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1969-04-16 第61回国会 衆議院 大蔵委員会 第21号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十四年四月十六日(水曜日)     午前十時四十一分開議  出席委員    委員長 田中 正巳君    理事 金子 一平君 理事 倉成  正君    理事 毛利 松平君 理事 山下 元利君    理事 渡辺美智雄君 理事 只松 祐治君    理事 村山 喜一君       伊藤宗一郎君    大村 襄治君       奧野 誠亮君    木野 晴夫君       河野 洋平君    正示啓次郎君       田村  元君    地崎宇三郎君       中村 寅太君    西岡 武夫君       坊  秀男君    本名  武君       村上信二郎君    山中 貞則君       阿部 助哉君    井手 以誠君       北山 愛郎君    久保田鶴松君       中嶋 英夫君    平林  剛君       広沢 賢一君    河村  勝君       田中 昭二君    広沢 直樹君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 福田 赳夫君         運 輸 大 臣 原田  憲君  出席政府委員         大蔵政務次官  上村千一郎君         大蔵省主計局次         長       相沢 英之君         大蔵省主計局次         長       海堀 洋平君         大蔵省主税局長 吉國 二郎君         大蔵省理財局長 青山  俊君         大蔵省証券局長 広瀬 駿二君         大蔵省国際金融         局長      村井 七郎君         国税庁長官   亀徳 正之君         運輸省鉄道監督         局長      町田  直君  委員外出席者         大蔵大臣官房審         議官      林  大造君         大蔵省国際金融         局次長     奥村 輝之君         日本国有鉄道総         裁       石田 禮助君         日本国有鉄道副         総裁      磯崎  叡君         日本国有鉄道常         務理事     小林 正知君         専  門  員 抜井 光三君     ————————————— 四月十五日  支那事変賜金国債償還に関する請願三池信君  紹介)(第四一二五号)  租税特別措置法の一部改正に関する請願山下  元利紹介)(第四一二六号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  通行税法の一部を改正する法律案内閣提出第  二九号)  国の会計に関する件  税制に関する件  金融に関する件  証券取引に関する件      ————◇—————
  2. 田中正巳

    田中委員長 これより会議を開きます。  国の会計税制金融及び証券取引に関する件について調査を進めます。  質疑の通告がありますので、順次これを許します。平林剛君。
  3. 平林剛

    平林委員 きょうはお許しを得まして、一般質問を展開したいと思っております。特にきょう私が取り上げたい問題は、最近の経済情勢にからみまして、いろいろな角度から大臣のお考えをお尋ねしてまいりたいと考えております。  特に最近の経済の動向には激しいものがあることは、御承知のとおりでありますが、アメリカ公定歩合預金準備率の引き上げ、あるいはこれによって日米公定歩合水準が四十年ぶりに逆転をいたしまして、日本金利は高い高いと言われておったのに、このごろではアメリカがむしろ六%と、わが国金利水準を上回るというような状態も出てまいりました。こうして世界高金利時代——イギリスにいたしましても、あるいはその他の諸国にいたしましても、高金利時代に入ったわけでありまして、こういう情勢を踏まえて、これからの経済はどうあるべきかということに私ども深い関心を寄せておるところでございます。  そこで、こうした情勢の中でもう一つ特徴的なことは、わが国外貨準備予想外といっていいくらいに天井が高くなってまいりました。昭和四十四年の二月の末に三十億八千六百万ドル、三月末には三十二億一千万ドル、年内には四十億ドルになるのではないかという見通しさえあると伝えられておるわけでございますけれども、大蔵大臣は、この外貨準備の今後の趨勢につきまして、どんなようなお考えを持っておられるのですか。まず、そのところからお尋ねしてまいりたいと思います。
  4. 福田赳夫

    福田国務大臣 ことしの国際収支につきましては、経済見通しにおきまして、一億ドルの黒字という見通しをいたしておるわけであります。もとよりこれは見込みでありまして、どういう実際上の変化を示すか、これは予断を許しませんが、この見通しに対して大きな影響を与える要因というものは何であるかというと、これはヨーロッパの通貨問題がどういうふうな解決をたどるか、もしこの通貨問題の解決にやりそこないがあるというようなことになると、通商不安につながって、わが国輸出に影響するところがあるのじゃあるまいか、それが第一点です。  それから第二点は、何と申しましても、わが国輸出の大宗といいますか、それを占めるものはアメリカ経済であります。アメリカ経済推移が一体どういうふうに相なってまいるか、この二点になるわけであります。  私は、この二つの問題の推移がどういうふうになるか、これを非常に注意深く見守っていきたい、それに対して適宜、適応、適切、弾力的な対策をとりながら、国内経済の維持に当たってまいりたい、これが私の経済に臨む基本的な姿勢なんであります。  お尋ねの外貨準備というものは、わが国をめぐるところの国際環境によって大きく支配されるであろう、こういうふうに見ておりまして、現在お話しのように、三十二億ドルをこえる外貨保有するまでに至っておりますが、特別の異変がなければ、この外貨保有はなお若干ふえるのではあるまいかと思うのであります。ただ、世界高金利という状態は当分の間定着体制である、そういうことを考えまするときに、円シフトの問題というのが起こる、これはなかなか避け得ざるところではあるまいかと思うのであります。それらを含めまして、若干の増加はあるが、四十億ドルというようなことは、私どもとしては考え得られないのではあるまいか、さように考えておるのであります。外貨準備は、その量の多きをもってたっとしとせず、その中身が大事であるという感覚をもちまして、外貨取り入れにいたしましても、長期の、また中期の健全な外貨、これにつきましては、従前どおりこれが取り入れ努力をいたしますけれども、短期移動性の激しい資金につきましては、これはむしろ消極的な態度をもって立ち向かってまいりたい、かように考えております。
  5. 平林剛

    平林委員 外貨についての今後の見通しの大まかなお話を承ったわけでありますけれども、いま量の多きをもってたっとしとせず、問題は中身であるというお話がございました。  そこで、これは大臣でなくてもけっこうでございますが、三十二億ドルをこしました外貨準備の現状において、その内容はどういうぐあいになっておりますか、ちょっと明らかにしてほしいと思います。
  6. 村井七郎

    村井政府委員 三十二億ドルの三月末の中身でございますが、金は三億五千七百万ドル、それからゴールドトランシュという御承知IMFに対する債券、外貨とほとんど同様のものでございますが、それが二億八千百万ドル、それからその他が外貨及び証券というふうに相なっております。私たち米国財務省証券等と言っておりますが、いわゆるTBでございますが、TB及び預金ということで、これが二十五億七千五百万ドル、以上でございます。
  7. 平林剛

    平林委員 いわゆるユーロダラー、これはどのくらいですか。
  8. 村井七郎

    村井政府委員 ユーロダラーと申しますのは、これは民間の銀行外国銀行から受けている預金でございますので、外貨準備としてはそれを構成しておりません。
  9. 平林剛

    平林委員 そこで、大蔵大臣に伺いますけれども、外貨準備を、あまり多くならぬほうがよろしいという議論もございますし、また、いまお話しのように、多きをもってたっとしてしないという御意見もございますけれども、わが国外貨準備、現在の三十二億一千万ドル、まあ年内に四十億ドルはなかなか困難だろうというお考えのようでございますけれども、このわが国準備高というものは、大臣としては、わが国経済の今後から見て、これは十分であると考えておるか、あるいはもっとこの際ふえるものならふやしたほうがよいと考えておりますか、その辺のお考えはいかがですか。
  10. 福田赳夫

    福田国務大臣 まあ良質外貨というものであるかどうかが問題なんでありますが、健全、良質外貨はもう少し多いほうがむしろいいのではないか。と申しますのは、これはお恥ずかしい話でございますが、昨年の外貨事情国際収支の状況を振り返ってみるといたしますと、昨年は三億五千万ドルの赤字を実は予想した、御承知のとおりです。ところが、逆に十六億ドルの黒字になった。二十億ドルの見通し違いというものが出てきておるわけです。非常に、何というか、国際経済関係のゆれの幅の大きいことに実は驚いておるというような状態であります。これが、国際収支が幸いにして黒字のほうに動いたからまあ問題はないのでありますが、かりにこの二十億ドルの見通し赤字への狂いであったということになったら、これはたいへんなことになったわけです。しかも、昨年のいまごろは二十億ドル足らずの外貨保有である。そこへもっていって、二十億ドルのマイナスのフレが出てきた、こういうことになったら、一体日本経済はどうなるか。これはたいへん極端な引き締め政策取り入れを余儀なくしたであろう、こういうふうに思うわけであります。今後、国際経済情勢がどういうふうに変わっていくか。それに伴ってわが国経済、また国際収支も変わってくるでありましょうが、そういう大きなゆれのあることも考えておかなければならぬ。これから日本経済をゆるぎなく前進をさせていくということを考えますときに、どうしても国際収支天井を高くしておかなければならぬと思うのです。  戦後経済を回顧してみますと、一、二年の不況、二、三年の好況、一、二年の不況、二、三年の好況、これの反復だったわけですが、その反復は、好況時に国内消費が伸びる。産業消費個人消費が伸びる、それに従って国際収支が悪化する。そこで引き締めなければならぬというので、不況状態を出現させる。こういうようなことから景気の循環というものが繰り返して行なわれたわけでございますが、そういうことはなるべく避けたいのです。避けるためには何をしなければならぬかというと、国際収支が多少の変動がありましても、びくともしないという状態に置きたい、こういうふうに考えますので、短期の非常に浮動性の高い資金というようなものが国内に累積されることは、これはむしろ危険な要素とも考えられまするが、しかし、良質外貨でありますれば、もう少しこれはふえたほうがむしろ日本経済の安定のためにはいい、こういうふうに考えておるのであります。
  11. 平林剛

    平林委員 そこで、外貨準備内容改善しようとする大臣のお考えは、良質外貨は多いほうがよろしい、これは多くしたい、外貨準備もできるだけ天井高くすることが望ましいというお話がございましたが、こういう機会に、たとえば金準備など、先ほどお話でありますと三億五千七百万ドル、この金準備は、外貨準備に占める割合から見ますと一〇%程度でございますね。EEC諸国水準比較をいたしますと非常に低い。EEC諸国が大体五〇%から七〇%程度あるというお話を私は聞いておるのでありますが、それに比較をいたしますと、たいへんに低い。こういうことを考えますと、外貨準備内容を安定させる。特に国際的な通貨については、いろいろな問題があるときであるだけに、こんなときにひとつ内容を安定させていく。もちろん金は利息を生むものではありませんけれども、しかし、もう少しあったほうがよいというような考えもあるわけでございますから、こういう機会に金を少しふやしていくというようなお考えはありませんか。
  12. 福田赳夫

    福田国務大臣 まあ長い間、日本外貨事情は、外貨準備二十億ドル、それに対して約三億ドルの金、こういう状態が続いたわけです。それにしても、金保有割合は非常に少ない。EEC諸国に比べましても比較にならぬくらいな状態です。この状態がよかったか悪かったかということになりますと、いまお話しのように、日本発展途上の国であり、外国から大いに輸入をしなければならぬ。それを元手にして輸出をしなければならぬ。そういうようなことから、とにかく外貨を少しでも必要とする時代であったわけです。伸びる若い日本経済であったわけです。そういうような状態下において、やはり金利を生む外貨形態、これのほうが得策であった。私はそう思い、金保有が少なかったことについては、私はむしろ、それが当然であったというふうに考えるわけであります。  ところが、昨年以来ずっと外貨保有高がふえてまいりまして、いまや三十二億ドルをこえ、まだ多少はふえそうだ、こういう状態になってきますると、多少その考え方を変えていく必要があるのじゃあるまいか。すなわち、その金の保有というものをもう少しふやす努力をすべきではあるまいか、そういうふうに考えます。  ただ、そうは考えるものの、さて、金をどういうふうにして入手するかということ、これは、いま国際的な申し合わせによりましていろいろ制約がある。各国、特にアメリカ中央銀行からの買い入れあるいはIMF買い入れ以外には道はないのであります。そういう客観的な可能かどうかという問題もあります。同時に、わが日本が金の買い出しに向かったというようなことに相なりますと、これは国際経済協調体制に大きな悪影響を及ぼすわけであります。世界経済に一半の責任を持つというわが国体制とすると、それはいま国際道義としてとり得ない、こういう問題もあるわけであります。  そういう問題をあわせ考えますと、まあ金保有というものはふやしたい。ふやしたいが、現在はその時期ではない。国際情勢推移を待って、将来の問題としてこの問題を考えていく、こういう段階かと思うのであります。
  13. 平林剛

    平林委員 いままでは、わが国経済から見て、輸入意欲というものに備えるということから金準備を、金をふやしていくという考えはなかったけれども、その考えは改めたい。しかし、いまお話しになったようないろいろな制約、これも考慮しなければならないということはございました。またやはり、国際道義ももちろん必要なこともございましょう。しかし、わが国経済長期にわたって安定をしていく、そして外貨準備についても、この際非常に心細かった金の準備をふやしていくという考え方は必要だということをお認めになった。その考えは適当な時期に実行に移すという御意思はあるわけですね。
  14. 福田赳夫

    福田国務大臣 将来の問題としてはぜひ考えて、また、考えるばかりではなくてこれを実行していきたい、こういうふうに考えますが、しかし、ただいまはその時期ではないのだ、こういうふうに御理解願いたいと思います。
  15. 平林剛

    平林委員 金のほかにたとえばマルクとかスイスフランだのドル以外の通貨保有をふやす、つまり準備高内容多様化することによってわが国外貨準備を安定させていくという考えはありませんか。
  16. 福田赳夫

    福田国務大臣 多様化もこれも当然考えていくべき問題だ、かように考えるのであります。しかし、これとても、さあ日本マルクの買いに方針を打ち出したというようなことになると、これはマルク事情に大きな変化がある。ですから、そういう大きな方向転換というものも、これもなかなかむずかしいのです。しかし、これも日本外貨保有内容を安定させるという角度からいうと、長い目の問題としては多様化ということを考えていく、また考えております。
  17. 平林剛

    平林委員 さて、そこでこうした外貨準備がある程度ふくらんでいく、つまり天井が高くなっていくような時期に、政府としては外貨対策というものを総合的に検討して、余裕のある外貨準備のときになすべき仕事というものがいろいろあるんじゃないか。たとえば、先ほどお話がありましたように、中身をよくするというやり方、これは大臣からも、長期の健全なものは大いに取り入れるし、短期のものについては消極的だというのも一つ考え方でございましょう。同時に、金の購入あるいは外貨準備多様化ということで安全性をふやすということも一つ考え方でしょう。そのほかにある程度余裕のある時期にこそ外貨全般について今後の経済を展望しながら取り入れるべき政府の基本的な考え方というものは当然立てられねばならぬ、そういうようなことでございまして、総合的にどんなお考えを持っておりますか。重なるところもあると思いますが、お考えを聞かせてもらいたいと思います。
  18. 福田赳夫

    福田国務大臣 まあ基本的には、何といたしましても安定外貨をそう無理をしないでふやし得るものならばふやしたい。これがわが国経済国際経済社会変動に対する抵抗力になるのです。景気が山と谷の連続である、こういうことを回避する最大のきめ手になる、こういうふうに考えておるわけです。  それから、これも重複いたしますけれども、第二はこういう際にこそ外貨内容というものを改善をいたしてまいるということであります。それから、外貨事情がいい、それに安心をしてはならぬ。安心をしてはなりませんけれども、国内経済体制全体を均斉のとれた形に直すというためにこの外貨を活用していくということ、そういうことじゃあるまいかと考えます。
  19. 平林剛

    平林委員 私からやや具体的にお尋ねしますけれども、余裕のある外貨——余裕があるかどうか、これは議論が別でありますけれども、従来から比べると比較余裕のある外貨保有しておる時期に、たとえば適時輸入を増加させて物資の需給緩和をはかっていく。輸入といっても、私の申し上げておるのは、特に国内物価を鎮静させるためには、これをかなり有効に活用するという方法もあると思うのです。私はこういう意味では、従来から政府には物価対策というものが乏しいということを指摘はしてまいりましたけれども、こんなときに総合的に物価対策物価抑止という面でこの外貨を有効に活用していくというようなことは検討してしかるべき課題ではないだろうかと思うのであります。こういう問題について、大蔵大臣直接の所管ではないでしょうけれども、物価の安定は政府の基本的な課題にもなっておるわけでありますから、総合的にまた計画的にこういうようなことを検討する用意がございますか。
  20. 福田赳夫

    福田国務大臣 これは総合的に検討されておる問題なんです。物価安定推進会議あたりでも輸入政策を活用すべし、こういうようなこともずいぶん言われておるわけなんです。ただ、現実の問題とすると、物価対策に貢献し得る輸入にどういうものがあるかというと、これは大体において農産物になってしまう。国内農産物の保護という問題とまっ正面からかち合う問題でありまして、そう簡単な問題じゃ実はないのです。ですから、理論としては輸入政策物価政策上非常に大きく役立ちそうでございますが、実際の問題とすると、なかなかこれが実現がむずかしい、こういう性格のものである。しかし、産業機械近代化合理化、こういう際にあって、そうして将来の輸出力に備えるとか、いろいろ国内経済全体の均斉をはかるという上に配意をする心がまえは持つべきである、かように考えておるわけです。
  21. 平林剛

    平林委員 これは、私どももう少し検討して具体的な案を考えるべきだと思いますし、政府自体も単に農産物だけだ、非常にむずかしいということでほうるのじゃなくて、ぜひじみち考え方、計画を事務当局に検討させていただきたい。そういうことを要望いたしておきたいと思うのであります。  それから、これは私の早耳かもしれませんけれども、こうした際にアメリカ中期債購入するというようなことをせよという考え方が一部にあると私は聞いておるわけであります。これは現在の国際通貨体制に協力するという意味日米経済協力改善につとめるという意味、それから世界的高金利アメリカ景気抑制に入ったという時期から考えますと、将来の輸出を確保するという意味などあって、それと引きかえにアメリカ中期債購入をどうだというような議論がある。私の何とかの早耳かもしれませんけれども、一部に伝えられておるわけです。そんなお考えはあるのですか、ないのですか。
  22. 福田赳夫

    福田国務大臣 まだこの外貨保有中身をどういうふうに変えていこうか。たとえば、いま国際金融局長から外貨証券合わせて二十五億ドルあるということを申し上げたのですが、その中身をどういうふうに差しかえるかということについては、まだ検討はいたしておりません。  それから、アメリカからいま輸銀債というお話があるかのごときお話ですが、こういう話にもまだ接しておりません。実はこの間シドニーに参ったわけですね。その際、ケネディ財務長官から何かそういうような関連の話でもあるかとも思ったのですが、一切そういう話はないのであります。外貨保有形態につきましてはケース・バイ・ケースといいますか、どれが一番日本のために有利で確実であるかということを基準といたしまして、随時ひとつ運用形態というものをきめていきたい、こういうふうに考えていますが、いま固まってどういう考え方にしたいという方向の動きはありません。
  23. 平林剛

    平林委員 この問題だけでたくさん時間を使うわけにまいりませんけれども、最後に、この外貨準備に関してお尋ねしておきたいことは、先ほどお話がありましたように、外貨準備が乏しかったわが国経済のときは、変動のたびに景気調整を余儀なくされるということを何回も繰り返してきたわけなんです。それでは三十何億ドル、四十億ドルに近くなったからといって先行き絶対そういう動揺があり得ないかというと、これは先ほど大臣お話しになりましたように、一年間に十何億ドルも違うときですから、逆の目に出ないとも限らない、やり方いかんによってはそういう事態も招かないとも限りませんですから、必ずしもこれでだいじょうぶということはあり得ないことだと思いますけれども、しかし、今後の景気抑制という点について国際収支の面からいろいろ調整していくという、つまり警戒心を、これは赤であるぞ、これは黄色であるぞというような指標は少なくなったことは事実ですね。そこで今後経済変動、そうしたものについての分析はかなりいままでに比べて慎重にこまかくしていかなければならないということも考えねばならぬと思うのでありますが、大蔵大臣としては今後は、景気抑制あるいはそういう注意警戒というようなことについての指標目安、こういうものを何に置くおつもりですか。
  24. 福田赳夫

    福田国務大臣 いままで経済調整考え方がいろいろとられたわけですが、その手段をとる、それにあたって最大の考慮を払った問題は国際収支物価であります。この国際収支物価注意しながら経済運営をしていく、これは今後といえども堅持していく考えであります。ところが、国際収支のほうは幾らか気が楽になってきた、こういうように思うのです。まあこれは幾らかです。物価のほうはまだまだなかなか関心の深い問題であります。しかし、いずれにいたしましても、この国際収支物価が今後経済運営をやっていく上において注意しなければならぬ二つの大問題である。やっぱり私は経済というものを常にずっと見ておるのですけれども、経済を診察をするときの病状、これはあるいは病状というか健康度というか、これは何であるかというと国際収支物価だ、こういうふうに考えておるわけであります。今後もこの問題にはほんとうに細心の注意を払って経済運営に当たっていきたい、かように考えております。
  25. 平林剛

    平林委員 これからの景気抑制、そうしたものに対する目安を従来は国際収支物価に置いていた、国際収支の点についてややゆとりがあるということになれば、物価の動向というものをめどにするということはきわめて焦点になってくるわけであります。ところが、いままでの政府考え方は、五%や六%はびくともしなかった。もっともこのごろは諸外国においてもだいぶ物価が高くなってまいりまして、相当高い水準でアップする現象が見られてまいりましたけれども、これはもって他山の石にすべきであります。むしろ私はそういう点を考えますと、三%や五%上がるのはあたりまえだぐらいな考え方はもうさらりと捨てた、もっときびしい態度に立って物価の安定、そしてそれも三%、五%あるいは六%上がるのはしかたがないという考え方ではなく、景気抑制のめどに物価という問題を重視すべきだということをこの際強調しておきたいと思うのであります。  そこで、次の問題に移りますが、景気見通しの中で、最近景気のかげり論というのが展開をされてまいりました。昨年末から製品在庫率の上昇や一部商品市況の低迷、あるいは機械受注の伸び悩みなどがございまして、かなり大型景気のもとで三年間、いろいろ矛盾と問題をはらみ、表だけではなく陰にはいろいろな悩みを内蔵しながらも高水準をとってまいりましたけれども、こうした議論が出てきたことは注目すべき問題だと思うのであります。しかし、最近の報道を見ますと、ややそれは楽観的な見通しもあるということを承知しておりますけれども、大臣といたしましてはこうした最近の傾向をどういうふうに判断をされておりましょうか、あるいは今後の景気見通しはどういうふうに立てておられますか、それをひとつお答えいただきたいと思います。
  26. 福田赳夫

    福田国務大臣 私は、景気見通しはどうかという問題もあるけれども、むしろ景気をリードしなければならぬ、こういうふうに考えるのです。かげり論という話ですが、これはわが国経済が四年目の成長に入った、いままで三年続きだった、もうそろそろそういう時期じゃないか、こういうことなんです。そこへ多少の指標変化が出てきた、こういうことですが、外貨天井も高いし、ひとつ安定成長を続けていきたい、こういう考えです。
  27. 平林剛

    平林委員 さてそこで、安定成長を続けたいというお考え、これはこまかいことはきょうはあまり時間もありませんから聞きませんけれども、この間参議院の予算委員会で今後の景気見通しについての質疑が展開されまして、政府経済の安定成長をどの程度が適当と見ておるかという質問に対し、内閣総理大臣は、ここのところ一〇%程度がいいだろう、経済の成長率は一〇%程度が適当であろう、こういう答弁をいたしました。これはいまあなたが言われた安定成長とどういう関係があるかわかりませんけれども、少なくとも政府経済社会発展計画の数字では、四十二年度から四十六年度の実質成長は八・二%ということから比べますと、これはばかに勢いがついた威勢のいい議論日本経済の実勢から見てあるいはこの程度は伸びるかもしれぬということはあるけれども、あなたがいま言われた安定成長と経済成長率一〇%という総理大臣の答弁とはどういう関係になっていますか。
  28. 福田赳夫

    福田国務大臣 三年間一二%ないし一三%の経済成長を続けたわけですね、これは御承知のとおり。今後それをほうっておいたら世界経済情勢さえよければ、あるいはまあそういうふうになっていくかもしれない。しかし、一二、三%という成長だと、これは国内的にいろいろの不均衡を生ずるわけです。物価問題をとらえてみても、あるいは国内のいろいろな諸施策を考えてみましても、どうも不均衡をかもし出す要因になる。そこで、これではもう高過ぎるというのが私と総理大臣が話をした要点なんです。これをもう少し押えようじゃないか。さあ押えるにいたしましても、この八・二%というこれまでの考え方、これまで押えられるかどうか。日本経済の持っておるエネルギーというものを考えますと、どうもそこまで押え切るということは、これは非常に困難な問題じゃないかということを考えますと、ことし九・八という線を打ち出しておるわけでありますが、その辺がこの五年間ぐらいを見通しまして、まあその間にも浮き沈みはありましょう、しかし平均してこの五年間大体その辺がにらみどころじゃあるまいかと、こんなふうな結論に到達したわけなんです。いま経済社会発展計画、これが八・二%を基軸として考えられたわけでございますが、実績ははるかにこれを上回るという状態にある。そこでどうしてもこれを改定しなければならぬ、とこういうふうに考えておるわけですが、さらにこの改定にあたりましては、必ずしも一〇%というワクにとらわれるわけじゃありません。ありませんが、よく科学的、技術的に検討いたしましてひとつ結論を出していきたい、こういうことです。  そこで私は、いま安定成長とあれはどういう関係かと言うが、安定ということは何だといいますと、何といっても第一は、先ほどから申し上げておりますとおり一つ国際収支国際収支に逆調を来たして、そしてまた緊縮政策をとる、経済は深い谷に落ちる、またそれから立ち上がり、はい上がって高い山をかもし出す、こういう時期的に見て不安定な状態、これを排除しなければならぬ。それからまた、この成長の高さによって国内的にはあるいは物価の問題、あるいは公害の問題、あるいは社会資本と民間資本とのアンバランスの問題、いろいろな格差問題、ひずみをかもし出すわけですが、それがなるべく避けられるような形、ですから年次的に見、また質的に見て日本経済が安定する形、こういうことを称して安定成長と、こういうふうに言っておるわけでございますが、まあそう高くない成長で、しかも長続きする形が一番いいというふうに考えておるのです。現実の政治の問題、こういうふうにしてとらえてみまするときに、まあ一〇%ぐらいのところに目途を置いて考えざるを得ないかなというのが現在の状態なんであります。
  29. 平林剛

    平林委員 この三年間、私どもは高度成長と言い、また、政府経済の成長と申してまいりました。いま安定成長——別にことばにとらわれるわけではございませんけれども、政府経済社会発展計画が八・二%ということを指標にしながら実際は一二%、一三%と高まってきた。これはなかなか押えられるものではないという力がある、これはお互いの認識だと思います。それがそう考えざるを得ないということで一〇%程度が適当だということになりますと、私はいまの政府経済政策から考えてみますと、さらに押え切れず、成長率は一そう高いという形になっていくのではないだろうか。それは国際収支物価、十分それを考えにればよいというお話ですけれども、実際は国際収支は最近は、政府の功績というよりは諸外国情勢からまあ何となく捨いものをしたような形になっておりますが、物価は必ずしも安定していない。そしてまた、先行きには大きな不安があるということを考えますと、一〇%程度の姿が安定成長なり、この議論はどうも私はいただけないと考えておるわけであります。そしてまた、一〇%程度が適当だという考えだけでおりますと、実質的には結果的にそれがいままで以上に高い水準で成長を遂げる。これはインフレにつながり、また諸物価の高騰につながっていく。それから政府の施策いかんによりますけれども、いろいろな格差の拡大になっていく、こういうことを私どもは非常に心配をするわけでございます。  こういうようなことについて考えてみますと、一〇%程度というのは必ずしも安定成長とはいえない、こう思うのですが、いかがでしょう。
  30. 福田赳夫

    福田国務大臣 とにかくこれは世界情勢にもよるのです。これをにらまなければならぬ。一〇%成長だからといって、何が何でも毎年毎年一〇%というわけじゃない。あるいは八%という年もありましょう。あるいは一一%という年もあるかもしれない。これはやはり世界経済の中の、しかもきわめて有力なる通商国であるわが日本経済でございますから、世界経済の波というものはまっ正面にかぶってくるわけです。そういう日本経済ですから固定的な考え方というのはよくないと思うのです。ですから波はあるのです。多少の波はありましょうが、五年間くらい平均してみると、大体一〇%くらいの成長にはなりそうだ、こういうふうな見通しですね、これを持っておるわけです。しかもこれが一二%、一三%が続く状態はよくない。これに対しては抑制という政策意図も含めての意味でございますが、また同時に、逆にこれが五%なら五%で落ち込む場合には、わが国国際収支天井がいまや高い状態にありますから、これをささえるための需要の創出ということも可能である。そういうようなことを考えながら、多少の波はありましょうけれども、振り返って平均してみると一〇%成長というくらいになりましょうかな、こういうふうに見ておるわけなんです。その間まだ物価状態に非常に大きな問題がある、あるいは国際収支を脅かすような要因が出てきたということになると、これは格別、そのときに臨機応変の措置をとらなければならぬ、これは当然のことであります。
  31. 平林剛

    平林委員 そこで私は、かねがね政府経済政策、特に福田さんの財政について不安を覚えておりますのは、どうも従来安定成長論者であった福田さんが、非常に積極的というか、むしろ従来の評価から比べるという高度成長論者になったのじゃないかというような議論をしなければならぬほど腹が大きくなったといいますかな、何か気持ちにそういうものを感じて不安でならぬのですよ。たとえばいまの一〇%の経済成長率についても、私はやむを得ない、大体こんなことだろうというような議論はわかりますけれども、しかし、現在国民全般が一番おそれているのはインフレの促進ですね。これは世界的にも、アメリカでも今度のいろいろな措置は、インフレ抑制に積極的かまえを示してきたという証拠でございます。そういうことから考えますと、どうもインフレ抑制という点について少し腹が大きくなり過ぎたような感じをいたすわけであります。  その一つの例として、この間の予算委員会でも大蔵大臣が言われました国債発行火種論というやつは、どうも私は納得できないわけでございます。御承知のように、国債の導入が行なわれましたのは福田蔵相の時代、これを新財政と称して国債導入の財政が展開をされてまいった、この功罪はいろいろあると思います。あると思いますが、やはり何といっても今後のインフレという点、国民生活の不安という点では大きな黒い影を与えている、これも事実です。縮小しよう、だんだん漸減しようというかまえを示してきたことも事実でしょう。それから財政に対する国債の依存率を低めようという努力のあったことも事実でしょう。しかし、そのことは逆に考えれば、国債発行という政策がある意味ではインフレ、こういう点についての不安、そしてまたほうはいと巻き起こってきた世論、そういうものにこたえる政府の姿勢だと私は見ておるわけでありますが、依然として福田さんは国債発行の火種論を唱えておる。この間も私は政府から若干の資料をいただいたのでありますけれども、内国債の償還の年度別の額は、四十四年度は九百四十七億円、四十五年度は七百三十一億円、四十六年度は九百九億円という程度で済んでおりますけれども、昭和四十七年度になりますと、これが一ぺんに二千三百六十六億円になる。四十八年度には七千百八十億円になる。四十九年度は八千百四十九億円になるというぐあいに、急激にこの辺から国債償還の期限が到来をするわけであります。  そこで私どもは、今後の景気見通しの状況から判断をいたしますと、かりに政府見通しのように、ある程度成長率一〇%程度はやむを得ないなという高成長が続く段階において、景気抑制ということはきわめて重要なカギになってくるわけであります。そこで私は、四十七年、四十八年、四十九年の国債の償還が大量に来るという時期に、この償還を厳格に行なうというようなことが景気抑制策になり得るのではないか。必要のないときまで公債を発行する、火種として残しておくというような議論はほんとうの姿勢ではないのでないか。むしろ次の不況期に備えて、理想的にいえば国債の依存率をゼロにしておいて——もう福田さんやり始めたのだからいけないという人もいないでしょう。そのときはまたそのときで考えることにして、少なくともこれをゼロにしていくという努力をするというのが必要な態度ではないかと思うのでありますけれども、どうも私はこの間からあなたの国債発行火種論というのは気に入らないものでありますから、お考えを直してもらいたいなと思うのであります。いかがでしょう。
  32. 福田赳夫

    福田国務大臣 私が、また政府が公債を発行したその根源にさかのぼって考えてまいりたいのですが、これは二つ理由があるのです。一つは、これは景気調整に公債は非常に役立つ、伸び縮みをさせるということですね。それからもう一つは、これは何といってもいま国の体制を見てみますと、社会資本の立ちおくれの状態である。それから社会保障制度など、国において施設すべき事項が多々あるわけです。そういうことを考えますと、国の需要というものがもう年とともにこれはふえていく、またふやさなければならぬ、こういう状態に置かれておる。まあ生産のボリュームだけはわが日本世界第三位だというが、しかし、他の先進諸国と非常に違った点は蓄積というものがない。社会資本の蓄積がない、また家庭の蓄積がないという点、こういう点を克服していかなければほんとうの中身のある先進国とはいえない。  そういうことを考えるとき、この伸び行く財政需要に対応する財源をどこに求めるか。これはいままでの考え方でいいますれば、増税にこれを求めるほかないのであります。ところが、増税にそういうものを求めるということ、そういうことは企業あるいは家庭の蓄積にそれだけマイナスの影響をもたらすわけであります。それであってはならない。しばし民間にかわって、企業、家庭にかわって国が借金をするという政策を続けるべきである。そういう二つの理由、この理由から国債発行政策というものを取り上げたわけなんです。  それで、しかし国債がそういう役割りを果たしながらも、これは漸減した形をとらなければならぬというふうに考えまして、かたく国債漸減方針はとっておるわけであります。ただ漸減方針をとった結果、もう国債の発行額が千億だ、二千億だというような状態まで来たという際に、さあ、あなた方からも強く言われます減税だ、減税だと、この減税政策を、千億、二千億の公債ならこれを発行していってその辺で打ち出すか、あるいはその発行をやめて、もう減税政策はなおこれを押えるべきかどうかという判断に立った場合に、私はどっちをとるか、こういうことだろうと思うのです。その際に、私は、二千億程度のあるいは千億程度の、つまり民間消化ですね。民間消化程度の国債ならばこれを発行しておいて、そこで減税政策に転換というか、重心を置いた財政政策を進めるべきではあるまいか。こういうふうにいま考えるわけで、そういうことが当初国債政策を取り入れ考え方、つまり火種を残しておいてこれの伸び縮みにより景気調整に役立たせるということですね。それからまた、伸び行くところの財政需要に対応するためにその増税を回避する、こういう二つ考え方に合った考え方ではないか、こういうふうに考えておるのですが、おそらくこれは御理解のいただける考え方ではないか。むしろ、あなたは私にそういう考え方はやめろとおっしゃいますが、私からすればひとつ御理解を願いたい、こういうような心境でございます。   〔「定数不足だ、だめだ、成立していないじゃないか」と呼ぶ者あり〕
  33. 田中正巳

    田中委員長 では、ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  34. 田中正巳

    田中委員長 速記をとって。
  35. 平林剛

    平林委員 いま国債発行の火種論について、何とか大蔵大臣考えを直してもらいたいという話をいたしておったわけでありますけれども、私は、きょうは国債発行政策そのものを繰り返して議論をするつもりはないのです。しかし、この問題に関しては、どうも福田大蔵大臣考えと合意できない。そういう基本的な考え方経済政策の中で持っておるものでありますから、どうも変えるわけにまいりません。  そこで、もちろん社会資本の立ちおくれとか、あるいは社会保障、そうしたものをふやしていく、そして国民生活水準を高めていくという考え方はわかるのでありますけれども、しかし、いまのお話を聞いておると、福田大蔵大臣は少なくとも経済安定成長論者とはいえないですね。私は経済というものはやはりむしろ国民生活全般のバランスがくずれないように、いいところは伸び切るけれども、しかし、その陰において泣く者がないようにというところが、経済をあずかる者の妙諦であろうと私は考えておるわけでありますが、遺憾ながらそれは非常によくいっていない。むしろそうしたひずみはなかなか解消する段階、緒にもついていないという点を私はやはり指摘しておかなければならないと考えておるのであります。それはだれでもなるべく早く国際的な生活水準に高めていきたいという気持ちはあるけれども、たとえばタイヤを幾らふくらまそうと思っても、これは自動車のタイヤになるか、自転車のタイヤになるか、オートバイのタイヤになるか、それは国際的な比較においていろいろな評価のしかたがありますけれども、その中に空気を入れるために、やたら空気ポンプでぎしぎし押し込めば、タイヤそのものがパンクする。国債発行政策というものは、ある意味ではそういう危険を持っておる。そこでやはり経済の原則というものは守っていく。国債発行なく、いま大蔵大臣が言われたようなことを達成をするというのが政治であり、経済である、こう考えておるわけであります。特に景気調整を国債でやるなんという考え方は、私は邪道だと思うのです。そうして国債の発行をすべて銀行金融機関、あるいは日本銀行がこれを引き受けてしまうというようなことは、結局経済拡大、インフレの促進、こういう方向につながるものでございますから、やはり何といっても必要がないとき、これは国債をゼロにしていくという努力をすべきである。そして次の不況期に備えて、国債依存率というものをなくしていく、こういう態度をとるというのが必要なことで、あくまでも火種論に固執をされるということは、国債に取りつかれている大蔵大臣というふうな考えを捨てるわけにまいらぬのです。腹が大きくなったり、国債政策に取りつかれている。そうしてその経済的な運営の論理は少し邪道に走り過ぎるという批判をこの際呈上しておきたいと思うのであります。私は、その点は政府においてもよく検討すべき問題だと思うのでありますが、さしあたりお尋ねします。  先ほど指摘をいたしました昭和四十七年度に二千三百六十六億円の国債の償還期限が来るわけであります。これは四十年のいわゆる赤字国債ですね。これは期限が来たならば、厳格に償還すべきものである。しばしば政府も言明しておりましたが、その考え方は踏襲される、それは従来の言明どおり実行する、こういうふうに理解をしてよろしゅうございますか。
  36. 福田赳夫

    福田国務大臣 そのとおり考えております。
  37. 平林剛

    平林委員 償還するといたしましても、これはいまどこが保有しておるかということなんでございますけれども、その点はいかがですか。
  38. 青山俊

    ○青山政府委員 四十年度の二千億の分につきましては、当初引き受けましたのが市中で一千百億円、運用部で九百億円でございます。そしてその市中の千百億円の大部分は、オペによりまして日銀保有になっております。市中にございます額は現在約六十五億円、それから個人等が消化いたしましたのが大体八十五億円、こういう状況になっております。
  39. 平林剛

    平林委員 これは大部分が日銀保有ということになっておるわけでございますから、政府としてはこの際、いま御言明のとおりに、四十年の赤字公債は厳格に償還をするということは実行してほしい。  そこで、四十八年度の七千百八十億円についてはどうするつもりですか。
  40. 福田赳夫

    福田国務大臣 これは先ほど平林さんからお話がありましたが、これを一時に四十八年度に償還をするという考え方は持っておりません。これは四十九年度にも、五十年度にも多額の償還があります。それらをならして償還をするというような考え方から、さしあたりその大部分を借りかえという挙に出る、こういうふうに御承知願いたいと思います。
  41. 平林剛

    平林委員 理財局長、四十八年はいま保有の状況はどうなっておるか、念のために承ります。
  42. 青山俊

    ○青山政府委員 四十八年度の分につきましては、運用部で持っておりますのが九百七十億円、それから日銀で保有しておりますのが四千九百四十億、市中で持っておりますのが三百九十五億、それからその他で二十億、それから証券で四百二十六億、これは個人消化分でございます。合計いたしまして六千七百五十億、こういうことになっております。
  43. 平林剛

    平林委員 四十九年はわかりますか。
  44. 青山俊

    ○青山政府委員 四十九年は、運用部が一千億、それから日本銀行が持っておりますのが二千百二十四億、市中が持っておりますのが三千六百四十七億、証券いわゆる個人関係でございますが、これが持っておりますのが四百二十五億、合計いたしまして七千二百億、こういう状況になっております。
  45. 平林剛

    平林委員 大臣、いまお聞きしておりますと、昭和四十年の赤字公債はその大多数が日銀保有になっておる。それから四十八年度に償還期限の来るいわゆる建設公債と称していたものは日銀保有が四千九百四十億円、これも相当数が日銀の保有になっておる。四十九年の分は二千百二十四億円でございますけれども、これもだんだん日銀保有になってくる。こういうことになると、先ほど国債は景気調整に役立つというお話があったわけですね。日銀保有のものを償還することは景気調整に役立たぬとは言いませんけれども、先ほどから議論いたしておりました今後の経済成長、その成長率の一〇%が高いか低いかは議論がありましょうけれども、いずれにしても従来の観念からいえば、高度成長をさらにそれに上積みしたという状態の中において国民が受けるところの物価上昇、インフレ促進という点を考えますと、むしろこれは償還に充てていく。そして、そうでなくとも突っ走ろうとする景気の上向き姿勢を押えて、これ以上経済の矛盾を拡大させていかない、こういう配慮が当然必要じゃないでしょうか。それを借りかえでやるんだ——四十七年に償還期限が来るものは約束どおり償還するけれども、四十八年、四十九年は借りかえでいくんだ、こういう考え方はつじつまが合わないじゃございませんか。いかがでしょう。
  46. 福田赳夫

    福田国務大臣 どうも、国債の累積額とか国債の償還、これを景気と結びつけられますが、そうは私は考えないのです。問題は、国債を発行してそれを財源として予算の規模が拡大し、あるいはその国債の額によって予算の規模が縮小する、そこに景気に及ぼす問題点というものがあるわけです。そこを私は言っているのです。ですから、国債につきましては、四十七年度に償還期限の来るものについては全額償還ということを考えておる。四十八年度のものにつきましては、そのときの償還能力というものを測定いたしまして償還をいたしますが、これは景気にそう大きな影響がある問題じゃない。問題は、その当該年度において国債が発行され、それによって財政の規模が一体どういうふうになっていくか。つまり、財政規模が拡大しあるいは公共投資が盛んに行なわれて刺激的要因となるのか、あるいは公債があまり発行が行なわれないで縮小されて、そして景気に対しては抑制的な効力を及ぼすのか、そこに景気との結びつきがある、そう考えておるのであります。  またもう一つ日本銀行保有しておるじゃないか、こういうようなお話でありますが、これは公債政策をとって以来、日本銀行通貨供給方式を変えておるわけでございます。それまでは貸し出し政策をとったわけでございます。今度はそうじゃない。オペレーションによって通貨の供給をやる。これとても通貨が一体どういう増加状態になっておるかということが問題なんであって、国債が幾ら持たれているということは問題じゃない。問題は、日本銀行通貨がほんとうに適正に供給されているのか、適正規模を上回って供給されておるか、そこにこそ問題がある。こういうふうな理解をいたしておるのであります。
  47. 平林剛

    平林委員 議論するわけじゃないけれども、景気に結びつけるということはあなた自身がおっしゃったから、私は、国債償還を景気調整に結びつけたらどうか、こういうことを言っておるわけです。  それからもう一つは、そういういまのお話によれば、むしろ国債の発行よりは財政の規模だ、こういうことになれば、千億や二千億円を火種論で残すということは成り立たないんじゃないですか。それを保有しておくというような議論は成り立たないじゃないですか。だから私は、取りつかれているんじゃないですか、こう言うのです。それはゼロにすべきだ。あなたの言っている財政規模ということが問題で、国債の発行がどうだというなら、あまりにもそれを火種として残しておくなんという考え方がどうもちょっと取りつかれておるんじゃないですか、こう言うのです。
  48. 福田赳夫

    福田国務大臣 あなたは事を非常に抽象的に考え過ぎるんじゃないかと思います。国債がだんだん減って、二、三年後には、今度はそのときの市中消化能力いかんにもよりますが、千億でありますか二千億でありますか、その程度のことで済みそうだという際に、さあその公債を発行するかあるいは減税政策——それを発行せぬでもいいだけの財源があるならば、減税を優先せしめるべきだという議論があったときに、平林さんが一体どういう選択をするか。私は、あなたがいろいろ議論をしているような調子じゃないんじゃないかというような感じがしますが、それはそのときの問題であります。  とにかく千億、二千億程度の公債が出ておる、つまり市中で消化し得る程度の公債が出ておるという状態は、決して日本経済のためにマイナスの要因にはならない、そういうふうに考えておるのであります。むしろ、そういう際には、わが国は企業でもあるいは家庭でも蓄積が少ないんだ、そういうようなところに着目して減税政策ということを考えるべきではあるまいか、そういう考え方であるということを御承知願いたい。
  49. 平林剛

    平林委員 これは議論でありますから、私はあなたの火種論についてのお説はどうも納得できませんので、これからも今後の動向を見ながら、ときどき食いついていきたいと思っております。  それから同時に、おっしゃるように、これからの国債は全部市中消化にして、そうして日銀の買いオペをやめさせるというようなかまえを示しながら、インフレ抑制をやるような態度を、それなら逆にとるべきだということを申し上げておきたいと思うのであります。しかし、これはまた議論になるからこの辺でやめまして、最後にそろそろ私の質問も締めてまいります。  最後にお尋ねしたいことは、最近大蔵省が試算をいたしまして、一人当たりの国民所得の世界第一位というのは今世紀に実現をするという資料を発表したのですね。大蔵省の試算では、国民所得は、早ければ一九八八年、おそくとも一九九二年には世界第一位になる。日銀の総裁が言っていました。大胆不敵賞をやりたいくらいだ、一年先もわからないくせに、こういうことをよう試算したものだ。新聞では、うれしい試算でバラ色の夢だと書いている。私は、これは非常に興味のある試算だと思いまして一度読んで見たのでありますけれども、こういう試算をこの機会に発表したという政策的目的は何かあったのですか。何か政策的意図があってこういう試算を発表したのでしょうか。何かのお考えがあってこれを発表したのでしょうか。大蔵大臣、いかがですか。
  50. 福田赳夫

    福田国務大臣 実はいつごろでありましたか、去年ですね、アメリカのハドソン研究所の所長さんであるハーマン・カーンという人が、日本の将来についての論文を発表したのです。その際、二十一世紀になると、日本が一人当たりの国民所得において世界第一位になるということが推定される、そういうことを言った。それで、一体そういうようなうまいことにいけばこんなうれしいことはないわけなんですが、さあそう言っても、そんなことはなかなかむずかしいことだろうと私は考えるわけです。わけでありますが、ひとつハーマン・カーンがいろいろ言っている。言っているところを大蔵省でもフォローしてチェックしてみたらどうか、こういうことなんです。ちょうど私のうしろにおる林審議官がそういう方面の仕事を担当しておりますので、林君、ひとつハーマン・カーン理論を点検してみたらどうかと言って、林君が点検した結果についてのお話じゃないか、こういうふうに思うのです。  一応これは非常にラフな計算ですが、過去十年間ぐらいでありますか、各国の成長率を調べ、その成長率で今後も進むというここに想定をとった場合、あるいはそれが日本においては、またほかの国においても予想し得る要因を入れて多少の変化がある。変化を加えて試算をしてみるという際に一体どうなんだろうかということなんですが、その結果によりますと、まあいろいろ計算は出ておりますが、先々のことはどうかわかりません。わかりませんが、わりあいに確度が高いのは、この五年ぐらいは確度は高いだろうと思う。またそれに次いで確度が高いのはその次の五年間、一九七〇年代というぐらいの年は、特に一九七〇年代の前半期ぐらいのことはそう大きく狂わないんじゃないかと私も思いますが、一九七〇年代の前半期には、とにかく日本の一人当たりの国民所得はヨーロッパ水準になる。それから七〇年代の末期ぐらいになると、ヨーロッパの特に高い国なんかを追い越すというような状態になり、だんだんと先進諸国を追い越すという計算が出てくるのです。これはあくまでも試算であり、実は大蔵省発表というほどのことはないんで、そう神経を立てられるほどの問題ではないのでありますが、大蔵省も国の経済運営につきましては責任を持っておりますから、いろいろな人の考え方、そういうことも参考にします。それが正しいのかどうか、どういう意見が間違っているのか、どういう意見が正しいのか、そういうことを常に試算をしておるので、その試算の一つであるというふうに御了承願いたいのであります。
  51. 平林剛

    平林委員 これは非常に罪が深い。かつて池田さんが所得倍増論を展開したときに、これが結果的には今日のいろいろな物価高といういわゆる高度成長政策の一つのはしりであったわけでありますが、あのとき抱いた所得倍増論、これに期待をした国民があとでどれだけあじけない思いをしたか、いや怨嗟の目を政府経済政策に向けたかということを考えますと、この一人当たり国民所得世界一位論というのも、私は所得倍増論と同じように罪が深いものである。私は昨年、実はソ連はじめ西ヨーロッパ諸国を視察させていただく機会を得ました。そこで、国民生活世界第二十一位という議論に非常な疑問を覚えたのです。それは国民生活世界で二十一位、こう言うけれども、それはうわべの金額、それを比較しての議論である。社会環境、たとえば国民の生活しているところの社会環境、住宅あるいは公共施設、衛生、いろいろな問題を勘案をして、では国民生活は何番目かということを考えたならば、うわべの所得金額で二十一位というのは当たらない。むしろヨーロッパの水準から見ると、もっとそうした社会環境を計算に入れたならば、低いではないかという感じを持って実は帰ってまいったわけです。同時に、今日一人当たりの国民所得が多い。これが世界一位になるというような表面の数字の計算、これは私はお遊びだと思うのであります。先ほどから私、議論しておるように、わが国外貨準備高が高い、天井が高いということ必ずしもたっとからず、中身が問題だ。これは大蔵大臣お話しになりました。山も高きがゆえにたっとからず。林は木が繁るからこれは幸いになってくるわけであります。国民所得が世界一位になったことすなわちそれが国民生活にとってしあわせであるかどうか、これは問題があると私は思うのです。むしろそれよりも、高度成長の陰において、空気や水の汚染あるいは交通の渋滞、都市の過密、自然の破壊、そういうものを勘案をしながら世界一位であるとか二位であるとかいうことを争うべきであるし、またそれを評価すべき問題である。そういう点の考えがなく、ただ一九八八年になれば一人当たり国民所得は世界一位になるという幻想を振りまくというような考え方をもし政治的に使うとするならば、これほど罪の深いものはない、私はこう考えておるわけであります。  政府におきましても、どうかひとつ、山高きがゆえにたっとからず、そして外貨準備の高きがゆえにたっとからずという考え方経済運営、国民生活への配慮を政府の諸施策において考えてもらいたいということを要望いたしたいのでありますが、これをお答え願いまして、私はおしまいにしたいと思うのです。
  52. 福田赳夫

    福田国務大臣 最後のいまの平林さんのお話、これは私と考え方は違わないのであります。私は林審議官の数字を見まして、それは数字的にはそうなる。しかし、われわれの生活の実感ですね、それはどうなるのかというと、そんなものじゃない。それはなぜかという点なんです。  それは、つまりわれわれがこれからその年々の所得において追い抜いていく先進諸国、これには偉大なる蓄積があるのです。この蓄積には二つの種類がある。一つは社会資本としての蓄積です。あなたが指摘されるような道路であり、下水道であり、上水道であり、あるいは都市計画であり、そういうような社会的蓄積がある。これは生活環境です。それからもう一つの問題は、家庭の蓄積です。それの一番大きな問題は住宅です。もう何十年も続くような堅牢な住宅、またその堅牢な住宅の中にはこれも何十年も続くような堅牢で優雅な調度、そういうものを持っておるわけなんです。わが国には、そういう社会的な蓄積も少なければ、また同時に、個人個人の家庭のたくわえ、蓄積というものも少ないのです。そういうことがみんな寄り合ってわれわれの生活感、こういうことになってくるのであって、一年間の所得が増大したからといって、それだけわれわれが豊かになった、楽になったという感じにはなるまい。これはいつも私はこの数字について触れる場合には強調しているのです。全くあなたと同感でありますことをお答え申し上げます。
  53. 平林剛

    平林委員 最後の点は同感ということであれですが、いろいろなお議論は私どもあります。問題は、今後の政策いかんによるわけでございますから、きょうはこれは私の希望として、また政府に対する強い要望として、国民の期待として申し上げておきまして、質問を終わることにいたします。
  54. 田中正巳

    田中委員長 午後零時四十五分再開することとし、暫時休憩いたします。    午後零時十七分休憩      ————◇—————    午後一時七分開会
  55. 田中正巳

    田中委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。只松祐治君。
  56. 只松祐治

    ○只松委員 大蔵委員会は、たいへん法案が多くて一般的な質問がなかなかできないわけでありますが、通例、日切れの法案が終わりまして、四月に入って二、三回は一般質問をやっておるわけであります。大臣があっちこっちにおいでになりまして、したがいまして大蔵関係全般についていろいろ尋ねたい気持ちはやまやまですが、なかなかそのチャンスがない。きょうは、あれこれ飛びますが、たまった問題を、全部はできませんが、多少法案とはかけ離れますが、二、三お尋をするわけです。一番ポピュラーな、法案とは無関係な問題から順次質問をしてまいりたいと思います。  その一つは、果実酒の問題でございます。現在十三品目というものが許可になっておるわけであります。これは大臣はあまりこまかいことは御存じないと思いますが、その十三品目が許可になった基準と申しますか、どうしてこういう品目だけを許可にしたかということについて。
  57. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 これはもう御承知と思いますけれども、現在の酒税法で、酒類の製造というものは、酒類にものを混和いたしまして、他の種類の酒類をつくりました場合には製造ということになるわけでございます。ところが御承知のとおり、日本では古来から梅酒というようなものが各家庭で実際上つくっておったという事実がございます。しかし、それが厳密にいえば密造になるということは非常に困るのではないかということから、いろいろ検討いたしまして、三十七年に梅酒につきましては、これを消費者が直接につくる場合には製造と見ないというふうに改正をいたしたわけでございます。ところが、梅酒だけでなくて、地方的にもかなりそういう種類の果実があるので、もう少しそれを拡大してほしいということがございまして、検討いたしました結果、十三品目というものが定められたわけでございます。選定の基準と申しますか、これは御承知のとおり、蒸留酒に糖類あるいは果実等を加えた酒類というのはリキュールになるわけでございます。そういう意味では一般にリキュールとして、リキュールの典型的なものに該当するようなものは避けまして、家庭でつくるのに適当な品種を選んでやったというのが当時の実情であったかと思います。
  58. 只松祐治

    ○只松委員 ことばじりをとらえるわけじゃないですが、いま適当ということばがたまたま使われましたが、全く適当な基準だろうと思うのですね。これは一般的に果実酒について論争が行なわれている、あるいは我妻さんなんかが法理論の面からいろいろ援護射撃をされておるようですが、こういうものを見ましても、何を基準に十三品目にしたか、あるいはしなければならないか、これは明らかではない。まことに適当なものだろうと思いますが、何かぴしっとした基準がありますか、そのときにきめた。
  59. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 御承知のとおり、現在の日本の酒税法は、世界においても最もこまかい基準と申しますか、酒類の種類を多く規定をいたしまして、それをしかも級別に分けて、きめのこまかい課税をいたしております。そういう意味では、家庭でつくる酒にいたしましても、全体としての酒類の課税のバランスをあまりくずさないようにという配慮も必要でございます。また、全く入手しがたいようなものを指定しても、これまた意味がない。その地方なら地方で採取し得るもので、しかも市販酒とあまり競合しないようなことも考えなくちゃならないといったような基準でやっておりますので、具体的にこれという基準を一つで定めるわけにはいかないと思います。
  60. 只松祐治

    ○只松委員 端的といいますか、極端にいえば、基準のない基準といいますか、別に基準はないけれども、いま言われたように梅酒あるいはそれに類似して地方でいろいろつくられておる、そういうのを、この程度でどうだろうということを、当時の利害が対立しておった業界の仲間の意見や何かをそんたくしてきめた、こういうことではないかと思うのですね。そういたしますと、その当時といまのいわゆる洋酒業界なり醸造業界の、あるいは酒造界全体の状況も異なってきております。あるいは日本の社会全体の生活の向上、あるいはアルコールに対する要求度、そういういろいろなものが異なってきておりますね。したがって、当然に私は、こういう問題はやはりそういう社会情勢変化に伴って検討していく必要がある、こういうふうに思います。それは次の段階でいきます。  もう一つ、もとに戻って、たとえばトチの酒というのがありますね。トチの実というのは、これは通常私どもも子供のときから、トチは毒があるんだ、こういうことをいわれて、なまで食ってはならないぞということで、おふくろからおこられたわけなんですが、何かいろいろな方法を加えれば飲めないことはないようですけれども、実際上は、通常飲用に供すべきものではないわけでありますね。こういうふうに、よほどの特殊な加工方法を経なければ飲めない、こういうものがここの中に含まれている。たまたまある地方でそういうものが使われておったのかもしれませんが、こういうものが入っておりますね。いま何十種類、あるいはこういう草の実や何かを入れますと何百種類というものができるわけなんです。これはいまのやみ米と同じで、実際上はもう各家庭ではそういうものをつくっておる。こういうふうに本も、堂々とその酒のつくり方という本が売られているわけですから、この十三品目のときも論争がありましたように、そういうことが酒税法や何かでもしけしからぬのだということになれば、この本それ自体が当然問題になりますね。あるいはこれでつくっている各家庭は酒税法違反で一斉にやはり検査をしなければならない、こういうことにもなるわけで、だから私はやみ米と同じだと言うのです。いまは特に米が余ってきたからでもありますが、食管法で云々と言ったらもの笑いになりますね。それと同じように、これだけのものが一般的に各家庭で——私は醸造とは思わないですね、加工されて愛飲されておる。こういう事態を見るときに、私はこの基準というものはきわめてあいまいであるし、むしろそういう意味では不当である、こういうふうに思います。  こういうことに関して、これはそこまでくると行政の範囲をこえて政治的な判断にもなってくるわけですが、両面からでけっこうですが、ひとつこういう基準をきめてこのままにしておいたほうがいいのかどうかということについて伺いたい。
  61. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 御指摘のとおり、そういう本も出ております。そのためにあるいはそれを実験してみる家庭が出るということも考えられるわけでございます。この制度の趣旨を先ほど申し上げましたが、日本の酒税法でございますと、たとえばしょうちゅうにつきましては一キロリットル十一万円という税金でございますけれども、このしょうちゅうに糖類を加え、果実等を加えますとリキュールになりまして、その場合には三十万円近くの税金になってしまうというような、酒の種類による課税の差別を置いております関係もございますので、一般的にこの酒の種類を乱してしまうような結果はできるだけ避けたいという点はございます。  そういう意味で、同時に、古来から酒に親しんでいる国民がそれに一般的に普及している方法で加工を加える、つまり梅酒のようなものだけはみなし製造とはしないのがいいのではないかということから始まった制度でございますけれども、これがさらに十三品目に拡大されて、その意味からいうと中途はんぱではないか、いっそ全部広げてしまったらいいではないかという御意見もあり得ると思いますが、先ほど申し上げましたような課税の税率の非常な違いというものを考えますと、無制限にこれを考えるわけにもいかない。しかも実際にこのリキュールという一種の混成酒と申しますか、こういう種類の酒をつくっているメーカーが非常に零細でもございますし、それらを勘案して消費者の嗜好を満たすということを一面に考え、同時に、全体としての酒類の製造の健全な発達ということも考えてまいりますと、やはり品目にある制限を加えておくことは必要かと思いますけれども、御指摘のようにやってみて、あまりつくる理由のないものがあるために、実際上十三品目が十三品目にもなっておらぬというような実情もなきにしもあらずでございます。そういう意味では不必要なものは再検討する必要があるかと思いますけれども、その点さっき申し上げましたような酒税の体系全体を考えながら、各種の要望もございますので、十分に慎重な検討を加えているところでございます。さらに今後検討を続けてまいりたいと思いますので、検討の結果によってはまた必要な措置をとることもあり得るかと思っております。
  62. 只松祐治

    ○只松委員 ほんとうは税小の委員会かなんかでこの問題だけを二、三時間みっちりやれば、相当いい結論がその場で出ると私は思うのですよ。まあ酒とは何ぞやということで、酒税法の第二条に一%以上のアルコール分を含んだものということがずっと書いてありますが、要するに醸造するものと、それから現在ある醸造されたものに対して加工をしていくというもの、十種類あるんですよね。いまここで果実酒というのは、醸造するものでなくて、醸造されたアルコール分に対して加工をしていくということになる。その場合ちょいちょいあなたのことばの端に出ておるように、税体系を乱すということと、それを裏返せば間接税なり酒税の税収が減ってきはしないか、こういうことが一番主税局としては——まあ国税庁としては密造酒というような段階になってくるでしょうけれども、主税局としては税収が減りはしないか、あるいは伸び悩むのではないか、こういうことが心配されてくる。ところが、ほんとうは酒とは何ぞやということから始まって、それからあなたが言う酒税が減ってくるという——売買するかというと、売買はしません。家庭でどういうふうに使われるかという問題も全部論じてくれば、ぼくはあなたたちが懸念しているような問題はほとんどない、こう思うのですよ。  あなたたちは一番酒税体系が乱れるということを考慮される。私は決してそうじゃない。たとえばここであなたのほうから説明してもらってもいいのだけれども、私のほうにたまたまありますから言いますが、しょうちゅう、ウイスキーの特、一、二級、リキュール、こういうもののこの数年来の伸び率、こういうものを見ましても、しょうちゅうの甲類で昭和三十八年度、五年前が九十八億、四十三年度では九十四億、ところがウイスキーの特級は四十六億が百五十三億になっている。それから一級は十六億円が七十億円、二級は六十一億円が百二十三億円、リキュールも十億円が八十億円、こうやって急速に伸びてきております。その中で伸びないのは、あなたたちが逆にしょうちゅうが伸びていると言うけれども、しょうちゅうはほとんどそう変わらないで、ほかのものは急速に伸びてきておる。じゃ各家庭でこの果実酒というものがそんなにつくられていないかというと、約四百万から五百万ぐらいの世帯でこの果実酒というものが愛用をされておる、こういうことです。  こういうものを見ましても、確かに最初は家庭ですから、家庭の中で奥さん方がしょうちゅうに添加して果実酒やあるいは花の酒や何かそういうものをつくられる。それから進んでいってやはりウイスキーやブランデーや、あるいは本格的なリキュールを愛用される、こういうことだろうと思うのですね。この四百万、五百万の家庭がありながら、こうやってしょうちゅうはほとんど横ばいでありながらほかの酒がぐんぐん伸びていく。ちょうどいま男女平等か何かの関係か知りませんが、女性のたばこをのまれる人が非常に多くなった。こういうことで一戸に二人の成人があれば一人はのむ、こういうふうになってまいりまして、たばこというのが伸びておりますね。未成年者がのんでおるだけではない。こういうことで、ぼくはこういう数字を見ても、あるいは一般的にそういうものを類推しても、各家庭のあり方というものを見ても、決してあなたたちが言っているような税体系を乱したり、あるいはこのことによって酒税が減ってくる、あるいは洋酒が圧迫される、あるいは洋酒が伸びていくから逆に日本酒や何かほかのものが圧迫されていく、こういうことではないと思う。だから、そういう面ではあまり酒税とか行政的な面からだけ見てないで、もっと大局的な立場から見ていくべきではないか。それを私は、大臣のほうの政治的な面とも関連がありますが、こういうことをさっきちょっと言った。そういう点、大臣はどういうふうに思いますか。
  63. 福田赳夫

    福田国務大臣 この問題は私はあまり詳しく承知しておりませんが、いろいろいきさつもあるようでございますので、慎重に検討さしていただきます。
  64. 只松祐治

    ○只松委員 慎重にということですが、私が言っていることは大体おわかりになりますかどうか、こういうことです。
  65. 福田赳夫

    福田国務大臣 あなたのお話もよくわかるのです。わかるのですが、いろいろいきさつもあるようでございますので、慎重に検討さしていただきたい、かように申し上げているわけです。
  66. 只松祐治

    ○只松委員 話はわかるけれども慎重にというのですが、わかったようなわからないようななにです。確かにきょう突然質問して一挙にどうする、こうするというにはまいらないかと思いますけれども、やはりこれにはこれだけの、長年いろいろ論じられてきたりしている。一般的にマスコミや何かは大きくは取り上げてきておりませんが、しかし、それぞれの専門業界では相当激しく争われたり何かして、利害関係を伴っているようですから、私はどっちの業界に味方をするとか味方をしないとかいうことで言っておるわけじゃない。一番問題は、四百万から五百万の愛用される家庭があって、主として御婦人だ。結局御婦人が酒に親しまれてこういうものを家庭でつくっていく。さっき平林君が言いましたように、やがて家庭生活が上がるという大蔵省のバラ色の設計がある。当然それに伴って家庭内でいろいろな酒を愛用していく。その場合一番低い国民生活の中から入りやすいのはホワイトリカーですか、しょうちゅうにそういうものをいろいろ添加して、そして家庭でつくっていく。しょうちゅうは安いですから、そこから入っていくのが一番楽しみでもありますし、家庭生活を豊かにする面もあるし、いろいろなプラスの面が出てくる。一言で言うならば家庭円満の秘訣と申しますか、こういうことになる。これはあなたたちの中で、石田博英さんもそういう面からだけじゃありませんが、非常に推進しております。あるいはずばり家庭円満の秘訣ということは言っておりませんけれども、家庭生活の豊かさ、こういうことを言っている。事実皆さん方の御家庭でもつくっておられて、奥さん方が楽しんで、晩の食卓をにぎわしている、豊かにしているということが非常に多いわけです。  そういう面を考えるならば、あまり四角四面の法律で取り締まる、こういう面からではなくて、もっと社会的な面からこの問題は対処していく必要がある。しかも業界で争っているような、この数字から見ても私は利害関係というものは直接関係はあり得ない、こういう前提に立っているわけです。これがほんとうに業界が争っているような形であれば、またあまり酒税体系が乱れるということになれば、あなたのほうがさっきから言われるような点を重点的に考えていくということもいいかと思いますけれども、私は、まず酒税体系もそんなに乱れないし、業界が争っているのは、この数字とはおのずから別個のものである、こういう観点に立っているわけです。  そうするならば、国民生活をエンジョイしていく。言うまでもなく外国では方々の国がこれを無制限にしておる国さえもたくさんありますね。したがって、総理になろうとされる福田さんがどういう構想を打ち出されるかわかりませんが、少なくとも家庭生活を豊かにしていくのにそういうものが一つの大きなささえになる。そういう意味大臣にいろいろ質問したい問題がある中で、私がきょうあえて一番先に質問するゆえんのものも、見方によっては雑酒くらいのというような形でしょうが、そうでなくて、私はいまの家庭生活というものを見渡した中で、これが自由につくられる。たとえばレモンなんかつくることはできないわけですね。ミカンはつくることはできても、レモンはつくることはできない。そんなばかなことはないですよ。だから私は、とっちめようという質問じゃないのでもう少し前向きの答弁がされると思うから、論争といいますか、そういうばかなことはあまり言っていないわけですが、ミカンはいいけれどもレモンは悪いとか、こういった比較をすれば一ぱいありますけれども、そういうばかなきめ方はないわけですね。私はそういう論議をしようとは思わないのですが、もう少し国民生活を豊かにしていく、家庭生活をエンジョイさせていく、こういう面から、これを社会的、政治的に高度な判断をしていく必要がある、こういうことであえて大臣に御意見を聞いておるわけです。どうですか。
  67. 福田赳夫

    福田国務大臣 私は、この問題はきょう初めてあなたから伺うわけなのです。そういうようなことで、ここで結論的なことを申し上げるわけにはいかぬと思いますが、あなたのおっしゃる御趣旨はよくわかったつもりであります。慎重に検討させていただきます。
  68. 只松祐治

    ○只松委員 慎重という度合いですが、前向きでこの十三品目を、たとえばトチ酒はだめだからとか、また新たに加えるとか、あるいは無制限にするとか、そういう全般を含んでの慎重だろうと私は解しますけれども、このままではよくない。何らかの形でそういう社会情勢、国民生活の変化に適応して、それからこうやって実際本も書かれて、各家庭でいろいろな酒や何かもたくさんつくられているわけです。そこら辺にたくさんあるから、何百種も酒がつくられている。厳密にいえば石田さんなんか脱税で逮捕しなければならない。何ならあなたのほうで密造酒で逮捕して——国税庁長官にきょうひとつ教えてもらいたいということをぼくは言ったのだけれども、そういうことまで聞いていると長くなりますから、せっかくおいでいただいたけれども、きょうはやりませんが、つまらないことであちこちで密造という形で、同じようなくだものが場所によって呼び方、名前が異なるのですね。そうするとその名前を使って摘発して罰金をかけたり、そんなばかなことをしているのですよ。そういう問題は別の場所で、税小か何かでやりますから、そういうことの論議はきょうは私はいたしません。  ですから、もっとおおらかな前向きの形で——こうやって何百種という酒が一般家庭で現実につくられている。そしてその人たちは別に逮捕もされなければ何もされていないで、堂々と市販されているわけですから、これはやはり国民生活上やむを得ないといいますか、いいとはあなた方も言わないだろうから、やむを得ない、ある程度しかたがないという前提に立って、これはどうにもできない。この十三品目がきめられる前にもすでに出ておって、そのときには酒税法違反であるとかなんとかいうことで多少論議があったのですが、それでもどうすることもできなくて、この十三品目が許可されたわけですね。今日ではもう何百という酒ができるということが一般的にいわれている中で、それでつくられているわけですね。そういうものを、事実上破られている法律をもってこれだけで縛っていくというのは私は誤りだと思う。それよりもむしろ、全部を撤廃することは慎重さが必要でしょうけれども、もっとこれを広げていくなり何なり、前向きの形での慎重さということを言っているのではないか、そういうことではないですか。
  69. 福田赳夫

    福田国務大臣 あなたのお話、興味深く拝聴したわけです。よく考えさせていただきます。
  70. 只松祐治

    ○只松委員 主税局長、どう思いますか。
  71. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 御趣旨の点を参酌しながら、実情を大臣に十分お話し申し上げまして御判断をいただきたい、かように存じます。
  72. 只松祐治

    ○只松委員 約三十分たちましたので、この問題だけで押し問答いたしておりますと、ほかの一般財政問題等ができませんから、きょうはこの程度にしておいて、まあ大臣も趣旨はよくわかったということでありますから、きょうの私の趣旨をよく御理解いただきまして、御検討をしていただきたい。別な機会にもっと具体的な質問をしてみたいと思いますから、具体的なお答えをいただきたいと思います。ぜひひとつこういう前向きの検討をしていただきたい。事務局のほうでも、この前から私がこういう質問をするということは多少言っておいたわけですから、ただなかなか微妙な問題だから、一挙にはというような話もありましたけれども、もう少し——というのは、ちょうどいまから梅とかなんとかいろいろなくだもののとれる時期になるのですね。そうすると、やはり五月から六月に向かってそういうくだものがだんだんとれてくるので、一般家庭ではこれを認めるか認めないかということは、果実酒をつくる上で非常に大きな問題といってはなにですが、一番山に差しかかるわけです。そういう意味で、ある程度の方向が示されるならば、ひとつ五月ごろ、果実のとれるころまでに前向きの答弁あるいは姿勢というものが示されれば国民は喜ぶわけですね。だから、そういう意味で私はきょうも取り上げておるわけでありまして、ひとつそういうふうに御検討いただきたいのですが、どうですか。
  73. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 これは現在具体的に品目をあげて要請がございます。それにつきましては、私どもとしても現在検討をいたしておるわけでございます。先ほど来申し上げましたようないろいろな関係がございますので、直ちに結論が出ない段階でありますが、この検討につきましては、私ども今後できるだけ早く結論を得たい、かように考えておるわけでございます。
  74. 只松祐治

    ○只松委員 できるだけ早くということですから、私が繰り返し言いますように、ひとつ期日が来年にならないように、ことしの果実が実る前に、これはいわば腹一つですからね、ひとつ出していただきたい。それを要望いたしまして、この問題の質問を終わります。  それから、大蔵大臣は少し前にアジ銀へおいでになってお帰りになったわけでございますが、ここでいろいろ演説をされたり、記者会見等でいろいろ発表をされた。きのうですか、ちょっとそういうことにも触れられましたけれども、一口にいえば非常に強気といいますか、だれかがそう言ったら、まあ外相よりは弱気だというような話もありましたが、われわれから見れば強気の発言、こういうのは何に基づくわけですか。たとえばアジアの現実というものを見てそういうことを痛感されたのか、あるいは日本の少しばかりたまってまいりました外貨の蓄積、こういうもので強気になってああいうことを言ったのか、御心境のほどをひとつお聞かせいただきたい。
  75. 福田赳夫

    福田国務大臣 私は、日本の国の国際社会における姿勢が一つの曲がりかどに来ている、こういう判断をいたしておるわけです。戦後二十五年間、きわめて順調な復興、発展を遂げて、いまや世界第三位の経済実力を備えるというところまで来たわが日本でありますが、今後の日本の国の成長、発展ということを考えてみると、そうしますと、いままでの行き方とかなり変わった姿勢の転換をしなければならぬ時期に際会した、こういう判断をしておるのです。  つまり、わが日本が弱小国である、特に経済的に見まして、そう世界で第何位だという国でもない過去におきましては、わが国はもうわが国自身のことだけを考えておればそれでよかった。ところが、今後日本が伸びていくためには、やはりもう一つの壁に突き当たろうとしておる。つまり、わが国自身だけでは伸びいくことはできません。政治的にもあるいは経済的にもこれは許されない。わが国はもう世界の中のそびえ立った経済実力国といたしまして、世界の繁栄に責任を持たなければならぬし、また、世界が繁栄しなければわが国の成長発展にも限界がある。わが国はもうぼつぼつと姿勢を転換して、世界の繁栄に責任を持つというかまえを示さなければならぬ時期に来ておる、こういうふうに考えておるのであります。しかし、さればといって、わが国経済の将来はどうかというと、わが国経済がさほどの発展を示さないという見通しであれば、そうは考えてもなかなか国際社会に協力することはできませんけれども、展望するところ、この五年間ぐらいは相当を確率をもって成長発展を期待し得る、こういうふうに確信をするわけであります。  さようなことから、私はアジア開発銀行の総会に臨みまして、わが国といたしましては、今後後進国の開発には大いに協力をしたい。また、国の情勢が許せば、五年間で今日のアジア諸国に対する経済協力の額、一九六八年は五億ドルであったんだが、これを倍ぐらいにしてみたい、こういう発言をいたしたわけであります。この倍くらいというのはどういう高さであるかと申しますと、大体ノミナルの成長率一五%見当ということでございますけれども、いまわが国世界各国の後進国に対しまして援助しておる額、総額はわが国の国民所得の〇・七%ぐらいに相当するわけでございます。国際社会におきましては、わが国など先進国は一%の協力をすべしという要請をされておるわけなのでありますが、なかなか一%ということはむずかしいかもしれませんけれども、とにかく経済も伸びていくであろう、それに見合いまして、経済援助というものは五年間で倍増ぐらいアジア諸国に対しては特にいたしていきたい、こういう気持ちを表明したわけです。
  76. 只松祐治

    ○只松委員 全体としては倍増というようなことのようですが、それでは具体的にどこの国を中心にして——あるいはインドネシアの経済の動向が非常に重要だというような談話を発表されております。たとえばインドネシアを中心にしてやるとか、あるいはインドを中心にやる、なかなか前もって発表すると影響するところが大きいかと思いますが、およそそういう国家を目標として考えておられるのか、何となしに倍増、こういうことですか。あるいは農業開発を中心に考えておるのか、あるいは教育というような問題も出されておるのか、あるいはどこかの工業開発を中心にされておるのか、そういう具体的なものがあっての場合ですか。ただ何となしというのですか、どうですか。
  77. 福田赳夫

    福田国務大臣 大きく申し上げますと、援助の対象は近い国々である東南アジア、次いで中近東というようなところになるだろうと思います。さらにその他の低開発国ということになるだろう、こういうふうに思います。  それから、援助のやり方につきましては、その国々につきまして事情が違うと思うのです。援助を受ける国々は、それぞれ自力更生の計画を立てることをわれわれは要請をし、期待をいたしておるわけであります。その計画におきまして、どういうところからまず着手されなければならぬか、そういうようなことをよく見きわめまして、援助が有効適確にその国の国情に合致しながら、その国の発展に役立つようにという配慮をしていきたい、かように考えておるのであります。
  78. 只松祐治

    ○只松委員 これは午前中も論議がありましたが、たまたまいま、月間一億ドルからの外貨が蓄積されていっておりますから、いわばそういう強気の発言もできるのだろう。たとえばかりに、逆にこれが減ったというようなときになれば、大臣、アジ銀に参りましてもそう強気の発言はできないと思います。これはいまみたいな経済情勢のもとにおいて言われておるのか、それとも外貨の蓄積や何かが減ろうともそういうものと無関係に、アジアの後進地域の現状を見るときに、やっぱりやっていかなければならない、こういうことで、日本経済と見合うということは当然でございましょうけれども、あくまでこれは現状に立脚したものですか。
  79. 福田赳夫

    福田国務大臣 私は大蔵大臣らしく、わが国の実情、実力これを許せば、五年間に倍、こういうふうに申し上げておるわけであります。今日のわれわれの見通し、そういうものを前提としての発言であります。しかし、これに大きな変化がある、わが国外貨事情がよくない、経済の成長もよろしくない、財政の事情もまたよくないということになれば、これは格別であります。しかし、そういうことのないように経済政策は運営をしてまいりたいと存じますが、もちろんそういう前提のあることは御承知おきを願いたいのであります。
  80. 只松祐治

    ○只松委員 こういう大きな金を対外的に支出をしていくということになると、国内の場合では、日本のようにこれだけいろいろな行政機構が確立しておりましても、金の使い方にいろいろ問題が出てくる。外国へ支出いたしますと、こういう後進国の場合には、インドネシアあたりなんか、すごい汚職や何か横行しておる。社会秩序も必ずしも十分でないわけです。こういう国家に援助する場合に、ある程度おおらかといいますか大まかといいますか、そういうふうにならざるを得ないであろう。しかし、大切な日本の国民経済の中から、これはあとでお聞きしますが、国民生活を一方的に押えながらも公約していかなければならない。私はもっとこれに対して監視といいますか検査といいますか、こういう機構を設ける必要があるんではないかと思います。ただ出すだけどんどん出して、それが有効に使われていようがいまいが、あるいはどういう成果をあげてきておるか、農業開発なんかなかなかその成果を端的に見出すことは困難であろう。しかし、そういうものについても、私は、明らかにする責務があると思う。こういう多額の金を支出していくようになると、よけいに私は何らかの形で、調査機関といいますか検査機関で、その成果を確かめていく、国民にも示していくということが必要になると思うのです。何かそういうことについて構想なり、また今後必要があるというふうにお考えですか。
  81. 福田赳夫

    福田国務大臣 ごもっともなお話なんです。そういうことでございますので、私どもとしては援助がほんとうにその国のために役立つか、援助を与えて、プロジェクト援助であればプロジェクトの効果いかんということを十分検討いたしました上で、援助の取りきめをいたすわけであります。さようなことでありますが、これは国内でたとえば補助金を出すとか、あるいは特別の融資をいたしますとか、そういうものとはまた違った面がありますのは、相手は独立国家である、そういうふうなことで、内地では考えられないきつい壁というか限界があるわけでございますけれども、御説のような趣旨でできるだけの努力をいたしておる、こういうのが実情でございます。
  82. 只松祐治

    ○只松委員 だから、今後大きくなると、単にいままでの機構だけではなくて何か特別の、大蔵省の中に設けられますかあるいはアジ銀等の中のそういう部面を強化されるか、これはもちろん固まってないと思いますが、何らかの形で私はそういうものをしていく必要があるんじゃないかと聞いておる。特別な機構なり何なりそういうものをおつくりになる、あるいはそういうものをもっと強化していく考えをお持ちでございますか。精神ではなくて機構そのものです。
  83. 福田赳夫

    福田国務大臣 それはいろいろ手を尽くしております。詳しくは、いま国際金融局次長のほうからお答えをいたします。
  84. 奥村輝之

    ○奥村説明員 御指摘の点はまことにごもっともでございますので、昨年から各省相談いたしまして、外務省はやはりこういうところの窓口になりますので、外務省が中心となりまして、専門家あるいは役人、こういうのが、日本から巨額に援助いたしておりますその先に調査団を出しておるわけでございます。いま作成中の調査報告、まだ出てきておりませんものが多いわけでございますが、大臣もお答え申しましたように、相手国はそれぞれ独立国でございます。私どもとしてはあくまでも前向きの立場をもちながら、援助がさらに有効に使われるにはどうしたらいいか、こういうふうな積極的な観点でこういうような制度を今後とも相手国の身にもなって運営してまいりたいというのが、具体的に現在行なっておる方式でございます。
  85. 只松祐治

    ○只松委員 こういう対外援助の増大の中に、いまの社会主義国家というのは事実上何も含まれておりません。その点については国交回復もしてないのが幾つかありますが、そういうことになっています。まあいまのところは資本主義国家内で日本の貿易というものが順調に伸びておりますからいいけれども、これも必ずしも、昨年から論議しましたように、資本主義陣営内だけの国際貿易というものを手放しで喜ぶべき状態ではない。そういう経済的な問題からだけではなくて、もっと社会主義国家との関係というものを深めていかなくちゃならない。日中貿易もしりすぼみになってしまっておる、こういう状況下にあるわけです。とかく今度の蔵相の勢いのいい演説でも、ある面ではアジアにおけるアメリカの肩がわりではないか、こういうことが裏側でささやかれてさえおるわけです。そういうことでないという証左のためにも、もっと社会主義国家との関係というものを深めていかなければならぬ。アジ銀の中だけではこれは解決できない問題だと思います。やはり東南アジア全般の問題としても、たとえばベトナム戦争が終わるということになると、南ベトナムだけではなくて、北ベトナムその他にもそういう復興の手というものはやっぱり差し伸べていかなければならない。そういう社会主義的な諸国、社会主義圏についても蔵相は同様なお考えをお持ちでございましょうか。
  86. 福田赳夫

    福田国務大臣 アジ銀と限らないで全般の話といたしますと、わが国世界各国と差別なく経済的には交流をいたしておるわけであります。ただその間に、社会主義国でありまして、わが国と通常の国交を持たない国が四つあるのです。中共、北朝鮮、北ベトナムまた東ドイツ、これらの国に対する交易のしかたというものは、おのずから他の諸国とは違ってくる、こざるを得ないのであります。気分といたしましては、経済経済だ、政治は政治だ、こういうようなことで全面的におつき合いをしておる、またこのおつき合いが伸びることを期待している、こういうふうに御了解願います。
  87. 只松祐治

    ○只松委員 今回おいでになったあれはアジ銀でございますが、いまお答えいただきましたように、経済全般としてはそういうことです。さらに具体的に輸銀の延べ払いやそういう問題についても、これだけいわゆる非社会主義国と申しますか、社会主義国家以外のところとは援助も大幅に増大していく。そしてその開発を援助していくという立場に立つならば、開発まではいかなくとも、通常の貿易の輸銀の問題や何か、そういうものはもっとおおらかな気持ちなり積極的な立場をとるべきだと思います。日中貿易の先細りなんというようなことも考えて、大蔵大臣は、この際ひとつ積極的に、アジ銀で示されたようなそういうお考えにおいても、本年度から前向きの姿勢で取り組む、こういうことをひとつお答えをいただければ幸いだと思います。
  88. 福田赳夫

    福田国務大臣 社会主義国とおっしゃいますが、社会主義国の大本山であるソビエトロシア、これとの間にはきわめて活発なる経済協力関係が結ばれておるのであります。だんだんとこれが伸びていく傾向にさえあるわけであります。それから東欧諸国においてまたしかり。ただ条約を持たない、つまり国交のまだ回復しておらない国との間はなかなかむずかしい。この間の関係は、いわゆる政経分離という方式でいくほかはないというので、従来ともその方針でやってきておりますが、今後もそういう方向でやらざるを得まい、こういうことに相なるわけであります。それらの国交のない国に対する輸銀の使用、これも輸銀は政府機関なものですから、いろいろとむずかしい問題が出てきますが、これらはケース・バイ・ケース、こういう方針でやってきておりまするし、今後もその方針でやっていく、こういう考えであります。
  89. 只松祐治

    ○只松委員 だから、いま繰り返しませんが、大臣先ほどから述べられたような気持ちがあるならば、アジアにおける社会主義国——ソ連は国交回復をして貿易しているとおっしゃるなら、まあしいて言うならばアジアにおける社会主義国家とも、もう少しおおらかな気持ちで、ケース・バイ・ケースを一歩進めた形でやっていくべきだと思います。アジア銀ではあれだけの非社会主義国家にとっては前向きの話ですね。だから、これだけのことを言われた福田さんですから、ひとつ社会主義圏も同様の——同様までいかなくとも、少しぐらい前向きの発言をいただきたい、こういうことです。
  90. 福田赳夫

    福田国務大臣 御意見としてとくと承ります。ありがとうございます。
  91. 只松祐治

    ○只松委員 御意見を聞いておくということですから、全然無視するということではないと思いますが、ぜひそういうように要望をいたします。  どうも聞きたいことが、さっきから言いますように初めての一般質問でございますから、いろいろあるわけですが、もう一、二問聞いておきたいと思います。  次に、当面の問題の一つとして、やはり証券問題について若干お尋ねをしておきたいと思います。いま史上最高といわれるダウ平均が千九百円の大台をこしました。これについて、ひとつ大臣の御所見を伺っておきます。
  92. 福田赳夫

    福田国務大臣 私がオーストラリアへ行っている間に、千九百円の大台をこしたという話を聞きました。これは結局、わが国経済の発展また今後に対する展望、これに対する期待、信頼というものを象徴するものである、これがこの株式市場にあらわれてきておる、こういうふうに基本的には考えております。しかし、こまかいことを言うといろいろ問題があるわけでありまして、千九百円と申しますが、最近の株式相場の成り行きを分析してみますると、一つ一つの銘柄が軒を並べて上がっておるという状況じゃない。特定の種類の銘柄に特に集中的に騰貴現象が見られる、こういうような状況が一つ。それから、それに関連いたしましてもう一つの問題は、国内の投資家の意欲も上がるには上がっておりますが、外人の日本の株式に対する需要というものが非常に強くあらわれてきておる、こういう点なんであります。私は、この状況を見まして、必ずしもこれは過熱の状態であるというふうには思いませんけれども、そういうことでなくて、いまとにかく日本経済に対する、また日本の企業に対する信頼感というものがそうさせておる、こういうふうに見ておりますので、いま静かにこの株価の成り行きについて慎重に注目しておる、こういうのが現状でございます。
  93. 只松祐治

    ○只松委員 これまたえらい強気の発言がありまして、過熱ではない、わが国経済への信頼や期待に対応するものだ、こういうことですが、私は必ずしもそうではない。  そこで、そういうことならば、証券局で十二銘柄について売買の報告を求めておりまして、まだこの内容は出てきておらないようですが、ひとつその状況についてお知らせをいただきたい。
  94. 広瀬駿二

    ○広瀬政府委員 ただいまの御指摘の十二銘柄についての売買内容の報告は、これは去る四月十一日に東京証券取引所において行なったものでございまして、なお同日大阪証券取引所では六銘柄について売買内容の報告を求めておりまして、会員から、四月七日から十一日までの分につきまして昨日の十五日に報告をするように、それから十二日以後の分は四日目ごとに報告を求めております。したがいまして、まだその結果につきまして証券取引所におきまして集計分析中でございますので、的確なことはわからないわけであります。  いまお尋ねになりました十二銘柄の状況はどうかということでございますならば、最近の値上がりの状況を約一カ月の間をとりまして、四十四年三月十一日から四月十一日までの十二銘柄の状況でございますが、各銘柄について申しますと、大和ハウス九百一円から一千三百四十四円、値上がり幅四百四十三円、上昇率は四九%、資生堂は七百円から八百七十円、上昇値幅百七十円で上昇率二四%、ナショナル金銭登録機六百二十三円から九百三十円、三百七円の値上がりで四九%、立石電機七百四十円から九百六十円、二百二十円上がりまして上昇率二九%、ソニーは一千五百十二円から一千八百九十八円、三百八十六円の値上がりで二五%、東京電気化学六百九十五円から千円、三百五円上がりまして四三%、ミツミ六百四十九円から八百二十六円、百七十七円の値幅で二七%、アルプス電気八百三十六円から九百四十九円、百十三円の値上がりで一三%、パイオニア九百三十五円から千二百四十円、三百五円で三二%アップ、松下電工五百三十五円から六百九十円、百五十五円の値幅、二九%アップ、リコー三百六十四円から四百五十三円、八十九円、二四%アップ、日本楽器四百二十円から六百二十円、二百円、四七%のアップ、こういうふうになっております。
  95. 只松祐治

    ○只松委員 いまお読みになりましたが、約一カ月間で一番少ないので一三・五%から多いのじゃ四九・三%というように、大体三〇%から四〇%一カ月間に上がっておるのですね。それでは日本経済大臣の言われるように、きわめて信頼が高まった、こういたしましても、一カ月間にそれほど利潤が急増したり配当が多くなったり、あるいは増資で何か利益が出るとか、全部が全部そうではない。また、そういうふうでないから証券局としては報告を求めておるのだと思う。そうすると、大臣がさっきおっしゃった強気の発言と現状とはいささか異なるのではないか。大臣はそう思わなくて、あくまでこれだけ上がっていくのも日本経済が非常に信頼され期待されておるからだ、こういうふうにお考えですか。私はついでに言っておくならば、相当の相場というものがここでつくられておるのではないか、こういう気さえするのですが、そういうことは全然ない、こういうふうにお考えですか。
  96. 福田赳夫

    福田国務大臣 私が、これは日本経済に対する期待と信頼だと申し上げております主たる理由は、これらの株が買われる、値がさ株が特に買われる。だれが買うのだというと、それは国内の投資家もありまするけれども、外人が買うのです。これはどういう現象だろうか。やはり私は、世界じゅう見てみて、世界の人々が円というものに対する、またそれの背景としての日本経済に対する信頼感、これがものをいっておる、こういうふうに見るわけです。それが端的にこの株価にあらわれてきておる、こういうふうに見ておるわけであります。いろいろ証券局はたいへん注意はしておりますが、とにかくそう大きな投機的様相というものはいまのところは認められない。しばらく推移を静観するという態度に出べきじゃあるまいか、こういうふうに考えております。
  97. 只松祐治

    ○只松委員 証券局のほうの報告を求めますと、まだこの報告を受けた内容というものはわからない。もう一週間ぐらいかかるということですが、大臣はずばりと外人投資家による、こういうお話であります。私は勘としてはそうかもしれませんけれども、外人投資家ばかりではない。証券局はまだその調査は終わっておらないわけですから、そういうことはなかなかいえないと思うのです。大臣なかなか高姿勢で強気の発言ばかりされるのですが、私は、たとえそのとおりであっても、外人投資家がちょっと手を引けばそのかわり逆に値がくずれてくる、こういうことになる。この面からいっても、大臣おっしゃるとおりでも危険性があると思いますが、そういう論争はさておきまして、とにかくこうやって異常な値上がりをしてきておるということに関しては十分注意しなければならぬし、対策もしていかなければならぬ。  と申しますのは、わずか三、四年前に株価が落ち込んでしまってどうしようもなくて、保有組合や共同証券に肩がわりをさせました。山一や何かには日銀特融資を出して、無利子、無担保、無催促、こういう形で日銀がして、私たちはそんなばかなことがあるかと言ってやったわけですが、とにかくやられた。依然としてそういう傷というものが残っておるわけですね。きょうあたりの新聞等を見ましても、山一、大井に向けての日銀融資はひとつ市銀に肩がわりしようかというようなことが出ておりますけれども、これだけ、大臣が言うように、ほんとうに日本経済が立ち直ってきた、あるいは証券界もほんとうに立ち直ってきたということならば、私は、即刻あるいはもっと早く、山一や大井証券等にはやっぱりこれは市中銀行等に肩がわりさすべきだと思う。ほんとうに日本経済が立ち直ってきて、けさから言われるように、少なくとも五年先ぐらいそういう強気の展望が持てるならば、安心して市中銀行に肩がわりさすべきだと思うのです。そういうふうな措置というのは、これは自然に出てきたのか、大蔵省がサゼスチョンされたのかわかりませんが、おそきに失したと思うのです。こういう点について、もっと大胆にといいますか、まあ直接やるのはどうかという話もあるようですが、しかし、日銀がこれを特融した場合には大蔵省の意向でしたわけですからね。よくいわれますように、損するときは、ひとつ拝みます、頼みますと政府なり日銀なりに泣きついてくる。ところが、もうけたときには、われらは私企業だからあまりうるさく言うな、大蔵省の逃げ手も、これは私企業だからあまりそう指導はできない、こういうことを言うわけです。しかし、これは本末を転倒しておる。もともと大蔵省の指導で日銀の特融がなされたわけですから、これは即刻返すべきだと思うのですが、どうですか。
  98. 福田赳夫

    福田国務大臣 山一や、また大井証券に対する特融につきましては、それは特融が行なわれた当時はずいぶん御批判もありましたが、その後証券界の状況が改善をされましたに伴いまして、特融額もたいへん減ってきております。山一についていいますと、当初は二百八十二億円であったものが現在九十八億円、また大井証券につきましては、五十三億円であったものが現在は十三億円と、かように減ってきておるのであります。  しかし、これは特融でございまして、こういう事態はお説のとおり早く解消されたほうがいい、こういうふうに考えておったのでありますが、いま、この残っておる山一の九十八億円、それから大井の十三億円につきまして、日銀特融からこれをはずして市中金融に切りかえようかという話が進行中であります。大蔵省といたしましては、とにかくこういう事態がなくなるということが一刻も早いようにという考え方をいたしておりますので、資本市場の正常化という上からも、これは歓迎すべきことではあるまいかというふうに考え、そういう姿勢でこの問題に臨んでおる、かように御了承願います。
  99. 只松祐治

    ○只松委員 同じようなことは共同証券にも続いて言えることでありまして、六百六十億くらいなお残っておる。これだけ史上最高の高値をつけた、操作でも何でもして、仕手株その他何でもして。その基盤をなすものは、とにかく日本経済界に対する信頼だ、こうおっしゃるならば、経済も本格的に再建されたのだから、外国へもどんどん金を援助するということならば、この日本における五、六百億の証券界のいわゆるぶざまなかっこうといいますか、外国から見てもあるいは国内から見ても、なおかつこういうものがあるということは、たいへんぶかっこうな不健全なものだと思うのです。それならば、私がこの前聞いたときも、できるだけ努力する、年内をめどということをにおわされたわけでありますが、これも私は早くやるべきだと思う。その場合も、いや、民間だからという逃げ口上をすぐ使われるわけですが、これも繰り返して言いますように、そのときは大蔵省が指導してやったわけですから、当然に解散のときも大蔵省がイニシアをとってすべきだと思う。もしこれができないとおっしゃるなら、本格的な証券界の立ち直りではない。こういうことにもなる。それから、本格的に立ち直っておるのだけれども、しないというのなら、あまりにも一方的だ。これだけの金があれば、もっと政府はほかのことができる、日銀だって別個の仕事ができるわけですから、立ち直ってしまって、もうけ過ぎて、警告さえも発しなければならないという証券界に、こういう過剰保護といいますか、する必要はさらさらない。即刻おやめをいただきたいと思いますが、いかがですか。
  100. 福田赳夫

    福田国務大臣 お話しのように、共同証券は非常に奇形な存在なんです。これはなるべく早く解消されたほうがいいのです。そういうようなことではございますが、これまた一挙に六百六十億円もあるという株価のものを放出するわけにもいかぬ、ぽつぽつと放出をしなければならぬというふうに考えてきたわけですが、幸いに証券市況も非常にいいわけでありますから、共同証券保有株の放出も順調に行なわれる、こういうふうに見ておるわけであります。前々からそういうことを希望しておったのですが、本年中にはとにかく放出を終わりたい、こういうふうに思っておったのですが、特別の異変がない限り、どうやらそういう方向に行きそうだということは、かなり確度をもって申し上げられるような状態でございます。
  101. 只松祐治

    ○只松委員 行きそうじゃなくて、私が言っているように、これができるときの状況から、現在の株界はむしろ規制しなければならない、警告さえもしなければならないという過熱状態でしょう。そういうところを見ると、ただお説教をして、高過ぎるからやめろとか何とかしろというよりも、政府がめんどうを見てきたそういう問題について、いま月に十二億くらいですか、放出しておるのは。
  102. 広瀬駿二

    ○広瀬政府委員 週に簿価で二十億くらいです。
  103. 只松祐治

    ○只松委員 二十億くらいしておるのを三十億なりにするなり、もっと大幅に早めていくということで、下手に警告したり口頭禅に終わるよりも、実際上のそういう操作によってすべきだ、私はそういうものが一番いいものだと思う。共同証券というもの、外から見ても、まだいびつなかっこうというものがあるわけですから、そういうことをされるのが、合理主義者の福田さんに一番ふさわしい政策だと私は思うのです。そうお思いになりませんか。
  104. 福田赳夫

    福田国務大臣 これはお説のとおりなんです。しかし、一挙にというわけにまいりませんが、放出のテンポはこの市況の状態だと早め得る、こういうふうに思うわけであります。まあおそくも年内にはこれの放出を完了されるであろうという見通しが、私は相当の確度で申し上げることができるのじゃないかというふうに思います。
  105. 只松祐治

    ○只松委員 私たちは社会党ですから、別にそれほど証券界の動向や何かにこだわるものではありませんけれども、いまの資本主義社会におけるあなたたちの立場からしても、証券界の正常化ということが望まれるわけですから、ひとつ努力をしていただきたいと思います。  それから最後に、これはほんとうは一番最初に、この前アジ銀に行かれる前に一般質問があれば、私はこの問題をいろいろ論議したいと思ったのですが、多少時期おくれになりましたから、簡単にしておきます。  去年も補正予算を組むかと言ったら、絶対組まないというお話でしたが、とうとうお組みになった。ことしも、いまから総合予算主義で組むとはなかなか言えないと思いますが、絶対に組まない、こういうことでございますか。それとも、状況によっては組む、こういうことでございますか、
  106. 福田赳夫

    福田国務大臣 異常または非常な事態が出ない限り、補正を組む考えはいま持っておりません。
  107. 只松祐治

    ○只松委員 異常であるか異常でないかは、大蔵大臣と私とでは、見方、考え方が違ってくるわけです。たとえば食管会計は、ことしは米価値上げをしないというようなことを言っておりますが、自民党の中にも何とか議員という人がおいでになって、まあ社会党だけの要求じゃなくて、そう簡単に米価問題がおさまるとは思っておらない。官房長官や農林大臣のきのうあたりの談話を見ても、今度は米審に消費者代表、生産者代表を加える、こういう談話が出ておりますね。そういうことになりますと、さらに私はなかなか簡単に押えるというわけにもまいらないだろうと思います。それに去年から多少規制しております作付反別がそんなに急に減るかというと、工場の生産規制や何かと違って、去年までつくっておったたんぼをぽんとやめて、ぶらぶら遊ぶということは農村の人たちはいたしませんね。そういうことを考えてくると、私は総生産量はそんなに減るとは思わない。こういう米の需給状態、生産者米価、消費者米価、こういう問題、それからくる食管赤字、あるいはいま通行税の審議を大蔵委員会できょうぼつぼつ始めるわけですが、この状況によっては国鉄も七、八十億なり百億くらいの赤字が予想される。あるいは健保の問題で扱い方いかんによっては二百億前後の赤字が出てくる。これを大蔵大臣は異常と見られるか、いやそのことはたいしたことはないのだ、こう見られるか、そういうことによって補正予算を組むか組まないかの論議がおのずから分かれてくる。私たちは、そういう異常といいますか、そういう事態が来ることをある程度予測するわけです。そうすると、それに加わって公務員の賃上げという問題も必ず出てまいります。そういうことになると、必ずまたことしも補正予算を組まなければならぬ。その裏づけになる自然増収というものも、これもいまから言うのはちょっと早いけれども、いまの経済成長を続けていくならば、それと春闘というものがやはり去年と同じように七千円前後の賃上げが行なわれるならば、やはり二千億前後の自然増収が出てくるだろう。この使い道や何かをめぐってやはり補正予算というものを組まざるを得ない、こういうふうに私は思います。  したがって、去年は絶対組まないとおっしゃいましたけれども、今度は異常な事態がやってくれば組むというお話でございますが、その異常の見方によっては、繰り返して言いますが、あなたと私たちとは違いますが、いま私たちが言うようなことを異常であると断定するならばお組みにならざるを得ないだろうと思います。いま言ったようなことならば組む、こういうことでございますか。
  108. 福田赳夫

    福田国務大臣 いま言ったというのは、国鉄運賃法の成立がおくれておるということ、また生産者米価が引き上げられるであろう、それから健保というようなことをあげられましたが、私どもは、国鉄運賃にいたしましても、健保にいたしましても、もうぽつぽつ皆さんの御承認を得る段階が近づいておるのじゃあるまいか、さように考えております。したがって、これを機縁に補正を組むという考えを持っておりません。また、米価につきましても、前から繰り返し繰り返し申し上げておるのでありますが、両米価据え置きだ、こういう方針を堅持しておりますので、これによって補正予算を編成するということもまた考えておりません。
  109. 只松祐治

    ○只松委員 だから、大蔵大臣のおっしゃるとおり、思われるとおりにいけばそうだろう。今度は逆に、私が言うように国鉄収入が七、八十億か百億の赤字が出た、あるいは健保で二百億か二百二十億の赤字が出た、あるいは食管会計も必ずしも大蔵大臣や大蔵省の言うとおりじゃなくて、自民党なんかの突き上げが出てきた。逆にいえば、悪い条件といいますか、そういう条件が出てきた。かりに私が言っているような事態が起きたとするならば——これは起きる可能性があるわけです。去年も起きた。とするならば、お組みになりますか。それを私のほうは異常と見ますよ。大臣は、異常な状態が出てくれば組む、異常でなければ組まないと言う。私が言うようなことが異常な事態であるとするならばお組みになりますか、こういうことです。
  110. 福田赳夫

    福田国務大臣 さようなことはゆめゆめ考えてみたこともないので、補正なしでいける、また異常または非常な事態がなければ必ず補正なしで通す、こういう決意でございます。御了承願います。
  111. 只松祐治

    ○只松委員 どうも最後になりますと、すべて押し問答みたいになってしまうのですが、大臣のおっしゃるとおりならばそのとおりだ。それはそれでいいですよ、大臣のおっしゃるとおりゆめゆめなければ。しかし、ゆめゆめあれば、とにかくお組みになりますか、こういうことであります。だから、大臣のおっしゃるとおりならば組まないということでいいです。まだ予算案通過直後ですから、組むとは言えないと思いますけれども、逆の裏目に、かりにそういう問題がこういう私たちの危惧しておるとおりにいけばお組みになりますか。仮定論議ですから、水かけ論争にならざるを得ないと思いますが、今度は私のほうの仮定論議——大臣の仮定論議についてはそのとおり、私の仮定論議についてはどうですか。
  112. 福田赳夫

    福田国務大臣 只松さんの仮定論議について、かつて考えたこともないのであります。さよう御了承願います。
  113. 只松祐治

    ○只松委員 考えればそういうことになるという、裏になると思いますが、考えたことはないということですから、これで終わります。  こういうことを通じて私が最後に言っておきたいことは、対外援助についても強気ですし、株価やそういう問題についてもなかなか強気です。しかし、帰するところ、これは日本国民が一生懸命働いて、そうしてこれだけの日本経済の発展というものをもたらしておるわけですから、外国に援助するのもけっこうでございますが、しかし、その前にやはり日本国民の生活を引き上げる必要があるだろうと思う。それは、単に春闘に見られる賃金の引き上げだけでなくて、社会保障制度の確立と広範な国民生活の充実だと思うのです。株価や何かの上がってくるのも日本経済のしからしむるところで、上がるのはやむを得ない。それだけ上がってくるならば、私は、共同証券や何かもっときちっとやって、やはり国民生活をもっと充実すべきだろうと思う。  よくいわれますように、成長率は世界第一位、総生産は世界第二位とか第三位、しかし国民の所得は二十位とか二十一位といわれますように、確かに国民の総生産高を一億の人口で割った場合の所得が減ることぐらい存じておりますけれども、しかし、それにいたしましてもなおかつ日本国民の生活というものは安定をいたしておりません。しかも、これを長期的に見た場合には、昔は会社員の人でも、サラサーマンでも、ちょっと長くつとめると、退職金で自分の家だけでなく、家作の一、二軒建てることができた。ところが、いまはとてもはかない夢なんですね。よほどの恵まれた人でなければ、持ち家もできない、まして家作に至ってはなおさらである。したがって、全般的に見るならば、確かに社会現象面としては国民の生活が向上したかのような面も見られます、特に国民の消費生活、耐久消費財の面からいうならば。しかし、人間全体の生活から見るならば、必ずしも戦前より安定しておるとは思っておらない。だから、ひとつ佐藤内閣の枢要な地位におられる福田さんは、そういう面の強気といいますか、高姿勢だけではなくて、もっと国民個々の生活の向上のために十分な意を払っていただきたい。そういう面に対する努力をお願いいたしまして、質問を終わりたいと思います。
  114. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 ちょっと関連。十五日の日にちょっとNHKのテレビを見ておりましたら、株価が非常に上昇しておる。その理由の中に、証券会社の自己売買が過半を越えておるというのが第一点と、それから信用取引が現金取引よりも多いという、その事実の中から今日の株価高があらわれているという森永東証理事長の話が報道されておりましたが、それは事実でございますか。事実であるとするならば、その具体的な数字を、いまこの場でなくてもけっこうですが示していただきたい。  それについて、そういうような伝えられることが事実であるとするならば、これは非常に危険な要素を持っていると私は思うのです。それについては、大蔵大臣あたりは強気の見方を、先ほど只松君の質問に対してなさいますが、やはりあまりにもそういうふうにして投機性をもてあそぶようなかっこうになってきますと、大衆はさらに証券市場から逃げていくというようなおそれが出てくると思うのです。そういうような意味において、大蔵大臣が鎮静を呼びかけるような態度を堅持されるのが望ましいんじゃないか、こういうように考えますので、大蔵大臣にもあわせてお答えいただきたい。それだけです。
  115. 広瀬駿二

    ○広瀬政府委員 十五日のテレビの放送は、私、見ませんので、森永さんが何というふうにおっしゃったか存じませんが、証券会社の自己売買の比率でございますけれども、これは上位の十一社の比率を示した数字を持っておりますが、三三%から三六%くらい自己売買の比率になっております。それから信用取引のほうは、御指摘のようにかなりふえておりまして、信用取引の比率は最近では五〇%をちょっとこすというような状態になっております。  そこで、こういうふうに株式市場が活況になってまいりますとこういうふうな動きがあるわけでございまして、それがすべて不健全だ、投機的で不健全だということには必ずしも断じ切れないと思いますけれども、しかし、御指摘のような警戒をしなければならないということは確かでございまして、この点につきましては昨日、これは大臣のほうからおっしゃると思いますけれども、新聞記者会見におきまして、株価の情勢につきましては、情勢推移を当面注意深く見守る必要があるとおっしゃっておりました。それから森永東証理事長も、冷静慎重に判断をすべきだということを一般投資家に望むというふうに言っております。
  116. 福田赳夫

    福田国務大臣 ただいま証券局長からお答えいたしましたとおりでございまして、いまどういうようなということも考えておりませんけれども、注意深くこの推移は見守っていきたい、かように考えております。
  117. 田中正巳

    田中委員長 田中昭二君。
  118. 田中昭二

    田中(昭)委員 まず、予算委員会でお尋ねしました東淀川税務署は、全国の税務署の中で特殊なケースで税務行政が行なわれております。この問題は大事な問題ではないか、こう思うわけであります。  そのことにつきまして、予算委員会でお尋ねいたしましたところが——まず、最後の結論のほうから先に言っておきます。大臣から、東淀川税務署の署長さんを特別によく取り調べる、そういうお話がありましたが、そのことはいつ、どこで、どういうふうに取り調べられたのか、その結果についてはまだ御報告をいただいておりませんから、いつ、どこで、どのような取り調べをなさったか、その内容もできましたら教えていただきたいと思います。
  119. 福田赳夫

    福田国務大臣 東淀川署の問題につきましては、田中さんから予算委員会においても、またこの大蔵委員会におきましても何回かお話を承りました。お話を承っておりまして、私は東淀川署でやっておる指導型の税務行政、これはおもしろいじゃないかという感じを受けたわけであります。しかし、これは他に与える影響もあって、即断的にこれを全面的に他に及ぼすというわけにもまいらない。しかし、おもしろい考え方でもありますので、その利害得失を検討し、また、実情もよく取り調べた上で善処しますということを申し上げておるわけであります。国税庁長官にもこの問題は、いいことは大いにやらなければならぬという態度で取り調べてもらいたいということを申しておるわけであります。その結果につきましては、長官のほうから答弁させていただきます。
  120. 亀徳正之

    ○亀徳政府委員 お答え申し上げます。  東淀川税務署の署長は、前々から申し上げますように私よく知っております。また大阪局へ参りまして、東淀川税務署へ参って直接署長から彼の話を聞いております。よく承知いたしております。ただいま大臣がお答えになられましたように、東淀川方式——こう言うのは少し大げさなような感じがするわけですが、極力納税者を指導、調査よりも指導に重点を置くという考え方をとっているわけであります。基本的には私、毎々申し上げておるわけでございますが、申告納税制度というものが基盤でございますし、また、この申告納税制度をいかにして伸ばしていくかということが税務行政の基本かと考えております。その意味では、まじめにともかく申告しようという納税者の方々につきましては、あまりさまつなところを取り上げていじめる、あるいは重箱のすみをつつくようなことをやるということではなしに、やはり指導的な立場を中心に指導していくということが大切ではないか。と同時に、これは先生もお考えになっておるように、はっきりと意図して脱税しておられるようなときはしっかりと調査しなければいけない、それがまじめな納税者を鼓舞するゆえんである、かように考えております。   〔委員長退席、毛利委員長代理着席〕  したがいまして、東淀川署のやり方というのは、やはり私かねがね言っております線に沿ってやってもらっておるわけでございます。ただ、署によって、非常に相手の納税者の質、度合い、また税務署側の署員の体制、いろんなことからしまして、やはり指導と調査の割り合いというものは、各署によっていろいろ事情は違っております。率直にいって、東淀川署は非常に指導的な立場に重点を置いた署であります。やはり、本来はそういう方向に持っていくのが妥当か、かように私も考えております。
  121. 田中昭二

    田中(昭)委員 同じ議論を繰り返したくないないんですが、私は、予算委員会でも言いましたように、非常に大事な問題でございますから、また大臣も後ほどよく調べる、こういうお話であったんでございますから、いつ、どこで、どういうふうな内容で調べられたか。大臣が直接行かれたんでなければ、長官がどういう——いま大臣お話の中にも全国的にやることはどうだとか、それからまた、長官のお話の中にも、東淀川方式というようなことで言うと言い過ぎかもしれないというような、そういうおことばを聞きますと、私はなおさらまた突っ込んでその問題を議論しなければならないようなことになるんじゃないかと思うのです。全国でそういうことを試験的にやらせているのは東淀川税務署だけでしょう。そういう問題、それから大臣も、特別なことだから、よく調べてから御返事、報告をする、こういうことだったんです。前の予算委員会のときには、私は内容もずっと申し上げたわけであります。一つ一つそのことについて大臣の郷所見を聞いたわけです。全国的にやるべきであるというようなお答えは、五回もいただいております。いいことは助長すべきであるというお答えも二回いただいております。そういうことを考えて、もう少し私はお答え願いたいと思うんです。でありますから、事実、東淀川税務署の署長さんをどういう形で調べられたか、そのことだけについて客観的事実を言ってください。
  122. 亀徳正之

    ○亀徳政府委員 大臣には、私からよく御報告いたしてございます。  それから、いつ、どこで、こういうことで、口はいつか私は覚えておりませんが、とにかく東淀川署へ直接私が、むしろそれは先生の御質問の前でございますが、行って、署長本人からいろいろ話を聞いております。
  123. 田中昭二

    田中(昭)委員 それでは私が言うたことの答えには全然なってないんじゃないか。私が御質問を申し上げる前に行かれたならば、その行かれたことについて大臣に、具体的にこうこうこういう報告をした、それが取り調べたことになるんじゃございませんか。
  124. 亀徳正之

    ○亀徳政府委員 私は、署長といろいろ話し合った結果をよく大臣に御報告申し上げております。
  125. 田中昭二

    田中(昭)委員 その内容を聞いているんです。いいかげんなことを言いなさんな。わざわざ予算委員会で質問して、その前に行ったことを大臣に報告があっておれば、大臣もあのように、初めてこの場で聞いたというようなことは御発言にならないはずです。私は大臣を信用いたします。なぜ、私が一番初めに質問したときに、知らないとか、よくわからないとおっしゃるんですか。
  126. 亀徳正之

    ○亀徳政府委員 率直に申して、予算委員会のときには大臣に十分説明がいたされておりませんでしたので、その後大臣に私から状況を御報告した次第でございます。
  127. 田中昭二

    田中(昭)委員 あなたが報告された内容を言ってくださいと初めから申し上げておるでしょう。
  128. 亀徳正之

    ○亀徳政府委員 御報告した内容は、先ほど申し上げましたように、東淀川署では、指導という点に非常に重点を置いておられる。しかし同時に、調査というものも全然無視しておるわけじゃない、調査もやっておるわけです。しかし、指導というものにより重点を置いた仕事のしぶりをしておるという点が第一点。それから先生も御案内のような、納税協会の会館を建てているというような状況、そういった点を大臣に御報告いたしておるわけでございます。
  129. 田中昭二

    田中(昭)委員 大臣、こういうふうになりますと、また一つ一つ確認を取っていかなければならないことになります。時間もある程度制限されておりますので、そういうことをしようということになったならば、ほんとうにあとのことが話ができないのです。ですからその内容は、指導的なことに重点を置いておるとするならば、その税務署はいままでこういうことをやってきたという実績があるわけです。これは新しくできた税務署ですけれども、管轄というものはちゃんと前からあるわけですから、ここではこういうふうな状況でいままで税務行政をやってきた。私、調査件数なんかわかりませんが、かりにいままで一千件調査して、それに対して申告是認をどれだけやって、それから調査したことによって差額が出たものについて、過少申告加算税とか重加算税とか、そういうものをつけるものがどれくらいあったか。それがあの河手署長のような思い切った措置で、そういうものがどういうふうに——指導的立場に立って、その余分な加算税とかそういうものをつけないようなことになった、それがひいては税務行政の、納税者と税務署のりっぱな今後の姿になっていくという、そういうことの報告があって当然だと思うのです。それでないと、ただ指導的立場、指導的方法をとっております、こういう程度では、これだけの質問を通じてお答えになる材料としては、あまりにもばかにしたようなことでないでしょうか。ですから、それじゃ一つ一つ聞いていきますよ、時間がどれだけかかっても。  それじゃ東淀川税務署の昭和四十一年度からの確定申告の状況を聞かしてください。
  130. 亀徳正之

    ○亀徳政府委員 ただいまその資料を持ち合わせておらないのですが、私、そこまでこまかいお話に発展すると思っておりませんでしたので、後刻資料として差し上げたいと思っております。  なお、こまかい——私、やはり大蔵委員会でのお話でございますので、税務行政の全体の考え方、処理のしかたというものがより大切であろうということでお答え申したわけでございまして、こまかくいろいろ事務処理の体制になりますと、やはり所得階級区分、高額所得者に対する調査割り当てとか、いろいろなこまかい数字が実はございますし、またそれも調査しておりますが、そこまでのお話に発展すると実は思っておりませんでしたものですから、総体の東淀川署の考え方を申し上げたわけでございます。  なお、必要でございますれば、またその辺の数字は取りまとめて、詳しく先生に御報告したいと思っております。しかし、基本的な考え方は、先ほどから繰り返すようでございますが、やはり指導的な立場でやるということが基本でございますので、その点はむしろ先生のお気持ちと一致しておるわけでございます。御了承を願いたいと思います。
  131. 田中昭二

    田中(昭)委員 そこで大臣、東淀川税務署の方式、全国的にこれをしていくということについては、大事な問題でしょう。これは税務行政の中で、全国の納税者が加算税なんかを取らないで済ましてもらおうとするというようなことは、これはただ東淀川税務署だけの問題じゃない。もしも東淀川税務署だけそういうふうにするということになると、税法との関係も出てくるのじゃないか。そういうことを私のほうからあまり触れなくてそうっとして質問しているのです。そこらの辺のことを考えて言ってもらわなければ、いまのように、ただ東淀川税務署だけは指導的にやっているのだ。聞いている人は、ただそれだけくらいしかわからない。私、専門家ですから、実務をやっておりますから、この問題をどうするかということについては、大事な問題なんです。これは法律ではっきり申告額と調査額とは差があれば加算税をつけるという法律があるのに、日本全国で一カ所だけそれをやらないで、やらないということが指導なんだということでそういうことをやっていく。しかし、現在の税務行政についてはそういう方法でもして申告納税制度を育てたい。それには、署長さんもいままでにない決意をして、その決意を国税局、国税庁が認めて、そうして試行錯誤的に行なわせておるのではございませんか。もう長官のお話も聞きましたから、私、なるたけ大臣にそのことをわかっていただきたい。全国の税務署におります第一線の税務職員、それと納税者にこれを周知徹底したならば、どういうことになりますか。国会で論議されたことは、当然行政面をあずかる第一線で——三月十五日の確定申告を過ぎて、そしてこの問題がいまから一番重要になろうとしている時期に差しかかっている。ですから、もう一ぺんさっきに戻りますが、いま長官のほうから、そういうこまかい数字まで調べなかった。何もこちらはこまかい数字を求めて質問したわけでございませんでしょう。指導的立場で全国に一カ所やっているのだから、それはほかの署と違ってこうこうこうなんです、そういうことを取り調べてみたところが、大臣も、これではいかぬ、これをどうするか、大臣からは、先ほどは抽象的なお話ですから、はっきりしたお考えを私まだ確認しておりませんが、そこにどうも、全国的に推し進めることですね、そうなっていかないということになったことは、相当そのことについて検討もなさり、十分聞いてあるのじゃなかろうか、こう思うのです。  そういう点を聞いたのですけれども、お答えがないから、それでは、東淀川税務署がどういうふうになっているか、具体的な内容——何もむずかしいことはありません。東淀川税務署が四十二年分について、いま私が言いました申告税は何ぼ調査して加算税を取ったのは何ぼ、それが四十三年は、こういう指導的な立場をとってきたから何ぼ申告税がふえて、加算税を取らない人たちはこういうふうに少なくなりました、こういうことによって納税協会もりっぱな働きをして、申告納税制度が順調に進んでいくと思われます、そういう簡単なことでいいのじゃないかと思うのです。どうでしょうか、大臣。   〔毛利委員長代理退席、委員長着席〕
  132. 福田赳夫

    福田国務大臣 この問題は、あなたからここでも、また予算委員会でもお話を承りました。なお、廊下でもまた承りました。そういうことで、私もおろそかにしておるわけじゃないんです。長官に、こういう話がある、長官もあなたのお話は聞いておるわけでございますが、いい点があれば、これをひとつやっていこうじゃないか、そういうようなことで、事情をひとつよく取り調べておいてもらいたい、こういう要請をしておるわけです。長官の報告では、東淀川署はなかなかうまくやっております、こういう話です。いわゆる指導型の方針でやっておる。しかし、これで全然調査をもうなくしたというわけじゃない。調査しているものもあります。しかし、主体は指導型だ。それじゃこれを私のほうから全国に、そういうふうなやり方ができるかという話をするに対しては、東淀川署はこれは特別だ、つまり納税者のほうの納税意識というものも非常に高いし、同時に税務署のほうの体制も、これは他に比較しましてかなり高くて整っておる、この方式を各署にいま直ちにやるということについてはまだ問題があります、こういうところまでの報告を受けておるわけなんであります。なお、専門家であられるあなたからの御指摘でありますので、この問題はさらにまた検討をしてみる、こういうことにいたしたいと思います。
  133. 田中昭二

    田中(昭)委員 ほんとうは検討するじゃ困るんですけれどもね。それは大臣も、いままでこの問題に対していろいろあったことは大体ほんとうのことを——ほんとうと言うとなんでありますが、おっしゃっておるようでございますが、廊下でも言った、それで私は期待しておったのです。大臣から、ちゃんと長官から報告させますから、こういう話があったでしょう。ですから、私は長官から阿かお話があるだろう、こう思っておったわけです。ところが、全然話もございません。ですから、またここに出して聞かなければならぬようになったわけです。聞く以上は、そんな廊下で話すようなことはできませんし、私、ほんとうはもう少し詰めておかなければならない問題があるわけです。  もう一つ、それじゃ最初のほうのことで聞いておきますが、東淀川署をこういうふうにしたほうがいいんじゃないかという客観情勢、国税庁のほうでお考えなり、また署長からの申し出もあったでしょうし、それからまた、局の言い分もあったでしょうし、また、それを長官が聞いてそれを踏み切ったでしょうし、そういう客観情勢といいましょうか、そういうものはどのようにしてありますか。
  134. 亀徳正之

    ○亀徳政府委員 これはいま大臣からもお話しされましたように、あそこの署長は非常に意欲的であります。また最近、新しく庁舎を立てたところでございます。また、特に署長も意欲的でありますので署員も相当優秀な署員をわりと集中して、また彼もそういう方式をひとつやってみたいということもありますので——しかし、それは再々私、申し上げますように、全く突拍子もないことをやっているわけじゃございません。基本的にはわれわれが進むべき方向に向かっての一つの強い努力を具体的にしようということでございますので、それはけっこうではないかという認識のもとに、局長も私も十分その点は理解して、署長は仕事を進めておるような次第でございます。
  135. 田中昭二

    田中(昭)委員 いま大臣もおっしゃって、長官がいまおっしゃったのですが、長官のお考えのほうが足らないですね。よく大臣お話しになっておることも聞いておいてください。大臣はいま、この東淀川署に対しては、納税者の意識も高い、だから全国的に——ここだけいわゆる試験的でしょう、試験的ということばが当たるかどうか知りませんけれども、ですから、大臣ははっきりその辺を考えて、納税者の意識も高い、税務署の職員の何とかというふうにおっしゃいましたけれども、その辺私ちょっと理解ができないのですけれども、まず納税者の意識が高いということ、これはどういうことでそういうことが言えますか。また、東淀川署の税務職員が何かこういうことをすることについて、それに向いておるという事実がございましたら、それを聞いておるわけです。いいでしょうか、長官、おわかりでしょうか。
  136. 亀徳正之

    ○亀徳政府委員 納税者の意識が確かに高いという面は、具体的にはこれは非常に署長の努力もあるのですが、業種ごとにもいろいろ、納税者側にあるいは納税協会という一つの組織かと思いますが、まとめる努力を具体的にいたしております。ただ全般につきましてそういった組織ができるかできないか、またそういった点がやはり署によっていろいろ違っております。それで東淀川署の場合にはそういうことが可能ではないかということで割り切っているようなわけでございます。
  137. 田中昭二

    田中(昭)委員 いまの、納税意識がよそよりも高いということについては、具体的には何もお話がなかった。いわゆる納税者の団体には青色申告会とか、それから商工会とかいろいろございます。特に東淀川も民主商工会なんかも会員がたくさんおります。民主商工会、御存じでしょうか。そういうこともいろいろ検討の材料になっておるはずです。署長さんおっしゃるんですもの。それは長官がお会いになって、私も二時間会っておりますから、お話ししたことを全部聞きまして、私はここで考えてもらわなければならないことは、職員を長くつとめてやめた人がよく言います。自分もやめて初めて外部に出てみて、いまの税務行政がほんとうにまだまだ考えなければならないことがたくさんある。ほとんどの、まじめにつとめてまじめに考えておる人ほどそういうことを言います。私の地方でも私の先輩でたくさん署長でやめた人がおります。その人たちから私にいまいろんなたよりがあります。そのたよりの根本になっておりますのは、いま私が言いましたように、税務署におるときにはわからなかったけれども、やめて外部に出てみて、国民の立場に立って、いろいろ納税者の立場に立って考えてみると、いまの税務行政についてはいろいろな問題がある。それは具体的にここで言えば、税務署を批判したようなことになりますから、私は差し控えておるわけでございますけれども、そういう人たちの意見も私は大事であると思うのです。そのいい例があの東淀川署でも、直税課長をしておった宮崎さんという人が税務署から納税協会のほうに移っております。納税協会の事務局長としていま税務署のほうとの間をうまいぐあいに橋渡しをしてああいう姿ができておるわけです。ですから、ああいう方たちの意見というのはそのまま受け入れても何も、税務行政にプラスこそすれマイナスにはならないということを私は強調したいのです。  いまの私の質問に対して先ほど長官のお答えは、その客観情勢については、納税意識が特別あそこがどうだというようなことの具体的なお話はなかった。ですから、それは求めるほうが無理であればまた後でもけっこうでございますから、大臣どうかそういうことを考えて、私はいま大臣のおっしゃった検討するということがどういう意味なのか、もう一回お尋ねしておきたいと思うのです。
  138. 福田赳夫

    福田国務大臣 これは東淀川署は、長官の報告によると、署の体制があらゆる角度から見ていい。他に比較にならないくらいいい体制である、人事配置その他ですね。それから納税者の意識も高い。そこで他の税務署に見られないような強い形で指導型の調査が行なわれる、こういう報告を受けておるのです。  なお、これをそれじゃ他に及ぼすことはどうだというについては、これはそこまでいくことは税務行政のあり方としてはいいことには違いないが、その税務署を取り巻く環境、つまり納税者の意識、また税務署の体制、そういうものが東淀川税務署のような体制であることは、これはなかなかそうはあるまいというようなことで、これを直ちに全面的に及ぼすというような考え方をとることはむずかしい。そこまでの話を聞いておるのです。ですからなおこの問題、いいことはいいので、伸ばさなければならぬと思いますから、そういう方向で取り調べてみたい、こう申しておるわけであります。
  139. 田中昭二

    田中(昭)委員 そうしますと、指導型立場をとっております東淀川税務署以外の約五百近いほかの税務署は、そういうものがないということですね。東淀川税務署はそれに適しておるけれども、それ以外の税務署はそういう環境がないというようなことに理解していいでしょうか。
  140. 亀徳正之

    ○亀徳政府委員 率直に申して、先生常にちょっと極端な形に推し進めて御質問をなさいますので因るので、ほかの署に、指導的な立場での納税者を指導するものが一切なくて調査一点張りということでは決してないのでございまして、東淀川の中ではいま言った指導的な立場での納税者の指導というものが相対的にほかの署よりは多いということを、前々から申し上げておるわけでございます。したがいまして、ほかの署は、東淀川署以外は全然無能でだめだとかいうようなていの話では決してございませんので、ほかの署も非常に熱意をもって、まじめな人たちに対しては指導的な立場を、それ以外の方々に対しては調査をということで努力しておるわけでございまして、そのニュアンスの差といいますか、やはり指導的な立場を東淀川署の場合にはより多くとりながら、一つの課税水準も決して落ちておらない、こういうことを申し上げておるのでございますので、あまりそこを対立的な感じで白か黒かという感じで先生にきめつけられますと、ちょっとお答えしにくいのです。  やはりこういうものは白か黒かでございませんで、いろいろニュアンスの差を持ちながら、特にこの税務執行というものは相手もあることだし、そこの業種、業態、納税者の協力度合い、いろいろなものが千変万化いたしておるわけでありまして、その中にいかに適正な課税を執行していくかというところに、しょせん各署に一人一人署長というものを置いて、機械的な指導でなしに生きた行政をするようにさいはいをふるっておるようなわけでありまして、東淀川署以外は一切だめかという御質問に対しましては、各署とも同じような熱意と乏しい人員と乏しい予算の中で努力しておるということをむしろ率直に申し上げたいと考えております。
  141. 田中昭二

    田中(昭)委員 それは長官、少しあれじゃないですか。私も何も対立して白か黒かというような論議をしてはいないでしょう。だから、大臣もこのことについてはいろいろな幅があるから検討して——そうでしょう、大臣。白か黒かではっきりするのだったら、これは法律で処理すればいいんじゃないですか。何も対立的とか、白か黒かで私はしておるのじゃないのです。東淀川税務署がそうであるならばそうであるという説明を具体的にまだ聞かないのです。私が納得するような、東淀川税務署だけがそういうふうにしていいという客観的な具体的な事実は何も聞かない。だけれども、何べん言ってもわからないからそれはそうしましょう。しかし、それに類似した税務署が全国にあるならば、それを推し広めていくべきじゃないか、こう言いたいんだけれども、ほかの税務署がこの税務署のを推し進めていくことを私は希望しているのですよ。何も税務署が納税者と対立することを心にきめて言っているんじゃないですよ、質問したんじゃないですよ。大臣わかりますでしょう。だから、大臣は検討するとおっしゃったから、私はその辺のことを、まあ東淀川税務署に似たようなところがあるならば、それをどんどん推し進めていくということでしょうね、そういうものがあるならば検討するということは。そういう意味でしょう、大臣、ちょっとそこを聞いておきましょう。
  142. 福田赳夫

    福田国務大臣 これはたとえば——たとえばという仮定の話ですけれども、かりに東淀川署がやっていることはいいんだということでこれを他に及ぼそうというようなことを考えましても、これは通牒が出たというようなことになると、一律的な非常な反響もあって、これが行き過ぎになるとかそういうようなこともおそれられる。なかなかその辺は機微の扱いを要すると思うのです。  それから、おそらく長官がこれをいいところは取り入れる、こういう考えを持った場合に、これを取り入れる方法、そういうものは、署長会議の席で、東淀川署はこんなことをやっているというような話が出るとか、そういうような形だとか非常にデリケートな扱いを要する問題である。これは田中さんもよく御理解をいただけることじゃないか、こういうふうに思いますが、そういうことをいま亀徳長官は申し上げておるんだろう、こういうふうに理解します。  とにかく、いいことはどこまでもいいんですから、いいことはやるべきですよ。そういう考えにおいては一貫すべきである、かように考えております。
  143. 田中昭二

    田中(昭)委員 ですから、いいことは推し進めていくということについて、いろいろ今後の状況を見ていく、検討する、そういうことですね。悪いことならば、検討も何もせぬで、それは悪い、こう言える。ところが、いいことも、そういうような姿でいくことはたいへんいいことだ。だけれども、現状においては東淀川税務署だけがそういう環境、条件がそろっているんだという、現時点でそうなんでしょう。ところが、ほかの全国では四百何十の税務署がありますから、そういうところにも、そういうものがあるならば推し進めていきましょう、こういう大臣のお気持ちでしょう。違いますか。
  144. 福田赳夫

    福田国務大臣 いいことは大いに伸ばすんですよ。これはもう鉄則です。しかし、その伸ばし方が一律に通牒を出してというような行き方、この辺になるとまたそれなりの悪影響もあるわけです。そういうようなことで、これは言わず語らずとまではいきませんが、非常にデリケートな扱いをしなければならぬ。それがまた行政指導の妙味のあるところじゃないか。あんまりこれを突き詰めて、何というか紋切り型に切っちゃうと、できるものもできないことになりはしないか、そういうことを長官は心配をしているんだろう、こういうふうに想像をしております。あなたの意のあるところはよくわかっております。
  145. 田中昭二

    田中(昭)委員 長官はそうでしょうが、大臣として先ほど検討するとおっしゃったでしょう、いいことだからと。その前の話の段階では、東淀川税務署がそういう条件が整っているから、これは試験的とおっしゃらないのですけれども、どうも全国で一カ所でやっているということは、試験的にうまいぐあいでいくならばそういうふうにして進めていこう、こういうふうに私どもは常識的に思うのです。ですから、この東淀川税務署の行き方がいいから、いいならば、いままで税務行政については、申告納税制度になってさんざん苦労してきた、それをこういう形で取り戻していけるならばということを検討していただけるわけでしょう。ですから大臣も、その一つの署だけに通達を出して、ほかの税務署もどうかやれとかいうようなことでなしに、これは局長会議でも署長会議でも、こういう姿でやっているから、地方においてこういうことができるようなところであるならば考えてみろ、具体的にはそういうお話になるんでしょう。
  146. 福田赳夫

    福田国務大臣 まあそういう形になる場合もあろうかと思うのです。具体的にどうだと、こういう方法論までまだここでお答えするわけにはいかぬと思いますが、しかし、いいことは伸ばす、これだけは間違いないのですから、その東淀川署の、納税者と非常な強い協力関係で税務行政を進めておるというこの姿、これは私は税務行政としてはいい形であろう、こういうふうに思うのです。ですから、そういういい面は伸ばしていかなければならぬ。ならぬが、そのやり方です。これは非常なデリケートな扱いを要する問題であろう、こういうふうに思いますので、その辺はおまかせおき願いたい、かように思います。
  147. 田中昭二

    田中(昭)委員 それではもう少し、こまかいことですけれども確認しておきます。  先ほど私が言いました納税協会の宮崎事務局長、この人のいろいろな言い分は、長官、どういうふうにお考えになっていますか。
  148. 亀徳正之

    ○亀徳政府委員 私、宮崎事務局長とは面識ございませんし、宮崎局長から直接話を聞いたことはございません。
  149. 田中昭二

    田中(昭)委員 それでは私のほうから聞いた範囲のことを申し上げておきます。  先ほどもちょっと言いましたように、この東淀川税務署に隣接しております納税協会については、国税庁の強力なる援助をすべきである、援助をしなければ納税協会はスムーズに仕事をすることができない、一口に言えばそういうことを要望してありましたから、私はそれを申し上げておくわけです。  その次は、あのときに大臣のお答えの中に、税法上適切な額で所得の申告がなされなければならない、そういう意味のおことばがあって、そしてその額というのは「多からず少なからず適切な額」このような御発言があったわけです。これはどうも、この大臣のおことばを受けて、税務行政のずっと末端の第一線がそういうことを考えた場合、迷うような気持ちがするのですね。「多からず少なからず適切な額」これについて大臣の——大体そういうことをおっしゃったことは御存じでしょう。じゃあそのお考えを聞いておきたいと思います。
  150. 福田赳夫

    福田国務大臣 申告はこれは税法に照らして税法どおりの申告をする。税法に照らして、多過ぎてもぐあいが悪いし、また少な過ぎてはなおさらぐあいが悪い。申告というものは税法に従ってさるべきものである、こういうふうに申し上げたので、そのことについてはもうこれはあたりまえのことを申し上げたわけなんで、いささかも間違っておるというふうには思いませんし、これがまた混迷を与えるなどとは全然考えられないことだと思います。
  151. 田中昭二

    田中(昭)委員 もちろんそれは、税法に規定された以上に多くきめていくということはあり得ないと思うのです。それでは、税法にきめられたとおり、それからずっと少なくきめられておるということはないということですか。多くてもいけない、少なくてもいけない、税法できめられたとおりだ。そうすると、その税法できめられたとおり税務行政というのがいっておるかどうか、それはどうですか。
  152. 福田赳夫

    福田国務大臣 それは人間のやることですから、そうきちんきちんといかない面もあるかもしれませんけれども、少なくともそうしなければならないということだけは絶対にそうあるべきでありまして、それを目ざして全力を尽くしておるというのがいまの税務署の現状である、かように考えます。
  153. 田中昭二

    田中(昭)委員 次に、税収入の地域別におきます不公平といいますか、この前、大臣がいらっしゃらないときに、私この問題を取り上げました。各国税局別の税収が常識で考えるようにいってないですね。それで、そのことについて、国税庁、主税局、次官にお尋ねしたわけですが、そのお答えで、一番常識的なお答えをいただいたのは次官です。何もことさら言うわけじゃございませんけれども、次官のおことばが一番常識的です。その次には主税局長のお答え。その次に、一番よく知っておらなけりゃならない国税庁、これのお答えが一番常識的でないですね。そのように行政というものが、いまの税務署の問題でも同じでございますが、ここでこういうふうに言われたり、税法に従っていろいろな通達を出されることにおいても、第一線の税務行政についてはそれと逆なことが行なわれている。それはさっきいろいろ申し上げたかったのですけれども、あくまでも重箱のすみをつつくようなことはしないとか、ひどいことはしないとか、こういうようなお答えしか出ませんから、私はあまり言わなかったのですが、ここで、全国の国税局別の税収の各年度の比較、これについて、事務当局のほうからでもけっこうですから、私のほうから資料要求してありますが、そのおもなものだけでもけっこうですから、読んでいただきたい。
  154. 亀徳正之

    ○亀徳政府委員 各国税局別に、各税目別に言いますと、たいへん時間をとりますし、都市局と地方局との問題を取り上げておられると思いますので、東京、大阪、名古屋というものを取りまとめて都市局、その他の地方局をその他局といたしまして申し上げます。先生のお尋ねはおそらく具体的な税額、それから伸びというような点もあるだろうと思うのですが、一応国税庁の年報を中心にまとめたもので、四十二年度の数字も出ましたので、それを中心に申し上げます。   〔委員長退席、倉成委員長代理着席〕  三十八年度を一〇〇といたしまして、源泉が都市局で一八四・二、その他局が一八五・六。申告が都市局が一九〇・三、その他局が二三一・八。法人税が都市局が一四九・二、その他局が一六〇・三。それから酒が都市局が一四五・〇、その他局が一四七・九。それから揮発油、地方道路税が都市局が二一六・三で、その他局が三五九・五。物品が都市局が一三五・〇の伸びに対して、その他が二二〇・〇。全体で、都市局の伸びが一六五・八に対して、その他局が一八八・一というふうに相なっております。  ただ、どの年度を一〇〇にとるかによってこの数字が狂ってまいります。また重ねての御質問もあろうかと思いますので、そのときにお答えいたしたいと思いますが、いろいろの事情があるわけでございます。特に伸びだけで見ますと、いろいろ問題もあるということを御認識願いたいと思います。
  155. 田中昭二

    田中(昭)委員 いまの数字は、大臣、ちょっとわかりにくかったと思うのです。私、もう一回数字のこまかいことじゃなくて、常識的に申し上げてみたいと思うのです。  たとえば三十八年なら三十八年に東京局は全体の税収の何%をあげたか、その同じ三十八年に九州の熊本局なら熊本局は何%の税収をあげておったか。ところがそれが、四十年−四十二年に、国税庁の相当な努力経済情勢等も考えて調査もやり、いろいろなことをやったが、それは問題じゃないですけれども、問題は、たとえば三十八年には東京局の全体の税収に占める割合が、数字はいまここでわかりますけれども、わかりやすくするために四〇であったとする、そして熊本は二%であったとします。ところが、四十二年は東京が三五になって熊本が二・五になった。熊本は全体の税収に占める割合が、四十二年になったら上がった、その反面東京局は下がった、こういうことはおかしいではないでしょうか、こういうふうに申し上げたわけです。それは、そのときに主税局長も次官もいらっしゃったから、その辺は頭に入っておると思いますが、それに対して、先ほど国税庁のほうが一番常識にはずれていないか、こう言ったことの参考に、そのときのお答えを読んでみますと、次官は、「都市は、通常常識から考えてみますれば、ずっとシェアがふえて広くなっておらなければならぬと思います。」東京局が三十八年よりもパーセントが下がるということはおかしい。これだけ東京に人も集中し、どんどん都会に人も来ておるわけですから、当然都会がふえなければならない、こういう考え方です。それに対して主税局長のほうは、初めのお答えは全然間違っておりましたね、逆でしたが、それは申し上げません。二番目におっしゃったのでは、「法人税がふえておりますが、所得税はあまりふえておらないということはございます。総体としてはシェアは漸次上昇しております。」漸次減っているのです。それから国税庁のほうは、「あまり大きな違いはないと思いますが、必ずしも都会局のほうのウエートが高くなっているとは言えない年もございます。」こういうふうに、さっぱりわからないようなお答えだったのです。  大臣、常識的に考えてみて、都会の局が私は税収がふえなければならないと思うのですが、どうですか。
  156. 福田赳夫

    福田国務大臣 そういう面もあるような気もするし、また、最近の地方の経済の伸びなんかを考えると、また逆なような感じもするし、それがまたその経済の実態がどういうふうな税にはね返りをしてきますか、その辺にもデリケートな関係があるんじゃあるまいか。ちょっと私も的確なお答えはできませんけれども、経済のほうの伸びは……。  いま長官がさらに補足説明をいたしたい、こう申しますので、お聞き取り願います。
  157. 亀徳正之

    ○亀徳政府委員 若干この点は強調しておきたいと思うのですが、確かに直接税の中ではいろいろ問題もございましょう。ただ全体のいまの税額のウエートが大きくなる一つの大きな要因として、最近揮発油税の税収が相当大きいわけですが、大体いなかの局に蔵置場を置いて、そしてその揮発油のできた工場からそこへ未納税移出をいたしまして、そこでいなかの蔵置場から出るときに揮発油税がかかる。それからたとえば物品税でも、たとえば東芝のいろんな電気製品を熊本とかそういうところに蔵置場を置いて、そこで未納税移出をして、そしてそこから出るときに物品税がかかる。そして総体の地方局の税額の中に、やはりそういった税額の占めるウエートがどうしても高うございます。そういった特殊な要因がございますと、やはり相対的にいなかの局の税収のウエートが高まるという要因があることは、一つ御指摘申し上げます。  実は私も具体的に申しますと、むしろ小さい署の姿に移して恐縮でございますが、宇土の税務署で総体の税額が十五億程度のところでございますが、そこに揮発油の蔵置場ができるということで、かれこれ五億から十億ぐらいの税収が直ちに追加して加わってくる、こういった事態もございますので、そういった要因をいろいろからみ合わせて考えないと、単純に総体の税額で議論しますと問題があろうかと思います。  しかし、通じていえば、日本経済をささえている力はやはり東京、大阪、名古屋というところでございますので、やはり直接税、そういった面では都市局が相当のウエートを占めなければなりませんし、また事実絶対額では東京、大阪、名古屋というところに大部分の直接税は集中しておる。  ちょっと先走っての答弁で恐縮でございますが、われわれも五万の定員がちっともふえないわけですし、法人成りもふえる、課税対象もいろいろむずかしくなるという中で、やはり都市に重点を置かなければならぬということで、全体の定員はふえないわけでございますが、やはりいなかの局から人を東京、大阪、名古屋に移す、あるいは賦課のほうが問題ではないかということで、徴収から直接税、特に徴収、間税の人を切りまして、やはり直接税の賦課の部分に移す、あらゆることを努力いたしまして、課税の徹底を期すべく努力をしておるわけでございます。
  158. 田中昭二

    田中(昭)委員 大臣、いま間税のお話を引かれてそういうお話があったのですけれども、五兆円ぐらいの税収の中で、所得税と法人税だけで三兆二千億でしょう。そうしたら所得税と法人税だけ見ても、それが常識的にいって都会局が税収がふえなければならない、これはわかると思うのですよ。間税なんか全体の収入から見たらわずかなものじゃないですか。そうでしょう。  ですから、これはそのときに上村さんもおっしゃっておったけれども、都会の局が所得の把握に問題がある。東京になれば一税務署の調査が行き届かない、そういう問題があるんだ。それをしっかりやればこういう姿にならないんだ、そういうふうなお答えもいただいておるわけです。申告所得税だけで見てみれば、私はこの前数字もあげて言ったのです。申告所得税とか源泉所得税とか法人税だけ見れば、いなかよりも都会のほうが減っておる。次官もおっしゃったように、所得の把握の問題が実は問題としてある。だから今後考えていきたい。どういうふうにそれじゃ考えるかということがまだ具体的にお答えいただいていないから、きょうはそれを聞こうと思っておりましたが、そこまでいかないわけですね。
  159. 亀徳正之

    ○亀徳政府委員 誤解のないようにお願いしたいのでございますが、私は把握度の点において、都会局がだいじょうぶだということは決して申し上げておらない。やはりそこに問題があることは十分に承知いたしております。だから、思い切った人員の移動もあえてやっておるようなわけです。ただ全般として正しい御理解を願う意味では、いなかの局も総体の税額が少ないですから、やはり揮発油税といっても相当の税額になります。そういうものがウエートとして構成比の関係では響いてくることも頭に入れてお願いしたいし、それから源泉徴収の所得税の額が相当なウエートを占めておるのですが、これは最近の趨勢を見ますと、何と申しますか、給与水準の格差是正と申しますか、これは申告所得税のある年度が、やはり地方局のほうが都会局よりも高い数字があるわけでございます。それは、絶対的な水準はもちろんまだ都会のほうが高いわけです。相対的に所得の水準の伸び方というものが、やはりいなかのほうがといいますか、都会のほうに接近する過程をとっておる。そういうようなことで相対的にやはりいなかの給与所得もふえる。いろいろな要素がからんでおるということも十分御認識いただきたい。  しかし、基本的には、やはり都市局と地方局との課税水準はどうかということになりますと、その辺はたいへん率直に申して問題がある。したがって、そこに税の執行上、扱う者としてのいろいろなむずかしい問題、解決しなければならぬ問題、また努力が要請されておるような次第でございます。
  160. 田中昭二

    田中(昭)委員 いま長官もお答えになったように、確かに把握の問題がある。ということは、把握が完全にいけば税収はまだ都会局はあがる。大臣、おわかりでしょうか。
  161. 福田赳夫

    福田国務大臣 これはなかなか重大にして、かつ機微の問題でありますので、なおこういう数字が出てきた根源について、よく検討してみたいと思います。それが大事だと思います。
  162. 田中昭二

    田中(昭)委員 私がこの前申し上げたのですが、東京局は三十五年で全体の四二・二%の税収をあげておった。ところが四十一年では四二・二%から三九・七%に減っておる。これだけちょっと大臣申し上げておきます。  それで、いま申し上げました人員の問題、そういうことで相当地方局から東京局に人員を入れて補充してあるわけでございますが、その成果がなかなか出てこないのですね。この問題が一つございます。それと、いまの税収のあがることについては、世間ではよく国税庁は割り当て課税をやっておるのではないか、ですからそういうふうになかなか税金が減らない。いわゆる税務署では前年にこれだけの税収があれば、ことしは経済状況等を見てこういう所得の伸びになるからこのくらいの税収はあがるだろうということは計算するはずです。そういうことが影響しておるのではないか、こう思いますが、大臣どうですか。
  163. 亀徳正之

    ○亀徳政府委員 割り当て課税というようなことばがあり、またなかなかそういうことばが消えていないということは、私としてはまことに残念に思っております。決して割り当て課税のようなことはいたしておりません。割り当て課税ということは、おそらく主税局が所得税は幾らといったときに、各局幾らという割り当ての作業がなければ割り当て課税にならぬわけでありますが、そういうことは一切いたしておりません。
  164. 福田赳夫

    福田国務大臣 私も寡聞にしてまだ割り当て課税ということは聞いておりません。
  165. 田中昭二

    田中(昭)委員 しかし、そういう税収の占める割合等から見ていけば、いま私が言ったとおり、税務署では国税局別に大体の所得の推定をして、そして税金を取るための基礎にしております。これは見る者から見れば割り当て課税だといわれてもしかたがないですね。そういうことを申し上げておきます。  次に、国税の徴収についてもいろいろ国民の不満といいますか、そういうものがありますが、その中で会計検査院の指摘事項を見ましても、租税についての不正件数なり金額は毎年ふえていくような状況ですね。これに対しては長官並びに大臣としてどのようにお考えになっておりますか。
  166. 亀徳正之

    ○亀徳政府委員 検査院の指摘の件数がなかなか減らないことはまことに遺憾に存じております。ただ、よくいろいろ誤解があるのでありますが、たとえば一つの資料の総合漏れ、これも一件に数えられるわけでございまして、やはり検査院の検査を受けた場合に、主として資料の総合漏れあるいは法令の解釈の誤りというものがいろいろ指摘されるわけであります。弁解がましくなってこの点は申しわけございませんが、同時に非常に多数の案件を持って、うっかりしてその資料の総合漏れが——それも大半総合しておって、一件漏れておっても指摘されることがあるのでありまして、私どもとしては極力それが少なくなるように努力いたしたいと考えておるような次第でございます。
  167. 田中昭二

    田中(昭)委員 その資料総合漏れだけじゃないのですけれども、かりにそういうものがあって、それが毎年ふえていく、それは間違いだからあっていいということは私は許されないと思うのですね。
  168. 亀徳正之

    ○亀徳政府委員 間違いがあっていいとは決して申し上げていないので、やはりそういうものも率直にいって一件に数えられるし、やはり人間のやることでいろいろ努力してもどうしてもそういう漏れがあるということを御認識願いたいということを申し上げただけで、私たちの立場としては、当然そういう資料の総合漏れがないように、また少しでも会計検査院の指摘事項が少なくなるように、常に地方各局に督励しておるような次第でございます。
  169. 田中昭二

    田中(昭)委員 大臣、この税務署の不正といいますか、手落ちといいますか、そういうのが全体の金額から見ましても多いのですね。件数も多い。いま長官の言われたある限られた人員で相当努力されておるということは私もわかります。ですけれども、これがこのままで、検査院の指摘事項の半分は租税に関する間違いだというようなことは好ましい状態じゃないと思うのです。何とかこれを少なくしていくという方法を大臣としてお考えになっておりましょうか。お考えになってはどうですか。
  170. 福田赳夫

    福田国務大臣 精一ぱい努力いたすようにいたしたいと存じます。
  171. 田中昭二

    田中(昭)委員 もうやめろやめろというようなことですが、たくさんありまして、もう一つ。  私は、ほんとうに国民の立場に立って、ここでいろいろ国会の中で税務行政に関して、法律は法律として、あるいは行政面においてあたたかい手を差し伸べるべきではないかというようなことをずっとお願いもしてきました。ところが、これが先ほどの調査と同じで、なかなか第一線の納税者のところにそのとおりといいますか、前進した形がいかないのです。率直に私、大臣にわかりにくいことばかもしれませんが、そういう面がありまして悲しい思いでおるわけです。  具体的に申し上げますと、昨年初めに九州で御存じのえびの地震があったのです。そのときに、あの小さな町で、私も行ってみましたところが、もう土べいは倒れ、家は倒れ、商品はめちゃくちゃになって、そして何カ月と余震におびえておる。私も一晩あの野原に寝てみたのですけれども、ほんとうにみじめな状態で住民の人があの寒さにおびえておりました。そういう被害を受けたときには、税務署は税の減免等についてもう最大のサービスと、それから税法上許されておる措置をとってやってください。ちょうど予算の分科会のときでございました。前の水田大蔵大臣もあたたかい手を差し伸べますと約束されたものが——もう一年たちますが、私はそのときそういうあたたかい手がなかなかできないからこういう方法もありますよ、こういうふうにするのがあたたかい手を差し伸べることになるのではないですか、こういうことまで申し上げたのですけれども、それがあそこの場合は一年間申告が延びておりますから、そういう措置がなされてないのです。それからことしは金沢のほうで自衛隊機が墜落をした。あれで家を焼かれ、家財道具をなくした人がおります。こういう人たちに対して税務署はどういう税法上の——まあ大臣あたりがお考えになっている救済しなければならないということが反映しないのですね。もしもそれが反映されておるとするならば、その具体的事実を私はお聞きしたい。私が調べたところでは、えびの地震も、私が何回も言っても、それが末端の税務署では、ただ救済措置がありますよということを役場なり町を言って回ったという程度ですが、こういうことについて何とかここでいろいろ、そういう手をとるべきであるときめたことは、納税者に直接そのまま生かされていくということができないものでしょうか。
  172. 福田赳夫

    福田国務大臣 税務署、徴税機関は、とにかく国民のふところに入る収入を、その一部を税として出していただくのですから、これはそれ自体仕事はどうも喜ばれるというような性質のものじゃないわけです。それだけに、税務行政の執行というのは気をつけなければならぬ。私は常々、愛される徴税機関ということを言っておるわけなんでございますが、なかなかいろいろなケースもあろうと思いますが、今後ともできる限り愛される徴税機関という方向努力していきたい、かように考えます。
  173. 田中昭二

    田中(昭)委員 そういうことはもう何べんも聞きました。私は、そういうことをお聞きしたんじゃなくて、あたたかい手をいまからでも差し伸べる方法はあるのですから、長官のほうから、電話一つでもけっこうです。現地の税務署に、こういうふうにやってやれや——それじゃ、やってない事実をまたここでいろいろ言っても水かけ論です。そういうふうにできませんか。
  174. 亀徳正之

    ○亀徳政府委員 災害のときには直ちに手を打つようになっておりますが、先生のお話もございますので、さっそく熊本の状況をキャッチいたして、もしも落ち度があれば早急に手配いたしたいと思います。
  175. 田中昭二

    田中(昭)委員 じゃ終わります。     —————————————
  176. 倉成正

    ○倉成委員長代理 次に、通行税法の一部を改正する法律案を議題といたします。  質疑の通告がありますので、順次これを許します。中嶋英夫君。
  177. 中嶋英夫

    ○中嶋委員 十五日の参議院の運輸委員会において佐藤総理が、第二次、第三次の運賃値上げが当然予想される、これまたやむを得ない、こういう答弁がなされております。その原因として総理が考えておるのは、いわゆる物価の上昇によって運賃の値上げは四年ごとに第二次、第三次とやむを得ない、こういうことのようでありますが、こういう見解について、当事者である国鉄当局として同様の見解を持っておられるのか、あるいは別途の見解をお持ちなのか、それをまず国鉄総裁から伺います。
  178. 原田憲

    ○原田国務大臣 同様の御質問が私にもあったわけでございます。この問題はたびたび御質問を受けておるのでございますが、この根拠になっておりますのは、再建のための推進会議の意見書の中に、運賃改正というものを四十四年、その後二回見込んでおる、こういうことを根拠にしてどうかと・こういうお問いがあるわけでございます。それに対しまして総理は、物価の値上がり等を勘案するとそういうことも考えられることもあるので御理解を賜わりたいというふうに答えられたと私は考えております。  私も同様な立場で、たとえば国鉄の再建のための推進会議の意見書の中に試算が盛られておりますが、たとえば人件費、これもどうなるかわからぬ不確定な要素を含んでおるわけなんでございます。仲裁裁定がどうされるかわかりませんから、そういうふうな場合に、あるいは値上げをもってしなければならぬことがあるかもわからないということをお答えをいたしておるわけでございまして、そういう場合にはひとつ御協力を賜わりたい。少なくともあの試案では毎年上げるということは言っておりませんし、それに加うるに、きょうはここに大蔵大臣おられますが、今後この再建推進会議が申しておるところのことについてより一そう財政当局から御協力を賜わるならば、これらの問題についてもあるいは値上げをやらずに済むかもわからぬ、こういうこともあり得るというようにお答えを申し上げておるのでございます。
  179. 中嶋英夫

    ○中嶋委員 さすが財政通であられる原田さん、運輸大臣になられまして、再建推進会議の結論だけを尊重するということなく、みずからの御見解を含めて、特に財政当局の協力を得ていきたいという御見識は、私は敬服に値すると思うのであります。いま赤字解消とよくいわれますが、四十年までは、たしか国鉄の原価計算年報というのが発表されておる。最近発表されない。関係者の間で議論になっておるのは、旅客運賃は現在赤字ではない。むしろ貨物運賃のほうが大幅な赤字をかかえておる。にもかかわらず、先般来衆議院で審議され、現在参議院で審議を行なっております運賃値上げは、赤字である貨物運賃の値上げはなしで、黒字である旅客運賃の値上げ、いわば旅客運賃の値上げによって、貨物運賃の赤字をカバーするというこういう内容のものでありますから、運賃値上げについて、特に国民各層には理解しにくい反対の空気がまた非常に高まってきておると思うのであります。  こういう点から、旅客であろうが貨物であろうが、同じ軌道を走りますから、レールの損耗率がどっちが多いか少ないかという議論もあるでありましょうが、そういうようなことは、それぞれの運行回数で比例して割ればいいわけでありまして、最近当局では、旅客、貨物の両運賃別の内容について資料を求めましても、これに対して資料を出さないわけであります。なぜそういうように資料を出さないのか、出せないのか。これをひとつどなたかお聞かせ願えれば幸いであります。
  180. 石田禮助

    ○石田説明員 お答えいたします。  旅客と貨物の収支状態でありまするが、実際に貨物の損失が幾ら、旅客の損失が幾らということのあれは不可能なんです。それでいずれにいたしましても不可能でありまするが、今度運賃の値上げをするということは、要するに収入をふやすということにあるのでありまして、貨物のほうはこれをふやせば、それは物価のほうにも影響するばかりでなく、収入は減ると私は思う。これは貨物に対する競争というのは非常に激烈である。それで収入をふやすにはどうするかということになると、やはり旅客のほうの賃率を上げて収入をふやす、これ以外に手はないのであります。  国鉄がいままで貨物と旅客の原価計算を要求されて出せないというのは、事実できないということを御了承願いたいと思います。
  181. 中嶋英夫

    ○中嶋委員 私は、できないことはないと思うのです。それは少なくとも傾向は出るだろうと思うのです。しかし、いまの総裁のお答えの中から、すでに貨物に赤字があるけれども、これを値上げをすると、他の輸送機関との競争に太刀打ちできないというようなこういう意味ですから、明確な数字はないが、貨物運賃が黒字ではないということが言えると思うのですね。黒字ならば逆に値下げをして競争に打ち勝つという方法もあるわけです。ですからいまの答弁から、貨物運賃に赤字ありとこう私は理解して次の問題に進みます。  そこで、その総裁のおっしゃる競争相手である自動車輸送、この自動車輸送の今後の見通し、特に最近の道路事情等、あるいは従来自動車輸送では考えられなかったやはり仕分けをするためのターミナルをつくるとか、いろいろな諸経費、諸設備が必要となってくる、こういう趨勢、しかもこの前途は相当きびしいものがあると見通される。こういう現況下において自動車輸送の今後の見通しというものをどのようにお考えになっておるかを運輸大臣から伺いたいと思います。
  182. 原田憲

    ○原田国務大臣 総合的な交通政策という面から自動車というものがどう伸びていくかというお尋ねでございますが、いまの総裁のお答えのように、国鉄の貨物輸送が自動車というものとの競合によってたいへん食われた、こういう事実は間違いがないと思います。しかしながら、いま御指摘のように、それでは自動車が今後未来永劫続いていくかということについては、生産の面からもいま議論の出てきておるところでございます。しかしながら私は、自動車産業というものはまだここ一年や二年でまいってしまうような産業であるとは考えておりませんが、総合交通政策の面から、私どもは陸海空というところでどうとらえるかということを政策的に考えていかなければならぬと考えております。  その点で今後自動車、それから鉄道、空というものがどう働いていったらよいかということでとらえていきますと、鉄道というものは、全国的に見て中、長距離の貨物の輸送、これは今後時代が相当進み、技術革新が行なわれても、国鉄というもの、鉄道貨物輸送というものは、国民経済の中で繁栄のための条件として必須のものであろう。それから大都市の通勤通学の輸送、これも自動車は、バスが非常にたくさんできてきておりますけれども、大量輸送ということになるとどうしても鉄道というものによらざるを得ないであろう。あるいは都市間の旅客輸送、これもなるほど東名道路ができバスも走りますけれども、やはり都市間の旅客輸送を受け持つものは国鉄のほうであろう。こういうように把握していくわけでございます。  そうしますと、したがって自動車というものはどういうものを将来背負っていくのかということを考えますと、中、短距離の旅客、それから近くの貨物、そして面といいますか、広くその面としての輸送を受け持つ、こういうことが自動車の受け持つ役目になってこようかと考えるのでございます。  しかしながら、このごろは何しろ日進月歩というそのことばのまさに当てはまるように、技術革新というものが非常なものでございますから、どのようにまた進んでいくかわからないという部面もございますけれども、これに対応しながら交通政策というものを進めていかなければならぬと考えておりますので、これらの面につきましては、なおいわゆるコンピューター時代でございますので、PPBSというようなこともいわれております。これらのことを取り入れて、鉄道は何をやる、自動車は何をやるということを考えて進めてまいりたいと考える次第でございます。
  183. 中嶋英夫

    ○中嶋委員 ですから、少なくともわれわれが反省しなければならぬと思っておるのは、一時期、これはアメリカの影響などもありますが、自動車輸送が何か交通輸送機関の主になって、鉄道輸送のほうが従になるんじゃなかろうかというような、そういうような考え方が相当広くしみ込んだ時期があったと思うのです。確かに鉄道輸送よりは、いわば生産した工場から問屋まで直通、あるいは顧客のところに直通できるという要素、積みかえが要らぬというような要素、こういう中で特に自動車産業が非常な政府の応援も得てどんどん拡大していく。そういう中で、何か自動車が主で鉄道輸送のほうが従になるのじゃなかろうかというような、そういう大きな錯覚があったと思うのです。しかし、日本の地勢、人口集中、狭隘さ、地価の高騰ぶりなどからいくと、とても最近の自動車生産には道路のほうが追いついていけない。道路行政は非常に重要な行政で、相当な予算をとってなお足らぬ。もちろん舗装の状態など、率も各国に比べて非常に低率なことはまことに残念である。これはぜひ改良しなければならぬと思うのでありますが、しかし、一方で混雑状態をつくっておるのは、ある意味では無計画な自動車の生産、そういう生産過剰などが非常に道路事情を逆に悪化させておる、こういう現況です。  私どもは鉄道の輸送を見詰めるときに、一面自動車の輸送というものが、いま運輸大臣おっしゃったように、いわば中間距離の貨物、旅客輸送、並びに貨物の場合は地場と申しますか、面の面を担当するとかというようなところにいやおうなしに局限されてくる、こういうことが言えると思うのです。ですから、政府の方針として、自動車はこの辺を担当、あるいは鉄道はこういう面を担当するのだということよりも、いやおうなしに追い詰められて自動車輸送というものは地場あるいは中間距離のところにとどめられていく、こういう事情にあるだろう、こう思うのです。こういう点から、私は鉄道輸送と自動車輸送の比重はやはりわが国においては鉄道輸送に主がある、こう確認してしかるべきだ、こう考えるわけですが、この点、大蔵大臣、運輸大臣、両大臣の御見解をまず伺っておきたいと思います。
  184. 原田憲

    ○原田国務大臣 国鉄総裁が答弁をしたいそうですが、国鉄の総裁はあなたの問いはまさに的を射ておるとおっしゃりたいのだろうと思っておりますが、私は、中嶋さんがおっしゃる自動車というものが、はたして生産を抑制するというところまで政府がやらなければならぬということになるかどうかということについては、日本の経営者というものは経済に適応する能力を持っておると思いますから、これはすでに今後の自動車というものに対する見きわめをみずからつけてきておる、このように実は考えておるのであります。日本経済の強さというものはそこにある。政府が一々何でもかんでも乗り出していってとやかく言わなくても、みずからの世界における地位、みずからの生きていく道というものに的確に適応するところの頭脳を持っておる。その経営というものが今日の日本を築き上げたと思っておりますので、自動車の生産に政府が制限を加えるというところまでいかなければならないというふうには——実はこんなことを言うと通産大臣のなわ張りでありますから、私が要らぬところまで言う必要はないと考えますが、交通政策としてはあなたがおっしゃっておるような点、十分検討されなければならない点があるのではなかろうか。  ということは、エネルギーの面におきましても、ガソリンというものが、これも技術革新で都会におけるところの公害というものがなくなってきたらまた別問題でございますが、それらの問題をとらえて考える。今日の都市の中におけるところの都市改造を行なうことによって、もちろん交通緩和ということは考えられるでありましょうけれども、それらの問題を考え合わせてやってまいりますときに、鉄道というものが十分果たせる役割りというものがある、鉄道を利用したほうがよいという点を勘案すべき点はある、このように認識をいたしております。
  185. 福田赳夫

    福田国務大臣 私も大体運輸大臣と同じような考えですが、確かに、交通機関、その体系、これについては考える余地がある時期に来ておるのじゃないか、そういうふうに考えます。ただ、実行はなかなかこれはむずかしい問題でありますから、考えたからといって直ちにそれが具体化し得るというふうには考えませんけれども、問題は出てきておる、こういう認識を持っております。
  186. 中嶋英夫

    ○中嶋委員 最近、浜松町から羽田空港までのモノレールがオリンピックの少し前にでき上がってからおよそ閑散とし、経営としては大赤字、経営者としてもどうなるか見通しが立たない、あのモノレールがいつやめるのだろうという見方があったのですね。ところが最近、首都高速道路の渋滞が非常にひどいものですから、浜松町からの乗客が非常にふえてきた。黒字転化の見通しすらある。こういう一、二年前に考えられない大きな変化がきていると思うのです。  ですから、私がいま伺ったのは、もちろん自動車の生産制限をいまするとかしないとかいうことを、このきょうの委員会政府側と質疑をしようとは思っていません。しかし、いやおうなしに、いまおっしゃったように、自動車産業界のほうで自主的にしろそういうことが要請されてくる。しかも最近のいわゆる景気のかげり論などの中には、自動車の在庫が非常に多くなってきたということも指摘されておる。そのことをしかし私は問題にするのではなくて、自動車輸送と鉄道輸送の主従が、鉄道輸送のほうが少なくとも主じゃなかろうか。ないしは再検討するということは、自動車輸送がかりに主であり、鉄道輸送が従だときめつけられないところまでは、これはみんな意見の一致を見るところだろうと思うのです。そうなると、たとえば今度の通行税、これは一種の目的税であります。同じように、鉄道輸送における軌道に匹敵するのは自動車輸送における道路だと思うのですね。その道路の建設、補修などの場合は多額の国庫の支出、負担が行なわれておるわけです。ですから、いみじくも冒頭お話があった、鉄道輸送と自動車輸送とを競争相手と見るかどうかは別として、かりに競争相手と見た場合に、鉄道のほうにはハンディがある。自動車輸送と比べて、通行税あるいは、もちろん建設する場合の資金については政府の援助、手当てがつくでありましょうけれども、いわゆる独立採算制——いい悪いは私はきょう論じませんけれども、逆に地方公共団体に納付金などを納めなければならないというのが国鉄の実情なわけですね。こうなると、無限にその機能が拡大し発展していく可能性が乏しい自動車輸送の、鉄道における軌道とも称すべき道路に対しては、国、地方公共団体が相当の出費をしておる。しかし重要な、再検討まで皆さんお認めになった鉄道輸送については、そういう国あるいは地方公共団体からの援助というものは一切ない。  先ほど原田運輸大臣に伺ったとき、財政通としての原田さんが、単に従来の経過から生まれてくるいわゆる審議会方式である再建推進会議の結論をそのまま実行に移していくというそういう主義ではなくて、財政事情に通暁された原田さんとしての見識を先ほどちらりとお示しになったわけですが、たまたま大蔵大臣はそのときちょっと席をはずされておりましたけれども、私はこの辺のところを、大蔵大臣は答弁がなかなかじょうずで、問題はあります、しかし実行になるとなかなかというようなことで、不得要領のところで終わるのですけれども、現に自動車輸送の壁というものは一、二年ということばをさっきぽっと運輸大臣もお使いになりましたけれども、そう先ではない。これにたよっている姿と、鉄道輸送に国が大胆に力を入れていくという、いわゆる独立採算制などというものこそを再検討していく、こういうときにもう来ているのでないか。ここのところをひとつ大蔵大臣から伺っておきたいと思います。
  187. 福田赳夫

    福田国務大臣 道路と国鉄というお話ですが、道路は不特定多数の全国民を相手にいたしておるわけであります。これはやはりこれを全部有料にして事業としてやっていくというわけにはいくまいということは、中嶋さんも御理解をいただけるだろうと思います。これに反して、同じ交通機関として重要なる役割りをになっておる国鉄は、ともかく東海道にいたしましても、山陽にいたしましても、あるいは東北にいたしましても、その路線というものを独占をしておる。そういうことを基幹とした企業体制というものができ得る体制にあるわけであります。もとよりこれは企業体でありますから、独立採算ということをやる。これは私は、企業をほんとうに近代化合理化させる上に、独立採算ということで他の私鉄とかなんとかと競争させる、また経営をしっかりやっていくという上において、いい仕組みであるというふうに考えまするが、御指摘のように、これは公共機関であり大事な機関であります。ですから、これに行き詰まりがあるということになれば、これは困るのです。でありまするから、今回も、とにかく再建会議の御提案を財政当局も尊重するという態度をとったわけでございます。  道路には国費が出ておるが、国鉄には出ておらぬという議論、しばしば聞くのでありますが、そういう根本的な違いがある。こういうことはぜひ御理解を願いたい、かように思っております。
  188. 中嶋英夫

    ○中嶋委員 国鉄の企業、公共的な企業だということはわかりますけれども、利用者は双方とも不特定多数なわけですよ。道路は確かに不特定多数の人々が利用する。しかし、いまもう歩くということと車に乗るということと差をつけることのできない時代に入っておると思うのです。以前は、人間親からもらった二本の足がある、これがまず主だ。それがかごに乗るとか、馬に乗るとか、車に乗るとか、いわば楽をするということで、これは確かに別扱いということが考えられたかもしれませんけれども、いまはもうとにかく生産に従事するために、自分の家からつとめ先に歩いていったのでは間に合わない、働けない。あるいは公共的な任務を持っておる人が歩いておったのではその任務が果たせない、課せられた使命というものは達せられない、こういうことだろうと思う。  ですから私は、道路と軌道というものを別性格のものだとは考えられない。ただ、その軌道の上を走る車両、あるいはそれを運営するための諸経費、これは企業の中でぜひ放漫でなくやっていただかなければならぬと思うのですね。同じように道路の場合でも、その道路の上を走る車を企業として、これは何も私営だけでなく公共団体もやっておるわけです。都営バスとか、市営バスとか、あるいはいま国鉄の経営するバスもあるだろう。そうすると道路と軌道というものについて、私は、大蔵大臣が言うように、一方は不特定多数の人が利用するのだという差異はないと思う。もちろんいままではあった。そういうお考えをお持ちになるのも無理ないと思う。その考え方をいま切りかえなければならぬときに来ておるのではなかろうかということで私は伺っておるわけです。要するに、あすを展望した意味でのお考えをお聞かせ願いたい、こういうことです。
  189. 福田赳夫

    福田国務大臣 しかし、国の公共施設は、中嶋さんからもお話がありますが、だんだんそういう傾向になっていくものが多いのじゃないかと思います。道路につきましても高速道路というような形をとる、これは独立採算をたてまえとするわけであります。また空港なんか、これはなかなかむずかしい点がある。というのは諸外国からいろいろ来るものですから、競争上というようなむずかしい点がございますが、しかし、だんだんと私はそういう傾向をとっていくのではあるまいかと思う。むしろそういう公共の輸送施設というものは、税という形で支弁するという形態が、だんだんとむしろ国鉄式な、利用者によって運営をするというような企業形態をとっていく傾向というものが、広く見て大勢となっていくのではあるまいか、そういうふうに考えます。そういう変化は私は想像いたします。
  190. 中嶋英夫

    ○中嶋委員 そういう傾向が一面あらわれていることは私も認めます。しかし現在、たとえば昭和四十二年度を見ましても、国からの道路予算で財源として認められておるのは、一般財源で八百二十二億円出ているわけですね。それから地方公共団体の場合においては、特定財源を除いて、一般財源は実に二千億をこえておるわけです。こういう予算が実行に移された道路の上で、道路輸送というものは現在維持されているわけです。もちろんそこには、たどたどしい足取りで歩く子供の歩行者もあるでありましょう。老人も歩くでありましょう。しかし、いまや道路利用者の主は自動車にかわっている。もちろん歩行者優先というスローガンはあるけれども、いまや歩道というものは以前のように人影というものはほとんどない、こういう状態ですね。こういうハンディが鉄道輸送と自動車輸送の間にある。私は、何も自動車のほうにこういう財源を使うのがいかぬというんじゃない。道路予算は決して多いとは思わない。少ないと思う。しかし、同様のものが鉄道の場合においても考えられていいんじゃないか。しかもその鉄道が黒字続きであるものに援助するのじゃなくて、赤字続きである。しかも、総理大臣が認めらたごとく、今後も値上げ、値上げが予想される、やむを得ないだろうということが言われる。こういうときに鉄道輸送というものに対しての再認識というものがあってしかるべきだ。特に当委員会で活躍された財政のベテランである原田運輸大臣の御見解なども、この機会にお聞かせ願えれば幸いだと思います。
  191. 原田憲

    ○原田国務大臣 いま中嶋さんがおっしゃる点で、独立採算制をとっておる国鉄に対して国から財政援助策をとってもしかるべきじゃないか、これと比較するのに道路というものを例に引いて申されておるのでございます。道路は無料公開が原則でございます。いま確かにあなたがおっしゃるように、時代の変遷というものはございます。しかし、いまあなたがおっしゃるように、やはり昔のかごとか馬とかに匹敵するものが鉄道であるとするならば、鉄道はこれは乗った者が運賃を払う。道は無料公開、これは歴史的な沿革にもつながるわけでございます。また、やはり鉄道というものは国営の当時からその運営は運賃をもってまかなわれてきたことも御存じのとおりでございますから、私はやはり、独立採算制をとっていく、そして、これが能率のよい経営をしていくことによって国民にサービスをすることができるということが原則であろうと思います。  しかしながら、先ほどお話の出ましたように、時代というものの変遷から一方において非常な変革がきて、独占を許されなくなった。輸送の部面で独占を許されなくなって、一方においてだから収入というものが減ってくる。また、投資をいたしましたことについて収入が上がらずに、逆に金利というものが負担になって押しかけてくる。人件費は赤字であるから払わぬということができる時代ではございません。やはりそれ相当な人件費は払っていかなければならない。こういうことが重なって国鉄は財政の上で非常な危機に瀕した。こういう時代でありますので、これに対応するためにはその手段として国家が財政的な措置を講じて、そうしてこの財政危機を突破することによって本来の独占採算制で国民にサービスができるというところへ持っていくという努力をするというのがたてまえではなかろうか。そのためには今度、まあ国鉄総裁に言わせますと、いままでそういう機会があった、それは運賃値上げという方法によってそういうことが可能であったけれども、それは国も聞いてくれなければ国会も聞いてくれなかった、こういうことをおっしゃっておるわけでございますが、運賃値上げということだけでやろうといたしましても、物価という問題も勘案しなければなりませんし、いまあなたがおっしゃっておるような問題も私は含まれておると思います。  それらのことを考え合わせますときに、いま一番国鉄の財政の上で圧迫を加えておるところの金利というものを何とか一応たな上げする、これを推進会議が申しておるわけであります。このことについて大蔵当局にいままで何度も話をやったけれども、大蔵当局は聞いてくれない。まあ他に例を引きますならば、船に対して利子の補給をやったじゃないか、こういうような話も推進会議では出たようでございます。またこの場で、国会でも、そのような話が出ております。中嶋さんもそのようなことをいまおっしゃっておるわけでございますが、その点について国のほうでは今度はよろしい、それを見ましょう、ただし一般会計に現在それだけの財政的な上で余裕がないから、それに相応するものを金を貸して、それに見合うところの利子を補給するという形で、実質的にはそれを実施することにしようということを一方でとっておるわけであります。  それから、いまあなたがおっしゃっております国の場合に、大臣がおっしゃっている有料道路、国鉄と比較するならば、それが妥当なものではないかと思います。それに対しまして六分五厘の金利の差を補給していこうという財政補助金制度、これは去年から始まっておるのでございますが、これも五十年まで続けていこう、こういうことを財政的な措置として国はとったわけでございます。私は、先ほど申し上げましたように、望むべくはこの六分五厘は六分にも下げてほしい、こういう希望を持っておりました。それも折衝もいたしましたけれども、大蔵大臣は、国の大事な国民の税金を預かっておられるのでございますから、ただ望んだからといって、はい、さようでございますかというわけにはまいりません。これを説得しなければなりません。これのほうが有効であるということ、その点について私はまだ今後も努力を続けたいと思っておりますが、まあ六分五厘の現在の財政補助金は五十年まで出す、こういうぐあいになってきた。これはいわゆる三位一体という形で国のほうも財政援助をするということで、実は大蔵大臣はたびたび、国鉄総裁がいままで言うたことないほど感謝されておるんだという表現を使っておられるのは、ここにあるのだと思います。私はけっこうだと考えておるのでございます。
  192. 中嶋英夫

    ○中嶋委員 私の質問の機会に、大蔵大臣なんかにおせじを言ってもらっては困ります。  いま受益者負担の考え方を、私が先ほど使ったかごや馬の話、運輸大臣うまくからませましたけれども、確かに馬に乗った者は馬にだちんを払ったでしょうし、かご屋にかご賃を払ったでしょう。しかし、その当時の街道筋には並木道があった。あの松並木は何も受益者が払ったものではないですね。そのときの政治として、雨風あるいは日射病というようなものから、ああいうものが長い歴史の中でできてきた。ですから、平地の長い街道には松並木がある。これはいわばレールに枕木があるのと同じ条件だったろうと思う。これはもう数百年前の行政者が考えてやっておるわけです。ただ私鉄などの場合は多角経営ですから、土地でもうけたり、デパートでもうけたり、あるいは最近では中小企業を圧迫するようなスーパーマーケットのようなものをどんどんつくって、同時にまた、それが旅客をふやしていくという相乗関係をつくって、伸びあるいは維持してくるわけです。独占企業だからといっても、実際は相当のところはもう独占でない。相当競合路線が出ておる。国鉄は多角経営はできないというかせを受けておる以上は、当然受益者負担方式などというものでない新しい考え方、しかもいままで国鉄を経営する側のほうで自動車輸送を競争者に見て、それとの関係で貨物運輸は上げられない、旅客運賃でやってくれということを旅客である国民のほうに押しつけている。先ほど石田総裁から、貨物の運賃値上げは物価値上がりの原因になるが、旅客運賃の値上げは物価値上がりの理由にならないというお考えがあったが、私はそうは言えないと思う。それは、いま各企業でも交通費負担も相当広まってきましたし、結果的には旅客運賃の値上げというものは各会社、企業の出張旅費の値上げにもかかってくるでしょうし、つまりコストの一部を負担することには何ら差異はないと思う。そういう考え方ではなくて、やはり国鉄を守る——私は石田総裁の総裁就任以来の非常に精力的な努力というものは高く評価しながら、いわゆるピンチに立った国鉄を何とかおれは守ってやるのだという意気込みはよくわかるのですが、それが重点で、何か新しい展望を国によくわからせるということが、お説教のようにはよく出てわれわれにはわかるけれども、ほんとうに福田さんのこうべをたれさせるまでの説得があっていいのじゃないか。いま原田さんが言うように、大蔵大臣は同じ大臣でも国政の非常に大事な面を担当しておられるので、国鉄問題については金がないということで遠慮しいしいやっておられる。私はもう自動車輸送というものは限界に来ていると思うのです。たとえば一トン当たり、一キロ当たりの運賃の比較表がよく出ますが、鉄道のほうが少し安い、そのかわり時間がかかる。あるいは品目によって、あるものは鉄道が安く、あるものによっては鉄道のほうが高くつく。大体五分の態勢になっている。しかし、これから一年たったら自動車のほうも時間がかかってくるだろうし、相当の変化がやってくると、いやおうなしに鉄道は国の輸送の大動脈だというプライドの上に、私は国鉄経営に対する国の新しい乗り出し方が当然要請されるときが来ると思うのです。  そういう意味で、大蔵大臣に遠慮しないで、ひとつ大蔵大臣のいる前で、日ごろ考えていられることを原田さんにもう一ぺん言ってもらいたいし、石田さんに質問するのは、どうも私の持論が石田さんの持論と似ているようなもので、繰り返すようでちょっとひっかかるが、もしこの機会に発言されるならば御見解をお示し願いたいと思います。
  193. 石田禮助

    ○石田説明員 日本の貨物輸送の上において国鉄が主であるべきものが、一体どうしていまやトラックのために振り回されておるかということでありまするが、これは私は終戦後の国鉄の輸送力の不足ということにあると思います。国鉄は二十四年に公共企業体になりましてからどういう仕事をやっておったかというと、ぶちこわされた施設の修理にただきゅうきゅうとして、輸送力の増強なんかというものは事実できなかった。その間に日本の産業は非常に発達してきて、輸送需要は多くなる。しかも一方に旅客の輸送需要は非常に大きい。国鉄としては限られたきわめて貧弱な輸送力をどっちに使うかということになると、これはいいことか悪いことかわかりませんが、とにかく旅客輸送のほうに使って貨物のほうには使わなかった。使う余地もなかった。さらにまた、これは少し国鉄の欲ばったことをお話しするようで、はなはだ申しわけないのだが、貨物のほうよりは旅客のほうがもうかるというようなことで、輸送力は貨物のほうに対しては振り向けぬ。そしてまたサービスも悪いということ。その結果どういうことになっているかというと、自動車の輸送に対する需要は非常に窮屈になってきた。数字から見ても御承知でしょうが、これはいわゆる路線業者だけの力をもってしてはもうとても追いつけないということで、つまり製造家そのものが自分でトラックを持って輸送をするようになった。これが一番大きい。現在のトラックの所有者の区別を見ましても、路線業者の持っているものよりは製造家の荷主の持っているほうが大きい。一般荷主が自分で自分の荷物をトラックで運ぶということになった場合には、かりに鉄道なりに積んで輸送したほうが利益だということであっても、やはり持てるトラックは利用しなければならぬということで、トラックの輸送は非常にふえてきた、こういうことだと思います。  もう一つ、とにかくトラックのいいことはドア・ツー・ドア、国鉄はつまりターミナル・ツー・ターミナル、そこにつまりハンディキャップがあった。たとえば国鉄にしましても、引っ込み線のごときドア・ツー・ドアのことをやっているものに対しては、国鉄の輸送量二億トンの半分以上は引っ込み線です。それで国鉄の現在のあれからして、貨物輸送に関するものにつきましては、とにかく輸送力をふやすということとサービスを思い切って改善するということでありまして、最近においてはだんだんとその効果が出てきておる。まずその一番大きなものはコンテナ輸送で、これは非常な勢いです。一年に三割五分から三割はふえておる。それから引っ込み線はひとつできるだけ奨励してこれを利用する。さらにドア・ツー・ドアに対する対策として、国鉄はトラック業者と手を組んでドア・ツー・ドアをやるようにする。それでコンテナというものをやっておるような次第であります。というようなことで、国鉄の輸送力の増強ができた場合においては、私は相当貨物輸送がふえるのじゃないか。さらに国鉄はいま貨物についてはスピードアップする、そして発着の日時を的確にするというようなことによって、東京−大阪間にはエクスプレス・カーゴ・サービスというものをやるようにしました。  要するに、国鉄はどうしてこんなに輸送力が貧弱な状態になったか、こういうことでありますが、これは私は、昨日の参議院の運輸委員会で申したことですが、国鉄は、終戦後非常なインフレーションの中で物価は上がってくる、人件費は上がってくる、それでとても経費の支弁はできぬということで運賃の値上げを要求する。ところが、運賃の値上げを要求する場合に、国会はどういう態度をとったか、政府はどういう態度をとったかというと、いわく、われわれはいま物価問題と戦っているときなんだ、このときに公共料金を上げるなんというのは問題にならぬというようなことで顧みられもせず、みられた場合においてもいいかげんにぶった切られていまのような安い運賃しかできなかった。そのために自己資金ができなかった。自己資金ができないがゆえに輸送力の増強ができなかった。  そのほかに、私は大蔵大臣をここに置いて申し上げるのははなはだ勇気を要する次第でありますが、そういうぐあいに自己資金の流入が貧弱なる上においてどういうことをやったか、公共負担です。一番大きなのは通勤、通学です。通勤、通学の五割の割引。それはさておいて、それ以上のものだけをいいましても、貨物の割引と一緒にして、昭和二十四年から四十二年までに国鉄の負わされた荷物というのは一兆二百億だ。もしも五割というものを入れると、一年に千七、八百億の荷物を国鉄はしょわされてきた。こういうような、ろくすっぽめしを食わせないで、そうして大きな荷物をしょわされてきたというのが今日までの状態であって、これは私が総裁になってからずいぶんずうずうしくやりましたけれども、なかなかどうも了解を得られなかったのですが、今回ようやく大蔵省がさいふのひもをゆるめて、適当な、というかどうか知りませんが、まとまった援助をしてくれるようになった。これが、企画庁長官をして言わしめると、今度やったら、総裁、これからもやるんだ、こういうことを言いましたが、どうぞ願わくは、将来ともそういう頭で、もう少し慈愛の目をもって国鉄を見てくださいというようなことを、大蔵省にお願いせざるを得ないというのが、私の忌憚なき希望であります。
  194. 中嶋英夫

    ○中嶋委員 私に与えられた時間は一時間ですから、あまり長い答弁をされると……。石田総裁の、沿革から説いての御意見、私らもいろいろ機会に伺っております。ただ、私の言いたいのは、あなたは自動車輸送を競争相手というふうに言うが、自動車輸送と鉄道輸送の場合の見通しとしては、現在鉄道輸送が主であり、自動車が従なんだ。そういうときに、自動車のほうは、道路、鉄道でいえば軌道に相当する部分は、国なり地方公共団体の支出によって相当カバーされておる。鉄道はそれがない。それをただひたすらに利子補給とか、あるいは運賃値上げのほうに求めていって、運賃値上げに国会が理解がない、政府も少し気がねし過ぎる、こういう御不満を石田さんはお持ちだけれども、将来の展望からいった場合に、運賃値上げに活路を開くということは、特に先ほど来わからぬと言いながらも、御答弁の中ににじみ出ているように、旅客運賃は明らかに黒字なんですよ。定期券が安いといっても、それは旅客運賃でカバーできる。問題は貨物運賃です。先ほどからお話しのように貨物の赤字がまさに国鉄の荷物なんです。しかも、この荷物を解決する道が明らかに物価高騰の大きな条件になる。しかも、自動車輸送のほうは、道路事情からいって、私は輸送力は逆にこれからダウンしていくと思います。そういうようなことから、まさに考え方の切りかえどきじゃなかろうか。その切りかえるところを大蔵大臣のほうでよくつかんでいただくときが来たのじゃないか。こう考える。  プライベートなお話し合いのときに福田さんと話したことがありますが、この自動車輸送の状態はどのくらいで行き詰まるだろう。プライベートな場所ですけれども、そのときに大蔵大臣は、二年か三年だろうということをおっしゃったのでありますけれども、そういうことが見通されるときに、自動車と鉄道と競争だとかなんだとかいうことでなくて、自動車は行き詰まった、国鉄も行き詰まった、その輸送力を増強するためには運賃値上げだ。これでは国民はかなわないわけです。そうでなく、早晩行き詰まっていくものを運賃値上げで建て直すということでないものを、私は当然大蔵当局として考えていいと思うし、同時に、運輸当局としてもそこに焦点を置いて、今後の施策というものを進めるために、大蔵省との折衝も必要でございましょうが、腹を固めていいときが来たのじゃなかろうか、こういうことなのでありまして、この点について大蔵大臣、運輸大臣のお考えをもう一ぺん伺いたいと思います。
  195. 原田憲

    ○原田国務大臣 先ほどから申し上げておりますが、国鉄が計画をするためにこれから投資をする、これがいまの再建推進会議の案でいきましても三兆七千億、これはまだ確定はいたしておりません。法律が通りましてから私どもが基本計画を立て、国鉄に計画を立てさせるわけでございますけれども、これらの投資というものを通じて考えますときに、相当な額でございます。その場合に、これに対する国からの助成策というものを、先ほど五十年までは六分五厘ということでいわれておりましたけれども、私といたしましてはより有利な国からの助成策を国鉄にしてほしいという考えを持っております。  なお、先ほど通勤、通学の問題で、これはまだ黒字であるというお話がありましたが、私は、これは大問題であろうと考えております。これは国鉄だけの問題でなしに、地価政策という、地価の問題と取り組まなければ、今後大都市だけではなしに、地価というものが物価問題の根底になって、計画というものはすべてこれによって挫折するときが来るであろう。それをだれが補うか、結局国民が補わなければならない。国ということを言いますときには、これは列車に乗らない人の金で補うということでございます。ゆえに通勤、通学というものが、いま国鉄総裁が言われるように五〇%程度の割引をきめてしまって上るということは、半額をきめてしまっておるということでございます。それを定着したものとして受け取っておるために値上げをすることは物価に響くということで、非常な問題になるわけでございます。このことを考えますときに、大都市交通という面で把握しなければならない問題が私はあると思います。これは国鉄だけでなしに、私鉄におきましても、あるいは公営企業、いわゆる高速地下鉄道等につきましても、国民の足を確保するためにどうしたらよいか、こういう面については大蔵大臣に、今後この面からの国の財政面の助成策ということを考えていただきたい問題である、私はこのように考えておる次第でありまして、今後ともこれは利用者負担ということが原則ではありますけれども、十分に国として考慮すべき政策ではなかろうか、このように考えておる次第でございます。
  196. 福田赳夫

    福田国務大臣 お話しのように、交通問題はよほどよく考えなければならない時期に来ておると思うのです。これは総合的な考え方が必要である、こういうふうに考えます。その中において国鉄がどういう地位を占めるか、私は、国鉄の任務というものは決して衰えない。大都市間の旅客の快速輸送という任務、それから距離の長い区間の貨物輸送という問題、都市交通、こういうようなことを考えまして、決して任務が衰えないのみならず、ますます拡充をされていく、こういうふうに考えます。しかし、いまわが国において問題なのは道路事情だ、つまり自動車交通、これを私は実は非常に心配しておるのです。どうしても道路を急速に整備しないと、路面交通について非常にやっかいな事態が起こってくるであろう。新しく重要なる任務を持ってくるのは地下鉄輸送という問題じゃないか。この問題は、また運輸当局ともよく相談をして、将来に備えなければならぬ、こういうふうに考えております。  そういう総合的な立場に立ちまして考えるときに、国鉄はまたいよいよ任務を重くする。鉄が完全な企業として立ち行くということについては、絶対にそうあってほしい、こう期待している次第でございます。
  197. 中嶋英夫

    ○中嶋委員 いまのお考えの中にあった受益者負担、利用者負担という考え方ですね、これは私はわからないのです。マスコミもそうですけれども、赤字路線というものがいわばじゃま者扱いされて、御承知のように評価されている。私は実は都市部にずっと住んでいる者で、赤字路線に全然関係がないのですが、もちろん政治家が人気取りのために、歴然とした赤字のところに強引に線を引いたり、あるいは曲げたりすることは、これは鉄道に限らず、道路にしても厳に慎むべきことだと思いますけれども、赤字路線がその地域にはどうしても必要だという場合には、やはり私は赤字路線は置くべきだと思います。諸外国の例でも、たとえばブラジルなどは、鉄道だけではなしに飛行機の場合でも、国が相当めんどうを見るわけですよ。見なければあの国の産業経済その他が停滞をするわけです。そうなれば受益者負担などと言っておれないときが来る。たとえばいま大蔵大臣が言われました地下鉄、これもやはり同じ軌道、鉄道輸送なんですね。これなどはたいへんな建設費がかかるわけですね。そういうものが、乗りものがあり、乗る人があるという関係でなくて、その他の社会的な変化から成り立っていかなくなってくる。こういうときに、受益者負担、利用者負担という考え方に閉じこもるということは、おそかれ早かれできなくなる。できなくなるなら、できなくなってから大あわてするよりも、その趨勢を見きわめて、いまのうちから考え方を変えていったほうがいいんじゃないか、もう変えるときが来た、こういうことを申し上げておるわけです。  ですから、少なくとも乗りものがあり、乗る人があるという関係でものを始末するときはもう去った、こう理解をした上で、時間がありませんから、今後の御研究を望みたいと思う。その点だけそれぞれお伺いしたいと思います。
  198. 福田赳夫

    福田国務大臣 国の交通政策は、決して将来を展望しないでやっておるわけじゃないのです。将来を展望しながらやっておる。それだけに、先ほど申し上げましたように、さあ道路事情はどうだというようなことも心配しなければならぬ。また、国鉄の任務というものを考える場合に、長期にわたって国鉄をどうするかということも考えなければならぬし、長期的な観点に立ってそれぞれ考えておるわけでございますが、とにかく世の中が急速に変化します。その変化ということを常に踏んまえまして、あやまちなきようにしていきたい。そういう際に、利用者負担という問題ですが、これはやはり大きな柱になるわけであります。この考え方は、そう簡単に捨て去るわけにはいくまい、かように考えております。
  199. 原田憲

    ○原田国務大臣 私も、やはり受益者負担ということは、鉄道あるがために益を受ける人たち、こういうことばと受け取りますならば、それらの人たちが鉄道に対するところの何らかの措置を講ずべきであるという立場に立つものだ。利用者というのは乗客、こういうことにしますと、その運賃というものが経営の収入の原則になるということは、将来とも変わらないと考えます。ゆえに、いま国鉄が背負っている財政再建をするために助成策を講ずることによって、十年後には国鉄は財政的にも必ず立ち直ることができる、こういうことをお願いを申し上げておるのでございまして、やはり経営という際に、利用者負担というたてまえをとって、これをうまく運用して国民にサービスができるというやり方が、私は原則じゃなかろうか、このように考えておる次第でございます。
  200. 中嶋英夫

    ○中嶋委員 最後に申し上げておきますが、どうも私の考え方が、特に大蔵大臣にはよくわかっていただいていないと思うのです。受益者負担、利用者負担という柱は簡単に変えられない、もちろんそれは急激に変えたらたいへんなことになるだろうと思います。しかし、いま交通機関を利用している人は、益を受けているとか受けていないという状態はほとんどないと思います。それは観光旅行とか新婚旅行などは別でありますが、いまは完全な足になっている。私どもは親から与えられた二本の足があることで、おまえは利益を受けている、こういうことにはならぬと思うのです。足が二本もちゃんとあるのだから、おまえは税金を払えとかあるいは何か負担しろ、そんなばかなことはないと思う。いまは完全な足になっているのです。だから、乗りものがある、あるいは乗せたいものがある、運びたいものがある、それを運ぶものがあるというその関係だけでものを始末するときはもう去ったということです。このことを十分お考え願いたい。これを強調して質問を終わります。(拍手)
  201. 倉成正

    ○倉成委員長代理 阿部助哉君。
  202. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 この法律が実施をされますと、通行税というのは二十四、五億入るわけですか。
  203. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 ことしの見積もりでは、この通行税の改正後で二十五億の歳入を見込んでおります。
  204. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 この法律は、皆さんの提案理由の説明にありますように、昭和十五年に戦費調達の一環として発足した、こうおっしゃっているわけですが、戦費調達の一環として戦時立法でやられたものは、もう大体考え直してもいい段階ではないか、こう思うのですが、大臣いかがですか。
  205. 福田赳夫

    福田国務大臣 確かにこれは昭和十三年から始まっているというふうに承知いたしております。しかし国費も多端であり、大勢からいいますと、直接税が非常に重くなってきている。そこで国民のそういう税の負担感というものも重くなってくる、そういうことで——税の理論からいいますと、いろいろあります。ありますけれども、なかなかふん切りがつかぬ、こういう状況で、むしろ少し長い目の考え方からすると、直接税的なものでない何かいい財源はないかと模索しているような状況下にありますので、これが始まったのは昭和十三年だということではありますけれども、そう早急に廃止するというわけにはいかない、かような考えでおります。
  206. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 いま年数はどうでもいいのですが、大蔵省のこの書類では昭和十五年となっているわけです。それはどうでもいいことですが、やはり理屈に合わないものは、なるべく早く整理したほうがいいのではないか。これは、いろいろな理屈はあるでしょうけれども、利益のないところに税を課するというようなことは、やはりやめたほうがいいのではないか。昔であれば人頭税といいますか、そういうものは悪税だと、こう思う。同じような形で通行税なんというものは、戦争中の戦費調達という異常時代にこれができたものであって、もういまの段階では、私はいますぐやめろということも言いませんが、一、二年のうちにこんなものはやめてしまうほうがいいのではないかという感じがするのです。大臣、いまもいろいろあれはあるが、だんだんやめていってもいいようなお話でありますが、これはやはりある程度のめどをつけて、もう通行税なんていう古くさい戦時的な色彩のあるものはおやめになるほうが、税全体の体系の上から見て正しいと思いますが、いかがでしょうか。
  207. 福田赳夫

    福田国務大臣 これは、いずれ税体系というものを相当考えなければならぬ時期が来ると思います。そういう際の宿題にさせていただきたい、かように考えます。
  208. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 特にいまいろいろ問題になっております国鉄の場合にとってみれば、投下した資本も非常に少ない。しかも赤字で動きがとれないというようなときに、また国鉄に便乗して税金を二十五億ばかり政府が取ろうなんという考え自体問題があると思うのです。大臣課題にするとおっしゃるのですが、私はそれはそれでいいけれども、国鉄のいまの問題をかかえておるときでありますだけに、むしろ汽車に乗ったときの通行税なんというものは、ほんとうはこの際やめて、その分だけでも国鉄のほうに回してやるほうが正しいんではないか。正しいとかいうよりも、そのほうが当然なんじゃないかという感じがするわけでして、もうこんなものはできるだけ早くやめていただきたい、こう思います。  次に、この法律が通らないと運賃の値上げのほうは——実際はこれはセットになっておるような感じがするのですが、これが通らないと運賃は値上がりをするわけにいかないわけですか。
  209. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 今回改正をお願いしております法律は、従来の税法でございますと、国鉄運賃法の制度と矛盾をいたしますので、それを直すためにお願いをしておるわけでございます。  簡単に申し上げますと、現在は通行税は一等にだけ課税になっております。二等は非課税になっております。ところが、等級制のない場合には、一応みなし規定がございまして、全体を二等であるとみなす、そこに運賃の差がある場合に、五割以上差があれば、それを一等とみなすというようなみなし規定を置いておりますが、ただ国鉄につきましては、運賃法ではっきりと等級をきめておるというたてまえから、法律上みなし規定の適用を排除するということが明文で規定されております。したがいまして、この改正で、明文でみなし規定の適用を排除しておりますものを削除いたしませんと、このみなし規定は適用になりませんから、今回国鉄運賃法の改正で等級制を廃止いたしましても、国鉄の車両がすべて二等だという法律上の規定がないわけでありますから、要するに二等がない、二等の非課税規定が適用にならないおそれが出てまいります。そうなりますと、全体に通行税がかかるということになってしまうわけで、もちろん政府はそんなことを考えておるわけではございませんが、国鉄運賃法を直せば、同じように通行税法も直すのが法律上つながっておるわけでございますので、ぜひこれは一緒にやっていただかないと、論理的な矛盾が起きるということになるわけでございます。
  210. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 一緒にやったほうがいいにきまっておるのでして、それにかかわらず、先般の運輸委員会でああいう強行採決というような事態を引き起こす。むしろやはり並行して審議をしていくということが正しいほんとうの姿だったと思う。むしろああいうことをやるよりは、国民の前に堂々と論議を尽くして、そしてこの法案と並行しながら審議をされていくということが、私は正しいあり方だったと思うのですが、どうしてああいうような事態——政府のほうでは私たちの責任じゃない、国会の問題だろうとおっしゃるだろうけれども、今日の政党政治の中で、私は政府当局にもやはり責任がある問題だと思う。そんなことをやってみたところで、今日依然として四月一日からの発足はできないでおる。それならば、やはり国会の審議というものを尊重しつつ、並行して審議するのが正しかったと思うのですが、大臣はやはり議員でありますし、自民党の党員でありますから、その点どうお考えになりますか。
  211. 原田憲

    ○原田国務大臣 このことにつきましては、運輸委員会におきましても、また参議院でもお答えを申したのでございますが、私どもは責任をもってこの方法がよかろうということで、政府の案を提案いたしたわけでございます。  したがいまして、国民の最高決議機関である立法府において、十分うまい運営をやっていただいて、賛否は別にいたしまして、適当なところで結論が出していただける。これが良識でございますから、そのようにお願いを申し上げておったのでございます。ところが、運輸委員会におきまして、いわゆる混乱のうちに採決がなされた。その結果、いま阿部さんがおっしゃっておるような質疑が私に対してなされておるわけでございますが、これはまことに残念なことでございまして、できるだけ私は、国民の前に、賛否は別にして質疑を重ねて、問題の所在を明らかにし、採決をして結論を出す、こういうことをお願い申し上げたいと存ずる次第でございます。
  212. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 大臣の答弁、まことにりっぱであります。私もそのとおりだと思います。そうすると、過般の強行採決は、自民党の一人相撲だ、こういうふうに大臣はお考えになるのですか。
  213. 原田憲

    ○原田国務大臣 私は、予算委員会で質問がありましてお答えをいたしたのでございますが、国会は国民の最高決議機関でございます。したがいまして、会期がきめられ、そして政府が提案をいたしました、期限を切った法案につきましては、賛否は別にいたしまして、その期間に十分な議論を尽くすということが、良識の府の常識ではないかというふうに考えております。  しかし、人間のいたすところでございますから、間違いというものが起きないとは言えないのでございまして、したがいまして、いま阿部さんがおっしゃるように、私も議員でございますから、いまさらしかつめらしい議論はいたしませんが、やはり与党といたしましては、政府と一体であるという関係から、責任をもってこれを通過さそうとする。これに反対という立場の人たちは、これをはばもうとする。こういうことになるのでございまして、私はあの場合、自由民主党がやったことが、一人相撲ではないかという御質問に対しましては、これはさようでございますということは申し上げられないのでございまして、その点は御了解を賜わりたいと存じます。
  214. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 大臣のおっしゃる先ほどのおことばは納得しますが、いまのやむを得ないという話には私は納得しないのでありまして、やはりああいうことのないように十分な論議を尽くして、その上で、確かに賛否は私はやむを得ない、国民の選んだ多数なんですから、多数の意見に従うということは、これはやむを得ないところでありますが、ああいう形で論議しないままで、どさくさで通してしまうということには、私は非常に強い抵抗を感ずるわけであります。  次に、私もよく聞かれて、不勉強のせいかよくわからぬのですが、今度一等、二等を廃止して、特別料金ですかを取る、特別車をつくるということはどういうことなんですか。ただみんな底上げをするだけ——やはり区別があるんじゃないですか。何にも変わらない、前に三等があったのを二等にしたみたいで、車も変わらなければ何も変らないで、これを一等にするということは、何わかごまかしみたいな気がしてならぬのですが、どういうふうに変わるのですか。
  215. 原田憲

    ○原田国務大臣 技術問題でございますから、詳しく政府委員あるいは国鉄から説明いたします。
  216. 磯崎叡

    ○磯崎説明員 ただいまの御質問でございますけれども、昭和三十五年に、従来の一、二、三等級であったものを、国会の御承認を得まして二等級にしたのは御承知のとおりでございます。その後、おかげさまで相当設備等もよくなってまいりましたが、最近の状況を見ますと、いわゆる現在の一等客はほとんどここ数年間ふえておりません。ふえてないどころか漸減の傾向でございます。二等客は多少ふえております。そういう意味で結局現在の二等の約二倍近い運賃では一等を利用する人がだんだん減ってきてしまう。いままでは二等車の設備があまりよろしくなかったので、ぜひ一等という方もあったのでございますけれども、二等の設備がよくなってきましたために、結局一等車の利用がどんどん減ってきておりますということで、この際、等級制度をやめて運賃は一本にしてしまう。しかし、いままでの一等車が約千両ございます。今後とも病人、婦人等、多少やはり楽な旅行をしたいという方もおられる。そういう方に、たとえば十五両なり二十両なりに一両くらいの一等車的なものが必要だと思いますが、それは運賃はいまの二等車と申しますか、単独の運賃でございます。それに特別車両料金を払っていただけば利用していただけるという、こういう形を考えておるわけでございまして、いまの利用度の少ない一等車をもう少し利用度をふやしたいという私のほうの商売上の考えも入っております。
  217. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 どうもしかし、私たちのローカル線は何十年前からかわからない車ばかり走っておるわけですよ。そんなのを一等だなんていってもらったところで、国民はちっともぴんとこないですよ。一等の運賃をむしろ何ぼか下げるというだけの話であって、どうも等級だけ、名前だけ上げてもらってもどうも国民はぴんとこない。そうすると、これからつくる車はみんないまの一等車のような車をつくって、逐次変えていく。相当年数はかかるだろうけれども、そういうお考えなんですか。
  218. 磯崎叡

    ○磯崎説明員 私のほうの車は、終戦後だいぶたくさんつくりましたけれども、やはり初めのうち資材その他の関係でいい車ができませんでしたが、最近はいまの二等車の内容も少しずつよくなっているということは御存じのとおりでございます。将来ともいまの二等車のレベルをもう少し上げていきたいという気持ちは、先生のおっしゃったとおり持っております。しかし、いま走っておる一等車程度のものを将来全部使うかといいますと、そこまではちょっといまの状態では——やはりいまの二等車を徐々によくしていくというような程度の改善はぜひやっていきたいと思っておりますし、また地域的に申しますと、いまお話しのとおり、多少地域によって、線路によって使う車が違う。使う車が新旧ございますので、これもなるべく早くいい車を、新しい車を全国で使っていきたいというふうにしたいと思っております。
  219. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 どうもあなたのお話はわからないのです。それならば、いままでの二等車が今度一等車になるのですが、これからつくるのはどんどんよくしていくということですね。そのかわり今度はいまの一等車のようなものはつくらないで、新しい車は全部設備をよくしていくということですか。
  220. 磯崎叡

    ○磯崎説明員 必ずしもいまの一等車のようなものを全部これからつくるというわけにはまいりません。と申しますのは、やはり製作費が二等車で約七割ぐらい高くなっております。新しい車を全部いまの一等車式にするのはむずかしいと思いまてが、いまの二等車を今後全般になるべくだんだんよくしていきたい。しかし、それでもある程度ぜひ楽に行きたいという病人、婦人等もございますので、それらのためにはやはり十五両なり二十両編成に一両ぐらいいまの一等車程度のものは将来ともつくっていかなければならぬ、かように考えております。
  221. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 そうすると、そんなに一等車みたいなものをつくらずにだんだん差を縮めていく、こういうことでありましょうけれども、これは時間のかかることであって、何かただ名前だけ変えて国民はごまかされたような気がしてならないそうであります。私もいろいろ聞かれるのだけれども、どうもその辺の説明をしてやるだけの知識がないせいもありますけれども、いまのあなたのお話を聞いておりましても、どうもこれは国民は納得をしないのじゃないですか。もう少し国民が納得するようなやり方を国鉄はなさったほうがいいのじゃないですか。
  222. 磯崎叡

    ○磯崎説明員 私ども、できるだけ国民の御納得を得るような方法でやらなければいけないと思っておりますが、やはり利用の少ないいまの一等車、二等が込んでいるのに一等ががらがらだというあの状況は必ずしも好ましい状況だとは思いませんので、やはり一等をやめましていまの二等が標準的なものになるというふうな考え方でぜひまいりたい。それもいまの二等のままでなしに、内容をよくして標準的なものにいたしたい、こういう考え方でございます。
  223. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 次に、きのうかおとといかテレビで何か出ておりましたけれども、乗務員を一人にするとかどうだとかいう問題でいろいろ意見が分かれているようで、問題があるようでありますが、何といっても国民の生命をある程度預かっておるといっても過言でないこの問題を、相当慎重な上にも慎重を期して事を実現しないと、事故が起きてから考え直すのでは困るわけでありまして、それでなくても相当過労な仕事をしておるわけですから。この点は、いつごろ国鉄としては実施をされる予定でおるわけですか。
  224. 磯崎叡

    ○磯崎説明員 御承知のとおり、あの一人乗務、二人乗務の委員会は、昨年の九月の時点におきまして、二組合並びに国鉄当局、三者意見が一致いたしまして、委員を推薦いたしまして委員会をつくって、その委員会で専門的な人間工学的な医学的な立場から御検討を願ったものでございます。その点三者全く意見を同じくしているという性格の委員会でございまして、決して国鉄側でつくった委員会ではございません。したがいまして、その委員会で出ました結論につきましては、初めから十分尊重するという約束を三者の間で取りかわしております。ただ、いま先生のお話のとおり、いろいろ労働条件が変わってまいります。したがって、労働条件につきまして団体交渉をする、こういう約束になっております。しかもこの間の委員会の結論でも、段階的に実施しよう、こういうことになっておりますので、慎重に段階的に、しかも労働条件を片づけながら実施してまいりたい、こういうふうに思っております。
  225. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 そうすると、いつごろからそれを実施するとかいうことは、まだわからぬわけですね。
  226. 磯崎叡

    ○磯崎説明員 委員会の結論が出ましたので、なるべく早く組合と労働条件について話し合いをいたしたい、こういうふうに思っているわけでございます。
  227. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 この結論自体がいろいろと疑問があるように報道されておるわけですが、皆さんが第三者の機関だというようなことをいろいろおっしゃるけれども、私はいろいろな委員会や何かの様子を見ておりましても、何といってもこれは任命をするのが皆さんであったり、政府であったり、もう人選の段階で必ずしも国民が納得するようなものではないのではないか。たとえば米価審議委員にしたところで、初めから、ぼくらから見れば御用学者みたいな者や新聞の論説委員の札つきのような人間を任命しておいて、これが中立委員だなんておっしゃってみたって、われわれ納得しない。   〔倉成委員長代理退席、毛利委員長代理着席〕 そんな者が出す結論に、たとえば米審の場合には農民が納得するはずがない。その委員の選び方自身もほんとうは労働者と最後には団体交渉をするというか、話し合いをするとおっしゃるならば、そういう人たちの推薦するのも選んで、より科学的にやるというのならわかりますけれども、委員というものの任命が大体いまのような形になっておる。ある意味でいえば、この委員会とか調査会、審議会というものは政府の隠れみのになっていると言っても過言でないのではないか。ときには政府から資料を出す、政府から要請するということも、昨日の石炭の問題でさんざんとにかくここで論議がされたわけですが、ああいう形でいけば、審議会とか調査会というものをわれわれはどこまでが科学的なのか、どこまでが中立的なのかという点では疑問を持つわけです。  そうすれば、このいまの一人乗務、二人乗務という問題も、事故が起きてしまってから国鉄の総裁や副総裁がおわびをされてみたって時おそいですね。そういう点で疑問があれば、その疑問を解明するまで徹底的に科学的な調査をされた上でないと、これは実施すべきでない、こう考えるのですが、いかがですか。
  228. 磯崎叡

    ○磯崎説明員 ただいまのお話の中で、過般できました調査会は、私、ほかの政府委員会等存じませんが、少なくとも過般の動力車乗務員の数の問題についての委員会は、先生のおっしゃったとおり、国鉄当局、国鉄労働組合、国鉄動力車労働組合三者が意見を一致いたしまして、五人の委員を推薦いたしてつくった委員会でございまして、決して国鉄当局の任命いたしたものではございません。三者の同意により、しかも人選も全部一人ずつ三者で相談してきめた委員会でございます。したがって、三者で御委嘱申し上げるという形でできた委員会でございまして、お間違いいただいたといたしますれば、私のことばが足りなかったと思いますが、その点御了解願いたいと思います。
  229. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 この委員会は確かにそうでした。それでありますけれども、まだいろいろな疑問が出ているようでありますので、その点では十分な解明をした上でやるべきである。また労働条件等も重くなってくる、疲れてくるというようなことも当然考えられますので、働いておる労働者の意見も十分聞いた上で実施をしていただきたいと思います。  次に、先ほどお話がありましたように、私たちもいろいろなところで聞くわけでありますが、貨物輸送で大体国鉄が赤字だ、こういうふうにいわれておるわけです。そこで、国鉄はアメリカの駐留軍の貨物を相当に運んでおられると思うのですが、これは料金等の問題はどういう約束になっておるのか、お伺いしたいのであります。
  230. 磯崎叡

    ○磯崎説明員 駐留軍の貨物輸送につきましては、根拠規定は日米の条約でございますが、実際には私のほうは一般の荷主と全く同じ扱いをいたしております。運賃につきましては、大体駐留軍の貨物は三種類おもにございまして、一つは石油類、一つは火薬類、一つは雑貨類、雑貨と申しましても非常に範囲が広うございますが、一般貨物、おおむねこの三つに分かれるわけでございまして、おのおのにつきまして——一般雑貨類、これには家具とかいろいろなものがございますが、そういったものにつきましては、私のほうで申します一級ないし二級の等級でもって運賃をいただいております。また、石油並びに火薬につきましても、国内の輸送荷主からいただく運賃と全く同額の運賃を徴収いたしております。
  231. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 これはいわゆる日本アメリカとの地位協定ということできめられておるわけですか。
  232. 磯崎叡

    ○磯崎説明員 この駐留軍の輸送の根拠につきましては「公務鉄道輸送支払手続設定のための日本国有鉄道アメリカ合衆国との間の協定」、これが基本になっております。そのほか専用線あるいはタンク車等につきましてこまかい規定がございますが、これは一応省略いたしまして、それが基本協定になっております。これに基づきまして、私のほうでは、公共機関といたしましてやむを得ない事情のない限り、鉄道営業法第六条によりまして、一般荷主と同じような運送契約を締結いたしております。すなわち、貨物につきましては貨物運送契約、旅客につきましては旅客運送規則によりまして、一般の旅客、貨物と同じ契約でもって輸送いたしております。
  233. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 私は、一番の基本になるのは地位協定の七条によるんだ、これをもとにしてさらにこまかい約束をしておられるんだと思うが、いまのように、運賃はアメリカ駐留軍のものと日本の民間のものと同じだと言うが、貨車の回し方とかそういう輸送の面ではやはりいろいろな便宜ははかっておるんじゃないですか。
  234. 磯崎叡

    ○磯崎説明員 米軍の持っております貨車につきましては、いわゆる日本の各企業が持っております私有貨車と申しますか、それと同じような運用をいたしております。それから、その他米軍の持っておりません貨車につきましては、国内の一般荷主と同じような、貨車の優先順位というものは申し込み順によりまして、また月ぎめ、年ぎめの荷主につきましてはあらかじめ申し込みを受けまして、それによって貨車の配給をいたしておるわけでございまして、特に一般荷主に先んじて米軍に対しまして国鉄の一般車を使用さすということはいたしておりません。
  235. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 国鉄では、赤字路線といいますか過疎地帯の鉄道を廃止しようという御意見があるわけですね。   〔倉成委員長代理退席、委員長着席〕 こういうものはどういう基準でおやりになるのか。具体的にいえば、私のところ等は雪国であります。ですから、これを廃止してかわりのバス輸送、自動車輸送ということをお話しになっても、雪の降りておる間は自動車輸送はきかないわけです。数カ月間というものは除雪に非常な骨を折って、なかなか自動車輸送がきかない期間が相当長期間ある。そうすると、そこの住民の生活にこれは非常に大きく響くわけですが、そういう点はどのように配慮するわけですか。
  236. 磯崎叡

    ○磯崎説明員 もともと、昨年話の起こりましたいわゆる赤字ローカル線の問題は、赤字だから、国鉄の財政上困るからという理由で話が起きた点ももちろんございますが、単にそれだけではなくて、輸送設備として鉄道輸送設備が地域の旅客、貨物の要求に対して少しオーバーであるということから、ほかの簡素な輸送設備があれば当然そちらに譲るべきである、こういう考え方から起きたものでございますので、一応根拠といたしまして、道路輸送と鉄道輸送のいろいろな分界点を計数的に出してみております。しかし、それを抽象的にはもちろんきめられませんので、現在一線一線につきまして具体的に、ただいま先生のおっしゃったように、雪の場合はどうだとか、あるいはほんとうに並行道路があるのかどうかということを非常にこまかく調査をいたしておる次第でございます。また私どもといたしましても、国鉄限りで廃止できる問題ではございません。これは大臣の御認可がなければ営業廃止のできないたてまえになっておりますので、その場合にはやはり地元住民と十分お話し合いいたしまして、地元住民の御納得をいただかない限り大臣にも申請ができないということになりますので、いまいろいろ各線別に調査いたしまして、具体的に地元の方々とお話し合いいたしまして、御了解のついたものにつきましては手続を進める、こういう順序でございまして、決して、無理やり、やみくもに放してしまうというむちゃなことを考えておるわけではございません。その点御了解願いたいと思います。
  237. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 それにしても、地域のローカル線付近の住民は非常に不安を持っておるわけですね。それでまあ、廃止をするという場合にはかわりの交通機関がある、あるいはまたそれを用意する、こういうことでありましょうが、そのときには一体どうなんです、バスやそういうものの料金とかそういうものは、いままでの国鉄の料金と大体同じだ、こういうことにするわけですか。
  238. 磯崎叡

    ○磯崎説明員 その点につきましては、すでに私のほうは数線廃止をいたしました経験がございますが、かわりに民間のバスをやってもらった例もございますれば、また、私どもの国鉄バスをじかにやったということもあり、いろいろ内容が違っております。その際の運賃も地域によって多少違いますが、大体現在の鉄道運賃と一般のバス運賃との中間ぐらいに定めております。そうして場所によりましては、通学生等につきましては、在学中とかあるいは一年間とか限りまして運賃の補償をするというような方法をとって、急激な変化を避けるというのがいままでのやり方でございます。今後ともやはりそれと同じような考え方で参りたいというふうに考えております。
  239. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 鉄道は、そういう開発路線であるとかいろいろな面で赤字線を持っておるわけですね。そうしますと、この国鉄というのは公共性というものをやはり非常に重視しなければならない、こう私は思うのであります。先ほどお話がありましたが、経営という面に、企業性という面に強く重点を置くのか、あるいはまた公共性というところにウエートを置くのか、これはどうなんです。これは両方だなんという答弁は成り立たぬと私は思うので、どちらかやはり重点を置いていかなければ、国鉄の今後の再建とかいろいろなことの方策が立ってこないと思う。そういう点で、これはむしろ運輸大臣にお伺いしたいのですが、その点はどうお考えになっておりますか。
  240. 原田憲

    ○原田国務大臣 よく公共性と企業性ということをいわれるのでございますが、これは目的は何かというと、鉄道なら鉄道というもののサービスを受ける側がどう受けておるかということにかかってくると思うのでございます。企業性ということをいう場合には、何といいましてもいわゆる能率をあげて、そして能率のよい経営をやって、そしてサービスをよくして大衆の求めているところに応ずる、こういうことでございます。公共性という場合には、そういうことでなしに、赤字でも何でもかまわない、サービスをするのが公共性と、こういうようにとかくいわれるのでございますが、公共性とは何ぞやという問題が、私はほんとうに明らかになっておらないように思うのでございます。  ただ国鉄の場合は、この国鉄というものの沿革からいいましても全国的な輸送機関である、こういう立場をとっております。いま阿部さんの言われる点の公共性という面において、たとえば需要の少ないところでもこれから開発をしていこう、いま利益が出なくても開発していかなければならないとか、あるいは人口が減って乗り手が減ってきたけれども、これは通勤、通学というものを考えるときに、ほかに輸送機関がないじゃないか、その場合には、これはこの輸送機関というものをなくしてしまったならば、そこにこれに代替するものがない場合にどうするかという、こういうような場合には、私はいわゆる公共輸送機関として公共性というものを考えなければならないと思うのであります。したがって、やはり国鉄というものを考えますときに、独立採算制をとって運営をしていく、運賃収入というものをもとにして経営をしていくという考え方は、先ほど中嶋さんにもお答えを申し上げたのでございますが、それではやっていけないというところはどうするのかという問題が国鉄の場合はあるというふうに考えなければならぬ点があるのじゃないか、そういう点について国のほうから、いわゆる国鉄に乗らない人でも、これはその人たちの税金、お金でもって助成をするということをやってもこれは理屈に合うのではないか、こういう面も国鉄の場合はある、私はそのように考える次第でございます。  したがって、いまの赤字線の問題に関しましても、国鉄の諮問委員会では具体的に八十三線ですかの名前をあげて、これは問題がある、こういうことをいっておりますけれども、これはまず代替機関がなければならないということが前提になっております。先ほど阿部さんが言われたように、代替機関がなければならぬ、それからその地区におけるところの将来の問題はどうだ、こういう問題があろうかと思います。それからその地区におけるところの状態はどうだ、地元の人たちの意向というものはどうだ、これもよく勘案して十分納得を得なければならない、それが政治というものだ、こういうように考えております。それが公共性とおっしゃるならば、そのことは公共性と受け取っても過言でないと思いますが、私はそういう考え方でいまの赤字線という問題について処理をしていきたい、このように考えておりますし、企業性と公共性という問題に関しましても、具体的にはそのように受け取っておる次第でございます。
  241. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 もうやめますけれども、いまの大臣お話はわかるようなわからないようなお話で、そんなお考えでおるから国鉄が今日のような状態になったんじゃないかという感じがするわけであります。ほんとうにもうけ仕事でやるならば新幹線ばかりやっておればいい。けれども、それは国全体の経済また民生という点からは、もうからないところもやむを得ないという面を持っておる。それだから、国がもう少し金を出してこれを能率的なものにしていこうということだろうと思う。ところが、今日までさっぱり国のほうからは金が出ていない。そうしてこれは企業と言うけれども、先ほどからお話がありましたように、一般の私鉄等はいろいろなデパートであるとか、スーパーであるとか、土地会社であるとかをやっておる。国鉄の場合はどうかといえば、鉄道はやっておるけれども、交通公社がわきにおっていろいろな仕事をやっておる、日通が仕事をやっておる、あるいはまた鉄道弘済会などというものが入っておるという形で、これは営利企業ではないから何ももうける必要はないだろうけれども、こう赤字を出してこれを再建しようとすれば、やはり公共性といえ考え方を強く出さなければ金が出てくるわけはないじゃないですか。  それから、私は大臣に申し上げたいのだけれども、たとえば鉄道のまわりにあるいろいろな企業を見ておりますと、たとえば日通の場合、いろいろと問題を起こして、上のほうはだいぶ不正をやったりいろいろやっておるけれども、労働者の場合になると、非常に多くの労働者は臨時雇いだというような形で労働強化だけやっておるじゃないですか。弘済会はといえば、これはどういう関係か、鉄道職員の未亡人などを使っておるという考え方かもわからぬけれども、実際は非常な低賃金でこれを使っておるのは、もう大臣も御承知のとおりだと思う。全く前近代的な労働条件の中で使って、それで上のほうだけが適当なことをやっておるようなことが鉄道のまわりには数限りなくあるのじゃないか。それで国鉄が赤字でございますなんということでおる場合には、私は、公共性という立場で国からも出してもらう、もう一つは、そういう問題も運輸当局としてはもう少し考えてもいい問題が多々あると思うのです。そういう点で、皆さんもまたわれわれも、国鉄の今後のあり方というものについてはもう少し真剣にかかり、また大蔵当局からも、この鉄道の近代化のためにはもう少し真剣に金を出すことを考えていただかないと、いま皆さんが計画を立てられておるこれも、なかなかうまくいかぬのじゃないかという感じがしてならぬわけであります。  私の時間が参ったようでありますから、多少しり切れトンボになりましたけれども、これで終わります。(拍手)
  242. 田中正巳

    田中委員長 広沢賢一君。
  243. 広沢賢一

    広沢(賢)委員 先ほど中嶋委員の質問に対して石田総裁は、今度は大蔵省はまとまった財政措置をとっていると言って、満足なことを言っていましたが、全く無責任きわまる、石田さんらしからぬことばです。  まずお聞きしますが、ことしの大蔵省のとった財政措置で、これはまとまった措置であると思うかどうか、副総裁にお聞きしたいと思う。  もう一つは、国鉄財政再建推進会議の十カ年計画で、まず九千億は政府のほうから利子補給がある、それから三兆三千億は運賃その他の負担による、それから一兆円は合理化その他企業努力によるということで大前提がされています。これは三方一両損ですね。ほんとうにそう思いますか。その二点をお聞きしたいと思います。
  244. 磯崎叡

    ○磯崎説明員 先ほど総裁が申しましたことしの大蔵省の財政措置でございますが、私ども従来からいろいろお願いしてまいったわけでございますが、微力にして実現いたさなかったものが、今回とにもかくにも財政再建補助金並びに財政再建特別交付金、こういう制度をつくっていただきまして、十年間の長い目で見た一つの財政援助の緒についていただいたということは、私どもといたしまして満足か満足じゃないかとお聞きになれば、これはもう一〇〇%満足とは申し上げませんが、いままでのわれわれの希望をよく聞いていただいたというふうに、私は率直に考えております。  それから先ほどの財政再建推進会議のいわゆる利用者、納税者、国鉄、この三方の問題でございますが、これは三方一両損ということばでなくて、われわれ三位一体ということばを使っております。三方一両損だと一両ずつじゃないかという御意見もございますが、私どもといたしましては、三位一体でもってやらなければならない、こういうふうに考えておるわけでございます。
  245. 広沢賢一

    広沢(賢)委員 そうすると、具体的に九千億のことを聞きますが、十年間で九千億というと、一千億ですね、利子補給するかのような、何か錯覚を起こさせるような宣伝をしていますね。ところがようく見まして、これはいま二つあげた額で、政府から出すお金、一般会計から出すお金は具体的にどのくらいなんですか、お聞きします。
  246. 海堀洋平

    海堀政府委員 これはどのくらいになるかというのは、この措置がはっきりこれだけになるというものと、それから今後の投資の規模というものにかかるものとございますが、幾らであるか、はっきりわかっている点からまず申し上げますと、いわゆる今度国鉄に発行を認めました再建債の利子補給というものは、これは現に借りている債務についての利子について長期の借り入れ金を認めまして、これの利子補給をするわけでございますので、これははっきりといたしておるわけでございます。したがいまして、この金額は大体九百七十一億程度と考えていただいていいかと思います。  それから四十三年度から措置をいたしておりますいわゆる建設勘定のための外部資金、建設規模に対する六分五厘までの利子補給を七年間行なうという点は、五十年までの建設について七年間利子補給を行なうわけでございますが、これは建設の規模自身が国鉄再建推進会議の意見とそれから私のほうで行ないました財政審議会の意見とが必ずしも一致いたしておりませんので、その計算は、一応五十年までの建設規模いかんによって変わってくるわけでございますが、まず四十三年度に決定いたしましたのは、第三次長期計画にかかわる建設資金に関する分、これは二兆九千七百億円ときまっておりましたので、それの四十年度からの分につきましての分は、これは決定いたしております。これが九百四十三億三千万でございます。もちろん再建期間を多少越えても行ないますので、その合計額が九百四十三億円程度でございます。それから追加分でございますが、これは私のほうの一応の試算になりますので、その点御了解をいただきたいと思いますが、これが五十年まで延ばしましたために追加になる分が三百三十七億円程度、したがいまして、この六分五厘との差額の利子補給という分が千二百八十億円程度になります。両者を合わせまして利子補給の金額といたしましては二千二百五十二億程度ということになります。  これ以外に、要するに実質的に現存六千三百億円程度政府関係から国鉄が借りております金の利子、四十四年度について申しますと四百八億円になりますが、これにつきまして毎年その額は残高が減少していくにつれまして、支払いの利子は減っていきますが、その支払い利子につきまして、据え置き期間十年、二十年の償還の再建債の発行といいますか、長期借り入れを認めておるわけでございます。これが十年間で発行を認めます額が二千四百七十六億円でございます。しかし、これはそういう形の長期の借り入れを認めるということでございまして、利子補給の先ほどの直接的に助成するというのとは、多少性格が異なろうかと存じます。
  247. 広沢賢一

    広沢(賢)委員 そうすると、遠回しにずっと言ってきましたけれども、大体十年間で、一番初めの二つは二千二百五十二億、十年間ですね。ちゃんと言ってください、十年間と。一年間と錯覚を起こすといけないから。そうすると、それを十で割らなければいけないということになりますね。
  248. 海堀洋平

    海堀政府委員 これは十年間というのは多少誤解がございまして、たとえば五十年までの建設資金について七年間利子を見るものですから、その分は四十七年度まで見ることになりますので、その点では必ずしもかっきり十年ではございません。再建債の利子補給はまさに再建期間に合わした十年でございます。ただ従来行なっております六分五厘との差額の分は五十七年度分までになっております。その額はほとんどわずかでございますので、大勢的に見れば、十年間に二千二百五十二億円というふうに考えていただいてよかろうかと思います。  しかも、念のために申し上げておきますが、国鉄のいわゆる再建推進会議の九千億という数字が念頭にあるようでございますが、これは計算の方式が、まず何の助成もないときの、非常に大きな赤字を出しておりまして、そのときには利子が利子を生むといいますか、非常に損益においても赤字である、それを埋めるために借金をしなければならぬというふうな形の計算をしておきまして、そしてそれをある措置によって消していくという計算がなるものですから、また利子の利子がその場合に消える勘定に入っているという点をまず第一点考えていただきたいと思います。  それから二番目は、いわゆる政府からの借り入れ、先ほど申し上げました六千三百億円に対する毎年度の支払い利子、すなわちここで先ほど申し上げました十年間で二千四百七十六億円というものを政府から一応繰り入れてほしいということにはなっておりますが、十年後はこれを当然返すというふうな形の答申になっておりますので、九千億そのものがまずそういう複利の計算になっているということと、それから政府が今度再建債で見ようとしている分は、十年たつと返すということになっているという点だけは、九千億を読む場合に、そういうふうに読んでいただきたいということを申し添えます。
  249. 広沢賢一

    広沢(賢)委員 それだからやはり誇大広告なんです。その誇大広告を国鉄総裁が満足するとか、そのとおりの説明でもってよそに説明するなんということは全く情けない話ですね。ほんとうに情けない。だから、いままで自己資本金八十九億なんという哀れな状態だったのですね。だから、実際今度よく計算しますと、たとえば孫利子の補給なんというのは名案、名案といわれておりますけれども、十三億円ですね。これはもうほんとうに財政の実に妙手なんて新聞でいっていますけれども、妙手どころか、何とお金を十年も繰り延べているのです。十億円しか出していないのです。そういうことなんです。だから、そこでもってまとまった財政措置とか、ありがたい、ありがたいとかなんて言ったって、私はこれは受け取れないと思うのです。  そこで、そうしますと、まずこのほうから片づけていきますと、三位一体というのは実際は三位一体でなくて、一方の一つ政府の柱というのは全然細くて、びっこで、三位一体はびっこである、そういうふうにお認めになりますか、どうですか。
  250. 磯崎叡

    ○磯崎説明員 これは試算表をごらんくださいましても、大体、一、二、それから三・幾つという程度の率になっております。全部平等ではございません。しかし、いま先生の御質問に主計局の海堀さんが答えられましたように、推進会議の原案では、一番大きい政府関係の債務を直接たな上げするという計算でやっているわけです。それを昭和五十四年度から二十年間でお返しする、こういう計算になっているわけでございますが、今回のいわゆる名案と称されるものは、たな上げは困る、そのかわりたな上げ分を貸してやろう、その貸した金は十年据え置きの二十年償還ということになりますので、実は原案よりも十年延びまして三十年ということになるわけでございます。その点はむしろ推進会議のときにそこまで案が浮かばなくて、ただ一律的に政府関係債務のたな上げということ一本でやったことよりも、国鉄側にとりましては、五十四年度以降のことを考えますれば、むしろ有利になっているというふうに考えていい、これは数字上はっきり出てまいるわけでございます。  いま先生がおっしゃいました十三億は、なるほど初年度十三億でございますが、この十三億は翌年度二十六億になりまして、これが御承知のとおりずっと昭和五十三年まで続くわけでございます。それらを合計いたしますと、先ほどの約九百七十二億になるということで、初年度は非常に小そうございますが、これはどんどん多くなりまして、最終的には、十年間全部足しますと約九百七十二億になるということで、全体としては推進会議考え方とほとんど違いない、こういうふうに考えていいと思います。
  251. 広沢賢一

    広沢(賢)委員 ところが、実際に四十四年度の利子及債務取扱諸費の内訳をお聞きしますが、そうすると、全部で合計千四百六十九億円、ことしはやはり利子を払わなければいけない。そうですね。それで、その中で公募債、銀行に払う利子は四百八十八億円にも達する、それは間違いないですか、どうですか。
  252. 小林正知

    ○小林説明員 ただいま先生のおっしゃいましたとおり、間違いございません。
  253. 広沢賢一

    広沢(賢)委員 そうしますと、もう一つ数字的に確めますが、営業収入自体はもうかっていますね。大体最近のいろいろな計数で、一、二年前では八千五百七十一億円、しかもそれは前よりもだんだん営業収入の増加の実績をあげている。もう一つ聞きます。人件費は大体三千億円ぐらいの程度ですね。それから利子は先ほどのあれですが、元利払いにすると二千六百億円ぐらいになるのですね。それからあと、今度の公共負担は八百三十八億円見当だと思いますが、以上の数字についてお答え願いたいと思います。
  254. 磯崎叡

    ○磯崎説明員 人件費はちょっと先生のおっしゃった数字は違っておりますが、昭和四十三年度におきまして約五千百十二億、四十四年度、過般成立いたしました予算におきましては五千七百三十二億、収入の約五四%であります。それから営業収支、いわゆる直接費だけで申しますと、これは償却費を計上いたしませんければ、まだ償却前は黒でございます。しかし、これはもしことし運賃が上がりませんで、しかもベースアップがございますれば、これは完全にことし償却前赤になるということでございます。
  255. 広沢賢一

    広沢(賢)委員 具体的にどのくらいですか。
  256. 磯崎叡

    ○磯崎説明員 これは裁定が出ませんのでわかりませんけれども、もしかりに昨年度同様ぐらいのものが出るといたしますれば、償却前はほとんど黒はなくなります。これは収入状況とも見合いがございますので確定的なことは申し上げられませんが、一応現在の収入状況が続き、もし運賃改定ができない、そして仲裁裁定が従前見当のものがあるといたしますれば、四十四年度は残念ながら決算的には償却前は赤になるというのが大体の数字でございます。
  257. 広沢賢一

    広沢(賢)委員 そうじゃなくして、それでは損益計算書や何かでもって見ればわかりますが、急に二、三年前の営業収入の八千五百七十一億が消えてしまうということはないでしょう。だから、その勘定でもっていったらどのくらいになるか。運賃を値上げしようと思って、盛んにそんな数字の操作をやらないで、営業収入は償却前で利子を払わなかったらどのくらいになるか。あるわけですよ。それからあと今度は元利払いや何か、全部年度を限って、去年でもいいから言ってください。
  258. 磯崎叡

    ○磯崎説明員 四十三年度の数字で申し上げますと、収入が九千二十五億、それに雑収入を加えまして九千三百五十七億が収入でございます。これに対します経費が、これは四十三年度の仲裁を含みませんで七千三百七十六億、利子が千三百十七億、合計八千六百九十三億、したがいまして、償却前は六百六十四億、償却費が千八百九十三億、これは償却、除却全部入っておりますが、千八百九十三億でございます。したがいまして、償却後の損益といたしまして千二百二十九億の赤字でございます。これに対しまして、さらに仲裁の分のあと始末が約三百億前後ございますので、まだ確認の締めくくりはできておりませんけれども、収入がたとえ九千二十五億上がったといたしましてもこの千二百二十九億の赤字、さらに仲裁裁定のあと始末のもの約二百五十億ないし三百億のものがふえてまいります。こういう計算になります。
  259. 広沢賢一

    広沢(賢)委員 これに元金の払いが入っていませんが、これでちょっと、これは企業採算とよくいわれるから、普通の企業に直して考えてみます。  そうしますと、これは九千三百五十七億なんというと、ことばがあれですから、けたを少なくして、九万三千五百七十円の月の収入のある人が、人件費が五万七千円で元利払いが一万三千円。それで元金も入っているから約三万円くらいになる。そういう経営は健全だと思いますか。それから税金は、公共負担を税金とすると、八千三百円の税金ですね。主計局次長、こういう経営があったならば、これは利子が多過ぎるのじゃないかと思うのですね。利子支払いを何とかしなければいかぬというようなことを言うでしょう、会計士でもだれでも。
  260. 海堀洋平

    海堀政府委員 まず企業として考えますと、使用総資本に対する利子負担ということで考えていけば、企業と一般的に比較できるものだろうと思います。現在の国鉄の使用総資本約三兆円余りだろうと思いますが、四十三年度で三兆四千億程度というものに対する利子の負担の割合は四・三三%程度でございます。これは世の中の企業の使用総資本に対する利子負担としては決して高いものではございません。したがいまして、それが企業経営として不健全である、いわゆる利子負担割合が高過ぎるということは言えないのではなかろうかと存じます。  それから、いわゆる元金の返済というものは損益の問題ではございませんで、これは何で借金をしたかといいますと、つまり現在動いております施設とか車両とかいうものを整備するためにしたわけでございます。したがいまして、これは当然減価償却で返済していくということが企業の常識でございまして、それができかねるという点は、結局収益性が低いということを意味するわけでございます。つまり減価償却が、現在のところ、先ほど副総裁から御説明のありましたように、四十三年度で千五百億円程度の赤字になるのじゃなかろうかというふうなお話でございまして、たぶんことしで償却、除却を含めまして千八百億円程度になるのじゃなかろうかと思います。そうしますと、いわゆる償却が十分できかねる状態にあるということを意味するわけでございまして、企業経営として考えますれば、利子負担の使用総資本に対する四・四%程度であるということで取り上げて、企業経営が不健全であるというふうに言うことは無理かと存じます。これはそれぞれの公企業体的なもの、たとえば電力とかそういったものをとっていただいても、使用総資本に対する利子負担というものは、その程度はまだいいほうではなかろうかというふうに考えております。
  261. 広沢賢一

    広沢(賢)委員 そこのところが私は違うのです。たとえば磯崎さんが四十二年九月号の「文芸春秋」に有名な論文を書かれましたね。「国鉄が第三次長期計画期間中に、東京周辺の通勤緩和のために投資する額は約五、八〇〇億円であるが、」ずっと飛ばしまして、「これは年間二八、〇〇〇円の利子を乗客一人について支払わねばならないことを意味する。」「もし、政府が道路と同じように五、八〇〇億円出して通勤用の鉄道をつくってくれるなら国鉄はこんご増加する定期客をタダで運んだ方が、利子のつく金で投資をして乗客から運賃をもらうよりはるかに得である。」という文章があるのですよ。これは磯崎さんが書いているのです。で、私がいろいろ見ても、たとえば自己資本がいままでずっと八十九億円で三兆円の固定財産があるというと、これは全くおかしな話ですね。こんな経営はないと思いますが、その点について磯崎さんはこういうことを言ったというのは、やはり利子がうんとかかり過ぎているんだ、それでひいひいいっているんだということだと思いますが、磯崎さんと主計局次長との答弁をお願いします。
  262. 磯崎叡

    ○磯崎説明員 ただいま先生のお読みになったのは、確かに私が書いたものです。これは通勤輸送、ことに東京の通勤輸送につきましては、たとえばキロ当り大体三十億円から五十億円かかります。したがって、これから増加する約百十何万のお客さんのために五千億から六千億の投資をいたしますと一人当たり四十万円ぐらい投資することに計算上相なりますので、その利子だけで、もし七分と計算いたしますれば二万八千円。運賃が約一万円前後でございますから結局利子に及ばない。もちろん経費が出てこない。その分だけの計算として、私、間違ってないというふうに思っております。  それから全体から申しますと、やはりそういう意味の非常に不採算の投資がふえてまいるということで、利子の絶対額は人件費の絶対額から比べれば問題になりませんが、ただ増加の指数が非常に大きくなってくるということは確かでございます。先ほど海堀主計局次長が言われましたとおり、全体から見れば、利子負担というものは人件費から比べればまだまだ軽いのでございますが、ただ伸びが非常に大きいということは事実でございます。その点を大蔵省が心配されて、ある程度、六分五厘まではひとつめんどうを見てやろう、五厘だけめんどうを見ていただいたというのが今度の財政措置のうちの一つでございます。
  263. 海堀洋平

    海堀政府委員 まず資本が非常に過小であるという話のあとのほうから先にお答えさしていただきたいと思うのでございますが、国鉄が、要するに、公社になる際には、相当な現物の資産をもって発足したわけでございます。もちろんこの資本金というのは戦前の貨幣価値における資本金でございまして、これは資本金とされているもの、そのものだけを取り上げて見るということはできないのでございまして、ある時点におきまして再評価をしておりまして、それのいわゆる再評価益、資本積立金が一兆一千八百九十二億円というもの、これをも含めて一応資本金を考えていただかなければならないのではなかろうか。したがいまして、現在の総資本に対するいわゆる資本金が過小であるかどうかという点になりますと、必ずしも他の企業に比較しまして過小であるということは言えないのではなかろうかというふうに考えます。  それから二番目のいわゆる通勤輸送について、こういう投資を借り入れ金ですればこうなるという点につきまして、二つの点を考えなければならないと存じます。それは、鉄道の投資というものは、御存じのとおり、そう短期に採算のとれる投資ではございません。つまり路盤というようなもの、あるいはトンネルというようなものは、三十年、五十年という償却でものを考えなければいけない。したがって、初めが赤字でだんだん採算点に近づきまして、最後に黒字を生むということでございまして、新規投資の当初における赤字だけを取り上げて云々することは妥当ではないのではなかろうか。したがいまして、その償却期間全体を通じて採算がどうであるかということを考えなければならないと存じます。しかしながら、現在の通勤定期の料金で、では長期に採算がとれるかということになりますと、これは要するにその投資のコストと、それからいただく料金との関係になりまして、やはり現在の通勤定期あるいは通学定期の料金が、それに要するコストに比べて低過ぎる——こう言ってはおこられるかと思いますが、少なくとも採算ということを考えた場合に、妥当な料金であるかどうかという点につきましては、経済的に考えた場合に、私も必ずしも妥当な料金ではないということは認めざるを得ないと存じます。
  264. 広沢賢一

    広沢(賢)委員 すぐ料金のほうへ持っていってしまうのだけれども、料金を安くするということは、これは国民経済全体の上からの要請なんだから、これは一つのハンディキャップにしても、経営として見て、公共負担でやらなければならぬ安い運賃だけで自己資本をふやすということは、さっき総裁が言ったように、これは無理な話ですよ。したがって、国会でも政府でも、その運賃値上げはなるべく物価値上げよりか低目に低目にということでやってきた。ならば、それに対して出資部分を政府がいろいろめんどうを見てやらなければ、先ほどいろいろよその営利事業と比較して主計局次長さんがおっしゃいましたけれども、毎年毎年、この収益性が国の要請で少ないこの企業というか国鉄公社の中で、元利払いを、この前までは二千六百億円、いまでは利子払いだけでもって千三百十七億円といっている。それで四苦八苦させているということは、理屈に合わない話だと思うのですよ。したがって、これを政府がめんどうを見なければならぬということで、さっきの三位一体、三方一両損になったのだけれども、これが実際は誇大広告であったということで、もう一回聞きますが、そうすると、ことし十三億円と、あとどのくらい一般会計から現実に出しておりますか。
  265. 海堀洋平

    海堀政府委員 いわゆる四十三年度から始めました建設資金の六分五厘までの利子補助が七十一億円、それから今回新たに行ないます再建債に対する利子補給が十三億円、計八十四億円がそういう関係で出ております。ほかにいわゆる戦傷病者等に対して国庫が法律によって負担しておる額が若干ございます。これはしかし法律に基づく別途の措置でございまして、財政再建とは直接関係いたしておりません。
  266. 広沢賢一

    広沢(賢)委員 そうすると、やはり国がいろいろめんどうを見たといいながら、実際は八十四億円だったということなんですよ。これはほかのいろいろな費目と比べようがないと思うのですが、たとえば万国博覧会に一般会計から相当出している。それだけを全部比べたってあれだと思うのですが、造船利子補給等はうちの委員もいつも出しておるのですが、八十四億円で、まとまった財政措置で画期的だなんて石田総裁が言っていたんじゃ、これはとてもじゃないけれども、特殊な立場にあるこの国鉄の財政の上からいっては成り立たないと思うのですがね。  そこで、国鉄の側からいわせると、ここにもありますが、一日七億円の元利払いというわけですね。それで国鉄でちゃんと漫画を書いて宣伝をしておるのです。したがって一日過ぎれば七億円ですね。ですから元利扱いについてたな上げしたとはいいながら、考えられることは、十年、二十年の資金繰り表の中では、それがちゃんとおもしになってかかってくるのです。そうすると、その次の三兆三千億に及ぶんですね。だから全然さっきと違うわけですよ。さっきの金額では、九千億の利子補給じゃなくて、ずっと少なくて、利子補給全部合計してもその半分くらい、半分以下ですね。今度は運賃のほうは三兆三千億円見込んでいるのですが、これはいろいろのものを見ますと、認可事項であるというのですね。今後はあまり国会の御審議を経なくてもよろしゅうございますということになっているというのです。それで三年に一回ぐらいずつ上がっていくというのですが、もう一回聞きますが、そういうことはあり得ることなんですか、どうなんですか。
  267. 磯崎叡

    ○磯崎説明員 その運賃法の扱い方の問題は政府の問題になりますので、政府のほうから御答弁していただきますが、私のほうでは、一体今後十年間に運賃をどうするのかという御質問の点についてお答え申し上げます。  これは財政再建推進会議の意見書にも相当具体的に書いてございますけれども、結局現在のまま一応の輸送の伸びがある、収入も若干自然増もあるということを前提といたしまして、そうして十年間の収入が約十二兆、支出が幾らあるというふうに全部計算いたしますと、結局問題は人件費がどのくらい上がってくるかということが一つの大きな問題点になります。これはいまお手元に差し上げてございます試算は、大体九%アップという試算で見ております。すなわち三%が定期昇給で、六%がいわゆるベースアップでございます。この九%のベースアップをいたしますと、ベースアップの分だけで十年間で約二兆四千億になります。したがいまして、先ほどごらんの運賃値上げで三兆三千億という数字が出ておりますが、十年間のベースアップだけ、いわゆる定期昇給を除きました純粋なベースアップ分だけ、上積みになる六%のベースアップ分を計算いたしますと、十年間で総トータルは二兆四千億、そうすると二兆四千億が約十五兆の収入から出るか、これは絶対に出せないわけでございます。したがいまして、ベースアップ分のうちで当然一般企業ならばいわゆる生産性の中に吸収さるべきベースアップが相当あるわけでございますが、国鉄の生産性は非常に低いということから申しまして、二兆四千億のうち、実際生産性に吸収できる分は大体半分くらいと見ざるを得ないというふうに思います。そういたしますと、毎年の定期昇給を含めまして九%のベースアップのうち、約四%分くらいはどうしてもはみ出してくるわけであります。その分はやはり思い切って増収をすることができない限り、運賃その他でめんどうを見ていただかなければ結局人件費が払えなくなってくる、こういう現象になってくる。これはいろいろ仮定がございますので、だから何年に一回という結論にはなりませんけれども、推進会議の試算におきましては一応九%のベースアップがある。初めからベースアップなしで計算すればこれは運賃値上げは要らないわけでありますけれども、これはでたらめな試算はできないということで、一応あり得るベースアップを推定いたしますと、そのうちで生産性に吸収できない分はどうしても運賃でめんどう見ざるを得ない、こういう計算になっております。
  268. 広沢賢一

    広沢(賢)委員 そうしますと、いまの話をずっと聞いていると、頭から、たとえば今後やるのは山陽新幹線ですか、こういうものをやらなければならぬ、猛烈な投資をしなければならぬ、その大きなワクの中でもってああだ、こうだ、ひねり出して人件費をどのくらい縮めるかと、いろいろこうやっていって、その中から誇大広告のつまりさっき言った約九千億のそれが出てくる。政府からのあれが出てくるし、それからたな上げをする部分が出てくるというわけで、だからその一つのきまったワクの中でやりくりしなければならぬとなれば、やはり運賃値上げ以外にないという理屈なんですよ。同様に、一兆円の合理化というのも、これはたいへんなものですよ。いまものすごい過密ダイヤで国鉄はたいへんな苦しみですね。世界一の過密ダイヤ、それでもなおかつ合理化していかなければならぬ、一兆円をひねり出せというと、これはとても——あとで減価償却についてもお聞きしたいと思うのですが、やりくり算段ができない、それでもってぎゅうぎゅう押し込められているような感じがするのです。  それで、たとえば経済企画庁長官が十二月二十七日にこう言っていますね。四十三年度の千二百億の赤字について言っているのですが、ずいぶん前の話ですが、「約千二百億円の赤字というのは減価償却の赤字で、償却前では約六百億円の黒字である。」四十三年度ですね、そのあとで「財政投融資関係資金の利子タナ上げによる資金繰りの改善」、これは今度やったわけですね。これが誇大広告、あとその次に「財政の追加投入——などで対処すべきで、なお不足する場合には投資の圧縮もやむをえない。」というのです。これはあたりまえなんですよ。いまでも国鉄はちゃんとした任務を果たしているのですが、結局一つの推進会議の——いまお聞きしますと、このワクも誇大広告はしたけれども、実際これはきまるかどうかわからないのですな。  それで運輸大臣にお聞きしますが、やはりゆとりのある計画でなくちゃいけないと思うのです。それで三兆三千億にのぼる運賃値上げその他による措置、一兆円の合理化努力なんというのができるというように自信がおありになるのですか、どうです。
  269. 原田憲

    ○原田国務大臣 それは、そういうことはやるというたてまえでこれから臨んでいくわけでございます。これは先ほどから言っておられますけれども、この国鉄再建推進会議長期収支の試算というのは、これはあれが四百八億でしたか、利子のたな上げ分を一般会計から出せ、こういうこと等をこのまま財政措置ということで五百十四億の中に書いてあるわけです。だからこれは今度は実質的には四百八億というものは借りてきて返す、それを利子補給でその利子分を見るのでありますから、一般会計から見たと実質的には変わらぬことになりますし、それを十年間据え置いて二十年間で返していくということは、一般会計から現ナマでもらって二十年間で返すよりも有利であるということを国鉄副総裁が言っていますように、決して誇大広告ではないのであります。その四百八億のほうはほっておいて十三億だけだから誇大広告だと言われると、これはちょっと殺生な話じゃないか、このように思います。  それから、もちろんここでは財政措置が九千六十七億ということになっておるが、そのとおりにはならないじゃないかというお話で、もう少しゆとりがなければならないのじゃないかということにつきましては、先ほど中嶋さんにも申し上げておりますとおり、またあなたは経済企画庁長官の言を引いておっしゃっておりますが、私は大蔵大臣からできるだけの財政措置というものを望みたいと思っておりますけれども、四十四年を出発点にいたしまして、予算関係というものは、これはもうはっきり国民——皆さん方にきめてもらわなければならぬ問題でございます。これは今年度の予算というものはすでに両院を通過いたしておるのでございまして、今後の問題になってこようかと思うのでございます。  合理化に関しましては、これはあなたもおっしゃっておりますが、私はなかなかむずかしい点があろうかと思います。たとえば、赤字線を全部なくしてしまうというようなことについては、なかなか政治的に考えますときに、そのとおりになるかどうかということについては、非常な問題も含んでおると思いますけれども、これらにつきましては、私は今後できるだけの努力をしながら、政治的な判断をしながら、事に処していきたい、このように考えておる次第であります。
  270. 広沢賢一

    広沢(賢)委員 運賃の問題……。
  271. 原田憲

    ○原田国務大臣 運賃も、したがいまして、きのう総理大臣が答弁をしたことにつきまして、中嶋さんからも先ほど質問があったのでございますが、これの一番問題になるのは、人件費がどれだけ上がってくるかということ、これは九%まで副総裁は見ておると言いましたが、これはわからない。それから物価の高騰というものもわからない。こういうことを考えますと、それらの問題を解決するために、あるいは運賃を値上げをしなければならぬ、こういうことからこの試算がなされておるわけでございます。これらの問題につきましても、今後いまの財政当局との折衝によっては、この問題はいわゆる運賃値上げというものにたよらなくてもやれる、やれないとは言えないので、私どもはできるだけの努力をいたしていきたいと考えております。しかし、値上げが絶対ないかとおっしゃられますと、そうはいくまい、こういうことでございます。
  272. 広沢賢一

    広沢(賢)委員 それから、国会の承認事項はどうですか。
  273. 原田憲

    ○原田国務大臣 国会の承認事項といいますのは、運賃の決定であろうと思います。これは、国鉄の推進会議では、この期間に関しては、これを運輸大臣の認可事項にしてはどうかというような意見が出ておるわけでございますが、これは国鉄のほうからいいましたならば、そのことが望ましいと考えておるであろうと思います。また、私も国鉄だけの財政問題ということから考えると、あるいはそのほうが望ましい点があるやにも思いますけれども、なかなか五〇%という定着した国鉄運賃割引問題、それから運賃というものが国民生活の中に定着した問題でございますので、今回国鉄再建推進のための臨時特別措置法には、この問題を含まなかったということを御理解賜わりたいと思います。
  274. 広沢賢一

    広沢(賢)委員 そこは絶対に理解できないのですがね。つまり、国鉄が、大蔵省主計局従属庁みたいな国鉄公社であれば、たとえばさっき言った誇大広告ではないと言うけれども、十三億しか出していない。あとは全部借金のたな上げなんですからね。繰り延べなんですからね。いろいろ操作して出たところは八十四億で、この八十四億をもとにして大蔵省が国鉄に介入するわけなんです。地方財政でも地方公営企業が指定団体になる。そうすると、去年の賃上げもできないのですよ。よそは全部上がっているのです。ところが、去年の賃上げも一年おくれてまだできないで、ストライキをやらざるを得ないというので、大騒ぎになる。これは何がもとかというと、地方公営企業についても、再建指定団体になったからで、今度の場合のこの国鉄の十カ年計画も一種の再建指定団体になりかねない。介入が相当強くなると思うのです。現に大蔵省の意見で、金も出すが口も出すというのですが、その点についてどのくらい金を出して口を出すのか。わずか八十四億出して、それでもってがみがみ国鉄について口を出して、ぎゅうぎゅう締め上げるんじゃどうにもならないと思いますが、その点について、国鉄副総裁はどういう気持ちを持っているのか、それから大蔵省としてはどういう気持ちを持っているのか。
  275. 磯崎叡

    ○磯崎説明員 ただいまの点でございますが、私どもは、大蔵省が非常に高い立場から私どもの経営を見ておられるのであって、決してこまかいことに一々容喙されるというふうなことはなさらないということを確信いたしております。今後ともそういうことのないようにお願いいたすつもりでおります。やはりわれわれに自主性を持たして仕事をさしていただきたいと思います。
  276. 福田赳夫

    福田国務大臣 どうも誇大広告、誇大広告と言われまして非常に残念に思いますが、十三億というのは決して誇大広告ではないのです。十三億と三十年にわたる長期の融資、これもあわせて考えてもらわなければいかぬ。実質は、ほんとうにこれは国鉄のためになる資金なんです。それをあわせ考えると、かなりこれは大胆な財政協力である、かように確信をいたしております。だからといって、別にこれまでと異なって、国鉄の財政に干渉するというわけではございません。ただいま副総裁が確信していると申しましたが、大所高所からの、国の財政を統轄するという見地からのいろいろ御相談は申し上げます。
  277. 広沢賢一

    広沢(賢)委員 誇大広告かどうか、もう一つあげますと、たとえば造船利子補給に対しては一般会計でどれくらい出しているか、これは主計局次長がよく知っていると思うのです。金額ですよ。造船にそれだけ手厚いことをやっているならば、やはり八十四億というのは少な過ぎるじゃないかということはだれでも思うのです。国鉄ですから、日本一つしかない、みんなが利用しているんです。これに事故があったらもうたいへんなんです。大騒ぎになるのです。多少の金にはかえられない。百億、二百億にはかえられない。万国博覧会にどのくらい出しておりますか。たいへんな額を出しているじゃないですか。そうすると、大所高所から見ると言うけれども、どういうように大所高所から見ているのか、私たちは疑問に思うのです。  その次に、減価償却の問題を、ちょっと関連がありますからお聞きしますが、六三年に減価償却はどのくらいだったか、それから六四年、六五年にどのくらいだったか。私のほうの資料によりますと、六三年に減価償却六百七十六億、それが一躍六五年に千五百三十億にぴょんと飛び上がったのですが、どういうわけですか。この数字の事実は間違いないですか。
  278. 小林正知

    ○小林説明員 お答えいたします。  一九六三年、すなわち昭和三十八年度では減価償却費は六百七十六億円でございます。それから翌年度、三十九年度でございますが、減価償却といたしましては九百八十八億、かようになっております。
  279. 広沢賢一

    広沢(賢)委員 私の手元の資料では、六三年が六百七十六億、六五年つまり昭和四十年ですね、千五百三十億になっておりますが、そっちの間違いかどうかですね。
  280. 小林正知

    ○小林説明員 ただいま先生が申されました数字は三十八年と四十年でございますね。分けて申しますと、三十八年が償却費六百七十六億円、四十年度は償却費が千三百六十一億円、減価償却費のほかに繰り延べ資産償却費というのがございまして、これが七十五億円、それから固定資産の、これは投資をしてまいりますと、前にございました古い資産を除却いたします。その除却費が九十三億円、合わせまして約千五百三十億円になるかと思います。したがいまして、減価償却というお尋ねでございましたので償却費だけを申し上げましたが、先ほど年度が一年度違いましたことは失礼申し上げました。
  281. 広沢賢一

    広沢(賢)委員 私はいわゆる減価償却を言っているのですよ。いわゆる減価償却が二年間に二倍になった。この前の電電公社の電話料金の値上げのときに、あまりひどい減価償却の見積もりがあったので、堀委員が、これは何か操作しているのじゃないかというので、電電公社はおそれ入って料金値上げをやめちゃったんですね。二年間に二倍になるということは、普通、常識ではわからないけれども、それはどういうわけなのかという点をお聞きしたいのです。
  282. 小林正知

    ○小林説明員 お尋ねの件でございますが、最近の減価償却制度の制度改正といたしまして、結論といたしましてはかくのごとく減価償却費が非常に多く増加いたしましたゆえんは、二つに分けて申し上げることができるかと思います。  一つは、新幹線等の開業が三十九年にございまして、国鉄の経理のしかたといたしまして、投資をいたしまして資産を増加をいたしてまいります過程の中におきまして、工事中においてはもちろん収益対応の原則から償却費は立てませんが、開業いたしますと、その年度から償却費が立ってまいる。またちょうど、ただいま先生の御指摘になっておられますその期間は第二次長期計画の進行過程でございまして、かなり資産の増加がございました。したがいまして、そういった増加に伴ないます償却費の増加が一つと、いま一つは、三十九年に減価償却制度の改正をいたしておるのでございます。それに基づきますところの両方の償却費の増加が加わりまして、ただいまのような数字になるわけでございます。三十八年の償却費、そのほか繰り延べ資産償却、固定資産除却を入れますと八百十億の決算になっておりますが、四十年度は千五百二十九億、かようなことになった次第でございます。
  283. 広沢賢一

    広沢(賢)委員 三十九年度、四十年度によその営利企業並みの法人税の適用をして減価償却の耐用年数を早めたというのでしょう。そうですね。つまり、この年度だけは営利企業のあれを適用するわけなんです。先ほど主計局次長は、国鉄というのは長くかかるものだという国鉄の特殊性をお話しになった。それはさておいて、減価償却をうんと見積もったほうがいいことはいいですよ。ところが、こういう問題については、これは運輸大臣それから総裁にお聞きしたいのですが、減価償却をやり過ぎて、その結果、帳簿づらは何とかやりくりしなければならぬという、さっき言ったその他にワクがあって、人件費を圧迫し、結局労働組合ではさっき言った一人乗車にして、その費用といったらたいしたことないと思うのですが、それで過密ダイヤで、それでやりくり算段をして、どうなるかわからない、科学的に調査しなければならぬというところまでぎりぎりまで追い詰められて、帳簿上のつじつまを合わして、あとで大事故が起きたときに逆効果が生まれる。そうすると減価償却どころじゃないですね。こういう問題について、総裁と運輸大臣はどうお考えになりますか。
  284. 原田憲

    ○原田国務大臣 私は、減価償却のやり過ぎをして、あなたがおっしゃっておるようなことが起きたら、これはたいへんなことであると思います。しかし、そうはならない。この質問の一番冒頭に、造船の利子補給の問題と比較してどうだということから始まっておりますので、今度の場合に、国鉄がそういうことで十分とは——先ほど副総裁は、十分かと言われたら十分であるとは申し上げられませんがということを申しておりますが、いわゆる財政措置を国がした、こういうことでございまして、造船事業というものが今日りっぱに立ち直り、もう一息でほんとうにそれこそ完ぺきという状態に立ち至っておることを考えますときに、このたび財政当局、政府がいたしました措置によって、国鉄というものが将来の背負うべきつとめの中で十分責めを果たしてくることは間違いがない。また、国の財政をあずかっておる大蔵省が一枚加わってこそ、そのことは担保される。私は広沢さんがさっきおっしゃったように、またいろいろ財政当局がやかましゅう言うて、そして賃金も上げささぬじゃないかというような懸念のお話もございましたが、賃金の問題に関しましては、これは仲裁裁定というものが行なわれれば当然行なうことでありまして、私は、大蔵当局が加わるほうが、逆に言うと、裁定のなには保障されている。もっとこれから国のほうに私は運輸大臣として要請をし、国鉄再建のための手だてを加えていく、その突破口が開けた、こういうふうに解釈いたしておるのでございまして、その点では今後も十分注意をしてやっていくつもりでございます。
  285. 広沢賢一

    広沢(賢)委員 いまの問題と、それから国鉄副総裁にお聞きしたいのは、人件費は全部の総ワクの中の比率としては下がっていますね。人件費は比率が下がっているんですよ。下がっているでしょう。それから職員の数も、六六年と六七年の資料ですが、少なくなっているんじゃなかろうかと思うのです。輸送量とキロをかけたやつ、いわゆる人キロ、この数は非常に多くなっていますね。そういう点を考えて、もう一つお聞きします。  一人当たりの営業収入はふえていますね。これは非常に重要だと思うのです。その点を確認したいと思います。
  286. 磯崎叡

    ○磯崎説明員 先ほどの償却費のお話でございますけれども、私どもの償却費は定率法と定額法とを併用いたしております。定額法でやっておりますのは、車両、機械、船舶だけでございます。あとは全部定率法でやっております。しかも国鉄の減価償却費は、民間会社と違いまして、それが流動資産の形で社内保留されるのでなくて、固定資産にほとんど全部なっております。これが先生の御心配の安全対策等に使われる原資になるわけでございますので、私どもといたしましても、極力そういった方面に自己資金が使えるように尽力をしてまいりたい、こういうふうに思っております。  それから、ただいまお話しの人件費の割合でございますが、これは運賃に対する割合から申しますと、大体五四、五%を前後しております。それは運賃値上げのあった年等によりまして多少違っておりますけれども、大体一番多かったときが昭和四十年度の六三%、それからあとずっと、四十一年に運賃を上げましたので五六%、それから大体五六、七、八のところを前後しているわけでございます。したがいまして、運賃値上げをいたしますと総体の水揚げが自動的にふえますので、一人当たりの水揚げがふえてまいります。
  287. 広沢賢一

    広沢(賢)委員 それからもう一つ、これは主計局次長にお聞きしますが、大体国鉄の一人当たりの人件費、賃金は高いと思うかどうか。二十年勤務で四十四歳で五人家族、手取りが四万四千円から四万五千円ぐらい。これはひどいものですね。八七%がアルバイトを奥さんがやっているのです。それで写真もずいぶんありますけれども、仮眠室とかいうのはとてもひどい状態ですね。だから、国鉄の人件費を切り詰める、もしくは国鉄の人員を人減らしすることを強引にやってきたということは、これは会計帳簿上の問題と離れて、そういうところに押しつけるということはよくない。事故のもとだと思うのですが、それについてさっき言ったのは、人件費比率なんかずっと下がっている。だったら、そういうところにしわ寄せすることはいけないのだということについて確認を求めたいと思いますが、どうでしょうか。
  288. 磯崎叡

    ○磯崎説明員 国鉄職員の給与の問題につきましては、昭和三十九年以来三公社五現業のバランスがとれているというふうに仲裁委員会では見ておるわけでございます。私どもは毎年、当事者能力の問題等もございますが、仲裁委員会の裁定でもってベースアップしておりますので、仲裁委員会がほかとのバランスをとっておられるというふうに思いますし、また仲裁裁定を見ましても、民間企業等の賃金を相当に考慮して考えているというふうな仲裁裁定になっておりますので、私は国鉄職員だけがそうほかに比べて悪いというふうに仲裁委員会はしておられないということを考えております。
  289. 海堀洋平

    海堀政府委員 国鉄の現在の基準内賃金の平均はたぶん五万二千円余りだと思います。これは民間との比較についてはいろいろ議論があろうかと思いますが、一応いろいろな比較の方法をとりまして出ましたものを見ましても、民間に比べて決して低いというふうには出ていないというふうに承知いたしております。  それから、賃金を特に押えているのではないかということでございますが、最近の例としまして、去年の仲裁裁定が七%プラス四百円という仲裁裁定が出まして、この場合、国鉄は三百五十九億円の原資を要したわけでございます。その際に当初予算で千二百二十九億円赤字を計上いたしていたにもかかわらず、政府といたしましては仲裁裁定の権威を尊重いたしまして、三百五十九億円を要する仲裁裁定を受諾したわけでございます。ちなみに、去年定期運賃の改定によって増収いたしました額は約三百億円でございますので、その定期の改定によりまして得ました額以上の額が仲裁裁定の実施に要したわけでございます。したがって、政府といたしまして、決してそういった賃金をただ抑制するというふうな姿勢ではないことは御理解いただけるのじゃなかろうかと存じます。
  290. 広沢賢一

    広沢(賢)委員 私はそれと違って、国鉄の労働者がストライキを禁止されている、これは各国のあれと比べて不公平です。これはあり得べからざることですが、しかしそれが行なわれている。しかし、それでもストライキをやらなければならぬ。それで賃上げをしているのだと思うのです。私がいま言うのは手取りですよ。そうすると政府としては、なるほど国鉄ですから給与改定にはやはり相当の額が必要です。物価が上がるのだからしようがない。それについて、それだけの額でもって押えてないということじゃなくて、実際上見ると、やはり民間から比べれば、いまおっしゃった五万数千円が手取りが五人家族で四万五千円なんというのはひどいもんだとだれだって思うのです。だから、こういうところに縮まないで、やはりもっと企業努力をしなければいけないと思うのです。あと、そうすると今度は、随意契約の問題なんか一ぱい出てまいりますが、国鉄で非常にもうけている企業は大きな企業で一ぱいある。これは民間企業です。  そこで、大体終わりに近づきましたのでもとへ戻りますが、先ほど私がいろいろ御質問したのは、金利払いが多過ぎるのじゃないかということですね。大体金融機関にことし四百八十八億払う。それから合計で計算すると千四百六十九億円も払う。それで国鉄の、働いている人は非常に過密ダイヤであぶない思いをしながら給料も高くはない、低いという。それから公共負担が八百三十八億円ある。これはよその営利企業なら負担しない額なんですよ。しかもこれは造船利子補給の海運会社だって、こんな負担はしていないんだから。そういうことを考えると、やはり鉄道運賃政策は物価政策からやっていかなければならぬ。というと、最後の結論は、この十カ年計画を練り直すときに、政府の財政投融資、それから利子補給等々について、その分を換算した額だけやらなければ企業経営としての公平さを欠くんじゃなかろうか、このように思うのですが、大蔵大臣、いかがでしょう。
  291. 福田赳夫

    福田国務大臣 今度の国鉄の総合計画は、これはもう国鉄財政再建協力会が非常に熱心に検討して、また国鉄当局の意見も聞いて決定した最後の案といっても差しつかえないかと思うのです。それによりまして、先ほど副総裁からもお話がありましたが、実質的にこの提案を財政当局としては受け入れた、そういう内容を持ったものであります。したがって、私は、これで国鉄当局がやっていける、また意見書もそうなっておる、こういうようなことでありますので、決してこれがまた改定を要するとかいうような状況ではない、これでいよいよ国鉄も再建の軌道に乗った、かように見ております。
  292. 広沢賢一

    広沢(賢)委員 そのことは、国鉄のほうがそういうふうにのんじまったんだというのであったら、これはとてもじゃないけれども、たまったものじゃないですね。ことしの措置で八十四億ですから、これ以上になると思うのですが、十カ年計画でこれは十倍したって九百億どころか八百四十億、十分の一ですよ。それで一方、運賃値上げのほう、その他の措置が三兆三千億でもって、それから合理化その他の一人乗務にしてしまうとか、そんなことをごんごんやらされるということで、一兆円ですよ。そうしたら、これはびっこですよ。全然これは三位一体じゃないですよ。こういう片手落ちのやり方では、これは今後十カ年でもってやるというんじゃ、とてもじゃないけれども、国鉄当局がのんだのがどうかしていると思うのです。それで、この推進会議に、学者として、私どもの知っておる学者がいますけれども、この人たちはもう全く一人一人つるし上げですよ。国民のために無責任きわまると思うのです。運輸大臣はそのまん中にいるんだからお考えになると思うのですが、これは公平な三位一体だと思いますか。三位一体というのは、三つ足がありまして、こんなかっこうじゃないのです。ちゃんとしたかっこうなんですよ。ところが、一方は十カ年でもって九千億どころか九百億くらいですね。一方はさっき言った数字ですよ。三兆三千億とか一兆円とかいう数字ですよ。これは三位一体じゃない。そうですね。だから、三位一体だとかそれからその他の三方一両損ということにかけては、これはまさに誇大広告ですよ。誇大広告でないということは言えないと思うのですが、その点について、きわめて不公平であるということについてお認めになりますか、運輸大臣
  293. 原田憲

    ○原田国務大臣 あなたの言われた四十四年度八十億、これを十年間でも八百億ということが悪いほうの誇大じゃないかと私は思います。そんなことはないんで、先ほどからの話を詰めていきましたら、さようなことはないと思います。三方一両損ということばを使ったのは、これは私が使ったので、率直に言いまして、これは失敗だった。損をするのではないのです。みな得をする案なんです。それをわかりやすく言うならば、日本には大岡さばきで三方一両損ということばがあるものだから、私はそのことばを使って本会議で言ったら、それから公明党の沖本さんでしたか、質問のときに、運輸大臣は三方一両損と言ったけれども、そうじゃないのじゃないか。これは「ダイヤモンド」かなにかで、三方一両損というのを学者が使っていましたよ。運輸大臣が言ったのはおかしいと。私は、わかりやすく言ったためにたいへん誤解を与えた。それから私は、今度、本会議で三位一体ということを申し上げておりまして、三位一体というのは、何も一人ずつが同じ金を出してやることが三位一体、こういうことを申し上げておるというより、率直に言いまして私は、財政当局はいままで——国鉄はいまのように、石田さんが総裁に就任して、あの人がここで何度も言うように、長期計画を立てたときも、それはそのときの委員会はたしか出資をしろ、こういうことを意見書で言っておったと思うのです。しかしながら、それに対して財政当局は、それだけの金を出資する余裕はない。それは私はそのときの委員の人たちが決して悪いとは言いません。しかし、国の全般の財政ということも考えて答申をしてもらわないと、財政当局は、ないそでは振れぬということに結局なってしまう。だから結局運賃を値上げするか、借りてくる金でも金利の高い——高利貸しではありませんけれども、言うたら悪質な金までかき集めて投資をしなければ、いわゆる国民経済の中の条件としての国鉄のつとめを果たせない。こういうようなことで今回は、この推進会議では、高度な立場に立って、英知を集めて、今度こそほんとの再建策を立てよう、こういうことで意見が出てきておると私は思います。  したがって、広沢さんはこんなものはだめだ、こうおっしゃるけれども、それはいままでのことを考えたら、ようこれだけしたな、こういうふうに受け取っていただいて、一日も早く御協力くださるように、伏してお願いを申し上げる次第でございます。
  294. 広沢賢一

    広沢(賢)委員 そう言われると、あと一言つけ加えなければならぬ。  三つが損するのではなくて——確かにそうですよ。運賃値上げを十年間に三回もやられる。しかも国会審議を経なかったなんというと、たいへんなことになると思う。それは一方的に国民が損なんです。国民が一方損。それからその次に、一兆円の合理化ということでもって、国鉄の当局も、その労働者も、ひいひいいって、ストライキをかけて合理化をしなければならぬという、そうすると、これは国鉄の損なんです。実際、損なんです。それで、公共負担が、先ほど言ったように、たいへんな額に毎年のぼっているのだから。十年間に八百億。もしくは四千億円のたな上げ分だって、考えてみれば、ほかのほうと比べると金額としては半分以下です。  という点でもって、全くそれは、いま運輸大臣の言っていることは、運輸大臣の職責を果たすということにはいかない。やはり大蔵大臣もしくは大蔵省に従属している、そういう言い方であろう、私はそう思います。  以上で終わります。(拍手)
  295. 田中正巳

    田中委員長 河村勝君。
  296. 河村勝

    ○河村委員 先ほど阿部委員が質問いたしまして、通行税というものは、昭和十五年に戦費調達のためにできたものだ、だから、もういいかげんにやめたらどうだという質問に対して、大蔵大臣はさっき、税制の体系上問題はあるけれども、もう少し宿題にして残してくれ、こういう答弁でありました。ところが、過去数年前から福田大蔵大臣みずからが、予算委員会その他で、早急に検討するというような答弁をされておるわけですね。それからもうすでに何年もたっておるわけですから、いまから宿題というのもたいへん言い古しのようでありますが、一体どのような検討を今日までされておるか、それをお伺いいたします。
  297. 福田赳夫

    福田国務大臣 確かにこれは戦争前から、直前にできたのでありますけれども、あの当時といたしますと、ほとんど全部の通行料金に対してかかった、そういうことでいろいろ問題はあったのですが、今日は非常に整理をされまして、奢侈というか、奢侈品に物品税がかかるという性格とほぼ似てきておるという現状であります。そういう現状から考えますときに、必ずしもこの税は悪税だというふうには考えておりません。また、先ほど申し上げたのですが、直接税がどうも重くなるような傾向を持つ、そういう際に、まあ通行税という、税額からすればわずかなものでございますけれども、これを廃止するというようなことはいかがなものであろうかというふうにも思います。  とにかくこの問題は、いませっかくのお話でございますけれども、私はこれを廃止するというお答えはできない。まあ今後税制の大きな体系的な改正でもあるという際の問題として検討してみたい、こういうふうに思っております。
  298. 河村勝

    ○河村委員 奢侈税といわれるのには、だいぶバランスの問題で議論があると思うのですけれども、その点はあとで申し上げますが、今度の国鉄の運賃値上げくらい世の中で問題になったことはかつてないわけです。それは主として物価問題との関連で非常に問題になったわけです。  そこで、大蔵大臣、体系上問題がある、あるいは将来検討すると言われるなら、こういう際に、値上げプラスそこに通行税がかかってくれば、その分だけはどうしてもやっぱり値上げになるわけですよ。ですから、ちょうどいい機会ですから、わずか二十五億かそこらで、毎年一兆円以上の自然増収があるときに、ほんとうに問題になるほどの税金じゃありませんし、何か無理やりにがんばって残しておるような感じが非常に強いのでありますけれども、そうした物価対策上のために、わずかであってもおやめになる時期ではないかと思いますが、いかがですか。
  299. 福田赳夫

    福田国務大臣 かりにこれをやめようなどと言うと、また一方において、非常に高級な施設に対していままで課税されておったものをわざわざやめるのはどうかと、こういうような議論が必ず私はあると思います。そういうようなこともありますが、とにかく私は、そういう高級な施設の使用料金、これに対するいままでの課税、これをいま変える時期ではない、こういうふうに考えておるわけであります。
  300. 河村勝

    ○河村委員 これは主税局長に伺いますけれども、今回の運賃改定は、一等、二等を廃止してモノクラスにしたということでありますけれども、実質的には二等運賃をもとにして上げたわけですね。それにもかかわらず、特別車両というものに対して通行税をかけるという理由はどういうところにあるのですか。
  301. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 今回の運賃の引き上げは、先ほど副総裁から申されましたように、一等、二等の車両は昔どおり残っておって、二等の車両を利用する者、一等の車両を利用する者、いずれも運賃は共通にする、しかし、一等の車両を使っている者については特別車両料金というものを取る。つまり、従来利用者が非常に少なくなってしまった一等をできるだけ有効に使うために一等料金を引き下げるという意味も含んでおるということも言われたわけですが、利用の形態を見ますと、従来の一等車と同じ利用のしかたをするわけでございます。同じ列車に一等車がついておりまして、特別の料金を払えばそれが使えるということであれば、やはりそこに等級があるのと同じではないか、したがって、本来ならば、運賃まで含めて、その一等車両に対するものは課税をすべきであるという理屈もございますけれども、運賃が共通になった以上は、その特別車両料金の部分だけを課税すれば足りるだろうということで、十億ばかり減収になりますけれども、今回の改正で、決して新しく税金を取るわけではございませんで、従来よりも十億ばかり減らして従来の制度をほごにする、こういうことでございます。
  302. 河村勝

    ○河村委員 相当あつかましい御答弁ですが、大体一等、二等の運賃のまん中辺をとって、それに対して一〇%値上げをしたというなら、モノクラスになっても、それは半分くらい税金をかけろという理屈になるかもしれませんけれども、実際二等運賃をもとにして計算しているわけでしょう。その理屈はちっともないのでありますが、いま大蔵大臣は、奢侈税的な要素が強いと言われましたね。ところが、今度の特別車両料金を見ますと、百円、二百円、三百円という零細なる車両料金に対してまで通行税をかけるわけですね。これは全然つじつまが合わないように思いますが、いかがですか。
  303. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 距離によって特別車両料金も低いということはあり得ると思います。ただ、距離が短いものは特別に課税しない、距離が長くなると課税をするというのも理屈がないわけであります。やはり従来の一等車を利用するために特別に払う料金については当分——いずれ一等、二等が実質的にもなくなれば別でございますけれども、一等車というものがあって、それに乗っている人が特別な料金を払う限りは、やはり特別の扱いをしないとむしろ不公平だということになると思います。
  304. 河村勝

    ○河村委員 距離とは関係ないのですよ。普通列車の旧一等車の場合には、八十キロ以上は全部三百円でしょう。千キロあっても、やはり三百円なんです。ですから、その理屈は成り立たないのですが、その点はとう考えるのですか。
  305. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 もちろん、一律の部分もございますけれども、これも、従来から一等車として、一等の料金として課税されていたものに相当する車両でございます。それを利用するための料金である限りは、やはり従来の一等と同じ性格のものを持っていると考えるべきだろうと思います。そういう意味で、特別車両料金というものの性格が、そもそも従来の一等車に相当するものを利用する料金であるという性格づけをされる以上は、同じように扱うよりほかはないんじゃないかということで、特別車両料金一般を同じ扱いにするということにいたしたわけでございます。
  306. 河村勝

    ○河村委員 いまのあなたの答弁は、近距離のものは安いのはあたりまえである、だけれども、距離によって差等をつけるわけにいかぬから取るのだという説明でございましたね。そうなれば、距離が幾ら長くても三百円であれば、これは大蔵大臣がいま言われた奢侈税という性格は全くないですね。さっきの答弁と全然違うんじゃありませんか。
  307. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 奢侈と申しますか、要するに他の同じ種類の消費がありながら、特別料金を払うことによって、より上級の消費を得るという場合にそれを奢侈といいますか、高級消費と申しますか、いずれにしろ、普通の消費と違った扱いをするというたてまえでございますから、距離によって上がらなくても、その特別の車両を使うというところに差別があると考えるべきだろうと思ってやったわけでございます。
  308. 河村勝

    ○河村委員 大体二千円くらい運賃を払って、それに三百円プラスになる、それくらいの程度で、高級品、下級品という課税の理屈を分けるだけの理由が一体あるのですか。
  309. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 先ほどから申し上げておりますように、この特別車両料金の性格に着目すべきだと思っているわけでございます。つまり違う車両、従来の一等車両というものに乗車するためには、その特別車両料金を払わなければならぬ。それがつまり、通行税の企図しておる一等と二等と区別して、二等には課税をしないけれども一等には課税をするという趣旨から申しますと、今回の運賃体系に沿った調整を加えるとすれば、そこに差別を求めざるを得ないというところに今回の改正をいたしたゆえんがございます。
  310. 河村勝

    ○河村委員 そう公式的な無理な主張をすることはないので、一等に課税するのだから、旧一等車にはなお課税するという説明であるけれども、一等車に課税するというのは、二等車に比べて一等車が倍近くの高いものであった、だから高級だからかける、こういうことなんでしょう。だから二等料金に対してわずか百円くらいしか違わないものが、それがただ単に旧一等車であるということだけでもって課税するのは、全然実質的な理由はないじゃないですか。
  311. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 御指摘の部分はおそらく横須賀線等の一等というものに相当するかと思いますけれども、今回の運賃改定で、従来一等車に乗っていた場合の料金の上がりよりも二等車のほうが高いということは先ほども言われたとおりであります。そういう意味では、私どもが酒の税を引き上げたり引き下げたりいたします場合に、かつて一級酒が売れ行きが悪いために税率を下げて、非常に一級酒が伸びたことがございますが、そういう趣旨でお下げになったと思いますけれども、差がなくなったにいたしましても、その従来の利用と同じ利用がされるというところに着目して、従来の税金の体系をその際調整するとすれば、そこに差等を設けるより方法がないと思います。
  312. 河村勝

    ○河村委員 あなたの答弁は何を言っているのかわからないですよ。これはなぜそうこだわらなくちゃいけないのですか。実際特別車両料金を取るというのは、寝台に料金をかけるのと似たようなことなんでしょう、理屈は。そうじゃありませんか。
  313. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 寝台にかけると似たような意味ではあると思うのです、特別の利用をするものでございますから。
  314. 河村勝

    ○河村委員 そうしますと、寝台のほうは免税点は今度千六百円ですが、それなら特別料金だって千六百円ぐらいのところでもって線を引くのがあたりまえじゃありませんか。
  315. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 寝台車について課税最低限をきめるにつきましては、先生もよく御承知のように、従来二等寝台に課税をしないという趣旨で千四百円をきめたことは御承知だと思うのです。今回も旧二等寝台に相当するものが千六百円に上がったために、千六百円という課税最低限を設けたのでありまして、従来からその考えは同じでございます。
  316. 河村勝

    ○河村委員 あなたのは全部形式論なんですね。二等寝台にかけるとかかけないということじゃなしに、実際、奢侈というのが悪ければ、高級、下級でもよろしいけれども、それでもってはっきり区分されるくらいの違いがあるから高いほうにかける、こういうことでなければならないわけですよ。それなら理屈は変わりはないので、少なくとも百円から三百円くらいまでのものにわざわざ一割の税金をかけるなんといういやがらせみたいなことをやる必要は全くないと私は思うのですが、再度答弁してください。
  317. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 一等車両を使う限りは、従来は全部にかかっていたわけであります、運賃から、もとから。今回はその運賃にはかけないということにいたしまして、特別車両料金という、ごくわずかなものになってしまった部分にだけ課税しているわけでございまして、そういう意味では決して無理なことをしたのではなくて、むしろ運賃体系に即して適正なる課税をするという目的でやったわけでございます。
  318. 河村勝

    ○河村委員 大体いままでの一等運賃にはかけないという非常に恩着せがましい言い方であるけれども、実際今度の運賃というのは二等運賃をもとにしてそれを一〇%上げたのでしょう。だから性格は二等運賃そのものですよ。それについて、それにかけてないのは何かありがたいと思えというような言い方は、実際大衆課税というものを一体どういうふうに考えているのか、はなはだ私は精神がおかしいのじゃないかと思いますが、どう思いますか、あなたは。
  319. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 それは、河村先生のおっしゃるのは形式論でございまして、運賃に特別車両料金を加えたものが実は運賃であり、それを体系上等級をなくした運賃の上に特別車両料金を乗せたというのが実態ではなかろうかと思います。そういう意味では、特別車両料金と運賃を一緒にして考えるのが本来ではないかと思いますが、そのようなやり方をすれば第一線の混乱が非常に大きくて、実際上課税不能であろうかということで、特別車両料金に限定をして課税をするということにいたしたわけでございます。
  320. 河村勝

    ○河村委員 あなたと幾ら押し問答してみてもろくな返事をしないからやめますが、それではちょっと伺いますけれども、高級品あるいは奢侈品というような考え方に関連をして、現在バスには通行税はかかっていませんね。そうですね。
  321. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 バスには等級の差がございませんから、課税をいたしておりません。
  322. 河村勝

    ○河村委員 等級に差別がないのは今度の国鉄運賃も同じですね。そこで、バスでも、最近の高速道路の高速バス、これはもう、リクライニングシート、ルームクーラー、便所までついて、非常にすばらしいものです。それから遊覧バスなんというものは、これは完全に遊楽が目的だけのためにあるのですね。しかも非常にデラックス、料金も通常運行するバスより特別料金を取っていますね。そうすると、そういうものと湘南電車や横須賀線の二等との差と、普通のバスとそれからそういうデラックスなバスとの差とを比べたら、一体どっちが差が大きいと思いますか。
  323. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 バスの路線であっても、別に特別車両料金として徴収するという形をとっておれば、今度の規定は全部適用になるわけであります。しかし、それは特別車両料金でなければ、通常の第四条のみなし規定によって一、二等を判定して課税をするということになるわけであります。もちろん、非常にデラックスなバスが課税になっておらないという点は、これは車種が違うわけでございますので、そうなれば、高級な外国車に乗っても、タクシーも課税しろということになって、これは本来性質の違うものであると考えるわけであります。
  324. 河村勝

    ○河村委員 タクシーとバスと一緒にされては困るのだが、私は別段バスに通行税をかけろと言っているわけではないのですよ。もうデラックスであるとかなんとかいうのはいまは変わってきているのですね。何のかんのと言っても、全体の生活程度が上がってくる、いままで奢侈であったものがどんどん奢侈でなくなるわけですね。だから、バスのこれだけ差があるものにかけないでおいて、それで、普通の旧一等車だからといってわずか百円や二百円プラスアルファを取るものに税金をかけるというのは、全く理由がないのです。あなたはそれでもってほんとうにまじめに返事をしているのですか。
  325. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 それは見解の相違があるとは思いますけれども、通行税の体系として、これを調整するとすればどこに差を求めるかとすれば、やはり旧一等車を、特別に利用する料金を取るものというものを求めざるを得ないと思います。
  326. 河村勝

    ○河村委員 もうあなたと押し問答しているのはくたびれたからやめますが、最後に伺います。  さっき、この通行税法が成立しなかったら一、二等運賃全部に税金がかかるのだ、こう言いましたね。それは通行税法の四条ただし書きで除外しているからだということですが、二等にみなされない、だからこれもやはり形式論議ですね。大体、二等運賃に引き戻して、そこから運賃値上げをしたのですから、二等料金と同じです。そうすれば、この三条の一号に該当して、それで税金がかからなくなるというふうに考えるのが実質的な法解釈であろうと思いますが、いかがです。
  327. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 法律の精神から申しますと、旧二等まで税金の対象にしろということは考えていないと思います。しかし、法律の形式といたしましては、これは明らかに等級の差別をなくしたわけでございますから、それに対して、等級の差別がない場合はいかなる等級を適用するかという規定である第四条は排除されている限りは読みようがないということにならざるを得ないわけでございます。ですから、いわばこの通行税法の改正というものは国鉄運賃法改正と一体をなしている。いわば国鉄運賃法を前提とした通行税の規定であるという点が非常にやっかいな問題を起こしているわけだと思いますけれども、形式論から申しますと、今回の運賃改定は二等を設定されたわけではないので、等級を廃止したわけでありますから、二等というものもない、一等もないわけであります。それをいかに調整するか、あの法律をいかにして運賃法に合わせて読めるようにするかというのが今回の改正でございます。それが改正されない限りは、どうしても旧法で読まざるを得ないのではないかというのが私どもの見解であります。
  328. 河村勝

    ○河村委員 どうもみつぎ取りというものは、いかなるへ理屈でも何でもつけて、何でもかんでも取ってやろうという精神が非常によくあらわれていて、職務に忠実であることは感心をいたしますけれども、国民の立場から非常に遺憾といたします。  これで質問を終わります。(拍手)
  329. 田中正巳

    田中委員長 次回は、来たる十八日金曜日、午前十時理事会、十時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。    午後七時二十二分散会