○永井
委員 時間がありませんから最後に入りますが、私は、今日ほど農村の危機はないと思う。危機という危機感がほんとうにあるかどうかということについては、私は、
農林省のいまのあり方については問題があると思う。こんな危機の
時代はないと思う。危機であるとするならば、危機の実体は何かという分析が正確にされなければならない。病気の実体がわからないで治療策が立つわけはないのでありますから、危機の実体をもっときびしく分析して、そうして治療方法を確立しなければいかぬ。今日の農村の危機は
政治の貧困だ。そうして、この病気は
政治によって毒されておる。だからその治療方法は、
政治的な
政策による解決以外にはない、私はこういうふうに思うのであります。
そうして、そういう立場に立って考えますと、これほどの危機であるにもかかわらず、経団連は、農村からもっと中高年齢層の労働力を出せということを言っております。農村にはいま一千万人以上の就業労働
人口がおるのだ。これは三百万でいいのだ、労働
生産性の低い農村に、こんなところに置いておいたって労働力の不
経済だから、七百万は農村から出すべきだ、こういうものを農村から追い出せという要求がある。あるいは経団連のほうからは、
国内で高くつく
生産品をつくる必要はない、安い
輸入品を入れて、そうして
消費者の立場に立って考えるべきだ、こういうふうにも言っておる。
そういたしますと、これほどまじめに働き、これほど世紀の危機に当面しておる
農民を、あっちからこっちからたたきのめす声が出ておるだけであって、ほんとうに
農民の気持ちに立って、この荒れようとする田園の中から立ち上がろうとするその
農民に、正しい力づけをする、正しい方策を与えるということがどこからも出てこない。こんなばかな話はないと私は思うのであります。
そういう中で、たとえば
農林省の四十四年度の予算を見ますと、先ほど来苦労したと言うが、
大臣の苦労はわかりますけれども、中身はなっていません。農政転換でたくさん予算をつけた費目はいろいろございましょうけれども、中身は去年に比べて、全体予算に占める割合が〇・二%総額でふえたというだけです。そうして、食管の繰り入れとか災害を差し引いた残りの全体予算に占める割合が、四十四年度は六・六%、四十三年度は六・五%、〇・一%ことしはいいというだけの話です。どこが画期的か。これだけの問題の重大性を認識した上に立っての裏づけとしての予算というものではありません。
大臣、これは
農林省から出しているのだから、
農林省のものなんだから間違いありません。さらにこの中には林野庁の予算もあり、水産庁の予算もあり、それから農林本省の俸給とかそういうものがいろいろある。そういうものを差し引いて、純粋に四十四年度農政のために使われる
政策費予算というものはどのくらいあるのかといえば、私は、二千五、六百億くらいよりないのじゃないかと思います。いろいろなものを除いたら、
政策費予算というものは二千五、六百億よりないのじゃないか。六兆六千億からの
膨大な予算を使っている中で、二千五、六百億の予算より
政策費予算がないというならば、今度合併する八幡、富士の一企業の年間の融資額よりも少ない。これがいま危機に当面している
農民に対する予算の総額だというに至っては、私はあきれざる得をないのであります。
でありますから、そういう立場に立って、うそ偽りではなく、与党、野党ということではなしに、この農村の危機の実態が何であるか、これを
理解した中でもっと十分分析し、その問題を的確にあげて、そうして、この間において
農民の気持ちにこたえるにはどうしたらいいかという、役所の中から下へ問題をおろすのではなくて、
農民の畑の中から問題を吸い上げて、育て上げて、そうしてそれを上において集約して対策を立てるというまじめな農政の時期にきている。それほどの良心を持って農政に当たらなければ、いまはたいへんなときだと、こう思いますよ。
私は、もっといろいろな問題について触れたいと思いましたけれども、時間がありませんから、これはいずれ次の機会に譲りますが、私は、長谷川
農林大臣から口当たりのいいことを聞こうとは思っておりません。それから、つじつまの合った話をしてもらおうとも思っておりません。もともとつじつまは合わないことを口の先でつじつまを合わしたって、私はそんなことは問題にならぬと思いますから、そんなことは要らぬ。だから、長谷川
農林大臣が
大臣就任にあたって、社会党の代議士会へのこのこやってきて就任あいさつをした、あの障壁をはずした態度、そしてどろくさい土をつけて、そのたんぼのにおいを
大臣室なり
委員会の
大臣席へ持ち込んで、もう少し長谷川
大臣らしいどろくさい農政を、勇気を持ってやってもらいたい。小理屈を言うことはやめてもらいたい。激励して、私の
質問を終わります。