○上村政府
委員 いま
阿部先生の御
質問はごもっともだと思うのであります。
これは実は「
審査請求の趣旨及び
理由」とある、そしてそれにつきまして第三項は述べております。たとえば第一項第三号における趣旨というものはどうするのか、あるいはそれにある
理由というものはどうするか。また、それは明らかにされなければならないものとするというのでありますから、これはもちろんそうあってもなくてもいいものではありません。あってもなくてもいいものであればそれは書かぬでもいいだろう、こういうような御
主張はごもっともなんであります。でありますが、この点は御理解を賜わりたいと思いますが、全体的な
考え方といたしまして、今度のこの
不服審判所というものを設置するというものにつきましては、世論が、要するに従来の
協議団では裁決権を持っていない、要するに
国税局の
付属機関であって、そこにいわゆる裁決権というものは全然ない、執行機関の
付属機関になっておる、これでは同じ穴の
ムジナではないか、だからこれについて非常に
不満がある、こういう批判が強くなってきた。もう
一つは、
一つの執行機関の
付属機関でございますので、
国税庁の
長官から出しておる
通達と違反するということはほとんどできない。でございますので、
通達どおりにやっていかなければならない。そうすると、結局そこに真の権利救済というものができるのかできないのか。こういう、いろいろな点もございますが、大きな二つの点が世論で批判を受けてきた。それで、政府としましても、税調のほうへも御相談をかけて、税調の御意見というものをしんしゃくいたしまして、今回の
法律の
改正案を御審議賜わることに相なった。
この動き方からいいますれば、今度のこの趣旨というものにつきましては、裁決権を認めていく、あるいはこの
通達と違うということも、従来
国税庁長官が出しておった
通達と違うことで権利救済をしていく。これはいろいろな手続が一ぱい書いてありますけれども、そういうことで、
一つの従来の世論に対しましてこたえていくという道をとった。けれども、
先生も御案内のように、それでは、もしそういう趣旨からいうならば、むしろ準司法機関のようにしたほうがいいのじゃないか、こういうような御意見も出てきた。けれども、政府としましては、税調などの御意見が妥当であろうというようなことで、そういう趣旨にした。
こういういきさつを見ますと、従来よりもいわばこの
不服審判所というものの
権限といいましょうか、それが強くなってきた。要するに、従来よりも司法的といっては語弊がございましょうが、とにかくそういうような従来の裁判
制度の原理原則というものをこれに入れようという
考え方、だから挙証責任がどちらにあるのかという御論拠にもなるであろうし、また
先生も御案内のように、現在
司法裁判所におきましても
請求の趣旨及び
原因とありますが、これは専門家でも
請求の趣旨及び
原因というものはどの範囲かというのはなかなかむずかしいことで、要は、これこそ、およそ長年の司法
制度によりまして判決あるいは判例とかその他学説とかというものが出まして、現実においてはどの程度ということはわかってきておりますが、およそわかりにくい概念であります。けれども、そういうことでございまするので、とにかくその概念を比較的明白にしていくほうがいいじゃないかというものの
考え方というものは、私は、決して悪いことじゃない、いいことだと思うのでございます。がしかし、あってもなくてもいいのじゃないか、あってもなくてもいいのならやめておけばいいじゃないか、これはごもっともな意見です。けれども、少なくとも今度の
審判所につきまして、従来よりも強い
権限を与えるということになりますと、その権利救済の段階におきまして、当事者処分権主義というところまではいきませんけれども、
一つの従来の司法部面でとらえておりまするところの権利救済というものを導入していこう、こういうような
考え方のもとに、趣旨並びに
原因というものにつきましてある程度明白にしてきたものだ、こう思うのでございます。それで、あってもなくてもいいというわけではない。それかといって、この規定を入れたからといって
納税者に対して非常に不利というようなものをここでしたというわけでもない、こういうようなことであろうかと思うのでございます。
そういうようなことで、
先生が御
質問されていることはよくわかるしごもっともなことである。また事務
当局がお答えしておるのも、この従来の成り行きというようなものも説明しておりますので、たいへん失礼かと思いますが、申し上げておきたいと思います。