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1969-09-10 第61回国会 衆議院 地方行政委員会 第59号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十四年九月十日(水曜日)     午前十時三十七分開議  出席委員    委員長 鹿野 彦吉君    理事 塩川正十郎君 理事 細田 吉藏君    理事 山口 鶴男君 理事 山本弥之助君       青木 正久君    桂木 鉄夫君       山口シヅエ君    井岡 大治君       太田 一夫君    河上 民雄君       依田 圭五君    門司  亮君       小濱 新次君    林  百郎君  委員外出席者         警察庁長官   後藤田正晴君         警察庁長官官房         長       富田 朝彦君         警察庁交通局長 久保 卓也君         警察庁警備局参         事官      三井  脩君         運輸省自動車局         長       黒住 忠行君         建設省都市局都         市総務課長   国塚 武平君         自治大臣官房参         事官      立田 清士君         自治省財政局長 細郷 道一君         専  門  員 川合  武君     ————————————— 本日の会議に付した案件  小委員会における参考人出頭要求に関する件  地方自治地方財政及び警察に関する件      ————◇—————
  2. 鹿野彦吉

    鹿野委員長 これより会議を開きます。  この際、参考人出頭要求に関する件についておはかりいたします。  地方公営企業に関する小委員会において、地方公営企業に関する件の調査のため、参考人出席を求めて意見を聴取いたしたいとの小委員長からの申し出があります。つきましては、同小委員会参考人出席を求めて意見を聴取することに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 鹿野彦吉

    鹿野委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。  なお、期日、参考人人選等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 鹿野彦吉

    鹿野委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。      ————◇—————
  5. 鹿野彦吉

    鹿野委員長 警察庁長官から発言を求められておりますので、この際これを許します。後藤田長官
  6. 後藤田正晴

    後藤田説明員 後藤田でございます。先般の異動で警察庁長官を拝命いたしました。ごらんのとおりそこつな者でございますし、性不敏でございますので、責任の重さを痛感いたしております。御案内のようなむずかしい時期でございますので、皆さん方格別の御叱正と御理解のもとに仕事をやってまいりたいと思っておりまするので、どうか格別の御教示をお願い申し上げます。  簡単でございますが、ごあいさつを申し上げます。      ————◇—————
  7. 鹿野彦吉

    鹿野委員長 地方自治地方財政警察及び消防に関する件について調査を進めます。  質疑申し出がありますので、順次これを許します。山口鶴男君。
  8. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 ただいま就任あいさつをされました後藤田長官に、警察問題につきまして二、三お尋ねをいたしたいと思います。  その前に、就任に際しまして心からおめでとうを申し上げておきます。   〔委員長退席細田委員長代理着席〕  まず最初に、警察庁昭和四十五年度予算に対しまして予算要求をせられたことを新聞で拝見をいたしました。七〇年対策をからめまして再び警察官増員要請いたしておるようであります。  そこでお尋ねをいたしたいと思うのでありますが、後藤田長官は前の新井長官とは異なりまして、自治省税務局長として、自治省幹部経験をされました。そういう意味ではきわめて広い視野をお持ちの長官であると考えております。特に自治省税務局長も歴任されたわけでありますから、地方自治に対する考え方というものは十分御理解をいただいておるものと推察をいたすわけであります。  そこで警察官増員の問題でありますが、御案内のように警察法規定によりますと、「地方警察職員定員は、条例で定める。」ということに警察法の五十七条で規定をされております。そして「この場合において、警察官定員については、政令で定める基準に従わなければならない。」こう法律でなっておるわけであります。私はこれは非常におかしいと思うのです。戦後の警察制度は、戦前の警察制度の反省の上に立って組み立てられております。当初、戦後の警察制度ができましたときには、自治体警察というものが中心で運営をされておりました。その後これが昭和二十九年改正されましたが、しかしやはり自治体警察と申しますか、都道府県警察中心とした警察組織になっていることは長官の御案内のとおりであります。そういう意味では、地方自治という立場を十分尊重して現在の警察法はできておると思います。したがって、そういう観点から考えますならば、警察官定員につきましてことし五千人増員いたしまして、来年また五千人増員要求するようでありますが、警察庁が五千人の増員要求して予算を獲得される、そして政令を公布をする、そうすると他の都道府県はそれに従わなければいかぬと、こういうことになりますと、少なくとも国家公務員定員につきましては、従来は各省別定員、今度は総定員法ができましたから総定員法によって議会議決をもって定員がきまります。地方公務員の場合は、それぞれ地方自治体のいわば議会が決定する条例に従って定員がきまってくるわけであります。ところが、警察が本来の自治体警察趣旨にのっとるとするならば、私はこの警察法規定は間違いだと思う。条例でもって定めることについて、この政令等制約というものは撤廃すべきじゃないか。そうでなければ地方自治という観点からいうておかしいと私は思うのです。従来の新井長官ならいざ知らず、少なくとも自治省幹部として地方自治に対して精通しておられる後藤田長官は、この警察法五十七条の規定について、一体地方自治観点からどのような御見解をお持ちでありますか、まずお聞かせをいただきたいと思います。
  9. 後藤田正晴

    後藤田説明員 お答えを申し上げます。  ただいま御質疑になりましたような御意見も確かに一つのお考えであると思います。ただ、御承知のとおりに現在の警察府県自治体警察というたてまえをとる、そして同時に公安委員会というものの管理のもとに置くということによって警察の民主的な立場を貫く、こういうことに相なっておりまするけれども、同時にまた、警察というものの仕事性格から見まして、やはり地方的な仕事のほかに、国という立場で考えなければならぬ、この二面の性格があるかと思います。で、どちらに重点を置くかということもありましょうけれども、いずれに重点を置くにしても、この二面の性格があることは私は否定ができなかろう。これらの点を考えまして、現在の警察というものが府県自治体警察立場をとりながら、やはり一定の事項については国が必要な統制を加える、こういう立場になっているように思います。私は現在の警察仕事実情から見て、また国情等から見て、現在の制度がベターなものではなかろうか、こういうふうに考えておるのでございます。そういう意味合いから全体の警察力というものを、山口先生おっしゃるようにそれぞれの県に自由にやれというのも一つ考え方かもしれませんが、やはり国という立場から見てこの程度のものがいいのではないか、こういう基準をきめるということは私は必要なことじゃないか、こう思います。そういう意味合いから、現在全国的な立場に立ってみてそれぞれの都道府県定員というものはこの程度がいいのではないかということを政令基準できめる。しかし、たてまえはあくまでも府県自治体警察という厳としたたてまえがございまするので、それぞれの府県当該政令できめられましたこの程度でよかろうではないか、こういう数を基準として都道府県議会の承認を受けて条例当該県定員をきめる、これは私は現在の状況から見て一番いい制度ではなかろうか、こういうふうに考えております。
  10. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 ただいまの長官の御答弁でありますが、そうしますと長官は、政令できめるのはいわば標準をきめるのである、その標準に従って都道府県議会条例をもって定数をきめるという趣旨の御答弁をされましたですね。そうしますと、たとえば東京都なら東京都、大阪府なら大阪府に対しまして、五千人増員のうち東京都に二千人という政令をきめる、大阪については千人という政令をきめた。ところがこれは標準であるから、東京都が二千人という政令がきまってもそれは千五百人でよろしい、こういうことで判断をすればそれでもよろしい、それに対して警察庁としてはとやかくのことを東京都なりあるいは大阪府に対して文句をつけることはない、あくまでも地方自治のたてまえを尊重する、こういうふうに解してよろしゅうございますか。
  11. 後藤田正晴

    後藤田説明員 およそ職員定員をふやすという場合には、よほどの理由がなければならぬわけです、相当多額の負担を税によって出さなければならぬわけですから。そこで私どもがきめる場合には、やはりそういう立場から、最小限人間がこの程度必要である、こういう基準を従来からきめております。したがって基準という立場から見れば上、下あってしかるべきではないか、こういう御質問のようですが、私どもはきめる立場が、やはり最小限人間がこの程度要るのだ、こういう立場できめております。したがって私ども立場としては、少なくともその程度人間は置いてもらいたい、それ以上置くことは府県実情でけっこうでしょう。しかしながら、もちろん財政上の措置その他は私どもとして十分とっております。ただそれ以上に置くというものについての財政上の措置は、最小限のものしかいたしておりませんので、やはり基準という法の趣旨から見て、あまり大幅に政令定員を上回るということについては私どもとしては適当でなかろう、こういう指導をいたします。また政令定員以下に、いまおっしゃったように二千人というものを千五百人しかやらぬということは、基準という立場から見てもおかしいし、同時に私どもの先ほど言った立場、つまり最小限のものしか常に政令には書かないという立場から見て、下回るということは、私どもとしては全国的な治安の立場から見て好ましからざる措置である、こういうことで指導をいたします。   〔細田委員長代理退席委員長着席〕  現実に、従来の定員改正をやりました場合に、府県県単で上回る職員を置いておる例は相当多いと思います。しかし、政令定員を切って、それ以下で条令できめるという例は従来どこも出てない、これが実態でございます。
  12. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 そうしますと、私は少しおかしいと思うのです。少なくとも国家公務員定員——予算は別ですよ、予算国会できめる。それとは別個に、定員については従来は各省別定員、今回は総定員法法律としてきまるわけですね。地方公務員の場合も、予算もありますが、同時に定数につきましては条例当該議会が定める、こうなっています。そうすると警察だけはおかしいことになるのじゃないですか。いまの御答弁によりますと、下回っているところはない、こういうわけでありまして、基準に従わなければならぬ、こう書いてあるのですから、基準とするとか標準とするということばならいいわけでありますが、従わなければならぬということになるから、それは強制力があるでしょう。そういうことで警察庁指導されておるから下回っているところはない、こういう現実の姿になるだろうと思うのであります。そうしますと、警察定員だけは——予算は確かに国会を通ったというかもしれませんが、しかも定数については、国会警察官定員幾ら、こういうふうにきめるわけじゃないでしょう。いわば国会議決もしないのに政府の都合で政令というものが出されている。もちろん予算という制約がありますが、とにかく国家公務員定数がきまる場合とはだいぶ質が違うわけであります。それが今度は都道府県へいきまして、条例という形はとりますが、もうすでに当該議会が左右するという権限は実質的にはないのじゃないですか。いわば形骸化されている。政令がきめておるものを基準としてきめなければならぬ、こういうことになるわけですから、都道府県議会議決というものはまさに形骸化されたものしかない。そうすると、他の職員と別に、警察官だけはいわば議会コントロール、民主的なコントロールというものから除外されてきまってくるということは、これは私は問題だと思うのです。少なくとも自治省幹部として長い経験を持たれた後藤田さんとしては、地方自治のたてまえからいって、地方自治の本旨からいって、これは非常におかしいとは思いませんか。いかがですか。
  13. 後藤田正晴

    後藤田説明員 先ほど申しましたように、やはりこれは警察というものの仕事性格、こういう面から見て、地方自治との兼ね合いということで現在の制度はできておると思います。またこの制度が先ほど言ったように適当だ、私はこういうふうに考えております。
  14. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 どうも自治省幹部であったことはややお忘れになっておるのではないかという感じがいたしまして遺憾に存じます。  後藤田さんのような御議論をすれば、私はこうしたらいいのではないかと思うのです。義務教育小学校中学校教育、これはやはり国家的な見地からきわめて重要な仕事であります。そうして小学校中学校教職員定数というものを、これは教育機会均等という憲法の趣旨からいきましても、全国一つ基準というものは保障しなければならぬ、当然でしょう。それでは小中学校教職員定数はどういうかっこうできまっておるかといいますと、これは義務教育学校における教職員定数標準に関する法律という、いわゆる定数標準法という法律できまっております。これは標準でありますから、当該都道府県がこれを下回ってもいいし、上回ってもいいという形で、必ずしも警察規定のように基準に従わなければならぬ、こういう規定はないのです。全国教育機会均等を保障する、その意味では標準に関する法律がある。しかし、これは議会コントロールというものは別個にその道を開いておる。私は警察も本来そうすべきではないかと思うのです。したがって、この法律の五十七条の規定があるから、後藤田さんも地方自治というたてまえは承知しながらああいう答弁をしておるのではないかと思うのですが、この矛盾を解決するとすれば、義務教育学校定数をきめておるような仕組みに直すことがいわば国の機会均等要求、それから自治体住民自治という立場、民主的なコントロールという立場、両方を保障する道として最善の方法ではないだろうかというふうに思います。私の考え方について御感想があればお答え願いたいと思います。
  15. 後藤田正晴

    後藤田説明員 私は、学校先生方制度のきめ方と警察のきめ方と必ずしも同じでなければならぬとも考えませんけれども、ただいまの御意見は私は有力な一つ考え方だと思います。ただ、その場合に、現在の学校先生のきめ方の場合には、御承知のとおりに人件費については二分の一の国庫負担つまり国統制というものがそれだけ強く自治体に対してかかっていると思います。ところが警察の場合には人件費が全部自治体負担、こういうことになっております。したがって、こういう問題についても、やはり以前に連帯支弁金制度というものがありましたけれども、そういうこともあわせてやはり財政面等も考えるというようなこともなければいけないのではなかろうか。いずれにしましても、ただいまの御意見は十分尊重して考えなければならぬことだろう、こういうふうに思います。
  16. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 私は、何も警察官国庫負担制度をしけと言っておるのではないわけでありまして、義務教育学校教職員の場合に二分の一国庫負担があることは承知をいたしております。ただ、私がいま申し上げましたのは国家的な要請といいますか、そういうものと都道府県議会議決というもの、地方自治というものを調和させるとすれば、いま言ったような考え方があるのではないか、こういう意味で申し上げた次第であります。今後警察行政を執行されます場合に、やはり自治体警察から戦後の警察制度が出発したという歴史的な経過、現在も都道府県警察というものが警察主体となって構成をされておるという点を十分念頭に置かれてぜひとも対処されますことを特に御要請をいたしたいと思います。  それから、前の柏村長官はしばしば地方行政委員会に御出席になったのでありますが、新井警察庁長官はどういうわけか地方行政委員会の御出席の回数が少なかったように記憶をいたしております。後藤田長官は、ここはホームグラウンドなのでありますから、ぜひとも地方行政委員会にしばしば御出席をいただくように、その点は特に要請をいたしておきましょう。  それから次に、予算要求の中身を拝見いたしますと、本年度に新設された管区機動隊四千二百人のため手薄になった市民警察穴埋めに充てられる、こう書いてあります。現在管区機動隊というものが四千二百人あるわけですね。私は、この管区機動隊というものは現在の警察法趣旨からいってはなはだまずいと思わざるを得ない。さっき言いましたように、警察は、警察庁それから都道府県警察に分かれておりまして、たまたま警察庁地方機関として東北、関東、中部、近畿、中国、四国、九州に管区警察を置くということになっておるわけであります。ところが、その後この管区警察管区警察学校というものを付置することにいたしまして、この管区警察学校に四千二百人の管区機動隊というものを置かれるやに聞いておるわけでありますが、現在の警察法のたてまえからいって、地方機関であります管区にこれほど膨大な機動隊を置くということは、都道府県警察主体の現在の警察法のたてまえからいって私は問題があると思うのです。この点はいかがですか。それに、あわせてお伺いいたしますが、過般の地方行政委員会で、機動隊総数は何人かということに対しまして、約七千九百人程度機動隊員全国においでだ。これは都道府県警察に置かれる機動隊だと思いますが、人数が私の申しました七千九百が不正確でありましたら正確なお答えをいただきたいと思いますが、このうち警視庁が三千百三十七名、こういうふうに聞いております。そうしますと、警視庁の三千百三十七名を含む全国都道府県警察機動隊七千九百、このワクのほかに管区機動隊というものが現在四千二百人おるというふうに理解してよろしいわけですか。そうしますと、全体の機動隊員は約一万二千名近くになるということになると思うのでありますが、そのように理解してよろしいわけですか。
  17. 後藤田正晴

    後藤田説明員 お答え申し上げます。  まず、あとのほうの御質問からお答えいたしますが、各県の機動隊総数は九千七百でございます。そのうち五千百三十七名が警視庁機動隊、こういう数字でございます。また管区機動隊の四千二百名ばかりはそれ以外の数字である、こういうことでございます。  そこで最初の御質問でございますが、管区機動隊というのは現在のたてまえから見ておかしくはないか、こういう御質問でございますが、私どもといたしましても、やはり現在のたてまえをくずさないで、しかも最近の情勢に対応する措置を講ぜねばならぬということで、管区機動隊というものを置いたわけですが、これは先般の国会でも私のほうのだれか職員お答えをしたと思いますが、四千二百名ばかりの管区機動隊のうち三分の一を、施設が特別にございませんので管区学校において絶えず訓練をする。これは大体年に三回転、四カ月程度訓練をして、そして当該県に返す。残りの三分の二は、これは県に絶えず原所属でおって、通常の勤務に服しておる、こういうやり方。ただそれは人をきめないで絶えずやるというのも、全体の能力をあげるという意味からいえば一つやり方ですが、最近の各種警備事案実態から見て、府県相互間の応援派遣に出さなければならぬという場合が多い。そこでそういうものに備えるために絶えず編成をはっきりしておく、そしてその編成要員である、それが管区機動隊だ、それは三分の二は絶えず常時の仕事に従事をいたしておる。こういう姿で今日まで来ておるわけでございます。ただ最近の実態でございまするので、先ほど五千名増員という問題で、穴埋めだ、こういうお話がございましたが、まさにそのとおりでございます。と申しますのは、いまのやり方でいきますと、三分の一は管区学校訓練を受けておるわけですが、三分の二は県のそれぞれの警察署あるいは本部の原所属で働いておる、こういうことになっているわけですね。そこでこれまたしょっちゅう引き揚げ勤務ということになるわけです。そこで、この際私はむしろそれは管区に集めるというのは必要なかろう、また適当でもないだろう。したがって三分の二はやはり当該県人間なんですから、県に置いておく。しかし、それは県庁所在地の一地に集結して、そして各種事案があれば出るし、同時にまた年末の警戒であるとか交通の一斉であるとか、いろいろなときにもちろん使いますが、こういうようなときにも使う。そうしますと、原警察署なりあるいは本部の各課の原勤務に穴があくということになりますね。そういう意味合いで、その穴を埋めるためにこれだけの増員、四千二百ばかりの増員をしなければいかぬだろう。同時に残りの八百名、これは三多摩地方外勤——主として外勤でございますが、これが手薄になっております。したがって三多摩地方外勤を補うという意味で八百名程度ということで、合計五千名程度を今回の増員でお願いしたいということが四十五年度予算一つの内容になっておるということでございます。
  18. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 そうしますと、先ほど私が記憶しておりました数字は間違いで、現在都道府県警察におります機動隊定員は九千七百、うち警視庁が五千百三十七、別に管区機動隊の四千二百名がおりますから、現在機動隊は一万三千九百名全国におられる。ところで、その管区機動隊の四千二百名については、三分の一の千四百は管区に常勤しておるが、三分の二に当たる二千八百名については各都道府県警察定員であるので、その必要以外は各都道府県県庁所在地におって、そうして他の任務についておられるが、召集があった場合はこの二千八百名の方はそれぞれ管区機動隊所属する形になる、こう理解してよろしいわけですか。
  19. 後藤田正晴

    後藤田説明員 お答えします。  おおよそそういうことでございますが、少し訂正をさしていただきたいのは、定員は、これは全部当該都道府県定員になっております。ただ現実に県の定員であり県の人間だけれども、三分の一は管区学校訓練をしておる、こういう形になっておる。そして三分の二は原所属でそれぞれ働いておる。ところが何か事があるとあちらこちらに行かねばならぬ。しかもそれは常時編成をきめて、何某は第何中隊第何小隊の第何分隊員であるということを平素からきめてある。そしていざというときにはその組織、したがって当該組織人間は絶えず訓練等を通じて顔見知りになり、指揮官がだれであるということもはっきりしておる、こういう姿になっておる、こういうことでございます。
  20. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 四千二百人すべてこれは都道府県定員である。ただし、このうち三分の一は管区警察学校訓練を受けておるといいますか、三分の一の人員の千四百人は常に管区警察指揮下に置いてあるというふうに理解をすればよろしい、こういうわけですね。  そこでさらにお尋ねいたしますが、五千人増員の根拠はその管区機動隊四千二百人の穴埋めである、あとの八百人が三多摩のいわば警備と申しますか、それが手薄なのでそれに充てるということになりますと、三多摩地区警察力手薄だということは、言いかえればこれは警視庁管内機動隊の数があまりに多いので、そういう意味で三多摩警察のほうが手薄になっているのじゃないかと推察をされますが、そういたしますと五千人すべて、これはいわば機動隊のために手薄になった人員のために穴埋めが必要であるから来年増員要求する、こういうことになりますね。  そのようにいたしまして、警察が非常に警備に力を入れておいでのようでありますが、本来警察法昭和二十九年改正されましたときに、警察庁には警備局というものは初めから置かれたのですか。そうではないでしょう。
  21. 後藤田正晴

    後藤田説明員 当初から警備組織はございました。
  22. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 昭和三十五年以降にできたのではなかったですか。
  23. 後藤田正晴

    後藤田説明員 それはおそらく名前のことだと思います。警備組織は、もういまとちっとも変わっておりません。ただ、私どもの役所は、最初は部と称しておったわけです。それが全部が局になった、こういうことだけで、実態は変わっておりません。
  24. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 最近、特に警備に対して非常に力を入れておいでのようでありますが、そこでお尋ねいたしますが、新聞で拝見をいたしたのでありますが、秦野警視総監が九月三日記者会見をいたしまして、十月一日から安保体制に入る、こういうお話をせられたそうであります。その内容を拝見をいたしますと、「一、管下全警察官のうち、年齢四十五歳以下、階級は警部補以下の二万五千人で鎮圧部隊を編成する、二、事件が多発した場合は、刑事部、防犯部を第二公安部、第三公安部として動員をする。」本来、私は警察の主たる任務は刑事部ではないかと思うのですが、長官のお名前も後藤田さんでありまして、やっぱり強盗を押えるのが本来警察の主たる任務であったのではないかと私は推察をするのでありますが、最近は強盗ではなくて大学だというふうに、あるいは警備だというふうになっているような感じがしまして、長官の名字もあるいはお変わりになったのではないかというような感じもするのであります。これは余談でありますが、とにかく、本来一番重要な刑事部を、第二公安部というような形で動員をする。たいへんなことだと思います。もちろんこの二万五千人のうちに機動隊五千百三十七名、先ほどお答えいただきました者が含まれておる。騒動の高潮期に第一線の交番ががらあきにならないよう、年齢、階級を問わず、たとえば警部が交番勤務につくなど、弾力的な運用をはかっていく、こう書いてあるわけでありますが、しかし警視庁定員三万六千七百三十七人ですか、そのうち二万五千人、約六八%に当たる方を動員するということになれば、本来の警察の任務というものがきわめておろそかになるということは、これはもう避けられないと思うのです。これほどきわめて異常な体制をしくということについては、私ども非常に奇異に感ぜざるを得ないのであります。このような安保体制は、当然警視庁独自で御判断されたのではないと思います。当然警察庁からしかるべき指導なり助言なり、そういうものがあって、その上でこういうような発表になったと思うのでありますが、今回のこの警視庁の十月一日からのいわゆる安保体制につきましては、警察庁としましては一体いかなる御指導をされましたのか、お答えをいただきたいと思います。
  25. 後藤田正晴

    後藤田説明員 御承知のとおりに、私ども警察仕事というのは絶えず受け身の仕事だと思います。積極的に当方からどうだというのでなしに、やはり犯罪の情勢がどのようになるということに対応しながら受け身の立場で諸般の準備をするというのが、私は警察の本来的な姿だろうと思います。そこで、最近のむずかしい情勢から見て、やはり市民の生活の平和を守る、秩序を守っていくという意味合いから、絶えず警察としては最近の情勢に対応してどうしたらいいのだろうか、どう対応すべきかということを考えるのは、これは私は当然だろうと思います。したがって警視庁で今回実施をきめたことも、こういった一般の情勢に対応して責任を果たすためにどうすればいいのだということから出た案で、平たくいえばきわめてあたりまえのことをあたりまえにきめたのだ、こう私は理解をいたしております。もちろん全国的にもそういうことはございますので、私どもとしてもやはりそういう立場全国警察指導してやっておるというのが実態でございます。警視庁の場合は四十五歳以下の人間で二万五千最大動員、こういうことのようですが、四十五歳以下の人間が大体八〇%程度おります。その中から二万五千の警察官を動員して使う、こういうことですが、先ほど言いましたように、あくまでも最悪の場合にどうなるだろうか、その場合に警察としてはどこまで動員の力があり、どこまで対応できるであろうか、これを絶えず考えなければならぬ。同時に、その場合に警察力が足りないということであれば、他の府県からどのような応援を求めるべきであるか。これはもう当然幹部としては考えなければなりません。あれはそういう意味合いの計画である。その計画を立てる際にやはり一番むずかしいのは、御質問にありました一般の治安維持とのかね合いの問題です。全国的に申しますと、大体五〇%ないし七〇%程度の動員というのが各県の実態でございます。これは県によって多少のでこぼこはございますが、おおむね五〇%ないし七〇%程度当該県の事態に対応する。それで当該県警察力が足りなければよそから回してもらおう、こういう計画になっております。一番むずかしいのは、いま申したようにその際後方といいますか、一般の治安維持の問題、これをどう考えていくかということ、そこで警視庁の場合と、これはほかの県もそういう例がございましょうが、幹部は普通はデスクで仕事をしておるわけですけれども、そういった幹部もそういう際にはやはり一般の警察業務に従事するために第一線に出て、そうして通常の警察勤務に服せ、こういうことに計画をつくっておるようでございます。  刑事、防犯等が本来的な仕事ではないか、そういう際に第二、第三公安部とはおかしいではないか、こういう御質問もございました。これまた当然の御疑問だと思います。ただ第二公安部、第三公安部というのは、これはそういうつもりでやれ、こういうことだと私は思います。というのは、事件の性質によりまして、公安の刑事と防犯なり刑事部の刑事とは、なかなか、仕事が似ておるようで、実は適用の法条の問題とか、平素の扱いとか、まるきり違うものですから、なれておりません。そこで、刑事、防犯の諸君に公安系統の法令の勉強なりあるいは調べの勉強なり、諸般の勉強をしておけ、そしていざというときには必要な数を、それぞれの私服要員として警備事件の捜査に当たらなければならぬぞ、こういう意味合いで、今回そういうやり方をとったと思います。これが一般に言われておる第二、第三というわけですけれども、平素はそういう訓練を十分しておけ、いざとなれば使うぞ、こういうことだと思います。その場合にも、もちろん一般の防犯の仕事なり、あるいは捜査の仕事があるわけですから、それの要員というのは、これはもう十分確保しまして、その上でそれ以外の人間を第一線に出す、こういう計画になっておりますので、その点もお答えしておきたいと思います。
  26. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 そうしますと、単に警視庁が十月一日から、新聞で報道せられたような安保体制をとったのではなしに、他の府県におきましても、四十五歳以下、動員の割合は五〇%ないし七〇%というお話もありましたが、同じような形で各都道府県警察が、このような動員体制といいますか、安保体制をそれぞれ計画している、こういうことになるわけですか。
  27. 後藤田正晴

    後藤田説明員 警視庁は御承知のとおりですが、ほかの県も、準備の状況によってでこぼこはございます、ああいった細部のやり方まできめたのは、おそらく警視庁が一番早いと思いますが、しかし、これは警視庁独自というのでございませんで、全国的にそういう計画を私は立ててもらうつもりでおります。私ども考え方は、大体制私服合わせて十万弱という程度の動員を考えております。これを各県それぞれの定数等も見まして、各県でおよその数字をはじき出して、各県はそれによって細部の計画を立ててもらう、こういうことにやっていきたいと思っております。
  28. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 十万と申しますと、全警察官の何%に当たりますか。
  29. 後藤田正晴

    後藤田説明員 全警察官が十七万五千でございます。
  30. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 そうしますと、六割ないし七割の動員を考えている。いまの長官の御答弁の口ぶりからいたしますと、警察庁として全都道府県警察に、まあ早いおそいはあるにしても、こういう体制を指導していく、こういうふうに了解してよろしいわけですね。  そこでお尋ねいたしたいと思うのですが、一般庶民からすれば——現在の警視庁本部組織を見ますと、総務部、警務部、交通部、警備部、それから警ら部、公安部、刑事部、防犯部、こうなっておりますね。そして、特に従来の警察の本来の任務ともいうべき刑事、防犯、こういうような部を第二公安部、第三公安部というような形にいたしまして動員することも考えるということを見ますと、たとえばあれじゃないですか、全国民の注目を集めている例の三億円事件ですね、いまなお捜査も難航をいたしておるようでございますが、それから最近起こりました十和田市における二千万円の事件ですね、そちらのほうは、さっぱり進展をしない。これを扱っておるのは、警視庁では刑事部だと思いますが、そちらはさっぱり進まぬ。しかも肝心のそれを捜査しておる刑事部が第二公安部としてもっぱら安保体制に組み入れられるということになれば、警察というものは、本来の任務をもう放てきしたのではないか。むしろ、何といいますか、あげて安保体制にのみ取り組んでおられる。一般庶民からすれば、非常に割り切れぬ感情を、この報道からは持つのがあたりまえじゃないかと思うのですね。そうではなしに、一般の刑事関係の事案がどんどん進展して、すべててきぱきと問題が解決しておるというなら、これはけっこうでありますが、そちらのほうはさっぱり進まぬ。しかも、その肝心な刑事部を第二公安部というようなことでは、私は、国民としては割り切れぬ気持ちを持つのは当然だと思うのです。この点はいかがですか。
  31. 後藤田正晴

    後藤田説明員 いわゆる三億円事件等がいまだに検挙になっていないということについては、私もたいへん責任を感じておりますが、まだまだ捜査の過程でございまするので、私は、必ずこの事件は解決をするものと、こういうふうに期待をいたしておるのでございます。  御質問の、本来の任務を離れて云々というお話ですが、やはり警察が本来の任務を果たすために、先ほど来申したような、いざという場合の体制をとり、またその準備もし、訓練もするのだ、こういうふうに私は考えております。ただ、もちろん警察の任務というものは、あくまでも国民の生命、財産を守る、同時に社会の秩序を維持する、こういう立場にあるわけです。したがって、私は、平たいことばで言えば、いわゆる市民警察活動といいますか、市民の、国民の生活に密着した面の警察活動、これが警察の基本の仕事であって、その仕事をおろそかにするということでは、これはとうてい国民の信頼をつなげない、国民の信頼のなきところに治安の維持がありようはずもありません。そういう意味合いから、私は、やはり市民警察活動、市民生活に密着した警察活動というものを重視をしてやっていきたい。しかし同時に、また最近のような騒々しい世の中になりますと、やはりこれまた——国民大多数は、平和な社会の実現を望んでおると思います。そういう意味合いにおいて、私どもは、あくまでもこれまた国民の平和な生活を維持するための活動だ、こういう観点から、あらゆる事態を想定をして、これに対応していく、これがやはり警察の基本的任務である、こういうふうに私は理解をしておるのでございます。
  32. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 警察の基本的な任務はどうかということにつきまして長官からお話がありましたが、とにかくこういうような、十月一日から安保体制を大々的にしいて、しかも刑事、防犯という重要な仕事が第二公安部、第三公安部として動員せられるというような報道を見ました場合に、私のような感じを持つ国民は多いと思うのですね。そういう点は、やはり十分念頭に置かれて対処をしていただきたいと強く要請をいたしておきたいと思います。  押し問答ばかり繰り返してもあれですから、次の問題をお尋ねしたいと思うのですが、最近人事院勧告が出ました。これに対しまして、当然全国の公務員労働者諸君は、これを完全実施すべきである、あるいは部分的には、初任給の上がり方が少ないから、少なくとも最低四千円は引き上げるべきであるとか、あるいは期末手当は〇・一八カ月分民間と公務員の差があるのに、〇・一カ月しか勧告しないことは不当である、当然これは〇・二カ月に増額をすべきである、あるいは五月にさかのぼって実施をすべきであるというような要求を掲げて運動をすることが今後予想されます。ところで、御案内のように本年四月二日に、東京都教組の事件に対しまして最高裁の判決がございました。最高裁としての判断は下されているわけでありますが、そういたしました場合、こういった純粋な労働運動、しかも最高裁判所が明確な判断を下した事案、こういうものは当然警察として、警備警察活動の対象にはもはやならぬと私は思うのです。そういうものについては警察として警備事案の対象としていろいろされることは、これは全く誤りだと思うのでありますが、その点の見解をひとつ明確にしておいていただきたいと思います。
  33. 後藤田正晴

    後藤田説明員 もちろん私どもは、それが正当な労働運動である以上は、何の関係もございません。ただそれがあくまでも法に触れるという場合に、私どもはそれに対して処置をとる、こういうことです。そこで、法に触れるか触れないかということについては、これは判例等も当然十分参酌をした上で運用をしていく、こういうことに相なろうかと思います。
  34. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 九月の六日の早朝、警視庁が早大の文学部構内で百二人の方を凶器準備集合罪で逮捕をされたようでございます。かつて当委員会でも議論の対象になったのでありますが、昭和四十三年一月の飯田橋事件、この際、学生約百三十名が角材や石を持って無届けデモをやっておった。これに対して凶器準備集合罪を適用して全員逮捕をしたという事件がございました。本来凶器準備集合罪を適用いたします場合は、その凶器が使い方によっては凶器になるというのではなしに本来的な凶器である、いわば銃砲刀剣のたぐいでしょうね、そういうものを持って集合するという場合に凶器準備集合罪を適用するというのが従来の考え方であった。しかるに飯田橋事件におきまして、角材や石を持って無届けデモをやっておる、それに対して凶器準備集合罪を適用したことは、これは行き過ぎではないか、拡張解釈ではないか、本来凶器にのみ凶器準備集合罪は適用すべきであるということが議論をされたのであります。しかるに今回はこの角材や石を持っておったわけではない。単にシュプレヒコールをしてデモをしておった。これに対して、建物の中に角材とか火災ビン等が備えつけられていたということを理由として凶器準備集合罪を適用するということは、飯田橋事件がすでに拡張解釈のそしりを免れぬ上に持ってきまして、さらにこれは非常な拡張解釈である。飯田橋事件を越えるあまりにもひどい拡張解釈ではないかという感じを持たざるを得ないのであります。凶器準備集合罪というものは、このようにどんどん拡張解釈するということは問題ではありませんか。
  35. 後藤田正晴

    後藤田説明員 凶器準備集合罪を拡張解釈ではないか、こういうお話ですが、凶器準備集合罪は、御承知のとおりに、多数の者が共同加害の意思を持って、そして凶器を準備をしたとか、あるいは準備をしておることを知ってそれに参加したという者を処罰をするのが、これが凶器準備集合罪だと思います。そこでこの凶器とは何ぞやということで、いま御質問がありましたが、飯田橋事件についてそういう御質問があったことは私も承知しておりますが、すでに今日その点は一切解決済みだ、私はこういうふうに思います。これはすでに起訴もせられて裁判も進行しておる。  第二番目の、早稲田の文学部での、中庭に集合しておった者を凶器準備集合罪で全員逮捕したのはこれまた拡張解釈ではないか、この点ですが、これはちっとも拡張解釈ではない、私はそう思うのです。問題はやはりケース・バイ・ケースで、当該集まっておった人間が凶器を準備したとかあるいは共同加害の意思を持って凶器を準備をしておることを知って参加をしたものであるかどうかという、そのつながり、個々の立証関係、これが私はきめ手であると思います。早稲田の場合には御承知のとおりの状況で、こまかい点御質問があれば、また担当の者から答えさせますが、私は、あの事案の場合には、あの中庭に集合しておった者は、まさにあの内ゲバの際に相手を攻撃をしようということで、いろいろな凶器を準備をして、そしてあそこに集まって立てこもっておったものである、この間の立証が十分だということで、全員検挙になったもの、こう解釈をしております。したがって法の拡張解釈ということではない、従来どおりの解釈でやっておる、私はこういうふうに理解しております。
  36. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 飯田橋事件の場合の凶器、これは本来的な凶器でなしに、角材とか石というものですが、使い方によっては凶器になるというものでしょう。これについてはもう解釈は確定している。起訴されて、裁判の進行中だ、こういうお話であります。それはあれでしょう。警察なり検察庁の段階でそういう解釈を確定しているといいますか、とっているということでしょう。裁判の進行中であれば、まだ裁判所としてはこの問題については確定しているわけではありませんで、問題は、警察なり検察庁というものの法解釈というものがややもすれば拡張解釈されて、これが現実の公権力の行使となってあらわれる、そこに私は問題があるように思うのです。先ほど例に引きました四月二日判決についても同様だと思うのです。警察なりあるいは検察庁におきましては、あのような行為はストライキ行為であり、地公法三十七条違反であり、地公法六十一条に該当するものだ、こういう解釈を確定されて、各県で起きましたような同じような事案につきまして、いずれも逮捕をし起訴したことは事実でしょう。しかし最高裁の判決によれば、そのような検察庁なり警察の解釈というものはこれは間違いであって、憲法二十八条の団結権に触れる違憲の疑いがあるということで全員無罪になったと思うのです。しかし、そのときはもうすでに十年も期間がたっておるわけであります。私はやはりそういう点を警察が十分考慮する必要があるのじゃないかと思います。検察庁なり警察の段階で法解釈を確定して公権力の行使をやってしまう、十年もそれ以上もたってから、やはりそれは間違いだったということになる。その間受けた一般国民の被害たるや、これはばく大なものだと思うのです。私はやはりそういう点に思いをいたして、そしてやはりこの凶器準備集合罪につきましても、初めは本来的な凶器、それから角材や石に拡張解釈する。今度は持っていなくても、そばに置いてあったからこれを適用だということでは、これは私はますます拡張解釈になっていくのではないか。それが裁判所において判断せられる。その判断がどう出るかは別でありますが、結局、もしかりに将来それが凶器準備集合罪は適用にならぬということになった場合には、その間受けた国民の被害というものはたいへんなものなんですから、やはりその辺を十分判断しながら対処をされるということが必要ではないのか。もちろん私どもはこのような過激な行動をとること自体について、決して賛意を送るものではありませんし、そのようなことはきわめて誤った行為であると私は思います、現実にゲバの行為があるというようなことは。しかしこの凶器準備集合罪というものが、いま言ったように拡大解釈されるということのおそろしさというものも私どもはやはり指摘をしなければならぬと思うのです。いま申し上げたような点について、長官としてお考え方をひとつお聞かせいただきたいと思うのです。
  37. 後藤田正晴

    後藤田説明員 申し上げるまでもなく警察は、これは権力の機関でございます。権力というものは私は絶えずもろ刃のやいばだ、こう考えております。したがってこれはよほど慎重に使わなければならないものと、こういうかたい考え方のもとに全国警察指導していきたい。したがって抽象論としては、ただいま先生がおっしゃった御議論に私はいささかの異議もございません。  ただ具体的な問題になると、これはやはり十分注意をしながらも、事態を私どもの手で解決するための責任を果たす、国民に対する私どもの責任を果たすという意味合いから、これは警察仕事というのはいわばやむにやまれずやるものだ、こういうのが私は基本だと思います。そういう意味合いで、法の解釈等にも十分注意はしますけれども、ケース・バイ・ケースで処理していきたい、こういうふうに思います。
  38. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 時間も約一時間近くかかりましたから、これで終わりたいと思いますが、先ほど申し上げた点はひとつ十分考慮をいただきたいと思うのです。  最後に私は警察官の教養の問題をお尋ねして終わりたいと思うのです。私も地方行政委員をいたしております関係で、東京都内で起こりますいろいろな事案に立ち会うと申しますか、そばで拝見をする機会も多いわけでありますが、その際、警察官の態度がいわば挑発するといいますか、そういうような態度が見えまして、必要以上に混乱を拡大しているのではないかという感じを持つことがしばしばございます。  本日の読売新聞の「編集手帳」というのを拝見しましたら、次のようなことが書いてございました。「なにもやることがないから警察官にでもなろうかなどと、これまたさいきん評判のよろしくないガードマン並みの心構えで“就職”したとしか思われない警官が目立つ。交通事故、汚職はむろんのこと、他人のものをだまっていただく“しら波”つまり盗賊巡査まで現われる始末である」。実は私の住んでおります町にも同じ事案が起きました。私の住居の百メートル近くでやはりこういうような事案が起こりましたが、具体的なことを尋ねるわけではありません。そういうことがあったということですね。「つい先日も東京・練馬でパトカーが小型乗用車と衝突した。非番だった二人の巡査が無断でしかも酒酔い運転したことはむろん言語道断だが、目撃者の話によると、警察の事故処理が不公平であったというのも許せない。すくなくとも、そう思わせるだけでも不徳のいたすところというべきである」「こうなるのも、悪い意味での伝統である特権意識がまだ残っているからだろうか。それともとくに若い警官が、ある種の挫折感から、なかばやけくそになっているため世のなかがあべこべになるのか……。」こう書いてありますが、私はやはりこの十月一日から二万五千人の方を動員して安保体制をしく、そういう意味では非常に問題があると思いますが、特に実際の治安に携わる警察官の方が、ここで批判されておるようなことがあるとするならば、私は非常に問題ではないかと思うのです。  私の住んでおりますところで起きた事案をちょっと申し上げましたが、あるいは酒酔運転で人をひき殺すというような事案もやはり私の住んでおります近くで起こったこともございました。もちろん本人の罪であろうと思いますけれども、しかしそのような状態を引き起こした警察全体としての責任というものもこれは免れることはできないと思います。ぜひとも、警察官の方々の教養の面につきましては十分長官としても配慮をされまして、そして世の中から指弾を受けますような事案を根絶すると同時に、特に警察官の方たがいわゆる大衆を挑発するような行為は厳に戒めることが、この治安確保の上からいってもきわめて重要ではないのか、こう思います。特に警察官の教養、教育の点について長官としての所信があれば承っておきたいと存じます。
  39. 後藤田正晴

    後藤田説明員 ただいま御指摘の点は御意見のとおりでございます。やはり大ぜいの中から、きわめて少数ではございますが、遺憾な事件を起こす者があることは事実であり、これまたたいへん残念に思っておりますが、何としても警察官教育というものに力を将来とも入れていきたい、こう思います。私はやはり治安の維持というものは、国民の皆さん方との間の相互の理解というものが基本だろうと思います。それがためには、まず理解をしてくれという前に、警察官みずからがりっぱになることだ、同時に警察の姿勢をただすことだ、こういうふうに考えております。そういう意味合いで、まず処遇等も私どもが十分考えて、りっぱな人をまず警察界に入れる。そして働きがいのある職場環境をつくっていく。そして、それをさらに内部で教育訓練を徹底をする。そして職業人としても、また社会人としても、一般の国民の皆さんから見て親切だ、同時にまたたよりになる、こういった警察官づくりということに最大の力を注いでまいりたい、こういうつもりでおりますので、御理解を賜わりたいと思います。
  40. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 一つ忘れましたので、数字だけ聞いておきます。  昭和四十三年に機動隊が出動した回数は三十一回だと聞いておるのですが、よろしゅうございますか。それから昭和四十四年の八月末までに二百四十回出動しているというふうに聞いておりますが、正確な数字をお教えをいただきたいと思います。  それから過般、文部次官通達がございまして、警察が判断した場合には大学の要請がなくとも出動する場合もあり得るというようなことを承っておるわけでありますが、本年になりましてから、大学からの要請なしに出動いたしました回数が何回であるか、わかればひとつお答えをいただきたいと思います。
  41. 三井脩

    ○三井説明員 ただいまの件数でございますが、今年に入りましてから要請なしに大学に入りました数は六十五回でございます。これは本年の上半期、六月末までということになっております。
  42. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 全体の出動した回数はどうですか。
  43. 三井脩

    ○三井説明員 昭和四十二年までに四十五回出ておりますが、これは要請がありましたものが三十六回、要請のないものが九回という内訳になっております。四十三年中は全部で三十一回出ておりますが、要請のあるもの七回、ないもの二十四回。四十四年はただいま申し上げたところでございますが、総数は四十四年上半期で百六十二回、うち要請のありますものが九十七回、要請のないものが六十五回ということでございます。
  44. 鹿野彦吉

    鹿野委員長 林百郎君。  ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  45. 鹿野彦吉

    鹿野委員長 速記を始めて。
  46. 林百郎

    ○林委員 では警察庁長官お尋ねします。  各省各庁とも来年度予算の概算要求をしている時期であります。警察庁でもすでに一部は新聞に発表になっておりますが、来年度予算要求の主要な項目、それからその裏づけ、数字、そういうものがわかったら、来年度の警察行政とからめて長官に説明願いたいと思います。
  47. 後藤田正晴

    後藤田説明員 官房長からお答えいたします。
  48. 富田朝彦

    ○富田説明員 お答えいたします。  四十五年度の警察庁予算要求につきましては、総額四百八十九億三千六百万円の概算要求を取りまとめまして、目下大蔵省と事務的な折衝を行なっておるわけでございます。この柱と申しますか重点事項としましては四点一応考えておりまして、その第一は、破壊的集団暴力から市民生活を擁護するに必要な諸経費、第二の重点項目といたしましては、交通の安全と円滑対策の推進、第三といたしまして、社会構造が変化をいたしておりますので、それに対応するに足りる刑事警察あるいは保安警察の体制を確立いたすこと、第四といたしまして、車両、通信その他警察力の充実整備、かような四点の重点を立てまして概算要求を行なっておる次第でございます。
  49. 林百郎

    ○林委員 長官お尋ねしたいのですが、いまのはある新聞にも出ていた内容です。この中で、もちろん安保体制についてわれわれの見解と政府の見解は対立しているわけです。警察のあり方についてもわれわれは一定の批判的な立場に立っています。そういう立場から率直に答弁を願いたいのですが、この破壊的集団暴力から市民生活を擁護する、これは約五十一億くらいの予算だと思いますが、この破壊的集団暴力というのは何を考えているわけですか。
  50. 後藤田正晴

    後藤田説明員 御承知のとおりの最近の実情から見まして、私どもは、学生のあばれる連中、反戦青年委員会等の暴力行為を集団でやる人たち、あるいはベ平連等の名のもとに破壊活動をしておる人たち、あるいは矯激な行動に出るアナーキストの動向査察、取り締まりの問題、あるいはこれらの一連の動きに反発をして直接行動に出るおそれのある右翼の連中、こういう者たちに対する警察の取り締まり、これを対象にいたしております。
  51. 林百郎

    ○林委員 その次に、社会構造の変化に対応する刑事、保安警察体制の確立、この社会構造の変化に対応するということはどういうことを意味しているのですか。
  52. 後藤田正晴

    後藤田説明員 御承知のとおりの高度の経済成長、高度の消費社会、高度の技術革新といったようなことで、現象面で私ども市民の立場に立ってみてもふぐあいなことがいろいろございます。こういったことをわれわれが取り締まっていかなければならぬ面があるわけですから、そういうことに対応する典型的なことで考えますれば、やはり都市における人口集中の問題だと思います。そこで都市犯罪というものが、最近は人口の割合以上に犯罪の比率が都市において高まっております。これは原因はいろいろあろうかと思いますが、私は最大の原因は都市における匿名性、名前が隠れておるということ。これの結果無責任層がふえておる。この犯罪の検挙が、都市の匿名性なるがゆえに、また警察立場からもなかなか検挙が困難になってきつつあります。これに私どもがどう対応をしていくか。これは事後捜査に追い込むと、なかなか都市の犯罪の検挙というのは多くの人の力と経費を要して、しかもなかなか検挙がうまくいかぬ、こういうことになります。そこで、できるだけ犯罪の認知を早くする。そしてそれに応じて即刻緊急の配備措置を講ずる。同時に警察官を現場にできるだけ早くやる。同時にまた、初動の捜査部隊がございますが、初動捜査の部隊を現場に急行させる。そして現行犯もしくは緊急逮捕の段階で検挙をする。この体制をとらないと都市犯罪の激増に対処できないだろう。そこでそういう意味合いから刑事、保安の経費の増額を要求したい。  同時に、もう一つの典型的な現象としてあらわれておるのは、犯罪が非常に広域化しております。そこでこの広域化しておる犯罪に対応するためにはやはり捜査本部というものの組織、運営の問題、各県の相互の共助の問題、あるいは全国的な規模における捜査の体制のとり方、たとえば指定一〇七号といいましたか、あるいは番号が間違っておるかもしれませんが、ああいったような事件ですね。こういったような全国的な捜査のネットワーク、これをとる体制、こういうようなことで相当の経費がかかります。こういうことをわれわれはやっていきたい。この意味合いから、ただいま申したような項目のもとに経費要求をいたしております。
  53. 林百郎

    ○林委員 官房長、いまの四項目ですが、これの数字を大体確かめておきたいのですが、あなたのほうから、もしわかったら四項目別の数字をちょっと出してください。それから対前年度どのくらいの比率か。
  54. 富田朝彦

    ○富田説明員 お答えいたします。  第一に申し上げました破壊的集団暴力から市民生活を守るという経費でございますが、これは五十一億でございます。それから第二の、交通の安全と円滑対策の推進のためには二十二億でございます。それから第三の、ただいま長官から説明を申し上げました社会構造の変化に対応する刑事、保安警察の関係は四十六億でございます。それから警察力の充実整備が二百三十一億。これは重点項目でございまして、四百八十九億の総額にはこれ以外に人件費、これも当然毎年支払っておるような人件費、そういったようなものが一般的な事項といたしまして百三十七億ございます。これを合わせますと四百八十九億、かように相なるわけでございます。四十四年度予算額からは三百九十億余でございます。したがいまして、九十数億の増加要求、ちょうど二五%でございますが、そういう要求をいたしております。
  55. 林百郎

    ○林委員 長官お尋ねしますが、この予算警察力の充実整備、これが二百三十一億、圧倒的に大きい数字を示しておるわけです。いままでのは、使いなれないことばがあったから長官にそれを聞いたわけですけれども、この警察力の充実整備というのはどういうことを考えているわけですか。
  56. 後藤田正晴

    後藤田説明員 車両とかあるいは通信とかあるいは施設とか、各般のものになっておりますが、官房長からお答えいたします。
  57. 富田朝彦

    ○富田説明員 お答えいたします。  警察力の整備充実の主たる項目は車両でございまして、これらは捜査用の車両あるいは交通用のパトカーあるいは事故処理車、さらには警備用の車両、こういうものでございます。  それからそのほかに麻薬の捜査でありますとか、そういう特殊な最近の保安上の犯罪あるいは刑事上の犯罪に即応できるような器材、こういうものも含まれております。  それから通信でございますが、これも相当金を食うものでございますが、マイクロ多重をすでに装置をいたしておりますが、最近の通信量あるいは情報化社会というような観点からいたしまして、これの改修をはからざるを得ないというような点。  それから警察施設、これは例年お願いを続けてきておるところでございますが、警察学校あるいは府県警察署あるいは派出所、駐在所に対する補助金等、さらに機動隊でまだ未整備のもの等につきましてお願いをいたしておるのでございます。  その他、犯罪鑑識の関係の技術の向上のため、あるいは科学警察研究所におきまして、いろいろな科学警察的な研究あるいは鑑定をいたしておりますから、そういうものに使用する経費等でございます。
  58. 林百郎

    ○林委員 こまかいことは、どうも長官時間がないので残念だと思いますけれども、従来いわゆるスパイの費用ですね。これは警備公安に要する費用として予算に組まれ、一部は直接警察庁のほうから県の本部長へ渡していた。それから警察庁自体も使っている。これが非常に黒い霧におおわれているわけなんですね。どうしてもこの点は、警察庁はわれわれの質問に対してはっきり出さない。ところが例の背叛社事件の公判でも明らかになったように、実は警察官がこの犯人に前後九回ぐらい会っていて、十一万もの金を渡していた。しかもこれで犯人のほうに言わせれば、硫酸を買ってきたり爆破用の装置をしていた、こういうことまで出てきているわけですね。こういう警備公安に要するスパイの費用というのはどのくらい予算に組んであるのですか、率直に聞きますけれども
  59. 後藤田正晴

    後藤田説明員 スパイに要する経費はゼロでございます。
  60. 林百郎

    ○林委員 そうすると、こういう背叛社事件に要する費用だとか、こういう情報提供者に対する謝礼、それからかつては、これは島根の県警の文書から出たいろいろの情報提供者に対する、協力者への謝礼あるいは飲食費というのがずっと組まれていますが、これはどういう費目に組まれるのですか。
  61. 後藤田正晴

    後藤田説明員 警察としましては、各種の犯罪に対応するために、いわゆる情報の収集をいたします。しかしそれはスパイではございません。犯罪情報収集のために必要な経費ということで、捜査費という科目で費用を組んでございます。
  62. 林百郎

    ○林委員 そうすると、明年度の予算概算要求の中で捜査費は幾ら組んで、それは前年度幾らであったのに対して幾らの増額になっていますか。
  63. 後藤田正晴

    後藤田説明員 御質問はおそらく警備公安と、こういうことでしまうけれども、私どものほうの組み方は、警備公安に要する捜査費ももとよりですが、刑事、それから交通も、ひき逃げ等ございますから交通も入り、同時にまた保安の警察官等に要する情報費、これらひっくるめて一本になって組んでございます。そして当該年における犯罪の実態に応じてその中から使用をしていく、こういうことになっておりますが、金額は官房長からお答えいたします。
  64. 富田朝彦

    ○富田説明員 お答えいたします。  捜査費といたしましては、昨年が二十三億でございます。そのほかに補助金がございますけれども、捜査費としては二十三億でございます。これに諸般の情勢等を加味いたしまして若干の増額をして要求をいたしておりますが、目下事務折衝中でございまして、この数字は動く可能性がありますので差し控えさせていただきたいと存じます。
  65. 林百郎

    ○林委員 だからそこへいくと、事務折衝だとかなんとかいうことで国会答弁に出てこないことになるわけですね。そうすると、昨年度は二十三億ですか。
  66. 富田朝彦

    ○富田説明員 そうでございます。
  67. 林百郎

    ○林委員 それから各地方の警察本部へいった補助費は、そのほかどのくらいですか。
  68. 富田朝彦

    ○富田説明員 捜査費の補助金といたしましては二億七千万円でございます。
  69. 林百郎

    ○林委員 これはあとでまた質問しますが、長官、時間がないようですから長官お尋ねします。  先ほどの予算項目のうち、四つの項目のうちの一つ警察力の充実整備という項目がありまして、その説明がたしかあったと思います。先ほど山口委員質問されたのですが、この警察力の充実整備の重点が、一九七〇年になると機動力あるいは警備、ここへ相当重点が置かれているように、先ほどの答弁を聞いていると私としてはそういうふうに聞こえるわけなんですけれども。そこで、これももうすでに各新聞紙も出しているところなんですけれども警視庁の四十五歳以下二万五千人の鎮圧部隊と新聞には出ていますが、これはどういう訓練をするのか。そしてあなたは、この形態が各地方警察にもいって、地方警察でこういう形で約十万人の鎮圧部隊というか応急の機動部隊がつくられるだろう、こういう話があったようですが、これはどういう訓練をするのですか。
  70. 後藤田正晴

    後藤田説明員 一定の時間をきめまして、そして集合教育を多くの場合やるわけです。それぞれの府県には学校等も持っておりますので、たとえば月のうちに二回なら二回ときめて教育をやる。やり方としてはそういうやり方、内容は、やはり基本は適正な職務執行ができるようにということで、まず法令の解釈、運用、同時に検挙した場合の捜査書類のつくり方、また部隊活動をいたしまするので部隊活動のやり方、同時にまた、平素からだがなまっておりますから、体力の訓練、つまり体育ですね、こういうようなことを中心教育をいたしております。
  71. 林百郎

    ○林委員 だいぶあなた答弁で逃げているようですけれども、そんななまやさしいものじゃないのです。きょうの新聞にも「“非常体制”で取締り」と、警視総監が昨日管内の九十余の署長を集めて訓示を与えている。これを見ますと、機動隊を含めて二万五千人が出動できる体制ですね。だから出動して具体的な行動をとる、そういう訓練をするという意味じゃないですか。法規を適正に適用するとか、捜査に関する書類を適切につくるということじゃなくて、やはり弾圧部隊というか、われわれとあなた方の使うことばは対照的だから、あなたのほうは、われわれの使うことばは親しまない、あなたのほうの使うことばは、われわれからすれば親しまないのですけれども、われわれから見ると、一九七〇年を控えて、安保体制でいろいろの弾圧体制を固めていくというふうにとれるわけなのですけれども、そういう出動体制の訓練をするというのは、これを固めるのじゃないですか。それが一つと、そうなりますと警視庁でも七割、それから地方警察でも七割がそういう方面の特殊訓練。あなたはからだがなまっているから鍛えるんだ、しごくんだというふうなことを言っておられますが、そうすると、本来市民が警察に期待しておる市民警察というのですか、刑事的な警察の機能ですね、そういうものは非常に制限されて、ただでさえ、さっきも話がありましたけれども、三億円の犯人がつかまらないとか、殺人犯の迷宮入りが非常に多くなってきているとか、もうとられたものの返還率なんというのは三割程度です。七割は一たんとられたらもうあきらめなければならないという状態ですね。そして、いまや警察に対する市民の信頼というものは非常に低下している。一方、政治的な警備公安の警察力というものは非常に高まって逆に市民の批判を受けている、こういう警察の姿になっているのですね。これをあなたが長官になってからさらに一そう強化する方向に行こうとすることは、われわれははなはだ心外に思うわけです。そういうことになると思いますが、どうですか。
  72. 後藤田正晴

    後藤田説明員 いろいろのお立場でいろいろの御解釈は当然出てくると思いますが、これはいまさら私が申し上げるまでもなく、警察は軍隊とは違うのです。警察というものは出動の訓練をして相手をやっつければいいんだといったようなものでは絶対ない。警察というものはあくまでも法を犯す者を逮捕するのだ。最後はだれが逮捕し、しかもだれをいかなる証拠によって逮捕をしたということを、個人個人の司法手続による処理を必要とするわけです。ここが勝負どころなんです。そういう意味合いから、先ほど私がお答えをしたように、たとえそういう部隊活動であっても、部隊の力で圧倒するのじゃないのです。これは最後はあくまでも犯人を検挙して個人個人の司法処理をする、その司法処理が適正にできるというための警察官訓練せなければならぬ、そういう意味合いでの訓練中心になるのだ、こういうことでございます。
  73. 林百郎

    ○林委員 では長官どうぞ——いずれまた長官質問を続けたいと思いますが、では官房長と警備局、それからその他の警察関係の方にあと答弁願いたいと思います。いまの答弁は非常に抽象的なのですけれども、その十万人、十七万幾らの全国警察官の約七割以上に当たる十万人を、警視庁の特殊部隊と同じような訓練をしていくのですか。その訓練はどこでどういうようにやるのですか。それは警察庁としてやるのですか、管区でやるのですか。またやるとすれば、どこでどういうふうに、どのくらいの期間訓練をすることになるのですか。
  74. 富田朝彦

    ○富田説明員 全国十万でございますが、数字が若干違いますので、私から申し上げたいと思います。十七万五千でございますので、約六割でございます。それの訓練といたしましては、先ほど長官から説明もいたしましたけれども管区機動隊につきましてはあのような訓練をいたすわけでございます。三分の一が管区学校におきまして訓練をいたし、あと三分の二はそれぞれの府県におきまして、これは定例招集日とかあるいはその他県庁所在地等に集合できる機会を見つけまして、そういうおりに訓練をいたすわけでございます。またその他の府県におります警察官は、座学としてのいろいろな法律の研究、勉強ということもあろうかと思いますが、これはそれぞれの警察署なりそういうところで時間をとりまして、所要の職員教育をいたします。それからああいう部隊行動を必要といたします場合には、県内のいわば拠点といいますか、何ブロックかに分けてありますような、そういうところに集めまして訓練をするなり、あるいは県庁所在地警察学校訓練をいたすなり、かような訓練のしかたでありまして、特別な訓練のしかたを考えているわけではございません。
  75. 林百郎

    ○林委員 そうすると、先ほどの本年度五千人の増員ですね、これは管区の機動要員として約四千二、三百人動員されるので、それを補充するために五千人の新たな増員を必要とするのだというような話があったのですね。その管区機動隊が四千二百人、これを埋めるために五千人の増員要求するというのですけれども、これはどういう関係になるのですか。いまの訓練と四千二百人という数字と五千人の新規増員との関係はどうなんですか。
  76. 富田朝彦

    ○富田説明員 ただいまの最後のほうからお答え申し上げます。  五千人増員の中身でございますが、これは管区機動遂の訓練を強化いたしたりそういうようなことで、県庁所在地に三分の二はおるというようなこと、三分の一は管区学校におり訓練を受けます。そういうことで、そこにやはり第一線の交通でありますとかあるいは外勤警察官でありますとかが、どうしても署単位で見ますと穴があくことがございますので、その穴埋めに四千二百十人を外勤並びに交通警察官増員として考えておるわけでございます。それから五千との差の七百九十でございますが、これは東京都の三多摩地域におきまして、非常に人口の流動あるいはいろいろな新都市化現象が起こっておりまして、これに見合うだけのやはり外勤警察官の手当をいたしたい、こういうことで七百九十名の増員を一応考えているわけでございます。
  77. 林百郎

    ○林委員 管区機動隊は、それは事あれば招集を受けるので、だからそれは穴があいているということではなくて、それはいつでも事態に応ずることのできる体制にあるということでしょうか、それとも四千二百名を管区機動隊として常時管区が掌握しているということですか。私が理解するところでは、五千名増員というのは、そういう十万人の新しい機動的な訓練をしなければならないから、そういう場合、市民警察手薄になるからそれを埋めるんだ。これで埋めさせておいて、これから漸次訓練をして十万人の機動的能力を持つ警察官を養成していくんだ、そういうことじゃないですか。
  78. 富田朝彦

    ○富田説明員 管区機動隊四千二百名は、動員計画上は概略十万と申し上げましたが、その中に入っておるわけでございます。したがいまして、その穴埋めという先生のお考えは、私はそのとおりであろうかと存じます。ただ、四千二百十名が常に管区学校に全部集まりまして訓練を受けておる、こういうのではございませんで、その三分の一に当たります約一千四百五十名ぐらいになろうかと思いますが、それが管区学校に参りまして訓練を受ける、その分はそれぞれの府県をある一定の期間だけ離れておるわけでございます。その残りの三分の二は、それぞれの府県におりまして、それぞれの活動をし、あるいは訓練を受けておる、こういう状態でございます。
  79. 林百郎

    ○林委員 さらに、新聞の報道するところによると、警察職員で一般職員を四千五百十六人、これは交通巡視員、交通警察官の補助、これの増員も要望しているんだという記事が出ておるんですけれども、これはどういうことなんですか。
  80. 富田朝彦

    ○富田説明員 ただいまお尋ねの四千数百名の交通関係職員でございますが、これは純然たる府県職員といたしまして、地方交付税の財政需要を算定します際にいろいろその地方の職員としてお願いをいたそう、こういうわけでありまして、この中身は、最近駐車とかその他の交通事情につきましては、私から申し上げるまでもなく、諸先生いろいろ常に御指摘あるいは御激励のところでございますが、この駐車でありますとかそういうものにつきまして、あるいは学童の登下校でありますとか、警察官も一生懸命やろうということで努力をいたしておりますが、まだ手の届かぬところが現状においてもございます。そういう意味合いにおきまして、一般職員といたしまして、地方のそれぞれの府県に必要とするそれぞれの実態に応じまして、総数で四千五百六十名であったか、数字は若干不確かなところがあるかもしれませんが、そういうものを一応交通巡視員というような名前で、仮称でございますが、そういう名前で一応考えておるところでございます。
  81. 林百郎

    ○林委員 その交通巡視員というのは、身分がはっきりしないんですけれども、これは都道府県警察官としての身分を取得し、それから財政的には、国の警察のほうでは財政的な援助は全然なくて、交付金の算定のときの財政需要額に算定されるということですか。どうも身分関係がはっきりしない。警察官なんですか、警察官じゃないんですか。
  82. 富田朝彦

    ○富田説明員 これはちょっと説明が足りなかったかと思います。警察官ではございません。各府県警察の一般職員という身分の職員と考えております。
  83. 林百郎

    ○林委員 そうすると、いままで警察官のやっていた仕事の一部を、新しく地方の自治体職員として交通巡視員という身分の職員を設けて、これに肩がわりさせるということでいいですか。
  84. 富田朝彦

    ○富田説明員 お答えいたします。  肩がわりするという面もございますし、さらに、いままで児童の登下校等につきましてはどう見ても足りない。警察官が現場におって誘導したほうがいいのでありますけれども、それがやはり足りないというような、いわば充足という点も実は考えておるところであります。  なお、この巡視員につきましては、どういう権限を持たせますかは現在検討中でございますが、児童の登下校時の問題等につきましては、これは特別の権限なしにもできるわけでございますけれども、しかし、駐車とかそういう問題にもタッチをいたすということになりますれば、当然これは道路交通法の一部をその面におきまして改正を検討いたさなければならない、かように考えております。
  85. 林百郎

    ○林委員 そうすると、それは都道府県要請で、都道府県がイニシアを握ってやればいいので、これは警察庁のほうで一般職員として四千五百数十名の増員要求するということは、これはどういうことなんですか。やはり警察の息がかかっているということなんですか、どうもそこがはっきりしないのです。
  86. 富田朝彦

    ○富田説明員 これは地財計画で、先生案内のように、全国にそういう面での、いわば都道府県警察に対しまする警察庁としてのめんどうを、自治省との間でいろいろ御相談をいたして、いろいろ従来もやっておるような経緯もございますので、そういう関係から一応四千五百六十名という数字をあげまして、自治省等といろいろ御折衝を始めておる、こういうところでございます。
  87. 林百郎

    ○林委員 そうすると、もう少し具体的な問題に入っていきたいと思います。先ほどの警備公安に関する情報提供の謝礼予算ですね。先ほど官房長は、昨年は二十三億ですか、そういう御説明だったように聞いたのですが、これは警察庁が使う費用で、このほかに都道府県本部長に二億幾らを補助金として交付している、こう聞いていいのですか。警察庁独自で二十三億使っている、補助金として、全国都道府県警察へ交付するのが二億幾ら、こう聞いていいですか。
  88. 富田朝彦

    ○富田説明員 お答えいたします。  ちょっとお答え申し上げなければいけなかったかと存じますが、先ほど四十四年度の国費の捜査費が二十三億と申しましたのは、これは警備ばかりでございませんで、刑事あるいは保安そういうものの費用、いわゆる捜査費を含んでおります。したがいまして、この二十三億の大半は、九割近い額は、これは都道府県本部長のもとにおいてそれぞれの目的に従ってこれを使用いたしておる、こういう状態でございます。
  89. 林百郎

    ○林委員 私はスパイのための費用と言ったら、これは情報提供のための謝礼だというのですから、ことばはどういうことばでもいいでしょう。そうすると、情報提供の謝礼というのはこの中で約どのくらい含まれるわけですか。前は警備に要する費用というのはちゃんとあったんですけれども、最近は警察活動に要する費用とか何とかいうことで、込みにしてしまって、一そうわからないようにして、あなた方の思うつぼに予算編成をしてしまっているもんですから、ちっともここのところがわからないわけです。ところが、それが問題なんでね。そこが警察予算の中の黒いベールなんですよ。そこをわれわれははっきり知りたいと思うのですけれども警察活動で要する費用の中で、そういう情報提供の謝礼とか——これはなぜ私たちがそう聞くかといいますと、刑事警察のほうの警察官は、身銭を切って、そうして捜査に当たっている。これは警視庁の花といわれたかつての刑事の諸君ですね。こつこつ手弁当で身銭を切ってやっている。ところが警備公安のほうは、もうこれ見よがしに幾らでも金を使っている。たとえば一九五五年の島根県警の文書を見ますと、料理店で酒を飲んだ酒代だとか、あるいは会議費だとか、協力者との懇談会だとか、あるいは協力者への謝礼だとか、もうふんだんに金を使っているわけですね。だからこういう政治的な意図を持つというか、こういう警備公安のほうの警察活動には幾らでも金を使っている。同じ警察官でありながら、これ見よがしのような使い方をしている。そちらの警察官は出世コースも早い。一方こつこつ刑事警察をやっているほうの警察官は、貧乏に甘んじて市民のために奉仕している。共産党だって、警察の持っているそういう側面を評価しないことはないですよ。警察を、みそもくそもみんな一緒にして敵視しているわけじゃありませんから、よくそこのところを官房長も知っていただきたいと思うのですけれどもね。本来市民が期待している警察活動のほうの費用はほんのわずかで、むしろ警備公安のほうにふんだんな金が使われている。われわれ国会では、その点をやはりメスを入れなければいかぬじゃないかと思っているわけです。ところがそこへいくと、あなた方のほうはどうしても答弁を渋るわけですよ。ですから、四十四年度警察予算の中で、あるいはもしそれがなければ四十三年度でもいいですが、そういう警備警察の情報提供のために使った金というのはどのくらいなのか、ひとつここで答弁を願いたいと思うのです。
  90. 富田朝彦

    ○富田説明員 お答えいたします。  ただいま先生から御指摘がありましたように、最近では警察の活動に要する経費と一括をいたしておりますが、従前の大体分けておりました時代のめどがございますので、そういうめどから一応算定をいたしてみますると、これは警備公安関係の何も情報謝礼と申しますか、そういう意味で使われるばかりではなくて、御案内のように最近の過激派の学生を中心にしました暴力集団の非常に多くの事件の捜査、そういうことも含めまして十七億ぐらいになろうかと考えられます。  なお、いわゆる刑事事件に関係しておりまする警察官につきましての御評価はたいへんありがたく存じておるわけでございますけれども、やはり公安係の刑事も同じく身銭を切り、炎天下に走り回り、こういう苦労は、なかなか目には見えませんけれども、いたしておるわけでございますので、御理解をいただきたいと存じます。
  91. 林百郎

    ○林委員 念のために聞いておきますが、そうすると、あなたの言った十七億、これは昭和四十四年度ですね。
  92. 富田朝彦

    ○富田説明員 そうでございます。
  93. 林百郎

    ○林委員 背叛社事件の公判定で、証人に出たのはアナーキストの団体、背叛社が出たのですけれども、あなたの答弁の中にもありますように、最近の暴力学生と称するもの、トロツキストと称するか、こういうものにももちろんそういう情報を収集したり、情報の提供を求めたり、場合によってはそれに対する適当な謝礼を提供するとか、そういうコネクションは持っているわけですか、それは全然ないのですか。
  94. 富田朝彦

    ○富田説明員 三井参事官のほうから御答弁いたさせます。
  95. 三井脩

    ○三井説明員 御在じのように、私たち、犯罪が発生しました場合にこれを適確に検挙するのは当然のことでございますけれども、それ以前におきましても、そのような犯罪あるいは社会の治安を乱す事態、これをできるだけ未然に防止していくという仕事もあるわけでございます。したがいまして、ただいまお話がございましたように、いわゆる捜査費という中で使っておりますのは、犯罪捜査のためのものと、それから未然に防止するためのもの、こういうふうなものに性質上なろうかと思いますが、その辺の限界というのは、今日のように連続的に過激な集団暴力行動が展開されるという中ではなかなか区別がつきがたい点もあるわけでございますが、今日の治安の状況から申しますと、御指摘のアナーキストというのがたいへん爆発物をつくったり、これを使ってテロ的活動を行なうというような動きがございますし、現にしばしば事件が起こっておるわけでございます。また過激な学生の集団暴力行動が今日発生いたしておりますが、こういうような多発しておる事件の捜査を適確に進める、また次に起こる事件の防止にこれを役立てていくというような活動をいたすわけでございますから、ただいま御指摘のような金を使いまして、私たちは情報を収集する活動を鋭意やっておるわけでございます。したがいまして、アナーキストの例以外に、過激な暴力集団である学生あるいはその上部の政治団体というようなものにつきましても、情報を収集すべき重要な対象として鋭意取り組んでおるというのが現状でございます。
  96. 林百郎

    ○林委員 もう少し聞きたいのですが、たとえばトロツキスト学生が、あなたの言うように非常に世間の指弾を受けるような暴力行動に出ている。警察庁としては事前にいろいろな情報も知っておきたいという場合は、そういう中で情報を提供してくれる人には、捜査に協力したということで協力費を提供する。いわゆる背叛社の和田俊一のやったようなことも、トロツキストの方面にもそういう手を伸ばしている、こう聞いていいのですね。
  97. 三井脩

    ○三井説明員 情報の提供その他協力をいただくわけでございますが、その際に、アナーキストの場合も同様でございますけれども、たとえば機関紙を送ってもらうというようなこともございます。また大学の中で警察官と、過激な学生がこもっておるというところで会うことは当然できないわけでございますから、学外の適当な場所で警察官と会って、警察官が情報を聞くということもございますし、また過激な集団がビラ、パンフレットというようなことで組織の内部で流しておる資料、こういうものはたいへん貴重でございますが、こういうものをその協力をいただく方からわがほうが入手するということがございます。したがいまして、そういうような行動をいたします場合に、協力をしてくれる人自身も当然それだけの出費があるわけでございますから、協力に対する謝礼という意味で、そういうような実費弁償的な要素というものはたいへん多いわけでございます。おそらく先般のアナーキストの場合は、御指摘にもございましたように数回ありまして、その間に十一万という額を出しておりますから、十一万は実費弁償としては多過ぎるというような点もあろうかと思いますけれども、この場合は十月十九日、これは例の背叛社事件の二年前に、アナーキストグループが日本特殊金属工業の田無の工場に襲撃をかけた記念日でございます。それからまた十月二十一日は国際反戦デーということで、各勢力がこの日に大きな闘争を計画しておった、こういう時期でございまして、そういういわば闘争の盛り上がった中でこの背叛社グループが爆発物その他を使って破壊活動をやろう、こういうような状況の直前でもある、こういうような状況でございましたので、ただいま申しましたような意味で、和田俊一に対しましては、あるいは見方によれば多額かと思われる謝礼をやっておった、こういうことでございまして、万一あれが使われます場合には街頭において相当の死傷者も出かねないという状況でございましたので、ああいうような謝礼が出たということになるわけでございます。現に十月六日に背叛社におきましては、爆弾製造中にこれが爆発をいたしまして、たいへんな重傷者が出て、ようやく一命を取りとめた、こういうような状況でございまして、そういうような具体的なケース、ケースに応じまして、その相手方が警察に協力してくれる内容、これの高度さといいますか、程度、それからそれがわがほうにおいて必要とするそのときどきの情勢ということを勘案いたしまして謝礼を出しておるわけでございまして、重要な情報を教えてくれる人でも、警察官の日夜を分かたない治安維持活動に共鳴をして協力してくれる、こういうような場合に、必ずしも相当の謝礼ということでなくて、いわば相手方も身銭を切って協力してくれるという場合もあるわけでございます。
  98. 林百郎

    ○林委員 そういう警備公安の情報活動の中で、ことにわが党は非常に被害を受けているわけなんです。もちろんわが党に対するそういういろいろのスパイ活動が行なわれていることもわれわれはよく聞知しますが、八月六日の東京地方裁判所刑事第十五部の公判の日の和田の証言によると、間々田敬作警部補に対して和田が、あなたは私から情報をもらったと言うが、私もあなたから共産党の情報をもらっていたはずだ、それから、襲撃するのに共産党だけではおもしろくない、自民党や公明党もやったらどうか、そして治安立法の口実をつくったらどうかという意味のことも言われたということを言っておりますが、これは官房長、事実はどうですか。
  99. 三井脩

    ○三井説明員 ただいまの点、私のほうで担当いたしておりますので、官房長にかわってお答えをいたします。  警察に協力してくれるという人の場合も、本人の考え方なり、その内容については千差万別でございます。したがいまして、ただいま御指摘の警視庁警部補がこの和田俊一と会う場合にも、会ったら、情報を下さい、はいさようならというわけにはまいりませんで、本人が何を考えておるか、また、組織の状況について本人が何を知っておるかということを話の中で引き出していくというようなことも大切な仕事でございます。機関紙類等につきましては、もらえればもらって、持ち帰ってよく読めばいいということもありましょうし、あるいはその場で読んで、わからないところをさらにただすということもあろうと思うわけでございますが、そういうような会ったときの雑談の中で、和田俊一から当時の社会情勢についていろいろ話しかけがあり、あるいは新聞を見たところで雑談をするというようなこともあったわけで、そういう中であるいは共産党関係といったようなことも、社会党もあろうかと思いますけれども、話題の一つにのぼったということは考えられるわけでございます。ただ林先生質問趣旨はおそらく、これは後にわかったことでございますけれども、背叛社グループが共産党本部に対して火炎びんを投てきするという、いわば火炎びん攻撃の事案が六月二十九日に発生いたしておりますので、それとの関連を頭に置いて御質問かと思うわけでございますが、公判廷でも言っておりますように政党本部、共産党に限りませんけれども、政党本部の襲撃をこの警視庁警察官が和田に対して指示をしたとか、あるいは示唆をしたとかいうようなことは全くないわけでございます。これは公判廷においても出廷した警察官が明瞭に証言をいたしておるところでございます。ただ御指摘のように、和田自身は、この出廷した警察官である証人に対する被告人としての反対尋問と申しますか、被告人尋問の中で、そういうことを頭に言いながら尋問をしたということがあるわけでございます。これについては耳にいたしておりますし、また事実さようなことも全くないわけでございまして、私たちは法に基づきましてその予備行為を取り締まる、起こったものを取り締まるとともに、起こらないように防止につとめるということでございます。ただいまの点は、警察として全くさような事実はないということは、理屈でそうであるだけでなく、私も十分ただしまして、全くさようなことはない、こういうことでございますので、御理解いただきたいと思います。
  100. 林百郎

    ○林委員 そういう弁解をされますが、昨年の六月二十九日に共産党の本部が襲撃された後に、逮捕もされなければ、起訴もされなければ、そしてその後間々田敬作警部補が昨年の九月二十五日まで約九回にわたって連絡をとり、十一万の金を渡している。これは警察として許されないことじゃないか。天下の公党である政党の本部を襲撃して火炎びんを投げた男に対して、どういうことがあるにしろ、警視庁の首脳部が九回にわたってこれと連絡をとり、しかも金を十何万も提供しているということは民主主義の根幹を破壊する、そのことに警察が手を貸している、こういわれても弁解の余地はないじゃないでしょうか。私はそんなことまでして警察の機能が果たされなければならないということは絶対ないと思うのです。それはもう限界を越していると思うのですよ。それは犯人なんですから、犯人に対しては警察権としての捜査を行使すればいいのであって——あるいは被疑者ですよ。それへ持っていって金を十一万もつぎ込んで、最後にはまたアパートで火炎びんが破裂して負傷者まで出したということ。それまで警視庁の首脳部が金を提供している。こういうことは民主主義の根幹を破壊することじゃないですか。それへ手を貸しているということになりませんか。
  101. 三井脩

    ○三井説明員 ただいま御質問の点でございますが、六月二十九日に共産党本部に対する火炎びん攻撃事件がありました。背叛社で爆発を起こしました事件は十月六日でございます。六月二十九日の事件につきましては、背叛社事件の捜査の過程で、背叛社の連中がやったのだということが判明いたしましたので、十一月二十日これを脅迫罪として東京地検に送致をいたしておるわけでございます。ただいまの御指摘では、六月二十九日に共産党の本部襲撃事件が発生しておって、その被疑者がもう当時から十分わかっておって、その被疑者であることを、犯人であることを承知の上で警察がこれから協力を求めておった、こういうような印象を受けるわけでございますけれども、事実はそうではございませんで、事件として六月二十九日に共産党本部攻撃事件が発生したということは、客観的事実としてわれわれとしては即日これを承知いたしまして、所轄の原宿警察署中心といたしまして、共産党本部皆さん方の御協力を得て、実況見分もし、捜査を鋭意進めておったわけでございます。ただ、これがアナーキストらしい、こういうような、共産党本部にまで火炎びんというような手段を用いて攻撃をかける、こういうようなことは、どうも反日共糸、反代々木系という各派がたくさんあるわけでございますけれども、それらの日ごろの主張、行動といったようなことを分析、検討いたしてみますと、どうも、やるとすればアナーキストであろうというような判断は、われわれは持っておったわけでございます。ただ、アナーキストはその性質が、アナーキズムであるというところから当然かと思いますけれども、いろいろの組織をつくっておりますけれども、その組織には綱領、規約もないといった式の、わりにルーズな組織といいますか、しかし、わりに団結は固いと言えるわけですが、同じアナーキスト陣営の中でも各派に——各派というほどでないかもしれませんが、いろいろのグループに分かれておるわけでございます。いかにもアナーキーな状態にあるわけでございまして、したがいまして、アナーキストと一言に言いましても、アナーキストのどのグループであるかというような点は必ずしも明瞭でない。アナーキストの中で、いわゆる理論アナーキスト、啓豪アナーキストといわれるような、実際の行動をしないアナーキストもありますし、この辺は一応除外していいかと思いますけれども、最近では次第に行動化してきておって、われわれがはっきり行動アナーキスト、こう言っているのも相当数おるわけでございます。理論派、啓蒙派などでありましても、行動アナにだんだん変わってくるという最近の状況でもあり、アナーキストグループ自体がいろいろに分かれておって、それぞれの主張も行動も違うというような中で、アナーキストくさいという判断を持ちましたけれども、これはどこで、どの派閥であるのかというような点につきましては、つまり、火炎びんを投げたという現場の実況見分、つまり現場から進めていく捜査と、それからまた、派閥、人の関係から、人脈から洗っていく、こういうような両面の捜査を鋭意続けておったわけであります。それが、最終的にその辺について判断を持ち得ましたのは、十月六日の背叛社爆発事件で、この和田をはじめ十三名の被疑者を逮捕し、逮捕したときにとたんにわかったというわけではありませんで、これをいろいろ取り調べ、またその裏づけ捜査をやっていく中で、初めてこれが背叛社グループの中の一部の人間がやったんだということが判明いたしたわけでございます。  背叛社事件では十三名を検挙いたしましたけれども、そのうち共産党本部に対して火炎びん攻撃をかけた、あるいは共謀共同正犯といったような関係で被疑者としてわれわれが脅迫罪により東京地検に送致をいたしましたのは、和田をはじめ七名でございます。  そういうような状況でございまして、すでに犯罪を犯し、また、先ほど申しました十月闘争の中で過激な破壊活動をやろうとしておる人間に金をやって協力を求めた、こういうような関係にはないわけでございます。警察としては、十月闘争を何とかここで、大きな破壊活動をし、あるいは死傷者が出るというようなことにならないようにいたしたいというように考えた次第でございます。  なおまた、この背叛社グループを特に注目をいたすようになりましたのは、これはアナーキストの他の派閥あるいはまた過激派の学生、こういったものもいろいろアナーキストのことにつきましても知識を持っておる、情報を持っておるというようなことがありまして、そういう他の面から背叛社は注目しなければならぬということをわれわれは感じておりましたし、ことに昨年は、五月一日のメーデーの日にこのアナーキストグループが黒ヘルメット、黒旗を持って代々木の会場で暴れて、自分の反対する組織のデモ隊に攻撃を加えた、こういうようなこともありましたので、そういう意味でたいへん注目しておったわけでございます。
  102. 林百郎

    ○林委員 そう言いますが、和田俊一は、昭和四十二年の九月、日本特殊金属襲撃事件で警視庁の公安部は逮捕しているのですよ。だから、もうこういう危険性を具備しているということは知っているはずですよ、あなたのほうでは。共産党本部の襲撃事件だけということじゃないのですよ。もうおととし逮捕されているのですからね。しかも、共産党本部だけでなくて、自民党や公明党もやれと指示されたと午前中の公判で和田自身言っておるのです。これは重大な問題ですよ。本人が言っておるのですからね。そこで、警視庁が金を十何万も出していた、しかも、一昨年も、そういう危険性を具備している者だということを知っていたということ、これは許されないことだと思うのですがね。これは民主主義の根幹を警察行政自体が、警備公安警察が破壊することになるのじゃないですか。昭和四十二年九月に日特金事件で逮捕収監されたことを三井さん知りませんか。
  103. 三井脩

    ○三井説明員 御指摘の事件は四十一年の十月十九日に日特金の田無工場、同じ年の一月後の十一月十五日に豊和工業、愛知県でございますが、これに対する襲撃事件がございます。アナーキストグループでございます。いずれも検挙されまして、日特金の事件で起訴され、本人は保釈になっておるということは承知いたしております。そういう関係があって、収監した担当の警察官を本人が知っておったということから、七月の六日に電話で、他の事件の仲間の処分がどうなっておるかということを聞いてきたというのが彼と接触するに至りましたきっかけでございます。
  104. 林百郎

    ○林委員 だから、爆発物取締罰則違反の被疑者として保釈中じゃないですか。そういう者に一これは泳がしているのもいいところですよ。そういう者にいかに情報提供とはいえ、しかも間々田君は警部補ですが、接触して、多額の金をやって、それがまた爆発物の材料を買うお金になっておるということは、これは許されないことと思うのですよ。  時間がありませんので、私次の問題に移りますが、これは同じことで、戸高公徳ですね。これは、まあ、ある週刊誌を見たら出ていたのですけれども、これは共産党に爆発物を提供して、そうしてこのことのために共産党がいわゆる菅生事件というので非常な被害をこうむった男ですよ。これは、警察と連絡をしながら爆発物を警察からもらってきて共産党員に渡して、そうして交番の机のまん中に置いておいて、そうして共産党員が爆発物の陰謀をしているということを報告して逮捕のきっかけをつくった。この男が特捜部研修所教授になっているというのですね。八月三十日にこういう警察庁の人事異動が出ていますが、これはそのとおりですか。
  105. 三井脩

    ○三井説明員 そのとおりであったと思います。ただ、菅生事件の内容につきましては、先生おっしゃいましたけれども、私たちは違う見解を持っておりますけれども、菅生事件自体はもう済んで、判決も確定し、戸高君本人は刑の免除を受けておるということでありますから、国家公務員として、それぞれ公務員となるべき資格というものは法にきめられておりますけれども、いわゆる公務員の欠格条項というものは彼にはない、つまり適格に公務員になり得る資格を持っておるということでございます。
  106. 鹿野彦吉

    鹿野委員長 ちょっと林君に申し上げますが、もう時間がなにですから、もしもあと継続されたければ、午後再開いたしますから……。  速記をとめて。   〔速記中止〕
  107. 鹿野彦吉

    鹿野委員長 速記を始めて。  この際、暫時休憩いたします。    午後一時一分休憩      ————◇—————    午後二時四十四分開議
  108. 鹿野彦吉

    鹿野委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。林百郎君。
  109. 林百郎

    ○林委員 先ほどの菅生事件の戸高君の問題ですけれども、これは先ほどの私の発言がちょっと足りなかったと思いますが、菅生事件は、言うまでもなく戸高君がダイナマイトを自分でしかけて、そして何ら関係のない共産党員をそれに巻き込ませたという事案で、先ほどの答弁にもありましたように、これは、有罪ではあるけれども刑を免除する、こういう判決になっておるわけですね。だから無罪ではないわけです。こういう爆発物取り締まり罰則に違反して、有罪の判決を受けて、刑は免除された。しかも天下の公党である共産党も非常な大きな迷惑をこうむるし、関係者にも非常に大きな基本的な人権に対する侵害をしておる。こういう人を警察大学の特捜幹部研修所の教授にするということは、これは道義的にいっても許されないことじゃないかというように私たちは考えるわけです。こういうことから察警官の規律の弛緩や、それから道義的判断がゆがめられることが出てくると思うわけですけれども警察大学特捜幹部研修所というのはどういうところですか。
  110. 富田朝彦

    ○富田説明員 お答えいたします。  特別捜査幹部研修所と申しますのは、特に最近の刑事事件におきまして、捜査手続上並びに捜査指揮等の問題につきまして、今後開発すべきいろいろな問題点あるいは反省すべき諸点等がございますので、特に捜査能力を、高級幹部と申しますか、そういうレベルの警察官に対しまして与えたいということで、あくまでも研修あるいは研究というような形におきましてそういう幹部を研修させるそこの職員につきましては、警察部内の職員のいろいろな研究の伝達もございまするが、同時に部外の有識者あるいは判検事あるいは弁護士、こういう各界の捜査上非常に有益な立場におられる方の御経験なりあるいは御判断なり、御意見なりというものを承って勉強いたす、こういうシステムになっております。なお、職員のうちには研究資料の整理、そういうものの指導、こういう点に主として当たる者もございます。  以上です。
  111. 林百郎

    ○林委員 戸高がそういうところの教授になって、一体何を教えるのですか。彼の経験は、何の関係もない共産党員を罪におとしいれるために警察と連絡をとってダイナマイトを装置したというのでしょう。そういう男に捜査のどういう特別な知識を与えさせるのですか。どうやったら共産党をわなにおとしいれてこれを弾圧することができるか、そういう手口を教えさせるのですか。それより考えようがないじゃないですか。しかも、匿名で神田かどこかの出版社に身をひそめておって、それがほじくり出されて出てきて、それで当たったところが、警察と意を通じて共産党をおとしいれるためにみずからダイナマイトを運んで交番に備えつけたという男でしょう。これに捜査のどういう手口を教えさせるというのですか。全く警察の堕落じゃないですか、こういうことをするということは。そう思いませんか。
  112. 富田朝彦

    ○富田説明員 お答えいたします。  先ほど特別捜査幹部研修所の性格について御説明をいたしましたが、これは時代のいろいろな移り変わりとともに、捜査技術の進展あるいは問題点の発掘等々ございますので、そういう点を中心に研究し、またお互いに研修をさせるという趣旨でございます。また警察官は、先生案内のように、だれしもが刑事捜査といわず、いわゆる捜査一般につきまして勉強をさせられ、また、その資格といいますか、そういう要件を要求されておるところでございます。そういう意味におきまして、特に戸高君が特別なことを教えるなり研究するなりという任務が、その特別捜査幹部研修所において課せられておるということは全くないと聞いております。つまり、警察官として元来本質的に持たなければならない捜査技術、そういうもの一般につきましていろいろ問題点を研究していく、こういうふうに私は聞いております。
  113. 林百郎

    ○林委員 言うまでもなく警察官は、警察法にも「不偏不党且つ公平中正を旨とし、いやしくも日本国憲法の保障する個人の権利及び自由の干渉にわたる等その権限を濫用することがあってはならない。」これは警察法の第二条。それから第三条にも服務の宣誓の内容が規定されてあるわけですね。「日本国憲法及び法律を擁護し、不偏不党且つ公平中正にその職務を遂行する旨の服務の宣誓を行うものとする。」と書いてある。こういう精神で警察官はその服務を忠実に全うしなければならないということが書いてある。そういう精神を最高に植えつけるべき警察大学の教授に、こういう、人の人権を無視して、憲法に違反した犯罪人であった者を警視に昇格して教授にするなんという、そんなことが何の良心の苛責もなくできるなんて、私は警察首脳部の感覚がおかしいと思うのですよ。  要するに、共産党を弾圧した経験のある者ならどんな男でも昇進させてやるということになるのですか。もう少し考えられたらどうですか。そんな警察をだれが信用できますか。だれが法の守り手としてそういう警察に対して評価ができますか。あなた、そう思いませんか。あなた方はいつも民主勢力や共産党やよその党を弾圧することばかりやっているから麻痺しているんじゃないですか。何の罪もない共産党員を警察が仕かけたダイナマイト事件に巻き込ましておいて、その主謀者として、しかも有罪だけれども警察と連絡があったから刑だけは免除しよう、こういう判決を受けている男をどうして警察大学の教授にし、警視に——まあ警視に昇格するしないはかりに部内問題としても、警察大学の教授にどうしてするのです。何を教えさせるのですか、その男に。私はわからないのですが、そう思いませんか。
  114. 富田朝彦

    ○富田説明員 お答えいたします。  事件の内容につきましては、先ほど警備局の三井参事官から先生お答えをいたしたところでございまして、私どもいささか違った見解を持っておるわけでございますが、本人戸高君が警察の研修所におきまして教えることは、文字どおり警察法あるいは憲法の趣旨に基づきましたことを教えていく、そういうふうに確信をいたしております。かつてはそういう刑の免除を受けたということはございますけれども、私はさように確信をいたしておりますので、御理解をいただきたいと思います。
  115. 林百郎

    ○林委員 そういう全く警察部外のわれわれ国民の考える道義的な基準と反したようなことがまかり通る警察だから、最近の警察における規律の弛緩は目に余るものがあるわけです。その一つで、これも私は首脳部がどこまで責任を明らかにするか問いたいと思うのですけれども、七日の夜、自分の上司のところに行ってビールを三本飲んで、そして、そこに行くにも帰るにも覆面のパトカーを使って民間の自動車に衝突した、そして大被害を民間の自動車に与えた。これは石神井署に連絡して、署のパトカーが三台来たんだけれども、当の巡査ですね、合志巡査というのですか、にやにや笑っている。そして飲酒量を調査させるというんだけれども警察署から来た警察官が時間をかけて、そうしてわざわざうがいをさせて——これは先ほど同僚の議員も質問しましたが、そうやっている。そこには百人も市民が集まってきて、群衆の中から、何をやっているんだ、酒くさいじゃないかと言っているんだけれども、署から来た警察官は、自分の仲間だもんだから、そのにやにやしている男をそのままにして、なるべく時間をかけて、水でうがいをさせている。普通の酔っぱらい運転を取り締まるとき、わざわざ水でうがいなんかさせますか。しかも、この覆面のパトカーというのは私用に使っていたのでしょう。自分の仲間のところに酒を飲みに行くのに、警視庁の覆面のパトカーを使っていいのですか。これはどういう事案ですか。説明してください。
  116. 富田朝彦

    ○富田説明員 お答えいたします。  ただいま林先生からお尋ねのございました、九月七日の夜に警視庁員が起こしました交通事故につきましては、先ほど山口先生からも御指摘がございましたところでございますけれども、まことに私ども残念に存じております。私が聞き及んでおります範囲におきましてお答えをいたしますが、さらに現場の取り締まりその他取り扱いの状況につきましては、交通局長も参っておりますので、交通局長のほうからお答えをいたします。  事故が発生をいたしましたのは、御指摘のとおり九月七日の午後十時四十五分ごろでございまして、場所は練馬区の下石神井、大泉街道の上でございます。第一当事者は、先ほど名前をあげられました合志亨、二十五歳の警視庁巡査でございます。所属は警護課第二係というところに所属しておる巡査でございまして、これは当日七日は、連日それまで警護用務に非常に忙しい目にあっておりまして、週休をとりまして、そして当日の夕方、兄の結婚式の祝いに小型冷蔵庫を贈りたいということで、それの下見にこの練馬の大泉学園町のほうまで参っておるわけでありますが、その帰りに一軒、大塚という、やはり警護課の第二係に勤務いたしておりまする巡査長の三十四歳になる同僚といいますか、上司のところにちょっと立ち寄りまして、テレビなどを見て簡単な夕食をごちそうになって帰る途中のことでございます。その際に、ビールを一人あて一本ぐらい飲んでおるようでございます。そういうことで、帰りがけに大泉街道におきまして前方からの対向車両を発見をしまして、あわててハンドルを左に切ったのでありますが、電柱の関係でそれをさらに今度はよけようというようなことでまたハンドルを切り直すということをいたしております間にぶつかったのでございます。これは第二当事者に、いわゆる被害者になられた小林さん並びに石沢さんにはまことにお気の毒なことをいたしたわけでございまして、その際に公の車を運転をいたしておったということは御指摘のとおりであります。これは六日の土曜日にちょうど警護任務がございまして、そして上野駅まで当該車両で警護をいたしまして、さらに群馬まで列車に乗りまして警護をいたしたわけであります。そこで群馬県警の者に引き継ぎをいたしまして取って返した。そして、本来ならば、大体の管理のきめといたしましては、当該車両は総理官邸の中庭に置くというような取り扱いをいたしておったようでありますが、そこまで持ってまいりませんで、万世橋付近の自分の寮のところへ持って帰った。それを翌日週休をとっておりましたために使ったということでございまして、その点は、車のいわば管理はいかにあるべきかということを当該巡査が知らなかったということはまことに遺憾なことでございます。また、それの管理すべき点につきまして、今後いろいろ検討をして、さようなことのないように十分な配慮をしなければならない問題もございますが、目下そういう点につきましては、いろいろ警視庁におきましても真剣に反省し検討いたしておるところでございます。  なお、当該合志巡査は九月八日免職処分に警視庁はいたしておるところでございます。  以上概況でございます。
  117. 林百郎

    ○林委員 民間の意見から申し上げますと、「あきれましたね。言語道断という以外ないケースですよ。ビールを飲んだのがわかっていながら警察は飲酒運転でない、と発表したそうですが、一体、どういう感覚ですかね。私たちが事故など起こしたとき、少しでも酒くさかったりしたら、ぎゅうぎゅうしぼられて飲酒運転ということにさせられています。調べたのが仲間同士だからって、ちょっとひどい。こんなことばかりしていると、たださえゆらぎがちな国民の信頼は失われる」、また交通評論家の某氏は「「かんじんの警察官がこれではどうも」と言い、「それにしても警官三人もがビールを飲んで、だれもとめようとしなかった」」自動車を運転しているということを知っていながら、警察官が寄ってたかってビールを飲むということはどういうことですか。あなたは三人で三本くらいだと言っておりますが、三人で三本くらいで済む話ではないですよ。その合志巡査が自動車で来ているということを知っていながら、飲もう飲もうと言ってビールを飲んでいるなんという警察官、これであなた飲酒運転の取り締まりができますか。また、覆面のパトカーが何でこんな私用に使われるのですか。何か自分の仲間か上司か知りませんが、ビールを飲みに行くのに、そういう私用に幾らでも役所の車が使えるなんというのは、どこの役所にそんなことが許されるところがありますか。しかも一番厳正に規律が守られなければならない警察庁でしょう。仲間同士が何をやっても——私が戸高の質問をしたのもそうです。仲間同士なら、他人にどんな迷惑をかけたって、おまえよくやったと栄転して大学教授にまでしてやる、そんなことで警察の規律が守られると思いますか。官房長、どうお考えになりますか。しかも普通の商業新聞でも、この責任は、一緒に行った北崎憲男巡査と訪問を受けた大塚富士男巡査長と、さらに上司に当たる下稲葉警備部長、堤警護課長、同課の係長あるいは宿直責任者等が負わなければならぬと言っているのに、あなた、合志巡査だけが懲戒免職になって、あとの者は何もないのですか。
  118. 富田朝彦

    ○富田説明員 お答えいたします。  ただいまお読みになりました新聞等にあらわれておりまする市民の声につきましては、私どもその点は心から反省をいたしております。また、本来交通違反等を取り締まるべき警察官一般の立場といたしまして、いま御指摘のような点があったのはまことに残念に思っております。その点並びに車の管理の問題、あるいは本人がそうした使用をいたした形の問題、これについては、本人についてはまことに遺憾でございますし、管理についても、先ほど申し上げましたように十分反省をいたしておるところであります。したがいまして、その他の関係者並びに監督の立場にある者につきましては、現在警視庁において個々人別にいろいろ検討中でございますので、御報告をいたしておきます。
  119. 林百郎

    ○林委員 弁解がましい答弁で、厳然たる規律のもとに警察官の姿勢を直すという響きは全然感じとれないわけですけれども、時間も参りましたので、私はこれで一応の質問を終わりまして、先ほどの質問をさらに二、三詰めてみたいと思うところがあるわけです。  先ほどの十七億という数字、これは三井参事官答弁でしたか、警備関係の謝礼や情報提供の予算関係が約十七億という、これはそう聞いていていいですね。主として情報提供の謝礼関係、そういう方面に使われる予算が十七億、こう聞いていいですね。
  120. 富田朝彦

    ○富田説明員 お答えいたします。  これは捜査に要しまするいわゆる捜査費、事件捜査その他で刑事が捜査に当たりまする場合の諸経費、これは刑事警察におきます捜査費と全く同じでございます。それ並びにいまお話しのございました情報提供者というものに対する諸経費を含んでおります。それは十七億でございます。
  121. 林百郎

    ○林委員 一九六六年ですから、いまから四年ほど前ですか、これは国家警察予算が二百七十七億だったですね。このときはまだ警備警察費という項目があったわけですけれども、これは三十億なんですよ、このとき。それから、本年度予算警察活動に必要な警備捜査費が二十三億ですけれども、これはいろいろ入れているんでしょう。こういう一九六六年の例からいって、捜査費まで全部ひっくるめて十七億というのは、非常に少ない数字なんですよ。私の質問は、四十四年度予算の中で、背叛社事件にも出ておるけれども、こういう情報提供者等に対する謝礼提供、そういう予算はどのくらいか。だから十七億というのは、それを主としたものが十七億、こういうことならわかりますがね。警備、公安関係の捜査費全額が十七億じゃ、これは非常に少ない数字で合わないですよ。
  122. 富田朝彦

    ○富田説明員 お答え申し上げます。  ただいまお尋ねの一九六六年度の問題につきましては、これは捜査費並びに捜査活動といいますか旅費が一緒に含まれた額でございます。それで、先ほど十七億と申しましたのは、いわゆる捜査費でございまして、そのほかに活動旅費といたしまして、旅費が二十一億ございます。そういうふうに御理解をいただきたいと思います。
  123. 林百郎

    ○林委員 それは聞いていますが、そうすると捜査費の十七億の中で、情報提供者等に対するいろいろの工作、謝礼、そういうものは比率からいうと、どのくらいと見たらいいですか。
  124. 富田朝彦

    ○富田説明員 お答えします。  先ほど午前中にお答えいたしました際、ちょっと申し上げたわけでございますが、十七億はただいま四十四年度予算でございますので進行中の予算でございます。したがって、それを従来の一応の実績その他から推定をいたしまして、十七億と申し上げたわけでございます。したがいまして、この中にどういう割合をもって占めるかということは、ちょっとまだそこの集計ができていないのは事実でございます。
  125. 林百郎

    ○林委員 そういう過去の実績からいうとどうなるんです。
  126. 富田朝彦

    ○富田説明員 過去の実績につきましては、これはいわゆる支出官でございます各県本部長が、その県々の実情によりまして必要なところにそういうものを支出をいたしておる状況でございまして、当方としては、これをそういう意味におきましては把握をいたしておらないのが実情でございます。
  127. 林百郎

    ○林委員 そうすると、情報提供費やいろいろひっくるめて捜査費が十七億というように聞いておけばいいわけですか。
  128. 富田朝彦

    ○富田説明員 はい。
  129. 林百郎

    ○林委員 それから、あと三井参事官にお聞きしますが、先ほどの背叛社の答弁の中から、その他暴力集団についても同様の情報提供のいろいろの工作もしておるという答弁がありましたが、これは警視庁の山本公安部長も、背叛社というのはアナーキズムに基づく暴力結社である。彼らの暴力行為を未然に防止するために情報をとらなければならない、それは他の暴力学生集団などについても同様である、こう言っております。これと同趣旨のことですか、先ほどあなたの言われたことは。警視庁の山本公安部長が、背叛社事件のときの記者会見で、こういうことを言っているのですよ。要するに背叛社と同じような手口で、他の暴力学生集団についても同様である、同様なことをやっている、こういうことを言っているんですよ。これと同じと聞いていいですか。
  130. 三井脩

    ○三井説明員 背叛社についての関連で、山本公安部長が記者会見で話をしておる内容が新聞に出ておるわけですが、私も趣旨は同じように理解いたしております。つまり、背叛社関係があのような事件を起こそうとしておる、これに対する警察活動として謝礼を出したという事案でございますが、いまいろいろ過激な行動をしております学生の各組織についても、これについて情報を把握するというのはわれわれの仕事でございますので、同様に情報提供に対する謝礼を出しておるということでございます。ただ、やり方等は、相手方がいろいろ千差万別でございますので、どういう方法でやっておるかというようなこまかな点については差がございますけれども、情報提供に対して謝礼を出す場合あり、出さない場合がある。出しておる場合もございます。
  131. 林百郎

    ○林委員 背叛社事件の場合は、御承知のとおり、背叛社というアナーキストの組織があって、その中の和田という男が情報を提供したということで謝礼を出しておる、こういうようなやり方が他の暴力学生集団にも適用されておる、そういう場合もある、こういうことだと聞いていいですか。
  132. 三井脩

    ○三井説明員 暴力学生の活動につきましても、われわれは治安維持のために情報をとっておるということでございます。そのやり方は、アナーキストの場合と、あるいは暴力学生の場合と、いろいろ差はございますが、情報提供に対して謝礼を出しておる場合があるということでございます。
  133. 林百郎

    ○林委員 そのやり方はこういうやり方をする場合もあるかどうかと聞いているんですよ。
  134. 三井脩

    ○三井説明員 背叛社の場合にやったやり方と申しますか、こういうという中身は、ちょっと私にも理解できかねるわけでございますが……。
  135. 林百郎

    ○林委員 組織の内部の人から情報の提供を受けてそれに対して謝礼を出しているわけでしょう。そういうやり方もやっているのかと聞いているのです。
  136. 三井脩

    ○三井説明員 その点につきましては、組織の周辺におる人、組織の中におる人、両方がございます。全学連等の組織に入っておる人間につきましてもそうですし、全学連のさらに内部であります特定の学生前衛組織というのをつくっておるわけでございますが、そういう情報ほど貴重であるというようにわれわれ考えて、情報活動をやっておるわけでございます。
  137. 林百郎

    ○林委員 三井参事官の言う暴力学生集団、暴力学生というのは、組織的にいうと、どれとどれとどういうものですか、いまあなたが情報をとられているというのは。何々派、何々派とあるでしょう。
  138. 三井脩

    ○三井説明員 学生の派閥は五流十三派とかいろいろ言われております。今日大きく申しまして、先般九月五日につくりました全国全共闘連合というようなものに集まっておりますのは、そうして事実上これを動かしておりますのは、大体反代々木系学生八派ということでございます。そのいずれの派につきましても、私たちは情報を得たいとして努力をいたしております。
  139. 林百郎

    ○林委員 和田俊一が、明治大学の学生大会で火炎びん騒ぎがあったとき、そこに出ていっていた。東洋大学の分については、警察当局では知らないと言っていますが、明治大学の学生大会に火炎びん騒ぎがあったときに和田がそこに行っていたということは知っておりますか。そうして、背叛社の和田自体は学籍はどこの大学に学籍を持っているのですか。
  140. 三井脩

    ○三井説明員 和田俊一は東京理科大学の学生でございましたが、もう卒業いたしましたので元理科大学学生というように理解いたしております。  それから、明治大学へ行ったということでございますが、これは例の背叛社が月例会ということで——必ずしも月に一回やっておるかどうかわかりませんけれども、ときどきそういうような会合をやっておる。それが明治大学でやったということは、われわれ今日ではわかっております。そのときに火炎びんの実験らしきものをやったということは、後の調べで明らかになっております。
  141. 林百郎

    ○林委員 そうすると、三井参事官、そのときはもう学校は卒業していた、学校を卒業した者が明治大学へ行って火炎びんの練習を何でするのですか。
  142. 三井脩

    ○三井説明員 今日、大学紛争の現状の中で、いわゆる過激派の学生が拠点大学といっておるようなところは、最近はまたいろいろ大学側の管理措置警察に対する出動要請等でだんだんよくなってきておると思いますけれども、いわばそういうようなグループといいますか、中にこもっておる学生が入ることを認めるというような人間は、だれでも入れる。入れないのは警察官くらいのものであるというような状況もあるくらいでありまして、安田講堂を過激派の学生が占拠しておったときには、あそこへ全国の高校生を集めて全高連結成の準備会というようなことをやっておるわけでありますので、学生の身分を持っておる持っておらないということは、中を事実上占拠しておる人間がこれを認めるか認めないか、容認するかどうかということによってきまるわけでございます。ことにそういうようなアナーキストといわれるグループと、反代々木系といわれる過激派学生のある派閥はたいへん密接なつながりを持っておるわけでありますので、そういうようなことがあり得ることであるというように思っております。ただ、実際上は、学生と学生でない人間との関係ということからいいますと、現に学生の身分を持っておる人間というのは多く入っていると思いますし、先ほど申しました各大学の全共闘が横の連合をするというような状況の中で、たとえば東大の闘争に日大、中大の全共闘が応援にかけつける、また逆の場合もあるということはしばしば行なわれているところであります。なおまた、全学連を母体にして過激な行動をやっておりますが、それに対する上部組織、上部の政治団体というものを構成しておりますのは、大体において学生のOBでございます。現在学生でそういう上部団体の政治局員というような地位を持っておる者もございますけれども、大部分はOBでございます。したがいまして、たとえば中革系の全学連、これの上部団体であります革共闘、前進派、これの政治局員である幹部が二名逮捕されて破防法で起訴されておりますが、こういうのは元学生で、現在学生ではない。こういうことでございますので、そういう上部政治団体と現在の学生の組織との間には緊密な連携がございますので、大学の中に入るというのは、単に学生という身分を持っておる者だけには限らないというのが、今日の特に拠点といわれておりますような大学の現状であるというように考えております。
  143. 林百郎

    ○林委員 三井参事官警視庁が情報提供者だとして三カ月の間に十二万近くの金を渡している。それで火炎びんをつくっている。その火炎びんをつくっている男が公然と大学にも入っていける。大学へ入っていって火炎びんのつくり方を実験したりしている。それを学んだ大学生が、今度また暴力をふるう場合に、その火炎びんを投げている。こういうことになれば、これは暴力学生の火炎びんの襲撃を警視庁が見て見ぬふりをする。あるいは泳がせる——われわれはいわゆる泳がせるということばを使っておるが、これはそのとおりになるのではないですか。だから、あなた方のそういう態度が、ああいうトロツキストである学生の火炎びん襲撃やなんかを許している、そういうことに通ずるのじゃないか。そういうやり方をしている。したがって、和田俊一が公然と明治大学に行って火炎びんの講習か何かやっている。ところが、その火炎びんをつくる費用は実は警視庁の間間田ですか、警部補から金が出ていた。それは間間田警部補はそれに使えとは言わなかったと言っておりますけれども、和田のほうに言わせれば、それで買っていると言っている。そういうことになるのではないですか。
  144. 三井脩

    ○三井説明員 ただいまの点につきましては、二点お答えを申し上げたいと思いますが、第一点、この和田が明治大学へ入ったといいますのは、明治大学のある建物の場所を借りて背叛社グループのメンバーが集まったということでございます。背叛社グループに結集しておる連中が会合する場所に、連中からいえば安全だと思われる警察の目が届きにくい大学の中を選んだわけでございます。  それから第二点の、十一万の金を渡しておりますが、これで火炎びんをつくったかどうか、爆発物をつくったかどうかという点でございますが……(林委員「本人がそう言っている」と呼ぶ)この点について本人は、公判廷でも、ほかに間違ったことを幾つか言っておるわけでございますが、まずこれは他の被疑者その他の調べの中から明瞭になっておりますけれども、あの爆発物の材料は彼が元そこの学生でありました東京理科大学から持ち出したものであります。この材料によってつくったものであるということは明らかになっておりますし、理科大学からも盗難被害届けが出ております。  それからもう一つ、彼が警察官からもらった金で買ったと称しております硫酸、たとえば四合びんその他ございますが、これを私たちが今日の市価と申しますか、薬局等で買う場合どのくらいの金がかかるかということを計算してみますと、四百円でございます。わずか四百円でございますから、十一円の金が手に入ろうが入るまいが、これをつくることについてはたいへん容易なものであったのではなかろうかというように考えておる次第でございます。
  145. 林百郎

    ○林委員 済みました。
  146. 鹿野彦吉

    鹿野委員長 太田一夫君。
  147. 太田一夫

    ○太田委員 最初に道交法に関しまして警察庁お尋ねをいたします。  伝えられるところによりますと、十月一日を目途にいたしまして反則金制度に関連をいたし、これを点数に換算をいたしまして、それを累積し、ある限度の点数になりますと、その運転者の免許を停止する、こういうことが実施されるやに伝えられておるのでありますが、非常に重大な問題でありますので、もしそういうことが用意されておるとするならば、その概要をこの際明らかにしてほしいと思うのです。
  148. 久保卓也

    ○久保説明員 十月一日から運転者管理センターといいます電子計算機の組織中心とする運転者管理機能が発足するわけでありますが、この内容としますところは、運転者の違反事故歴をそれぞれ電子計算機の中に覚え込ませておくわけです。そうして新たに違反なり事故があった場合に、それを従来の違反事故と見比べ合わせまして、それぞれ点数ができておりますが、その点数によって停止についてもその程度をきめ、さらにある一定の点数から上になりますと取り消しということになるわけであります。  そこで、この制度は過去三年の違反と事故歴を覚え込ませることにしておりますが、かりに一年間無事故無違反でありますと過去の点数が消えます。また停止なり取り消しなりが行なわれました場合にもそれが消える。しかしながら、たとえば一点二点というわずかな点数のついている軽易な違反と、それから事故の場合には死亡、重傷、軽傷というふうに分けまして、これも運転者の責任の重い場合、軽い場合というふうに分けて、これについてそれぞれ、たとえば死亡の一番責任の程度の重いときには十三点といったような数字がつきます。そうすると、その場合に、軽い違反でありましても、かりに二点の点数がつくとしますと十五点になってその人は取り消しになる。さらに軽い違反が、たとえば一点なら一点のものが六回続けて行なわれるという場合には、六点になったときに初めて停止処分を受けるということであります。  この制度のみそは、従来軽易な違反については行政処分がそのつど行なわれないということが実態としてあります。と申しますのは、こちらの方針としましては累犯——何度もやった者については、その度合いに応じて行政処分をやるようにという方針ではありますけれども現実問題として、違反者の違反歴をその現場で、あるいは県本部で把握することができておりませんので、現実には一点ないし二点の軽易な違反については行政処分が行なわれないで、反則金で処理されておる。ところが、今度の場合には、そういうものが累犯をしてきますると行政処分になるということが一つであります。  さらに、累犯を加重するということで、たとえば違反なり事故の前歴がない場合には、いま申し上げましたように停止は六点から、取り消しは十五点からでありますけれども、前歴が一回ある場合には四点から停止になるし、十点から取り消しになる。あるいは前歴が二回以上ある場合には、停止は二点から始まるし、五点以上から取り消しになるというように、累犯が非常に加重されておる。したがいまして、一度停止を受けた、あるいは事故なり違反があったという人は、この次はなるべくそういうことをしまい、すぐ停止なり取り消しを受けるからということで、事故の予防につながってくるのではなかろうか。さらにまた、過去一年違反なり事故がない場合には、いま申し上げましたように、それ以前の違反事故の前歴が消えるわけでありますから、なるべく違反あるいは事故を起こさないようにしようという努力が期待できるわけであります。  さらに停止、取り消しがただいま申し上げましたように六点なり十五点でありますが、それ以前の段階、直前の段階において、警察から本人に警告書を出します。この次違反なり事故があった場合にはあなたは停止をされます、あるいは取り消しをされます、というような警告を出しますので、本人、運転者は一そう違反なり事故に注意をするであろうということが期待できるわけであります。そういうようなことで、総合的に合理的な運転者の管理ができるのみならず、事故防止に非常に役に立つであろうということを期待しておるわけであります。
  149. 太田一夫

    ○太田委員 鈴木交通局長が、四十二年七月十一日に、当委員会におきまして、道交法の一部改正即反則金制度をつくりましたときに、附帯決議を付したことは御承知でございましょう。その第三項には「運転免許の仮停止にあたっては、違反および過失の有無を慎重に検討し、いやしくも過誤なきを期するよう十分に指導すること。」というのがあるのです。この運転免許の仮停止というのはいまのこととは違うわけです。警察署長に一任されておる。仮停止二十日以内でありますが、それさえも過失の有無、違反の内容を十分慎重に検討して行き過ぎのないようにという、そういう注文がなされた。当時の国家公安委員長である藤枝さんは、その趣旨を尊重する旨の発言をされておる。あなたのいまおっしゃったのは、反則金を納めた者、それが幾たびか重なると自動的に免許が停止される。ということはこれは非常に大きな制度の改革であろうと思うわけです。制度の基本が変わっておると私は思うのですが、そのような重大な制度の基本をお変えになるというのに、単なる政令か何かでおやりになるという根拠はいかがなものでありますか。認識はいかがなものでありますか。
  150. 久保卓也

    ○久保説明員 現在の道交法の百三条によって、取り消しと停止の基準政令で定めるという旨が明記されてあるものですから、政令の改正が昨年十月に行なわれておるわけであります。
  151. 太田一夫

    ○太田委員 政令によってそのような重大なる変更をなさんとすることは行き過ぎだ。道交法を改正したとき、四十二年の七月十一日の当委員会において最終的にこれを可決したときに、仮停止でさえも慎重に、行き過ぎのないようにという注文がつけてある。あなたのきょう御説明になりましたのは、その政令の内容は、六点という点数になれば、反則金の違反を含めましてたちまち自動的に有無を言わせずに停止される。そのようなことは重大なドライバーの権利侵害であるとわれわれは思うのですよ。当時の道交法改正にあたっていろいろ言われたことと、いまあなたのおっしゃっていることとは、だいぶ認識に隔たりがある。現在の道交法は免許の停止については政令に譲っているんだから、何でも政令を変えればいいんじゃないかとおっしゃるが、反則金そのものの性格を変えたじゃありませんか。その点はいかがですか。
  152. 久保卓也

    ○久保説明員 事故防止、交通の安全については、先生はたいへん御熱心であられるわけで、この制度そのものは、先生が平素おっしゃっていることにたいへん寄与すると私は思うのです。  ただ、いままでは反則行為があった場合に行政処分になっていないじゃないか、こうおっしゃるわけでありまするが、先ほども申し上げましたように、基本的には累犯者については行政処分を行なうようにということは、従来と変わっておりません。ただ遺憾ながら累犯であるということを確認できなかったために、今回の管理センターでそれを確認できることになった。こういったような総合的な体系で、私は交通安全というものは一そう推進されるものと確信するわけでありますが、違反を一回やった、反則行為を一回やったというだけで云々されるわけではありませんで、一点の行為であれば六回、二点の行為であれば三回というわけで、違反行為を何度もやった人を、行政処分をやらないで見のがしていいものであろうか。むしろ私は、従来の不合理がここで合理化されたものと考えられるわけでありますし、おそらく先生も御賛成いただけるものと考えておるわけであります。しかしながら、基本的な運転者の権利を尊重することにつきましては、先ほどの附帯決議の趣旨は今後も他の分野に生かさるべきものと考えております。
  153. 太田一夫

    ○太田委員 もうちょっと点数制の内容についてお伺いをいたします。  まず、昨年の十月からの反則金が適用されるとしますね。ですから、いまは九月ですから、もうほとんど十一カ月です。十一カ月の間に六点に相当する違反を犯した者があるとするならば、この十月一日にたちまちにしてこれは免停です。最初の六点で三十日間の免停がそのまま有無を言わさず来るわけです。  そこで、その六点ということについて伺います。反則金に限定しますよ。反則金でない重大な事故は、これは道交法において別途処分をいたします。反則金の対象になりませんから……。これは刑事罰もあります。懲役、禁錮ないしは罰金、科料等がありますからそれはいいです。それは別の問題です。酔っぱらって人を殺傷した場合は、別の処分がありますから、そのことを私は言うておりません。軽微な反則金という処分を受けた者が六点に達したならば、三十日間の免停になるということについてひとつお尋ねします。六点とはどんなことをやったときに六点になるのですか。ちょっと例示をしてほしいと思います。
  154. 久保卓也

    ○久保説明員 たとえば二十キロ未満の速度超過があれば一点でありますから、その速度超過を六回やれば六点になります。それから信号無視は二点でありまするから、これは三回やれば六点になります。したがいまして、初回であれば、三十日の行政処分を受けるわけでありますが、ただ経過規定といたしまして、過去一年の違反歴は入っておりまするけれども、十月一日から発足する場合には、過去かりに六点なり十五点なりの点数がありましても、最初に処分を受ける者は、停止の場合には二点、それから取り消しの場合には、たしか五点であったかと思いますが、その分がなければすぐには停止なり取り消しなりは受けないということになっております。
  155. 太田一夫

    ○太田委員 それではちょっと伺いますが、反則金の対象になっております違反、軽微なる違反、これは、たとえばその中には横断歩行者の妨害というのがある。車間距離の不保持がある。どろはね運転というのがある。保管場所法駐車違反がある。左折右折等の方法違反がある。あるいは通行区分違反がある。全くしばしば起きやすい事故、いまおっしゃったスピード違反一点とか、信号無視二点というのは別にいたしまして、たとえば車間距離不保持、どろはね運転は何点でございますか。
  156. 久保卓也

    ○久保説明員 車間距離不保持は一点であります。それからどろはねは点数は入っておりません。
  157. 太田一夫

    ○太田委員 右折左折違反、一方通行違反はどうですか。
  158. 久保卓也

    ○久保説明員 両方とも一点であります。
  159. 太田一夫

    ○太田委員 そうしますと、車間距離不保持が一点。これは事故を起こさなくたって、車間距離が不保持であった場合は一点。いま東京都の中の自動車交通を見て、車間距離が適正というのはまずないでしょう。適正なほうが例外じゃありませんか。実際これをやりますか。車間距離不保持というのは、これは大型車四千円、普通車三千円、二輪車三千円の反則金になっておるでしょう。それが点数一点でしょう。それを六回やれば六点となって、免許停止三十日ということになれば、都会で運転する人は全部、一日に行き戻りあるとすると、まず三日間、一週間足らずして六点の点数をちょうだいいたします。三十日間の免停と相なる。これは都会で運転するなということにひとしいことでありますが。そういう具体的な問題とこの点数制との関連というのは検討されておるのでありますか。
  160. 久保卓也

    ○久保説明員 この車間距離不保持の問題は、私も今後交通渋滞が非常に進んでいく場合に問題である規定だとは考えております。現実問題として、車がふえてまいります場合に、適正なる車間距離が保てるかどうか、若干問題があるところでございます。ところで、取り締まりの面で見ますと、これは、そのつど、かりに警察官が現認いたしましても、一々はかるわけでもありませんので、取り締まりは事実上困難であります。  そこで、この点が問題になるのは、事故が起こった場合に、本人の供述、あるいは付近で見ていた人たちの供述によって、非常に近い距離であって、追突が当然起こるであろうといったような距離しか保っていなかったといった場合に、事故にもそれぞれ点数がありますので、その事故にこの車間距離不保持の一点が加算される。たとえて申しますと、追突事故を起こした、そのために相手にけがを与えた、それが本人に非常に責任があったという場合には、軽傷事故だけで六点の点数がつきますが、さらに、その場合に車間距離を保っていなかったことが明白であったという場合には、一点が加算されて七点になるということであります。
  161. 太田一夫

    ○太田委員 車間距離不保持の場合には、事故が起きなければ適用しないとおっしゃったけれども、信号無視、右折左折の方法違反、一方通行をうっかりしたというような場合は、事故が起きなくてもやられるのでしょう。車間距離不保持だけは反則金の対象になっておるけれども、事故が起きなければ取り締まりが困難だ。困難なことばかりじゃありませんか。あまりにも一方通行が多い。きのうまでここはよかったと思ったら一方通行、朝よかったと思って入ったら、いや反対はだめだ、新しく制度が変わったんだということになって、ついうっかりの善意の過失は幾らでもある。この前のときの私の質問に対して、あなたは、今後必ずしも検挙主義ではない、十分指導するとおっしゃったから、おそらくあいきょうがあるといいますか、悪意でない善意の違反というものは、反則金そのものも適用されないだろうと思うのですが、実際はそうじゃない。なかなかきびしいのです。よほど熟練した、年齢の多い、社会的な体験と経験を持ち、人間の修練を積んだ交通警察官である場合においては、ここは一方通行ですよ、ですからあなたはこちらへは入ってはいけません。帰りなさい。戻ってください。あるいは、これは右折違反だからちょっと戻って気をつけて行きなさい。ここの信号はなかなか見にくいようだから気をつけてくださいとやるのですけれども、若い警察官はそんなことをしますか。全部たちまちぴりっと反則金通告書を渡されるじゃありませんか。もらったら最後、これは取り消しがきかないでしょう。といって、これはいやだから、私は裁判まで持っていくというほどのことがやれますか。みんな、めんどうだから、千円、二千円、三千円払っていたのですから、あなたのほうが、たとえば右折違反、一方通行違反一点だとか、車間距離不保持一点だとか、信号無視が二点だとかいう点数をおつくりになって、それがわずか六点にして三十日間の免停とは、あまりにもそれは現在の交通渋滞の実情を知らざるもの、運転者の気持ちに理解がないものと評されてもしかたがないと思いますが、局長は、これが事故を防止する最善の道なりと信じていらっしゃるのですか。
  162. 久保卓也

    ○久保説明員 警察交通指導取り締まりについては、指導、警告を重点にしてやるということは、この前も申し上げたとおりであります。ところで、私がそう申したのみならず、従来の方針がそうであって、さらにそれを強く推し進めようというわけでありますが、それの証拠には、昨年一年の取り締まり件数が約四百万件でありますが、二、三年前の一番多いときが五百万件あったわけであります。この数字を見ましても、非常に適正な取り締まりに進みつつあるということがおわかりいただけるだろうと思うわけであります。四百万件の中で、反則行為は約二百五十万近くございますけれども、この面につきましても、確かに警察官個々によりましては指導、取り締まりの巧拙はあろうかと思いまするけれども、やはり違反は違反でありまして、そういうものの積み重ねによって事故が起こるかもしれないわけなんで、非常に軽微なものについてまで一々やるわけではありませんでしょうけれども、場所によって、軽微なものといえども事故につながってくるおそれのあるものは、やはりやっていかなければならない。そこで、この反則金の制度がとられるようになりましてから、第一線の警察官も、全般的に申せば非常に慎重になっているわけでありまして、反則金の収入といいますか、予想された金額も、当初よりも二、三割減る可能性があるというようなことが、第一線における慎重さを示しているのではなかろうかというふうに私ども理解いたしております。
  163. 太田一夫

    ○太田委員 これはその当時、四十二年三月に警察庁が「反則金通告制度について」なる参考書を当委員会にお出しになりまして、その六ページに「しかしながら、前に述べたような道路交通環境と交通違反の状況、違反処理の現況等を前提として考えると、危険性の高い、または悪質な違反はもちろん、無免許運転者の違反や反復違反者の違反等を除いたその他の大部分の違反は、それが道路交通に具体的な危険を生じさせたものでないかぎり、道路交通秩序に違反する反則行為としてとらえ、このような反則行為をした者に対しては、直ちに刑罰を科するという態度でのぞむよりは、むしろ交通取締りの責に任ずる警察行政機関が一定の金額の反則金の納付を通告し、これを任意に納付した者については、あえて訴追しないものとするという簡易迅速な処理方式をとることが合理的であると考える。」と書いてある。ですから、反則金の対象になった違反というものは、この制度からいって累犯だとか悪質だというようなことにはならないわけだ、こういう御説明であった。だから、六点という点数の反則をやりますと三十日間の免停にする、これは、幾ら考えてみても、常識的にきつ過ぎるという気がするのです。当時おっしゃった警察庁の「反則金通告制度について」なる文書は、そういう意味でこの精神は今日生きておらないのですか。
  164. 久保卓也

    ○久保説明員 その精神は当然生きております。また、その精神によって運用しているつもりであります。ただ、その場合といえども、反則行為もやはり本来は本法でいけば公訴も提起され、かつ罰金を受けるはずのものであります。それを、いまお読みになりましたような方針で運用していこうということであります。  ところで、その反則金制度がとられました場合に、先生もおそらく御承知であろうと思いまするけれども、批判がありましたのは、違反をやるについては金さえ払えばよろしいのか、金を払えばどんな違反でもできるのか、といったような批判があったと考えます。それに対しては、単に反則金だけで処理をするのではなくて、やはりこの点数制度によって累犯者については行政処分をするということで、合わせて一本になるというのがこの制度の本来のあるべきたてまえであろうと考えます。
  165. 太田一夫

    ○太田委員 あなたの考え方が何もそう大きく間違っておるとは思いませんよ。一つ食い違いがある。われわれは、反則金という制度をつくられたときに、この委員会において非常に問題にいたしまして、これが適正に運用されることをもって将来の交通秩序の確立のために非常に意義あることであろうと考え、そう大きな混乱もなくして成立したことを思い出すわけです。あなたのほうのお出しになったものでも、道交法の違反というとらえ方でなしに、道路交通秩序に違反する反則行為としてとらえるとおっしゃった。本来の道交法第何条違反ということではない、道路交通秩序に違反する反則行為としてとらえるという以上は、いささか本則の第何条違反だ、第何条の違反に該当するものとはいえないではありませんか。そうすると、あなたの、政令にまかされておるいわば免停という措置も、最初ここで御説明なさいました道路交通秩序に違反する反則行為であったらば、そう簡単にオートマチックに、自動的に免停にするなどということはできないじゃありませんか。
  166. 久保卓也

    ○久保説明員 道路交通秩序に違反するものとして反則行為をとらえるというその理解のしかたは、間違っておるとは思いません。しかし、その根拠にあるのはやはり道交法の違反である、これは変わってはおらないわけでありますから、ただそれを反則金という形で救おうとしておるわけであります。しかしながら、何度も申し上げまするように、それだけでほっておいてよろしいのかといいますると、やはり、小さな違反でありましても、それが積み重なりますと事故につながってくるという可能性があります。  これは二、三年前に六万人の違反を犯した運転者の追跡調査をやったことがあります。そうしますと、この六万人の人が三年間に事故を起こした率を見ますと、三年間に一回違反をした人と九回違反をした人の事故歴を見ますと、十七対九十の差であります。したがいまして、やはり小さな違反でありましても、累犯していきますとどうしても事故を起こしやすいというような実績も出ております。そこで、どうしても小さな違反でありますけれども危険な行為については、何度も積み重なるものについては、単に反則金を払ったからそれでよろしいかというと、何かひっかかるものが残るのではなかろうか。それを反省させるという意味で、運転を三十日なら三十日排除するということは、必ずしも当を失しないのみならず、合理的な制度と考えざるを得ないわけであります。
  167. 太田一夫

    ○太田委員 久保局長、それではもう一回聞きますが、スピード違反は一点でございましたね。それでは横断歩行者妨害というのは何点でございますか。
  168. 久保卓也

    ○久保説明員 横断歩行者妨害というのは二点であります。なお、スピード違反につきましては、先ほど一点と申しましたのは、御説明しましたように、二十キロ未満の場合でありまして、二十キロないし二十五キロの場合は二点、二十五キロ以上の場合は六点、こういうふうに政令で定められております。
  169. 太田一夫

    ○太田委員 だから、朝都内で四十キロの制限のあるところを五十五キロぐらいで通りますと——六十キロというのが本来道交法上の限界でしょう。それを四十キロと制限されておる東京都内のすばらしく整備された広い道を、午前四時か五時ごろ五十五キロ程度で飛ばしますと、これは十五キロ違反でございますから一点の点数をとられるわけです。そうしてまた、スピード違反の反則金を払わなければならぬということになるわけです。これなんか実際上考えてみますと、非常に不合理な制度でしょう。いまあなたのほうは、非常に緻密な交通秩序の確立運動をやっていらっしゃって、朝は向こうから来るのを一方通行にし、夜はこちらから行くのを一方通行にするというような、まことに芸のこまかい、早く言うと、感情、気持ちにぴったり合ったような制度をおとりになっておるところがある。違反もこれに付随しますけれども、これは実際の交通の安全とか秩序ということからいうといいことなんです。そういう点からいったら、普通の交通状態のときに、四十キロで走るべきところを、早朝深夜において五十五キロで走ったから、それを四千円の罰金だとか一点の点数だということは、これは少しばかり常識はずれだと思うのです。ところが、法は法だ、法は曲げられないとくる。  それからもう一つは、横断歩行者の妨害などというのは、これは国会周辺で常時やられておるじゃありませんか。われわれが第一議員会館、第二議員会館から本院に登院しようとしてあの信号機の、横断歩道の前に立っておったときに、まともに道交法を守っていく運転手はどれだけありますか。それを一々やりますか。やったらこれは交通渋滞、それから、同時にこれは、たちまち全部が六十日間の——最初ですから三十日間の免停ということになると思う。まさに横断せんとするときなどに、しようとしている人が立っておるのに、立っているどころではない、歩いているのに、その前がすいておればすいすいと行くでしょう。これが東京都の中の交通を一応スムーズに動かしておる住民、市民、都民、国民の知恵ですよ。国民の知恵というのは、警察の皆さんがきめこまかくおつくりになった道交法というものの中において、ある程度、この程度のところならよかろうというなわ伸びというものを考えておる。そのなわ伸びが、あなたのおっしゃる四十キロのところを五十キロで走っても、その辺のところは問わないというあなたのほうの知恵だ。同時に、ドライバーとしては、歩行者が歩いているけれども、広い道ならば、その前をいま通り抜けても決して事故は起きないというときには通り抜ける、これはドライバーの知恵ですよ。その知恵があるからある程度混雑が緩和されておるのに、さあそれは一点でございます、横断歩行の場合は二点、まともにこれがやれますか。これはどうですか。
  170. 久保卓也

    ○久保説明員 実は正直な話、私ども制度については先生からおほめいただくものと思っておったわけでありますが、本日はややほこ先が違うようでありますけれども、いまの歩行者の問題なんかは、私は先生とは逆の意見でありまして、歩行者を見たら運転者はとまってほしい。なるほど、場合によっては渋滞が起こるかもわかりませんけれども、そこは歩行者優先という精神がやはり尊重されるべきであって、これは法律で取り締まるとか取り締まらないとかいう問題以前に、運転者のモラルの問題として臨んでみたい、私はこういうふうに考えるわけであります。  それから、広い道路で交通量の少ないときに、たとえば朝なり深夜なりにスピードを十キロ、二十キロオーバーして走っているものを取り締まるのかというお尋ねでありますけれども、これも法律があれば必ず取り締まらねばならないということでもありませんで、やはりそこは先生が無理とお感じになることは警察官も無理と感ずるわけでありまして、そういった場合には、おそらく取り締まりをしておらない、つまり健全なる社会通念によってやっておると確信いたしております。
  171. 太田一夫

    ○太田委員 局長、あなたの常識というものの中からは出てこないようないろいろなトラブルが現地にはたくさんある。そこで問題が起きておるわけです。この間もこういうことがあったでしょう。神奈川のタクシーの運転手さんが何か反則金の対象となる違反を起こしまして、その本人がそれに対して不服だとして裁判で争ったところ、最後は無罪になりました。無罪となったけれども、免停となったということだけは——免停となったのですから反則金ではなかったかもしれませんが、免停となったことだけは取り消しができない。こういうのが神奈川県のタクシーの運転手さんに実例としてありました。  それからもう一つは、この間、われわれのドライバー諸君の関係する労働組合の代表者があなたのほうのだれかと話をしたようであります。六点になったら即免停なんということは、全くどうも血も涙もない話じゃないかと言ったら、まあ、あきらめるんだな、こういう話だった。その話が関係のない者の話なら、制度ができている以上はあきらめるということもあり得るかもしれませんし、運が悪いといってあきらめるかもしれませんが、実際に免許証を持っておる者からいったら、横断歩道をまさに横断せんとする歩行者がある場合、とまるというようなことは一々ほんとうにやれますか。これは現実にやっていない。それをいまさらやれたってやれませんよ。あなたがどんなにしゃちほこだったってできませんよ。交通警察官をいま一万人増員してもよくできませんよ。やれたらほんとうにやってください。ある者はのがれる、あるところではそれは寛大な処分を受ける、あるところでは二点の点数をとられる。それははなはだ不公平です。実際上できないことだと私は思うのです。しかも、一番問題になるのは、この前の反則金のときに、警察庁は、先ほど私が申し上げたとおりに、「反則金制度について」なる文書をわれわれにお出しになりました。そのときに、これは道交法の違反の罰金にかわるものだというような言い方じゃない、こういう道路の状態ということを見るならば、悪質運転者とか反復違反者というものを除いたその他の軽易な違反者に対して、道路交通秩序に違反する反則行為としてとらえる。だったらですよ、反則金は点数になりませんよね。反則金でないものを点数にするならいい。あるいは、反則金を点数にするにしても、内容を検討し、これは非常に悪質であるというその確認がなされた後において、その六点を適用されるということは、その点でも、六点即三十日間の免停ということは、私はその当時の立法の精神からいって、今度の措置というものは逸脱行為だと思うのですよ。違法だと思いますが、どうですか。
  172. 久保卓也

    ○久保説明員 反則行為に当たるもののすべてを取り締まれるかというと、当然取り締まれません。したがいまして、警察官が現場に臨んで取り締まる場合、やはりそこには健全なる社会通念というものがあるわけでありまして、非常に無謀な、あるいは事故につながりやすい危険な行為、なるほど反則行為として小さなものではありましょうけれども、そういったようなものを取り締まるということでありまして、そういうものはやはり累積してみるとあぶないということは、過去の実績から見ても考えられまするし、それは反則金という金だけで解決さるべきものではあるまい。やはり、何としましても、善良なる市民を保護するということを第一の前提と考えるべきではなかろうかということで、たまたま非常に軽易な、あるいは事故につながらない、危険でないような反則行為が考えられるような場合もあるかもわかりませんけれども、それは私どもが悪いのであって、全般的な方針としては、そういういま私が申し上げたようなことでやるべきであるし、それをやらせるのが私どもの任務と考えております。
  173. 太田一夫

    ○太田委員 三年で六点でございますから、一年に割り当てられれば二点、一年三百六十五日のうちに一回信号を無視した、一回横断歩道において歩行者が横断せんとする直前を横切った、こういうことがあれば免停されるでしょう。だから私は、この制度は、内容を検討して、反則金でもあまりにも悪質なものが多い、罰金さえ払えば青空駐車でもいいんだろうというようなやり方をして違法駐車をやるというようなものに対しては、免停にするということにはとやかく言いませんよ。だから、いやおうなしに六点において三十日間の免停というのは困るということ、これはあなたたちが、過去四十二年のときに当委員会において、道路交通秩序に違反する反則行為という説明をなさった精神と違う。どう考えても道交法違反だというとらえ方ですよ。説明が違うじゃありませんか。
  174. 久保卓也

    ○久保説明員 私どもはやはりいま先生があげられました通達文書の精神によってやっておるつもりであります。したがいまして、何が問題であるかと申しますると、単純に文句だけからいけば反則行為に当たるというものでありましても、ほんとうに反則金をとるべきものであるかどうかという判断をやはり現場の警察官はやるべきである。もちろん、法律でありますから拡張解釈も縮小解釈もできましょうけれども、われわれが判断すべきなのは、やはり一般の交通のルールを守っていくということ、それから交通の危険な行為、あるいは事故につながるような行為、そういうことをなるべく排除していく、そういう習慣をつけていくということが非常に重要でありまして、小さな違反であるからといってそれを見のがすわけにはまいらない。その辺に一種の妥協点というものがあると考えまするけれども、結論は、やはり適正な反則行為の、何といいますか、摘発といいますか、そこに問題があろうかと考えます。ですから、あまり問題にならないような、たとえば私が先ほど例にあげましたような反則行為までも一々反則行為として処断するということではない、結局問題は、警察全般の指導取り締まりの問題である、必ずしも点数制度の問題にはからんでこないというふうに私は考えます。
  175. 太田一夫

    ○太田委員 われわれはあなたたちのことばを信頼していいか悪いかわからない。取り締まりじゃなくて指導だとおっしゃるけれども現実には血も涙もないやり方をしておられる。だから、かつて道交法違反としてとらえない、道路交通秩序に違反する反則行為だという意味で、反則だから反則金を科すといったその御説明と、今度の説明とははるかに変わっている。それなら反則金の際に、本人の弁明を一ぺん求めるべきだ。一度呼び出して、交通課長なり署長のところで、合意の上において切らなきゃいけない。反則金はいまじゃ合意じゃありませんよ。だから、そういう意味において、かつての制度のほうがそれよりいいじゃありませんか。それじゃ反則金はやめたらどうですか。反則金をやろうといったときには、反則金はそういう罰金ではない、罰則ではないのだ、税金を納めることが少しおそくなった人に対して、特別加算金を少しつけるようなものだ、こういう説明だった。そこはうまいこと言ってごまかして反則金制度をとって、今度はその反則金について一回一点なり二点なりという点数をつくって、わずか六点やそこらの点数になるというと免停三十日、これは私は天下のドライバー諸君にとってはほんとうにショックだろうと思うのですよ。納得できませんね。委員長、われわれはそういうことばは困りますよ。この際私は、その扱いについて、ここでおっしゃることは、文書としてあるにかかわらず、それが通用せぬというのはどういうことですか。道交法違反なら道交法違反として本則どおりおやりになったらどうですか、反則金制度をやめて。おやめになればこれを認めますよ、六点でも何点でも。前の説明と違う。きょうは時間がないという委員長さんの御注意でございますけれども、それはちょっと局長、法改正でも何でもおやりなら別として、現行道交法の中で政令の範囲においてそういうことをおやりになるということは、非常に逸脱した行為だと思うのですね。どうしても納得できませんが、どうですか。
  176. 久保卓也

    ○久保説明員 私は、何度も申し上げますように、いまの反則行為あるいは点数制度が、先ほどお読みになった趣旨からはずれておるものとは考えません。やはり同じ趣旨のもとに運用されておるというふうに考えます。そこで、反則金制度をやめますことは、関係者すべての人にとって不幸であろうと考えます。ですから、問題は、反則行為の取り上げ方それ自身に問題がある、したがって警察官個々の教養の問題であるというふうに考えるわけであります。
  177. 太田一夫

    ○太田委員 それがわからぬと言っておる。教養が信用できぬと言っている。だからこの当時も、何回も、取り締まりじゃなくて啓蒙指導をやっていただきたい、やります、という話だった。以来二年たちましたが、なかなか交通警察官に対するところの評価というのはそこまで高まっておりません。おりませんが、だんだんよくするとあなたがおっしゃるなら、私はその指導中心主義にやるということを信じましょう。しかし、点数六点で免停三十日は、これは私は認めるわけにはいかぬ。というのは、四十二年のときに、これは道交法違反としてとらえるんじゃないと言っていらっしゃるのに、なぜ道交法違反として議論しなきゃならぬのでしょう。これは警察庁当局の食言じゃありませんか。あなたは同じことだと言うが、ことばが違う、字が違う。その点大問題だと私は思うのですがね。
  178. 久保卓也

    ○久保説明員 反則行為でありまするから、あくまでも道交法違反として扱っておるのではありません。もちろん、反則の切符を受け取らない人は、もとに戻って道交法のほうに返るわけでありますけれども、反則行為として本人が認め、反則切符を受け取る以上は、やはり反則金制度にのっとっておる。道交法の個々の条文違反そのものではないということであります。その点は、何度も申し上げまするように、従来の考え方と変わっておるものではありません。
  179. 太田一夫

    ○太田委員 従来のと違っておらぬといったって、あなたそのときに交通局長をしておりましたか。四十二年のときにあなたはこれを説明しましたか。
  180. 久保卓也

    ○久保説明員 言うまでもないことで、私はおらないわけであります。しかし、その精神で今回もやっておるということであります。
  181. 太田一夫

    ○太田委員 だから、その当時の説明は、道路交通秩序に違反する反則行為とおっしゃったじゃありませんか。道路交通秩序に違反する反則行為にどうしてそんな行政罰や罰が科せられるのですか。根拠を教えてください。
  182. 久保卓也

    ○久保説明員 それは道交法の第百三条によって政令に取り消しと停止の基準がゆだねられておるというたてまえになっております。その政令は施行令として三十八条でありますか、そこに書かれておるわけであります。
  183. 太田一夫

    ○太田委員 だから、免許の取り消し、停止というのは、これは道交法の違反が対象でしょう、違反に罰則がついているのですから。こうこうこういうことをした者は幾らに処すると書いてあるじゃありませんか。罰則は、事故を起こした者、違反をした者が対象でしょう。そうじゃないですか。
  184. 久保卓也

    ○久保説明員 反則行為に当たるそれぞれの行為としてとらえておりますので、そういう行為がありました場合に、政令でもって、三十八条によってそれぞれの行政処分を受けるということになっておるわけであります。
  185. 太田一夫

    ○太田委員 反則行為というのは違反行為ではないですよ。広い意味においては違反行為かしれませんが、この場合、反則金をつくったときの精神は、道路交通秩序に違反する反則行為だと、だから反則金は罰金でもなければ過料でもないんだ、税務署でいう加算税にひとしいものだ、そういう説明ですよ。税務署の加算税は、何回やったからといってどこかにそんな罰金がありますか。
  186. 久保卓也

    ○久保説明員 あくまでも、先ほど御説明のありました交通秩序を乱す行為、そういうものの積み重ねというものはやはり野放しにしておくわけにはいかないということで、行政処分という形で取り上げたものです。そういうように御理解いただいたほうがよろしかろうと考えます。
  187. 太田一夫

    ○太田委員 かつて旧道交法においては、スピード違反であろうが、右折違反であろうが、一応本人の弁明の余地を与えた、呼び出しをして。今度は反則金制度はその弁明の余地を与えないんだ。それは前とは少し違って軽い意味においてとらえるとおっしゃったから、われわれは本人の弁解の余地、疎明するチャンスなくてもよかろうと言った。だんだんとあなたは事を重くしておるじゃありませんか。
  188. 久保卓也

    ○久保説明員 反則の制度は、現場で警察官から切符をもらうわけでありますが、それに応じない者は、御承知のように道交法の原則に返るわけでありますが、かりにその切符をもらっても、不服な者は、不服であるといいますよりも、その切符をもらった者は、たてまえとしては各県の幾つかの場所にありまする通告センターに参って、そこで弁明の機会はあるわけであります。しかしながら、本人がその必要ない、やはり自分が間違っておったと考えれば、通告センターに行かないで反則金を納める、そういう制度になっておりますので、本人の不満を申し述べる機会というものは通告センターにもありまするし、反則制度に従わない自由もあるわけであります。
  189. 太田一夫

    ○太田委員 それは、あなたのほうは何とかこのものを、反則行為というものも幾つか重なってくるというとあまりほめたことじゃないから、おきゅうをすえてやろうという気持ちから出ていると思うから、そのことについてとやかくのことは言わない。だから、事故を起こしたその反則行為の内容をしさいに検討し、そういう幾つか悪質なものがあった場合に、これを免停の対象としてとらえるというのは、それはわかるけれども、六点イコール免停ということは、これは弁解の余地なしに反則金の切符を交付する現行の反則金のやり方から見ますと不穏当だと私は申しておる。いまあなたは、それは本人が異議があれば何も反則金を払わなくてもいいとおっしゃる。それはそのとおりだ。しかし、その当時はそんな話じゃないですよ。大いなる争いがある場合はそうだ、しかし反則金というものは、これは免許証にも書きません、前科にはならないのだ、だからこれは、処分が早くできますように、早く言うと合理化の一環として考えられた制度であるというような御説明であった。だから、反則金を払ったからといって、免許証には書いてありませんよ。免許証は白ですよ。だから、もしこの六点で三十日間免停にするなら、もとの道交法に戻したらどうか。それならば本人は必ず警察交通担当者のところに行きましただけでも弁解の余地がある。話をして、いやこれはまことに私のほうが悪かった、私は知らなんだ、君の言ったことは、おれのほうから見るとはなはだどうもけしからぬと思うが、君はそういう意味で初めてここへ来たために、それで一方通行、うっかりしておったのか、しようがないなという、前ならば処分に幅があった、警察署長に。いまはないじゃありませんか。だから、あなたのほうが、六点イコール免停でなければ、十分事情を調べて、その中の悪質なもののみを免停するとおっしゃるならわからぬわけじゃない。
  190. 久保卓也

    ○久保説明員 六点になったときの内容を調べて行政処分の有無を考えろというお話もわからないではありません。しかしながら、この六点というのは過去三年間の事故歴でありますから、過去三年のものをどのように詳細にやるかということは、結局一点なり二点なりの行為の積み重ねであります。どのように慎重に考慮しようとも、その一点、二点の行為の積み重ねでありますから、むしろ私どものたてまえとしては、その一点なり二点なりの反則行為の是非というものをその場その場合で判断をする。したがって、至当なものと考えたものについては点数として残していく。つまり反則行為としてあげていくということにしたほうがよろしいのではなかろうかというふうに考えます。
  191. 太田一夫

    ○太田委員 いわば点数に乗せるときに判断があるというなら私はまた別だと思う。しかし、どろはね運転はゼロ点だ。しかし、どろはね運転というものはちゃんと反則金があるでしょう。どろはね運転ぐらいけしからぬものはないですよ。四千円なり三千円なりある。しかし、どろはね運転をゼロにするということは、どろはね運転をやめよといったってなかなかやまらぬ。日本の国は道が悪いから運転手の責任だとばかりいえない。そこでこれはゼロ点にしたんでしょう。それなら、この中でゼロにするものはたくさん出てきますよ。ということは、反則金の切符をもらったけれども、これを点数に乗せぬというものが出てきてもいいわけだ。切符はもらったけれども、反則点数にはしないよというものが出てきてもいいわけだ。その反則点数にするしないの選択が、地方の警察署長かどこかにあって、それが行なわれるということをあなたはいまおっしゃったのですか。反則金は払ったけれども、点数には乗せられないという例が出てくるのですか。
  192. 久保卓也

    ○久保説明員 点数にあげまして行政処分にいたしまするのは、もちろん運転をさせないということでありますから、点数に算入すべき行為の対象というものは、その運転によって危険が予想されるような行為であるということであります。したがいまして、どろはねというのは、なるほど人に迷惑をかけまするけれども、運転をしたことによって危険を及ぼすという筋合いのものではないという観点のもとに、これは点数制度の場合の点数には算入しておらないということであります。
  193. 太田一夫

    ○太田委員 冗談じゃないですよ。自転車に乗っておる。ぱちゃんと大きな水がかかれば、その人は転落しますよ。どろはね運転が人命に危険やなんか起こさないなんて、そんなばかなことがありますか。認識不足じゃありませんか。ましてや深夜などは、四十キロや六十キロで走ったところで、何ら事故を起こさないじゃありませんか、前方に人がいなければ。これも違反の対象にしなくていいじゃありませんか。そういう実情実情に応じてやるのじゃなくして、ある程度反則金には一つの定型というものが設定されておるのでしょう。それでいや応なしにやるのでしょう。だから、あなたたちは、四十二年のときは、反則金は罰じゃありません、罰として刑罰も科しませんし、そのようなことについては免許証も何らよごれるということはありません、これは罰金を納めてもらえば済むのですと言っておきながら、いまになって、四十二年ですから三年たったわけですか、そうしたら、六点、いわば交通違反三回やれば、信号無視三回やれば免許停止三十日だ、そんなことはごまかしじゃありませんか。われわれはそういうごまかしを一々気にしてやっておったのでは、今後法律なんて審議できませんよ。
  194. 久保卓也

    ○久保説明員 私は決してごまかしているわけではありませんし、そのつもりも毛頭ありません。ただ、何度も申しまするように、たとえば深夜、早朝に十キロ、二十キロのスピード違反を検挙して反則行為としてとらえるか、反則金を払わせるかというと、そういう取り締まりをやらないようにというのが私どもの真意である。したがって、危険につながらないような行為を反則行為としてすぐに反則金制度の上に乗せるつもりはない。いわば指導、取り締まりの方針の問題である、そのあり方の問題であるということを繰り返し申しているところであります。
  195. 太田一夫

    ○太田委員 私はこの際ちょっと納得ができない。一つの同じ問題について、前の警察庁の関係者の御説明と、今度の皆さんの御説明とが違うという点について、私は非常な疑惑をいま持っておるわけなんで、幾らあなた方が不当な取り締まりはしないとおっしゃっても、六点で三十日間の免停という制度がしかれるということの可能性が私はどうしてものみ込めない。これは、少なくともわれわれは、そんなことに発展することはないという前提のもとにこの問題の審議を行ない、そういう説明を聞いておるわけなんです。時間がなければこれ以上やりませんが、私は時間が許されるならあすの朝まででもやりますよ。これはたちまち、横断歩道を自動車が通る場合においては、まずほとんど七割の自動車は横断歩道の歩行者妨害の違反ということになり、二点の点数をとられるでしょう。実際上何も事故が起きなかったからいいのだということにはなりませんよ、あなたの先ほどの御意見からいっても。これはあなた、そういうことをおっしゃっていたのじゃ、いまの交通ラッシュ、道路の設備は不十分だ、安全施設は不十分だ、そういう際において、この自動車のはんらん時代において、六点で三十日間なんということをやったら、優良なまじめな運転手がずいぶん免許停止を受けるということになると私は思うのですね。この前はどうも欺瞞的な説明がなされておった。前の人に一ぺん来てもらわなければわからない。それだったら、私は反則金の免許証に書き込んでもらいたい。わからぬじゃありませんか。あなたのおっしゃることだと、もう一回であなたは免停になりますよという通告が直前にくるという。それはわかった。そんなことをしなくたって、ちゃんと書きやわかるじゃありませんか。反則金も同じように一件として免許証に書いたらいかがですか。そういうことをされるならまた別だ。反則金はそういうものじゃないという説明を受けたから、あなたのおっしゃることがわからぬと言っておる。
  196. 久保卓也

    ○久保説明員 反則金を払ったということを免許証に書くということは、すべての人が要望すれば書いてもよろしいけれども、そういうことばむしろ望まないというのが運転者の希望であるはずでありますし、また余分の手数でもあろうかと考えます。したがいまして、従来のやり方でそれはよろしいのではないかと思います。
  197. 太田一夫

    ○太田委員 だからいけないと言っているのです。ごまかしだと言うのです。食言だと言っている。当時の立法精神と違うのです、あなたのほうの考え方は。免許証に書くのはいやだといったから書かないということにしたのじゃないですよ、あなたほうは。違反としてこれはとらえないから書きませんとおっしゃった。それじゃあなた、これはどういうふうにわれわれ理解するのですか。常にそのようなむずかしい、わけのわからぬ話になってくると、われわれは、提案説明聞いたり、いろいろな説明を聞いてみても、全然警察のおっしゃることは信用ができぬということになるじゃありませんか。林さんのお話とどうも同じ話になって、はなはだ恐縮だけれども警察を私は信用せぬと必ずしも言っておるわけじゃないが、特に鈴木さんは熱心に交通対策を考え——今度道交法の改正をやろうとしておられる。新時代に即した道交法をつくろうとなさるということは私はいいことだと思う。けれども、反則行為というのを、そういうふうに違反行為というふうに読みかえられることは、私ははなはだ残念だと思うのですね。どうですか、委員長、これはいつまで議論しておっても、私は反則行為は違反行為だなんていうふうに理解できぬ。自民党さんどうです。自民党さんの理事さんいらっしゃらないけれども……。反則行為は違反行為だ、道交法違反行為であるということにして、ただ免許証に書かないだけだとそれの解釈が確定されれば、われわれは、その当時うかつであったということで引き下がりましょう。解釈を確定してください。統一解釈、あなたじゃ困る。国家公安委員長に出てきてもらって、権威のある答弁をしてもらわなければ困ります。
  198. 久保卓也

    ○久保説明員 反則行為即道交法の違反行為であるということは一言も私は申し上げておらないはずであります。やはり反則行為というものは反則制度というものによってやっているだけで、単にその反則金を払わないという場合に道交法のもとに返るというだけであります。それは法律に書いてあるそのとおりのことしか申し上げておりません。
  199. 太田一夫

    ○太田委員 当初申し上げたでしょう、附帯決議の中で。仮停止さえも、「違反および過失の有無を慎重に検討し、いやしくも過誤なきを期するよう十分に指導すること。」昭和四十二年七月十一日の衆議院地方行政委員会におけるこの改正の際の附帯決議ですよ。これは仮停止です。これは重大な死傷事故を起こしておる、それを三十日間の停止、六点の点数が累積されたから三十日間、いやおうなし、うむをいわさずやるということが、反則金制度というものをとった精神と合致するとは、どう考えても思えない。また、そのような説明がなされておったとも私は思い出せない。だから、当時反則金の説明の中でそのようなとらえ方で説明がされておったとすれば、ひとつそれをお示しいただきたい。御説明がされたということなら、われわれはごまかされたで引き下がりましょう。みずからの不明を恥じるよりしかたがない。
  200. 久保卓也

    ○久保説明員 当時反則行為の御説明をしました場合に、将来点数制度はどうなるかということをあるいは説明されておらなかったのではなかろうかと考えますけれども、決して食言でもなし、また、ごまかしておったということでもなかろうと確信いたします。
  201. 太田一夫

    ○太田委員 国家公安委員長の責任ある答弁をお願いします。
  202. 鹿野彦吉

    鹿野委員長 太田委員に申し上げます。  来たる次回の委員会において、公安委員長から責任のある答弁をさせますことをお約束いたしておきます。  残余の質疑に入っていただきます。
  203. 太田一夫

    ○太田委員 それでは、あと二点で二十分ずつ一時間のつもりでおったのですが、話がやぶの中に入ってしまいまして申しわけありませんでした。これは私が悪いのではなくて、警察庁のほうがちょっと勇み足だったと思いますので、御了解ください。  新都市計画法につきまして建設省にお尋ねをいたしますが、最近新都市計画法の実施に関しまして、市街化区域の指定問題で、各地におきまして非常に混乱を生じておるわけです。これは愛知県の刈谷市の話ですが、刈谷市におきましては、愛知県知事の設定いたしました市街化区域には、全市の都市計画区域の二四・二%でありましたが、それを四四%に修正する、いわば八割増しの修正を求めるということを全員協議会におきましてきめております。それに安城市におきましても、全市の都市計画区域の一二・九%の市街化区域の指定内示があったのでありますが、とてもそんなことでは将来の都市化と住民の意欲にこたえられないというので、六割増しの修正を要求をするといっておるわけであります。これは第七条第二項によりまして、十年以内に市街化区域を何かもう一回あらためて考えるようにいわれておるのでありますけれども、市街化区域と調整区域との線の引き方がたいへん問題になっておる。問題は、その際において住民参加というのはどうなっておるかということです。単に公聴会をやるからいいということではなしに、各市町村も全員協議会でいろいろなことをやるといっても、議会議決を得る必要がないわけです。ですから、住民参加ということを当時約束をされた建設省は、この市街化区域の線を引くことについて、公聴会以外に——公聴会というのは、やられたところで実際上には修正がきかないのでありますが、どういう方法で当該市町村並びにその住民の要望と意思にこたえるつもりであるか、その点についてお答えいただきたいと思うのです。
  204. 国塚武平

    国塚説明員 新都市計画法は六月十四日から施行されまして、ただいまお話がございましたように、都市計画法で定めております市街化区域、調整区域を定めるべき都市計画につきまして、市街化区域の設定の準備に入っておるわけでございます。市街化区域の設定は都道府県知事が定めるわけでございますが、法律に定める手続に従いまして市町村の意見を聴取し、かつまた都道府県に置かれます都市計画審議会の議を経てこれを定めるということに相なるわけでございます。先生承知のとおり、新都市計画法は市街化区域、調整区域を設定いたしまして、都市の計画的、段階的な整備をはかっていくというのが大目的でございますので、建設省といたしましては、できるだけ早期にこの区域の設定をはかってまいりたい、そのように指導してまいりたいということでございます。  ただいま愛知県の例を引いてお話がございましたが、たとえて申し上げますと、愛知県について申し上げますれば、県が市街化区域の素案を県内の調整を終えてつくりまして、これを地元市町村にお示しをいたしまして、市町村との調整をはかっておるという過程でございます。市街化区域は、先ほど先生仰せになりましたように、法律の第七条第二項によりまして、市街化区域は、すでに市街地を形成している区域と、今後おおむね十年以内に計画的に市街化をはかるべき区域と、この二つからなるわけでございます。現に市街化しておるところにつきましては、これは当然市街化区域に入れるわけでございますが、いわゆる新市街地といたしまして、将来の人口なり産業の見通しを立てまして、新たに市街地として配置する必要のあるところを新市街地として都市計画区域に取り込んでくる。この場合の考え方でございますが、これにつきましては、都市計画法の目的が、市街化区域を設定することによりまして、今後計画的な整備が達成できるというのが主目的でございますので、そういう観点から土地区画整理事業でございますとか、あるいはその他の面的な整備事業というものを主体にして、計画的な街づくりができるというところを主体にして、新市街地をとってまいりたい。ただいまお話がございましたように、市町村段階におきましてできるだけ区域を広げてほしいという要望も、私ども伺っておるわけでございますが、先ほど来申し上げておりますように、現段階の素案を市町村にお示しをして、市町村との調整にこれから実は入ってくるわけでございます。  そこでお尋ねの、市町村段階における意見の聴取はどういうふうにやるかということでございますが、この点につきましては、昨年十一月、市街化区域の設定につきまして都市計画中央審議会の答申の中にも、特に注意事項として示されておりまして、都道府県知事は、市町村との関係におきまして十分な意見の調整をはかり、かつ住民の意見を聴取するように措置するという一項がございますので、私どもといたしましては、法律にうたっております都道府県知事が都市計画を定めるときには、必要があれば公聴会を開いて意見を聞くという趣旨もございますし、この思想は、今後は市街化調整区域を設定するような、いわばこれからの街づくりの基本になるような構想でございますので、これについては個々の市街化関係者という観点以上に、住民の意見を聞きながら計画をつくっていくという趣旨でございますので、そういう観点からいたしまして、公聴会をできるだけ多方面で開いてまいりたい。また、これによりまして、不足なものにつきましては、市町村段階におきまして説明会を開催をいたしまして徹底をする。また、市町村が市街化区域についての意見をまとめられますために議会議決は必ずしも必要といたしておりませんけれども、市町村段階におきましてひとつ審議会を構成をしていただきまして、学識経験者あるいは都市計画担当の理事者あるいは農業関係の関係者等々を加えました審議会を開催をいたしまして、その審議会を通じて市町村長の考え方をきめる、それをお出しをいただいて、都道府県知事の段階で調整をするというような方法を指導してまいりたいと考えておるわけでございまして、先生御指摘のような趣旨に沿いまして、区域の設定に問題が起こらないように今後十分留意してまいる考えでございます。
  205. 太田一夫

    ○太田委員 ぜひそうしてください。説明会を開く、審議会をつくる、けっこうです。ひとつ大いに意見を聞いていただき、住民参加並びに地方自治法の本旨だけは、これは尊重していただきたいと思うのです。  簡単なことで一つお尋ねしますが、調整区域に対する除外例というのは、小規模なものの開発を抑制されておるわけでありますが、例外が政令等にあるようです。たとえば販売、加工、修理業等はよろしいのですが、あるいは農林漁業者の居宅は、自分の農林漁業のためならよろしいのですが、問題は次男、三男のための住居を自分の畑等につくるごとは抑制されておるのですが、これは認められる可能性があるのですか、ないのでございますか。
  206. 国塚武平

    国塚説明員 市街化調整区域につきましての開発許可の規制でございますが、ただいまお話しがございましたように、市街化調整区域の中で、たとえば農家が農業を営んでおられる、その場合に、自分のむすこさんのために住宅を建てるという場合には開発許可が与えられるかどうか、こういう御質問だと考えます。  法律に定めております開発行為の許可除外といいますか、開発許可が要らないという条項には当てはまらないわけでございます。法律により開発許可を受けなければならないわけでございますが、これにつきましては、都道府県に置かれます開発審査会にかけまして、その開発行為が周辺における市街化を促進するおそれがないと認められ、かつ市街化区域に建てることが困難だということが認定されますれば、開発許可は受けられることに相なります。
  207. 太田一夫

    ○太田委員 建設省はけっこうです。  運輸省と自治省お尋ねをいたします。  これは過疎地帯の対策のことでありますが、最初運輸省にお尋ねをいたしますのは、最近名古屋陸運局のほうにできましたのは、過疎バス路線対策協議会というものができまして、山間僻地のバス路線をABC三段階に区分をいたしまして、Aはどうしてもだめだ、Bは何とかてこ入れをしようとか、このようなふうに、その営業状態を三段階に分類をして、将来の存続をどうするかをきめようじゃないか、こういうことをおきめになった。そういうところの山村僻地の、あるいは過疎地域の交通機関がまさに死滅せんとしておるということを証明するものだと思うのでありますが、来年度の新しい方策の中に、自治体に白バスを運行させることを認めていこうじゃないか。自治体に白バス、これは非常に新しい考え方でありますし、提案でありますけれども、それでなくても、財政的に困難な山間過疎地域の市町村に、一般の住民のための通勤用のバスまで買わせたり、運転させたり、あるいは市民が町へ買いものに行くのまでその足を直営の白バスによってやろうということは、財政的にもたまったものではない。また、安全面からいえば、安全運転管理者というものが置かれるかわからないが、非常に疑点がありまして心配でありますが、そういう点についてどうお考えか、運輸省と自治省からお答えをいただきたいと思うのです。
  208. 黒住忠行

    ○黒住説明員 過疎地域におきますバスの輸送でございますが、バス輸送は、最終的な公共交通機関でございますから、これの運行を維持するということの方策を原則といたしております。そのためには、事業経営の合理化、さらに国といたしましても助成を強化いたしまして、維持をいたしたいというのが基本でございます。しかしながら、輸送需要が非常に少なくて、バス会社等によりまして運行する必要がない地域におきまして、地方の町村等が、あるいは部落等が、ぜひ残したいというふうなところがあります場合等におきましては、その町村に対しまして、車両の購入に対して二分の一を補助いたしたい。そしてまた、この運営につきましても——お客が少ないことでございますから、経費がかかるわけでございます。それにつきましては、自治省のほうでいろいろの方法を検討していただいておる次第でございます。われわれといたしましては、きわめて例外的な地域におきまして、なおかつ町村なり部落等が維持をしたいというふうなときにおきましてこの措置を考えたい、こういうふうに考えております。
  209. 立田清士

    ○立田説明員 私たちといたしましては、過疎地帯の交通の確保というのは一番重要なことであろうというふうに考えております。したがいまして、現に交通網がございますれば、できるだけそれは運輸行政の中で維持をされていくのが一番望ましいというふうに考えております。したがいまして、市町村である程度交通の確保という観点から、たとえば自家用車等を利用してやらざるを得ないという事態がありました場合においては——それにしましてもそういう事態が出ないことが望ましいわけでございますが、万一そういうことが出ました場合においては、先ほど運輸省からお話のありましたような点を考えまして、十分そういう点の措置を考えていきたい、そういうふうに思っております。
  210. 太田一夫

    ○太田委員 自治省お尋ねいたしますが、いまのお話でありますと、在来の交通網が維持強化されていくことが望ましいけれども、それは運輸行政の中で維持させることが望ましい。しかし、運輸行政の中でどうしてもできなければ、自治省という中にかかえ込んで、財政的にも、いろいろな問題においても、めんどうを見よう、こういうわけなんでありますが、これは運輸省の四十四年度の方策も、いわば不採算バス路線の維持費の補助制度というものは、キロ当たり三十三円を、国が半分と地方自治体が半分ということであって、現在でも運輸行政の中でやるのじゃなくて、自治省が実は十六円五十銭ほどのところであるけれども、維持をするために特交等の配慮をされていると思うのですよ。運輸省だけでやれと言ったら、運輸省は業者に対してやれやれと言うのだけれどもやれない、しかたがないから自治省に御返却します、それじゃ、私のほうで白バスを買ってやりたくても白バスも買えぬから、熊さん、八つぁん、だれか車持っておらぬかいというような話になってくる。それでは過疎の促進であって、過疎地帯に対する対策じゃないと思うのですよ。これは自治省どうですか。
  211. 立田清士

    ○立田説明員 先ほど私が申し上げた点、多少ことばが不足だったと思いますので、その点を補足さしていただきたいと思いますけれども、運輸行政の中でと申し上げましたのは、現にいろいろ運輸省の中でそういう措置をやっておられまして、それに関連して地方財政の面でもちろん措置もいたしておるわけでございます。そういう意味で、現にそういうふうな一つのバス路線等がありました場合においては、そういうものが、私たちの立場から見ますれば、その地域住民の直接必要といたします路線というものについては、なお維持されていくほうが望ましい、そういう意味で申し上げたわけでございます。
  212. 太田一夫

    ○太田委員 自治省お尋ねしますが、それでは運輸省が投げ出したところのバス路線、いわば不採算路線についてどうしてもやっていけないといった場合には、そのバス路線は休止される。あと全部引き受けるといったときに、あなたのほうは、地方の自治体に何かの財政負担をかけさせるか、それとも全額めんどうを見るのか、その点はどうですか。
  213. 立田清士

    ○立田説明員 万が一、現にバス路線がございまして、それが何らかの事情で——そういうことは私たちの立場からいきますと、あまり望ましいことではございませんが、どうしてもその市町村でやらざるを得ないといったような場合につきましては、先ほど言われたように、運輸省が来年度において車両購入等の措置についてお考えになっておるわけでございますので、そういうものとあわせまして、私たちのほうとしても、そういう措置について検討をして措置をしていくようにいたしたい、そういう方向で考えざるを得ない、そういうふうに思っております。
  214. 太田一夫

    ○太田委員 バスを買うなら半分は運輸省が補助するとおっしゃったが、半分は自治体が補助する、そういうことならそれでもいいですね。あと燃料費であれ、車検費であれ、あるいは運転手の費用にしろ、全部めんどうを見る、それは基準財政需要額で見るというような言い方じゃなくて、別途に全部めんどうを見るというやり方でなければやれない。たいへんな金がかかると思う。もしそれができるならば、既存のバス路線の維持をはかったほうがいいのじゃないか、かえって安くいくのじゃないかと思うのです。不採算路線の補助の問題については、きょうはちょっと時間がないので聞きませんが、実際に運輸省にお尋ねしたいことは、自治体営とした場合には、公営企業じゃないでしょうけれども公営企業みたいなものができるわけだ。あるいは白色ナンベーによって乗り合いバス経営をするような自家用車族もできるわけでございますが、それはそれとして、民営バスが非常に苦況に立っているときに、国営バスと立地条件が、税制においても、その他においても、自賠保険等の考え方から見ましても、どうも差別があり過ぎると思うのですが、現状はどうなっており、どのような違いがあり、民営バスに対して公租公課においてどのようなよけいな負担をかけ、どのような制度において国鉄側と差別があり、将来はそれをどうするおつもりであるかということについて、何かお考えがあったら承っておきたいと思うのです。
  215. 黒住忠行

    ○黒住説明員 国鉄と民間につきましては、おのずから経営の性格が違うわけでございまして、民間の業者に対しましては、自動車に関するものや燃料に関する諸税金はもちろん全部かかるわけでございまして、それにプラスいたしまして、事業経営自体につきまして法人税、事業税あるいは道府県民税、市町村民税、固定資産税、電気ガス税等がかかるわけでございます。国鉄に対しましては、自動車の取得税あるいは自動車税というふうなものと燃料に関するものはかかっておりますが、事業経営の点につきましては、国の公社でございますからかかっておりません。ただ固定資産税的なものにつきましては二分の一を納めておるわけでございます。それが現状でございますが、国鉄と民間に対する税制をどうすべきかという問題は、これは全体の税の体系内の問題だと思います。直接運輸省が所掌しているわけではございません。われわれといたしましては、国鉄と民営事業を同じスタンドポイントで競争さすという政策ではなくして、道路運送法におきましても、国鉄に対する規制と民営バスに対する規制は異なっております。われわれといたしましては、国と民営が相争うということではなくして、なるべくその間に円満なる協調のもとに事業をやらす、そしてまた国鉄バスにつきましては国有鉄道法関係の規制もございまして、一定の範囲内のものに限るわけでございます。そういうふうなことでやっているわけでございまして、将来におきましても、この国鉄バスと民間バスが相争うというふうなことはなく、円満な協調のもとにおのおのの分野を守りつつ当該地域の輸送需要にこたえていくというふうな方向で指導してまいりたいと考えております。
  216. 太田一夫

    ○太田委員 自動車損害賠償責任保険の保険料というのは、国鉄の場合はないでしょう。民間の場合はあるという点からいっても、実際上、一台のバスを持った場合の経費というのは、民間に非常につらくなっておるわけです。それで、過疎地帯に不採算路線を運行するような場合は、その会社がもうかっておるとかもうかっておらぬとかいうことは度外視して、一路線ごとに検討して、そういう不均衡なものは均衡をとりながら維持ができるように措置すべきじゃないかと思うのです。そういうような、何でも地方の町村にまかせよう、まかせようということは、このごろ地方自治体は黒字だなんということを新聞が書くから、そこで運輸省も、大蔵省も、困ったこと、めんどうくさいことはやめて、自治省にまかせればいい、こういうことになる。いま細郷さんはいらっしゃらないけれども細郷さんあたりは、特交で何とかやるよなんということを簡単におっしゃるとたいへんなことになるので、立田さん、これから気をつけて、特交でやります、やります、なんということはおっしゃらないようにしていただかなければ困ると思う。これは運輸省の黒住さんどうですか。そういう過疎地域は一路線ごとくらいに検討して、維持できるようにもっと積極的にこの過疎地域の交通、足を守るということについて措置をしていただきたいと思いますが、御見解はいかがですか。
  217. 黒住忠行

    ○黒住説明員 われわれのバス事業に対しまする行政の最も重要な点は、過疎地域におきます事業者の経営をいかにして維推するか。そうして路線をいかにして維推するかということでございまして、これにつきましては全力を注ぐ必要があると思っております。同時にまた、地域住民には至大な利害関係があることでございますから、関係の都道府県とか市町村とも十分相談をいたしまして、最後の公共交通機関であるところのバス事業を維持したいというふうに考えておる次第であります。  それから、さらに税制の問題でございますが、過疎地域におきますところの乗り合いバスに対する車両に関しますところの諸税の軽減につきましては、でき得べくんばこれの軽減方について措置するというふうなことも考えたいということで、これから関係省とも折衝をしてみたいと思っております。
  218. 太田一夫

    ○太田委員 終わります。
  219. 鹿野彦吉

    鹿野委員長 次回は来たる十月八日水曜日午前十時から理事会、十時三十分から委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後五時二分散会