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只松委員 生産は伸びているし貯蓄はふえているし、そういういろいろなプラスの面、そういう面を見ると、総裁みたいな
考え方もできる。たとえば私はいつも言うのですが、年金生活をしている人がいますね。三百万なら三百万の退職金をもらってずっと十五年間生活できると思ったのが、これだけ
物価が上がっていくと、十三年なり十年なり七、八年しか生きられない。おたくの前の銀行ですか、いまから、ことし大学を卒業した人が六十五歳まで生活費が幾ら要るかというと、三億三千二百万円、こういう数字を発表された。そうやっていまから生産に従事していく大学卒業生はいいわけですけれ
ども、こうやって年金で生活している、あるいは貯金をわずか持って、夫の貯金で未亡人が生活している、こういういわゆる固定された金で生きている人は、もういまの総裁のようなことばでは、インフレじゃありませんとか、
経済は安定しておりますとかなんとか言っても、とてもじゃない、それはおそろしいくらい
貨幣価値というものはなくなってきているわけです。いわば、私はこういう面は昔と違う貧乏人というものができている、端的には老人層の貧乏人というものが新たな社会問題として出てきていると思うのです。きょうは、さっきから言うように論争するわけじゃありませんが、問題のとらえ方によっては私は、単にインフレではありませんというような形で、いまの
経済状態はノーマルであるというふうには言えない。
だから、
皆さん方としては、
日本の高度
経済成長なり
経済の
成長という大きな分野の大局からだけしかごらんにならないと思いますけれ
ども、われわれ
政治をやっていく者から見れば、そういう基本的な問題とともに、やはりこの社会に落ちこぼれたそういう人々、あるいは落ちこぼれようとしておるそういう人々というものをどう救っていくかということが非常な大きな仕事になってくるわけです。平均余命が非常に長くなってまいりまして、
日本のように社会保障制度が非常に立ちおくれておるこういう国において、あなたがたとえばいま貯金に例をとりまして、私は反論しようとは思いませんが、貯金は約二〇%近く
日本の
国民はしておりますね。世界の先進主要
国家に二〇%の貯金をしておる
国民というものはほとんどありませんね。大体四%ないし八%でしょう。なぜこうやって貯金をするか、むしろさせられているかというと、これは低い社会保障制度。それからまた世界で五十五、六歳で定年というばかな国はどこにもない。いわゆる終身雇用制のような形になっておる。
日本では五十五歳で首をばっさばっさ切られる。きょうも
大蔵省の役人の人がみんなあいさつしましたけれ
どもは定年退職五十五ですから、その前にどこかいいところへ行こう、こういうことになっている。いろいろなことを
考えても、そういうところからこの貯蓄というものが
日本では異常に高いわけです。これだけ、逆に貯蓄をさせなければならないのだろうか。貯蓄は特に資本家側にとって多いことがいいにはさまっているでしょう。しかし、これだけ高度の貯金をさせなければならないのだろうかということも、私は為政者として当然問題だ。もっとやはり現実の生活を
国民にエンジョイをさせていくということをすべきではないかと私は思いますね。
皆さん方のように
金融機関で金を吸い上げる、あるいはそれを巨大設備へ投下して、貸していくという面だけから見れば、貯蓄が異常に高いほうがいいでしょう。しかし、現実に豊かな生活をさせていくという
政治の側面から見れば、もう戦後二十何年たっても依然としてこういう二〇%に前後する貯蓄をさせていかなければならない。もっとやはり社会保障制度を充実させていく、あるいは定年制というものを何らかの形で延長していく、こういうことをやはり私は
考えなければならないと思う。
私は
論議をしようと思っているわけじゃありませんけれ
ども、ぜひひとつ
金融なり大きな財界の面というだけではなくて、やはり
日銀総裁というのは政府当局ときわめて密接な
関係にある。いわば
政治的なそういう側面もぜひひとつお
考えの上、いろいろな問題について御配慮をいただきたい。
そういう面で、たとえば日銀の通貨の
増発状況を見てまいりますと、昨年度は対前年比で一八・四%、一昨年度は一七・一%、こういうふうに
経済成長や何かを大きく上回って日銀の通貨というものが増発されております。これもこの前ちょっと言いましたが、言うと、必ずしも日銀の通貨の増発は悪いことじゃないというような
お話になりますけれ
ども、私はこういう面もやはり
皆さん方としてはこれだけ通貨を増発させていいのかどうかですね、いまの
経済成長ぐあいから見て。これも私は
物価高騰の大きな要因になっていると思う。若干
経済の原則から離れたような話になってきましたけれ
ども、
卸売り物価、
小売り物価の上昇に関連してぜひひとつ総裁としても、そういう面を配慮してやはり
金融政策等も行なっていただきたいということをお願いすると同時に、この日銀の通貨の増発についてこれはやむを得ないとおっしゃるのか、やはり少し押えていこう、こういうふうにお
考えですか、どうですか。