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松島説明員 消防行政の当面の問題について、ただいまのところ考えております諸点について申し上げたいと思います。
第一番目は
消防の
体制の問題でございますが、
消防体制を
確立いたしてまいりますために、従来から
常備消防と申しますか、
消防本部署を
設置しなければならない
市町村の指定を逐次広げてまいってきております。最近は市の
段階まではそういった
体制も進んでまいりましたが、
常備体制を一そう
強化してまいりますためには、
町村の
段階にまで及ばなければならない状態となってきております。
町村がそれぞれ
消防本部署を持つということは、財政的な面から申しましても、また組織の能率的な面から申しましても、いろいろ問題のあるところでございます。やはり
消防は
一つの力でございますので、ある
程度の
人員が確保されなければ十分な力を発揮できないわけでございまして、そういう
意味で、小さな
町村が独立で
消防本部署を設けましても、十分な力を発揮するだけの
体制を整えるということがなかなか困難であるという問題がございます。そこで、これらの点について、
組合で
実施をするとか、あるいは
相互応援の
方式で
実施をするとか、
委託方式をとるとかいうことで、いわゆる
共同処理方式をとることによって、できるだけ
充実した
常備消防という
考え方で進めてきておるわけでございますが、今後これをさらにどの
程度の規模で進めていくかということが
一つの問題にはなろうかと思います。
一方において、
広域市町村圏というような問題がいろいろ論議の対象になっておりますけれ
ども、こういったものとの
関連をどう考えて今後の
消防体制を
整備していくかということが
一つの
問題点ではなかろうかというふうに考えておるわけでございます。
第二点は、
消防団の問題でございます。
消防団は、かつては百八十万人くらいの
消防団員がございましたけれ
ども、現在では百二十五万人
程度まで
減少してきてまいっておりまして、毎
年度減少を続けておるというのが現状でございます。この
原因につきましても、私
どももいろんな
調査をいたしておりますけれ
ども、
一つは、
町村合併が行なわれたということによって減ってきたという面がございます。特に
昭和二十七、八年ごろから三十二、三年ごろまでの
消防団員の
減少が著しいのは、結局
市町村合併の結果ではなかろうかというふうに考えられます。
第二の
減少の
原因と考えられますのは、
消防設備の
近代化が進んできて、ある
程度機動力が発揮されるようになってきたということに伴うものであろうと考えられます。
消防団の
装備を見てまいりますと、
昭和二十四年には
腕用ポンプが五万三千台でございましたものが、
昭和四十二
年度は二千六百台というふうに減ってきておりますが、逆に
小型動力ポンプが、
昭和二十七年の統計でございますけれ
ども、三千四百台
程度でありましたものが、現在では五万二千台になってきておる。ちょうど
腕用ポンプと
小型動力ポンプとが反対の形になってきておる。こういうことでざごいますし、また
消防ポンプ自動車について見ますと、
昭和二十五年には五千四百台
程度でございましたものが、現在では一万二千台
程度になってきておりますが、これに対しまして
手引き動力ポンプは、
昭和二十四年には一万三千台でございましたものが、現在七千台
程度に減ってきておる。すなわち、
消防ポンプ自動車は二倍以上にふえておりますし、
手引き動力ポンプは半分以下に減ってきておる、こういうような形があらわれてきております。これによりましても、
消防団の
設備も、かなり
近代化と申しますか、
機械化が進んでまいりまして、
機動力が増強されてきた。そういったことから
消防団員の
減少というものの
原因が
一つあるのではないかというふうに考えられます。
第三の
原因といたしましては、
消防本部署の
整備が進んできたということでございます。
消防本部署が
整備されるに従いまして、
消防団の受け持ちます
役割りというものも、それだけ相対的には
減少してくるわけでございますので、そういったことから
消防団が減ってきたのではなかろうかというふうに考えられます。もちろん、これは逆の
方向でも考えられるわけでございまして、
消防団が
減少したので、
消防力の低下を防ぐために
消防本部署の増設が行なわれてきておるという面もあろうかと思いますが、それぞれ
原因となり結果となって、こういうふうになってきたのではないかというふうに考えられます。
それから第四の
原因として考えられますことは、よくいわれますように、農山村におきます
人口の
減少に伴うものであろうと思います。
人口の絶対数が減ってまいりますような
町村では、やはり
消防団になる
要員そのものが不足してまいりますので、そういったことから
消防団員の
減少ということが起こっておるのではないかというふうに考えられます。
第五の
原因といたしましては、
消防団に若い
人たちがなるということを希望しないという空気と申しますか、そういったものが反映しているのではなかろうかというふうに考えられます。
こういったいろいろの
原因が考えられますけれ
ども、これらの
原因のそれぞれについて今後どう対処していくかということは、その
原因によってやはり対処のしかたも違ってくると考えられるのでありまして、一番最初に申し上げました
町村合併による
減少というのは、いわば
町村合併の行なわれたときに起こった
減少でありまして、今日も同じ
原因で続いているというわけではございませんので、それについては格別の
対策というものは必要がないというふうにも考えられます。しかし、
消防力の
強化と申しますか、
機動力の
強化ということによって
人員減少というものが起こってき、またそれが可能であるとするならば、今後の
消防団の
減少に対応していく
対策としても、やはり
機械化、
機動力化をもっと高めていくということは、
一つの
方向として考えていかなければならないのではないかというふうにも思われるわけでございます。
問題は、やはり
消防団に若い
方々がなることを希望しないというような問題について、どう対処していくかということが大きな問題であろうと思います。これは主として
精神面の問題でございますので、なかなか
対策もむずかしい面があろうと思いますけれ
ども、やはり若い人を引きつけていくような
消防団、それのためには、単に精神的な、訓示的な面を強調したからといって問題が解決するわけでもございませんので、やはりそこには
消防そのものが魅力のあるものになるというような
方策を講じていかなければならないのではないか、そのためには、やはり
消防というものの
装備の
近代化というようなものもはかって、何かどろくさい
消防という感じでないものにしていくということが必要なのではないかというふうに考えているわけでございます。
また、
消防団は、報酬を目当てにして
消防団員に入られるわけではございませんけれ
ども、せっかく公のために働いていただく
方々に対します
処遇という問題も、やはり考慮をしていくべきものであり、従来も
公務災害補償制度の拡充でありますとか、あるいは
退職報償金制度の
確立でありますとかいうような形を通じまして、
消防団員の
処遇につきましては
努力が続けられてきておりますけれ
ども、引き続きこの
方面の
充実ということをはかっていく必要があろうというふうに考えております。
第三番目は、
消防施設の問題でございますけれ
ども、
消防施設につきましては、
消防施設の
補助金あるいは
地方債等を通じまして、あるいは
交付税等を通じまして、
充実がはかられてきておりまして、
消防団の
状況につきましては、
先ほども申し上げましたように、ある
程度進んできておりますけれ
ども、しかし、世の中が進んでまいったと申しますが、変わってまいったと申しますか、それに伴いまして、
火災の
態様というのもかなり変わった姿になってきておりますので、これからの新しい
火災と申しますか、それに対応し得るような
体制をやはり整えていく必要がある。たとえて申しますと、いままで
建物といえばせいぜい木造二階
建て程度の
建物しかなかったような
中小都市においても、最近におきましては五階、六階、十階というふうな
建物ができてくる。そういうものができれば、やはりそれに対応するような、たとえばはしご車でありますとか、そういったものが必要になってくるわけでありまして、そういう面で、時勢の進展と申しますか、そういうものにおくれないような
消防施設を
整備していくというための、
消防施設の
近代化のための
補助金の
増額強化ということが、引き続き
努力されていかなければならないというふうに考えております。
それから、
救急体制の問題でございますけれ
ども、
救急業務が
市町村の
消防の事務として法制化されましてから、
人口十万
程度の市から
人口五万、さらに四万、三万というふうに、逐次
救急隊を
設置しなければならない市を拡充してまいったのでございます。現在は、本
年度の
政令改正によりまして、
人口三万以上の市には
救急隊を置かなければならないことにいたしております。
ここで今後の
救急体制の問題についてどう考えていくかという
考え方をやはりひとつ
確立していかなければならない問題があるのではないかというふうに考えております。と申しますのは、現在
救急出動件数は四十三年中に大体六十万件でございます。現在
救急業務を行なっておりますのは、主として
先ほども申し上げましたように
市部でございますので、
市部人口約六千万といたしますと、一年間に百人につき一件の
割合で
出動をしているということになるわけでございます。現在
人口三万
程度のところまで
救急隊を
整備することにいたしましたので、三万と申しますと、百人に一人でございますと一年間に大体三百件、
全国平均というわけにもいきませんで、
交通事故の多いところ、少ないところ、いろいろあろうと思いますけれ
ども、平均いたしますと、
人口三万
程度ならば一年間に三百件
程度の
出動、すなわち、毎日一件
程度の
出動があるということになるわけでございます。ところが、
人口三万まで
救急隊の
整備を義務づけてまいりました次の
段階として、あるいは
人口二万、あるいは
人口をもっと下げたらどうかということになりますと、
救急出動件数というものと
救急隊の維持の
効率という問題とをあわせ考えていかなければならない
段階が来ているのではなかろうかというふうに考えられるのであります。三日に一ぺん
出動するための
救急隊を持つとか、あるいは二日に一ぺんの
出動のための
救急隊を持つということが、はたして
効率的であるかどうかという問題がございます。もちろん、人の命に関することでございますから、
効率の面だけから問題を考えるということには
検討の余地はあろうと思いますけれ
ども、それにしても、もっと
効率よく運営することができればそれに越したことはないわけでありまして、そういった
意味から、やはり今後
町村の
段階まで
救急隊の
整備をしていくということであれば、
組合あるいは
相互委託というような
共同処理の
方式によって
救急隊を維持していくということを考えていかなければならないのではなかろうかというふうに考えるのでございます。
この問題は、
先ほどの
消防本部署の問題とも
関連いたしまして、今後の
市町村の
広域消防体制というものをいかに
整備していくかという問題として
検討していかなければならないというふうに考えております。
次は、
消防における
予防行政の問題でございます。
消防の任務は、
火災があった場合に、それを
最小限度に消火につとめるということは当然のことではございますけれ
ども、同時に、
災害が起こる、あるいは
火災が起こるのを防ぐということに、より大きな重点を今後置いていかなければならないのではないか。と申しますことは、従来と申しますか、過去の
火災においては、
火災というのは、主として財産の焼失ということが中心でありましたけれ
ども、最近の
火災の
態様を見ますと、
火災が起これば必ず
人命の
損傷が伴いがちであるということでございます。しかも、その
人命の
損傷が場合によっては非常に大量に生ずるということでございます。そういうことから申しますと、どうしても出た火事を消すというよりも、出さないようにしていくということがまず考えられなければなりません。これは何も今日に始まった問題ではございませんけれ
ども、特に最近はそういう感を深くするわけでございます。そういった
意味から、
予防行政というものをもっと
充実していかなければならないという
考え方が生まれてくるわけでございます。このために、
消防法関係法令の
改正によりまして、多数の人が集まられるところ、あるいは危険なものを置いたり取り扱ったりするところについては、
火災を防止するため、あるいは一
たん火災が起こったときには一刻も早くその
状況を確知するため、さらには
人命の
損傷をできるだけ避けるための
施設についての
設置を義務づけてまいっております。一応そういった
方面の規定はかなり
整備されてきておると思いますけれ
ども、特に旅館、ホテルあるいは百貨店、劇場というようなところにおける
消防用設備の
設置は、
法令の
改正によってかなりきつく義務づけられてまいりましたが、それをどういうふうに
機能を保持し、管理をしていくかという問題がこれから大きな問題でございます。
火災報知機をつけていたけれ
ども、たまたまそのときに鳴らなかった。よく調べてみたら、誤報がときどきあったので、めんどうくさいといって、電源を切ってあったというような
事例もないわけではございません。そういったことでは、せっかくつけた
装置、
施設も何の役にも立たないわけでございます。また、
火災報知設備をつけました場合に、改造をやった、あるいは増築をやったときに、その線が途中でもって工事のために切断されていた、それを知らないでいた、ほうっておいたというような
事例もないわけではございません。こういったことを考えますと、
火災の防止あるいは
早期発見というために、いろいろな
装置の義務づけをしておりますけれ
ども、それがはたして適正に管理され、
機能が保持されているかどうかということについては、必ずしも十全でない面があるわけでございます。これは
関係者の絶えざる
努力と申しますか、注意を喚起していかなければならない問題でございます。そういった点から、今後この問題をどういうふうにしていくかということが、やはり
火災予防行政を進めていきます場合の
一つの大きな
問題点であるというふうに考えておりまして、私
どもも何らかの
方策を講ずるように
努力、
検討を続けておるわけでございます。
もう
一つは、やはり
危険物の
行政の問題でございます。今日の生活はたいへん便利になりましたけれ
ども、その便利は危険と隣合わせだというふうにいわれております。このことは、もう私が申し上げるまでもなく、
自動車の
普及ということは、たいへん便利になりましたけれ
ども、それはここ数日来の
新聞でも非常に問題になっておりますように、
交通事故というものと隣合わせ——ということばは適当でないかもしれませんが、非常に密接な
関連がある。あるいは
家庭燃料としてのプロパンガスというものはたいへん便利なものであります。したがいまして、その
普及というものはたいへんな勢いで
普及しましたけれ
ども、これまた
新聞等でしばしば伝えられますように、
爆発事故というものが絶えないという問題がございます。そのほか、
石油類というようなものが非常にたくさん取り扱われるようになってまいりました。そこで、
危険物の取り扱いというものを、もう少し新しい技術の進歩と申しますか、そういった面も考えあわせて規制を
強化していくと申しますか、そういう必要があるのではないかということで、これはただいま
消防審議会等にも専門的な見地からいろいろ御
検討をいただいておるところでございます。それらの
答申等もいただきまして、今後の
行政体制の
確立をやっていきたいと考えております。
これらと
関連する問題でございますけれ
ども、
危険物そのものではないにいたしましても、今日の
都市の構造あるいは
建物の全体を通じまして、一たび
災害が起きるならば非常に大きな損害が生ずるであろうと思われます
高層建築でありますとか、地下街というようなものについての
対策も、これからやはりもっとこまかく
検討をしていく必要があるのではないかと考えております。
順序も必ずしもそろいませんで申し上げましたけれ
ども、当面の問題として私
どもが考え、かつ
検討をいたしております点について御報告を申し上げる次第でございます。