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1969-03-06 第61回国会 衆議院 農林水産委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十四年三月六日(木曜日)     午前十一時一分開議  出席委員    委員長 丹羽 兵助君    理事 安倍晋太郎君 理事 仮谷 忠男君   理事 白浜 仁吉君 理事 三ツ林弥太郎君    理事 湊  徹郎君 理事 兒玉 末男君    理事 稲富 稜人君       大野 市郎君    金子 岩三君       佐々木秀世君    菅波  茂君       瀬戸山三男君    田澤 吉郎君       中尾 栄一君    中垣 國男君       藤本 孝雄君    松野 幸泰君       伊賀 定盛君    工藤 良平君       佐々栄三郎君    柴田 健治君       芳賀  貢君   米内山義一郎君       永江 一夫君    斎藤  実君       樋上 新一君  出席政府委員         農林政務次官  小沢 辰男君         農林大臣官房長 大和田啓気君         農林省畜産局長 太田 康二君         農林省蚕糸園芸         局長      小暮 光美君         食糧庁次長   田中  勉君         林野庁長官   片山 正英君         水産庁長官   森本  修君  委員外出席者         厚生省薬務局参         事官      下村  孟君         農林省農政局参         事官      田所  萠君         農林省畜産局参         事官      平松甲子雄君         農林水産技術会         議事務局研究参         事官      川井 一之君         水産庁漁政部長 安福 数夫君        専  門  員 松任谷健太郎君     ————————————— 三月六日  委員木村武雄君及び園田直君辞任につき、その  補欠として金子岩三君及び野原正勝君が議長の  指名で委員に選任された。     ————————————— 三月五日  漁業近代化資金助成法案内閣提出第四三号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  農林水産業振興に関する件      ————◇—————
  2. 丹羽兵助

    丹羽委員長 これより会議を開きます。  農林水産業振興に関する件について調査を進めます。  この際、大和田官房長から発言を求められておりますので、これを許します。大和田官房長
  3. 大和田啓気

    大和田政府委員 昨日、資料提出に関する御質問に対しまして私がお答えいたしましたことで、十分私の気持ちを御理解いただけない節がございましたようですので、重ねて申し上げます。  私ども昨日申し上げました真意は、国会御審議の御参考として御要求になりました資料につきましては、折衝中のものその他特別のものを除きまして、できるだけすみやかに資料提出して御審議の御参考に供するつもりでございます。これが私が昨日申し上げましたことの真意でございますので、御了承いただきたいと思います。
  4. 丹羽兵助

    丹羽委員長 引き続き、農林水産業振興に関する件について質疑の申し出がありますので、これを順次許します。佐々栄三郎君。
  5. 佐々栄三郎

    佐々委員 主として水産庁長官の御答弁をお願いしたいと思います。この件につきましては、長官事前詳細事件の内容をお話ししてあるわけですけれども、一応順序として簡単に問題点を申したいと思います。  香川県は番の州の埋め立て工事で、今日までに約百四十万坪の海面が埋め立てられまして、この付近の漁民はその大半の漁場を今日までにすでに失ったわけであります。この埋め立て地には、現在川崎重工やその他の大企業がいま誘致をされておるわけでございます。県はこの第一期工事地帯大型船舶が出入できるようにするため、それと第二期工事をこれから始めるわけですが、そのために、約五十万坪の海面を埋め立てなくちゃなりません。その土砂を採取するために、いま私が問題といたしておりまする海面、これは坂出市与島町の瀬居島地区西漁場といわれるところでありますが、ここのしゅんせつを計画いたしまして、この海域にありますところの第一共同漁業権、これはえむしであります。それから第二共同漁業権、これは建て網でありますが、この権利を持つ六つ漁業協同組合からなっておりまする塩飽漁業協同組合連合会と県との間で漁業権一部変更、つまり一部消滅のことでありますが、それの交渉を行ないまして、正式の補償契約もまだ締結されておらないのに、昨年の十二月からしゅんせつ工事を開始したのでございます。  ところが、塩飽漁業協同組合連合会が県と交渉するにあたりまして、その前提である漁業権一部消滅につき利害関係地区、すなわちこれによって被害を受けますところの漁民同意を得ておりませんでしたために、組合員漁民工事が開始されて初めて漁業権消滅という重大事実を知るに至ったのであります。  そこで漁民側は、問題海域でのしゅんせつ工事を直ちに中止せよ、第二に、県と漁連との間の漁業権消滅交渉を白紙とし、直接被害を受ける漁民との交渉にせよという二つの要求を県に対していたしたのでございます。ところが県は、次の理由をあげてこの漁民申し出を拒否したのであります。どういう理由かと申しますと、単協組合員に匹敵するものは連合会の場合はその単協であり、塩飽漁業協同組合連合会会員六つ単協であるからして、六つ単協同意だけで漁業権得喪変更は可能であり、本件の場合六つ単協の六人の組合長出席同意しているから適法である、被害地区漁民同意は必要でない、こういうような回答をいたして、漁民側要求を拒否したのでございます。県のこの態度に憤激した漁民は、現在海上デモとか漁民大会等、あるいは県庁に押し寄せるというような抗議活動を繰り広げておるというような実情であります。  以上が概要でありますが、これから私、水産庁長官お尋ねをしたいと思います。問題が法律論争的なものになりますので、あらかじめ長官にお願いしておきたいのは、私の質問したことだけに簡潔に答えていただきたい。長官の言わんとするところは、順次述べる機会があるように私、考えておりますので、先走った答弁でない答弁を、一つ一つについて簡潔にしていただきたいと思います。  まず第一にお尋ねいたしたいのは、農林省設置法の第三条にどういうことが規定されておるか、お答えをいただきたいと思います。
  6. 森本修

    森本政府委員 農林省設置法の第三条には、農林省の任務とそれから行政の大まかな範囲を定めておるようでございますが……。
  7. 佐々栄三郎

    佐々委員 ちょっと一行ぐらい読んでください。
  8. 森本修

    森本政府委員 「農林省は、農林畜水産業改良発達及び農山漁家福祉増進を図り、もって国民経済の興隆に寄与することを目的として」云云とあります。
  9. 佐々栄三郎

    佐々委員 要するに、漁民福祉増進をはかるということが、水産庁としての大きな仕事だということをうたってあるわけでございます。したがって、私が以下お尋ねいたしますことにつきまして、単に形式論理をもてあそぶことなく、漁民福祉という立場に立って、いわゆる情理兼ね備えた、日本漁民の親方としての水産庁長官のあたたかい気持ちを持った御答弁を私はお願いいたしたいと思うわけです。  そこで、まずお尋ねをいたしたいことは、水産業協同組合法共同漁業権得喪変更につき、五十条で次のように規定しております。「左の事項は、総組合員の半数以上が出席し、その議決権の三分の二以上の多数による議決を必要とする。」そして四号に、「漁業権又はこれに関する物権の設定、得喪又は変更」こういう規定があるわけです。そこで長官にお伺いしたいのは、これは単協の場合の規定でありますが、ここで三分の二の末端組合員同意を必要とする、こうなっております。これはどういう趣旨でこういう規定が置かれておるかということについてお伺いしたいと思うのです。
  10. 森本修

    森本政府委員 これは、いわゆる単協議決特別事項という規定でございまして、ここに並べてありますところの各種の項目は、それぞれ組合運営としてきわめて重要なものであるという観点から、議決手続に関しては、特別に出席者の三分の二以上の多数決による議決を必要とするということを規定しておるというふうに思っております。
  11. 佐々栄三郎

    佐々委員 それは、どういう理由で三分の二の同意が必要だということですか。なぜ三分の二の同意がなくちゃいかぬということですか。これを聞きたいのです。
  12. 森本修

    森本政府委員 ただいま申し上げましたように、組合運営事項としてはきわめて重要な事柄に属する、そういう理由によりまして、この項目については特別議決事項だというふうに思っております。
  13. 佐々栄三郎

    佐々委員 私はこう思うのです。要するに、組合長単独漁業権消滅というような、組合員の、漁民生活に重大な影響のあるような問題は、末端組合員意見を聞かなくてはならぬ、その承諾を得なくてはならぬということを規定しておると思うのですが、いかがですか、率直にお答えをいただきたい。
  14. 森本修

    森本政府委員 もちろん、この規定にありますように、総組合員過半数出席と、三分の二以上の議決を要するということでございますから、組合員意見を聞かなければいかぬということはもちろんでありますが、その意見の聞き方として特別の、普通の議決原則よりももう少し重い議決の要件による決定を要するのだということを書いております。
  15. 佐々栄三郎

    佐々委員 ずばりとはっきり言ってほしいのですが、要するに、末端組合員を保護する規定じゃありませんか。
  16. 森本修

    森本政府委員 組合運営としてはきわめて重要な事柄に属するので、特別の手続による議決を義務づけておるというふうに申し上げておるわけです。
  17. 佐々栄三郎

    佐々委員 末端組合員生活に関係するから、これを保護するためにこういう規定があるじゃないかという、私から言ったことを長官は認めるか認めないか、長官おっしゃっていただきたいのです。
  18. 森本修

    森本政府委員 ここにこう五つ号を掲げておりますけれども、私が先ほど申し上げましたのは、それぞれ五つ項目が、組合の基本的な運営上の事項に属するということで、こういった手続を考えておるというふうに申し上げたわけであります。  お尋ねが、あるいはこの四号ないし五号について、なぜ他の定款変更なりあるいは組合の解散といったようなことと並べてこの項目の中へ入れておるかということでございますれば、一つは、組合運営としてきわめてこれは重要なことであります。なぜ組合運営として重要なことに属するかということは、組合漁業権得喪なり、あるいは行使規則の制定といったようなことは、組合員全体の漁業なり、ひいては生活の問題にかかってくるといったような配慮から、この項目の中に入れておるというふうに思います。
  19. 佐々栄三郎

    佐々委員 そのくらいのことはもっと早く答弁できると私は思うのです。要するに、これは生活を知らぬ間に奪われないために、漁民の保護のために設けられておる規定なんです。  そこで、私は続いてお尋ねをいたしますが、漁業権単協が持っておる場合、いま言った五十条で、特別決議事項として過半数出席で三分の二の同意を必要とする、そしてそれによって末端組合員生活を守る、こういう趣旨でありますが、いま問題になっております塩飽連合会が持っておる共同漁業権の場合は、末端組合員意思生活権というものはどういうような方法で守れるか。五十条で尊重された末端組合員意思というものは、この連合会のような場合にはどういう形で尊重されるのか、尊重されなくていいのか。尊重されるならば、一体どういう形で尊重されるのかということを聞きたいのです。
  20. 森本修

    森本政府委員 連合会のほうで漁業権を持っております場合には、やはり同じような九十二条で準用いたしますところの五十条の規定ということになってくるわけでございますが、この際におきましては、法律解釈としては、連合会構成員でありますところの組合の三分の二以上の議決によって同様のことが決定をなし得るというふうに私どもは読んでおります。
  21. 佐々栄三郎

    佐々委員 九十二条で五十条を準用する。その場合に五十条の組合員ということばは、つまり組合というふうに読みかえるわけですね。そう解釈するわけですね。そうすると、六つ漁業協同組合がこの連合会構成でありますから、六つ組合総会構成され、過半数出席、三分の二の同意が必要だ、こういうふうに解釈していいのですね。
  22. 森本修

    森本政府委員 そのとおりです。
  23. 佐々栄三郎

    佐々委員 そのときに組合長は、独断的に総会出席をして議決をしていいのかどうかということをお聞きしたい。
  24. 森本修

    森本政府委員 それは、組合長がおよそ漁業協同組合事務を処理いたします際に、いかなる手順によって事務を処理するかということになるかと思います。当該組合におきまして、そういう場合のことを定款規定をしておるという場合もあろうかと思います。組合事務の処理のしかたについて、かようなことはどうするんだという場合があろうかと思います。したがって、規定上の話としては、それに従って組合長行動するということになると思います。  ただ、組合運営あり方としては、もちろんこういった民主的な行動をすべき協同組合でありまから、組合長が事を決するにあたっては、できるだけ組合員なりあるいは理事の意向を聞いて事を処していくというのが、組合の民主的なあり方としては当然ではないか、かように思います。
  25. 佐々栄三郎

    佐々委員 要するに、組合ということばからいえば、これは組合長というのとは違うわけですから、組合長単独意思でやるわけにはいかない。やはり組合ということばがある以上、組合員意思を聞かなければならぬということが条件だと思うのです。  そこで、一体本件の場合に、水産庁香川県の水産課と連絡をとっておるようですが、はたして組合員意思を問うためにどういうような手続をしておるか。組合長単独意思でない、組合意思として確立したものが本件の場合にあったかどうかということですね。これは、あなた方はどういうふうに確認しておられるか。
  26. 森本修

    森本政府委員 今回の事柄は、私どもが聞きますところでは、一回目の話と二回目の話といったようなことで、その間に、当該組合内部でいかなる相談のもとに、組合長がどういう行動をしたかということにつきましては、まだ実は十分事情を確かめていないというところでございます。
  27. 佐々栄三郎

    佐々委員 そういうような手続が行なわれておりません。たとえば、理事会が開かれたかというと、この六単協について理事会は開かれておりません。少なくともこの漁業権消滅させられる与島漁業地区においては、この単協理事会というものは開かれておらないのです。こういうようなことでは、これは合法的とは言えないと私は思うのですが、いかがですか。
  28. 森本修

    森本政府委員 ちょっと先ほど申し上げましたように、何といいますか、県から正式な形で、当該単協がどういう手続をしてやっておるかということについては、十分私どもは確かめておらないわけです。若干風説のようなことは聞いておりますけれども、こういう席上でございますから、特に個別、具体的な問題でありますので、よく確かめた上で、その点はお答えをさしていただきたいというふうに思っております。
  29. 佐々栄三郎

    佐々委員 私の知る限りで申し上げますが、与島漁協におきましては、組合長が六人で構成される総会出席いたしまして同意をいたしました。そうしてあとで、それからしばらくたって村へ帰りまして、理事会を開いて承認を求めたのです。ところが、十三名の理事は、これは賛成したのです。ところが、それらの理事は、与島というところは島が六つあるのですが、よその島の人たちなんですね。よその島の関係のない理事あと事後承諾をしました。そして瀬居島のこの漁場が失なわれる地域理事は二人おるのですが、その二人は、そういう重要な問題については、地元の人にはからなければ賛成するわけにはまいりませんと言ってこれに反対をしたのですよ。こういう事実がある。そういうような点から考えてみまして、私は、事前同意が得られたということには、これはとうてい解釈できないと思うのです。  また、事後承諾という点を水産庁の役人の方はおっしゃるのです。なるほど、十五人の中で二人が反対しただけですから、事後承諾という意見も私はあると思うのです。この問題について、一応組合長が賛成したのだから、県のほうもそれを信用して漁業権消滅したものだ、こういう解釈になるのじゃないかという、いわゆる表見代理理論を展開されたわけです。しかし、権限のない組合長がそういうような賛成をしたからといって、その漁民権利が失なわれるという道理は私はないと思うのです。  特に、民法百十条の表見代理は、これは善意第三者の取引の安全を期するという規定です。この場合の相手方は、だれかというと県です。県は漁民生活を保護するたてまえにあるものです。そういたしますと、県の場合に、表見代理規定が適用される善意第三者とはとうてい言えない。やはり、はたしてそれは組合長個人意思でなくて組合員意思か、漁民意思かどうかということを、県は確かめる義務があると思うのです。そういう意味から、この表見代理理論もここでは適用することができない、こう私は考えておるわけです。どうですか、こういう点について長官はどういうふうに思われるかお聞きしたいと思う。
  30. 森本修

    森本政府委員 一般論ではございませんで、特定組合に起こった特定の事態についてのお尋ねでございます。先ほど申し上げましたように、私どもとしては、そういう実態がどういうふうに進んできたかということについて、正式の話は実は伺っておりませんので、そういう段階であまり申し上げますと、間違いを起こすようなこともあるいはあるのではないかという気がいたします。  そこで、はなはだかってで恐縮でございますけれども、そういった実態をよく調査をいたしました上で、ただいま御質問になりましたようなことについてもお答えをさしていただいたらどうかというふうに思います。
  31. 佐々栄三郎

    佐々委員 長官はそういうことをおっしゃるけれども、この問題はもう早くから水産庁は知っておるのです。それから香川県の水産課長も、あなたのほうの係官と会っていろいろ話もして、そうしてその指導も受けているはずなんですよ。だから、その実態については十分知っておるはずだと思うのです。長官が知らぬだけで、あなたのほうの担当課でも十分承知しておると思うのです。ですから、そういうことを言われると困ると思うのです。この問題は、漁民漁業権というもの、生活をする権利が、自分たちの知らぬ間に剥奪されていいかどうかということを私は尋ねておるので、これは非常に重要な問題ですから、いいかげんな答弁はしないようにしていただきたいと思うのです。しかし、私はまだお尋ねしたいことがあるから、次へ進んでお聞きしたいと思います。  私は、先ほど単協理事会承認をしたらいいかどうかということについて、一応理事会承認したらいいというような、そういう前提に立ってお話をしたのですが、こういうような問題は、理事会権限にあるのかどうかということについて、私は非常に疑問を抱いておるのです。水産庁の方は、理事会同意事後承諾だけれどもあると言われるが、私は、その事後承諾ということも認めないし、それから、理事会そのもので問題が決定されるべき筋合いではないと考えておるのですが、理事会にそういう権限があるというのは、一体どういう規定に基づいて、いかなる理由理事会にこういう重大な問題を決定する権限があるのですか、これをお伺いしたいと思うのです。
  32. 森本修

    森本政府委員 理事会といいますか、当該組合定款に特別の規定がないという場合におきましては、民法一般原則に従うということになるわけでありますから、民法原則によれば、理事会決定をして組合長事務を処理するということになるわけであります。
  33. 佐々栄三郎

    佐々委員 この与島漁協定款を見ましても、漁業権消滅事項理事会に委任するという権限は与えておりません。そうすると一体どうなるかというと、当然これは特別決議事項でありますから、三分の二の組合員、少なくともその漁業権を失わされる当該地域の三分の二の漁民同意が必要だ、私はこう解釈するのです。理事会権限ではない、総会事項だと私は解釈するのです。  水産庁協同組合課で監修しました、あなたのほうが出した「水産業協同組合法の解説」という本の二〇六ページに、こういう四十八条の総会議決事項につき、次のように述べております。「本条の規定する事項は、他の如何なる方法によってもなしえない総会専権事項であり、従って理事会決議又は組合長意思のみによって行ないうる旨を定款規定しても無効である。」こう書いてあります。これは、いわゆる普通の決議事項について書いてあるのですが、特別決議事項でありますから、これはさらにより以上重要な問題ですから、なおさらのこと理事会に委任すべきことではない、こう私は申してよいと思うのです。いかがですか。
  34. 森本修

    森本政府委員 単協がみずから漁業権を持っておる場合におきまして、その得喪をいかなる手続決定するかということになりますと、御引用になりました条文によって、総会組合員の三分の二ということになっておりますが、連合会が持っておりますところの漁業権につきまして意思決定をする場合は、連合会のメンバーの三分の二ということに、先ほどもお答え申し上げましたようになるわけであります。先生がいま言っておられますのは、連合会出席をして単協組合長意思表示をするときに、単協内部でどのような手順を踏んで組合長が出かけていけばいいかということであろうと思いますので、先ほどの五十条というのは、その場合には法律問題としては当てはまらないということを申し上げておるわけであります。
  35. 佐々栄三郎

    佐々委員 私が冒頭に、長官に対して形式論理をもてあそぶのはやめてもらいたいということを申したのは、このために言ったのです。しかし、単協有の場合と連合会有の場合と、そういう区別をする必要が、理由があるのですか。単協有の場合には組合員同意を必要とするが、連合会有の場合は六人の組合長だけでできるという理由がありますか。そのときに出席した一組合与島漁協というのは、その組合長がそこで賛成したら、その与島漁協当該地域漁業権というものは消滅するのです。私は、この実質にやはり注目をしなければいかぬと思う。この実質に注目して、組合長総会出席する場合には、やはりその組合員同意を得べきものだと私は思う。少しも変わりがないのです、漁民の場合は。こちらは単協有でありこちらは連合会有だとしても、末端組合員というのは、その漁業生活をしておるということについては、これは何ら相違はないのです。  それを、単協有の場合には、法律規定がはっきり組合員とあるから、これは組合員同意を得よ、もう一つのほうは会員あるいは組合とあるから、組合員意思は尊重しなくていいという議論にはならぬのです。やはりそのときには、その五十条の規定意思決定を尊重して、組合長がその地域漁民意思を聞くというのが、法律の正しい解釈だと私は思うのです。あなたは少し形式論理をもてあそび過ぎると思う。一番初めに私は、水産庁というものは漁民福祉を念願してやるものだということを確認しましたが、そういう精神でやるならば、単協有の場合と連合会有の場合を、そういう形式論理的にはっきり区別して差別をする理由というものは生じてこない。これはいかがですか。
  36. 森本修

    森本政府委員 法律解釈の問題としては、おことばを返すようでたいへん恐縮ですけれども、私が先ほど申し上げたようなことになると思います。  ただ、現実の組合運営あり方として、そういう場合には組合長はいかなる行動をすべきであるか、また、水産庁としてはどうあるように考えるのかということでありますれば、もちろん、組合員なりあるいは行使権者利害に対して重大な影響を及ぼすことでありますから、何らかの形でそういう人たちとよく御相談をするということは、組合長あり方としては当然あるべき態度ではないかと思いますけれども、先ほど来はこの五十条の解釈問題としてお尋ねでございましたので、解釈としては、そこまではなかなか拡張はし切れないのではないかということを申し上げておるわけでございます。
  37. 佐々栄三郎

    佐々委員 そうしますと、私はもう一つお聞きしたいのですが、あなたは法律の条文を上つらで、と言うと失礼だが、形式的に解釈するとそうなるのだ、こう言われるのですね。六人の組合長出席したからそれでいいのだと言われるのだが、ところが九十二条の準用規定を見ますと、五十条の組合員という文字をいろいろに読みかえておるのですね。一つは、これを会員と読みかえる場合、これはいまあなたの言われた六人でいいのだという議論です。そう読みかえていいのだということは、九十二条二項の「連合会会員に関する事項」のところにあります。それからまたこの会員というのを、会員及び所属員と読みかえるように明記してあるのもあるのです。これは九十二条の三項の「連合会の管理に関する事項」の準用の場合にそう読みかえよと書いてある。それから、この組合員という文字を所属員と読みかえるというような場合がある。やはりその所属員というのは、末端組合員であると私は解釈するのですが、これが九十二条の三項の管理に関する事項なんです。  こういうふうに、九十二条で五十条の組合員という文字を準用する場合に、あなたはこれは会員単協と読んだらいいのだ、こう解釈せられるが、この九十二条の規定の中に所属員と読む場合もあるし、会員と読む場合もあるし、いろいろの場合があるのですね。なぜあなたは会員というのに固執をせられるか。  私は、あなたのほうから出された、先ほど言った水協法の解説をいろいろ読んでみたのです。この中には、法律の中で組合員と読めというふうには書いてないけれども理論的に組合員と読むべきだ、こういうような解説をしておる個所が二カ所あります。一カ所は、単協の倉荷証券に関する規定でございます。それからもう一カ所は、二十四条の専用契約の規定です。これは法律には何とも書いてないけれども会員と読んではいけない、組合員、所属員と読みなさい、そう書いてある。そういたしますと、あなたは、九十二条で五十条を準用する場合に、単協とこれを読め、組合と読め、組合員と読む必要はないのだというようなことが正しい解釈だと言われるが、あなたのほうで書いた本自体が、事と筋合いによっては組合員と読んでもいいのですよと書いてある。  私は、先ほど来からここで述べましたいわゆる組合員生活防衛、生活権に直結する漁業権の喪失というような問題については、当然会員というのも組合員、所属員と読んで差しつかえないと思うのです。それが、つまり漁民福祉を念願しなくちゃならぬ水産庁長官としての法解釈だと私は思う。あなたの解釈は非常に冷たい。いわゆる水産庁長官としてのあたたかみがない。漁民漁業を取られようが、知らぬ間に漁場を喪失しようが、それはしかたがないのだというような非常に突き放したものの考えだと思うのです。もう少しあたたかい解釈を下されるべきだと私は思うのですが、どうですか。
  38. 森本修

    森本政府委員 漁業者が不当に権利を奪われます場合に、どういう態度をとるべきかということは、水産庁としてもよく心得ておかなければならぬことだということはわかっておるのでございますが、直接の法律問題についてのお尋ねでございますから、その点を申し上げますならば、所属員と読みかえることを、事実上といいますか、解釈上しておりますのは、連合会の事業のうちにおきましても、直接末端の所属員が利用することができ、またそれが適当であるといったような関係のものにつきましては、御指摘のございました倉荷証券の関係でありますとか、あるいは専用契約の関係でありますとか、そういうものは読みかえてまいる。それ以外のものについては読みかえることがむずかしいのではないかというふうに思います。  なお、もう少しこの問題を突っ込んで申し上げますならば、あくまでもこれは総会における特別議決規定であるわけです。その場合に、御指摘のケースについて所属員と読みかえるといたしますれば、手続としてはきわめて妙なことになるわけであります。所属員全体を集めたそういう総会機構というものはどこにもないわけでありますから、読みかえるといたしましても、すぐ、はたとそこで手続関係としてはまいってしまうというふうなことがございますから、そういうことをあわせ考えますならば、なかなかそこまでは読み切れないのではないかということを申し上げております。  ただ、おしかりをいただいてはなはだ恐縮ですけれども、何も故意に冷たく解釈をしようというつもりはありませんので、十分先生の御趣旨はよくわかっておるつもりです。
  39. 佐々栄三郎

    佐々委員 組合員解釈して、その総会を開く手続がない、こうおっしゃる。私は、この間もそういうことをおっしゃったので、実は水産庁の本を読んでみました。あります。それは、あなたは知らぬかしらぬが、係員のほうは御承知です。そういう場合には所属員の意思をどういうふうに聞いたらいいかということは、あなたのほうの本の解説に入っております。おっしゃってください。それはできます。
  40. 安福数夫

    ○安福説明員 ちょっと失礼でございますが、こちらのほうで、突然の話でして御質問趣旨がよくわからないのですが、水産庁の出している本のどこかに、いまの連合会漁業権得喪について、所属員の意思を聞けと書いてある、こういう趣旨でございますか。
  41. 佐々栄三郎

    佐々委員 違います。こういうことなんです。たくさんの組合員意思を聞く方法がないじゃないかということを、この前にも長官が言われたから、そういう方法はあるはずです、そのとおりはないのですが、全体の意思を聞かなければならぬときがあるんですから、それはありますと言ったのです。長官は、ないように思うと言われる。あなたはあるというふうにお答えになるだろうと思うのですが、どうですか。私は、それは研究しておるのですがね。
  42. 安福数夫

    ○安福説明員 ただいままでのやりとりの経過は、法律的にどうかという問題と事実関係の問題。事実問題としてそういう方法があるじゃないか、ないのか、こういう御質問であれば、事実問題としては、そういう意見を反映さす、そういうことはあるだろう、こういうことだろうと思うのです。
  43. 佐々栄三郎

    佐々委員 まあ、それはその程度でいいでしょう。本質に関係した問題ではありませんから。ただ、長官がこの前もそういうことを言われたから、私は研究してきたのです。あります。あとでまたお知らせいたしましょう。ほんとうに意思を聞くんならですよ。聞かぬのなら知りませんけれども……。  そこで、いままで論じてきましたのは漁業権の、つまり漁民意思が聞かれておらない。おらぬのに、目をさましたら、自分の家の前の漁場しゅんせつ船が入ってしゅんせつをやっておる。これは一つ相談なかった。これは一体適法かどうか、違法じゃないか、憲法違反じゃないか、私はそう思うのですが、水産庁長官は一体どう考えるのですか。
  44. 森本修

    森本政府委員 まあ事実関係は、先ほど言いましたようによく確かめてみたいと思いますけれども、補償の話がたしか二回あったようにも聞いておる。一回目の場合には、ちゃんとまとまっておるわけでありますから、当然、漁業権を使ってやっておった人はそういう事態をよくわきまえておられるのじゃないか。したがって、一夜明ければというふうなことではあるいはないんじゃないかとは思っておりますけれども、その点は、よく確かめさしていただきたいと思います。  お尋ねのような事態は、現実のあり方としては決してあるべきことではないと私は思います。ただ、法律的な手続としては、先ほど申し上げたようなことでありますから、何回もお答えして恐縮でありますけれども組合内部運営あり方として解決をしていくということが、当面、実際的な処理ではないかというふうに私は思っております。
  45. 佐々栄三郎

    佐々委員 これは一夜明ければと申しましたが、それはことばのあやですけれども、実際上、漁業権喪失について同意を求められなんだのです。知らぬ間に組合長がやってしもうたのですね。それで、おかしいというてぐずぐず長いことしておったのですが、それが爆発したわけなんです。その事実関係は、長官は御承知なかったか知らぬが、あなたのほうの担当官は知っているはずです。相談を受けておらない。  しかし、私が聞かんとするところは、これはあなた方は事実関係と言うが、私は法律関係だと思うのです。そんな自分の生活権を剥奪されるというような事態については、たとえば耕作権と同じく漁業権は物権とみなすとこうある。土地に関する規定を準用する、こういう規定が御承知のとおりあります。たんぼと一緒です。百姓がたんぼしておるその耕作権、それがいつの間にか耕作権を取り上げられるという事態が起こったら、これはどうです。これは違法ですよ。それと同じです。漁業権は物権とみなすわけですからね。これは私は事実問題ではなくて法律問題だと思うのです。そういうような横暴がまかり通ってよいのかどうか、長官はどう思いますか。そういうことがあっていいことかどうか。少なくとも相談をして、事前に納得を得た上で工事に着手すべきでしょう。そういう納得を得ておらないのですね。いかがです。
  46. 森本修

    森本政府委員 組合あり方なり、あるいは工事をする人と漁業権を持っておる人との関係ということになりますと、当然、御指摘のように、十分了解を得た上で話をまとめ、また、工事に着手するのが穏当な措置であろうというふうに私は思います。
  47. 佐々栄三郎

    佐々委員 そうすると、現在、工事停止の要求を県に対して漁民側がしておるのですが、これは停止をするのが当然でしょうね。特に、漁業補償契約書の正式なものがいま調印されておらぬのですよ。そういう正式の補償契約書も調印されぬのに、大きなしゅんせつ船が二はい入って掘っておるのですよ。そういうことは許されるのですか。私は、水産庁長官として、すっきりした考え方で意見を述べてもらいたいと思うのだ。あなたは漁民の側で、あなたが漁民を守らなんだら一体だれが日本の政治の官庁の中で漁民を守るのですか。
  48. 森本修

    森本政府委員 一般論としては、私がただいま申し上げたようなことでございますけれども本件について、一体当事者間にどういうふうな形でものごとが進められ、現在どういうことになっておるかということは、先ほど言いましたように、正式には十分把握をしていないということですから、本件について、いま県がやっておるのはおかしいとか、そういう話については、私、いまちょっと所見を申し上げることを差し控えさしていただきたいと思います。
  49. 佐々栄三郎

    佐々委員 しかし、それは私は、もう長官ともこの問題で話をするし、あなたのところの係官とも私はよく話をしておるし、先ほど言ったとおり、香川県の水産課長もあわてて飛んできて、あなた方の係と話をしておる。それから、刻々と変わって起こってくる向こうの情勢については、電話が入っておるはずなんですよ。おそらく、きょう私がここで質問することも、県のほうでは知っておると思うんですよ。そうしたら、それからもうおそらく二週間たっておると私は思うのです。知らないではこれは済まぬです。あなた方が知らぬと言ってそっぽを向いておる間に、漁場はどんどん破壊されておるんですよ。水産庁長官として、それではあまり無責任だと私は思うのですが、どうですか。
  50. 森本修

    森本政府委員 実は、私のほうの係のほうで、実際にどういうふうな話を伺っておるか、私はその場に立ち会っておりませんから、一部始終確認をしておりませんけれども、私が確かめておるところでは、県のほうからは、一つ法律解釈しして、こういうケースの場合にはどうだろうかしいったような御相談があったようであります。したがって、いま御説明がございました全体の事柄手順がどうなっており、どういう経過をたどっておるかということまでは、私どもの現在の段階では、十分、正式にここで御答弁申し上げるような材料としてつかまえていないということでございます。その点は、ひとつそういうこととして御了解いただきたいと思います。
  51. 佐々栄三郎

    佐々委員 実際漁民が、自分の目の前の漁場に、二台も大型のしゅんせつ船が入って折り返しておるのですよ。それでは、これからえむしもとれないし建て網もできない。もう十年間も魚が寄りつかなくなる。それだけ魚がとれるところ、だったのですが、それをを県が強引にそういうことをやる。警察は警察で、デモをやったというので、首謀者だといって三人も四人も警察に召喚するということをやっている。いろいろなところで圧迫の手を加えてこれを推進しておるのですね。県がこういうことをやり、水産庁水産庁で県の肩を持つようなことをやるので、漁民はほんとうに切歯扼腕しておるのです。直接これによって漁場を失なわれるのは、島の百七十人です。そういうことを考えれば、もっと親身になって、漁民の立場から問題を解決するようにしてもらわなければいかぬと私は思うのです。そういうことをいつまで言ってもしようがないけれども、もうあとわずかですから、私の言いたいことだけを言いたいと思います。  それは、長官単協有の場合と連合会有の場合とは違うというようなことを言われた。しかし、法律の条文は違います、九十二条と五十条では。準用規定ですから違うことは違うが、私はその精神を生かぜ、こう言っているのです。それにしても、単協有共同漁業権というものと連合会有共同漁業権というものと、その本質ですね、これについては一体違いがあるのかどうか、漁民として。違いがあるなら、どういう点が違うのだということを、漁民の立場からおっしゃっていただきたいと思う。どっちであろうが、漁民はそれによって生活ができなくなるということについては、私は同じだと思うのですが、どうですか、違いますか。
  52. 森本修

    森本政府委員 現実問題としては、単協有のものをある個人が使っておる、また連合会有のものを使っておるということにおきましては、使っている人が系統団体の漁業権を使っておるんだという点においては、漁民のなまの感じとしては、そう変わりはないというふうに思っておられると私は思います。  しかし、先ほど言いましたように、法律構成としては実はその点が非常に違ってきておるということは、先ほど来御議論になるようなことになっておるわけであります。そういうことだと思います。
  53. 佐々栄三郎

    佐々委員 長官はそれに固執しておるのですが、固執するところに矛盾があるんですよ。漁民としては同じだというなら、あの準用規定というものを組合員というふうに解釈する、少なくともそれに近い解釈をして、漁民を保護するというのが当然だと私は思うのです。あなたはもう県の立場に立っておられる、私はそう思う。  そこで、私は漁業法の八条の、組合員漁業を営む権利という問題について少し申してみたいことがあります。第八条の一項には、漁業協同組合組合員または当該漁業協同組合会員とする漁業協同組合連合会が、その有する共同漁業権ごとに制定する漁業権行使規則規定する資格に該当する者は、当該漁業協同組合または漁業協同組合連合会の有する共同漁業権の範囲内において漁業を営む権利を有すると、非常にややっこしいようですが、一口に言えば、連合会が持っておる場合もあるいは単協が持っておる場合も、漁民漁業を営む権利を持っておるのだということを規定しておるのです。  そしてこの問題について、水産庁企画室編集の「新漁業法の解説」という中で、その六七ページから六八%にかけて、こういうような説明をしております。これは連合会有の場合を含んでおるので、単協有の場合だけを言うておるのじゃないのです。お聞きください、あなたのほうから出した本です。「この規定により、組合管理漁業権権利の内容は、漁業権者または入漁権者たる漁協または連合会は単に形式権利者であって、権利の具体的行使を団体的に規制するという単なる管理権能を有する状態におかれ、実質的な漁業を営む権利は一定の資格を有する組合員が各自行使するという形で分有するという内容のものであることが法定されているわけである。」組合員漁協漁業権を貸し付けているのではない、だから貸し付け禁止の規定には違反しない。さらにまたこうも書いてあります。「組合員のこの権利は、漁業権または入漁権そのものではないが、それと不可分の、その具体化された形態である。そうして、この権利漁業権および入漁権が物権とみなされ、物権として扱われているのに応じ、物権的性格を有し、」ここは全くの漁業を営む権利ですよ。「物権的性格を有し、妨害排除請求権等の物権的請求権を発生せしめる権利と考えてよいであろう。」こういうふうにあなたのほうで出した本が解説をしておるのです。  こういうような解説は私は正しいと思います。これは要するに、単協有であろうともあるいは連合会有であろうとも、そこで漁業をしておる漁民権利を物権的な権利として認めておるのです。それをあなたは、連合会の場合は別だというような解釈をせられるが、その本質に着目したならば、あなたの解釈が非常に形式論理だということはだれしもわかる。三歳の童子でもわかる。妨害排除請求権等の物権的請求権を持っておるのですよ。いまそれが侵されているわけだ。権利を行使して、その妨害を排除していいんじゃないですか。そこまで強い権利なんです。それを、連合会有の場合は違うんだと言って、赤子の手をねじ上げるようにその漁業する権利漁業権を剥奪をしても、あなたは差しつかえないというのですか。私はそういう理論はあり得ないと思うのです。  もともとこの共同漁業権というのは、これはあなた方が専門ですから、私は釈迦に説法だと思いますけれども、徳川時代からその部落の漁民が、そこで漁業するところの権利を持っておったのです。昔の、この漁業法の前の漁業法の時代は、これはいわゆる入り会い漁業、陸上における入り会い地と同じような入り会い漁業で、いわゆるゲルマン法にいうところの総有、すべて有するという観念の権利なんですね。それは明らかでしょう。それは、連合会有の場合でもあるいはまた単協有の場合でも同じ権利なんです。そのことをあなた方の本では認めているのですけれども、そういうような権利を気軽に取り上げるというようなことができるとすれば、その規定そのものが私は憲法違反だと思うのです。新憲法が認めた基本的人権とか生活権、こういうようなものは奪うことができません。基本的な権利です。法律規定がどういうふうに規定してあろうが、それ自身が憲法違反です。  あなたは、それなら漁民の立場になって考えてごらんなさい。おやじの代から、おじいさんの代から朝晩そこで、自分のうちの前の漁場で漁をして生活してきたのですよ。それを自分が知らぬ間に、組合長の一存でその漁場がなくなってしまったら、あなたはどう思いますか。こんなことは常識ですよ。そういうことがないように、新憲法はこの権利を保障しておるはずです。どうお考えになるか、お答えをいただきたい。
  54. 森本修

    森本政府委員 先ほども私が申し上げましたように、先生も言われますように、そこで現実に漁業しておった人が、全然相談にもあずからぬような形で組合内部運営が行なわれているということであれば、それは組合運営問題としては、きわめて適切を欠くということになろうかと思うのです。そういう意味合いでは、私は先生が言っておられますような趣旨については、決して否定するものではないわけです。組合運営なりあるいは理事者のとるべき態度としては、水産庁としても十分今後指導上配慮を加えていくということには変わりはございません。
  55. 佐々栄三郎

    佐々委員 私はこの問題について、水産庁のほうの係官が県に了承を与えておる、こう理解しておるのです。それであなたは非常にこだわっているんじゃないかと思うのです。もっとすなおに漁民の立場から解釈すれば、私の言っていることは、決して私は無理とは思わぬのです。そういう点、私は非常に遺憾だと思います。  それからもう一つ、根拠法規の点について私は申し上げたいと思うのですが、漁業法の八条三項及び五項には次のような規定があります。漁業協同組合連合会は、その有する特定区画漁業権または第一種共同漁業権について漁業権行使規則を定めようとするとき及び廃止、変更しようとするときは、水協法の規定による総会議決前に連合会会員たる漁業協同組合組合員の三分の二以上の書面による同意を得なければならない。これは連合会の場合なんですが一連合会の場合でも、漁業権行使規則の廃変については、総会議決だけではいけない。事前に三分の二の組合員の、総会を開いて同意を得なくちゃならぬ、こうなっておるのです。  それで、この漁業権行使規則とは何ぞやというならば、漁業権があってこそ漁業権行使規則というものがある。要するに、漁業権から派生した権利なんですね。一体的不可分であるけれども、基本にはやはり漁業権というものがある。その漁業権行使規則について、連合会の場合でも三分の二の同意を必要とするというのに、基本的な権利である漁業権そのものの得喪変更について、同意を必要としないというととは、私はちょっと考えられぬのですが、この規定のたてまえからいっても、やはり私は、漁業権得喪変更については、組合員同意を得る必要があると解釈すべきだと思うのですが、いかがでしょう。
  56. 森本修

    森本政府委員 漁業権行使規則をこういう手続にしておりますのは、何といいましても組合が持っておりますととろの漁業権を、どういうふうな形で使っていただくかということは、それぞれ行使をされる人の間で、バランス問題とかいろいろな関係で、そういう人の意見を、現実に使われる人の意見を十分聞いておかなければいかぬという趣旨から、こういうふうな手続を定めておるというふうに思っております。   〔委員長退席、安倍委員長代理着席〕
  57. 佐々栄三郎

    佐々委員 しかし、よく考えたらこれはわかるのですが、現実の手続とかそういうような具体的な権利行使規則を定めるのに、連合会の場合でも三分の二の同意が必要なのに、漁業権そのものの得喪、それより大事だと思われる漁業権そのものの得喪変更について、組合員同意が必要でないという解釈はできぬでしょう。九十二条の準用規定というものをやはり組合員というふうな形に、少なくとも当該漁業権消滅させられるところの単協については、いまの場合与島漁協については、やはりその漁民同意を必要とすると解釈するのが筋じゃありませんか。
  58. 森本修

    森本政府委員 法律解釈問題としてでございますと、遺憾ながら先ほど私がお答え申し上げましたようなことを、繰り返して申し上げるということにならざるを得ないわけです。  ただ、くどいようでありますが、運営あり方として、それがいいかどうかということとはおのずから別でありまして、私どもとしては、先ほど申し上げましたような民主的な組合運営あり方について、十分指導を加えるというたてまえでございます。
  59. 佐々栄三郎

    佐々委員 そうしたら、いま発生しておるこの事件について、長官はどういうような対策を講じようとなさるのですか。傍観しておるのですか、それともあしたでも香川県へ行きますか、私と一緒に。あなたを父親と考えておる漁民が、漁場を刻々と怪物のようなしゅんせつ船によって破壊されておるのです。これは先祖伝来の漁場ですよ。それをあなたは、形式論理をもてあそんで傍観するのですか。それとももっと姿勢を正して、日本の水産庁長官として何らかの方策を講じる意思があるのかないのか、傍観するのか、それを最後に聞きたいのです。
  60. 森本修

    森本政府委員 こういうところで議論になったようなことでございますし、また事柄が、先ほど御指摘がございますように、必ずしも全国的な問題でございませんから、私どもとしては、従来のたてまえとしては県を通じていろいろなことを調べ、また県を通じてそういった問題については指導するというのがたてまえでございますが、こういうところで御議論になったようなことでございますから、まず十分実態について調べた上で、私どものとるべき態度を検討してみたいと思います。
  61. 佐々栄三郎

    佐々委員 長官は全国的な問題じゃない、こうおっしゃったが、それは間違いです。事件は香川県の島で起こった事件ですが、こういう形で漁業をする権利がとられるということになると、これは全国の漁民影響するのです。連合会有の場合は手軽に取り上げられるということになったら、偶然によって連合会有になり単協有になるのですよ、先祖伝来の漁場であっても。何らかの偶然によって、あるものは単協の所有になりあるものは連合会有になる。その偶然によってこの場合連合会有になったからといって、同意を得ないでとれるのだということになったら、その偶然こそはまさに漁民を扼殺するもの、絞め殺すようなものですよ。これはおそろしい偶然ですよ。  そういうことを考えれば、連合会の場合にはそういうことができるのだということでやったら、全国の協同組合共同漁業権について、全国の漁民が非常な不安におののくことになるのです。六人の組合長相談して何百人の漁業権を奪ってよいというなら、これほど不安なことはありませんよ。これは全国的な問題です。これからが心配です。問題は重大ですが、いかがですか。
  62. 森本修

    森本政府委員 個別のこの案件について、どういう対処をするかというお尋ねでございましたので、いまのようなお答えを申し上げたのです。いずれにせよ結論としては、私としては、十分調べましてしかるべき対処策を検討してみたいと思います。  なお、それが一般的な問題になり、指導方針にかかわることでありますれば、もちろんそういった問題として私どもは将来取り組みたいというふうに思います。
  63. 佐々栄三郎

    佐々委員 もう終わりますが、もう一つだけ追加して聞きたいことは、補償契約が正式に調印されてないのに、現に船が入ってしゅんせつをやっておるんです。そういうことは合法ですか。少なくとも漁場をとるなら、それに対して正式の契約を結んで、お金を幾ら出すというような話ができなかったら、そこにしゅんせつ船が入って、そこを荒らし回るというわけにいかぬと思います。これはいかがですか。補償金が、いま動揺して上がったり下がったりしておって確定しておらぬ。契約書類もできておらぬのです。こういう状態で、そういうしゅんせつ船を入れて漁場を荒らすことができるのですか。これは違法じゃありませんか。
  64. 森本修

    森本政府委員 もちろん、そういった補償関係につきましては、十分合意を得た上で工事に着手するというのが穏当な態度であろうと思います。
  65. 佐々栄三郎

    佐々委員 しからば水産庁長官香川県へ工事を中止せよというような指令を出しなさい。そういうような違法が行なわれておるのですから、それは出してください。
  66. 森本修

    森本政府委員 よく調べました上で、とるべき態度を検討したいと思います。
  67. 佐々栄三郎

    佐々委員 そうすれば、調査はいつまでに行なわれる予定でございますか。それをいつ報告してくれますか。
  68. 森本修

    森本政府委員 なるべく早く取り進めたいと思います。
  69. 佐々栄三郎

    佐々委員 なるべく早くというといつですか。あまりおそくなっては困るのです。日がたてばたつほど漁場が消えてなくなっちゃうのですからね。あなたが寝ておる間もしゅんせつ船は昼夜兼行でやっている。問題が起こってきたら、この間まで一隻しかおらぬしゅんせつ船が二隻出てきたのですよ。県はそういうやり方をしておるのですから、ほんとうにもう一刻が惜しいのです。どうですか。
  70. 森本修

    森本政府委員 なるべく早く調査をいたします。
  71. 佐々栄三郎

    佐々委員 その点はあなたを信用しましょう。それじゃひとつなるべく早くやってください。  これで終わります。
  72. 安倍晋太郎

    ○安倍委員長代理 工藤良平君。
  73. 工藤良平

    ○工藤委員 私はごく簡単に、短時間で御質問をいたしたいと思います。  実は、先般シイタケの不良種こまの問題についてこの委員会でも取り上げまして、その後対策をいろいろとお願いしてまいったわけでありますが、その後さらに新たな被害も発生をしておりますし、すでに相当な期間も経過いたしておりますが、これは被害の対象地域も増加をいたしておるようでございますので、被害の状況について、林野庁で把握しておれば報告をしていただきたいと思います。
  74. 片山正英

    ○片山政府委員 大きな被害の出た県は三県でございまして、大分県、宮崎県、静岡県でございます。  われわれの現在の調査では、活着不良本数というのが、大分県においてはおおむね二〇%、宮崎県において二%、静岡県において一九%、そのように調査いたしております。
  75. 工藤良平

    ○工藤委員 活着不良状況が二〇%ですか。そういう非常に微々たるもので、金額的にはどのような報告がきておりますか。
  76. 片山正英

    ○片山政府委員 実は、金額の判定というのは非常にむずかしいわけでございますが、本数でいきますと、大分県が五百万本、宮崎県が百万本、静岡県が二百万本と、一応こういうふうに推定いたしております。
  77. 工藤良平

    ○工藤委員 きょうは、その内容については私、詳しくは質問しませんけれども、これは後日なるべく詳細に調べて資料提出をしていただきたいと思います。  そこで、この原因の問題でございますが、すでに先般からもいろいろな、気象条件等外的な条件もございましたけれども、主としてその原因は、やはり種こまの不良ということが原因だということが、県段階からも指摘をされているわけでありますけれども、その点について、林野庁としてはどのように把握をしておられるか、その点お伺いしたいと思います。
  78. 片山正英

    ○片山政府委員 いまのなぜ不良かというのは、確かにいろいろの原因がございます。先生おっしゃいました種菌の問題、それから種菌を取り扱うあり方の問題、それからいわゆるほだ場における取り扱いの問題、気象条件、いろいろ原因はございますが、私のほうもそういう諸因子に対しまして、林業試験場をして実は調査をさせてみたわけでございます。  中間的の報告を受けておるわけでございますが、それによりますと、いろいろな原因が重なってはおりますが、しかし、調査の内容といたしまして一つ、トリコデルマ菌がございます。これはシイタケの菌と相反して、その菌をなくすような形の菌でございます。それが、実は検査いたしますと出てまいったわけであります。しかし、その菌がいかなる形で入っていったのか、これがなかなかむずかしい問題でございます。それで、調査した対象がすでに一年近くもたっておるところでございますので、どういう形で入ったかというのは正確に理論的には詰められない、残念ながらそういう段階でございます。
  79. 工藤良平

    ○工藤委員 その点については、今後の対策との関係もありますが、私はこの前も指摘しましたように、新しい被害を入れますと、三年連続ということになるわけでありますが、三年連続特定の業者の出した種こまが活着不良である、こういう状態が続いておるわけで、これこそまさに、いろいろ外的な条件もあろうけれども、主としてやはり種こまの不良という問題について視点を向けなければならない、こういうふうに思うわけでありまして、その点については、林野庁はどのような態度で調査に臨んでこられたのか、その点をひとつ明らかにしていただきたいと思います。
  80. 片山正英

    ○片山政府委員 先生は、その不良ということでございましたので、一番不良の発生したところを中心にして実は調査をいたしてきたわけでございます。しかし、具体的な調査までには至りませんでしたけれども、片や別の面で、同じ種こまが場所によっては非常にいいというところも実はあるわけでございます。したがいまして、その辺が判定の非常にむずかしいところでございますので、やはり種こまの取り扱い、あるいは種こまの性質をどう理解してやられたか、そういうこともだいぶ関係するようなものではないだろうかというふうに判断いたしております。
  81. 工藤良平

    ○工藤委員 確かにそういう一面もありましょう。しかし、同じ種こま業者の中で大量生産をしているわけであります。しかもそのシェアというものは、この前報告も出ておりましたが、全国で七〇%独占をしておるという状況の中でこういう問題が起こったわけでございます。私は、そういう面についての徹底的な追及が必要だということを、この委員会でも指摘をしておるのであります。現実に私ども地域で起こっておる種こまは、すべてそれに集中しているわけでありますから、確かに大量生産の過程の中でそういう問題が起こってきているわけで、そういう観点からの原因の追及というものが必要だ、こういうことも私は指摘をしてきたわけであります。これは追跡調査にもなりましょうが、いま新たな問題も起こっておるわけでありますから、ぜひこの問題については、さらに陣容を整えていただいて、原因の追及には最大の努力をしていただきたいということを申し上げておきたいと思います。これはまたあらためて、林野庁の報告が出れば、その時点でもう少し前向きに詰めてみたい、こういうふうに思っております。  そこで、先般二月四日付で、各種こまの業者あてとそれから都道府県知事に対しまして、指導のための林野庁長官の通達を出されているわけであります。もちろん、これは非常に前向きの姿勢として、緊急の措置としてとられたことについては敬意を表したいと思うのですけれども、残念ながら、これはさっき申し上げましたように、全体的な活着不良の条件というものが並列的に並べられている。これは無難な方法ですけれども、私がさっき申しましたように、種こまの不良ということが主たる原因だという視点に立って指導体制を整えていかなければならない。むしろいまは、シイタケ生産農家のほうが逆に試験研究機関よりも進んでいるというような実態もあるわけであります。ですから、やはりそういった意味で、こういう文書を出してみましても、何だ、こんな程度のものかということにしかならないわけでありまして、特に業者に対する通達文書を見ますと、たとえばどういうことを書いているかというと、「製造、保管、輸送等に万全の措置をとられたくここに特に依頼する。」こういうことで、ほんとうに農林省がお願いをするという程度の文章にしかなっていないわけでありまして、私は、これでも若干の刺激にはなるだろうと思いますけれども、この前も申し上げましたように、やはり何らかの菌の規格に対する規定なりあるいは営業の許認可に対する農林省の態度というものを明らかにして、それに対する法的な根拠を明確に制定していく必要があるのではないかということも指摘をしてきたわけで、この点に対する指導文書と、さらに次の段階に向かっての林野庁の態度というものを、ぜひ明らかにしていただきたいと思います。
  82. 片山正英

    ○片山政府委員 先生御承知のように、シイタケは一番最初はなため法というやつで、木を切ってその中で自然発生させたという経緯がございます。それを種こまあるいは種菌という中において、これが非常に成績をあげて、シイタケ栽培というものが津々浦々に伸びておるというのは、その種こまが原因だと思っております。ただ残念ながら、シイタケの種というものは非常に下等な生物でございますので、的確な姿というのはなかなか把握できないのが現況だと思っております。  そこで私たちも、先生の御指摘もございますし、全体の中でこれは何とか解決していきたいということで、四十四年度におきましては、種菌の劣悪化の原因と病原の微生物の関係というものを明らかにしよう、それから種菌の品質の判定——これはいろいろございます。非常にいい種菌であるけれども外界に対して非常に弱い、弱いからそれを保護してやれば非常にいいのでありますが、それをおろそかにすれば非常に悪くなる、ものによってこういう種菌の性質もございます。したがって、そういう点を林業試験場において新しく四十四年から研究を始めていこう、ポイントはそこであろうということでわれわれも努力してまいり、その中で指導してまいりたい。さしあたり、先生におしかりを受けましたけれども、各メーカーの問題、それからそれを取り扱う業者の問題について、ある程度こまかく指示したという状況でございます。
  83. 工藤良平

    ○工藤委員 この問題はぜひとも今後、さっき長官もお話ししておりましたように、雑菌も非常にふえてきておりますし、それに対する抵抗力というものも弱まってきているわけでありまして、全体的な菌業者に対する問題、さらには全体的な生産者に対する指導体制というものも、行政的な面から必要になってくるだろうと思いますので、ぜひその点については、いま直ちにといっても非常に困難でしょうけれども、陣容を整えて研究を進めていただいて、できるだけ早く菌の規制、それから業者に対する許認可の問題等についても規制をやっていただくように対策を講じていただきたい、こういうように思います。  それから、それに続きまして、私もできれば議員立法でも出して、直ちにこの問題に対する規制をしていきたいという考え方を持っているわけでありますが、非常にむずかしい問題でありますので、私は、林野庁の試験研究機関でひとつ十分に検討していただいて、しかもこれはなるべく早い機会に出していただきたい。そのためにも、やはり陣容なり予算的な措置というものも必要になってくるだろうと思いますし、すでに予算は衆議院を通過いたしましたけれども、林野庁として四十四年度に行なう施策について、どのような対策を講じられるか、その点もひとつこの際明らかにしていただきたいと思います。
  84. 片山正英

    ○片山政府委員 まず第一点は、先ほど申し上げました試験研究を重点の方針として林業試験場にさせていきたい、これが第一点でございます。  それからもう一点は、種こまを打ち込んで、そうしてしばらくたって、一年くらいたってどうだということじゃなしに、種こまを打ち込んだあと日ならずしてそれがどうなっていくのだ、被害が蔓延する前にどうなっていくのだということを指導しなくてはいかぬ。これは県に普及員というものがございますから、そういうものを通してこれは指導していき、もしあったとしてもその被害がなるべく大きくならないように指導してまいりたい、こういうふうに思っております。  それからもう一つは、やはり各メーカーの方々の姿を、そういう種菌でないように工場その他に対しても指導してまいりたいと思っております。
  85. 工藤良平

    ○工藤委員 これからそういった方向で検討をしていただくとすると、ほとんどいままでは、極端にいいますと野放しみたいなかっこうでありましたから、できるだけ早く種こま業者の実態、それから意見を聞くということも必要だろうと思います。  ただ、その際に重要なことは、ごく特定の業者なりの意見を聞くということじゃなくて、やはり小さな業者の中にも、非常に良心的な専門的な研究をなさっている方もたくさんあるようでございます、私も実態を調べてみますと。ですから、そういう人たちの貴重な意見というものを、ぜひ検討の過程の中において聴取するということも私は必要じゃないだろうか、こういうように考えますので、ぜひこの点についても早急に、しかも、繰り返し繰り返しそういう状態をひとつつくり出していただくように、この点は特に要望したいと思うのでありますが、その点についてはどうでしょう。
  86. 片山正英

    ○片山政府委員 御指摘のとおりのことだと思いまして、われわれもさしあたりの問題としまして、学識経験者と主要な種菌メーカーを呼びまして、もうすでに連絡いたしておりますが、そこで一応全体の問題で打ち合わせてみたい、こういう手はずを整えておるわけであります。その結果によってまた対処してまいりたい、かように思っております。
  87. 工藤良平

    ○工藤委員 最後に、特にこのシイタケ産業というものがだんだん、国内消費の中においてもあるいは貿易関係の中におきましても、非常に主要な役割りを果たしているわけであります。特に輸出の関係については、中国をはじめといたしまして各地からの要望もあるようでございまして、今後このシイタケの輸出の問題をめぐりましてどのような傾向をたどっていくか。さらに国内消費の問題についても、先般来から、たとえば高血圧にいいとかあるいはガンにいいとかいう宣伝も実はされておるようでありまして、もしもそういうようなことになりますと、国内消費というものも高まっていくのじゃないか。  しかし、現在のところでは、価格の面におきましてもまだ非常に高いわけでありますので、どうしても量産体制というものとあわせながら貿易、そして国内の消費というものを高めていく必要があろうと思います。したがって、そういう面についての農林省の考え方といいますか、そういうものについてひとつお伺いをしたいと思います。
  88. 片山正英

    ○片山政府委員 日本の山は、御承知のように薪炭林、そして薪炭に使われております。しかし薪炭、木炭というのは急激な減少を見ております。したがいまして、それにかわる姿としては、シイタケというものはまことに望ましいものだと思います。最近におきましてシイタケの所得は、木炭を若干上回る傾向にすらなっております。われわれもそういう意味から、林業構造改善の中の一つの大きな柱として、シイタケの問題を推進してまいりたいと思っております。  ところで、需給の関係になりますと、従来は貴重なものだという認識もございまして、なかなか普及がおくれておる。もう少し普及関係に力を入れてまいりたい。これは、とりもなおさず輸出についてもそうだと思っております。そのような意味の助成指導を行ないながら、これは一つの農家の大きな所得財源になりますので指導してまいりたい、また、山の実態に即した問題であろうというふうに思うので指導してまいりたい、かように思っておるわけであります。
  89. 工藤良平

    ○工藤委員 私は、特に中国のシイタケ産業との関連というものを、日本の量産体制を考えていく場合にも配慮しなければならないのではないだろうかという気がするわけでありまして、私も私なりにいろいろと調査をやっているわけでありますけれども、なかなか把握がむずかしいようでございまして、おそらく中国あたりでも、こういった種菌の開発によりまして大量生産ということも考えられるのではなかろうか、こういうように思うわけでありまして、そういうような状態が起こってまいりますと、シイタケ産業にとりましてもたいへん大きな脅威になりますし、ぜひそれらの実態も、政府のほうで把握できればできるだけ早く把握をしていただいて、これからの体制に即応する状態というものをつくっていかなければならぬのじゃないか、こういうように思います。  それとあわせまして、特にシイタケの場合には、いま原木の問題がたいへん大きな問題になっているわけであります。原木不足という状態が生まれてまいっておるわけでありまして、この際、特に国有林野の木材の払い下げの状態の中で、パルプ材との間に競合するという面も非常にあるわけでありますが、ぜひひとつ、このシイタケ用の原木については、シイタケの生産者に対して、払い下げについても十分な措置というものをやる必要があるのではないだろうか、こういうように思いますので、この二つの点について、最後に長官からお答えをいただきまして、私の質問を終りたいと思います。
  90. 片山正英

    ○片山政府委員 御承知のように、国有林材というのは薪炭林じゃなしに、原生林の木を切るということが多いものですから、丸太が大体太いわけでございます。しかし、地元産業としてのシイタケに対しては十分配慮して、そういう適材があるならば、つとめて地元産業に確保してやりたいというふうに考えております。  それからパルプとの問題でございますが、パルプは若干シイタケと関係すると思いますが、何でもいいというあの広葉樹であります。シイタケは原木が限られているという点が一つ違うかと思いますが、つとめて地元の実態を把握いたしまして、御期待に沿うようにしたい、こう思っております。
  91. 工藤良平

    ○工藤委員 その点は、特に地域的に、いろいろな濶葉樹の分布の状態等によりまして確かに違いがあると思います。ある地域においては非常にシイタケの原木に適する国有林野がある、こういうこともいわれているわけで、そういう場合には、ぜひひとつそういう配慮というものを林野庁としてもやる必要があるのじゃないか、そしてシイタケ産業の育成というものについて最大の努力を払っていただきたい、こういうように思います。  これらについては、後ほどもし国有林野の法案が出てくれば、それとの関連の中でもう少し詰めてみたい、こういうように思っておりますので、きょうは以上で、簡単ですけれども終わります。   〔安倍委員長代理退席、委員長着席〕
  92. 丹羽兵助

    丹羽委員長 柴田健治君。
  93. 柴田健治

    ○柴田委員 時間を倹約する意味で簡潔にお尋ね申し上げますから、お答えを願うほうも簡単にお願いしたい。簡単といっても、わけのわからぬ簡単では困るので、要点を簡明に言っていただきたいと思います。  まず、家畜伝染病に関連して、二点ほどお尋ねしたいと思うのです。第一点としてお尋ねしたいのは、御承知のように昭和四十三年二月に、岡山県の鏡野町というところで乳牛の炭疽病が発生した。自後、私たちは、関係機関がこれに取り組んで適切な措置なり、また、その後の感染経路なり原因究明という立場でやられておる、こう信頼しておったのでありますが、その後何ら進展もみない、ただ生産農家が被害をこうむっただけに終わるというような状態になっておるわけです。これらの点について、家畜伝染病については、予防対策について万全を期してもらいたい、そしてまた原因究明の中で感染経路等は十分やってもらいたいということは、本委員会決議においてもなされておるわけであります。そういう立場から、当局がこの問題についてどういう措置をとったのか、その措置の方法お尋ねしたいと思うわけであります。  概略を簡単に申し上げますと、先ほど申し上げたように、昨年の二月十八日に発生して以来十一頭が感染しておるわけであります。その感染の十一頭だけの被害ではなくして、その後伝染病の予防法に基づいて、その危険区域の指定を受ける、その中では乳の販売もできない、牛の移動もできないといういろいろ制約を受けて、その被害はまことに大きいわけであります。この被害を受けた農民からは、どうしてくれるんだという強い意見が出てまいりました。  それで、この原因究明がまず必要だ、この原因究明によって事後の措置がなされるということで、関係機関は末端においていろいろと研究をし、調査もせられたのですが、一番の疑問になりましたのは、この発生源は飼料ではないか、えさではないか、こういうところに問題がしぼられました。土中に長い間菌が温存されておるということではなくして、飼料から入ってきたという見方が強くなってまいりました。その飼料はどこから求めておるか、今度は飼料の販売先に問題点がしぼられまして、それは要するに、広島県の呉市にある呉飼料株式会社という会社から購入しておる飼料で、二種混合という飼料なんでありますが、この混合飼料というものは法律できめられておるわけであります。  御承知のように、飼料の品質改善に関する法律という法律がございますが、この法律の十六条には、虚偽の宣伝をしてはならないという禁止規定もある。これから考えて、この混合飼料の成分なり量質というものは明確にしなければならぬわけですが、この二種混合の飼料の中になま骨粉を入れている。これは飼料会社が屠殺場で牛の骨をもらってきて、そのなまの骨を何%か混入した、この事実は間違いないということです。このなま骨粉を二種混合の飼料に入れるということは、法的に問題もあるということでいろいろと騒いだわけであります。これらの点について、畜産局は行政的に——法的な問題はどういう解釈かわかりませんが、行政指導の中で、これらの原因究明なり事後措置についてどういう方法をとられたか、お答えを願いたいと思います。
  94. 太田康二

    ○太田政府委員 昨年のいわゆる四十三暦年におきまして炭疽が発生した頭数は、全部で十一府県、二十七頭ということに相なっておりまして、いままで大体十頭くらいでありましたが、昨年は若干ふえたのでございます。このうち岡山県におきましては、ただいま柴田委員がおっしゃいましたように、二月から七月にかけまして、九市町村で十一頭の発生が報告されておるのでございます。  農林省といたしましては、発生に対処いたしまして直ちに岡山県に対しまして防疫措置を指示いたしますとともに、係官を直ちに現地に派遣いたしまして、調査並びに現地防疫に当たらせたのでございます。また、われわれのほうの機関でございますところの家畜衛生試験場の中国支場が和田山にございますし、動物検疫所神戸支所、それと神戸肥飼料検査所の協力を得まして、発生原因をすみやかに究明するようあわせて指示をいたしたのでございます。  これらの指示に基づきまして調査をいたしたのでございますが、ただいま柴田委員のおっしゃいましたように、岡山県の場合には、いまおっしゃいましたメーカーの飼料が各発生農家において給与されておるということが判明いたしたので、今回発生いたしました原因がこの飼料に原因するかどうか、これが一番大事な点でございますが、これを究明するにあたりまして、御承知のとおり炭疽病というのは、病性からこれの原因を究明することが非常に困難な病気でございまして、直ちにこのえさが原因であるという決定にまでは、実は至っておらないのでございます。もちろんメーカーに対しましては、飼料の回収とか製造方法の改善等につきまして指導をいたしたのでございますが、その結果、八月以降には発生いたしていないというのが今日までの実情でございます。  そこで、発生に伴いますところの蔓延防止措置といたしましては、家畜伝染病予防法に基づきますところの死体の焼却または埋却、あるいは発生畜舎の消毒、緊急予防注射等も実施いたしまして、これらに要した経費をそれぞれ法律に基づきまして補助いたしますとともに、さらに、牛乳の一部を廃棄いたしましたので、これにつきましても汚染物品として処理をいたしましたので、手当て金の支出をしたというのが現在までの段階でございます。
  95. 柴田健治

    ○柴田委員 すなおなお答えをいただいたので前へ進みたいのですが、メーカーのこの飼料の中身、要するに入れてはならないものを入れた。先ほど言われた農林省の神戸肥飼料検査所の所長が——去年の七月二十九日に、一九二一号という通達で通達文書が出ておるわけです。これには、やはり政令や法律に違反している傾向もある。こういう正式に官庁が出した政令や法律に違反する行為、この政令や法律に違反というと、先ほど言ったように、どの法律ということになればこの飼料の品質改善に関する法律です。これらは十六条違反ということになれば、一年以下の懲役であり、五万円以下の罰金だという罰則規定があるわけです。  不審な点は罰せずという法律の精神もあろうと思いますけれども、明らかに政令や法律違反をしておるということを書く限りおいては、相当の根拠がなければこういう文書は役所としては出せぬと思う。それだけ文書に書く限りにおいては、相当の根拠をつかんでおられる、こういう気持ちがいたします。私は、何もメーカーを罰せよとかどうせいと言うのではなくして、これらの原因究明をやる行政機関としての責任があるし、また、責任を果たすために努力をしたことはわかりますけれども、やはり被害農家の立場からいうと、関係機関の努力に対して、メーカーは、ただ以後慎しみますという程度では納得できない、こういう気がいたしますので、きょう直ちにどうしろということは御注文申し上げませんけれども、もう一歩踏み込んで、関係機関の今後のそういう家畜伝染病予防法に基づく予防体制上、末端では一生懸命努力しておるその努力の効果が、途中で石けんのあわみたいに消えてしまったのではいけないので、責任機関としての畜産局はもう一歩踏み込んで、解決の方向というか、そういう点に努力してもらいたいと思う。この心がまえを聞いておきたいと思うのです。
  96. 太田康二

    ○太田政府委員 柴田委員御指摘のとおり、神戸の肥飼料検査所が、四十三年六月五日に、御指摘の呉飼料の工場に立ち入り検査をいたしまして収去いたしました資料七点中、一点から約八・四%の骨粉の混入が認められた、こういう事実があるわけでございます。  そこで、法律的に申し上げますと、これは飼料の品質改善に関する法律の十五条の二の成分等の表示義務の違反ということでございます。これによりますと、罰則といたしまして「五万円以下の過料に処する。」ということになっているのでございますが、今回の場合、初めてのことでもございましたので、検査所長といたしましては、呉飼料株式会社に対しまして、そういった事実がある、再度こういったことのないようにしろという厳重な注意をいたしまして、始末書の提出を求めたのでございます。  いずれにいたしましても、先ほども申し上げたわけでございますが、炭疽病の原因の探求というのは非常に困難でございまして、この飼料が直ちに原因であるということの究明が現在できておらないわけでございますので、ここらあたりをさらに突っ込んで検討をいたしました上で、先生が御指摘なさいましたような方向で今後対処してまいりたい、かように考えております。
  97. 柴田健治

    ○柴田委員 誠意ある局長答弁だから、これ以上追及しません。お互いに問題を解決するように、前進させるように私たちも努力しなければならぬ責任があるわけですから、お願いしておきたいと思います。  次にもう一つ、家畜伝染病に関連してお尋ねしたい二番目なんですが、中国の肉の輸入について、これは通産省ベースでものを考えた場合には別なんですけれども、私たちは生産農民という立場から問題点を解明していく責任もございますので、お尋ねしておきたいと思うのです。  いまの中国肉の輸入に対して、国内の農民の団体といわず農民といわず、家畜を飼っている関係者は非常に関心を持っているので、政府がどういう姿勢でこれと取り組んでいるのか、そういう取り組み方、それから今日までの経過、それを簡単に聞かしていただきたい。農民のほうから、この点について聞きたいという注文をいろいろわれわれ受けるわけですが、そういうことで、いまどういう経過になっているのか、お答えを願いたいと思う。
  98. 太田康二

    ○太田政府委員 中国肉の輸入問題は、ずいぶん昔から中国側からの強い要請も実はあるわけでございます。  そこで、従来農林省といたしましては、過去三回にわたりまして、政府の職員というわけにもまいりませんが、民間の方が中心になりまして、過去三回調査が行なわれたのでございます。これは三十一年、四十年、四十一年の三回でございます。そこでこの第三回目の、いわゆる田中報告書というものが提出されたのでございますが、この田中報告書が提出された機会に、農林省といたしましては、家畜衛生の専門家にお集まりをいただきまして、これまで行なわれましたところの調査報告につきまして、総合的な検討を行なったのでございます。この結果、家畜衛生専門家の意見といたしまして、最もこわい口蹄疫、この口蹄疫に関しまして、疫学的な特性から見まして、わが国の家畜に対する安全性が十分に確証されておるということが言いがたい、こういった結論が得られております。  この結論によりまして、実はわれわれは、申し上げております五項目ということで、過去における口蹄疫の発生状況と実害、いままで行なわれましたところの口蹄疫の撲滅方法の具体的な経過、第三に、口蹄疫ワクチンの性状、種類、製造方法、使用目的等、第四に、口蹄疫の診断の方法、それから第五に、その他最近における不明疾病の発生の有無とその状況、こういったものについて的確なる情報を得たいという提案をいたしておったのでございます。  ただ、中国側といたしましては、すでに過去三回民間の調査ではございますが調査が行なわれて、中国がかつての状況に比べますとたいへんきれいになっておる。しかも、口蹄疫につきましては一九六二年以降発生していないというような報告もあるんだから、直ちになま食肉の輸入をしてもらいたいということで、わがほうの実はこういった提案については、一向に返事をいただけないという状況に相なっておって、今日まで至ったのでございます。  そこで、本年の日中覚書貿易の関係でまたこの問題が取り上げられまして、何らかの形で解決できないかということで、実は政府部内でもいろいろ検討いたしたのでございますが、現段階におきましては、相手側が受けるか受けないかの問題もなお残っておるわけでございますが、もし洋上で加工をして食肉加工品にする、そういったことが考えられないか、そういうことで——向こうからはなまで買って、本邦船の中で洋上加工するのですが、はたしてどういうものができるかどうか、これは具体的に現地において品物を見て、価格、品質等のこともございましょうから、はたして何をつくるかという問題はまだ残されておるわけでございますが、そういった加工の方式をとった場合には、口蹄疫ビールスが非常に熱に弱いというような特性もございますし、加工に用いられる船舶が本邦船でございますれば、熱処理加工過程あるいは施設のチェック、そういったことが十分できますし、消毒措置等も十分行なわせるということができますので、そういった意味では、口蹄疫がわが国に侵入するおそれはないのではないかということで、検討いたしておるというのが現段階でございます。
  99. 柴田健治

    ○柴田委員 その問題がないとすれば、農林省は受け入れるという腹をくくられたんですか。
  100. 太田康二

    ○太田政府委員 そういった洋上加工の方式で行なった場合には、口蹄疫の侵入のおそれがないかどうかの技術的検討をいたしたのでございますが、いま申し上げたようなことで、それであれば口蹄疫の侵入のおそれはないだろう。  ただ、われわれが考えておりますのは、御承知のとおり、牛肉は年間の需給を見定めまして、外貨割り当て制度で、おおむね年間二万トンというワク内でやっておることでもございます。それから豚肉の場合は、原則は国内の供給で間に合うわけでございますが、需要に対して供給が足りないときに、緊急輸入という形で処理をいたして外貨割り当てをいたして輸入をしておる。それからマトンにつきましては、AA制だということになるわけでございますが、いずれにいたしましても、現在それらの外貨割り当てのワク内で処理するということで考えておるのでございまして、中共のなま食肉の輸入の問題に関しまして、特に特別のワクをつくるというような考えはないわけでございますので、まあ国内に対する影響という点は特にないのではないかというふうに考えております。
  101. 柴田健治

    ○柴田委員 予防法からいうと、御承知のように、農林大臣が指定をしておる国、してない国の取り扱いがはっきりしておるわけですね。中共は指定してあるのですか。
  102. 太田康二

    ○太田政府委員 まさに家畜伝染病予防法上は、なま食肉は輸入禁止区域になっておるわけでございます。
  103. 柴田健治

    ○柴田委員 輸入禁止区域になっておれば研究するための肉でも入れないという、これはもうよほどきびしい条件が必要で、それは法律の精神にはっきりうたっている。それを、聞くところによれば、二万トンの外貨割り当てのワクの中でどのくらい入れるか知りませんが、とにかく洋上で加工する。それは洋上で加工すれば、いろいろまたほかの法律にも関係してくる。関税の問題もございましょうし、いろいろあるでございましょう。私たちはそういうことは別として、きょうの場合は家畜伝染病の予防から見て、炭疽病も重大な伝染病であるが口蹄疫もたいへんなことなんだ。これは、おそらく日本の牛にちょっとでも伝染すると、二十頭や三十頭の問題じゃないのだ。何万頭という牛が被害を受ける。一方では、今度はもう作付転換で、畜産だ果樹だなんて農林省はいいながら、一方では、そのワクが二万トンあるから、そのワク内で特に危険な禁止区域の中から入れる。農民が納得も理解もできない間に、ただ一方的な解釈で、一方交通の解釈で、危険性がないという判断で入れられたんでは、農民は理解もせずに、そのまま入れられるという一つの不安があるわけですね。入れるなら入れるにしても、やはり関係団体を納得させなければならぬ。  その納得をさせる方法としてはいろいろあると思いますけれども、まず全国の農民を個々に納得させるのはなかなかむずかしいでしょう。けれども、それを一つの集約として、組織論からいって農業団体というものがあるわけです。農業団体との意思の統一、意見調整、こういうものはやられておるのですか、どうですか。
  104. 太田康二

    ○太田政府委員 農業団体の御主張も、原則としてなま食肉の輸入には反対である。今回の、われわれの現在検討の段階におきましては、なま食肉の輸入ということはしないのだということにはっきりいたしておるわけでございまして、とにかく洋上加工で、熱に弱いビールスをそこで完全に絶滅した形での、製品にしての輸入ということになるわけでございますので、そういったことでありますれば、口蹄疫の侵入のおそれはないのではないかということで、われわれは技術的にそういった見解を出しておるわけでございまして、この線で、まあ心配の向きが生産者団体には確かにあるわけでございますので、十分説得にあたってまいりたい、かように考えております。
  105. 柴田健治

    ○柴田委員 今日、重要な農政の転換期を迎えておるときです。平素、平和な時分には話し合いができると思うが、そうでなくても今度の政府の総合農政の考え方が、まだ末端によく理解されてないし、まだあやふやな点があるから、そういうこととかみ合わせてかえって不安をつのるような、生産農民に不安を与えるような行為をとるということは、これはもう農林省は重大な責任問題だと私は思うのですね。だから、農業団体と意思の統一をはかるようにしてもらいたい。それができないのに入れられると、われわれは政治家としても困ると思うのです、正直言うて。やはりあらゆる関係機関と相談をして、意思統一をはかってからやってもらいたい。これは私は強い希望を申し上げておきたいと思うのです。  もう一つは、業者に洋上加工をやらせる。洋上加工というと島ではだめだ。島は洋上じゃないからだめですよ。船の中だ。船でやるとすれば、業者の選定というものは非常にむずかしくなってくる。少ない資本じゃできない。国が船をつくってやるのか、農林省も通産省も立ち会ってこういう船でやれ、こういう船の構造まで示して船を建造さしてそういう加工をさせるのかどうか。ただ業者をきめて、大きい資本を持っておるからおまえらやれといわれるだけであるかどうか。私は、いまの業者は正直言うて信用しないですよ。それはもう防疫体制の上に立って完全にいたしますと言うても、いまごろの業者というものはややもすればまぜものを入れるのです、飲料水に至るまで。この間九州で問題になった米ぬか油でも、何を入れているかわからぬでしょう。国民は信用しないんです。  そういうことを考えたら、国がよほど責任を持って、船の構造まで考えてやる意思があるのかどうか。業者の選定を軽はずみにやってもらっては、いまイミテーションの時代で模造品ばかりで、人造肉までまぜて、これは中国肉の加工品ですとやられたらたいへんなことです。船の上でやるものはどんなことでもできるのですよ。見えぬのですよ。しろうとが行くわけにいかないし、国会議員もそう簡単に行けぬですよ。そういうことを考えたら、よほど慎重な態度でやってもらわなければ、洋上加工で加工したものを、加工したものじゃなくてなま肉だといって消費者にかぶせるだろう、そういう気がするのです。それはやはり関税の関係もあって、加工したといったら、食肉加工品で関税率が高くなるから、あくまでもなま肉だからといって受け取ってもらう。そして関税率を下げてもらう。農林省のほうからいえば、洋上加工ということで明確にしているが、それを今度は、なま肉を加工したものをなま肉ですというて消費者に売るようなやり方をするなら、これは信用できないでしょう。何ぼ洋上で加工して完全に防疫体制やりますといったって、私はどうも信用できない。その点はどうですか。農林省としては、その加工に関する船舶の面まで注文つけるのかつけないのか。
  106. 太田康二

    ○太田政府委員 こまかい技術的な問題でございますので、われわれのいま検討していることを申し上げますと、向こうからなま食肉で買うわけでございますから、このなま食肉につきましては、当然の国際的な常識でございますが、衛生管理の良好な屠場から来たもので、中国の食肉衛生検査に合格したものということで、屠殺前または食肉検査によって異状のないもののみを食用または輸出用に供することは国際的な常識でございますので、まずこういう形でのなま食肉の取引をする。  それから加熱処理の基準量は、家畜衛生技術的に見て、アルゼンチンの煮沸肉の輸入を現在認めておるわけですが、最低その程度、中心温度七十度一分間ということで、当然これを確保せしめる。  それから製品の汚染防止のためには、船内を原料区と製品区とに明確に区分しまして、それぞれの区域別の作業員というものを別々にいたしまして、また製品につきましては、新しい材料によりますところの防水包装を行なわしめる等の措置をとる。  それから原料肉の接触物、施設等の消毒、廃棄の点でございますが、これは加工施設その他原料肉に接触するものの水洗、消毒というものは、食品衛生の観点からしても当然でありますが、口蹄疫のビールスの付着の可能性をも考慮いたしまして特に念入に行なわせる。処理加工後の消毒方法といたしましては、食用を前提とする肉の場合と異りまして、当該接触物、施設等に対応する最も効率の高い方法を実施させるということで、その具体的な例といたしましては、原料肉の容器、包装は廃棄させる、なま肉保管場、加工処理場等の蒸気消毒をさせる、作業服及び作業員の消毒の励行、加工品の残滓についても必ず煮せさる、まだいろいろあるわけでございますが、こういったことをいたします。  さらにわれわれのほうといたしましては、製品がわが国に入ってまいります場合に、指定検疫物またはこれに準ずるものとして輸入検疫を行なう。必要に応じましては、洋上加工の各過程をチェック並びに指導するために、家畜の防疫官を乗船せしめるというようなこともやる必要があるのではないかというふうに考えておるのでございます。
  107. 柴田健治

    ○柴田委員 時間がないから、多く法理論も言いませんけれども、相手国から食肉を入れる場合には、相手国の証明書をつけなければならぬということが法律に書いてあるのですね。その証明をつけない場合はだれが証明をするのか。証明がつかないということになれば、それは法律違反だ。法律違反を犯してまで農林省がやるはずはないという考えを持っている。そうすると、家畜伝染病予防法を改正しなければならぬのではないかという気がするのですが、この法律を改正せぬでもそういうことがやれるのですか、それが第一点。それから、大分実施をする要綱というか、大体の大綱がきまっているようですが、私たちも、洋上まで防疫官を駐在させて、外国からあわてて輸入してはいかぬとまでは言わないけれども、あわてて輸入する必要はないじゃないか。もっと国内の防疫体制を整備し、そして、日本の畜産の振興体制というものを安定させるためのいろいろな諸施策がまだ残されているので、それらをまずやってからさあどうぞ、こういうくらいにやってもらいたい。ただこちらだけにラッパを吹いて、日本の農民だけにラッパを吹いてやれやれといって、そして外国から外貨の割当の数量だけ入れますなんて、結局、農林省の畜産局は通産省の畜産物輸入局長じゃないかという気がする。通産省の畜産物輸入局長になってもらっては困るので、日本の生産農民を断じて守る、そのくらいの気魄がなければ困る。いまのを見ると、何か通産省のペースに乗っているような気がする。本日は時間がないから、納得できませんけれどもこのくらいでやめますが、法の改正をしなくともやれるということになれば、いずれまたあらためてこれは委員長にお願いいたしますが、通産省に来てもらって、徹底的に論議を深めない限りは、何ぼ片一方で畜産振興といっても、農民は信用しないと私は思う。その点問題点を保留しておきますけれども、予防法だけは改正せずにやるかどうかということを……。
  108. 太田康二

    ○太田政府委員 いまの予防法を改正しなくても、今回の措置はできるというふうに解しております。  それから、先生のおっしゃいますように、豚肉もそうかもわかりませんが、牛肉につきましては、実は世界の総生産量が三千万トンくらいでありまして、その五%の約百五十万トンが貿易の取引の対象になっておるというようなことで、どこの国でも牛肉につきましては、できる限り国内自給できる姿勢をとっておることは申すまでもないわけであります。  実は私のほうといたしましても、かつて昭和三十一年には二百七十二万頭の肉牛がおったわけでございますが、その後役使用というものが順次機械にかわりまして、肉中心の畜産にかわってまいりまして、実はかつて、これはわれわれの反省でございますが、非常に輸入を極端に押え過ぎたために、国内の資源が旺盛なる需要に対応するために過度に屠殺されたというようなこともございまして、一昨年の昭和四十二年が百五十万頭台で最も落ち込んだわけであります。実は、四十一年から肉用牛振興対策というものを講じまして、これに非常に力を入れておりまして、基本的な国内自給の方向を打ち出しておるわけでございまして、その効果が直ちに出たというわけではございませんが、昨年は百六十六万頭にふえたというようなことでありまして、これらを基礎にいたしまして、漸次国内の自給度向上につとめてまいりたい、かように考えて施策を進めておるというのが現状でございますが、何分現在の供給量が少のうございますので、その点はある程度輸入に仰がざるを得ない。  現在の段階におきましては、豪州、ニュージーランドがおもな供給源になっておるわけでございますが、中国の問題につきましては、今回いろいろな意味も含めまして、何か研究できないかという形で出されましたが、洋上加工方式ということで、その検討の内容につきまして、いま申し上げた形でやれば、先ほど来申し上げておりますように、口蹄疫の侵入の心配はないのではないかということを、農林省としては考えておるのでございます。
  109. 柴田健治

    ○柴田委員 終わりますけれども問題点たくさん残されておりますから、いずれ通産省に来てもらって、それからまた畜産行政全体にわたって論議しなければ、あなた自信を持っておると言っても、あなたの自信は根底からくずされようとしておるから、そういうことでお願いしておきます。
  110. 小沢辰男

    ○小沢(辰)政府委員 柴田先生、私、最後に一言申し上げておきます。  いま私どもが、各種委員会あるいはまた本会議等におきまして、皆さん方のほうから、農林省なりあるいは日本政府は、中共肉の輸入問題について非常に政治的な配慮を加えて、これを妨げているんじゃないかというようなおしかりばかり実はあったわけでございます。それに対して私どもは、そういう考えはない、政治的な配慮でないのだ、むしろ純粋に家畜衛生的な技術上の観点から心配があるから、慎重にやっているんだというお答えをしてきたわけでございます。さすが農林委員会でございまして、家畜衛生と畜産振興の立場から、いろいろ心強い御意見を私ども賜わりまして、実はほんとうに意を強ういたしたわけでございます。  いま畜産局長が申し上げましたことで、先生は何か畜産局、農林省が、ほんとうに日本の農業というものの将来の成長産業である畜産振興について、何かこう消極的なような御印象で質問がありましたけれども、逆でございまして、私どもは畜産にはこれからも一そう力を入れてまいりたいと思います。  ただ、いろいろ各方面からの要請もありまして、口蹄疫をほんとうに心配のないようにする措置がないだろうか、そういうようなお尋ね等もありましたので、いま申し上げましたような点についていろいろ検討し、これが受け入れられればその点の心配はほとんど防遏できるんじゃないかという検討をしている、その検討の内容について御報告を申し上げたわけでございまして、そういうふうに決定してどんどん入れるんだというような誤解をしないようにひとつしていただきたい。私、最後に念のため申し上げます。
  111. 柴田健治

    ○柴田委員 次官わざわざ御答弁願ったのですが、私たちの解釈は何も輸入に反対しておるわけじゃない。輸入するにしてもあらゆる関係機関に納得させなければならないし、同時にまた、国内の畜産体制というものをどう築くか、これから論戦しなければならぬし、ことしの予算を見ても、ちょびちょびふやして百二十億やそこらの金ですが、片一方、膨大な金を使っているところもある。百二十億くらいでほんとうに畜産が振興できるのか。また、農林省が繁殖育成センターをやっておるが、もうかっておるかどうか、まだまだ論戦しなければならぬところはたくさんある。それらの輸入肉の問題について、農林委員会資料でも一ぺん出されたらいいのです。一回も出していない。要求しないほうも悪いんだけれども、何も出してこない。結局、一致協力体制というものができていない。論戦はまだこれからなんです。国会の代表質問で、予算委員会でどういうようになったか知りませんけれども、私たちは農民の立場で、われわれも農業団体に所属しておるんだから、やはり真剣に考えなければならぬ。そういう立場でお尋ね申し上げたので、論戦はいずれ次の機会に……。
  112. 丹羽兵助

    丹羽委員長 午後二時に再開することとし、これにて休憩いたします。    午後一時十三分休憩      ————◇—————    午後二時十一分開議
  113. 丹羽兵助

    丹羽委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  休憩前の会議に引き続き質疑を続行いたします。樋上新一君。
  114. 樋上新一

    ○樋上委員 私は、四十年以来くさくて食べられないと消費者からの苦情が相次いで出ている異臭米が、四十三年産の新米からも頻発しているということを聞いておりますが、これに対して、政府はこの実情を掌握していらっしゃるかどうか。また、この被害発生状況等について、年次別具体的に説明を願いたい。異臭米は、ただ単にくさいだけではなく、これを長い間食べ続けていると吐きけや目まいがする。そして、場合によっては精神錯乱も起こすというところまでいきかねないというような、人体の生命にかかわるような問題でございますので、この点をどれだけ掌握されて、どれだけの手を打っておられるか、この点について御説明を願いたいと思います。
  115. 田中勉

    ○田中(勉)政府委員 異臭米の発生の原因その他については、食糧庁以外に農林省全体としても、生産担当の部局等で関係がございます。またこの件につきましては、厚生省関係におきましても関心のある問題でございます。  一応、食糧庁の立場から申し上げますと、先生いま御指摘ございましたように、大体においのする米で、いわば食糧庁がお米屋に売りまして、配給上いろいろ問題になりましたのは、大体主として四十一年産米でございます。四十一年産米につきましてかなりの県から、そういう発生の苦情がございまして、どうも配給にのせにくいというようなことがございました。  そこで、その原因等につきましては、農林省の中においてそれぞれの研究機関もあるわけでございますので、そこで本腰を入れて検討してもらう一方、私のほうといたしましても、この異臭米がはたして人体にどういう影響があるかということもあわせ検討願ったわけでございますが、農林省のその当時の、四十一年産米についての検討の結果では、人体についての影響というものはないというように判断をされましたので、配給上支障のないものにつきましては、これを配給にのせたことは事実でございます。  何ぶんにも異臭米でございますので、食用その他の面においてやはり配給上問題があるというような米が、政府手持ちの中に確かに出てきました。その米の処分につきましては、配給不適格ということで処理をいたしましたのが、四十一年産米で大体九千三百トンばかりございます。大体その所在地の県を申し上げますと、静岡、愛知、京都、大阪、兵庫、和歌山、高知と、これらの諸県に在庫している米で、大体九千トン近くのものを配給不適格ということで処理をいたしました。   〔委員長退席、三ツ林委員長代理着席〕  この場合に、処理の方法といたしましては、お米屋さん以外のいわば原材料、お米を原料とするようなそういう原材料の方面においての需要先に向けまして、入札売却をいたしたわけでございます。  これが四十一年産の現実に処理をいたしました結果でございますが、明けて四十二年産米につきましては——なお、これらの米の現地における発生の追跡調査とかいろいろなことを、生産担当の人たちも含めましていろいろ検討してもらったわけでございますが、引き続いて四十二年産米につきましても、やはりにおいのする米が出ている現状があるわけでございます。  このにおいといいましても、一々一俵一俵全部を悉皆的ににおいをあれするわけにはまいりませんですが、大体そのにおい米が出たような地域の米につきましては、一応私のほうはマークをいたしまして、なお、そのにおいの米が配給上どの程度まで処理できるかどうかというようなことで、いまその処理につきましては、一応配給にそのままのせることなく隔離をいたしまして、せっかくこまかい分析をしておるというような現状でございます。  四十二年産米につきまして、いま在庫県で私のほうが一応把握しておりますのは、秋田、神奈川、富山、静岡、愛知、広島、大阪、こういう県に相なっておるわけでございます。
  116. 樋上新一

    ○樋上委員 それはマークして在庫にそれがある。しかし、これの原因は何か。この異臭米になった原因の追求を私はお聞きしたいのですが、その点をお聞かせ願いたいと思います。
  117. 田中勉

    ○田中(勉)政府委員 概括的なことは、食糧庁の段階で申し上げるのはちょっといかがかと思われるわけですが、原因につきまして、まず四十一年産米のときにおきましては、農林省の中におきまして農業技術研究所、また食糧研究所、それから生産担当の農政局全部一応総合いたしまして、現地における実態調査を、生産から収穫、保管に至るまでの追跡調査をいたしたわけでございます。その追跡調査の過程におきまして、いろいろ栽培上あるいは農薬との関連がないかどうかというようなことも、もちろん検討の中にのってきていることも事実でございますが、何ぶんにも異臭米が、どういうような原因でにおいがするかというような分析がなかなか確定されておりません。  たとえば、農薬というようなものに一つの焦点をしぼってみました場合におきましても、農薬の残量が、お米の中にある量というものがきわめて微量であって、そのことから、すぐ農薬だということを断定するわけにまいらぬわけでありますが、いまのところまだ、これが異臭米の原因実体であるということについて、確定した一つ調査結果が出ておらぬわけでございます。  引き続いて四十二年産米につきましても、先ほど申し上げましたように、なお各地においてそういう米が出ておる現状でございますので、さらに追跡調査を、いませっかくやっているという段階であります。
  118. 樋上新一

    ○樋上委員 この件については、富山県の農業試験場におきましては、昨年春より異臭米の再現試験を行ない、県の農業水産部は十二月の九日にその結果を発表しております。  原因は幾つかあげられていますが、その中で、特に有機燐系の農薬でありまして、これはいもち病の防除剤でESBP、これを使用した場合に多く発生しているということが実験的に確かめられた。さらにIBP、EDDP剤も疑わしいと富山県の農業試験場の試験結果を発表しておるのですが、この富山県の農業水産部の発表と、農林省はどういう違った見解を持っていらっしゃるのか、これを信用されるのかされないのか、この点お伺いしたいのです。
  119. 川井一之

    ○川井説明員 富山県で発表されました直後に、富山県から、富山で行ないました異臭米の再現試験の中間発表の内容につきまして、向こうの担当者から簡単な連絡を受けたわけでございます。  それによりますと、においが生ずると思われる幾つかの要因を再現いたしまして、それと結果のにおいとの関係はどうかということを試験したものでございますが、なまわらを十日以上多量に堆積した場合、においの発現率が高い、あるいはどろ水のたまったところに稲を五日以上堆積した場合に強いにおいが認められる、あるいは灯油がもみと接触した場合に油くさくなるという問題、さらに農薬については、有機燐剤の一部について異臭との関係が認められたというような問題につきまして、結果の報告があったわけでございますが、富山県のそのときの報告はごく中間報告で、概要の一部ということでございまして、富山県に対しまして、目下その試験研究の詳細な結果の報告資料を、現在求めているという状況でございますが、まだ最終報告は手元に届いておりませんけれども、そういう状況でございます。  それから、それとは別に農林省におきましても、この四十二年産米のうち、異臭と関係があるというふうに現在疑われております一部の農薬も含めまして、主として微量化学分析を行なっている状況でございます。この結果と、さらに富山県からの詳細な報告の結果を待ちまして、その問題の検討、今後の措置というものを考えてまいりたいという状況でございます。
  120. 樋上新一

    ○樋上委員 この有機燐系殺菌剤でございまするが、これによる異臭米については、四十一年五月に国会でも取り上げられておる。そのときに農林省は、原因の究明を約束したのですけれども、その後、結論らしいものは今日に至るまで出ておらない。これだけ富山県がやっておるのに、それを取り上げようとしない。今日に至るまでその結論らしいものを出しておらないということは、私は政府は怠慢ではないか、こう申し上げるのですが、その点はどうですか。
  121. 川井一之

    ○川井説明員 ただいまお話しのございましたように、四十一年の産米につきまして、一部の地方で異臭米の疑いの持たれたものが発生いたしたわけでございます。これにつきましては四十二年の三月に、農林省の関係局及び試験研究のお世話をいたしております技術会議が一応検討いたしまして、さっそくその現地調査を計画したわけでございますが、これにつきましては、先ほどお話があったわけでございますが、一応異臭米と思われるものの産地及び消費地、つまり産地のものと消費地のもの、両方からサンプルを取りまして、約百四十三点のものにつきまして、ます食糧研究所で、強いにおいのあるものとないもの、及びその強いにおいのあるものの要因は何かという点を検討するための官能試験を行なったわけでございます。その官能試験の結果、特に強いにおいのあるものにつきまして、そのにおいの分析というものは、まだ科学的には確立されない状況でございますけれども、その中でも一つの要因が、あるいは農薬にあるのではないかという疑いもありましたので、これにつきましては、いまの微量化学分析法である程度分析できるということもございまして、国の研究機関におき産して、特にその中のにおいの強いものにつきまして分析を行なってあります。  さらに、その分析結果だけでは要因が判定できませんので、それぞれのサンプルが農家でどういう栽培法をとられたか、あるいはどういうような農薬の散布をやられていたか、さらにはそれを刈り取ってからどういうような乾燥方法、あるいは貯蔵方法を行なっておるかというような、生産から保管に至るまでのいろいろな条件を追跡調査いたしまして、そういう追跡調査の結果とその分析結果、あるいは官能試験の結果というものを総合的に検討いたしたわけでございますが、一応農薬残留——農作物の中には、農薬を散布いたしますと、どうしても若干微量のものが残るわけでございますが、これらのサンプルにつきましても、農薬残留量はごく微量のものは認められたわけでございますけれども、それとにおいの強いものとの関係をかなりこまかく検討したわけですけれども、残留量とにおいとの関係につきましても、明らかな相関が認められなかった状況でございます。  これが四十一年の結果でございますが、引き続きまして四十二年にも、各地でいろいろそういう異臭米が出ましたので、同じように食糧庁と御相談いたしまして、国の研究機関で、四十一年度産米について行なったと同じような方法で、現在分析し、検討を遂行中でございまして、この異臭米の要因確定という問題につきましては、方法論上もきわめておくれておると申しますか、なかなかむずかしい問題もございますので、必ずしも実体を解明するに十分であるとはいえませんが、関係研究者としてできるだけその面では努力いたしておるわけでございます。
  122. 樋上新一

    ○樋上委員 政府の研究機関で行なっておりますのは、いまおっしゃいましたサンプル試験ですね。各地からのサンプルにより行なっておるということだが、おのおの気象条件、農薬の散布、そういう状態も、ただサンプル試験だけによってはたして正確につかめるかどうか、私はこれは非常にむずかしいことだと思う。やはり再現試験をやらなければならないと思うのですが、富山県ですら、この再現試験を行なうのに五十八万円という予算をかけてやっておる。ところが、政府はただサンプル試験だけやっておって、そうした再現試験はやっておらない。やろうと思えば設備も十分整っておる政府が、県でさえこれくらいやっておるのになぜやらないのか、ここを私は申し上げるのでございます。  技術会議で聞いたところ、四十三年の十一月から食糧庁に頼まれて、サンプルを送ってもらってサンプル試験をやっておる。それから技術会議では、再現試験は時間と金がかかるからやらないのだ、やったからといって条件が違うのだ、こういうことを言っておるのですが、こういうことがあるのですか。
  123. 川井一之

    ○川井説明員 ただいま、再現試験がなぜ国で行なわれないかという趣旨の御質問があったようでございます。技術会議といたしまして、時間と金がかかるからということは毛頭ございません。事実これにつきましては、これまで疑わしい農薬につきまして、一応再現試験を実行したことがございます。そういう経緯を見ましても、再現試験を全然やらないということではないわけでございまして、これまでも一応問題になったものにつきましては、一部の研究機関でそういう再現試験を行なって、なおその結果についての検討をしてまいっておるという経緯がございます。
  124. 樋上新一

    ○樋上委員 技術会議の結論は四月ごろに出るのではないかということで、その結論がまだ出ておらない。四十一年に引き続き毎年これは起こっているのでして、多くの産地県が農林省からの行政指導もないままに出荷して、消費地においてこういう非難の声が起こっている。この対策に対して政府は非常に消極的である。その責任というものはやはり政府にあるのだ、行政指導の面は政府にあると私は思うのですが、その責任の所在はどこだとおっしゃいますか。
  125. 川井一之

    ○川井説明員 私どもの研究機関では、いろいろな現象の原因の解明及びそこから出てくる対策の可能性というものを検討する立場にございまして、この異臭米関係につきましても、一部農薬等の疑いがあるということで、現象の解析、あるいは方法論の確立、あるいはその結果についての検討というものは実施いたしておるわけでございます。  その研究の成果を、どういうふうに一般に役立たせていくかというあたりの問題は、これまた指導上ございますけれども、技術会議といたしましては、そういう指導上必要な資料は、できるだけこれを整備していくという考え方で進めておるわけでございます。
  126. 樋上新一

    ○樋上委員 消費者からボイコットを食った異臭米の処理がどのように行なわれているか、これは食糧庁にお伺いするのですけれども、この処理方法に遺憾な点があるのじゃなかろうかと私は思うのです。先ほどちょっとお伺いいたしましたら、一部は工業用に回すのだとおっしゃっていますが、まだ在庫はある。  そこで、私の申し上げたいのは、その異臭米が人体に影響してくる。ただくさいだけではない、人体に影響してくるのだということになるならば、かりにそれを工業用に回しても、そこにまた残留分があって、もち菓子というようなものに使われるならば、そういうところにまた影響がないか。この点はどうですか。
  127. 田中勉

    ○田中(勉)政府委員 異臭米の取り扱いにつきましては、食糧庁の段階では、四十一年産米でとった処置が最初であるわけです。四十二年産米については、この処置をどうするかということは、なお今後に処理をいたしたいと思っているわけでございますが、四十一年産米の処理にあたりましては、先ほども申し上げましたように、農林省におきまして各局それぞれ研究機関合同で調査を行ないまして、慎重に調査を行なった結果、その原因の究明につきましては確定的な結論は出なかったわけでございますが、どうもこの米につきましては、農薬が若干残っておるというようなことが一応検出されたわけでございますが、この面から見まして、人体への影響はないという判断が、その当時農林省の中に一応結論として出されまして、私どもといたしましては、配給上これは人体に害があるものではないが、しかしながらにおい等によって配給することは適当でない、こういうものにつきましては、特にこの処理にあたって、このにおいの強いものにつきましては、配給以外の、先ほど申し上げました工業用の原料等に使っているわけでございます。  その処置につきましては、先ほど御指摘もございましたように、もし毒性なり人体に影響ありというようなことになりますれば、工業用ということに限定いたしましても問題はあろうかと思うわけでございますが、当時の四十一年産米について、農林省各局なり研究機関の総合的な検討の結果は、人体への影響はないものというぐあいに一応判断をいたしまして、その結果とりました処置で、なお大事をとりまして、においの強いものにつきましては、食糧の配給以外の工業用の原料として処理をする、こういうことに処置をとったわけでございます。
  128. 樋上新一

    ○樋上委員 私のほうの見解といたしましては、この異臭米が人体に影響があるかないか、こういう点につきまして、各県においても自前で、その原因調査に乗り出しておるのですが、それは農薬の有機燐糸のもので、殺虫剤としては効果的であるけれども、その反面には人畜に対する毒性も多い。だからにおいだけではない。そういうので、農薬の使用規制についてやらなければならないと各県は踏み切っておる。しかし、逆に幾つかの県では、使用規制の措置をとった農薬を他の県では奨励している実情がある。農林省は、各県がここまで自主的に行なっているのに何ら行政指導がない。それなら農林省は、人体に関係ないというのだったら、各県で行なっておるのを全部だめだといってやめさせてしまえばいい。各県で行なっておるのには、これは農薬の規制をしなければならないという非常に熱心なものが出ておるのですね。  だから、有機燐系の農薬は、殺虫剤としては効果があるけれども毒性も多い。そこで、この農薬の許容量について私は説明を願いたい。またその残留度はどの程度か、この点についてお伺いしたいのです。
  129. 下村孟

    ○下村説明員 お答え申し上げます。  米につきましては、まだ許容量が策定されておりません。
  130. 樋上新一

    ○樋上委員 いま私が申し上げましたのは、県でもうすでに研究されておるのでして、そしてまた野菜に対する第二次障害も起こっておる。その稲わらを堆肥に使った場合にも起きておる。そして堆肥による被害状況も、こういうぐあいにどんどん発表されておるのですよ。ここにいろいろ、第二次障害というのはこういった結果になっているということが出ている。わかりますか。これは全部県で行なっておるところの結果なんです。異臭米に使ったこの殺虫剤が第二次障害を起こしておる、野菜にまで起こっておる。それほど重大になっておるのに、先ほど来から聞いておりますと、あまりたいしたことはない、異臭米の処置というようなことについても、何ら重大な結果にはならないというように聞くのですけれども、私はこの残った、いま在庫されておる異臭米が、普通の配給米の中にまじっていくのではなかろうか、こういうことを心配するから、これから薬剤のことについてもっと深く質問したいのですけれども、米については研究しておりませんというだけではなしに、もう少し防除剤として使われておったことに対して検討が加えられておらないのか。どうですか。
  131. 下村孟

    ○下村説明員 厚生省といたしましては、昭和三十九年から実験を開始いたしまして、この残留許容量をすでにきめておりますものが四品目ございます。ただいま御質問の米につきましては、ただいま鋭意研究中と、こういうことなのでございます。  ただいま調査をしております品目は米、これが第一点でございます。その次にイチゴ、キャベツ、大根、緑茶、ナシ、こういう種類につきましてただいま調査を実施中でございます。で、近いうちに調査の結果がまとまるものと考えております。
  132. 樋上新一

    ○樋上委員 それでは、農薬による事故死、中毒にかかって死亡した数が私は相当あると思うのですが、この点発表していただきたいと思います。
  133. 下村孟

    ○下村説明員 ただいままでのところ、残留農薬による事故死はないようでございます。
  134. 樋上新一

    ○樋上委員 では、農薬による他のことで人体に影響し、そして事故死になっておるものがあるはずですが、最近におけるところのその数を発表していただきたい。
  135. 下村孟

    ○下村説明員 昭和四十三年におきます農薬による事故発生の状況を、簡単に御報告申し上げますが、まだ完全に各県から報告が届いておりませんために、この報告は最終報告ではございません。中間報告のようなものと考えていただきたいと思います。  農薬を散布中に中毒を起こしました数は百四十件でございます。死亡が十一件でございます。中毒、死亡合計いたしまして、散布中の事故が百五十一件、こういうわけでございます。その次に、農薬を誤って使いまして事故を起こしました例が若干ございます。誤用いたしまして中毒にかかりましたのは二十五件でございます。死亡いたしましたのが二十四件でございます。計四十九件の事故が発生しております。それから自殺、他殺、これに使われましたものが、中毒といたしまして百二件、それから死亡として七百二十六件、計八百二十八件、こういう数になっております。  したがいまして、農薬を散布中、それから誤って使う、それから自殺、他殺に使う、こういう事故を全部含めまして、計千二十八件の事故が起こっておりますが、ただし、先ほど申し上げましたように、この数は完全な集計ではございません。
  136. 樋上新一

    ○樋上委員 これは何年から何年までですか。
  137. 下村孟

    ○下村説明員 四十三年でございます。
  138. 樋上新一

    ○樋上委員 四十三年でこれだけの事故が起こっているのですね。私は、四十三年だけでもこれくらい起こっているのですから、さかのぼってみれば、相当な農薬による事故があったと思う。これはあまりにも検討がなされていない。  この農薬というものが人体に及ぼす影響というものは、有機燐系の農薬では、特に〇・一ないし〇・三グラムで死亡するとされておるようです。また、長い期間食べた人体にも影響があらわれて、吐きけや目まいを起こして、精神錯乱も起こってくる、こういうことが、研究の結果ある一部に発表されておるのです。それを重要視されておらないところに私は問題があるのじゃないか、こう思うのです。  大体、異臭米が人体に対し有害でないという保証がはたしてできるのかどうか。その研究結果は確実なものが出ておるのか。富山県の試験場の話によると全然違う、こう私は思うのです。先ほどから人体に影響はないと言うけれども、その研究結果は、どこへ出しても恥ずかしくない研究結果が出ておるのですか。
  139. 下村孟

    ○下村説明員 ただいま、人体に対する影響はどうかという御質問の内容と承りましたが、実は厚生省といたしまして、昭和四十一年の五月に静岡県下で異臭米の事故が起こりまして以来、さっそく検体を収去いたしまして、これを国立衛生試験所のほうで試験をいたしたわけでございます。その試験の要点といたしましては、二点ございます。   〔三ツ林委員長代理退席、委員長着席〕 第一点は、化学的な試験でございます。第二点は、動物実験でございます。  第一点の化学的な試験につきましては、においが非常によく似ております農薬、それと真菌類、こういうものにつきまして化学的な検査をいたしましたが、その結果は、全く農薬は検出されておりません。また、真菌類につきましては、一般の酵母でございますとか細菌、ペニシリウム、こういった菌が比較的多く検出されましただけで、そのほか特にあげて問題にするようなものは見つかっておりません。  第二点の動物実験でございますが、これは、ただいま国立衛生試験所におきまして、動物を使いまして鋭意実験中でございます。
  140. 樋上新一

    ○樋上委員 農薬の登録許可の方法はどのように行なわれているのかということを伺いたいのですが、効果面だけの評価で行なっているのではないか。農業生産、国民の保健衛生の見地から見た場合を考慮しているのかどうか。  また、農林省、厚生省の責任分野がはっきりしていないようだが、これは連係を保っているのかどうか。いわゆる人体に対する問題は厚生省になっているようだが、具体的に農林省との間ではどのようになっているのか、この点をお聞きしたい。
  141. 田所萠

    ○田所説明員 ただいまの、農薬の登録問題につきましてお答え申し上げます。  農薬の登録検査につきましては、申請書の提出に際しまして、その農薬の品質、薬効、薬害及びその農薬の毒性に関します資料提出をメーカーから求めまして、慎重に検査を実施しておるわけでございます。なお、毒性のあるものにつきましては、登録に先立ちまして厚生省に連絡をいたし、毒物及び劇物取締法による検定をまちまして農林省としては登録を認めておるわけでございます。  特に、最近残留問題等が起こっておりますので、新農薬の問題につきましては、残留毒性について特に厚生省のほうと連絡をとりまして試験を行ないまして、その結果によって登録をするということにしておるわけでございます。
  142. 樋上新一

    ○樋上委員 農政局長は、「米麦の品質改善の指導について」という通達で、「稲作後期の病虫害防除に際しては、適期かつ適確な防除に留意し、農薬の散布が異臭米発生の原因として疑いを持たれないよう指導すること」こう述べていますが、どのような指導をしているのか、具体的に説明願いたい。また、これではくさいものにふたをせよという考えで、前向きでないと私は思うのでありますが、農林省は農家や消費者のほうを向いているのか、それとも農薬メーカーのほうを向いているのか、こういう点に私は疑いを持っておる一人でございますが、明確な御答弁を願いたい。
  143. 田所萠

    ○田所説明員 異臭米につきましての農薬の関係につきましては、先ほどから御質問がございまして、それぞれ関係局のほうから答弁があったわけでございますが、異臭米の原因につきましての農薬の関連につきましては、まだはっきりしておりません。農薬に異臭米の疑いがあるというようなこともいわれてはおりますけれども、ただいまの技術会議並びに厚生省のお話を聞きましても、そういうふうに原因がはっきりしておらないということでございます。  しかし、われわれ指導をする立場といたしましては、そういう疑いが一応持たれておるというようなことで、それが原因というふうにはまだはっきり考えておりませんが、疑いがあるというようなことで、生産奨励の立場からは、そういう農薬を使うときには、特に収穫前にそういうものを使うということについて問題が起こる可能性があるのじゃないかというようなことで、これについては、そういう末期におきます農薬の使用については特に留意をするように、農薬の散布につきましては、適期防除ということで実施をするようにということを指導しておるわけでございます。  なお、この指導通達は、何も農薬が異臭米の原因であるということがはっきりしたということで指導しておるわけではございません。
  144. 樋上新一

    ○樋上委員 非水銀糸殺菌剤の問題は、昨年五月から六月にかけて各地で報道されているように、農薬により野菜等の生育障害がひんぱんに起こっている。しかし、あなたはまだそれははっきりしていないとおっしゃるのですが、あれは昨年の六月国会でも取り上げられて、政府も十分検討すると答弁をしております。  また、四十三年の六月二十七日付の農林省農政局長及び蚕糸園芸局長名で、「野菜栽培などのため、稲わらを堆肥、赤土または敷わらなどに利用されることとなる稲については、今後のいもち病防除にPCBA剤の散布をさけること。」という通達が出されたが、現実には、稲の生産農家と野菜栽培農家とは別な場合が多い。だから、そういうことがはたして守られているのかどうか。また、「PCBA剤の散布をさける」と記しているが、ことしはどうなのか。
  145. 田所萠

    ○田所説明員 先生の先ほど来の御質問によりますと、異臭米につきましては有機燐糸剤が疑いがあるのじゃないかというようなお話でございますが、いまの野菜の問題は、有機燐系剤ではございませんでPCBA剤、要するに塩素系の農薬でございます。それで、この塩素系の農薬につきましては、ただいま先生の御指摘のように、昨年、第二次障害といたしまして野菜その他に局地的に若干の被害が出ましたので、農林省ではさっそく現地調査その他専門官を派遣いたしまして調査をいたしまして、その後その対策につきまして研究をいたしておるわけでございます。  なお、奨励担当の立場といたしましては、さっそくその問題になりました農薬につきましては、販売中止また製造中止というようなことで対処してきておるわけでございまして、それ以後、その農薬につきましては販売を行なっておりません。
  146. 樋上新一

    ○樋上委員 第二点に、「PCBA剤を散布した稲わらを用いるときは、対象とする作物に影響の生じないことをテストしたうえで使用すること」と記しておりますが、このテストは、どこでどのように行なわれたか、この点を……。
  147. 田所萠

    ○田所説明員 現在の時点におきましては、すでにPCBA剤がある程度使用されたあとでございまして、そういうものを散布した稲わらというものが農家のほうにあるわけでございます。そういうようなことで、PCBA剤を散布した稲わら全部から被害が出ておるわけじゃございませんが、そういう危険性が確かに現実問題として起こっておりますので、それを使う場合におきましては、そのPCBA剤を使った稲わらは、実際に被害が出るかどうかということをテストして使用するようにということを、県を通じまして農家に指導をいたしたわけでございます。  なお、そのテストのやり方につきましては、技術会議のほうでやり方を考えまして、その具体的な方法を各県に指示しておるわけでございます。
  148. 樋上新一

    ○樋上委員 この農薬は薬事法、毒物及び劇物取締法、同施行規則等の諸法規に適合しておるのですか。
  149. 下村孟

    ○下村説明員 ただいま御質問のPCBA、それからESBP、この二つのものは普通物でございます。
  150. 樋上新一

    ○樋上委員 生育障害の原因がPCBA剤であると、農林省は四十四年の二月非公式に発表いたしましたね。このとき国会で追及したのはPCBA剤だけであったが、PCMN剤も発表しておるのですが。これはどうですか。
  151. 下村孟

    ○下村説明員 やはり普通物でございます。
  152. 樋上新一

    ○樋上委員 農林省植物防疫地区協議会におきまして、この農薬は使用しないように指導してほしいと、口頭ではあるが中間報告がなされておるが、農薬会社に対しては、農薬登録票の交付を取り消したかどうか、この点をお伺いしたい。
  153. 田所萠

    ○田所説明員 まだ取り消しておりません。しかし、製造並びに販売の中止を命じております。
  154. 樋上新一

    ○樋上委員 取り消していなかったならば法律に違反しない。そのため、メーカーは販売可能である、こういうぐあいに解していますよ。農薬会社に対しては口頭でおっしゃっておるのでしょう。ですから農薬会社としては、決して販売中止を命じられているとは思っておらない。口頭だけであったら、これは販売されていきますよ。これを知らずに農家のほうはどんどん使っていき、そうして第二次障害が出てきた。この責任はどこで持つのですか。
  155. 田所萠

    ○田所説明員 その事故のあとは全然販売しておりませんので、農家のほうで使うということはあり得ないと思います。  なお、登録取り消しの問題につきましては、現在、農林省の技術会議のほうで、その問題につきましてのいろいろの条件がございますので、それを現在究明中でございます。その原因の究明を待ちまして、正式な取り消しということにしたいということを考えておるわけでございます。
  156. 樋上新一

    ○樋上委員 最近、厚生省の薬の汚職が新聞に報じられておりますが、この点について、農林省のほうはだいじょうぶかと私は心配しておるのでございますが、だいじょうぶですな。この点いろいろお伺いしたいことがあるのですが、どうですか。
  157. 田所萠

    ○田所説明員 だいじょうぶでございます。
  158. 樋上新一

    ○樋上委員 それではお伺いいたしますが、農家が甚大な被害を受けたら、その損害の補償はどこがするのか。前に山梨県のブドウは、武田製薬がある程度損害をもったけれども、今度こういう第二次障害で盛んに障害が出て、それを販売をさせないように口頭で言っておるけれども、販売をした場合は、結果はどこがその損害をもつのか。
  159. 田所萠

    ○田所説明員 先ほどから申し上げておるように、PCBA剤につきましては販売をさせないようにしておりますので、そういう被害は出ないというふうに思っております。
  160. 樋上新一

    ○樋上委員 そういうようにおっしゃっているのでしたら、ちょっと老婆心ながらお伺いしておきたいのですよ。今度汚職が起きていろいろ新聞に報じられておりますところの厚生省と業界の黒いつながり、これは最初は、佐藤製薬というところが厚生省に入れておって、そこで汚職が出ておる。そうして、そこからだんだん飛び火して、科研化学というところ、ここが農林省のほうに農薬を入れておるのですが、その科研化学にも波及して、「新薬汚職贈賄の課長取調べ」ということが出てきた。  ところで、この科研化学というのが、農林省のほうへ農薬を入れているということは御承知ですか。
  161. 田所萠

    ○田所説明員 農林省に農薬を入れているということは、おそらくないと思いますが、試験場その他で、実際に試験をするための資材として、いろいろな農薬を購入しておると思いますけれども、それは一般の資材購入でございまして、ちょっと先生の、納めておるということがよくわからないのでございます。
  162. 樋上新一

    ○樋上委員 いや、間接にその農薬を許可しているのです。農薬の許可という問題ですよ。その中でもいいか悪いかという許可をしているわけですよ。それは農林省でしょう。違いますか。
  163. 田所萠

    ○田所説明員 それは農薬取締法によりまして、農薬の登録をすれば販売できることになるわけでございます。
  164. 樋上新一

    ○樋上委員 だから、この科研化学が農林省に入れておって、登録許可をされている。その登録許可されているところに、科研化学とこういう農薬会社と結託した問題が起こっている。だから、この農薬を許可するときには絶対そういうことはないか、こういうふうに私は申し上げている。  それで、専門的な話をしますと、この科研化学は三種類の農薬を納めているのです。ポリオキシンという果樹殺菌剤、第二はブラストサイジンS、これはいもち病の殺菌剤、三つ目はカスガマイシソというのを納めている。これは、他の農薬会社にこの科研化学からやるのだけれども、このポリオキシンといういま私が申しております果樹に対する殺菌剤には、非常に疑わしい問題があるのです。それはどういうことかといいますと、初めに農林省が許可したときには、その成分がポリオキシンB5程度になっていた。それを、次にまた訂正して、ポリオキシン複合剤Bとして訂正されて売られている。ここに問題があるのではないかと思うのですが、この点を……。
  165. 田所萠

    ○田所説明員 農薬取締法によりまして農薬は登録をいたしまして、その許可がおりれば販売ができるわけでございます。  それで、その許可をするところにそういうことはないかという先生の非常な御心配の御質問でございますが、農林省といたしましては、そういうことはございません。  なお、ただいまのポリオキシンの登録の問題についてでございますが、検査所の担当がおりませんので具体的なことはよくわかりませんが、農薬登録の場合におきましては、一応申請をいたしまして、そしてその薬効その他表示の試験データ、会社の出しましたデータと検査所で検査しましたデータが違っておったり、また取締法の条文に違反する場合におきましては、それに対しまして改良を命じたり、取り消しを命ずるということができることになっております。  それで、具体的な内容がよくわかりませんので、ちょっと申し上げかねますけれども、そういう面の何か改良申請をしたのか、登録のそういう取り扱いに問題があったのか、後日また十分調べまして御報告申し上げたいと思います。
  166. 樋上新一

    ○樋上委員 これは答弁はよろしいが、最後に一言だけ私は要望しておきます。これは、厚生省も農林省も両方聞いておいてほしいのです。  農薬事故の実態という厚生省の調べによると、農薬による事故死は、過去十年間に八千人をこえている。ところがこの数字は、保健所を通じて報告されたものだけで、実際には氷山の一角といわざるを得ない。  また、日本農村医学会の調査によると、農薬使用者の四二、三%が中毒症状を訴えていると発表されたが、この率からすれば、全国の農薬使用農家を四百万戸と見て、年間百七十万の人が被害を受けていることになる。  いま、全国至るところの農村で、三十代、四十代の働き盛りで、中風患者のように廃人同様になって呻吟している者が続出しているが、これらは、農薬に接して軽い中毒症状を繰り返しているうちに、農薬の毒性が神経系統、細胞組織、骨格、臓器、血液等を侵して、ついに慢性中毒になり果てた悲惨な姿になっているのである。  そこで、「農薬散布で死亡 三人重症」これはある新聞に出ておった記事であります。埼玉県下でのできごとですが、マスクなど完全装備であったのに、散布した農薬が霧状になって口から吸い込まれて中毒を起こし、一人が死亡し、三人が重症を受けた。また愛知県下でも、三人が中毒、うち一人死亡、二人重症という農薬事故があった。この両者とも完全装備で、農業指導員が監督しており、つまり農林省の指導による共同防除作業中に発生した事故である。このような農薬事故は、二十数年間も全国のどこかで毎日のように繰り返されてきていて一決して珍しいことではない。  ところが、不可解なことには、これらのすべてが個人的な不注意として片づけられ、被害者の一人負けとして処理されている。はたしてこのような農薬事故が、被害者個人の不注意として葬り去られていいものであろうか。  私は、ここで守られていない農薬取締法について最後に申し上げたいが、農薬取締法を見ると、農林大臣は、農薬の製造業者から農薬登録の申請があったときは、農薬検査所の職員に農薬見本の検査をさせ、その農薬が危険防止方法を講じた場合でも、なお人畜に著しい危険を及ぼすおそれがあるときは、農林大臣は農薬の登録を保留して、申請者に対して申請書の記載事項を訂正し、または農薬の品質改良を指示することができるとなっている。これは農薬取締法第二条、第三条の要約です。つまり、農薬検査所の職員が農薬見本の検査をした時点で、人畜に対する農薬の危険度は予知できることになっているので、当然人畜に危険な農薬は品質改良を指示すべきであり、危険防止方法を講じた上での死亡事故が発生するような危険な農薬は登録されないことになっている。指示することができるということは、指示しなくてもよいということでは決してないのであります。したがって、完全装備をしていての農薬事故は、農林大臣が人命の危険と安全を左右する権限がありながら、農薬取締法を守らなかったために発生したいわゆる致死事件であって、この一連の因果関係から見て、こうした致死事件が刑法上不問に付されていることは、どうも納得ができない。  農薬禍はだれの責任かと、昭和四十一年二月二十五日の国会で、わが公明党が農薬禍の問題を取り上げ、政府の責任を鋭く追及したことがあったのです。それで初めてその農薬禍は社会問題として取り上げられた。また同年の三月十六日に、参議院の予算委員会で公明党の宮崎正義議員が、農薬によってとうとい人命を失った責任はだれがとるのだと質問したときに、農林大臣はこう言っているのです。「だれが責任をとるかということになりますと、この奨励——奨励と申しますか、これを奨励しておりまする農林大臣が責任を負うています。」と答弁しておる。この答弁でも明らかなように、農薬禍は農林大臣の責任であって、被害者個人の不注意に帰して処理する性質のものではない、私はこう申し上げるのです。  まだまだありますけれども、時間の関係上省略いたしますが、先ほど来から私の質問いたしておりますのは、人命の上にこの農薬がいかに重大であるか、また第二次障害を起こしておるときに、政府はもっと真剣に、中間報告なんといってないで、どんどんと手を打ってやっていただきたい。同時に、この登録業者との忌まわしい問題が農林省のほうに波及しないように——これは厚生省の問題ですけれども、老婆心ながら私は申したら、だいじょうぶだとおっしゃっているので安心しておりますが、今後もこういう点に十分注意をしてやっていただきたいことを要望いたしまして、私の質問を終わります。
  167. 丹羽兵助

    丹羽委員長 斎藤実君。
  168. 斎藤実

    ○斎藤(実)委員 総合農政の一環として、昭和四十四年度予算に稲作転換奨励金として二十億の予算がつきました。それで稲作転換ということは、今度米が余った、そのために稲作を転換して他作物にこれを転換するということだろうと私は思うのですが、稲作転換をするようになったいままでの経過を、まず第一にお伺いしたい。
  169. 大和田啓気

    大和田政府委員 米の生産が、昭和四十二年に千四百四十五万トンという新記録を出しましたこと、それから昭和三十八年に千三百四十一万トンほどの米の消費がありましたものが、昭和四十一年には千二百五十万トンに消費が下がったこと、そういう事情によりまして、昨年の十月には持ち越し米が三百万トン程度できる。さらに昭和四十三年度におきまして、前年とほぼ同じ千四百四十五万トンという収穫がございましたけれども、四十二年の米の消費は千二百四十八万トン程度であったという、そういうことによりまして、ことしの十月末には五百七十万トン程度の米が持ち越されるであろうというふうに考えられるわけでございます。  ただ、このことに対しましては、昭和四十二年及び四十三年が異常な豊作であって、平年作であれば米の需給には問題ないではないかという御意見があるわけでございますが、私ども昨年の十一月に公表いたしました「農産物の需要と生産の長期見通し」によりますと、昭和五十二年におきまして、水稲の面積が昭和四十三年度の三百十七万ヘクタールと同じであるといたしますと、反収といいますか、十アール当たりの収量は四百四十五キログラムと平年作の場合に押えまして、陸稲も若干ございますから生産が千四百二十万トン程度になるであろう。それに対しまして需要のほうは、やはり依然として一人当たりの食糧用消費が減って、四十二年には一〇三・三キログラムという一人当たりの食糧用の消費が、昭和五十二年には九一・六キログラムと下がるのではないか。したがいまして、人口は毎年年率で約〇・九%ふえますけれども、また酒米等の需要は漸次ふえる見込みでございますが、そういうものをひっくるめまして、昭和五十二年における米の生産は千四百二十万トン程度、米の消費は千二百四十万トン程度で、平年作におきましても百八十万トン程度の供給過剰になるのではないか。さらに昭和四十四年で申し上げますと、これもかりに三百十七万ヘクタールという水稲作付面積が変わらないといたしますと、平年作で押えまして、生産は千三百六十五万トン程度になるのではないか。しかるに一方消費のほうは、依然として千二百四十万ないしせいぜい千二百五十万トンでございますから、過去において相当な持ち越し米があるということ、また十年先において相当の供給過剰があるということ以外に、当面のここ二、三年の問題といたしましても、平年作で百万トン以上の供給過剰があるではないかという、そういうことでございます。  したがいまして、米の生産がここまで至って需要をオーバーするということは、これは私ども関係者、学者を含めまして、何人も予想できなかったことでございますから、それだけに日本の農業のエネルギー、あるいは日本の農家の努力というものは高く評価さるべきものでありますけれども、しかし、この状態が現状のままいつまでもこういうふうに推移することはとても考えられないということで、あまり無理のない方法で徐々に、水稲の作付面積を他の作物に転換すべきではないかという、そういうことが今回の稲作転換事業の骨子であるわけでございます。
  170. 斎藤実

    ○斎藤(実)委員 そうしますと、約一万町歩でどれくらいの転換を見込んでおりますか。
  171. 大和田啓気

    大和田政府委員 四十四年度におきましては、もしも米の需給という面からだけ考えますと、二十万ヘクタールないし二十五万ヘクタールの水稲作付面積が多過ぎるということになりますから、二十万ヘクタールないし二十五万ヘクタールの稲の作付をやめてもらったらどうかという議論が当然出てくるわけでございます。  しかし、日本のように国土が狭く、また農家が営農耕地を非常に要求いたしておる国で、ただ稲をやめさえすればそれでいいというものではございませんで、稲をやめましても、そのあとに何かつくらなければ、農家自身も承知しないでしょうし、また国といたしましても、国土の有効利用あるいは農産物を二十四億程度も輸入しておる現在でございますから、できるだけあと作をつくるべきではないかということで、とりあえず四十四年度においては、一万ヘクタールという作付転換の面積を予算に計上いたしたわけでございます。  この一万ヘクタールの面積では、どういう土地が転換していくかということによっても当然違いますけれども、非常に低い生産力のところで転換が行なわれれば大体四万トン、非常に高いところであれば五万トン、その間であれば四万五千トン程度ということで、一万ヘクタールの作付転換によって、米の需給が直接に非常に好転するというふうには私ども考えておらないわけでございます。
  172. 斎藤実

    ○斎藤(実)委員 いま官房長のお話で、二十万ヘクタールないし二十五万ヘクタールが過剰であると言われた。昭和四十四年度では一万ヘクタールの転換になっておりますけれども、二十万ヘクタールないし二十五万ヘクタール転換させるとなれば、これは何年計画くらいで転換させるおつもりですか、その点についてちょっとお聞きします。
  173. 大和田啓気

    大和田政府委員 私ども、米の生産過剰の問題に対処して米の生産調整をいたします場合に、ただ作付転換だけということではございませんで、片方で開田の抑制ということも当然考えておるわけでございます。  それで、先ほども申し上げました五十二年の長期見通しによりますと、十年間で水田が大体三十万ヘクタール程度つぶれていくのではないか、そういうことでございますし、十年先の米の需給が、平年作において均衡するといたしますと、水稲の作付面積は二百七十七万ヘクタールあればいいわけで、昭和四十三年におきまして三百十七万ヘクタールあるわけでございますから、その差四十万ヘクタールということになるわけでございます。しかし、片方で三十万ヘクタールつぶれ、それから開田も若干はあるわけでございますから、差し引きいたしますと、大体十年間で二十万ないし二十五万ヘクタール程度の作付転換が要るのではないかという一応の計算はございます。  ただ、私どもが四十四年度の予算としてお願いをいたしております米の作付転換の政策は、十年間で何万ヘクタールを作付転換するための第一年度の計画として一万ヘクタールということではございませんで、年度計画なしの、四十四年度においてとにかく一万ヘクタールの作付転換をしようという考え方でございます。これは、ことしの作柄がどうなるかということも若干関係がございますし、あるいは作付転換の政策を農家がどういうふうに受けとめるかという問題もございますし、さしあたりは、四十四年度の問題として一万ヘクタールを考え、その受け入れられ方、あるいはその進み方を見て今後の長期的な問題と取り組んでいきたい、こういうつもりでございます。
  174. 斎藤実

    ○斎藤(実)委員 そうしますと、昭和四十四年度に限って一万ヘクタールの転換をする、農民がどういう反応を示すかそれによってまた今後考える、こういうふうに理解してよろしいでしょうか。
  175. 大和田啓気

    大和田政府委員 農家が作付転換事業に対してどういう反響を示すか、あるいはことしの作柄、米の消費事情等々いろいろな要件、あるいは開田の抑制ということがどの程度実現したかといういろいろな要素を勘案して、四十五年度以降のことはまたあらためて考えるということでございます。
  176. 斎藤実

    ○斎藤(実)委員 これは農家のほうでは、一応農林省の案についていろいろ論議をし、意見もまとめているようであります。それでこの資料によりますと、野菜、桑、果樹、サトウキビ、飼料作物、てん菜、こういうふうになっておりますけれども、これ以外のものについてはどうでしょうか。
  177. 大和田啓気

    大和田政府委員 私ども作付転換をすすめる場合に、需要についてあまり心配のないものという判断で農家と話し合いをするわけでございますが、いまお述べになりました作物以外でも、たとえば、地方によりましてイグサをどうするとかいろいろ問題があるわけでございます。したがいまして、その地方地方の実情もございますから、作物の種類を限定しないで、大体おもなものはさきにお示ししたものでございますけれども、地方地方の事情によって転換をすすめることが望ましいようなものは、県知事と地方農政局とで相談をしていろいろ取り上げていく、そういうつもりでおります。
  178. 斎藤実

    ○斎藤(実)委員 転換する場合、この機械、施設の導入等について助成する、こういうふうにもなっておりますけれども、この機械、施設というのは具体的に一体どういうことです。
  179. 大和田啓気

    大和田政府委員 たとえば、集団的に牧草を植える、あるいは田畑転換を始めるという場合には、当然土地改良をやって排水をする、それからトラクターを導入する、あるいはサイロを入れる、あるいは牧草の乾燥機を入れる、そういう問題になるだろうと思います。  ただ、私どもそれぞれの、作物についての大体の、いわばメニューというか、機械の種類を、こういうものではどうかということを示しますけれども、いわばセット方式というか、牧草を入れる場合、あるいは果樹を入れる場合、これこれの機械を入れなければいけないというふうに、あまりこまかく厳格には限定したくない。あるものは農家が持っているものもございましょうし、あるいはすでに補助金でトラクターを買っているという例もございましょうから、そこのところは実情に合わしてできるだけ無理をしない、要らないものを買わせるということのないようにいたしたいというふうに考えておるわけでございます。
  180. 斎藤実

    ○斎藤(実)委員 いま官房長のお話を伺って、実は私もそうであろうと思っておったのですが、農家のほうでは、トラクターとかそういった一連の機械を買わなければこれはだめなんだ、こういう感覚を持っておるわけですね。持っておる者に対しては別にこれを買う必要はない、こういうように理解してよろしいですか。
  181. 大和田啓気

    大和田政府委員 そのとおりでございます。
  182. 斎藤実

    ○斎藤(実)委員 これは大臣がきょういらっしゃいませんから官房長にお尋ねしますが、なぜ米が余ったかというと、米以外の作物には価格保証がない、米が一番安定しているというので、畑をつぶして米をつくってきたというのが私は実情だと思うのです。それで転換する場合、やはり収入が伴わなければ転換も不可能だと思う。野菜、果樹等一連の米以外の農産物に対する価格保証というものがあってなきにひとしい、私はこういうふうに考えるのですけれども、今後の米以外の農作物に対する価格支持制度、価格保証というものに対してどういうふうに考えておりますか。
  183. 大和田啓気

    大和田政府委員 米以外の価格政策は、あってなきにひとしいというお話でございますが、米麦、繭、イモ等々、大体農産物の生産額にいたしまして七割程度のものについて、国が直接あるいは間接に相当な価格政策をやっておるわけでございます。私は今後も、その価格政策だけで処理しきることはなかなかむずかしいけれども、価格政策といいますか、特に価格の安定ということについての重要性はますます今後も重要になると思いますので、価格の安定ということをまず主眼にして、やれるものからやはりそれは範囲を拡大するように努力をしていかなければならないというふうに考えております。
  184. 斎藤実

    ○斎藤(実)委員 それでは酪農の問題に入ります。  畜産局長お尋ねしますが、わが国の酪農の現状というものは、国民経済の要請からいって非常に楽観を許されないというふうにわれわれも判断をしているわけです。この際政府としても、一段と積極的に酪農振興については力を入れていかなければならないと思いますが、その点についてどういう方針を持っておられるのか、最初にお尋ねしたいと思います。
  185. 平松甲子雄

    ○平松説明員 酪農につきましては、国民所得が伸びてまいりますにつれまして牛乳の消費量が増大してくる、この国民の増大する消費にこたえて、安定的に供給をしてまいるということを、酪農政策の基本としておるわけでございまして、ただ単に通常の施策を講じてまいるということでは十分でございません。  まず酪農の基盤という点で、草地の改良をするというふうなことで飼料基盤を造成する。それから乳牛の資質の改善をはかるという意味におきまして、乳牛の改良増殖をはかってまいる。家畜の導入を奨励してまいる。それから乳牛の育成について種々の施策を講ずる。流通段階につきましても、価格の安定を期するというふうなことで、不足の場合の暫定法というような施策を講じてまいっておる。あるいは乳製品の価格安定についての制度を講じておる。それから将来の消費の増大をはかるというふうな意味も兼ねまして、学童に対して、体位向上の意味も含めて、なま乳の学校給食をやるというような施策を講じまして、生産と消費の安定的増大をはかってまいるというようなことをやっておる次第でございます。
  186. 斎藤実

    ○斎藤(実)委員 特に牛肉が非常に高いということで、非常にいま国民も関心を示しておるわけですね。この肉牛の振興対策について私はお尋ねしたいのですが、輸入の牛肉については、昭和三十九年からずっとふえてきておるわけですね。一方、国内では稼働中の乳牛が肉用として屠殺をされているというようなこと、こういったことが酪農経営にも非常に不安を与えておる。したがって子牛対策、あるいは輸入対策、あるいは飼料対策、これが肉牛経営の非常に大きなネックになっておるわけですね。非常にこれは問題だと思うのですが、この牛肉の値段の高いということに対して、どういうふうに対処されようとしておるのか、それをまずお尋ねしたいと思います。
  187. 平松甲子雄

    ○平松説明員 御存じのとおり牛肉につきましては、戦争前から日本の牛は田畑の耕うんに使われ、その耕うんに使われたものの上がりが肉用として屠殺されて、国民に牛肉として消費されたという実態があったわけですが、戦後耕うんの動力化ということに伴いまして、役用としての和牛の需要が減ってまいりましたということから、和牛の頭数が減少してまいりまして、最高時におきましては二百七十二万頭程度あった和牛が、四十二年には百五十五万頭まで減るということになったわけでございます。それに伴いまして、牛肉の価格も増大をする。その結果、牛肉についても、ここ数年来一万トン前後の輸入があるというような状態であるわけでございます。  もちろん、乳牛につきましても、乳牛としての用の終わったものについては廃牛として肉用に供され、それから乳牛の子牛の中でも、雄のほうは乳牛として用をなしませんので、牡犢のときに殺されるということがあったわけでございますが、最近、牛肉資源が減少するということもございましたので、和牛の増産対策につとめますと同時に、乳牛の雄子牛につきましても、これを肉用資源として活用するということを考えておりまして、そのための施策を講ずるということで、四十三年になりますと、従来減少傾向を続けておりました肉牛の飼育頭数が、百六十六万頭と増加傾向に転じたという経過でございます。
  188. 斎藤実

    ○斎藤(実)委員 値段が高いということは、生産より需要のほうが上回っているということだと思うのですね。ですから、毎回中共の牛を輸入すべきであるということ等も論議をされましたが、やはり問題は子牛の導入、育成というものが積極的になされなければならぬと思うのですが、値段が高いから、稼働中の牛でも殺して肉にしてしまうという傾向があるわけです。絶対量が足らない。それに対して農林省ではどういうふうに対策を考えているのですか、再度お尋ねします。
  189. 平松甲子雄

    ○平松説明員 確かにただいま申し上げましたように、和牛が肉牛資源として減少してまいったということから、牛肉の価格が高くなってまいり、それに対応いたしまして資源の食いつぶしということで、生産する数量よりもつぶす数量のほうが多いということが行なわれ、同時に、牛乳の資源といたしましての乳牛につきましても、牛乳価格と肉価格との相対関係から、三十八年、三十九年には屠殺頭数がふえるというようなこともございまして、乳牛の伸びが鈍ったというような現象もあるわけでございますが、牛肉の価格が増大いたしますにつれまして子牛の価格が高くなるということから、最近二、三年の間には、むしろ従来と異なりまして、増殖資源として活用するという意味において、和牛に種つけをして子を産ませるというような傾向が非常に増大してまいりましたし、先ほども申し上げましたように、乳牛の雄子牛を肉資源として使ってまいるというようなことを考えております。  そこで、施策といたしましては、そういうふうに価格の面で子牛の価格が高くなったということが、肉資源としての牛の増産に役に立ったということのほかに、肉用牛振興対策というものを四十一年に策定いたしまして、飼料資源としての草地の改良であるとか、あるいは里山資源を利用しました里山での肉用牛の飼養に対する施策でございますとか、あるいは繁殖育成センターの施策でございますとか、そういうものを講じてまいる。乳用牛の雄子牛につきましても、その施策の一環として対策を立ててまいるというようなことで、資源の増大をはかっておるというような状態でございます。
  190. 斎藤実

    ○斎藤(実)委員 酪農や牛肉を経営する農家にしてみれば、サイロだとか畜舎だとかそういった施設、あるいは牛の入手等についても非常に多額な金が要るわけですね。相当多額な資本が必要になってくる。しかも大規模な面積が必要である。その中で、また借金等もかかえてたいへんな状態なんですね。その中で飼料が非常に割り高だ。何とか  この飼料が安くならぬか、これを農家に行っても非常に数多く聞くわけですね。ですから、乳代の  三分の一以下にしてもらいたいという声が非常に多いわけです。いま非常に飼料が高いので、飼料を安く購入する、これに対する対策はどうでしょうか。
  191. 平松甲子雄

    ○平松説明員 先ほど来お答え申し上げておりますように、草食性の動物でございますから、飼料としては草資源をもってこれに充てるということで、優良な草を家畜に与え得るように、国県営、小規模というようなことで草地改良事業を実施いたしておりまして、その面積なり予算の金額なりも年々増大いたしておるということは、先生つとに御承知と思いますが、そのほかに、ただいま御指摘の購入飼料の面につきましては、御承知のとおり食糧管理物資でありますところの大麦、小麦等につきましては、飼料需給安定法で、食糧管理特別会計の飼料勘定といたしまして、政府が外国から輸入いたしまして、これを農業団体を通じて農家に売り渡すという仕組みをやっております。これは、外国の飼料価格が最近軟調であるということも手伝いまして、飼料価格としては最近下がりぎみというふうな傾向にあるわけでございます。そのほかの物資につきましても、全体的に最近は海外の市況が軟調でございますために弱含みであります。  それから、ちょっと言い落としましたけれども、えさ用に供されますところの穀物につきましては、関税を免除するということで、まずその面で飼料価格が安くなるというように施策を講じました上で、なおかつ政府が財政負担をいたしまして、安価に供給するという施策を講じておるわけでございます。
  192. 斎藤実

    ○斎藤(実)委員 四十六年を目標に、酪農近代化基本方針というものが政府で発表になりました。この方針について、昭和四十二、四十三年度の生乳の需要と生産について御説明願いたい。
  193. 平松甲子雄

    ○平松説明員 酪農近代化基本計画を、昭和四十年十月に策定をいたしまして発表いたしたわけでございますが、それによりますと、大体四十六年を目標年次にいたして計画をつくっておるわけでございます。その計画に対応して四十二年、四十三年はいかがであるかというお尋ねでございますが、中間の年次につきましては、こういう見通しなり計画というものの性格上、点として落としていくということはいたしておりませんけれども、かりに年々の伸び率というような形のもので数字を置いていくということにいたしますならば、牛乳・乳製品の消費量の伸びが、最近天候のかげんその他もあったせいかと思いますけれども、近代化計画に比して鈍化しておる。それから、生産の伸びもそれに対応するようなものでございましょうけれども、四十一、二年につきましては鈍化しておるという状況にあるわけでございますが、四十三年につきましては、生産のほうの伸びは、大体計画の線に近づいてきているというような状況にあるということでございます。
  194. 斎藤実

    ○斎藤(実)委員 きょうは大臣も出席できませんので、この程度にいたしますけれども、どうかこの肉牛や酪農振興については、ひとつ十分に力を入れてもらいたいということを要望して、私の質問は終わります。
  195. 丹羽兵助

    丹羽委員長 次回は来たる十一日開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後三時四十五分散会