○林
委員 私は、
日本共産党を代表してただいま提案されております新
東京国際空港周辺整備のための国の
財政上の
特別措置に関する
法律案に
反対の
討論をいたします。
反対の第一の理由は、本
空港の性格の問題でありますが、それは米軍との
地位協定との
関係で、
安保条約のもとではいつでも
アメリカの公な使用に供さなければならないのは当然でありますが、そのことが軍事的使用に道を開くことになることもまた明らかであります。今日
日本の空が米軍の使用によって奪われており、米軍専用の軍用空域の
関係で東京周辺の空は、この
千葉県の北総方面以外にはあいていないという事情があります。すなわち、日米
地位協定付属文書で
日本の空は
米軍機に最優先権で与えられており、東京周辺の上空はブルー14と呼ばれる米軍専用空路が、南は大島近辺から横須賀、東京、大宮、宇都宮、日光に至る南北を結ぶ幅十マイルの壁として関東平野を従貫しております。これは東京西方一帯にある横田、ジョンソン、立川、厚木などの米軍飛行場群との
関係で設けられた軍用空域で、
民間航空機は立ち入りがほとんど禁止されており、
日本の航空管制の全く及ばないいわゆる空の治外法権地帯といわれております。さらに関東上空はブルー14に沿って通称ヨコタエリアと呼ばれる広大な空域が米軍専用管制区域となっております。また、埼玉県入間川、茨域県霞ケ浦の百里など航空自衛隊基地の軍用空域もこの
地域にあるわけであります。
日本の空の交通は、米軍と自衛隊の軍事優先として使用され、
民間機はその往来の間を縫って飛行しなければならない状態に置かれております。
政府が富里から三里塚に強硬に新
空港を建設しようとしたおもな原因が、このような日米
安保条約と米軍の
地位協定に基づく米軍優先、軍事優先の空域の
関係が一つの要因だったことは明らかであります。その結果は、本
空港もまた明らかに米軍の使用に供せられる軍事的使用に道を開くに至ることは、これらの事情を勘案すれば当然であります。このような性格を持つ
空港設置の具体化のための本
法案にわが党は
反対をするものであります。
反対の第二の理由は、本法による
財政上の
特別措置の具体的
内容についてでありますが、この具体的な措置によりましてもなお膨大な負担が
地元自治体に負わされるという点であります。関連
市町村が周辺整備のために必要とする予算は、参考
資料で概算しただけでも、
特別措置で負担減額を行なってもなお四十九億円にのぼり、これは関連
市町村の歳入の二・七倍という多額の負担になるわけであります。また、
千葉県として必要とする予算は約五十八億円にもなり、この額は
千葉県の四十二年度の普通建設費の年間決算額のほぼ一割に匹敵するものであります。
このような多額の負担は依然として地方
自治体の負担になるものでありまして、これが地方
自治体の
財政を大きく圧迫するものであることは明らかであります。
空港建設に伴う人口増加に対処するためのいわゆる
成田ニュータウンの建設について、
地元の負担率を見ますと、地区内の下水道が八〇%、ごみの焼却場が九三%、公民館が九四%、保育所が八九%、幼稚園が八一%、小学校が七三%、中学校が六九%消防施設が六一%など、
地域住民の生活に欠くことのできない施設はほとんど
地元負担で行なわれることになっております。また
市町村の負担はほぼ四十三億円にのぼっておりますが、この額は実に
成田市の四十二年度歳入の五・三倍にのぼるのであります。しかも本
法案による負担軽減額は、現行法で
市町村が負担しなければならない額に比して、この措置によりましても地区内の下水道ではわずか四・八%の是正、ごみ焼却場で一・一%など、きわめて微々たるものであります。
地域住民の生活に欠くことのできないこれらの施設を建設する
責任を、地方
自治体にその負担能力をはるかに越えて義務づけることになるわけであります。
空港建設によって重大な
被害をこうむる
地域住民の生活と営業に対する
補償がほとんど顧みられないのみか、地方
自治体にこのようなばく大な
財政負担を負わせることについて、わが党としては
反対するのであります。これは本
法案によってもなおこのような数字が出てくるのでありますので、わが党は
反対する第二の理由としてこの点をあげるわけであります。
第三の理由は、
農民の土地と生活、営農を守る上からとうてい承認できないという点であります。予定敷地内に所有地を持つ農家だけでも約八百戸に及んでいる。しかも専門家の計算によりますと、超音速の大型ジェット機の騒音によって全く人の住めなくなる
成田市の遠山
地域を中心とした部落を入れますと、面積は約二千四百三十ヘクタール、千二百四十八世帯、五千五百人の住民が、直接間接立ちのかざるを得ないと推定されておるのであります。さらにこれが、四千メートルと二千五百メートル滑走路の直下になる山武郡の芝山町を含めると、その範囲は五千ヘクタールになろうという計算も出ておるわけでございます。一方、代替地として国が準備している土地の面積は、約五百ヘクタール程度です。しかもこの
問題点は、場所がまだ具体的に、現在の住居との
関係で
決定されておらないということと、小規模土地所有者の営農が保障されていないという点であります。たとえば代替地として考えられている五百ヘクタールのうちの印旛沼を
干拓した部分は、少なくとも三年は営農ができないといわれております。
空港用地となっておる
農民のために準備されているのは特に沼の中心に近い部分であり、
干拓して堆積した土の下のアシなどの腐敗による沈下がひどいことが予想されております。したがって八年から十年ぐらいの間は水田としても使えないのではないかと、
農民の声が出てきております。しかも国の
財政措置との
関係で、所有権は八年間は
農民のものにならないといわれております。代替地の
条件は、水田の場合は印旛沼
干拓地を見ますと、現所有地の一・五倍、一応こういう数字が出ております。しかし畑地の場合は、現在の所有地面積が二
町歩以上の人には七反五畝、二
町歩から五反までの人には約五反、五反未満の人には七畝の比率しか出ておりません。
農民の要求を見ますと、自主流通米等の動きや、都市周辺であることから畑地を多く望んでおるのでありますが、畑地の場合もいま言ったような僅少な比率であるし、所有権はすぐには移らない。また移転
促進のための農地を宅地転用しないまま家が不法に建てられているというような、こういうこともありまして、土地の管理が
農民に実質的に移らない、所有権が移らないということで、
農民の間から非常に大きな批判の声が上がってきているわけであります。
さらに、
成田用水の
計画を見ますと、国や
公団のほうでは、水がなくなるからこれは必要だ、約四千
町歩のかんがい用水として必要だ、こういう説明をしているのでありますが、この水がなくなるという原因をよく調べてみますと、これは第一に、
空港建設に伴って地下水が大量にくみ上げられている。第二は、用地内の御料牧場あとの森林が伐採されている。第三は、用地外の御料牧場あとの森林伐採が行なわれている。第四は、県有林の伐採が行なわれている。これらによる水源の枯渇が、水がなくなる大きな原因になっているようであります。本来これらの森林は水源涵養の保安林としての役割りを果たしていたのでありますが、これがまさに乱伐されるのでありますから、
地域住民にとっては重大な影響が与えられるのであります。ことに営農上重大な影響が与えられるのであります。ところが、この
土地改良事業に対して二十四億にのぼる
地元負担が計上されておるのでありますから、
農民にとってはこれは全く泣きつらにハチという形で、
農民の営農を
財政的負担の上からも大きく圧迫することになるわけでありまして、私
たちはこの
農民の土地と生活と営農を守るという点からいっても、本
空港には賛成できませんし、また、本
空港を設置するための具体的な措置としての本
法案には賛成することができないのであります。
以上の
反対の理由によりまして、私
たちは本
法案に
反対するばかりでなく、三里塚に
国際空港を設置すること自体に根本的に
反対するものであります。
わが党は、一九七〇年六月二十三日を期して
安保条約終了の通告を行なうとともに、その後一年を
経過することによって
安保条約を終了させる。このことは
安保条約の十条に日米両国の合意事項として規定されておるのでありますから、この当然の権限を行使する。それによって米軍を撤退させるとともに、国内における米軍の広大な基地を返還させ、横田、立川、厚木等の広大な
空港を返還させることによって、いわゆる
国際空港問題を
地域住民や
自治体に犠牲を負わせることなく根本的に解決できる、この方途をここに提案をいたしまして、私の
反対討論を終わりといたします。