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1969-04-18 第61回国会 衆議院 大蔵委員会 第22号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十四年四月十八日(金曜日)    午前十時四十分開議  出席委員    委員長 田中 正巳君    理事 金子 一平君 理事 倉成  正君    理事 毛利 松平君 理事 山下 元利君    理事 渡辺美智雄君 理事 只松 祐治君    理事 村山 喜一君 理事 竹本 孫一君       伊藤宗一郎君    奧野 誠亮君       木野 晴夫君    河野 洋平君       笹山茂太郎君    正示啓次郎君       田村  元君    地崎宇三郎君       中村 寅太君    西岡 武夫君       坊  秀男君    本名  武君       村上信二郎君    山中 貞則君       阿部 助哉君    板川 正吾君       北山 愛郎君    久保田鶴松君       多賀谷真稔君    中嶋 英夫君       野間千代三君    平林  剛君       広沢 賢一君    春日 一幸君       沖本 泰幸君    田中 昭二君       広沢 直樹君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 福田 赳夫君         運 輸 大 臣 原田  憲君  出席政府委員         内閣法制局第四         部長      角田礼次郎君         大蔵政務次官  上村千一郎君         大蔵省主計局次         長       海堀 洋平君         大蔵省主税局長 吉國 二郎君         運輸省鉄道監督         局長      町田  直君  委員外出席者         日本国有鉄道副         総裁      磯崎  叡君         日本国有鉄道常         務理事     長瀬 恒雄君         日本国有鉄道常         務理事     小林 正知君         専  門  員 抜井 光三君     ————————————— 四月十七日  委員広瀬秀吉辞任につき、その補欠として山  花秀雄君が議長指名委員に選任された。 同日  委員山花秀雄辞任につき、その補欠として広  瀬秀吉君が議長指名委員に選任された。 同月十八日  委員北山愛郎君、佐藤觀次郎君、広瀬秀吉君及  び広沢直樹辞任につき、その補欠として山崎  始男君、板川正吾君、野間千代三君及び沖本泰  幸君が議長指名委員に選任された。 同日  委員板川正吾君、野間千代三君及び山崎始男君  辞任につき、その補欠として佐藤觀次郎君、広  瀬秀吉君及び北山愛郎君が議長指名委員に  選任された。     ————————————— 四月十六日  音楽等入場税撤廃に関する請願(田畑金光君  紹介)(第四三九六号)  同(森田重次郎紹介)(第四三九七号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  通行税法の一部を改正する法律案内閣提出第  二九号)      ————◇—————
  2. 田中正巳

    田中委員長 これより会議を開きます。  通行税法の一部を改正する法律案議題といたします。  質疑の通告がありますので、順次これを許します。平林剛君。
  3. 平林剛

    平林委員 ただいま議題となりました通行税法の一部を改正する法律案に関して、お尋ねをいたしたいと思います。  私がきょうお尋ねしたいことは、通学定期の問題であります。この方面はとんと私も専門的知識がございませんから、国鉄当局に初めお尋ねをいたします。  通学定期割引が行なわれて、私の聞いたのでは七割一分ぐらいの割引になっておるのだそうでありますけれども、これによって国鉄はどの程度実際に入るべき収入を縮小しているのでありましょうか。その金額はどのくらいになるか。また参考のために、通学定期というのは何人くらい該当者があるのかというような点をお話しいただきたいと思います。
  4. 磯崎叡

    磯崎説明員 私から御答弁をいたします。  通学定期につきましては、御承知のとおり国有鉄道運賃法に、通勤通学定期は五割引きに割引しろ、こういういわゆる法定割引というものがございます。それが第一の割引でございまして、それからさらに、現実に昭和二十三年以来割引率国鉄限りで設定しておるわけでございます。その割引率の平均は、区間によって若干違いますが、現在全部を平均いたしますと約八割一分引きになっております。これはさっき申しました五割を含めてでございます。ですから、五割を含めました八割一分でございますので、いわゆる法定限度よりさらに三割一分引いております。その三割一分に相当する額が的三百四十億でございます。したがいまして、もし初めの法定部分をいただくといたしますれば、約五百億ぐらいが法律割引すべきものだときめられており、さらにそれから三百四、五十億ほど引いております。したがいまして、現在通学者からもらっております運賃が大体百八十億でございます。そしていわゆる法定以上の割引が三百四十億ぐらいでございます。
  5. 長瀬恒雄

    長瀬説明員 定期利用人員が、四十三年は全体で五十億人でございます。このうちで通学関係は約二割でございます。
  6. 平林剛

    平林委員 通学定期法定で五割、国鉄昭和二十三年以来割引率をただいまのお話のようにやっておる。その理由はどういうところにありますか。
  7. 磯崎叡

    磯崎説明員 通勤定期につきましては、戦前からもある程度割引をいたしておりまして、その割引根拠は、やはり文教と申しますか、通学者学校に通う子供たち経費を幾ぶんなりとも国で見てやる、こういう思想戦前からあったのではないかと思います。それをそのまま引き継ぎまして、しかし、割引率戦前は大体五割前後でございましたが、それが終戦後いろいろの経済情勢関係で、いま申しましたように、最高九割以上引いていたことがございますが、現在は八割一分でございます。
  8. 平林剛

    平林委員 割引根拠がただいまお話しのように文教政策学校に通う子供たち経費をある程度負担しようという思想に基づいて行なわれておるというならば、これを私は素朴に考えますと、この経費率国鉄が背負わなければならぬという理由は何となく薄いように感ぜられるわけであります。本来は、これは文部省の教育予算補助一環として処理すべき性格のものではないかと考えるのですけれども、いかがでしょうか。
  9. 磯崎叡

    磯崎説明員 これは私のほうだけの意見でございまして、政府の御意見ではないと存じますが、私のほうからいたしますれば、戦前国鉄運賃収入に非常に余力があり、財政状態がよろしかったときは、しかも国によってほとんど事実上の独占権を認められておったわけでございますので、そういう際には当然国鉄負担する力もあるし、また負担しても差しつかえないというふうに考えておったわけでございますが、御承知のような財政状態なり、また、ことに企業独占性というのは全くなくなってしまったということになりますと、いわゆる負担の転嫁ができなくなってくる、こういうことになりますと、やはりある程度文教政策的なお考え方をしていただきたいというのが国鉄側の希望でございます。
  10. 平林剛

    平林委員 私もそうだろうと思うのであります。運賃収入余力があったとき、あるいは独占権が認められていたときの国鉄に課すべきものとしてこうしたものが国鉄負担になっておったというのは、当時の事情としてはある程度通ったかもしれませんけれども、今日のように、国民全般国鉄運賃の値上がりをこうむらなければならないというぐあいに国鉄自体財政的な危機があるときに、なおかつこれを国鉄負担するというのは、どうも理屈に合わぬという感じがするし、本来これは政府がその財政負担として持つのがほんとうでないかというのは、素朴な疑問であろうと思うのであります。  そこで私は、この素朴な疑問を大蔵大臣に解明をしてもらいたい。国鉄負担をするというのが妥当とはお考えになっておらないと思いますけれども、なぜ放置されておるのか、その辺をひとつ伺いたいと思います。
  11. 福田赳夫

    福田国務大臣 ただいま国鉄総裁からお答えがあったとおりでありまして、これは独占権を与えられておる、それで公共任務をやっておる、そういうことから今日まで来ておる、こういうことなんです。
  12. 平林剛

    平林委員 それが情勢が変わった。運賃収入余力があった時代は特別である、それから独占権を認められていた、しかし今日では、この委員会の審議でもいろいろな角度から検討されておりますように、自動車あるいは私鉄というものの発達に伴いまして、必ずしも国鉄がすべての運輸交通機関独占というわけにはなっていない、情勢が変わっております。その変わったときに、どうしてなおこういうのが通用するのでしょうかという素朴なる私の疑問に答えてもらいたい。
  13. 福田赳夫

    福田国務大臣 公共体だから財政が窮屈になってもほうっておいていいかというと、そうはいかない。そこで国は総合的に援助をするというので、今回大幅な財政援助をする。その個々についてするのじゃないのですよ、総合的にするというたてまえであります。
  14. 平林剛

    平林委員 総合的に援助をするというお考えはわからぬではございません。しかし、たとえば今日の国鉄の現状で、政府総合的援助をせねばならぬというときには、まず何を差しおいてもわかりやすいところから手をつける、筋の通ったところから手をつける、そういう意味では、教育予算的なものが国鉄になお負担をさせているというのは、優先的に解決すべきもので、これをその一環として解決する。そしてはじめて総合的援助というものが成り立つ、それが素朴なる根拠じゃないかと私は思うのです。それについてお答えを願いたい。
  15. 福田赳夫

    福田国務大臣 その援助方法がいろいろあると思うのですが、あなたは個別的な立場から考えておりますが、そうではなくて、総合的に援助する、もっと大幅な援助をする、こういうことなんです。
  16. 平林剛

    平林委員 これは大蔵大臣、やっぱり援助方法はいろいろあると言うけれども、こういう素朴なる疑問を残しておいて、そして総合的に、もっと大幅な援助をすると言っても、ここでは押し問答で通りますけれども、やはり一般国民の素朴な気持ち、これはやはり解消しない。その点は、大蔵省当局においても十分検討しなければならない問題だと私は考えておるわけですけれども、いかがでしょう。
  17. 福田赳夫

    福田国務大臣 検討しました結果、総合的に援助をする、こういうことなんですがね。いま学生の割引のことをおっしゃっていますが、これはどこまでが国鉄の固有の営業で、どこからが今度は公共的サービスか、こういうことになると、これは問題があると思うのです。それは非常に限界がむずかしいです。少しまけてお客さんを呼ぼう、こういう営業的な見地もあるだろうと思います。そういうむずかしいことでなくて、ひとつ総合的に援助してやろう、こういうたてまえであります。
  18. 平林剛

    平林委員 確かにおっしゃるとおり、どこまでが営業——たとえ通学子供でも、国鉄を利用する以上はその料金を払う、あたりまえだと思います。どこまで営業で、どこまで文教政策か、その区分の煮詰め方は理屈はあると私は思います。しかし、この場合に、運賃法は五割引法定ということになっておる。それをこえるものをやっておる。国鉄が好きでやっておるわけではない、ある程度国策上のことがあるとすれば、五割をこえる分については、やはり政府文教予算的なものとして区分するという理屈は成り立つのじゃありませんか。
  19. 福田赳夫

    福田国務大臣 しかし、その限界となるとなかなかむずかしいのじゃないでしょうか。つまり、幾ら割引をしました、それによって国鉄利用者がふえました、これは国鉄営業的役割りになるわけですね。それからその上が今度は公共的役割りになる、こういうことになるわけです。その辺の境目というのはなかなかむずかしいです。あるいは物資輸送にしてもそうだろうと思う。安くする、それがどこまでが政策的な意味を持つか、こういうようなことは非常にむずかしい問題があると思う。そういうむずかしい考え方をするよりは、公共企業体であるから、その公共性に着目して、総合的にこれを援助しよう。つまり、困らしては困る、非常に重大な役割りを持っておる、その役割りが尽くせないようになったら困る、そこでひとつ総合的に援助していこう、こういう考え方であります。
  20. 平林剛

    平林委員 限界がむずかしいということも私はわかります。わかりますが、ではどこで限界をつけるかといえば、法定の五割、それをこえたものについては文教政策的なもの、こういう割り切り方をしてできないことはない。問題は、大蔵省がそれをやるかやらないかということにかかっていくと思うのでありまして、ここに一つの問題があるということを私は申し上げておきたいと思うのであります。これはいずれかの機会に解決すべきものと、私だけに限らず、世論としてはそう考えるだろうということを申し上げておきたいと思うのであります。  そこで、いま大臣お話しになりましたが、もう一つの問題がやはりあると私は思うのであります。貨物輸送、これもいま国鉄では政策的な割引をしておるというのでございますけれども、これは、国鉄当局としては、大体どのくらいいわゆる公共的な負担として行なっておるかどうか、その数字を明らかにしてもらいたい。
  21. 磯崎叡

    磯崎説明員 貨物関係につきましては、やはりいまの通学定期と非常に似ておりまして、法律ではございませんが、法律の中に、貨物運賃等級表によってとるということになっておりますが、その等級表の中に一つのきめがございまして、そのきめの中で、いわゆる公共的な政策割引——政策等級と申しますか、それをきめております。その政策等級による負担が約四十億でございます。たとえば米などは本来二級の運賃をいただくべきところを四級の運賃に下げております。こういう意味のものであります。ちょうど、先ほど申し上げました定期法定割引と似たような性格のもの、これが約四十億ございます。  そのほかに、昭和三十年前後から、いわゆる暫定割引と申しますか、あるいは特別措置と申しますか、二種類ございますが、主として農林水産物資等につきまして、年間約五十億の割引をしておる次第であります。
  22. 平林剛

    平林委員 これも先ほどの学割と同じなんでありますけれども、こういうことになった根拠はどこにありますか。
  23. 磯崎叡

    磯崎説明員 初めのほうの政策等級につきましては、やはりこれは、国鉄貨物運賃制度が非常に古い、ほとんど明治初年以来の従価等級主義と申しますか、物の値段でもって運賃をきめるという、非常に税金的な運賃制度になっておりますので、値段の安いものは自然的に運賃が安い、こういうことになっております。したがいまして、先ほど申しました政策等級の四十億は、これはそういう運賃制度のころからきているというふうに考えます。しかし、御承知のとおり、ほかの一般輸送機関は、そういう物の値段でなしに、形とか重さとか、そういう輸送の対象として考えるべき物理的な性格から運賃が算出されておりますけれども、国鉄のこの運賃だけは物の値段できまっているということでございますので、主としてトン当たり価格の安い生活必需品につきましては自然的に運賃が安くなってくる。これは一つの問題であります。したがいまして、先ほど申しました通学の五割と似たような性格でございます。  その次の五十億の割引につきましては、これはやはり昭和二十七、八年ごろの非常にインフレーションのひどかった時代貨物運賃を相当大幅に上げていただきましたけれども、その際に、やはり国民生活影響が大きいということで、主として生活必需品につきましては、やはり一般貨物割引率より下げて若干の値上げを認めていただいたわけでございますので、その差額が結局割引運賃という形で残っているわけであります。古くは昭和二十七、八年、新しいものは昭和三十六年ごろから、物資によって違いますが、大体大きく分けて二種類ございますが、いずれも運賃値上げ国民生活に対する影響を極力減らすという意味割引をいたしておるのでございます。
  24. 平林剛

    平林委員 これも、いまお聞きのとおり、国民生活に大きな影響を与えるということから、国鉄貨物輸送暫定割引特別割引という形をとっておられると私は聞きました。今日、国民生活における物価という点は、大きな影響を与えるし、政府もこれを非常に重視しておる。佐藤内閣の重要な課題であると考えられておるわけでありますけれども、これなども国鉄に押しつける。先ほどの御議論とあるいは似たようになるかもしれませんが、私、これも筋が通らぬ。もしもこれが政府物価対策一環としてこういうものをやるということになったならば、政府物価政策というのはひとつ筋が通る、こう考えるのでありますけれども、これなどもやはりさっきと同じように、総合的な援助というような意味で、これはそのままほうっておく、こういうお考えでしょうか。
  25. 福田赳夫

    福田国務大臣 ですから、二つの考え方があるんですね。援助する場合に、個々の問題に着目して、そして援助するという方式、そういう方式もありましょう。ありましょうが、それっきりで一体いいのか、こういうことになると、そうでない場合も出てくるかもしれない。そういう考え方ではなくて、国鉄は重要なる国策を遂行しておる、その立場に立って、困れば政府も黙ってはおらぬ。また何回も申し上げますが、総合的な立場国鉄財政を見る、こういうことだろうと思います。そっちのほうが、むしろ筋が通るんじゃないですか。国鉄公共性の高いものである。その公共任務としてサービスを与える一面、しかし、その結果困るということがありますれば、また、ほかのいろんな要因ともあわせ考えまして、総合的にこれを援助していく、これも私はりっぱな考え方であろう、かように思います。
  26. 平林剛

    平林委員 いまの説明で筋が通る人と通らぬ人とある。通る政治と通らない政治があると私は思う。かりに私どもが政権をとったならば、私はこういう時期には、いま言った九十何億円ですからね、これは政府物価対策一環として一般的予算で処理するという方針を私なら出しますよ。そのほうが筋が通ると私は考えています。大蔵大臣のそういう筋も、通るところもあるでしょうけれども、われわれの常識では通らぬ。これも一般国民——ここで幾らやっても、大臣わりあいとそういうところはがんこなところがあるからすぐに考えを直すというわけにはいかぬでしょうが、世論がきめるだろうとは思います。しかし、政府においてもこの際、こうした問題を検討したとお答えになるでしょうけれども、今後も検討する必要があるということを申し上げておきたいう思うのでございます。  次に、国鉄資本金についてお尋ねいたします。国鉄資本金はいま幾らですか。
  27. 磯崎叡

    磯崎説明員 八十九億でございます。そのほかに再評価積立金、再評価益でございますが、昭和三十年に第二次の再評価法に基づきまして、資産を再評価いたしまして、その分が一兆一千二百億でございます。
  28. 平林剛

    平林委員 国鉄が発足したときの資本金幾らで、現在の資本金幾らか、こういうような点の御説明をいただきたいと思います。
  29. 磯崎叡

    磯崎説明員 昭和二十四年に国鉄が発足いたしましたときの貸借対照表上の資本金は四十九億でございました。その後、昭和二十五年に政府から四十億の出資をいただきまして、現在は八十九億でございます。
  30. 平林剛

    平林委員 もし国鉄と同じ程度規模資産を擁する民間会社、あるいはこれの例に一番近い私鉄企業などにたとえてみたならば、非常に私は国鉄資本金というのは少ないんじゃないかと思うのですけれども、その点はどんなふうに感ぜられていますか。
  31. 磯崎叡

    磯崎説明員 いま申しましたとおり、八十九億の出資のほかに、政府から日本国有鉄道になりました際に引き継ぎました資産の再評価益が一兆一千億ほどございますので、それを加えますと約一兆二千億台になるわけでございます。そうすると、現在国鉄があげております収入年間一兆でございます。したがいまして、その再評価益がそのまま資本金になるべきであるということにいたしますれば、それほど過小資本ではないというように言えると思いますが、問題は最近いたしておりますところの大きな投資が、まあ民間会社ならばあるいは増資等方法によって投資されるものでございましょうが、その方法が行なわれないで、自己資金並びに借り入れ金でやっているというところに問題点があるというふうに考えます。最近の大きな投資を行ないますまでのことにつきましては、もし再評価益をそのまま資本金と見ますれば、それほどの過小資本ではないというふうに考えられるわけでございます。
  32. 平林剛

    平林委員 この資本金八十九億円を、民間企業であると、たとえば年間の収益の何ぐらいは資本金になっている、国鉄ぐらいの規模なら六千億円や七千億円ぐらいはあたりまえであるというような議論を私は聞いておるわけなんでありますけれども、いまのような資本金のままに置いて、再評価益というのはどういうようなぐあいに動くのか私はよくわかりませんけれども、資本金をふやしていくということは、国鉄企業経営上いろいろな影響があると考えておるのですが、いかがですか。
  33. 磯崎叡

    磯崎説明員 その点につきましては、すでに国有鉄道法の第五条に資本金という規定がございまして、「日本国有鉄道資本金は、別に法律で定めるところにより、昭和二十四年五月三十一日」すなわち、国有鉄道ができた日の前日でございますが、「五月三十一日における国有鉄道事業特別会計資産の価額に相当する額とし、政府が、全額出資するものとする。」その次に「政府は、必要があると認めるときは、予算に定める金額範囲内において、日本国有鉄道に追加して出資することができる。この場合において、日本国有鉄道は、その出資額により資本金を増加するものとする。」こういう法律がすでに第五条で準備されておりまして、一般の商法の原則によらない増資方法がきめられてあるわけでございます。したがって、この法律を制定されましたときにも、いま先生のおっしゃったようなことをある程度予見してこういう法律ができたんじゃないかというふうに考えられるわけでございます。
  34. 平林剛

    平林委員 私の答えに正しくぴったりきていないお答えですけれども、大蔵大臣に伺います。  ただいま国有鉄道法第五条、第二項に、「政府は、必要があると認めるときは、予算に定める金額範囲内において、日本国有鉄道に追加して出資することができる。この場合において、日本国有鉄道は、その出資額により資本金を増加するものとする。」と書いてあるわけであります。ただいまのお話のように、国鉄昭和二十四年四十九億、その後増資がありまして、二十五年八十九億になっておるわけであります。しかし、それ以後資本金は八十九億円にとどまっている。一般企業と比べて、国有鉄道の持っておる事業規模から考えますと、あまりにも過小である。確かに再評価益というお話はございましたけれども、ただいまの法律に基づけば、政府は必要があると認めたときは追加して出資しなさい、とこう書いてあるわけです。これを国鉄が発足以来今日まで資本金の増加がない。これは政府国鉄そのものに対して可能な限りの出資を含めた努力をしていないということにも通ずるのではないかと思うのであります。もちろん、必要を認めなかった、こう言えば別でございますけれども、必要を認めなかったのかどうか、この点をお答えいただきたいと思います。
  35. 福田赳夫

    福田国務大臣 いま副総裁が申し上げたとおりでございまして、積立金があるわけなんです。企業会計ではこれを評価する、こういうことが当然のことなんで、そういうことからいいますと国鉄自己資本状態というものは悪くない。私鉄では二一・七%、鉄鋼では二六・二%、電力三一・六%、それに対して国鉄は実に四二・三%と、こういう高さ。でありまするから、資本が少ない、こうは私は言えない。そこから問題はそうはないと思います。かりに資本を出してもどういうことになるかというと、金利がそれだけ助かるというだけの問題であって、そう大きく国鉄に貢献をするということじゃない。そのかわりには資金運用部資金というものを毎年毎年多量につぎ込んでおる、安い長期の金をつぎ込んでおる、こういうようなことで十分カバーして余りある、こういうふうに考えております。
  36. 平林剛

    平林委員 ここも政府大蔵大臣のお考えと私の根本的な違いですね。資本金をふやしても金利が助かるだけで、大きなことはないと言うけれども、今日国鉄一つ企業的な危機にある、国鉄運賃値上げをしなければならない一つ理由、しかも大きな理由は金利負担、これがあるわけでしょう。そうすれば金利が助かる程度である、大きなことではないというのは、ちょっと認識が違うんじゃないでしょうか。それからもう一つ政府のほうは長期低利の融資をしておると言うけれども、融資は利息がつく、それをつかないようにして国鉄の再建を軌道に乗せるというふうに考えるのが、今日政府当局の必要な努力として要請されているときではないでしょうか。  そういうことを考えると、私は、今日の国有鉄道資本金八十九億円は過小に過ぎるから、国有鉄道法第五条第二項に定められたとおり、政府出資金をして資本金を大きくすることによって金利を助けさせる、この措置こそ当面とるべきものでないか、こう思うのですが、いかがですか。
  37. 福田赳夫

    福田国務大臣 いまあなたもよく財政の実情を御承知でしょうね。百億、二百億入れたところで、利息の負担六、七億というようなものでしょう。その程度国鉄問題が解決されるわけじゃないのですから。これが一兆円も資本を投入する、こういうことになれば、これはもうたいへん変わってくるでしょうけれども、これはもう現実離れをしたことなんで、現実に即して考えるときには、やはり資本金の問題がいまそう大きな問題になっておる、そういうふうには考えない。やはりそれは総合的にこれを援助しなければならぬ時期に来ておる、そういう認識でございます。
  38. 平林剛

    平林委員 しかし、私の指摘している点はおわかりでしょう。国鉄資本金八十九億円は過小に過ぎるのではないか。国有鉄道法第五条第二項に「政府は、必要があると認めるときは、追加して出資することができる。」ことになっているのですから、その方法をとったらどうですか。しかし、一ぺんに五千億円も六千億円も出資するということを求めているのではありません。政府の姿勢が問題ですよ。昭和二十五年に約四十億円出資増加して以来やっていない。あなたはいま百億円や二百億円やってもしょうがないと言うけれども、百億円といえどもこれを十年間続ければ一千億円になるし、二百億円といってもこれを五年間続ければ一千億になるわけですね。私はその姿勢を言っておるわけです。一ぺんに何千億円もこういう措置をとることは、幾らあなたが財政的にたんのうなる大蔵大臣としても無理でしょう。無理なことは言いません。しかし問題は、二十五年以来この状態に置いておる、そういうほうりっぱなしの状態をどうかしたらどうか、可能な限り出資をするという姿勢があるかどうか、これです。
  39. 福田赳夫

    福田国務大臣 個々考えますと、いろいろ方法があるのです。ありますが、あなたはさっきは特別割引、これに着目されての議論をされておる、今度は資本金についての議論をされておるわけです。しかし、そういう個々の問題ではなくて、総合的にこれを援助しなければならぬ時期に来ている、こういうので、私どもとしては非常に思い切ったことを考えておる、そういう援助をしておる。現実問題として資本金の問題でこれが片づく、そんなふうな認識を持っておりません。おそらくあなたもお持ちにはならぬだろうと思う。  それから、資本金の問題からいえば、企業会計原則からいいまして、とにかく四二%という高い自己資本率を持っているのですから、この問題から入るよりは、もう少し高い角度から、大きな角度から入ったほうがよかろう、こういう考え方であります。
  40. 平林剛

    平林委員 私は高い角度とは考えていない。私は個別のことを言っておるつもりはありません。いま質問を展開してまいりました三つの問題、それぞれ総合的に考えれば、いかに政府がこうした措置についてほうりっぱなしかということが浮き彫りになるでしょう。私は個々の問題を言っておるつもりはないのです。資本金の問題、学割に対する政府の措置、それからまた貨物輸送に対する政府考え、そうしたことを総合的に考えてやることこそ必要な措置ではないかということを私は申し上げておる。それを積み重ねれば総合的なものになっていく。依然として私たちにこういうことを指摘される問題点を残して、いや、総合的にやったのだと言うが、こうした措置をまず解決して、なお足らざるものを援助するという考え方もあっていいのではないですか、私はそういうことを申し上げておるわけなんであります。これも政府出資金を資本金として検討すべきであるということを要望いたしたいのでありますけれども、いかがでしょう。
  41. 福田赳夫

    福田国務大臣 とにかく今度の問題は、国鉄財政再建推進会議において十分検討して、総合方式が一番よろしい、こういう結論に達したわけです。それを大体われわれとしては清水から飛びおりるような気持ちでうのみにした、こういうような考え方なんです。その点をとくと御理解のほどをいただきたいと思います。
  42. 田中正巳

    田中委員長 速記をとめて。   〔速記中止〕
  43. 田中正巳

    田中委員長 速記を始めて。
  44. 平林剛

    平林委員 次に、国鉄当局お尋ねしますが、国鉄定期の旅客の運賃収入はどの程度得ておりますか。これは国鉄運賃収入のどのくらいの割合を占めておりますか。
  45. 長瀬恒雄

    長瀬説明員 お答えいたします。  収入は、普通旅客、いわゆる乗車券を買うお客、これは四十二年でありますが、四千六百五十億円、定期が八百二十六億円、比率にいたしますと一五%程度定期収入であります。
  46. 平林剛

    平林委員 最近は定期で通うという人もかなりふえている。つまり定期を利用する人もふえていると思うのですが、いま四十二年というお話でしたけれども、たとえば五年前、十年前くらいの割合はどうなのですか。ずっと大体一五%程度が継続されているような形になっておりますか。
  47. 長瀬恒雄

    長瀬説明員 利用人員といたしましては、普通旅客が約二十億人でございます。定期の旅客が五十億人でございます。したがいまして、この比率は全然逆でございますが、先ほど申しました収入は、大体一五%程度でございます。
  48. 平林剛

    平林委員 わかりました。  急行料金、寝台料金、これの収入額はどのくらいになっておりますか。それぞれに答えてください。
  49. 磯崎叡

    磯崎説明員 急行料金の収入額が、四十二年度の実績が千九十四億、それから寝台料金は百二十二億でございます。これはいずれも四十二年度の実績でございます。先ほど長瀬が申しました定期外の一般のお客さんの収入の数字の中にこれが入っております。念のために申し上げます。
  50. 平林剛

    平林委員 四千六百五十億円の中にですね。
  51. 長瀬恒雄

    長瀬説明員 はい、さようでございます。
  52. 平林剛

    平林委員 そこで私は、財政法第三条と、ただいま問題にしております定期の旅客運賃並びに急行料金、寝台料金との関係お尋ねしたいわけであります。  国有鉄道運賃法によりますと、普通旅客運賃については一キロメートル幾らと、その賃率が法律で定められております。しかし、定期旅客運賃とそれから急行料金、寝台料金は国有鉄道がこれを定めることになっています。これはどういうわけかという点であります。いかがでしょうか。
  53. 町田直

    ○町田政府委員 財政法第三条並びに財政法第三条の特例に関する法律によりますと、国有鉄道運賃につきましては、その基本賃率を定める、こういうことに相なっております。運賃法におきましては、運賃及び料金を定めるということになっております。さらに加えまして、たとえば先ほど御議論の出ました定期運賃については五割までとする、そういうことを定めてあるわけでございます。その他につきましては、いま御指摘のような定期運賃の実際の割引率とかあるいは施設の使用料金、こういうものにつきましては、国有鉄道総裁が定める、こういうことに相なっておるわけであります。
  54. 平林剛

    平林委員 財政法第三条によれば、「租税を除く外、国が国権に基いて収納する課徴金及び法律上又は事実上国の独占に属する事業における専売価格若しくは事業料金については、すべて法律又は国会の議決に基いて定めなければならない。」と書いてございます。なるほど、いまお話しのように、財政法第三条の特例に関する法律には、「国有鉄道における旅客及び貨物の運賃の基本賃率」以外のものについては、法律または国会の議決を経なくてもこれを決定し、改定することができると書いてありますけれども、財政法第三条の基本から考えますと、この点には少し矛盾がある。というのは、いままでは定期代の収入あるいは急行料金の収入というものがそんなにたくさんなかった時代、この時代には、ある程度この財政法第三条の特例に関する法律理屈は成り立ったかもしれない。しかし、いま御説明のありましたように、急行料金の昭和四十二年度の収入で千九十四億円、四十三年、四十四年は明らかにされません。しかし、最近の国鉄の傾向は、次第に普通の列車を急行なり特急に切りかえてきている。そして実質的な増収をはかるようなことをやって営業をおやりになっておる。これはいろいろな事情もあるでしょう。国民の要求もあれば、財政上の、収益上の必要もある。そういうことで、急行、特急がふえておる時代になってきております。したがって、この金額はこれからはふえるといっても、減ることはありません。今回の通行税法によりましても、新幹線その他の急行料金は大幅に上がります。この金額は総体的に大きくなるわけであります。  私は、このことは国民生活に与える影響もまたいままでより以上に倍加してくるであろうと考えるわけであります。そうなれば、昔、財政法第三条の特例に関する法律に基づいて、今日の国有鉄道運賃法第五条、第六条で国鉄がこれをきめておりましても、時代が違ってきたということを考えますと、本則に戻るべきではないか、こう考えておるわけであります。これは財政をあずかる大蔵省のむしろ御見解が必要でないかと考えておるわけでありますが、いかがでしょう。
  55. 海堀洋平

    海堀政府委員 財政法第三条の趣旨は、国が租税はもちろんのことでございますが、非常に独占的に経営している事業、それは国民生活に非常に密接な関連がございますので、国会の議決を経て定めるという趣旨でございます。したがいまして、立法論といたしましては、先生のおっしゃられる趣旨は十分わかるわけでございます。ただ、先生も御存じと思うのでございますが、現在国鉄は非常な財政の危機に直面しておりまして、財政再建推進会議の御答申におきましても、また、私のほうの財政制度審議会の答申におきましても、こういう財政危機に直面し、しかも競合的な輸送手段が非常に発達しておりまして、常に競争を意識しながら、弾力的に事業を遂行していく必要上、臨時的に行政府あるいは運輸大臣に料金をある程度の裁量をもって上下できるようにしてはどうかというふうな意見も出ておりますので、基本的な考え方といたしましては、先生のお考えは立法論としては十分わかるわけでございますが、現在の国鉄の危機を打開し、そして現在の輸送手段間の競合関係というものを考えるときには、ある程度政府に弾力的な操作を許していただくということもまた必要ではなかろうかと存じます。
  56. 平林剛

    平林委員 急行料金あるいは定期収入が比較的小さいときは、いまあなたのお話しのように、国鉄の裁量にまかせることも容認できる条件はあると思います。しかし、今日のように、国鉄の今後の経営、それから提出された法律案、今後の傾向ということを考えますと、企業だけの立場でものを考えられては国民は困るわけであります。私は国民の名において、財政法第三条の本則に戻る必要があるのではないか。あなたは企業立場を主張したが、大蔵省はもっと大きな意味国民の生活ということを考えなければならぬ。その調和を求める必要があるのです。今度の法律のように、一キロメートル幾ら幾らにするというのを出してくる。それと同じように、急行料金は幾ら、それからこれは幾らというふうに法律上書いてくるということが望ましいと私は思うのです。今日の法律はどうも財政法第三条のたてまえに反する。国民立場においてものを考えれば、ここは考え方を改めねばならぬ、こう思うのですけれども、これは主計局次長さん、同じ答えならあなた答えなくていいから、政務次官いかがでしょう。
  57. 上村千一郎

    ○上村政府委員 平林先生が御指摘をされておられる点につきまして、次長も立法論としましてはよく考える点があるということを申しておるわけでございます。なお、これだけ国鉄運賃というものにつきまして国会内におきましてもいろいろと御論議が起き、また世論も相当あるという意味におきまして、国鉄運賃というものが非常に国民経済全体に大きく関係があるだろう、そういう意味において財政法第三条の本旨に戻る必要がありはせぬかという御論旨かと存ずるわけでございますが、その立法論という問題につきましてはよく考えていく必要があるけれども、しかし、現在の段階におきましては、国鉄当局の行政措置というようなものについてある程度弾力性を持たしておく点も必要であろう、こういうふうに次長も述べておるわけでございます。大体大蔵省としましてもそんな考えを持っておるわけでございます。
  58. 平林剛

    平林委員 この点は考える必要があるんじゃないですか。まあ私は、今国会で直ちに現在の国有鉄道運賃法の第五条、第六条を変えて運賃法のときにそれを法定化しろ、直ちにせよなんという性急なことは言いません。しかし、国鉄運賃は四年に一度ぐらい上げるというようなことを、いいか悪いかは別にいたしまして、大体政府でもお考えになっておるのですね。そういう意味では四年後の話になるかもしれません。しかし、四年後のときには法律上検討しなければならないというものは、これはやはり筋として、四年後の情勢考えたならば、法定化する必要はお感じになるぐらいな時代の先覚といいますかそれだけの認識といいますか、国民立場に立ってものを考えるという考え方は必要なんじゃないですか。
  59. 海堀洋平

    海堀政府委員 実は今回の国鉄財政危機に際しまして、運輸省の側で国鉄財政推進会議の審議を経まして答申を得ており、また、大蔵省といたしましても財政審で真剣な討議をしたわけでございますが、推進会議のほうでは「再建期間の初期において、公共負担の是正を含み実収一〇%程度運賃改訂を行なうとともに、その後における物価騰貴等の止むをえない要因に基づく運賃改訂については、国有鉄道運賃法の特例的措置として運輸大臣の認可事項とし、適切な時期にこれを行なうことができるよう措置する。」というふうに、全体として認可事項的なことを考えてはどうか、これはもちろん臨時緊急の措置という意味でございますが、そういう御答申をいただいておるわけでございます。  また、財政審におきましても、「国鉄財政再建については、その経営責任者が企業的精神に徹してその運営に当ることが強く要請される。これがため、国鉄に対する政府及び国会の監督は真にやむを得ない最小限に止め、企業の自主性を最大限に発揮せしめることとする。」というふうな答申をいただいております。  どこまでを法律的な規制に置くかという問題は非常にむずかしい問題でございますが、先生も御存じのように、たとえばたばこにつきましても、昔は個々の品目につきまして一々国会の御審議をお願いしていたわけでございますが、やはりいろいろな嗜好の変化というようなこともございまして、グループ別の価格につきまして国会の御審議をお願いするというふうになってまいっておりますので、その点は企業性と政府、国会の規制の調和という点をどこに求めるかという非常にむずかしい問題だと存じます。今後とも真剣に検討してまいりたいと存じます。
  60. 平林剛

    平林委員 あなたが真剣に考えるということで、私はこれ以上議論は進めません。進めませんが、常識として考えてもらいたい。というのは、普通旅客運賃については法定化しておる。そうして定期、急行料金、寝台料金等につきましては国鉄にまかせておる。しかし、次第に急行なり特急の本数がふえてくるというようなことになると、むしろこの収入のウエートが高くなってくる。そのバランスを考えて、まあ逆転したり何かすることはどうかわかりませんが、ここをなお検討して、普通運賃のバランスと特急料金あるいは急行料金、寝台料金の増加というようなバランスが相当程度接近する、あるいは逆転する、まあそこまでいかなくても、国民生活影響を与えるということにおきましては同じことなんですよ。そうなればひとつ財政法第三条の本則に戻って、国民立場に立って、これを規制するのは国鉄なかなか困難であろうけれども、これは国民のための国鉄なんでありますから、そこはやはり筋を立てていく。真剣にひとつ御検討をいただきたいということを要望いたしまして、次の質問に移ります。  次は、国有鉄道運賃を定める原則というものがございますね。ちょっと原則をお話しいただきたいと思います。
  61. 町田直

    ○町田政府委員 国有鉄道運賃法第一条の第二項によりまして、「前項の運賃及び料金は、左の原則によつてこれを定める。  一 公正妥当なものであること。二 原価を償うものであること。三 産業の発達に資すること。四 賃金及び物価の安定に寄与すること。」以上でございます。
  62. 平林剛

    平林委員 国有鉄道運賃法第一条第二項にはただいまのような規定があります。「一 公正妥当なものであること。」たいへんけっこうなことであります。公正妥当なものでなければならない。「二原価を償うものであること。」これも当然一つ考え方としてよろしいと思います。「三 産業の発達に資すること。」これも、国有鉄道が今日発展をしてきた現状における役割り等を考えますと当然のことでございましょう。「四 賃金及び物価の安定に寄与すること。」これも、私は当然であろうと思う。幸いこの中には、衆議院の運輸委員会みたいに、委員長とこう言ったら国鉄運賃法を上げてもいいなんて書いてないから、たいへんけっこうな原則が書いてあると思うのですね。あんなやり方で運賃を上げるというのはよくないですね。ああいう審議のやり方で運賃を上げてもいいなんということは法律に書いてない。あれはちょっとこの法律から考えるとよくないですな。  これは別にいたしまして、私の言いたいことは、いまあげた四つのうち三つまでは抽象的なことばなんですね。「公正妥当なものであること。」「産業の発達に資すること。」「賃金及び物価の安定に寄与すること。」これは非常に抽象的であるし、非常に選択的なものであるし、その判断によってはどのようにでも動くというような規定であります。しかし、第二号の「原価を償うものであること。」ということは、原価ということに関する限り、きわめて具体的な問題であるということは皆さん御専門家でありますからお気づきだと思うのであります。  さてそこで、私は、この国有鉄道運賃金法第一条の運賃、料金を定める原則に照らしてみて、貨物運賃の問題を取り上げたいと思っておるわけでございます。貨物輸送における国鉄収入幾らでございましょうか。
  63. 小林正知

    ○小林説明員 お答えをいたします。  四十四年で申し上げますと、国鉄におきます貨物運賃年間収入は二千六百六十九億円、かようなことになります。
  64. 平林剛

    平林委員 全収入の何割ぐらいになりましょうか。
  65. 小林正知

    ○小林説明員 全収入が、その場合におきまして運輸収入のトータルが一兆五百八十二億円でございますので、おおむね二六%程度になるかと思います。
  66. 平林剛

    平林委員 この貨物運賃は原価計算すると、収入に対する割合は百分の百四十、すなわち赤字になっておると聞いておるのでありますけれども、いかがでしょう。
  67. 磯崎叡

    磯崎説明員 四十二年度におきましても、全体として赤字が出ておりますので、客貨とも実は赤字でございます。一応旅客と貨物に分けて申し上げますと、貨物は、営業係数、いま先生のおっしゃいました一四〇は一二五でございます。貨物が一二五で旅客が九八でございます。これは四十一年度でございます。
  68. 平林剛

    平林委員 一応旅客は百分の九十八、貨物は百分の百二十五、そうすると貨物輸送に関しては収入より経費のほうが多い、そういうことになると思うのでありますが、それならば、私が指摘をいたしましたように、国有鉄道運賃法第一条第二項の「運賃及び料金は、左の原則によつてこれを定める。」ということに反する、そう考えてよろしゅうございますか。
  69. 磯崎叡

    磯崎説明員 運賃法の、先ほど先生がおっしゃいました原則の第二号の「原価を償うものである」という解釈に実はいろいろございまして、いわゆる全体として国有鉄道収入が支出を上回っているという時代、それから収入が支出に及ばないという時代ということで多少違ってくると思います。現時点におきましては、御承知のとおり全体から見ますと、四十二年度以来赤字に転落いたしておりますので、客貨とも赤であります。しかし、赤の程度は、先生のおっしゃったとおり、貨物のほうがひどいということでございまして、いわゆるこの運賃法の「原価を償う」という意味は総括原価である、全体としての収入と全体としての原価、こういう見方をいたしております。  と申しますことは、たとえば旅客運賃の中でも、定期一般とを比較いたしますと、定期は非常な赤が出ておる。しかし定期以外、ことに新幹線のようなものは非常にもうかっているというふうになりますと、本来ならば一体原価とは何か、線別にしなければならない、あるいは客貨別にしなければならない、しかもその客貨別の中でも輸送の種類ごとにしなければならぬということになりますので、それは非常に無理だということで、現時点におきましては全体の収入と全体の原価というふうな解釈でいく以外にない、こういうふうに考えております。
  70. 平林剛

    平林委員 個別的な考え方ではなくて総合原価主義でいく、そういう形から国有鉄道運賃法第一条第二項の規定には反しないと思うというのが、要すればそのお答えになっておると思うのでございます。それだと運輸大臣、いわゆる赤字路線はこれは赤字だから廃止するというのもおかしいですね。総合的な原価主義ということになりますと、これだけ取り上げてこれは廃止するという方針をとるというのは間違いですね。おかしいですね。ロジックが合わない。運輸大臣いかがでしょう。
  71. 原田憲

    ○原田国務大臣 総合原価主義をとっておりますから、現在赤字線は黒字線のカバーによって運営されておる、こういうことになっておりますから、いま平林さんが言っておられる、総合原価主義からいうとそれははずすということはおかしいということにはならないのじゃないかと私は思います。  しかし、先ほど言われました運賃四原則という中には、産業の発展にも尽くさなければならぬということがこの運賃の基本にきめられておるわけであります。したがって、いまの赤字線の多くというものはこれから開発していかなければならない地点も入っておると思います。逆に、昔と違って、昔は競合するものはなかった、国鉄が唯一の交通機関であったという時代と違って、ほかの輸送機関のほうがよい場合がある、ということが新しい部面として出てきておりますので、赤字を出すものを廃止をするということについて、一つ理由だけで、企業性ということだけで廃止をするということは国鉄の場合問題があろう、このように把握をいたしております。
  72. 平林剛

    平林委員 これは少しく私は議論があるところですけれども、きょうは本題のほうではないからこの程度にして、ただ私、国鉄総裁にもまた磯崎さんにも申し上げておきたいのだが、国鉄当局がやたら赤字路線、赤字路線ということばを使わぬほうがいいですよ。国有鉄道は明治の時代に発足以来、社会政策的に、あるときは軍事的に企業採算を度外視した形において発展をしてきておるわけでしょう。戦後においても営利を目的としない路線が多い。それは地域住民の利益なりあるいは地域開発のために建設をされてきたわけでありますから、こういう国鉄の土台があるわけですから、みずから赤字路線ということばを使うのはおかしいと思うのですよ。私は、これは政策路線とでもあるいは社会路線とでもことばを使うならともかく、国鉄当局自体が赤字路線、赤字路線と言うのですね。総裁なんかも今度の国会で方々で言っていることを聞くと、赤字路線と言っている。こういうものの言い方——ほかの人が言うならいいです。大蔵省とかほかの政府の人たちが言うならいいが、国鉄はやはりその使命からいえば、社会路線であるというようなことばで押し通すという態度がなければいかぬ、こう思っておるわけでありまして、総裁にもよくお伝えいただきたいと思います。  それでは、そろそろ次の問題に移ります。国鉄のガード下の貸借についてお尋ねします。  私も、こちらは専門外でございますからよくわからぬのですけれども、いろいろの話をお聞きしますと、非常に不明朗な話がある。直接国鉄との貸借関係でなく、また貸しが多い。そうして紛争や不満の種になっておるということを聞いておるわけであります。この点は、運輸委員会等におきましてはいろいろな角度から検討されておると思うのでございますけれども、私は、この現状を国鉄当局からちょっと聞かせてもらい、今後の参考にしたいと思うのであります。
  73. 磯崎叡

    磯崎説明員 国鉄のガード下の問題でございますが、これにつきましては、昭和三十三年ごろに一ぺん、かんばしからぬ問題が起きまして、その後いろいろ委員会等をつくりまして、これを明朗化しておるわけでございますが、現在大きく分けまして賃貸の現状に三種類ございます。  一つは、終戦直後、いわゆる不法占拠等がもとになりまして、何と申しますか、裸のままで貸してしまったというか、占拠されてしまったというものがございます。それを占拠した人、あるいは借りた人が裸のままで貸してしまうという、ほんとうの意味の第三者に転貸するというケースが一つございます。それから二番目に、借りてはいたけれども、ある程度自分で借り主が造作をいたしまして、その造作つきでさらに第三者に貸しておる、こういう一種の賃貸借を高架下で結んでいる例がございます。それから第三番目に、国鉄が直接使用者に貸している、こういう例がございます。  これがいずれも問題が起こりましたし、また、私のほうの管理能力も限界がございます。一々ほんとうの人が入っているかどうか調べることもなかなかできないということで、高架下管理刷新委員会と申します委員会におきまして、その三つにつきまして、次のように方針をきめたわけでございます。  まず、第三番目の国鉄が直接貸しているものにつきましても、往々にして転貸されてしまうということで、いわゆる差配会社をつくって国鉄の支配下に置いて、それを厳重に監督し、差配会社に全部造作をさせて、実態をつかませる、こういうことで、たとえば現在、新幹線のガード下、あるいは中央線のガード下等につきましては、おおむねそういう差配会社をつくりまして、ほとんど問題なしにやっております。  問題は、第一番目と第二番目の問題でございまして、第一番目の、いわゆる裸貸しと申しますか、これは非常に悪質というか、感心しない例でございまして、これは具体的な例を申し上げるのはなんだと思いますが、いろいろ問題があるのはごらんのとおりでございまして、これはほとんど全部訴訟に持ち込んでおります。実力で明け渡しはとてもできませんので、訴訟いたしておりますけれども、ある種の判決では、結局、かえ地をやれとかというような判決が出る場合もございまして、必ずしも私どものほうの主張が通ってないケースがございます。しかし、いずれにいたしましても、法律でもって裁判所で黒白を争うという態勢にいたしております。  それから第二番目の、ちょうど中間的なものがございます。これは三百数十件ございましたが、現在百十件ぐらい残っております。これは大体は東京でございますけれども、いわゆる国鉄から正式に借りまして、それを自分で造作をして、そして第三者に貸している。うわさによれば、第三者から相当高い賃貸料を取っておるというふうにも聞いております。これらにつきましては、第一の例のように、必ずしも違法、不法ということは言えませんので、契約を一年契約にいたしております。そうして契約のつど第三者への賃貸をやめろという勧告といいますか、いたしまして、極力国鉄と直接のものにしてしまう。そしてそれから第三のようなカテゴリーに持っていくという段階を経ると思いますが、一応一年一年の契約のつど明朗化するようにという勧告をするということで、なかなか法律的に明け渡し請求できないたてまえになっておりますので、この点、私どもといたしましても一番措置に悩んでおります。いろいろ高架下を貸します際のいきさつといたしましては、主として露天商の整理とか、あるいはやみ市の整理とかいうことで、東京都その他の公共機関から正式な依頼を受けまして貸したというふうな起源もございますし、また、正式に使用料も取っておりますので、急拠明け渡しの請求はなかなかできないというふうな事態でございます。これはまだたしか百十何件残っております。これはやはり訴訟によることができませんので、相対で整理してまいるという方針でやっております。
  74. 平林剛

    平林委員 なかなか時代がかったものもあるから、管理上困難なこと、取り扱いも複雑なこともよくわかるのでありますけれども、しかし、私ども各方面からいろいろなうわさを聞くことが絶えません。このガード下の貸借による件数はどの程度あるか、それから賃貸による権利金、賃貸料金は年間どの程度国鉄としては得ておるか、そんな点もひとつ明らかにしておいてもらいたいと思います。
  75. 磯崎叡

    磯崎説明員 大体高架下はほとんど東京、大阪。名古屋が一部でございます。地方にも若干ございますが、大体その大都市だけでございます。件数が二千五百五十件、それから面積が四十六万平米、使用料は年額六億一千五百万円。  ただ、いま先生権利金とおっしゃいましたけれども、実は私のほうは権利金は取らないわけでございます。と申しますことは、ガード下につきましては、権利金を収受いたしまして賃貸借にいたしますと、完全に賃借権が発生いたしまして、どいてくれない。国鉄輸送上の必要とか、あるいは高架の上を直すとかいう際にも、そのつど補償をしなくちゃいかぬということで、権利金は一切取らない。そのかわりどくときには国鉄の都合によっていつでもどくという一札が入っております。なかなかどきませんが、しかし、これは裁判所に持ってまいりますれば、現にそういう不法のものにつきましては、仮処分の執行を認めてもらった例もございます。したがって、権利金は取っておりませんが、その他のいわゆる使用料につきましては、いま申しましたとおり約六億円でございます。
  76. 平林剛

    平林委員 ガード下の貸借による件数は、東京、大阪、名古屋で二千五百五十件、年間の使用料総額六億一千五百万円、一件当たりにいたしますとあまり大きな金額になりません。そこでこうしたガード下は、利用のいかんによりましてはかなりりっぱなところもあるわけですね。いまあなたが御指摘のように、ある程度造作すれば普通の事務所と変わりがない、あるいはそれ以上に、駅のそばにありますから非常に便利なところもありまして、世間常識から見ますと、どうも不当に安過ぎるのではないかというような意見がかなり強いのではないか。結局国鉄はいろいろな面で、運賃値上げその他をして国民全般にある程度犠牲をお願いしなければならぬという立場にあるときは、われみずからもふだん国民から指摘をされておる問題についてはえりを正して、そしてそれを公正妥当なものにしていく努力をしなければならぬと思うのです。六億ぐらいでは、一件当たりにしますとほんのわずかになってくるのじゃないか。洗い直して検討する必要があると思いますが、いかがでしょう。
  77. 磯崎叡

    磯崎説明員 全く仰せのとおりでございまして、実は、私どももその点につきまして、いま先生のおっしゃるとおり、確かにガード下の中には、もう退去してもらわないでいい、権利金を取って永遠に貸してしまったほうがいいというところがないとはいえませんが、また、考え方によってはぜひ残しておきたいところもございます。こういった輸送情勢が変わりますので、いろいろその点についても検討いたしまして、一時権利金を取って貸してしまおうかという考えも持ったこともございますが、やはり確固不動なものでも困るというようなことで、いまのような形にしております。したがいまして、現在では三年に一ぺん必ず再評価いたしまして評価し直しまして、そしてその近傍類似の地代が上がりますと、それによりまして自動的にと申しますか、こちらから一方的に使用料を上げる。いわゆる賃貸料でございませんから一方的に上げることができますので、大体三年に一ぺんずつ必ず更改するということで、いま先生のおっしゃったことを多少補っているつもりであります。  今後私どもといたしましても、高架下の問題につきましてはたとえば高速道路などについても同じ問題があるように承っておりますので、十分関係方面のお知恵もひとつ拝借いたしまして、ほんとうに権利金として取って貸してしまったほうがいいというものがあれば、あるいはそのほうがいいんじゃないかという気もいたしますし、かといって、たとえば地下鉄を掘るなどという場合にすぐ高架下を使わなければならぬというケースも出てまいりますので、場所によりましてやはりきめていかなければならぬと思っておりますが、いまのように土地の使用ということからだけ申しますと、やはり常識的におかしいじゃないかとおっしゃるのはもっともなことでございますので、せめて私どもといたしましても三年に一ぺんという更改をいたしておるわけでありまして、たとえばそのためにずいぶん訴訟になって不払い同盟なども起きておりますけれども、これは裁判所のほうでも私どもの主張を認めておりますので、いままでの原則どおり三年に一ぺん、大体一割から一割五分上げておりますが、そのことだけは最低限にやってまいりたいと思っております。根本的な問題につきましては、さっき申しましたとおりの問題があるわけでございます。
  78. 平林剛

    平林委員 いまのお話けっこうですが、その場合に差配会社にやらせるということと、国鉄当局がある程度責任をもって処理することとでは、響きが違ってくるわけですね。私はその点はどうなんだろうかなと心配しておるわけなんですが、その点はいかがですか。
  79. 磯崎叡

    磯崎説明員 実は国鉄が一時しばらく自分でやっておったわけでございますが、非常に手数がかかることと、やはりある程度特殊な、というと非常に語弊がございますが、普通の常識でできないようなこともいろいろいたさなければならぬこともございますので、私どもの職員がいたすことにはちょっと無理があるということで、これは高架下管理刷新委員会でもずいぶん議論された上で、やはりまともな国鉄職員にやらせるには少し無理だということで、やはりそういう専門的な知識のある人にある程度やらせなければまずいんじゃないかということで差配会社のほうがいいというふうな結論が出たように聞いております。実際二千件もございますと、一件一件、だれが死んだとかなんとかでいつの間にかかわっているというようなことなどは、私どもの職員では把握しがたい面がございますので、その点はやはり委員会の結論どおり、差配会社でいくほうが結果的には間違いないのじゃないか、こういうふうに思っております。
  80. 平林剛

    平林委員 この場合でも国鉄当局がおやりになれば、ある程度監督の目が行き届く。しかし、差配会社になるとまた一つ越えるわけでありますから、やはり国鉄の責任というものはかなり重くなってくる。十分注意をして、また今度差配会社そのものに誤りがあるというようなことがないように厳重に注意せなければならぬ。私どももこれは注目をしておりますから、どうかひとつそういう御配慮をしていただきたいということを申し上げておきたいと思います。  それでは、そろそろ終わりでありますが、もう一つだけ、せっかく国鉄当局にも調査していただいてありますから、これだけ質問してやめることにします。  新幹線の乗客、私も小田原に住んでおりますから、ときどき利用させていただいておるわけですが、この問カードを配りまして、乗客の調査をおやりになっておって、私もちょっと書き込ましていただきました。この東海道新幹線の利用客、その目的別というようなことで皆さんがおやりになった調査結果で、おわかりになっている点をひとつ御紹介いただけませんか。
  81. 長瀬恒雄

    長瀬説明員 新幹線につきまして、実は三月の一日に二億人の輸送人員が達成いたしました日に調査いたしましたものと、それから一昨年十月十八日の旅客の質的調査というもので調査したものでございます。  非常に簡単な調査でございますので、統計的に整理されておりませんが、まず新幹線の利用の状況につきまして、男女別、これは男性が八三%、女性が一七%ということが一昨年の統計でございますが、たまたま三月一日のときには土曜日でございましたので、男性が七六%、女性が二四%、こういうような結果になっております。  それから年齢構成につきましても、二十代、三十代、四十代とございますが、これが大部分を占めております。一番高いのが三十代でございます。その次が二十代、その次が四十代、こういうことでございまして、ビジネスというものを中心にして考えられるのではないか。  それから職業でございますが、職業はサラリーマンが五八%、商工業がその次に一一%、会社、団体の役員の方々が九%、主婦がその次に七・五%、こういうことでございます。  それから交通費の負担でございますが、これも調べました結果は、勤務先、いわゆる会社負担というのが五二%でございます。それから本人、家族が三八%でございます。  それから旅行目的でございますが、これは用務、これが六二%、それから観光と申しますのは、遊びでございますが、約二〇%、家事私用、これが一五%。  それから住所でありますが、もちろん各地に及びますが、三九%が南関東、それから京阪神が二六%、それから東海地方、名古屋付近が一六%、こういう数字になります。  それから日程でございますが、これは……。
  82. 平林剛

    平林委員 それくらいでけっこうです。  結局私がこれを聞きましたのは、新幹線の利用客が職業別に見るとどうかという点で、少し分析したかったわけであります。いまお話を聞いておりますと、若い世代が多く、ビジネスが中心であるということ、それから職業別ではサラリーマンが圧倒的に多く、商工業、会社、これがそれに続いておりますけれども、その運賃負担というものが勤務先であるか本人であるかという点については、勤務先というのが五二%ある。このことは、新幹線というものが今日の状態においてその利用客が会社の用務、これが非常に使われておる。考えてみると、東海道新幹線が通っておるところは京浜工業地帯、中京工業地帯、大阪工業地帯を結ぶ産業路線であることは言うまでもございませんから、こういう傾向があらわれてくるのは当然だと見ておるわけであります。しかもこれは土曜日でありますから、あるいは比較的その面が少なかったかもしれない、普通の日は五二%が七〇%程度までいったかもしれない。ここに私は新幹線の旅客利用分布から考え一つの意義というものがあらわれていると思うのであります。  そこで、新幹線の今日までの建設計画は毎年三千億、四千億円という巨額が投ぜられておるわけであります。そしてそれを生かして使うことによって利便を受けたのはだれかといいますと、一般の乗客もあるでしょうけれども、産業政策的な値打ちというものが非常に高い。そういうことを考えますと、私は、新幹線を利用することによって各産業が受けておる利益というものが非常に多いのじゃないかと思う。利用する乗客もまああれだけれども、それを利用することによって受ける利便は、会社、産業、こういうものが非常に多いということになると、その負担をただ乗客だけに課してしまうということが妥当なりやいなやということなんであります。  そこで、大蔵省あたり、いかがですか。何か条件があるというと、財源を考えるのが御商売のようでございますけれども、国鉄の新幹線に伴ういわゆる開発利益を受けている受益者、それに対する何らかの措置というようなことは考えたことがございますか。
  83. 海堀洋平

    海堀政府委員 開発利益の問題というのは、いろんな面で取り上げられまして、種々論議をされているわけでございますが、これをどういうふうに評価し、どういう形でそれを税の形なり、あるいは税ではなくても国が使えるような形に持ってくるかという点については、非常にむずかしい点がございますので、現在までのところどういうふうに持っていくかという結論を得ておりません。
  84. 平林剛

    平林委員 やめます。(拍手)
  85. 田中正巳

  86. 広沢直樹

    広沢(直)委員 私は、この通行税法の一部を改正する法律案につきまして、さきの提案理由説明にもありましたように、国鉄運賃の一部改正、それから旅客運賃等の等級廃止に関連して所要の改正をすることになっておりますが、いわゆるこれはワンセットとして考えるべきものでありますので、きょうは運輸大臣も出席でありますし、私は、運賃法並びにその諸問題について、大蔵当局にもただしておきたいと思います。  まず第一に、この通行税については存廃論があるわけでありますけれども、その通行税の沿革と変遷について主税局長に伺っておきたいと思います。
  87. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 わが国で通行税が最初にできましたのは、明治三十八年の非常特別税におきまして、あらゆる交通手段に対しましてキロ別の定額課税を一等、二等、三等に分けて実施したのが最初でございます。その後これを通行税という名前に変えましたが、この旧通行税は大正十五年の四月に一応廃止をされております。現在の通行税法のもとになりましたのは、昭和十三年に支那事変特別税で通行税を課したことから始まっておりますが、これは昭和十五年に通行税法という名前の単独法に改まりました。  したがいまして、通行税法としては、昭和十五年が始まりというかっこうになっております。なお、この際の通行税は、前の通行税がすべての交通手段にかけました関係で、これは古い方はよく御承知だと思いますけれども、東京市電などというものにも一銭かかっておったわけでございます。したがいまして、市電の切符は、昔のことを思い出しますと、片道七銭、住復になりますと十三銭、一銭安いわけです。これは通行税が一回しかかかっていないということで、それが長く市電の住復切符の上に残ってきたという沿革でございます。新しい通行税法は、その点では三等の五十キロ未満を非課税とするというようなことで、やや近代の消費税の性格を持ってきたものではございますが、なお戦時中の経費をまかなうという面から、三等まで全部課税していたわけでございます。  ところが、戦後に至りまして、昭和二十五年に三等の課税を廃止をいたしました。さらに税率をその際引き上げまして、いわゆる高級消費を対象とする消費税の形をとってまいりました。いわゆる戦時的な性格というものをここで著しく改めたわけでございます。さらに、二十九年四月には、従来料金の内ワクで課税しておりましたけれども、外ワク課税、ちょうどいまの物品税その他のような形に改めまして、一般消費税の形を整えてきたわけでございます。  さらに、三十六年四月に、今回問題になっておりますような、等級制のない場合の課税方式というものを、みなし規定を入れたのでございますが、その際に、国鉄には等級制があったために、カッコ書きで国鉄に適用を排除をいたしましたのが、今回の問題の大きな点でございます。  さらに、昭和三十七年には、御承知の間接税一般を整備いたしました。この際に消費税につきましては、サービスに対する課税、物品に対する課税、それらを通じて一般の水準にある消費については小売り段階で課税するものは一〇%、製造段階で課税するものは二〇%を一種の標準税率といたしまして、さらに高級なものにつきましては、その上方に加重税率を設けるということで、全般の間接税を整備いたしました。その結果として、現在の通行税法では、その基準税率一〇%をもって課税をするという形で、ちょうど日本の消費税体系の中の一つの形として残ってまいったわけであります。  そういう意味では、戦時立法ではございましたが、これを通じて日本の消費税体系というものが漸次整備をされて、現在では一つの近代的な消費税体系の形のものになっておるという沿革でございます。
  88. 広沢直樹

    広沢(直)委員 次に、もう一点お伺いしておきたいのは、諸外国の通行税の現状というものはどういうふうになっておるか、この点を……。
  89. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 現在アメリカでは、航空機に対して五%の通行税を課しております。それからイギリスでは現在通行税はございませんが、西独、フランス、オランダ、スウェーデン等はいずれも付加価値税をかけております。西ドイツではすべての交通機関に対しまして一一%の付加価値税をかけております。ただし五十キロ以下の鉄道及び通勤用のバスについては五・五%、フランスではすべての交通機関に対しまして一七・六五%、外ワクで申しますと一五%、それからオランダは一二%、スウェーデンは一一・一一でございますが、これを外ワクの計算をいたしますと一〇%であります。そういう形で、名前は違いますが、通行税に相当するものが課税されているということでございます。
  90. 広沢直樹

    広沢(直)委員 それでは次に運輸大臣にお伺いをいたしますが、等級廃止の理由についてひとつ御説明をいただきたいと思います。
  91. 原田憲

    ○原田国務大臣 一、二等がだんだん設備の格差が、全部とは言えませんけれども、少なくなってまいりました。国民の生活水準の向上に伴いまして利用者層が変わってまいりました。利用状況の変化、これらにかんがみますと、従来の等級制を維持して、一等、二等と分けて、別個の運賃料金を徴収するということが実情に沿わなくなってきております。旧一等車については、特別の設備の利用対価として料金を徴収するということがむしろいまの実情に合っておるのじゃないか、こういうことが考えられますので、このたびは等級制をもう思い切って廃止をしよう、こういうことにいたしたものでございます。
  92. 広沢直樹

    広沢(直)委員 ただいまの説明、並びに国鉄が発表しております一等運賃制度の廃止の説明書によりますと、これを要約しますと、現在の一等の利用状況及び一車当たりの収入状況から、いわゆる一等の利用促進で営業収入の増進をはかるということが理由になっておりますね。そうなりますと、一等の利用状況の四十年からの年次別の推移はどういうようになっているか、当局からお答えいただきたい。
  93. 長瀬恒雄

    長瀬説明員 お答えいたします。  三十九年におきましては一等の旅客が千四百七十三万六千人でございます。それを一〇〇といたしまして、四十年は九四でございますが千三百九十一万六千人、四十一年が八四、実数で千二百四十万八千人、四十二年におきましては千三百三十二万人、これは指数で九〇でございます。
  94. 広沢直樹

    広沢(直)委員 営業収入も……。
  95. 長瀬恒雄

    長瀬説明員 収入は、三十九年が二百六十八億、四十年が二百七十三億、四十一年が運賃改定いたしておりますが三百六億、四十二年が三百二十九億でございます。
  96. 広沢直樹

    広沢(直)委員 このたび一等車を廃止して特別車両、いわゆるグリーンカーにする、こうした場合に乗客数並びに収入予想というのはどういうようになっているか。これを、一等を存置した場合と、それからこういうふうな制度を変えた場合においてどういうふうになっていくかということをひとつ……。
  97. 長瀬恒雄

    長瀬説明員 先ほど御説明いたしましたように、三十九年におきましては千四百七十三万人、それから四十一年までずっと落ちておりますが、四十一年から若干アップいたしております。しかし、今回のように制度改正をいたしますと、従来の運賃は二倍でございますが、一・五%倍になりますので、われわれといたしましては大体三十九年以前の状態になるであろうということで、今回の利用増といたしましては、約三割程度ふえるという見込みを立てております。この収入は約四十億でございます。
  98. 広沢直樹

    広沢(直)委員 一応ふえるという算定にはなっているようでありますが、収入のほうはどうでありますか。いままでの二倍が一・五倍という計算になりますと、減るということになりますか。
  99. 長瀬恒雄

    長瀬説明員 従来の一等収入に対して、今回は一等運賃が別になるわけであります。それをかりに換算いたしましてトータルいたしますと、特別車両料金というものでこれを一等に相当するものをちょうだいするわけでございますが、その分がふえるとなりますと、従来の一等運賃よりも、先ほど申しました数量的な面からふえるということで、従来の一等そのまま残しておきますよりも四十億程度はふえるという計算であります。
  100. 広沢直樹

    広沢(直)委員 今度の特別車両料金はいま言う数字的なものを算定にしているわけですが、それをほかと比べた場合、たとえば新幹線の「ひかり」、新大阪−東京間の運賃比較を現行と改正した場合と比較すると多少安くなっておりますけれども、これは航空ジェット機の住復運賃として換算してみますと、片道が五千八百円くらいになるわけですね。そうすると、いまでも相当向こうのほうに利用者がふえていっているということになります。その点はどういうふうに考えていらっしゃるか、お答えいただきたい。
  101. 長瀬恒雄

    長瀬説明員 飛行機の料金は六千八百円でございまして、今回は国鉄が若干下げております。この利用人員というものにつきましては、新幹線の安全、確実性という点から逐次ふえてくるということが想像できるわけでありまして、たとえば「ひかり」の例でございますと、四十二年におきましては「ひかり」が従来の一等で百二十八万人でございますが、四十三年は百三十六万人、これが今回さらに利用しやすくなる、大衆化するという点から相当利用がふえるという見込みでございます。
  102. 広沢直樹

    広沢(直)委員 それは、値下げになること、あるいはまた大衆化されていることについては、大いにけっこうだと思うのです。しかしながら、今回の運賃改正でいまの区間で八・五%くらいの値下がりになるわけです、新大阪−東京間ですか、「ひかり」の場合。しかしながら、いま確かに片道のジェット機は六千八百円です。しかし住復になりますと、割引で一万一千六百円、片道は五千八百円になるわけですね。ですから、安全性の問題というのは、これは航空機だって安全性は一番重視している問題であるわけですから、別に単なるそういう比較でふえるだろうということにはならないと思うのです。  ですから、今回の一等は廃止して特別車両料金にしていくということは、要するに利用者の増、そしてまた運賃収入の増収になっていくという一応の計算はされておりますけれども、しかし、すべての環境を比較対照した場合に、相対的には相当運賃が上がってくるわけです。ですから、決してそれが実際の増に結びつくという明確な基礎数字というものは考えられないのじゃないですか。その点を、確かにこういうふうにしたほうが有利である——それは一等乗客については確かに値下げにもなり、大衆化されていきましょう、そういう乗客については多少部分的には。遠距離を乗っている場合はやはり運賃値上げ関係で高くなってきているところも出てきているわけです。そういうことは言えるでしょうけれども、比較対照した場合に、はっきりそういうことが言い得るかどうか、その点の見解はどういうふうに考えていらっしゃいますか。
  103. 長瀬恒雄

    長瀬説明員 従来の一等の傾向から見ますと、従来は高過ぎるというような面がございまして、その面からもこれは確かにふえる面がございます。しかも一等に乗りたい老人あるいは病弱の人というものがふえてまいる。それから飛行機との関連におきましては、先ほど安全と申しましたが、もちろん飛行機も安全でございますが、国鉄のほうが確実である。それからさらに、道路の状況という点からも考えますと、ますますふえるのではないか、こういうふうに考えております。
  104. 広沢直樹

    広沢(直)委員 それから今度のいわゆるグリーンカーにした場合に、ここにも書いてございますが、旧一等は存置するということになっています。約千二百両あるわけでしょう。新しいグリーンカーというのをつくるわけじゃない。そうすると、これは残していくということになると、設備はそのままということになりましょう。ですから、特に特別車両としなければならない、名称を変えなければならないという理由、これはどこに生まれてくるのですか。
  105. 長瀬恒雄

    長瀬説明員 従来の一等車に相当いたしますものは、これは無等級になるわけでございまして、それに対して八百円から最高二千円まで、それをこえますとさらに六百円料金を徴収するわけでありますが、この根拠は、設備の利用という点が従来の二等と一等と比べますと、たとえば新製品を新しくつくる場合に、約七割程度高いわけであります。したがいまして、そういうものを利用者からちょうだいする、さらにスペース的にも若干ゆとりがございますので、こうした特別車両料金というものを創設したわけであります。
  106. 広沢直樹

    広沢(直)委員 一等廃止の理由の中に、普通運賃は場所の多動の対価であるとか、あるいは特急とか急行料金というものはスピードの対価である、あるいはまた設備によって差異を設けない、一本化するということが、運賃論の上からいえば理論的であるといわれているわけですね。しかしながら、今回こちらの国鉄の場合の一等運賃制度を廃止することになりましても、それは他の交通機関においてもやはり等級差別というものはあるわけですね。ですから、こういった理由で一応一等というものを廃止していくのだ、特別料金をとるから特別車だ、そういう名称の使い方なんですけれども、いまこれが通行税法にひっかかってくるということになりますと、やはり等級を廃止していけば、一条、二条に基づく通行税が二等にもかかってくるのだという問題が出てくるわけですね。ですから特にカッコ書きがあって、国鉄の場合においては一等、二等の等級がはっきりしているからということで、三条の適用によって二等には非課税になっているわけですね。ただ特別車両というが内部的には一つも変わらないと思うのです。特別車両というか一等というかだけじゃないか。ただ内容は、いま言うように、多少運賃が移動の対価であるとかスピードの対価であるとかいうところは下がっていくことはある。大衆化されていくということはたいへんけっこうだと思うのですね。   〔委員長退席、山下(元)委員長代理着席〕 しかしながら、他の交通機関だって等級というものがあって、それはやはり設備によっての対価となっている。ですから、あながちこれを変える云々ということでなくてもいいんじゃないかというふうに考えられるわけですが、その点どうですか。
  107. 長瀬恒雄

    長瀬説明員 他の交通機関にも等級があるというお説でございますが、飛行機には現在国内航空にはございません。それから私鉄でももちろんないわけでございまして、したがいまして、現在等級を設けている交通機関は国鉄だけではないか。しかし、そのほかに私鉄におきましても、いい車を使って特急その他の料金を取っております。これらとの関連から考えましても、やはり設備料金というものに統一すべきではないかというふうに考えております。
  108. 広沢直樹

    広沢(直)委員 大蔵大臣がおりませんから主税局長にお尋ねしますが、通行税がどういう推移になってきているか。国鉄あるいは航空機あるいは電車、汽船、それのトータルを一応御説明いただきたい。
  109. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 先ほど非常に簡単に御説明をいたしましたが、最初通行税は各機関を通じて各等の等級にかかわらず、税率は違いますけれども、通行税をかけておりました。その後航空機は、御指摘のようにただいま国際線には課税いたしておりませんけれども、   〔山下(元)委員長代理退席、委員長着席〕 等級別でなくて当然全部課税いたしております。ただ一時航空機につきましては、航空機の育成という観点から通行税を二分の一に軽減をいたしております。つまり五%の課税にしたわけでございます。これは四十二年度にこの制度を廃止いたしまして一〇%に復帰いたしております。それから汽船につきましては、昭和二十六年に汽船の二等の課税を廃止いたしております。さらに三十五年には国鉄だけございました三等がなくなりまして、汽車の三等というものは事実上課税がなくなったわけでございます。そのうち私鉄がほとんど等級がなくなってしまった関係で、先ほど申し上げましたように、三十六年には二等だけと申しますか、等級のない場合には一応全部二等とみなすという規定を置いて、そのために私鉄はほとんど課税にならなくなったわけでございます。ただし、特別料金を別に取っておるその料金が、一番最低の料金よりも五割以上高いときにはこれを一等とみなす。さらに三倍以上になったものについては一等、二等以外の等級、つまり特級ということにみなすという規定を置いたわけでございます。しかし、実際問題といたしましては、等級別の税率がなくなりまして、同じ税率になっておりますから、結局課税か非課税かという問題になったわけでございます。  これが現在までの汽船、航空機、汽車に対する課税の簡単な沿革でございます。
  110. 広沢直樹

    広沢(直)委員 私が聞いてるのは、いまのことじゃなくて、年次的にずっと国鉄の通行税の収入ですね、それはどういうように変わってきているかということです。今度改正になりますとどういうふうになっていくか。それから国鉄だけではなくて、ほかは別に制度を改正したわけじゃありませんから、どんどんふえていっているだろうと思うのですけれども、その推移がどうなっているかということを聞いているわけです。
  111. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 昭和三十五年ごろの数字で申し上げますと、国鉄からは三十五億程度収入をあげております。それから航空機はその当時六億五千万ぐらい、汽船はわずかでございますが三千六百万ということで、総体の収入金額が四十二億ということでございます。  それから、その後航空機の課税が増加してまいりまして、たとえば三十九年で申し上げますと、国鉄が二十六億、航空機は十三億にふえてまいりました。合計で四十億ということになっております。さらに、四十二年に航空機の特例を廃止いたしまして、その関係で四十二年になりますと、国鉄が三十二億程度それに対して航空機は三十四億ということになりまして、現在その合計額が六十七億という数字になっております。  ことしの見積もりでは、御承知のとおり国鉄関係が二十五億、航空機が六十八億、あわせまして九十四億ということで、昭和三十五年当時から見ますと、まさに航空機と国鉄との関係は逆になっているという姿でございます。
  112. 広沢直樹

    広沢(直)委員 先ほど通行税の沿革と変遷のことをお伺いしたわけですが、もちろんこの通行税そのものが、昭和十三年に支那事変特別税法として設けられたものである、こういうふうに言われておりますけれども、そういう特別的な立法で設けられたものであるならば、これを廃止してもいいじゃないかという論議もあったわけです。しかしながら、また昭和二十五年には、一応それが奢侈的な性格を持ってきて、この間の提案理由説明にもございましたけれども、担税力のあるものから負担してもらうのだということで、普通運賃にも急行料金にも全部かかってきておったわけですね。そうして今度特別車両ということになってくるわけでありますが、こういった奢侈的なものであるとするならば、こういうものを全廃云々ということよりも、むしろ目的税としてこれを使っていったらどうか。たとえば道路財源にしていくためには、ガソリン税から取ってこれを道路財源にしていくのだという目的税がちゃんとあるわけですね。ですからこの場合においては、そういったものを考えていく考えはないかということですが、どうでしょう。
  113. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 目的税につきましては、これは前から申し上げておりますけれども、財政収入全般をできるだけ効率的に使うという面から申しますと、一定のものを一定の目的に直接関連づける目的税の制度というのは、どうしても財政のある意味では硬直化を起こすという傾向がございます。そういう意味では、目的税制度はできるだけ限定して考えていくというのが私どもの考え方でございます。たとえば道路財源にいたしましても、揮発油税の場合、これは揮発油税と道路との関係というのはかなり明確でございますが、消費税などになりますと、なるほど何か使ってはおりますけれども、消費担税力全般というものをある程度推測しているという面から申しますと、目的税にしてしまうには不適当な税ではないか、私どもはそういうふうに考えておるわけでございます。
  114. 広沢直樹

    広沢(直)委員 しかしながら、いま国鉄財政問題が云々されているわけですね。したがって、それから取っていく通行税というものは、施設の改善だとかそういった関係に、あるいは微々たるものかもしれませんけれども、通行税としてはそういう目的税的な性格を持っても決しておかしくないと思うのです。ですから、そういった面に還元して使われていく方向にやっていく考えはないと、これはあと大蔵大臣が来たどきにまたいろいろ聞いてみたいと思うのです。  それじゃ、次に運輸大臣に主としてお伺いいたします。  再三繰り返し論議もされてきたわけでありますが、国鉄公共事業体としての性格ですね。この問題をめぐって、やはりこれが基本的な財源の援助とかそういった面に関係してきておりますが、この点が、どうもいままでの論議を聞いておりますと、いままで企業性を重視した一つ考え方になっているわけです。特に今回の国鉄の危機に際して、物価関係からもこれはストップすべきであるという強い国民の要望があるにかかわらず、どうしてもこれは上げていかなければならない、あるいは独立採算制の問題にしましても、これは独立採算制を貫いていかなければならない、それは私、あとからまた理論的に申し上げますけれども、要するに、そういった関係が強いわけです。国鉄公共の福祉を目的として、法律によって設立された法人である。ですから、公共性というものを十分重視していくことは、国鉄の本来の使命である、こういうふうに思うわけでありますが、御見解をひとつ。
  115. 原田憲

    ○原田国務大臣 日本の国鉄性格ということでございますが、これは参議院でも、国鉄法を出した西園寺さんの話から始まってきまして議論をしておったのでございますが、私は、西園寺さんと比較されて非常に光栄に存じておったのでございます。いまの法律による国鉄は、一般のいわゆる民法でいう民間会社ではない。しかし、特別会計という制度の中で経営をやっていく、そして法律にも書いてあるように、能率的にこれを運営していく、こういうことで国民の福祉に貢献をするというのが、この性格、目的でございますから、やはり国鉄というものが日本で始まってから、運賃収入というものをもって経営していく、独立採算制をもってやっていくということは、西園寺さんが国策としてやったときからこの制度をとっておるということが一つ性格であろうと私は思うのであります。ただ、当時は、日本の国で交通機関としては、もう鉄道は王さまであって、どんどん収益もあがる、だから開発のためにもどんどんと線路を拡大していける、あるときには戦費調達までカバーすることができるという時代があったわけでございますが、現在はそうでないということは、もう広沢さん御存じのとおりでございます。  そのたてまえは、私はそうであろうと思いますが、このたびは、国鉄がその使命を達成するために、このままではもう使命を達成することが非常にむずかしくなる、いわゆる償却前の赤字というものが生じてくるというような財政状態になってきた。ここで運賃を上げるということも、一つ方法としてはあります。今度も運賃値上げをお願いいたしておるのですが、四十一年ですか、あのときも同じように、今後の国鉄のために七カ年計画をやっていくために運賃を上げたい、あるいは政府に対して出資をやれ、こういうことがあったけれども、それはできなかった。そこで今度は、今度こそひとつ抜本的な策をとろうじゃないかということで、私は運輸大臣といたしまして、いわゆる国のほうからの財政支出をお願いをする、地方にもお願いをする、国鉄みずからも合理化につとめる、国民の皆さんにもひとつお願いをする、こういう形式をとりましてお願いをしたのでございますから、その公共的な意味に対するところの国の責任の一端を果たさしておる、あなたがおっしゃっておることについては、そう解釈してもらってよろしいのじゃないか、このように考える次第でございます。
  116. 広沢直樹

    広沢(直)委員 私がこの質問をする趣旨は、今度の財政負担が、運輸大臣がおっしゃっておる、おとといも言っておりましたですが、要するに三位一体論だ、国鉄あるいは国、そしてまた国民、こういう負担をしていくんだと言っているのです。しかしながら、今度の場合、この負担割合というものは国民に非常に大きくかかってきているわけです。だから、国民負担において今度の赤字を何とかカバーしていこうという傾向が強いわけです。公共性を重視していくということになれば、当然国鉄が陸上交通機関としての根幹として、安全あるいは確実、あるいは便利な輸送、低廉な運賃で提供する、そして公共の福祉につとめるとともに国民の利益を目標としていくべきものがある、これは当然である。その上に立って、最高の能率をあげていくための企業性、こういうわけで独立採算制というものも持たれたわけでありましょうし、目的は公社として、公共企業体として発足した本来の姿があると私は思うのです。  ですから、今回の赤字の原因については、いろいろ論じられておりますが、やはり一面では、国策上における産業政策、あるいは国土開発政策上から、たとえ赤字であろうともその線はつくっていかなければならない、いままでそういうふうにしてやってきたわけです。これを維持していく。そういった問題については、国鉄公共的な使命を感じていけば、当然国からの財源の援助をしていくべきだ、財政援助をやっていくべきである、こういうふうに思うわけです。あるいは、先ほどからお話があっておりました政策的な割引にしても同じことが言えると思う。その点が今度の財政の中には取り入れられない。ただ利子補給という形で、この間もお話がありましたように、石田総裁は、それでもやっていけるから一歩前進したのだという考えを持っているわけですが、むしろ、これは大蔵当局に言わなければならないわけですけれども、担当大臣として、国鉄のいまの財政危機に対する打開の一つの方策というものが国の財政援助を求めるのは、いま言った二点の問題については当然じゃないか、こう私は考えているわけですが、その点についてどうですか。
  117. 原田憲

    ○原田国務大臣 私も、このたびの政策において、その分を取り入れてお願いをしておる、こういうことを申し上げておるのです。話が少しそれるかとも思いますけれども、結局国民へのサービスができるかどうか、こういうことなんでございます。鉄道経営というものが、確かに外国では、公共負担という意味財政援助を受けておる、そのかわりに、先ほどからもお話がありましたように、税金は取っていますね。通行税という形で、あるいは付加価値税という形で税金を取っておる。そのかわりに、また援助もしておる。それでうまくいったかというと、御案内のように、鉄道というものはヨーロッパ等においては斜陽産業だといわれるようになってきた。日本の新幹線というものができてきて、鉄道というものが見直されたというのが常識みたいになっておるわけなんです。  そこで、この鉄道というものが国民経済の中でにない手として働くことができるかどうかという問題を詰めて考えてみたら、確かにある。鉄道というものは、働けば斜陽産業じゃない、十分今後ともにない手となることができる。その方向として、ただ公共負担公共負担ということだけでいってよろしいかどうかというたてまえに立つと、やはりたでまえは独立採算制、運賃収入ということをとることがたてまえである。そして、それでもいままでは、正直にいいまして、大蔵省は金を出さなかったわけですよ。四十一年度も運賃だけでやっていけ。——出資を三百億ですか、九百億要求したこともあると聞いております。そのときは運賃値上げで、あるいは借金してやれ、こうだったわけですね。それで、正直いって、なかなかうまくいかない。  そこで私は、何べんも同じことを言うようになりますけれども、この点に対してはどうしたらよいか、財政の立て直しという点から考えていきますと、一番おぶさっておるものは何か、投資に使った金の借金の利子だ。これを払わなければならぬ、そのために借金をしなければならぬというような状態になって、国鉄の新しいものをつくるどころじゃない。いわゆる償却前の赤字だ。借金のための借金をしなければならぬという状態になっておるから、こいつをまずたな上げすることに金を出せ、これは推進会議の、こうしたらよいという一つの要点ですね。そのことについて、今度は適当な措置をとってお願いをしておる。これは国としての措置をとった。  それからやはり投資をしていかなければならぬ。これが議論になるところでございますが、たとえば一般の道路というものは同じように、無料公開であるけれども、有料道路、高速道路というものは金を取っておるじゃないか。これには国は六分の金で貸しているじゃないか、何で国鉄に同じようにせぬのだ、こういう議論で、出せ。去年から一部見ておりますけれども、これをもっと低利にしたらどうだ、こういう交渉をいたしまして、これは五十年まで六分五厘と拡大したのですが、まだ六分がいいかどうかということについては議論が残っておるわけです。私は、六分にせいということを、今度は何とかしてもらいたいと思っておりますが、この予算では残念ながらそのとおりいかなかった。  財政当局としては、ここできのうも答弁いたしておりましたが、そのような論拠に立っておるわけであります。それらについてできるだけのことをいたしまして、やはりたてまえとして国民の皆さん方にもひとつ御協力を賜わりたい、こういうことを申し上げておるということを、何べんも同じことを申し上げますけれども、広沢さん、御理解を賜わりたいのであります。   〔「定足数不足だ」と呼ぶ者あり〕
  118. 田中正巳

    田中委員長 ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  119. 田中正巳

    田中委員長 速記を始めて。
  120. 広沢直樹

    広沢(直)委員 ただいま運輸大臣から説明がありましたとおり、独立採算制という問題については、論議は再々繰り返されているわけです。それも国鉄ができた時分と現在は状況が変わってきたではないか、独立採算制というのは限界が来たじゃないか、こういうふうに言われているわけですね。したがって、これを現在において強く維持していくということになれば、いまの運賃値上げのように国民負担に大きなしわ寄せをしていくことになるじゃないか。ですから、当然いまは独立採算性ということの限界が来たとして、公的機関の上から、国から財政援助というものをやっていくべきじゃないか。その財政援助も、国鉄公共性を重んじている結果として、いわゆる赤字線についても、先ほど申し上げましたように、国土開発、あるいは産業政策上必要なものはつくらなければならぬ。あるいはまた、政策上のものは当然これは政策割引というのをやっていかなければならぬ。したがって、そういったものについては、国からの財源の援助があってしかるべきじゃないかという考えに立つのが、運輸当局としては当然じゃないか。ただ、いま利子補給やってくれたから少し前進したんだ、いままでは何もやってくれなかったんだ、そういう甘い考えであったならば、これからの十年の計画を見ましても、すべて運賃値上げ運賃値上げでやっていかなければならない。そういったところにやはり国民というものは納得できないものがある。その点をもう少し——私は運輸大臣に、激励している意味で言っているわけですよ。どうですか。
  121. 原田憲

    ○原田国務大臣 まことにありがたいことです。私は運輸大臣として、今度の国鉄財政を再建をする際に、先ほども言いましたように、六分五厘よりも六分にしてもらいたいということを大蔵大臣との問で折衝いたしたわけであります。大蔵大臣としては、現在の国鉄の経営状態を分析して、これは収益性を重要視していくならば、いけるじゃないか。大蔵大臣国鉄だけじゃない、ほかの財政全部見ていますから、こういうわけで、その点については、先ほども言いましたように、期間の拡大ということにおいて、一応ことしの勝負ということでは終わっておるわけでございますが、この問題は私は残しておるつもりでございます。  まだほかに新しい状態ということが予想できるわけです。いわゆる技術革新時代でございまして、国鉄が今日に来たというのは、日本の国が、特にこの十年非常な変動をしておる、これに適応することができなかったということが一つの原因の最たるものであろうと思います。したがいまして、今後もこれについて、たとえばいまお話の出ておる通勤通学という問題でございますが、これが投資の非常な対象になるわけで、金はかかるは、利子はかかってくるはということで、ますますやらなければならぬ。こういうことできのうも本会議場で、これは問題は別でございますけれども、地下鉄の問題をどうするか。大蔵大臣と自治大臣と運輸大臣との間で覚え書きを書いておるじゃないか、来年の予算で改善をするということじゃないか、そのとおりでございます。それらの問題につきましては、今後国の政策として、いわゆる運輸行政を全うするために、あなたが応援するつもりだぞとおっしゃっておりますが、私も十分このことについては今後も努力をいたしていきたいと思っています。
  122. 広沢直樹

    広沢(直)委員 今回の値上げにしましても、その総額は大体九百十億ですか、収入増になるのは。相当期間も変わってきておりますし、その点はどうなりますか。
  123. 原田憲

    ○原田国務大臣 九百十億の予想が四月一日からでございましたから、それだけおくれておるからそれだけ減るじゃないか、こういうお尋ねでございます。これはそのとおりでございまして、これはまことに計画上からいうたら困ったことでございますが、一方からいうと、安い運賃が続いているじゃないか、こういう御議論にもなろうと思いますが、私どもといたしましては、国鉄が一日二億五千万といわれておるのでございますが、今後増収努力をいたして、いろいろな手を打ってカバーしていくということに努力するように指導したいと思っております。
  124. 広沢直樹

    広沢(直)委員 ですから、その約九百十億といたしましても、先ほど言ったように、政策割引分だけでも累積すると一千億近くあるわけですね。石田総裁は一兆円になるんだ、こう言っていましたが、単年度だけ見たって、近時においては一千億近くになっておる。そういう点について国が打つ手をちゃんと打っておけば、その上においていろいろ考える余地というものは出てくるでしょうが、国は政策割引をさせておきながら、国鉄に独立採算制でやっていけといったって、こういう競争条件も変わってきた今日において、当然その赤字の大きな原因になっていることは間違いないんです。それならば、公共企業体としてのいまの国鉄は当然そういうふうな荷物を背負わされている以上、財源を国から補てんしていくということは当然の考え方じゃないですか。いま外国においても、西ドイツの例あるいはイギリスの例、いろいろ例がございますけれども、それは当然の考え方としてやっているわけですね。ところが、それはやらないでおいて、今度赤字になったからということで、国民負担がその半分以上をかつがなければならぬというような運賃値上げに対して、一体国民が納得するかということですよ。  そういう意味ですから、今後においてもこういった考え方を運輸大臣——当然これは財源補てんをすべきである。あるいは赤字線についても、赤字線だからといって企業性だけを重んずるのなら、公共というのをのければいい、あるいは民間にしてしまえという議論だってあるわけですね。だから、公共企業体である国鉄においては、それだけの国の政策上の問題を背負っていかなければならないということであれば、独立採算制というたてまえはとっておっても、当然それだけを補てんするという考え方を持つのが当然じゃないかと思うのですよ。どうですか。
  125. 原田憲

    ○原田国務大臣 この日にちが延びただけの減収でも、国の財政負担をしてもらうべきじゃないかという、これはありがたいおことばでございますが、先ほども申し上げましたように、やはり増収努力をするということがまずたてまえであろうと思います。また、経費の切り詰めをやるということが私はまずたてまえであろうと思います。ただ、やはり先ほどから言っておりますように、私自体は、運輸大臣として十分であると考えておりませんので、今後とも努力いたしていきたいと思います。  ただ、よけいなことかもわかりませんが、先ほども言いましたが、西ドイツあるいはその他の国国でも確かにやっております。しかし、それでうまくいかないので、一方では財政硬直化の原因にそういうことが問題になってきておるというようなことを考えて、日本は日本の独自の一つ考え方から、鉄道というものがこれだけりっぱにやっていけるぞ、新幹線技術ということを世界につくり出してみせた日本の技術を持っておる国鉄であります。一、二等廃止も、こういうことをやったというのは世界で初めてでしょう。これらについてもいろいろいま議論が出ましたが、やはり日本の国鉄というものを世界が見習おうというぐらいのことをやっていくために、まず今度のこれが出発点であるというくらいに私は考えておるということを御理解賜わりたいのでございます。
  126. 広沢直樹

    広沢(直)委員 運輸大臣は私のいまの質問を誤解してしまったんですね。延びた分だけ入れろと言っている意味じゃないですよ。要するに、いま言うように政策割引だとか、あるいは国土開発、あるいは産業政策上からやっていかなければならないものについては国から財源を補てんすべきであるというそういう考え方は、現在はどうこうといまいろいろ言っておられますが、それならば理論的に考えて、それが妥当なのかどうなのかというあなたの考えを聞いているわけです。  それからもう一つは、独立採算制と言うけれども、やはり独立採算制と言うならば、当然そういうふうな政策割引をさせられたり、あるいはいわゆる赤字線をどうしてもつくらなければならないというような負担を背負っていくということになれば、独立採算制にならぬわけですよ。それを補てんして同じ競争条件のもとにおいて、そうして独立採算ということは考えられると思うのですよね。ですから、いまおたくがおっしゃっている独立採算制という問題を固執していく上において、国民負担というものが運賃値上げでうんと増大してきている、しわ寄せしてきているという観点は、どうしても国民としては考えられるわけです。  そういった筋論の上から考えても、当然やるべきことはやった上で、そうして先ほどの国鉄運賃法に基づいて考えていくということならば、また論議の余地があろうかと思うのですよ。その点をいま伺っているんですよ、どうですか。
  127. 原田憲

    ○原田国務大臣 私は、たてまえはやはり運賃収入をもってすることがたてまえであるということは、何度も申し上げることでございますが、将来ともそれがたてまえであろうと思います。いまあなたがおっしゃったように、公共という問題で、公共負担の一番大きなのは通勤通学の、法律によって五〇%割り引きしておる、これが現実の姿になっておるわけですね。これが国鉄財政の上に非常におぶさってくるわけですよ、この五〇%割り引きずるということは、もうからぬことですから。それで、お客さんの数はふえてくるが、収入はふえないということは、先ほどの質問中にも言われておる。こういう点についてどうするか、こういう問題があなたのおっしゃっておる問題の一つの具体的問題じゃなかろうか。こう私は把握しておるわけでございまして、先ほども言いましたように、これらの問題は、今後とも国がどうするかということについて私は努力をしていきたい。一例をあげて申し上げたのでございます。
  128. 広沢直樹

    広沢(直)委員 いま時間がないそうで、それから運輸大臣はもう一カ所に出なければならぬそうですが、運輸大臣にあと若干の質問が残っておるのです。ですから、この際運輸大臣に、ずっと時間までおっていただくならば、いま質問をいたしますが、運輸大臣に対する質問をしておるわけですから、途中から出られるとなんですが、その点どうですか。
  129. 田中正巳

    田中委員長 ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  130. 田中正巳

    田中委員長 速記を始めて。  暫時休憩いたします。    午後一時十三分休憩      ————◇—————    午後二時二十一分開議
  131. 田中正巳

    田中委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。板川正吾君。
  132. 板川正吾

    板川委員 通行税法の一部を改正する法律案について質疑をいたしたいと思います。  まず、国鉄当局に伺いますが、国鉄が、今回、一等運賃制度を廃止して一区分一等級制度に変えた理由、これについて説明を願いたいと思います。
  133. 磯崎叡

    磯崎説明員 かぜを引いて声が出ませんので、お聞き苦しいかと思いますが……。  御承知のとおり、昭和三十五年に、当時まで一、二、三等でございました国鉄の等級制度を二等級にいたしました。これは、運賃制度の改正ということで、運賃法の改正をしていただいたわけでございます。そのときにも、なるべく早くこういう等級はやめるべきだという御議論もあったのでございますが、また、三等級を直ちに一等級にするほどでもない。ことにまた、当時の三等車の設備が非常に悪かったものでございますから、一応二等級ということでまいりましたが、その後、昭和三十九年の秋に新幹線を開業いたしますときに、思い切ってその際に一等をやめてモノクラスと申しますか、にしたらどうだという話が相当ございまして、私ども、真剣に考えたのでございますが、新幹線だけやっても、ほかのほうができなければやはりしようがないじゃないかということで見送りまして、新幹線を一、二等にしたわけでございます。  その後、おかげさまで車両も多少ずつよくなっておりまして、二等の車もだいぶよくなってまいりまして、一等車との差が減ってまいりました。しかし、運賃は相変わらず一等のほうは二倍でございまして、そのために、数字から申し上げますと、昭和三十九年度を一〇〇といたしますと、二等旅客は一割以上ふえておりますけれども、逆に一等旅客は減ってきておるわけでございます。もっとも、運賃収入は、四十一年に運賃改定がございましたので、多少ふえておりますけれども、利用者の数は減ってきているという状況でございます。  それを裏から設備的に見ますと、二等車の平均の利用状況は約八割、あらゆる車両、あらゆる列車を通じまして約八割乗っていただいておりますが、一等のほうはその半分、約四割しか乗っていただいておらないというふうなことで、非常に利用率が悪いということでございます。  別して、一等が非常に不振であるという理由は、すでに国内のほかの交通機関は、飛行機におきましても、私鉄におきましても、あるいは船におきましても、ほとんど等級がなくなって一本でございます。ところが、国鉄だけが相変わらず一、二等という等級を続けている。まあ、二等がよくなったので、座席を確保するという手段で一等を使うということも減ってまいりました。  それらの理由で、ひとつここで思い切って、これまでの一、二等級制度の一等運賃をやめてしまいまして、そうして運賃法でいういまの二等運賃で全部の車を利用していただく。しかし一方、やはり非常に忙しい方、あるいは婦人、あるいは病人というように、少しでも設備のいい車に乗って旅行しなければならないという方もまだおられるわけでございますので、いまの一等車をやめてしまうということは非常にまた極端なわけでございますので、いまの一等車は約千二百両ございますが、それはそのまま置いておく。これは一種の設備料金といたしまして、設備料金をいただくということでいったらどうかというのが、今度の改正の内容でございます。  以上でございます。
  134. 板川正吾

    板川委員 こういうことになりますか。一、二等の区分を廃止をするということは、従来の二等車は利用度が非常に高い、八〇%もある。しかし、一等車のほうは四〇%。これは料金が高いからじゃないか、こういうふうに見て、値段を安くすることが乗客の利用度を高めるということに通ずるだろう、こういうふうなことで一、二等の区分を廃止したと、こう言われておりますが、それでは将来、一等車の利用客が非常にふえて、乗車効率といいますか、乗車密度というのが高くなった場合には、今度は、一、二等の区別をするようなことは考えておりませんね。
  135. 磯崎叡

    磯崎説明員 その点は、私ども現在におきましては、将来いわゆる特別車の利用がふえましても、いわゆる一、二等という等級制度は復活すべきじゃないんじゃないか。やはり単独等級でいって、そうして設備料だけはいただくという、いま私鉄でやっておられる形のほうがあるべき姿じゃないかというふうに考えておる次第でございます。したがいまして、今後ともやはりいまの一等車の持っている設備に相当する設備はやはりつくってまいりたい。今後一切一等車的なものをつくらないという意味ではなくて、今後ともやはり一編成に一両とかあるいは二両とかいうものは、さっき申し上げましたような人に利用していただく意味でつくっていきたい、こういうふうに考えております。
  136. 板川正吾

    板川委員 従来は一等運賃というので、運賃で差がついておったのです。しかし、国鉄の資料等によると、運賃というのは差別をつけるのはおかしい。移動料なんだから、甲地点から乙地点に移動するということについては、どの車であろうが、それは同じじゃないか。車がいいために特別車の料金という利用料金ですね、このほうが合理的だ、こうおっしゃった。実は、いままでの一等、二等というのも運賃でもらっているけれども、実際はそれは一等車の施設の利用料金というものを運賃という名目でもらっておったにすぎないのですね。その点はぼくは言い方の差であって、実体は差がないと思うのです。  ただ、われわれがここで問題にしたいのは、運賃という場合には、運賃の改定には国会の議決を必要とする。しかし、料金改正については国会の議決を必要としない。国鉄がきめて運輸大臣の認可を得るということになっておるでしょう。だから、そういう点国鉄の自由裁量の範囲というのを拡大する、こういう傾向は、これは午前中も議論があったかと思うのですが、財政法三条の趣旨からいって、その自由裁量の幅を広くするということは私どもは問題だと思うのです。料金というのをどんどん分野をふやしていって、この料金は国会の議決を経なくてもよろしい。簡単に値上げができる。この分野をふやしていくことによって値上げができるというような意図があるんじゃないかと思うのですが、この点で、こういう批判に対してどういう弁明をされるつもりですか。
  137. 町田直

    ○町田政府委員 現在の法律によります運賃と料金の制度につきましては、先生御指摘のように、午前中も御質問がございまして、財政法三条並びにそれに基づく特例法に基づきまして、現在の運賃法運賃の基準、賃率の基準を定める、こういうことになっております。そこで現在の運賃法は、先生御承知のように、それだけではございませんで、さらにその上に、たとえば定期運賃の五割の限度とかその他幾つかの必要な事項を定めておるわけでございます。もう一つは、たとえば施設使用料金等はそれじゃどうして国鉄総裁に譲っているのかということでございましたが、これは一つはおそらく国鉄営業の弾力性と申しますか、そういう趣旨で、あまりこまかいところまで全部法律等で定めることはない、こういう考え方だろうと思います。  そこで、今度の改正によりまして、一等、二等の区別がなくなり、そうして施設使用料金になったということでございますけれども、そのことはやはりいま定めております一等、二等の区別——一等は二等の一・六六六倍とするという区別を法律で定めております。その法律を改正いたしまして、ただいま副総裁の述べましたような理由で、いわゆる区別のない料金にしたい、こういうことで御審議を願っておるわけです。その上で施設使用料金というものを新たにきめている、こういうふうに御理解願いたいと思います。
  138. 板川正吾

    板川委員 この問題はそれほど深く追及しようとは思いませんが、当初のうちは、国鉄運賃、料金体系の中では、料金の分野というのはある意味では軽かったのです。だから、これは一々国会の論議を経なくてもよろしいということで、財政法の三条の趣旨からはずしたと思うのです。しかし、最近みたいにこの料金の分野が非常に広がってきて、運賃収入の中の割合が高まってくると、私は、本来であるならば、やはり国会の議決を経るということのほうが妥当じゃないかという感じがするのです。このままで料金の分野が広がっていくと、そういう議論も今後さらに高まってくるだろうということだけ言っておきます。  そこで、これは国鉄でいいのですが、こういうふうに一、二等の区分をなくして値下げした場合に、特別車の乗車効率というのが過去四〇%であったのが、どのくらいになると踏んでおりますか。
  139. 磯崎叡

    磯崎説明員 大体四〇%が一躍現在の二等並みに上がるようになるとは思っておりませんが、大体五割ぐらいふえるだろう。四〇%が六〇%ぐらいになるということで、その収入増加分は実は一等運賃が減りますことと差し引きいたしまして、約四十億ないし五十億ぐらいのそのための増収があるというふうに踏んでおるわけでございます。
  140. 板川正吾

    板川委員 それでは次に移ります。  通行税の問題で伺いますが、通行税の制定当時の事情とその後の沿革について簡単に説明を願いたいと思う。これは大蔵当局どなたでも。
  141. 福田赳夫

    福田国務大臣 主税局長から……。
  142. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 御承知のように、通行税法は過去にも一回、明治三十八年に非常特別税として設定されたことはございます。これにつきましては、その後大正十五年に廃止になっておりますが、この税法はあらゆる等級にすべて課税をするという古い形のものでございます。  昭和十二年四月に、支那事変特別税法で通行税を課したわけでございます。このときは、通行税法という法律はできておりませんでしたが、その他の物品税と一括新税として起こされまして、当時は三等の五十キロ未満を非課税とするという形のものができ上がったわけでございます。それが昭和十五年の四月に通行税法として独立をいたしまして、同時に、急行料金にも課税をするようにいたしました。これが大体その形で戦時中ずっと継続いたしました。  終戦後に至りまして、二十五年に三等に対する課税を廃止いたしました。さらに同じような意味で、二十六年には汽船の二等を廃止いたしました。このときから一般の消費税と同様に、担税力の高い、相対的に高級なサービス、物品の消費というものを対象とする消費税の形に変わってきたわけでございます。  その後三十六年には、二等、これは三等が廃止になって後の二等でございますから、従来の三等寝台でございますが、三等寝台については免税点を設けて、旧三等寝台つまり二等寝台につきましては課税しないという体制を打ち出した。その前は寝台はすべて課税の対象でございましたが、これも担税力というものから考えて一等寝台に限定することにいたしたわけでございます。同時に、私鉄等におきまして等級制を廃止したものが多い、ほとんどが廃止しておったという実情から、みなし等級制度を設けて、等級がない場合には二等とみなすという規定を置いたわけでございますが、国鉄におきましては等級制が法律上あるということから、このみなし規定は適用しないことにいたしております。今回これを国鉄にも適用するようにしようとする改正をいたすわけでございます。  さらに三十七年には、他の物品税あるいは入場税等と権衡をとりまして、消費税全体の調整を行ないました。その際には、物品、サービスに関する課税は原則として、小売り段階で課税するもの、つまり消費者に直接課税するものは一〇%、製造段階で課税するものは二〇%の税率を標準税率といたしまして、特にぜいたくなものはそれに加重税率を設けるという、消費税全体を通ずる体系整備をいたしました。その際に、税率を一〇%に引き下げることにいたしたわけでございます。  最近、昭和四十二年には、従来航空機産業の助成のために半額課税をいたしておりましたのを、すでに航空機も相当なところまで達しておるということから、従来の特例を廃止いたしまして、現在は航空機その他すべて一〇%の一率課税となったわけでございます。
  143. 板川正吾

    板川委員 それでは現在通行税法によって通行税を取る目的——何の理由で、どういう目的でこの税金をかけておりますか。
  144. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 現在間接税の体系におきましては、物品の消費あるいはサービスの供与を受けるということに対しまして、そのうちで担税力の高さを推定できるような、一般の消費に比べて高級あるいは奢侈的な消費を対象として消費税を課するというたてまえをとっておるわけでございますが、通行税につきましても、運輸という一つサービスのうち、一等という特殊な高いサービスの供与をとらえまして、これに対して課税するということにいたしておるわけでございます。現在、航空機についてはすべて課税いたしておりますが、航空機が他の運輸手段との関係では現在の段階では高級消費とみなしているわけでございます。したがいまして、航空機と汽車、汽船の最上級のものが課税になっておるということであります。
  145. 板川正吾

    板川委員 今度の通行税は寝台料金と特別車の使用料金ということになりましたね。これは、一般の人が座席でかけていくのに横になって休んでいけるのはいわば一種のぜいたくである、一般の人が普通の車に乗っていくのに、特別な車に乗ることはぜいたくである、だから奢侈税的にこの税金をかけることになった、こういうのですか。その取る理屈がわからないのです。通行税というのは、この文字からいうならば、そこを通行する者にかけるというのがたてまえでしょう。通る者にかけるのに、消費税の一環として、あるいはぜいたく的な行為だからかけるんだというなら、この名前と実体が違うんじゃないかと思いますが、この点どう思いますか。
  146. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 御承知のとおり、わが国の間接税体系は、西欧諸国のいわゆる一般売り上げ税体系と違いまして、個別消費税体系をとっておるわけでございます。たとえば物品税にいたしましても、物品を指定して担税力の高い高級な消費、奢侈的な消費といったようなものをとらえようとしておるわけでございますが、同じ物品でも、たとえばたんすでありましても、小売り七万五千円以下のものには課税をしない、それ以上のものに課税するといったような体系をとっております。これは日本の、消費税あるいは直接税を主としておる国の特色と申しますか、消費税におきましても、物品に課税する場合もサービスに課税する場合も、全般にはかけずに、そのうちで相対的に高級なものをとらえて、それが担税力があるとして課税するという体系をとっておるわけでございます。これが日本の消費税のいわばあり方だと思うのでございます。そういう意味で通行税、名前は確かに全部にかかるようでございますが、実際は汽車の場合一%の乗客しか課税になっておらないという結果になっておるわけでございます。物品税でも同じように、物品税とは申しておりますけれども、同じ物品であっても課税最低限以下の安いものは課税にならないという形をとっておるわけでございます。
  147. 板川正吾

    板川委員 すなおに日本語を解釈しますと、通行税という名前で奢侈税的な税金を取るというのは、これはおかしいと思いますね。それならばその趣旨のように、日本国民はまだやたらに寝台車なんか使っちゃいかぬ、特別車も使っちゃいかぬ、ぜいたくだ。だから、これは担税能力があるから税金を取るんだという意味なら、そういう明らかにした税制体系にしたらいいんじゃないですか。通行税というのはどうもおかしい。通る人に税金をかけるんだという趣旨のようにとれる名称でありながら実際は奢侈税だというなら、その点おかしいんじゃないですか。直す気持ちはありませんか。
  148. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 先ほど通行税の変遷をお問いになりましたが、そこで申し上げたように、確かに通行税はだんだん内容が変わってきたことは事実でございます。そういう意味では少し牛刀を用いて鶏肉をさいている感がなきにしもあらずと思いますが、先ほど申し上げましたように、物品税も同じように実は奢侈物品税とでもいうべきなのかもしれませんが、一応課税対象物件を明らかにして、思想的には、消費税全般がその中で高級消費というものを対象にする、そういう意味で通行税ということばをそのまま使っております。そういう点で御了承いただきたいと思うわけであります。
  149. 板川正吾

    板川委員 これは大蔵大臣に伺いたいのですが、国鉄の通行税に一応しぼってみますと、いま言ったように、明文上にも実体上にもどうも不合理があると私、感ずるのです。全体の金額もごくわずかであります。ですから、通行税というのはこの際廃止したほうがいいんじゃないか、廃止してもいいじゃないか。その程度のことを特別のぜいたくとして課税しなくてもいいじゃないか。そうしてその廃止した分を、国鉄に料金改定をさせるならば、その分だけ国鉄収入財政援助に回すべきじゃないでしょうか。いっそのこと廃止して、その分だけ国鉄財政援助のほうに回すという気持ちはありませんか。
  150. 福田赳夫

    福田国務大臣 国鉄援助する必要がありますれば、何も財源を特定のものに求める必要はない。これは回さなければならぬと思います。  ただこの税は、高級のサービス、高級の消費といいますかサービスでしょうな。高級のサービスをねらって、そこには担税力があるのだ、こういう考え方からきておるわけで、名前はいま局長が言うように、いささか牛刀を用いて鶏肉を料理するような名前でございますが、極端にいえばいろいろあります。物品税にしたって何も物品全部にかかっておるわけではありませんし、入場税といっても免税点はあって、高い料金の入場にのみ適用されるのでありますから、それは御議論は御議論といたしまして拝聴いたしました。いま直接税中心のわが国の税制体系ですね。何とかして、機会があればもう少し直接税中心でない形ということを考えなければならぬのじゃないか、私はそう考えておるのです。そういう際に、何かもったいないような税金でもありまするし、また担税能力もある、サービスもいい、そういうものを使用する、それに対する税だ。こういうので、どうも高級ウイスキーに対する課税をやめたらどうだという意見に通ずるものがあるような感じがしてならないのであります。将来税制改正の場合にはよく検討はいたしますが、この際はぜひひとつこれで御協力を願いたい、かように存じます。
  151. 板川正吾

    板川委員 高級サービスに課税を撤廃しろという趣旨は、それを国鉄の料金の改定に含ませて国鉄収入にしてやったらどうか、大蔵省が税金として取らずにという意味で言っておるのですから、ウイスキーの外国製のやつを安くしろと言っておるのじゃありませんから誤解のないように……。  そこで、大臣国鉄財政援助する必要があれば別途に考えるのだ、こういう趣旨をいま言われました。しかし、航空事業育成のためといって過去において通行税を半減しておったでしょう。いまの理屈からいうとおかしいのじゃないですか。過去において航空事業育成のために取るべき通行税を半分にしておったという、先ほど報告がありましたね。そういう制度をやっておるのだから、私が言いたいのは、それならばいまの国鉄財政の再建のためか育成のためか、とにかくそういうことでなくするということだってあり得たっていいのじゃないか。その見合いにおいて考えるのですが、いかがですか。
  152. 福田赳夫

    福田国務大臣 航空機は近年とみに急速に活発になったわけでございます。なかなか旅行者が航空機使用になじまない。そこで当然一割という課税であるべきであるけれども、国民になじませる、それには多少でも負担を軽くするという必要を認めて半分、こういうことにしたわけですが、そういう理由国鉄にはないんですね。もう国民国鉄で非常になじまれて、親しまれておる国鉄でございます。そういうようなことで、航空機の場合とこの場合を比較されるのはいかがか、かように存じます。
  153. 板川正吾

    板川委員 別途に育成なり援助なりするのは考えると言うから、それならば過去において航空機にあったじゃないかという議論を言ってみたのですが、たいした議論じゃないからいいです。ただ、そういうこともあり得てもいいじゃないかと思っておるだけです。  そこで、これは運輸省でもいいですが、新しい運賃制度をとったために、たとえば新幹線を使う東京−大阪の乗客等が、一、二等の廃止により特別料金を設定されましても、いわば運賃、料金合わせて大幅に交通費の負担が安くなっておりますね。本来東京−大阪、新幹線に常時乗るというような人は、いわば担税能力という点からいえば十分あり得る階層だと思うのです。ところが、そういう人たちについて今度の運賃、料金あわせての改定においてはかえって負担を安くさせる。安くさせるということはいかがなものでしょうね。要するに今度の場合には、大衆には一五%の運賃値上げを要求している。そして東京−大阪の新幹線の特別車に乗るような人は料金が安くなるような改定をとったということは、私は、大衆感情からいっても芳しくはない、せめて値下げをしなくても据え置きぐらいにしたらよかったのじゃないかと思うのですが、その点は国鉄でも運輸省でもいい、ひとつ御返答願いたい。
  154. 磯崎叡

    磯崎説明員 いま板川先生のおっしゃったお気持ちは、私、たいへんよくわかるのでございます。その点もだいぶいろいろ考えました。それで、少なくとも一等制度をやめた以上は、一等運賃は取れないけれども、それをどの程度で押えるべきか、いま先生のおっしゃった新幹線の特急の利用者の運賃は在来線と同じでございますから、いわゆる特別車両料金を幾らにするかということはいろいろ検討いたしまして、いまの現状維持、六千三百円でございますか、の案もつくったり、あるいはもう少し下げたのもつくったり、いろいろ考えてみたわけでございますが、結局やはり特別急行料金としての特別車両料金としての一つの料金体系と申しますか、そういうものも一つ考えなければいけない。それからもう一つは、やはり在来線における特別車両料金との均衡もなければいけないというふうなことで、特別急行料金が千九百円ということに相なりましたのは、そういう意味でほかの在来線とのバランスあるいは特別急行料金の中のバランスというふうなことで考えました。  また、特別急行料金の千九百円のほかに、いまのいわゆる特別車両料金が二千円でございます。その二千円は、八百円からスタートいたしまして距離別にやりますと大体こういう形になるということで、何も必ずしも私、飛行機との競争とかいうようなことを頭に置いたわけではございませんが、いまの運賃でも、実はけさほども御質問ございましたけれども、飛行機のビジネス料金よりも少し高くなっております。実際新幹線の一等の利用も非常に悪くて、いい時間帯のもの以外はほとんどがらがらでございます。そういうことでやはり何とかしてあの車の利用率を高めたいということで、御承知のとおり「こだま」のほうはすでに一等車を一両にしてしまいました。「ひかり」のほうはどうしても観光団その他がございますから一両にできませんので、三両つけておりますが、これもやはり利用をふやすという意味では現在よりも少し下がってもやむを得ないのじゃないかというふうな、いろいろな角度から一応検討した数字でございます。  私、先生のおっしゃるお気持ちは非常によくわかりまして、そういう検討もしてみたわけでございますが、結論的にはこういうことになったわけでございます。
  155. 板川正吾

    板川委員 一般大衆には平均一五%の運賃値上げを要求し、中には二〇%、三〇%もありますが、しかし、新幹線等を利用する人には一五%から八%程度逆に安くなるということは、これは大衆感情として好ましくない。少なくとも据え置きくらいに措置すべきじゃなかったかと私は思いますね。これはままいいです。  そこで次に、主税局長は先ほど、一律に通行税を取っておったことは古い形式だ、それは古い時代にとった形式だとおっしゃるのかもしれませんが、外国等では通行税というものを一体どういうような取り方をとっておるか、それとも外国で通行税を取っておる国、取らない国、こういう点について説明を願いたい。
  156. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 名称はいろいろございますけれども、アメリカでは現在は内国空路の航空機だけに五%の課税をいたしております。それから西ドイツ、フランス、オランダ、スウェーデン等、いわゆるEEC諸国におきましては、いずれも付加価値税を課しております。ドイツの場合は一一%でございます。ただ五十キロメートル以下の鉄道及び通勤用バスについては五・五%の軽減税率を使っております。半分でございます。それからフランスは付加価値税で、これはすべてにつきまして外ワク一五%、それからオランダが一二%、スウェーデンが一〇%という率で付加価値税を課しております。  これらの国々は、先ほどちょっと私が申し上げましたが、いわゆる西欧諸国は消費税を一般売り上げ税の形で取っておりまして、通行税だけではなくて、他の物品につきましてもすべて購入したものに対して一律の税をかけております。これがEEC諸国の特色だと思うのでありますが、その点日本と違っておるようでございます。
  157. 板川正吾

    板川委員 そうした国々はこの通行税を取って、これを目的税的に交通関係の費用とかあるいは道路の費用とか、そういったようなところに特別な意図をもって使っておるということはございませんか。
  158. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 いま申し上げた諸国においては、これは一般売り上げ税ないし付加価値税でございますので、それを特別にイヤマークしてやっておるというものはございません。
  159. 板川正吾

    板川委員 これは運輸省かな。今度の運賃値上げ法案と通行税法の一部改正法案、この取り扱いの事務手続について伺いたいのです。  運賃法通行税法、これは一体として手続をされるのだろうと思います。反対するわれわれとしては残念でありますが、たとえば参議院で可決された後施行までの手続、日程等について伺いたいと思うのであります。参議院で可決されたその後、いわば奏上の手続があり、公布があり官報に掲示された後、公布の翌日から施行、こういうことになっておりますね。そうしますると、参議院の議決後どのくらいの日にちで公布され、施行されるということになりますか、この点について予想でありますが、ひとつ伺っておきたいと思います。
  160. 町田直

    ○町田政府委員 運賃法の一部改正法律案につきまして、先生いまおっしゃいましたように、成立いたしましたら奏上いたしまして、公布いたしまして、そして翌日から施行する、こういうことでございますので、その手続を順調に済ませ次第施行いたしたい、こういうふうに考えております。
  161. 板川正吾

    板川委員 たとえばきょう可決になったとすれば、いつから——国鉄としては一番早い機会にやりたい、こう思っておるでしょうから、たとえば今晩十時なら十時に可決されたらあしたからできますかどうか、幾日間か置かざるを得ないのか、その点の見通しはわかりませんか。
  162. 町田直

    ○町田政府委員 きょう可決されましてあしたからということになりますかどうかは、実は奏上の手続、それから官報公布の手続等いろいろございますのでなんですが、いままでの例を見ますと、たしか翌日または翌々日くらいという形になっていたかと思います。
  163. 板川正吾

    板川委員 鉄道営業法によりますと、三条の二項で、国有鉄道以外の私鉄の場合に、運賃その他の運送条件を加重するとする場合、要するに運賃値上げをする場合には七日以上の公告をせよ、こういう手続規定があります。しかし、これは国有鉄道以外の鉄道であって、国有鉄道には七日以上公示しろという規定は適用されません。国有鉄道については営業法第三条によって「運賃其ノ他ノ運送条件ハ関係停車場ニ公告シタル後ニ非サレハ之ヲ実施スルコトヲ得ス」ということになっておりますから、国有鉄道は公示をすれば運賃値上げを実行できる、こう思います。これは国鉄に聞いているのですが、そうしますると、この場合公示という方式は具体的にはどういう方式をとりますか。たとえば本日より運賃値上げをいたしましたということであるのか、それとも通常一般に掲示されておる当駅から主要なる駅までの運賃はかくかくになりましたという意味において運賃表を掲示をするのか、どういう自主的な手続がとられておりますか。
  164. 磯崎叡

    磯崎説明員 いままでの慣例によりますと、官報でもって運賃法の成立が公布されますと、施行はその翌日になっておりますので、その翌日の午前零時に駅頭に掲示をいたします。それからどこからどこまで幾らという具体的な金額も全部掲示いたします。しかし、たとえば終電車が一時ごろまで出ますが、その間だけは慣例上旧運賃ということになっております。事務的に間に合いませんので、午前零時に掲示を一斉に出しますが、終電車までは前の運賃、あまり法律根拠はございませんが、慣例上はそういうふうにいたしておりまして、実際の新しい運賃は翌日の初列車からというふうな扱い方になっております。
  165. 板川正吾

    板川委員 法制局来ておりますね。私鉄の場合には七日間の公示を法律で義務づけておりながら、国鉄の場合は国会で議決になり、その晩のうちに奏上し、その晩のうちに官報の号外が組まれ、そしてその晩の零時に掲示をすれば翌日から運賃値上げしていい。運送条件加重、運賃の加重をやってよろしい、こういうようになっており、私鉄とその点において扱い方に差別があるのはどういう理由ですか。鉄道営業法の三条の解釈で。
  166. 角田礼次郎

    ○角田政府委員 三条の二項では、御指摘のように私鉄国鉄と取り扱いを異にしておるわけでございますが、法律の解釈と申しますよりは立法の趣旨についてお尋ねだろうと思います。それで実は、古い記録をいろいろ調べてみたのでございます。と申しますのは、この鉄道営業法の三条の二項で「国有鉄道以外ノ鉄道」という文字が入りまして、国鉄私鉄との取り扱いを異にするようになりましたのは、昭和二十三年の国鉄運賃法が初めて制定されたときなのでありますが、その附則でかように改正して異なる取り扱いをしている。  そこで実は、当時の衆議院の委員長の本会議における報告とか、あるいは衆議院の委員会の速記録等を調べてみたのでございますが、実ははっきりしない点とはっきりした点とございます。その点について委員の方からの質問がございまして、それに対して当時の政府委員答えとしましては、要するに国鉄運賃は国会における法律の審議というものを通じて、十分事前に国民に予告できる、そういうことであるので従来私鉄並みと申しますか、それまでは国鉄営業法の適用を直接受けていた制度を現行のように改めた、こういうふうに答えております。それ以上のことはあまりはっきりいたしておりません。  なお、これはおことばを返す意味で申し上げるわけじゃございませんが、この点についてはそれ以上の追及が行なわれておりませんで、実はこの法案につきましては三点ばかり修正されておりますが、その修正点の中にはこの点も入っておりませんので、どうもそれ以上のことははっきりいたしておりません。
  167. 板川正吾

    板川委員 いいです。これは法律の解釈でいいのですが、ここで私、疑問を持つのですがね。国鉄運賃法の場合には国会へ法律案として提出され、そして議論になるから、国民運賃値上げする趣旨も、どのくらい上げようということも、ラジオを通じてあるいは新聞等を通じてあらかじめわかる。だから、それがきまったとしても青天のへきれきのごとくではない。しかし、私鉄の場合には、業者から運輸大臣に認可申請が行なわれる。運輸大臣は公聴会なりをしかるべきときに開いてそれを認可する。しかし、一般の人はよくわからない。だから運賃値上げするときにはせめて一週間以上は公示しろ。片っ方は国会で論議をされるから公知される。私鉄の場合には、運輸大臣に申請をして一般の人はよくわからない。申請されたという手続だけだからわからぬ。こういうのがこの三条で私鉄国鉄を分けた理由のように思うのです。  しかし、私鉄の場合でも、最近は新聞、ラジオ、テレビ、そういったもので、情報社会といわれるくらいですから、どこでもわかっておるんだし、そういう点ではどうもこの三条というのが実態に合わない感じがするんですね。何で国鉄私鉄に差別があるのかということです。私は、この際はやはり私鉄並みに国鉄も少なくとも公布の日、この場合には公布の日の翌日という法律修正が可決しておりますから、公布の日の少なくとも国会で議決した一週間後ぐらいにすれば、その間に運賃値上げの公示が事実できると思うのです。少なくともそういう一週間程度の時間を見て公示をして、それから運賃値上げをするということのほうが値上げの場合には私は妥当のように思う。私鉄国鉄並みにしろというんじゃなくて、国鉄も一週間以上の公示を必要とするようになるべきだと思いますが、この点について鉄監局長いかがですか。
  168. 町田直

    ○町田政府委員 ただいま先生のおっしゃいましたのは、成立後公布まで公示に必要な期間、日を置いたらどうか、こういうような御意見かと思います。政策的と申しますか、先生のおっしゃられるような意味であるいはそういうことが適切なのかもしれませんけれども、ただ私、実ははっきりわかりませんので間違っておるかもしれませんが、法律が成立しましたあとは、要するに所要の手続を経て順調に公布をするというのがたてまえではないかと思いますので、そういうおっしゃるような趣旨のことを入れることがはたして法律の公布の手続として適切であるかどうかという問題も別途あるのではないかという気がいたしまして、いまここで直ちに御趣旨に沿いますというようなお答えはちょっといたしかねる次第でございます。
  169. 板川正吾

    板川委員 手続は済んですみやかに上げるというんなら、それなら私鉄の場合も一週間置く必要はないという議論が生まれると思うのですね。私鉄の場合には一週間公示しなくてはならぬという法律規定があるんだから、運賃値上げとか運送条件の加重、こういう場合にはある程度事前に予告した上で上げなさい。こういう趣旨をいっているんであって、利用者なり国民に予告した後上げなさいというんで、その趣旨のほうが私は正しいと思うのですよ。だから、この規定は国鉄運賃法の中にはないのだけれども、本来ならやはり七日間ぐらい公示すべきだ。いまの法体系の中でそれを実行するとすれば、公示の日を参議院可決後一週間ぐらいあとにすれば実質的にそういう取り扱いができるだろう、こう思います。  まあそれは私の意見ですから議論はやめて、時間の関係もありますから、この際ひとつ大蔵大臣国鉄の運営問題について伺ってみたいと思うのです。  国鉄出資金八十九億円、大蔵大臣、これは一体妥当な出資額でありましょうか。この国有鉄道法によりますと、国鉄出資金は国が全部出資をする、国は必要とあれば予算範囲出資を増額することができる、増額された場合には増資されたものとする、こういう規定になっております。国以外が国鉄出資するわけにはいきません。国が必要とあればこれを増額することができるんだ。しかし、八十九億円というのは、従来ずっと八十九億円でありますから、これで国がこれ以上出す必要を認めていなかったという議論に私はなると思うのでありますが、この八十九億円という出資額はあまりにも少ないんじゃないでしょうか。これは私が調べたところでは、たとえば私鉄ですら、東武が百工億、東急百五億、名古屋鉄道が百二十四億、私鉄の大手十四社の合計が千二百三十三億、私鉄大手十四社の資産は約一兆円、国鉄資産は三兆円、私鉄大手十四社の資産国鉄の三分の一の一兆円。十四社の資本金が合計で千二百三十三億円。八幡、富士は、最近合併するかもしれませんが、合併された場合には二千三百億円というふうになる。国鉄企業というのは従業員四十七万人、一年間の総売り上げが一兆一千億、日本最大の企業であります。この日本最大の企業が八十九億円の出資金というのはどういうわけなんでしょうか。これで、これ以上出す必要がないというお考えはどういうのでしょうか。その点伺います。
  170. 福田赳夫

    福田国務大臣 お話しのように、資本金は八十九億であります。しかし、資本は非常に膨大な資本でありまして、一兆一千億をかなり上回る額になっております。企業として見る場合に、資本として、資本金ばかりでなく積立金等を加えた資本としての評価をすべきだと思うのですが、その資本比率は四二%という高きにのぼるわけでございます。他の私鉄でありますとか、鉄鋼でありますとか、電力でありますとか、かような会社に比べてかなり高い比率になっております。  そういうようなことで、資本議論資本論といたしましては、これはそう悪い状態ではない、かなり高い評価をしていい状態になっておる、こういうふうに見ております。
  171. 板川正吾

    板川委員 資本が比較的高いんだ、四二%あると言う。いま国鉄で実は一番困っておるのは、財政的な金ですね。財政資金が困っておるわけです。私はその意味がよくわからぬのですが、国鉄がいま一番必要とするのは金なんですね。その金で一番使いいい金は資本金を出してもらうことが一番いいんでしょう。それは内部留保というのもあるかもしれませんけれども、しかし、国鉄のような大企業が八十九億円という国の出資という。それが少ないために、いまいわば国鉄財政が苦しいんじゃないでしょうか。だから、たとえば政府関係機関で、ほかの企業政府はどのくらい出しておるかというと、専売公社については二百三十何億円出しておりますね。日本電電公社、これは百八十二億円出しておる。電源開発については六百六十六億円、日本航空については二百六十九億円、航空機製造会社は他の資本が入っておりますからいいですが、日本住宅公団が七百七十五億円、日本道路公団が七百七十八億円、首都高速道路公団に約三百三十億というふうに出ておりますね。そういう政府関係機関の出資の割合から見ましても、これは国鉄があまりにも少ない。私、私鉄大手十四社を調べましたらば、資産に対して資本金の割合は一九%。そうすると、国鉄資産三兆円というのであれば、約五千億から六千億ぐらいの出資金が必要じゃないか、こういう議論になると思うのであります。  この政府関係機関の割合に対して、国鉄出資は何としても少ないように思うのでありますが、その点はどう思いますか。
  172. 海堀洋平

    海堀政府委員 先生御存じのとおり、国鉄は、特別会計で戦前から非常に大きな事業を行なっておりまして、当時の持っておりました資産はそのまま現物で公社に移されたわけでございます。公社設立後の出資金、いわゆる金で出資した額は八十九億円でございますが、現物で出資されたものは過去の評価になっておりますので、これを再評価いたしました積立金が一兆一千二百億円余り、他に寄付等がありまして、現在損費を引きました自己資本が四十二年度末で約一兆五百億円程度、先ほど大臣からお話のありました四二%というのは四十一年度でございまして、四十二年度で申し上げますと三六%程度の自己資本の割合になっているわけでございます。  それに対しまして、戦後につくりました公団とかあるいは電発というふうなものについては、なるほど出資を行なっております。たとえば道路公団につきましては、大体新規投資資本コスト、利子負担が六分になるように政府出資をいたしておるわけでございます。それから住宅公団につきましては、前に出資をいたしておりまして、最近は交付金に切りかえておりますが、その考え方は、分譲住宅についての延べ払いについての、分譲を受けた方の利子負担が七・五%、それから賃貸の場合におきましては、その賃貸を受けたなにが五%程度というふうなことでなにしております。この場合に国鉄は使用総資本に対してどの程度の利子負担になっておるか申し上げますと、四十三年度予算で見てみますと四・三三%の使用総資本に対する利子負担であります。これはその他の政府関係機関あるいは民間と比べましても、使用総資本に対する利子の負担の割合が出資が少ないためにとかいう意味で特に高いというふうには考えられないのでございます。
  173. 板川正吾

    板川委員 では、その議論はあとにしましょう。  時間の都合もありますから、では大蔵大臣に次に伺いますが、いま、あの戦後の日本を再建した二つの基幹産業が財政的に重大な危機を迎えている。その一つは石炭産業、その一つ国有鉄道を中心としている鉄道であります。  戦後の日本の経済を復興させたのが、エネルギー面では石炭であり、交通運輸の面において国鉄というものの役割りが日本の経済の発展の回復をささえたと思うのです。その石炭と鉄道の再建方式がどっちもこの国会にかかった。ところが、石炭については過去三千億という金が出ており、さらに今後五カ年間に四千二百億の金が出る。あるいはそれ以上になるかもしれない。しかし、国鉄については政府は若干の援助をしたとかいうことを言っておりますが、これはわれわれの計算からいえば、ほとんど援助なしと思っている。逆に国鉄に犠牲を負わしておると思うのでありますが、とにかくこの石炭産業に対する再建方式国鉄を再建する方式とあまりにも扱い方に差があるのは、一体どういう理由なんでしょうか。これは私ども運輸関係の者とすると、石炭再建には膨大な国の資金が投じられておる。きょうの本会議でも御承知のように若干の改正が行なわれましたけれども、たとえば石炭山が廃山して、そこの労働者には退職金も未払い賃金も、退職金一〇〇%、未払い賃金七五%まで保証される。その山の炭を運搬しておった鉄道部門が、閉山のためにこれまた廃線になっても、その労働者には一銭も出ない、こういうたてまえになっておる。とにかく石炭の再建方式と鉄道の再建方式に大きな差があるのは一体どういうことなんでしょうか。これは財政問題として大蔵大臣にお伺いいたします。
  174. 福田赳夫

    福田国務大臣 私、石炭と国鉄を比べて考えたことはありません。ありませんが、私の直感を申し上げますれば国鉄はそのになうところの任務というものは決して私は衰えてはいない、こういうふうに考えます。ただ、いろいろな競争企業、競争輸送機関なんかの出現によりまして、改善、改革を要するという事態に当面しておる、そういうふうに考えます。国鉄のになう任務は今後ますます重大である、かように考えます。  石炭のほうは、これもわが国のエネルギー源として重要ではあります。これは重要です。しかし、一部整理をする、しなければならぬ面が出てきておる。   〔委員長退席、倉成委員長代理着席〕 廃山、廃鉱というようなことの必要になる、必至になる面が出てきておる。その辺がなかなか違っておる面じゃあるまいか、さように考えておるのであります。  これが再建策につきましては、石炭につきましては石炭鉱業審議会に原案をつくってもらい、その答申に基づいてこれをやっておる。また、国鉄につきましては国鉄財政推進会議、この会議意見書に基づいてこれをやっておる。こういうので企業の形態がおのずから違うのですから、その援助方法、それは違いが出てくるのは当然でございますけれども、その援助の量になりますと、おっしゃるように非常に違いがある、こういうことじゃないかと思います。これはかなり財政面においては少ないかもしれぬ。しかしながら、投融資の面において非常に膨大な援助をするということになっており、しかもこれが推進会議意見書、そのものを大体においてのみ込んだという援助の量でもありますので、私は、決してこの石炭産業に対してとった措置に見劣りがある、かようには考えておりません。
  175. 板川正吾

    板川委員 いつも明快な議論をする大蔵大臣としては、いまの答弁はさっぱりどうも要領を得ていませんな、何を言っているのだか。同じ企業で基幹的な産業ですよ。石炭もエネルギー需要上重要な役割りを果たしてきました。日本の唯一の国産エネルギー源として石炭産業を維持することも大切であります。いまのエネルギー源の七〇%は石油でしょう。その石油の大部分が輸入ですから、万が一この石油供給源における戦争、動乱というようなことになりますと、たいへんな影響を受けます。そこで国産エネルギーである石炭を維持しようというのは、国の政策上私は妥当だと思うのです。そのことに私はけちをつけているのではないのです。そういう評価を認めて石炭産業に対して過去三千億、将来五年間に四千二百億円という、それが石油の関税の金であろうが、国家の金をそこに投じている。石炭産業を維持再建させるという方式を使っている。しかし、国鉄については、競争機関の発達等によって部分的には弱まっている。部分的には弱まっておるが、一面また大都市を中心とする大量通勤輸送の需要も非常にふえている。これに金を使わなければならない、こういう関係になっております。  なるほど、国鉄としては何も斜陽産業だとは私ども思っておりません。しかし部分的には、たとえば私がいま比較に出したのは、石炭山が廃山をする、それを運んでおった私鉄がつぶれる、こういう場合には、石炭山については政府資金で一〇〇%の退職金が保証される、七五%の未払い賃金が保証される。しかし、運んでおった私鉄に対しては、これは一銭もいままでは国家資金援助というのはないのです。だから、そういう意味で不合理があるのじゃないかということを一つ例として申し上げた。同時に、いま国鉄が大都市通勤輸送等について膨大な資金がかかる。そうしてそれも懐妊期間が長くて、鉄道建設というのは最終利子が非常にかかるわけです。財政的な急迫を告げている。その国鉄に対して孫利子をわずか負担するという程度のものであって、それで国が国鉄に対して援助を惜しまなかったというのは、平等を欠いているのではないか、財政政策として石炭と国鉄と比較した場合に、平等を欠いているのではないか。その具体的な一例として見ると、いま石炭山の私鉄と炭鉱の問題と同じようなわけなんです。ただ若干政府がめんどうを見た。幾らか利子を負担をすることに昨年からなった。  実は私、比較してみたのですよ。昭和三十五年に、国鉄のいわゆる借り入れ金の中に占める財政投融資の額は全体で五四%を占めておった、鉄道債券が四六%。ところが昭和四十二年になると、財政投融資の割合は二五%に減って、鉄道債券の割合が七五%にふえた。鉄道債券の金利は御承知のように七分五厘から七分三厘でしょう。財政投融資の金は六分五厘。そして国鉄には政府出資もない。それから政府の低金利の金もだんだんウエートが下がってきている。  そうして、先ほども公明党の議員が質問しておりましたけれども、国鉄にはいわば公共負担というものを押しつけておる。国鉄では、国鉄運賃法からいいまして定期券の割引を五割以上しろということになっておる。定期券の割引をいまどのくらいしているかというと、私鉄の場合には、学生定期割引が普通運賃の九三二%が最高で平均九二・七%です。国鉄の場合は、昨年若干の修正があったから、学生定期通勤定期とも若干割引率は下がったでしょう。これはなぜそういうコストを割って割引をさしておるかといえば、それは産業政策上あるいは文教政策上、定期券の安い運賃が望ましいということでそういうことになっておると思うのです。諸外国の場合には、そういう原価を割った負担に対しては政府が補償しておる、こういう例もあるのです。そのほか、定期券ばかりでなくて政策等級の問題、暫定割引の問題、特別措置の問題、新聞雑誌等の問題というようなもので、とにかく国鉄は取ってもいい限界から見ますと、四十二年度に九百二十九億円という負担をしておる、こういうことになる。  一方において、国鉄というのは、長距離は飛行機、短距離は自動車輸送と競争関係にある。飛行機のほうは、これはほとんど国内航空の飛行場は公費をもって国と地方自治体でつくってやっておる。道路は、これは膨大な道路建設資金をもってつくって、一般に無料公開を原則としておる。鉄道の場合には全部自分で、増線する場合でも、これは一坪何万円というものを買い込んで工事しなければならぬ、こういうことになっておるのですね。  要するに、国鉄にはそういう負担を社会がかけておりながら、社会がこれをめんどうを見ない、国がこれをめんどうを見ないというのはさてどうかな。石炭政策との見合いにおいてもおかしい、こういうふうに考えるのですが、どうでしょう。
  176. 福田赳夫

    福田国務大臣 国鉄は、他の航空産業あたりに比べますと、非常に歴史の古い運輸輸送機関でありまして、当初はたしかこれは国費で運営したはずであります。その時代からの積み重ねの財産が、いまの公社に引き継がれておる、こういうことになっておるわけであります。いま飛行機の場合と比較されての話でありますが、飛行機はこれからということだと思うのです。ですから、やはりこれからかなり国が出し分を多くしけなればやっていけない、こういうことだろうと思いますが、同じことが国鉄についても百年前にはあったわけなんです。その百年前の国鉄の草創の時期と今日の航空機のこととをお考え願いたい、こういうふうに思うわけです。  とにかく、今度のこの再建案は、国鉄財政再建推進会議が、これが最善の案だといって意見を出された、それをほとんどまるのみにして国会で御審議を願っておる、こういうことでございまして、頭の中で考えればいろいろの道筋があると思います。あると思いますが、まあまあ専門家が寄って、これが最善だ、こういうふうに考えた案でありまして、私は、それをとにかく政府としてほとんど全面的に受け入れた、そのとった政府の態度に対しましては決してこれが悪い考え方ではあるまい、かように考えておるのであります。
  177. 板川正吾

    板川委員 では議論を少しほかへ変えてみますが、大蔵大臣ひとつ将来のことも考えて交通政策という面を理解してもらうために議論してみたいと思うのであります。  いまの日本の交通政策上特に重要なのは、大都市の通勤輸送、これをどうするかということが実は重要な問題だと思うのです。経済の高度成長が引き続き今後も行なわれるかもしれません。人口の大都市及びその周辺に集中が行なわれております。企業は地方に分散しろという政府の指導等もありますけれども、これは一たんあるものをこわしてよそに分散するというのはなかなかむずかしい。たとえば筑波山のふもとにおける学園都市、本庄における早稲田大学の移転等、これはなかなか一朝一夕に大都市の分散なんというのはできるものじゃないのです。  ところが、専門家の意見によりますと、昭和四十年から六十年の間に、東京を中心として一都六県、大臣の選挙区である群馬県も、東京、神奈川、千葉、埼玉、茨城、栃木、この首都圏に人口が千三百万人この二十年間にふえるだろう、こういわれております。人口がふえるのは、その中心はやはり東京都から五十キロないし六十キロまでの範囲が一番多い。それは群馬の赤城山のふもとにおける五十万都市、宇都宮三十万都市、水戸の何十万都市というのもありますけれども、やはり一番人口がふえるのは東京周辺です。東京周辺に非常な勢いで人口がふえてまいりますと、経済の中心である東京とその地方との通勤需要というのが非常に数を増してくる。この通勤需要をどうするか。千三百万人ふえる中で約三百八十六万人という勘定になっておりますが、通勤客がこれだけふえるといっておる。そのために二十二本ないし二十四本ぐらい複線の通勤鉄道をふやさなければ輸送し切れないという考え方になっておる。大体そういう構想があるのであります。しかし、いま鉄道を敷くといっても、国鉄でも私鉄でもそうでありますが、東京都の地下を掘るのに一キロ六十億から七十億円かかる。東京都から郊外に出るのも、どこでも平面交差はもうほとんどなくなりますから、高架線にするということになりますと、一キロについて十五億から二十億近くかかる。五十キロの郊外電車を敷くためには一千億円以上の金がかかるのですね。その一千億以上の金をもって複線通勤電車を一本敷いて、現状でいくならばとてもこれは採算が合わないのです。運賃を三倍にし四倍にしても、いまのままでは利息も払えないという状況でしょう。ですから、いまのままでいくならばもう鉄道を敷くというわけにはなかなかいかない、敷けば敷くほど赤字になる、こういう状況にあるのですね。ですから、大都市通勤輸送のために膨大な資金を要するのですが、こういう点について大蔵省当局としてはどのような理解があるだろうかということが私の質問の趣旨なんです。  なお、説明をいたしますと、たとえば鉄道輸送というものを評価してもらいたいということなんです、結論として言いたいことは。鉄道輸送の場合には十メートルの面積があれば複線区間が大体できます。道路輸送の場合には四十五メートルくらいの幅がないと六車線の道路ができない。しかも道路の輸送力というのは、六車線であっても一日五万台か六万台の自動車しか交通しておりません。一番多い東京−千葉間の高速道路が一日五万五千台、そこを通る頭の数は一日八万人。しかし、国鉄の中央線は二分間隔、十両編成で一時間に十一万人の通勤者を輸送しておる。ですから、大都市の交通は将来、この通勤需要、通勤者を輸送するための輸送機関というのは、鉄道以外に能率的な輸送機関というのはない、こう思うのです。そういう意味で、鉄道の輸送力、大都市における役割りというのを評価しなくてはならないだろうと私は考える。ところがそういう面においては、鉄道はとにかく自己資金でやれ、独立採算制でやれ、そうして一方において道路をふやすこともいいのでありますが、道路に膨大な金をかけてもそれは輸送効率というものは非常に低いのです。こういう面から、大蔵当局としても、この交通政策に取り組む財政考え方というものをひとつこの際考え直しを願いたいと私は思うのでありますが、いかがですか。
  178. 福田赳夫

    福田国務大臣 交通問題は、申し上げるまでもなく、これからの非常に大きな問題だろうと思います。ことに自動車による路面交通というのが非常にむずかしい事態になるであろう、こういうふうに考えます。いまの自動車の生産状況、道路の整備状況、そういうものをあわせ考えるときに、数年後にたいへんな問題が出てくると思います。われわれはそれに対しても備えなければならぬわけなのであります。そういう際において、傾向とすると、輸送手段というものが大量輸送手段、そっちのほうにだんだんといく傾向を持たなければならぬということに着目する必要がある。そういうことを考えるときに、やはり国鉄役割り、また私鉄役割り、さらに地下鉄の役割り、これは非常に重要になってくる。これを補うのに大型バス、こういう体系で通勤輸送というものがサービスの完ぺきを期せられる、こういうことになると思います。  いま、それぞれの特性に応じまして、これらの方向の施策がうまくいくようにというので、財政当局としても援助しております。国鉄についてはいま御提案のようなかっこうになっております。それから地下鉄につきましては四十五年度から新援助方式考えたい、こういうふうに考えております。私鉄につきましてもいろいろな面の助成、補助を与えるというふうにしておる、さようなことで、何とかひとつ輸送問題において大きな行き詰まりが生じないように、経済の発展との間に輸送の隘路というものが生じないようにということを心がけてまいりたい、さように存じます。
  179. 板川正吾

    板川委員 そうした大都市を中心とする交通需要に対しては、鉄道、道路すべての総合輸送力をもって立ち向かうということは必要でしょう。しかし、この通勤需要に対してはやはり鉄道以外にない、鉄道を重要視すべきだという意味を申し上げたのであります。  そこで、最近実はこういう議論が新聞に出ておるわけですが、これをひとつ伺っておきたいと思います。  鉄道と他の交通機関との輸送手段の競争力というのが、先ほど言いましたように平等でない。われわれの議論としては通路費の負担だと言っておりますが、鉄道は通路費を自己負担にする、自動車の場合には税金、あるいはガソリン、軽油税、こういうものを持っても半分程度しか道路の費用の負担をしていない、飛行機の場合も割合が小さい、鉄道の場合には全額自己負担である、こういうことで競争条件が平等でない。この競争条件が平等でないのを平等にするために、われわれのほうの議論としては、政府財政補助金というような制度をもって国鉄援助して競争条件を平等にしたらどうか、こういう議論。われわれのほうのたてまえなんです。  ところが大蔵省では、「「輸送手段の公正競争を実現するには税制、財政補助金、運賃制度などの諸制度について全輸送手段を通じて条件が均等でなければならない」と、イコール・フーツティングに関して一見、運輸省と同一の見解を示している。だがその解決の仕方は「鉄道に全面的に補助金を与えて、他の輸送手段に対する競争力を培養するというのではなく、国鉄運賃引き上げ、財政援助、合理化の三本柱で」——実は三本立てではないのです。運賃引き上げと合理化の二本立てですが、ここはこういっているのです。「三本柱で自立する一方、他の輸送手段にも適正にコストを負担させる方向で競争力を均等化すべきだ」といったもの。」まあ大蔵省としては、国鉄についてはその三本柱で合理化をさせ、運賃を引き上げて——実は運賃を引き上げると競争力はなくなるのですけれども、引き上げる一面、他の交通機関に対しては競争力を平等にするために負担を増そう。「鉄道以外の輸送手段の利用者の負担をまし、財政補助を適正化する形で、均等かつ平等にしようというわけだ。」  こういう議論が四月十三日の日経にあります。要するに、交通機関の競争条件というのを、国鉄援助を与えてバランスをとるのじゃなくて、他の交通機関に負担をかけさしてこの競争条件の平等をはかろう、こういう考え方のようでありますが、こういう思想を現在お持ちでありますかどうか、一言言ってください。
  180. 海堀洋平

    海堀政府委員 先生御存じのとおり、世界各国とも現在輸送問題、特に鉄道輸送の斜陽という問題を契機にしまして、どういうふうに輸送問題を解決していくかということにつきましていろいろ論議が行なわれております。したがいまして、事務的には私たちといたしましても各国のいろいろな理論、それから現にとりつつある措置等を検討いたしまして種々論議をいたしていることは事実でございます。しかし、何といいましても、各種輸送手段にはそれぞれの経緯とそれから現実がありまして、直ちに各国の理論あるいは各国がとりつつある措置をとれるというふうに考えているわけではございません。  ただ、基本的な考え方といたしまして、たとえば西独の交通大臣のレーバーが演説しました中に、やはり各交通機関はそのコストをそれぞれ国民経済的に見て最も安い輸送手段で行なう、しかし、安い輸送手段で行なわれなければならないけれども、コストはその利用者によって負担させるというのが基本的な考えであるというふうなことを述べております。それからフランスとか、あるいはその他の国におきまして、重量物トラックに車軸税、要するに道路の損傷に応じて税を負担していただくというふうな措置もとられている。そういうことはやはり今後日本の輸送体系を考えていく上に必要であるがゆえに、勉強はし、議論はいたしておりますが、そういうふうな方向が直ちに現実に実現できるというふうには考えておるわけではございません。
  181. 板川正吾

    板川委員 われわれも競争条件を平等にしていくべきだという議論には賛成なんです、それも公正、妥当に行なわれるならば。確かに鉄道の場合、競争条件が不利にさせられておるんです。何だかんだといったって、安い定期券や何かで押えられており、割り引きもさせられており、しかし、一面、独立採算制だということでやられるんですからね。しかも、大都市中心の鉄道網を今後強化しなくちゃならないということになると、それを自己資金でやれということじゃやっていけないんですね。いずれにしましても、交通機関の競争条件、輸送条件というのを平等にするということにわれわれのほうも賛成でありますが、まあ具体的に将来政策等が出ましたら、議論をしていきたいと思います。  もう一つだけ伺いますが、将来の大都市中心の通勤需要というのをどうするかということを考えた場合、非常に通勤者が多いんですね。通勤定期の利用者が多くなってきているんです。かつては六割だったのが、七割になり七割五分になり八割近くになっておると思います。鉄道の輸送するお客さんというのは、圧倒的多数が通勤者ということになるんです。この通勤者にコストを割った割り引きをしておるということは、いわば私はこれは産業政策上の必要に基づいて行なわれてきておると思うんです。いろんな理屈はあるかもしれませんが、通勤者に膨大な交通費を負担させてはいけないんです。それでは大都市の会社通勤者が集まらないということもあるでしょう。労働力確保ということもあるでしょう。ですから私は、将来この通勤定期というのは全額企業負担というたてまえをとったらいいんじゃないか。もちろんこれは事業者負担になりますから、政府通勤の手当を全額負担する。いやならもっと近くから人をとるべきである。それがいやならば近くに住宅なり、住宅政策を呼応して近くに転勤させる。遠くから通う定期運賃を払いたくないというなら、人をとる場合には近くから人をとるべきである。遠くから通うのを承知で人をとる場合は、政府も事業体も全額負担する、こういうたてまえになれば、これは交通問題解決の一歩前進になるんじゃないかと思うのです。   〔倉成委員長代理退席、委員長着席〕  いろいろな方法があります。いま運輸省などで交通施設整備の株式会社なんというような案を出して、別会社をつくって新しい鉄道を敷く援助をしようなんということを言っておりますけれども、実際それは私は不可能だと思うのです。いま東京都の美濃部さんが地下鉄をぜひ東京都に認可してほしいというので、運輸大臣に申請をして、運動をして許可になった。ところが、東京都がいまから新しく金を借りて地下鉄をやったのじゃ、運賃を普通三十円が最低の場合に六十円にしなくてはならない、半年後に七十円、一年後は八十円にしなければ採算が合わない、こういうことになる。ところが、交通営団のほうは、浅草——渋谷間なんというのは戦前からやっておったのですから、全部償却も済んでおる。あるいは丸ノ内線というのは、地下工事が一キロ三十五億円程度でできたときのもので、それがいまフルに回転しておるから、ある程度工事能力、資金的な能力がある。しかし、東京都がこれから借金をして、一キロ七十億円もかかる地下鉄を掘って、そうしてやったところで、これは金利負担に追われて採算が合わないのですね。ですから、これから大都市通勤のための鉄道を敷くなんということは、新会社で金を借りてやらせるんだということでは採算はペイしない。だが国鉄が全国的に、あるいは私鉄がとにかくいま償却済みのような財産をフルに回転するという中で、この建設資金の相当額が生み出されるのだろうと思うのです。  そういうふうなことを考えてみますと、将来の大都市の、特に東京都を中心とする通勤需要を考えた場合に、通勤定期の代金は事業者負担という原則にでもならないと、私はこの問題は解決しないと思うのです。これは私がそう思っておるということで、念頭に置かれて、大蔵当局においてもひとつ交通問題を今後重要な課題として取り組んでもらいたいと思うのです。国鉄に独立採算制だけ押しつけて、わずかな孫利子だけを負担してやるというだけでおまえ自由にやれというのじゃ、絶対にこれはやっていけるものではない、こういうふうに考えるものですから、ひとつその点を将来も御検討を願いたいということを要望しておきます。大臣からひとつ……。
  182. 福田赳夫

    福田国務大臣 たいへんいろいろ有益な御意見を承らせていただき、ありがとうございました。
  183. 板川正吾

    板川委員 では、時間となりましたから、以上をもって私の質問は終わります。(拍手)
  184. 田中正巳

  185. 広沢直樹

    広沢(直)委員 先ほど大蔵大臣おいででなかったので、大蔵大臣に対する質問を若干残しておきました。大臣に主としてお伺いをいたしたいと思います。  通行税法について、先ほど主税局長から沿革と変遷については具体的なお答えがあったわけでありますが、この通行税そのものが、昭和十三年のいわゆる支那事変特別税としてできてきたのだ、そういう特別的な措置であるということから、存廃論というものも盛んにいわれておるわけです。しかし、その後において、これは昭和二十五年の四月の改正で、原則として一等旅客運賃については、先ほども話がありましたが、奢侈的な性格を持っているんだ。確かにこの提案理由説明の中にも、汽車及び電車の一等乗客について通行税を課税しておりますのは、その利用の実態が一般の旅客と比較してより高い水準にある、それに担税力があると認めての関連でこれをかけている、こういうわけでありますね。しかし、今回の等級廃止により、先ほど副総裁からも御説明がありましたけれども、非常に安くなることはけっこうだと思うのです。そうしてまた大衆化されていくということもけっこうだと思うのです。しかし、先ほども指摘があったように、大衆の運賃が相当上がっておる、非常に短い区間においては五〇%も上がっておるし、通勤定期においては——せんだっての予算委員会でも私は具体的な例を引いて指摘いたしておいたわけでありますが、そういったものが急に安くなっていくということは、政策的なものから考えて、そういったものを優遇していくんじゃないかという感じになっている。むしろこういったものは奢侈的な考えがあるならば、一応通行税を取ったものを、今度はいまいう国鉄財政がたいへんだということであれば、これは目的税といいますか、使途を明確にして、通勤対策の費用だとかいろいろなそういうものに還元して考えていくべきじゃないかということをお伺いしたわけです。大蔵大臣の答弁をいただくということで、これは保留してありました。
  186. 福田赳夫

    福田国務大臣 目的税という考えですが、そもそも目的税という考え方は私はなるべくこれを制限をしていきたいという考え方を持っております。やはり財政を運営していくには、広く財政需要を見、それから財源を勘案いたしましてバランスのとれた財政運営をしなければならぬ。そういうときに、この税はどこへ回すんだということになれば、みんな背番号がついて、国の財政のやりくりが機動的にいたしかねる、こういうことで、目的税にしたらどうだというお考えにつきましては賛成はいたしかねます。  ただ問題は、奢侈的というようなお話でございましたが、そういう面もあると思いますが、もう少し適切に申し上げれば、今度の特別料金というかこちらのほうは、その与えるサービス一般サービスに比べますと非常に高度なものである。その高度のサービスを利用しようとする人はそれだけの担税力を持った人である。そういうところに着目して課税を存続していこう、こういう考え方でございまして、これを逆に廃止をするというような考え方をとりますと、どうも私ども、あなたもちょっと触れられましたが、ちょっと妥当でないような感じもする。さりとて、これをまた徴収して目的税として使用するということになりますと、先ほどのようなことでどうも適当でない。私は、ただいま提案をいたしておる方式、一方においては国鉄を全面的に応援する統一体系というが全面的な体制をとる、また一方においては、従来もあったこの税の体系というものを存続するこの形ですね、これは当面やむを得ないのではないか、そういうふうに考えております。
  187. 広沢直樹

    広沢(直)委員 確かに国鉄に対しては、前々からお話がありますように、四十二年から利子補給をやっていく、あるいはいろいろな方法考えているようでございますけれども、いま私が申し上げた目的税にしたらどうかということは、通行税として取っているのがいまの汽車においては一等ですね。あるいは航空機、電車、汽船にしてもそういう特別な設備をしたもの、こういった特定のものにかかっているということでありますし、こういう国鉄財政がたいへんだという時期においては、その方向にこれを還元して使っていく。あるいは道路にしても同じですが、道路予算が少ない。したがって、道路の補給とか道路財源をつくるためにガソリン税というものを目的税としてやっているじゃありませんか。そういう見地からいま意見として申し上げたわけであります。将来ともに国鉄に対する政府財政援助というものは、利子補給だけというのではなくて、何らかそういった面で——先ほども指摘があったように、資本金も少ないということであれば、公共企業体でもありますし、考えていくという筋合いは持ってしかるべきじゃないかと私は思うのです。そういう見地からいまお伺いしたわけですが、もう一ぺん御意見を伺いたい。
  188. 福田赳夫

    福田国務大臣 今回の提案は、十年間を展望いたしまして、十年間をもって国鉄を再建しよう、こういう計画に基づいての、その一環としての財政援助でありますので、これで大体国鉄はいけるんだ、こういう見通しを持っておるわけであります。
  189. 広沢直樹

    広沢(直)委員 いまお答えがございましたが、過日の運輸・大蔵の合同委員会のときも、私は、十年間の計画ということをおっしゃっておりますので、その推進会議の十年間の計画に基づいて具体的に聞いたわけであります。しかしながら、十年というのは試算表として出ておりますけれども、これは明確にこうなっていくんだという筋合いじゃない。確かに、一つ一つ尋ねていきますと非常に不備があるし、まだまだいろんな検討を要するものがあの中にあるのであって、決して十年間にこれだけできるんだというかっちりしたものじゃないというふうに、私たちはそのときの答弁で理解しているわけです。やはりここはもう少ししっかりしたものを立てる。赤字で値上げしてくれということになるならば、赤字の理由をもちろん明確にしなければならぬでしょうが、こういうふうにして再建していくんだという確実性のあるもの——それは長期の見通しですから、全然狂ってはならないということはないでしょうが、少なくとも、その初年度において多少狂ってくる、あるいは二、三年たてばもう狂ってしまうという計画であってはならないと思うのです。そういう見地から、ひとつその面について十分今後も検討いただきたいと思います。  次に、独立採算制の問題について、先ほども運輸大臣と論議をしておったわけでありますが、一昨日も大蔵大臣から独立採算制の問題については御答弁があって聞いておりました。いままでの論議の中では、答弁によりますと、公共企業体としての公共性というものを重視していくというよりも、いま赤字でたいへんだということが表面に出ておりますから、どうも企業体としての性格が非常に強いように感じているわけです。したがって、独立採算制をやっていくんだということは、これはもちろん企業の能率化をはかっていく上においては当然の考えだと思うのですが、しかしながら、こういった時期に独立採算制ということで国民に大きなしわ寄せをしていくような値上げ、こういうことがいいのか悪いのかということは、素朴な国民感情として受け取りがたいものがあるわけです。したがって、公社、公共企業体としてはこれを重視していくのは当然だと思うわけでありますけれども、しかしながら、独立採算制をとっていく一つの趣旨というものが、要するにその経営の能率化をはかっていく、あるいは財政の健全化を維持していくということであれば、現状において政府自身が何ら財政援助というのは——四十三年から、先ほど話があったように利子補給程度で、あとは独立採算制でやっていくのだ、そのワクの中で赤字が出てきた分はやむを得ないということで国民に大半を負担さしていく。そしてまた、十年計画は先ほど言ったとおりでありますが、少なくともそれによって四年ごとの値上げ考えているということが出ているわけですね。  そこで、私が主張していることは、要するに政策割引だとか、あるいは当然産業政策、国土開発政策上から考えていっても必要な路線については、たとえ赤字であってもやはり建設は進めていかなければならない。陸上機関の基幹でありますから、当然それはそういう使命を持っておる。ですから、そういった役割りを持ったいまの国鉄公共企業体のいまの赤字の原因をいろいろ調べてみましても、四十二年度の単年度でも経常勘定においては黒字が出ておるが、いままでの累積において、あるいは利子の積み重ねにおいて赤字が出てくる。こういう結果になってくるとするならば、当然ここでいま言う政策割引だとか、政策上の路線の拡張については国が財政援助をしてあげるべきじゃないか、こういうことを申し上げているわけですが、それに対する大蔵大臣考え方を承っておきます。
  190. 福田赳夫

    福田国務大臣 いま政策割引について援助すべしというようなお話でありますが、その個々の問題をとらえて、そして個々の対策をする。それは私はまあ一つ考え方であり、一つ方法だろうと思います。しかし、この際の国鉄に対する措置としては適切でない。やはりこれは総合的に国鉄財政全体をとらえて、そして総合的な援助をする、この方式がいいのだと思う。いま再建推進会議意見は後者の見解によっておるわけですね。私は、この見解というか意見を尊重すべきだ、こういうふうに思います。まあ確かにそういうお考えはありましょう。ありましょうが、国鉄は膨大な援助を必要とする状態になってきておる、その総合方式、これのほうを可とする、こういう考えであります。
  191. 広沢直樹

    広沢(直)委員 総合方式、それは一昨日もお答えがあっておったわけでありますが、総合方式と一口に言いますけれども、その一環としては、確かにこれも石田国鉄総裁が指摘しておったように、累積すると通勤通学割引にしてもすでに一兆円になるのだ、単年度でも一千億だ、こういうふうに言っているわけですね。ですから、独立採算制というものを強く維持していくという考え方ならば、やはりこういった政策割引だとか、あるいは国策上から考えていく路線の問題については——政治路線についてはまあ別でありますけれども、そういうことじゃなしに、政策上から考えていく路線拡張の問題については、当然それは考えてみるべきじゃないかと思うのですね。全然そういったことをやらない、ただワクの中へはめてしまうという考え方でありますと——やはりいまの交通状況は変わってきたのだ。当時国鉄ができて独立採算制を用いていた独占時代時代が変わってきたということは、これはさんざん論じられておるし、常識である。そうなってくると、そういった公共性という立場からいろいろな荷物を背負ったまま競争していくといえば、どちらになっていくかということは、これはもう常識的に考えても結論は出てくるわけですね。したがって、それをやっていくということになれば、これはいま言うそういった政策的なものに対する財政援助というものは当然考えられるべきじゃないか、私はそういうふうに考えるわけです。
  192. 福田赳夫

    福田国務大臣 だから、一つ考え方だというふうに申し上げるのです。しかし、それを一つ一つ具体的に突っ込んでいくと、なかなかこれはむずかしい問題じゃないかと思いますね。たとえばある路線が赤字路線だからこれは負担をどうするか、これは非常にむずかしい問題です。どういうふうに負担し合うかという問題。それから一方において、国鉄は東海道線、山陽線、東北線、これは基幹路線を独占しておる。これとの差し引き勘定を一体どうするんだというようなむずかしい問題もあるわけです。あるいはいま米を安く輸送しておる。しかし、その安いがゆえにたくさん輸送しているという面もある。その差し引き勘定を一体どうするのか。これは非常にむずかしい問題だと思うのです。私は、そういう一つ一つとらえていく方式、これは考えられないことはありません。考えられないことはありませんけれども、非常にむずかしい問題であり、この際は総合援助方式、これのほうがいい、こう申し上げているのであります。
  193. 広沢直樹

    広沢(直)委員 考えられないわけはないということでありますが、当然これは考えていくべきだ。これは意見も含めて強く要望しておきたいと思うのです。  というのは、諸外国におきましても、それはいろいろ問題のあることは指摘されておりますけれども、やはりいまの国鉄というものの財産は国民の共有財産である。したがって、民間企業に補助金を出すと同じように、当然そういったものは、特にその公共性の強いものについては国の政策上のものを持っていかなければならないわけですから、そこだけで独立採算制を考えるなんということは、これは常識的にいってもおかしいと思うのですね。  最後に、時間がございませんのでもう一つ伺っておきたいのですが、これは総合的に考えてやっていくのだというお話でありますけれども、当然これはいまの物価という見地からいえば、いまの国民は、先日の世論調査によりましても、第一番にやってもらいたい政策は物価安定政策、物価を安定さしてもらいたい、こういうわけなんです。ところが、これも種々論じられたように、昨年暮れには物価対策に抜本的に取り組んでいくということも、物価安定推進会議においても総理みずから決意を発表されておる。ことしに至って、国鉄運賃だけはかくかくしかじかであるから、要するに値上げを認めてもらいたいという話があって、種々論議が行なわれてきたわけです。ところが、現在の国民生活から考える場合においては、当然ここに何らかの値上げを阻止していく考え方を持っていくべきではないかと思うのです。国鉄の事情もわかる。ほっておいていいというわけはな  い。ですから、私はいま言ったように、それが一環として考えられるし、諸外国においては当然そういうような建設費の負担だとか、あるいは長期負債のたな上げだとか、通勤通学輸送に対する割引の補てんだとか、こういうことはやってきているわけですね。これだけやりましても、単年度を見ましても一千億ですから、このたび九百十億の予定されている増収というものは補てんできるのじゃないか。今回の値上げはやめていくこともできたのではないか。総合方式でというような形で国民にこういうふうにしわ寄せしていくということは、どうも納得がいかない。物価という問題は、国会内でも物価を最重点にしていくんだということは盛んに言われているわけです。そういう見地において経済企画庁においても、ほかの値上げというものは押えていくんだ。では、やりようによってはいま言ったようにやれるんじゃないか、こういう考えがあるわけです。  それで、時間がございませんのであとから答弁いただくとして、運輸大臣にお伺いしておきますが、要するに先ほどもいろいろお話し申し上げましたとおり、鉄道の再建推進会議においても、いま私が述べておるようなことは当然考えられ得べきことであるという提言がなされているわけですね。ですから、それを十分尊重して、やはり当局においてもこういったことが実際に行なわれていくように、そしていま言うような見地からできるだけ物価値上げは阻止していくという考え方、それをとっていかなければ、いまの国民の経済状態、生活状態というものはどういうふうに変わってきているかといえば、これはもう再々指摘されているとおり、一年間定期の利子というものは五分五厘だけれども、しかしながらそれを上回るような、三十六年から八年間平均しましても五・八%ぐらいの物価上昇になっているし、これをオーバーしているということは再々言われているとおりです。これはもう経済からいうと危機ラインであるとまでいわれております。それからやはり資料によって調べてみましても、共かせぎといいますか、そういった方々も内職的な方が多い、あるいは時間外労働も多いとかいうような、やはり物価の歯どめを何とか政府が責任をもってこれはやっていかなければ、毎年毎年こういうような上げ方をしていくのだったならば一体どうなるかといった問題があると思うのです。そういう見地から、いま暫定的であれそういった方針をとっていけばいいじゃないか、これは何も無理にそれをできないんだというのじゃなくて、やろうと思えばできないわけはないと思う。これは政府の姿勢そのものだと思うのですね。そういう見地に立ってお伺いしておきたいのです。  それから、私鉄とかあるいはタクシーの値上げは、盛んにいわれておりますけれども、その点については予算委員会で質問した際に、十分に検討しておる、極力押える——極力がついておったわけでありますが、現状はどうなっているか。そして、これは再三おっしゃっていらっしゃるように、値上げは断固反対して押えていくか、そういった点についてお伺いしたい。
  194. 福田赳夫

    福田国務大臣 物価政策はいまわが国の政府が当面しておる最大の問題の一つであります。そういう見地から、公共料金につきましては気をつけておるのであります。ただこれは、公共料金一時ストップを全部しちゃえば、それはことしはいいかもしれぬ。しかし、さあ来年は一体どうするのだ、再来年はどうするのだということを考えますときに、これは非常に問題の多いことになるわけであります。現に昭和三十九年でありましたか、オールストップして、そのときはよかった。その翌年はどうだというと、このオールストップというのはそう長続きできないのです。結局この翌年には公共料金を上げなければならないことになる。また、それを契機として物価がぐっと上がってくるというようなことであります。オールストップというのは響きはようござんすが、これはあと先を見ますと、そう簡単なものじゃないのであります。しかし、いま物価対策が大事な時期でありますので、米麦、塩また電電料金、そういうものを据え置きということにいたしましたが、国鉄をこれまた据え置きというようなことになりますと、また来年に至ってこの処置が非常にむずかしくなる。これだけはことし片づけておかなければならぬというので、特にお願いをいたしておるわけであります。
  195. 原田憲

    ○原田国務大臣 公共負担の問題をどうしていくかということについて、大蔵大臣からもお答えがございました。私は運輸大臣でございますから、運輸大臣立場でものを考えたらよいのでございますけれども、やはり国務大臣として国の財政上なし得る手段というものをお互いに考え出さなければ、ただ言うているばかりではおふろ屋のゆうばかりで何も実現しなかった、こういうことでは何にもならないのであります。  私は率直にいいまして、いままでのやっておったことについて政府の責任じゃないかということをよく言われる。私は責任のがれ的なことを言いたくはありませんから、そうでございますと言っているのです。いままでの政府ばかりが悪いのじゃないという言い方をするよりも、責任をもって自民党が政治をやっていたら、そこで批判されることがあったら、率直にいっていいと私は思っているのです。  その中の一つに、今度こそ何とかしなければならぬという問題にこの国鉄問題があった、そう私は認識しまして、それで日本のいまの国家財政の中でお互いにくふうをして打つ手はないかということで、去年の四月から、予算を終わってまだ審議している最中から今日の問題を論議し、五月には再建推進会議というものをつくって結論を出した。この方法というものは、それも批判ございますよ。しかし、私は適切なものであるという認識に立ちまして、これで十年間にまずこの再建をしよう、再建できるということでいっておるわけでございますから、このことに御理解を賜わりたい。  しかし、たびたび申し上げておりますけれども、これは人間の考えることでございますから、絶対というものはないと考えるほうがいいし、たとえば先ほど大蔵大臣が、公共負担というものを考えながら、それじゃ具体的に個々の問題となったら非常に問題があるじゃないか、こういうお話をされました。私は大都市交通という通勤通学、これらの問題こそは、それは一方に地価という問題が解決されればこれはまた別なんですよ。こういう問題を考えますときに、これは五〇%という運賃定期制限を加えておいて、そしてもう少しのところまで値上げしてきていますけれども、それでも半分ですわ。それをそのまま法律で捨てておいて、それでやれと言われても、それは相当な無理な問題を含んでおるのじゃないか。私はまだそこに、大蔵大臣との間に折衝しなければならぬという運輸大臣としての考え方を持っておりますということを再三申し上げておるわけでございますが、いわゆる三位一体方式ということで努力していくということについて御了解賜わりたいと思います。
  196. 広沢直樹

    広沢(直)委員 それから私鉄とタクシーの値上げについて。
  197. 原田憲

    ○原田国務大臣 それから私鉄その他の公共料金問題について、国鉄だけはやむを得ないが、そのほかのものは抑制するのか、あなたに確かに予算委員会で私はお答えをいたしております。その態度はいまも変わっておりません。もちろん申請は出てきております。しかしながら、これらの問題については極力抑制というところへウエートを置いて今後も対処していく、こういう態度については変わっておりません。
  198. 広沢直樹

    広沢(直)委員 それじゃ時間も過ぎましたので一応終わりにしますが、しかしながら、いま運輸大臣から率直に、いままでのこういうことはおわびしておるのだ、非常に率直でよろしいと思うのです。しかし、一番問題は、これは三十九年ごろから赤字は出てきておるし、当然そのころから具体的に、その事前からモータリゼーションの時代がやってきておるということは、これはだれしも考えられることでございますから、いまここになって赤字になった分だけ国民が背負ってくれ、こういうふうに言われても、これは国民としてはほんとうに納得しがたい問題であります。  そういうわけですから、大蔵当局においてもそれはいろいろ使うところはあるだろうけれども、一兆二千億も自然増収が考えられておる今日ですから、財政の上からでも各国にならってそういうようなことを具体的にやっていく。将来四年先あるいは八年先、そういうこともまた考えられておるわけですから、具体的にこれを推進していくということを強く要望して、私の質問を終わります。(拍手)
  199. 田中正巳

  200. 野間千代三

    ○野間委員 二、三お尋ねをいたします。  これは大蔵大臣、経済社会発展計画というのがありますね。多少変わってきていますけれども、四十四年から四十九年まで、この中の国鉄借り入れ金の償還計画、それから利子の支払いの計画が載っておるわけです。これがたいへん高額になるのですね。一方国鉄の出しております、副総裁いらっしゃいますが、「昭和四十三年度予算参考書」これのほうには国鉄としての償還計画が載っております。これはもちろん経済計画のほうと予算参考書上の償還計画とは多少違います。違いますが、大筋として大体似たような数字です。これは当然だろうと思うのです。その問題なんですけれども、ちょっと大蔵大臣に申し上げると、昭和四十四年には償還計画の償還のほうが千五百七億、それから利子のほうが千七百五十九億、合計三千三百六十六億ですね。国鉄のほうのは今年度の予定が、値上げをしてあるやつですが、償還分が千四百九十五億、利子分が千四百六十九億、二千九百六十四億、これが四十四年度の国鉄予算であります。これが昭和四十七年は、経済社会発展計画のほうが三千五百七十四億の償還、利子が二千八百六十六億、合計六千四百四十億になります。国鉄のほうの資料によると、償還計画が四十七年が二千八百三十九億、利子の返還は、これは毎年借りていきますから、四十三年からも借りていくのがあるから、これはまだ載っていない。この辺は四十七年の国鉄のほうの償還計画の二千八百三十九億円に何ぼかの返済利子が載るわけですね。これがまず一つです。大蔵大臣、これがこの特徴なんです。  初めに副総裁お尋ねしたいのは、昭和四十三年の利子が千三百二十六億だった、四十四年の利子分が千四百六十九億であります。つまり百二、三十億ふえておるわけですね。これは今度の利子補給なりあるいは政府管掌の金のああいう孫利子法則をとったにしても、この返還計画と利子の返済ののぼっていく割合はそう影響はないですね。
  201. 磯崎叡

    磯崎説明員 いまの予算書のつくり方は、私どもが利子として計上をしてあるものは一応計算上の利子を全部出しております。  それが支出に出ております。今度政府からいただきます補助金なり交付金はまた別途収入のほうに入っておりますので、一応利子は全部計上してあります。  それから、いまお手元にごらんになっております予算参考書の私どもの返還計画は、四十三年度末の確定債務に対する返還計画でございますので、四十四年度以降の借りる予定のやつは入っておりませんので、その点食い違いがあるかと思います。
  202. 野間千代三

    ○野間委員 それはそうなんです。ですから、四十四年以降も民間のほうから二千九百億ですか、借りておりますね、大体毎年三千五百億ぐらい借りていくという傾向でいきますね。そうすると、その返済の利子がこれに加わってくる、こうなってまいりますね。したがって、経済社会発展計画の予定をしている、私の言った四十七年の六千四百四十億円は確かに少し高いです。国鉄のほうのは、同じ年度が二千八百三十九億で、私が言った四十二年、四十四年の傾向線をたどっていけば二千億ぐらいじゃないかと見えるのですね。これは三年ばかりありますから、四十七年には合計でやはり五千億円近いものになってまいります。したがって、利子と返還の約四、五千億円の金というのは、これは四十七年以降もずっとふえながら続いていくという関係になっているのです。四十七年までは、六千四百四十億円だ、四十八年、四十九年の分は経済社会発展計画の中に書いてない。書いてないが、ここで大蔵大臣頭に入れてもらいたいのですが、四十七年ごろどうしてこんなに高く返す金がふえたかということです。返還金と利子がこのときは頂点に達するのです。国鉄の返還計画では、四十七年は、ぼくが言ったように二千八百三十九億で、四十八年は二千七百二十六億返すだけですよ、元金だけで。四十九年が二千七百二十九億、同じようにずうっと続いている。これが天井であります。それまでは返還が大体二千二百億から二千三百億くらいなんです。大蔵大臣、どうして四十九年がこんなにふえたかというと、これは三十九年、四十年あたりから民間資金をたくさん借りるようになったのです。そうして国のほうの財政投融資の率が逆転したのです。したがって、それが民間のほうは結局七年ものでしょう。そういう関係があって返す利子のほうが四十七年あたりから急増をしてくる、こういう傾向なんです。これは運輸大臣何か言っておられるけれども、何か反論があるのですか。そうじゃないですね。こういう経緯がある。認めますね。(原田国務大臣「特別債の話をしている」と呼ぶ)特別債がふえたんですね。それでこうなった。  そこで大蔵大臣、それに気がつかれまして、いま運輸大臣の言われるように特別債を少ししたり、国のほうの財政投融資のほうの長期借り入れをふやすように四十四年は少ししたわけです。それはぼくが言ったようなことにお気づきになったからですね。ちょっとここまで確認したいのですが、大蔵大臣、これは否定しないでしょう。どうです。
  203. 福田赳夫

    福田国務大臣 私は、数字を見ているわけじゃありませんから的確なことを申し上げるわけにはいきませんが、しかし、そういう傾向があるであろうということは、そう思います。
  204. 野間千代三

    ○野間委員 実は国会は黒板がないからわかりにくいのですけれども、経済社会発展計画の償還計画に利子払いの計画があるはずですから、資料としてあとで出してください。もう一つ、この予算参考書というのはそう国会に出てないと思いますから、一表になっている「長期借入金及び鉄道債券償還計画総括表」というのがありますが、これを資料として印刷して出していただきたいと思います。  以上の資料についてどうですか。
  205. 磯崎叡

    磯崎説明員 私のほうはすぐでも印刷して持ってまいりますけれども……。
  206. 只松祐治

    ○只松委員 委員長、ひとつ委員会に出してください。
  207. 磯崎叡

    磯崎説明員 承知しました。
  208. 野間千代三

    ○野間委員 経済社会発展計画のほうは経済企画庁になるのかな、管掌しているのは。それじゃ経済企画庁のほうからでも出していただくようにお願いしたいのですが、これはいいですね。
  209. 田中正巳

    田中委員長 委員長においてさよう取り計らいます。
  210. 野間千代三

    ○野間委員 そこで、そういう傾向でいって五十三年を迎えるわけですよ。   〔委員長退席、倉成委員長代理着席〕 四十四年から五十三年までの十年間の再建計画、こうなっておりますね。そこで運輸大臣が御努力されて、これはぼくらもいままでずいずん要求もしたり、あるいは国鉄総裁、副総裁なども要求されて、たいへんお骨折りになった問題がある程度実現の一つになってきたという御努力は、これはわれわれはやはり認める必要があると思う。ただ問題は、そういう御努力なんでありますけれども、私がいま言ったように、実に五千億円から六千億円にのぼる元金の返済と利子を四十七年以降続けなければならぬ。これは決して減らない、こういう傾向でやはり依然として進んでいくということになると思います。そうなると、二千九百六十四億円という元利償還が四十四年よりももっと困難な事態が、この借金の返還のほうから四十七年以降あるいは五十三年という十年間の再建計画の以降も出てくるという危険はないのか、こういうことなんです。いかがですか。
  211. 福田赳夫

    福田国務大臣 それらの問題をすべて入れ込んで、そして国鉄十カ年計画を推進会議できめたわけなんです。それを意見として出しているわけです。それに対して再建会議が言うとおりのことを政府のほうではしておるんです。ですから、利子負担がふえてくる、償還の負担がふえてくる、それは傾向としてはありましょうが、この援助計画で全部それらを解決していく、こういうことになるのです。
  212. 野間千代三

    ○野間委員 それは大蔵大臣、ずいぶん都合のいい答えなんですね。それならばお伺いしますけれども、今度の答申に基づいてやっていらっしゃるもので、政府のほうでおやりになったのは、政府管掌の六千三百億円の利子をたな上げをしておいて、それの孫利子が十年間で九百七十二億です。そうですね。そして二千四百七十六億は一応たな上げになっておる。これが十年間から二十年間に均等で返していかなきゃならない。やっぱりこれは五十三年以降返すわけですね。そうなりますね。それから民間から借りる四十四年以降五十年までのものは六分五厘以上でしょう。これは大体十年間幾らになりますか。
  213. 海堀洋平

    海堀政府委員 これは投資規模そのものによって多少違いますが、約千二百八十億円程度というふうに考えていただいてよろしいかと思います。多少十年をこえた分も入っております。
  214. 野間千代三

    ○野間委員 大体千百億から千二百億円くらいというふうに推察ができますね。そうすると、借金関係援助として考えられる措置は、この九百七十二億円に、いまお答えの約千二百億、こういう計算ですね。そうすると十年間に二千億何ぼかの援助があるということですね。約二千二、三百億の金がいまぼくが言った借金財政で困窮をしている国鉄に対する援助として十年間にやる、こういう勘定ですね。
  215. 福田赳夫

    福田国務大臣 それらの要因を全部取り入れて十年間で金が要るんです。いま国鉄が必要なのは金ですが、その金は政府が再建債として出しましょう、しかも利子はたな上げいたしましょう、こういうことなんですから、実質的にただの金を十年間それだけ手に入れたという勘定になるわけであります。問題は、それだけの金があれば国鉄が十年たったら一体どうなるかということが問題なんです。この国鉄の推進会議は、それだけの利子のたな上げされた再建債とそれから利子の補給というものがありますれば、これはやっていけますというんです。十年たって、その後になれば、そのお金はまたお返しできますといわれるんです。私どもはそれを全面的に信用して全面的に援助をしておる。これが今回の案でございます。
  216. 野間千代三

    ○野間委員 そうじゃないんですよ。ぼくが言ったように、借金財政に対する取り扱いは、事実問題としてたった二千二、三百億円にすぎないのであります。それにこれからの運賃値上げ分があるんでしょう。運賃値上げの第一期分が九百十億円ですね。しかも答申のほうをまじめにやるとおっしゃるから、答申は十年間に三回やれといっているので、どうですか、三回やるんですか、運輸大臣
  217. 原田憲

    ○原田国務大臣 これはこの問総理も同じ質問を受けてやむを得ないではないかという答弁をされたと新聞で報道せられておりますが、私もそばにおって一緒に答弁したのですが、やはり物価の値上がりというようなものも今後十年間にあるわけでございますから、いまの人件費を幾らに見るかということも、一応の見積もりはあっても不確定要素で、裁定が下ればそれに適応しなければならないというような問題がまだ含まれておるわけでありますから、一応いま大蔵大臣の言われたように、国鉄というものが十年後にどうなるということを考えたときに、十年間のうちに、ことしを入れてあと二回値上げをしなければならぬであろうという計算をいたしておるわけであります。だから私は、その間にあるいはうまくいって増収をはかることができるとか、あるいはそのほかに、全部取り入れたと大蔵大臣は言われますけれども、私は先ほどから言っておりますように、全部取り入れられたとはまだ考えておらない。そこらの問題を勘案していきますならば、値上げすることはないとは申し上げませんけれども、十年の間に必ず二回やることが起こるんだということも必ずしもまだいえない。しかし、それじゃ値上げをせずにやっていけるかと問われたら、それは値上げをせずにと言うことはできないであろうというふうに思っております。
  218. 野間千代三

    ○野間委員 原田運輸大臣が十年もやっているわけにはいかないから、いまからそれは答えられませんね。問題は、いま運輸大臣が言われたように、答申を全部取り入れたとは考えられないんです。大蔵大臣はにこにこ笑って、全部取り入れたと言われた。(福田国務大臣「おおむね」と呼ぶ)おおむねですか。それでは大蔵大臣お尋ねしますけれども、答申のほうでは、十年間の後、つまり五十四年に減価償却後の赤字がたしか六兆四、五千億円になっているはずですね。償却前の赤字は五兆円です。大体そういう結果になる。そこでそれを解消する手段が必要だ、こうなっておるわけですね。つまりそれはそこに到達しますよ。答申でいったとおりといたしますれば、その中の一つに、お金の返した利子なんかも、ぼくが言ったようになってきますよ。にもかかわらず、政府のほうでおやりになってくださったことは、お金として援助したのは大体二千三百億円ですね。そうじゃないですか、主計局次長。
  219. 海堀洋平

    海堀政府委員 先ほどから借金の返済の議論をいたしておりますが、これは資本勘定の問題でございまして、まずここでいま先生のおっしゃいました六兆九千億とかなんとかいう損益の問題でございますので、借金の返済と建設に要する資金につきましては、できるだけ長期低利の金で財政投融資をもってめんどうを見ていくということは、運輸、大蔵とも努力をいたしておるところでございます。したがいまして、まず借金の返済のほうの議論はこの数字に入ってございませんので、除いて考えていただかなければならないかと存じます。  再建推進会議が申しておるところの財政援助は二つございまして、一つは、先生が先ほど申されました六千三百四十一億円の政府が管掌しております金につきまして、十年間その利子、ことしについていえば四百八億円、これを一般会計から十年間ずっと、各年違いますが、貸していけ、そしてその貸したものを十年後に返していくぞ、返していくからそれを一般会計から入れろ、この要望が一つございます。これにつきましては一般会計も苦しいので、それを直接一般会計から入れられませんが、財政投融資の中で運用部貸し付けでそれの等額を十年間据え置き後二十年償還で貸しまして、そしてそれの利子につきましては、十年間無利子になるように補給いたします。したがって、十年間をとってみれば、その再建推進会議の御要望はそのまま実質的には御要望に応じたということになろうかと思います。  それからもう一つございまして、この再建推進会議投資規模が五十年までとその後とちょっと金額が違っておりまして、五十年までは四千億となっていたと思います。その四千億の建設資金についてその外部資金の金利と六分までの差を四十四年度分から決算的に補給するようにと、こういう趣旨の答申がもう一つございます。これは実はその再建推進会議の要請は、四十四年度分から翌年に補給するようにという答申であったのでございますが、運輸省はできるだけ、あるいは国鉄はできるだけ有利なほうがいいから四十四年度分の当年度分から六分にしろという要請があったわけでございます。これは推進会議の要請を一年、金の出し方としては早く要請がございました。私どもとしては現在六分五厘まで補給いたしております。これは四十三年度に第三次長期計画の工事二兆九千七百億円の分につきまして六分五厘との差額を補給いたしましょう、こういったのを五十年の建設まで、すなわち国鉄が高い建設規模で推移するであろうと申しております五十年まで、その利子補給六分五厘まで続けましょう。こう申し上げておりまして、その話し合いの違いは建設規模の問題は別にございますが、あと五分を私のほうとしては否認いたしましたという点が違うわけでございます。
  220. 野間千代三

    ○野間委員 大蔵大臣、それはぼくは否定していないのですよ。おっしゃっていることはそれはけっこうですと言っているのです。たいへんいいことですと言っている。ただ問題は、ちょっとここで皆さんとは考えが変わってくるのですが、答申のとおりにやれば国鉄は完全に再建されますという考えもある。ただぼくらは、答申のとおりにやったのでは、これはわれわれが考えている再建になりませんよという立場なんですよ。そこは違うのですよ。答申のほうは運賃値上げしろといっているし、首を切れといっているのですから、ただ答申の中でとれるものとして、いま次長が説明されたようなこと、これはやれといって、これはおやりになった。したがって、答申はその運賃値上げと、それからいわば合理化と、それからいまのようなやり方と、大体この三つあるわけですね。   〔倉成委員長代理退席、委員長着席〕 その中の最後のやつを少しおやりになった。それはいいでしょう。そこで議論を返してもらって、つまりそういうふうにやっても、いま言われる損益勘定との、工事勘定のあれはあるけれども、しかし、国鉄が実際に返していくものはこういうかっこうになっていきますと、国鉄財政一つの側面として、重要な側面として借金をこれだけ返していかなければならないという、財政負担はずっと続いていくのですよとぼくは言っているわけだ。したがって答申がいった、いま次長が説明された二つの方法だけでやっていくと、運賃値上げをしなければならぬ、三回値上げをしなければならぬといっている。それから答申の中では、ベース改定もしなければならぬといっている、人員も削減しなければといっている、労働強化も一・六倍しなければならぬといっている、こういうものが入ってこざるを得ないのですよ。  そこで大蔵大臣、先ほどから議論になっているように、国鉄運賃物価に与える影響やいろいろ社会的な問題がありますね。大蔵大臣お出かけになるようで、ちょっとそれじゃ急ぎますが、私の言いたいのは、大蔵大臣もお認めになったように、国鉄財政の中の一つの重要な側面として四十四年からのこういう傾向線がある。したがって、こういう問題その他たくさんあるのですが、そういう問題を含めて、国鉄財政はよほど一方の柱になっている値上げをしていかないと、再建ができないのです。したがって大蔵省としては、いま言われた二つの利子補給あるいは孫利子補給、そういう方式だけではなくて、もう少し、たとえばよく言われているような建設費について、これは資本が少ないのですからね、きのうからも議論になっているように、資本金が少ないのですから、資本金をふやすという意味で工事経費に対する支出をしたり、よく言われる道路のほうは国で三分の二負担しているのだから、したがって道路と同じように、路盤の金くらい持ったらいいじゃないかというようなことになってみたり、そういう意味の補助というか援助というか、そういうことを考えないと、ほんとうの財政再建にはなっていかないのじゃないかということを言っているのですよ。いかがですか。
  221. 福田赳夫

    福田国務大臣 御意見はとくと拝聴いたしましたが、いまとにかく推進会議があんなに熱心に検討してくれて、これだけの対策ができれば、国鉄は十年後にはぴんとすると、こうおっしゃっているのだから、それだけのことをしておるわけなんです。そういう段階でありますので、さあ承知いたしましたと、こういうふうには申し上げることはいたしかねるのであります。
  222. 野間千代三

    ○野間委員 そういういまのお答えは、十年間、次長の言われたこれだけではないのだということですね。そうとっていいのですか。十年間の再建計画のうちの、いまやっているこれだけではないのだということですね。ほかにも考えますということです。
  223. 福田赳夫

    福田国務大臣 十年間を展望して再建会議がこれこれのことをやってくれぬか、それをおおむね政府としてはやっておるわけです。そのときに、また追っかけてこれをやれ、これをやれと言っても、それはいたしますとは言いかねる。どうぞひとつ……。
  224. 野間千代三

    ○野間委員 いまの回答をまじめに受け取れば、せっかく二十七人もの学者が集まってやったのだから、それをおおむねやったので、いますぐこの国会で、野間君の言うとおりほかのこともやるということにいかないということのようなので、時期を見てなおもっといいことをやるというふうに受け取ることにして、大蔵大臣のほうについての御質問は、以上で一応終わっておきたいと思います。  それで次に、これは運輸大臣お尋ねをいたしますが、いま言われるように、政府のほうで援助をされている分が一つの部分としてある。よく三方一両損と言うやつですね、一両損で、政府のほうで措置をされている分が一つある。もう一つ運賃値上げの問題があるということですね。運賃値上げの問題は先ほど大臣お答えになったとおりです。ただここで問題になるのは、推進会議意見でいくと、運賃値上げその他公共負担是正の分も含めてたしか三兆四千億円ぐらい、十年間収入見込みが可能になりますね。そうなっております。これは副総裁そうでしょう。
  225. 磯崎叡

    磯崎説明員 推進会議におきましては、はね返りの利子を含めまして三兆三千億円と一応試算をいたしております。
  226. 野間千代三

    ○野間委員 そういうわけですね。そうすると、この三兆四、五千億の運賃値上げ、その他の分を考えてみると、その他の分というのは副総裁、どのくらいありそうなんですか。
  227. 磯崎叡

    磯崎説明員 推進会議で試算いたしました数字は、運賃値上げの三兆三千億のほかに、政府の措置が約九千億円、これはさっき主計局の次長から言われましたように、方式が変わりましたので金額は変わりますけれども、内容は同じでございます。それから増収及び経費の節減等で約一兆八千億、これが一本の柱でございます。
  228. 野間千代三

    ○野間委員 つまり、三兆四千億円のうちの大部分、半数以上が運賃値上げで見込めるというふうに考えていいのですよね。運輸大臣、そういうことですよ。そうすると、今後二兆円近くの運賃値上げの増収を見込んでいるというふうに推定できるのです。そうすると、今年は九百億ですから、十年間で九千億円でしょう。したがって、そこでもう一回か二回は上げなければいかぬという計算が出てくるわけですね。  そうすると、それ以外に重要な要素として重要な問題として料金ということがあるのですね。料金はいま一年間に大体千六百億円くらい入っている。旅客の運賃がいま約七千億円ですから、旅客運賃が七千億円の中に千六百億円の料金収入が入っている。そうすると、つまり運賃の約三割くらいが料金として収入がある、こういう計算になりますね。そうですね。これはたいへん重要な要素になってくるのです。これから新幹線がふえてくる、それから急行、特急がふえてくる、寝台が高くなる。そうなると、極端な話が、料金と運賃が同じだというふうにならぬとは限らないのです。多少極端ですけれども、それはそうならぬとは限らぬ。限らぬというのは、国鉄運賃値上げをするというのは容易なことではないのです。そうすると、わりあいに安易な定期値上げあるいは料金の値上げという、大臣総裁が相談をしてきめられる、国会であまり文句をつけられないというもののほうに傾いていくという危険性がありはしないかとぼくらは心配をするわけです。  したがって、たいへん重要な要素になっているので、料金と運賃というものの関係をよほどきちっとしておかなければならぬというふうにぼくらは考えざるを得ないわけです。そこでぼくらの要求としては、運賃の中の料金として考えられる部分、これは運賃と同じような取り扱いをすべきだという主張になるわけです、そこで、料金というものはどういうものなのかということをひとつ伺っておきたい。
  229. 町田直

    ○町田政府委員 現在の法律で申しまして、運賃というのは、御承知のようにものを運ぶというものでございます。料金というのは、大体設備の利用とかあるいは運送以外の役務に対する報酬をさしているというふうにお考えいただいていいと思います。
  230. 野間千代三

    ○野間委員 大体そういうことですね。そういうことでいくと、たとえばいまだいぶ収入がある急行ですね。この東海道新幹線の「ひかり」のような超特急とかそういうものは、あるいは特別の施設をいうという鉄監局長のお答えのとおりかもしれません。しかし、現在線の急行であるとか特急であるとか、そういうものは、新幹線ができた現在、いまや特別なサービスとは言えないと思う。したがって、特急なりあるいは急行なりというものは運賃と同じような性格になっている。しかも大体一律で大きなきざみでつくようになっていますね。こういうものはやはりいま局長の言われるものを運ぶ料金ではないのか、どうなんですか。
  231. 町田直

    ○町田政府委員 やはり急行料金というのはスピードに対する対価というふうに考えられると思います。そこで御指摘のように、ほとんどのものが急行になってしまったときに、やはりそれをスピードに対する対価として出すべきかどうかという問題はあるかと思います。本質的に、いまの急行等がほとんどすべての汽車の速力であるというふうになった場合には、むしろそれはスピードに対する対価でなくなるというふうに考えます。現在の段階におきましては、急行、特急以外の普通というものがございますし、そういう段階ではやはりスピードに対する対価として考えている、こういうふうになっております。
  232. 野間千代三

    ○野間委員 それ以上のこういう問題は大蔵委員会の所管事項でなさそうですから、運輸委員会で検討するようにしたいと思います。ただ、料金と運賃という問題は将来十分に検討する必要があるというふうには運輸大臣もひとつ頭の中に入れておいていただきたいと思います。  その次に、十年間の基本方針、基本計画、これをつくらなければいけませんね。それはいつおつくりになるのですか。
  233. 町田直

    ○町田政府委員 現在参議院で御審議いただいております国鉄財政再建促進特別措置法が成立いたしましたら、できるだけすみやかに基本方針を閣議決定によってつくって、これを指示いたしまして、それを受けて日本国有鉄道が基本計画を立てます。基本計画には大体数カ月は要るのではないかというふうに考えておりますが、少なくともそういう期間内にはつくりたいと思います。
  234. 野間千代三

    ○野間委員 それで基本方針と基本計画ができ上がる、そうすると第九条で改善命令を出すようになっていますね。この改善命令というのは、これは運輸大臣が出すんですね。この再建特別措置法でいう改善命令というのと、それから日本国有鉄道法の第五章でいっている監督という部分とは、これは本質的に違うと思いますね。日本国有鉄道法でいう監督というのは、日本国有鉄道の運営管理、これを一切総裁が持っている、それに対して公共の福祉の上から監督をしなければならぬという部分だけ監督をするということですね。これは日本国有鉄道法の第五章の監督の趣旨でしょう。したがって、第五章では認可とそれから公共の福祉上の監督命令、こういうものに分けてありますね。これはよろしいですか。
  235. 町田直

    ○町田政府委員 第一条の日本国有鉄道の目的に関連いたしました監督というふうに理解いたしております。
  236. 野間千代三

    ○野間委員 そうですね。それが一番正確なお答えだと思う。そうなってきますと、国鉄財政再建促進特別措置法でいっている改善命令という部分は同じですか、同じでないのですか。
  237. 町田直

    ○町田政府委員 先生言っていらっしゃるのは、おそらく財政再建促進特別措置法でいっております第九条の改善命令だと思いますが、これは本質的には本法に基づいていたします監督でございます。したがいまして、もっとさかのぼりますと、この本法の国有鉄道法との関係がどうなんだということにあるいはなるかもしれませんが、これは両方とも別個の法律でございますから、それが一体のものであるという——法律的にはそうではないというふうに解釈されます。しかしまた、もう少し広い考え方をいたしますれば、国有鉄道というのは、日本国有鉄道法に基づいて設立され、かつ監督されているその国有鉄道が、現在の段階で非常に財政事情が悪くなったので、それを臨時に一定期間内に改善しようという趣旨でできた法律でございますので、両者は非常に密接な関係にある、こういうふうに理解をいたしております。
  238. 野間千代三

    ○野間委員 論理的にはそうだろうと思うのです。したがって、やはり本家は日本国有鉄道法にあるというふうにまず立脚すべきだと思うのです。その中で、ぼくらは財政再建促進特別措置法というのはいい法律と思ってないのですが、まあ並べて考えてみれば、その日本国有鉄道法の範囲の中で、そこに規定されている第五章の運輸大臣の監督権の中で、その範囲の中で監督がさるべきものというふうに思うのですが、そう考えてよろしいですか。これは大臣どうでしょう。
  239. 原田憲

    ○原田国務大臣 結論を先に言うと、今度の法律ができたら、いままで以上に国鉄の自主性がそこなわれることにならないか、こういうことをあなたは言っておられると思うのですが、私はこの間も言ったのですが、そうならないと思っているのです。というのは、考え方が異なることは別にしまして、私は、この財政再建のための措置法というものは、その財政というものをあずかっておる大蔵省というものに最低のなにを保証さした、この法律によって。だからこれは法律ですから、最低のことはやったのだから、これ以上のことを上積みしていったらいいのだ、私は一つはこういう考え方をしているのです。だから、これは決して悪い法律ではない、こういうふうな受け取り方をしておりますのと、それからいままでと同じように、国鉄の組織が変わるわけじゃございませんから、いまあなたがおっしゃっているように、基本的な方針としては、運輸省のほうで基本方針はこうだ、基本計画はこうだ、こう言いますけれども、それにのっとって実際にはやはり総裁以下国鉄が再建計画というものを出してくる。どちらかというと、私は改善命令ということをもしやらせなければならぬというときには、これは国鉄の、皆さんがおっしゃって心配しておられるような、赤字線の廃止をほんまに出してきた、そうはいかぬぞというようなことのほうが政治的な判断でせにやならぬことになりゃせぬかということを私は考えるぐらいです。  ただ、大蔵省というものが一ちょうかんでいるから、これは非常なものじゃないかということが問題になると思いますけれども、やはりこれは主体は運輸省であり、そして再建計画を立てるのは国鉄でございますから、従来の精神というものは失われないようにしていかなければならぬが、しかし、国鉄といたしましても、みずからこのたび相当な国の援助というものを仰いでおるのでありますから、これは当然果たすべきことは果たしてもらわなければならぬ、こういうことを担保する意味でこの法律があるということも、これまた国民に対して必要じゃないか、このように考えます。
  240. 野間千代三

    ○野間委員 実はそういうことで、運輸大臣は自分が直接管掌する役所だからいまのようなお答えになってもらえると思うのですが、一ちょうかんでいる大蔵大臣は、なかなかそういう感じ方でない部分があると思うのです。そこで実は大蔵大臣にいてもらいたかったのですが、ちょっといらっしゃらないので、これは問題にしておきますから……(「政務次官がいる」と呼ぶ者あり)それは、別に軽重を問うわけじゃないけれども、あとで来るそうですから、その分だけ残しておいて、その分だけ時間は節約しますから、その部分はあとでいたします。  これで最後にしますが、副総裁財政再建推進会議の試算の中に、人件費の削減というようなことで一兆四千二百六十八億ばかり予定をするというふうになっておるわけですね。この中で、要員の削減あるいは賃金の削減というような部分が何か書いてあったように思うのですが、こういうことはそう容易に考えるべきでないし、それともう一つは、これが実は改善命令ということに関連をしてきたり、それからそこで、この法律と、今度は日本国有鉄道法と、もう一つ公共企業体等労働関係法というものに関連をしてきたりというようなことがなしとしない気がするのです。これは、いま鉄監局長がお答えになった再建計画ができると、やはり運輸委員会議論をしてもいい問題だと思うのです。その際に詳しく聞きたいと思いますが、この際、その件についてどうお考えになっていらっしゃいますか、伺いたいと思います。
  241. 磯崎叡

    磯崎説明員 財政再建推進会議意見書の中で、職員の頭数、給与の問題に触れておりますのでちょっと御説明申し上げます。  まず給与につきましては、試算の前提といたしまして、定期昇給を三%、それからいわゆるベースアップを六%、合計いたしまして九%のアップを一応見込んで試算をいたしております。  それから人員数につきましては、機械化、合理化ということで約七千三百億ほどの投資をいたしまして、六万人程度の人間を浮かす。これは逆に申しますと、これからの高校卒の労働力の供給力の問題とからんでくるわけでございまして、御承知のとおり、非常に大学進学率がふえてまいりまして、高校卒で就職する子供たちの数は、昭和四十年度をピークとしてずっと減ってきているわけであります。そうして、この再建期間中に入りますと三万人台を前後するというふうな労働省の推定でございますが、そういたしますと、国鉄がいままでのような年間一万数千人の若干労働者を吸収できるかどうかという問題が当然起こってくるわけであります。ことに御承知のとおり、私のほうで若干労働者のやる仕事と申しますのは、たとえば連結手のような非常な危険な作業等もございますので、そういったことはなるべく機械化、近代化をして、頭数が、若年労働者が要らないようにしたい。そうしてなるべく中級以上の技術者で国鉄を運営していく。あと、ほんとうの雑務的なものは、これは別といたしまして、一般の若年労働者はほんとうに特殊な仕事だけをやっていく、あるいは上へ上がっていく階梯職として必要な最小限にとどめる。こういう考え方で機械化、近代化の投資を七千数百億いたしまして人を浮かしていく、こういう内容でございます。  そうして、とどのつまりどういうことになるかと申しますと、これもやはり試算でございますが、一応そういうことを前提といたしまして人件費だけの試算をいたしますと、人件費のうちの先ほど申しました六%のベースアップ、それだけで四十四年から五十三年までの累計が二兆四千億ぐらいになります。人件費の総額が十年間で八兆七千四百億くらいでありますが、そのうち基礎になる、根っこになる部分と定期昇給分が六兆三千億、それからさっき申しました六%のベースアップが二兆四千億、こういう計算であります。それから一方、先ほどのお話にも出ておりました運賃改定をもし試算どおりに計算いたしますと、十年間運賃改定による増収だけの分が二兆六千億でございます。全体の収入は十五兆でございますが、そのうち運賃改定による分が二兆六千億。さっき三兆三千億とおっしゃいましたのは、はね返りの利子が入っておりますので三兆三千億でありますが、ネットの運賃増収分は、あと二度上げさせていただいたといたしましても二兆六千億であります。もちろん金に色はついておりませんが、運賃改定で二兆六千億増収いたしますけれども、ベースアップで二兆四千億というものが計上されておる、こういう計算が基礎になって試算ができております。
  242. 野間千代三

    ○野間委員 時間もありませんから、その問題はまた別の機会にいたします。  実は、大臣がいらっしゃるのが六時三十分だそうで、私、そのころいないものですから、政務次官いらっしゃるので……。  先ほどの、大蔵省のほうでは国鉄の監査がなかなかきびしいようになりかねない、しかし運輸大臣としては、やはり国鉄が成長していく方向で考えていきたい、こういう言い方ですね。そうですね。大蔵省のほうとしてどうお考えになるか、それだけひとつ政務次官からお答えをいただきたいと思います。
  243. 上村千一郎

    ○上村政府委員 いま野間先生からも御指摘がいろいろあったわけでございますが、先ほど大蔵大臣も申し上げたとおり、この国鉄の再建推進会議によって、十年後においてはこうなるのだというような貴重な御意見が出ておるわけでございまするので、それにつきまして全部が全部というわけでもないでしょうけれども、おおむねその措置を講じた。でございまするので、所期の目的を達するであろう、こういうふうに存じ、国鉄の重要使命ということは十分わかっておるわけですし、それを監督されるのは運輸大臣がとにかく直接の監督官になっておりまするので、御指摘のような点におきまして御了解していただいていいと思います。
  244. 野間千代三

    ○野間委員 それでけっこうです。それで、先ほども議論があったように、大量に輸送する機関を政府としても十分に大事にする、そういう措置をするのが世界的な傾向であると思う。実は時間があればそれを言いたかったのですが、別の機会にしますが、そういう時期なので、ぜひ大蔵省、運輸省、政府一体になって、国鉄の将来が完全に国民の足として、また動脈として、国の経済を背負う機関として十分に再建できるように骨折ってもらいたいと思います。  以上で終わります。(拍手)
  245. 田中正巳

  246. 沖本泰幸

    沖本委員 初めにお断わりいたしますが、質問が重複するところもあると思いますが、公明党としては強行採決で質疑を打ち切られたわけですから、これが初めての質問だと思って、御丁寧な答弁をしていただきたい。大臣にそのことをよろしくお願いいたします。質問の順序が飛ぶかもわかりませんが、その点は御了承いただきたいと思います。  そこで、まずお伺いしたいのですが、再建案の中は運賃値上げが基礎になっている。この前も運賃値上げして、次いで今回また運賃値上げということになるわけですけれども、十年間で三回の運賃値上げをするということが、今度の記載の中に見られるわけです。前回の運賃値上げのときは第三次長期計画を前提にした値上げ、こう考えられるわけです。今度は、赤字解消の十年間の再建案に対する運賃値上げの、三回にわたる中の一回だ、こういうことになるわけですけれども、その場合第三次長期計画は手直しされなければならない点が出てくると思うのです。その問題に対する、どういうふうに長期計画は変わるか、こういう内容が国民に対して示されておりませんけれども、この点はいかがなものでしょう。
  247. 磯崎叡

    磯崎説明員 ただいまの御質問は、昭和四十年度からやってまいりました七カ年計画と今回の再建計画とのラップした間の関係はどうなるか、こういう御質問だと存じます。その点につきましては、この意見書の中でもずいぶん論議されました。そこでこれが出たのが去年の十一月でございますが、そのころの時点から、もう一ぺん第三次長期計画は再検討すべきだ、再検討の時期に来ている、こういう御意見が出ております。たまたま昭和四十二年度の国鉄監査委員会の監査報告書の中でも、やはり第三次長期計画を再検討しろ、こういう御意見もございましたので、私どもといたしましては、昨年の後半からいろいろ再検討をいたしておったわけでございます。ところが、この根本問題は、やはり先ほど野間先生の御質問で鉄監局長が答えられましたとおり、やはりこれからの基本計画並びに再建計画と申しますか、いま御審議願っております法律に基づきまして正式なものができるわけでございますので、それができるまで完全なものはできないわけでありますけれども、一応四十四年度の予算といたしましては私どもも移り変わりの準備をしなければいけないわけでございます。  具体的に申し上げますと、一番おもな内容の変更は、たとえば通勤輸送はほとんど第三次長期計画のまま。それから安全の確保あるいは貨物輸送の近代化等についても、おおむね第三次計画のままでございますが、一番変わってまいりますのは、第三次長期計画では幹線の複線化ということを相当頭に入れてまいりました。これは日本じゅうの幹線を全部複線にするのだというような計画も持っておりました。すでにできましたのは東北線が複線電化いたしましたが、その後の道路事情あるいは輸送事情等で、必ずしも全線全部複線にしなくてもいいという線がところどころございます。これを必要部分だけに限りまして、そしてそれを、先ほどやはり野間先生の御質問でございました近代化、合理化の投資のほうに向けていく、この点が一番の違った点でございまして、四十四年度の予算はそういうほうに切りかえができるような組み方をいたしたわけでございます。  それで、御承知のとおり昨年の秋、四十三年十月一日に相当根本的なダイヤ改正をいたしました。そのダイヤ改正ができましたのは七カ年計画の前半の投資の集積でございます。幸い四年、三年と切っていままで投資をしてまいりました。前期の四年間の仕事が大体昨年の秋で一段落するという形の投資をいたしましたので、四十四年度以降は今後の再建計画にのっとりまして、国鉄の将来のシェアであるところの都市間の旅客輸送、中長距離の貨物輸送通勤輸送並びに安全あるいは合理化対策、こういうものに移り変わっていく、こういう移り変わりになると思っております。
  248. 沖本泰幸

    沖本委員 そのつなぎの問題ですけれども、やはり国鉄としては全体に立って第三次長期計画というものをはっきり打ち出しているわけです。それが今度変更しなければならない。もっと赤字になってきたので再検討しなければいけない。それが再建計画が通るか通らないかというところで、通ったとすればそれをもとにして、これから計画を再検討していくことになる。その間のつなぎをいまやっておるところだ、こういうことになるわけですけれども、それでは、その東京でやっている工事であれ、あるいはまた関西で行なっている工事であれ、いま行なっている工事そのものが第三次長期計画に沿って、そのもの自体が合理的に進められておるのか、非合理的なものであるのか、どっちなんです。
  249. 磯崎叡

    磯崎説明員 先ほど申し上げましたとおり、第三次長期計画で現在やっております工事は、今度の再建計画で手戻りにはならないような工事をやっております。現在東京あるいは大阪でやっております諸工事、大体これは通勤対策でございますが、通勤対策と一部複線、複々線化がございますが、これは再建計画の中でもそのまま踏襲できる工事を現在やっておるわけでございます。
  250. 沖本泰幸

    沖本委員 それでは通勤対策について、これは大臣にもあとでお答えいただきたいと思うのですが、たとえて言うならば、東京で東京外環状線工事をどんどん進めております。大阪でもそれに類したものがどんどん行なわれつつある。あるいは名古屋を中心とする地点に同じような計画が進められていっている。その計画のどこが先に計画されたのか。どこから順序が始まっていくのか。あるいは人口流入とか人口膨張とか、あるいは都市の構造とか、あるいは運賃の形態とか、そういうものの面に立って工事の順序というもの、あるいは工事費とか、工事がしやすいとか、将来性とかというようなものが順序立てられていっているのか。  またたとえて言うならば、これは卑近な例で非常に恐縮とは存じますけれども、東京外環状線は隅田川を渡るについては非常に新しい工法を使わなければならないし、技術的なものが非常にかかる。あるいは先ほどの板川さんの御質問にもあったように、東京駅前はずっと地下を掘っていかなければならないし、それに建設費というものにばく大な金がかかっている。その単位が違うわけですね。それと同じような重要度というものはやはり都市の集中化というものによって違ってくるわけです。それを科学的に計算されていってそれで進められているのか。もちろん東京も必要ですけれども、東京周辺だけに力が注がれておるのか、これは政治的に進められているのか、あるいは合理的に進められているのか、どうらなんでしょうか。
  251. 磯崎叡

    磯崎説明員 その点につきましては、私どもとしては純粋に事務的にやりまして、これは経済計画なり各都道府県の今後の発展計画、あるいは首都圏整備委員会の将来の予想、近畿圏整備委員会の将来の予想、そういった関係各方面の科学的な、将来の人口増と当然並行してふえてまいります通勤通学者の増加を基礎にいたしまして、そして密度の高いところからやっておるわけでございます。しかし、と申しましても、結局やるのは東京と大阪でございまして、名古屋は、名古屋——岐阜問にもう一本線路をつくるかつくらないかということで、これはちょっと数字が少ないので全然手をつけておりませんが、問題はやはり東京と大阪でございます。ただその点につきまして、東京のほうが非常に数字が大きい。けた違いに数字が大きいものでございますので、それからいままでの国鉄の受け持っている分野が東京と大阪で多少違う。逆に申しますと、大阪では私鉄にたより切っているというふうな面もなきにしもあらずでございます。その点若干の反省も私ども必要だと思っております。ただし、東京が重点的になっていると申しますか東京の数字が非常に大きいものですから、東京駅の前だけでも数百億の金がかかるというふうなものが投入されておることは事実でございます。
  252. 沖本泰幸

    沖本委員 そういうところにお金を使っていく上から合理的でないという点が考えられるんじゃないか。ぼくは一例をあげて言ったので、すべての例ではないわけで、完全とは言い切れませんけれども、そういう点を十分考えて、通勤対策あるいはラッシュ対策というものが進められなければならない、こういうことになると思うわけです。  そういう上から、たとえば通勤通学ラッシュ、こういうものについていえますことは、運賃値上げになった。ところが、運賃を払うのは利用者です。利用者は、運賃を上げられて払ったけれども、ラッシュは一向に片づかない、何の見るべきものが出てこない、こういう点は大臣どうなるんでしょうか。
  253. 原田憲

    ○原田国務大臣 現在の運賃というものは、先ほども大蔵大臣が、一体運賃が高いか安いかということになると、昭和十年をとって幾らになるのか、二百三十四倍だ、そうすると平均が五百八十倍だったら運賃は安いじゃないかという話をされておったのですが、高い、安いという問題からいいますと、これは安いということになるのですが、実際問題としてはそれが定着しておりますから、それを上げるということは、これはもう感情としても、すぐに収入の問題になりますから、響いてくるというのが当然のことであろうと私は思います。したがいまして、あなたがおっしゃっているように運賃は上がったけれども、混雑というものが、サービスというものがちっともよくならないじゃないか、こういう声が上がるということは決して否定をいたしません。しかし、それを言っておったのでは、混雑というものは緩和することはできないのでありますから、いまの長期計画でもこの七年の間にいまの混雑を緩和するために努力をしておった。借金でやるということはあとに乗ってくる人も負担をしてもらう、公債もそうですけれども、そういうことでありますから、運賃値上げするということは、いま乗っている人がすぐサービスが悪いということが響いてくるということで問題があるわけでございます。だけれども、借金あるいは公債というもので事業を進めるということはあとの人も負担をしてもらうとことになるのでありますから、これをできるだけ安い金利で借りてきて事業を進めるということが、あなたの言われておる理屈には合ってくると思うのでありますが、どうしてもそれだけでは足らぬ。そこでこの三位一体の今度の案ですが、運賃を最低限度上げさせてもらうのでよろしく御協力を賜わりたい、こういうことを申し上げております。  なお、私は特にいまあなたがおっしゃっておる通勤通学といいますかこの問題と取り組むのにはもう一つ考え方を進めて、私が言いましたように借金をする場合でも、いま六分五厘でありますが、これを六分ぐらいで金を回してもらわぬと、あるいはもっと有利な金を回してもらわぬと、現在すでに新しく団地ができると、さてそこへ足をつけねばいかぬが、電鉄会社に敷けといっても現在敷けません。そういうところへ投資する金はございません。いまの私鉄では開発銀行の金だってなかなか借りられない、こういうことでございますから、せっかく団地をつくっても、住居をつくっても、運ぶ足が確保できないというような状態もなしとしないのでありますから、この点につきましては、私は何べんも申し上げておりますように、今後とも大蔵当局と折衝し、これらの問題について解決をするように努力をしていきたいわけでございます。
  254. 沖本泰幸

    沖本委員 それでは国民が納得しないと思うんですね。私がいま御質問していることは、素朴な国民立場に立ってお伺いしている点なんで、大阪弁で言うたらなんでやということになる。つまり、きのう本会議で民社党の門司さんも御質問になっていましたけれども、人口がふくれ上がって都市交通が混雑してくる、それはわしらの責任ではないと言われたわけです。産業が都市に集中し都市に人口が集中してくるのは、自然にそうなってきたのではなくて、政治の責任じゃないか。そこへわれわれが置かれて、運賃を上げられて苦しい思いをして、疲労して通勤しなければならない。そのわりに給料が上がるわけはない、こういう点に立つわけです。ですから、そういう観点に立って、何かの形で運賃が上がったらこういうことがあるということでなければ、国民というものは納得しないと思うわけです。そういう点について、通勤緩和あるいはラッシュ緩和というものに対する新しいものが出なければ、何もならないということになるわけです。  それと同時に、前回、前々回における定期値上げというものに対してはきちっとしたものがあったわけです。ラッシュ対策あるいは輸送力増強というようなものの内容が盛り込まれて、運賃を上げますというものがあったけれども、それによって答えが出てこなかったというような、何度も何度も国民はだまされておるというものがここにあるわけです。それが今度は、国鉄の赤字を運賃値上げで背負わされて、その上交通緩和は一つもないということになってくれば、これは国民は納得しないと思うわけですね。  そういうふうに申し上げれば、大臣としても答えようがないということになると思いますが、そこで安い金利の金を借りるというようなことも大事でしょうけれども、それ以上に大都市に対する大きな政策というものを考えていただいて、その面から問題を理解していくということでなければならないと思うのです。ただ運輸の立場から輸送面だけ考えているということでなくて、大きな政治の分野に立った角度から大都市問題を扱っていって、交通対策を行なっていく。それにはお互いの都市対策に対する連係が要ると思うのです。そういうものに対して、大臣は閣僚会議なり何なり、あるいは国鉄国鉄として各都市の市長なり何なりと将来の都市計画というものに対する計画性あるいはビジョンについてのいろいろなお話し合いをなさったかどうか、お答えをいただきたいと思うのです。
  255. 原田憲

    ○原田国務大臣 これは今後の問題で、いままでよく国鉄総裁お話を国会で聞かせてもらっておると、国鉄には何の相談もなしに家をどんどん建てて、そしてそれを運べといわれる。運べといわれると、いまあなたがおっしゃるように、サービスをよくするためには車をつくらなければならぬ、線路を増幅しなければならぬ、そのために金がないから金をどうしてつくろうか。運賃を上げるか、あるいはいま言ったように借金をするのに有利な国の金を貸してくれということを言っておる。それは、運賃値上げは国会でも聞いてもらえぬし、そして財政投融資の安い金利の金もなかなかそうそうは貸せぬといわれるので、先ほどから話のありますように、特別債というような金利の高い金を借りてやらなければしょうがない、やらなければ人を運べないのだからということでやってきたということを、よく聞かされておるわけであります。  私は、いまあなたがおっしゃっておるように、これは責任を問われれば、自由民主党が政権を担当してきておるわけでありますから、決してそれは言いのがれはしませんということを申し上げておるのでありますが、これぐらい世界に大きな——革命ということばがただ暴力をふるうて政治形態を変えるというようなことでなしに使われるならば、日本の国に起こっておることはまさに革命じゃないか。たとえば人口の半分が農民であったものが都市に移り住んでおる。そして、そのかわりそれによって所得という場が得られてきた。いままでなかったのです。いまから十年前には次三男はどないして食べていくかといっておったのですから、それが今日一応人手不足というようなところへ来た。そして生活形態というものまで変動を来たしておる。こういうことに対する対応策というものが、交通の場面でもって見るならば、今日この状態になっておる。それはもう私は責任はどうだと言われれば、決して逃げるものではありません。しかし、その原因を突き詰めてそれに対処していかなければ何も結論は出てこないのでありますから、あなたのおっしゃっておることは都市政策というものについてはそのとおりだ。あるいは都会はいま過密であると言われておるが、これを都市計画法をつくって住宅は高層化することによって職住近接の、いわゆる交通部門をもっと緩和したところの方策はないか、あるいは高速によるところの通勤というものも考えられないかということを考えていくことは、私は今後運輸省としましても、ただ運輸、運んでいたらいいということだけでなしに、総合的な考えを立てていかなければならぬと思いますが、しかし、その中でも推進会議の中で示されておるように、鉄道というものは何をやっていくか、斜陽産業ではないのだということの中には、いまあなたのおっしゃっておるところの都市間の輸送であるとか、あるいは通勤通学輸送であるとか、大量貨物輸送ということは、これはもう絶対必要なものであるという場面に立ってこれを推進していかなければならぬ、このようにいま私も考えております。今後とも努力をしていきたいと思っております。
  256. 磯崎叡

    磯崎説明員 ただいま大臣がおっしゃいましたように、私のほうといたしまして、昭和四十年度以来通勤輸送問題は、実は収支もない、経済計算もないというたてまえで全力をあげてやってまいりました。その間にやはりさっき申しましたように、政府あるいは関係都道府県等でも御意見をずいぶん聞いてまいりましたけれども、大体はやはり推定よりも実績のほうが上がってくるということで、実際に輸送需要に追いついていない面があると思います。しかし、私どもとしましても、今後やはりこの通勤問題は国鉄の採算をもう度外視して、いわば降りかかる火の粉を払うつもりでやっていかなければならぬというふうに考えております。
  257. 沖本泰幸

    沖本委員 副総裁にもう一度お伺いするのですが、そういう面について各都市の市長とか何かと将来に対するビジョンとかそういうものについて、いろいろな打ち合わせとかあるいは資料をお寄せになって検討なさるとか、そういうことはあったのですか、どうですか。
  258. 磯崎叡

    磯崎説明員 これはいろいろな機関がございまして、たとえば具体的に、都市計画審議会などにはうちの者もそのメンバーに入っております。それからたとえば住宅問題などにつきましては、住宅公団と積極的に人事交流いたしまして、そしてお互いの状況を知り合うというふうな立体的な方策をとってやっておるわけでございますが、やはりとかく計画が互い違いになっているということでございますので、その点は今後とももっと密接にやっていきたい、こう考えております。
  259. 沖本泰幸

    沖本委員 そういう都市交通についてですけれども、地方の公営企業の交通ということになりますと、ほとんど地下鉄に切りかわりつつある、そういう点では新しい面を切り開きつつあるわけですね。ところが、国鉄に関しては、東京、大阪で見るような環状線の車両、これもいま問題になっている一人乗務というようなことになってきているし、車両そのものを見ても大ぜいを入れるということだけにしぼられていっている。できるだけ回数をふやし車両をふやしていくという、こういうことだけに頭がしぼられているわけですけれども、ものの十年もたたない間に、これはもっと高速化された新しい形態の車両にあるいは交通機関にかわらなければならないかわからない。そういうものが将来に横たわっているわけですけれども、そういうものは再建計画の中にうたわれておるのかどうか、そういうものに変わっていくのかどうか。その形態はどういうものであるか、その点について……。
  260. 磯崎叡

    磯崎説明員 私、まだ正確に国鉄意見と申しますか——もちろん政府の御意見も伺わなければなりませんが、私どもなりに考えておりますことは、現在の線路を使いましてそれを複線にするとかあるいは複々線にするということは、私は限界があると思います。非常に土地代が、先ほども板川先生がおっしゃいましたように、坪何十万円という土地を買いまして線路をふやしていくということは、ほとんど不可能であります。現在計画していることが精一ぱいだと私は考えます。しかし、その後さらに人口がどうしても首都圏あるいは近畿圏に集中するならば、新しい形の通勤輸送、さっき大臣がおっしゃいました住と職とが近づくような通勤輸送をやらなければいけないということで、実は再建推進会議の中でも、いろいろこれは入れべきか入れべきでないか議論がされましたけれども、現在の十年間に予見されます国鉄財政状態では、それがどうしても入らないということで、これはこの文章の中にも、必要だけれども、これは別途財政措置等考えて、いまの国鉄財政負担にならないような形でもって、そういう、いま先生のおっしゃったような新しい通勤輸送体制というものを考えるべきだ、あるいは、全国新幹線網というものを考えるべきだというふうな結論になったわけでございます。
  261. 沖本泰幸

    沖本委員 そうすると、いまのお話から見ますと、いわば再建そのもののラインと、いわゆるそのほかの将来の国鉄のライン、将来性に関する国鉄の進み方というものと、二本線があるように考えられるわけですけれども、そういうことになるわけですか。
  262. 町田直

    ○町田政府委員 ただいま副総裁から申しましたように、財政再建推進会議では、この十年間にどれだけの投資をしてどういうことをやるべきであるかという大体のところを検討していただいたわけでございます。そのときに、一つの大きな使命でございます都市間旅客輸送につきましては、幹線輸送等大いにやっていこう、こういうことであります。その中で、いまお話しの新幹線につきましては、山陽新幹線をできれば昭和五十年までに完成いたしたい、こういうことで入っておるわけでございます。その余の新幹線、並びにいまお話の出ましたいわゆる通勤新幹線というようなものにつきましては、これもいま副総裁が申しましたように、この中では、必要であろうけれども、いまの国鉄財政事情から考えて、別途財源措置を講じて検討すべきだ。  なお、その中でやや詳しくいっておりますのは、たとえば関東地方で申しまして、東京−仙台間、東京−高崎間というようなところについて、あるいは通勤新幹線というようなものを考えなければいけないかもしれない。それはおそらく、現在の輸送状況がさらに進んでまいりまして、東北線あるいは高崎線等の東京−仙台間、東京−高崎問がかなりまた込んでくるであろう。そのときに、いわゆる複線化、複々線化というものをやるよりも、むしろ通勤新幹線というような構想で考えたほうがいいんじゃないか、こういう考え方が入っておるわけでございますけれども、それがはたしてこの再建期間の十年間に出てくるかどうか。  それからさらに、いま全国総合交通体系で考えております札幌から九州に至る新幹線というようなもの等も、この十年間のどの時点にどういう形で出てくるかということもまだいまのところでは未確定な状態でございますので、まあ、そういうものを含めまして、いま申し上げましたようなものは、おそらく今後の十年間に手をつけなければいけないだろう。新全総の計画は昭和六十年を目標にしておるわけでございますけれども、そういう事態になる可能性がある。その場合には、できれば、いまの国鉄財政負担をかけないような財政措置等を考えていくべきである、こういう趣旨が述べられておるわけでございます。
  263. 沖本泰幸

    沖本委員 ちょっと考えただけで、住宅は、いまのお話ですと、相当住宅が向こうに向かって伸びていく。そういう観点に立って、中距離、長距離からの通勤という点に対するお答えだったと思うのですけれども、それ以上に今度は住宅事情というものは、最近のいろんなもの——専門家の意見とかあるいは計画とかそういうものをあわせてみても、大蔵大臣もおっしゃっていましたけれども、だんだん住宅が高層化していく。そうすると、都市の中心部に大きな住宅がどんどん建っていくわけです。大きな都市の中心部に建つところの住宅をつないでいく交通機関ということになっていくわけですけれども、そういうものも、いままでの国鉄の交通機関を生かしていく、あるいは新しい国鉄の交通機関が新しい面を開拓していく、それに対する地方の私鉄なりあるいは公共企業体輸送機関、こういうものとの兼ね合いというものが出てくるわけですね。そういうものが将来どういう形で出てくるのか、それが再建計画の中に載っているのか、あるいはその総合輸送体系の中にそういうものが含まれておるのか、それはどうなんですか。
  264. 原田憲

    ○原田国務大臣 いま沖本さんのおっしゃっておることは、これから基本計画の中で考え、そうして国鉄の新しい再建計画の中で考慮される分と、そうして現在すでに長期計画として進めておるものとあるわけでございます。それらをうまく立てて、今後の再建計画というものを国民のために、ビジョンということばが使われましたが、こういうことになるということでやっていかなければならぬと考えるわけであります。  たとえば具体的なお話が先ほど出ましたが、大阪府でいいますと、あるいは城東線であるとか、片町線であるとか、福知山線であるとかいうものが都市と近郊をつないでおる国鉄関係の路線としてある。しかし、これは現在の長期計画の中には入っておらないわけであります。しかし、これらの問題は、都市のこのいま指摘されておる通勤通学の鉄道としてはぜひ必要なものであろうというときには、当然これらの計画を取り入れて、そうして新しい住居との問題等を勘案してやっていく。そういうことになりますと、私は、話が非常に具体的になってきますけれども、その行政を行なっておる大阪府あるいは兵庫県というようなもの、それからそこに点在する市町村というものと、先ほどあなたがお話しになったように、国鉄とが一体になって、一つ考え方というものを確立していくことにならなければならないであろう、このように考えております。
  265. 沖本泰幸

    沖本委員 そうしますと、いま私が申し上げたことは、夢のようなお話でなくて、これから当然起き得る、想像できるものであり、それ以上のものが、たとえていえば、万国博ではそういうふうなものが展示されるなり、あるいは将来に向かってのそういう展望が見られるというようなものが出てくるわけです。  そういうふうになっていきますと、国鉄再建計画で十年間で赤字を解消していくという一つの線と、それから、それ以上に上回っていくところの国鉄の新しい事業というものが、再建計画に影響しないような形とおっしゃいますけれども、そういうもので出てくるということが想像されるわけですけれども、そうでしょうか。
  266. 原田憲

    ○原田国務大臣 金目の面でいいますと、国鉄が長期計画で立てておりましたのは、四十六年まで二兆九千何がし、ざっと三兆円までのものでありまして、今度の十年の計画は三兆七千億というのでありますから、そのかわり三年まででございますが、それだけの伸びというものが金目の面だけであるわけであります。だから、その新しい面も必ず出てくることはもう言をまたないわけでありますが、再建計画を立てるにあたっては、先ほども話に出ましたけれども、幹線はすべて複線にしようという計画を持っておったけれども、その分は少しストップをしなければならぬ。しかし、都市問の輸送の面においては進めなければならぬ。こういうことを再建計画で立てていくのでありますから、あなたのおっしゃったようなことがあらわれてくる、このように考えております。
  267. 沖本泰幸

    沖本委員 ちょっと話の行き違いができたと思うのですが、結局私がお伺いしているのは、いま言ったように、非常な交通部門の発達ということによって国鉄も新しい分野に向かってどんどん進んではおるわけです。そういう点から新幹線化ということ、複線化あるいは電化、立体交差、こういう面では、再建計画の中に含まれているもの、あるいは第三次長期計画をある程度手直ししなければならない、検討しなければならない、そして変えて新しいものを組んでいかなければならない、そういう面もあるかわりに、またそれを上回る新しい輸送体系というものを組んでいかなければならない。そういうものがいままで以上に出てくる、これは予想されるということになってくると、その分に要るいろんな投資、そういうものは、再建計画とかそういうものに影響しないような形で考えられてくる。こういうことになると、同じことが二つ出てくるということになるわけです、私たちしろうと目で見ていると。結局結論的に言うと、そんなことをするんでしたら、いっそのことたな上げしてしまったらどうですかということになるんです。   〔委員長退席、毛利委員長代理着席〕 たな上げをしてしまって、そして政府がその分だけ全部見て、新しいものに向かっていったほうがいいんじゃありませんか。毎年少しずつ片づけながら、全然新しいものが二つの線で出てくるということは、少しおかしいんじゃないですか。当然その新しい分野に向かって進まなければならないし、これは当然考えられるわけです。ですから、結局その再建計画ということよりも、再建計画そのものは、政府がごっぽりと背負い込んで、そして、国鉄負担をかけないで、新しい面からやらしていく、国民負担をかけさせない、こういう面のほうが私は筋が通る、こう考えるのですが、これは私の意見でございますが、大臣いかがでございますか。
  268. 町田直

    ○町田政府委員 まず新しい十カ年計画と申しますか再建計画の中で、たとえば、いま御指摘のございました都市の通勤対策に関するものにつきましては、まあこれからきめるわけでございますけれども、当然のことに通勤対策費というものを考えてやっていく、こういう前提が一つあるわけです。これは御承知のように、たとえば現在東京で申しますと、いわゆる五方面作戦と申しておりますが、五つの方面の鉄道を複線化してやっていく、こういうことで、現在ある程度完成しておりますけれども、そういうものを続けて今後やっていく。大阪につきましても、名古屋につきましても、同じようなことをやっていくという計画を立てることは当然でございます。  そこで、もう一つのというお話になってしまったんでございますけれども、それじゃ、いま世上いわれておる通勤新幹線というようなもの、これを一体どういうふうにとらえていくかという問題だろうと思います。御指摘のように、通勤新幹線をいまこの際同じようにこの中に組み込んじゃって、十カ年計画の中に入れて、財源等についても全部考えていったらどうか、こういうことであろうと思いますけれども、通勤新幹線というものが、いまの段階ではたしてどの程度具体化し、どういうふうになっていくかということは、まだ実は通勤新幹線と全国新幹線網というものにつきましても御承知のように、新全総計画で検討いたしておる最中でございますし、それがどういうふうな形になってくるか、また、将来どういう時期にそういう形のものを考えていくかということをもう少し詰めないとならないわけです。それと、かたがた、そういうものを、たとえば全国的な新幹線をやるということになると、これは相当な投資を必要とするわけでございます。そういうものをどうやって設備資金考えていくかということも一つの大きな問題でございます。これからの問題になろうというふうに考えております。  そこで、とりあえず十カ年計画では、第三次長期計画で考えました通勤対策をさらに引き伸ばし、さらに強力にやるということを考えて、一応三兆七千億の中の五千五百億で十カ年間通勤対策を再建計画では組んでいるわけでございます。そのあとと申しますか、通勤新幹線というものが具体化してきた場合には、当然そういうものは都市の交通対策あるいは全国交通対策として、組み込まなければならないでありましょうけれども、これは相当な資金もかかることであるだろうし何か別途の方策を考えて、国鉄財政負担のかからないような形で考えるべきであるというので、先の話と申しますか、いわば固まっていない話として、ぜひ必要であろう、その場合にはそういうことをよく考えなさい。こういう指摘がしてあるわけでございます。
  269. 沖本泰幸

    沖本委員 まあ将来のことはまた別の機会に譲るとしましても、通勤対策、これは大臣、ひとつ考えていただきたいのです。これはいままでの行きがかりで考えるということではなくて、先ほど申し上げましたとおりに、これは大きな都市問題として別に考えていただいて、その中で果たす私鉄役割り、あるいは公営企業が持っておる、公共企業体が持っておる輸送機関の役割り、その中にある国鉄役割り、こういうものと、それから将来の都市の発展、そういうものとあわせた別途の考え方で対策を立てていただかなければ、いままでどおりでいくとたいへんなことになってくると思うのです。いつまでたっても利用者というもの、通勤者は一生涯、これから将来もいわゆる混雑から解放されないという結果が考えられるということになりますから、やはり新聞の読める程度の楽さを持って通勤ができるような、将来に対する問題を開いていく、こういうものでなければならないと思います。  まあ話をずっと避けてしまったのですけれども、やはり私が不安に思うのは、いま申し上げたのが一点と、それからもう一つは、先ほどから言っておりますとおりに、別途に進んでいくけれども、そうなってくると、再建計画の十年間というものが終わって、また同じ再建計画が生じはしないかというおそれがあるということになるわけですね。そういう点も十分考慮していただきたい、こういうことになるわけです。そうすると、結局運賃の改定というものに対して、値上げというものに対してはっきりしたものは出ていないわけです。三回だけ上げるということしか載っていないわけですから、それも将来そういうような変動があるものを国鉄はかかえ込んでおるわけですから、そういうものは全部これから先の運賃の中に組み込まれてくるかどうか、現在時点でそういうものをはっきり筋を引いて、それに対する問題として考えていくか、どっちなんですかということになるわけです。
  270. 町田直

    ○町田政府委員 先ほど私が申しましたのは、そのあとのほうでございまして、要するに現在というか、今度十カ年計画を立てようという場合には、そういう新しいと申しますか、第二と申しますか、そういうものを一応考えていない。したがいまして、なぜ考えないかということですが、そうなると、御指摘のように、非常に大きな投資をしなければなりません、それに対する負担というものも非常に大きくなるだろう、こういうことでございますので、そういう新しいものについては、別途の財源措置を考えるということでやっておるわけであります。したがいまして、別途の財源措置が考えられないで十カ年計画の中に組み込まれるということになりますと、御指摘のように、何らかの形で財源も見なければなりませんから、そうでないような形にしたいというのが推進会議意見であります。私もそういうふうに努力していきたい、こう考えるわけであります。
  271. 沖本泰幸

    沖本委員 そこで今度は、総合交通体系というものについてでございますが、この前の質問に対して、大臣は、今後も国鉄はこの輸送体系の中で果たすべき任務がある、都市間の旅客輸送、中長距離の輸送、また大量貨物輸送、大都市における通勤通学輸送の分野において十分な役割りを果たすべきである、その点に立って総合輸送政策を効果的にやっていく、それは財政再建推進でやっていかなければならない。こういう点は計画の中に十分うたわれておる、こういう意味のことを大臣が先般御答弁なさったと記憶しておるのですが、この点はいかがですか。
  272. 原田憲

    ○原田国務大臣 そういうところへ主眼を置いて、基本方針を立てて、そして国鉄の計画というものを立ててもらう、こういうことでございます。
  273. 沖本泰幸

    沖本委員 ところが、私の申し上げたいのは、国鉄の果たす役割りというものをもう一つその上に立って考えてもらわなければならないことになるわけです。これはこの間の運輸委員会でも話題になったわけですが、たとえばコンテナの問題一つ取り上げても、窓口から窓口ということになるけれども、それは国鉄が一貫してやるものではない。その間に通運業者が入ってくる。それの運賃形態とかあるいは輸送のつながりとか、こういうものに対する問題点が多分にあるということなんですね。そうなってきますと、結局、港湾と船舶あるいは国際的な海運事情、あるいは陸上交通と貨物輸送関係、あるいは飛行機と空港の問題、そういう点を考えてみましても、海運業務と港湾関係とあるいは国鉄というものとがニュアンスが全然ばらばらに離れて内容がある。そこに一貫したつながりが見受けられないわけです。ですから、この前も申し上げましたとおりに、建設省は建設省でかってに全国の道路計画を策定して、それによってどんどん道路建設をやっていっている。国鉄国鉄で自己の計画に従った自分の果たす使命という将来の展望をつくってお進めになっていっている。こういう点が一貫していないわけです。  それは将来、旅客という点について考えてみましても、もうほん近い将来に、大臣がよくおっしゃっておるとおりにエアバスが走り出す、飛ぶようになるわけですね。ジャンボの時代を通り越してエアバスの時代になってくる。あるいは国内線だけ考えても、国鉄の三時間程度の距離間において飛行機が全部その間を飛ばしてしまう、一百三便は持つというようなところが航空業界の将来の考え方で、これはもうほん近い将来に実現させたい、こういうふうに考えているわけなんです。それをもう実現の方向に持っていっている。したがっていまの姿は、全体的ないわゆる総合輸送、国家というものを全体に考えた、あるいは日本本土というものを全部考えた、あるいは世界における日本の現状というものを考えながら、将来に向かっての国鉄が果たす日本の中の役割りというものに立ったものではないと私は考えるのです。その点大臣お答えに食い違いがあったのではないか、こう考えるわけですが、その点いかがですか。
  274. 原田憲

    ○原田国務大臣 そういう上に立って考えてみても、国鉄が果たすべき任務というものは、都市間の旅客輸送、それから大量貨物の中長距離間の輸送通勤通学という大量輸送ですね。これは、かりにそういう時代が来ても十分この特色を発揮し得るということを識者も見、そのことについて国鉄の果たすべき地位があるということを言っておると私は把握をいたしておるのであります。したがって、いまあなたがおっしゃっておることを輸送部門だけからいいますと、航空というものは、長大距離の高速輸送であるそれから海上、山岳地帯などを横断する輸送である。海運は長距離の大量貨物輸送、臨海工業地帯間の貨物輸送である。自動車は中長距離間の旅客、貨物の輸送、面としての輸送。こういうところから今後世界と日本ということを見て、一番卑近ななにでいうと、やがて発表されるであろう総合開発計画は、昭和六十年を見越したその時代の開発の青写真に適応した輸送というものの果たすべき条件、これが今度の出発点になる、私はこのように考えておるわけです。  先ほどから聞いておりますと、そういう都市だけでも別な機関をこしらえてやったほうがほんとうに効果があがるのではないか、この間、そういうことを運輸省で考えているのではないかという御質問がありましたが、それはいろいろ研究でございますからやってはみますけれども、運輸省としてそういうことをやろうということではないということを先ほど局長は言ったわけでございます。私どもはそういうことも勘案しながら、その出発点にする、こういう考えを持ってやっておるということでございます。
  275. 沖本泰幸

    沖本委員 これはお互いの話の筋が少し違うような、私の質問がちょっと複雑であったかもわからないのですけれども……。  もう一度言いますけれども、たとえば建設省がやっている道路計画というものと、運輸省がやっている港湾計画とかあるいは輸送計画というものとが、全然一つになっていない。横のつながりが全然ない。そのために別々のものが進められてきている。どっかでかち合うわけですね。かち合ったときにどこか損するということになるわけです。そういうふうな内容の中で、今度国鉄の再建十カ年計画というものに支障は来たしませんかと、こう聞きたいわけです。その再建十カ年計画そのものが国鉄というもののこれからの基礎になっていくわけです。それが大きな影響力を持っているわけです。その中に運賃値上げが入っているわけです。そうすると、それが変わってくると、将来運賃が変わるではありませんか。そのときはどうするのですか、やはり国民はまたしょわなければならないのですか。それはもう全然わからないのですか、上がるものか、もっと安くなるものか。こんなに三回上がるということはわかっているけれども、という点がはっきりしていないということなんです。そういう点はいいかがですか。   〔毛利委員長代理退席、委員長着席〕
  276. 町田直

    ○町田政府委員 御指摘の点でございますけれども、道路と鉄道の関係、これは一番問題になるんじゃないかという感じがいたします。その他、港湾あるいは陸運、海運、航空等の関係、それぞれ出てまいると思いますけれども、まず何よりも総合計画を立てて、その中における国鉄役割り、こういうのが本来の行き方であろうと思います。  ただ、道路等の関係になりますと、やはり省が分かれておりますから、それをどう調整するかという問題になりますが、やはりその点は当然よく連絡をとってやっていこう、こういう言い方よりしょうがないのじゃないかという気がいたします。特に国鉄の再建計画につきましては、その基本方針は閣議できめる、こういうことにいたしております。それ以上に具体的な国鉄の再建計画が出ます場合には、当然それと関係のある各省、特に道路につきましては建設省、それからその他、大体は運輸省でございますけれども、内部の調整というものを当然とっていかなければならないということは考えているわけでございます。  ただ将来、国鉄の再建計画のできたあとで道路計画が変わってきたらどうするのかということでございますけれども、そういうところは、何と申しますか計画の調整ということになるのではないか。そこで、もし道路計画が変わった場合に国鉄の計画を変えなければいかぬということが出てくるとすれば、その段階でやはり基本計画そのものが変わらざるを得ないということになるのは、これはやむを得ないという気がいたします。しかし、大体のところ、やはり国鉄の使命というのは推進会議でいっております三つの使命とそれについての計画、それが中心になる計画でございますので、どうも計画が変わったことによってそれほど大きな変わり方はこない。それによってまた運賃をぐっと上げなければならぬ、そういう状態になるかどうか、その辺のところはまずまず、あまりそういう影響はないのじゃないかというような感じがしておるわけでございます。
  277. 原田憲

    ○原田国務大臣 私は、口がうまいこと言えぬので十分に御了解が賜われないかと思いますけれども、あなたのおっしゃっておることは、私はわかっておるつもりなんです。輸送分野というものは決して固定的なものではございません。時代の要請によって変動するものでございます。そのような事態への適応体制がすみやかにでき上がるように公共投資の配分、道路と鉄道なんかの配分、それからいまおっしゃっている運賃制度、こういうことを政策的に誘導して、均衡のとれた総合交通体系を確立すること、これが運輸行政だ、こうおっしゃっておるのであると思います。私もそのとおりであると思います。そこで、そのために一そう私どものほうでは、必要な統計資料を整備し、要員の充実もはかり、たとえば、PPBSというようなこともいわれておりますが、これらのことを十分整えて積極的に進めていきたい、こういう考えを持っておることは間違いないのであります。
  278. 沖本泰幸

    沖本委員 では例を引いて申し上げます。  たとえば、国鉄再建計画の中で合理化、近代化という問題があります。その中でコンテナという、これは国が一番ねらっている大きな収入源になっていく問題です。ところが、海運のほうではコンテナに対してフェリを考えているのです。フェリで国内間の港と港をつなぐということを盛んに言っていますよ。同じ運輸省の中じゃないですか、同じ運輸省の中でそれだけ食い違いがあるのですよ。大臣この点どうなんですか。
  279. 原田憲

    ○原田国務大臣 これは日本のいまの経済の伸長というものを考えて、それに適応するところの輸送というものをどう分担するかということの配分であろう。私どもは、先ほど言いましたように、運輸行政の中でそれを調整し、国民経済の中で最も合理的に運営していくようにやるのが運輸行政である。そのために先ほど言いましたような参謀本部というものを今度つくって、ここで十分効果をあげるようにやってもらいたい、こういうことを申し上げたわけでございます。
  280. 沖本泰幸

    沖本委員 大臣のおひざ元で、片一方では国鉄のほうで力を入れて、コンテナをドアからドアということで、港から線路を引いて、その間通運業者につないでもらうけれども、それを前からどんどん計画にお移しになっている。これは非常な熱の入れ方です。ところが一方では、繰り返しになりますけれども、東京から九州に向けてフェリでコンテナを積んだなりのトラックをそのまま運んでいく、あるいは名古屋のほうからは、これは陶器がおもに集まってくる、その地域、地域によってコンテナによって集荷する内容が違うわけですね。港の性格が違ってまいります。そういうふうになってくることによる集荷の内容そのものは、フェリがうんと安い、だからフェリを大型化してフェリによってこれをやっていこう、これが最も近代的な輸送考え方だ。これは海運関係で、運輸省の中でお考えになっていることになりますから、大臣がおっしゃっているとおりに、参謀本部をつくってこれをコントロールしていくということになると、国鉄のお考えになっていることがパーになる、全然だめになるといいますか、あるいは海運関係でお考えになっているフェリの計画が全然だめになるか、どっちかということになります。そうなってくると、その再建十カ年計画でも根底からくずれますよ。その中に運賃値上げが入っているということになるわけです。  ですから、ここで申し上げたいのは、総理府なら総理府、そういうところに、全部の輸送体系を合わしたところ、全体をコントロールしていくところの根本が要るということになるわけです。それがなければ、みんなばらばらのことをやってしまう。運輸省にも要るでしょう、だけれども、総理府にも要る、私はそう考えるわけです。大臣いかがですか。
  281. 原田憲

    ○原田国務大臣 そういうあなたのおっしゃっておるようなことを考えて、それで推進会議では、なお国鉄というものの果たし得る部面がそこにあるということをいっておると私は認識しておるのであります。したがって、この再建計画というものがパーになって、全部がフェリボートになるというようにはならない。日本の経済の伸びていく中において、輸送分野においてどう配分されていくか、それはフェリボートも私はできてくると思います。それらのことが今後十年の中で、日本の国鉄のコンテナ輸送というものがなくなって、あなたのおっしゃるように、全部運搬が船になってくる、こういうことにはならない。私はそこらのことをよくコントロールしながら最も合理的に、国民経済の中で貢献のできる輸送方法というものを考え出して運営をしていかなければならぬ、そういうことであろうと思う。  国鉄が一番こたえたのはモータリゼーション、これが国鉄収入に一番こたえた。その自動車というものは道路をただで使うからどんどん盛んになったというけれども、今日、それがどうなるかわかりませんが、かげり現象なんていわれておる。一番はなやかだった自動車産業についてもそういわれるようになっておる。しかし、自動車というものがはたしてどうなるか、これもやはり私のほうの行政の中で、生産部門は通産省でありますけれども、私のほうは自動車行政を担当しておりますから、これらのことを全部考えて、その中で国鉄というものは、いまおっしゃっている働く道があるんだ、再建計画はその中で立てられるんだ、こういうふうに考えておるのでございます。
  282. 沖本泰幸

    沖本委員 私の言わんとしておるところは、その再建計画の中に運賃の改定が入っておるということなんです。それがいま言ったようなちょっとしたことだけで狂いが起きてきます。間違いなく狂いが起きます。全部が全部コンテナをフェリに取られるということはありませんけれども、多少どころではない、大きな計画変更をしなければならないということになってきますと、第一番に再建計画そのものの基盤が非常に脆弱であるということが指摘されるわけです。その上またもう一つ言えることは、やはりいま申し上げたとおりに、全体的な総合輸送体系あるいは輸送政策というものがないということは、私が本会議で御質問したときに佐藤総理も、確かにそれはないということで、早くこれはつくらなければならないということはおっしゃっておられました。そういう点に立っていない再建計画というものは必ず手直ししなければならないということになると、今度は、それで私が一番心配するのは、運賃に響いてくる、こういうことになるわけです。  ですから、いまは大臣、三位一体論、こうおっしゃいますけれども、これは決して三位一体論ではないわけです。三位一体ということになれば、同じウエートでなければなりませんけれども、おのおの位置をかえた三位一体で、国民のほうが一番重たい荷物を背負い込まされた三位一体ですから、そのほうもまた狂いが生じてくるということになるわけですから、いわゆる再建計画の十カ年計画そのものが根本から狂いませんかということなんです。そうすると、いわゆるそういう中に置かれる基礎的な計画そのものが狂ってきます、それをどういうふうにおまとめになるのですか。
  283. 原田憲

    ○原田国務大臣 それはいま申し上げましたように、たとえば船といいますとすぐ港湾でございます。港湾がいま五カ年計画というものを立て、つくっておるのは、この船というものが日本の貿易量というものを考えて、そこに海運、運輸委員会できょうも御審議願った今後の造船計画その他あるわけです。それらを勘案しまして、国鉄の果たすべき役割りというものが推進会議の中で示されておる。これは今後十年の中でそう一ぺんに手直しをしなければならぬ——先ほどちょっと話がありましたが、沖本さんはフェリに取ってかわられてしまうという話だったのでありますけれども、私はそうはならないと思う。たとえば海の場合はそういうことで五カ年計画を進めておるのでございますから、それとマッチした、いま佐藤総理のお話が出ましたが、私どもも行政を担当しておりますから、できるだけそれらに間違いのないような計画を立て、御心配のないようにいたしていきたい、このように思います。
  284. 沖本泰幸

    沖本委員 運輸大臣のおっしゃっている計画というのは、運輸部門だけの計画ということになるわけですから、それよりもっと広い視野に立った計画をもう一度練り直してやっていかなければならないということになるわけですよ。そうなってくると、再建計画をもう一ぺん変えてくださいということになるわけですが、言いかえてみれば、参議院に行ってもう一ぺんもらい戻してくる気はありませんか。
  285. 原田憲

    ○原田国務大臣 先ほど言いましたように、私は、国鉄の手直しがないとは断言はできません、十年先のことでございますから。だけれども、私は、先ほど言いましたように、これは出発点にいたしている、こういうふうに考えておりますので、参議院へ行ってもらってくるよりも、ここで早く結論を出していただけるようにお願いを申し上げる次第でございます。
  286. 沖本泰幸

    沖本委員 大蔵大臣が遊んでいらっしゃいますので、大蔵大臣に御質問します。  先日ちょうどひまがあったものですから、テレビで大臣の御対談を、御婦人とお話しになっているところを見せていただいたのです。お話の中に、去年は物価が五%くらい伸びると思った。しかし四・八%に押えられた。これは暖冬異変で野菜なんかがだいぶ出回ったんで非常に得をした。ことしはそういうわけにはいかぬと思う。五%はくるだろう。しかし、極力それで押えるために、予算もそういうふうな組み方をしたというところから、だけれども、国鉄運賃だけはどうしても上げざるを得ない。これは国鉄が倒れてしまう、つぶれてしまうからどうしても上げなければならない。こういうふうにおっしゃったわけです。そのかわりに物価影響する米も押えました、麦も押えた、塩も押えている、こういうふうに物価影響するものは極力押えた。このとおりだったと思うのです。そうすると私の横にいた——大阪ですけれども、大阪の人がいわく、何でや、こう言うのです。何でやというのは、どうしてだということです。どうして運賃だけ——米も押えたし、麦も押えたし、塩も押えたなら、運賃も押えたらいいじゃないか、こういう言い方をしていらっしゃるわけです。多少は物価影響するということはおっしゃったのです。物価影響するんなら押えればいいじゃないか。何でわしらだけ運賃を背負わんならぬ、こういうことなんです。国鉄は赤字だといっても、わしらが赤字にしたわけではない。赤字にもせぬわしらが何で運賃を背負わんならぬ、それは何でや、こういう繰り返しなんです。  みやげに持って帰りたいのですが、大臣、どういうふうに御答弁なさいますか。
  287. 福田赳夫

    福田国務大臣 一般国民の中には、何でやという感じを持たれた方が多数あると思うのです。物価政策にそんなに熱心ならば全部ストップしたらどうです、こう言うのです。私は沖本さんはわかってくれると思う。それは、つまり公共料金を押える、これはそのとき、その年はいいですよ。国鉄運賃をことし押えました、押えたこの年はそれだけ物価にはいい影響があります。しかし、これを押え切りができますか、そこに問題があるのです。かつて三十九年に全部押えたことがあるのです。しかし、翌年は続けることができない、解除しなければならない。そうすると物価が上がってきます。そういうようなことで、やはりいろいろな経済事情が違う。賃金も上がってくる。そういうようなことになりますと、公共企業の中においても利用者への御負担、これを考えなければならぬものが出てくるわけです。それを全部やったら、これはたいへんなことになる。全部値上げだということはたいへんになりますから、ぽつりぽつりやって、いろいろくふうしておるのです。  ことしは物価問題の非常にむずかしい年でありますから、米麦だ、塩だ、あるいは電信電話だ、いろいろな面でくふうしてこれを押えることにしましたが、さて国鉄、これは火の車のような状態になってしまった。これをとにかくやっておく、やっておかないと将来また禍根を残す、こういうような考え方なんです。それは全部押えればという感じを持つ人が多いと思うのです。しかし、ほんとうに国の公共料金と物価の問題というものはどういう関係にあるかということをしさいに検討し、またいままでの経過というものをよく調べてみれば、なかなかそうはいかぬものじゃないかということがわかっていただけるものじゃあるまいか、さように考えます。
  288. 沖本泰幸

    沖本委員 いわく、赤字なら赤字で、わしらが赤字にしたわけじゃないんだから、赤字になった国鉄は国の財産だから、それを見ているのは政府じゃないか。だから、赤字になったら、わしらも税金を出しておるんだから、出しておる税金で見てくれたらいいんじゃないか、それをまた運賃を出さんならぬということになればわれわれは二重負担じゃないか。二重負担じゃないけれども、二重負担みたいになる。何で運賃だけ上げるということになるのか、こういう繰り返しなんですがね。税金を出しておるんだから、税金を使うのが政府やないか。政府がそれを見てくれたらいいじゃないか。それを、国鉄だけ運賃を上げてわしらがそれを払わなければならないことになると、一部の者だけ困るやないか、何でや、こういうことなんです。
  289. 福田赳夫

    福田国務大臣 国鉄に九百億円を投入する、これをもし一般財政から投入する、こういうことにいたしますと、それだけ増税というか、ことし四十四年度でいえば減税の額を減らさなければならぬ。逆にいうとそれだけ税負担国民によけいかかる、こういうことになるのです。ですから問題は、そういう形でいきますか、あるいは利用者たるお客さんに負担していただきますか、こういう問題になるわけなんです。  国鉄はとにかく明治の初めからずっと独立採算というか、でやってまいりまして、しかも利益をあげて政府にみついだ時期もずいぶん長く続いたわけでございます。そういう企業性のある国鉄なんでありますから、これはやはり企業として立ち行くための企業原則に従った努力、これが中心になると思う。そうすると、やはりお客さんの御負担、こういうことがまず考えられるわけでありますが、お客さんの御負担が、国鉄の場合、いま一体どういう地位にあるか。いま戦争前に比べて物価がどのくらいになっているかといいますと、戦争前の基準年次は昭和九年、十年、十一年、この当時に比べましていま諸物価は五百八十倍になっておるわけです。国鉄幾らになっておりますか、二百三十四倍です。そこにも実は問題があるのです。国鉄だけなぜ上げるんだと言うが、ことしだけの問題を考えてもらっては困る。少し長い目の問題を考えてもらいたい。あるいは電信電話の料金を上げなければならぬ時期もあるかもしれない。あるいは米価の改定をしなければならぬ時期もあるかもしれない。しかし、全部ならしてみまして、今日国鉄が一番料金値上げの必要に迫られておる、こういう判断で国鉄料金の値上げをする。しかし同時に、政府もこれに対して全面的な財政援助をする。そして長期にわたっての展望としては、国鉄をほんとうに輸送界において重大な任務をたくましくになっていただくというためにふさわしい姿勢にする、こういうことで今回の三位一体という体制の施設が進められておる。ぜひともひとつ御理解のほどをお願い申し上げます。
  290. 沖本泰幸

    沖本委員 結局いわく、米を押えるの、麦を押えるの、塩を押えるのもただでは大蔵大臣は押えられへんやろ、何がしかの金が要ることになるでしょうと言われる。ただで押えられるんだったら、いままでどうして押えなかったか、何がしかの金が要ることになるやろ、それなら運賃を押えるのも同じことじゃありませんか、これが横におる人の素朴な理論なんです。黙って聞いていて、私も国会議員ですから、そのときは政府側のような、全くそのとおりと言うわけにはいきませんから、ある程度は、ああ言っているのはこういう意味や、こう言いたいのですが、こっちも、ほんまやと言わざるを得ないのです、向こうの言っていることを聞くと。米を押えるのも麦を押えるのも、塩を押えるのも、政府が金を出さなければ押えられないだろう。物価にはね返るから押えるのでしょう。金を出すのでしょう。そうしたら運賃だけに国はなぜ金を出さぬのや、その出してもらう金はわれわれ国民の金やないか、どっちを出すにしても同じゃないか、米や麦や塩に出すんなら国鉄にも出していいじゃないか、こういう素朴な理論なんですが、それに対して大臣はどうお考えですか。
  291. 福田赳夫

    福田国務大臣 ただいま申し上げたようなわけなんで、ひょっとした感触としてそういうふうに考えられる方が多々あると思うのです。しかし、私がいま申し上げたことも御理解が願えると思うのです。ことに、私はいま申し上げたことを沖本さんも御理解いただいておるのじゃないか、こういうふうに存じますが、これは全部公共料金をストップする、これを長期にわたって続けていくというようなことは絶対にできません。そんなことがいまの経済情勢でできるものじゃありません。そういう中において、ことし一体どういう公共料金を改定するかというと、一番差し迫った問題は国鉄である、こういうことなんです。もしここで国鉄料金改定は当分しないのだ、毎年さあ九百億円、千億円、千五百億円投入するということをすると、国民負担がそれだけふえるのです。そういう話をしていただきますれば、私は、素朴な感じを話された大阪のその方も、ああ、そういう考え方もあるのかなといって御理解がいただけるのじゃあるまいかと思う。
  292. 沖本泰幸

    沖本委員 私が納得できないのですからこれは言いようがないと思うのであります。  そこで、先ほどのお話ですが、長期の展望に立って三位一体、これから将来を考えて十カ年計画ということになるわけですけれども、先ほど申し上げたとおり、再建十カ年計画が、基礎になることが、はなはだ心もとないわけです。大蔵大臣そばでお聞きになっていて、非常に基礎が弱いとお考えになりませんですか。
  293. 福田赳夫

    福田国務大臣 いまはとにかく世の中が非常なテンポで変わってきます。十年前と今日とを比べてみると、十年前に私は、十年後の日本の社会というものはこんな状態になろうとはほんとうに思わなかった。そういうことが今後もあり得ると思うのです。そういう中においての長期計画でありますから、これは見通しと実績が違ってくる、これもあり得ると思うのです。しかし、やはり長期の展望を持って事を進めなければ、いい政治じゃありません。そういうようなことから十カ年という展望のもとに国鉄が再建計画を立てられたことは、私は正しい行き方であった、こういうふうに思うわけでございます。しかし、長期展望ですから、実績との狂いができることはあり得る。そのときにはそのときの情勢に応じて対処しなければなりませんけれども、いまはとにかく手ぶらで来年、再来年くらいのことを考えてやったのじゃいかぬと思います。長い目の展望を持つ。その国鉄が立てた展望は、私は、今日において見通し得る最善を尽くした展望である、こういうふうに考えておる次第であります。
  294. 沖本泰幸

    沖本委員 もし大臣お答えが総理のお答えであればこれは大問題になるわけですけれども、この前にも本会議で申し上げたとおり、政府の総合輸送政策がないということは歴代内閣の責任だ。そのために国鉄がこういう道をたどらざるを得なかった。政府にはっきりした長期輸送政策が存在し、それこそ大臣のおっしゃる全体観に立った展望の輸送政策をそのときどきの政府が打ち出しておれば、ここまでにはならなかった。こういうことが専門家の意見であるということになるわけです。いわゆる展望とおっしゃいますから、望遠鏡でピントを合わそうにもピントの基礎がないわけです。ぼけてしまっているということになるわけです。ピントを合わすべき物体がない。長期政策というものがないわけです。国鉄はこういうものを基礎にして将来を考えていきなさい、あるいは道路計画はこういうものを持ってやっていきなさい——建設省のやっているところの道路計画というものはオリンピックから端を発していると言っても過言ではないといえるくらいになって、それで道路計画がどんどん進んでいった。そこに石炭の問題もあって国鉄は赤字をよけいふやしていったという点もあるわけですけれども、そういう中にあって政府輸送政策というものがはっきりきめられておったならばここには至らなかっただろう。そういう点から考えると、政府輸送政策がなかった責任だ、こういうことになるわけです。大臣は、長期展望十カ年計画というものを立てたことはいいことだとおっしゃいますけれども、その展望自体が基礎が危ういわけです、はっきりした基礎がないわけですから。手直しもあるだろうと言うけれども、国民にとっては手直しをされると運賃に響いてくる。というのは、試算の中には三回値上げするということが載っているわけです。そこに響いてくるだろうということを憂えて申し上げるわけなんです。  そういう点、早急にすべてを一貫した長期政策というものを立てていただかなければこれはだめだと思いますし、その政府が打ち出したところの総合政策と国鉄が立てたところの再建計画とにらみ合わしてみて、それを大臣がごらんになってこれはだいじょうぶだとお考えになればこれはわかります。しかし、大臣がさっきからの答弁でおっしゃっていたとおり、私は清水の舞台から飛ぶつもりでうのみにしたとおっしゃっているわけです。だから、あまり基礎的にお考えになっていなかった。そのままうのみにしていらっしゃるということになると思うのです。食い違いが起きたら大問題である。その十カ年計画は、国鉄の将来というものの方向をどう変えていくかという大きな基礎になってくるわけですから、その点に立って、どうなさいますかをもう一度お答え願いたい。
  295. 福田赳夫

    福田国務大臣 運輸大臣は運輸諸手段について総合的にごらんになっておられるわけです。これもそのときどきじゃない、先まで見通して、どうするか、ああするかと日夜心を砕いておる、その運輸大臣が、国鉄はこうするんだ、したいんだ、これに対して財政当局が協力を申し上げる、これは私は当然だろうと思うのです。長期政策、しかもいろいろな道路だ何だというようなものも含めての長期政策、それがあることは好ましいのです。社会経済発展計画というものがあったのですが、これは経済の発展のテンポがあまりに早いためにちょっともう使えない。いまこれから長期計画を練っておりますが、しかし、それはそれとしても、いま国鉄運賃改定というものに迫られておる。これをしないと、これは禍根を大きく残していく、こういうことになる。そういうことから、私は運輸省の計画に賛成をいたした次第でございます。
  296. 沖本泰幸

    沖本委員 大蔵大臣にいま申し上げたことは、決して運輸大臣の御発言を失望して、信用できぬ、こう言うておるわけじゃないのです。それは十分踏まえて申し上げておるつもりでして、これは両大臣にお願いしたいわけですが、早急に横の連絡をとっていただいて、はっきりしたものをつくってください。飛行機とか国鉄とか港とか船とかいうものは運輸大臣のお手元で十分できるわけですけれども、そのほかとのつながりを十分考えた総合計画を立てて、そういう上に立った内容でなければ、これは非常に基礎が弱い、こういうふうに考えるわけでございます。こういう点を特に御要望したい、こういうように考えるわけです。  これで終わります。(拍手)
  297. 田中正巳

  298. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 通行税に関連をいたしまして、その周辺の問題を質問いたしたいと思います。  まず、戦後国鉄の新線建設は、その建設された新線の収支はどういうようになっておるか、お尋ねいたしたい。
  299. 磯崎叡

    磯崎説明員 私からお答え申し上げます。  戦後しばらくの間は、国鉄では新線建設をやらなかったわけでございます。たしか昭和二十六年からだと思いますが、新線建設を始めまして、昭和三十八年、いわゆる鉄道建設公団ができるまでに、累計約七百七十三キロ開業いたしました。年次別の数字は省略いたしますが、その後昭和三十九年三月に鉄道建設公団ができましてからは、昭和三十九年に六千九十八・五キロ、それから昭和四十年に二千十五・八キロ——鉄道建設公団ができましてからは、運輸省のほうからちょっと申し上げます。
  300. 町田直

    ○町田政府委員 三十九年に鉄道建設公団ができましてから開業いたしましたのは、全線開業五千八十九キロメートル、部分開業七千百三十キロメートルでございます。
  301. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 これらの新線が現時点においてどういう収支の状態になっておるか。新幹線とその他を分けて御説明願いたい。
  302. 磯崎叡

    磯崎説明員 全体で総収入が三十八年度までで七十億四千六百万円、その原価が百五十六億九百万円、差し引き八十五億六千三百万円の赤でございます。その後鉄道建設公団から引き継ぎましたものが、ただいま運輸省から申し上げましたが、百九億八千四百万円の収入に対しまして、支出が二百六十七億八千五百万円、差し引き百五十八億百万円の赤でございます。  それから新幹線を申し上げますと、逆に申しますと、本年度の予算といたしまして、予定利益は八百四十六億の黒でございます。これを入れますと、本年度末の予定利益の累計は千六百八十一億でございます。これは三十九年度、四十年度、四十一年度までは若干の赤を出しましたので、それを相殺いたしまして、本年度末で千六百八十一億の黒になる予定でございます。  以上でございます。
  303. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 これらの償却はどうなっていますか。
  304. 磯崎叡

    磯崎説明員 全部入っております。
  305. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 そうしますと、新幹線を除きまして、すでに全部開通並びに一部開通をしておる数線の五年後の状態というのはどういうように想定なさっておりますか。
  306. 磯崎叡

    磯崎説明員 新幹線を除きまして、昭和五十一年度までの一応十一年間でございますが、これは鉄道建設公団の建設計画とマッチいたしておりますので、昭和五十一年度までの年度別の収支の試算を申し上げます。  この線がA、B、C、Dに分かれておりまして、A、B線の合計で収入が二百十九億、原価が六百七十五億、差し引き四百五十六億の赤でございます。その次にC線、これは何と申しますか、A、B線よりもう少し幹線に近い線ですが、それが五十一年度までで千二百七十二億の収入がございまして、これに対する経費が三千二百四十五億でございます。それで差し引きいたしますと千九百七十二億のやはり赤でございます。ABC合計いたしますと二千四百二十九億の赤でございます。そのほかにD線、これはこの付近の武蔵野線とか滋賀県の湖西線とか、国鉄の現在の計画と対応いたしまして、国鉄側としてもぜひつくってほしいという線が四線ほどございます。これはさしあたりはもちろん赤でございます。資本費が非常に大きゅうございますので赤でございますが、一応数字を申し上げますと、これは大体四十六年度ないし四十七年度に開業いたします。したがって、それまで収入がございませんので、四十六年度以降の六カ年間の累計でございますが、千九百十五億の収入でございます。これに対しまして経費は三千六百十八億、差し引き千七百三億でございますが、これは実はこの経費の中に、借料と申しまして建設公団に支払う使用料がございます。これを借金ベースで七年間で計算いたしておりますが、これを償却ベースに引き直していただくようになっております。これはことしの予算からすでに、たとえばこの付近で申しますれば桜木町から先の根岸線とかああいうものでございますが、この計算は、さっき申しました借金の返還ベースで一応計算しておりますが、これを償却ベースにいたしますと、経費が大体千億くらい減ると思います。ちょっと正確じゃございませんが、大体そのくらいだと思います。五十一年度までの六年間でございます。そういたしますと、いまの千七百三億から約千億くらい引いたものが赤でございます。これは私どもといたしましては将来とも骨格をなす重要なる線、こういう意味でございます。  以上でございます。
  307. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 建設後どのくらいでペイするか、私もしろうとですからよくわかりませんけれども、要は昭和二十六年くらいから新線建設がなされて、その新線建設をされた路線と日本経済が向いている顔とが違ったんじゃないか、こういう感じがするわけです。要するに、日本はいままでの各領土を失って小さな島に閉じこもったという中で、資源開発ということに非常な重点を置いた、北海道のごときは、明治初年は非常な開発意欲に燃えたけれども、あるいは朝鮮だ満州だ台湾だといって置き忘れられてきた。戦後になって初めて振り返った。こういうことでかなり資源開発に重点を置いたが、日本経済はそういう方向には行かなかった。要するに、太平洋ベルト地帯に日本経済は集中的に企業が集まった、ここに一つ問題があると思うのです。  ですから、これらの新線がはたして将来とも黒になるかどうか私はわかりませんけれども、できた以上はこれはどうしても維持していかなければならぬと思いますが、そこに私は大きなズレがある、かように考えるわけです。要するに運輸省がやっておる仕事は、一体経済がどう向いておるかということを考慮なくやったんじゃないか。もちろん政治家が関与しておることも事実ですね。しかし、私はそういう感じがしてならない。しかも、その企業は必ずしも政府の意図どおりいかなかったかもしれない。そこに非常に大きな問題点があると思うのです。  そこで、資源開発を求めて敷設された路線がはたしてそういう役目をしておるかどうか。むしろ経済は、資源というのはそれほど必要がない。鉄鋼のごときは、資源がなかったから日本の鉄鋼は伸びたんだ、なまじっか鉄鉱石や原料炭があったらたいへんなことで、内陸に工場ができておったであろう。幸いにして資源がなかったから海岸線につくったから今日のような、ドイツやイギリスよりも有利な地位に立つことができたんだ、現在こういう考え方が持たれておる。何か資源は要らぬもののようにいわれてきている、そういうところにやはり問題がある。これはあとから質問いたしますが、別の面で大きなひずみを起こしておる。国鉄も急遽その方向に変えざるを得ない、大方向転換をせざるを得ない時期に来ておる、ここに将来の投資の問題がある、かように考えるわけです。これはひとつ運輸大臣並びに大蔵大臣から、両面から御答弁を願いたい。
  308. 原田憲

    ○原田国務大臣 戦後の日本経済に国鉄が対応できなかったのじゃないかということでございますが、私はその面があったと思っております。特にこの十年間はその傾向にむしろ拍車をかけてきておる、そういうことであろうと思います。今後新しい計画、再建計画を立てるときに、そのことについての十分の考慮を払って立てるべく、この一年間あらゆる面から検討して、国鉄が今後果たし得るものは何か、こういうことから、たとえば都市間の旅客輸送であるとか、中長距離大量貨物輸送であるとか、あるいは大都市の通勤通学輸送であるとか、これらの面について国鉄国民経済のために果たし得るものがある、こういう点に立っておる、こういうことは間違いなかろう、このように考えております。
  309. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 大蔵大臣どうですか。
  310. 福田赳夫

    福田国務大臣 運輸大臣がそうおっしゃいますから、そういうふうに私も大体考えたいと思います。ただ一つ、これはやはり事を経済的にはかり考えるわけにはいかない、やはり政治的、社会的に考えなければならぬという一面がある、こういうふうに思います。つまり新線建設、これがいろいろ御批判を受けてはおりまするけれども、やはり国鉄に対する辺地の国民の期待、これは非常に大きなものがあるわけなんです。この人たちにもやはり交通の便というものを考えなければならぬ。採算からいうと非常にむずかしい問題があるかもしれませんけれども、そういう考慮も払わなけりゃならぬ面もあるのです。しかし、モータリゼーションといわれるこの時代でありますから、あるいはそのほうが便利だ、こういうような感情にだんだんと変わってくる一面もあると思います。それにはそれなりの対応をしなければならぬと思いますが、経済という角度のほかにそういう一面のあることもつけ加えさせていただきます。
  311. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 私は、いま新線の建設されたものを撤去せよということを言っておるわけじゃないのです。しかし、政治の面もある、こうおっしゃるから私はあえて大蔵大臣に質問いたしたいのですが、いま都市の大需要地を中心に工場が林立して集中しておりますね。あなたのほうでは公共投資が間に合わぬですね。水道にしてもあるいは輸送にしても住宅にしても、さらに公害問題が起こっておる。これらをほとんど国及び市町村が負担をしておるんですね。企業のほうは、石油の製油工場の隣に電力の発電所ができる、その隣に製鉄所ができる、その隣に石油化学ができて自動車工業ができれば、これは全く輸送費要らぬわけでしょう。そしてみな公共投資にその負担をかけておるわけですね。いま日本は世界でもかなり高水準の公共投資をやっておる。しかし、現実にはあまり間に合ってないでしょう。  あなたは大蔵大臣として、一体、国として全体的なコストはどちらが安くなるようですか。工場を建てるときに企業が出すコストと国が負担するコストというものを調べてみて、そしてもうこれ以上伸びたらこれは社会費用のほうが膨大になって、トータルとしては国民経済としてはマイナスだ、こういう面が出るはずですね。ましてや大蔵大臣ですから十分おわかりでしょう。ですから、それについてはどういうようにお考えですか、どういう計算をされておるのですか、その基準は。
  312. 福田赳夫

    福田国務大臣 そういう際に何%何%という基準はなかなかむずかしかろうと思います。しかし大体、これは不経済な公共事業であるか経済的な公共事業であるか、こういうことは、大まかな判定はできるわけでありまするから、あまり不経済的な公共事業を行なう、こういうようなことはいたしません。
  313. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 大まかな計算をして指導しているんですか、現実に大蔵省としては。
  314. 海堀洋平

    海堀政府委員 私の記憶で、間違いがあったら悪いのでございますが、通産省に産業立地に関する法律がございまして、あまり強い規制ではございませんが、そういった立地条件を勘案したある意味の工業立地に関する監督をいたしていると存じます。
  315. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 監督しておったって、企業はコストが安くなるのですからみんな集まりますよ。金が要るのは政府及び地方公共団体が負担しなければならぬでしょう。企業のほうは助かるのですよ、それによって。需要地に集まったからといって税金が高くなるわけじゃなくて、法人税が高くなるわけじゃないでしょう。ですから、そういうことに対する国の政策が何もないのですよ。大蔵大臣、何かばくとしたものがあるようでありますけれども、ひとつお示し願いたい。
  316. 福田赳夫

    福田国務大臣 別にこれという基準は、私は、ないと思います。これだけの民間企業がここに進出する、それでなければこれだけの公共投資はいたしません、こういうような基準はおそらくないんじゃないかと思いますけれども、大体そういう情勢を判断しながら公共投資をやっていく、これは事実そのとおりやっておると思います。それからなお特別の公共事業、たとえばダムをここにつくります、これはどういう経済効果があります、こういう点や何かにつきまして非常な精細な基準を持っておりまして、それに当てはまるという場合においてやる。しかし、総合的な地域開発だというような点になりますると、そこまではいまの能力ではなかなかむずかしいんじゃあるまいか、こういうふうに思います。しかし、あなたのおっしゃるそういう方向を目ざしてやっているということは事実でございます。
  317. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 ぼくには全然、そういうような方向を目ざして、しかも前もって政府が指導しておるということは考えられない。とにかく四日市のような小さいところで、そして風向きを考えて、あれだけ石油の製油工場や発電所ができたらたまらないのはだれでもわかるでしょう。しかし、会社としては、ここに石油会社が来れば、石油化学の工場が来て、隣に合成ゴムの工場が来れば、これは便利のいいことは言うまでもない、パイプでつなげばいいんですから。しかもその傾向は、最近はあらゆるところに顕著ですよ。原子力発電だって、続いて原子力発電をしているんですね。それは地域が反対をするから、免疫になったところにどっと集まるのです、反対が少ないですから。現実に原子力発電だってそういう状態ができておる。それが全然放置されておるでしょう。いま百万キロワットの発電所ができれば、二・五のサルファの重油をたけば、一時間に十トンの亜硫酸ガスが出るのですよ。そうして、ばいじんでありますと、いまは金をかければ集じん装置ができる。ところが亜硫酸ガスは、脱硫装置をやるけれどもなかなか方法がないでしょう。いまミナス原油なんていっているけれども、ミナス原油なんかは、インドネシアの政情がわりに不安定だから投資がほとんどない。百年河清を待つような対策になっておるのですよ、現実は。ですから、そういう大きな観点からの指導が全然ない。そうしてみんなしりぬぐいをしておるでしょう。  あなたは、先日の地方財政白書に対する答弁でいろいろお答えになっておったけれども、率直にいいますと、地方自治体の行政水準は上がってないのですね。ただ大人口移動のしりぬぐいしておるのでしょう。一方においては過疎で学校の校舎が余っておる。一方においては足らないという現象が起こっておる。みんないま行政水準そのものが上がってなくて、大人口移動のしりぬぐいをしておるのですね。ですから、たとえば高炉をつくるにしても、八幡製鉄が一日に百三十六万トンの水を使っておる。これは大阪の三百三十万の飲む飲料水と同じでしょう。ですから国として、企業にまかせるのでなくて、大きな立地的な体系をつくらないと、結局企業ができたあとのしりぬぐいはみな国がしておるのです。ですから、日本の公共投資というものは最高の水準に行っても、いまの状態では追いつかぬだろう、ここに問題があるわけでしょう。自動車だって、いまかげりが将来四十七年ごろにあるという。かげりの最も大きいものは何といっても道路でしょう。ですから、そういう一番大きなかなめの政治がない、政策がない、そうしてあとは行政が企業のしりぬぐいをしておる、こういうところに今日の国鉄問題もあるわけですね。それに対して、ことにさいふを握っておられる、しかも大蔵大臣を再度やられて総裁有力候補だという大臣の抱負をひとつ聞きたい。
  318. 福田赳夫

    福田国務大臣 抱負というほどのことはありませんけれども、あなたがいまおっしゃられるような大きな国土開発の構想ですね、これは国としても持っているわけなんです。社会経済発展計画、こういうものがあった。ところが、この社会経済発展下において実際の経済はどうだったかというと、これは非常な勢いで進んだ。その予定しておった成長率よりもはるかに高い実績になったわけですね。今日になってみると、せっかくの社会経済発展計画でございますけれども、これが実情に全く合わないのです。それくらいのスピードで経済発展があったわけです。いまこれは練り直さなければならぬ。いま長期的な新全国開発計画というものを練っております。そう遠くない時期にこれができ上がると思いますが、あなたのいまおっしゃられるような点が、まさにそういう計画というものが大きくあって、しかもその計画のもとで地域開発を行なう、その経済性を検討する、こういうこと、あるいは瀬戸内海に橋をかける幾つかの計画があります。その経済性なんというものも十分検討しなければならぬという問題もあると思います。あるいはダムをつくる、これなんかも精細な検討をいままでもやっておりますが、なお精細な検討もしなければならぬだろう。いまPPBSという問題も持ち上がっておるわけです。そういう進んだ科学技術を用いた検討というものも行なわれるだろうと思います。とにかく計画性をもって、合理主義というものを中心にして事を進めること、これが近代国家として当然なんだ。ただしかし、そればかりで行きますと、またおしかりを受ける面も出てくるのですが、やはり国民全体の感情——私が社会的、政治的と申し上げたのはそれなんです。そういう問題もまず頭に置かなければならぬことでありましょう、こういうことを申し上げておるわけなんです。  いまとにかく社会資本が非常な立ちおくれである。毎年毎年の所得、これはだんだん、だんだんふえておって、おそらく一九七〇年代といえば、わが国の一年間の一人当たりの国民所得なんというものは、ヨーロッパ水準に優に達する、こういうふうに思いますが、しかし、生活が一体よくなるかといいますと、私はそうヨーロッパの人々のような生活感を味わうことはできないだろうと思う。なぜであるかというと、これはわれわれに蓄積がないのです。われわれの家庭でもそうだ。しかし同時に、われわれの家庭を取り巻く社会ですね、さあ道路であります、あるいは下水道であります、上水道であります、あるいは河川であります、このわれわれを取り巻く生活環境、つまり社会資本といわれますが、われわれの共同の社会を建設するための投資は非常におくれておる。道路についていえば、私は何十年のおくれと思います。それをいま急速に取り戻しをしておる過程で、公共事業費の使い方からいいますると、先進諸国に比べてもたいへん膨大な公共投資をしておる形ですが、それでもなかなか取り戻しができないというような状態が今日の状態ではないかと思います。しかし、相当のスピードでやっていますから、いずれは私は取り返しができると思いますけれども、しかし、なかなかこれは時間がかかりそうな問題であるというふうに考え公共投資をどういうように効率的にやっていくか、合理的にやっていくかという点については、特に留意をしていかなければならぬ問題である。大筋においては全く同意見であることを申し上げます。
  319. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 私は、量の話をしておるわけではないですよ。経済社会発展計画よりも意外に伸びた、問題は伸び方ですよ。伸びたことを私は云々言っておるのじゃない。その伸び方のやり方について問題がある。それは全く無政府的な、政府からいえば無計画的な企業の恣意にまかした開発計画でやっている、こういうところに問題があるのですよ。ですから、量が意外に伸びたというのはそれはけっこうなことですよ。しかしその伸び方が問題だ、こういうように考える。しかも日本は昭和三十年代から伸びてきたのです。  そこで、もう外国はこの苦い経験をすでに味わってきておるのですね。御存じのように、これは地域開発の問題からいえば、もう一九三四年ぐらいからイギリスではいわゆる特定地域開発改良法案を出した。要するに、一地域が単一産業で立っているということは不況を非常にもろにかぶるということで、なるべく多くの産業を入れて、そして多角的な産業地帯にしたいというようなこと。それからもうすでにビバリッジの構想による戦後における工場配置法もできた。それで各国とも、あるいはパリから人口を移動させ工場を移動させる運動が起こり補助金をつけた。イギリスにおいてもそのとおりだ。そういうのを見ておるわけですね。日本経済が発展する途上においては、西欧の諸国がどういう状態にあるかを知っておるのですよ。知っていてこういう野方図なやり方をしたというところに問題があると思うのです。技術だけはどんどん入れたけれども、そういう地域開発とか住民の生活を中心にする開発方式がなされなかったというところに、私は、政府の大きな根本政策が抜けておったと思うのです。そうしていまごろになって過密過疎と騒いで、そうして再開発を叫んでもなかなか現実はむずかしい。なぜその時代にやらなかったのか。そうして国民の生活だけではなく、経済合理性からそろばんをはじいても大体大まかなところはつかめるはずですよ。それをやらなかった。ほんとうの企業だけの合理性にたよったというところにこれは問題があると思うのです。  ですから、いま起こっている交通地獄の問題も、これは私が運輸大臣に言うまでもないですね。輸送力の問題でどのくらい空間をとるかということはもう言うまでもない。そうして大量の通勤機関と運輸機関というものをどんどんネグレクトしたというところに問題がある。それでいまになって大騒ぎをしておるということでしょう。それから企業だってきわめて無責任で、そこに霞が関ビルを建てるのはいいですよ。これは何万人も入るのですね。こういうのがぼっと何の許可なくできたら、一体その輸送はだれが計画してだれがしりぬぐいするのか。一体霞が関ビルができるときに、運輸省はその計画を前もって聞いて、それに合わせておったのかどうか。そういう問題についてはあらかじめ協議があってできたのかどうか。こういう点も私は非常に問題があると思うのです。ですから、まるっきり無関係にあらゆるものができて、そして結局は税金を必要以上に払わなければならぬ、こういうことになる。  そこで、私は続いて聞きますけれども、いまの交通地獄という都市における問題は、一体運輸大臣どういうつもりですか。これだけ一万四千も人が死んで八十一万のけが人が出て、昭和五十年になると、いまの計算でいけば大体一千万人死傷者が出るだろう。今世紀は大体一億みなけが人だということが算術計算で出てくる、こういうのです。ですから、いろいろ規制の問題も早く行なうべきじゃないか。あるいは警視庁はどう言っておるとか、自治省はどう言っておるとか、運輸省はどう言っておるとか、おのおの別々の案で、それも調整がつかないで今日まで来ておる。これだって一体どういう状態ですかね。このことが都市交通なんかみんな影響しているでしょう。要するに、いま東京においてバスが十一キロしか走っていない。これが十二キロ走れば、一キロよけい走ると、十億以上の黒字になるのです。これは国鉄だって同じですよ。ちょっとスピードを増すことができれば、相当の黒字になる。そういうことを一体どういうように考えておるのか、これをひとつ御答弁願いたい。
  320. 原田憲

    ○原田国務大臣 都市交通という問題については、具体的に都市交通の対策本部というものをつくりまして、いまあなたのお話のように、運輸省だけでなしに関係各省相寄ってこれの対策をやっておる、こういうことでございますが、根本はあなたが先ほどおっしゃった、われわれ都市政策という名前で呼んでおりますが、新しい都市づくりというか、これが完成を見なければこれらの問題の根本の解決策はない。これをどうするか、こういうことが問題である、こういう把握のしかたをいたしております。  これらの問題を、私はいま運輸大臣でございますが、運輸大臣としてどうしていったらいいか、こういうことでいま問題になっております都市におけるところの一番大量輸送機関として——都市の最も都市らしきものは、これから情報産業というものの町づくりになるであろうといわれておりますけれども、都市というものが機能を果たす、そしてそこではいわゆる人間らしいビジネスに励み、生活も豊かに送れる、こういうことの中におけるところの交通機関とは何であるか、国鉄はその場合に果たし得るところのものがちゃんとある。こういうことをこれからの計画の中で実現していかなければならぬ。たとえば国鉄を例に引いてやるならば、このように考えておるわけであります。
  321. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 国鉄というお話が出ましたのでちょっと聞いてみたいのですが、あなたのほうは自由主義経済というのに、なぜ鉄道は国有鉄道にするのですか。
  322. 原田憲

    ○原田国務大臣 これはいまは名前は国有鉄道ですけれども、特殊法人でございます。戦前はこれは民間の鉄道を買収してそしていわゆる国営の鉄道にしたわけであります。しかしこれは、そのときにはその当時の国の一つ国策というものがあったわけです。産業の開発もそうであれば、いわゆる軍事的な輸送ということも考えなければならぬ。これらについて国の政策を伸ばしていくために国有鉄道というものが始まった。戦後はこれをいわゆる独立採算——そのときもやはり独立採算制ですが、独立採算制でもって、いわゆる親方日の丸というようなことじゃなしに、能率よく運営をしていくということによって国民に奉仕をする、国民の福祉に貢献する、こういうことでいまの形態というものはできた、このように私は存じておるわけであります。
  323. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 国有鉄道ならば、電電公社や専売ほどはいきませんけれども、ある程度独占性というものは必要じゃないか。もうかるところは全部私鉄にまかしておくのなら、国鉄は採算の悪いところばかりやっておるというなら、ちょっと問題がありますね。そして一方私鉄のほうは、その輸送を利用して土地開発もできるし住宅もできる、あるいはまたデパートも営む。こういうことで、国鉄は最も黒字になる路線を私鉄に譲って、はるかへんぴな地域開発の公共事業をやらしておる。こういう点を、電電公社や何かのように全国的な独占と違って、考慮してやらなければならない。そして公共性を持たすなら公共性を持たすことが必要じゃないか。それにはやはり国からの援助というものが一般会計から要請をされなきやならぬじゃないか、こういうふうに考えるわけですがね。  資本金幾らですか。何度も質問があったと思いますが、一般会計から幾ら金を出しているか。
  324. 町田直

    ○町田政府委員 資本金は八十九億でございます。
  325. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 そこが私はきわめておかしいと思うのです。資産が三兆円あって、借金が二兆円あって、売り上げが一兆円をこしておる企業が、九十億足らずの資本金というのはおかしいでしょう。しかも戦後相当新線の建設をしなければならぬ、こういうやり方はほかのものじゃないんですね。普通の私鉄だって利子の要らない金を資本金で集めるわけです。ですから、私は、今日いろいろいわれておるけれども、もうすでに質問があったと思いますが、外国の事例を見ても問題がある。これは政府側にもある、こういうように考えるのです。運輸大臣、御答弁を願いたい。
  326. 原田憲

    ○原田国務大臣 この資本金が八十九億の問題は、いまの国鉄の再評価資産というような問題とあわせて考えていく必要があろうかと思います。私は、あなたのおっしゃっている先ほどのことに賛成のことが非常に多いものですから、それを言うと過去のことばかり言うことになってしまうのですよ。あのときこうしておいたらという議論になってしまうものですから、私はあなたに賛成ですけれども、そのことは申し上げません。  これからのことが……(多賀谷委員資本金をふやせ」と呼ぶ)そこで資本金をふやせ、なるほど私鉄というものはあなたがおっしゃったとおり、もうかるところをやっておった。このごろはそうではありませんよ。このごろはそうでもありませんが、もうかるところをやっておった。そういうところへ国鉄がもっと力を入れてやっておったらという話が出た。私はそれは賛成だ、とこう言うんです。だから、今日の再建策というものをどうしていくかということについて——最近の過去においては長期計画を立てたときに、千億近い出資金を出せという要求を、運輸省、国鉄は国に出しておる。しかし今度は、国という立場に立つと、現在の財政の中で現なま九百億を国鉄出資をすることができるかどうか、こういうことを国全体の財政の中で考えていくと、結局はそれが不可能になるのです。しかし、事業はやっていかなきゃいかぬ。そこで特別債というような金利の高い金を借りてやってきた。これはあとになって、国鉄収入は伸びない、利子はかさんでくるという財政悪化の一つ問題点をそこでもう現出しておるわけであります。私はそれらのことを勘案して、今度は出資金を出すと同じ、あるいはより以上の効果を与えるための方策はないか。国家財政の中で五百億の最後に残った金を公共投資で、実際問題としては取り合いをしておる。これはあなた方から見たらそれに対する意見はありましょうけれども、それが現実の姿である。その中で国鉄へ何百億出資しろ、四百八億たな上げの現なまを出せ、こう言ってみてもこれはなかなか大蔵当局を説得することはできない。それじゃ何かいい方法はないかというようなことから、今度のいわゆる三位一体の形の再建策を出してきたということを御理解を賜わりたいのであります。
  327. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 いま日本経済で一番重要なものは物価でしょう、大蔵大臣。ほかのことはわりあいにあなたはうまくいっていると思うのです。しかし、物価がうまくいかないということをあなたもしょっちゅうおっしゃる。物価ですよ。  ですから、昨年の三月、物価安定推進会議公共料金に対する提言というのを行なっておる。それには、「公益事業の投資資金を調達する手段として料金引き上げが必要だと主張する向きもあるが、本来、料金の決定は損益勘定にもとづく原価主義により算定されるべきで、設備投資はできるだけ料金引き上げ以外の資金調達、たとえば受益者負担金」——これは開発利益のことですね。「のほか長期低利借り入れ、出資などによるべきである。」こういうこともいっておる。昨年の十二月には、菅野企画庁長官もそういう意味のことを、要するに償却前は何も赤字じゃないんじゃないかということをおっしゃっている。ですから、私はいま日本経済で一番重大なものは何かという視点で考えれば、これは軽々に許すことのできない料金値上げだと思う。普通の状態のときに国鉄料金だけが上がるという場合には、あるいは採算上やむを得ないということがあるかもしれないけれども、いまとにかく物価というものをわれわれは一番注意をして考えなければならぬときに、なぜお上げになるかというのが問題だと思うのです。  そこで、これは私鉄経営者のほうから「エコノミスト」に広告として出ておるのですが、国鉄の料金が上がったらわれわれ私鉄も上げてくれというので、一覧表が出ておる。私はこの真偽のほどはよくわからないのですが……。  それで、運輸省に聞きますが、品川から久里浜、京浜急行なうば三千五十円である。これは一五%上がったときの一カ月の定期だと思います。国鉄ならば六千四百三十円である。二・一倍になりますよ。あるいは上野から成田まで、京成電鉄であれば二千四百円、国鉄であれば六千七百三十円で二・八倍でありますよ、こういう記事が広告の形で出ておりました。この計算をすればこのとおりですか。
  328. 町田直

    ○町田政府委員 いま先生がおあげになりましたのは、資料がございませんですが、どちらでございましたか。品川……
  329. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 品川−久里浜です。ずっと読めば時間がかかりますからね。
  330. 町田直

    ○町田政府委員 ちょっと同じところが資料としてございませんが、似たようなところを申し上げますと、京成の京成千葉−市川真間間二五・三キロ、これが定期運賃で千六百八十円、国鉄の市川−千葉間二三・八キロ、二千八百八十円というようなことで、二倍にはなっていないと思います。一・七倍くらいだと思います。
  331. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 要するに大臣、一・八倍くらいから二倍以上、そうすると旅客はどちらへ行くんですかね。あなたのほうは高くしてもだいじょうぶ、国鉄収入は上がると見ている。お客は向こうに行きっこない、こう見ているのかどうか。
  332. 町田直

    ○町田政府委員 はたして行くか行かないかということも問題なんですけれども、実は現在でもいまの例で申し上げますと、京成の場合は千六百八十円が国鉄の場合二千七百円でございますか、それが今度二千八百八十円になる、こういうことでございます。現在でも差があるわけでございます。これはなぜなのかと申しますと、昨年四月一日に定期運賃の改定をいたしました。そこでそういう差が出ておる、こういうことでございます。確かに移動はないとはいえないと思います。しかし、一体どの程度移動があるかという問題は、これは非常にむずかしい問題でございます。実績を見ないとはっきりわからない。それから全体で申しまして、国鉄全体の線の中で、こういう全く私鉄と並行しているような線というのがどの程度あるかというのは、これまた一つの問題でございます。同じような区間を走っておりましても、それが非常に駅が離れておったり何かするというようなことで、移動があるとかないとかいう問題はまた変わってくるんじゃないかというような感じでございます。非常に事務的な話でございますけれども、移動があるかないかという話だけはそういうことでございます。
  333. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 だんだんおそくなりますから集約して質問しますが、これは半分以下であるけれども、非常に残念ながら住宅のある地域が思うように私鉄に乗るわけにいかないとか、もうどうにも私鉄のほうも混んでおるから国鉄へ行こうとか、結局動かないとすればこういうことだろうと思いますのです。これは一般市民に何か非常に強制的に二倍高いものに無理に乗せておるという感じですね。だから、運輸白書にもありますように、片道一時間往復二時間で、そうして混雑をするなには八百二十カロリーだということをいっておりましたが、それは労働者が八時間働くよりも多いカロリーです。通勤の二時間のほうが多いのです。労働者が普通に働くのは八時間でエネルギーの消費が七百四十カロリーですね。通勤で往復二時間でありますと八百二十カロリーです。こういうことを無理にさしておるのですね。そうして料金は二倍以上高い。こういうことが許されるかどうか、非常に問題だと思うのです。そこで、次にあなたのほうの償却は一体定率でやっているのですか、定額でやっているのですか、政府が法人税率で示す標準でやっているのですか、一体どういう方法でやっているのですか。
  334. 磯崎叡

    磯崎説明員 定率法と定額法と併用いたしまして、車両、船舶、機械、自動車、これは定率でございます。あとの設備、たとえばトンネル、橋梁等は全部定額でございます。それから耐用年数は法人税の耐用年数と同じでございます。
  335. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 これは御存じのように、最近になりましても二度耐用年数が短縮されておるのですね。この耐用年数の短縮というのがまた経理に非常に影響がある。しかし、国鉄の場合は幸いにして普通の耐用年数よりも実際は多く使っておるんじゃないか。たとえば東海道線から今度は中央線にその貨車を回す。中央線からいなかのほうに回す。ですから、私鉄の場合と国鉄の場合は率直にいいますと、地方には非常に失礼だけれども、順番にだんだん悪い貨車、列車を地方に回す、こういうことで標準耐用年数よりも実際はかなり長いのじゃないですか。
  336. 磯崎叡

    磯崎説明員 車輛につきましては耐用年数が走行キロにあらわれてくるわけでございます。したがいまして、実際、たとえば二十年の車輛ですとおおむね何万キロ走るということでございますので、いい線路におきましても悪い線路におきましても、走行キロから申しますと大差ない。それからもう一点は、非常にこういう財産が大きいものでございますから、グループ償却になるわけでございます。したがいまして、個々資産をとりますと、これが五十年たっておるものもございますけれども、全体の橋梁なら橋梁というグループから申しますと、耐用年数で償却と申しますか、取りかえをやっている、こういうことになるわけでございます。
  337. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 いまの耐用年数の問題でありますが、やはり私鉄の場合よりも国鉄の場合は、いなかへ行くと、こんなものをまだ使っているのかということで、実際はむだなくそれこそよく使われておる。ですから、この耐用年数を短縮するかどうかということで、経理はだいぶ違いますね。きょうは時間がありませんから詳細に申すことはできないので非常に残念ですけれども、一回あなたのほうの時間さえあれば、償却を現実にどうやっているのかというのを調べてみたいと思いますが、残念ながら時間がありませんから別の機会に、これは法律云々よりも別の機会に譲りたいと思います。  そこで、貨物収入というものを将来どう考えておるか。先ほどから交通全体の政策の話がありましたが、一体日本の交通の中における国鉄、ことに貨物輸送については御存じのようにずっと赤字ですね。最近黒字になったことはない。旅客はほとんど黒字でしょう。あなたのほうで最近は旅客と貨物の収入運賃別に発表されないわけですから非常に困るのですが、過去一九五七年から六四年を見ても、貨物運賃は七千百七十六億の赤字、旅客運賃が一兆二千四百九十六億の黒字、こういうことになっている。その後は問題になりましたからずっと発表されなくなった。こういうこともずるいわけですけれども、一体将来の貨物に対する収入をどう考えておるか、これをお聞かせ願いたい。
  338. 磯崎叡

    磯崎説明員 貨物につきましては、先生もよく御存じのように、石炭の問題が国鉄にとって一番大きな問題でございます。私どもの貨物輸送が落ちてきました一番大きな原因は実は石炭でございます。石炭が四千七百万トンくらいあったのが、現在は三千万トンでございます。それが大体年間二百万トンずつくらい、ごそっごそっと減ってまいりますので、それが一番大きな問題でございますが、これを含めまして、国鉄だけに送らせるということでなしに、経済企画庁が道路、船舶等をいろいろ検討いたしまして、日本の全体の生産性その他から見た上で鉄道のシェアをきめたわけでございます。その鉄道のシェアによりまして、それにさらに、実は先ほどお話のございましたこれからの貨物サービスと申しますか、いわゆるコンテナ輸送、一級コンテナのフレートライナーと申しますか、これによって流通コストも下がるというふうな関係から申しまして、フレートライナーによる輸送収入というものを考えております。全体としての伸び率はあまり高く見ておりません。そういうことでございます。
  339. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 石炭の話が出ましたけれども、ぼくはああいうこそく的なことではだめだと思う。取るところは取るほうがいい。ドイツも石炭の輸送賃を上げるときに、関税から値上げ分の約八割は一般会計から国鉄に渡した。ぼくはそういうようにしたほうがはっきりすると思うのです。ですから、それは石炭のほうも困る、国鉄も困るのですけれども、役所だがらいいだろうというようなことはやめて、やはり石炭にはそういう補助制度があるわけです。その補助制度を一応石炭に与えてやるか、あるいは国鉄がその石炭特別会計からもらうか、そういうことを私ははっきりさせたほうがいいと思うのです。そうしなければあちらにも迷惑をかけこちらにも迷惑かける、そういうことではいけないので、それははっきりしたほうがいい。もうすでにドイツのほうでは、現実に値上げ分の八割はこの関税の中から当然運賃値上げ分として国鉄にやっておるわけです。私は区切りをはっきりすべきである。こういうように考えるわけです。しかし全体で見ますと、あなた方の貨物の収支というのははっきりしないでしょう。貨物というのは伸びもそうありません。いまはちょっと赤字です。将来どうですかというと、黒字になるという話でもない。石炭でお茶を濁されたけれども、一体黒字になるかどうか、いつごろになったら黒字に転換するのか。こういうように道路網がだんだん高速道路化していく中で、低速で走る貨物がはたして伸びていくのかどうかですね。ですから旅客は別にしても、相当抜本的なものが貨物については要るのじゃないか、こういうように考えるわけです。御答弁いただきたい。
  340. 磯崎叡

    磯崎説明員 確かに貨物輸送につきましては、国鉄は全般的におくれをとっていることは事実でございます。今後の貨物輸送につきましては、先ほど申しましたとおりにいろいろ試算いたしましたところ、昭和五十三年度における全体のシェアは大体二〇ないし二四%、昭和四十年度に対して十年間で五割しかふえない。この程度の見方しかいたしておりません。したがいまして、いまの貨物が旅客とどちらがもうかるとかもうからぬとかいう議論になりますけれども、その客貨別の問題と、もう一つは旅客輸送定期定期外の度数、あるいは同じ貨物がもうからぬと申しましても、東海道線の貨物はもうかっているけれども裏縦貫はもうからぬ、こういう線別の計算も当然しなければいかぬわけであります。したがいまして、今後は私どもは、単に旅客、貨物とかいう総体的な計算でなしに、どの線の旅客輸送はもうかっている、どの線の貨物輸送は損しているという詳細な計算でなければ、いまの先生のお話のような将来大きなきちっとしたデータにならないというふうに思いまして、いまそういうふうな計算のしかたに変えているところでございます。  そういたしますと、結局主要幹線につきましては貨物は黒でございます。これはなぜかと申しますと、輸送単位が大きいということ、大体現在千トンないし千五百トンを輸送いたしておりますが、いずれ東海道は二千トン輸送ができるようになる。こういたしますと、アメリカの鉄道輸送のように一万トン輸送はできませんけれども、たとえば北海道の石炭輸送のように現に二千トン輸送をやっておりますが、こういう輸送は貨物としてはやはり黒でございます。したがって、単に全国的に見て貨物が赤だ、旅客が黒だということではなしに、線区別に見まして客貨ごとに考えなければいけないというふうに思っておる次第であります。
  341. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 大臣幾ら国鉄は旅客は平均をとっていかなければならぬといっても、一方において旅客は二倍以上の値上げをしておる。一方貨物の場合においてはむしろ原価よりも割って低い料金にしておる。これはやはりかなり矛盾があると思う。しかし国鉄ですから、そこに国鉄のよさがある、またその使命があると私は思うのです。ですから、いま路線別におっしゃるけれども、これは地域開発があるし、そこに人間は住んでおるし、その貨物を中央まで持っていかなければならぬ。ですから、やはり大蔵省が金を出すということですよ。  そこで、私は孫利子なんというのはあまり賛成しない。けれども、あなたのほうは四百八億の利子に対して十三億でごまかしたですね。これと同じようなことをすれば九百十億の運賃値上げが五十九億で済むんですな。六・五%でいけばね。どうですか大蔵大臣、案外簡単ですよ。あなたのほうは四百八億を十三億ということでやったでしょう。その計算と同じようなことを九百十億に適用してごらんなさい。わずかでいいですね。ですから、いま物価が一番重大な政策のポイントであるというなら、そのくらいわけないでしょう。あなたのほうで五、六十億の利子を見れば、要するに九百十億を財投に返して、財投の利子分だけを見るということなら簡単なんですよ、同じ方式でやれば。それをすれば、少なくとも政府の姿勢としては物価安定の方向に行っている、こういうことが言えるわけですけれどもね。わずか五、六十億を節約したためにたいへんな非難を受け、また、実際物価問題の取り組みに対する国民の不信感を抱かせる。とにかく昭和三十六年から年平均五・七%というんですからね。そういう政策は私はないと思うです。大蔵大臣の決意をお聞きいたしたい。
  342. 福田赳夫

    福田国務大臣 物価対策は、これは最大の重大問題と考えておるのです。しかし、物価もだんだんと改善をされてきておる。多賀谷さんも御承知のとおり、三十六年、三十七年、三十八年、どうでしたか。これは六%台だった。公共料金の全部ストップを三十九年にやって、この年は四%台で済んだ。ところが、そんなことは長続きさせるわけにいかぬ。四十年には公共料金も引き上げなければならぬ。そうするとまたこれが七%近くまではね上がる。それが最近は、昭和四十一年度はどうですか。四%台です。四十二年度も四%台です。四十三年度も、これは五%に接近しますけれども、四%台、たいへんぐあいはよくなってきているんです。しかし、なおこれをよくしなければならぬ、こういうので努力しているんです。まあ米麦の問題、あるいは塩の問題あるいは電信電話の問題これはみんな押えるという政策をとりましたけれども、みんな一挙に押えてしまうとどうしてもそのあとにひずみが残る。これはことしだけの物価じゃありません。これは来年もあり再来年もあるんですから、そういう長い目で考えるときに、やはり差し迫った国鉄財政だけはこの際再建をしておかなければならぬ。こういうふうに考えて、国鉄もよくなれ、物価も安定せい、これがわれわれの考えであります。
  343. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 とにかく物価上昇の政府の見込みはほとんど合わないですけれども、合わないにしても、戦後、戦後というよりもインフレ時代は別にして、少なくとも昭和三十五年ぐらいからの政府の明年度の物価上昇の見込みというのでお立てになった計画というものでは二番目ですよ。そうでしょう。四十一年度の五・五%に次いで五・〇%ですからね。政府みずからそれだけ物価が上がるということを言っておるのに、なぜ国鉄料金ぐらい安定できないのですか。据え置きできないのです。私は六十億だとこう言っておるでしょう。あなた方知恵者がいたのですからね。孫利子をすればあと六十億で済むじゃないですか。九百十億を財投から出して、それに六分五厘をかけてごらんなさい。なぜそれができないか。
  344. 福田赳夫

    福田国務大臣 孫利子方式でやって、その上さらに運賃値上げをやらないと十カ年の展望というものはできないのです。もしかりにこの九百十億円の値上げをやめて、これも孫利子だということになれば、これは十年先に非常に大きな負担を残すわけなんです。そういうことを考えるとどうしてもこの際この問題は決着をつけておかなければならぬ。
  345. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 終わります。(拍手)
  346. 田中正巳

    田中委員長 次回は、来たる二十二日火曜日、午前十時理事会、十時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。    午後七時五十九分散会