○木内国務
大臣 お答え申し上げます。
この原潜が横須賀に寄りまして、横須賀の市民の方々にたいへん御心配をかけている。また神奈川県御出身の大出さんにも、たいへん御心配をかけておりますことは、たいへん恐縮いたしております。
御案内のように、原潜が過去においてたびたび入港してまいりました。そのつど皆さん方から御注意がありまして、検出の機器を整備したらいいじゃないかというお話がありました。まことにごもっともなことでございますので、私
どものほうにおきましても、検出の機器の整備に努力をいたして今日まできておるわけなんですが、そこで、最近におきましては、この検出機器が非常に、自慢じゃありませんが、精密になってまいりまして、きわめてかすかな放射能の異動でもこれが検出されるというようなふうになってまいりました。そこで、今回ハドック号が十日に入港して以来の様子を見ますると、私
どものほうのいままでの力で科学的に調べたところによりますと、原潜から放出した一次冷却水によったものでないということは、きわめて明らかになっておるわけであります。
しからば、なぜこの異常値が検出器にあらわれたかと申しますと、先ほど来お話になっておりまるようなアイソトープですね。イリジウム192のこのアイソトープのガンマー線によって
——このごろはちょうど、御案内のように、人間の胸をレントゲン写真をとるように、鉄管でも何でもガンマー線で写真がとれる。すでに
わが国の国内におきましても、あるいはボイラーの鉄管、あるいは
日本航空の飛行機のプロペラのシャフトの検出、あるいは船の溶接、あるいはまた鋼管の溶接、各方面に使われておりまして、これにつきましては、御案内のように放射能障害防止の基準法をきめまして、一定の基準内でなければならぬということになっておるわけであります。
ところで、今回
アメリカが基地の中において、駆逐艦の母艦においてイリジウムのガンマー線を使っての検査をする。英語で言えばノンデストラクティブテスト、非破壊検査ということで、探傷検査をする。これは、ある
意味において、あそこへたくさんの船が入ってきておるからやむを得なかったろうと思われますが、その中で使ったのも、私
どものほうで
法律できめている基準の外に出ておらない。人体に対する安全性その他は十分考慮してやっておるようでありますが、これは御案内のようにアイソトープの放射能ですから、放射能の検出機器に直接響くのはしかたがない。とめようがない。
それから、それだけかと申しますと、そのほかにいまのレーダー、これは電池のノイズでありますが、放射能の測定器は、御案内のように放射能をそこで感ずるのですけれ
ども、電気に変えて入るようになっておるのでありますから、そこにレーダーの電波が来るというと、これを防ぐわけにいかない。これはあとでもまたお話があるかもしらぬと思うのですが、この点については、レーダーの影響というものを遮断するような設備をしたらいいじゃないかということを過去においてたびたびおっしゃっておられる。
科学技術庁におきましても、前長官時代からそういう御要望がありまして、非常に努力はしてきたのです。ところが、私
どものほうでこの機器の製作を注文する際に、そういう条件を固くつけたのですけれ
ども、
日本で一流のメーカーですけれ
ども、これにはシャッポを脱いでしまったのです。これはいまではできないということでシャッポを脱がれてしまったものですから、今日では、機器におきまして、レーダーの電波を遮断する設備はできないわけです。これは非常に遺憾ですけれ
ども、現在の
わが国の
科学技術の水準と、こういう機器をつくる業者の水準からいって、これはしかたがないじゃないか。しかたがないからといってこれはほうっておくわけではありませんけれ
ども、そういうことがありまして、私
どもの機器に対する影響は、一次冷却水が出ればもちろんこれは響きますが、そうじゃないということはいろいろなことから明らかであります。ですから、残っているところの、いまのイリジウム192のアイソトープのガンマー線である、これが
一つ、それからレーダーのものと、この二つが原因になったわけですね。
そこで、私
どもは、人体にはあの
程度のものならば全然影響はないと思っておりまするけれ
ども、先ほど来お話しのように、横須賀の市民の方々が非常に不安に思っておられる。また、大出さんその他の方々が皆さん御心配になっておられる。これは無理からぬことですが、これは科学的に見ますと人体にほとんど影響はないものだが、不安は不安として何とかしなければならぬ。そこで、私
どものほうは、
外務省のほうにお願いいたしまして、先ほど愛知
大臣から詳細にお述べになりましたように、原潜の入っている間はこの検査機器に影響があるような行動はとらないようにしてもらいたい、こういう申し入れを再三再四にわたって申し入れたことは
外務大臣から御説明があったとおりであります。
ところで、しからば、現地においてどうしておるか、
外務大臣がおっしゃったように、現地で交渉することにまかせるかという問題がございます。私
どものほうからは、この班長である赤羽君という放射能課長がちょっとかぜを引いておったものですから、根岸君というのがかわりに行っておりました。それで、赤羽君がかぜがなおって、いま向こうへ行っておるのですが、現地におきましては、私
どもの課長の
程度ですから、向こうの交渉相手としては、さっきも
お尋ねがありましたが、ピースという参謀と会っているようです。そこで、愛知
大臣がおっしゃったように、原潜がいる間は、検査機器に影響のあるようなレーダーでも、あるいはアイソトープの問題でも、なるべくやらないようにしてもらいたい、こういう申し入れをやりました。ところが、私
どものほうで聞いておりますところによりますと、それはイリジウム192を使うほうのことは事前にひとつ通告をすることにしよう、しかしいまもお話がありましたように、もう数十隻といいますか、私
ども数はよくわかりませんが、たくさんの船が出たり入ったりしている。それでレーダーというものは、今日、船の航行にあたりましてはどうしてもこれを使わなければならぬあれになっているものですから、それをこれだけの数多くの船が使う。それを一々あらかじめ知らせるというようなことはできない、こういうことを言っておられるわけです。しかしそのほかの対空射撃のあれとかそういうものは、向こうでは言っておりません。それはこちらの言い分を聞いてくれると思いますが、航行用のレーダーというものは、あらかじめ知らせるといってみたって、たくさんの船がみな動くたびにそれを使うのだから、それをあらかじめ知らせることはできない、かような向こうの話であったと私は報告を受けております。そんなようなわけで、できるだけひとつ不安のないようにして、いずれにいたしましても、原潜の一次冷却水から出た放射能でないということだけは明らかになったわけであります。