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1969-04-15 第61回国会 衆議院 大蔵委員会 第20号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十四年四月十五日(火曜日)     午前十時四十四分開議  出席委員    委員長 田中 正巳君    理事 金子 一平君 理事 毛利 松平君    理事 山下 元利君 理事 渡辺美智雄君    理事 只松 祐治君 理事 村山 喜一君    理事 竹本 孫一君       伊藤宗一郎君    大村 襄治君       奧野 誠亮君    木野 晴夫君       河野 洋平君    笹山茂太郎君       正示啓次郎君    田村  元君       地崎宇三郎君    中村 寅太君       西岡 武夫君    坊  秀男君       本名  武君    村上信二郎君       山中 貞則君    阿部 助哉君       井手 以誠君    北山 愛郎君       久保田鶴松君    多賀谷真稔君       中嶋 英夫君    平林  剛君       広沢 賢一君    河村  勝君       田畑 金光君    田中 昭二君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 福田 赳夫君  出席政府委員         大蔵政務次官  上村千一郎君         大蔵省主計局次         長       相沢 英之君         大蔵省主計局次         長       海堀 洋平君         大蔵省関税局長 武藤謙二郎君         通商産業政務次         官       藤尾 正行君         通商産業省鉱山         石炭局石炭部長 長橋  尚君  委員外出席者         労働省職業安定         局失業対策部長 上原誠之輔君         専  門  員 抜井 光三君     ————————————— 四月十五日  委員春日一幸辞任につき、その補欠として田  畑金光君が議長指名委員に選任された。 同日  委員田畑金光辞任につき、その補欠として春  日一幸君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  石炭対策特別会計法の一部を改正する法律案(  内閣提出第三四号)      ————◇—————
  2. 田中正巳

    田中委員長 これより会議を開きます。  石炭対策特別会計法の一部を改正する法律案議題といたします。     —————————————
  3. 田中正巳

    田中委員長 政府より提案理由説明を聴取いたします。上村大蔵政務次官
  4. 上村千一郎

    上村政府委員 ただいま議題となりました石炭対策特別会計法の一部を改正する法律案につきまして、提案理由及び概要を御説明申し上げます。  政府は、従来、石炭鉱業合理化及び安定をはかるための対策実施してきたところでありますが、最近の石炭鉱業状況にかんがみ、さらに石炭鉱業整備円滑化及び再建整備促進をはかる等のための対策を講ずる必要が生じましたので、さきに石炭鉱業審議会にはかり、その答申を受けて本年一月に今後の石炭対策について閣議決定を行ない、これを強力に推進しようとしております。これに関し必要な措置を講ずるため、政府は、別途、石炭鉱業合理化臨時措置法の一部を改正する法律案石炭鉱業再建整備臨時措置法の一部を改正する法律案等関係法案を今国会に提出いたしておりますが、本法案は、これらの措置を講ずることに伴い、石炭対策特別会計法についての次のような改正を行なおうとするものであります。  第一に、今回の石炭対策実施するため、本特別会計存続期限を三カ年間延長して昭和四十九年三月三十一日までとするものであります。  第二に、政府石炭対策実施する昭和四十四年度から昭和四十八年度までの間における本特別会計の収支は、全体としてほぼ見合うことになると予想されますが、石炭対策に要する費用は五カ年度間を通じ毎年度おおむね平均的であるのに対し、その財源となる原重油関税収入は逐年増加していくものと予想されており、初期において財源不足が生ずる見込みでありますので、借入金規定を設けようとするものであります。  第三に、昭和四十四年度からの新規施策として、石炭鉱業を営む会社が負担している金融債務及び従業員等関係債務の償還に充てるための再建交付金を交付することといたしておりますので、これを本特別会計歳出範囲に加えるほか、所要の規定整備をはかろうとするものであります。  以上が、この法律案提案理由及ば概要であります。  何とぞ御審議の上、すみやかに御賛成くださいますようお願い申し上げます。
  5. 田中正巳

    田中委員長 これにて提案理由説明は終わりました。     —————————————
  6. 田中正巳

    田中委員長 これより質疑に入ります。  通告がありますので、順次これを許します。多賀谷真稔君。
  7. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 大臣が午後見えるそうですから、主として技術的な問題について質問をしたいと思います。  まず、前年度剰余金が百二億九千二百四十六万八千円、こういうふうに百億以上出ておるわけです。これは一体歳入側についてどれだけ剰余金が出たのか、それから歳出側についてどれだけ支出減があったのか、これらをあわせて御答弁願いたい。
  8. 海堀洋平

    海堀政府委員 まだ四十三年度の決算が正確に出ておりませんので、正確に申し上げることはできませんが、歳出は、予備費を含めましてほとんど全部使用いたしております。したがいまして、剰余金見込みは、歳入予算を上回った分と考えていただいてよいかと存じます。
  9. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 そういたしますと、輸入関税の基礎になる輸入量、それを四十三年度についてお述べ願いたい。
  10. 武藤謙二郎

    武藤(謙)政府委員 四十三年度において、関税関係収入が非常に多かった。どれだけふえたかということでございますが、それをまるく申しますと、六十六億でございます。それがどういう関係で生じたかということを申しますと、これは経済活動の水準が、御承知のように非常に高くなった、それから在庫増があった、こういうことでございます。
  11. 多賀谷真稔

  12. 武藤謙二郎

    武藤(謙)政府委員 これはたいへん中身は複雑でございますが、たとえば原油について申し上げますと、四十三年度の当初の見込みが一億一千五百万キロリットル、それがその後の見込みで一億三千万キロリットル、こういうふうにふえております。製品重油A重油で申しますと、二十万キロリットルが三万キロリットル、それからC重油が千四百万キロリットルが一千万キロリットル、端数はございますが、大体こういうふうになっております。
  13. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 今後の五年間の見通し、すなわちまず第一に、四十四年度の関税収入見込み重油輸入量、並びにさらに今後五年間どういう推移をたどるか、これをお聞きかせ願いたい。
  14. 武藤謙二郎

    武藤(謙)政府委員 まず輸入量でございますが、四十四年度が、原油で一億四千七百万、四十五年が一億六千四百万、四十六年が一億八千四百万、四十七年が二億五百万、四十八年が二億二千九百万、こういうふうに原油が伸びる、こう見ております。  そこで、収入がどういうふうになるかということでございますが、五年間で大体四千六百億円、それから四十四年度に前年度からの百億円がございます。それを加えますと、四千七百億円になります。
  15. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 今度の法改正によりますと、四十四年度、四十五年度に限り、借入金をすることができる、こういうように法改正をしておる。四十六年度からは、法律改正を得なければ借入金ができないことになるわけですか、四十六年度からは借入金をしなくてもまかなえる、そうしてさらに、剰余ができて借入金の返済ができる、こういうように考えておるのかどうか、お聞かせ願いたい。
  16. 海堀洋平

    海堀政府委員 御存じのとおりに、今回の対策による歳出の五カ年間のおよその見込みでございますが、大体五カ年間を通じまして四千五百億円弱というふうに、通産省労働者との間で試算されておるわけでございます。それに対しまして、いま関税局長から御説明がございましたように、その間における関税収入は大体四千六百億円程度、それに去年の剰余金、本年度受け入れました剰余金が約百億円ということで、大体四千七百億円程度というふうに、全体としては試算されております。  それで歳出のほうを見てみますと、今年度は歳出が八百八十五億円でございます。この点がどういう推移をたどるかということでございますが、多少の変動要因もございますが、一般的に申し上げますと、鉱害対策費とか産炭地域振興対策費というふうな経費は今後増加していくであろう。それから離職者対策につきましても、その推移いかんによっては増加することもあり得る。しかしながら石炭鉱業再建交付金石炭鉱業元利補給金石炭鉱業合理化事業団出資金等はおおむね横ばい推移するだろう。それから石炭鉱業安定補給金石炭増加引取交付金等については、出炭量の減少に伴って漸減し、さらに炭鉱整理促進費補助金、いわゆる閉山交付金等計画期間後半には減少するであろう。したがいまして、今後の歳出の面はほぼ横ばい推移する、多少の増減はあろうかと思いますが、ほぼ横ばい推移するであろうと予想されております。  他方、関税収入のほうは、先ほど関税局長から御説明のありましたように、逐年増加いたしていきますので、四十六年になりますと、多少の余裕が出、さらに四十七、八年中には相当程度余裕が見込まれるという状況でございます。したがいまして、四十六年には借り入れの必要がなくなるであろうというふうに見込まれております。
  17. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 この法律はぎりぎり一ぱい書いた法律という感じですね。ですから、四十四、四十五年度に限り借入金をすることができるということですから、これは四十六年にその必要があれば、また法改正をしなければならぬ、こういう事態になる。大蔵省としてはやむを得ないかもしれませんが、きわめて弾力の薄い法律規定のしかたである、こういうように考えるのです。  そこで私、不審に思いますのは、事務処理費というのがありますね。これは四十三年度の予算にもあるし、特別会計にもそのことは規定しておるわけですね。ですから、法律違反ではないのですけれども、これは一体どういうものが入っておるか、これをお聞かせ願いたい。
  18. 海堀洋平

    海堀政府委員 事務処理に要する経費は、四十四年度は十一億円でございますが、これは石炭関係行政を行ないます役所の人件費事務費でございまして、通産省及び労働省所管当該事務に従事している者の人件費及び事務費でございます。
  19. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 これは、たとえば通産省ではだれから入るのですか。石炭部長から入るのですか。鉱山石炭局長鉱山をやるんだから、これは入らぬかもしれぬ。これはどこから入るのです、どういう職種の人が入るのですか。
  20. 海堀洋平

    海堀政府委員 いま通産省関係は、課長補佐以下石炭関係事務をとっている人の人件費、それから石炭行政に関する事務費というものを組んでおります。
  21. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 そうすると、鉱山保安局はどういうところから入るのですか。
  22. 海堀洋平

    海堀政府委員 鉱山保安局は、鉱山一般的な保安事務をいたしておりますので、その中には、石炭鉱山のみではなくて、一般鉱山関係も入っております。したがいまして、ここで計上いたしておりますのは、石炭関係保安関係事務に従事いたします課長補佐以下の人件費事務費を計上いたしております。
  23. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 地方通商産業局にはどういうのが入るのですか。
  24. 海堀洋平

    海堀政府委員 詳細な点がわかりませんので、後刻通産省のほうで調べましてお答えさせていただきたいと思います。
  25. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 ぼくは、本来、保安であるとかあるいは本省行政をやるのは、石炭特別会計でないでしょう。やはり一般会計かう出すべき性格のものでしょう。そのやっている事業に伴うならば別として、本省の役人の、しかも、本来いままでずっと行なってきたもの、あるいは保安石炭課のもの、こういうものの人件費特別会計で見るというのは、これは邪道じゃないですか。なるほど、あなたのほうには、法律事務処理と書いてあるから、これに入るべきだ、こうおっしゃるかもしれないけれども、これはやはり一般会計から国の行政事務として行なう費用でしょう。それを特別会計の中に入れるというのは、どうも私は納得できない。それは何か事業をするのに、特別にその事業に伴う人件費であるとか、あるいは監督費であるとかというのならわかるのですが、そうでない、本来、行政のいわば国の事務として行なうものが、一般会計から出なくて、特別会計から出されるというのは、どうも私は不審に思うのですが、どうですか。
  26. 相沢英之

    相沢政府委員 この石炭対策特別会計は、およそ石炭対策に必要なあらゆる経費歳出に計上するという考え方でつくられましたものですから、当然、その歳出関連して行なわれる事業に直接必要な本省のあるいは出先機関人件費事務費というのは、これは特別会計歳出に充ててしかるべきものであるという判断から、この特別会計歳出事務取扱費ということで掲げてあるわけでございますので、特別会計の立て方からいたしまして、そう異例に属するものではないというふうに思っております。
  27. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 元来、国が固有の産業政策としてやっているのに、もう課員全部この特別会計で、そうして地方の通産局まで、しかも、保安においては鉱山保安石炭保安と分けて、石炭保安特別会計、これはやはり違法ではないかもしれませんね。違法ではないかもしれませんが、あり方として、私は、非常におかしいと思うのです。あなたのほうが事務取扱費というのをわざわざ特別会計法の中に項目を入れておられるから、これは違法でないといえば違法でないかもしれないけれども、やはり特別会計性格からいっておかしいことはないですか。一般会計の中には課長以上しかいないのです。それなら、どうして課長は除いたのですか。石炭部長石炭関係課長をなぜ除いたか。
  28. 相沢英之

    相沢政府委員 これは、ほかのたとえば郵政事業特別会計などにつきましても同様なことがあるわけでございますが、一般行政的な仕事をしている人たち人件費及びこれに伴う事務費は、それは一般会計にそのまま残しておくということ、そういうふうに同じ所属の部局にあって仕事をしておりましても、まあその特別会計仕事に直接関連している仕事をしている者については、それを特別会計で経理する、それから一般的な行政をしている者については、それを一般会計でやるというふうに組み分けている例はほかにもございます。私、その部長課長、どこのところで線を引いているか、詳しくは承知しておりませんけれども、その石炭対策特別会計で行なわれておりますところの事業の直接実施面にタッチしているところの人の人件費及びこれに関連する事務費というものを特別会計に計上するという考え方で、これは区分したものというふうに考えております。
  29. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 課長部長一般会計で、課長補佐から特別会計という、そういう課員のおらぬ一般会計がありますか。それは特別の事業をやるのに、その事業に伴う人件費について見るということは、私は、それはわかります。しかし、そうでなくて、課長補佐からは全部石炭関係しておるんなら特別会計だ。それで、やはり気がさすと見えて、部長課長一般会計に置いておく。そういういわば筋道の立たぬ、基準のないやり方というのはないと思う。通常の石炭行政としてはこの程度であるというならば、それは一般会計に置いて、これはどうも特別にいまいろいろ事業をやっておるからというのではみ出した分について特別会計というならわからぬことはないですけれども、その役職のいわば比重において差をつけるというのは、全く納得いかないわけですが、どうですか。
  30. 相沢英之

    相沢政府委員 まあ具体的にどこのところで線を引くかという問題になりますと、なかなかそのボーダーラインについては議論があると思いますが、やはりそういう石炭対策についての根本的な企画立案をするというところと、それから、それに基づいてその対策実施するところとを区別いたしまして、その対策実施面に直接関係するところは、その事業実施に伴うところの間接的な経費ではございますが、まあ直接関連の深いものということで、これを特別会計の中に取り入れて経理する、そういうことはこの石炭対策特別会計以外にも例があることでございます。
  31. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 現実はそういうふうになっていないでしょう。要するに、そういう特別の事業があるから、それに関連をするものは特別会計であるというのならわかりますけれども石炭課長補佐からは全部特別会計石炭政策というものはないじゃないですか。しかも石炭局というのは何ももう、昭和三十七年度から政府特別措置をやるようになってからできたわけじゃないでしょう。本来の国の産業政策として行なわれておるわけですから、そういうふうに区別をなさっておれば私は言わないのですよ。そうではなくて、課長以上は一般会計で、その下の課長補佐からは特別会計という、そんな基準はあり得ないだろう、こう言っているのです。これは具体的にどうなんです。
  32. 相沢英之

    相沢政府委員 こういう例は、たとえば農林省で申しますと、農業災害補償法に基づいて行なわれておりますところの共済事業、この特別会計におきましても、やはり経済局長一般会計で行ななっております。一般会計から人件費等を支出しております。もちろん経済局長仕事農業保険だけではございません。そのほかの部分が多いのですけれども、しかしながら、理屈を申しますとと、農業保険関係仕事も入っておるので、その人件費については一部特別会計で見るべきではないかというような議論もあるかと思いますけれども、そういう企画立案責任者については一般会計でその給与を支給するというような例はほかにもあるわけであります。
  33. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 共済特別会計共済事業としてやっているのですから、これはいいと思うのです。しかし、石炭の場合、ある部分特別会計だというなら話はわかるのですよ。ところが、部長課長一般会計で、課長補佐からは全部特別会計というのはどうも基準が合っていない、こう言っているわけでしょう。ですからあなたのほうで、これは本来国の行政としてはかなりはみ出た分だというならば、特別会計でけっこうですと私は言っているわけです。しかし、課長補佐からはそれもこれも全部まとめて特別会計でいって、部長課長一般会計でやっておるというのは、どうも便宜的過ぎる。筋が立たないでしょう。基準がないでしょう。そういうように一般会計特別会計というのは基準のない方法でおやりになっているのですか。
  34. 相沢英之

    相沢政府委員 特別会計の設置に関しましては、財政法根拠規定がございます。財政法の第十三条の二項に、特別会計を設ける場合が列記してございますが、この会計は「特定歳入を以て特定歳出に充て一般歳入歳出と区分して経理する必要がある場合」その場合に該当するものをとして設けられたわけでございます。  そこで、この石炭対策特別会計歳入である原重油関税収入をもってどこまでの歳出をまかなうのかという考え方によって、その歳出範囲が限られてくるわけでございますが、その場合に石炭局あるいは出先石炭関係の人の給与あるいは事務費につきまして、特別会計に入る分と一般会計に残る分と、どこで線を引くかという問題になります。これは先ほども申し上げましたとおりに、ボーダーラインになりますとなかなかはっきりした線を引けないのでありますけれども、およその考え方としましては、先ほど来申し上げておりますように、一般的な石炭対策に関して基本的な企画立案をする、そういう人の給与あるいはこれに要する事務費一般会計、それから、石炭対策の具体的な事業実施するのに必要な事務に携わる人の給与あるいは事務費特別会計で支弁する、このように区分をして考えているわけでございます。
  35. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 基準をおっしゃるのは理解できますね。一般的石炭行政立案をやるあるいは企画をやる者は一般会計、特別な事業に直接携わる者は特別会計、これはよくわかる。ところが、具体的にあなたのほうで仕分けをされているのは、部長課長立案に携わる、あとの課長補佐からは具体的な事業をする。こういうのは部下のおりません部長課長でしょう。それではどうもおっしゃる基準に合っていないじゃないか、こう言っているのです。時間がありませんから、こればかりやっておってもなんですが、これははっきりして、相沢次長がおっしゃるならおっしゃるようにひとつやってもらいたい。具体的にはあなたのおっしゃるような基準に適合していないではないか、こういうように申し上げておきたい、かように思います。ちょっとその点、政務次官から御答弁を願いたい。
  36. 上村千一郎

    上村政府委員 課長以上、それから課長補佐以下というふうな分け方は、いま多賀谷先生おっしゃったように、多少そこに、相沢次長が申し上げましたような基準と正確に合うのか合わないのか、ごもっともだと思うのです。また、その以下のほうでもはっきりその基準に合うのもございましょうが、その点につきましては、いま次長が申し上げましたようなものの考え方で分けておるわけでございますが、御指摘の点もございますので、この点は十分今後検討してまいっていきたいと思います。
  37. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 次に、産炭地域開発雇用対策費というのが今度初めて新設をされておる。これは一体特別会計法第一条二項の何号に該当する事業であるのか、お聞かせ願いたい。
  38. 相沢英之

    相沢政府委員 石炭対策特別会計法の第一条の第五号「前各号に掲げる措置に附帯し、又は密接に関連する財政上の措置政令で定めるもの」この規定に該当するものとして政令で定めることにいたしております。
  39. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 この産炭地域開発雇用対策費というのは、管理は通産省に属するのですか、労働省に属するのですか。
  40. 相沢英之

    相沢政府委員 労働省に属します。
  41. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 そうすると、これは離職者対策が主である、こう考えてよろしいのですか。
  42. 上原誠之輔

    上原説明員 いま御指摘のありました産炭地域開発就労事業は、私どものほう労働省で、この事業実施につきまして所管をするわけでございますが、この目的とするところは、失業者が停滞しておる地域において、今後なお石炭合理化によりまして多数の失業者が発生する、そういう事態に対応して地域雇用安定対策として実施するものでございます。   〔委員長退席山下(元)委員長代理着席〕 したがいまして、就労者対策としての意味を持っておるわけであります。ただ一面におきまして、単なる失業対策ということでなくて、この事業実施することによりまして産炭地域開発に寄与させようということで、その意味におきましては公共事業的な色彩を持った事業である、こういうふうにお考えをいただきたいと思います。
  43. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 いま失対部長から雇用の安定ということがありましたが、一体雇用の安定になるのかどうかということ、それからこの雇用する対象炭鉱離職者であるのかどうか、この二点。
  44. 上原誠之輔

    上原説明員 この開発就労事業対象になりますいわゆる就労者範囲でございます。第一は、炭鉱合理化に伴って発生いたします離職者でございます。それから第二は、炭鉱合理化に伴いまして関連産業からも離職者が発生してくるということでございまして、この関連産業からの離職者をも対象にいたすつもりでございます。  なお、この事業によりまして雇用の安定ができるかという御意見でございます。私どもといたしましては、この事業実施と、さらには公共事業なりあるいは産炭地におけるいろいろな産炭地開発事業とも関連をさせながら、全体といたしまして雇用の安定に資するよう、事業の運営にあたりましては十分配慮してまいりたいと考えます。
  45. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 そういたしますと、この産炭地域開発雇用対策費というのは、炭鉱離職者だけでなくて、関連労働者対象にする、こういう制度、いわば関連労働者対象とするというのは、いわば初めていままでの石炭政策の中に導入されてくる概念ですか、そう理解をしてよろしいですか。
  46. 上原誠之輔

    上原説明員 従来の炭鉱離職者対策に関しましては、主として直接に炭鉱合理化に伴って出てまいります炭鉱離職者というものを中心にしてやってまいっておるわけでございます。そういう意味におきまして、今回の開発就労事業が、直接的な炭鉱離職者のみならず、関連産業からの離職者をも対象にするということになりますれば、その点は新しい概念だと思います。
  47. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 この事業は、今度逆に、雇用の吸収という面から見れば、あるいは地域開発という面から見れば、確かに非常に寄与すると思います。しかし、雇用安定という面から見れば、ぼくは現実に不安定雇用の増大ではないか、こういう感じがしてならないのです。  そこで、一体労働省としては、雇用の安定ということが一番大きな問題であるにかかわらず、不安定雇用の増大というものをなぜ入れるか。これが産炭地域振興として通産省がやるなら、私はわかる。なぜ私がそういうことを言うかといいますと、この事業というのはいわば土木事業を主とする事業であって、その事業がなくなれば解雇をされる労働者ですね。炭鉱を解雇をされた、あるいは関連企業で解雇をされた者は、われわれとしては、少なくとも次には安定雇用のところでぜひ雇用させたい、吸収させたい、こう願っている。政策はその方向に推進しておるでしょう。それにわざわざ不安定雇用仕事を持ってくれば、安易につきますよ。労働者は遠くへ出るよりも安易につく。安易につくけれども、それはその人の幸福につながらない。一体これを労働省としてはどう考えておるのか、また、大蔵省としてもどう考えておるのか、これをお聞かせ願いたいと思う。
  48. 上原誠之輔

    上原説明員 この開発就労事業によりまして、労働者に就労の機会を与えるということに関連しまして、先生からこれは不安定雇用じゃないかという御指摘がございました。私ども産炭地域における失業問題を解決いたしてまいります場合に、先生御承知のように、第一のやり方といたしましては、やはり何と申しましても広域紹介ということでございます。私ども炭鉱合理化が始まりましてからそういう趣旨で広域紹介ということで仕事を進めてまいったわけでございます。ただ、反面におきまして、広域紹介にどうしても乗らないというものが実はあるわけでございます。先生の御出身地の筑豊におきましても、すでに相当数の失対事業をやっております。あるいはまた、生活保護を受けておる人たちが非常に多い。それから安定所の窓口に出てまいっております失業者も非常に多いので、私どもといたしましては、広域紹介で、現在人手不足の世の中でございますから、できるだけ散らすという方向でやっておるわけでございますけれども、現実の問題としてはなかなかそうまいらないということが私どもの悩みでございます。  一方におきましては、やはり何と申しましても正常雇用の実現ということは、その地域におきまして石炭産業にかわるべき産業が新たに起こってくるということが望ましいわけでございまして、そういう方向でその地域が振興する基盤を整備するということを一方においてやりながら、その事業の中で広域紹介に乗らないものについて就労の機会を与えていくということで、私どもとしてはぜひこの事業就労者の停滞しておる地域においてやらしていきたいということで、今回予算に計上したわけでございます。  ただ、先生御指摘になりますように、これは請負事業でやるわけでございますので、制度的には、一人一人の労働者にとりまして雇用が安定するという面は形式的な意味ではないわけでございますけれども、先ほど申し上げますように、一人一人の労働者に対しましてはできるだけ安定した形で就労ができますように、これは私ども安定機関の立場といたしまして、できるだけ万全の措置をとって、安定的な雇用の場をつくり上げていきたい、こういうふうに考えております。
  49. 海堀洋平

    海堀政府委員 炭鉱離職者が発生しました場合に、現在の炭鉱雇用事情から見ますと、一番望ましいのは、他の炭鉱雇用される、そうして能率の高い炭鉱が十分雇用が確保されるということが一番望ましいところでございます。労働省もそういう方向で、まず第一次的には他の炭鉱、さらにそれが可能でない場合には、応急的ないわゆる広域職業紹介といいますか、そういう方向で雇用の安定をはかっていくという方向で努力はいたしていただいておると存じます。ただ、現実に筑豊地区におきましては、相当量の炭鉱離職者並びに関連産業からの離職者が発生して、それが失対事業等に相当数滞留しているといいますか、そういう状況にある。失対事業の弊害というものが種々論議されておりますので、そういう失対事業等での滞留を避けつつ、他方で炭鉱離職者雇用の安定をはかりつつ、その地域開発にも資するということで、新しい構想で労働省から要望がございましたので、広域職業紹介等の第一義的な手段への補助的な対策として考えて予算を計上いたした次第でございます。
  50. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 この公共事業というのは、名前は公共事業ですけれども雇用安定の面から見ますと、一番これは不安定雇用なんです。ですから問題は、この事業雇用形態が一体どうなのか、これは大部分日雇でしょう。何かこれは、雇用形態は通年雇用ですか。
  51. 上原誠之輔

    上原説明員 事業といたしましては、先ほど申し上げますように、公共事業的な形で、建設業者に請負の形で実施するわけであります。したがいまして、一つ一つのたとえば道路建設なら道路建設という事業をとらえてみますと、それにつきましてはおのずから工期があるわけであります。工期の間につきましては、それぞれの労働者はその工期の間じゆう安定的に雇用の場につく、こういうふうになるわけでございます。ただ、工期を終わったときにあとどうするかということになるわけでございますが、これはいわゆる就労の調整でございまして、事業実施の面におきましては空白ができないように、他の公共事業なりあるいは産炭地鉱害復旧事業なり等との関連を十分考えながら、空白ができないように、就労の調整をはかっていきたい、こういうふうに考えておるわけであります。
  52. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 これはボタ山処理事業のように、炭鉱離職者を恒久的に——恒久的というか、その事業が続く間雇うというシステムなんですか。
  53. 上原誠之輔

    上原説明員 これは工期によるわけでございまして、非常に長期にわたってその事業が継続されるということになりますと、その間じゅう雇用されるという実態が出てくるというふうに考えております。
  54. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 これは日々雇い入れの形でいくわけでしょう。ですから私は、これは全くの不安定雇用だと思う。そうして本人から見ると、幸福であるかどうか問題なんです。人間は安易につきやすいから、その辺に拾い仕事でもあれば必ず行くのですよ。しかし、それだけ年齢はだんだん老齢化するわけです。いわゆる安定雇用の場をこれによって失うのです。ですから私は、一般失対等にいろいろ議論はあるけれども、たとえば緊急就労であるとか、あるいはいまのボタ山処理事業であるとか、あるいはかつての特別失対であるとか、こういうようなやはり雇用が安定するという——あなたのほうは停滞をするとおっしゃるけれども、経済にも寄与している。問題は、安定雇用にしないで不安定雇用の中になぜ政策として追い込むか。それは産炭地振興の面から見ればいいですよ。しかし、あなたのほうは、労働省予算をとって、しかも石炭特別会計から予算をとって、なぜ不安定雇用に追い込むような政策をなさるか、こう言うのです。ですから、産炭地域就労事業をできれば雇用形態としては考えざるを得ないでしょう。工期が来れば首になるのですよ。しかもこの仕事の実態を見ると大規模なものじゃない。全国で二十五億でしょう。ですから、大規模なものでないといえばみんな小さな事業だと大体考えられる。ことに市町村がある部分負担をするわけですから大体小さい事業です。そうすると工期は常に切れる。ですから、これは全く日雇いであり、不安定雇用である。しかもそれは労働省予算だ。一体日本の労働省というのはどういう雇用政策を持っているのか。こういう点に疑問を感ぜざるを得ない。ですからこれはどうしても、中間的なワンステップだ、こうおっしゃるけれども、これはそれにならない。ですから、これはむしろ雇用形態を恒常的にするということに変えていかなければ意味がない。こういうように考えるのですが、これをひとつお聞かせ願いたい。
  55. 上原誠之輔

    上原説明員 ただいまの多賀谷先生の御意見、まことに私も同感に考える点もあるわけでございます。ただ、筑豊地帯にしからばそういう事業をやらないで、あと失業者が多数出てくる場合にどういう手を打つかということでございます。先ほど申しますように、現実の問題といたしまして、広域紹介でどうしても処理できないという面があるわけでございまして、この現実に目をつけます以上は、やはり何らかの形で雇用の場をつくっていくということが必要であろうと思います。  ただ、公共事業的な運営で労働者を就労させていくことが不安定雇用ではないか、こういうような御意見でございます。私どもといたしましては、何もこの就労事業だけで永遠に続けていくということではないわけでございまして、事業に就労している間をとらえて十分職業相談等を行ないまして、求人等が出ます場合には、一般の民間の常用就職ということにつきましては万全を期していくというつもりでございます。そういう意味で、就労事業についておる場合につきましては、これはお話しのように日々雇用ということからすれば、一般の常用雇用という面から申しますと問題があるわけでございますけれども、私どもの目標といたしましては、やはり常用雇用ということでこの就労の間に安定機関としては最大の努力を払っていきたい。なおまた、就労事業についておる場合におきましても、空白期間ができませんように、できるだけ就労の調整をいたしまして、安定した就労の場を維持していく、こういうように考えておるわけでございます。
  56. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 だから緊急就労という制度があるでしょう。むしろ緊急就労を拡大したらいいわけですよ。ですから私は、この仕事が悪いというのじゃないけれども雇用形態を不安定にして意味がないじゃないか、労働者個人からいえばかえって不幸になる、そういう政策をなぜ労働省がおやりになるのですか、こう聞いているわけです。でですから、緊急就労というせっかくの制度があるのだから、その制度に乗せて、そうして一応、雇用は永遠ではありませんけれども、安定をさすという方向でなければものは解決しない、こういうように考えるわけです。ですから、せっかく予算をとられたのですから、ひとつ雇用形態のほうを変えて、緊急就労と同じように扱われたらどうですか。
  57. 上原誠之輔

    上原説明員 安定雇用という形をどういうふうに観念するかということになるかと思うのでございます。先生おっしゃいますように、たとえば失対事業だとか、あるいは緊急事業だとかという意味におきましては、その事業にずっと就労できるという意味では安定しているわけであります。そういう形の安定がはたして労働者にとって幸福であるかどうかという点になりますと、やはりそこで停滞させておくという状態は私は適当でないというふうに考えるわけでございます。したがいまして、私どもといたしましては、失対事業に就労している者も、あるいは緊就事業に就労している者につきましても、常時職業相談を実施いたしておるわけでございますけれども、その事業そのものに就労しているということが安定感を与えますために、就労自身にとりましては、他の民間の常用雇用に就労していくということにつきまして、どうも消極的になるという事情が出てくるわけであります。そういう点を考えまして、たとえば公共事業なりあるいは公共事業的な運営で就労している間につきましては、不安定ではありますけれども、本来の労働者の幸福というのは、民間の常用就職ということが労働者の幸福であるという点を見まして、就労事業には日々雇用という形ではありますけれども、その間に民間常用就職というものを促進するというたてまえで、いま申し上げましたような開発就労の雇用実施していきたいと考えております。
  58. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 どうもあなたのことばは全く矛盾していますよ。額に汗されているけれども、実際矛盾しているでしょう。それは緊就だって永遠の職場ではないです。しかし、いま私が言うように、この開発就労事業よりもずっとはっきりしていますよ。これは常に不安定雇用に追い込んで就職をさそうというのですか。常に不安定雇用だから今度はどこか見つけていく、そういうようなことは初めからしなければいいでしょう。ですから、せっかく石炭特別会計という貴重なワクから、労働省がしかもおやりになるのだから、安定雇用的な就労事業というものを考えるべきじゃないか。しかもそれは事業効果のわりあいに高い——それは私はそう思うのですよ。事業効果の高いものをやはり考えるべきだと思う。そういうことをおやりにならないで、ますます不安定雇用をおやりになっておるというのが、長い目で見ると非常に悪い政策である、こういうことになる。それはいま確かに筑豊炭田では停滞しています。どうにもならない。だから緊就というものをふやしたらどうか、こう言っている。あるいは特別失対というものを復活してさらにおやりになったらどうか、そのほうがやはり労働者としては安定しているわけでしょう。  しかも、これはきわめて零細な業者が請け合うのですね。そうして全国で二十五億の金ですからね。ですから、事業としてもきわめて短期間の工期です。そういうものを大蔵省のほうも一体なぜ認めたのか、一体これは雇用対策になると思っておるのかどうか。それは通産省が、産炭地振興事業として、市町村財政も悪いからぜひこういう取りつけ道路もつくりたいというなら私はわかる、その意味からいえば。それはやはり事業効果をねらっての問題。しかし、少なくともこの事業雇用政策として出てくる問題ではない。雇用政策として出てくるならば、緊急就労というようなものが出てくるべきである、かように考える。主計局次長の答弁をお願いします。
  59. 海堀洋平

    海堀政府委員 炭鉱離職者対策につきましては、もちろん労働省関係で種々対策を講じるとともに、たとえば通産省関係でやっております産炭地域振興事業団等の融資等につきましても、炭鉱離職者をある程度雇用するとか、あるいはそこのやっております土地造成事業につきましても、炭鉱離職者雇用を義務づけるとかいたしまして、通産省所管でやっている事業につきましても、やはり雇用の面を考えているわけでございます。  他方、労働省関係では、広域職業紹介を柱といたしまして、種々の対策を講じておるわけでございますが、なお、現実の問題として、特に筑豊地区で炭鉱離職者並びに関連事業離職者が滞留している事実に着目いたしまして、従来やっております各般の施策に加えまして、この事業を取り上げたわけでございます。この事業には、雇用対策の面が大部分でございますが、多少ともその地域開発というふうなことも加味されているわけでございます。したがいまして、従来の施策を拡充するとともに、さらに新たにこの措置をとっておりますので、現実に即した施策ではないかというふうに考えております。
  60. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 労働省、どうですか。雇用形態をもう少し安定的な方向に持っていくようにしたらどうですか。せっかくあなたのほうは予算をとっておやりになるわけですからね。もう少し私は雇用形態の安定ということが考えられるのじゃないかと思うのですが。
  61. 上原誠之輔

    上原説明員 雇用形態の安定という点でございますが、実際の運用といたしましては、先生お話しのとおり、この事業実施いたします場合の就労の形態は、公共事業なりあるいは緊就事業と同様に、日雇い紹介の形式で就労してもらうということになるわけでございます。したがいまして、そういう点から見ますれば、不安定ではないかというような説が出てくるわけでございますが、私どもといたしましては、事業の施行の時期的な面、あるいは地域的な面等につきまして十分調整をいたしますとともに、また他面におきましては、産炭地域で行なわれます一般公共事業あるいは産炭地の振興事業とも十分関連をさせながら、労働者一人一人にとってみますれば、年間を通じて安定した雇用になるというような方向で事業の運営をはかっていきたいというふうに考えておるわけでございまして、先生の御懸念の点は十分今後とも考慮しながら、事業の運営に万全を期してまいりたいと考えております。
  62. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 私は、まだ納得しないのです。これはさらに労働省から出ております炭鉱離職者臨時措置法の際、審議を続けていきたい、かように思います。  そこで、ちょっと問題が大きい問題で、答弁が大臣でなければできないかと思うのですが、事務当局の意見を聞きたいと思うのです。今度、再建交付金とかあるいは企業ぐるみ閉山に対する特別の処置ができた。そこで、大蔵省としては、一体、今後、とにかく石炭企業の維持をはかろうとしておるのか、あるいは企業の強化という問題に重点を置いておるのか、石炭産業の強化を考えておるのか。要するに産業で生かすのか、企業を生かすのか、一体どういう方向で考えられておるのか、お聞かせ願いたい。
  63. 海堀洋平

    海堀政府委員 石炭は、御存じのように原料炭と一般炭とございますが、原料炭につきましては、鉄鋼の関係の一原料として非常に重要なものでございます。それから一般炭につきましても、やはり国産のエネルギー資源として貴重なものでございます。ただ、それはあくまで国民経済的に考えますと、要するに、国民経済的に最も効率的に供給されなければならないであろう。やはりこれも国民経済の中で妥当なコストで供給されていかなければならないというふうに考えて、どの程度まで国家が助成し、どの程度までその供給を確保していくかという点につきまして、十分に検討をいたしまして今回の助成を決定したわけでございます。その際に、石炭鉱業審議会の答申は、そういう国民経済的に効率的な供給を達成していく上においては、やはり与えられた助成の中で、各企業はあくまで企業の自己責任に徹して、自己努力を最大限に発揮していくことによって、その原料なりエネルギー源なりの効率的な供給が確保されるであろうというふうな答申をいただいておりますので、一般的にいえば、大蔵省考え方としては、その原料なりエネルギーなりが国民経済的に最も効率的に供給されるということに着目いたしております。  その供給の形態、それをどういう形で行なうことが最も効率的であるかという点につきましては、審議会の答申に基づきまして、やはり私企業の原則を基本にいたしている次第でございます。ただ、それはあくまで基本でございますが、やはりその私企業を基本にしながら、個別企業の利害を越えて、生産流通面について共同行為、統合等の必要な場合には所要の措置を講ずるというふうに考えておる次第でございます。
  64. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 私は、私企業論をやっているのじゃないのです。いま、たとえば今度の再建交付金にしましても、もとの元利補給金にいたしましても、要するに企業の借金を対象に肩がわりをする、こういうものの考え方です。そこで、たとえば社外投資一つとりましても、その社外投資は、企業としては健全になる場合だけでしょう。それは企業として弱体となるようなものは認められぬ。企業として健全になるようなものは認めるのかどうか、石炭以外のですよ。あるいはまた、石炭企業の中で他の部門への進出がある、その他の部門への進出に対して資金を投ずる、そういうことをお認めになるのかどうか。それは、企業としては強化をされるだろう。しかし、はたして産業として、石炭産業だけを考えてみると、石炭産業の強化になるかどうか非常に疑問である。会社のほうは、石炭からなるべく撤退をして他の産業をやりたいという意欲がある、こういう場合に、一体どういうようにお考えになっておるのか、これをお聞かせ願いたい。
  65. 海堀洋平

    海堀政府委員 これは石炭鉱業審議会の場を通じて種々論議されたところでございますが、国家が石炭鉱業につきまして他に類例を見ないような手厚い助成を行なってこれから行こうとしているわけでございます。   〔山下(元)委員長代理退席、委員長着席〕  したがいまして、各石炭の企業が優良な資産を他に移しまして、そしていわゆる石炭の側に弱い部門を残していくというふうな形で、要するに石炭企業から資本が逃避していくといいますか、その資産が流れていくといいますか、そういうことは厳に規制していきたい。何も国家の助成がなくて、かってにやっている企業でございましたら、それは企業の自由でよろしかろうと存じますけれども、これだけの手厚い助成を受けておるのでございますから、企業みずからがみずからの持っている資産を石炭に投入していくというふうな姿勢を前提として、国家の助成を考えている次第でございます。  ただこれは原則でございまして、石炭産業が縮小していく過程で、政府としては雇用対策につきましても相当の助成が必要でございますので、石炭企業みずからが、ある効率的な雇用機会をつくるというふうなことで、それが経済的であれば、その個々の実情に即しまして、多少の副業と申しますか、そういうこともあり得るかと存じますが、基本的には、私企業の持っている現在の力は石炭の産業のために使っていただく、それに国家が助成をしていくというふうに考えております。
  66. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 そういたしますと、現実は石炭企業の中で、しかも石炭だけで出発をした会社が他の部門をやる。そうして他の部門がかなり一人立ちができ、益金を非常に生むようになると分離をする。この状態は、大蔵省としては一体認められますか。
  67. 海堀洋平

    海堀政府委員 先ほど申し上げましたように、原則的には、あくまで現在の持っている企業の資産なりは石炭のために使っていただくという原則に基づきまして、国家はこれだけの手厚い助成をしていくという基本的な態度は変わらないわけでございます。ただ個々具体的な事例になりますと、それが国の助成をも含めました石炭企業の妥当な撤退といいますか、そういうことが一番経済的であるというふうに考えられる場合には、個々具体的な事例に即して検討していくことになろうかと存じます。
  68. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 検討する方法があるのですか。何か法律の権限がありますか。結局会社が他の部門を何かやっておる。他の部門は非常によくなる、そうすると他の部門だけ分離していく。石炭企業だけを残すから鉱害も膨大になる、未払い金も払えない。そうして今度は企業分離、倒産ということで買い上げの対象になる、こういうことでしょう、現実は。その分離をされるときに、一体大蔵省としてはチェックできるのですか。
  69. 海堀洋平

    海堀政府委員 石炭鉱業の経理を規制いたしておりまして、そういった資産あるいは会社の分離等につきまして、政府の規制を受けておりますので、そういう事態については、個々に即しまして検討してまいることになるだろうと思います。
  70. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 経理規制法ができたときに、大手の会社で現実に分離したでしょう。そうしてその会社は、近く企業分離、閉山という申請をする。それに対して一体役所は何か言ったのですか。また言う権限があるのですか。法律上の権限がありますか。
  71. 長橋尚

    ○長橋政府委員 四十二年度から施行されております石炭鉱業再建整備臨時措置法におきましては、社外投融資はもとよりでございますが、資産の処分につきましても、これを届け出させ、また再建整備計画の実施上支障があるかどうかを政府としまして審査いたしまして、支障がある場合には再建整備計画の勧告を行ない、勧告に従わない場合には元利補給契約を解除するというような制度になっております。  その前後におきまして、ある大手の企業が兼業部門を独立させたというケースがございましたが、その段階におきましては、それが、残る石炭企業につきまして非常に大きな経営上の支障があるかどうかという点を十分に審査いたした次第でございます。
  72. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 現実にあるでしょう。兼業で分離をした会社は一応隆々とやっておる。残った石炭の部門の会社は、未払い金も払えないというので倒産寸前、企業ぐるみ閉山の手続をとるわけでしょう。ですから私は、こういうことを企業家の選択にまかすという制度がおかしいと思うのです。それは結局企業家としては企業分離、閉山で国が買い上げてくれるなら、いい分だけ分離して別会社をつくって、石炭だけ残して企業分離、閉山をしたいからという申請をする。現実には、労働者もかわいそうだ、中小企業の未払い金がある、鉱害もほうっておけぬので適用せざるを得ない。  ですから、こういうことが平然として行なわれるという制度がきわめておかしい。しかも法律にあるというなら、なぜやらなかったか。いや、支障がなかった——支障がないのじゃないでしょう。だれが考えたって、一方のほうは現実においても隆々としておる。従業員のボーナスも高い。残ったほうはまだ賃金の未払いも続いておるというので、企業ぐるみ閉山というのでしょう。また、いまからでも起こるのですよ。ある会社は石炭部門を残して、そのほかは全部いま分離にかかっているでしょう、別会社をつくろうとしておるでしょう。現実に、いま石炭は非常に優秀な会社でも、将来の見通しがないものだから、石炭会社とほかの会社と分離しようとしておる。これは言わなくてもおわかりであろうと思う。そういうことが平然として行なわれておるというところに問題があると思う。そこで、政府は一体何のために金をつぎ込んでおるのだ。ですから業界のほうは、植村さんが逆の意味石炭を分離して一カ所に集めるというのは、業界が反対をした。反対をしておって、今度は自分は分雑をして兼業は残していこう。そうして腹一ぱい石炭について恩恵を受けようとしておる。ですから、まじめな会社はばかを見るわけですね、この政策というのは。とにかく従業員を同一に扱わなければならない。不幸を見ることのないようにというので、常に兼業として一体となっているものが会社としてはばかを見る。こういうことは、国の政策が企業家の選択の自由にまかされて、そうして膨大な国の投資を得て行なわれるということが、非常に今後の石炭産業の将来に暗影を投ずる。ですから、私は率直に言うと、今度の制度は石炭産業の再建ではない、企業の再建ではある。しかし、その企業は石炭企業ではなくなっておる、その時点においては。こういうことを考えざるを得ないのですよ。ですから私は、一体企業で存続をさせるのですか、産業で存続さすのですか。企業でさすならば、少なくともいまの企業形態を解散しちゃいかぬ。そうしてそこから投資をしたものはその企業でかかえるんだ。炭鉱部門が悪くて退職金が払えないなら他の部門の黒字で払う、こういうようにすべきでしょう、国がこれだけの財政投融資をする、補助金を出すのですから。それを今度企業家の選択にまかして、いい分はどんどん分離をして悪い分だけ残して、そうして、払えませんから政府何とかしてくださいというような行き方は、これは私は国民としても許せない。これに対して一体大蔵省はどういうように判断をしておるか。
  73. 海堀洋平

    海堀政府委員 先ほども御答弁申し上げましたように、石炭鉱業審議会議論の過程におきましても、やはり企業は第一次的に責任を持っておりまして、その持てる資力をあげて全体としてその企業の再建に邁進すべきである、それに対しまして政府が所要の助成策を行なっていくべきであるという基本は、石炭鉱業審議会議論の過程を通じて是認されていると存じます。したがいまして、再建計画その他の過程でその企業が優良な資産を他に分離するといいますか、逃避さすということは厳に監督をし、規制をしていくという基本的な考え方に立って法律を運用していくということでございます。
  74. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 一度でもやったことがありますか。やれないでしょう、事実上は。口ではおっしゃっても、事実そういうことが起こった場合にはやれないでしょう。また、やろうとしないでしょう。顕著な例が幾つもあるのです。それをおやりになっていないということは、やる意思がないのか、あるいは見て見ぬふりをするのか、むしろ勧めるのか。逆にいえば、そんな石炭に巻き添えを食って全部が倒産するようなことは困りますよ、だから早く分離しなさい、こう勧めるのか。一体どういう方向で行っておるのかわからないのですよ。われわれが衝に当たっておって、政府の政策がわからない。だから結局政府は、石炭石炭だけ集めてつぶしてしまう、そうして石炭に投資した金は他に使われてもやむを得ない、そしてそれは別会社になって生き残っている、こういう形になるのでしょう。
  75. 長橋尚

    ○長橋政府委員 先生御指摘のように、決してそういった企業の分離なり何なりが企業自体の恣意で自由に野放しで行なわれているという実情にはないわけでございまして、御指摘の過去の事例につきましても、その段階で、残る石炭部門につきまして分離する部門が金融面での保証なりその他の支援を十分に与えるというふうな点も見きわめまして認められたわけでございます。今後につきましても、会社の組織の変更というものはやはり重要な財産の移動なり処分を伴うわけでございますし、石炭行政といたしまして、石炭鉱業に対して他に類例を見ない大幅な助成が行なわれているわけでございます。その筋合いを十分に踏まえまして、分離等がかりに行なわれます場合に、それが石炭部門の維持、存続という点についてマイナスにならない。むしろ分離して非常に労使一体となっての企業努力が喚起され、十分能率をあげてやっていかれる。また、他部門も引き続き石炭部門に対してあるいは保証なりあるいは担保の提供なりそういった形で十分な支援が行なわれる。具体的なケースに応じまして、十分に石炭鉱業のための対策という観点から審査を行なって、ケース・バイ・ケースで判断さるべき問題だ、かように考えている次第でございます。
  76. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 現実にすでに行なわれておる、また近く行なわれようとしておる、しかも資産の半分くらいが別会社になる、そういう事態になっておるわけですよ。私は、次に来たるべき会社の名前をあげませんけれども、あらゆる財産を全部、炭住の土地まで別会社にしようとしておるのですよ。会社は減資をして、その減資をした減資分に相当する資本金を新会社に移して、それで株主にはその減資をした分だけ新会社の資本の株を持たす、こういう計画が着々として行なわれておる。そういうような状態に打つ手はないでしょう。ですから私は、全体的に制度として考えて、いまのような状態なら企業家は当然それを選びますよ。その他の産業部門が黒字を出せば、補給金その他の援助が打ち切られるでしょう、まあ安定補給金はくれるにしても、その企業として黒になれば。しかもその黒は他の部門から出るのですから、そうするといわゆる再建交付金というものは打ち切られる。だから分離をするわけです。いわばそういう仕組みになっているのですよ。そういうことをしない者は経営者として能力がないような仕組みに、制度がなっているのですよ。ですから私は、制度そのものが悪い。また制度が、こういうような資本主義下に、単に企業家の良心にだけ訴えてみえも、企業家はその企業を存続するために努力するわけです。そういう仕組みにしたほうが悪いではないか、こう考えているわけです。ですから、それらについて一体どう考えておるのか。  それから、今度大手十社、中小何社になるかわかりませんが、再建交付金というのが出る。これは第二次肩がわりですね。この第二次肩がわりというのは、他の企業に出資をした分が入っているのでしょう。金に区別はできないから入っているのでしょう。いわば合理化事業団の近代化資金だとか、あるいは短期融資であるとか、あるいは年金の福祉事業団から借りた融資とか、住宅公庫から借りたものを除いては、全部借り入れ残高を対象にしているわけですね。ですからそれは、石炭部門以外に使った金額の借金も入っているのですよ。これについては区別できないでしょう。制度がそうなっておるから、だれも石炭だけに投資をしませんよ。企業が存続するためには他の部門に投資しますよ。他の部門に投資するなら、一体石炭産業政策であるかと言いたい。きわめて不公平な政治になっている。大蔵省、一体どう考えているか。
  77. 海堀洋平

    海堀政府委員 今回再建交付金を交付するにあたりまして、各会社の長期借入金金融債務並びに労働関係債務を政府が代位弁済していくという形をとるわけでございまして、それはあくまでも負債でございますので、それが前にほかの石炭以外に投資したものについての借り入れも含まれていることがあり得るかどうかという点につきましては、片や負債面に着目し、片や資産面の議論でございますので、どれがどの金であるということは言えないわけでございますが、負債が非常に大きいわけでございますから、それは他の部門に投資した分もあるいは含まれていると考えるほうが妥当かと存じます。ただ、今回その再建交付金を交付するにつきましては、単に過去の債務というものだけに着目しないで、各企業別配分につきましては、その債務とそれからいわゆる石炭企業としてどれだけの活動をしてきたか、いわゆる出炭量等に着目いたしまして、まず配分を考えていきたいというふうに考えております。  それから、今後につきましては、再建計画を出しまして、今後各営業年度に行なわれます投資とかそれから重要な財産の処分というものは、すべてその計画書に記載をして認可を受けるということになっておりますので、石炭の企業を遂行していくに好ましくないような投資なりあるいは資産の処分というものは厳重に規制をしていきたい、その厳重な規制の上に立って国家の助成を考えていきたいというのが、大蔵省の基本的な考え方でございます。
  78. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 政務次官、お聞き及びのように、これは企業家としては、その企業に忠実であれば企業を維持したい、存続をしたい、繁栄をさせたいというのは、資本主義で当然でしょう。そうすると、石炭にはほどほどに投資をして他の部門に進出したいというのも当然なんです。またそのことは、逆の意味からいえば悪いことではないかもしれませんね。ところが、石炭産業にそれだけ国が厚い恩恵を与えておるという面から見ると、政府の政策は貫徹できない。ですから、どうしてもここに、一体今度出されている政策というものは石炭産業政策であるのか、石炭会社の企業維持の再建の政策であるのか、再建というのは石炭産業の再建ではなくて石炭企業の再建である、こう考えざるを得ない。そこに石炭政策としてきわめて遺憾な問題がある、こういうように私は考えるわけです。ですから、それについて一体どう考えておるか。ただ、われわれが国有とか公有とかいう話をするから、必要以上に私企業を温存するばかりで一つも発展がない。  ドイツだって今度、御存じのようにあのルール炭田を一社にした。ルール炭田株式会社というものをつくった。そうしてその下に、いわば日本でいえば鉱業所のようなものを七つ置いて、二十九炭鉱のうち二十三炭鉱がそれに入った。そうして労働者は全部ルール炭田株式会社という一社に雇用されておる。鉱区もそのルール炭田株式会社が持っておる。ですからルールだけでも、日本の少なくとも二倍以上、三倍ぐらいに近い出炭量を持つ炭田においても一社にしておるわけですね。そういう点を考えれば、石炭だけでこれだけの金を投ずるなら、やりようがある。それをあいまいに、全くざる法のような形で金を出しておる。そういうところに問題があるんじゃないか、こういうように考えるわけですね。ですから、これは企業家を責めるよりも制度が悪いのです。逃げられるような制度になっておる、そこに問題があると私は思うのですね。これをひとつ御答弁を願いたい。
  79. 上村千一郎

    上村政府委員 昨年でございましたか、多賀谷先生、欧州方面の石炭事情を御視察になって、私も当時ロンドンで、多賀谷先生のいまの経過その他のこと、御視察のことをいろいろ承ったことがございます。御造詣がきわめて深いと存ずるわけでございます。が、先ほど、企業家というものがその企業を継続し維持し発展しようということ、それはごもっともであろう、またそれを責めるべきものじゃないだろう。しかし、国家から手厚いところの保護を受け、そして援助を受けておる場合の企業家の良心というものは、また別のものだろうと思うのでございます。  でございまするので、現在の場合、先ほど通産省のほうの部長からもお話がございましたし、大蔵省次長からもお話がございましたが、とにかく手厚い国家の援助と、いわば助成措置を受けておる場合の企業家の良心というものは、単にその自己の企業が温存され、そして発展するということが無理からぬというふうに私は割り切るわけにいかないだろうと思うのでございます。しかしながら、先ほど先生から種々御指摘もあり、また、現実にいま先生がおっしゃっておられるようなことが行なわれつつあることも、私は否定できぬと思うのです。要するに、これをどういうふうにチェックしていくか、そういうことで、いま通産省のほうの部長からもチェックし得るであろうということ、その配慮をいろいろ述べておるわけでございます。しかし、それじゃとても不十分である、いかにそんなことを言っておったところで、現実にはそうはいっていないじゃないかという御指摘、私も十分その点は検討しなければならぬというふうに思っておるわけでございますが、いま部長並びに次長が御答弁申し上げたような意味において、何とか弊害のないように所期の目的を達するように努力し、そしてなお弊害が起きるというようなことがあれば私は十分検討しなければならぬ、こう思うわけでございます。  先ほど先生もおっしゃいましたように、非常に大きな問題でございますし、きょうは大臣も出席されますので、また大臣からもきっと所信をお伝えするであろう、こう思うわけでございます。
  80. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 大蔵省は渋い渋いといわれておるのに非常に甘い面があるんですね。なぜかというと、さきに一千億の第一次肩がわりをやり、また第二次肩がわりとして一千億を出す、それなのに担保も取らなければ鉱区の提供もやらないで金の出しっぱなしというのは一体どういうわけですか。さっきからいろいろ質問しているが、国家の介入の余地がないですよ、法律があるだけで。株も取らなければ担保も取らないで、そしてうまくいかないうまくいかないといって金をどんどんやっておる。しかもこれは借金ですよ。国の政策として安定補給金をつけるとかなんとかじゃないですよ。どういう金を使ったかわからぬけれども、とにかく借り入れ残高があるから、そのうちはっきりしている分だけ逆に引いて、そして残った分に肩がわりをして見る。それに何らの担保も提供さしてないでしょう。私企業の中に発言力を持つようになってない。鉱区の統合なんていってもできやしませんよ、私企業ですからね。鉱区の統合なんていうのは、利害関係が対立しておるからできないんでしょう。国の政策というものは入らない。ですから、経営者のほうは、いいときは私企業だと言うけれども、都合の悪いときは、もうわれわれは再建炭鉱だから、こう言う。ですから、一体なぜこの担保を取るとかいうような方法を講じられないのですか、全く野方図に二千億も出すわけですか。
  81. 海堀洋平

    海堀政府委員 石炭鉱業の再建は非常に重要な問題でございますので、石炭鉱業審議会で約半年にわたりまして論議を尽くしていただきまして、その答申に基づきまして政府として施策を決定したわけでございます。なぜ千億円また今回再建交付金で千億円、元本ベースで千億円の肩がわりをしながら担保を取らなかったのかという御指摘でございますが、現実の問題といたしましては、現在の石炭企業はもはや担保が取れるような状態にない。もし確実な担保があるのであれば優に他から借り入れもできていくであろうと考えられますが、すでにそういうことが不可能であるという状態になっておりますので、今回の再建交付金というものによって、形は借金の肩がわりという形になっていきますが、現実にはその負債とそれから石炭企業としての活動の大きさといいますか、出炭量等を十分に配慮いたしまして、政府が代位して弁済していくという措置をとったわけでございます。それでやはり石炭鉱業審議会の答申自身がそういった政府の一定の助成をはっきりさして、その助成のもとで私企業原則に立って各企業の最大限の努力によって石炭産業の再建をはかっていくべきであるという趣旨を尊重したわけでございます。  ただ、先ほど先生から御指摘のございました、石炭の個別の企業が優良な資産を他に分離して石炭部門は弱体にして、そしてそれを政府措置に、まあ悪くいえば押しつけてくるというふうなことがあり得ては、国としてはまことにまずい政策ではないかという点につきましては、私のほう、特に大蔵省から強くその点の同じような主張を申し上げまして、十分に優良な資産が他に逃避するというふうなことのないような規制を行なっていくことを考えている次第でございます。
  82. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 その担保はなるほどいまないかもしれませんけれども、一千億肩がわりをして払えば担保が解除されるわけでしょう。借金を払うのですから、借金を払えば担保は解除されるのはあたりまえでしょう。ですから、なるほどいまはこれ以上金を借りるのに担保がないことは事実です。しかし、次から次へずっと政府が払っていくのですから、担保を政府が持つということについて政府はもう少しコントロールする発言権を持ちなさい、こういうことを言っておるのです。いいときは私企業だと言うのです。商法上違反がない。ですから、それは株を持ってもいいわけですけれども、何だかもう少し持つ必要があるんじゃないか。あなたのほうはなるべくさわらぬほうがいい、これはとんでもない担保でもとったら将来国がかぶらなければならぬ、こう思っておるのですか。
  83. 海堀洋平

    海堀政府委員 代位弁済をしていく、実はその債務自身を十五年にまず延ばしていただきまして、金利も三分以上の分は免除していただくというふうにしまして、それを半年賦で償還していくわけでございます。したがいまして、相当程度たちました際には、あるいはその借入金の残高に対して担保が十分あるいは十分以上になるということもあり得るかと存じますが、そういう場合には、それをさらに活用して石炭企業のより健全な経営に充てていただくという方向で考えている次第でございます。
  84. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 私がなぜそういうことを言うかといいますと、たとえば鉱区の統合をするとか流通機構の問題を整理統合するとかという場合に、これは私企業間に対立があってできないのですよ。ですから、鉱区は本来国のものだ、こう言う。かつての日本の鉱業法は、鉱区は国の所有とする。そのほうは権能を与えるという形になったわけですね。そういうものをこの際やはりある程度国が確保しておかなければ、事実上いかに体制部会を開いてもできない。だからやはりそういうような制度をつくる必要がある、こういうように考えたわけです。  そして、欧州あたりでも金は出すけれども、必ず義務をいろいろな面で課しておる。たとえば政府が閉山交付金を出す場合には、その山について、その炭鉱が持っておる土地はルール地区開発のために市中価格で提供しなければならないとか、いろいろのやはり金を出すだけの義務を課しておる。そういう点は日本においては全然皆無である。そうしてそのことが地域経済の発展を阻害しておる。こういう幾多の問題があるわけですね。それらについて何ら経営者に対して義務を課していない。こういう点は実にルーズである、かように私は考えるわけです。なぜ、渋い渋いという大蔵省がこんなに野方図に金を出して、そうしてそういう制度をつくらないのか、私はきわめて残念に思うわけですが、お聞かせ願いたい。
  85. 海堀洋平

    海堀政府委員 先ほども申し上げましたように、今回の措置は、石炭鉱業審議会の答申を基本にいたしまして、諸般の対策をとったわけでございます。ただ、あくまで私企業原則は貫いておりますが、先生おっしゃいました鉱区の調整等につきましても、所要の勧告等ができるようになっている次第でございます。
  86. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 石炭鉱業審議会の答申と言われますが、これは経過は御存じのとおりですよ。会長である植村さんがいやだいやだと言うのを、あなた方が、すなわち大蔵省通産省がのませたのでしょう。植村試案というのが出て、それに対して通産省大蔵省でけちをつけたわけですよ。こんな答申はないですよ。あなたは審議会で逃げられるれけども、会長が、口には入るけれどものどに通らぬ案だなんて、自分でつくっておいてそういうようなこと言う案はないですよ。政府が諮問しておいて、その諮問を受けた会長が試案を出したら、今度はそれを通産省大蔵省が練り直して、そうして押しつけた。こういう審議会を無視した今度の答申というものはあり得ない。経過は私はよく存じておる。あなたが石炭鉱業審議会の答申だといってにしきの御旗のようにおっしゃるが、何が答申ですか。植村さんは不満で不満でしょうがない、こう言ったでしょう。そうして何度も植村、通産省会談などというのが行なわれたわけでしょう、私は、植村さんの案がりっぱであったとは言いませんよ。言いませんけれども、こんな押しつけ方をした案はないですよ。いままでの審議会の答申というのは、それは原案は事務局である通産省が書くかもしれない、大蔵省と相談して。しかし、今度のような場合には、これは天下周知の事実でしょう、毎日、新聞に報道されたわけですから。いま政府が押しつけようとするのは不満だ、これは遺憾である、こういうことが毎日のように新聞に載ったわけですよ。こんな答申はない。これは審議会の自主性を全く無視した答申ですよ。政府というのが内閣をさして言うならば、あるいは大臣はおれタッチしてない、こうおっしゃるかもしれませんけれども、これは少なくとも役所で官僚がつくった案でしょう。そうして植村さんはあれだけ折衝したからやむを得ないというので審議会にはかって答申を出した。これはあなた方の作文ですよ。官僚なら官僚らしく筋のったものを出したらいいと思う。全く筋が通っていない。日本の官僚は優秀といわれておる。優秀なら優秀らしい案をつくったらいいのですよ。  今日の石炭鉱業がこういうような状態になって、そうして欧州のようないろいろな石炭経営の形態がある。それが現実にいろいろな形で行なわれておる。そういうものを知りながら、日本においては私企業だということで、ただ金を出すだけという全く無為無策、こういう政策というものはあり得ない。ぼくは率直に言うと、官僚が一番悪いと思うのですよ。それは経営者が悪いのはあたいりまえ、当然です。これは官僚に良心がないためなんです。一体どう考えておるか。あなたは審議会と言われるが、審議会じゃないでしょう。あなた方の案でしょう。
  87. 海堀洋平

    海堀政府委員 石炭鉱業審議会の政策小委員会が主体になって、その案を主体にいたしまして石炭鉱業審議会の答申が行なわれたわけでございます。その過程におきまして、いろいろと御意見が出ていることは事実でございます。ただ植村会長だけの御意見ではございませんで、要するにあくまで小委員会——委員会でございますので、その委員さん方の御意見の集約されたところが答申になっていると考えております。もちろんその過程におきまして、役所に意見を求められた場合には役所としての意見を申し上げている次第でございますが、基本的には、その小委員会の各委員の意見の集約されたところをもとにしまして審議会の答申が出されている次第ございます。
  88. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 政策小委員会の意見がそのまま反映したんじゃないでしょう。植村さんがあれだけ努力をして役所と折衝したけれども、これ以上はできませんでしたという案ですよ、これは。植村さんと役所と折衝した結果、これ以上私の力をもってしては案ができませんということを聞いたから、皆さん、植村長老がそれほどおやりになったんでこれはもうやむを得ぬだろう、こういう案ですよ、これは。フリートーキングをしてつくった案じゃないのですよ。  もうこれ以上言いませんけれども、あなたが石炭鉱業審議会ということを盛んにおっしゃるからあえて言うわけですが、これは私は、やはり審議会のあり方に問題があると思う。そして官僚があれだけ圧力を加えるなら、もう審議会なんかおやめになったほうがいいのですよ。役所ですきっとした案をつくったほうがいいのですよ。そうして政府はこう思う、こう言ったほうがいいのです。それを審議会を通じて、何かといえば審議会の先生、そうして実際は役所がつくった原案である、こういう審議会のあり方というものは、私は決していい結果を生まないと思う。これは責任の所在がはっきりしないのです。植村さんが来ていろいろ質問をしてごらんなさい。植村さんも、いや、私は最初こう考えておった、あるいはその途中では受けざらというものが必要であるといわれた、ことごとく植村さんの案というもはつぶされたわけでしょう。ですから、役所は役所らしく、もう自分の政策になったわけですから、これは審議会の問題を離れて、役所として独自に検討して出したのですよ。そういう意味で御答弁を願いたい。  本日はこれで終わります。
  89. 田中正巳

    田中委員長 田畑金光君。   〔「定足数が足りない」と呼ぶ者あり〕
  90. 田中正巳

    田中委員長 ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  91. 田中正巳

    田中委員長 速記を始めて。
  92. 田畑金光

    田畑委員 初めにお尋ねしたいことは、この石炭対策特別会計の存読期間を三年延長するということでありますが、四十四年度の予算を見ますと、三十七億の借入金でまかなうような予算の仕組みになっておるわけであります。今度の特別会計財源については、関税定率法による原重油関税の暫定税率の適用と、さらに再建整備法に基づく納付金によってまかなうことになっておるわけでありますが、今後のこの財源状況についてどのように大蔵省として見込んでおるのか、これを初めに承りたいと思います。
  93. 武藤謙二郎

    武藤(謙)政府委員 特別会計財源になります関税収入でございますが、五年間で約四千六百億、そのほかに四十四年度は繰り越しの分百億がありますから、それを合わせると約四千七百億になる、そう見ております。
  94. 田畑金光

    田畑委員 五年間の総額について述べられたわけでありますが、四十四年度からの年度別についてひとつ御説明を願いたいと思います。
  95. 武藤謙二郎

    武藤(謙)政府委員 一応の見通しをずっと申しますと、これは予算でございますが、四十四年度は七百四十四億、四十五年度が八百三十億、四十六年度が九百二十六億、四十七年度が千二十八億、四十八年度が千百四十一億、こういうふうになっております。
  96. 田畑金光

    田畑委員 四十四年度及び四十五年度に限って、石炭対策に要する費用財源に必要があるときには借入金をもって充当する、こういうことになっておるわけでありますが、これは特に四十四年度と四十五年度に限りと限定しておるのはどういう事情によるのか、その辺の事情を明らかにしてもらいたい。
  97. 海堀洋平

    海堀政府委員 いま各年度のおよその関税収入の見通しについて関税局長からお答えがございました。  歳出のほうの見込みでございますが、本年度は八百八十五億円でございます。この歳出が今後どういうふうになるかということにつきましては、今後の事情にもよるわけでございますが、一般的に申し上げますと、鉱害対策とか産炭地振興対策というふうなものは今後ふえていくであろう。他方、石炭鉱業再建交付金、これは四十五年には平年度化するためにある程度ふえますが、その後は横ばい推移する。それから従来やっております元利補給金、これも横ばい推移する。それから合理化事業団への出資金、これは主として無利子貸し付けのための出資金でありますが、これも横ばい推移するだろう。それから閉山がある程度進捗いたしますので、石炭鉱業安定補給金石炭増加引取交付金等は減少し、さらにいわゆる特別閉山交付金制度というものが二年間に限っておりますので、これも経過期間の後半には減少する。これらの要因を考えますと、通産当局と各般の試算をいたしましたところ、四十五年に多少の増加は見られると思いますが、以後歳出横ばい推移するであろう。それと、先ほど関税局長から御説明のございました各年度の関税収入の一応の見通しというものを比較してみますと、四十四、四十五年には歳入関税収入のみでは多少の不足が見込まれますが、四十六年度以降は余裕が出てくるというふうに見通されておる次第でございます。したがって、借入金規定を四十四、四十五年度に限った次第でございます。
  98. 田畑金光

    田畑委員 四十四年度、四十五年度について、借入金をあらかじめ予定したということは、合理化臨時措置法に基づく石炭鉱山整理特別交付金の交付期間が四十四、四十五年の二年に限定した、こういう政策措置に基づくものであるということでございますが、四十四年度の閉山予定量、四十五年度の閉山予定量を幾らに見ておるのか。これは石炭部長のほうになると思いますが、ただ私、疑問に感ずることは、四十四、四十五年度に特別閉山交付金の交付期限を限定した、これはどういうことをねらっておるのか。四十六年度以降については、石炭についてはほぼ安定するというようなことを予定しておるのか。それとも、要すれば入り口整理というようなこともかつていわれたわけでありますが、四十四年度、四十五年度のうちに、整理すべき山は整理しようとする政策意図に基づくものであるのかどうか。もし、そういうようなことになってくるとすれば、すでに伝えられておりますように、二、三の大手が、この法律の成立、あるいは政府の政策が確定した暁には、閉山の申し入れをするというようなことが伝わっておるわけでありまして、そういうことになってまいりますと、なだれ閉山というような現象に立ち至りはしないか、こういうことが心配されておるわけでありますが、この辺の事情についてひとつ明らかにしていただきたいと考えます。
  99. 長橋尚

    ○長橋政府委員 特別閉山交付金制度を、四十四年度、四十五年度の二カ年にわたる臨時措置として、合理化法の一部改正案に織り込んで御提案申し上げておるわけでございますが、これは今回の新しい石炭対策におきまして、企業が今後、明らかにされた国の助成の限界というものを踏まえまして、どのように対応していくかということで、大きく分けまして三つの選択の道を開いたわけでございます。  一つは、再建交付金を受けて、そして何とか労使一体の企業努力によりまして、再建軌道に乗せていこう、こういう選択でございます。第二は、再建交付金という制度にはなじまない企業の経理実態になっております場合に、安定補給金の面で再建交付金を受けるよりも大きな助成を受けて、今後の再建をはかっていく。それから第三には、この際、企業として経理状態も相当悪く、異常な累積債務をかかえ、長期債務も非常に多く持っているというふうな企業の場合に、ここで再建のための助成の限界ということを踏まえました場合に、やはりどうしてもやっていくめどがはっきりと立たない。そこでこの際、産炭地、従業員その他に対する影響を最低限にとどめて、社会的な影響を緩和しながら、企業のあるいはまた炭鉱の整理をはかろう、かような選択でございます。  特別閉山交付金は、一般閉山交付金では従業員その他関係債務者に対して非常に不十分な弁済しか行ない得ない、過去の石炭政策のもとで鋭意石炭再建の維持に努力してまいったわけでございますが、非常に企業の実態が悪くなり、どうにも再建のめどが立たないというものに対しましての、いわば命綱と申しますか、そういうふうな意味合いで考えられたものでございまして、現在の石炭企業の実情というふうなものを分析いたします場合に、ここでどうしても特別閉山交付金というふうなものによって、極力円滑な整理をはからざるを得ないというふうな企業があることは、石炭鉱業審議会におきましても指摘されたところでございます。そういった企業に対しての特別措置ということで、二年間に限ってこれを認めることにいたしたわけでございまして、いわゆる入り口整理とか、そういうふうな意味合いではございませんで、幾つかの行き方について、企業の選択というふうなことを前提にいたしまして用意した一つの対策であるわけでございます。  今年度、来年度の閉山予定数量という点でございますが、これは先ほど来申し上げておりますように、あくまでも企業としてどのように態度を決するか、閉山するかどうかというのは企業の責任判断の問題でございますので、あらかじめ推定することは非常にむずかしい問題でございますが、四十四年度予算の積算にあたりましては、いままで国会で御質問の際いろいろ出ておりますような、三百八十万トン程度というものを想定いたしております。しかし、これは結果的にどのようになるか、わからぬ問題でございます。いまのところの私どもの判断といたしましては、おおむねこの前後で止どまるのではなかろうかというふうに考えております。来年度につきましては、いよいよ想定のむずかしい問題でございまして、ここで数字的に申し上げることを差し控えさしていただきたい、かように存じますが、今年度の場合は、昨年度石炭鉱業審議会で八カ月にわたります長い慎重な検討、審議が行なわれ、その間新しい政策の出るのを待って、そしてそれによって自分の出処進退をきめていこうというふうな、いわゆる政策待ちの期間がございました関係で、新政策が実施されます際、ある程度閉山申し込みというものが、昨年度あたりに比べますと多くなっているわけでございますが、来年度におきましては、閉山数量はむしろ減る可能性のほうが強いのではなかろうか、かようにこの段階として想定いたしているわけでございます。
  100. 田畑金光

    田畑委員 合理化臨時措置法の内容については、いずれまた石炭特別委員会での質問ということになりますので、深く立ち入ることはやめますが、ただ、私お尋ねしておることに、この特別会計によれば、四十四年度、四十五年度に限り借入金を認める、こういうようなことになっております。これはこの特別閉山交付金との関連でこのような会計内容になったのか。それとも、先ほど関税局長説明によれば、四十六年度の関税収入はたしか九百二十六億という説明でございましたが、四十六年以降については、借入金をやらなくても、かりに閉山措置等が相当量にのぼっても、特別会計では十分まかない得るんだという想定のもとに、この特別会計法改正にあたって、四十四年、四十五年度の借り入れ制度を認めたのかどうか、この辺を実はお尋ねしておるわけです。
  101. 海堀洋平

    海堀政府委員 先生がおっしゃいましたように、特別閉山交付金制度が四十四年、四十五年度に限られているから、それで借入金の借り入れできる期間を四十四年、四十五年に限ったわけではございません。先ほども説明申し上げましたように、今回の対策に基づきまして、大体通産省として考えられる種々の石炭鉱業の動向というものを予測いたしまして、それに要する対策費を試算したわけでございます。その試算は先ほど申し上げましたように、増加する経費横ばい推移する経費、それから減少する経費等でございまして、四十五年度には多少増加するかとは存じますが、ほぼ横ばい推移するという、そういう歳出の見通し、これは通産省と相当な期間にわたりまして、この対策を前提として検討した結果でございます。  そういうふうに横ばい推移するという見通しのもとに、他方関税収入見込みは、関税局で見通しを立てていただきまして、それとの収入、支出の関係を見きわめまして、借り入れは四十五年度までで十分である、四十六年度以降は関税収入をもって所要の歳出をまかない得るというふうに判断したためでございます。
  102. 田畑金光

    田畑委員 前回の答申が昭和四十二年度以降具体的な政策措置がとられ、石炭特別会計が設けられたわけです。ところで、前回の答申のときもそうだし、これに基づく閣議決定並びに政府のとられた石炭予算についても、四十五年度にはおおよそ安定するであろう、こういう想定で予算をつくられたわけです。たとえば前回の四十二年度に発足した政策によれば、四十二年度には、これは再建整備計画に基づく大手十七社を基準にとっておるわけでありますが、昭和四十二年度にはトン当たり二百六十八円の赤字、四十三年度には百九十七円の赤字、四十四年度には八十五円の赤字、そして四十五年度にはトン当たり二円の赤字、したがって収支とんとんになるであろう、こういう想定で前回の政策がとられたわけでありますが、にもかかわらず、四十二年度の初年度に前回の政策は崩壊を見た、こういう事情になっておるわけであります。  ところで、今度の新しい政策措置によって、これは当然四十八年度をめどにして石炭の経営が軌道に乗るであろう、こういう想定でできておると思うのでありますが、ことに答申に基づけば、四十九年度以降は政府の援助対策も漸減する、こういう趣旨で書かれておるわけであります。四十四年度から四十八年度に至る新しい政策が出発したわけでありますが、前者のわだちを踏まないという確信というものがあるのかどうか。これについて特に経理面から大蔵省としてはどのように踏んでおられるのか、この辺をひとつ明らかにしていただきたい。
  103. 海堀洋平

    海堀政府委員 今回の対策は、石炭鉱業審議会の政策小委員会で、八カ月に及ぶ審議の結果出されましたものでございまして、もちろんこの対策によりまして、計画期間を通じまして収支採算がとれるということを考えて、諸種の施策を講じたわけであります。それにはいろいろ前提があろうかと存じます。この前の対策のときの前提というものには、多少楽観的に見た面がございましたので、今回はそういう点も現実に即して修正いたしまして、この対策をとっていくなれば、もちろん採算の合わないもので閉山をしていくものもございますが、残っていきますものは採算がとれていくということを考えて、今回の対策を決定したわけであります。  ただ、四十八年が終わりましたら、では対策はなくなってしまうのかという点につきましては、もう先生御存じのとおり、元利補給金とか再建交付金というものは、相当期間にわたって交付されていきますので、あるものにつきましては、金額的に縮小していくものがあろうかと存じますが、四十八年度以降につきましても、所要の施策は行なわれていくというふうに考えております。
  104. 田畑金光

    田畑委員 いまの御答弁の中にありましたように、今回の政策と前回のそれとの間には、前提となるもろもろの与件に当然差異があるわけであります。そこで、今回の前提条件はかくかくなるがゆえに、今度の政策は政府の期待するように、あるいは審議会の答申のごとく、おおよそ安定を見るであろう、こういうようなことになると思うのでありますが、その前提要件が前回と今回はどういうふうな内容で違っておるのか、それをひとつ明らかにしてもらいたい。
  105. 海堀洋平

    海堀政府委員 まず前回の場合におきましては、はっきりとは申していなかったかと存じますが、当時のおよその出炭規模である年間五千万トンというものを何とか維持していこう。したがって、その五千万トンを維持するということを考えたがために、相当各般の、他の前提というものがシビアーになっていたんではなかろうか。今回はまず現在のところ、五年後におきまして、ある程度の経済性というものを前提とすれば、出炭の規模が三千五、六百万トンにまで縮小することもあり得るであろうという前提を立てております。したがって、能率の低いところは閉山を行なって、出炭の規模が縮小していくであろうということを、文章では明らかにしておりませんが、試算の想定では、五年間の後には、大体出炭規模が三千五、六百万トンになるであろう。あるいはそれをオーバーすることもあり得る、あるいはそれを下回ることもあり得るかもしれませんが、ともかく一応能率的なものが残っていき、非常に能率の悪いものは閉山によって縮小していくということがまず第一の前提でございます。  次に、炭の値段でございますが、これは最近の事情から申しますと、原料炭のごときはある程度引き取り者側に負担していただいて、価格を上げていただいてもいいんじゃなかろうかと存じますが、一応五年間炭の値段は横ばいであるというふうに前提を立てております。  それから、労務費につきましては、前回は年率七%程度の上昇と見ておりましたのを、今回は最近の賃金の動向等を考えまして、年率一〇%程度の上昇を見込んであるといったところが、前回の前提と非常に違っている点じゃなかろうかと存じます。
  106. 田畑金光

    田畑委員 三つの前提要件をあげられたわけですが、出炭規模は漸減する、昭和四十八年には三千五、六百万トン前後になるであろう。炭の値段は横ばい。賃率の引き上げが年率一〇%。さらに、いま次長のお話にございませんでしたが、例の物件費、資材費の値上げを二%、こういうふうに見ておるわけであります。そうしますと、結局四千二百億の中で安定し得るには三千五、六百万トン前後だ、こういうことだろうと思うわけです。  ただ、その中で、私はいろいろな点からこれは追及しなくちゃならぬと思いますが、かりに人件費の一例をとりましても、今日の石炭産業の安定をそこねる大きな一つの問題が労務不安、この労働力の確保の問題についてどうするか。いろいろ考えられるわけでありますが、その一つの中に、一体労働条件はどうなのか、労働条件の中でも一番労働者にとって直接的な関心のある賃率はどうなのか。こういう問題になってきますと、いまちょうど三公社五現業はじめ、民間のいわゆる春闘が展開されておる時期でありますが、炭鉱労働者の賃金の推移はどうなっておるのか。この点を私たちがしさいに検討してまいりますと、新政策が始まりました前後の、たとえば昭和三十五年、一例を地下産業の坑内夫にとりますと——これは二十五の製造業種を中心として見てみますと、三十五年には坑内夫は四番目、そして坑外夫は十六番目。これが昭和四十年になりますと、坑内夫は全製造二十五業種の中で六番目、坑外夫は二十位。さらに昭和四十一年になってまいりますと、坑内夫は六位、坑外夫はやはり二十位であります。昭和四十二年になりますと、坑内夫は十一位、坑外夫は二十一位。このように地下産業の、特に御承知のごとく危険を伴う石炭労働者の賃金というものは、年々低下してきておるわけであります。  一〇%の上昇を見ておる、こういうことでございますが、すでに昨年の炭鉱労働者の賃金のベースアップは一〇%をこえておるわけです。民間企業においては一三%をこえておる。ことしの民間産業のベースアップの平均はどれくらいになるかというと、大型景気を反映して昨年以上になることだけは間違いないと考えております。かりに労働賃金一つを問題として取り上げてみても、年率一〇%ということはもはや現実に即さない。すでに昨年炭鉱労働者の賃金のベースアップは一〇・四%にのぼっておる。四十四年度はおそらくそれにとどまらない、こう見ておるわけです。今度の新政策に基づく前提諸条件というものがかりにそのとおりであるといたしましても、賃金一つをとらえてみても、すでに初年度から狂ってきておる。  こういうことを考えてみますならば、一体これで石炭の安定ができるかどうか、こういうことを疑問に考えるわけでありますが、この点についてどのように見ておられるか、ひとつ見解を承っておきたいと思います。
  107. 海堀洋平

    海堀政府委員 五年間年率一〇%というのは、最近の賃金動向から見て決して十分であるというふうにはいえない数字であろうかと存じます。ただその場合に、同時に一人あたまの出炭能率の見方でございますが、相当な閉山が急速に——急速にといいますか相当進むにもかかわらず、能率の上昇というものを従来の見方よりはカーブとしては相当落として考えておりますので、賃金の一〇%の上昇自身はあるいは多少それを上回ることがあり得ようかと存じますが、他方、一人あたまの出炭能率については現在の想定を上回るのではなかろうかというふうに考えております。したがって、それらを総合して考えれば、十分所要の賃金を確保して収支採算を保持していけるのではなかろうかというふうに考えております。
  108. 田畑金光

    田畑委員 私は、いまの答弁は非常に問題だと思うのです。賃金はかりに一〇%以上になっても能率でカバーできるであろうということでありますが、いまの炭鉱の実情というのは、そんなに賃金並びに物件費の想定以上の値上げを吸収できるほど期待できるのかどうか。なるほど炭鉱の機械化あるいは近代化などというのは確かにそれなりに実績をあげておるかもしれませんが、日本の石炭事業の一番の問題は、坑内の整備条件の悪いということ、あるいはだんだん古くなって深部採掘ということになってきますと、条件はかえって悪化してまいってきておるわけです。また、最近の炭鉱災害の頻発を見ても、それらの事情はおおよそ理解できると思うのです。なるほど能率の面から見ますならば、新政策の始まった昭和三十三年の全国出炭の能率平均は一人当たり月十四トン、四十二年度にはこれが四十二トンをこえておる、三倍をこえておるわけです。こういう異常な能率の上昇ということは、確かに過去十年間にはあり得たけれども、今後そのようなことが期待できるのかどうか、これは非常に疑問だと思うのです。ましてやあなたの答弁のように、万事能率で吸収できるというのは甘い見方であると考えております。また、わが国の現在の出炭能率というものは、決してヨーロッパ先進国のそれに比べましても劣っていないわけです。  こういうことを見てまいりますならば、今度の政策的な効果というものが一体何年続くであろうか、何年要すればいまの赤字炭鉱の収支の問題についてささえになるだろうか、こういうことを私は疑問に思うわけでありまするが、こういうようなこともしさいに検討されて今回の予算措置に至ったのであるかどうか、この辺を聞かしていただきたい。
  109. 海堀洋平

    海堀政府委員 まず先ほど御説明申し上げましたように、出炭規模がある程度縮小していく現在、収支採算を考える場合には、現在の出炭規模を、もちろん大手を中心にしてでございますが、前提として、要するに収入と支出を算定いたしておりますので、出炭規模が縮小していく場合におきましては、やはりコストのかからない能率の高いところが残っていくであろう、その要素は実は捨象いたしておるわけでございます。したがいまして、出炭能率の上昇自体、従来の実績よりもぐっとカーブをスローにいたしまして出炭規模の上昇を見ておりますので、ここに前提といたしました出炭一人あたまの能率というものは、非能率炭鉱が閉山されていくということと、それからやはり近代化、合理化によりまして能率の高い炭鉱の能率が上がる、両方の点から見ると、ここに予定しております一人あたまの出炭規模というものは現実にはこれを上回ることが十分に可能ではなかろうかというふうに考えております。さらに、この収支はあくまで損益計算面での収支でございまして、したがいまして、減価償却その他のいわゆる償却経費も十分に見込んでおりますので、その点も、もし多少の狂いが出ましても資金面で無理がくるというふうな事態にはならないようにいたしておる次第でございます。
  110. 田畑金光

    田畑委員 次長、結局こういうことですか。今度のこの政策効果によれば、大手、中小を問わずトン当たり約九百円のプラス要因が出る、こういうように言われておるわけです。九百円のプラスですね。そうしますと、一〇%のベースアップになった場合、一体トン当たり幾らくらいにはね返ってくるのか。あるいは物件費あるいは資材費等の、要するに生産財の値上がりをかりに二%と見た場合に、トン当たりどれくらいにはね返ってくるのか。それをいまお話しのように、非能率の炭鉱の閉山あるいはビルド鉱が所期の生産をあげることによってある程度カバーできるというようなお話でございまするが、結局、今回の政策効果によるトン当たり九百円のプラス要因というものが今後何年間、いま言った炭鉱のもろもろのマイナス要因を吸収できるのか。その期間が、結局、新政策の効果が存続する、有効性を発揮できる期間ではないか。世間ではそれを二年というし、あるいは三年というし、こういうことになるわけです。  また、あなたの答弁を聞いておりましても、結局五年間で四千二百億、その四千二百億の財源でもって政策措置をやる、残存する炭鉱がだんだん減ってくる、したがって出炭規模も減ってくる、それに応じて残存する炭鉱に対する政策措置がかさ上げされる。こういうことを想定して、一応四十八年度までは安定するであろう、このように見ておるのだと私は思いますが、この点はどうですか。
  111. 海堀洋平

    海堀政府委員 五年間の石炭企業の損益につきましては、想定された出炭規模に基づきまして現在の助成を前提として収支採算を保持し得る。もちろん、前提は先ほど申し上げました前提に立ちまして、収支採算を保持し得るということでございまして、出炭規模が後半で非常に少なくなっていくといった場合に、それを単位の出炭に対する助成を、たとえば安定補給金というふうなものを特にかさ上げするというようなことを前提としているわけではございません。出炭規模はある程度後半においては縮小いたしますが、現在とりました措置というのは、必ずしも各年度の出炭規模と財政負担がパラレルに行なわれるという形ではございませんで、ある程度延べ払いというふうな措置をとっている面もございますので、大体現在の助成を前提といたしまして、五カ年間の助成が各年度おおよそ平均的に九百億円程度というふうに考えておる次第でございます。
  112. 田畑金光

    田畑委員 次長の答弁は、そういうことしか言えない、こう思います。  そこで、先ほどあなたの答弁の中にありましたが、原料炭などについては、御承知のように、鉄鋼生産の異常なというか非常な生産増に伴って、もうすでにわが国の製鉄用原料炭というものは、需要の三分の一前後だ、こう言われておるわけで、しかもこれからますますそういう傾向は強くなっていくわけです。三分の一どころか、もっともっと国内原料炭の需要に対する供給というものの比率は低下する、こう思うのです。そこですでに鉄鋼会社等においても、安定的な確実な供給があるならば、ある程度価格の調整などをやってもよろしい、こういう現状にあろうと思うのです。この間あの災害の起きた北海道の雄別炭鉱の茂尻鉱、あそこも原料炭です。そうして日本鋼管に原料炭を供給しておるわけでありまするが、あの災害前は、あの炭鉱の再建安定については、ある程度日本鋼管も価格の面で協力してもよろしい、こういうような話し合いもすでにでき上がっていたわけです。そこにあの災害が起きた、こういうことでありまするが、今日の原料炭の需給関係から見ますならば、当然私は、価格問題というものを考えてもいい時期がもう来ているのじゃないか、こういうような感じを特に持つわけです。言うまでもなく、わが国の原料炭の輸入先が豪州であり、アメリカであり・カナダであり、いわばある面においては労働賃金が非常に高い、また豪州のように労働不安の非常に強い国、そういうところから原料炭の輸入というものを仰がねばならぬわが国の将来のエネルギー構造を考えてみるならば、私は当然この価格問題ということを考えねばならぬ時期が来るのじゃないか、こういう感じを持っておるわけであります。あなたの先ほどの答弁の中では、価格については横ばいという想定であるが、現実としてはいろいろすでに問題が起きている、こういうような話も出ているわけです。だから、この点については、私はそのように見ておるのですが、どうお考えであるか。これはひとつ政務次官から御答弁をいただいたほうがいいと思いますので、あなたはどのように見ていらっしゃるか、この辺ひとつ聞かしてもらいたいと思うのです。
  113. 上村千一郎

    上村政府委員 先生からいろいろ御指摘がありまして、また、海堀次長から特に計数的な事務的な面から御答弁申し上げました。先生御指摘のような心配な点はあると私は思うのですが、しかし、とにかくいろいろと関係省とも協議検討しましてこの政策目的を立案し、また、御検討をお願い申し上げておる段階でございますので、とにかくいろいろ難点はあるけれども、これでいけるであろう、また、ぜひいかせるようにしなければいかぬというような点でいま考えておるわけでございます。いま先生の御指摘のいろいろな点につきましては、これはいろいろ心配の点ということは十分あり得るものだというふうに思っておるわけでございます。
  114. 田畑金光

    田畑委員 抽象的でよくわかりませんけれども……。  そこで私は、今度の再建交付金一千億円、前回の肩がわり一千億円、これを二度、合計二千億やったわけでありますが、なおかつ炭鉱の債務というものはどのくらい残るのか。
  115. 長橋尚

    ○長橋政府委員 お答え申し上げます。  現在大手十六社で申しますと、総借り入れ金残高が約二千四百億でございますが、前回の元利補給金の交付対象としてたな上げされております分が、いま残高が約八百八十億円程度でございまして、その残りが千五百五十億円程度でございます。このうち、今度再建交付金対象として結果的にはどの程度取り上げられることになるかでございますが、いずれにしましても、残といたしましてはなお五、六百億円のものが残ろうかと存じております。
  116. 田畑金光

    田畑委員 六百億か八百億か、それは今度の新しい法律に基づく、制度に基づく申請を見なければわからぬと思いますけれども、六百億にしてもあるいは八百億にいたしましても、やはりいまの石炭にとっては相当なというよりも非常な重荷だと考えるわけであります。私は、前者の多賀谷氏の御意見、聞いていて、非常にごもっともだという面も多々あるわけでありまするが、同時にまた、私は別の見方もしておるわけであります。まあ過去二回のあれで二千億もやってあと六百億前後残したというのはどういうことなのか。やるならばいっそ全部肩がわりしてもっと身軽くしたらどうだという極論もしたくなるわけでありまするが、それはいずれまた別の石炭特別委員会で掘り下げることにいたします。  そこで、今回のこの政策上のねらいですね。前回は、財政資金については十二年、金利は六分五厘、市中資金は十年で金利は五分、年賦均等償還。今回は、財政資金、市中資金ともに償還期間十五年、利率年三分、元利均等半年賦償還、こういうことでございます。そして今後の金融措置については、長期資金等については開銀から合理化事業団に、こういうことを前提にしているわけです。さらにまた市中金融については、要するに先ほど多賀谷質問に対する政府の答えの中にも出ておりましたが、政府が肩がわりする、あるいは再建交付金を交付することによって担保余力が出るであろう。その担保余力をさらに見合いにして今後の運転資金に充てさせたい。こういうことが今後の石炭金融措置の前提になっておるわけであります。  私は、ここで疑問を感ずることは、前回の政策措置で肩がわりを受けた。そしてその直後、大手炭鉱の末席を汚していた大日本炭鉱が閉山をした。あの閉山によって金融機関は債権の回収はどうであったかというと、金融機関はほとんど一〇〇%近く債権の回収ができるわけです。また、優良担保物件を全部確保していたわけです。有価証券その他あるいは不動産等々ですね。  ところで、今度第二次の再建交付金ということになって、いま言ったような十五年で年利三分、おそらく預金金利のコストを割るような条件で、しかも十五年、半年賦償還、こういうようなことを金融機関に協力を求めるわけでありますが、一体その金融機関が優秀な有価証券その他の担保物件を持っていて、こういう条件で協力するかどうか。協力しなければ金融の面から破綻をするわけでありますが、一体市中銀行をして協力させる、これについては強制できるのかできないのか。あるいは当然金融機関の同意あるいは合意あるいは協力を得て初めてできることだと思いますが、この辺の事情は一体どうなるのか。これが第一ですね。  第二点としてお尋ねしておきたいことは、そのような肩がわりをさせたそのことによって、できるだけ優良な担保物件を解除させる、それを見合いに市中銀行等から運転資金等の融資を仰ぐという前提になっておりまするが、これについては大蔵省、大蔵大臣としてはどういう市中銀行等についての協力を求めようとなさるのか、これが第二点ですね。  第三点としてお尋ねしたいことは、開銀資金というものから炭鉱をシャットアウトして合理化事業団に万事依存させるという今後の石炭金融については、いよいよ今回の政策全体がいわば手切れ金、もう炭鉱はこれでおしまいだぞ、手切れ金的な性格を持っておると見るわけでありまするが、ほんとうに石炭を安定させる、エネルギー全体の中に一定規模の石炭を確保しよう、こういうことであるならば、長期資金等については開銀がやはり石炭のめんどうを見るということが、開銀のたてまえから見ても私は当然の金融のあり方ではないか、こういうふうに考えるわけでありますが、これらの点についてひとつ大蔵省考え方を承っておきたい。
  117. 海堀洋平

    海堀政府委員 まず再建交付金というものは、金融債務あるいは労務者等の債務につきまして政府が代位弁済をしていくわけでありますが、もちろん十五年、三分ということに同意をいただかなければならないわけでございます。十分な担保がある場合、それを行使してしまう危険はないかというお話でございますが、金融機関といえども十分な担保がある場合もあれば、やはり金融機関もその企業と相当長い間関係を持ってきたわけでございまして、必ずしも十分な担保がある場合のみではないと存じます。それから十分な担保がある場合にも、金融機関といえどもやはり社会的なあるいは国家的な公共的な目的というものには十分協力をしていただける。したがいまして、大蔵省といたしましてもそういった指導をいたしまして、この再建交付金の制度が円滑に実施できるように努力をしていきたいと存じますし、また、金融機関の協力は十分得られるであろうというふうに考えております。  それから、あとは今後の金融措置についてのお話であったと思いますが、まず現在の制度としまして、いわめる担保抜きといいますか、優秀な担保があって、それによってさらに市中金融を導入できるという場合には、もちろん行政的な審査をいたしますが、担保を金融機関に抜かせまして、それによってさらにその担保でもって借り入れをできる道を開いたわけでございます。この場合に担保を抜いた分につきましては、もしその企業が途中で倒産する、石炭企業をやめるというふうな事態になりました場合の政府保証につき特別な措置をとりまして、優秀な担保の活用、市中資金の導入について特別に配意しているわけでございます。  さらに、開発銀行は手を引いてしまったではないかという話でございますが、実は主として長期の設備金融につきまして、特別会計からの事業団への出資金、事業団から無利子貸し付けという制度に切りかえましたのは二つ理由がございまして、一つは、すでに各石炭企業は長期資金を市中から導入できる、あるいは開銀から借り入れをするにつきましての担保がすでに枯渇しているであろう、したがってやはり特別会計の資金で長期資金の大部分のめんどうを見なければいけないであろうというふうに考えましたことが一つ。それから開銀からの借り入れにしましても、六分五厘という金利負担があるわけでございます。この金利負担を軽減することによって、企業の損益を助けようというふうに考えたわけでございます。のほうは、したがいまして、直接的にいわゆる石炭の特別ワクというものはなくなったわけでございますが、十分に採算のとれる企業に対しましては、その他という資金ワクから石炭に対しましてやはり従来の特別の金利で貸し付ける道は開いておるわけでございます。  それから、短期の金融につきましては、やはりいわゆる炭代を見合いにいたしまして市中金融に今後とも期待していきたいというふうに考えております。
  118. 田畑金光

    田畑委員 本会議の時間も間近のようでございますから、私は質問はいろいろたくさんありますけれども、この辺で終わりますが、特に私は政務次官に伺いたい。  本来なら大臣にお話しするのが、ほんとうでございますが、いまの次長の答弁の金融措置の問題でありますが、そうなまやさしく、また容易な問題でもないと思うのです。やはり新政策が今後うまくいくかどうかということは、金融面というものの比重が非常に多いわけだし、あるいはむしろそれが死命を制する、こういう結果になろうと見ております。ましてや先ほど申し上げたように、今回一千億、あるいは実際はそれ以下になると思いますが、再建交付金を見ましても、十五年の半年賦償還、そして金利三分というと明らかに資金コストを割る。銀行にとってはこれは相当の犠牲だと思うわけです、いわゆる営利をたてまえとする金融機関のサイドで見るならば。にもかかわらず、それに協力を求めて、さらに優良な担保については解除してもらって、そしていま答弁の中にありました運転資金については炭代見合いのほかに、さらに長期資金等については市中銀行から担保を解除された物件を見合いに融資を受ける、こういうようなたてまえになっておりまするが、これはなかなかしかく簡単にいかないと思うのです。また、開銀が相手にしなくなった産業、企業に対して、合理化事業団に今度一千億あるいはそれ以上にのぼりますが原資を出して、そしてなるほど六分五厘の開銀の利息が、合理化事業団から今後は無利子で融資されるという、確かに経理面からいくならば個別企業はそれだけ楽になるわけでございますが、資金のワクから見た場合はたして間に合うかどうか、これが問題です。ことに合理化事業団の債務保証であっても、なおかつ石炭に融資を渋っておるというのが今日の市中金融機関の姿であるということを考えたとき、私は、今回の制度は金融面から大きな問題にぶつかってきはせぬか、このように判断するわけです。  したがいまして、特に私は、大蔵大臣に強く要望しておきたいことは、今後の石炭金融については、単に通産大臣の問題としてだけでなくして、政府として、大蔵大臣としてもひとつ責任を持ってこれに協力するように支援されるように強く要望したいと思っております。この点、大臣がおりませんから、政務次官にかわって御答弁を願うと同時に、もう一つ私は、これも大臣でなければちょっとどうかと思いますが、この間の石炭に関する本会議において総理大臣は、今回の石炭政策をもって最終と見るのか見ないのかという質問に対しまして、これは最終として見ていない、こういうことを明確に答えておるわけであります。これに対して通産大臣は、政務次官が先ほど答弁なさったように、できるだけこれで安定をはかろう、はかり得る、このような答弁で、総理大臣と通産大臣の答えに差異があったわけです。しかし、その後通産大臣は石炭特別委員会において、総理大臣の言明のとおりであるということを認め、私の答えは一つの所管大臣としてそうありたいのだという希望の表明を強く重点に置いて申したので、ことばのニュアンスの差異だ、このようなことを言っておられましたが、とにかく総理みずからも今回の措置についてはこれを最終と認めないで、さらに体制の問題その他について検討して石炭産業のあるべき安定を求めていこう、こういうことを明確に述べておられるわけであります。私は、体制問題その他についてもいろいろ皆さん方の考えを承りたい、こう思っておりましたが、時間も参りましたのでこの程度でおさめますが、いま言った二点について、大蔵大臣にかわったつもりで政務次官から御答弁をいただければありがたいと思います。
  119. 上村千一郎

    上村政府委員 金融の面につきましては、先ほどもちょっと心がまえその他につきまして申し述べたわけでございますが、先生の御指摘のように、非常に問題点があると思うのです。でございますので、いま御指摘がありましたのを踏んまえまして、あやまちのないようにやっていきたい、また、その旨も大蔵大臣にお伝えをいたしておきたいと思います。  なお、総理のお話と通産大臣のお話について、そこのニュアンスが違ったということ、そのとおりと思うのであります。要は、先生も御指摘のように、石炭対策という問題につきましては、ことほどさようにむずかしいわけなんです。むずかしいわけでございまするので、今回の政策目的によって——それで十分であるかと言われますというと、総理もお答えになりましたように、それはまた今後の推移を見て考えなくちゃならぬということになると思いますが、しかし、とにかくこれでいこうというように政策目的を立て、しかも多くの国家財政上の負担をいたすわけでございまするので、これはもうどうしても所期の目的を達したい、こういう心がまえは当然かと私は思うわけでございます。  そういうわけでございますので、いま先生がおっしゃいましたような点を踏んまえまして、ひとつ努力をいたしていきたい、こう思うわけでございます。
  120. 田中正巳

    田中委員長 暫時休憩いたします。    午後一時五十一分休憩      ————◇—————    午後三時三十一分開議
  121. 田中正巳

    田中委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  この際、福田大蔵大臣より発言を求められております。これを許します。福田大蔵大臣。
  122. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 一週間、皆さんにおひまをいただきまして、昨晩帰ってまいりました。  向こうへ私自身が参りましてたいへんよかったと思いましたのは、アジア各国の大蔵大臣がほとんど例外なしに参っておったことであります。それから、域外国におきましても、アメリカの財務長官などが参加しております。そこへわが国の蔵相が欠席だということになると、アジア諸国に対して非常に失望感を与えた、こういうふうに思いますが、まあ行かしてもらってたいへんよかったと思います。  会議のほうは、御承知のようにわが国としては、民間資金の導入に先進国は努力すべきである、また、アジア開銀を通ずる融資が銀行ベースのみならず、より緩和された条件のもの、つまりそういう特別基金に対して先進国はもっと協力すべきである。わが日本が昨年農業基金に二千万ドル出し、ことしまた二千万ドル出そうとしておるにかかわらず、他の先進諸国はほとんど追随をしない。——これはアメリカのほうを向いて言ったことばでございますが、そういう発言に対して、アジア諸国は、非常にもっともな考え方であるというので、アメリカあたりへも相当詰め寄り、アメリカといたしましてもいよいよそれにふん切りをつける、この次の国会にその法案提案をするというところまでまいりました。それから、オーストラリアが主催国でありますが、まだ農業基金に拠出をしておりませんけれども、これに対してもかなりの印象を与えた、かように考えておるのであります。  つつがなく任務を果たしてきましたことを御報告申し上げまして、ごあいさつといたします。   (拍手)     —————————————
  123. 田中正巳

    田中委員長 次いで、石炭対策特別会計法の一部を改正する法律案について、その質疑を続行いたします。井手以誠君。
  124. 井手以誠

    ○井手委員 石炭特別会計について若干お伺いをいたしたいと思います。  最初に、大蔵省にお伺いしますが、四十三年度までの石炭対策費は合計幾らでございましたか。
  125. 海堀洋平

    海堀政府委員 四十三年度から過去の五年をとってみますと、千八百八十九億円支出をいたしております。さらに四十三年度から過去十年にさかのぼってみますと、二千三百六十二億円を支出いたしております。
  126. 井手以誠

    ○井手委員 今回提案された石炭対策費は、四十四年度から四十八年度まで、利子を含めて幾らの予定でございますか。
  127. 海堀洋平

    海堀政府委員 現在予定いたしております対策につきまして、また、石炭の出炭ベースあるいは閉山の規模が通産省の想定しているように推移するといたしますと、ほぼ四千五百億円前後の対策費が必要であろうというふうに考えております。
  128. 井手以誠

    ○井手委員 通産省にお伺いいたします。  四十九年度以降、石炭産業が企業として自立できる見通しがあるかどうか。今日出されておる石炭対策費の大部分はその後も必要ではないかと私ども思っておりますが、午前中の質問でも、炭価は横ばいだというお答えもございましたし、賃金のベースアップなり資材費の値上がり等々を考えてまいりますと、今日では大体年間九百億円を予定されておりますが、四十九年度以降もかなりの金額が石炭対策に必要ではないかと思われますが、どうですか。
  129. 長橋尚

    ○長橋政府委員 石炭対策費のうち、たとえば元利補給金、四十二年度から実施しております元利補給金は十年ないし十二年払いになっておりますし、また、今回予定されております再建交付金も十五年、半年賦払いというようなことになっております。また、石炭対策費の一環をなしております鉱害、産炭地域振興対策費というふうなものも、今後五年といわず引き続き需要が期待されるわけでございまして、四十九年度以降石炭対策費がゼロになるというふうな想定はいたしておりません。ただ五年の間に四千数百億円というふうな助成の限度内におきまして、石炭鉱業が能率的な姿で再建路線に乗るべく企業の最大限の努力が払われることを期待しておるわけでございまして、五年先につきましては、そういった基礎の上でその点におきます諸情勢がどうなるかというふうな問題、たとえば労働情勢あるいは石炭鉱業におきます生産性のその時点におきます先行き見通しというふうなものとのかね合いで、石炭対策費というふうなものがどの程度必要になるかということがきまってくるものと考えております。
  130. 井手以誠

    ○井手委員 私は、抽象論は要りませんから、結論だけでけっこうです。特別会計の中の合理化安定対策費の安定補給金あるいは再建交付金元利補給金事業団出資金等々、あるいはお話しのように鉱害対策産炭地域振興対策費などを見てまいりますと、今日、大体九百億円までには達しないにしても、それに近い数字が必要ではないかと聞いておるんです。どうですか、その大半は必要じゃないですか。
  131. 藤尾正行

    ○藤尾政府委員 御指摘ではございますけれども、私どもといたしましては、今後五カ年間、四十九年までに再建のめどをつけるということで今度の対策をとっておるわけでございます。したがいまして、これによりまして、石炭対策といいまするものが軌道に乗るということでございまして、今日の緊急的な九百億円が、そのままの形で四十九年度以降も石炭対策費として必要であるとは思っておりません。
  132. 井手以誠

    ○井手委員 政務次官はどういうつもりでお答えになっておるか知りませんが、そんな甘いものじゃございません。まあそのことはけっこうです。きょうは、大蔵大臣お疲れのところをお見えになっておりますから、大臣にお伺いいたします。  ただいま御説明があったように、すでに石炭産業には二千数百億円が投入されておる。さらに今年度から五カ年間に四千五百億円、さらに四十九年度以降も、その石炭対策費の大半は、炭価が横ばいである以上、かなりの国費を投入しなければならぬことは明らかであります。私がお伺いしたいのは、これほどの巨額の国費を投入するということは、国民に納得を得られなければならないわけでありますし、また、その最終年度には、私企業としての自立の見込みが立たなくてはできないはずだと思われるのであります。大蔵大臣は、これだけの膨大な石炭対策費が、はたして生きた金に全部使われておるとお思いになりますかどうか。世間では死に金じゃないかという批評が非常に多いのであります。その辺について、あとでお伺いしますが、それだけの膨大な国費を投入する以上は、生かされねばいかぬわけですが、予算編成にあたって大蔵大臣はどのようにお考えになりましたか。
  133. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 これは井出さんも御承知のように、石炭鉱業審議会におきましてずいぶん各界の意見も聞き、国家的総意というぐらいな答申も打ち出しておるわけです。この答申では、私企業、これでいくべきだ、こういう前提でありまして、この私企業原則でこの石炭対策をするにはどうすべきか、こういう発想をとったわけでございますが、今度の政府案はほとんどこの審議会の答申をそのまま取り入れた、こういうことになります。したがって、私は、この前の対策は中途はんぱに終わってしまったわけですか、今度は、これは審議会も自信を持っておるように、審議会の案そのものを取り入れたこの政府提案としては、まずまずベストな案だ、これで効果は必ず発揮できるものであろう、最後の石炭対策だ、こういうふうな認識を持っております。
  134. 井手以誠

    ○井手委員 これだけの膨大な国費を投入して、はたして四十九年度以降に自立できるかどうかについては非常に危ぶまれるわけであります。私は、四十九年度以降の問題についてとやかくきょうは論議しようとは思いませんが、これだけの膨大な国費を投入する以上、その支出は厳正でなくてはならぬと考えております。そういう意味で、いまから特に再建交付金を中心にお伺いをいたしたいと思います。  第一次の肩がわりのときに、金融機関の協力の確証がなくては肩がわりはしないというたてまえでありましたが、四十年度、四十一年度は、そういう第一次の肩がわりがあることを期待して、石炭企業はたくさんの借入金をいたしました。かけ込みと申しますか、たくさん借入金をいたしました。ところが、肩がわりができてから、あまり金融機関は石炭産業に貸していないのです。協力をしていないのです。  私は、数字をお伺いしたいと思いますが、四十一年度——四十二年の三月までの一カ年間に六十六億円の貸し増しがあったが、四十二年度はどうなっておりますか。ふえておりますか、減っておりますか。
  135. 長橋尚

    ○長橋政府委員 石炭鉱業大手十六社におきます四十二年三月末の総借り入れ残高、財政金融、市中金融を合わせましての合計額は二千二百十八億円でございまして、それに対しまして四十三年三月末の借り入れ残高は二千三百五十二億円でございまして、百四十億円弱の借り入れ残高の増になっております。
  136. 井手以誠

    ○井手委員 私がいただいたあなたのほうの資料にはそうなっていないのです。マイナスになっておるのです。石炭部長、昨年の後半から石炭企業が一番困っておるのは、銀行が金を貸さないからじゃございませんか。昨年の十月から、特に銀行の借り入れについては一〇〇%国が保証するという、それほどまでの措置をして借り入れを促進したじゃございませんか。第一回の肩がわりの場合には、金融機関の協力が絶対の条件であったはずです。それが予定どおりいったですか、どうですか。その点をはっきりお答えを願います。
  137. 長橋尚

    ○長橋政府委員 昨年の秋当時におきまして、まだ新石炭対策石炭鉱業審議会において論議を重ねられているという情勢下におきまして、石炭企業が非常に金繰りにおきまして苦しい状況にあったことは、御指摘のとおりでございまして、行政面におきましても、財政金融面で特段の配慮を加えますと同時に、市中金融機関に対しましても、支払いの猶予とか適宜の金融協力を要請したわけでございます。答申が十二月の末に出ました段階におきまして、この新政策実施までの間、新年度開始までの間の金融につきましては、いわゆる経過金融といたしまして、特段の配慮を加えるべきであるというふうな内容が盛られたわけでございます。その答申を見て、一月の十日の閣議決定におきまして、政府としてもそういう前提のもとでの金融協力を求めて、おおむね新政策への移行までのつなぎ金融につきましては所要の額を確保し得たものと、かように考えております。
  138. 井手以誠

    ○井手委員 私がお伺いしているのは、市中銀行が第一次肩がわりに対して協力したかどうかということを聞いているのですよ。先刻の私の数字も、あなたは財政資金と一緒になって残高が多いということをおっしゃいましたが、市中銀行は減ったじゃないかと私は聞いておるのですよ。端的にお答えをいただきたいと思います。——いや、もういいです。  続いてお伺いいたしますが、大手十六社の本年三月末における社外投融資の総額は幾らでございますか。
  139. 長橋尚

    ○長橋政府委員 いま手元の数字といたしまして、四十三年三月末残高で申し上げますと、大手十六社の社外投融資の合計額は、残高として八百六十二億円でございます。
  140. 井手以誠

    ○井手委員 大蔵大臣にお伺いいたしますが、石炭企業は、大手十六社は、大きいところは一社で二十数社の子会社、関連会社を持っておる。中には石炭産業の第二会社もありましょう。あるいは関係のないホテルの経営、あるいはレジャー産業の投融資も合わせますと、八百六十二億にのぼっておるわけです。これは会社の考課状には資産として明らかになっておるはずでありますが、この資産に対しては政府は肩がわりをすべきではないと私は信じております、財産としてあるはずですから。膨大な石炭会社の借金の中に、北炭のようにホテルを経営する、三井のように最近はどんどん三池でレジャー産業をやっておる、土地開発をやっておる、そういうものに投資するために銀行から借りた金まで国は肩がわりする必要はないはずであります。
  141. 海堀洋平

    海堀政府委員 確かに、現状におきまして、石炭に直接関連する部門への投融資もございますが、あるいは関連石炭会社への投融資もございますが、それと関係外に投融資が行なわれていることは事実だと存じます。   〔委員長退席、毛利委員長代理着席〕 ただ、今回の肩がわりは、一応一千億円というものを前提といたしまして、単に債務だけを目ざすものではなくて、その債務の残高とそれからその企業の出炭量、要するに石炭企業の大きさといいますか、出炭量をめどにして代位弁済を行なっていくわけでございます。今後その再建計画を出さすにつきましては、その投融資あるいは重要な資産の分離というふうなことにつきましては、すべて計画を出させましてこれを審査することになりますので、今後のそういった投融資あるいは資産の分離ということは、石炭企業を中心にして十分な監督が行なわれていくということになろうかと存じます。従来とも経理関係の規制はございまして、石炭企業にとってマイナスになるような投融資については、関係通産省で十分な規制が行なわれてきたものというふうに私のほうでは理解いたしております。
  142. 井手以誠

    ○井手委員 主計局の次長は午前中もそういうようなお話がございました。計画を検討するということでは本日は済まされぬわけです。銀行から金を借りて社外に投融資した八百六十二億円の金、これは財産として石炭会社には残っておるはずですから、当然差し引くべきではないですか。検討じゃないですよ。私のお伺いしているのは、社外に投融資した分については肩がわりから差し引くべきであると申し上げているのです。  大臣、一昨年の一千億円の肩がわりのときには、銀行の借り入れ残高に対して国は肩がわりをしてやったわけです。借金の一番うまい会社ほど得をしたはずです。その金がどこに使われようと、借金の多い、帳じりに借入金の多いところはその分だけよけい国から肩がわりをしてもらったはずです。大体その当時は二千億円の借金があった、そのうち一千億円は肩がわりした。その後若干ふえておるかもしれぬけれども、残り一千億円を今度肩がわりしようというのですから、若干の端数は残るかもしれませんが、一千数百億円の中の一千億円を肩がわりしようという今回の措置に対しては、それは生産高と借り入れ残高を勘案してという答弁はありますけれども、当然社外投融資は引くべきじゃないですか、当然の大蔵省のなすべきことだと私は思います。これは政治問題ですから大臣からお願いします。
  143. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 ちょっと次長からまずやって……。
  144. 海堀洋平

    海堀政府委員 もう一度内容を御説明さしていただきたいと思います。  現在、先ほど石炭部長から説明申し上げましたように、四十三年の三月末現在の社外に対する投融資の残高は八百六十二億円、そのうちで投資が二百二十九億円、融資が六百三十三億円でございます。その八百六十二億円を内訳で見ますと、まず主として第二会社でございますが、要するに、石炭鉱業に対する投融資分が二百九十八億円、それから石炭鉱業を営むについて必要な石炭関連事業に対する投融資が百四十九億円でございまして、これは従来の石炭合理化の過程でこういう形になってまいりましたものでございまして、これの合計額が四百四十七億円、いわゆる社外投融資額において五二%を占めております。その他の事業、これは製造業あるいは不動産業、その他先ほどお話がありました観光業等も一部ございます。これらを合わせまして四百十五億円となっております。  この社外投融資は上記のようでございますが、石炭関連の部門は、これは石炭鉱業がそういった形で行なっていくことを妥当と考えて行なったものでございますので、まずその企業と一体として考えていいんじゃなかろうかと存じます。その他の部門につきまして、約半分弱の分でございますが、これは会社がやはり規模を縮少していく上につきまして、こういう形で離職者の吸収先をつくるとか、そういったほうの、あるいは会社の経理内容をよくするとかいうことで、関係官庁の経理上の監督のもとに行なった措置でございまして、決して各企業がかってに行なったものでございませんで、それが石炭企業としても収支採算をよくしていく上で妥当な措置として行なわれてきたものと考えられますので、今回の肩がわりの際にはこれを除外して考えるということはいたさない所存でございます。
  145. 井手以誠

    ○井手委員 どうも午前中からの大蔵省の答弁を聞いておりますと、従来の大蔵省の態度から全く百八十度転換した答弁のようです。ここにこういう記事があります。「炭鉱大手は子会社を育成強化」と書いてある。炭鉱が縮小する。この際自分の子会社、傍系会社はどんどん投融資をやって育成強化していこうという記事がここに載っておる。昨年の秋です。何を物語るか。国民の税金で大事な石炭対策をやろうというのに、観光事業もホテルも離職者救済だからといって認めていいのですか。国民がそれで納得するでしょうか。私はきょうはあまり口をやかましく申しませんが、常識でわかることだと思うのですよ。なるほど八百六十億円の中には山野のように第二会社に投資したものも二百九十六億円あります。しかし、石炭関連事業というのは必ずしも子会社をつくらねばならぬ内容のものではないのです。しかし、かりにそれまで譲るとしても、四百億円をこえる観光事業等の出資、投融資については、これは厳に差し引かねばならぬ性格のものであると考える。税金から払うのですよ。銀行から金を借りて、そういう子会社に投融資をした借金の残高に国は払う。それは今回は生産高を加味するとはいえ、結論は同じことです。それは分け方の問題だけです。三井、三菱その他の関係会社の利害がふくそうするだけの話でございます。結果においては一千億円肩がわりするわけですから。それは何とおっしゃろうと、離職者対策だからいいと言うことは、これは絶対にできません。なおたくさんこういう問題がありますから、続いてお伺いをいたします。  今回一千億円の肩がわりをやろうという、そして担保を抜かせようというわけです。担保を抜いたら土地、有価証券その他の担保物件は解除になる。そうしますと、それは財産として石炭会社には残るはずです。国が借金を返してやって、その大手の会社には土地や有価証券が残るはずです。その解除された担保物件はさらに運転資金の担保力として活用なさるという気持ちも私は知っております。しかし、そのまま野放しにしていいとは、私は絶対に言えないと思う。少なくとも国の債権保全という意味からも、債権ということばがいいかどうかわかりませんが、債権と同じ形です。炭鉱が立っていかないから荷を軽くするために国が肩がわりしようというのだから、それによって生じた財産というものに対して国は管理の責任があると私は思う。大蔵大臣御存じないかもしれませんが、有価証券は大手十六社で幾らありますか、お伺いいたします。——証券局で集計した有価証券の統計によりますと、投融資した分の有価証券じゃなくて、財産として保有しておる有価証券は五十三億、工場用地でない一般用地、たとえば東京に宅地を持っておるような土地、それは帳簿価格は五十七億円、これは当時の購入価格となっておる。株もそのとおりです。十数年前の購入価格です。そうだとするなら、有価証券の五十三億、一般用地の五十七億という膨大な資産、これは五倍以上になるでありましょう、あるいは十倍になるかもしれません。それほど膨大な担保になっておる有価証券と土地が、借金があるからといって国が返してやった。これだけは財産として会社に残るじゃないですか。そういうことを許していいのですか。国民が税金として払うのにそれでいいのですか。
  146. 海堀洋平

    海堀政府委員 いわゆる再建交付金の交付、つまり石炭企業の持っております金融債務、労働関係債務等を政府が代位弁済していけば、そこに担保が過剰になりあるいは担保が抜けていく。それによりまして、さらに政府はこれを最後の対策と考えておりますので、そういった担保が将来さらに市中から金融を仰ぐ上で使われていくということはもちろん前提といたしておりまして、それを政府が召し上げてしまうということは考えておりません。  さらに石炭鉱業審議会の答申の過程で、初めのときに、現在その肩がわりすべき金融債務について入っている担保のうちで、特に担保として価値のあるものについては、市中金融をさらに導入するために、その分につきまして、もちろんこれは役所の厳重な審査の上でございますが、担保を抜かせまして、担保を抜かす条件は、もちろんそれを担保としてさらに市中から金融がつくということを条件といたしておりますが、その担保を抜いた分につきましては、途中で石炭企業としてその企業がやまる場合には、特別な保証措置までとっているということでございまして、政府といたしましては、この再建交付金によりまして、企業に力をつけて、そうして自立を促していこうということでございます。  いま御質問のような点は、それによって企業みずからの力で立っていける素地をつくろうという趣旨に基づく石炭鉱業審議会の答申であろうと存じますので、それはそのとおりに尊重いたしております。したがって、政府が代位弁済した後に浮いてくる担保は、当然その企業が石炭企業の存続のために十分活用していただくということが今回の提案の趣旨でございます。
  147. 井手以誠

    ○井手委員 その点は前から私も承知をいたしております。国が肩がわりをして、解除された担保をさらに活用して運転資金をつくらしてやろうじゃないか。長期資金は毎年百億円ばかり国が無利子でめんどうを見てやろう。運転資金は解除された担保を活用してもらう。国が借金のまるがかえですよ、そうでしょう。私がお尋ねしておるのは、国が肩がわりをして解除された担保、それは担保として活用の道はあるでしょう。それは運転資金の担保です。しかし、それは会社の財産として残るわけですから、その分については、国が株式を保有するとか何らかの方法によって、肩がわりの分についてはある程度の管理をしておく必要がないか、お伺いしておるわけです。もしいまのとおり野放しにしてしまいますと、どう処分されようとかってになってくるわけですよ。これは非常にたくさん問題がございます。こんなでたらめな融資というものは私は絶対に認められません。かって気ままです。  それでは次にお伺いいたします。麻生セメントが麻生鉱業に信用保証しておるようなものは——名前をあげて悪かったけれども、そういうもの、住友が保証しておるようなものは、それは国は払わないのですか、肩がわりしないのですか、信用保証したようなものについてはどうなんです。それはちゃんと信用保証しておればこそ金融機関は、市中銀行は金を貸しておるはずです。それをなお乗り越えて国がわざわざ返してやろうというのですか。
  148. 海堀洋平

    海堀政府委員 再建交付金は、その担保が十分である、あるいは十分でない債務もあろうかと思います。あるいは他の第三者が保証しているものもあろうかと存じます。それを各社別に一応金額をきめまして、まずこういう債務から優先的にとれ。たとえば経過金融はまず優先的に取り上げる、それから労働者関係債務は優先的に取り上げるという形で、与えられたワクの中で優先順位はございますが、その担保が十分であるとか保証があるとか、そういうことは特にございません。したがいまして、たとえばその保証ある債務が取り上げられまして政府が弁済をしていきますと、それだけその保証者は保証の責任を免れるという形になろうかと存じます。  ただ先生御存じのとおりに、十五年間に元利均等で三分で支払っていくわけでございますから、途中でもしこれが石炭企業をやめる、要するに解散をいたす場合には、原則といたしましてはその残高の二分の一、未回収元本の二分の一しか政府は保証いたしません。したがいまして、途中でそれがつぶれました場合には、あるいは保証している方はその保証債務の実行を迫られる。まず保証担保というものを各債権者は実行いたしまして、それで原則として、未回収になりましたものの二分の一を政府が保証するという形になっております。しかし……。
  149. 井手以誠

    ○井手委員 ちょっと待ってください。私は端的にお伺いしておりますので、そのとおりお答えを願いたい。  第三者が信用した分まで国が肩がわりしますか、それだけでいいのです。するかしないかです。
  150. 海堀洋平

    海堀政府委員 肩がわりをいたします。
  151. 井手以誠

    ○井手委員 第三者が信用保証しておる分まで国が払うのですか。市中銀行は第三者を信頼して貸てしおる。その分まで国が返してやるのですか。
  152. 海堀洋平

    海堀政府委員 現在こういう措置をとらざるを得なきに至りましたのは、すでに市中金融機関が、先ほど井出先生御指摘のように減少に向かっている、貸し増しは何もしない、それは担保がないからだ。それから第三者につきましても、もし非常に資産のある第三者が信用保証をするのであれば、どんどん銀行は貸していっていただけると思います。ところがすでに、金融機関は担保もなし、それから現在行なわれているようなそういう信用保証する人もなくなってきているというのが、石炭企業の現状じゃなかろうかと存じます。  で、その石炭企業を再建していくためには、そういったすでに市中金融がついてこなくなっている状態を前提といたしまして、各般の措置をとっていかざるを得ない。したがって、前に信用保証したものは、それはもうめんどう見ないのですというふうな形でそれぞれを区分していきますと、今後のそういった第三者あるいは金融機関の協力というのは非常にむずかしくなってくるのじゃなかろうかと存じます。したがいまして、そういったものももちろん再建交付金対象として取り上げていかざるを得ないと考えまして、第三者が保証しているものを取り上げております。  ただ、これは質問の中で麻生の例をあげられましたが、一点ちょっとこういう例がございますので、こういう場合には特別な取り扱いをしております。たとえば住友炭鉱が杵島炭鉱に対しまして約五十億円程度の金を貸しております。   〔毛利委員長代理退席、委員長着席〕  ところが杵島炭鉱は、予想でございますが、特別閉山交付金の交付を受けまして、企業ぐるみで閉山することになろうかと存じます。この場合にはそういう一般債務、要するに金融機関ではない、ほかからの債務につきましては二分の一まで国が見るということになっておるのでございますが、これを見ますと、住友のほうで再建交付金としてまたその相手に貸すための借金について肩がわりをする。そうすると住友は二重に肩がわりを受けるということになりますので、この場合には杵島炭鉱における住友からの債務につきましては一切見ない。そしてその住友サイドのほうで再建交付金として金融債務を代位弁済していくというふうな措置をとっております。
  153. 井手以誠

    ○井手委員 麻生セメントは——先刻多賀谷君も指摘しましたが、十億円の資産を持っておった麻生鉱業は、そのうち優秀な分だけ資産六億円を分割して麻生セメントができたわけです。借金だけ麻生鉱業に残っておる。その財産を持っておる麻生セメントが保証したものに、国は麻生鉱業に対してたくさんの会社ぐるみの金を出さねばならぬ。財産を持って別れた麻生セメントが信用保証したものに、それほどまでに国は肩がわりしてやらねばいかぬのか。そういういきさつがあるものまで一律に国が肩がわりをしなくちゃならぬ理由がどこにありますか。
  154. 長橋尚

    ○長橋政府委員 ただいま御指摘のケースにつきましては、いわゆる企業ぐるみ閉山交付金制度において、当該企業ぐるみ閉山を行なう企業の金融債務について、どのような閉山のための交付金を考えているかということに関連する問題かと思いますが、その場合につきましては当該麻生セメントなら麻生セメントの保証のもとで貸していた金融機関の回収不能分につきましてその半分を見るたてまえでございまして、その保証の実行につきましてはいま当然の前提というのがたてまえでございます。
  155. 井手以誠

    ○井手委員 そうじゃないんだ。私が聞いておるのは、大蔵省、わかっておるはずだ。麻生鉱業は麻生セメントをつくって非常にもうけた。もうけた麻生セメントを、財産のいいところだけ六億円をやって分離をしたのです。それで麻生鉱業には借金ばかり残した。その麻生鉱業が今回だめになろうとしておる。その麻生鉱業に信用保証をした麻生セメントの分まで国がなぜ肩がわりをしなくちゃならぬのかと承っているのです。社会正義の立場から申し上げている。
  156. 海堀洋平

    海堀政府委員 これは少し具体的な話になりまし衣が、先ほどは一般的な再建交付金の交付の場合に保証のある債務でも肩がわりするのかという話でございましたので、これはそのとおりでございますとお答えしたわけでございます。ところが、現在具体的な話になっております麻生の場合におきましては、これはここでもう問題が出ましたので、明らかにしていいのかどうかわかりませんのですが、再建交付金の、いわゆる再建計画を出しまして再建交付金を受ける対象にはならないようでございます。すなわち、いわゆる今回設けました特別閉山交付金、企業ぐるみ閉山という形で企業のあと始末がされる、この場合におきましては、その麻生セメントから保証を受けているのは、これはどこから借りているのか知りませんが、それは金融債務一般債務は回収不能額の二分の一を政府が保証するわけでございまして、その保証を受けて麻生に貸している金融機関はまずその保証債務の実行を求めまして、そしてその保証債務によって回収できた額というものは、これはいわゆる二分の一の政府保証の対象からは除外されるということになりますので、たまたまこれが再建交付金対象ではございませんで、すぐ特別閉山交付金の対象になるものでございますから、まず保証債務を実行していただいて、そして回収不能がその金融機関に出た場合にはそれの二分の一までを保証する。ただし、その二分の一にも限界がございまして、ある限度まで二分の一でございます。ある限度までということになってございます。
  157. 井手以誠

    ○井手委員 大臣、ひとつお聞き願いたいのは、午前中にも指摘されましたが、この麻生鉱業に見られるように会社の分離です。いまここに子会社の育成強化ということをごらんに入れましたが、いま石炭会社は大体そういう方向にある、分離を計画をしておると私どもは聞いておるのです。いいところだけ分離して、自分の関係者はそこで安堵しようというやり方でしょう。国の金で、国民の税金でそういうことが許されるかどうか。私は、そういう分離については厳に歯どめが必要であると考えておるのであります。分離さしてはならぬのです。実は一昨年、第一次肩がわりの際に、今後社外への投融資については厳重に規制しますと通産省は答弁をいたしまして言明をいたしました。しかし私の調べでは、その後三井は、三井土地開発、三井三港商事ですか、そういった方面に大体二十億近く金を出しているのです。はたしてこれが規制されたと言えるでしょうか。国で借金を肩がわりした、借りた金は社外のそういうレジャー産業に投融資されておる。規制はされていないのです。そして、それがだんだん高じて会社が分離されてくる。いいところだけは自分たちの身分安堵のために分離経営される。炭鉱は借金だけ残して、国に保護を求めようとしておる。その一番端的な例が、今回の第二次の肩がわりです。大臣、あとでまとめてお答え願ってもいいんですが、事務当局としても、大蔵省の良心からそんなかって気ままな会社の分離などということは許してならぬはずです。海堀次長にもう一ぺんお伺いします。
  158. 海堀洋平

    海堀政府委員 再建整備会社は、毎事業年度重要な資産の処分とか投融資につきまして、通産大臣にその計画を提出して認可を受けなければならないことになっております。したがいまして、石炭企業の経営にマイナスになるような投融資とかあるいは資産の処分というものは、厳に規制してもらわないと困りますし、また、私のほうは強くそれを望んでおるわけでございます。今回の石炭鉱業審議会審議の過程を通じましても、大蔵省といたしましては、いいところだけを持って逃げるというふうなことは、厳に慎んでほしいということを強く申し入れまして、所要の措置がとられるということを通産省並びに審議会に強く要望いたしまして、そういうふうな規制を行ない得るようになっておるのでございます。
  159. 井手以誠

    ○井手委員 規制を行ない得るようになっておるとおっしゃいますが、私は、これが予想されましたから二年前の委員会で注意を申し上げました。ところが、その後の発見によりますと、三井は三池開発、これはグリーンランド、戦時中に膨大な用地を強制収用ですか、強制的に買い上げたところにグリーンランドをつくっておると聞いております。三井商事、これだけで十七億円貸しているんです。融資しておるんです。これが規制されたといえますか。
  160. 海堀洋平

    海堀政府委員 それは、私のほうはそういう形で石炭企業にマイナスになるような投融資もしくは重要な資産の処分というものは、厳に規制され得るように法律構成がなっておりますので、あとは通産省が個々の具体的措置について御判断願ったのだろうと思いますが、通産省のほうから具体的にお答え願いたいと思います。
  161. 井手以誠

    ○井手委員 よろしゅうございます。事実わかっております。  次に、昨年十月からことしの四月三十日までの金融機関の協力融資については、優先的に一〇〇%返済をする、国が肩がわりをするということになっております。私は、石炭答申があったのは十二月の末だと記憶しておりますし、閣議決定は一月の十日のはずです。その一月十日のはずの石炭対策の以前、十月一日からの銀行の借り入れを一〇〇%国が見てやろうというのはどういう意味なのですか。通産大臣の認可か了承か何か知りませんが、通産大臣が保証したものについては一〇〇%返してやろうというのです。さかのぼってそういうことができるのですか。当時から政府の方針はきまっておったんですか。その金がどこに流れたか、行き先の追跡はおそらくできておらぬでしょう。一月の十日過ぎであれば、私はわかる。石炭答申のときぐらいまでは、せいぜいわからぬでもない。その以前から、すなわち十月一日から市中銀行が貸した金額についても、一〇〇%優先的に国が返してやろうという意味はどういうことなんですか。
  162. 海堀洋平

    海堀政府委員 正確に申し上げますと、まず再建会社といいますか、その当時の状況から申しますと、新石炭政策が論議されている、その当時はその当時の法律で、閉山があった場合にはこれこれという規定があったわけでございます。現在問題になっておりまして、すなわち企業ぐるみ閉山が予想されております明治とかあるいは杵島というふうなものは、そういう状況下におきまして、もし金融が全然つきませんでしたらどうしても立っていかない。その場合におきましては、普通閉山交付金では、その労務者に対する支払いも非常にわずかになりますでしょうし、ましていわんや一般関係業者への支払いというものはほとんど不可能であるというふうな状態で、そこで、そういった企業が倒産に追い込まれた場合には、非常に関係者に迷惑が及ぶという状況であったわけでございます。したがって、今回のいわゆる特別閉山交付金制度に何とか持っていきまして、関係の労務者並びに関係の業者にある程度措置が講ぜられるということが、社会的に見て必要ではなかったかというふうに考えるわけでございます。  それがために、もちろんまだ新しい法律は国会で成立いたしておりませんでしたが、何とかいま御審議をいただいております新政策に、それらの企業の閉山に対する手当てを新法によってやってやりだいということから、何とか今年度までその企業を存続せしめる必要上特に考えた措置でございまして、個別の企業並びにその金額とも通産省と十分に協議をいたしまして、必要最小限度の額について特別な措置を講じたわけでございます。すなわち、特別閉山交付金を交付する際にそのつなぎ金融の分だけは十分に見よう、一〇〇%見ようということにしたわけでございます。
  163. 井手以誠

    ○井手委員 つなぎ資金のことについては私も理解できるのです。新政策の決定以前、答申以前にさかのぼってどういうふうに使われたかわからぬものを一〇〇%国が肩がわりしなければならぬ理由がどこにあるであろう。政策決定後であれば厳重に監査することもできるでしょう、査定することもできるでしょう。その以前にさかのぼってはたして適正な監査ができるかどうか、それほどまでに金融機関に国は金を返してやらねばならぬ義理があるのですか。本来ならばこれは市中銀行と炭鉱の商取引ですよ。しかし、炭鉱がつぶれては困るというので特別の措置を講じていることは御承知のとおり。しかし、国民の税金で払うものならば、国民が納得がいける筋の通ったものでなくてはならぬはずです。政策決定以前からのものになぜさかのぼって一〇〇%返してやらなければならぬのか、優先返還をしなくてはならぬのか、それを承っておるわけです。
  164. 海堀洋平

    海堀政府委員 御存じのとおりに政策決定、要するに答申の出ましたのは十二月、さらに政府の方針を決定したのが一月の十日だったと私、記憶いたしております。しかし、すでに昨年の春以来企業ぐるみ閉山の予想されている企業が倒産寸前にあるという状態が出てまいりまして、そしてこの石炭新政策を通産大臣が石炭鉱業審議会に諮問いたしたわけでございます。その際に、審議の過程におきまして、こういった方向で新規政策を考えるから、その間にこの企業が新しい対策が成立する前に倒産に追い込まれないようにということで、通産省行政指導によりまして細々とつないでまいりましたわけでございます。私たち大蔵省の立場からしますと、先生のように割り切った議論をいたしたいと思いまして、通産省との交渉でずいぶんその点は同じような主張をいたしたわけでございますが、実際問題といたしましては、すでに九月ごろからそういう措置を前提といたしまして、通産省行政指導をして無理に市中銀行に頼んでいたのが実情のようでございまして、その点さらに詳しくは通産省のほうから説明をさしていただければ幸甚に存じます。
  165. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 さっきから定足数を言っているのですが、委員長は何もおっしゃらない。われわれは審議に協力するために本会議後こうやってやっておるわけです。大臣もお疲れでだいぶ眠そうなお顔をしてつとめておられる。自民党の方々はもう少し定足数をそろえて——これはわれわれの国対の決定でもありますので、ほかの委員会も全部定足数の足らぬところは、内閣委員会等ももう休みにしておるわけです。もしおやりになるならば、われわれも協力するから定足数をそろえてやっていただきたい。
  166. 田中正巳

    田中委員長 ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  167. 田中正巳

    田中委員長 速記を始めて。  井手以誠君。
  168. 井手以誠

    ○井手委員 ただいままで再建交付金の内容についていろいろとお尋ねをいたしました。この際まとめてお伺いをいたしたいと思います。  石炭対策費に今日まで二千数百億円投ぜられておる。さらに今回石炭対策で四千五百億円、四十九年度以降も毎年五、六百億円以上の国費投入が必要であると考えられるわけです。これだけの巨額の国費を投入する場合には、石炭産業の再建の見通しがつき、国民の納得が得られねばならぬことは当然であると考えます。私は、石炭産業の再建についてはかねがね主張したものでありますが、今回の石炭対策費の中で、特に再建交付金をめぐって、あまりにも政府のやり方が業者本位である、金融機関保護もあまりにもひど過ぎるという感をいたしますので、お尋ねをいたしました。  第一には、八百六十億円にものぼる大手の炭鉱以外の会社に対する投融資、その中には第二会社もあるかもしれません、あるいは関連企業もあるかもしれませんが、少なくとも四百数十億円というものは何ら炭鉱関係のない観光その他の事業に投融資されておるのでありますから、この分については、今回の第二回の肩がわりの一千億円からは差し引くべきであると私は申し上げました。  第二には、政府が一千億円の第二回の肩がわりをした場合には、石炭会社が市中銀行の担保に入れておる分については、当然担保が解除されるわけです。今回の石炭政策によりますと、長期資金は国が無利子でまかなってやろう、運転資金は市中銀行に負うことになるのであります。その場合に担保力をつけるということはわかりますが、国がそれほどたくさんの金を返してやった場合、残るたくさんの会社の有価証券なり土地の財産については、国は何らかの方法をもって管理すべきではないか。野放しでやらせるべきではない。もし野放しにするとするならば、いつかってに処分されるかわかりません。その有価証券なり土地というものは、私の計算では数百億円にのぼると考えるのであります。  さらに、最近石炭各社は石炭の将来に非常に悲観をして、石炭以外の子会社をどんどん強化育成し、そして会社を分離しようとしておることは巷間よく伝えられておるところであります。いいものだけ会社を分離して余生を保とう、悪いものは国で買い上げてもらおうというこの会社の分離については、私は当然国がこれだけの国費を投入するのでありますから、分離できないという歯どめをすべきだと思います。かってにいい財産だけは別に切り離して余生を送ろうなどということは、断じて許すわけにはまいりません。こういう石炭産業の再建では、業者保護、金融機関保護の今回の石炭対策は、私はどうしても納得ができないのであります。従来のあのきびしい大蔵省の方針と打って変わって、きわめてゆるやかな、甘やかした大蔵省の態度は私は不審でならぬのです。どうしてもこの政策は変えてもらわなければならぬのです。  私は、あとでも申し上げますが、石炭政策はもっと前向きでなくちゃならぬ。生産ができるような政策でなくてはなりません。今回の政策のほとんどは、炭鉱がかってにつくった借金を政府がしりぬぐいするというやり方です。  くどいようですけれども、第一回の場合は、銀行からよけい借金をした炭鉱ほど助けられている。今回は生産量を加味されておりますけれども炭鉱が銀行から借りたものをほとんど全額に近いほど返してやろうというあまりにも甘やかした政策であって、おそらく大蔵大臣もそんなものについては検討されるべきものだと考えております。大蔵大臣のお考えを承りたいのです。
  169. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 井出さんからたいへんいろいろ御意見を承りまして、たいへんな参考にさしていただきました。ありがとうございます。  社外投資の問題ですが、再建整備にあたりましては、会社一体の関係がありますので、これを除外して考えるというのもなかなかむずかしい問題ではないか、かように考えますが、解除されました担保に対する措置、また会社がいい部門だけを分離しておる傾向に対する措置、これは当然そういうことがないように政府としては注意をしなければならぬと思います。それらの点は実行上通産省ともよく連絡をとりまして遺憾なきことを期したい。これはお話しのように国民の税金ですから、その扱いにつきましては税金の性格にもとるようなことがあっては相ならぬ、かように考える次第であります。
  170. 井手以誠

    ○井手委員 社外投融資については、会社は一本であるからやむを得ないというお答えでございましたが、最近サラリーマンの国税減税運動などがいわれるほどに、国民の金で石炭政策をやろうという大事な金です。その金で観光施設に投資したものまで払ってやらなければならぬ義理が一体どこにありましょうか。会社は一体だと言っても、石炭対策費は炭鉱再建のために出したのです。れが炭鉱以外の観光施設に出したものを、なぜ一体だと言って国が肩がわりをしなくちゃならぬ義理がどこにございましょうか。重ねてお伺いいたします。  第二点は、担保の問題と会社分離の問題です。そういうことがあってはならぬように通産省とよく協議をして注意をいたしますというおことばでしたけれども、それだけでは国会としては承服するわけにはまいりません。現に次々にそういう計画が進められておるし、実績もあるわけですから、いやしくも税金から石炭政策の膨大な金を出そうとする場合には、しっかりとした歯どめが必要です。分離を禁止するとか、解除された担保についてはどうするとかというはっきりした対策政府が保証しなくては、おそらく国民は納得しないでしょう。重ねて伺います。
  171. 長橋尚

    ○長橋政府委員 社外投融資の問題につきましては、前回石炭対策実施されました昭和四十二年度以降、従来以上に厳格なチェックをいたしておるわけでございまして、本日御指摘の三池開発、三井商事というケースにつきましては、どういう形で融資が行なわれ、三井鉱山がどの程度、全額出したものかどうか、そういった点、ちょっとつまびらかにしておりませんので、さっそく調べたいと思いますが、今後につきましても、再建整備法の規制の規定を活用いたしまして、十分にチェックしてまいりたいと思います。なお、特定の社外投融資、つまりその社外投融資のための借り入れというものが明確になっておりますものにつきましては、通産省といたしましても、当然再建交付金対象債務からはずして考えていく次第でございます。  それから、分離の問題につきましても、再建整備法の再建整備計画の段階、あるいはまた、それ以後、実施過程におきますいろいろな届け出その他の規制措置がございますので、そういった措置を活用いたしまして、十分に精査し、およそ石炭再建整備というふうな目的に対してマイナスになるようなケースが発生することのないように、十分留意いたしてまいる所存でございます。  解除担保の問題につきましては、まず今回の再建交付金の交付の前提になります再建整備計画の認定の段階がございますが、その再建整備計画の中におきまして、今後の資金調達計画というふうなものを明らかにさせるわけでございまして、今後の資金計画におきまして、再建交付金の賦払いの進捗に応じまして逐次解除される担保について、どのような活用を会社自体として考えているか、また、それを十分に審査いたしまして、公正に再建整備計画の認定を行なう腹づもりで、通産省としてはいま諸般の準備をいたしておる次第でございます。
  172. 井手以誠

    ○井手委員 三井については、有価証券の報告書に明らかです。第一次肩がわり以後に、三井鉱山から三港商事、あるいは三池開発のほうに九億、七億という金が出ておるのです。あなた方、見ているでしょう、非常に厳重に注意しているとおっしゃるから。これは大蔵省証券局でつくったものですから間違いないはずです。どうもおかしいですな。注意しておるとおっしゃるけれども、出ておるじゃございませんか。グリーンランドの開発費すなわちレジャー用に金が出ておるじゃございませんか。そういうものまでなぜ国が払わにゃならぬか聞いておるのですよ。  私は、これは一つの例として申し上げましたが、委員長、どうも今度の石炭政策は、いままでの質疑応答で大体御理解願っておると思いますが、これは党派の問題じゃない、イデオロギーの問題でもございません。社会正義の問題です。私どもは、石炭対策費はもっと前向きに、ほんとうに石炭産業が再建できるようにと思って、今日までその一員として努力してまいりました。ところが、出された石炭対策費は銀行救済ではないですか。業界のかって気ままなやり方に対して、一体炭鉱の経営努力をどう考えておりますか。最近の炭鉱の経営努力というものですか。やれば政府が助けてくれるだろう、出してくれるだろう、そんな甘いものじゃないですよ。この問題はきわめて重要であります。私はいままでの答弁では納得できません。また聞いていらっしゃる方もみなそうだと思うのです。突然のことですから、大臣もお疲れもあるし、答弁しにくいだろうと思いますので、きょうは私はこの程度で打ち切ります。  いま重要点を二、三点申し上げましたが、まだほかにも問題がある。いま少しみんなが納得できる——われわれの主張どおりにせよとは申し上げません。けれども、右か左か納得できる、理解できる答弁でなくてはなりません。会社一本などと幾らおっしゃったって、レジャーのほうに使った金を国が肩がわりしてやろうなんて、どうしても許せませんよ。そんな答弁ではいけません。ひとつ十分大蔵省通産省は話し合いをされて、後日委員会で御答弁を願いたいと思っております。私はまだ質問を終わったわけじゃございません。これ以上進めませんので、この程度できょうは打ち切ります。
  173. 田中正巳

    田中委員長 委員長より申し上げます。  本件についての質問はきわめて重要な問題を含んでおりますので、後日までによく調査の上、的確な答弁のできるように検討いたしてもらいたいと存じます。  ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  174. 田中正巳

    田中委員長 速記を始めて。  田中昭二君。
  175. 田中昭二

    田中(昭)委員 まず総括的なことからお伺いいたしたいと思います。  いわゆる総合エネルギーに占める石炭の位置づけの問題でございます。今次の答申に至るまでには、年産五千万トンという目標をもって総合エネルギーに占める石炭の位置がきまっておったわけでございますが、今度の新石炭政策にはいわゆるその位置づけがなされていない。一体石炭対策の前提たるべき目標はどう考えていらっしゃるのか、お尋ねしたいと思います。
  176. 長橋尚

    ○長橋政府委員 石炭につきましては、もとより国内エネルギー源のほとんど唯一のものでございますし、原料炭といたしましても、鉄鋼主要原料という非常に重要な役割りがございます。また、電力用炭といたしましても、今後なお相当の需要が期待される状況でございますが、他面、その生産をにないます石炭鉱業自体の側に立って考えますと、いわゆるエネルギー革命と称されます客観情勢の大きな変化が非常に急速度で進展いたしました。その間、また石炭鉱業内部におきましても、自然条件の悪化、あるいはまた高度成長に伴います労働需給の急激な変動というふうな問題を蔵しまして、石炭鉱業は前回四十二年度から石炭対策が新たに講ぜられましたにもかかわらず、コスト高、それからまた自然条件の悪化に伴います生産能率の低下、そして極度の資金繰りの窮迫というふうな事態を迎えたわけでございます。従来のように五千万トン維持というふうなことでまいります場合、非常に非能率な部分を温存してまいらなければいけない。そして、そのために非常に大きな国費の投入を先々必要とされてくるというふうな状況に直面するに至ったわけでございます。  そこで、石炭鉱業全体としましては、冒頭申し上げました石炭の需要の重要性というふうな点にかんがみまして、これを極力再建の軌道に乗せていくというようなことが必要なわけでございますが、同時に、国の助成にも一定の限界がございますので、その国の助成の限界内でどうしてもやっていけない部分につきましては終閉山もやむを得ないのではないか。ただし、その終閉山による社会的な影響に対しましては、最大限の手当てをしなければならない、かような考え方、つまり石炭鉱業全体として再建軌道に乗せていく、そしてその過程で発生するやむを得ない終閉山につきましては、できるだけこれを円滑に処理できるように考えていく。こういう基調に立ちまして、審議会の答申が行なわれ、今般国会に御審議をお願いしております一連の石炭対策を講ずることとなったわけでございます。  そういう考え方でまいります場合、五年後におきましても約三千五百万トン程度の生産を見込むことは可能である。また、その程度の生産を見込み得るように国の助成の限界を置いたわけでございます。こういう国の助成の限界のもとで、各企業が労使一体となって最大限の努力を発揮することを期待しているわけでございまして、その努力のいかんによりましては、五年後におきます生産水準が三千五万トンを上回ることも期待いたしているわけでございます。
  177. 田中昭二

    田中(昭)委員 まず現在の石炭対策について、客観情勢また自然条件等というようなお話がございましたが、そのためにいままで対策が講じられたんじゃありませんか。その対策の目標である位置づけもなされてないということに対しては、いまいろいろのことばでおっしゃいましたけれども、私は、もう少し現状を直視し、国の援助によってそれだけのことをやったならば、それがどういうところに問題があったかという点の指摘がなされなければ安心できないと思うのです。三千五百万トンといったって、そういう試算、基準にしましても、私はそういうことでは国民は納得することはできない、こう思うのです。どうかそういう点につきまして、もう少し政務次官なり大蔵大臣からお聞きしたいと思います。
  178. 藤尾正行

    ○藤尾政府委員 ただいま石炭部長から申し上げましたとおりでございまするけれども、現在の石炭に対する私ども考え方は、これを単にエネルギー源だけということは考えておりません。これは製鉄業に対しまする必須の原料炭という考え方がその底流といたしまして非常に強くあるわけでございます。したがいまして、今後の私どもが持っております製鉄業の発展状況というものともにらみ合わせまして、それに必要といたします原料炭をできるだけ確保いたしたいというのが、今度の石炭政策の私ども考え方の基調になっておるわけであります。したがいまして、現在では一応私どもが持っております原料炭の千二百万トンといいまするものを中心にいたしまして石炭対策をとっていく。そうしますと、結局いろいろの出入りがございますけれども、いま石炭部長から申し上げましたように、三千六百万トンとか七百万トンとかいうことで、いままで目標としてまいりました五千万トン達成ということだけに重点を置いておるわけにはまいらぬ、こういうことに相なるわけでございます。
  179. 田中昭二

    田中(昭)委員 そういうこともいままで言われてまいりまして、私たちとしては現在の石炭労使の状況を見ましても、当然現状維持ぐらいはやっていくためのいろいろな政策ではございませんか、その点どうですか。
  180. 藤尾正行

    ○藤尾政府委員 先ほども石炭部長から申し上げましたとおりでございまして、いろいろな労働の需給あるいは開発に対しまするそれぞれの原価の高騰、こういった面から考えまして、現在まで目標としておりました五千万トンを達成するということにつきましては、企業によりましてはそれが非常にむずかしいという情勢が出てまいるということで、政策転換を行なったわけでございます。
  181. 田中昭二

    田中(昭)委員 次に移ります。  石炭鉱業の経営者の姿勢でございますが、現在の現状を見てみますと、全面的になしくずし的に崩壊の危機に直面している、こういうことは否定できないと思います。しかし、私企業である以上、経営者の努力が最優先して、その上で国の助成もこれをカバーするというものでなければならないと思うのですが、しかるに実情は助成だけを前提としたような・そうしてかろうじて経営されているというような状況であります。こういうことにつきまして、政府はこの点どのようにお考えになり、今後どのように指導、規制されていくものか、お考えを聞いておきたいと思います。
  182. 藤尾正行

    ○藤尾政府委員 ただいまも申し上げたとおりでございまして、御指摘のとおり、いままでの経営をそのまま続けてまいれないという企業がそこに出てまいるわけでございますから、私どもは今後これを変えまして、まず経営者の経営計画、再建計画といいまするものを出させまして、これが、あらゆるチェックをいたしました結果、成り立っていくものであるという裏づけを十二分に立てたものにつきまして、その再建に協力をし、積極的な助力を惜しまないということでございまして、やむを得ずここに再建のめどが立たないというものにつきましては、その企業の倒壊にあたりまして、それが与えます社会的ないろいろな不安、こういったことがございますので、その社会不安を起こさせないように閉山措置をまた別に講じようというのがいまの石炭対策の姿でございます。
  183. 田中昭二

    田中(昭)委員 そういうことはずっといままで聞いてきたわけです。いままでの質問にもありましたように、そういう企業下の従業員があくまでもみじめな状態でおるにもかかわらず、もうかる企業は先ほどのように事前に分離されて、そうしてその負債をかかえた鉱山のあと始末だけを政府がしていくような感じが強いわけです。そういう現実に対してはどうお考えになりますか。
  184. 藤尾正行

    ○藤尾政府委員 先ほど来いろいろ御指摘がありまして、石炭部長の御説明も十二分でなかったのでございますけれども炭鉱会社がその炭鉱を維持いたしてまいりまするために、炭鉱の採掘だけではやっていけないということで、その経営を補いまするためにいろいろな企業を行なってきておった、これは事実でございます。したがいまして、その企業の経営に当たっておりまする基本的な炭鉱採掘事業外の企業の支配権、これは借り入れ資金にいたしましても何にいたしましても、親会社でございます石炭企業といいまするものが持っておるわけでございます。したがいまして、その系列企業といいまするものが予定のとおりうまくいっておるということになりましたならば、その経営努力によりまして石炭企業自体がかぶっておりまする赤字といいまするものが幾ぶんでも補われておるということはあるわけでございまして、その点、私は別に、炭鉱会社がきわめて不正なことをやっておるということにはならぬと思います。
  185. 田中昭二

    田中(昭)委員 先ほど質問を伺っておりまして感じたのですが、政府はこの石炭につきまして産業として生かしていくのか、企業として生かしていくのかというふうな質問があってお答えがあったようでございますが、そのことといま政務次官のおっしゃったことは私は疑問があるのですが、どちらですか。現在の政府の持っております政策は、企業として救っていくのか、産業問題として救っていくのか、どちらでしょう。
  186. 藤尾正行

    ○藤尾政府委員 私どものただいまいただいておりまする審議会の御答申といいまするものは、企業を中心としてこの石炭再建というものを乗り切っていこうという考え方でございます。しかしながら、企業と産業といいまするものが明確に分離をされるわけではございませんので、私どもその企業をそれぞれの面におきまして今後再建をしていただきまするためには、産業としての面からも検討を加えていかなければならぬ、これは当然のことでございまして、たとえてみれば夕張地区という一つのかたまった石炭鉱業所に対しまして、現在のところでは企業単位でございまするから、それぞれの企業が二本も三本も立て坑を掘っておるというようなことは、現実にいままであったことでございます。そういったことは今後大いに考えていただきまして、各企業としてお考えになるのでなくて、産業として立っていけるように合理化し、共同化し、そうしてこれを産業としての立場から立っていけるような方向に誘導をしてまいる、これが現在の私どものとっておりまする石炭産業への姿勢でございます。
  187. 田中昭二

    田中(昭)委員 ことばを返すようですが、産業と企業性を分けるというようなことを私は聞いているのじゃないのです。そういうことじゃなくて、あくまでも産業として保護していくというふうなことがあるとするならば、いままでとってきた措置がそういうふうになっておるのでしょうか、こう聞いておるわけですよ。  そういう点から私は、石炭産業を保護するという面では、ただ、千億補助してできなかったからまた千億補助する、そういうようなことではしりぬぐいみたいなことになってしまうのじゃなかろうか、こういう感じがするのですが、いかがでしょう。
  188. 藤尾正行

    ○藤尾政府委員 しりぬぐいのために石炭再建策を考えておるわけではございませんで、石炭企業自体が、産業としての石炭業といいまするもの自体が立ち直ってもらいまするために、この再建策をいろいろ御審議を願っておるわけでございます。
  189. 田中昭二

    田中(昭)委員 次に入ります。  この特別会計の五カ年間の見通しですか、その収入の運用についてお尋ねしますが、この会計に繰り入れられます元となる原重油関税収入実績と、この五年間の見通し、先ほどと重複しますけれども、またお伺いします。また、この関税収入の増加がずっと見込まれた場合に、この増収部分石炭会計に繰り入れられることとなると思いますが、この会計の今後のあり方について伺っておきます。
  190. 武藤謙二郎

    武藤(謙)政府委員 実績でございますが、四十二年度が五百六十九億、四十三年度が六百六十二億、それから四十四年度でございますが、これが七百四十四億の見込みでございます。それから四十五年度が八百三十億、四十六年度が九百二十六億、四十七年度が千二十八億、四十八年度が千百四十一億、こういう見込みでございます。
  191. 田中昭二

    田中(昭)委員 その関税収入の増加部分はずっと特別会計へ入れていきますね。
  192. 武藤謙二郎

    武藤(謙)政府委員 いまのは特別会計へ入るものでございます。
  193. 田中昭二

    田中(昭)委員 主計局のほうは、特別会計はそのようなことで今後のあり方はようございますか。そういう方針ですか。
  194. 海堀洋平

    海堀政府委員 今回の措置は、本年度、四十四年度から四十八年度まで——一応特別会計は延長いたしておりますが、今回新たにとります各措置は、その後に続く措置もございます。ただ、四十四年度から四十八年度までをとってみますと、ことしの歳出額が、予備費を含めまして八百八十五億円、今回の措置によりまして今後増加する経費もございますが、減少する経費もございまして、四十五年度以降はほぼ九百億円程度横ばいに四十八年度までは推移するであろうと見込まれております。したがいまして、全体として約四千五百億円弱の歳出所要額になろうかと存じます。したがいまして、先ほど関税局長から説明のありました関税収入で十分まかなえるわけでございます。
  195. 田中昭二

    田中(昭)委員 これだけ石炭に投じました政府の資金というものは、大体五年間過ぎましてどのくらいになりますか、全体で。
  196. 海堀洋平

    海堀政府委員 先ほど申し上げましたように、いままで十年間をとりますと、四十三年度の決算がまだ済んでいませんが、一応四十三年度予算どおり使われたと見込みまして、三十四年度から四十三年度までに二千三百六十二億円使用いたしております。これに今後五カ年間で約四千五百億円弱でございますので、つまり、四十八年度までの十五カ年間ということになりますと、六千八百億円余りということになろうかと存じます。
  197. 田中昭二

    田中(昭)委員 約七千億に近い金が投じられておりますが、これは一私企業に対して相当な額ですね。全国民で割りましてもどうなりましょうか。生まれたばかりの赤ちゃんから入れて七、八千円ぐらいの金を政府は投入したことになるのです。  こういうことについて、まあいまの大蔵大臣に全部どうと言うことはできませんけれども、こういうことをやっていくならば、私は、それなりの効果があがるような、また、国民の税金でございますし、十分納得のいく、また負担の公平というようなことから考えてみましても、監視していかなければならない問題じゃないか、こう思いますが、大臣としてどうお考えになりますか。
  198. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 お話しのように、石炭について巨額の金をつぎ込んでおるわけですが、これはやはり国の重要な資源であり、かつ、その資源の中でも最も大事なエネルギー源である、こういうことを考えますときに、かなりの犠牲ではありまするけれども、これは国民が協力して、この産業を維持していかなければならぬという必要に迫られてき、また今後も迫られていく、こういうふうに思います。そこで、考えなければならぬ問題は、そういう多額な国民の負担なしにこの企業が維持されていくということを考えなければならぬ、こういうことだろうと思いますが、今回そういう方向で、私企業として、しかも自立し得るような企業として、この産業が成り立つためにはどういうふうにするかということを石炭鉱業審議会において衆知を集めて検討した、その結果が、今回、当分特別会計を通じて国家が補助する、助成する、しかしその後は自立できるのだ、こういう体制、構想が整いましたので、あえて今回こういう措置を皆さんに御審議を願う、こういうことになった次第であります。  今日のわが国の情勢からすると、どうしてもこれだけの負担はしていかなければならぬ。しかし、この負担をした暁におきましては、企業も独立してやっていける、こういうことに相なりますので、ぜひともひとつ御賛成をお願いしたい、かように考える次第であります。
  199. 田中昭二

    田中(昭)委員 まあ大臣の前半のお話は十分りっぱなお話だと思っておりますが、いまここで小さく分けていきますと、どうも問題だと思います。当初言いましたように、石炭の位置づけの問題もできていないというようなことでは、そういういま御答弁になったような安心感が持てないわけです。確かに現在の生産地、石炭地域に行きましてきびしい現実を見てみますと、これでいいだろうか、こういう気持ちが先に立ちまして、いろんな要求なり今後のことを考えますと、私らとしても何とかしてあげなければならないというような感じが一ぱいでございます。どうぞ政府におきましても、二度とあやまちを繰り返さないように、日ごろその成果、そういうものを見ながら推進していかなければならない。この法案につきましても相当な期待を持って、この法案の成り行きが注目されておると思います。  そこで、次の問題でございますが、この新しい政策によりますと、石炭鉱業合理化基本計画の目標年度が四十八年度に改定されまして、これに伴って特別会計も四十八年度まで延長することになっております。元利補給金制度による交付は、いままでずっと長年にわたってきておりますが、この再建交付金制度の運用との関係はいかがなものになるのでしょうか。
  200. 海堀洋平

    海堀政府委員 特別会計は、一応この期間に私企業ベースにおける石炭鉱業の再建がほぼ軌道に乗るであろうという期間を五カ年と考えておりまして、現在とっております元利補給金あるいは今回とろうとしております再建交付金は、法律規定に基づきまして自後も、たとえば再建交付金は四十四年度以降十五カ年という期間は、法律規定に基づいて交付されていくということに相なろうかと存じております。
  201. 田中昭二

    田中(昭)委員 次は、災害防止でございますが、特にまた最近炭鉱における災害の発生が相次いでおります。人命尊重の見地からもまことに遺憾のきわみであると思いますが、これらの発生原因は、保安よりも生産第一の無理な労働力管理にあるのじゃないかとも考えられますが、この災害の発生により生産意欲の低下、仕事の停滞等を考えたならば、事業としてもまことに大きな損害であろうと思われます。もちろん人命を尊重することは何よりも第一の大前提であることは言うまでもありませんが、政府はこの保安確保についていかがお考えになっておりますか、その姿勢をお伺いしたい。
  202. 藤尾正行

    ○藤尾政府委員 御指摘のとおりでございまして、私どもは、炭鉱自体が保安を確保するということを第一条件にしてもらわなければならぬ、かように考えておるわけであります。なぜかと申しますと、これは人命尊重というたてまえはもちろんでございまするけれども、それ以外にも、御案内のとおり一つの事故が起こりますと、それによりましてその会社の経営自体というものがこうむります損害がきわめて大きい。さらにはそういったものが波及をいたしまして、ただいま御指摘のような労働力確保というような面においても狂いがくるというようなことで、もし保安をあやまつというようなことでもございましたならば、それによって再建計画自体ができなくなるおそれがあるということでございます。  ただいま、はなはだ申しわけございませんけれども、おことばがございまして、炭鉱はいま保安をあまり重視しない、生産を第一に考えて、やたらに掘りまくっておるから重大な事故が発生をしておるのではないかという御指摘があったわけでございまするけれども、私どもが考えますると、私自体がこの四月二日に起こりました茂尻炭鉱の事故の調査委員長といたしまして現場に参ったわけでございまするけれども、決して保安上の——もちろん保安全体から申し上げましたならば、確かに保安上の欠陥があったということは認められまするけれども、それが炭鉱といたしまして措置いたしております保安上のいろいろな施設が欠けておるとかなんとかということでございませんので、非常に残念ではございまするけれども、現在炭鉱で働いておられる方々が当然やらなければなりませんイロハのイ、ハッパをかけるときにはガスを点検するのだというようなごくわかり切った、あたりまえのことがあたりまえのこととして実行されていなかったというところが大きな災害を惹起をいたしまする大きな原因となっております。こういうこともあわせまして、したがいまして保安教育といいまするものが非常に必要であって、一番方から入坑されます際に、毎回毎回同じことをかんで含めるように教え込んで、そしてそれを実行させるというようなところまで、この保安教育を含めました保安対策が徹底するということが私どもの指導の目標であり、また炭鉱が立っていく必須の条件である、かように私は考えます。
  203. 田中昭二

    田中(昭)委員 それはそのとおりでしょう。あたりまえのことがあたりまえに行なわれないから、いろいろな注意なり助成措置なりのあたたかい指導の手が必要でないでしょうか。ちょっとした不注意で大きな事故が起こる、これはそういうものだということも私たちは認識しております。今度のこの石炭対策にしてもそうです。人間ですから、自分に精神的な不安があったり性急なことがありますと、やはりちょっとした不注意につながっていく、こういうふうに思うのです。大蔵委員会ですから、そういうことをこまかく言うつもりはございませんが、いまの政務次官のお答えでは、あたりまえのことがあたりまえに行なわれていない。国会ぐらい非能率な、国民の皆さんに申しわけないようなことを、私たちは衆議院へ来まして二年間いろいろ見ましたけれども、あたりまえのことがあたりまえに行なわれてないという現実を見まして、私は国会こそもう少し考えなければならないと思うのです。いかがですか、その点は。
  204. 藤尾正行

    ○藤尾政府委員 御指摘のとおりでございまして、私はあたりまえのことがあたりまえに行なわれるということでなければ、すべて秩序が立っていかぬ、かように思います。  御指摘の、国会があたりまえのことをあたりまえにやっていないではないかということでございますけれども、その問題につきましては、私が御答弁申し上げる限りではございません。
  205. 田中昭二

    田中(昭)委員 次は、産炭地域の振興についてお尋ねしたいと思います。  相次いで終山、閉山が行なわれております産炭地域は疲弊し切っております。今後ますますこの状態が深刻化していくと思いますが、これを思いますと、これを振興させていくためには、いままでのような部分的な措置ではいけないのではないか、すなわち国土総合開発計画、地域開発計画等と一体になって抜本的な計画のある施策を講ずべきであると考えます。少なくとも鉱害復旧事業、道路の施設、港湾の整備等も一元化して行なうべきであると思いますが、この点どのようにお考えでございましょうか。
  206. 長橋尚

    ○長橋政府委員 ただいま御指摘のとおりでございまして、産炭地域振興につきましては、現在全国総合開発計画でいろいろ検討されておりますが、そういったこととの関連もとりつつ、産炭地域振興臨時措置法自体におきましても、できるだけ総合的な観点からこれを取り上げていくということで、基本計画が策定され、また四十二年度には実施計画が策定されているわけでございます。そういった実施計画を基本といたしまして、関係各省と協力をはかりつつ、総合的な見地からの産炭地域振興に努力している次第でございます。  また、鉱害との関連につきましても、別途鉱害復旧基本計画というふうなものを目下策定中でございまして、そういったものと産炭地域振興計画とのかみ合わせについても十分に配意してまいる所存でございます。  そして、この産炭地域振興につきましては、新しい石炭対策のもとでやむを得ない終閉山に対処するための施策の一環としまして、四十四年度におきましても予算の大幅な増額を見たわけでございまして、まず新しい項目といたしましては、産炭地域の市町村に対します臨時交付金といたしまして四十四年度に十億円の計上を見ております。また、閉山の影響の大きな産炭地域の市町村に対しましての財政援助を、地方交付税その他自治省予算等と相まちましてさらに推進することになっております。また、産炭地域振興事業団の事業内容につきましても、規模を大幅に拡充いたしまして、今後の終閉山に対処しての産炭振興に対処することに相なっております。
  207. 田中昭二

    田中(昭)委員 その産炭地域振興臨時交付金制度、並びに新しくできました開発就労対策事業の運用でございますが、この具体的内容をお聞かせ願います。
  208. 長橋尚

    ○長橋政府委員 産炭地域振興臨時交付金の運用につきましては、目下大蔵省関係当局とも最終的に打ち合わせ中でございます。大体の考え方といたしましては、閉山トン数を基準にいたしまして、一定の単価をきめまして、当該市町村に対する交付額を決定するという考え方に立っておりますが、その場合、閉山の影響が解消いたしますまでの間が四年ならその四年間というふうなものを想定いたしまして、その間第一年目、第二年目、第三年目と漸減を考えることにいたしております。また、過去の終閉山の影響につきましても、過去一定年数内におきますものはある程度の率でこれを考慮する。ただいま申しましたような基本的な考え方に立ちまして、目下関係当局と最終的な詰めを行なっておるところでございます。  なお、産炭地域開発就労事業につきましては、労働省所管でございまして、私のお答えの限りではないと思います。
  209. 田中昭二

    田中(昭)委員 労働省でないと答えられないのですか。——大蔵省、この新規事業開発就労対策事業にどれくらいの予算で大体の構想を練ってあるのでしょうか。
  210. 海堀洋平

    海堀政府委員 約二十五億円でございますが、これは御存じのとおりに、従来主として広域職業紹介を中心として離職者対策実施してきたわけでございますが、特に筑豊地区におきまして、全部他の企業あるいは他の石炭鉱業への再就職というものが円滑に進まないで、ある程度失業対策事業とかに失業者が滞留しているということが事実ございます。そういう現実に着目しまして、石炭企業からの離職者並びに関連の中小企業等からの離職者対象としまして、広域職業紹介によって再就職を世話のできかねるもの、あるいはできるまでの間におきまして、それの就職の機会をつくる。しかもそれが失対事業のような形ではなくて、その地域開発にも資するというふうな形でその就労の機会を与えるというふうに運用するように考えております。
  211. 田中昭二

    田中(昭)委員 もう少しそのことを具光的にお聞きしたいのですけれども、新聞等の報道によりますと、この閉山によって退職する人たちの退職金の支給の問題ですが、何か七五%は政府のほうで保証するというようなことが報道されておりますが、これはどういうふうになっておりますか。
  212. 長橋尚

    ○長橋政府委員 特別閉山交付金制度におきまして、金融債務一般債務、鉱害債務等と並びまして、従業員の退職金債務をどのように扱うかという問題につきましては、目下最終的な詰めを急いでいる段階でございまして、これは法律が国会で御審議いただきましたあと、政省令できめる問題でございますけれども法案審議の一環といたしまして、目下具体的にどのように考えるかということについて検討いたしておるところでございます。
  213. 田中昭二

    田中(昭)委員 政務次官、この問題は退職金ですから、七五とか言わずに全部支給するようにはできませんか。できましたらあとでもけっこうですから、教えていただきたいと思います。
  214. 藤尾正行

    ○藤尾政府委員 従業員から会社が借りておりまする債務あるいは退職金につきましては、できる限り御趣旨のように処理いたしたいということで、現在努力中でございます。
  215. 田中昭二

    田中(昭)委員 それじゃ法律が通れば六月から実施するわけでしょう。ひとつわかりましたならば早急に教えていただきたいと思います。  最後に、明治鉱業が閉山にきまったわけですが、明治鉱業というのはずっと株価も安くて、ほんとうに塩づけといいますか、何とも言えない、株なんか持っている人は心配だろうと思うんですね。そういうのはどういうふうになりますか。これは大蔵省のほうから、明治鉱業あたりの株というのは、どういうことになっておりますか。
  216. 海堀洋平

    海堀政府委員 明治鉱業につきましては、たぶん、今回の法律規定しました特別閉山交付金の対象になりまして、企業ぐるみ閉山することになろうと思います。もちろんその資産が各般の債務に不足しているがゆえに、政府は退職金あるいは金融債務あるいは一般債務について所要の措置をとるわけでございます。当然会社の資産はあげて負債の返済に充てられるわけでございまして、有限責任でございますから当然ゼロで済むわけでございまして、もしこれが株式でなかったらもう少し負担していただきたいところでございます。
  217. 田中昭二

    田中(昭)委員 以上で終わります。
  218. 田中正巳

    田中委員長 次回は、明十六日水曜日、午前十時理事会、十時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。    午後五時四十七分散会