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1969-09-10 第61回国会 衆議院 大蔵委員会 第51号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十四年九月十日(水曜日)     午前十時三十六分開議  出席委員    委員長 田中 正巳君    理事 倉成  正君 理事 毛利 松平君    理事 山下 元利君 理事 渡辺美智雄君    理事 只松 祐治君 理事 村山 喜一君       大村 襄治君    河野 洋平君       正示啓次郎君    辻  寛一君       西岡 武夫君    本名  武君       村上信二郎君    山中 貞則君       阿部 助哉君    久保田鶴松君       佐藤觀次郎君    中嶋 英夫君       平林  剛君    広沢 賢一君       広瀬 秀吉君    河村  勝君       広沢 直樹君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 福田 赳夫君  委員外出席者         人事院総裁   佐藤 達夫君         総理府総務副長         官       岩倉 規夫君         経済企画庁調整         局長      赤澤 璋一君         大蔵政務次官  上村千一郎君         大蔵省主計局次         長       橋口  收君         大蔵省主税局長 細見  卓君         大蔵省関税局長 上林 英男君         大蔵省理財局長 岩尾  一君         大蔵省証券局長 志場喜徳郎君         大蔵省銀行局長 青山  俊君         国税庁長官   吉國 二郎君         参  考  人         (日本銀行総         裁)      宇佐美 洵君         専  門  員 抜井 光三君     ――――――――――――― 九月十日  委員田中昭二君辞任につき、その補欠として広  沢直樹君が議長の指名で委員に選任された。     ――――――――――――― 八月五日  一、国の会計に関する件  二、税制に関する件  三、関税に関する件  四、金融に関する件  五、証券取引に関する件  六、外国為替に関する件  七、国有財産に関する件  八、専売事業に関する件  九、印刷事業に関する件  一〇、造幣事業に関する件 の閉会中審査を本委員会に付託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  国の会計に関する件  税制に関する件  金融に関する件      ――――◇―――――
  2. 田中正巳

    田中委員長 これより会議を開きます。  今般新たに就任されました細見主税局長上林関税局長岩尾理財局長志場証券局長青山銀行局長吉國国税庁長官よりそれぞれ発言を求められておりますので、順次これを許します。細見主税局長
  3. 細見卓

    細見説明員 主税局長を拝命いたしました細見でございます。たいへんむずかしい年の税制を担当いたすことになりましたので、はたしてうまくできますかどうか、われながら非常にあぶながっているような次第でございます。  どうぞよろしくお願いいたします。(拍手
  4. 田中正巳

  5. 上林英男

    上林説明員 このたび関税局長を拝命いたしました上林でございます。  従来ともいろいろと御指導いただきましたが、今後ともよろしくお願い申し上げます。(拍手
  6. 田中正巳

  7. 岩尾一

    岩尾説明員 理財局長岩尾でございます。  二年間ほど留守をいたしまして、また御迷惑をおかけいたします。よろしくお願いいたします。(拍手
  8. 田中正巳

  9. 志場喜徳郎

    志場説明員 志場でございます。  証券局関係は、三年前に一年間財務調査官といたしまして経験したことがあるだけでございまして、ずぶのしろうとに近いわけでございますが、今後一生懸命にやりたいと思っておりますので、御指導を得まして誤りなきを期したいと思っております。よろしくお願いいたします。(拍手
  10. 田中正巳

  11. 青山俊

    青山説明員 青山でございます。  理財局長として約一年二カ月、財投その他につきまして非常に皆さま方の御指導にあずかりまして、ありがとうございました。今後銀行局のほうを担当いたしますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。(拍手
  12. 田中正巳

  13. 吉國二郎

    吉國説明員 吉國でございます。  まことに至らぬ者でございますが、五万職員とともにひとつよろしく御指導のほどをお願い申し上げます。  なお、懸案が一つ残っておりますので、そのほうもよろしくお願いいたします。(拍手
  14. 田中正巳

    田中委員長 ちょっと速記をとめて。   〔速記中止
  15. 田中正巳

    田中委員長 速記をつけて。  国の会計税制及び金融に関する件について調査を進めます。  本日は、参考人として日本銀行総裁宇佐美洵君が御出席になることとなっております。  質疑の通告がありますので、順次これを許します。只松祐治君。
  16. 只松祐治

    只松委員 まず、来年度予算について若干お伺いいたしたいと思います。  すでにいろいろ新聞や何かで取りざたされております。おそらく大蔵省側としてはまだ固まっておらないというお答えになろうかと思いますが、現在固まっておる範囲内の、大蔵省の来年度に対する予算編成方針についてお聞かせいただきたいと思います。
  17. 福田赳夫

    福田国務大臣 いま景気先行きが非常に見通し困難な状態にあります。どちらかというと、景気先行き過熱化のおそれがあるというようなことから、九月一日から日本銀行公定歩合引き上げ中心とする金融措置をとったわけであります。これがどういう影響持ちますか、いま予算編成の準備を進めておりますが、その締めくくりはというと、十二月の末になるわけであります。その末の時点で、それらの影響を踏んまえて、来年度の経済見通しがどうなるか、これを慎重に検討し、詰めてみたい、こういうふうに考えております。  もし過熱状態が続くというような見通しでありますれば、予算は当然抑制型の傾向をとらなくちゃならぬと思います。しかし、金融政策効果効を奏しまして、さあ来年も鎮静安定のムードで推移するであろうというような経済見通しになりますれば、これは、予算中立型というか、そういうことで財政の所期の目的を達成するということを進めなければならぬ、かように考えておる段階でありまして、具体的な問題は一切暮れの問題だ、かように御了承願いたいのであります。
  18. 只松祐治

    只松委員 まあ確かに原則的にはそういうことではないかと私も思っておる。ただ明年は、一九七〇年の日米安保を控える政治的な大きな課題を持っております。いずれにいたしましても、正月早々になりますか、あるいは秋になりますか、とにかく選挙というものが行なわれる。どうしてもこれは、政党政治ですし、皆さん方がいま政権をおとりになって予算編成をされるわけです。  そういうものをいろいろ考えますと、いわば大型予算といいますか、おおばんぶるまいにならざるを得ないような心配といいますか、気がするわけです。特に、個人的なことを言っちゃなんですが、福田さんは、そういう場合の、一つ総裁後任のかなめに立たれておるので、どうしても人気取り政策をやらざるを得ないような羽目に追い込まれるのじゃないかと思うのです。そういうことになりますと、ことしの予算でさえも警戒中立型ということを盛んに前宣伝はされました。実際上は一六%近くの前年度に対する大きな予算の伸びを示しました。そういうことも手伝って、警戒中立型なんということが盛んに宣伝されましたけれども、ことしの予算案は、私たちも言いましたが、一般マスコミ等もいわゆる大型予算だということで盛んに攻撃されました。明年はそういういろいろな要素を考えあわせますと、それ以上に危険性があるのではないか。そうすると、いまお話しになりましたように、過熱傾向が出てきておる。公定歩合引き上げその他とられておりますけれども政治的には――経済的な側面からそういう留意すべきといいますか警戒すべき考え方が出てきますけれども政治的な面から見るとどうしてもおおばんぶるまいにならざるを得ない、こういう気がするのです。そこいらの心がまえはどういうふうにお持ちになっておられますか。
  19. 福田赳夫

    福田国務大臣 一部に、選挙気がまえだからあるいは来年は安保だから、自由民主党の政府はおおばんぶるまいをするのじゃないかというような見方もあるようであります。しかし、これは全く逆であります。私は、経済財政の見地ばかりじゃありません、広く政治という角度から考えまして、今後長い目の日本政治をどうするかという基盤といたしまして、経済安定成長、これが最大の課題であるというふうに考えておるのであります。  つまり、今日のように成長の高さはそう高くなくてもよろしい、またむしろもう少し控え目のほうがよろしい、しかし落ち込みのない経済成長、これこそが日本の国益であり、また国民のためであり、またひいてはわが国将来の長きにわたってのためである、こういうふうに考えておるわけであります。選挙がどうであろう、あるいは一九七〇年がどうなるであろう、そういう配慮は一切いたさない、厳粛な気持ち国家予算、これが国家国民のためにどう作用するか、そういう態度で取り組んでいきたい、かように考えております。
  20. 只松祐治

    只松委員 まことにごもっともな話で、ぜひそういう態度予算編成に当たっていただきたいと思います。あとで日銀総裁がお見えになりますから、そちらで若干そういう経済問題の論議を行ないたいと思います。  卸売り物価をとりましても小売り物価をとりましても、あるいは通貨の増発状況その他いろいろな面をとりましても、私が前から言っておりますように、インフレ的な傾向というものがきわめて強いわけです。こういう状態がずっと日本経済に続いていくとするならば、これは日本経済の将来にとってはゆゆしい問題ができやしないか。いま言われましたように、どの程度安定成長が望ましいか。国家によっていろいろ異なるでしょうけれども、それこそどこを目標にして福田大蔵大臣安定成長を言っておられるかわりませんけれども西ドイツあたりをとりますと、五、六%の経済成長率、したがって物価というものはあまり上がっていかない、変動していかない、こういういわゆるほんとうの意味安定成長を行なっているのですね。これは第一次大戦後、西ドイツがインフレというものに対してきわめて警戒心が強い。こういうことなり何なりその国によっていろいろ状況が違う。ひとつぜひそういう意味安定成長を行なっていただきたいと思います。  私は、安定成長というのもある意味では一〇%程度安定成長は高過ぎる。これは別な機会に論議を行ないたいと思いますけれども、やはり日本資源あるいはもっと大きくは世界の資源、そういうものやいろいろなものを見て、あるいは諸外国経済成長状況、そういうものを見ていった場合に、一〇%をこした成長というのはそれに安定と名をつけていいかどうか、私はきわめて疑問だと思います。そういう意味で一〇%以上の安定成長というのは私は問題がありはしないかと思う。まあどの程度安定成長大蔵大臣としてはお持ちになっているのか。  それから、宇佐美総裁もお見えになりましたから先を急ぎますが、予算規模をたとえば七兆八千億ということがもうほとんどの新聞にずっと出ておりますね。したがいまして、さっきからおっしゃられております、そういうことは関係なく厳粛な気持ちでやるということでございますが、そうするとこの七兆八千億というようなものは大蔵省事務当局並びにそういうところから出たのではない、まだそういうものは全然ないというのか、それとも大体そういうものに近いものだ、こういうお考えでございますか。
  21. 福田赳夫

    福田国務大臣 来年度の予算規模につきましては、まだ大蔵省といたしましては、事務段階におきましてもまた私の段階におきましても、何らの具体的な結論を得ておるわけではございません。つまり、九月期の企業決算というもの、これを見ないと一つはいかぬわけです。その他経済の動き、暮れの時点においてどういうふうになってくるだろうか。先ほども申し上げましたが、暮れの時点に立って、来年の経済過熱ぎみというようなことでありますれば、財政規模押えぎみにしなければならぬと考えます。また、来年は安定しそうだというようなことであれば押えぎみ考え方をとる必要はない。さらに、そういうことはなかなかないと思いますけれども、観念的にはどうも来年の経済デフレギャップだというようなことになりますれば、これは財政にそのデフレギャップを埋めるための任務も負わせなければならぬというように考えますが、ことしの十二月の時点昭和十五年度における経済推移いかん、また、その推移というものが想定できますると税収見積もりというものが出てくるわけであります。その税収見積もりに対しまして、さあ国債発行額を一体どういうふうに見るか、あるいは減税をどうするか、そういうようなことから今度は歳出の規模というものがきまってくるわけであります。  そういういろいろな複雑な諸条件を一つ一つ解決して、初めて財政規模がきまってくるわけであります。新聞にいかように出ておるか私存じませんけれども、いまそういう数字を大蔵省として予定しておるということは今日のこの時点ではないのであります。
  22. 只松祐治

    只松委員 まあ予算規模がきまらなければその財源についてはなかなかきまらないわけですが、しかし、当然にいろいろ、自民党の内部でも減税構想あるいは新税構想というものが出ております。昨年来私たちは、一般的な減税はもちろんですが、サラリーマン減税について強く要望をしてまいりまして、今年度久しぶりに税率緩和が行なわれた。もちろん来年も引き続いて税率緩和が行なわれるものと期待しております。  その場合、そのことをちょっと話しておきますと、サラリーマン減税税率緩和の場合、一律にするか、五百万円以下にするか、三百万円以下にするか、そのウエートをどう置くか、なかなか大事なところだと思います。私たちとしては、ぜひ低所得者層中心税率緩和というものをはかっていただきたい。それから一番若い諸君が、去年あたりまでは中学はまあまあで、課税最低限引き上げられましても、高校卒独身者に対してかかってきている。いまのように中卒でもたいへん初任給がいいと、中学を卒業しても税金がかかるような状況になってきていますね。こういうことを考えますと、当然納税人口もふえてきますから、大学を出た人はやむを得ないとしても、少なくとも中学高等学校ぐらいの者は、出て一、二年は税金をかけない、こういうことにすべきじゃないか。  これは当然にうらはらをなします租税特別措置、それから田中さんのおっしゃっておる自動車税、これは直接所得税との関係ではありませんけれども、そういう新税構想というものが、前の水田さんの場合には、売り上げ税というようなことでときどきにおわされておったわけですが、何らかの形の税体系というものを考えなければならない。田中さんは反対ですが、たとえば法人税率がいまわりあいに大会社は下がっておりますから、大会社法人税率を上げるとか、何らかの形で私は税体系を変えていかなければならぬだろうと思うのですが、そういう点についてのお考えをひとつ聞かしていただきたい。
  23. 福田赳夫

    福田国務大臣 来年度の租税体系につきましては、これは国会皆さんからも御意見を承ってきております。それから税制調査会意見も聞かなければならぬ、こういうふうに考えておりますが、これは今月からいよいよ御審議をお願いをする、こういう段階に入るわけですが、それらの皆さんの御意見を結集いたしまして、来年度の税制改正はどうあるべきかという大蔵省としての見解をまとめる、こういう段階になります。  ここで申し上げ得ることは、私は、来年度の税制改正におきましては、課税最低限引き上げ問題、つまり百万円課税最低限、これはぜひやっていきたい、こういうふうに考えておるのであります。それからなお財源の事情、これが許しますれば、長期税制答申、この答申の線に沿った中堅所得者階層以下の方々に対する税率の引き下げ、これをひとつやっていってみたい、かように考えておるのであります。その他いろいろの構想を言う人がありますけれども、それらは広く国民意見の動向というものをお聞きをいたしまして、そして私ども考え方を固めていきたい、かような段階でございます。
  24. 只松祐治

    只松委員 新規税制については、なかなか税調答申しないときですからむずかしいでしょうが、しかし、税調が出すにいたしましても、おおよそのサゼスチョンといいますか、大蔵省側考えがわからないと、税調も出しにくいだろうと思う、特に新規課税の場合は。そういう点については、全然白紙でございますか、それとも若干自動車税なり何なり、そういうものについてお考えをお持ちでございますか、どうですか。
  25. 福田赳夫

    福田国務大臣 全然白紙というわけはないのです。御意見を求められれば、こんな気持ちだということは申し上げたいと思っておりますが、その申し上げたいという気持ち、それをまだ固めておりません。いま固めつつある、こういう段階だというふうに御了承願います。(「それでいいよ」と呼ぶ者あり)
  26. 只松祐治

    只松委員 それでいいという声もありますが、固めつつあるということでありまして、それは裏を返せば、新規税制について考慮しておる、こういうふうに――自動車税一つ私はあげましたけれども、ほかにも多少あります。そういう面について、サラリーマン減税その他と関連しつつ来年は税体系そのものについて、租税特別措置利子配当の問題からいろいろ税制措置を大幅に手直しするのか、そのままでいくのか、どうするのか、これと取り組まなければならない問題がありますので、いずれにしても何らかの形でそういうものを構想しなければならぬだろう。したがって、自動車税等を含んだ形において構想をしておる、こういうふうに理解していいわけですね。
  27. 福田赳夫

    福田国務大臣 自動車税自動車税と、こう言われますが、これまた私ども具体的構想として頭にはありません。つまり、そういう問題はこれはもう年末、十二月の時点結論を得る問題だというふうに考えております。  あれはどういう考え方かというと、社会資本、つまり交通投資、これを大幅に広げる必要があるじゃないか、そうすると、どうも財政状況から見ると財源が不足する、そこで新税として車検税というようなものを考えたらどうか、かような構想のようでありますが、しかし、公共投資をそんなに広げ得るような昭和四十五年度の経済情勢であるかどうかということをまず判断しなければならぬわけであります。どうも過熱ぎみであるというときに、公共投資をそんなにやるということになれば、これはさらにそれに拍車をかけるというようなことになる、それではいかぬ、こういうのが只松さんのお考えかと思いますが、同時に、それではこれだけの交通投資をふやさなければならぬという際に、さあ新税を起こす必要があるかどうかという問題もあるのです。つまり税収見通し、こういうようなことから、それくらいの金は既存の税収をもってまかない得るということがないとも限らぬわけであります。そういうようなことを総合的に勘案いたしまして、十二月の時点できめる、こういう問題かと思うのです。私はああいう考え方一つ考え方だと思います。思いますけれども、いまここで、それに対して結論めいた考え方を打ち出すということは、さような状況ではできない、かように御了承願います。
  28. 只松祐治

    只松委員 ただ田中さんの構想自動車税は、目的税みたいな形で出されておりますが、それは酒税なりあるいはたばこ専売益金なり、あるいはいろいろな物品税は、それぞれ間接税としてとらえておりますが、それがすべて目的税であるかというと、そうではありませんね。ですから、私はあれも必ずしも目的税としてとらえないで、一般税制のうちの構想としてとらえれば、また別な面のおもしろさといいますか、意義があると思うんですよ。いま地方自治体で一番困っているのは、道路の新設、舗装ですね。特に埼玉県あたりのように、どんどん人口が流入してきているようなところは、いなか道にどんどん家が建っていく。そうすると先に家が建ってしまう。建ってしまうと、今度は早く道路をつくらなければいかぬ、舗装しなければけしからぬということで、市や県に押しかけてくる、こういう形になりまして、とにかくいままではたんぼ道だったのに砂利を入れなければならぬというようなことでたいへんですね。遠くになればなるほど、わりとマイカーを持っている人が多いわけですよ。そういうところで、マイカーどろんこ道を行くわけにはいかないから砂利を入れたり舗装をする。こういうことになりまして、予想以上にそういう近郊都市というのは、そういう面に費用がかかっておりますね。そういう一般行政面からも考えられ得る問題だと私は思います。これはいい悪いは別ですよ。だから、きょうは時間もありませんから、別な税制の問題のときにそういう問題を論議したいと思いますが、そういうようないろいろな問題を含んで考えていく。それでなければ、私はサラリーマン減税源泉所得減税はなかなか容易でないと思う、常に皆さん方財源がとおっしゃるから。ただ自動車税や何かの新税をつくる場合に、目的税の面からだけ考えた場合には、大幅なサラリーマン減税というものは容易でない。だから、やはりそういう新しい観点からそういうものを考えた場合には、少なくとも税調長期答申程度減税は、今年あたりもできるし、またしなければならぬ。しかし、そういうことを考えないで、税調が行なった長期答申のものを全部完全実施するということはなかなか容易でないだろう、財源の面から。そこらをいろいろな角度からぜひお考えをいただきたい。  それから、当然これとうらはらをなすのは公債の問題だろうと思いますけれども、これも仮定の問題でありますが、現在のような経済情勢推移していくということならば、前国会でたびたびおっしゃっておりましたが、国債は全然なくするとは考えないけれども順次減らしていくということでございましたが、来年もさらに減らしていく。通常の国家の場合は五%を切っておりますからね、予算の中に占める国債の比率は。本年度でも少ないといってもまだ七%をこしております。だから、やはり諸外国と同じようにあるいはそれ以下に公債を減らしていくという福田さんの理論を遂行されますか、いかがですか。
  29. 福田赳夫

    福田国務大臣 来年度予算に関連して、公債をこの際増発して大いに社会資本投資を行なうべし、こういう議論をなす人もありますが、私は、公債を出してまで社会資本の充実をはかる、それを許すような経済情勢にはなかなかなるまい、つまり、財政から景気の刺激を必要とするというような事態にはなかなかならぬじゃないか、こういうふうに思います。いまこの時点では、来年度予算におきましては、公債は、従来のように公債発行漸減方針、これを進めていくほかはなかろう、かように考えております。
  30. 只松祐治

    只松委員 最後に、せっかく日銀総裁見えになっておりますからこの際――きのう商工委員会で、私たち委員会のいろいろな都合もあったのですが、大蔵委員会のほうへはおいでをしばらくいただかぬで、商工委員会のほうに先においでになって、どうも日銀総裁としては多少筋違いじゃないかと思います。そこでデノミお話などが出ておりますが、大蔵大臣としてはデノミに対してどういうお考えをお持ちでございますか。私よく読んでおりませんが、日銀総裁は全面的に賛成されたのかどうか知りませんが、賛成というようなお考えだが、水田さんだったかだれかも多少考えていいというようなお話が前にあったというように聞いておりますが、福田さんとしてはまだ態度を表明されたことがないようであります。これだけ物価騰勢が続いていくし、貨幣価値が相対的に下落してくる、こういうことになりますと、私たちも、ことしとか来年とかいうことは別といたしまして、近い将来にやはり考えなければならないのじゃないかという気もいたします。大蔵大臣のお考えを聞いておきたいと思います。
  31. 福田赳夫

    福田国務大臣 ちょっといまの御質問の趣旨を明らかにしていただきたいのですが、物価が上がって貨幣価値が下落したからデノミをやるか、こう言うと、それはデノミじゃないのです。デバリュエーションなんです。おそらく只松さんはそのことを言っておるのではなくて、貨幣価値は安定している、しかし一ドルが三百六十円というようなこの比率、これは勘定がやっかいだとかなんとかだからもう少し円とドルとの比率を接着さしたらどうだろうか、こういうことだろうと承知してお答え申し上げます。  そういう御質問でありますれば、これは長い先の将来のことになると私は思いますが、物価が安定し、日本経済の基礎が確立いたしまして、そして通貨のいろいろな処置を行ないましても、もう日本経済に対していささかの動揺も不安も与えない、こういう事態になりますればぜひデノミネーションはやらなければならぬ。やり方につきましては、百分の一にいたしまして、そして一ドルが三円六十銭というような行き方もありますし、あるいは一ドルを一円というふうに直す方法もありましょうし、いろいろありましょうが、ともかく今日のような三百六十円が一ドルであるというような形は、わが国の通貨の威信といたしましても、また計算上の近代化、合理化というような見地からいたしましてもこれは適当ではない、こういうふうに考えておるのであります。  ただ、いま現在、また近い将来そういうことをやるか、こういうことになりますと、私はそういう状態じゃないと思うのです。物価が上昇傾向にある、そのときデノミネーションが行なわれると、これは物価に対してどういう影響を与えるか、これはちょっとはかり知るべからざるものがある。そういうようなものを考えまするときに、私はこれは慎重たらざるを得ない、こういうふうに考えておるわけであります。  それから、いまちょっと触れましたが、貨幣価値日本で下落したということに触れましたが、対外価値、対内価値とあるわけでありますが、対外価値につきましては下落どころじゃないのです。いま日本の円は非常に強い立場に立っておるわけであります。諸外国の一部におきましては円のデバリュエーションじゃない、切り上げをすべしというような意見さえ出てくるような状態でありまして、デバリュエーションのごときは全然考えておらぬし、考え得られざることである、またそうしなければならぬ、かように考えております。
  32. 只松祐治

    只松委員 原則論としては賛成だということです。これは日銀総裁にもお聞きしたいと思いますが、いつごろどうかという、これはなかなか重要枢機にわたる問題もあるものでありますからちょっとお答えしがたいと思いますが、大まかな考え方として、私たちがそういうものを考える場合、いつ投資が一巡したと見るのか、これもなかなかむずかしいでしょうが、これも大まかな意味で設備投資というものが大体山を越したといいますか、まあ企業によってどこが山を越したか越さないかということはいろいろありますが、大体日本の設備投資というものは一巡をするような形が見えてきた。これが五年先になるか七年先になるか十年先になるか、経済成長その他できまってくると思いますが、そういう何といいますか一段落と言ってはちょっと表現があれですが、そういうときにデノミを行なう、こういうことが常識的に考えられはしないか、こう一般に言われていますが、そういうふうに理解していいですか。それとも、特別な経済情勢ができた、国際的な何か特別の情勢ができた、こういうときにデノミを行なう、こういうふうなことになりますか、どうです。ただ行なう行なうと言っても、一般の人にはかえって不安まで与えないでしょうけれどもデノミを行なうのはどういう形だと多少私は明らかにされたほうがいいのじゃないかと思います、やるとするならば。
  33. 福田赳夫

    福田国務大臣 これは内外の環境ということだろうと思いますが、国際経済も安定しておらなければならぬ。それから国内におきましても経済全体の安定ということであろうと思いますが、かなめは何といっても物価でございます。物価が、これがまあ安定基調になったというときが、私は、デノミを行ない得る最大の条件が整った時期だ、かように見ておるわけであります。
  34. 只松祐治

    只松委員 それじゃ日銀総裁のほうにお聞きしたいと思います。  公定歩合引き上げがありましたが、ほんとうは事前に先月おいでをいただいて、大体そういうことではないかと思って、およそこういう問題を聞こうと思ったが、あと先になりましたから、いまさら原因とかなんとかいうのは多少おかしくなりますけれども公定歩合引き上げられました主要な要因、あるいはもう行なわれたのですから若干のそういう経過等が出てきておると思いますから、経過あるいは効果というものをどういうふうにお考えになりますか、ひとつお聞かせをいただきたい。
  35. 宇佐美洵

    宇佐美参考人 私どもは、何といいましても経済を安定的に成長させるという立場をとりまして、金融政策を行なっておるつもりでございますが、ことしになりましてから日本経済をしさいに検討いたしますと、やはりいろいろな面において、幸いにも国際収支が黒字基調を引き続き続けておりますけれども、しかし、これとても先行きについてはいろいろな問題があるわけです。しかし、当面はこのほうはよろしいのでございますが、国内の情勢はいろいろの点においてやはり行き過ぎが出ているのではないか、かように考えた次第でございます。  物価の面、ことに卸売り物価もいままでは比較的安定しておりましたが、ことしになりましてから毎月上昇を続けておる、あるいは生産、あるいは出荷、あるいは設備投資などをしさいに見ますると、今後この調子を続けますと非常に行き過ぎになるのではないかというような懸念も出てまいります。また、われわれの直接関係いたしております銀行の貸し出し等もなかなか勢いが強くなってきておりますし、また、日銀券なども御承知のように毎月のように前年度比高い増勢を続けておる。こういうような情勢が反映いたしまして、労働需給の問題もございますが、最近どうも企業マインドもだんだん強くなって、設備投資の計画等を見ましても、いままでは慎重でございましたが、毎月のようにやや拡大の趨勢を示している向きもあるというようなことでございますので、今後のことを考えまして未然にこれを防止するというようなことがいま必要ではないか、かように考えまして公定歩合引き上げ、また準備率も引き上げたような次第でございます。
  36. 只松祐治

    只松委員 引き上げられてまだわずかしかたちませんが、そういうわずかの間ながら、あなたの感触といいますか、まだその程度でしょうが、そういうものを通じて――六・二五%、それから多少ほかにも手を打たれたわけでございますが、いま打たれた対策で十分である、こういうふうにお考えですか。それとも、事と次第によってはまた新たな対策も考えなければならぬ、こういうようにお考えですか。
  37. 宇佐美洵

    宇佐美参考人 ただいま申し上げましたとおり、今回の措置は、将来を考えまして、いまの勢いを未然に抑制しておきたいということでございます。したがって、この程度で十分だろうと考えております。事と次第ではということでございますが、事と次第ではまた何かあるかもしれませんけれども、現在私どもが政策を変更いたしました趣旨は未然に防ごうということでございまして、いま急に景気を不景気にしたいというような意思は毛頭ございませんで、様子を見ていきたいと思いますが、現在においては、たとえば最近銀行の貸し出しにつきましてポジション指導ということをやっておりますが、これもだんだん銀行に浸透してまいりまして、そういう点から見ましてもこの程度のことできき目があると私は考えております。
  38. 只松祐治

    只松委員 過去の、特に近ごろの過去の例を見ますと、農協とか生保とかなんとか、要するに日銀あるいは都市銀行の影響の及ばない、逆にいえば都市銀行の占めてくる金融界における比率といものは年々低下をしてきておりますね。こういう点や何か考えて、前にも日銀の公定歩合引き上げたからといって、そう全般にあなたたちが思われているような経済的な影響が来ない、こういうことが言われたわけなんですが、そういう点については一つも心配しておらない、今度の打った手で十分だというふうにお考えですか。それとも、そういう日銀の及ばない、公定歩合が直接他の利子の引き上げその他に及んでいかない点についても、今度は幾らか配慮されているような気もいたしますけれども、そういう点は心配要らないということでございますか。
  39. 宇佐美洵

    宇佐美参考人 四十二年の場合は、御承知のように国際収支が非常に心配でございましたので、金融を引き締めたわけでございます。そのときしり抜けではないかというような御批判もございました。しかし、あの引き締めをやりました目的が国際収支の改善にあったわけでございます。これは当時のことをいまさら申し上げる必要もないのですが、その目的を達しましたので、さらにいわゆるしり抜けといわれている批判に対しても、私どもはあの政策で目的を達した、かように考えておる次第でございます。  今回は前回と違いまして、いろいろ複雑な目的がございますが、何にいたしましても、景気をあまり過熱にすると国際情勢の変化あるいは国内のいろいろな変化に対処することが一そうむずかしくなってまいりますので、これを激しい手段をとらずにいくようにという配慮からいたしたわけでございます。あの当時とは事情が変わっておるわけでございます。
  40. 只松祐治

    只松委員 こういう金融引き締めが行なわれる場合に、とかくその一番しわ寄せというのがすぐもろに中小企業に参ります。今度の場合にも中小企業に配慮してあるとかおっしゃいます。よく私たちが言うとそう口ではおっしゃいますけれども、なかなか具体的には中小企業にどう対策をするか、具体策としてはいままでもあまり見られないわけであります。もうすでに私たちが見聞きしている段階でも、中小企業の金融機関等がわりあいに引き締めておりますね。資金力が弱いだけ、引き締められたら一番先に来るわけですが、そういう点について、むしろこういう高度経済成長をあおったり設備投資をあおったりしているのは大企業で、中小企業は知れたものだと思います。ところが、引き締めの影響を受けるのは中小企業だ、こういう形になるわけですが、何か特別に中小企業に対してそういう措置をおとりになりましたか。また、今後とられるという御意思があるかどうか。
  41. 宇佐美洵

    宇佐美参考人 中小企業の問題につきましては、私どもも十分気を使っておるつもりでございますが、最近の中小企業につきましては、いままでの非常な困難なところを乗り越えてこられたわけでございますので、中小企業自体もかなりよくなっておるのじゃないかと思っております。また、金融機関のほうも中小企業問題については非常に重要視しております。全体の金融機関の貸し出しの率も、若干でございますが、だんだん中小企業向けの金融はふえておると思うのであります。さらに最近はいわゆる大企業、親会社と子会社の関係から申しますと、大企業のほうも中小企業の大事なことをかなり認識しておりますので、むろん全部が全部とはまだ申せませんけれども、かなり重要視して、中小企業の力を借りなければなかなか困難だという点を認識して、なるべく子会社のほうにしわを寄せないような配慮も相当されておるように聞くのでございます。  しかし、実際御承知のように、中小企業の数は非常に多いのでございますので、全体がことごとくそういうふうになったとは申しませんけれども、そういう点につきましては、銀行に対しましてもよく注意いたしておりますし、また企業に対してもいろいろ注意しておるつもりでございます。それらのことにつきましていろいろの不都合が起きた場合にはむろんでございますが、十分配慮してまいるつもりでございます。
  42. 只松祐治

    只松委員 きょうは討論じゃなくて、参考人としておいでいただきまして、御意見を拝聴するのが中心でございますから討論いたしません。なかなか総裁がおっしゃるような状況になくて、中小企業金融は逼迫しておるようでございます。ぜひひとつそういう点に対する特別の御配慮をしていただきたい。  それから、こういうふうに物価が異常に上がってきております。先月末あたりですと、卸売りで三%をこす、あるいは小売りは先月は七・一%ですか、東京では七・八尾、こういうふうな異常な小売り物価、消費者物価の高騰、こういうものをいろいろ私たち考えますと、私はこの前も大蔵大臣とはインフレ論争をちょっとやったわけですが、私がインフレとは何ぞやということで、通貨の面から見るか、こういう物価の面から見るか、人によっていろいろ論があるようでございます。しかし、アメリカあたりでは三、四%消費者物価が上がると、インフレの懸念がある、懸念があるということで、むしろ政府のほうが警告をしてそういうものを押えにかかっておる、こういう状況ですね。佐藤総理は、高度経済成長が続けば五%くらいの物価上昇はやむを得ない、この言われた内容についてはいろいろとられて意見が分かれておりますけれども、それに近いことをおっしゃった。私は、日本はこれだけ物価が上がっておれば相当のインフレだ、こういうふうに思っております。  日銀総裁は、インフレ論争はけっこうでございますが、現在のこの日本経済情勢というものをそういうインフレ的な要素が強い、警戒すべきだ、こういうふうにお思いでありますか。それとも、こういう高度経済成長のもとでは、この程度物価の上昇なりこういう一般経済情勢はやむを得ない、こういうふうにお考えでございますか。
  43. 宇佐美洵

    宇佐美参考人 私は、現在日本がインフレだとは考えておりません。現に貯蓄も伸びておりますし、あるいはまた換物運動もないように思うのであります。しかし、いまのような状態を放任しておきますと、インフレ的傾向がだんだんふえてくるんじゃないかということと、もう一つは、アメリカの例を申し上げるまでもないんですが、インフレ的マインドが出てきますと、これを直すのに、財政金融両方面からやりますけれども、なかなか直しにくいものだ。早くその芽を退治しておかないといけないのではないかという基本的な考えを持っておる。いまインフレとは決して思っておりませんけれども、しかし、こういう傾向が将来助長されてまいりますと、その危険もある。ですから、今度の金融措置も、そういう基本的の考えがむろんあったわけであります。
  44. 只松祐治

    只松委員 生産は伸びているし貯蓄はふえているし、そういういろいろなプラスの面、そういう面を見ると、総裁みたいな考え方もできる。たとえば私はいつも言うのですが、年金生活をしている人がいますね。三百万なら三百万の退職金をもらってずっと十五年間生活できると思ったのが、これだけ物価が上がっていくと、十三年なり十年なり七、八年しか生きられない。おたくの前の銀行ですか、いまから、ことし大学を卒業した人が六十五歳まで生活費が幾ら要るかというと、三億三千二百万円、こういう数字を発表された。そうやっていまから生産に従事していく大学卒業生はいいわけですけれども、こうやって年金で生活している、あるいは貯金をわずか持って、夫の貯金で未亡人が生活している、こういういわゆる固定された金で生きている人は、もういまの総裁のようなことばでは、インフレじゃありませんとか、経済は安定しておりますとかなんとか言っても、とてもじゃない、それはおそろしいくらい貨幣価値というものはなくなってきているわけです。いわば、私はこういう面は昔と違う貧乏人というものができている、端的には老人層の貧乏人というものが新たな社会問題として出てきていると思うのです。きょうは、さっきから言うように論争するわけじゃありませんが、問題のとらえ方によっては私は、単にインフレではありませんというような形で、いまの経済状態はノーマルであるというふうには言えない。  だから、皆さん方としては、日本の高度経済成長なり経済成長という大きな分野の大局からだけしかごらんにならないと思いますけれども、われわれ政治をやっていく者から見れば、そういう基本的な問題とともに、やはりこの社会に落ちこぼれたそういう人々、あるいは落ちこぼれようとしておるそういう人々というものをどう救っていくかということが非常な大きな仕事になってくるわけです。平均余命が非常に長くなってまいりまして、日本のように社会保障制度が非常に立ちおくれておるこういう国において、あなたがたとえばいま貯金に例をとりまして、私は反論しようとは思いませんが、貯金は約二〇%近く日本国民はしておりますね。世界の先進主要国家に二〇%の貯金をしておる国民というものはほとんどありませんね。大体四%ないし八%でしょう。なぜこうやって貯金をするか、むしろさせられているかというと、これは低い社会保障制度。それからまた世界で五十五、六歳で定年というばかな国はどこにもない。いわゆる終身雇用制のような形になっておる。日本では五十五歳で首をばっさばっさ切られる。きょうも大蔵省の役人の人がみんなあいさつしましたけれどもは定年退職五十五ですから、その前にどこかいいところへ行こう、こういうことになっている。いろいろなことを考えても、そういうところからこの貯蓄というものが日本では異常に高いわけです。これだけ、逆に貯蓄をさせなければならないのだろうか。貯蓄は特に資本家側にとって多いことがいいにはさまっているでしょう。しかし、これだけ高度の貯金をさせなければならないのだろうかということも、私は為政者として当然問題だ。もっとやはり現実の生活を国民にエンジョイをさせていくということをすべきではないかと私は思いますね。皆さん方のように金融機関で金を吸い上げる、あるいはそれを巨大設備へ投下して、貸していくという面だけから見れば、貯蓄が異常に高いほうがいいでしょう。しかし、現実に豊かな生活をさせていくという政治の側面から見れば、もう戦後二十何年たっても依然としてこういう二〇%に前後する貯蓄をさせていかなければならない。もっとやはり社会保障制度を充実させていく、あるいは定年制というものを何らかの形で延長していく、こういうことをやはり私は考えなければならないと思う。  私は論議をしようと思っているわけじゃありませんけれども、ぜひひとつ金融なり大きな財界の面というだけではなくて、やはり日銀総裁というのは政府当局ときわめて密接な関係にある。いわば政治的なそういう側面もぜひひとつお考えの上、いろいろな問題について御配慮をいただきたい。  そういう面で、たとえば日銀の通貨の増発状況を見てまいりますと、昨年度は対前年比で一八・四%、一昨年度は一七・一%、こういうふうに経済成長や何かを大きく上回って日銀の通貨というものが増発されております。これもこの前ちょっと言いましたが、言うと、必ずしも日銀の通貨の増発は悪いことじゃないというようなお話になりますけれども、私はこういう面もやはり皆さん方としてはこれだけ通貨を増発させていいのかどうかですね、いまの経済成長ぐあいから見て。これも私は物価高騰の大きな要因になっていると思う。若干経済の原則から離れたような話になってきましたけれども卸売り物価小売り物価の上昇に関連してぜひひとつ総裁としても、そういう面を配慮してやはり金融政策等も行なっていただきたいということをお願いすると同時に、この日銀の通貨の増発についてこれはやむを得ないとおっしゃるのか、やはり少し押えていこう、こういうふうにお考えですか、どうですか。
  45. 宇佐美洵

    宇佐美参考人 いまがインフレかという御質問に対して、いま私はインフレとは思っておりませんけれども、いまるるおっしゃいました点を考えまして今度の措置をとったわけでございます。  日銀券のお話がございましたが、これはやはり日本経済が非常に進んでいくという点でふえておるのでございますけれども、そのふえ方が非常に激しいという点も心配して、あなたがいまおっしゃったとおりの心配をいたしまして今度の措置をとったつもりでございます。決してそういう点を軽視しておりません。また政府におかれても、私が知る限りにおきましては、やはり物価の問題を非常に心配しておるというふうに伺っております。まあ何とか今後、今度の措置あるいは政府のおとりになっている、またこれからおとりになるのが効果をあげるようにひとつ力を入れていかなければならぬ、かように思っておるのであります。あなたがいまおっしゃった注意はありがたく承りましたが、私もそういうつもりでやっております。そのことだけをひとつ申し上げておきます。
  46. 只松祐治

    只松委員 次に、軍需産業問題について少し御意見をお聞かせいただきたいと思います。  特に総裁が前おいでになりました三菱系が一番軍需産業問題に御熱心なようですね。いろいろな会長や何かもやっているし、また受注率も非常に高いわけです。いまの日本は、御承知のようにずっと敗戦以来平和憲法を守りまして、自衛隊といいますように軍隊とまだ名がつけられないというような形で、したがって、日本の軍需産業というものはまだまだ日本国民全体の経済の中ではウエートが低いわけです。しかし、これを予算面から見ましてももっと上げていこう、あるいは国民総生産高に対しても最低一%以上あるいは二%にしなければならないとか、いろいろな議論が近ごろあちらこちらに出てきておるようでございます。これ私は、ある意味ではいまの日本で一番危険なことだと思います。沖繩の返還と関連して日本の自主防衛論が強まってきて、そして再軍備構想が打ち立てられる。そして日本の自主防衛じゃなくて自主軍需産業というものが日本に興ってきた場合、これはいままでの、終戦後ずっとこうやってきた経済の発展というものは、私は一口で言うならば平和憲法にささえられて日本が平和産業を中心にこの経済をささえ発展させてきた、こういうところに一番大きな原因があるんじゃないか。これが一たび軍需産業の方向にそのウエートが向かっていきますと、これは私がこういうところで時間がないのに申し上げるまでもなく、軍需産業というものは一ぺんすべり出しますと、これはほかの者が買ってくれるわけじゃありませんから、政府、政界に圧力を加えまして、そしてずっと雪だるま式に太っていきます。これは韓国やアメリカの例を見まるまでもなく、あるいは日本の過去の歴史を見るまでもなくそのとおりですね。だから何としても私たちは、いまのこの高度経済成長を続けていっておる日本経済を、いま言われますように安定成長を続けさせていくと同時に、その基本になるものはやはり平和経済を続けさせていく。このことを私たちはしっかり踏まえておかないと、これが自主防衛や日本の独立に名をかりて軍需産業にウエートを置いたような形になっていきますと、日本は取り返しのつかないことになる、こういうふうに思うわけであります。総裁のそういう点に対する御所見をひとつ承っておきたい。
  47. 宇佐美洵

    宇佐美参考人 これはちょっとお断わりしておきたいのですが、先ほど、これからいまのような状態ではおまえの銀行の統計によると先行きたいへんだとか、あるいはまた、おまえの銀行とおっしゃったかどうかはっきりいま覚えておりませんけれどもは三菱が非常に軍需産業をやっておるのはけしからぬというようなお話、私はいま三菱銀行には何ら関係がございません。それだけをお断わりしておきます。  むろん、日本がこういうふうに経済発展をしてまいりましたのは、軍備に力を入れずに平和産業をやってまいったからだということは、まさにただいまおっしゃったとおりであります。したがって、今後戦前のような非常に軍備に力を入れるということになって平和産業を無視するような状態になりましたら、これはゆゆしいことであることは申し上げるまでもないのでございます。しかし、いろいろの条件がございまして、それではどれくらいの軍需産業をしたらいいのかというようなことにつきましては、これは私の守備範囲の問題ではないと思いますのでほかの方に質問をしていただきたいと思いますが、私が申し上げられることは、そんなばかなことは絶対にないと存じますけれども、しかし、やはり平和産業を基礎にしてそうしてやっていかなければならぬということは私も確信いたしておる。しかし、いろいろの関係で、いまおっしゃったような点も若干はあるいは出てくるかもしれませんけれども、これは主幹はやはりもう平和産業という点は堅持してまいる。それ以上のことは私からちょっとお答えする範囲じゃないと思いますので、ごかんべん願いたいと思うのであります。
  48. 只松祐治

    只松委員 一般政策はもちろんそれは政府当局の責任になりますが、基本的なお考方と、それから万一景気が下降線をたどるとかなんとかいうことになればそういう圧力が出てくるわけですから、金融面からひとつ軍需産業やそういうきわめて顕著に軍事的なものだと思われるような面にはやはりチェックをされるべきだろう、そういう心がまえを、政策としてはもちろん政府当局ですが、特にお聞きをしてお願いをしておくわけです。  それから、時間がだんだんなくなりましたからもう一、二問お聞きしますが、さっきちょっと大蔵大臣にお尋ねをいたしました。きのう、これも堀君のほうから何か質問があったようでありますが、デノミネーションについて肯定論の御意見をお述べになっておる。ひとつ総裁のデノミに対するお答えを聞いておきたい。
  49. 宇佐美洵

    宇佐美参考人 デノミにつきまして、はっきり申し上げますと、昨日商工委員会で御質問がございました。そのときは、いま先進国の間で一ドルに対してこういう大きな数字を出している国はほかにないではないか。それから、これは笑い話かもしらぬけれども予算審議の場合でも何兆なんと言われると非常にわかりにくいということがございます。私どもも、先ほど大蔵大臣もおっしゃいましたが、いまの数字をずっと続けていいものかという点につきましては、確かにほかの国と比較いたしまして、日本の権威からいいましても適当な時期があったら直すべきであると思います。それできのうの御質問は適当の時期に直すかということでございましたので、むろん適当な時期には直すべき問題だと存じます。しかし、いまは適当の時期とは私は考えておりません。適当の時期を選ぶことが大事ではないか、かようにお答えしたわけでございます。したがって、先ほど大蔵大臣がおっしゃった考えと私は全くその点は同様に考えております。
  50. 只松祐治

    只松委員 適当の時期というのも、その時期というより具体的内容ですが、さっき大蔵大臣が言われたように、物価の安定とか海外の情勢とかそういうものが整えば、極端にいえば来年でもいい、まあそういう状況ではありませんけれども、条件次第によってはやる、こういうことですか。
  51. 宇佐美洵

    宇佐美参考人 適当の時期というのは、先ほどお話が出ましたが、物価の問題も非常に大事だろうと思いますし、さらにデノミと平価の切り下げを混同するような議論が出ておる間はすべきではないと思います。
  52. 只松祐治

    只松委員 では、最後に一つ、世界経済の動向はこれもこの八月から九月にかけてのときに私は教えていただこうと思っていたのです。総裁が外遊をされまして、外国へ行かれていろいろ豊富な知識をお持ち帰りのときでございましたので、お聞きしようと思ったのですが、その後いろいろ国際通貨の問題や何か発言をされております。そういうことに関連いたしまして、ひとつ世界経済の情勢、特に通貨問題等について御所見を承りたいと思います。
  53. 宇佐美洵

    宇佐美参考人 世界の経済の動向、通貨問題の動向を短時間に申し上げることはむずかしいのでありますが、やはり各国は現在、多くの主要国と申してもいいと思いますが、インフレ的傾向を何とか押えるために財政と通貨の両面から努力しております。しかし、先ほども申し上げましたとおり、そういう傾向は一朝一夕には非常に直りにくいものである。しかし、非常に努力をしておりますので、だんだん効果が出てくるものと思います。けれども、個々の各国の情勢を見ますと、非常にいろいろ困難な問題があるようでございます。したがって私どもは、現在は国際収支はいいのでございますが、これが今後長くいまのような状態が続くものと考えることは非常に危険ではないかと思っております。国内の情勢を整えて、そうしてこれに対処する。なかなか対処することもむずかしいのでありますが、むずかしくても対処する心がまえでやっていかなければならぬ。私は、いまのような情勢が続きますと、世界経済あるいは世界貿易というものがあるいは若干スローダウンしてくるのではないか、その場合に日本があわてないようにしておかなければならぬ、かように考えております。
  54. 只松祐治

    只松委員 フランスは申すまでもなく非常な緊縮政策をやっておりますね。英国も前からやっておる。アメリカも下半期はそういう状態をとろうとしておる。いまもうとりつつあります。こういう状況をずっと見まして、それから西ドイツ選挙後どうなりますか、マルク切り上げをやるかどうかですが、こういうのをごらんになりまして、ただ単に注意しておかなければならないという程度でいいのか、それともいわば相当の警戒を要するというふうにお考えになっておりますか、もうちょっと突っ込んだ御所感を承っておきたいと思います。
  55. 宇佐美洵

    宇佐美参考人 各国の情勢がそれぞれ違いますので、一括申し上げにくいのでございますけれども、いまの日本としてはやはりいろいろな点から、すぐにどういう手を打つかというよりも、情勢を注意深く見て、その対応する素地をつくっておくということが必要ではないかと思っております。
  56. 只松祐治

    只松委員 時間がありませんから、これで終わります。
  57. 田中正巳

    田中委員長 村山喜一君。
  58. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 日銀総裁のお帰りの時間もあるようですから、私は二点ほど簡単に質問をいたしておきたいと思います。  それは、今回公定歩合引き上げまして、それと同時に預金準備率の引き上げ操作をおやりになった。その結果、一千億を境にいたしまして一・五%、それから〇・七五%に預金準備率が引き上がったわけですが、これによってそういうような資金を凍結といいますか調整する、その数量は幾らですか。
  59. 宇佐美洵

    宇佐美参考人 私どもがこれをやりますときの試算でございますが、大体五百五十億ぐらいではないか、かように考えております。
  60. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 五百五十億ないし六十億程度で、預金準備率を引き上げ過熱状態に入っていく心配のある日本経済を鎮静化する、こういうようなことでおやりになるのには、これだけではもちろんぐあいが悪いからポジション指導をしようということなんでしょうが、私がここでちょっと総裁にお尋ねしておきたいのは、ポジション指導というのは昨年の十月ですか、窓口規制をやめてから日銀は始められたと思うのです。このポジションというのは、コールローンからコールマネーと日銀の貸し出し、まあ都銀に言わしめると借り入れ金になるのですが、それを加えたものを差し引いたものとして、われわれはポジション指導の数字の上でそういうふうなことを考えて理解をしているつもりですが、そういう立場からこのポジション指導というものをおやりになっているのだというふうに受け取ってよろしゅうございますか。
  61. 宇佐美洵

    宇佐美参考人 ポジション指導につきましては、銀行のポジション、資金量がふえるというのは、やはり何といっても預金でございます。それに対しまして貸し出しが片一方においてふえる、その差し引きでございます。
  62. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 そこで、都市銀行をはじめ金融機関は、大体、窓口規制をおやめになってから、その後四十三年度末ごろまでは順調に進んで、節度ある貸し出しというものが行なわれていたようでありますが、ことしの六月から非常に貸し出しが急増をしておるようであります。それは産業界からの資金の需要というものが増大をして、その中において預金はさほど伸びてこない、そういうような状態でありますから、まあ既発債を市中に売却をして、それで資金を得てそれを貸し付けるという操作等もやりながらやっているようでありますが、都市銀行を中心にして非常にポジションが悪化しているのじゃないか。それを今度ポジション指導をするとおっしゃるのだけれども、こういうようなポジション指導というものは、こういうような急激な貸し出し等が行なわれる場合には当然措置されてこなければならなかったのではないだろうか、そういうふうに私は思うのです。それについてはあらためてポジション指導をやるのだということを言われるのは、どこか理由があるのでございますか、それが一つ。  それからもう一点は、私は、やはり日銀の貸し出しという問題についてこの際目を向けないわけにはいかぬと思う。これが、この前も私は総裁にお尋ねをいたしましたが、四十一年度は一兆七千百七十七億あったものが、四十二年度は少し減りまして一兆五千八百六億になった。四十三年度は一兆五千六百三十七億になっている。ところが、この八月末の日銀貸し出しは一兆八千八百五億円ということになっておる。ですから、そういうような意味から、預金準備率の引き上げによりますその五百六十億程度のものをポジション指導一つとして計算の基礎に入れてやるのかどうか。それもまだお尋ねしていないわけでございますが、一体こういうような、日銀貸し出しが増加をしながら公定歩合引き上げ、ポジション指導をやりますということは、どうも国民に対する説得力がないのではないか。もう少し日銀自体が目をつけておやりにならなければならないのは、十年一日のごとく、中身は変わっても金額の上においては増大を続けているこの日銀貸し出しを、あなた方自身がどういうふうにして解消をしていくのかということを国民に示して、そして通貨の安定性というものを国民の希望にこたえるようにしていくのが中央銀行としての日銀の使命じゃないかと私は思うのです。その点から、それに対する御見解をお伺いをしたいと思います。
  63. 宇佐美洵

    宇佐美参考人 日銀の貸し出しが八月末一兆八千億あったことは、おっしゃるとおりであります。しかし、これはひとつ第一に御理解を願いたいことは、非常に季節的要因が多いということでございます。これは原因がいろいろございますが、一つ財政の引き揚げ時期になっておるという点も考えて、私どもは毎月の日銀貸し出しも非常に注意しておりますけれども、むしろその原因が何だ、季節的要因が非常に多い場合には、これはいたし方ない、こういうふうに考えております。もっと具体的に申しますと、これから米の代金その他散超期になりますので、これからは日本銀行の貸し出しはだんだん減ってくるのではないか、かように考えております。  それから貸し出しの内容でございますが、これが最近、ここ両三年非常に変わってまいりまして、具体的に申しますと、いま一兆八千億というふうに申し上げましたけれども、大体その五割は貿易関係の貸し出しでございます。輸出関係の貸し出しでございます。それから一割弱、七%くらいは証券関係でございますが、あと四二、三%は一般貸し出しでございます。  ところで、このふえておるというのは貿易関係でふえておるのであります。そうして、むしろ過去の数字をごく大ざっぱに申し上げますと、一般貸し出しは過去七年くらいの間に二千億くらい減っておるのでございます。したがって、貿易は国策としてどうしても優先するといういわゆる制度金融をいたしておるので、日本の輸出が非常に増大いたしますとそれだけ資金が要るわけでございまして、このほうの資金がまず要る、これもいろいろ限度がございますけれども、まずいまの程度貿易が進めばいたし方ない、かように考えております。一般貸し出しにつきましてはだんだん減らしていく、また私どもも、個々の銀行に対しましては、非常に厳重に一般貸し出しがふえないように注意しております。それが具体的にはポジション指導ということになってくるんじゃないか。季節的要因をどうぞよく御考慮くださるようにお願いいたしておきたいと思います。
  64. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 総裁、時間がないので、もうこれで終わりますが、いまの問題は、商業ベースで輸出延べ払い、信用を供与していく。その場合、自己資金でまかなう場合と財政資金でまかなう場合と、それから回り回って、日銀信用というような形で都市銀行を通じて貸し出しをされる、こういうことになるのでしょうが、そこら辺の問題点については、今後輸出金融のあり方という問題とも関係が出てまいりますし、また、輸出それ自体が国策であったとしましても、輸出をやることによって物価影響がないとは言えないわけですから、それだけ日銀の貸し出しが恒常的に一兆五千億もなされて、それが十年一日のごとく、中身はいまおっしゃったように変わったとしても、その分だけは滞留しているわけですから、これについて信用造出が行なわれないということはあり得ないのですからね。その面からくるところの貨幣価値の下落という問題も、物価との関連において考えないわけにはいかぬと私は思うのです。ですから、この点については、今後またおいでをいただいたときに検討したいと思うのです。  ただ、最後に一言お尋ねしておきたいのは、今度の予防措置は、これは景気の鎮静、設備投資を中心とする鎮静をもたらして、そして物価の安定に寄与するということの自信を総裁はお持ちでありますか。先ほどいろいろな条件ということがありましたが、金融だけでこういうような金利を引き上げ景気の調整をやろうと思っても、財政が節度ある政策がとられない限り、とてもむずかしいと思うのです。そういうような意味において、財政過熱状態のままそういうようなことになっていけば、また公定歩合引き上げなければならない。結局、それがめぐりめぐって金融政策にしわ寄せがくるのではないか、私はそういうような懸念がまだある。それについては日銀総裁としては、そういうことにならないように期待をするというだけではなしに、中央銀行の総裁としての立場から、貨幣価値を守るという意味においても今後も努力をされるべきだと思いますが、それについての御所見だけをお伺いして終わります。
  65. 宇佐美洵

    宇佐美参考人 私どもはこれによって総需要を何とかもう少し押えたい、かように考えておるのでございます。したがって、これが先行きいまのような状態を抑制していくということは非常に物価上昇にチェックになるであろう、かように考えておりますが、しかし、金融政策物価問題がすべて解決をするものではないことは申し上げるまでもないのであります。ことに卸売り物価はなかなか個別的政策も非常に大事だと思います。政府におかれてもせっかく目下いろいろなことで努力されておりますし、私としてはもう大蔵大臣には申し上げる必要もないほどよく御承知なんですが、物価問題は決して金融問題で万事解決するものではないということを思っておりますので、政府におかれても十分――金融はまあいわば窓口をあけたというくらいのところで、実際はこれからいろいろな政府さらに民間の協力がないとなかなかこの問題はむずかしい、かように考えております。
  66. 田中正巳

    田中委員長 これにて参考人に対する質疑は終了いたしました。  宇佐美参考人には、御多用中のところ御出席をいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚くお礼を申し上げます。  御退席いただいてけっこうでございます。     ―――――――――――――
  67. 田中正巳

    田中委員長 質疑を続行いたします。村山喜一君。
  68. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 人事院勧告と公務員の給与改定の問題に関連をいたしまして、主として財源見通しの問題を中心にこれから質疑をしてまいりたいと思うのです。  それに入ります前に、今回とられました景気調整政策、公定歩合引き上げ、預金準備率の引き上げ等によります政策は、卸売り物価、消費者物価の高騰という状態、そして設備投資の過熱状態、まあ経済指標から見て赤の信号がもうかかってきた。こういうような状態にある日本経済を、息の長い安定的な成長に導いていくのだという立場からとられた政策であろうと思うのであります。  「昭和四十四年度の経済見通し経済運営の基本的態度」というものを閣議で決定をされました。これによりますると、経済成長率は、四十三年度の国民総生産は五十兆六千億円程度だという見通しであったのですが、その後実際速報によって確定したのを聞けば、実質経済成長率は一二・六%の伸びだと見ていたものが一四・三%になった。これからいくならば、ことし九・八%というふうに安定成長ということで打ち出しておられたものは、これはやはり一四%ないし一五%の経済成長率ということになるのではないだろうか。もうすでにいろいろな指標からそういうことが言われておるわけであります。これについては、経済企画庁が担当している主管庁でありますけれども福田大蔵大臣としても、財政金融税制の一番の責任者という立場の上から、こういうふうに経済見通しというものが狂ってくる。最近政府の経済見通しが当たったことがないと言われるくらいの、測候所よりも確かに当たるが、確率は非常にに低いわけですが、こういうような見通しが大幅に狂ってくるという上において過熱問題等が出てくるわけですから、一体これはどういうふうに今後――もう八月の段階を迎えてあと半年程度残っておるわけですが、その中で消費者物価は七・一%も上昇をしておる。政府の政策目標の五%の中にとどめるということはむずかしい段階を迎えておる。こういうふうになってくると、いまはインフレではないけれども、インフレ的な要素が非常に強くなってきた。クリーピング・インフレーションからもっと顕在化していくインフレーションになっていきつつあるのではないかと私たちも心配をしておるのですが、日本はインフレとは見ない、アメリカはインフレ的な傾向があるのだ、こういうふうに分析をしておられるのか。どういうふうに今後の経済見通しを修正をし、あるいは政策運営の方向としてはどういう方向に持っていって当初の計画のような方向にされるのか、その方向というものはどうなんでありますか、これを初めにお尋ねしておきたいと思います。
  69. 福田赳夫

    福田国務大臣 いま世界的に非常に物価高の時期でございますが、ちょうどアメリカとイギリスが似ておりますが、消費者物価が五%から六%この一年間で上がっておるわけです。それから卸がやはりこの両国では三%ないし四%くらい上がっておる。フランスが非常に極端なんですが、消費者物価が六%をこえる上昇、こういう状態、しかもフランスでは卸売り物価が九%もこえるという状態である。  こういう中において、わが日本におきましても物価問題がむずかしい段階を迎えておる。今日までの消費者物価の動きを見ておりますと、五月まではたいへん調子がよかったと思うのです。ところが六月、七月、八月、ここで消費者物価は七%ちょっと出るという状況を示しました。これは私ども分析して、季節的要因かと思いましてこれを捨象して考えますと、五%を出るというような状態です。つまり、台風が早目に来た、大雨が来た、こういうようなことで、生鮮食料品の値上がりというものが著しいわけであります。それが響いておると思いますが、消費者物価の問題は季節的要因というもの、これを何とか克服して、目標としては五%という線に努力をいたしたいと考えております。これは全然できないというようなふうには考えておりません。何とかしてこれを実現をいたしたいという考えでございます。ところが、心配いたしておりますのは、卸売り物価が頭を持ち上げてきた、こういう状況でございます。これは、一つは国の総需要という問題がある。つまり、これはいわゆる過熱傾向というものがあるということかと思うのでございます。なお、海外の物価高の影響というものが輸出入を通じてわが日本にも波及するということ。それからコスト要因と申しますか、そういう方面に春闘の賃上げが響いておる、こういうようなことも考えられます。  いずれにいたしましても、卸売り物価が頭を持ち上げておるという点につきましては、私どもは非常に重大な関心を持っておるのであります。その最大の原因である総需要の行き過ぎというものについて考えなければならぬ、こういうことから金融措置をとったわけでありますが、見通しといたしましては、本年度の経済は上半期、まあ半年近くになりますが、この半年近くの推移を見ると昨年の一四・三%、この水準を動いておるように見ております。まだ統計はとっておりませんけれども、大体大づかみに見まして昨年の水準を動いておる、こういうふうに見ております。私は、昨年の一四・三%というのは、これはいかにも高過ぎる。わが国は物価問題をかかえておる。また社会資本の立ちおくれという問題をかかえておる。また過密過疎、またそれに関連して農村の生産性の問題、それからさらには中小企業の近代化の問題あるいは公害の問題、むずかしいいろいろな問題をかかえておるのでありますが、それらの問題を克服するというのにはこの一四・三%という成長の高さ、これじゃとても幾ら努力してもそれらの問題の解決の努力に追いつかない。何とかしてこれを少し低めたい、こういうことから九・八%という成長路線を年度初頭に打ち出しておるわけでございますが、いままでの推移を見ると一向にこれがおさまらない。しかし、これをほうっておきますと過熱状態で、その反動政策をとらざるを得ない、こういうことを憂いまして、予防的金融措置をとったわけでございます。  これからの推移が一体どうなるかということですね。そこで一カ年間としての成長の高さというものが出てくるわけでありますが、何とかして昨年から続いておる高さをもう少し押えぎみにいたしたい、こういうふうに考えておるのです。金融措置がどういう響きを持ちますか、この響きがないというような事態であればまたどういうことを考えるか、いろいろくふうをこらしまして、成長の速度をもう少し押え、かつ物価をもう少し安心した状態に置きたい、かように考えておるのでありますが、ただいま懸命に努力をいたしておるという最中でございます。
  70. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 大蔵大臣の説明を承っておりますと、これから景気をスローダウンというのですか、過熱しないように持っていくという意図でやるのだということですから、そうすると、九・八%、まあ一〇%という実質経済成長の伸び率は、これはいまのところは計画変更をする意思はないということでございますか。それとも先ほど説明にありましたように、四十三年度の実績一四・三%程度のものがやはり今後も続くであろう、それ以上になしたらこれはたいへんだということで、まあ一応の経済見通しはやがて修正をしなければならないであろう、こういうふうにお考えでございますか。
  71. 福田赳夫

    福田国務大臣 いままでのところではまさに修正をしなければならぬような勢いでございますが、まあ金融措置をとった。またこれからも推移によりましてはいろいろな手段を講じていきたい、そういうふうに考えますが、これから数カ月間の推移を見て、これからの見通しについてはよく判断をいたしてみたい、かように考えておる段階でございます。
  72. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 私は、今回とられた公定歩合引き上げ、そして預金準備率の引き上げ、そういうような金融面からの景気調整は、物価上昇が起こっている中ではやるべきだと思うのです。これはわれわれもそういうように主張している。しかしながら、一体何のための引き締めなのかということが今度は問題になってくる。そうするとそれに対してはいまの景気の過熱を予防するのだ、防止するのだということでしょうが、はたしてそういうような措置をとることによって、あなた方がねらっておられる安定成長への道がつくられる、これだけで措置ができるのだという自信をお持ちであるかどうか。これの政策効果というのはやはり相当時間がたってみなければわからない。この前の引き締めだってしり抜け引き締めということが言われているように、大企業の場合にはほとんど痛痒を感じなかった。今度も預金準備率を五百六十億程度、これを吸い上げてみましても、まあこれから生み出す信用創造というものはたいしたことはありません。いま日銀総裁にお伺いしてみましても、日銀貸し出し等については季節的な要因があるのだからこれはやむを得ないのだというような立場に立っておいでになる。  そういうような点から考えてまいりますと、はたして金融措置だけで景気の鎮静化に成功するかというと、私はむずかしいと思う。やはり一番設備投資を鎮静化させていくのには公定歩合の操作が第一に必要だろうと思うのですが、その次にはやはり法人税率の操作なりあるいは財政支出の操作というものが景気鎮静策には効果があると言われている。その法人税率景気の動向によってそういうふうに操作されませんから、財政支出の繰り延べとかなんとかというようなことも、次の段階では考えなければならないのではないかと私は思うのですが、そういうような必要性はないというふうにお考えでございますか。
  73. 福田赳夫

    福田国務大臣 今回は前回引き締め措置をとりましたそのときと金融事情が非常に違っておるのです。前回の場合におきましては銀行の手元がかなり楽だった。と同時に、企業が自己資本というものをかなり持っておりまして、まあ金融措置が効果をあげないような環境にあったわけであります。今回はどうかというと、もうすでに金融界はその手元がかなり窮屈なんです。昨年の同じ時期に比べまして、ことしになりましてから実に銀行貸し出しは倍近くになっておるのです。しかもどうだというと、企業のほうでは金が足らぬ足らぬという。それから銀行のほうでも金が足らない、そういうような状態でありまして、前回とかなり金融環境というものが違っておる。そういうときにおいて金融措置をとるというのでありますので、前回とはかなり響きが違ってくるのじゃあるまいか、こういう観察をいたしておるわけなんです。  まず、とにかく過熱の傾向がある、ここで予防的措置をとるという、その第一歩として金融措置をとったわけでございますが、この推移をとにかく見たい、こういうのが今日の私の考えであります。必要があればまた別の金融措置考えなければならぬ、あるいは金融にとどまらない財政上の措置も考えなければならぬということもあるかもしれませんけれども、今日この時点ではとにかく産業界に対しまして警告を発する、これでどういう反響が出てくるか、こういうことで状況を注視してまいりたい、これが私のただいまの姿勢であります。
  74. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 だから、先ほど日銀総裁の発言を聞いている中で、ポジション指導というのは、銀行のポジションが悪くなったのは六月の段階ですから、もうその段階から、かねてからポジション指導をするというのであれば、去年の同期の日に比べて倍近くも貸し出しをするようなのをチェックしていくのが中央銀行の使命なんです。それをいまの段階になってからポジション指導をしますということを言われても、どうも私はいただけないと思いましたのですが、時間の関係がありましたのであの程度におきました。  そこで、経企庁の赤澤調整局長にお尋ねいたします。ことしの経済見通しは、いま大蔵大臣から言われたとおりですが、この赤信号がついたままいま進行しつつあるという段階の中で、私はやはりこのまま経済見通しを放置しておくわけにはいかぬと思うのですが、事務的には、その情勢に合わせてあなた方は、その実態に即するような指標のもとで、経済運営の基本的な態度というものを策定をされる必要があるのじゃないかと思うのだけれども、その点については内部の検討はどうなんですか。
  75. 赤澤璋一

    赤澤説明員 お話しのとおりでございまして、私どもといたしましては、毎月月例報告等を中心にいたしまして、経済の現状につきましては常にこれを心しております。そういったことから、年度当初の見通しがどういうふうになっていくかということも、常に検討をいたしております。ただ、今回のように、年度の途中で景気の引き締め措置といいますか、予防措置がとられましたので、今後これをどういうふうに政策効果を発揮していくか、こういった面の検討も現にやりつつございます。また同時に、私どもの研究所でつくっております短期のパイロットモデルにいろんな外生変数を入れても検討してみたい、こう思っておりまして、いまそういったことについてせっかく内部で検討中である、こういう段階でございます。
  76. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 佐藤人事院総裁おいでをいただいておりますので……。  新聞によりますと、今度の勧告の内容はきわめて優秀である、最近はもててもててしようがない、全国の看護婦さんや木内科学技術庁長官からお礼を言われた、あとに残るのは完全実施だけだということで、非常に勇気百倍、福田大蔵大臣のところにそれをやってもらいたいということで行かれているようですが、感度はいかがでございますか。
  77. 佐藤達夫

    佐藤説明員 私どもの立場は、これは毎年のことでありますけれども、官民格差を埋めていただくということであります以上は、実施時期についても、五月にさかのぼっていただかないと、格差を埋めたことにはならぬということで、努力に努力を重ねておるわけです。ことしもただいまおことばのとおりに、一生懸命に努力を続けておる段階でございます。さぞかしいい結果が出るだろうと期待をいたしております。
  78. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 私は、あなたがあっちこっち動いて努力をされておるということの実績を評価するがゆえに、あなたが受け取られた感度はどうですかということを聞いているのであって、その基本的な態度だけを、ものの考え方だけを聞いているわけじゃありません。  そこで、総裁にお尋ねしますが、勧告を出された、たとえば看護婦の夜勤手当の問題等、まことにけっこうです。しかしながら、月に八日間ですか、夜勤を二人制で週二日間程度にとどめるべきであるという勧告もすでに出されておるけれども、なかなかこれが実行に移されていないですね。そうなると、やはり看護婦養成の問題なり、あるいは全体の行政職員の定員の合理的な配置の問題なり、そういうような問題が出てこなければ、これはあなた方が勧告をされても、なかなかその面においても実現ができないということになる。それらの点については、もう限界が――こういうような劣悪な状態の中では看護婦になりたくないというようなかっこうの者が出てきて、医療保障の面における大きな穴があく心配さえも出てきているわけですが、あなた方としては勧告をしっぱなしということはないだろうと思うのですね。それが守られるように努力をされる必要があるのじゃないか。給与勧告の問題にしてもそうですよ。その立場から、いろいろな立場であなたは努力をしておられるわけでしょうが、どうなんですか、その見通しを……。
  79. 佐藤達夫

    佐藤説明員 私は、見通しが楽観的であろうと悲観的であろうと、とにかくわがほうの念願は何としても貫徹せにゃならぬという意気込みで、それに一念を集中してやっておるわけでありますからして、その意気込みをひとつ御了察を願いたいと思います。
  80. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 まあ意気込みはけっこうですが、それが実が実るようにしてもらわないといかぬと思うのですね。  そこで、大蔵大臣は、人事院勧告を受けたら失神をされたということが新聞に出ておりました。まあ一〇・二%、五千六百六十円、これは春闘の結果によれば、労働省発表が一五・八%ですから、それに定期昇給分を加えましても、公務員の給与ベースの改定率からいえば民間のそれよりも低いことは事実です、率そのものからいえば。そこでそれだけの、民間との格差が五千六百六十円あるということで、これを埋めなければ優秀な公務員を採用することはできない。いま公務員として、国民に公僕として奉仕をしておる、その生活を保障することもできない。労働基本権を守っていくためには当然代償措置として、これは完全に実施をされる義務があるというようなことでやっているわけですが、さきに私が給与改定の問題で大蔵大臣意見をただしたことがあります。そのとき大蔵大臣は、私の質問に対して、人事院勧告が、その改定の率が低ければ完全に実施ができる、しかし高いときには、これはなかなか完全に実施時期まで含めてできるかどうかということについては言えないというような意味の発言をなさったことがあります。今回この人事院勧告を受けて、大蔵大臣としてはどういうような御所見をお持ちであるか、その点の基本的な考え方についてお伺いしたい。
  81. 福田赳夫

    福田国務大臣 人事院の勧告を受けますと、政府はこれを尊重するという姿勢をとらざるを得ないわけです。そこで、佐藤総裁が人事院勧告を携えまして佐藤総理にお目にかかり、両院の議長にもお目にかかってこれを申し上げ、そのあとで私のところにお見えになって、勧告の書類をいただいたわけです。帰りがけに、ぜひひとつ完全実施でいきましょう、こういうことで握手を求めましたのですが、どうも私は、握手に応ずる気持ちになれない。財源のことを考えると、これはまことに容易なことじゃないのであります。予算編成いたしますその際におきましては、まあ大体四十三年度程度のことかな、こういうふうに見ておったものが、一躍一〇・二%という暴騰をいたしておる。その財源を一体どうしようか、一方において総合予算主義という方針も出しておる、これは困ったなということでございました。その日の午後、関係閣僚が集まってその内容について総理府のほうから詳細な説明を聞いたわけですが、とにかく私もこの席では何とも言えない、失神状態だということを申し上げて今日に至っておるわけなんであります。  しかし、これはほっておくわけにはいかない問題でありますが、問題は実施の時期の問題に結局しぼられてくるのではあるまいか、そういうふうに思っております。予算におきましては、五%を七月から実施するというために必要な人件費を盛っておるのであります。それで人事院勧告が出た際に、その不足する分は予備費をもってこれを支弁するという考えでありました。ところが、この予備費の状態は一体どうなんだ、こういうと、さきに農政対策費といたしまして二百二十五億円を支出することになったわけであります。それから台風が、普通は秋にあるわけでありますが、これが早目に参ります、また大雨が来ますというようなことで、災害対策費のほうは、どうも例年よりよけい要りそうだ、こういうふうな状態でありまして、予備費から回し得る財源、これも例年のようなわけにはとてもとてもいかぬ、こういう状態です。一方において人事院勧告はこれを尊重しなければならぬ、しかし財源はそういうような状態である。これをどういうふうにするか、こういうことでただいま苦慮しておるわけでありますので、どうも早急には結論は出そうもないのです。これからの財政推移等をよく見きわめました上で、これにどういうふうに対処するか、そういう方針をきめていきたい、かように考えておる段階でございます。
  82. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 では、尊重するということは、金があれば払うということなんでしょう。この点は間違いありませんか。
  83. 福田赳夫

    福田国務大臣 財政運営というたてまえから総合予算主義というものをとっておるわけであります。そういう方針もありますが、それらを踏んまえまして、財政これを許せばできる限りのことはいたしたいというのが私の考えでございます。
  84. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 私は、やはり稲作関係の対策費ですか二百二十五億、これなんかも補正予算に計上しなければ、予備費の中から支出できる筋合いのものじゃございません。そういうような意味で、災害が出る、これも予備費の中から支出をされるわけですが、確かに既定経費の中から問題を処理しようとすれば、その財源が不足することは間違い。  そこで、この不用額なりあるいは節約なりということについては――行政費の節約分等についてはすでに指示を流されたということも聞いているのですが、これはどの程度まできまっておりますか。
  85. 福田赳夫

    福田国務大臣 人事院勧告は、なるべくこれを尊重したいという意図のもとにいろいろその財源対策を考えておるのです。しかし、ただいま申し上げましたような事情で予備費からの支出は非常に幅が狭い、他に方法を考えなきゃならぬか、こういうと、さしあたり考えられますものは各省の行政費の節約、こういうことなんです。  そこで、この問題につきましては、事務的にいま各省との間に話も進めておる段階でございますので、まだこれを閣議で決定するとかなんとか、そういう正式な方針決定まで至っておりませんけれども、私ども、ある腹づもりをつくりまして、その腹づもりに基づきまして各省の経理当局と寄り寄り話し合っておる、これが現状でございます。
  86. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 そこで、どれだけの財源が要るかということについては、すでに内閣委員会等で数字の発表があったようでありますが、五月から完全実施をするということになると、既定計上経費の四百四十三億を差っ引いて八百九十六億足らない。それを予備費の中から充当しようと思っても、まあぜいぜい期待ができるのは二百億程度のものでしょう。とすれば、あとは行政経費の節約、これがどの程度見込めるかということが一つの数字になるわけです。それだけでは完全実施をやろうと思えば、金が足らないことは間違いないと私は思うのですが、そういうことになりますね。これは事務当局でけっこうです。
  87. 橋口收

    ○橋口説明員 人事院勧告に基づく給与改定の所要額でございますが、村山先生、いま八百数十億というお示しがございましたが、一般会計で申しますと、五月実施で、四百四十三億円を差し引きまして、実質的に必要になります額は七百九十六億円でございます。  なお、御参考までに六月で申しますと七百十五億円、七月で申しますと五百四十四億円でございます。
  88. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 それじゃその七百九十六億円でいいですよ。そのものを予備費からせいぜい持ってこれて二百億ぐらいしか期待できないと思うのですがどうですかと聞いている。
  89. 橋口收

    ○橋口説明員 予備費の使用の見込みにつきましては、先ほど大蔵大臣からお答えがあったわけでございますが、現段階におきまして、使用済みの経費としましては、災害関係の経費が八十三億円ございます。したがいまして、予備費としましては約八百十数億円が残っておるわけでございます。ただ、これは先ほどから御説明ございましたように、災害関係の経費等の予定もございます。その他一般行政経費につきましても、先ほど大蔵大臣からお答えございましたように、現在どの程度の節減が可能かということについて検討を進めておるわけでございます。また、予算の執行の過程におきまして、ある程度の不用額も発生するわけでございます。それらにつきまして、現在すべてを検討しているという段階でございます。
  90. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 まだ財源の捻出が幾らになるかという確定的なものは出てこないでしょうが、しかし、八十三億しかまだ災害関係に支出していないといっても、緊急査定その他が事務的に進行していけば、いままでの災害分だってやはり二百億ぐらいにはなるだろうと私たちは思う。今後また災害が出るだろう。それに充当する分がやはり四、五百億あたりになるのではないか。そうなったら、予備費からだけではなかなかまかない切ることはできない。それから不用額あるいは行政節約をやっても、それでも七百九十六億というのはなかなかまかなえでいだろう、こういうふうに思うのですが、まかなうことができるとなればまことにけっこうな話なんですが、どうなんでしょう。
  91. 福田赳夫

    福田国務大臣 最善の努力をいたしてみます。
  92. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 そこで、やはりその中でまかなう方針であるのか。まあ最善の努力をするという意味が、現在計上されている予算の範囲内でやるというのか。この点はどうせ補正予算を計上する時期が来ます。そのときには一応の歳入の見込みというものも、これは計算をし直さなければならぬ段階を迎えると思うのです。先ほどから予算編成方針の中においていろいろファクターをもってそれぞれ税目ごとに集計がなされて、それによって租税収入の見積もりがなされているわけですが、最近の租税及び印紙収入の結果から見まして、私は約二千億くらいの自然増収は間違いなく期待ができるというふうに思うのですが、この点については主税局長から、どういう判断をしておいでになるのか、お答えをいただきたいのであります。そこで、それの根拠を私が大蔵大臣にお示しをいたしますからお聞きを願いたいのであります。
  93. 細見卓

    細見説明員 二千億とおっしゃっておるのは、おそらく六月末の収入状況を見まして、昨年の決算の収入状況と比べられて、それをそのときのおそらく二割程度の収入歩合で割りかえされて、それが一年間続くものとすれば二千億くらいの数字になるというような御計算じゃないかと思うのですが、それが七月になってまいりますと三一・一%の収入歩合になっておりまして、そのときには〇・八%昨年度よりはよかったのが、むしろ〇・七%というふうに割合は悪くなり、しかも収入割合といいますか、全体の収入は三割一分程度になっているわけでありますから、したがって、予測される金額というのは小さくなるということであります。  しかし、私どもこの段階で今年度の税収考えます場合には、やはり何といいましても九月決算、これがもう税収の三割近いウエートを占めているわけでありますし、これらの法人の収益の状況というものがわかる段階でなければ、この五兆数千億、六兆近い数字の中でどの程度税収が当初予定したものよりふえるかということは、おそらく申し上げることができない数字であろうか、かように考えております。
  94. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 あなたが審議官のときですか、去年ですね。私は税収見積もりについて同じような質問をこの席でいたしました。そのときに二千億は間違いないと私は思うと言ったら、その後二千四百億で補正予算を計上された。それの収入、決算を見たら、完全ではなかったけれども、しかしながら、大体二千億を上回ったことは事実でした。そのとき取り上げた指標がやはり六月のその指標を使って、それから率をかけ出してこの数字を想定をしていったわけですが、いまその積算の基礎は、主税局長が予想しておられるように、四十三年度の決算額と四十四年度の当初予算額との比率を求めて、そこからその倍率によって全体の租税収入に積算をしてその差額を打ち出したというその積算の方式は前と同じです。しかし、もうすでに七月の段階のものの数字がここにございますが、八月なり九月なりはこれくらいの租税収入があるだろうという予測数値を出されておりますね、その点は間違いございませんか。
  95. 細見卓

    細見説明員 およその予測は立てておりますが、先ほど来ここの委員会で御議論がございましたように、これからの経済推移というのは非常に微妙な段階に入っておりますので、そうしたものも税収に反映いたします。ちなみに現在税収として比較的良好でありますものは、給与所得を中心とする所得税税収、それから法人税、関税というようなものが大体良好な成績を示しており、それに反しまして酒税あるいは印紙税といったような、どちらかといえば間接税につながるものが低調な収入状況を示しておるわけであります。したがいまして、所得税とか法人税とかあるいは関税と申しますように、経済活動と非常に密接な関係の多い税収が現在好調になっておるわけでありますから、わが国全体の経済活動いかんが今後の税収に大きく響くわけでありまして、そういう意味でいましばらく推移を見なければ、ことしの税収は去年よりもはるかにむずかしい事態になろうかと思います。
  96. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 時間がありませんからもうそろそろやめますけれども、法人税の税収景気関係ですね。これは六カ月余りの間差があるでしょう。だから、現在の時点におけるものが年度内において徴収はできるわけですが、これから景気調整をやって、景気調整の効果があらわれるのは年を越してからでしょう。だから、そういうような言いわけは理由にならないのです。ですから、その点はあなたが幾らそう言われても、ああそうですかといって引き下がるわけにはいかない。それから酒税にしても、租税全体の中で占める率を考えなければならない。それから物品税にしてもそうですよ。ですから、法人税なり所得税の伸び率というものを見ていけば、大体の税収見積もりというものは私は立ってくると思う。その中で一番伸び率のいいのは法人税ですね。これは非常に伸び率がいい。なるほど、いろいろ当たってみると七期連続の高収益をあげているわけですから、これはそういうことだ。それからあなた方が予測した以上に、春闘の結果一五・八%も民間の賃金は上がったわけですから、それによる税金の伸びというものは期待できるわけです。この計算からいきましても、あなた方が一番低い数値をとって〇・七%しか伸びていないとおっしゃるのだが、〇・七%で七月段階で押えたときに、その計算方式でいった場合には幾らの自然増収になりますか。
  97. 細見卓

    細見説明員 計算だけで申し上げますとおそらく千三百億ぐらいになるかと思います。
  98. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 それは一番低いところで押えたときがそうですね。ですから、四半期の中で四月、五月、六月という段階で押えて、過去の決算、補正予算その他の数値をずっと照合してみると、大体高度成長をたどっている過程の中で生まれてきたものはほとんど変わりがない、そういう傾向があることは事実です。その上から積算をしていくと千九百七十一億程度は期待ができるという数字上の計算ができるから、大まかにいって二千億の自然増収は、いま金融の調整政策がとられたとしても、それは一ぺんに一四・三%の実質成長率を一〇%以下に低下させていくという政策を急激にとられない以上は、税収の上においては期待ができる、こういうふうに考えるのが、財源見通しをつける上においては正しい予測の方法じゃありませんか。  大蔵大臣、いま主税局長とのやりとりを聞いておりまして、あなたの感覚としては二千億という税の伸びが期待ができるというふうにはお考えになりませんか、いかがですか。
  99. 福田赳夫

    福田国務大臣 今日までの税収状況から判断いたしますと、大体予算で見た程度の動きを示しておるわけであります。問題は今後九月期決算がどうなるか、こういうことなんでございますが、これもそう悪い状態じゃないと思いますけれども、春闘のあの賃上げが相当大幅だった。そういうようなことから増収はかなりあると思いますけれども、増益ということになるかどうか、その程度は多少低まってくるのではあるまいか。そんなふうなことを考えますと、今後の税収の全体の状態もそう楽観はできない、それが今日私の見方でございます。
  100. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 大臣はIMFの総会に九月の二十四日にお出かけになる。それまでの間に給与のなにについては七人委員会で政府の態度をおきめになりますか。そういうような見通しをつけてお行きにならなければならないのじゃないかと私は思うのですが……。
  101. 福田赳夫

    福田国務大臣 なるべく早くきめたいというところですが、ただいま申し上げましたように、財源見通し等も非常にデリケートだ、それから景気の動きももう少し見なければいかぬ、こういうような状態の非常にむずかしい時期に来ておるわけです。そういうようなことで、まだ私は関係閣僚と相談をしておるわけじゃござい益せんけれども、二十四日私がIMF総会に出発するまでに結論を最終的に出すというのはちょっと困難じゃあるまいか、そんな感じがいたしておるのであります。
  102. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 これで終わりますが、最後に総理府の岩倉長官が見えていますから、給与担当の所管の総理府として、あなたは国務大臣でありませんけれども、きょうは床次長官にかわって出てきてもらったのだから……。  私はいま給与改定に対する財源の問題を申し上げました。主税局長が言うように、〇・七の指数の伸びをとってみてもこれは千三百億、〇・八の指数を六月の第一・四半期で押えてとっていけば、各年度大体そういうことになっておりますから数値としては正しいと私は自信を持っているのですが、それによると約二千億。そういうような財源も期待ができるという中においては、あなたのところは責任を持って給与改定――お金がないとは私は言わせない。そういうような意味において労働基本権の代償として当然勧告は完全に実施されるべきものだ、こういう立場から質問を行なっているわけですから、それを踏まえた上であなた方の決意のほどをお伺いをして、私の質問を終わります。
  103. 岩倉規夫

    ○岩倉説明員 他の委員会におきまして床次総務長官が御答弁いたしておりますように、人事院勧告は人事院と申します中立的な専門の機関が詳細な御調査に基づいてお示しになったものでありまして、政府はかねてからこれを尊重するということを基本方針にしてまいっております。本年度につきましても、そういう基本方針を踏まえまして誠意をもって対処いたしていきたい、このように考えておる次第でございます。
  104. 田中正巳

  105. 広沢直樹

    広沢(直)委員 いまちょうど公務員の給与改定の問題についてお話がありましたので、初めに関連して若干お聞きしておきます。  今度の公務員の給与改定について一〇・二%のアップ、こういう勧告が出ているわけですね。完全実施ということになりますと大体総額どれくらいの経費がかかるか。その点、まず最初にお伺いしたいと思います。
  106. 橋口收

    ○橋口説明員 これは先ほど村山委員の御質問にもお答えをいたしましたが、五月に実施をするということで計算をいたしますと、一般会計で千二百三十九億円の額になります。それに対しまして御承知の四百四十三億円がございます。したがいまして、増加額としては七百九十六億円でございます。
  107. 広沢直樹

    広沢(直)委員 そこで、先ほどから議論が続いておりますが、要するに政府の基本方針としては、人事院勧告の完全実施というのを基本方針として進めていくということになっているわけですね。ところが、いままで人事院の勧告というのはそのとおり守られたことはない。基本姿勢としてはそれを守っていくということを言いながら、現実は守られていないわけですね。大体政府は昨年度から総合予算主義ということを唱えているわけです。したがって、私たちそのつど言っているわけですが、この人事院勧告に基づいて公務員の給与のベースアップ、こういった問題は予備費の中で考えていくのでは当然いつもしり切れトンボになってしまう。そういう観点から、当然これは予備費の中で組むべきではないという姿勢も言ってきたわけです。いまも申しておるとおりに、現実には予算の中で四百十三億しか組んでいない。   〔委員長退席、倉成委員長代理着席〕 あとは予備費の中で何とか調整するという話ですが、先ほどの大蔵大臣の答弁の中にも、災害の問題だとかあるいは稲作転換対策費ですか、そういったものが組まれているということで、結局このとおりの実施はほとんど不可能である。それならば補正予算を当然組まなければならない。しかし、補正予算を組んだとしても、いまのお答えにあったように、税収の伸びはまだ判然としない。大まかな見当はついているのでしょうけれども、見当だけでは基本姿勢はきめられないわけですから、そういう観点に立っていくと、現在の完全実施ということは実際にはもう無理であると財政当局としては考えているのかどうか、その点どうでしょう。
  108. 福田赳夫

    福田国務大臣 実施の時期をどうするか、これ以来の点については何とか完全実施でそれをやっていきたい、また、これはやれるというふうに考えております。ただ問題は、実施の時期をいつにするかということ、これが金目に非常に影響してきておる問題ですが、これに対しましては予備費の充当、これも考えておりますが、同時に予算の節約、これをできないものかということで、いま事務的に寄り寄り協議を進めておる、こういうことでございます。
  109. 広沢直樹

    広沢(直)委員 かりにいま言う人事院勧告に基づいて完全実施とまではいかなくても、先ほどお答えのあったように、昨年どおりの七月の実施の場合でも、一〇・二%といいますと九百八十七億円の財源が必要じゃないか。そういうことになると先ほどの稲作特別対策費、そういったものが二百二十五億かかる。それから災害等の経費が昨年は三百八億でしたか、それをオーバーして五百億ぐらいかかる。こうなりますと、当然いま組まれている予備費ではもうまかなえない。実施の時期が昨年どおり七月としても大体そういう計算が出てくるわけですね。そういうことになるとこれは補正予算を組むということはもうはっきりしているのかどうか、その点だけちょっと。
  110. 福田赳夫

    福田国務大臣 ただいまこの段階で補正予算を組むということは考えておりません。ただこういうことはあります。事務的経費の節約ということを協議しておるという段階でありますが、もしそういうことがきまりますれば、組みかえ補正を必要とするということはあるかもしれませんが、予算規模を拡大するという補正ですね、増ワク補正、これはただいま考えておりません。
  111. 広沢直樹

    広沢(直)委員 そうしますと、いま行政費を節約していくというのですけれども、大体基準をどこに置かれているかまたお答え願いたいと思うのですけれども、それにしてもいま言ったような財源が出てくるかどうかということが問題だと思うのです。   〔倉成委員長代理退席、委員長着席〕 いままでにもそういうことでいろいろ経費の節約ということは当然あったわけでありますけれども、大体百億か百五十億ぐらいじゃないか。あるいは公共投資を全部含めて考えていくということになれば、これは公共投資繰り延べとか、いろいろそういう措置が出てくるのじゃないかということも考えられるし、その点はどういうふうに考えますか。
  112. 福田赳夫

    福田国務大臣 事務的経費についてはこれはぜひ私としてはやりたい、こういうふうに考えておりますが、公共事業費につきましては、社会資本の立ちおくれ、こういう問題もあり、また、今後の経済見通しというような点から考えまして、この間金融措置をとった、追っかけて財政措置をとるというところまで考えるかというところまではまだいっていないのです。  そういうようなことで、公共事業費をどうするかということはまだ結論を得ておりませんけれども、事務的経費につきましてはぜひやりたいというのが今日ただいまの段階でございます。
  113. 広沢直樹

    広沢(直)委員 そこで、さっきお伺いしたように、事務的経費の節減というものを大体どの程度と判断されているかどうか、これまた一つ大きな問題になってくるわけですね。この点どうですか。
  114. 福田赳夫

    福田国務大臣 これはまだその方針につきまして閣議で決定しておるという段階でもないのです。事務当局間でどの辺までできそうかというようなことを寄り寄り相談をしておるという段階でございますので、これから幾らの財源が出るということはちょっと申し上げかねる時期なんです。御了承を願います。
  115. 広沢直樹

    広沢(直)委員 大体いま伺っているところによると、行政費七%の節減をして給与財源に充てていくというような方針を固めていると伺っているわけですけれども、しかし、それにしても大体百五十億前後、それくらいの経費しか出てこないのじゃないか。そうしますと、先ほど申し上げましたとおり、七月の実施にしたところで九百八十七億の財源を必要とするという試算が一応出る。それから先ほどの稲作転換対策費ですか、それと災害のとを加えますと、それでもやはり予備費ではまかなえない、私たちはそう判断するわけですね。  総合予算主義ということは、これはいいことですけれども財政硬直を打開するために総合予算主義をとる。放漫な財政というものはある程度ワクの中で考えていかなければいかぬというのが常識論なんです。もう一つ景気対策、先ほどから問題になっております景気対策の意味もあると思うのですね。ですから当初において――やはりこういうワクの中で昨年も総合予算主義はくずれているわけです。ことしもこういう形をそのまま継続しているわけですから、総合予算主義はこういった観点から考えても無理じゃないか。当然最初において補正予算を組んでいくということを考えていかなければ、景気対策の上から考えていっても、あるいは財政硬直打開の上から考えていってもそれは見当違いになってくるのじゃないか。姿勢としてはよくわかるわけですけれども、そういう面で、大蔵大臣としてはやはり当初に総合予算主義を貫くと言っても、そのワク内でおさめようとすれば、先ほどからお話があった公務員給与改定の人事院勧告の完全実施ということもこれは無理じゃないか。当然補正予算を組むという姿勢のもとにこれを完全実施の方向に持っていくという方針を持っていくべきじゃないか、こういうように考えるわけですが、どうでしょう。
  116. 福田赳夫

    福田国務大臣 総合予算主義は予算のワクをとにかく年度内守り抜く。そのために年度初頭において予見し得るあらゆる需要というものを予算に盛り込む、またその財源をととのえる、こういうことなんです。しかし、予算編成後にもいろいろの問題が起きてくるわけであります。私は、異常または非常の場合におきましては、必ずしも増ワク補正ということを排斥するという考え方はとるべきじゃない、こういうふうに考えておるわけでございますが、しかし、今日の段階では人事院の勧告がある。いまあなたは、七月実施ということでも九百幾らかかるというようなお話ですが、そうじゃないのです。七月実施だと五百四十億必要なんです。でありますが、とにかく最善を尽くして人事院勧告尊重という姿勢を示してみたい、かように考えております。
  117. 広沢直樹

    広沢(直)委員 この問題ばかりやっていますと時間がなくなりますので……。ただし、七月実施ということで、先ほどから言っているように時期の問題だということなんですが、これはやはり五月、そしていま言う一〇・二%、こういうことを守ろうとすれば当然無理だということなんです。昨年は八月実施の意向だというのに対して、それは七月にしろとかいうことで、結果的には七月になったわけですね。ですから、それは昨年と同じように七月だというのじゃなくて、尊重するという意味があるのだったならば、少なくとも五月実施ということをやっていかなければならぬ。ある程度そこにいろいろ考えられる点が今後も出てきましょうが、そうなっていくとどうしてもこれは無理じゃないか、こういうふうに申し上げているわけです。そういうふうに財政のワクの中で全部縮めてしまうと、それでは人事院勧告というものは単なる勧告であり、単にそうするのが望ましいという一片の見方なのか、いままでの過程から考えていってもそういう批判が出てくるけれども、先ほどの話ではそうじゃない。あらゆるデータに基づいて、現在そうあるべきじゃない。現在の社会情勢上、経済情勢上無理であるという結論の上に立っての勧告でありますから、それは尊重するというのが政府の基本方針ならば、具体的にそういった面について検討していかなければならない、こう思うので強く申し上げているわけです。  さて、先ほどから問題になっております金融引き締めの問題について若干お伺いしたいと思いますが、今度の金融引き締めは予防的な措置なのか、少々の犠牲が出ていったとしても政策転換をする時期が来ているのだというふうに判断しているのか。先ほどの日銀総裁の話では、未然に将来の景気過熱を防ぐという考え方からいうならば当然予防的な措置だと考えられるわけですが、念のためにもう一ぺん聞いておきたい。
  118. 福田赳夫

    福田国務大臣 政策転換ではございませんです。あくまでも予防的な措置であります。私どもは、経済の安定的成長、つまり落ち込みのない成長ということを念願しておりますが、そのためには過熱があってはならない。これに対して予防的な措置を講じたい、こういうことから出てきておるわけであります。
  119. 広沢直樹

    広沢(直)委員 確かに現在の経済指標を見ておりますと、先ほど日銀総裁から詳しく話がありましたとおり、先行きは過熱的な方向にあるという見方をしているほうが多いようであります。特に卸売り物価の高騰という問題は当面重要な問題として取り上げられております。したがって、今度の引き締めにあたってこういった問題はどれだけの効果があると判断したかということですね。非常にむずかしい問題だと思うのです。しかしながら、公定歩合を六・二五%にした、この程度でいけるだろうと判断していくには大体どれくらいの効果があるという判断がなければならない。やみくもにそれはこの程度でというわけにはいかぬ。その点の判断はどう考えておられるか。
  120. 福田赳夫

    福田国務大臣 この措置の当然の結果といたしまして、金融機関は慎重な態度に転ずる、こういうふうに思います。それから企業家の企業マインド、これも変化を示してくる、こういうふうに見ております。それらが数字的にどういうふうになるかということは測定はできない、これは御了承願えると思いますが、かなりの影響が出てくるであろう。その影響の出方を見まして、また今後の措置も考えていきたい、かように考えております。
  121. 広沢直樹

    広沢(直)委員 確かにいままででも、たとえばコールレートの引き上げをやるとか、あるいは資金ポジションの指導をやっていくとか、そういうようなことを実質的な金融の引き締め的な方向で日銀もやってきたと思うのです。ですから、市中金利の金詰まりといいますか、そういうものが進行してきている。今回の場合のように、前回のような公定歩合だけの引き上げじゃなくて、やはり預金準備率を引き上げていくというようなこと、あるいは輸出貿易手形の割引率を引き上げるというような一連の措置をとっていけば、確かにある程度の効果は出てくるのじゃないか。いままでの話の中にも、いままでのような効果のない引き締めはやりたくないということを再々発表されていらっしゃるわけですから。しかしながら、それが予防的な措置であるとは言いながら、かえってスローダウンしていくのじゃないかという見方と、それから単なる、ちょっと頭を押えて状況を見ているという考え方とあるわけですけれども、いまのお話でしたら、一応頭を押えてどういう状況になってくるか見ているという感じですね。  そこで、こういう引き締めがあった場合にまず問題になってくることは、やはり中小企業の倒産だとか、そういう非常に資金の乏しい企業に対しては極端にこういう形が出てくる。これもいま指摘されているとおりです。ただ今回の公定歩合引き上げ一つの要因として考えられたことが、卸売り物価、関連して消費者物価もずっと高騰を続けているわけですから、そういう意味では物価を抑制していく一因になっていく。先ほど日銀総裁は、金融面だけではこれは無理だと言われましたが、それはそのとおりだと思います。しかしながら、私はそういう物価面から見た場合においては、かりに今度の引き上げによって市中金利も一応年率に直したために引き上がっていく、こういうことになってくると資金は集まってくるし、金利が上がっていくということになれば、それがかえって今度は当面コストにはね返ってきて物価を押し上げていく一つの要因にもなるのじゃないか、こういうことも考えるわけです。その点はどういうふうに当面判断されているか、まず伺いたいと思います。
  122. 福田赳夫

    福田国務大臣 いま問題にしておるのは卸売り物価の上昇、これが最大の問題です。これはなぜそういうふうなことになるかというと、いろいろな原因があります。ありますが、これは国の総需要が強過ぎるということなんです。総需要の要因としては設備投資需要ということもあります。また、財政需要ということもあるわけです。またさらには、国民消費需要ということもある。あるが、とにかく設備投資需要が非常に強くいま押し出されておる。これは銀行の窓口を見るとわかるのです。幾ら貸しても貸しても、まだ企業家の需要を満足するに至らないというくらい旺盛な投資需要があるわけであります。これに対して手を打つ必要がある、こういう判断に立ったわけであります。  そういうことから、今回の金融措置は特に設備投資需要を中心とした国の総需要を抑制するという見地からかなり影響するところはあろう、こういうふうに判断しております。
  123. 広沢直樹

    広沢(直)委員 確かにこういう金融引き締めが総需要を抑制していくということにもなってくるわけでありますけれども、それが結局物価の見地から考えた場合に、影響してくるのは非常におそいと思うのです。直ちにというわけにはいかない。  そこで、いま言うように、直ちに考えられることは、単なる公定歩合引き上げだけで市中金利は関係ないということであれば、そう極端なこともいま考えられないわけですけれども、やはり今回の場合はそれに連なって銀行では市中金利も上げていくということになったわけです。そういうことになりますと、これはやはり資金の詰まりと同時に金利の高いものを借りていくということになりますから、今度の利上げというものが物価に直接影響してくるのじゃないか。これはいま卸売り物価が問題だとおっしゃっているけれども、消費者物価のほうにも当然これは影響してくるし、資金コストとして考えられていくならば、当然含まれて物価の値上げに影響してくるのじゃないか、こういうことが考えられるわけですが、その点はそうならないとお考えになっているのか、多少そういう点は考えられるという見方なのか、どうでしょう。
  124. 福田赳夫

    福田国務大臣 それはそうはならぬという見解です。つまり、今度の公定歩合引き上げは〇・四%なんです。ですから、企業家の資金コストからいえば――コストといえば金利ばかりじゃありません。一番大きなのは何といっても原材料であり、それから人件費であります。そういう企業家の経理から見ましてきわめて微々たるものです。ところが、その原材料のほうが、卸売り物価が上がるというようなことになりますとコストに大きく響くわけでありまするが、その卸売り物価に対しましていい影響を持たせたいというのが今回の金融の措置なんです。ですから、この〇・四%の金利の引き上げは、企業によっていろいろ違いましょうが、ごくわずかの経費の増加です。これはもうカバーして余りある、こういうふうに考えております。
  125. 広沢直樹

    広沢(直)委員 結局全然影響がないという見方は、私はそうじゃないと思うのです。ただ先ほど言ったように、今回の引き締めというのが政策転換、多少の犠牲は払ってもという意味じゃなくて、予防的な措置にせよ、やはりこれは一面では心理効果というものもねらっていると思うのです。ですから、こういった機会に中小企業、あるいは中堅企業でもそうですけれども、現在相当逼迫してきている。物価値上げ調になってくるというならそういうことも大きく意味しているわけですね。ですからいま言ったような効果というのは当然考えられるということです。全然そういうことが考えられぬということはないと思う。それが今後における物価の上昇的な問題が、ほかの要因もあると思いますけれども、あらわれてくると考えられるのですが、それはいま言う心理的影響においても全然ないというお考えなのですか。
  126. 福田赳夫

    福田国務大臣 いや、いま広沢さんは金利が上がるからそれでコストが高くなるじゃないかというお話ですから、それはありましょうが、これは微々たるものである。しかし、他面において卸売り物価の抑制に大きな効果を生ずるこの措置はそれをカバーして余りある、総合して言っておるわけなんです。また、心理的影響とかいろいろな影響について申されますが、影響がなければ困るのです。影響があって初めて卸売り物価の引き下げにも作用してくる、こういうふうに考えております。
  127. 広沢直樹

    広沢(直)委員 確かに今度の公定歩合引き上げは、日銀総裁もはっきり言っておりますが、要するに物価の安定ということ、あるいは大蔵大臣もその意味もある、こうおっしゃっていらっしゃるわけでしょう。そういう見地から考えていくと、今度の当初予算にあたっても国鉄運賃の値上げだとか、そういう公共料金の値上げを初めとして、いままた一連の運輸関係の運賃が上がろう、こういう勢いが強いわけですね。そういった問題がやはり物価に大きく影響しているわけであって、卸売り物価あるいは消費者物価というものが非常に騰勢を強めているということ自体は今度の引き上げの主たる原因にはならないのじゃないか。設備投資にしても以前と違って、いま大体二〇%前後という設備投資の状況である。ですから、いままでの企業がどんどん設備投資をやっていかなければならなかったときは大体九五%ぐらいですか、非常に激しい伸び率であったけれども、現実的には二〇%前後ということを保っていっているいまの状況の中では、こういったことは通常維持されてしかるべき問題ではないだろうか、あるいはそれ以上押えていくということになれば、これはやはり落ち込みに向いていくような結果になるんではないか、こういう判断もできるわけですが、その点どうでしょう。
  128. 福田赳夫

    福田国務大臣 今後ほっておいて落ち込みになるだろうという説は、私は多数の人に接しておりますが、きょう初めてお伺いをいたすわけです。むしろ逆に、ほっておくと過熱になる、こういうようなことを憂える、これが金融界はもちろんですが、産業界におきましても、あるいは評論家、そういうような方面においても、一般的な見方であります。それに対して多少のことは何か考えなければならぬ、こういうふうに考えまして、先般の金融措置をとったわけであります。
  129. 広沢直樹

    広沢(直)委員 私は、落ち込みとは言っていないわけです。要するにこれは、きき過ぎるとそういうふうに向いていくのではないか。ただ、いままでの公定歩合引き上げ等というのは、さいぜんから再々言われておるように、国際収支の改善だというわけでしょう。そうしてまた、前回はきき目はないと言われたけれども、総裁は改善に役立ったんだ、こう言っているけれども、今度はそうじゃない。黒字維持基調の中でこれが行なわれる。ですから、それじゃ引き上げる要因というのは、景気を過熱していくような傾向見える、したがっていわゆる設備投資が増大しているじゃないか、あるいはそれ以外にいろいろありますけれども卸売り物価も上げられているわけですから、そういうことが一つ引き上げの理由ということに今度なれば、私が先ほど申し上げたように、設備投資にしても、そう過大的にこれはぐんぐん広がっているんじゃない、やはりいまの企業の能力から考えていけば、それくらいの伸び率というものは考えられるんじゃないかということが一点。それをいま主題として押えていこうという考え方になれば、先行きそういうことも考えられるのではないかというわけです。  もう一つは、いま言う物価の問題ですけれども、先ほど申し上げたように、物価に対する考え方卸売り物価というのは海外要因も非常に影響しているんだ、確かにそうだと思うのです。しかし、それに対して国内の需要というものも強いので、今回の卸売り物価というのは注目していなければならない。その意味においても、ある程度押えていかなければならないだろう、この意味はわからぬでもない。しかし、卸売り物価が上がっていく、そうしてまた消費者物価が上がっていくというこの問題に関しては、やはり政府の物価に対する姿勢というものが、真剣に取り組んでいるとはいうものの、今年度の当初予算における公共料金の値上げの姿勢から考えていくと、まだまだこういった問題というのは取り組み方が足りないというか、そういうような考えが起きるわけです。  したがって、今回の場合は、一応物価対策として考えられるならば、中小企業あるいは農業の、近代化のおくれた構造の改善をやっていかなければならない。それから、あるいは一面においては、中堅企業あるいは大企業の、要するに管理価格だとかあるいはカルテルだとか、その取り締まりを強化していく、独禁政策というものを強くやっていかなければならない。こういったものをやっていかなければ、物価問題として今度の引き上げ要因ということに考えられないんじゃないか。ここに、先ほどもちらっと総裁が言っていらっしゃったことは、金融面だけでは考えられない、総需要は押えられる方向に向いていくかもしれないけれども、これはおそいわけだ。こういう見地に立っていけば、この併用をしていかなければならないと思うわけだけれども金融引き締めで一番波をかぶるのは、これはいつも言われておるとおり中小企業だ。そういう観点に立つならば、今後もこういったことにおいて中小企業の倒産が増していくんではないか、あるいはそれによって近代化というものも、こういう引き締め基調にあるときにはおくれていくんじゃないか。現在の設備投資の増勢というものは、やはり大企業、そういった面において行なわれてきているわけですから、その点が非常に心配になるわけでして、その点をどう考えておられるか、お伺いしたいと思います。
  130. 福田赳夫

    福田国務大臣 物価対策は大きく分けますと二つになるわけです。一つは、総需要対策ですね、需要供給の関係ということになりますか。もう一つはコスト要因です。つまり、これが個別対策とでもいいましょうか。いま広沢さんの御指摘のように、中小企業の近代化だとか農村の近代化、合理化、それから競争体制の確立でありますとか、あるいは流通の改善でありますとか、いろいろのことが考えられます。これは個別対策。  個別対策、これは考えられまするけれども、特に中小企業の近代化、農村の近代化、流通機構の近代化、こういうことになりますと、かなりの時間がかかるのです。その時間のかかる間に、いま物価問題というむずかしい問題に当面しておる。これを、とてもこれらの個別対策というものが、当面起きておる物価対策に即効的な役割りを演じ得ないのです。そこでどうしても、いま当面するこの緊急の問題に対しましては、総需要の方面に重点を置くという考え方をとらざるを得ない。  そういうようなことからこの間の金融措置もとったわけでありますが、これの措置の推移を見て、さらにどういう対策をとるべきか、これも考えていきます。いきますが、個別対策、これで総合政策、総需要対策をとったから放置するのかというと、さにあらず、これもあわせて粘り強くやっていく、このほかないのです。  まあそういう考え方物価問題には臨んでいきたいと思っています。
  131. 広沢直樹

    広沢(直)委員 そういう意味はよくわかるわけです。ただ、引き締めがあった場合において波をかぶるのは中小企業であるといわれているわけです。ですから、前回の引き締めのときには大蔵大臣は確かに、中小企業に影響を与えないように、そちらのほうの規制はしない、むしろそういった面においては増額をしていくのだ、資金は潤沢にそれは回していくのだということをおっしゃっている。しかし、今度の公定歩合引き上げに対しては、要するに中小企業にも十分なる配慮は払いつつも、これは引き締めの影響というものはあるであろうというような談話を発表されているわけです。ですから、今回の引き締めをきかそうということになれば、いままでのような形じゃなくて、企業全体に対して相当引き締めというものはきいていかなければならない。でなければ効果は出てこない。  そういう見地から考えてみますと、いま言う中小企業というものは、先ほど御指摘のように、近代化がおくれている。これは長い間かかっていくとはいうものの、いま当面そういう引き締めによって波をかぶるのは中小企業ではないか、こういうことです。倒産件数も非常に高いわけですから、そういう見地に立って、ではこの引き締めに際して中小企業に対しては十分なる配慮ということは、先ほど日銀総裁もちらっと言っておりました。その問題に対しては、では大蔵当局としてはどういう考え方を持っているのか、この点を伺っておきたいです。
  132. 福田赳夫

    福田国務大臣 これは、引き締め措置というか今回の予防的措置は、大企業といわず中小企業といわず、あらゆる面にこれが波及しなければ所期の効果は及ばないのです。しかし、中小企業は弱い立場にありますので、その弱い立場という点におきましては、特別な配慮をしなければならぬ、そういうふうに考えております。  この前、昭和四十年の大不況ということがあった。あのときは、中小企業は特に非常に困難な状態に当面したわけでありますが、あのときの経験等もありますので、中小企業の運営につきましては特別に注意を払っていく、こういうかまえでございます。
  133. 広沢直樹

    広沢(直)委員 その姿勢としてはわかる。わかるけれども、具体的には、こういう引き締めがあった場合にどういうような手を打っていくか。形としてよくあらわれてくるのは、大体いま大企業の系列化が進んでいるわけですね。そういう関係で、引き締めにあうと、直接影響がないとしても、大体、大企業が手形を引き延ばすだとか、あるいは支払い遅延をやるだとか、こういう面は往往にしてあらわれてきているわけです。こういった面をはっきりさしていくということも一つの方法だと思うのです。手形のサイトを引き延ばすようなことはさせないとか、あるいは支払い遅延、そういうようなことは抑制していくとか、これに対する強力な指導がなければ、結局、親企業のいま言う資金の圧迫というものは全部中小企業がかぶるという結果において、いままで倒産とかそういう面が顕著にあらわれてきた。もちろんその倒産の中には、何も金融面だけでなくて、放漫経営だとかいろいろな理由はあるけれども、言うなれば、やはり資金が潤沢ではないということが近代化のおくれになり、すべてになってきているわけですから、今度その点の金融引き締め措置によって、政府自身が中小企業の保護育成ということから考えていくならば、直接その波をかぶって倒産がまたふえるという懸念の上に立つならば、当然こういった処置は強力に行なわるべきじゃないか。その姿勢を聞くと同時に、具体的にどういうふうな処置を考えていくのかということをお伺いしているわけです。
  134. 福田赳夫

    福田国務大臣 いま金融のほうでは量的引き締めという方向はとっていないのです。多少の影響はありましょうけれども、これは予防的措置を講ずるというので金利の引き上げをした、こういうのが現状でございます。その結果どういう影響が大企業といわず中小企業といわず出てくるか、これは戸の数カ月間の推移を見る、こういうことかと思うのです。  中小企業におきましては、前回の不況時と違いまして、系列化というものがかなり進んでおります。大企業のほうでも、中小企業の存在につきましては深い関心を持つに至っておるのです。事情はだいぶ変わってきておると思いますが、それにしても、しわ寄せというものが中小企業に集まるというようなことがあってはならない。そこで、日本銀行金融政策をやるにあたりましては、そういうふうにならないように銀行の指導に当たる、また大蔵省としては、歩積み・両建て、あれがまた頭を再び持ち上げないように配意をしなければならぬとか、あるいは支払遅延等防止法ですね、ああいうようなものをどういうふうに運営していくかというようなことも考えなければならぬ。いろいろ問題がありますが、まだこの措置が、いまこの段階影響をじかに出しておるという状態じゃございません。数カ月の推移を見なければわからぬ。その推移を見まして、適時適切なる対策をとる、こういうふうに御理解願いたいと思います。
  135. 広沢直樹

    広沢(直)委員 一時半まででどっかへおいでになる予定だったそうでございますので、時間がありませんので、最後に一言だけ聞いておきたいのです。  先ほど予算編成とからんでの質問がありました。それに年末になってみなければ、その時点景気状況を見てきめるというお話だったのですね。しかし、いまのような考え方で今度の引き締め、多少きくであろうという引き締め措置はとったのでありますが、大体引き締めがきいてくるというのは三、四カ月、そして末端まで浸透していくというのは、いままでの例にあったように七カ月かそこらくらいかかっているわけです。そうなってきますと、昨今の新聞を見ましても、金融筋では来年の一-三月ごろに大体こういう効果がわかってくるだろう、こういうことになりますと、現在の引き締め基調でいこうという、これは金融関係財政も伴っていかなければ引き締めというか、景気対策にはならない。そうなりますと、これが警戒的になるのか、あるいは中立的になるのか、積極的になるのか、基本姿勢としては一応警戒的な行き方でいくのが当然じゃないかと思われるわけです。その点は、そのときになってみなければわからないという含みの答えでありますけれども、いまの情勢から考えていって、景気引き締めの必要があるんだと見きわめていま予防的措置を講じた。これは相当長くかかると考えられているか、あるいは短期に終わると考えられているか。それから効果という面を考えていくと、来年の初頭になる。したがって、そういう見地に立って、年末になって予算編成ということになりますけれども、しかし、いまもう予算編成の作業にかかっているわけですから、引き締めの方向で考えていっているのか、その基本的な姿勢をお伺いして、時間をもっといただきたいのですが、超過しておりますので、きょうはこのくらいにしておきますが、的確にお答えをいただきたいと思います。
  136. 福田赳夫

    福田国務大臣 いまは、暮れというか十二月の時点に立って、昭和四十五年度の経済はどんなふうになるであろう、ほっておいたら過熱するのか、九月一日の措置が功を奏して鎮静安定の状態になったのか、そういうようなことをその時点で判断をいたしまして、それに対応した性格の予算を組みたいということなんです。いまこの時点で、来年は警戒型予算だとか、あるいは中立予算だとか、積極型の予算だとかいうことは申し上げかねるのです。もう少し時間をおかし願いたい、かようにお願い申し上げます。
  137. 田中正巳

    田中委員長 本日は、これにて散会いたします。    午後一時四十六分散会