申し上げまして私の質問を終わります。
  207. 丹羽兵助

    丹羽委員長 斎藤実君。
  208. 斎藤実

    ○斎藤(実)委員 農林大臣にお尋ねしますが、まず私は、農林大臣の日本の農政に対しての基本的な考え方を、具体的な質問に入る前にお尋ねをしたいと思います。  ことしは大量の過剰米の在庫、さらにまた食べられなくなった古米の処理、あるいは食管赤字の増大、さらに政府米価据え置きの方針、さらに自主流通米制度の発足、米から他の作物への作付転換、それにまた食糧自給の低下、輸入農産物の増大、さらに加えて諸物価の高騰、こういうこれまでにない環境、情勢の中で米価決定の時期を迎えているわけであります。ですから、去年までのあり方とはかなり事情が異なってきているわけです。  こういう状況を考えますと、この日本の農業の現状、将来というものに対して、非常に重大な転換期にきているのではないか、このように考えるわけです。日本の国民食糧確保、あるいは農業の将来について、佐藤内閣の責任者である長谷川農林大臣が、日本農政を将来どういう方向に持っていくのか、こういう基本的な姿勢をまず最初にお尋ねいたします。
  209. 長谷川四郎

    長谷川国務大臣 いままでのやり方と申しましょうか、いつも申し上げているように、農業基本法というものがありまして、それによって今日まで農業を進めたわけではございますけれども、何にいたしましても今日の日本の農業の技術というものが非常に向上をしておりまして、米がよろしいということになりますと、全く米の見込みのなかったようなところまで、たとえば地方で言うならば、北海道から九州までが米一色になりつつあるような状態。あるいはまた他の農産物の中でミカンがいいということになると、ミカンばっかりつくられていくというような状態。したがって、今日では経済事情が非常に向上を伴っておりますものですから、すでにナツミカンというようなものになりますと、食ぜんにのぼせないというような実態、事実まであらわれてきておりますし、リンゴを見ましても、今日までのようにリンゴというものは食べなくなってしまったという、こういうような食糧全体にわたって、経済の実態とあわせまして大きく変化を来たしておるのでございます。  こういう中に立っておりますから、私は、何といっても今後の日本の農業というものは、主産地主義というか、こういうようなものをどうしてももり立てていかなければ相ならぬだろう。したがって、米をつくられるところ、見込みのあるところ、たとえば米一毛作であって、米でなければほかの作物がつくれないというようなところ、こういうような地がたくさんあるわけでございますから、そういうようなところはなるべくお米をつくってもらうように、その生産を高めてもらうように、それにはなるべく省力、人間の力のあまり必要のない省力化をして、そして生産を高めていくように、思い切ったこれらの施策を加えなければ相ならぬだろうし、反面また、畜産なら畜産のうちの養豚なら養豚地帯というものもここに当然きめて、あるいは養鶏地帯だとか、果樹なら果樹のうちのミカンだとか、カキだとか、あるいはリンゴだとか、みなこれらを別々にいたしまして主産地形成を行なって、そうして思い切った施策を農業面においてかけていかなければ相ならぬ。こういうような考え方でいくことができるならば、すなわち、おのずから需要生産というもののバランスもとれるであろうし、いろいろ先ほどからおことばがありましたけれども、今日は、日本の国内の農業は、日本だけの考え方によっての農業ではなくなってもきておることも考え直さなければ相ならぬだろうと考えます。  こういうような点において、すでに米につきましても、主産地形成をとるべきだというような考え方の上に立って、今年も八カ所を指定しておる。これらは大規模でありまして、二千ヘクタールから三千ヘクタール、こういうような地を指定いたしまして、そうして良質な米を省力化して最も生産を高めてもらうような方法をとっていこう。それでそういうような主産地ということの指定を受けたところには、政府は思い切った投資を行なうようにやっていきたい、そうして国内の農産物需給のバランスをとっていきたい、こういうような考え方をもって、目下いろいろ試案を進めておりまして、これらの試案につきましては、われわれ農林省だけでおきめすべきものではないのであって、要は、皆さん方とともにどうやったらばより高い農業の形成をすることができ得るかというような点につきまして、お互いがここで一体となった姿によってこれらはつくり上げていくべきだ、こういうふうに考えておるのでございます。  長くなりますからこまかいことは申し上げませんけれども、そういうような将来の考え方をもって、今日の農政は今後進めるべきだというように考えておるのでございます。
  210. 斎藤実

    ○斎藤(実)委員 時間がありませんから次へ進みます。  今回の米審に対する政府諮問主文の問題について、私は若干申し上げますけれども、この中で「米穀需給事情を考慮して」こういうふうにあります。   〔委員長退席、仮谷委員長代理着席〕 これは食管法第三条第二項に、「政府ノ買入ノ価格ハ政令ノ定ムル所ニ依リ生産費及物価其ノ他ノ経済事情参酌シ」こう明示されています。なぜこの主文に「米穀需給事情を考慮して」こういうふうに入れたのか、農林大臣から御答弁をお願いしたい。
  211. 長谷川四郎

    長谷川国務大臣 食管法施行令第二条第二項は、経済事情を参酌して、米価を一たん定めた後に、経済事情の変動が著しい場合には、その一たん定めた米価改定することができる旨を定めたものでございまして、しかしそうだからといって、逆に食管法第三条第二項の経済事情を参酌してこれを定むというのは、一たん定めた米価改定する場合だけに限られることにはならない、このように解釈をしておるのでございます。   〔「答弁が違いますよ」と呼び、その他発言する者あり〕
  212. 仮谷忠男

    ○仮谷委員長代理 静粛にしてください。
  213. 長谷川四郎

    長谷川国務大臣 答弁が間違いのようでございますから、再び申し上げます。  需給事情経済事情の中に含まれることは当然であり、したがって、食管法に基づき米価決定する場合に参酌する経済事情として需給事情を考慮することは、食管法違反するものではないと考えますし、さらに、なお本年産米価は、生産費及び所得補償方式基本として決定する考えであることは言うまでもないと思います。
  214. 斎藤実

    ○斎藤(実)委員 私は、明らかに食管法第三条第二項に「経済事情参酌シ」と、こういうふうにうたわれておりますから、この諮問主文の中に「経済事情を参酌して」というふうに入るのが当然である。どういうわけでこの「米穀需給事情を考慮して」とこれを入れたか、ちょっと私はいまの農林大臣の答弁では納得できないのですが、再度答弁願います。
  215. 長谷川四郎

    長谷川国務大臣 「生産費および所得補償方式基本とし米穀需給事情を考慮して決定する」というようなことは、つまり、経済の中に需給というものは大きいウエートを持っておる、こういうことを表現したのであって、要は、現在の現実という上に立った需給というものを十分御認識賜わりたいという点もあわせ考えまして、このように諮問文の中に入れたわけでございます。
  216. 斎藤実

    ○斎藤(実)委員 では、この「米穀需給事情」ということは米が余っている、こういう判断でよろしいですか。
  217. 長谷川四郎

    長谷川国務大臣 食糧庁長官から答弁をいたさせます。
  218. 桧垣徳太郎

    桧垣政府委員 諮問文に「需給事情を考慮して」ということを入れましたのは、農林大臣がお答えしたとおりでございますが、ここでいっております需給事情というのは、先ほどもお答えを申し上げましたように、現段階におきまして政府管理米が大量に過剰在庫の状態になっており、また、平年作を前提にいたしましても今後百万トン以上の供給過剰という、構造的な供給過剰状態にあるという、その需給事情という意味でございます。
  219. 斎藤実

    ○斎藤(実)委員 いまの食糧庁長官の答弁を聞きますと、先ほど私が質問をしましたように、いまの米穀需給事情というのは米が余っているんだ、こういうふうに判断してよろしいですか、農林大臣
  220. 長谷川四郎

    長谷川国務大臣 御判断のとおりでございます。
  221. 斎藤実

    ○斎藤(実)委員 そうしますと、米審に対する生産者米価諮問は、この主文にありますように、米穀需給事情というものは米が余っているんだ、米が余っているから、生産者米価は据え置きなんだ、こういうふうに判断をしてよろしいでしょうか。
  222. 長谷川四郎

    長谷川国務大臣 余っているから据え置きでよろしいんだというのではなくて、現実はこのように需給がアンバランスになっておりますということをつけ加えたことであって、価格審議会委員決定するところでございまして、それに対して私のほうは、これでなければならないという価格を申し上げておるのではございません。
  223. 斎藤実

    ○斎藤(実)委員 そうであれば、わざわざこの諮問主文に、「米穀需給事情を考慮して」というふうに入れる必要はないじゃないですか。いま私が質問しましたように、農林大臣から米が余っているんだ、こうとってもよろしいという答弁がありました。それから諮問についての説明にも、明らかに米の需給は大幅な緩和を示しているというふうにうたっておりますから、先ほどから再三各委員質問されましたように、この政府の意図は、米が余っているから昭和四十四年度の生産者米価は昨年同様に据え置くんだ、こういうふうに考えざるを得ません。そうでなければ、この諮問の中に「米穀需給事情を考慮して」というふうに入れる必要はないわけだ。先ほどの農林大臣の答弁によりますと、そういうふうにわれわれは判断せざるを得ない。農林大臣、いかがでございますか。
  224. 長谷川四郎

    長谷川国務大臣 諮問をいたすのでございまして、答申委員がおきめいただくのであって、私のほうがきめるのではございませんから、答申が出るまでは、私のほうは何とも申し上げるわけにはまいりません。
  225. 斎藤実

    ○斎藤(実)委員 佐藤内閣総理大臣並びに長谷川農林大臣が、本会議並びに委員会等でたびたび、昭和四十四年度の生産者米価は据え置く、こういうふうに発言をされました。ですから、農林大臣諮問したばかりでいまのところはわからぬ、こういうふうに答弁されましたけれども、   〔仮谷委員長代理退席、委員長着席〕 当然これは最初から、この生産者米価は据え置くんだ、米が余っているから据え置くんだ、こういうふうに最初から腹の中できめておられた。もしそういう判断であれば、これは重大なる問題である。農林大臣、いかがでございますか。
  226. 長谷川四郎

    長谷川国務大臣 速記録を見てもらうとおわかりなんでございますけれども、私は米価を据え置くとは言っておらないのでございます。しかしながら米価審議会の議を経てその答申を尊重いたしますということを、必ずつけ加えてあるわけでございます。  ですから、したがって生産者に対しましても、ことしはなかなかむ、ずかしい状態でございますよというような点をまず知ってもらいたいということも、その意の中にあるので申し上げたのでございます。
  227. 斎藤実

    ○斎藤(実)委員 先ほど来の農林大臣の御答弁で、政府は、米が過剰になってきたから——その裏には、食管赤字の増大という問題も含まれましょうが、生産者米価の据え置きということは、食管制度そのものをはずそうとしているのです。ことばをかえていえば、これは完全なる食管制度を無視している問題である。法律違反である。この米価の据え置きということは、長年にわたって苦労して築き上げてきた米作農家を不当に圧迫し、さらに、農家を苦境におとしいれようとするものである、われわれはこのように判断をしております。  なぜ私はこのように申し上げるかというと、生産費も上がっております。もちろん物価も上昇している。また毎年賃金も上昇しておる。こういう状態の中で生産者米価を据え置くことは、米をつくり過ぎた農家が悪いんだ、ことばをかえていえばこういうことにもなろうかと私は思う。ですから、経済事情その他を勘案して生産者米価を据え置くということは、政府みずからの失敗を農民にしわ寄せをしようとしていることにも通ずる。これは全国の米作農民が非常に不安に思っておるし、また非常な動揺を来たしておる。したがって、一国の農政をあずかる農林大臣として、これは何らかの方法を考えなければならないというふうにわれわれは判断をしているのですが、この生産者米価に対する据え置きの考え方をもう一度考え直す考えはありませんか、再度御答弁をお願いします。
  228. 長谷川四郎

    長谷川国務大臣 まだ米価決定を見ておりませんから、私から申し上げるわけにはまいりませんけれども、米価決定によって再生産確保でき、そしてより高い生活ができ得るような施策は、これに伴ってまた当然考えていかなければ相ならぬ、こう考えております。
  229. 斎藤実

    ○斎藤(実)委員 この諮問説明の中に、米の需給は大幅な緩和を示しているというふうに書いてある。先ほどの答弁も、農林大臣は米が余っているからだ、こういうふうに答弁されました。じゃ一体、今日このような状態、米が余ってきた状態、古米も非常にふえておる、しかも古米が食糧には供されないような事態にもなってきている、このように米が今日まで余ってきた責任は、一体どこにあるのですか。農林大臣、御答弁をお願いします。
  230. 長谷川四郎

    長谷川国務大臣 だれの責任だということも——私たちは政府にも責任か十分あることを認識して、先ほどから御答弁を申し上げておるのでございます。  今後におきましても、このまま生産がますます増大し、毎年毎年消費は減る、逆に作付反別は、申し上げたように毎年増加していくということになるならば、これこそほんとうの異常な状態が継続されることになります。これは決して農民の利益になることではないだろう、このようにも考えますので、この点につきましては、先ほど申し上げましたように、農民生産者自身も、この点は十分考慮に入れておいてもらわなければならない問題だと考えるのでございます。
  231. 斎藤実

    ○斎藤(実)委員 先ほど農林大臣から、米価の据え置きの問題あるいは生産者米価をどうするかという問題は、答申が出てから考えるという答弁がございました。かりに米価が据え置きだ、じゃ一体これからの農民はどういうふうにして生きていけばいいのか。それでは米以外に価格が保証されて、収入が保障されるというものがあるかどうか。米が一番手っとり早くて、今日まで米をつくれ、つくれといって奨励をしてきて、今日米は増産になっているわけでしょう。しかも米価は据え置きだ。それじゃほかに何をつくっていけばいいのですか。何を農家がつくっていけば、これからの農民所得が向上し、家計が安定するのか。そういう方策があれば、ひとつ農林大臣から明らかにしてもらいたいと思う。
  232. 長谷川四郎

    長谷川国務大臣 申し上げるまでもなく、ただいまも申し上げましたけれども、それだからといって米が需給のバランスを欠いて毎年毎年たくさん余って、買い上げたお米が、たとえば十四万円で買ったものがえさになっていくというようなことが何年も続くというようなことがあったときに、世論がそれを許すでございましょうか。それでもそれを続けなければ相ならぬということは、皆さん方でもなかなか言いにくい事態が来るのではなかろうか。そういうような点もすでにいまからわれわれは考慮をしなければならぬ。したがって、そういうような事態がまさに来ているのに、政治は何をやっておるのだというその責任も当然追及されるであろう。  こういうような点につきまして、いま斎藤さんは何をつくればいいかと言うけれども、これは一つのものを何をつくればいいというわけにはいかないのでありまして、土地、土地によってみな違うのでございますから、適地適産がありますから、それによった生産をやってもらうようにして、それには思い切った施策をやり、先ほど申し上げたように、その施策に対しては政府としては大いに責任をもって援助をしていきたい、そうしてりっぱに生産ができるような方向に持っていきたい、こういうふうにやっておるわけでございます。  ただ本年も、たとえば富山だとか秋田とかいうような米の一毛作地帯はなかなか困難ではございましょうけれども、転換できる地区内においては、一万ヘクタールではございますけれども、これに対しては二万円を出しましょう。そのほかに、たとえば農機具というようなものに対しましても、大体一万七千円ぐらいのものを見ましょう。合計いたしますと三万七千円ぐらいかかる予定でございますけれども、農業というものはそれが定着するまでというものは、一年こっきりというわけにはまいりませんので、これらは少なくとも三年間ぐらいの間はそれを児なければならないだろう、こういうような考え方をもって、われわれはこの施策を通じてお願いを申し上げたのでございましたけれども、なかなか思うようにはいっておりません。そういうように、結論を申し上げますならば、何をつくればいいんだと言われましても、適地適作がありますので、その土地に合った生産というものをなるべくやっていただきたい、こういうように考えるのでございます。
  233. 斎藤実

    ○斎藤(実)委員 農民は非常に敏感でありまして、日本の農政がどういう方向に進んでいるかということはちゃんと敏感に知っています。米が余ったからといって総合農政を打ち出しました。作付転換、これも打ち出した。しかし、政府のいうように作付転換は実際に行なわれていないじゃないですか。農民は非常に不信感を持っています。ですから、政府が鳴りもの入りで発表した総合農政も何ら見るべきものがない。こういうことであっては農民は納得できない。ですから、将来農民が納得し、安心して生産に励めるような政策を、農林大臣もお考えになっているんじゃないかと思う。そういう政策があれば、お考えがあれば、この委員会の席上で明らかにしていただきたいと思う。
  234. 長谷川四郎

    長谷川国務大臣 冒頭に申し上げましたように、私は適地適産主義を何とかこの際つくって、そうしてこれを貫きたい、こういうような考え方を持っております。
  235. 斎藤実

    ○斎藤(実)委員 大体時間も来ましたから、私は農林大臣の答弁には承服できませんが、この問題はまたあらためて御質問申し上げたいと思います。  なお、同僚議員の樋上さんが関連質問がありますので、私の質問は以上で終わります。
  236. 樋上新一

    ○樋上委員 いま大臣が答弁になりました中で、作付転換もこうやってやるんだ、こうやっていくんだという計画はありますけれども、現在まで作付転換したものはわずか四割しか出ておらない。そして作付転換しても政府の指導が、どの方面でどうしたらいいかという確実な指導がないもんですから、過去にやったことが全部損をこうむっておる。ですから、政府の言うことと反対のことをやったらもうかるんだろうか、こういうような状態まで不安を持ち、また疑いを持ってきているということは、政府の総合農政に対する信頼感というか、そういうことが非常に欠けている、こう私は思うのでございます。  ですから、過剰米を誇大に宣伝しているが、端境期の需給操作に必要な繰り越し在庫や凶作、そういったものに備えた備蓄米も考慮しなければならないはずです。それを過剰米を非常に宣伝をして、こんなに米が余ったのだから、余ったのだからというようなことを言って、何かお米をたくさんつくれば、農民が罪悪を犯しているような感じを起こすような宣伝になっておる。私はこういうこと自身が、政府の農政に対する信頼感がないのだと思う。  あなたはいま米審答申、がなければ言えないのだとおっしゃいますけれども、もうすでに政府は本年度は据え置きである、据え置きであると主張しております。だったら農家の所得向上はいかにしてやっていくのか、その対策はどんなことを考えておるのか、それを明示していないではないですか。全く無責任である。生活水準の向上の方向を示して、それを保障していくのが政治であり、これまで国民食糧確保に苦労してきた米作農家に対する唯一の道であると私は思うのですが、この点はどうです。
  237. 長谷川四郎

    長谷川国務大臣 私たちに対する信頼感がないかあるか、あなたの御判断は別でございます。したがって、先ほども斎藤さんにもお答え申し上げましたとおり、われわれは総合農政といいましてもまだほんとに緒についたばかりでございますので、あれがあのままで満足をしているものではなくって、特に今後はこういうように日本の農業技術が向上している以上は、十分これらを生かすような方法をもって今後やっていかなければならぬ。それは、私の考え方は先ほど申し述べたとおりでございます。
  238. 樋上新一

    ○樋上委員 物価が上昇いたしまして、勤労者の賃金も非常に上昇してきた。その上昇率は一六・五%である。また、物価指数は四・九%と上昇しておる。この中で米作農家は、もしここに米価を据え置くというような結果になるならば、これは賃金の固定価でがまんせよということで不平等であり、また不当である。もし据え置きになれば、米作農家は米作収入の絶対額で一千億円、物価上昇による実質価値減で一千億円、計二千億円の減収となる。そしてこれは、とりもなおさず生活水準の切り下げである。  政府は、昨年から総合農政を打ち出しておるのですが、その中身は米作抑制のみである。米以外の作物でも、価格も安定して所得確保をされ、そして向上をしていくならば、何も米作に執着する必要はないのであります。ところが、いま米以外の作物では何ら安心してつくれるものはない。  食管の財政負担は、米作農家のためにだけあるわけではない。米の再生産確保消費者家計安定のためのものであって、これを一方的に農業予算とすること自体当を得ていない。しかも、二千九百七十億の財政負担のうち半分以上が政府管理経費である。  また、政府は構造政策の推進を主張しておりますけれども、その過程やその間の農業所得の向上はどうするのか明示していないのであります。その具体的方策を示さずして構造改善のみを主張するのは、これは無責任であると私は思う。
  239. 長谷川四郎

    長谷川国務大臣 賃金の上昇も物価の高くなったことも、全部資料として審議会には提出してございますので、当然、委員はこれらを十分勘案して答申を出してくださるものだと確信をしております。
  240. 丹羽兵助

    丹羽委員長 この際、委員長から農林大臣に一言申し上げます。  本日の委員会における審議の状況を、米価審議会に伝えていただくよう要望しておきます。  次回は来たる十日開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後六時五十三分散会