○大出
委員 これは私と伊能さんとは所属する政党が違うので出発点が違いますけれども、私も何とか上げなくて済めば上げないほうがいいということで値上げ反対の論理を展開してきたのです。ところが、こまかく調べれば調べるほど、これは何とか財源を考えなければならぬというところにきたというのが私の到達点なのです。ハイヤー、タクシーが東京で運んでおる人の数、さっきちょっとお話が出ましたが、統計を見ると三百万人ですね。三百万人といいますとこれは国電の通勤通学を除いた輸送人員とほぼ同じですね。そこへもってきて、都電なんかに比べると、まるきり比較にならぬほどハイヤー、タクシーのほうが多いですね、輸送量は。ここまでくるとこれはもうなみなみならぬことですね。公共性も非常に強くなっているのです。そういう意味で、確かに公共料金という意味での影響のあることは私もわかっている。わかっているんだが、しかし一方、いままで申し上げたように、解決しなければならぬ運転者の状況というところをとらえると、いまのままでさて経営者にこれ以上出せと言ってみても——過去において累進歩合その他で水揚げの中から得た利益をいろいろなほうに使っている事実はある。あるが、現実にいまそれじゃどのくらい人件費コストが高くなっているかという点、七割近いものを調べてみると、これはとても現状解決にはならぬということになる。そこのところで私は先ほどからものを申し上げているのですけれども、経済企画庁というのは妙なところで、藤山さんが企画庁
長官のときに、私はこの種の問題でここで長い論争をしたことがあるのですけれども、どうも寄せ集め世帯でどうにもならぬということを最後に藤山さん言っておられた。各省から引っぱってくるものだから、自分の省に
関係のあるものは一生懸命やるけれども、当時は物価について中西さんがこほしていた。こういういいかげんなインチキな庁はないという。どうもたいへんな論議になってしまったことが実はある。とんでもないところに一生懸命力を入れて、肝心なところはみんな抜けちゃっているんですね、経済企画庁というのは。そんなに物価物価とおっしゃるなら、いままで経済企画庁はもうちょっと物価を押えてきたらいい。反対だなんといってみたって、国民に反対だと言っていれば経済企画庁の役目は果たせるということでやっていて、適当なところになるとぽんとおりてしまう。初めからしまいまで一貫して押し通したことなんか一ぺんもない。何でも最初は反対だと言ってみなきゃならぬ役所だろうということなんですね。権限なんか全くない。これは総理大臣が表に出てきてやるよりしようがないことですから、企画庁
長官に権限ないのですから。だから菅野さんの言っているごとき、何を言っているのかさっぱりわけがわからぬ。何でもかんでも公共料金だから困りますと言っておけばいいという調子の話で、理屈も何もない。私はこの間だっていろいろやりとりしたけれども、しまいには例の名古屋と豊橋間の国鉄運賃と私鉄運賃の違いを申し上げた。それは確かにそうです。片方は、名鉄は二百六十円、片方は今度上がって三百十円、急行料金が二百円ついているから五百十円、名鉄は二百六十円で十五分おきに急行が走っているのですから、こんなばかにしておいて、私鉄運賃を上げると言われれば上げざるを得ないじゃないかと私はこの間話をしたのですけれども、さっぱり話が通らぬ。経済企画庁というのは確かに政府のシステムの中では物価にからむ問題は
関係閣僚が集まって相談をするということになっているので、そうすると経済企画庁は物価は何とか一応やっていかなければならぬということになっているわけだから、とにかく反対らしいことをいつもおっしゃる。国鉄の旅客運賃値上げのときにだって、経済企画庁は反対だとおっしゃった。反対だとおっしゃったならばしまいまで反対で押し通してくれれば、国鉄を押えたんだからしかたがない私鉄もがまんする、通運料金もがまんする、ハイヤー、タクシーも苦しいけれどもがまんする、こうなるのだけれども、まん中の一番大きいやつを——経済企画庁
長官もこの間ここで、言いにくい、答弁しにくい、まことに答弁にならぬ答弁をしました。もはや国鉄はもたないから私は認めたんだと言う。ところが途中になって詰まってしまって、私も当時は大出さんと同じように考えたんだと言う。考えてなぜそう変わったのだと言ったら、いたし方なかったんだと言う。それじゃ答弁としてはまことにいたし方ない答弁なんで、困る。いまの答弁聞いていてもさっぱりわけがわからぬ答弁なので、もう少し筋道を通した話をしてほしいんですよ。港湾、通運料金は早く上げてしまっている、国鉄運賃は上げてしまっている、労働省の側からすれば、港湾という職場だって人は入ってこない、新規労働者はさっぱり来ない、だからもっと魅力ある労働環境に変えなければならぬ、そうして港湾労働に関する賃金というものも、船内にしても沿岸にしてもはしけ回漕にしても上げなければならぬ、そうしなければ新規労働者は入ってこない、そんな金はどこから出てくるかといったら料金しかない、人件費コストを調べてみると非常に上がっている、だから料金値上げしがなかろうというのが、労働省の昨年八月の「港湾労働の現状と問題点」です。その意味ではこれはハイヤー、タクシーだって同じことなんですよ。だから押えるというのなら、これは国鉄なんというのは一番押えやすいのです。そうでしょう、年間政府その他から二兆円から借りているのだから、借金の支払い利子が九百七十一億、一五%上げて、増収で九百十億なんだから、そうなると政府が取らなければならぬ国鉄の利息を長期返済なりあるいはたな上げなりすればやっていけるのだということを中山伊知郎さんだって指摘している。そういうところを上げておいて片方押え切れるというふうに考えるのなら、やはりそれなりの物価との
関係その他を明らかにして、国鉄がどのくらいそれじゃ一般物価に響くのか、ハイヤー、タクシーというものを上げたらどれだけ一般物価に響くのか、そこらを全部明らかにして、それなりの事情を、納得し得る解説を与えて、かくて、押えるなら押えるのだと明確にしてもらいたいのです。基準法違反のほうについても、現状、経営状態はどうなって、労働環境条件、賃金はどうなっていて、だからこれはこうするのだという方針を出してもらいたいですね。そこらが総合的に行なわれていないで、財源はそこしかないのがお互いに明らかになっておってということになると、やはり問題解決をしない、こういうことなんです。
さっきの点少しつけ加えて申し上げて結論に持っていきますけれども、先ほど私が申し上げている中で志村タクシーの——これはあとで警視庁の
関係にも承りたいのですが、
新聞を見ると、道路運送法違反、乗車拒否というので摘発という記事があります。ここに東京の志村交通の一欠勤の控除額、一日休むと、十三乗務で一乗務休むとどのくらい引かれるかということが書いてある。いま志村交通は本給二万円です。これは日割り計算で、無
事故手当が三千円、一欠五百円引きということになっている。精勤手当が三千円、一欠千円引き、生産手当が千五百円、これは十三万円以上に支給、深夜手当が五千円、これも日割り計算、歩合給が十万円以下はゼロ、十万円以上が積算歩合で五〇%、家族手当、妻六百円、二子まで四百円、こういう給与ですね。ここで一ぺん欠勤して休みますとどうなりますかというと、一欠勤の控除額、本給で千五百四十円、無
事故手当が五百円、精勤手当が千円、生産手当が千五百円、深夜手当が三百八十円、歩合給が五千円引かれる。計九千九百二十円引かれてしまうわけですね、一日休むと。これは労働省の
課長、こういう賃金体系をつくっておったら、背骨が痛くったって、しりが痛くったって、女房、子供のために出てこなければならぬということになる。こういう形の賃金体系を組ましておくということは、二・九通達を出した趣旨に反するでしょう、一欠で九千九百二十円引かれたんでは。この間、私は志村タクシーに乗りましたときに、若い運転手さんだったが、聞いてみた。あなたは一体どのくらいもらうんだと言ったら、私を全くのしろうとだと思ったんでしょう、いろいろ説明してくれた。実は女房と結婚したときに、女房と一緒になったんだから、切られちゃかなわないというので——一生懸命働くから一緒になろうと言って一緒になった。それで七万円持っていった。そうしたら、おとうさん、七万円も働くのかということになった。あなた七万円働くんですか。それ以来何としても七万円にいくまでがんばらなければいかぬと思ってやっている。どのくらいの距離かと言ったら、四百二十キロは軽いと言うんだな。冗談じゃないですよ。横浜だって、十一年も前を見たって、三百七十。四百二十キロは軽い、それができないときには、公休出勤だ。公休出勤二日やる。そうすると、さっき私が例にあげました志村交通さんが、ちゃんと報告すれば、これは明確に基準法違反でしょう。横浜あるいは私がさっき例にあげたところでは、報告すれば罰金を取られる。報告しないから、基準法違反に問われないということで、ばかな話ですよ、ずいぶんむちゃくちゃな。報告すれば指導のしょうがあるでしょう。報告しないでやみからやみにいっているものはどうにもしようがないでしょう。そうでしょう。聞いてみると、全く涙ぐむような話ですよ。その人の話を聞いていると。若いときですからできるんですけどと本人が言っておる。十七万円どうしてもあげないと七万にならぬと言うのですよ。十七万円あげるとなったら、それはたいへんですよ。四百二十キロこさなければできないでしょう。公休出勤、休みの日に二日くらい出なければできないでしょう。そういう苦労をしておる世の中ですからね。そこで一つ例をあげて申し上げますが、この辺でいまの労働条件のほうの問題は締めくくります、実はまだこまかい点がたくさんあるんですけれどもね。
そこで、現状営業という形での、つまりハイヤー、タクシーの状況と安全運転、これは神奈川の組合なんかでもやってみたこともありますけれども、これを調べてみますと、タコメーターによるデータで見ても、現状営業の場合、実働時間を十八時間五分として、走行キロが三百七十七キロ、最高速度が八十二キロ、乗車回数五十五回。この五十五回というのは常識ですから、五十五回。それから、営業収入が一万三千三百二十円、こういうことなんですね。タコメーターのデータによると、こう出ておる。これを安全運転という形にいたしますと、実働時間で走行キロが二百六十三キロ。これはそうです。どんなに走っても三百キロが限度です、二百六十三キロ、最高速度が七十四キロ、乗車回数が二十九回、営業収入が九千七百二十円、いまの現状営業とそれから安全運転の賃金を調べますと、現状営業でいって七万四千四百四十九円、安全運転の場合ですと五万三千七百七十八円、こういう数字が出ております。その差は二万六百七十一円、こうなると、安全運転をやれといったってやれっこないですよ。現実に食えないですからね。だから、やはりこのあたりは、労働省の
課長、申し上げておきますが、よく各組合がいろいろなものを出しておりますけれども、モテル賃金といわれるようなもの——ここに神奈川県のハイヤー、タクシーの皆さんが賃金討論をずっとやって、最後に要求額というものをを出して、これをみんなで大衆討議をしておりますけれども、ずいぶんささやかな要求なんです。それから、ある人が一番いま何が、ハイヤー、タクシーで
事故その他を含めて重要かというと、累進歩合は全部やめてしまえ、積算歩合も全部やめてしまえ、一律歩合にしてしまえという人がいますが、私もこれは賛成ですね。いささか極端ですから、その手前でものを言った場合に、大体二十六日ということに計算をして、十三出番、そうして労働基準法三十二条の規定による、さっきの話の十六時間を必ず守る。そうして平均速度は二十キロなら二十キロ、最高速度は七十五キロなら七十五キロ、こういう押え方をして、走行キロは三百キロ以内というふうに押えて計算をして二百九十六キロ、乗車回数四十九回、こういう計算をしていきまして、そうして給料が七万円台になる。そのくらいのことを考えれば現状はおさまるかもしれません。三百キロぐらいを限度にして、そうして営収だって、業者の皆さんのために考えなければいかぬから、営収が一万八百十円、このくらいのところを押えて、何とかしなければならぬという案を出しておる人がある。私は、これはある程度わかる。やはりそういう営業をやっておる経営者側の営収はどのくらいになるか、そうして運転者のほうにはどのくらいいくか、そうして三百キロで押えて——いま十年、十一年前の基準で三百七十キロ、六十キロ台やったって、これは走れやしないですから、それ以上やろうと思えば、さっき言った志村タクシーさんの若い人の例のように、死ぬ苦しみです。だから、そういうところを一ぺん一つの基準として出して、そうしてタクシー料金というものを、営収というものと、労働者の賃金というものと、労働環境というものと、基準法とのにらみ合いというものとをあわせて考えてみて、どうすべきだという見解をやはり運輸省と労働省は相談して出すぐらいなことを……。(「経済企画庁」と呼ぶ者あり)経済企画庁というのはどうも少し場違いみたいなことをやっておるけれども、ほんとうに企画を立ててもらわなければ困る。そういうふうにして、やはり抜本的に、いま乗車拒否だ、乗車拒否だと言われてたたかれつぱなしの運転手、刑法改正までやったのだから、そういうところまで突っ込んでみていただきたい、こう思うのですよ。
そこでここにハンドルを持つ人たちの、三百十二名のタクシーの運転手さん、それから二十九名のハイヤーの運転手さん、教習所の教官十五名、これらの方々、合計三百五十六名です。この方々の一人々々を当たって、病気、健康状態その他を調べた書類がここにある。これによりますと、場所は職場別に見ると、横浜が十六、川崎が一、横須賀が一、湘南が一、相模原が三、小田原が一、こういうところで、平均年齢が三十三歳、勤続年数が平均四年、ここで職場の健康管理その他を全部調べた。そうしたところが、健康診断について定期的に行なわれていると答えた人が、このうちの二百八十九名、八一%、定期的に行なわれていないと答えた人が四十七名、一三%。健康診断の回数が、年に一回というのが百三十二名、三七%、一年間に二回というのが百六十七名、四六・九%、二年に一回が十五名、四・二%、一年に四回というのが五名、一・四%。そこでずっと病気その他を当たっていきますと、非常に多いのですね。腰椎症、つまり腰痛ですね、これが百六人おるのですよ、二九・八%あるのですね。御本人たちに、タクシー営業運転をやっておるのでそうなったのかという質問をして、ほとんどはそういう答えをしておる。痔が九十二名、二五・八%、それから胃下垂が八十四名、二三・六%、それから神経痛が七十名、一九・七%、高血圧が三十六名、そのほか、じん臓病だとか糖尿病だとかリューマチだとかいろいろあるのですが、これは非常に少ない。腰痛と痔。胃下垂、神経痛、ここまでが圧倒的に多いのですね。私のところは、うしろが横浜の火葬場なんですが、妙なことを言うようで恐縮ですけれども、私、前に
調査に行ったときに、火葬場の方々が仏さまを扱っていて、職業がわかる。長年運転をやっている方というのは、みんな骨が原形をとどめずくずれてしまう、そういう話まで実際にしております。長年やっている方というのはたいへんな労働なんですね。どこかが必ず悪い。これは職業病云々ということで腰椎症なんということは非常に大きな問題になっております。また、追突その他に基づくむち打ちもたくさんあります。そういう問題だって組合が自主的に集まっていろいろなことを考えてやっているのであって、国という立場に立って一体どこまでこういう職業の人たちに対して骨を折っておるかというと、これまたほんとうにさびしい話ですね。私はやはりそこらのところを、厚生省との
関係もありましょうが、労働省あたりがもう少し前に出てくれないと、気の毒過ぎて私どもは見ておられませんよ。そして、仮眠所その他を見たって、消毒もしないようなふとんが積んであるということになっているでしょう。経営者の方にも責任があります。何でそういうところに還元をしてあげぬのかという気になる。しかも、なおその上に経営によって性格が違うのですね。私鉄資本なんというのは私鉄の駅々でおりる乗客を運ぶのです。タクシーなんというのは最大のガソリン消費なんです。ところが、そこの中には韓国資本もあればその他の資本もある。資本の性格によっても違う。違うけれども、少なくとも結論的にいって、同じことを同じようにやっているのですから、同じことを同じようにやっているのに、最低の会社と最高の会社とでこんなに差がついてしまうなんということをなぜほうっておくかという問題、そこまで労働省としても運輸省としても考えてくれないと困ると私は思うのです。これらは同じことをやっているのでしょう。にもかかわらず、歩合その他の違いによってたいへんな開きになっているという現実、ここらのところを皆さん一緒に考えなければいかぬですよということを私は冒頭に申し上げたと思うのです。これは何党がどうじゃなくて、やはりみんなで考えなければならぬ時期に来ていると私は思うのですけれども、そういう意味で何か皆さんに少し御意見がないですか。