○三井説明員 ただいま御
質問の点でございますが、六月二十九日に共産党
本部に対する火炎びん攻撃事件がありました。背叛社で爆発を起こしました事件は十月六日でございます。六月二十九日の事件につきましては、背叛社事件の捜査の過程で、背叛社の連中がやったのだということが判明いたしましたので、十一月二十日これを脅迫罪として
東京地検に送致をいたしておるわけでございます。ただいまの御指摘では、六月二十九日に共産党の
本部襲撃事件が発生しておって、その被疑者がもう当時から十分わかっておって、その被疑者であることを、犯人であることを
承知の上で
警察がこれから協力を求めておった、こういうような印象を受けるわけでございますけれ
ども、事実はそうではございませんで、事件として六月二十九日に共産党
本部攻撃事件が発生したということは、客観的事実としてわれわれとしては即日これを
承知いたしまして、所轄の原宿
警察署を
中心といたしまして、共産党
本部の
皆さん方の御協力を得て、実況見分もし、捜査を鋭意進めておったわけでございます。ただ、これがアナーキストらしい、こういうような、共産党
本部にまで火炎びんというような手段を用いて攻撃をかける、こういうようなことは、どうも反日共糸、反代々木系という各派がたくさんあるわけでございますけれ
ども、それらの日ごろの主張、行動といったようなことを分析、検討いたしてみますと、どうも、やるとすればアナーキストであろうというような判断は、われわれは持っておったわけでございます。ただ、アナーキストはその性質が、アナーキズムであるというところから当然かと思いますけれ
ども、いろいろの
組織をつくっておりますけれ
ども、その
組織には綱領、規約もないといった式の、わりにルーズな
組織といいますか、しかし、わりに団結は固いと言えるわけですが、同じアナーキスト陣営の中でも各派に——各派というほどでないかもしれませんが、いろいろのグループに分かれておるわけでございます。いかにもアナーキーな状態にあるわけでございまして、したがいまして、アナーキストと一言に言いましても、アナーキストのどのグループであるかというような点は必ずしも明瞭でない。アナーキストの中で、いわゆる理論アナーキスト、啓豪アナーキストといわれるような、実際の行動をしないアナーキストもありますし、この辺は一応除外していいかと思いますけれ
ども、最近では次第に行動化してきておって、われわれがはっきり行動アナーキスト、こう言っているのも相当数おるわけでございます。理論派、啓蒙派などでありましても、行動アナにだんだん変わってくるという最近の状況でもあり、アナーキストグループ自体がいろいろに分かれておって、それぞれの主張も行動も違うというような中で、アナーキストくさいという判断を持ちましたけれ
ども、これはどこで、どの派閥であるのかというような点につきましては、つまり、火炎びんを投げたという現場の実況見分、つまり現場から進めていく捜査と、それからまた、派閥、人の関係から、人脈から洗っていく、こういうような両面の捜査を鋭意続けておったわけであります。それが、最終的にその辺について判断を持ち得ましたのは、十月六日の背叛社爆発事件で、この和田をはじめ十三名の被疑者を逮捕し、逮捕したときにとたんにわかったというわけではありませんで、これをいろいろ取り調べ、またその裏づけ捜査をやっていく中で、初めてこれが背叛社グループの中の一部の
人間がやったんだということが判明いたしたわけでございます。
背叛社事件では十三名を検挙いたしましたけれ
ども、そのうち共産党
本部に対して火炎びん攻撃をかけた、あるいは共謀共同正犯といったような関係で被疑者としてわれわれが脅迫罪により
東京地検に送致をいたしましたのは、和田をはじめ七名でございます。
そういうような状況でございまして、すでに犯罪を犯し、また、先ほど申しました十月闘争の中で過激な破壊活動をやろうとしておる
人間に金をやって協力を求めた、こういうような関係にはないわけでございます。
警察としては、十月闘争を何とかここで、大きな破壊活動をし、あるいは死傷者が出るというようなことにならないようにいたしたいというように考えた次第でございます。
なおまた、この背叛社グループを特に注目をいたすようになりましたのは、これはアナーキストの他の派閥あるいはまた過激派の学生、こういったものもいろいろアナーキストのことにつきましても知識を持っておる、情報を持っておるというようなことがありまして、そういう他の面から背叛社は注目しなければならぬということをわれわれは感じておりましたし、ことに昨年は、五月一日のメーデーの日にこのアナーキストグループが黒ヘルメット、黒旗を持って代々木の会場で暴れて、自分の反対する
組織のデモ隊に攻撃を加えた、こういうようなこともありましたので、そういう
意味でたいへん注目しておったわけでございます。