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1969-05-14 第61回国会 衆議院 農林水産委員会 第29号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十四年五月十四日(水曜日)     午前十時五十四分開議  出席委員    委員長 丹羽 兵助君    理事 安倍晋太郎君 理事 仮谷 忠男君   理事 藤本 孝雄君 理事 三ツ林弥太郎君    理事 湊  徹郎君 理事 兒玉 末男君    理事 森  義視君 理事 稲富 稜人君       大石 武一君    大野 市郎君       金子 岩三君    小山 長規君       菅波  茂君    瀬戸山三男君       田澤 吉郎君    中尾 栄一君       野原 正勝君    八田 貞義君       藤波 孝生君    松野 幸泰君       伊賀 定盛君    石田 宥全君       工藤 良平君    佐々栄三郎君       柴田 健治君    永井勝次郎君       芳賀  貢君    美濃 政市君      米内山義一郎君    神田 大作君       樋上 新一君  出席国務大臣         農 林 大 臣 長谷川四郎君  出席政府委員         経済企画庁総合         開発局長    宮崎  仁君         農林政務次官  小沢 辰男君         農林大臣官房長 大和田啓気君         農林省農地局長 中野 和仁君         農林省畜産局長 太田 康二君  委員外出席者         経済企画庁総合         開発局参事官  小榑 康雄君         農林省農政局参         事官      中澤 三郎君         建設省都市局技         術参事官    葛生 新一君        専  門  員 松任谷健太郎君     ――――――――――――― 五月九日  農林物資規格法の一部を改正する法律案内閣  提出第九二号) 同月十二日  農林漁業団体職員共済組合法等の一部を改正す  る法律案兒玉末男君外十二名提出衆法第四  一号) 同日  国有林野活用に関する法律案成立促進に関  する請願天野光晴紹介)(第六一二一号)  同(笹山茂太郎紹介)(第六一二二号)  同外四件(白浜仁吉紹介)(第六一二三号)  同外二件(森田重次郎紹介)(第六一二四  号)  同外二件(中曽根康弘紹介)(第六一九八  号)  同(藤尾正行紹介)(第六一九九号)  同(久保田円次紹介)(第六三三三号)  同外一件(熊谷義雄紹介)(第六三三四号)  同外一件(中川一郎紹介)(第六三三五号)  同(森山欽司紹介)(第六三三六号)  同(渡辺美智雄紹介)(第六三三七号)  国有林野事業に従事する作業員処遇改善に関  する請願外一件(川村継義紹介)(第六一二  五号)  同外二件(北山愛郎紹介)(第六一二六号)  同外一件(永井勝次郎紹介)(第六一二七  号)  同(美濃政市紹介)(第六二〇〇号)  同外五件(美濃政市紹介)(第六三三八号)  農業者年金制度確立に関する請願北澤直吉君  紹介)(第六一二八号)  同外四件(丹羽喬四郎紹介)(第六一二九  号)  同(北澤直吉紹介)(第六三三九号)  農地法の一部を改正する法律案成立促進に関  する請願外五件(足立篤郎紹介)(第六一三  〇号)  同外一件(有田喜一紹介)(第六一三一号)  同外四件(久野忠治紹介)(第六一三二号)  同外三件(小山省二紹介)(第六一三三号)  同外一件(白浜仁吉紹介)(第六一三四号)  同(砂田重民紹介)(第六一三五号)  同外二件(中曽根康弘紹介)(第六一三六  号)  同外三件(灘尾弘吉紹介)(第六一三七号)  同(西村榮一紹介)(第六一三八号)  同外二件(八田貞義紹介)(第六一三九号)  同(福井勇紹介)(第六一四〇号)  同(福永一臣紹介)(第六一四一号)  同(佐々木良作紹介)(第六二〇一号)  同外八件(砂原格紹介)(第六二〇二号)  同外二件(八田貞義紹介)(第六二〇三号)  同外四件(福永健司紹介)(第六二〇四号)  同外一件(藤尾正行紹介)(第六二〇五号)  同外一件(山下元利紹介)(第六二〇六号)  同(渡辺美智雄紹介)(第六二〇七号)  同外三件(足立篤郎紹介)(第六三四〇号)  同外二件(稻村左近四郎紹介)(第六三四一  号)  同外三件(江崎真澄紹介)(第六二四二号)  同外十九件(遠藤三郎紹介)(第六三四三  号)  同外一件(大石武一紹介)(第六三四四号)  同(久保田円次紹介)(第六三四五号)  同外二件(重政誠之紹介)(第六三四六号)  同(渡海元三郎紹介)(第六三四七号)  同外一件(中曽根康弘紹介)(第六三四八  号)  同外十件(永山忠則紹介)(第六三四九号)  同(丹羽喬四郎紹介)(第六三五〇号)  同(西村英一紹介)(第六三五一号)  同外六件(橋本登美三郎紹介)(第六三五二  号)  同外四件(八田貞義紹介)(第六三五三号)  同外十二件(渡辺栄一紹介)(第六三五四  号)  同(藤本孝雄紹介)(第六三五五号)  同外二件(松野頼三君紹介)(第六三五六号)  同(森山欽司紹介)(第六三五七号)  中国食肉輸入禁止解除に関する請願和田耕  作君紹介)(第六二〇八号)  同外四件(和田耕作紹介)(第六三五八号) 同月十三日  食肉輸入に関する請願井出一太郎紹介)  (第六三九六号)  同(小川平二紹介)(第六三九七号)  同(小沢貞孝紹介)(第六三九八号)  同(吉川久衛紹介)(第六三九九号)  同(小坂善太郎紹介)(第六四〇〇号)  同(下平正一紹介)(第六四〇一号)  同(羽田武嗣郎紹介)(第六四〇二号)  同(原茂紹介)(第六四〇三号)  同(平等文成紹介)(第六四〇四号)  同(増田甲子七君紹介)(第六四〇五号)  自主流通米に関する請願井出一太郎紹介)  (第六四〇六号)  同(小川平二紹介)(第六四〇七号)  同(小沢貞孝紹介)(第六四〇八号)  同(吉川久衛紹介)(第六四〇九号)  同(小坂善太郎紹介)(第六四一〇号)  同(下平正一紹介)(第六四一一号)  同(原茂紹介)(第六四一二号)  同(平等文成紹介)(第六四一三号)  同(増田甲子七君紹介)(第六四一四号)  国有林野活用に関する法律案成立促進に関  する請願小渕恵三紹介)(第六五三六号)  同外二件(倉石忠雄紹介)(第六五三七  号)  同外一件(地崎宇三郎紹介)(第六五三八  号)  同(中川一郎紹介)(第六五三九号)  同(森山欽司紹介)(第六五四〇号)  国有林野事業に従事する作業員処遇改善に関  する請願外二件(山中吾郎紹介)(第六五四  一  号)  農地法の一部を改正する法律案成立促進に関  する請願外一件(藤本孝雄紹介)(第六五四  二号)  農業者年金制度確立に関する請願外二件(北澤  直吉紹介)(第六五四三号)  同外九件(中山榮一紹介)(第六五四四号)  同外四件(葉梨信行紹介)(第六五四五号)  中国食肉輸入禁止解除に関する請願有島重  武君紹介)(第六五四六号)  同(大橋敏雄紹介)(第六五四七号)  同(岡本富夫紹介)(第六五四八号)  同(斎藤実紹介)(第六五四九号)  同(田中昭二紹介)(第六五五〇号)  同(中野明紹介)(第六五五一号)  同(樋上新一紹介)(第六五五二号)  同(広沢直樹紹介)(第六五五三号)  同(山田太郎紹介)(第六五五四号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 五月十日  食糧管理制度の堅持に関する陳情書外四件  (  第三五四号)  同外六件(  第四二一号)  昭和四十四年産米生産者価格に関する陳情書  (第三五五号)  農業近代化資金適用範囲拡大等に関する陳情  書  (第三五六号)  自主流通米制度反対に関する陳情書外一件  (  第三五七号)  同外二件  (第四二二号)  林業対策に関する陳情書  (第三五八号)  畜産施設の整備に関する陳情書  (第三五九号)  林業行政に関する陳情書外一件  (第四一八号)  農地法の一部を改正する法律案成立促進に関  する陳情書外一件  (第四一  九号)  農地法の一部改正に関する陳情書  (第四二〇号)  中国食肉輸入禁止解除に関する陳情書外一  件(第四二三  号)  国有林野事業に従事する作業員処遇改善に関  する陳情書  (第四二四号)  離島における第一種漁港改良事業補助率引上  げに関する陳情書  (第四二五号)  加工原料乳保証価格に関する陳情書  (第四二六  号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  農地法の一部を改正する法律案内閣提出第一  四号)      ――――◇―――――
  2. 丹羽兵助

    丹羽委員長 これより会議を開きます。  農地法の一部を改正する法律案を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。柴田健治君。
  3. 柴田健治

    柴田委員 先般に引き続いて質問を続行いたしたいと思います。  先般、農地法改正の第一条について、途中で質問を保留しておるわけでありますが、大臣がお見えになりましたから、大臣にお尋ね申し上げたいのですが、離農対策というものをもっと考えなければならぬのではないか、こういう私たち考え方もあるわけでありますが、大臣として、ただ事柄の上で離農対策というのでなくして、離農対策というものはどういう方法をとるべきかという考え方を明らかにしてもらいたい、こう思うわけであります。   〔委員長退席安倍委員長代理着席ただことばの上の離農対策だけでは、今度農地法改正をしてみたところでどうにもならないわけだ、こう私たちは理解するわけであります。その点、離農対策基本的な考え方についてお答えを願いたいと思います。
  4. 長谷川四郎

    長谷川国務大臣 離農農林省として進めるわけではございませんが、兼業農家としてそれが協業化していくとか、こういうようなことになった場合に離農される方がある。そういうことになるならば、そういう方に対しましては、何らかの方法考えなければならないことは当然のことだと思います。  したがって、これはただ農林省だけの問題で解決のつく問題でもない。他にも関連する省がございますので、十分これらに対しましては、検討を加えるべきであろうと考えております。
  5. 柴田健治

    柴田委員 まことに抽象論的なお答えで、他の省との関係、それは全くそのとおりだと思いますが、しかし、離農対策については他の省との関係があるといえども、やはり主体となって構想を練るのは農林省役割りだ、私はそう理解するのです。他の省に相談しなければということで逃げられると、私たちは今度の農地法改正というものは、ただ法改正だけ急いで実質的な中身というものはあまりないではないか、こういう考え方を持つものであります。  とにかく離農対策というと、離農対策としての離農年金というものも考えなければなりませんし、また老後の保障の問題、また転職に関する雇用関係の安定の問題、もろもろあると思いますが、そういう点の農林省としての考え方を明らかにしないと、他の省に呼びかけようとしても呼びかける方法がないではないか。そういう基本的な考え方をもう少し、抽象論的に逃げるのでなくして、もっと大臣としてこの点は——これはもう事務当局ではだめで、大臣としての考え方が大きく支配すると私は思うので、抽象論でなく、もっと具体的にお願いしたいと思う。
  6. 長谷川四郎

    長谷川国務大臣 御指摘のとおりで、私たちは逃げようとかそれを無にしよう、そんな考え方は毛頭持っておりません。今日までの日本農業が、この偉大な経済力を持った日本をつくり上げてくれた。これに対して、そんな簡単に離農するからといって逃げようとか、ほうっておくとかいうような、そんな考え方は毛頭持っておりません。それにはそれに報いるだけのことは十分考慮しなければならぬはずであります。  ただ農林省としてそういう基本的な考え方を持っておりますけれども、いまここで私が、こういたしますとはっきりと申し上げるだけの、各省との打ち合わせがついておらないから申し上げるのでありまして、精神はあなたのおっしゃることと同じことであります。あなたがおっしゃることも私の考えもちっとも違っておりません。
  7. 柴田健治

    柴田委員 昨日ですか、新聞にも報道されましたが、農業基本法の二十五条で設置されておる農政審議会諮問をし、いずれその答申を受ける、こういうことになっておりますが、その諮問内容というものが新聞に明らかになっておる。この答申を受けるのが今年の秋か明年か、こういう見通しのようでありますが、一方で農業基本法に基づいて農政審議会諮問をする、そういう段階で、一方で農地法改正するという、これはどうも私はつじつまが合わないような気がいたすわけであります。  今度の諮問内容を見ると、まず食糧供給考え方をどうするか、たん白質の問題をどうするか、地域別生産目標をどうするか、農業技術の革新、労働力流動化をどうするか、兼業問題、農地流動化による規模拡大方式協業等集団的生産組織をどうするか、また農業経営のにない手としてその後継者の養成をどうするか、土地及び水資源合理的利用をどうするか、農山漁村の再開発流通加工及び消費者保護対策をどうするか、農産物貿易の問題をどうするか、また価格政策、所得問題、こういうものを問題点として諮問をするように報道されておるわけでありますが、農業基本法という一つの国の制度の中で、正式に農林大臣諮問機関として農政審議会が設置され、その審議会でこういう重要な問題を、これから論議して答申を受けようとするそういう段階に、農地法だけを急いで改正しなければならぬという理由はどこにあるのか。こういう答申を受けてからでもおそくはないのではないか、こういう気がいたすのでありますが、大臣考え方をお聞かせを願いたいと思います。   〔安倍委員長代理退席三ツ林委員長代理着席
  8. 大和田啓気

    大和田政府委員 大臣お答えいたします前に、私が事務的な点についてお答えをいたしたいと思います。  農政審議会諮問をいたしましたのは、数日前ではございませんで、昨年の十一月に、私ども総合農政ということで、新しい農政に踏み出すべく決意をいたしました当時諮問をいたしまして、それは今後の農政推進上留意すべき基本的事項いかんということで、総理大臣から農政審議会諮問をいたしたわけであります。  自来、農政審議会におきましては、その諮問にこたえるために数回自由討議がございまして、委員としての多少の考えが出ましたことと、それから最近二回にわたりまして、大蔵省、経済企画庁、通産省、労働省等各官庁から、現在の農政に対する意見あるいは今後の農政に対する注文等意見開陳がございまして、二、三日前にございました農政審議会におきましては、それらを受けた上で、農林省として、現在の農政あるいは今後の農政に対してどういう考えを持っているかということを、事務当局として問題点指摘意見を申し上げたわけでございます。  その中でも、いま御指摘がございましたようなことを説明いたしたわけでございます、今後におきまして、農政基本としては、やはり農業で生活をすることのできる自立経営農家の育成ということを基本としながら、大多数といいますか、相当数農家はそれになかなか達し得ないわけでございますから、それらの人々十分念頭に置いて兼業対策というものをやっていかなければならないのではないか。  また、兼業農家農業生産ウエートも相当な比重を持っておるわけでございまして、昭和四十二年度におきましても、一二%の自立経営農家の受け持っている農業生産部分は三五%でございますから、そのほかに自立経営でない専業農家というのが七・八%はあるわけでございましょうから、したがいまして、兼業農家生産ウエートは六割前後というふうに想定されるわけで、それらの重要な兼業農家農業生産に対しましては、一つは、賃貸借の条件を弾力的にして経営規模拡大の道を開くために、農地法改正が絶対に必要であること、さらに、兼業農家を含めて農業の集団的な生産組織をつくって、兼業農家の主婦なり老人なりの過労を防ぐと同時に、農業生産を全体として進めていくこと、そういうことの意見開陳をいたしたわけで、農政審議会におきましては、当然今後の御意見によって答申が行なわれるわけでございますけれども農林省事務当局として、あらゆる農政問題を考える場合の第一関門として、農地法改正は絶対にお願いをしたいということを申し上げたわけでございます。
  9. 柴田健治

    柴田委員 先ほど申し上げたように、そうした国のあらゆる各階層の農業の問題に非常に知識の高い専門家審議会委員に任命されて、そういう方々の英知を集めて答申を受けるわけですから、その答申を受けてから制度改正というものはやる、順序としてはそうあるべきではないか、こう私たちは理解するわけであります。それを、農地法だけは事務当局段階改正を急いでやっておくんだ、これでは、この審議会答申を受けても——諮問をされる内容を見ると、農地流動化であるとか、また協業、集団的な生産組織であるとか、また流通の問題、こういう問題を、労働力問題等を含めて、法の改正と同時にどう実施するかというということを並行して考えないと、これは矛盾もはなはだしいと私は思うのです。ただ事務当局だけの考え方でこの法の改正をするんだということは、あまりにも越権のさただと私は思うのです。  やはり大臣としては、日本経済の中に日本農業をどう位置づけていくかということが大臣としての重要な役目であろう、こう私は思うわけです。日本経済の中で今後農業をどう位置づけていくのか、これがわれわれ生産農民立場からいっても、また立法府においても、当然考えられなければならない重要な課題であると私は思うのです。そういう点が、やはり農政審議会諮問する限りにおいては、そういう方向位置づけをしようという努力だろう、私はそう善意に解釈しておるわけですが、そう善意に解釈いたしましても、あまりにも片手落ちな法の改正だけを急ぐことは軽率なことだ、問題は非常に大きく残ってくるのではないか、私はこういうように理解するわけです。農林大臣として、日本経済の中で農業をどう位置づけていくか、そのお考え方を明らかにしてもらいたいと思うのです。
  10. 長谷川四郎

    長谷川国務大臣 それは逆で、昨年農地法改正というものが国会に提案をされまして、当然通過をさせて御賛同を得られるものであろうというその上に立って、前西村大臣ただいまの審議会にも諮問をしたようでございます。ですから、決して矛盾をしておるのではないのでございまして、農地法そのもの審議が、昨年御存じのように一カ年おくれておりまして、前後のようにあなたがお考えになるかもしれませんけれども農地法のほうはすでに通過をさせていただくものという前提に立って御審議を願ったようなお話を承っておりますから、その点はお間違いないようにしていただきたいと存じます。  もちろん、日本農業がいかなる立場にあるかということは、再三私が申し上げるまでもなく、ただ日本国内農業だけで考えられるときではなくなってきておる。毎日私のところへ各国からの外交の人々が来て要求するものは、みな農産物の話ばかりでございます。逆にこれを買ってくれ、買ってくれという話をしてくる。そういう中にある日本農業でございますので、農民努力もさることながら、われわれ行政を行なう者は、なお一そうのこれに加えて努力をしなければならぬというように考えておるのでございます。
  11. 柴田健治

    柴田委員 大臣お答えは、どうも私のお尋ねとピントが合ってないんじゃないか。まあそれは部分的には商取引の問題もあるでありましょうが、ただ貿易大臣じゃない、農林大臣ですからね。農林大臣として、いま現在日本農業がどういう立場日本経済の中で置かれておるのか、そういう点を分析しながら、将来の位置づけというものを明確にする必要がある。そうしないと、農業規模拡大をするとか、協業組織をして集団生産方式をとるといっても、成功するものではないと私は思うのです。国としての方向というものを明確にする必要がある。そして今後の日本国民食糧需給体制というものをどうしていくかということをはっきりしてもらわないといけないと私は思うのです。そういう点で、今日まで高度経済成長政策というものの中で日本農業が果たしてきた役割り、こういう点に分析誤りがあると、今後の農政の進め方にまた誤りをおかすんではないか、こういう心配があるわけです。  今日まで十年間にわたり、高度経済成長政策農民が協力をしたんではなくて、協力させられた。たいへんな犠牲を払ってきた。この犠牲の払い方において非常な問題を持っているし、われわれの考え方からいうと日本農業犠牲にした、こう言っておるのであります。しかし、取り返しがつかないのでありますから、いままで十年間犠牲をしいられたその経済政策、また今後、いまのようなインフレ的な通貨政策をまだ続けていく中で、どういう形で日本農業の基盤を整備し、また規模を拡大し、農民生産意欲をどう高めていき、希望というものをどう与えていくか、農林大臣としてこれを明確に示す重要なときでもあるし、それを示すのが農林大臣役割りだと私は思っておるわけです。  そういう点から、ただ商取引のことを言われて困っておるというのではこっちが困るのです。その点を十分検討願いたい、こう思うわけですが、農林大臣考え方をもう一度聞いておきたい。
  12. 長谷川四郎

    長谷川国務大臣 柴田さんには再三申し上げてあるので、きょうあらためてまた繰り返して申し上げる必要はないと思うから、その部分は申し上げなかったのでございます。何回となく柴田さんに申し上げたわけでございます。  自立経営というものが現在要請され——柴田さんだけが農政をやっておるのではなくて、お互いに与野党ともこぞって、どうやったら日本農政というものがうまくいくかということで、皆さん方の御意見等も十分尊重しながら、それを行政面に移しております。したがって、自立経営もさることながら、日本のこれだけ定着しておる兼業農家離農させて、そのままほっておくというのではなくて、並行して、どうやってこの兼業農家を今後存続させ、そして生産性を高めていくかということは、再三申し上げておるとおりでございまして、そのような方針をもって、今後さらに推進をいたす考え方でございます。
  13. 柴田健治

    柴田委員 どうもよくわからぬのですが、昭和三十六年にできた農業基本法は、われわれの党は、いろいろ問題があるということで反対意見も申し上げ、これは成功しない、こういう考え方で取り組んだのですが、自民党政府は、農業基本法日本農業の憲法だ、これによって日本農業自立経営選択的拡大方式論でだいぶん吹聴したわけですが、この農業基本法ができてから相当年数がたちましたが、この農業基本法がどれだけ成功したか、大臣はどういう分析をしておられるのか。これは成功した、そういう理解で今度の農地法改正をやろうとするのか、この点の見解を聞きたいのです。
  14. 長谷川四郎

    長谷川国務大臣 農業基本法制定以来、どのような成果をあげているか、詳細にわたって官房長より御説明いたさせます。
  15. 大和田啓気

    大和田政府委員 昭和三十六年に農業基本法ができまして、そこで取り上げましたいわば新しい問題は、農業生産選択的拡大農業構造改善という問題であったと思います。自後、名方面にわたる政策の結果、私どもは、農業基本法が想定した成果というのは、ある程度まで実現したという考えを持っております。  たとえば、農業生産性向上の点にいたしましても、昭和三十五年と四十二年とを比較しますと、総生産は約二割五分の増大でございます。これに対しまして、農業労働力は二割二分ほどの減少でございます。したがいまして、一人当たりの物的生産性は六割ほどの増でございます。同じ期間の製造業の物的生産性は約九割の増でございますから、製造業における九割の増、農業における六割増というのは、私は世界の各国の水準で見ましても、それほど低いものではないというふうに考えるわけでございます。  さらに、農業所得の増もございます。また農外所得の増もございまして、基本法で農家の生活水準と他産業の従事者の生活水準をできるだけ均衡させるということで、大きな目標にいたしたわけでございますけれども昭和四十二年における事実は、農業白書でも詳しく御説明いたしてございますけれども農家一人当たりの生活費は、町村在住の他産業従事者の一人当たりの生活費に比べて、むしろ五%アップでございます。農家平均の一人当たりの生活費と、町村在住の勤労者の一人当たりの生活費とを比較いたしますれば、農家が勤労者の水準より五%アップしたということでございます。全国を総合いたしまして、東京、大阪等の勤労者を含めましても、もうそれほどの遜色はございません。農家の生活水準に関する限り、私は相当程度格差の是正ということは行なわれたというふうに思います。  また、農業構造改善という点について申し上げますと、農業で生活することのできる農家、これを私ども自立経営と呼んでおりますけれども、大体昭和三十四、五年当時、基本法制定以前ではどちらかといえば、そういうしっかりした農家が農村にあるというよりは、農村にあったことも事実でございますけれども、いわば頭の中の所産というと言い過ぎでございますけれども、なかなか農村に定着をいたしかねる状況でございましたし、また、当時の低い生活水準からいいましても、町村在住の勤労者とひとしいだけの生活所得を農業であげる、いわゆる自立経営農家というのは、農家経済調査におきまして大体九%でございましたけれども昭和四十二年においてそれは十三%にふえておる。さらに協業経営といいますか、単なる稲作あるいは果樹作等々の作業の共同化ということではございませんで、全面的な協業経営、あるいは養畜、養蚕、酪農等々の部門的な協業経営を含めまして、さいふを一つにする完全な共同経営もすでに五千をこえておる状況でございます。また、私どもが近ごろ力を入れてやっておりますところの集団的生産組織も、稲作において二万四千というふうに数えられておるわけでございます。構造改善の面についても、私どもは、基本法の農政成果は相当あがったというふうに考えます。  しかし、いまここで私ども基本法の成果が大いにあがったということを特に申し上げるつもりはないので、農業内外の情勢から見て、構造改善のテンポももっともっと進める必要がございましょうし、農家の生活水準も農村の生活環境ということを頭に入れて考えますと、まだまだ都市と農村との格差は残っておるわけでございますし、農家の所得がふえたといいましても、当然兼業所得が五割を若干こえるような情勢でございますから、今後におきましてもこれらの政策をますます強力に進めて、もっともっとよい農家あるいはもっともっとよい農村をつくることに努力すべきであると考えるわけでございます。
  16. 柴田健治

    柴田委員 官房長の話を聞いておると、生産性が高まったし、他産業との所得格差も縮まったしと、何もかもいいように言われるのですが、他産業との格差の是正という立場一つ取り上げてみても、それは大都市付近で多少よくなった農村もあるでありましょう。けれども、自立農家といいながら、専業農家といいながら、専業農家みずからがどんどん兼業農家に転落する。表面は専業農家の形になっておっても、季節労務者、出かせぎ等で農業外所得を得なければ営農資金も出ない、また生活資金も出ない、こういう農家が順次ふえておることは、これは格差是正になってない、われわれはそう理解せざるを得ないのであります。  国全体の総生産額、こういう面から、農業基本法をこしらえた以前からいえば伸びたのだ、構造改善も成功した、こう言われますけれども、それの反面、農民がいま持っている負債額、それは地域的には多少差があると思いますけれども、どの程度負債を持っているかということを十分理解されていると思うのですが、負債の総額をどう見ているのか。それから預金の伸び方、私は預金もあまり伸びていると思いません。一時、昭和四十一年、二年というのは豊作で、米の価格の安定で多少預金は伸びたと思いますけれども、今後、農民の預金というものがそう伸びるとは考えられない。かえって、今後この農地法改正して、規模拡大だ、いや機械化だ、省力化だ、こういいますと、やはり相当の過大な先行投資というか、過剰投資をしいられてくる面も出てくると思うのです。いままでの農家が持っている負債と、今後また新しい農業経営を変えていくための負債というものが——いま、農民の手持ち資金というものはあまりない、われわれはこう理解しているのですが、そういう点の資金面から見た農業のあり方、これが他の産業と比較をしてみて、他の産業はどれだけ国の恩恵で財政投資を受けているか、農業の財政投資の姿、これらを考えた場合に、あまりにも差がひど過ぎる、こうわれわれは理解しておるわけですが、今日の農民が持っている負債の総額、この点の数字をひとつ明らかにしていただきたい。
  17. 大和田啓気

    大和田政府委員 農家経済調査によりますと、全国農家の平均で預金関係が一戸当たり七、八十万円、負債関係が二十数万円でございます。農家の負債というのは、ここ最近相当といいますか、かなりのテンポで増大をいたしておりますけれども農家経済調査で見る限りは、預金の増加のほうが多い状態でございます。  なお、お話の中にもございましたが、農業と財政ということで関係して見ます限り、農家農業所得の面で所得税を払うということはごくわずかでございますし、財政から農業に対して、土地改良その他の補助金その他の国費の投下というのは、ますますふえておる状態でございますから、当然財政と農業といいますか、国の収支の面から見た農業と非農業との関係では、農業にとってプラスであることが明らかでございます。
  18. 柴田健治

    柴田委員 平均を言われると、たとえば、大都市付近の預金高というものは相当伸びておるわけです。都市近郊の農村は、土地を少し売っても大幅な預金ができるし、地域開発に伴って公共用地なり工場用地なり宅地なりに転用して、その金額をそのまま農協なら農協へ預金すると、その地方の農民の一人頭の預金額の平均というものはふえてくることは間違いない。ところが純農村地帯、山村地帯、たとえば山村振興法等の法律で指定を受けておる純農村地帯の預金がそうふえておるとは、われわれはどうしても考えられない。そういう純農村地帯のこれからの農業というものをどうするかということが、われわれの重要な課題なんだ。その点について、今後の新しい農業経営をやるための資金というものがないではないか。この資金操作というものを政府はどう考えるのか、一つ制度金融の中で今後そういう地帯をどういう方法で優遇していくのか、そういう考え方があればお聞かせを願いたいと思う。
  19. 大和田啓気

    大和田政府委員 御指摘のように、山村あいるは山村に近い農村ということだけを取り上げてごらんになりますれば、全体よりも預金の額の伸びは少ないという問題はあろうかと思います。私が申し上げましたのは、農家経済調査で全体の農家を通観した結果といたしましては、農家の経済余剰はここ数年相当なスピードで伸びて、預金もふえ負債もふえておるけれども、負債のふえるよりも預金のふえる速度のほうが速いということを申し上げたのであります。これもまた事実でございます。  それから、農山村を含めて、資金が不足しておる農家に対して金融上どうかという御質問でございますが、これは当然農協その他の系統金融機関が貸す場面もあるわけでございますけれども、財政上の問題といたしましては、四十四年度の予算で御審議をわずらわしましたけれども農業近代化資金を、四十三年では千億ほどでございましたのを、一挙に三千億にふやしまして、その三千億の中で五百億ほどは、農協が現に熱心に進めております営農団地のための資金として、利子を普通より下げて措置をいたしておるわけでございますが、近代化資金三千億、それから公庫資金二千二十億、これも前年に比べて相当の増でございまして、これ以外に農業改良資金制度等々があるわけでございますが、資金のおもな部分は近代化資金とそれから公庫資金とで、私どもは、農家が金を借りて大いに農業を伸ばそうというそういう志がある限り、四十四年度におきましては、資金がないために金が十分借りられない、したがって、農業経営改善が資金の面からなかなかできがたいということは相当解消をして、むしろ農業近代化資金三千億というのは、三千億はたして全部使い切ることができるかということを、関係者がある意味で考えておりますような状況で、資金の面からは、よほど事態は改善されたというふうに考えます。
  20. 柴田健治

    柴田委員 今度農地法改正をして、農業経営規模拡大ということから、新しい今度の第一条の目的でも、いわゆる「効率的な利用」と、効率的ということばを挿入するわけですが、効率的ということばは、私たち非常に疑問を持つところなんです。たとえば資金運用の面から、資金の効率的運用ということばで今日農協資金、農民の資金がどういう方向で使われておるかということを一つ取り上げてみても、この効率的ということばでいろいろなところに金を貸しておる。農業関係のない施設に、建設業者にも金を貸したり、また一般の商業にも金を貸したりということで、効率的ということばで取り扱われると、ほんとうの農業資本として利用度を高めるのでなくして、他に転用される可能性が出てくる。農地以外の他の商業資本なり金融資本のほうに転用されるという一つの可能性が強まってくるのではないか、こういう一つの心配から、この効率的ということばに、われわれは非常に疑問を持つわけであります。  特に、今度第一条の目的を一部変える——一歩前進をさせるのだ、こういうお答えになると思いますが、われわれは、前進になるか後退になるかその点の解釈の問題でありますけれども、とにかく目的を変えるということは間違いのない事実でありますが、要するに今度第二次構造改善事業、先ほど官房長は、第一次構造改善は成功した、第二次構造改善事業を、今度四億の予算規模で順次今後十年間やっていこうという構想でありますが、この第二次構造改善事業と今度の農地法改正というものは、われわれから言うと関連があるものだ、こう見ておるのですが、関連があるとするなら、この法の改正と第二次構造改善内容というものを、ひとつもっと具体的に教えてもらいたい。  たとえば、四億の事業費の中で、離農年金というか、離農者対策はどう見ておるのか、こういう点は一つ指摘をしたい重要な問題であります。それからこの四億の事業費の中には、今度の農地法改正で、小規模農家で出てもらうのだ、やめてもらうのだという者がある区域内にあった場合、その離農者に対してどういう予算措置を組むのか。この第二次構造改善にはそういうものは含んでいないのか。この点をひとつ明らかにしてもらいたいし、構造改善事業の具体的な実施要綱というものも、もうぼちぼち出してもらってもいいのじゃないか、こういう気がいたすのですが、実施要綱の資料要求もあわせてお願いしたいのです。
  21. 中野和仁

    中野政府委員 御質問の最初のほうの効率的の問題でございますが、今回農地法改正いたしましても、不耕作者が土地を取得することを禁止するということは引き続き守っていきたいということで、そこは直しておりません。したがいまして、農業内部で土地がどういうふうに効率的に使われていくかという方向を、今度農地法の各部面に入れてきたわけでございます。  それから構造改善との関係で、農政局からもお答えがあるかと思いますが、農地法の関連で考えてみましても、今度の構造改善事業の中に経営整備事業等を織り込んでくるわけでございますが、その場合、土地が農業基本になる場合、その土地を効率的に使われるようにというような考え方から、町村なり県の公社なりそういう事業を特別にやるものについて、農地法上耕作者が土地を買えるという例外といたしまして、不耕作者でありますけれども、そういう土地を取得し、あるいは売り、貸すというような事業もやるということで、その辺の連携といいましょうか、両方タイアップして今後進めていきたいというふうに考えておるわけでございます。
  22. 中澤三郎

    ○中澤説明員 第二次構造改善事業のうち離農年金的なといいますか、構造改善事業を行ないます場合に、農家として離れていく方々に対してどういう援助措置、たとえば離農奨励金的なものを含んでいるかどうかというお尋ねでございますが、端的には、第二次構造改善事業を行なう場合に、農家部分的な離れ方あるいは全体的な離れ方をする方がございますが、直接的にその方々に援助資金というような形でやる予算は、現在のところ考えておりません。  ただただいま農地局長からお答えもございましたように、第二次構造改善事業におきましては、協業経営の促進とかあるいは集団的な生産組織の育成ということを行ないます過程におきまして、具体的にそれがやりやすいというか、たとえば、農地信託におきますところの事務、管理費とか、あるいは農地流動化するために必要な金利負担、経費負担というような事業費につきましてはこれを見ていきたい、こういうふうに考えておるわけでございます
  23. 柴田健治

    柴田委員 実施要綱の内容は出してもらえますか。
  24. 中澤三郎

    ○中澤説明員 実施要綱につきましては、ほぼ大筋がきまってはおりますが、いまお尋ねがございましたことも含めまして、まだ決定済みでないところがございますので、現在の段階で全貌をお示しすることは、事務的に無理ではないかというふうに考える次第でございます。
  25. 柴田健治

    柴田委員 こちらが要求することは、どうもまだだ、まだだということでいい回答がもらえないのですが、われわれは一つの法の改正審議の過程の中で、関連のあるものは全体的に組み合わせてみる必要があるわけでありますから、やはり私たち立場に立ってお考えを願って、法の改正と同時に構造改善なら構造改善の実施要綱ぐらいは、こういう方法でやるというそういうものを示してもらいたいと思うのですよ。それを示さずに、ただ法改正だけを急ぐなんということは、私は筋が通らぬと思うのであります。ぜひこの審議中に構造改善の実施要綱を、きょうの間に合わぬかわかりませんが、ここ二、三日のうちにでも、来週中にでも出してもらいたいということを強く要求し、いずれ理事会にもひとつはかって取り扱いをきめてもらいたい、こう要望しておきたいのです。  それから戦後農地造成として、干拓から開墾いろいろやってこられて、継続もやっておられるわけでありますけれども、戦後の農地造成の個所別と面積、それがはたして今日まであくまでも農地として耕作されているのか、転用されておる個所があるとするならば転用された個所、また使用目的の変更等を含めて、それも資料をひとつ要求したいと思う。われわれはあくまでも単年度の予算の中で、農林予算がこう組まれました、こういうことで農民に訴えてまいりました。その中には膨大な農地造成費があるわけであります。ところが、農地造成をしながらその農地として使ってない、そういうところが私は農民を欺瞞してきた点ではないかと疑わざるを得ない。その点の資料も、この法の審議でぜひ必要でありますから、農地造成に伴う先ほど申し上げた点を理解願って御提出願いたい、これも要求しておきたいと思うのであります。  次に、第二条の問題ですが、農業生産法人の要件に関する点であります。農地の提供者が生産法人をつくる場合に、たとえば十アール提供する、一方は一ヘクタール出す、Bは二ヘクタールも提供する、こういうことで土地の提供者の面積の比重というものが、それぞれの地域においていろいろ出てくると思うのですが、そういう提供面積の比重において、生産法人の運営というか農業経営をする場合に、差といいますか、力関係というものをどういう割合で生産法人は認めていくのか、民法法人とは違った形で、やはり農地を提供する面積に合わせて力関係をきめていくのか。この点をある程度われわれも知っておかないと、生産法人の組織促進にいたしましてもそれはなかなか——おれは二反しか出さないのだ、土地だけは提供しておこう、生産法人だけは加入しよう、こういうことではほんとうの土地の生産性はあがらない。みんなの力を、十のものは、十出し切っていくだけの協力体制と生産体制をつくっていかなければならぬと思うのですが、この点についてどういう考え方をお持ちになっておられるか。
  26. 中野和仁

    中野政府委員 ただいまお話しのように、現在つくられております農業生産法人に対する土地の提供のしかたにつきましては、ある場合には出資をし、ある場合には賃貸借であり、あるいは使用貸借の場合もいろいろあります。そして先生御指摘のように十アール出した者、一ヘクタール出した者いろいろございますが、土地が大きいから力があるというふうにはわれわれ考えておりません。  今回の改正案におきましても、その法人の役員の過半数は土地を出し、かつ農作業に従事するということで、単に経営管理だけでなく農作業に従事する者が中心でなければならぬ、そういう考え方をとっておりますので、土地をよけい出した者がその法人を支配していくのだという考え方にはなりませんし、また、そういうふうにならないように指導もしていきたいというふうに考えております。
  27. 柴田健治

    柴田委員 農地局長、たとえば一ヘクタールを一団地として持っておる農家ばかりではないわけですね。あっちの谷へ二十アール、こっちへ三十アールということで、水利関係も違うし——農村地帯だって近代的な、たとえば岡山県でいえば藤田村、興除村、そういう標準で一枚が五反もまた一町もあるようなところは協業もしやすいということになるでしょう。けれども、山間地で、あちらの谷へ少し、こちらの谷へもある、水利関係も違う、水利権も違うというようなところで、同じように協業というのはなかなかむずかしい。その地方、地方で入り会い耕作というか、そういう入り組んだところの耕地の交換分合等ができればこのようなことはないが、交換分合ができないような地域で生産法人をつくる場合、こちらにも一つ、こちらにも一つ、こういうことで、三カ所も四カ所も一軒の農家生産法人に加入しなければならぬ、いま持っておる土地の立地条件からいうと。そういう場合に「常時従事」ということば、その面がどう影響するのか、そういう場合の生産法人はどうするのか、その点ひとつお答え願いたい。
  28. 中野和仁

    中野政府委員 ただいまのお話は、山村等におきまして団地が非常に分散しているような場合に、はたして一つの法人経営として成り立つかどうかという問題はあるかと思いますけれども、もしそういうことででもつくりますれば、そういうばらばらになっております団地の上で、自分が働ける限りはそこで働くということが、常時従事の意味だというふうに考えます。
  29. 柴田健治

    柴田委員 これは農地局長、軽い考えで答えてもらっては困るのですよ。実際問題として重要な問題ですよ。生産法人をつくらしていくには、やはり農家が持っておる耕地の実態というものをどう把握し、それを有効適切に、先ほど申し上げたように、第一条の農地の「効率的利用」ということになれば、生産性を高めていかなければならぬ。生産性を高めるためには、経営を、個人的な経営でなしに生産法人という、こういう第二条の面で改正するとするなら、ただ平たん地だけの水利関係も立地条件もいいところ、そういうところを基準にした生産法人方式論をとってもらうと大きな誤りがある。やはり日本の農村の実態というものは千差万別であって、至るところに条件の悪いところもあれば、いいところもある。条件の悪いところを、まず最低の線をどう考えるかということが、法律を改正する者、またわれわれ審議する者の任務です。ただ一律に平たん地だけを基準に置いて考えてもらっては困るのだ。その点を軽い気持ちで答弁してもらっては困る。そういう点をどうするか、どう指導していくか、その点をもっとはっきりお答え願いたい。
  30. 中野和仁

    中野政府委員 お話しのように、たとえば水田等につきまして、平たん地では、圃場整備をやります場合に三反歩区画にして、個人の所有権とは別に大きな区画をつくっていくわけでありますが、山村になりますと必ずしも三反区画にならない、場合によっては一反歩区画にしかできないという場合がありますけれども、その場合でも、できるだけあちこち分散をさせないで、一軒の農家が二つ三つの団地にまとまるようには、現在でも運用上やっているわけでございますが、そういうものを法人に含めて、そして法人をつくる場合でも、できるだけその前に圃場整備事業をやりまして交換分合を進めるという気持ちで、いままでも運用しておりますし、今後もそういうふうにやっていきたいと思います。
  31. 柴田健治

    柴田委員 農地局長、農地の交換分合を強力に進めてこられたのですが、今日全国で、農地の交換分合の面積はどのくらいあるのですか。   〔三ツ林委員長代理退席、委員長着席〕
  32. 中野和仁

    中野政府委員 農地の交換分合につきましては、戦後何度かにわたって予算化をいたしまして、ちょっと記憶が確かでありませんけれども、たしか三次にわたって交換分合を進めてきまして、相当な面積になっておると思いますが、具体的な面積実績につきましては、後ほど資料で提出いたしたいと思います。
  33. 柴田健治

    柴田委員 今度のこの生産法人の要件に関する法の改正をすると、よほど考えてやっていただかないと、私たちは大きな誤りをおかすのではないかと思う。やはり富農というか、大きな農家だけが生き残っていく、小さい農家はもういよいよ切り捨てになってくるのではないか、こういう一つの心配が出るわけであります。今日は資本主義時代でありますから、やはり資本力をたくさん持つ者が、どういう職業の中でも、それがもう力を強めてくることは間違いない。だから、やはりこの生産法人を育成するにあたっては、その土地の持ち分、また金の持ち分、そういうものを重点に置いて権力というか、力を増していくような指導でなくして、金はなくてただ土地だけ提供した者も同じような力で営農していくのだ、こういう指導をやってもらいたいという気もするわけですが、この点について、富農養成という形にはならないか、そういうことを心配しないでいいか、そういうことは心配ございませんという、そういう強いお考えはあるかどうか、お尋ねしておきたい。
  34. 中野和仁

    中野政府委員 先生十分御承知のように、現在の生産法人は農業を専業にやる者で、かつ土地か労力を出す者が法人を構成するということになっております。したがいまして、資本だけ出すという法人は認めておりません。  そこで、その土地か労力を出した者の中で、それじゃどれがウエートを持つかという問題になってくるわけでございます。先ほども申し上げましたように、中心になるのは、土地も出し労力も出す者が今後も中心になっていくかと思います。しかし、一つの法人をつかまえてみまして、たとえば、十ヘクタール十人で法人をつくったといたしました場合に、十ヘクタールに十人が全部一年じゅう働く必要はなくなったほど、機械化もその他の技術も進んできたわけでございます。その場合に、中心になって働く者以外の者は、単に土地の提供者になってくるわけでございます。土地の提供者になってきましても構成員の中に入れておきますので、そういう意味での総会その他での発言権はございますので、われわれといたしましては、資本が支配しない範囲で労力を出す者、あるいは土地を出す者、経営をやっていく者、これらを十分うまく運営をしていきたいというふうに考えるわけでございます。
  35. 柴田健治

    柴田委員 私たちは最悪の場合を考えてお尋ねを申し上げておるわけで、いいところばかりを当局は説明される。これはだれが執行部になっても、執行部というものは都合のいいところだけ言い出すものですが、悪くなった場合はどうするかという点をわれわれは指摘をしておきたい、こう思うのです。  それで、これからの法人というと他の資本が入ってくる。たとえば、農家を集めて一つ生産法人やらぬか、資金だけはおれが何とかして貸してやろう、こういうような他の資本が入ってくる可能性があるのかないのか。たとえば外国資本も入るのか。先般も新聞が伝えるところでは、レストランもつくったりなんかしてどんどんやる。それで土地をどうしても使われるわけですが、そういう場合に複合的な企業形態、農業もやるのだ、養鶏もやるのだ、ほかの畜産もやるのだ、こういって生産法人をつくらして、いずれはその土地を他に転用しよう、こういうねらいで長期にわたっての作戦計画、そういうものが出てきはしないか。他の資本がそういう法人組織の面に入る余地を残してはいけない、入ってはいけない。これを防止するための手を打っておかなければいかぬのではないか、こういう気がいたします。  もう一つは、いま労働力が足りないために、小さい建設業者が農家労働力を、農繁期は百姓してきなさいというので農家へ帰す。それは、他の業者に労働力をとられないために何とかとめておきたい、こういう気持ちで、それならひとつ農業生産法人をつくって、こちらの仕事がない時分には農業をやらせる、工事がどっと出た時分には建設工事をさせる、こういうことで、複合的企業という、そういう立場農業生産法人をつくらした場台にはどうなのか。それはつくれないのかつくれるのか。この点の見解を聞いておきたい。
  36. 中野和仁

    中野政府委員 先ほども申し上げましたように、外国資本が直接農業生産法人をつくるということは、現行法も、改正をいたしましても、先ほど申し上げましたように、土地か労力を出す者以外にはできませんから、法律上はそういうことはあり得ないと思います。  ただ、御指摘のように、それでは裏に回ってどうかという問題はあろうかと思います。間々そういうことで耳に入ることもあるわけでございますけれども、その点につきましては、こういう生産法人をつくって農地を取得する場合に、知事の許可を受けにくるわけでございますから、その許可の段階で厳重にチェックをいたしたいと思います。  それから、第二番目の土建会社の話でございますが、土建会社の社長さんが農業をやらないで直接生産法人をつくるということは、いまの外国資本の場合と同様だと思います。ただ、土建会社の社長さんが地方の方で、自分も片手間になるかもしれませんけれども農業をやっており、それがほかの農家と集まって別の法人をつくるということは、法人としてはできる場合もあり得るかと思いますけれども、いまおっしゃいましたように、自分の会社の労働力の需給調整をやるために法人をつくるということは、ちょっとわれわれ考えられないのではないかと思いますけれども、そういう妙な法人が出てくる場合は、先ほども申し上げましたように、これは知事の許可制でございますし、その後の指導といたしましても、もし法人の適格要件を欠きますならば、その法人を解散させると申しますか、農業生産法人でなくするという一定の手続が農地法にございますので、それによりまして厳重に指導をしていきたいというふうに考えます。
  37. 柴田健治

    柴田委員 農林省がいろいろ指導をせられても、法の盲点というか、法の網をくぐってやる連中はたくさん出てくるわけです。いまのいろいろな現行法規の中で、農林関係の法律ばかりじゃございませんが、ややもすれば法の盲点をくぐる連中が出てくることは間違いない。そういう点をわれわれは心配している。たとえば、外国資本が直接入ってくることは、それは考えられぬですけれども、何らかの形で間接的に入ってくる。たとえば食品会社に、生産と結びつけるためにこうしたらどうですかというようなことで入ってくる。もうそれは米や何かにはおそらく外国資本も手を出さないと思いますけれども、ねらいは畜産関係かもしくは蔬菜か果樹かということになるのではないか。  たとえば、外国のジュースを日本でひとつつくってやろう、ひとつ日本の果樹をどこか生産地をつかまえたい、生産法人か何かでその実体を押えていきたいということになると、外国の資本というものは、使い方は日本人よりもうまいんですから、日本人が考えるような常識では考えられない。もうけるためには手段を選ばずということなんです。外国へ進出してくるくらいな資本家というものは、どこの国だって非常にうまくて、それは生きた目玉でもひっこ抜く、目の中へ指でも突っ込もうかというものでもなければ出てこない。だから、ちょっと常識では考えられないこともあり得るかもしれない。そういう場合に間接の間接でやって、何年かたったらぐっと自分が握ってしまうという場合に、日本農地というものはそういう方向で悪用される。だからわれわれは、やはり法の改正をするためには一歩も二歩も、いろいろ裏の裏まで掘り下げて検討しておく必要がある、こういう気がいたしますからお尋ね申し上げるわけであって、そういうものは断じて許さないようにしてもらいたい。  知事の権限、知事の権限とあなたは言われるが、知事というものは、今日まで農地に対してどういう理解を持っておるのか。いまの知事は、たとえば新産業都市の区域指定を受けたい、工特区域指定を受けたい、低開発の指定を受けたい、開発の区域指定だけ受けて、農地はどっちでもいいんだ、道路をつける、有料道路をつける、一般のいままでの道路を広げる、工場を誘致する、それがいまの地方公共団体の大きな、重要な役割りのように理解している。農地をどう大切に守って、その農地の高度利用を考え生産性をどう高めていくかというふうな、国の姿勢も誤っておるから、都道府県の知事から市町村長まで、農地に対しては非常に理解が薄いのではないか、われわれはこういう解釈をせざるを得ない。知事の権限、知事の権限と言って、知事にまかしておけば何でもいいようにやってくれるだろう、これは逃げの一手だと思うのです。  この法の改正をするためには、農林省が指導を明確にする意味においても、こうあるべきだということを、ただ知事に権限をまかせるのではなくして、こういう点については農林大臣の権限で措置いたします、こういうどこか締めくくりのところは守るべきではないかという気がするのですが、農地局長、どうですか。
  38. 中野和仁

    中野政府委員 農地法におきます知事の権限は、これは国の委任事務でございまして、当然農林大臣が指揮監督するわけでございます。今回農地法改正案が通りますれば、われわれといたしましても、今度の法の運用の精神から、具体的な実施のやり方まで非常に詳細にわたりまして、その辺の指示はいたしたいと思います。
  39. 柴田健治

    柴田委員 それでこの生産法人ですね、農地局長、こういう組織を進めるには、やはり農民の労働報酬というものをどう基準を立てるかということが、この法人について重要な点だと思うのです。いま米は支持価格をきめて、長い間米の価格については安定をしてきておるからいいようなものだけれども、今後総合農政という立場を進めていく限りにおいては、先ほど農林大臣から、日本農業のあり方、位置づけというものは、総合農政という立場でどんな作物をつくっても農家が安定していかれるような、そういう利益のあがるようなもうかる農業にしたい、こういう意味のお答えがあったようでありますから、もうかる農業ということになれば、やはり農民の労働報酬というものをどう基準を見るのか、この労働報酬についての見方というものは、大きく農業生産法人の場合に影響してくるのです。個人経営の場合は一日千円になっても八百円になっても、まあいいだろうという泣き寝入りがある。生産法人の場合はそうはいかない。女子の労働報酬をどうするか、男子の労働報酬をどうするか、その労働報酬というものがある程度基準になって、たとえば十の農家なら十の農家一つの出資をしているわけですから、畜産なら畜産で、果樹なら果樹で、蔬菜なら蔬菜でつくった場合には、どれだけの報酬を出したら利益が出るのか出ないのか、その労働報酬というものが、今度の農業生産法人については非常に重要な役割りを果たすのではないか。その点の労働報酬についてはどういう考えを持っておるのか、お答えを願いたいと思います。
  40. 中野和仁

    中野政府委員 生産法人の農業経営の場合も、いろいろな作物をやるわけでございますから、一律に労働報酬が幾らでなければならないということにはならないかと思います。しかし、たとえば米にいたしますれば、さっき先生から御指摘ございましたように、現在米が相対的には高くて安定しておるということでございますので、たとえば米の場合だと、かなりそこの生産法人の反収が高い場合には、相当な利潤といいましょうか、それが出ると思います。その場合には、おそらく都市近郊労賃なり何なりを労働報酬としてその法人が払いましても、なお相当な利潤が出る場合があるわけでございます。  しかし、酪農の場合あるいは果樹の場合をとってみましても、ミカンは非常にいいけれどもリンゴはどうかという問題がございますので、一律に都市近郊労賃がいいということも申せないと思います。やはり一般的には、その地方、地方の日雇い労賃程度は最低確保しなければならないのではないかというふうに考えるわけでございます。
  41. 柴田健治

    柴田委員 聞き捨てならぬことばなんですが、日雇い労賃と言うが、日雇いでも全国では差があるわけですね。AとかBとかCとか地域において日雇い労賃でも違うわけですが、生産法人で奨励をして、いまの物価からいって、いまのような通貨政策の中ではたして成功するだろうか。そういう見方で生産法人を育成するなんというのは、私は少し軽率だという気がするわけです。   〔委員長退席藤本委員長代理着席〕  もう一つは課税の問題なんですが、いま全国で多額納税者になっておるのはお医者なんですよ。これはなぜ多額納税者になるかというと、御承知のようにいま健康保険制度があるわけです。この健康保険制度で恩恵をこうむって、患者には何ぼの診療点数がついておるのかわからない。これほどけっこうな商売はないのですが、そういうけっこうな商売において、また租税特別措置法という法律を適用して、基礎控除を七二%も適用しておるのですが、農業法人でもそれだけの優遇措置をしたらどうか。個人個人では農業所得については国税を払ってないのだから、こういう解釈なんですが、いま固定資産税においても何においても、地方税で農村がどれだけ払っておるかということと、それからいま農村で一番困っておるのは、課税以外の、税外負担といわれているのですが、この税外負担でたいへんな負担をかぶっておるわけです。これは長い日本の歴史の農村の慣例という面もございますけれども、この税外負担において農家は非常に苦しんでおる。この税外負担は別だといわれればそれだけでしょう。しかし、これらはもう所得の中で、農村としてその地域の連帯性の中で、親戚づき合いは別としても、地域全体のそういう責任の分野をそれぞれの負担で補って、社会秩序というか農村の地域の秩序を保っておる。要するに、農村地域の秩序を保つ一つの経費なんです。これは、どちらかというと必要経費なんです。これらはいま地方税の中でもあまり認めてない。こういう税法の中で、生産法人をつくらした場合にはどう優遇するかということをもっと考えなければならぬのではないか。そういう点で考え方を明らかにしてもらいたいと思う。
  42. 中野和仁

    中野政府委員 法人に対する税法の問題でございますが、従来からわれわれといたしましても、何とか優遇できないかというようなことでいろいろ努力をした経過がございますが、現在におきましては、農事組合法人に対する課税の特例といたしまして、法人税は、一般が百分の三十五に対しましてこれは百分の二十三にしております。それから生産法人であります農事組合法人で現物出資をした場合の譲渡所得に対する所得税は、たしか五年間延納を認めるということにもいたしております。それから登録免許税につきましては、一般の所有権移転の登記の場合は千分の五十でございますが、これを千分の六にする。それから不動産取得税につきましては、賃借権でなく現物出資を組合がする場合がございますが、この不動産取得税は非課税ということになっております。  そういうようなことで、生産法人についても一般の法人よりもかなり優遇をしておるわけでございますが、今後とも生産法人組織なり協業組織が進んでくること等の関連におきまして、われわれとしては軽減のために努力をしたいと思います。
  43. 柴田健治

    柴田委員 戦後税金の面で農業は、所得税については軽減されておることは事実でありますけれども、地方税についてはあまり恩恵がないわけです。かえって上がっておるわけです。たとえば工場誘致をしたら、それぞれの都道府県なり市の条例で、工場誘致条例という非常にけっこうな条例ができて、工場が来たら、三年なら三年間固定資産税を免除にする、またそれに還元もしてやる、こういう恩恵を与えてきておる都道府県がたくさんあるわけです。それなら農業だって土地の基盤整備、土地改良事業、構造改善事業で相当な資本を投下しているのだから、三年間なら三年間、五年間なら五年間固定資産税ぐらい免除してやる、農業生産法人をつくって構造改善をしなさい、都市の工場誘致と同じように三年間地方税の中で固定資産税は免除しましょう、それくらいの優遇措置があってもしかるべきだと思うのです。  先般も大臣には申し上げたのですが、戦後十年間に八百万人の農村の労働力を供給した。八百万人を養成するために約八兆円の負担を親がしているわけですが、八兆円の金も取られ人も取られて、これだけ他産業を伸ばしてきた最大の協力者、犠牲者は農村だから、もうぼちぼちこの辺で農村にそういう恩典を考えて、還元というのはおかしいのですけれども、優遇措置を講じてもしかるべきだ、こうわれわれは考えざるを得ないのです。そういうことを考えたら、今度の法の改正農業生産法人をつくらしていく、それにはこういうふうに課税方式を変えていくのだ、地方税を含めてこうやるのだ、今後伸ばすためにはこう優遇していく、そういう考え方を示してもらいたい、こう言うのです。現行である程度こうなっておりますというような、そんないまある制度は知っております。もう一ぺん答弁してください。
  44. 中野和仁

    中野政府委員 いまの御質問お答えする前に、ちょっと訂正させていただきます。先ほど法人に現物出資をいたしました場合の譲渡所得税につきまして五年間と申し上げましたのですが、あれはその法人の組合員でなくなるまでは延納を認める、こういうことでございますので、申しわけありませんでしたが訂正させていただきます。  それから固定資産税の問題につきましては、これもまた現行法のことを申し上げて申しわけないのですが、三十九年以来当分の間据え置くということになっておりまして、現在平均的には、田が反当大体五百円ぐらい、畑が二百円程度でございますので、これを一般的に、土地改良をやりました際にはまけるということは、なかなか困難ではないかというふうに思います。
  45. 柴田健治

    柴田委員 あまり優遇措置もせずに、農業生産法人ができるなんということは私たち考えられぬ。農林省は机の上で、そういう考え農業生産法人がどんどんできるなんて考えること自体が、私は現場というかほんとの農村の実態を知らない人の言うことだ、こう思うのです。もう少し実態を把握して、農業生産法人の育成なり将来のあり方というものをある程度国が進める限りにおいては、もっと優遇措置を考えるべきではないか。いずれこの問題については同僚議員がお尋ねされると思いますから、次へ移ります。  一条、二条を終わって今度は三条ですが、この農地の権利移動の制限に関することですが、要するに権利を移動する問題でございますから、これは重要な問題であります。この点について、今度の法の改正でどれだけ移動をするのか。いま現在日本農地が五百四十万町歩、こういわれておる。この五百五十万町歩足らずの農地の移動というものを何%ぐらいさしたのがいいのか。それはやはり農家戸数、現在五百五十万の農家、それを半分にして二百七十万戸にするのだ、あるいは二百万戸にするんだ、二百万戸にして農地の移動というものをどうするんだ、この点から考えて、そういう権利移動というものの考え方を出してこなければならぬ、私たちはこう思うのです。  この賃貸借関係で、これからの農村は不景気になってくる。不景気になった場合に担保を入れて金を借りる、それはもう農地として売らずに他にどんどん転用される、こういう心配が出てくるのですが、他に転用は、この法の改正で十分押えられるのかどうか、この点の見解はどうですか。
  46. 中野和仁

    中野政府委員 一般的には、第三条は農地の移動についての統制でございます。それから、いまの転用のお話につきましては、第四条ないし第五条でその土地が転用に値する場合には、知事なり農林大臣の許可で運用しているわけでございます。  いまお話しの土地を担保にして金を借りた場合、その土地がそれでは外へ出ていかないか、こういうお話でございますが、その点は、第三者がその土地を取得することはできないということにしておりますので、そういう心配はないと考えております。
  47. 柴田健治

    柴田委員 通作距離の問題が今度は出てきたのですが、通作距離の問題はどういう基準で見るのか。たとえば家だけはここにあるが、いままで持っておった農地は公共用地か何かで売らざるを得ない。特に、今度の新しい都市計画法で市街化区域として区域指定を受けた、出ていかなければならぬ。そのためにはどこかへたんぼを求めて、おれは他に転職するといってもほかに手に職がないんだし、ほかの職業では手に合わないし、長い経験を持っておるのは農業しかないんだ、その長い経験を生かすためには農業しかないんだ、そういう場合に、政府が都市計画法でどうされるか知りませんが、どちらにしても代替地というのは、よそへたんぼを求めて、こっちは農地を売ってしまう。そうして遠方へ、今日機動力もあるし、少少距離があってもつくりにいける、こういう場合の例もありましょうし、いろいろその地域地域の問題が違ってくると思いますが、通作距離というものを、どういう基準でどの程度のものを置くのか。  それは、たとえば東京都から茨城県のほうにつくりにいく、群馬県のほうにつくりにいくというのは、ちょっと常識からはずれておると思いますけれども、それでもつくりにいけないことはない。どの程度通作距離というものの基準を設けるのか、この点の見解をひとつ聞いておきたいと思うのです。
  48. 中野和仁

    中野政府委員 通作距離につきましては、いま先生から実際のお話がございまして、確かに千差万別だと思います。いまのお話のように、たとえば東京から茨城に通う、これは常識的に不可能なことだと思います。したがいまして、こういう場合には農地法で、東京の農家が茨城で土地を取得することは原則としてはできないと思います。  ただ最近、これは栃木の話でございますが、神奈川の農家が、自分の本拠は神奈川にございますけれども農地を向こうで取得して、向こうへは作業の家屋まで建てまして、耕作期間中はそこで住むというような場合には、あるいは例外的には可能かと思いますが、常識的に申し上げますならば、やはり朝自動車で出まして、そうしてそこで日中働きまして帰れる範囲というふうなことになるかと思います。  この点につきましては、具体的な事情はいろいろ違いますので、特に村の外へ出て買う場合が多いわけでございますので、農業委員会の判断ではできないという考え方でありますから、もうちょっと広範囲な観点からものを見るという点で、知事の許可制にしてございます。
  49. 柴田健治

    柴田委員 それではケース・バイ・ケースで知事の権限にまかせる、こういうのですな。農地局長、そのケース・バイ・ケースで、そういう点については弾力的に都道府県知事にまかせる、こういう解釈ですか。
  50. 中野和仁

    中野政府委員 弾力的に全面的にまかせるということではありませんで、運用の方針といたしましては、できるだけ効率的にその土地を買った農家が利用できるかという問題でございますから、そういう観点から、指導方針といたしましては具体的な指示をいたしたい。単に知事にまかせっぱなしにはしないつもりでございます。
  51. 柴田健治

    柴田委員 その点については、それぞれの町村の農業委員会、同じ町の農業委員会の中で、町内で移動する、耕作するというのなら実態が把握できますけれども、たとえば町外、一つの町を越してもう一つの町ということになると、その行政区域以外の区域に出る場合は、それぞれの農業委員会のなわ張りが出てくると私は思うのです。この点の調整というものは、それぞれの該当農業委員会で話し合いをせられると思うのですが、これはよほどうまくやらないと紛争の種を起こすと私は思うのです。この点については、十分考える必要があると私は思います。  次に、転貸しの禁止の制限をゆるめると、これはもうたいへんなことになるのではないか。いまの法の運用である程度の慣行は——慣行というか、制度一つの習慣がついておるのを混乱させるおそれがあるのではないか、こういう気持ちがするのですが、農地局長どうですか。この点については心配ないですか。
  52. 中野和仁

    中野政府委員 小作地の転貸につきましては、今回そんなにゆるめていないつもりでございますが、ただ、先般から申し上げておりますように、農地保有の合理化事業をやります法人の事業の実施により貸し付けようとする場合にはよいということと、水田裏作だけに貸す場合は転貸しもよろしいということ、それから農業生産法人の常時従事者たる構成員が、その土地を法人に貸し付ける場合にはよいということにする以外は、一般小作人が自分の小作地を、地主の同意も得ないでぽんぽん貸すということは認めないつもりでございます。
  53. 柴田健治

    柴田委員 農地局長、近ごろ各地方でレジャーブーム時代というか、そのためにレジャー施設をどんどんつくっていく傾向が強いのです。それで大資本家というか、資本家の皆さんに土地を買ってもらって何かに使おうというので、たとえばサーキットをつくるとか、レジャーセンターをつくるとかいうことで広大な面積を転用する。そういう場合に一団地、原野、水田、畑を含めて五十万坪だとか百万坪だとか、こういう山林原野を含めての農地転用という問題が方々に出てくる。それは、要するに土地に資本をかけようという資本家がいま多いのであります。たとえば丸紅であるとか、三菱商事であるとか、伊藤忠であるとか、こういうものがあらゆる方法で、将来高速道路がつく、または地域開発がされようとするところ、そういうところにレジャー施設をつくっていこう、こういう場合に、この法の改正でそういう面が強く出てきて、農業委員会や市町村があげてそういうものを施設する、農業なんかやめてもよい、こういうことをちょいちょいわれわれは耳にするのでありますが、こういう点が出てきた場合に、これはどうですか、そういうものは手放しでやらせるのかどうか、その点の見解をひとつ聞いておきたいと思います。
  54. 中野和仁

    中野政府委員 経済の高度成長との関連で、工業用地になるとか、あるいは宅地化するとか、あるいはいまお話しのレジャー的なものへの転用ということがかなりふえていることは事実でございます。しかし、農地法によりまして、四条、五条での転用規制というのは、今後も厳重に続けるつもりでございますので、町村がそういうことを言ってきたからといいまして、直ちに知事なり農林大臣が、どこでも許可をするということではございません。  現に、農地転用につきましては転用許可基準をつくりまして、そういう場合でも、第三種的な市街地の中に介在するような農地からまず許可をする。それからその次は第二種農地。第一種農地は、原則的には許可をしないという原則は変えるつもりはございませんので、先生の御心配になるようなことが、無秩序に行なわれるということはないと考えております。
  55. 柴田健治

    柴田委員 この新総合開発計画を読んでみると、将来はレクリエーションの場、観光施設、その他いろいろレジャー施設の計画があるわけですが、これらに要する土地の面積、要するにこれはもう山林原野だけではない。農地も相当使われるという計画があるのですが、経済企画庁が見えておると思いますが、経済企画庁はこの農地法改正に伴って、どういう考え方でこういう計画を立てられたか、経済企画庁、ひとつお答えを願いたい。
  56. 小榑康雄

    ○小榑説明員 ただいまお尋ねの新全国総合開発計画案を、ただいま審議会答申をもらいまして、閣議決定すべく案を固めつつあるわけであります。これは昭和六十年を目途とするフレームにおきましていろいろな主要指標の数字を掲げております。その指標の数字は、昭和三十九年に中期経済計画を作成すべく作業をいたしました際に、経済企画庁で長期のモデルを開発いたしまして、これによりまして推計値を出したわけでありまして、この推計値を考慮しながら総合的視点から策定したものでありますけれども、この計画案の中でも明らかにしておりますように、これは確定的目標を示すものではなくて、新全国総合開発計画の具体的内容及びその実施の成果と相互に関連するものでありまして、あくまで一応の前提であるという点に御留意をいただきたいと思うわけであります。  それで、農林業の主要計画課題におきましても、草地開発あるいは圃場条件の整備等いろいろな数字を掲げておりますけれども、これらは食糧需要の動向とか、資源賦存状況等の関係のほか、将来における農業内外情勢の変化に対応するに必要な意欲を加えまして、その方向についてのめどを示したものでありまして、具体的に今回の農地法改正にどう関連づけるかというところまでこまかく検討されていないのでありまして、これらの点につきましては、将来農林省なり、あるいは先ほどお尋ねのありましたような観光開発等の問題が具体的に起こりましたときは、その実施官庁と調整をはかりながら行なっていきたいというふうに考えておるわけであります。
  57. 柴田健治

    柴田委員 経済企画庁はこの総台開発計画案を、企画庁の立場で各省の意見を聞きながらこしらえたと思いますけれども、これはあくまで農地法改正との関連で総合的に検討しなければならぬ問題でありますからお尋ねを申し上げたのでありますが、まず、今度農地の権利移動をゆるやかにいたしますと、たいへんな方向に使われる可能性がある。現行の制度の中ですら農地がどんどんつぶれておりまして、いま一年に三万ヘクタールといわれ、四万ヘクタールといわれ、そういう農地が他に転用されておる実態からいって、こういうものをどんどん許せば許すだけ土地の価格というものは引き上げられる。やはりそこに土地の所有者と小作者との争いというものがふえてくる、これは当然のことだ。そういう一つの紛争の種がいまの経済政策の中で起こってくる。これは農民が悪いのでもなければ、土地の所有者が悪いのでもない。やはり経済政策でそういう弊害が起きておる、こうわれわれは判断をしておるわけであります。  とにかく今度上限面積、下限面積——下限面積はいままでの三十アールを五十アールに引き上げる。要するに、五十アール以内でも農業しかできない人もある。たまたまいま兼業農家だというけれども兼業農家の中でも、先般工藤議員からいろいろ兼業農家で御質問があったようでありますが、兼業農家でも安定したつとめを持っておる人、たとえば学校の先生であるとか、農協の職員であるとか、役場の職員であるとか、退職金ももらえるし、老後の年金ももらえるようなそういう職業を持っておって、一方では農家戸数に入っておるけれども、一方では勤労者という立場で勤労所得税を払っておる、そういう面の兼業農家という小規模農家もあるわけですが、五十アール以内でもそういうつとめも何も持っていない、ほとんど山林季節労務者か日雇い労務者、出かせぎという形でやっておる農家、そういう農家も事実あるわけです。それらを、おまえ五十アール以下だからもうだめだ、こういう考え方は、少し現実から離れた意見ではないか。そういう五十アール以下でも、それらの方に農業を専門にやってもらおう、それぞれの市町村の農業委員会が、五反以内でもこれはもう五反でも一町でもプラスをさせて、また生産法人の組織の中に入れて、常時農業労働者として働いてもらおう、あくまでそういう方々に農業の中心勢力としてやってもらおう、それぞれの農業委員会がこういう判定を下した場台には、五反以内でもそういう農家人々を育成していく、こういう考え方を持ってもらわないといかぬのじゃないか、こういう気がするのです。五十アール以内はだめだ、そういうことでなくて。その点についての農地局長の見解はどうですか。
  58. 中野和仁

    中野政府委員 今回農地の取得面積の下限を五反といたしましたのは、先般工藤先生のときにも申し上げたわけでございますが、兼業農家規模の限界といいましょうか、それが非常に上がってきておりまして、今後もし農業をやるとすれば、せめて五反以上は持っておってほしいというような気持ちからそうしたわけであります。  したがいまして、お尋ねの、たとえばいま三反の農家農地を取得して、先生お話しのように一ヘクタールを取得して農業をやりたいという者を、決して禁止しておるわけではございません。そういうわけでございますから、その点は御心配ないと思います。
  59. 柴田健治

    柴田委員 それから上限面積なんですが、いま日本の耕地は、水田、畑含めて基盤整備、圃場整備等が終わっている率は非常に少ないのです。それはずっと進んでいる県は、たとえば東北のほうに一部進んでいる県もございますけれども、西日本のほうは、地形的においても立地条件が悪い府県においては、あの第一次構造改善事業で、一部は基盤整備なりいままでの土地改良事業でやっているところもございますけれども、まだまだ大型の機械を入れて耕作をするような土地の整備がなされていない。そういう場合に、たんぼ一枚で五十アール、また一ヘクタール、こういうところは労働時間の短縮また大型の機械化、こういうことで経営が刷新されている。要するに技術革新の恩恵を受けておる。そういうところもあるわけですけれども、まだまだ一反で、要するに十アールで三枚も五枚もで畦畔排除していないところもある。そういう畦畔排除しようにも資金もなし、土地条件の悪いところで上限面積をふやしてみたところで、はたしてそれだけの経営ができるのか、能力が出るのか出ないのか、そういう考え方も一応持つべきだ。そういう事態をどうするか。  ただ法改正で、上限面積を撤廃してどんどんふやしたらいいじゃないか、ふやしたところで農地は幾らあっても経営する能力がない、それなら生産法人をつくるか、それもできないという場合に、まず上限撤廃をする場合には基盤整備事業、そういう土地条件の改善というものを思い切ってやらなければならぬと私は思うのですが、その点について、今後の基盤整備事業というものは、ただ第二次構造改善でやればいいのだというのか。第二次構造改善で四億円の規模でやるところは、正直に言って平たん地が多い。傾斜地帯における構造改善というものは、四億もかけてやらなければならぬような構造改善事業の場所が少ない。  要するに、今後の小規模の構造改善、小規模の土地改良、圃場整備というものについてどういう構想を持ち、そういう土地条件の改善をやっていくのか、その考え方をひとつ明らかにしてもらいたい。
  60. 中野和仁

    中野政府委員 お話の山村等におきます小規模な圃場整備につきましては、農地局といたしましては、団体営の圃場整備事業を実施しておるわけでございます。これにつきましても、御承知のようにことしも相当予算をふやしておりますので、重点的にそういうところに使うつもりでおりますけれども、特に山村振興法におきます指定地域につきましては、受益面積を二十ヘクタールから十ヘクタールに下げるということもやっておりまして、決して平たん地ばかりに金をつぎ込んで、そういう出村等の辺境地帯にはつぎ込まないということではないというふうに考えますし、われわれの運用といたしましても、そういう地帯にはそれぞれ必要な資金は投下をしていきたいというふうに考えます。
  61. 柴田健治

    柴田委員 私たちは岡山県の山の中に住んでいるのですが、平たん地は汽車が通っておる付近だけがやや改善されておる。水利施設についても、いま全国でため池がたくさんあるが、このため池の新しい築造でなしに、現在、その維持管理ですら十分でない。国は災害が起きれば、老朽ため池の採択基準があって、年々徐々にはやっておられるけれども、全国の二十七万というため池の現状を一つ取り上げてみても、水はたまっておるけれども水路は全然だめだ。水利関係改善でも、私のほうの地方では水路がほとんどないというため池がたくさんある。そういう水路関係一つ取り上げてみても、まだまだ補助というか、そういう採択基準をもっともっと検討をして、老朽ため池の修築なりまた水路の修築、改築、そういうものもあわせて考えてもらいたい。基盤整備というものは、われわれの地方では〇・二か〇・三%ですよ、改善をしているところが。まだ九〇%、九割くらいは昔のままの農地の実態であります。  そういうところは、やろうとしても個々の農家の実態、それから農協の実態、またその市町村の産業経済というもの、地方財政の中でも土地基盤整備に振り向けるだけの財政的な余裕がない。そういうことを考えた場合、現在あるものを維持するのが精一ぱい、そういう町村なり山村地帯がたくさんある。そういう事実をわれわれはどう踏まえて、それを改善するのにどういう構想を練るべきか。そういうものを一方で考えて、いま局長が言われるように、ことしの予算は組んでおります、二十町歩を十町歩にと言われるが、私たちは五町歩に下げるべきだと思う。もう少しランクを下げて、もっとそうした地帯の農業しかやれない地域の改善を、この際五年なら五年、五カ年計画を立てて取り組むべきだ、それによって将来この法の改正で上限面積の撤廃をするんだ、そういう前提条件でやる仕事の計画というものを明らかにして、上限の制限の撤廃だ、こういうことにならないと、私は法の改正だけ急いだって、農村の恵まれない地域、そういう基盤整備のおくれている地域は、法の改正をしていただいても何も恩恵がないではないか、こういうことが言えると思うのです。  将来、この法改正と同時に、そういう地域における整備計画が五年なら五年の計画で、現在山村振興法だのいろいろ法律がございますけれども、それも思い切って改正して整備計画を立てます、こういうくらいの熱意があってほしい。それを一つ考えないというところに、われわれは不満を持たざるを得ないのです。農地局長なり大臣どうですか。この点について大臣考え方もこれは聞いておく必要があるのですが、お答えを願いたいと思います。
  62. 長谷川四郎

    長谷川国務大臣 御指摘のような点、たとえば過疎地帯というような点、こういう面には特に力を入れていかなければならない。おっしゃるとおりでございまして、であるから今回の農地法改正にあたりましても、そういう面にはなるべく平等に力を入れていく、特に過疎地帯という面については農業生産をいかにして高めていくか、そうして所得の向上をはかるかという、こういうところに十分重きを置かなければならないというようなものが基礎づけられておると私は深く感じております。したがいまして、先ほどからのいろいろそういうような点については、特に力を入れてその目的を達してまいりたいという考え方でございます。
  63. 柴田健治

    柴田委員 農地局長、ひとつその計画を持っておられるのかどうか。ただやらなければならぬという、大臣大臣としての考え方を明らかにしたまでなんですが、農地局長として、事務当局として、私が先ほど申し上げた点について、現行法のいろいろな問題を改正する点があれば改正をする、改正をして五カ年なら五カ年計画でそういう点も重点的に取り上げてやる、こういう何か構想か計画が事務当局としてあるかどうか、局長ひとつ……。
  64. 中野和仁

    中野政府委員 御指摘の老朽ため池の修復維持の問題でございますが、従来からそういうため池に依存している地帯が、日本の水田地帯におきましてたしか十数%ございますので、それは基本的にはやはりダムをつくり、りっぱな水路をつくって水源の転換をやったほうがいいと思います。しかし、そういうことができない地帯もございます。そのためには、やはり老朽ため池の維持管理、それからそれのかさ上げ、修復等をやらなければいけないものがかなりございます。  われわれも、また予算のことを申し上げて恐縮でございますが、ことしもかなり予算の増額をやっております。と同時に、全体といたしましては土地改良長期計画が、ちょうどことしの予算が完了いたしますと、十カ年計画のまん中になるわけでございます。しかし、農産物の需要と生産の見通しが変わりました点がございますので、それから農業の事情もいろいろ変わってきておりますので、われわれは新しい農業をどう持っていくかということとあわせまして、これを改定したほうがいいのではないかといま考えております。  そこで、ことしの予算では、すでに各地方農政局、県をわずらわしまして調査に入っております。そういう場合に重点を置きます面は、基盤整備の問題、圃場整備の問題もございましょうし、それから基幹かんがい排水の事業もございましょうし、農地造成の問題もございましょうが、先生先ほどから御指摘の、山村地帯における小さな土地改良事業をどうするかという問題も一緒に現在調査に入っておるわけでございますので、それができ上がりますれば、できれば四十五年から長期計画を改定する際に、その問題も十分その計画の中に組み入けて考えていきたいと思います。
  65. 柴田健治

    柴田委員 そういう下限、上限の面積の問題を改正する限りにおいては、先ほど申し上げたもろもろの日本のいままでの長い間の農地の不備な立地条件を改善するように取り組んでこそ、この法の改正が生きてくる。それをしない限りにおいてはこれはもう成功しない、こういう考え方をわれわれは持っておるわけでありますが、やはりそういうものと取り組んで、将来の日本農業は、土地の基盤を整備しながら農地の利用方法考えなければならぬ。  その農地の利用方法は、いままでは、米を中心に農林省考えた。食糧増産ということは米しかつくらない、並行して農産物の成長部門であるということで、果樹や畜産を織り込んで今日までささやかに進めてきたことは間違いのない事実でありますけれども、やはりこれから農産物の価格の問題をどうするか、そして生産単位をどう標準をきめていくか。日本列島の長い中で、気候なり気象条件なりその他いろいろな条件を勘案して、作物というものを、その地方地方の地域別生産体制というものを考える必要があるのではないか。  それには、やはり個々の農家生産単位というものを、基準というものをある程度示して、乳牛なら何頭くらい飼ったら、要するに酪農も生活も安定するのだ、和牛ならどの程度、果樹の中でもいろいろ種類がございますが、果樹ならどの程度、そういうものを示す。一つの基準も何も示さずに、また農産物の支持価格も何もきめずに、上限面積を撤廃してこれでやりなさいといったって、これは成功するものではない、こう私たちは思うのです。そういう基盤整備とあわして生産単位の基準というものをある程度きめて標準を示して、こういう方法でやりなさいということでなければならぬ。  先般畜産局長にお尋ねしたら、どうもまことに申しわけないと御答弁がございました。いま国が示した和牛の繁殖センターを一つ取り上げてみても、四十ヘクタールの規模で四十から五十頭の規模をもって放牧をして、これが和牛の繁殖センターとして適正な規模である、これを見習って畜産の振興をやったらどうですか、こういうモデル地域ということで、いま全国で百カ所ほど和牛の繁殖センターをつくっておる。ところが、資本も十分あり、土地も持ち、元牛も確保してどの条件も完全に満たされておるにもかかわらず、どこの繁殖センターに行っても赤字の連続であります。一つももうかっていない。国や県がやるそういうモデル地域ですらもうからない畜産になっておる。農民にそれを見本に見習ってやりなさい、これが一つ生産単位です、こう言ったって、国や県がやってすら赤字が出るのに、わしらが金を借りてやってみたってもうからぬじゃないか、損をするならやめたほうがいい。もうかる農業をさせるために、やはりもろもろの条件を明確にしていく必要がある、こう私は思う。  その場合、やはり生産単位というものをある程度、標準はこうですとはっきりしたことはなかなか出にくいだろうと私は思うのですが、やはり生産単位の基準というものをまず示す、そういう方向で上限面積の撤廃というものも考えなければならないのではないか。どうですか、この点農地局長の見解は。
  66. 中野和仁

    中野政府委員 お話しのように、果樹なり畜産なり最近経営が非常に大きくなってまいりまして、いまの農地法によります内地は三ヘクタール、北海道は十二ヘクタールというものが基準であるということでは、なかなか農業経営規模拡大もできないというような観点から、今度は上限は、自分で農業をやる限りは幾らでも持てるというふうに法律としては直したわけでございます。  そこで先生のお話では、必ずしも農地法に上限を書けというふうには伺いませんでしたので、ちょっと別の面でのお話をさしていただきすと、御指摘のように、農業をやっていく農家に目標がなければならないことは確かでございます。しかし、けさほど来るるお話がございましたように、農政方向というものを現在審議しておりまして、そういう意味で実際農家にこういう目標だというものを与えるためには、もう少し時間が要るかと思います。思いますけれども、現在農林省でいろいろな政策をやっておりますが、たとえば総合資金制度におきましても、一応当面八百万円借りてやるのはこういう経営の目標がよろしい、水田なら四町とか、酪農では二十頭でしたか、そういうふうにやっておりますし、北海道の寒冷地帯の法律におきましても、地域区分をやりまして営農類型をつくってやっているというようなこともございますし、それから干拓地におきましては、八郎潟にいたしましてもそのほかできます干拓地におきましても、やはり地域によりまして四ヘクタール、十ヘクタール、こういう経営目標がよろしいということでわれわれやっておりますので、そういうものが集約されてまいりまして一つ方向が出てくるということはございますけれども、現在は、個々の政策でそういう目標を示しながらやっていきたいということではないかというふうに思います。
  67. 柴田健治

    柴田委員 日本農業はどちらかというと規模面積が小さい、そういうことをわれわれは認めざるを得ないのですが、面積が少ない上に、その面積から多収穫というか、所得を上げようといろいろ総合的な経営方式をとっている。一方では立体農業といわれる、たとえば山を少し活用して、それに特殊林産物を、それも換金作物としてやる。一年三百六十五日の中で、水田では米をつくって何ぼか米で代金をあげる、また春になったら麦をつくって麦で代金をあげる、その間でいろいろな蔬菜をつくってやっていく。  それで、昔は借金を払うときは盆と暮れの節季に払う、こういう代金払いの方式が、いまはもうほとんど現金払いになっておる。農協が米の代金から決済をするということになっておりますけれども、大体一般の生産資材であろうと、生活資材であろうと全部現金決済、現金取引になっておりますから、一カ月の必要経費、生活費を含めて三百六十五日同じような収入を得なければならない。そういうところに日本農業が総合的な農業になる原因がある。  一家の経営を見ておっても、山を何ぼか所持して、自分のところの自家消費であるけれどもシイタケもつくる、クリも少しつくる、くだものも少しつくる、こういう自給体制をとりながら、やはり現金収入もはかっていくという農業経営のほうが、地域においては多い場合がある。そういうところの農業を、水田なら水田に一本にまとまりなさい、畜産なら畜産に一本に固まりなさいといったってこれは無理だ。  そういう場合に、個々の農家の経営方式を、立体農業という形を認めて総合的に、出かせぎをしなくてもこういう方法で立体農業をすれば、水田は五反歩でも山林が幾らあれば、その山林の経営方式を変えて、利用方法を変えてやったらどうかという、これは営農技術の指導の面ですが、そういう面でわれわれは今後の農業を、ただ割り切っての経営指導でなしに、総合経営という立体農業の面も地域においては取り入れて、ただ面積にこだわらずに、そういうものも指導したらどうかという気もするのですが、この点については農政局長、ひとつ見解を聞いておきたい。
  68. 長谷川四郎

    長谷川国務大臣 農政局長は来ておりませんから、私がお答えします。  非常に御説ごもっともで、あとからお話しの点ですが、やはり協業を行なおうということになりますと、たとえば二反歩とか、三反歩とか、五反歩とか持っておる人が、十軒なら十軒が一つになった、こういう場合になりますと人間の労力が非常に省かれていく。でありますからそれらを総合的に、たとえば米づくりだとか、酪農だとかいうばかりでなくて、あなたはいままでどういうような技術を持っていた、だからあなたは畜産をやりなさい、そのうちのどういうものをやりなさいとか、あなたはどういう技術を持っていたからどこの担当をしなさいとか、そういうような協業化した中にもやはり総合性を保つということが最も重要なことで、御指摘のとおりだと思います。したがって、そのような方向に向けていきたいというようにわれわれも考えておるのであります。  したがって、他の国々と違って、同じ反収でああましても、世界第一の収穫を持つという日本でございますので、必ずしも大きいばかりがいいという意味ではないのでございまして、いかにその土地を有効に立体化して、そして使うかというところに、今後の農業というものがあるだろうと考えますし、それで初めてもうかる農業——もうかる農業とは、すなわち企業化していくという考え方にならなければ相ならぬだろうと考えるのであります。こういうような点については、国をあげてこれらの施策に対する応援というか、補助政策とか指導方法をとってまいりたい、こういうように考えております。  冒頭のお話しのように、生産単位あるいはその生産の体制、こういう面につきましても、十分な考慮をしなければならぬ点が多々ある。したがって、その生産単位というようなもの、生産体制というようなものにも、ある一定の土地の規模の上にどのくらいのものが最も妥当性があり、それがすなわち企業として成り立つかどうかという点については、なお一そうわれわれは考え、そしてその点についての指導をしていかなければならない点があるだろう、このように考えております。
  69. 柴田健治

    柴田委員 第三条を一応終わり、次に第六条、第七条に入るわけですが、この辺でひとつ休憩していただいて、午後からまた質疑を続行したいと思います。
  70. 藤本孝雄

    藤本委員長代理 午後二時に再開することとし、これにて休憩いたします。    午後零時五十五分休憩      ————◇—————    午後二時二十一分開議
  71. 丹羽兵助

    丹羽委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  午前の会議に引き続き質疑を続行いたします。柴田健治君。
  72. 柴田健治

    柴田委員 休憩前に引き続いて質疑を続行いたしたいと思いますが、今度第六条、第七条の小作地等の所有制限に関連してお尋ねを申し上げたいと思います。  在村地主というか、在村者と同様に一代限りという点が、どういうことで一代限りという定義になっているのか、この点についてお尋ねをしたいと思うのです。たとえば、近ごろ産業災害だとか交通災害ということで、一家の支柱が不慮の災害を受けられる率が多い。その場合に、主人がなくなったからまたもとに返って、子供が大きくなるまで農業をしたい。こういう場合に、この一代限りという問題に拘束されるのかされないのか、この点もひとつはっきりしておいていただきたい、こう思うのですが、お尋ねを申し上げたい。
  73. 中野和仁

    中野政府委員 先生の一代限りとおっしゃいましたのは、相続人一代限りというふうに思います。したがいまして、いまの御設例のような場合に、たまたま不幸にしておやじさんがなくなられた場合、むすこさんまでは例外的に、その村から外へ出ましても不在地主として認めるということになるわけでございます。  ただ、そのむすこさんが、初めから東京におるとかなんとかということでは認められないのでありまして、農業を廃止するときに同一世帯におります二親等以内でありますれば、それがそのあと全員村から外へ出ましてまた戻ってくる場合はよろしい、こういうことになるわけでございます。
  74. 柴田健治

    柴田委員 たとえば、いままでつくった農地を、他にいい職業が見つかったから、こういうことでBの農家に五反なら五反、一町なら一町の土地を小作に出して、それで自分は働きに出た、家族を引き揚げて出た。ところが、出て間もなくいろいろな不慮の災害や事故にあってなくなった。それはもういま予測もできない。三年も五年もたってからの死亡と、出て半年か一年たたぬ間にそういう事故にあって帰ってくることもある。ところが、あなたは不在地主になったんだからもうだめだ、こういうことの取り扱いを受けると、奥さんや子供というものをどうするのかということになるんですね。不在地主のそういう災害の場合は特別に考慮するとか、何か考える必要があるのではないか、こういう気がするのですが、この点をも含めてひとつお答え願いたい。
  75. 中野和仁

    中野政府委員 ただいまのような場合に、むすこさんがいなかに帰りまして、もう一ぺん農業をやりたいということになるわけでございますが、その場合には、出ていくときにだれかに貸しているはずでございます。そこで、その二人の間での耕作権の問題になってくるわけでございますが、この点は、帰ってきた者が自作をほんとうにやるかどうか、それから借りているほうの経営の状況がどうかということを判断しまして、知事が解約を認めるかどうか、許可制度によって運用したいということになるわけでございます。
  76. 柴田健治

    柴田委員 先ほど農業生産法人を論議したのですけれども、この農業生産法人の構成員で、常時従事するという常時の場合が、われわれはどの程度のものを常時というのかよくわからないが、そうすると所有権と小作権との関係、そういうものの制限をあまり拡大し過ぎると、結局、不労所得者のそういう面のほうが強くなるんではないか、農地をそういう方向で利用されるんではないかという気もするのですが、この点は心配ないでしょうか、ひとつ局長にお尋ねいたします。
  77. 中野和仁

    中野政府委員 個人でも離農いたします場合は一ヘクタールまで、これは都府県平均でございますが、不在地主を認めるということになったわけでございますが、農業生産法人の場合は、その一ヘクタールという制限を置いておりません。したがいまして、先生御指摘のように、現在農家は三ヘクタールやっておりまして、それを全部法人に預けて外へ出ていく場合もあり得るかと思いますけれども生産法人に預けていけば、いわばその農地というものは、その法人が自主的にといいましょうか、管理をしているようなかっこうになるものですから、その出ていった者が昔のような旧地主のような考え方になって、非常に高率小作料を取るということにはならないんではないか。生産法人が預かっているといいますか、借りているわけでございますから、その辺はだいじょうぶだ、そういうふうな判断をいたしまして、個人の場合と生産法人に貸す場合と差を設けたわけでございます。
  78. 柴田健治

    柴田委員 それでは、結果は生産法人に加入さしておいたほうが得策だということも言えるんですか。
  79. 中野和仁

    中野政府委員 協業なり規模の拡大を進めていく場合に、やはり生産規模の単位というのは大きくしたほうがよろしゅうございますから、そういうところに預けていったほうが、得だというのはおかしいわけですけれども、その法人経営として土地をまとめてやっていく上においては非常にいいわけでございますので、そういう扱いにしたわけであります。
  80. 柴田健治

    柴田委員 ただ、農協が委託耕作というか委任耕作というか、そういう請負耕作をする場合、農協のいまの農業経営の指導のあり方等を考えてみて、農協がこの委託農地をあくまで農地として耕作をしてくれればいいけれども、農協は委託は受けたが、機械力なり技術的なりまた労働力等で行き詰まった。行き詰まったら、農協は委託農地を、そのままでは困るので他に転用をはかろう、こういう農協が出た場合に、ほかにこの農地を転用さしたほうが楽だ、同時に、また農協がいろいろな施設にその農地を使ってみようというので、農協自体が使用目的を変えて転用する場合、また他に転用のあっせん等を農協みずからやる、こういう可能性が出てくるんではないか。こういう心配があるんですが、今日の農協のいろいろな事業をやっている実態から見て、これはある半面から、側面からひとつ考えておく必要があるんではないか、こういう気がいたすのですが、この点は心配ないでしょうか。
  81. 中野和仁

    中野政府委員 組合員が農協に経営を委託することにつきましては、先般御審議がありました農協法による農協の権能といいましょうか、権限といいましょうか、そういうもので認めるということになってくるわけでございます。そういう農協に組合員が預けました小作地につきましては、先ほどの生産法人と同様に扱うつもりでございます。したがって、在村地主一ヘクタールという制限はございません。  そういうふうに預かりました農協が、いま先生お話しのように、本来そこで委託を受けて農業経営をやるべきでありますけれども、その土地がそういうふうに使えないというようなことになってきますと、これは当然転用の問題等になってくるわけでございます。そうしますと、これは当然農協は本人に返しまして、本人がそこを転用するということになってきます。そうしますと、やはり農地法の一般原則の転用の許可基準によって処理をするということになるわけでございます。  それからなお、いまお話がございました農協の共同利用施設の用地にそこが使えないかというお話でございますが、そこが農地でなくなるような転用のしかたでございますれば、いま申し上げました転用一般の原則で扱うことになりますが、農協が組合員の耕作なりあるいは養畜の事業に必要な共同施設というもので、それが草地なりその他の農地としてそのまま使えるということになりますれば、引き続きそれを農協に貸しまして、その場合、不在地主になりました場合でも所有制限はしないということに今回の法律でやっております。
  82. 柴田健治

    柴田委員 たとえば非営利法人として、営利は目的でない、そういういろいろな法人が、たとえば今度の新都市計画法で市街化区域なり調整区域、そういうものの取り扱いが今後非常に問題になってくると思いますが、そういうことから、結果的に何か農地の転用を促進するような形になるのではないか。農民を完全に締め出すのではないかというような意見も地方で聞くわけでありますが、今度の農地法改正と、新しい都市計画法との問題、それから農振法との関係で、この小作地の所有制限について全然関係ないとはいえないと私たちは思うのですが、この点の調整というか、取り組みの指導というか、そういう点について見解を聞いておきたいのですが、どういう指導をやられるのか。
  83. 中野和仁

    中野政府委員 都市周辺におきます農地の問題については、いろいろいま御指摘があるような問題があるわけでございまして、先般の通常国会におきまして新都市計画法ができまして、それによりまして市街化区域と市街化調整区域とを主要な都市については分けるわけでございます。  この市街化区域は、先生もう十分御承知のように、十年以内に計画的に市街化する地域ということになっているわけでございます。したがいまして、その地域の分け方については、都市側から一方的にそういう線を引くことは非常に問題だということから、あの法律にもございますように、そういう線の引っぱり方は、建設大臣農林大臣が協議をしてきめるということになっているわけでございます。したがいまして、協議がととのいました市街化区域につきましては、包括的にいわば農地の転用を十年以内に認めるということでございますから、許可ははずしたわけでございます。そしてそのかわりに調整区域のほうにつきましては、これは市街化を抑制する地域ということになるわけでございますから、農地の転用等につきましては、従来以上にきびしく運用をしなければならないという一般的な考え方になっておるわけでございます。  そこで、そういうあたりの小作地がどうなるかというお尋ねでございますが、市街化区域に入りました地域につきましては、もはや農地法的なものの考え方から小作地の所有制限があるとかないとかいう必要はないというふうに考えまして、今回市街化区域の中の小作地については、小作地の所有制限をはずすという改正案にしておるわけでございます。
  84. 柴田健治

    柴田委員 市街化区域の中にある農地というものは、もう農地としての考え方を捨てるということにいま御答弁なんですが、そういう農地としての考え方を捨てられると、これは現在農地、特に小作地として小作をしておる耕作権のある農民と所有権を持っておる所有者との、そういう点の調整というか指導というか、そういうものはもう都市計画法のほうが優先権を持ってしまって、そんなものは知らないのだ、そんなものは耕作農民も所有者もかってに話し合いをして、いまの都市計画法の法の精神に従いなさい、こういう指導をするというのですか。
  85. 中野和仁

    中野政府委員 先ほど申し上げましたように、小作地の所有制限についての制限をはずすというだけでございまして、市街化区域の中といえども、急にきょうあすすぐ全部がなくなるわけではございません。農業をやっておる農家もあるわけでございますから、引き続き農地農地として移動する場合の三条の許可制度は残しておきます。  それから、その中にも小作地があって、地主と小作人の関係がいろいろ出てまいりますが、それは農地法の二十条の規定は当然適用があるわけでございまして、市街化区域の中に入ったからといって、地主が小作人からすぐかってに土地を取り上げができるということでは決してございません。
  86. 柴田健治

    柴田委員 この小作地等の所有制限に伴って、結果的には小作地の拡大ということになってくるのですが、この小作地の拡大で土地の生産性が高まるという考え方に立つのは私たちはどうかと思うのです。長い歴史を持ってきた日本の農村が、戦後の農地法であくまでも自立農家という、耕す者が農地を持つという、そういう原則をつくるために農地法をつくって、結局自作農という方向で今日まで来たのですが、今度小作地を拡大するような法の改正で、要するに人の土地に対してどれだけ魅力を感じ、意気込みを感じて土地の生産性を上げていくか、これは長い歴史でいろいろ経験済みだと私は思うのですが、人の土地にほんとうに資本投下をして一生懸命やるであろうか。どうせ人の土地だ、いま一時使用させてもらっているのだ、こういうことで安易な考えでやる。  借りものに対する日本人の考え方、自分のものは大事にするのですが、人のものはややもすれば粗末にするのが日本人の大体の考え方だ。そうでしょう。自分の持っているものは大体大事にする、ところが国のものや県のものだということになれば粗末にする。これは役所でもそうです。親方日の丸だという気でやっておる。少々ルーズにしてもいいだろう、こういうことで土地の生産性がはたして高まるのだろうか。戦前の長い歴史の中で、人の土地に対する考え方、自分の土地に対する考え方というものがたいへんな開きがあったことは、皆さんも御承知のとおりだと思うのです。  そういう小作地の拡大方式で、はたして土地の生産性の向上、効率的な利用というものが成功するのだろうか、こういう気がいたすのですが、ひとつ局長のお答えを願いたい。
  87. 中野和仁

    中野政府委員 お話しのように、農地法は耕作者が土地を持つのがよろしいというたてまえでございます。そういうたてまえの原則を今回の改正で全然くずしてしまったということではございません。と申しますのは、現在自作農がもう大部分を占めております。小作地の量といいましても全体の農地の中のわずか五%、三十万ヘクタール足らずでございます。  ところが、最近の農業の事情を見てみますと、これは場所によって非常に違っておりますけれども、いまのままにほっておきますと、あまりつくりたくもない、あるいは農業の機械化が非常に進んでまいりまして、とても手ではやる気がない、そうかといってそのままにしておきますと、やみに流すかあるいは荒しづくりをするというようなことが非常に出てまいりましたので、そういうような農地はもう少し、動員というのはおかしいですけれども流動化をいたしまして、今後農村に残って農業をやっていく農家に、なるべくそれが借りやすいようにしたほうがいいのではないかという考え方から今度の改正案を出したわけでございますから、自作地にプラス小作地を加えて規模の拡大をはかる場合が非常にあり得るということでございます。  その場合に、その農地農業をやめられる農家から買っていけないということはもちろんございませんし、その面に対しましては農地取得の促進等をはかりしまして、十分その規模拡大をしたい農家の購入に対する援助はいたしたいと思っておりますので、その辺をからめまして考えておるわけでございます。  ただ、先生が言われましたように、人の土地に対しては、やはり自分の土地ほど力を入れないのではないかということは確かにあるかと思います。思いますけれども、それだからといってそれをほうっておくというわけにもまいりませんので、今回、繰り返すようでございますが、自作地にプラス小作地も場合によっては加えても規模拡大をはかったほうがいいのではないかということを考えたのでございます。
  88. 柴田健治

    柴田委員 もう一つ、私たちが今度の小作地の所有制限緩和で心配することは、農地流動化ということばではきれいに見えるのですが、この農地流動化が度が過ぎると、農地の転用のほうがひどいのではないか。この転用ということになれば、その土地の価格の引き上げにつながる、こういう心配が出るのです。この農地流動化の面で、現段階で見ると、その地価の引き上げの一つのお先棒をかつぐのではないか、こういう気がするのです。こういう土地価格の高騰につながる危険性はあるのかないのか。なければないというお答えを願えればいいのですが、どうでしょうか。
  89. 中野和仁

    中野政府委員 今回所有制限を緩和いたしましても、それは農業の内部でできるだけうまく使われるというような観点からやったわけでございまして、たまたまその農家生産法人に預けたりあるいは村に残る者に預けて出ていきましても、それは農地として使われているわけでございますから、小作地の所有制度を緩和したことによって、地価が上がるということはないというふうに思っております。
  90. 柴田健治

    柴田委員 いずれ同僚委員から、私がお尋ねしたことへの事務当局お答えに対しては、角度を変えて御質問があろうかと思いますから、次へ進ましてもらいます。  第二十条の農地等の賃貸借の解約制限についてなんですが、これは全部が信託事業になった場合、この緩和措置ということばが入っているのですが、この緩和措置の関係はどうなるのかということです。  それからまた期限なし、要するに期限のない契約をつくった場合です。とにかくつくっておいてくれ、期限は入れない、こういう期限のない契約をつくっておる。その関係が地方に多々あるわけですが、こういう場合の賃貸借の権限というものの効力はどうなるのか。今度の法の改正で、こういう点についての規制というものは農地局長どうなんですか。
  91. 中野和仁

    中野政府委員 お尋ねの第一番目の農協の信託に出しました場合には、現行法でも許可をはずしております。その点は改正をいたしましても同様でございます。  それから、第二番目の期間の定めのない契約で、いつまででもつくっておいてくれ、こういうやり方があるわけであります。その場合に現行法どおり、解約をいたします場合には知事の許可を要することにいたしておりまして、今回は改正はいたしておりません。
  92. 兒玉末男

    兒玉委員 ちょっと進行について。  与党はいまこれしかいないのですか。誠意がないですよ。早急にみんな出席するように連絡してください。
  93. 柴田健治

    柴田委員 結局、所有権が拡大されていくのです。所有権のほうが今度は強くなってくる。こういうことで今度の賃貸借の契約制限が緩和されてくるとどうなるのだろうか。こういう問題で所有権と今度は所有権を移動する場合、こういう点の関連にわれわれ疑問を持つのです。局長はこれを言うたら意味は理解されると思うのですが、結局、所有権が当然に拡大されるのじゃないですか。こういう契約というか、この法の改正で所有権のほうが強くなるのじゃないですか。その点ひとつお答え願いたい。
  94. 中野和仁

    中野政府委員 現行法によりますと、耕作権は常識的にも非常に強いといわれておりまして、一ぺん貸しますと、小作人のほうが返してこない限りはなかなか知事も許可してくれませんし、返してもらえないということになっているわけでございます。それは実態的にそういうことになっているわけでございます。  今回改正いたしましたのは、その点につきましていまのように厳重に小作統制をやっておりますと、逆に、われわれの力が至らぬ面もありますけれども、やみ小作という形で、初めから許可を受けないでやみ小作の形になるわけでございます。この場合は、まさに先生おっしゃいましたように所有権が全く強くて、いつでも返せと言えば返さなければならぬというのがやみ小作の実態だと思います。  しかし、そういうことではせっかく農地法以来やってまいりました規制がくずれてまいりますので、今回は若干は貸し手といいましょうか、地主側の立場考え、そして耕作権はあくまで守らなければならないという別の面からの要請、この二つをいろいろ考え合わせた末に考えましたことは、一つには、新しい契約からのことでございますが、合意のない限りはもちろん知事の許可がなければ解約はできないわけでありますけれども、合意をした場合は知事の許可は要らない。それから十年以上、賃貸借契約を初めからそういう約束で結んでいる場合は、十年たてば返してもらえるというようなこと等、ある意味では賃借権と所有権とのバランスをもう少し考えて、貸しやすいように、しかも借りた上でも耕作権も保護されているように、こういう考え方でつくったわけでございます。
  95. 柴田健治

    柴田委員 たとえば水田の場合ですが、裏作だけを賃貸借契約で三年なら三年、五年なら五年という期限つきの契約をする場合、裏作の作付品目によってある程度賃貸借の契約の何か基準というものが必要ではないか。ただ借り手と貸し手の相対で——農業委員会が調停をするとかいう調停の問題はあとでお尋ねするとしても、賃貸借契約に何か植えつける作物において基準が必要ではないかという考え方をわれわれ持つのですが、この点は何もお考えはないのですか。地方地方にそれぞれまかせる、こういう考え方でやらせるのですか。
  96. 中野和仁

    中野政府委員 農地法におきまして、裏作の作物をどれがいいというようなことはできないと思いますけれども、最近では、裏作といたしまして自給飼料をつくるということが若干ふえてきておりますので、そういう面につきまして考慮いたしまして、たとえば裏作だけ貸す場合には、知事の許可なしに返してもらえるというような措置を今回とったわけでございます。
  97. 柴田健治

    柴田委員 飼料作物になるということを言われたのですが、裏作の場合は、たとえば飼料作物でただ一応貸してあげましょう、借りましょう、ただし牛をその中に放牧してはいけない、放畜してはいけない、刈り取って使ってくださいと土地の所有者のほうがいろいろな条件をつけて、条件をつけた契約というものがなされてくるのではないか。それから裏作をする場合、どんな作物でも向こうから限定されてくる。その場合の賃貸借の契約金額、向こうが条件をつけた場合にはどういう金額、条件をつけない場合はどういう金額、こういうことをある程度考えておかないと、ほんとうはこれは成功しないと私は思うのですよ。ただ水田裏作の賃貸借のこういう法の改正で緩和措置をししやるのだ、こういっても私は成功しないと思うのです。そういう何か条件がつくつかないは別だ、そう言えばそれきりですけれども、その所有者の条件というものは私はついてくると思う。無条件で、条件なしで賃貸借の契約をしないと私は思う。  局長がたんぼを持っておって、私が借りる。何にもつくっていないのだから貸してください、それじゃ貸しましょうか、契約を三年なら三年にしますという場合、あなた所有者として考えてごらんなさい。くいを打っちゃいけません、牛を放牧しちゃいかぬとかなんとか契約の条件をつけますよ。そういう条件をつけるのと、無条件で賃貸借する場合は、その考え方はある程度指導面で明らかにしていかないと、私は成功しないと思うのですが、どうでしょうか。
  98. 中野和仁

    中野政府委員 小作契約の場合に無条件で貸すか、地主側がいろいろな条件をつけるか、いろいろな事態があるかと思います。それによりまして小作料といいますか、賃貸し料に影響があるかどうか、それも問題があるかと思いますけれども、実態が千差万別であろうと思いますので、具体的にいまここで条件をつけるのはこうだ、あるいはそれ以外のものはこうだということは申し上げられませんけれども、実行段階に入りました場合に、特にいまお話しがありました裏作の小作料をどういうふうなものの考え方にするかというような点につきましては、具体的な指導はしていきたいというふうに考えております。
  99. 柴田健治

    柴田委員 裏作は飼料作物ということになっているのですが、たとえば十アールに対して飼料作物、作物によりけりですが、イタリアンライグラスというようなものを植えさしていく場合、たとえば裏作期間中に何回それが刈り取りができるのか、十アールに対してどの程度の収益性があるのか、そういう作物ごとのその収益性、気象条件その他によって、それぞれの地方で多少違いましょうけれども、実際高く賃借料を払って裏作のそういうものが成功するだろうかという気がするのですが、それぞれの飼料作物においての収益性というものは、この法の改正をする限りは、私はいろいろ基礎的に検討せられておると思うのですが、具体的にひとつお答えを願いたいのです。
  100. 太田康二

    ○太田政府委員 いま柴田委員のおっしゃいましたイタリアンライグラスを栽培した場合の土地の純収益を、私どもがいろいろな前提を置きまして試算したものがございますが、十アール当たり収穫量が五トンと見た場合におきましては、粗収益は一万三千円でございます。これはイタリアンライグラス百キログラム当たり二百六十円という計算で推定をいたしております。それからこれに必要な生産費でございますが、牛乳生産費調査によります百キログラム当たりの費用価に資本利子、租税公課等を推定いたしまして加算いたしますと、十アール当たり一万一千九百七十八円。したがいまして、純収益はいまの粗収益から生産費を引きました千二十二円ということに相なっております。  そこで、利潤を一応四%と見ますと、生産費の四%で四百七十九円、したがって土地の純収益といたしましては五百四十二円、一応の試算としてこういう試算をいたしております。
  101. 柴田健治

    柴田委員 畜産局長、その生産経費、生産の必要経費というものも、よそのたんぼを借ってイタリアンライグラスをつくった場合、一番経費のかかるのは刈って運んでくる労賃というものです。それは距離によって違うのですけれども、その労賃をどの程度見ておるのか。この点ひとつ畜産局長、十アールに対して何人分その五トンなら五トンの生産の上でかかるのか、それで一日の労働報酬をどう見ておるのか。
  102. 太田康二

    ○太田政府委員 私が申し上げましたのは、毎年統計調査部で実施いたしております牛乳生産費調査の数字で申し上げたのでございまして、ちょっといまここに詳細な資料を持っておりませんので、何人かかったかということはお答えいたしかねるわけでございますが、後ほど資料に基づきまして御説明申し上げたいと思います。  なお、その際の家族労賃の評価は、御承知のとおり臨時日雇い賃金によって評価をいたしておるのでございます。
  103. 柴田健治

    柴田委員 農地局長、いま畜産局長がお答えになって、基礎的な数字はまだこれからいずれ後刻お答えがあるようですが、イタリアンライグラスを植え、また青刈りのトウモロコシを植えるにしても、やはりそれぞれの作物について労働報酬なり、また何人分かかるかということを考えて、ただ賃貸借のこの道だけで水田裏作が成功するという、こういう軽い気持ちで取り組んでもらっては失敗すると私は思うのですが、そういう点について農地局長としては、いまの現行の統計数字に出てくる畜産なら畜産だけというのでなくして、ほかの作物を裏作でどういう作物——飼料作物だけに限定されていくのか。水田裏作の賃貸契約はもう飼料作物だけだと、こう限定されてくるのか、その他何と何とができてくるのか。地方によって多少違うと思いますが、そういう点のお考えをひとつ聞かしていただきたいと思う。
  104. 中野和仁

    中野政府委員 従来までの小作契約でありますと、表、裏を通じまして土地を貸すというのが通常の形態でございました。その場合には、普通は表に米をつくり、裏には麦をつくるということが普通の形態であったわけでございますけれども、麦はだんだんつくらなくなってきて、裏作はほうっておくというようなことになったわけでございます。  それに対しまして、別の酪農家なりなんなりがあいておる水田の裏を使いたいというようなことで、自給飼料を増産しなければならないというような、いまの日本の畜産の事情からそうでございますから、そういう話になってきたわけでございますが、具体的にいま何かと言われますと、飼料作物が中心になろうかと思いますが、そういうように表に米をつくって、裏にまた別の人が何かつくるというような事態が、たとえばイチゴとか何かそういうものが出てきますれば、それについては、それはいけないということではもちろんないわけでございまして、農地法上は裏作という考え方をとっておるわけでございますから、作物だけの限定をしておるわけではございません。
  105. 柴田健治

    柴田委員 私は、土質の関係にも影響があって、土地の所有者というものは、そう裏作をつくらせることに簡単に同意はしないと思うのです。たとえば、青刈りをするトウモロコシを植えるということは、正直言うたらきらうのです、土地がやせるということで。ただレンゲ等を植えるのなら、それはあとに耕作をして水稲にかえってプラスする、こういうことでどうぞと、料金はこの程度でよろしい、貸してあげましょう、こういうことになりますけれども、作物によったら、裏作をつくってはあとの作物に影響するということで、その他病害虫もあるでしょうが、そういういろいろな病害虫対策等を考え、土質にも影響してまいりますから、この裏作耕作というものが賃貸契約の上でどれほど成功するか。たとえば契約料金、契約金によって大きく変わってくる。その契約金の基礎、収益性によってどう変わってくるか、こういう点もよく考えてひとつやらないとこれは失敗する。われわれはどうもこれは成功すると思えない。  一部には水田裏作要求の地域もあります。われわれも知っております。ただそれは農協なら農協、農業委員会なら農業委員会の幹部が言うだけであって、農民農民の契約になってごらんなさい。これは植えられちゃ困る、これはつくってくれちゃ困る、土質がやせる、こういうことでいろんな条件が出てくるわけですね。そう簡単にいかないのですよ。こういう案を出してくることは、私はあまりにも末端の実態というものを知らな過ぎると思う。現実に農村の土地所有者、またそれを耕作する農民生産していく飼料なら飼料にしても、買うた飼料のほうが安いじゃないか、こういう意見が出て、これはむずかしい問題だと思うわけですが、こういうことを出す限りにおいては、もっと基礎的に十分答弁ができるようにすべきじゃないか、こういうふうに私は考えておるわけですが、将来十分検討を願いたいと思います。  次に、小作料の規制緩和に関する改正なんですが、二十一条から二十四条にわたって、附則八項、附則九項、こういうものが改正されるわけですが、小作料の引き上げというものは、はたして経営規模拡大にどれだけ影響というか関連があるのか、この点私は非常に疑問を持つのですが、農地局長どうですか、この点については。小作料を引き上げたら規模拡大になるのかどうか。
  106. 中野和仁

    中野政府委員 現在の一年間の農地の流動しておる実態につきましては、先般工藤先生のときに申し上げたわけでございますが、いろいろの数字から推定してみますと、内地のほうで七万五千ヘクタールぐらい土地が動いておるわけであります。そのうちの約半分は所有権の移動でございます。それから残りの四分の一は賃貸借での移動です。これはほとんど大部分は統制なしといいますか、やみでの賃貸借でございます。したがいまして推定をしたと申し上げたわけであります。  現在、やみでそういうふうな状況になっておるわけでございますので、それが全部表に出てくるということまでは申し上げられませんけれども、少なくとも、先ほどから申し上げますように、小作料の一筆ごとの最高統制額の統制をやめ、賃貸借につきまして、もう少し地主と小作人とのバランスをとったような考え方に持っていきますと、いままで貸したくても貸すと返ってこないというような連中も貸すようになりましょうから、そういう面から、若干は貸借による流動化ができてくるというふうに考えておるわけでございますが、改正をしましたらとたんに急に三倍になる、五倍になるというふうには、われわれも考えていないわけでございます。
  107. 柴田健治

    柴田委員 たとえば私が一ヘクタールつくっておる、その一ヘクタールの中で自分の所有しておるのが八反だ、残り二反、二十アールというものは人の土地だ、それはもう小作料を払っておる。自分の耕作面積の二割が小作地である。二割程度の小作地なら、少々小作料を上げられても多少のしんぼうはできる。ところが、一町の中で五十が自分ので五十が人のだ、五十・五十のような経営農家について小作料を上げられたらどうなるのか。あくまでも耕作する者に土地を持たしていくという農地法の大原則からいって、この小作料を引き上げるのを認めると、依然として私は、未来永久拡大こそすれ小作地というものはなくなっていかぬのじゃないか。小作地というものはなくならぬ。こういうことを将来日本農地の中に残していく事態は、土地の効率的利用という第一条の目的を変えていく、そういう要素がうらはらではないか、逆じゃないか、こういう気がするのです。  この点について小作料を上げるということは、小作地をあくまでも認めて、小作地を拡大するような方向で、それも離農年金でもつくって完全に農家をある程度整理していく、それから百姓する者に土地を全部与えていくんだ、それからその差額金は国が全部負担して土地所有者に補てんしていくんだ、こういうやり方をするならばまだいざ知らず、小作地をあくまでも残して小作料を上げていくようなやり方については、私はこれはおかしい、こういう考えを持つのですが、あくまでもこれは過渡的な一時的のものか、将来は小作地というものはなくしていくのが正しいのか、この点ひとつ見解を聞いておきたい。
  108. 中野和仁

    中野政府委員 小作地につきまして、先ほど先生のお話のような設例の場合、一ヘクタールやっておって二反は借りておるという場合もありましょうし、あるいは五反借りておるような場合もございます。その場合に、いろいろその農家の収益が違うことも事実でございます。そういう面からだけ申し上げますと、なるほど全部が自分の土地になったほうがよろしいわけでございます。そのこと自体を、今度の改正案でも決して否定しておるわけではないのでございますけれども、こういうふうに今回改正しようと考えましたのは、先ほども申しましたので繰り返すことになりますけれども、いまのままにしておきますと、やみ小作になるか荒らしづくりになるかというような問題になってくるわけでございますから、その土地をもう少し有効に使うということになりますと、どうしても村に残って農業をやりたい農家のほうにその土地が動いていくわけです。  その場合に、その農家が自分の労賃を引き下げてまで借りるかどうかということになりますと、なかなかそれも考えられない。結局小作料というのは、土地を貸した以上は小作料を取るということになるわけでございましょうけれども、借りるほうからしましても、経費をまかなって自分の労賃も相当まかなった上で、若干の利潤が出るというような考え方にならなければ、実際に土地の貸し借りもほんとうの意味で動いてこないということになりますし、また、だんだん日本農家の実態もそういう方向に動いてきたのではないかと思われるわけでございます。現に農業調査によりましても、最近ではやみの小作地でございますけれども、小規模農家が大規模農家に貸すという傾向もだんだんふえてきておりますので、私が申し上げたようなことにだんだんなってくるかというふうに考えます。
  109. 柴田健治

    柴田委員 局長の口から、やみ小作があるということを聞こうとは私は夢にも思わなかった。農地法を完全に守ってない証拠なんですよ。農林省の当局からやみ小作がありますということばを聞くのははなはだ心外で、これはもう完全に農地法は守られてないわけで、該当市町村の農業委員会は何をしておる、こういうことをいわざるを得ない。  問題は私は、現在いろいろ契約が二重になっておる点がある。農業委員会に出しておる契約と、土地の所有者と小作者が契約しておるものとある。今日、私たちが末端で調査してみますと、農地の取り上げの問題、要するに返還問題が起きておる。その地域を調べてみますと、純農村地帯はわりあい少ない。純農村地帯は、そういう土地の返還問題で農地返還紛争という紛争が起きておるところはわりあい少ない。この数字を見て農地の移動の状態を見ましても、やはり大都市、新しい地域、何と申しますか、地域開発をやっておる地域でどうしても多いですね。大阪付近であるとか、兵庫県とか、愛知県であるとか、そういう太平洋ベルト地帯における既存の、いままでの都市と新しい都市計画によって都市開発、新しい町づくりをしておる地域においてはどうしても農地の紛争というものは起きておる。考えてみると、これらは要するに農地で貸しておくよりか返してもらって、安い小作料で——いまの物価からいうとそれは安いと思えるでしょう。安い小作料でつくってもらうよりか返してもらって、一時自分が使う。一年か二年か耕作するようにしておいて、他に転売したほうが不労所得として非常にいいと、こういうある程度の期間を置いての一つのねらいが出てきて土地を返せという問題が起きる。土地を返したらわれわれ農業としてやっていけないから、それなら小作料を何ぼか上げますからつくらしてください、もうちょっと上げろ、そう上げちゃかなわぬというのでそこに紛争が起こる。小作料の引き上げと農地の返還、そういうものは相関連しておる。そして土地を持っておる者は、他に転用というか転売をしようというねらいがある。ですから、そういう地域開発の地帯の紛争というのは非常に件数がふえておる。農地局長はそういう地域的に紛争の起きておるところをどう理解しておるのか、局長の見解を聞きたい。
  110. 中野和仁

    中野政府委員 農地をめぐります紛争につきましての実態につきましては、先生いまおっしゃいましたような実態は私もあるかと思います。都市周辺におきましては、農地農業上使うよりも、その土地を、農家立場からしましても宅地化をしていったほうがいいというようなことから、いろいろ問題が出てくるわけでございます。  その場合に、小作地でありますと、小作人ががんばっておるとなかなか転用ができないという問題もあるわけでございますが、実態といたしますと、そこが宅地化する場合には、小作人は耕作権を現在持っておるものですから、その離作料をよこせということもあります。その離作料が、地域によりましては、農地の値段の半分のときがあったりあるいは三分の一のときがあったりいろんな事態があるわけでございます。そういう問題は農村地帯には起きないわけでございます。むしろ農村地帯は、やはり貸しておるほうが自作をしたい場合に取り上げたいというような場合、それから、小作人が労力がなくなってもう返しますといった場合が、非常に多いというふうにわれわれも判断をしております。
  111. 柴田健治

    柴田委員 まあこの点については、まだまだ論議をしなければならぬ点だと思うのですが、もっと実態を把握をしてよく理解してかからぬと、この小作料の引き上げで規模拡大に結びつくという考え方は、これは大きな誤りをおかす、こう思うわけであります。  小作料金は近傍類似ということばを使われておるようでありますが、近傍類似というのは、それぞれの農業委員会に自主的にまかして類似額で基準をきめるのか。この点の基準を出すのは農業委員会に、そういう正式機関にまかせるのか。たとえば、所有者が申し出た料金を基準に置いて近傍類似にしてしまうのか。この点が、小作料金のきめ方に非常に影響してくると思うのですが、局長の考え方はどうでしょう。   〔委員長退席安倍委員長代理着席
  112. 中野和仁

    中野政府委員 今回の改正案におきまして、小作料につきましては一筆ごとの統制というのはやめますけれども農業委員会に標準額をつくらせるという規定を置いております。それは農地を区分しまして、たとえば田、畑、樹園地、それからその中を上中下というふうに分けてきめるわけでございます。そのきめ方といたしましては、この法律では抽象的にしか書いてございませんが、少なくとも通常の経営が行なわれた場合の生産量、あるいはその収穫物の価格、それから生産費を見比べまして大体この水準でよかろうということできめるわけでございます。  したがいまして、いま先生のおっしゃいました近傍類似の問題になりますと、大体われわれの考え方といたしましては、法律が改正になりますと標準額をつくらせまして、一応その村での標準をつくっておく。そしてその後事態が変わりまして、地主が増額を要求するという場合の近傍ということになりますと、先ほど申し上げました農地の区分なりあるいは上中下田別にそういうものと比べてみなければいけない。必ずしも隣のたんぼということではございませんので、大体生産力が似たようなところを見て、そうしてそれによって高いとか低いとかいうことを判断されるのではないかというふうに考えております。
  113. 柴田健治

    柴田委員 たとえば、Aの町村の土地台帳に載っておる等級、それからBの町村における土地台帳に載っておる等級というもの、そういうものは何も考慮せずに、ただその町村、町村の現在の収益高、収穫量、そういうものの基準においてきめるのか、土地台帳の等級に合わせてきめていくのか。これをどう勘案していくのか、この点が第一点。  それからもう一つは、いままでの農地は米づくりが一本であった。ところが、いま総合農政ということを農林省が盛んにいうのですが、米づくりだけではなくしてほかの作物もつくらせるのだ、つくってもらうのだ、こういう考え方を明らかにしておるようでありますから、これからの小作料というものは、米だけを基準に置いて小作料をきめるのか、他の作物についてどうするのか。この小作料金について、所有者がどうあろうとも、あなたの地方は蔬菜一本でつくってください、あなたのほうは米ですと、その地方、地方でそれぞれの集団栽培方式、集団地形成、こういうものが将来は行なわれるだろうとわれわれは予測しておるのですが、その場合、農林省が指導してつくらせる作物についての小作料金はどうするのか。いままで米だけであったが、米以外の作物をつくった場合の小作料金はどうするのかという、この点の考え方をひとつ聞かしておいていただきたい。
  114. 中野和仁

    中野政府委員 土地台帳の等級は、先生のお話は、昔ありました土地の賃貸価格のことではないかと思いますが、それでありますと、おそらくそれをつくりました当時は、やはり土地のいろいろな状況からの上下ができておったと思うのです。現在、それを使うことはいかがかというふうに思います。  現在の小作料統制におきましても、いろいろな要素から農地等級をつくりまして、上中下というよりは十五等級に分けているわけでございます。おそらく今後農業委員会が、各土地についての小作料の水準を安定させるために標準をつくる場合にも、そういうものがやはり参考にはなると思いますけれども、あまりこまかく分けますと、一筆ごとに土地の小作料をきめていかなければならぬということになるわけでございますから、先ほど申し上げましたように、やはり標準というものをつくっていったほうがいいのではないかというふうに考えておるわけでございます。  それから、さっきも申し上げましたが、小作料はやはり田と畑と樹園地というふうにきめていくのが普通だというように思います。米で幾ら、あるいはイチゴなら幾らというふうに小作料をきめるのはなかなかむずかしいのではないかというふうに思います。ただ、たとえばイグサの地帯でありまして、イグサが一面に植わっておるというところになりますと、そこはイグサが植えられるたんぼだということになりまして、イグサを含んでそこの値段が大体これくらいだろうということは、その地域によってはきめられるのではないかというふうに思いますけれども、一般的に、作物で小作料をきめるというのはなかなかむずかしいというふうに思います。特に畑におきましては、いろいろな作物がございますから、なかなか畑の作物ごとにきめるのは不可能だというふうに思います。
  115. 柴田健治

    柴田委員 農地局長、私は苦い経験を持っておるから言うのですが、終戦後村長兼務で食料調整委員会長をやっておって、米の供出の割り当てを受けた。その収益性、収穫量は土地台帳で等級がついておる。その等級は表土の関係、水利の関係その他耕作上の利便を考えて大体きめられている歴史がある。それに基づいて農林省は供出量を示す。何町村はどれだけという平均反収を出して、自家保有量を残してこれだけ出しなさいという割り当てをして、いわば苛酷に強権発動まで受けるような形の中で米の供出をしてきた。そういう苦い経験を踏んでおるので、等級を基準にしないということになれば、農業委員なら農業委員個人個人の主観が土地所有者との話し合いの中で入って、かえって紛争を招くおそれがあると思うので、等級を無視するという姿勢は私はどうかと思うのです。この点は誤解のないように、ある程度尊重するという立場で取り組まないと、その地方の町村ごとに問題を起こす原因になるのではないかと思うのですが、どうでしょうか。
  116. 中野和仁

    中野政府委員 私は、先ほど無視するということを申し上げたわけではございませんで、古い土地台帳の賃貸価格そのものでありますと、その後の土地改良その他の状況で変わっておりますので、そのまま使えないかと思います。そういうことを頭に入れ、それから、現在統制小作料のもとになっております農地等級も、やはり先生おっしゃいましたように立地条件なり、あるいは気象条件なり、通作距離なり、いろいろな面から判断をいたしましての等級もあるわけでございますから、当然農業委員会がそういうものを参考にしてきめていくということを申し上げたわけでございます。
  117. 柴田健治

    柴田委員 次に、当事者同士が話し合いがつかない場合、地主のほうは小作料の一方的な引き上げ請求、支払い請求というものを出す。小作人のほうはそれに応じられないということで、それぞれ民事訴訟、民事調停を起こすわけですが、この場合に、何でもかんでも裁判へかければいいじゃないか、日本に裁判所があるのだから、裁判で調停してもらえばいいじゃないかという安易な考えで法改正をされると、今日、農民は警察と裁判所へは行きたがらない。その次に税務署に行きたがらない。これは長い歴史を持っておる。警察ですら行きたくない。特に裁判所なんというのは行きたくないというのが農民の心理なんです。こういうことを考えてみると、裁判という一つの機関があるのだから、何でもかんでもこれに調停なり判決をしてもらうほうがいいじゃないかという安易な考えでこの法の改正をせられると、農民のいまの心理状態、農民の社会的知識状態からいって、これは成功するとは思えない。こういう考え方については賛成しかねるのです。裁判にかけるにはいろいろな経費が要るわけですが、いまの日本の裁判の訴訟費用は負けたほうが払うことになる。だから、訴訟を起こしたくても経費の問題等がある。こういうことを考えた場合に、裁判所の利用方法も少し考え直したらどうか、こういう気がするのですが、農地局長は裁判所はフルに使ったほうがいいというお考えかどうか、お聞かせを願いたいと思うのです。
  118. 中野和仁

    中野政府委員 今回の改正によりまして、すべて小作料の決着は裁判へ持ち込めというふうに考えているわけではございませんで、小作料を相対できめることにいたしました場合に、最初の契約は、当然話がつかなければ契約になりませんから、最初にそういう契約を結びましたあと事情が変わりまして、地主のほうから小作料を上げろということを言う場合があるわけでございます。この場合も、必ずすぐ裁判に持っていくのではありませんで、話がつかなかった場合に、今度の法律改正にもありますように、農業委員会による和解の仲介でやってもよろしゅうございますし、農事調停でやってもよろしいわけでありますが、最終的に地主が小作料を上げろと言った場合に、それは困ると言って、それじゃ土地を返せと言われても困るわけでございますから、新しくこの規定を置きまして所要の調整をいたしまして、裁判まで持っていくその間は当然そこでつくっておっていいわけでございます。取り上げられない保障のためにこういう規定を入れたというふうに御理解いただきたいと思うわけでございます。  なお、この増減額請求の規定は借地法、借家法にもございまして、同様な考え方で今回入れたわけでございます
  119. 柴田健治

    柴田委員 農業委員会ということばが出ましたが、農業委員会の勧告ということばと、調停権、裁判権というものとどういうふうに拘束力が違うのか。農業委員会の勧告はどういう拘束力があって、どれだけの権限があるのか。この点、農地局長ひとつ。
  120. 中野和仁

    中野政府委員 勧告でありますから、法律的な強制力はございません。ただ、この問題につきましては、先般も申し上げたわけでございますが、やはり小作料を一筆ごとの統制をやっておりましても、また私、やみと申し上げて申しわけないのでございますけれども、なかなか守りにくいという実態になってきておるものでございますから、今回は標準小作料をつくるなりこの勧告制度を設けるなりして、村の中での小作料の水準というものを、村の中で田植えの一種の賃金協定のような考え方と一緒になるかどうかわかりませんけれども、少なくとも村の水準はこういうものだというものを村の中で持っていく一つ方法として、それから、あまり飛び離れた高い小作料を取っている地主に対しましては勧告をするのだという考え方でございます。したがって、その勧告をして、従わなければ罰則があるということではないという考え方をしておるわけでございます。
  121. 柴田健治

    柴田委員 農業委員会にこういうことをさせるということを明記する限りにおいては、相当権限を持たせ、また農業委員会の権威を高め、農業委員会の財政力の問題もやらぬと、農業委員会は形式的に終わってしまう、私はそう思うのです。今日各町村の農業委員会の経費を見てみると、国は去年の二十一億を五億ほどふやして、四十四年度では二十六億くらいになっているのですが、この二十六億で、これだけの法の改正をして農業委員会に十分に活動——まあ今度は三名という員数で勧告なり、紛争のある限りは調停なりあっせん、いろいろやらそうということらしいのですが、農業委員会のいまの財政力でどれだけのことができるのか、自信があるのかどうか。私はそういう点で、今日それぞれの町村の農業委員会委員、大きい市町村は二十名以上の農業委員、小規模の町村は十五名か十八名前後の農業委員がおるのですが、この農業委員の費用弁償というのは最底は幾らなんですか、最高どれくらい出しておるのか、この点をひとつ聞かしてもらいたい。
  122. 中澤三郎

    ○中澤説明員 農業委員会に対する国の財政負担についてのお尋ねと思いますが、現在、農業委員会に対する国の財政負担といたしましては、全額国が負担するたてまえになっております。委員と職員に関する経費と、それから農業委員会が業務上必要な費用につきましては国が二分の一を補助いたしますところの、この二つからなっております。  それで現在、お尋ねの中にありました農業委員会におきます職員は、平均一委員会四名でございますが、御指摘にありましたような農業委員会に関する超過負担の問題がございましたので、四十三年度におきまして、農林、大蔵、自治三省におきまして共同調査をいたしました結果、国が本来委員会の必須的な事務として全額負担すべき職員数は一人であるという結果が出たわけでございます。従来からこの一人につきます負担は国がしてきておりますし、また先生いまお話しにありましたような四人のうちの二人につきましては、交付税で四十四年度から見、残りの一名は市町村の事務の兼務、あるいは市町村の事務と関連のある事務だということで、委員及び職員に対する超過負担に関する点は解決ができたというふうに考えております。  もう一点、そういうふうに考えました場合の単価の問題につきましては、やはり超過負担の事実がございましたので、四十四年度から三カ年計画でこれを解消することといたしまして、四十四年度ほぼその五分の二に相当する額の予算措置をしておるわけでございます。  なお、一委員会当たりの平均で申し上げたわけでございますが、最高どのくらい、最低どのくらいという御質問でございますが、ちょっと直接その資料が手元にございませんので、後ほど資料として差し上げたいと存じます。
  123. 柴田健治

    柴田委員 農振法の審議のときにも申し上げて、農業委員会の市町村の持ち出し分をなくするために三カ年で解消する、こういうお答えをいただいたのですけれども、私は、現在の農業委員会の活動状況ですら、地方の持ち出し分というものがものすごくふえていると思う。これから農振法の問題なり、またまた今度の農地法改正に伴って紛争の起きるような案件が、そういう法の改正をされると農業委員会はたいへんな仕事を仰せつかってくる。非常に事業分量がふえるといわざるを得ないのではないか。その場合に、いまのような活動状況の中の積算の基礎というよりか、これからふえる見通し、これら農地流動化という立場で小作料の引き上げ、こういう小作料の問題での紛争というものも、一々裁判所へ行けなんて、農業委員会のメンツにかけても言えない。また、農業委員会は、裁判所へ訴えなさいというような、そういう農業委員会では困るのです。あくまでも裁判所に行かせずに、農業委員会で完全に調停するだけの力を持たさなければならぬ。それには、一件当たりの紛争、調停に三人の者が何回かかり、何回会議をして全体会議に報告をして承認を求めるのか、これらの経費の積算というものを今度の農地法改正でどう見ておるのか、この点をひとつ数字的に明らかにしてもらいたい。   〔安倍委員長代理退席委員長着席〕
  124. 中澤三郎

    ○中澤説明員 お答え申し上げます。  農業委員会としまして、確かに先生おっしゃいますように、今回の農地法改正によりまして新しい必須事務がふえるわけでございます。農業委員会におきましては、従来任意的な事務といたしまして、農地の利用関係に関するあっせん、調停の仕事をしてきております。この仕事はかなり件数が多うございまして、任意的な事務としてもかなりの業務量があったわけでございますが、今回それがいわゆる委員会の必須事務として法定されまして、このために私たちのほうといたしましては、年間ベースでほぼ五千万円に及ぶ予算措置をいたしているわけでございます。したがいまして、事務はふえるわけでございますが、従来任意事務としてやってきた事務のいわば実質的には延長事務でございますし、予算もつけたことでございますので、農業委員会としてはこれを相当こなしていただける、こういうふうに考えておるわけでございます。しかし、法定の事業といたしましては四十四年度が初めてでございますので、なお今後実際に起こる和解の件数等を考えまして、今後なお検討は続けていかなければならない、こういうふうに考えておるわけでございます。  ただいま申し上げました五千万円というのは、通年ベースの数字でございますので、四十四年度はとりあえず——とりあえずと申しますか、第四・四半期から実施することになっておりますので一千二百七十七万円の予算でございますが、この積算の根拠につきましては、農地局のほうからお聞き取りいただきたいと思います。
  125. 中野和仁

    中野政府委員 和解の仲介その他で紛争が起きました場合、予算上の措置といたしましては、大体、現在県におります小作主事が関与しておりますものが年に三千件くらいございます。それよりははるかに多いという考え方から、大体一万五千件くらいと想定をいたしまして、仲介委員も年に三回やるいう考え方をとりまして、いま農政局参事官が申し上げましたような積算をいたしておりまして、大体平均ベースにいたしまして、手当の単価を七百円程度といま見ておるわけでございますが、それを変えないとすれば、大体五千万円近くを特別の経費として農業委員会に配付をしたいというふうに考えております。
  126. 柴田健治

    柴田委員 私たちの予測では、いままでの取り扱い件数からいうと、各町村の農業委員会は、一カ月に一回開くかせいぜい二回だと思うのです。今度農業委員会がこの法の改正で、農振法を含めて、ただ農地の移動だけを農業委員会がやるという役割りではなくて、農業という名前がつく限りは、農業振興全般にわたって農業委員会が重要な役割りを果たさなければならぬし、またその役割りを果たすためには、予算措置を十分考えなければならぬと私は思うわけですが、そういう点から考えて、いままでのような月に一回か二回の農業委員会の開催という程度では、これは前進しないと思う。今度件数がふえてくると思う。農地流動化を認め、賃貸で小作料の引き上げ、それから水田裏作の賃貸契約、それらの一つ一つ考えてみますと、いままでのような農業委員会の活動では手に負えないと私は思う。要するに取り扱う件数が膨大になってくる。  それで、一件当たりの経費をどの程度見て、何件ぐらいふえるか、こういう点の積算をひとつ示してもらいたいと私は思うのです。農業委員会の費用弁償七百円で本気でやれますか。農業委員会の一日の費用弁償、この点を十分考えてもらわないといけない。
  127. 中野和仁

    中野政府委員 さっき積算を簡単にしか申し上げませんで申しわけありせんでしたが、われわれ全国で大体一万五千件くらい紛争が起きるという推定をいたしまして、そうして仲介委員は三人、それが一件について三回はやるという積算をしまして、その一回について七百円、こういうことでございます。七百円が確かに低いということもありますけれども、今後運用の実態を見まして、費用弁償はできるだけ増額をしたい。来年以降の予算の折衝といたしまして増額は考えなければならないと思っておりますが、ことしの予算で盛っておりますのは、いま私が申し上げましたような積算の基礎になっておるわけでございます。
  128. 石田宥全

    ○石田(宥)委員 関連しまして。  今度の法改正の中で、農業委員会にいろいろな権限を与えられるわけですが、これは私、非常に問題だと思いますので、ついででございますから、各県農業会議の予算総額のうち国庫負担分、その他と区分をされて、同時に現在おる人員なども明らかにしてもらいたい。それから、いま問題になっております市町村の農業委員会の予算、人員等これはほぼ明らかになりましたけれども、県段階、中央段階の分は克明にひとつ資料として御提出を願いたい。実はあとで要求しようと思っておりましたけれども、いま論議になっておりますから、ここで要求をいたしておきます。
  129. 柴田健治

    柴田委員 農地局長、農業委員会の事務職員の給与のこと、ちょっと聞き落としたのですが、事務職員の給与は、平均はどの平均で押えておるのか。そして事務職員はこれ以上ふやさないという方針か。現在のままの人員で委員会だけが活動すればいいのか。やはり事務処理という問題もあるわけです。農業委員会は現地調査もするでありましょうし、その紛争の小作者なり土地の所有者、要するに地主にかけ合いに行く。夜でも昼でも行かなければならぬでしょうし、遠距離の場合には相当の経費が要るわけです。そういうことを考えた場合に、農業委員会委員の活動と事務職員の事務分量の増加に伴う職員の増員というものは考えないのか。現在ある職員の給与はどの程度の給与で、公務員でいうと何級の給与で押えているのか。
  130. 中澤三郎

    ○中澤説明員 お答え申し上げます。  先ほど申し上げました四十三年度におきます三省共同調査の結果の数字でございますが、農業委員会の一人当たりの平均の給与、七号俸十一でございまして、三万九千七百円でございます。  それから後段の御質問でございますが、今回の農地法改正によりまして、先ほども申し上げましたように、農業委員会委員会としての必須事務がふえておりますが、従来実質的に行なっていた事業との関連もございまして、今後職員の数をふやさなければ処理できないというふうには考えておりません。したがいまして、ほぼ現行の職員数でこの仕事をやっていただけるのではないかというふうに考えておるのでございます。
  131. 柴田健治

    柴田委員 農業委員会の事務の職員の能力というものを、われわれは無視してはならないと思うのです。土地の所有権の問題を取り扱う職員は、ただ役場の戸籍事務をやるような考えではこれは能率があがらないし、かえって問題が紛糾するということも考えられる。やはり農業委員会委員の能力も必要でありますけれども、事務職員の能力というものを重要視しなければならぬと私は思う。そういうことから考えて三万九千円余りの給与で、経験年数を——これはその地方、地方における経験年数というものを相当勘案しなければならぬので、高校卒業した者をすぐという考えではいけないと私は思うのです。やはりこの事務職員の給与改善を思い切ってして、優秀な者を事務職員に置いて今後の農業の振興をはからせる、そういうような姿勢がないと私はいけないと思うのですが、今日の農業委員会の事務職員の年齢、経験年数というものは平均してどの程度のものなのか、参事官ひとつお答え願いたい。
  132. 中澤三郎

    ○中澤説明員 お答え申し上げます。  農業委員会委員会としての任務を所期されたように実施していただくためには、委員の問題だけでなくて、その事務を担当していただきますところの職員の方々の質、あるいはその待遇というものが関連してくるということは、御指摘のとおりだと思います。先ほど端的に現在の一人当たりの平均給与を申し上げたわけでございますが、これは地方公務員としての農業委員会職員の方々を国家公務員として引き直してみますと、これも先ほど申し上げました三省共同調査の結果でございますが、引き直しますと三万一千円でございまして、むしろ給与のベースは国家公務員よりもいいという形が出てくるわけでございます。  これはなぜかと申しますと、国家公務員ベースに引き直すという理由といたしましては、採用試験の有無だとか、あるいはまた特昇の有無、中途採用者の格づけというような問題、また全般的に国の給与と市町村の給与の全体的なベースというようなものの関連がございます。したがいまして、給与の面におきましては必ずしも国家公務員に劣るものではないというふうに考えますし、またその資質におきましても、これも先ほど申し上げました同じ三者共同調査の結果によりますと、平均の勤務年数がほぼ十二年と出ておりますので、あまり先生の御心配いただくようなことはないとは思いますが、しかし、従来から農業委員会の職員の資質の向上につきましては、私たちも非常に気を使い、ことに県の農業会議なり全国の農業会議所におきましては、かなりこういう研修なりあるいは啓蒙、知識の向上に関する内部的な事業を非常に精力的にやっていただいておりますので、今後ともそういう面につきましては、私ども十分御指導申し上げるし、また御協力を申し上げるとともに、上部団体の活動をお願いしたい、こういうように考えておるわけでございます。
  133. 柴田健治

    柴田委員 参事官意見を聞くと、待遇がいいから能率があがると言うけれども、いま農業委員会の能率がどの程度あがっておるか、実態をあなたほんとうはあまり詳しくないと私は思う。国家公務員が三万一千円で三万九千円出しておるから優遇だ、待遇は十分優遇されておるというような言い方なんですが、この農業委員会の職員の能力いかんにおいては、その地方、地方の農業委員会の活動に重大な影響を及ぼしてくるし、また一つの案件が能率があがらないということも言えるし、ひいては農民にたいへんな迷惑をかけるということも関連を持ってくるわけでありますから、これからは待遇改善については——いま全国平均なら、大都市なら相当予算規模を持っておる、正直言うて。大都市なら相当融通がきくから、農業委員会委員の費用弁償も職員の待遇も案外いいという面もまだまだあります。われわれも承知いたしておるのですが、特に山村地帯の財政基盤の低い町村の農業委員会の予算を、あなたは見ておられるのですか、正直言うて参事官。せいぜい年間二十万円ほどの予算を組んでおる農業委員会が至るところにあるじゃないですか。それで、そういう点を改善する方策というものを持っておられるかどうか。私は全国平均ということを言うておるのじゃないのです。こまかく申し上げると時間がかかるから、この辺でやめておきますが、こっちは実態を調べて申し上げているのですから、そういう額だけで濁して、上っつらだけで通り抜けようとしてもらっては困るのであって、ほんとうはもっと掘り下げて検討してもらって、職員の質の問題、待遇の問題、農業委員会全体の経費の問題それらを再検討して、出すべきものは国が思い切って出す、そのくらいの姿勢がなければ、農地法改正をしたって意味がないと私は思う。ひとつこの辺の大臣考え方を聞いておきたいのです。
  134. 長谷川四郎

    長谷川国務大臣 農業委員会のほうも、これがさらに重荷にもなってくるし、仕事もふえてまいりますので、当然質のいい——と言いますと失礼でございますけれども、なるべく質のいい方々を選んで、そして当然この委員の任命を行なっていかなければならないだろう、こういうふうに考えております。
  135. 柴田健治

    柴田委員 大臣、それでは答弁にならぬのだよ。それでは迷答弁になってしまうのですが、農業委員会の仕事がふえるという、その理解だけではいけないので、国は出すべきものは思い切って金を出す、そういう姿勢がほしいので大臣の見解をお聞きしたので、ただ仕事の分量をこれ以上たくさん押しつけて申しわけないと言わずに、仕事をしてもらうぞ、そのくらいの予算は思い切ってつける、こういう考え方を聞かしていただきたい。
  136. 長谷川四郎

    長谷川国務大臣 いまここで、予算を幾ら出しますということは申し上げられませんけれども、だんだんそういうようなことになりますので、つとめて予算のほうの面にも多く見積もるようにいたしまして、そしてでき得る限り予算額をふやしていきたい、このように考えております。
  137. 柴田健治

    柴田委員 次に、三十六条の農地等の売り渡しに関する件で、その中で一部お尋ねしておきたいのですが、草地の共同利用というところで、団体と農協連というのがございます。単位農協ならわかるのですが、農協連というのはどういうものをさすのか、この点を聞かしていただきたい。
  138. 中野和仁

    中野政府委員 今回三十六条によりまして、「農地、採草放牧地等の売渡の相手方」といたしまして、共同利用することが適当な、従来は採草放牧地だけでございましたのを、今回農地を入れまして、そして売り渡しの相手方といたしまして地方公共団体、農協のほかに農業協同組合連合会を入れたわけでございますが、これは先ほど先生もお触れになりましたように、畜産の場合には郡畜連というのがそういう共同利用事業をやっているわけでございまして、したがいまして、県連に直接売るとかいうようなことを実態として考えているのではございませんで、郡畜連等に売ってあげる、こういうことを考えているわけでございます。
  139. 柴田健治

    柴田委員 郡畜連の名前が出ましたから、郡畜連のことを聞いておきたいのですが、この郡の畜連というのは、個人個人が加入して郡畜連をこしらえているというのはないと私は思う。また、これは農協法の精神からいっても、郡畜連にそういう個人個人が加入するようなことになってないと私は思う。やはり単位農協がそれぞれの定款において、総代会で決議をしてそれぞれの連合会に加入することになっている。それなのに、単位農協が果たす役割りを郡畜連がやらなければならぬというところに問題があると思う。あくまでも単位農協にそういうことはやらせるべきだ、それが生産の窓口だ。郡畜連というここまでふやしてまいりますと、郡畜連なら郡畜連が共同利用という一つの利用目的を前面に出しながら、他に転用というか、そういうことを何か考えるのではないかという気がいたしますが、これは私の一方的の憶測でありますから、そこまではお答え願わなくてもいいのですが、郡畜連のいまの運営のあり方から見てそういうものを認めてもいいのかどうか、これは法の精神からいっておかしいという気もするわけです。この点の見解を聞いておきたいと思う。
  140. 中野和仁

    中野政府委員 生産の場での共同利用施設でございますから、当然本来単位農協がやるべきだと私も考えます。しかし、専門の畜産農協になりますと、そこの小さな村だけではとても大きな育成牧場がつくれないという実態が若干あるようでございます。  そこで、ある郡でまとまってひとつ育成牧場をつくりたいといったような場合に、とても単位農協でできませんので、そういう実態を判断しながら、また政府の土地の売り渡しでございますから、その点は悪用されないように十分気をつけながら、連合会にも今回売り渡しを認めたいというふうに考えているわけでございます。
  141. 柴田健治

    柴田委員 次に、郡畜連であろうと、単位農協であろうと、その他生産法人であろうと、共同利用の適地の中にいろいろなものが現在ある。たとえば、五十町歩なら五十町歩の中に家が一戸ある。それは農業をやっていない。その農家があるために共同利用というものが死んでしまう。そこで放牧したって民家に影響して、畜産公害だというので提訴される、また紛争を起こす。そういう家屋がある場合にどういう処置をとるべきなのか。この共同利用のための農地の売り渡しということでありますから、売り渡しの場合、その民家があるためにほんとうに共同利用の価値がなくなる、その民家が一軒のいてくれたらいいのだという場合に、売り渡しの中で価格等も関連してまいりますが、そういう点は指導面でどうするのか、それを聞いておきたいのです。
  142. 中野和仁

    中野政府委員 共同の育成牧場をつくります場合に、まん中に家が一軒あって非常にじゃまになる場合があり得ると思いますが、それはやはり農地法でどうこうということにももちろんまいりません。しかし共同利用ですから、村の住民あるいは組合のためのものでございますから、その所有者と村で十分話し合いをして、移転してもらうという話し合いをつけるよりほかないのではないかというふうに思います。   〔委員長退席安倍委員長代理着席
  143. 柴田健治

    柴田委員 畜産局長に聞きたいのですが、今度農地法改正されて、共同利用という目的で農地の売り渡しの問題が明確になってまいりますと、畜産に影響があるわけですから、農林省の畜産局としては、そういう場合に事業費で見るのか見ないのか、立ちのきまで見れるのか見れないのか、その点について伺っておきたい。
  144. 太田康二

    ○太田政府委員 従来、われわれが草地改良事業を通じて造成をいたしております、いわゆる農協等の共同の育成牧場につきましては、いま先生が御指摘をなさったような問題があまり実際には起こっていないと承知いたしております。現実に現在の草地改良事業の助成では、そういった場合の移転費まで含めての助成ということは、現段階においては考えておりません。
  145. 柴田健治

    柴田委員 次に、四十三条の二に入ります。和解の仲介ですが、この和解の仲介というのが、前の農業委員会のときの小作料のところでも申し上げたのですが、この調停が、実際この文章ではたして処理できるのかどうか、自信があるかどうかお尋ねしたいのです。
  146. 中野和仁

    中野政府委員 現在でも農業委員会法に基づきまして、紛争の処理は事実上やっておるわけでございますが、今回ここに新しくこういう規定を設けましたのは、農業委員会が、当事者の一方から申し出があった場合には、農業委員会としては受けて立つ義務があるということを考えましたことが一つと、必ず二十人なら二十人の農業委員が全部集まって、和解の仲介というのは容易じゃございませんので、三人選ぶということを新しくきめたわけでございまして、われわれとしましては、こういう規定を置くことによって、いままでの紛争処理の形態がもっと円滑にいくのではないかというふうに考えております。
  147. 柴田健治

    柴田委員 今度の場合は、市町村農業委員会の調停が不能な場合は県知事が仲介をする、こういうことになるようですが、はたして、市町村の農業委員会が調停に失敗したからといって県ができるかということは、なかなかこれはむずかしいのではないか。全部が全部、市町村農業委員会が失敗したから県も全然解決しないというわけではない。中には、県知事さんが出てきたのだからということで——まあ知事が一々出てこないと私は思う。県の事務当局農業会議等を通じてやられると思いますけれども、県が出たら成功するとは私は考えられない。この点について自信があるのだろうかという気がするわけです。  また、農業委員会が調停をしようという場合、いまの法律からいうと、農業委員会は調停をしてくれなくてもいいと拒否をした場合に、農業委員会としてはこれはもうグリコになってしまう。お手あげだ、こういうことになった場合はどうするのか。それならすぐ裁判へ行くのか。農業委員会に権限を持たさずに調停をしなさいといっても、拒否を受けたら農業委員会は取りつく島がない。まあ庄屋の娘でも口説いてみなければわからないように、何回でも通えばまた別かもしれませんが、そこまで経費がないから通いはしない。そういうように拒否した場合にはどうするのか、この点農地局長……。
  148. 中野和仁

    中野政府委員 農業委員会が和解の仲介をいたします場合に、当事者が農業委員会に頼まないよと言った場合は、そこで農業委員会が無理して割り込んでやるということは、和解の性質をちょっとはずれるのではないかというふうに思いますので、農業委員会が職権でやるということは考えておりません。  ただ農業委員会がその後紛争に巻き込まれたとか、あるいは二つ以上の農業委員会にまたがるとか、あるいは当事者の一方が拒否して農業委員会ではいやだと言った場合には、知事のほうへ和解の仲介を行なうように申し出ができます。知事のほうではそれを受け取りまして、小作主事等を使いまして和解の仲介をやるということにいたしておりますので、大体私たちはそういうやり方でうまくいくのではないかと考えております。
  149. 柴田健治

    柴田委員 大体こういう土地紛争、農地紛争では、地主のほうが頑迷固陋なんですね、長い歴史の経験から見ても。小作人のほうは、どちらかといえばお願いするほうの側になる。まあおのでいえば刃を持っておる。柄のほうは地主が持っておるのだから強い。強いほうが農業委員会なんて要らぬ、そんなに出しゃばってくれるな、こうなって、やはり地主のほうが強い。地主のほうが農業委員会の言うことを聞かない。小作人のほうは農業委員会へ、ひとつ和解の仲介をお願いします、こう頼んでも、地主のほうが今度の法改正では非常に権限を持っておる、所有権拡大ですから。結局この和解の条文というものは、法の改正である程度設けても、これは意味をなさないと私は思うのです。  その場合、農業委員会に小作人が申し出た場合には、地主側は調停に応じなければならぬ、このくらいな法改正をすべきじゃないかと私は思う。拒否をしたら、もうグリコでお手あげだなんていうようなことでは、法の精神は生きてこない。両方拒否するならしようがないですよ。小作人も拒否する、地主のほうも拒否するならこれはしようがないですけれども、片一方が頼みますと言ったやつを片一方が拒否するという場合は、農業委員会に勧告の権限を持たして、調停ができるように、和解ができるように、公平な処置ができるように、調停に応ずるような規制をすべきじゃないかと私は思うのですが、この点についてどうですか。
  150. 中野和仁

    中野政府委員 先ほども申し上げましたように、今回の農業委員会の和解の仲介は、当事者の双方から、あるいは一方からの申し立てがあったときは、農業委員会は和解の仲介をやる義務があるということを申し上げたわけであります。したがいまして地主のほうが、先ほど先生のお話のように強いといった場合に、小作人が困った場合に、小作人一方からの申し出でも農業委員会は和解の仲介をやる義務があるわけでございます。  ただその場合に、これは本来和解でございますから、両方の話がつかなければ成立しないわけであります。それ以上地主が拒否した場合には、あるいは裁判に持っていきますか、そういうことをやりませんとできないのではないかと思いますが、先ほど申し上げましたように、小作人一方からの申し立てで農業委員会の和解ができるということにはしてあるわけでございます。
  151. 柴田健治

    柴田委員 まあ農地局長は自信を持っておられるけれども、実際現行の農地法ですら、地主のほうが言うことを聞かなくて、裁判訴訟でいまだに争っておる地域もあるわけです。この点について、私たちはいままでの経験上申し上げておるわけですから、法の改正をするならもっと農業委員会に権限を持たせるべきだ、こう私は思うわけです。都合のいいときだけ農業委員会をかり出すようなやり方は、私はおかしいと思うのです。  次に第七十四条の二、開拓財産の問題なんですが、この点については、国有財産としての道路、水路、ため池等の公有地を一応無償、無料で貸与する、貸し付ける。ここまではわかるのですが、万が一利用目的が変わる場台には、これは自動的に返還を求める、こうなっておるわけです。現状の国有財産を無償で貸与を受けても、改善を加えなければ、そのままじゃ利用価値がないという場合に、そうすると、農民が相当の負担をかけて改築なり利用方法改善に投資する。その場合に、利用目的が変わったから返してくれ。ところが、その投資した金に対しては何ら、それはおまえたちが無償で使って、便利のいいように直したんだから、返すときにはもう一銭も見ないぞ、こういう考え方ですか、その点ひとつお答えを願いたいと思う。
  152. 中野和仁

    中野政府委員 今回の改正案の第七十四条の二で道路等の譲与をきめましたのは、これは貸すのではありませんで、開拓地等におきまして昔——昔と言いますとおかしいのですが、入植農家農地を売り渡しましたあと、その中に介在しております道路とかあるいは水路、ため池等がございます。それを国が形式的には管理しておるわけでございますが、実質は開拓農協等がやっておるわけでございます。それを現在の農地法では、有償でなければやれないということになっておるのを、今度はただであげたいということにしたわけでございます。  その場合に、いまお尋ねのその道路をたとえばこわしまして、そこにほかのものを建てるといった場合は、その道路として使わないわけでございますから、国は返してもらうわけでございますが、道路として使っておる以上は返してもらわない、永久に返してもらわないというたてまえにしておるわけでございます。したがいまして、いまお話しの道路の譲与を受けたあと、おそらく市町村なり土地改良区等が道路の修繕等をすると思いますが、その費用を、あとで国が万一返してもらう場合に弁償するということは、現在考えておりません。
  153. 柴田健治

    柴田委員 私この点、たとえば昭和三十年にきめられた補助金適正化法という法律があるのですが、この法律でいくと、昭和三十年以降国の補助をもらって事業をした施設に対して、途中で他に売買する場合、他に使用変更する場合は、補助金を、たとえば国が五割なら、処分した金の五割を国に返す、三割は県に返す、地元が二割、それは補助率によって違いますけれども、この昭和三十年にさかのぼって、補助金適正化法で補助率にあわして金を返納しなければならないというのがいまの法律です。   〔安倍委員長代理退席委員長着席〕 片一方ではそういう法律を農民に適用して、片一方では国の財産を買って改善をして相当の投資をしたものを、今度返す時分には、おまえかってにやったのだから一銭も見ないぞというのは、これは筋が通らぬような気がするのですが、この点は農地局長、国というものはかってなものだな、こういうことになりはしませんか。
  154. 中野和仁

    中野政府委員 補助金適正化法のお話は先生のおっしゃるとおりでございますが、今度の新しい改正によりましては、道路として使っている間は、そういうものを返してもらわないというたてまえになっておるわけでございます。たまたまその道路を、たとえば観光地に使うとか、観光用の施設をそこに建てる、めったにそういうことはございませんけれども、そういうふうに道路以外のものに使うというときだけ返してもらうわけでございます。  したがいまして、その土地に農家のほうで金をかけるということをおっしゃいましたけれども、それは道路の維持のために金をかけておるわけでございます。それをつぶしてほかの用途に使うというときでございますから、その前に道路を修繕しました金まで国がもう一ぺん返すということはいかがかと思いますので、先ほどのように御答弁を申し上げたわけでございます。
  155. 柴田健治

    柴田委員 次に草地の利用の問題は、これは七十五条の二から十まで関連して入り会い林野等の問題がありますから、きめのこまかい質問をしたいのですが、時間も相当食っておるようですから、新都市計画とこの新しく経済企画庁考えておる総合開発との関連でお尋ねを申し上げたいと思うわけであります。  六月一日の実施が予定されている新都市計画法の指定を受けた町村、この市街化区域内におけるいままでの農用地に対して、一集団で二十ヘクタール以下は農地としてもう認めない、補助も何も一切しない、そういうことになっておるようです。二十ヘクタール以上の団地なら農業地域として残していく、それ以下なら原則として残さないが、特別の場合は考慮してもいい、こういうことなんですが、こういう基準を出されると、これはそれぞれの市町村のいいかげんな解釈で、いよいよ農民を締め出すようになってしまうということになりますし、また不労所得者を肥やしていくということになりはしないか。先ほど申し上げた点もこれは関連いたしますけれども、この点はあくまでも基準であるから、これにこだわる必要はないのだ、こういうお考えかどうか、この点についてお答えを願いたいと思うのです。
  156. 中野和仁

    中野政府委員 この六月に施行されます新都市計画法によりますと、これは先ほど柴田先生の質問に対して私もお答え申し上げた点があったわけでありますが、市街化区域と調整区域を分けるという点が、一番当初の仕事としては大事な問題になってくるわけでございます。そうしますと都市側といいますか、土地所有者といいましょうか、そういう面から見ますと、できるだけ市街化区域を広げたいという気持ちがあると思います。しかし一方、あまりにも広いところをとりますと、単に地価のつり上げとかなんとかということになるだけで、都市の施設はなかなかできません。と同時に、都市近郊の農業が非常にスプロール化されましてめちゃくちゃになるということがございますので、都市近郊におきましてどういうところを市街化したらいいか、どういうところは調整区域として残して、今後も農業を続けたらいいかという問題が問題になるわけでございます。  その場合に、一方的に都市側のほうで、ここだけは市街化したいということをかってにきめるということは非常に問題がありますので、農林省といたしましてもあらかじめ建設省とも相談をいたしまして、都市計画法におきます両地域を分ける場合の農林漁業との調整措置というのを、現在案としてつくっているわけでございます。  これによりまして申し上げますと、われわれの気持ちとしましては、集団的な優良農地というのは、都市近郊といえども市街化区域に入れてもらいたくないということを考えているわけでございます。それの原則が、団地としまして二十ヘクタール以上で、しかも生産力の高いところ、それから現に国営事業なり、県営事業なり、あるいは団体営事業で土地改良事業を実施中のところ、こういうところを市街化区域に入れるのは問題でありますから入れないということ、それから、つとめて入れたくないと考えておりますのは、野菜の指定産地等もございますので、それになりますと二十ヘクタールもない、団地としますれば、あるいは三ヘクタールとか五ヘクタールというようなところもございますけれども、今後とも農業で残したいような野菜の指定産地につきましては残していきたい、こういう考え方でおります。  ただ、あまりこれを細分化いたしますと、結局現状と同じようになりまして、農地があり、その向こうに住宅地ができ工場ができるということで、非常に無秩序な都市の発展ということになるものですから、今度の初めての試みでございますけれども、この都市計画法が通りますと、われわれも都市周辺の農地の利用のあり方については、十分農業者の立場に立って運用してまいりたいというふうに考えております。
  157. 柴田健治

    柴田委員 ちょっと建設省にお尋ねしたいのですが、今度新しい都市計画法で区域指定をして、いままでは市街化区域でなかったものを今度市街化区域にしたが、その離れが調整区域で農用地もある。ところが、今度区域指定になる中に農業用の施設がある。たとえば水路があって、その水路をこわされたのでは、調整区域になっておる農業地域には水が行かない。そういう農業用施設に対して、都市計画で市街化区域にしたのだから、もうそれは農業用施設に対する補償も考えなくてもいいし、どうなってもいいという考え方をするのか。また、水についてはいろいろな汚物を流して、調整区域の農業地帯にいろいろなものを流してもいいのかどうか。あくまでも万全な対策を講じて、市街化区域の中にある農業施設については保全と維持管理と、そしていろいろな汚物を水田のほうには流さない、こういう考え方を持っておられるのかどうか。  いま東京でもそうです。東京にこの間大雪が降ったら、雪がまっ黒になったといわれるくらい、都市の中にはいろいろなものが累積されてくるわけです。その累積が、大雨が降ったりいろいろな場合に、全部農業用水路に流れ込んで、水田のほうへ流していくということになれば、これはもう水稲に対して非常な弊害を与えていくんではないかという気がするのですが、この点、建設省としては全責任を持つのか。市街化区域にある農業用施設については補償、保全、維持管理、全部建設省はめんどう見るのか、この点を明らかにしてもらいたい。
  158. 葛生新一

    ○葛生説明員 今度の新しい都市計画法によりまして、市街化区域と市街化調整区域を設定することになるわけでございますが、市街化区域につきましては、新法の十三条によりまして、少なくとも公園、道路、下水道、こういうものを都市計画決定することになっております。その場合におきまして、農業用水路が市街化区域の中に入っておるというような場合におきましては、私どもの都市計画の立場におきましては、下水道でございますので排水路でございます。そういう意味におきまして用水路と排水路と、これは一応用途は別になるわけでございますので、そういうような被害の生じないようにということを考えてやっておるわけでございます。  なお、市街化調整区域、市街化区域におきまして開発許可の制度がございます。その場合におきましても、地区内におきますところの排水についても十分な設計をする、そういうようなことにおきまして許可をするというようなことになっておりますので、先生の御心配になるようなことは今後ないというふうに考えております。
  159. 柴田健治

    柴田委員 あわせて建設省にお尋ねしたいんですが、住宅建設に伴って、今後五カ年計画であるとか、五十一年までにはどうするとか、四十七年までにはどうするとかいういろいろ計画変更して出されましたけれども、将来建設省が住宅を建てる場合に、農地をどの程度つぶさなければならぬのかというその点についての計画というか、考え方を聞かしておいていただきたいと思うのです。
  160. 葛生新一

    ○葛生説明員 お答え申し上げます。  実は宅地需給につきましては、計画局の宅地部のほうでやっておりますので、私、実は資料を持っておりませんので、後刻資料として差し上げたいというふうに考えております。
  161. 柴田健治

    柴田委員 あとから資料でひとつお願いしたいと思います。  次に、今度は企画庁にお尋ねしたいんですが、経済企画庁の今度の昭和六十年までの開発計画を見ますと、土地の利用計画というもの、その中で現在の原野が三分の一になるであろう、こういうビジョンを出されたんですが、この原野で三分の一になるという考え方がどこから出たのか。  それから、たとえば道路、宅地というものが、四十年を起点として考えた場合には、六十年の場合に約倍くらいになるだろう。道路用地がそれだけ要る。今日の道路用地、宅地の面積を考えてみると、これまたたいへんな農地、原野というものがつぶされるということになる。これが事実かどうか。これは財政投資というか、その資金計画を見なければどうとも言えないのですけれども、資金計画がまだ明らかになっていない。この点について、私たち農地を守るという立場から判断した場合には、この計画の案を立てる前には、農林省と十分な調整をして出されたものだと理解をせざるを得ないのであります。  それから農林漁業の人口、これは五百万人以下になるであろう、こういうことも農林省ともう打ち合わせ済みだろうと思うのですが、この点どういう考え方でこういうことを出されたのか。  それからまた、新ネットワークとして札幌、仙台、東京、名古屋、大阪、広島、福岡、この七大都市を結ぶ交通網の整備、これに次ぎ太平洋ベルト地帯の、特に今日まで歴史を持っておる都市部の整備をやる交通網ということになれば、これまた農地の減少ということが相当出てくるだろう。それから空港の整備、幹線鉄道、たとえば新幹線がどんどんふえてくる。これらの農地の利用度というものをどの程度見られているのか、経済企画庁からひとつお答えを願いたい。
  162. 小榑康雄

    ○小榑説明員 ただいまお尋ねになりました新全国総合開発計画の十三ページにあります「土地利用の構成」につきましては、御指摘のとおり道路、宅地等で相当な面積がふえまして、そのもとといたしましては原野等が減少するということになっております。これはこの上のほうに書いてありますように、都市化の進行、核家族化の進展等によりまして、あるいは工業の発展というようなことからどのくらいの宅地が必要であるか、それからまた将来のモータリゼーションの普及に伴いまして、道路整備計画というものがさらに進んでくるであろうというような推定をいたしたわけでありますけれども、これにつきましては、すでに建設省でも道路の長期計画を出しておられますので、そういうようなものを勘案いたしまして、この程度の面積が必要になってくるであろうというようなことを出したわけでありまして、これに伴いまして、農地のつぶれる部分ももちろん出てくると思います。この点につきましては、農林省と十分打ち合わせをいたしてきたわけであります。  それから、もう一つお尋ねになりました一次産業の人口が五百万人以下になるであろうということにつきましては、これは午前中にお答えいたしましたように、長期モデルによる計算等から推定値を出しまして、これに総合的見地からの検討を加えて一応この数字を算出したわけでありますけれども、これにつきましても、農林省とはすでに打ち合わせ済みでございます。
  163. 柴田健治

    柴田委員 おそらく、農林省に無断でこういう計画は立てないという気がするのですが、これだけの計画を農林省経済企画庁が打ち合わせをしてやっておられるのなら、もう少し農林省も、この経済企画庁が窓口として出された総合開発に基づいて、これからの日本農業のあり方というものを、これだけの農地が減ってくるのだから、それをどうするか。  それからもう一つは、第二タイプとして大規模産業開発という形の中で、大規模一つの畜産というものをやりたいという構想も出ておる。それから東北などで、おもな水系流域では、高生産的な稲作地帯の基盤をつくっていくという構想も出ておる。そうすると、東北はもう稲作オンリーということも考えざるを得ないのではないか。これは、特におもなということばが入っておりますから、どういう点をさしておるのかわかりませんけれども、おもなということで東北地帯における稲作の基盤をつくっていく、こういう構想でありますが、農林省としては、この出した総合開発の中で、これに本気で取り組んでこられたのか、これは日本では通用するのかしないのか、どうもどこの国の計画かよくわからぬような気がするのです。全部を読んでみると、これはまことに思いつきの点があるのではないかという気もいたします。  それからもう一つは、農村の居住地の移転、要するに集落移転というものを考えておるか。こういう構想を入れる限りにおいては、農林省としては農地の移動というよりか、農家の移動というものを考えておるのかどうか。これを入れる限りにおいては、そういうことを考えておるのではないかという気がするのですが、これはまず農林大臣、ひとつお答えを願いたいのです。これは経済企画庁農林省ですから、省と省との親分が答えてもらわぬといけない。
  164. 長谷川四郎

    長谷川国務大臣 なかなか計画的な問題で、私も就任まだ日が浅うございますから、詳細にわたって官房長より説明させます。
  165. 大和田啓気

    大和田政府委員 先ほどお尋ねの件でございますが、新しい総合開発計画は、これから二十年先のことでございますから、私どもの「農産物の需要と生産の長期見通し」が昭和五十二年でございますから、企画庁の計画に対して、具体的な対応策をまだ全部固めておるというわけではございません。  しかし、この企画庁の新しい計画は相当野心的な面もあるわけですが、私どもの施策でも、それに対して相当程度対応しようとする姿勢はすでに示しておるわけでございまして、四十四年度の新しい予算として、たとえば九州の阿蘇の久住、飯田について相当広範囲の未開発地の開発のための調査の予算を組んでおります。これは東北、北海道等についても及んでおるわけでございます。  それから、この企画庁の新しい計画でも、別に東北地方を稲で一色に塗りつぶすというわけでもございませんので、酪農等々を入れる計画になっておりますけれども、水系別に見て、相当大規模の米の生産地に対して、その生産から流通まで一貫しての合理化のためには、これもまた四十四年度から、新しい予算の柱として約四億ほど計上して、稲作の生産の高度化のための予算も組んでおるわけでございます。  私ども昭和六十年というまだ相当先の計画でございますから、一々こまかいことについては詳細計画はございませんけれども、大体のものごとの筋道として、こういう方向でやはり農業問題についても進んでいっていいのではないかということで、要所要所については、すでに手を打っておるわけでございます。
  166. 柴田健治

    柴田委員 こういう農業に関連する構想については、資金はあくまでも農林省が受け持つのではないかと思うのですが、この点については官房長開発計画そのものは一つのビジョン、昭和六十年であと二十年といわれるけれども、実際には十六年しかないのですから、十六年の間にこれを築いていくということになれば、資金計画というものは農林省が窓口にならざるを得ないのではないか。農林省としては、本気でこれに対応するような構想ということになれば、資金計画の見通しを十六年の間に立てなければならぬと私は思うのですが、官房長、この資金についてはどう考えるか。
  167. 大和田啓気

    大和田政府委員 この企画庁の計画に基づきまして、それぞれ各省が所管の仕事を進めるわけで、農林関係については当然農林省の仕事として進めるわけでございます。  ただ昭和六十年までを目がけての年々の資金計画というのは、まだ当然立っておらないわけで、この新しい計画の方向に沿うて農政を進める場合の資金計画あるいは実際の法律その他の制度等については、これからだんだんに固めていくという段階でございます。
  168. 柴田健治

    柴田委員 もう一つ、居住地域の移転ということで集落の移転、要するに集団移転なんですが、これは農林省は本気に考えているのですか。
  169. 大和田啓気

    大和田政府委員 土地改良あるいは農村の生活環境の改善に関連して住宅も移転すべきであろう、あるいは移転してほしいという声は、ぼつぼつ農村に起こっておるわけでございます。  ただ、これはなかなかむずかしいことで、私ども承知している限りでは、戦前といいますか、昭和十年代に京都府の雲原村で西原亀造という非常に勇敢な村長さんが、土地改良に、あるいは当時の耕地整理に関連して農村の住宅を移転させたという例が、私どもの承知している唯一の例でございます。非常にむずかしいことではございますけれども、農村の近代化、あるいは私ども農業経営改善ということだけではなくて、農村構造の改善ということに取りかかろうといたしますと、どうしても住宅の問題に入らざるを得ないわけでございますので、二、三日前に農政審議会で私どもが説明いたしました農政の新しい方向については、その問題もひとつ今後十分検討しようということにいたしておるわけでございます。
  170. 柴田健治

    柴田委員 もう一つ、これは畜産局長にお尋ねしたいのですが、この総合開発の中で、肉牛と乳牛合わせて一千万頭、新しく百四十万ヘクタールの草地改良をする、こういう計画なんですが、両方合わせて一千万頭に頭数をふやすということはたいへんなことなんです。これは実際たびたび申し上げるのですが、いま和牛の繁殖センターですら赤字だらけでいるのに、畜産局がこれをまともに受けてどう処理するのか。総合開発の中で一つの構想というものが、畜産局は畜産局なりの考え方もありましょうけれども、この総合開発との関連でどうやるのか。また百四十万ヘクタールの草地改良ということ、これもまたたいへんなことだと思うのですが、この資金というか、実際日本の草地改良の可能地というものは、経済企画庁が出す限りにおいては、これは的確な可能地をより出して出しておるのだと思うのですが、この基礎はやはり畜産局が出した資料ではないかと思うのですが、この点について数字は的確なものであるかどうか、お答えを願いたいと思います。
  171. 太田康二

    ○太田政府委員 農林省といたしまして、長期の見通しといたしましては、昨年の十一月に公表いたしました「農産物の需要と生産の長期見通し」の数字があるわけでございまして、その五十二年の姿は、先生も御承知のとおり、家畜につきましては乳牛が大体二百九十万頭台、肉牛が二百五十万頭台という数字を出しております。そのときの草地の面積が、既耕地における飼料作物が八十九万六千ヘクタール、それから草地の造成が六十一万一千ヘクタールであります。  今回の企画庁の新全国総合開発計画の数字は、おそらくできる限り自給率を高く維持して、牛乳・乳製品並びに肉牛を国内で供給するという場合に、昭和六十年の計画といたしますと大体一千万頭ぐらい。これに対しまして、草食性家畜でございますから、できる限り理想的な給与をする。と申しますのは、肉牛につきましては九〇%を粗飼料で供給し、そのうち全量を良質粗飼料で供給する。乳用牛につきましては、七五%を粗飼料で給与し、それを全量良質粗飼料で給与するということの計算をいたしますと、草地の改良といたしまして、現在よりもさらに百四十万ヘクタール造成する必要があるという数字の目標をお示しになったものとわれわれは理解をいたしておるのでございます。  しかし、現実の問題として、これだけを達成することはなかなか困難であろうかと思いますし、まだまだ先のことでございますが、思い切った政策を講じないと、なかなかこういったことにはならないだろうと思います。畜産の場合には、特に繁殖育成部門が非常にむずかしい部門が多いわけでございまして、地域分業というような思想、これは今回の国総計画全体にも流れておる思想でございますが、そういった意味におきまして、草資源の豊富な地帯にできる限り大規模な公共育成牧場を創設する、なおかつあわせまして、大規模開発プロジェクトによりまして、酪農経営等の大きな規模の集落の形成を含む開発方式というような、従来考えられなかったような方式も今後検討いたしまして、ぜひこの目標に向かいましてわれわれも今後検討を進めてまいりたい、かように考えております。
  172. 柴田健治

    柴田委員 わがほうの理事が、もうこの辺でという御意見もございますけれども、まだまだお尋ねしたい点は、この法の改正でいろいろあるわけでありますが、あとは同僚議員等にお願いをいたしまして、一応私のお尋ねする点の大筋だけ終わったわけです。まだきめのこまかいのはたくさん残されておりますけれども、同僚議員にお譲りしたいと思います。  農林大臣に最後にお尋ねしたいのですが、今度の法の改正で、大臣のことばをかりて言うと、農地の効率的な利用という立場、土地の生産性を高めて、そして省力化ということで機械化、近代化、こういうことでやるということでありますが、いまの日本農業の土地基盤整備事業を見ても、まだまだたくさん残された点がございます。もっと財政投資をしなければならない点があるわけでありますが、今日これは日本だけで解決するものではないという面もございます。  それは何かというと通貨の問題ですが、いま日本通貨政策を見ておると、インフレ的な通貨政策ですか、これがいつまで続くのかというわれわれは一つの心配がある。そういう形の中で日本農業をどう変えていくか。たとえば、いま欧州のほうではフランであるとか、ポンドであるとか、マルクであるとかいう通貨にいろいろな不安が出ております。ドルの不安が出てくると、ドルがくしゃみすると日本の円はかぜを引いてぺちゃんこになるといわれるくらい影響力を持っているのですが、金の保有高がない日本の場合は、ドル不安が起きた場合、こういうインフレ的な通貨政策がずっと続くということは考えられないのですが、こういう点をあわせ考えた場合に、今後日本農業に、農民みずからに過剰投資をさせるような農業経営を推し進めた場合に、どうなるのかという一つの不安をわれわれは持つわけです。  この点について、農林大臣はどういう見通しを持って、農民には無理な過剰投資はさせないという考えを持っておられるのか、日本通貨政策から見る農業のあり方、また農業推進の面から、農林大臣としてはどういう考え方で進めていくのか、この点だけ最後に締めくくりとして聞いておきたいと思うのです。
  173. 長谷川四郎

    長谷川国務大臣 おことばの中に、インフレというようなおことばがありますけれども日本の現在の大型景気は絶対インフレではないということを知ってもらわなければならぬ。逆に物と貨幣との流通のバランスを欠いたときに初めてインフレというものが起こるのであって、御承知のように、現在では世界の中でも最もすぐれて物があり余るほどの、農作物においてもしかりでございます。そういうような中に立って、インフレというものは起こらないのであります。これだけの経済能力を持った日本、その持続性が四十四カ月も続いており、したがって農業にも好影響を与えておることも当然だと考えられます。  しかしながら、何といっても弱いものは農業でございますので、負担がなるべくかからないような方法を、なおさらにより多くとられることが最も好ましいことでございますので、そういうような上に立った農業生産性の向上を深めてまいりたい、このように考えております。
  174. 柴田健治

    柴田委員 短時間どうもありがとうございました。
  175. 丹羽兵助

  176. 美濃政市

    美濃委員 最初に農林大臣にお尋ねいたしますが、農地法の第一条の目的は、私は権利調整の法律だと思うのです。この法律の目的に書いてありますように、「耕作者の地位の安定と農業生産力の増進とを図ることを目的とする。」となっておりますが、特に耕作者の地位を安定する、これは権利調整を弱くして、耕作者の地位、特に耕作者の人権は守っていけないと思うのですが、この相関関係をどのように考えて今回の法改正を提案しておるのか、まず最初にこの目的についてお尋ねをいたしたいと思います。
  177. 長谷川四郎

    長谷川国務大臣 御指摘のございました第一条でございますが、耕作者の権限といいましょうか権利といいましょうか、こういうようなものが今日まであまりにも強過ぎたという感もないではない。それがために、農地を貸したくても、いろいろなそういう面の利用度が幾分ずつ狭められていいったというような感もございますので、そういう面を弾力的に、総合的な上に立った方法をもって行なうようにしたらより効率的な目的が達せられるであろう、こういうような考え方であります。  したがって、農地法改正は、農地のよりよい生産性の向上をはかって、そして経営が効率的に行なわれるような考えを持っておる、こういうことを申し上げておるわけでございます。
  178. 美濃政市

    美濃委員 私は、現行法が農民の地位や人権を守るために強過ぎるとは考えていないのですが、どういう面が強かったというのか、具体的にひとつ説明を願いたいと思います。
  179. 中野和仁

    中野政府委員 最も端的に申し上げますと、農地改革のときに在村地主一町歩につきましては小作地が残ったわけでございます。したがいまして、これの耕作権の強化ということが非常に必要であった当時の時代でありますので、先生御承知のように、第三条、第二十条合わせまして、非常に賃借権を強化したわけでございます。そのこと自体はわれわれ決して間違っておるとは考えておりません。  しかしながら、先ほどからの質問にもございましたように、農業の事情が非常に変わってまいりまして、そのまま放置しておけば、結局一ぺん貸しますとなかなか返ってこないという観念が非常に強くなりました関係上、新しい契約をする場合には大体三条の許可を受けにこない。したがって、先ほどもおしかりをこうむりましたところのやみ小作になるというような関係にもなってきたわけです。そして、あるいは荒らしづくりになるというようなことがございますので、そういうことでは今後の農地の効率的な利用ということができませんので、もう少し新しい契約につきましては、地主側と小作側との権利が調整されながら、しかも耕作権が安定して使われるという観点から、今度のような改正考えたわけでございます。
  180. 美濃政市

    美濃委員 現実に少し妥協し過ぎる答弁じゃないでしょうかね、考え方が。  私はその前に、農地とは農業生産をする手段の資産である。したがって投資資産ではない。あるいは大臣もしばしば、農業生産は弱いと言っておりますが、農業生産の所得の内容、そういうものから見ると、特に農地というものは投資資産として扱ってはならない。農業用の生産手段資産であるという定義の上に立ってこういう法律を考えるべきだと思うのですが、大臣考え方はどうですか。
  181. 中野和仁

    中野政府委員 いまお話しの、農地農業生産の場合の基本的な生産手段であることは、私もそのとおりだと思います。したがいまして、農地法はそういうものの考え方に立ってできておるわけでございます。  ただ、今回の改正につきましてその辺が、いろいろな改正をやっておりますので、あるいは投資資産というようなものの考え方をここに入れてきたのではないかというお尋ねかとも思いますけれども、われわれはそういうふうには考えておりません。たとえば、小作料の緩和をいたすことにいたしましても、小作料のものの考え方というのは、やはりその一定の土地の収益から、物財費なりあるいは労賃なりの経費を引いた残りが土地に帰属するというものの考え方は決して変えておりませんし、そういうものの考え方で今後とも農地法を運用していくべきだというふうに考えております。
  182. 美濃政市

    美濃委員 その点は考え方が一致するということになれば、私は、いわゆる権利調整の中でいろいろそれに関連する問題が出てくるわけですが、まず第一に小作料の問題を取り上げたいと思います。  そういうふうにいま局長から考え方が述べられましたが、しかし、それは客観的なものでなくて具体的に、そういう青天井でなくて基準というものが当然設けられるべきである、こう思うわけです。それは、しかし今度の法改正で小作料は青天井であるということになりますと、これはもう必然的に、農地というものをいわゆる投資資産として扱う、こういう定義に立たざるを得ないわけですがね、青天井というのは。いま答弁になったような答弁があるのであれば、なぜ青天井にしたかということです。そういう基準を設けて、いわゆる小作料というものは、制限というものは当然法律の中に明記していくべきである、具体的に。作物が多様化しておりますし、地域も多いですから、具体的な設定のしかたについてはどういう方法でやるか、画一的に国がきめるか、あるいは農業委員会なり都道府県知事がきめたものを法律で追認してそれを守らせていくかというような、やり方には二本の考え方があると思うけれども、青天井ということはどういうことなのか、私は青天井ということが理解できないのです。
  183. 中野和仁

    中野政府委員 今回の改正案の小作料の考え方でございますが、われわれは青天井というふうには考えていないわけでございます。と申しますのは、この改正案をごらんいただきましてもおわかりいただけると思いますけれども、小作料の金納制はそのまま続けておりますし、金納以外での授受は禁止しております。  それから、小作料の額が、その後事情変更ある場合には、先ほどから御議論のありました小作料の増減額請求権というのを、小作、地主両方ともに認めておるわけでございます。しかも、小作料の額が全く青天井というようなことではない。と申しますのは、特に二十四条の二におきまして、小作料の標準額を農業委員会につくらせるのだということにしておるわけでございます。  その場合のものの考え方といたしまして、耕作者の経営の安定をはかることを旨として、先ほど私が申し上げました土地に対するものの考え方を入れまして、結局、その単位当たりの生産価格から物財費なり労賃なりの経費を引きました残りが土地に帰属するというものの考え方で標準額をつくり、その標準額を守らせていきたい。守らせる場合に、それを従来のように、ある意味では非常に低い小作料のまま全国一律ということではなかなか守りにくい。  その原因としますところは、一つには、地域によりまして非常に生産力の差が出てまいりまして、とても守れないということがあるわけでございます。それからもう一つは、これは先ほど先生の、現状に妥協的過ぎるというお話もございましたが、現段階農地問題を考えます場合に、大部分は現在の農家間の取引になるものと思うのです。大きな農家、小さい農家の差はございますけれども農家の貸し借りということになるものですから、これも先ほど御答弁申し上げましたように、やはりそういう段階では村の中での一つの秩序、村の中での協定的なものの考え方でやったほうがかえって守られるのではないか。一律に統制をいたしますよりも、そのほうがいいのではないかということでございまして、先ほどお話しのございましたように、全く青天井で小作料をはずしてよろしいということは、われわれは決して考えていないわけであります。
  184. 美濃政市

    美濃委員 これはいつか私どものグループで、たしか農地局長さんだったと思うのですが、院内の部屋へ説明に来てくれたときに、青天井、こう言ったと私は記憶しておるのです。これは、あなたの部屋とかで個人的に言ったということならここで言いませんけれども、多数の議員が寄ってあなたから説明を求めたときに、青天井という説明だったと思います。それで私は青天井、こう言っておるわけです。  それで二十四条の二の関係は、ただつくらせるというのでしょう。法律の第何条かに統制小作料、いわゆる統制ということばはいまの時代に合わぬとすれば、それは基準でいいと思うのです。その基準小作料を設定するということを法律に設けて、そして二十四条の二でそれを市町村農業委員会につくらせ、それをこの法律によって農林大臣が追認する。それは単に申し合わせ的な、たとえば臨時雇用の、さっきお話しのありましたような日雇い労賃の申し合わせ、このようなものでは私は効果がないと思うのです。農業委員会の任意の申し合わせは、これはどちら側からか、たとえば地主側から拒否したとしても拘束力がないですから、権利調整の法律は、ある程度法律が拘束力を持たなければならない。まあ物価統制令で、統制小作料として小作料を上回ったときに、直ちに司法処分に付するというようなことは、多少緩和することはいいけれども、やはりそれにやや準じた制限小作料には、法律的な根拠を持っていかなければ、法律そのものはやっぱり青天井というようなことになるわけです。あなたが私どもに第一回の説明をしたときに青天井と言ったと思うのだが、私の聞き違いかもしれないけれども、そうすると、法律としては青天井である。たとえば、農村における日雇い労働賃金なんかは法律根拠はないですから、やっぱり青天井でしょう。何ぼといって協議がととのわなければ、それは雇わない、来ないということになるわけですからね。そこを任意で申し合わせをしておる、こういうことなんですが、それは、その時点において起こる日雇い労働賃金の問題ですからそれでもいいですけれども、私は、そういうことでは非常に権利調整関係が大幅に後退した、したがって耕作者の地位は後退しただけやはり守れないと、こう思うわけです。それで、そこの点をもっと具体化する必要があると思うのですが、どのようにお考えになるか。
  185. 中野和仁

    中野政府委員 小作料の統制の撤廃といいましょうか、そういうものについて私がもし青天井ということを、御説明に行ったときに申し上げたとすれば、私のことば足らずな点でございますので、先ほど申し上げたふうにひとつ御理解いただきたいと思うわけでございます。  ただ農業委員会にまかせてそれぞれ基準をつくってそれを守らせる方法でございますけれども、もしいまお話しのように、あとから農林大臣でも知事でも追認しましてそれを守れということであれば、結局村で、今度の法律にありますように農地の区分をいたしまして、上、中、下田別にするとか、あるいは上畑、中畑程度では、これは基準にならないと思います。結局それを詰めていきますと、むしろ現行のように、全部そこを一筆ずつ幾らときめなければいけないということになるかと思います。それを法的拘束力をもって守らせるということになりますと、それ以上の取引をした者は、無効であるとかなんとかという現行法に戻さなければならないというふうになるのではないか考えるわけでございます。そうしますと、結局そういうことをやるためには、その基準といたしまして、農林省のほうで全国一律にやはり基準を全部きめてしまわなければ、法的統制はできないというふうにも思われますので、そういうことをやっておりますと、こういうことを私が申し上げて非常に申しわけないのですけれども、あまりにも地域の実態が変わってまいりまして、一律の基準によりましての統制はもはや困難で、しかも、先ほど申し上げましたように土地の貸し借りが農家間で行なわれるということになってまいりますと、第三者が法的統制をもってやるということは困難ではないかというふうに思いますものですから、先ほど申し上げたような筋で、今回の小作料につきましては統制を緩和して、別の秩序の立て方を考えたほうがいいんではないかというふうに考えておるわけでございます。
  186. 美濃政市

    美濃委員 どうもそこが考え方の相違ということになりますが、私は、そういう法的な拘束力なしに、いまお話しのあったようなことをやっても、これは効果がないと思う。ないよりはいいかもしれませんけれども、あって有害だとは考えませんけれども、ほとんど拘束力のないそういう措置をなぜしなければならぬか、これをひとつお聞かせ願いたいと思います。現行法が間違っておると考えておるのか、いわゆる耕作者の、農業者の人権、地位を守るために現行法は非常に誤りなんだ、悪いんだ、それだから改正するというのか、時代の波に押し流されて、とてもじゃないが守ることができないから、農林省の意識が低くて守ることができないから、守りやすいようにくずそうというのか、この点の見解をひとつきちっと伺っておきたいと思います。
  187. 中野和仁

    中野政府委員 ただいまの問題でございますが、先ほども申し上げましたように、一律に統制をやるとすれば、やはりあらゆるものを考えまして、最低のといいましょうか、非常に限界的な農家についての統制額を基準にしまして、それを上下に開くというようなことになりますけれども、どうもそれでは現実に合ってこないということになってきたのではないかと思います。われわれは小作料統制を続けてまいりましたし、当初は非常に守られておりました。その段階では、まさに弱い耕作者の保護ということでその点は必要であったと思います。そのために附則におきましても、現在あります小作料については、流動化にそれほど関係ございませんから、統制は今後十年問続けるということにしておるわけでございます。  ただ、今後新しくそれでは貸し借りをするときに、第三者がつくりました全国一律の基準で貸し借りするかということになりますと、おそらくいまの農家兼業農家が土地を貸す場合にはやらないと思います。結局、どういうことになるかと申しますと、農業委員会の許可を受けにこない、それは全くやみ小作でございます。そうなりますと、耕作者の立場から見ますと全くそれは無権限な、耕作権の何もないものになるわけでございます。  そういう事態になってきておりますので、本来なら、先生おっしゃいますように全国の農村にそれぞれそぐうような小作料がございまして、それがみなぴしっと守られればそれでよろしいわけでございますが、統制という以上は全国まちまちというわけにはまいりませんし、その辺に非常に悩みがあったわけでございますが、新しい地主からも貸しやすく、また借り手もかなり安定するということで、農地法上の一つの賃貸借ということになりますと、やはりこの際小作料は、一律的な統制はやめたほうがいいんじゃないかというふうに考えるわけでございます。
  188. 美濃政市

    美濃委員 その小作料の統制をやめると、かなり高い小作料というものが形成される、こういうことになるわけです。  その前に、たとえば兼業農家であっても、法律は所有権を保護し、いかに小さい兼業農家であっても、その耕作は法律は規制しないわけですから、そういうものをつくらなくてもいいという原因が起きると思う。たとえば兼業農家であれば、本体の賃金所得が非常に多くなる、あるいは兼業農家の中でつとめており、年齢的にも身分的も高まって、もう業務的にも年齢的にも耕作することが重荷である、だから一定期間貸したいという原因が起こると思うのです。耕作をして他の収入と合わせて生計をするというときには、私はつくったほうがいいと思うのです。貸すという考え方が起きるということは、その人には当面その農地をつくる必要がないということなんです。だから、なぜ小作料制限を撤廃して、そして任意でなければ流動化しないという理由がわからないわけですね。無理な流動化をさせなくてもいいんじゃないかと思います。  たとえば兼業農家でも、二反でも三反でもその当該本人が生計上耕作することが、多少でも所得がふえて生計が有利だというのであれば、法律はそれを禁止していないのだから、本人みずからがつくるというのがたてまえじゃないですか。何でそれを統制をゆるめて無理に流動化をしなければならぬのか、これが私にはわからないわけです。なぜそういうことをしなければならぬのか。流動化をしてみても、そんな流動化のしかたというものは、面積にも限度があるわけですね。どうしてそういうことをしなければならぬのか。兼業農家といえども、生計所得に多少でも役立てようというのなら、みずから耕作するのがたてまえでしょう。  片や、たとえば米であれば、反収の問題は一応ありますけれども、米価について表面からいうならば、地代は五千円でしょう。地代五千円を米価で求めておる。田を借りて一万五千円だとか年貢を払ったとすれば、すなわち、耕作した者の計算上からいっても労賃に食い込んでくる。貸してもいい実情にある収入ある者が、みずからつくるのが、年齢的にもあるいは現在の所得的にも——所得が高くなるということは身分が高まりますし、会社でも役所でも管理職となれば、年齢的にもかなりな年齢になるし、肉体的にもあるいは勤務時間も長くなって、兼業農家は耕作することがちょっと重荷で、そういうときには一定年限貸したいということが私は条件だと思うのです。その場合、経済的にはそう多額の年貢は要らぬわけですね。そうしてつくる者の労働賃金を搾取するまでそういうふうに法律を弱めるということは、新規の貸し付けだからといっても、私は貸すという条件が起きた場合に、そういう配慮をする必要はないと思うのです。  ただ、私が考えるのは、そういう人であっても、たとえば定年で退職するとか、あるいは経済収入の道が断たれたときに、やはり先祖伝来の土地であるから所有権は保存して、そのときには自分が耕作できるような措置を講じてもらいたいという要求が強いということは承知しております。貸した以上はもう耕作権で、ほとんど半ばとられたことになってしまうのだという点は、これはやはり流動化のために、たとえば信託に預けるときにそういう条件を付して、原則は信託にそれを預けて、信託機関がそういう条件で貸す、こういう道は、一面いまの日本の社会上、経済上必要があると私は考えておりますけれども、小作料についてそういう優遇措置は要らない。明らかに耕作する者の労賃を搾取して、そうして貸してもいい条件の者の所得を上積みするということは、耕作者の地位を守るという法律の第一条の目的から反しておる、こういわざるを得ないのですが、どうでしょうか。
  189. 中野和仁

    中野政府委員 いま御設例になりましたように、土地所有者が農業から足を洗ってといいましょうか、兼業している方がだんだん安定をしてまいりますと、気分といたしまして、そんなに高い小作料を取らなくてもいいということはあるかと思います。現に都市周辺等におきましては、管理だけしておいてもらえばよろしい、むしろこちらから金をあげようという場所もあるくらいでございますから、そういうこともあり得るかと思いますが、一般論といたしまして、われわれ小作料を、この際相対で話し合いを原則にしてもいいのではないかと考えましたのは、先生はいま、そういうふうに小作料をはずすと小作料が高くなって、耕作者のほうの労賃に食い込むのではないかというお話でございましたけれども、われわれは一般的にはそういうことはないという判断をしたわけでございます。  と申しますのは、実態からいいまして、たとえば米で、これは金納でございますから、俵数で申し上げては非常にまずいのですけれども、たとえば全国平均八俵とれる、これは平均でございます。それから米作地帯になりますと十俵、十二俵とれるわけでございます。ところが実際にかかります経費、これの見方はいろいろあるかと思います。したがいまして、幾らと言いにくいわけでございますが、常識的に村のほうでいっておりますのは、大体物的経費は二俵くらいのはずです。それから、その周辺の田植え労賃等を参考にしましたいわゆる日雇い労賃を計算しますと、労働費といいましょうか、そういう労賃部分はおおむね二俵から二俵半だと思うのです。これをいまの米価計算で近郊労賃評価をいたしましても、三俵から三俵半ということでございますから、どうしてもそこに、もし八俵の場合には三俵ないし二俵半というものが出てくるわけでございます。これが全部小作料ということになりますと、もし三俵だとしますと、二万五千円というのが出てくるわけでございますが、現実のやみ小作料は、一般的にはそこまでは高くなっていないようでございます。どうもわれわれ推定してみますと、その地代部分が半分に分けられる。地域によって、農地の需給関係によってかなり違いますけれども、そういうふうになっているようなのが現段階ではないかというふうに思いますので、今度小作料がはずれますと、小作人のほうは労賃まで食い込んだ土地の借り方をするというふうなのが、一般的なものであるとは考えていないし、また、今後の日本経済全体の進み方、雇用のふえ方、兼業の増加ということを考えてみましても、そういうようにはならないのではないかというふうに考えておるわけでございます。
  190. 美濃政市

    美濃委員 どうもそういう話は私どもあまりいただけないのでございます、豊作年の反収を基準に農業経済を考えるということは。米には共済がございますけれども、畑には共済がありません。これは米だけの問題ではないし、それから米価の計算は、全国平均反収で一応米価計算をしておりますから、一部の上田地帯にはそういう現象は確かにあるでしょうけれども、全国の米作地帯で、米価の決定基準と実収平均がそんなに開いておるとは私は考えません。たとえば、北海道地域の北海道米価、何県米価というふうにはきまっていないわけでございますから、統計上平均で押えると、一部にはいまお話しのような現象があるということは事実だと思います。ない現象を言ったとは考えませんけれども、それをもって全般的にそういうふうに判断しておるということは、大きな農政上の錯覚を起こしておる。  それからもう一つは、凶作年次には共済金はもちろん出ますけれども、共済金は御存じのような基準ですから、平年作がとれただけの補償はされないわけですから、凶作年次にはかなりの災害資金なり何なりを借りる。だから水害もある、台風もあるとなれば大きな減収をして、それを平年作で払っていかなければならぬわけですから、そういうものを全部そう言っておったんじゃ、単に農業生産というものは豊作型の作況を想定してものを考え農政を扱うということになるので、それは私は問題があると思うわけです。これは小作料についてもさることながら、農政全般についてそういう考え方農林省皆さん方考えておるということについては、私はこれは問題がある、こう思うわけです。
  191. 中野和仁

    中野政府委員 私、八俵と申し上げましたのは、特に豊作型ではございませんで、最近の水稲の全国平均の数字を申し上げたわけでございます。ただ、いまの凶作の場合には、現行の農地法によりましても、小作人のほうから、収穫物が二割五分を割った場合には減額請求権がございますので、そう言って請求すれば凶作の年には対応できるというふうに現在考えておるわけでございます。  なお、先ほど御答弁申し上げるのを忘れて申しわけなかったわけでございますが、信託のお話がございました。これはそういうことで、現行法でも昭和三十七年の農地法改正で信託制度を設けまして、それが実際にあまり進んでいないのは御承知のようなことでございますけれども、いまでも大体指導方針としましては、六年預けて——預けてといいますか、名義は農協の名前になるわけでありますが、実質上預けてやれるという制度もありますので、それは今後とも活用すべき問題であるというふうに思います。
  192. 美濃政市

    美濃委員 私は、いわゆる二種兼業農家立場にある勤労者の人の意見を聞いたことがあるわけですが、その話の中で、私がいま申し上げたように、われわれは自分でつくるよりも農地を貸したい、その条件はそんなに過大な年貢はもらわぬでいい、ただ、退職したり定年退職したときに、先祖伝来の土地であるからそこへ帰って住みたいのだから、その希望さえ満たしてくれたらあえて過大な年貢は必要としない、極端にいうと統制年貢で縛ってもらってもいい、そのかわり租税特別措置というのがあるのだから、分離課税にして租税特別措置の恩恵を与えてもらいたい、こう言っておる。たとえば、貸す条件にある人はかなりの給与をもらっておりますから、農民を苦しめて年貢をもらっても、上積みすると地方税、国税で半分はとられてしまう。だから、租税特別措置の恩恵はぜひということを切実に私どもは聞く。なるほどそうだなと思ったのだが、そういうことを検討したことがあるかどうか。租税特別措置もあらゆるものにやっておるのですから、やる気になればこれはやれない制度ではないので、あるのですから、そういう点を考えたことがあるかどうか。いまここでそれがいいとか悪いとか言うのでなしに、そういうことを検討したことがあるかどうか。
  193. 中野和仁

    中野政府委員 退職したときに返してくれという気持ちは、いまのお話のような場合には私もよくわかるわけでございます。したがいまして、今回の改正でも、たとえば十年貸しておいてあとは、帰ってきてもう一ぺん農業をやるときは返してくれということであれば、十年たてば一方的に返してもらえるということにまでしておるわけでございます。それをあまり極端にやりますと、今度は借り手のほうの耕作権が安定しませんので、十年ということで置いたわけでございます。  それからもう一つは、合意があれば知事の許可を要らないで返してもらえることにしたのも、いまのような両者のいろいろな貸し借りでの実態を判断した上でそうしたわけでございます。ただ、これにつきましても、その合意を、それじゃ初めから三年たったら返せという合意を一札とっておくということでは、あまりにも耕作権の保護に欠くるところがございますので、合意をします直前半年前というようなことの制限を置きましてやるというふうな考え方をとっているわけでございます。  ただ、お話しのように裕福な——裕福なというと言い過ぎかもわかりませんけれども兼業農家でほかのほうから主要な収入があるから、小作料は安くてもよろしいというのは、私も実態としてあることはよく存じておるわけでございますが、その小作料につきまして分離課税にするということにつきましては、新しい御提案でございまして、現在まで、そういうふうにやるのが税法上どうなるかというところまで、農林省として詰め切っておりませんが、研究課題とさせていただきたいと思います。
  194. 美濃政市

    美濃委員 ちょっとここで大臣に伺いたいと思いますが、いま局長は研究課題にすると言うのだが、大臣お聞きのように、この点は、臨時雇用の賃金申し合わせのような気休め的な申し合わせを市町村農業委員会がしても、これは守れないし、また農業というものは、そういう基礎の上に立って設備をしたりあるいは機械を導入したりすることは、そういうきわめて不安定な状態の中では真の農業生産の向上とか、農業者の生活安定にはならないのでありまして、その点は検討事項も出てきたので、やはり法案審議中にもうちょっと検討してもらいたいと思いますが、いかがですか。
  195. 長谷川四郎

    長谷川国務大臣 私も、その問答を聞いていながら少し考えるのですが、要するに基礎となるべき二十四条の二に、「農業委員会は、その区域内の農地につき、その自然的条件及び利用上の条件を勘案して必要な区分をし、その区分ごとに小作料の額の標準となるべき額を定めることができる。」こうあるわけです。ですからその基礎となるべき、たとえば米作なら米作を基準にしてもよろしいと思うのですが、土地のいいところと悪いところでは収穫がおのずから違うのですから、その一つの基礎となるべき何ものかが必要だ。その基準を何に置くかということが、何か一つもの足りないような感がする。美濃さんのお話を承っておるとそう私も感ずるので、そういうような点について、これらは目安を何かつけなければならぬだろう。だから、たとえば米作なら米作、水田なら水田はどうだ、しかし水田と同じように畑がいくかというとそうはいかないから、水田の何々をもって畑の相当額とするというような何かがあったほうが、より具体的じゃないだろうかというようにも考えます。  したがって、これらはいま少し考えてみる必要があると思うという答弁でございますが、私もいま、その点についてはそういうような感がいたしますので、もしこれらが省令か何かではっきりと出して有効ならば、そのような方法もとるべき道もあるだろうというように考えております。
  196. 丹羽兵助

    丹羽委員長 次回は明十五日開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後五時二十七分散会