○米内山
委員 農林大臣にお伺いいたします。
先般の
質問の際、
大臣おられませんでしたので、少しばかり
大臣の御所信を伺わなければ納得がいなかい点があってきょうに延ばしておるわけでありますが、これは端的に申し上げますと、今度の
農協法の一部
改正法律案の提案理由の説明の中にこう書いてあるのです。「近年における経済の高度成長を背景として、
農業生産の選択的拡大や機械化の進展など
農業近代化の動きが見られる反面、兼業化が進み、
経営規模はなお零細であり、
農業の
生産面の一部には楽観を許さないきざしもあらわれております。」こうしてみると、零細でありかつ兼業化が進むということは、わが国の
農業の現状から見て単に一部楽観を許さないという程度のものじゃないと実はわれわれは
考えるのであります。
特に、
農業全般に対して農林省の
考えている、対応している感覚というものは、われわれから見ると実に楽観主義に過ぎるじゃないか。たとえば、今度農林省が発表した長期にわたる農産物の
生産と需要
関係を見ましても、数年後には食糧の自給度というものは七〇%に低下するというような
事情なんです。そうしますと、一億の国民から見ると三千万人分がゼロだということになる。人口三千万というと、いまの百数十カ国ある中で中並み以上の国です。世界じゅうに三千万人分の食糧がゼロだという国がないと同じように、高度成長の中で
一つの独立した国家が、このような大量の自給度を失うということは、単に
農業の問題ではなく経済全般の重大問題だ。これに対して、一部楽観を許さないというようなことは、私は、先ほど言われた、どこかの
農協が試算表を粉飾したというけれ
ども、農林官僚が自分たちの責任を隠すために、国民に対して事態を粉飾している、われわれはこう理解せざるを得ない。
しかも、今度の
農協法の
改正をしさいに見ますと、何が
目的であるかはっきりしない。たとえば三十七年の
改正にあたって、
農協が
農地信託を受けるというような
法律をつくった。そのために、全国の数千という
農協がそれぞれ
総会を開き、定款
改正をした。今日その結果はどうかというと、ほとん
どものの数にならない。
政府が考ていることと
農地の実情というものは別であるということ、これは明らかな証拠なんです。特に、今度
農協が
委託を受けて
農業経営をやるということは、全く実情に合わぬ。先般
質問しましたそれに対する回答というものは、われわれは全く納得ができない。
と申しますのは、
農業基本法によって国の
方針というものは、
自立経営農を拡大するということ、さらに
協業を促進するということになったはずだ。今度は三本の道をこれによって開こうとしている。今度の
改正は、
農協が
農地の
委託を受けて
経営も
委託を受ける、こういう道なんです。そこで、これを聞きましたら、何ら積極的な理想を持ってこれをやろうとするのじゃないということは明らかなんです。事務当局はそういうふうに
答弁しました。
と申しますのは、いかにして零細化する
農業を近代化しようかという場合には、やはり大型化する以外にない。大型化することによって初めて機械化が可能だし、
生産性が高まるのであります。ところが、今度のは虫食い
状態、あちこちに離農者が放置するような
農地を
農協が引き受けてこれを
経営するというような、
農業の実情を知らない
人たちが
考えるような構想だとわれわれは承ったわけであります。こういうふうな虫食い
状態に、点々とした
農地に、どうしてこの提案説明にあるように、
農協が機械も持っておるから近代的な
生産性の高い
農業ができると思いますか。この点について、具体的な所見を聞きたいのです。
さらに、
農業というものは単にたんぼと稲作だけではない。一人一人の
農家が豚三頭、乳牛一頭というふうに、もしかりに
農協にこの
委託を頼んだときに、
農協はどうして畜産
経営を
受託できるか。片一方にはたんぼ、片一方には畜産というものがあって
経営というものがある。これが
農業の実情なんです。
そこで一歩譲って、こういうたくさんのばらばらにある畜産
経営というものを一カ所に集めるならば、どこかに大きな畜産団地のようなものをつくり、共同による畜舎があれば可能だが、先般の私の
質問に対しては、国はそういうふうな近代化の
方針について、これに関する限り助成する腹がないと言う。すでにこれまでの助成方法によって、
農協には機械が充実しておるはずだという前提に立っておる。これではどこから
考えても、積極的な姿勢というものはない。
農地信託で成果があがらないから、今度は
農協の
経営で何とかほおかぶりをしようというひきょうな態度だと言う以外に
考えられない。こういう無責任な法案を出して——出すことは
政府の権限かもしれないが、立法府というものは、出された以上はこれを真剣に検討しなければならぬ。およそものの役にも立たない法案を次々と出されるが、もっと
農業には根本的な立法をしなければならないものがあるはずだ。こういうふうな農林省の
考え方では、農民はこれを信頼できなくなるはずなんです。
大臣、私はこの点の
大臣の所信を伺いたいのです。
そうして、この
農業の危機を打開していくために大事なのは
農協という組織です。ところがその
農協は、いまのままでいくと農民との間に不信感が高まる一方だと思う。第一は不正の問題、この不正の問題を徹底的に管理するような方式が立たないならば、
農協はますますその経理の面からも不信感を招く。さらに、
農協の変な形の政治行動です。自主流通米に賛成したのは
農協の上層部だけで、それは新潟県に限ったものではない。青森県だって、稲作農民の大部分は自主流通米に反対の意向を持っておる。ただ、これは初めてのことだから、うまくいくか悪くなるかが未知数だ。もしこの結果が悪くいって、うまくいかなくて、そうしてそれが端緒になって食管
制度の根幹がくずれるようなことになったならば、
農協中央会を中心とする
農協に対する政治的な農民の不信は高まる一方だ。そうして農民と
農協との連帯性というものは弛緩し、
農協は大きな危機におちいらざるを得ないことが心配される
状態であります。
こういう重要な観点に対して、
農林大臣は、
農協不正に対しては現行法でできないならば、何か立法措置が必要だ。知事に権限があっても、
地方に財源がないならば国はその財源措置を講ずべきだ。いまの
法律にはどうあるか知らないが、私は戦前の産業
組合運動をやり、今日なお
農協の
組合長をやっておるが、戦前の産業
組合法には、不正をやった
理事を、裁判を待たずして
行政命令で解任する条項があったのです。私は実は
昭和八年ごろ、明治三十三年にできたこの
法律で、
行政命令で首を切られた一人です。農林省から出向した当時の主事というのが、私にこの
法律を適用した。解任は受けたが、次の
総会で私は満場一致で
組合長になったことがあるが、今日、いかに民主化だか知らないが、不正をやったら、裁判の判決を待たなければ、
組合の
理事から引き落とすことはできない。それはリコールでできることだが、これは、明らかに今日の民主主義の浸透した現在では、あってもいい条文だと思う。明らかに不正をなしたものに対しては、
行政命令で職務の執行を停止するとか、その権限を取り上げるということはあってもしかるべきことだと思う。このような、もっと強い
対策を講ずる必要があると思うが、農林省はこれに対してどのようにお
考えになるか。