運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1969-02-26 第61回国会 衆議院 農林水産委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十四年二月二十六日(水曜日)     午前十時三十四分開議  出席委員    委員長 丹羽 兵助君    理事 安倍晋太郎君 理事 仮谷 忠男君   理事 白浜 仁吉君 理事 三ツ林弥太郎君    理事 湊  徹郎君 理事 兒玉 末男君    理事 稲富 稜人君       大野 市郎君    佐々木秀世君       菅波  茂君    瀬戸山三男君       田澤 吉郎君    中垣 國男君       中山 榮一君    藤波 孝生君       松野 幸泰君    伊賀 定盛君       石田 宥全君    工藤 良平君       佐々栄三郎君    實川 清之君       柴田 健治君    中澤 茂一君       永井勝次郎君    美濃 政市君      米内山義一郎君    樋上 新一君  出席国務大臣         農 林 大 臣 長谷川四郎君  出席政府委員         農林政務次官  小沢 辰男君         農林大臣官房長 大和田啓気君         農林省農林経済         局長      亀長 友義君         農林省農政局長 池田 俊也君         農林省農地局長 中野 和仁君         農林省畜産局長 太田 康二君         農林省蚕糸園芸         局長      小暮 光美君         食糧庁長官   桧垣徳太郎君         林野庁長官   片山 正英君         水産庁長官   森本  修君  委員外出席者        専  門  員 松任谷健太郎君     ――――――――――――― 二月二十日  委員樋上新一辞任につき、その補欠として沖  本泰幸君が議長指名委員に選任された。 同月二十二日  委員沖本泰幸辞任につき、その補欠として樋  上新一君が議長指名委員に選任された。 同月二十四日  委員柴田健治辞任につき、その補欠として山  内広君が議長指名委員に選任された。 同日  委員山内広辞任につき、その補欠として柴田  健治君が議長指名委員に選任された。 同月二十五日  委員柴田健治君及び池田禎治辞任につき、そ  の補欠として川崎寛治君及び永江一夫君が議長  の指名委員に選任された。 同日  委員川崎寛治辞任につき、その補欠として柴  田健治君が議長指名委員に選任された。 同月二十六日  委員柴田健治辞任につき、その補欠として中  澤茂一君が議長指名委員に選任された。 同日  委員中澤茂一辞任につき、その補欠として柴  田健治君が議長指名委員に選任された。     ――――――――――――― 二月二十一日  昭和四十四年度における農林漁業団体職員共済  組合法の規定による年金の額の改定に関する法  律案内閣提出第五二号) 同月十八日  農林年金制度改正に関する請願外三件(足立篤  郎君紹介)(第六九三号)  同外八件(青木正久紹介)(第六九四号)  同外四件(只松祐治紹介)(第六九五号)  同(青木正久紹介)(第七二四号)  同(畑和紹介)(第七六二号)  同外十八件(山口敏夫紹介)(第七六三号)  同外八件(足立篤郎紹介)(第八五〇号)  中国産食肉輸入禁止解除に関する請願外五件(  勝間田清一紹介)(第六九六号)  同(佐野憲治紹介)(第六九七号)  同外三件(穗積七郎紹介)(第七二五号)  同外五件(広沢賢一紹介)(第七九四号)  同(松本七郎紹介)(第七九五号)  農林漁業団体職員共済組合法の一部改正に関す  る請願枝村要作紹介)(第七九一号)  卵価安定基金加入に関する請願外二件(倉成正  君紹介)(第七九二号)  小作料統制廃止反対に関する請願戸叶里子  君紹介)(第七九三号)  ブリ資源保護に関する請願柳田秀一紹介)  (第七九六号)  同(植木庚子郎君紹介)(第八三六号)  同(内海英男紹介)(第八五一号)  食管制度堅持に関する請願宇野宗佑紹介)  (第八二四号) 同月二十一日  食糧管理制度堅持に関する請願小沢貞孝君  紹介)(第九一七号)  同(下平正一紹介)(第九一八号)  同(中澤茂一紹介)(第九一九号)  同(原茂紹介)(第九二〇号)  同(平等文成紹介)(第九二一号)  農業委員会等組織強化に関する請願井出一  太郎紹介)(第九二二号)  同(小川平二紹介)(第九二三号)  同(小沢貞孝紹介)(第九二四号)  同(吉川久衛紹介)(第九二五号)  同(倉石忠雄紹介)(第九二六号)  同(小坂善太郎紹介)(第九二七号)  同(下平正一紹介)(第九二八号)  同(中澤茂一紹介)(第九二九号)  同(羽田武嗣郎紹介)(第九三〇号)  同(原茂紹介)(第九三一号)  同(平等文成紹介)(第九三二号)  林業種苗制度改正に関する請願井出一太郎  君紹介)(第九三三号)  同(小川平二紹介)(第九三四号)  同(小沢貞孝紹介)(第九三五号)  同(吉川久衛紹介)(第九三六号)  同(倉石忠雄紹介)(第九三七号)  同(小坂善太郎紹介)(第九三八号)  同(下平正一紹介)(第九三九号)  同(中澤茂一紹介)(第九四〇号)  同(羽田武嗣郎紹介)(第九四一号)  同(原茂紹介)(第九四二号)  同(平等文成紹介)(第九四三号)  農林年金制度改正に関する請願外十一件(木部  佳昭君紹介)(第一一〇〇号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 二月二十日  食糧管理制度堅持に関する陳情書外二十九件  (第四三号)  果樹保険制度改善に関する陳情書  (第四四号)  ブリ資源保護に関する陳情書  (第四五号)  ノリの白ぐされ病害対策に関する陳情書  (第四六号)  林業種苗法改正促進に関する陳情書  (第四七号)  農業改良普及事業費補助金廃止反対に関する  陳情書  (  第四八号)  林業改良普及員設置補助金制度の確保に関する  陳情書  (第四九号)  農林年金制度改善に関する陳情書  (第  五〇号)  農業基盤整備事業促進に関する陳情書外一件  (第五一号)  長崎干拓事業促進に関する陳情書外一件  (第五二号)  パインアップルかん詰自由化反対に関する陳  情書外一件  (第五四号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  農林水産業振興に関する件      ――――◇―――――
  2. 丹羽兵助

    丹羽委員長 これより会議を開きます。  農林水産業振興に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありすので、順次これを許します。柴田健治君。
  3. 柴田健治

    柴田委員 農林大臣に、食管問題に関連する点と総合農政、この二点を中心に御質問を申し上げます。簡単に申し上げますので、大臣は正直な方だと信じておりますので、正直にお答えを願いたいと思います。  まず、日本のいまの食糧事情といいますか、食糧が非常に余った。その余った理由はどういうつかみ方をしているのか、どういう理解をしているのか、その点をお答え願いたいと思います。
  4. 長谷川四郎

    長谷川国務大臣 米の余った理由というのは、農業者が非常に懸命に努力をして生産向上につとめてくれたということが一点、さらに、非常に農業が科学的といいましょうか、機械化してきたという点もこの中に加味されておりますし、反面また、国民全体が食う米の量というものが、食糧構造改善によって減ってきた、こういうような点も中に含まれておると思うのでございます。  さらに、米の余ってきた理由として、生産が高まってきて需給のバランスを欠いてきたという点については、他の農産物よりも米作、米をつくったほうが、所得の上に立って幾ぶんか上位であるというような点にもあると思うのでございます。また、政府の一貫した指導方針といたしましても、総合農政という点には頭を置きながらも、やはりまず消費者全体に、主食である米というものの安定を与えようというところにウエートがあったということも、いなめないところの事実だと思います。そういうような観点に立って米の生産量というものが非常に高まってきた、こういうふうに考えるわけでございます。
  5. 柴田健治

    柴田委員 ただいま大臣答弁を聞いておると、時代の流れ、趨勢といいますか、食生活改善に伴って農民生産意欲向上し、そうして両々相まって食糧がダブついてきた、こういう傾向だというような意味の御答弁でありますが、四十一年まではそう食糧が余ったということばを聞かなかった。毎年三割増産ということで、地方公共団体は総力をあげて食糧増産にはげんでいて、農民もそれを受けて立って、食糧増産をしてきたことは間違いのない事実だと思います。それは大臣も御承知のとおりだと思いますが、四十二年度になって、私は非常にふしぎに思いますことは、史上最高の大豊作という作柄を発表したのが四十二年の九月であります。農林省が四十二年産米作柄を第一次発表したのが九月です。そして大豊作だと一方では放送しておきながら、九月以降から食糧輸入をなぜあれだけ膨大にしたのか。昭和四十二年の会計検査院が決算報告を出したその決算報告書を見ると、食糧関係で五百十二万トンという数字輸入しておるのです。それが、九月以降に五百十二万トンになんなんとする食糧関係輸入量です。大豊作だといって報道しておきながら、九月以降の後期にたいへんな数量輸入したということは、どうしても私は割り切れないのですが、大臣、この矛盾をどう理解されておるか。
  6. 桧垣徳太郎

    桧垣政府委員 私から御説明を申し上げまして、大臣から大局的なお答えをしていただくことにいたします。  四十一年まで、御指摘のように日本の米の需給関係はむしろ不足ぎみでありまして、相当量輸入を続けておったのでございます。四十二年にあのような大豊作が来るということは、何人も予想をしなかったと私は思うのでございます。御案内のように、収積予想量のほぼ確実なことが予想されますのは、九月十五日の時点でございます。それまでには、すでに四十二年度における米の買い入れについては、輸入先と成約、契約が終わっておったものでございまして、その時点で、輸入を削減するというわけにはまいらない事情にあったわけでございます。  また、御指摘数量は、これはえさ用の麦を含む麦類数字だと思われますので、麦の輸入につきましては、国内需要を満たすに必要な量を入れたのでございまして、米につきましては、別途資料も御提出を申し上げておると思いますが、四十二会計年度は三十五万トンの米の輸入をいたしたのでございます。
  7. 柴田健治

    柴田委員 麦は二百九十六万トン、米は三十六万トンですから、数字はもうこっちは知っているのです。そんな数字のことをお尋ねしているのではない。大体九月の上旬に、今年は大豊作だという作柄を発表した。その後入れるから、農民政府のやっていることはどういう理由かわからない。一方では大豊作という放送をして、それで農民を喜ばして、そうして片一方では九月以降、何ぼ契約を事前にしておったからといって、そういうめちゃくちゃに輸入量をふやすところに、この食糧が余ってきた最大原因があるといわざるを得ない。われわれはそう理解しておるわけです。  輸入する理由は何ですか。最大理由物価対策の面から、政府諮問機関である物価安定推進会議から答申されておる、この物価対策から輸入するのか、他の産業を保護するために輸入するのか、アメリカドル防衛のために協力する体制輸入するのか、どちらですか、大臣
  8. 長谷川四郎

    長谷川国務大臣 食糧輸入の問題は、まず消費者に安定を与える、こういうことが第一条件でなければなりませんし、他国のために何ら犠牲になる必要もございません。こういうような点から考えて、ただいま長官が御答弁申し上げたように、前の契約のものが入ってきたのだというような——前のことは私はまだなったばかりでわかりませんけれども、そういうような御答弁でございますので、その点は御了承願える点があるだろうと考えます。
  9. 柴田健治

    柴田委員 とにかく、私は政府考え方一貫性がないと思う。自分の国は自分で守らなければならぬという国防論をいっておるが、その国の国防の第一条件というものは食糧を確保することです。われわれはそう理解しておる。自分の国の国民が食べる食糧は、自分の国でつくっていくという原則がない限りは、どんなにりっぱな飛行機を持ったって、どんなに軍艦を持ったってだめなんです。大東亜戦争がいい例なんです。日本長崎、広島で原爆を受けた。あれも敗因の一つでありましょう。しかし、最大原因食糧がなくなったということ。この事実は、あなたたちはもう経験済みなんですよ。あのベトナムを、アメリカはすぐ征伐できると思った。ところが、四年もかかってアメリカは負けておる。なぜあのベトナムが強いかということは、食糧が豊富にあるということです。食糧を持ってない国はたいへんなんですよ。たとえば塩でもどうですか。日本国内生産は七十万トンで、外国から五百万トンも輸入するような計画です。  今度の政府が出した五十二年度までの食糧需給見通しを見てごらんなさい。ほとんど輸入重点ではないですか、大豆といわず麦といわず。小麦は五百万トン、大麦・裸麦が百万トン、計六百万トン入れる。大豆国内生産は十二万トン前後に押えて、外国から四百万トン入れる。飼料関係では、濃厚飼料千八百万トン要るだろう。そのうち五百万トンは国内生産で、千三百万トン近くは外国から輸入しなければならぬという計画を出している。こんなことをして、万一日本が、ぐるりが海で輸送船団がとまったら大臣どういたしますか。完全自給できる体制があるのですか。
  10. 長谷川四郎

    長谷川国務大臣 食糧がいかに国民生活重要性を持っておるかということは、御指摘のとおりでございまして、かつての体験の上に立って、まず国民食糧というものだけは心配してくださるなというような体制をとることが、第一の条件でなければならないと思います。われわれ政治を行なうものは、これが当然な義務だと考えられます。特にわれわれ農林省においては、その措置に万全を期していかなければならない。しかしながら、今日の情勢を見たときに、まさに先ほど御指摘のあったような、米が余ってきたというような現象をあらわしておる。しからば今後はどうだということになりますと、このままの趨勢でいくとさらに米は余るであろうし、反面、日本経済力の上から見ましても、この経済向上するに従って、さらに一般国民食糧構造というものの上に立ったならば、主食は減っていくであろうということもそのように考えておるのでありまして、でありまするから、今後はそういうような間違いのないような、一つの企画というか、指導方針というものを立てなければならないだろう。  それには、まず総合的に考えをここに置いて、そうして、今後輸入すべきものは何と何と何だ、どうしても自国で生産しても引き合わない、また引き合う引き合わないばかりでなくて、将来において国内においてないものは何であろうか、あるものは何だ、こういうものをやはり区分をし、そうして試算というか、そういうような体制を整えて、まずそういう点については思い切った政策を行ない、今後怒濤のごとく押し寄せてくるであろうと思われるところの外国の農作物と、いつでも対決のできる体制だけはとらなければ相ならぬ時代にまさに到達をしているだろう、こういうふうに考えております。
  11. 柴田健治

    柴田委員 国連の食糧農業機構の発表を見ると、一九七五年には、成長率六%くらいと見ても、なお食糧が余るという数字はない。かえって不足を続けるであろうというような数字が出ておるのですが、そういう将来の情勢から見て、あの五十二年までの長期見通し農林省が出した輸入重点主義的な需給見通し、これをわれわれが検討してみて非常に矛盾を感じる。これも、やはり全国の農民が関心を持っておる重要な点だと私は思うのです。片一方では食生活改善であるとかコストの問題、いろいろありましょうけれども、それは総合農政という形であとで御質問申し上げますが、何としてもこういうことで、今度の開田計画変更を見ても、十万七千ヘクタールの計画を三割抑制をして七万七千ヘクタールに押える。しかし、一方では工場用地なり道路用地、宅地ということで年々農地が転用されている。これを合わせていくと、将来六十年ということを一つの目途として、その農地転用数字膨大になってくる。片一方では開田計画変更で七万七千ヘクタール、差し引きずると実質的には三十万ヘクタールくらいは農地がつぶれていくという勘定になってくる。  こういうことをした場合に、一朝有事の場合はどうするのか。一朝有事の場合に、こういう農地をどんどんつぶしていくようなやり方は——米作を転換していくという計画ならよろしいですよ。それならある程度理解できます。しかし、農地をつぶす数字をふやしていくようなそういう考え方で、一朝有事の場合にどうするのか。将来のことでありますから大臣見解を……。
  12. 大和田啓気

    大和田政府委員 大臣からお話しいただく前に私から申し上げます。  いま御説明がございました世界食糧事情見通しでございますが、FAOの一九七五年の見通しでも、穀物全体として決してマイナスでございません。米とか粗粒穀物等についてはマイナスでございますが、小麦等相当余裕がございますので、穀物全体としてはプラスでございます。また、FAO作業が出ましたそのあとで、実はOECDからまた別の作業が出ておりまして、それによりますと、世界穀物余り方の度合いは、FAO見通しに比べてはるかに大きいわけでございます。したがいまして、ここ一、二年の推移で申し上げますと、国際機関のいろんな見通しでは、今後十年あるいは十五年後に世界食糧事情が、非常に窮屈になるという見通しではまだございません。  それから、もう一つ申し上げたいことは、私ども一昨年の十一月に、「農産物需要生産長期見通し」を出しましたけれども、あれは決して輸入依存という趣旨ではございません。相当国民食糧消費がふえますけれども、同時に、日本農業生産も年率二・七%でふえていくであろう。米は完全自給、野菜、くだものと畜産物は、ほぼ完全自給に近い程度の自給をしよう、そういうむしろ畜産物あるいは果樹蔬菜等については、意欲的な姿勢が出ておるというふうに申し上げてよろしかろうと私は思います。  ただ、御指摘のように、大豆でありますとかトウモロコシでありますとか、それは自給に持っていくことが望ましいことは言うまでもありませんけれども、日本のようないわば零細経営で集約的な農業がな行なわれているところで、大豆、麦あるいはトウモロコシ等々について、これは完全な国際商品でございますが、国際価格でつくるというふうには申しませんでも、国際価格から相当割り高価格であっても、それを完全自給まで持っていくことは、私は非常にむずかしいだろうと思います。これらの作物は、もちろん地域によって必要な作物もあるわけでございますから、主産地形成で合理的な生産を進めるということで、私ども、決して生産を放出果するつもりはございませんで、生産性向上のために努力はいたしますけれども、これはやはりある程度輸入に依存せざるを得ないというふうに、割り切らざるを得ないというふうに思うわけでございます。  それから国全体で、この五十二年の長期見通しでも、若干農地面積が減る想定になっておりますが、開田はある程度まで抑制をいたしますけれども、畑作あるいは草地改良は念を入れてやりますし、農用地全体としてはむしろふえるわけでございますから、御心配の点は、私はまずないのではないかというふうに思っております。
  13. 柴田健治

    柴田委員 大臣質問するのだけれども、補佐役答弁するので……。  それなら総合農政の点で大臣にお尋ねしたいんですが、どうも政府総合農政論というのは、私たちよく理解ができないですよ、今度の予算を見ても。総合農政とは何ぞや、それは価格政策をまずとらなければならぬとわれわれは思う。そして、需給計画というものが明確にならなければならない。流通の抜本的な機構改革、これも考えなければならぬだろう。また、耕作農民の老後の保障も完全に実施しなければならぬだろう。こういうもろもろのものを確立するということを前提に、初めて総合農政論というものが生まれてくる。  ところが、今度の総合農政論を見ると、とにかく米をつくるのをやめさせるだけであって、あと何もしない。果樹だ、畜産だといって、主要農産物のそうした価格政策すらとれないという、こういう総合農政がはたして妥当な総合農政論か。大臣、どうですか、あなたの総合農政論見解を言うてもらいたい。
  14. 長谷川四郎

    長谷川国務大臣 どうも、われわれが考えているのと柴田さんのおっしゃることは、だいぶ違っておるんですけれども、そうばかりじゃない。私たちのほうは米ばかりじゃなく、土地の問題におきましても、かなり土地改良基盤整備というものには重点を置いてやっております。  総合農政とは何ぞやとおっしゃることでもございますから申し上げますが、まず第一番目には、お米に偏重であったものを、これを総合的に見た上で、果樹園芸、さらに蔬菜畜産、こういう面を総合的に育成し、そして価格ばかりでなくて、政策的にこれを維持育成していくということに重点を置くべきだ、こういうふうに考えておるのでございます。
  15. 柴田健治

    柴田委員 価格政策よりかまず基盤整備事業のほうが先だ、こう言われるのですね。われわれはその点はちょっと理解できかねるのですよ。基盤整備というものはコスト引き下げ政策の一環であって、それは労働時間の短縮ということもありましょうけれども、やはりコスト引き下げ一つの手段であって、基盤整備だけが総合農政じゃない。果樹だ、畜産だといっても、価格政策をとってやらなければだめで、いま米というのは価格政策があるから、政府のきめた支持価格というものがあるから、好むと好まざるとにかかわらず農民はそれに信頼をし、たよって生きてきたんです。果樹畜産について価格政策をとってごらんなさい、あなたが無理に総合農政論を言わなくても農民はつくりますよ。私はそう思うのです。総合農政というものは、価格政策がまず重点でなければならぬ、われわれはそういう見解を持っている。基盤整備事業だけで総合農政というものが解決するものではない。もっとほかにコスト引き下げ政策を総合して考えなければならぬでしょう。  たとえば肥料の問題、農薬、農器具または農業用電力、税金、金利その他ありましょう。また国が出す補助金の問題、こういう総合的なコスト引き下げ政策基盤整備とあわせて考えなければならぬと思う。将来外国農産物との競合ということを考えた場合に、日本農産物がどうしてもコスト局になる。そこで、将来のコスト引き下げをどうするかということも、政治家としては一つ考えなければならぬ重要な問題だと思う。そういうことは一つも考えない。価格政策もとらない。ただ畑作転換だ、自主流通だということだけで総合農政だということは、どうも本末転倒しておると思うのですよ。大臣、その見解をひとつ聞かしてもらいたい。
  16. 長谷川四郎

    長谷川国務大臣 私が、土地改良だとか基盤整備だとか言うのは、前のあなたの御質問に対して申し上げたのです。  そこで、さらに申し上げるならば、あなたは世界的に見て食糧が非常に不足していくじゃないかというお話です。それは世界人口が六億のときでさえも、このままでネズミ算的にいけば、おそらく全世界の人類は食糧危機で滅亡するであろうと、百二年前にマルサスは唱えました。しかし、今日二十六億の人口がおっても、だれ一人野たれ死にしていない、かえって食糧が高級化していっている、こういう現実をやはり見てもらわなければならぬ。  ですから、私たちの申し上げておるのは、現実を見ながら日本の将来——五十年も百年も先でなくても、少なくとも十年、二十年先というものは、経済の実態の上に立って食糧というものがどういうふうに変化していくだろう。経済力向上していけば、おのずから食いものの嗜好が違っていくというのは当然なことでなければならぬ。それに相マッチした農作物に対する政策というものを行なっていかなければならない、生産を変えていかなければならない面があるだろうと思うのです。同じ米だから同じじゃないかといっても、それはやはり好むものがだいぶ違ってきておる。まずい米とうまい米というものは、消費者の好みが違ってきておるはずであります。こういう現実の上に立って政治というものは行なっていかなければならない。そういう上に立って総合農政というものを行なうのであって、御指摘のような、柴田さんがおっしゃっているような点ばかり、悪い点ばかりではなくて、中にはいいこともあるのじゃないですか。
  17. 柴田健治

    柴田委員 どうも大臣は正直な人だから、私としても言いにくいのですが、やはりこれは価格政策も必要だ、コスト引き下げ政策も必要ではないか、こう私はお尋ね申し上げている。あなたは変なことを言わずに正直に言ってください。コスト引き下げ政策については手落ちがあります、価格政策は将来こういうふうにやりますと、何か考え方を明らかにしてもらわないと、いやしくも農林大臣日本に一人しかいないのだから、あなたの発言が耕作農民にとってどれだけ失望を与え、また信頼というか、希望と夢を引き出していくかということになるわけで、ただ理屈で言っているのじゃないのですよ。この点、価格政策はとるべきである、また、コスト引き下げについては将来こういう構想を持っておりますと、大臣ならそのくらいな長期のビジョンというものがなければ、大臣になったって価値がないでしょう。
  18. 長谷川四郎

    長谷川国務大臣 それは、いずれにしても物の生産には価格政策というものがあることは、これはもう御指摘のとおりでございまして、たとえば、御地のほうにできるところのマスカット一つ見ましても、価格政策があるからこそ今日の隆盛を見ているのと同じことでありまして、要は将来どうするか。御指摘のように、現在のような混乱したというか、指導方針というものが幾多あるように思われるけれども、もっと十年先とか二十年先というようなものの一つ計画一つのビジョンというものを打ち立てていくということだけは、まさに御指摘のとおりだと考えます。  でありますから、いますぐこれを行なえといってもなかなかできないけれども、農林省としては、一般の生産者の方々の御意見と、また、この問題は与党だとか野党だとかいうものではなくて、多くの人の御意見を承って、主産地制というようなものでもとったらどうか。そして、米がいいといえば、北海道の果てから九州の果てまで米をつくっていくとか、、ミカンがいいといえば全部ミカンに変わるとか、こういうようなあり方であっては真の政治ではないのではないか。ですからもっと国民に、価格政策をとることにおいても、農業政策をとることも、すべてが消費者にいかに安定を与えるかということが、まず先行しなければならない問題であろう。それによったところの生産が伴っていかなければならない。こういう上に立って、まず主産地制というものを確立していきたい。そういうことにして、たとえばこの地区はこういうもの、この地区に至ってはこういうもの、そういうような指定作物というようなものを指定して、それには政府が、思い切ってこれにいろいろな面を導入してその生産を高めていく。そうでないと、いつまでも混乱状態というものは続くし、冒頭御指摘があったように、これだけ押し寄せてくる外国農産物と対決していかなければならないことは当然であり、特に、東南アジア方面は日本の技術者が出張して、そして技術の指導をやっておる。そして同種類、同様のものがたくさん出てくる。これと対決をしていかなければならないはずでありますから、そういう面に対しての用意をまずここで打ち立てておく必要があるだろう。  これは、ただそういうビジョンは持ちましても、農林省の考えだけによって行なうべきではない。多くの人の御意見を十分聞いて、それを尊重してそういう面を確立すべきときに、まさに来ているということだけは申し上げられると考えております。したがって、御意見のような点も十分承り、それを参考にして、申し上げたような点に進んでまいりたい、このように考えておるわけでございます。
  19. 柴田健治

    柴田委員 大臣は、主産地形成ということばを二、三回使われたのですが、それならば、将来農産物によって、地域的気象条件、土壌関係その他を勘案して品種選定、そういうものを見た場合、やはり主産地形成という計画をお持ちですか。
  20. 長谷川四郎

    長谷川国務大臣 いますぐにこれを行なえとか計画があるかと言われても、ないのです。しかし将来、十年、二十年という先の日本の農政はこのままでいいか悪いかということに対して、御指摘のような点もあります。でありますから、そういうような方向に向かって樹立しなければならないだろう、こういうことを申し上げておるのであって、いますぐ農林省だからやれ、そんなものではないと思う。この主産地形成というものは、そんな簡単にできるものではない。全国のこれだけ広い中に立ったことは、ただ農林省考え方だけでなくて、別途こういうものは考える機関を持って、そうしてその実施に当たるまでの期間というものは、十分御意見を承ってそのような構想に進むべきだ。ビジョンがあるかということを言われたからそのように申し上げたのであって、来年度のビジョンはどうかということではなくて、ビジョンというものはもっと長いものだ、こういうふうに思いますので、そう申し上げたのであります。
  21. 柴田健治

    柴田委員 どうも大臣の言うのはよくわからぬ。  予算のこまかい点については、いずれ問題点を御質問申し上げるとして、農民年金農業者年金の問題がここ二、三年大きくクローズアップされ、論議されてきたのですが、ことしの予算では一千万で、四十五年度を目途として実施をする。ところが、巷間伝えられるところによれば、農業者年金として特別の立法措置で別の制度をつくっていくという考え方と、もう一つは、現行の国民年金法にプラスアルファ、そういう方式で厚生省所管にしてやっていくという案、農民の負担額、こういうものがどうなるかわかりませんけれども、この二つ。大臣としてはどちらを選ぶのがいいか、その見解を聞いておきたい。
  22. 長谷川四郎

    長谷川国務大臣 ただいまいろいろ検討している問題は、厚生省において、現在国民年金改善を検討しております。これらの関係を考慮しながら、農業者年金制度を昭和四十五年の実施を目途に調査、検討を進めておるのでございます。  大体、農林省考え方としてといいましょうか、厚生省と両者の考え方は、このような改善方法をとってまいりたい、実施方法をとってまいりたい、こういうふうに考えております。
  23. 柴田健治

    柴田委員 どうも大臣の言うことはよくわからぬが、その程度で終わります。  国鉄運賃の関係で、農産物の運賃については一応話し合いでストップ。ただ、一般の通運関係が一斉に運賃値上げの要求をしておるようですが、これを上げられると、肥料が三十七億円も運賃増だし、飼料関係でも十七億円くらい上がるのではないか。そうすると、結局また農民がたいへんな迷惑をこうむるし、ひいては消費者である国民も迷惑をこうむるということになるのですが、この国鉄運賃のように、民間の運賃の値上げを農林省としては絶対に認めないのかどうするのか、この点を聞いておきたいと思う。
  24. 長谷川四郎

    長谷川国務大臣 国鉄運賃においては、御承知のとおりでございますが、他の面につきましては、局長から答弁いたさせます。
  25. 亀長友義

    亀長政府委員 通運料金につきましては、運輸省のほうから現在各省に話がございます。日本通運を中心として、昨年来通運料金値上げの申請が出ておったようでありますが、御承知のような事件がありまして、そのまま今日に至っておるという推移でありまして、運輸省が現在各省に話をしております内容は、一般的に通運料金を上げるのではなくて、現在通運料金の認可は、個々の経営者に対して、それぞれの経営を考えて認可をするという制度になっておるそうであります。したがって、非常に赤字補てん的な、各社に対する個別値上げの形をとるというような案でありまして、私どもといたしましては、そのような赤字補てん的な考え方には反対であります。  農林物資につきましては、幸い国鉄運賃につきましては、公共割引がそのまま残されましたけれども、昨年来港湾料金あるいは倉庫料金というものも値上げをいたしておりまして、そこへさらに通運料金を上げるということについては、非常に影響が大きいということで、目下企画庁を中心に協議中でございます。企画庁も、現段階におきまして、運輸省の案に必ずしも賛成をいたしておる段階ではございません。いずれにしましても、企画庁を中心にしまして慎重に検討してまいりたいと思います。
  26. 柴田健治

    柴田委員 業者の申請に伴って、政府部内の話し合いというものが行なわれておることはよく知っておりますけれども、農林省としては、反対か賛成かとお尋ねしたのです。簡単に答えてもらえばいい。
  27. 亀長友義

    亀長政府委員 反対であります。
  28. 柴田健治

    柴田委員 総合農政という代名詞で宣伝をしてこられた、そうしてふたをあけたことしの予算の内容は、結局、総合農政関係というのは、国庫補助金で二百一費目で、そのうち公共事業関係百十四費目がある。農業構造改善事業八十七費目の中で、今年度新規事業としてふやしたものが二十五費目。こう考えてまいりますと、国がどんなに音頭をとって踊ってみても、地方公共団体が果たす役割り、地方公共団体がどう責任を分担していくのか。政府の考えておる今度の総合農政を推進していくためには、地方公共団体にどういう任務と役割りを果たさせるのか、またどういう関係を持たせるのか、大臣、ちょっとお答えを願います。
  29. 長谷川四郎

    長谷川国務大臣 これは、農林省だけが総合農政をやるという意味ではないのでございます。地方公共団体の御意見を十分尊重しながら、総合的に考えていかなければならない問題でございますので、これはどちらがやるかと申されても、農林省ばかりではない。御指摘のように、それじゃどういう役割りをやるんだ。それは、全部の役割りをお互いが分担して考える、そして総合的にやっていかなければならないことだと考えます。
  30. 柴田健治

    柴田委員 大臣はそのように関係がある、国だけではなく地方公共団体もそういう役割りを果たしてもらいたい、任務がある、そういう見解を示されたのですが、それなら、まず地方公共団体の財政はどういう取り組み方をしておるのか。大臣、地方財政計画というものはこの二十日ごろに出るだろうとわれわれ予測しておった。だから、地方財政計画が出た場合に内容を検討いたしたいと思うけれども、地方財政計画がいまだに出てこない。内簡は各都道府県に出しておるようでございますけれども、都道府県の予算はいま空のものを組んで、これから地方公共団体は審議を始めようとしておる。ところが、地方財政計画はいまだに出てこない。国は何をしておるかという声がある。その中で、地方財政計画を出さずに、総合農政は、地方公共団体も大いに役割りを果たしてもらわなければならぬ、関係は十分ありますと大臣はただいま答弁されたが、地方財政計画は出ないのに、地方財政計画の中で産業経済費はどの程度ことしはふやしたのか、どういう話し合いをしたのか、大臣答弁願いたい。
  31. 長谷川四郎

    長谷川国務大臣 もちろん、地方公共団体との話し合いというのは、基本的にはこちらから、いかに、どういうふうな補助を行なうかというようなものがまず先行いたします。ですから、そういう点については十分検討を加えなければならない問題であると考えますが、地方からまだ出てこないというのは、そういう点についてはどういうことになっているか、私も就任してそう古くありません。よくわかりませんから、局長から答弁させます。
  32. 大和田啓気

    大和田政府委員 地方財政計画はまだ出ておらないようですが、私ども、農政を行なう場合に適正な補助金を交付するわけで、たとえば、従来問題になっておりました都道府県の超過負担の問題につきましては、普及員の給料その他相当な改善を進めておりますし、地方財政計画が組まれていない現状でございますけれども、府県が農林省の施策を受け切れないほどの非常な無理なことを、私どもやっているつもりはございません。これは、当然従来と同じように、農林省の施策を県でうまく消化をして、財政に乗せてやってくれるものと信じておるわけであります。
  33. 柴田健治

    柴田委員 いまの答弁を聞いていると、従前どおり踏襲していくという考え方ですが、それでは一方的な押しつけだ。あなた方がかってに絵をかいて、この絵をのめという押しつけですよ。結局両方相談し合って、相互援助という形で国策を推進していくのだ、そのためにはこういう方法で、たとえば今度の新しい総合農政の費目については、こういう基準でやっていく、補助率は前のいろいろな費目よりは別な、新たな観点で補助率も大幅にふやして、地方負担の持ち出し分は少なくいたします、こういう話し合いをしてこそ、初めて総合農政というものは片ちんばでも推進するのではないかという気がする。それを、いままでのような感覚では、昔の徳川時代政治と一緒じゃないですか。おれがきめたものはのめ、地方財政がどうあろうとものめということじゃないですか。地方財政計画がいまだに出てこないが、内容はどういう折衝をしたのかということを聞いておるのです。  たとえば、産業経済費を何%と見るか、地方財政計画には当初においては含んでないけれども、将来交付税の算定基礎を変えるとか、特別交付金を考えるとか、こういう制度を考えて処置いたしますとか、何とか考えてやらないと、総合農政は、結局タクトを振ってもだれもついていかないことになる。いま地方財政はそう楽じゃないのです。今度の新しい費目についての地方財政計画に与える影響をどう把握しておるのか。影響ないという考え方なのか。こんなばかなことはないと私は思う。
  34. 大和田啓気

    大和田政府委員 農林予算は、四十四年度七千六百八十八億、前年に比べて一七・五%伸びましたけれども、先ほど申し上げましたように、地方財政でこれを受け切れないほどの重荷を負わしておるというふうには考えておりません。しかし、総合農政の内容についての県との話し合いは、昨年の秋以来知事会あるいは知事の委員会等を通じて、ずいぶん懇切に農林省としてはやってきておりまして、いきなり私どもの考えておることを、県に無理に押しつけるという姿勢ではございません。
  35. 柴田健治

    柴田委員 まあいずれ論争はあとにしたいと思うのですが、基本的なことだけ聞いておきたいと思います。  今度の新規事業の中で、たとえば第二次の構造改善事業、これらの実施要綱というものはいつ出すのですか。われわれに審議しろ審議しろといって予算を審議させる、基礎のないものを審議せいという。どういう方法でやるんだという実施要綱くらいは示していくのが、国会審議のほんとうのあり方ではないか。何もこしらえずにおいて、ばっとつまみみたいなものをこさえて、そうして国庫補助三億単独一億、合計四億、そういう数字で二千二百五十カ所、来年度二百カ所計画、そんなことでなしに、採択基準はこういたします、実施要綱はこうですという書類を出すべきじゃないですか。これを出さないというのはどういうわけですか。大臣、どうですか。
  36. 池田俊也

    池田政府委員 第二次構造改善事業、来年度地域の指定計画の樹立に入るわけでありますが、事業の実施は四十五年度からになるわけです。  私どもといたしましては、本年度予算の編成に際しまして、ぜひとも来年度から事業を発足させたいということでいろいろ財政当局と折衝したわけでございますが、大筋の考え方は一応大蔵省と了解がついておるわけであります。ただいま先生のおっしゃいました数字等もその一部でございますけれども、大体の構想については了解がついておりますが、まだ事業のこまかい内容につきましては、なお現在話し合い、折衝中の事項が多々あるわけでございます。それで、まだ要綱という形では実はまとまってないわけでございますけれども、これは早急にまとめまして、関係者の方の御理解を得るようにしたいと考えておるわけでございます。
  37. 柴田健治

    柴田委員 大蔵省が構造改善するのじゃないですよ。農民がするのです。それがいま大蔵省中心で、大蔵省の外局ですか農林省は。そういう言い方ではわれわれは納得できかねるんですよ。  第一次構造改善はやや成功だという理解をしておられるようですが、それでも農民には相当の負債が残っておる。前は九千万と三千万で事業費一億二千万円です。今度三億と一億ですよ。日本の現在の地理的条件、いまの既耕地の実態から見て、三カ年で四億やる、この四億のする個所、ほんとうはたいへんなことですよ。それが採択基準も何もない、また実施要綱もきめずに、第二次構造改善をやりますといって花火を上げたって、農民理解できない。どういう方法でやるんだ、どういう実施をやるのだろうか、こういう関心を農民は持っている。そこにも総合農政というものは、政府のいうのはどうもあいまいだ、花火だけ上げてくれるけれども実際の中身はないじゃないか、こういうふうに農民は受け取っておるわけです。  われわれが予算を審議するときには、やはりそういうものを含めて、それを基礎に置いて予算を審議しなければ審議したとは私はいえないと思う。国会軽視もはなはだしいと思う。一つもそういうことがない。役人の一方交通である。国会とは何であるか、何を審議するんだ、基礎がなければ審議できない。そういう実施要綱等をいつ示すのか、いつごろ出す予定ですか、まずそれについての見解を聞いておきたい。
  38. 池田俊也

    池田政府委員 ただいまお話しございましたように、今回考えております第二次事業は、従来の事業に比べまして相当規模の拡大をいたしたい。これは、もちろん地域によりまして負担力の関係等もあるかと思いますけれども、私ども第二次事業を考えますのについて、関係の方々、たとえば農業団体の方でございますとかあるいは関係市町村の方、そういう方の御意見をいろいろお伺いいたしましたところ、ぜひとも規模の拡大をしてほしい、こういうような要望が非常に強いわけでございます。  今回考えております規模につきましては、そういうような点からも、私どもは、実際に適用いたしました場合には、そう地元の方の御意向と違うという形になるということはないのではなかろうかというふうに考えているわけでございますが、何せ規模といたしましてはかなり大きくなりますし、考え方といたしましても、若干新しいニュアンスを取り入れていきたい、こういう考えでございます。  今後十カ年間にわたる、相当長期間にわたる規模の大きな事業でございますので、事業の具体的な内容につきましては、実は慎重に検討をいたしたい。大体の構想は私ども持っておるわけでございますけれども、なおこまかい点につきましてまだ詰め足りない点がございますので、その点の検討をいたしているわけでございまして、時期ということをはっきり申し上げるわけにはまいらないのでございますが、早急に結論を出したいと考えているわけでございます。
  39. 柴田健治

    柴田委員 平たん地の構造改善というより、大体農民の受け取り方は、傾斜地帯における構造改善の取り上げ方というものに関心を持っているのですよ。傾斜地帯については、何%の勾配のところは構造改善をやるとか、また、平たん地でも鉄道線路のごとき、いまの第一次構造改善の個所を見てみますと、たとえば鉄道の電話が通っている、電柱が立っている、この電柱の移転費が全部地元農民の負担ですよ。予算を事業費の中に組んでいない、認めていない。ただ計数的にはじき出しておる。そういう公共施設の移転費や何かを事業費に見ていないというやり方、こういうことをするから第二次構造改善等も非常な問題があるわけです。  それは別として、今度の予算で私が非常に関心を持っているのは、農業機械化で省力化する、この論理はわかります。けれども、この機械を使うのは人間であります、農民であります。この農民が、農機具によって年々労働災害というものがふえておるわけです。  農機具によるこの労働災害、現行の災害補償制度はいろいろありますが、これに入るのには、なかなか手続なり掛け金等があって、そう簡単に農民が入れない。入れる道はあるけれども、まだ法的には差別がある。この差別撤廃をして、完全にそうした農機具による労働災害を、片一方で機械化を推進するのなら、もっと農民の労働災害対策と並行して考えなければならぬのではないか。農薬はもちろん、こういう点でもっと農民の労働災害の対策を基本的に——それは自然病気で、農夫症という病気で農民はいろいろたいへん苦しんでおるが、機械による農業、要するに、農林省が農政の中で推進していくそうした農業機械化に伴う労働災害については、国もどういう方法で対策をやるかということは、考えなければならぬと私は思う。この点についての大臣見解を聞いておきたい。
  40. 池田俊也

    池田政府委員 確かに御指摘のように、農業機械による事故が最近かなりふえてきておるわけでございます。これは、もちろん農業機械が普及したということにもよるわけでございますが、内容について見てみますと、私どもは、やはりかなりそこに問題があるのではなかろうかという感じを持っているわけでございます。たとえば、最近一年間の事故を見ますと、五、六%程度の事故率になっておるわけであります。内容を見ますと、やはり一番多いのは、実際に機械を扱います人の技術が十分でない、あるいは交通法規に対する理解が十分でないというようなことが、どうも事故の一番大きな原因のようでございます。あと、まあ機械の整備が十分でないとかその他の理由があるわけでございます。  私どもといたしましては、やはり今後さらに機械を入れていかなければなりませんし、それに対する安全を確保するための施策というものは、正直のところを申しまして、従来かなりおくれておりますので、これはぜひとも力を入れてまいりたい。従来若干の予算をちょうだいいたしまして、機械を扱うためのいろいろな講習会とか、あるいはそういう技術者の養成とか、たとえば農作業の安全月間というものを設けまして、そういう啓蒙運動みたいなこともやっておるわけでございますけれども、なお十分でございませんので私どもはさらにこれは充実していきたい。来年度の予算でも、農作業の安全対策という予算でございますが、金額はわずかでございますけれども、大体倍くらいにいたしておるわけでございます。  それからもう一つ、御指摘の労災保険の問題でございますが、確かに御指摘のように、従来かなり対象が限定されております。たとえば、自走式の機械を使っている方とか、あるいは五人以上雇っていなければいかぬとか、いろいろな限定がございますので、現状においては、なかなか一ぺんにこれを拡大するというのは困難でございますけれども、私どもは現状と見合いながら、やはりそういう点についても拡大をするような努力をしてまいりたい、そう思っております。
  41. 柴田健治

    柴田委員 次に、作付転換についてお尋ねしたいのですが、今度の予算委員会でもそれぞれ大臣は、また、きのうも予算分科会で武藤さんに答弁されておったのをじっと聞いておりますと、いろいろあるわけですが、この作付転換というのは、結局市街地付近はだめだ、それから集団でなければならない、十町歩程度で転換をしないとだめだ。十町歩というような基準は、どういう基礎で出してきたか。十町歩をほかの、たとえば果樹にしろ飼料にしろ——十町歩の飼料というものと並行して、畜産関係やなんか影響するわけですが、ほかに資金が今度はたくさん要る。単に二万円程度の奨励金を出して、せいぜい他の資金の融資をするのでしょうが、結局、これはまた作付転換を各府県に割り当てをするのか。各府県に割り当てをしておるようですが、してないと言われてもしておるのですが、目標を内示している。おまえのところの県はおよそ百町歩とか二百町歩とか、見当、大見当だ。やみ夜の鉄砲で結局割り当てをして、さてどうすればいい、みな都道府県は弱っているのですよ。都道府県は、ネコの首へだれが鈴をつけに行くかという心配をしているのですよ。行ったらかみつかれる、何をとぼけておるかというので。作付転換だと言われるから、都道府県は農民に言うていいやら悪いやらわからぬ。それこそネコの首に鈴をつけに行く相談ばかりしている。行けない。とぼけちゃいかぬと言われる。そういう農民の気持ちは全然わからない。その時点において一万ヘクタール、まあ四万トンくらいの減収政策んなですが、私はどうもこの点についてはあまりにも農民をばかにしたやり方だと思う。  この間の公害問題で、大きな会社、企業家は十年間の猶予期間を与える、十年間でぼちぼち施設改善しなさい、こう言う。農民のほうはどうする。米が余った、それやれ、こう言う。悪いことでも執行猶予というのがある。農民は作付転換をする限りにおいては、気象条件なり、土質の調査なり、品種選定とか流通関係、資金関係、総合的に調査期間が要る。役所は何だ、一つの法律制度をつくるのに、雨の日も風の日も机について法律ができるわけだ。それでも二、三年かかる。農民年金制度をつくるといったって、何年かかって、調査費を何千万と金を使って、農民だけはすぐ作付転換できる、そういう考え方を持つところに、農民考え方を十分あなたたち理解してない。猶予期間を一つも与えない。各都道府県の農業団体に調査費を与えて、おまえのところの県は将来こうあるべきだ、作付転換ができる、そういう構想をまず立て、調査費をつけてやる、それくらいな思いやりがあってこそ、ほんとうにあたたかい総合農政の推進の姿勢ではないか、私はそう理解する。ことし言って来年から作付転換しろ、猶予期間も何も与えずに、そんなばかなやり方がありますか。大臣、あなたは農村から相当の票を取って出られたのでありますが、猶予期間も与えず、調査費も与えず、それであなたがほんとうに農林大臣として信念のある、自信のある作付転換ができると思いますか。なぜ猶予期間を与えぬのだ。
  42. 長谷川四郎

    長谷川国務大臣 都市周辺はなぜやらぬのかという第一の問題でございますが、いろいろ御意見もありましょうけれども、いままで大体都市周辺で米をつくった、一年休んでいて補償費だけもらった、それがすぐ次の年には宅地になっちゃった、そういうようなこともあり得ることであります。ですから、都市周辺というものには、あまり計画的な転換政策というものは御無理じゃないのだろうかというような点も考えておるのでございます。  御指摘のような、無理やりにもう押しつけたんだろうとおっしゃるんですけれども、まだそこまでいっていないんですよ。いろいろ相談をしてみてくれぬか、現実の上に立って需給のバランスをどうやるかということも、ひとつお互いに考えてみてくれないか、それにはどうか生産地のほうも御協力願えるだけ協力してくれませんかという程度であって、基本的なものについてこうするんだ、これでいかなければいかぬのだ、そういう強制的な押しつけはまだしていないはずなんですけれども。まあそう御無理でないようにひとつやりますから、どうか……。
  43. 柴田健治

    柴田委員 どうも大臣答弁を聞いていると、それだったら予算を思いつきで組んだといわれてもしようがないじゃないですか。基本的な構想が一つもない。それなら作付転換の実施要綱はいつ出すのですか。われわれは、あの昭和八年に作付転換が問題になったときに、軍部が反対してつぶれた、そういう過去の歴史的なものをよく知っておる。日本は瑞穂の国、農業国である、こうして長い歴史を持ってきた。たいへんなことなんですよ、作付転換をさせるということは。重要な段階に来ておる。その中で実施要綱も出さずに、一万ヘクタールやるんだ、反二万円で二十億円の予算を組んで、これから出します、話し合いします。まことに人をばかにしたやり方だと思うんですがね。実施要綱を出しなさい。
  44. 長谷川四郎

    長谷川国務大臣 それは出しますが、その点についてお話し申し上げますけれども、先ほどのお話の、ちっとも聞いておらぬ、聞いておらぬと言うんだけれども、たとえば、構造改善だって一億一千万円から四億円にしたんですよ。ずいぶんこれだって地方の事情を聞かなければそうやれやしません。私がこの予算をとるといったって、ずいぶん地方の話を聞いたから、一億一千万円を四億にしたんだから。これを五割増にするのでもたいへんで、大蔵省との折衝もかなり苦労したつもりなんですが、これは地方の農業というもの、農村の実際の話をずいぶん聞いたからこそ、これであってはならぬ、こういうことでやったつもりなんです。御批判も、全部が全部当たらないと言うんではないが、中には当たらない点もあるわけなんで……。  実施要綱は、いま官房長から話します。
  45. 大和田啓気

    大和田政府委員 これは、実はまだ予算も御審議いただいておるときですから、作付転換を大いにやってくれというふうに、農林省は地方に呼びかけていないんです。どういう実態か、あるいはどういう希望があるかということの調査なり、あるいは末端の意向を尋ねる程度のことをやっておるだけでございます。  それで、ごく最近でございますけれども、私どもの腹案らしきものをもって、地方農政局なりあるいは県なりに、いま相談をしている段階で、それが終わりまして、三月の上旬くらいには、大体こういうふうにやったらどうかという腹案くらいは御説明できるだろうと思います。そのときに、大臣からもお話がございましたけれども、一万ヘクタールということ、そしてあくまで自主的な転換を政府として誘導するのであって、強制的に稲作の転換をさせぬということは、もう口がすっぱくなるほど言っておることでございまして、その点は、いま御趣旨のように、いきなりがちがちやるのはおかしいではないかという御批判は、十分私ども注意してやっておるつもりでございます。
  46. 柴田健治

    柴田委員 作付転換といっても、農民はことしの植えつけというのは一月にはや用意するのです。一年の計は元旦にありという。それがいまだに実施要綱を出さずに、予算が審議中である、いずれ説明というのでなしに、実施要綱を出さないと——所によっては苗しろの用意をしなければならぬし、用意というものは、あなた方がたばこ屋にたばこを買いに行って、きのうまでハイライトを吸っていたがきょうはピースだというふうに、そう簡単に変更できるものではないのですよ。そんな軽い気持ちで、そうして、結局猶予期間をなぜ与えなかったかということ。各都道府県なり農業団体に、将来の作付転換の構想は、こうあるべきだという考えがあるのだけれどもどうだ、こういう調査費ぐらいはつけてやって、猶予期間をなぜ与えなかったか。  こういうことに対して、大臣は、苦しいの、同情してください、私は一生懸命にやったんだ、そういう答弁ではいけないので、もう少し順序を追ってお答えを願いたいと私は思う。
  47. 大和田啓気

    大和田政府委員 確かに、苗しろの準備をするのに近いような段階のところもあるわけでございますが、とにかく予算案として国会で御審議をいただいておるのでございますから、予算案が通らないのに、農林省として作付転換を積極的に進めるといたしますと、また別の御批判が必ずあるわけでございます。そこのところのつり合いがなかなかむずかしいところで、私どもは、仕事が多少おくれておるわけでございます。  それから、まあ作付転換の問題は、私ども、たとえば開田がどうなるか、あるいは農地の壊廃がどうなるか、米の需給事情がどうなるかという、いろいろな情勢の推移もありますから、いまここでにわかに、将来どうこうするということを申し上げられませんけれども、私ども、やはり米の作付転換というのは、今後の相当大きな問題として引き続きあるだろうと思います。したがいまして、今回はとにかく一万町歩ということで、いわば実験的な段階でございますけれども、県なり農業団体なり市町村なりには委託費を用意してございますから、その中で、いま御趣旨のような調査もあわせ行なえるような仕組みを十分考えて、研究をいたすつもりでございます。
  48. 柴田健治

    柴田委員 まあいずれあとからお願いを申し上げる点がございますから、御注文だけを申し上げて、次に食管問題に入ります。  大臣、四十四年産米の米審についてですが、米価審議会の委員の任命について、いままでの国会での話し合い、論議の中で、いろいろ関係——前の西村農林大臣お答えになっておりますが、それぞれ利益代表を今度は入れます、国会代表も、生産者代表も、消費者代表もみんな入れますというお答えをされておるのですが、そういう考え方があるかということが第一点。それから先ごろ、新聞によると、四月、五月ごろに、いろいろ準備ができないので、また積算というか、米価についてのいろいろな生産費の問題等で資料が整わないからおくれるのだ、こういう御発言があったようでありますが、今度の米価審議会の委員のその構成の問題、任命がいつ終わるのか、いつ発表されるのか、そしてほんとうに米価審議会として発足して審議するのはいつか、この三点を簡単に……。
  49. 長谷川四郎

    長谷川国務大臣 前年度のいろいろな問題もよく知っております。そういうような上に立って慎重にやらなければいかぬ。あわせまして、当時の私のいろいろな体験といいましょうか、そういう上に立って、その構想は立てております。ですから、どれとどれというふうにただいま申し上げにくいのでございますけれども、大体、前年度皆さん方からいろいろなお話を承ったのを基礎に置いて構成をやっていきたい、こういうふうに考えております。したがって、いつということはなるべく早くやりたい。  まあほんとうに親切なやり方ならば、いまお話しのように、ほんとうは種をまく前に、ことしの米審が審議をした結果はこのようでございます、幾らが妥当でございますという答申をいただいて、そしてまず米をつくる人に、ことしはこうだ、この上に立った米作をやってもらいたいというような考え方でやるべきでありますけれども、なかなか統計というのがむずかしいのだそうでございます。一生懸命やれ、そんなことではだめだ、こんな不親切なことをやらないで、いままでのように七月、八月というわけにはいかぬから、ことしは早目に発表すべきだ、急いでやれという、そういう命令といいましょうか、私がお願いをいたしまして、そうしてただいま非常に急いでいるようでございます。ですから、なるべく早目にその構成をし、審議にあずかりたい、こういうふうに考えております。
  50. 柴田健治

    柴田委員 いままでの米価算定の基礎というものは、前年度のあらゆる生産費を基礎に置いて、ちょうど住民税のきめ方と一緒にやっているのですよ。なぜその資料が整わないのです。ぼくはおかしいと思うんですよ。そういうことから考えて、あまりにもことしは、予算の面から見ると、総合農政論というのが前面に出てきて、農民は重大な関心を持っておるそのときに、いまだにその米審の任命が発表できない、いつごろ会議が開かれるかわからない、こういうことで、誠意のある農林省考え方というものが——農民が受けとめておる気持ちというものは、農林省というものは農民の味方でないなあという気持ちを持っているのですよ。あなたは、もうそういじめずに、まあ一生懸命予算について努力したんだ、まあ高く評価してくれ、こう言わぬばかりに答弁されますけれども、農民はそう受けとめておらない。長谷川農林大臣は人間的にはりっぱであっても、農政についてはどうも思いやりがないという受けとめ方をしておるのですよ。  冗談は別として、次に、十三日の予算委員会で、石田議員から福田大蔵大臣質問しているのですよ。ことしの米価のきめ方は、従前どおりに限界反収方式をとるのかという質問に、それは変更して平均反収農家方式をとる。平均反収農家方式をとるということは、これは重大なことなんですよ。こういうことを、米審の委員も任命しない、米審にもかけないという前に、かってに大蔵大臣が、そういう米価の算定方式を変えるような答弁をする。結局これは、われわれからいうと食管法第三条の二項違反じゃないか、こういう気持ちもするわけであります。これは違反になるかどうかわかりませんけれども、そういう気持ちがするわけであります。いまの大蔵大臣答弁を見ますと、実質的には生産米価の引き下げになる可能性が出てくる。据え置き論というよりか引き下げになる可能性が出てくる。たとえば、限界反収方式でなくて平均反収農家方式をとると、結局は生産米価据え置きどころか、引き下げになる可能性がある、こういう心配があるわけです。数字についてはよろしいが、そういうことをかってに大蔵大臣答弁をしておるのです。農林大臣と打ち合わせをして答弁せられたかどうか知りませんが、農林大臣としてそういう方式、大蔵大臣と同じような考えを持っておられるかどうか。
  51. 長谷川四郎

    長谷川国務大臣 大蔵大臣と同じ考えは持っておりません。というのは、私のほうはただいま御指摘のとおりの立場にあります。したがって、平均反収でこれを決定しようなどという考え方は持っておりません。この点だけは明らかにしておきます。
  52. 柴田健治

    柴田委員 だから、大蔵大臣はかってにああいうことを、予算委員会で石田議員に答弁したことに解釈してもよろしいね。  次に、自主流通米ということで、この前の委員会で工藤君からいろいろ質問があったんですが、自主流通米というのは、結局は、自由販売だとわれわれは受けとめておるわけです。日本語は便利がいいんで、自主流通米と、こういっておるのです。自主流通米というて、農民が小首を傾けて考えておる間にすっと通っちゃうのです。これはごまかしだと思うのです。  それは別として、何としてもこの自主流通米という制度というものは、結局は生産者と消費者がどろをかぶる、こうわれわれは理解しておる。いまやみがある。現在の段階ではやみということです。やみ米というのが相当出ておる。東京でも大体一日に四割近くはやみではないか、こういわれておる。それは事実かどうか知りませんが、大阪でも、大都市付近には非常にやみがある。こういうことを考えた場合に、きのう大臣は武藤さんに、買い入れ制限はいたしません、予約は完全にいたします、こういう答弁をしておられたようですが、自主流通米ということばを出して、片一方では買い入れ制限いたしません、食管の根幹は守ります、こういうことを一方では言うておるのですが、実際この自主流通米を実施して食管が守れるのかどうか。  また、一方では物統令から米をはずす、こう言っておる。価格調整はどこでできるのですか。食管法十条でやる。食管法十条というのは法の基本であって、施行規則がなければやれない。施行規則もきめずに、十条で価格調整や取り締まりができるということを食糧庁長官答弁しておるようですが、人をばかにする答弁であると私は言わざるを得ない。食管法施行規則という施行令があってこそ、初めて食管法というものは生きてくる。法の精神というものは、外堀を埋められて、中だけが孤立するということはあり得ない。法治国家はそのようなものではないと私は思う。こういう法の解釈のしかたというものは大きな誤りがある。だから、要するに自主流通を許したら食管というのは守れるかどうか、大臣、ちょっとお答えを願いたい。
  53. 長谷川四郎

    長谷川国務大臣 昨日も申し上げましたように、買い入れ制限はいたしません。したがって、食管制度の根幹というものは維持してまいりたい、まいります。これだけを申し上げて、他の点につきましては、食糧庁長官から御答弁申し上げます。
  54. 柴田健治

    柴田委員 長官はよろしい。それなら大臣、買い入れ制限は絶対しないという、これは国会で決議をしても御異論ございませんな。
  55. 長谷川四郎

    長谷川国務大臣 何も御異議はございません。
  56. 柴田健治

    柴田委員 それから、自主流通米についての中間経費はだれが持つのですか。
  57. 桧垣徳太郎

    桧垣政府委員 流通経費は、当然一つコストでございますから、生産者は政府の買い入れ価格を基準にした価格で販売するはずでございますので、経費の負担者は、最終的には消費者でございます。
  58. 柴田健治

    柴田委員 それなら、結局消費者が全部どろをかぶるということになるのですね。これは間違いないですね。大臣消費者が全部かぶるということは間違いないですね。
  59. 桧垣徳太郎

    桧垣政府委員 どろをかぶるというのは、どうも私、理解できないのでございますが、最初のスタートにおける価格コストが加わって消費者価格が形成されるというのは、商品一般の流通の場合の普通の形であるというふうに私は思っております。
  60. 柴田健治

    柴田委員 それならもう消費者は、自主流通はどんな価格に売られても、何も文句が言えないということになるわけですか。
  61. 桧垣徳太郎

    桧垣政府委員 自主流通米は、もうすでに御理解をいただいておることと思いますが、消費者自分のほしい米を、この程度の価格であるならば買おうという、需要があった場合に対応するものでございますから、消費者が納得しない価格というときには、結局、消費者は買わないということになって、政府販売の配給を受けるということに落ちつくと私は思います。
  62. 柴田健治

    柴田委員 長官、要するに市場は大混乱をして、低所得者は非常に困る。金のある者は一升が三百円しようと四百円しようと買って食べる、こんなことは自由経済の原則だからしょうがない。そういうことになった場合、市場が混乱し、価格調整はどうするのですか。あくまでも規制はしないというのですか。
  63. 桧垣徳太郎

    桧垣政府委員 自主流通米につきましては、需要の動向のうちで価格の形成をさせるということの合理性を見出そうとするものでございますから、したがって、これについての価格規制はいたしませんという考え方でございます。  ただ、政府の管理にかかる配給米につきましては、現在、物価統制令によって最高価格を設けておりますが、物価統制令の適用は、米一般について適用するのが筋と考えますので、私どもは、自主流通米の発足と同時に、物価統制令の適用は適当ではないのではないかというように考えておりますが、いずれにしましても、政府管理米の配給末端価格につきましては規制をいたしたい。  その規制をする場合に、現在私どもが考えておりますのは、政府の登録にかかる販売店は販売価格でございますから、行政上の指導価格、指示価格で基準価格を設けるということで、十分消費者の家計安定をはかることが可能である。それには、物量的な操作に遺憾のないようにする。また、ある程度の監視制度等、あるいは記帳の方法等にくふうをこらしまして、われわれの監督というものも可能になるような方法をとりたい。また、小売り店の競争という関係を通じる消費者へのサービスを必要とする段階に相なりますので、四月以降は、消費者と小売りの結びつき登録を廃止して、消費者は通帳の提示によって、どの小売り屋からでもお米を買うことができるというようにいたしたい。  それで、なおかつ政府管理米の末端価格について政府の方針が貫けないということに相なりますれば、そのために食管法十条の規定がございますので、推移によっては、食管法第十条に基づく命令を出すというようなことも、伝家の宝刀としては備えておるということを申し上げておきたいと思います。
  64. 柴田健治

    柴田委員 長官、現在ですら、物統令もあり、取り締まらなければならぬそういう現行法規がたくさんあっても、一つも一取り締まっていないのに、物統令がはずれて、食管法十条の伝家の宝刀だけあっても、やる意思が全然ないじゃないか。あの十条で、施行規則も何も考えずに宝刀だけあるといっても、結局、刀をがんじがらめにカズラでひっくくって抜けぬようにしておるのと一緒じゃないですか。そんなことでできるはずないじゃないですか。  農林大臣、今度の自主流通関係で、農産物の検査方法を変えなければならぬのではないかという気がするが、検査方法は変えないのですか、これが第一点。それから、政府の買い入れ価格、この価格を最低価格で押えるという気持ちがあるのではないか、これが第二点。それから、買い入れ規格を改定する、たとえば低品位米等の取り扱いをどうしていくのか、この三点についてお答えを願いたい。
  65. 桧垣徳太郎

    桧垣政府委員 自主流通米を発足いたしましても、農産物検査法自身は改正をする考えはございません。ただ、自主流通米の性格から見まして、従来の検査のやり方について、新たに銘柄検査を加える必要があるという点がございますが、これは法律の範囲内の問題でございますので、改正はいたしません。  それから、第二点の政府買い入れ価格は食管法第三条による価格でございますから、お話の御趣旨がよく私にも理解のできないところもございますけれども、いわゆる自由流通下における支持価格というものとは、性格を異にするもあであろうということだけは十分申し上げられると思います。  それから第三点、検査にあたりましての等級間の規格を変更する気持ちはございません。
  66. 柴田健治

    柴田委員 大臣政府は非常用として、災害その他に関係して備蓄米というものは、日本の場合はおよそ何十万トン、何百万トンが適正なのか、この備蓄米の基本的な考え方。それから、この備蓄米に対する貯蔵の方法、この考え方はないですか。この備蓄米というのは、日本国民にとっては重大な関心があるのですよ。非常災害という場合に、どういう量が日本の備蓄米として、政府の責任において備蓄する適正な数量か。
  67. 長谷川四郎

    長谷川国務大臣 備蓄米といいましょうか、保管方法という面については考える必要はあるだろう、これは御指摘のとおりだと思うのです。したがって、それには従来やってきたようなそのままの備蓄方法がいいか、今日に至ってもそのままの備蓄方法でいくということについては疑問がありはせぬか。たとえば、古米がどうでこうで、古々米がどうでこうでといわれているが、今日、これだけ科学が進んでいる中で、古米、新米という差別をしなくても、どちらを出してもおわかりにならないくらいの保管方法というものはあるのじゃないだろうか。こういうような考え方の上に立って、いまいろいろ研究を始めております。  たとえば、水中保管をどうするとか、コーティングの方法をどうやるとか、この方法がいいとか悪いとか、あるいは低温の倉庫をもりと活用したらどうかとか、その活用度をどうするとか、もみ貯蔵をどう持っていったらいいかとか、たくさんの方法がございます。その方法につきましては真剣に取り組んでおります。ですから、その結論はまだ出ておりませんけれども、近いうちに結論を出しまして、その方法をとる考え方でございます。  数量はどのくらいが妥当であるかという点については、長官から説明をさせます。
  68. 桧垣徳太郎

    桧垣政府委員 国民の基幹的食糧について、凶作等に備えるためにある程度の備蓄を必要とするということについては、私ども同感に思っております。  ただ、現在の食管の保有の状態は、御承知のとおり昨米穀年度の暮れ、つまり去年の十月末に、三百万トンの玄米を政府管理をいたして繰り越したわけでございます。ことしの十月末には、約五百七十万トンの繰り越しということになりまして、自主流通米を加えます一般消費者に対する配給量としては九・五カ月分、政府の配給予定数量の十一カ月分というものを持っておるのでございますから、現状で、そういう不時の場合に備える数量としては十二分であろうと思います。  理論的にどの程度の備蓄が必要であるかということは、私はいろんな議論の分かれるところであると思いますけれども、食糧管理をやっておる者の立場から申し上げますと、少なくともいろいろな物理的制約もある。たとえば、備蓄米というのは、いつでも国民食糧として好適な状態のものでなければならない。したがって、前年産米あるいは前々年産米というものが新しい年の米と置きかわって循環をする必要があるだろう。そういう観点からいきますと、一年間に古米を配給の面で循環をし得る量は、どうもよほど努力をいたしましても、百五十万トン程度になるのではないかというふうに考えられますので、したがって、この数量は、保管方法等の改善があればまた変わってまいるのでございますが、従来のような状態のもとでは、大体百五十万トン程度のストックがあれば、かりに作況九五というような、三十年以降あまりないような作況が二年続いたとしても、百五十万トンあれば対処できるというようなことでございますので、われわれの立場からは、大体百五十万トン程度の備蓄量があれば、少なくとも食糧需給操作にはことを欠かないのではないかというふうに思っております。
  69. 柴田健治

    柴田委員 時間がおくれましたが、もう二、三点お尋ねして終わりたいと思います。  今度の自主流通米は、要するに、大体二月末に農民は予備登録という形で、ことしはどこに米を売り渡します、どこを窓口にしますということで登録をし、それから金融登録が三月の中旬。今度は方向を変えて、いままでの期日を延ばして、三月の月末に予備登録、四月になってから金融登録がえをやる。こういう登録がえのときを迎えて、自主流通米制の実施要綱を出さないということは、何としてもわれわれは審議するわけにいかない。自主流通米の実施要綱というものを出してもらいたい。登録の問題もある。  また、そういう自主流通米ということをいろいろわれわれが考えると、今度おそらく政令を改正されるのじゃないか。この政令を変えるということをしないと、自主流通なんというものはできっこありゃしないじゃないか、こういう気持ちがするわけであります。たとえば、米穀管理の改善をするのはどういう方法でやるのか、配給のルート、配給方法の改善をどういう方法でやるのか、販売業者との登録の関係をどういう方法でやるのかという、いろいろ細部にわたっての検討をわれわれは加えなければならぬと思うので、自主流通についての実施をどうするのかという要綱出してもらいたいと思うわけですが、見解をお尋ねしたい。
  70. 桧垣徳太郎

    桧垣政府委員 自主流通米を制度的に確定するのは、御指摘のように、政令の改正その他命令関係の整備を終わったときでなければ完備をしないわけでございますが、自主流通米について、現在、予算を御審議を願うために、われわれとしては自主流通米はこういう構想で考えておるという程度のものは、お示しをすることは可能であります。
  71. 柴田健治

    柴田委員 私は委員長に資料要求をしたいのです。  いままで私が質問をしてまいりました点で、ぜひ資料がほしいのでありますが、輸入農産物の関税のかからない、各外国農産物がどの程度で生産されているのか、こういった関税をかけてない価格の一覧表をつくってぜひ提出願いたい。これからの日本主要農産物果樹を含め、畜産物を含めてコスト引き下げをどうするかということは、われわれ政治家の任務である。やはりこれから消費者の立場も考え、生産者の立場も考えて農業政策を進めていかなければならぬ。その場合に、将来の国際農業、国際経済、そういう形の中の競合、対決をしていかなければならぬという、好むと好まざるとにかかわらずそういう運命をたどる日本農業、そうした場合には、日本農産物コストをどういう方法で引き下げていくかという、一番最初に論議をした点でありますが、この参考のために、外国農産物の関税のかからないコストを、通産省と話し合いをしてこの資料の一覧表を出してもらいたいということが第一点。  第二点は、構造改善事業の実施要綱をいつ出してくれるかということの資料要求。  それから作付転換実施要綱。これもあわせて出してもらいたい。  それから自主流通米制度の実施要綱も出してもらいたい。  この四つを資料として至急に出してもらわないと、われわれは次の法案も何も審議いたしません。これだけ申し上げて質問を終わります。
  72. 長谷川四郎

    長谷川国務大臣 柴田さん、一番最初のは外国生産価格ですか。日本へ来てのCIF価格でなくて……。
  73. 柴田健治

    柴田委員 日本へ来た関税のかからぬ農産物価格でもよろしいです。
  74. 長谷川四郎

    長谷川国務大臣 CIF価格でいいですね。
  75. 柴田健治

    柴田委員 委員長、お願いします。
  76. 丹羽兵助

    丹羽委員長 承知しました。  ちょっと私から政府側に申し入れをいたしますが、ただいま要求のありました資料、至急御提出を願うようにお願いします。  たいへんお待たせをいたしましたが、次は永井勝次郎君。
  77. 永井勝次郎

    ○永井委員 長谷川農林大臣に伺いたいと思います。  政府は、いま農政の転換をやろうとしておるわけであります。この転換については、それぞれの実態があり、また考えがあろうと思いますが、それの実行にあたりましては、政府の側の事情によってだけ、あるいは財政的な、あるいは需給的なそういうことだけで、農民の犠牲においてこれをやろうとするのか。   〔委員長退席、安倍委員長代理着席〕 あるいは、このことによって農民も喜んで生産意欲を盛り上げていける、そういうものにしていくのかどうかということについて、われわれは転換の問題について吟味をしていかなければならない、こう思うわけでありまして、私は、その生産の現場の立場から大臣にいろいろお尋ねをいたしたいと思います。ですから、大臣から農政の理屈をいろいろ聞こうというのではありません。農民生産の場において気持よく、あるいは大いにがんばれるという条件が整備されるかどうかという点を中心にして、農林大臣は上のにおいをもってそのいすにすわっておると考えますから、その立場において、ひとつ率直にお答えをいただきたいと思います。  北海道の米の北限地帯、そこで四町歩の水田耕作をしておる。豊作の年もあるが、常に気候の不順の影響を受けて、共済制度でつっかい棒をされながら水田農家をやってきた。しかし限界で、政府の呼びかけに応じて転換しようとする。酪農にかわったらいいか畑作農業にかわったらいいか、こういう迷いを持ちながら、いまどうしたらいいかということで頭を悩ましている農家を想定いたしまして、そしてこれらの転換の中心にあって、いろいろな情報を十分に持って指導できる立場にある農林大臣として、この農家の相談に応ずる場合、結論からいえば、酪農にかわって安心していけるのかどうか、また有利な条件がこれからそこに用意されているのかどうかということについて、農家の相談にお答えをしていただきたい、こう思います。
  78. 長谷川四郎

    長谷川国務大臣 その地区において、この場所では何かというような点については、私から申し上げるわけにはまいらないだろうと思います。なぜならば、北海道のその地区が、たとえば、気候、風土というものがどういうふうなものになっておるのか、あるいは酸性であるかアルカリ性であるか、PHの点までも調べた上でなければ、そういう結論的なものは出てこないだろうと思います。したがって、北海道のこの地区が転換するのだが、何がいいかということを言われても、私はそれはお答えするわけにはまいらないと思います。いずれにしても、転換をしていただけるならばぜひ転換をしてもらいたい、そのかわりにできるだけの援助を今後なおさらに引き続いて続けていきたい、こういうような考え方だけは持っております。  このたびの、たとえば一万ヘクタールにつきましても、決してこれは強制的に申し上げている意味ではないのでありまして、要は、その地区地区の将来をあわせ考えたとき、米の需給緩和の上に立って将来性を考えてみたとき、こういう上で初めてその判断を求め得るのでございます。ですから、いまここでその地区はどうかと言われても、申し上げるわけにはいきませんけれども、もし転換をしてくださるならば、でき得る限り将来性を持ったものに転換し、でき得る限りの援助といおうか、あたたかい手を尽くしていきたいという考え方には変わりはございません。
  79. 永井勝次郎

    ○永井委員 私が大臣にお尋ねしたのは、もちろん家族構成がどうであるとか、経済的な条件がどうであるとか、地質がどうであるとか、農業経営についてはいろいろの必要条件がありましょう。そういう条件を並べて、そうしてどうですかと聞くのではなくして、一般論として聞くのですから、だからそんなにこまかいことまで聞こうとしているのではない。だから、転換しようとするその選択権は農家にあるのでしょう。農家にあるが、米はだめだというなら、酪農か園芸か畑作かこれ以外にないとすれば、その中の一つの、これから引っ越し先の酪農について、そこへ引っ越していって不安はありませんか。安定した経営がそこに用意できるかどうか、そういう一つ条件をいま一般論として聞いているのです。いかがですか、不安はありませんか。
  80. 長谷川四郎

    長谷川国務大臣 ただいま申し上げましたように、転換をするということは方針にマッチしていただくことなんですから、でき得る限り手厚い、あたたかい手を伸ばしていきたいというように考えております。  ただいまの、たとえば酪農はどうだというようなお話もございましたが、昭和四十一年以来加工原料乳の保証価格の算定、こういう点にあたっても、飼養管理費などについてもいまやっておりますが、今後もあわせ考えなければならない問題は、現在米作をやっている方で、政府の方針に沿って転換をしてくれたという方については、一そうの考え方をもってあたたかい方法で迎えてやらなければならない、こういうことだけははっきり申し上げられると思うのであります。
  81. 永井勝次郎

    ○永井委員 あたたかい気持ちで迎えるということについては、たいへんけっこうだと思います。あたたかいにもピンからキリまであるので、その具体的な内容をこれからお聞きしなければいけないのです。  まず、米をつくっておりますと、とれた年は、四ヘクタールつくっておれば、反収七万円としても四、七、二十八、三百万円の粗収入はあるわけです。かりにこの収穫が半分であったということで共済金を受けるにいたしましても、大体百五、六十万円の収入は確保できる、こういう条件であります。でありますから、それを酪農に転換する、こうした場合、四町歩という経営規模の中でどのくらいの牛が飼えて、どのくらいの牛の収入が大体確保できるのか、収入の見通し等について、大臣がわからなかったら畜産局長でけっこうですが、こまかいことは要らないですから、大筋で答えていただきたい。
  82. 太田康二

    ○太田政府委員 酪農の収益の問題でございますが、先生も御承知のとおり、酪農につきましては年々乳価が値上がりをいたしておりまして、畜産物価格の中では、ある意味においては最も安定した部門であることは間違いないわけでございます。特に北海道におきましては、加工原料乳の不足払い制度の発足以来、非常に生産の伸びておることも御承知のとおりでございまして、われわれの試算によりますと、畜産経営の収益性ということで見てまいりますと、昭和四十二年の数字で申し上げますと、全国平均の規模で申し上げまして、一日当たり家族労働報酬が千百六十八円、これはたしか、その年におきます米の一日当たり家族労働報酬の二千六百二十七円に比べますと、まだ非常に低いわけでございますが、御承知のとおり、酪農労働は年間労働でございまして、かなりの収益が入ることは間違いないわけでございます、しかも、多頭化によりますところの生産性向上という効果もあるわけでございまして、現に三十頭以上の規模になりますれば、二千八百四十円ということで、米よりも高い一日当たり家族労働報酬をあげておるということでございます。  ただ、酪農の場合には、御承知のとおり初度の設備投資が非常に金がかかるというようなこと、しかも、収益が還元されるまでに相当の迂回期間があるという意味で、新しく始めるということになりますと、いろいろ問題もあろうかと思いますが、現在酪農を実施されておられる方がこれを多頭化していくというような場合には、われわれといたしましては畜産経営拡大資金、あるいは私のほうの予算で実施いたしておりますところの乳牛の導入制度、あるいは昨年つくりました総合資金制度等によりまして対処してまいりたい、これによりまして多頭化の促進をはかってまいりたい、かように考えております。
  83. 永井勝次郎

    ○永井委員 その場合酪農の経営規模、適正規模としてどのくらいのところに標準を置いて指導し、あるいはそういう基準を確立していこうと考えているのか、その基準、目標をどこに置いているのか明確にしていただきたい。
  84. 太田康二

    ○太田政府委員 昭和四十六年を目標年度として、昭和四十一年に酪農近代化の目標を示したのでございますが、酪農専業経営におきましては、十ないし十五頭規模ということを目標に育成してまいりたい、かように考えております。
  85. 永井勝次郎

    ○永井委員 それは搾乳牛だけですか。
  86. 太田康二

    ○太田政府委員 経産牛でございます。
  87. 永井勝次郎

    ○永井委員 搾乳牛十頭とか十二、三頭というのは、もう北海道では採算がとれない線です。いまのところどうにかそろばんがとれるのは十七、八頭。搾乳牛を十七、八頭入れるとすれば、成牛は六、七頭を用意しなければそれだけのものが維持していけない。いまもう北海道の酪農の基準は三十頭から四十頭です。長期の展望をするなら、五十頭目標の計画でなければ、これから国際競争にも打ち勝っていくという長期展望をもっていくならば、そういう基準に立たなければ、私は酪農なんと言えるものにならないと思う。十頭ぐらいの搾乳牛で、いまの時点——いまの時点はかりではなくて、四、五年先までそれでいいのだ、そういう考えに立つならば、とんでもない間違いだ。  いま、水稲から酪農に転換するという場合、これは全然経営の内容が違うのですから、設備投資、転換の投資というものが非常にかかります。そういうものの資金手当てが、いまの制度の中でできますか。できないでしょう。制度資金の関係はみんなばらばらでしょう。十分に手当てがつかない。足りない分は自己資金なり、ほかからの高い金利の金を借りる。ですから、最初すべての条件がそろって、一〇〇%済んで、よくいく場合はその中で償還もできていくでありましょうが、雄牛がたくさん生まれたとか、あるいは病気になったとか、家族に病人が出たとか、何かの正常な運営の中のつまずきがあれば、そこでまいっちゃって、今度は借金なんかが累積していき、たいへんなことになる。借金が残って、サイロが残って、畜舎が残って、そうして酪農でばらばら、こういうことになりますから、当初にあたってあたたかい援助をするという大臣のなには、かりに十五頭と仮定いたしまして、十五頭の搾乳牛をこれから新しく入手して酪農に転換するとして、資金としてさしあたってどのくらいの金が要ると思いますか。その資金の手当ては、制度的にどれだけ手当てができると思いますか、明確にしていただきたい。
  88. 太田康二

    ○太田政府委員 家畜の導入の制度といたしまして、資金の裏づけといたしましては、先ほどもちょっと触れましたところの総合資金制度がございまして、八百万まで貸せることになっております。したがいまして十五頭規模で、一頭五十万といたしまして七百五十万ということで、家畜、畜舎含めましてそれによって一応の手当てができるというふうに考えております。  それから、育成段階の資金問題につきましては、実はたしか昭和四十一年度だと思いますが、農業近代化資金の改正をいたしまして、運転資金につきましても、酪農の場合は育成期間には収益があがらない、しかも相当の期間かかるということで、この間の運転資金も、実は近代化資金の対象にいたしまして、金利の引き下げを行なうというようなこともあるわけでございます。
  89. 永井勝次郎

    ○永井委員 項目をあげればいろいろあるでしょう。しかし、経営は実際ですから、水稲をつくっているのが今度は酪農にかわって、採算線に乗る十五頭前後の搾乳牛を用意して、そしてこれから出発しようとする。その場合、まず十四、五頭の搾乳牛をどこから求めるかというと、育成牛をプールしたところはそんなにない。そうすると、いままで酪農をしている農家から買い集めるのですよ。買い集めなければならないとすると、いい牛なんか売ってくれる人はないですよ。一番悪い牛ばかり寄せ集めて十五、六頭の牛を買ってそこから出発する。だから、みんなそこで失敗しているのですよ。  北海道なんかでも、オホーツク牧場なんか三億からの資金を入れて、そうして近代化して集めた牛は二百何十頭だけれども、ぼろ牛ばかり集めたから乳があまり出ない。品質も悪い。そういう牛よりないのですよ。そういう体制日本の酪農業にはできていないのだから。大臣、よく聞いておいてくださいよ。それを、何かやればすぐ牛がそれだけ集まって経営が成り立つなんて思ったらとんでもない。だから、転換するについても、それぞれの時間的な経過と、用意と、それからそういうものがやれるような環境をまず整備してかからなければ、いきなりやれなんていったって、金を貸しただけではできない。金を貸せば建物はりっぱにできます。牛の頭数はそろいます。しかし、経営の内容が整わない。それが実態です。  ですから、三億何千万円かけたオホーツク牧場なんか、みんな建物を見に来ます。たいしたりっぱなものですから、あまり人が来て困るものですから、オホーツク牧場では見学料として一人二百五十円の入場料を取って見学させるほどです。そのうちに、経営のほうはあんまりうまくいかないものですから、今度は観光のほうに力を入れて、観光に来る人のために中に売店をこしらえるというようなばかげた方向にまで発展していっている。これはもうひつくり返ってきているのです。  それから、大臣も御承知のように、根釧原野で開拓のパイロット、機械化のなにをやりました。金を入れて設備をする間は、たいしたものだ、こう言ってみんなに見せる。いよいよ乳をしぼったりして具体的な経営に入ると、もうみんなまいっちゃう。そして離農をする。このごろは根釧原野のパイロットについては、成功したということを言いません。黙っている。その次に出てきたのは、今度あっちこっちで、経営まで入れた資金の手当てをしてやって、それも失敗している。ですから、これは簡単に酪農酪農と、酪農にいけばすぐ経営が軌道に乗るなどと思ったら、とんでもない間違いで、そこに問題がある。  それから、酪農というのは、一頭牛を飼っても二頭牛を飼っても、それを順次積み重ねていけば酪農が成功できると思ったら大間違いで、いままで北海道だって何十年の間そういうタイプのことをやってきた。一頭牛を飼って、それを育てて子供をとってだんだんふやすやり方だったが、適正規模というものがあって、二頭や三頭では赤字なのです。困っている者がその赤字の経営をやるから、さらにマイナスになってしまって倒産が早い、こういうことになるわけであります。  それから、北海道の何十年の酪農の歴史の中では、かつては乳というものは副産物なんだ。主産物として考えてはいない。牛を飼うのは土地を肥やすためだから、主産物は牛のふん尿だ、ふん尿をとってそれで堆肥を積んで地味を肥やしていくのだ、その上に乳は副産物として金になるのだ、こういう農業を指導してずっとやってきた。そして最初は補助金を出して、牛が相当ふえてきて牛乳の生産が多くなったら、従来の私企業はもう買いどめです。乳を買いません。もう一ぱいですから私のところは要りませんということで買わないから、乳を川へ流す、あるいは引き取れ、引き取らないということで騒動を起こす。でありますから金を入れて酪農を進める、乳が上がってくる、上がってきたら買いどめになってまたぐっと下がる、こういうことの繰り返しをずっとやっているのですよ。だからいまの段階で、酪農さえやればあすの農村が明るく展開するのだ、あすが開けるのだなどとかねや太鼓でやるということは、無責任きわまるやり方だと思う。もう少し経営をする人々に、そこで生活をかけ、農業に生命をかけてやる生産農家の立場に立って、どういうふうにやるのだ、どのようにそろばんがとれるのだ、こういう論理が正確になって、それが実証されなければ、幾ら大臣があたたかいとかなんとか言ったって、それはあたたかいのでなくて、ことばはあたたかいけれども中身は冷たい、冷酷な仕打ちになって結果される。そのことを大臣どう思いますか。大臣には、いろいろきれいな理屈やつじつまの合ったことを聞こうとするのではない。失言あれば失言もいいけれども、ひとつ生産農民の立場に立っていただきたい。いまの政策は、このまま進行したら非常に危険な状態が出るのだ、非常な混乱が現場に起こるのだ、その問題を片づけてからでなければやれないのだということを認識する必要がある。その認識があるかどうか。
  90. 長谷川四郎

    長谷川国務大臣 非常に参考になる御意見を承りました。現在酪農について、日本ばかりでなく各国の様子を聞いてみても、各国の意見も大体同様なお話を承っております。ただいまの永井さんの、転換はどうするのだというお話は、四町歩持っている方が一ぺんに転換していく、転換という意味はそういう意味ではなかったのですけれども、酪農の将来にかけての見通しについては、重大なものをはらんでいるということだけはそのとおりだと思います。したがって、ただいま一万ヘクタールを、何とか協力を願って転換を行なおうという点についての意見はどうかと言うから、私の意見を申し上げたわけでございまして、四町歩を持っている方がこれをやる、補償をしてこうだからこうだ、これはやっぱりなかなかむずかしい問題だと思います。  御意見はほんとうに高く評価をし、よく承っておきますが、こまかい点については局長からお話し申し上げます。
  91. 永井勝次郎

    ○永井委員 転換するについても、その門口でいろいろ問題があるということを認識していただけばそれでいいです。  そこで、さらにそれが軌道に乗るとする。乗った場合、いま牛乳の不足払いができたから増産体制は上向いてきました。それまでは牛乳生産は停滞ぎみであったわけですけれども、不足払いができてから上向いてきました。上向いてきたが、現在の需要の状況はどうかといえば、飲用乳は横ばい状態です。そして加工原料乳のほうに多くこれが回っていく、こういう状況であります。そういたしますと、いま需給関係は、国産が七割ちょっとで、不足分は外国から輸入するという、これだけの大体幅があるようでありますから、生産していってもこれはまだ余裕があると思います。余裕があると思いますが、いま原料乳は国際価格に比べて二割前後高い。製品は国際価格に比べて三倍近く高い。こういう高いバターやチーズのなんでは、消費にはそれぞれの限界があります。そう伸びません。  そういたしますとやがて、米が生産過剰になって大騒ぎするように、たちまち牛乳が生産過剰になって始末がつかない、買いどめだという、かつて何回も何十回も繰り返してきた北海道酪農のばかげた失敗を、いまの時代においてまた繰り返す心配が私は非常にあると思うのですが、生産の場におけるいろいろな問題は別として、需給関係について、酪農転換をした、五、六年で牛乳が余った、どうにもならぬ、こういうような不安は、経験ある農民はみんな感じているのですが、大臣、その点における見通しは不安はありませんか。
  92. 太田康二

    ○太田政府委員 昨年の十一月に発表いたしました「農産物需要生産長期見通し」でも、実は四十一年に比べて五十二年は需要が一・九ないし二・一倍伸びると見ておるわけでございます。先生御指摘のとおり、昭和四十三暦年におきましては、実は不足払いの効果等もあったかと思いますが、非常に生産が伸びまして、一一・五%ということに相なっておるのでございまして、久しぶりでかつての一〇%台のエネルギーを取り戻したような状況になったわけでございます。ところが、生乳生産が非常に急速に回復したにもかかわらず、夏場が非常に冷夏でございまして、そのために飲用牛乳が、あるいはアイスクリーム類等の消費が伸び悩んだのであります。  ちなみにその数字を申し上げますと、飲用牛乳の伸び率が四十一年から四十二年にかけましては、六月で一三・六%、これが四十三年の伸びはわずかに五・七%、七月が九・四%が七・四%、八月が八・二%が三・九%というようなことで、四十三年全体といたしましては、飲用乳の伸びは一〇%くらいであったわけでございます。生産がさらにこれを趣えてオーバーした、しかも夏場の最も消費の旺盛な時期にこういった状況であった。したがいまして、非常に加工原料乳がふえたということでございまして、そのために乳製品の製造がふえまして、在庫増になって市況を圧迫しておる、こういう状況にあるわけでございます。  われわれは、これはあくまでまだ短期の問題であって、構造的な問題ではないというふうに見ております。ただ、非常に残念なことには、消費がまだ必ずしも定着していないといううらみもあるわけでございますので、われわれは今後生産者団体あるいは乳業メーカー、小売り業者含めまして、消費の拡大宣伝ということについてつとめてまいりたい、かように考えておりまして、長期的に見ますれば、先ほど申し上げたようなことでございますので、短期的にそういった問題も出ておりますが、これはあくまで短期的な問題であるというふうに考えております。
  93. 永井勝次郎

    ○永井委員 見方によるが、短期的に見れば、その年度の波動を短期に押えれば短期的だ。しかし、そういうものが底流にあって恒常的な要因がそこにあるのだ、そうしてそれが、ことしの要因がさらに次の年にも出てくるのです。こういうことを一つ一つつなぎ合わせていくならば、これは将来に対して危険信号が出ている、こういうふうに見なければいけないと思います。  それから、そういうふうに生産の面における問題として問題が提起されるだけでなくて、私はもう一つは、やはり乳糖の輸入であるとかカゼインの輸入であるとか、こういうものによって、合成牛乳によって生乳を圧迫している。そうしてその圧迫の中で、現在扱っておる酪農家に対して前途に非常な不安を与えている、こういう問題が私は現在非常にあると思う。これを押える、あるいは国産を第一にしてやっていくというそういう決心と、そういう政策政府にあるわけじゃないでしょう。  そうなれば、こういう問題を一つ内容に控えておるし、それにもってきて、ずっと長期にわたってまじめに酪農をやって、そうして計画を立ててやってきておるところに、政府見通しのない、その場限りのものが、ここでばばっとやってきてがっとふえた、そうして乳価ががたっと落ちてくる、そういう市場混乱によって、その長期の経営が基本からゆさぶられるという心配を、非常に酪農家は長い歴史の中で体験してきておる。これを心配しているわけですが、その関係はどうですか。大臣はわからなくてもいいから、政治家の見識として問題の所在をつかんで、そうして役所に対して、生産農民の立場からこうすべきだという指示と決意をする責任があるわけですから、まじめに聞いておいてもらわなければ困る。
  94. 太田康二

    ○太田政府委員 ただいま乳糖、カゼインの御指摘があったのでございますが、実は乳糖、カゼインは、現在カゼインはAA制、乳糖は自動外割制になっておるのは御承知のとおりだと思います。実は、乳糖は御承知のとおり医薬用、育児用、調製粉乳用として、あるいはカゼインは印刷用紙のコーティングあるいは接着剤というような固有の用途があるわけでございまして、輸入数量が年々多少ふえておることは事実でございます。  そこで、われわれの推計によりますと、これが先生御指摘のように、かなりの数量が還元乳として使われておるのではないかという御指摘でございますが、四十二年で代用脱粉用に使われたのは八千六百トン、四十三年度が四千四百八十トンということで、むしろ減っておるのでございます。実はこれをAAにいたしましたときの趣旨といたしましては、こういったものが代用脱粉のほうにまた還元されて、こういうものになるということが考えられなかったわけでございますが、その後食品加工業の技術の進歩によりまして、一部いま申し上げたように代用脱粉になっておることは事実のようでございます。  そこで、実は乳糖につきましては、四十三年の八月一日から、先ほど申し上げましたような自動外割制度に移行いたしまして、関係者の用途確認というものが行なわれることになりまして、これによって十全の意味で、輸入を押えるというわけにはまいらぬわけでございますが、われわれはこういった手段を講じまして、輸入の急増をある程度押えてまいれるのではないかと考えております。  要は、基本はやはり国内生産が十分需要を満たし得れば、こういったことがなくなるであろうということでございますので、やはり酪農経営の生産性向上ということにつとめることが肝要であろうというふうに考えております。
  95. 永井勝次郎

    ○永井委員 そうすると、畜産局長は乳糖、カゼイン、これを入れて、これにバターを加えて牛乳に還元する。これは非常に安い価格でできるわけですが、そういう価格まで、日本国内生産牛乳のコストを下げて競争させる以外には、国内の酪農の生産性を高めていくという方向はないのだ、こういうお考えですか。そういう合成の、半値以下の値段でできるものと国内生産乳を競争させる、酪農の今後の目標はそれと競争させるのだ、こういう方向で酪農を振興させよう、こういうのですか。これを明確にしてください。
  96. 太田康二

    ○太田政府委員 私が申し上げましたのは乳糖、カゼインについてすでにAA制であり、AIQ制であるというような前提のもとに立ちまして、これをいまさらもとの——もとと申しますか、外貨割当制度に戻すということは、現在の国際的な事情からいいまして困難でございます。そこで、基本は、こういったものにたよらないでもいけるように、日本の酪農の生産性向上せしめることが基本でございますというふうに申し上げたわけでございまして、現実の問題として、先生御指摘のように乳糖、カゼインで代用脱粉をつくっておるわけでございまして、これがさらに還元乳になっているという数量は、現段階においてはきわめて微々たるものであるというふうに考えております。  しかも、還元乳の問題と申しますのは、やはり現在の需給の状況から見まして、夏場の生産需要のアンバランスの時期には、どうしてもある程度国内産の脱粉で還元乳をつくるというようなことは、もう需給の実勢から見まして認めざるを得ない状況でございまして、これはある程度やむを得ないわけでございますが、先ほど申し上げましたように、基本的には生産量を高めまして、そういったことのないように、全部牛乳で供給できるような体制に持っていくことが必要である、こういうふうに申し上げておるのでございます。
  97. 永井勝次郎

    ○永井委員 先ほど、不足払いの制度ができてから国内生産は上向いてきた、上向いてきているけれども、それが飲用乳に結びついていない、加工原料乳がふえてきているんだと申しましたが、こういう形は、これは国内の酪農を振興させる正常な姿ではありません。これは飲用乳がもっと国内に伸びて、そうしてその余ったものが加工に回るというなら別だけれども、飲用乳がこういうふうに伸びないという原因は、乳糖とカゼインを還元した牛乳が出回っている、その圧迫によって飲用乳が伸びていない、そういうふうに正確にものをつかみませんと、私はたいへんな間違いが起こると思うのです。そのほかえさの問題もありましょうし、いろいろありますが、私は、いま言ったように、酪農に転換すればもうそれでいいんだ、問題は簡単なんだ、そうしてあらゆる手厚い援助をするからなどという口先だけの問題では、とても解決できない問題が、転換先の酪農にはこれだけありますよという大きな問題を二、三ここにあげたんです。これは政治的な問題もありましょう、経済的な問題もありましょう、国際的に問題を処理しなければならない問題もありましょうけれども、米をつぶすための一つの転換先として、あまり安易に酪農を扱ってもらってはたいへんな問題になりますよということを、私は警告しておくわけです。  それならば、酪農はそういう不安定状態ですということになれば、それじゃ畑のほうはどうなんだ。大臣、畑のほうに転換させるのに、これこれこういう作目をつくりなさい、これは米つくりよりもずっと有利ですよ、安定していますよ、こういう一つの自信を持って勧奨できる条件がありますかどうか、伺っておきます。
  98. 長谷川四郎

    長谷川国務大臣 前にも申し上げたのでございますけれども、畑地というものへの転換にいたしましても、ただ単にここでこれがいいという意味ばかりじゃなくて、やはり何といっても適地適産主義をとっていかなければ、その畑地の転換ということもなかなか困難性がある、だろう、こういうふうに考えております。特に酪農につきましての御意見は、今後私たちが考えている方向に進める点についても大いにこれをかてといたしまして、将来に対する酪農政策を持っていきたいというように考えます。非常に参考になりましたし、私がいろいろ常に、そろそろこういう点についても考えなければならない時点には来ておらないかというような点と、御指摘の合成牛乳といいましょうか、こういうような点についても、考える必要があるのではないだろうかと申し上げていた点、私もまだ就任わずかでございますけれども、ただお米の現実を見て、これがいいからこればかりやっていく、酪農がよければ酪農だけに、果樹なら果樹のこの一種類がいいからこれだけにというように、どうもある一定の偏向というか、そういう点についての推進がこのごろ非常に多うございますので、こういう点も十分考慮に入れていかなければならない。今後の酪農政策にも、十分御意見を参考にいたしたいと考えております。
  99. 永井勝次郎

    ○永井委員 酪農が不安定で、しかも投資はたいへんな金がかかる。大臣、少なくも二十頭から二十五頭の搾乳牛に転換するとすれば、資金として三千万円以上かかります。それだけの新しい投資をして、安定してない酪農に転換させるということは、これは容易でないと思うのです。  それならば、そういう金をかけないで、転換しやすい畑作関係はどうかといえば、ここでは経営をうんと拡大すれば別ですが、そうでなければ、こじきのような生活をすることを覚悟できなければ畑作へは転換できないというのが現状ですよ。そして、北海道の場合は単作地帯で、つくるものが何かあるかといえば、畑作の柱は園芸局の関係にあるビートであるとかバレイショであるとか、あるいは豆であるとか麦であるとか、こういう関係でしょう。これらの関係は、小麦はもう八割以上が輸入小麦で圧迫を受けている。国内生産したって、契約栽培とかなんとかああいうことをやったって、二割は国産でまかなうめん用の粉とするけれども、パンやその他の粉は、もうカナダやアメリカ輸入小麦でまかなうのであるから、どんなに増産してもそんなものは要りませんというので、こういうような会社の契約栽培からははずされている、こういうような状態です。大臣大豆はもう九割が輸入ですよ。砂糖だって七割が輸入ですよ。でん粉だって、バレイショでん粉が去年は非常に豊作で三十万トンとったというが、みんなから顔をしかめられて、そして大臣だって適時に買い上げて市場価格を維持するということを、なかなかしないということでもてあまされているのでしょう。これもみんなコーンスターチの輸入に圧迫を受けておるのですよ。一つとして安心してつくれるもの、これをつくったらいいというものは、畑作には何もないのですよ。何がありますか。だから、平均して反収一万五千円をあげるということは非常に困難なんですよ。二万円なんということはとてもできません。そうすると、畑で豊作で反収一万五千円です。米をつくれば、一粒もとれなくても共済制度で大体一万四、五千円はもらえる。そしてわらでも何でも売れば、それで反収二万は大体とれる。  こういう米に傾斜した農業政策だったから、米にみんないったのです。そして農林省は、米の政策だけやっていればいいのです。農事試験場に行ったって、畑作関係の試験というものは何がありますか。ほとんどこれは傍系ですよ。試験をやったって、その試験の領域においては出世できない。米が主流で、北海道のすみでも、米をやらなかったら出世できない。片すみで畑作のほうをちょびちょびっとやっている。こんな状況だから、いま米をつぶすための口実として、畑に転換せいといったって、だれも転換できる条件というものはありませんよ。これをどうしますか。こじき暮らしを覚悟しなければ畑に転換できないという、そういう条件をそのままに放置して、転換せい転換せいといったって、転換できようがないじゃありませんか。大臣どう思いますか。
  100. 大和田啓気

    大和田政府委員 いまの稲から畑に転換する場合、あるいは先ほどの酪農に転換する場合、それぞれ困難な問題があるという御指摘は、私はそのとおりだと思います。ただ、米自身の需給の問題にもたいへん深刻な問題があることと、それから、ただいま私どもが稲の転換対策として進めようとしておることは、全国で一万ヘクタールでございます。北海道の米作につきましては、いろいろ意見があることは御承知のとおりで、限界地帯を越える、あるいは限界地帯に近いところでも四、五万町歩の水田があって、その水田をどうするかということも、なかなか深刻な問題でございますけれども、一万ヘクタールの四十四年度の転換につきましては、私どもはそういう事情は特に考慮はいたしません。これは全国的な実験的段階でございますから、北海道の稲作に特に傾斜をつけて、北海道の稲作を集中的に転換をさせるというつもりはございません。  したがいまして、先ほどのお話のように、四町歩の稲作農家に対して、その稲作をやめてすぐ酪農に転換しろというようなことを、私ども申し上げるつもりは毛頭ございません。これは北海道だけではございませんし、全国の問題としても、すでに牛を飼っている農家で、水田をやっている一部を牧草にかえるということか、おそらく多く行なわれることであろうと思います。もともとそう初めから無理なことをやれというのじゃありません。北海道につきましても、北海道の稲が何にかわるかといえば、やはり一部分牧草にかわり、場所によりましてはてん菜にかわり、ごくわずか野菜にかわるということで、大体まかなえる程度の面積というふうに考えております。  ただ、今後稲作の転換という問題は、先ほども申し上げましたように、なかなか四十四年度の一時的な問題ではなくて、おそらく今後相当続く深刻な問題であるといたしますと、かりに相当大規模に稲作を転換させるという場合には、御指摘のような問題が非常に深刻な問題としてあって、農林省としても十分それに対処しなければ、なかなか次の段階には踏み出せないというふうに私は考えております。
  101. 永井勝次郎

    ○永井委員 総合農政というのは、単に農林省がいうだけでないのだということは、私は先ほどの長谷川農林大臣の意見に賛成なんです。   〔安倍委員長代理退席、委員長着席〕 それならばそれのように、もっと国策として農業に本格的な取り組み方をしなければだめじゃないかということを、もっと実態を分析してそれを明らかにして、ごまかすことがなく、責任のある農政転換への方策を確立しなければいけない。これは単に自民党だけの問題ではないとわれわれは思っているのです。世紀の一つの産業転換だ、人口大移動だ、こういうふうに思っているわけであります。  人口が、御承知のように若年労働者の八割以上がもう大移動をいたしました。こんな人口大移動は、近代歴史にないというほど大きな移動が、黙々として農民の犠牲で行なわれている。さらに今後も、いま言ったように反収を上げないで、そしてその価格を補償しないで、そして国際価格の安いものと競争させるという方向で農政をやるならば、経営面積はますます拡大していかなければならないですよ。そうすると、農村において勝ち抜き競争で、力のあるやつはたくさん面積を持って、弱いやつをどんどん農村から離農させていかなければならない。これはたいへんな、農村における適者生存の競争がもう始まっておるわけです。でありますから、こうやろうかああやろうかというので、先行きどうなるかという不安から、腰の落ちついた営農というものがいまできていない。  そればかりではない。そういうふうに一つの問題が出てきますと、今度は過疎になってきます。人口が非常に少なくなってくる。そうすると、この国会に全国の市長会あるいは県その他自治団体から、人口過疎に対する法案を議員立法で出そうとしている。その内容はどうかといえば、部落なんかで非常に人の少なくなったところは、もうそれを抜いてしまう、無人化してしまう。あるいはある部落によっては、うんと減ったところは安楽死をやらせようという。安楽死というのは合併させるので、町村合併とか農協合併とか。そしてそこから人間を間引きしちゃって固めてしまおう、こういうような政策が一方で、農業というものは総合的にやるといいながら、そういうことがずっと進められようとしているのでしょう。  そればかりでない。その過程においては、もう農村に入っていたバスの路線が運行をやめる、あるいは赤字線の鉄道は取りはずしてしまう。いろいろな日常生活が、すぐ目の前で圧迫を受けてきておるのです。農業の経営の問題だけじゃないのです。大きな社会問題として、これはずっと発展しておるのです。  これだけ問題が深刻に発展しておるときに、農林省は酪農に転換せい、畑作に転換せい、園芸に転換せい。園芸にしても、ミカンは三割過剰になっておるのですよ。そして暴落しておるのですよ。何一つ、これならば安心してここへ身を託して、自分はここで一生懸命農民としての意欲を持ってやろうというような、安心した移転先がどこにもいまないでしょう。私はこんな深刻な状態はないと思うのです。農業政策なら、紙に書けば幾らでも転換できます。しかし、その政策の転換の中で、そこで生活を実践していく農民の側からいえば、これは生体解剖ですよ。生きたままの解剖ですよ。冷酷なやり方ですよ。満二十歳から五十五歳まで農業経営を実際にやるとすれば、単作地帯は三十五年間より農業がやれないのですよ。三十五回の農業をやる機会よりない中で、五年に何回は凶作だ、あるいは農産物価格の変動だ、こういうもので、自分努力以外に、農業経営の怠慢であるとか何とかということでなくて、ほかの要因によって自分たち努力がチェックされていく、スポイルされていく。  こういう条件というものを考えたら、農民の人がほんとうに暴動を起こさないで、黙々として農村から離れて大移動をやっておるというようなことは、私はたいへんな問題だと思うのですよ。理屈ではなしに、長谷川農林大臣、自民党政府はもっと責任を感ずべきだ。あまりにも無責任だ。官僚もあまりにも怠慢だった。そうして、野党はあまりに非力だ。こういうことが、そのしわ寄せが、みんなまじめに働いておる農民にいっておるのですよ。したがって、畑作はみんな外国輸入に圧迫されて、そしてその間で細々と国産が一割を保つ、二割を保つ、三割を保つ、こういうみじめな農業の環境なんというものは、何といっても政府の責任ですよ。長谷川大臣、どう思いますか。
  102. 長谷川四郎

    長谷川国務大臣 いろいろ御意見は承りました。したがいまして、農業政策的な大転換を行なわなければならないのだから、将来日本はこれでいくのだという農政というものを打ち立てなければならないときがまさにきておる。したがって、本年それを、とりあえずこういうやり方をやりますという簡単な問題でもありません。したがって、その政策の転換は、先ほども私が申し上げたように、どうしても主産地制というものをとらなければいけないのじゃないか。そうでないと、いつになっても現在のようなことを繰り返し、不安というものを除くわけにはまいらない。であるから、今後は主産地制というものをとる。  それには、農林省で考えるなんということの問題ではないので、生産者団体からの意見も十分聞きながら、さらに与党とか野党とかを問わず、与野党の意見が一体となったその上によって、主産地制というものを今度とっていくような政策を行なっていかなければ、この不安を除くことはできないだろう。特に、お話しになった輸入農産物の問題に対しましても、もうこれは想像以上のものがあると私は思う。私がびっくりしておるのは、農林省へ行きまして、毎日だとは申しませんけれども、農産物を買ってくれないかというのが、各国から常に参っております。したがって、こういうような点、あるいはヨーロッパにおけるところの酪農の実態、あるいはまた近くのアジア全体における日本人による技術、日本技術を彼らが受け入れてその生産性を高めていく。その上に立ってまた総合して考える上に立ったならば、どうしてもここで抜本的な考え方をして、これによって将来の日本農業はかくいくのだという一たとえば先ほどのお話しにあげたような、輸入すべきものはこれとこれ、この品目は当然輸入にまつべきだ、したがってこれとこれとこういうものによって日本農業生産の拡大をはかり、そうして農業の所得安定をはかるべきであるというような面を、ほんとうに考えなければならないときだというように考えます。  そういう点について、いろいろこの間うちから、わずかの体験ではございますけれども、その上に立って、私の意見だけは省内に申し上げておるわけでありまして、きょうの御意見も十分私は承りまして、これらを参考にして今後の農政に取り組んでいくという考え方でございます。
  103. 永井勝次郎

    ○永井委員 時間がありませんから最後に入りますが、私は、今日ほど農村の危機はないと思う。危機という危機感がほんとうにあるかどうかということについては、私は、農林省のいまのあり方については問題があると思う。こんな危機の時代はないと思う。危機であるとするならば、危機の実体は何かという分析が正確にされなければならない。病気の実体がわからないで治療策が立つわけはないのでありますから、危機の実体をもっときびしく分析して、そうして治療方法を確立しなければいかぬ。今日の農村の危機は政治の貧困だ。そうして、この病気は政治によって毒されておる。だからその治療方法は、政治的な政策による解決以外にはない、私はこういうふうに思うのであります。  そうして、そういう立場に立って考えますと、これほどの危機であるにもかかわらず、経団連は、農村からもっと中高年齢層の労働力を出せということを言っております。農村にはいま一千万人以上の就業労働人口がおるのだ。これは三百万でいいのだ、労働生産性の低い農村に、こんなところに置いておいたって労働力の不経済だから、七百万は農村から出すべきだ、こういうものを農村から追い出せという要求がある。あるいは経団連のほうからは、国内で高くつく生産品をつくる必要はない、安い輸入品を入れて、そうして消費者の立場に立って考えるべきだ、こういうふうにも言っておる。  そういたしますと、これほどまじめに働き、これほど世紀の危機に当面しておる農民を、あっちからこっちからたたきのめす声が出ておるだけであって、ほんとうに農民の気持ちに立って、この荒れようとする田園の中から立ち上がろうとするその農民に、正しい力づけをする、正しい方策を与えるということがどこからも出てこない。こんなばかな話はないと私は思うのであります。  そういう中で、たとえば農林省の四十四年度の予算を見ますと、先ほど来苦労したと言うが、大臣の苦労はわかりますけれども、中身はなっていません。農政転換でたくさん予算をつけた費目はいろいろございましょうけれども、中身は去年に比べて、全体予算に占める割合が〇・二%総額でふえたというだけです。そうして、食管の繰り入れとか災害を差し引いた残りの全体予算に占める割合が、四十四年度は六・六%、四十三年度は六・五%、〇・一%ことしはいいというだけの話です。どこが画期的か。これだけの問題の重大性を認識した上に立っての裏づけとしての予算というものではありません。大臣、これは農林省から出しているのだから、農林省のものなんだから間違いありません。さらにこの中には林野庁の予算もあり、水産庁の予算もあり、それから農林本省の俸給とかそういうものがいろいろある。そういうものを差し引いて、純粋に四十四年度農政のために使われる政策費予算というものはどのくらいあるのかといえば、私は、二千五、六百億くらいよりないのじゃないかと思います。いろいろなものを除いたら、政策費予算というものは二千五、六百億よりないのじゃないか。六兆六千億からの膨大な予算を使っている中で、二千五、六百億の予算より政策費予算がないというならば、今度合併する八幡、富士の一企業の年間の融資額よりも少ない。これがいま危機に当面している農民に対する予算の総額だというに至っては、私はあきれざる得をないのであります。  でありますから、そういう立場に立って、うそ偽りではなく、与党、野党ということではなしに、この農村の危機の実態が何であるか、これを理解した中でもっと十分分析し、その問題を的確にあげて、そうして、この間において農民の気持ちにこたえるにはどうしたらいいかという、役所の中から下へ問題をおろすのではなくて、農民の畑の中から問題を吸い上げて、育て上げて、そうしてそれを上において集約して対策を立てるというまじめな農政の時期にきている。それほどの良心を持って農政に当たらなければ、いまはたいへんなときだと、こう思いますよ。  私は、もっといろいろな問題について触れたいと思いましたけれども、時間がありませんから、これはいずれ次の機会に譲りますが、私は、長谷川農林大臣から口当たりのいいことを聞こうとは思っておりません。それから、つじつまの合った話をしてもらおうとも思っておりません。もともとつじつまは合わないことを口の先でつじつまを合わしたって、私はそんなことは問題にならぬと思いますから、そんなことは要らぬ。だから、長谷川農林大臣大臣就任にあたって、社会党の代議士会へのこのこやってきて就任あいさつをした、あの障壁をはずした態度、そしてどろくさい土をつけて、そのたんぼのにおいを大臣室なり委員会大臣席へ持ち込んで、もう少し長谷川大臣らしいどろくさい農政を、勇気を持ってやってもらいたい。小理屈を言うことはやめてもらいたい。激励して、私の質問を終わります。
  104. 長谷川四郎

    長谷川国務大臣 いまのお話、少し違うのじゃないかな。予算でも千百四十六億去年よりはよけいなんですよ。そこで、人件費が大体一千億くらい入用なんですよ。全体の上から見るといろいろ御批判はありましょうけれども、ことしは千百四十六億よけいとってある。しかし、何といっても私もまだ就任したばかりでございまして、これをすぐどうこうというわけにまいりません。御意見を十分承りまして、ほんとうに血の通った農政を樹立したい。私の時代に全部行なうことはできないけれども、種をまいたというか、その植えつけだけはしてまいりたい、こういうような考え方で進んでおります。
  105. 永井勝次郎

    ○永井委員 数字の話ですから、いいかげんなことを言ったと言われては悪いですから……。これは農林省が出しているのですよ。四十四年度の農林関係の予算総額は七千六百八十八億、四十三年度が六千五百四十二億、そうして、これが国全体に占める比率が、四十四年度は一一・四%、四十三年度が一一・二%でありますから、ことしは〇・二%より多くなっていない。それから食管、災害等を除いたものが四千四百五十四億、これは国全体の中に占める比率が六・六%、こうなっておるのであります。そのほかのいろいろな、林野庁の関係とか水産庁の関係とか事務費とか、そういうものの差し引き勘定は、私のめくら勘定です。でありますから、こんな前年度に比べてわずかなもので——新しい費目はありますけれども、中身としては、基盤整備に幾らか予算はつきました。しかし、価格対策についてはずっと後退しているのです。だから、議論するならばもっと場所を変えて、十分この議論をしたいと思いますから、きょうは私時間がないですから、またあらためていたします。
  106. 丹羽兵助

    丹羽委員長 午後二時三十分に再開することとし、これにて休憩いたします。   午後一時十一分休憩      ————◇—————   午後二時三十八分開議
  107. 丹羽兵助

    丹羽主査 休憩前に引き続き会議を開きます。  午前の会議に引き続き質疑を続行いたします。中澤茂一君。
  108. 中澤茂一

    中澤委員 まことに恐縮だが、資料の要求だけ正式にお願いしておきます。  要求の内容は、工業用じゃなくて食糧用の輸入米、それの在庫数量と、いまの在庫場所と、それから年次別にどれだけ残存しているか。現在、大体二十七万トンぐらいあると聞いておるのだが、それをひとつ資料として正式に委員会のほうへ出してもらいたい。それだけです。お願いします。
  109. 桧垣徳太郎

    桧垣政府委員 資料として提出を申し上げます。
  110. 中澤茂一

    中澤委員 はい、ありがとうございました。
  111. 丹羽兵助

  112. 稲富稜人

    ○稲富委員 最初に、水産関係のことについてお尋ねいたします。  最近、静岡県の銭州近海におきまして、ソ連のまき網漁船団が漁業をやったということを聞くのであります。しかも、この銭州近海はサバの産卵場として、国内ではまき網漁船の操業規制を行なっている区域であるということは御承知のとおりでございます。それだけに、わが国の漁業に及ぼす影響も非常に大きいと思うのでございますが、このソ連のまき網漁船団の行為に対して、政府はいかなる態度をとって措置をされたか、その点をまず承りたいと思うのでございます。
  113. 長谷川四郎

    長谷川国務大臣 御指摘の、伊豆近海におけるサバの資源保護というような点につきまして、わがほうにおいては一本づりのみか許しておらない地区内に、ソ連のまき網船団が来きまて漁に当たっておるという情報が入りまして、その情報に基づきまして、現地に問い合わせいたしましたところが、まさにそのとおりだというようなことを伺いましたので、さっそく外務省に申し上げまして、外務省を通じまして、ソ連のほうに申し入れてもらいました。  ソ連も、口を開けばいつでも資源保護ということを言っておられる。いつも折衝のときには言われておるので、わがほうにおいてもサバの資源保護という大眼目のために、一本づりのみか許しておらない、地区であるからぜひともこの点を御了解願って、今後の漁獲に十分御留意願わなければならぬ、こういう考え方をもって外務省に申し入れたところが、外務省は先ほどの御返事によりますと、大使館の参事官に外務省に来ていただきまして、その点を十分お話は申し上げたけれども、確たる返事がなかったという話でありまして、さらに私のほうから外務省に出かけまして、この点についてはぜひとも御協力を願いたいということを、再三にわたりまして外務省にお願いを申し上げた次第でございます。
  114. 稲富稜人

    ○稲富委員 昭和四十二年にわが国におきましては、外国人漁業の規制に関する法律の制定をいたしております。しかも、第三条によりますと、「次に掲げるものは、本邦の水域において漁業を行なってはならない。」ということになっている。この点から申しましても、このソ連の行為というものは、外国人漁業の規制に関する法律に明らかに抵触しておる、こう思うのでございますが、これに対する解釈はいかがでございますか。
  115. 森本修

    ○森本政府委員 外国人漁業の規制に関する法律でいっておりますことは、外国の漁船がわが国の領海内で操業するということを禁止しておるわけであります。今回は、ソ連の漁船が領海内までは入っていないということでございますので、その条文に、は、法律的に見ますと、直接には抵触しないということになるのであります。
  116. 稲富稜人

    ○稲富委員 現在の、この外国人漁業の規制に関する法律には抵触しないとしても、今後、しからばこういうような問題が起こるとすれば、何かやはり法律によって規制をしなければいけない。この点の措置に対しての考えがありますかどうか、この点を伺いたい。
  117. 森本修

    ○森本政府委員 もちろん、法律は国内の法律でございますから、御指摘のように検討し、改廃を要する点は改廃してしかるべきだと思いますが、こういったことは国際的に影響を及ぼすことでありますから、国際的な慣習なりあるいは影響なりというものを考慮して、この問題は検討しなければならないというふうに思います。  したがいまして、そういった観点から、この法律についても、私どもとしては考え方を進めていくべきじゃないかというふうに思っております。
  118. 稲富稜人

    ○稲富委員 次に起こる問題は、海域その他の拡張等によります専管水域等の問題に対する法的措置を国がとるということが一つ。これは、もちろん外交上の問題がありますから、外務省等との関係を通じてやらなければならないと思いますが、これに対する措置、並びに沿岸漁民のこういう被害に対する保護対策というものも、また国としては当然行政的にやらなければいけないと思うのでございますが、こういうことに対する考え方は、政府として考えておるかどうか。以上の二点を承りたいと思います。
  119. 森本修

    ○森本政府委員 法律に対します考え方は、ただいま申し上げたとおりでございまして、その水域をどういうふうに定めていくかという問題は、漁業水域なりあるは領海問題とも直接関連をしてくることでございますから、そういった問題の一環としてこの問題は検討されるべきだというふうに思います。  それから、沿岸漁業なりあるいは中小漁業なりというものに対する問題は、先ほど申し上げましたように、たとえばこの場合には、サバの問題としてその資源が減少するということを極力防止しなければならぬということでございますから、法律問題とは別に、ただいま申し上げましたように、ソ連側に対してはわが国の中小なり沿岸漁業の重要な漁場であるから、その点については協力をしてくれということを、強く申し入れておるということでございます。
  120. 稲富稜人

    ○稲富委員 それではこの問題につきましては、領域に対する法律的な立法措置の問題、さらに沿岸漁業に対する積極的な保護対策を十分考慮してもらうということを要望いたしまして、この問題に対しての質問はこの程度にとどめておきたいと思うのであります。  次にお尋ねいたしたいと思いますことは、農林大臣は、この前私の質問に対しましても、西村農林大臣が提唱されました総合農政というものは継承してまいるんだということを申されておるのでございます。私たち昭和三十六年に、農民の非常な期待の中に、しかも、政府もまた農民に非常に期待を持たせながら農業基本法の制定をやられた。ところが、農業基本法の制定後、農業に対する成果を十分われわれは見届けないうちに、最近における米の生産過剰とかなんとかいわれます米の問題が出てきた。にわかにこれによって総合農政だということを提唱された。農民はまた、農村が行き詰まっておるときだけに、この政府の提唱した総合農政に対しても非常に期待を持っておると思うのでございます。  ところが、最近の政府総合農政に対する取り組み方等を、本委員会質問応答で聞いておりますと、どうもこれもまた期待はずれになるのではなかろうかという不安さえ生ずるのであります。本日の午前中の柴田君の質問に対しましても、まだ予算が通っていないから、予算が通った上で具体化するのだというお話でございましたが、これは非常な詭弁であって、私たち総合農政というものを政府が提唱するときには、少なくとも政府が考えておる総合農政というものは、こういう問題によって日本農業を立て直すのだという具体的なビジョンを出してこそ、総合農政に対する期待も、総合農政の成果もあがると私は思うのでございます。ただ、いかにも米が余ったんだ、これにあわてふためいて、今度はこれを総合農政に切りかえてこの問題を処理しようという、こういうような考え方というものは——わが国の農政というものが今日行き詰まったということは、農政に対する長期見通しに立った計画性がなかった結果だと思うのであります。やはり総合農政においても思いつきであって、何らその計画性がないのではないかというそしりを私はのがれるわけにいかないと思うのでございます。これに対して、もっと積極的な総合農政に対するビジョンというものがあらなければいけないと思うのでございます。この点は、もしもいまからでもやらなければいけないという考えであるならば、大いに反省して、そうして今後総合農政というものと真剣に取り組んで、農民が安心し得るようなビジョンを出していただきたい、またこれが非常に急務である、かように考えますが、農林大臣の所見を承りたいと思うのでございます。
  121. 長谷川四郎

    長谷川国務大臣 農業基本法制定以来、政府は諸般の問題につきまして、その施策の充実をはかってきておったようでございます。しかしながら、御承知のように、いずれにしてもまず第一に消費者に安定を与えるという、その食糧の一番基本であるところの米の安定をはかることがまず先決であるというように、どうも米という点に重点が置かれておった、それに相まって米をつくる技術が非常に向上をしてきた、これらをあわせまして需給のバランスを欠くようになってきたのだと思うのであります。  そこで、総合農政ということを西村前大臣がお考えになりまして、何といっても米ばかりに片寄らずに、畜産物あるいは果樹、園芸、こういうような点にも総合した上に立った考え方で農政というものは進めるべきでないか。こういうような点において総合農政ということばが出てきたのだと思うのでございまして、まさにそのとおりではあろうと思うのでございますけれども、現在の米の需給の実態というものを見た上に立ち、また、たとえば果樹類の生産量というものを見ていっても、何か一方に片寄ったものに施策が行なわれるようになると、どうしても偏した生産が行なわれていくであろう。こういうような点に私は考えを置きまして、今後の農政というものはもちろん総合農政ではあるけれども、その総合農政の基幹の上に立って、そして主産地主義というものをとっていかなければならないだろう。  その主産地主義というものは、北海道から九州の果てまで、御承知のように米がいいといえば米ばかりつくってしまう。こういうようなことを繰り返すことのないような方法を考えなければならない。そこで、全国的に見て何がその地区に最も適しているかという、こういうような点をまず考える。これは農林省だけの考え方であってはならないだろう。全国の農民からいろいろな点を伺い、そしてあらゆる技術というかこういうものを結集しなければならぬ。また、学術的にもいろいろなものを検討しなければならぬだろうし、与党野党を問わず農政の問題というものは、本格的に取り組むべき時代がまさに到来しておる。広くそういうような知識を集めて、そしてこれで日本の将来の農政はいくんだという、この上に立ったただいまお話しのようなビジョンというものを農民に与えるべきではないだろうか、こういうふうに私は考えます。  しかし、これとてもそう急に、いますぐこれをやるというようなことも困難な問題が横たわっておりますので、何としてもこの問題だけはやらなければならない問題であるけれども、それではすぐことしから行なうということは困難があります。  そこで、まずいま転換をしてもらうというもの、たとえば一万ヘクタールの転換をしていくというようなものに対しまして、草地だとかあるいは園芸であるとか果樹、それに野菜というようなものをまず転換を見込んでおいて、その期間に、広く知識を集めてそのような方向に進むべきである。そうなってくれば、おのずから生産需要のバランスというものもとっていくことができるし、いま海外からたくさんの輸入というか、農産物の貿易については、怒濤のごとくということばがありますが、まさにことばどうりに押し寄せてきている。この問題と今後取り組まなければならないから、こういう問題も、いつでも持ってこいというその体制を整えたい。  それには、主産地主義をやるのには、やはり政府自体が思い切った施策を講じていかなければならない。こういうふうに考えておるのでございますが、その指定された主産地において、自分は主産地でそういうものを指定されたけれども、われわれはこういうものをやるんだ、こういう方があるとするならば、日本の現在の憲法において、これを押えるわけにはまいらない。また、こういう点については国は援助することはできない。自分の力によってその営農をやるというならば、これはやむを得ないでしょう。こういうような考え方をもって、将来に対する主産地主義というものをとっていきたい。  しかし、もう何といっても差し迫ったことしの問題、これは幅はごく狭いようでございますけれども、まず総合農政の一端として、何とか当分の間見込みのある畜産、園芸あるいは果樹、草地というようなものに転換をしてもらおうではないか、こういうような考え方でおるわけでございます。
  122. 稲富稜人

    ○稲富委員 私は、総合農政を西村農林大臣が提唱されましたときに、西村農林大臣に言ったことがある。米がえらい生産過剰になったからといって、これを何とか処理するための総合農政では意味はない、そういうものを度外視して日本農業のあり方というものを基礎づけ、日本農業というものを立て直すんだという意味からの総合農政でなかったら、総合農政の意味はないということをはっきりと私は申し上げた。そのときに西村農林大臣も、それに対してはすでに総理の了承を得ておりますと言った。私は、総合農政というものを打ち立てるならば、相当な財政的な措置をやらなければ、総合農政というものは机の上の議論ではできないんだ。それに対しては、政府も十分考えておりますと言った。  ところが、来年度の予算を見ても、総合農政に対してはわれわれの期待しておるような施策が行なわれておらない。総合農政ということは政府はには言われ、農民はそれを期待しておる。しかし、私たちははたしてどれほど真剣に総合農政に取り組んでおるかということに対して、はなはだ失礼でございますけれども、非常に不安と疑問というものを持っております。ところが、総合農政というものは予算が通ってから具体化するんだ、これでは、あまりにも総合農政に対して熱意がなさ過ぎるということを私は申し上げておる。  それでいま大臣が言われたように、もちろん総合農政というものはそういうような考えでなければいかぬだろう。であるならば、少なくとも昨年からやり出したんだから、来年度の予算面においては、その総合農政に対する国の施策の片りんでもうかがえるような予算措置というものがあってもよかったんじゃないか。これが、総合農政に対する非常な農民の期待はずれと不安感をもたらしておると私は思うのです。この点は、たとえば作付転換のごときものも、主産地の形成をやるんだとおっしゃる。ところが、作付転換問題に対してさえもまだ具体的な方向というものを示しておられない。農民はもう種まきの時期を控えて、一体米に対する政府の取り組み方はどういう状態であろうか、こういう迷いと不安が農民の中にあるというのが、農村の現状なんです。  私はその点からいって、どうも政府は、今日まで農政というものを、何かぶつかってみると、そのぶつかった問題についての思いつき農政をやられたんだ。農林大臣もこれは認めておられるようで、農業基本法ができて、いろいろ努力したようでございますとおっしゃっております。おるようでございますではなく、しておりません。努力はしたようでございますとおっしゃっておるけれども、努力はいたしておりません。努力したとすれば、それは不十分な努力であったにすぎない。  それだから総合農政というものを打ち立てる以上は、もっと具体化した、農民が安心して取り組めるような計画農民の前に示すことが必要ではないかということを、私はお願いしておるわけなんです。もしもこれがないとするならば、いつごろ総合農政に対する見通し計画というものを発表できるか、こういうことをまず承りたいと思うのであります。
  123. 長谷川四郎

    長谷川国務大臣 御指摘の点は、十分私たちもやらなければならないというふうに考えておりますが、まず本年度におきましても、米作の転換というようなことは、少しではありますけれどもやり、さらに、基盤整備だとかあるいは第二次構造改善事業だとかそういうような点、基盤整備という点についても、思い切った施策だけは今年は講じたと思うのでございます。農民年金にいたしましてもその一端でございます。御指摘の点、まさにそういうような点はあり、また農民の不安を取り除くということがまず第一であり、そうして農民が、よし、それでは将来これでいくんだという腹の底からこれに確信を持つようなものを与えなければならない。まさにそのとおりと思うのでございます。  私たちもそういうような点については、今後はっきりとした方向を進めていくつもりでございますけれども、何といっても私は十一月になって、それ米が余る、それ今度はこちらだ、国会だというようなことで追い回されておりますので、なかなか思うようには進んでおりませんけれども、国会の予算委員会でも済むことになるならば、これとあわせまして、申し上げたような主産地主義というようなものの形成は、こういこうではないかというような点については、いろいろな衆知を集めてまいるつもりでございます。その点はどうか御理解いただきまして、御協力のほどをお願い申し上げたいと考えております。
  124. 稲富稜人

    ○稲富委員 それで、そのときに考えてもらいたいこととは、たとえば、米の主産地主義というものを考えられる。   〔委員長退席、安倍委員長代理着席〕 その場合、まず日本にどのくらいの米の生産量が必要であるかという計画ですね。その米の生産量を、これだけ必要であるとするならば、これだけを生産するためには、どこどこの生産地を必要とするかという問題が起こってくると私は思う。ところが、考えなくちゃいけないことは、この米の主産地を考えると同時に、今度は、従来米をつくりながらも非常に生産の低かった土地がある。それじゃこれが米の主産地から離された場合はどうなるかという不安がある。これに対してはどうするかという、やはり具体的な方針を示さなければ、主産地形成ばかりでは片手落ちになるということを考えなくちゃいけない。この点については、いままでの農政というものは非常に片手落ちが多い。  たとえば、農業基本法によって構造改善事業をやるんだという。そうして果樹園芸だというと、何でもかんでも構造改善事業をやればいいというので、山のてっぺんまで構造改善をやってミカンをつくった。今度は、ミカンがだぶついているというような、こういうような思いつき思いつきの構造改善であってはいけない。これも、やはり一つ計画性がなかった結果が、ミカンの生産過剰を来たしたというような状態であると私は思う。この点は一つも総合性がなかったということなんですよ。この点はひとつ、この主産地問題を考えると同時に、その主産地以外の農業をどうするかという問題、その地方の農民がどう取り組めばいいかという問題、これもあわせてやはり一つの農政を打ち立てることが必要であり、これが農民に安心を与えるゆえんである、かように考えますので、こういう点に対する考え方もおありになるかどうか承りたい。
  125. 長谷川四郎

    長谷川国務大臣 お説のとおりでございまして、米が他の作物に比して幾分なりとも所得がいい、こういう上に立って、やはり米というものの生産が多く進められていったんだと考えられます。その米をつくっているところを、今度は主産地主義をとって、あなたのところはこれが指定品目ですよということになりますと、その品目に対するには、米をつくっていたと同様といいましょうか、より以上の収獲のある、収入のあるものにしていかなければならない。けれども、ただそのままで農民が、おまえが苦労するんだよというわけにはまいらないと思います。ですから、冒頭に申し上げたように、これには相当ばく大な費用をといいましょうか、政府の援助体制を整えなければならぬ。  そればかりでなく、それまでいくまでの間には、ほんとうにあらゆる人たち、さっき申し上げたように、北海道から九州までの方々の御意見を十分承らなければならぬし、また、与野党を問わず意見を承らなければならないし、先ほど申し上げた学識経験者の意見もともにあわせて、その上に立って行なわなければならない重大な問題だと思う。  口にはこう申し上げられますけれども、これこそ簡単にできる問題だと私も思っておりませんけれども、少なくともこのくらいの考え方を持って、今後の農政を進めていくことができなければ、外国と対決をして日本の農政を盛り立てていくことはでき得ないだろう。こういうような考え方の上に立って、これらの措置にまず進んでいく考え方を申し上げたわけでございます。
  126. 稲富稜人

    ○稲富委員 そういうような一つの決意をもって真剣にこの際取り組んで、ほんとうに日本農業をこれでつくり直すんだ、やはりこのくらいの決意をもってやらなければ、なまはんかなことで今日の農民の期待に沿い得るような総合農政はあり得ないと思いますので、その点はひとつ農林大臣の決意にわれわれ非常に期待をいたしたいと思うのでございます。  それで、さらに具体的な問題に対して二、三お尋ねしたいと思うのでありますが、午前中の柴田君の質問に対しまして、備蓄米の必要があるんじゃないかという意見がありました。私たちもそう思います。それで、先刻言いましたように、米の生産は、これだけの米の生産量が必要であるということと同時に、備蓄米、これこそ当然必要だということも、あわせて政府計画しなければいけないと私は思う。先刻から備蓄米に対しては、食糧庁長官も必要があるんだ、百七十万トンくらい必要があるんだ、こういうことを言っていらっしゃったと思いますが、しからば、その備蓄米というものは、予算書を見ましても一つもあらわれてない。私たちはやはり米がだぶついた——これは米がだぶつこうとだぶつかないとを問わず、常に備蓄米の必要はあり得ると私は思う。食管特別会計の中から備蓄米をどうするんだという、この具体策というものもあらわれなければなりません。これに対して何もあらわれてない。こういう点に対しては、ただ必要と思っておりますではいけないんです。どうして具体化しようとしておるのか、この点が一つもあらわれてないということを私は指摘いたしまして、これに対するもっと具体的な政府考え方を承りたい。
  127. 長谷川四郎

    長谷川国務大臣 現在では、これが幾らの備蓄米だというふうに銘打ってはおらないようでございますけれども、これはいまの食管制度において、現今の需給情勢、実態の上に立ってあらためてやる必要があるのでないかというような考え方もあったと思うのでございます。しかし、お説のように、将来にかけての考え方というものは、備蓄米は、国民よ、いつでも心配をするなというような事態のないこともないはずでございますので、そういうところに対する必要性というものは感じられると思うのです。しかし、現在のように食管制度において米が余っておるもんですから、あらためてそういうようなことはとっておらないようでありますけれども、お説は十分承っておきます。さらに、その備蓄方法につきましても、ことしの米がもう来年はすぐ古米になって味が変わってしまうんだ、こういうような保管方法であってはならないし、これは何か考える必要があるんではないか。あわせて備蓄という点については、保管方法というものをもう少し考える必要がある、こういうような考え方の上に立っていろいろやっておるようでございます。いずれにしても、たとえば、先ほども申し上げたのですけれども、水中に保管してどうするとか、あるいはコーティングをやって味の変わるのを防ぐとかいろいろやっておるようでございす。こういうような点もあわせまして、ただいまのお話のような点の備蓄にも備えていくようにしていかなければならない、こういうように考えております。
  128. 稲富稜人

    ○稲富委員 私の持ち時間が一時間で終わりますので、私の質問よりも大臣の御熱心な答弁のほうが長いので、非常にありがとうございますけれども、いろいろお聞きしたいことが多うございますので、それじゃまとめて具体的な問題を質問いたします。  まず、将来やはり国際的な自由化の波が押し寄せてくるということ、これは当然否定できないと思うのでございます。そうなりました場合におきましても、また国内生産米価の問題を考えましても、将来起こってくる問題は、やはりいかにして生産費の少ないような農業をするか、取り組むかということが必要だと思うのでございます。これに対しましては、政府総合農政を打ち立てるときに、この問題もあわせてひとつ十分考えなくちゃいけない問題じゃないかと思うのであります。それがためには、やはり生産費を安くするためには、あるいは将来基盤整備の問題も必要でございましょう。あるいは土地改良の問題も必要でございましょう。こういう問題を農民に負担をせしめるということは、なおさら生産費が高くなるわけなんで、こういうものに対しては、やはり国の財政的な措置によって、思い切った基盤整備あるいは土地改良等の問題に取り組むことも、総合農政を打ち立てる上から非常に必要であるということをまず考えたいと思うのでございます。これに対する大臣考え方を承りたい。  さらに、現在農村の生産費の非常に高くかかるものに、機械化の問題があります。機械化の波に乗って、この機械に農民は非常にたくさんの金を費やしております。今日の農村経済は、機械化貧乏だとさえいわれております。こういう点に対しまして、国が何らかの施策によって、この機械に対する農民の負担をなくするような、個人個人に機械を持たせないような、あるいは機械センター等をつくってこれを貸与するとか、あるいはそれに対する団体がある場合助成をするとか、こういうことによって、農民の機械に対する負担を減少するような方途を講じてやるということも、またこの際考えなければいけない問題じゃないかということが一つ。  さらに、いま一つは、最近の農村の金融の問題であります。国はかつて、農村に対する助成とか補助とかいうのをなるだけ少なくして、農村金融に踏み切った。ところが、農村金融というものは、ほかの産業との金融のつり合いがあるというわけで、農村経済の伸びに反するような高い金利が農村に取り扱われている現状である。私たちは、農村における特異的な生産の実態からいって、農村金融のあり方もこの際考えて、長期しかも最も低利な農村金融というものを打ち立てることも、総合農政の一端として当然政府は取り組まなければいけない問題である、こう思うのでございますが、これに対する考え方を承りたいと思うのでございます。
  129. 長谷川四郎

    長谷川国務大臣 まさに総合農政の一環として、御指摘の点等についてはやっていかなければならぬ。したがって、新しい四十四年からの計画につきましても、土地改良につきましては、御承知でもありましょうけれども思い切った予算を組ませたつもりでございます。たとえば、一万一千円のやつを四万円まで出すというような点もその一つの事例であります。  しかし、機械化の問題もそのとおりでありますが、機械化のほうをいろいろ調査してみますと、共同使用という点について、さらにもっと重点的に考えていく必要があるだろう。それに対する政府の助成策というものも、当然考えなければならぬだろう。  また金融は、これに対しましても低利でいくということは、これは当然でございますが、これらの点に対しましても、今後さらに一段と強化してまいるつもりでございます。
  130. 稲富稜人

    ○稲富委員 ただいまの機械化の問題等も、共同で使うというような問題はある。これに対して、やはり機種の改良をともに考えなければ、一々使わなければならないという問題も起こりますので、こういうこともあわせ検討する必要があると思いますので、その点もひとつ十分考えていただきたい。  次に、時間がありませんので飛びますが、先般来いろいろ問題になっております自主流通米のことについてお尋ねしたいと思います。これは国の管理外の米として考えているんだという答弁がされておるのですが、そのとおりでございますか。
  131. 長谷川四郎

    長谷川国務大臣 自主流通米を認めても、米の価格需給の調整に必要な米は、食管法第三条の規定に基づいて、政府が農家から直接買い入れるというようなこと、それから自主流通米の点についても、食管制度に対しての違反ではないというような点でございますが、その点は、桧垣長官から御説明申し上げます。
  132. 稲富稜人

    ○稲富委員 それで、私が政府にお尋ねしたいことは、政府は食管制度の根幹は守るということをしょっちゅう言われております。食管制度の根幹を守るということは、現時点においては、食管法を守るということがその基本でなくちゃならない、こう思いますが、これはどうでございますか。
  133. 長谷川四郎

    長谷川国務大臣 食管制度を変えるつもりは、全くございません。
  134. 稲富稜人

    ○稲富委員 根幹を守るということは……。
  135. 長谷川四郎

    長谷川国務大臣 根幹もそのとおり守ってまいります。
  136. 稲富稜人

    ○稲富委員 そうすると、食管制度の根幹を守るということは食管法を守るということであり、食管法も守る、こういうことだと解釈いたして差しつかえございませんね。
  137. 長谷川四郎

    長谷川国務大臣 さようでございます。
  138. 稲富稜人

    ○稲富委員 それでお尋ねしたいと思いますのが、ただいまの自主流通米の問題でありますが、食管法の第一条は、「本法ハ国民食糧ノ確保及国民経済ノ安定ヲ図ル為食糧の管理シ」ということをはっきりうたっております。それで食糧を管理することが、食管法できめられた政府の当然の義務なんです。ところが、自主流通米というものは、先日からの答弁を聞いておりますと、食管法施行令の五条の五によってそれを認めたのだと言っていらっしゃいます。少なくとも食管法施行令というものは、食管法を生かすための法律であらなければいけないと私は思う。しかも食管法の第一条によって、管理外の米を認めるということが、はたして食管法の違反にならないかどうか、これに対する法的な根拠をひとつ承りたいと思うのです。
  139. 桧垣徳太郎

    桧垣政府委員 仰せのとおり第一条は、「国民食糧ノ確保及国民経済ノ安定ヲ図ル為食糧ヲ管理シ其ノ需給価格ノ調整」を行なうとございますが、この場合の管理というのは、私どもの解釈は、政府が農家からの直接買い入れを行なって、政府が所有権を取得して管理する場合としからざる管理と、二つを含むというふうに解釈いたしておるのでございます。それは、この食管法全体をごらんになりましても、政府直接の買い入れ以外の規定が入っておるのでございます。でございますので、ここでいう管理というのは広義に解すべきである。第三条の米穀の買い入れのところで、第一条の目的を達成するために必要な米は、政府が農家から買い入れをする権限を与えられておる。したがって裏から言えば、政府は買い入れをする義務を負うということでございますが、食糧の全体的不足の際には、政府買い入れを運営上確保するために法律で認められました命令、つまり施行令の第五条の五で、生産者は政府以外の者に売ってはならないという規定を設けておるというふうに解釈いたしております。  したがって、第五条の五で、第一条の管理の目的に沿いつつ政府を通さない米の流通を認める、そうして政府国民食糧の確保、そのために必要な直接管理及び統制をするということがあれば、法律上の解釈としては何ら違法ではないという考えをとっておるわけでございます。
  140. 稲富稜人

    ○稲富委員 それは非常に三百代言的な解釈じゃないですかね。第三条は、「米穀ノ生産者ハ命令ノ定ムル所ニ依リ其ノ生産シタル米穀ニシテ命令ヲ以テ定ムルモノヲ政府ニ売渡スベシ」と書いてある。この命令というものは、命令をしなかった場合は売らぬでいいという意味じゃないでしょう。ちゃんと売らなくちゃならないことを義務づけられておるから、その命令によって、第三条は生産したものは全部売らなければならないとなっておる。それで農民は、当然政府に売ることを義務づけられているので、それ以外の米を認めるということさえも非常に間違っておるわけなんです。米は売らなくちゃいけないから、それは政府が管理することが政府に義務づけられておる。  ところが、この管理外の米を認めるということは、食管法の施行令だとおっしゃるのだが、施行令というものは、食糧管理法ということの法律を実行するためにつくったものじゃないですか。本法を離れて施行令というものがあるべきじゃないのですよ。そういうような解釈をされておるということは、非常に三百代言的な解釈だと私は思うのです。いかがでありますか。
  141. 桧垣徳太郎

    桧垣政府委員 施行令は、法律の施行のために認められた政府の権限による立法であるということは、仰せのとおりでございます。第三条の規定は、政府農民生産した米の全量を買い上げる義務を負うという規定ではない。第一条の目的を達成するために必要な米については、政府農民から強制的に買い上げる権限を付与された規定である。したがって裏から申せば、先ほども言いましたように、一条の目的を達成するために必要なものを政府が買わなければならないということは、これは条文の論理解釈からして当然であるということでございまして、この点は政府内部における一致した見解でございまして、私の解釈が、仰せのような非難に値するものであるとは思っておりません。
  142. 稲富稜人

    ○稲富委員 政府が一致した考えであると言うなら、政府が非常に曲げて解釈しておるということです。政府みずからが法律を犯すような、解釈を自分の都合のいいように、便宜にそれを解釈するということは、法の尊厳においてあり得ないことだ。この点は、私は食糧管理法の第一条で示しておることが、食糧管理法のほんとうの根幹でなければならないと思います。これを離れて根幹なんてあり得ないのですよ。しかも、食糧というものは国が管理をしなければならないと義務づけられておる。義務づけられておる米というものは、農民はまた政府に売らなきゃいけないことが義務づけられておる。これが第三条なんです。それをかってに、政府がそのときの都合によってこれをいいように解釈をして、これは法に触れておりませんなんて、こういうようなことは、どうも私は納得がいかない。どうなんですか。これはどうも政府の統一した見解だとおっしゃるのだが、そういうような法の解釈では、あまりにも法の解釈を便宜に考えているんじゃないですか。この点どうなんですか。農林大臣はそれでいいとおっしゃるのですか。食糧庁長官のような答弁でいいとおっしゃるのですか。
  143. 桧垣徳太郎

    桧垣政府委員 毎度申し上げておりますとおり、三条の規定は、どう読みましても、決して政府生産者の生産した米の全量を買わなければならないという条文でないことは明らかであるというふうに私どもは解しております。ただ、第一条の目的達成のために必要な米を、政府がこれだけの権限を与えられておりながら買わない、したがって、第一条の目的のための義務を果たさないということは、これは法律違反である。しかし、現在のような需給事情が緩和いたしております事態において、政府需給調整能力を十分に持ちつつ政府を通さないということで、しかも、食糧管理法全体の立場からは、行政的規制を加えつつ流通を認めるという自主流通の方途は、食糧管理法に何ら違反するものではないと考えております。   〔安倍委員長代理退席、委員長着席〕
  144. 稲富稜人

    ○稲富委員 それでは、食糧庁長官の解釈からいきますと、ことしはこの自主流通米というものが百七十万トン認められております。政府が必要だと思えば、将来これは百七十万トンが五百万トンになろうと、一千万トンになろうと、自主流通米がだんだん多くなってきても、法に触れないという問題になってくるのです。そうなりますと、それがために食管法の根幹はこわれてしまいますよ。それはことしは百七十万トン、これによって法に抵触しないのだ、自主流通米を認めるんだ、百七十万トンだとおっしゃる。来年必要によって、これがもしもあるいは五百万トンあるいは一千万トンになった場合でも、あなたの解釈のとおりにすれば、これは一つも法に抵触しないとなれば、だんだんそれが大幅にいけば、食管制度の根幹というのはこわれることになる。こういう事態が起こりはせぬかということです。どうですか。
  145. 桧垣徳太郎

    桧垣政府委員 私がただいま申し上げましたように、一条、三条の解釈からして、政府国民のために負っております需給調整の機能を害するような姿になる、つまり、自主流通米をむやみに増大して政府の調整能力がなくなるということであれば、これは明らかに食糧管理法違反ということになると思います。したがいまして、現在の構想のもとでも、自主流通米の量については農林大臣の許可にかからしめているということで、政府需給調整能力をそこなうというような事態になれば、行政的に規制すべきものであるというふうに思っております。
  146. 稲富稜人

    ○稲富委員 政府が管理する能力をそこなうようになるかならぬかということは、政府の解釈ですよ。政府の解釈次第ですから、政府はその自主流通米をどんなにたくさんふやしても、政府の管理には影響しないという解釈をすれば、この問題は自主流通米が多くなってもいいということになると思う。そういうことから、だんだんだんだん食管制度の根幹というものは弱められてくるという問題が起こるような事態がくるということも考えられる。それは政府考え方次第ですから、あなたのおっしゃるようにすれば、政府はこれだけたくさん自主流通米を認めても、こちらのほうに影響しない、保管にも関係しないのだといえば、差しつかえないという問題になってくるが、法の解釈はそういうようないいかげんなものではないと思う。たとえ百七十万トンであろうとあるいは一万トンであろうと、法の尊厳の上からいったならば、これはやはりこれだけだから認めるとか、政府の管理に影響しないから認めるとか、そういうような法の解釈であってはいけないと思いますが、いかがですか。
  147. 桧垣徳太郎

    桧垣政府委員 食管法の基本的な考え方は、主要食糧に対する需給の調整という点に重大な目的あるいは使命があります限り、需給の実態を離れて法律の運用はできないことであるというふうに私は思うのでございまして、現在の需給事情、またごく最近の将来についての需給見通しということを考えますれば、政府需給操作をし得る数量を確保し得て、それを越えるものについて政府買い入れをしないで、政府を通さないで流通するという道を一定の規制のもとに認めることは、何ら法律の違反にはならないというように考えております。
  148. 稲富稜人

    ○稲富委員 どうも私は食糧庁長官の御説明は納得できません。しかし、この問題で議論しておりますと、こればかりで私の質問ができませんので、いずれまたいつかの機会にしたいと思いますが、この問題は、私もひとつ検討したいと思う。問題は、こういうことによって食管法の根幹を守ると政府の言うことが、なしくずしにこわされてきやしないかということを私は非常に憂慮するわけですが、その点を大臣に聞きたい。法的解釈の問題はまた次に譲るといたしまして、こういうようなことでなしくずしに食管法を変え、食管の根幹を維持することが困難であるというような状態に立ち至らないかということをわれわれは憂慮するのであるが、この点に対して、もっとはっきり農林大臣からこの際言明してもらいまして、法の解釈はあとに譲ることにいたします。
  149. 長谷川四郎

    長谷川国務大臣 食糧管理制度というものは、決して根幹をくずすようなことはいたしません。私は、はっきり申し上げておきます。  いまいろいろお話を承っておると、やはり何といっても、昭和十七年に、食糧不足する、国民食生活が非常に不安定なときである、だから、まず国民食糧需給の安定をはかることが第一である、こういうような点からこの食管法というものが生まれ出てきたということも、いなめない事実だと思うのでございます。でありますから、国民食糧の確保及び国民経済の安定というその大目的に沿う必要がある。そこでいま稻富さんのお話のように、五百万トンになったらどうするということではなくて、国民が必要だという数量は、配給で受けたいというなら必ず確保する、そういうものが根幹にあるのだ、こういうふうに私は解釈をいたすのですが、それは別の問題として、いずれにしても食管法は変える意思は全然ございませんということだけははっきり申し上げておきます。
  150. 稲富稜人

    ○稲富委員 いずれ法的の問題は他の機会にお尋ねすることにいたします。  私の持ち時間が終わりますので、簡単に二、三この機会にお尋ねしたいと思いますが、私たちは、今日総合農政ということを政府が提唱される以前において考えてもらいたいものは、農政全体が総合的であらねばならないと同時に、ほかの部門においても総合的であらねばいけないと思うのです。たとえば、畜産の問題を取り上げました場合でも、農業基本法によって、選択的拡大として畜産というものの振興政府は非常に力を入れたとおっしゃる。ところが、その畜産そのものが総合的じゃない。御承知のとおり、飼料外国から輸入しているという状態なんです。この点からいっても、総合農政を提唱する前に、総合畜産というものを樹立する必要があると私は考えますが、この点いかがでございますか。  ことに畜産に対する草地の問題に対しては、何とか申しわけ的に少しくらい草地改良等で取り組んでおられるようでございますが、濃厚飼料のごときはほとんど外国から輸入している状態なんです。日本畜産というものは外国飼料の加工業といわれておる。こういうような状態に置かれておって、はたしてこれが日本畜産であるといえるかどうか。これは日本畜産振興に対する総合性がない結果であると私は思うのでありますが、どうか。この点は、畜産自体において総合的な畜産振興対策を立てていく必要がある、かように思いますが、いかがでしょう。
  151. 太田康二

    ○太田政府委員 御承知のとおり、えさの対策といたしましては、自給飼料の対策と濃厚飼料の対策があるわけでございますが、自給飼料対策につきましては、先生も御承知のとおり、乳牛、肉牛等の草食性家畜につきましては、できるだけ草によっての給与を行なう、これが経営の安定であり、経営基盤の整備であるということで、公共事業の予算をもちまして草地改良事業ということで、年々相当の事業費で事業を実施していることは御承知のとおりでございます。現に土地改良長期計画におきまして、昭和四十年の十二万三千ヘクタールを昭和四十九年までに四十万ヘクタールにふやしまして、五十二万三千ヘクタールに持っていく。今回の長期見通しでは、これを五十二年に六十一万一千ヘクタールまで持っていくという計画を立てております。それから既耕地における飼料作物の導入事業、さらには転換事業等で、いずれにしても草食性家畜に対してましての自給飼料対策というのは、かなり力を入れて実施していることは御承知のとおりであります。  そこで、濃厚飼料の対策でございますが、先生御指摘のとおり、豚、鶏等の増大に伴いまして、確かに配合飼料の原料でございますところのトウモロコシ、マイロ等の輸入が急増していることは御承知のとおりであります。しかしながら、海外飼料と比べまして、こういったものを、確かに不足でございますから国内生産をすればよろしいわけでございますが、実は非常に生産性の格差に基因いたしますところの価格差がございます。なおかつこういったものを無理につくらせますことによりまして、農家の所得が非常に減るという問題も実はあるわけでございまして、これより有利な作物があるというようなことで、実は国内産の濃厚飼料についての政策というのは非常に困難でございまして、現状はいま御指摘のとおりの状況になっておるのでございます。  そこで、流通飼料対策といたしましては、飼料需給安定法に基づきまして、需給の定定を通ずる価格安定ということで、外国から専増産ふすま用の小麦、あるいは粒用小麦、肉用牛のえさになりますところの大麦、あるいはトウモロコシ、こういったものを、食管特別会計の飼料勘定へ無税で入れまして、財政負担をして安定的に供給する。そのための財政負担も、四十四年度では三十一億の負担をするというようなことで、こういった政策によりまして農家経営の安定に資したい、こういった実情でございます。
  152. 稲富稜人

    ○稲富委員 それから、畜産の総合対策として考えなくちゃいけないことは、飼料の問題はいまあなたのおっしゃったとおりでありまして、今後いろいろ積極的に取り組まなければいけないと思いますが、いま困っているのは、し尿処理の問題で困っている。このし尿処理の問題もあわせて考えなければ——昔と違います。公害等の問題もありますので、これに対する具体的な施策といいますか指導というもの、こういうものはやはり総合的に考えなければいけないと思いますが、こういうことに対して考えておられるかどうか。
  153. 太田康二

    ○太田政府委員 確かに畜産公害問題、特にし尿処理の問題が大きな問題になっていることは、十分承知いたしております。そこで、畜産局といたしましては、二カ年ほど中央畜産会に依頼をいたしまして検討をいたしてまいったのでございますが、現在、この処理の施設としていろいろな方法があるわけでございます。たとえば、活性汚泥法によるもの、あるいは曝気法によるもの、いろいろあるわけでございまして、実は昭和四十三年度に実験事業として、三カ所でし尿処理の機械施設の設置助成をいたして、その経過を見ております。さらに四十四年度ももう一回これを実験事業として予定いたしておりまして、機械メーカーのほうでも、それぞれ新しい技術開発でコストの安い機械の開発につとめております。そこで、われわれが四十五年度からこれをいかなる形で実際の政策の上に乗せるか、金融でいくのか補助でいくのか、そういった問題の解明のための実験事業を現在実施しております。  それから、いまの公害の問題にからみまして、畜産の新しい開発団地の問題が各県で現に具体的に起っておりますので、われわれは四十四年度予算におきましてこれの追跡調査を行ないまして、どういった形でこれに助成、誘導を与えることが必要であるかというような調査もいたしまして、これもできれば四十五年度から政策の上に乗せてまいりたいということで、現在公害問題について取り組んでおるのでございます。
  154. 稲富稜人

    ○稲富委員 結論に入りますが、畜産問題に対してはいま申し上げましたような各般の情勢を考えた総合的な畜産対策というものを考えていただきたいということであります。  さらに、この総合的対策というものは、果樹園芸においてもまたしかりでございまして、今度は果樹なんですが、これもさっき言いましたように、構造改善だというわけで、山のてっぺんまで開いて、そうして果樹をやった。ところが、生産がだぶついているという問題。これに対しては、果樹に対する一つの加工業の問題、あるいはかん詰め、ジュース、こういう問題に対してどういう取り組み方をしておるか。  ことにジュースのごときは、今日もくだものの汁でないものがジュースと称して市販されている。やはりこういうジュースというものは、規制をする必要があるのじゃないか。ジュースというものはくだものの汁でなければいけないと私は思う。ところが、砂糖水に化学染料で色をつけて、これをジュースと称して市販している。これは食品衛生法によりますとジュースじゃないけれども、単にそういう名前のつく清涼飲料水として認めると、こういう。これは、ちょうど桧垣食糧庁長官畜産局長をしていらっしゃる時分に、私は牛乳の問題で、色づけ牛乳とかフルーツ牛乳の問題を質問したことがある。そのときに厚生省の食品衛生課のほうでは、これは牛乳は入っておらぬけれども、フルーツ牛乳と称する清涼飲料水だ、コーヒー牛乳と称する清涼飲料水として認めているのだ、取り締まりの対象にはならない、こう言っている。これはジュースの場合もそうだと思う。ジュースじゃないものが、そういう名前をつけた清涼飲料水として認めておるから取り締まりの対象にならないと言われるのだから、これは農林省が、ジュースというものはどういうものであるという一つの規定をして、そうしてくだものの汁じゃないものをジュースとして売っていかないようにするとか、またジュースを、ほんとうにくだものの汁を製品にすれば相当の市価で売れます。  今日、日本の清涼飲料水というものは、コーラであるとかいろいろな名前で売られております。しかし、これはほんとうの果汁のうまいものが出てくるならば、こういうような清涼飲料水というものは相当に駆逐されると私は思う。リンゴの汁にせよあるいはミカンのジュースにしろそうだと思うのでありますが、こういうこともあわせて、やはり果樹振興のために、植やつけだけ奨励するのではなくして、こういう加工による消費部面もあわせて計画を立てて指導することが果樹総合農政である、かように考えなければいけないと思うのでございますが、これに対してどういう取り組み方をされておるのであるか、将来どういう取り組み方をされるのか。特に、かん詰め等は海外輸出等の関係もありますので、こういうものに対してもどういう姿勢で取り組まれようとしておるのか、この点もあわせて承りたいと思います。
  155. 小暮光美

    ○小暮政府委員 ミカンかん詰めの問題につきましては、御承知のように、昭和三十年代の後半期から内需が非常に強くなりまして、なま食用のミカンの値段が年々異常といえるほどの高騰を続けました時期がございます。それまで営々辛苦して海外のミカンかん詰めの市場を広げてまいりましたが、内需の強さに圧迫されて、ややもすれば市場を失いそうになったわけでありますが、関係者一致協力しまして、農林省もこれを助成しまして、輸出ミカンかん詰めだけは確保しようということで、原料集荷の面に大きな金融の手を打つというなことを中核にいたしまして、輸出、ミカンかん詰めの市場の確保には努力しております。輸出向けのミカンかん詰めの生産高は、四十一年に多年の念願でございました五百万ケースにもう一息の四百九十九万ケースというところまでたどりついたのですが、一昨年、昭和四十二年のミカンが非常な干ばつで不作になりました。そこで、少しまた減りました。昨今のミカンの市況にかんがみまして、さらにかん詰めの生産増強をはかるということで、ことしは四百六十五万ケースくらい輸出向けのミカンをつくったろうと思います。今後もミカンの需要の安定及び拡大という点から、内版も含めましてかん詰めの原料の価格の安定ということには真剣に取り組んでまいりたい。  なおほかに、多年の願望でございましたなま食用のミカンの対米輸出も、限られた形ではございますが認められましたので、これも、これを寄りどころにして、今後できるだけミカンの輸出につとめてまいりたいと思っております。  それから、ジュースの問題につきましては、御指摘のように、これまで消費者が的確に果汁飲料の選択ができるように必ずしもなっておらなかったと思われる面がございました。ただいま農林経済局のほうでは、農林物資規格法の改正を企図いたしまして、種々検討いたしております。別途、関係の業界が公正取引委員会にお願いしまして、果汁飲料の表示のあり方について公正競争規約、そういうものの作成を目下検討いたしております。まだ関係の業界に多少利害の錯綜がございまして、議論の帰結を見ておりませんけれども、農林省としてこれに関与いたします姿勢といたしましては、消費者が、びんなりかんの中に詰められた飲みものの内容を、正確に把握できるような形のものにいたしたい。特に、何のまじりけもない、純粋のくだもののしぼり汁であるというものにつきましては、天然果汁一〇〇%という表状をいたしまして、それ以外の果汁飲料におきましても、従来の規格ではパーセンテージを表示することになっておったのですが、非常に小さな字で、王冠の一部に書いてあるといったような事実も確かにございます。書き込みます活字の大きさも、おそらく何号活字というふうに指定するところまで議論が行くと私は思います。実際に入っております果汁の量を四五というような形で、大きく数字で表示するといったようなことを考えたらいかがかというようなことで、消費者がその嗜好に応じまして間違いなく、果汁の入っておりますもの、あるいは純粋の果汁というものを、選択して買えるような形に特っていきたいというふうに考えております。
  156. 稲富稜人

    ○稲富委員 果実の輸出問題につきましては、先般、私ハワイに行きましたとき、二世の人たちから、パパイヤを日本輸入してもらいたい、パパイヤならば、これはハイクラスの人が食べるので、日本の果実にあまり影響しないじ牛ないか。そのかわりその交換として、二十世紀であるとか、ミカンであるとか、カキであるとか、こういう日本のくだものを輸入したい、こういうような希望が非常に強かったのであります。ところが、これが植物防疫法の関係があってなかなか困難だというような状態を聞いたのでありますが、これがわずかばかり入った、しかもハイクラスの人がパパイヤを食べるのだ、そして一般的な二十世紀であるとか、カキであるとか、ミカンであるとかというのが交換で大量輸出できるというならば、私は貿易上日本があまり損をすることはないのじゃないか、こういうことも考えられると思うのですが、こういう問題に対しては、何か考えておるかどうか、承りたいと思います。
  157. 小暮光美

    ○小暮政府委員 ハワイ産のパパイヤの問題につきましては、かなり前からアメリカ側からも非常に強い希望がございまして、農林省といたしましては、植物防疫の面に万遺漏なきを期して、いずれこれの輸入につきまして配慮したいという姿勢で、防疫のあり方について技術的に検討を続けております。  先ほども申しましたように、アメリカの太平洋岸北部五州向けに、初めてなまのミカンの輸出が認められたような形でございますが、なお私どもといたしましては、アメリカ大陸の大きな需要に対して、日本の特産の果実をなまで送り出す方途につきまして、向こう側の植物防疫の問題も含めて、鋭意努力を続けたいというように考えております。
  158. 稲富稜人

    ○稲富委員 その他まだいろいろ聞きたいこともあります。ことに、林業の問題等もありますが、時間がありません。林業の問題はいずれまた、法律案もありますので、法案のときに質問することにいたしましてきょうはやめます。  ただ最後に、農林大臣にお願い申し上げたいと思いますことは、私、前に申しましたように、総合農政を樹立するというたてまえにおいて、さらに畜産においても、果樹においても、林業においても、その部門部門としての総合性というものが、いままで日本の行政になかったということだけは事実でございます。こういう問題に対しても、各その部門においての総合的な振興対策を、この際早期に打ち立てることが最も必要である。幸いに総合農政ということを損唱されておる時期でございますので、なおさらこの機会にその点も十分考えて、農政に対する振興策を考えていただきたいということを農林大臣に強く要望し、これに対する農林大臣の決意のほどを承りまして、私の質問を終わることにいたします。
  159. 長谷川四郎

    長谷川国務大臣 いろいろな、幾多の御指摘等ございましたが、さらに総合農政という点については、今後十分念頭に置きまして指導に当たっていくという考え方でございます。
  160. 丹羽兵助

  161. 樋上新一

    樋上委員 総合農政につきましては、もうたくさんの方が述べられましたので、私は重複を避けまして、農業構造改善事業並びに基盤整備についての機械化についてお伺いいたしたいと思うのでございます。  農業構造改善事業を計画したところでも、土地基盤整備事業の負担が過重のためとか経済的見地から、効果があがらないということから、その指定を返上するようなところもあるように聞いておりますが、この点は私はどうかと思うのです。これは農業のために資本を投下できるような環境が整っていないところに原因があるのではなかろうかと思うのですが、大臣、いかがでしょうか。
  162. 池田俊也

    池田政府委員 構造改善事業の実施段階におきまして、事業費の負担がやや大きいというようなことで、若干関係農業者の間に、いろいろな御意見があるというような事例は、ときにあるわけでございます。ただ、構造改善事業におきますいろいろな問題は、むしろこれは当初から、どのくらいの負担がかかるというのは大体はわかっておるわけでございますから、一部の場合におきましてはそういうこともあるのでございますが、むしろ土地基盤整備については、いろいろな利害関係が対立するというようなことで、なかなかこれも実施ができないというような事例は、かなりあると聞いておるわけでございます。
  163. 樋上新一

    樋上委員 そういう事態があるのですね。返上しておるようなところが……。  昨年、全国農業構造改善対策協議会で行なった調査の結果においても、集落整備や文化厚生施設などを取り入れた事業を望む者が全体の四七・六%を占めており、農業構造改善に直接関係のある環境整備事業まで取り入れることを望んでいる者が三一・二%にのぼっている。こういう事実からも考慮する必要があると思いますが、この点はどうでしょうか、具体的な見解を聞かせていただきたいと思います。
  164. 池田俊也

    池田政府委員 確かに、ただいま御指摘のような意見がかなりあるわけでございます。私どもといたしましては、やはりこの事業は、その名前が示しますように農業構造改善事業で、総合的な地域のいろいろな環境の整備ということでは必ずしもないわけでございますので、たてまえといたしましては、やはり農業構造の改善に資するような事業、たとえば基盤整備でありますとか、あるいは近代化施設というようなものにウエートが置かれるのは、これは当然でございますけれども、それとの関連で、やはり集落の再編整備とか生活環境の施設の整備に類するようなことの関係が出てくる場合が実はあるわけでございます。そういうようなものにつきましては、やはりこれは対象とするのが妥当ではないだろうかということで、これはまだ最終的に結論を出してあるわけではございませんけれども、来年度から発足いたします第二次の構造改善事業におきましては、そういうものもできる範囲において取り入れていきたい、こういうように考えているわけでございます。
  165. 樋上新一

    樋上委員 二部の畜産や園芸面における多頭飼育、大型化、またカントリーエレベーターの建設などが見られるのですが、経営そのものの改善生産性の高い経営はほとんど実現していないように思われるのですが、この点はどうですか。   〔委員長退席、三ツ林委員長代理着席〕
  166. 池田俊也

    池田政府委員 従来やってまいりました構造改善事業に対するいろいろな反省と申しますか、これは私どもも次の第二次事業に、当然それは反映させなければならない。こういう観点で、従来の事業につきまして関係の方のいろいろな御意見とか、あるいは学識経験者の御意見等を伺っているわけでございますが、確かにいまちょっと先生御指摘のようなことがあるわけでございますので、私どもとしましては、やはり従来の構造改善事業は、いわゆる主産地形成と申しますか、あるいは言い方をかえますれば農業生産の選択的拡大というような点では、かなり成績をあげたのではないかという気がいたします。  それから、いわゆる労働生産性向上というような点でも、ある程度の成果をあげているように思いますけれども、ただ、そのことばにうたわれておりますいわゆる農業構造改善というところから申しますと、これは決して十分とはいえない。むしろこれは農政全般の問題でもございますし、構造改善事業がすべてを解決するわけにはいかないとは思いますけれども、やや看板倒れになっている傾きがあるのじゃないかという反省を、実はしているわけでございまして、そういう点については、次の第二次事業で改善を加えていきたい、こういうふうに考える次第でございます。
  167. 樋上新一

    樋上委員 私は、この土地基盤整備事業の収益性を低めているものに、基盤整備に対する高い工事費、これが原因しているのじゃなかろうか、こう思うのです。そしてその原因として考えられることに、工事を請け負う資格を定めた指定業者制度に欠陥があるのではなかろうか、こう思うのです。この制度が業者に対して独占権を与えて、入札といっても自由競争を排して、農民に高い工事費を強制しているように私は思うのですが、農林省当局としてはどのような指導、管理体制をしておるのか、また、工事の完成に対してどのような処置をとっているのか、明らかにしていただきたいと思います。
  168. 池田俊也

    池田政府委員 これは、あるいはそれぞれの事業主体におきまして、先生御指摘のような、何か特定のものをきめて、それに該当する業者に限るというような指導をしている事例があるいはあるのかと存じますが、一般論といたしましては、実は私どもは何らの制約をいたしておらないのでございます。当然各事業主体において最も適当な、またコストの安いものに事業をやらせるということでよろしいわけでございまして、特別の制約はいたしておらないわけでございます。
  169. 樋上新一

    樋上委員 特別の制約はないという点ですけれども、現実にこういうものが行なわれておって、そこにいろいろな問題があるという実例があるのでございます。だから私は、農林省としてはそういう特別なことはないといいながら、そういうことが現実に行なわれているというところに目を向けていただきたい、こう思うのです。  かつて農業恐慌の時期において救農土木事業を行なったが、地元農民にその労賃をかせがせる意味で企画されたものであった。それと比べて今日の土地基盤整備事業は、むしろ土建業者本位となっているのではないか、こう私は思うのです。この点が私は問題だと思うのです。
  170. 池田俊也

    池田政府委員 先生御指摘の事例が、どういうあれかちょっとよくわからないのでございますが、あるいは想像いたしますと、農地局において行なっております公共事業の関係等で、そういうようなことがあるかと存じますけれども、私どもがやっております構造改善事業は、やはり地域の農業者の意向を基礎にいたしまして、最もそれに適するようなやり方で、わりあいに自由なやり方でやらせるというのが、実は事業の本来のたてまえでございますので、特別なそういう指導はいたしておらないのでございますが、また具体的な事例がございましたら、後ほどでもお伺いいたしまして、それにあまりふさわしくないようなことがあれば、また指導をいたしたいと思います。
  171. 樋上新一

    樋上委員 これは想像ではないのでございます。構造改善事業は、それ自体農業生産構造の高度化につながるものであると思いますが、現実農民が苦情を持っているのは、この請負工事にあると思うのです。  これは先日の新聞で報じておりましたように、農林省の課長が工事を請け負った業者に手心を加えた。そしてその謝礼として百万円もの遊興代を収賄した。金だったら収賄になるんだが、飲み食いならいいだろうというぐあいに、遊興代に百万円も使わした。これは新聞に出たので御存じだろうと思うのでありますが、こういうことがあるのは、先ほどから申し上げておりますように、請負業者に農林省の課長ともあろう者が、こういう手心を加えておる現実の証拠が出てきておる。ですから、これは新聞に報じておるので皆さん御存じだと思うのです。この事件を見ましても、このような制度、方法が汚職の温床になるんだと私は思うのです。一方では農民や地方の負担を大きくするものであるので、農民が返上しようというような問題が出てくる。それに対してあなた方は、先ほどから聞いておりますと、そういうようなものは知らない。そういうことがあるなら教えてもらいたいと言いますけれども、こういう事実が出てきておるのですから、行なわれているということをはっきり私は申し上げたい。
  172. 池田俊也

    池田政府委員 お話の新聞は、私もちらっと見たわけでございますが、それはたしか私の理解では、農地局所管でやっております公共事業の関係でございまして、その場合におきましては、先ほど先生のおっしゃられたようなことがあるわけでございますけれども、私のほうは公共事業ではございませんで、農業構造改善事業というのは市町村が計画をきめ、それぞれの事業主体がございまして、それに総合助成という方式で補助金を出してやらせておるものでございまして、そういうような業者の指定というようなことは、私どものほうはいたしておらないわけでございます。
  173. 樋上新一

    樋上委員 それは独占権も、そういう指定業者制度もあなたのほうは御存じなかろうかと思いますけれども、農民としては、先ほどから申しておりますとおり、こういったことが公然と行なわれているので苦しんでおるのです。だから、こういう間脳についてもっともっと慎重に考えてやってもらわなければならないと思うのです。  農業構造改養で、昭和三十年からトラクター、コンバインが導入されましたが、この事業によってもたらされた負担は、もっぱら農業にかぶさっているのであります。このような現状を軽視した施策をやめて、現状に即した施策を講ずべきであると思うのですが、この点はどうですか。
  174. 池田俊也

    池田政府委員 これは御存じであろうと思うのでございますが、構造改善事業は、国のほうから見た場合には、ほかの事業に比べまして非常に手厚い助成をいたしておるわけでございます。全般的に五割補助ということになっておるわけでございますが、さらに土地基盤整備になりますと、地方財政でさらにかさ上げをしているということで、七割程度が国なり県なりで助成をされている。残りの三割が地元の負担になっている。それから融資の事業があるわけでございますが、融資の事業も利率は三分五厘という非常に低率でございます。  そういうことでございまして、私どもは、個々の場合におきましては、農業者の方がかなり負担と感じられる場合もあろうかとは思うのでありますが、そういう財政的な援助は、他の事業に比べるとかなりやっているわけでございます。まあ今後事業量が相当大きくなりますので、確かに御指摘の点に対する注意は非常にしていかなければならぬとは思うわけでございますが、従来の事業はそういうことでございますので、一部の地域におきましては、確かに非常に負担が大きいということはあろうかと思いますが、全般的には、かなり御満足をいただいているのじゃなかろうかと思うわけでございます。
  175. 樋上新一

    樋上委員 これに関連いたしまして、農業生産向上させるためには、構造改善とともに効果的な機械化をはからなければならない。三十四年ごろから機械の導入が行なわれ、三十七年ごろから顕著になってきたようでありますが、労働力の節減はされたものの、やたらに導入をはかったために、機械化の導入が農業経済を圧迫しているといった現象が各所に出ているのでありますが、この点についてどのようにお考えでしょうか。
  176. 池田俊也

    池田政府委員 私どもは、今後日本農業の近代化をはかっていくという観点から申しますと、機械化を促進することは非常に重要なことであるという感じを持っているわけでございます。御指摘のように、この数年機械化がかなり進んでおりまして、ある作業をとってみますと、ほとんど大部分、九割くらいが機械で行なわれているということがあるわけでございます。  ただ、いままでの機械化の過程を振り返ってみますと、やはりかなり反省すべき点があるわけです。というのは、ある点は機械化をされましても、その次の段階の作業が機械化されていないということがあるために、機械の効率が十分に発揮できない、あるいはよそのところでこういう機械を入れているので自分のところも入れた、ところが土地条件等がなかなかそれに合わないで、機械が十分稼働しないという事例がかなりあるわけでございます。確かに機械化の進展の段階でそういう問題が非常にあったわけでございますけれども、最近におきましては、農家のほうも機械万能ではなくて、機械化の条件というようなものもかなり知識として持ってきているという感じでございまして、従来確かにそういうことがありましたけれども、今後、私どももそういう点注意して指導しなければならないと思いますが、その点はかなり改善はされてきていると考えるわけでございます。
  177. 樋上新一

    樋上委員 この機械導入にあっては、特に機械の共同利用の推進をはかって、このために国の補助や融資の充実強化を行なってはどうか、この点ですね。さらに、農業基盤整備も機械化を十分活用できるように推進すべきである、私はこう思うのですが、どうでしょう。
  178. 池田俊也

    池田政府委員 機械化の推進につきましては、農林省としましてもかなり従来力を入れてきた。悪口を言う人に言わせますと、どうも農林省は何でもかんでも機械化だ、あまり知恵がないじゃないかと言う方もあるくらい、それぞれの各物資の担当局で機械の導入をやってきているわけでございます。  いろいろな補助事業がございまして、一々ここで申し上げるあれはございませんけれども、たとえば、四十四年度予算あたりでどのくらい機械導入のための金が使われるか試算をいたしたものがございます。これによりますと、ごく概算の数字でございますが、直接機械導入に助成をしておりますのが七十四億くらいございます。その他機械の利用等に関するいろいろな予算もございますが、さらに、御承知のように農業近代化資金というのがございまして、これが非常に機械の導入に大きな役割りを果たしているわけでございます。従来、近代化資金の大体三割くらいが機械の購入に向けられているわけでございますが、来年度は近代化資金三千億ということで、その三割がいくかどうかは非常に疑問だと思いますが、かなり大きな金額が回っているわけでございます。その他改良資金等におきましても、一部機械化のためのワクがございますので、そういうものを合わせますと、かなり多額の助成措置がとられているのではないかと思うわけでございます。
  179. 樋上新一

    樋上委員 反面、農業機械の普及とともに、年々農業従事者の機械による事故が増大している。現在、全国でどのくらい起こっているのでしょう。また、どのような事故が多いのか、御説明願えればけっこうだと思います。
  180. 池田俊也

    池田政府委員 はなはだ申しわけないのでございますが、この事故に関する資料が必ずしも十分ではないわけでございます。そういう点で、若干正確さに欠けるのでありますが、その点をお許しいただきたいと思うのでございます。  最近一年間におきまして調べた数字でございますが、全体の数はちょっとはっきりいたしませんが、私どもの調査の結果によりますと、機械を扱っている方の中で、大体六%程度が何がしかの事故を起こしている。これは傷害事故と死亡事故とございますけれども、それを合わせまして、その程度の方が事故を起こしているという数字がございます。
  181. 樋上新一

    樋上委員 こちらに事故の統計があるのですけれども、これはあとにいたしまして、全国農業安全協会の調査にしても、県の統計をすべてとっていないようですね。それでは実態も明確にならず、対策も後手になってしまうが、私は国がこういう点に責任を持って行なうべきではないかと思うのです。  全国農業安全協会の推計によりますと、農作業の負傷率は全産業労働者の災害に比較しますと、男子では六倍、女子が三倍の災害となっています。また、全産業労働者の負傷中動力運転によるものが二六・六%に対して、農作業では五四・四%と二倍以上でございますが、この原因は一体どこにあるか考えねばならないのです。事故の原因は運転者側にもあるようでありますけれども、これは運転に対する訓練不足、いわゆる安全教育がなおざりにされておるからで、この点にもっと私は力を入れるべきではないか、こう思うのです。  農業機械事故の最大の要因の一つとしては、機械の安全度の問題があると思います。毎年増加の一途をたどっている農業機械の安全基準は定められているのかどうか、この点どうでしょう。
  182. 池田俊也

    池田政府委員 確かに先生御指摘のように、事故は非常にふえておりますし、原因の中身を調べてみますと、一番大きなのが、実際に機械を扱っている方の技能が十分でない、あるいは交通規則に対する理解が十分でないというようなことの事故が一番多いわけでございます。大体そういうようなものがほぼ半分くらいを占めている。あと機械の整備がよくなかったとか、機械そのものがよくなかったとかいろいろございますけれども、半分ぐらいがそういうことでございます。  それで、私どもといたしましては、今後さらに機械化が進みましてそういう事故がふえる可能性がございますので、やはりそういうものに対する対策を強化する必要があるということで、従来、農作業安全対策と申しまして、いろいろなそういう講習会をやるとか、あるいは農作業の安全月間というのを設けて啓蒙運動をやるとかいうことを一方やっております。さらに、県に訓練センターというようなものを設けまして、そこで技能者の養成をやるというようなこともやっておるわけでございますが、それだけでは必ずしも十分でないわけでございます。それで私どもは、先ほど先生もおっしゃいましたけれども、安全装備基準というようなものをつくる必要があるのじゃないかということで、実はわずかな金でございますが来年度若干の予算をいただきまして、そういうものもつくるように、現在いろいろな準備をしておる段階でございます。
  183. 樋上新一

    樋上委員 安全装置に対して、わが国はあまりに野放しであるということです。こんな話を聞いたことがあるのですが、それはある会社がアメリカへ耕うん機を輸出しようとしたら、むき出しの回転部にカバーがなければ販売できないし、買うこともできない、そういうぐあいで待ったがかかった。日本においては機械はカバーなしで通っているのです。この事実をどう考えるか。人命はいずれの国でもとうとさに変わりはない。けれども、これも野放しにしておるから、だんだん負傷者が多く出て人命にかかわる者ができておる。アメリカにおいてはカバーがないからそれは買わない。日本のメーカーはどんどんそれを農業方面に売っておるのです。それは野放しである。監督も何も野放しである。  農業機械の事故はいまに始まったことではないのですが、いまだに安全装備基準が定められていない。そこで政府は、農業機械の普及に対する力の入れように対して、これではあまりに無責任であったと私は思うのです。安全基準がないために、どうしても多少危険であっても能率本位になりやすく、そのために、実際農作業に携わる農家の立場を忘れているのではないかとの声も起こっておるのですが、早急にこの安全基準というものを定めるべきである。この点は大臣に、私は予算ももっと出してやっていただきたいと思うのですが、どうでしょうか。
  184. 長谷川四郎

    長谷川国務大臣 農業機械化の進展に伴いまして、農作業による事故が増加してきているということだけは、御指摘のとおりであろうと考えております。これに対しまして、従来から農作業の安全のために施策は講じてはきておるのですけれども、ただいま御指摘のような点も考えまして、事故防止のためにこの対策に対しましても充実をはかってまいりたい、このように考えております。
  185. 樋上新一

    樋上委員 四十四年度における農林省の予算で、機械を買うために国が出す補助金、機械導入のための融資は、大まかでけっこうですがどのくらいでしょうか。また、これに対する安全対策費は幾らが充てられているのですか。
  186. 池田俊也

    池田政府委員 農作業の安全対策の予算でございますが、これは補助金でございますが、金額にいたしますと、端数はあれにいたしまして、大体千二百万でございます。さらに来年度新しいことを考えているわけでございますが、それは県に機械の安全整備のモデル施設をつくりたい、こういうことで来年度五カ所ほど考えておりますが、それの予算が約一千万円でございます。  それから、いまの安全装備基準の策定関係は、これは事務費でございまして、ここで申し上げるほどの金額ではございませんが、項目としてはあるわけでございます。  それから一般的に機械導入に対します予算につきましては、若干先ほども触れたわけでございますが、これは各局に分かれておりまして、畜産関係でありますとか、園芸関係あるいは蚕糸関係、いろいろに分かれておるわけでございますが、いずれにいたしましてもそういう機械導入に結びつくような予算が約四十億でございます。それから、先ほどお触れになりました構造改善事業の中でも、相当程度機械が取り入れられるわけでございますので、そういうものをいまの四十億に合わせますと、大体七十四億ぐらいになる、こういうような予算でございます。
  187. 樋上新一

    樋上委員 これは伺いますけれども、機械購入のための補助金が七十四億円で、機械導入のための融資は九百億円にものぼっている。これはどうでしょう。
  188. 池田俊也

    池田政府委員 融資の面でございますが、大体、従来近代化資金の三割ぐらいが機械の導入に向けられておったということで、そういう九百億という数字があるわけじゃございませんで、来年度その比率をかりにそのまま三千億の近代化資金の三割といたしますとそうなるということを申し上げたわけで、従来の、たとえば四十三年度あたりで見ますと、大体三百七十億見当が機械のために使われているのではないかというわけでございます。
  189. 樋上新一

    樋上委員 安全対策費は、先ほど千二百六十五万円であるということを聞いたのですが、安全施設促進費等を加えても二千二百万円程度である。これで安全対策は十分と私は考えられないと思うのです。千二百万円の安全対策費で一体何ができるか。これを各県別にしたら、わずかに三十万円程度にしかならぬ。この機械の安全は生命にかかわる問題でありますし、私は、この最も大事な人間の生命が忘れられているのではないかと思うのです。もっと安全対策費に予算を向けるべきではないかと思うのですが、どうでしょう。
  190. 池田俊也

    池田政府委員 これは確かに予算といたしまして、必ずしも十分でないというのは御指摘のとおりでございます。ただ、従来機械につきましては、販売業者が相当いろんなアフターサービスと申しますか、そういうような指導をいたしておるわけでございますし、さらに国といたしましても、別に農業機械化研究所という特別な法人もございますが、そこでいろんな検査等のこともやっておりますので、機械化関係の予算といたしましては、そういうものをひっくるめて考えますと、必ずしも非常に少ないということも言えないかと思いますが、やはり今後充実しなければならないことは御指摘のとおりでございますので、私どもも努力をいたしたいと考えております。
  191. 樋上新一

    樋上委員 安全教育というものを政府から推奨しておられるのでしょう。ところが地域によっては、この安全教育など聞いたことがない、そんな金がそういうところに行っているのかどうかもわからない、こういうように県でいっているのですが、一体どこへこの金が行ってしまったのか、こう思うのですが、その点どうですか。
  192. 池田俊也

    池田政府委員 これは金額は確かに御指摘のように少ないのですが、直接関係しておられる方は非常に熱心で、たとえば、この金は四十三年度に比べますと大体倍にふやしているわけです。しかし、倍になりましたが、実は元金が比較的小さいために、県にきました場合にどうもあまり目立たないというようなことで、あるいは実際の農業者なりあるいは農業団体のほう等で、御存じないという向きもあるかと存じますが、各県に補助をいたしまして、そういう事業はやらしているわけであります。
  193. 樋上新一

    樋上委員 現在、この機械の検定等を行なう機関として農業機械化研究所があるようでありますが、その業務内容等についてお伺いしたいのです。
  194. 池田俊也

    池田政府委員 機械化研究所という特殊な政府出資の法人がございまして、いろいろな機械化に関する事業をやっているわけでございますが、大きく申しますと、内容は一つは研究でございます。いろいろな機械化に関します基礎的な研究等をやっているわけでございます。それから、さらにもう一つのここの事業といたしましては、機械の検査等をやっているわけでございます。これは一定の機械については検査を受けるというたてまえになっておりまして、そういうものについては機械化研究所において検査をやって、これは確実に機械として合格であるというような認定もやっているわけでございます。
  195. 樋上新一

    樋上委員 研究業務の鑑定及び国営検査は、年間どのくらい行なわれているのですか。
  196. 池田俊也

    池田政府委員 検査の件数でございますが、四十一年におきましては、合計した数字がないので計算してみないとわかりませんが、大体の感じで申し上げますと、大体各年百件程度検査等をいたしておるわけでございます。
  197. 樋上新一

    樋上委員 私は、いまなぜこういうことをお尋ねするかというと、国営検査の基準は何か、またどういう形で行なわれているのかというと、これは名前だけです。四十一年は百件くらい行なわれていると言いますけれども、この機械化研究所で行なわれているのは、性能向上、取り扱いの難易、耐久性に主眼を置いて、安全性というものはごく一部、また別にしなくてもよいということでありますが、私は安全性こそ最も大切であり、重視せねばならないと思うのに、この国営検査においては安全性が忘れられておる。四十一年に百件やったのはどういうところで行なわれているかと言っても、まだそういうことがつかんでおられない。最も肝心なのは人命の安全性というのだけれども、どんどん死傷者が出ているのですよ。そして国営検査は、あくまでメーカーの委託によるもので、義務づけていないということですね。考えようによっては、不良機械は検査を受けずに売り出せる。まことに危険と思われるのですが、この国営検査の義務づけということについて私は考えねばならぬと思うのですが、この点はどうですか。
  198. 池田俊也

    池田政府委員 機械化について考えてみますと、やはりわが国はかなり後進国でありまして、先ほど先生も触れられました、たとえば安全というような点からいうと、どうも外国に比べて考慮が十分でないというような点が確かにあると思うわけでございます。この機械化研究所もできまして六、七年たつわけでございますが、まだいまの検査等で十分な、満足できるような状態には必ずしもなっていない点が確かにあると存じます。私どももやはり方向といたしましては、いまお触れになりましたような強制検査というような方向に行くべきであろうという感じを持っているわけでございますが、まだ現状におきましてはそこまで体制がいっていない。いろいろな対象になっております機械の範囲も十分でない。  私どもは、現在機械化審議会という審議会がございますので、そこにお願いをいたしまして、対象とすべき機械、あるいはどういうような観点からそれの検査をやるべきかというようなことについて、実は御相談を申し上げる手はずになっているわけでございまして、そういうようなところの御意見も伺いながら、方向としては逐次そういう方向に持ってまいりたいと考えているわけでございます。
  199. 樋上新一

    樋上委員 まことに私は心配するのですが、いまメーカーの委託によってやっているのです。これはそのとおりですね。現在行なわれている国営検査の対象機種も、耕うん機、自動脱穀機などわずか十数種だけで、コンバインやスピードスプレーヤーなどの新しいものや、大型のものは対象からはずされているのですよ。そういった不満の声が多いのでありまして、必要機種に対しては検査のワクをもっと広げるべきである。  私はなぜこういうことを言いますかといいますと、全国の四十六県についてこの調査をしたのです。全国四十六県のうち二十五県は未報告である。四十六県中二十一県は報告してきた。その未報告をのけて報告した中からとっても、耕うん機によって死亡している者が一年間に二十六人、重傷が七十一人、合計九十七人、それから自動脱穀機、これによって死亡が一人で、重傷が二十二人、合計二十三人、またミルカーにおいては死亡が四人、重傷が三十六人、合計四十人です。農作業別に死傷しているのはどんなものかというたら、耕うん作業で死亡が十三人、重傷が三十八人で五十一人、運搬作業で死亡が十六人、重傷が三十四人、合計五十人、脱穀作業で死亡が一人、重傷が二十八人、合計二十九人です。こういうぐあいに、わずか二十一県の報告において、一年間の死亡と重傷がこれだけ出ている。国営検査基準なるものがあるにもかかわらず、危険な機械はその中からはずしておる。これは重大な問題であります。  機械の耐久試験についても、外国では耐久性について最低五十時間、機種によっては三百時間から五百時間も行なっているのでありますが、この耐久試験に対する基準の制定等も私は明確にすべきであると思う。こういうところが、私は現在この国営検査基準が不明確なように思える。これを徹底的にやらなければならぬ。こういう問題はあまり重要視されておらない。重要視されておらないけれども、三ちゃん農業の中でこうした機械を扱うものは年とった老人なり、また婦人が多い。機械の操作もわからない。そうしてたくさんの人が死んだり負傷していくのですよ。六年間戦争に行って、からだは健康で帰ってきたにもかかわらず、機械の扱い方がいま言うたとおりおろそかにされていて、やっている間にばっばっと手が折れてしまった。農作業で手が折れてしもうた。泣いている。また、三ちゃん農業の婦人は耕うん機に乗って、若い労働者がみな離村したあとで残ってやっているときに、妊娠しておるのに三カ月ぐらいでみな流れてしもうた。これは泣くにも泣けない。そうして負傷した者はだれが補償するか。労災保険もその補償はされない。農民自分から金を出してその労災保険に入るのですが、その負担が大き過ぎる。こういうことも考えてみますときに、私が先ほど来から申しているように、この国営検査においてもっともっと政府は親切にやるべきじゃなかろうかと思うのです。  こういう点をずっと調べてまいりまして、この労災保険は、農作業者にとって掛け金も一般労働者に比べて高い、自走式の機械に限られている等々不満が多い。じっとしている機械はかからぬ。自走式の機械に限られているのだ、この保険が。  また、農村災害の場合は一般労働と違い、農薬中毒から死んでいく人もある。また、運転中に転落して重傷を負っていく者もある。こうした特殊事情を考えるに、私は農業者独自の労災制度や共済制度をつくることを提案するのですが、大臣はこの決意はございましょうか、どうでしょう。
  200. 池田俊也

    池田政府委員 機械化研究所におきます検査の対象基準というような点は、確かに現在かなり限定をされております。私どももこれは方向として当然拡大をすべきであるということで、現在いろいろ検討しているわけでございますが、なぜそういうふうに従来かなり対象が限定されていたか。機械の検査というのは、専門家にいわせますとなかなかむずかしいのだそうでございまして、いろいろな基準がはっきりしないとなかなか検査ができない、こういう事情があるようでございます。しかし、いずれの事情があるにせよ、やはりそういうものはがっちりやる方向に行くべきなんで、私どもはそういうふうに拡充をいたしたいと考えているわけでございます。  それから、最近事故が非常にふえまして、特にこれは先般も農村医学会等で取り上げられたようでございますが、婦人が機械を使いまして流産等が非常に多いということがいわれておるわけでございます。これは最近の農業事情で、婦人に相当農業労働のウエートがかかってきているというような事情が基礎にはあると思うのでございますが、やはりかなり無理な機械の使い方をしている、そういうやむを得ざる事情もあると思いますけれども、必ずしも知識が十分でないために、そういうような事故を起こしているという事例もあると存じます。そういうようなことで、私どもは、先ほど先生の御指摘の安全基準というようなものを早くつくりまして、そういうものにする対策にも資したい、こういう気持ちでございます。  なお労災保険の問題、これは非常にむずかしい問題でございます。御指摘のように、現在かなり対象が限定をされているという事情がございます。これは、あまり対象を広げますと、その把握がまたむずかしいというようないろいろな技術的な問題もあるようでございますけれども、私どもは、やはり必要な範囲においては範囲を拡大していくべきである、こういう基礎的な考え方を持っているわけでございまして、今後ともそういう線で努力をいたしたいという考えでございます。  ただ、別個の組織をつくるのがいいのかどうかということになりますと、保険というものは、まあはなはだイロハを申し上げて恐縮でございますけれども、対象範囲が広いほど運営がうまくいく、あるいは保険料も比較的割り安にいくというようなこともございますので、別にするのがいいのかどうか、これは相当検討を要するのではなかろうか、事務的にはそういうような感じを持っているわけでございます。   〔三ツ林委員長代理退席、委員長着席〕
  201. 長谷川四郎

    長谷川国務大臣 大体いまの局長答弁で尽きると思うのですけれども、農業従事者のいろいろなそういう点については、大体、機械の故障によってその事故が起こったというのは案外少ないようでございまして、訓練不足とかあるいは不注意とかいうような点がだいぶあるようでございます。さらに機械の耐久力について云々というお話がございましたが、これらはずいぶん意を用いまして、そういう点については十分注意は、会社そのものには与えておるようでございます、私が伺いましたときにも。そうではなくて、やはり国営でその耐久力についての検査をもっとやれという点については、そういう点も考えてみる必要がある、こう考えます。  労災の点については、いま局長が申し上げましたように、労災の中の範囲を広げていくという点のほうがかえっていいのではないかと私も考えておるのでございますが、いずれにしても十分その点については、今後検討を加えてみたいと考えております。
  202. 樋上新一

    樋上委員 いろいろ大臣の御決意も聞きましたのですが、最後に私はもう三一日。安全な農業機械をつくる人間工学的な研究のための予算をもっとほしい。それから、いま機械を使うのは男より女のほうが多い。これに使いやすい機械をつくらす。また、全購連がもっと安全なものを提供してほしい。機械の不備のために起きる災害についてはメーカー自身に補償さすべきである、こういう点も考えるのです。  何にいたしましても、忘れられておるところのこうした農村の災害を防ぐ上において、あたたかい政府——それは不注意によるのだというぐあいに一言で片づけてしまえばそれでしまいなんですけれども、三ちゃん農業といわれている人手を失った中で、女の人が使って増産に励んでおる姿を見たときに、これはおろそかにすべき問題ではない、こういうぐあいに私は要望いたしまして、私の質問を終わりたいと思います。
  203. 丹羽兵助

    丹羽委員長 次回は明二十七日開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後四時三十七分散会