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吉國(二)
政府委員 先般も申し上げましたけれども、そういう点がいわばこの制度を最終的に確定するについて一番問題だった点でございます。
一つの
考え方としては、この不服審査を司法的な立場でとらえるか、あるいは行政的な立場でとらえるかということが大きな分かれ目になるかと思います。
先ほど申し上げましたように、わが国では行政行為に対する抗告争訟的なもので準司法的な機関を設けるという例がございません。そういたしますと、準司法機関を新しくつくるとすれば、これはやはり司法系統の解決によらしめるという方向にならざるを得ない、
一つの
考え方といたしましては、第一審の地方
裁判所の中に独立の
訴訟部をつくるとか、あるいはそういうことで
裁判所の機構を非常に拡大するというのも
一つの将来の行き方として
考えられるのじゃないか。第二番目には、準司法機関的なものを設けます。しかしそうなりますと、三審制の司法機関の裁決との間にあまりにも重複が多過ぎる。そういう
意味では第一審を省略するという形が
考えられます。それから行政的に
考えます限りは、やはり
納税者の権利保護という面と、同時に行政の監督的機能、統一的機能というものを加味した、したがって行政部内における第三者的なもの
——行政部内と申しますのは、つまり、行政行為の基本権限のあるところの中にはありながら第三者的機能を持つもの、こういうような三つの
考え方があると思います。
もちろん、それぞれ
理由があるわけでございますけれども、現実に
考えました場合には、先般
大臣が申されましたように、実際に税務の争訟というものが迅速に解決されるということは、
納税者にとって権利保護の非常に有力な手段になるわけであります。そういう
意味から申しますと、迅速性という点を
考えますと、どうもいま直ちに司法機関を拡大するとか、あるいは準司法機関を設けるということは適当ではないのではないか。たとえば現在までに終結いたしました
訴訟案件を見ますと、税務争訟でも平均二年半ぐらいかかっているわけであります。それらを
考えますと、準司法機関なり司法機関を設けてそこに直接行くという形になりますと、
件数も何倍となってまいりますから、さらに混乱が生じてくるであろう。それとまた、わが国のいまの制度から申すと、一番現行の実定法体系に即しているのは、やはり行政
段階における解決ではなかろうか。行政
段階の解決といたしましては行政不服審査法の系統がございますけれども、この系統はまだ依然として昔の訴願法を継受したような面がございます。手続等は整備されておりますけれども、また、訴願事項等が概括的にきめられているという点では非常に進歩しておりますけれども、第三者的な機構を取り入れるということにはなっていないわけであります。
そういう点から申しますと、税務争訟は協議団という制度を取り入れて第三者的な機能というものをできるだけ果たさせようとした点においては、当時としては非常に進歩的な制度であったと思います。しかし、それが現在問題になっている点は、何と申しましても最終的な裁決権は協議団に留保されていない、
課税決定の指揮を現実に行ない、またみずからも
課税決定を行なっております国税局長にある、その点は第三者機能としては不十分であるという
判定がございます。そういう点で、行政
段階で不服審査の形をとるということに
結論が出ましたけれども、同町に裁決権というものを分離をいたしまして、
国税庁長官の執行権の中で事後裁決的な機能を完全に分離をいたしまして、特別の機構をつくる、それによって第三者的機能はほぼ完全に果たし得るであろうという
結論が出たわけでございます。
そういう
意味では、ほかの第三者機関としての、純粋な第三者機関を設けるという
考え方はもちろん十分に検討されましたけれども、現実的には日本の実定法体系には全く新しいものであるということが
一つと、それからそれが設けられた場合に司法制度までこれを直していく、第一審省略というようなことをやっていくには実際上相当な時間がかかる。むしろ、よし将来そういうことが
考えられるとしても、その準備
段階としては少なくとも第三者的な機能を果たす機関が発達していなければならないというふうに
考えられるわけでございます。税制
調査会も全然この
考え方が適当でないといっているわけではないので、十年あるいは二十年先にはそういう形も
考えられると思いますけれども、それに移るにはそれだけの準備が必要である。その準備として、一番適当なものとして
考えられるのは、やはり行政
段階の中に完全な第三者機関に近いものをつくるというところにあるのではないかという
結論が出たと思うのであります。
そういう
意味で、現実的な解決としては、やはり現在の
一般的な制度の範疇に残りながら、同時に第三者機関による裁決という方式を強力に取り入れまして、いわば将来のつなぎと申しますか、もちろんその場合には日本の行政、司法制度自体も相当変わってくるということも考慮に入れながら
考えていくべきではなかろうかというのが、今回の
結論だったわけでございます。