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林委員 私は、日本共産党を代表して、ただいま
議題となっております
地方交付税法の一部を
改正する
法律案に
反対の討論をいたします。
第一に、これは各
野党委員がすでに触れておる点でありますけれども、このたび、国は、昭和四十三年度に引き続いて、四十四年度においても、
地方交付税六百九十億を借り受け、これを四十五年度に返済する、ただし地方財政の事情によっては、四十六、四十七年度までに分割返済するということについてであります。この点であります。
現在、地方団体の公共施設や事業の水準は、自治省が発表したところによっても、市町村道の改良率は二二・一%、舗装率は実に四・五%という状態であります。また、下水道の普及率は人口集中地区面積の二四%、し尿処理の四〇%は海洋投棄、その他の公営住宅、保育所等の施設は、住民の要求に大きくかけ離れたものであります。たとえば市町村道の改良率、舗装率をともにかりに五〇%まで高めるにしましても、現在の事業量で見ますと、七十年から八十年もかかるという状態であります。このような現状は、いささかも地方財政富裕論が成り立つ余地のないことを明らかに示しております。
それにもかかわらず、今回再び六百九十億を国に貸したという事実は、これがどういう形にしろ、国のいう地方財政好転論を事実上自治大臣が認めたことであります。また、地方団体固有の財源である
地方交付税を、国の都合で減額調整をするというものであって、これは
地方交付税制度の原則を一方的に踏みにじったものであります。しかも
地方交付税法に定められた自治大臣の権限を明らかに踏みはずして取りかわした大蔵大臣との覚書の第一項の中で、別途
地方交付税の年度間調整の
措置を検討すると約束しております。また、特別会計を設けて地方財政の長期的、
計画的な
運営をはかることも必要であるということを自治大臣が本
委員会において答弁しておるところを見ましても、
地方交付税が地方団体固有の財源であるという従来の基本的
立場をくずしておるといって差しつかえないと思います。現行の
地方交付税制度は、言うまでもなく地方団体固有の財源であって、これを自治大臣と大蔵大臣の覚書でこの基本的な
立場をくずすわけにはいかないのであります。このたびの
改正は、この現行の
地方交付税制度を根本的に変質させ、国の財政に従属させる道を一そう大きく切り開いたものといわざるを得ません。これが
反対の第一の理由であります。
第二に、基準財政需要額の算定が、都市化に伴います基盤整備事業や、いわゆる総合農政による農業基盤整備事業等、国の施策にあわせまして重点的に算定されている点であります。また、費目ごとの基準財政需要額について、それを経常的経費と投資的経費の区分を明らかにするということによって、一般財源であるべき
地方交付税に対して、すでに財政
運営の指標を示すものとしての国からのひもつきの役割りを高め、地方団体の財政
運営に対する
政府の干渉を一そう強めようとすることであります。たとえば都市
計画費の単位費用は、昭和四十三年度に比べて四〇・四%の増になっているにもかかわらず、住民の生活に直接影響を与える衛生費はわずか一〇・七%の増にすぎません。しかも、この都市
計画費の投資的経費をさらに見ますと、四十三年度に比べまして投資的経費は五三%の増となっております。このように投資的経費に重点が置かれております。また、その他土木費でも街路事業費、土地区画整
理事業費、流域下水道事業費、農業行政費で農業基盤整備事業、あるいは林野行政費において治山造林事業等、その他都市
計画費等に事業費補正を適用しておるのであります。これらのことを見ますと、すでに港湾、道路などの国の事業
計画による直轄事業、その他補助を伴う事業に対する地方団体の負担分を基準財政需要額の中に算入して事業費補正を行なって、幹線道路等、いわゆる産業基盤の強化という国の施策に合わせて地方財政が
運営されるように仕組まれておるわけであります。そうして、一般財源であるべき
地方交付税も、間接的に支出に条件がつけられ、単独事業を地方
自治体が独自で行なう余裕はほとんどなくなっておるような状態であります。
今回の
改正は、単独事業を伸ばすということが一応言われておりますけれども、事実を見ますと、新都市
計画法、都市再開発法、農地法
改正等による都市過密化に伴う大企業の市場支配の矛盾を解決するための新たな国土開発あるいは都市再開発の要請にこたえるために、地方財政をこれに奉仕する方向へ重点的な方針が置かれておるわけであります。同時に、地方財政
運営の指標としての役割りを高めるといって、経常的経費と投資的経費を区分して、有形、無形の
政府の干渉を強めようとしておるわけであります。この
運営によっては、一般財源としての
地方交付税が事実上、補助金等国庫支出金的な性格をますます濃厚にし、その方向に変質されておると言って過言でないと思います。こういう
意味で、本来地方
自治体の独自の運用にまかされるべき
交付税が、このように国庫支出金的な性格に変質されるという点で、これは地方自治に対する重大な干渉であるという
意味で、私たちは第二にこの
法案に
反対するわけであります。
第三に、土地開発基金でありますが、土地開発基金は、都道府県、指定都市、人口十万人以上の市及び都市周辺の特定の市町村を対象として、その財源は、
地方交付税需要額に算入するものでありますが、これはすでに述べましたとおり、新都市
計画法に基づく土地基金制度に対する財源的な
措置でありまして、これは大企業に奉仕するための街づくりと大規模開発事業に利益をもたらす事業に地方団体を奉仕させようとするものであります。さらに、重要な問題は、地方団体固有の財源であり、一般財源である
地方交付税の使途にあらかじめひもをつけ、
政府の干渉を一段と強めることを示すものであります。このことは、財政の健全化と称して留保資金あるいは
地方公務員労働者の給与改定費、あるいは国鉄納付金二十五億円の減額
措置等々とともに、あらかじめ使途についてひもをつけているということと同じでありまして、これは明らかに国の都市開発、国の都市
計画、これに仕えるための財源的な
措置であるということを、同じく土地開発基金についても言うことができると思います。一連のこれらの事実は、明らかに地方
自治体の固有の財源であるべき
交付税に、重大な中央からの
制限が加えられていると言って差しつかえないと思います。
以上、明らかにしましたように、今回の
地方交付税法改正が、
政府のいう街づくり、地域づくりの政策を
地方交付税の中に組み入れて、地方団体固有の財源に対する
政府の干渉を一そう強めるとともに、まさに地域住民の負担で街づくり、地域づくりを進めようとするものであります。
このことは、四十四年度の地方財政
計画を見れば一そう明らかになります。たとえば、歳出の構成を見ますと、投資的経費が最大の三七%を占めて、金額にして実に二兆四千五百三十億円を計上しております。その内訳を見ますと、国庫補助を伴う公共事業から単独事業に、特に市町村道と下水道事業に重点が置かれております。これは、
一つには地方財政好転説と、いわゆる地域づくりの宣伝で、国庫補助事業の整理と合理化をはかることであり、もう
一つは、高度成長政策による地域経済社会の激しい変化による矛盾によってやらなければならなくなっておる事業を、
政府のひもつきによって
政府干渉を強めながら、市町村の自前でやらせようとするものであります。特別事業費の前年度比五一・六%の伸びはこのことを示しておると思います。したがって、市町村道の改良、舗装にしても、これは幹線道との連絡に重点が置かれ、市町村民が真に要求している独自の道路の改修等が実現する保障は全くないようなわけであります。一方、それに反して人件費と一般行政費とは圧縮され、他方、警察職員は五千名も増員しながら、一般職員のほうを見ますと、定員の合理化で約八千三百名の削減を
計画しております。行政需要増による自然増を差し引いても実質四千五百名の削減を一般職員には行ない、警察官の増員を一方では
計画しておるわけであります。このように、
定年制の法制化がすでに財政の面からもはっきりと出てきておると思うわけであります。
結局、
政府は、いわゆる街づくり、地域づくりを推進するために、地方団体固有の財源である
地方交付税に土地開発基金等のひもをつけ、また、財政
運営の指標を示すと称して投資的経費、経常的経費との区分をつけて、有形無形の
政府干渉を強め、
地方交付税制度を国庫支出金的な性質に変えようとしておるわけであります。このような意図を持った
地方交付税の国庫支出金化をはかる本
法案に対しては、わが党は賛成できない次第であります。
最後に、地方団体の財政自主権を確立し、われわれは
地方交付税が地方団体固有の財源であることを保障するとともに、地方団体が地域住民の要求に即応した行政需要にこたえる財政需要額の適正な算定を自主的に行なうことを基本とする
地方交付税制度の地域住民の要求にこたえ、地方
自治体の固有の財源としての
地方交付税制度の民主化を要求いたしまして、私の
反対討論を終わります。