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-
-
-
-
○
鈴切委員 長官、いま
人事局長からそのように
人事管理の問題でお話がありましたので、これ以上追求するつもりはありません。しかし、一言だけ
所信を伺っておきたいと思いますが、
防衛庁より提出していただきました
資料は、四十二年度において
原因別隊員死亡者数が三度まで食い違いがあり、さらに三回目の数も訂正しなければならないということは、これは
人事管理の問題であり
人命の問題であるがゆえに、私はほんとうにほっておくべき問題でない、そのように思うのです。そこで、少なくともあなたの最も愛し、たよりにされているところの
自衛官が
死亡されました。それはたとえ
公務上であろうとも
公務外であろうとも、その
遺家族の悲しみというものは全く私は同じではないかと思います。このような
人命軽視の風潮というものは、結局は
自衛隊募集をしてもなかなか集まらないという結果を招くようになってしまうのではないかと思うのであります。
一昨年十二月十五日に、五十七国会において
麻生人事局長の私に対する答弁で、
遺家族の問題につきましては各
幕僚幹部が主体となってやってきた、したがって内局のほうにおいてはその
実情の把握というものは必ずしも十分でなかった、遺族の
実情を掌握して今後の
施策の
資料にすると答弁していたにもかかわらず、いまだに
改善されていなかったということに対して、
長官、
人事管理についてどのように今後対処されていくか、その
所信を伺っておきたい。
〔
委員長退席、
伊能委員長代理着席〕
-
○
有田国務大臣 きわめて大事なことであります。
人命尊重、言うまでもない。ことに二十五万の
自衛隊員を統率する意味におきましても、
人事管理の
重要性というものはよくわかります。ただいま
人事局長から
数字の間違いがあったということは御
指摘のとおりまことに遺憾だと思います。今後一そう
事務当局を鞭撻いたしまして事故の誤りなきを期して、
人事管理の万全を期していきたい、かように考えております。
-
○
鈴切委員 そこで具体的にちょっとお聞きしたいわけでありますが、
昭和四十一年度の
一般国家公務員の
自殺率は十万人に対して一・〇三であります。
自衛隊員は十万人に対して一・三、このように
一般公務員よりも
自殺率が非常に多くなっておるわけでありますが、このように
自殺率が普通の
一般公務員よりも高率になっているということは、これはどういうことが
原因なのであろうか。みずから生命を絶たなければならないという
理由はどこにその
原因があるかということについて、
人事局長ひとつ伺いたいと思います。
-
-
-
○
鈴切委員 自衛隊の受験の資格は入隊する月の一日現在十八歳以上二十五歳未満の
男子となっております。しかも
試験は、
筆記試験、
口述試験等は
中卒程度であるけれども、
身体検査についてはかなり基準がきびしくなっているわけであります。その
身体検査に重点を置いているにもかかわらず
自殺率が多いということは、私はただ単に男性と女性というそういう問題ではなくして、やはりそこには何か拘束された問題、あるいは
訓練の非常に
過度の問題、あるいは
自衛隊に入ったけれども希望を失ってしまったというような、そういう問題が、案外と話し合いの中において解決できるような
問題等についても、そういう拘束されている中において解決できない点があるのではないか、このように私は非常に心配をするものであります。ゆえに、なおいまこういうことで
一般公務員よりも多いという点について、
自衛隊としては今後その点を十分に配慮をされていくべきではないか、このように私は思います。
次に、若い人が
病死で
死亡しておられるわけでありますけれども、
死因別にこれを明らかにしていただきたいと思います。
-
○
浜田政府委員 自衛隊員の
病死によります
死因がどのような
状態になっておるかというふうな御質問だと思いますが、現在
自衛隊員の
病死の率は
隊員十万当たりで四九・二ということになっております。この中で最も高いのが
悪性新
生物、いわゆる
ガン等による
疾患でございまして、これが第一位でございます。それから
心臓の
疾患によりますものが第二位。第三位が
中枢神経系の
血管損傷、
通常脳卒中といわれている
疾病でございます。この
自衛隊員の
病死の率の四九・二が高いか低いかという問題でございますが、この問題につきましては、御承知のとおり
一般隊員を募集します
段階におきまして
身体検査を実施しておりますために、
一般の
国民に比べますと、これも
年齢による
死亡率の差が非常にございますので比較する
年齢層によってだいぶ違ってまいりますが、比較的近いと思われます三十ないし三十五歳、これに比較しますと、一〇七・四で約二分の一以下、それから二十五歳から二十九歳という
死亡率でございますと七〇・七で、やはりその七割
程度というふうな
数字になるわけでございます。
そこで、この
死因の中で
自衛隊員の
病死の中におきます何か特徴があるかというふうなことになりますと、残念なことには
自衛隊員の
病死という
段階だけでとらえますと、
自衛隊なるがゆえに特別に多いというふうな
疾病は、私
たちのほうでは見当たらないのじゃないか。内科的な
疾患については、
自衛隊員であろうと
一般国民であろうと
死因にそれほど差はない。特に多い
悪性新
生物の場合には、
原因そのものがはっきりしておりませんので、この
ガンの予防をどうするかということは、
早期発見、
早期診断ということしかございませんから、したがって、この間の差を見つけるということは相当困難であるということであります。それから
心臓性の
疾患も、
一般の場合は一二・九、
自衛隊の場合は七・七ということで、私はそれほど
病死の率が高いというふうには考えておりません。
以上でございます。
-
○
鈴切委員 そこで、私は、問題になるのは、
死因別にあなたのほうの
資料で見ていきますと、
全国平均よりかなり
自衛隊員の
死亡率は少なくなっておりますね。それにもかかわらず、
ガンだけが
平均より上回っておるということであります。これは私は非常に大きな問題ではないかと思います。それでは、なぜ
ガンがこのように
平均より上回るかという
原因、またほかのものは
死亡率が減っておるわけですが、それは当然あなたのおっしゃるように、
自衛隊の
健康管理に関する
訓令保健第九条に基づいて、
検診項目を第十条できめられておるわけであります。それには
一般検診、
胸部結核性疾患、性病、寄生虫、
トラコーマ検診、
歯牙検診と、特に
胸部結核性疾患に対する
検診は非常に厳格にされております。しかし私は、急増する
ガン対策に対しては何ら手を打つすべもないという現在の
状態を考えたときに、こういうふうに野放しにされておるところに
ガンの非常に急増しておるという点が見受けられるのではないか。しかも、
自衛隊は非常に
過度の
訓練をするわけであります。
過度の
訓練をすれば、当然それに対して
動物性たん白質というものをとるかっこうになるわけでありますが、
野菜が少ないということは、これば発
ガンを助長する
一つの大きな
原因等にもなるわけであります。そういう点を考えたときに、日本の人口における
ガンの
平均よりか多いという問題は、今後やはり
自衛隊としては何らかの
対策を講じていかなければならない問題ではないかというふうに感ずるのですが、その点について。
-
○
浜田政府委員 ガンの
原因につきましては、いろいろ学問上にも説がございますし、それからはっきりこれが
ガンの
原因であるというふうにつかまえることば現在の医学では必ずしも十分でないというふうに考えております。
自衛隊におきます
ガン対策につきましては、幸い今度四十四年度に
北海道地区に
ガンの
検診車を一台購入いたしましたので、できるだけ
早期に
ガンの
早期発見をするというようなことで
対策を講じておりますし、今後
方面ごとにできるだけ
ガンの
検診車を充実させることによってできるだけ
ガンの
早期発見に努力したいというふうに考えております。なお、
自衛隊の
ガンがなぜ多いかという
一つの示唆にはなろうかと思いますが、ただいま
栄養上
野菜が非常に少ないのではないかというふうな御
指摘もございましたけれども、
筋肉労働、
肉体労働というような点で判断をしてまいりますと、
自衛隊というのは非常に
訓練をよくやります隊でございますので、どうしても
肉体労働が多い。したがいまして、それに対しますカロリーを相当補給しなければならないというふうなところから、若干胃のほうに負担がかかってくる。したがって、
肉体労働者のほうに幾ぶんいわゆる
消化器系の
ガン疾患が多いのではないかというふうな予想はたつわけでございます。しかしながら、数
そのものが非常に少のうございますので、現在そのために
自衛隊に
ガンが多いというような
資料の持ち合わせはございませんが、今後その点につきましては、御
指摘もございましたので、
十分検討を続けてまいりたいというふうに考えております。
-
○
鈴切委員 確かに
自衛隊の
衛生管理の問題について、非常に厳格にされておるがゆえに、
結核なんかは非常に少なくなっておるわけですね。十万人に対して
自衛隊員はわずか一・五。ところが
普通全国の
昭和四十一年度
男子三十歳から三十四歳におけるところの
死亡の中において、
結核は一一・九、こういうふうに高率を占めておるわけです。
結核とかそういうふうに
保健に関連した事項がきめられておる問題については非常に
自衛隊員の
死亡率が少なくなっておる。ところが、やはり
ガンが大きな盲点になっている。あなたがいま言われるように、
北海道のほうに
検診車を設けているというのは賢明な方法ではないかと私は思うのですが、さらにそういう点から、私は、もう一度そういう点を検討されたほうがいいように思うわけであります。
ところで、二十九条の
栄養管理の問題でありますが、これははたして十分であるか。これは、医師または
栄養士である
幹部職員をもって
栄養または調理上の
技術指導を行なわしめ、
栄養改善法第十条の規定により
栄養指導員の
指導を受けさせなくてはならない。このようにされているわけですが、
栄養指導員の状況並びに
医官の
充足率、この点はどうですか。
-
○
浜田政府委員 自衛隊の
医官の
充足につきましては、
定員八百十三名に対しまして
現員が三百二名、
充足率が三七・一%ということで四〇%を割っております。
歯科医官の場合には百九十一名の
定員に対しまして
現員が六十名、三一・四%、これが四十四年三月三十一日現在の
数字でございまして、私
たちとしても、何とか
医官充足については今後とも大いに推進していかなくてはならないというように考えております。
栄養の問題につきましては
装備局の
所管でございますので……。
-
○
鈴切委員 四十二年度の
医官の
充足率は、前にいろいろ答弁されておりますけれども、
定員に対し大体四〇%、病院のほうの率が八〇%、部隊における
医官の率は二〇%、そうしていまお話ありましたように三七・一%、こういう
状態になっております。
医官の
充足率が非常に悪い
状態であるということは、はたして十分な
健康管理ができるか、そのように私は思うわけであります。しかも、第十六条の臨時
健康診断、第一項、第二項の、緊急を要するときに臨時の
健康診断をしなければならないという項目があるわけでありますけれども、そういうことから考えると、非常に
医官が不足をしている現状において十分な
健康管理ができない、このように私は思うのですが、なぜそれでは
医官が
充足されないか、その
理由についてお伺いいたします。
-
○
浜田政府委員 医官充足の問題点について御説明いたしたいと思います。
現在
医官充足対策で私
たちがとっております措置は、第一点が貸費学生制度ということで、大学に入学をしております
段階におきまして月額六千円の貸費をいたしまして、
自衛隊を志願していただく医科幹部候補生を募集しております。ただ、この額につきまして今後相当
対策を進めていく必要があるんじゃないかというふうに思っております。
それから第二点は、現在の
医官充足の問題点は、大学との連携において国立病院そのほかすべての医師の
充足が行なわれておりますので、特定大学の医局との連関を伴って医師の
充足をとらざるを得ないのが現状でございます。特にこの問題は学位の取得というふうな問題もあるので、私
たちのほうには――この大学のいろいろな問題とも関連をいたしまして、
医官充足についてのなかなか成果のあがらない問題点になっているようです。大学等の研修の問題あるいは研究についての通修の
問題等については、できるだけ便宜をはかっているのが現状でございます。それからなお、重点を学位を取得しました後の医師に置いて、できるだけ来ていただくように進めておりまして、その関連におきまして航空医学実験隊でありますとか、横須賀地区病院の潜水医学実験部というふうな、かなり研究環境の整備した施設を設けることによって、研究に意欲を持った医師を集めるというふうなことで努力をいたしております。
それから次に、部隊
医官につきましては御
指摘のように非常に
充足率が低くなっておりますが、その
理由としましては、なかなか専門の診療技術を得にくいということ、あるいは研究に対して必ずしもいい
職場環境ではないというふうなことからかなり低い率になっておるわけでありますけれども、できるだけそういう部隊勤務の医師に対しましては、大学等への通修の期間に対して便宜をはかる、あるいは研究所への派遣というふうなことを考えまして、できるだけ研究になじむように努力をいたしております。
それから次に、大学等のいろいろな通修の期間につきましては、できるだけ所属長を通しましてそういうことの便宜をはかられるように努力をいたしております。
次に、病院につきましては、病院の近代化政策等をはかりましてできるだけ
医官が得やすいような
職場に努力をしているのが現状でございます。
以上、問題点につきましてはいろいろとございますけれども、今後、医師というものがだんだん特殊専門診療技術に走っているそれに比べて、
自衛隊の部隊
医官は
一般の診療技術ということでございますので、その間についてのギャップを埋めるように努力をしていかなければならないだろうというふうに考えております。
なお、部隊
医官が非常に得にくい点につきましては、開業医あるいはもよりの勤務医師等に委嘱を申し上げまして、医師の委託制度と申しますか、委託医療機関等を設けまして、できるだけ部隊にそういったような人
たちにパートタイムで来てもらいまして、
隊員の診療等につきましては確保できるように努力しているのが現状でございます。
-
○
鈴切委員 いろいろお話しになりましたけれども、いずれにしても
医官の
充足率は毎年毎年四〇%、並びにいまお話しがありましたように三七・一%という、まことにお粗末な
状態であります。これを考えたときに、私は
健康管理をする上においても大きな問題点ではないかと思うのです。
医官がいなかったために、当然助かるべき病気が助からずして死んでしまったというようなことになれば、これは国の責任ではないか、私はこのように思うわけであります。私の知っている者の中に、
自衛隊法によって災害出動をされた方の中に、からだの調子が悪かった、そのときに医者にめんどうを見てもらおうと思っていたところが医者がいなかったために、無理をして出ていってついに死んでしまったという、そういう例を私は知っているわけであります。そういう点から考えたときに私は、この
医官の
充足については、いま
衛生局長がお話しになりましたそういうふうなただ理論的な問題でなくして、もっともっと深く掘り下げていかなくてはならぬ問題じゃないか、このように思うのですが、
長官ひとつその点について。
-
○
有田国務大臣 医官の非常に不足しておることはまことに遺憾に存じます。そこで、いま
衛生局長が申しましたようにいろいろな
対策を講じております。しかし私は、やはり抜本的な
対策を講じないと、いまのやり方は、いいことはいいけれども
一つのびほう策にすぎないのじゃないか。そこでいま私の考えている構想は、いまの防衛大学というものがありますが、あそこに医科課程を設けて、そうしてみずからの大学においてみずからのお医者さんをつくる、こういうことをやればここに適正なる
医官の配置ができるのじゃないか、かような考えをして、ただいま事務次官を長としまして、この
医官の問題だけじゃありません、その他の関係もいろいろありまして、防衛大学
そのものの再検討を命じておる、こういう
段階でございます。
-
○
鈴切委員 私は
公務上の死を案外
公務外の
病死にして片づけてしまっている場合が多いのではないかという感じがするのです。これは死人に日なしということでありますけれども、ちなみに、
公務死亡の中には全然
病死がいないわけであります。皆さん方の提出された
資料の中には、
公務死亡の中には全然
病死がいない。しかし、他の官庁の例を調べてみますと、やはり
公務上の
病死というのは認められている。その点どういうふうになっているのか。やはり私は、
一つは
自衛隊という特殊な中におけるところの
死亡というのは案外とそういうことで
病死は
公務上の
死亡というふうにされていないというふうに感ずるわけでありますが、そういう点については、私はやはり
遺家族の立場に立つならば、公平な中立機関を設けるべきではないか、そして中立機関によって納得がいけるような方法を講ずるべきではないか、このように思うのですが、その点について。
-
○
麻生政府委員 われわれのほうも
病死が
公務に起因する、あるいは
公務と相当因果関係があるというものにつきましては、
公務災害として扱っておるわけであります。先般差し上げました
報告の中に、最初の
報告により漸次
公務災害による数がふえておるというのは、われわれとしましても
公務についてできるだけ客観的に適正に判断をしてやってきている
一つのあらわれだ、こう思っておるわけであります。前向きにひとつ
公務の認定というものについては判断をしていきたいと思います。
なお、
公務の認定につきましては、人事院ともよく相談をし、その意見も聞きながらやっておりますので、現在のやり方でまず心配はないのではないか、こういう判断をしております。なお
公務の認定の場合におきましては、
衛生局の
医官の判断も非常に尊重しておりますので、
公務に起因するとか、
公務と相当因果関係があるものにつきましては、医学的な判断に非常にウエートを置いて判断をしておるわけでございます。
-
○
鈴切委員 あまり時間がありませんので、これは過日私への答弁で、
麻生政府委員は「特に若年の殉職者に対する配慮は必ずしも十分だとはいえない点があるが、われわれとして遺族の現状に即したきめのこまかい
対策を今後推進していきたい」このように言われてもおります。またさらに「陸士長の場合二十歳で遺族補償一時金、葬祭料、退官退職手当の合計八十八万八千八十円です。(独身者には)遺族年金は国からの支給はありません」「現在の自動車損害賠償保険法による賠償が三百万円というような時代に照らして検討いたしますと少ないという感じがする。われわれもいろいろな知恵をしぼりまして若くして国の防衛に殉職された方々のためにできるだけ手厚いもてなしをしたいと思っております」こういうふうにあらゆるところで前向きの答弁を得ているわけでありますが、実際にそれではその後どのように具体化されたかということについてお伺いをいたします。
-
○
麻生政府委員 防衛庁におきましての殉職者を検討してみますると、現在九百四十三人ございます。そのうち独身で
公務災害で
死亡した者が約六百人おるわけでございます。したがいまして、
公務災害にかかった者の過半数以上のものが若年で
公務災害にかかっておる。これは各省庁と比較いたしまして、
防衛庁に独特な現象ではないかというふうに判断しておるわけでございます。したがいまして、この若年の殉職者に対する処遇につきましては、
防衛庁としましては各省よりも前向きにひとつ処置をしていかなければならぬという決意においては前と変わりがないわけでございます。われわれといたしましては、
防衛庁職員給与法では出動等の場合の
公務災害補償につきましては別に法律で定めると規定されておりますが、平時におけるところの
公務災害補償につきましては、
一般職の
国家公務員災害補償法を準用しております。したがいまして、やはりもとである
一般職の
国家公務員災害補償法を担当しております人事院のほうにわれわれのほうから要望いたしまして、できるだけこの若年殉職者に対しまするところの処遇の
改善をはかりたい。できれば最低の保障というようなものを、あるいはその殉職者の父親がたとえば
年齢五十五以上になったというような場合において何らかの救済というものができないかというようなことについて要望いたしたい、こう考えているわけでございます。
-
○
鈴切委員 最後に、これは
昭和四十一年八月二十七日に第十二偵察隊北川俊彦三曹が群馬県で殉職をされた事故がありますが、これに対してお父さんのほうから手紙が来ておるわけであります。そのお父さんの手紙の中には北川君のことについて「小学校より中学卒業まで優等で貫き、小学卒業に知事賞、中学卒業のとき教育会長賞を受けました。陸自第一〇五教育隊でも大隊一位になり大隊長より朱書の一位賞を受けております。五人のむすこを持っておりましたが、将来一番期待しておりましただけに残念にたえません。またむすこの霊もあまりにも安い
自衛隊の命に浮かばれずにおることと信じます。」こういうふうに実に悲壮な手紙が来ているわけであります。
そこで
自衛隊法の第五章五十三条から六十四条まで、第九章の百十八条から百二十二条の規定等は
一般公務員、特に警察官にも規定されない規定と罰則があるわけであります。非常にきびしくなっております。しかも、
自衛隊員がなくなられても実際に思うような補償はされていないというのが現実ではないかと思うのです。そこで昨年私の質問に増田
防衛庁長官は「治安関係の職員でありますからILO関係の規定からも除外されており、結社の自由も団体交渉の自由もない、実力部隊であるから百二十二条のような特別のきびしい規律に服しておるわけです。
一般の
国家公務員、公社の職員と違いまして特に見てやらなくてはならない。私どもはものを言わないだけに特に見てやらなくてはならないと考えておる次第です。」このようにはっきりと答弁をされておるわけであります。しかし具体的に何ら進まないというのは、私はそこに遺族を援護する義務規定がないところに大きな問題があるのではないか、このように思うわけでありますが、その点について最後に
防衛庁長官に、やはり遺族を援護する義務規定を設けるべきである、これは今後やはり遺族に対する大きな問題ではないか、このように思うのですが、その点についてお伺いいたします。
-
○
有田国務大臣 自衛隊員の
死亡者の御遺族に対して非常に御理解深い御意見を拝聴して非常に感謝いたします。私どもも公私にわたる
死亡隊員の遺族に対しましては、いわば部隊葬あるいは慰霊祭等のほか、できる限りの援護を行なっておるわけでございますが、御
指摘のように
防衛庁として援護規定を設けてないということは、ほかの官庁と同様でございますが、しかし創設以来国のために熱心にやられたその殉職者の遺族の方々に対する援護の必要性は、ことに責任者である私の立場としては十分にわきまえて御趣旨を尊重して、そして今後前向きにこの問題を検討して援護に対して一そう努力して御趣旨に沿うように進めたい、かように考えております。
-
-
-
○華山委員 このたびの増員につきまして、
長官は有事の際の増員、有事増員ということを言われたようでありますが、有事増員ということはどういう意味なのか、いまここで問題をあげますので、ひとつそれによってお答えを願いたい。
有事増員というのは有事の際に増員するのだ、すなわち有事の際までは現行の人員でいくという意味なのか、有事の際に備えてそれまでに徐々にあるいは急にでもいいかもしれませんが増員していくのだ、こういう意味なのか、よくわかりませんので、ひとつお答え願いたい。
-
○
有田国務大臣 今回の六千人増員――ほかにもありますが、六千人の陸上のほうを申しますと、これはしばしば申しますように、十八万体制というものが第一次防以来あるわけですね。そしてそれはそれぞれ部隊の編成
定員である。われわれのこの部隊の編成というものは、有事に備えて万一のときにその責任を果たせる体制をつくっていきたい、こういうことでございます。もちろん安保条約とかそういうものは前提となっておりますが、そういう体制でいきたい。そこで、いまの欠員の問題があるのですね。ところが欠員は陸士といいますか、兵のほうに多いわけです。ところが兵のほうは、いざというときに比較的短期間で養成ができるわけです。ところが指揮官とかいわゆる部隊長、その他いろんな装備が伴います。そういう装備というものは、いま言ってすぐというわけにいかないですね。そこでわれわれとしては、部隊の編成として装備なりあるいは部隊長なり、それぞれの編成をやっておる。たとえば、百人の
隊員が要るというときに九十人より
隊員がない。それでも部隊の編成ができておれば
訓練は十分できる。あと足らぬのは、いざという、いわゆる有事のときにそれを
充足すれば十分責任が果たせる、こういう意味から有事ということばを使ったわけです。
-
○華山委員 それでは、有事の際までは増員はしない、現行の人数でいくんだというふうに了解してもよさそうであります。
-
○
有田国務大臣 ちょっと、増員しないという意味じゃないのです。先に増員は編成
定員として増員を願う。私の言うのは
充足の問題が――大体九〇%以上の
充足率を考えておりますが、一〇〇%の
充足にならなくても現在の編成部隊としてはそれは必要だ、こういうことを申しておるのですから、増員が要らぬというわけではないのです。
-
○華山委員 お出しになったこの説明によると、最小限度必要だ、こういうことをおっしゃっております。片方では有事の際に必要なものだ、こうおっしゃっておるわけです。有事の際には最小限度、これで間に合うのでございますか。そういう説明でございますか。
-
○
有田国務大臣 いまの
自衛隊は、万一の場合、すなわち有事に備える体制できておるわけでございます。したがいまして、もちろん相手の侵略の様相によっていろいろ変わります。しかし、通常兵器によるいわゆる局地戦はこの
程度で守っていきたい、これが最小限度の
定員でございますと、こういう趣旨でございます。もちろんその前提には安保条約があったりいろいろなこともございますけれども、いま申したような考えから編成
定員のことを申し上げたわけでございます。
-
○華山委員 そういたしますと、いまお出しになりましたが、この次の防衛計画におきましての陸上
自衛隊の増員はないもの、こういうふうに了解してよろしゅうございますね。
-
○
有田国務大臣 いや、増員という問題といまの
充足とは、私は別にしておるのですよ。いま増員を願っておるのは、六千人というのは、何べんも言いますように、部隊の編成
定員をお願いしておる。そこで、欠員があるじゃないか……
-
○華山委員 欠員の問題を聞いておるのじゃありません。
-
○
有田国務大臣 それは
充足なんですね。
充足率が九〇何%と、こうなっておるわけですね。一〇〇%
充足すれば、これは完全になるわけですね。それは有事の際に補えばそれで事足りるのじゃないか、こういう趣旨のことを申しております。
-
○華山委員
長官の説明によれば有事の際もということでございますし、この説明によれば最小限度だ、こう書いてある。そうすれば、有事の際の最小限度と理解するのは、私は当然だと思うのですよ。ですから、この際の増員が有事の際に備えてこれでおしまいなのである。何も日本の財政はよけいな人員を置く必要はないのですから、そういうふうに理解されるからどうかということをお聞きしておる。
-
○
有田国務大臣 防衛ということは華山さんも御承知のとおり、相手に対する防衛でございますから、相手がだんだんと強力なる部隊になってくると、わがほうもやはり相対的に考えなくちゃならぬ。だからこれが私どもの目安として、一応通常兵器による局地戦に対しては臨める、これが最小限度の――それは多いほうかいいことはきまっておりますけれども、これが最小限度の
定員でございます、こういうことでございまして、これでがんじがらめ、何十年も先までこれでいいのかと言われますと、そうはいかない。一応いまの考え方からこの
程度でいける、こういう趣旨でございます。
-
○華山委員 この次の防衛計画もありますし、いまおっしゃったことをよく覚えておきたいと思いますが、しかしただいま
長官、うかつに世界の情勢とか相手の模様とかいうことをおっしゃいますと、それじゃこの増員は、世界の情勢としてどこの国を考えてお立てになったのか、こう私は聞きたくなるわけですね。どうなんですか。
-
○
有田国務大臣 わが国は御承知のとおり、別に敵国というものは考えておりません。しかし、大体極東における情勢ということを踏んまえて、日米安保条約ということをまた前提としながら、しばしば言うように通常兵器による局地戦ならこの
程度で防げるあるいは排除できる、こういう考え方です。
-
○華山委員 これと関連いたしまして、過日どなたかの質問に対しまして、佐藤総理大臣は、徴兵はいたしませんとこうおっしゃったんですね。徴兵はいたしませんということと、徴兵はできませんということとは違うわけです。それでこの問題は古くて新しい問題のように私は思いますけれども、憲法上できないのではないか。いたしませんでなくて、できませんという問題じゃないのか、こういうふうに思うわけであります。
この点につきまして、法制局
長官のおいでを願ったわけでございますけれども、ずいぶん論議をされたあとでございましょうが、あらためてひとつ、この徴兵ということと憲法との関係を御説明を願いたいと思う。
-
○高辻政府委員 ただいまの御質疑の中に、ずいぶん議論があったことではあろうがというお話がございましたが、実は、徴兵はいたしませんというのが、これが歴代政府の責任大臣――これはいまの佐藤総理に限らず、おっしゃっていたと思います。そういうようなこともありまして、とにかく現実当面の問題ではないものでございますから、法制局としてその点について何といいますか、当面の問題としての具体的な研究、そういうことをいたしたこともなく、したがってまたそういう研究の結果として、自信を持ってお話をするという時期ではないように私は思います。
しかし、お尋ねでございますから申し上げますが、むろん憲法上大いに問題がある。その問題がありますのは、私のうろ覚えの学者の見解でございますけれども、
一つは憲法の十八条の何びとも「その意に反する苦役に服させられない。」というのが
一つ。この規定に抵触するから憲法上できないのだという考え方がある。
ところがもう
一つの考え方は、「その意に反する苦役に服させられない。」徴兵というのは、国の防衛、そういうものは苦役というふうな範疇で考えるのはおかしいのではないかというような考え方がございますが、同時に憲法九条の規定、これは御承知のようないろいろ解釈ございますが、戦力の保持の規定、それからいって、徴兵というのは考えられないのではないかという考え方がございます。
実は、その憲法違反のほうの二つの考え方を申し上げましたが、学者の中には、憲法上できないわけではないという御説もないわけではございません。しかし、はっきり申し上げられることは、憲法上、いまの二つの説のどちらであるかは別といたしまして、できないというのが通説である、これだけははっきりしておるということを申し上げられます。
-
○華山委員 学問上はできないということが通説であるということであって、しばしば政府は学問上の学説等は無視されますから、場合によっては、徴兵もいたしませんでなくて、いたしますという
段階にこないとは限らないのですね。憲法にきちんとした根拠はないというふうにいまのところ法制局ではお考えになっている、こういうふうに了解をしてよろしゅうございますか。
-
○高辻政府委員 最初にお断わり申し上げましたように、実は当方として法制局も研究室ではないものですから、何といいますか、何ら現実的な政治あるいは行政と離れたことすべてをやっておるわけではございませんので、最初に申し上げましたように、いろいろな検討を加えてこうだということを申し上げるような勉強をいたしておりません。しかし、いま申し上げましたように、学界の学者の説というのを率直に御
紹介申し上げましたが、その中には苦役に服させられないという説からいって違憲である。あるいはその中には入らない。入らないけれども、戦力不保持からいって相いれないのだという説がある。またごく一部の説ではございますが、ちょうど徴兵は、災害に際して救助の業務に市町村ないし都道府県の住民が当たらされる場合があると同様に、国防というもの、一国の防衛についてはそれと同じように考えられはしないかというような考え方も率直に申し上げてあるものですから、それを申し上げております。
しかし、先ほども申し上げましたように、憲法十八条なりあるいは九条なりの関係からいって、徴兵制度というものは憲法上できないのだという考え方が
一般的であるということだけは事実として申し上げられます。
-
○華山委員 そういたしますと、総理がいたしませんとおっしゃったことは、学説のいかんにかかわらず政策である。政策としていたしませんということをおっしゃったのであって、憲法の拘束があるというふうにはお考えになっておらない。私は非常にこの点は私どもの考えていたこととは違うわけであります。まことに日本
国民の将来に対しまして重大な問題だと私は思わざるを得ません。
〔伊能
委員長代理退席、
委員長着席〕
いまここでさらにお聞かせ願っても同じことでございましょうから、これでやめますけれども、どうも私も不勉強でございましたが、このようなことは政治としても学説としても私はもう定着しておったものだと思うのでございますが、まことに残念でならない次第でございます。
それから、もう
一つ伺っておきたいのでございますが、これは二月の予算分科会で
長官ともいろいろお話し合いをいたしたのでございますが、現在B52のような長距離爆撃機が沖繩にきているわけです。日本の本土にはきておらない、駐留しておらない。しかし、いま沖繩が返還されるということになりますと、B52というものは一体どういうふうなもので、日本に駐留ができるのかできないのかということがまた考えられるわけであります。それにつきまして、日本は敵に脅威を与えるようなことはできないという憲法上の拘束がありますから、これはできませんのでございますね。
長官お答え願いたい。日本自体ができない……。
-
○高辻政府委員 まずB52のごとき兵器を日本の
自衛隊が持てるかどうかというのがさしあたりのお尋ねのようでございますが、これは何べんも実は申し上げておることでございますけれども、日本の戦力を、憲法九条は保持を否認しておる。しかし、詳しく申し上げることもないと思いますけれども、その自衛権あるいは自衛権の行使
そのものについては憲法九条は禁止をしておらないという意味から、それに見合う限度のものであれば、これは憲法も保持を否認しておるものではない。それ以上にわたればむろんいけないというようなことから、私どもはその装備なりあるいは行動なりについて自衛の範囲を逸脱することになるか、ならぬかという一点に実は非常に神経――少なくとも理論的に私どもが言うわけでございますから、理論的な問題としてその点に焦点がくるわけでございます。
ところで、そのB52ということになりますと、これは一国の防衛、自衛といいますか、ほんとうの狭い意味の自衛に必要であるというよりも、やはり何か戦略爆撃とかよくいわれるような、そういうところに使うのが本体的なものでございますようでございますから、そういうものになりますと、私どもはとうてい
自衛隊としてそういう兵器を保持することはできないというふうに考えております。
-
○華山委員 しからば、アメリカは、いまは沖繩はあの
状態でございますからB52を常駐せざることも認められるのでございましょうが、返還された場合にはどういうことになるのかという問題につきまして
長官にお聞きいたしましたところ、
長官は日本の憲法は日本の
自衛隊を拘束するけれどもアメリカを拘束するものではない。これは当然のことだと思う。それで歯どめといたしまして、日米安保条約の事前協議がございますけれども、これによりまして、四十三年の四月二十五日の日本政府外務省の発表では、日本政府は次のような場合に日米安保条約上の事前協議が行なわれるものと了解している。「一 配置における重要な変更」これは略します。「二 装備における重要な変更の場合」といたしまして「核弾頭及び中・長距離ミサイルの持込み並びにそれらの基地の建設」こう書いてあるわけです。長距離爆撃機については何ら触れておらないわけであります。これからいたしますと、アメリカは現在沖繩に常駐さしているところのB52を、合併された場合の沖繩、日本本土をひっくるめてB52の駐留ということは、これはできる、こういうふうに解釈すべきものでありましょうか。この点、法制局
長官の御
所管でありますかどうかわかりませんけれども、お伺いいたします。
-
○高辻政府委員 お答えを申し上げます。
この憲法の日本の戦力あるいは外国の戦力との関係についての解釈は、すでに御
指摘になりましたことでございまして、私どもそう考えていますし、最高裁の判決もそうであったのでございますが、さてそれではB52を大体置けるのかどうかということでございますが、これは御質問にはございませんけれども、一国の中に外国の軍隊が駐留をする、あるいは外国の軍隊が一定の装備を持って駐留をするということは、これは本来からいえば、その駐留国の主権がこれを容認するか容認しないかによってきまることであることは当然でございます。
ところでお尋ねの問題は、おそらくは安保条約というものがあって、そうしてそのもとで外国の、つまりアメリカ合衆国軍隊でありますが、それがある場合のことであろうと思いますけれども、それはいまのあるいは配置あるいは装備というようなことについての協議の対象事項にはなっておりませんので、そういう意味では置けることになります。ただし、B52はなっておりませんといま簡単に申し上げましたが、B52が何か非常に多数あるいは一航空団というのですか、そういうものになれば配置の変更というようなことに関係がございますが、そうでなしに、そういう問題を生ずることなしに、B52があること自身が条約なりあるいは憲法に違反するかということになりますと、それはそういうことはございませんというお答えにならざるを得ないのでございます。
-
○華山委員 現在沖繩にもB52が常駐しておりますし、これが日本に返還されて、安保条約のもとで内地と同様に取り扱われることになるということになりますと、B52は日本の領土に常駐するということになる。これは私は国際的な考え方によりまして非常に大きな問題だと思うのです。敵に脅威を与える。しかし、敵に脅威を与えるものであるから日本では持てないけれども、アメリカでは日本内部に持つのだ、こうなることは私は重大な問題だと思わざるを得ません。その点につきましては、きょうは法制局
長官のお考えをお聞きするにとどめておきたいと思いますが、あらためてまた私なりどなたかからお聞きすることがあると思います。
それからもう
一つお伺いいたしますが、安保条約には日本の施政のもとにある領域、こういうことになっておりますけれども、日本の施政のもとにある領域というのは、日本の領土、領海、領空というものと私はいままで考えておりました。しかし、公海上の日本の商船には多少の拘束はありますけれども、日本の統治権が及ぶわけです。その際に敵の攻撃を受けるというふうな場合にはこれは安保条約ではできない。ただ戦争でも発展してきた場合は別ですけれどもできない。そうすればどうしても日本の自主防衛ということでこれは排撃しなければいけない。こういう
段階になろうと思います。私の考え方を申し上げましたけれども、その点についてどうでございましょうか。
長官からひとつ……。
-
○高辻政府委員 いまお話がございましたとおりだと私も思っております。安保条約の第五条は「各締約国は、日本国の施政の下にある領域における、いずれか一方に対する武力攻撃」というようなことがございまして、この領域というのはまさに御
指摘のように領海、領空、領土が入ると思います。したがって、公海において商船なりあるいは自衛艦が爆撃を受けた、あるいは攻撃を受けたという場合に五条の適用がそのまま発動になるということはあり得ないことだと思っております。
-
○華山委員 そういたしますと、私、気になりましたことは、
長官は、今後海上
自衛隊といいますか、海上
自衛隊の装備といいますか、そういうものに重点が置かれるであろうということを強調された。そうして私疑問に思うこは、そういうふうな商船群、現在十万トン二十万トンという輸送船があるわけです。そういう船団というものは単に海上の艦艇をもって護衛できますか、私はできないと思うのですよ。哨戒もしなければいけないでしょう。そういたしますと、どうしても空中からの防衛、空中からの哨戒ということが必要になってくる。それで、
長官が強調された点を推し進めていきますと、日本は国力が許すならば、国力に応じては航空母艦の建造までいくのじゃないか。そうでなければ、海上の船団等の防衛はとてもできない。戦術上そういうものじゃないというならばそう言っていただきたいし、航空母艦の建造にまでいかなければいけないんだというならばその点を言っていただきたい。
-
○
有田国務大臣 海上交通の安全ですね、ことに日本の商船を守るということは、私はこれが
自衛隊の
一つの任務であると思います。もちろん敵の領海とか領土の中には入れませんけれども、公海を航行する船舶に対しては護衛をするということは私はできると思います。ただ、しかし、日本のいまの海上
自衛隊の能力がどこまで行けるか、これは御承知のいまの
状態ですから、もちろん遠いところまでは行けない。しかし、いま日本の近回りはやはり考えていかなければならぬ、かように思います。
そこで護衛については、もちろん護衛艦も必要だ、またおっしゃるように航空といいますか、対潜航空的な、敵の潜水艦に対するそういう航空機も必要だと思います。しかし、日本の現在において、航空母艦を置いたらどうかというお説でございますが、日本の海上
自衛隊の今日の姿では、いま航空母艦を置いてはたしてそれが適切か、航空母艦を置くとまた航空母艦等を守る護衛艦が必要なんですね。そこでかつて
防衛庁の内部におきましても、その点を検討されまして、今日の
段階では航空母艦までは進まずに、まずいまの護衛艦ですね、ヘリコプターを搭載できる護衛艦いわゆるDDHといいますが、それを二隻建造するということでいま三次防は進んでおるわけです。そうして、あわせて対潜作戦なりそういうことの充実をはかっていこう、こういうのでいまの
段階では航空母艦をつくる
段階までいっていない、こういう
状態であります。
-
○華山委員 ちょっと誤解があるといけませんので申し上げておきますが、私は置いたらどうかといっておすすめしたわけではありません。そういうところまでいかなければ、日本の十万トン二十万トンの大船団を――今日実業界ではマラッカ海峡まで行けなんということを言っているのですから。
長官は一応そういうことはできませんとおっしゃいましたけれども、私は国力に応じてはどうしたってそういうところまでいくようなことをお考えになっているのじゃないかと思う。そうでなければ、ヘリコプターぐらいでやったのではあぶはちとらずですよ。それでお聞きしたのでございますけれども、今後とも絶対にそういうことはやらないのだ、航空母艦は日本の商船の保護にもなるであろうけれども、外国に対して非常な脅威を与える、その点からも航空母艦等は日本では持つべきではないというお考えをお聞きしたがったのでございますが、どうですか。
-
○
有田国務大臣 われわれは、航空母艦といいましても、攻撃するような航空母艦は持ちません。しかし、また、現
段階におきましては、われわれは相当検討しまして、やはり経費の面から見ても効果的でなければならぬ、こういう考えから、さっき言いましたようにDDH、それにヘリコプターを載せて護衛する、こういうことを考えておるわけであります。また、護衛艦自身だってヘリコプターを載せなくても護衛はできるのです。しかし、おっしゃるように、空からの護衛も必要であるというようなことで、別の対潜航空機とかあるいはヘリコプターというようなものも考えて、そうして日本の能力といいますか、いまの限界において適切と考えたことがいまのような
状態であります。航空母艦はいまつくろうという考えはありません。
-
○
岡田(春)委員 ちょっと関連いたしますが、先ほど華山委員の御質問はきわめて重要な質問をしておられるわけです。これは若干
防衛庁長官並びに法制局
長官にはっきり確かめておかなければならない点があるのです。
と申しますのは、華山委員の質問は、B52のごとき攻撃的な武器を沖繩に配置されている場合に、たとえば沖繩が日本に返還された場合、沖繩を含めた日本に――安保条約下の基地としての日本にという意味だと思うのですが、そういうところに配置ができるのかどうか、これは憲法上認められるのかどうか、こういうことだったと思うのです。そういう点で法制局
長官の答弁は、まあ若干御答弁があったのですが、必ずしもわれわれ正確に聞き取れない面もあるので、もう一度この点を、B52に限らず、攻撃的な兵器、これは憲法上違憲と認められるような攻撃的な兵器というものを日本の基地内に配置することができるのかどうか。これは認められるのかどうか。こういう点を伺いたいわけです。
-
○高辻政府委員 まず、先ほど申したことでありますが、一国の主権のもとに他国の軍隊がかってに入ることができないことは、これは言うまでもないわけで、この主権の容認というものがあって初めてそういうことができるわけであることは万々御承知のとおりでございます。
そこで、沖繩と本土とを分けておっしゃいましたけれども、ごく大ざっぱに安保条約の適用地域ということを考えてみました場合に、安保条約では御存じのとおりに米軍が日本に駐留することを認めております。すなわち主権の容認がございます。その場合に問題になりますのは、まさにおっしゃるように憲法との関係でございますが、これはしばしばいままでにもお答えをしておりますけれども、これは安保条約を結びます前の、旧安保条約を締結するときが一番最初のときでございますが、当然われわれとしては憲法との関係を最も大きな問題の焦点として検討したわけです。その際のわれわれの考え方というのは、憲法九条の二項、戦力を保持しないという規定が、日本国が管理し支配権を持つものについての規定であって、そういう関係でないものについての規定ではないという解釈に到達して、実は旧安保条約の法制局の審議が通ったわけでございます。
その後にむろん問題は問題として残っておりましたが、御存じのとおりに、砂川判決だったと思いますけれども、最高裁の判決が私どもの考えと同じ考えで、この外国の戦力、九条二項の戦力保持との関係は、私どもが考えたと同じ考え方をとっておったのでございます。つまりそれは、憲法九条第二項はわが国の管理権、支配権に立たないものについての規定ではないんだというようなことでございまして、そこで外国の軍隊、この場合にはアメリカ軍隊でありますが、それの装備についての憲法との関係は、それで御理解をいただきたいと思います。
さらに何か御質問があれば重ねて申し上げます。
-
○
岡田(春)委員 それではあなたの解釈からいうと、憲法九条二項の規定は、外国の戦力あるいは兵力には適用しないのであるから、したがってそれじゃ日本の基地内にはいかなる兵器も持ち込めるという解釈であると理解してもいいのですか。
-
○高辻政府委員 憲法との関係については、これは最高裁の判決をごらんいただけるといま申し上げたとおりであると私は思っておりますが、要するに、最高裁の判決を、いま私どもはそれが私どもの考えと同じであるという考え方に立っております。
それから、もしそうである場合に、それでは何でも持てるかということにつきましては、これは一国の主権が、それこそ、こういうものは持っていいとか持っていけないとかいうことは可能であります。つまり現在でいえば、いわゆる事前協議、核等については、日本に装備する場合には事前協議が要る、一定の範囲の配置についても事前協議が要るというふうに、主権の作用としてものを言う手はございます。ございますけれども、それは憲法との関係と申しますよりも一国の中に外国軍隊を駐留さすについての主権の意思の作用であるというふうに御理解願っていいものであると思います。
-
○
岡田(春)委員 あなたはそれじゃ事前協議で認めるかどうかということは憲法の範囲外である、主権の行使は。そういう意味に理解してもいいのですか。憲法の範囲外としてそのような基準をもってそれを拒否し得るかどうか、そういう政府の主権行為である、こういう解釈になるのですが、憲法はその場合に対象外になる、こういう御理解ですか。
-
○高辻政府委員 憲法九条と外国軍隊の装備については、これはもう重ね重ね申し上げましたから申し上げません。しかし、主権というものが憲法と無関係かというと、むろん関係はございます。国際慣習法上も、むろん法律的に問題がございますが、いま申し上げている趣旨は、そういう一定の装備、それを憲法は、外国軍隊が持つものについては直接何もいっておらない。だからといって全部持ち込めるのかどうかといえば、それは一国の主権が任意に考えていいことである。つまり憲法上の制約と別に憲法との関係だけからいえば、それでアメリカの軍隊は憲法九条二項の制約のもとには立ちませんということは、はっきり申し上げられるわけです。
-
○
岡田(春)委員 それじゃ具体的に伺いますが、あなたはさっきから砂川判決、最高裁判例を盛んに乱用されるのですが、乱用される例として、私、言いますが、この判決の中に――私、全文ここに持っているんだが、要旨の中に特に重要な点、「従って、一見極めて明白に違憲無効であると認められない限りは、裁判所の司法審査権の範囲外のものであって、」云々、憲法上外国の軍隊に一見きわめて無効であるという最高裁判所が判決を下したということは、どういうように御解釈になりますか。
-
○高辻政府委員 私は、そういう御質問があるのでしたら、実は判決文を持ってくるところでしたが、いまお持ちならばちょっと拝借をさせていただきたいと思います。
-
○
岡田(春)委員 いまお見せしてもいいですよ。しかし、これは私のノートだから、ほかのほうを見られたら困りますよ。ちょっとここだけ読んでごらんなさい。
-
○高辻政府委員 いま御
指摘の点があることはよく承知しております。よく承知しておりますが、私が申し上げている点はその部分でなしに、実は私が持っていれば、それこそ申し上げられるのですが、憲法九条の二項についての、戦力を保持しない、その保持するという意味について、最高裁は明確な判断を下しております。そこの部分を実は申し上げておるわけです。
-
○
岡田(春)委員 私の質問にお答えいただきたい。最高裁の判決で一見明らかに違憲無効という、こういう事実が外国軍隊の中にあるということを想定している。このことはないとあなたは御判断になるのかどうなんだということを聞いている。これはどうなんですか。
-
○高辻政府委員 御質問の趣旨十分わかりませんが、安保条約が憲法上どうなんだという点については、御
指摘のようなくだりがあったことは承知しておりますが、先ほど来の問題の本質は、外国軍隊が装備をする、それと憲法九条との関係についてお尋ねがございました。その一点にしぼって私はお答えしておりますが、その点についての、まさに御
指摘の判決の中に私が申し上げたと同じ趣旨のことが――ことばは必ずしも同じでないかもしれませんが、同じ趣旨の判示をしておりますので、その判示のところをよくごらんいただきたいと思います。
-
○
岡田(春)委員 それじゃ、そういうようにあなたごまかされるから、その前後をもう少しはっきり読みましょう。私の文章でもあなたは信用なさらないのだから、あなた、お帰りになったら、このことばのとおり書いてありますから、もう一度お読みください。判決の途中の部分で、「ところで、本件安全保障条約は、前述のごとく、主権国としてのわが国の存立の基礎に極めて重大な関係をもつ高度の政治性を有するものというべきであって、その内容が違憲なりや否やの法的判断は、その条約を締結した内閣およびこれを承認した国会の高度の政治的ないし自由裁量的判断と表裏をなす点がすくなくない。それ故、右違憲なりや否やの法的判断は、純司法的機能をその使命とする司法裁判所の審査には、原則としてなじまない性質のものであり、」だから、私は、ここでは、最高裁はそれは違憲ではないとかあるとか言っているのではないのですよ。なじまない性質のものであると言っている。いいですか。その次に、「従って、一見極めて明白に違憲無効であると認められない限りは、裁判所の司法審査権の範囲外のものであって、それは第一次的には、右条約の締結権を有する内閣およびこれに対して承認権を有する国会の判断に従うべく、終局的には、主権を有する
国民の政治的批判に委ねらるべきものであると解するを相当とする。」こういうようになっている。明らかに違憲無効であるというものがあり得るという想定に立っての判決の趣旨じゃないですか。その点はどうなんだというのに、あなたは、憲法九条に、外国軍隊の問題は全く該当しないのだから、これは法律解釈の対象外である、こうおっしゃっているけれども、砂川の判決の趣旨とあなたは違うじゃないですか。「一見極めて明白に違憲無効である」という外国軍隊もあり得るということを具体的に
指摘しているじゃありませんか。あなたは、これをどう解釈するのだと言っている。
-
○高辻政府委員 いまの御
指摘の点は、私、全部承知しております。ただ問題が、アメリカがB52を持つことについてどうかというお尋ねが進行してまいりました。そこで私は、この判決の中の一部を申し上げましたが、その部分が最もお答えの中核でございますので、幸いにしてちょうどいま持っておられる方がおりましたので、その部分を申し上げますが、九条二項が「その保持を禁止した戦力とは、わが国がその主体となってこれに指揮権、管理権を行使し得る戦力をいうものであり、結局わが国自体の戦力を指し、外国の軍隊は、たとえそれがわが国に駐留するとしても、ここにいう戦力には該当しないと解すべきである。」このとおり読んでおりますが、このくだりがさつきの御質問についてのお答えのくだりでございます。そのほかの部分、いろいろございますことは十分承知しております。その要点だけを申し上げました。
-
○
岡田(春)委員 あなた、答弁は、ごまかしではだめですよ。私は、華山委員の質問に関連をして、それでは、判例の中に、「一見極めて明白に違憲無効である」というものを除いて、こう書いてある、それは違憲無効なものがあり得るということを想定しているからではないか、それについては、あなたはどう解釈するかと聞いているのです。前のほうは何も……。
-
○高辻政府委員 別の問題を御提示になったようでございますが、それはそこに焦点を合わせて申し上げますと、「一見極めて明白に違憲無効である」と認められないというのが最高裁の考え方であるわけです。
-
○
岡田(春)委員 「限りは、」――「限りは、」ですね、裁判所の審査権の範囲外である、こうなっているじゃないか。
-
○高辻政府委員 それはそのとおりです。
-
○
岡田(春)委員 もう一度、それでは、あなたの解釈どおりでいくと、外国軍隊というのは、日本に、たとえば水爆でもいいですよ。水爆でも日本に配置された場合に、憲法上これを拒否することはできないという、そういう法律解釈ですか。その点はっきりしてください。
-
○高辻政府委員 先ほどからも申し上げておりますように、むろん一国の主権の作用の中に入るわけでございますから、一国の主権の意思としてこれを入れなければならぬということはございません。入れないでも済むわけです。さればこそ、安保条約に基づく事前協議で、核については、これをノーと言うことができるということになっているのも、そういうわけだからでございます。
-
○
岡田(春)委員 入れなければならぬか、なるかという政府の判断の基準は何ですか。憲法じゃなくて、安保条約ですか。憲法はその場合に全然問題にならぬわけですか。それを伺います。
-
○高辻政府委員 憲法が禁止しているというのではなくて――これは憲法が禁止しているかとうかの問題は先ほどのくだりで申し上げましたから、あらためて申し上げませんが、それこそすべて法律的な価値判断ばかりがすべてではないのでありまして、政治的にこれをどう見るべきかということはきわめて重大でもありますが、まさにその判断に立って考えてしかるべき問題だと思います。
-
○
岡田(春)委員 あなた、どういう答弁ですか。政治判断を私は聞いているのではないのですよ。あなたの仕事は、法制局
長官で、法律の問題でしょう。私は法律解釈を聞いているのですよ。憲法上はそれは対象にならないとおっしゃるのですか、どうなんですか、と聞いているのです。
-
○高辻政府委員 それは、先ほどの最高裁の判断をよくごらんいただきたいと思います。それについて、私が先ほど御説明を申し上げました。
-
○
岡田(春)委員 これは関連ですから私ももう進めませんけれども、最高裁の判断は、私がさっき読んだように、「従って、一見極めて明白に違憲無効であると認められない限りは、」こういうものがあり得る、という前提に立っているのです。この点の解釈は、そういうことはあり得るということも解釈しないとおっしゃるのですか。解釈しないとおっしゃるならば、あなたは解釈しないと御答弁になってもけっこうです。解釈しないとおっしゃるならば、まさに今度は砂川判決の決定とあなたの解釈とは違うのだということになる。それならそういう解釈でもけっこうですが、法制局
長官として御判断を明確に示していただきたい。
-
○高辻政府委員 確かに、「一見極めて明白に違憲無効であると認められない限りは、」というのはございます。ございますが、問題の焦点、つまり、アメリカの駐留軍が憲法九条二項の関係ではどうなるかという点についての判断は、実はそこではなくて、この九条二項が、「その保持を禁止した戦力とは、わが国がその主体となってこれに指揮、管理権を行使し得る戦力をいうものであり、結局わが国自体の戦力を指し、外国の軍隊は、たとえそれがわが国に駐留するとしても、ここにいう戦力には該当しないと解すべきである。」という判断を下しております。それを私が申し上げているわけでございます。まさに問題の焦点でございます。
-
○
岡田(春)委員 私は、関連ですからこれ以上やりませんけれども、あなたの答弁はそらしている。あなた自身が憲法九十九条に違反することになりますよ。どうぞ御注意ください。九十九条は、「天皇又は摂政及び国務大臣、国
会議員、裁判官その他の
公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ。」尊重、擁護の義務がある。あなたは、法律解釈の場合に、尊重、擁護の義務を負ってもらわないと困りますよ。憲法上の規定で、砂川判決の中に、まさに「違憲無効であると認められない限りは、」というのがあるのにもかかわらず、特に法制局
長官という法律解釈の責任を持つ者が、九十九条のこの規定を擁護、尊重してもらわなければならない。あなたは、いまの解釈では擁護、尊重していないじゃないですか。私は関連ですから、先ほどの点をもう少し詰めたいのですけれども、もう詰めませんけれども、この問題、九十九条との関連においても、あなたの先ほどの外国の戦力の問題については、明らかにすべき点がたくさんあります。こういう点は、私はきょうは保留しておきますが、関連ですからこれ以上申し上げませんが、いまの法制局
長官の答弁では私は完全に了承いたしません。
-
○華山委員 それでただいまの問題でございますけれども、もう一度申し上げますけれども、とにかく現在のところは装備についての事前協議の範囲といたしましては、B52は入っておらない。核ミサイルは入っておるけれども、これは入っておらない。そうするならば、とにかくアメリカで現在持っておるところのB52、これは日本に持ってきてもいい。事前協議の対象にはならないそうですから、現在のままの
状態で沖繩が日本に返った場合には、日本の中には敵に脅威を与えるB52があるのだ、常駐してもよろしい、こういうことにならざるを得ないですね。その点だけ申し上げて、次に移ります。
自衛官募集についてお尋ねいたしますが、
自衛官の
充足率――先ほどいろいろなことをお聞きいたしましたので、率のことは重ねてお聞きいたしませんが、陸上
自衛隊員の
充足率がなぜ他の
自衛隊に比べて低いのか。どういうわけでこれは陸上
自衛隊は低いのですか。
-
○
麻生政府委員 一つはこの士の数が非常に多いということが
一つの
原因だと思います。また階級構成におきましても、士の数というものがほかの
自衛隊と比べて多いわけでございます。したがいまして、ほかの海上
自衛隊とか航空
自衛隊というものと比較をいたしまして、士の階級のいわゆる魅力が少ない、こういうことが
原因ではないかと思います。
-
○華山委員 はっきりいたしませんが、時間の関係もありますから前に進みます。
自衛官の応募者を見ておりますと、地域的に非常に偏差があるのですね。
数字的にどういう偏差がありますか。私は調べたものもございますけれども、あなたのほうでお調べになったものもあると思います。とにかく何といいますか、後進的な農村地帯、いわゆる過疎地帯から
自衛官が多く出ている、都会からは出ない、こういう現象があると思いますけれども、あなたのほうではどう把握していらっしゃいますか。
-
○
麻生政府委員 大体客観的に見ますと、九州あるいは東北方面から
自衛官の出身者が、その人口に比例いたしまして多くなっております。また大都会あるいはその周辺の県の出身者の人口と、それからこの出身者の数の比率を見ますと、これが少なくなっておるというのが、客観的な傾向でございます。
-
○華山委員
防衛庁はもう少し科学的にものをごらんになったらどうでしょう。私はこの問題について一応の興味を持って調べてみたのでございますけれども、非常に違うのですね。たとえば、東京都の十八歳ないし二十四歳の青年層、それから東京都出身の
自衛隊員、これを分けてみますと、千人について四人です。人口じゃない、適齢人口の青年ですよ。鹿児島県が一番多いのですけれども、これは百人について約二十人です。片方は百人について二十人、片方は千人について四人、その比の違いはとにかく五十倍に達するのです。日本の
一つの機関、
自衛隊員というものが、地方によってこんなに違いがあってもいいのかということなんです。いまの
数字を詳しく申し上げますと、出身
自衛隊員のその県の十八歳ないし二十四歳の適齢人口に比較した割合は、最高は鹿児島県一九・九二%、約二〇%、最低は東京都で〇・四二%なんです。いかに何でも地方的に違いはしないか、こういうところに日本の
自衛官募集の最大の問題があると思う。これを方面隊別に直してみますと、最高は西部方面隊であって、いまの十八歳ないし二十四歳の青年人口と出身
自衛隊員の割合は一〇・四九%となります。ところが東部方面隊では一・五〇%、西部方面隊は東部方面隊の七倍の率の高さなんです。私、この点につきまして一応統計的な分析をしてみたのですけれども、何もこんなものは大したことはないのですが、
男子の十八歳ないし二十四歳の青年の増加率ですね。各地によって減るところもありますし、増加するところもある。その増加率を縦の線にして、そうしていま言った割合を横の線にして、各県の地位をこの座標の中に載せてみると、きれいな曲線をなすのですよ。それでいま言えることは、人口の増加するところからは
自衛隊員は来ないということだ、人口の減り方の著しいところから
自衛隊員が来ているということなんです。こういうことでいいものだろうかどうか。それで先ほどの二つの座標から、この青年の増減の率、それから青年の
自衛隊に入っている割合、これを座標に並べてその相関係数をとってみますと、逆係数として〇・七七という高率を示しておる。これはたいへんな相関係数ですよ。もう明白に日本の
自衛隊員は農村僻地の――ことばは悪いかもしれませんけれども、貧乏な地帯から入っているということなのである。人口の集中するような、自民党のよく言われる繁栄の地帯からは
自衛隊が来ないということなんです。これでいいものかどうか。私は疑わざるを得ない。これひとつ見てください。
〔華山委員、
麻生政府委員に書類を示す〕
-
○華山委員 それで、そういうふうなことですが、だけれども、そういう地帯から来る
自衛隊員が全体に占める割合が少ないんだということであるならば、私もさして問題にいたしませんけれども、この五年間に一〇%以上人口が増加した府県というのは神奈川児の四一・五%を最高として神奈川、埼玉、千葉、愛知、兵庫、広島、群馬、京都、東京という九県です。これは非常に増加したところです。ここにおけるところの出身の
自衛隊員というものは、全体の〇・一五%にすぎない。それで一〇%以上の人口の減った県、これはこの前の国勢調査、その前の国勢調査でしかわかりませんから、
資料ちょっと古いのでございますけれども、一〇%以上減の県というのは長崎の二五・一%を最高として、長崎、宮崎、鹿児島、佐賀、島根、秋田、岩手、熊本、大分、山形、青森、鳥取、福島、徳島、
山口、こうなっている。この十五県からの出身の
自衛隊員は五〇%近いんですね。これに、一〇%をちょっと割りますけれども、
北海道を加えますと、優に五〇%をこえるんです。このようなことを考えますと、現在のような
自衛隊員の集まり方というものは、私は今後の日本の政治上重要な問題だと思いますよ。それで、こういうふうな私の申し上げましたようなことが起きたということは、一体何に
原因しているのか。
自衛隊はそういう地帯で人を集めることに精力を集中しているためなのか、あるいは人口減少というものは他へ集中するんですから、それに伴う
一つの現象にすぎないのか、どうなのか。その点ひとつ、長い間でもないでしょうけれども、
局長御経験だと思いますから、伺っておきたい。
-
○
麻生政府委員 ただいま先生から非常に示唆に富む御質問をいただいて、たいへんいろいろ反省しなくちゃならぬ点があると思います。われわれ、募集をやっております立場から試みにいま先生が申されました四十三年度におきます適齢者人口、すなわち十八歳から二十四歳までの者を分母といたしまして、四十三年度に
一般隊員として採用いたしました比率をいまかりにとってみますると、東京の場合は〇・一二でございます。(華山委員「もっと低い」と呼ぶ)これは、先生のは出身で、現在おる
隊員をとっておられると思います。私のほうは四十三年度に採用しました士を分子として考えております。そうしますと、〇・三一でございます。それから、お話がありまし鹿児島県は〇・七五でございます。したがいまして、二倍強も多く鹿児島県からとっておるということになります。
それから先生がお話ありました出身の点で、われわれは曹士というものを分子として考えてみますると、この場合は東京が〇・四九でございます。(華山委員「分母は」と呼ぶ)分母は適齢者人口でございます。それから鹿児島県が一一・五一ということでございまして、先生が言われるように四十倍というほどにはなっておりませんが、やはり二十倍以上になっておるということはこれは客観的な事実でございます。これをわれわれ否定するわけではございません。しかし、それでは東京からあまり出ていないかと申しますと、東京で昨年採用いたしました二士は三千二百十三名でございます。全体でとっておりますのが三万三千七百六十二人でございますので、約一割というものはやはり東京からとっておるわけでございまして、大都市であまりとっておらないということには、別な角度から申しますと必ずしもならないわけでございます。人口の一割近いものを占めております東京で、やはり一割近いものを採用しておるわけでございます。しかし、いずれにしましても、最初に申しましたように九州とか東北方面から
自衛隊に対する応募者が多いということは、これは客観的な事実でございます。これは
一つには、その地方におきますところの経済構造、したがいまして、それに伴います弱年労働力に対するところの需給関係の相違、あるいはその土地における大学に対する進学率という点もありましょう。あるいはその地域の防衛意識の厚薄というものもあると思います。昔から九州は軍隊に行く人が多かったわけでございまして、そうした伝統的な気風というものもこれは作用しておると思います。したがいまして、やはり九州とか東北というものからの志願者が多いということでございます。しかし、われわれといたしましては、人口の過疎地帯に人口の変動があるわけでございまするから、こうしたわが国における最近の人口動態というものを把握いたしまして、それぞれの地域に即応した募集のやり方というものを考えていかなければならないというふうに考えております。したがいまして、地方に即したような、また都市におきましては都市に即しましたような募集方法というものをやりまして、できるだけ各県の中に格差の生じないように今後努力していきたいと思っておるわけでございます。
-
○華山委員 あなたのほうで重点地区というものを設けているでしょう。重点地区というものを見ますと、大体農村ですよね、私の見るところでは、ことに出かせぎ者なんかが多いところが多い。そうしてその重点地区につきましては、その後その通牒が改まったかどうかわかりませんけれども、「重点市町村に対しては、都道府県が通知した入隊期待数の全部または相当数を確保する」こと、とこう書いてある。その重点地区はどこかということを見ますと、大体農村地区の寒村地区ですよ。市というものもありますけれども、その市というものも最近農村地帯を合併したそういう市なんであって、このごろの市なんというものは、これはもういいところであるとは実は言えないわけです。そしてちゃんとこう重点的にそういうところを指定しているでしょう。金をたくさんやっているんでしょう。県庁からいった人数だけは出しなさいと書いてあるでしょう。あなたのところはそういうところから人を集めよう集めようとしていることは、これは明白ですよ。
それからひとつ、都会の集め方ということをおっしゃいましたけれども、都会の集め方については、私は驚くべきものを見た。これは
局長にも申し上げておきましたから、
局長から
長官にもお見せになったと思いますけれども、こういうはがき、このはがきに、「
自衛隊東京地方連絡部杉並出張所御中」となっていて、アンケートを求めているわけです。アンケートといったって切手を張って出せということですけれども、その中に、「
自衛官を希望する方、または
自衛隊の内容を詳しく知りたい方は下記の該当事項に〇印をしてお送り下さい。」と書いてある。「志願される方は下記に〇印をどうぞ」「1
国家公務員として安定した職につきたい」「2立派な技術を身につけたい」「3身心をきたえ充実した生活がしたい」「4夜間高校、大学に通学したい」「5現在の職業では将来が不安である」「6その他」と、こうなっている。私はみずから国を守る気概を持って
自衛隊に入りたいというようなことは
一つも書いてない。こういうのがあなたのいわれる都会向きの
自衛官の集め方なんだ。誘うに利をもってしているのです。いいですか。
自衛官本来の目的なんというのは何にも書いてない。
さらに、次のほうを見ますと、「資格、待遇等」と書いてありますが、資格、待遇等につきましての例といたしまして、資格、待遇欄の下の四分の一のところには、日産のマークがついていて、「
自衛隊で心身技術をみがき、満期除隊後は日産のマイホームプランで安定した生活を」と書いてある。そこにいうことは、
自衛隊に入って、そしてそのあとは日産自動車に入ればマイホームができますよということなんだ。こういうふうなことがあなたのさっき述べられた都会の
自衛隊の集め方なんですか。
今度はその裏をひとつごらんください。「
自衛官志願案内」、いろいろ書いてありますね。どこに事務所があるとか、これは
自衛隊のことだが、その下の大体三分の一くらいのところに、今度は日産自動車の採用広告がある。これは満期してからだから二、三年あとなんでしょうけれども、採用広告が出ているのです。「入社時から正規従業員になれます。」「
自衛隊の体験や技術を生かす重要
職場に配置されます。」「希望者には
自衛隊除隊者入社案内を送ります。」「日産自動車株式会社雇用
対策本部」とちゃんと出ているのだ。あんまりひど過ぎるんじゃないか。あなたは都会の人を、そのときそのところのしかるべき方法によって集めると言うけれども、こんな、まるでこれは産軍複合体の見本みたいなものですよ。どうなんです、こういうことは。
長官、どうお思いになりますかこれは。その問題につきましてはいつか予算分科会でも福岡議員がお尋ねになったように、それはトヨタ自動車と合作の
自衛官募集の広告を出したという。またこの
委員会でも楢崎委員は静岡交通のことを追及された。こういうふうなあり方で、これが都会向きの
自衛隊の集め方、こういうふうにお考えになっているのですか。しかし私は、これを出した人はたいへんに忠実なりこうな人だと思いますよ。こうでなければ東京の人は来ないのだから。何も
自衛隊の幹部はこのことをやった人をおこる必要はない。しかし、私はいかにもひど過ぎると思うのです。
長官もごらんになったと思いますが、どうですこういうことは。
-
○
有田国務大臣 先般も予算
委員会でしたか、これと同様な募集ポスターについての問題がありました。そのようなことのないように十分
指導するとこういうことを申しておったので、また事実そういうように
指導したのでございますが、いまおっしゃるようなことが出たということは
指導の徹底さを欠いたうらみがありまして、まことに遺憾に思います。
ただ、この際お願いしておきたいことは、先ほども申したように地区によっていろいろ応募者の数が違ってくる。この差のあるのは、第一にはその地域における産業構造のあり方、若年労働者を多数要望している地域とそうでない地域によって異なります。また一面においては大学へ行く進学率の状況によっても違います。ことに、私が思いますのに、その地域の防衛意識といいますか、国防に対する熱意のある地域とそうでない地域によって差があるものと思います。こいねがわくは私は全
国民が防衛意識に燃えられて、おっしゃるように全地域から多数の応募者が出ることを期待してやまないのですが、こういうようなポスターが出たことはまことに遺憾に思います。
-
○華山委員 ポスターじゃないんです。申し上げますが、これはどこから拾ってきたかと言われるといけないから――結城という私の秘書が散歩しておるときに、板橋区の
自衛官募集の掲示板があった。最近のことです。一週間ぐらい前のことです。その掲示板に封筒がすみに置いてあって、どうぞ中身を御自由にお持ちくださいと書いてあったから持ってきたんですよ。こういう
状態です。これは一体どこで金を出したものですか、日産自動車の広告なり何なり出ておるけれども。
-
○
麻生政府委員 このはがきにつきましては、先生からの御注意もありまして、私のほうで調べましたところ、東京地方連絡部と日産自動車が相談いたしまして本年の一月ごろ作成した模様でございます。具体的には、このはがきのうち、
自衛官募集に関する部分は地方連絡部が、また日産に関しまする部分は日産でレイアウトしたものであります。経費は日産側が負担したものでございまして、約十四万円
程度であったということでございます。
これをつくりました動機と申しますか、それを考えますと、おそらく、
自衛官というのはやはり二年あるいは三年を任期としております。したがいまして、
自衛官として二年なり三年なりの任期を十分つとめたあと、はたして自分の
職場がどうなるかという不安もあるわけでございます。したがいまして、
自衛官を任期満了で退職した場合、有力な会社で
自衛官を募集しておるのだということが頭にあれば安心して志願もできよう、また
自衛官として勤務する場合においても将来の不安を抱かずに職務に精励できるだろう。地連としてはこういう親心から考えてやった、こう思うのでございます。
しかし、先ほど
長官から御答弁申し上げましたように、全体の奉仕者である
自衛官の志願募集と、それから特定の会社の、たとえ満期除隊者の採用募集とは申しましても、同じはがきの中に載っておるということはやはり適切を欠くのではないか、こう思いまして、さっそく撤収するように命じた次第でございます。
-
○華山委員 これはちょっとひど過ぎるから、また決算
委員会ででも伺いますけれども、公文書をほかの会社の経費でつくったということは、これは許されないと思う。金額の問題じゃございません。
それからもう
一つお聞きいたしますが、この中にこう書いてある。技術教育を受けられるとか、夜間大学に行けるとかいうことが書いてありますが、「4」に「任期満了除隊者には」その次が太字で「超一流会社」に就職あっせんをしますとこう書いてあるのですね。そして日産の広告のほうを見ますと二千人以上の除隊者が働いておる、こう書いてある。一体
自衛隊は、こう書いてある以上は責任を持って就職をあっせんしていらっしゃると思うのですけれども、一体就職をあっせんしていらっしゃるのですか。いままでどうなさいました。
-
○
麻生政府委員 自衛隊の任期満了除隊後の就職につきましては、労働省とお話をいたしまして、労働省から通勤地域以外も含めた、広域職業
紹介の推進についてという通達が出ております。その中で、
自衛隊退職者職業
紹介業務取り扱い要領というものがきまっております。職業安定法にもありますように、職業の
紹介というのは、職業安定所あるいは職業安定機関の本務であるわけでございます。したがいまして、任期満了後除隊した者が
一般の企業に就職いたします場合は、本人が行く場合は別でございますが、
自衛隊に相談をしてそうして
一般企業に就職をするという場合におきましては、職業安定機関を通じて求職なり求人の手続をとっておるわけでございます。したがいまして、
自衛隊が直接民間企業に職業あっせんするというたてまえではありません。職業安定所が職業
紹介をやるのを
自衛隊としては御協力申し上げるというようなことでやっておるわけでございます。
なお、
隊員の生活
指導といたしまして隊内で、やめたあとの人生の進路
指導というようなことはやっておりますけれども、
一般企業に対する職業のあっせんというものを直接やっておるというふうにはわれわれは
指導しておらないわけでございます。あくまで職業安定機関に御協力申し上げているということでございます。
-
○華山委員 そうだとすると、これは誇大広告になる。あっせんをいたしますと責任を負っているじゃないですか。職業安定所に私のほうからお世話申し上げますとか書いたらいいじゃないですか。これは誇大広告ですよ、明白に。しかも太字で書いてある。「超一流会社」に就職をあっせんいたしますと書いてある。これは誇大広告ですよ。やはり
自衛隊は官庁なんです。なおひとつどういうことをやっているか実際調べてみたいと私は思うのです。あなたは職業安定所を通じ、とおっしゃる。しかし、こういう広告を出して、形だけ職業安定所にちょっと出しているんじゃないですか、法をくぐるために。とにかく正式には職業を
紹介あるいはあっせんするためには、安定法第三十三条によって労働大臣の許可が要る。労働省に聞いてみたところが許可を与えたことはない、こう言っているわけです。それから、おそらくそういうふうな答弁をなさるだろうと私は思っていた。堂々とやってくださいよ。それはとにかく、この「超一流会社」というのはこれは一体何のことだかわからないですね。太字で書いてある。特殊指定会社のことをいうのだろうと思うが。やり方がまことにみみっちいですね。誘うに利をもつてしている。これが都会におけるところの人の集め方。農村地帯においては、一応人員をきめておいて、それだけは金を多くやるから集めろというやり方をしている。こういうばかなやり方はないですよ。私は、
自衛隊の
隊員の集め方というものは
自衛隊の本質に関係してくると思う。先ほど申しましたように、農村の――ことばが悪いかもしらぬけれども、貧しい家庭から
自衛隊員が多い。確かだ。これを、たとえば治安とか何とかいって鉄砲でも向けるようなことやらしてごらんなさい。階級的な問題がうつ然として起きますよ。
長官、その点だけは、どういう人が
自衛隊員だということをよく考えておいてもらいたいと思う。どうですか
長官、こういう集め方改めなさいよ。
-
○
有田国務大臣 先ほども言いましたように、防衛意識の非常に高い地域は非常に応募者が多い、こういうことを考えましたときに、私は華山さんにもお願いしたいんだが、お互いによってこの大事な日本の防衛ということをしっかりと
国民に徹底さすようにしたい、その上に立って堂々と私は募集してりっぱな
自衛隊をつくり上げたい、かように考えますからひとつよろしくお願いしたい。
-
○華山委員 それはおっしゃるとおりだと思いますよ。この表を見ましても、この間、
山口委員が御質問になったが、あの若い
指導者を持たれる埼玉県は非常に募集率は悪いです。山形県のように、どちらかというと老反骨漢のいるところは
自衛隊員は多いですね。そこで、大臣が何と言おうと政治家が何と言おうと、そんなことばで解決のできる問題じゃない、私はこう思いますよ。これはよほど気をつけていただかないと妙なことになる。昔の軍部のことは言ってもおかしいですけれども、米が余ったというのはいまに始まったんじゃないですね。前にも一ぺんあった。
昭和九年。その際に朝鮮、台湾から日本の植民政策がどんどん入ってきた。そこで米が余って、そして減反という問題が起きたんです。さらに十一年に起きた。そのときに農林省や拓務省の減反ということをとめたのはその当時の軍部なんですね。私はそれをまねしろなんとは言いません。ところがいまは何ですか、米は上げない。私は、皮肉なことばをもってすれば、
自衛隊員を集めるために農村を貧乏にしたんだ、こうさえ言いたくなるじゃありませんか。金持ちの……(「貧乏じゃない」と呼ぶ者あり)農村は貧乏じゃないというけれども、金持ちの農村から
自衛隊には来ません。大体山の中です。貧農です。大体貧農のいるようなところばかり指定している、重要地点に。
もう
一つ伺っておきますけれども、日本の軍隊は何かゲリラの
訓練をしていますか。
-
○宍戸政府委員
自衛隊は直接侵略から間接侵略を防衛する任務がありますし、また治安警備の任務もあります。それに即応した
訓練をやります。お尋ねのゲリラというのはどういう様相のことを言われてのことかよくわかりませんけれども、正規軍でない不正規軍がかりに侵略してきたというふうなことを頭に置いて
訓練しているかということであれば、そういう場合も頭に置いて
訓練はいたしております。
-
○華山委員 東北管区の一番の上の人は東北総監とおっしゃるのですか。
-
○宍戸政府委員 方面総監。
-
○華山委員 東北方面総監がある都市で演説をなすった。講演をなすった。それを細大漏らさずその土地の新聞が二ページにわたって書いたわけです。そうしてその中に、総監はこう言っているのですね。アメリカはいまベトナムに五十数万の兵を出しているけれどもこれをおさめることができない、それはアメリカの持っている兵器が近代兵器であってゲリラ戦に向かないからである。これはまだいいですよ。その次がひどい。日本だったならば二、三個師団でだいじょうぶだ、こう言っているのですよ。私はびっくりした。それで新聞社にこれは間違いないのかと聞いたら、責任は私のほうにあるかもしれませんけれども、テープレコーダーをとり、速記をしたのですから、内容は間違いないと信じます、こういっている。二、三個師団で、五十万のアメリカができないことを――よほどのゲリラ戦でもやっていなければ、そういう自信はできないわけです。でなければこの司令官はほらを吹いているわけですね、誇大広告。こういうことを見た人は一体どう思うか。日本の兵隊がベトナムのようなゲリラ戦に出る演習をしているのじゃないのか、あるいは一たん事ある場合には日本の兵隊は山の中にこもってゲリラ戦でもやるのだ、その際にわれわれはどうなるのだ、こういうふうに考えるのはあたりまえでしょう。大体、よくゲリラ戦の演習もしていない、
訓練もしていない日本の兵が二、三個師団南ベトナムに行ってゲリラ戦ができるなんてことは、私はちょっと神経がおかしいと思うのですね。どうですか、
長官、そういうふうなことを言わせていいのですか。
-
○
有田国務大臣 御質問のような発言が、ある高級
自衛官によってなされたということは耳にしております。しかし、これはもとより個人的の見解でありまして、わが
防衛庁の公式な見解というようなもので絶対ないのでございます。したがいまして、このことを私はここで論評する限りでないと思っております。
ただ
自衛隊におきましては、先ほども防衛
局長が申しましたように、わが国に対する侵略に対して、その防止をする責任があります。また、それがいわゆる間接侵略といいますか、不正規軍から来る場合もあり得ると思いますので、その侵略防止の一形態として、ゲリラ戦も想定しながら、これに対処する
訓練はしておるわけであります。さように御了承願います。
-
○華山委員 個人の一見解というけれども、制服を着てやっているのです。将官ですよ、方面隊の司令官でしょう。写真にちゃんと出ている、制服を着てやっているのですよ。それでも個人的見解ですか。どうなんです。公式見解じゃないのですか。
-
○
有田国務大臣 私は、その人の個人的見解を言われたものだと思います。
-
○華山委員 私は、制服を着たまま個人的見解をその辺にたくさんの人集めてやっているということは、とても考えられない。
それから、この人の言ったことというのはちょっとおかしいのですね。私は、そう言っちゃ失礼だけれども、あの人はよく重要視されたものだと思っているのですよ。これは古い話ですけれども、あの当時は機密漏洩で非常に騒然としていた。総理大臣は、まことに恐縮でございます、
国民におわびしますとおっしゃった。そのときにこの人は何と言った。機密漏洩なんてものはしろうとが見たってわかるもんじゃないのだ、あんなものは平ちゃらです、こう言っている。平ちゃらということばはちょっとおかしいですけれども、あんなことを大騒ぎするのはおかしいので、軍事の機密なんてものはしろうとなんか見たってわかるもんですかと言っている。その講演の中で公衆の前で言っている。私は実際ああいう人がいるということは驚いた。
そのほか二、三ありますけれども、この人はおやめになったそうだから私は言うのですけれども、人事の登用にはあまり非常識な人はおあげにならないほうがいいのじゃないですか。どうです、
長官。
-
○
有田国務大臣 そういう面については十分心得て今後の人事をやりたいと思っております。
-
○華山委員 簡単に、これは私質問するつもりじゃなかったのですけれども、きのう実は少数の人をお連れして、六・二三反安保のことでおうかがいした。前の日に
長官がお会いになるということだったんですけれども、そういう連絡のことは私じゃありませんから、わかりませんけれども、うかがったところが、
長官はお会いにならなかった。官房
長官、どうなんだ、何か錯誤があったのですか。
-
○島田(豊)政府委員 昨日反安保関係の各県の代表の方々が十数名
長官に面会を要求されているということは知っておりました。ただその時間的関係が、昨日の午後でございましたから、
長官は引き続き二つの会合がございまして、どうしても
長官としては面会できないということでございましたので、その旨を、そういうお
申し出のありました方に実はお電話で御了解を得たということでございます。
-
○華山委員 それでその際に何か非常に興奮をしておりますし、いろいろなことがあったので、私はあとで聞いておくからということを申したのでございますが、その問題は、神町の
自衛隊が治安出動の演習をした、その際に、公道、道路の通行をとめた、そしてなぜ公道をとめるのかといったところが、機密を保持するために、人の目に触れないように公道をとめたのだという答えだというのですね。その事実というものをお知りになっているのかどうか、そういうことはできるのでしょうか。
-
○宍戸政府委員 お話の演習場には、実は公道はございませんで、
自衛隊の管理する演習場でございまして、ただ事実上
自衛隊の私道といいますか、道はございます。つまりわりあい広い演習場がございまして、その地域の近隣の方の便利のために、演習しないときには事実上お通り願ってもかまわないというような慣習にはしております。ただ、演習する際には、危険ですから、普通の演習場の形に返すという
程度の道はございます。お尋ねの、演習する場合も、通常の演習と同様に、
一般の通行をとめて演習をしたということでございます。
-
○華山委員 現地は御存じなわけですね。――それでは私現地を見ておりませんから承っておきます。
それから、こういうことを言うのですね。治安出動の演習ですから相手方に何らかの標識がなければいけないのですが、それにプラカードを使ったというのですね。これは万国共通のもので、いろいろなデモ行進とか多数の意思表示をする場合にプラカードを持って歩くのは、これはもうどこでも許されたことです。
一つの様式なんですね。このプラカードを相手の標識にするということは非常識きわまるものだと思う、その点どうなんですか。
-
○宍戸政府委員 プラカードにつきましては、先生のお話のとおりだと思います。プラカードを掲げて大衆が行動をしているということについて
自衛隊の治安行動を云々するというようなことはわれわれ全く考えておりません。プラカードを掲げただけで
自衛隊の行動の対象にするなんというふうな考えは持っておりません。ただ、この演習場の演習の場合のことを聞いてみますと、いろいろなことの想定をやりまして、甲、乙と分かれて、演習ですから、鎮圧される部隊と鎮圧する部隊と分かれてやるのが演習の当然の形でありますが、鎮圧されるほう、つまり暴徒のほうの想定につきましては、銃を持っているとか火炎びんを持っているとかいうふうな想定をいたした、その一部としてプラカードを掲げたものも想定した、全体としてプラカードだけということを想定したいわけではなくて、騒擾形態のときに、ある人は銃を持っている、あるかたまりは火炎びんを持っている、あるかたまりはプラカードを持っている、そういうふうな想定をした演習をした、こういうことが事実ございます。
-
○華山委員 そういうふうな誤解を招くような、プラカードを敵にするような演習というようなことは誤解を招きやすいから、私はやめてもらいたい、そんなものなくたってだいじょうぶでしょう。
それからもう
一つお聞きしたいのですが、何か最近治安出動のために通達をお出しになりましたか。現地ではそういうのだそうですけれども。
-
○宍戸政府委員 治安出動
一般について特に通達を出したということはございません。ただ、いまお尋ねの現地の者が地元の方の質問に対して、中央から指令によってこの演習を行なったのだという意味のことを申し上げたという事実は聞きました。
繰り返すようですが、治安出動
一般について、特に最近通達を出したことはございませんが、神町における演習につきましては、たまたま東北方面隊の
訓練を陸幕長が監察するという予定を組みましたので、全体の陸幕長の監察のための予定行動を通達をいたしました。そういう意味の連絡をいたしましただけでございます。
-
○華山委員 あなたはそれじゃ、言うに落ちず語るに落ちるということがありますが、陸幕長がそういうものを監察して歩くなんということは、いかに本格的に演習しているかということですよ。(「そうじゃないよ、
訓練だよ」と呼ぶ者あり)
訓練しているかということですよ。そのために行かれたのでしょう。それだから何か出したのでしょう。通達というのを見せてください、あとで。いまはないでしょうから……。
-
○宍戸政府委員 陸幕長が
訓練を
指導するのは当然の任務だと思います。東北方面隊でも東部でも西部でも
訓練をやりなさい、それから全部の地域を順繰りに回るわけでございますが、ある時点では東北方面隊を監察する、
指導をするということは陸幕長の当然の任務であろうと思います。そういう意味の連絡をした、こういうことでございます。
-
○華山委員 その通達の内容を出してください。
それから、あなたがおっしゃったけれども、治安出動の視察ということになるのじゃないですか。そうでなくて、ただばく然と行かれたのだとすれば、何もそんなことをおっしゃる必要はない。
一般訓練でなくて――
一般訓練の中に含まれているかもしれませんけれども、治安出動のための視察訪問をやったのでしょう。
-
○宍戸政府委員 東北方面の監察をするというのは、東北方面の
一般の監察のためでございます。その中には普通の行政事務も入りますし、
一般の
訓練も入りますし、それからお尋ねの治安行動の
訓練も入ります。そういうことでございます。
-
○華山委員 治安通達とかいうものをひとつ見せていただきたいということ。とにかく
訓練をやっているということだけはわかりました。
これで私の質問は終わります。
-
○
藤田委員長 本
会議散会後直ちに再会することとし、暫時休憩いたします。
午後一時二十四分休憩
――――◇―――――
午後四時十八分
開議
-
○
藤田委員長 休憩前に引き続き
会議を開きます。
質疑を続行いたします。永末英一君。
-
○永末委員 今回の防衛二法は、主として増員また新編成の問題でございますが、御説明を伺っておりますと、日米安保体制を前提としてものを考えておられる。伺いたいポイントは、その日米安保体制というものに対して、
防衛庁は一体何を考えておられるかというその考え方の問題と、それからこの提案の中に盛られている量の問題と、その関係がしっくり
国民にわかっているという
段階まで説明が行き届いていないと思うのですね。それをひとつこの際明らかにしておきたいと思います。
第一番に、大体これは三次防の経過中でございますから、三次防は日米安全保障体制を基調としてつくられておるということでございました。だといたしますと、今回のこの二法案もすなわち安保条約を前提、日米安全保障体制を基調としてやっておる、こういうことですね。それからひとつお答え願いたい。
-
○
有田国務大臣 もちろん私
たちも日米安保体制を堅持しながら防衛力の充実をはかりたい、かように考えております。
-
○永末委員 期待しておるというのは、わが国の安全のために何か貢献するであろうという期待があるからだと思うのです。したがってその面については、一体この日米安保条約を結び、日米安全保障体制にあることが、わが国の安全について
防衛庁の角度からどういうことを期待しておるのか。ぼやっとした言い方ではよくわからないかもしれませんから、これを分析してお答え願いたいと思いますが、
一つには、現在の世界の平和と安全を乱す要素の中に、核を用うる戦闘というものが考えられる。もう
一つは通常兵力を用うる戦闘が考えられる。したがってこの二つの点に焦点を置きつつ、一体何を期待しておられるのか明らかにしていただきたい。
-
○
有田国務大臣 御承知のとおり、わが国の防衛は憲法上の制約がございます。なお、
国民感情の上からいった
一つの制約がございます。で、われわれ普通の局地戦、普通兵器によるものは何とかしてわれわれの力によってこれを防衛したい、こういう気持ちでおりますけれども、御
指摘のように、今日の世界は核というものがございます。したがいまして、核戦争というものは実に人類に被害をもたらしますから、われわれはそういうものは喜びませんけれども、いわゆる核抑止力というもの、アメリカの大きな抑止力というものを期待して、そして戦争が起こらないことをひとつ願っておる。で、またみずからは、おそらくアメリカは核の発動はしないでしょうが、それに対して報復力というものがございます。したがいまして、核を持っておるほかの国もあとの報復力がおそろしいためにそれを差し控える、こういうことになって、私はこれが戦争を未然に防止するという役割りをなしておるのじゃないか、かように考えております。
なお、安保条約に期待するところは、先ほど言いましたように憲法上の制約がありまして、日本はいわゆる攻撃的と申しますか、外国へ侵略することは毛頭考えてない。ところが、いわゆる攻撃的の兵器がないと真の防衛もできない問題があるかもしれない。そういう場合に対して、アメリカの強大なる兵力というものがそこにバックとなって日本の国土の安全というものをささえてくれる、私どもはそういう点を安保条約に期待しておるわけでございます。
-
○永末委員 まず核にしぼって御見解を明らかにしていただきたいと思います。
その前に、憲法上の制約とかなんとかかんとかはございます。これは現実にいまある問題ですが、何かそれを前段に出されると、制約があるから考えられない、そんなんじゃないと思うのですね。われわれの防衛の考え方は、現存のわれわれの持っておる憲法あるいはわれわれの持っておる現状というものを踏み台にして考えていくというのであって、それを制約だなんというふうに表現を使われたら、裏を返せばないほうがいいということになりますよ。これはひとつもう一度十分ことばを考えつつお考えになるほうがいい。制約じゃない。それを前提にしてわれわれはわれわれの防衛を考えていく、安全を考えていく、こういう考え方でなくてはならぬと私は思います。
さて、ことばの問題は別といたしまして、核の問題でございますが、安保条約を結んでおるからアメリカの抑止力のおかげをこうむれるのだ、こういう御見解ですか。
-
○
有田国務大臣 安保条約がある、いわゆる友好国でございますから、アメリカは責任をもって日本を守る義務を負っておりますから、おそらくアメリカはそういう場合に核を――もちろんそれは抜きはしませんよ、抜きはせぬだろうと思いますけれども、それが大きなささえとなって、いわゆる先ほど申しました抑止力として大きな役割りを果たす、かように考えております。
-
○永末委員 正宗の名刀でも、抜くことがあるという予断があるからそれは名刀で通るのであって、絶対に抜かれないんだということでは通らないわけですね。
そこで問題点は、アメリカと安保条約を結んでおる、アメリカが強大な核大国である、したがってその核の抑止力のおかげを日本がこうむれるだろう、こういう期待だろうと思います。アメリカから見れば日本は他国ですね。他国のためにアメリカが核を使用することも考えるとお思いですか。
-
○
有田国務大臣 これがいわゆる共同防衛でございますから、私はもう日本の国のことは
国民が、われわれが考えなくてはなりませんけれども、やはり友好国としての責任は持ってくれる、かように考えております。
-
○永末委員 それはあなたの信念ですか。それとも確固たる根拠がございますか、それを伺いたい。
-
○
有田国務大臣 これはやはり条約というものがある。条約というものはお互いに信頼と信頼をもっていくんですからね。私はこの条約というものが一番大きな根拠になり得る、かように思います。
-
○永末委員 ベトナム戦争はいま終結に向かいつつある過程です。アメリカ側はいわば一方的に撤兵を少しは実行しつつある、そういう現
段階だと思います。これはアメリカが三年前にベトナムに増兵をいたしましたあの当時の彼らの目的とは全く反した結果が出つつあると思う。このベトナム戦争の過程におきまして、ベトナムに行っておりますアメリカ兵を救援するために戦術核兵器を使うべしという議論がアメリカ国内にはございました。しかしこれが使用せられずして現在の
状態になっておる。このことをわれわれは他国人として見た場合に、もう一度質問いたしますが、日本のためにアメリカが核兵器を使用するのだ、こういうことが容易に予定できますか。もう一度お答え願いたいと思います。
-
○
有田国務大臣 先ほど来言いますように、核というものは、これは抜いたらたいへんな被害を人類に与えます。それだけに慎重にかまえておると思います。しかし少なくとも核報復力、もし相手の国が打ったらそのときには報復してくれる、これは期待できる。そうしますと、みずからが抜かなくても相手も抜くことを差し控える、大きな核を持っておりますから。私はそういう点でここに戦争というものは未然に防止される、こういう大きな力が動いておるということを考えております。
-
○永末委員 現在核拡散防止条約にアメリカ並びにソ連はほかの国を引き入れて、これに調印、批准せしめようと一生懸命になっておるわけですね。これと、いまあなたがお感じになっておるように、核大国が自分のいわば同盟国に対する核保障をし得るのだという期待を核のない同盟国が持っておる。そういう観点から、この核防条約の批准をなぜ一体アメリカが一生懸命になっておるか。これをどう解釈しますか、お答え願います。
-
○
有田国務大臣 核拡散防止条約といいますか、これにつきましては、私は
所管の関係上あまり深い研究はしておりませんが、しかし、とにかく核というものが世界にあまりに多く持たれるというと、そこに乱発されるおそれがないか。そこでやはり核というものはこれ以上つくられないようにして、そしていまの核の抑止力の均衡が保たれておる、その限界に置こうというような考えからきておるのじゃなかろうかと私は思っておるわけですが、そういう観点から言いまして、私はこの核拡散防止条約というものに直ちに賛成するということはどうかと思いますけれども、やはりその趣旨には一応耳を傾けていかなければいかぬ。それから同時に日本の国論とかそういうものを勘案しながら、これは外務大臣の
所管でございますが、そういう方向へ持っていかれるべきものじゃなかろうか、かように考えております。
-
○永末委員 私は
防衛庁長官、外務大臣の
所管をあなたにのぞいてくれということを申しておるのではございません。わがほうの安全を考える場合に核の問題について、
一つには安保条約というものでアメリカの核のかさを頼んでおる。しかし片一方そのアメリカはわが国に核防条約の批准を迫っておる。これは事実であります。しかしそれは単にアメリカだけではなくて、ソ連もまた核防条約の参加のほうに入っておる。しかもそのアメリカとソ連とは、国連の安全保障
理事会において、この核防条約に参加してくる国々に対して核の保障をいたしますということを、それぞれの決議案を出して決議までしておる。こういう状況下にあるわけですね。
そこであなたは、安保条約さえあるならば、アメリカ一カ国の核抑止力でもって核に対する脅威は全部のがれられる、こういう期待を持っておる、そういう御答弁があったわけだ。そこで私は伺いたいのは、それならば、なぜいまのような核防条約に対する批准を日本に押しつけようとしておるのか。その辺がはっきりしなければ、核防条約を批准することによってわが国がこうむるべき国家の安全上のメリット、取り柄というものは証明できないと思う。あなたは
所管でないと言われたが、やはりこの核防条約がわが国の安全を維持するために一体役立つのか役立たぬのかということを、外務省ではなくて、あなたのほうも真剣に取り組むべき題間だと私は思います。その観点でひとつもう一ぺんお答え願います。
-
○
有田国務大臣 われわれ日本人は、少なくとも核というものに対する特別な感情を持っております。感情というよりも、御承知のとおり世界で唯一の原爆被害国でありますから、それだけ核に対しては真剣な考えを持っておると思います。私はこの核拡散防止条約というものは、少なくとも核兵器の拡散を防止して核戦争が発生する危険の増大を食いとめようという趣旨だと考えております。そういう意味からいいましても、われわれはその趣旨には賛成という気持ちを持っております。
-
○永末委員 質問の趣旨がしっかりまだ通じないような気がするのです。つまり現在核を持たない国々の
一つの問題点は、おれ
たちは核を持たない、しかし核を持っている国が現実に存在するのだ、その核を持っている国が持たないわれわれに対して核の脅威をもって臨む場合にどうしてこれをしのげるだろうか、ここにやはり一番大きな問題点がある。先ほど本
会議が学生紛争の問題が出ましたけれども、核の脅威というものは現状の秩序に対する不安感をいろいろな人に与えておる。若い世代にも与えておる。私は現代の恐怖の均衡といわれる核戦略時代の平和と、世界にびまんしておる学生紛争とが無関係だとは思いません。現代における一種の不安の象徴だと思う。その意味合いにおいて、国の安全の責任者であるあなたから、やはり核に対するわが国の安全はこうこうこういうことでおれは考えているのだということを明らかにしていただきたい、これが趣旨なので、われわれが広島、長崎で原爆をこうむったということは事実でありますけれども、期待や願望ではなくて、やはりぎりぎりのところ、われわれが非核方針を貫くにあたってアメリカ以外の核の脅威に対してはここまで安全のかぎを固めつつある、こういうことをお考え願いたいという趣旨なんです。
そこで、もう
一つその点について伺います。安保条約はわれわれに対する核の脅威をアメリカによって埋めるものだ、こうおっしゃたけれども、もし核防条約の調印、批准をしてこの中に入ってしまった場合には、安全保障
理事会のこの決議がきいてくるわけですね。そうすると、何もこの安保条約に入っていなくても、安全保障
理事会のあの決議によってアメリカもソ連もわれわれに対して核保障をする、そのおかげをこうむれることになる。いわば二重になりますね。そうすると、何か安保条約というものは要らぬのじゃないか、こういう感じがいたす。この点についてどう思いますか。
-
○
有田国務大臣 私はそう簡単には考えない。やはり最も友好国である、条約を結んでおるアメリカが、日本の
自衛隊ととともに日本の国土の安全を守るというかたい約束をしておりますから、やはり本気で考えてくれる、かように考えております。
-
○永末委員
防衛庁長官、一カ国の核保障の中にかじりついていく時代が一体どこまで続くのか、この辺のところのお見込みを少しお聞かせ願いたい。あなたは、中共の核武装が北極を越えてアメリカ大陸に有効に働き得る時期をいつと思いますか。
-
○
有田国務大臣 中共も大陸間弾道弾の開発をだいぶん進めておりまして、一九七〇年初代、七五年になるか七二年になるかということはここで断言できませんが、とにかく七〇年代初期ということがいわれております。しかし私の見るところでは、中共がそこまで行きましても、アメリカのいま持っておるところの核保有力からいいますと、これは雲泥の差だ。したがいまして、中共も、もしもそういうものをかりに抜いたならば、それに対する報復力というものをおそれておるだろう。これは中共のほうもなかなか簡単に抜きませんと思います。その報復力というものは中共も非常におそれるだろう。こういうようなことで、互いにその抑止力を発揮しながら核戦争が未然に防止される、こういうことを私は期待しております。
-
○永末委員
防衛庁長官、一九七〇年代の初期で、一年から五年まで言われましたが、いろいろ伸展をしておるわけですから、もう少し正確に期日を測定しつつ現在の核防条約を――米ソ両国か非常にカバレージをあせっておる、それはやはり判断すべきだと思う。それから同時に、中共の有効な核兵器体系の成立ということとともに、わが国を含めてアジアの情勢は変わってくる、私はそう思わなければならぬ。それまでに一体われわれの防衛方針をどう固めていくか、安保体制をどうするか、私はあわせて一本の問題だと思うのです。そこであなたは、中共がたとえそうなっても、アメリカの核兵力はきわめて強大だからまだ心配することはないと言われるのは、ちょっと行き過ぎじゃないですか。アメリカとソ連との間に現在の平和共存
状態ができたでしょう。これはお互いに核兵力というものは防御不可能だということを認めた結果だと私は思う。だとすると、いま私が質問をしておりますのは、技術的に中共の核兵器がアメリカ大陸に届くというのではなくて、有効な
一つの核戦力としてアメリカが脅威を感ずる時期、こう言っておるのでありますから、あなたの知っておられる情報ではそれはいつか。単に技術的に届くというのではありません、アメリカがそれに対して脅威を感ずる時期はいつかということを聞いておるわけです。
-
○宍戸政府委員 これはなかなかわれわれが即断するわけにもいかない問題だと思いますけれども、各種の情報、特に最近のアメリカのレアード国防
長官の発言等から見ますと、お尋ねの点に特に触れました点では、中共は七〇年代半ばまで十八から二十ぐらいのICBMを持ち、十八カ月以内にICBMの発射テストを行なうであろうというふうなことを言っております。この点から、先ほど
長官が言われましたように、現在開発中なんですけれども、アメリカが脅威を持つ年代としましては七〇年代半ばぐらいじゃなかろうかということがレアード
長官のことばから推定される、こういうことが言えるかと思います。
-
○永末委員 私も一九七五年までにそういう
状態が起こると見ております。そこで問題は、核の話ですから、安保体制というものはアメリカ一方国だけの核の抑止力にたよっておる。しかし世界は中共の核武装とともに、特にアジアはいろいろな組み合わせが可能になってまいります。
防衛庁長官はわが国の核に対する安全の度合いを高めるために、アメリカとソ連の二つを核防条約の中で相手方として、そしてわれわれがその他の非核国で核保有能力があると世界が認めておられるような国々と語ろうて共同の核保障を取りつけるほうが、アメリカーカ国の核保障よりもより有効だ、こういうお考えはお持ちになりませんか、伺いたい。
-
○
有田国務大臣 これはなかなかむずかしい問題だと思うんですよ。両方にあいそをつくって、かえって一方の力をそぐというようなおそれもある。私は核拡散防止条約
そのものには賛成でありまして、ソ連もアメリカも、またその他の国々も核拡散を防止していわゆる核軍縮をやってもらうということは非常に賛成だ。けれども、両方に秋波を送ってはたしてそれがうまくいくか、これは私は疑問だと思います。
-
○永末委員 私、両方に秋波を送ってというんじゃないのです。現在の核兵器というものは昔の兵器と違ってきわめて射程が長い。それはいままでの主権国家の国境、すなわちバウンダリーというものを否定してきている。やはり違った世界像、核戦略の中では違った国家関係のからみ合いというものを考えていかなければ、少なくとも核兵器下における安全というものの度合いは私は高まらぬと思うのです。いままでの国家観念を前提として何か一国に、こっちにつき合えばこっちに秋波を送った、そんな問題ではない。しかもいま現実に私が提案いたしました問題は、いまのところアメリカ、ソ連と対決姿勢をとっておる中共が現実に核戦力の充実をはかってくる過程においては、わが国としては、いままで安保体制だけがただ
一つの核保障だと思っているような膠着した体制では、なかなかこの転換期を抜け切ることはできない、そういう意味で言っておるのであって、秋波ではありませんよ。われわれが核についての見識をどう持つかというぎりぎり一ぱいの考え方だ。もう一回。
-
○
有田国務大臣 でありますから、この核拡散防止条約の趣旨には賛成だ、いわゆる核軍縮には賛成だと言っておるのですが、さてどこと条約を結んでどうするというときには、私は最も信頼する国と友好関係を結ぶのが適当ではないか、こういうことを言っておるのです。
-
○永末委員 まだ私の言うことがよくわからないようですから、ひとつ御検討を願います。核の問題はそういう重要な問題で、きょうはわが国の安全に含んでおる問題の提起を
一つしておきますから、せっかく
防衛庁長官、御検討願っておきたいと思います。もう五年でがっちりこの問題にわれわれは当面せざるを得ないようになるのですよ。
さて第二の問題は、先ほど日米安全保障体制を基調とする、こういうことでございました。どうもこのごろあなたのほうの政党の中に、自主防衛論ということを言う人があるのです。われわれ民社党は、すでに三年前から自主防衛論を申しました。このごろあなたのほうで自主防衛というけれども、一体われわれの言う自主防衛とあなたのほうの自主防衛というものはどこがどうなっておるのかと、よく
国民各位の質問を私は受けるのです。そこで
防衛庁長官は、
防衛庁として自主防衛ということを考えられ、言われたことはございますか、伺いたい。
-
○
有田国務大臣 私、みずからも自主防衛ということを言うたことはございます。
-
○永末委員 現在の体制は自主防衛ですか。
-
○
有田国務大臣 これはいろいろ見方がございます。実質的に、たとえ日本における兵備といいますか、これが少なくとも、日本がイニシアチブをとって、そして自分の国は自分で守るという、その精神的なことがしつかりしておることも
一つの自主だと思いますが、私がしばしば自主防衛ということを言うのは、これはおしかりを受けるかもしれませんが、私の常に言っておることは、日本は憲法上許されないものがあるのだ、またその他いろいろの
国民感情において許されないものがある、そういうものを打ち破ってやろうなんということは考えないが、少なくとも日本がここまで国力ができたのだから、日本の力によって、少なくとも通常兵器による侵略に対してはみずからの力で防ぐ、その体制をつくるべきだ、こういう意味で自主防衛ということを私は叫んでおります。
-
○永末委員 あのね
防衛庁長官、おかしなことになりますよ。いまおっしゃったことを聞いておりますと、憲法上許されないものがある、
国民感情上許されないものがあるから自主防衛を言うておるということになりますと、何か、憲法上許されたら、あるいは
国民感情上許されたら、自主防衛と違うものがあなたの防衛方針の基礎に出てくるわけですね。自主防衛というのは、一体三次防に書いてありますように安保条約を前提にして成り立つものなんですか、そこをちょっとお聞かせ願いたい。
-
○
有田国務大臣 私はそういう憲法なり
国民感情、率直に言えば核の問題なんか
国民感情ですね。
〔
委員長退席、
伊能委員長代理着席〕
そういうことをやろうという考えはない。しかしいま日本で許される範囲において、これを日本みずからの力でやろうということは当然。いままでの経過を見ますと、いずれかというと、
自衛隊の成立の過程を見ますと、警察予備隊から保安隊、そうして
自衛隊に移り変わっておりますが、アメリカに武器も貸与を受ける、いろいろアメリカに依存したいままでの行き方、そういうようなあの当時の日本の貧弱な国内状況ではしかたがなかったかもしれないが、今日ではここまで国力ができておるのだから、日本の許される範囲で自主的に防衛をやっていこう、こういうのが私の言う自主防衛でございます。
-
○永末委員 あなたのほうでつくられた三次防の大綱によりますと、こうなっているのですよ。安全保障体制が基調だ、つまりこれが前提だ。そこでいわばその上に、あるいはそれを前提にしたその内輪で防衛力を整備するのだ、これがこの三次防の考え方、ずっとそういう考え方です。自主防衛というのは、なるほどいろいろな条件はございましょうが、少なくとも他国との関係を前提にしないで、一応自分で自国を守ることの構想を考えてみる、それと、それ以外に一体何ができるかということを考えてみる、それの内容と、他の国との関係。いまわれわれの一番近い関係はアメリカでしょう。そのアメリカとの関係を調整しよう、それを条約上表現する。私の聞きたいのは、いまの三次防に書いてあることと、あなたの党のほかの人が言っております、自主防衛をやって、そして安保条約はこれを補うのだという表現と、これは同じですか。三次防の表現と、防衛が先で安保条約はこれを補うのだ、こういう表現は同じですか、違うのですか。
-
○
有田国務大臣 ことばの上では違うと思いますけれども、私
たちの気持ちは、先ほど来言いますように、アメリカに依存する度合いを少なくして、少なくとも現在ではまだ日本だけで独自戦に対しても十分安全を期するということはどうかと思いますけれども、ここまで国力ができたのだから、日本の許容されていない面は、これは安保条約によって補完せざるを得ないけれども、まず日本の防衛というのは日本が主役で防衛するのがたてまえで、足らざるものを安保条約によってアメリカに補ってもらう、補完的にやる、これが私はほんとうの自主防衛じゃないか、かように考えております。
-
○永末委員 いまある
状態が自主防衛だと、いまあなたは内容を言われましたけれども、自主防衛というのは、われわれのほうに
原因があり、その結果もわれわれが受けるということ、そういうことを根本とされなければ自主防衛とは言えない。ところが安全保障体制の中で一番議論されているのは、われわれのほうの意思によらずしていろいろな前提がアメリカにつくられる、これは困るじゃないかという感覚が
国民の常識にあるわけですね。一体いまある
状態が自主防衛かと聞いたら、自主防衛だと言われるので、はなはだ観念上こんがらかってくる。われわれの考えている自主防衛とあなたの言う自主防衛とは違うわけです。それであなたの御感覚では、いまも口主防衛だから、これから別に自主防衛と言わなくてもいいわけですね。
-
○
有田国務大臣 私はさっき精神的ということを言いましたか、まだ遺憾なから――日本もだんだん目ざめてきておりまして、
自衛隊というものに対する理解の
程度が深まってまいったと思いますが、まだ完全に
国民みずからがみずからの国を守るというしっかりした体制ができているかというと、私は疑問だと思うのですよ。しかし、いま全然自主防衛がないかというと、そうでもない。けれども、その自主防衛の度合いというか、それをだんだん高めていって、日本の国はわれわれの力で守ろうという体制、しかしいろいろな条件があるから、その日本のできない面はアメリカによって補完してもらう、これが私のいま考えている自主防衛。でありますから、そういう方向に持っていきつつあるということと、現在がこうだということとは少し趣が違う。でありますから、いまのままで完全に自主防衛とは申しませんが、そこをだんだんみずからの手によって守っていく、そうやってだんだんと整備していきたいというのがわれわれの自主防衛の考え方です。
-
○永末委員 だんだんこれから自主防衛に持っていくということと、あなたが当初言われた、いまでも自主防衛だということとは違うのですよ。違いますけれども、いまも自主防衛だと言われるのでしたら、あなたは日本国の防衛のための
防衛庁としての統合的な防衛方針というものは立てられますか。たとえばわが国に対して直接侵略があると想定する。その直接侵略として、上陸か着陸があってやってくるでしょう。その上陸か着陸のためにわが国の陸、海、空三
自衛隊が一緒になって、目的はそれを防ぐという一点ですから、そういう
一つの戦略、それを動かせるためには何と何をわが方が独自でどうしなければいけないかというようなことがぴしゃっとありますか。あったら言ってください。
-
○
有田国務大臣 先ほど来言っておりますように、いままで全然自主防衛じゃなしに、他力本願ばかりで日本は何もやってないかというと、そうではない。その濃度が違う。私は、自主防衛ということを唱えながら、先ほど言いましたように、日本の許されている条件の範囲においてはしっかりと日本みずからの手によって守っていく、どうしてもいけない分をアメリカで補完してもらう、この自主防衛の
段階にずっと持っていく、こういう考えでありまして、いまのは全然自主防衛じゃないかというと、そうでございますとは言えない。しかし、その自主防衛の濃度をどんどん高めていくというのが私
たちの考え方であります。
-
○永末委員 知らぬ間に新しい概念を持ってきて、そしてその概念で説明しておるのは言語魔術といいまして、言語魔術をやってはいかぬ。
国民はわからないわけだ。つまり、いままで安保条約があるから安全だということの説明がずっと行なわれてきた。知らぬ間に去年の秋口あたりから自主防衛というのがちらちら言い出されて、このごろは自主防衛というものが非常に人々の目に映るようになってきた。自主防衛ということと、自民党政府が長年にわたって安保条約を基調としながら唱えてきた防衛とは違うわけですよ 自主防衛なら自主防衛になると、その内容というものを
国民としては知りたい。いまでも自主防衛だ、これから濃度をどんどん高めていくのだというのであれば、一体兵器生産をわれわれ独自でやっているから自主防衛だ、こんなことになりますか。
-
○
有田国務大臣 これはいままでも何回も言っておりますように、とにかく日本の戦力――戦力というと語弊があるかもしれませんが、
一つの力というものは兵器の面ももちろん大事です。いわゆる兵力
そのものも大事でございますが、それにも増して大事なのは
国民の防衛に対する理解、すなわち
国民とともに歩む
自衛隊、
国民がともどもに日本の防衛をやらなければならぬという気魄と気概、このことがきわめて大事だと私は思う。そういう点においていま完全かというと、必ずしも完全じゃないから、だんだんとその方向に持っていく、そして日本の防衛体制を全うしたい、こういう考えであります。
-
○永末委員 あなたのおっしゃったことはポイントですよ。自主防衛というのは
国民がその気にならなければできないものである。しかし、
国民がその気になってないかのごとく言われたが、その気にならせないのはあなたの責任です。政府の責任です。政府はいままで、日本の現在の平和をささえている条件を明確に
国民に説明することをしない。この
委員会で問題になりましたが、国防白書なんて――白書なんかどうでもいいですけれども、政府が責任をもって現在の平和の条件を
国民に説明をする、そういう説明書というものはいまだかつて出たことがないですね。私は昔から、質問いたしましたら、そのうち出しますというのを歴代の
防衛庁長官に御答弁いただきましたが、いまだに出たことはない。出たことがなければ
国民はわかりませんよ。わからない
国民に、単に頭から、自分で自分の国を守る気概を持てと言ったって持ちようがないわけです。やはり平和の条件というものを、
国民に政府の信ずるところを示して、それに協力を求めるということが必要ですね。この前あなたは、そのうちに国防白書を出そうというようなことを言われましたけれども、そのうちじゃなくて、どうですか、ぴっちり出せませんか。国防白書ということばはどうでもいいのです。政府が責任をもって現在のわが国の平和の条件を
国民に示す、こういうものを出さなければ
国民がその気にならぬのはあたりまえだと思う。処士横議のような国防論が起きては困りますよ。どうですか。
-
○
有田国務大臣 私はそういうような気持ちでもって、
国民とともに歩む
自衛隊、
国民の防衛に対する深い理解と協力を求めなければならぬ、ついては国防白書というものを出して、そして一そう
国民の防衛の意識を高揚せしめたい、そのような考えでせっかく防衛白書を起草しつつあるという
段階であります。私はこれを近く
国民の皆さんに明らかにしたい、かような考えであります。
-
○永末委員 近くというのはいつごろですか。
-
○
有田国務大臣 これはこの前もお答えしたと思いますが、そんなに二年も三年も先だというのではなしに、私は八月何日だ、九月何日だというはっきりしたことは申しかねますけれども、少なくともこの秋ごろから年内までには出してみたい、こういう考えております。
-
○永末委員 秋ごろから年内まで、しかと承っておきます。責任をもって出してください。
さてもう
一つ聞きたいのは、現在核戦略時代といわれておりますけれども、どうも核戦略時代といっても、現実に核戦争というものは起こりにくくなっておると思う。しかし核戦争は起こりにくくなっておるけれども、逆に通常戦力を集結して、そして一挙にある部分の現状変更を行なって、それを既成事実にしようという企てはあとを絶たないのではないかという気がいたしますが、あなたはどういうお見込みでございますか。
-
○
有田国務大臣 そういう諸国もあるかと思いますけれども、しかしとにかくこれ以上核がふえるということは世界人類のためには非常に不幸なことだと思います。そこに核拡散防止条約というものが出てきたのではないかと思います。
-
○永末委員 そんなことを聞いてない。核戦争は起こりにくくなってきておる、しかしその反面、通常戦力を集結して一挙にある部分の現状変更を国際的に起こして、そしてそれを既成事実にして突っ走ろう、こういう企てのほうが起こりやすくなっておる、それは逆に核戦争が起こらないからですよ。しかしこれがいままでは、それが起こるならば一ぺんにエスカレートして核戦争になるだろうという予測をしておったが、逆であって、むしろそれはある
程度までいったら核の抑止力がきいて、広がらずに、そこでしょぼっとしてしまって現状変更はない。しかし現状変更をやろうという、そういう事件が過去においても起こっております。だからあなたのお見込みとしては、そういうものがわがほうの周辺にも起こり得る余地があるかということをお伺いしておる。
-
○
有田国務大臣 そういうことが起こるとは断言しかねますけれども、御承知のとおり世界各地にいわゆる局地紛争というものが巻き起こっておる。そういうことが全然ないかというと、私はそういうこともやはり心配だ、かように思いまして、やはり平素から、そういうことがないことを期待しますけれども、やはり備えたけはしておかないと大事な日本というものが危うくなってはたいへんだ、かような考えであります。
-
○永末委員 あまり話を
一般化しないで、わが国の防衛を聞いておるのですから、そこへ焦点を置いてお答え願いたいと思うのです。
そこで、あなた自主防衛があるなんて言われましたから、わが国の防衛方針をスロー
ガン的に申しましたらどういうことになりますか。たとえば、憲法は、他国にまで派兵して戦うというようなことを予定しておる憲法ではございません。これは制約ではないのであって、われわれはそういう方針でわが国の安全を保とうと日本の
国民は決意した。その決意があの憲法にあらわれておるわけですね。そこで、そうならばわれわれはそれを守っていくわけでしょう。
自衛隊は、これも
自衛隊と書いておるのであって、ほかの文字を使っておりません。そうすると、それを一言で言うならば、守っていくとしたら戦略姿勢、専守防御という方針かある、そういうことばで表現したならば、あなたの自主防衛方針というのは何ですか。
-
-
○永末委員 はなはだけっこうです。そういう方針をとって、それは貫いていただきたい。あなたのほうの内部にも、よく、攻撃は最良の防御なりなんてことを考えておる人にちょいちょい私も遭遇するのですが、そうじやないのだ、専守防御というものに徹していくということが、これが、わが国が決して他国に対する昔のような侵略の意図も持たないし、そのもとによって力を持っておるのではないということを他国に与える、その意味では、大きな意味でわれわれの安全を保つにきわめて必要だ、再守防御の方針というものをしっかり踏んまえて、その方針のもとに私は防衛力の整備をやっていくべきだと思います。
さて、そこまでいきましたので、もう
一つ伺っておきたいのでありますけれども、アメリカの通常戦力による援助というものは、一体どのくらいのスピードでわれわれは援助されるとお考えですか。たとえば空の場合はどうなりますか、お答え願いたい。
-
○
有田国務大臣 それは事態によっていろいろ変わると思います。それで、先ほど来言いますように、局地的に侵略を受けましても、通常のものは、だんだんと日本の防衛力が充実してくれば日本だけの力でこれを防御していきたい、かように考えておりますが、やはり日本の少なくとも現在の防衛力は、しっかりしていると言いたいけれども、それほど万全を期するわけにはいかない。したがいまして、そのときの情勢によりますけれども、アメリカは、現に空軍は日本にもおりますし、また沖繩にもおりますし、また本国からもいざというときには出てくることと思います。そのときの戦局の状況によって、どの
程度来るかということが変わってくるかと思います。
-
○永末委員 私の伺っているのは分量と違うのです。速度の問題です。つまり、あした来るのか、三日かかるのか、四日かかるのか。それは来る分量にもよりますよ。一番早く来るのは空でしょう。空の場合に、アメリカの持っておるのは、わがほうの周辺に航空基地があることは事実だ。わがほうの中にもありますが、兵力はきわめて少ない。アメリカから飛んでくる場合には一体何日かかるか。第七艦隊がどこにいるのかわかりませんけれども、そこから部隊として作戦基地まで来るのはどのくらいかかるか。大体日数が計算できているでしょう。それを答えてください。
-
○
有田国務大臣 いまのスピード時代ですから、ことに最近の科学の進歩によりまして相当スピーディーにそういうことができるようになっておりますが、現に日本にも相当おりますし、沖繩にも現在相当おります。しかし、大体どのくらいの日数がかかるというようなことは、ひとつ政府委員のほうから答弁いたさせます。
-
○宍戸政府委員 事柄の性質上、具体的に時間なり日数をあげることはきわめて困難だということは先生もよく御存じの上でのお尋ねだと思いますけれども、つまり標準的に申し上げて、空が一番早い、海がその次である、陸はそのあとであるということがまず言える。それで、これも典型的な標準的なことしか申し上げられませんが、様相自体で幾らでも違います。空の場合は現に相当な兵力が本土なり、あるいは沖繩を含めて本土周辺におりますから、支援に来てくれる単位が、場合によっては時間単位、おそくとも日数単位であることをほぼ期待しております。それから海の場合は、お尋ねの第七艦隊という強力な艦隊が周辺におるわけですけれども、これが支援に来てくれる時間は時間単位ではない。早くても日単位、あるいは週単位であるということが言えるかと思います。陸上兵力の場合はそれが大体半月を含めての月単位、早くて週単位であるというふうなことが言えるのではないかというふうに
一般的に考えております。
-
○永末委員 自主防衛というのは、まさしくそこにやはりはっきり考え方の焦点を定めねばならぬ問題なんですね。われわれがやらなければならぬ分量がはっきりあるわけですね。したがって、いまおっしゃったように、即時反応なんと言われましても、反応するようになってない。プエブロのときに、一体アメリカの第七艦隊が事件が起きましてから完全に日本海に入ってきたのは何日かかりましたか。
-
○宍戸政府委員 日数単位でございました。大体四日から五日くらいだったような記憶でございます。
-
○永末委員 アメリカ軍の最終的な表現としては、二月四日にB52が嘉手納の飛行場に配置をされた。やはりアメリカ軍の展開もそれくらいの時間がかかるわけですね。それを考えるならば、われわれのやるべきことは、やはりその内容が出てくると思うのです。さてしかし、
防衛庁長官、あなたの気持ちは言われたが、そういうことをあなたのほうで計画していますか。
-
○
有田国務大臣 そういう構想の上に立って、これも急にいま言って、この次の四十五年ですぐそれが完成するかというと、なかなかそうはいかぬと私は思う。やはり日本の
一般の民生の面も考えていかなければならぬ。しかしながら、いま申したような構想の上に立って、国力の許す範囲でできるだけそういうことに積極的に向こうべきだ、かように考えております。
-
○永末委員
防衛庁長官、民生のことを考えるのですか。
-
○
有田国務大臣 もちろん、
防衛庁としてはほかのことを考えなくてもいいとおっしゃるかもしれませんが、しかし、私も政治家の一人でもあるし、国務大臣として考えたときに、そうひとり、ほかのことはどうなってもいい、防衛力だけ充実したらいい、そういう考えも私は持ってない。やはり国力にふさわしい防衛力という、そういうことを常に考えながら、しかもわが国の防衛の基本方針も国力、国情に応じてなす、こういうことでざいますから、それが先ほど来言いますように、国力がここまできたのだから、もう少し大きく伸びてもいいじゃないか、こういうことを私ば主張しているのです。
-
○永末委員 政治家
有田さんに、民生のことを考えるなと言うておるのと違いますよ。
防衛庁長官としては軍事力のことをお考えになるのが当然である。しかし、それを考える場所があるわけですね。あなたが議員である国防
会議というものがあるわけです。国防
会議では、民生のことも産業のこともその他万般のことを考えてやることになっておる。ところがこの前予算
委員会で聞いてみましたら、あなたの同僚の経済企画庁
長官は、国防
会議の議員ですけれども、コマーシャルベースはかり考えてあまり防衛のことを考えておらぬようだ。あなたのほうで防衛計画の大綱をつくられても、国防
会議では一度もそれに関する産業の調整計画は考えたことがない、こう言うので、私は心配しているのですよ。だから、あなたが
防衛庁長官として、
防衛庁の中だけで民生を考えることは私は不必要だと思うが、同時に国務大臣であり国防
会議議員として、国防
会議の中でそれを言われることは私はきわめて必要だと思います。そこで、国防
会議の事務
局長さん、国防
会議というのは、私は設置されたときには号、れ相応の任務があったと思う。ところがどうも、期待して見ているのだけれども、いまのような要望にこたえた運営がなされていない。
防衛庁長官は自主防衛ということを口にされる。何か専守防御という防衛方針にのっとって考えておられるようだけれども、そこまでいけば
防衛庁だけでできる問題ではないわけで、もっと各省にもわたり、国の政府の活動のいろいろなところにかかわる、それがあわせて一本になって防衛構想として出てこなければならぬ問題だと思う。それをやる官庁は
防衛庁ではないと私は思う。
防衛庁だと思って即断すると、昔の三矢研究事件みたいなのが起こる。それは政府全体の責任であり、それを担当する場所は国防
会議だと思います。
防衛庁長官そう思いませんか。
-
○
有田国務大臣 もちろん筋としてはそうだと思います。しかし、私も国防
会議の議員の一人であります。そういうことでありますから、何もほかのことを考えずに、民生のことなど考えずに防衛のことだけどんどんやって、五割でも六割でも進めよう、そういうことも私は常識としては考えられない、こういう筋のことを言っております。
-
○永末委員 私はあなたに、民生のことを考えたらいかぬなんてひとつも言っていませんよ。ただ、あなたが軍事力の責任者だから、それはもう真剣に考えてくださいと言っているだけです。ただ、民生のことを考え、ほかの産業のことを考える場所は国防
会議だから、国防
会議の議員としてそれは考えてください。国防
会議の事務
局長、国防
会議というのは佐藤内閣ができましてから数回何か開かれたようですが、こういう種類のものが正規の国防
会議の
会議で議論になったことはございますか。わが国の防衛方針だとか具体的な
一つのある戦略の構想だとか。私は承っておると、防衛力整備計画というものは、飛行機を何機買うかとか、そういうことは議題になったような気がいたしますけれども、どうも一番重要なそういう方針に関することが国防
会議で議せられあるいは固められたということを不敏にして聞いたことがないのですが、ひとつ御
報告を願います。
-
○海原(治)政府委員 国防
会議でどのようなことが検討されたかということにつきましては、これはそのつど責任者が外部に発表しました以外は公表しないことになっております。これは、事柄の性質上御了解いただきたいと思います。
それから、従来の国防
会議の中で、いま先生のおっしゃいましたようなことが議論されたかどうかということにつきましては、いま申しましたようなことでございますから、その当時出席しておりました者でないとわからないわけでございます。ただ、私のほうには、事務局におきまして、いわゆる懇談会、これも正式の国防
会議でございますが、その懇談会を含めまして、毎回どのようなことが検討されたかということの記録がございます。正確な表題もございますので、これから私の知る限りのことを申し上げますと、いま先生のおっしゃったようなことは、そのつど討論されたと考えられますけれども、私の体験では、具体的にいま御提示のありましたような形でのお話というものは、私の知る限りではなかったと思います。
それから、なお、国防
会議のあり方につきましては、従来内閣
委員会、それから予算
委員会等におきましてもいろいろと御意見がありました。これにつきましては、先般も受田先生からこの席で御質問がございましたが、従来、政府としましては、今日の機構のあり方、それで十分だということをお答えしております。
-
○永末委員 国防
会議というのは、もう少ししゃんと内容を持って、私はこういう種類の問題をやってほしい。
防衛庁では産業の問題とかほかの問題はできないわけですね。それは国防
会議しかないわけです。したがって、あなたは事務
局長であって、その主任の大臣は内閣総理大臣ですから、これは内閣総理大臣に注文をつけなければならぬ事項でありますが、
防衛庁長官も、
防衛庁で全部やれないんだから、それは国防
会議の議員として、国防
会議の中へ持ち込んで、そしてこれとこれとはあなたのところでやれと、こういうことで、
国民はそれを受けて初めてわかるわけなんですね。だから、国防白書なんかもあなたのところだけでつくるということをあまり気ばらなくていいのであって、もう少し広範な意味で――私が申しておるのは、現在平和だ、その平和の条件を
国民に知らせるのですから、やはり権威のあるものをおつくり願いたいと思うのです。
さて、そういうことで、天体のあなたの方針をいま聞いておるわけですから、そこでちょっと空のことを伺いたいのですが、大体、二十億円を出してファントムF4Eを買っていくわけですから、86Fはだんだん減ってくる。104もこれからだんだん減っていく。これはファントムの百四機ができあがるころ、一体どれくらいの保有実動機数になりますか伺いたい。
-
○
有田国務大臣 F104それからF86合わしてどういうようになるかということは、政府委員のほうからお答えいたさせます。
-
○宍戸政府委員 四次防末で申し上げますと、ファントムが四飛行隊、それからF104がほぼ五飛行隊になる見込みでございます。86F部隊はゼロか一
程度残る、その
程度に見込んでおります。
-
○永末委員 現在は十五隊ですね。それから、そのころになると十隊か九隊になってしまう。そうしますと、伝えられる四次防では新しい有人戦闘機をつくる、こういうことですか。
-
○
有田国務大臣 四次防においては新しいものをつくっていきたい、かように考えております。
-
○永末委員 その場合、現在対地支援、対艦支援用としては86Fが使われておりまして、いまおっしゃったように、四次防の終末期にはこの86Fというものはみんななくなってしまう。そうしますと、対地支援、対艦支援のために、一体どういう航空機を使おうというお考えか。あるいはそんなものは要らぬというお考えなのか。
-
○
有田国務大臣 要らぬとは申しません。私どもはいまだ四次防をつくっておりませんから、明確にこうだと断言することをはばかりますが、いま申し上げたように、XTといいますか高等練習機、あれをつくっております。これが非常に順調に進んでおります。それを今度はその機体を利用して、そして戦闘機に使いたい、かような考え方を持っておるわけでございます。
-
○永末委員 そのXTはいつできるのですか。
-
○
有田国務大臣 いままで順調に進んでおりますが、完全にできるのは四十八年ですか――四十八年になると記憶しております。
-
○永末委員 私が伺ったのは対地支援、対艦支援ですが、四十八年に何機できるのです。
-
○
有田国務大臣 いまのやつは練習機でございますが、そこでこちらも自信ができるわけですから、そういう対地支援のようなものは、そこにXTの機体を利用していくようにしたい、こういう考えであります。
-
○永末委員 四十八年にはあなたのほうの計算でも86Fは六隊になるわけだ。四隊、四隊で減ってくる。どうも対地支援用の86Fのほうが早く減るらしい。そうしてあなたのほうの四十八年と称せられるときに最初の練習機のモデルができても、それから実験をして、それからそれに機数をそろえるのはあと三年、四年かかるでしょう。まさに四次防の最終期です。その最終期には86Fはないわけだ。そうするとあなたの言われるように高等練習機のわがほうの生産をやって、それを何か対地支援に使おうなんというものは、ちょうど86Fがなくなったころ機数がそろうかそろわないかという
程度でしょう。話が違うじゃないですか。
-
○
有田国務大臣 まだ四十八年ごろにはF86Fが全然なくなっておるわけでもございません。そういうようなことを見合いながらわれわれは計画を進めておるわけでございます。
-
○永末委員 あのね、
防衛庁長官、私が自主防衛とあなたが言うたのはあやしいというのはここなんだよな。ここがあやしいというのです。一体わが国に上陸をしてくるためには、船が来るでしょう。船に兵器と人間が乗ってわがほうに来るでしょう。そういうことを想定せぬでよろしいというなら
自衛隊やめたらいいのであって、想定しているから考えている。その場合に、海の上を進んでくる船をやすやすと上陸させて、それから陸上
自衛隊が迎え撃つということではないとぼくは思う。やはり進んでくるものを上陸前に破砕をしようということは当然考えられる。その上陸してくるものを排除する力は、いままでの戦訓に考えれば、空中からの攻撃が一番でしょう。それならば一体対地支援、対艦支援ということを本格的に考えるべきじゃないか。あなたがいまおっしゃったように、何か全部は減っておりませんからではない。一体わがほうの航空兵力というものは何を任務に考えるのか。要撃能力が一番なのか、それとも対地支援、対艦支援を本格的に考えるのか、それを言ってください。
-
○
有田国務大臣 要撃能力というものは非常に大事です。同時に対地支援、対艦支援ということも大事だと思います。そこで、おそらくあなたはF4EJの専用爆撃装置をはずしたことに触れてこられるのではないかと推定されるのですが、(永末委員「早いですな」と呼ぶ)飛行機だけに実は早いんですよ。――と推定されるのですが、その間を、このF4EJも全然やらぬというわけじゃない。専用爆撃機がないだけでしてね。それはやはり爆弾も積んでいくわけですからして、それだからそういうことを、過渡的に不十分であるかもしれぬけれども、まあまあそういう働きも果たさせて、そうしてその間をぬっていこう、そうしていよいよになればどんどんとつくっていきたいというのが私どもの考えなんです。
-
○永末委員 よくわからないのですがね、あなたの言っておられることが。ぼくは別にそこまで聞いていないのだから、先回りしてあなた答えておられますが、そこを質問しろというなら質問しますけれども、私が伺いたいのは、わがほうの航空
自衛隊というのは一体何に使うのか。私は国家的な戦略戦術と申し上げたのはそこなんであって、いままでの経過から見たら、アメリカの要撃戦闘機隊がなくなったから、そこに要撃戦闘機隊をつくれといって86Fをもらう、それから今度104をつくる、こういう経過であった。自主防衛というならわがほうが独自に、要撃だけではない、対地支援、対艦支援が必要ならそれも考えるということで初めて自主防衛になるのでしょう。だからたまたまとかいうことではなくて、もっと積極的に、進攻してくる相手方の分量というものを考えたら、これを排除するためにはどのくらいの力が要るかということが計算に出てくるはずだ。それならばそれによって所要の兵力量の算定ができるはずだ。そういうことを私は自主防衛的な発想だと思うのです。それを、あなたのいまのお話なら、二十億円も金を出して一機飛行機をつくって、それが不十分であるけれども爆撃もできますというのでは通らないのではないですか。不十分ではない、この飛行機を使うならば相手方の上陸を企図するそういう船団については、これだけの機数があればこれだけのものは完全に排除してみます――空中戦等もありますよ、そういうことを
国民に説明し得て初めてあなたは責任を果たすことになる。いままでの、あなたの前任者の答弁では、何か足が長いからというようなことで変なことにかかずらわって、爆撃照準器もみんなはずすのだという話をしておられた。しかしながら、同時に、その飛行機は爆弾を積むことができる、それから飛行機対飛行機の戦闘のためのレーダーを積んでおるのであるから、だからそれでもって対地支援、対艦支援もできますと、こういう答弁であった。あなたは一体そういう不十分な爆撃装置、爆撃ということばがいやなら、不十分な対地支援能力を持ったままこの百四機のF4Eを装備されるおつもりなのか、それとももっと有効にこれが使えるように装備をするおつもりなのか、それをお答え願いたい。
-
○
有田国務大臣 いまのF4EJは御承知のとおり爆撃専用装置をつけてないことにしておりますが、これはやはり外国に攻撃的脅威を与えるつもりは日本はないのだ、こういうことの示唆としてつけないことにしておるのです。しかし、おっしゃるように日本にどんどん入ってくる船舶の輸送その他に対して、日本に上陸せんとするものをぽかんとしておるわけにはいかない、そういうものに対しては、さっき言いましたように四次防計画でそういうものを撃破する航空機もつくりたい。ここで私がはっきり何機こうだこうだと言うことは、ちょっといま、四次防計画の方向は一応きめておりますけれども、まだ作業がそこまで進んでないんですよ。だから、そういうものを使うようにしたいということを言っておるだけであって、何機何機ということをここでちょっと、来年、再来年あたりになればそういうことは明確になると思いますが、いまのところそういうことがはっきり言えないことは残念でございますが、考え方としてはそういう考え方で進めたい、かように思っております。
-
○永末委員
防衛庁長官、F4Eは空対地レーダーやコンピューターやコントロールボックスをはずしておりますが、しかしあと練習機ができてきて、これをひとつ改装して、いま申し上げたようなものを積んで有効な対地支援能力を持った飛行機に仕立てる、こういうことですか。
-
○宍戸政府委員 ちょっと先ほどの
長官の御答弁に補足して申し上げたいと思いますけれども、わがほうは防空要撃能力をとにかく高めるということをまず防空構想の第一の主眼にしております。現在は、それは104と86Fでやっておりまして、四次防の中の一部であるファントムを百四機選びましたのは、まず防空要撃能力を現在よりも高めよう、また現在働いております86Fの減りぐあい、それから104も若干減りますが、それを量的にも補い、かつ質的に補おうということが第一の主眼でございます。
先ほど先生お尋ねの対地支援についてはどう考えるかということにつきましては、現在86F部隊が四個部隊、四個飛行隊をそれに充てるようにしております。しかし能力が必ずしも十分じゃございません。その
数字は、先ほど私、四次防末ごろ、つまり五十一年前後については86F部隊は大体一残るか残らない
程度に減るだろうと申し上げましたが、四十八、九年ごろはまだ86F部隊、特に対地支援の任務を持ちます86F部隊は四十九年、五十年前後にはまだ残っておる予定にしております。つまり防空のほうの部隊が先に落ちまして、対地支援のほうは任務上わりにあとまで残るという計算をしております。その補充として何を考えるかということが次の第四次防の課題の
一つでございます。で、まだ検討中でございますけれども、現在開発中のXT-2が候補の
一つになるであろうということを
長官お答えになった、こういうことでございますので、その点ちょっと補足して申し上げます。
-
○永末委員 私が言うておる統合戦略というのは、そういうことを考えて計画を立ててくださいというのです。あなた分量を言わなかったでしょう。四十八年、九年にまだあります――ありますよ。しかし、一隊残っておるか、これが二隊か四隊かということが問題でしょうね。そういうことをやはり
国民に説明しなければ、
国民はわかりませんよ。F4Eの問題だって、事の経過で積まないなんて言ったけれども、ほんとうにそれを積まないほうが――積んだら一ぺんによその国が脅威を感ずるかどうか。これは意図に違っておる。兵器に罪はありません。機械には意思がないのだ。機械を使うのは人間でしょう。だから、あなた方政府のほうが一体どういう意図でその力を持っておるか、兵器を持っておるか、そのことがわがほうの周辺国にはっきりわかるならば、それに対して脅威感を持つということは私はないと思う。
日本の国はどんな国ですか。細長い国でしょう。
北海道の一番上から沖繩まで何キロありますか。防衛
局長、何キロありますか。
-
-
○永末委員 わがほうの小牧の飛行基地から大陸のほうに二千キロ向けたら、その中に北京は入りますか、入りませんか。
-
○宍戸政府委員 入ると思います。
-
○永末委員
防衛庁長官、そういう話なんだ、F4Eの話は。兵器に罪はないと言うのだ。足が長いから爆撃装置を持たせない、そんなこと本質が違うでしょう。F4Eをたとえわがほうが入手をしても、その使い方はこうだということが相手方にわかるような外交方針、わがほうの防衛方針というものがあるならば、私は相手方は何もそれによって脅威を持たない、脅威を感じないと思う。わがほうの領土内の支援のためには足の長い飛行機はぼくは必要だと思う。そういうことを勇敢にじゃんじゃん言うべきだと私は思います。したがって、爆撃装置に罪があるかのようなことを言って、そんなことを
国民に思わしたら、
国民は高い金を出して、それで性能の悪い飛行機を
防衛庁は買うということになったら、むしろ逆にあなたの責任を問うというようなことになりかねないかもしれません。そういう意味合いで、兵器と、
防衛庁で立てるであろう戦略戦術の関係というものをもう少しきっちり考えて――
国民の税金でこれはみなまかなうわけだ。
国民の納得できるような説明をする、そういうことをひとっことしじゅうに出るであろう国防白書にはやはり出してもらいたい、これを強く要望しておきます。
それから、パイロットはちゃんとできるのですか。苦しまぎれにF4Eを練習機に使いますということを言って、計画を立てておりますけれども、パイロットは間違いありませんね。お答え願いたい。
-
○
有田国務大臣 大体パイロットの計画も飛行機の製造に順応して計画を立てておりますが、その詳細なことは政府委員から答弁させます。
-
○永末委員 詳細なことはいいです。その結論だけ聞かしてください、あなたの責任問題だから。
-
○
有田国務大臣 万遺憾なきを期したい、かように考えております。
-
○永末委員 海の場合をちょっと伺っておきたいのですが、一体
防衛庁長官は、自主防衛という観点からわがほうの海上
自衛隊にどういう任務を与えておられるのですか。外航防衛、対潜哨戒、いろいろなことがございますね。海上防衛、地域防衛、いろいろなことがございますけれども、あの護衛艦の四十数はいをもって、どういう任務を主たる任務として与えることが日本の防衛のためによろしいとお考えか、承っておきたい。
-
○
有田国務大臣 わが国周辺の領海はもとよりのこと、ことに海峡、港湾その他海上交通に対してその安全を確保したい、こういう考えのもとに、一そう海上
自衛隊の増強をはかっていきたい、かように考えております。
-
○永末委員 けさの新聞を見ると、あなたのところの総理大臣は、どうも海上
自衛隊の力が足らぬと言われたという記事が載っておりました。つまり、いままで、そういういまあなたのお答えになったような答えがあるわけだ。われわれ
国民として知りたいのは、たとえば三十隻の船を護衛する場合には何隻の護衛艦が要るとあなた方は兵力量算定の場合考えておられるか。三十隻の船をフィリピンの南まで送るという場合に、一体何隻の護衛艦が必要だと考えておりますか。
-
○宍戸政府委員 船団を護衛する場合のいわば護衛のしかたの問題だと思いますけれども、一応われわれ現在描いております構想では、一護衛群を
一つの戦術隊にしたいということでございまして、外航護衛にそういう群を二群持ちたいというふうなことを一応の基礎にしております。これはまたいくさの様相によって幾らでも違ってくるわけですけれども、ごく標準的な試算を申し上げますと、大体千三百海里くらいを護衛するとして――先生のお示しのはちょうど三十隻でございましたが、三十隻の試算は実はしておりませんけれども、五十隻で試算した場合に、二群ございますと年間二十数回の護衛が計算上可能である。そのときの被害率というようなことが実は問題でございますけれども、とにかく二十数回護衛することが可能であるという試算を一応しております。それでトン数に直しますと約五千トン
程度になる。(永末委員「五千トンと言ったけれども五千万トンでしょう」と呼ぶ)万トンでございます。失礼しました。現在の輸入量が約三億数千万トンでございますので、六分の一か七分の一くらいを、五十隻船団を組みまして、二群ありますと千数百海里護衛することが一応可能であるというふうな試算をしております。
-
○永末委員 その場合に、潜水艦だけを制圧する護衛艦がことに必要だと思います。そういう状況になった場合、二群そうやって出しておいて、年に二十回といえば月に二回でしょう。十五日に一ぺんということになりますね。しかし、潜水艦がうろうろしている情報が入る、それを制圧しに行かなければならぬ、こういうことになりますと、その軍艦が要りますね。一ぱいの潜水艦に何ぱいくらい必要だと思いますか、制圧用の護衛艦が。
-
○宍戸政府委員 一ぱいの潜水艦でどうだということは、計算はきわめて困難だと思います。われわれが一応描いております標準的な構想としましては、護衛艦を、将来の確保としましてはDDHを中心にしました護衛艦を八ぱい
程度は持ちたいという構想を一応描いております。さらに常時一機はP2V
程度の対潜哨戒機が空から対潜哨戒をする。空の対潜哨戒機と護衛艦数はいがあわせて護衛する、そういう構想を描いておるわけでございます。
-
○永末委員 私の聞いておるのは、潜水艦情報が入った、それを制圧するためにP2Vも飛ぶでしょう、護衛艦も行くでしょう、そうすると一目標に対してどのくらいのものを動かせるかということになると、あっちの目標がある限度をこえたらだめだということになりますね。どっちへ回すか。そうすると四十数隻の船腹というもので不十分かどうかということになってきますね。そういう計算はしておられるですね。
-
○宍戸政府委員 ちょっとお尋ねの趣旨がよくわかりませんけれども。
-
○永末委員 こういうことだ、いま六万五千トンの護衛艦の保有トン数があるわけだ。四十一隻か二隻でしょう。それを海上護衛、外航護衛とそれから対潜警戒に充てる。付近の海域の何とかいうのは別にして、それで一体足るか足らぬかということを
国民に説明しなければなりませんね。だからあなたの言うように、二群に分けてどうだと言われたが、二群でもいまのようにたった五千万トン
程度では生きていけません。そうしますと群をふやさなければならない。一群の編成はわかっておる。そうするとそのほかに潜水艦を制圧するということを考えた場合に、足るのか足らぬのかということが計算に出てくる。だからそれを聞いているわけです。
-
○宍戸政府委員 足るか足らないかということでございましたら、現在の力としてはきわめて不十分であるという感じを持っております。もともと潜水艦が出ることを防ごうというのが護衛の趣旨でございますので、本来、先ほど申し上げましたように船団に直につける護衛のほかに、周囲を、沿岸をずっと絶えず飛行機なり船で常時哨戒をしまして、そこにめったに潜水艦が入ってこれないような態勢をするということがまず第一必要でございます。その戦力もまず十分でございません。それを前提にして、実際に船団が動く際に直衛をするということがまたさらに必要になってまいりますが、その能力も先ほど申し上げましたように必ずしも十分でないということを先ほど申し上げたわけでございます。
-
○永末委員
防衛庁長官、このごろ世の中で、わが海上
自衛隊がマラッカ海峡まで守備範囲にしたらどうだということが、わが国内のみならず、アメリカでもそういうことを言う人があるんですね、これどう思いますか。
-
○
有田国務大臣 そういうことを言う人がちょいちょいあります。また国会の中におきましてもそういう質問もございます。御承知のとおり日本の海運からいいますと、あの海域は日本の船舶が盛んに航行しておるわけですね。非常に重要な航路だと考えております。しかしわれわれのいまの海上
自衛隊の力をもって、アラッカ海峡もわれわれが責任を持って護衛すると口で言いましても、私は、現
段階においてはそれは言うべくして実際は困難だ、かように考えております。しかしそういう問題も、日本の、ことにアジアの石油の輸送ということを考えたときに、これは日本の産業といいますか、経済活動といいますか、われわれの日常活動の面においても、もしあの航路が閉鎖され、あの運航ができないということになってくると、たいへんなことなんですよ。でありますからわれわれも、いまそこまでの責任を持てるところまでいきませんけれども、何とかしてその航路の安全をはかっていかなくてはならぬ、こういう気持ちは持っております。私はそういう場合に処しまして、もちろん航路もいろいろと変えなくてはならぬ場合も出てきましょう、また石油源の地域も、ペルシャとかあの方面ばかりに片寄らずに、分散することも考えなくてはならぬ、また日本における備蓄のことも考えなくてはならぬ、ことに今日、ご承知でしょうが、私もそれを盛んに唱えてきた一人でございますが、原子力発電の新型転換炉とか高速増殖炉というようなものを急いでやらなくちゃならぬというようなことは、結局回り回って日本のエネルギー源をいかにして確保するか、石炭の
対策ということも講じ、できるだけ温存したいという御承知のとおりの政策をとっておることも、そういうエネルギー源の確保という点から考えておる。海上輸送の面においてもやはりその一翼を海上
自衛隊がになって、そうしてできるだけ日本の経済なり
国民生活のために守っていかなくちゃならぬ、こういう考えを持っております。
-
○永末委員 昨年の四月九日に参議院の予算
委員会で、わが党の中沢伊登子さんから海上の災害派遣というようなことについて話が出ました。
自衛隊の
一つの重要な仕事の中で災害派遣というのがございます。陸上の災害派遣は非常に口につくものがございますが、海上の海難があった場合に、これは海上
自衛隊がすぐに出たということはなかなか数が少ないのですが、海上保安庁の方、昨年の中沢伊登子議員の質問に対して、海上における海難があった場合の救助体制についていろいろ検討を加えるという政府側の答弁がございました。それから一年以上たっているのでございますが、どういう検討を加えられたかお答え願いたい。
-
○林政府委員 昨年の中沢先生の御質問の際に答弁いたしましたのを実は私きょう持ってまいりませんでしたが、遠距離海難がございまして、海上保安庁の持っております航空機、巡視船艇の力をもっていたしましては迅速、適切な救助がとれませんような場合には、そのつど
防衛庁海上
自衛隊ないしは外国の救助機関、それから外国の軍隊に援助を要請いたしております。新聞紙上にはあるいはそのつど載っておりませんかもしれませんが、
防衛庁のE2V機など非常にしばしば出動いたしておる、かような
状態でございます。
-
○永末委員 E2Vがマリアナに行ったこともございますが、去年の中沢議員の質問は、遠距離海難に対して、いまあなたがお答えになったようによその政府とか海軍に頼む――手が届かぬほうはしようがございません、しかしわがほうの近海でもう少し足の届き得るようなものを持っておれば何とかやれたのではないか、その意味合いで、いま開発が進んでできあがっておりますPSの活用はどうかという質問があった、それは検討するという話になっていたのですが、どうなっているか伺いたい。
-
○林政府委員 海上保安庁でも遠距離救難の要請が非常に強いものでございますから、本年三月にYS11の海難保安、救難用に改造いたしました一番機を入手いたしまして、すでに出動させております。それからマリアナの教訓に基づきまして二千トンの大型巡視船の二隻目が本年三月にできまして、これまたマリアナ海域に近いほう、つまり具体的には小笠原海域を中心といたしまして前進哨戒をいたしておりまして、海難がございましたときには短時間に現場に到達できるような体制をとっております。
先生がただいまおっしゃいましたPXIS型の飛行艇でございますが、これは御承知のとおり
防衛庁で二機引き渡しを受けて使っておられますが、海上保安庁ないし運輸省といたしましてもその性能には非常に深い関心を持っております。なおかつわが国の海事関係者、海上生活従事者がこのような飛行艇を海難救助体制の一環として持つようにしたいというような御要請の非常に強いことも承知いたしております。海上保安庁といたしましては、このPX-S型を救難用に使います場合に、若干研究問題があるということで、次のような点について研究をいたしております。まず第一はPX-Sの性能といいますか、諸元がどの
程度のものであるか、われわれがこのようなものであるというふうに知らされていることがそのとおりであるかどうかを確認するということでございます。さらに海上保安庁で救難用にPX-Sを持ちますときには航空法の規定が適用されまして滞空証明書が必要になりますので、この滞空証明書を獲得するためにどのような工事が必要でどの
程度の経費がかかるかというようなことでございます。
〔伊能
委員長代理退席、
委員長着席〕
さらに基地の事情によりましては飛行艇を水陸両用機に改造することが要請されるわけでございますが、それが可能であるかどうか、あるいは可能であるといたしましてどの
程度の時日ないし経費を要するかというような問題でございます。なお、海上保安庁の予算のワクの中では、このPX-Sが非常に高価な飛行機でございますので、その点からも研究問題がございます。しかしながら、先ほど申し上げましたように御要望が非常に強いということも十分承知をいたしておりますので、ただいま鋭意検討しておる
段階でございます。
-
○永末委員
防衛庁長官、いまお話しのようなことを海上保安庁は考えているわけですね。あなたは、
国民とともにある
自衛隊――まあ海の場合はあまり
国民と縁がないものですからよくわからぬ面があります、自衛艦に乗せてもらって喜ぶということはありますけれども。しかし、われわれの同志でございます海員組合は非常にこれを期待しておるわけであります。そこで、いま海上保安庁の最後のことばは、高くてしょうがないというようなことですが、これはもともと海上
自衛隊が熱心にこの開発を見守ってこられた飛行艇である。これは
自衛隊法の中にある災害派遣にまさに妥当するのですね。政府のなわ張りは別として、ともかく必要を感じておるのなら、ひとつあなたの
防衛庁として、このPSを保有して災害派遣の体制を整える、こういう用意はございませんか。
-
○
有田国務大臣 先ほども保安庁のほうから話がありましたように、わが海上
自衛隊も災害救助、救難ということについては相当やっておるつもりなんです。そこで、いまお尋ねの新飛行艇のPS1、これは御承知のとおり対潜哨戒機として開発されたものであります。しかし海難救助に際しても、遭難者の捜索に従事したり、ヘリコプターや艦艇と相まって有効な働きをするものと考えます。ただ、これを救難機として使用するためにはやはりそれ相応の改造と装備をする必要がある、いまのままでそのまますぐ使えるわけではない、そういうことをよくお考えを願いたいのですか、私のほうもそういうような救難機として、
国民のために、海難救助のために協力をするということについてはやぶさかなものではありません。
-
○永末委員 もう時間がございませんから、あと簡単に締めくくりますが、ひとつ陸のことを聞いておきたい。
この
委員会で治安出動のことが問題になりました。私は陸上
自衛隊の
隊員の主たる任務は、ことばは悪うございますけれども、結局人を殺傷する
訓練を受けておると思うのですね。ところがいわゆる治安出動といわれていることは、全然目的が違うことです。しかしわれわれの陸上
自衛隊は、警察予備隊からの歴史的な経過があるために、なおかつ治安出動が
自衛隊の主たる任務であるかのように法定をされておる。だから、それを考えておると思いますが、しかし私は国内的に
自衛隊が出動するかどうかということのけじめをつける
一つのかぎは、その対象が人を殺傷するものを持っておるかどうかということにあるべきではないか、人を殺傷しないものを持っておる
一つの群策に対して
自衛隊が出るということは、
長官が言われた
国民とともにあるべき
自衛隊が実は
国民に対立するものになる。そこで
一つの標識として、
自衛隊が対内的に出動する場合には相手方が人を殺傷するものを持っておる、それが
一つの標識だ、このように私は考えるべきだと思いますが、あなたのお考えを伺っておきたい。
-
○
有田国務大臣 治安の任は言うまでもなく警察が全責任を持つべきだと思います。ただわれわれの
自衛隊に課せられた任務は、従属的といいながらも、治安出動に出る任務を課されております。したがいまして、われわれは治安出動に出ないということは言い切れないのでございますが、御
指摘のように
自衛隊というものはいわゆる相手国の侵略を防御し、これを排除するという使命を持っておりますから、どうしても強固な武器を持っております。そういう関係上、治安出動というものはあくまで慎重にやるべきだ、かように考えておりますが、相手が武器を持っておるというようなときは、これは警察の力ではいかない。そういう警察の力で及ばぬというときには、日本の安定のためにわれわれが出動するということはやむを得ないというようなことも考えますが、しかしそれはあくまでも慎重にやって、御
指摘のように相手が武器を持っておるというような、これはたいへんないわゆる間接侵略というか、侵略的なものがくるときじゃないかと思いますが、そういう場合にはわれわれも日本の安全、平和を守るために、また治安を守るために余儀なく出ていくという場合があり得ると考えます。
-
○永末委員 私はこれで質問を終わりますが、
防衛庁長官、私の角度から見まして現在の
自衛隊の、
防衛庁の一番大きな問題は、
自衛隊が
国民とともにあり得る姿をつくることだと思うのです。したがって、いろいろのいきさつがございまして、いろいろな要望が考えられますが、ともかくすべての
自衛隊の日常の活動も、あるいはいろいろ考えられる場合も、
国民とともにある、この一本をはずしたら
自衛隊の前途というものは非常に大きな変化をこうむると思います。したがいまして、そのためには
自衛隊の考えていることを
国民に知らせることも必要だし、
自衛隊が行動する場合にも絶えず
国民の側にあって行動する、この一線をはずしてはならない、そのたゆみない
一つの努力というものが、いまのような
自衛隊と
国民との間にある何らかのいわれのないすき間風というものをなくすることになり得るはずだ。あなたは責任者でございますから、十分にひとつそのことをやっていただきたい。そういう角度から見ると、どうも安保体制を前提として今度の二法案で考えているようなことが必要最小限というようなことは、どうも量として、からみ合いがまだはっきり説明せられたように私には感ぜられないのです。残念ながら時間がございませんので質問を打ち切りますが、いまのような、
長官として
自衛隊と
国民とともにあるべき姿をつくることについては、一段とくふうをこらして努力していただきたいことを要望しておきます。
-
○
有田国務大臣 私も就任したときから、
国民とともに歩む
自衛隊、それから
国民に信頼される
自衛隊ということを標榜してやっておるわけですが、今後とも一そうその線に沿って努力するつもりです。どうか永末さんもひとつ御協力賜わって、大いに
国民的支援を寄せられんことを切望してやみません。
-
-
○伊藤(惣)委員 まず治安問題について、
自衛隊の治安出動について伺います。
防衛庁においては来年の安保再検討期をめぐるいわゆる七十年騒動を予想して、その
対策に取り組んでいるというふうに伺っておりますが、
自衛隊の治安出動について若干の質問を行ないます。
まず、治安出動命令を発する場合については
防衛庁設置法の第六十二条二項によって必ずしも出動の可否を国防
会議にかける必要はないとされておりますが、これはどう解釈すべきかということが第一点。この七十年においていわゆる七十年デモ、これに対して国防
会議にはかけないのか、あるいはかける場合もあり得るのか、その点についてまず伺いたいと思います。
-
○
有田国務大臣 この治安出動は、先ほど来申しておりますように、あくまでも慎重な態度でいかなくてはいかぬ。国防
会議にかけてやるということは、法律上そういう制限はありません。が、しかし、少なくとも総理大臣が治安出動の命令をされるときはもちろん私のほうにも相談があるし、また公安
委員長といいますか警察のほうとの関係もあります。また閣議というものがありまして、閣議で慎重なる態度で検討されると思いますが、少なくとも私は相談を受けることは明らかでございますから、私は先ほど来言っているように、あくまで慎重にかまえまして、どうしても警察の力ではいかんともしようがない、そういう特別の場合以外には軽々にかようなものは発動すべきものではない、こういう考えでございます。
-
-
-
○伊藤(惣)委員 治安出動の場合において総理、
防衛庁長官と公安
委員会との相互の間の緊密な連絡を保つ必要があることが
自衛隊法には出ておりますね。この三者において治安出動に関して確定した基準があるのかないのか。平時においては治安出動に関する話し合いというものは持たれているのか持たれていないのか、その点明確に答えていただきたいと思います。
-
○
有田国務大臣 この問題につきましては、常に警察庁のほうともいろいろ治安の状況なんかの連絡をしながらやっておりますが、その詳細については防衛
局長から……。
-
○宍戸政府委員 警察との関係では、御存じと思いますけれども、治安出動の際における協定というものが
防衛庁長官と国家公安
委員長との間で結ばれております。これがお尋ねの第一の基準に当たるかと思います。それをもとにしまして
事務当局で必要な連絡、意見の交換をやっておるということでございます。
-
○伊藤(惣)委員 いまの問題ですが、協定があることは知っております。しかし七十年騒動とか、そういう治安出動する場合の
対策としては、やはりその協定に基づいてこういう場合を想定して、
一つの確定した基準というものを越えた場合にはこうしようということが必要ではないかと思うのです。その点が第一点です。
もう
一つは、平時においてこの治安出動に関する話し合いというものが持たれているようにいま
長官から聞いたのですが、そのとおりですか。この二点について。
-
○宍戸政府委員 平時においてといいますか、つまり常時警察当局と
防衛庁当局とでは話し合いをしております。ただそれは、たとえば防衛局の課長なら課長が向こうの警備局の課長と不定期に会って必要なときに相談する、あるいは東部方面総監部と警視庁が定期に合って相談するということを含めて常時連絡をしている、意見の調整をしていることを申し上げたわけで、
長官もそういう御趣旨でお答えになったことと思います。
それから協定、さらに細部の何か基準があるかということのお尋ねにつきましては、具体的な基準というものは、両者の問できめたものはございません。意見をいろいろ両方から言いまして、御存じだと思いますけれども、要するに法律上警察力が不足の場合に初めて
自衛隊が出るわけですけれども、どういう事態でどういう不足のしかたがあるか。つまり先ほどお話の出ましたように、相手が武器を持つというふうな事態では警察の拳銃ではすでに対処できない。したがって、
自衛隊がそういう場合には出るのであろうというふうな話し合いはするわけでございますけれども、具体的に協定のさらに細目の協定、細部の基準というものをつくっておるわけではございません。地域的な細目協定はつくりますけれども、中央でさらに具体的な基準をつくっているわけではございません。
-
○伊藤(惣)委員 その基準はつくる必要がある、こう私は判断しているわけですが、その場合、来年といってもすでに六月二十三日も過ぎて、来年の安保改定期は一年未満になった。そういう点で、こういう点は早く明確に基準というものをつくるならばつくる、つくらないならつくらないという形において考えるべきじゃないかと思うのです。その点ひとつ。
それから、
自衛隊法第八十一条に基づく治安出動に関し、
一般の警察力をもって治安を維持することができないと認められる場合などの事態を予測していると思うのですが、それはどういうような事態か、それを伺いたい。
-
○宍戸政府委員 協定のさらに細部の基準をつくったほうがいいという御意見のように伺いましたけれども、将来の問題ですから断言するわけにはまいりませんけれども、現在警察当局とわれわれのほうでは、そういうのをつくる方向で検討しているというわけではございません。お互いに意思を疎通させながら、具体的な事態をお互いに想定しながら意見を交換はいたしますけれども、お尋ねの七〇年を頭に置いて
自衛隊が必ず出ようという体制に実はあるわけではございません。むしろ警察当局は自分
たちの力で十分対処できるという自信を持っておりますし、われわれもそれを期待しております。しかし、たびたび
長官からもお答えのように、任務でございますから、われわれは万一の場合を考えて
訓練はいたしておりますけれども、お尋ねのように、来年、あと一年足らずで
自衛隊が出る体制を整えつつあるんじゃないかということにつきましては、そうじゃございません。常時
訓練はいたしておりますし、七〇年について特に警察が
自衛隊にぜひ出てもらわぬと困るというふうな意見を言っておるわけではございません。
それから、法律上の、警察力不足のときの具体的な様相ということであったように思いますけれども、これも実はなかなかむずかしい問題で、現実にいままで二十年間あったわけでもございません。そういうことで
自衛隊が出動したことはもちろん一度もあるわけでもございません。したがって、抽象的なことになろうかと思いますけれども、先ほども申し上げましたが、典型的に、予想、仮定の問題ですけれども、戦争する場合には、やはり武器の問題、質の問題ではないか。暴徒がゲバ棒とか火炎びん
程度のものであれば、現在ときどき行なわれているような騒擾
程度であれば、警察力で十分対処してまいりましたし、これからも対処し得るだろうと思います。ただ、これがライフル銃なり小銃なりを不法に入手して、それが数が相当そろうというふうなことになりますと、警察の拳銃では対処しがたいというふうなことになりまして、あるいは
自衛隊の出動を考えなければならぬというようなことが質の問題として言える、だろう。
それから量の問題としては大規模な内乱、騒擾的な場合を設想するわけですけれども、必ずしも銃がたくさんなくても、非常に長期間騒擾が続く、あるいは非常に地域広く騒擾的なことが行なわれるという場合には、警察力があるいは不足する場合もあるかということが仮定の問題として抽象的に設想できるわけでございますが、具体的に、先ほど申し上げましたことで、来年そういうことになろうというふうに両当局で考えているわけではございません。
-
○伊藤(惣)委員 治安出動あるいは防衛出動――災害出動は別として、そういうことがあってはならないし、また、ないことを希望しているわけでありますが、やはり、
一つは万が一という場合、それからもう
一つは抑止力としてという考え方からも、こういう
訓練がなされているわけであります。ですから、これについては
訓練も事実やっておりますし、またそういうことを想定していることも事実ですね。しかもこのことについては、相当にデモやストライキをやる革新系の人
たちから見ても非常に注目していることでもあるわけです。ですから、こういう場合はこうなんだ、そういう場合はこうなんだというような具体的な、しかも
国民の前に、なるほどそれはあたりまえだというような納得できるものでなければ、私はいけないのではないかと思うわけです。その点で、決して治安出動に積極的に出なさいなんということを言っているわけではなくて、そういうことを想定してやる場合に、やはりその基準というものを明確にしておくべきである。そういうことについては、たとえないというような見通しがあったとしても明確にすべきだ、こういうふうに私は考えて質問しているわけですから、その点は前向きにどうかしっかりした答弁を願いたいと思うわけです。
防衛庁長官に伺いますが、来年度の日米安保の再検討期を目前にしているわけですけれども、これについては、ずっと盛り上がりまして、治安出動もしなければならない事態が起こるかもしれないわけですね。そこのところの最悪の場合、
自衛隊の出動もあり得る、こういうふうに判断しているか、いないか。このことは非常に大事な問題なので、
一つは
長官の来年に対する見通し、また治安出動というものを真剣にあり得ると考えているかどうか、その点について
長官の判断を……。
-
○
有田国務大臣 来年、いわゆる一九七〇年とよくいわれますが、私はいまのところでは、そういう治安出動をしなくちゃならぬという事態が起こるとは考えておりません。また起こってはならないと思っています。しかし御承知のとおり、治安出動ということはわれわれに与えられた任務の
一つでもありますから、だから
国民の期待にそむかないように
訓練は常にやらしております。しかし出動ということになってくると、私はあくまでも慎重にやっていきたい、かような考えのもとにやっておるつもりであります。どうか来年そういう事態が起こらないようにお互いに努力し合ってみたい、こういう気持ちでおります。
-
○伊藤(惣)委員 では伺いますが、
訓練の時間ですけれども、いま
自衛隊は治安出動
訓練をやっておりますが、ことしはどのくらいの時間をやっているわけですか。昨年はどのくらいの時間で、どのくらいふやしているわけですか。
-
○宍戸政府委員 部隊によって、まず地域的に違いますし、それから部隊の種類といいますか職種によっても違うわけでございますが、ごく標準的に申し上げますと、
訓練時間は年間二千二百時間ぐらいだと思いますが、その中で治安行動の専門の
訓練をするのは、全国的に
平均をいいますと五十数時間でございます。ただ、これは地域的に違いまして、治安警備上重要地点と思われます大都会付近の部隊では、それを数倍
程度に上げております。それから、わりあい地方的なところにおりますのは、その五十数時間
程度の標準的な時間で
訓練をいたしております。昨年とことしについて特段の差はございません。
-
○伊藤(惣)委員 都会の付近というと何部隊なんですか。それから
訓練の内容、具体的にどのようなことを行なっているのか、この
訓練は何に基づいて
訓練しているのか、その点を伺いたいと思います。
-
○宍戸政府委員
訓練の内容は、いわゆる暴徒の制圧の
訓練が中心になります。つまり、端的にいいますと、機動隊が暴徒を制圧いたします。一番下の
段階ではそういうことの
訓練もやります。
〔
委員長退席、三原
委員長代理着席〕
それからさらに、先ほども華山先生から、御質問がございました、相手が火器を持つという場合にこちらが火器で制圧するというような
訓練もいたします。要するに暴徒を制圧する
訓練というふうに御了解いただければけっこうだと思います。
それから、何に基づいてかということにつきましては、もちろん大もとは法律なり政令なりの規定があるわけで、さらにそれに基づきまして各種の
訓練をやっておりますし、それから警察との協定等もございます。そういうものが
訓練の一番基本的な基準になりますが、お尋ねのもっと具体的な基準といいますか、具体的なよりどころは何かということではないかというふうに思われますが、具体的なあれにつきましては各種の事例集、つまり国外、たとえばアメリカなりフランスなりでどういう事態があった、そういう事例を研究する。それから警視庁その他の警察当局がいろいろな事態に制圧行動をやるわけでありますが、そういうものを研究する。そういう事例集を各部隊に流して、そしてそれを
訓練の参考にしていろいろな演習をつくる。それから野外その他の本来の部隊行動のためのいろいろの教範なり基準がございますが、その中で暴徒制圧に利用できるものは利用するということ。その他各種の小銃なら小銃の使い方、ヘリコプターならヘリコプターの使用の方法、そういうものをあわせて、申し上げたようなことをすべて総合して
訓練の
一つの
一般的な根拠にしている、こういうことでございます。
-
○伊藤(惣)委員 ずいぶんややこしいが、要するに治安行動教範は前
防衛庁長官はつくらない、こう言ったわけですが、今後も治安行動教範はつくらないわけですか。その点をひとつ……。
-
○
有田国務大臣 いわゆる治安行動教範というものは前
長官と同様つくらない考えております。しかし、何も基準がなくては困るではないか、そこでいま私
たちの検討しているものは指揮官心得というものを検討中です。この指揮官心得というものは、部隊の出動、部隊の活動というものは指揮官の号令に従っていくものですから、指揮官がしっかりとした心得を持つことが非常に大事だという考えのもとに、たいへんおくれておりますが、いま
事務当局で目下検討中で、おおよそ草案ができつつある。私もこの大事な法案が通過しましたら直ちに検討をして、一日も早く指揮官心得をきめたい、こういう考えております。
-
○伊藤(惣)委員 先ほど防衛
局長は、ヘリコプターの規則とか、あとは歩兵なら歩兵が銃を使う場合の歩兵教典ですか、そのようなものをまぜてやるような話でありますが、
長官の言ったこととどっちがほんとうなんですか。指揮官心得でちゃんとやるのですか。それともいま言ったようないろいろなものをとって、その中で組み合わせてやるのですか。どっちなんですか。
-
○宍戸政府委員 指揮官心得ができましたら、それが具体的な
訓練の基準、むしろ基本的な基準になろうかと思います。現在それがありませんので、先ほど申し上げましたような各種のものを根拠にしておる。それじゃ将来とも指揮官心得一本でやれるかといいますと、これは基本的な基準にはなりますけれども、やはりそれだけでは足らないので、先ほど申し上げましたような各種のものを根拠にするということは続くと思います。
-
○伊藤(惣)委員 確かに指揮官心得だけでは
訓練はできないと思うのですね。それは防衛
局長御存じで、そのことをさっき触れなかったと思うのです。何も前
長官が治安行動教範はつくらないと言ったから、それを引き継いで
有田防衛庁長官も前
長官と同じようにつくらないなんと言うと、今後非常に苦しい問題になるのじゃないかと思うのですよ。私は、
自衛隊には火器があるし、戦車もあるし、いろいろな面で強大なそういう兵器がある、現在ですらまだ
国民の間にはなかなか理解されておらないのに、さらに
国民からにくまれるような、あるいは
国民から白い目で見られるような、そういう中での治安出動はやってはならぬ、こういうことからも、やるなら堂々とやるべきであると思う。しかもまた前
長官の言ったことを筋なんか通さなくてもいいから、堂々と治安行動教範をつくって対処する、このようなことを言って堂々とやればいいのですよ。その点について
長官どうですか。
-
○
有田国務大臣 私は別に教範に対して遠慮も何もしません。ただ私が指揮官心得でいこうという考えの根本は、この
自衛隊の治安出動ということは非常に重大であって、しかも先ほど来お話がありましたように、
隊員に武器の使用が認のられておるわけです。そこでその武器の実際使用といいますか、たとえば砲ならば引きがねを引くとか、あるいは拳銃ならばそれを使う、こういうことは指揮官の命令によって動くものですね。でありますから、指揮官がしっかりとした心得を持って、その指揮の上に部隊が動くということになりますから、指揮官というものによって部隊が左右される。そういう見地から見て、私は指揮官心得というのが非常に重大な役割りをなすという考えのもとに、指揮官心得に重点を置いて基準を定めていきたい、こういう考えております。
-
○伊藤(惣)委員 現在は指揮官心得を検討中であるということでありますが、将来ともずっと指揮官心得でいくのですか。絶対に治安行動教範はつくらないわけですか。そういうことを断言して困らないのですか。
-
○
有田国務大臣 これは経験がありませんからなんですが、しかし私は指揮官心得で十分事足ると思います。あとはいろいろ時代によって応用問題が出てきますけれども、しかし一番大事なことは、武器の使用について指揮官がしっかりとした認識を持ってそれに対処することが必要である、こういうことから、おおむね指揮官心得ができたならばそれで事足るのじゃないだろうか、こういう見解を持っております。
-
-
○宍戸政府委員 先ほどもお答えしたと思いますけれども、指揮官の
訓練の基本的な基準は、指揮官心得ができますとそれが基本的な基準になって、
長官の言われるように基本的なものとしてはそれでいけるのじゃないかということでございますが、それじゃそれ以外のものは全部不必要かということでございますと、先ほどもお答えしましたが、もっと具体的な各個の、小銃の使い方だとかあるいは証拠収集の方法だとか、カメラの使い方だとか、そういったものから、あるいはヘリを動かすとか、通信機材を動かすとか、そういうようなのはそれぞれ各種の教範なりいろいろな
訓練基準がございますが、そういうもので指揮官心得を補充していくということは将来とも必要になってくるであろう、こういうことでございます。
-
○伊藤(惣)委員 その辺は納得いかぬところですが、なぜすなおに――まず
防衛庁長官、こんなことを言っていることは、歴代の
長官の中で、たいへんな失言をしていると思うのですよ。それぞれの出動に教範がなければいいですよ。全部あるのですよ。それを指揮官心得だけで、教範は絶対つくらないといったら、ほかの防衛出動もすべての出動も、心得だけでよくなるわけですよ。こういうことを一回言っちゃったから、どこまでもそれに従って不便なことをやって、治安の
訓練をやる場合にはこそこそこそこそやって、飛行機が来たときにぱっとやめるとか、そんなことをしながらやらなければいけないという事実がいまあるわけですよ。だったら、私は堂々とやりなさいと言うのですよ。そんなことよりも、出動する基準のほうか大事なんです。その点を前向きで――前
長官であれば、言ったことについてはどこまでも言うでしょうから、われわれは追求しなかったわけでありますが、新しい
長官になって、新しい気合いで今後考えるならば、そのくらいの前向きで検討してもいいのじゃないか、特に将来についてはそのくらいの考え方でいいのじゃないかと思うわけですよ。指揮官心得あたりでは絶対できないわけですよ。これは法律的にいってもできるわけないわけです。
そこで、ここへいっても、
長官、将来も治安行動教範をつくらないのか、その点
一つと、それからその具体的な
訓練でありますが、戦車を使って鎮圧するということもやっているかどうか。ちょっと大事なことを聞きますけれども、ひとつ簡単に、しかもすりかえないでまっすぐに答えてください。
-
○宍戸政府委員 普通予想し得る治安行動に戦車を使う必要はまずないと思います。しかし間接侵略的な、不正規軍がいわばゲリラ的に入ってきて、戦車もしくは戦車に近いような強力な武器が相手に使われているという事態を想定した場合には、こちらも戦車を使う、直接侵略でなくても、いわば間接侵略的な場合に戦車を使うことは理論上あり得る、こういうことを申し上げられると思います。
-
○伊藤(惣)委員 図上演習というのをやっているのですか。
-
○宍戸政府委員 図上演習に関しましては、各種、直接侵略の場合も間接侵略の場合も治安行動の場合もやります。やっております。
-
○伊藤(惣)委員 この治安出動用の装備について、現在
自衛隊にある装備は、警察の機動隊から見た場合には非常に貧弱ですし、全然比較しても話にならぬ、こういう
状態ですが、今年度はそれに対して相当予算を計上したわけでありますが、現在どのようなものを考えておるのか、たとえば警察のあの機動隊と同じたて、または同じような放水車とか、そういう同じような装備を持つのか持たないのか、その点伺いたいわけです。
-
○佐々木(達)政府委員 治安出動の
訓練に使用される器材等でございますが、その範囲は非常に広範囲でございますが、一応われわれ考えておりますのは、照明装置、それから拡声装置、連絡装置、写真装置、担架、個人医療嚢、それから防具等、備涙剤等を一応治安
訓練の器材と考えております。
-
○伊藤(惣)委員 たては入ってないのですか。
-
○佐々木(達)政府委員 防具等にたても入っております。
-
○伊藤(惣)委員 治安出動の場合も、いろいろな種類があると思うのです。ほんとうに間接侵略という場合と、デモとかストライキとかという場合があるわけですね。それに対する
一つの見方、基準ですね。こういう場合にはこういう治安出動をする、こういう場合にはこういう出動をするということをひとつ明確にしておく必要があるわけですね。その点、草案には載っていると思うのですが、その点について伺いたいのです。
それから
自衛隊法第七十八条における「その他の緊急事態」というところがあるわけですね。これはどのような場合なのか。これは
自衛隊の命令による治安出動に関するものであって、この解釈は明確にしておく必要があると思うのです。政府は、内乱というような場合を想定しているかもしれませんが、ばく然とした解釈ではきわめて不安なわけです。それで、このことについて、政府の詳細な統一見解というものですか、
長官と防衛
局長と違ったのではしようがないですから、そういった点を示していただきたいわけです。
-
○
有田国務大臣 その法律にも明記してありますように、いわゆる間接侵略また大規模の内乱、騒擾に値するような大きな騒ぎというようなときに、警察力でもってしては対処できない、こういうときに治安出動を発動する、こういうたてまえになっております。
-
○宍戸政府委員
長官のお答えのとおりでございます。
-
○伊藤(惣)委員 この
自衛隊法第七十八条にはこう書いてあるわけです。「命令による治安出動」すなわち「内閣総理大臣は、間接侵略その他の緊急事態に際して、
一般の警察力をもっては、治安を維持することができないと認められる場合には、
自衛隊の全部又は一部の出動を命ずることができる。」こうあるわけです。しかしこの「間接侵略その他の緊急事態」、これが明確じゃないわけですよ。「その他の緊急事態」とはどういう事態なのかということです。
-
○宍戸政府委員 例示にあがっております間接侵略といいますのは、外国の教唆、干渉がありまして、そして国内において大規模な内乱、騒擾的な事態が起こっている場合というふうにいえるかと思います。「その他の緊急事態」といいますのは、それに準ずる場合ということがいえるかと思いますが、やはり治安行動のことを頭に置いて考えますと、間接侵略という事態と違いますのは、外国の教唆なり干渉なりがなくても、大規模な内乱事態、騒擾事態という事態があれば「その他の緊急事態」の中に入る、こういうことがいえるのじゃないかと思います。
-
○伊藤(惣)委員 それじゃ、この「その他の緊急事態」ということは、いかなる場合といえども、規模の大きい小さいを別にして、デモなんということは、そういうことに際しては
自衛隊の出動は、この
自衛隊法七十八条の趣旨ではない、こう考えてよろしいのですか。
-
○
有田国務大臣 もうそういうようなことは絶対考えておりません。そのデモなんということと、警察力で対処できない、いま申したような間接侵略あるいはこれに準ずるという場合とは雲泥の差でございますから、そういうことは考えておりません。
-
-
○
有田国務大臣 法律的にも、デモはそういうものではないと思っております。
-
○伊藤(惣)委員 それでは法律的にもそういうことはあり得ないということですね。
それじゃ伺いますが、
自衛隊法第七十八条と第八十一条――八十一条というのは、「要請による治安出動」ですね。要するに「都道府県知事は、治安維持上重大な事態につきやむを得ない必要があると認める場合には、当該都道府県の都道府県公安
委員会と協議の上、内閣総理大臣に対し、部隊等の出動を要請することができる。」こうあるわけです。このいわば「命令による治安出動」と「要請による治安出動」、これが七十八条と八十一条との関係でありますが、これはいずれが優位なのか。すなわち、治安出動その他の緊急出動に際して、というように包括的に総理大臣にいわば無制限の裁量権行使を認めている第七十八条を規定しておりながら、なぜあらためてこの八十一条の規定を置く必要があったのかということなんですが、その点について伺いたいと思います。
-
○宍戸政府委員 これは主として地域的な差ではないかという感じがいたします。つまり八十一条の場合には、まず知事さんが判断される。知事さんの持っておられる地域的な管轄権の範囲内で治安維持上の大きな事態が生じまして、警察力をもってしてはとうてい維持できないというふうに公共団体の責任者である知事さんが判断される事態というものがあり得る。その場合に知事に要請権を与えられて、そして最終的には全国のまた責任者である総理が判断される、こういう順序で八十一条ができているものと思います。命令による治安出動は、そういう地域的なことも全然無視するわけじゃございませんけれども、全国的な事態ということを主として頭に置く、あるいは例示にも出ておりますように、外国との関係というようなことも頭に置いて総理が直接判断される、二つの条文においてはそういう差がある、こういうことが言えるのじゃないかと思います。
-
○伊藤(惣)委員 これは非常に重大なことなんです。たとえば、ないと思います、ないとは思いますが、東京都においてそういういろいろなデモやまたは、その判定の基準というのは、先ほどまだきめてないとおっしゃられましたが、いろいろなことが起きた、総理大臣は、見れば、これは間接侵略あるいはその他の緊急事態だ、こう判断した。ところが東京都知事は、これはそうじゃない、どこまでもデモはデモだ、そんな他国から全然そんなものは何にもないと言った場合に、この七十八条と八十一条とにおいて、どちらが優先するかということは明確にしておかないと、たいへんなことになると思うのです。もし七十八条が八十一条に優位であるというならば、要請の治安出動といってもこの場合非常に混乱するわけですね。ですから、七十八条と八十一条における、このどちらが優位なのか、この点について明確にお答え願いたい。
-
○宍戸政府委員 どちらが優位になるか、どちらが優位であり、どちらが下であるかという差はないのじゃないかとわれわれ思います。最終的には総理が判断されるたてまえになっておりますが、公安
委員会、都道府県知事等が関与される要請による治安出動の場合におきましても、最終的な命令権者は総理でございますので、十分意見を調整された上で出動の可否を決定されるということになろうと思います。八十一条と七十八条で上下の関係はないというふうに存じます。
-
○伊藤(惣)委員 これはいろいろ議論すればあるんですが、時間の関係もありますので、この点はもう少し聞きたいのですが、次に移ります。
いずれにしても、この治安出動命令では国会の事前の承認が必要ではなくて、事後において、すなわち出動を命じた日から二十日以内に国会の承認を得ればいいことになっているわけですね。これは規定にあるとおりです。これは防衛出動と比較した場合に、国会の承認手続が非常に緩和されているわけです。これはどういう観点からこういうふうにつくられたのか、それが
一つ。
それから総理大臣の権限が、裁量権行使というのがきわめて大きいわけでありますけれども、それとともに、この
自衛隊の許される行動範囲というのはきわめて制限さるべきものと思うわけですけれども、この点について、
防衛庁長官あるいは
局長はどういう見解を持っておるか、その点について。
-
○
有田国務大臣 私は詳しくは法律の経緯を存じませんけれども、とにかく防衛出動のときは、国をあげての大事な問題です。国会の承認の上に立って、
国民総意の上に立っていくというのがほんとうの姿じゃないか。もちろん治安出動も大事でございまして、国会の承認を得ますけれども、これはいわゆる事後承認ということであって、これはあくまで内部的なことでございますから、これが行き過ぎであれば国会の不承認になれば、直ちにそれはやめてしまう、こういうことでありまして、この間に相当の、私は相違があるんじゃないか、軽重の上において相違があるんじゃないか、かように思います。
-
○宍戸政府委員
長官のお答えと筋は一緒でございますけれども、防衛出動と、命令による治安出動との国会手続の差は、やはり何と申しましても防衛出動は国の運命
そのものに関するということ、それから国際的な関連することであるということで、原則として事前に国会にかけられる、緊急の場合には事後もやむを得ない、こういう制度をとられたものと思います。治安出動の場合はいわば国内的な事態でございますので、また他の警察法上の緊急事態布告等との関連もあって、事後的な手続にとどめられた、こういうことであろう
かと思います。
-
○伊藤(惣)委員 治安出動についても、間接侵略と、そうじゃないデモやストライキによるそういう治安と、二通りあるわけですね。しかし、最近の国際情勢から見ますと、直接侵略よりむしろ間接侵略が、紛争のまず大多数が、そういう間接侵略がおもなわけですよ。だから私は、それを差別することがおかしいんじゃないかと思うのです。同じじゃないかと思うのです。しかも、核時代におけるそういう出動というのは、直接侵略などはまずあり得ない、われわれはそう考えているのです。また、そうできない時代だと思っております。ですから、その点については差別して考えることはおかしいじゃないか、こういう点が言いたいわけです。その点について
長官もよく考えて、今後そういうことについても検討をさるべきじゃないか。
それから、先ほど
防衛庁長官は指揮官心得を、おくれているが出すとおっしゃいましたが、いつごろの見通しで出す予定なのか。この内容については、われわれは非常に関心を持っております。その内容については、
国民の前に堂々と公開すべきじゃないか、こう思うわけですが、その点について伺いたいと思います。
-
○
有田国務大臣 指揮官心得は、何月何日というわけにはまいりませんけれども、私もこの重要な防衛二法が衆参両院を通過して、からだに余裕ができたら、直ちに指揮官心得について取り組んでいきたい、かように考えておりますから、できるだけ早い機会にこれをつくり上げたい。かように考えます。
-
○伊藤(惣)委員 防衛二法が参議院を通過したとたんに出す、こういうことですね。
-
-
○伊藤(惣)委員 それで、これは公開すべきじゃないかと思うのですが、その点どうですか。いつごろ出すんですか、ほんとうに。それも大体の
一つの草案ができているわけですから、その時期を
防衛庁では見ているわけですよ。だけれども、はっきりいつごろ出す、しかも公開するのかしないのか、その点も明らかにしておいたほうがいいと思うのです。その点についてお伺いします。
-
○
有田国務大臣 防衛二法が通ったらとたんというわけでもございません。直ちに取り組んでいきたいと思いますから、そう長い時間はかからないと思いますが、それでも九月になるか十月になるか八月になるかということは今日まだ断言できない、いまから私は取り組む予定でございますから。
それから、これは本来からいえば、指揮官心得というものは部内の心得でございますから、私は別に公表をする必要があるかどうかということはまだ考えておりませんが、しかし、必要となればまたそういう要点というようなものはお示しすることにやぶさかでない、かように考えております。
-
○伊藤(惣)委員 ぜひ、
国民に愛される
自衛隊というのが
長官の常々の口ぐせでありますから、そういう面からも治安出動についてはこういう心得でやるのだということを
国民の前に明らかにして、そしてそういう間接侵略あるいは七〇年
対策に対して具体的な方針を明らかにしていくことが大事じゃないかと思うのです。
次に時間の関係上基地問題について二、三伺いたいと思うわけですが、その点あとで
長官、答弁をお願いします。
在日米軍基地の返還については、昨年十二月末に日米協議会等において五十数カ所の基地の返還に対して
防衛庁はいろいろ検討を加えてきた。このことはいままでの質問の中でも明らかになっておるわけであります。そこで私が伺いたいことは、今後もどんどん検討され、また返還、移転あるいは縮小、そのようにされていくわけでありますが、米軍基地いわゆるその施設区域の返還、縮小、移転に対する基本的な態度または基準ですね。こういう基本的態度、こういう基準に基づいて検討し、そして返還させる、または縮小する、または移転する、こういう基準があると思うのですが、それを明確に伺いたいわけです。
-
○
有田国務大臣 私の考えは、米軍基地というものは、これは日本の防衛の上から申しましても必要なものである、こういう前提に立っております。ただ、いろいろな情勢の変化によりまして、現在ある基地のうちでも比較的不要不急のものがあります。そういうものはこちらへ返還してほしい、またいろいろと情勢の変化がありまして、たとえば、都市がどんどんそのほうへ発展していくと、必要だがその土地からよそへ回したほうがいいじゃないかというようなものもございましょう。そういうものはまた移転ということになりましょうし、いろいろと日本の狭い土地柄ですから、だんだんそういうような情勢の変化と、それから利用度それから都市の発展、その他いろいろな関係から考えまして、そういう総合判断の上で返還してもらうものは返還してもらう、移転してもらうものは移転してもらう、こういうような考えで進んでおるわけであります。
-
○伊藤(惣)委員 いまおっしゃったことが基本的態度、基準ですか。付近住民に迷惑かけるということは全然出てこないのですが、そういうことは考えないのですか。防衛上必要であるという基地についてのみ返還あるいはまた縮小、移転する、その中で不要不急なもの、都市計画上支障を来たすもの、またはその基地の周辺の発展とか利用度とかいうことだけですか。施設庁
長官、これは基準があったらもう少し……。
-
○山上政府委員 ただいまの大臣のお答えを補足して私から申し上げます。
特にいまお触れになった点につきましては、ただいまのような米軍の施設の実態に即しまして、特に従来は非常に使っておったが、いま遊休になってきたということの実態、これらはもちろん勘案しなければならぬ返還の一番大きな点だと思いますが、ただ遊休であるからといいましても、いろいろ軍事目的によりまして、これは現在はあいておるけれども、いずれ先にいって必要がある。あいていることがむしろ必要であるというようなものもございます。
〔三原
委員長代理退席、
委員長着席〕
したがって、これらは単純にその実態のみではいかれないと思いますが、そういったものとか、あるいは先ほどお話のございましたように、特にその付近の
実情とか、都市化の傾向が著しいというような
実情から付近との関係が調整のとれてこないもの、これらにつきましては問題の難易その他いろいろございますが、移転ということもひとつ考えていく必要があるのではないかということも考慮のうちに入れている次第でございます。
-
○伊藤(惣)委員 わが党でやった基地総点検から見まして、いろいろ分類したわけですよ。その基地の中については、私
たちは
国民的立場から取り組んだわけでありますが、政府は安保体制を基準にして、しかも防衛上必要な点というところに基準を置いて考えているのですが、ただ、付近住民に対する考え方が
防衛庁には全然ないのかということがいまの答弁の中にちょっと感じられるわけですよ。いわば、目的外使用、遊休施設、付近住民に危害を与えているもの、さらにまた二十二種類からある基地公害を通して、きわめて日米友好関係上うまくないものというようなものもその基準の中に入れて検討してきたのではないかと思うのですが、その点いかがですか。
-
○山上政府委員 もちろん施設の付近に与える影響ということは、これらの考慮のうちに当然考えております。ただ、付近の住民に与える影響がありますれば、直ちに移転とか返還とかいうことになるかというと、必ずしもそうならない。この場合にはむしろ付近住民に与える影響を少なくするように、いわば、たとえば飛行場が騒音で非常に音を与える。しかしながら飛行場をどこへ持っていくというわけにはまいりませんので、それらについて防止の措置を講ずるというような方法も考える必要があるのではないか。ただ、そうでなく、これはむしろそういった面からもあり、また都市の過密化というような点等から移転が必要だという判断のものも中に出てくる。そういったものについては移転も考える。あるいは住宅その他につきましてはできる限り集約していくということが
一つの考え方の中に入っておることも事実でございます。
-
○伊藤(惣)委員 そうしますと、そのような基本的態度または基準から申しますと、おのずと日本にある百四十五、小笠原を含めて百四十七カ所の基地についてはわれわれは判断がつくわけです。
そこで、私はきょうたくさん聞きたいのですが、時間がありませんので、特に問題となっておりますグラント・ハイツの問題について伺いたいわけです。当然いま言った中において、都市の発展上またはその利用度あるいは基地公害という面からいっても、私はこれはまず日米関係において第一に日米合同
委員会等において取り上げるべき問題である、このように考えておったのですが、これは議題にならなかった
理由は何ですか。
-
○山上政府委員 グラント・ハイツの問題については、前回にも御質問がありましたのでお答え申し上げましたが、御承知のようにグラント・ハイツの住宅地区には横田、立川等の米空軍を主体とする空軍将校が、千四百以上だと思いますが、千四百数十世帯が現在おるのでございまして、これらの将校の勤務関係等並びにその数が相当なものでございます。したがいまして、これをもしどこか移転させるといたしましても、これの必要な施設とかあるいはこの移転には相当巨額な費用もかかるというような問題もございます。住宅地区の周辺が最近だんだんと都市化してきつつあるということはもちろん承知いたしておるので、これらについては移転等の可能性についてただいま私が申しましたような問題を含んでいろいろ検討はいたしておりますが、いま前回の協議
委員会の
段階におきましては、まだそこにいくまでに至ってない。この問題については現在われわれのほうでその可能性等について検討いたしておる、こういう
段階でございます。
-
○伊藤(惣)委員
防衛庁長官、このグラント・ハイツについて私は
長官に一回行って見てもらいたいと思う。なぜかといいますと、このグラント・ハイツというのは練馬区の中にありまして、土地の面積が約六十万坪あるのです。飛行場ぐらいです。しかも、その周辺はもう住宅が、ちょうどマッチ箱を重ねたようにびっしりと詰まっているわけです。そうして、その中には現在約千百世帯くらいいるわけです。しかも、その中にはゴルフ場、サッカー場、野球場、学校、公園、モータープール、もういわばアメリカにある公園住宅
そのものがグラントハイツです。その付近に住宅はびっしりとこうある。しかも、一世帯当たりの土地の坪数がどのくらいになるか。一世帯大体六百坪ですよ。一世帯が六百坪、一軒ずつ住んでいるわけですよ。片や、付近住民は、一人が一畳ないしは一畳半くらいにびっしりと住まっているのに、中は都市のどまん中にありながらゆったりと住んでおるという事実。しかも、そのグラントハイツの汚水、これは現在まだまだ下水が完備しておりませんので、それを一カ所に集めまして、汚水を処理しているわけです。その悪臭というものが埼玉県から板橋区あるいはもちろん練馬区というような、もう都外または二区及び三区にわたって漂っている。特に、入梅なんかというのはひどいですよ。とてもじゃないけれども、歩いていても鼻をつまんで歩かなければしょうがないというぐらいものすごいにおいが漂っている。しかも、入梅が明けますと今度は白いハエがわくのです。その白いハエがウンカのようにわくのです。いままで何回となく施設庁のほうからもDDTをまいてもらいました。しかしながらどんなにまいても、最近では強くなりまして、関係ないのです。何ぼまいてもわんとくる。そのまた白いハエというのは非常に暑いところと明るいところが好きなんです。夜、食事するときに窓をあけていれば電気、煮物をしていれば煮物に入ってしまうのです。ですから、夏あの付近の住民
たちは電気を消して、窓を締めて、まっ暗なところでめしを食っているんですよ。こういう事情を御存じですか。ですから、私はこの問題については去年から言ってきておる。増田
防衛庁長官も施設庁
長官も、善処をします、抜本的な
対策を講じます、こういままで言ってきました。じゃ、抜本的な
対策として何をやったか。木を植えたんです。その木というのはこんなちっぽけな木なんです。あれが育って大きくなるまでにはあと三十年もかかりますよ。しかも、次々と薬をまきますからみんな枯れてしまうのです。あれだったら、むしろ枯れた木を並べてふさいだほうがまだいいくらいです。こういうようないわば悪臭または汚水のためのハエの被害というのがあるわけです。これに対して付近住民はあげて反対しているわけですよ。しかも何回となく政府に言っているわけですよ。それに対して政府のほうでは、善処する、あるいは抜本的な
対策を講ずると何回も言ってきました。しかしながら具体的に何もされていない。これが現状なんです。
しかもあの広大な土地があるために、練馬の都市計画からいっても東西交通は全然だめなんです。その場所を迂回すること何と四キロに及ぶのですよ。本来ならば一キロで行くところが、その四倍も回らなければいけないわけですよ。昔はちゃんと道があったのです。基地ができたためにいまは通れない、こういう現状なんです。ですから、どうか
長官それを見て、付近住民の言うことが無理なのか、またはいままで
防衛庁のとってきたことが正しいのか、その点を一回視察して判断していただきたい、こう思うのです。
その中で施設庁
長官にお願いしたいことは、汚水処理、ハエの
対策、これについてどういう考えがあるのか。また基地内について、たとえ急速な返還が無理だとすれば、東西間の基地内を通す道路ということについて、練馬区においてはあげて要求しておりますが、その点についてどのように考えるのか。この二点について答弁してください。
-
○山上政府委員 汚水処理については、昨年来お話もございましたので、薬剤の散布であるとかあるいは消毒であるとか植樹であるとかといったような、いわば運用上の管理の
改善ということを米側に要請してやってまいったのでございますが、もちろんこれが完全というわけにはまいりません。この根本には、この施設が
昭和二十二、三年ころの、その当時としては非常に最新式の東京都御推薦の汚水処理施設であったそうでございますが、まわりに人家がふえてまいりますと、それに比較してやや旧式になってきておるという
実情もございますので、これを移転させるというような方向で、新しい活性化方式という方式を採用したものをやろうではないかということで、実は本年度の予算にも予算を計上いたしておる次第でございます。
この問題につきましては、その処理とまたもう
一つは道路の問題でございますが、道路の通行の問題につきましては、これは地元からもいろいろ御要望のあるところでございまするが、施設の東側を、道路地域を拡充して通れるような方式ということについて米側と折衝中でございます。まだこれは結論を得ておりません。そういう
段階でございます。
東西交通については、現在までのところでは米側においては非常に困難だという意思を表示しておりますが、今後なお話し合いを続けてまいりたいと思います。
-
○伊藤(惣)委員 いまのところを移転して、また同じようなにおいがどこかに移るのじゃないのですか。いろいろ先にいって言いますけれども、要するにここはうるさいからそこを切ってしまってまた別につくれば、これは同じです。ですから、ことし調査費を組んだといいますが、その点のことだと思うのです。では、その移転したあとはどうするのですか。現在あるところを移転するといまおっしゃいましたが、では残ったところはどうするのですか。
-
○山上政府委員 移転が完了すれば、いまの汚水処理場のある地域は要らなくなりますから、これは返還してもらうということになると思います。
-
○伊藤(惣)委員 ぜひその点の返還は強力に推進していただきたいと思います。
そのグラントハイツの近くに、練馬区田柄町にある元軍事顧問団の住宅がございましたね。現在これはどうなっておりますか。
-
○山上政府委員 グラントハイツのすぐ東側にあるのは睦台という地区だと思いますが、その顧問団の住宅地区につきましては、御承知のように顧問団が漸次減少してまいりますので、これは元来が日本住宅公団の建物、敷地でございまして、これを顧問団に貸与いたしておったのでございますが、顧問団の住宅が減少してまいってきておるわけでございます。一方、実は御承知のとおり昭島におきまする施設の返還が政府の方針として決定いたしておりまして、これを返還させるためには、そこにありまする住宅を移転させなければならない。その移転の身がわりといたしまして、睦台におきますところの現在あいてきました住宅約四十戸、これを身がわりに米軍に提供する。住宅公団にはかわりの敷地を交換したということで処理されております。
なお、そのほかにも若干のあき家ができつつあります。これらにつきましては整理の上、これが完全に整備が済みますれば、これは顧問団でも要らなくなるということになりますれば、将来住宅公団のほうにお返しするということになるはずである、かように考えております。
-
○伊藤(惣)委員 この問題、睦台アパートというのが非常に高級なアパートなわけですね。現在四十棟ありまして、ほとんどその大半があき家になっておるわけですよ。ところが、最近これがグラントハイツに合併したようですが、この点はいかがですか。
-
○山上政府委員 ただいま私の答弁ですべてを申し上げたつもりでおるのですが、そのうち四十世帯分を米軍に昭島の代替施設として提供いたすことに決定いたしました。したがって、その分がグラントハイツと同じ提供区域の中に入ることになる、こういうわけでございます。それで残りの分につきましては先ほど申し上げたとおりでございます。
-
○伊藤(惣)委員 これは私は非常に重視しているわけですよ。なぜかといいますと、グラントハイツ
そのものは一世帯当たりが六百坪に住んでおる。きわめて広大なところに住んでおるわけです。ところがいままで民間人に、軍事顧問団が使っておった睦台アパートがさらにグラントハイツの一部の中に編入された。これは調べてきたのですよ。全部ここにありますがね。これによりますと、いわばこれは基地の拡張ということになるわけです。これはアメリカに提供した施設、区域の拡大ですよ。この場合は当然日米合同
委員会で決定して、その後においてそういう手続をとることが当然なわけですよ。合同
委員会にもかけないで、黙って基地の拡大をする、施設、区域に入れる、こういう
一つのことがもし何でもなく通るとすれば、今後どこでもそういうような形で施設、区域を拡大されるおそれもあるというように考えられるわけですよ。この点は合同
委員会できめたのですか。
-
○山上政府委員 これはすでに合同
委員会で決定済みでございます。先ほど申し上げました戸数の提供を合同
委員会で決定いたしております。
なお、この地域はもともと米軍顧問団に住宅公団から借り上げて提供しておったもので、それを今度は米軍施設の提供に変わるわけでございます。これについては合同
委員会の決議を経ております。
-
○伊藤(惣)委員 合同
委員会ならば、いつ幾日の合同
委員会で、だれとだれが出席したときにそのことがきまったのですか。
-
○山上政府委員 六月の十九日の合同
委員会でございます。
-
○伊藤(惣)委員 私は東京施設庁に聞いたときに、日米合同
委員会にまだかかってない、こう聞いております。きょう電話で聞いて確認している。そこで疑問が生じたわけです。ところが、事実はグラントハイツからの軍人が一週間前に入っておる。しかも、検間所あるいは門衛所といいますか、守衛所ですか、そういうものがいままであったけれども、いまは人が入っておらない。したがって、実際の手続はこれからだ、こう私は電話で聞いておるわけです。しかしながら、入っておるのはおかしいじゃないか。私はその点をきょう聞きたかったわけですよ。六月十九日は間違いないですか、その点。
-
○山上政府委員 六月十九日に間違いございません。
-
○伊藤(惣)委員 それで伺いますが、そういう法的には問題がないとした場合、あのグラントハイツのほうは縮少してもらいたい、返還してもらいたい。できなければ移転してもらいたいという声が付近住民にたくさんあるのですよ、
長官。それが事実上、グラントハイツが拡大された。まだ区民はこのことは知らない。いずれ住宅公団が今度は
一般国民に対してあれを開放するであろう。あれをもっと高層化するなり、または増改築をして、
一般の
国民に提供されるであろうということを楽しみにしておるわけですよ。ところがいつの間にかそれがまたグラントハイツの一部になっておるという事実。現在、日本の基地というものは縮小の方向にあるわけですよ。しかも、防衛上絶対に必要だという基地じゃない、いわば、ここは完全な住宅地域ですよ。しかも、昔はすぐそばにあった朝霞というところのいわば住宅地域ですよ。現在、このグラントハイツの中を調べてみますと、どういう人が住んでおるかといいますと、
一つは立川、横田、府中、こういう人
たちなんです。その三多摩にある基地から東京都内のグラントハイツまでの距離はどのくらいあるのか、車で飛ばしても一時間はかかる。ところが最近は御存じのように車が込んでおります。非常に交通が渋滞しておるわけですよ。したがって、そこに住む人
たちは口をそろえて言うのですよ。もっと近くに何かないだろうか。こんな遠くまで来なければならぬというのは非常に不便である。いわば、飛行場とか基地の中に住むことも、テレビなんか見られないけれども、もう少し近いところに基地があればわれわれ喜んで移る。しかも、あの米軍の宿舎の費用は高い。一世帯が何と百十四ドルぐらい、日本の金にして四万円近くですね。高い家賃を払って住んでおる。こんな遠いところでこんな高い家賃で、しかも、朝起きるときはいつも三時半か四時ごろ起きて五時ごろ出なければ、ベースに七時半とか、八時半という時間までに行けない。これがちょっと間違えば、交通渋滞で二倍も三倍もかかる。私
たちは、ほかに移転する場所があれば、練馬の住民が返してもらいたい、またいろいろな住宅が不足しておるからつくりたいといっていることは知っておるので、
防衛庁さえ何とかしてくれればわれわれは喜んでどきます、こう軍人の人
たちは言っておるわけですよ。それについて
長官どう思いますか。
-
○
有田国務大臣 グラントハイツについての伊藤さんの地区住民並びに米軍の声まで反映して非常に熱烈な訴え、私も非常に胸を打たれております。また実際一ぺん視察したらどうかということですが、私も何とか時間を差し繰って、百聞は一見にしかず、一ぺん現地を視察させてもらって、そして前向きな姿勢でこれに対処していきたい、かように考えておりますので、ひとつ伊藤さんもともどもによい知恵を貸していただいて、そして善処するようにお互いに努力したい、かように考えております。
-
○伊藤(惣)委員 総理大臣も、あるいは前の
長官も、やはり日本の基地の付近に住む住民の協力がなければ基地の確保はむずかしい、したがって、そういう問題については前向きに取り組んでいく、これはいままで言ってきておることなんですから、いろいろなことを申し上げましたが、そういうことを頭に置いてグラントハイツについてはどうか検討していただきたい。特に、私、お願いしたい点は、現在ですらさらにアパートというものは拡張すべきじゃない、その睦台アパートというものをむしろ住宅公団が
国民のために開放すべきじゃないかということが
一つ。それからもう
一つは、先ほど言いましたように、そこに住んでおる米軍自身が、そばにあれば移転したいということを言っておりますので、そういう
一つの見通しがあれば、移転なり返還なりを次の日米合同
委員会において取り上げて主張していただきたい、こう思うのですが、その点いかがでしょうか。
-
○
有田国務大臣 私もいま伊藤さんからいろいろとお聞きしたのですけれども、やはり一ぺん現地も見たいし、またいろいろ複雑な関係もあるようですから、住民の声並びに米軍の声もよく承り、そうして、先ほど言いましたように、前向きの姿勢で検討していこう、こういうように考えております。ひとつよろしく御協力をお願いいたします。
-
○伊藤(惣)委員 検討するというのはいままで何回も聞いているのです。だから、次の合同
委員会で取り上げて、移転か返還か要求する、そう言われるのか、あるいはまたやむを得ないというのか、ひとつ明らかにしてもらいたいと思うのです。要するに、いま政府は安保を長期に堅持する、来年は自動継続になるかわかりませんけれども、いずれにしても長期に堅持していこうとしているのが政府の態度ですね。私は公明党の立場からでなくて、政府自民党の、政府ベースで考えてもやはり友好関係にひびの入るようなそういう基地の使い方、あるいは施設区域の使い方はへただと思うのですね。そういう点から、前向きで移転あるいは返還について合同
委員会で取り上げるかどうか、この点伺って質問を終わりたいと思います。
-
○
有田国務大臣 次の合同
委員会に取り上げるかどうかということはちょっと早急でありまして、そうはいかないと思いますが、先ほど言いましたように、私も前向きで
十分検討して、そうして現地も一ぺん視察して、伊藤さんもそこに入ってもらってともどもにひとつ善処していこう、こういう考えでありますので、よろしく。
-
○伊藤(惣)委員 睦台アパートの返還は。
-
○山上政府委員 睦台アパートの、先ほど申しました提供した以外になおMAAGに提供するものが減少してまいります。その分につきましては整理されますれば住宅公団のほうにお返しすることになる、こういうふうに考えております。
-
-
○大出委員 先ほど来伊藤さんが質問をしていた点でありますが、本来
自衛隊法という法律は、当時の議事録などを見ましてもあまり満足な議論をしていないのですね。特に問題の百三条なんというのは論議なしに通っている
状態ですからね。先ほどの七十八条なり八十一条なりという問題をめぐっても、ほんとうはもう少し論議を詰めなければならぬ筋合いですね。もちろん、防衛出動
そのものについても少し詰めておかなければならぬ問題がたくさんあります。したがって、実は相当な時間をいただいて、防衛二法
そのものという意味で、特に関係条項をじっくり詰めてみたいと思っておったのですが、
理事懇談会の話し合いもありまして、きょうはそう長い時間をかけないでということでございますから、それに従って御予定を皆さんお組みになっておられるようでありますので、できるだけ時間は詰めて申し上げていきたいと思っております。
そこで、先ほど問題になりました間接侵略ということば並びにその定義、かつての国会答弁、こういうふうなものがいろいろあるのでありますが、総理に質問を申し上げたときに、国会答弁を例に引いて私のほうから読みあげましたが、先ほどの宍戸さんの答弁がちょっと足りないので、まずそこだけは確認をしておきたいと思うのであります。私のところにいまございます当時の国会答弁によりますと、間接侵略は何かという質問に答えて、「一国または二国以上の外国の教唆または干渉によって生ずる国内における大規模な内乱や騒擾をいう」、こうなっているのですね。これは方々に引用されてものの本にも書いてありますから、この点、この間総理相手に質問を申し上げたときに確かめましたところ、そうだということでございますから、これは統一をしておくほうがいいのじゃないかという気がいたします。
さて、そこで内乱騒擾、さらにまた間接侵略、こういうのですけれども、わが国というのは一体いまどのくらい間接侵略をされていることになるのですか。皆さんの答弁の中には狭義という意味、広義という意味つまり狭い意味、広い意味で間接侵略がある、こういっております、旧来の議事録からいきますと。こんな厚いものですから持ってきませんでしたが、二つある。また記者の諸君が部隊を歩いて中堅幹部の皆さんにいろいろ質問をしています。そのやりとりなどの記録もございます。ところがその中でも狭い意味にあるいは広い意味にという受け取り方をおのおのしてものを言っておられます。したがって、間接侵略というこの国会答弁は、いま私が申し上げたとおりなんだが、一体その度合いというのが非常にむずかしい。最終的にはこれは時の総理の高度な政治判断だということになっているわけですけれども、これまた非常に危険であり、かつあいまいです。してみると、その中に言われる狭い意味であるいは広い意味でということがございまして、ここらは一体どういうふうに考えておられるのか、あわせて日本という国はいま間接侵略をされているのかいないのか。ある人は、狭い意味でいえば二〇%ぐらいされている、ここに書いてありますが、ある人は、広い意味でいえば五〇%ぐらいされているという。そうなってくるとえらいことになる。そこらのところは
防衛庁はどういうふうにとらえているかということを承っておきたいと思います。
-
○
有田国務大臣 間接侵略の意味は、先ほどお読みになったような意味で政府も考えております。
そこで、現在の日本に間接侵略がどの
程度あるのかという御質問でございますが、これはなかなかむずかしい問題と思います。私は現在のところ、間接侵略の事態というようなものがあるとは断言いたしかねるのであります。しかし、一部に社会不安の芽とでもいうべきものがないとはまたこれ断言できない、かように思うのですが、われわれは社会の秩序が保たれるように切に念願しておりますが、
防衛庁としましては、ことに
自衛隊としましては、いかなる事態に対しましても万全の備えをする必要がある、こういう考えております。
-
○大出委員 備えということばを使われましたが、正確には防衛計画ですな、言うならば。そうでしょう。そうすると、防衛計画といわれるものの中には、直接的な侵略ということばを使われておりますが、そういうもの、あるいはただいまの間接的な侵略、両方に対する備え、つまり防衛計画がなければならぬことになると思うのですが、そういうふうに理解をしてよろしゅうございますか。
-
○宍戸政府委員 毎年つくっております防衛計画では、直接侵略の場合も仮定をいたしておりますし、間接侵略の場合も仮定をいたして計画をいたしております。
-
○大出委員 さて、そうなると、防衛計画というのはまずどこから立て始めるのかという問題です。まず、この
委員会の十二日に問題になりました四十年の統合年度戦略見積もりというのがありましたね。
長官、あのときは、答弁の中では全然知らないと最初はおっしゃった。あとになったら知っておることになりましたね。そこで、防衛計画というのは、これはまずどういう脅威があるだろうかという見積もりから入っているのですね、皆さんのやっているのをながめてみますと。たとえば、四十年の統合戦略見積もりでも、まず脅威の見積もり、どういう
程度のどういう脅威があるかという点を相当詳細にやっておられる。そこから入って、どういうふうな形を追って結果的に防衛計画ができ上がっておりますか。
-
○宍戸政府委員 国外の脅威は客観的に見積もります。それからわがほうの能力を見積もります。また、安保条約に基づく米軍の能力、期待度等を見積もります。そういうことを見積もりまして、それを基礎
資料にしまして、今度は具体的に、昔でいえば作戦計画、いまで申し上げますと防衛計画あるいは警備計画をつくるわけでございます。この場合は、先ほども申し上げましたが、直接侵略のいろんな場合を想定し、あるいは間接侵略のいろんな場合を想定いたしまして、それに対処する計画をつくる、こういうふうな手順にいたしております。
-
○大出委員 そこで、これはある、ないとか、中身を読んだとか読まないとか言うと問題になりますから、皆さんもお答えしにくいから、その点を私は触れませんが、皆さんのやっておられるのを見ると――と言うのは、いままでは、ひた隠しに隠されるが、四十年、四十一年ごろというのは、皆さん方がお立てになった
北海道を守る陸戦想定なんかも、非公式ならば質問に答えたですよ。したがって、私はそういう過去のやつを当たってみると、比較的明らかなんですね。まず脅威の見積もり、ここから始まりましてね。これは当時は敵性国、対象国、いろんなことをやり取りした答弁がありました。増田
防衛庁長官になってから、対象国とも言わぬということになってきましたが、しかし、中身は
北海道を守る陸戦想定によるとソビエトの八個師団が十万、常備軍三十万極東におるわけですから、陸上でいくとソビエトの場合は。八個ソビエトの師団が入ってくる。これは
北海道を守る陸戦想定の上ですよ。それからいきますと、敵性国はどこかということになってくる。それを表に出す出さぬは別。さて、そこから侵略の意図の有無、それを一体どういうふうに分析するか。それから近い将来さらに長期にわたって、こういう分析をずっと皆さんにされる。そうでしょう。ここまでは、私は念のために申し上げただけです。
そこで、こういう計画、つまりこれが防衛計画になるのですが、こういう計画をお立てになるのには情報が要るのですね。どういうふうに一体情報を集めて、これを戦略的に分析をし、見積もりをするかということなんですね。したがって、その次の
防衛庁の情報機構というのは、一体どうなっていますか。
-
○宍戸政府委員 中央から申し上げますと、各幕に情報部局がございます。まずその前に、内局にもございます。全体を取りまとめ、判断して、そして直接
長官を補佐する、内局では防衛局、課でいいますと調査課がそうでございます。それから統幕及び各幕に――統幕では第二室と呼んでおります。それから陸幕では第二部といっております。海幕では調査部といっております。空幕では防衛部といっております。それが中央の情報を収集し分析する機構でございます。
それから、それぞれ方面なり師団にいきますと、その系統の情報機構がそれぞれございます。
それから、国外のことまで申し上げますと、外務省に出向しました防衛駐在官、これが諸外国の軍事的な情報を収集して、外務省を通じてわれわれに届けてくれる、こういう仕組みにしております。組織的に申し上げますと、そういうことになります。
-
○大出委員 これは
長官、防衛計画策定に至る間の、いま私が申し上げた点を本来ならば例をあげて、かつての皆さんのいろいろな
資料を集めて分析をしてみた上で、私も実はいろいろ調べておりますが、そこのところを実ははっきりさせていきたいんです。また大切なことですから。何しろ第三次防衛力整備計画なんという、整備の計画があって、防衛計画は表に出てないから。そうでしょう。だが、しかし、先ほどの時間の関係がありますから、実はきょうは関係の内閣調査室長さんだとか公安調査庁の
長官にも御出席いただきましたし、あるいは警察庁の警備局の参
事官の方にもお見えいただいておりますので、できるだけ
長官を省略させていただきまして承りたいのですか、
長官――これは
防衛庁の
長官でございますが、
防衛庁の情報収集機能と申しますか、これはどの
程度のものだとお思いになりますか。
長官おやりになって日なお浅く、あるいはおわかりにならぬかもしれません。しれませんが、どの
程度の情報収集能力をお持ちか、これは防衛計画策定その他に一々関連をするのですから。先ほど
長官がお答えになった、外からあるいは内からという法律上の規定があります、その辺どういうようにお考えになりますか。
-
○
有田国務大臣 防衛庁としましては、先ほど言いましたように、情報収集はできるだけのことをやっておると思いますが、何ぶん御承知のような日本の国防、防衛体制でございますので、いわゆる情報収集の完全を期しておるかというと、まだまだもの足らないものが相当ある、かように思います。
-
○宍戸政府委員 ちょっと補足して申し上げたいと思います。
はっきり申し上げましてまだ十分でないと思っております。国内的にはここへお見えの内閣調査室なり、公安調査庁なり、警察当局からいろいろな
資料をいただいて、それを
自衛隊なりに分析をいたしております。国外的には、先ほど申し上げました外務省の系統からいろいろな
資料をいただいております。それを、普通でいえば軍事的に分析をいたしております。さらに米軍と意見調整、情報交換をいたしております。具体的には、米軍から得られる
資料は相当価値のあるものが多いということが
実情で、
自衛隊独自のものはまだ不十分である。しかし、そういった関係機関からいろいろ補充をいたしまして、お話しの戦略見積もり等にできるだけ正確を期す、こういう体制になっております。
-
○大出委員 その中身はきょうは時間がかかりますから承らぬことにいたします。ただし、いま
長官から御答弁いただいたいろいろのことをやっておると思いますという御答弁は、これはいささか受け取りかねるわけでございます。確かにいろいろのことをやっていなければおかしいわけでございまして、少なくとも
防衛庁長官でございますから、そこら辺は一ぺん御研究おきいただきたいわけであります。
そこで、まず、先ほどお話がありました陸上
自衛隊の中央
資料隊、いまそう言っておりませんか。そういう名前は使っておりませんか。
-
○宍戸政府委員
資料隊という名前を使っております。
-
○大出委員 そうすると、まず中央
資料隊というのがあります。それから同調査隊がありますね。それから海空
自衛隊の
資料調査隊、海外の防衛駐在官が集める
資料、それから陸海空の三つの幕僚監部で分析している――これはさっきお話がありませんでしたが、統幕二室というのがございますか。
-
○宍戸政府委員 先ほどもお答えしたつもりでございますが、統幕に第二室というのがありまして、それは情報関係を所掌しております。
-
○大出委員 あと内局の調査課があるわけでありますね。
ところで、出てまいりませんでしたが、東京都小平市の陸上
自衛隊調査学校というのがありますね。これは今日何人ぐらい卒業生がございますか。――いいです。これは昔の陸軍中野学校みたいなことをやっているとは私は思わぬのですけれども、何をやっていますか。
-
○島田(豊)政府委員 これは人事教育
局長からお答え申し上げることでございますが、調査学校でやっておりますのは、
一つは語学の教育でございます。これは
自衛官が米国にいろいろなことで留学いたします。それに必要な語学の修得をやらしております。それから調査隊の職務といたしまして、主としてこれは
自衛隊保全の目的をもちまして各種の調査をやるわけでございますが、その場合の調査の要領、情報収集の要領、そういうものについて調査学校で教育をいたしておるということでございます。
-
○大出委員 小平の陸上
自衛隊調査学校というのは
昭和二十九年に開校しているのですね。それで卒業生は、いま島田さんお話しの語学教育の課程を専攻した方を含めて六千人をちょっとこえましたね。たいへんな数ですよ、六千人をこしているのですから。そのうちで純粋な情報関係というのは三千五百人。それからいまちょっと中途はんぱな御答弁でしたが、この中に戦略情報分析というコースがある。これは調べてくださいよ、島田さん。この戦略情報分析コースというのが二百八十四人おるのです。幹部コースというのがもう
一つある。これはやっていることが違うのでしょう、中身が。それで外国駐在武官というのは主としてこの中のこういうコースを通った人ということになる。それからさらに各師団の司令部の情報の中枢にいく人、これはいろいろ分かれているのですね。これは曹士課程なんというのがある。幹部課程、曹士課程と、こうあります。非常に緻密に分かれているのですね。曹士課程の人は中央
資料隊で
資料の収集をする、翻訳、整理をする、さらに調査
隊員として全国の各部隊の機密保持に当たるなんという任務がある。これがどういうふうに動いているかということをやはりつかんでおいてお答えをいただかないと議論がかみ合わない。しかしどうもあまりたよりないので、いまこれをやっていると私ばかりしゃべっていることになってしまいますから途中でやめます。
ところで、スパイ
対策なんというものは教えていないですか。
-
○島田(豊)政府委員 情報収集の要領についての教育をやっておりますと同時に、外部からのいろいろな工作、
自衛隊に対する働きかけがございますので、そういう
自衛隊の保全をするための対情報と申しますか、そういう面での教育をやっておりますけれども、
自衛隊が外部に対してスパイ工作をやる、そういう要領を教えるような教育は調査学校ではやっておりません。
-
○大出委員 これは旧軍の中野学校みたいなことをやっているのじゃないかということを言う人もいるけれども、そこまでの能力はまだ備わっていないのだろうと思います。
ところで、米軍との情報交換は、わざわざハワイに行ってやっているケースが幾つかあります。そのほうが詳細な情報を向こうからもらえるということなんですね。ギブ・アンド・テークという形でこっちも情報を持っていかなければいかぬ。その限界によるということで向こうがくれるということですね。ここらがなかなかむずかしいのです。もう少し皆さんのほうでお考えをいただかぬと、こういう点についても日本の
自衛隊の自主性なんというものは本来ないと言っていい。すべてそこにたよっているということになるわけですからね。だからそこらのところを、実は
長官にものを言いたかったのですけれども、
長官はいろいろとやっておると思いますという御答弁なので、私のほうは質問の意欲を失った感じなんでございます。そういう答弁もあり得ると思いますけれどもね。
そこで、実は時間がないし、せっかく各方面の方にお集まりいただいておりますので……。
自衛隊の
長官以下の皆さん方は、一体情報というものをどう考えるか、その機構、機能というものをどう考えるか、日本という国を中心にして、国外を含めてどうなっているかということ、これはやはり相当的確に判断をいたしませんととんだ間違いが起こる、こういう心配が私はありますけれども、何かを引き出してこの
委員会をとめてみても、この時間ですから意味がないので、なるべく先に進みたいと思うのであります。
そこで、
自衛隊の皆さんの中で、たとえばレーダーの基地にいる人が、ある日休暇を一週間もらっていなかに帰る。さて、その前に、彼女がおって、上司に始終話をしてあるので、そこへ寄っていけよということを言われて、寄ろうというので、出てきて東京タワーにのぼったら、とたんに外国の人から英語で話しかけられた。この人はレーダー基地におりますから――あそこにいたら、英語ができなければ何にもわからないですからね。だから、これは練習しているわけですから、話しかけられて、語学の勉強にもなると思ってお茶を飲みに行った。そうしたら、車に乗せられて案内をされた。とたんに監禁をされ、脅迫をされるという事件が起こった。これは新聞にも出た。そういうふうな事件があるのですけれども、どなたか御存じですか。
-
○宍戸政府委員 お尋ねの内容は、昨年の一月十三日の読売新聞の「この日本の中で」という連載ものの中の一部に、
自衛隊員が誘拐されて基地の情報を強要されたという記事が載っておりますが、このお話かと存じます。この記事が載りましたので
自衛隊で調べましたが、記事の内容はほぼ事実に近いことがわかりました。しかし記事が全く事実というわけでもございません。たとえばI三曹ということになっておりますが、この三曹と思われますのを調べてみますと、二年後退職というふうになっておりますが、事実は二年後でなくて、事件直後に退職しておるという
程度の差があります。
自衛隊に対する働きかけの件数が約三千件以上というふうに出ておりますけれども、これはスパイの働きかけがこの
程度の件数あるわけではないということでございました。
大体以上のようなことを当時調べたわけでございます。
-
○大出委員 私のところにある
資料のほうが詳しいですから、それはいいです。大体そういうことでございましたという答弁がありましたからそれでいいのですけれども、実は私もこれは調べてみた。東京駅の便所の右から二掛目のドアに画びょうをさして、その頭を赤く塗っておけということになっておるのですよ。ここまでくると、これはそのときのいろいろなこまかい
資料からいきますと、うそだとは思えない、どこから考えても。そこで実はいまあなたにぽんと質問したのですが、ここに記事が載っておりますよということは、おたくに私のほうで申し上げておるのだから、これがわかるのです。ですから、その事実をお認めになればいい、時間の関係がありますから、長々と質問いたすことはいたしません。これは読売新聞の四十三年一月に連載したスパイシリーズの中に載っておる記事ですから、あとはごらんいただけばわかるということであります。ただしかし、三千件というのは多過ぎるにしても、そんなことは常時ある。その事実の
一つをあなたはいまお認めになっているわけで、私のいまここにある
資料でも認めざるを得ないわけです。そうだとすると、そういう事実があって、それは一体どこから働きかけられたのかという点について、なかなか言うことをはばからざるを得ぬような点が私の気持ちの中にもあるのです。
防衛庁側でも、某国ぐらいしか言いたくないのではないかと思うのですが、そこらのところはいかがでしょう。
-
○宍戸政府委員 当時いろいろな角度から調べておりますけれども、具体的な国名をあげることは遠慮さしていただきます。
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○大出委員 そういう御答弁であれば、それでけっこうです。私もそのことを深く追及しようというところに目的があるわけじゃございませんので、私のところにもいろいろ
資料がありますが、けっこうです。
そこで、もう
一つ申し上げたいのでありますけれども、アメリカの情報機構、諜報機構あるいは防諜、いろいろなことばがあるのですが、たとえばカウンターインテリジェンスというのがある。これは防諜でしょうね。上瀬谷の通信基地はそういうふうな基地だと思うのです。だから、そういう意味ではいろいろなものがCIAから始まりまして、たいへん体系的にぴしっとでき上がっているのです。
さてそこで、日本の場合は、まず先ほど御質問にお答えをいただいた
防衛庁の中の情報機構というものがある。これは先ほど宍戸さんが答えられたとおりですが、さてそのほかに、内閣には内閣調査室があるわけでありまして、また公安調査庁がある、そして警察庁がある、こうなっておりますね。これは機能的にはどういう相関関係を持っているのですか。これは内閣調査室長大津さんにお見えいただいておりますので、承っておいたらいいと思うのでありますが……。
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○大津説明員 内閣調査室は、内閣法にもございますように、政府の重要政策に関する情報の収集及び調査という業務を行なうということになっております。と同時に、各行政機関の行なう情報の収集調査であって、国の重要政策に関するものについての連絡調整を含むということになっておりまして、各関係の情報機関につきましてのそういう面についての連絡調整の仕事をやってまいるということになっておるわけであります。
その他の公安調査庁あるいは警察の情報収集の任務につきましては、それぞれの設置法等によって定まっておるところだと思いますので、そのほうから御説明いただいたらと思います。
-
○大出委員 そうしますと、内閣調査室というものは最後のところにある、いまお話の連絡調整というのは、横にということになると思うのですが、つまり私がほかの具体的な事例から例をあげて調べてみますと、内閣調査室には公安調査庁からやはり相当情報が入っている、それを内閣調査室はいろいろ分析をされておられる、こういうことにならざるを得ぬのです。ここらのところは、公安調査庁の吉橋
長官がお見えになっておられますが、そこらの関係はどうなっておりますか。
-
○吉橋政府委員 公安調査庁は御承知のように、公安調査庁の設置法に基づきまして、いわゆる破壊活動防止法に準拠して規制のための調査並びに処分の請求を主管している役所であります。それで内部的に調査、指定団体をきめまして、それに関する諸般の
資料、情報等を収集しておるのでございまして、内閣調査室との関係は、先ほど内閣調査室の室長が言われたように、連絡協調、情報協力というようなことで、われわれのほうで入手いたしました
資料、情報等で、内閣調査室で必要と思われるものを提供しておる、そういうような関係でございます。
-
○大出委員 そうしますと、内閣調査室なり公安調査庁なりというところと警察庁との関係はどういうことになるのですか、
後藤さんがお見えになっておられるようですけれども……。
-
○
後藤説明員 申し上げるまでもなく、警察の責務が警察法の第二条に書いてございます。そこでこの警察の責務を端的に申しますと、人の生命、身体、財産の保護あるいは犯罪の捜査、公共の安全と秩序を守る、こういうことが主たる任務になっておりますが、これに必要とする事前の情報あるいは犯罪がありました場合には犯罪の情報、こういうものを収集しておるわけでございます。そのうちで内閣調査室において必要と思われるであろうようなものにつきましては、そのつど連絡をいたしておるわけでございます。たとえて申しますと、最近でございますれば、いわゆる過激派の学生が方々で問題を起こしておりますが、こういう過激派の学生がどういう系統でどんなことをたくらんでおるのかというようなことが私のほうでわかりますが、これを内閣調査室のほうへ連絡申し上げる、こういう関係になっておるわけでございます。
-
○大出委員 実はこの問題を掘り下げてものを申し上げるということになりますと、純粋な意味で申し上げていくことになりますと、実は法務
委員会の分野などにわたるものが多分にあると思うのですけれども、私は、実はたまたま日本の防衛二法というものが中心になっている審議の場でございますから、明るい表へ出ている日の当たっている面とそうでない面とが、これは国家機能の中にあるわけですが、その反対のほうの側の問題がさっぱり表に出ないままというのは、やはりいささか問題があると思いますので、どういう機能を、おのおの法律上はあるのですけれどもそれがどういうふうになっているのかという点、ここらをひとつはっきりさしておきたいと思って、短時間でありますが、ものを申し上げているのでありますが、
防衛庁といえども、これはシビリアンコントロールということになっているのですけれども、これは防衛
局長をはじめ警察関係の方々がたくさんおいでになる。その意味では警察コントロールかもしれぬと思うぐらいなんですが、その意味では、法律は法律として、実際はうんと密接ではないか、こう思っているのですけれども、そこらはどこにあるのですか。これはおのおの別々であって、つまり、そういう情報というものがおのおのの法律事項になっているから、
防衛庁はやはり
防衛庁であり、内閣調査室は内閣調査室であり、公安調査庁は調査庁であり、警察庁は警察庁である、このままだという理解でございますか。調査室なら調査室というところは、総理大臣がおりますから、どこかそこらで一本に、実質的には法律は法律としてぱっとつかまえているところがあるのかないのか、そこらのところはどちらかにお答え願えませんか。大津さんのほうから。
-
○大津説明員 先ほどお話し申し上げましたように、それぞれの行政機関の情報収集の目的というものがそれぞれ違っておるということでございますけれども、その情報が政府の重要政策の上にいかに反映しなければならないかという意味におきましては、連絡調整という仕事も内閣官房のほうでやらなければならないということでございまして、その面におきましては、情報の収集の面におきまして一本化することが法制のたてまえとしてもできるということで、これは内閣官房
長官、あるいはそのもとにありまする官房副
長官の主宰のもとにおきまして、随時必要な問題につきましてはそういう調整をはっきり行なっております。
-
○大出委員 さて、そこで、皆さんのそういう情報入手経路あるいは目的、法律的義務等々があるわけでありますが、それと、さっき
防衛庁から話が出ております米軍なりあるいはアメリカなりとの間の情報交換、これはわりに、ギブ・アンド・テークにしても、そういう交換の場がある。さてそうなると、
一般的に見て、機密というふうなことに属するものを入手するしないという動きの中で、アメリカのCIAというものと、その下にCIDなどという機関もありますが、そういう関係との皆さんの機関との相関関係というのは、相互協力の形にあるのかどうかということですね。ここのところはいかがですか。
-
○大津説明員 他のほうのことはよく存じませんけれども、内閣調査室としては、特にCIAとそういう交換の仕事をするというようなことはやっておりません。
-
○宍戸政府委員
自衛隊ととCIAは直接の関係を持っておりません。先ほど申し上げましたのは、在日米軍あるいはその上部機関である太平洋の陸海空軍の情報関係と交換をする、こういうことでございます。
-
○吉橋政府委員 公安調査庁も、CIAあるいは外国の情報機関との関係はございません。
-
○
後藤説明員 私のほうも、CIAについては関係はございません。私のほうは、先ほど申し上げましたとおり、警察の職務を達成するのに必要な情報を集めておるわけでございますが、その限りにおきましては、あるいは憲兵隊、憲兵司令部でありますとか、あるいは各部隊にそれぞれの機関がございます。機関と申しますか、先ほど先生おっしゃいましたCICなどというのがございますが、その限りにおいて、警察の責務を達成する上において必要とする情報を集め、そしてそれが米軍のほうに役立つというようなものについては、これは連絡をいたしておりますし、また向こうのほうで警察のほうに役に立つと思われるものがあれば、そういうほうから連絡を受けるということはございます。
-
○大出委員 宍戸さん、これは関係ないとおっしゃるけれども、アメリカの機構を見ますと、CIA、日本流に言えば中央情報局ですね。この統制のもとにDIAがある。これは軍情報部なんですね。これあたりが全く関係ないということは――これはCIA傘下です。これはあとから二、三例をあげますけれども、おかしなことになる。それからFBIがありますが、これは御存じの連邦捜査局、まだ幾つもありますが、こういうものが幾つも集まって、てっぺんのほうはこの協議体ができているわけです。協議体があって、その協議体はUSIBですね。国家情報
委員会、ここが調整の役割りを果たす。先ほど官房副
長官からお話がありましたが、調整の役割りを果たす。それが国家安全保障
会議等につながるという形になっている。だから、大統領の隣の部屋の赤電話、情報室の赤軍話を取り上げれば、
たちまち天下の情勢、世界の情勢がぴしっとわかるというシステムなんですね。ですから、日本という国土を中心にものを考えれば、安保条約というものを媒介にして置かれている日本の立場からいえば、こちらの側と関係がないなどということはあってはならない筋合いのものではないかという気が私はする。ただ、それが直接的にCIAというものでなくても、軍情報局が、情報部が、DIAがあるのでありますから、先ほど警察のほうでおっしゃっている多少の関連が出てきておりますが、そういうふうに受け取れる節々があるのです。そこらのところをもう一ぺん――これは
防衛庁に関して言えば、
防衛庁長官にお答え願いたいのですが、アメリカの軍情報部等との関係はほんとうのところどういうことになっているか。いかがですか、
長官。
-
-
○宍戸政府委員
自衛隊と米軍との情報連絡については先ほど申し上げているとおりで、まず一番密接なものは、在日米軍と
自衛隊の情報関係でございます。年に数回
程度でございますけれども、上部機関である太平洋軍と情報交換をすることにしております。さらにその上部機関でありますDIA、国防省情報機関でございますけれども、これとは、お互い国防関係でございますので、これは回数はたいへん減りますけれども、連絡はございます。そういうことでございます。また、最も国防省と連絡いたしているのは、特に外務省に出向しておりますわがほの防衛駐在官でございます。CIAとわがほうとの接触は直接にはないのでございます。
-
○大出委員 防衛駐在官の皆さんの役割りというものは非常に重要なんですが、そういう面での間接的な関係はなくはない、こういうことになると思うのです。
時間があまりあり産せんので、もう少し中に入ってものを申し上げたいと思うのでありますが、外務省に承りたいのですが、国籍がカナダでございまして、ドナルド・アーサー・ロランズという人のビザ、これは一体どうなっているかということをあらかじめ御連絡をして、お調べおきをいただきたいということをお願い申し上げたのと、中川さんにも御足労いただいて恐縮ですが、この人が三十五年の七月から三十六年までの間約一年半の間に五回出たり入ったりしているのですね。しかもロランズという人は奥さんも入ってきております。御夫婦でおったのですけれども、ロランズ・アンナさん、この二人なんですけれども、これがカナダには実は本物のロランズ御夫妻がおるわけでありまして、本物でないロランズ御夫妻が一年半ばかりの間に日本に入ってきておる。たいへんたくさんの回数出たり入ったりしております。これは入管でおわかりいただける筋合いだと思います。これは調べたものだからお伺いしなくてもいいとは思ったのですが、人が調べたもので自分で調べたのではございませんから、そういう意味で実は念のためにお願いをしたのですけれども、そこらのところはどういうことになっておりますか。
-
○中川(進)政府委員 ドナルド・アーサー・ロランズという一九二六年三月八日生まれのカナダ人が最初は
昭和三十三年に参りまして、特定査証というので百八十日で参りました。そして
昭和三十四年の十一月に出国いたしましたが、その後
昭和三十四年の十二月にまたやってまいりまして、そして約十回出たり入ったりしております。
それで、いまお尋ねのカナダに本物のロランズが住んでおるがということでございますが、何が本物か何がにせものかということは私どもにもわかりかねるのでございまして、入国管理当局といたしましては、旅券を持ってきて、旅券に名前が書いてある、その写真が張ってある、それと照合いたしまして、本人の言うことが間違いがなさそうだし、それから有効な査証を在外公館から受けておる限りは入国を認めざるを得ないのでございまして、入国を認めた上でまたいろいろな用事で再入国の申請がありますと、その事情を聞きましてもっともだと思えば、しばしば国会で申し上げますように、在留外国人の便宜をはかるという意味から極力好意的にこれらを認めていこうということでございまして、これは本人がたびたび申請した結果こういうたびたびの再入国が行なわれた、かように考えております。
-
○林説明員 ただいま中川入管
局長からお話しございましたように、第一回目は
昭和三十二年の十一月ごろにロンドンで査証の申請をしまして、当時はまだ日カ間に査証免除取りきめがございませんので、本件は中央の外務省にまいりまして、外務省として
法務省入管当局と協議した結果、有効な旅券を持って、しかもこの際は短期視察というふうな名目でございましたので、当時は特定査証百八十日でもって入国査証を与えました。その後、さらに
昭和三十四年の十二月九日にマニラで貿易という目的で入国査証の申請がありました。そこで同様にマニラの日本大使館を経由しまして外務省から
法務省に相協議いたしまして、商用査証ということで本人に与えました結果、十二月九日に日本に入国してきたというふうに聞いております。その後の
状態につきましては、ただいま入管
局長からお話ししたとおりであります。
-
○大出委員 ここにこまかい
資料がありますけれども、これまた先ほど申し上げました読売新聞のスパイシリーズの四十三年一月七日に載っておりまして、「ある日突然蒸発」「にせビザで堂々貿易商」こう書いてあるのです。これを世の中の人が読みますと何か疑心暗鬼になるんですね。私の秘書がこれを読んで、こんなことが一体世の中にあるんだろうかと思ったというわけです。ところが実際調べてみると、あるんだろうかじゃなくて、現にあるんですね。ここにこの新聞に載っております記事は、ちゃんと念のために調べているのですね。どういうわけでにせの発給をしているのか、調べてみると最初はロンドンから入ってきたそうです。そうしてカナダ政府発給の旅券を持ってロンドンから入ってきている。そして丸ビルの一室を借りてトランジスタラジオの輸出の会社をつくって、社員六人を使っているんですね。ところがこれをICPO、国際刑事警察機構というのを通じて旅券の二人の身元を照会したら、何と別なロランズ夫妻はカナダに実在していたというのですね。しかも、そのアンナという奥さんのほうはこの間に、三十七年十一月に帝国ホテルにやってきて日本の晩秋を一週間楽しんでいたというんですね。だから、このときににせもののロランズ夫妻は日本にいたわけですね。それがある日突然蒸発。この人は田園調布のうちだとかいろいろありますけれども、それもここに全部
資料がございますが、まことにこれはふしぎな話で、最後は香港に行っておる。香港に行くときには飛行機で行ってない。船で行っておる。ロランズという旅券ではない、別な旅券を持って香港に行っておる。こっちへ入ってくるときにはロランズで入ってきた。ところが香港はそういうことで立っているけれども、羽田の入管には入っていないのですね。飛行機に乗ったことは間違いないのだけれども、飛行機を途中からおりてしまうわけにいかないですから、羽田に飛行機が着いて、入管まで行くこの間に消えたとしか思えない。こういう点について当時警察がお調べになっていると思うのですけれども、
後藤さん、その間の事情はおわかりになりませんか。
-
○
後藤説明員 先生お尋ねの点は、三十八年の七月二十三日でございますが、警視庁の東調布警察署に対しまして、ただいまお話しの者でございましょう、ロランズ夫妻が見えなくなったというので家出人の捜索願いが出されております。これに基づきまして警察といたしましては、それぞれ関係の方面に手配をいたしております。なお、この失踪した、つまり行くえ不明になったわけでございますが、その間にどういうことがあったのかというようなこともその状況を調べてございます。そういたしますと、わかりましたことは、七月二十三日でございますが、ロランズ家に雇われておりましたメイド、これはそこに住み込みではなかったようでございますが、これが二十三日にロランズ氏のところに参りましたところが、新聞受けに三日分ばかりの新聞が入ったままになっておる、そして裏口の錠はかかっていなかったということでございます。そこで入ったわけでございましょう。そうしますと、室内の電話のところに十万円の現金が置いてございまして、そして日本語のひらがなでこのメイドさんの名前を書きまして、皆さんにお金を払ってください、お大事に、こういうことが書いてあったそうでございます。そこでこの状況からいたしますと、これは計画的にと申しますか、あらかじめどこかへ行こうという考えのもとにいなくなってしまったということが推定されたわけでございます。そこでなお、捜索願いが出たことでもございますし、各入国管
理事務所あるいはその出張所等に対しまして出国の事実があるかどうかということについて問い合わせをいたしましたが、発見するに至らなかったのでございます。
状況はそんなことでございます。
-
○大出委員 ちょうど相前後してウルグアイ人でエンリケ・ローウェダーという人が茅ケ崎海岸に車を残して消えた事件があるのです。この人の身元というのはフランスの捕虜収容所の中に記録台帳がありますが、そこに載っておるのです。指紋照合をしたところが違うのです。こういう事件もこのときに起きているのです。
いまお話のメイドさん、久保田かねさんという方で、御主人は衆作さんとおっしゃるのですけれども、この書いて置いていったというわけなんだそうですが、ここに詳細なものがあるのでございますが、実に詳しいので、私もびっくりしているのです。久保田かねさんの御親戚の関係やなんかみんな調べて、おまけに家の地取りや地図まで詳細なんです。たいへんな調査
資料を相当な労力を使っておると思います。そのまた関係の方々、あまり名前をあげないほうがいいと思うのですけれども、いまお話しが出ましたからちょっと口にしてしまったのです。おまけにロランズ氏は、香港ゼネラルエレクトロニクスという株式会社がございまして、ここへ行っておるわけです。ここの取締役並びに代表取締役なんです。ロランズさんはそういう根拠地があって香港に行っておるわけであります。
私はこの問題をずっと追っていって、実はそれなりのことが出てくるという意味で明らかにしなければならぬということも考えるのですけれども、ここにありますので――ただ、そのことよりも実は別にもう
一つ何とか公にしてお考えをいただかなければならぬことがあるので、実は時間の関係もあってあまり深く入りたくない。そこでこの問題は別な角度からやりたいと思うのです。
もう
一つ確かめておきたいのですが、やはり同じスパイシリーズの中で「外交官を力ずく」というのがあります。これは四十三年一月九日の読売新聞です。これはロシア語のスペルを見ると、ここにはポクロフスキー事件、こうなっておりますが、私のほうのロシア語のスペルを見るとポプロフスキー、こういうふうに読める字なんですけれども、先ほど
防衛庁のお話がありまして多少の違いはおのおのあるようでありますが、これはソビエトの大使館の、私のほうの調査の中身でいくと武官になっておりますが、外交官です。多少ずつ違いがあります。さっきのものもそうですが、記者の方がそういうふうに書いたのかもしれません。この件について、これは非常に新しいのです。事件が起こったのは四十一年の三月十七日なんです。これは「自宅のアパートで」、ここに書いてあるのをそのまま読めば「アメリカ情報部員とみられる三人の男に誘かいされかかった(?)」――ほんとうかどうかわかりませんが、そういう事件がありまして、これまたどうも、すぐあと三人の相手の人はその翌々日に出国した人、それからやがて少したって出国した人というので、みんないなくなってしまったわけですが、この件も警察でお調べになっておりますね。ちょっと言っていただけないですか。
-
-
○大出委員 この件は非常にスリラーめいたふしぎなことがこの中にたくさんある。しかも、日本の神楽坂の料亭を使っておりましたり、ある診療所を使っておりましたり、いろいろなことが実はございます。問題は、あまり深く言わないほうがいいと思いますけれども、つまりこの大使館におられた方を
一つの目的があっていろいろな地取りをやり、約二カ年間にわたっていろいろ調べた人がある。そうして連絡をする場所がどこであり、どういうところにどういう感覚で寄るかということを調べたわけです。それから飲みに行ったり何かするときもあるわけですが、そういう場所等にもドアマンその他を全部連絡をつけて、その人の身元も全部調査されてありますけれども、その人が行ったらすぐ知らせるというぐあいのものを、たとえば高輪のプリンスホテルであるとか帝国ホテルであるとかいう大きなところに全部ちゃんとした渡りがつけてある、こうなっております。
そこで、ここにある私の
資料で見ると、明らかに誘拐をしようとしたのではないか、そうしてそれがうまくいかなかったのではないかというふうに見られるわけです。つまり――ここから先はなかなか言いにくいのですけれども、きわめて簡単に、取り調べました、こう言い放しましたが、ここまで私ちょっと口にしましたから、取り調べた結果どういう事件であったというふうに、あるいはどういう事件だったという印象をお持ちかという点、どうしてもお話しいただけぬというならいたし方ありませんが、概略でけっこうですけれども、言えるのだったら言ってください。
-
○
後藤説明員 これはすでに
昭和四十一年の四月二十日でございますが、この四月二十日に衆議院の外務
委員会において取り上げられまして、当時の外事課長が詳細に御
報告申し上げております。私も当時外事課長が申し上げました事実以上に知っておるわけではございません。
私どもの感触はどうかということでございますが、これは三月十七日の夜のことでございますけれども、一一〇番がかかりまして、港区のあるアパートにおいて外人がけんかをしておるという通報があったわけであります。この通報者はアパートの管理人でございます。そこで、現場にパトカーがかけつけまして、これはことばが通じないということもありまして、とりあえず署に来てもらいたいというようなことで状況を聞いたわけであります。
その結果、判明いたしましたところでは、このアパートに住んでおります二人の外人がある
程度親しくつき合っておったようでございますが、そのうちの一人がある晩――ある晩というのはこの晩でございますが、腹痛を起こしましている状況がございました。この知り合いのもう一人の外人が部屋まで連れていった。そうしましたところが、部屋の中に二人ばかり知らない外人がおったということで、それであわてて外のほうへ腹痛を起した人を介抱してくれたその人が逃げ出したというようなことでございます。問題は、それであれば、その
段階で警察にお話がありますともっと簡単に済んだかと思いますが、これはその次の問題がございまして、実はそのあとでございますが、さらに数名の外人があらわれまして、部屋の中におったというこの外人に対しまして、このアパートから出ていくところを取り囲みまして乱暴をしたということでございます。そこで、両者間においてけんかのようなことになりましたので、管理人があわててこのことを一一〇番に入れたということでございます。そこで、これは関係者につきまして警察のほうではできるだけの取り調べをいたしましたが、第一の事件と申しますか、最初の事柄から第二のトラブルに至るまでの間、以上申し上げましたようなことで、これはどうも特別に何らかの事件として立件をするというほどのことでもないというようなことでこれはそのままになっておるわけでございます。
-
○大出委員 その辺にしましよう、時間がありませんから。
また
自衛隊のI三曹でしたかな、それから先ほどのロランズさんの問題、いまのこの文面で、新聞でいけばポクロフスキー氏の事件、私のほうの
資料でいきますとポプロフスキー、こうなっておりますが、うずくまってからだのぐあいが悪いというので、ポクロフスキーさんに介抱をされて二階まであげてもらった人、それもわかっておりますが、そうして部屋の中に二人いたということでありますが、これもおおむねここにあります。そこで港区芝三田の清風苑という、この十六号室はポクロフスキーさんの部屋でございます。筋向かいの十四号室というのがいまお話しのうずくまっていた人の部屋なんです。そこに行ったら二人おったわけなんですけれども、実はそこまで私いま申し上げたら、いずれも架空ではない。いずれも事実として多少の相違はあるにしても皆さんがお認めになっている。そうすると、いま私が申し上げた限り、いま事件をあげましたが、おおむねこれは信憑性があるというふうにごらんいただかなければならぬ。皆さんのそういう御答弁です。ですから、そうすると、私がここにたくさん持っている詳細な
資料というものは、これまた架空なものではない。まだたくさんほかにあります。井上さんの問題、小林、佐々木、高野、井尻なんていっぱいあります。二十件近くございますけれども、そうすると、今度は逆にここに書いてある読売新聞のスパイシリーズというものも、うそやはったりを書いておいでにならない。さすがに天下の読売新聞です。相当労力をさいて記者の方々を方々に飛ばしてお調べになって書かれた。そうすると、ここに書いてあるスパイシリーズのことだけれども、ものスパイシリーズという、「渦まくスパイの影」ということも、多少の相違はあるかもしれぬけれども、あまり違った、当て推量ではない、これはこういうことにならざるを得ない。
そこで、さっき冒頭に申し上げましたように、日本の国というものが舞台になって、外交官、いま私は何国と言ってしまいましたが、そういうことが現にある。ここらを一体どういうふうに皆さんお取りになっておられるのか。平和でございといって生きている私
たちにとってあまりピンとこない事件なんですけれども、
一つの国家という暗い感じを持たざるを得ないようなものだと思いますけれども、たいへんな暗闘がそこらじゅうにあるということは言える。ここのところを情報、諜報関係の方がお集まりでございますから、
防衛庁というものが存在をして機密云々というようなことでよく問題になります。そこらのところを総合してみると、一体これをどう考えて、国家主権という立場から見てどうしなければならぬかという点を、特に
防衛庁も相当な情報諜報機関というものがあるが、さっき私はカウンターインテリジェンスということを申し上げましたが、これは防諜ということになりますが、そこらのところを含めて、どう考えるか。私は
自衛隊の違憲論をとなえる人間でございます。ございますけれども、現に存在をするということになると、
国民の立場から見て、れっきとした
自衛隊に籍のある方が、某国ということでお答えになりませんでしたから私も言わなかったが、某国の某までわかっておる。そうすると、そこらのところを一体どういうふうに考えるべきかという点、これは国家責任を問われますよ、本当に。
国民の側からごらんなさい。こんな全く奇々怪々なことがこんなに新聞に書かれて、これを読んでおるでしょう。しかも四十三年一月ですよ。それを何の回答も与えないでこのままになっているということをどう考えたらいいかという点。これは国務大臣であり、
長官であられる
有田さんしかおいでになりませんので、しかも
防衛庁を
所管されている大臣でございますから、そこらをどういうふうにお考えになるか。ほかのところは専門家に承りましたから政治的な意味でどういうふうにお考えになるのかという点を承りたいのです。
-
○
有田国務大臣 そういうようなことが行なわれておるということはまことに遺憾に思います。しからばわがほうがどうしたらいいかということでございますが、これはなかなかむずかしい問題と思いますけれども、新聞にそういうことが載っておることはいまお説のとおりよくわかりましたが、われわれとしては、真偽さまざまな記事が各種各様に載る場合があるのですが、これに対して一々これをどうだとかこうだとかいうことも実に枚挙にいとまがないというようなことでありまして、非常に遺憾なことでありますけれども、情報関係各官庁の人がおそろいですから、それをよく総合した上でひとつ判断をしていきたい、かように考えるわけでございます。
-
○大出委員 私、きょうこれを持ち出しましたのは二つ意味がありまして、事実こういうことが次々にある。きょうも続けられているかもしれない。こうなってまいりますと、やはりそういうことは
国民の前に、事実であるものはあると、明らかにして、その上でこれをどう考えるかということをほんとうにお互いに考えなければいかぬという点が
一つ。それからもう
一つはこういうことと関連をして、非常に個人という意味でむずかしい立場に置かれている人――これは本来本人の意思ではないのだがそうなっていってしまって、そうなっている人だけれども、これは何としても救わなければならぬということになる。この二つの面があるのですね。
そこで、私はもっと言えば、先ほど冒頭に申し上げましたように、皆さんの中にそれらしい機関があるわけですから、そことの関連、それを国という立場でどうとらえるかという問題がもう
一つある。そういう意味で実は取り上げてみたわけですけれども、時間がありませんから、あまり深く突っ込まないようにしておるのですが、「外交官を力ずく」この記事の中を実際どうなっているか調べてみるといろいろ書かれておる。さっき申し上げたように、調べて、ある場所に車をとめて、向こうから来る経路がわかっておれば、こっちから車をぶつける。そして介抱して連れていく。かつてこれは新聞に別な意味で、これは成功した例で新聞に出ておりますけれども、某国と某国との間の誘拐事件が成功するのですね。別な立場で、今度は争う立場でそういうことがある、こうなっているわけですね。だから、そのためには相当な日本人が使われている。そして身上調書から何から実に詳細なものが全部あるのですね。ある診療所を使って連絡場所にしておる。ここに張り込んで次々に来る患者から何から全部調べる。人相、骨柄、タイプまで、しかもものすごく詳細な現地地図まで全部書かれておって、どこから何分、どこから何分と全部、こういうことになっているわけですね。こういう詳細な調査をやっている。それはたいへんな組織力がなければできませんね。これはまた調べた人はたいへんな労力を費やしておるのですね、日にちもかけておる。ですから、そういうことで現にこれをやっていたという人がいたとすればどうなるか。いまのは車の経路でやろうとしたら失敗をして、そうして先ほどの例の三田のアパート清風苑の十六号室、十四号という関係で、そこでやろうとしてこれまた失敗したといういきさつ。これは聞いてしまいましたが、なぜそこまではっきり私はものを言うかというと、ここにある
資料で、現に調査をした人がおって、その人が一番末端で自分で調査した
資料ですが、この人がCIAに使われておって、やめたのですよ。そうしたら、私のところに手紙が来ております。本人の身の危険ということもありますから、名前を申し上げておきましょう。横須賀市追浜町二の四五、松本政喜、本人の私のところに参りました最初の手紙によると、「前略、私はアメリカ諜報機関に勤務していた者ですが、昨年三月に事情があってやめました。その後毎日毎日がおどしといやがらせの連続で、現在は外出もあぶなくてできない
状態が続いておりますので、昨年の十二月から現在に至るまで自宅に引きこもっておりましたが、もうこれ以上がまんができなくなりました。忍耐も限界にきておりますので御援助におすがりに参上した次第です。一応概略お聞きくださいませんか。」ということで中身が書いてある。たくさんございますが、一々申し上げません。ずいぶんいろいろなことがございます。概略申し上げますと、この方は――二申というのがございまして、こちらのほうにもいろいろございます。この方は、日本の終戦後、例の有名な、かの有名なということになりますか。キャノン機関におった。キャノンという人はいま台湾にいるそうですけれども、キャノン機関におって、二十一年四月二十日交番から呼び出しが来たということですね。それで行ってみたらCICから呼び出しが来たので行ってくれというところから始まっている。そしてキャノンと一緒にいろいろなことに関係してずっときた。それからいまでもあそこにあるでしょうけれども、CICの最初の湯島の岩崎邸、これは
昭和二十五年だそうですが、ここに正式に勤務して昨年の三月まで勤務していた。御家族のこともあり、子供さんも大きくなって日大に通われるということになってきて、暗い半面の仕事をずっとしてきた人ですから、何としてもやめなければならぬということでやめたんでしょう。それで、ちょっと簡単に冒頭申し上げたのですが、そんな事情があった。私も実は当初非常に御本人が――一番末端ですから、やれ人を殺すなんということをやっている人ではありませんけれども、しかし暗い面でそういう苦労をされておりまして、いやいやながらそういうことになっていた。一番最初の出発点が警察から呼び出されたわけですから、そういうことでそうなってしまったわけですから、何とか縁を切りたいということがあったのでしょう。それができないできてしまった。しかしもうしょうがないということでやめた。だから、そういう意味ではいささかノイローゼぎみで多少オーバーなところがあるんじゃないかという気がいたしまして、あまりに奇々怪々な話が出てまいりますので、私も実は疑心暗鬼だった。ところが、この人の話の中にまず内閣調査室長をやっておられた村井順さん、私はお目にかかったことはありませんが、村井順さんの話が出てまいりまして、当時から仕事の関係で知っておったのでしょう。そこで、非常に自分の身の危険を感じたりして頼みに行った。そしたら村井さんが、それじゃ警視庁の土田君に会ってみたらどうだと言うので、警視庁の刑事
部長をしておる土田国保さんに
紹介された、そして会ってみた。ところが人権擁護
委員会に行けとかなんとかということでなかなか取り合ってくれないというわけですね。それであきらめて帰ってきた。ところが精神
状態がおかしいんじゃないかというふうにごらんになったのでありましょう。私も最初そう思った。ところが、ふしぎなことに日下部さんという警部補の方がその当時の
資料を出してくれということでおいでになった。何回かこの人のところへ来ている。ところが御本人は私のところに
資料をよこしましたが、この
資料をうっかりあげてしまうと、それこそこれがあるからもし何かあっても表にこれが出るから身の安全を保てるのかもしれぬということで、死力を尽くしてこの
資料を隠して渡さなかった。何回も行っておられる。御本人に聞いてみてください。これもまた私は非常にふしぎな気がする、そこらは。そこで最後に思いあぐねて、こうなると国会という場所で全部ぶちまけて明らかにしてしまったほうがいいのかもしれぬということで実は相談にお見えになったわけです。私も実は気にしましたし、心配もしましたが、さっき申し上げましたことの真実性も皆さんお認めになったようでございますので、私も実はここで口を切るについては正直に言ってずいぶん考えた。しかし人一人の問題を救い切れないという政治はあり得ないわけですし、また御子息さんがこれまたいささかノイローゼで、私は心配してそれを御子息さんに直接連絡をしてもらった。御子恩さんもおやじの言うことはほんとうだと言っておられる。日大に行っておられたが、これは、やめて、最近自動車事故が起こったりして手首を切って
自殺のまねごとをした事件も出てきた。そうなると私も、いかにそれが多少オーバーな点があったにしても捨てておきたい、こう思いましたので、はっきり申し上げたわけです。また、私が昨日オープンで皆さんに御連絡をしておいでいただくようにしました関係で伝わったと思いますし、土田さんにも一ぺん電話で連絡した上でと思ったので電話しましたら、昨日は三億円の捜査のほうに行っているというわけでありました。そこからだと思いますが、本日この松本さんあてに、さっき私がここにあげました警部補の方から電話が入っている。電話が入ってきたことを私に御本人から連絡が参りました。ですからそうなると、警視庁の皆さんのほうへも、私きょうここでこういう取り上げ方をするから日下部さん御本人に御連絡していただきたいということを申し上げておきました。御本人に日下部という警部補の方から連絡が行っておるわけであります。しかも、これは家を引っ越しておるけれども、ようわかったと思います。この日下部さんが知っておる住所にはいないのです。ところがちゃんと連絡が行ったとなると、これもいささかたいへんなものだと私も思うわけでありまして、私もうっかり歩いておられないと思うのですが、引っ越して御本人がそこにいないのです。引っ越したからわからぬと思ったら、電話を盗聴されておってちゃんと電話がまいりましたということです。ですから、そういう問題が現に日本のこの世の中に、しかも横浜に住んで家族をかかえておる方で、その方の問題でもあるわけです。そういう両方の面で私はここで明らかにしてみて、皆さんが一体どういうふうにお考えになるか。時と次第によっては、たくさん材料がありますから、別な場所で本格的にこの問題ということで詰める方法もあります。ありますが、そのことよりも当面そういう気の毒な方がある、本人がやりたくてやった仕事じゃない。さっき私が申し上げたように、警察から突然呼び出しを食って、行ってしまえばこれはどうにもならない。CICに出頭しろと言われておるからおまえは行けと言われて、戦後のことですから、これはCICに行かなければえらいことになると思って行った。そういうことですから、そうすると、それ以来離れようがない、話を聞いてしまった。そういう人が、この人だけでなくてまだたくさんおるのじゃないかと思う、これだけの捜査ができる組織をかかえておるとすれば。これは私がそれこそ相当な金を使って調べてもわからない。日本人で相当たくさんこういうことに従事しておるらしい。それがCICというものと、あるいはCIAというものと、日本の情報調査機関というものといろいろな相関関係があって進んでおるとすると、これはやはり別な角度から考えてみなければいかぬという気がしたりしまして、とりあえず私はこの点について、そういうふうに身の安全ということをも含めてどういうふうにすれば一番いいのかという点を、関係の皆さんすべてお集まりですから私に知恵を貸していただきたい、率直に申し上げまして。
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後藤説明員 ほかの方からも御答弁があるかもしれませんが、直接警察に関係しておる部分がございますのでお答えさせていただきます。
いま、先生お話しのこの方は確かに警視庁の土田刑事
部長のところにあらわれて、脅迫されておるというようなことの訴えをしております。それからさっそくこの事実について調べさせております。警視庁では、まずこの方が店を出しておられた場所を所轄しております本富士警察署に最初調査を下命しております。最初この方が訴えられましたのはいま先生お触れになりましたようなことで、どうも自分は去年やめてからそのつとめ先の者のさしがねだと思うが、暴力団のような者に脅迫されて困るということで、自分が出しておる本郷の店もそういうわけでたいへん困るのだというような訴えがございました。そこで本富士警察署ではこれを調べましたけれども、そのような事実を認めることができませんでした。それから、さらに念を入れまして今度は警視庁の本部でさらにこれを調査いたしましたけれども、やはりその事実をつかむに至りません。それから御本人が、自分はときどきつけられておる、尾行されておるようだというような訴えがあったわけであります。そこで事実それがあったかどうかということで、先ほどおっしゃいました追浜の自宅から御本人がおられました文京区の店までの間、尾行者がおるかどうかということをさらに数名で数回にわたりましてこれを続けております。そのときにはいわゆる尾行者は発見するに至りませんでした。それからさらに念を入れまして、今度はひとりで、数回にわたりまして、やはり自宅からつとめ先まで一緒に行動をいたしましたが、その間においても尾行者らしい者を発見するに至りませんでした。このときの御本人の話では、これは警視庁の警察官がおるのできょうは来ないんだというようなことを言っておられるようであります。それから、この方は先生お話のように、だいぶいろいろなことで心配しておられるようでございまして、いわゆるノイローゼがこうじておるというような状況でございましょう。近所でも若干そのようなうわさが出たようでございます。そういうことで、警察といたしましても、これはやはり医者にまず見せておいたほうがいいんじゃないかということで、去年の暮れでございますけれども、精神科の医院に本人を同道いたしまして、見てもらっております。これは前後二回でございますが、その結果、やはり入院を必要とするというような
状態であるという診断が出ておるわけでございますが、本人がこれをがえんぜず、入院するに至っておりません。それから店のほうでございますけれども、これは去年の暮れにやめておるようでございます。
それからなお住所でございますが、本人の言うところによりますと、二十一年の四月に米軍のCIC、それからさらに他の機関に勤務しておった、こういうことでございますけれども、その機関をやめましてから、去年の四月で五回住所を変えておるわけでございます。それで、ただいまは藤沢市に住んでおるということがわかったわけでございますが、これは追浜におります間にやはり奇矯な行動に若干出まして、近所でもいろいろ評判になっておったようでございます。それで警察のほうに、訴えと申しますか、身辺の安全ということで、保護方を依頼してまいりましたのは追浜のアパートに住んでおる時点からでございます。その前に三カ所ばかり住んでおったということは御本人から聞いておるわけでございます。藤沢市のどこであったかはしばらくわからなかったようでありますが、御本人の妹さんがやっておられる会社と申しますか、商会がございまして、この商会を通じまして、おそらく現住所がわかって、きょう先生お話しのような連絡がいったといたしますれば、警視庁の警察官から連絡がいったということだと思います。
それからなお、
資料を出してもらいたいというようなお話かあったということでございますけれども、これは別に他意はございませんで、いろいろなことを自分でやっておったので、脅迫されておるのではないかというような話があって、それでは一体どういうことをやっておったのか、何かそういうことがあるのかということで、そういう話のついでにそういうことが出たということでございます。これはあくまでも身辺の保護ということで私のほうは考えておるわけでございまして、他意はございません。
それから、今後どうしたらいいかということでございますが、これは居住地が神奈川県でございますので、さっそく神奈川県のほうにも連絡をとりまして、御本人が安心して生活ができますように、身辺について十分に保護の措置をとっていきたい、かように考えます。またさらに、もし東京都内においてあるいは勤務されるとか、あるいは商売でも始められるということになりますれば、その所在地を管轄する警察署及び警視庁本部においても、さらに十分なる保護の措置をとるように
指導いたしたいと思っております。
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○大出委員 この人は、CIAをおやめになるときにもらった金の額まで実はわかっているのですよ。それから私も本人に三回ばかり会ってますが、いまお話のように私も最初はずいぶんオーバーなことを言うと思ったのですが、いま私が申し上げましたように、この
資料を本人から出してもらって、これは本人の自筆ですけれども、確かに本人か口頭で言っておりましたよりも実際にやっておりますのはだいぶ詳しいのです。これはずいぶん昔の、もうクリップがまっかにさびちゃっているようなのからずっと積み重ねてありまして、どこからどう考えてもこれがにせものだとは思えない。おまけに起こっている事件が、新聞にありますのと比較してみまして、はるかにこちらのほうが綿密詳細ですね。ということになりますと、これがでたらめだとは思えない。そこで私、御本人がいまやまさにやめて時間が
たちましたし、確かにいささかノイローゼぎみなところがあることは、私も本人に会ってそう思いますが、そのことの発端が、長年こういうことをやってきたという結果としてやめざるを得なくなった、あるいはやめようという気になった。その間ずっと本人も悩んできたというようなことがあってやめたといういきさつからすると、第三者の私がながめてみてもあり得ることだという気がしますので、したがってさっき申し上げた三つの論点から、やはり今日日本というものを中心に、さっき幾つか問題を提起いたしましたが、そういうことが行わなれているということを認めざるを得ませんし、しかもそれが、新聞に出ておる以外の
資料によるともっと深いものがある、これも認めざるを得ません。そうすると、それを
国民の側から見たら、一体どう考えたらいいのかということ、それから先ほど責任を持つと申しましたが、そういう面でどう考えたらいいのかという点、それから
防衛庁という、これは大臣
所管の機構があるわけですけれども、ここの情報機関等もあるわけでありますから、そこらのところを、こういうことになってしまっている現状をながめてみて、
防衛庁は機密漏洩だの云々と騒ぐんだけれども、こういうことになっているとすると、幾ら騒いでみたって、三千件はオーバーだという話がありましたが、いろいろな働きかけがあるんだ。
防衛庁から出て会社に行っている人もおるのだから、これはとてもじゃないか無理な話です。だからそういうふうなことまで含めて問題提起を申し上げておくということにきょうはとどめておきたい、こういうことなんです。ひとつどうか関係の皆さんのほうで、一人の人間でも、ここまではっきりしたものがあるのに間違いがあっては困りますから、そこも心配いたします。この点は皆さんのほうにお願い申し上げておきたい、こう思っております。
たいへんどうも長くなりました。
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藤田委員長 次回は来たる二十六日午前十時より
委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
午後八時四十七分散会