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広瀬(秀)議員 私は、
提案者を代表いたしまして、
国税審判法案につき、
提案の
理由及びその
内容の概要を御
説明申し上げます。
戦後二十数年を経た今日、
納税者の
税金に対する
不平と
不満は依然として非常に多いのが
現状であり、また、その
不平不満を
内容的に見ましてもきわめて切実なものがあることは、周知のとおりであります。
ところが、このような
納税者の
不平不満に対処すべき
現行の
権利救済制度は、その
不平不満、すなわち、
租税事案を正当に解決するにはあまりにも不備であり、かつ、欠陥の多いものであることは、つとに指摘されてきたところであります。
すなわち、
現行の
租税事案にかかる
権利救済制度のもとにおきましては、
処分庁及びその
直近上級庁が
不服申し立ての
処理機関とされておりますため、
不服申し立てについての決定ないし
裁決の公正は十分に確保されていないといわなければなりません。もちろん、
審査請求の
段階では
協議団の
制度が設けられてはおりますが、この
協議団の
制度につきましては、
執行機関の
系列内に置かれた
付属機関であり、
裁決権を有するものではなく、
国税局長の
指揮監督に属し、かつ、
協議官はすべて
税務職員で構成されていることなどから、
協議団に期待されている
裁決の公正をはかるための
担保的機能はきわめて不十分なものにとどまっているのが
現状であります。
さらに、
協議団が
執行機関の
系列内にある限り、
租税事案の
審理にあたって
国税庁長官の
通達と異なる取り扱いをすることは困難であり、そのため、本来
国民は
法令に拘束されるが、
通達には拘束されないものであるにもかかわらず、
不服申し立て、すなわち、
行政不服審査の
段階では
国税庁長官の
通達による拘束から脱することができない結果となっており、これでは
納税者の権利利益の完全な
救済が何ら確保されないことは明らかであります。
一方、
租税事案についての裁断の公正の確保という見地から申しますと、裁判所による
救済が最もその目的に合致するものではありますが、しかし、裁判所による
救済、すなわち、訴訟は、費用や時間を要する点に問題がありますので、裁断の公正を保持しつつ、比較的簡素な
手続により
事案が
処理されるような
制度が現在強く要望されているといわなければなりません。
すなわち、
現行の
協議団制度には裁断の公正を保持することができないという致命的ともいうべき欠陥が存するという
批判、その
批判からもたらされる完全な第三者
機関の公正な裁断による
救済への要求と、裁判のように費用や時間をかけなくても済むような租税
救済制度が望ましいという
納税者の立場、すなわち、行政
段階での比較的簡素な
手続きによる
救済への要求という両者の要請を満たすような新しい租税
救済制度を確立することが必要不可欠であるといわなければなりません。
以上のような考え方によりまして、
現行の
協議団の
制度を廃止し、行政
段階の新しい租税
救済機構として、
執行機関から完全に分離独立した
裁決機関としての
国税審判庁を設けることとし、この
国税審判庁が純粋の第三者
機関として
租税事案につき比較的簡素な
手続きで公正な審判を行なうことによって、
納税者の権利利益の
救済をはかることとする必要があることを強く認識し、ここにこの
国税審判法案を
提案した次第であります。
以下、この
国税審判法案の
内容についてその概要を御
説明申し上げます。
まず、第一に、この
国税審判法案による
制度の基本的な仕組みでありますが、内閣総理
大臣の所轄のもとに
国税に関する
不服申し立ての
処理機構たる
国税審判庁を設置することとし、この
国税審判庁による審判を、行政
段階における租税
救済制度の
中心的な地位を占めるものといたしたのであります。ただ、
事案が簡易少額であるなどの事情から
納税者が
現行の
制度によってより簡易迅速な
処理を期待する場合も存することを
考慮いたしまして、全面的にこの
国税審判庁による審判の
制度を強行するのでなく、
現行の
税務不服審査の
制度のうち、二審的
審査請求は廃止して、二審の
段階ではすべて
国税審判の権利の
救済によって不服の
救済を求めるべきことといたしますが、
異議申し立ての
制度と始審的
審査請求の
制度は存置し、すなわち、一審の
段階ではこれらの
制度と
国税審判庁による審判の
請求のいずれかを選択することができることといたしました。
第二は、
国税審判庁の機構でありますが、
国税審判庁は、中央
国税審判庁及び
地方国税審判庁とし、中央に中央
国税審判庁を、
地方には全国を通じて十一の
地方国税審判庁を置き、さらに、
所要の地に
地方国税審判庁の支部を設けることといたします。各
国税審判庁には、審判官、調査官及び事務官を置くことにしておるのであります。
第三は、審判
請求先でありますが、
国税庁長官のした
処分に対する審判の
請求は、中央
国税審判庁に対し、
国税局長、
税務署長、税関長または登録免許税に関する登記、登録
機関のした
処分に対する審判の
請求は、所轄の
地方国税審判庁に対して行なうべきことといたしておりますが、しかし、その
処分が、形式的には
税務署長のした
処分ではありますが、
処分書に、その調査が
国税庁の職員によってされた旨の記載がある場合及びその不服が
国税庁長官の
通達が
法令に適合しないことを
理由とするものである場合におきましては、すべて中央
国税審判庁に対して審判の
請求をすべきことといたしております。
第四は、審判の
請求期間でありますが、これにつきましては、
原則として、始審的審判の
請求については、
処分があったことを知った日の翌日から起算して二月以内、二審的審判の
請求については、
異議申し立てについて決定の通知を受けた日の翌日から起算して一月以内といたします。
第五といたしまして、審判権の行使の公正を確保いたしますため、審判官の除斥及び忌避の
制度を設け、審判官が事件や当事者と特殊な関係がある場合におきましてはその職務の執行から除斥される、三とし、また、審判官について審判の公正を妨げるべき事情があるときは審判
請求人、
処分庁または参加人はその審判官を忌避することができることといたしております。
第六は、審判の
請求と
国税の徴収との関係でありまして、これにつきましては、審判の
請求は、
処分の効力等を妨げないことといたしておりますが、審判
請求人が滞納
処分による差し押えをしないことを求めた場合には、審判の
請求について明らかに
理由がないと見られる場合及び繰り上げ
請求の
理由に該当する事実がある場合を除き、
国税審判庁は、
処分庁に対し差し押えをしないことを命じなければならないこととし、また、審判
請求人が相当の
担保を提供して差し押えの
解除を求めた場合には、
処分庁に対し差し押えの
解除を命じなければならないことといたしております。
第七に、
国税審判庁の
裁決に不服がある
処分庁は、その
裁決を取り消さなければ著しく公益を害すると認めるときに限り、裁判所に出訴することができることといたしております。
第八に、事件関係人の
審理期日における
意見の陳述、証拠
申し出の順序、
国税審判庁の
審理のための調査権等について、
所要の
規定を設けることといたしております。
以上が
国税審判法案の
提案の
理由とその
内容の概要でありますが、
納税者の
権利救済制度の根本的改革という問題は、周知のように、かねてからの
国民的課題ともいうべきものであり、
処分庁から完全に独立した純粋の第三者
機関による
権利救済制度の実現は、真に
納税者の権利利益の
救済を万全ならしめるものとしてこの
国民的な課題の解決への大きな前進を意味するものであることは明らかであり、
国税審判法の制定が必要であるゆえんがここに存することを深く認識していただきたいのであります。
国民の待望するこの
国税審判法案につきまして、何とぞ慎重に御
審議の上、すみやかに御
賛成くださいますようお願いいたしまして、
国税審判法案の
趣旨説明を終わります。
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