○吉田稔君 吉田でございました。
本日、
有線放送業務の
運用の
規正に関する
法律の一部を改正する
法律案を御審議するに
あたりまして、民間の放送連盟に対しまして意見を開陳する機会をお与えいただきまして、厚く御礼申し上げる次第でございます。
私
ども民間放送事業者は、従来、指定されました放送区域内における難視聴区域の
救済に関しましては、
NHKさんと協力をいたしまして、UHFまたはVHFによる電波を利用した中継局によりましてその
救済に当たってきたわけでございますけれ
ども、
都市におきましては、最近
高層建築物とかあるいは自動車等の雑音等、人為的な原因によりまして急激に受信障害を生じておることは周知のことでございます。
こういう
都市における受信障害
地域の
救済手段といたしましてはいろいろと考えられるわけでございますけれ
ども、ケーブルという媒体を利用した
有線テレビの再送信が最も有効な手段であるというふうに考えております。したがいまして、現行法等によりましてこの
業務を放置しておきますと、ただいま
NHKの
佐野専務もお述べになりましたように、きわめて無秩序の中でその事業が乱立いたしまして、そのこと自体は
一般聴視者に対して必ずしも
利益を招くものではないと、そういう見解を私たちは持っております。今回、
郵政大臣が指定する区域におきましてかくのごとき
業務を行なわんとする者に対しましては、本
法律案のような
許可制に基づく規制を行ないまして、視聴者の
利益を守り、秩序あるケーブル網の布設を促進しようとお考えになることは当然でございまして、この
改正案に対しましては、民間放送連盟といたしましては基本的に賛成でございます。
しかし、きょうの再送信
規正に関する
法律の問題とは直接
関係ないことをちょっと申し上げさしていただきたいのでございますけれ
ども、この再送信に用います媒体であるケーブルは、御承知のように、伝送可能の情報量は非常に膨大でございまして、この
法律に規制してございますように、その区域における全
テレビジョン番組を再送信いたしましてもなお余りあるだけの情報量を持っているのでございます。で、この情報量というものは、われわれがいま入り口に差しかかっております情報産業化時代において情報伝達の路線として非常に大きな
役割りを演ずる
可能性を持っていることをわれわれは認識しなくてはいけないのではないかというふうに考えます。したがって、この大容量のケーブルが単に
テレビジョンの受信障害の
救済というような手段だけに利用されることでないようにいたしまして、今後、これが新しい情報産業化社会の中で非常に有用な機能を発揮できるような特別の御高配がお願いできれば、というふうにわれわれは考えております。
次に、この
法案に
関連いたしまして、若干の
問題点につきまして希望と意見を述べさせていただきたいというふうに考えます。
まず第一点は、第三条の二の一及び二に規定してございます
郵政大臣の指定する区域及び
業務区域の実体的な内容に関する問題でございます。
この点につきましては、
先ほどNHKの
佐野専務理事も
法律レベルによって規定されることを御希望になったようでございますけれ
ども、かりに
法律レベルによって規定されない場合でも、今後省令等によりまして具体的な取りきめが行なわれるものというふうにわれわれは解釈しております。したがいまして、われわれ民間放送業者といたしましてはこの点たいへん重大な関心を有しておりまして、どんな
基準でこの区域が指定されるのか、さらに、その指定された区域の中で
業務区域というものがどういうふうにしてきめられていくのかというような具体的な取りきめの段階で十分われわれとしての意見も述べさせていただきたいと思っておりますので、そういう機会はぜひお与えいただけるように、この席をかりて希望させていただきたいというふうに考えます。
それから第二点でございますが、これは
NHKの場合には特に問題にならないことではないかというふうに私考えておりまして、特に
民放の場合の問題だというふうに認識しておる問題が
一つございます。
それはこの指定区域に
関連する問題でございますが、この指定区域として指定されない
地域、指定区域外における再送信
業務に関する問題でございます。この指定区域外における再送信の
業務は、今回この
法律が改正されましても従来のように届け出制によって行なわれるわけでございまして、放送業者の同意が得られれば、その区域を放送区域としない放送業者の電波がそこで再送信できるということになるわけでございます。このことは一見、
一般聴視者に対して番組の多様的な供給ができるという観点もあるかもしれませんけれ
ども、現在の県域放送という電波行政の基本的な秩序を乱すことにはならないかということを私たちは憂えております。その結果は、その
地域を放送区域としておる地元放送業者の
経営を著しく圧迫することにはならないだろうかということをたいへんおそれております。
ここでちょっと余談になりますけれ
ども、現在
アメリカにおきましても同種の問題が
CATV業者とそれから放送業者との間に存在しておりまして、最近私の手元に届きました米国の権威ある
雑誌でございますが、「ブロードキャスティング」という
雑誌がございます。これの五月二十六日号にたいへんおもしろい記事がございます。御承知のとおり、
アメリカの下院におきましても現在
CATV法制審議が行なわれておるわけでございまして、これをめぐりましていろいろ利害
関係者の意見がたくさん出ておりますが、その中で、
CATVのチャンピオンである
アメリカ有線テレビ協会のフォード
会長が、当然これは激しくFCCのいろいろな規制された
法律に対して攻撃を加えておるのでございますけれ
ども、法制化されることに反対しないという項目を三つほどあげております。そのうちの二つは、これはすでに本
法案にも盛ってございますけれ
ども、免許区域内の
放送局全部をそのままの形で再送信するように義務づけること、それから技術
基準を設けること、この二つはこの
法案にももちろん盛ってあるわけでございますが、これに対してはもちろん反対はしない。これと並べましてもう
一つ、ただいま私が申し上げた問題に
関連のある項目について反対をしないと言っております。それは遠方局の番組を
CATVが取り入れることによって
地方局の存在が脅かされる場合に限りその取り入れをやめさせることという規制でございます。これを取り入れることについては反対しないという意見を述べていることは、非常に注目に値するのではないかというふうに考えております。
この
法案におきましては、ただいま申し述べました三件のうち二件ははっきり盛られてございますが、最後のこの問題については触れてないわけでございます。県域放送をたてまえとし、その民力度に応じた数の
放送局を設置いたしましていま民間放送事業というものが整斉と行なわれているわけでございますけれ
ども、これがこういうような形で、しかも集中的に最も経済力の高い地点に対して他の放送区域の放送電波が形を変えて侵入してくるということに対しては、十分慎重に御配慮いただかなければならない問題ではないかというふうに考えております。
それから第三点でございますが、これは著作権に関する問題でございます。
再送信の場合の著作権問題につきましては、別途、現在著作権法の改正におきましていろいろ審議をされているように伺っておりますし、私自身これの専門家ではございませんので詳しく意見を申し述べることはできませんけれ
ども、いずれにしましても、著作者と放送業者と再送信事業者、この三者の間で今後問題が起きないように御配慮をしていただかなければならないのではないかと考えております。
次に第四点でございます。
これは第三条の二の第六項に規定してございます。
許可を受けた
有線電気通信設備を
テレビ再送信の
業務以外に使用する場合は別に
郵政大臣の
許可を要することという項目があるわけでございます。この規定は、解釈のしようによってはいろいろな解釈ができるというふうに考えます。
私たちといたしましては、
先ほどこの問題に
関連したことにつきまして
佐野専務理事からもちょっとお触れになりましたが、この規定は前向きにしかも積極的に
運用されるものであるというふうに私は解釈したいのでございます。と申しますのは、再送信の義務を満足に果たすことなく他の
業務に血道を上げるなどということはもちろん論外でありますけれ
ども、
法律の命ずるところを十分満たした上でその他の
業務へのケーブルの活用をはかりますことは、当然
有線テレビ加入視聴者の負担を基本的に軽減できるゆえんではないかというふうに考えているわけでございます。
冒頭にも述べましたように、ケーブルの有しております情報伝達の能力というものはすばらしいものでございまして、これはあまり脚光を浴びたものだとは思いませんけれ
ども、非常にじみちな技術革新の
一つの所産であると私は考えております。このケーブルは、大乗的に国民経済の見地から見ましても、これを他の
業務に積極的に利用していくことはきわめて合理的でもありますし、情報時代の要請でもあるというふうに確信しております。再送信業者がこれを政治的に偏向した目的に利用するとか、あるいは公序良俗に反するような行為に及ぶようなことがあった場合には、刑法その他現行の法規やあるいは
放送法の準用によって十分規制できるものと私は解釈しております。
もとより、こういう再送信以外の
業務の利用のためには、
関連法規の、たとえば
有線電気通信法その他の整備が必要となるでありましょうけれ
ども、急速な技術の発展に逆行して、社会が当然受け得る技術革新の恩恵を制限しないようにこの
法律の
運用に
あたりまして御配慮いただければたいへんありがたいというふうに考えるわけでございます。私たちも
NHKとも
どもこの難視聴区域の
救済に対しては当然道義的にその責めを負っている一員といたしまして、この
有線テレビ放送の
建設につきましては非常な情熱を持って立ち向かっております。
こういう機会に、非常につたない意見でございますけれ
ども意見を述べさせていただきまして、しかも御清聴いただきましたことに対して、厚く感謝申し上げます。
どうもありがとうございました。