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1969-04-15 第61回国会 衆議院 農林水産委員会 第20号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十四年四月十五日(火曜日)     午前十時四十三分開議  出席委員    委員長 丹羽 兵助君    理事 安倍晋太郎君 理事 仮谷 忠男君   理事 藤本 孝雄君 理事 三ツ林弥太郎君    理事 湊  徹郎君 理事 兒玉 末男君    理事 森  義視君 理事 稲富 稜人君       大野 市郎君    金子 岩三君       菅波  茂君    瀬戸山三男君       中尾 栄一君    中垣 國男君       中山 栄一君    野原 正勝君       藤波 孝生君    松野 幸泰君       伊賀 定盛君    石田 宥全君       工藤 良平君    佐々栄三郎君       實川 清之君    柴田 健治君       芳賀  貢君    神田 大作君       斎藤  実君    樋上 新一君  出席国務大臣         農 林 大 臣 長谷川四郎君  出席政府委員         経済企画庁総合         開発局長    宮崎  仁君         農林政務次官  小沢 辰男君         農林大臣官房長 大和田啓気君         農林省農政局長 池田 俊也君         農林省農地局長 中野 和仁君         林野庁長官   片山 正英君  委員外出席者         北海道開発事務         次官      小熊  清君         食糧庁総務部長 松元 威雄君         食糧庁業務部長 中村健次郎君         建設省都市局参         事官      山下  武君        専  門  員 松任谷健太郎君     ――――――――――――― 四月十五日  理事白浜仁吉君同日理事辞任につき、その補欠 として藤本孝雄君が理事に当選した。     ――――――――――――― 四月十日  農地法の一部を改正する法律案成立促進に関  する請願井出一太郎紹介)(第三六三四  号)  同外二件(石田博英紹介)(第三六三五号)  同(佐々木秀世紹介)(第三六三六号)  同外一件(篠田弘作紹介)(第三六三七号)  同外六件(地崎宇三郎紹介)(第三六三八  号)  同外三件(渡海元三郎紹介)(第三六三九  号)  同外二件(中川一郎紹介)(第三六四〇号)  同外四件(野田卯一紹介)(第三六四一号)  同外二件(箕輪登紹介)(第三六四二号)  同(渡辺美智雄紹介)(第三六四三号)  中国食肉輸入禁止解除に関する請願外一件(  帆足計紹介)(第三六八六号) 同月十二日  農地法の一部を改正する法律案成立促進に関  する請願内田常雄紹介)(第三八四五号)  同(金丸信紹介)(第三八四六号)  同(坂田英一紹介)(第三八四七号)  同外四件(重政誠之紹介)(第三八四八号)  同外一件(周東英雄紹介)(第三八四九号)  同(中川一郎紹介)(第三八五〇号)  同外四件(早川崇紹介)(第三八五一号)  同(福田一紹介)(第三八五二号)  同(藤井勝志紹介)(第三八五三号)  同(本名武紹介)(第三八五四号)  同外二件(増岡博之紹介)(第三八五五号)  中国食肉輸入禁止解除に関する請願帆足計  君紹介)(第三八五六号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  理事辞任及び補欠選任  農業協同組合法の一部を改正する法律案内閣  提出、第五十八回国会閣法第八九号)  農地法の一部を改正する法律案内閣提出第一  四号)      ――――◇―――――
  2. 丹羽兵助

    丹羽委員長 これより会議を開きます。  この際、理事辞任の件についておはかりいたします。  理事白浜仁吉君より理事辞任いたしたいとの申し出があります。これを許可するに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 丹羽兵助

    丹羽委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  次に、理事補欠選任の件についておはかりいたします。  ただいまの白浜仁吉君の理事辞任に伴うその補欠選任につきましては、先例により、委員長において指名いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 丹羽兵助

    丹羽委員長 御異議なしと認めます。よって、委員長藤本孝雄君を理事に指名いたします。      ――――◇―――――
  5. 丹羽兵助

    丹羽委員長 農業協同組合法の一部を改正する法律案及び農地法の一部を改正する法律案を一括して議題といたします。  質疑申し出がありますので、順次これを許します。芳賀貢君。
  6. 芳賀貢

    芳賀委員 法案質疑に入るに先立ちまして、農林大臣所見をお尋ねしたい点があるわけです。  それは、現在審議中のたとえば農地法改正農協法の一部改正、あるいはまた継続審議になっておりますところの国有林野活用法案等の問題につきまして、従前よりそうでありますけれども、特に農業団体の中で農業会議所中心となって、執拗と考えられるほど法案成立促進に連日の行動をしているわけです。もちろん、農政を主眼にした団体でありますけれども、しかし、その行動というものは、一定のワクを越えるということになると、非常に苦々しい感じを受けるし、また農業会議所なるものが、農業委員会法に基づいて設立されておるわけでありますから、これは何ら主体性のない、財源面においても、運営面においても、これは一〇〇%政府の補助あるいは助長等に基づいて運営をしておる団体であります。団体農政の前進のために推進的な役割りを果たすということは、これはわれわれとして決して否定するものではありませんが、特別の意図と目的をもって、度を過ごしたような活動をやるということは、その行動自身が何ら効果をあらわすことができないということにもなるわけであります。私ども社会党としては、別に意に介するわけではありませんけれども、あまりにも政府の御用的な機関となって、本来の行なうべき使命を没却したよりなことになると、これは監督者である農林大臣として、適切な指導あるいは注意をする必要があると考えるわけであります。これらについて、農林大臣はどのような判断をされておるか、この際、参考までにお尋ねしたいと思います。
  7. 長谷川四郎

    長谷川国務大臣 どのような団体がどのような程度まで法案促進に、まあ私たちから言えば協力をしていただいておるかということは、私は存じません。しかしながら、法案そのものを是とするとして、その人たち行動があるのだと考えます。しかしながら、それがあまりにも行き過ぎたという点があるならば、その点については注意もいたしたいと存じます。
  8. 芳賀貢

    芳賀委員 農業会議所というものは、元来、農林大臣農政上の諸問題等について、団体である会議所等意見を聞くというもので、これは従来もやっておる点であります。だから、求められた場合には、日本農業の今後の進展の問題とか、現在横たわっておるいろいろな重要問題等に対して、適正な意見を具申するということは、これは当然の任務ですが、一々国会に、政府が提案した法案のお先棒をかついで、それだけを促進することがいかにも農業会議所の仕事であるようなことを、下部の都道府県農業会議あるいは全国市町村農業委員会等に、そういう誤った考え方使命感を与えて運動を巻き起こすようなことは、これは監督の立場にある農林大臣として、その実態を十分調査されて、適否の判断を明快にされて、注意すべき点はする、助長すべき点はするということで臨むべきと思いますが、いかがですか。
  9. 長谷川四郎

    長谷川国務大臣 ただいま申し上げたとおり、注意すべき点があるとするならば御注意も申し上げましょうし、その点がどの辺まで運動されておるか。また、農林大臣としてはこの団体に、法案成立運動をしていただくためにこちらから何らお願いはしてありませんから、その点だけは御了解願いたいと思います。
  10. 芳賀貢

    芳賀委員 きょうは内容にわたることは避けて、この点だけを大臣に申し上げたわけであります。  本日審議すべき法案に関連いたしまして、おおよその質疑は終わっておるわけでありますが、農振法の問題のある点について、二、三あらかじめお尋ねしたいと思います。  この農業地域振興整備法案につきましては、法案策定当時の発想によりますと、農業領土宣言というような相当意欲的な農林省のかまえでありましたけれども、提案になりました内容を見ると、全く意欲の片りんも見ることができないわけであります。  特に私が問題と考える点は、これらの国土計画一環として農業振興地域の近代的な整備をはかるということになれば、その計画主体はあくまでも国の責任政府責任において行なうべきであるというふうに考えるわけであります。ところが、この法案内容につきましては、その大事な基本方針についても、基本計画につきましても、農林省としては直接みずからの責任でこれを策定するという、そういう点が全然ないわけです。ただ農林大臣としては、都道府県知事あるいは市町村等に対して計画作成に対する助言、指導勧告等を行なうということだけしか農林大臣としての権限規定がないわけですね。それでは一体、今後重要な国土総合計画あるいは国土利用計画土地利用区分計画等策定する場合に、この農振法なるものは、何らそうした国土利用計画と、国の段階において農林省責任がないのかということになるわけでありますが、こういういろいろな発想に基づくところの法律の根拠について、農林大臣所見を明らかにしておいてもらいたいわけです。
  11. 長谷川四郎

    長谷川国務大臣 御指摘のような点もおありのようでございます。こまかい点についてはまだ私も、申しわけないのですが、よく存じませんので、局長から答弁させます。
  12. 池田俊也

    池田政府委員 農業振興地域法案考え方でございますけれども、ただいま先生がおっしゃったような考え方も、私、率直なところあり得ると思います。  ただ、この法案の趣旨としますところは、やはり地域農業者考え方中心にして、どういう地域農業中心にしてその地域振興をはかるか、そういう点の最後の決定地域農業者の意向によりたい、こういう基礎的な考え方があるわけでございます。  そこで、当然国の全体的な計画との調整をはかる必要があるわけでございますが、これにつきましては、当然国土総合開発計画あるいは各地方総合開発計画というものが策定されておるわけでございますので、この線に沿いまして、それぞれの農業振興地域整備計画というものは調整がはかられる、こういう仕組みになっておるわけでございまして、県知事が定めます農業振興地域整備基本方針、これにつきましては、当然農林大臣承認をいたすわけでございますから、その全国的な土地利用計画にうまく合うように調整をすることになるわけでございます。そういう意味では当然農林省責任を持つ、こういうことになるわけでございます。
  13. 芳賀貢

    芳賀委員 私の聞いておるのは、これは当然国としての責任基本方針基本計画というものは、大臣責任において立てるべきだと思うわけなんですよ。その国土利用計画基本方針に基づいて農業振興地域整備計画策定あるいはまた市町村計画策定というものは、やはり国の一貫した大方針に基づいて策定されるのが当然だと思うのですよ。ただ農業者意思に基づいて、下から積み上げたのを承認するというようなことは、これは考え方自身が間違っておると思うのです。こういう計画もないでしょう。  たとえば、新しい国土総合開発計画にしても、これはやはり総理大臣責任者となって策定するわけであるし、いま局長の言われた地域開発計画にしても、北海道開発の場合には、これは北海道開発庁長官主体になって、それが計画策定者でありますが、それ以外の地域計画策定責任内閣総理大臣ということになっておるわけですね。だから、そういうことを比較した場合においても、一番大事な農業地域振興計画をほんとうに立てて、その計画実行するということになれば、結局、計画実行能力のあるものはだれかということに当然なると思うわけですよ。農林大臣が全然これに関与しない、タッチしないで、できたものに対して承認を与えるというのでは、これは完全な計画実行はできないと思うのです。だから、これは全国計画というものが基本になって、地域計画はそれに連なって適正に策定されるというのが、計画をつくる場合の当然の順序であるというふうに私は考えておるわけです。これは責任回避ですね。  農業が大きな壁にぶつかっておるということはわかるが、その壁の厚さに驚いて、何でもかんでも逃げ腰になって、大事な長期計画についても、農林大臣責任がない、農林省はまともに取り組まぬ、これでは、これからの日本農業がどうなるかということは、あなた方にまかせることができないということになるわけですね。この点農林大臣から明確にしてもらいたい。   〔委員長退席仮谷委員長代理着席
  14. 長谷川四郎

    長谷川国務大臣 そのようにも受け取れないのですよ。おっしゃるように、地方地方地域に対する振興適地適産ということばもあるように、本省自体が何のかのと言って指導するというような一つのもの、規格をつくるということもどうかと思います。しかし、それを考えるといたしましても、ここにありますように、都道府県知事は、農業振興地域整備基本方針を定めようとするときは、農林大臣承認を受けなければならない。」こういうようにございますので、おっしゃるほどの御心配は要らないので、かえってそのほうが、地域住民農業者の本能をまともにあらわし、その土地を一番よく知っており、その高度利用がさらにできるのではないかというようにも考えられます。その点は私はそういうように考えます。
  15. 芳賀貢

    芳賀委員 これはあまり議論するつもりはないが、こういうような法律発想からいうと、国の意思というものは働いていないのですね。そうなんですよ。末端の農業者とか地域考え方を尊重するというのは、表面はいいが、それでは、現状の農業実態というものをそのまま認めたような形で終わるのじゃないですか。全国農地の現況というものを農林省の統計でまとめてあるのだから、こんな法律をつくらぬでも、そのとおりだというのならば、何も要らぬじゃないですか。私は、やはり政府として、国の責任主体的に日本国土というものを、総合的にどういうふうにこれを利用すべきであるか、三千七百万ヘクタールに及ぶ国土の総面積の中で、農用地としてはわずか六百数十万ヘクタールしかないわけですから、農業発展国民経済発展のためにどのようにしてわが国の国土を総合的に利用するかという、その大方針というものが先にあって、そうして農業地域計画というものはどうするかということになると思うんですね。その基本計画というものは、第四次の全国総合開発計画の中にもおよそ明らかになっておるわけであります。これが閣議決定されれば、新国土総合開発計画というものは、やはり政府責任において、政府が持っておる実現手段を通じて実行に移すということに当然なると思うわけですが、これは当然その一環をなすと思うのですね。  法律の中にも、国土総合開発法とかあるいは地域総合開発法であるとか、その他もろもろの開発計画策定して実行に移しておる計画との調整をはかりなさいということになっておるわけですが、従来の全国的な総合開発計画というものは、政府間とか国の段階調整してきたわけなんですよ。それが今度は、法律から見ると、都道府県知事が国の基本計画との間において調整をとらなければならぬということになるのですね。そこに問題があると思うのですよ。農業地域振興計画であるなら、国の段階で行なう調整作業というものは、農林大臣責任を持って調整するというのが当然だと思うのですね。その点、私はどうもこの法律組み立て自身農林省責任回避逃避政策から出ておるというふうに考えるので、これは何にも意味がないんですよ。この法律をわれわれが通してやっても効果がないということは、農林大臣はじめ各局長はもうわかっておるでしょう。効果がない法律を一生懸命で委員会審議さして通してみても、それは何も花が咲かないで終わるということになると思うので、この点はもう一度十分に考え直す必要があると思うのですよ。
  16. 大和田啓気

    大和田政府委員 市町村ごと農業振興地域整備計画は、いわば地方における実践的な課題でございますから、これを国がつくりあるいは県がつくるということは適当ではないので、私は、これは当然市町村がつくるべき筋合いのものと思います。  ただ、御指摘の点は、おそらくそこではなくてむしろ村々の計画全国的な計画、あるいは農林省でいえば、地方農政局を置いて行政をしておりますけれども、その地方農政局単位、相当広域の農業をどうするかという問題と一体どうやって組み合わせるか、そういうことの御指摘であろうと思います。  その点につきましては、法律の体系でいえば、県が基本方針をつくる場合に、農林大臣承認するという形で全国的な調整ができるような仕組みになっておるわけですけれども、それはいわば法律制度としての問題で、実態としては、現在全国的な見通しあるいは計画的なものとしては、農産物生産需要長期見通しというものを農林省は持っております。それから目標としては、それより多少ずれますけれども、企画庁を中心として新しい全国総合開発計画を立てておるわけですが、私ども農業あるいは農産物生産の問題としては、現在全国的に昭和五十二年の見通しを立てただけでは不十分であるので、それを地方農政局単位におろし、できるだけ県単位あるいは県内の諸地域単位農産物生産見通し、それは可能性の問題を含めてでございますけれども、そういうものを立てて、それと下からの農業振興に関する市町村ごと計画調整をするということが至当であろうというふうに考えておるわけでございます。  したがいまして、法律のたてまえからいえば、市町村ごとの下から積み上がってくる計画、それはそれとして意味があるわけですけれども、それと全国的なあるいは地域的な動きとの調整は、また別のルートで――別のルートというとおかしいわけですけれども、さらに県単位あるいは全国単位承認という過程を通して、全国的な計画あるいは全国的な見通し地域的な見通し等との調整は十分行なうべきものであって、市町村だけが孤立して、そういう計画を立てることをこの法律がねらっておるわけではないわけでございます。
  17. 芳賀貢

    芳賀委員 おそらくこれは、都市計画法を相手にして考えたからこうなったと思うのです。都市計画法の場合には、これは都道府県知事主体になって計画策定する、ただし二県以上に及ぶ場合には、これは建設大臣ということになっておるわけですから、だから、先にできた都市計画法対抗意識といっては変ですけれども、それに対抗するというような考え方でおそらくつくったと思うのです。しかし、都市計画法の場合の法律目的と、この農業地域国土の中でどういうふうに確保して農業発展をはかるという目的とは、これは類似な点もあるが、大きく違うと思うのですね。  それでお尋ねしますが、それでは都道府県市町村策定した計画というものは、それを農林省の手で全国計画にまとめるという考えはあるのですか。この法律にはないのですけれども、それはどうなんですか。
  18. 池田俊也

    池田政府委員 知事策定いたします基本方針農林大臣承認いたすわけでございますけれども承認をいたす場合には、当然私どもといたしましては、全国総合開発計画等との調和、それから、先ほど官房長から御答弁いたしました長期的な生産需要見通し、これ等と照合いたしまして、はたして適正なものであるかどうかということを検討いたすわけでございます。それで必要がございますならば、これは知事さんとも十分御相談をして、直すべき点があれば直していただく、こういうふうにしたいと考えておるわけでございまして、これを全部集めて、特に一つ計画にするという考え方は、現在は持っておりません。
  19. 芳賀貢

    芳賀委員 そこで、いま農業関係長期計画あるいは全国計画というものは相当たくさんあるわけですが、農業地域基本計画というものは、国は全然総括もしないということになれば、その農業地域ということは、つまりことばをかえれば、その地域における農用地を、いわゆる農業生産基盤として十分高度に利用して、期待される農業生産発展させるということにあると思うのです。そうすると、たとえば農業基本法によるところの長期十カ年計画というものがあるわけです。これらの関係は、基本法と農振法は全然違うというわけにこれはいかぬと思うのです。この農基法に基づく農畜産物長期需要生産見通しというもの、これはやはり農用地基盤となって農畜産物生産をするわけですから、だから全国計画として、現在どれだけの農用地全国にあって、そして農基法のこの長期計画とどういうような関連のもとに生産活動を行なうべきかということは、やはり農振法においても全国計画というものは整備されていなければ、的確な見通しはできないと思うのですよ。選択的拡大で適当にやりなさいといっても、やればすぐ米もだめだ、牛乳もこれ以上つくってはいかぬ、イモでん粉はもう要りませんということになれば、選択的拡大というような余地はないですからね。そういう問題が一つあるでしょう。  それからもう一つは、土地改良法に基づく土地改良長期十カ年計画、これは昭和四十一年三月二十五日に閣議決定になって、目標年度昭和四十九年ということになっておるわけです。この計画も、日本農業生産を大きく発展させるためには、もう重要な役割りを果たしておるわけですね。土地改良事業となれば、農業振興地域内における農用地改良開発ということに当然なると思うのですよ。振興計画には全国計画は何もありません、ただし土地改良の十カ年計画は、これは全国計画としてございます、あるいはまた農基法に基づく長期十カ年計画もありますということになるですね。法律があるから当然そうなるのですよ。それから酪農振興法についても同じことがいえるわけですね。これは昭和四十年の十月に酪農近代化基本方針というものを農林大臣がきめて公表しておるわけです。これにしても、当然農業地域における酪農振興と、生産、供給、消費というものが結びついておるわけです。これも十カ年計画があるわけですからね。あるいはまた果樹地帯には、果樹農業振興特別措置法に基づいて果樹農業振興基本方針、これは五カ年計画で、昭和三十六年にやはり閣議決定して実施に入っておるわけです。これもやはり全国農用地の中の果樹振興地域基礎にした長期計画ということになると思うのです。それから農用地ではありませんけれども林業基本法によっても、昭和三十九年七月に公表された森林資源に関する長期計画あるいは林産物の需要長期見通し、こういう林業基本法に基づいた長期見通しというものが一方においてはあって、一方においては、今度は国有林活用をやるというような計画がまた出てくるわけでしょう。今度の農振法にも出てくるわけなんです。いままで相当農林省としては長期構想を持って、必要な長期計画というものを農林省責任策定して実行してきておるわけですが、しかし、いまの政治体制経済体制というものが、この計画化を完全に実行できないような仕組みになっておるので、五カ年計画、十カ年計画がそのまま実現できない、そういううらみはありますが、しかし、長期計画を持って努力しているということは事実だと思うのですよ。その一番大事な基礎をなすところの農用地の確保、振興計画というものは、全国的なものは要りませんという考えは、私は間違いだと思うのです。この点をもう一回、だれでもいいですから。
  20. 池田俊也

    池田政府委員 先ほど申し上げたわけでございますが、私ども知事基本方針承認する場合には、当然、全国総合開発計画なり各地方総合開発計画との調和考え承認をするということがあるわけでございますが、それ以外に農業面では、先ほど官房長からお話しいたしました基本法による生産需要長期見通し、この上に立って承認をするということに当然なるわけでございます。  それから、さらに各作目によりまして、ただいまおあげになりましたような酪農関係であるとか、あるいは果樹等でございますとか、いろいろな基本方針なり計画があるわけでございます。でございますから、こういうものとも調和が保たれるようなものでなければ、これは承認ができないわけでございます。それから、農地につきましても土地改良長期計画があるわけでございまして、これは今回の長期見通しによって、従来のものを修正するという必要がございますので、これにつきましては、現在省内で検討いたしておるわけでございますが、これとの調整も当然なされなければならない、こういうわけでございまして、私どもは、初めから全国的な農業振興地域計画を立てるということはいたしませんけれども、それぞれのそういう計画との調整については、十分これは留意をいたしまして、知事基本方針策定する場合には、その指導をするということでございますので、全く無方針にやるというわけでは決してないわけでございます。
  21. 芳賀貢

    芳賀委員 それではこの際、新国土総合開発計画、これはまだ第四次案の段階ですが、この中で、「国土利用の考え方」という項があるのです。これに対しては農林省としてはどういうような考えを持っているわけでしょうか。一〇ページです。
  22. 大和田啓気

    大和田政府委員 私ども企画庁と調整をしながら作業を進めておりますけれども農業につきましては、たとえば稲作地帯において、近代化、高度化をはかるという方向が一つ。それから、従来あまり利用されなかった山岳地帯といいますか、相当平らな山地帯において大規模な畜産を行なうという、そういうことが新しい計画として新総合開発計画の中に盛られているわけでございますが、そういう方向においては私どももきわめて賛成だとして、四十四年度の予算においても、そういう幾つかの、阿蘇その他三つ、四つの地帯についての新しい畜産開発の芽を、調査予算として出しているわけでございます。
  23. 芳賀貢

    芳賀委員 私の聞いておるのは、企画庁が中心になって作業をしておるわけですが、この「国土利用の考え方」の中には、当然農用地の利用、いわゆる利用区分上の基本的な問題があるわけですから、こういう点に対して農林省はどう考えておるというのですか。   〔仮谷委員長代理退席、委員長着席〕 全くそのとおりでございますというのであれば、これは経済企画庁に全部まかしてあるので、したがって、先ほど農林省が言われたとおり、それだから全国計画は要りませんということにも通ずるわけですね。この点、どうなっていますか。
  24. 大和田啓気

    大和田政府委員 御指摘の点は、新全国総合開発計画第四次試案にあります一四ページの「土地利用の構成」でございますか、たとえばこれを見ますと、農用地として昭和四十年に六百万ヘクタールが、昭和六十年において六百五十万ないし七百万ヘクタール、森林として昭和四十年に二千五百十七万ヘクタールとありますのが、昭和六十年に二千四百万ないし二千四百五十万とあります。これについての農林省意見はどうかと、そういう御質問がございましょうか。
  25. 芳賀貢

    芳賀委員 それもまじっていますが、それだけではないのです。
  26. 大和田啓気

    大和田政府委員 この新全国総合開発計画は、私どもが「農産物生産需要長期見通し」を立てました目標年次よりもさらに遠い年次で、私どもなかなか行政的に接近することが困難な面もあるわけでございますけれども、ここに盛られております考え方としては、農林省としてそう反対をしておらないといいますか、大体こんなものであろうかという考えを持っておるわけでございます。
  27. 芳賀貢

    芳賀委員 いま官房長の言われた前に、この地域区分が表によって出ているでしょう。全国を七つのブロックに分けて、そのブロックに性格づけをして、たとえば、北海道の場合には食糧供給の基地にする。東北圏の場合には、これもまた食糧供給基地、首都圏の場合には大都市圏として今後開発する、中部圏の場合にもあるいは近畿圏の場合にも、これは大体同じような構想であります。それから中四国圏の場合にも地方圏、大都市周辺の地域として経済的な発展を進めていく、それから第七ブロックのうちの九州圏の場合には、これも地方圏として、北九州地区を中心にして食糧供給基地としての主要な役割り考えておるわけですね。だから、この企画庁の構想からいうと、全国を七ブロックに分けた場合、北海道圏、東北圏それから九州圏がいわゆる主要な農業地域ということになるわけですね、これは国土全体から見れば。この地域農業生産活動あるいは食糧供給の社会的責任を分担してもらうという構想だと思うわけなんです。  だから、経済企画庁の場合にはこうした全国的な、どの地域農業の面においては主体的な役割りを果たすべきかというような、そういう長期見通し、そういう計画というものは整理されておるわけですね。ところが、一番肝心な農林省が何もないというわけなんですよ。無為無策でおって、企画庁がつくったのに大体賛成でございますというわけです。それが全国の総合的な国土利用の計画ですから、それに調和していけば、農林省は独自の仕事をする必要はありませんということになるわけですね。
  28. 大和田啓気

    大和田政府委員 いま御指摘の七ブロックで、北海道、東北、九州が食糧供給基地というふうに一応性格づけられておりますけれども、そのほかの地域において、それでは農業振興する必要がないか、あるいはそこにおいて農産物の相当な生産が期待されておらないかというと、それはそうではございませんで、食糧供給基地というのは、いわば他産業その他との相対的な関係で、そこにおいてきわめて農業が優位を示すということでございます。そのほかの地帯におきましても、それはそれぞれの地方実態に即して、中小家畜でありますとかあるいは野菜、果樹でありますとか、そういうものの農業生産は、この新全国総合開発計画の中にも当然盛り込まれておるわけでございまして、さい然と地域を七つに分けて、その三つは農業をやりその他は農業をやらないという趣旨で、別に企画庁が取りまとめておるわけではありません。  私ども全国的な農産物生産及び需要見通しにつきましては、昨年の十一月にこれを公表いたしましたけれども、その地方地方農業生産地域分担につきましては、現在、それを公表すべく作業中でございます。決して無策でこの問題を過ごしておるわけではございません。
  29. 宮崎仁

    ○宮崎(仁)政府委員 ただいま農林省のほうからお答えございましたことで大体尽きておるわけでございますが、私どもの作業しております問題につきましての、特に一三ページ、一四ページの表について御質問がございましたので、その点、少し考え方を申し上げておいたほうがよろしいかと思います。  この土地利用のフレームということで書いてありますのは、今度の計画目標としております昭和六十年度、この目標年度に向かいまして、わが国の国土全体をどのように使っていくかということについての大ざっぱな推定を書いたものでございます。このフレームということばを使っておりますのは、これは計画の本体というわけではない、いわば計画内容を書くための一種のワク組みの作業をここでやっておる、こういうふうに考えていただきたいと思います。  そこで、この表の意味するところは、ちょっと説明不十分でございますが、性格としてⅠ、Ⅱ、Ⅲと書いてございますが、特に問題になりましたⅢにつきましては、これは今後新たに形成される大規模な食糧基地、そういった性格を示そうということで書いてございまして、ほかのところで食糧の生産が行なわれない、こういうわけではございません。そういった特徴を特にこういうふうに書いたわけでございます。Ⅱでは、これは既成の工業集積を示しておるということでございます。それから、Ⅰについては全国的な位置づけを示したもので、その首都圏、中部圏、近畿圏という大都市圏に対して、東北あるいは中四国圏、というのは隣接圏であり、さらに九州、北海道はそれをまた離れた遠隔の地方圏になるだろう、こういうようなことでございますが、全体を通じましては、御承知のように、国土全体をできるだけ有効に使っていくというような考え方で、従来の土地利用考え方基本的に改めようとしておるわけでございます。  農業につきましては、産業開発プロジェクトの関係として書いてございまして、たしか二九ページと思いますが、ここに、いま農林省官房長から御説明がありましたように、「食糧供給基地の配置と編成」ということで私ども考え方が書いてございますけれども土地資源に恵まれた北海道、東北及び九州地方については、主として耕種と大家畜の大型産地化を進める、首都圏の内陸部でありますとか中部圏近畿圏の内陸部あるいは日本海側、中四国地方、こういったところについては、耕種のほかに酪農や中小家畜生産、その他それぞれの立地特性に応じた農業の開発を進めていく、こういうかっこうに考えていくことがいいのではないかということを、この試案では提案しておるわけでございます。
  30. 芳賀貢

    芳賀委員 政府委員に申しておきますが、ここは子供の学校ではないですからね。北海道圏、東北圏、九州圏以外の地域では農業はなくなるとか必要ないなんて、そういうつまらぬ子供のような議論をする者は一人もいないのですよ、わが同僚委員の中においても。だから、発言はつつしんでもらわぬといけないと思うのです。そこで、この開発計画はまだ作業の途中ですから、ここで内容の議論をする必要はないわけなんですけれども、しかし、参考として私もこの内容は十分検討してみたわけです。  そこで、農林省にお尋ねしますが、たとえばこの総合開発計画の試案に基づいて、それではいまの全国的な農用地の現況というものはどういうようになっておる、それが五年後、十年後あるいは二十年後のビジョン等を参考に考えた場合に、農用地あるいは都市の、都市開発法でいえばこれは市街化区域あるいは調整区域ですが、そういう国土全体の中の動きというものが、どういうふうに利用上の変化が生ずるかという数字をあげて説明してもらいたいと思うのですよ。それと同時に、現在においても、農村地域の都市に向かっての人口移動というのは極端に激しくなっておるわけですから、五年、十年、二十年将来に、日本の総人口が都市地域と農村地域を分けた場合に一体どういうような分布を示すかということも、これはやはり大事な点だと思うわけですよ。これは農業振興地域の立場から見ても、都市計画法の立場から見ても、国土総合開発の立場から見ても一番大事な点だと思うわけです。これは農林省農政局長ですか。
  31. 池田俊也

    池田政府委員 これは、先般公表いたしました生産需要長期見通しにも一部出ておるのでございますけれども、私どもといたしましては、農地の面積は、現在約六百万ヘクタール弱でございますけれども昭和五十二年にはまあ五百七十五万ヘクタールに若干減少を来たすというふうに実は見ているわけでございます。これは、従来のそういう傾向から一応見通した数字でございますが、まあそういうようなことでございます。  それから就業人口につきましては、現在一千万弱ございます農業就業人口が、やはり五十二年にはかなり大幅に減りまして、三分の二程度、大体六百万人、農家戸数にいたしますと大体四百五十万戸というふうに見通しているわけでございます。
  32. 芳賀貢

    芳賀委員 次に、これと関連して、農業地域の問題だけが法律に出ておるが、これと全く切り離すことのできない水の問題というものは、これはどう考えるのですか、農業地域整備計画を立てる場合。水と全然関係なしにこれはやるかどうかですね。
  33. 中野和仁

    ○中野政府委員 振興計画と水の関係でございますが、各地域でこういう振興計画を立てます場合に、農業生産基盤整備考えます場合には、その村々で水をどう考えていくかということは、当然前提として入っておるわけでございます。  ただ、先ほどからの御議論で、全体としてどういうふうに水を考えていくかという場合には、土地改良長期計画の前提といたしましても、どれぐらいの水の需要があるのかということは、別にわれわれとしても調査の段階でやっておるわけでございます。
  34. 芳賀貢

    芳賀委員 それでは、都道府県市町村計画の場合には、水利用あるいは水資源の開発の問題は、計画一環として出てくるわけですね。
  35. 池田俊也

    池田政府委員 知事が立てます基本方針の中に、法案の四条でございますが、四項目ほどいろんな内容を定めるべき事項をきめているわけでございますが、実は、この中にははっきり水の問題は取り上げていないわけでございます。  ただ、この中で当然農業振興地域として指定をいたすような地域の位置なり規模というものをきめるわけでございますし、また、その土地農業上の用途区分の基準に関する事項というようなものをきめるわけでございますから、その前提といたしまして、水の利用をどういうふうに一応将来考えるのかということがございませんと、こういうような点がはっきりいたしませんので、私ども計画の前提として、当然そういうものは知事がきめます基本方針の中でその方向を明らかにする、こういうふうに考えているわけでございます。
  36. 芳賀貢

    芳賀委員 次に、地域開発との関係ですが、北海道開発庁の小熊次官が来ておられるのでお尋ねしますが、北海道開発審議会が昭和四十二年八月に、寒地農業開発法制定に関する建議を、時の北海道開発庁二階堂長官に行なっているわけであります。ただいま質疑を行ないました全国総合開発計画の中でも、北海道圏は、これは日本でも主要な食糧供給基地としての役割りを期待されておるわけでありますし、この農振法から見ると、北海道開発計画との調整ということも法律上明らかになっておるので、これらの点について、北海道開発庁としての見解を述べてもらいたいと思います。
  37. 小熊清

    ○小熊説明員 お答え申し上げます。  北海道の開発は、先生御承知のように、北海道総合開発計画に基づいて現在行なわれているわけでございます。申すまでもなく農業地域整備というものも、その開発計画一環として推進されるということになっておるわけでございます。その際、地域住民考え方、意向というものは、開発計画の推進の上に非常に大きなファクターになってくるわけでございまして、ただいま御議論になっております農業振興地域整備法律において、まず整備計画市町村が立てるということは、北海道開発の推進にとっても有用であるというふうに考えております。また、地域整備基本方針都道府県知事が立てる場合には、農林大臣承認を求めることになっておりまするし、その際、北海道の開発計画との調整を十分はかっていくということで進めてまいりたいと思っております。  全国総合開発計画につきましては、現在これを策定中の段階でございますが、国土総合開発法の規定によりましても、全国総合開発計画とそれから北海道の開発計画というものは、十分に調整をはかっていくということに規定されておりますので、現在政府部内において、両者そごを来たさないように調整をしている段階でございます。
  38. 芳賀貢

    芳賀委員 いまの答弁でありますが、開発審議会が建議した寒地農業開発法制定の問題については、これはあくまで農業政策上の問題ですからして、具体的に解決する場合には、農林省中心になって方針を進めてもらうことになるわけですが、この建議を開発庁として具体的に採択したわけですからして、どういうふうにその後進めておるわけですか。
  39. 小熊清

    ○小熊説明員 寒地農業開発に関する建議が北海道開発審議会から出されたわけでございますが、これは、北海道の農業開発に関する抜本的な提言であるというふうに考えております。  ことに、最近の農業をめぐる諸情勢というものを考えますると、この建議の重みというものはさらに増してくるのではなかろうか。先生御承知のように、北海道の総合開発は、現在、昭和四十五年までの第二期の開発計画に基づいてやっておるわけでございます。ただいま四十六年以降の次の計画というものについての構想を準備いたしておるわけでございます。その次の計画段階では、当然この寒地農業に関する建議の趣旨というものが、相当生かされるという方向で検討を進めなければならぬと思っておる次第でございます。  なお、具体的に建議がなされましてからどういうことをやっておるかというお尋ねでございますが、開発庁として調査の予算をとりまして、この具体化のためのいろいろな調査を進めております。現に昭和四十四年度からは、これは全国総合開発計画とも関連がございますが、根室地方において相当スケールの大きい畜産基地というようなものを構想する調査を始めることになっておりますし、また、開発審議会の中に寒地農業の小委員会を設けまして、昨年以降専門の先生方をわずらわしまして、種々御検討を願っておるわけでございます。今後さらにその専門的な小委員会を通じまして、これが建議の具体化に結びつくという方向で、さらに努力を重ねたいと思っている次第でございます。
  40. 芳賀貢

    芳賀委員 ついでに小熊次官にお尋ねしますが、全国総合開発計画の試案によりますと、北海道内部における経済圏の構成が現在と非常に変わっておるわけですね。この計画によると、いわゆる札幌を中心とした札幌圏に北海道の総人口の七〇%が集中するというふうに全国総合開発計画には出ておるわけです。そうなると、残る三〇%が北海道各地域に散在するということになるが、これと農業との関係は一体どう考えておりますか。
  41. 小熊清

    ○小熊説明員 全国計画と北海道の計画との間については、現在、政府部内でいろいろ調整をしておるわけでございます。私どもとしては、札幌を中心とした地域は、中枢管理機能というようなものを中心としてやはり相当伸びていくだろう。しかしながら、同時に、札幌以外の道内各地に拠点というものを設けまして、その拠点を中心として、全道あまりむらのない開発が進められるというふうに指向しているわけでございます。  次の計画におきましても、大体さような方向はそのまま展開されるというふうに考えておりますが、札幌圏だけが北海道の中心であって、そのほかはだいぶ劣るというようなことのないように、むしろ機能的に札幌圏、それからそのほかの拠点、さらには農村地域というふうに、普遍的なレベルアップというようなものを考えていきたい、かように考えておるわけでございます。
  42. 芳賀貢

    芳賀委員 いまの点が非常に大事なわけですので、もう一度お尋ねしますが、国土総合開発法に基づいた全国計画はもちろん必要ですが、しかし、北海道開発法というのがあるわけですからして、北海道地域における総合開発計画というものは、北海道開発法に基づいて、やはり独自性というものは生かされなければならぬ。その独自性というものが基調になって、全国総合開発計画は北海道地域に対してもどうするということにならなければいかぬと思うのです。ですから、これはやはり北海道開発庁が必要か必要でないかというところまで、場合によっては発展する問題ですからして、全国計画と北海道の開発計画との今後の位置づけという問題については、ここで明確にしておいてもらいたいと思うのです。これは開発庁並びに経済企画庁両方から、この主体性の問題については明らかにしておいてもらいたいと思います。
  43. 小熊清

    ○小熊説明員 現在、国土総合開発法という法律に基づきまして、全国総合開発計画策定されるわけでございます。またこれと並んで、北海道開発法という法律がございまして、北海道に関する地域開発の計画策定するということになっておるわけでございます。したがいまして、全国総合開発計画策定されましても、これと調整をとりながら、北海道の総合開発計画というものは北海道開発法に基づきまして、先生のおっしゃるようないわば独自のたてまえ、立場というものから立ててまいりたい。  ただこれは、北海道といいましてもあくまでも全国の一部でございますから、その意味で、全国計画とは十分調整をはかる、かような規定も設けられておるわけでございます。かような立場に立って北海道の次の計画を現在準備中である、かように申し上げておるわけでございます。
  44. 宮崎仁

    ○宮崎(仁)政府委員 全国総合開発計画と北海道総合開発計画との関係につきましては、いま北海道開発庁の小熊次官から御説明があったような考え方と全く同じでございますが、この第四次試案までの段階におきまして、そういった意味での北海道総合開発の特殊性と申しますか、そういったことに関する書き方がやや不十分であるというような御指摘もございまして、いまその内容等についてお打ち合わせをいたしておるところでございますが、何といいましても、法律的に見ましても、北海道総合開発というのは特殊な事情がございまするし、また、従来の開拓の歴史におきましても非常に独自の性格を持っておるということでございますので、そういった点を計画の中に明確に書くようにいたしたいと考えております。  それから、特に第二部のブロック別構想における全国総合開発計画と、新しくつくられる北海道の総合開発計画との調整の問題ということも問題でございまするので、そういった点についてもこの中で明らかにしておきたい、こういうふうに考えております。
  45. 芳賀貢

    芳賀委員 農振法の関係については、他の同僚委員が相当真剣に質疑をされたので、もう尽きておると思いますので、いま一、二点だけお尋ねしたいと思います。  建設省から来ておるので尋ねますが、この都市計画法と農振法との関係ですが、国民経済的に見た場合、都市地域と農村区域というものは、これはやはりこん然一体となって機能を発揮すべきものであると思うわけであります。したがって、農業地域では、国民が必要とする農畜産物生産活動を行なって、都市圏に対して供給を持続するという、そういうことになるわけですからして、都市地域に今後も人口が大幅に集中するということになれば、国民経済的には、やはり都市地域が主要な発言権を持つということに、需給関係から見てもなることは常識的に考えられるわけであります。  そこで、この都市計画法と農振法との調整をはかるということが法案にも出ておるわけですが、それではこれを具体的にどうするかということになれば、建設省としてはいかなる具体的な考えを持っておるわけですか。特に、市街化調整区域の問題というのが一番問題になる点だと思うのですがね。
  46. 山下武

    ○山下説明員 お答えいたします。  現在、新しい都市計画法の施行を六月に控えて、都市計画法の附則三項に基づきます市街化区域と市街化調整区域を区別して都市計画をきめる作業を、いま準備をしておるところでございます。  特に、都市計画のサイドにおきましては、市街化区域は、今後十年間において市街化をはかるべき区域として取り扱い、市街化調整区域におきましては、市街化を抑制すべき地域としてこれを取り扱っておるわけでございます。したがいまして、市街化区域におきましては、当然市街化が予想されるわけでございますので、この区域における農地の転用の許可についても、届け出をもって足りるということになっております。  ところで、この市街化調整区域の関係でございますが、これはできるだけ市街化がはかられないように抑制していくようにという配慮のもとにやっていくわけでございますから、当然この市街化調整区域の中においては、相当大規模な優良な農地等が残るわけでございます。そういうような農地におきましては、都市近郊の農業として農業役割りを十分果たしていただくような区域になろうかと思いますし、また、当然農振法の適用の区域にもなっているわけでございまして、これらの区域につきましての農業との調整は、私どものほうとしても特に配慮いたしまして、農業との調整、都市計画との調整等十分考えまして、円滑に農業生産が行なえるようなことを配慮していくということで、農林省とも十分打ち合わせを遂げているところでございます。
  47. 芳賀貢

    芳賀委員 そこでお尋ねいたしますが、都市計画法に基づく市街化調整区域のおおよその推定面積と、それから農振法に基づく農業地域との重複した部分というのが出てくると思うのですが、いわゆるダブリですが、これはどのくらいに考えておるのですか。
  48. 山下武

    ○山下説明員 おおよその数字を申し上げさせていただきますが、現在の都市計画法で指定をしております都市計画区域というのが、大体十一万平方キロくらいございます。それで、今度の新しい都市計画法が施行されますと、それに基づいて新たに都市計画の区域というものを再編成いたしまして、新しい都市計画法の政策の対象区域をきめるということになるわけでございますが、大体の面積は、その約半分よりもちょっと多いところでございまして、六万二千平方キロ程度になろうかと思います。  その中で特に市街化区域、市街化調整区域を区別して行なう都市計画の区域が四万三千平方キロぐらいになるわけでございます。この数字は、多少舞台に移してまいりますと変化が出てくるかと思いますけれども、その中で市街化区域として策定できるものが、大体八千三百平方キロ程度ぐらいなところではなかろうかということで、いま大体の目やすをつけておるところでございますが、それ以外の三万五千平方キロ程度が市街化調整区域になろうかと、大体の推定をいたしておるところでございます。
  49. 芳賀貢

    芳賀委員 この点は農政局長からもお答えいただきたいが、振興地域として想定される地域内に市街化調整区域が食い込んでくるというか、重複する面積は、何万ヘクタールくらいになるものなのか。
  50. 池田俊也

    池田政府委員 ただいま建設省からお答えがあったわけでございますが、市街化調整区域として指定される予定の面積の中で、農地は大体百五十万ヘクタールというふうに私ども承知をいたしております。でございますから、現在の全体の農地の約四分の一が市街化調整区域の中にある、こういうことになるわけでございます。  ただ、それならばその市街化調整区域の中の百五十万ヘクタールが全部農業振興地域になるかどうかと申しますと、これは、先ほど来いろいろ御議論のございました点にも関連いたすわけでございますが、地域農業者の意向が最終的にそのかぎをにぎるわけでございますので、やはり比較的都市に近い地域でございますと、ある程度その中から、農業振興地域に指定されない地域が出てくるというふうに私ども考えておるわけでございますが、その地域は、ただいまの段階では、はっきり申し上げられないわけでございます。
  51. 芳賀貢

    芳賀委員 だから、これは大きな問題だと思うのです。農用地の四分の一の百五十万ヘクタールが市街化調整区域になることが予想されるとすれば、都市計画法から見れば、この地域というものは市街化することを抑制することを目標にしているというが、しかし、都市の逐年の膨張に基づいて、やはり都市的な役割りをその土地が果たさなければならぬということにだんだん変わっていくと思います。それからまた、その調整区域の土地所有者は、おそらく土地価格の関係等もあって、農業振興地域としてこれを確保したいという気持ちよりも、場合によっては、これは市街化の拡大に伴って有利に農地を処分できる条件をむしろ確保しておいたほうがいいというような考え方は当然あり得ると思うし、それを否定することはできないと思うのです。  ですから、土地所有者あるいはその地域農業従事者が、結局ふらふらした気持ちで、農地を財産保持的な考えで今後所有し、経営するということになれば、こういう重複した農業振興地域に強力な国の農業施策を講ずるということは、たいへんなことだと思うのです。そういう点については大臣、何かお考えがありますか。
  52. 長谷川四郎

    長谷川国務大臣 御指摘のように、調整区域が一つの歯どめになっているわけでございまして、その一応の歯どめになっているところにまで食い込んでいくであろうというのが、芳賀さんの心配だと思うのです。  そこでわれわれは、この歯どめはあるけれども、さらに土地基盤整備をやらなければならぬし、土地改良を拡大していかなければならぬし、また、奥地開発というものにも重点を置いてやっていくわけでございます。  先ほど御指摘のあったように北海道という地区、これは、おっしゃるように、その独自性を十分生かして、こういう地区を特に指定して、そして今後の農業の拡大をさらにはかっていかなければならぬ、こういうような考え方を持っているわけでございます。
  53. 芳賀貢

    芳賀委員 最後の質問になりますが、これは農地局長にお尋ねしたいと思います。  昭和三十四年十月二十七日の農林事務次官通達は、農地転用許可基準を示しているわけですが、これを見ると、いま政府がお出しになった農振法よりも、内容的に目的が明確になっているわけですね。だから、比較をして次官通達のほうがしっかりしているということになれば――例の国有林活用法も同じで、これも次官通達で、国有林活用基準というのが以前から明らかになっておって、それを法制化するということで農林省も苦労されているのですが、たとえば、許可基準の第一の目的事項等についても非常に明快な内容を規定しているわけですが、この許可基準と農振法が成立した場合の関係というのは、どういうように考えておりますか。
  54. 中野和仁

    ○中野政府委員 お答え申し上げます。  農地転用の許可基準につきましては、御指摘のように三十四年につくりまして、その後社会情勢の変化等で運用を多少変えているところもありますけれども基本的にはこの精神でやっております。  今度の農振法ができました場合に、農用地利用区分をやりました地域につきましては、農地転用はその利用区分のやり方に従ってやるということになっております。基本的には、この転用許可基準と今度の振興法と、考え方を変える必要はないのではないかというふうに考えております。
  55. 芳賀貢

    芳賀委員 そうすると、運用上は農振法が主となって、許可基準が従たる役割りを果たすということになるのですか。
  56. 中野和仁

    ○中野政府委員 転用許可基準の場合は、農振法の振興地域だけではなくて、全国農地に全部適用しているわけでございます。振興法ができましてこれが指定されてまいりますと、振興法に基づきます農用地利用計画に指定された用途以外の用途には供されないように農地転用の許可を運用していくということでございますから、原則的には許可がますますしにくくなるといいますか、しないという方向になってくるかと思います。
  57. 芳賀貢

    芳賀委員 ですから、許可基準の第一の目的にしても、「優良農地を確保して農業生産力を維持し、農業経営の安定をはかるとともに農業及び農業以外の目的のための土地利用関係調整して、その合理化をはかるため農地転用を適正に規制し、もって健全な国民経済の進展に寄与することを目的とする。」これはまことに明快になっているわけですね。農振法などは、こういう内容も明快でないし目的もはっきりしないのから比べると、事務次官通達のほうがしっかりしたものだと私は思っているわけなんです。  それから旧都市計画法との関係についても、この時代は第一種農地、第二種農地、第三種農地とうふうに農用地を区分して、第二種、第三種農地については、市街化地域と大体対応できるようなことになっておるわけですね。こういう農地法上の精神というものが基本にならなければ、農振法の適正な運営も絶対できないと思うのですよ。  そこで関連してお尋ねしますが、今度の法案の中で、農用地利用計画市町村段階で区域を設定することになるわけですが、その区域には、既存の農用地はもちろんであるが、農用適地もその区域に包括することができるわけですね。国有林関係は、わざわざ法案国有林活用ということを一項うたっておるが、農用適地ということになれば、単に国有林だけじゃなくて、その周辺のいわゆる私有、民有の未墾地等も農用適地として区域に包括する必要というものは、当然現地の判断で出てくると思うのですよ。そういう場合どうするかということは、この法案にも非常に煩瑣な手続を経て、最後には知事の裁定というような形で、その裁定は、行政不服審査法に基づく裁定と同様の効果があるというようなことをうたっておる。  そこで農地局長にお尋ねしたいのは、そういう場合農地法によるところの未墾地買収等の規定の発動というものは、やはり必要じゃないかと思うのですよ。これは数年前の土地改良法改正の場合でも、農用地の開発、造成事業をやる場合に、その事業区域の中に、民有未墾地とかそういう土地が包括される場合には、これも農地法の未墾地買収の発動はしないというような説明が当時国会であったわけですよ、あのときは丹羽君が農地局長だったと思いますけれども。今度の場合も、どうしても国がこれは農用地として適当である、必要であるというのでその土地利用計画の中に編入することによって、その地域農業計画が大きく前進する、そういう認定が行なわれる場合は、それは所有者が進んで協力してもらうことが一番大事でありますけれども、しかし、その調停とか裁定とか、そういうことだけに精力を費やすということでなくて、国民的な立場から農用地に開発、造成することが妥当である場合には、農地法の発動ということも必要だと思うのですよ。ここ数年全くこれを眠らしているわけですが、これはどういうわけで眠らしておるわけなんですか。
  58. 中野和仁

    ○中野政府委員 お話しのように、農地法によります未墾地買収制度は、昭和三十六年以降停止をしております。  と申しますのは、あの制度ができましたのは、先生御承知のように、終戦直後の緊急食糧増産ということで、どうしても農地は強制的にも確保しなければならないという問題がありまして発動してきたわけでございますが、その後食糧事情も安定してまいりまして、それからまた社会情勢、外部の経済情勢も変わってまいりまして、強制的にああいう制度を発動するという実態がだんだんなくなってきたという判断をいたしまして、現在では、開拓パイロット制度をはじめいろいろな制度で、国の厚い助成の上で土地所有者全員の同意のもとにやる、その所有者が納得しない場合には、これは土地改良法でも、御指摘のように勧告制度を設けておりますし、今度の法律でも、やはり土地利用についての市町村長なり知事なりの勧告ということでいきまして、こういう土地の利用が将来進められる上におきまして、それほど支障はないのではないか、強制的にまでやることは困難ではないかというふうに、現在判断をしております。
  59. 芳賀貢

    芳賀委員 農地法という法律があって、役人がかってに眠らすというのはおかしいのではないですか。大臣、どう思うのですか。農地法の第三章に、未墾地買収の規定が厳然としてあるわけですね。それを、行政府の役人がかってに昭和三十六年以降眠らしております。これはちょっと変じゃないですか。どう思いますか。
  60. 長谷川四郎

    長谷川国務大臣 ただいま局長が御説明申し上げたように、社会情勢というものが変わってきたということと、それを作成するときの目的等というものとの間に相違が出てきておる。こういう上に立って、現在の法律をそのまま現行法律として用いることについては、何らかここに不備な点があるというような考え方のようでございます。そのように御了承賜わりたい。
  61. 芳賀貢

    芳賀委員 そうなれば、たとえば、この振興地域土地利用計画を立てる場合も、本人の同意が必要になるわけなんですよ。既存の農用地であっても、その区域に編入されるということに同意、不同意の意思表示をするということになるわけですね。それで未墾地の場合は、それが国家的な立場から見て農用地としての適地である、これを開発することが国家的にも有効であるということを認定した場合でも、それは個人の所有地だから、この法律で財産権に対しての影響を与えるということはうまくないということであれば、既存の農用地の所有者であっても、いや、私はこの利用計画区域に入りたくありませんということであれば、勧告したり、調停したり、裁定したりする必要は何もないじゃないか。そのほうはできるだけ時間をかけてやるというのも、これは大きな矛盾だと思うのですね。それから、都市計画法の場合でも、市街化調整区域に認定される場合には、本人の意思というものが明らかにされなければならぬということになっておるわけですね。いやならしようがないですといってこれは処理すればいいじゃないですか。そういう関係はどうなんですか。  未墾地だけは本人の意思を尊重して、法的な発動はすることができない。既存農地の場合には、有権的な買収発動ではありませんけれども、結果的にはどうしてもそうさせるというところまで法律を背景にしてやるわけです。そしてとどのつまりは、未墾地はもう眠らしてあるから手をつけるわけにはいかぬ。そのかわり企業財産として有効に活用されておる国有林であっても、これを国有林高度利用ということで、必要があればどんどん農用地に変更する。ここらも首尾一貫しないと思うのですね。何のために国有林活用だけを農振法の中にうたっておるわけなんですか。そして一方、農地法の必要な法律発動、これはもう三十六年から眠らしておるので、いま起こすわけにはいかぬというわけでしょう。国有林問題は追って当委員会審議の場に供された場合にまた論議することになりますが、これらの事情について、農地局長並びに農政局長から明快な説明をしてもらいたいと思います。
  62. 池田俊也

    池田政府委員 農地法の運用の問題は、後ほど農地局長から御答弁があると思いますが、私どもこの農業振興地域法案を作成いたす段階考えました考え方を申し上げますと、これはやはり市町村計画をきめるわけでございますけれども、あくまでも地域住民の意向の上に立って農業振興地域計画をきめていく、こういうものであろうというふうに考えるわけでございます。  そういうことでございますと、一応農用地利用計画というものを立てますが、もちろんこれを立てます場合には、地域住民の意向を十分に聞くということで、先ほど先生のお述べになりましたようなかなり詳細な規定を置いておるわけでございますが、その後におきまして、土地の利用がその利用計画に沿って行なわれていない場合に、一体これをどうするかという問題があるわけでございます。  これにつきましては、本来の利用目的に合うような利用がなされるべきであるという考え方は当然でございますが、それを最終的に強制力を持ちまして、地域住民の意向に反してでも強制するということが、制度論としてできるかどうかといいますと、ここは若干疑問がございまして、やはりそれは行政庁の勧告というような範囲を出ることはいささか困難ではないか、こういうことに実はなったわけでございます。  それから国有林の問題につきましては、当然この農用地利用計画の中にも入り得るわけでございますが、これにつきましては、農林大臣がその計画を見まして必要ならば承認をする、こういうことになるわけでございまして、制度論といたしましては、現在の農業情勢なりあるいは制度の考え方からいきまして、それ以上はいささか困難ではないか、こういうことになったわけでございます。
  63. 芳賀貢

    芳賀委員 農地法の四十七条には、都道府県開拓審議会の設置の条項が出ておるわけですが、今度の場合は、利用計画策定する場合、農用地区域に包括すべき林野あるいは未墾地、それから既存の農用地にしても、これははたして将来農用適地かどうかというような判断をする機関というのはないのですね。ほとんど市町村長に権限をまかせて、そして市町村議会の議決によってその計画成立するということになっておるのですね。だから、地方自治体である市町村あるいは議会にだけ、この農地法上あるいは農業政策上の大きな権限を全くまかしてあるわけです。いま私が読みました開拓審議会の機構等は、開拓適地としての判断をする機関で、すぐこれを当てはめるわけにはいかぬが、農地法においてはこういう慎重な、適地の当否を判断する機関が審議会等において設けられておるわけなんですね。だから農振法を策定する場合にも、いわゆる基礎立法である、基本法であるところの農地法の精神を十分理解し、この農地法を高度に運用するという立場で新しい法律というものはつくるべきじゃないかと思うわけですが、こういう点は農地局長、どう考えておるのですか。もう何でもみんながやるのだからしようがないというので、農地法を守らぬ気になっておるかどうかですね。
  64. 中野和仁

    ○中野政府委員 農地法に開拓審議会の規定を置きまして慎重を期しておりますのは、やはり個人の未墾地を強制的に買収するという前提がございますので、非常に慎重な一つの手続として、そこで調査をするということになっておるわけでございますが、今度の農振法の場合は、先ほど農政局長からお話がございましたように、やはり地域住民の総意といいましょうか、そういうものでの計画になってきておりますので、直接農振法には、県の段階でそういう審議会はないのではないかと思いますけれども、やはり具体的な利用計画になりますと、知事のほうでも十分その町村の計画を審査いたしますので、その点で気をつけるようにやっていかなければならないというように考えます。
  65. 芳賀貢

    芳賀委員 たとえば、都市計画法には都道府県単位の地方審議会があり、また中央審議会というものがあって、やはり市街化の問題に対しても慎重に扱うということになっておるのですよ。農振法の場合には、町村長と議会がそれでいいということになればよろしい。全くこれは軽率な、ずさんなそしりを免れぬと思うのです。そうじゃないですか。  最後に農地局長にお尋ねしますが、農用地利用計画を立てる場合、特に北海道等においては草地の造成が、土地改良十カ年計画に基づいて相当雄大な構想で進められておるわけです。いまその障害になっておるのはいわゆる公有林野、特に北海道が所有しておる道有林ですね。この中には、国有林に劣らぬような農用地あるいは草地としての適格条件を備えた地域が相当あるわけなんです。それを、たとえば農林省が大規模草地の開発計画の調査対象にして、基本調査ぐらいはやるわけですが、今度はそれの実設計をやるということになると、必ずそれは成立しないのですね。国有林の問題もそれは国として大事かもしれぬが、やはり七百町歩とか一千町歩以上の大規模草地を造成するということになれば、民有の未墾地とかそういう土地を相対売買で買収してやるということには、相当の困難が伴うわけです。こういう点は農地局長としては十分事情はわかっておると思うのです。開発庁としても……。四十四年度の予算編成の場合においても、当然これは最適地として草地造成の実施計画を立てるべきである、調査地域にこれは採択して行なうべきである。北海道の所有林野というのは、いろいろな手段方法を講じてそれができないようなことになっておるわけなんですよ。  だから、たとえばこの農振法によっても、そういう都道府県が所有しておる公有林等について、どうしてもこれは農用地として適当である、この農用地区域に編入すべきであるというその地元の判断が行なわれた場合には、農林省としても万難を排して、それが実施に移されるようにやるかどうか。いろいろこれは問題があるのですよ。皆さんの場合には、国有林活用だけで万事解決するように思っておるかもしれぬが、そういうわけではないですからね。こういう点について、農地局長並びに北海道開発庁から、これは明快にしておいてもらいたいと思います。
  66. 中野和仁

    ○中野政府委員 農振法によりますと、町村の段階で、国有地のみならず公有地も計画の中に入れ得るわけでございます。ただ、それはあくまでも計画でございますので、具体的にそれじゃその事業を実施する場合に、草地改良をやるとか、あるいは開拓パイロットをやるといったような場合には、たとえば北海道の場合でありますと、道庁のほうでその町村の計画を尊重しなければできないわけでございます。  われわれとしましても、今度のこの法律ができまして、そういう方向に町村の意向が向いてきました場合は、できるだけ道庁にもその指導をいたしまして、土地が提供できるような方向でお話をしたいと思います。
  67. 芳賀貢

    芳賀委員 委員長に申し上げますが、肝心の農協法の関連で農振法の質問をしたわけですが、関連のほうに時間を費しましたので、午前はこのくらいにして、農協法については、後刻またあらためて質疑をさしてもらいたいと思います。
  68. 丹羽兵助

    丹羽委員長 ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  69. 丹羽兵助

    丹羽委員長 速記を始めて。  芳賀君。
  70. 芳賀貢

    芳賀委員 せっかくの委員長の御指示ですから、農協法について質問をいたします。  農林大臣にまずお尋ねしますが、今回の農協法改正内容を見ると、一昨年農林省において農協法改正の第一次要綱をつくられたときと非常に内容が違っておるわけですね。どう変わっておるかというと、一昨年の時点では、改正の要綱案のうちにおいて、われわれとして、これはいまの時代の推移から見て当然農協法の一部改正をする必要もあると認められるような点もあったわけですが、今回の改正案の内容を見ると、これは改めたほうがいいという点が全部姿を消して、こういう改正はむしろしないほうがいいんではないかというような点だけが改正案として登場しておるわけですね。もっとも、第一の点の、農協が組合員の委託を受けて農業の経営を行なえるという規定の改正は、これはわれわれとしても認めるにやぶさかでないわけでありますけれども、それ以外は、どうも私ども社会党の立場から見ても、これは同調できないような改正点が非常に多いわけですが、農林大臣としても同じような判断をしておられると思いますが、いかがですか。
  71. 長谷川四郎

    長谷川国務大臣 他の点についても、以前の農協と合併後の農協というものが、農協の組織そのものが変わってきておる、こういうような点がございますので、やはりそれと対応したものでなければなかなか運営上困難であろう。したがって、今後の農協というものの使命というものも、ただ単なるいままでの農協でなくて、今度はさらに指導という面について当然大きく携わって、その面の重責をになっていかなければならない立場にもある。  こういうような観点から、今度の農協法というものを改正することに踏み切ったのでございまして、それらを勘案いたしますと、御指摘の点もございましょうけれども、十分御審議を願って、そしてぜひとも今国会においてこれを通過さしてもらいたい。それが現在の農協自体の、拡大してきたといいましょうか、時代に即応してきた農協の育成になるものだ、かように考えるわけでございます。
  72. 芳賀貢

    芳賀委員 それでは農政局長にお尋ねしますが、ここに昭和四十三年一月三十日の時点の「農協法改正案について」という資料がありますけれども、そのときの改正の要綱案は、第一が農協による農業経営の受託、第二が信用事業に関する規定の整備、第三が連合会の会員の議決権及び選挙権の数の特例、第四が専属利用契約に関する規制の緩和、第五が組合の第二会社に対する出資等の適正化、第六が総代会の権限の拡大、第七が農事組合法人制度の整備、第八がその他ということになっておるわけでございます。この時点と比較しても、相当改正案の内容が後退しておるわけですが、その問の事情について率直に説明を願います。
  73. 池田俊也

    池田政府委員 いまお述べになりました当時の改正案の考え方に対しまして、現在御提案申し上げておりますのは大部分において同じなんでございますが、実は二点ほど、当時予定しておりましたものが今回の改正案の中には盛り込まれていないわけでございます。その一つは、専属利用契約制度の改正の問題、それから第二は、第二会社に対する措置の問題、この二点でございます。  専属利用契約の問題から申し上げますが、これは、当時の考え方といたしましては、やはり農協の事業の安定的な振興をはかるというような観点からいうと、従来農協法にございます専属利用契約という制度を、もうちょっと実際に合うように活用できるようなかっこうにしたほうがいいのじゃないかということで、期間を延長するということと、それから、それに応じなかった場合にその施設の利用に何がしかの制限をつけられる、こういうことを当時考えたわけでございます。これにつきましては、農林省といたしましてそういう案をつくりまして、関係省とのいろいろ調整に入ったわけでございますけれども、率直なところを申しますと、公正取引というような観点からも問題がある、やはりこういうものは、相当限定的に制度としては扱うべきものである、期間を延長するということとか、あるいはそれが応じなかった場合にその施設の利用を断わるというのは、制度としては少し行き過ぎなのではないか、こういう御意見がございまして、現在の公正取引の法的な体系の中でいささかむずかしい、こういうことになったわけでございます。  それから、第二の第二会社の問題でございますが、これは、最近いろいろ農協の第二会社に対する御意見がございまして、私どももこれの実際の扱いについては、やはり何がしかもう少し行政指導といいますか、そういうものを強化するような方向で検討いたしたい。その場合に、やはり法的な根拠があったほうがやりいい、こういうことがございまして、第二会社の内容については、たとえば、総会で報告をするとかそういったたぐいの改正案を実は考えたわけでございますが、これにつきましては実は通産省等と、やはり中小企業者のいろんな意向がございまして、農協の第二会社というものに対してかなり疑問を持っている向きがあるわけでございまして、そういうようなこととの関係で、なかなか制度的にどう扱うかということの結論は得られなかった。こういうことでございまして、私どもはこの二点については、今回法案の中に盛り込むことをいたさなかったわけでございます。  ただ、これにつきましては、実際の行政指導の面では、運用等を通じまして、その足りないところを補っていきたい、こういう考え方でございます。
  74. 芳賀貢

    芳賀委員 いま局長が述べられた専属利用契約の点は、協同組合法の十九条の規定であります。「組合は、定款の定めるところにより、一年を超えない期間を限り、組合員が当該組合の施設の一部を専ら利用すべき旨の契約を組合員と締結することができる。」そしてその次の第二項が従来から問題なわけなんです。「前項の契約の締結は、組合員の任意とし、組合は、その締結を拒んだことを理由として、その組合員が組合の施設を利用することを拒んではならない。」これは農協ができたときから問題になった点なわけですね。従来われわれとしては、この第十九条の第二項の規定を削除することのほうが十九条の趣旨が生きるじゃないかということで、農協法改正のたびごとにこの問題は取り上げてきておるわけです。最初の農林省の案が、一年を五年に緩和するというようなことでありましたけれども、どういうわけでこれはできないのですか。おそらく関係官庁といえば公正取引委員会をさすと思うのですが、公取はこの点に対してどう言うのですか。
  75. 池田俊也

    池田政府委員 問題点は両方、二点についてあるわけでございますが、比較的に申し上げますと、実は期間の延長よりかむしろ後段のほうの、いまお述べになりました点が特に問題になったわけでございます。  やはり農協の組合員というものが組合の事業を利用するというのは、これは全く任意であるべきである、本来自由であるべきであって、当然組合の事業が組合員の利益になるという観点でございますけれども、しかしながら、あくまでもそれは任意によるべきであって、他の、たとえば農協外の業者を利用するということも、否定すべきではないという基礎的な考え方があるわけでございます。  ところが、そういう専属利用契約に加入しなかった場合には、その事業は利用させないということになりますと、これはいわゆる独禁法でいっております不公正取引という観念に趣旨としてはまってくる可能性が非常に多いということで、これは、やはり制度としてはいささかとりがたいという結論になったように承知いたしております。
  76. 芳賀貢

    芳賀委員 それでは、公正取引委員会と議論をして敗れたわけですね。   〔委員長退席、三ツ林委員長代理着席〕
  77. 池田俊也

    池田政府委員 これは、役所間のいろいろ相談ごとでございますから、敗れたとか勝ったとかいうことはあまり適切でないと思いますが、私どもは、やはり実際上の必要からいえばそのほうがいいのではないか、こういう感じは持っていたわけでございます。しかしながら、やはり制度からいいまして、それはいささか制度としてとりがたいという公取の御意見も、これは一面においては確かにそういうことはあり得るだろうということでございまして、私どももこれを撤回したということでございます。
  78. 芳賀貢

    芳賀委員 それはこの法律にも、九十七条に専属利用契約の取り消しの規定があるわけです。「行政庁は、第十九条第一項の規定による契約の内容が公益に違反すると認めるときは、当該契約を取り消すことができる。」こういうことで、専属利用契約でも何でもいいというわけではないですから、それが公益に反するというような場合には、行政庁の権限でそういう専属利用契約というのはよろしくないといって取り消しができるわけですね。そういう規定があるわけですから、十九条で締結する専属利用契約というものは、もちろん公益に反しない限度ということになるわけですから、真剣に公取と議論をすれば、そう簡単に敗れるということはないと思うのです。必要なら当委員会に公取も呼んで、どういうわけで、農林省が一番重要と考え改正点に対して公取は異論を唱えてこれが改正できないようになったかという経緯を、一方からだけ聞いても信用することができないわけですから、これは委員長にお願い申し上げて、次の機会に公取も呼んで、対決というわけではないけれども農林省はどのくらい自信を持ってこの問題を法理論の上で説明して、向こうがそれにどう対応したかということを明らかにしておく必要があると思うのですよ。これは農協法だけでなくて、やはり法的に農業や農民の利益を守る制度というものが、私たちながめておるとだんだん弱められていく、そういう傾向があるし、政府全体の姿勢もそこを指向しているように考えられるので、この点は、きょうは公取の出席はすぐ間に合わぬから、保留しておきたいと思います。  しかし、その組合員の意思に基づく農協施設の任意利用の話もわかるが、農業協同組合の原則ともいうべき一つに、加入、脱退は任意であるということになっておるわけですから、他の農業共済組合法のように、一定の同意者が得られれば、他は強制的に会員にするとか区域にするということと違って、あくまでもこれは資格を持った農民の自由意思に基づいて農協へ加入する、またいつでも脱退するという自由が原則として保障されておるわけですから、自己の自由選択に基づいて組合員になり、その事業を利用して自己の利益を拡大するということであれば、何も専属利用契約の問題にしてもむずかしい点ではないですよ。加入、脱退が自由じゃない、権力的に入れさせられたのだということになれば、また利用の点についても、拘束をするということは避けなければならぬと思いますが、自由の原則に基づいて加入し脱退するという点から見れば、この事業の利用についても、進んで自分たちが施設を、事業を利用するというのは当然なことだと思うわけです。  しかも、この十九条というのは、毎年の総会の議決等によって拘束しなくてもいいということになっておるわけですね。だからこれをはずしてしまえば、農協の総会等において、組合の施設については組合員は進んで利用するというようなことを、総会の議決事項として取り上げて、それが議決された場合には、やはり組合員に対しての拘束力は持つと思うのです。だからこの十九条の条文がなくても、そういうことは農協の運営の中で合法的にやれると私は思うのですが、その点は局長どう考えておりますか。
  79. 池田俊也

    池田政府委員 この制度は、確かにいまおっしゃいましたように、加入、脱退の自由、こういう農協の上に一応乗っかりましてそういうたてまえでございますけれども、やはり組合としては事業の安定をはかるという必要がございますので、それのいわば一つ調和の手段ということで、農協法に当初盛り込まれたというふうに私ども理解しているわけでございます。  確かにそういう点からいえば、組合の意思ということで専属利用契約というものを、一応そういうものに乗っかった上で組合員に事業を利用してもらうということをきめた場合であれば、それは不公正取引に該当しないじゃないかということも私あり得ると思うわけでございますが、ただ、実際問題になりますと、これは御存じのとおりでございますが、やはり農協というのは一つ地域に大体一つ、これは専門農協とかいろいろございますけれども、大体は一つの農協でございまして、実質的には、その組合の事業が利用できなくなった場合には、他の農協の事業を利用するというわけにはなかなかいかない事情にあるわけでございます。そういうようなことを考えますと、制度的には、いやならば入らなければいい、こういうことにもなるわけでございますが、実質的にはそうもまいりませんので、事実上やはりある程度そういう取引の自由というものを制限する、こういう効果はあるわけでございます。  そういうような点から、さっき申し上げたような結果になるわけでございまして、私どもは、これはただ実際の運用では、たとえば期間の問題ございますと、これは更新は当然できるわけでございます。でございますから、一年という期間であっても、これは更新をしていけば、ずっと従来と同じような利用もできるというようなことにもなりますし、また後段の点、その利用を拒んだ場合に云々ということにつきましても、実際問題としてそれが非常に事業の障害になるということも、これは組合の運営によりましては、そう組合の事業に大きな支障を来たすということもなく運営ができるのじゃないかという気持ちは、実は持っておるわけでございます。
  80. 芳賀貢

    芳賀委員 それからなお、私が後段で指摘したように、こういう法律上の専属利用規定等がなくても、農協の総会において、農協が有しておる設備利用等については、組合員は進んでその施設を利用する、こういう総会の議決等が行なわれた場合、当然これは十九条の規定以上に拘束力を持つと私は思うのですがね。これは合法的に行なわれると思うのですよ、そういう議決をしてはならぬというわけにはいかぬですから。これはどうお考えですか。
  81. 池田俊也

    池田政府委員 その点は、実はもう少し詳しく検討してみないとはっきりしたお答えができないわけでございますが、おそらく問題としては、やはり独禁法に抵触しないかどうか、そういう決議が独禁法に抵触しないかどうかという問題が起きてくるのではないかという気がいたします。あるいは、そういう決議の効果が有効かどうかが……。それは、単に組合員の申し合わせみたいなもので、ひとつ努力目標としてそうしていこうじゃないかということでございますれば、これは問題でございませんけれども、ある程度組合員を拘束するということになりますと、若干問題があるのじゃなかろうかという気がいたします。
  82. 芳賀貢

    芳賀委員 なお、これに関連して組合員の除名規定が法律にありますね。その場合に、除名に該当する事項としては、たとえば、一定の期間以上組合の施設を利用しない者、こういう点もあるわけですね。そうすると、専属利用契約の締結規定はありましても、組合にはそういう意思がなくてもそれを拒んではならぬということになるから、専属利用しない場合もあるのですね、法律上利用しなくてもいいと書いてあるわけだから。しかし、その組合法の除名規定からいうと、一定の期間以上農協の施設を利用しないと、組合員ではあっても利用しない場合には、これは除名の理由というものが成り立つということになるわけなんですよ。これは何も任意で加入、脱退する者を除名する必要もないわけですけれども、同じ法律の中にそういう除名規定として、施設不利用の場合にはこれは除名できるということになっておるので、これは公取委といえども否定できないと思うのです。この点はどうですか。
  83. 池田俊也

    池田政府委員 除名の一つの事由といたしまして、「長期間にわたって組合の施設を利用しない組合員」ということもあるわけでございます。これは、もちろん公取でも異論があるわけではございませんで、現行法にもあるわけでございます。  ただ、この場合の長期間にわたって組合の事業を利用しないというのは、全くその組合の事業を利用しない。たとえば、特定の施設についてだけ利用しないということではなしに、すべての施設についてそうで、全く組合員としての意味がない、こういうような場合に、一応除名の対象になり得るということでございますので、いまの特定の施設を問題にして、それの利用云々ということでございますと、この除名事由は該当しないのではないか、こういうふうに私ども考えているわけでございます。
  84. 芳賀貢

    芳賀委員 私がこの点を取り上げているのは、単に組合員に対して制度上拘束するということを強めろというのではないのですよ。それは、たとえば員外利用の制限規定というのがあるわけですね。正組合員である組合員が、自分の組合の施設を利用しようがしまいが、それは本人の自由であるということになれば、それを拘束してはならぬということになれば、それと同じように、員外者が農協を利用することは、その地域の住民として経済的にもあるいは文化施設の面においも――医療施設は差別したけれども、員外利用というものを認めている。何も一方において員外利用を厳重に規制する必要はないじゃないかということになるのですよ。組合員に対して利用規制ができないということであれば、員外者も自由に組合利用の恩恵を受ける機会を与えても差しつかえないと思うのですがね。
  85. 池田俊也

    池田政府委員 御質問の趣旨がちょっとよく理解できなかったわけでございますが、組合員が組合を利用するのはたてまえとしては当然自由である。もちろん専属利用契約に該当する場合は別でございますが、自由であるというふうに考えているわけでございまして、ただ、それが全く組合を長期間にわたって利用しないというように、組合員として特に認めておく必要が全くないというような場合には、これは事務の整理というような観点も入れまして、むしろ除名をするということが制度的に認められているわけであります。  それから、員外者が組合を利用するかいなかは全く自由でございまして、組合としては事業を利用させるということが、やはり地域の協同組合として必要な場合もございますから、そういうことが制度的に認められているわけでございますが、その制限の範囲内においては、利用するかいなかは全く自由、組合員以上に自由、こういうふうに考えるわけでございます。  私どもは、やはり組合員である以上は、その組合員としての意味を持つためには、組合の事業を利用するというのが本来のたてまえであるが、それが全く利用しない場合には一応除名の対象になり得る、こういうふうに考えているわけでございます。
  86. 芳賀貢

    芳賀委員 私が員外利用を取り上げたのは、農協が持っている公共的な施設と公益的な施設は員外利用の制限はないわけですよ。しかし、購買事業等については、これがいま一番問題になっているのですが、農協が都市に進出して近代的なスーパーマーケットを設備して、これに経営の重点を置いているので、地域の他の中小企業が圧迫されるからけしからぬ、農協法改正等でも行なって、この員外利用の規定を設けて厳重に規制せよという声がもう起きているわけですから、こういう点は農林省としてよくわかっていると思うのですよ。だから、員外利用の制限の問題と組合員の自己の施設利用の関係というのは、これは別な問題であるようにも考えられるが、相関関係はあるのですよ。それでいま聞いているのですよ。  趣旨がわからぬと言うが、員外利用の面については、購買事業等についても、員外者が利用する場合には損失分担はないのです。利益の部分だけ農協の事業を利用して、利益になる分だけを吸収するというところに特徴があるわけですね。これは、まだゆるめたほうがいいというように局長考えておるわけですか。
  87. 池田俊也

    池田政府委員 員外利用の制度を認めております趣旨というのは、私は二つあるのじゃないかという気がいたします。一つは、農協というのは職能的な協同組合が本質でございますけれども地域協同組合というような性格も一部持っておりますので、やはりそれは地域住民に、組合員に差しつかえない限りにおいて認めるというのが一つの点。それからもう一つは、やはり組合の事業のある程度のボリュームを確保するというような点からいたしますと、ある場合にはやはり員外者といえども認めたほうが組合の事業にプラスである、こういう場合があり得るわけでございます。そういうような観点から員外利用を認めているというふうに思うわけでございます。  現状におきまして、さらに員外利用の範囲を広げるかどうかについては、私どもは、やはり現状程度が一応妥当なところではないかというように考えておるわけでございます。
  88. 芳賀貢

    芳賀委員 員外利用の点については、今度の改正案の中にも、金融事業に対するいわゆる員外者のみなし利用の点が出ておるわけです。   〔三ツ林委員長代理退席、委員長着席〕 だから、われわれとしてはそうした金融面の事業に対して員外利用の道を拡大するよりも、やはり日常生活の中において、地域の住民が、たとえば購買事業等についてもあまり拘束されないような形で、気楽に農協の店へ来て物を購入して帰れるというような環境をつくってやる必要があると思うのですよ。そう思わぬですか。
  89. 池田俊也

    池田政府委員 信用事業の点につきましては、今回は若干の改正を御提案申し上げているわけでございますが、一般の購買事業等について員外利用の範囲を拡大するという考え方は、確かにいま御指摘のような点もあると思うわけでございますが、一面ではまた、御存じのように、最近都市農協等がかなり活発に購買事業を行なうというようなことで、中小企業者等との間でいろいろ摩擦が起きているわけでございます。  現状におきまして、私どもは、やはりこれを拡大するということは、組合の事業の安定を確保するというような観点からいうと、必ずしもいま直ちにこの範囲を拡大するという必要はないように思うわけでございまして、特に、現状においてその範囲を拡大することは、まだいささかその必要はないのじゃないかというふうに考えておるわけでございます。
  90. 芳賀貢

    芳賀委員 それでは、利用を縮小するような必要もないと考えているわけですね。大体現状維持で、その範囲のことでやるほうがいいだろう、こういうことですか。この点は大事なことで、農林省が購買事業等に対する員外利用を規制しなければならぬというようなことになれば、これは重大問題が起きますからね。だから現状の形の中で、地域の特徴とか経済性というものを十分考慮して、弾力的に有機的に行なうべきであるということならそれはわかるけれども、この点はどうなんですか。
  91. 池田俊也

    池田政府委員 信用事業の点は、御提案申し上げているようなわけでございますが、その他の購買事業等につきまして、私どもは現在の状態を、さらに員外利用の規制をきびしくするというような気持ちももちろんございませんし、逆に、さっき申し上げましたように、これをさらに緩和するという考え方も特に持っておりませんで、現状程度が一応妥当なところではないか、こういう考えでございます。
  92. 芳賀貢

    芳賀委員 次に、改正点にもあります議決権の問題ですが、ここで問題になるのは、単協段階においては組合員の議決権は、一人一票の原則はそのまま変えないわけですね。農協組織の一番基礎になる単位協同組合段階においては、組合員の議決権、投票権というものは一人一個の原則をそのまま維持する。ところが、地方の連合会あるいは全国連合会段階においては、今度はその会員に対して、議決権、投票権についても、一個のものもあるし二個以上のものもあるというふうな改正になるわけですが、これは、農協の歴史的な性格から見ても大きな変革になると思うわけですが、この点をどう考えておるのですか。単協においても連合会においても、一定の条件に基づいて議決権が不同があるということであればそれなりに意味があるが、単協は一人一票の原則を守る、連合会はそうでないというところにどうも理解しがたい点があるわけです。
  93. 池田俊也

    池田政府委員 私どもは、やはり協同組合の原則というのは、一人一票というのが原則であるというふうに考えるわけでございます。ただ、今回連合会につきまして、実質的には一対一以上の議決権を与えるというふうにいたしておりますのは、いわば現状に対する適応といいますか、そういう意味の修正でございまして、思想的にはあくまでも一人一票、こういう考えでございます。  それならばなぜそういう例外的なものを認めるかということでございますけれども、これは、やはり現在の連合会組織というのはかなり複雑なかっこうになっておりまして、たとえば、昔の産業組合の当時と比べますと、そういう系統的な段階というのが画一的ではなくていろいろな形がある。郡連というのもございますし県連もある。それが三段階で入っておるところもございますし、あるいは四段階というところもある。いろいろ非常にバラエティーがあるわけでございます。しかも、合併が進みまして、非常に大規模な三千人、五千人という農協もありますし、一方では数百人という農協もある。こういうことでございますので、やはり実際問題として、それらを全く一票で扱うのがいいかどうかという点が、どうも実際上問題になるわけでございます。  特に問題になりましたのは、これは御存じのとおりでございますが、農協の合併という問題がからみまして、むしろ合併をすると、従来二票ありました議決権が一票になるということで、非常に連合会に対する関与の場が狭まるという印象を一部で持っておるわけでありますから、私どもは、やはり農協というものを相当基盤を強化する必要があるというふうに考えておるわけでございますので、そういう点も考えまして、この際修正を若干したらどうだろうか。  これが、一人一票の原則に対する非常に重大な修正ではないかという考え方もあり得るわけでございますが、この点につきましては、国際的にもいろいろそういう問題がございまして、国際協同組合同盟というようなところでも、同じように連合会については特例を設けるということにもなっておりますので、私どもは、思想的にはあくまでも一人一票であるが、現状に対する対応という意味で若干の修正を加えた、こういうふうに理解しておるわけでございます。
  94. 芳賀貢

    芳賀委員 農協組織などにおきましては中央会等が中心ですが、いま局長の言ったとおり、協同組合の国際会議等において、連合会段階においては、必ずしも一人一票の原則でなくてもいいというようなことを盛んに理由にあげて農林省考えに同調しておるようですが、これは割り切って考えれば、たとえば株式会社の場合には、株式の保有の数字に応じて議決権が変わってくるわけです。今度の場合には、連合会の会員である農協、あるいは中央連合会の会員である地方連合会の会員数だけを基礎にして何票というふうな規定をするわけですね。そうなると、頭数が多い少ないだけでそういう発言権に差を与えることが適当かどうかという問題もあると思うのですよ。おととしの構想は、会員数によるのと、もう一つは事業実績か出資の保有高、そういうものも勘案してやるというようなことをいっておられたわけですが、今回の場合には、会員数だけということにしぼったようです。協同組合というのは、やはり経済行為を中心にやる組織ということになれば、単に地方連合会の会員である何々協同組合は、組合員数が二千人だから、三千人だからというようなことだけで権限に差をつけるということも問題があると思うのですね。むしろ連合会の会員としての協同組合の実績といいますか、経済行為あるいは出資、そういうものが基礎になって初めて発言権とか連合会内部における活動指導性というものが出てくるわけですからね。いまのようにほとんど農業が兼業化して、一体正組合員とは何ぞやというようなところにさかのぼって再検討しなければならぬ時期に、ただ組合員の数が何千人だからここは三票の議決権を与えるというようなことは、あまりにもこれは幼稚過ぎる考えだと思うのですよ。  もう一つは、そういう差別をしなければ、中央の連合会や地方連合会が適正な運営ができないということは全然ないと思うのですね。もしこうしなければ正常な運営ができない、障害があるというような点があれば、事例をあげてもらいたいと思うのです。
  95. 池田俊也

    池田政府委員 今回の一人一票制の若干の連合会についての修正でございますが、これは考え方としては、実はそういう数だけで考え考え方と、出資というところまでは考えませんでしたが、組合に対する事業の利用分量というものを一つの基準にしてやるということも一つの案としては考えられたわけでございます。  ただ、いま御提案申し上げておりますものは、これは基本的にはさっき申し上げましたように一人一票制、あくまでも人数を中心にした考え方であるわけでございますが、事業の利用分量を基礎にして考えるということになりますと、事業の利用分量というのは年度が終わってみないとわからない。もちろん、前年の結果を利用するということもあり得るかとも思いますが、非常に不安定でございまして、年じゅう議決権の数が変わるというような可能性もありますし、また、いろいろ制度的にも問題があるので、私どもはこれをとらなかったわけでございます。  さらに、出資というような考え方もあり得るかと思いますけれども、こういうことになりますと、大体いろいろな会社組織の考え方と非常に近づいてきまして、協同組合の原則からいうといささかどうであろうか、こういうことで現在のような考え方をとっているわけでございます。
  96. 芳賀貢

    芳賀委員 私の聞いているのは、このように改正しなければ支障がある、運営上障害があるという点があれば、事例をあげて説明してもらいたいと言っているのですよ。
  97. 池田俊也

    池田政府委員 これは程度の問題でございますので、これを改正いたさなかった場合に、非常に組合の事業が行き詰まるとかなんとかということでは必ずしもないと思うわけでございます。  ただ、実際問題として、先ほど御説明申し上げたわけでございますが、合併というような事態を考えました場合に、合併をいたした場合に、非常に発言権が従来より弱化をするというふうに考える向きも、実はかなりあるわけでございます。そういうようなことで、合併を促進するというような観点からいたしましても、今回のような修正を加えることが妥当であるということでございまして、これを認めなかった場合に組合の事業、連合会の事業の運営が非常に行き詰まるとか、そういう性質の問題ではなかろうと考えておるわけでございます。
  98. 芳賀貢

    芳賀委員 この点は局長、大事なんですよ。それで合併した組合に二票あるいは三票の議決権を与える場合と一人一票でいった場合に、その大型化した農協の、単協の運営あるいは単協の組合員にどういう利害が及ぶのですか。連合会へ出ていって、うちは三票の議決権があるぞと言って組合長が大きな声を張り上げることによって、その単協の何千人かの組合員に、三票の議決権が出たことによってどれだけ利益が伴うのですか。ここが問題だと思うのですよ。基礎はやはり単位農業協同組合ですからね。しかも、その組合員である農民の利益というものが基礎になるわけですからね。地方のボス化した組合長が、おれは三票の議決権があるからそう粗末にするなというような、その材料だけにするために改正をしたのでは、むしろ弊害だけが伴うということになると思うのですよ。議決権を不同なものにすることによって、単協あるいはその単協の組合員に対してどういう利害上の変化が起きるかということを明確にしてもらいたい。
  99. 池田俊也

    池田政府委員 これはいまお話しにございました、かりに三票あったのが合併して一票になるということで、特にその組合に不利を与えるということでは必ずしもなかろうと思うわけでございますが、ただ、まあ一般の考え方といたしまして、連合会の会員であります場合には、やはり連合会の事業なりあるいは役員の選任なり選挙なりというものについて、発言権を確保したいというのは当然の期待でございますので、私どもは、やはりそういうような点を考えますと、一律に五千人の組合と五百人の組合を同じように扱っていいかどうかということになりますと、やはり若干の格差を設けてほしいという意見が出てくるのも、これはある程度やむを得ないのじゃなかろうかという気持ちがあるわけでございます。  それから、さらにそういう数だけではなしに、いろいろ連合会の会員の中にも、結びつきが非常に強いものと、何段階にも階層が多くございまして、関連度が比較的少ないというようなものもあるわけでございます。そういうようなものにつきましても、若干そういう関連度というようなものも考慮したほうが実態に合うというようなこともございますので、そういうような点も考えまして、今回の改正を御提案申し上げているわけでございます。
  100. 芳賀貢

    芳賀委員 この点はわれわれとして同意できがたいところですが、これ以上は議論になりますけれども、実際問題として地方の単協においては、連合会等における議決権を組合員数によって差をつけるというのは、そう強い要望というものはないのですよ。農協の中央会あたりが農林省にどういうことを言っているかわからぬが、実際末端の組合員あるいは単協は、こういうことは考えてないのですよ。それよりも、これからの農業協同組合というものは一体どうなるか、どうしなければならぬかというところにむしろ関心の重点があるのですから、小手先で、ただ議決権を頭数において調整すればいいなんという問題は何にもならないと思うのですね。  その次の問題は、今度の改正案で総会に大幅な権限を与えるという点ですね。これも、いまの連合会段階の議決権と相通ずるものがありますが、この農林省改正案については、これは私の承知しているところでは、農林省内部に設置された農協問題の研究会の結論を見ても、あるいは農協中央会の意見書の内容を見ても、農林省改正案ほどに、こうしてもらいたいとか、かくすべきであるという結論はどこにも出ていないのですね。それを農林省だけが独走してこういうような改正をやるというのは、非常に反動的な考えに立っておると思うのですが、いかがですか。
  101. 池田俊也

    池田政府委員 農協法改正案でございますから、私どもは当然農協側におけるいろんな御意見というものは十分検討いたしまして、必要なものは法案内容に取り込むということで考えているわけでございますが、農林省におきまして、この問題についていろいろ検討をいたしました段階におきましても、総代会においての権限の拡大ということについては必要である、こういう結論であったというふうに私どもは理解をしているわけでございまして、特に農林省だけが独走をしたというつもりはないわけでございます。
  102. 芳賀貢

    芳賀委員 その中の大きい点は、総代会に従来以上に――農協における特別議決等についても、総会の権限事項にする改正を行なう場合には、ただし役員の選任については、総会外の組合員の直接選挙にして、総代会の権限拡大と調整すべきであるという意見は、農林省の中の研究会も農協中央会も一斉に指摘している点なんですよ。ところが改正案は、役員改選も総代会の中で投票によるなり選任ができる、あるいはまた解散、合併の特別議決もできる。ただし解散、合併については、あとで組合員の投票によって最終決定を行なうということにはなっておりますが、みそもくそも全部総代会でやれるということになれば、組合員の農協に対する意思の反映の機会というものは全く遮断されてしまうのですよね。  こういうやり方というものは、民主的であるべき農協というものを、農協の一部の指導者グループと一般の農民である組合員との間を遮断するような作用をどうしても起こすのですよ。法律はそう考えていなくても、それによる作用としてそういうことが表面に出てくるからして、この点は、農協の指導、育成を担当する農林省として、そのくらいのことはよく考えておってもらわぬと困ると思うのですね。そうじゃないですか。
  103. 池田俊也

    池田政府委員 私どもは、今回の総代会の権限の拡大が、非民主的であるというふうには実は考えていないわけでございまして、これは、先ほどおあげになりました農林省の研究会の結論としても、やはり役員の選挙あるいは解散等についても、総代会でできるようにというような趣旨の結論でございますし、大体そういう線に沿ってやったつもりでございます。  それで、この考え方は非常にむずかしいところでございまして、制度として、形として非常に民主的であることが、直ちに組合員の意向を十分に組合に反映させることができるかどうかということは、一がいに言えないと私は思うわけでございます。非常に妙なことを申し上げるようでございますが、かりに総代会制度というものを考えました場合に、やはり総会のほかに総代会を設けたということは、組合の規模が相当大きくなってきた場合に、かえって総代会というものを通じまして組合員の意向をやや間接的に組合の運営に反映させるほうが、より組合員の意向を反映し得るという考え方基礎にあるわけでございます。  でございまして、かりに非常に大きな組合の場合に、総会ですべてをやるということになりますと、これは実際問題としてなかなか組合員も出てまいりませんし、そうなると、かえって一部の非常に勢力のある人が全体を牛耳るというような可能性もあるわけでございます。それよりか、むしろ総代会というもので、ある程度数は限定をいたしますけれども、総代になった人が原則としてはほとんど出てくる、そしていろいろな組合の運営につきまして議論をし、結論を出すということのほうがより民主的であるということは、実際問題としては非常にあり得ることでございまして、むしろ今回の役員の選挙等についての権限の拡大というのは、そういう観点から理解をしていただきたいというふうに考えるわけでございます。
  104. 芳賀貢

    芳賀委員 どうも局長の話を聞いておると、失礼かもしれないが、農協問題についてはあまり苦労しておらぬですね。農林省の中で、たとえば戦後でもいいですけれども農協法ができてから今日まで二十数年の間の歴史的変遷に、身をもって当たった農林省の役人の皆さんであれば、こういう安易な考えで、法律改正だけでやれば問題は解決できるというふうにはならぬと思うのですけれどもね。  たとえば、昭和三十七年に農協法改正をやったとき、これは農地法改正も同じにやって、あのとき農地信託の事業を農協がやれるという改正をやり、あるいは農業生産法人の規定を農地法の中に入れるとか、相当大幅な農協の性格に及ぶような改正を、農地法とあわせて行なったことがあるわけです。あの改正のときに総会の代理権を、従来は出席した正組合員は他の組合員の代理権を一票行使できるというふうになっておったのが、あのときの改正で、本人を入れて五票、つまり本人を除いて四人の組合員の総会出席の代理権を持つことができるというふうに改正したわけですね。このときも、社会党はそれは問題がある、一人で他の四人の総会の出席権を代表するというようなことは、これは当然弊害が起きるので、そういうのは避くべきであるということで議論をしたことがあるのです。  もう一つは役員の選挙で、それまでは総会内における選挙あるいは総会外における選挙、とにかく総会においても総会外においても、組合員の投票をもって役員選挙をやるということになっておったのが、あのときの改正で、今度は選任することができる。これはいずれも組合の定款によってそういう方法をとることができるというふうな法の改正であるし、今回の場合にも、総代会をして全体の総会にかえる場合には、こういうこともできるということで――それはそれぞれの農協が、定款において規定すればいいわけで、改正されたから必ずこうやりなさいということではないが、しかし、三十七年の改正によって、今度は役員の選挙は投票によらないで、総会の決定に基づいて、総会に出席した者の中から数名の選考委員をあげて、選考委員会において役員を選任してもかまわぬというふうに改正したわけですから、これは大きな改悪なわけですよ。他の土地改良法にしても、共済組合法にしても、総会において選考委員会を設けて役員の選任ができるというような規定は、いまの農協法以外にはないのですね。  だから、総会の代理権を五票まで認めるとか、投票によらないで総会で数名の選考委員によって役員の大事な選任ができるというような改悪を、もうすでに行なって今日に来ておるわけなんですよ。これはもう法律になっておるから否定することはできませんが、たとえば、大型化して全体総会ができないということであれば、いまの法律規定によれば、五人までは代理できるということになれば、出席できない者は代理を委任するというような方法でも、これは十分そういう適正な総会というものは成り立つわけですね。われわれはそういうことを奨励し推奨するわけではないが、いまの農協法の規定を合法的に使えば、実人員の出席はその五分の一でも、全部が出席したと同じような結果になると思うわけですよ。  それから一方においては、選考委員会における選任制も残した中で、今度は総代会において役員の選任ができるということになれば、いま局長はこのほうが民主的だと言うが、とにかく全組合員の意思というものが、役員選挙の場合においても、組合の法人としての最後の意思決定に、直接関与できないという弊害も出てくるわけですね。これを全部まともにやればいいが、なかなかそういうわけにはいかないのです。だから、今度の改正というものは、そういう点にも大きな問題があるわけなんですよ。  だから、たとえば大型化に対応して総代会に権限を与えるとすれば、せめて総代は、これは組合員が選挙の形で選ぶわけでしょう。そうじゃないですか。総代は選挙でやるということであれば、役員の選挙は、組合員数が多いからできないということはないと思うのです。共済組合等においても、役員は、総代制をとっているところでも、全組合員が直接投票で選挙するわけです。土地改良区においても、総代は選挙を通じて選出するということになっておるわけです。だから、一番民主的で法律的にも指導的な役割り農政上果たしておる協同組合の議決のあり方とか、総会のあり方とか、役員選挙のあり方というものを、逆行させるような改正というものは、慎重に取り扱ってもらいたいと思うのですよ。そう思わぬですか。
  105. 池田俊也

    池田政府委員 この問題は私、非常にむずかしい問題だと思うわけでございますが、戦後農協法ができまして、その後何回かにわたって組合の運営に関する問題について改正が行なわれているわけでございます。その一部につきまして御指摘があったわけでございますが、私どもはやはりいま振り返ってみますと、当時の農協法というのは、非常に言い方が妙でございますが、協同組合原則ということに非常に忠実であった。やや古典的といえるくらいに協同組合原則の形に非常に忠実でございまして、それはそれで非常によかったと思うわけでございます。  その後のいろいろ農協事業の発展なり、あるいは経済情勢の変化ということがありました場合に、制度をそのまま踏襲するということが、かえっていろいろ問題が起きてくる。非常に大きな数の組合になりますと、総会を開いても、なかなか組合員は縁遠くなって出てこない。代理議決を使うという手はございますけれども、これは制度本来の趣旨として決してそう好ましいことではございませんし、やはり組合の運営というものは、一堂に集ってそこでいろいろ議論をしてきめるということが一番好ましいわけでございます。  ところが、大規模な組合ではそれができませんので、それにかわる制度として総代会というものが一応できている。総代会というものは、私は運用のいかんによりましては、これはむしろ組合員の意向というものを非常にうまく代表し得る方法だと思うわけでございます。もちろん、運用のいかんによりましては、非常に一部の意向しか代表しないということもあり得るかと思うわけでございますが、むしろ総代というものを通じまして、その末端の組合員の意向を十分に把握するという方法はいろいろあるわけでございまして、私どももそういう指導はしておるわけでございますが、そういうものを活用いたしますならば、むしろかえって組合員の意向というものを十分に反映できる。  特に、総代ということでございますれば、これはかなり出席をするわけでございますから、常時そういうものに参加をしていれば、おのずから組合の運営についての知識も豊富になるわけでございますから的確な判断ができる、こういうふうに考えるわけでございまして、私は、形式的な制度面の民主主義というものが、必ずしも実際面においてはそのまま組合の運営に反映しないということがございますので、むしろそういう点を補うものとして、今回の改正のようなことを考えたほうが、より組合員の意向を反映できるというふうに実は考えているわけでございます。
  106. 芳賀貢

    芳賀委員 それは、たとえば総代会に権限を与える場合、それじゃ総代会によらないで総会をやる場合の代理権の問題、五人以内の代理権これを改めて一名にするとか、あるいはまた選任の方法を、これは総会における組合員の選挙とか総会外における選挙というふうに改めるとか、この総代会の権限強化とあわせて、いままでとった欠点のある点は同時に直すというなら話はわかるのです。全部いままでのそのままでしょう。ますます混乱するわけじゃないですか。  特に今回の総代の場合、総代は他の総代の代理権を持つということにしてあるんじゃないですか。そういう総代制というものはどこにもないじゃないですか。せっかく組合員五名に一名程度の総代を組合員が選出してある。ところがその総代は、自分の権利を行使する以外に他の総代一名の権限も代理権の名のもとにおいて行使できる。それじゃ、ますますその数が少なくてやれるということだけを考え改正をはかるというわけですね。他に理由のないようなことを考え出しては、農協法改正の中で次々に制度の改悪をはかっていくというのは、どうも解せないですね。まともに農協法に取り組むんじゃなくて、他に何らか別の意図があって、こういうことをやるのであれば話はわかるのですよ。一般の組合員を衆愚にするような、そういう古典以前の時代に農村を逆行しようとする考えが、自民党佐藤内閣にあってこういう改正をするというのならば、またそれなりに目的意識があってやるということになるが、局長の話を聞いていると、何もそういう大きな魂胆とか意図はない。こう直したほうがやりやすいからというだけのことですから、ますます内容が混乱する。大臣どう思いますか。
  107. 長谷川四郎

    長谷川国務大臣 私も、あなたと同じようなことをいろいろ質問して、作成にあたってのいろいろお話を承ったのです。いろいろ疑問があって、芳賀さんがおっしゃるような方法がいいんじゃないか、そうではなくて、前のほうがいいんじゃないかということまでも申し上げてみましたけれども、結局、いろいろな角度から見、それからまたいろいろな点から、他のほうも比較してみるとか聞いてみるとかいろいろやってみて、やはり今後大きくなっていく、農協がいままでのような小さい二百人、百人、五十人というんじゃなくて、何千人というような大きな農協になってくるとなかなか困難だから、やはりそのほうがやりやすくないだろう。といって、一人一人の個人の権利も尊重しないわけにはいかない。反映しなければ相ならぬ。そういう点も十分検討いたしまして、反映しないことはない、やはり反映するんだから、その方法が今後の運営にはいいんじゃないだろうかというようなことも申し上げたわけでございまして、結論として、たいした影響がないんじゃないか、個人そのものに対する影響はない、個人の意思というものを十分尊重もでき得るんだ、こういうことに結論が出まして、現在のような方向になったわけでございます。
  108. 芳賀貢

    芳賀委員 いいですか大臣、国会議員の選挙にしても、市町村長の選挙にしても、あるいはまた農業委員の選挙にしても、これは住民が、必ず選挙執行の時期には、進んで投票所へ行って選挙しているわけですからね。その選挙をやっておる住民がいわゆる正組合員の資格を持っていれば、これは農協の組合員になっておるわけですから、農協の組合員が、国が行なうあらゆる公的選挙に投票しないとか、それに参加していないというのであれば、これは別扱いにするということもあるかもしれぬが、国民の権利として、そういう時期には必ず農村のほうが投票率がいいわけですからね。だから、どうして農協の一番大事な身近な役員選挙をやる場合に、総代会にまかせなければならぬということになるのですか。さあ今度は農協の理事選挙だ、いままでのような者を出したらたいへんだぞということから、私は他の選挙よりも投票率は高いと思うのです。それを、今度は総代会でそういうことはやれる。しかもその総代は出てこない、別の総代に代理権だけを持たせてやるというようなことで、何でもかんでも大型になったからできないとか、農家は忙しいからみんな集まるわけにはいかぬというようなことだけで大事な法の改正をするということは、これは大きな取り返しのつかぬような結果を招くわけですよ。  この間、公明党の委員の皆さんから、特に農協の不正事件の問題等についての質疑がありましたが、それとは別に、最近各地の事例としては、組合員であって自分の農協に対する不信感とか違和感というものが非常に強いということは、これは農林省としてもよくわかっておると思うのですね。いわゆる農協経営者と組合員の間において、仲間としての血のつながりがだんだん薄くなる。それが、やはり一つは、あまりに大型化したというような場合も出るのですね。あるいは地域社会において、何か断層が生じておるというような点とか、いろいろあるわけです。そういう中において、今回のような法律改正をするということは、ますます農協内部における不信感とか違和感というものを助長するような結果が起きないとは限らぬと思うのですよ。安易な農協経営をやる者は、今度は法律改正でこうなったからこうしなければならぬというような印象を、場合によっては組合員に与えて、絶対こうしなければならぬでもないにかかわらず、今度は法律がこうなったから、定款を変更してこうしなければならぬということで押しつければ、組合員はなるほどそうか、それはしかたがないだろうということになるわけですね。これは三十七年の改正のときにもそういう欠陥があらわれておるわけですから、やはり慎重にやってもらいたいと思うのです。  それから、その次にお尋ねしたいのは、今回の法改正には関係ありませんが、最近問題になっておるのは、各都道府県の連合会等において国会議員、特にこれは参議院議員が、連合会の会長の地位を占めたまま議席を持っておるという事例が非常に多いのですよ。これは農協ですから、兼職禁止とかそういうことを法律で規定する必要はないが、この弊害というものは相当大きいと思うのですね。しかもそういう場合には、全部自由民主党所属の参議院議員であって、たとえば、北海道の中央会長とかホクレン会長とか、九州各県は全部連合会長が参議院議員になっておるでしょう。これは法律から見れば何も差しつかえはないが、そういう農協の連合会の会長である者が、その組織を踏み台にして国政に参加する。参加したとたんにその地位を離れるということであれば話がわかるが、ますますそれを踏み台にして、二足のわらじのようなことで行動するということは、これは農協の正常な発展あるいはまた国政の運営の面から見ても、弊害なしといえないと思うのですが、こういう点は大臣、どう考えておりますか。なるたけそういう顔役が地方の連合会長になって、参議院議員になったほうがいいとお考えかどうか。いかがですか。
  109. 長谷川四郎

    長谷川国務大臣 前段のことは、基本的なものは総会で行ない、総会がいろいろの場合に行なえない場合は総代会で行なうんだ、こういうことなんですから、基本はあくまでも総会で、総員の意思の上に立って行なうんだ、こういうことだから、その点は御了承願います。  後段のことは、それがどっちがいいかということでございますけれども、どうも自由民主党の議員がなっておるから、社会党の議員がなっておるからいけないのだという意味ではなくて、やはり参議院の選挙はわれわれの選挙と違って、選挙区域が広いものですから、勢い総代をつとめていたというか、その会長をつとめていた人がこうなるということになれば、そのような結果になるのだと思うのですけれども、どっちがいいか悪いかという点については、ちょっとどうも答弁に困るのですが……。
  110. 芳賀貢

    芳賀委員 別に私は形式論で、この農協法については、法律上兼職禁止すべきであるというような考えは持っていないんですよ。しかし、事例を申し上げると、参議院の森八三一君が以前全国中央会の会長をやっておられた。そうして参議院議員を長年やっておられたわけです。最近になると、だんだん農協が主体となって農政活動を強力に進める場合、農協組織の連合会あるいは中央会の会長として、一定の農政の路線とか戦う目標というのがあるわけだから、その場合には、会長としてあるいは連合会の首脳部として、その実現のために先頭に立って努力するのはあたりまえですね。ところが、そういう重要な地位にある人物が今度は国政に参与しておる。これは自民党だからいいとか社会党だからどうとかというわけじゃないんですよ。たまたまそういう人に限って必ず自民党所属ということになっておるわけです。ところが、自民党の所属議員であれば、やはり党の政策というもの、それから党としての一定の方針というものがあるわけです。その党の農政に対する方針とそれから農協の行なう農政活動というものは、常に合致していけばこれは問題がないんですよ。  ところが、農民運動とか農政活動をやる場合には、やはり時の権力に対して、批判を行なうとかその政策を変えさすということでなければ、農民運動とか農政活動の必要性というのはないんですよ。御用機関とか下請機関みたいになって、先ほど言った農業会議所のようになってしまって、何でも農林省のきめたことを推進する下請機関のようなことになれば、これはもう農民の利益を代表して、問題の解決をはかるという活動ができなくなるわけです。そういうジレンマにおちいって、ついに森八三一君は会長と国会議員をあわせて行なうということはできない、そういうことで会長の地位を去って、いま参議院におって国政に専念しておるわけです。こういう人は良心的なんですよ。自分がやってみた結果、これはやはり大きな矛盾がある、二足のわらじでどこまでもいけば、これは農民の利益を阻害するようなことにもなりかねぬというようなことで、本人が自発的に中央会長をやめますということになったわけですよ。  だから、こういう良心的な人が多ければいいわけだし、また、最初からそのくらいのことは認識して――参議院に当選するまでは、その地位を利用したほうが有利だからいいとしても、その場合には整理して、これは中国との政経分離じゃないが、なかなか両方やるったってそうやれないですよ。やはり経済に専念するか政治に専念するかしなければならぬ。われわれとしては、片一方だけとっても力足らぬと考えておるときですから、こういう点は、法律にないから何とも言えぬとかわからぬなんという問題じゃないのですよ。あり方としては、この連合会の大事な運営等をやる場合には、その会長なり常勤の役員というものは、その任務と政治的な分野との関係をどうすべきかというようなことは、政府として、農林省として明確な指導方針を出すべきじゃないですか。そんなことをやらぬで枝葉末節で、組合員が五千人になったから集まりが悪いからどうするなんということは、これは何も農林省が心配しなくとも、大型化に伴ってその農協が十分配慮して、これを適切に消化しておると思うのですよ。これは農林大臣に聞くのはお気の毒ですから、大和田官房長のほうからでもこの点を伺いたい。
  111. 長谷川四郎

    長谷川国務大臣 これは芳賀さんの御意見でございますけれども、たとえば、公の労働組合の現職にある委員長が国会議員になっているような例もありますし、また、これは公共性の鉄道というか、運輸省におる方々、労働組合から出て運輸省に籍がある方が、市会議員になるとか地方の議員になっておる例もあります。しかし、これらと農協の問題とは違うかもしれませんけれども、そういうふうなものになったから、その使命が果たせないということもないだろうと思いますが、そういう御注意のあった点については、私のほうも十分注意はさせますし、何か他に方法があるならば、それらに対しましてそういうことの避けられる道があるならば、なるべく避けられるような方法をやらせることが最もいい道だとは考えますから、十分その点には考慮をするようにお話し申し上げておきましょう。
  112. 芳賀貢

    芳賀委員 この点は大臣間違わぬようにしてくださいよ。国民はすべて国政に参加する権利というものは平等に持っておるわけですから、元労働組合の組合員であろうと、元政府の官僚であろうと、どなたであろうとその機会を得て国政に参加するということは、これは妨げるものじゃないでしょう。これは憲法の固有の権利ですからね。  ただ、国政に参加した暁、依然として官僚をつとめる、これはつとめられぬことになっておるから、これはやめるわけでしょう。だからそれはいいですよ。しかし、国政に参加してなお、大きな曲がりかどに来ておる農業農業問題を扱う指導者が、それに専念しても力がまだ足らぬというような時期に、むしろそういう地位を温存して、二またのような形で行動しておるということについては、農協本来の姿から見て、農林省として一体どう考えておるかということを私は尋ねておるのですよ。これらの点は非常に重要な問題であるので、農林省に農協に対する指導性があるならば、何らかの適切な発言とか指摘を行なっても差しつかえないじゃないかというふうに言っておるのです。だれが国会議員になっていいとか悪いとかいうことを言っているわけでないですからして、その点は、農林大臣は八期連続当選の優秀な国会議員ですから、間違わぬようにしてもらいたいと思います。  それから最後に、社会党として改正に同意できる改正点についてお尋ねしますが、今回の改正は、組合員の委託を受けて農協が農業のいわゆる委託経営をやることができるというだけの規定の改正ですが、これだけの改正でいいと思っているのですか。七年前には農地信託制度というものを農協法の中に取り入れたけれども、これはあとで実績の資料を出してもらえばわかりますけれども、ほとんどこれは法律改正をやっただけで、何らの見るべき成果というものはあがっていないのですよ。今回の場合には、組合員の委託を受けて農業の経営をやることができる。これは当然農地法との関係も出てくるわけでありますが、どの程度の期待感を持ってこの点を法律改正に出したか。  もう一つは、最近行なわれておるいわゆる請負耕作ですね。こういうような耕作形態のものも、あわせて農協が委託を受けて経営を行なうという、そういう思想も含めて今回の改正案を出しておるかどうか。そういう点を、農政局長並びに農地局長からも詳しく述べてもらいたいが、この改正点だけが、われわれとしてはやや同意できる点です。これは大事ですから、他の同僚委員からも重ねて後に質問があると思いますが、お答え願いたい。
  113. 池田俊也

    池田政府委員 先ほどのことは大臣からお話がございましたが、若干補足して申し上げますと、私ども、国会議員等が農協の役員等になること自体については、先ほどの大臣のお答えのとおりでございますが、農協の指導という点からいたしますと、やはりそういう方は不在にする場合が非常に多いわけでございますから、それに対しましては、当然常勤のしかるべき役員等を置いて、適確に組合の管理運営に当たるというような指導は十分いたしているわけでございます。  それから、次の農協の今回御提案申し上げております経営の受託の問題でございますが、確かに先ほど御指摘のありましたように、農地の信託の制度につきましては、その後必ずしも当初期待しておりましたように実績はあがってないわけでございます。これは農地法問題等ともいろいろからんでいるとは思いますが、やはり農地の信託という制度が、なかなか農民の理解にうまく合わなかった点があるいはあるのではなかろうかという感じもいたしているわけでございます。  今回の経営受託につきましては、当然農地法改正があるわけでございますが、私どもは、こういうものを今後大いに育成をいたしまして、そうしていわゆる協業といいますか集団的生産組織というものとのつながりを密接にして、そういう集団的生産組織というものを育成していく一つの手がかりにしていきたい、こういう感じを持っておるわけでございます。  もちろん、一方では基本法でうたっております自立経営の育成というのが重要な柱でございますけれども、同時に、やはり経営規模の小さい農家が多数あるわけでございますから、そういうような農家を通じまして、農業生産の効率的な活用という点からいきますと、こういうものを極力活用していきたい、こういう感じを持っているわけでございます。従来一部の農協につきましては、作業の全面委託というようなかっこうで、そういうものが現実に行なわれているというような実態もあるわけでございます。私どもは、もう少しそれをかっちりしたかっこうにして育成をしていきたい、こういう考え方を持っているわけでございます。
  114. 中野和仁

    ○中野政府委員 請負耕作との関連でございますが、先生御承知のように、最近請負耕作がずいぶんふえてきております。このままでは、農地法を維持していく上からも非常に問題がございますので、われわれ考えましたのは、ただいまお話がありました農協の受託経営の問題それから農業生産法人の要件を緩和いたしまして、もう少し実情に即するようなやり方で集団的な生産組織の育成ということを考えておりますが、それと同時に、個人の賃貸借関係につきましても実情に即するように改正いたしまして、いまのやみ小作なり請負耕作をできるだけ賃貸借なり、それからただいまの集団的な経営という方向に、一つの秩序の上で発展さす方向に持っていきたいというふうに考えているわけでございます。
  115. 芳賀貢

    芳賀委員 いま予鈴がなっておりますので、あといまの経営委託の点と、それからもう一つ改正点である金融事業に対する組合員外、いわゆる員外みなし利用の問題についてまだ触れていませんので、その点を保留して、きょうはこの程度にしておきます。
  116. 丹羽兵助

    丹羽委員長 本会議散会後再開することとし、これにて休憩いたします。    午後一時五十分休憩      ――――◇―――――    午後三時二十九分開議
  117. 三ツ林弥太郎

    ○三ツ林委員長代理 休憩前に引き続き会議を開きます。  午前の会議に引き続き質疑を続行いたします。芳賀貢君。
  118. 芳賀貢

    芳賀委員 先ほどの農協法改正の点で、組合員の委託を受けて農協が農業の経営を行なうということですが、この内容ですね。これによると、組合員から委託されて、いわゆる農業の経営全般を農協の事業として行なうのか、あるいはまた耕作面だけの委託を受けて事業として行なうのか、そういう点が明確でないので、これはいかがですか。
  119. 池田俊也

    池田政府委員 これは農業経営の委託ということでございまして、単に農作業を委託するだけでなしに、農業経営全般について委託を受ける、こういう考え方でございます。
  120. 芳賀貢

    芳賀委員 それでは組合員の耕作地について、農業生産面の事業だけをするということではなくて、その組合員の持っておる、いわゆる農民としての経営全般を委託を受けて、組合員にかわって行なうということになるわけですね。  そうなると、単に農産物生産をして、その投下した成果に対して一定の費用を受けて事業を継続するということでなくて、組合員にかわって農業経営をやるということになれば、いろいろの条件のもとに置かれた組合員がおるわけですからね。数年間赤字続きで正常な経営ができないというような場合にも、委託があればその経営を引き受けて、そして完全な経営を行なう、あるいは負債の整理も行なう、生産物の販売とか経営に必要な資金の導入も行なうというように、全面的にいわゆる農業経営の委託を受けて事業をやるということになれば、これはいまの農協として一体できるでしょうか。
  121. 池田俊也

    池田政府委員 経営の委託でございまして、単に作業をしてその対価を受け取るというだけではないわけでありますけれども、当然これは、ある農家をとってみますと、たとえば水田をやったりあるいはほかの作目をやったりいろいろな形があるわけでございます。それを全般として引き受けるということでは必ずしもないわけでございまして、たとえば水稲なら水稲につきまして、水稲の種まきから始まりまして収穫をする、あるいは、これは当然組合員との委託契約の内容になるわけでございますけれども、場合によればその販売までやる。そして、それに対して適当な委託料といいますか、受託料の支払いを受ける、こういうかっこうになるというふうに私ども考えているわけでございます。  最終的には、結局どこまで入るかということは、委託契約の内容ということに御理解いただいてよろしかろうと思います。
  122. 芳賀貢

    芳賀委員 これは、局長の説明によると、経営の全面的な委託じゃないのですね。経営の部分的な、たとえば水稲の耕作とか、あるいは酪農部分の乳牛飼育管理とかですね。そうなれば、耕作部分についての委託経営ということになるんじゃないか。経営全般ということになれば、私が言ったとおり、その農家の置かれておる経済状態とか、生産能力の問題とか、あるいは農協と組合員との間において貸借関係等も当然あるわけですから、そういう点を全面的に委託するということになれば、これは農協としてたいへんな業務になるわけです。私の理解としては、組合員の農業生産についての生産活動を、農協が事業分野を広げて、そして場合によっては組合員が農業生産面の仕事を委託してきた場合には、引き受けてやれるというふうにわれわれは理解したわけなんですが、経営全般の委託ということになれば、問題はまた別になると思うのですよ。
  123. 池田俊也

    池田政府委員 これは、当然委託契約の内容の問題でございますけれども、私どもが想定をいたしておりますのは、たとえば水稲なら水稲をとりますと、単に個々ばらばらの農家じゃなくて、ある程度まとまったかっこうで、農家との間で農協との間の委託関係を樹立してもらいまして、いわば、実体的には集団的な生産組織というようなかっこうにするのがいいんではないか、こういう考え方を持っているわけでございます。  そういうことから、たとえばいろいろな農家がありまして、それがばらばらに農協に委託するということでは、委託ということの意味が十分ではございませんので、やはり全体を総合して、集団的な生産体系の一環になるというようなかっこうの委託を私どもとしては指導をいたしたい、こういう考え方があるわけでございます。  それで、いろいろなかっこうがあり得るわけでございますが、一般的にはそういうようなかっこうでいく。そうして農作業を、たとえば水稲なら水稲の農作業は、始まりから終わりまで全部農協が引き受ける。ただ、損益の計算は最終的には委託者、農家に帰属するわけでございまして、農協はそれに対して受託料というような対価を受け取る、こういうようなかっこうが最も普通のかっこうであり、また、一番好ましいかっこうではないかというふうに考えておるわけでございます。
  124. 芳賀貢

    芳賀委員 そうなれば、耕作面の事業の委託ということになるのではないか、どうなんですか。経営ということにならぬじゃないですか。耕作も経営の一部ではあるが、農業の経営、経済全般を含めた委託ということになれば、これはいまの農協としては、当然それを消化する力もないし、国の制度としてそこまで何も持っていく必要はないんじゃないかと思うのですね。経営も人にみなまかせるようであれば、それは農民としての位置が失われたときですからね。  もう一つは、二月の組合員と農協との間においての委託経営契約は、これはもう考えておらぬ。数戸の、いわゆる集団的な委託経営という場合に初めて農協が取り上げるということを目標としておるということになれば、これもまた問題があると思うのです。私は当初、一組合員が農協に対して耕作を委託したいという場合は、農協はそれを受託することができるということかと思っておった。ところが局長の話だと、一戸の農家ではこれはだめだ、数戸の農家が共通の条件のもとに農協に委託の申し出をした場合に、初めて農協は受託して事業をやる、そういう説明ですね。この辺、もう少し詳しく伺いたい。   〔三ツ林委員長代理退席、委員長着席〕
  125. 池田俊也

    池田政府委員 説明のしかたがあまり適切でなかったかと思うわけでございますが、私どもは委託契約の内容は、これは当然委託契約自体は個々の農家と農協との契約になるわけでございます。しかしながら、そういうことも全く意味がないとは思わないのでございますけれども、私どもはやはりこの制度というものは、一応今後の指導方針としては、いわゆる集団的生産組織というものの一つのよりどころにするような方向で運用されるのが、一番好ましいのではなかろうかというふうに考えておるわけでございます。  といいますのは、たとえば、農協が相当大きな機械等を持ちまして、あるいはオペレーター等を置きまして農業経営を引き受けていく場合に、ばらばらの農家では大型の機械の効果というものが出てこないわけでございます。相当耕地がまとまって、そうして相当多数の農家が経営の受託をするというようなかっこうになったときに初めて意味が出てくる。そういうことでございますので、契約は個々でございますけれども、実際の運用としてはなるべくこれは集団的に、必要な場合には委託関係を結ばせるというふうに運用していくのが、一番この制度を生かす道ではないだろうか。もちろん個別にできないわけではございませんけれども、そういうふうな運用をしていくのがいいんではなかろうかというふうに考えておりますので、そういう趣旨で申し上げたわけでございます。  それから、個々の作業の委託とあまり違わないのではないかという点でございますが、これは、私どもとしては経営全般を引き受けて、もう農家には一切あれしないで農協で、農協が持っているのと同じにやるということかといいますと、そこのところは若干違うわけでございまして、最終的の計算は農家に帰属するというわけでございますが、作業委託との違いは、やはり何といいますか、要するに経営の管理といいますか、マネージメントといいますか、そういうものまでこの場合には農協が引き受ける。だから水稲の場合でございますと、たとえば、どういう品種のものを植えつけをして、どういうようなやり方でどうこうするということも一切農協の管理にまかせる、こういうような趣旨で、個々の、たとえば耕起でございますとか、しろかきでございますとか、そういうものを委託するのとは若干違うわけで、そういうようなものとして考えているわけでございます。
  126. 芳賀貢

    芳賀委員 この法案成立すれば、当然信託事業とか共済事業と同じように規程をつくると思うのですね。農協はその規程に基づいて、また定款等にもそれを明記して事業をやるということになると思うのですよ。だから、法律のほうではいま局長の言ったような構想であっても、農協としては組合員から経営の委託があった場合は、それを引き受けてやるというふうに、今度は定款とか規程は明確にするわけですね。  その場合に、たとえば石田さんという組合員が、ぜひ私の農業経営をやってくださいという場合、いや、あなた一人じゃだめですよ、もう何人か仲間ができて、農協として機械化あるいは集団化の規模でやれる条件にならなければこれはできませんと言って断わらなければならぬということになるでしょう。当然そうなると思うのですよ。だから、これは農協がこの事業を行なわないつもりであれば行なわなくてもいいわけです、農協自身が事業としてきめるわけですからね。しかし意欲的に、困難であってもこれは農協の生産活動としてどうしてもやらなければならぬということになれば、相当の困難を克服して農協は取り組むということになるし、そういう農協が多くなければいけないと思うのですが、いまのような説明では、実際の事業を開始することはなかなかできないと思うのですよ。  だから、単に農協法にそううたえばいいとか、農協の委託経営規程にうたえばいいということであれば問題はないですが、実行するということになれば、これはなかなか問題があると思うのですね。これは農地局のほうから、もう少し解明してもらいたいと思うのですよ。
  127. 長谷川四郎

    長谷川国務大臣 いま話を聞いてみて、北海道の感覚でいることと地方とは違うのじゃないかと思う。北海道だと規模が大きいですから、二月そのままでもいい。地方へくると二反歩、三反歩というような経営権を委託することは個人でもできるわけです。協業するのもなかなか容易でないから、ここのところは何軒かまとまったら一町歩になるから、これで委託して経営をやってもらおうじゃないか、こういう場合もある。そういう場合にも使えるんじゃないか。  こういう二つのことがあるわけで、いま御指摘のように、北海道だとまさに一人でそれだけの大規模経営をやっているのですが、地方は――地方というか、内地へきてみると二反歩、三反歩というように経営規模が少し小さいから、そういう場合には、なるべくそういうふうな集団したものになってもらうほうがやりいいんだ、こういう説明だと思うのですよ。
  128. 中野和仁

    ○中野政府委員 ただいまの農林大臣なり農政局長のお話のように、私も考えております。
  129. 芳賀貢

    芳賀委員 これは、北海道の場合にはそれほど必要ないのですよ。専業農家である組合員が、みずから生産に従事しないで、農協に経営委託するなんということはあり得ないのですよ。委託をしてそれによって幾分の分収を受けたとしても、それは専業農家として農業に努力して得た所得よりもふえるはずはないですからね。だから、専業的な農家の場合は、自分が耕作しないで他に経営を委託するとか、耕作を委託するということはあり得ないのですよ。むしろ集団化、共同化の方向に自分も参加して、新しい経営の道を開くということは当然あり得るし、その主体的な役割りを農協あるいは農事組合法人が果たすということは、これは当然なければならぬことなんです。  だから、むしろ大臣の言われたような零細な兼業農家、そして零細な農地を守ってきた年寄りとか婦人は、おそらく農協法からいえば、いまは農民として、正組合員としての資格を完全に具備しておらぬ場合が多いと思うのですね。そうなれば、午前中に私が指摘したように、結局、いま行なわれておる請負耕作的なそういう経営のやり方というものを、合法的に農協法あるいは農地法で制度の中に取り入れるということになるわけですね。それとの関係が非常に強いんじゃないかと思うのですよ。  だから、私が経営全般かどうかということを聞きましたら、耕作上の委託であるということになれば、これは農協に耕作を委託して、土地の所有者あるいは経営者は直接労働する必要がないわけだけれども、しかし、農地というものは生かされて農業生産活用されるということになるわけですから、この辺がどうも理解しがたいので、これは農地法の番人の農地局長のほうから、もう少し詳しく説明してもらいたいと思います。
  130. 中野和仁

    ○中野政府委員 農業経営を委託する場合には、土地は当然農協のほうが使うということになりますから、そこでは何らかの使用収益権というものが農協に移る。農地法の場合には、先生御承知のように、耕作の過程の全部または大部分を主宰している者が耕作者であるということにしておるものですから、この場合は農協が農業経営をやるということで、土地の使用収益権が許可制でもって農協に移るという考え方になるわけでございます。
  131. 芳賀貢

    芳賀委員 そうなると、農地法上からいえば、これは使用収益権の権利の移動ということになるでしょう。農協法改正からいえば、これは経営の委託ということになるわけですからね。法律の趣旨からいえば当然そうなると思うのですよ。  しかし、いま農協法考えておるのは、これは明らかに請負耕作を何とか制度にのせて有機的に動かすという、そういう考えが強いんじゃないかと思うのですね。これは率直に言ってもらいたいと思うのですよ。何もこの点を不明にして、あとに問題を残す必要はないじゃないですか。何らかの形で解決しなければならぬ問題ですからね。いままでのように賃貸借の関係で保有農地を小作に出して、一定の小作料を収受して、土地は所有者が保有するというやり方がだんだん行き詰まっておるわけですから、そういうところに今回の農地法改正のねらいもあるわけですからね。やはり現状においては、全国的にいわゆる請負耕作というものはだんだん実体論として拡大されておるわけですね。これを放任しておくわけにはいかないわけですよ。  だから、これを合法化するにはどうするかということになれば、いまの農協法改正のような形、あるいは農地法の中でこれを改正して位置づけするとか、方法としてはそれ以外にないと思うのですね。そういうことがいけないということを前提に私は質問しておるのでないですから、ただ問題を抽象化して、これは経営全般の委託であるとか、部分的な委託であるとかいうことで濁されては、論議は前に進まないのですよ。
  132. 池田俊也

    池田政府委員 これは、先ほど御説明申し上げましたように、私どもは経営の委託というふうに考えているわけでございますが、実際の考えられる事例としては、やはり規模が比較的零細で、たとえば兼業等を相当やっている農家、それが労力関係等でなかなか適確な農業経営ができない、しかし農地は手放したくない、こういうような事情が、比較的都市の付近等では非常に多いわけでございます。そういうものが、一部やみ小作でございますとか、そういうようなかっこうで行なわれているという事態があるわけで、また、一部は作業委託ということで農協が受託している例もございます。  それで、私どもといたしましては、やはりこういう関係というものはいまの農業の事情、特に都市に比較的近いような農業の事情としては、ある程度そういうふうなものが起こってくる下地というものがあるわけでございますから、   〔委員長退席、安倍委員長代理着席〕 そういうものをきっちりしたかっこうにしまして、そしてそれを、むしろ今後われわれとしては向けるべき方向に向けていくというふうにいたしたい。  構造問題といいますか、これは自立経営農家の育成ということが大事でございますけれども、実際問題としては、やはり兼業農家というものが相当たくさんあって、それは将来もその状態は変わらないわけでございますから、そういう農家を集団して、いわゆる協業といいますか、集団的生産組織といいますか、そういうものにつなげていくというふうにしたい。そのよりどころとして、いま申し上げましたような農協の経営受託という制度を開いて、いままで非常にはっきりしないかっこうで行なわれたものをきっちりしたかっこうにして、的確な内容運営されますようにするということと、それから将来は、そういうふうに集団的生産組織の育成ということに結びつけていくというようなねらいを持って実は考えているわけでございます。
  133. 芳賀貢

    芳賀委員 いまの請負耕作には相当問題があるのです。水田の耕作請負にしても、たとえば十俵の収穫があがるとすれば、これは一俵八千円にして総収益八万円ですから、その場合の分収の問題があるのです。最近の調査の結果からいうと、委託を受けて、いわゆるオペレーター群を編成して耕作をやる受託者の側の十アール当たりの配分が、一万円程度あるいはそれ以内にとどまる。そしてその委託者、土地を保有して自分が耕作しないで請負耕作に出した側が、五万円あるいは四万円の分収を受けておるということですね。だから、小作契約の場合と逆どころじゃないのですよ。不労所得が非常に分収の中で多くて、実際に生産活動をした受託者のほうの収益の分配が過小だというような問題もあるのです。これは、制度的にあるいは行政的に指導もしておらぬし、規制もしないからそういうことになっておるわけですね。だから、今度委託契約によって行なうということになれば、名称はどうなさるかわかりませんが、その収益の分収というのはどういうふうに考えておるのですか。
  134. 池田俊也

    池田政府委員 契約の内容として当然定まる問題でございますけれども、私どもは、やはり定額の委託料といいますか、受託料といいますか、そういうものを委託者が農協に対して支払いをする。たとえば水稲について十アール当たり幾らというような定額の支払いをするというかっこうが、一番いいのではないだろうかという考えを持っているわけでございまして、大体そういうような線で指導等をいたしたい、こういうふうに考えておるわけでございます。
  135. 芳賀貢

    芳賀委員 定額というのは、どっちが定額なんですか。委託者が定額の分収を受けるのか、あるいは実際に経営した側の受託者が生産労力に相当した分収を受けるようにするというわけですか。そうすると、いまの請負耕作のような分収割合でいいというわけですか。   〔安倍委員長代理退席、委員長着席〕
  136. 池田俊也

    池田政府委員 これは、当然農協というものの事業活動の性格の問題だと思うわけでございますけれども、組合員の利益という観点で事業をやるわけでございます。でございますから、農協が経営の受託をいたしました場合には、当然費用がかかるわけでございます。その費用を償うというような観点から定額の受託料を受け取るというようなのが、農協のこの種の事業の目的からいっても一番適切なのではないだろうか。その金額が一体幾らかということは、これはいろいろ条件によって違うと思いますから、一がいに申し上げかねますけれども、そういうような観点からきめるのがいいのじゃないだろうか、こういうように考えているわけでございます。
  137. 芳賀貢

    芳賀委員 一般の組合員はもちろん土地を所有して、正組合員の場合には通年耕作に従事しておるわけですね。そういう組合員の場合には、農業上の収益、所得部分というものは非常に過小なんです。ところが同じ組合員であっても、今度はみずから全然耕作しない、その土地の使用収益、あるいは委託の形で農協にこれを委託して、農協が本人にかわって農業の経営をやった場合の分収は、直接経営に携わった農協はできるだけ小額な取り分にして、労働に従事しない、不労所得者といってもこれは資本家じゃないですが、そういう立場の組合員にできるだけ有利な収益上の分収を与えるということは、これは問題が逆じゃないかと思うのです。  大事な国土であり農地だから、これを国民経済的に活用しなければならぬから、本来は耕作する意思がなければ、それは耕作する意思のある者にその土地の権利を移動させて、そして耕作の意思の強い者が経営規模を拡大して農業の大きな生産をあげるというところに、この農地政策あるいは農業政策のねらいがあると思うのです。そういうことでいけば、いつまでたったも零細所有者というものは農地を手放す気にならぬでしょう。自分が耕作するよりも、耕作しないで土地を所有しておったほうが比較的利益が多いということになれば、これは農地の流動化も何も進まないじゃないですか。流動化に歯どめをかけるために農協法改正をするということになれば、農地法改正目的とこれは全く逆ですか。同じ農林省がそういう別の、異なった政策を同時的に打ち出すというのは問題があると思うのです。そういう特定の組合員の特定の利益だけを守るために、農協というものは存在していないわけですからね。こういうことであれば、これは農協法改正はむしろやるべきでないということになると思うのです。法律だけを強行して通しても何もならぬ。これは大和田官房長、あなたは先輩でしょう。
  138. 大和田啓気

    大和田政府委員 請負耕作あるいは三重県の勝田の構造改善地区でやっておりますように、共同耕作で土地の所有者にどれだけの利益を分配するかということは、日本における共同作業あるいは協業化を考えます場合の一番むずかしい問題の一つだろうと思います。  したがいまして、農政局長が申し上げましたのも、農協のたてまえからいって、一種のサービスだから、農協が極端に多い分け前を要求するということはしないという趣旨でございまして、土地の出資者に対して、その地区の農協の組合員から見て異常に高い利益を与えるような、いわば委託料のきめ方は、私どもはやはり不適当だろうと思います。そこのところは農協のサービス事業であるということと、それからその地域地域における農業経営者の所得ということも、おのずから地場ではわかっておるわけでございますから、著しく不公平のないように、やはり措置すべきであろうというふうに考えます。
  139. 芳賀貢

    芳賀委員 この点は非常に大事だと思うのです。たとえば農地法基本からいっても、いわゆる小作料とか使用収益にしても、これはやはり基本は地代論から出ておるわけですからね。地代論の構想というものは、これは否定したりあるいは軽視すべきでないと思うのです。土地は、みずから耕作する者が所有する場合には優先すべきである。あるいは所有しておらなくても、耕作者のその土地に対する耕作権というものは、何よりも優先的にその尊厳が保れるというところにいま農地法の精神があるわけですから、それを法律が違う、農協法だからそんなものはどうでもいいというわけにはいかぬと思うのですよ。  地代論から出発しているから、たとえば法定小作料にしても、いままでやはり農地法一つ基本の柱として維持されてきているわけですからね。まあ昨年そういう制限を撤廃するようなことが行政的にやられたし、今度の改正では、全くノーズロースみたいに農地法改正もなっておるわけですが、いまの農業の経営委託の考え方というものは、これはやはり農協の社会的使命あるいは全部の組合員に対して共通の平等の利益を与えるという点から見ても問題があると思うのですね。農民でありながら自分で耕作しない、耕作の努力をしないでただ形式的に農地だけを保有していて、それを耕作者に手放す意思もない。これはほんとうは正組合員とはいえないと思うのですよ。  その組合員に対して、農協はサービス事業だから、農協が委託経営をやった場合にも、できるだけぎりぎりに費用を切り詰めて、最大限の農業上の収益というものを委託者である不労土地所有者に対して与えなさい、こういう考え方というのは農協ではできないですよ。農林省がやれと言ったって、われわれ農協の立場ではそういう考えではやらぬということになりますけれども、それでもいいですか。
  140. 池田俊也

    池田政府委員 そういう委託料をどの程度にすべきかという問題は、私、一般論としては、農協の事業の性格からいきまして、さっき申し上げたようなことになると思うわけでございますが、これは、組合がもちろんきめるわけでございます。  ただ、私はこの問題は、委託をいたしました農家と農協だけの観点から見るのははたしていかがなものだろうか、やはりもう少し広い観点から、この問題を取り上げる必要があるんじゃないだろうかという考え方を実はいたしているわけでございます。  といいますのは、そういうようなことである程度集団的な生産体制というものができてくるという下地ができますならば、当然農協としては大型の機械を備え、あるいはオペレーターを置いて、そういう事業に相当正面から取り組むことになる。こういうような基礎ができますと、逐次そういうものが他にも波及をいたしまして、やはり協業を助長するということにつながっていく。これはそういうことを常に期待しているわけではございませんけれども、たとえば農協が委託を受けまして、その作業を再委託をするということはあり得るわけでございます。でございますから、たとえば実際に農業をやっている人たちにその作業をある程度、農協がつくった秩序のもとにおきまして生産の作業委託をするということもあり得るわけなんで、そういうことになれば、やはりそういうものを足がかりにしまして逐次協業が助長されていく。こういうような観点を実は私ども考えているわけでございまして、もちろん個々の農家がいろいろ労働力の不足とか、そういうようなことで、経営を委託に出すということも、これは現実にはそういうことがこの制度の直接のきっかけにはなると思いますけれども、さらにそれをもう少し積極的な意味に実は指導をいたしたいし、またそういうふうに考えておるわけでございます。  そういうような観点から考えますと、単にいま先生がおっしゃいましたような考え方だけでもないんじゃなかろうか、こういう感じを持っているわけでございます。
  141. 芳賀貢

    芳賀委員 私ども考えとしては、たとえば集団化にしても共同化、協業化にしても、それはあくまでも農民である組合員がその活動組織に参加するということが前提にならなければいかぬと思うのですよ。それは、所有しておる農地を経営に提供するということも参加しているということにもなるが、しかし、働く意思があって労働力があれば、共同あるいは協業の事業にみずから参加するというのが当然だと思うのですよ。いまもう農村は極端に労働力が不足しているわけですからね。専業農家の場合にも、自家労働だけでは非常に労力が足らぬが、雇用しようとしてもその供給がないんですからね。  その中で、今度は働かない組合員の仕事まで農協を通じてやってやるなんという余裕は全然ないですからね。実際に農業を経営し、持続しておる組合員の生産活動が維持され、高まるようにするために、農協としては生産活動や営農指導の事業をどうするかということで精一ぱいなわけですね。そうやって余裕、余力があれば、そういう不労組合員のためにも、まあサービスとしてやってやるというそういう順序になるんじゃないですか。これは全く実態を知らぬ考え方なんです。むしろこれは農政局がやったからこういう考えになってしまったんじゃないですか。これは農地局だとか農業に直接関係のあるところで、同じ農林省でも担当されたほうがよかったんじゃないですか。
  142. 池田俊也

    池田政府委員 これは、私ども原則論といたしましては、確かに先生がおっしゃいましたように、個々の農家が、やはり直接協業経営なりあるいはそれに近いようなかっこうで生産に参加をするという形の集団的生産組織というものが好ましいということは、これはもう当然そのとおりだと思うわけでございます。  ただ、現実の問題といたしましては、やはりかなり都市化されたような地域におきましては、必ずしもそういうことを期待できない農家がかなりあるわけでございます。そういうような農家は、やはりそうはいいましても、現在の状況のもとにおきましては、今回農地法改正が提案されているわけでございますけれども、現在の地価の問題等もからみまして、農地を保有したいという傾向が非常に強いわけなんで、そういう条件のもとで、やはり農地というものを最高限度に利用するということも当然これは必要なことでございますから、そういうような利用をはかるというような観点、それから、さっき申し上げましたような私どものような観点をかみ合わせてみますと、やはり現実の事態におきましては、こういう制度というものが非常に意味があるのではないだろうか。農業が非常に専業的に行なわれておりまして、相当規模の大きいような地帯では、あるいは比較的こういう制度が生きる余地は少ないかとも思いですけれども、そういうようなことを考えますと、私どもは非常に意味がある制度であるというふうに考えているわけでございまして、決してこれは農業実態から離れて考えているということではないわけでございます。
  143. 芳賀貢

    芳賀委員 そこで、農協に経営委託をした組合員は、みずから耕作しなくてもいいというような立場になるわけですね。そうでなくて、農協が主体的に農業の経営はやってやるが、その組合員が組合員の家族形成の中で、自己の能力に応じて農業に従事できるという者はおると思うのですよ。そういう人たち活用するということも、これはあわせて考えないといけないと思うのです。  ですから、農林省考えておる集団化とか共同化の方向というのは、働かない土地所有者だけふやして、そうして農業労働者的なものをどこからか集めて、そして純粋な農業労働者としての賃労働をやるような形態を、農協が組織化するというようにもとれるわけですが、そういうことはいまの農村ではできないですよ。この点は、よく現地の実態等も農地局としては、わかるわけですから、横の連絡をとって臨んでもらいたいと思うわけです。  それから次に、農協法にあるところの農事組合法人と経営委託の関係はどう考えておりますか。
  144. 池田俊也

    池田政府委員 関係と仰せられますのは、農事組合法人にも経営の委託ができるようにするという考え方はどうか、こういう御質問かと思うわけでございますが、実は今回の改正案では、そういうのをとっていないわけでございます。  これはまあ農業生産のための農事組合法人でございますから、そういう経営をやるということも実際問題としては考えられるわけでございますけれども、やはり経営の委託を受けるということは、個々の農家との関係等から見ましても相当重要な問題でございまして、経済的と申しますか、経営的な基礎を相当しっかり持った団体でないと、いろいろ問題を生ずるおそれがあるのではなかろうかというようなことを実は考えまして、今回は農業協同組合に限りまして、農事組合法人には一応考えなかった、こういうことでございます。
  145. 芳賀貢

    芳賀委員 これは局長、実体論から見ると逆なんですよ。農業協同組合自身がこの仕事に取りかかるということは非常な困難があるわけですね。また総会等において、この委託経営事業をやるかどうかというような場合に、これは相当論議ができるわけなんです。しかし農事組合法人の場合は、協同体の上に立って農業生産を行なうということそれ自体が目的になっておるわけですから、だからその農事組合法人が、参加した組合員あるいはその提供された農地基礎にして十分な農業経営をやるわけですが、しかし、最近は経営も高度化してきておるし、機械導入も盛んに行なわれておるわけですから、その法人の中にはまだ余力が出てくるわけですね。経営余力あるいは作業余力というものは、農協自身よりもむしろ組合法人のほうがそういう場合に対応しやすいと思うわけですね。だから余力があれば、あるいはその事業を拡大することが、法人としてもある程度の収益を伴うということであれば、その近隣や周辺の委託希望のある者の耕作をその経営の中に取り入れて、いわゆる委託経営の形でやることは可能だと思うのですね。そういう末端の生産組織は今後も拡大され、あるいは組織ができておらぬ地域においても必然的に組織ができて、そして委託経営を望む組合員の要望にも応ずることができる。これは将来にわたってでなくて、過渡的にいまどうしても農地を手放したくない、あるいはまた国の制度から見ても一ぺんに流動化を進めるというきめ手もないわけですからして、過渡的にはそういう形態があっても、将来はやはり協同体の中にみんなが参加して、能力に応じた農業生産活動をやれるような体制に持っていかなければいかぬと思うのですよ。  だから、あくまでも過渡的の有効な措置として、請負耕作とかあるいは経営委託というものを取り上げるわけですからして、もちろん農協も行なうが、農協の区域にある農協の正会員である法人も、農協と同じように行なうことができるというふうに同時的に取り上げたほうがいいと思うのですよ。いま農協だけやって、その次に生産法人をやるというのは間違いで、行なうのであれば、同時的に農協も組合法人もできるというふうにしたほうがいいと思うのですよ。中野さんはそう考えないですか。
  146. 中野和仁

    ○中野政府委員 一昨年から法律をつくるまでに、論議いたしましたときにその問題も出たわけでございますが、農業生産法人あるいは農事組合法人そのものが農業経営をやるわけでございますから、いまのような設例の場合には、むしろそういう農家から農業生産法人なり農事組合法人なりが土地を借りるかあるいは出資を受けまして、それに必要な対価といいますか、小作料を払いまして、法人としての経営をやったほうがいいのではないかというふうにわれわれ割り切りまして、いまのように農協の場合だけ認めるということにしたわけでございます。
  147. 芳賀貢

    芳賀委員 割り切って請負耕作をなくすわけにいかぬでしょう。それを認める形で合法化するということになれば、たとえばそういう生産法人に参加する意思はない、しかし請負耕作でやってもらいたいという土地所有耕作者がたくさんおるわけだから、それを取り入れるということになれば、農事組合法人も農協と同じように――これは性格が同じなんですから、大きいか小さいの差、それから農協は数種の事業の中で今度は農業経営がやれるということに改正されるし、農協の組合員である農事組合法人は、農業生産活動を唯一の目的として農業経営をやっておるわけですから、その経験もあり能力のある法人が委託経営ができないということはないじゃないですか。請負耕作をやることができないというのはおかしいじゃないですか。
  148. 中野和仁

    ○中野政府委員 先ほど農政局長も、委託経営をやる場合には、やはり農協なり何なりの協同体の経営的な基礎がしっかりしておるほうがいいということを申し上げておったようでございますが、農事組合法人の場合は、それ自体が農業経営をやっておるわけでございますから、さっき申し上げましたように、その法人が経営規模を拡大する場合に、そういう請負耕作をやってくれというような人がありますれば、むしろその土地を借りて、あるいは出資を受けて自分の経営としてやったほうが、その法人自体の収益もあがるし、そのほうがいいのではないかというふうにわれわれ考えたわけでございます。
  149. 芳賀貢

    芳賀委員 くどいようですが、そういう委託をしようとする組合員は、農地を法人に出資する意思もないのですよ。そういう一定期間の契約を締結する意思もないわけでしょう。そういう場合には、やはりいまの農協法考えているような、一年きりのこの経営委託契約以外にないということになるじゃないですか。だから、農協法でそう考えておるのであれば、農地法のほうでもその仕事をやるためにできた生産法人があるわけだから、内容がだんだん充実すれば、たとえば、いま五十ヘクタールの農地基礎にして法人が農業経営をやっておるが、しかしさらに――これは今度の改正によっても、組合法人の資格条件を緩和するわけですね。そうなれば、その農事組合法人のいわゆる正組合員である資格者のほかにも、たとえば事業を拡大する場合には、これに従事する労働力を雇用して事業を行なうということが、いままでよりは手広くやれるわけですよ。この改正点から見れば。だから、専業に農業の経営とか生産を行なうことのできる法人が、幸いにして三十七年から農協法の中にできているわけですから、それを活用して、農協もやるし、同時にまた生産法人もやる意思がある場合には当然できるということにすべきじゃないですか。何もこんなことにこだわって議論している必要ないですよ。そういう時間があれば、具体的に実行をどうするかということに頭を悩ませたほうがいいと思うのですね。
  150. 池田俊也

    池田政府委員 ただいま農地局長から、むしろ本来のかっこうの生産法人なり農事組合法人の事業として取り組んだほうがいいという答弁があったわけでございますが、われわれも、本来はそういうのが一番好ましいかっこうだと思うわけでございます。  それで、確かに芳賀先生がおっしゃいましたように、私どもも、農協がこの事業をやるということと同じような意味において、あるいはむしろ実際に農業生産に農事組合法人のほうが全面的にタッチしているんだから、それに当然認めるべきであるという御議論は、実は御議論としてはよくわかるわけでございます。  ただ、私どもが踏み切れませんでしたのは、さっきも申し上げたことでございますけれども、やはり農事組合法人というのはいろいろ形がございまして、相当小規模なものもございます。そういうようなものが、かりに他の農家から経営の委託を受けるということになりますと、これはやはりそういう経営的な、経済的な基盤がどうだろうかということと、それからこの問題は、非常に間違った方向にいきますと、これはさっきお話がございました、やみ小作というようなかっこうにもなりかねない危険を一部は持っているわけでございます。そういうようなことがございますので、この制度を認めました以上は、私どもはこれはきっちり、十分把握のできるように監督も十分やっていきたい。実際には、先ほど申しましたように、組合としては規程等をつくりまして、はっきりした基準でやっていくということになると思いますが、そういうものも私どもとしては十分把握をして、行政庁の十分な監督のもとにこの事業の適正を期する、こういう観点が必要ではないだろうか。  そういう点からいきますと、どうもまだ農事組合法人にその制度を認めるのは、いささかその点に踏み切れない点がございますので、事業の実施面からいいますと、おっしゃるような御議論は私どもよくわかるわけでございますけれども、今回の改正案ではそこまで踏み切れなかった、こういうことでございます。
  151. 芳賀貢

    芳賀委員 それじゃ実際問題として、いまある生産法人が事業を継続しながら、たとえばことしの事業計画の中で相当経営上の力が余っておるので、ことしは法人の経営のほかに希望があるので、たとえば五ヘクタールなら五ヘクタールの分については、委託を受けて経営をやるというような方針をきめた場合には、これは農地法あるいは農協法の違反になるからやってはいけないということで禁止するのですか。そういう実際問題が生じた場合ですね。
  152. 中野和仁

    ○中野政府委員 今回の農地法改正案でも、委託を受けられるのは農協だけということにいたしまして、いわゆるいま芳賀先生のお話の、請負耕作なりそういう賃貸借契約からはずれたようなものについては許可をしないということにいたしておりますので、形式的には、もちろん農地法違反になるわけでございます。  ただ、そういう場合に、全面的な経営の委託を受けないで、あるいは耕うんとか防除とか一部の作業の委託を受けるということは、農業生産法人としてできると思います。
  153. 芳賀貢

    芳賀委員 そうじゃなくて、必要上それを行なうことにして行なった場合にはどうするのですか。これは法律違反か何かで罰則を適用するとか、その法人に解散命令を出すとか、そこまでやるのですか。法律はそうなっておるが、午前中の未墾地買収規定のように、これは以前から眠らしておるから使わぬという方式でいけば、法律上は認めないことになっておるが、これはことしから眠らすことになるから、規制はしないという場合もあり得るわけですね、行政的な措置として。そこを正直に言ってもらいたいのですよ。
  154. 中野和仁

    ○中野政府委員 非常にむずかしいお話しでございますが、法律的に申し上げますと、許可を受けられない場合でございますから、そういう契約を結びましても、それは無効になるわけでございます。  ただ、実際問題として罰則をかけてどうということではございませんので、事実上そういうことが行なわれるかとも思いますけれども、そういうことは指導としては好ましくないもののですから、私、先ほど申し上げましたように、生産法人がいまの法律でやります場合には、やはり借りるなり出資を受けるなりする方向で指導していったほうがいいんではないかというふうに思います。
  155. 芳賀貢

    芳賀委員 農政局長にお伺いしますが、この改正が行なわれた場合、この事業を行なうということをきめた農協、その農協の組合員の中で、一定の組合員が共同的な事業をやるという方針のもとに法人をつくって、そして主として委託を受けた農業の経営をやることを目的として農業生産活動をやるという動きが出た場合には、これはどう取り扱うのですか。組合員の中には、自分の土地を委託に出して、自分は働かないという者も出てくる。それを法律上認めようとするわけでしょう。また組合員の一部において、それに対応して同じ農協の組合員の数名が協同組織をつくって、機械を導入して、いわゆるオペレーターを編成して、そして主たる仕事はその委託を受けた、端的に言えばこれは請負耕作ですが、これを適法にやろうとする場合、これはどうするのですか。
  156. 池田俊也

    池田政府委員 ちょっとお話しのケースがよく頭に浮かばないわけでございますけれども、先ほどの農事組合法人の問題にあれして申し上げますならば、そういう農事組合法人が他からの委託を受けた農業経営をやりたいという場合に、これは先ほどもお話がありましたように、現行法では一応違法である、こういうことになるわけでございます。  ただ、それならばそういう道が全くないかというと、これは農作業の委託でございますならば、禁ぜられてはいないわけでございますから、農協が一たん経営の委託を受託いたしまして、今度はその農協が作業の委託というかっこうで、そういう農事組合法人に作業を委託するというかっこうはあり得るわけでございます。私どもは、やはり農事組合法人等がそういう点で非常に余力があり、その希望があるということであるならば、当然そういうような農協との結びつきについて少しくふうをしてうまくやれば、本来の目的に合った事業ができるのじゃなかろうか、こういうふうに考えているわけでございます。
  157. 丹羽兵助

    丹羽委員長 芳賀委員に申し上げます。時間もたいへん経過し、残余の質疑者も多数おられますので、結論をまとめられますよう、御協力をお願いいたします。
  158. 芳賀貢

    芳賀委員 これは質疑ですからね。社会党が法案を出しておるのであれば、答弁、説明の中で結論的なことを出せますが、政府提案の法律に対して不明な点を質問しているわけですから、こちらで結論をつけて、これは修正しなさいとか、撤回しなさいなんという結論はなかなかできかねるわけなんですよ。改正点の一番重要な点であり、かつ社会党としても、この点は取り上げて最も妥当な制度化を考えなければならぬという点が、いわゆる経営の委託の問題です。そういう点で、政府の説明は、これは委員長が聞かれてもわからぬと思うのですよ。おそらく委員長が聞かれても、私よりも理解しがたい政府の答弁だと思うわけなんですよ。これは政府提案だから、委員長は賛成しなければならぬという問題じゃないですからね。だから、委員の質疑内容が何を求めてやっておるかということをよく判断されて、みだりに時間だけを気にして、もう時間がないとか、結論を急げなんと言われても、それは委員長らしくないわけですよ。ほかの委員長ならとにかく、丹羽兵助さんが委員長として席に着いている以上、これは委員長の権限だけで時間規制をするわけにはいかぬでしょう。審議を尽くして法律を上げるということは、一番望ましい姿じゃないですか。
  159. 丹羽兵助

    丹羽委員長 重ねて芳賀さんにお願いをするわけなんですが、御協力を願うと申し上げているのです。あとに質疑者がずいぶんありますから、できるだけということをお願い申し上げているのです。
  160. 芳賀貢

    芳賀委員 五月二十五日まで会期がありますから、何もきょうに限ったわけじゃないんです。いま局長の言われたようなことを前もって言ってもらえば、長い時間を費やす必要はないのです。  農協がこれをやる場合は、農協自身が農業経営を行なう体制づくりをしなければならぬでしょう、いわゆる直営方式の形で。トラクター等の必要機械を導入して、それに必要な技術者、それからそれに伴ういわゆる農作業を行なう労働力というものが必要なわけですから、たとえば、大型トラクター一セットについて技術者が何名とか、それから作業員何名というそういう編成で農協が設備をして、農協の直営方式で経営をやるということが一つですね。それからいま農政局長の言った、農協自身が直接行なうのでなくして、農協が、一部の組合員が編成したオペレーターの組織に経営を、いわゆる再委託みたいな形になりますけれども、そういう形で、しかし責任は農協が持って完全な経営ができるというような方式、この二つの方式しかないと思うのですよ。これは法律がきまれば、農林省としては、委託経営を行なう場合にはこういうような形態で行ないなさい、必要な機械、施設等については、政府としてどういうような助成とか助長政策を講じてやるということが約束づけされなければならぬわけでしょう。だれが考えたってその道しかないわけです。だから私が先ほど提起した、そうであれば農事組合法人も、農協と同じようにこれができるということにしておけば、非常に問題は明快に進めやすいと思うわけなんです。大体局長意思もそこにあるように、いまようやく判明しましたが、法律運営というものはそういうものでなければならぬと思うのですね。  それで、最後の問題点は信用事業の問題ですが、これによると、いわゆる単協が金融機関の業務代行ができるという緩和規定と、それから員外者の農協の金融業に対する利用度の拡大の道をはかるということに尽きると思うのです。この点について、具体的な説明をしてもらいたいと思います。
  161. 池田俊也

    池田政府委員 信用事業に関する今回の改正の要点でございますが、一つは、政令で指定いたします金融機関の業務の代理ができる、こういうことでございます。もう一つは、組合員の家族あるいは地方公共団体以外の非営利法人に対する貸し出し、預金担保の貸し付けでございますけれども、これの制限の緩和、それから金融機関あるいは地方公共団体に対する貸し付けの緩和、こういうような点でございます。  後段から申し上げますが、これにつきましては、やはりそれぞれの事項で若干ずつ性格が違うわけでございますけれども、信用事業の実態からいいまして、たとえば、金融機関に対する貸し付けあるいは地方公共団体に対する貸し付け、これは性格的には余裕金の運用というような性格を実は持っているわけでございます。それが現在の法制度のもとでは一般の貸し付けと同じ扱いになっているということで、やはり農協に相当資金の蓄積が出てきました場合に、組合の事業に支障のない範囲内において、それを余裕金運用という趣旨から運用することは、実際問題として必ずしも組合の事業にマイナスではございませんし、むしろ資金の有効利用という点から必要なことであるというふうに考えまして、今回若干の制限緩和をしょう、こういうことでございます。  それから組合員の家族あるいは非営利法人に対する預金担保の貸し付けでございますけれども、これも従来かなりきつい制限があったわけでございますけれども、これは、性格的には預金担保の貸し付けでございますから、預金の払い戻しと同じような性格を持つものであると私ども考えるわけでございます。そういうようなものにつきましては、やはり実態に応じて若干緩和をはかることが、むしろ他の法制度との関連からいいましても適切なものであろう、こういうふうに考えておるわけでございます。  それから、単協におきますいろいろな業務代理の問題でございますが、これは先般総合資金制度というものができまして、相当多額の資金を農家に貸し付けをするという道が開かれたわけでございます。これにつきまして農協連合会等が一々審査をいたすというようなことは、これは実際問題としてなかなか手が回りかねるというような点もございますので、これにつきましても、今回御提案申し上げておるような趣旨の業務の範囲拡大をすることが実際に合うのじゃなかろうか、こういうような観点から御提案を申し上げておるわけでございます。
  162. 芳賀貢

    芳賀委員 農協運営上、いわゆる組合の保有資金、貯金が中心になりますが、この保有資金を効率的に運用するということでいろいろ問題が起きるわけなんです。これは農林省が検査等をやっても、そういう弊害は一部にあるわけなんですよ。特に、農業地域でない都市周辺の農協などは、組合員が農地を宅地等に売却したりして、相当の土地代金を農協に貯金するというような傾向が非常に多いので、最近の単協の貯金の保有高からいうと、農業地域の単協よりも都市地域の単協が、貯金の保有高が非常に多いですね、百十億円とか百億円とか九十億円とか。こういうのは東京とか、東海あるいは太平洋ベルト地帯の、どっちかというと、もう農業中心になっておらない地域の農協の貯金保有が非常に多いわけなんです。  こういう農協は、組合員に対する貸し出しと組合員の貯金の比較から見て、どうしても運営上から見ると逆ざやになるわけですね。それで、保有資金の効率運用に必要以上の努力をするというところに、金融事業上の不正とかいう問題が相次いで生じておるわけですからして、法律改正のねらいがそこにあるわけでもないと思うが、しかし、金融事業の緩和措置をはかるということになれば、どうしてもその弊害につながりやすいわけですからして、そういう弊害防止をあわせて講ずるということが必要になると思うわけです。  特に、金融機関相互のいわゆるコール貸しですが、こういうことをやる農協の経営者が、いかにも経営手腕が卓越しているような、そういう過信におちいりやすいわけですね。こういう点はどう考えておるのですか。もう少しそういう弊害を助長するようなことにしないと、農協の運営がうまくいかないと考えておるのですか、どうですか。
  163. 池田俊也

    池田政府委員 現在、これは地域によってかなり違うわけでございますけれども実態を見てみますと、たとえば信連の員外貸し付けというようなものは、かなりふえているというような実態がございます。金融機関貸し付けというものは、これはさっき申し上げましたように、実質的には余裕金運用というような性格のものだとわれわれは思うわけでございますけれども、そういうふうなものもいまの制度では一応貸し付けられることになっておりますので、そういうようなものを入れますと、実体的に員外利用制限を越えているというような場合が、実はかなりあるわけでございます。私どもは、やはりどうしてもそういうような実態になるということがありますので、この際制度改正を実はお願いをしているわけでございます。  一面、またそういうように緩和をいたしました場合に、本来の組合の業務の運営からいって好ましくないような、むしろそっちのほうにだけ非常に力が入るというようなことでは、これは非常に困るわけでございますので、私どもとしては、やはりそこに一つの基準を設けまして、行き過ぎのないように実は規制をしていきたい、こういう考え方を持っているわけでございます。  これはまだ検討している段階でございますが、たとえば、金融機関に対する貸し付けというようなものでございますならば、貯金の残高の二割以内であるとか、たとえば地方公共団体につきましては、組合員に対する貸し付けの一割以内であるとか、そういうようなはっきりした基準をつくりまして、行き過ぎのないように、実は従来もある程度そういう指導をしているわけでございますが、さらに一段とそういう指導をしたい、こういうふうに考えているわけでございます。
  164. 芳賀貢

    芳賀委員 先般の農林省の発表と思いましたが、全国の貯金、預金の現況の中で、農協関係の貯金の伸び率が鈍化したということが指摘されておるのです。それにもかかわらず、農協内部のいわゆる資金需要は、依然として旺盛であるということがうたわれておるわけです。この点から考えると、やはり員外利用とか員外貸し付けの道を広げるということも、あるいは資金運用上必要かもしれぬが、重点はあくまでも内部需要にこたえるということで、農協資金の活用を十分考えていかないといけないと思うのですね。特に、中金の場合でもそういえると思うのです。  それからもう一つ、以前から問題になっているこの三段階制ですね。農協系統の三段階制を、あるいは金融事業についてはすみやかに二段階制にすべきであるというような議論、これはもう十年前にも当委員会等で行なわれた点なんですが、どうしても農協の資金コントは他の市中銀行等に比べてもコスト高なんですね。いろいろ理由はあると思いますけれども、やはり三段階制というものが、コスト高の一因をなしているのではないかと考えられるわけです。そういう分析は農林省もやっておられると思いますが、こういう点はどうですか。農協が非常に大型化しておるし、自律性が高まっている中において、以前のように、局長の言われた古典的な農協意識で、いつまでも三段階制を堅持しなければならぬ問題でもないと思うのです。これもむずかしい問題ですが、農林省としては現在どういうような判断をされておりますか。
  165. 池田俊也

    池田政府委員 この三段階制といいますか、必ずしも硬直的に三段階制をとる必要はないではないかという御意見は、かなりあるわけでございます。  この問題につきましては、農協の内部でもいろいろ議論がございまして、検討も、過去ずっとしてきているわけでございますが、やはり系統の組織というような点から申しますと、いま直ちにこの段階る改めるということは、必ずしも実態に即しないのではないか。むしろ事業の実施面におきまして、事業のそれぞれの種類によりまして、これを硬直的に、必ず三段階を通すということではなしに、ある事業によっては、もう二段階というようなことでもいいわけでございます。むしろそういうような、それぞれの事業の実態に応じて、硬直的でない方式をとるというようにするのが、より実際的なのではないだろうか、こういう感じを私どもは持っているわけでございます。  それからいまの、特に信用事業の場合に、三段階であるがために相当資金コスト等が高くなる、こういう問題でありますが、この点につきましては、従来そういうことがかなりいわれておりました。そういうことを背景にいたしまして、農協の中でもいろいろ努力をして、経費の節減等につとめてきたわけでございまして、現状におきましては、この三段階であるために、他の金融機関に比べて非常に資金の原価が高くなっているということは、必ずしもないのではないかというふうに私ども考えているわけでございます。  特に、単協の段階におきます資金コストは、他の金融機関よりかなり安いわけでございます。過去におきましてはかなり高かったこともございますが、現状はかなり安くなってまいりまして、したがいまして、農家が単協から融資を受ける限りにおきましては、むしろ他の金融機関よりもかなり安い資金が借りられるわけであります。農中まで、上まで上がりまして下がってくるということになりますと、若干高くなってまいりますけれども、そういうケースは比較的少ないわけでございます。大部分は単協、一部は信連からということでございますので、そういう点から見てみますと、特にその関係で他の金融機関より高い資金を使っている、こういうことには必ずしもなってないというふうに、私ども考えているわけでございます。
  166. 芳賀貢

    芳賀委員 いまの点は、全国の農協の実態というものは、これは特徴がはっきり出ておるのですよ。ですから、都市地域の農協は資金の保有は非常に多いのですよ。五十億も百億もだぶついておりますね。しかし、その内部の資金需要というものは少ないのです。農業を積極的にやらないわけだから、施設の資金も経営の資金も要らないわけなんですよ。ところが農業地域の場合は、貯金も毎年伸びてはおるが、それ以上に農業の近代化とかあるいは経営の拡大とかを行なわなければならぬわけですからして、貯金の保有が伸びる以上に需要がさらに拡大しておるわけですね。  だから、全国どの農協でも自己資金だけで間に合うというものではないわけです。農業生産拡大の意欲が旺盛である地域の農協は、経営も相当大型化になっておるが、それ以上に資本投下が必要な組合員が多いわけだから、資金需要があるわけですね。そういう場合には、結局中金、信連の、全国から一応上に上がった資金を今度は農協が導入して、組合員が使用するということになるわけですから、実際資金の使用面においては、コスト高ということになるわけなんですよ。その辺をよく理解して議論してもらわぬと、相対的に農協の資金はコストが安いということでは、これは的確な判断にならぬと思うわけです。  委員長、きょうはこの程度にして、次回は、農協事業に対する独禁法上の解釈というものが、今回の農協法改正を妨げている点があるわけですから、委員会に正式に公取の出席を求めて、その際農協法改正の問題について、若干の議論をさせてもらいたいと思います。
  167. 丹羽兵助

    丹羽委員長 實川清之君。
  168. 實川清之

    ○實川委員 農協法改正の問題について質問をいたしたいのですが、すでにもう各委員から相当質問が出尽くしておるようですから、私はごく数点について、重複しないように、しかも、末梢的な事務的なことについて若干お伺いしたいと思います。  最初、実はきょう委員席に配付されました農協の不正事件の書類を拝見しまして、私、非常にびっくりいたしたわけですが、この数字を見ますと、昭和四十二年で四十億というような金額の不正事件があったように書いてございますが、この数字は一体どこから拾ってこられたのか。確実な数字なんですか。
  169. 池田俊也

    池田政府委員 御提出申し上げました数字は、私どもが県庁から報告を受けまして、それを合計した数字でございます。
  170. 實川清之

    ○實川委員 これは、すると刑事事件になっておるものですか。  それで、この内容について若干お伺いしたいのですが、ここにいわれている不正事件の内容なんですが、どのような内容を持った不正事件か。それから不正事件でありますから、当然直接あるいは間接に農協または農民に対して相当な被害を与えていることになるわけだろうと思いますが、一体この不正事件は単協、県連、全国段階のどの辺でこういうような不正事件が最も頻発しておるか。あるいはまた県連全国連の場合ですと、経済連あるいは共済連、中央会と各団体がございますが、そのどの辺でこういうような事件が最も多発しておるか、それをひとつお聞かせ願いたいと思います。
  171. 池田俊也

    池田政府委員 御提出申し上げましたこの資料の事件は、もちろん刑事事件になったものもございます。それから、あるいはまた必ずしも刑事事件とはなりませんでしたが、私どもといいますか、県庁の調査等を通じて発見したものもございます。そういうものを全部合わせまして御提出申し上げたわけでございます。  それから、ここにあげております大部分のものは、実は単協の事件でございます。一部連合会等も含まれているわけでございますが、大部分は単協というふうに御理解願ってよろしかろうと思います。  それから、事件の性格はいろいろあるわけでございますが、一部は横領事件、役職員が横領したというのもございますし、それから背任等の、他に貸しつけをいたしましたようなもので、それが適法に行なわれなかったというようなものもございます。いろいろな内容のものがあるわけでございます。
  172. 實川清之

    ○實川委員 御案内のとおり、最近農協の各種事業、それぞれ数字の上では相当伸びておるわけです。したがって、悪いことをしようと思えば比較的やりやすい条件というものができてきたんじゃないかと思うのですが、こういう問題に対する農林省の検査なり監督なり指導といったようなものは、私の知っておる範囲では、いわゆる検査が中心になって行なわれておると思うのですが、これは一体年どのくらい検査をおやりになっておるか、この点をひとつお聞きしたいと思います。
  173. 池田俊也

    池田政府委員 農協に対する検査でございますが、これは御存じのとおり、都道府県それから農林省、まあ農林省は県段階以上、こういうような分担でやっておるわけでございます。  現在、検査に従事しております職員の数あるいは予算的な制限等がございますので、法律では「毎年一回を常例として」というような表現はございますけれども、実際には、総合農協等について考えてみますと、大体年間四割程度のものを行政庁が検査している。それからなお、ほかに中央会が監査士というものを置きまして監査をやっておるわけでございますが、そういう者が、大体私の記憶では二十数%くらい実施をしておると思います。合わせますと六十数%ぐらいが、年間に検査なり監査なりを実施しているというような状況でございます。
  174. 實川清之

    ○實川委員 私も単協の組合長をやっておりますし、また県連の会長をやったこともありますが、どうも検査を受けてみての印象なんですが、率直に申し上げますと、多少なれ合い的な検査が多いんじゃないか。あるいはまた検査をしましても、そのあとの事後処理と申しましょうか、そういう点がどうも不徹底のような感じがいたします。特に県段階の組合では、私も現在県段階の正式の役員じゃありませんが、はしくれの役員みたいなことをやっておりますが、各連の事業のやり方等を見ましても、非常に問題があるように思うのです。  たとえば、事業推進費といったような名目で相当巨額の金を、予算の上では正式にのせているわけですが、その実際の運用等を見ますと、非常に問題があるように私、考えるのです。これは不正事件ではございませんが、農民の蓄積をむだづかいをしている。  最近農協では、どこでも事務所の改築をやっております。事務所の改築も悪いことじゃないのですが、相当の金がそういうところへ使われるし、あるいは毎年役員なりそういった者の旅行が行なわれる。最初は二、三泊程度近県へ旅行していたのが、だんだん国内で一番遠いところに五、六泊というような形で大名旅行になる。さらに最近では、海外旅行までやるような傾きもぼつぼつ出ています。こういうものが、一体農協事業の上にどの程度貢献するかというと、これはもうほとんど無意味だと私は考えております。いわゆる大名旅行、物見遊山に出かけるわけでございまして、そういう場合に、不正とまでは言い切れないが、蓄積された農民の金が相当湯水のように使われておるのが現況じゃないか、こういうように考えますが、こういう点に対する農林省指導なりあるいは監督と申しますか、そういう点が非常に不徹底だし、あるいはまたあまりやってないんじゃないか。検査をすればそういう問題は相当見つかるはずですが、あまり指摘事項を見ましても出てない、こういうように思いますが、その点についてどうでしょう。
  175. 池田俊也

    池田政府委員 御指摘がありましたような事例につきましては、実は私どもはかなり限られた人員、限られた日数でやるわけでありますから、十分であるということを申し上げる自信はございませんけれども、まあそういう必ずしも適当でないような経費の使い方というようなことについては、かなり指摘をし、また実際その是正をさせているというふうに考えるわけでございます。  ただ、私ども、やはりこの不正事件に関連をいたしまして、ある意味では検査の限界というようなことも感ずる場合があるわけでございますけれども、それはやはり組合に対する検査でございますので、外部的な取引関係等を当たるというようなことはなかなかできないわけでございます。これが初めから計画的に不正行為等をやっておる場合でございますと、外部の出入りの業者等と連絡して、そういう架空の取引をするとかいろいろなことがございますので、そういうものは実はなかなか捕捉できないわけでありまして、警察関係が手を入れまして、そういうことを初めて知るというようなこともかなり実はあるわけでございます。  そういう点では、私どもの検査の限界というようなものを実は感ずるわけでございますが、御指摘のような経費の不適当な使用というものは、実はかなり指摘をしているように思うわけでございます。なお十分でない点があるかと思いますので、その点は、さらにわれわれは努力しなければならないわけでございますが、大体はそんなふうに考えているわけでございます。  それからなお、私ども検査を通じまして感じますことは、やはり一般的に農協の役職員の方、これは大部分は非常にりっぱな仕事をしておられるわけでございますが、一部には、どうもそういう意味の農協の管理の担当者という面の自覚が足りないのじゃないかと思われるケースがかなりございます。明らかに適当でない貸し付けをするというふうなのが非常にございます。  それから、もう一つ感じますことは、内部組織というのが非常に不完全である。当然預金の受け入れなり貸し付けなりについては、いろいろな段階を経て、相互のチェックシステムというものをつくっておくべきものが、一人でやっているというようなものがかなりございまして、そういう点については非常に痛感しておりますので、従来も指導はしておるわけでございますが、今後ともさらに努力したい、こう考えておるわけでございます。
  176. 實川清之

    ○實川委員 それに関連いたしまして、農協の役員の選び方の問題です。農協では選挙による方法が一つと、それから一つは選任制とでも申しますか、この二つのやり方をとっておるわけですが、私の知っておる範囲では、選任制のやり方を採用してからそれに切りかわったのが非常に多いと思います。全国あるいは県段階の連合会でも、ほとんど選挙の方式で役員を選び出しているという事例は非常に少ないのじゃないかと思うのです。  選任制のやり方ですが、これはやはり現状維持という形です。あるいは役員があまり交代をし過ぎて、経営にマイナスになってくる、こういうような弊害は防げると思いますが、どうも役員人事が停滞をするという反面の弊害もあろうと思います。私は千葉県ですが、千葉県の県連の役員などを見ましても、非常に老齢化をして気力のない老人が組合長になったり、あるいは役員になっておる。特に農協が大型化をしまして、経営が非常に専門的に、あるいは技術的にも高度のものが要求される現段階の農協の責任者としては、必ずしも適当な人が選ばれないうらみがあるわけです。それから、有権者である組合員の意思が選任制ではあまり反映しない、こういううらみがあるわけでございまして、選任制をやめてもとの選挙の方式に返ってはどうか。このほうが、農協としてははつらつたる清新な人事もやれるだろうし、あるいは組合員の意思も十分反映できる。もちろん、選挙による弊害もございますけれども、もうこの辺で選任制は、一応農協が安定した現状ではやめたほうがいいのではないか、こういうぐあいに考えますが、御所見を承っておきたいと思います。
  177. 池田俊也

    池田政府委員 これは、実はそれぞれ一長一短があるわけでございまして、選任制というものを設けました趣旨は、組合の民主的な運営ということも当然でございますけれども、やはり組合の経営について、相当熟達した能力なり経験なりを持っておる人を選ぶというためには、選挙制よりか選任制のほうがいいのじゃないか、こういう観点だったわけでございます。  私どもは、やはり一長一短ございまして、それぞれの組合に応じまして、どういう観点から今後組合の経営者を選ぶかということによりまして、それぞれの最も適切な方式をとるというふうに、いろいろな方式を設けておくのが一番実態に合うのではないか、こういう考え方をしておるわけでございます。
  178. 實川清之

    ○實川委員 それから、単協でも連合会でもあるのですが、連合会の中央会以外の各連合会あるいは単協の場合は、組合長なり連合会長というものを選ぶ場合には、いわゆる理事の互選制をとっておるわけです。ほかの県のことは私はわかりませんが、千葉県なんかの事例を見ますと、最近農協の組合長なりあるいは連合会の会長、専務というような役員の互選にあたって、買収、供応といったような行為が非常にたくさんあります。しかも、単協の組合長でも、一票五万円とか、極端なのは十万円というような事例すらあるわけでございまして、これでは農協本来の姿からいくと、非常にきたない役員の互選が行なわれておるわけです。こういう問題に対して、農林省は何かこれを押えるようなことを考えないか。  一つの方法としましては、中央会の会長、副会長は総会で直接選挙をいたしておりますが、こういうような形で、単協の組合長あるいは専務を選ぶ場合も、総会で直接選挙をやれば、買収といったような形は比較的押え得るのじゃないか。あるいは公職選挙法を準用するとか……。とにかく最近非常によごれてきたように私は思うのです。これは私の経験している狭い範囲のことで、全国的にそうであるとは断定できませんが、多かれ少なかれそういうことがあり得るのじゃないかということは考えられるわけです。この役員互選のやり方について、どうお考えになっておりますか。
  179. 池田俊也

    池田政府委員 非常に実態を御存じの先生からそういうお話でございますので、私どもは必ずしもそういうことが広く行なわれているというふうには、従来理解していなかったわけでございますが、そういう事例があるということを伺いまして、非常に意外に思うわけでございます。  根本は、組合の役員になるような方の自覚の問題でございますし、あるいはそれに関連して、組合員の自覚の問題であろうと思うわけでございます。総会で初めから直接選挙で組合長を選ぶというような方式も考えられるわけではございますけれども、また一面、組合の経営に最も適した人を選ぶというような観点からいって、必ずしも実態に合わない面もあるいはあるのではなかろうかという感じもあるわけでございまして、私どもは十分検討させていただきたいと思いますが、現状におきましては、現在の制度の上に立ってその弊害を除くような努力をすべきではなかろうかというふうに考えているわけでございます。
  180. 實川清之

    ○實川委員 先ほど申し上げました農協の不正事件なんかも、こういう問題と関係がないわけではないと私は思うのです。   〔委員長退席、湊委員長代理着席〕 したがって不正事件をなくす、粛正するというような角度から申しましても、役員の選任についてはもう少しフェアな方法でやれるように、ひとつ今後検討していただきたいと思うのです。  それから、農林省の検討事項の検討結果という書類を見ますと、これは形には出てまいりませんでしたが、兼職禁止の問題が論議になったようです。現在県の中央会長とか、あるいはまた経済連会長、信連会長というような立場の人が、衆議院議員あるいは参議院議員になっておる方が相当おられると思います。私もかつては県連の会長で代議士を兼職をしておったこともございますが、自分の経験から申しましても、あまり国会議員や県会議員のお歴々が、経済団体の長を兼務するということは芳しくないように私は考えています。したがって、これは兼職は禁止すべきだ、こういうぐあいに考えています。これは抵抗があってなかなかむずかしいだろうと思いますが、農林省はどのようにお考えになっていますか。
  181. 池田俊也

    池田政府委員 実は、私どももそういうことについていろいろ検討した経緯があるわけでございます。いろいろな似たような団体がございますが、そういう団体に関する法制度の中で、いまお話しのような兼職を禁止するという規定はないわけでございます。これは、いろいろ想定をいたしますと、おそらく憲法に規定されておりますいろいろな、そういう公職に関する権利というものとの調整で、そういうものを制限することが、はたしてその制度の観点からできるかどうか、こういう問題がどうも基本にあるようでございます。  私どもは、そういうようなことがございますので、いま直ちにこれを法律の中に取り込むのは、いささか問題があるのではなかろうかという感じを持っておるわけでございますけれども、実際の運営の面におきましては、そういうような方は、とかく不在をする場合が多いわけでございますから、そのような場合には、適当な専務理事であるとか、そういうような実質的に組合の経営を担当できるような人をかわりに置くというような点については、従来指導をいたしておるわけでございます。
  182. 實川清之

    ○實川委員 次に、現在各都道府県段階の中央会、連合会の役員共通制の問題についてお伺いをいたしたいのですが、現在役員共通制をとっておる府県はどのくらいありますか。  それから、農林省の立場から見まして、役員共通制はどのような弊害を伴っておるか、こういう点についてひとつお伺いいたします。
  183. 池田俊也

    池田政府委員 共通役員の問題、これは実にむずかしい問題だと私ども考えておるわけでございます。現状でございますが、現状は連合会四十六府県あるわけでございますが、その中で、大体二十六県ほどが何がしかの共通役員制をとっておる。全部共通というのもございますし、あるいは信連、共済連が共通である、あるいは会長は別々であるというように、いろいろな形があるわけでございますが、全部合わせまして二十六県ほどあるわけでございます。  これにつきましては、私ども、実は従来次官通達等で指導方針を示しているわけでございますが、これは端的に申しまして、一長一短であると私ども考えているわけでございます。農協法の本来の趣旨からいたしますと、若干疑問がございます。信用事業、共済事業は他と兼営ができない、あるいは中央会の性格から云々ということがございますので、そういう点からいうと若干疑問がございますけれども、また、これは一面経営の一体性を保つとか、あるいは経費の節減をはかるとか、そういうようなプラスの面も実はございます。  それで、私どもといたしましては、これに対して一がいに、これはいいとか悪いとかいう判定を下すのは当分控えておくほうがいいのではないか。むしろこういうものを実施するような場合におきましては、こういうような点については特に御注意を願いたい。たとえば、信連等で会長の共通役員制をとっておりますような場合には専務理事を置くというようなことで、事業の運営を十分適正にできるような体制を整える、こういう点に実は留意してほしいというようなことで指導を申し上げているわけでございます。
  184. 實川清之

    ○實川委員 共通制は、昭和三十六、七年ころからこういう形がぼつぼつ出てきたと思うのですが、その当初は、農林省は積極的にだめだと否定もされなかったようですが、大体において否定的な態度をとってこられた。しかしそれにもかかわらず、全国的にはだんだんこの共通制をとっておる府県が多くなって、ただいまもお話しのように二十六府県ということになってまいったわけですが、なおこの傾向は今後も続いていくのではないか。場合によると、全部がなるとは限りませんが、もう少し共通制をとる府県が多くなるだろうと思います。  たとえば、共通制をとらないで、しかも全体として非常にうまくやっておるといわれております長野県とかあるいは福岡県ですか、ああいう先進県を見てまいりましたが、ここには、中央会長なりそういったような大先輩がおって、各連の会長なり専務なりは、人的にそういう大先輩の会長とつながりがある。こういうことで統一が保たれ、チームワークもとれておるようですが、そうでない県ですと、いわゆるドングリの背比べと申しますか、中央会、各連間の連携がなかなかうまくとれないし、場合によると対立をするというような形が出てまいりまして、むしろ私は、現状では中央会、各連の会長が分立をしていることのほうが弊害が多いんじゃないか、こういうように感じます。  その反証として、先ほど申し上げたように、各都道府県で、農林省の否定的な態度にもかかわらず、あちこちで実施をした、こういう結果になってあらわれたんだと思うのですが、農林省としましては、いろいろ利点もありましょうし、それから共通制の欠陥と思われるようなものもないわけではないと思いますが、こういう点は消極的な否定から、むしろこれを助長するというと語弊がありますが、できるものについては積極的に指導されたほうが、私はいまの段階では適切なように思います。  特に農協法では、中央会と各連合会の取り扱いを別にしております。中央会が各連を統括をするというような機能を付与されておりますが、中央会が、現実にそういう機能を行ない得る条件というものは実はないわけなんです。したがって、中央会は絵にかいたぼたもちみたいなもので、中央会に与えられた使命なり役割りというものをなかなか果たし得ない。その苦悶の結果が、こういうような共通制という変則的な形を生んだと私は思うのですが、特に、現在農協の場合、単協の規模が拡大をするいまの合併の状況、私はまだ非常に不十分だと考えておりますが、さらにもう一段合併が進行いたしますと、必ずしもいまの県段階の中央会、各連のあり方が、そのままそっくりとは受け取れないように思うのです。それから、県段階の各連の合理化の問題なり、あるいはまた農協の総力を結集して、農協が現在直面いたしておりますいろいろな大きな問題に、あわせ取り組むというような問題についても、いまのままでは団体間のセクト主義がなかなか強くてやれないんではないか。したがって共通制を、まあ奨励はしないまでも、むしろこれを活用すると申しますか、生かしていったほうが、私はいまの段階ではどうもいいように考えております。この辺について、ひとつ農林省でももう少し検討していただきたいと考えております。  それから合併の問題ですが、農林省から出されました資料を見ますと、農協の合併も、昭和三十六年の助成法ができました以後に相当の成果をあげておるように考えますが、ただ合併した規模が、いままでの合併は、大体農協ができた当時は町村が小さい町村で、その後町村合併が行なわれた。いまの農協合併は、大体合併後の町村の行政区画に合わしているという合併が多いようです。しかも現実の農業事情というのは、その程度の組合の規模では十分乗り切れない、もう一段大きな合併というものが必要ではないかと私は考えておるわけですが、今後の合併問題についての農林省の御見解を承りたいと思います。
  185. 池田俊也

    池田政府委員 農協の合併は、かなり進んではまいっておるわけでございますけれども、確かに従来合併をいたしておりません組合の規模というのは、まだ比較的小さいわけでございます。たとえば、五百戸未満というのが半分くらいを占めておる、こういう実態でございますので、私どもはやはりもう一段と合併が進むことが好ましいという考えを持っているわけでございます。   〔湊委員長代理退席、委員長着席〕  ただ、従来合併助成法がございまして促進をしてまいったわけでございますけれども、なおこういうものが残っているということは、地域的にやはりかなり離れている地域で、他との合併がむずかしいとか、あるいはその他なかなか合併しにくいような事情のある組合が残っているというふうに一応考えられるわけでございます。それから、合併をしました組合につきましては、大体八割方が千戸以上の規模になっておるわけでございまして、私どもは、なお今後の情勢によりましては、さらに一段と合併をするということが必要な事態も出てくるかという気もいたしますが、現状におきましては、大体一応の目標を達したのではなかろうかというふうな感じを持っているわけでございます。  ただ、やはり将来、他の経済との関係等で農協の事業も逐次強化をしなければならぬ面がございますので、そういう事態に応じまして、私どもは、やはり合併を推進するように指導はしていきたいという考えを持っているわけでございます。
  186. 實川清之

    ○實川委員 それから財務処理基準令ですが、財務処理基準令ができたのは昭和二十五年だったと思いますけれども、あの当時の農協は、終戦後の社会的なあるいは経済的な混乱の影響を受けておりまして、農協経営の基礎というものはきわめて脆弱であったわけです。特に昭和二十四年ですか、ドッジラインの実施によって、単協が大幅に赤字組合に転落をしたという時期のあとで財務処理基準令をつくられたと思うのですが、その当時の農協の状態といまとでは、格段の差があろうと考えております。  したがって、いまの財務処理基準令は、現状ではやや古くさくて、これを時代向きに改める必要があるのではないか。たとえて申し上げまするならば、貸し付けの限度を自己資金の百分の十五というぐあいに押えておりますが、合併組合なんかでは、たとえば繰り越し欠損金がたくさんあるというような場合になると、自己資金がゼロになって貸し付けができない。しかも、貯金は相当集まってきている。金があって貸せないといったような皮肉な現象もないわけではありませんし、もう少し財務処理基準令を、いまの現状に適合したようにつくりかえる必要があるだろう。この古くさい財務処理基準令がありますために、検査や監査を受けた場合、これを根拠に指摘されるわけですが、実情は守れないという結果になるわけで、守れない基準令をつくっておくより、守れる基準令をつくったほうがいいんじゃないか。この点一つお伺いいたします。  それから、農協では公金の取り扱いが認められているんだろうと思うのですが、実際上ほとんど取り扱いができない。千葉県の場合百五十組合の中で、公金取り扱いをやっているのはわずか三組合です。それで、各単協も扱いたいという気持ちは強いわけですが、これが自治省あたりの考え方関係かどうかよくわかりませんが、とにかく実際上は農協には扱わせない。しかも、役場の金を預かったり、あるいは市町村役場に金を貸したりするというような取引の関係はあるわけですが、公金の扱いだけは事実上行なわれていない。この点について、なぜそういうことになっているか、事情をお伺いいたしたいと思います。
  187. 池田俊也

    池田政府委員 財務処理基準令の問題でございますが、私どもも実はいま御指摘のように、若干新しい事態に応じて内容を再検討する必要があるのではないかという感じを持っているわけでございます。自己資本の基準あるいは貸し付け金の基準等の点につきまして、その後の事態に応じて検討するということで、実は現在いろいろ調査をしているわけでございまして、実態を把握いたしました上で必要な範囲内におきましては改正を検討したい、こういう考えでございます。  それから公金の取り扱いでございますが、これは農協がそういう扱いをするということも当然あり得るわけでございますが、それぞれの町村におきますいろいろな事情等もあると思いますので、私どもといたしましては、実はこれにつきまして統一的な指導方針というものは設けておらないわけでございますが、それぞれの地域の実情に応じまして取り扱うというようなことで考えたらいいのではなかろうかという感じを持っているわけでございます。
  188. 實川清之

    ○實川委員 それでは皆さんに御迷惑をかけますので、きょうの私の質問はこの辺でやめておきます。いずれまた機会があったらいたします。
  189. 丹羽兵助

    丹羽委員長 神田大作君。
  190. 神田大作

    ○神田(大)委員 だいぶ時間もおそくなりましたから、簡単に御質問申し上げたいと思います。  まず第一に大臣に、最近の農協の運営は信用事業が中心となって、それに販売、購買、物を売ったり買ったりというようなことが主体になって、農協法の第一条の目的にあるところの指導事業というような、営農指導事業というようなことがおろそかになっていると思われますが、この辺で、ひとつ農協の本来の使命に立ち返る指導をしなければならぬと思います。農林省としての今後の農協の運営基本方針について、もう考えなければならぬと思うのでありますが、どう思われますかお尋ね申し上げます。
  191. 長谷川四郎

    長谷川国務大臣 農協の誕生、その目的、まさにおっしゃるとおりなことから農協制度というものができたわけでありまして、どうも、御指摘のように、このごろは少し欠陥があるようにも見受けられる点も多々あります。  今後の農協の使命は、ますます高まっていくばかりでなくて、これらとあわせまして、農協はさらに指導的な立場に立たなければならぬ。その指導とは、今後の営農をいかにしていくかという指導的な見地に立って、その立場における指導をしていかなければならない大きな使命があるわけでございますから、今後の農協に対して、ただいま實川さんからもいろいろの点についてお指図がございましたが、私はこれらの問題、たとえば制度の問題、不正金融の問題、あるいは農協の管理の問題、こういうような点について、みずからの体験からのお話も承りましたので、その点に合わせまして、これらの問題に対しては厳重なる態度をもって進めなければならぬ、こういうようにいま考えまして、またあなた方からの御指摘の点については、農協本然の姿に戻った指導に当たるべく、今後これらに向かってさらに一そうの努力を加えていく考えでございます。
  192. 神田大作

    ○神田(大)委員 今度の農協法改正の重大な点は、農業経営の受託をすることができるということでありますが、先ほど言ったように、いまの農協が、大企業のつくったものをトンネル式にただ農民に売り渡す、あるいはまた自分たちのつくったものを消費者に持っていくというようなことが主体であるからして、受託を受けて農業経営をやっていく能力といいますか、そういう力が私は足りないんじゃないかと思います。せっかく法を改正いたしましても、このような大きな新しい仕事を受け入れてやっていける体制にするためには、よほど農林省としても腹を据えて農協の指導にかからなければならないと思いますが、この点について、どうお考えになりますか。
  193. 長谷川四郎

    長谷川国務大臣 先ほどからもいろいろの論議がありましたように、今度のこの問題も、実際に農協が土におりて、みずからの手と足で指導に当たっていかなければならない。したがって、その受託の方法にいたしましても、先ほどからお話がございましたように、これらと真剣に取り組んで、農協の指導的精神に返ってもらわなければなりませんし、また、そうしてこそ初めて農協の将来があるんだ、このように考えます。  でありますから、農林省といたしましては、これらの指導に十分当たれるように農協に向かっての指導を行なってまいる考え方でございます。
  194. 神田大作

    ○神田(大)委員 大臣は忙しいようだから、一応私の質問は、これでいいです。  それでは局長にお尋ねしますが、農業経営の受託をさせるということについて、それではどういう内容で受託経営というようなものをさせるのですか。農協はもちろん営利事業ではありませんから、もうかるだけもうけてやるというわけにはいかぬでしょうが、たとえば、一反歩当たりに対しまして幾らという手数料をもうけるとかなにかしてやっていかなければならぬと思う。この契約内容等についてどのような考えを持っているか、お尋ねします。
  195. 池田俊也

    池田政府委員 この契約は、個々の農家と農協との間の関係でございますので、その間の話によってきめることは当然でございますけれども指導方針といたしましては、やはりこれが適正なかっこうで行なわれる必要がございますので、必要な御指導は申し上げようと思っているわけでございます。  大体の考え方といたしましては、やはり一定の定額の委託料あるいは受託料を、農協が委託者側から受け取るというような形が一番好ましいのではないだろうか。その考え方といたしましては、当然必要な機械とかあるいはオペレーター等をかかえなければなりませんので、そういうものの経費をまかなう、そして必要な経費をカバーするというような額をめどにしてその額をきめるというかっこうが、一番好ましいのではなかろうかというふうに考えているわけでございます。
  196. 神田大作

    ○神田(大)委員 それでは、どういうような基準にするかというようなことについて、具体的に農林省としてはいまお考えになっておるかどうか、お尋ねします。
  197. 池田俊也

    池田政府委員 金額等のことになりますと、これはもちろんいろいろバラエティーがございますので、一律の御指導を申し上げるのがいいのかどうか、実はまだきめかねているわけでございますけれども、従来農協が作業の委託というようなかっこうで、いろいろ水稲等についての業務の委託を受けていることがございますので、そういうようなめどを参考にいたしまして、まあ大体このようなものがいいんじゃないかというようなことで、法律成立いたしました場合には、当然指導通達というものを私どもは出すことを予定しておりますので、そこでできるだけ具体的に御指導を申し上げたい。金額等は、あるいは指導するということにはならないかと思いますが、その場合の契約の形であるとか、あるいは農協がそれを引き受けました場合には、当然特別勘定みたいなものを設けましてその収支を明らかにするというような必要がございますので、そういうようなことについてのやり方等につきましても十分御指導申し上げたい、こういう考えでございます。
  198. 神田大作

    ○神田(大)委員 この農業経営の委託を受ける場合において、組合の多数のうちのある部分がそういう委託をするわけでございますから、農協の経営内容からすると、たとえば損をした場合に、これを一般の組合員に全部かぶせるというわけにはいかぬと思うのです、そういう特別な事業でございますから。その場合に、やはり独立採算制と申しますか、そういう新たな部門を置かなければならぬと思いますが、そういう点については、当局ではどうお考えになっていますか。
  199. 池田俊也

    池田政府委員 おっしゃるとおりだというふうに考えるわけでありまして、やはり特別の独立採算制というような観点からの部門計算をいたしまして、当然その関係から必要な委託料の額をはじき出す、こういうふうにいたしまして、直接関係のない組合員のほうに御迷惑をかけることのないように指導いたしたいと考えております。
  200. 神田大作

    ○神田(大)委員 そういう場合において、いまの農協法でもって、そのような独立採算制の特別な部門を置いて経理をするというようなことは可能であるかどうか。
  201. 池田俊也

    池田政府委員 これは、当然可能であるというふうに私ども考えております。
  202. 神田大作

    ○神田(大)委員 いまの定款等では組合員は平等にして、いわゆる組合の損益はその持ち株によって配分されるわけでありますが、これらの独立採算制をとった場合において、一部門がそういうような独立採算制をとることによって、損益の配分で組合員に甲乙がつくと思いますが、そういうことについての法的疑問はありませんか。
  203. 池田俊也

    池田政府委員 独立採算制ということで部門計算をいたすという考え方でいるわけでございますので、当然そういう委託を受けた場合の必要な経費、それからそれに対して取けるべき委託料が、原則的には収支相バランスするというような観点で、その計算が行なわれるべきであろうというふうに考えておるわけでございまして、その限りにおきましては、特にそういう部門計算において利益を出すということは、本来の農協の性格からいいまして、必ずしも適切ではなかろうというふうに考えますので、そういうことであれば、特に他の組合員とのいろいろな利害関係におきまして、問題を生ずることはないというふうに私ども考えておるわけでございます。
  204. 神田大作

    ○神田(大)委員 このような受託経営をやる場合、農協としては相当経営に対しまして合理化、機械化等をしなければならぬと思いますが、現在の農協は、そのような機械化はされておらないのが大部分でございます。また、そうしなければ実際問題として経営は黒字になっていかないと思いますが、これら機械化に必要な、あるいはまたその他の受託をやる上において必要な農協の施設その他のことにつきまして、農林省としてはこれに対しまして助成をするなり、あるいは何らかの機械化しやすい方途をする考えがあるかどうか。そうすべきであろうと思いますが、その点についてお尋ね申し上げます。
  205. 池田俊也

    池田政府委員 これは、直接この農業経営の受託に関連をいたしまして、そういう補助金を考えているわけではございませんけれども、私ども農林省の中で各種事業がございまして、その中で、いろいろな機械とか施設等に対する助成はなかり大きな金額になる、全体合計いたしますと相当大きな金額になるような事業を実はやっているわけでございます。  それで私どもといたしましては、特に本年度からは第二次の構造改善事業も発足するわけでございまして、これも相当金額が大きくなっておりますので、こういうものを、今後こういう農協の経営の委託というようなことに、直接役立つようなかっこうでむしろ運用していくというふうに実は考えているわけでございます。直接この事業のための助成というものはございませんけれども、そういうようないろいろな補助事業を通じまして、そういうことに役立つように配慮していきたい、こういう考えでございます。
  206. 神田大作

    ○神田(大)委員 農協法改正についての直接のこまかい点はたくさんありますが、時間の関係上割愛いたします。  次に、農協運営の上に非常に関係のある食管問題等について、少しくお尋ねしますが、四月一日に行政管理庁が、食管運営について非常にむだがあると、運賃の問題あるいは保管の問題その他の点においてだいぶ指摘をされておりますが、このような指摘農林省にあったかどうか、指摘された点はどういうことであるか、お尋ね申し上げます。
  207. 大和田啓気

    大和田政府委員 いま食糧庁から人が参っておりませんので、とりあえず私からお答えいたします。  行管から御指摘のような指摘がございまして、その中には十分傾聴に値して、私ども検討して改善をすべき事項もございますし、またものによりましては、なかなか現在の食管の運営からいって問題の点もあるわけでございます。  したがいまして、現在食糧庁において、右の行政管理庁の勧告につきましては検討をして、近く結論を出す予定でございます。
  208. 神田大作

    ○神田(大)委員 新聞等によって見ただけでございますが、あの指摘内容は、われわれが委員会等において、再三喚起を促しておいた事項がだいぶあると思うのです。そういう点について、行管庁から指摘されるまでもなく、食管赤字三千億というような膨大な赤字が出る今日において、このようなことは当然改善さるべきであるにもかかわらず、今日まで何回かの指摘にもかかわらずそのままにしていたということは、私はこれは行政庁の怠慢であると思います。  特に運送等につきましても、日本一の産地である北海道へ、関東方面からわざわざ米を持っていったり、あるいは九州へ一回持っていったやつをまた大阪へ引き返すというような、そういうむだをやっていた。あるいはその他、こまかいことを言いますと長くなりますが、保管料等につきましても、当然節約すべき点が節約されなかった。いろいろ指摘された事項があるようでありますが、それらについて、食糧庁の責任者としてはどうお考えになるかお尋ねします。
  209. 中村健次郎

    ○中村説明員 お答えいたします。  ただいま御指摘のございました点につきましては、食糧庁といたしましても常々留意いたしまして、運送等につきましても、できるだけその運送コストを安くするということで、LP等によりまして最も経済的な運送をするというふうにつとめております。  ただ、全国の消費者に公平な配給をするということも、食糧管理の大事な仕事でございますので、ただ経費の面だけによって運送するということもできない事情にございます。したがいまして、内地からの米を若干北海道へ送る、あるいは北海道の米を、東京だけではなくて名古屋なり大阪なり、場合によりますと九州までも送ってこれを公平に消費してもらう、こういったこともやらざるを得ないということでございますが、できるだけ経費の節約をするように運送をしてまいるようにいたしておる次第でございます。それから、保管料の節約につきましても、できるだけ保管料は安くつくようにということで、最も保管料の単価の高い内地米につきましては、極力政府倉庫のあいている限り、保管料のかからない政府倉庫に優先的に保管をするとか、なお、保管料は大消費地に参りますと高くなりますので、大消費地には必要な数量を送りまして、できるだけ産地の安い保管料のところに置くとか、いろいろなくふうをいたしまして保管料についての節約を考える、こういうふうに運用をいたしております。
  210. 神田大作

    ○神田(大)委員 この経費の節約にも関連をするのですが、わざわざ東京、大阪の大都会へ持ってきて、非常にコストの高いところで精米をやらないで、産地の農協なりあるいは農業倉庫等において精米施設をして、そうして白米にして消費地へ送っていくということを、われわれ前々から主張しておりますが、こういうことにつきましても、わざわざ東京、大阪の消費地でやれば、また今度ぬかは再び農村へ還元しなくちゃならぬ。持ってくる場合においても、ぬかをつけたよけいなものを一緒に運んでくる。これは非常にむだなことであろうと思いますし、また、保管関係から申しましても、産地において保管させるべきが適正である、こう私は考えますが、その点についてどう考えますか。
  211. 中村健次郎

    ○中村説明員 産地で精米をして消費地に持ってくるほうが、経済的ではないかということでございますが、これにつきましては、そういった考え方もございますけれども、何しろ精米にいたしますと、非常に品質が変化しやすくなります。したがいまして、産地で精米にいたしまして、それをある期間産地に置かなければならないということになります。なお、それを運送いたしまして消費地へ持ってきまして消費者に配給するということになりますと、精米にいたしましてから配給するまでの期間が長くなってまいります。そういたしますと、米がいたみましたり味が落ちましたりということで、産地で精米した米というのは、消費者に好まれないという事情がございます。  そういうことで、現在はできるだけ配給に近い場所で精米にして、できるだけおいしく消費者に食べてもらう、こういう方針で、産地の精米というものは極力少なく制限をしてまいっておるわけでございます。
  212. 神田大作

    ○神田(大)委員 それは一つの理屈かもしれないが、配給計画というものが立っておるのでありますから、何もこれを二カ月も三カ月も四カ月も置くというわけじゃない。一つの配給計画に基づいて、たとえば東京周辺あるいは大阪周辺、名古屋周辺等においてはこれは可能なことであります。わざわざぬかを持ってきたり運んだりする必要はないと私は思うので、この点についても、ひとつ前向きで検討をしてもらいたい。そうすることが、やはり農協等においても仕事ができることでありますし、それだけの設備は、もう前にもそういうことはやったことがあるわけでございますからして、何も都会の密集地に持ってくる必要はないんじゃないか、こういうようにわれわれは考えるので、この点については御検討を願いたい、こういうように考えます。  次に、今後保管が長引いて、一年、二年あるいは三年というように古い米が保管される場合になりますと、これが管理につきましては、非常に重大な問題が起きると思う。この間韓国に送った米が、虫が食ったというのでだいぶ問題になったようでありますが、これら板つき米、あるいは虫食い等の古い米に対しまして、政府はどのような対策をお立てになっておられるか、お尋ねします。
  213. 中村健次郎

    ○中村説明員 多量の政府食糧を手持ちいたしております状態になっておりますので、仰せのように、長い期間米を保管しなければならない状況になっております。したがいまして、われわれとしてはできるだけ長い期間保管いたしましても、虫食いなり台つきなり、あるいはカビがついて変質するということがないように、できるだけこれを長く保っていく方法を講じていかなければならないということで、四十三年度におきまして、準低温倉庫、あるいは低温倉庫、あるいは断熱倉庫というふうな、長期の保管に耐える倉庫を生産地に建設してもらいたいということで、農林漁業金融公庫から百二十億の低利、長期の融資をするということで、これで百万トン程度の収容力のものをつくってもらうという助成措置をとっておりますし、なお、四十四年度におきましても七十億の予算を計上して、低温、準低温の倉庫を、さらに五十万トン程度ふやすという措置をとりたいということで考えておるわけでございます。  こういうことによりまして、ある程度長く保管しましても、味も変わらないというふうな形で保管をしていくという方法を講じておりますが、全部の保管米をそういった倉庫に保管するということも困難でございますので、あとのものにつきましては、普通の倉庫に積んであるものにつきまして、極力保管管理に注意をいたしまして、虫食いなり変質なりを起こさないように注意をいたしております。  なお、それにいたしましても、二つゆを越すというようなことになりますと、変質するものはどうしても若干は出てまいるかと思いますが、これらの措置につきましては、その出ぐあいなりそれぞれの実態に応じて、これをどういうふうに処理していくかということは考えてまいりたい、このように考えております。
  214. 神田大作

    ○神田(大)委員 二つゆを越すような場合に、低温倉庫をつくっておくといっても、これは知れたもので、こういうことではとても間に合うわけではないのでありますが、こういう場合に、各農協では、いわゆるはいがえといって、下に積んだ米を上にし、上の米を下にするというようなはいつけがえをしなければならぬが、そういう場合の費用等に対しましては、これは政府はどのように考えておりますか。
  215. 中村健次郎

    ○中村説明員 下の米を上に上げ、上の米を下におろす、これは天地返しと申しておりますが、これは東北地方の軟質米地帯で、つゆになる前にそういったことをやる習慣になっております。これに対する荷役費は政府で支払うということで、それに対する予算的な準備もいたしております。
  216. 神田大作

    ○神田(大)委員 東北ばかりでなしに、古々米になりますと、全国的にこれを行なわなくちゃならぬ。そういう意味合いにおいて、軟質米というふうなことでなしに、あらゆる米においてこのような措置をしなければ、必ず板つき米というものはできるものでありますから、その点についてもどのように考えておるか、お尋ねします。
  217. 中村健次郎

    ○中村説明員 天地返しが主として行なわれておりますのは東北でございますけれども、もちろん、東北以外の地帯におきましても、天地返しでございますとか、あるいははいがえ等の措置を保管上とらなければならぬという状態になったときには、それを指示いたしましてやってもらい、経費は食糧庁のほうで出すようにいたしております。
  218. 神田大作

    ○神田(大)委員 その場合の経費というものは、一体どの程度に見ておるのか。あるいはまた、そういう板つき米が出た場合の責任はだれが負うのか、このことについてお尋ねします。
  219. 中村健次郎

    ○中村説明員 ただいま天地返し、はいがえ等の保管管理上必要な荷役の経費の予算の金額の資料を持ってまいっておりませんので、金額はお答えできないのでございますが、在庫も多くなっておりますので、少なくとも昨年以上の金額を準備いたしておりまして、十分にそれができるような準備をいたしております。
  220. 神田大作

    ○神田(大)委員 責任はどうです。
  221. 中村健次郎

    ○中村説明員 台つきとか変質等が起きましたときの責任でございますが、これは非常にむずかしい問題でございまして、保管業者のほうで十分な注意をしていただきまして、これははいがえなり天地返しなりをしなければ台つきが出ますということで、やろうとするのに、それはやらぬでよろしいというふうなことで出たような場合、これは保管業者に責任がないわけでございますから、当然無責ということで、責任を追及しないということになります。  ただ、保管業者が十分な管理者としての注意をして管理しなかったがために出たというものについては、当然それによる損害の賠償を請求するというふうな契約になっております。
  222. 神田大作

    ○神田(大)委員 今度、マル通に一括輸送を委託しないで、ほかの業者にもこれを請け負わせるという制度を政府はとったといわれておりますが、このようなことはどういう方法でやっておられるか、お尋ねします。
  223. 中村健次郎

    ○中村説明員 四十三年度の途中から、従来日本通運株式会社のみに契約しておりました運送契約を、全国通運と日本通運と食糧庁の三者の契約にいたしまして、貨車運送にかかるものについてと、それから途中からでございますが、大型鋼船で北海道から運ぶものにつきまして、全国通運にもこれを分担してもらうということにいたしておりまして、契約は、三者が一つの契約を結ぶという三者契約の形になっております。  なお、運賃につきましては、四十三年度は暫定的に、従来から使っておりましたプール単価を、両者に同じように適用するということで実施をしてまいりました。四十四年度からの契約は、全国通運と食糧庁、それから日本通運と食糧庁というふうに別々の契約にいたしまして、運賃につきましては、電子計算機を利用いたしまして、それぞれの運送形態に応じた実費の支払いということで支払うというふうに、契約を変えて実行いたしております。
  224. 神田大作

    ○神田(大)委員 日通と全国通運に契約したと言われますが、日通と全国通運との契約の数量割合はどのくらいであるか、お尋ねします。
  225. 中村健次郎

    ○中村説明員 日通と全国通運の運送数量の分担割合でございますが、これは貨車輸送にかかるものについては、その貨物が発送されます駅、発駅につきまして一貫運送にかかる数量の三割を全国通運、七割を日本通運ということにいたしております。
  226. 神田大作

    ○神田(大)委員 この問題については、行政管理庁からも指摘されているように、いままで相当ずさんな計算をされておったようでありますが、私は、このことは質問が長くなりますので保留いたしまして、あとの機会にこの問題をお尋ねしたいと思います。  私は、この前のこの委員会において、前の田中食糧庁次長に対して、ビール麦の検査規格について、すみやかにこれは改定すべきであるということを言っておきましたが、その後ビール麦の検査規格はどのように改定になりましたか、それをお尋ねいたします。
  227. 松元威雄

    ○松元説明員 お答え申し上げます。  ただいま御質問のビール麦の規格改正の件は、かねてからの懸案であったわけでございます。当時答弁申しましたときは、検査規格のうち特に整粒の規格、整粒を判別いたしまするふるいの目につきまして、いろいろ議論があったわけでございまして、それにつきまして、生産団体で三カ年間品質調査をするということで、調査をしている過程であったわけでございます。  その後、いろいろ検討した結果、結論を申し上げますと、本年一月に規格改正をいたしまして、四十四年産麦から適用いたしますように規格改正をいたしました。従来の検査規格は、一等から三等までございましたが、これを一等、二等及び等外上という規格にいたしまして、そのうち等外上につきましては、整粒を規定いたしまするふるいの目につきまして、一般は二五ミリということでございますが、二・二ミリ以上のものというふうにいたしまして、新しい規格を設定いたしました次第でございます。
  228. 神田大作

    ○神田(大)委員 一等、二等については、どのような規格でございますか。
  229. 松元威雄

    ○松元説明員 従来一、二、三等であったわけでございますが、従来の一、二等を合体いたしまして一等とし、従来の三等相当を二等といたした次第でございます。
  230. 神田大作

    ○神田(大)委員 もともとビール麦の規格の網目は従来二・二ミリでもってやっておったのに数年前に食糧庁はこれを二・五ミリに粒を大きくして、そのためにビール麦生産者は大きな損害を受け、だいぶ問題になったわけでありますが、私はそのときに、二・二ミリから二・五ミリに網目を大きくした場合においては、当然価格を上げるべきであるのに、価格は上げないでそのままにして、規格だけを変更したということは農民に大きな損害を与え、あべこべにビール会社に大きな利益を与えたことになるのであって、これをすみやかにもとに戻すべきであるということを主張いたしたのであります。二・二ミリであろうと、従来それでもって十分採算が合っておった。何も農民が不利になる二・五ミリにする必要はなかったのであります。  このことについては、もう再三私が委員会において質問をし、御検討願うようにしておったのでありますけれども、ようやく今度規格改定をして、等外上のみ適用したようでありますが、なぜこの一等、二等についてもそれを適用しないのか、この点についてお尋ねします。
  231. 松元威雄

    ○松元説明員 これは先生十分御承知のとおり、ビール麦の生産は、生産団体需要者側との契約栽培にいたしておりまして、契約栽培に従って栽培をし取引もする、取引条件もきめる、価格条件もきめる、こういうことで行なわれておるわけでございます。  その場合、食糧庁といたしますと、いわば取引の基準になる検査規格を設定することが仕事であるわけでございますが、この検査規格は、何と申しましても両者の取引と申しますか、双方の要望というものを十分勘案いたしまして、合理的な取引の基準となるように設定すべき性質のものであるわけでございます。  ただいま先生御指摘になりましたようなふるいの目の問題でございますが、おっしゃるとおり、以前には二・二ミリであったものを二・五ミリに改正をいたしたわけでございます。そもそも需要者側の立場といたしますと、ビール麦の品質という点からいたしますと、二・五ミリのほうが望ましいという主張をいたしておるわけでございますが、それに対して生産者側といたしましては、いわば生産の条件と申しますか、態様と申しますか、そういうことを考慮しまして、二・二ミリでいいのではないかという主張をいたしておりまして、両者なかなか議論がまとまらなかった次第でございます。  それで前回答弁申し上げましたのは、しからば両者が納得のいくように十分話し合いをしようということで、四十年からそういった懇談の場を設けて検討を進められたわけでございますが、その場合、何ぶん二・五ミリか二・二ミリかというのは、長い間の経緯もございまして早急な結論も出ませんものですから、さしあたり生産者側におきまして品質の調査をいたす場合に、容積重でございますとか、整粒でございますとか、水分でございますとか、そういう点について三カ年間調査をいたしまして、その調査結果によって判断をいたそうということで調査を進めていた次第でございます。その三カ年間の品質調査の結果の過程におきまして、必ずしも絶対的に二・二ミリでなければならぬという明白な結論が、どうも出にくかったというふうに生産団体から聞いておる次第でございます。特に当時は作柄がよかったということもございまして、好天にも恵まれたということもあったのでございましょうが、絶対に二・二ミリでなければならぬという説明が、非常にむずかしいという事情があったわけであります。  そこで、なかなか決定的なきめ手がないわけでございますが、さりながら、一方ビール麦の検査に不合格になったものにつきまして、ビール会社が、いわゆるビール落ちと称して買い入れているという実態がある。この実態は何としても正規の扱いをしなければならぬということで、いま申しました等外上という規格を設けまして、さしあたり二・二ミリ以上のものを規格に正式に取り上げるというふうにいたした次第でございます。
  232. 神田大作

    ○神田(大)委員 聞くところによると、等外上にした二・二ミリの麦は、ビール会社においてはこれをビール麦としては買わない、契約外であるというようなことをいっておったようであります。そうなりますと、これはもともとビール麦としてはなかった。しかし最後になって、それではしかたがないから買ってやろうというような恩を着せて、ビール三社が協定をして値段を下げて、そして農民を痛めつけていままで買っておった。  今度三カ年間の研究によって、二・二ミリを等外上としてビール麦の規格にはしたけれども、会社のほうが買わぬということになると、これはたいへんな問題になると思うが、食糧庁はこれに対してどう考えます。
  233. 松元威雄

    ○松元説明員 従来、ビール麦の契約生産及び買い入れにつきましては、これはたしか農政局のほうから通達も出ておりまして、合理的な契約買い入れをするという指導をいたしているわけでございます。  ただその場合、従来は、ビール麦の規格に合わないために不合格になった。しかしながら、極力国内産の麦をもって原料に充てることが望ましいわけでございますから、それをビール落ちと称して買っておった実態だったわけでございます。それをむしろ今回は、正式にビールの規格に取り上げるということで、従来ビール落ちの扱いであったものが、正式のビール麦の規格に合致するというふうにいたした次第でございますから、より契約買い入れはスムーズにいくというふうに考えている次第でございます。
  234. 神田大作

    ○神田(大)委員 そうすると食糧庁としては、等外上のビール麦はもちろん契約内であるというように、そのようにお考えになっておりますか、お答え願います。
  235. 松元威雄

    ○松元説明員 そのようなつもりで指導してまいる考えでございます。
  236. 神田大作

    ○神田(大)委員 この問題につきましてはいろいろありますが、時間が長くなりますから、私はこれで終わったということじゃなしに――もともと二・二ミリのものをわざわざ二・五ミリに格上げして、価格を一銭も上げない。そしてビール会社が非常な有利な立場に立って、農民を不利な立場におとしいれたこのことは、これはたとえ生産者と業者の協定によってなされたとはいいながら、規格というものは厳然として食糧庁がこれをきめるものでありますから、食糧庁に責任があるわけですから、私はこの問題は全面的には納得できません。一応等外上として二・二ミリを認めたことに対しましては、その努力は多といたします。しかしながら、一、二等の問題を解決しないということに対しましては私は了解しませんから、次の機会においてこの問題をまた御質問したい、こういうふうに考えます。  それでいま一つ、価格の問題について申し上げたいと思いますが、今度ビールが百二十円から百三十円になりまして十円上がったわけでございます。これをいわゆるビール会社のほうで三円とか、小売りと卸が七円というようにその配分をしたようであります。よくわかりませんが、そういうふうにしたように聞いておりますが、それでは一体生産者に対してはどのような観点に立って、ビールの値上げに対しましてこの恩恵を及ぼす気か。配分をどのようにする気か。全然生産者には関係なしに、上がったものは全部小売り業と卸売り業者、製造業者だけで分ける気であるかどうか、お尋ねいたします。
  237. 松元威雄

    ○松元説明員 先ほどお答え申し上げましたとおり、ビール麦は生産者と需要者との契約によって生産、買い入れをいたしている次第でございまして、価格条件もその一環できめられているわけでございます。したがいまして、両者の合意をいたしたものがわれわれは合理的だというふうに考えている次第でございます。
  238. 神田大作

    ○神田(大)委員 あなたたちのそういうのを称して官僚答弁と申すのですよ。いま日本の麦作がどんどん減っておる。本年度においては、大麦あるいは小麦等において約一〇%減っておる。ビール麦もようやく前年並みであろうというように、日本の二毛作あるいは畑作等における麦類が減っておる、総合農政を推進すると口では言いながら。麦の需要を増進させるものの一番の問題点は、やはりビール麦を増産させることです。外国から、とにかく二十四万トンからの麦芽、その他のビール麦を輸入しておるでしょう。この輸入を押えて、内地の麦の増産をさせるというところに総合農政一つの問題点があると思いますが、あなた方のように、せっかくビールが十円上がったが、そういうのが業者と生産者の話し合い――もちろんそれはそうでしょう。そういうことでしょう。そういうことであるが、いまのようなビール麦の価格では、だんだんビール麦の作付が減っていくわけだ。これをふやすために、これを農家が引き合うような価格にしていかなければならぬというふうに当然思うのでありますが、これに対しまして、政府としてはどのような方針でこれをやるかということについて、もっと日本農政の立場に立ってこれを検討すべきだと思う。  これはあなたに言ってもしようがない。これは大臣もいないから、あとでよく聞きたいと思うが、いまのそういう木で鼻をくくったような、そういうような答弁では私はとうてい納得できません。経済局長はいますか。――農林省責任ある人が、いま一回その問題について答弁願います。
  239. 松元威雄

    ○松元説明員 ただいま私の答弁のしかたにつきまして――両者の実態を御説明申し上げたのでございます。もちろん、これは農林省の中でも、生産担当部局の農政局あるいは流通の基準となります検査規格を設定する食糧庁ということで、両者協議しながら、ビール麦の生産あるいは流通の合理化というものに努力をしている次第でございます。  先生御指摘のとおり、ビール麦は、今後ビールの需要はふえるわけでございますから、今後も生産を伸ばさなければならぬということで、昨年策定いたしました農産物の需給の長期見通しでも、ビールの生産はふえるということを期待いたしているわけでございますから、その期待のように生産が伸びるように、各般の面で施策を講じていかなければならぬというふうに考えている次第でございます。
  240. 神田大作

    ○神田(大)委員 これはあとで責任ある大臣が出席のときに、あらためて御質問申し上げることにしますが、このビールの価格等につきましては、いまのようなままでは生産がますます減退する。小麦対比にいたしましても百分の七十四ということでありますが、この根拠等につきましても、私らは大きな疑問を持っておるわけでございます。この百分の七十四というのは一体妥当なものであるかどうか、その点をお尋ねします。
  241. 松元威雄

    ○松元説明員 ただいまビール麦の基準価格のきめ方につきましての御質問でございますが、ビールの基準価格は、当初は普通大麦の価格をベースにしてきめていたわけでございますが、その後三十七年でございましたか、最も安定しているのは小麦であろうということで、小麦の価格を基準にしまして基準価格を設定するという両者の話し合いになったわけでございます。  その場合、三十七年でございますから、その前年の三十六年の小麦価格とビール麦の価格の比率を基準にしてやっているわけでございまして、そういう話し合いで両者の合意が成立してやっているわけでございますから、そういう意味では合理的なものだというふうに考えている次第でございます。
  242. 神田大作

    ○神田(大)委員 やはりこれも型通りの答弁です。しかし、現在においては経済情勢も変わってきておる。小麦というものの需要と、それからビール麦の需要というものはもうたいへんに違っておる。ビールを百二十円としますと、ビール一本つくるための原料は、麦でいまの価格にしてわずか六円です。六円でもって百二十円で売っているわけです。こういうような嗜好品に使用するビール麦と、パンやうどんに使う小麦の比率が、小麦に対し百分の七十四というものは、私はいろいろの観点から言いますと、これは不当である、もっと是正すべきである、こういうように考えます。これは大臣と経済局長等がいたときにあらためて御質問しますが、ただ、この問題はいつもビール三社が、いわゆるビール酒造組合というものをつくって、大きな力でもって、そんなことをいうのだったら外国の安い麦を買ったほうがいいというので、いつでも押しまくられておるのです。この辺で私は抜本的に、日本の麦作をどうするかというふうな観点に立ってこれはお考え願いたい。  私はこれ以上質問をしてもらちもあかぬから、大臣局長を呼んでいただいて、近いうちに質問することを保留いたしまして、私の本日の質問を終わります。
  243. 丹羽兵助

    丹羽委員長 次回は明十六日開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後六時二十一分散会