運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1969-03-14 第61回国会 衆議院 内閣委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十四年三月十四日(金曜日)     午前十一時十五分開議  出席委員    委員長藤田 義光君    理事 伊能繁次郎君 理事 佐藤 文生君    理事 塩谷 一夫君 理事 塚田  徹君    理事 三原 朝雄君 理事 大出  俊君    理事 受田 新吉君       赤城 宗徳君    井出一太郎君       小渕 恵三君    菊池 義郎君       田中 龍夫君   三ツ林弥太郎君       山口 敏夫君    淡谷 悠藏君       華山 親義君    鈴切 康雄君  出席国務大臣         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)      床次 徳二君  出席政府委員         皇室経済主管  並木 四郎君  委員外出席者         宮内庁長官   宇佐美 毅君         大蔵省理財局国         有財産第二課長 市川広太郎君         運輸省航空局飛         行場部長    丸居 幹一君         参  考  人         (新東京国際空         港公団総裁)  今井 栄文君         専  門  員 茨木 純一君     ――――――――――――― 三月十四日  理事八田貞義君同月六日委員辞任につき、その  補欠として三原朝雄君が理事に当選した。     ――――――――――――― 三月十一日  婦人少年室廃止反対等に関する請願大原亨君  紹介)(第一七六八号)  同(金子一平紹介)(第一七六九号)  同外一件(大久保武雄紹介)(第一八五二  号)  同(亀山孝一紹介)(第一八五三号)  同(小峯柳多君紹介)(第一八五四号)  同外十六件(徳安實藏紹介)(第一八五五  号)  同(正示啓次郎紹介)(第一八五六号)  同(塚原俊郎紹介)(第一八五七号)  同外六件(橋本龍太郎紹介)(第一八五八  号)  同(福永一臣紹介)(第一八五九号)  同外一件(藤井勝志紹介)(第一八六〇号)  同外二件(藤田義光紹介)(第一八六一号)  同(坊秀男紹介)(第一八六二号)  同(武藤嘉文紹介)(第一八六三号)  同(武部文紹介)(第一九〇一号)  同(畑和紹介)(第一九〇二号)  同外一件(浜田光人紹介)(第一九〇三号)  同外一件(帆足計紹介)(第一九〇四号)  同外二件(山花秀雄紹介)(第一九〇五号)  同外二件(山本政弘紹介)(第一九〇六号)  同外六件(臼井莊一君紹介)(第一九〇七号)  同外一件(大村襄治紹介)(第一九〇八号)  同(金丸信紹介)(第一九〇九号)  同外十二件(久野忠治紹介)(第一九一〇  号)  同外二十三件(大柴滋夫紹介)(第一九七六  号)  同(武部文紹介)(第一九七七号)  同(浜田光人紹介)(第一九七八号)  同外一件(山花秀雄紹介)(第一九七九号)  同(山本政弘紹介)(第一九八〇号)  同(天野光晴紹介)(第一九八一号)  同(亀岡高夫君紹介)(第一九八二号)  同外二件(鯨岡兵輔紹介)(第一九八三号)  同(齋藤邦吉紹介)(第一九八四号)  同(澁谷直藏紹介)(第一九八五号)  同(菅波茂紹介)(第一九八六号)  同(八田貞義紹介)(第一九八七号)  同(湊徹郎紹介)(第一九八八号)  同(粟山ひで紹介)(第一九八九号)  元満鉄職員であつた公務員等恩給等通算に関  する請願川崎寛治紹介)(第一七七〇号)  靖国神社国家護持立法化反対に関する請願(  江田三郎紹介)(第一七七一号)  同(久保三郎紹介)(第一七七二号)  同(斉藤正男紹介)(第一七七三号)  同(阪上安太郎紹介)(第一七七四号)  同(山中吾郎紹介)(第一七七五号)  同(渡辺芳男紹介)(第一七七六号)  同(江田三郎紹介)(第一八九四号)  同(久保三郎紹介)(第一八九五号)  同(斉藤正男紹介)(第一八九六号)  同(阪上安太郎紹介)(第一八九七号)  同(野口忠夫紹介)(第一八九八号)  同(山中吾郎紹介)(第一八九九号)  同(渡辺芳男紹介)(第一九〇〇号)  同(石橋政嗣君紹介)(第一九四六号)  同(板川正吾紹介)(第一九四七号)  同(江田三郎紹介)(第一九四八号)  同(久保三郎紹介)(第一九四九号)  同(斉藤正男紹介)(第一九五〇号)  同(阪上安太郎紹介)(第一九五一号)  同(柴田健治紹介)(第一九五二号)  同(武部文紹介)(第一九五三号)  同(田中武夫紹介)(第一九五四号)  同(野口忠夫紹介)(第一九五五号)  同(森本靖紹介)(第一九五六号)  同(山内広紹介)(第一九五七号)  同(山中吾郎紹介)(第一九五八号)  同(渡辺芳男紹介)(第一九五九号)  靖国神社国家管理反対に関する請願井上泉君  紹介)(第一七七七号)  同(小川三男紹介)(第一七七八号)  同(大原亨紹介)(第一七七九号)  同(加藤勘十君紹介)(第一七八〇号)  同(河上民雄紹介)(第一七八一号)  同(栗林三郎紹介)(第一七八二号)  同(佐野憲治紹介)(第一七八三号)  同(阪上安太郎紹介)(第一七八四号)  同(實川清之紹介)(第一七八五号)  同(田代文久紹介)(第一七八六号)  同(西風勲紹介)(第一七八七号)  同(野口忠夫紹介)(第一七八八号)  同(福岡義登紹介)(第一七八九号)  同(堀昌雄紹介)(第一七九〇号)  同(安井吉典紹介)(第一七九一号)  同(田代文久紹介)(第一八五一号)  同(井上泉紹介)(第一八八三号)  同(大原亨紹介)(第一八八四号)  同(加藤勘十君紹介)(第一八八五号)  同(栗林三郎紹介)(第一八八六号)  同(阪上安太郎紹介)(第一八八七号)  同(佐野憲治紹介)(第一八八八号)  同(田代文久紹介)(第一八八九号)  同(實川清之紹介)(第一八九〇号)  同(野口忠夫紹介)(第一八九一号)  同(堀昌雄紹介)(第一八九二号)  同(安井吉典紹介)(第一八九三号)  同(井上泉紹介)(第一九六〇号)  同(大原亨紹介)(第一九六一号)  同(加藤勘十君紹介)(第一九六二号)  同(角屋堅次郎紹介)(第一九六三号)  同(木原実紹介)(第一九六四号)  同(栗林三郎紹介)(第一九六五号)  同(佐野憲治紹介)(第一九六六号)  同(阪上安太郎紹介)(第一九六七号)  同(實川清之紹介)(第一九六八号)  同(田代文久紹介)(第一九六九君)  同(内藤良平紹介)(第一九七〇号)  同(広沢賢一紹介)(第一九七一号)  同(平林剛紹介)(第一九七二号)  同(堀昌雄紹介)(第一九七三号)  同(古川喜一紹介)(第一九七四号)  同(安井吉典紹介)(第一九七五号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  理事補欠選任  参考人出頭要求に関する件  宮内庁法の一部を改正する法律案内閣提出第  一六号)      ――――◇―――――
  2. 藤田義光

    藤田委員長 これより会議を開きます。  この際、おはかりいたします。  理事八田貞義君が委員を辞任されました結果理事一名が欠員となっております。これよりその補欠選任を行ないたいと存じますが、先例によりまして、委員長において指名するに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 藤田義光

    藤田委員長 御異議なしと認めます。よって、三原朝雄君を理事に指名いたします。      ――――◇―――――
  4. 藤田義光

    藤田委員長 宮内庁法の一部を改正する法律案を議題とし、審査を進めます。  この際、おはかりいたします。  本案に関して新東京国際空港公団総裁今井栄文君を参考人とし、意見を聴取したいと存じますが、これに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 藤田義光

    藤田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。  なお、御意見質疑をもって聴取することといたします。     ―――――――――――――
  6. 藤田義光

    藤田委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。淡谷悠藏君。
  7. 淡谷悠藏

    淡谷委員 まず今井総裁にお聞きしたいのですけれども、実は宮内庁法の一部を改正する法律案の中に「現在、下総御料牧場千葉成田三里塚地区に所在いたしますが、昭和四十一年七月の閣議決定により新東京国際空港が同地区建設されることになったため、同牧場栃木県に移転することとなりました。これに伴いまして下総御料牧場の名称を『御料牧場』に、位置を『栃木県』に改めようとするものであります。」というのが大体この法案の骨子なんですが、その中に「なお、新牧場建設業務は、新東京国際空港公団によって進められており、」という一項があるのであります。もうすでにこの仕事が始まっておりますかどうか、総裁にお伺いしたい。
  8. 今井栄文

    今井参考人 下総御料牧場につきましては、昭和四十一年度から若干の予算公団としてはつけていただいておりまして、昭和四十二年度並びに昭和四十三年度用地買収並びに若干の整地その他の建設業務を開始してまいったのでございますが、昨年の暮れから用地約二百五十ヘクタールにつきまして全部買収を完了いたしましたので、本格的な造成工事に現在入っておる状況でございます。
  9. 淡谷悠藏

    淡谷委員 それじゃ、この委員会宮内庁法の一部を改正する法律案成立してもしなくても、公団仕事進捗にはちっとも影響がないのですね。国会がどう決定しようとも、公団公団としてこの仕事は進める、こういうふうに理解してよろしいですね。もう始まっておるのですからそうじゃないですか。
  10. 今井栄文

    今井参考人 高根沢御料牧場の新しい用地決定いたしましたのは昭和四十二年の三月でございまして、三月七日に宮内庁並び運輸省におきまして同時に発表をいたしております。自来空港公団は新牧場建設政府から命ぜられました。その命ぜられましたことは、四十一年度、四十二年度、四十三年度引き続いて国会の議決を経ました私ども予算の中に建設予算が計上されております。したがいまして、その予算に従って私どもとしては建設業務を進めてまいっておるという状況でございます。
  11. 淡谷悠藏

    淡谷委員 床次総務長官にお伺いしますが、いまのような公団の見方なんですが、そうしますと、あらためてこの法律案を急いで決定する必要がないのじゃないですか。長官もそういうお考えであれば、もうあらためてこの宮内庁設置法の一部を改正する法律案などは審議する必要はないと思う。その点はいかがでございますか。
  12. 床次徳二

    床次国務大臣 予算といたしましては、債務負担行為を始めまして、その準備をいたしておるわけですが、今度完成いたしますので、正式に決定をお願いする次第であります。
  13. 淡谷悠藏

    淡谷委員 この法律案が通らぬと完成したものはどうなりますか。法律案が通っても通らなくても差しつかえないものなら、あらためて出す必要はないと思う。この法律案成立をまって初めてその仕事進捗ができるものとわれわれは考えておりますが、審議する前にどんどん仕事のほうは実質的に進んでおる。そうしますと、何もこの委員会で一生懸命審議する必要がなくなってくる。この点は長官いかがですか。
  14. 床次徳二

    床次国務大臣 建設いたしましたときに、役所の組織法の一部として、宮内庁設置法の中には正式に加わることになるわけです。
  15. 淡谷悠藏

    淡谷委員 もし諸般の理由から国際空港ができなくなった場合、この完成した新しい牧場はどうなるのですか。現在の下総牧場と同じように、その牧場は拡張されますか。これは、この法律案を出した以上は、この法律案成立いかんがその仕事進捗影響を持つものとわれわれは解釈をしておる。どんどん仕事が進んでおって、この法律案は通らぬ、もしくは新国際空港ができなかった、こういう場合にはどうなりますか。
  16. 床次徳二

    床次国務大臣 今日の新牧場建設は大体八月一ぱいくらいをもって完成する見込みであります。その完成を予想いたしまして、この法律案を実施するわけでありますが、この法律案施行の時期もその完成のときを予想いたしまして、政令によって実施いたす予定であります。
  17. 淡谷悠藏

    淡谷委員 あくまでもこの新牧場というのは新国際空港ができるものという仮定のもとにつくられたものです。これがまだ、われわれには見通しがつかないさまざまな難点に逢着していることは事実です。これは今井総裁、ないとは言わせません。あなたが一生懸命新聞で宣伝している以上に事態は深刻です。多くの犠牲者も出ています。こういう中にあって、どんどん宮内庁のこの新牧場完成だけが進んだということは私はどうしても納得がいかない。第一、今井総裁、あなたはこの間運輸委員会でもその点を追及されておりますが、国際空港公団農地を取得するという法律的根拠は一体どこにありますか。
  18. 今井栄文

    今井参考人 これは政府側からの答弁が至当かと思いますが、私ども承知いたしておりますことは、空港公団が現在の農地法農地を取得できないということは一般的には明確でございます。しかし、新空港敷地並びに高根沢に新たに建設する牧場につきましては、農地法について、農林省運輸省のほうでお話し合いをいただきまして、農林省のほうで、高根沢御料牧場予定地における農地につきましては公団が取得できるという特例をしいていただいたのでございます。
  19. 淡谷悠藏

    淡谷委員 その点は非常に私、この間運輸委員会速記録を読みまして疑問に感じた。運輸省のその当時の出席の局長がきょうはお見えになりませんので、丸居飛行場部長にお聞きしたいのですが、一体国際空港公団農地を取得できるようになった法律の条文をあげて、本文まで読んで、ここでひとつ説明を願いたい。どういう根拠に基づくのですか。
  20. 丸居幹一

    丸居説明員 代替牧場のほうにつきましては農地法施行規則の第三条の七号というのがございますが、これに「新東京国際空港公団が国の牧畜及びその附帯事業の用に供する施設で新東京国際空港建設に伴い廃止されるものに代わるべきものの造成及び譲渡を行なうため当該施設の用に供する農地又は採草放牧地を取得する場合」というのが掲げてありまして、これで許可が要らないで公団が取得することができるということになっておると思います。
  21. 淡谷悠藏

    淡谷委員 その施行規則はいつできた施行規則ですか。
  22. 丸居幹一

    丸居説明員 昭和四十二年の九月二十九日農林省令第四六号でございます。
  23. 淡谷悠藏

    淡谷委員 その施行規則関係する農地法の条項をお示し願いたい。農地法の第何条に基づいてそういう施行規則をつくったか……。
  24. 丸居幹一

    丸居説明員 農地法の第三条に、許可を受けなければならぬということになっておりますけれども、それの除外する場合は、この限りでないという除外する場合が書いてあります。その第九号に、「その他省令で定める場合」というのが載っておりまして、これによるものと思います。
  25. 淡谷悠藏

    淡谷委員 その内容をしっかり御朗読ください。関係のあるところを。
  26. 丸居幹一

    丸居説明員 農地法第三条、「農地又は採草放牧地について所有権を移転し、又は地上権永小作権質権使用貸借による権利賃借権若しくはその他の使用及び収益を目的とする権利を設定し、若しくは移転する場合には、省令で定めるところにより、当事者が都道府県知事許可使用貸借による権利若しくは賃借権については、農業委員会許可)を受けなければならない。但し、左の各号の一に該当する場合及び第五条第一項本文に規定する場合は、この限りでない。」それで一号からずっと九号まで並んでおりまして、その最後の九号に「その他省令で定める場合」というのがございまして、これを省令で定めておるということになっております。
  27. 淡谷悠藏

    淡谷委員 委員長も農政に関してはベテランですから、いまの答弁で大体見当がついたと思います。農林省自体も、省令できめて何でも除外ができるというような考えを持つならば、これは農地法の根幹を脅かすものであります。何でもかんでもできたのでは、今度は宮内庁の問題ですから、まずいいとしまして、宅地造成の会社などがやはりこの特例にどんどん国会の承認も得ないで適用されるのであれば、農地法の根本に触れますよ。これはあらためて委員長農林省からも御出席を願って、この点はもっと追及したいと思う。  そこで、今井総裁にお伺いしますが、宮内庁関係のこの牧場買収は幾ヘクタールで、公団予算は大体どれくらいになっておりますか。
  28. 今井栄文

    今井参考人 面積は当初は二百七十ヘクタールで予定いたしておったのでございますが、宮内庁と最終的にお話し合いの結果約二百五十ヘクタールということに相なったのでございます。  それから公団予算でございますが、昭和四十一年度の予算計画額は三億五千三百万円、昭和四十二年度の事業予算計画額が十一億九千百万円、昭和四十三年度の計画額が十七億二千万円、これらは繰り越しを入れてでありますが、こういうことになっております。
  29. 淡谷悠藏

    淡谷委員 合計幾らになりますか。
  30. 今井栄文

    今井参考人 合計予算総額としては二十三億六千万円であります。
  31. 淡谷悠藏

    淡谷委員 先般の木原委員の質問では、大体二十二億というように聞いているのですが、もうすでに一億六千万が狂っているようですね。  もう一つ伺いますが、宮内庁関係以外の代替地千葉県を通して取得されているようですが、この総面積並びに買収価格幾らになっていますか。
  32. 今井栄文

    今井参考人 ただいま一億六千万超過いたしておるということでございますが、これは公団予算といたしましては調査費その他でございます。したがいまして、御料牧場用地取得並びに建設につきましての総予算は大体二十二億というふうに考えていただきたいと思います。  それから千葉県における代替地取得価格につきましては、富里付近におきまして一反歩当たり七十万円、それから成田市内におきまして八十万円ということでございまして、その取得いたしました総額は、全体といたしまして、民有地で約三百ヘクタール、これに御料牧場残地が百ヘクタール、並びに県の本来の所有地が百ヘクタール、合計で約五百ヘクタールの代替地を用意いたしてございます。
  33. 淡谷悠藏

    淡谷委員 その買収価格総額幾らですか。
  34. 今井栄文

    今井参考人 これは先生も御承知のように、農地法によりまして公団農地を一般的に取得できないというたてまえで、当初代替地を取得いたします際に千葉県知事に公文をもってお願いしましてその御承諾を得まして千葉県において代行をしていただいたわけでございます。したがいまして、その価格についての詳細な額はいま手元にございませんが、民有地につきまして先ほど申し上げましたように全体で約三百ヘクタール約二十億でございます。
  35. 淡谷悠藏

    淡谷委員 この間運輸委員会で、あなたも御出席のようでしたけれども小川三男委員から千葉県の開発公社千葉県の債務負担として三百町歩約二十二億の金が支払われていますと言っておる。あなたはこれを訂正しませんでしたね。二億ですか、違っているのです。二億といったら民間では大きな金ですよ。ついこの間言った、これは二月二十八日ですか、そのときの審議といまの審議とではまた違ってくるのですね。どっちがほんとうですか。
  36. 今井栄文

    今井参考人 二十億と申しましたのは約という意味で丸くいたしましたのでございまして、先般の運輸委員会における答弁、二十二億ということに訂正いたしたいと思います。
  37. 淡谷悠藏

    淡谷委員 国民の出している金ですから、そう丸くしたり三角にしたりしてもらいたくないのです。正確に言ってください。二億なんという金は大きい金です。偶然宮内庁用地民間用地全体が二十二億と一致しておりますね。宮内庁のこの御料牧場の問題は、この比重に見られるように、いまの建設には非常に大きな比重を持っているのです。第一期工事には宮内庁のこの用地がなければ工事ができないような状態でしょう。そうじゃないですか。しかも、民間に対しては新しい施行規則をつくっていないんじゃないですか。依然として千葉県が代行しておる。一方では公団が自分で仕事をし、一方では千葉県にまかせている。あなたはこのときの委員会二人三脚でありますとか言っておりますね。二人三脚というのは一体どういうことなんですか。空港をつくる上での二人三脚というのは一体何のことですか。
  38. 今井栄文

    今井参考人 簡単にお答えいたしますが、二人三脚というような表現を用いましたのは、空港予定地が現在千葉県にあるわけなのでありまして、私ども千葉県の御協力を得なければこの事業は遂行できないというたてまえで、あくまでも千葉県と空港公団との二人三脚であるというふうに申し上げたのであります。  それから、なお千葉県といたしましては、御承知のようにこの空港建設を機会におくれておりました北総地帯の全体の開発計画というものを持っておられるわけでございまして、空港を中心とする北総開発に私ども公団としてやり得るあらゆる御協力を申し上げる、こういう意味二人三脚と申し上げたのであります。
  39. 淡谷悠藏

    淡谷委員 どうかするとすっころびそうなあぶない二人三脚だと思いますが、特に私この際総裁に御注意申し上げておきたいのは、どのような抵抗があろうとも、どのような事態が出てこようともまず手をつけたのだからぜひともこれはやるのだ、これは公団総裁としては当然お考えでしょうけれども、場合によっては思わざる事故が起こってやめることがあるのです。  大蔵省からおいでを願っておるのは、朝鮮戦争の場合に米軍ロッククライミング演習場として群馬県の妙義山演習場に指定したことがある。非常に激しい抵抗が起こりました。多くの犠牲者も出ました。しかもその中にあってどんどん買収を進めたのです。進めておる途中で朝鮮戦争がやみました。これにつれてこのロッククライミング演習場も取りやめになりました。あの妙義山のてっぺんの岩だらけ土地がいまもなお国有地として残っておるはずでございますが、その当時の買収した総面積並びに買収価格等、この際お伺いしたい。
  40. 市川広太郎

    市川説明員 お答えいたします。  けさほど急に調査にかかりましたので、一部あるいは間違いがあるかもしれませんけれども、現在まで調査しました範囲内でお答えいたしますと、二十九年六月までに防衛庁米軍提供のために買収いたしました面積が一万一千二百四十一坪でございます。これを米軍に提供いたしておりまして、三十年三月十五日に米軍から返還になりました。返還になりまして三十年の六月十五日に防衛庁より大蔵省普通財産として譲り受けました。現在この財産遊園地ということで地元地方団体に貸し付けさせております。
  41. 淡谷悠藏

    淡谷委員 その当時買収価格は一ヘクタール当たり幾らだったのですか。
  42. 市川広太郎

    市川説明員 細部のところはお答えする資料がございませんので、また調べましてお答えいたします。
  43. 淡谷悠藏

    淡谷委員 一万一千二百四十一坪というとずいぶん大きいのですが、坪千円くらいでしょう。そうじゃないですか。その当時の実際の価格幾らかというと坪千円どころではないですよ、百円足らずです。演習地に提供するからといって、これだけの土地時価の十倍で買っておいて、演習地が要らなくなりました、国有財産にします、大きな国損じゃないですか。これをもっと詳しくお調べ願いたい。当時、時価幾ら買い取り価格幾らであったのか、現在の価格幾らになっておるのか、そういう点なども知りたい。とてもきょうはこのままでは終わるわけにまいりませんので、次の委員会にぜひ大蔵省から御提出を願いたい。  床次総務長官にお伺いしたいのですが、いまお聞きのとおりの状態で、計画どもあまりに先走りしますと思わざるところに大きな国損が生ずるのです。いまの例などは最もいい例です。ですから、今井長官非常な自信を持っておやりになっているようですけれども、当初富里計画しました国際空港計画と現在の計画ではおよそ半分ですね。滑走路の数も半分、敷地も半分。半分で済むものならばなぜ最初富里の場合も半分の計画でいかなかったか。現在では地元で四千メートルの滑走路一本だけにとどまるような錯覚さえ持っている。そこで、そんなふうな計画の基本にかなりな動揺がある場合、どんどん全体の構想がまとまらないうちにやるようであっては、私は将来非常にこの国際空港の前途が心配になる。その点についてのお考えをお聞きしたい。
  44. 今井栄文

    今井参考人 新空港予定地決定いたしましたのは昭和四十一年の七月四日の閣議だったと思いますが、それ以前に先生御指摘のように富里あるいは霞ケ浦というような候補地についていろいろ論議があったことは承知いたしております。富里は当時約七百万坪という構想でスタートしたことも聞いておりますが、それはいずれも当公団の発足前の問題でございます。私は推測いたしますに、理想的な空港というふうなことで当初いろいろ考えたのでございますが、現在のわが国の地理的な条件、非常に山岳地帯が多く平野地が非常に少ないというふうなことで、内陸空港をつくるという現実の問題にぶつかりまして、なお、東京湾内の埋め立て空港は――羽田の非常に便利な現在の国際空港、いわば空の銀座通りというふうな非常に複雑な航空路が設定されておるわけでございまして、埋め立て空港というものは実際問題として羽田を極端に制限しなければつくれないというふうな状況で、やむを得ず東京を中心といたしまして大体半径六十キロの範囲内で候補地を求めるということで、当時三里塚の現在の位置が最終的に決定したと思います。  しかしながら、七百万坪の飛行場が理想的であるか、あるいはまた三百五十万坪で十分足りるかというふうな問題につきましては、これは今後の問題でございますが、私どもとしては現在の日本の地形的な状況あるいは東京国際空港として東京と直結する立地的な条件あるいは十分な平地が確保できるというふうな観点から、現在の成田空港予定地というものを政府が御決定になったのでございますが、私どもは現在のところではそれ以上の広い敷地をあの地域に求めることは非常にむずかしいのではないか。それから一千六十ヘクタールというものは約三百万坪、現在の羽田の約三倍の地域を持つことになるのでございますが、現在の世界的に有名な国際空港の中でも、たとえばロンドンのヒースロー空港は約四百万坪余でございますが、こういった空港と大体匹敵し得る面積を確保できる。それと滑走路。四千メートルの滑走路並びに二千五百メートルの滑走路、それから三千二百メートルの横風用の滑走路というふうな三本の滑走路をつくりまして、その中で最も近代化された各般の施設を整備することによって東京の表玄関としてふさわしいりっぱな空港ができるというふうに現在でも私どもは確信しております。
  45. 淡谷悠藏

    淡谷委員 現在のこの計画というのはこのあとで変更はないわけですね。前にちょっと富里抵抗があっただけで半分に減ったのですから。総裁は非常に楽観しておられるようですが、前の委員会でもお答えになったようにさまざまな問題がまだ残っておる。そういうふうな問題がどうにも解決がつかない場合にはこの計画はもっと縮小される、そういうこともあり得るのですか。
  46. 今井栄文

    今井参考人 公団といたしましては現在の空港予定地政府の指示によりまして空港建設することを命ぜられているわけでございます。私どもは現在の空港建設計画を変える意図は全然ございません。
  47. 淡谷悠藏

    淡谷委員 公団総裁としてはそれ以上の答弁はできないことはわかりますよ。  運輸省にお聞きしたい。運輸省はいまの三里塚空港計画というものを最終決定のプランとしてお考えになっているのか。
  48. 丸居幹一

    丸居説明員 そういうつもりでございます。
  49. 淡谷悠藏

    淡谷委員 もう一つお伺いしたいのですが、新東京国際空港というのは羽田の補助港なのか、羽田とは別個な独立した国際空港なのか。これはしばしば委員会などで問題になっていますがね、いろいろニュアンスが違う。そういう点ではどうお考えです。羽田と併用する空港なのか、それとも羽田とは別個な空港なのか。
  50. 丸居幹一

    丸居説明員 新空港が完全にでき上がりましたら国際線は全部そちらのほうに移しまして、東京の国際空港は新空港になる予定でございます。羽田はもっぱら国内線に使用されることになる予定でございます。
  51. 淡谷悠藏

    淡谷委員 羽田が国際空港として使用できないという理由はどこにあるのですか。
  52. 丸居幹一

    丸居説明員 国内線ががんがん飛んで参りまして、かりに羽田に――羽田は現在国際線として使っておるわけでございます。それから国内線も入っておるわけでございます。どちらの着陸回数のほうが多くなるかといいますと、われわれの見通しでは国内線のほうが発着回数が多くなる。現在でも多くなりますけれども、将来も当然その傾向をたどっていく、このように考えております。したがいまして、羽田を国内線専用にしましても、もう羽田のほうが先に一ぱいになるというふうな状況でございますので、羽田は国内線しか使えぬのでなしに、発着回数からいいましてやはり国際線と国内線を分けたほうがいいのだという結論なのでございます。そこで、国内線をそっちに入れるということは施設その他の点で不便でございますので、もっぱら新空港を国際線に使い、羽田は非常に東京から至近の距離にありまして便利でございますので、羽田を国内線に使いたい、かように考えておる次第でございます。
  53. 淡谷悠藏

    淡谷委員 現在の羽田の発着機数ですが、いま、羽田には国際線、国内線、それからいろいろな会社の私用飛行というのもありますね。こういうような数、特に米軍がこれを使っている度数並びに自衛隊が使用する度数、詳しくお聞きしたい。
  54. 丸居幹一

    丸居説明員 羽田は現在――現在というとちょっと、資料が四十二年の資料でございますが、四十三年はまだそろっておりません。四十二年の資料で発表させていただきますが、国際線が三万三千五百十四回、国内線が七万七千七百四十回、合計いたしまして十一万一千二百五十四回というふうになっております。いま先生おっしゃるのはMACチャーター機か何かと思いますが、ちょっといま数字を持ち合わせておりませんのですが……。
  55. 淡谷悠藏

    淡谷委員 これはこの間運輸委員会でも問題になりましたが、中曽根運輸大臣と原田運輸大臣との中に――原田運輸大臣とは言いませんが、現在の運輸省考え方の中に、米軍使用を断われるか断われないかで相当論議が巻き起こされている。したがって、これはどうしても、この羽田が狭いということに関しては、米軍機の使用、自衛隊機の使用度数というものや、特に伊藤忠その他の個人会社が使っている例があるでしょう、そういう点もお出し願わぬと狭いということの実証にはならぬ。一つ、あなたは狭い原因を隠しておりませんか。あなたのほうで、この成田空港をつくる前にさまざま羽田の対策について出された資料がありますね。この委員会にも配られていますよ。それにはっきりブルー14というのをいっているじゃありませんか。アメリカの専用路等があるために羽田が非常に狭くなっているということを書いているじゃありませんか。それをちっともあなたは羽田の狭い原因にあげておられない。こっちも相当調べているのですから、変な隠し立てをしないで、はっきり言ってもらいたい。事は非常に重大な問題ですから、われわれもっと頭を冷やして冷静にならなければならない。
  56. 丸居幹一

    丸居説明員 羽田のブルー14の話になりますけれども、おっしゃるとおり、これがないほうが羽田の離発着について便利なことは確かなんでございますけれども、しかしいま私たちが技術的にいいまして、一番やはり羽田で狭いという原因が起こりましたのは、むしろエプロンの狭さというのが一番困った原因なんであります。それで、ただいまエプロンにつきましては十八バース拡張中でございます。これを拡張いたしましたら、さっき申し上げましたように、大体羽田が一ぱいになるというふうに考えられるのは離発着回数十七万五千回でございますが、十七万五千回離発着いたしますのに相応するバースが確保できるというふうに考えております。それで羽田が狭くなる、一ぱいになるということは、その滑走路の能力である十七万五千回というものに到達するということなんでございまして、先生のおっしゃるように、ブルー14がないほうがいいじゃないかということは、おっしゃるとおり、ないほうが羽田の離発着に便利でございますけれども、それよりも前に滑走路の十七万五千回という制約のほうがむしろ羽田の死命を制することになりますので、十七万五千回に到達する時期というものが羽田が一ぱいになるときというふうに私ども考えております。  それから、さっきの資料がいま出てまいりましたので、ちょっと……。MACチャーターの羽田着陸回数は、昭和四十二年は二千二百二十六回となっております。
  57. 淡谷悠藏

    淡谷委員 委員長に一つお願いがあるのですが、いまの御答弁運輸省が出されました資料とはだいぶ幅があります。前の委員会には一ぺん配られましたけれども委員も新しくなっておるでしょうし、委員長も新しくなっておりますから、あの資料をもう一ぺんお出し願いたい。非常に重大な原因としてブルー14をあげていますよ。特にあの新島の射爆場などもブルー14があるために射爆場を移せないじゃないですか。そのことは肯定されるでしょう。日本の飛行機もやっとこのごろは何機かがあそこを通るかもしれませんけれども、わざわざ危険きわまりない大島のほうを回っていっているでしょう。この事実をお認めになりますか。
  58. 丸居幹一

    丸居説明員 たいへん私、局長でなくて申しわけないのでございますが、私飛行場部長で、ほかの所管のことについて責任ある御回答ができないのは非常に残念でございますけれども、私は羽田の飛行場の能力というものは、旅客定期の離発着が十七万五千回に到達すると羽田の滑走路はフルになるというふうにわれわれは技術的に結論を出しているのであります。ブルー14がそれにプラスされる、その能力の減少にブルー14がプラスされるというふうには実はいままで理解をしておりませんでした。
  59. 淡谷悠藏

    淡谷委員 この運輸省の出しました資料というものは、はっきり運輸省の名前をうたった資料なんですよ。それを現在あなたが否定されるようであれば、これはやはり大臣に出てもらわなければしようがない。しかもこの資料の中には、木更津案あるいは羽田拡張案に対する資料ですが、いまのままで飛行機が飛んでくる、SSTのようなものになった場合に、空路がブルー14に非常に押えられるので、千代田区の上を旋回する以外に方法がないとはっきり書いてあるじゃありませんか。百トンの油を積んでくる飛行機が万一人家密集地帯の千代田区の上で事故を起こした場合は非常に大きな惨害を起こすから、そこで千葉県に持っていきたいのだとはっきり書いてある。それとあなたの言ったことはまるで違う。これはどうしても一ぺん運輸大臣に出てもらいまして、安保条約による軍事使用の問題とからめて、もう一ぺんやらなければとても話がつかぬと思う。ぜひあの資料はあらためてお配りを願いたい。  なお、宮内庁長官に、これはたびたびおいでを願いまして申しわけないのですけれども、私たちは宮内庁の立場というものは、千葉県の多くの農民と同じような立場だと思っております。前から長官にもお話を申し上げ、またこの間の委員会でもあなたの非常に苦渋に満ちた御答弁を聞きましてお察しできる。一体あの牧場使用を申し出られたのはいつごろのことで、だれが一体話をされたのか、率直にお聞かせ願えないでしょうか。
  60. 宇佐美毅

    ○宇佐美説明員 私どもに運輸大臣が正式と申しますか、お話しいただきましたのは、ちょっといま何年というのは覚えておりませんが、中村運輸大臣のときだったと思います。
  61. 淡谷悠藏

    淡谷委員 前の運輸委員会では山村委員がおもしろい発言をしているのですよ。これは空港公団総裁もお聞きでしょう。これは千葉県が何にもほしかったのではないのだ、どうしても政府が総理大臣からしゃにむにやれと言われましてやらざるを得ないからやったのだと、こういうことを山村さんが言っておられる、そのとおりだと思うのです。前の成田港公団総裁も言っておられましたけれども富里があのとおり反対されましてどうにもならない、そこでやはり佐藤総理と友納知事と話し合いをしてしゃにむに押しつけたのがいまの空港でしょう、非常に調査その他に至らない問題がたくさんございます。その問題がいま出てきているのです。それを力一方で押していこうという構想の中には、とんでもないところにしわ寄せがいくおそれが非常にあると思う。一例を申し上げますならば、今度の栃木牧場というものの土質調査をされましたか。これは総裁にお聞きしたい。
  62. 今井栄文

    今井参考人 新牧場の土質調査は十分行なっております。
  63. 淡谷悠藏

    淡谷委員 それは現在の下総の牧場と土質において同じですか。
  64. 今井栄文

    今井参考人 私、技術屋でございませんので、技術的な答弁はできませんが、現に私自身も下総にも行っておりますし、それからまた高根沢のほうの新しい牧場へたびたびおじゃまをしておりますが、いろいろ専門の方々のお話をお伺いいたしましても、今度の牧場予定地の土質その他につきましては、いろいろな観点からの見方はあると思いますけれども、現在の下総御料牧場よりは非常によろしいというふうな印象を受けておる実情でございます。
  65. 淡谷悠藏

    淡谷委員 ほんとうですか。あなたがそうおっしゃるなら、ぼくも聞いてみたいのですが、これは宇佐美長官にひとつお話しを願いたいと思うのですが、下総御料牧場の沿革についてあらましをお聞かせをいただきたいと思う。
  66. 宇佐美毅

    ○宇佐美説明員 江戸時代は江戸幕府の放牧場というような意味で一万五千ヘクタールくらいあったといわれております。明治八年内務省の勧農局牧場といたしまして開設をいたしまして、明治十三年に下総種畜場となり、獣医学校等を設立したという記録が残っております。十四年には農商務省の所管となりましたが、越えて明治十八年から宮内省所管の下総種畜場ということになり、二十一年に下総御料牧場と改称いたしました。そのときが三千四百八十八ヘクタールでございます。その後いろいろなこまかい変遷がございますが、ときに民間に開放されまして、昭和の十七年に下総御料牧場と改称されまして、二十一年、戦後、政府の緊急開拓計画によってさらに八百七十六ヘクタールを林野局に移しまして一般に開放されました。それからさらに二十三年には自作農創設特別措置法によりまして百三十ヘクタールを農林省へ移管いたしました。昭和三十一年から宮内庁の付属機関として今日に至ったわけでございます。
  67. 淡谷悠藏

    淡谷委員 そこで公団総裁、あなたは専門象にと言っておりますが、専門家といっても広うござんして、いろいろ間違いをする専門家もあるのです。特に、これがどうしてもほしいということになれば、いろいろ専門家にも専門家としてのあなたのほうに対する答え方があるでしょう。一体だれに頼んで調査してもらったのですか。係の方でけっこうですよ。
  68. 今井栄文

    今井参考人 農林省でございます。
  69. 淡谷悠藏

    淡谷委員 やはりこれは農林省に来てもらわなければならないですな。  下総御料牧場の地下水の高さどのくらいありますか。それは宮内庁長官には無理でしょうから、今度農地造成をやっております公団のほうからお聞きしなければならない。
  70. 今井栄文

    今井参考人 地下水につきましては、場所によって若干の高低があると思いますが、実はきょうはその調査を担当いたします工務担当の責任者を連れてまいっておりませんので、その点につきましては、できれば詳しい資料を先生のお手元へお届けいたしたいと思います。
  71. 淡谷悠藏

    淡谷委員 あとで資料を出されるならば、そのときでもいいのですが、とてもこれじゃ審議できない。  下総牧場についてはいろいろな話があるんです。かつて明治政府が大農法を取り入れようとしたときに試験牧場にしたのはあそこなんです。そして初めて外国の牧草を取り入れましてあそこでは失敗している。アルファルファという草をやりましたので地下茎が六尺くらいはえるのです。二メートル近くはえます。牧場の地下水が高かったことが調査されなかったために、これは外国の牧草はだめだという非常な軽率な判断がその当時の専門家によってなされている。したがって、今後やはり牧場地として決定するためには、地上の土質の調査だけじゃなくて、地下水その他万般にわたるような調査が完了しませんと、これでりっぱに代替地ができたとはいえない。特に空港公団総裁をはじめとして農業の専門家じゃないでしょう。それが、ただ土地をほしいばかりにあちこちに代替地をつけて、あそこへ移れ、ここへ移れという。宮内庁も気の毒です。まして同じ二十二億の金を使う、一般代替地へ入れられる農民の気持ちを考えてごらんなさい。百姓というものは金をやればそれでもう土地を投げてどこへでも行くのだという、この発想は誤りですよ。あなたは何と答えているか。土地を追われた農民たちがどういう空港関係の職業につくのかという質問があった場合に、こんなことを言っているじゃないですか。何か有利な近代的な仕事にはつけない。みんな草刈りだとか掃除だとかというものに農民はいくであろうとあなたは言っているのですね。言っていませんか。じゃ聞きましょうか。山村委員の質問に対する答弁です。あなたが言っていないというなら、ひとつ記憶を呼び返してもらいたい。「構内の営業につきましては、いろいろなものがあると思います。たとえば、国際線における旅客を対象とする高級なレストランであるとか、あるいはまた、商品の陳列、宣伝を目的とする空港のロビーにおける真珠であるとか、あるいはまた光学機械であるとか、あるいはまたトランジスタ関係のテレビ、ラジオその他等、そういうふうなものについては、これは地元の方々がそういうことをおやりになることは、私は必ずしも適当ではないと思います。あるいはまた、外国の旅客を対象にしますインフォーメーションというふうな仕事も、これは相当な経験と、語学その他につきましてのたんのうな人たち等を集めなければならぬというふうな問題等もございますが、しかし、それ以外に地元の方々のおやりになる仕事としては、運輸関係をはじめ、あるいはまた、ガソリンスタンドであるとか、ハイヤーであるとか、タクシーであるとか、あるいはまたクリーニングであるとか、あるいはまた印刷の仕事であるとか、あるいは、みやげ物の売店であるとか、あるいはまた一般の方々を対象とする、あるいはまた従事員を対象とする食堂であるとか、いろいろな仕事があるはずでございます。もちろん、飛行場の清掃の問題であるとか、あるいは除草の問題であるとか、」ということをちゃんと言っているでしょう。大体百姓が土地を離れてやる仕事というのは、おそらくこんなものでしょう。しかも土地というものは、新しいところに移ったからといって、長い間やってきた土地のはだ身に感ずるあたたかさというものは、感じられるものじゃないです。それが現在のあの開拓地の人々をはじめ、農民が、七十歳をこえた老人までが決死隊を組織して、どうにもならないといってやっている心情じゃないですか。あまりに土地闘争としての成り立ちを、この問題に対して総裁はお知りにならない。この間、宇佐美長官お留守の場合に、この農民がどうしても陳情申し上げたいというので、次長の方にお目にかかりました。宮内庁でお通しくださって、中へ参りました。ほんとうに純真な農民たちの持っていったものは何だと思われますか。昔の佐倉宗五郎が持っていったような「上」というあの陳情書ですよ。それで次長から、いまの請願法によると、これはもうだめですからこれはお伝えできませんが、口頭で機会のあるときに陛下に申し上げておきますという答弁を聞いて、何ぶんお願い申しますといって下がってきた。こういうふうな農民の心情というものに対して、幾ら近代的な空港をつくるのかもしれませんけれども、もう少し血の通った、あたたかいやり方があると私は思う。このままでいくならば、農民自体が黙っていませんよ。しかも今度のこの牧場の問題は、第一期工事の半分を占める重要な牧場でしょう。なお第二期工事、第三期工事に対しては大きな抵抗がある。もしもこれらが、宮内庁でこれを提供したからわれわれの土地も取り上げられるのだというふうにいったら、一体どうなさいます。私はこの問題は慎重の上にも慎重を期しませんと、まさに千葉県の農民の血の上に国際空港をつくらざるを得ないというような、国家としてまことに憂うべき状況になると思います。単なる反対ではありません。運輸省の資料を見ればわかりますが、あの空港完成したあとには、百里の基地と競合するということもはっきり書いているじゃないですか。これはもう総裁も知らないはずがない。その点は、農地法の問題もあるし、運輸省の問題もございます。防衛庁の問題もあるのです。ブルー14がいつまで存続するのか、どのように変化するのか、これを見なければ羽田空港の将来もやはりはっきり判断するわけにいかない。米軍のチャーター機の問題、自衛隊機の使用回数などもはっきり出されておりませんし、これ以上審議を進めましても水かけ論になりますから、きょうは保留しておきたいと思う。あらためて運輸大臣、農林大臣も御出席の上この問題を根本的に審議できるように、ぜひ委員長において慎重にお取り計らいを願いたいと思う。
  72. 藤田義光

    藤田委員長 ただいまの淡谷委員の御発言に関しましては、できるだけ善処いたしたいと存じます。
  73. 淡谷悠藏

    淡谷委員 きょうはこれにいたします、答弁がないですから。
  74. 藤田義光

    藤田委員長 これにて参考人に対する質疑は一応終了いたしました。  今井参考人には、長時間にわたり当委員会の審査に御協力をいただきまして、まことにありがとうございました。
  75. 藤田義光

    藤田委員長 受田新吉君。
  76. 受田新吉

    ○受田委員 今度御提出に相なっております宮内庁法の一部改正法案、これをお尋ねをする前提として、まず国の基本的な問題として、憲法第一条にある国民統合の象徴であられる天皇の御地位並びにこれに関係する諸問題をお尋ねしたいと思います。  憲法第一条の規定する象徴天皇というお立場は、一切の行政上の責任、そういうものを持たない立場のお方が天皇であるという形になるのか。またある程度の天皇に対する、統治というきびしいことばでなくして、憲法第一条の規定による陛下御自身の責任問題がどこかにひそんでおるのかどうか、ひとつ御答弁願いたいと思います。
  77. 宇佐美毅

    ○宇佐美説明員 象徴たる天皇の御地位あるいはその権能、これは申し上げるまでもなく憲法によってその権能は制限的に列挙されておるものと存じます。しかもこれにつきましては、常に内閣の助言と承認ということでございますので、行政的な問題につきましては当然お触れにならないという考え方であると理解をいたしております。
  78. 受田新吉

    ○受田委員 憲法第七条には「天皇は、内閣の助一言と承認により、国民のために、左の国事に関する行為を行ふ。」と、「国民のために」こういうことが書いてあるわけですから、国民のためにならない国事行為は行なうことができないというまた裏の解釈ができるかどうかです。
  79. 宇佐美毅

    ○宇佐美説明員 内閣の助言と承認そのものが国民のためでなければならないというふうにも読めるわけでございます。内閣の助言と承認がある揚台にそれがはたして国民のためかどうかという御判断は、内閣が責任を持ってそろいう立場で助言と承認をしておられるというふうに私ども考えるほかはないと思います。
  80. 受田新吉

    ○受田委員 憲法の規定からは、天皇に対しては、内閣の助言と承認がありたる事項に関する拒否権は一切ない、こういうことですね。
  81. 宇佐美毅

    ○宇佐美説明員 一言にしていえばそういう関係であろうと思います。
  82. 受田新吉

    ○受田委員 たとえば、内閣の助言と承認の中に、著しく国民のためにならぬことを党派的根性からやる総理があらわれた場合に、これに対して陛下が御注意することができるのかどうかです。とんでもない総理が存在する場合に対する、その助言と承認を求めて陛下に御裁断を仰ぐ、憲法第七条の規定の中でそれに対して御注意はできるかどうか。ひとつお答え願いたい。(「それは仮定の問題だ」と呼ぶ者あり)
  83. 宇佐美毅

    ○宇佐美説明員 御注意という意味はちょっとむずかしくなりますが、御質問はできるだろうと私は思います。
  84. 受田新吉

    ○受田委員 仮定でなくして実際の問題で、つまり質問をしてこれでよろしいかと念を押される。そこを私は、ある程度陛下のそういう良心に違うような助言と承認事項を携えて憲法第七条の国事行為を行なってほしいという要請のありたる場合に、陛下の御質問またはこれでよいかと念を押される、このくらいはやはりやられてしかるべきではないか。私は実は天皇陛下が大東亜戦争の終結に対する御前会議で、最後には閣議がまとまらないままで鈴木総理が陛下の御裁断を仰いだ。これは私、非常に幸いをしたわが国の答えだったと思うのですが、陛下自身が戦争終結への裁断を下された、すなわち陛下には非常に平和に対する思想がおありである。それから後に、終戦後マッカーサーの支配下に属せられたその期間中も、マッカーサーにお会いになって、私の身はどのようになってもいい、国民のためにこの問題の処理をお願いしたいという、やむを得ない占領下にある立場でありながら、なおかつ自己を犠牲にして国民のしあわせのために投げ出そうとされた、こういう奉仕の精神。私、読売新聞の「昭和史の天皇」をずっと愛読しておるのでございますが、その間の事情などを当時思い起こしてみて、なかなかいいときに陛下がおられたものである。もし真に天皇陛下が非常に好戦的な性格のお方であったり、どこかに覇者的な風格があったりしたならば、わが国はどのようなことになっていたかもしれないという意味において、わが国は天皇が平和愛好の思想をお持ちいただいたおかげで、この答えが今日こうしてよいほうへ用いられたという、非常に感謝の気持ちもあるわけです。  その点についてひとつお尋ねしてみたいのですが、陛下がシナ哲学の王覇の弁-王道か覇道かの弁の中で、王道をおとりになったという点、もし覇道をおとりになった、覇者たる陛下で教育されていたとし、また陛下自身がそういうお気持ちを持っていたとしたならば、驚くべき悲しい現実がいまもたらされていると私は思うのです。明治天皇の御進講をされた元田永孚先生や現在の陛下に対する杉浦重剛先生たちのそうした天皇に対する御教育-進講ということばを教育ということばにかえましょう。陛下に対するお小さいときからの教育、王道教育のしからしめたものではないかと思うのですが、私の考えに間違いがあるかないか、ひとつまず御答弁願いたい。
  85. 宇佐美毅

    ○宇佐美説明員 陛下のいま仰せになりましたようなごりっぱな御人格というものがだれの力によってできたか、どういう御教育があったかということでございますが、とにかくこれはなかなか具体的に、こういうことがあってこういう影響ということは、教育というものの性格上むずかしい問題でございます。やはり生まれながらのお素質もございましょうし、それからいまお述べになりましたようないろいろな碩学の方々のうちから自然に御体得になったことじゃないかと思うのです。どんなにりっぱな本、どんなにりっぱな先生がいても、これを受け入れる御素質がなければ何もならないことじゃないかと思います。長い間いろんな方々が心を込めて申し上げたことが必ずやいまの御人格の基礎になったと私も考えておりますけれども、具体的に何かと仰せになってもちょっと困ることだと思います。
  86. 受田新吉

    ○受田委員 私は、陛下もだんだんお年を召されてくるのですけれども、好戦的な軍部政府が連続して昭和七年以来終戦まで及んだわけです。その中で平和愛好者でいらっしゃる陛下の存在というものは非常に意義があったと思うのです。私は日本を救い得た原因はそこにあった、いま顧みてそう思っております。そこはやはり陛下に対する御進講の担当者の人格の反映というものが陛下の天分にプラスしたものである、かように思っているのですが、やはり今後象徴天皇となられる皇太子並びに皇太孫、浩宮さんたちの教育に対しても、私は重要国事事項を御担当される御地位にある象徴天皇のあと継ぎになられるような方に対する御教育というものについても、宮内庁はいまの王道を、仁の道を、仁、義、礼、智、信、人倫五常の道をお教えになる、四書五経の非常に豊かなる思想を十分教育しておられるのかどうか。近代的な国家の立場からマルクス思想というようなものも一応あるということだけは教えられるのかどうか、そういうことも一緒にあわせて御答弁願いたい。
  87. 宇佐美毅

    ○宇佐美説明員 皇太子殿下の御修養と申しますか、あるいは御幼少のころからの御教育ということでございますが、前にはやはり御教育参与というような形でいろいろな方が参画しておられましたが、ようやく御結婚になり、二人のお子さまをお持ちあそばして御年三十五歳になられた。しかし御日常の御勉強というものはなかなかヘビーでございます。将来のお立場から、まず内外の歴史というものを常に御研究でございますし、また同時に、現下の国際情勢とか国内事情の基本的な動向あるいは実情というものをいろいろお聞き取りになり、あるいは実地に御視察になり、有識者と話し、青年と話すというようなことで、ずいぶん御多忙な御日常でございます。  たとえば、国際情勢は隔週に外務省の条約局長が刻々と世界の動きを申し上げておりますし、また、平沢和重氏等もときに出ましていろいろ申し上げておりますし、それから各国に駐在する日本の大使が帰ってきますと、お召しになってお聞きになる。こういうようなことで、国際的な問題については非常に進んで御勉強でございます。  国内の問題につきましても、私はお若いうちに日本の基本的な産業、経済の現況をしっかり把握していただきたいということを希望申し上げて、そういう意味からいろいろな施設あるいは研究所等を御視察になっております。  なお、そういう問題についても中山伊知郎、藤瀬五郎という人をときにお召しになりますし、それから科学的な面で村野賢哉氏等をお召しになり、定期的になさっておるのであります。もとより皇室の伝統であります福祉事業に対する御関心も非常に強く、各方面の専門家の現在の実情あるいは施設を御訪問になる等の努力を続けられております。  歴史も先ほども申し上げましたように、日本の歴史を中心にし、東洋の歴史を中心としていま御勉強でございますし、ことに明治以来の近代政治史として岡義武氏から隔週数年にわたって御勉強になっております。そのほか、漢学としては吉川幸次郎その他和歌とか英語とかずいぶん多方面にわたって御研究でございます。ただ将来、仰せになりましたような、基本的な皇室として伝統であることは、陛下も常に仰せになりますように、国民に先立って憂え喜びはあとにするというような先憂後楽というような思想、あるいは仁智というような意味のこと、こういった将来象徴としておなりあそばしたときに一番大事な根本問題は、お小さいときからいろいろお育て申し上げております。いまはそういったふうに各方面の御勉学がございますけれども、また常にそういう問題を基本として身につけていただくように努力をいたしているわけでございます。  浩宮さまもただいま学習院初等科の三年、今度四年におなりになる。いままでは低学年でいらっしゃいますので、基礎的に体力を整え、基本的な御人格というようなことの御勉強を主として、しかも普通の生徒と同じような学校の教育をお受けになっておりますが、なお殿下がみずから御自分のお小さいとき以来のことをお考えになりまして、特に日本の歴史――まだ三年でいらっしゃいますけれども、いまの皇太子殿下のお小さいときに非常にわかりやすい日本の歴史を御進講した三上次男という先生から日本の歴史をお聞きになりますし、また最近は宇野哲人先生から論語の素読をお受けになっておるようなわけで、まだ非常な低学年でいらっしゃいますから、基本的な御体力とそういったお小さいときからの人格の形成という問題に非常に留意をいたしていろいろ御勉強を願っているところでございます。
  88. 受田新吉

    ○受田委員 わが国の国家の形態が立憲君主国という形態のものか、これは法律論から見てお尋ねをしてみたいのですが、これはいま関連するのでお尋ねするのですが、さよう了解してよろしゅうございますか。
  89. 宇佐美毅

    ○宇佐美説明員 これは学界にいろいろな議論がございますし、そういう論もあることは承知いたしております。
  90. 受田新吉

    ○受田委員 憲法をもって統治せられ、そして君主制があるという意味で立憲君主国、つまり象徴天皇という立場であっても、憲法第七条で国事を行なう権をお持ちである。これは国事権、一つの天皇陛下の権利です。それがある以上は、立憲君主国と通常の意義における国家形態のあり方というものを理解してよろしいかどうか。これは宮内庁長官として確たる信念をもって御答弁を願いたいと思います。
  91. 宇佐美毅

    ○宇佐美説明員 ただいまも申し上げましたとおりに、憲法があります意味において立憲である。それから象徴であられる陛下を君主というならば立憲君主国ということになりますし、そういう論もございます。いま私個人の考えでなく、政府答弁といたしますと、そういうことについてはっきりとどういうことばを使うかということは直接お答えしにくいことだと思います。
  92. 受田新吉

    ○受田委員 私は、なぜこれをお尋ねするかというと、憲法第一条の国民統合の象徴であるという陛下の地位、国民の総意に基づく、国民全体のそういう意思に基づいて象徴天皇を規定する、こういうことになっておるというと、単なる契約説というような意味でなくして、民主的に天皇を象徴とするという憲法を否定しない限り、憲法を尊重する限りは、国民の総意で天皇の御地位がきまっておるわけです。しかも、第七条に、天皇は国事を行なう、最高の国事を行なう権利を持っておられる。そういう意味から、やはり政府宮内庁の解釈というものは私非常に大事なことだと思うのでありますが、専制君主国ではない、これははっきりしました。立憲君主国である。総務長官、国務大臣として御答弁願います。
  93. 床次徳二

    床次国務大臣 私、法律的なことについてはよくわかりません。これは法制局長官からお答えすべきことかと思いますが、ただいまのような前提に立って申しますれば、立憲君主国であるということが言えると思うのであります。  なおお話がございましたごとく、わが国の憲法、これは新憲法になっておりまするが、旧来からのわが国の伝統というもの、これを十分に踏んまえました上において一条の表現があるというふうに考えておる次第であります。
  94. 受田新吉

    ○受田委員 そうした立憲君主国の君主となられる後継者の教育というものは、私は非常に重大であると思うのです。いま長官からるる御説明をいただいたのですが、しかし昔のように「神聖ニシテ侵スヘカラス」という旧憲法の第三条の地位から、天皇は神にあらずと神格否定宣言をされて今日きておられる。すなわち、国民とともにある陛下であるという形になられた。したがって、帝王学という学問を教育されるのか、あるいはそれも含めて、つまり大衆の中に大衆とともにある天皇という立場への準備の教育をきれるのか、基本的な考え方をお示し願いたい。
  95. 宇佐美毅

    ○宇佐美説明員 法律論を一応離れまして、私は、日本の国というものが、憲法ができます前から天皇と日本国民と国土はあったという感じを持つくらいでございます。したがって、古くから今日に伝わってまいりましたそういったことにつきましては、現在まで制度がいろいろ法律的な意味において変わってまいっておりますけれども、根本的に天皇は常に国民とともにあるということであると思います。ですから、将来におきましても常にそういうことを中心に考えていかなければいけない。たとえば、皇太子殿下が側近の者にも、自分は国民のためなら何でもやる、何でも言ってきてくれとおっしゃいます。そういうようなことがやはり皇室の伝統というふうに私は解釈いたします。
  96. 受田新吉

    ○受田委員 万葉集をひもとくと、開巻のまず初めに、二十一代雄略天皇の御製が出ておる。「籠もよ み籠持ち ふくしもよ みぶくし持ち この丘に 菜摘ます兒 家聞かな 名告らさね そらみつ やまとの國は おしなべて 吾こそをれ しきなべて 吾こそませ 我こそは 告らめ家をも名をも」という長歌が出ておる。かごを持ち、へらを持って丘で菜をつんでいる娘さんよ、あなたの名は何といいますか、私はそらみつ大和、日本を治める天皇ですよ、あなたの家はどこですか、あなたの名は何ですかと、当時天皇みずからが野べに散歩をされて、丘の上で菜をつんでいるかわいい娘さんに呼びかけておられる。私は、この万葉の思想の中にどことなく風格の高い民主的な天皇御一家の存在を各所に拝見しておるわけです。いまにして陛下が町に出られて、あなたの名は何ですか、お家はどこですかというような風景が見られない。私はデンマーク、スウェーデン、ノルウェーの国々をおととしの秋つぶさに視察したときに、馬に乗られた皇帝と総理大臣とが町を自由に散歩しておられる。これを撃ち殺すというような不届きな者もおらぬ。非常にとけ込んで買いものをされる皇族の方々、自由に散歩される皇室の御存在という民主的なこれらの国々は、てまえみそじゃございませんが、民主社会党政権の国家である。そうした国々で非常に大衆にとけ込んだ皇室一家、王室一家というものを拝見しました。  わが国には陛下御自身が国民とともにありたいと、あの終戦の勅語に、朕なんじ臣民とともにありと言われて、初めて陛下の立場を明らかにされ、そして国民のためにという憲法第七条の天皇の国事行為の権能が得られる。自分の身を犠牲にしてでも国民を救ってくれとマッカーサーに言われておるすなおな陛下のお気持ちに反して、宮内庁があまりにもきびしく陛下が国民と接触されることをはばまれるおそれはないか。多少不心得な国民もおるので、ある程度私は警戒は必要だと思います。との国民の中には正常な心を持った者ばかりでない、天皇制を否定する国民もある。そういう中での多少の危倶はありますけれども、陛下御自身が国民とともにありたいと仰せられ、国民統合の象徴であり、国民の総意に基づく天皇の地位、そして陛下が国民のために国事行為を行なうという憲法の規定において、宮内庁としてきびしく古い伝統を考え過ぎられる危険はないかと思うのですけれども、これは陛下の側近として――側近といえば侍従長に当たられるわけですが、行政官として宮内庁を担当され、陛下をお守りする立場にあるお役人の最高地位にあられる宇佐美先生お答えを願いたい。
  97. 宇佐美毅

    ○宇佐美説明員 ただいまのお尋ねのとおり、われわれの任務は、常に皇室と国民とをほんとうに親密に結びつかせるということが一番大事な点であろうと私ども考えております。常に時代の動きを見、情勢を見てやるべきであると思います。  外国の例をお引きになりましたが、もちろんいろいろその国の歴史あるいは国民との関係というもので当然あらわれ方が違うこともございます。それから伝統ということも、一挙にすべてを破壊するということはなかなかむずかしいこともございます。しかしながら、われわれの向かっていく方向はあくまでもいま申し上げましたような点でございますが、たとえば野球、変な例でございますが、ピッチャーがあって、うまくキャッチャーに受けてもらわなければならぬという問題もございます。そういう点が私どものいろいろ苦心があるところでございますが、いろいろな点についてずいぶん前とは変わっていると思っております。もちろん十分とはまだ申しませんけれども変わってきておりますが、これがなかなか一般の人の目につくことが少ない。たとえば、最近いろいろ週刊誌にも出ておりますけれども、私どもから見ると、どうも一つの片寄った方向だけを報道されているように思えます。そういう点で、両陛下はじめ皇族さま方が努力していらっしゃることを国民の方々に知っていただかなければならぬと思います。  それから、いまの御意見に対しましては全くわれわれも同様でございまして、これからも大いに理解をしておつとめいたしたいと存じます。
  98. 受田新吉

    ○受田委員 理解をしてつとめるように努力したいというお話でございます。これは非常に大事なことで、これをりっぱに行なうことによって、国民とともにある天皇御一家、こういう形が国民の中に浸透することによって、皇室御一家というものが末長く繁栄すると思うのです。ところが覇者の風格を持ち、また側近におられる方々があまりに陛下を特殊の御存在のようにされ過ぎて、統合の象徴であられる陛下を神格的なものにする要素がどこかにひそむようなあまりきびしい形をおとりになることによって、国民の中に皇室に対する批判的な勢力というものが出る危険性があると思います。つまり、天皇御一家が、またその御子孫が常に平和を愛せられ、民衆とともにあるそういう姿、日本の古い歴史と伝統からいって上代のわが皇室と国民のように、丘の上で菜をつむ娘さんに呼びかけるこの風景を日本の将来にずっと持っていくように努力すべきであって、どこかに無理をすることによって天皇御一家の存在に対する批判的な勢力がふえるという危険性があると思うのです。この点は私たちの心づかい、陛下のおそばにおられる宮内庁長官以下が、こうしたうるわしい、大衆とともにあり、朕なんじ臣民とともにあり――いまは朕ということばはありません、いまは国民とともにある天皇一家であるぞというこの気持ちを十分浸透させることによって、皇室と国民大衆の間がより親和し融和する、そしてわが国の繁栄に結びつけることができると思うのです。国家百年の大計のもとに、宮内庁長官を中心に常にこの心づかいをもって導いていただきたい。  ヨーロッパの君主国の中には専制的な性格の皇帝がおったら必ずこの皇室はやられてしまっている。そういう意味からも、ほんとうに大衆とともにある王室は繁栄しているというこの先進諸国家の実例を見るときに、長い間の歴史と伝統を持つわが国の皇室と国民大衆が結びつくという方向を終始持ちながら、しかも天皇の権威を十分保ちながら、これを国家百年の大計のもとに宮内庁長官、ひとつお導きを願いたいと思うのです。国家のあり方について、永遠である姿をひとつとっていただきたい。御所見を伺いたい。また、国の基本に関する問題でありますがゆえに、国務大臣からも御答弁願いたい。
  99. 床次徳二

    床次国務大臣 ただいまお話がありましたことは、これは日本の天皇制の特色である。他の国ではそういう長い間の伝統というものがない。これはもう陛下御自身の御英明とか、皇太子殿下個人としての御英明という問題を離れまして、やはり伝統の美風というものも背景に忘れることはできません。国民もまたその理解というものを十分に考えなければならないと思うのでありまして、そういうたてまえにおきまして、今後ともますます日本の天皇制というものが古い特色を発揮し、そして国家とともに、国民とともに繁栄することを私ども期待するものであります。政府といたしましても、その趣旨におきまして十分に努力をいたしたいと思うのであります。  特に皇室の問題につきましては、宮内庁は総理府の機関ではございますが、しかし宮内庁の特色というもの、その使命というものを私ども十分尊重いたしまして努力いたしたいと思います。
  100. 受田新吉

    ○受田委員 その使命を果たすための具体的な方法として、今度の法案に直接関係する問題をひとつお尋ねしてみたいのです。  これは淡谷先生からもお尋ねがあったわけですが、御料牧場のことでございます。宮内庁法の第八条に規定してある中にこの御料牧場の任務が書いてある。「宮内庁の管理する牧畜及びその附帯事業を行う機関」と、こう書いてある。これは牧畜ということばがあるわけですが、一つの事業として牧畜をやるというのかどうかということ、それからその附帯事業というのにどんなものがあるか、お答え願います。
  101. 床次徳二

    床次国務大臣 宮内庁長官から具体的にお話があると思いますが、御料牧場におきましては、単に牧畜をずるのではなくして、直接御用の畜産、酪農製品をつくるということ以外に、牧場の設置を通じまして、外交団に対する問題とか、また国民の農場経営に対する思想の啓発等、いろいろの任務を帯びておるわけであります。さような意味において、普通の農園とは非常に特色のあるものだと私ども考えております。
  102. 宇佐美毅

    ○宇佐美説明員 牧畜、事業と書いてございますが、結局その牧畜によって一つの収益をあげる、そういう意味はあまりないわけでございます。むしろ御用に立てる、牧畜、附帯事業というのは、それに基づく、いろいろ牛乳から乳製品をつくるというような意味のものを含めて書いてあるわけでございまして、目的といたしましては、そういうところから出発いたしまして、なおああいう総合的な牧場というのは日本にもほかにない、あるいはある意味においては、文化的な意味でひとつ大事な意味もあるということもございます。なお、最近見学者も三里塚あたりでも非常に多くなって、ことに青少年が、馬とか牛とか羊とか、知らない子供もたくさんおるわけです。そういうような人もだんだんふえつつございます。そういうことで、そういった意味の総合的なもの、それからいま総務長官の言われましたような外交団の接伴というような意味も込めて、そういうものをひっくるめてこういう文字で表現されておるわけでございます。
  103. 受田新吉

    ○受田委員 私は、二百五十ヘクタールといえば牧場としては、日本としては非常に広い大規模な牧場だと思うのです。その牧場でどのくらい牧畜をしておるのか、数、それの生産量がどれくらいあるのか、それぞれの種類の生産量というものもひとつ承りたい。そして国民とともにある皇室御一家ということになるならば、その生産物の一部を、庶民とともに喜びを分かつ意味で、この間、菊池氏がはしなくもちょっと触れましたが、私、このことを前から――国民とともにある皇室として、御料牧場で出た生産物を肢体不自由児の施設に交代に交互に持っていく、あるいは母子寮、老人福祉の施設、こういうところへ、これは陛下の牧場で出た生産物であるといって、たまでけっこうでございますが、それが分配される計画があるのかどうか。陛下御一家及び宮内庁の方方、長官も牧畜牧場の生産物を御飲用になっているかどうかは別といたしまして、そうした大衆とともにある一角をどこにか持っておく必要がある、それを含めて御答弁を仰ぎたいと思います。
  104. 宇佐美毅

    ○宇佐美説明員 現在の牧場における状況でございますが、大体軽種馬、いわゆるサラブレッド系統が二十四頭ございます。これは新牧場では廃止をする予定でございます。競馬馬はやらないということでございます。あとは乗馬あるいは馬車の馬、乗馬が十四頭、競馬が三十一頭、それから乳牛が三十一頭、それから綿羊が百十三頭、それから豚が九十頭、鶏が千三百七羽というのがことしの一月の現況でございます。それでこれは主として両陛下の御用あるいは御陪食あるいは園遊会等のほうに必要なものは回して、余りましたものは一般に売っておるといいますか、払い下げておるわけでございます。払い下げの量というのは、そう多くございません。ちょっと申し上げますが、いまの数字はちょうど過度期でございますが、いわゆる競馬馬の生産をいたしましたときに、一般に払い下げるものは五千四百七十八万余でございます。
  105. 受田新吉

    ○受田委員 これは金額ですか。
  106. 宇佐美毅

    ○宇佐美説明員 はい、金額でございます。それはサラブレッドが非常にいいのが出ますと非常に高くなるわけでございまして、その他のサラブレッド以外のものの金額というのは約五百万程度でございます。あまり多くの数量ではございません。
  107. 受田新吉

    ○受田委員 総務長官が公務のためお帰りになるということですから、長官にちょっと途中質問をはさみますが、また残りは締めくくりのときに時間があるようですから御答弁願いたいと思うのですが、いま皇室を中心としたいろいろな公式制度が、すでに長期にわたって、私からも政府へ結論を出すように要請が繰り返されておるのです。つまりいろいろな儀式それから国旗、国歌、並びに儀式の中にある葬儀、こういうものが、吉田さんのときも国葬というかっこうになっていたけれども、何らの法的根拠のない国葬を政府がかってにやっておられる。そういう国の全体の問題を行政府の思いつきでやられるような不愉快なやり方というものは、国葬を受けた者としてもあまりいい気持ちはしないわけです。そういう問題について、各種の問題が残っている。これを何かの機関で、きわめて自由な機関で討議することを二、三回やったようですが、一向その答えが出たという報告も受けておりません。歴代の総務長官が私に答弁したのは、公式制度については目下こういう機関でこうやっておるとかいうことを二、三回私承ったが、その答えはどうなっているかの答弁をいただいておらぬわけです。国家形態の上において、特にこれは賓客を迎える方式、祝賀の方式、葬儀の方式、こういうものを含めた、また元号の問題が依然として未解決である。皇室典範の改正における女帝を認めるかどうかについてもはなはだ不徹底であるし、成年の規定も、どこかに一般国民との間に差がある。こういうような諸問題を解決する任務は総理府にあり、その長官の重責であると私は判断いたします。  長官御就任以来、公式制度については何らかかわり知っておられないというお立場か、前長官より事務引き継ぎを受けたが、一向に自分が長官就任以来手をつけるに及んでいない、こういう状態か御答弁を願って、そして御退散を仰ぎたいと思います。
  108. 床次徳二

    床次国務大臣 お答え申し上げます。  ただいま御質問になりましたところのいろいろ重要な問題、元号とかあるいは国旗とか国歌の問題、国賓の扱いの問題、あるいは法令の公布制席の問題、あるいは天皇の国事行為の委任等の問題につきまして、昭和三十六年以来、公式制度連絡調査会において検討してまいりました。いろいろ詳細に検討してまいりましたが、その中には漸次定着してまいるというものもあるわけでありますが、しかし、なかなか重要な問題でありまして、これが決定しかねておるものもあるわけであります。御意見の中におきましては、審議会等の諮問機関を設けて、そうして結論を出したらどうかという御意見のようにも思うのでありますが、しかし問題によりましては、そういう審議会によりまして結論を出すことを必ずしも適当でないというものもあるわけでありまして、今日まだ検討中であります。  なお元号等につきましても数回にわたりまして御質問をいただいておるわけでありますが、今日におきましてもこの問題につきましては、さらに世論の動向等を十分に検討いたしまして、そうして慎重に取り扱って結論を出すべきものではないか、かような立場から事務的に検討を続けておる次第であります。
  109. 受田新吉

    ○受田委員 宮内庁長官、私がいま競馬馬を御料牧場でやっておられるということについては、これはちょっと筋違いだと思うのです。そういう賭博的な性格の馬を御料牧場でやる。しかもこれはこういう付属機関の大事な一翼を承っておる機関でやっておるという、競馬馬の育成を皇室の牧場でやっておるという、これは私非常な不愉快なことを聞いたわけでございますが、何のために賭博的な馬を御料牧場で養われたのか、サラブレッド問題、品種の問題という問題をお取り上げになってはおられるようですが、それは適当なところでやるべきです。御料牧場というのは民間牧場よりも模範的なものをつくろうということで、ただ純然たる事業欲にかられておる牧場ではないということを――さっきから事業とは何かとお尋ねしたら、そうお答えになっておるのです。ちょっと御答弁を仰ぎたいのです。
  110. 宇佐美毅

    ○宇佐美説明員 サラブレッドをいたしましたのは歴史は古いと思います。明治以来、昔日本で馬が非常に必要だというふうに明治天皇のおぼしめしもありまして、おそらく乗馬馬の生産の御奨励ということがずいぶん行なわれておりますから、そういう意味から始まったことと思います。サラブレッドというものは、私も専門家でございませんが、競馬馬のほかにアラブ種とかけ合わせて乗馬のいいものを生み出すという面もあるわけでございます。しかし、新牧場に至りますときに、これはやめようということで計画からは落としてあります。これは面積が減ってきた一つの理由にもなるわけであります。仰せのとおり、現状においては、もしそれを売りますとむしろ競馬のほうにいくことが多いわけですので、われわれは今度はその飼育の技術は絶えますけれども、やめようという決意をしているわけであります。
  111. 受田新吉

    ○受田委員 五千万円以上の払い下げ所得がある中で大半が競馬馬である、こういうのに至っては、私はまことに釈然としない。千羽以上の鶏も飼っておられる。皇室御一家だけで召し上がるにしてはあまりにも多過ぎる鶏である。そうしますと、宮内庁の方々がそのおすそわけをいただいておるのか。あるいは宮内庁の人はそれはタッチしておられないか。私はたまには、同じところにおられる方ですからおすそ分けいただいていいと思いますが、民間に払い下げられてほかの収入を得られるというよりは、いま申し上げたような社会福祉関係施設に、これは陛下の御料牧場で出たものだからといって、お年寄り、身体障害者、肢体不自由児、かれんなる就学の困難な学童、そういう子供たちに、お昼のときにこれは御料牧場から出た卵ですよ、こういうふうなことをある特定のところへ分散して、あるいは非常に優秀な経営をやっているそういう施設を選んではこれをやっていく。こういうようなところに、国民とともにある皇室一家の御料牧場の価値があるのではないかと思うのです。わずかの所得を得るよりも、そうした意味で国民とつながる牧場であるというかっこうにするならば、牧場に対する批判というようなものが漸次消えてくる可能性も私はあると思うのですが、運営のしかたにいささか間違いはなかったか、御反省ありやいなや、今後の施策とあわせて御答弁願います。
  112. 宇佐美毅

    ○宇佐美説明員 生産品の処置につきましてはおおむね御陪食とかあるいは園遊会とかその他のほうに回すほかに、余りましたものは一般に払い下げる。その払い下げの中に宮内庁の職員も若干ございます。具体的に申しますと、私ども年にバター半ポンドくらい、ときに回ってくることはあります。それだけであります。それで前には、若干鶏なんかもやろうとしたことがございます。私はそういうものは全部、いまやめさしております。一般のほうになるべく回すということをいたしておりますが、ただいまのお考えの点につきましては将来においてよく検討いたしたいと存じます。
  113. 受田新吉

    ○受田委員 そうしますと、この牧畜付帯事業というのは鶏、こういろ意味ですか。事業の付帯性というのは何ですか。
  114. 宇佐美毅

    ○宇佐美説明員 これが始まりましたときには三里塚のほうの面積は広うございまして、それで牛馬の飼料、トウモロコシとか何とかやりまして飼料をつくるということも一つの付帯事業というふうに考えております。それからバターとかハムをつくることが牧畜に入るかどうか存じませんが、そういう付帯的な事業、そういうものをひっくるめて考えられているわけであります。
  115. 受田新吉

    ○受田委員 お話をもとへ戻します。  皇室の尊厳、権威というものを、私たちは民衆とともにある皇室でありながらも、やはりある程度保たなければならない。そこで天皇御一家及び皇族の方々――特に皇族の身分を離れて一般国民となられた旧皇族の方々、こういう方々の生活というものも、旧皇族であったという経緯において、宮内庁はやはりお考えになるのか。もう皇族の身分を離れた者はもう一般民と同じことであるから、旧皇族というものは全然考慮していないということなのか、はっきり御答弁願います。
  116. 宇佐美毅

    ○宇佐美説明員 宮内庁法のたてまえはあくまでも皇族だけでございまして、すでに皇族の籍を離れられた方々にまで当然の職務としては入っておりません。しかしながら、陛下のお子さまが御降嫁になって、それはもう一般民であるから宮内庁は知らないというわけに実際問題としてはまいりません。旧皇族さんの中にも、御親戚の立場の方もおられる。それからいまの時代から考えますと、旧皇族に対しましての一般の人の扱いというものが、何か皇室の一部という感もまだ残っておるようにわれわれも思います。ですから、そういうところでやはり皇室というような広い意味の評価の問題になる場合もあり得るというふうに思いまして、当然の職務でございませんし、なかなか私どもは口に出すのもむずかしい世の中になっておりますけれども、しかしわれわれとしてはそういうことに対して、法律上何もないから何でもいい、ほっておくという感じよりも、できたらできるお世話はしたい、しかし権限もございませんし、もちろん予算が使えるわけでもございません。そういうことで、なかなか苦心がございますが、常に頭にございます。
  117. 受田新吉

    ○受田委員 頭にあるだけで行動にはあらわれてないわけですね。旧皇族の元宮殿下という形になって、一般のいろいろな機関から悪用きれる危険もあるわけです。ところが元宮殿下という肩書きは非常に魅力があるので、そういうところで悪用の弊はないかを御調査されたことがあるかないか。それからまた、元宮殿下という立場で生活上非常に困られて、ひんしゅくを買うような行為をされる元宮殿下はないか、これもひとつ御答弁を願いたい。
  118. 宇佐美毅

    ○宇佐美説明員 旧皇族あるいは御降嫁の方々につきましても、やはり何かあると、こういうことがあるがやっていいだろうかと御相談に見えることもございます。あるいはわれわれが聞き込みまして、どうも非常にぐあいが悪い、これは国民にとっても迷惑な問題じゃないかというようなことがございますと、一応御注意をいたしたりすることがございます。そういうわけで、あまり具体的に申し上げるわけにもいかないのでございますけれども、昔のように宗秩寮というようなものもあるわけでもございませんし、なかなか実際問題は効果があがらないこともございますけれども、われわれが気がついて、ああいうことはよろしくないと思うということを御注意申し上げることは相当数あると思っております。
  119. 受田新吉

    ○受田委員 皇室の御一家と、それから皇室の藩屏という昔の華族というものもあった。その中で旧皇族というものはやはり独特の存在、その人御一生の間はやはり元宮殿下であることは間違いないですから、その場合に天皇御一家のほうで内廷費、宮廷費、どちらでもいいですが、そのいずれかを適当な方法で、旧皇族の品位を保つために支出するということが認められるものかどうかでございます。
  120. 宇佐美毅

    ○宇佐美説明員 ただいまの憲法なり皇室経済法のたてまえから申しまして、皇族以外のものに、いわゆる憲法のことばで「賜與」――くださることは国会の議決が一々要るというたてまえでございます。いまの内廷費の限度ではなかなか大ぜいを相手にされることもできませんし、法律的にも、厳密に申しますとできないたてまえになっております。
  121. 受田新吉

    ○受田委員 そうしますと旧皇族は全く野放し、かように了解してよろしゅうございますか。
  122. 宇佐美毅

    ○宇佐美説明員 そういう意味において、経済的な御援助というものも非常にむずかしゅうございます。しかしわれわれの努力でできますことはいろいろ御相談に乗っておるというのが実情でございます。
  123. 受田新吉

    ○受田委員 私は、この点はやはり皇室の権威を保つために皇室の御親戚――いずれにしても旧皇族は御親戚ですから、遠い親戚か近い親戚かは別として、御親戚であるごとには間違いないわけですから、そういう方々の対社会的な関係において、これは元宮殿下ですから、やはり皇室の尊厳にも関係するのです。元宮殿下ということが必ず肩書きに書かれるので、これを否定するわけにもいかない、本物ですから間違いないのです。そういうときに皇室という立場を尊重する何らかの形がとられなければならないこともあり得る。それは御親戚づき合いということで、内廷費の中に御親戚づき合い費をちょっと――あるいは宮廷費のほうがいいかもしれない、どちらかで。御親戚づき合いの経費まで制約しているわけじゃないでしょう。どうですか。非常に困った旧皇族があるならば、陛下が御親戚としてそれにおつき合いをする、金一封をお贈りする、こういうようなものは国民も一々あまりきびしく申さぬと私は思いますよ。そう金額が大きいわけじゃないのだから、ある限度を限って、たとえば謝金に相当する程度、薄謝に相当する程度のものが陛下から御下賜される。金一封がどれだけか、私いつか三千円が一番低いのだという話を聞いたわけですが、天皇の御下賜料というのであけてみたら三千円ほどあった「天皇陛下御供物」と書いてあるからすばらしいものかと思ってあけてみたら三千円とある。封筒と入れもののほうが大きくて中身のほうが少ないというようなこともあるわけですから、そういう陛下が親戚づき合いをする経費に対して宮内庁はどういうお考えですか。
  124. 宇佐美毅

    ○宇佐美説明員 率直に申し上げますが、やはり元の皇族あるいは御親戚という関係において、冠婚葬祭、日常のおつき合いというものはあり得ます。ですから、それは法律上の問題からいっても賜与の制限の範囲内にとどまる問題でございますから、ちゃんと、たとえば八十八におなりになっておめでたいというときにはお祝いを何かお贈りになるとか、そういう普通の元皇族とのおつき合いという意味において出ていることは出ておりますが、やはり大きな意味で財政援助をするとかなんとかいうことは、法律的にも問題になる心配もございます。ただ、そういうおつき合いならばよろしいということでお願いをしているわけであります。
  125. 受田新吉

    ○受田委員 皇室用財産と行政財産宮内庁は管理されておる。その皇室用財産は一応わかる。行政財産というものがどういうものであるか、これはその財産処分に対して皇室用財産と相違する点はどこか、現在ある行政財産で漸次これを整理の方向へ持っていこうとするものがあるか。皇室の財産としては日本は多過ぎるというふうに菊池議員がこの間言うておりましたけれども、その皇室財産の各国との比較、こういうものを含めて御答弁を願いたい。
  126. 宇佐美毅

    ○宇佐美説明員 すでに御承知のとおりに、皇室用財産というものは、国有財産のうち皇室の用に供するということでございまして、これは一々こまかく申し上げるまでもなく、皇居とか赤坂の御用邸、常磐松の御用邸、下総の牧場もそうでございますし、葉山の御用邸とか鴨場とか那須の御用邸、それから関西へいきますと京都御所とか修学院離宮、桂離宮、正倉院とか、各地にございます御陵というものが皇室用財産国有財産でございます。  そのほかの公用財産というものは、皇居内の宿舎とか各地にございます宿舎、あるいは京都事務所とか陵墓の宿舎、あるいは付属地というようなものが公用財産ということに相なっておるわけでございます。  それで、皇室用財産というのは、戦後、新憲法当時に皇室用財産になりましたもの以外にふえつつあるものは、今度下田の御用邸を、本年度の予算買収いたしました。これがありますけれども、あとは特にふえたところはございません。このほうは、皇室で使わない、御用としてはもう御使用にならないという意味でございますと、宮内庁で解除をいたしまして大蔵省にお渡しする。たとえば品川の東久輝さまの土地のごとき、最近ではそういう例でございます。あれはこちらで解除して大蔵省にお渡しして、そのあと大蔵省が処分をきめられたわけでございます。  行政財産のほうも、宿舎がおもでございますから、これは勤務上なるべく皇居の近所あるいは赤坂御用邸にいてもらいたいものとかございまして、また不足の点は大蔵省とも御相談して、少しずつふえておりますけれども、特に目立つようなものはございません。
  127. 受田新吉

    ○受田委員 それで、一つここで問題があるのですが、御陵墓に関係した、これは書陵部が御担当なんですが、明治七年の太政官達の中に「御陵墓調査上発見ノ古墳届出方」というのが一つある。この規定はまだ生きておるのかどうか。  それから、いま全国で御陵墓はどれくらいあるか。この間、奈良県の南部に旅をして、この内閣委員会で視察してみたら、長慶天皇の御陵墓のあるところが荒れ果てておるのですね。天皇の御陵はかっこうがよく似ていて、そういうのがあると、どこもかしこも陛下の陵という。この長慶天皇はあとから追加された九十八代の天皇でいらっしゃるので、御村上、長慶と、こう追加された天皇であられるので、一つの問題があったわけだと思うのですが、御陵墓が確定しない。それから、いま書陵部が御担当だと思いますけれども、御陵墓は荒れ果てて、秋など落ち葉がかさかさしているのに、管理者がおらぬというときには、だれかを頼んで清掃させるようにしているのかどうか。昔は、宮内省の御所管時代には、もうちゃんとしたそういうものもできたでしょうが、民間のお墓でも、いまみなお互いえらいりっぱな墓をつくってきれいにしておるのに、象徴天皇の御祖先の歴代の天皇及び皇族のお墓というものは荒れ果てておる、こういうようなかっこうのものはないか。私はいささか疑義がありまして、象徴天皇という形がとられている限りは、やはり御祖先のお墓もきれいにお掃除がしてあって、そこをまた拝礼したい人もたくさんあるのですから、そういうものにいい感じで接せられるようなお墓にせねばいかぬと思うのです。この点も、非常にこまかいようでございますが、やっぱり憲法第一条に関係する問題であるからお尋ねするのです。
  128. 宇佐美毅

    ○宇佐美説明員 初めのお尋ねの規則というのは、もし陵墓と思われるものがあったら届け出ろという規定で、いまはもう効力がないという解釈でございます。  それから、長慶天皇の陵について御下問ございましたが、長慶天皇につきましては大正十五年に御在位というものが確認されて、歴代にお入りになりました。そして昭和十九年に御陵が京都の嵯峨に決定に相なりました。これは臨時陵墓調査委員会というものがあって、東大とか京都大学、文部省とか宮内省の関係者で昭和十年から十九年までいろいろ審議いたしました結果であると思いますが、全国にしますと、約百七つの長慶天皇の御陵と称せられるものの伝承地がございます。そういうものを全部検討いたしました結果、現在の京都に決定になったものであります。  仰せになりました場所は、現在では村有になっておりまして、当方の関係はいまなくなっておるわけでございます。で、御質問のとおりに、全国に歴代の御陵墓というものが八百五十九ございます。個所数にいたしますと、北は山形県から南は鹿児島県までにわたって、近畿が多いわけでございますが、四百五十二カ所ということになっております。  これに従事いたしております陵墓職員、現場の職員と申しますのは、現在二百五十五名、これは非常勤の職員九十一名を加えてでございます。戦前は、これが常勤の人が三百四十三名でございまして、だいぶ減っているわけでございますが、宮内庁につきましては、占領中に七度にわたって占領軍の指示による定員減が行なわれてまいりました。私の記憶によりますと、終戦のときは六千人の宮内省職員がおりました。これが現在千二百人くらいでございますが、それはもちろん博物館でございますとか、学習院とか農林省にまいりました林野局というものに人も制度とともに移りましたが、これは減るのはあたりまえでございます。しかし残りました者を勘定しますと、二千五百人くらいになる勘定でございます。いまそれが千二百人に押えられた、したがって陵墓も人が減るということでございます。  それから、戦争、戦後を経まして、陵墓もだいぶ荒れ、あるいは風水害にかかるということがございまして、仰せのとおり万全であったとは申せないのでございます。陵墓につきましては、経常経費といたしましては坪当たり幾らという経費で、四十四年度でございますと約六千三百万円くらいでございますが、これではとうてい手が回りません。したがって、そのほかに七年計画を立てまして総額約七億円、昭和四十二年度から始まりまして大体七千万円くらいずつ追加していただきまして、計画的に整備を進めておりまして、漸次よくなってまいるものと思います。
  129. 受田新吉

    ○受田委員 時間も進行しておりますので、これでおきますが、私は四十四年度の皇室費歳出予算を拝見して、昨年ここで、内廷に必要な経費は、一般国家予算のバランスをとる上からも、毎年この必要経費の増額措置はとられるべきである、宮内庁だけが別カクであるべきでない、こういうことを申し上げたら、長官、次長のほうから、皇室は遠慮をされて、四年に一ぺんくらいためてお願いするということでしたが、これは一般国家予算のほうがためることができるならそれもいいでしょうが、各省とも要求予算、そしてそれが最後に通過するときにはある程度削られたにしても、予算の中には毎年必要経費等の増額措置がとられておる。この点について、内廷費、宮廷費、皇室に必要な経費というものもそれに含めてしかるべきだと私は思うのですけれども、こういうものについてどうですか、毎年是正措置、少なくともこれの増額措置をとる必要があるはずなんですが、これは遠慮する必要はないと去年申し上げたのです。天下の憂えに先んじて憂え、天下の楽しみにおくれて楽しむという先皇の教えを実践される意味においてまことにありがたいと思いますけれども、今度宮殿造営部というものがなくなることになっている。これも民のかまどの煙立つその喜びを陛下が感ぜられて、民のかまどの煙が立ちのぼる現状――しかし、その中には政治の悪さで立ちのぼらぬ民家もたくさんあるわけです。立ちのぼり過ぎる国民と、それから立ちのぼらぬ国民がある。これは政治の悪さです。陛下の御責任じゃない。けれども、陛下は、その煙たち立つという大体の規模における高度の経済成長をごらんになって、戦後二十三年にして宮殿を落成された。去年の秋のあのときに陛下のお喜びのおことばを承ったときに、ちょうど仁徳天皇を思わせるような気がしたのです。三年間税金をやめて、宮殿はぼろぼろのところで、仁徳天皇がやぐらの上に立ってかまどの煙の立つのをながめられたという風景を思い出させる感じが私はしたのですが、私、宮殿がよくなったことに対していろいろな批判があることについては、一応民のかまどの煙がここまで立ちのぼった現状において、陛下がおくればせに宮殿をお許しになったという点において、一応仁徳高い陛下であると合格点をつけてあげたいと思うのです。けれども、これに伴うこういう諸経費についてことし要求されておらない理由、私が去年申し上げたのがなぜ実行されておらないのか、この点をお伺いしたい。
  130. 宇佐美毅

    ○宇佐美説明員 前回の国会におきまして、瓜生次長に対してただいまのような御発言がありましたことは私もよく伺っております。そのほかの委員からも、大出委員でございましたか、何か基準を立てるべきじゃないかという御発言もございました。当時の総務長官でございます田中議員も、これは考えるべき問題じゃないか、重要なことだからという意味で、われわれも全くそのとおりだということからいろいろ検討いたしまして、われわれだけでもいけませんので、皇室経済会議を構成する委員の方々、それに総務長官もお集まりいただいていろいろ御相談を申し上げたわけでございます。大体いままでの内廷費の場合に予備費というものを約一割程度見ております。要するに物価騰貴、あるいは内廷に職員がございますが、職員のベースアップ、これはいま公務員と同様にやっておりますので、その問題、それからあるいはだんだん国民の生活程度も伺いまして、先ほど仰せになりましたように、中身をあければ幾らであったというようなことも少しずつ直したいというようなことで、いろいろ研究をいたしまして、その予備費の限度を限度として考えてまいりますと、いままでのような物価上昇あるいは給与べースの改定というものを見ますと、二年に一ぺんくらいに当たるということで、そういう方針で今後お願いいたそう。ですから、あるいは来年度の末には増額の案をお願いしなければならないような情勢かと考えておりますが、そういうことで、その審議会におきましても御了承いただいたわけでございます。ですから、これからは具体的に申しますと、二年に一ぺんくらいお願いすることになろうかと考えております。
  131. 受田新吉

    ○受田委員 そういうことで、前進をすることにはなっているというわけですね。  では、おしまいに、私は、宮内庁法第一条の八にあります――いま財産関係のことはお尋ねしたが、「車馬に関すること。」というのがあります。御料馬、御料車というものがある。ところが、陛下はお馬がお好きだろうと思う。お年をとられたから落馬きれるとたいへんですが、陛下のお馬に乗られたお姿、あるいは騎馬立ての御料車というものがあると思うのですが、そういうものを最近拝見したことがない。ところが北欧の国々へ行くと、やはり王さまが御料車へ乗りお馬へ乗って通っておられることがちょいちょいあるという現状です。日本で天皇、皇后両陛下あるいは皇太子その他の方々が、せっかくある御料車あるいは御料馬、そういうものにお乗りになることがあるのかないのか。これは必要がないならもう廃車にして、帝室博物館か何かで、これがかつての天皇御常用の御料車だとして国民に見せてあげるほうがよほどいいわけですから、そういう実際に実用に供せられない御料車それから馬、こういうものがあるならば、車のほうは昔の帝室博物館、いまは上野の博物館でもいいですから、納めて、国民にそれを見せる、こういう措置をすべきだと思うのですが、いかがですか。  それから、国民とともにある陛下という意味から、私が多年申し上げている陛下の海外御旅行というものも、これだけ国民がひんぱんに海外に、太郎も次郎も三郎も花子もすべてみな行くようになった、こういうときに、国民とともにある天皇御一家、特に陛下の海外旅行ができない――私は開会式のときに、陛下のお姿をこの二十二年の間拝見しておりますが、最近お年を召されておる御苦労の陛下のお顔を拝見するときに、感無量のものがあるのです。よく風雪に耐え抜いて今日まで御苦労されたあの善良な陛下に、もう寄る年波の争われないお姿を拝見するにつけ非常に胸が痛むのです。その陛下に、あまりお年をとられないうちに、せめて国民と同じように自由な海外旅行をしていただきたい。海外旅行が自由にできる法律もできたのだ。その陛下の御旅行に対する自由、おそらく陛下の御心中にはそういうお気持ちがあったと思う。私、去年ハワイの移住百年祭へ行って、海外日系人会の議長を承った。はるかに故国をしのんで、皇室の繁栄と国家の繁栄を祈る祝電をお打ち申し上げた。あれは私の文章です。陛下のところにそれが届けられたかどうか、まだ承っておらぬけれども、陛下にお打ちしたような電報を――私は陛下に海外へ来ていただきたかった。常陸宮が御夫妻で来ておられる。しかし陛下よ安らかに長生きをしてくださいと祈る気持ちを電文にしたわけです。陛下にあまりお年をとられない間にひとつ、去年も行っていただきたかったができなかったが、これから何かの計画があるかどうか。いまは、海外へ陛下がお出かけになるからというて、そうむずかしい公式的なことを考えられなくてもいいのではないか。外務省に今度儀典長というえらいポストの役人が生まれるような法律がこの間通ったのです。そういう意味からよその国の人を迎える、王さまなど大いに歓迎するようになっておるが、こちらから行かれる、たった一人海外旅行の自由のない陛下に、法律ができてここに満五年間、一向にこれが実を結ばぬということは、私ははなはだ残念だと思う。このあたりであの寄る年波の、御苦労の多かった陛下に海外旅行をしていただいたって国民の中でけしからぬじゃないかと言うような者は、ごく一部の特定の人を除いてはないと思います。陛下よまた皇后陛下よというので、みんなが喜ばれると思うのですが、これは国民の願いでもあると思うのですがね。海外旅行の御計画を御答弁願って私の質疑を終わりたいと思います。
  132. 宇佐美毅

    ○宇佐美説明員 馬あるいは馬車のことについて御質問がまずございましたが、馬は外交団の信任状捧呈のときに希望の人には馬車を出すことにいたしております。ただ、御承知のとおり最近の交通事情というものはたいへんなものでございまして、ゆうゆうと馬車で歩きますと、警視庁も非常に困る事態が方々で起こりますので、いろいろ警視庁のほうの陳情もございます。事実危険があっても困ります。それから東京の町は非常に坂が多いので、馬車が遠いところまではなかなか行きにくい点もございます。近ごろは特に希望する人は、イギリス大使館の少し先に宮内庁の分室というもと内大臣の官舎であったものがございます、そこまで来てくださればそこからイギリス大使館の前を通って半蔵門から警視庁の前から桜田門に入っていけばあまり交通上支障がないかということで、非常に希望する国が多うございまして、信任状捧呈式に相当馬車を使っております。そういうことからやはりまだ馬の準備は必要であり、牧場でそういう馬の準備をしているわけでございます。いまは陛下は運動は、特にお散歩以外はほとんどなさいません。馬のほうもなさいませんで、馬は皇太子殿下、皇太子妃殿下、近ごろは浩宮さまも馬のけいこをお始めになっております。青山御料地の中の速成の馬場で御練習になっております。常陸宮さまもときどき遠乗会などに出ているわけでございます。そういうわけで馬のほうの問題はまだそういう御使用がございますので、公的にはいま仰せになりましたように、北欧の三国の王室なんかもおっしゃるとおりに社会主義政府でございますが、みんな馬車で、しかも町を少し練り歩くような、そして国民がみんなそれを迎えるというかっこうでございます。日本では、一般の人は、馬車が通りましてもそういう態度にはなかなかなりにくい点もございますけれども、しかし希望のある場合には馬車を使っております。また国賓が見えましたときに、これまたいまの交通問題がございまして、警備の問題もございますが、これから迎賓館が、赤坂離宮等がもし実現するとすればまた考えようもあるのではないかと思います。そういった意味でまだ馬車は宮内庁といたしましてはやはりしばらく持っておりたい。ただ、台数なんかは余りましたものもございますから、そういう馬車の古いものは、たとえばそれを明治村でございますとかあるいは明治天皇関係で明治神宮にたしかあげたと思います。そういうふうにできるものは考えるということにいたしてまいります。  それから最後に、いつでも陛下の御外遊のことに御発言がございまして、そのことはそのつど、私が国会に参りますと、陛下はお召しになって、きのうはどういうことがあったかといつでもお尋ねになりますので、詳細に申し上げるわけでございます。ここ二、三日前もございまして、すぐお召しがありましたので、御発言の大体の趣旨はお話しを申し上げたわけでございます。そういう意味で、かねてからの陛下の上をお思いの上の御発言、御外遊のこともときどきは申し上げたことがございます。しかしこれは何もかたくなに考えておるわけでもございませんけれども、そうまた簡単なことでもございません。私どもはいますぐおいでいただく計画を持っておりませんけれども、今後仰せのとおり御年齢の問題もございます。よく研究をいたした、いというふうに申し上げるほか具体案はございません。
  133. 受田新吉

    ○受田委員 それでは終わります。
  134. 藤田義光

    藤田委員長 次回は来たる十八日午前十時理事会、十時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。    午後一時四十七分散会