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1969-06-10 第61回国会 衆議院 内閣委員会 第29号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十四年六月十日(火曜日)     午前十時四十八分開議  出席委員    委員長 藤田 義光君    理事 伊能繁次郎君 理事 佐藤 文生君    理事 塩谷 一夫君 理事 塚田  徹君    理事 三原 朝雄君 理事 大出  俊君    理事 浜田 光人君 理事 受田 新吉君       足立 篤郎君    赤城 宗徳君       井出一太郎君    内海 英男君       菊池 義郎君    田中 龍夫君       野呂 恭一君    葉梨 信行君       古内 広雄君    三池  信君       山口 敏夫君    淡谷 悠藏君       稻村 隆一君    岡田 春夫君       木原  実君    華山 親義君       平岡忠次郎君    安井 吉典君       鈴切 康雄君    伊藤惣助丸君  出席国務大臣         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)      床次 徳二君  出席政府委員         厚生省援護局長 実本 博次君  委員外出席者         総理府恩給局次         長       平川 幸蔵君         総理府恩給局恩         給問題審議室長 大屋敷行雄君         大蔵省主計局給         与課長     相原 三郎君         専  門  員 茨木 純一君     ――――――――――――― 六月十日  委員渡部一郎君辞任につき、その補欠として伊  藤惣助丸君が議長の指名で委員に選任された。     ――――――――――――― 六月九日  靖国神社国家管理反対に関する請願外二百七  十九件(河村勝紹介)(第八二六八号)  同外三十六件(竹本孫一紹介)(第八二六九  号)  同外二百二件(和田耕作紹介)(第八二七〇  号)  同(麻生良方紹介)(第八三四三号)  同(池田禎治紹介)(第八三四四号)  同外二十四件(内海清紹介)(第八三四五  号)  同(小沢貞孝紹介)(第八三四六号)  同外二十四件(折小野良一紹介)(第八三四  七号)  同外二十四件(春日一幸紹介)(第八三四八  号)  同外二十四件(河村勝紹介)(第八三四九  号)  同外二十四件(曽祢益紹介)(第八三五〇  号)  同外二十四件(竹本孫一紹介)(第八三五一  号)  同(玉置一徳紹介)(第八三五二号)  同外二十四件(塚本三郎紹介)(第八三五三  号)  同外二十四件(本島百合子紹介)(第八三五  四号)  同外十件(門司亮紹介)(第八三五五号)  同外二十四件(和田耕作紹介)(第八三五六  号)  同(内海清紹介)(第八四九二号)  同外十一件(小沢貞孝紹介)(第八四九三  号)  同外一件(春日一幸紹介)(第八四九四号)  同外十一件(河村勝紹介)(第八四九五号)  同外一件(折小野良一紹介)(第八四九六  号)  同(竹本孫一紹介)(第八四九七号)  同外十三件(塚本三郎紹介)(第八四九八  号)  同外十二件(和田耕作紹介)(第八四九九  号)  婦人少年室廃止反対等に関する請願外二件(山  村新治郎君紹介)(第八三〇二号)  靖国神社国家護持に関する請願(稻葉修君紹  介)(第八三〇三号)  同(小峯柳多君紹介)(第八三〇四号)  同外七件(田澤吉郎紹介)(第八三〇五号)  同外一件(田中榮一紹介)(第八三〇六号)  同(田村元紹介)(第八三〇七号)  同外四件(田村良平紹介)(第八三〇八号)  同外四十九件(高橋清一郎紹介)(第八三〇  九号)  同外一件(砂田重民紹介)(第八三一〇号)  同外十三件(竹下登紹介)(第八三一一号)  同(内藤隆紹介)(第八三一二号)  同外六件(八田貞義紹介)(第八三一三号)  同(福井勇紹介)(第八三一四号)  同(藤波孝生紹介)(第八三一五号)  同外九件(森田重次郎紹介)(第八三一六  号)  同外一件(渡辺肇紹介)(第八三一七号)  同(上村千一郎紹介)(第八三五七号)  同(仮谷忠男紹介)(第八三五八号)  同(小峯柳多君紹介)(第八三五九号)  同外十件(白浜仁吉紹介)(第八三六〇号)  同外一件(田中正巳紹介)(第八三六一号)  同外三十五件(谷垣專一君紹介)(第八三六二  号)  同外一件(野原正勝紹介)(第八三六三号)  同外四十一件(武藤嘉文紹介)(第八三六四  号)  同外一件(橋本登美三郎紹介)(第八三六五  号)  靖国神社国家管理反対に関する請願河上民雄  君紹介)(第八三六六号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  恩給法等の一部を改正する法律案内閣提出第  四九号)      ――――◇―――――
  2. 藤田義光

    藤田委員長 これより会議を開きます。  恩給法等の一部を改正する法律案議題といたします。  質疑の申し出がありますので、これを許します。大出俊君。
  3. 大出俊

    大出委員 幾つか問題点があるのです。先般基本に関する点についてだいぶ質問を申し上げたのですけれども、時間の関係もありまして途中で打ち切りましたが、今回の政正案について少し承っておきたいわけです。  特別項症増加恩給年額是正という項でありますね。ここのところ、ちょっと考え方を説明していただきたい。
  4. 平川幸蔵

    平川説明員 このたび特別項症処遇改善をいたしたわけでありますが、内容を簡単に御説明申し上げます。  御承知のように特別項症は、一項症の金額に、従来の処遇では五割増しということになっております。これは一項症の症状より重いものにつきましては一項症にプラスする、こういうことになっておるわけでありますが、これを今同十分の七まで増額いたしたい、こういうことでございます。その理由といたしますところは、二項症以下の症状におきまして、たとえば二項症と五項症あるいは二項症と四項症というようないわゆる併合的な障害につきまして、その処遇基礎となるべき計算をいたす場合におきましての額を参考にいたしますと、十分の五というのは低きに失すると、こういうことで今同恩給審議会答申もございまして、この答申にのっとりまして、実は特項症だけ若干処遇において欠けるところがあった、したがいまして、この最高限を十分の七に引き上げる、こういうことでございます。
  5. 大出俊

    大出委員 審議会指摘事項であることを承知しておりましてね、だから聞いているのですけれども、私の質問しているのは、いまお話しの点はみんなわかっているのです。十分の五を十分の七にしたのはわかるのです。十分の八じゃなぜいけないのですか。
  6. 平川幸蔵

    平川説明員 先ほど簡単に説明しましたのであれかと思いますけれども、二項症以下の症状におきまして、たとえば二項症と五項症、そういった障害の場合における金額の算定がほぼ七割増しということになりますので、その七割ということを持ってきたわけであります。それに対しましてバランスをとった、こういうことであります。
  7. 大出俊

    大出委員 そうすると、七割増しになるのにいままで五割増しであったのは間違いだ、こういうことですか。
  8. 平川幸蔵

    平川説明員 間違いであったというよりも、処遇におきまして再検討いたした。しかるところそういう処遇について欠けるところがあったということを率直に認めまして、われわれといたしましても恩給審議会答申どおり――先生指摘されましたように大正十二年にできた法律でございまして、四十数年経過しておるわけでありますけれども、そういった面につきまして処遇漏れがあるならばこれは是正すべきではないか、このように考えて是正さしていただいたわけであります。
  9. 大出俊

    大出委員 どうもいささか権威がなさ過ぎるという感じがするのです。いまになって七割増しになるのだからという、そんなことは初めからわかっているわけです。だからそういう意味でちょっとふに落ちないわけで、別によくなることに反対するわけはないのですが、先々のこともありますので、念のために伺っておいたわけであります。  それから、これは私が去年の通常国会でだいぶやかましくものを言ったことなんですが、特例扶助料支給条件の緩和の問題ですね。これは何年後に死んでもらえるということにするのだというふうに思いますが、これも考え方を、審議会答申事項でございましょうが、御説明いただきたい。
  10. 平川幸蔵

    平川説明員 この制度考え方を若干参考までに申し上げますと、御承知のように内地等におきまして職務に関連いたしまして負傷罹病をいたしまして、それがもとで死亡された遺族に対しまして特例扶助料という制度を設けているわけであります。ところが、ただいま先生が御指摘になりましたように、従来は死亡の時期を限定いたしまして、一般負傷、疾病につきましては復員後四年、結核につきましては十二年、これは数次の改正を経てこうなったわけでございますが、そういう制約があったわけです。ところが、復員後の年数において公務関連があるかいなかということを決定することは適当でない、やはり何年たっても、負傷罹病公務に関連するならば、その人が復員後何年経過しましても、死亡した場合には特例扶助料を支給すべきじゃないかといったような意見をわれわれも持っておりましたので、たまたま恩給審議会にこの意見を求めましたところ、全く同一の意見をいただいたわけであります。そういうことで、要するに支給する時期いかんにかかわらずこれを職務関連性がある、こう考えまして、支給するということで法律改正をお願いしている次第でございます。
  11. 大出俊

    大出委員 これはいままでは、昨年私申し上げましたが、内地での職務関連死亡というものの認識ですね。四年、十二年と、こうなっておるわけですが、一生懸命御家族が介抱をして四年の命が五、六、七年と長持ちした、一日もよけい生きてもらいたいというので。ところが四年を過ぎると、一生懸命介抱して生きてもらって、金もかけてやったらもらえない。そうなると早く死んでもらったほうがよろしいという、そんなばかな話はないじゃないか。いろいろ皆さんから反論がありましたが、ようやくどうも私どもの主張が通ったという感じなんですけれども、早く死んだらもらえるから早く殺してしまえというわけにいかぬのですから、ようやくこうなったというわけです。私は、先ほどの件もそうですけれども、どうもこの辺が旧来でも矛盾矛盾を重ねていって、しかも一つを直すと逆にそれが悪平等、平等という議論が起こって、また直すことになるという経過を踏まえていますが、これは大胆に、旧来から古くて新しい議論をしているのですけれども、そこらのところは――審議会答申いろいろたくさんありますが、そこらはなるべく早く私は直すべきものは直していただきたい。何べんも毎年言わなければ直らぬというのじゃ困るのですね。ぜひそれをお願いしておきたいと思って、念のために質問申し上げたわけであります。  きょうはなるべく時間を倹約しようと思いますので、あまり長い議論をいたしません。指摘だけしておきたいと思うのでありますが、長期在職者最低保障の引き上げという項がありますね。ここのところもちょっと一般方々には議事録に残しておきませんとわかりにくい点があると思いますので、お答えいただきたい。
  12. 平川幸蔵

    平川説明員 長期在職者に対する最低保障の増額でございますが、この最低保障という制度は、この前の御質疑に対しましてお答えしましたように、約三年前にできた制度でございます。これは恩給法においてはいわゆる最低保障という制度はなかったわけでございますが、諸般の情勢上必要だということで導入したわけでございます。考え方基礎となっておりますのは、いわゆる厚生年金定額部分に見合う分ということで最低保障を考えたわけであります。   〔委員長退席伊能委員長代理着席〕 このたび最低保障につきましての厚生年金定額部分が九万六千円に上がるということで、それにスライドと申しますか右へならえして改正いたしたい、このように考えた次第でございます。
  13. 大出俊

    大出委員 普通恩給の九万六千円、扶助料の四万八千円、これは共済組合法にも最低保障があるのですが、そこら厚年その他が上がるので、逆ですけれども、あわせて上げようということですな。それでいいですか、そういう理解で。
  14. 平川幸蔵

    平川説明員 実は最低保障制度はいろいろ年金においてあるわけであります。たとえば国家公務員共済組合等におきましては十三万五千六百円ということになります。いろいろ考え方といたしましては、たとえば国家公務員共済組合法に右へならえするのだというような考え方もあるかと思います。予算的な段階においてはわれわれとしていろいろな角度から検討したわけでございますけれども、やはり三年前に採用した制度のときに厚生年金定額部分というものをベースに置いておる関係上、それをやはり基本にして考えるべきではないかというようなことで今回修正したわけでございますが、先生の言われる意図かどうかこれはわかりませんけれども、国家公務員共済組合等につきましての配慮はわれわれも一応考えたわけであります。経過におきましてはそういうことであります。
  15. 大出俊

    大出委員 そこら共済のほうと話をして上げたというのですか。たとえば八万四千円の共済のほうも手直しするのですか、そうすると。
  16. 平川幸蔵

    平川説明員 これは大蔵のほうと話したということではなくして、国家公務員共済につきましては御承知のように実は最高限最低保障といろいろ制度がございます。たとえば最高限は現在十一万円になっておりますけれども、これも十五万円に上げる、最低保障は八万四千円だと思いましたが、これを十三万五千円に引き上げる。これは基礎的な俸給はかなり上がっておりますので、御承知のように大体昭和三十三年の基準になっておりますから、それをこのたび共済のほうを上げる、このように聞いております。
  17. 大出俊

    大出委員 だから、この前もくどいように申し上げたのですけれども、各種の公的年金がある、そうすると何か審議会連絡会議をお持ちになっているでしょう。会長がメンバーになっておられるでしょう。こういう場合に、そのほうと相談をしておいてもらわないと、あとから申し上げますが、たとえば満日ケースをこの委員会で不当だと皆さんおっしゃるかもしれないけれども、あのときに不当だとおっしゃったのは主として大蔵省であって、審議会が落ちたのも大蔵省が落としたのですから、事務局大蔵省がまさにまかり通ったのです。だからそれは当然恩給審議会答申に満日計算が通らなかったのは大蔵省がだめにしたのです。この委員会記者諸君データを提供して修正した。記者諸君データをあんなに知っているはずはないけれども、一ぱい新聞に書いたケースがある。ところが今度は共済のほうは右へならえしてくれないで、大蔵委員会でそのまま。当委員会恩給法というワクの形の中で満日ケースをつくった。そうすると雇員といわれる方々についても、他の委員会所管大蔵省のほうは当然右へならえしてくれなければ困ると私は思う。なぜならば、恩給法改正が行なわれて共済は右へならえというのが現実なんです。ところがそちらはいつになってもそのままになっているから、やっぱり満州からお帰りになっておる方々については雇員期間というものをどうするかという点がどうしても残る。だからいまだにたいへんな時間と労力を費やして、この関係方々は各省をお歩きになっているという実情にある。これでは困るという気がする。あのとき修正したのはこの委員会意思なんだから、かつ国会を通ったのだからこの国会意思なんだから、それではそのあとどうするんだということを、たとえば皆さん意思に沿わないでも、そのことによって起こるアンバランスをどうするかという問題が残るから、そこらはやっぱり関係の機関があるのですから御相談をやっておかないと、所管でない私の委員会大蔵省給与課長にお見えいただいてまた質問しなければならぬということになるので、私が大蔵委員会へ行って質問してもいいけれども、恩給法がここに出ているので質問しているのだから、そこはやっぱり皆さんのほうでもう少しきめこまかく御相談いただけないものですかね。いかがですか。
  18. 平川幸蔵

    平川説明員 実は最低保障問題につきましても、先ほど申し上げましたように、公的年金調整連絡会議というので大きな議題になっております。目下真剣に討議されております。ところがわれわれとしては、一つ片方では恩給審議会答申というものが出ておる。恩給審議会答申最低保障問題についても明らかに言及されておるわけです。そういたしますと、われわれといたしましては、理想的な状態といたしましては、完全に話がまとまってそれから提案するということが最も理想的な状態だとは思いますけれども、片っ方における審議会においては、この審議会答申を行なうということについての緊急性ということについて非常に重視されておるわけです。これを政府は体しまして、できるだけ早くやっていきたいということを考えまして、さしあたって最低保障につきましてはこの前の厚生年金ベースというものもございますし、そういった線で一応とにかく上げていくという努力をしたわけでございますが、先生言われましたような趣旨におきまして、今後話し合うということにつきましてはできるだけわれわれ努力いたしたい。したがいまして、今後そういった場におきまして、そういった御意見なりを十分に体しましてわれわれは討議いたしたい、このように考えておる次第でございます。
  19. 大出俊

    大出委員 九万六千円という根拠は、計算上どういうことになっておるのですか。
  20. 平川幸蔵

    平川説明員 九万六千円、前の六万円でもいいのですが、これの根拠厚生年金定額部分だけのものでございます。
  21. 大出俊

    大出委員 厚生年金定額部分だけとおっしゃるが、そうすると厚生年金のその根拠は、何によってその金額にきまっておるのですか。
  22. 平川幸蔵

    平川説明員 月額にいたしまして四百円、これが基礎になっておりまして、これに二十年でございますから二百四十カ月分、これが基礎になっております。
  23. 大出俊

    大出委員 そうすると恩給というたてまえの中で、つまりどういう理由最低保障幾ら幾らにするというふうにきめたかという点は、厚年に右へならえしたというだけですか。
  24. 平川幸蔵

    平川説明員 基本的には最低保障についていかなる額が恩給として最も適当かということの議論についてあまりやってないのじゃないかという御質問かと思いますけれども、われわれといたしましては、事務的には実はいろいろ検討しておるわけであります。おりますけれども、いま申し上げましたような客観条件の中において検討いたしたわけでございまして、先生の御趣旨にもありましたように、そういった面もこれは恩給審議会答申にはそう書いてありまして、他の公的年金との連絡をとりつつ考慮すべきであるというような至上命令といいますか、そういうことも書いてあります。そういうことでございますから、われわれとしては事務的には検討はいたしておりますけれども、現在基礎になっておりますのが厚生年金定額部分である、これを具体的に考え方基本的に直すというまでには時間的な余裕がなかったということでございますけれども、今後そういった点につきましてはできるだけ検討していきたい、こういうように考える次第であります。
  25. 大出俊

    大出委員 この間私が厚生年金についての計算の算式を読み上げて御質問申し上げたのですが、四百円が基礎になっておる、これはわかっておるわけでありますが、平均標準報酬月額を二百五十円に足して、そして千分の十をかけておるという、それに被保険者の月数をかけて、プラス加給額、こうなっておるでしょう。そうすると恩給計算の方式とその計算の成り立ち方、つまり構成が違うのですね、明確に。違うものを、厚年がそうだから他の公的年金とのバランスというのだから右へならえしたということで、恩給というたてまてからくる最低保障というのは一体いかにすべきかということがなかったということになると、これは全く木に竹を継いだようなことになる。厚生年金計算のしかたと恩給計算のしかたは根本的に違うのですから、そこで最低保障は向こうはこうだからこちらは右へならえということでいいのかということを言っている。そうでしょう。だからその根拠は何だといったら、厚生年金だ、審議会のほうは他の公的年金との状況をよくながめてうまくバランスをとってやれという至上命令だからという、これもずいぶん機械的だと思うんですね。そうすると当面皆さんのほうは何もないんですね。
  26. 平川幸蔵

    平川説明員 もともと恩給制度におきまして基本的に考えられることは、恩給というのは在職年最終俸給をかける、これによって恩給が出てまいるわけであります。御承知のように、戦前におきましてはいわゆる加算加算年というのがございまして、加算年金額計算になるというようなことから、比較的恩給というのは、この間の御意見にもありましたように、一応生活できるような恩給を支給した、こういうような状態でありました。したがいまして在職年にかける最終俸給というような形で出てまいりました恩給額が実際的にはある程度の額であったということで、もともと恩給制度には最低保障という制度はなかったわけであります。これも最初に申し上げたとおりであります。  ところで、三年前にこの制度をつくったわけでございますが、確かに恩給にこういう制度を導入することの可否という基本的な問題はあろうかと思います。しかし、われわれといたしましては、定額恩給というものをいかにレベルアップしていくかということについては、やはり努力していかなければならないと考えておりますが、そういう程度で一応出発点となったわけでございまして、この間、いろいろ検討してまいりました結果、実は厚生年金定額部分というものが公務員共済組合におきましても反映されている、そういうようなことを考え合わせまして、やはりこの部分に焦点を合わすことが、当面の問題としては、最適とは申しませんが、次善の策ではなかろうかというような考え方で採用したわけでございますので、ひとつ御了承願います。
  27. 大出俊

    大出委員 私は、もう少し基本的に考えていただきたいと思うのですよ。この間申し上げたように、兵なら兵という軍人恩給ケースがありますけれども、これはいま一万円年金ということで、月一万円で十二万円、十二万円をこえるようにしようということですが、実は年齢格差が出てきたわけでございます。ここにも一つの大きな問題があります。いまの問題でも、これは実在職年数ということでしょう。この実在職年数ということが、普通恩給所要最短年限である普通恩給または扶助料、だから加算恩給対象外でしょう。そうすると加算恩給という特殊なケースについては、最低保障はどういうことになりますか。
  28. 平川幸蔵

    平川説明員 先生指摘になりましたように、加算恩給については最低保障制度はないわけでございます。形は違いますけれども、実は加算恩給受給者で七十歳以上の者に対しましては、最低保障と申すのはちょっとあれかと思いますけれども、加算減算率を撤廃いたしまして、十二万円の恩給を支給する、こういう制度をつくっております。それから扶助料につきましても、最低保障ではございませんが、いまと同じように加算減算率を撤廃して、十二万円の恩給を支給する形になっております。先生お述べになりましたように、いわゆる最低保障というものに該当するかどうか、これはまあ問題はあろうかと思いますが、そういう処遇改善につきましては、現在までも考慮しておるわけであります。今回、その項目の中に出ておりますけれども、いわゆる傷病恩給受給者加算恩給を受けている場合におきましても、これは加算減算率を撤廃して、十二万円の恩給を支給するという考え方を出しております。そういう点で改善の措置を講じたいということを考えておるわけであります。
  29. 大出俊

    大出委員 一昨日私が申し上げたこの軍人恩給の格づけ是正ですが、この問題でも、実在職年数基礎になっておりますから、一般の兵の方々は、十一万人の中で千人しかない、こういうことでしょう。兵の方々加算がついて恩給をもらう方々は、これは今度の例の格づけ是正だって、したがって非常に冷遇をされている。もう一つ、いまここでまた実在職年数基礎にして最低保障をするのですから、ここでもまた最低保障がないということになると――これは一般方々が召集を食って兵隊に連れて行かれたりして、長く軍隊におろうと思った人でない人のほうがほんとうは気の毒な人ですよ。職業軍人であれば、これは義務だからしようがない。そうでしょう。ところが、そちらのほうが優遇をされて、やむを得ず一銭五厘で出征軍人として引っ張って行かれたほうが、何かにつけてこういうことになると――ここに軍人恩給の性格というものが本来あるわけですから、そこが基礎にならなければ私はおかしいと思う。先ほどから、一体軍人恩給という立場で最低保障というものを考えたことがあるのか、こう聞いているのですけれども、この点は何も考えていない。そうすると、こういう点をやはり何とか考えなければ、根本的に軍人恩給というものを、いままで生きている階級差というものを考え直すということにならざるを得ない、理屈から言えば。そこらのことがありますから申し上げているので、皆さんのほうで考えていないものをここで言ってもしようがありませんから、時間がありませんから指摘するだけにしておきます。  それから、いまあなたのおっしゃったそのあとのほうでございますけれども、これは別に、割り切っていることですから、とやかく申し上げません。  それから扶養家族加給などの引き上げ、そういうことがこの項目の中にありますが、これは一般の扶養手当と少し違った数字が出てきております。これは人事院を呼んできて聞かなければいかないと思っておりましたが、これも時間がありませんから何ですが、この点はどう考えておりますか。
  30. 平川幸蔵

    平川説明員 先生指摘のとおり、実は国家公務員の給与の考え方と若干違うわけであります。簡単に御説明申し上げますと、このたび一律に月四百円の加給を、妻は千円、これは国家公務員と同じであります。ところが国家公務員の給与におきましては、その次に第一子が六百円ということになっておりますが、恩給の場合におきましては、第一子ではなくて、それ以外の者について一人につき六百円ということになります。これは妻が受給者である場合に、それに父母があるというような場合、具体的な例を想定いたしますと、父母のうちの一人が六百円になるということで、国家公務員の給与の場合と違うわけであります。これは、われわれといたしましては、やはりこのケースは、実は遺族の人のケースが一番多いわけでございまして、できるだけ恩給としての遺族の処遇ということは、恩給審議会でも答申にうたわれておりますし、私どもも若干多く出ているような感じになるかと思いますが、そういう意味においては国家公務員の給与とは違う、あえてそういう考え方をとったわけでございます。
  31. 大出俊

    大出委員 これは、そういうところになると恩給の特色だ、こういうお話ですが、さっきの最低保障になると、恩給の特色がどこかへいってしまって、加算恩給がついていない。実はそっちのほうにほんとうは恩給の特色が出てこなければならぬ。だからこそ上げ底恩給だなんということを言われる。おじいさんは兵隊さんだからだめなんだという話になったり、今度は何とか格づけ是正があるからと思うと、加算恩給をもらっている軍人は該当しない。そうかと思うと、最低保障を引き上げるといったって、これはないのですからね。そういうことになると、特色が全くなくて、妙なところに特色がある、こういう話になります。そこらが、長らく恩給を、私は昭和四十年からいじっておりますが、どうも妙なことばかり積み重なっているような感じです。筋がない。ナマコみたいなものですね。ここらあたりは、どうもわけがわからぬですね。しかし、そういうことでお出しになったというのであれば、それ以外にどうも今日ないものはいたしかたがありませんし、時間がありませんので、あまり言いたくないのですけれども、この間すでに格づけ是正のところは、どうもこういう形でやられることについては賛成しかねるということを申し上げておきましたが、ほんとうであれば、恩給制度というものを、この辺で根本的に変えなければならぬと思うのですが、どうも時間と何が足りませんから、やむを得ぬと思います。  そこで時間がありませんから、大蔵省の方に承っておきたいのですが、満日ケースの修正をこの委員会がやりまして、本会議を通っているわけですけれども、これは大蔵関係のほうでどうなっているのですか。
  32. 相原三郎

    ○相原説明員 満日ケースにつきましては、官吏相当の者には通算いたしておりますが、雇員相当の者については資格期間として見ております。
  33. 大出俊

    大出委員 それは、どういう理由雇員期間というものを皆さんのほうは通算をされないのですか。
  34. 相原三郎

    ○相原説明員 すでに御存じのように、現在の共済制度は、国家公務員として長年忠実に勤務した者に対する年金ということを目的としているわけであります。そういう意味から言いますと、現状では、その範囲外のものも入っております。ただ、これは恩給制度というものを受け継ぎました共済のたてまえ、その範囲内で実施しておるわけでございまして、雇用人の場合には恩給制度ではございませんでしたので、そういう意味ではずされておるということでございます。
  35. 大出俊

    大出委員 そうすると、共済組合恩給というのはたてまえ上別個であるからということになるわけですか。
  36. 相原三郎

    ○相原説明員 共済制度におきましては、共済制度発足前の恩給時代のものをそのまま引き継いでおるということでございます。
  37. 大出俊

    大出委員 これはまあ経過は、私自身でやってきたことですから、よくわかっておるので、岸本さんがおたくの給与課長時代、古い話になりますが、これは三公社五現がはっきりするようになりまして、専売、国鉄というところが共済年金のほうに移行するという時代があったわけですね。それを電電公社が追っかけてこれに移行するということになって、このときに、五現業をどうするかということになって、これは議員立法で、参議院の永岡光治なる人、いま逓信委員長をやっておりますが、彼の議員立法で当時提出をしたのです。ところが、あなた方のほう、つまり岸本さんのほうが途中から大蔵省岸本試案をつくった。参議院に共済年金という形の永岡提案もあるのでということで、各省を集めて相談をされて、いろいろ紆余曲折がありましたが、結果的に共済移行という形をとったわけですね。だから、いまの恩給というのは、いまおる人たちがこの世の中から消えていくとなくなってしまうのですね。あとは全部共済に移行しちゃった。そこで問題は、旧憲法時代は、共済組合という制度恩給という制度は別個のものであった。当然です。これは、恩給納付金を出している人は十七年で三割三分三厘になる。共済長期の場合には二十年だということになっていたわけであります。ただ問題は、これはいま通算のしかた、両方計算が違いますから、今日、期間は計算をして足すわけですよね。ところが、しかし、やはり身分差があったということのために、任官してない人は恩給法の適用を受けないのだということで、共済長期だったわけで、これは当時の日本の官吏制度がそうさしていたと思う。   〔伊能委員長代理退席、委員長着席〕 戦後、昭和二十三年に国家行政組織法、定員法が出てきて、プロシャ、ドイツ型の官吏、吏員、雇員という形の旧来の日本の官吏制度というものをアメリカ式の事務官制度に変えたわけですから、本来、ここのところまでくると、身分差は、そういう意味ではない。だから、ほんとうを言えば、このときに恩給という制度共済組合という制度は一本にしとかなければならぬ筋合いだったわけですが、以後もそういう形で続いていたというところに一つ問題がある。だから私は、ここまでくると、ワクにとらわれて、共済とそれから恩給というものは別個であるというものの考え方だけでものを済ますわけにいかない、戦後の官吏制度というのは一本になったのですから。そうなってくると、恩給なるものの制度のものでなくなった。こういうことになるわけですから、そういう意味で、私は、やはりこちら側の恩給法の手直しという中で満日ケースを救ったのだということになったら、共済を含めてのこの雇員の時代というのは、これは当然通弊をすべきである、こういう理屈になるんですよ、これは。やり方はいろいろありましょう。ありましょうが、そうしなければ筋が通らない、こう私どもは考える。もう一ぺん聞かせてください。
  38. 相原三郎

    ○相原説明員 従来の経緯に関しまして詳しいお話で、私も実は非常に参考になったのでございますが、ただ問題は、その当時に年金制度があったかどうかということにもからんでくるかと思うのです。つまり、官吏に関しては恩給制度がある、雇員については年金制度がなかったと聞いておるのでありますが、そういうものについてどれだけのものをこの際及ぼすかということになると思います。いまの共済制度は、先生指摘のようなことになっておるわけですが、必ずしもそのワクにとらわれているということでもございませんが、やはり当時なかった者に対していまどうするかという問題、あるいは、先生おっしゃいますのは満鉄のケースかと思いますが、そういう問題を戦後処理としてどうするかという別個の観点はあったと思いますが、いまの共済制度というものから見ればやはり相当問題があったのではないかと思います。
  39. 大出俊

    大出委員 これは私も郵政省育ち、郵便局育ちですから、安月給をもらっていた。私は、昭和十四年に郵便局に入ったのですけれどもね。そうすると、昔は、これはずいぶん安月給だなと自分で思って、これじゃ食っていけないんじゃないかと思っていた時代に、私は、郵便配達をやっていたのですが、取り締まりというのに呼びつけられて、そういうことを言っちゃいかぬ、非常にありがたいんだというわけですよ。細く長くまじめにつとめれば、おまえが幾つ幾つになるというと恩給を幾らくれる。当時は、臨時事務員から入ったわけですから、まだ任官していない。共済適用です。短期、長期とあって、短期は医療で長期は年金だ。これは二十年つとめると、共済長期の掛け金をかけていると、三割からの年金をくれるんだ。そうすると、これは孫でも世話していれば一生生きていけるんだ。だから、そういうかってなことを言わないで一生懸命仕事をしろとおどかされた。それは当時みんなそういうふうに共済というものを考えていた。任官できるかなという時代ですからね。当時は主事補、補になると任官するのだという、そういう時代ですよ。片一方では、局長に日々訓練なんて、軍隊訓練をさせられた時代ですよ。だから、その時代はどこの職場におったって、そういう感覚をみんな持っていたと思うのですね。それをいまになって、共済のあり方が、共済移行、つまり恩給国庫納金を払った諸君共済移行をする。いまの共済組合のたてまえからすればということを持ち出すというのは、この恩給という次元でものを言う限りでは間違いだと思う。当時の制度だ。それを変えたんですから、だからそうなると、ここにいろいろ陳情される方々理由があります。全部読んでおりますが、これを一々ここで申し上げたってしかたがない。みな皆さんのところへも――これは森田隆二さんという方ですが、これは元南満州鉄道株式会社職員であった公務員等の恩給共済年金通算等に関する陳情というんです。これはやっていくと時間がなくなりますから、私は、中身に触れないでいきたいと思いますけれども、これは満鉄にしろ満州電電にしろ、やっとこさっとこ、皆んのところにもたいへん陳情されたと思うのですが、私も新聞記者皆さんに、データなんか流したものだから、はったり的に書かれて非常に往生したのですが、しかし、それにしても、去年の国会を通って満目ケースを実施することになったんですから、そうだとすると、共済組合の分野でも、いろいろな理屈はありましょうけれども、右へならえするのが筋だと私は思っている。そのしかたはいろいろある。そこのところを私は、これは所管違いの委員会だから、どこまでものを言ったらいいかという点はありますので、こうしろというようなことを言っちゃってもいいんだけれども、少しどうもそこまで言うと、大蔵委員会のほうの関係もあって言い過ぎだと思うのですけれども、あなたのほうは何か考えていないのですか。
  40. 相原三郎

    ○相原説明員 満鉄の社員のほうに昨年度恩給制度で非常に問題が広がったというところのバランス上、雇員の方がいろいろ陳情なさったことは聞いております。ただ、これは先生も十分御承知のことだと思いますが、波及するところが非常に大きい。これは立場の差によって、波及するのは当然じゃないかという御議論があるかと思いますが、私どもとしては、波及するのは非常に困るということでいろいろ苦慮しているわけでございます。
  41. 大出俊

    大出委員 あげ足をとるわけじゃないんですが、私も理屈を申し上げてないのですから、オーソドックスな言い方をしているんですから……。私は、わかっているからこういうことを言っているのですが、いまお話しの、波及するところが非常に大きい。したっていいじゃないですか。たてまえからいけばという議論もあるけれども、苦慮していると言われるのは、苦慮されるというのは、陳情者の側の言い分の中に全く理屈がないわけではない。ただ、それを何かの論拠をつくって大蔵省は一生懸命防いでいる。しかし、これはこっちで直しているからね。官吏期間が直っているのに、雇用人期間はどうするんだという話になると、確かに苦慮しているという、おっしゃる意味の痛いところが一つある。これはお認めになったようにいまのあなたの発言で受け取るので、そこから先こまかい追及はいたしません。いたしませんが、通算のしかたというのは、これは二十年でいま四割の共済制度になっています。昔と違う。そうすると、そこから先五十分の一、一年づつふえていく勘定になるわけですね。そうすると、通算の幾つかのケースの中には六十分の一もあれば百二十分の一もある。ですからいろいろな通算のしかたがあろうと思うのですが、しかしいずれにしても、やはりバランスをある程度考えていただくということでないと、せっかく官吏期間は通算されたが雇用人期間は通算されていないから、ようやく追いついたかなと思ったとたんに、いまなおかつ、自分と同じようにやってきて、満州から帰ってきて、振り返ってみるというと同じような仕事をしてきた人と比べると、やはり二分の一とか四分の一とか、雇用人期間がありましたから開きがあるわけですよ。こういうことになっておる。ですから、せっかく直したんだから、そこらのところはもう少し皆さんのほうで御検討いただいて、他への波及ということについても、これは優秀な官僚の皆さんだから、みごとに防ぐというようなことはおやりになる。たとえば私の昭和十四年以来の実情からいえば、共済二十年でしたから、共済期間が十三年あった。ところが、共済のほうは一時金をもらちゃった。さて、任官して恩給法の適用を受けるようになって、国庫納金を払うようになった。ところが、恩給は十七年ですが、こちらは十五年だった。この場合、共済期間が十三年で恩給期間が十五年、いずれも年金額に達しない。したがって何ももらえない。一時金で終わってしまった。こういうケースもある。当時は、たてまえが別個ですから、だから波及するということになると、そういうケースだって出てくる。それはどうするか。理屈からいえばそういうこともわからなくはない。わからなくはないけれども、先ほど私が申し上げたように、日本の明治憲法下における官吏制度ということ、戦後の官吏制度というものは明らかに変わったのだから、公務員ということになったのから、奉仕者ということになったのだから、そうすると、いまの時点でものを言えば、過去のそういうケースがあるけれども、筋論からいえば、そういうところも含めて救済をすべきだということになる。だから、皆さんのほうは手をつけると幅が広くなるからということで防ごうとされていたと思うのですが、しかしそれはそれの処理のしようがある。そこらのところは、あなたがたは頭のいい人がそろっておって、そういうことになるとうまいことを言うものですよ、何とかの知恵で。その知恵をひとつ発揮していただいて、苦慮しておりますというところで、ひとつ苦慮していただけますか、いかがですか。
  42. 相原三郎

    ○相原説明員 これは制度論から申しますと、私たち共済制度をあずかる立場から、とてもできないという感じがするわけです。ただ満鉄の方については、これと別個の特殊な事情、恩給との関連等からして現在のような措置がとられているのであって、私たちとしては現状が最大限の処置であるというぐあいに考えております。ただ先生おっしゃいましたように、満鉄の古い方々から見れば、同じ職場にいた社員の方はこうなっている、おれのほうはこうだというような議論も出るというような程度の実情もわからぬわけではありません。おそらくいままでの共済の修正の経緯を見ますと、初めはとてもそんなことができるはずはないのではないかと思われたことも、類似のケースがだんだん手直しされたために、何となくできそうな感じになるということで論議されたのが従来の例であったと思うのです。そういう意味で、一つ踏み出すことによって、将来、現状から見れば措置することが適当でないということもさせられるかもしれないという感じもするわけで、その辺が私たち非常に苦慮しているという点であるということを重ねて申し上げておきます。
  43. 大出俊

    大出委員 国家公務員が三十四年十月一日で共済年金のほうに移行した。地方公務員が三十七年十二月一日付でこれまた共済年金に移行した。残っている恩給というのはこれだけであり、適用されている人たちだけ一代限りである、こういうようになるわけですね。そういう段階まできて、いまなおかつ審議会答申が出ている。審議会答申というのは言うなれば恩給に関するバイブルだ。恩給審議会答申というものは、これからまた答申を求めるなんということはちょっとないのじゃないか。いまの答申の範囲内でなさる。まとめていってこの恩給というものは終わる。そうだとすると、やっぱり恩給のほうを直したんだから、満日ケースも、やっぱり切って切れない共済期間というものについては、この際そういう意味で決着をつけるということにしていただかなければならぬと思う。いまお話しのとおり、できそうもないことがずんずんでき上がって、二十八年以来三十幾つあるのです。手直し、修正案というものが三十七回目でしょう。三十何回直してきて、できそうもないことがみんなできちゃった。今度もできそうもないことが修正、改正案でできてきている。そういう点を考えて、できそうもないことを、不可能を可能にするということは皆さんよくおやりになるので、いまそのぎりぎりまできているだろうと思うのですよ。ここから先――委員会は向こうですから、少し私のほうの勇み足になりそうなんですが、現状は、たてまえ上はどうも共済というものはワクがある。しかも新しくなっているからワクがある。だからそういう意味で波及、効果その他いろいろ考えるととてもじゃないができない。しかしいろいろ陳情される趣旨はごもっともな点もある。一緒にいた人間から比べると不利ではないかといわれることはわかる。したがって苦慮している。しかも先行き、できそうもないというようなことができちゃったり、させられたりするということになっちゃったというお話だから、させられちゃう気になっていただければこれは片がつくのだ。ひとつ大蔵委員会のほうで、この辺でさせられちゃう気になっていただいて、決着をつけていただきたい、こう思います。私のところの末委員会でだいぶ皆さんに御苦労をいただいて去年直したのですから、やっぱり責任上そのくらいまで言っておかないと、該当者の皆さんにこの委員会としても申しわけないと思うので、ここまで言っているわけです。慎重にものを言っているわけですから、ぜひそこのところは――皆さんのほうでいろいろ相談をされておることは知らないわけではない。ぜひそこら、もう一度進めていただくように御努力願いたい。この点を希望いたしておきます。これは御答弁いただくことには無理がありますから、けっこうです。給与課長、笑っておられるけれども、事実私のほうも苦慮しているのですから。  もう一つここでお願いしておきたいのですけれども、総務長官おいでになるところで承っておきたいのですが、一昨日のやりとりの中で、まず一つは調整規定というものを、審議会答申をつくるにあたって物価というものは五%という線でウエートを置いた。はたしてそれが将来に向かって、長い制度ということになりますといいのかどうか。長い制度というふうにしてみると、物価五%ということが基準になることがはたして恩給の将来いいのかどうか、適用者の皆さんに対して御配慮があったように受け取れるわけであります。したがって、ごもっともな話で、恩給法の二条ノ二という調整規定は、何も物価が一番てっぺんに出てきているわけではない。だからそこのところを御検討いただいて、この規定の制定の趣旨からいきますと、まず国家公務員の給与、そして国民の生活水準、本来ならばこれが調整規定からいけば基礎にならなければならぬ、そういう法文の書き方ですよ。そして「物価共ノ他」というところで「物価」が出てきているわけです。「諸事情ヲ総合勘案シ」ということになっておる。ですからこの法律は、やっぱり法律ですから、審議会答申は出ておりますから、法律は曲げるわけにいかない。お出しになった法律をきめてきた上で皆さんのほうは審議会にはかったわけです。ですから法律趣旨というものを変えるわけにいかない。そういう意味でひとつ二条ノ二というのをとっていただいて、さて制度化するというほうに私どもとしては、どもと申し上げたのは社会党の私だけではございません、皆さんの気持ち、この委員会ではそういうことでございますので、そういう意味で御努力をいただきたい気がする。この二条ノ二にございますように「年金タル恐給ノ額ニ付テハ国民ノ生活水準、国家公務員ノ給与、物価其ノ他ノ諸事情ニ著シキ変動が生ジタル場合ニ於テハ変動後ノ諸事情ヲ総合勘案シ速ニ改定ノ措置ヲ講ズルモノトス」これが二条ノ二でございますから、したがって、どうもこの二条ノ二から物価がすぽんと頭を飛び出して五%というのが、これは法律のたてまえからすると逆なんですね。だからそこらのところを、ひとつ法律趣旨を中心にしていただいて、つまり趣旨にかんでみ、国家公務員の給与、これが一番近いわけでありますから、国家公務員であった人のつまり経済的な減耗補てんという趣旨でございますから、そういうふうなことで制度化ということをひとつお考えいただきたいと思うのでありますが、いかがでございましょう。
  44. 平川幸蔵

    平川説明員 この際、恩給審議会答申についてのわれわれの考え方をはっきり申し上げますと、一応物価の上昇率が五%をこえた場合においては必ず年金額を改定する、なおかつ国家公務員給与との格差がある場合においては、その格差をある程度補てんすべきである、こういう表現になっております。しかし私が考えておりますのは、いわゆるこの調整規定の答申の内容は、物価中心主義と考える必要はないと思うのであります。というのは、御承知のように現在のように経済成長が非常に激しい段階においての答申でございますから、ただいま先生のお読みになりましたように、大体指標としては三つございます。国家公務員の給与と物価と国民の生活水準、こういうことを一応並列的には書いてございますが、御承知のように現状といたしましては経済成長率のほうが物価よりも非常に高い、こういう場合における年金の調整のしかたとしては、まず一応物価の最低限をチェックする、こういう意味におけるいわゆる物価、これをまず持ってきたのであろうと私は解釈しております。したがいまして、これにつきましては、いわゆる義務的と申しますか、政府においてその義務を負って改定することを明確にしておる。これを物価中心主義と言うならばあるいは言えるかもしれませんが、そういう意味ではないというように私は考えております。その上積み分といたしまして、この際国家公務員の給与かあるいは国民の生活水準、これは二者択一的なものになるとは思いますけれども、このいずれかを持ってくる、この場合は大体国家公務員の給与を持ってきております。というのは、御承知のように恩給受給者というのは、現在は公務員でないにしましても、かつては公務員であったから、指標としましては、やはり上積みの指標といたしましては国家公務員給与が一番適当であろうということが考えられます。その国家公務員給与で上積みする場合におけるしかたを、審議会としては若干意見を述べておるというにすぎないのでありまして、必ずしも国家公務員給与が物価よりも補完的に調整されるんだというように考えることは別に必要ないのじゃないかというように考えております。そういう気持ちでわれわれとしてはこの調整の具体的な運用に当たっていくのが最も適当な運用のしかたではないかというように考えておるわけでございます。
  45. 大出俊

    大出委員 わかりました。私も似たような考え方を持っているのですがね。いずれにしても、心配が一つあるのは、どうも制度化ということを逃げたがるのがうしろにおいでになる大蔵当局の皆さんで、ここまできたらそういうことをおっしゃらずに、やはり制度化すべきだと思うのですよ。よく私が例にあげる文武官の恩給の改革に関する法律という法律がフランスにあったり、それから公務員退職年金法という法律がアメリカにあったり、物価をとるところもあれば公務員給与をとるところもあります。この間次長が御説明になっておるドイツの例もあります。ありますが、それらを私はいろいろ調べております、資料もありますけれども、いずれにしても制度化ということが一つの中心にならなければならぬ筋合いで、こう物価がうんと上がっちゃった、公務員給与が上がっちゃった、しばらく改定しないでこうやってここまできて上げたのじゃ、この間というものは置きざりになっちゃうのですね、退職公務員というのは。あなたはまたここでしばらく、七回か八回か、戦後十二回ですか、改定をしておりますが、その間いつもここのところは置いてきぼりを食う、またここで上がる、こういう上がり方をするのです。片方はこう上がっている、毎年人事院勧告が出てきているのですから。そういうことを考えると、いつも置いてきぼりを食うわれわれの先輩をこのままにしておいてはいけない。皆さんだって、やがておやめになればその部類に入るのだから。大蔵省あたりは、天下りは国家公務員賃金並みなんて決算委員会でやられて、困ったななんて思っているのじゃないかと思うのですけれどもね。そうなると、恩給は大切ですし、共済年金も、やはりあなた方の元給与課長で、岸本さんの実力ある給与課長時代に共済移行をやったんですから、そういう点等を考えると、この辺でやはり制度化に踏み切ってもらう。いずれに中心を置くにしても、その場合に中心の置き方は、いま次長がお答えになったが、この人たちは国家公務員であったわけですから、あと昇給しないというだけですから……(伊能委員「きょうは人の身、あすはわが身」と呼ぶ)そういうことです。それは運輸省の事務次官、政務次官、両方おやりになっている人が言うのだから間違いない。ほんとうに間違いない。  そういうことで、ひとつ大蔵省踏み切っていただきたい。どっちかということになれば公務員給与が中心でなければならぬということだけは間違いない。そこらのところをひとつお考えいただいて、法律の二条ノ二の趣旨をぜひ生かしていただきたい、お願いしておきます。  それからハンセン氏病について、この四、五年前に、私が国会に出てきて間もなくですが、お話を聞いたりして調べたことがある。ところが、その当時は該当の皆さんの側が、何か天刑病だなんていうことを言いたくない、表に出したくないという気分が多分にあったんですね。ただしかしここまでくると薬事療法その他もだいぶ進んできて、最近はある程度なおる、しかし外形はなおらない。しかも終戦後の昭和二十年という時点が中心ですから、したがって、こういう席で言いにくいけれども、この間申し上げたように断種をするという一つの既定事実があったんですね。これはなおらぬですよ。だからそうなると、これは今日だいぶよくなられた方々もたくさんいます。今回陳情に来られて、けさ私も陳情を受けたんですが、陳情に来られた方々が食堂に入ったら追い出されちゃったというんですね。そのときの話をしみじみ聞かされて、ついどうも理事会に出るのがおくれてしまって、議員会館の前で、あそこのたまりでお話を聞いたんですけれども、それはその食堂の方がそういう気持ちになるのは無理はないだろう、無理はないだろうけれども、御本人たちは危険がないから出てきているのですから。しかし外形はなおらぬです。だから、出て行ってくれなんていう話になってしまうんです。これはきのうの話です。そういうふうに社会一般の中に入ってこられた場合にそういう状態になる方々なんですから、私はほんとう言うならば、総理大臣かというここのところを変えて、ハンセス氏病という形に明確に別表のところでしていただきたい、正直言うと。しかしこの別表の中身というのは、身体障害というものを一つの外形的な基準を含めて基準にしておられますから、一つの病名だけあげて、これは五項症じゃいけないんだ、三項症以上、特を含めてこっちにいくんだというように――ここでハンセン氏病はということは法律体系上困るという皆さんの言い分も私はわからなくはない。これはまことに残念なことで、ほんとう言うならば、ここで法改正をやってしまいたいと思う。各党も御賛成なんですよ。塩谷さんが一番最初にお出しになっている問題だし、受田先生もそれをおっしゃっているし、わが委員会の一番古い伊能先生もそうおっしゃっているし、前回礼遇の、いつも内閣委員会で苦労されておった八田さんもお医者さんの立場で関連質問をされているし、私もいにしえにおいてこの問題を取り上げているし、皆さん意見も一致しているのです。現に起こっている事態を、きのうのことを申し上げましたが、一番困っている人の痛いところに手を置いて、そのことを解決するのが政治なんですから、そういう意味で法文上これを入れたい。しかしそれがどうしても皆さん困るのだというなら、答弁をちゃんと実のあるようにしていただいて、法律改正にかわる措置をしかとおやりをいただくということにしていただかないと、そういう気の毒な方々の気持ちは通じませんので、そういう意味でこれは総務長官からできれば御答弁いただきたいわけでございます。
  46. 床次徳二

    ○床次国務大臣 ハンセン氏病につきまして、委各位からたびたび御意見がございました。ごもっともと存じます。御質問の点につきましては、傷病恩給裁定の面におきまして、御意見のとおり現在の五項症から第三項症に引き上げることといたします。
  47. 大出俊

    大出委員 まあ附帯決議でもつけるとすれば、皆さんがいろいろ相談なさっているのがございまして、「ハンセン氏病については、その病状の特殊性にかんがみ、症項の奔走につき特別の配慮を加えること」。というようなことにまとまっているようでありますが、何とか三項症以上ということにしていただきたいと私は思うわけであります。九百人くらいの人員だろうというふうに承っておりますけれども、これは、大蔵御当局もおいでになりますが、ひとつぜひこの点は、そういう特殊な状況にある方々ですから、予算措置その他の面でいろいろ問題になるところだと思いますけれども、特段の御努力を賜わりたいと存じます。三項症と言い切られましたが、三項症以上ということにしておいていただきたいと思うのです。ここに写真やなんかもいろいろございますけれども、ここでそれまで触れて申し上げることも、長くなり過ぎますので遠慮をいたしますが、ひとつそういうふうにおとりをいただきたいと思うのでありますが、いかがでございましょうか。
  48. 平川幸蔵

    平川説明員 ただいま長官からお答えになりましたように、この問題につきましては三項症以上で裁定いたしたい、かように考えております。
  49. 大出俊

    大出委員 いま次長さんから、長官の先ほどの御答弁の多少の舌足らずの面を補足をいただきましたので、ぜひひとつそういうことで御尽力を賜わりたいと思います。  それから、非常にむずかしい問題ではありますが、症状等差に関する調査会が答申をお出しになっておりますが、私たちも持っておりますけれども、特別項症、それから第一項症、第二項症、それから第三項症、ずっと見ていきますと、これは赤じるしがついているところが、第五項症まで含めまして、外傷という面でだいぶ問題があるのですね。落とすというのは筋違いだと私はとりあえず思いますけれども、これはずいぶんたくさんありますので、一つ一つあげて議論しなければならない問題ばかりでありますけれども、これをやりますと、これまたたいへん時間がかかる。私がとっているやつだけでもこんなにありますからね。ですから一つ一つやる時間がありません。ありませんから包括的に申し上げますが、内部疾患その他については多少ずつ重く見ているように見えます。ただ外傷という範囲については少し軽く見過ぎているのではないかという気がいたします。したがって、そういう点について今回は法律改正をおやりにならぬわけですね。そういうことですな。
  50. 平川幸蔵

    平川説明員 はい。御説明申し上げますと、実は外傷及び目、耳、これにつきまして一応据え置くというような概括的な説明を申し上げましたが、実は正確に申し上げますと、その中でも特に重障者につきましては引き上げたわけであります。一例を外傷にあげますと、腕、上肢を肩関節で失っておる者につきましての問題でございますが、実は従来の裁定でございますと、若干残っておる者と全然ない者につきましては差があったわけでございます。ところが、やはりこの問題につきましては補装具というような問題を取り上げまして、残っておっても全然補装具の用をなさないというような者につきましては上げなければならないという答申が出ております。したがいまして、一例でございますが、そういう症状につきましては上がっております。目につきましても、数字ば忘れましたが、両眼につきまして一部上げております。そういう考え方は、やはりいま申し上げましたように、目といわゆる肢体障害につきましては原則として上げないということを申し上げただけでありまして、重障者の一、二の例につきましては実は上げておるわけであります。これが正確な説明でございます。
  51. 大出俊

    大出委員 ここに調査会報告と現行の比較の表がございましたね。いまの御説明、私持っておりますから、けっこうです。わかります。両上肢をひじ関節以上で失った者から、両下肢をひざ関節以上で失った者、両眼の視力の〇・〇一未満の者というふうに一項症であげておりますから、これはわかりますが、要するに私は端的に申し上げますと、下げないでいただきたい。現行より悪くしていただきたくない。そして上げるべきものは上げていただきたい。これはなぜかというと、前回冒頭に申し上げましたように、軍人恩給の性格から見て、ここでこれを多少下げてみたところで、本来この方々で終わりになるわけですね。もう一ぺんこんな戦争をやって両手を失ったの、両眼の視力が〇・〇一未満だのなんというようなことになっては困るのですから、ですからそういう意味で、いままで継続してきたものは、多少の論理的矛盾があっても、やはり下げるというのはよくないわけでありまして、何しろ人事院の地域給なんというものさえ、これは下げれば大騒ぎになるというので、時の総務長官の田中さんの足元などにも当時影響があって下げなかったのですから……。ちょっと口がすべりましたが、そういうところまで配慮したわけでありますから、これは受田さんのほうにもあとで関係がありますが、そういうこともあるわけでありますから、ひとつ見えない、手がない、足がないというような、まして御不自由な方々ですから、こういうような方々は、上がればといって下がることはよくないことでありますから、ぜひひとつそこのところは、そしてこれは早く上げるべきものは上げていただくというふうにお進めをいただきたいということをお願いしておきたい。ここらのところをひとつ……。
  52. 平川幸蔵

    平川説明員 先生の御意見と全く同様でございまして、実は恩給受給者の九五%は既裁定者でございます。したがいまして、理論的にもこの人たちの現状より症状を下げるということは法律的にきわめて困難であります。したがいまして、この前の委員会で申し上げましたように、基本的にも下げないということを絶対的な信条としてやったわけでございます。ただ先ほど申し上げましたように、実は目と肢体障害につきましては、上がるものもある半面、下がるものもかなりあります。これは、この際手をつけますと、下のものは、下げるものは下げないということで、上のものだけ上げるということになりますと、調整が時間的に実は間に合わなかったというようなわけでございます。それで先ほど申し上げましたように、将来他の省における障害の査定基準等の問題もございますので、そういうものもにらみながら、それこそできるだけ調査会の答申に沿った線で努力いたしたい、このように考えております。
  53. 大出俊

    大出委員 言っちゃ何ですけれども、ずいぶんつまらぬところに金を使っている面もありまして、出さぬでもいい補助金を政治的に出さざるを得ないといって大蔵が出す場合もあります。ですから、金を使うならこういうところに使わなければ意味がありません。そういう意味で、ひとつ多少のお金がかかりましても、これは大蔵省を説き伏せて、もし必要ならばかね太鼓でわれわれも大蔵省を攻め上げなければなりませんけれども、そういうことをひとつ実現をしていただきたいと思います。しかも早期に。  それから満州の拓殖公社のお話が塩谷さんから冒頭の質問で出てまいりましたが、ここらも、一つ手直しをすると他の矛盾を生ずるという一つケースだとは思いますけれども、恩給法の手直しが旧来からそういう経過をたどっているのでありますから、新しくこれから満州に日本が別に公社をつくることを計画しているわけじゃないから、ふえてきてみたって、あるものが全部片づいてしまえばそれ以上ないわけでありまして、私はそういう点はあまり他の波及波及と――予算事情がございましょうから、順番があって、一年これをやった、翌年これをやった、来年これをやったということはあってもいいけれども、やはり矛盾矛盾なんで、下のほうを救えばその下が出てくのはあたりまえなんだ。それは浜の真砂じゃなくてきまっているんだから、そういう点はぜひひとつ御勘案をいただきたいのであります。例をあげて申しますと、塩谷さんから拓殖公社の例が出ましたが、満州拓殖公社あるいは北支那開発公社とかあるいは旧満州の農産公社であるとか、これは農林関係でありますが、満州農作物検査所であるとか、邦人開拓保険団であるとか、幾つかそういうのがございます。これは三公社、専売、電電、満鉄を旧特殊法人、こういう名称で呼ぶとすれば、いまのは特殊機関ということに旧来なっていたはすであります。したがって、たまたま拓殖公社だけが出ましたが、その他の関連もございますので、ひとつそこらを含めてこれはぜひ御検討いただきたいというふうに思うわけでありますが、そこら辺について、現状をどうお考えかという点に触れておいていただきたいと思います。
  54. 平川幸蔵

    平川説明員 ただいま先生のお話のありましたように、いわゆる外国政府機関、外国特殊法人機関、それから外国特殊機関、そういった機関につきましては、平たいことばで申し上げますと終戦処理的なワクで恩給法に取り入れてまいったわけでございます。ところが、恩給制度自体としましてはやはり本来的に抵抗を感じたのであろうと思います。したがいまして、取り入れるときにおいておのずからワクを設けざるを得なかったということは率直に申し上げなければならぬところですか、問題は、ワクはどの程度のところが客観的に麦当であるかという点等だと思います。実はそういった問題につきましては、恩給局自体が非常に疑問を感じまして、恩給審議会答申をかけたわけでございます。いろいろございます。たとえば先ほどから言われましたように在職年等の問題もございます。それから条件がございます。たとえば八月八日の問題であるとか、「なるため」とかというような問題がございまして、そういったものを全部かけたわけでありますが、その一々について大体明確な御答申をいただいておるわけでございます。法人、特殊機関を、どういったものをこれ以上追加するかということにつきましては、実は恩給審議会の御意見は、現状以上に追加を認めることは適当でないという御意見が出ております。ただ先ほどの話ではございませんが、やはり同じような機関で、あの人は認められておるにかかわらず自分のほうについては認められていないというような感情的な問題もございますし、なかなかむずかしい問題がございます。それこそ苦慮しておるような状態にございますが、一応恩給審議会答申といたしましては、現状においては認めるべきでないという線は出ております。しかし将来の問題といたしましては具体的にいろいろ検討しなければなりませんし、率直に申し上げまして、各機関につきましての内容を完全にわれわれでも把握しておるわけではございません。そういうこともよく検討しなければならぬと思いますが、現状から申し上げますと、そういうことで一応当面の問題は処理していかなければならない、そういう立場でやっていきたい。こういうことでございます。
  55. 大出俊

    大出委員 いずれにしてもこれは国策機関であり、それから国策会社でございますから、したがってその中身というものも確かに検討に値すると思います。私も幾つか陳情を承ったり調べたりいたしました。そこでいま名前をあげたわけでございますが、ぜひひとつそこらを御検討いただいて、審議会答申というものがありますが、これは満日ケースのように審議会はだめだというケースはあっても、やはりそれは皆さん矛盾だとお考えになればやはりこれは直さなければならぬということになるのですから。臨調の答申だって、必ずしも全部が全部答申どおりになっているわけでもない。答申と別の方向へ進んでいるのもあるのですから。そういう点等をお考えをいただければ、これはアメリカのフーバー委員会だって、国会図書館に、その後の処理の方法でこんな学者の本がありますけれども、フーバー委員会というものは全部認められているかというと、だめだというので逆に行ってしまったのもあるわけです。それは日本だけに限らず、必要なことはやらなければならぬわけであります。したがってそういう意味で、いま前向きで御検討いただけるような御発言でございますから、ぜひひとつそういうようにお進めいただきたいと思います。  それから具体的な点で二、三点承ったり要望しておきたかったりする点があるのであります。一つは、そうたくさんあるケースではないと私は思いますが、ちょっと例を引いて申し上げますと、これは関係ないところでございますけれども、関東庁の日本政府雇員という期間が昭和八年の九月一日から昭和十年の三月三十一日まであった。これはとりあえず恩給対象期間になりませんが、昭和十年の四月一日から満州国政府の官吏になった。この満州国政府官吏期間が昭和十九年の六月二十一日まであった。ところが昭和十九年の六月二十二日から軍需省及び商工省の日本国政府官吏になった。そうしてこの官吏期間が昭和二十年の十二月二十六日まで続いた。これは日本政府の官吏という身分で、このまん中で終戦つまり二十年八月八日を迎えた。現に在職していないというケースですね。それから昭和二十年の十二月二十六日から昭和二十二年七月十日まで民間団体にあった。そうして昭和二十二年の七月十日以降は日本国の公務員、これは衆議院の常任委員会事務嘱託、これが昭和二十三年十一月二十二日まであって、昭和二十三年十一月二十四日から衆議院専門調査員ということで、公務員でありますが、昭和三十七年の十一月三十日まであった。三十七年の十二月一日から中小企業金融公庫に行っておられる、こういうケースです。  ここで問題点は、十九年の六月二十二日付で、これはここにございますけれども、政府の都合なんです。本人の意思にかかわりなく、日満両国政府高等官人事交流に関する協定というのでやった。これで当時満州国政府から軍需省本省に軍需官として、命令によって転出をさせられた。満州国政府によって命令されて軍需官ということで、この交流協定に基づいて日本の官吏の身分になった。そうして大体二カ年の約束で、言うならこれは出向みたいなものです。いずれはこれは満州国官吏に復職するという前提条件かついているのですね。両国官吏を兼任することは不可能だ。つまり交流協定がありますから、したがって依願免職、依願免官という形で、翌日日本の官吏として任官をされて日本に来ている。満州国のほうはしたがって休職の形になっている。日本の側に転出、出向ですね、こういうことになっておりますけれども、これはすべてそういう交流協定があって向こうを休職して来ているのです。当時の証拠書類はすべてある。辞令をもらっているのですから。ところがこれは二十年八月八日という終戦の日に現に在職していない、つまり満州国政府官吏としては在職していない。前の年の十九年の六月二十二日付で、命令によって軍需官として日本の官吏の身分を取得して、向こうは休職になっている。こういうことになっている。これは八月八日前に現に在職する者という基準を設けたところにこういう問題が起こっている。たとえば私なんかの場合は、郵政省の逓信官吏練習所なる専門学校に在校中に召集を食った。ところが身分は鶴見の郵便局に職があった。出征するにあたって、現場の職場の主任という資格はどうするのだということが問題になって、そのまま置いて行きますと、定数がきまっているからあとの人がなれない。だから最初は、早い出征というのは休職のかっこうで行っていますけれども、あとのほうの出征というのは、そこでもって退職をして行っているのですね。そのほうが、あとの人事交流がやりいいですから。やはり、先輩が出ていって、出征した人間の役職ですから置いておきたいという気持ちになって置いておくということになると、主任が一人欠けるというようなことになって、やめて行く人がいる。実際は同じなんですね。似たようなことで、これはやむを得ざる退職なんですね。本人の意にかかわらずということになるケースがあるのですね。これは満州の場合だって終戦のまぎわまで出征をしておりましたからね。そうすると、現に在職していないということになる。そういうケースもある。そこらのところ、これは直していい矛盾だというふうに私は思うのですよ。そこのところを一体どういうふうにお考えになるかという点……。
  56. 平川幸蔵

    平川説明員 御質問の件はまさに先生が御指摘になりましたように、昭和二十年八月八日現在において御本人が満州国政府官吏として在職していなかった、したがって、実際上は本人の意思関係なく異動が行なわれたにもかかわらず、こういったケースについては問題がある、こういう御指摘だと思います。  形式的に申し上げますと、確かにこのケースは現行の制度からいいますといわゆる漏れたる者、こういうことになります。もしこの方がかりに休職のまま八月八日までにおられたならば、当然われわれの恩給職員のケースに該当すると思いますけれども、おそらくそうでないようでございますから該当しないということになるわけでありますが、問題はこの二十年八月八日の件でございます。この件につきましては、実はどうしてこういうワクをはめたかということでございますが、先ほど申し上げましたように、いわゆる外国政府職員期間あるいは外国特殊法人職員期間、外国特殊機関の職員期間、これにつきましてはやはり終戦処理的な考えでワクを広げたわけでありますけれども、外国政府職員としての在職は、昭和二十年八月までにおられた方が、終戦というその事態がなかったならば、引き続いてその職にとどまったであろうという場合における救済措置ということでこの制度はできておるわけでございます。実際問題といたしまして、この問題のみならず、他のいわゆる先ほど私が申し上げたワクの問題等におきまして、ワクにはまる人はだまたまいるわけでございますが、微妙なケースで、はまらないというような場合が多々――多々かどうかわかりませんが、かなりあるというように私は考えております。そういった問題につきましては、やはり恩給というのは給与の一種でございますから、給与のバランスというものをやはり基本的に考えるべき問題だと私は考えますが、しかし直ちにいま申し上げましたように――実は恩給審議会におきましては、この問題につきまして緩和することについては否定的な意見が出ております。これも先ほどの満州拓殖公社と概括的な考えといたしましては同じ考えで処理しなければならないかと思いますけれども、個々の問題については、われわれも実は、実情につきましては相当知っておるわけでございます。基本的には、いかにバランスを今後とっていくかという基本的な態度の問題かと思いますが、よく検討いたしたい、このように思います。
  57. 大出俊

    大出委員 これは越田さんという衆議院の専門員をやっておられた方の実例ですが、こういう例が一つだけじゃないと思って私は取り上げたのですよ。  それから、たとえばこれは外国政府職員として昭和二十年八月八日まで在職し公務員となった者というワクがありますから、八月八日まで在職しないということで、はずれるということなんですね。しかし親切にいえば、カッコでも入れて、外国政府職員から引き続いて同日まで公務員であった者を含む、カッコ閉ず、くらい入れておけば、これに該当するからということになるのです。こういう気の毒なケースは出てこないことになるわけです。弾力条項を持たしていけば、そこのところをちょっと手直ししていただければ、同じことなんです、実情は。だから、片一方、八月八日までいてしまえば、当然該当してしまうわけですからね。本人の意に反して――当時は軍隊時代だから、命令といわれれば行かざるを得ないのですからね。だから、そういう人を救えないということになれは、あまりといえば――個人にしわを寄せてはいけないわけですから、そういう措置をおとりになって一項目を入れていただければ、これは救えるわけですから、レアケースと思いますけれども、その辺の配慮を御検討いただきたいのですが……。
  58. 平川幸蔵

    平川説明員 先ほどお答えいたしましたように、今後できるだけ慎重に、よく検討いたしたい、このように思っております。
  59. 大出俊

    大出委員 時間がありませんから、あと二つだけでやめますけれども、どうも事務手続の面で、これはたくさんありますから無理もないというふうに思いますけれども、もう少し何とかしていただけぬかという面が非常にあるのです。  前に一ぺんこういうことを申し上げたことがあるのですけれども、いろいろな陳情などをいただくのです。たとえば、ここにある一つの例は、福島県庁の世話課でございますか、ここに、かつて、七、八年前に申請をした。これは傷病恩給の申請であります。症状経過書、これは鹿又美吉という人でございますが、腰胸椎圧迫骨折後遺症、受傷または罹病の年月日、場所、昭和二十年四月二十七日、これは皇居内で、もちろん軍人でございますけれども、ここにいろいろ二重橋のところのいきさつが書いてあります。当時の同僚もおるようであります。したがって、これを提出をしたら、世話課が、その後、書類がどこかにいってしまったというので、調べてもわからない。出したのだけれども。そういうケースを私、何件か聞きまして、前に一ぺんごめんどういただいたこともあるのでありますけれども、似たようなケースがまた出てまいりまして、それで、どうなっているんだ、どうなっているんだということで年月がたってしまって、どこかへ行っちゃってわからぬという最後の回答で、しようがないから出し直したという。出し直したのは、四十四年三月十五日に出したのです。おたくの二課にお願いをして調べてもらったら、ついこの間、まだ県庁にあるのですね。どうもあんまりそれは、こういう事務的な面が、たくさんあるのですから無理もないとは思いますけれども、また、当時の証拠物件その他で、戦友だ云々だに聞いたりなにかというめんどうなこともありますから無理もないと思いますが、それにしても、この種のケースですと、おそらく厚生省の援護局へ回ってきて、それからおたくのほうへということになるのだと思うのですが、そういう間で半年も一年もたってしまう、あるいは何年もたってしまうという。いかなるものかと思うのです、本人の身になれば。そういう点、何とかこれはもう少し改善の余地はないかという気がするのですけれども……。この福島県のケースは、一ぺんお調べをいただいて、皆さんのほうで御努力をいただいた結果、福島県庁の世話課にまだそのままあるということなんです。これは、福島県田村郡大越町大字大越字遠山口百三十八番地、こういうことなんですが、裁定の結果こうなるああなるということは別として、何とかこういう点は事務的にもう少し能率的にやれないものかというふうに思うのですが、何かお考えがあれば……。皆さんの責任ではありませんけれども。
  60. 平川幸蔵

    平川説明員 裁定の問題につきましてお尋ねいただいたのでありますが、この際基本的にわれわれの考えを若干申し上げておきますけれども、実は年金恩給のように在職年限によって裁定する、こういう恩給について遅滞するということは、私ははなはだ申しわけないと思うのです。というのは、これは機械的に比較的に簡単にできる問題でございますから、これにつきましては、できるだけ早く――早くやりましてもまた漏れるということはございませんしところが傷病恩給につきましては、せんだって塩谷先生から御質問がありましたように、実は原因たる受傷と現症との間に二十数年経過している、そういう客観的な情勢の中で考えますと、かつて陸海軍の医療機関が整備されておりました戦前の考え方そのままを持ってきたシビアーな裁定方針では救われる者が少なくなる、基本的には私はそう考えております。したがいまして、ある程度あいまいな状態の中においても裁定し得るものがあるのじゃないか、こういう基本的な考えに立ちます以上、やはり傷病恩給につきましては、実は出てきます資料の中で若干不完備なものが必ずあるわけでございますが、こういうものをそのままの状態で裁定することは、受給者の意をくむことにならないのじゃないかと思いますので、若干手間はとりましても、できるだけこれに対しては加算をしていきたい。そのために、実は私自身もそういうことにタッチしておりますが、たとえば受傷当時の客観的な、いわゆる公的資料がなくても、その後の有間において少しでも何か手がかりがあれば、できるだけさがしていって、それによって恩給を裁定していくということでやっておりますので、実はおくれることもあるかと思います。しかし、これはおくれることの合理的な理由にはならないかと思います。できるだけ漏れがないように早くやるということは当然でございますが、ただいま御指摘の件は、恩給局の前段階における厚生省の援護局なりあるいは府県の世話課――実は府県の世話課は厚生省所管になっておりまして私どもの所管でございませんので、アドバイスは申し上げますけれども、私のほうは厚生省と一体的になりまして、できるだけスムーズにやっていきたいということは常時考えております。他方におきましては、一人でも漏れがないようにできるだけ親切な行政をやっていきたいということで、若干おくれることもあるかと思いますけれども、その点は御了承願いたいと思います。
  61. 大出俊

    大出委員 何とかひとつ事務的な促進面を、これは厚生省にもお願いしたいと思うのですが、進めていただきたい。本人の身になりますと、改正改正と出てくる中に、自分がそういうつらい思いをしてきて、後遺症が残って自覚症状があって、まだ世話課にあるままだというのでは、これはとても泣けないと思うのですね。泣き寝入りする人がないようにぜひひとつ御努力願いたいと思うのです。  もう一つ、これでおしまいでありますが、別に私、関係ないのですけれども、茨城県の竜ケ崎市の八代町三千百五十六番地にいる杉山良造という人ですが、この人の事実証明書というのは当時の戦友が書いてつけた。ビルマ派遣弓第六八二二部隊というのですけれども、これは機関銃の射手で、チンドエン県ブタリンというところで敵と交戦中に右前膊部、右中指迫撃砲被弾、その破片でひじのところをやられて、野戦病院に入って右の中指第一節の切断手術を受けた。これを申請して――指がなければ三款症、中指の機能が全くないというのが四款症ですね。ところがここから先がない。あとこっちにもう一つあるということで、本人はその後全く機能がないと言っているのですけれども、ところが機能がある、ないということで争いになってしまう。中指の機能を失った人、使えないという人ならば四款症なんですけれども、医者のほうは、本人が機能がないと言っていても、いやあるはずだと言う。そんなこと言ったってないんだ、いやあるはずなんだ、妙な話で、そういうところは私は――これは本人なんですからね。私、友だちに聞いてみたところが、やはりないというのです。友だちの、いつもほんとうにきかないという話をわきで聞いていて、医者は、全くないのじゃなくて、ここから先を切断していますから、残っているので機能があるはずだということで、なかなか物事がきまらぬというのは私は困ったことだと思うのです。おまけに本人に出てこいといったって、茨城のいなかのほうの仕事の関係もあり、なかなか出てこられない。これに追加証拠があればというが、追加証拠というのは何かというと、使えないということしかないわけです。そういうところはやはり、本人が真にそうであるかないかは話してみればわかるのですから、まあ予算の関係ではねられるものははねておこうという気持ちがあるのかもしれませんけれども、機関銃の射手で迫撃砲弾を受けていることは事実なんだし、判定の微妙なところですけれども、そこらのところは、それこそ軍人恩給の終戦処理という趣旨に従ってできるだけ前向きに解釈してやる。医者に幾ら言われても、こうしませんと本人は泣けないですよ。私はそういうところをもう少し皆さんのほうで考えてやれぬものか。本人からの訴えなどを聞いてみると、非常にくやしがっているのですね。現にそうであるのにだめだという。ほんとうに使えないんだから四款症だ、ところが使えるはずだというのじゃ、これはどうもおかしなことになるので、何とかもう少しこういう点の前向きの処理のしかたはないだろうかというように思うのです。
  62. 平川幸蔵

    平川説明員 いわゆる傷病恩給につきましては、申請していただきます場合に医者の診断書を提出していただきます。しかしそれで十分客観的に判断できないという場合におきましては検診制度というのがございまして、県に二、三の病院を指定いたしまして、襲用は私のほうで持ちまして、そこで検診をしていただきます。そういう制度をフルに活用いたしまして、客観的に機能廃疾であれば四款症でございますから、できるだけそういう道も開きたい。それからもう一つ、実は巡回相談といいまして、一日恩給局というものをブロック別に年に一回開いております。そういうときに、特に問題がある方は私どものほうに出向いていただきまして実情を訴えていただきましたならば、われわれとしてはできるだけその機会等を利用いたしまして判断いたしたい。とにかくそういうことでございますから、この件につきましても、たとえば事後重症というような請求のしかたも形式的にはございます。そういうことで途切れることなく請求していただければ、われわれとしても接触を保ちながら何らかのチャンスを見出していきたい、そういう努力はやっていきたい、このように考えております。
  63. 大出俊

    大出委員 まあ、二つ例にあげたのですけれども、いままでずいぶんいろいろな話を私も恩給をやっている関係で人から聞かれたり、同僚委員諸君から相談を持ちかけられたりしますが、私はこういうものは、すれすれならば最近はできるだけ見てあげるというのがたてまえじゃないかという気がするのです。戦争なんというものがなければぴんぴんしている人が、現に一節なら一節ないというような気の毒な人なんですから、いま前向きの御答弁をいただきましたが、そういうところはまさに戦後処理ですから、ひとつできるだけ前向きに見てあげて完全な処理をしていただきたいものだという気がするのです。それだけつけ加えまして、長くなりまして恐縮でございますが、また数々申し上げましたが、ひとつできるだけ善意に前向きにお進めいただくことをお願いいたしまして、これで終わります。
  64. 藤田義光

    藤田委員長 淡谷悠藏君。  淡谷君に申し上げますが、午後一時を目途に一たん休憩に入りたいと思います。質疑の途中だろうと思いますが、御了承の上御発言願います。
  65. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 はい、けっこうです。  非常に原則的な質問になりますけれども、恩給法の今度の改正の第三点として、支給条件の緩和というのがありますね。支給されてからの内容をいろいろお話を承っていましたが、この支給条件について、「恩給ヲ受クルノ権利ハ総理府恩給局長之ヲ裁定ス」と書いてありますが、これについて戦傷病者戦没者遺族等援護法と恩給法との関係、特にこの受給資格を決定する場合に、片一方は年金で片一方は恩給ですけれども、これは所管が違うか同じか、御答弁願いたいと思います。
  66. 平川幸蔵

    平川説明員 御指摘の戦傷病者戦没者遺族等援護法、いわゆる援護法でございますが、これは厚生省の援護局の所管でございます。考え方といたしましては、私どものほうからこういうことを申し上げるのはどうかと思いますが、いわゆる対象者の資格が違うということでございます。軍人、軍属――軍属といいましてもいわゆる判任官以上の軍属でございますが、この方々に対する処分は恩給法でやるわけでございます。いわゆる雇員等の軍属、これにつきましては援護法で処分する、大ざっぱに申し上げますと、こういうことになるかと思います。
  67. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 それでは旧軍人の恩給関係のほうはあなたのほうで決定する、こういうふうに理解してよろしゅうございますか。――それではお伺いしますが、旧軍人の恩給に限りませんけれども、恩給を受ける権利の裁定に関して異議があった場合は、これまたあなたのほうに申し立てをするということになっておりますね。あなたのほうで裁定して、裁定した人にまた異議の申し立てをする、これでうまくいきますかね。前にあなたのほうでおきめになって、また異議申し立てをするということは、同じ人が裁定の条件についてまた異議申し立てを受けるということは、これは実際においていい結果が得られないのじゃないんですか。
  68. 平川幸蔵

    平川説明員 御承知のように行政処分に対して不服がある者につきましては、異議申し立てないしは審査請求という制度がございます。審査請求は前に訴願ということばを使っておりましたが、法律改正によって審査請求ということになりました。第一段階の異議の申し立てというのは、これは同一行政庁に対してやるということに恩給法ではなっております。援護法につきましては私詳しいことは存じ上げませんが、この恩給法におきましては、同一裁定行為に対しまして権利を侵害されたという者につきましては、一年以内に恩給局長に異議の申し立てをする、なおかつ不服である者につきましては半年以内に内閣総理大臣に審査を請求するということで、これは行政処分一般としてはいわゆるあらためて見直すといいますか、平たいことばで申し上げますとそういう機会を当該行政庁に与えるものである、このように考えております。
  69. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 私この委員会でしばしば質問申し上げているのですが、今度の戦争の結果生じた戦傷病者は、事が敗戦だけに非常に複雑な様相にあったことはおわかりのとおりであります。したがって、この不服申し立て、異議申し立て、あるいは行政審査の申し立てですが、これは非常に立証しづらい条件がたくさんあると思うのです。この点でかなり異議の申し立てや行政審査の適用はあると思います。現在どれくらいありますか。
  70. 平川幸蔵

    平川説明員 異議申し立ての処理状況をお答えいたします。  最近一年間におきます異議申し立て及び審査請求の処理の状況でございますが、受付件数が八百六十件、それからその前の年からの繰り越し分がございまして、これを含めますと処理件数は千百五件になっております。異議申し立てのうち審査請求に関する裁決につきましては恩給審査会に諮問いたしております。諮問いたすときに本人の弁明書もとるわけでございます。したがいまして、異議申し立てに対しまして審査請求のほうは審査委員会にかける関係上、日時において若干おくれる、こういう傾向にはなっております。
  71. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 この千百五件というと、全体に対しては多くないかもしれませんがね、内容においてはかなり深刻な問題をはらんでおるものがあるだろうと思う。大体内容の種類別はどういうふうになっておりますか。
  72. 平川幸蔵

    平川説明員 いわゆる恩給の処分につきまして不服申し立ての内容でございますが、ただいまこまかい数字を持っておりませんので、いずれ提出いたしたいと思いますが、内容的に申し上げますと、いわゆる公務に基因しないということで棄却されたものに対する異議申し立て、それから、公務に基因するけれども四款症未到である、四款症未到というのは最低の年金でございますが、四款症未到、こういう異議申し立て、それから、たとえば現在五項症をもらっているのだが、五項症では不満である、四項症なり三項症が妥当である、こういう三つの部類に分けられると思います。この三つの部類のパーセンテージにつきましては、あとでまた資料で申し上げたいと思いますが、内容的にはそういう内容になっております。
  73. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 この中で公務に基因しないというのがありますが、これは戦争に行った軍人の場合は、はたして公務に基因するか基因しないかがはっきり立証される可能性がありますか。
  74. 平川幸蔵

    平川説明員 公務に基因するという、する場合の典型的な例でありますが、現認証明書というものが発行されておりまして、各部隊長が発行したその本物ないしは写しがありますと、これは疑問の余地がなく公務に基因する、こういうことに考えて差しつかえないわけであります。そういう裁定をしておるわけであります。そういう現認証明書がなくても、場合によっては公務性を認める場合は相当あるわけであります。たとえば御本人がソ連から引き揚げてきたという場合に、舞鶴に上がったといたしますと、舞鶴に上陸する場合に身上申告書というものを書くわけであります。その身上申告書に若干でも疾病のことが書いてあれば、疾病の名前がなくてもそこから一つ疑っていきまして、どういう症状であったろうかということにつきましての立証ができましたならば公務性を認めていく、そういうことでありまして、必ずしも完全な公的資料がなければ公務性を認めないというわけではございません。あとからいろいろな資料によりまして一、二、三というようなものを突き合わせまして客観的に総合いたしますとこれはやはり公務に基因するというような例も相当あるわけでありまして、そういう資料を集めましてもなおかつ公務に基因しないという例につきましてはやむを得ず却下する、こういうことになるわけであります。
  75. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 これは公務に基因するかしないかということは争いの存するところだと思いますが、部隊長の証明というのはこれは不可能じゃないかと思う。一隊全滅した場合もあるでしょう。それから敗戦の中にはさまざまの状況が生まれてくるようであります。現にこの間もあった例で、ある大きな新聞社がこの事実を追跡しておるようですが、まだ未帰還の兵隊をだんだん調べていくに従って、何か上級の将校に対してたいへん不満を持っている数人が一緒になってこの上級将校を殺したという事実がわかったわけであります。それからすぐ敗戦になりまして敵の軍隊が入ってきた、捕虜になってしまった、それを別な上官が敵の軍隊に渡して銃殺されたらしいことがわかったのであります。これは恩給に関して起こっている事件なんですが、これなども立証のしようもないし、恩給の規定からいっても、どういうものかということで遺族が非常に悩んでいる事実が実際あるわけです。敗戦というのはそういう形のものらしいのです。したがって、この現認証明書を取るということはたいへんいいのですけれども、今度この受給資格についての緩和がなされておりますが、ただ期間を延長したぐらいでは救済できない事例がたくさんあるんじゃないですか。今度の改正法を見ますと、その趣旨はこうなっているでしょう。在職期間内に死亡し、あるいは在職期間後、厚生大臣の指定する疾病については十二年以内あるいはその他の傷病にあっては四年以内に死亡した場合、これだけの改正では、受給資格の緩和ということにはなはだ遠いと私は思う。特に軍人恩給、未帰還の軍人あるいはこの基因するかしないかわからぬというような場合、これだけの改正では条件の緩和にはほど遠いと思うのですが、その点はいかがですか。
  76. 平川幸蔵

    平川説明員 ただいま先生が御指摘になりました点は、いわゆる内地等におきまして職務関連の傷痍疾病を受け、それによって死亡したものについての制限が、実はいままで復員後四年ないし十二年以内に死亡したものに限るという条項があったわけでありますが、これを撤廃するというだけの話でございまして、おそらく先ほどその前に御質問になりました趣旨は、戦地においてそういうことがあったということかと思いますが、そういう場合においては、現認証明書がないというのはおそらく当然かもしれません。ところが戦地と内地とにおきましての取り扱いが全然異なるわけでございまして、御承知のように、戦地で死亡したということにおきましては、特殊な反証がない限りにおいて、公務に見なされるわけであります。これは援護法的にも見なされるということになりますので、先ほど先生の御例示になりました件は、むしろ戦地であれば現認証明書がなくても、こういう援護法の問題もあるかもしれませんが、むしろ公務になるケースが、現実問題といたしましてかなり多いのではないかというような感じがいたしますが、あとのほうで御指摘になりましたのは、これは内地職務関連の特例条項がございますから、これとはちょっと関係がないのじゃないか、このように考えますので、ちょっと御質問趣旨がはっきり私のほうで受け取れなかった点はあるかもしれませんが、一応そういうことにお答えしておきます。
  77. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 現在未帰還の軍人で、遺族が恩給を受けていないという例がたくさんございますか。  一体死んだのか生きているのかわからぬ、証明ができないというので遺族が、実際に本人が未帰還であるにかかわらず、恩給あるいは年金を受けていないという例がたくさんございますか。
  78. 平川幸蔵

    平川説明員 御承知のように、戦地にありまして、いまだ帰還しない者につきまして、いわゆる戦時死亡宣告が宣告されたような場合には、公務扶助料は支給されるわけであります。ところが戦時死亡宣告を宣告されていないで生死が不明であるというような者につきましては、恩給法三十条によりまして――遺族というわけにはいきません、生存されておるかもしれませんから――留守家族に対しまして、これは公務扶助料でない普通恩給でございますが、恩給を支給しておるわけでございます。しかし、これは公務扶助料ではございません。というのは、まだ生死が判別しておりませんから、一応普通恩給を支給しておりまして、いま申し上げましたように、生死が確定いたしましたならば、公務扶助料に切りかえていくということになります。
  79. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 この前にも申し上げましたけれども、敗戦による犠牲というのは相当大きいだけではなくて、かなりな混乱と陰惨なものがたくさんあるようですけれども、疑わしいという点だけで恩給支給を断わらずに、この際やはり戦後処理として、きめるものはきめてしまったほうがいいのではないかと思う。特に私、この前から頼まれた事件が二つぐらいありますが、それはハンセン氏病者と精神病者の問題です。特にハンセン氏病の場合には、潜伏期間が長いものですから、内地に帰ってから死亡したり発病したりする場合があるが、この場合に現認証明書もしくは部隊の証明なんていうのは得られないですね。今度ハンセン氏病に対する処遇をだいぶ変えるようですが、この場合は一体どうなりますか。
  80. 平川幸蔵

    平川説明員 御指摘のとおりでございます。ハンセン氏病等、これはハンセン氏病だけではございませんが、その取り扱いでございますが、すべて戦地において発病をいたしましたものは、公務基因のハンセン氏病として取り扱っております。なおかつ帰りましてから一年以内に発生しましたものは、そういう立証資料の有無にかかわらず、全部ハンセン氏病として公務に認定しております。これが従来までの取り扱いであったわけでありますが、私どもといたしましては、幸いに傷病恩給症状等差調査会等がございましたので、復員後一年という期間で適当かどうかということを諮問したわけでありますが、非公式の意見といたしまして、やはり一年では短いのではないかという御意見をいただきまして、これを本年度から二年に延ばした。したがいまして、戦地から帰りまして二年以内に発病したハンセン氏病につきましては、これは発病自体というもので直ちに恩給を支給する、したがって、それ以外立証は必要ではございません。そういうことで、取り扱いについてはわれわれとしては緩和して処遇改善した、このようなことでございます。
  81. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 ハンセン氏病の期間を一年から二年にしたというのは、かなり延長したと思われるかもしれませんが、一体ハンセン氏病の潜伏期間というのは学説上何年になっておりますか。
  82. 平川幸蔵

    平川説明員 医学的な専門知識を持っておりませんので、責任ある答弁になるかどうかわかりませんが、われわれが聞いておりますのは、大体六、七年ないし十数年をこえるものもある、このように聞いております。
  83. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 それでは全く実態と今度の改正が合わないじゃないですか。十六、七年も潜伏する可能性のある病気が二年以内に発病しなければ、これを恩給の対象に見ないということは、これはどうも合わないように思いますが……。
  84. 平川幸蔵

    平川説明員 われわれがハンセン氏病等の取り扱いをします場合に、基本的には感染経路を取り上げるのか、あるいは発病自体を取り上げるのかという問題がございます。われわれといたしましては、やはり感染の経路を取り上げるよりも、戦地において発病したというそのこと自体を取り上げたほうが給与処遇上適当であろうということで、実は戦前からそういう処遇をしてまいったわけであります。感染の経路を取り上げますと、戦地において発病したものでも、場合によっては認められないというようなことも起こり得るわけであります。それで、そういう公平な処遇をするためには、やはり発病を戦地に限って、それを復員後一年であったものを二年ということで、この期間は戦地の延長であるとみなして、発病自体を取り上げる、こういうことになります。このほうが恩給処遇上の措置としてはより公平であろう、私はこのように考えておりますし、また過去の経過もそのように聞いております。以上でございます。
  85. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 それは一年より二年のほうが適当ですが、いまの御答弁にあったとおり、十五、六年も潜伏する可能性のある病気が二年で打ち切られるということは、どうも私は承知できない。三年目に発病したらどうします。四年目に発病したらどうします。これが戦争による、戦地から感染したものでないという証拠は出ないじゃないですか。特にこの病気の性質上、そういう点さらに考慮する必要があるのじゃないですか。
  86. 平川幸蔵

    平川説明員 このハンセン氏病のみならず恩給処遇問題につきましては、一定のワクと申しますか限界というものを考えつつ処遇しなければならないと思うわけでございますが、問題はその限界をどこに置くかという判断の問題だと思います。これにつきましては、医学的には先生が言われましたように感染して発病するまでに相当の期間があるではないかという御意見もよくわかるわけでありますけれども、ただ処遇上どの程度まで認めるかという問題と、医学的な問題と、必ずしも一致しない場合があり得るということでございます。たとえば結核等におきましても、結核が一たんなおりまして長期治癒の状態になりますと、やはりこれは公務起因の連続性が断たれる、こういうことになりまして、一応公務起因からはずれるということになるわけであります。そういう例でもわかりますように、ある一定の処遇の限界というものを考えつつ処遇してまいったわけでございまして、必ずしも医学的な面と一致しない面もあるかとは思いますけれども、いずれそういう御意見もございますので、将来また慎重に検討いたしたいとは思いますけれども、現状ではこのように処遇しているわけであります。
  87. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 現状がそうだからといって必ずしも合理的だとはいえませんが、特にこの委員会では先般来同僚委員諸君からハンセン氏病に対する問題がたくさん出ておりますので、直すべき問題ならばこの際はっきり直しておいたほうがよろしい。特にあとの病気の例は別といたしまして、ハンセン氏病というのはやはり特殊な環境に置かれているものですから、さっき同僚委員も言ったとおり、そういう疑いがあってもこれを隠しておくという場合もあるし、それから発病してから正規の診断を受けたりしましても、さかのぼっていつからということはなかなかはっきりできないかもしれない。これは処置上の問題と医学上の問題は分離されるとしましても、こういうことに対する処置は、やっぱり病気ですから、医学上の原則に立ってこれを処置するのが正しい処置ではないかと私は思う。これは非常に気の毒な例がたくさんあるだろうと思います。その当時は何ともなく思っておったものが、診断の結果ハンセン氏病とわかってがく然としたという例も間々あるわけでございますから、その点についてかなり緩和された処置をとりませんと、この法の精神が生きてこないと思うのですが、その点はいかがです。
  88. 平川幸蔵

    平川説明員 先ほど答弁いたしましたように、先生趣旨を体しながら実は復員後一年の期間を二年に延長した、こういう処遇をとったわけでありますが、今後ともこの問題につきましては慎重によく検討していきたい、このように考えております。
  89. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 やっぱり法律というものは、事実があらわれてから改正するという例はありますけれども、あらわれる可能性がある場合はやっぱりそれだけのことを考えてやらなければほんとうの法の精神は生きてこないと思います。これは取り扱いの点についてもやはり慎重に御考慮を願いたいと思う。  それからなお法改正後の取り扱いですが、実はいままでそういうふうな例で異議の申し立てをしましても審査会などでも却下された例はずいぶんいろいろあるのですが、この法改正で、新しい異議申し立てあるいは審査請求の道を開くおつもりですかどうですか。
  90. 平川幸蔵

    平川説明員 症状等差の問題だと思いますが、この改正法が通過いたしましたあとで異議申し立てをされた場合におきましては、新たなる基準で裁定をするということで御了承願いたいと思います。
  91. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 従来一度却下された事件でも、やはり改正後はもう一ぺん再審請求ができるということなんですか。
  92. 平川幸蔵

    平川説明員 先ほど申し上げましたように、傷病恩給につきましては事後の重症の請求という制度がございます。これは、たとえば第四款症未到でありましても、その症状が悪化したというような形式をとっていただいて請求するという方法がございますから、そういうことで請求していただいたならば、この法改正後におきまして新しい基準で裁定した結果、これは下がることはございませんから、現状維持か必ず上がるということでございますから、そういう方が上がるということもあるわけでございますから、そういう形式的な手続をとっていただくのも一つの方法かと思います。
  93. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 この恩給を受ける権利を失った者についてはどうですか。これは新しい法改正関係ございませんか。
  94. 平川幸蔵

    平川説明員 具体的な例が適当であるかどうかわかりませんが、たとえば懲役三年以上の刑に処せられた者は恩給を受ける権利を失う、こういう規定が第九条でございます。これに該当した者につきましては今度の法改正にも関係ございません。したがいまして、異議申し立て期間に再審査請求されることはもちろん自由でございますけれども、可能性につきましてはない、これはもうはっきり申し上げないと適当でないと思いますので、そういうことをはっきり申し上げたいと思います。
  95. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 私の言うのはこのハンセン氏病の問題で、たとえば一年が二年になった、その場合に、前は一年経過したというだけでだめになったものが、今度の法改正によって影響を受けますから、前は却下されておっても、あらためてまたこれを申請する権利があると私は思うのです。
  96. 平川幸蔵

    平川説明員 お示しのとおりだと私は考えます。
  97. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 もう一つ精神病の問題があるのですが、精神病と戦争というのは非常に密接な関係があるようにわれわれは聞いておるのですが、この精神病についての配慮は何かなされますか。
  98. 平川幸蔵

    平川説明員 この前の委員会でも御説明申し上げましたように、このたび症状等差の調査会の答申を受けまして、その一部を改正するわけでございますけれども、御承知のように精神障害は内科疾患でございます。内科疾患につきましては、原則として現状維持ないしは上がるということになります。したがいまして特に重症者につきましてはある程度、相当上がると考えていただいて間違いないと思います。したがいまして、これにつきましては御本人において希望があるならば請求していただきますれば、新しい基準によって裁定いたしたい、こういうように考えます。
  99. 藤田義光

    藤田委員長 午後二時より再開することとし、暫時休憩いたします。    午後零時五十八分休憩      ――――◇―――――    午後二時三十一分開議
  100. 藤田義光

    藤田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  恩給法等の一部を改正する法律案議題とし、質疑を続けます。淡谷悠藏君。   〔委員長退席伊能委員長代理着席
  101. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 休憩前の恩給局の御答弁では、恩給の受給権利が得られてから、条件についての申し立てに重点を置いてお答えになったのですが、私がさっきから御質問していますのは、受ける権利についての問題なんです。これはつまり受けた人がいろいろな条件についての異議があるのは、これはおぼれた者が船に救い上げられてからの異議の申し立てですけれども、まだ受けていない者は海の中にいるわけです。受ける資格がありながら受けていないという、非常な危急性を感ずる。特にこれは軍人関係の人に多いと私は思う。さっきの精神病の例などは、私実際に手がけた問題ですけれども、精神病と戦争とはどうも関係があるかと、いわゆるさっきの御答弁の、基因が戦争かどうかでかなりこれは冷たい待遇を受けた実例があるのです。したがって、この精神病などは、今後受給資格として認められるか認められないかという問題、この点をお聞きしたわけですが、御答弁がちょっとそれましたので……。
  102. 平川幸蔵

    平川説明員 精神障害につきましての恩給の裁定の問題でございますが、御承知のように、恩給法の別表に障害の種類が出ております。その中に一般的な規定といたしまして、心身障害という条項がございます。基本的には精神障害はこの条項に該当すると思いますが、昭和三十二年に傷病恩給調査会という制度ができまして、その委員会の中でやはり議論されたわけであります。その際、特定三病と申しまして、結核と精神障害、それから外傷性てんかん、この三つの障害が取り上げられまして、これは法改正しませんでしたが、総理府令で、総理府告示で出ております。したがいまして、精神障害自体はもちろん立証さえされるならば、恩給の対象になる、給付の対象になるということは問題ないわけでございます。
  103. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 そうはっきりきまっておれば、どうして法律改正されないのですか。もうきまっているならばそれでいいのですが、全部省令か何かでやってしまうということに、私は非常に不安を感ずる。たとえば異議を申し立てをするのもよほどの事情がなければこれは異議を申し立てしたりしません。また審査請求する場合も、私はそのとおりだと思う。総理大臣が決定する前に、諮問するのは恩給審査会ですね。この恩給審査会は省令できめるという。そうしますと、国会の段階で法律になっておりませんと審議の対象にならぬのですな。ほとんど省令でやってしまう。特に援護法との関係もありまして、一方は総務長官がこれを担当し、一方は厚生大臣が担当する、こういうふうな、内部機構が非常に複雑であいまいな点があるのですが、いまのように精神障害もやっぱり受給する資格があるならばあるようにはっきり別表の改正でも行なって明確に織り込んだらどうですか。
  104. 平川幸蔵

    平川説明員 さきほどの答弁、ちょっと補足説明さしていただきますが、このたびの法律改正におきまして、一例を第一項症にとりますと、精神機能障害のため、自己身辺の日常生活活動が著しく阻害され、その介護が必要である者というような考え方につきましての改正は、心身障害を柱に置いて読むようにと改正されておるわけであります。したがいまして、そういう点では、このたびの別表改正の中に柱として含まれておる。こう考えていただいて差しつかえない、このように考えております。
  105. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 特に、戦場から帰ってきた者、あるいは帰らない者に対しての立証ですがね。これは高官の戦死、高官の傷病ならばはっきりわかるのですけれども、しかし、多くの普通の兵隊さんたちは、これらの中で非常に立証がむずかしい例がずいぶんたくさんあると思う。したがって、取り扱いの場合には、そういうような異議申し立てに対して、あるいは審査請求に対して、もう少し本人に立ち入った愛情のあるしかたをやられるほうが法の精神から言って正しいと私は思いますが、この点はどうお考えですか。事務一辺で、この点はどうも着尺に合わないからといったようなことでこれを解されたのでは、泣くにも泣かれないような思いでいる人がたくさんありますが、その点で、今度の改正法を、施行する際の心がまえをひとつお聞きしておきたい。
  106. 平川幸蔵

    平川説明員 先ほど申し上げましたように、精神障害の柱で、心身障害はこのたびの法律改正の中に載っておるわけでありますが、この精神障害につきまして一番むずかしい問題は、御本人自体が、症状において非常に問題がある、したがって判断力もないというような状態において恩給請求をするということが基本的にむずかしい問題になるわけであります。そういうことについての配慮は、われわれとしては、事柄の性格上当然わかっておるわけであります。そういうことで、実は、われわれといたしましては、むしろ客観的な事実におきましてできるだけ把握していきたいということであります。したがいまして、たとえば症状経過等におきましても、本人は書くわけにはまいらぬわけであります。また、記憶等も大体喪失しておるような方が非常に多い。そうしますと、どうしても、第三者的な客観的な資料というものをじっとよく見詰めてできるだけ配慮するということは、特に精神障害にとっては一番大事な裁定方針ではなかろうかというふうに私は考えております。そういう配慮でもって、一般の内科疾患がこのたびレベルアップされますように、心身障害につきましてもそういう考え方で、特に重症者に対しましては、いま言った状態がきびしいわけでございますから、私のほうといたしましては十分注意して裁定してまいりたい、こういうように準備しておるわけであります。
  107. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 ハンセン氏病の場合も、本人はできるだけ隠そうという気持ちがあると同じように、精神病の特徴として、おれはばかじゃないのにみんなでばかだばかだと言うというのが特徴なんですね。本人は決して精神病を意識していない。したがって、これなども、家族とか、その他の機関で認定したものは、戦争と関係があるかないかということの問題で相当行き悩んでいるような例がございますが、そういう点などもやはり思いやっていただいて処理しませんと、異議申し立てあるいは審査請求なんかになると思わざる時間をとりますし、その間の遺族、家族の心労というものは相当大きなものがあると思いますから、十分御配慮願いたい。特に、この異議申し立てや審査請求が起こらないようなあらかじめの準備は必要と思いますが、さっきのハンセン氏病の潜伏時間が十五、六年というのに、二年で打ち切るということは、すでに異議申し立てが出ることを予想された改正案のように思います。これは常識から言ってもそうだと思う。潜伏期間が長いことは学界のはっきりした定説でありますから、それを二年で書類上の打ち切りなんてことになったら、これはまた異議申し立ての原因なり審査請求の原因になる。わかっていながらあえてそこで落ちつくということはどうも納得がいかないのですがね。お考えはいかがですか。
  108. 平川幸蔵

    平川説明員 先ほどもお答え申し上げましたように、実は、ハンセン氏病につきまして、復員後何年以内のハンセン氏病の発病が戦地の延長とみなすかということにつきましては御意見がいろいろあるかと思います。従来までは、先ほど申し上げましたように、復員後一年を戦地の延長とみなして裁定してまいったわけでありますが、この点につきましては、症状等差調査会、これは医学の最高権威の方々に寄り集まっていただいて構成されたメンバーでございますが、この委員会におきまして、実は恩給局の考え方を諮問したわけでございます。この斯界の最高権威の方々がやはり従来の恩給局の基本的な考えについては賛意を表されたわけであります。ただ問題は、従来のように復員後一年ということは若干短きに失する、やはり二年程度までは戦地の延長として発病を認めていいのではないかろうかという、相当はっきりした御意見をいただいたわけであります。この斯界の権威を集めた症状等差調査会の御意見というものは、やはり現状においては一番妥当なものではなかろうかということで、実は本年度あたりからの裁定においてそういうことを加味していったらどうかということで検討しておるわけでありますす。そういうことで御了承を願いたいと思います。
  109. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 これはハンセン氏病の定説が潜伏期間十五、六年ということはさっきも御答弁になったとおりなんですが、斯界の権威がその定説をくつがえすわけがない。したがって、これは医学上の観点じゃなくて、何か恩給法上の観点に立ってのしかるべきものという期間設定のように思いますが、そういう医学上の定説と合わないような事情というのは一体どういう点にあるのですか。
  110. 平川幸蔵

    平川説明員 御承知のように、恩給法におきましては、いかなる症状公務基因とみなすかということについてはわりあいに制限的な規定があるわけであります。ある場合においては公務基因が顕著であるというようなことを必要としておるわけでありますが、恩給法全体といたしましては、これも学問的になって恐縮でございますけれども、原因である傷病と結果である現象の間におきまして相当因果関係を必要とする、こういう定説になっております。相当因果関係というのは、字のとおり相当の因果関係がなければ認められないということであります。したがいまして、おのずから、結果といたしましては医学上の考え方恩給法上のいわゆる因果関係というものは必ずしも一致しないということは当然予想されるわけであります。これは単にハンセン氏病のみならず、他の結核あるいはじん臓障害、心臓障害等におきましても同時に言えることでございまして、一般論といたしまして、必ずしも医学的な関連性恩給法上の因果関係というのは一致しないということで考えられておりますので、問題はどの程度までが恩給として許される範囲であるかという判断の問題だと思います。そういった判断につきまして、症状等差調査会の一つの判断をお示しになった、こう考えていいのではなかろうか。先ほど先生が言われましたように、これは医学者による恩給的な判断だ、こういうように考えて差しつかえないと思います。そういうことで、われわれとしてはその判断を援用させていただいている、このように考えて差しつかえなかろうか、このように考えております。
  111. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 そういうお考えですと、斯界の権威というのは、医学の権威であっても恩給法の権威じゃないでしょう。つまりお医者さんの意見がしかるべきという決定をしたのは、医学上の観点じゃなくて恩経法の観点に立ったものになる。これはやはり医者にはくろうとであっても恩給法にはしろうとですわね。そのしろうとに恩給法の知恵をおつけになるのはあなた方じゃないですか。どうしても関連性がないと言いますけれども、あとの病気は差しおきまして、ハンセン氏病の場合でも、これはやはり日本の内地におけるハンセン氏病の扱いと戦地、特にあの当時の戦地におけるハンセン氏病の扱いは格段の相違があるでしょう。感染の可能性もあったでしょう。また戦争というものの持っている健康に与える影響からも発生する可能性が出てくると思うのです。これは医学界の権威が見た恩給法ということになってきますと、なおさら信をおけない。したがって、恩給局としては、やはりそういう医学上の観点に基づいて将来争いの起こるようなことはやらないほうが正しい扱いだと思います。関連性というものは問題でないのです、これは認めているわけですから。潜伏期の問題から申しますと、これはやはり恩給局も、医学上の問題は医学の権威にまかして潜伏期に合った恩給受権の設定をされたほうが私は正しいと思いますが、お考えいかがですか。
  112. 平川幸蔵

    平川説明員 ただいまお答えいたしました症状等差調査会のメンバーの中には、実は三人ほど恩給関係委員の方もおられます。したがいまして、もちろんその席上におきましてわれわれは恩給法的な考え方も御説明申し上げましたし、恩給につきましての相当の権威ある医者の方が実は二人ないし三人おられる。そういうメンバーで、実は恩給と医学を両にらみしながら適当な判断を下されたわけでありまして、必ずしも恩給と全く離れたあるいは医学と全く離れた結論が出たとは考えられないわけでありまして、私といたしましては、その結論を尊重していくということが当面の処理としては一番適当な方法ではなかろうか、このように考えた次第でございます。
  113. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 今後そういう事例がたくさん出た場合にあらためて考え直すくらいの余裕をお持ちですかどうですか。どうしてもこれで押し通すのだという考えですか。あるいはまた今後そういうような事例がひんぱんに起こるような事例があったら、そのときはそのときで考え直すというお考えはございませんか。これ以上お聞きすることはだめ押しになりますからやめますけれども、お考えを聞かしていただきたい。
  114. 平川幸蔵

    平川説明員 さらに今後よく慎重に検討いたしたい、このように考えております。
  115. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 そこで、さっきの御答弁についてもう一つ私から質問あるいは要請として申し上げておきたいのは、こういうふうな法律改正というのは末端まで浸透しないことが間々あるのです。ですから、従来の恩給法によって異議申し立てをしてもだめ、あるいは行政審査の請求をしてもだめとなった者は悲しくあきらめておった事情が相当たくさんあると思います。したがって、この法律改正によってあらためて申請ができるのだということを周知徹底させるような方法をお考えになっておるかどうか、お伺いしておきたい。
  116. 平川幸蔵

    平川説明員 このたびの法改正の内容につきまして、ただ単に傷病恩給のみならず一般の他の条項等につきましても、われわれとしては普及徹底するために、実はブロック会議を開きまして、そこでこの法案の形式的な面のみならず、特に傷病恩給につきましては内容が内容でございますから、詳しい内容を差しつかえない範囲においてできるだけ下に流したい、このように考えております。したがいまして、たとえば先ほど申しましたハンセン氏病の問題、これは程度の問題でございますが、そういった問題、あるいは給与を認める限界の問題、いま言った一年を二年に修正するといった問題につきましてもできるだけ各府県――これは組織上まず第一に府県に流していく。それから次には各府県におきます団体がございますから、この団体等にもできるだけ流すために、このブロック会議にはその団体に来ていただきまして、よく聞いていただき、質疑応答に十分お答えいたしまして疑問のないようにして末端まで流したい。それから政府機関の雑誌等もございますし、いろいろなあれを使いまして、できるだけわかりやすくPRをやっていきたい、このような覚悟でおりますので、われわれとしては相当な徹底ができるのではないか、このように考えておるわけであります。
  117. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 最後に、総務長官にお願いしておきたいのですが、お聞きのとおり、この恩給については、改正ということを前提にして相当問題点がたくさんある。これは私だけでなくて、同僚の委員皆さんもこういう関係の陳情は非常に受けておられるだろうと思う。扱い方についても、かなり愛情を持って親切丁寧にやっていただきませんと、そういった人がかなり苦痛を忍んであきらめておるという形をずいぶん私ども知っております。先般から私この問題につきまして、正直な話、援護局に行って話をし、恩給局に行って話をしますと、援護局のほうが親切なんです。これは次長が来られる前と思いますが。いまの次長さんの答弁では非常に懇切丁寧に愛情を持って答えておられますけれども、窓口ではつんけん突き放すような態度がずいぶんありました。私自身の体験から申しますと、これでは取りつく島がないだろうと思う。恩給法という性格上特に敗戦によって生じたさまざまな確認しがたい事態もある。いわば戦後処理の最後のけじめとしての軍人傷病恩給になるわけですからね。その点は、特に認められない一般の兵隊さんだった諸君の家庭にもそういう悲しみを抱かせないような御配慮、特にひとつ長官の御配慮を頼んで、この問題が解決するように、たくさん問題がございますから、この機会にやっていただきたいと思うのです。具体的な問題はまたあとでいろいろ出てきましょうけれども、そういう原則をひとつこの改正にあたってやっていただきたい。特に権利を受けるワクの拡大をはかるということが出ております。この際、そのワクからはずれるものがないように、この上の御配慮をお願いしたいと思うのであります。御所信のほどを承りまして質問を終わりたいと思います。
  118. 床次徳二

    ○床次国務大臣 ただいま淡谷委員のお話になりましたごとく、恩給法が対象といたします人が特に過去の人であるし、しかも戦争という時点を経過しておりますために、適用について、何と申しますか、非常に微妙な点もあるわけです。とりあえず予算その他の関係から見ますと、当初は比較的対象人数の多い明瞭なものから取り扱ってきたと思いますが、それだけに境にありますものあるいはきわめてわずかな対象であった人たちはなかなか法律改正まで一々そのために行なわず、つい人数の多いものから改正に着手するという結果になっておったと思います。したがって、だんだん拾ってはまいりましたけれども、まだまだ現実においては残されているものも少なくない。今回答申を受けましたものも、答申のうちの最初の三分の一というものを実施いたしまして、まだあと三分の二は残されておるというのが現在の状態であります。こういう問題も引き続き詰めて実現しなければならないし、なおその後に問題点として指摘されておりますものもあるわけです。かようなところを十分考慮いたしまして、今後とも不足のところにつきましては、あるいは不均衡のものにつきましては、これを是正する。そしてきわめてレアケースでありますけれども、しかし現実においてこのような不幸におちいっている人のないようにこの点は努力したいと考えております。  なお、本来のたてまえがさような状況でありますので、法律の施行にあたりまして十分な徹底をはかりまして、そして漏れた人が不幸な目を見ることのないように、この点は特に係の指導につきましても努力いたします。  なお、必要の書類、いわゆる審査用の書類あるいは証明というようなものにつきましても、これは年月がたっておりますので、ずいぶんその取り扱い等につきましては現実に即するように改めてまいったと思いますが、ただいま仰せのお気持ちは十分係の中に徹底させまして、恩給法が施行されます目的に合いますように実施する、かような趣旨におきまして今後ともさらに一そうの努力をいたしたいと思います。
  119. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 終わります。
  120. 伊能繁次郎

    ○伊能委員長代理 受田新吉君。
  121. 受田新吉

    ○受田委員 今回の恩給法改正案につきまして基本的な問題点と個々具体的な問題点等を分けまして、まず基本的な問題点指摘いたしましてお尋ねを始めます。  恩給ということばそのものが私には常に気にかかることばであることは、これまで毎回お尋ねしたとおりであります。恩ということば、これは近代的な感覚から言うたならばもう少しいい名称はないかということで、最近は国家公務員あるいは地方公務員の退職年金制度というものから見て、退職年金ということで恩給を考え直す方向に来ておるわけです。ただ共済制度、国家管掌方式である恩給と、組合管掌方式である共済制度との分離をはかる上から、特に従来恩給問題は総理府が扱い、恩給局が担当し、共済制度が発足して十年に近い歴史はまだ非常に若うございますが、そのほうは大蔵省が担当するということになっております。そこからこの総理府が扱っている恩給制度大蔵省が扱っている共済制度との、その分け方によってその間の連絡調整に事を欠いて、恩給法の持つ長所を十分共済制度の上にも生かさなければならぬところがあるにかかわらず、それがおろそかにされる。たとえば傷痍軍人の皆さんが増加恩給をもって併給される普通恩給を持っている、そういう人が共済組合制度の対象になる公社職員等になった場合に、退職するときにこれをどう扱うかというような問題が起こってくる。これは従来増加恩給部分をはずしておったのを、私この委員会で強く主張をし、また当局も考え直して、選択方式によっての共済制度ができた。しかし増加恩給の放棄はいやだという人に対するあたたかい心づかいがされない点があるので、現に増加恩給を放棄しないで、この共済年金の通算措置によるプラス増加恩給部分という新しい制度の要請があって、いまそれをどうするかを御研究中のようであります。  まあいろいろと問題がありますが、当局といたしまして、そこでお尋ねをしたいのは、恩給という制度は、これは共済組合制度と根本的にスタートが違う、だから共済制度への移行をはからなければならない問題点についてもとかく恩給法の古い観念に足を縛られ、近代的な制度へのチェンジがなかなかむずかしい、こういう問題には思い切った改革の措置をとる勇気をお持ちかどうかを、根本問題としてお聞きいたします。
  122. 平川幸蔵

    平川説明員 恩給の意味についてはこの前の委員会で引き続き質疑がなされたわけでございますが、問題は、制度の内容といたしましてどのような点が違い、どのような点が相類似しているところがあるかということを、将来どう考えていくかという問題だと思うのです。これはこの前の御質問にもありましたが、実は恩給自体の考え方といたしましては、御承知のように恩給法は大正十二年にできましたわけでございますが、実は歴史的には明治十七年からある制度でございます。非常に古い制度でございまして、本質は変わりませんけれども実は時代時代において果たしました役割りというものは、必ずしも同じワク内である、このように考えることはできないと思います。たとえば明治時代において果たしました恩給の役割り、大正以後の役割り、それから昭和のいわゆる戦争末期において果たしました役割り、あるいは戦後において果たした役割りというものは必ずしも同一ではない、このように考えてさしつかえないと思います。  ところで問題は、実は新しい公務員制度ができました機会に、どのような恩給のあり方を考えるかということでございますが、マイヤースの勧告も出ておりますし、その取り扱い等につきましてもいろいろ問題があったわけでございますが、一応昭和三十四年におきましていわゆる保険形式による共済組合法というものができたわけでございます。現職の公務員はすべて強制的にこの制度に移り変わっていくということになったわけでありますが、基本的にはこういう年金制度というものは、ある制度からある制度に移る場合においては過去の期待権といいますか、そういった権利を保障しつつ乗りかえなければならないという宿命もございます。そういう宿命をにないつつ制度の変遷を考えなければなりませんので、相当むずかしい問題も出てまいるわけであります。と同時に、一方において恩給だけで生活しておられるいわゆる恩給受給者が厳然としておられるわけであります。これが約二百九十万おられるわけでありますが、この方々処遇する場合におきましてては、片一方におきましていま申し上げました国家公務員共済組合なり地方公務員共済組合なりができたその現実というものを考えざるを得ない。そうしますと、やはりそこの影響というものをある程度受けざるを得ないのではないかということになるとは思いますけれども、そういった基本的た考え方につきましては、前からお答えしておりますように総余府に公的年金制度調整連絡会議という会議がございまして、ここにおいて基本的な討議がなされておるわけであります。結論はまだ出ておりませんけれども、いま申しましたような歴史的な観点も含めつつ、新しい制度にいかに移るべきかということも考えておるわけであります。ただし、すべての年金を同一内容にするというような考え方ではなくして、それぞれの特色を生かしつつ相互に関連させていきたい、こういう考えであろうと思います。私は公的年金制度調整連絡会議のメンバーの一員でございまして責任者でございませんから、その方向につきましてはちょっとお答えできかねますけれども、現実の討議内容はそのようになっておる次第でございます。
  123. 受田新吉

    ○受田委員 いま次長御指摘のとおり、公的年金制度調整連絡会議、この機関というものはどういう機構であって、どういう運営をしておるか、ちょっと気にかかるので、まずお尋ねをしておきます。
  124. 平川幸蔵

    平川説明員 まず第一に設置の趣旨でございますが、公的年金制度は種類も多く、所管省も区々にわたっております。したがいまして、共通する問題点も非常に多いということでございまして、政府は独自の立場から年金制度の調整に関し問題点の検討を行なうということで、一昨年この制度が設けられたわけであります。構成メンバーは、議長といたしまして内閣総理大臣官房審議室長が議長になっておりまして、総理府、厚生省、大蔵省以下人事院も含めまして約十の担当局長がメンバーになっております。  この会議の協議事項の内容でございますが、各公的年金制度の目的、性格、仕組み等についての検討、それから第二といたしまして、各公的年金制度の給付について公的年金としての共通する部分とそれぞれの制度の独自の特殊部分とを区別する考え方をとるかどうか、要するに共通部分と特殊部分を浮き出していくかどうかということについての検討、したがいましてもし共通する部分がありましたならば、各公的年金の共通部分はいかなる問題であるかということを取り上げる。たとえば一例を申し上げますと、いま問題になっておりまする年金額の調整、スライド方式と申しますか、調整の問題でありますとか、あるいは年金額の算定方法、それから先ほど質疑にございました最低保障問題、それから年金支給条件、それから障害死亡の時期に対する取り扱い、この障害死亡等の取り扱いにつきましては各年金比較的ばらばらになっておりますから、こういう場合における取り扱いをどう調整していくか、こういったことが主たる内容でございまして、現在まで相当開いておりまして、幹事会及び小委員会を十五回程度開催しております。  以上が大体の状況でございます。
  125. 受田新吉

    ○受田委員 十数回程度開催して、結論は一体どこまできておるのですか、現状における中間報告をしていただきたい。
  126. 大屋敷行雄

    ○大屋敷説明員 ただいまのところは幹事会のうちの小委員会というものをつくりまして、具体的に各制度の比較検討並びに意見の交換をしております。   〔伊能委員長代理退席、委員長着席〕 この幹事会と申しますのは、この会議のメンバーは局長クラスで構成しております、その幹事としまして各課長、そのうちで特に年金制度の根幹をなすもの、すなわち恩給とかあるいは共済、それから地方共済、それから厚生省の厚生年金、こういうところの各課長が小委員会をつくりまして、先ほど申しましたような検討をしておるわけであります。その小委員会の結論につきましては、近いうちに出るというふうに聞いております。
  127. 受田新吉

    ○受田委員 近いうちというのは、どういう近いうちか、そして大体その小委員会ではどの面についての結論を出すという基本的な問題の結論か、具体性を持った結論か、中間的な報告を頼みます。
  128. 大屋敷行雄

    ○大屋敷説明員 小委員会の結論と申しますのは、これを幹事会あるいは常設の委員会にかけるべきものでございます。非常に事務的な、具体的なものでございます。このまとめはおそらくあと二、三回ぐらいでできるのじゃないだろうか、こういう見込みでございます。
  129. 受田新吉

    ○受田委員 これがスタートして二年にもなるのに、いま小委員会案をこの二、三回のうちにまとめるというような程度のようでございます。それではどうも遅々として、十数回やったとはいうものの、一向進み方としては春日遅々たるものを感ぜしめる。こういう機関はもっと有効な、すかっとした答えが出るような進め方をしなければならない。各省の寄り合い世帯のような印象を受けてはならない。ある指導理念をはっきりして、総務長官が陣頭に立ってこの問題の処理に当たるような熱意を示してもらいたい。私自身で長い間この法律を担当しながら、依然として釈然とせぬものがあるのは、総理府という大事なお役所がせっかくできたにもかかわらず、恩給局という役所にずいぶん苦労をかけ、また大蔵省共済制度というものに対する間の連絡折衝等にもどこか対立的な印象を払拭し得ないものがある。恩給局が要求しても大蔵省がけ飛ばす、こういうような大蔵省に牛耳られる危険が確かに現在残っておるのです。こういうことを政治的な行政的な指導力によって払拭しなければならない。  私はこの前のときも提案しました。お話をちょっともとへ戻しますが、恩給という制度は国家の公務員、官吏が国家に貢献をした功績に報いる恩恵的なものであるという学説が一つある。この恩給法が明治初期にスタートした当時は、この恩恵的な意味を含めて恩給というものができたものと私は了解します。直来戦後になって、国家全体、国民全体の奉任者という、公務員という制度になったので、またここに風格を新たにいたしまして、昭和二十八年には人事院が国家公務員退職年金法なるものを法の規定に基づいて勧告しました。したがって、恩恵説から、そして今度は賃金による正当な報酬であるというような説にだんだんとこれが転化をしてきたということになると、国家へ奉仕した人に対して、国家がその人の御苦労に対して報いる。恩恵的なものでなくして、奉仕に対して国家がお報いしましょうという意味の解釈がある。また、賃金をあと払いをする。一部を蓄積して、最後に納金によってあと払いをするというようないろいろな説があるが、だんだんそうした奉仕者らしい、民主主義らしい制度に変えていかなければならない。そこで、要求があるのは、恩給ということばをあまり使うと、どうも新しい感覚の人から見ると、何だか古いものの見方をするような気がしてしかたがない。恩給族というようなことばが出てくる。そこで、公務員退職年金局というようなものに恩給局の名称も変えられれば、これがはっきりすると私は思う。そこで、大蔵省共済制度の分も持ってきて、公務員退職年金局にして、恩給部分と退職年金部分とを一緒にやる役所をつくってはどうかと提案をした。ところが、検討をしますと言うておったが、一向にまだ答えが出ておりません。総務長官、これは同じ公務員恩給局のやっている仕事、その恩給局の恩給は、すでに退職年金的な名称に変えていい時期が来ている。その時期に来ているならば、共済制度の退職年金を合わせて公務員退職年金局という名称に、あるいは公務員年金局という名称に変えて、恩給局をここでひとつ発展解消させてはどうか。そこで、その役所で一括して事務をとるならば、大蔵省で持っている共済制度のよさも、恩給局による従来の伝統も十分こなして、ここに、いま言われた公的年金制度調整連絡会議の御趣旨にも合致するようなお役所が私はできると思う。総務長官の御所見を承りたい。
  130. 床次徳二

    ○床次国務大臣 先ほどお話がありましたごとく、恩給恩給として全く別個の立場でもってスタートしている。なお、その発展の途中におきまして、近代的な共済組合的な考え方も入っていることは事実でありまするが、趣旨が全く別でできておりますために、なかなか共済組合との調和と申しますか、調整というものがむずかしいのでございます。したがって、現在公的年金の調整連絡会議でいろいろ検討しておりまするが、実は私どもも早く結論がほしい、それによって恩給法改正をすべきものについてはさらに一歩前進したいとも思うのでありますが、なかなかその結論が出にくい――まあ、近く出るそうでありますが、その結論の出るのを待って、恩給法自体の改正等にも当たってまいりたいとも思っているのであります。  根本的に恩給局と共済との行政組織としての取り扱い方について御意見がありましたけれども、これにつきましては、むしろ総理府自体の問題よりも行政官庁自体において考えるべきものかとも思うのであります。いまの状態では、両者を一つの組織にいたしまして実施に当たるということにつきましては、相当困難があるのではないかと思っておる次第であります。
  131. 受田新吉

    ○受田委員 恩給法そのものが大正十二年にできた。この法律に、明治時代の文官恩給軍人恩給をまとめた。その法律そのものが非常に難解な用語を使って、かたかなで、文語体で、新しい人はなかなかわからぬ。これをすべからずとかなんとかいうのが「スヘカラス」とかということではなかなかむずかしい。ひとつこんな用語を、最近の口語体で常用漢字を用いて、国民のすべてが恩給を理解するようなかっこうに切りかえたほうが――これは法令改正基本問題にも触れるわけでありますが、恩給法なんか、特にこの印象が濃厚なんです。近代的な新しい共済制度と、そして非常に典型的な古い文語体方式の恩給法とが同じねぐらの中におるのですからね。長官、いかがお考えですか。
  132. 床次徳二

    ○床次国務大臣 全くごもっともな御意見でありまして、たび重なるところの修正によりまして、しかもその修正がいろいろな形で、きておりますものですから、現在の条文を理解するのに非常に困難である、いわんや改正法について御審議を願う際において非常に難解のものになっております。その結果、先ほどお話がありましたように、恩給に対する一般の理解が徹底していないのじゃないか。不当に、何と申しますか、恩給族が圧力を持って予算を獲得しておるかのような印象を与えておるというようなことも、やはり一般の理解が得られなかったところに私は問題があると思う。したがって、わかりやすい法律をつくるということ、これは法律の性格から申しまして、むしろそれが必要なんじゃないかと思うのでありますが、ただ、いま直ちにこれを一本に書き直すことがいいかどうかと申しますると、実は恩給そのものにつきましては、対象人員が大体限られておる。終戦後の特別な現象によって漏れたところもまた不均衡是正のためにつけ加えるという形になっておりまするが、対象は大体もう限られておるという形であります。したがって、この非常に難解なものを一挙にするということは容易ならぬ仕事でありまして、むしろ現在は恩給是正の仕事に実は追われているという次第であります。実情はさようなわけであります。趣旨におきましては、わかりやすい法律にするということ、これは法律をつくる者の立場から申しまして、また法律を施行する政府の立場から申しまして、全く必要なことだ、御意見につきましては、全くさように思うのでありますが、いますぐそれをまとまったものに書きかえるか、また書きかえる努力をするということになりますと、まだ急を要する仕事も残されておりますので、今日に至っておるものと思うのであります。
  133. 受田新吉

    ○受田委員 この恩給法改正の第一の目的は、恩給年額の増額措置でございます。そこで、普通恩給扶助料をどう改定するかということで御提案がされておるわけであります。その御提案は、恩給審議会答申に基づくという形から、ここに消費者物価を基準にした提案をしていただいておる、このことについて、ひとついまからお尋ねをいたしたいのであります。  この恩給ということばは、私は、国家に長い間奉仕された人々に対して、国家がその御苦労に感謝する意味の給与という解釈でいいと思います。そういう解釈に立つ場合に、退職町点の給与というものがやはり恩給の基準にならなければならないと思うのです。これは昭和二十八年八月に恩給法の大改正をされて、戦後勅令六十八号で処分された恩給法が、生まれ変わった姿で国民の前にデビューしたのでありまするが、その恩給法のスタートにあたっても、現職の公務員の給与にいかにこれを合わせていくかという配慮がされていたと私は思います。だから現職の公務員というものが現在どのくらい給与をもらっておるか、それに対して過去の公務員はどうこれになぞらえていくべきかという配慮が恩給法の精神であろうと思う。仮定俸給制度ができ、倍率制度ができた。それも現職の公務員の給与というものにいかにこれを調整していこうかという心づかいがされておったと思う。すなわち、退職時の給与を基準に恩給額がきまってきたという恩給法のあれからいっても、そこに精神があると私は思う。  そこでひとつ例を当局でお出しを願いたい。昭和三十四年当時の公務員の給与と、昭和四十三年当時の公務員給与の上がり方がどうであったか、数字でお示しをいただきたい。私も用意しておるが、用意した数字が間違っておってはいけませんから、お答えは、全部当局のお答えを伺います。そして同時に、消費者物価が昭和三十四年にはどの時点にあって、昭和四十三年にはどの時点にいっておるか。比較検討の上で当局の数字をお示しいただきます。
  134. 平川幸蔵

    平川説明員 公務員給与と消費者物価についての指数をお答えいたします。  公務員給与につきましては、実は一〇〇を置く時点を昭和二十六年といたします。というのは、この時点におきましては、恩給の給与と公務員の給与が完全に一致しておった時期でございまして、この時期を一〇〇と置きますと、公務員給与は、昭和四十三年におきましては三三六・四という指数になります。昭和三十四年におきましては一五六・六という数字になります。次に消費者物価でございますが、消費者物価も同じく昭和二十六年を一〇〇と一応置きまして、昭和四十二年の数字しかございませんので四十二年を申し上げますと、一八五・九ということになります。昭和三十四年は一二一・一、こういう指数になります。
  135. 受田新吉

    ○受田委員 いまお示しいただいた数字だけで比較いたしましても、公務員給与は十年間に大体倍のところにいっておるわけです。その倍のところにいっている公務員の給与に比較して消費者物価というのは、四十三年がいまないというお話でございましたが、過去十年に五割前後というところですね。これを見ましても、今度の改正措置が、消費者物価を基準にして、消費者物価が五%上がったら改定するというような審議会答申というものは、現実離れしたところの、まことに退職公務員の生活を無視した答申が出ておると了解をすべきものだと私は思う。恩給法第二条ノ二に書いてある基本的な調整措置としての公務員の給与、生活水準、そして最後に物価というものがちょこっと頭をもたげているこの恩給法の精神、法律の精神と違った答申審議会においてなされておる。五%上がったら改定しようなどというこの答えというものは、恩給局次長としても、この審議会を運営される事務局をお扱いになられながら、間違いであったことに感無量なものを感ぜられるかどうか、御答弁願います。
  136. 平川幸蔵

    平川説明員 恩給審議会答申経過等は詳しく申し上げられませんが、われわれといたしまして率直に、恩給審議会答申を読みまして、先ほど答弁申し上げましたように、いわゆる物価中心主義というようには読んでいないわけでございます。と申し上げますのは、先ほど先生の御質問の中にもありましたように、消費者物価よりも公務員給与の上がり方が非常に大きいということは、これは明らかに国民の生活水準というもの、経済成長率というものが物価よりも高いということを示しております。こういう客観的な状態の中における調整規定というものを考える場合におきまして、いわゆる恩給法二条ノ二には指標として三つございます。ただいま先生があげられましたように、公務員の給与、国民の生活水準、物価、この三つがございますが、ただこの順序については必ずしも法律的に前後がどうだということはいえないと思いますけれども、要するに三つの運用のしかたをいかに具体化するかということが答申の内容だと思います。  先ほど申し上げましたように、答申の簡単なる内容をちょっと御説明申し上げますと、物価として五%の上昇率がありましたならば、恩給公務員の年額を改定すべきであるということは、むしろこれは最低限のチェックといたしまして、まず指標の適用の順序として物価を持ってきた、私はこのように考えていいと思います。なおかつその上積みの部分といたしまして、国家公務員の給与あるいは国民の生活水準、この二つは二者択一的だと思いますけれども、先ほど先生が言われましたように、恩給公務員もかつての公務員であったわけでありますから、指標としては国家公務員給与が適当であるということから、国家公務員の給与を物価の上積みとして、調整問題として持ってきたわけであります。その場合に、恩給審議会答申は、この給与をそのまま持ってくることは適当でないという意見を表示されたにすぎないのでありまして、この適用のしかたとしての御意見を示されたわけでございまして、別に物価のほうを中心主義に考えなければいけないのだというような答申ではない、私のほうはそのように考えておるわけであります。したがいまして、国家公務員の給与の上昇率が現在のように物価と相当格差があるという場合には、当然国家公務員の給与も現在の客観情勢としては考慮するのが適当である、このような解釈のしかたが適当ではないかというふうに私は考えておるわけであります。
  137. 受田新吉

    ○受田委員 これは大臣ひとつ御答弁願わなければならぬですが、退職公務員というものは、その退職当時の給与を基準にして、その後受けるところの恩給すなわち退職年金によってその後の生活を守るということが一つ。それからその生活は、社会的地位をある程度、十分とはいかなくてもある程度保持できるだけの文化性を持ったものがこれに含まれるというようなものをもって恩給あるいは退職年金額が決定されるべきものだと私は思うのです。  現に、事例としてあげますけれども、昭和三十三年当時――これは私の郷里の山口県に例をひとつとってみたい。調査を依頼して答えが出ておる。三十三年当時やめた勤続年数三十五年の小学校長の恩給額は二十七万三千五百円、三十四年が二十七万、これはちょっと少ない。ちょうど勤続年数などのバランスがくずれていたのでしょうね。三十五年が二十八万九千円、三十六年が三十四万三千円、三十七年が三十六万二千円、三十八年と九年の資料が出ません。四十年が四十五万六千円、四十一年が四十七万四千円、四十二年五十万二千円、昭和三十三年にやめた人が現時点において、昨年の時点において、ちょうど四十二年にやめた人の半分しか恩給をもらっておらぬという現状になっておるわけです。そうするともう十年前にやめた人は、この十年間に恩給の実質的価値が半減したということになるのですね。こういう問題が発生しているということにおいて、恩給法第二条ノ二は、そこに著しいということばが変動ということばの前提にありましても、そうした公務員給与が上がっていく場合、先輩としての退職者がそれにスライドして引き上げられるようにすべきものという大方針が基準として出されておる。  もう一つ、去年も指摘しました国家公務員法第六十四条の「俸給表」の中には、はっきりと、俸給表は、生計費、民間の賃金その他人事院が適当と認める諸条件を入れて決定すると書いてあって、生計費がちゃんと国家公務員の給与の最も大事な基準になっておるのですね。これはもうなっておる。したがって、国家公務員給与の中には、消費者物価などを含めた生計費がちゃんと入っていて、これをわざわざその物価のほうだけ、消費者物価だけを取り上げたような印象を受ける審議会答申というものには、何かそこに政策的な配慮が含まれているように思えてしようがない。どこか大蔵省あたりで横やりを入れられたのを、恩給局が沈黙してこれを了承したような答えになったのじゃないかという不安さえ、疑念さえ抱かれる。筋は、公務員給与を基準にする、これが最もはっきりした――その公務員給与の中には生計費が入っておる、そして人事院がその俸給表をきめておるのである。物価等が十分取り入れられたのが公務員給与として勧告され、それが現在、ことしの今度の勧告はおそらく六万円程度の給与勧告がされると私はおおよその予想を立てております。十年間に公務員給与が倍に引き上げられた。恩給をもらい、共済年金をもらう人は、十年間に実質恩給金額は半減するという悲劇が起こっておる。これをこのあたりで現職の公務員の給与が上がったのを基準にして、それに生活水準あるいは物価等、物価は一番最後にちょっと参考にするという程度にして、公務員給与を基準にして恩給額の改定措置をとるというのが本筋だと思うが、総務長官、御所見を伺いたい。
  138. 床次徳二

    ○床次国務大臣 大体御趣旨のようにあるべきだと思うのでありまするが、ただ過去におきまして終戦という一つの大きな断層を経ております。したがって、なかなか御趣旨のような形には動かないのでありまして、今回の改正におきましては、審議会答申もありましたので、大体さような趣旨において是正をいたしたいというところに第一の目的があったわけでありますが、ただしかし、その是正におきましても十分なところまでまいりませんので、ややそれに近いところでもって現実の姿はおさまっておると思っております。なお、今後におきましては、いわゆる積み残しと申しまするか、その部分につきましてはやはり改善を加えまして、そうし七恩給の、現職の公務員に比べまして著しい差と申しますか、文官との差でありますか、改めるようにいたしたいと思っておるわけであります。この点は答申案の内容等によりまして私ども尊重して実行いたしたいと思いますが、なお具体的なことにつきましては次長からお答え申し上げます。
  139. 受田新吉

    ○受田委員 基本的には私の提案に賛意を表していただいたわけですね、総務長官。いまの最後にちょこちょこと何かおかしいのが出たが、基本的には私の提案に賛成かどうか、それを総務長官……。大体それでいいとさっきおっしゃったが、初めの答えはいいのかどうか。最後に答申を尊重してというようなことばが入ったのでちょっと気にかかるので……。この点については、恩給法の二条ノ二が基本になるべきだ。審議会の中にもいろいろのことを書いていただいて、御苦労していただいた。しかし、この基本的な調整規定のところだけは、審議会はちょっと法の精神を曲げられたのです。この点ははっきりしておかなければいかぬ。次長から先に答弁を……。
  140. 平川幸蔵

    平川説明員 それでは、この際、公務員給与並びに物価につきましての審議会の相当詳しい経過を御説明申し上げます。それによって御推察願いたいと思います。  実は先ほど申し上げましたように、現在のように経済成長が著しい時期におきましては、下限といたしましてまず物価を調整基準として持ってくることは当然かと思います。ということは、少なくとも最低限として物価の上昇に見合うだけの改定をやらないと実質価値が維持できないという最低限の問題でございます。したがいまして、単にそれを非常に強い形で言いあらわしたにすぎない、まず物価につきましては。  次に、公務員給与と物価の格差において相当格差がある場合においては、このある部分を調節するように審議会答申はいっております。このある部分というのはどういうことかと申し上げますと、いわゆる国家公務員給与を分析いたしますと、いわゆる生活維持部分と――これは一つの分析の方法でございますが、生活維持部分と、それから生活改善部分、それから職務給的な改善部分と、わかりやすく申し上げますと、この三つに分け得るのじゃないかというように分析したわけであります。生活維持部分につきましては、これは物価であがなえるわけであります。物価が上昇したその同じ程度を改定すれば、生活維持部分は少なくとも同一購買力があるわけでありますから、それは維持できる。ところが、残る部分におきましては、いわゆる生活給的な改善部分ですね、こういうものがあるはずである。それともう一つ職務給的な改善部分、こういうものがあるはずである。順序を逆にして説明申し上げますと、職務給的な改善部分とは何かといいますと、たとえば、かつての一等級の俸給は現在指定職というような俸給制度ができております。これは何年か前にはなかった制度でございます。そういうように部分部分におきましては職務給的な改良部分というものがございます。したがいまして、この制度がなかったときに退職された人につきましては、ここまで利益を均てんさせる必要はないというような判断があるわけであります。しかしながら、生活改善部分といいますか、生活給的な改良部分につきましては、これは現職公務員が生活がレベルアップしておるわけでありますから、これをかつての恩給公務員であった恩給受給者には必ず均てんさせるべきである、こういう趣旨で、ある部分というのは生活給的な改善部分、これは見たらどうかというような議論が実はありまして、その表現を省略いたしていましたので、ある部分というような表現になっております。内容は、率直に申し上げますと、先ほど申し上げましたような生活給改善部分でございまして、われわれがこのたびこの予算を作成するまでに、実は物価と国家公務員の給与を考えたわけでありますが、その国家公務員の給与を考える場合におきましては、国家公務員給与の上昇率からまず物価を引きまして、その残りの部分の六割を計算いたしたわけであります。その六割というのが生活給改良部分ということで、過去六年間にわたる給与の分析をいたしまして、これは他省庁の方々にも御援助いただいて分析したわけでありますが、ほぼ六割に相当する生活給改善部分というものができたわけであります。これをかつての国家公務員である恩給受給者にも均てんさせていくべきである、こういう考え方で、実はわれわれ処理してまいったのでありますが、結果といたしましては過去の穴埋め分につきましては、この国家公務員給与の部分が落ちた、こういうような結果になったわけであります。
  141. 受田新吉

    ○受田委員 それでこの差額の六割という分を、六・五%をこの提案の四四・八へ足されて五一・三%という数字を出された。そして百七億でしたか、予算要求は一応された。ところが大蔵省に削られたからこれへ戻った、こういうことなんですね。そういうことですね。
  142. 平川幸蔵

    平川説明員 実はこの調整規定を具体的に運用するに際しまして、二つの処置のしかたがございます。まず本年度におきましては、昭和三十六年十月から四十三年の三月分までの経過措置をやる、いわゆる穴埋め分でございますが、これを本年度予算措置をしたわけでありますが、結果としてはそういうことになったということでございます。
  143. 受田新吉

    ○受田委員 だから、結果としては大蔵省にやられたわけなんです。やられて、この一番悪い物価のところで押えられた。最小限の措置にしかとどまらなかった。そこをやったものだから、いかにも消費者物価を基準に恩給局は動いたような印象を国民に与えて、受給者もそういう不安が出たけれども、本心は総務長官が指摘されたような、公務員の給与が上がればそれに準ずるのが原則であるという、いま総務長官が答弁されたことをもう一度確認させていただきたい。
  144. 床次徳二

    ○床次国務大臣 先ほど申し上げましたように、今回の改善でもって完全であるとは考えておりません。したがって、今後とも努力いたしまして、できるだけ恩給法趣旨が達成できますように努力いたしたいと思います。
  145. 受田新吉

    ○受田委員 ちょっとおかしいのです。それにはさっき私が質問を申し上げて、私がずいぶん難儀をして前提を申し上げた。公務員というものは現職の公務員がやめられるときに、その俸給基礎になって、恩給あるいは共済年金がきまるのだ、したがって、何年かたった後には、それが新しい公務員の新しい給与になるべく近づくような配慮がされなければならない。こういうことは原則として認めるかどうかということをお尋ねしたのはどうなんですか。
  146. 床次徳二

    ○床次国務大臣 たてまえとしては、御趣旨のように考えます。ただ、その後において、恩給につきましては途中でいろいろ変化がありますので、なかなかそう簡単にはそういうふうにはいき得なかった、またいきつつはないということで、趣旨におきましてはやはりさような気持ちでもって善処してまいりたいと思います。
  147. 受田新吉

    ○受田委員 それでいいです。非常にいいお答えです。私は、長官や恩給局が非常に心づかいをしていることはよくわかる。わかると同時に、ここでもう一つ問題は、この恩給法という古い観念の恩給でなくして、社会保障制度を加味した新しいものも現に採用されている。たとえば、家族加給制度を採用されておられる。こういうようなことからいって、共済年金制度で、共済制度のほうにあるいいところは恩給法でも適当にこれを採用するという一方の考え方恩給局にはおありですね。これも確認させていただきたい。
  148. 平川幸蔵

    平川説明員 恩給制度自体に矛盾しない範囲内におきましては、新しいいろいろの考え方を取り入れていくということは決して差しつかえないことだ、このように考えております。
  149. 受田新吉

    ○受田委員 そうしますと、ここで恩給法によく似た、しかし恩給法ほどきびしくはなくして、戦傷病者戦没者遺族等援護法というのがある。この法律厚生省援護局長が御所管で非常に苦労されておる。その法律のように、今度その支給対象に孫を入れられる制度が発生したのが一つある。これは傷淡軍人の場合に一つ例をとらしてもらいますが、この傷痍軍人で、今度の戦傷病者戦没者遺族等援護法の改正の中に、障害年金受給者に対する扶養家族加給の対象者に孫を加えられておる。子供を抜きにしてあとを引き受けなければならぬような事情のあるものに、その孫を加えておられるわけです。これは恩給法には孫がないわけです。いかがお扱いになりますか。
  150. 平川幸蔵

    平川説明員 実は先ほどお答えしておきましたように、援護法と恩給法との守備範囲と申しますか、これはおのずから異なるわけでございまして、御指摘のように恩給法の遺族の中には祖父母まではございますけれども、孫はございません。これは私も大正十二年当時の立法経過を十分承知しているわけでございませんから、よくわかりませんが、一応範囲を祖父母までに限ったということでございます。実は私のほうといたしましても、孫について給付すること自体についての論議はあまりなかったわけでございます。  直接のお答えにはならないと思いますが、実は夫につきまして、恩給法については妻と同一条件のもとに扶助料を支給してもいいのじゃないかということは考えたわけでございまして、これにつきましては実は恩給審議会がございましたので、恩給審議会にはかったわけであります。これにつきましてはある制限のつきました状態において認めることは差しつかえないというような答申をいただいております。したがいまして、孫につきましては実はわれわれとしても検討の議題にも実はならなかったものでございますから、いまここで直ちにどうするかということについてお答えできませんけれども、今後よく慎重に検討いたしたい、このように考えております。
  151. 受田新吉

    ○受田委員 これはかわいい孫ですものね。やっぱり援護法と同じ扱いをされても――すでに家族加給制度を援護法は認めておる。  それで今度の改正案を見ますると、扶養家族の加給額の引き上げの措置がされておるわけでございますが、この傷病年金にかかわる加給制度において、妻以外の加給対象者については一人に限り七千二百円、これは増額措置がされた。この点私は非常にいいことだと思いますけれども、一人に限りということがやっぱり一つ問題です。子供に一人に限りというようなことをきめられるのは、新民法のもとにおいては、子供は平等の原則のもとに親から愛を受けられ、また親に対して扶養義務を持っている。それがやがて扶養義務を持つ子供さんです。その意味からこの一人という限定は適当かどうか、御答弁を願いたい。
  152. 平川幸蔵

    平川説明員 実はこの一人に限り七千二百円というのは、出発点で御質問趣旨と若干異なるわけでございまして、それは御承知のように国家公務員の扶養加給が第一子が六百円でございまして、第二子以下が四百円、こういうことになっております。ところが実際恩給受給者にこの場合を適用いたしますと、むしろ問題は、たとえば具体例を申し上げますと、妻が扶助料を受けておりまして、それに父母がある場合におきまして問題になるわけでございます。むしろそういうケースのほうが多い。その場合に第一子のみということになりますと、父母は四百円のままに据え置かれる。これは遺族処遇としてはやはり問題がある。こういうことで、そこに実は焦点がいきまして、この父母の一人につきまして六百円に処遇をする。国家公務員の給与の家族加給から出発いたしまして、方向がそちらにいった、率直に申し上げますと、そういうことでございまして、国家公務員給与におきましても子供につきましては、第一子のみ、こういうことになっておりますので、その点御了承を願いたいと思います。
  153. 受田新吉

    ○受田委員 そうしますと、私お尋ねしたいのですけれども、もう国民年金とかあるいはその他の共済制度にこうあるからそれ以上は出ぬという、はっきりした限界をお持ちになっておるわけですね。お答え願いたい。つまり恩給法は他の法律よりも前進はしない、社会保障制度的なものを採用しても、他の法律の中にあるワクをそのまま採用する以外には出ないという原則を持っておるのかどうかです。
  154. 平川幸蔵

    平川説明員 問題は、恩給自体の価値判断の問題だと思います。したがいまして、常に他の制度を十分考えてはおりますけれども、ポイントは恩給自体の本来の制度にポイントを置いておるわけであります。したがいまして、客観的な情勢判断によりまして、そのとき適当だと思う処置をとっていく、そういうことだと思います。したがいまして、たまたまそういう措置が他の年金制度と一致する場合もありますし、場合によってはオーバーすることもあるかもしれません。しかしその点につきましては、やはり恩給制度は過去のあれを持っておりますから、そういうものを考えつつ恩給本来の制度をいかに改善していくか、こういうことがやはり基本的な課題になるかと思いますから、そのワクはやはり守っていかなければならぬ、このように考えております。
  155. 受田新吉

    ○受田委員 基本的な問題から具体的な問題に入っていかしてもらいますが、これはなかなか恩給法はややこしくて当局もたいへん御苦労されておることはよくわかります。恩給法という古い基準、古い歴史と伝統も前提にし、また新しいものも持ってき、援護法との関係も配慮する。また援護法を担当される厚生省はいつも、恩給法がこうあるからこれに準じてやる、こういうような配慮をされるというので、非常に御苦労の多いことはよくわかります。よくわかるが、個々の問題にいまから触れたいのですけれども、恩給法でこの点はこうしたらいいという問題が幾つもころがっておる。特に恩給審議会答申が昨年三月に出されて、その中から今回改正措置としてお取り上げになられたのがここに法案として出ておるわけなんです。ところがこの改正措置をされない審議会答申についての扱いはどうなっておるかということの御説明がまだないわけです。お答えを願いたいです。
  156. 床次徳二

    ○床次国務大臣 今回の予算におきましては、審議会答申の一部を取り上げただけでありまして、残されてあることを十分承知しておるわけでありますが、この残された部分につきましては、明年以後におきましてできる限りすみやかにこれを実現いたしたいと思っております。
  157. 受田新吉

    ○受田委員 残された問題は、明年以後において年次計画ではどのくらいのうちにやろうという御計画でございますか。個々具体的な問題を大まかな線がおありだと思います。
  158. 床次徳二

    ○床次国務大臣 大体三年計画でもって実行いたそうという計画であるわけでございます。
  159. 受田新吉

    ○受田委員 三年間に大体これに掲げてある主要なものを取り上げる。この答申にあげてある中で適当でないと政治的な判断をされるような問題はないかどうか。これは全部尊重するような中身を持っておる、こうお考えかどうか、ひとつお答えを願いたい。
  160. 平川幸蔵

    平川説明員 実は答申されております総項目が五十数項目にあがっております。その中で審議会改善すべきものと是認されたものにつきましては約二十数項目にわたっております。したがって、残る三十項目ほどは改善すべきでないという意見が出ております。是認すべきであるという項目につきましては三年間で全部処置いたしたい、このような希望意見を持っております。
  161. 受田新吉

    ○受田委員 三年間に希望を付した分は処理したい。ところが傷病年金を受くる者が増加恩給との関係で二割五分の減額措置をとられることについては適切な措置要求をしてあるただし書きがこの答申にあるわけです。その部分については年次計画の中に入れておるのか、このことは加算に対する措置をやったことで二割五分の減額措置についてのせっかくの答申があるのであるが、これは取りやめるということなのか、どっちなのかお答え願いたい。
  162. 平川幸蔵

    平川説明員 先生の御質問の内容は、傷病恩給受給者加算恩給受給者である場合におきまして、傷病恩給の一款症以下の受給者に対しまして二割五分の減額措置を講じておる、これについてどう措置しておるかという問題だと思いますが、実はこの問題につきましては二割五分の減額ということ、これを是正するということが本来の処遇改善のしかたではあるわけでございますが、実はわれわれといたしましていろいろ検討いたしました結果、この傷病恩給の二割五分を減額するということよりも、むしろこれは技術的な問題が相当ありまして、併給されておる加算恩給のほうの減額率を撤廃するというほうが技術的にも処遇上きわめて適当であるという結論に達しまして、実はことしの改善措置といたしまして、併給されておる加算恩給のほうでこの減額率を撤廃するという処遇のしかたをやったわけであります。御趣旨の点は、おそらくこの二割五分の傷病年金の減額分を何とかできないかということについてのお尋ねかと思いますが、実はこれは技術的にわれわれも考えたわけでありますが、こまかいことは申し上げませんが、きわめてむずかしい問題が出てまいりまして、非常に苦慮したわけでございます。われわれといたしましては答申どおりの線でやりたいとは思っておりましたが、もちろん答申自体は必ずしも明確な結論を出しておりませんけれども、あれやこれや苦慮いたしまして、実は加算減算率のほうの撤廃ということで解決させていただいたわけであります。
  163. 受田新吉

    ○受田委員 そうすると、これは明年以後の措置では、傷病年金を受くる皆さんの二割五分の減額措置はもうやらない、今回のでおしまいだということですか、まだ何か検討するのですか。
  164. 平川幸蔵

    平川説明員 先生のお示しのとおりだと考えていただいていいと思います。
  165. 受田新吉

    ○受田委員 私お尋ねを二つしたわけです。これでおしまいにするのか、さらにあるいはこれを検討するのか、そのいずれですか。
  166. 平川幸蔵

    平川説明員 われわれとしては、この問題についてはこれで一応解決したものというように考えておるわけであります。
  167. 受田新吉

    ○受田委員 私のお尋ねを申し上げた、そのいずれかというのに対して、そのとおりとおっしゃったが、その前のほうですと言うていただいたらはっきりしたわけです。それではこれでやめるというわけですね。これは加算の措置のほうで、減額の手続がしてあるからそのほうでプラスになりますか、あるいは年金額のほうの二割五分の減額をやめるほうがプラスになるか、個人によって違いが起こりますと判断ができますかどうか。
  168. 平川幸蔵

    平川説明員 これは総体的には個々のケースはいろいろございますから問題はあると思いますけれども、処遇といたしましては、この加算減算率の撤廃ということが相当厚い処遇改善になる、私はこのように考えております。
  169. 受田新吉

    ○受田委員 その加算の措置で、なおかつこの年金そのものの減額措置をやめるのよりもマイナスになるような場合が起こるかどうか。つまり加算措置のほうの減額措置と年金額のほうの二割五分の減額措置とはかりにかけて、不利な場合のものがないかということです。いまの加算措置で救われるほうが大きいかどうかという問題があるのですが、これは実際の個々の問題、私はやはり一応制度的には本人の最も有利な手を打つべきだと思うのでございますが、二割五分の減額をやめるのがよいか、あるいは加算の減額をやめるのがよいか、はかりにかけた場合にどうかという答えを伺いたいのです。
  170. 平川幸蔵

    平川説明員 相互比較の問題でございますが、これは私らの考えによりますと、比較的在職年が短い方が実は多いわけでありますから、加算恩給を持っているわけです。そういう方は一般的に非常に有利になるのじゃないかというように判断しております。傷病年金受給者で加算恩給を持っておるという人は非常に多いわけであります。先生が言われますように、長期の在職者というのは案外少ないわけでございますから、やはり加算恩給受給者が多いということは、結局そのほうで減額率を撤廃したほうが有利になる度合いが強いのじゃないかというように、的確な資料はございませんが、私はそう考えます。
  171. 受田新吉

    ○受田委員 だから長期勤務者の場合は、この二割五分の減額措置をやめてもらうほうが有利になるという場合が起こる。そういうことをここで答えを出さないで、さらに研究をしてもらいたい点があるのです。本人にいずれが有利かを――廃止するのが政府の態度でございまするから、これは今回の措置でとどめないで、研究の必要があるというときにはさらに研究していただくという態度をとっていただきたいのです。よろしゅうございますね。
  172. 平川幸蔵

    平川説明員 要するにバランス問題でございますから、具体的な例等もあると思いますが、今後よく検討いたしたい、かように考えます。
  173. 受田新吉

    ○受田委員 今度改正されている一、二、三、四、五、六、七、八、九、十、十一、十二――十二は今度の実施期日ですが、大体これは非常に大事なところをすかっとお答えを出していただいておる。これに漏れた分を三年計画で今度実行に移される、こういうことでございます。  そこで、いまお尋ねをした中でもう一つ掘り下げますが、傷病年金を受ける皆さんの場合に、その年金を受ける人がなくなってしまうと、遺族には何もないんですね。ところが傷病年金を受ける人は、やはり第一線で非常に苦労して、もし傷病の身とならなかったならば、普通恩給を受けるまで勤務したでしょう。それにいったはずです。ところが傷病の身となったために、やむなく軍役を退いて年金を受ける身になった。その家族にささやかでも扶助料を支給するという心がけは必要ではないか、こう思うのですが、いかがでしょう。
  174. 平川幸蔵

    平川説明員 非常にまれなケースでございますけれども、傷病年金受給者がその傷病によって死亡したという場合においては扶助料が支給されるわけであります。たとえば、結核で第三款症の傷病年金をもらっておるという方が結核で死亡しますと、遺族には扶助料がいくわけです。先生が御指摘になりましたのは、結核で傷病年金をもらっておっても、交通事故あるいはほかの胃ガンでなくなったというような場合においてはいかないのじゃないかという御質問だと思いますが、それはそのとおりでございまして、実はこの問題につきましてわれわれとしては恩給審議会意見を聞いたわけでございますが、そういった場合においては支給することは適当でないという恩給審議会答申をいただいております。したがいまして、その答申趣旨を尊重するたてまえにあります総理府といたしましては、そういう線でやっていきたいと考えております。
  175. 受田新吉

    ○受田委員 審議会答申の中にいけないと書いてあるものの中でも、これはいいと判断すればまたやってもらってもいいわけなんです。たとえば目症度など、これは目症度の家族に対してささやかな年金支給というものは――目症度の皆さんはすでに手帳をもらっておる。手帳をもらっておって、何らの措置をしてもらっていないということもあるのですから。これも、この中には、答申には出ていないが、現実の問題としてその御苦労に報いる意味からは措置すべきという分は、あとからまた配慮の中に入れるわけですね。全部削るわけじゃないんでございましょう。
  176. 床次徳二

    ○床次国務大臣 今日の状態におきますと、恩給法自体におきましてもずいぶんまだ欠陥があるわけでございまして、それに対して審議会から答申がありましたので、まず答申を実行することを目標といたしまして、答申を実行いたしました後におきまして新たなる問題として検討いたしたいと思います。
  177. 受田新吉

    ○受田委員 ハンセン氏病についての午前中の討議があったわけでありますが、当局から三項症以上に格づけしたいという御答弁がありました。ところが、このハンセン氏病の御苦労をなさる方々には、特項症、一項症、二項症に当たる方々もおありではないかと思うのですが、そういう場合には、三項症以上というのは、特項症、一項症、二項症までもそれぞれ考えるという意味であったかどうかをもう一度お答え願いたい。
  178. 平川幸蔵

    平川説明員 御質問趣旨のとおりでございます。
  179. 受田新吉

    ○受田委員 そういう心づかいに対して、当局が愛情をもって御措置されることを希望をいたしておきます。  次に、この恩給審議会答申の中に、措置するに適当でないというのが、実際はやっていかにゃいかぬようなものがわれわれ考えてみたら幾つかあるのです。たとえば増加非公死の扱いなども、これは増加恩給を受けて、その人が公務にあらざる死亡をした場合にはその増加恩給部分が配慮されないということは、はなはだお気の毒であるという意味からは、特別の扶助料を給する、こういう問題もひとつ検討の材料になる。また、倍率の問題につきましても、仮定俸給問題につきましても、個々の階級によって、下のものを基準にしてきめられておるときに、全体の、たとえば傷痍軍人の階級の中で兵を基準に格をきめるような制度ができているというのは、これは下士官のまん中辺をとっていく措置をとるとか、特務士官の給与を実質的な給与として支給される方向をとるとか、いろいろな問題が残っておると思うのです。  それから今度の改正措置で三号、二号、一号と書いてありまするが、これは十二年ないし十三年以上の勤務者の場合はそうであって、それに足らないでやめた人はこういう恩典に浴することができない、こういう人の問題というのはどうされようとしているのか、急いで答弁をやってください。
  180. 平川幸蔵

    平川説明員 先ほど長官から答弁いたしましたように、これらの問題につきましては、恩給審議会答申が完全に実行されました後におきましてできるだけすみやかに検討いたしたい、このように考えております。
  181. 受田新吉

    ○受田委員 そうしますと、これは恩給審議会答申以後になるかならぬか、私ちょっと問題があると思うのですが、大東亜戦争以降に限る制限がこの措置にあるわけですね。ところが、実際はシナ事変等で苦労をされておる人、それと大東亜戦争とを比べてみたときに、シナ事変以来苦労をされておる人のほうが逆に苦労が長いというわけなんです。そういう問題について、シナ事変まで延ばすかということは、その後の配慮の中に入るか入らぬか、シナ事変以前にさかのぼっての検討がやはり検討の中に入るか入らぬか、この措置に対する方向、時期の問題を御答弁願いたい。
  182. 平川幸蔵

    平川説明員 前の答弁と同じく、これも恩給審議会答申を実行した後におきましてできるだけ同じように検討をいたしたい、このように考えております。
  183. 受田新吉

    ○受田委員 なかなか誠意があります。これは非常に調子よくいきますな。  それではひとつ援護局長、せっかく来られたので、これは恩給法と重大な関連がありまするから御答弁を願いたいのですが、先般私たちははなはだ不愉快な新聞記事を読んだ。  それは、南方で敵前逃亡をして死刑の宣告を受けた者がおる。それは吉池袈裟次さんという方がおるという。何かの誤った情報の誤認のために、そういう誤認の汚名を受けたために、今日何らの措置もしておられないという事件を新聞紙上で見たのですが、これはどうかと思うのです。戦傷病者戦没者遺族等援護法の第四条第二項にある、故意または重大な過失によって負傷したことが明らかでないときは公務による傷病とみなすという規定があるわけです。それによって今度なくなったという意味からいうならば、これは故意または重大な過失でない、いや故意または重大な過失であるという、何らの証明がないとするならば、これは当然公務傷病あるいは公務死ということに見ていいのではないかと思うのでございます。  厚生省にある資料の中に、どこからか、ちょっとした考え違いをした人が書いたのが記録に残っておるのがいつまでも尾を引くということでは、これは困ったことだと思うのですが、政府としては、せっかく援護法の中にある、四条の二項、これはあとから追加した、改正した規定でありまして、初めはこんなに軽い規定ではなかった。私もよく覚えている。改正したのです。故意または重大な過失によって負傷したということが明らかでないときは公務傷病とみなすという、非常に英断をふるったと当時思ったのですが、それによって救われると思っておったら、今度は救われない人が出てきた。こういうことがあるわけです。厚生省としてはその御調査がなかなかむずかしいと思いまするが、はっきりした証言を持つ人が現に生きていない限りは、過去になくなった人のちょっと言うたような問題については、生存しておる人の証言のほうに重点を置いて措置される必要があるのではないかと思います。お答えを願います。
  184. 実本博次

    ○実本政府委員 吉池袈裟次氏の離隊逃亡のケースの件、御質問でございますが、この件につきましては、先生指摘のように、若干――死亡連名簿という、こういう戦没者の一人一人につきまして連隊ごとに備わっているものがございまして、その連名簿がもとでいろいろ公務上の死亡であるかないかということをきめて援護措置の資料にいたしておるわけでございまして、吉池さんの場合以外のすべてのケースがその死亡連名簿によりまして処理をいたしております。その死亡連名簿の中に、敵前逃亡、刑死ということではっきり明示されておったわけでございます。最初、初度請求のときには、その死亡連名簿によります記載によって却下をいたした。それがさらに御遺族のほうから再審査の請求、つまり不服の申し立てが出てまいりまして、そのケースにつきまして約十年間かかりまして、審査と申しますかその資料の再調査をやってまいったわけでございます。その再調査の中で、軍事裁判が行なわれたということだけははっきりいたしておるわけでございますが、その裁判記録の所掌の移管を受けた福岡の裁判所のほうにその吉池さんのケースだけが裁判記録がない、こういうふうなことがわかりましたので、いまその点につきまして、もうそこまでいろいろのものを調査いたしましたが、それからその当時の関係者、生存者等につきましても、いろいろな証言その他のものを得たわけでございますが、こういうものをすべて調査を、おおむねし尽くして、終了いたしましたので、近くこれは援護審査会という、不服審査が出てまいりましたときに諮問する機関がございますので、そこに諮問をいたしまして、そのケースの判断を求めるというところに至っておるわけでございます。  なお、四条二項の問題につきましては、先生指摘のように、故意または重大な過失であることが明らかでないというときには、それは公務とみなせというふうなあれでございまして、この吉池さんのケースといたしましては、いままでの態度といたしましては、離隊逃亡、つまり職務を放棄した後に起こってきたケースでございますから、それは公務上の死亡ではない、こういうふうなことで出ておりますので、その点四条二項の適用の問題といたしましては、一応いままでのところはっきりした判断が出ておるわけでございます。
  185. 受田新吉

    ○受田委員 そういうことで、こういうのは、汚名をいつまでも負うて家族はお気の毒であります。それから、第一線で苦労されて、戦後二十何年たって、時代がだんだん変わって、いまごろの戦争というものの中には、そんな昔のきびしい制約のもとでなくて、よほどみなおおらかな戦争をやっておるわけなんです。そういうときに、昔の敵前であったかどうかというようなことを議論するすきがない、証拠がない場合には、すかっともうお認めになって扶助料をお出しになる、年金をお出しになる御措置をされるべきだと私は思うのです。この扱い方については類似のものも多くあると思いますから、二十数年たった今日、昔の、どこかで証言された、どこかの間違った、誤った記録をもとにしたということのないように、できるだけ本人に有利な解釈で御措置をしてあげても、第一戦で苦労しただけでもたいへんな苦労なんですから、その意味でひとつ有利な解釈を御措置されることを希望をいたします。  同時に、この援護法は、あとでまた重大な過失の場合の問題として残るのは、いままでこうした援護法の規定を適用されるのは六項症までであったのだが今度これを三款症まで拡大する意図があるかないか。また、恩給法については五款までこれを採用する意思があるのかないのか。これも少し拡大して、恩給法には四款症まであり、五款症がまだはずれておるが、これをひとつ、軍属とかあるいは準軍属についての扱い方をこれまで範囲を広げる御措置についての用意を御答弁を願いたい。
  186. 実本博次

    ○実本政府委員 御指摘の援護法におきます障害年金症状等差の現行の第一――第三款症までを第四、第五款症まで広げる気持ちはないか、考えはないか。これにつきましては、われわれのほうも恩給審議会にあたります、事実上の厚生大臣の諮問機関でございます援護問題懇談会というものにその意見を求めましたところ、恩給法にならってそこまで引き上げるべきであるという答申と申しますか報告をいただいておりますので、その線に沿いまして、次の国会を目ざして法律改正をいたしたい、かように考えております。  なお、みなし公務のほうも、第六項症につきましても、同様にグレードを下げるということを勧告いたしておりますので、その点に沿って処置いたしたいと思います。
  187. 受田新吉

    ○受田委員 時間が進んでおりますから、いまからぱっぱと速射砲で一分三十秒ぐらいで五つ六つ速射しますから、それに速射で答えていただきたいと思うのです。  この国鉄無賃乗車は、戦傷病者特別援護法の中の恩典にある。特項症皆さんは、その重いからだにかわって外へ出て働く奥さまにその切符を使ってもらっていいのではないか、または代理する人に使わしていいじゃないかという問題がある。あるいはまた、もっと項症を下げていった場合に、御主人のもらう権利を奥さまと一緒に、これが使えるように、共用ができて、傷痍軍人の方々が国家に奉じたからだをひっさげて奥さまと一緒にお宮参りとか靖国神社参りとか、そういう形をとらせるような、愛情のある措置をとる必要はないか。  また、もう一つは妻の特別給付金について、傷病の身となって奥さまをもらうことのできないような立場になった傷痍軍人を、その奥さまにかわって、お母さんやおじいさん、おばあさんあるいは兄弟、姉妹が心からこれをいたわってあげている。むしろそういう方に対する特別給付金のワクを広げる措置はないか。また、この六月三十日で、昭和三十八年にスタートした戦傷病者の妻に対する特別給付金が時効になるのです。時効になるときに、相談員がおっていろいろ行き届いた地区はいいが、相談員がおられない、相談員の手をわずらわすことのできない隠れた該当者に対する周知徹底に事を欠いてはいないか。あと十日ばかりしかひまがない。これに対して、時効になっても救済する道をとるべきではないか。また、恩給法によって手続的に時効にされてしまった、しかしあとから見たらりっぱな傷痍軍人であったというような人に、時期は過ぎても、特効を乗り切って、本人であることがはっきりした場合には、その傷病の身に対してあとから特別の措置をとる道はないか。書類審査等で十分な手が打てるとお考えかもしれないが、書類審査のほかに、恩給法、援護法におきましては書類審査で解釈がむずかしいときには本人を呼び出して、本人の意思を聞くという手続をとる必要はないか。こういうような諸問題を十分御検討願って、行き届いた愛情のある措置をとっていただきたい。  もう一つ今度は、全体の問題として、退職者に対する恩給法問題でございますから、一般公務員あるいは国鉄を含む共済制度の対象になる皆さま方に対しての問題として、最低限の保障の問題が一応打ち出されてはおるのだけれども、九万六千円になる最低の年金額を受ける人の奥さんの場合に、もう少し扶助料の額を高める措置が必要ではないか。最低金額というものにある程度の高い線を考えるべきではないか。老齢福祉年金との併給制、これは恩給その他を受ける人と福祉年金とは性格は別のものである。そういう公的年金としての立場について、性格が異になっているものについては、この問題は、原則として、その間に金額の差を求めて制限を加えるような筋合いではないのではないか。そういう諸般の問題をひっくるめて御答弁を願いたい。  なお、最後にもう一つ昭和二十三年六月三十日以前の給与事情の生じた退職者に対する措置は、先般四号俸程度格上げされました。しかし、それから後のものを含めてもう一度――古い退職者は、警官とか、教員とかいうものは、古い制度では非常に低い地位にしがなかった。いまは非常に高い地位になっている。現在にこれを引き直して考えた場合に、旧退職者に対する優遇措置はまだもう一度検討が残っている問題ではないかと思いまするので、これらをひっくるめて速射砲で御答弁を願いたい。
  188. 実本博次

    ○実本政府委員 最初に国鉄の戦傷病者の無賃乗車の扱いでございますが、現在の制度では、本人が国鉄を利用する場合に限りまして、介護者として、その妻などの同行が認められている。あくまで戦傷病者本人に対する援護を行なうというのがたてまえになっておりますので、妻単独で国鉄を利用する、それが代行をしておった場合でも、妻だけで利用するということは法制上なかなかむずかしいと思います。しかしながら、御質問の点につきましては、なお法制上の問題について検討してまいりたいと思います。  それから、重度の障害者をかかえている父母等に特別給付金を支給する考えはないかというようなことでございますが、この問題につきましては、重度の障害者にはそれぞれ増加恩給あるいは介護加算というものもついておりますので、妻である者の特別給付金以外の給付金の考え方はいまちょっと考えていないわけでございます。  それから、戦傷病者の特別給付金の時効の問題につきまして、周知徹底をどうしているかということでございますが、この問題につきましては、大体、法制定当時に予定いたしました件数が三万三千件でございますが、現在まで受け付けておりますのが三万千三百件というところで、もうあとほんのわずかのものが残っておるわけでございまして、十日間の残された間に徹底してこれを請求させるように指導してまいりたい。  なお、時効一般問題でございますが、ケースケースによりまして非常にむずかしい問題でございますが、なるべく単純な理由だけで忘れていたというふうなものにつきましては、そんなに長い期間でない限りはケースケースで処理をしてまいりたいというふうに考えておるわけでございます。
  189. 受田新吉

    ○受田委員 妻の給付金の問題が残っております。
  190. 実本博次

    ○実本政府委員 妻の給付金につきましては、これは先ほど先生お問い合わせの障害年金の範囲を広げます。戦傷病者御本人のほうの範囲を広げました暁には、妻の給付金もそれに従って拡大していきたい、こう考えております。
  191. 平川幸蔵

    平川説明員 まず文官の不均衡の是正問題でございますが、これは御承知のように、今年度予算で調査費が盛られております。したがいまして、昭和二十三年七月前に退職いたしました者につきましても、なおかつこの調査の結果不均衡がわかりましたならば、是正いたしたい、こういうことで現在調査をやる予定になっております。  それから次に、最低保障問題でございますが、恩給法の原則といたしまして、普通扶助料は普通の恩給の二分の一ということになっておりますから、この原則をはみ出すことはなかなか困難だとは思いますけれども、これも恩給審議会答申がありまして、これも一応こなしました上においてはあるいはいろいろ検討いたしたい、このように考えております。  それから最後に、時効の問題でございますが、特に傷病恩給の時効につきましてはいつ時効が発生するか、いつ時効が確定するかということが実は実際問題としてなかなかむずかしい。ということは逆に言えば、ある程度具体的な件におきましては、先生の御趣旨のような配慮ができるのではないかというような感じもいたします。要するに戦後長年経過いたしました傷病恩給でございますから、具体的な案件につきましてはできるだけそういった面を考慮いたしまして、最低限で配慮いたしたいというような考えでございます。
  192. 受田新吉

    ○受田委員 委員長、これで終わりますから。  長官、私がさっきからお尋ね申し上げた諸問題点基本問題並びに具体的問題、これらにつきましてその基本になるのは、やはり恩給制度というものは現職の公務員の給与を基準にして、それに調整規定を設けるような制度化をはかることが私は一番筋が通ることだと思う。これらの制度化をひとつすみやかに打ち出して、安心して国家の公務に従事し、これから国家の公務に従う若い人にも、次代を背負う人にも、やがて先輩という形で退職公務員になるのだ。そうすると、若い人にも退職公務員は現職の公務員の給与を基準にして処遇されてくれるのだという安心感を持って、先輩、後輩の愛情もそこにつちかわれると思いますす。先輩を無視する後輩にならない。先輩を尊敬する現職公務員が相次いで生まれると思いますので、この現職公務員の給与を基準にした恩給制度制度化というものについて、ひとつ床次先生生、あなた御自身のすかっとした御答弁を願って私の質問を終わります。
  193. 床次徳二

    ○床次国務大臣 いま恩給制度制度化の問題についてお尋ねがございましたが、過般もほかの委員からも御意見がございまして、たてまえとして制度化につきましては賛成でございまして、いろいろな問題がありまするが、私でもも十分検討いたしまして、今後それの対策を立てたいと思います。
  194. 藤田義光

    藤田委員長 鈴切康雄君。
  195. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 すでに同僚委員からいろいろ質問をされておりますので、簡明に御質問を申し上げたいと思います。  今回の恩給年額の増額についてまずお伺いいたします。昭和四十年十月改定時の恩給に四四・八%の数値を改定の率としておりますが、これは単に物価上昇を考慮した数値にすぎないわけであります。恩給審議会答申においても、公務員給与との格差を調整する必要があると述べているにもかかわらず、物価だけにした理由はどこにあるのか、その点についてお伺いいたします。
  196. 床次徳二

    ○床次国務大臣 結果におきまして残された分があるわけでございますが、この点につきましては、今後の努力によりまして埋め合わせをいたしたいと思っております。
  197. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 恩給法の第二条ノ二には「国民ノ生活水準、国家公務員ノ給与、物価其ノ他ノ諸事情ニ」というふうになっておりますが、第一に質問したいのは、国民の生活水準をどのように考えておられるか、それから国家公務員の給与との格差をどう考えておられるか、その数値を明確にお答え願いたいと思います。
  198. 平川幸蔵

    平川説明員 お答えいたします。  恩給法二条ノ二には指標といたしまして、国家公務員の給与と国民の生活水準、物価というものをあげておりますが、指標的には、先ほど申し上げましたように、国家公務員の給与は、昭和二十六年を一〇〇にいたしますと、昭和四十三年は三三六・四、問題となりまする昭和三十六年、これは恩給の水準でいきますと、審議会答申の内容にもありますように、昭和四十年十月の恩給水準に見合う国家公務員の給与でございますが、これは昭和三十六年におきまして二〇〇・九という数字になります。そのときにおける物価の指数は一三三・五ということになります。要するに昭和三十六年十月から四十三年三月までの結果といたしましては物価だけをとったということになりますが、先ほど申し上げましたように、一応計数的には五一・三という国家公務員の給与を入れた指数が出たわけでありますが、結果といたしましては四四・八という物価に見合う上昇率しか計上できなかったということでございます。
  199. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 国民の生活水準をどのように考えられておるか、その点について……。
  200. 平川幸蔵

    平川説明員 国民の生活水準につきましては、先ほどもちょっと言及申し上げましたが、これは何をとるかといいますと、総理府統計局の消費支出に関する資料あるいは経済企画庁発表の消費支出に関する資料など種々なるものがございますけれども、要するに国民の生活水準の向上を恩給受給者にも及ぼしたい、こういう考えでございますが、先ほど申し上げましたように、国民の生活水準と国家公務員の給与というものはいわば二者択一的な方法でございまして、やはり恩給受給者はかつての国家公務員であったということから見ますと、指標としては国家公務員の給与のほうがより適当であろうというふうに現在の段階では考えております。
  201. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 日本の経済能力の発展があり国民所得が上がれば、当然恩給に対してカバーするという考え方に立って、恩給受給者の処遇改善をはかっていくという考え方に立っていくべきではないか、そのように私は思うのですが、そこ点についてあなたはどう思いますか。
  202. 平川幸蔵

    平川説明員 御意見のとおりでございますが、要はいかなる指標をどの程度まで反映させるかということでございます。で、恩給審議会答申にも、御承知のように、指標の適用の順序としてはまず物価を一番先に持ってきておりますが、これは先ほどもしばしば繰り返して申し上げておりますように、最下限をチェックするための指標の用い方でございまして、上積みのカバーするものにつきましてはどうしても生活向上分というものがなければならない、これを恩給公務員にも反映させなければならないということは当然のことでございます。したがいまして、国家公務員の給与を反映させるわけでございますが、そのいかなる部分をどの程度に反映させるかということが実は問題であります。先ほど申し上げましたように、その国家公務員の給与のうちの生活給的な改善部分につきましてはぜひ恩給受給者にも反映させてもらいたいというのが恩給審議会答申の内容でもあり、われわれとして考えておる目標でもございます。
  203. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 調整規定が恩給法に設けられて、そしてその具体的運用について恩給審議会答申があったにもかかわらず、恩給局においてはそれさえ十分こたえた増額ができないとしたら、多くの恩給受給者はほんとうに期待を失ってしまうのではないか、そのように思います。本年は調整規定の適用が始まる第一歩であり、その年でありますから、今後の調整規定の基本的運用方針を明確にお答え願いたい。
  204. 平川幸蔵

    平川説明員 先ほど長官がお答えしましたように、本年度から実は調整規定の具体的な運用の第一年度に当たりますので、初年度に当たりますので、答申趣旨をもちまして今後とも十分努力をしてまいりたい、このように考えております。
  205. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 先ほどお話がありました昭和三十六年の十月を基準時点として、それ以後昭和四十三年の三月までの上昇の数値というのは公務員が五五・七%、そして消費者物価が四四・八%、その差額の六割というのを生活給の改善部分として、恩給局が出されましたところの数値というのは五一・四%出されたわけです。これが恩給局が大蔵省に折衝した数値になっているわけですけれども、言うなれば恩給局としても当然国家公務員給与を加味していかねばならぬと判断をしたと私は思うのです。ところが、なぜそれを押し通さなかかったか、そしてしかも結果的にいえば四四・八%になったということは、大蔵省に削られたから後退をした結果になったのか、その点についてはっきり……。
  206. 床次徳二

    ○床次国務大臣 数字だけごらんになれば、結果的にはさようなわけでございますが、予算の要求等につきましてはこの問題以外のいろいろ要望すべき、実現したい問題がありますので、結果においてそういうふうに落ち着きましたので、足らなかった分につきましては今後とも努力いたしたいと思います。
  207. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 受給者の期待にこたえる方法は、二条ノ二の公務員給与とのバランス、物価、その他諸事情を勘案して十分考慮することと私は思う。そしてむしろ公務員給与を主として考え、先行させるべきである。今回のような物価だけで事足れりとするような増額で処置することは絶対に許されない、私はかように思うのですが、公務員給与との格差をどのように考えておられるか、今後どのように考慮するのか、さらに明確に総務長官のほうから御答弁をお願いいたします。
  208. 床次徳二

    ○床次国務大臣 この点は、ただいま申し上げましたように不足分というものが若干考えられておりますので、この点をできるだけ早く充足いたしまして、そうして全体の形において二条ノ二の規定が運用できるようにいたしたい。ちょうど来年度からこういう形になりますので、さような趣旨において努力いたしたいと思います。
  209. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 いわゆる二条ノ二の中に出されております国家公務員給与という、そのまっ先に出ているところの考え方に近づくように総務長官は今後考えていかれるかということですが、その点について最後に……。
  210. 床次徳二

    ○床次国務大臣 たてまえとして、さような趣旨において努力いたしたいと思います。
  211. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 今回の増額は、現行の年金によって区分される三本立ての仮定俸給の統合をはかることにより、前年度比七十歳以上の者は七・三%増、それから六十五歳から七十歳までは一二・七%、六十五歳未満の者は二〇・七%、老齢者になればなるほど増額率が低くなっております。審議会答申においても、仮定俸給とは別途老齢者の優遇措置を考えるべきである、そのようにしておりますけれども、この問題を今後具体的にどう処置をされていくか、その点についてお伺いいたします。
  212. 床次徳二

    ○床次国務大臣 答申にもありましたごとく、仮定俸給を一体化することが現在の恩給法におきましては当面の急務であると私は思います。かような趣旨において改正を行なったわけでございますが、しかし御指摘のごとく老齢者等の問題につきましてはやはり別途考慮するという問題がありまして、老齢者あるいは傷病者等につきまして今後の問題として検討したいと思います。
  213. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 今年度は老齢者は昨年度に比べて非常に優遇されないわけですが、老齢者優遇の問題について具体的にどういうふうなお考えがあるかということなんですが、その点について……。
  214. 平川幸蔵

    平川説明員 老齢者につきましては、実は、たとえば七十歳以上の加算恩給につきましては減算率というものが現在働いておりますが、これを全部撤廃するというような方法で処遇改善をしております。遺族等におきましてはいわゆる公務倍率というものがございまして、普通扶助料に対する倍率がございます。こういうものを逐次上げてまいっておるわけであります。こういうようなものについても検討いたしたい。要するに長官が言われましたように、いわゆる仮定俸給問題と別個の問題といたしましてこれは処分すべきであるということははっきり答申にも出ておりますし、実はまず本年度は恩給の水準を一本化するということが急務でございましたからこういう処置をとったわけでありますが、第二年度でありまする来年度からはそういった個々の問題を取り上げてまいりたい、こういう考えでおります。
  215. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 審議会答申の個別問題について少しお伺いいたしますけれども、答申においては五十四項目にわたる問題を取り上げて、二十六項目の問題について改善措置を講ずるよう指摘しております。今回はそのうち八項目しか取り上げていないわけでありますけれども、残りの十数項目をどのような処置をされていくのであるか、二十六項目をいつごろまでに取り上げて改正案を提出されるつもりなのか、その点について総務長官。
  216. 床次徳二

    ○床次国務大臣 答申を一挙動で実現いたしますにつきましてはなかなか容易でございませんで、まずことしはその最も緊要と思いますところの三分の一程度を実現いたしたわけでありますが、これも答申は三年計画をもって実現いたす、ことしは第一年次、あと二年でもって実行し、なお残された問題点もあるわけであります。答申以外の問題等におきまして、関連して検討すべきものもあります。答申を完了しました後におきまして、逐次そういう問題も処置してまいりたいと存じます。
  217. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 さらに個別問題の中で、今回旧軍人の仮定俸給の格づけ是正を行なっております。長期在職者という条件によって大部分の遺族、傷病者はこの恩典に浴することができない状態である。何がゆえに長期在職者公務死の遺族、傷病者を対象にするようにしなかったか、その点について。
  218. 平川幸蔵

    平川説明員 これは実は文武官の仮定俸給の不均衡の是正問題に関連するわけであります。御承知のように文官につきましては、過去三回にわたりまして長期在職者について給付の不均衡を是正したわけであります。したがいましてこれに見合う分は実は是正しなければならないと思いますけれども、恩給審議会答申最終結論は示していないわけであります。長期在職者についてのみできるだけの是正をすべきである、こういう若干ばく然としたような結論が出ておる。最終的な結論はどこであるかという検討につきましては、今後できるだけすみやかな機会に実現いたしたいと思いますが、当面ことしの問題といたしましては、さしあたり三号、二号、一号の是正をやりたい、こういう考えでございます。
  219. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 これでは実際に職業軍人の上級者を優遇するような状態で、一般傷病者、学徒出陣による戦死者などは全く軽視されておる施策であるといわれてもしかたがないと思うのです。個別問題の解決のしかたいかんによってはますます恩給問題を複雑にして、受給者にとって明朗公平な解決にならない場合があります。この対象者の階級別人員は何人であるか。実際に兵で十二年の対象はまことに私は少数だと思う。その点はどうなっておるのか、私はその点は今後十分検討されなければならない問題であると思うのですが、その点についてどのようにお考えであるか、その点具体的に……。
  220. 平川幸蔵

    平川説明員 基本的には、遺族の方々に対する処遇問題につきましては、先ほど申し上げましたようにこういった仮定俸給問題で勝負をするのか、あるいは他の方法で勝負をするか、いろいろ方法論としては問題があると思う。やはり遺族、傷病者等に対する処遇問題は、他の方法と申しますか、少なくともいわゆる実在職者の仮定俸給という問題ではなくて、たとえばいろいろほかに方法がございます。この点については具体的に現在言及する段階ではございませんけれども、実は処遇の方法としてはむしろ他の方法のほうが私のほうでは適当ではないかという考えを持っております。ただしその方法につきましては現在言及する段階ではございませんが、むしろそういった方法のほうがよかろうかというような感じであります。ただいまお示しの具体的な内容でございますが、全体といたしましては十一万人が該当するわけであります。兵につきましては、御指摘のように十二年の実在職年を持っておる者は非常に少ないわけでございまして、数といたしましては千人でございます。ただし、これは兵では千人でございますが、准士官以下で約八万人おられます。これはいわゆる職業軍人ではなくして、たまたま本人のあれによりまして長期に軍隊に勤務された、いわゆる召集の方々が多い、こういうような状態でございますが、こういう方々が八万人のほとんどを占めております。こういう意味におきましては、いわゆる職業軍人以外の方がほとんどの処遇の対象者である、こういうように御了承願いたいと思います。
  221. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 結果からいいますと、非常に下の者が今度は優遇をされていないということ、困っている人を救うという点については非常におくれている結果となるわけですし、それからいうと、上厚下薄というような結論、そういうふうなかっこうになるわけですけれども、こういうふうな問題は今後やはり私は十分検討されて、もう少し是正されていかなければならない問題だろうと思うのですが、この点についてもう一度伺います。
  222. 平川幸蔵

    平川説明員 先ほど申し上げましたように、この問題自体につきましての審議会答申は必ずしも明確ではありません。したがいまして、そういう意味におきましても検討しなければなりませんし、先生がいま御指摘になりましたような点も考慮に入れつつ今後よく検討してまいりたい、このように考えております。
  223. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 傷病恩給症状等差の是正についてお伺いいたしますが、なぜ症状等差調査会の報告は全面的においれにならなかったのか、その点について伺います。
  224. 平川幸蔵

    平川説明員 症状等差の調査会の報告をそのまま実施いたしますと、実は非常に問題がある点は、基本的には、御承知のように現在恩給受給者の九五%まで既裁定の恩給受給者でございます。したがいまして、現に恩給を受けておるということでございますが、この方々は、実は症状等差の報告書どおりにいきますと相当数ランクが下がるということになるわけであります。そうしますと、現在もらっておる恩給金額より下がる。金額的には現在の金額を保証するという方法もございます。しかし、そういたしますと今後のベースアップの利益も受けないということもございます。それから増加恩給から傷病年金に落ちたような場合におきましては、扶助料ももらえないというような欠陥がございましたので、現状維持ということで基本的な原則を打ち出したわけであります。そういたしまして、実は傷病恩給受給者処遇をいかに改善するかということで苦慮いたしたわけでありますが、その中でも内科疾患を相当重視しているということでございます。
  225. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 内部疾患については確かにそのあとが見えるわけでありますが、外部疾患についてはまだ配慮されていない点がずいぶんあります。傷病者にとって有利になる点と不利になる点とがあるということは理解できますが、有利になる点をすべて取り上げて、不利になる点は、これまですでに有利な法律で裁定を受けておったのだから、これを既得権としてそのままにしても、法律的に考えてよいのではないか、むしろ有利になる点をどう最大限に生かすかが私は問題ではないかと思うのです。この点、恩給局は少し努力が足りなかった、そのように私は思うのです。そこに傷病者の不満があるように考えるが、その点について今後どのようにしていくか、お伺いをいたします。
  226. 平川幸蔵

    平川説明員 御趣旨の点はよく了解するわけでございますけれども、実はそういう点につきましては、率直に申しまして傷病内におけるバランスが非常にとれなくなるというおそれもございます。しかしながら、バランスがとれないからといって手をつけないというわけにはいきませんが、時間的な問題がございましたし、予算的な制約もございましたので、十分な結論に達しないうちにこういう状態になったわけでございますから、今後は御趣旨の点も体しまして、あるいは他の年金制度症状等差の報告等も出てまいることでございますから、そういうのもよく参照しながら、今後の課題といたしましてできるだけ検討してまいりたい、このように考えております。
  227. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 最後に総務長官にお伺いいたしますが、ハンセン氏病については、非常に社会的に精神的に苦痛を伴う病気であるということはもう常識であります。その理由としては、まず第一に、他人と隔離され収容されているということ、昭和二十年ごろは断種をされて機能が不能になっているということ、それから外貌はまことに醜状で見るにたえないという状態、また、家庭生活と切り離されるのが非常に多いし、しかも被害は家庭にも及んでいるわけであります。そのことを考えますと、私ども同僚議員といろいろ相談いたしまして修正をして、他の病気と切り離して考えたらどうかという意見もあったわけでありますが、この点について、恩給局のほうではどのような措置をとっていくつもりであるか、総務長官にお伺いをいたします。
  228. 床次徳二

    ○床次国務大臣 御質問の件につきましては、傷病恩給裁定の面におきまして、御意見のように、現在の第五項症から第三項症以上に引き上げることといたします。
  229. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 以上をもって終わります。
  230. 藤田義光

  231. 伊能繁次郎

    ○伊能委員 先日来、恩給関係については各党からまことに適切な質問がなされまして、ほとんど意を尽くしたと私ども考えますが、さらに二、三の点について簡単にお尋ねをいたしたいと思います。  今回の改正については、総額で六十七億六千万円ということに相なっているようでございますが、これはもちろん調査費も含めての話でありますが、平年度にするとどのくらいの額になるかということであります。
  232. 平川幸蔵

    平川説明員 二百九十九億円であります。
  233. 伊能繁次郎

    ○伊能委員 昨年の改定の際には、初年度額と、本年にわたる平年度についてどのくらいになりますか。
  234. 平川幸蔵

    平川説明員 昨年の改善によりまする平年度百四十五億円でございます。本年度は二百九十九億円でございます。
  235. 伊能繁次郎

    ○伊能委員 そういたしますと、現在恩給関係として、本年度全額としてどのくらいのものが所要であるか、その点はどうですか。
  236. 平川幸蔵

    平川説明員 二千四百二十億円であります。
  237. 伊能繁次郎

    ○伊能委員 この恩給総額の過去数年間の傾向としては、どの程度に増加をしておりますか。
  238. 平川幸蔵

    平川説明員 過去五年間につきまして申し上げますと、恩給費予算といたしましては、昭和四十年度が千五百五十一億、四十一年度が千七百四十一億、四十二年度が千九百七十八億、四十三年度が二千三百二億、四十四年度が先ほど申し上げましたように二千四百二十億であります。
  239. 伊能繁次郎

    ○伊能委員 われわれは、恩給関係受給者は実人員としては逐次減少の傾向にあると思うのですが、先般来、同僚議員が質問をいたしましたように、恩給制度本来の趣旨を十分に、公平に、適正に運営をしていただく、さような意味合いから、常に恩給の適正な公平な増額を要求してきた結果がそうなったわけでありまするが、さいぜん総務長官から、同僚議員の質問に対しまして、来年度について、当面の個別問題については三カ年程度で恩給審議会答申是正してまいりたい、また、基本恩給自体についても、先般来の質問趣旨を十分に考慮して、是正をすべきもの、引き上げるべきものは引き上げてまいりたいというようなことでありましたので、かりに本年と同じ程度――あるいは私どもは今後、単に恩給審議会答申の適正であるといったものを三年間ということでなく、その他の疑問のもの、あるいは残念ながら恩給審議会答申とわれわれの考えが相反したもの等についても、今後十分検討をしてもらわなければならぬと思いますが、これらの点等を考慮した場合に、来年度の恩給是正問題でございますが、すでに四四・何%かの引き上げをこれから処理していこう、さらにことしの公務員給与、物価等を考えたときに、来年度は相当額の恩給の引き上げをしないと、全体の、総務長官が考えておられ、また恩給局が考えておられる、まず今回手をつけたものの地ならし、同僚議員から軍人等についてはアンバランスではないかという意見も出ましたが、しかしこれは全体の地ならしの一環であって、私どもやむを得ないと思っておりますが、地ならしをする上において相当金額が所要であると思います。今年度程度か、あるいはそれ以上になるかという予想の問題でございますが、実はこの点については本年度恩給局が、これは大出委員からも指摘をして、恩給局の態度についてわれわれ敬意を払っておるわけでありますが、初めて具体的な金額を予算として出して大蔵省に要求した。この点は私ども恩給について常に論議を政府といたしておる者としては一大進歩だ、かように考えて、政府当局、ことに恩給局当局の態度をきわめて高く評価するものでありますが、来年度についての大体のお考え、もう八月には概算要求を出さなければならぬという状況にも相なりますので、それらの点の基本的な考え方を総務長官からお伺いいたしたいと思います。
  240. 床次徳二

    ○床次国務大臣 具体的には次長からお答え申し上げますが、実は恩給局予算といたしまして、昨年から初めて正常化した予算要求をし、なおこれに対して四十四年度予算を実現したというように私どもは解釈をいたしておるのでありますが、しかしその基本になっておりますところの暫定措置におきまして、いわゆる積み残しがございます。  なお二条ノ二の関係におきましても、やはり本質的にこれを優先的に考えなければならぬものだと考えておりますし、なお、個別事項におきまして、一部実行いたしましたが、なお残されたものがあります。これを計画的に実行いたしてまいりたい。大体以上の方針を基本といたしまして、なおそれぞれの立場から特に優先して検討すべき事項等を加えまして来年度予算に対処いたしたい。今日検討して、不日と申しますか、いずれ予算要求として実現いたしたい。皆さん方の御協力を得たいと思うのでありますが、なお次長からつけ加えまして、御説明を加えさせていただきたいと思います。
  241. 平川幸蔵

    平川説明員 具体的な数字を申し上げますと、実は来年度の最大の問題は調整規定の運用の大整理でございます。したがいましてこれをやらなければなりませんが、実は昨年の四月からことしの三月までの指標の上がりを見ますと、物価におきまして四・九%上がっております。それから国家公務員の給与につきましては、手当を抜きまして七・一%、手当を含めますと約八%の増額をしております。したがいまして最大限八%、最小限四・九%の範囲内における調整規定の運用ということになります。したがいましてこれの所用額と、先ほど長官から申されました積み残しが約百十億ございまして、これを足しましたものが基本的な恩給年額の処遇改善ということになります。  なお、そのほかに実は本年度問題になって残っております老齢者、遺族、傷病者の問題がございます。これは先ほど申し上げましたように、仮定俸給の積み上げというような方法でなくて、他の方法でわれわれとしてはいろいろ考えていきたいというふうに考えておりますが、これに対する所要経費の増額ということに相なるかと思います。  なお、そのほか個別問題といたしましてかなりの額が要るかと思いますが、なお具体的な額につきましては、まだ現在公表する段階になっておりませんので、御了承願いたいと思います。
  242. 伊能繁次郎

    ○伊能委員 ただいま伺ったところで、恩給局の来年度予算に対処する基本的な考え方はわれわれよくわかったわけでございますが、これについては同僚議員諸君の応援を得てわれわれもできるだけ努力をして、恩給局の考え方を推進したいと思いますので、長官におかれましてもその点は最善の御努力を願いたいことを希望申し上げておきます。  次に、この四十四年度恩給予算の調査費の問題でありますが、さいぜん受田委員から質問も出ましたが、調査費の資料(1)(2)の、昭和二十三年六月三十日以前に給与事由を生じた文官等の格づけ是正等に関する調査、昭和二十三年七月一日以降退職した文官等の恩給に関する調査、これらのものについてわずかに百三十万円程度の調査費でございますが、これが調査が完了する見込みはいつごろかということを伺いたい。
  243. 平川幸蔵

    平川説明員 調査完了の見込み時期は十二月末でございます。
  244. 伊能繁次郎

    ○伊能委員 そうすると、本件については、来年度の予算にはまだ入るのが困難だということになりますね。  それでは第三の問題として、過去数年間あるいは十数回、戦後十二回と言っておりますが、しばしば恩給是正が行なわれた結果、三公社等における共済組合、これは新しい法律によって、共済組合法で移行したものもありますが、それらも同じように今回の法律改正に準じて大蔵委員会等においても同様な措置が行なわれると思いますが、それらの是正によって生じた金額は、私どもの聞くところによれば、国が補てんするということに相なっておるのですが、どうも最終的には国が補てんするのだ、しかもそれらの是正について、共済組合の掛け金を是正する程度のものではないということで、毎回掛け金等については政府側、組合員側等いずれも是正をせずに今日に至っております。相当の金額が積み残され、政府から支給をするという約束を大蔵省がしておると言いながら、現に補てんはしないということで、このまま補てんをする、補てんをすると言いながら今後新しい調整規定に基づいてだんだんに恩給是正が行なわれると、共済組合方面においても相当な負担になる、かように考えますので、この点は大蔵省問題ではありますが、重要な関連がありますので、総務長官としてこの問題については特段の御配慮をわずらわさないと、共済組合方面の基金の問題に重要な影響を来たすおそれがありますので、この点についての考え方を伺えれば非常にありがたいと思います。
  245. 床次徳二

    ○床次国務大臣 ただいまの問題共済関係でありまして、大蔵省所管でございまして、私の所管でございません。しかし、御趣旨につきましては大蔵省のほうへよく伝えたいと思います。
  246. 藤田義光

    藤田委員長 これにて質疑は終了いたしました。     ―――――――――――――
  247. 藤田義光

    藤田委員長 これより討論に入るのでありますが、別に討論の申し出もありませんので、直ちに採決に入ります。  恩給法等の一部を改正する法律案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  248. 藤田義光

    藤田委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。     ―――――――――――――
  249. 藤田義光

    藤田委員長 この際、伊能繁次郎君外三名より、本案に附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。  趣旨の説明を求めます。伊能繁次郎君。
  250. 伊能繁次郎

    ○伊能委員 ただいま議題となりました自由民主党、日本社会党、民主社会党、公明党、四党共同提案にかかる恩給法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議案につきまして、提案者を代表してその趣旨を御説明申し上げます。  まず、案文を朗読いたします。    恩給法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)   政府は、次の事項について速かに善処するよう要望する。  一、恩給法第二条ノ二の規定については、本規定制定の趣旨にかんがみ、国家公務員の給与、国民の生活水準を基準として、消費者物価その他を考慮の上、その制度化を図ること。  二、ハンセン氏病については、その病状の特殊性にかんがみ、症項の査定につき特別の配慮を加えること。  三、外傷等に因る各種機能障害の査定基準については、傷病恩給症状等差調査会の報告において改善すべきであるとする点に引き続き検討を加え、速かにその是正を図ること。  四、旧満州拓植公社等の在外国策機関及び在外国策会社の職員期間については、外国特殊法人及び外国特殊機関の職員期間として、公務員期間との通算措置につき検討を加えること。  右決議する  本案の趣旨については、すでに先般来同僚議員から十二分に政府にその趣旨をただし、政府もまたこの附帯決議の趣旨に対応して善処をする、また附帯決議の趣旨を十分に実行をするという回答もありましたので、先般来の当委員会における同僚議員の質疑を通じまして、すでにこの点は明らかになっていることと存じます。したがって、よろしく御賛同を願いたいと思います。
  251. 藤田義光

    藤田委員長 本動議について採決いたします。  本動議に賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  252. 藤田義光

    藤田委員長 起立総員。よって、本案について附帯決議を付することに決しました。  この際、床次総務長官より発言を求められておりますので、これを許します。床次総務長官。
  253. 床次徳二

    ○床次国務大臣 ただいま御決議のありました事項につきましては、政府としても十分検討いたしますとともに、特に、ハンセン氏病の方に対する処遇改善につきましては、御決議のとおり今後の裁定において配慮いたしたいと考えます。     ―――――――――――――
  254. 藤田義光

    藤田委員長 なお、ただいま可決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成については、委員長に御一任願いたいと存じますが、これに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  255. 藤田義光

    藤田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     ―――――――――――――   〔報告書は附録に掲載〕     ―――――――――――――
  256. 藤田義光

    藤田委員長 次回は、来たる十二日午前十時理事会、午前十時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。    午後五時四分散会